JP2005002283A - 熱伝導性組成物及びプラズマディスプレイ表示装置 - Google Patents

熱伝導性組成物及びプラズマディスプレイ表示装置 Download PDF

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Shunji Hyozu
俊司 俵頭
Kenichi Azuma
賢一 東
Atsushi Hasegawa
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Abstract

【課題】気泡を巻き込むことなく発熱体と放熱体とを接合させることができ、熱を効率よく伝えることができる熱伝導性組成物、及びそれを用いてなるプラズマディスプレイ表示装置を提供する。
【解決手段】炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体と、常温常圧で液状である高分子とを含有する熱伝導性組成物、好ましくは常温常圧で液状である高分子が、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするオリゴマーである熱伝導性組成物、及び、プラズマディスプレイパネルと放熱板とを有するプラズマディスプレイ表示装置であって、前記プラズマディスプレイパネル(1)と前記放熱板(3)とが該熱伝導性組成物(2)を介して接合されているプラズマディスプレイ表示装置(A)。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱体と放熱体とを接合させることができる熱伝導性組成物、及びそれを用いてなるプラズマディスプレイ表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気・電子部品等においては、部品から発生する熱によって破損等しないように、放熱体を設けて発熱体から発生した熱を外部に放熱することが行われている。
例えば、プラズマディスプレイ表示装置は、素子を挟み込んだ2枚のガラス基板からなるパネルを有し、パネルの1ドット毎にRGBの各要素があり、その各要素が放電により発光することにより各色を発現している。一方、色の発現には各色毎にRGBの各要素の放電状態が異なり、例えば、あるドットの発色が白の場合はRGBの各要素が全て放電することにより発色し、黒の場合はどの要素も放電していない。従って、放電による発光色によって発熱量に差が生じる。
【0003】
このため、プラズマディスプレイ表示装置の映している画面によっては、発光している要素が多い箇所と少ない箇所とにかなりの温度差が生じ、それぞれの部分での熱膨張率の違いからパネルに機械的負荷がかかり、パネル自体が割れを起こす危険性がある。更に、プラズマディスプレイ表示装置の映している画面によっては全体の発熱量が大きくなって、パネル自身の性能に影響を与える限界温度以上に高温になることもある。このため、パネルを構成するガラス基板の一方にアルミニウム等からなる放熱板を設け、プラズマディスプレイ表示装置が限界以上に高温になったり、温度差が生じたりするのを防いでいる。
【0004】
上述のように、放電による発光で発熱したパネルのような発熱体と上記アルミニウム等からなる放熱板のような放熱体との間には、通常、発熱体から発生した熱を効率よく放熱体に伝えるために熱伝導性組成物が介在される。
【0005】
従来、上記熱伝導性組成物としては、例えば、シリコーン樹脂に熱伝導性充填材を分散させたグリース状組成物である熱伝導性シリコーングリース等が用いられていた。上記グリース状組成物は、ある程度の熱伝導率を有すると同時に、必ずしも平滑ではない発熱体及び放熱体の表面によく追随できることから、効率よく発熱体から発生した熱を放熱体に伝えることができる。しかしながら、上記シリコーングリースは粘着性に乏しいことから、発熱体と放熱体とを接合させるためには、別に何らかの手段を講じる必要があり、例えば、プラズマディスプレイ表示装置のパネルのガラス基板と放熱板とを両面テープで接着し、生じた両者の間の空隙にシリコンを含むパテからなるシートを充填する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記特許文献1の方法では、両面テープを用いて発熱体と放熱体とを接着する工程と、熱伝導性組成物を充填する工程とが必要になることから、製造工程が増加し、製造効率が悪くなっていた。
【0006】
一方、熱伝導性組成物自体に粘着性を付与し、熱伝導性組成物によって発熱体と放熱体とを接合する方法が検討されている。しかしながら、このような粘着性を有する熱伝導性組成物を用いて発熱体と放熱体とを接合する際には、熱伝導性組成物と発熱体又は放熱体との間に気泡を巻き込んでしまうことがあるという問題があった。空気は熱伝導率が低いことから、空気を巻き込んでしまった場合には、その部分では熱伝導性が低下し、発熱体から発生した熱を効率よく放熱体に伝えることができない。とりわけ、プラズマディスプレイ表示装置におけるガラス基板からなるパネルと放熱板との接合のように、接合する面積が大きい場合には気泡の巻き込みは大きな問題となっていた。
【0007】
【特許文献1】
