JP2004538000A - 樹状突起細胞の成熟化の方法 - Google Patents

樹状突起細胞の成熟化の方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、特定構造の高分子量二本鎖RNA(dsRNA)ポリマーの存在下に未成熟樹状突起細胞を培養するステップを含む、インビトロで成熟樹状突起細胞を生成する方法に関する。特定構造の高分子量dsRNAポリマーは通常、ポリ[l]:ポリ[CxU];ポリ[l]:ポリ[GxU];ポリ[A]:ポリ[UxC];ポリ[A]:ポリ[UxG];ポリ[U]:ポリ[AxC];ポリ[U]:ポリ[lxU];ポリ[C]:ポリ[GxA];ポリ[C]:ポリ[GxU];ポリ[G]:ポリ[CxA];ポリ[G]:ポリ[CxU]、およびアンプリゲン[ここでxは平均で3〜40の数である]からなる群から選択される。未成熟樹状突起細胞を成熟前に抗原に曝露させ、次いで得られた抗原提示成熟樹状突起細胞からワクチンを調製することができる。癌、ウイルス、寄生生物、および微生物を処理する方法も開示されている。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト樹状突起細胞を成熟させるための方法、成熟樹状突起細胞からインターロイキン2(IL−12)の生成を増強するための方法、および増強レベルのIL12を生成する成熟化樹状突起細胞を含有するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞毒性CD8+T細胞リンパ球(CTL)は、MHC(主要組織適合複合体)クラスI分子とともに細胞表面上に腫瘍抗原を提示する腫瘍細胞を認識し、これを殺傷しうる(非特許文献1)。しかし、癌と診断されている患者の大多数の場合、患者の細胞免疫反応は腫瘍抗原に応じて十分には活性化されておらず、したがって、患者の体は腫瘍細胞を適切に殺傷し、さらに癌の拡大から患者自身を防御することができない。したがって、患者は、化学療法または放射線療法で治療されうるが、その両方は正常細胞を無差別に殺傷しうるとともに、患者に対して大幅に毒性の副作用を誘発しうる。細胞免疫反応が腫瘍抗原によって十分に活性化された場合は、患者の体は、従来型の癌治療に伴う望ましくない副作用なしに、腫瘍細胞そのものを根絶しうることが可能である。
【0003】
したがって、治療上、腫瘍関連抗原に反応するように、癌患者の細胞免疫系を活性化する必要が存在する。
【0004】
CD8+毒性T細胞(CTL)反応とCD4+Tヘルパー(Th1)反応を刺激するための最も強力な抗原提示細胞が、樹状突起細胞である(非特許文献2)。樹状突起細胞は、抗原を捕捉して加工し、局所リンパ節に移動し、CD8+T細胞反応を誘発することが可能である(非特許文献2)。樹状突起細胞は、細胞表面上に存在するMHCクラスI分子との関連で外来抗原を交差提示する能力を有する(非特許文献3)。これらの総合された特徴が、樹状突起細胞をして、CD8+とCD4+T細胞反応の両方を刺激することが可能な方法で抗原を提示させ、細胞ワクチンとしての樹状突起細胞の使用の理論的な根拠が提供されることとなる。しかし、このためには、十分な数で、かつ機能的に最適な抗原を負荷した状態で利用可能な樹状突起細胞を得ることが必要である。
【0005】
マウス試験は、GM−CSFおよびインターロイキン4(IL−4)とともにインビトロで増殖し、関連CTLで興奮させた骨髄由来樹状突起細胞の免疫能が腫瘍関連エピトープを規定することを裏づけた(非特許文献4、非特許文献5)。これらの試験は、規定された腫瘍関連抗原ペプチドで刺激された樹状突起細胞が、適切な腫瘍抗原を発現する確立された腫瘍を根絶することが可能であることを示した。動物モデルにおけるこれらの樹状突起細胞介在抗腫瘍反応は、CD4+Tヘルパー(MHCクラスII)およびCD8+(MHCクラスI)反応に依存し、Th1リンフォカインの産生にも依存することが示されている(非特許文献5)。
【0006】
これらの動物試験は、腫瘍抗原を負荷した成熟および未成熟自己由来樹状突起細胞を用いた多くのフェーズ1治験をもたらした。例えば、ネッスル(Nestle)ら(非特許文献6)は、ウシ胎児血清中に増殖した未成熟GM−CSF/IL4単球由来樹状突起細胞で転移性黒色腫患者16例を治療した。臨床反応は、皮膚、軟組織、肺、および膵臓の転移を有する正常に耐久性の患者16例中5例(完全反応2例、および部分反応3例)において確認された。MAGE−3腫瘍特異的ペプチドで刺激され、TNF−αで成熟化された単球由来樹状突起細胞は同様に、皮膚、リンパ節、肺、および肝臓の転移を有する患者11例中6例において反応を誘発した(非特許文献7)。MAGE−3HLA A1−特異的CD8+T細胞の顕著な拡大が患者11例中6例において確認され、皮膚転移の反応はCD8+T細胞浸潤を伴っていた。
【0007】
免疫療法剤としての樹状突起細胞の有効性を裏づける証拠も、他のタイプの一次腫瘍からの転移性癌を有する患者を対象とする治験から集められている。同種異系単球と自己由来腫瘍細胞の融合から調製され、TNF−αで成熟化された樹状突起細胞による免疫化は、4例の完全緩解を含めて、転移性腎細胞癌患者11例中7例における細胞免疫反応の誘発において有効であった(非特許文献8)。前立腺膜抗原P1およびP2で刺激したGM−CSF/IL4未成熟樹状突起細胞が、進行性前立腺癌患者37例において使用されている。完全反応1例および部分反応10例(PSAレベルの50を超える低下、または骨スキャニングでの顕著な消散)が確認された(非特許文献9)。同種異系HPV16+ve腫瘍ライセート特異的HPV特異的CTLで刺激した未成熟GM−CSF/IL4樹状突起細胞で治療した進行性子宮頸癌を有する一連の患者9例について、ワクチン注射後に評価可能(HPV16+HLA 002*)な患者2例中2例の末梢血における反応が示された(非特許文献10)。患者1例において、HPV16E7(11〜20)の頻度は2.2%上昇したことがクラス1四量体によって検出され、他の患者におけるIFN−γELISPOTアッセイは、4 HPV 16 E6および7由来CTLエピトープに対する特異的反応を、ぞれぞれワクチン注射後の1週間および2か月に示した。評価可能なHPV 16+患者4例中1例について、特異的Tヘルパー反応も確認された。ELISPOTによって検出されたT細胞免疫性は腫瘍ライセートに対するDTH反応と相関し、これらの患者は良好な臨床結果を辿った(肺転移の切除後18か月以上疾患の徴候がなく(NED)、進行以降3か月以上安定した症状)。
