JP2005001206A - 造形物の洗浄方法、造形物の製造方法および洗浄装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光造形を利用した造形物の内部空間を適切に洗浄する手法を提供する。
【解決手段】液状の光硬化性樹脂に光を照射して基板9上に形成された造形物8の内部には、らせん状の微小孔81が形成される。造形物8の面801には上側開口82が、面802には下側開口83がそれぞれ設けられ、上側開口82および下側開口83は微小孔81へと連絡する。造形物8が形成された基板9は洗浄装置にロードされ、洗浄装置のノズル411が上側開口82に挿入されて押圧される。ノズル411から吐出される洗浄液は上側開口82から注入され、微小孔81内を移動して下側開口83から排出される。これにより、光造形後に微小孔81内に残留した未硬化の光硬化性樹脂を適切に除去することができ、内部空間の形状精度が高い造形物8を製造することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】液状の光硬化性樹脂に光を照射して基板9上に形成された造形物8の内部には、らせん状の微小孔81が形成される。造形物8の面801には上側開口82が、面802には下側開口83がそれぞれ設けられ、上側開口82および下側開口83は微小孔81へと連絡する。造形物8が形成された基板9は洗浄装置にロードされ、洗浄装置のノズル411が上側開口82に挿入されて押圧される。ノズル411から吐出される洗浄液は上側開口82から注入され、微小孔81内を移動して下側開口83から排出される。これにより、光造形後に微小孔81内に残留した未硬化の光硬化性樹脂を適切に除去することができ、内部空間の形状精度が高い造形物8を製造することができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して造形物を製造する技術に関し、特に、形成された造形物を洗浄する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液状の光硬化性樹脂に光を照射して造形物を形成する光造形が実施されている。光造形では、造形物の3次元形状データをスライスして複数の断面データ(すなわち、2次元形状データ)を作成し、光硬化性樹脂を積層しながら各層に対応する断面データに基づいて光を照射することにより、所望の3次元造形物が形成される。このような手法により形成された造形物は、通常、表面に付着した未硬化の光硬化性樹脂が洗浄液(例えば、エタノールやケトン等の有機溶剤)で洗い流されたり、洗浄液に浸漬されて除去される。また、特殊な洗浄方法として、回転するステージ上に造形物を載置して洗浄液を表面に噴射したり(いわゆる、シャワー法)、洗浄液を貯溜した容器内に浸漬して超音波を付与する(いわゆる、超音波洗浄)ことにより、未硬化の樹脂を除去する手法も知られている。
【0003】
なお、特許文献1では造形物に形成された内部空間に空気を導入することにより、内部に残留した未硬化の光硬化性樹脂を空気に置換して除去する手法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−23854号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、微小な、あるいは、複雑な形状の内部空間を有する造形物を洗浄する際には、従来のシャワー法や超音波洗浄を施した場合であっても、未硬化の光硬化性樹脂が内部空間に残留してしまい、所望の内部形状の造形物を製造できないという問題がある。また、特許文献1の手法では、造形物の内部空間が簡素な形状である場合には残留する光硬化性樹脂を容易に除去することができるが、複雑な形状の場合には表面張力等の影響により不必要な光硬化性樹脂が残ってしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、光造形を利用した造形物の内部空間を適切に洗浄する手法を提供するとともに、これにより、形状精度の高い内部空間を有する造形物を製造することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物の洗浄方法であって、a)注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を準備する工程と、b)前記注入口から洗浄液を注入するとともに前記排出口から前記洗浄液を連続的に排出する工程とを有する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の造形物の洗浄方法であって、前記b)工程の後に、前記内部空間に残留する洗浄液を排出する工程をさらに有する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の造形物の洗浄方法であって、前記b)工程に並行して、前記排出口を吸引する工程をさらに有する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の造形物の洗浄方法であって、前記b)工程の前に、前記注入口に前記洗浄液を吐出するノズルを押圧する工程をさらに有する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、光造形を利用した造形物の製造方法であって、a)流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射することにより、注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を形成する工程と、b)前記注入口から洗浄液を注入するとともに前記排出口から前記洗浄液を連続的に排出する工程とを有する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の造形物の製造方法であって、前記a)工程において、前記注入口および前記排出口の少なくともいずれか一方が、前記内部空間に連絡する微小開口とは別の専用の開口として形成される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の造形物の製造方法であって、前記内部空間の内壁がチューブ状であり、前記注入口の開口面積が前記内部空間の断面積より大きい。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の造形物の製造方法であって、前記注入口が、前記造形物の内部から表面に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項5ないし8のいずれかに記載の造形物の製造方法であって、前記a)工程において、前記注入口に連絡する複数の排出口が形成される。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項5ないし9のいずれかに記載の造形物の製造方法であって、前記内部空間の内壁が、微小形状作製用の型である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物を洗浄する洗浄装置であって、注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を保持する保持部と、洗浄液を吐出するノズルと、前記注入口に前記ノズルを押圧する押圧機構とを備える。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る洗浄装置1の構成を示す図である。洗浄装置1は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物を洗浄する装置であり、洗浄装置1により造形物の内部空間に残留する光硬化性樹脂が除去される。なお、造形物は微小形状を作製するための型として使用される。
