JP2004535159A - 疾患検出及び治療用分子 - Google Patents
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Abstract
【課題】精製されたポリペプチドである、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子を提供する。
【解決手段】以下の(a)乃至(d)からなる群から選択した単離されたポリペプチドである。(a)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド。(b)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド。(c)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片。(d)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片。
【解決手段】以下の(a)乃至(d)からなる群から選択した単離されたポリペプチドである。(a)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド。(b)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド。(c)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片。(d)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子の核酸配列及びアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、発達障害、神経障害、心血管障害の診断・治療・予防に関する。本発明は更に、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来化合物の効果についての算定に関する。
【背景技術】
【0002】
推定によれば、哺乳類DNAの2%のみがタンパク質をコードしており、どの時点でも、タンパク質をコードする遺伝子群の僅かな部分のみが特定細胞内で実際に発現される。多細胞生物における種々のタイプの細胞は構造も機能も劇的に異なっており、特定細胞の個性を授けるものは、その独自のパターンの遺伝子発現である。また、異なる細胞タイプは、オーバーラップするが特有のセットの遺伝子群を、発生期を通じて発現する。生物の発達と生存とに寄与する、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、免疫応答、アポトーシス及び他のプロセスは、遺伝子発現の調節によって支配される。適切な遺伝子調節はまた、細胞を効率よく機能させる。これを確実にするため、その機能が要求される遺伝子群のみが所定の時期に発現される。遺伝子発現に影響を与える因子の例には、細胞間伝達を仲介し様々な細胞型の作用を協調させる細胞外シグナルを含む。遺伝子発現は、DNAとRNAとの転写レベル、及び、mRNA翻訳のレベルにおいて調節される。
【0003】
遺伝子と遺伝子産物とに異常な発現又は突然変異があると、種々のヒト疾患(例えば癌その他の細胞増殖異常など)を起こしたり、又はそれらに対する感受性を増加させたりすることがある。これらの遺伝子と遺伝子産物の同定が、疾患の早期検出のためのマーカーと、疾患の予防と治療との為の標的とを見出すために進展している努力の基礎となる。例えば癌は、身体のほぼ全ての組織に影響する細胞増殖異常の或るタイプを言う。癌の発生すなわち発癌は、しばしば、異常発現又は突然変異を通じて正常遺伝子が癌を起こす遺伝子すなわち癌原遺伝子へ変換することと相関する。腫瘍性タンパク質(癌原遺伝子の産物)の例には、細胞増殖に影響する種々の分子を含む。このような分子とは例えば成長因子、成長因子受容体、細胞内シグナル伝達因子、核内転写因子、及び細胞周期制御タンパク質である。一方、腫瘍抑制遺伝子は、細胞増殖抑制に関係する。腫瘍抑制遺伝子の機能を低減又は抑止する突然変異の結果、異常な細胞増殖と癌とが起こる。このように、多種多様な遺伝子と遺伝子産物とが細胞増殖異常(癌など)に関連することが見出されているが、まだ発見されていない多くの遺伝子と遺伝子産物が存在する可能性がある。
【0004】
DNAベースのアレイは、遺伝子発現と遺伝的変異性とを試験する、効率的で高処理の方法を提供できる。例えばSNP(すなわち一塩基多型)は、最も多いタイプのヒト遺伝的変異である。DNAベースのアレイは、数百、数千もの遺伝子群におけるSNPの発見を劇的に加速できる。同様に、このようなアレイを用いて、SNP遺伝子型解析(SNP genotyping)をなしうる。この解析では、個体群又は集団群からのDNAサンプルのアッセイを、選択したSNPの存在について行う。これらのアプローチは、ヒトゲノムにおける全ての遺伝的変異の体系的同定や、特定の遺伝的変異と疾患感受性、薬物治療応答性その他の医学的関連情報との相関の体系的同定を最終的にもたらすだろう(例えばWang, D.G.他 (1998) Science 280:1077-1082.)。
【0005】
DNAベースのアレイ技術は、全体的な遺伝子発現パターンの迅速な分析に特に重要である。例えば遺伝子的疾病素質、疾患、又は治療処置は、直接又は間接に、或る組織における多数の遺伝子の発現に影響することがある。この場合、発現される全ての遺伝子と、それらの遺伝子がその特定組織において発現されるレベルとのプロフィールすなわち転写物イメージを作製することは有用である。或る疾患を患う個体又は集団、又は特定の治療を受けている個体又は集団から作製されたプロフィールは、対照の個体又は集団から作製されたプロフィールと比較されうる。このような分析には、遺伝子機能の知識を必要としない。理由は、発現プロフィールを数学的に分析でき、この分析では各遺伝子を単にマーカーとして扱うからである。更に遺伝子発現プロフィールは、例えば或る発生段階や特定組織において、又は疾患や処置に応答して発現される全ての遺伝子を同定することによって、生物学的経路の詳細な分析を補助しうる(例えばLander, E.S.他 (1996) Science 274:536-539)。
【0006】
数種の遺伝子は、疾患と関連することが、染色体上の位置から知られている。その例として、マウスとヒトとの筋緊張性ジストロフィ(DM)領域にある遺伝子群がある。DMの根底にある突然変異はDMキナーゼ蛋白をコードする或る遺伝子に限局されているが、別の活性遺伝子であるDMR-N9は、このDMキナーゼ遺伝子に非常に近接した位置にある(Jansen, G.他(1992) Nat. Genet. 1:261-266)。DMR-N9は、或る650個のアミノ酸のタンパク質をコードし、このタンパク質にはWDリピートがある。WDリピートは細胞シグナル伝達タンパクに見られるモチーフである。DMR-N9は全ての神経組織と睾丸とに発現されるので、重篤例のDMにおける精神症状と睾丸症状との出現におけるDMR-N9の役割を示唆している(Jansen, G.他 (1995) Hum. Mol. Genet. 4:843-852)。
【0007】
他の複数の遺伝子の同定が、その発現パターンに、又は疾病症候群との関連に基づいてなされた。例えば細胞内オルガネラに対する自己抗体は、全身性リウマチ性疾患の患者に見られる。最近同定されたタンパク質であるgolgin-67はゴルジ自己抗原の或るファミリに属しており、αヘリックスのコイルドコイルドメインを持つ(Eystathioy, T.他 (2000) J. Autoimmun. 14:179-187)。Stac遺伝子は、脳に特異的で、発達に応じて調節される遺伝子として同定された。Stacタンパク質はSH3ドメインを持つ。またニューロン特異的シグナル伝達に関わると思われる(Suzuki, H.他 (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 229:902-909)。
【0008】
カルポニンはアクチン結合タンパク質であり、細胞骨格の機能と組織化とに関与し得る(Takahashi, K. 他. (1986) Biochem. Biophys. Res. Commun. 141:20-26)。カルポニンのN末端は、カルシウム結合タンパク質類及びトロポミオシンと相互作用することができる。幾つかの他のアクチン結合タンパク質の構造内に見出されるCH-ドメイン(カルポニン相同ドメイン)も、N末端に位置する(Gusev, N.B. (2001) Biochemistry (Mosc) 66:1112-1121)。
【0009】
分泌タンパク質
タンパク質の輸送及び分泌は、細胞機能のために必須である。タンパク質の輸送は、輸送若しくは分泌されるタンパク質のアミノ末端にあるシグナルペプチドが媒介する。シグナルペプチドは、約10から20の疎水性アミノ酸群からなり、新生タンパク質をリボソームから、膜で囲まれた特定の区画、例えば小胞体(ER)まで導く。ERを標的とするタンパク質には、分泌経路を進むものと、いずれかの分泌細胞器官(例えばER、ゴルジ装置若しくはリソソーム)に残るものとがある。分泌経路を進むタンパク質類は、細胞外空間へ分泌されるか、又は原形質膜内に残る。原形質膜内に保持されるタンパク質類は1つ以上の膜貫通ドメインを持ち、各ドメインは約20の疎水性アミノ酸残基からなる。分泌タンパク質類は、通常、不活性の前駆体として合成され、分泌経路を進む際に、翻訳後プロセシングイベントによって活性化される。そのようなイベントとして、グリコシル化、タンパク質分解、及びシグナルペプチダーゼによるシグナルペプチドの除去が挙げられる。タンパク質の輸送の間に起こり得る他のイベントとしては、新生タンパク質のシャペロン依存アンフォールディング及びフォールディング、及び、このタンパク質と、受容体若しくは細孔複合体との相互作用がある。アミノ末端シグナルペプチドを持つ分泌タンパク質の例は以下に述べるが、中には、細胞間シグナル伝達において重要な役割を持つタンパク質類もある。そのようなタンパク質の例として、膜貫通受容体及び細胞表面マーカー、細胞外基質分子、サイトカイン、ホルモン、成長因子及び分化因子、酵素、ニューロペプチド、血管介在物質(vasomediators)、細胞表面マーカー、及び抗原認識分子がある(Alberts, B.他 (1994) Molecular Biology of The Cell, Garland Publishing, New York, NY, 557-560, 582-592ページの概説を参照)。
【0010】
細胞表面マーカーとしては、免疫系の白血球細胞上で同定される細胞表面抗原類がある。これらの抗原を同定するには、系統的な、モノクローナル抗体(mAb)ベースの「ショットガン(shot gun)」技術が利用される。これらの技術によって、数百種のmAbが、未知の細胞表面白血球抗原類に対して産生されている。それらの抗原は「分化のクラスタ群」へとグループ分けされている。分類は、多様な分化白血球細胞型と未分化白血球細胞型とで共通の免疫細胞化学的な局在パターンに基づく。或るクラスタ内の抗原群は或る単一の細胞表面タンパク質を同定すると仮定され、「分化クラスタ」すなわち「CD(cluster of differentiation)」名が指定されている。CD抗原類が同定するタンパク質類をコードするいくつかの遺伝子が、標準的な分子生物学技術によってクローン化され、確証されている。CD抗原類の特徴は、膜貫通タンパク質であることと、細胞表面タンパク質であって脂肪酸含有糖脂質、例えばグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)への共有結合性の接着を介して原形質膜に固着されていることである(Barclay, A. N. 他(1995) The Leucocyte Antigen Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 17-20ページに概説されている)。
【0011】
マトリックスタンパク質(MP)類は、膜貫通タンパク質及び細胞外タンパク質であり、各組織の形成、成長、再形成、及び維持において機能し、炎症反応の重要な介在物質及び制御因子として働く。MP類の発現及びバランスを乱し得る生化学的変化の原因としては、先天的疾患、後成的疾患、若しくは感染性疾患がある。また、MP類は、免疫応答における白血球の遊走、増殖、分化、及び活性化に影響する。しばしばMP類は、1つ以上のドメインの存在によって特徴付けられ、そのようなドメインにはコラーゲン様ドメイン、EGF様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、及びフィブロネクチン様ドメインが含まれ得る。加えて、MP類は重度にグリコシル化され得る。また、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)トリペプチドモチーフを持つことがあり、これは接着相互作用において、或る役割を果たし得る。MPの例としては、細胞外タンパク質として、フィブロネクチン、コラーゲン、ガレクチン(galectin)、ビトロネクチン及びそのタンパク質分解誘導体ソマトメジンBがあり、また細胞接着受容体として、細胞接着分子(CAM)、カドヘリン、及びインテグリンがある(Ayad, S. 他(1994)The Extracellular Matrix Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 2-16ページ、Ruoslahti, E.(1997)Kidney Int. 51: 1413-1417、Sjaastad, M. D.及び Nelson, W. J.(1997)BioEssays 19:47-55に概説されている)。
【0012】
ムチン類は高度にグリコシル化された糖タンパク質であり、粘液ゲルの主要な構造成分である。ムチン類の生理機能は、細胞保護、機械的保護、分泌物の粘性の保持、及び細胞認識である。MUC6はヒトの胃ムチンであり、胆嚢、膵臓、精嚢、及び女性の生殖管にも見つけられる(Toribara, N.W. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:16398-16403)。MUC6の遺伝子はヒト染色体11にマップされている(Toribara, N.W.,他 (1993) J. Biol. Chem. 268:5879-5885)。ヘモムチンは新しいショウジョウバエ表面ムチンであり、抗菌エフェクター分子類の誘導に関与している可能性がある(Theopold, U., 他 (1996) J. Biol. Chem. 217:12708-12715)。
【0013】
タフテリン(tuftelin)類は、これまでに同定された4種のエナメルマトリックスタンパク質の1つである。他3種の既知のエナメルマトリックスタンパク質は、アメロゲニン、エナメリン及びアメロブラスチンである。これらの成分タンパク質群からのエナメル細胞外マトリックスの構築は、無機質置換を受けるのに適格なマトリックスを産生する中で重要であると考えられている(Paine, C.T. 他 (1998) Connect Tissue Res. 38:257-267)。タフテリンmRNAは、非ミネラル化歯原性腫瘍であるヒトエナメル上皮腫において発現されることが発見されている(Deutsch D. 他(1998)Connect. Tissue Res. 39:177-184)。
【0014】
オルファクトメジン(olfactomedin)関連タンパク質類は細胞外マトリックスの分泌糖タンパク質であり、保存されたC末端モチーフ群を持つ。これらのタンパク質は、線虫(Caenorhabditis elegans)からヒトにいたる広範囲の種の多様な組織に発現される。オルファクトメジン関連タンパク質類には、ヒトにおいて少なくともファミリメンバー5種を持つ遺伝子ファミリがある。この5つのうちの一つであるTIGR/ミオシリン(myocilin )タンパク質は眼で発現し、緑内障の病原と関連している(Kulkarni, N.H. 他 (2000) Genet. Res. 76:41-50)。Yokoyama 他 (1996) による研究では、AMYと呼ぶ135アミノ酸のタンパク質は、神経芽細胞腫細胞系cDNAライブラリにおけるラットの神経細胞のオルファクトメジン関連ER局在性タンパク質に96%の配列同一性を有することが発見され、これはAMYの神経組織における役割が重要であることを示している(Yokoyama, M. 他, (1996) DNA Res. 3:311-320)。ラット脳cDNAライブラリ群から単離された神経細胞特異的オルファクトメジン関連糖タンパク質群は、オルファクトメジンとの強い配列類似性を示す。この類似性は、神経細胞と神経分泌細胞において、これらの糖タンパク質が、基質に関連した機能を持つことを示唆している(Danielson, P.E.他(1994)J. Neurosci. Res. 38:468-478)。
【0015】
Mac-2 結合タンパク質は90kDaの血清タンパク質(90K)であり、ヒト乳癌細胞株SK-BR-3とヒト母乳との両方から単離された分泌糖タンパク質である。90Kは、ヒトマクロファージ関連レクチンであるMac-2に特異的に結合する。構造的には、成熟したタンパク質は長さが567アミノ酸で、その前に18アミノ酸リーダーが付いている。16のシステイン群と、7つの潜在的N連結グリコシル化部位とがある。最初の106アミノ酸は、マクロファージスカベンジャー受容体のシステインリッチドメインによって定義される古いタンパク質スーパーファミリに極めて類似したドメインを示す(Koths,K. 他(1993)J. Biol. Chem. 268:14245-14249)。90Kはエイズ患者の亜集団群の血清中で上昇し、原発腫瘍サンプルと腫瘍細胞株とにおいて多様なレベルで発現される。Ullrich 他(1994)は、90Kが宿主防御系を刺激し、インターロイキン2の分泌を誘発し得ることを実証した。この免疫刺激は、発癌性形質転換、ウイルス感染又は病原性侵襲の結果であると提起されている(Ullrich,A., 他(1994)J. Biol. Chem. 269:18401-18407)。
【0016】
セマフォリン類は少なくとも30の異なるメンバーからなる軸索誘導分子の大きなグループであり、脊椎動物、非脊椎動物、更にはある種のウイルスにおいても見つかっている。すべてのセマフォリンは長さが約500アミノ酸のセマ(sema)ドメインを有する。セマフォリン受容体であるニューロピリン(neuropilin)は、in vitroで神経突起の進展を促進することが示されている。ニューロピリンの細胞外領域はCUB、discoidin、及びMAMドメインという3つの異なるドメインから成っている。ニューロピリンのCUBモチーフ及びMAMモチーフはタンパク質間相互作用において幾つかの役割を果たすことが示唆されており、更にセマドメイン及びC末端ドメインを介してセマフォリン類の結合に関与していると考えられる(Raper, J.A.(2000)Curr. Opin. Neurobiol. 10:88-94の概説を参照)。プレキシン(plexin)類は神経細胞表面分子であり、カルシウムイオンの存在下で同種親和性結合メカニズムにより細胞接着を媒介する。プレキシン類は、特定の感覚系の受容体や神経細胞において発現することがわかっている(Ohta, K. 他(1995)Cell 14:1189-1199)。いくつかのプレキシンが、発生段階の神経系において運動神経軸索や中枢神経軸索の誘導を制御するよう機能することを示す証拠もある。プレキシンは、それ自体完全なセマフォリンドメインを有しており、古典的セマフォリンとセマフォリンの結合パートナーの両方の祖先であり得る(Winberg, M.L.他(1998)Cell 95:903-916)。
【0017】
ヒトの妊娠特異的β1糖タンパク質(PSG)は、分子量が72KDa、64KDa、62KDa及び54KDaの、密接に関連する糖タンパク質類の1ファミリである。これらは、癌胎児性抗原と共に、免疫グロブリンスーパーファミリ内のサブファミリを構成する(Plouzek C.A.及びChou J.Y.(1991)Endocrinology 129:950-958)。PSGの様々な亜集団が、ヒト胎盤の栄養胚葉(trophoblasts)、及び羊膜や漿膜によって産生されることが発見されている(Plouzek C.A. 他(1993)Placenta 14:277-285)。
【0018】
自己分泌型運動促進因子(AMF)は腫瘍細胞の遊走を調節する運動性サイトカインの1つであり、したがって、それに伴うシグナル伝達経路の同定は決定的に重要である。自己分泌型運動促進因子受容体(AMFR)の発現は、胸腺腫における腫瘍の進行に関連することがわかっている(Ohta Y. 他(2000) Int. J. Oncol. 17:259264)。AMFRは、分子量78KDaの細胞表面糖タンパク質である。
【0019】
ホルモンは、血液循環により運ばれ、標的細胞の表面又は内部の特異的受容体に結合する分泌分子である。ホルモンは多様な生化学的組成や作用機構を持っているが、2つのカテゴリーに分類し得る。第1のカテゴリーは小さい親油性ホルモンで、標的細胞の原形質膜を通過して拡散し、サイトゾル内受容体又は核内受容体に結合し、複合体を形成して遺伝子発現を改変する。これらの分子としては、レチノイン酸やチロキシンが、更には、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン、コルチゾール、アルドステロンなどの、コレステロール由来ステロイドホルモンがある。第2のカテゴリーに含まれる親水性ホルモンは、原形質膜の内側へ信号を伝達する細胞表面受容体に結合することで機能する。そのようなホルモンの例としては、アミノ酸の誘導体としてカテコールアミン類(エピネフリン、ノルエピネフリン)及びヒスタミンが、ペプチドホルモンとしてグルカゴン、インスリン、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、及びバソプレッシンがある(Lodish 他(1995)Molecular Cell Biology, Scientific American Books Inc., New York, NY, 856-864ページ等を参照)。
【0020】
プロオピオメラノコルチン(POMC)は、脳下垂体前葉が合成するホルモンであるコルチコトロピン(ACTH)の前駆体ポリペプチドであり、副腎皮質の刺激で機能する。POMCはまた、βリポトロピンホルモン(β-LPH)の前駆体ポリペプチドでもある。各ホルモンは、固有の生物活性を持つ、より小さいペプチド群を持つ。α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)と副腎皮質刺激ホルモン様中葉ペプチド(CLIP)はACTHから形成され、γ-リポトロピン(γ-LPH)とβ-エンドルフィンはβ-LPHのペプチド成分であるが、β-MSHはγ-LPH中に含有される。POMCのエキソン2及び3における遺伝子突然変異に起因するACTH欠乏による副腎不全は、早期発症肥満症、副腎不全及び赤毛色素沈着を特徴とする内分泌性疾患を生じる(Chretien, M.他(1979)Can. J. Biochem. 57:1111-1121、Krude, H. 他(1998)Nat. Genet. 19:155-157, Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)176830)。
【0021】
成長因子及び分化因子は、細胞間伝達の中で機能する分泌タンパク質である。いくつかの因子の活動には、オリゴマー形成が、又は膜タンパク質との会合が必要である。それらの因子とそれらの受容体間の複雑な相互作用は、細胞分裂、細胞分化、細胞シグナル伝達及び細胞運動性を刺激又は抑制する、細胞内信号伝達経路の引き金となる。殆どの成長及び分化因子は、その局所環境にある細胞に作用する(パラ分泌シグナル伝達)。成長因子及び分化因子には3つの主要なクラスがある。第1のクラスには、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子、インシュリン様成長因子、及び血小板由来の成長因子など、大きなポリペプチド成長因子を含む。第2のクラスには、コロニー刺激因子(CSF)のような造血性成長因子を含む。造血性成長因子類は、Bリンパ球、Tリンパ球、赤血球、血小板、好酸球、好塩基球、好中球、マクロファージ、及びそれらの幹細胞前駆体など、血液細胞の増殖及び分化を刺激する。第3のクラスには、ボンベシン、バソプレッシン、オキシトシン、エンドセリン、トランスフェリン、アンジオテンシン2、血管作用性小腸ペプチド、及びブラジキニンなど、小さなペプチド因子を含み、これらは増殖以外の細胞機能を調節するホルモンとして機能する。
【0022】
成長因子及び分化因子は、in vitroでの細胞の腫瘍性転換、及びin vivoでの腫瘍進行において、幾つかの重大な役割を果たす。腫瘍細胞による成長因子の不適正な発現は、腫瘍の血管新生及び転移に寄与し得る。造血時の成長因子の調節異常によっては、貧血、白血病、及びリンパ腫が生じ得る。インターフェロンなど幾つかの成長因子は、in vitro及びin vivoの双方で、腫瘍細胞群に対し細胞毒性を持つ。更に、幾つかの成長因子及び成長因子受容体は、構造的にも機能的にも腫瘍性タンパク質類と関連する。加えて、成長因子は癌原遺伝子群及び腫瘍抑制遺伝子群の双方の転写調節に影響を与える(Pimentel, E. (1994) Handbook of Growth Factors, CRC Press, Ann Arbor, MI, 1-9ページの概説を参照)。
【0023】
最初にショウジョウバエにおいて同定されたSlitタンパク質は、中枢神経系正中線形成及びおそらく神経組織の組織発生と軸索の誘導において重要である。Itoh他((1998) Brain Res. Mol. Brain Res. 62:175-186)は、Slit遺伝子の哺乳類相同体(ヒト Slit-1、Slit-2、Slit-3 及びラット Slit-1)を同定した。コードされるタンパク質群は推定上の分泌タンパク質であり、EFG様モチーフ及びロイシンリッチリピートを持つが、これらは共に、保存されたタンパク質間相互作用ドメインである。Slit-1 mRNA、Slit-2 mRNA及び Slit-3 mRNAは、それぞれ脳、脊髄、甲状腺に発現される(Itoh, A. 他、前出)。タンパク質のSlit ファミリは神経組織内のglypican-1の機能性リガンドであることが示されており、このことは、それらの相互作用は中枢神経系の組織発生時の特定の段階において重要であることを意味する(Liang, Y. 他(1999)J. Biol. Chem. 274:17885-17892)。
【0024】
神経ペプチド及び血管介在物質(NP/VM)は、内在性シグナル伝達分子の1大ファミリを構成する。NP/VMファミリに含まれる分子は、神経ペプチド及び神経ペプチドホルモンとして、ボンベシン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、ニューロメディンN、メラノコルチン類、オピオイド類、ガラニン、ソマトスタチン、タキキニン類、ウロテンシン2及び平滑筋刺激に関する関連ペプチド類、バソプレッシン、及び血管作用性小腸ペプチドがある。また、循環系に運ばれるシグナル伝達分子として、アンジオテンシン、補体、カルシトニン、エンドセリン類、ホルミルメチオニルペプチド類、グルカゴン、コレシストキニン、及びガストリンがある。NP/VMは直接に信号を伝達し得る他、別の神経伝達物質及びホルモンの活性若しくは放出を調節したり、またカスケードで触媒酵素として機能することができる。NP/VMの効果は、ごく短時間のものから長期間持続するものまで幅広い(Martin, C.R. 他(1985)Endocrine Physiology, Oxford University Press, New York, NY, 57-62ページの概説を参照)。
【0025】
NP/VMは、多くの神経障害及び心血管障害に関与する。例えば、神経ペプチドYは、高血圧症、鬱血心不全、情動障害、食欲調節に関与する。ソマトスタチンは、下垂体前葉での成長ホルモン及びプロラクチンの分泌を阻害し、また、腸、膵臓腺房細胞、及び膵臓β細胞内の分泌も阻害する。ソマトスタチンレベルの低下は、アルツハイマー病及びパーキンソン病で報告された。バソプレッシンは、腎臓内で水分吸収及びナトリウム吸収を増加させ、また高濃度では、血管平滑筋の収縮、血小板活性化、及び肝臓内でのグリコーゲン分解を刺激する。バソプレッシン及びその類似体は、尿崩症の治療のため臨床的に用いられる。エンドセリン及びアンジオテンシンは高血圧症に関与し、アンジオテンシンの血漿レベルを減少させるカプトプリルのような薬剤は、血圧を下げるのに用いられる(Watson, S.及びS. Arkinstall、(1994)The G-protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, 194、252、284、55、及び111の各ページ)。
【0026】
神経ペプチドはまた、侵害受容(痛覚)にも役割を幾つか持つことが示された。血管作用性小腸ペプチドは、慢性神経障害痛において重要な役割を果たすようである。オピオイド受容体様1受容体に対する内在性リガンドであるノシセプチンは、主に抗侵害受容作用を有すると考えられ、持続性の痛み若しくは慢性痛の、様々な動物モデルにおいて鎮痛特性を有している事が示された(Dickinson, T.及び Fleetwood-Walker, S. M.(1998)Trends Pharmacol. Sci. 19:346-348)。
【0027】