特許第2885147号公報(例えば、段落0019、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、気泡を巻き込むことなく発熱体と放熱体とを接合させることができ、熱を効率よく伝えることができる熱伝導性組成物、及びそれを用いてなるプラズマディスプレイ表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体と、常温常圧で液状である高分子とを含有する熱伝導性組成物を提供する。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、常温常圧で液状である高分子が、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするオリゴマーである請求項1記載の熱伝導性組成物を提供する。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、オリゴマーは、ガラス転移点温度が0℃以下である請求項2記載の熱伝導性組成物を提供する。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、オリゴマーは、粘度が常温常圧で20000mPa・s以下である請求項2記載の熱伝導性組成物を提供する。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、オリゴマーは、重量平均分子量が20000以下である請求項2記載の熱伝導性組成物を提供する。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、熱伝導性充填材を含有する請求項1、2、3、4又は5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を提供する。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、アスカーC硬度が常温常圧で30以下である請求項1、2、3、4又は5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を提供する。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、プラズマディスプレイパネルと放熱板とを有するプラズマディスプレイ表示装置であって、前記プラズマディスプレイパネルと前記放熱板とが請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を介して接合されているプラズマディスプレイ表示装置を提供する。
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の熱伝導性組成物は、炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体を含有する必要がある。
上記炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0018】
また、本発明の熱伝導性組成物は、常温常圧で液状である高分子を含有する必要がある。上記高分子は常温常圧で液状であるものであり、常温常圧で液状とは、常温常圧で固体状ではなく、流動性を示すものである。
上記常温常圧とは、通常の室温、通常の大気圧の状態下におかれたときのことを表すものである。
【0019】
本発明の熱伝導性組成物は、炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体100重量部に対する上記常温常圧で液状である高分子の配合量は10重量部以上、400重量部以下であることが好ましい。配合量が10重量部未満であると、気泡巻き込み防止効果が得られないことがあり、400重量部を越えると熱伝導性組成物をシート状に形成することが困難となる。
【0020】
上記常温常圧で液状である高分子は、上記炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体と相溶性があるものであれば特に限定されないが、相溶性を考慮すると、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするオリゴマーであることが好ましい。
【0021】
上記オリゴマーの主成分であるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0022】
上記オリゴマーのガラス転移点温度は0℃以下であることが好ましい。ガラス転移点温度が0℃を越えると、得られる熱伝導性組成物が常温で硬くなってしまう。好ましくは−10℃以下である。
【0023】
上記オリゴマーの常温常圧での粘度は20000mPa・s以下であることが好ましい。常温常圧での粘度が20000mPa・sを越えると、得られる熱伝導性組成物が常温で硬くなってしまう。好ましくは15000mPa・s以下である。
【0024】
上記オリゴマーの重量平均分子量は20000以下であることが好ましい。重量平均分子量が20000を越えると、得られる熱伝導性組成物が常温で硬くなってしまう。好ましくは15000以下である。
【0025】
本発明の熱伝導性組成物は、熱伝導性充填材を含有することが好ましい。