【0019】
洗浄装置1は、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、ステージユニット3がステージ移動機構2により図1中に示すX,Y方向に移動可能とされる。ステージユニット3には造形物8が形成された基板9が保持されており、ステージユニット3を跨ぐようにしてフレーム12が基台11に固定される。フレーム12には押圧機構51が取り付けられ、押圧機構51により洗浄液を吐出するヘッドユニット4が支持されてステージユニット3に対向する位置に配置される。
【0020】
ステージ移動機構2はステージユニット3を図1中のX方向に移動するX方向移動機構21、および、Y方向に移動するY方向移動機構22を有する。X方向移動機構21はモータ211にボールねじ(図示省略)が接続され、モータ211が回転することにより、Y方向移動機構22がガイドレール212に沿って図1中のX方向に移動する。Y方向移動機構22もX方向移動機構21と同様の構成となっており、モータ221が回転するとボールねじ(図示省略)によりステージユニット3がガイドレール222に沿ってY方向に移動する。
【0021】
ステージユニット3は、ヘッドユニット4側に開口する部材である保持本体31を有し、保持本体31には内部に流入する洗浄液を回収する洗浄液回収部32が接続される。保持本体31の上部(開口側)には、メカニカルチャックを有する保持プレート33が取り付けられ、基板9はメカニカルチャックにより保持プレート33上に保持される。
【0022】
押圧機構51はフレーム12に固定された支持板13の下面に取り付けられ、押圧機構51によりヘッドユニット4がステージユニット3上の基板9に対して進退する。ヘッドユニット4は、基板9に対向して配列される複数のアクセス部41を有し、各アクセス部41には微細な吐出口を有するノズル411が設けられる。ヘッドユニット4には供給管611が接続されており、分岐された供給管611の一方が制御弁612を介してシリンジ等の加圧機構を有する洗浄液供給部62に接続され、他方が制御弁613を介してエア供給部63に接続される。また、支持板13にはステージユニット3上の画像を取得する撮像部52が設けられる。
【0023】
洗浄装置1は、ステージ移動機構2、押圧機構51、制御弁612,613および撮像部52に接続された制御部7をさらに有し、制御部7がこれらの構成を制御することにより洗浄装置1が基板9上の造形物8を洗浄する。
【0024】
次に、光造形を利用して造形物を製造する動作について説明を行う。図2は、造形物を製造する工程を示す図である。まず、別途設けられた光造形装置に基板がセットされて、基板上に造形物が形成される(ステップS11)。例えば、液状の光硬化性樹脂を貯溜する樹脂漕が設けられた光造形装置において、基板がステージに支持されて樹脂漕内に所定の深さまで浸漬され、樹脂が基板上を覆うようにスキージにより液面が一様にされる。これにより、基板上に光硬化性樹脂の液層が一定の厚さ(例えば、20μm以下の厚さであり、以下、「スライス厚さ」という。)にて形成される。そして、予め準備されている断面データに従って光造形装置が有する光照射部から光が基板に照射され、基板上に造形物の最初の層が形成される。
【0025】
続いて、ステージがスライス厚さだけ下降し、上記と同様に、スキージによりならされた後に造形用の光が照射され、造形物の次の層が形成される。これらの動作が繰り返されることにより、図3に示すように、らせん状に形成された微小孔81(実際には、配列された複数の微小孔81)を有する造形物8が基板9上に微小な厚さ(例えば、2mm以下の厚さ)にて形成される。
【0026】
図3に示す造形物8において、微小孔81の内壁は直径が数十μmのチューブ状とされ、この段階では微小孔81内に未硬化の光硬化性樹脂が残留している。造形物8の基板9側の面802には微小孔81から連続する微小開口83(以下、「下側開口83」という。)が形成され、基板9に予め設けられた貫通孔91に連絡する。また、造形物8の基板9とは反対側の面801にも同様に、微小孔81から連続する微小開口82(以下、「上側開口82」という。)が設けられる。上側開口82は造形物8の内部から表面(すなわち、面801)に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口であり、面801の位置における開口の直径は数百μmである。
【0027】
基板9上に造形物8が形成されて準備されると、基板9が洗浄装置1にロードされる(ステップS12)。すなわち、造形物8を上側にして基板9が保持プレート33上に載置されて保持される(図1参照)。なお、保持プレート33において基板9の貫通孔91近傍には開口部が設けられている。
【0028】
洗浄装置1では、制御部7の制御によりステージ移動機構2が駆動し、基板9上の所定位置(例えば、位置決め用のマークが形成された位置)が撮像部52による撮像位置に移動する。撮像部52により基板9上の画像が取得されると、制御部7は入力された画像に応じて基板9をヘッドユニット4の下方へと移動し、造形物8の複数の上側開口82がそれぞれ対応するノズル411の下方に位置するように基板9がヘッドユニット4に対して位置決めされる(ステップS13)。
【0029】
続いて、押圧機構51が駆動され、ヘッドユニット4が基板9に向かって下降する。そして、図3に示すようにノズル411の先端が注入口である上側開口82に挿入され、傾斜面に当接して所定の圧力にて押圧される(ステップS14)。ノズル411が上側開口82に接続されると、洗浄液の注入が開始される(ステップS15)。具体的には、制御弁612が開放されて洗浄液供給部62からヘッドユニット4に洗浄液が供給され、ノズル411の先端から吐出される洗浄液が上側開口82から連続的に注入される。このとき、ノズル411は押圧機構51により上側開口82に押圧されるため、ノズル411と上側開口82との間から洗浄液が漏れ出すことが抑制される。
【0030】
