JP2004538159A - 複雑な型構造を持つ単結晶部材の製造方法 - Google Patents

複雑な型構造を持つ単結晶部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、溶融金属から、種々の構造部分(2、3)を持つ複雑な型構造の単結晶部材(1)を製造する際、この溶融金属が型構造に対応する雌形内にあり、該雌型を溶融金属の晶出速度に適合する温度降下(溶融点を含む)により、凝固前線を形成しながら移動させる製造方法において、この型構造の少なくとも1つの構造部分に別個の温度降下を生じさせることを特徴とする溶融金属から複雑な型構造を持つ単結晶部材の製造方法に関する。即ちその凝固前線(7)を配向させると不都合な構造部分を経て成長させなければならない場合、この構造部分又は範囲に相応しい温度降下を形成する。こうして複雑な型構造の単結晶部材を、信頼でき、かつ経済的な基材上に、複雑な型構造を持つ単結晶部材の製造を可能にする。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の構造部分を有する複雑な型構造の単結晶部材を溶融金属から製造する方法に関する。この溶融金属は型構造に対応する雌型内にあり、該雌型を、溶融金属の晶出速度に適合した、融解点を含む温度降下により凝固前線を形成しつつ移動させる。
【0002】
単結晶の部材の製造は、特にタービンの分野において常に更なる出力の増強のため益々重要になってきている。航空機の駆動装置のタービン又はエネルギーを発生するためのガスタービン等のタービンでは、タービン羽根は高負荷に曝される。ガスタービンの出力、効率及び放出(Emission)を増強する趨勢において、その最も重要なタービン案内羽根の熱的、機械的な限界条件は、益々厳しくなってきている。例えばこの台座の更なる薄層化、作動媒体の交換及びガスタービンの導溝の縁範囲における冷却漏れのため低下する外部の冷却により特別な負荷が生じる。ガスタービン内の冷気の消費を削減するため、それ以上の寸法のものにも有利となるようその環状の羽根の数を削減し、この材料特性の更なる向上が求められている。この限界条件を克服すべく、部分的にガスタービンの回転羽根の範囲に既に試みられているように、ある材料を交換するか、その材料の組織構造を単結晶へと変換する努力がなされている。単結晶化した部材は、温度上昇時、凝集材料に比べ、その材料中に著しく弱められた箇所を示すことのない粒界だけを持つ。
【0003】
単結晶の部材の製造は、既に以前から公知である。そのためまず融解物を鋳型に注ぐ。鋳型は製造すべき部材と逆の凹凸をもつ型構造を持ち、そのため雌型と呼ばれている。融解物が雌型内で凝固すると、融解物は所望の型構造を持つようになる。この型構造は、通常幾つかの範囲、即ち所謂構造部分から成る。この融解物を含む鋳型は、この融解物が更に熱せられ、液状で存在するように炉内にある。単結晶を形成するため、この雌型をゆっくりと炉から運び出すと、炉の外側で凝固プロセスが始まり、その温度降下に従って凝固前線が生ずる。その単結晶に所望の配向を与えるため、まず融解物で満たされた鋳型のカタツムリの殻状の尖端は、その最外側の尖端から凝固する。このカタツムリの殻状の尖端は選択螺旋構造と呼ばれている。即ちこの螺旋構造が結晶の成長方向を選択する役目をする。こうしてこの単結晶は、最初の凝固前線を形成し、所望の場合には雌型全体にわたり成長する。雌型は、その金属の晶出速度に適合する速度で、その温度降下を操作する必要がある。即ちこの融解物の温度を結晶の成長速度より速く降下させると、核生成が起こり、所望の単結晶と異なる配向を持つ付加的結晶が生ずる。このようなことが起こると、その部材は欠陥を生じ、使用不能になる。
【0004】