【0008】
したがって、種々の腫瘍関連抗原でパルス化させた単球由来樹状突起細胞を用いて種々の癌型からの転移を有する患者において、臨床的に重要な特異的クラスIおよびTヘルパー反応を誘発させることが可能である。しかし、現時点では、樹状突起細胞による最適な癌免疫化のために免疫学的に活性な表現型、用量、および負荷方法の定義に関して意見の一致は存在しない(非特許文献11)。
【0009】
成熟樹状突起細胞は、抗原の提示のほか、CTLおよびTヘルパー反応の誘発において、未成熟樹状突起細胞よりも有効である可能性が高いと思われる(非特許文献2)。未成熟樹状突起細胞による免疫化後に臨床的な抗癌反応は確認されているが、これらの患者における樹状突起細胞は、ある時点で、まだ未定義の刺激によってインビボで成熟していた可能性がある。樹状突起細胞は通常、それらの未成熟状態における末梢組織から抗原を獲得する。成熟は、それらの抗原獲得能の減少、それらの表面へのMHCおよび補助刺激(costimulatory)分子の発現増大、それらによるIL 12産生レベルの上昇、およびケモカイン受容体の発現変化によって特徴づけられる(非特許文献12)。
【0010】
したがって、それらのワクチン注射使用前のインビトロでの受容体の意図的な成熟化の手段が、リンパ節におけるT細胞を刺激するリンパ節への最適な移動能、最適なTh1リンフォカイン(非特許文献13)産生能、およびインターロイキンなど癌関連トレランス誘導影響に対してほとんど影響を受けない安定した機能的状態(非特許文献14)を有する表現型の利点を提供しうる。
【0011】
T細胞が樹状突起細胞との相互作用によって活性化または励起されるかどうか決定的なのは、マッツインガー(Matzinger)(非特許文献15)によって最初に提案されたストレスを受けた細胞、損傷を受けた細胞、または壊死細胞によって放出される病原体誘発または誘因されうる「活性化」または「危険信号」の性質であると思われる。しかし、最適な「活性化」または「危険信号」の性質はまだ明らかにされていないが、インビトロデータは、その決定的な性質に関係なく、樹状突起細胞の成熟化および樹状突起細胞によるIL 12産生を誘発しうることが必要であり、その2つの特性が最適なCD8+T細胞反応には重要であることを示していると思われる。
【0012】
細菌DNA、CD40リガンド、LPSなどの炎症誘発性作用物、ウイルス感染、GpGオリゴデオキシヌクレオチド、および熱ショックタンパク質はすべて、樹状突起細胞の成熟を誘発する(非特許文献16〜19)。TNF−αおよび1型インタフェロンなどのリンフォカイン類も樹状突起細胞の可逆性成熟を誘発することが知られている(非特許文献20〜21)。対照的に、活性化単球の上清(単球由来培地)は、安定した成熟状態の誘発が可能な作用物であるが、臨床用途にその品質を標準化することは困難である(非特許文献22)。樹状突起細胞の臨床免疫療法的応用には、高レベルの生物学的活性のIL 12を生成する安定した樹状突起細胞の表現型が理想形であると思われる。
【0013】
ポリ[l]:ポリ[C](ポリリボイノシン:ポリリボシチジル酸)、合成dsRNA(二本鎖RNA)は、CD86および成熟マーカー83の発現レベルが高い安定した成熟表現型を誘発することがわかっている。この成熟表現型は、サイトカイン離脱後48時間保持され、これらの成熟樹状突起細胞は高レベルのIL 12および低レベルのIL 10を生成する(非特許文献23)。T細胞由来シグナルの非存在下での微生物刺激(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)および各種細菌刺激による樹状突起細胞の活性化は、有意なレベルのIL 12を放出するに十分であると思われる(非特許文献24)。これらの条件下に、樹状突起細胞はCD40の発現を増大させ、その後のCD40の架橋によりさらにIL 12産生の増大が生じうる(非特許文献24)。樹状突起細胞によるIL 12p70の最適な産生は、CD40架橋と微生物刺激との相互作用を伴うという考えは、T細胞と抗原提示細胞との相互作用は、微生物刺激および/またはサイトカインがアジュバントとして用いられない限り、高レベルのIL 12産生を誘発するに十分ではなく、あるいは、IL12産生はT細胞との樹状突起細胞の相互作用によって誘発されることを示すヒトインビトロ試験と一致する(非特許文献25〜26)。これらのデータは、樹状突起細胞による高レベルのIL 12の産生における細菌刺激の重要性を強調するものである。さらに、これらのデータは、CD40mABの有効性(非特許文献27〜29)が、免疫療法における適切な細菌アジュバントの同時投与によって増大しうることを示す。
【0014】
臨床的な免疫療法用途のため、樹状突起細胞を細胞ワクチンとして用いた場合に最大レベルのIL 12を産生するように樹状突起細胞を誘発することが可能な非毒性、かつ臨床的グレードの刺激が必要とされる。あるいは、刺激は、潜在的な全身アジュバントとして、Th1効果の促進を必要とするワクチンに適用可能であるべきである。静脈内で75mg/m2までの用量のポリ[l]:ポリ[C]およびその種々の安定した誘導体(主にポリリシンまたはセルロースとのdsRNA錯体)が、多くのフェーズ1およびフェーズ2の抗癌治験において1970年代および1980年代に試験された。しかし、これらの治験は、ショック、腎不全のほか、凝固障害および過敏性反応を含むポリ[l]:ポリ[C]の毒性作用のため放棄しなければならなかった(非特許文献30〜32)。
【0015】
不対塩基(ウラシルとグアニン)の導入によるポリ[l]:ポリ[C]の構造的特徴における改変により、「特定構造のdsRNA」または「ミスマッチdsRNA」と呼ばれる、独特のdsRNAが得られた(非特許文献33)。これらの領域は、dsRNA加水分解を加速させ、ヒトにおける毒性を削減する(非特許文献34)と同時に、インターフェロン合成を促進する能力を保持する。アンプリゲン(登録商標)(ポリ[l]:ポリ[C12U])は、らせんdsRNA鎖に沿って規則的に発生するミスマッチの領域(非水素結合)を含有するかかる合成dsRNAの1つである。アンプリゲン(登録商標)は、免疫調節活性、RNAおよびDNAウイルスに対する抗ウイルス活性、およびインビトロおよびインビボでの腫瘍細胞抗増殖活性を発揮する(非特許文献33)。
【0016】