前述のように、上側開口82は微小孔81を介して下側開口83に連絡しており、注入される洗浄液は微小孔81に沿って下側開口83に向かって流れる。このとき、微小孔81に残留する未硬化の光硬化性樹脂は洗浄液中に溶解され(または、押し流され)、洗浄液とともに下側開口83から排出される。排出された光硬化性樹脂や洗浄液は基板9の貫通孔91および保持プレート33を介して保持本体31内へと導かれ、洗浄液回収部32により回収される。
【0031】
洗浄液が所定の時間注入されると、制御弁612が閉じられて洗浄液の注入が停止される(ステップS16)。そして、制御弁613が一時的に開放され、エア供給部63からのエアがノズル411を介して上側開口82から微小孔81へと供給される(ステップS17)。これにより、微小孔81内に残留する洗浄液が排出され、内部空間の不要物が取り除かれた造形物8が完成する。このようにして製造された造形物8は、微小形状作製用の型として利用され、無電解メッキ等により微小孔81の形状に対応する微小な形状の成型物が作製される。
【0032】
以上のように、図2に示す造形物の製造では、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射することにより、注入口(すなわち、上側開口82)から排出口(すなわち、下側開口83)へと連絡する内部空間である微小孔81を有する造形物8が形成され、洗浄装置1において注入口から注入される洗浄液が、未硬化の光硬化性樹脂が残留する微小孔81内を移動し、排出口から排出される。これにより、造形物8の微小孔81に残留する光硬化性樹脂を適切に除去することができ、形状精度の高い内部空間(特に微小な内部空間)を有する造形物8を製造することができる。
【0033】
次に、造形物の他の例について説明する。図4は、他の例に係る製造途上の造形物8aを示す図である。図4に示す造形物8aでは、図1の造形物8と比較して基板9側の面802に補助開口85a,85bがさらに形成され、それぞれ補助孔84a,84bを介して微小孔81の互いに異なる位置へと連絡する。
【0034】
図4の造形物8aが洗浄される際には、上側開口82から注入される洗浄液の一部は補助孔84aを介して補助開口85aから排出され、残りの一部の洗浄液は、微小孔81内をさらに移動して補助孔84bを介して補助開口85bから排出される。そして、補助孔84a,84bに導かれなかった洗浄液は下側開口83まで流れて排出される。微小孔81に接続する位置における補助孔84a,84bの直径は、洗浄液が微小孔81の全体に行き渡るようにノズル411からの洗浄液の注入条件(例えば、単位時間当たりの注入量や圧力等)に応じて決定される。
【0035】
以上のように、図4に示す造形物8aでは光造形工程(図2のステップS11)において、注入口に連絡する複数の排出口(すなわち、下側開口83、補助開口85a,85b)が形成される。その結果、注入された洗浄液を円滑かつ容易に排出することができ、造形物8aの内部空間を適切に洗浄することができる。なお、造形物8aにおいて補助孔84a,84bは微小形状作製用の型としては利用されない。
【0036】
ところで、洗浄装置1では、洗浄液回収部32が吸引ポンプとしての機能を有していてもよい。この場合、造形物8の下側開口83(または、造形物8aにおける下側開口83および補助開口85a,85b)の近傍が基板9の貫通孔91を介して減圧されるため、注入された洗浄液を吸引作用により下側開口83から容易に排出し、微小孔81を適切に洗浄することができる。
【0037】
さらに、洗浄液回収部32が吸引ポンプとしての機能を有するとともに、保持プレート33を多孔質材料で形成することにより、保持プレート33にメカニカルチャックを設けることなく洗浄液回収部32の吸引により基板9を吸着保持しつつ、微小孔81に注入された洗浄液を容易に排出し、造形物8の内部空間を洗浄することも可能となる。
【0038】
図5は本発明の第2の実施の形態に係る洗浄装置1aの構成、および、製造途上の造形物8bを示す図である。図5の洗浄装置1aには2つのノズル411,411aを有する複数のアクセス部41aが設けられる(但し、図5では1つのアクセス部41aのみを図示している。)。一方のノズル411は、図1の洗浄装置1と同様に、分岐する供給管611を介して洗浄液供給部62およびエア供給部63に接続され、他方のノズル411aには供給管611aから制御弁614を介してポンプ64が接続される。また、図5の洗浄装置1aでは図1の洗浄装置1から洗浄液回収部32が省略され、保持本体31および保持プレート33がメカニカルチャックを有する板状のステージ(図示省略)と置き換えられる。他の構成は、図1の洗浄装置1と同様であり、同符号を付している。
【0039】
図5の造形物8bでは、図2のステップS11における光造形工程において、微小孔81の下側開口83の近傍に接続する補助孔84c、および、上側開口82aの近傍に接続する補助孔84dが形成される。補助孔84c,84dは、それぞれ造形物8の基板9とは反対側の面801にて開口する補助開口85c,85dへと連絡しており、補助開口85c,85dは面801側に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口とされる。ここで、補助孔84cは基板9側の面802に近接した位置にて微小孔81に接続しており、補助孔84cと面802との間には厚さの薄い(例えば、1つのスライス厚さの)硬化した光硬化性樹脂の層が介在する。
【0040】
次に、図5に示す洗浄装置1aにおいて、造形物8bを洗浄する動作について説明する。図6は、図5の洗浄装置1aを利用して造形物8bを製造する動作の流れを示す図であり、図2のステップS15以降に行われる動作(ステップS21はステップS15と並行して行われる。)を示している。
【0041】
基板9上に造形物8bが形成されると、基板9が洗浄装置1aのステージ上に載置され、ヘッドユニット4に対して位置決めされる(図2のステップS12,S13)。そして、押圧機構51が駆動することにより、ノズル411,411aがそれぞれ注入口である補助開口85c、および、排出口である補助開口85dに当接して押圧される(ステップS14)。
【0042】
続いて、制御部7により制御弁612,614が開放されることにより、洗浄液の注入が開始されるとともに(ステップS15)、ポンプ64の排出動作により補助開口85dからの吸引が開始される(ステップS21)。これにより、注入された洗浄液が補助孔84c、微小孔81および補助孔84dを介して補助開口85dへと連続的に移動し、ノズル411aへと強制的に排出される。このとき、前述のように補助孔84cが面802付近において微小孔81に接続されるため、下側開口83近傍にも洗浄液が流入し、残留する光硬化性樹脂が除去される。なお、微小孔81の上側開口82a近傍は洗浄液が通過しないが、この部分については外部から洗浄することが可能である。
【0043】