シグナルペプチドを有する他のタンパク質として、酵素活性を持つ分泌タンパク質類がある。酵素活性としては、例えば、オキシドレダクターゼ/デヒドロゲナーゼ活性、トランスフェラーゼ活性、加水分解酵素活性、リアーゼ活性、異性化酵素活性、若しくはリガーゼ活性がある。例えば、基質メタロプロテイナーゼは細胞外基質を分解する分泌性加水分解酵素であり、したがって、腫瘍転移、組織形態形成、及び関節炎において重要な役割を果たす(Reponen, P. 他(1995)Dev. Dyn. 202 :388-396、Firestein, G. S.(1992)Curr. Opin. Rheumatol. 4 : 348-354、Ray, J. M.及びStetler-Stevenson, W. G.(1994)Eur. Respir. J. 7:2062-2072、Mignatti, P.及びRifkin, D. B.(1993)Physiol. Rev. 73:161-195)。別の例は、脂質合成に又はエネルギー生成に用いる酢酸を活性化するアセチルCoA 合成酵素である(Luong, A. 他(2000)J. Biol. Chem. 275:26458-26466)。アセチルCoA合成酵素が活性化されると、酢酸とCoAからアセチルCoAが形成される。アセチルCoA合成酵素はAMP結合ドメインシグネチャとして同定される或る配列類似性領域を共有する。アセチルCoA合成酵素は高血圧と関連性があることが示されている(Toh, H. (1991) Protein Seq. Data Anal. 4:111-117、Iwai, N. 他 (1994) Hypertension 23:375-380)。
【0028】
多くの異性化酵素は、タンパク質の折りたたみ、光伝達、及び種々のタンパク質同化経路や異化経路における諸段階を触媒する。或るクラスの異性化酵素は、ペプチジルプロリルシス−トランス異性化酵素(PPIアーゼ)として知られる。PPIアーゼ類は、タンパク質内の特定のプロリンイミド結合の、シスからトランスへの異性化を触媒する。PPIアーゼの2つのファミリが、FK506結合タンパク質(FKBP)とシクロフィリン(CyP)である。FKBP類が、共に強力な免疫抑制薬であるFK506とラパマイシンとに結合することにより、T細胞内の複数のシグナル伝達経路が抑制される。特に、FKBPのPPIアーゼ活性は、FK506或いはラパマイシンの結合によって阻害される。算出した分子量にしたがって名付けたFKBPファミリの5つのメンバー(FKBP12、FKBP13、FKBP25、FKBP52及び FKBP65)があり、それらは、様々なタンパク質複合体に関連する、細胞の様々な領域に局在している(Coss, M.他(1995)J. Biol. Chem. 270:2933629341、Schreiber, S.L.(1991)Science 251:283-287)。
【0029】
CyPのペプチジルプロリル異性化酵素活性は、T細胞活性化につながるシグナル伝達経路の一部である可能性がある。CyP異性化酵素活性はタンパク質折りたたみ及びタンパク質輸送に関連しており、またタンパク質複合体の構築又は分解、及びタンパク質活性の調節にも関与し得る。例えば、ショウジョウバエにおいてCyP NinaA はロドプシンの正確な局在化に必要であり、哺乳類のCyP(Cyp40)はステロイド受容体に結合するHsp90/Hsc70 複合体の一部である。哺乳類CypAはヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)からのgagタンパク質と結合するが、この相互作用はシクロスポリンによって抑制し得ることが示されている。シクロスポリンは強力な抗HIV-1活性を有するので、CypAはHIV-1の複製において重要な機能を果たし得る。最後に、Cyp40は転写因子c-Mybに結合し、これを不活化するが、この作用はシクロスポリンによって逆転されることが示されている。この作用は、転写、形質転換及び分化の調節でのCyp類の関与を意味する(Bergsma, D.J. 他(1991)J. Biol. Chem. 266:2320423214、Hunter, T.(1998)Cell 92:141-143、Leverson, J.D.及びNess, S.A.(1998)Mol. Cell. 1:203-211)。
【0030】
プロリンリッチγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)タンパク質(PRGP)類は、ビタミンK依存性1回貫通型膜内在性タンパク質ファミリのメンバーである。PRGPタンパク質はGlaリッチなほぼ45アミノ酸の細胞外アミノ末端ドメインを特徴とする。細胞内カルボキシル末端領域には配列PPXYの1つ又は2つのコピーがあり、この配列PPXYはシグナル伝達、細胞周期進行、及びタンパク質代謝回転のような、細胞の多様な機能に関与する種々のタンパク質に存在するモチーフである(Kulman, J.D.他. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1370-1375)。Glaを形成するグルタミン酸残基の翻訳後修飾過程は、ビタミンK依存性のカルボキシル化である。Glaを含むタンパク質としては、血液凝固に関与する血漿タンパク質類がある。これらのタンパク質とは、プロトロンビン、タンパク質C、S及びZ、並びに血液凝固第VII因子、第IX因子及び第X因子である。オステオカルシン(骨-Glaタンパク質、BGP)及び基質Glaタンパク質(MGP)もまたGlaを含む(Friedman, P.A.及びC.T. Przysiecki(1987)Int. J. Biochem. 19:1-7、C. Vermeer(1990)Biochem. J. 266:625-636)。
【0031】
新規の疾患検出及び治療用完全長ヒト分子、並びにそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。この新規の組成物は、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、発達障害、神経疾患、及び心血管障害の診断・治療・予防において有用であり、また、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価にも有用である。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0032】
本発明は、総称して「MDDT」、個別にはそれぞれ「MDDT-1」、「MDDT-2」、「MDDT-3」、「MDDT-4」、「MDDT-5」、「MDDT-6」、「MDDT-7」、「MDDT-8」、「MDDT-9」、「MDDT-10」、「MDDT-11」、「MDDT-12」、「MDDT-13」、「MDDT-14」、「MDDT-15」、「MDDT-16」、「MDDT-17」、「MDDT-18」、「MDDT-19」及び「MDDT-20」と呼ぶ、精製されたポリペプチドである、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子を提供する。或る態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一態様では、SEQ ID NO:1-20のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0033】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を持つ或る天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする。別の態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:21-40からなる群から選択される。
【0034】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。一態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0035】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0036】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドに特異結合する、単離された抗体を提供する。
【0037】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
【0038】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、又は(e)(a)〜(d)のRNA等価物を含む群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなる或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、複合体が存在すればオプションでその量を検出する過程からなる。該プローブと該標的ポリヌクレオチド或いはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。一態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチド群からなる。
【0039】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する一方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択した、或るポリヌクレオチドの配列を持つ。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、(b)増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチド又はその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0040】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群から選択される。一実施態様では、SEQ ID NO:1-20からなる一群から選択されたアミノ酸配列を持つ組成物を提供する。更に、本発明は、この組成物を機能的MDDTの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療を必要とする患者に投与する過程を含む方法を提供する。
【0041】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを有するサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程からなる。別法では、本発明は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、機能的MDDTの発現の低下を伴う疾患や症状の治療を要する患者への、この組成物の投与方法を提供する。
【0042】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性につき、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを含むサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程からなる。
【0043】
別法で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0044】
更なる別法で本発明は、機能的MDDTの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療を必要とする患者への、この組成物の投与を含む方法を提供する。
【0045】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0046】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドの活性を調節する或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドの活性にとり許容し得る条件下で、該ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の不存在下での該ポリペプチドの活性と比較する過程からなり、この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性の変化は、該ポリペプチドの活性を調節する化合物を標示する。
【0047】
更に本発明は、SEQ ID NO:21-40からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変する効果につき、或る化合物をスクリーニングする一方法を提供する。この方法は、(a)この標的ポリヌクレオチドを有するサンプルを或る化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の改変を検出する過程と、(c)可変量のこの化合物の存在下でのこの標的ポリヌクレオチドの発現と、この化合物の不在下での発現とを比較する過程とからなる。
【0048】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)(i)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物を含む群から選択したポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチドから構成されるプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程とを含む試験化合物の毒性の算定方法を提供する。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物を含む群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片を有する。毒性の算定方法には更に(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量の差は、試験化合物の毒性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、修正され得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施態様を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0050】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体が含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0051】
本明細書中で用いる全ての技術用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似或いは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施又は試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係して用いられうる細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0052】
(定義)
用語「MDDT」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などからの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたMDDTのアミノ酸配列を指す。
【0053】
用語「アゴニスト」は、MDDTの生物学的活性を強める、或いは模倣する分子を指す。アゴニストの例としては、タンパク質、核酸、糖質、小分子その他の任意の化合物や組成物の内、MDDTと直接に相互作用することによって、或いはMDDTが関与する生物学的経路の種々の構成成分に作用することによってMDDTの活性を調節するものを含みうる。
【0054】
「対立遺伝子変異配列」は、MDDTをコードする遺伝子の、別の形態である。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNA又はポリペプチドを作製し得る。ポリペプチドの構造又は機能は、変異することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異配列を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異配列を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加又は置換による。これら各種の変化は、単独で或いは他の変化と共に、或る配列内で1回以上、生じ得る。
【0055】
MDDTをコードする「変容した/改変された」核酸配列としては、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換の結果、MDDTと同じポリペプチド、或いはMDDTの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドをもたらす配列もある。この定義には、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列にとって正常な染色体の遺伝子座ではない位置での、対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーションを含み、また、MDDTをコードするポリヌクレオチドの或る特定オリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、また、サイレント変化を生じて機能的には等価なMDDTと成るような、アミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を持ち得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にMDDTの活性が保持される範囲で、残基の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似した非荷電極性側鎖を持つアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似した非荷電側鎖を持つアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0056】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0057】
「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅には通常、当業者に公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いる。
【0058】
用語「アンタゴニスト」は、MDDTの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子を指す。アンタゴニストとしては、MDDTと直接相互作用すること、或いはMDDTが関与する生物学的経路の諸成分に作用することによってMDDTの活性を調節する、抗体などタンパク質、核酸、糖質、小分子、又は任意の他の化合物や組成物があり得る。
【0059】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、無傷の免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab、F(ab')2 及びFv断片を指す。MDDTポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、無傷のポリペプチドを用いて、又は、目的の小ペプチドを持つ断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット或いはウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチド又はオリゴペプチドは、RNAの翻訳、又は化学合成によって得られるポリペプチド又はオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアタンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドを、動物を免疫化するために用いる。
【0060】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質又はタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域又は3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体への結合について、無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0061】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸又はオリゴヌクレオチド分子を指す。アプタマーはin vitroの進化過程(例えば米国特許番号第5,270,163号に記載されたSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment))から由来するもので、そのような過程は大きな組み合わせライブラリから標的特異的なアプタマー配列を選択する。アプタマーの構成は二本鎖又は一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体又は他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド成分は、修飾された糖基(例えばリボヌクレオチドの2'-OH基が2'-F又は2'-NH2で置換し得る)を有することが可能で、そのような糖基はヌクレアーゼへの抵抗性又は血液中でのより長い寿命などの望ましい性質に改善し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリア等の分子に抱合させることができる。アプタマー類は、例えば或る架橋剤の光活性化によって、それらの同種リガンド群と特異的に架橋させ得る(Brody, E.N.及びL. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0062】
「イントラマー(intramer)」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する。例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0063】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体又はヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性のヌクレオチドを含むアプタマーは右旋性ヌクレオチドに作用する天然の酵素による分解に対して耐性がある。
【0064】
用語「アンチセンス」は、特定の核酸配列の「センス」(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸又はベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖又は2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシル又は7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドを含みうる。アンチセンス分子は、化学合成又は転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、二重鎖を形成して転写又は翻訳を妨害する。「負」又は「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」又は「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味しうる。
【0065】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、「免疫学的に活性」又は「免疫原性」は、天然或いは組換え体のMDDT、合成のMDDT、又はそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物の或いは細胞の特異的免疫応答を誘発して特異抗体群と結合する能力を指す。
【0066】
「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5'-AGT-3'」は、相補配列「3'-TCA-5'」と対を形成する。
【0067】
「〜のポリヌクレオチド配列を含む(有する)組成物」又は「〜のアミノ酸配列を含む(有する)組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤又は水溶液が含まれ得る。MDDTをコード、若しくはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を持つ組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることも可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケ精子DNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0068】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5'及び/又は3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、又はGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)又はPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上のオーバーラップするcDNAやEST、又はゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を決定する配列もある。
【0069】
「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸であり、保存的アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0070】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷又は疎水性、及び/又は(c)側鎖の大部分を保持する。
【0071】
「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0072】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的又は免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0073】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子又は酵素を指す。
【0074】
「差次的発現」は、少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、或いは減少(下方調節)、又は遺伝子発現の欠損又はタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、又は病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
【0075】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンはコードされるタンパク質の1つの構造的又は機能的ドメインを代表し得るため、安定した基礎構造の新規な再構築(reassortment)を介して新しいタンパク質が組立てられることが可能であり、これにより新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0076】
「断片」は、MDDTの、又はそれをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一であるが親配列より長さが短いものを指す。或る断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチド又はアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すようなポリペプチドの最初の250又は500アミノ酸(又は最初の25%又は50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表及び図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
【0077】
SEQ ID NO:21-40の断片には、固有のポリヌクレオチド配列領域が含まれる。この領域は、SEQ ID NO:21-40を特異的に同定するものであり、例えば断片が得られる同一ゲノム中の他すべての配列とは異なるものである。SEQ NO ID:21-40の断片は、例えば、ハイブリダイゼーション及び増幅技術において、或いは関連するポリヌクレオチド配列からSEQ NO ID:21-40を区別する類似の方法において有用である。SEQ ID NO:21-40の断片の正確な長さ及び、断片が対応するSEQ ID NO:21-40の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0078】