アンプリゲン(登録商標)による臨床的治験は現在、合計で患者300例以上となる。用量限定的臓器毒性の証拠は、血液、肝、腎毒性を含めて確認されておらず、アンプリゲン(登録商標)(ポリ[l]:ポリ[C12U]は、臨床的用途のためにGMP条件下に調製されている(非特許文献34)。
【0017】
本願中で用いられる「特定構造の」なる用語は、ミスマッチ塩基の規則的に発生する領域を含有する二本鎖RNAを指すことが意図されている。ミスマッチ塩基間に水素結合はないため、二重らせんは弱くなっている。したがって、dsRNAの半減期は、より容易に、かつ迅速に低下するため減少し、ヒトおよび動物に対するdsRNAの毒性を低下させる。
【非特許文献1】
ツィンカーマーゲル(Zinkermagel)RM、ドヘルティー(Doherty)PC著「MHC−T細胞制限特異性、機能、および反応性を決定する多形性主要移植抗原の生物学的役割に関する制限細胞毒性T細胞の研究」、Adv Immunol 1979(27)、51〜177頁。
【非特許文献2】
バンチェロウ(Banchereau)J、スタインマン(Steinman)RM著「DCおよび免疫の対照」、Nature 1988(392)、245〜52頁。
【非特許文献3】
カーボン(Carbon)FR、クルツ(Kurts)C、ベネット(Bennett)SRら著「交差提示:CTL免疫および耐性の一般的機序」、Immunol Today 1988;19(8):368〜373頁。
【非特許文献4】
マヨドルモ(Mayodormo)I、ゾルニア(Zorina)T、ストルカス(Storkus)WJ、ジフォーゲル(Zivogel),L、セルッツィ(Celluzzi)C、ファロ(Falo)LD、メリフ(Melief)C、イルドスタッド(Ildstad)ST、カスト(Kast)WM、デレオ(Deleo)AB著「合成腫瘍ペプチドで興奮させた骨髄由来樹状突起細胞は保護的および治療的抗腫瘍免疫性を発現させる」。Nature Medicine、1995年、1(12)、1297〜1302頁。
【非特許文献5】
ジフォーゲル(Zivogel)L、マヨルドモ(Mayordomo)JI、チャンドラワン(Tjandrawan)Tら著「腫瘍由来ペプチド興奮樹状突起細胞によるマウス腫瘍の治療法:T細胞、B7共刺激、およびTh1関連サイトカインに対する依存性」、J exp Med、1996年(183)、87〜97頁。
【非特許文献6】
ネッスル(Nestle)FO、アリジャジック(Alijagic)S、ジレット(Gilliet)Mら著「ペプチドまたは腫瘍ライセート興奮DCによる黒色腫患者のワクチン注射」、Nat Med、1998年(4)、328頁。
【非特許文献7】
スルマー(Thurmer)B、ヘンドル(Haendle)I、ローダー(Roder)CDら著「Mage−3A1ペプチド興奮成熟単球由来DCによるワクチン注射は特異的毒性T細胞を拡大し、進行性4期黒色腫における一部の転移の退縮を誘発する」、J Exp Med、1999年(190)、54〜59頁。
【非特許文献8】
クーグラー(Kugler)A、シュトゥーラー(Stuhler)G、Walden Pら著「腫瘍細胞によるワクチン注射後のヒト転移性腎細胞癌の退縮−樹状突起細胞ハイブリッド」、Nat Med、2000年(6)、332〜336頁。
【非特許文献9】
マーフィー(Murphy)GP、ジョア(Tjoa)BA、シモンズ(Simmons)SJら著「11期前立腺癌ワクチン試験:一次治療後の疾患再発を有する患者37例を対象とした試験の報告」、Prostate、1999年(39)、54〜59頁。
【非特許文献10】
アダムス(Adams)M デ(de)ジョング(Jong)A、ナバビ(Navabi)H、リペッツ(Lippetz)C、Bヤサニ(Jasani)、B、マン(Man)S、フランダー(Flander)A、Rベイリー ウッド(Bailey Wood)、ファン デル ブルク(van der Burg)SH、Aブルネット エバンス(Burnet Evans)AS、メイスン(Mason)M著「潜在的な抗癌ワクチンとして自己由来および同種異系ライセートで興奮させた自己由来樹状突起細胞(DC)を用いた進行性子宮頸癌患者におけるHPV16特異的(CTL)およびTヘルパー細胞のインビボ誘導」、準備中。
【非特許文献11】
ジフォーゲル(Zivogel)L、アンジェビン(Angevin)E、Tトゥルツ(Tursz)著「樹状突起細胞に基づく癌の免疫療法」、Annals of Oncology、2000年(11(補遺3))、199〜205頁。
【非特許文献12】
スタインマン(Steinman)R.M.著「樹状突起細胞」、Fundamental Immunogy(ポール(Paul),W.E.編)所収、1999年、リッピンスコット(Lippinscott)−レーベン(Raven)、547〜573頁。
【非特許文献13】
ドダプカー(Dhodapkar)MV、スタインマン(Steinman)RM、サップ(Sapp)M、デサール(Desal)H、フォセラ(Fossella)C、クラソフスキー(Krasovsky)J、ドナホエ(Donahoe)SM、ダンバー(Dunbar)PR、セルンドロ(Cerundolo)V、ニクソン(Nixon)DF著「成熟樹状突起細胞の1回注射後のヒトにおける広いT細胞免疫の迅速な生成」、J Clin Invest、1999年(104)、173〜180頁。
【非特許文献14】
スタインブリンク(Steinbrink)K、ジョヌレイト(Jonuleit)H、モラー(Moller)、シューラー(Shuler)G、クノップ(Knop)J、エンク(Enk)AH著「インターロイキン10処置ヒト樹状突起細胞は腫瘍細胞を熔解する障害となるCD8+T細胞における黒色腫抗原特異的アネルギーを誘発する」、Blood、1999年(93(5))、1634〜1642頁。
【非特許文献15】
メッツインガー(Matzinger)P.著「耐性、危険、および拡大ファミリー」、Annu.Rev.Immunol、1994年(12)、991〜1045頁。
【非特許文献16】
スパルヴァッサー(Sparwasser)T、コッホ(Koch)ES,バブラス(Vabulas)RM、ヘーグ(Heeg)K、GB、リフォード(Lipford)GB、エルワート(Ellwart)JW、H ワグナー(Wagner)著「細菌DNAおよび免疫刺激CpGオリゴヌクレオチドはマウス樹状突起細胞の成熟化および活性化を誘発する」、Eur J Immunol、1998年(28)、2045頁。