制御弁612が閉じられて洗浄液の注入が停止されると(ステップS22)、制御弁613が開放されることによりエア供給部63からのエアが補助開口85cより供給され、微小孔81、補助孔84c,84d内に残留する洗浄液が除去される(ステップS23)。エアが所定の時間注入されると、制御弁613,614が閉じられてエアの供給、および、補助開口85dの吸引が停止する(ステップS24)。このようにして製造された造形物8bにおいて微小孔81は、微小形状作製用の型として利用される。
【0044】
以上のように、図5の造形物8bでは、微小孔81にそれぞれ接続する注入口および排出口(すなわち、補助開口85c,85d)が、微小孔81の微小開口(すなわち、上側開口82および下側開口83)とは別の専用の開口として形成される。そして、図5の洗浄装置1aにおいて、洗浄液が補助開口85cから注入され、これに並行して補助開口85dが吸引されて開口近傍の圧力が大気圧に対して減圧される。これにより、図5の洗浄装置1aでは洗浄液を容易に注入して排出し、微小孔81に残留する未硬化の光硬化性樹脂を適切に除去することができ、その結果、形状精度の高い内部空間を有する造形物を製造することができる。
【0045】
なお、図5の洗浄装置1aにおいて補助開口85cには、必ずしも強制的にエアが供給される必要はなく、例えば、ポンプ64の排出動作に伴って微小孔81内に周囲のエア(予めフィルタを介して浄化されているものとする。)が自然に注入されてもよい。また、必要に応じてアクセス部41に上側開口82aを閉塞する部材が設けられ、補助開口85dが効率よく減圧されてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0047】
図1の洗浄装置1において、造形物8の表面全体に洗浄液が付与されて下側開口83からの吸引により洗浄液が微小孔81内へと流入し排出されてもよい。すなわち、洗浄装置の設計によっては、洗浄液を強制的に注入するノズルを設けなくとも、注入口に付与される洗浄液に作用する圧力と排出口近傍に作用する圧力との間に差を生じさせることにより、洗浄液を注入口から注入することができる。
【0048】
上記第1の実施の形態では、貫通孔91が形成された基板9が利用されるが、例えば、多孔質材料により形成された基板上に造形物が形成され、排出口からの洗浄液が基板を介して排出されてもよい。なお、造形物は必ずしも板状の基板上に形成される必要はない。
【0049】
注入口である上側開口82(または、補助開口85c)はテーパ状とされることが好ましいが、一般的には上側開口82の開口面積を造形物8の内部空間である微小孔81の断面積よりも大きくすることによりノズルを開口に挿入して洗浄液の漏れを抑制することができる。
【0050】
注入口に押圧されるノズルは、例えば、図7に示すようにゴム等の弾性体により形成される環状部材412が先端に設けられたものであってもよい。このようなノズル411bでは注入口がテーパ状にされない場合であっても、洗浄液が適切に注入される。もちろん、排出口に対してもノズル411bと同構造のノズルが接続されてもよい。
【0051】
また、ヘッドユニット4には必ずしも複数のアクセス部が設けられる必要はなく、1つのアクセス部が基板9に対して相対的に移動して複数の微小孔81が順次洗浄されてもよい。
【0052】
図4の造形物8aでは排出口の役割を果たす補助開口85a,85bが、また、図5の造形物8bではそれぞれ注入口および排出口の役割を果たす補助開口85c,85dが、微小孔81の微小開口(すなわち、上側開口82,82aおよび下側開口83)とは別の専用の開口として形成されるが、このような洗浄用の開口が注入口のみに設けられてもよい。
【0053】
造形物の内部空間は、必ずしもチューブ状の内壁を有する微小孔81とされる必要はなく、より複雑な形状であってもよい。なお、造形物は樹脂漕を有する光造形装置により形成される必要はなく、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成されるのであればいかなる手法により形成されてもよい。
【0054】
また、製造された造形物は微小形状作製用の型以外の用途に利用されてもよい。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、光造形後の造形物の内部空間に残留する光硬化性樹脂を適切に除去することができ、これにより、形状精度の高い内部空間を有する造形物を製造することができる。
【0056】
また、請求項2の発明では、造形物の内部空間に残留する洗浄液を除去することができる。
【0057】
また、請求項3および9の発明では、洗浄液を容易に排出することができる。
【0058】
また、請求項4、7および8の発明では、注入口からの洗浄液の漏れを抑制することができる。
【0059】
また、請求項6の発明では、洗浄液を容易に注入または排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】造形物を製造する動作の流れを示す図である。
【図3】造形物を洗浄する様子を説明するための図である。
【図4】造形物の他の例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る洗浄装置の構成、および、造形物を示す図である。
【図6】造形物を製造する動作の流れを示す図である。
【図7】ノズルの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1,1a 洗浄装置
3 ステージユニット
8,8a,8b 造形物
51 押圧機構
62 洗浄液供給部
63 エア供給部
64 ポンプ
81 微小孔
82,82a 上側開口
83 下側開口
85a〜85d 補助開口
411,411a,411b ノズル
S11,S14〜S17,S21〜S24 ステップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して造形物を製造する技術に関し、特に、形成された造形物を洗浄する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液状の光硬化性樹脂に光を照射して造形物を形成する光造形が実施されている。光造形では、造形物の3次元形状データをスライスして複数の断面データ(すなわち、2次元形状データ)を作成し、光硬化性樹脂を積層しながら各層に対応する断面データに基づいて光を照射することにより、所望の3次元造形物が形成される。このような手法により形成された造形物は、通常、表面に付着した未硬化の光硬化性樹脂が洗浄液(例えば、エタノールやケトン等の有機溶剤)で洗い流されたり、洗浄液に浸漬されて除去される。また、特殊な洗浄方法として、回転するステージ上に造形物を載置して洗浄液を表面に噴射したり(いわゆる、シャワー法)、洗浄液を貯溜した容器内に浸漬して超音波を付与する(いわゆる、超音波洗浄)ことにより、未硬化の樹脂を除去する手法も知られている。