SEQ ID NO:1-20 の断片は、SEQ ID NO:21-40の断片によってコードされる。 SEQ ID NO:1-20 の断片には、SEQ ID NO:1-20を特異的に同定する固有のアミノ酸配列領域が含まれている。 例えば、SEQ ID NO:1-20 の断片は、SEQ ID NO:1-20を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1-20 の断片及び、断片が対応するSEQ ID NO:1-20 の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0079】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)と、それに続く1オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。或る「完全長」ポリヌクレオチド配列は、或る「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0080】
「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列又は2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、又は配列同一性を意味する。
【0081】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」又は「%一致」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた、2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0082】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウエアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189-191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組(ペアワイズ)でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定される。「weighted(重み付けされた)」残基重み付け表が、デフォルトとして選択される。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「percent similarity(類似性パーセント)」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0083】
或いは、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。
【0084】
このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールも入手可能であり、2つのヌクレオチド配列を直接にペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ(gap)などのパラメータをデフォルト設定にセットして用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0085】
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap:5 及びExtension Gap:2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100又は200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0086】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0087】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」又は「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0088】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスが選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「percent similarity」として一致率を報告する。
【0089】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0090】
Matrix:BLOSUM62
Open Gap:11 及びExtension Gap:1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、又は150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に支持された任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0091】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の微小染色体である。
【0092】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつ、よりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0093】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容的アニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングのための許容的条件は、当業者が慣例的に決定できる。許容的条件は、どのハイブリダイゼーション実験でも一定でありうるが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験によって変更されうる。許容的アニーリング条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAの存在下である。
【0094】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook, J. 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0095】
本発明のポリヌクレオチド間の高ストリンジェンシー条件のハイブリダイゼーションには、約0.2×SSC及び約0.1%のSDSの存在下、68℃で1時間の洗浄条件を含む。別法では、温度は約65℃、60℃、55℃、又は42℃を用い得る。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、及びヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
【0096】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって形成された、2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0t又はR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フイルタ、チップ、ピン又はガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0097】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0098】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患又は遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0099】
「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物など生物に導入すると免疫応答を引き起こし得る、MDDTのポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」にはまた、本明細書で開示する又は当分野で既知のあらゆる抗体生産方法に有用なMDDTのあらゆるポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片をも含む。
【0100】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド又はその他の化合物の構成を指す。
【0101】
用語「エレメント」又は「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の定義された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はその他の化合物を指す。
【0102】
用語「モジュレート」又は「活性を調節」は、MDDTの活性を変化させることを指す。例えば、モジュレートによって、MDDTのタンパク質活性の増減が、或いは結合特性の、又はその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起き得る。
【0103】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源又は合成起源のDNA又はRNAであって一本鎖又は二本鎖であるか或いはセンス鎖又はアンチセンス鎖を表し得るようなDNA又はRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様又はRNA様物質を指すこともある。
【0104】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は、同一のリーディングフレーム内に在り得る。
【0105】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを有する、アンチセンス分子又は抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、組成物に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNA又はRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0106】
MDDTの「翻訳後修飾」としては、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解的切断及びその他の当分野で既知の修飾を含み得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、MDDTの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なることとなる。
【0107】
「プローブ」とは、核酸配列の内、MDDTやそれらの相補配列、又はそれらの断片をコードし、同一配列や対立遺伝子核酸配列、又は関連する核酸配列の検出に用いる配列を指す。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであって、検出可能な標識又はレポーター分子に結合した配列である。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0108】
本発明に用いるプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の、少なくとも15の連続したヌクレオチド群からなる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又は少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
【0109】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J.他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻、Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M.他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis, M.他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0110】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野で既知のソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列からオリゴヌクレオチド及び最大5,000ヌクレオチドまでの大きめのポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンター(英国ケンブリッジ)から一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域又は最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有なもの、及び保存されたもの双方のオリゴヌクレオチドとポリヌクレオチド断片との同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRプライマー又はシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全又は部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0111】
「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組み合わせはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメント群の人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換又は欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えば細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0112】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0113】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳又はRNA安定性を制御する宿主タンパク質又はウイルスタンパク質と相互作用する。
【0114】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸又は抗体の標識化に用いられる化学的又は生化学的な部分である。レポーター分子としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分を含む。
【0115】
DNA配列に対する「RNA等価物」は、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、全ての窒素性塩基のチミンがウラシルで置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0116】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。MDDT、それをコードする核酸群、又はその断片群を含むと推定されるサンプルとしては、体液と、細胞や細胞から単離した染色体や細胞内小器官(オルガネラ)や膜からの抽出物と、細胞と、溶液中に存在する又は基板に固定されたゲノムDNA、RNA、又はcDNAと、組織と、組織プリントなどがあり得る。
【0117】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識する構造が存在するか否かに依存する。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0118】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましくは90%以上除去されたものを指す。
【0119】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸残基又はヌクレオチドに置き換えることである。
【0120】
「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフイルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気又は非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0121】
「転写物イメージ」或いは「発現プロフィール」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類又は組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0122】
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件又は人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞又は真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージ或いはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。用語「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。更に、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0123】
ここで用いる「遺伝形質転換体(transgenic organism)」とは任意の有機体(生物体)であり、限定するものではないが動植物を含み、有機体の1個以上の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られているトランスジェニック(transgenic)技術によって導入された異種核酸を有する。 核酸の細胞への導入は、直接又は間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスでの感染によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換又はトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他(1989)等の参考文献に記載されている。
【0124】
特定の核酸配列の「変異体/変異配列」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の同一性を有する核酸配列であると定義する。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体又は「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子との有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多く又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、或いは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互に有意なアミノ酸同一性を有する。多型性変異体は、所与の種の個体間での特定遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチド塩基が異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状又は病状性向を示し得る。
【0125】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0126】
(発明)
本発明は、新規のヒト疾患検出及び治療用完全長ヒト分子群(MDDT)及び、MDDTをコードするポリヌクレオチド群の発見に基づく。また、これらの組成物を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性障害、発達障害、神経障害、及び心血管障害の診断、治療、及び予防の開発に基づく。
【0127】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0128】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)及びそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte ポリペプチド ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO:)とPROTEOMEデータベースの最も近い相同体のPROTEOMEデータベース識別番号(PROTEOME ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5は、GenBank相同体とPROTEOMEデータベース相同体との注釈を示す。更に該当箇所には適当な引用文も示す。 これら全てを、引用することを以って特に本明細書の一部とする。
【0129】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)及びそれに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4及び列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウエアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化及びグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、及びモチーフを有するアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0130】
表2及び表3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が、請求の範囲に記載されたポリペプチドが疾患検出及び治療用完全長ヒト分子であることを確立している。例えば、残基M1より残基V725まで、SEQ ID NO:3は、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)での決定では、ラット角膜創傷治癒関連タンパク質(GenBank ID g8926320)と96%同一である(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。BLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:3が疾患検出及び治療用完全長ヒト分子である、更に確証的な証拠を提供する。別の例において、SEQ ID NO:7はE214残基からT735残基までトウモロコシのカルモジュリン結合タンパク質MPCBP(GenBank ID g10086260)に24%の同一性を有するが、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された。(表2参照)。BLAST確率スコアは1.2e-21であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:7はまた、TPRドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS解析からのデータは、SEQ ID NO:7が疾患検出及び治療用完全長ヒト分子である、更に確証的な証拠を提供する。別の例として、SEQ ID NO:10はP239残基からV1461残基までラットperiaxin(GenBank ID g505297)と63%の同一性を有す、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:10はまた、1つのPDZドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメイン群のPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:10 がperiaxinである、更に実証的な証拠を提供する。別の例において、SEQ ID NO:14はシロイヌナズナの推定ホスファチジルイノシトール-4-リン酸5-キナーゼ(GenBank ID g2739367)に対して残基Y20から残基V203まで36%の同一性があることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された(表2参照)。BLAST確率スコアは2.0e-25であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:14はまた1つのMORNモチーフを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:14 がキナーゼである、更に実証的な証拠を提供する。SEQ ID NO:1-2、SEQ ID NO:4-6、SEQ ID NO:8-9、SEQ ID NO:11-13、SEQ ID NO:15-20 は同様にして解析され、注釈付けをされた。SEQ ID NO:1-20の解析用のアルゴリズム及びパラメータを表7に記載した。
【0131】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列又はゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築(assemble)した。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)及び対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、及び塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を構築するのに用いたcDNA配列及び/又はゲノム配列の、また、例えばSEQ ID NO:21−40を同定するため、或いはSEQ ID NO:21−40と、関連するポリヌクレオチド配列群とを区別するためのハイブリダイゼーション技術又は増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片の、開始ヌクレオチド(5')位置及び終了ヌクレオチド(3')位置を示す。
【0132】
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は特に、例えば組織特異的cDNAライブラリ或いはプールしたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合もある。或いは列2のポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチド配列のアセンブリに寄与したGenBank cDNA又はESTを指す場合もある。更に、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、(英国ケンブリッジ))データベースから由来した配列を同定し得る(即ち「ENST」命名を含む配列)。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」又は「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。又は列2のポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方の集合を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4と同定されるポリヌクレオチドは、アルゴリズムが適用される配列のクラスタの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「縫合された(stitched)」配列である(実施例5参照)。又は、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は、「ストレッチされた」配列である。XXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号又はNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別子(「NM」、「NP」、又は「NT」によって表される)が、GenBank識別子(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0133】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、又は組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0134】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために、表4に示すような配列カバレッジと重複するIncyte cDNAカバレッジが得られたが、該当するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0135】
表5は、Incyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列群を構築及び確認するために用いられたIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表される、Incyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0136】
本発明には、また、MDDTの変異配列群をも含む。好適なMDDT変異体は、MDDTの機能的或いは構造的特徴を少なくとも1つ有し、かつ、MDDTアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