【非特許文献17】
リッジ(Ridge)JP、ジローサ(Dirosa)F、マッツィンガー(Matzinger)P著「調整された樹状突起細胞はCD4(+)TヘルパーとTキラー細胞との一時的な架け橋でありうる」、Nature、1998年(393)、474頁。
【非特許文献18】
セラ(Cella)M、アン エンゲリング(An Engering)A、V ピネットV(PinetV)、ピーターズ(Piters)J、ランザベチア(Lanzavecchia)A著「炎症性刺激が樹状突起細胞上のMHCクラスII錯体の蓄積を誘発する」、Nature、1997年(388)、782頁。
【非特許文献19】
バス(Basu)Sら著「壊死性であるがアポトーシスではない細胞死は、部分成熟シグナルを樹状突起細胞に送達し、NF−カッパB経路を活性化するショック熱タンパク質を放出する」、Int Immunol、2000年(12)、1539〜1408頁。
【非特許文献20】
サルスト(Sallusto)F、ランザベチア(Lanzavecchia)A著「培養ヒト樹状突起細胞による可溶性抗原の有効な提示は、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子+インターロイキン4によって維持され、腫瘍壊死因子によって減少する」、J Exp Med、1994年(179)、1109〜頁。
【非特許文献21】
ルフト(Luft)T、パング(Pang)KC、トーマス(Thomas)E、ヘルツォーグ(Hertzog)P、ハート(Hart)DNJ、トラパニ(Trapani)、J セボン(Cebon)J著「1型IFNは樹状突起細胞の最終分化を増強する」、J Immunol、1998年(161)、1947頁。
【非特許文献22】
ロマーニ(Romani)N、D ライダー(Reider)、ホイヤー(Heuer)M、エブナー(Ebner)S、E ケンプゲン(Kaempgen)E、アイブル(Eibl)B、ネイダーヴィーザー(Neiderwieser)D、シューラー(Schuler)G著「ヒト血液からの成熟樹状突起細胞の生成:臨床的適用性を特別に考慮した方法の改善」、J Immunol Methods、1996年(196)、137頁。
【非特許文献23】
ベリク(Verik)RW、ムチス(Mutis)M、エセンダム(Esendam)B、カンプ(Kamp)J、メリーフ(Melief)JM、シーズ(Cees)、ブラント(Brand)A、グルミー(Goulmy)E著「ポリリボイノシン:ポリリボシチジル酸(ポリl:C)は機能的に活性なヒト樹状突起細胞の安定した成熟を誘発する」、Journal of Immunology、1999年(163)、57〜61頁。
【非特許文献24】
シュルツ(Schulz)O、エドワーズ(Edwards)AD、シトー(Schito)M、アリベルティ(Aloberti)J、マニカシンガム(Manickasingham)S、シェール(Sher)A、ライス(Reis)e ソウザ(Souza)C著(2000年)「インビボの樹状突起細胞によるヘテロ二量体IL−12p70産生のCD40トリガーは、微生物刺激シグナルを必要とする」、Immunity、2000年(13)、453〜462頁。
【非特許文献25】
ヒルケンス(Hilkens)CM、カリンスキー(Kalinski)P、デ ブール(de Boer)M、カプセンベルク(Kapsenberg)M著「ヒト樹状突起細胞は、ナイーブTヘルパー細胞の発達をTh1表現型へ方向づける外因性インターロイキン−12誘発因子を必要とする」、Blood、1997年(90)、1920〜1926頁。
【非特許文献26】
スニガーズ(Sniggers)A、カリンスキー(Kalinski)P、CMヒルケンス(Hilkens)CM、カプセンベルク(Kapsenberg)ML著「ヒト樹状突起細胞による高レベルIL12産生は2つのシグナルを必要とする」、Int.Immunol、1998年(10)、1593〜1598頁。
【非特許文献27】
ディール(Diehhl)L、デン ブール(Den Boer)AT、ショーエンベルガー(Schoenberger)SP、バン デル フールト エル(van der Voort El)、TNシューマッハー(Schumacher)TN、メリーフ(Melief)CJ、オフリンガ(Offringa)R、トーズ(Toes)RE著「インビボでのCD40活性化は、ペプチド誘発末梢細胞毒性Tリンパ球耐性を克服し、抗腫瘍ワクチン効果を増加させる」、Nat.Med、1999年(5)、774〜779頁。
【非特許文献28】
フレンチ(French)RR、チャン(Chan)HT、チュチュ(TuTu)AL、グリーニー(Gleennie)MJ著「CD40抗体は、リンパ腫を根絶し、T細胞ヘルプをバイパスする細胞毒性T細胞反応を誘発する」、Nat Med、1999年(5)、548〜553頁。
【非特許文献29】
ソトメイヤー(Sotomayor)EM、ボレロ(Borello)I、E タブ(Tubb)E、FM ラティス(Rattis)FM、ビーン(Bien)H、ルー(Lu)Z、S フェイン(Fein)S、ショーエンベルガー(Schoenberger)S、レビツキー(Levitsky)HI著「T細胞刺激に対して耐性の腫瘍特異的CD4+の変換。CD40のインビボライゲーションを介して」、Nat Med、1999年(5)、780〜787頁。
【非特許文献30】
ロビンソン(Robinson)RA、デ ビタ(De Vita)VT、H レビー(Levy)HB、バロン(Baron)S、フッバード(Hubbard)SP、レビン(Levine)AS著「短報、第I〜II相多重治験−白血病または固形腫瘍患者における用量ポリリボイノシン:ポリリボシチジル酸」、J Natl Cancer Inst、1976年(57)、599〜602頁。
【非特許文献31】
クラウン(Krown)SE、フリーデン(Frieden)GB、ハンスール(Khansur)Tら著「インターフェロン誘導物質ポリル:C/ポリ−Lリシン(ポリICL)による第I相治験」、J IFN Res、1983年(3)281〜290頁。
【非特許文献32】
レビィ(Levy)HB、リレイ(Riley)FL著「ポリヌクレオチドの安定化形態の利用」(ケイン(Cane)PE、カーター(Carter)WA編、Handbook of experimental pharmacology所収、1984年、ベルリン、シュプリンガー・フェアラーク(Springer Verlag)、513〜533頁。