特に、広く張出した台座を持つタービン案内羽根を単結晶化することは極めて困難である。この案内羽根は、この部材の型構造を構成する複数の構造部分から成る。特に台座から側面部分への、そして逆方向への移行部が問題となる。この台座は、タービン内で案内羽根支持部内側の放射状表面と平行に、即ちこの表面と同一平面で案内羽根の範囲を形成し、この側面は一方では羽根の刃となり、他方では案内羽根支持部と案内羽根との接合要素となる。この配置では、この台座の平面の法線が、この側面の平面の法線に略垂直であることが問題となる。通常単結晶の成長方向は、主にこの側面の縦軸に沿って延び、また台座の平面の法線に平行に延びるように選択される。従ってそれら平面は、殆ど垂直に交わり、それらの広がり方向は互いに異なっている。従って側面の僅かな面から、台座の基本的に幅広い面への、凝固前線の面の殆ど突然の変化を実現せねばならない。この範囲内では、熱せられた範囲から熱せられない範囲内への炉内の鋳型の沈降速度の低下により対抗措置をとるか、又は相応する数のビード保持部をそらせ板の形で側面から外側の台座部分に備えなければならない。この両方の可能性を予測して有効に対処することは極めて困難であり、加えてこの処理中に変動を被むり、従ってその歩留りや生産力が減少する。従来この台座に、最適な温度降下の方向を与えることで、この問題を解決しようとしてきた。温度降下に対する台座の方向づけを最適化すべく炉内の鋳型を片側に傾けると、凝固前線が傾斜路に沿って台座中に扇形に広がり、その結果断面積の変化が弱まり、この問題は1つの方向で改善される。しかしそれでも直角の接続はそのままである。更に台座内に扇形に拡がった結晶を、案内羽根の狭い方の構造部分内に戻して集めることは問題であり、その際その凝固前線の平面の自発的変化により、再び直角の接続の問題が生じる。
【0005】
このような問題やこれに類似の問題は、別の型構造の他の部材にもしばしば起こる。
【0006】
従って本発明は、信頼できかつ経済的な基材上に、複雑な型構造を持つ単結晶の部材の製造を可能にする方法を提供することを課題とする。
【0007】
この課題を解決するため、本発明は型構造の少なくとも1つの構造部分に、別個の温度降下を形成することを提案する。
【0008】
本発明のもう1つの特徴は、別個の温度降下により別個の凝固前線を形成できる点にある。かくして、通例のように雌型に温度降下を生じさせる。最後にその凝固前線に対して不所望に方向付けられた構造部分を経て凝固前線を前進させねばならない場合は、この構造部分又はこの範囲に独自の温度降下を生じさせ得る。 即ちこの温度降下を主たる温度降下と無関係に、当面の構造部分の要求に対し最適に調整できる。このタービン案内羽根の例では、例えば誘導炉の磁界と共に、平らな凝固前線に代えて成形した凝固前線を形成し、温度降下を変化させることができる。従って、一方ではこの側面の縦軸に対して垂直な平面の凝固前線を形成する温度降下を側面の範囲に形成し、他方では台座内の凝固前線に湾曲を生じさせ、その凝固前線がその台座内を従来のようにその幅方向にではなく、高さ方向に移動する温度降下を形成する。凝固前線が側方に向かい湾曲し、台座の縁範囲に成長すると、この前線をそこで終わらせることもでき、再び側面部分に戻す必要がないことは、この実施形態の更なる利点である。従来は、その台座の幅内に扇形に広がる凝固前線が、その末端に到達した際に常にその側面内に戻す必要があった。こうして困難な横断面の変化及び多結晶粒の生成の問題を排除できる。このため各構造部分を完全に別個に冷却又は加熱することが可能になる。こうして極めて複雑な部材を単結晶として製造すべく、全ての構造部分に別個の温度降下を割り当てることが原則的に可能になる。
【0009】
本発明は種々別個の温度降下を、各々異なる速度で進めるべく形成できる利点を持つ。この種の方法は、特定の構造部分をこの温度降下に伴い、他の構造部分よりゆっくり操作することを可能にする。例えば複数の発熱体を使用する場合、該発熱体を互いに別個に雌型に沿って移動させ得る。このように、温度降下は種々の構造要素内で各々異なる速度で進行する。タービン案内羽根を製造する際、例えばその台座内で湾曲した凝固前線を、同時に側面内に進行する凝固前線よりも若干ゆっくりと進ませることが必要になる。こうして台座内での最適な単結晶の形成を保証し、かつこの側面内で進行する凝固速度を最大可能な値になし得る。個々の範囲間の譲歩はもはや不要である。どの範囲、即ち構造部分も、その単結晶を形成する際に、凝固速度と確実性との間に個々の歩み寄りを示す。