【0137】
本発明はまた、MDDTをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施態様において、本発明は、MDDTをコードする、SEQ ID NO:21-40からなる一群から選択された1配列を持つポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ ID NO:21-40のポリヌクレオチド配列には、配列表に示したように等価RNA配列をも含むが、そこでは窒素塩基チミンの出現はウラシルで置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくリボースで構成される。
【0138】
本発明はまた、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このような変異体ポリヌクレオチド配列は、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列との、少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を持つこととなる。本発明の或る特定の態様は、SEQ ID NO:21-40からなる群から選択された1核酸配列との少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する、SEQ ID NO:21-40からなる群から選択された1配列を持つポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。上記のポリヌクレオチド変異配列は何れも、MDDTの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るアミノ酸配列をコードし得る。
【0139】
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異配列は、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列のスプライス変異配列である。或るスプライス変異配列はMDDTをコードするポリヌクレオチド配列との顕著な配列同一性を持つ部分複数を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって生ずる、配列の数ブロックの付加又は欠失により、通常より多数又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。或るスプライス変異配列には、約70%未満、又は約60%未満、或いは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列との間で全長にわたって見られるが、このスプライス変異配列のいくつかの部分には、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の各部との、少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%、なお又は100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。例えば、SEQ ID NO:21の配列を含むポリヌクレオチドはSEQ ID NO:39の配列を含むポリヌクレオチドのスプライス変異体であり、SEQ ID NO:34の配列を含むポリヌクレオチドはSEQ ID NO:40の配列を含むポリヌクレオチドのスプライス変異体である。上記したスプライス変異配列は何れも、MDDTの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るアミノ酸配列をコードし得る。
【0140】
遺伝暗号の縮重により、MDDTをコードする種々のポリヌクレオチド配列が作り出され、中には、既知のいかなる天然遺伝子のポリヌクレオチド配列群とも最小の類似性しか有しない配列もあることは、当業者には理解されよう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組み合わせの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然MDDTのポリヌクレオチド配列に適用される標準トリプレット遺伝暗号を基に成されるものであり、このような変異は全て明確に開示されていると考慮されたい。
【0141】
MDDTとその変異配列とをコードするヌクレオチド配列は一般に、好適に選択されたストリンジェンシー条件下で天然MDDTのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然コドン群を含めるなどの実質的に異なるコドン使用を有する、MDDT或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作り出すことは、有益であり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされるアミノ酸配列を改変せずに、MDDT及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に改変する別の理由には、天然配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることもある。
【0142】
本発明にはまた、MDDTとその誘導体とをコードするDNA配列又はそれらの断片の、完全に合成化学による作製も含む。作製後にこの合成配列を、当分野で周知の試薬類を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入できる。更に、合成化学を用いて、MDDTをコード、又はその任意の断片をコードする或る配列の中に突然変異を導入できる。
【0143】
更に本発明には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列に、特に、SEQ ID NO:21-40及びそれらの断片群にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列群が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger(1987)Methods Enzymol. 152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載した。
【0144】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)又は当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページ等を参照)。
【0145】
当分野で既知の、PCR法をベースにした種々の方法と、部分的ヌクレオチド配列とを利用して、MDDTをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなど、上流にある配列を検出し得る。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322を参照)。別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(例えばTriglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186) (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。
第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(例えばLagerstrom, M. 他 (1991) PCR Methods Applic. 1:111-119)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。未知の配列群を検索するために用い得る他の複数の方法も当分野で既知である(例えばParker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー類、及びPROMOTERFINDERライブラリ類(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングし得る。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法については、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0146】
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、遺伝子群の5'領域を有する配列をしばしば含んでおり、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5'非転写調節領域への配列の伸長に有用でありうる。
【0147】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシング産物又はPCR産物のサイズを分析し、又はそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで刺激される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0148】
本発明の別の実施例では、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にMDDT、その断片又は機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列を産生し、これらの配列をMDDTの発現に利用し得る。
【0149】
MDDTをコードする配列を種々の目的で改変するために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/又は発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0150】
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA。 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797、Christians, F.C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264、Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319に記載)等のDNAシャッフリング技術の対象となり、MDDTの生物学的特性、例えば生物活性、酵素活性、或いは他の分子や化合物との結合力等を変更又は向上させ得る。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリをその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体を同定するような選択又はスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。かくして、「人工的な」育種及び急速な分子進化によって遺伝的多様性が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所与遺伝子の断片を同種又は異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリの相同遺伝子の断片と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝的多様性を、定方向の、制御可能な方法で最大化させることができる。
【0151】
別の実施態様によれば、MDDTをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部を合成可能である(例えば、Caruthers, M.H.他 (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215-223、Horn, T.他 (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225-232等を参照)。別法として、化学的方法を用いてMDDT自体又はその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相又は固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(例えばCreighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ、Roberge, J.Y. 他. (1995) Science 269:202-204等を参照)。
自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更に、MDDTのアミノ酸配列、又は任意のその一部を、直接合成の際に改変することにより、及び/又は他のタンパク質からの配列群又は任意のその一部と組み合わせることにより、変異体ポリペプチドを作製、又は、或る天然ポリペプチドの1配列を有するポリペプチドを作製し得る。
【0152】
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィを用いて実質的に精製し得る(Chiez, R.M.及びF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0153】
生物学的に活性なMDDTを発現させるために、MDDTをコードするヌクレオチド配列又はそれらの誘導体を好適な発現ベクターに挿入することができる。好適な発現ベクターとは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写と翻訳との制御に必要なエレメント群を持つベクターである。必要なエレメントの例には、ベクターに、またMDDTをコードするポリヌクレオチド配列における調節配列、例えばエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域などが含まれる。このようなエレメントは、強度及び特異性が様々である。特定の開始シグナル類によって、MDDTをコードする配列の、より効果的な翻訳を達成することも可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。MDDTをコードする配列、及びその開始コドンや、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要ないこともある。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(例えばScharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162等を参照)。
【0154】
当業者に周知の方法を用いて、MDDTをコードする配列と、好適な転写及び翻訳制御エレメントとを持つ発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章、8章及び16-17章、Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY,9章、13章及び16章等を参照)。
【0155】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、MDDTをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物等や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV又はタバコモザイクウイルスTMV)又は細菌発現ベクター(例えばTiプラスミド又はpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系又は動物細胞系がある(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Engelhard、E.K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他(1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311、;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス又はヘルペスウイルス又はワクシニアウイルス由来の発現ベクター、又は種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織又は細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813-815、McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0156】
細菌系では、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて多数のクローニングベクター及び発現ベクターを選択し得る。例えば、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の慣例的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)又はPSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターのマルチクローニング部位に、MDDTをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を持つ形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509等を参照)。例えば抗体類の産生などに多量のMDDTが必要な場合は、MDDTの発現をハイレベルで指示するベクター類が使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーター又は誘導T7バクテリオファージプロモーターを有するベクターが使用できる。
【0157】
酵母の発現系を使用してMDDTを産出することもできる。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae )又はピキア酵母(Pichia pastoris )に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内での保持のどちらかを指示する。また、安定した繁殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込むことを可能にする(例えば前出のAusubel, 1995; Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol. 153:516-544、Scorer, C.A. 他. (1994) Bio/Technology 12:181-184等を参照)。
【0158】
植物系もMDDTの発現に使用可能である。MDDTをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307-311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるような、CaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって駆動し得る。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーター又は熱ショックプロモーターを用いてもよい(例えばCoruzzi, G.他 (1984) EMBO J. 3:1671-1680、Broglie, R. 他 (1984) Science 224:838-843、Winter, J. 他. (1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85-105等を参照)。これらの作製物は、直接DNA形質転換に又は病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191-196ページ等を参照)。
【0159】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、後期プロモーターと3連リーダー配列とを持つアデノウイルス転写/翻訳複合体に、MDDTをコードする配列を結合し得る。アデノウイルスゲノムの非必須E1又はE3領域へ挿入することにより、宿主細胞内でMDDTを発現する感染ウイルスを得ることができる(例えば、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659等を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40又はEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0160】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を送達することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、又はベシクル)で送達する(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。
【0161】
哺乳類系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、細胞株におけるMDDTの安定した発現が望ましい。例えば、MDDTをコードする配列を細胞株に形質転換するために、発現ベクター類と、同じ或いは別のベクター上の選択可能マーカー遺伝子とを用い得る。用いる発現ベクターは、複製のウイルス起源、及び/又は内因性の発現エレメント群を持ち得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0162】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えばWigler, M.他 (1977) Cell 11:223-232、Lowy, I.他. (1980) Cell 22:817-823等を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(Wigler, M. 他 (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567-3570、Colbere-Garapin, F. 他 (1981) J. Mol. Biol. 150:1-14等を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝物のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDが、文献に記載されている(Hartman, S.C.及びR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、又はルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0163】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、MDDTをコードする配列が或るマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、MDDTをコードする配列群を有する形質転換された細胞群は、マーカー遺伝子機能の欠落により特定できる。又は、1つのプロモーターの制御下で、或るマーカー遺伝子が、MDDTをコードする配列とタンデムに配置されることも可能である。誘導又は選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0164】
一般に、MDDTをコードする核酸配列を含み且つMDDTを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNA或いはDNA-RNAハイブリダイゼーションと、PCR増幅とがあり、また、核酸配列或いはタンパク質配列の検出、定量、或いはその両方を行うための、膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含む、タンパク質の生物学的検定法又は免疫学的検定法もある。
【0165】
特異的ポリクローナル抗体又は特異的モノクローナル抗体を用いてMDDTの発現の検出と計測とを行うための免疫学的方法は、当分野で既知である。このような技術の例としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)などが挙げられる。MDDT上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合試験を用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. 他 (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St. Paul MN, Sect. IV、Coligan, J. E. 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ等を参照)。
【0166】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイ及びアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。MDDTをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、エンドラベリング(末端標識化)、又は標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、MDDTをコードする配列、又はその任意の断片を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3又はSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、又は発色剤等がある。
【0167】
MDDTをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。MDDTをコードするポリヌクレオチドを持つ発現ベクターは、原核細胞膜又は真核細胞膜を通してのMDDTの分泌を誘導するシグナル配列群を持つように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0168】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力又は発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」又は「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/又は活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0169】
本発明の別の実施態様では、MDDTをコードする、天然の核酸配列、修飾された核酸配列、又は組換えの核酸配列を、或る異種配列に結合させることができ、この結果、上記した任意の宿主系の、或る融合タンパク質の翻訳を生じる。例えば、市販されている抗体を用いて認識可能な異種部分を含むキメラMDDTタンパク質は、MDDT活性阻害剤に対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販されているモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、MDDTをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が持つように遺伝子操作すると、MDDTが、精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0170】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液又はコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで、放射能標識したMDDTの合成が可能である。これらの系は、T7、T3又はSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0171】
本発明のMDDT又はその断片を用いて、MDDTに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つ又は複数の試験化合物を用いて、MDDTへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)又は小分子が挙げられる。
【0172】
或る実施態様では、このように同定された化合物は、MDDTの天然リガンドに密接に関連し、例えばリガンドやその断片であり、又は天然基質や、構造的又は機能的な擬態物質(mimetic)、或いは自然結合パートナーである(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、この化合物は、MDDTが結合する天然受容体に、或いは例えばリガンド結合部位など少なくともこの受容体の或る断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施態様では、このような化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてMDDTを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、大腸菌からの細胞が含まれる。MDDTを発現する細胞又はMDDTを含有する細胞膜分画を試験化合物と接触させて、MDDT又はこの化合物のどちらかの結合、刺激、又は活性の阻害を分析する。