【0003】
なお、特許文献1では造形物に形成された内部空間に空気を導入することにより、内部に残留した未硬化の光硬化性樹脂を空気に置換して除去する手法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−23854号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、微小な、あるいは、複雑な形状の内部空間を有する造形物を洗浄する際には、従来のシャワー法や超音波洗浄を施した場合であっても、未硬化の光硬化性樹脂が内部空間に残留してしまい、所望の内部形状の造形物を製造できないという問題がある。また、特許文献1の手法では、造形物の内部空間が簡素な形状である場合には残留する光硬化性樹脂を容易に除去することができるが、複雑な形状の場合には表面張力等の影響により不必要な光硬化性樹脂が残ってしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、光造形を利用した造形物の内部空間を適切に洗浄する手法を提供するとともに、これにより、形状精度の高い内部空間を有する造形物を製造することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物の洗浄方法であって、a)注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を準備する工程と、b)前記注入口から洗浄液を注入するとともに前記排出口から前記洗浄液を連続的に排出する工程とを有する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の造形物の洗浄方法であって、前記b)工程の後に、前記内部空間に残留する洗浄液を排出する工程をさらに有する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の造形物の洗浄方法であって、前記b)工程に並行して、前記排出口を吸引する工程をさらに有する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の造形物の洗浄方法であって、前記b)工程の前に、前記注入口に前記洗浄液を吐出するノズルを押圧する工程をさらに有する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、光造形を利用した造形物の製造方法であって、a)流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射することにより、注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を形成する工程と、b)前記注入口から洗浄液を注入するとともに前記排出口から前記洗浄液を連続的に排出する工程とを有する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の造形物の製造方法であって、前記a)工程において、前記注入口および前記排出口の少なくともいずれか一方が、前記内部空間に連絡する微小開口とは別の専用の開口として形成される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の造形物の製造方法であって、前記内部空間の内壁がチューブ状であり、前記注入口の開口面積が前記内部空間の断面積より大きい。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の造形物の製造方法であって、前記注入口が、前記造形物の内部から表面に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項5ないし8のいずれかに記載の造形物の製造方法であって、前記a)工程において、前記注入口に連絡する複数の排出口が形成される。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項5ないし9のいずれかに記載の造形物の製造方法であって、前記内部空間の内壁が、微小形状作製用の型である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物を洗浄する洗浄装置であって、注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を保持する保持部と、洗浄液を吐出するノズルと、前記注入口に前記ノズルを押圧する押圧機構とを備える。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る洗浄装置1の構成を示す図である。洗浄装置1は、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物を洗浄する装置であり、洗浄装置1により造形物の内部空間に残留する光硬化性樹脂が除去される。なお、造形物は微小形状を作製するための型として使用される。
【0019】
洗浄装置1は、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、ステージユニット3がステージ移動機構2により図1中に示すX,Y方向に移動可能とされる。ステージユニット3には造形物8が形成された基板9が保持されており、ステージユニット3を跨ぐようにしてフレーム12が基台11に固定される。フレーム12には押圧機構51が取り付けられ、押圧機構51により洗浄液を吐出するヘッドユニット4が支持されてステージユニット3に対向する位置に配置される。
【0020】
ステージ移動機構2はステージユニット3を図1中のX方向に移動するX方向移動機構21、および、Y方向に移動するY方向移動機構22を有する。X方向移動機構21はモータ211にボールねじ(図示省略)が接続され、モータ211が回転することにより、Y方向移動機構22がガイドレール212に沿って図1中のX方向に移動する。Y方向移動機構22もX方向移動機構21と同様の構成となっており、モータ221が回転するとボールねじ(図示省略)によりステージユニット3がガイドレール222に沿ってY方向に移動する。
【0021】
ステージユニット3は、ヘッドユニット4側に開口する部材である保持本体31を有し、保持本体31には内部に流入する洗浄液を回収する洗浄液回収部32が接続される。保持本体31の上部(開口側)には、メカニカルチャックを有する保持プレート33が取り付けられ、基板9はメカニカルチャックにより保持プレート33上に保持される。
【0022】
押圧機構51はフレーム12に固定された支持板13の下面に取り付けられ、押圧機構51によりヘッドユニット4がステージユニット3上の基板9に対して進退する。ヘッドユニット4は、基板9に対向して配列される複数のアクセス部41を有し、各アクセス部41には微細な吐出口を有するノズル411が設けられる。ヘッドユニット4には供給管611が接続されており、分岐された供給管611の一方が制御弁612を介してシリンジ等の加圧機構を有する洗浄液供給部62に接続され、他方が制御弁613を介してエア供給部63に接続される。また、支持板13にはステージユニット3上の画像を取得する撮像部52が設けられる。