【非特許文献33】
ストレイヤー(Strayer)DR、カーター(Carter)WA、ブロドスキー(Brodosky)I、デイネイ(Dheyney)P、ペーターセン(Petersen)D、サルバト(Salvato)P、トンプソン(Thompson)C、ラブレス(Loveless)M、シャピロ(Shapiro)DE、エルサッサー(Elsasser)W。ジレスパイ(Gillespie)DH著「慢性疲労症候群臨床感染症における特定構造のRNA薬ポリ(l):ポリ(C12U)による比較対照臨床試験」、1994年(補遺1)、88〜95頁。
【非特許文献34】
アンプリゲン(登録商標)ポリ[l]:ポリ[C12U]臨床研究者パンフレット、バイオクローンズ(Pty)社(Ltd)、1998年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、インビトロで成熟樹状突起細胞を生成する方法であって、
特定構造の高分子量二本鎖RNA(dsRNA)ポリマーの存在下に未成熟樹状突起細胞を培養するステップ
を含む方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
特定構造の高分子量dsRNAポリマーは、ポリ[l]:ポリ[CxU];ポリ[l]:ポリ[GxU];ポリ[A]:ポリ[UxC];ポリ[A]:ポリ[UxG];ポリ[U]:ポリ[AxC];ポリ[U]:ポリ[lxU];ポリ[C]:ポリ[GxA];ポリ[C]:ポリ[GxU];ポリ[G]:ポリ[CxA];およびポリ[G]:ポリ[CxU][ここでxは平均で3〜40の数である]からなる群から選択されうる。より好ましくは、dsRNAポリマーは、アンプリゲン(登録商標)なる商品名で市販されているポリ[l]:ポリ[C12U]、またはポリ[C]:ポリ[l12U]である。通常、dsRNAは、ポリ[l]:ポリ[C12U]である。
【0020】
dsRNAの分子量は通常、100〜2500kDa、好ましくは300〜1500kDaである。
【0021】
未成熟樹状突起細胞は、ヒトまたは動物の体内から分離され、末梢血単核球から培養されうる。
【0022】
成熟樹状突起細胞を生成する方法は、成熟樹状突起細胞を活性化し、19時間以上、好ましくは43時間以上IL12p70を生成しうる。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、インビトロで成熟抗原提示樹状突起細胞を生成する方法であって、
未成熟樹状突起細胞を抗原に曝露するステップと、
実質的に上述した工程に従い樹状突起細胞を成熟化させるステップと、
を含む方法が提供される。
【0024】
抗原は癌抗原、例えば腫瘍関連抗原でありうる。あるいは、抗原はヒト寄生生物、ウイルス、または微生物由来の抗原でありうる。
【0025】
未成熟樹状突起細胞は、抗原を捕捉し加工するように樹状突起細胞を誘導するに十分な時間、抗原に曝露されうる。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、ヒトまたは動物の体内における細胞免疫反応を誘導するためのワクチンを製造する方法であって、
十分な数の樹状突起細胞が抗原提示細胞となるまで、インビトロで未成熟細胞を抗原に曝露するステップと、
上述した工程に従い未成熟樹状突起細胞を成熟化するステップと、
薬学的に許容される製剤中に抗原提示成熟細胞を含めるステップと、
を含む方法が提供される。
【0027】
抗原は癌関連抗原、またはヒトあるいは動物の寄生生物、ウイルス、または微生物由来でありうる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、実質的に上述した方法によって生成される抗原提示成熟樹状突起細胞を含むワクチンが提供される。
【0029】
ワクチンは、癌患者またはウイルス、寄生生物、または微生物に感染されたと診断された患者を治療する方法において使用しうる。
【0030】
ワクチンは、適切な希釈剤、賦形剤、または補助剤をさらに含みうる。
【0031】
ワクチンは、適切な細菌または全身アジュバントも含みうる。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、ヒトまたは動物の体内における癌を治療する方法であって、
腫瘍抗原提示樹状突起細胞を生成するために実質的に上述した癌関連抗原で未成熟樹状突起細胞を培養するステップと、
実質的に上述した工程に従い樹状突起細胞を成熟化するステップと、
ヒトまたは動物の体内に抗原提示細胞を注射するステップと、
を含む方法が提供される。
【0033】
本発明のさらに別の態様によれば、ヒトまたは動物の体内における寄生生物、ウイルス、または微生物を処置する方法であって、
抗原提示樹状突起細胞を生成するために実質的に上述した寄生生物、ウイルス、または微生物関連抗原で未成熟樹状突起細胞を培養するステップと、
実質的に上述した工程に従い樹状突起細胞を成熟化するステップと、
ヒトまたは動物の体内に抗原提示細胞を注射するステップと、
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明を図1および図2に関連して更に詳細に述べる。
【0035】
方法と材料
樹状突起細胞の供給元
白血球成分採取装置(leukophoresis)を用いて末梢血単核細胞を得た。1000IU/ml GM−CSF(ノバルティス(Novartis))および1000IU/ml IL4(ファルミンゲン(Pharmingen))の存在下、血清を含まない培地AIM−V(GIBCO)中の接着末梢血単核細胞から(ロマーニの変法を用いて)6〜7日間、培養した。未成熟樹状突起細胞集団を収穫し、2つの同等のアリコートに分割した。一方のアリコートを成熟化剤で処理した。さらに2日間、37℃下の培地中に細胞を放置した。
【0036】
樹状突起細胞分化の免疫表現型による特徴づけ
CD14、CD1a、CD80、CD86、CD40、CD54、CD83、クラスIおよびクラスIIに対するフルオレセイン結合モノクローナル抗体を用いて、FACScan(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))で樹状突起細胞分化のフローサイトメトリー分析を行った。
【0037】
樹状突起細胞成熟化の評価項目