【0173】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、フルオロフォア、放射性同位体、酵素抱合体又はその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたMDDTと混合するステップと、MDDTとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、アッセイでは標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリ又は天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0174】
本発明のMDDT又はその断片を用いて、MDDTの活性をモジュレートする化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、又は部分的アゴニスト、或いは逆アゴニスト等が含まれる。一実施態様では、MDDTが少なくとも1つの試験化合物と結合する、MDDTの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのMDDTの活性を、試験化合物不在下でのMDDTの活性と比較する。試験化合物の存在下でのMDDTの活性の変化は、MDDTの活性をモジュレートする化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物を、MDDTの活性に適した条件下で、DMEを有するin vitro系すなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、MDDTの活性をモジュレートする試験化合物は間接的にモジュレートする場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、又は複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0175】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、MDDT又はその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの産生に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288-1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的又は発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002; Wagner, K.U.他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系又はホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0176】
MDDTをコードするポリヌクレオチドを、in vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することも可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他 (1998) Science 282:1145-1147)。
【0177】
MDDTをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)又は遺伝子組換え動物(マウス又はラット)を作製することも可能である。ノックイン技術を用いて、MDDTをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫又は近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばMDDTを乳汁内に分泌するなどMDDTを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0178】
(治療)
MDDTの各領域と疾患検出及び治療用完全長ヒト分子類との間には、例えば配列及びモチーフの文脈における、化学的及び構造的類似性が存在する。また、MDDTを発現する組織の数例は、表6を見られたい。このように、MDDTは、細胞増殖異常、自己免疫/炎症の疾患、発生又は発達障害、神経障害、及び心血管疾患において、或る役割を果たすと考えられる。MDDTの発現又は活性の増大に関連する疾患の治療においては、MDDTの発現又は活性を低下させることが望ましい。また、MDDTの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、MDDTの発現又は活性を亢進させることが望ましい。
【0179】
したがって、一実施態様において、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にMDDT又はその断片や誘導体を投与し得る。限定するものではないが、このような疾患として、細胞増殖異常の中には光線性角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症疾患には、炎症、光線性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、滑液包炎、胆嚢炎、硬変、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、発作性夜間血色素尿症、肝炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、混合結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜炎症、骨髄線維症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、真性赤血球増加症、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、リンパ腫、白血病、骨髄腫等の造血癌、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィ、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。神経障害には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄疾患、筋ジストロフィ他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/分裂病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、及び家族性前頭側頭型痴呆とが含まれ、また心血管疾患として、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪部石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、冠動脈バイパス手術が含まれる。
【0180】
別の実施態様では、限定するものではないが上記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、MDDT又はその断片や誘導体を発現し得るベクターを被験者に投与しうる。
【0181】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、実質的に精製されたMDDTを有する組成物を、好適な医薬用キャリアと共に被験者に投与し得る。
【0182】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、MDDTの活性を調節するアゴニストを被験者に投与し得る。
【0183】
更なる実施例では、MDDTの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にMDDTのアンタゴニストを投与し得る。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、発生/発達障害、神経障害、及び心血管疾患が含まれる。一態様では、MDDTと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはMDDTを発現する細胞又は組織に薬剤を運ぶターゲッティング機構或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0184】
別の実施態様では、MDDTをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを被験者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防を成し得る。
【0185】
別の実施態様では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、又はベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療又は予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0186】
MDDTのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造できる。詳しくは、精製されたMDDTを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリ群をスクリーニングしたりしてMDDTと特異結合する薬物を同定できる。MDDTに対する抗体も、本技術分野で公知の方法を用いて製造することが可能である。限定するものではないがこのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれ得る。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えばラクダ又はラマに由来する)は強力な酵素インヒビターであり得る。またペプチド擬態物質の設計及び免疫吸着剤とバイオセンサーの開発に長所を有し得る(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0187】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒトその他の種々の宿主が、MDDT又は任意の断片の注入、又は免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0188】
MDDTに対する抗体を誘導するために用いるオリゴペプチド、ペプチド、又は断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を持つものが好ましく、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものとなる。これらのオリゴペプチド、ペプチド又は断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることも望ましい。MDDTアミノ酸類の短いストレッチ群は、KLHなど他のタンパク質の配列と融合され、このキメラ分子に対する抗体群が産生され得る。
【0189】
MDDTに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D.他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P.他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0190】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの「キメラ抗体」作製のために開発した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604-608、Takeda, S.他. (1985) Nature 314:452-454を参照)。別法では、当分野で既知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、MDDT特異的一本鎖抗体を生成し得る。関連する特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0191】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリ又はパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他 (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837、Winter, G.他 (1991) Nature 349:293-299等を参照)。
【0192】
MDDTに対する特異結合部位を持つ抗体断片をも産生し得る。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって産出されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって産生されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D他 (1989) Science 246:1275-1281等を参照)。
【0193】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れかを用いる免疫放射定量測定法又は競合結合試験に対する数々のプロトコルは、本技術分野において公知である。このようなイムノアッセイは通常、MDDTとその特異抗体との間の複合体形成の計測を含む。2つの非干渉性MDDTエピトープに対して反応性を持つモノクローナル抗体群を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合試験も利用できる(Pound、前出)。
【0194】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、MDDTに対する抗体の親和性を評価し得る。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態下でのMDDT-抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原とのモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体類は多様なMDDTエピトープに対する親和性が不均一であり、或るポリクローナル抗体製剤に関して判定したKaは、MDDT抗体群の平均親和性又は結合活性を表す。特定のMDDTエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体製剤のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012L/molの高親和性抗体製剤は、MDDT-抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107liter/molの低親和性抗体製剤は、MDDTが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I:A Practical Approach, IRL Press, Washington DC; Liddell, J.E及びA. Cryer (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0195】
ポリクローナル抗体製剤の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような製剤の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体製剤は一般に、MDDT-抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(前出のCattyの文献、同Coligan他の文献等を参照)。
【0196】
本発明の別の実施例では、MDDTをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用できる。ある態様では、MDDTをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、又は修飾したオリゴヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はより大きな断片が、MDDTをコードする配列の制御領域から、又はコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S.編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ等を参照)。
【0197】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で、細胞内に送達し得る(例えばSlater, J.E.. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475、 Scanlon, K.J.他 (1995) 9(13):1288-1296を参照)。
アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W.及びW. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347等を参照)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(例えばRossi, J.J.(1995)Br. Med. Bull. 51(1):217-225、Boado、R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、 Morris, M.C. 他. (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736を参照)。
【0198】
本発明の別の実施態様では、MDDTをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体連鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重症複合型免疫欠損(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重症複合型免疫欠損(Blaese, R.M. 他(1995) Science 270:475-480、Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207-216: Crystal、R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G. 他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. 及びN. Somia. (1997) Nature 389:239-242)を補正し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生体(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)などヒトのレトロウイルス(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poeschla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生体、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体)に対する防御機能をもたらすタンパク質を発現させることができる。MDDTの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からMDDTを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0199】
本発明の更なる実施態様では、MDDTの欠損による疾患や異常症を、MDDTをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってMDDT欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A.及びW.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501-510、Boulay,J-L.及びH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)がある。
【0200】
MDDTの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。MDDTを発現させるために、(i)構成的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. 及び H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769; Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、又はRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau, 前出)、又は(iii)正常な個体に由来するMDDTをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0201】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者はポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に送達することが可能になる。また、実験パラメータ群を最適化するのに必要な努力が最小限になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L.及びA.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B.他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修正が必要である。
【0202】
本発明の別の実施態様では、MDDTの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や障害を、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは或る独立プロモーターのコントロール下でMDDTをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナル群と、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列と、効率的なベクター増殖に必要なコーディング配列とを伴うRev応答性エレメント(RRE)と、からなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子又はVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A.及びA.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G.他(1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U.他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0203】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の或る送達系を用いて、MDDTの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する細胞群に、MDDTをコードするポリヌクレオチド群を送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製及びパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内にインポートする目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E.他 (1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0204】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の或る送達系を用いて、MDDTの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を持つ標的細胞群に、MDDTをコードするポリヌクレオチド群を送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターの利用は、HSVが向性を持つ中枢神経細胞にMDDTを導入する際に特に有用たり得る。ヘルペス系ベクター類の作製及びパッケージングは、当業者に公知である。或る複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターが、或るレポーター遺伝子の、霊長類の眼への送達に用いられている(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res. 169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus strains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92の使用についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F.他 (1999) J. Virol. 73:519-532及びXu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった各部分を有する多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0205】
別法では、或るαウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いて、MDDTをコードするポリヌクレオチド群を標的細胞群に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターはSFVゲノムに基づいている(Garoff, H.及びK.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、ウイルスのカプシッドタンパク質を通常はコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてカプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、MDDTをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に挿入することによって、ベクター形質導入細胞において多数のMDDTをコードするRNAが産生され、高いレベルでMDDTが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群が持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他 (1997) Virology 228:74-83)。αウイルスの宿主域は広いので、様々なタイプの細胞にMDDTを導入できることとなる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0206】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位(transcription initiation site)とは例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E.他 (1994) in: Huber、B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, 163-177ページ等を参照)。相補配列又はアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0207】
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、その後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、人工的に作製されたハンマーヘッド型リボザイム分子が、MDDTをコードする配列の、内ヌクレオチド鎖切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0208】
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
【0209】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、MDDTをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞株、細胞又は組織内に導入することができる。