上記熱伝導性充填材としては特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の無機充填材;銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル等の金属充填材;チタン等の金属合金充填材;ダイヤモンド、炭素繊維、カーボンブラック等の炭素系充填材;石英、石英ガラス等のシリカ粉類等が挙げられ、また、無機充填材の粒子に銀、銅又は炭素材料を表面被覆したもの;金属充填材の粒子に無機材料又は炭素材料を表面被覆したもの等も挙げられる。上記熱伝導性充填材は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
また、上記熱伝導性充填材と熱伝導性組成物のベースとなる重合体との親和性を向上させるために、シラン処理等の各種表面処理を行った熱伝導性充填材を用いてもよい。
上記熱伝導性充填材の形状としては特に限定されず、例えば、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状、不定形等のものが用いられる。
【0027】
上記熱伝導性充填材の配合量は、上記熱伝導性組成物中に5体積%以上、90体積%以下が好ましい。配合量が5体積%未満であると、十分な熱伝導率向上効果が得られないことがあり、90体積%を超えると、熱伝導性組成物の硬度が高くなり、反りや凹凸に追従しにくくなることがある。
【0028】
本発明の熱伝導性組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体、常温常圧で液状である高分子、及び必要に応じ熱伝導性充填材を混練してシート化する方法等があるが、均一な熱伝導性組成物が得られることや、工程の簡素化がはかれることから、アクリル酸アルキルエステルモノマー、常温常圧で液状である高分子、及び必要に応じ熱伝導性充填材を混合してスラリー状にした後、アクリル酸アルキルエステルモノマーを重合させる方法が好ましい。
【0029】
また、上記スラリー状中のアクリル酸アルキルエステルモノマーを重合させる方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、パール重合等の従来公知の重合方法が挙げられるが、塊状重合が好ましく、光重合開始剤を用いた紫外線(UV)による光重合がより好ましい。
【0030】
上記光重合開始剤としては特に限定されず、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン[例えば、メルク社製:ダロキュア−2959]等のケトン系;α−ヒドロキシ−α、α’−ジメチル−アセトフェノン[例えば、メルク社製:ダロキュア−1173]、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア651]、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア184]等のアセトフェノン系;ベンジルジメチルケタール等のケタール系;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア819]等のアシルフォスフィンオキサイド系;アシルフォスフォナート、ハロゲン化ケトン等が挙げられる。
【0031】
上記光重合開始剤の添加量は、アクリル酸アルキルエステルモノマー100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下が好ましい。添加量が0.01重量部未満であると、重合度が低下し、モノマー臭の強い重合体しか得られないことがあり、5重量部を超えると、ラジカル発生量が多くなり、分子量が低下してしまい、重合体に必要な凝集力が得られなくなることがある。より好ましくは0.05重量部以上、3重量部以下である。
【0032】
上記光重合における光照射に用いられるランプ類としては特に限定されず、例えば、光波長400nm以下に発光分布を有するものが好適に用いられ、具体的には、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が用いられる。なかでも、ケミカルランプは、光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、光重合開始剤以外の組成物の光吸収が少ないため、内部まで光が透過し、高厚膜の熱伝導性組成物を製造するのに好ましい。
【0033】
上記ランプによる光重合を行う光照射強度は、得られる重合体の重合度を左右する因子であり、目的製品の性能毎に適宜制御されるのであるが、通常のアセトフェノン基を有する開裂型の光重合開始剤を配合した場合には該光重合開始剤の光分解に有効な波長領域(光重合開始剤によって異なるが、通常365nm〜420nmの光が用いられる)の光照射強度は0.1mW/cm以上、100mW/cm以下が好ましい。
【0034】
上記重合の際には、得られるアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体のガラス転移点温度、極性を調整するために、不飽和二重結合を有する極性共重合性モノマーを添加してもよい。
上記極性共重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のビニル基を有するカルボン酸及びビニル基を有するカルボン酸の無水物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記極性共重合性モノマーの添加量は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体中に20重量%以下が好ましい。20重量%を超えると、得られる熱伝導性組成物の柔軟性が低下し、密着性が低下することがある。