a)IL 12 p70ELISAキットアッセイ(アール・アンド・ディー(R&D)システムズ(Systems))を用いてIL 12産生を分析した。分析では、細胞培養上清中のIL 12を測定するように設計された定量的サンドイッチ酵素免疫アッセイを使用する。
b)フローサイトメトリーを用いて、CD83およびクラスIIおよびCD86の発現の増加を測定した。
【0038】
成熟化剤の供給元
a)ポリ[l]:ポリ[C]をシグマ社(Sigma Ltd)(英国)から入手した。
b)アンプリゲン(登録商標)(ポリ[l]:ポリ[C12U])をバイオクロンズ(Bioclones)(Pty)有限会社(Limited)(南アフリカ)から入手した。
c)他の特定構造の高分子量dsRNAポリマーを以下に記載したように調製した。
【0039】
ポリマー構造を製造するための方法:
ミクロコッカス ルテウス(Microccocus luteus)から分離された酵素ポリヌクレオチドホスホリラーゼ(EC 2.7.7.8)を用いたヌクレオチド二リン酸塩の酵素重合によって一本鎖RNA(ssRNA)分子を合成した。1個以上のヌクレオチドを含有する特定構造の一本鎖RNAの場合、それぞれのヌクレオチド二リン酸塩の所定のモル比を用いてポリマーを合成した。次いで、最終ポリマーの正確な比を測定した。
【0040】
合成された一本鎖RNA分子(ポリ[C6U]、ポリ[C24U]、およびポリ[l12U])を、表1に示す。
【表1】
Figure 2004538000
【0041】
23.5mMの最終濃度に正確に従って、0.1M トリスpH9.0、0.3M尿素、7.5mM MgCl2、および0.5mM EDTA.Na2およびそれぞれのヌクレオチド二リン酸塩(NDP)を含有する緩衝液中の0.4単位/mlでポリヌクレオチドホスホリラーゼを用いて一本鎖RNAを分析した。重合は、ポリマーによって22〜40時間、22〜24℃下に行った。この時間中、中間試料を除去し、HPLCによってポリマーへのNDPの取込みを測定した。粘度測定も特定の時間で行った。重合の終了時点で(通常、ヌクレオチド二リン酸塩の取込みの程度によって測定)、100000の名目上の分子量カットオフ膜を含有するミリポア・ミニタン装置を用いて、ポリマー含有溶液を3倍に濃縮した。次いで、トリス、SDS、およびフェノールを溶液に添加し、60秒間隔で3回攪拌した。次いで、ベックマン(Beckman)JA10ローターにおいて5000rpmで溶液を遠心分離し、低フェノール層を除去した。次いで、フェノール、トリス、およびSDSを添加し、この手順を3回繰り返した。フェノール抽出後、KClを0.5M濃度に添加した後に冷却したフェノールでポリマーを沈殿した。ポリマー沈殿物を再熔解し、2回目を沈殿した。第2のポリマー沈殿物を水中で熔解し、まずEDTA緩衝液に対して限外濾過して重金属を除去し、次いで酢酸カリウムに対して限外濾過し、最後に、0.22μmフィルターの中を濾過し、凍結乾燥する前に、10容量の水に対して限外濾過した。
【0042】
ssRNAの分析
ssRNAの各バッチを以下の通り分析した。
【0043】
サイズ
分子をアガロースゲルで電気泳動し、それらを相補鎖とマッチングする目的でサイズの推定値を得た。全試料を標準のポリC12U材料(バッチ番号RU040105)と比較し、多角度光散乱によって、平均沈降係数が6.8Sであり、数平均分子量が500 000であることが測定された。アガロースゲル電気泳動での試料の移動度に基づき、ベックマン(Beckman)XLA分析超遠心分離機で分析的超遠心分離のために最大および最小のssRNAを選択した。最大のポリマー、ポリCは、8.9Sの平均沈降係数を有し、最小ポリマー、ポリl12Uは、5.3Sの平均沈降係数を有した。残りのポリマーはすべて、このサイズ範囲内にあることが予想される。
【0044】
モル当量
総リンを測定することによってモル当量を測定した。この値を用いて、アニーリング中に8mMのポリマー濃度を達成するために必要とされるポリマーの質量を測定した。(すなわち、リンに対して8mM[1リン=1モノマー])。有機リンの正確な測定を確実にするために、無機リンも測定した。
【0045】
スペクトル特性
識別の手段として、かつ二本鎖のアニーリング時の淡色効果の評価としても、UV波長プロットを記録した。
【0046】
塩基比
ポリマーを取込みヌクレオチドに酵素消化させ、HPlCを行って、一本鎖の1つ以上の塩基の意図的な取込みによるポリマーの塩基純度および塩基比を明らかにした。
【0047】
内毒素
Cape Cod LAL法を用いて内毒素を測定した(内毒素そのものは樹状突起細胞の成熟化を誘発しうるため、ポリマーは実質的に内毒素を含まないことが重要であった)。
【0048】
dsRNAのアニーリング
10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、150mM塩化ナトリウム、および1mM塩化マグネシウムを含有するアンプリゲン(登録商標)緩衝液中でアニーリングを行った。50℃で総有機リンに対して8mMにポリマーを熔解し、それぞれ相補ssRNA溶液の同等量を混合することによってアニーリングし、10分間65℃に加熱し、次いで室温に冷却した。次いで、材料を0.22μmフィルターの中に濾過し、層流下に小ビンに入れた。
【0049】
dsRNAの分析
スペクトル
アニーリング用に調製した2つのssRNA溶液およびアニーリングしたdsRNAの試料を取り、UV波長プロフィールを評価した(図1〜3)。淡色効果シフト(一般にssRNAのピーク吸光度における)をアニーリングの指標として評価した。
【0050】
内毒素
Cape Cod LALアッセイを用いてdsRNAの内毒素を評価した。
【0051】
濃度
濃度は、ssRNA構成要素の開始濃度と同等であると考えられた。
【表2】
Figure 2004538000
【0052】
ポリ[l]:ポリ[C6U]について得られた淡色効果シフトの減少は、二本鎖RNAにおけるウリジンミスマッチの頻度増加によって説明することができ、これにより、ポリ[l]:ポリ[C12U]など、より完全な塩基対ポリマーと比較した場合、dsRNA鎖における高い割合の一本鎖RNAが得られる。
【0053】
実験試験
(a)未成熟単球由来樹状突起細胞に対するアンプリゲン(登録商標)および他の高分子量特定構造のdsRNAポリマーおよびポリ[l]:ポリ[C]の樹状突起細胞成熟化効果の比較
【0054】