【0210】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5'末端、3'末端、或いはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート又は2' O-メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであるが、これら全ての分子に拡大することができる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものや、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を含める。
【0211】
本発明の更なる実施態様には、MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現の改変に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター又はエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。このように、MDDTの発現又は活性の増加に関連する疾患の治療においては、MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、MDDTの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0212】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、商用の又は専用の、天然又は非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/又は構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組み合わせ的に又は無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。MDDTをコードするポリヌクレオチドを持つサンプルを、このようにして得た試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、無傷細胞、又は透過化処理した細胞、或いはin vitro 無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現における改変は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常は、MDDTをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ若しくは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの発現改変に有効な化合物について、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D.他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M.他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)又はHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施態様は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性のためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド等)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0213】
ベクターを細胞又は組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、又はリポソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(例えばGoldman, C.K.他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466)。
【0214】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0215】
本発明のさらなる実施態様は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、MDDT、その抗体、擬態物質、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターなどからなる。
【0216】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下又は直腸がある。
【0217】
肺から投与する組成物は、液状又は乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0218】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0219】
MDDT又はその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な種々の形状の組成物が調製され得る。例えば、細胞不透過性高分子を有するリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。別法では、MDDT又はその断片を、HIV Tat-1タンパク質から得た短い陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569-1572)。
【0220】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はブタ等において、先ず治療上の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0221】
治療有効量とは、症状や容態を回復させる、たとえばMDDT又はその断片、MDDTの抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターなど活性成分の量を指す。治療有効度及び毒性は、細胞培養又は動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)又はLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を策定するのに用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0222】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、被験者の全身健康状態、被験者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、薬剤の併用、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮しうる。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって、3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0223】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質又はインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0224】
(診断)
別の実施態様では、MDDTに特異的に結合する抗体を、MDDTの発現によって特徴付けられる障害の診断に、又は、MDDTやそのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用い得る。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合されうる。MDDTの診断アッセイには、ヒトの体液から、或いは細胞や組織の抽出物から、抗体及び標識を用いてMDDTを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合又は非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0225】
MDDTを測定するための、ELISA,RIA,及びFACSなど、種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変容した或いは異常なレベルのMDDT発現を診断するための基盤を提供する。正常或いは標準的なMDDTの発現の値は、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験体から採取した体液又は細胞とMDDTに対する抗体とを複合体の形成に適した条件の下で結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験体、対照及び生検組織からの疾患サンプル中で発現するMDDTの量を標準値と比較する。標準値と被験者の値との偏差が、疾患を診断するパラメータとなる。
【0226】
本発明の別の実施態様によれば、MDDTをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。これらのポリヌクレオチドを用いて、MDDTの発現が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子発現を検出し定量し得る。この診断アッセイを用いて、MDDTの存在の有無、更には過剰な発現を判定し、治療時のMDDTレベルの調節を監視する。
【0227】
一実施形態では、MDDTをコード又は近縁の分子をコードするポリヌクレオチド配列(例えばゲノム配列)を検出可能なPCRプローブ類とのハイブリダイゼーションによって、MDDTをコードする核酸配列を同定できる。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているという、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントによって、プローブがMDDTをコードする天然配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列を同定するかどうかが決まることとなる。
【0228】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用でき、また、MDDTをコードする任意の配列との少なくとも50%の配列同一性を有し得る。本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNA或いはRNAが可能であり、SEQ ID NO:21-40の配列、或いはMDDT遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0229】
MDDTをコードするDNA群に対して特異的なハイブリダイゼーションプローブ群の作製方法としては、MDDTをコード又はその誘導体群をコードするポリヌクレオチド配列群を、mRNAプローブ群の作製のためのベクター類にクローニングする方法を含む。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。 レポーター集団の例としては、32P又は35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0230】
MDDTをコードするポリヌクレオチド配列は、MDDTの発現に関係する疾患の診断の為に用い得る。限定するものではないが、このような疾患として、細胞増殖異常の中には光線性角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症疾患には、炎症、光線性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、滑液包炎、胆嚢炎、硬変、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、発作性夜間血色素尿症、肝炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、混合結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜炎症、骨髄線維症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、真性赤血球増加症、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、リンパ腫、白血病、骨髄腫等の造血癌、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィ、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。神経障害には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄疾患、筋ジストロフィ他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/分裂病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、及び家族性前頭側頭型痴呆とが含まれ、また心血管疾患として、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪部石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、冠動脈バイパス手術が含まれる。MDDTをコードするポリヌクレオチド配列は、変容したMDDT発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、及びマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用可能である。このような定性方法又は定量方法は、当分野で公知である。
【0231】
或る特定の態様では、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて、MDDTをコードするヌクレオチド配列が有用であり得る。MDDTをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化されうる。又はイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく改変された場合は、サンプル内のMDDTをコードするヌクレオチド配列の変容したレベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0232】
MDDTの発現に関連する疾患の診断の基礎を提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロフィールが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトのいずれかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、MDDTをコードする配列或いはその断片とを混合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0233】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0234】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現又は過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法又は積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生又は更なる進行を防止することが可能となる。
【0235】
MDDTをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、MDDTをコードするポリヌクレオチドの断片を、或いはMDDTをコードするポリヌクレオチドに対し相補的なポリヌクレオチドの断片を好ましくは含む。また、最適化した条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0236】
或る特定の態様において、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列群由来のオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性又は後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)法がある。SSCPでは、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列群に由来のオリゴヌクレオチドプライマー類とポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)とを用いた、DNAの増幅を行う。DNAは例えば、病変組織又は正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、また統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフイルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0237】
ヒト疾患の遺伝的根拠を研究するためにSNPを用いることができる。例えば、少なくとも16の一般的SNPが、非インスリン依存型真性糖尿病と関連がある。SNPは、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血或いは慢性肉芽腫症等の単一遺伝子病の転帰の差異を研究する面でも有用である。例えば、マンノース結合レクチンの変異体であるMBL2は、嚢胞性線維症の肺での有害な転帰と相関することが示されてきた。SNPはまた、生命に関わる毒性等の薬剤への患者の反応に影響する遺伝変異体の同定という薬理ゲノミックスにおいても有用性がある。例えば、ALOX5遺伝子のコア・プロモーターにおける或る変異は5-リポキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息剤を用いた治療への臨床反応の減少につながるが、Nアセチルトランスフェラーゼの或る変異は抗結核薬剤イソニアジドに反応する末梢神経障害の高発生率と関連する。異なる集団におけるSNP分布の分析は、集団の起源と移動の追跡以外にも遺伝的浮動、突然変異、組換え、選択の調査において有用である(Taylor, J.G.他 (2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.及びZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P.他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0238】
MDDTの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識又はビオチン標識、対照核酸の共増幅(coamplification)、及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、Melby, P.C.他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235-244、Duplaa, C.他 (1993) Anal. Biochem. 212:229-236を参照)。目的のオリゴマー又はポリヌクレオチドが種々の希釈液中に存在し、分光光度法又は比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0239】
更に別の実施態様では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチド又はより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写物イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0240】
別の実施態様では、MDDT、その断片群又は、MDDTに特異的な抗体類を、或るマイクロアレイ上のエレメント群として用い得る。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニター又は測定することが可能である。
【0241】
或る実施態様は、或る組織又は細胞タイプの転写物イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写物イメージは、特定の組織又は細胞タイプによる遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照。当該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。従って、特定の組織又は細胞タイプの転写又は逆転写全体に本発明のポリヌクレオチド又はその補体をハイブリダイズすることにより、転写物イメージを生成し得る。或る実施態様では、本発明のポリヌクレオチド又はその相補配列がマイクロアレイ上の複数のエレメント群の或るサブセットを含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写物イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0242】
転写物イメージは、組織、細胞株、生検又は他の生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写物イメージは従って、組織又は生検サンプルの場合にはin vivo、又は細胞株の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0243】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写物イメージはまた、工業的又は天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを表示する、しばしば分子フィンガープリント又は毒物シグネチャと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S.及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が既知の毒性を有する化合物のシグネチャと類似のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリント又はシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリからの発現情報を含んでいる場合には、最も有用且つ正確である。理想的には、発現のゲノム全域にわたる測定が最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。ノーマライズ手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒物シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながる、シグネチャを統計的に一致させる過程に、遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒物シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0244】
或る実施態様では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0245】
別の実施態様は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織又は細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織又は細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織又は細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施態様では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner及びAnderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、或いは銀染色液又は蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物又は治療薬で処理又は未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られる同等に位置するタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的又は酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
【0246】
プロテオームのプロフィールは、MDDTに特異的な抗体を用いてMDDT発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施態様では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他(1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G. 他 (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール又はアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0247】
プロテオームレベルでの毒物シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒物シグネチャと並行に分析するべきである。数種の組織の数種のタンパク質に対しては、転写物とタンパク質との存在量の相関が乏しいので(Anderson, N.L.及びJ. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写物イメージには有意に影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒物シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロフィール作成はこのような場合により信頼し得、情報価値があり得る。
【0248】
別の実施態様では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0249】
別の実施態様では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。
【0250】
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法を用いて調製し、使用し、そして分析しうる(Brennan, T.M. 他 (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他 (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他 (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他 (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。 該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0251】
本発明の別の実施態様では、MDDTをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列又は非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列よりも非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。配列は、或る特定の染色体に、又は或る染色体の或る特定領域に、又は人為形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1作製物、或いは単一染色体cDNAライブラリ群に対してマッピングされうる(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355、Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149-154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて例えば病状の遺伝を特定の染色体領域の遺伝又は制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を発生させ得る(例えば、 Lander, E.S及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0252】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(例えば前出Meyers, 965-968ページのHeinz-Ulrich, 他 (1995)を参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌或いはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的染色体地図上の、MDDTをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、位置を決定するクローニングの作業を促進し得る。
【0253】