【0010】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、種々の構造部分の個々の温度降下が、その結晶成長方向に対し各々異なる方向を持つようにする。こうして、その凝固前線をその成長方向及び当面の構造部分に任意に向けることが可能になる。従ってタービン案内羽根を製造するこの例では、成長は側面に対する張出し部分から出発し、その幅内に成長するが、凝固前線は成長方向に垂直には向けない。即ちこの凝固前線は成長方向に対して90°以下の傾きを有する。
【0011】
本発明は、種々の構造部分の異なる結晶成長方向が、基本的に主結晶成長方向に従う点で特に有利である。主結晶成長方向とは、その結晶成長が基本的に進行する方向を意味する。従来の方法では、全ての結晶成長が1つの方向、即ち雌型を炉から導出する方向と反対方向に進んでいた。本発明により、多くの種々の結晶成長方向を、各々異なる温度降下状態で異なって形成することで、多くの種々の結晶成長方向が達成できる。例えば単結晶の星形部材を、中心から星形に外側へと成長させるとする。この部材の全ての稜の尖端に、その尖端へと進む別個の温度降下が生じることになる。従ってかかる部材に対し主結晶成長方向を定めることはできない。主結晶成長方向の利点は、移行部内での結晶成長方向の大きな違いにより、1つの構造部分から他の構造部分へと、一定の角度で再び増大していく多結晶粒の形成が起こらない高い確実性にある。従って本発明では、異なる結晶成長の方向を、主結晶成長方向と20°以上逸らさないことを提案する。しかしここに挙げた角度は限定的なものでないことに留意されたい。このプロセスの十分細やかな操作により、より大きな角度も実現できる。
【0012】
本発明は、別個の温度降下を、独立して装着可能な発熱体により作り出すことを提案する。主結晶成長方向における温度降下は、出力強度の相応しい発熱体により極めて容易に形成できるが、それに対し異なる構造部分の別個の温度降下は比較的小さな発熱体により形成できる。装着可能な発熱体とは、局所的に操作できる発熱体及び/又はその発熱量を調節できる発熱体を意味する。誘導コイル及び/又は放熱体を発熱体として使用すると特に有利である。従って必要に応じて適切な熱源を選択できる。
【0013】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、この温度降下を絶縁体により発生させる。従って温度降下を発熱体ばかりでなく、絶縁体によっても発生させ得る。発熱体だけを使用するよりも、絶縁体を用いることで、更に大きな温度降下を形成できる。
【0014】
本方法は、タービンの案内羽根を製造する方法として特に有利である。
【0015】
本発明の他の利点及び特徴を図面の説明から明らかにする。
【0016】
図1は切断線Xに沿って切断することで2枚のタービン案内羽根10から成る1つの単結晶の注型品1が得られることを示す。切断線Aは、隣接する側面2の縦軸に並列する注型品1の縦軸を意味する。側面と呼ばれる構造範囲に垂直に、台座3と呼ばれる構造範囲が存在する。図1はタービンの案内羽根の断面図を示し、従ってそれら平面は紙面に垂直に延びている。この選択螺旋構造4は、単結晶のタービン羽10が得られるように、引続き部材1の全体を通して成長すべき単結晶の形成に役立つ。このタービン案内羽根10は、その凝固前に液状の融解物として鋳型に容れられる。この鋳型は、この時点には誘導炉5内にあり、そのコイル5は単に概略的に図示してある。誘導炉5は、融解物を液状に保つ。この鋳型は、その金属の結晶成長速度に適合させた速度で単結晶を形成すべく下に向かって誘導炉5から導出される。選択螺旋構造4が、凝固温度以下に低下した後初めて、鋳型の降下に伴い、この鋳型を通して成長する個々の結晶が形成される。大きな温度降下を作るため、通常誘導炉5の下に遮蔽物6を取り付ける場合もある。誘導加熱は主としてコイル5内で起こり、磁場は外側で極めて迅速にその強度を失い、凝固は1平面内で鋳型の移動方向に垂直に最大限に行われる。凝固前線7は、種々の時間間隔に関して図1に破線で示してある。凝固前線7の前進時、側面の構造部分2と台座の構造像部分3とのほぼ直角の横断面に急激な断面積の変化を生じる。その箇所に、再びこのタービン案内羽根1を使用不能にする多結晶粒が生ずる危険性が高まる。