細胞表面表現型における変化によって測定される、ヒト単球由来樹状突起細胞の成熟化剤として、ポリ[l]:ポリ[C12U]、ポリ[C]:ポリ[l12U]、ポリ[l]:ポリ[C6U]、ポリ[l]:ポリ[C24U]、およびポリ[l]:ポリ[C]の直接比較をFACS分析を用いて行った。
【0055】
GM−CSFおよびIL4の存在下に7日間、白血球成分採取末梢血単核細胞を培養することによって未成熟樹状突起細胞を生成した。1つの試験ではポリ[l]:ポリ[C]を利用し、他の試験ではポリ[l]:ポリ[C12U]、ポリ[C]:ポリ[l12U]、ポリ[l]:ポリ[C6U]、およびポリ[l]:ポリ[C24U]成熟化刺激を48時間、均一な培養条件下に培地に導入した。FACS分析を用いることによって、成熟樹状突起細胞の表現型を測定した(図4および5)。成熟樹状突起細胞は、CD83に対して強い陽性として確認された(成熟樹状突起細胞の表面上には糖タンパク質が主に発現した)。クラスII分子も未成熟樹状突起細胞(未処置)と比較して増加した。試験した用量レベルでは細胞毒性の証拠は確認されなかった。
【0056】
(b)樹状突起細胞成熟化およびIL12産生に対するポリ[l]:ポリ[C]およびアンプリゲン(登録商標)(および他の高分子量特定構造のdsRNAポリマー)の時間経過の比較:
【0057】
密度勾配遠心法によって単核細胞を分離した。IL4およびGM−CSFの存在下に接着細胞を6日間培養した。免疫表現型の特徴づけ後に細胞を収穫し(未成熟)、IL4およびGM−CSFの存在下に血清を含まない培地中に再培養した。細胞の3つの分離プレートを以下のように調製した。
プレート1−処置せず、
プレート2−ポリ[l]:ポリ[C](100μg/ml)
プレート3−ポリ[l]:ポリ[C12U](250μg/ml)
【0058】
成熟化剤の添加後7時間で培養基を各プレートから除去し、成熟化剤を含まない新鮮培地を添加した。これを時間間隔をおいて繰り返し、収集した各培養上清でIL12産生を測定した。
【0059】
結果
成熟化効果
ヒト単球由来樹状突起細胞に対する成熟化剤としてポリ[l]:ポリ[C12U]、ポリ[C]:ポリ[l12U]、ポリ[l]:ポリ[C6U]、ポリ[l]:ポリ[C24U]、およびポリ[l]:ポリ[C]を比較したFACS分析結果がまとめられ、図4および図5に示されている。
【0060】
未処理樹状突起細胞と比較すると、ポリ[l]:ポリ[C]、アンプリゲン(登録商標)、ポリ[C]:ポリ[l12U]、ポリ[l]:ポリ[C6U]、ポリ[l]:ポリ[C24U]は、2つのマーカーの有意に高いレベルの発現を生じ、高い振幅の反応は、アンプリゲン(登録商標)、ポリ[C]:ポリ[l12U]、ポリ[l]:ポリ[C6U]、およびポリ[l]:ポリ[C24U]と関連していた。
【0061】
IL 12(p70)産生
試験した時間経過にわたって、未処理樹状突起細胞は、特異的ELISA法によって検出可能なIL12を産生することはなかった。ポリ[l]:ポリ[C]およびアンプリゲン(登録商標)は、4時間の時点でIL 12産生を示さなかった。しかし、19時間の時点で、それらは有意かつ同等に高いレベルのIL 12を産生した。その後、27時間の時点で、IL 12レべルは低く、43時間の時点で低下し続けた。各時点での産生レベルの全体的な低下は、アンプリゲン(登録商標)と比べてポリ[l]:ポリ[C]でより顕著であった。
【0062】
結果は、樹状突起細胞の表現型成熟化およびこれらの細胞におけるIL 12産生の活性化をひき起こすアンプリゲン(登録商標)の能力を初めて示す。アンプリゲン(登録商標)は、ポリ[l]:ポリ[C]と比べて樹状突起細胞を成熟させる大きな能力を有することも示されている。さらに、アンプリゲン(登録商標)によって誘発されるIL 12産生は、ポリ[l]:ポリ[C]と関連したものと比べより長い期間、持続すると思われる。
【0063】
全体的な所見は、アンプリゲン(登録商標)が、その非毒性的臨床プロフィールとともに、樹状突起細胞の成熟化およびIL 12産生の活性化をひき起こす作用物として顕著な可能性を有することを示し、この2つの属性は、抗原刺激樹状突起細胞による抗原特異的細胞毒性T細胞反応の最適な刺激および誘導において重要であると考えられている。さらに、アンプリゲン(登録商標)は臨床的グレードで製造され、非毒性臨床プロフィールを有するため、ワクチンにおける使用が意図されている樹状突起細胞と一緒の使用に適している。
【0064】
癌と診断された患者における細胞免疫反応を刺激するためのワクチンを製造することができる。ワクチンを製造する方法において、未成熟樹状突起細胞は、患者の腫瘍関連抗原に曝露され、腫瘍抗原提示未成熟樹状突起細胞を生成する。次いで、抗原提示樹状突起細胞は、上述した方法によってアンプリゲン(登録商標)の存在下に成熟化され、ワクチンの形で医薬組成物に含まれる。次いで、ワクチンは患者に注射され、その後すぐに、樹状突起細胞は患者の局所リンパ節に移動し、CTL反応を誘発すると予想される。
【0065】
出願人は、ポリ[l]:ポリ[C12U]、ポリ[C]:ポリ[l12U]、ポリ[l]:ポリ[C6U]、およびポリ[l]:ポリ[C24U]が、特定構造の高分子量dsRNAポリマーのクラスの代表であると考えており、示された結果から、他の特定構造の高分子量dsRNAポリマーも樹状突起細胞を成熟させるために適切であることが予想される。かかる特定構造の高分子量dsRNAポリマーの例は、ポリ[l]:ポリ[CxU];ポリ[l]:ポリ[GxU];ポリ[A]:ポリ[UxC];ポリ[A]:ポリ[UxG];ポリ[U]:ポリ[AxC];ポリ[U]:ポリ[lxU];ポリ[C]:ポリ[GxA];ポリ[C]:ポリ[GxU];ポリ[G]:ポリ[CxA];およびポリ[G]:ポリ[CxU][ここでxは平均で3〜40、好ましくは6〜20の数である]であり、dsRNAは平均で100〜2,5000kDa、および好ましくは300〜1500kDaの分子量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ポリ[C]:ポリ[l12U]のUV波長スペクトルを示す図である。
【図2】ポリ[l]:ポリ[l6U]のUV波長スペクトルを示す図である。
【図3】ポリ[l]:ポリ[l24U]のUV波長スペクトルを示す図である。
【図4】クラスIIおよびCD83によって測定された、成熟単球由来樹状突起細胞に対するポリ[l]:ポリ[C]およびアンプリゲン(登録商標)の効果を示す図である。