確定した染色体マーカーを用いた結合分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。いったん疾患又は症候群に関与する遺伝子(群)が、血管拡張性失調症の11q22-23領域など、特定のゲノム領域への遺伝的連鎖によって、大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされる任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を提示している可能性がある(例えばGatti, R.A. 他 (1988) Nature 336:577-580を参照)。転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
【0254】
本発明の別の実施態様では、MDDT、その触媒作用断片群、或いは免疫原断片群、又はそのオリゴペプチド群を、種々の任意の薬物スクリーニング技術における、化合物群のライブラリ類のスクリーニングに用い得る。薬物スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することができる。MDDTと試験する薬剤との結合による複合体の形成を測定し得る。
【0255】
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen,他 (1984) PCT application WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、MDDT、或いはその断片と反応してから洗浄される。結合したMDDTを次に、当分野で周知の種々の方法で検出する。精製したMDDTはまた、上記した薬物スクリーニング技術に用いるプレート上に直接コーティングもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0256】
別の実施態様では、MDDTと特異結合可能な中和抗体がMDDTとの結合について試験化合物と競合する、競合的薬物スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体を用いて、1つ以上の抗原決定基をMDDTと共有するどのペプチドの存在をも検出できる。
【0257】
別の実施態様では、MDDTをコードするヌクレオチド配列群を、将来に開発される分子生物学技術であり、現在知られているヌクレオチド配列群の諸特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存するあらゆる新技術に用い得る。
【0258】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0259】
前述しまた後述の全ての特許、特許出願及び刊行物の開示は、特に米国特許出願第60/268,117、第60/269,618、第60/271,118、第60/274,436、第60/274,486、第60/344,229及び2002年2月1日に提出、米国弁護士側管理番号No.PF-1352Pは、言及することをもって本明細書の一部となす。
【実施例】
【0260】
1 cDNAライブラリの作製
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールに又は変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Life Technologies)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムクッション上で遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0261】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)又はOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0262】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)又はSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で既知の推奨方法又は類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, 5.1-6.6ユニットなどを参照)。逆転写は、オリゴd(T)又はランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素又は酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B又はSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは分取アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位へ連結された。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1 プラスミド(Life Technologies)、PCDNA2.1 プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMV プラスミド(Stratagene)、PCR2-TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN (Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)又はplNCY(Incyte Genomics)等及びその誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRF又はSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10B又はElectroMAX DH10Bを含む適格な大腸菌細胞に形質転換した。
【0263】
2 cDNAクローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、下記の少なくとも1つを用いた。すなわちMagic又はWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットのいずれかである。沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0264】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384ウェルプレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0265】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)又はPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)又はMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬、又はABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373又は377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, unit 7.7に概説)を用いて同定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0266】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に公共のデータベース、例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベース群とBLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、ヒト、ラット、マウス、線虫、出芽酵母菌( Saccharomyces cerevisiae )、分裂酵母( Schizosaccaromyces pombe)、Candida albicans 由来の配列を有するPROTEOMEデータベース群(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、並びにPFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリデータベース、SMART(Schultz 他. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864、Letunic, I.他 (2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベースから選択したデータベースに対してIncyte cDNA配列又はその翻訳を問い合わせた(HMMは、遺伝子ファミリのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361-365を参照のこと)。問い合わせは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築された。或いは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、又はGenscan予測コード配列群(実施例4及び5を参照)を用い、Incyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いて構築し、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAの集団を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を誘導した。或いは、本発明のポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベースや、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリデータベース、SMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベースに対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0267】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は適切な参照文献であり、全ての文献は全体を引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、また確率値が低いほど、2配列間の同一性が高くなる)。
【0268】
完全長ポリヌクレオチド配列群とポリペプチド配列群との構築と分析とに用いた上記プログラム群は、SEQ ID NO:21-40のポリヌクレオチド配列断片群の同定にも利用した。ハイブリダイゼーション技術と増幅技術とに有用な約20〜約4000ヌクレオチドの断片群を、表4の列2に示した。
【0269】
4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集
推定上の疾患検出及び治療用完全長ヒト分子類の同定には、先ずGenscan遺伝子同定プログラムを、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)に対して実行した。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C.及びS. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C及びS. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346-354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan予測cDNA配列の内、どの配列が疾患検出及び治療用完全長ヒト分子をコードするかを決定するために、コードされるポリペプチドを、PFAMモデル群に対し疾患検出及び治療用完全長ヒト分子について問い合わせて分析した。潜在的な疾患検出及び治療用完全長ヒト分子はまた、既に疾患検出及び治療用完全長ヒト分子として注釈が付けられたIncyte cDNA配列群に対する相同性により、同定した。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分な又は省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNA又は公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正又は確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載した構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/又は公共cDNA配列でGenscan予測コード配列を構築して得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集した、又は非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0270】
5 cDNA配列データとのゲノム配列データの統合(assembly)
スティッチ配列( Stitched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集又は伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移性により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられた。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定した区間を、それらの親配列(parent sequences)に沿って現われる順にスティッチアルゴリズムで「縫い合わせ」、可能な限り最長の配列と変異配列群とを生成した。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNA又はゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得たスティッチ配列群を翻訳し、BLAST分析で公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0271】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列又は実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に対し、キメラタンパク質内では挿入又は欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質又はその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を試験し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
【0272】
6 MDDTをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:21-40を構築するために用いた配列群を、BLAST他のSmith-Watermanアルゴリズムの実装群を用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共ドメインデータベース群の配列と比較した。SEQ ID NO:21-40と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどの構築アルゴリズム(表7)を使用して、連続しオーバーラップする配列のクラスタ群に組み入れた。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethonなどの公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、いずれかのクラスタ化された配列が既にマッピングされているかを判定した。マッピングされた配列が或るクラスタに含まれている場合、そのクラスタの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
【0273】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲又は間隔として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。
【0274】
NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップ及びその他の情報源を用いて、既に同定されている疾患遺伝子群が、上記した区間内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0275】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種又は組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している(例えば前出のSambrook, 7章、同Ausubel (1995) 4章及び16章を参照)。
【0276】
BLASTを適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLIFESEQ(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一又は関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、任意の特定の一致を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を修正することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0277】
【数1】
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の正規化(normalize)された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。BLASTスコアを計算するには、或る高スコアリングセグメント対(HSP)内の一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基に-4を割り当てる。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0278】
或いは、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列を、由来する組織源について分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いて構築される(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。すなわち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性又は尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリーすなわち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、MDDTをコードするcDNAの、組織特異的発現及び疾患特異的発現を反映する。cDNA配列及びcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0279】
8 ポリヌクレオチドをコードするMDDTの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列はまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマー群の設計にはOLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用い、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜約72℃の温度で標的配列にアニーリングするようにした。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチド群の伸長は、全て回避した。
【0280】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要又は望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0281】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマー、Mg2 +と(NH4)2SO4と2−メルカプトエタノールを含む反応バッファ、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマー対、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。別法では、プライマー対であるT7とSK+とに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:57℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。
【0282】
各ウェルのDNA濃度は、1× TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配し、DNAが試薬と結合できるようにして測定した。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
【0283】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理又はせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質転換した細胞の選択を抗生物質を有する培地で行い、それぞれのコロニーを切りとってLB/2xカルベニシリン培養液の384穴プレートに37℃で一晩培養した。
【0284】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:72℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を29回繰り返す、ステップ6:72℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)又はABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシングレディ反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0285】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5'調節配列を得る。
【0286】
9 MDDTをコードするポリヌクレオチドの一塩基多型の同定
一塩基多型性(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体は、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:21-40において同定された。実施例3に記述されているように同じ遺伝子からの配列は共にクラスタ化され、構築され、遺伝子内の全ての配列変異体を同定することができた。一連のフイルタから成るアルゴリズムが、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられた。前段フイルタ群が、最小限のPhredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アラインメントエラーと、ベクター配列、キメラ、スプライス変異体の、不適切なトリミングに起因するエラーを除去した。先進の染色体分析の自動化した手順により、推定上のSNPの近傍の本来のクロマトグラムファイルを分析した。クローンエラーフイルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ或いは体細胞性突然変異によって引き起こされる等の、実験プロセッシング中に導入されたエラ−を同定した。クラスタリングエラーフイルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体或いは偽遺伝子のクラスタリングに起因するエラー、又は非ヒト配列によるコンタミネーションによるエラーを同定した。フイルタの最終セットは、免疫グロブリン又はT細胞受容体に見出される重複とSNPを除去した。
【0287】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために、高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって、更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人集団は92人(男性46人、女性46人)から成り、そのうち83人はユタ州、4人はフランス、3人はベネズエラ、2人はアーミッシュの出身である。アフリカ系集団は194人(男性97人、女性97人)から成り、全てアフリカ系米国人である。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)から成り、全てメキシコ出身である。アジア系の集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、中国人43%、日本人31%、コリアン13%、ベトナム人5%、他のアジア系8%の親の構成が報告されている。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で分析された。この集団で対立遺伝子変異を示さないSNPの時には他の3つの集団で更に試験されない場合もあった。
【0288】
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用
SEQ ID NO:21-40から得たハイブリダイゼーションプローブを利用して、cDNA、ゲノムDNA又はmRNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフトウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザインし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ-32P] アデノシン三リン酸(Amersham Pharmacia Biotech)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Boston MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて実質的に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1又はPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0289】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。非特異的シグナルを除去するため、最大で例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムの条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィー又はそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0290】
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合又は合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な、無孔の表面を持つ固体とすべきである(Schena(1999)前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法又はスロットブロット法に類似した手順を利用して、熱的、紫外線的、化学的又は機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(例えばSchena, M. 他. (1995) Science 270:467-470、Shalon, D.他. (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31等を参照)。
【0291】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、又はその断片又はオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片又はオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。一実施態様におけるマイクロアレイの調製及び使用について、以下に詳述する。
【0292】
組織又は細胞サンプルの調製
グアニジニウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)又はdCTP-Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用い、200ngのポリ(A)+RNAを含有する体積25mlで行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。混合後、2つの反応サンプルはエタノール沈殿される。沈殿には、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて完全に乾燥させ、14μlの5×SSC/0.2%SDS中で再懸濁する。