【0036】
上記アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体は、必要に応じて、耐熱性やクリープ特性を向上させるために架橋されてもよい。
上記架橋方法としては、例えば、アクリル酸アルキルエステルモノマーを溶媒中で重合する溶液重合又は水中で重合するエマルジョン重合等において、反応性の極性基を有する重合性モノマーを含有させ、この極性基と反応可能な架橋剤を添加することにより架橋させる方法等が挙げられる。
【0037】
上記架橋剤としては、例えば、トリレンジイソアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系架橋剤等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
また、上記アクリル酸アルキルエステルモノマーを光重合により重合する場合には、架橋剤として多官能(メタ)アクリレート化合物を添加することが好ましい。上記架橋剤を用いることにより、上記アクリル酸アルキルエステルモノマーの重合と同時に架橋を行なうことができる。
【0039】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記架橋剤の添加量は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下が好ましい。添加量が0.01重量部未満であると、得られる熱伝導性組成物の凝集力が低下して耐熱性やクリープ特性に劣ることがあり、5重量部を超えると、柔軟性が損なわれて密着性が低下することがある。より好ましくは0.02重量部以上、3重量部以下である。
【0041】
本発明の熱伝導性組成物におけるアクリル酸アルキルエステルを主成分とするオリゴマーを得る方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられるが、塊状重合が好ましく、光重合開始剤を用いた紫外線(UV)による光重合がより好ましい。
上記光重合方法としては、上記アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体作製時のアクリル酸アルキルエステルモノマーを重合させる場合と同様の方法を用いることができる。
また、分子量の小さいオリゴマーにするためには、例えば、連鎖移動剤等が用いられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン、ハロゲン化アルキル等が挙げられる。
【0042】
本発明の熱伝導性組成物には、発熱体や放熱体との密着性を向上させるために、粘着付与剤が添加されてもよい。
上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、C及びC系石油樹脂、クロマン樹脂等、並びに、これらの水添物等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【0043】
なお、上記粘着付与剤を上記アクリル酸アルキルエステルモノマーの重合時に添加する場合には、重合速度の低下や分子量の低下を生じる場合があるので、連鎖移動剤や架橋剤の量を適宜調節したり、重合阻害性の低い粘着付与剤を用いることが好ましい。
上記重合阻害性の低い粘着付与剤としては、例えば、水添テルペン樹脂、水添ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0044】
上記粘着付与剤の添加量は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体100重量部に対して5重量部以上、50重量部以下が好ましい。添加量が5重量部未満であると、密着性の向上効果が少なく、50重量部を超えると、熱伝導性組成物の柔軟性が低下し、かえって密着性が低下することがある。より好ましくは10重量部以上、40重量部以下である。
【0045】
本発明の熱伝導性組成物には、必要に応じて、各種の添加剤が添加されてもよい。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、軟化剤、無機充填材、有機充填材、顔料、染料等が挙げられる。
【0046】
本発明の熱伝導性組成物のアスカーC硬度は、常温常圧で30以下であることが好ましい。アスカーC硬度が30を越えると本発明の熱伝導性組成物を用いて発熱体と放熱体とを接合させたとき、密着性が低下するおそれがある。より好ましくは25以下である。
【0047】
本発明の熱伝導性組成物を用いて発熱体と放熱体とを接合させると、熱伝導性組成物は非常に柔軟であるため、発熱体及び放熱体に密着し、これにより、高い効率で発熱体から発生した熱を放熱体に伝えることができる。
本発明の熱伝導性組成物を用いて発熱体と放熱体とを接合する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の熱伝導性組成物をシート状に成形し、これを介して発熱体と放熱体とを接合する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の熱伝導性組成物は、プラズマディスプレイ表示装置におけるプラズマディスプレイパネルと放熱板との接合のように、接合する面積が大きい場合に特に好適に用いることができ、プラズマディスプレイ表示装置における発熱体と放熱体との接合に好適に用いることができる。本発明の熱伝導性組成物を介して接合されてなるプラズマディスプレイ表示装置もまた、本発明の1つである。