【図5】ポリ[l]:ポリ[C6U]、ポリ[l]:ポリ[C24U]、およびポリ[C]:ポリ[l12U]で処理した健常個体からの樹状突起細胞のCD83およびクラスIIの発現に対する効果を示す図である。
【図6】樹状突起細胞に対する成熟化剤ポリ[l]:ポリ[C]およびアンプリゲン(登録商標)の影響、および樹状突起細胞によるIL 12 p70生成の時間経過を示す図である。

Claims (28)

  1. インビトロで成熟樹状突起細胞を生成する方法であって、該方法が、
    特定構造の高分子量二本鎖RNA(dsRNA)ポリマーの存在下に未成熟樹状突起細胞を培養するステップ
    を含む方法。
  2. 特定構造の高分子量dsRNAポリマーが、ポリ[l]:ポリ[CxU];ポリ[l]:ポリ[GxU];ポリ[A]:ポリ[UxC];ポリ[A]:ポリ[UxG];ポリ[U]:ポリ[AxC];ポリ[U]:ポリ[lxU];ポリ[C]:ポリ[GxA];ポリ[C]:ポリ[GxU];ポリ[G]:ポリ[CxA];およびポリ[G]:ポリ[CxU][ここでxは平均で3〜40の数である]からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. xが6〜20の数である、請求項2に記載の方法。
  4. dsRNAポリマーが、ポリ[l]:ポリ[C12U]およびポリ[C]:ポリ[C12U]からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. dsRNAポリマーがポリ[l]:ポリ[C12U]である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. dsRNAの分子量が100〜2500kDaである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. dsRNAの分子量が300〜1500kDaである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 未成熟樹状突起細胞が、ヒトまたは動物の体内から分離され、末梢血単核球から培養されるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 成熟樹状突起細胞を活性化し、19時間以上IL12p70を生成させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 成熟樹状突起細胞を活性化し、43時間以上IL12p70を生成させる、請求項9に記載の方法。
  11. インビトロで成熟抗原提示樹状突起細胞を生成する方法であって、
    未成熟樹状突起細胞を抗原に曝露するステップと、
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹状突起細胞を成熟化させるステップと、
    を含む方法。
  12. 抗原が癌抗原である、請求項11に記載の方法。
  13. 抗原が、ヒトまたは動物の寄生生物、ウイルス、および微生物由来の抗原からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  14. 未成熟樹状突起細胞が、抗原を捕捉し加工するように樹状突起細胞を誘導するに十分な時間、抗原に曝露される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. ヒトまたは動物の体内における細胞免疫反応を誘導するためのワクチンを製造する方法であって、該方法が、
    十分な数の樹状突起細胞が抗原提示細胞となるまで、インビトロで未成熟細胞を抗原に曝露するステップと、
    請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に従い未成熟樹状突起細胞を成熟化するステップと、
    薬学的に許容される製剤中に抗原提示成熟細胞を含めるステップと、
    を含む方法。
  16. 抗原が、癌関連抗原、およびヒトまたは動物の寄生生物、ウイルス、および微生物由来の抗原からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
  17. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって生成される抗原提示成熟樹状突起細胞を含むワクチン。
  18. 癌患者、ウイルス、寄生生物、または微生物に感染しているとと診断された患者を処置する方法における使用のための、請求項17に記載のワクチン。
  19. 適切な希釈剤、賦形剤、または補助剤をさらに含む、請求項17または18のいずれかに記載のワクチン。
  20. 適切な細菌または全身アジュバントを含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載のワクチン。
  21. ヒトまたは動物の体内の癌を治療する方法であって、該方法が、
    腫瘍抗原提示樹状突起細胞を生成するために癌関連抗原で未成熟樹状突起細胞を培養するステップと、
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹状突起細胞を成熟化するステップと、
    ヒトまたは動物の体内に抗原提示細胞を注射するステップと、
    を含む方法。
  22. ヒトまたは動物の体内の寄生生物、ウイルス、または微生物を処理する方法であって、該方法が、
    抗原提示樹状突起細胞を生成するために寄生生物、ウイルス、または微生物関連抗原で未成熟樹状突起細胞を培養するステップと、
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹状突起細胞を成熟化するステップと、
    ヒトまたは動物の体内に抗原提示細胞を注射するステップと、
    を含む方法。
  23. ポリ[l]:ポリ[C6U]である、特定構造の高分子量二本鎖RNAポリマー。
  24. ポリ[l]:ポリ[C24U]である、特定構造の高分子量二本鎖RNAポリマー。
  25. ポリ[C]:ポリ[l12U]である、特定構造の高分子量二本鎖RNAポリマー。
  26. 実質的に本願中に記載され、例示された、請求項1に記載の方法。
  27. 実質的に本願中に記載され、例示された、請求項11に記載の方法。
  28. 実質的に本願中に記載され、例示された、請求項15に記載の方法。
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