【0023】
洗浄装置1は、ステージ移動機構2、押圧機構51、制御弁612,613および撮像部52に接続された制御部7をさらに有し、制御部7がこれらの構成を制御することにより洗浄装置1が基板9上の造形物8を洗浄する。
【0024】
次に、光造形を利用して造形物を製造する動作について説明を行う。図2は、造形物を製造する工程を示す図である。まず、別途設けられた光造形装置に基板がセットされて、基板上に造形物が形成される(ステップS11)。例えば、液状の光硬化性樹脂を貯溜する樹脂漕が設けられた光造形装置において、基板がステージに支持されて樹脂漕内に所定の深さまで浸漬され、樹脂が基板上を覆うようにスキージにより液面が一様にされる。これにより、基板上に光硬化性樹脂の液層が一定の厚さ(例えば、20μm以下の厚さであり、以下、「スライス厚さ」という。)にて形成される。そして、予め準備されている断面データに従って光造形装置が有する光照射部から光が基板に照射され、基板上に造形物の最初の層が形成される。
【0025】
続いて、ステージがスライス厚さだけ下降し、上記と同様に、スキージによりならされた後に造形用の光が照射され、造形物の次の層が形成される。これらの動作が繰り返されることにより、図3に示すように、らせん状に形成された微小孔81(実際には、配列された複数の微小孔81)を有する造形物8が基板9上に微小な厚さ(例えば、2mm以下の厚さ)にて形成される。
【0026】
図3に示す造形物8において、微小孔81の内壁は直径が数十μmのチューブ状とされ、この段階では微小孔81内に未硬化の光硬化性樹脂が残留している。造形物8の基板9側の面802には微小孔81から連続する微小開口83(以下、「下側開口83」という。)が形成され、基板9に予め設けられた貫通孔91に連絡する。また、造形物8の基板9とは反対側の面801にも同様に、微小孔81から連続する微小開口82(以下、「上側開口82」という。)が設けられる。上側開口82は造形物8の内部から表面(すなわち、面801)に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口であり、面801の位置における開口の直径は数百μmである。
【0027】
基板9上に造形物8が形成されて準備されると、基板9が洗浄装置1にロードされる(ステップS12)。すなわち、造形物8を上側にして基板9が保持プレート33上に載置されて保持される(図1参照)。なお、保持プレート33において基板9の貫通孔91近傍には開口部が設けられている。
【0028】
洗浄装置1では、制御部7の制御によりステージ移動機構2が駆動し、基板9上の所定位置(例えば、位置決め用のマークが形成された位置)が撮像部52による撮像位置に移動する。撮像部52により基板9上の画像が取得されると、制御部7は入力された画像に応じて基板9をヘッドユニット4の下方へと移動し、造形物8の複数の上側開口82がそれぞれ対応するノズル411の下方に位置するように基板9がヘッドユニット4に対して位置決めされる(ステップS13)。
【0029】
続いて、押圧機構51が駆動され、ヘッドユニット4が基板9に向かって下降する。そして、図3に示すようにノズル411の先端が注入口である上側開口82に挿入され、傾斜面に当接して所定の圧力にて押圧される(ステップS14)。ノズル411が上側開口82に接続されると、洗浄液の注入が開始される(ステップS15)。具体的には、制御弁612が開放されて洗浄液供給部62からヘッドユニット4に洗浄液が供給され、ノズル411の先端から吐出される洗浄液が上側開口82から連続的に注入される。このとき、ノズル411は押圧機構51により上側開口82に押圧されるため、ノズル411と上側開口82との間から洗浄液が漏れ出すことが抑制される。
【0030】
前述のように、上側開口82は微小孔81を介して下側開口83に連絡しており、注入される洗浄液は微小孔81に沿って下側開口83に向かって流れる。このとき、微小孔81に残留する未硬化の光硬化性樹脂は洗浄液中に溶解され(または、押し流され)、洗浄液とともに下側開口83から排出される。排出された光硬化性樹脂や洗浄液は基板9の貫通孔91および保持プレート33を介して保持本体31内へと導かれ、洗浄液回収部32により回収される。
【0031】
洗浄液が所定の時間注入されると、制御弁612が閉じられて洗浄液の注入が停止される(ステップS16)。そして、制御弁613が一時的に開放され、エア供給部63からのエアがノズル411を介して上側開口82から微小孔81へと供給される(ステップS17)。これにより、微小孔81内に残留する洗浄液が排出され、内部空間の不要物が取り除かれた造形物8が完成する。このようにして製造された造形物8は、微小形状作製用の型として利用され、無電解メッキ等により微小孔81の形状に対応する微小な形状の成型物が作製される。
【0032】
以上のように、図2に示す造形物の製造では、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射することにより、注入口(すなわち、上側開口82)から排出口(すなわち、下側開口83)へと連絡する内部空間である微小孔81を有する造形物8が形成され、洗浄装置1において注入口から注入される洗浄液が、未硬化の光硬化性樹脂が残留する微小孔81内を移動し、排出口から排出される。これにより、造形物8の微小孔81に残留する光硬化性樹脂を適切に除去することができ、形状精度の高い内部空間(特に微小な内部空間)を有する造形物8を製造することができる。
【0033】
次に、造形物の他の例について説明する。図4は、他の例に係る製造途上の造形物8aを示す図である。図4に示す造形物8aでは、図1の造形物8と比較して基板9側の面802に補助開口85a,85bがさらに形成され、それぞれ補助孔84a,84bを介して微小孔81の互いに異なる位置へと連絡する。
【0034】
図4の造形物8aが洗浄される際には、上側開口82から注入される洗浄液の一部は補助孔84aを介して補助開口85aから排出され、残りの一部の洗浄液は、微小孔81内をさらに移動して補助孔84bを介して補助開口85bから排出される。そして、補助孔84a,84bに導かれなかった洗浄液は下側開口83まで流れて排出される。微小孔81に接続する位置における補助孔84a,84bの直径は、洗浄液が微小孔81の全体に行き渡るようにノズル411からの洗浄液の注入条件(例えば、単位時間当たりの注入量や圧力等)に応じて決定される。
【0035】
以上のように、図4に示す造形物8aでは光造形工程(図2のステップS11)において、注入口に連絡する複数の排出口(すなわち、下側開口83、補助開口85a,85b)が形成される。その結果、注入された洗浄液を円滑かつ容易に排出することができ、造形物8aの内部空間を適切に洗浄することができる。なお、造形物8aにおいて補助孔84a,84bは微小形状作製用の型としては利用されない。