【0017】
図2は、図1と同じ部材1を示す。但し、既に上述した誘導炉5に付加して装着した誘導コイル8と放熱器9が相異する。それらは、その温度降下が平面的にではなく、本発明に従い変形するように配慮されている。こうして、この部材1の型構造の異なる構造部分2と3に、各々異なる温度降下を生ずる。この例では温度降下は半円形に近い形に形成されており、その温度降下の形成の可能性を概略的に示している。これは、縦軸Aの近くにある構造部分内にほぼ平行な方向に延びる凝固前線と共に成長することを意味する。即ちこの範囲では、凝固時に図1に示すような結晶成長と左程変わっていない。縦軸Aと離れた構造部分又は範囲は、主結晶成長の方向と、縦軸Aに緩く傾斜した成長方向を示す凝固前線7と混ざり合っている。この各々異なる結晶成長方向は、特に20°以上主結晶成長方向から逸れてはならない。この鋳型の場合、主結晶成長方向は、これが基本の結晶成長方向である故、縦軸Aに沿っている。台座3内で個々の温度降下は、誘導コイル8と放熱器9により形成される。この発熱体8、9を用いて温度を高めることで、縦軸Aから十分離れた範囲に形成される凝固前線7は専ら内側から外側に延び、この結果該凝固前線7は台座3を、横方向にではなく、高さ方向に通り抜ける。「高さ方向」とは、縦軸Aと同一方向の延びのことである。横幅とは、縦軸Aに対し垂直な寸法を云う。各々別個の発熱体は別個に装着可能である。それらは、例えば熱の発生状態を調整でき及び/又はその位置内で操作可能である。同様に唯一の発熱体で、複数の構造部分に対し別個の温度降下を作り得ることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図示の凝固前線の推移を持つ従来法によるタービン案内羽根の概略切断面図。
【図2】図示の凝固前線の推移を持つ本発明によるタービン案内羽根の概略切断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 部材(注型品、注型品)、2 側面、3 台座、4 選択螺旋構造、5 誘導炉(コイル)、 6 シールド、7 凝固前線、8 誘導コイル、9 放熱器、10 案内羽根

Claims (10)

  1. 溶融金属から、種々の構造部分を持つ複雑な型構造の単結晶部材を製造する際に、この溶融金属を型構造に対応する雌型内に入れ、この雌型を溶融金属の晶出速度に適合する融解点を含む温度降下により、凝固前線を形成しながら移動させる方法において、
    この型構造の少なくとも1つの構造部分に別個の温度降下を生じさせることを特徴とする溶融金属から複雑な型構造を持つ単結晶部材の製造方法。
  2. 各々異なる温度降下により別個の凝固前線を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 異なる個々の温度降下を各々異なる速度で進めることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 各々異なる構造部分の別個の温度降下が、結晶の成長方向に対して各々異なる方向を有することを特徴とする請求項1から3の1つに記載の方法。
  5. 各々異なる構造部分の異なる結晶成長の方向が、基本的に主結晶成長方向に従うことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の方法。
  6. 上記の異なる結晶成長の方向が、主結晶成長の方向と20°以上逸れないことを特徴とする請求項1から5の1つに記載の方法。
  7. 上記の別個の温度降下を、個々に装着した発熱体により生じさせることを特徴とする請求項1から6の1つに記載の方法。
  8. 誘導コイル及び/又は放熱器を発熱体として使用することを特徴とする請求項1から7の1つに記載の方法。
  9. 温度降下を絶縁体で制御することを特徴とする請求項1から8の1つに記載の方法。
  10. 請求項1から9の1つに記載の方法でタービン案内羽根を製造することを特徴とするタービン案内羽根の製造方法。
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