【0049】
(作用)
本発明の熱伝導性組成物において、アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は2〜14であり、アルキル基の炭素数がこの範囲にあるアクリル酸アルキルエステルを用いることにより、得られる重合体は広い温度範囲で柔軟性を有する。
また、本発明者らは、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体と、特定の性質を有する液状高分子とを含有する熱伝導性組成物を用いることにより、熱伝導性組成物は良好な粘着性により発熱体と放熱体とを接合させることができ、かつ、接合の際に空気を巻き込みにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0050】
本発明のプラズマディスプレイ表示装置は、広い温度範囲で良好な粘着性及び柔軟性を示す本発明の熱伝導性組成物を、プラズマディスプレイパネルと放熱板との接合に用いられることにより、空気を巻き込まずに発熱体と放熱体とを密着することから高い効率で発熱体から発生した熱を放熱体に伝えることができる。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示したプラズマディスプレイ表示装置Aは、発熱体であるプラズマディスプレイパネル1と、放熱フィン4が設置されたアルミ平板の放熱板3とが、シート状の熱伝導性組成物2で接合されている。
【0052】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
〔アクリルオリゴマーの作製〕
セパラブルフラスコにて、アクリル酸ブチル100重量部、連鎖移動剤であるドデカンチオール0.05重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5重量部を配合し、そこにモノマー濃度が55%の溶液になるように酢酸エチルを追加した後、窒素ガスによるバブリングを行って溶存酸素を除去して重合性モノマー溶液を調製した。
次にセパラブルフラスコ表面における紫外線照射強度が、5.0mW/cmとなるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、セパラブルフラスコの攪拌回転数70回転にて4時間攪拌しながら重合を行い、オリゴマーの酢酸エチル溶液を得た。このオリゴマーの酢酸エチル溶液を別の容器に入れ替え、100℃の乾燥機に投入して酢酸エチルを蒸発させて、アクリルオリゴマーを得た。
【0054】
〔熱伝導性組成物の作製〕
アクリル酸2−エチルヘキシル19.5重量部に、先ほど得られたアクリルオリゴマー45.5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート0.05重量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5重量部、及び、熱伝導性充填材としてシリカ(商品名:M3000、S.C.R.SIBELCO社製)90重量部を均一になるまでプラネタリーミキサーにて攪拌した後、窒素ガスによるバブリングを行って溶存酸素を除去して重合性モノマー溶液を調製した。
次いで離型処理した50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に1mm厚みのスペーサーを設置し、得られた重合性モノマー溶液をPETフィルム上に展開した後、このPETフィルムを折り曲げて、離型処理面が重合性モノマー溶液に接するよう被覆した。この状態で、被覆側のPETフィルム上における紫外線照射強度が5.0mW/cmとなるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、15分間紫外線を照射することにより重合して、シート状の熱伝導性組成物を作製した。
【0055】
(実施例2)
アクリル酸2−エチルヘキシル19.5重量部の代わりに、アクリル酸ブチル19.5重量部を用いた以外は実施例1と同様にしてシート状の熱伝導性組成物を作製した。
【0056】
(比較例1)
アクリル酸2−エチルヘキシルを19.5重量部から65重量部とし、アクリルオリゴマーを用いなかった以外は実施例1と同様にしてシート状の熱伝導性組成物を作製した。
【0057】
(比較例2)
比較評価用に熱伝導性シリコーングリース(商品名:G−747、信越化学社製)を選定した。
【0058】
実施例1、2及び比較例1で作製したシート状の熱伝導性組成物、並びに比較例2の熱伝導性シリコーングリースについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0059】
(1)アスカーC硬度の測定
C型ゴム硬度計(高分子計器社製)にて23℃雰囲気でのアスカーC硬度を測定した。
【0060】
(2)保持性の評価
JIS Z 0237保持力の試験方法に準拠して、25mm×25mmの大きさのシート状の熱伝導性組成物又は熱伝導性シリコーングリースを、アルミニウム板とガラス板の間に挟み込み、62.5gの錘をかけて、ガラス板と合わせた負荷荷重を10g/cmとして、60℃下24時間後の、錘の落下の有無を確認した。
【0061】
(3)密着性の評価