【0036】
ところで、洗浄装置1では、洗浄液回収部32が吸引ポンプとしての機能を有していてもよい。この場合、造形物8の下側開口83(または、造形物8aにおける下側開口83および補助開口85a,85b)の近傍が基板9の貫通孔91を介して減圧されるため、注入された洗浄液を吸引作用により下側開口83から容易に排出し、微小孔81を適切に洗浄することができる。
【0037】
さらに、洗浄液回収部32が吸引ポンプとしての機能を有するとともに、保持プレート33を多孔質材料で形成することにより、保持プレート33にメカニカルチャックを設けることなく洗浄液回収部32の吸引により基板9を吸着保持しつつ、微小孔81に注入された洗浄液を容易に排出し、造形物8の内部空間を洗浄することも可能となる。
【0038】
図5は本発明の第2の実施の形態に係る洗浄装置1aの構成、および、製造途上の造形物8bを示す図である。図5の洗浄装置1aには2つのノズル411,411aを有する複数のアクセス部41aが設けられる(但し、図5では1つのアクセス部41aのみを図示している。)。一方のノズル411は、図1の洗浄装置1と同様に、分岐する供給管611を介して洗浄液供給部62およびエア供給部63に接続され、他方のノズル411aには供給管611aから制御弁614を介してポンプ64が接続される。また、図5の洗浄装置1aでは図1の洗浄装置1から洗浄液回収部32が省略され、保持本体31および保持プレート33がメカニカルチャックを有する板状のステージ(図示省略)と置き換えられる。他の構成は、図1の洗浄装置1と同様であり、同符号を付している。
【0039】
図5の造形物8bでは、図2のステップS11における光造形工程において、微小孔81の下側開口83の近傍に接続する補助孔84c、および、上側開口82aの近傍に接続する補助孔84dが形成される。補助孔84c,84dは、それぞれ造形物8の基板9とは反対側の面801にて開口する補助開口85c,85dへと連絡しており、補助開口85c,85dは面801側に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口とされる。ここで、補助孔84cは基板9側の面802に近接した位置にて微小孔81に接続しており、補助孔84cと面802との間には厚さの薄い(例えば、1つのスライス厚さの)硬化した光硬化性樹脂の層が介在する。
【0040】
次に、図5に示す洗浄装置1aにおいて、造形物8bを洗浄する動作について説明する。図6は、図5の洗浄装置1aを利用して造形物8bを製造する動作の流れを示す図であり、図2のステップS15以降に行われる動作(ステップS21はステップS15と並行して行われる。)を示している。
【0041】
基板9上に造形物8bが形成されると、基板9が洗浄装置1aのステージ上に載置され、ヘッドユニット4に対して位置決めされる(図2のステップS12,S13)。そして、押圧機構51が駆動することにより、ノズル411,411aがそれぞれ注入口である補助開口85c、および、排出口である補助開口85dに当接して押圧される(ステップS14)。
【0042】
続いて、制御部7により制御弁612,614が開放されることにより、洗浄液の注入が開始されるとともに(ステップS15)、ポンプ64の排出動作により補助開口85dからの吸引が開始される(ステップS21)。これにより、注入された洗浄液が補助孔84c、微小孔81および補助孔84dを介して補助開口85dへと連続的に移動し、ノズル411aへと強制的に排出される。このとき、前述のように補助孔84cが面802付近において微小孔81に接続されるため、下側開口83近傍にも洗浄液が流入し、残留する光硬化性樹脂が除去される。なお、微小孔81の上側開口82a近傍は洗浄液が通過しないが、この部分については外部から洗浄することが可能である。
【0043】
制御弁612が閉じられて洗浄液の注入が停止されると(ステップS22)、制御弁613が開放されることによりエア供給部63からのエアが補助開口85cより供給され、微小孔81、補助孔84c,84d内に残留する洗浄液が除去される(ステップS23)。エアが所定の時間注入されると、制御弁613,614が閉じられてエアの供給、および、補助開口85dの吸引が停止する(ステップS24)。このようにして製造された造形物8bにおいて微小孔81は、微小形状作製用の型として利用される。
【0044】
以上のように、図5の造形物8bでは、微小孔81にそれぞれ接続する注入口および排出口(すなわち、補助開口85c,85d)が、微小孔81の微小開口(すなわち、上側開口82および下側開口83)とは別の専用の開口として形成される。そして、図5の洗浄装置1aにおいて、洗浄液が補助開口85cから注入され、これに並行して補助開口85dが吸引されて開口近傍の圧力が大気圧に対して減圧される。これにより、図5の洗浄装置1aでは洗浄液を容易に注入して排出し、微小孔81に残留する未硬化の光硬化性樹脂を適切に除去することができ、その結果、形状精度の高い内部空間を有する造形物を製造することができる。
【0045】
なお、図5の洗浄装置1aにおいて補助開口85cには、必ずしも強制的にエアが供給される必要はなく、例えば、ポンプ64の排出動作に伴って微小孔81内に周囲のエア(予めフィルタを介して浄化されているものとする。)が自然に注入されてもよい。また、必要に応じてアクセス部41に上側開口82aを閉塞する部材が設けられ、補助開口85dが効率よく減圧されてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0047】
図1の洗浄装置1において、造形物8の表面全体に洗浄液が付与されて下側開口83からの吸引により洗浄液が微小孔81内へと流入し排出されてもよい。すなわち、洗浄装置の設計によっては、洗浄液を強制的に注入するノズルを設けなくとも、注入口に付与される洗浄液に作用する圧力と排出口近傍に作用する圧力との間に差を生じさせることにより、洗浄液を注入口から注入することができる。
【0048】
上記第1の実施の形態では、貫通孔91が形成された基板9が利用されるが、例えば、多孔質材料により形成された基板上に造形物が形成され、排出口からの洗浄液が基板を介して排出されてもよい。なお、造形物は必ずしも板状の基板上に形成される必要はない。
【0049】
注入口である上側開口82(または、補助開口85c)はテーパ状とされることが好ましいが、一般的には上側開口82の開口面積を造形物8の内部空間である微小孔81の断面積よりも大きくすることによりノズルを開口に挿入して洗浄液の漏れを抑制することができる。
【0050】
注入口に押圧されるノズルは、例えば、図7に示すようにゴム等の弾性体により形成される環状部材412が先端に設けられたものであってもよい。このようなノズル411bでは注入口がテーパ状にされない場合であっても、洗浄液が適切に注入される。もちろん、排出口に対してもノズル411bと同構造のノズルが接続されてもよい。
【0051】
また、ヘッドユニット4には必ずしも複数のアクセス部が設けられる必要はなく、1つのアクセス部が基板9に対して相対的に移動して複数の微小孔81が順次洗浄されてもよい。
【0052】
図4の造形物8aでは排出口の役割を果たす補助開口85a,85bが、また、図5の造形物8bではそれぞれ注入口および排出口の役割を果たす補助開口85c,85dが、微小孔81の微小開口(すなわち、上側開口82,82aおよび下側開口83)とは別の専用の開口として形成されるが、このような洗浄用の開口が注入口のみに設けられてもよい。
【0053】
造形物の内部空間は、必ずしもチューブ状の内壁を有する微小孔81とされる必要はなく、より複雑な形状であってもよい。なお、造形物は樹脂漕を有する光造形装置により形成される必要はなく、流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成されるのであればいかなる手法により形成されてもよい。
【0054】
また、製造された造形物は微小形状作製用の型以外の用途に利用されてもよい。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、光造形後の造形物の内部空間に残留する光硬化性樹脂を適切に除去することができ、これにより、形状精度の高い内部空間を有する造形物を製造することができる。
【0056】
また、請求項2の発明では、造形物の内部空間に残留する洗浄液を除去することができる。
【0057】
また、請求項3および9の発明では、洗浄液を容易に排出することができる。
【0058】
また、請求項4、7および8の発明では、注入口からの洗浄液の漏れを抑制することができる。
【0059】
また、請求項6の発明では、洗浄液を容易に注入または排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】造形物を製造する動作の流れを示す図である。
【図3】造形物を洗浄する様子を説明するための図である。
【図4】造形物の他の例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る洗浄装置の構成、および、造形物を示す図である。
【図6】造形物を製造する動作の流れを示す図である。
【図7】ノズルの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1,1a 洗浄装置
3 ステージユニット
8,8a,8b 造形物
51 押圧機構
62 洗浄液供給部
63 エア供給部
64 ポンプ
81 微小孔
82,82a 上側開口
83 下側開口
85a〜85d 補助開口
411,411a,411b ノズル
S11,S14〜S17,S21〜S24 ステップ
Claims (11)
- 流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物の洗浄方法であって、
a)注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を準備する工程と、
b)前記注入口から洗浄液を注入するとともに前記排出口から前記洗浄液を連続的に排出する工程と、
を有することを特徴とする造形物の洗浄方法。 - 請求項1に記載の造形物の洗浄方法であって、
前記b)工程の後に、前記内部空間に残留する洗浄液を排出する工程をさらに有することを特徴とする造形物の洗浄方法。 - 請求項1または2に記載の造形物の洗浄方法であって、
前記b)工程に並行して、前記排出口を吸引する工程をさらに有することを特徴とする造形物の洗浄方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の造形物の洗浄方法であって、
前記b)工程の前に、前記注入口に前記洗浄液を吐出するノズルを押圧する工程をさらに有することを特徴とする造形物の洗浄方法。 - 光造形を利用した造形物の製造方法であって、
a)流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射することにより、注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を形成する工程と、
b)前記注入口から洗浄液を注入するとともに前記排出口から前記洗浄液を連続的に排出する工程と、
を有することを特徴とする造形物の製造方法。 - 請求項5に記載の造形物の製造方法であって、
前記a)工程において、前記注入口および前記排出口の少なくともいずれか一方が、前記内部空間に連絡する微小開口とは別の専用の開口として形成されることを特徴とする造形物の製造方法。 - 請求項5または6に記載の造形物の製造方法であって、
前記内部空間の内壁がチューブ状であり、前記注入口の開口面積が前記内部空間の断面積より大きいことを特徴とする造形物の製造方法。 - 請求項7に記載の造形物の製造方法であって、
前記注入口が、前記造形物の内部から表面に向かって径が漸次増大する略円錐状の開口であることを特徴とする造形物の製造方法。 - 請求項5ないし8のいずれかに記載の造形物の製造方法であって、
前記a)工程において、前記注入口に連絡する複数の排出口が形成されることを特徴とする造形物の製造方法。 - 請求項5ないし9のいずれかに記載の造形物の製造方法であって、
前記内部空間の内壁が、微小形状作製用の型であることを特徴とする造形物の製造方法。 - 流動性を有する光硬化性樹脂に光を照射して形成された造形物を洗浄する洗浄装置であって、
注入口から排出口へと連絡する内部空間が形成された造形物を保持する保持部と、
洗浄液を吐出するノズルと、
前記注入口に前記ノズルを押圧する押圧機構と、
を備えることを特徴とする洗浄装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100818306B1 (ko) * | 2006-11-22 | 2008-04-01 | 한국전자통신연구원 | 공격 패킷 시그너처 후보 추출 장치 및 방법 |
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2003
- 2003-06-11 JP JP2003166042A patent/JP2005001206A/ja not_active Abandoned
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100818306B1 (ko) * | 2006-11-22 | 2008-04-01 | 한국전자통신연구원 | 공격 패킷 시그너처 후보 추출 장치 및 방법 |
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