図2に示したように、平坦な台7の平面に210mm×150mmの大きさのシート状の熱伝導性組成物5を貼り付け、又は熱伝導性シリコーングリースを塗布し、この上から300mm×210mm×2mmのガラス板6をガラス板の中央部分にシート又はグリースがくるように静かに載せた。
次いで、図3に示したように、平坦な台の平面とガラス板9との間に挟み込まれたシート状の熱伝導性組成物8、又は熱伝導性シリコーングリースに、ガラス板上の12点の位置に4kgの錘10を載せた。錘を載せた直後、及び3時間後に目視にて観察し、ガラス板とシート又はグリースとが気泡に妨げられずに密着している部分の面積を、シート又はグリースの全体の面積に対する面積割合(%)で表し、気泡の有無による密着性の評価をした。
【0062】
(4)作業性
上記(3)の密着性の評価のためにシート状の熱伝導性組成物を貼り付け、又は熱伝導性シリコーングリースを塗布したときの作業性を官能評価した。
【0063】
【表1】
Figure 2005002283
【0064】
表1から、実施例1及び2で作製したシート状の熱伝導性組成物は60℃の高温でも保持性を発揮することがわかった。また、錘を載せた直後よりも、時間の経過とともに密着が進み、3時間後にはかなりの気泡が消失してガラス板とシートとが密着した。これにより、高い熱伝導効率が期待できる。
一方、比較例1で作製したシート状の熱伝導性組成物は、保持性は良好なものの、錘を載せてから3時間後でも多くの気泡が残存しガラス板とシートとが密着していないことから、高い熱伝導効率は期待できない。また、比較例2の熱伝導性シリコーングリースは、密着性は非常に良いが、作業性は煩雑であり保持性は無い。
【0065】
【発明の効果】
本発明の熱伝導性組成物は、上述の構成からなるので、気泡を巻き込むことなく発熱体と放熱体とを接合させることができるので、熱を効率よく伝えることができる。
また、本発明のプラズマディスプレイ表示装置は、本発明の熱伝導性組成物を用いてなるので、気泡を巻き込むことなく発熱体と放熱体とを接合させることができるので、熱を効率よく伝え、発熱体から放熱体に熱伝導できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマディスプレイ表示装置の一実施例で、プラズマディスプレイパネルと放熱板との間に熱伝導性組成物が挟み込まれた模式図である。
【図2】実施例の密着性の評価において、熱伝導性組成物とガラス板との配置を示す模式図である。
【図3】実施例の密着性の評価において、錘を配置する位置を示す模式図である。
【符号の説明】
A プラズマディスプレイ表示装置
1 プラズマディスプレイパネル
2 熱伝導性組成物(シート状)
3 放熱板(アルミ平板)
4 放熱フィン
5 熱伝導性組成物(シート状)
6 ガラス板
7 平坦な台
8 熱伝導性組成物(シート状)
9 ガラス板
10 錘

Claims (8)

  1. 炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体と、常温常圧で液状である高分子とを含有することを特徴とする熱伝導性組成物。
  2. 常温常圧で液状である高分子が、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするオリゴマーであることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性組成物。
  3. オリゴマーは、ガラス転移点温度が0℃以下であることを特徴とする請求項2記載の熱伝導性組成物。
  4. オリゴマーは、粘度が常温常圧で20000mPa・s以下であることを特徴とする請求項2記載の熱伝導性組成物。
  5. オリゴマーは、重量平均分子量が20000以下であることを特徴とする請求項2記載の熱伝導性組成物。
  6. 熱伝導性充填材を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
  7. アスカーC硬度が常温常圧で30以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
  8. プラズマディスプレイパネルと放熱板とを有するプラズマディスプレイ表示装置であって、前記プラズマディスプレイパネルと前記放熱板とが請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を介して接合されていることを特徴とするプラズマディスプレイ表示装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006270088A (ja) * 2005-03-21 2006-10-05 Mitac Technology Corp サーマル・インタフェイス材料構造とその製造方法
JP2007191519A (ja) * 2006-01-17 2007-08-02 Taiyo Ink Mfg Ltd 放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板
JP2018172594A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 積水化学工業株式会社 無機フィラー含有光硬化性組成物、及び、無機フィラー含有シート

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