【0293】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを生成する。各アレイエレメントは、クローン化したcDNAインサートを有するベクターを含有する細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。
【0294】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、0.1%のSDS及びアセトン中で超音波洗浄し、処理の間及び処理後に充分に蒸留水で洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で充分に洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドは、110℃のオーブンで硬化させる。
【0295】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを、高速ロボット装置(robotic apparatus)により、開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0296】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0297】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液中のCy3及びCy5標識したcDNA合成生成物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を有する。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上へ等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC、0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において各々45℃で10分間、3度洗浄して乾燥させる。
【0298】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。励起レーザ光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡のコンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
【0299】
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つのフルオロフォアを連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。適切なフイルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフイルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方のフルオロフォアからのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフイルタを用いて、フルオロフォア1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0300】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を、ハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なるフルオロフォアで標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、較正するcDNAのサンプルを2つのフルオロフォアで標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0301】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なるフルオロフォアを同時に励起及び測定する場合には、各フルオロフォアの発光スペクトルを用いて、データは先ずフルオロフォア間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0302】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0303】
12 相補的ポリヌクレオチド
MDDTをコードする配列群或いはその任意の部分に対する相補配列群を用いることにより、天然MDDTの発現が検出、低減、又は阻害される。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。適切なオリゴヌクレオチドを設計するため、Oligo 4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びMDDTのコーディング配列を用いる。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、MDDTをコードする転写物にリボソームが結合するのを防ぐ。
【0304】
13 MDDTの発現
MDDTの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌内でMDDTを発現するには、cDNAを好適なベクターにサブクローニングする。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子と、cDNA転写レベルを高める誘導性プロモーターとを持つものを用いる。このようなプロモーターの例には、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5又はT7バクテリオファージプロモーター及び、trp-lac (tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性細菌にMDDTを発現させるには、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発する。真核細胞でのMDDTの発現は、昆虫細胞株又は哺乳動物細胞株に、一般にバキュロウイルスとして知られるAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子をMDDTをコードするcDNAで置換するには、相同組換えを行うか、或いは、転移プラスミドの媒介を伴う、細菌の媒介による遺伝子転移を行う。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高レベルのcDNA転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合は夜蛾の1種Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いるが、ヒト肝細胞への感染に用いることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945を参照)。
【0305】
殆どの発現系では、MDDTが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、又はFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製を、迅速に1ステップで行い得る。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を、特異的に操作した部位でMDDTからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したMDDTを直接用いて以下の実施例17及び18の、適用可能なアッセイを行うことができる。
【0306】
14 機能的アッセイ
MDDTの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理的に高められたレベルでの、MDDTをコードする配列の発現によって算定する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを持つ哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターには、pCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びpCR 3.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来又は造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。 また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64又はCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザ光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFP又はCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、それらの細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取り込みを検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方光散乱と90°側方光散乱によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G.(1994)Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
【0307】
遺伝子発現へのMDDTの影響は、MDDTをコードする配列と、CD64又はCD64-GFPのどちらかが形質移入された、高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64又はCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質移入された細胞と形質移入されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて効率的に分離することができる(DYNAL, Lake Success NY)。mRNAは、当業者に周知の方法で細胞から精製することができる。MDDTと、目的とする他の遺伝子とをコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0308】
15 MDDTに特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G.(1990)Methods Enzymol 182:488-495を参照)又は他の精製技術を用いて実質的に精製されたMDDTを用いて、標準プロトコルで動物(ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を産出する。
【0309】
別法では、MDDTアミノ酸配列をLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を決定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の、或いは隣接する親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択については、当分野で周知である(例えば、前出のAusubel, 1995,11章を参照)。
【0310】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗MDDT活性を検査するには例えば、ペプチド又はMDDTを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、更に、放射性ヨウ素標識したヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0311】
16 特異的抗体を用いる天然MDDTの精製
天然MDDT或いは組換えMDDTを実質的に精製するため、MDDTに特異的な抗体類を用いるイムノアフィニティー(免疫親和性)クロマトグラフィを行う。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化したSEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィ用レジンと抗MDDT抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
【0312】
MDDTを有する培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、MDDTを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とMDDTとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファ、或いは高濃度の尿素又はチオシアン酸イオンのようなカオトロープで)溶出させ、MDDTを収集する。
【0313】
17 MDDTと相互作用する分子の同定
MDDT又は生物学的に活性なMDDT断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(例えばBolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。マルチウェルプレートの各ウェルに予め配列しておいた候補の分子群を、標識したMDDTと共にインキュベートし、洗浄して、標識されたMDDT複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なMDDT濃度で得られたデータを用いて、MDDTの数量、候補分子との親和性、及び会合についての値を計算する。
【0314】
別法では、MDDTと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)や、MATCHMAKERシステム(Clontech)などの、2−ハイブリッドシステムに基づく市販のキットを用いて分析する。
【0315】
MDDTは又はイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定し得る(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0316】
18 MDDT活性の実証
MDDTの成長刺激活性若しくは阻害活性の為の或るアッセイは、スイスマウスの3T3細胞におけるDNA合成の量を測定する(McKay, I.及びLeigh, I,編集 (1993) Growth Factors : A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY)。このアッセイにおいては、可変量のMDDTが、放射性DNA前駆物質である[3H]チミジンの存在中で静止状態3T3培養細胞へと加えられる。このアッセイのためのMDDTを得る手段は、組み替えでも良く、生化学的な標本より得ても良い。酸−沈殿可能DNAへの[3H]チミジンの取り込みは、適切な時間間隔で測定され、取り込み量は新規に合成されたDNAの量に正比例する。少なくとも100倍のMDDT濃度レンジにわたる線形の(linear)用量反応曲線は、成長モジュレート活性を示す。ミリリットルあたりの活性のユニットは、50%の応答レベルを生じるMDDTの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸によって沈殿されるDNAへの[3H]チミジンの最大の取り込みを意味している。
【0317】
別法では、MDDT活性のためのアッセイで、培養細胞中の神経伝達の、刺激作用若しくは抑制を測定する。培養CHO繊維芽細胞をMDDTに曝す。エンドサイトーシスによるMDDT取り込み後に、これらの細胞を新鮮培養液で洗浄し、細胞全膜電位固定したアフリカツメガエル筋細胞を、MDDTを含まない媒質中の線維芽細胞の1つと接触させる。膜電流を、この筋細胞から記録する。対照値に対し増加若しくは減少した電流は、MDDTの神経修飾性効果を示している(Morimoto, T.他(1995)Neuron 15 : 689-696)。
【0318】
別法では、MDDT活性のアッセイで、分泌性の膜結合オルガネラ(細胞小器官)におけるMDDTの量を測定する。上述したように形質移入された細胞を採取し、溶解する。ライセートは、当業者に既知の、ショ糖密度勾配超遠心法などの方法で分画する。そのような方法は、ゴルジ体、ER、膜結合小胞、及びその他の分泌細胞小器官のような、細胞内要素の単離を可能とする。分画された細胞ライセート及び全体の細胞ライセートよりの免疫沈降は、MDDT特異抗体を用いて実行され、また免疫沈降サンプルはSDS-PAGE及び免疫ブロット技術を用いて解析される。全細胞ライセート中MDDTに対する分泌オルガネラ中MDDT濃度は、分泌経路を通るMDDTの量に比例する。
【0319】
別法では、AMP結合活性の測定を、MDDTと32P標識したAMPとを混合して行う。この反応溶液を37℃でインキュベートし、反応はトリクロロ酢酸の添加で終了させる。酸抽出物を中和し、ゲル電気泳動にかけて非結合標識を除去する。ゲル内に留まる放射活性が、MDDTの活性に比例する。
【0320】
当業者には、本発明の要旨及び精神から逸脱しない範囲での、記載した本発明の方法及びシステムの、種々の修正及び変更については自明であろう。本発明について説明するにあたり幾つかの実施例に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。分子生物学又は関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載する本発明の実施方法の様々な修正は、明確に特許請求の範囲内にあるものとする。
【0321】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0322】
表2は、本発明のポリペプチド群のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。また、各ポリペプチドとその相同体(1つ以上)が一致する確率スコアも併せて示す。
【0323】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリペプチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0324】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0325】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0326】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0327】
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0328】
【表1】
【0329】
【表2】
【0330】
【表3−1】
【0331】
【表3−2】
【0332】
【表3−3】
【0333】
【表3−4】
【0334】
【表3−5】
【0335】
【表3−6】
【0336】
【表4−1】
【0337】
【表4−2】
【0338】
【表4−3】
【0339】
【表4−4】
【0340】
【表4−5】
【0341】
【表4−6】
【0342】
【表4−7】
【0343】
【表4−8】
【0344】
【表4−9】
【0345】
【表4−10】
【0346】
【表4−11】
【0347】
【表4−12】
【0348】
【表4−13】
【0349】
【表5】
【0350】
【表6−1】
【0351】
【表6−2】
【0352】
【表6−3】
【0353】
【表7−1】
【0354】
【表7−2】
【0001】
本発明は、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子の核酸配列及びアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、発達障害、神経障害、心血管障害の診断・治療・予防に関する。本発明は更に、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来化合物の効果についての算定に関する。
【背景技術】
【0002】
推定によれば、哺乳類DNAの2%のみがタンパク質をコードしており、どの時点でも、タンパク質をコードする遺伝子群の僅かな部分のみが特定細胞内で実際に発現される。多細胞生物における種々のタイプの細胞は構造も機能も劇的に異なっており、特定細胞の個性を授けるものは、その独自のパターンの遺伝子発現である。また、異なる細胞タイプは、オーバーラップするが特有のセットの遺伝子群を、発生期を通じて発現する。生物の発達と生存とに寄与する、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、免疫応答、アポトーシス及び他のプロセスは、遺伝子発現の調節によって支配される。適切な遺伝子調節はまた、細胞を効率よく機能させる。これを確実にするため、その機能が要求される遺伝子群のみが所定の時期に発現される。遺伝子発現に影響を与える因子の例には、細胞間伝達を仲介し様々な細胞型の作用を協調させる細胞外シグナルを含む。遺伝子発現は、DNAとRNAとの転写レベル、及び、mRNA翻訳のレベルにおいて調節される。
【0003】
遺伝子と遺伝子産物とに異常な発現又は突然変異があると、種々のヒト疾患(例えば癌その他の細胞増殖異常など)を起こしたり、又はそれらに対する感受性を増加させたりすることがある。これらの遺伝子と遺伝子産物の同定が、疾患の早期検出のためのマーカーと、疾患の予防と治療との為の標的とを見出すために進展している努力の基礎となる。例えば癌は、身体のほぼ全ての組織に影響する細胞増殖異常の或るタイプを言う。癌の発生すなわち発癌は、しばしば、異常発現又は突然変異を通じて正常遺伝子が癌を起こす遺伝子すなわち癌原遺伝子へ変換することと相関する。腫瘍性タンパク質(癌原遺伝子の産物)の例には、細胞増殖に影響する種々の分子を含む。このような分子とは例えば成長因子、成長因子受容体、細胞内シグナル伝達因子、核内転写因子、及び細胞周期制御タンパク質である。一方、腫瘍抑制遺伝子は、細胞増殖抑制に関係する。腫瘍抑制遺伝子の機能を低減又は抑止する突然変異の結果、異常な細胞増殖と癌とが起こる。このように、多種多様な遺伝子と遺伝子産物とが細胞増殖異常(癌など)に関連することが見出されているが、まだ発見されていない多くの遺伝子と遺伝子産物が存在する可能性がある。
【0004】
DNAベースのアレイは、遺伝子発現と遺伝的変異性とを試験する、効率的で高処理の方法を提供できる。例えばSNP(すなわち一塩基多型)は、最も多いタイプのヒト遺伝的変異である。DNAベースのアレイは、数百、数千もの遺伝子群におけるSNPの発見を劇的に加速できる。同様に、このようなアレイを用いて、SNP遺伝子型解析(SNP genotyping)をなしうる。この解析では、個体群又は集団群からのDNAサンプルのアッセイを、選択したSNPの存在について行う。これらのアプローチは、ヒトゲノムにおける全ての遺伝的変異の体系的同定や、特定の遺伝的変異と疾患感受性、薬物治療応答性その他の医学的関連情報との相関の体系的同定を最終的にもたらすだろう(例えばWang, D.G.他 (1998) Science 280:1077-1082.)。
【0005】
DNAベースのアレイ技術は、全体的な遺伝子発現パターンの迅速な分析に特に重要である。例えば遺伝子的疾病素質、疾患、又は治療処置は、直接又は間接に、或る組織における多数の遺伝子の発現に影響することがある。この場合、発現される全ての遺伝子と、それらの遺伝子がその特定組織において発現されるレベルとのプロフィールすなわち転写物イメージを作製することは有用である。或る疾患を患う個体又は集団、又は特定の治療を受けている個体又は集団から作製されたプロフィールは、対照の個体又は集団から作製されたプロフィールと比較されうる。このような分析には、遺伝子機能の知識を必要としない。理由は、発現プロフィールを数学的に分析でき、この分析では各遺伝子を単にマーカーとして扱うからである。更に遺伝子発現プロフィールは、例えば或る発生段階や特定組織において、又は疾患や処置に応答して発現される全ての遺伝子を同定することによって、生物学的経路の詳細な分析を補助しうる(例えばLander, E.S.他 (1996) Science 274:536-539)。
【0006】
数種の遺伝子は、疾患と関連することが、染色体上の位置から知られている。その例として、マウスとヒトとの筋緊張性ジストロフィ(DM)領域にある遺伝子群がある。DMの根底にある突然変異はDMキナーゼ蛋白をコードする或る遺伝子に限局されているが、別の活性遺伝子であるDMR-N9は、このDMキナーゼ遺伝子に非常に近接した位置にある(Jansen, G.他(1992) Nat. Genet. 1:261-266)。DMR-N9は、或る650個のアミノ酸のタンパク質をコードし、このタンパク質にはWDリピートがある。WDリピートは細胞シグナル伝達タンパクに見られるモチーフである。DMR-N9は全ての神経組織と睾丸とに発現されるので、重篤例のDMにおける精神症状と睾丸症状との出現におけるDMR-N9の役割を示唆している(Jansen, G.他 (1995) Hum. Mol. Genet. 4:843-852)。
【0007】
他の複数の遺伝子の同定が、その発現パターンに、又は疾病症候群との関連に基づいてなされた。例えば細胞内オルガネラに対する自己抗体は、全身性リウマチ性疾患の患者に見られる。最近同定されたタンパク質であるgolgin-67はゴルジ自己抗原の或るファミリに属しており、αヘリックスのコイルドコイルドメインを持つ(Eystathioy, T.他 (2000) J. Autoimmun. 14:179-187)。Stac遺伝子は、脳に特異的で、発達に応じて調節される遺伝子として同定された。Stacタンパク質はSH3ドメインを持つ。またニューロン特異的シグナル伝達に関わると思われる(Suzuki, H.他 (1996) Biochem. Biophys. Res. Commun. 229:902-909)。
【0008】
カルポニンはアクチン結合タンパク質であり、細胞骨格の機能と組織化とに関与し得る(Takahashi, K. 他. (1986) Biochem. Biophys. Res. Commun. 141:20-26)。カルポニンのN末端は、カルシウム結合タンパク質類及びトロポミオシンと相互作用することができる。幾つかの他のアクチン結合タンパク質の構造内に見出されるCH-ドメイン(カルポニン相同ドメイン)も、N末端に位置する(Gusev, N.B. (2001) Biochemistry (Mosc) 66:1112-1121)。
【0009】
分泌タンパク質
タンパク質の輸送及び分泌は、細胞機能のために必須である。タンパク質の輸送は、輸送若しくは分泌されるタンパク質のアミノ末端にあるシグナルペプチドが媒介する。シグナルペプチドは、約10から20の疎水性アミノ酸群からなり、新生タンパク質をリボソームから、膜で囲まれた特定の区画、例えば小胞体(ER)まで導く。ERを標的とするタンパク質には、分泌経路を進むものと、いずれかの分泌細胞器官(例えばER、ゴルジ装置若しくはリソソーム)に残るものとがある。分泌経路を進むタンパク質類は、細胞外空間へ分泌されるか、又は原形質膜内に残る。原形質膜内に保持されるタンパク質類は1つ以上の膜貫通ドメインを持ち、各ドメインは約20の疎水性アミノ酸残基からなる。分泌タンパク質類は、通常、不活性の前駆体として合成され、分泌経路を進む際に、翻訳後プロセシングイベントによって活性化される。そのようなイベントとして、グリコシル化、タンパク質分解、及びシグナルペプチダーゼによるシグナルペプチドの除去が挙げられる。タンパク質の輸送の間に起こり得る他のイベントとしては、新生タンパク質のシャペロン依存アンフォールディング及びフォールディング、及び、このタンパク質と、受容体若しくは細孔複合体との相互作用がある。アミノ末端シグナルペプチドを持つ分泌タンパク質の例は以下に述べるが、中には、細胞間シグナル伝達において重要な役割を持つタンパク質類もある。そのようなタンパク質の例として、膜貫通受容体及び細胞表面マーカー、細胞外基質分子、サイトカイン、ホルモン、成長因子及び分化因子、酵素、ニューロペプチド、血管介在物質(vasomediators)、細胞表面マーカー、及び抗原認識分子がある(Alberts, B.他 (1994) Molecular Biology of The Cell, Garland Publishing, New York, NY, 557-560, 582-592ページの概説を参照)。
【0010】
細胞表面マーカーとしては、免疫系の白血球細胞上で同定される細胞表面抗原類がある。これらの抗原を同定するには、系統的な、モノクローナル抗体(mAb)ベースの「ショットガン(shot gun)」技術が利用される。これらの技術によって、数百種のmAbが、未知の細胞表面白血球抗原類に対して産生されている。それらの抗原は「分化のクラスタ群」へとグループ分けされている。分類は、多様な分化白血球細胞型と未分化白血球細胞型とで共通の免疫細胞化学的な局在パターンに基づく。或るクラスタ内の抗原群は或る単一の細胞表面タンパク質を同定すると仮定され、「分化クラスタ」すなわち「CD(cluster of differentiation)」名が指定されている。CD抗原類が同定するタンパク質類をコードするいくつかの遺伝子が、標準的な分子生物学技術によってクローン化され、確証されている。CD抗原類の特徴は、膜貫通タンパク質であることと、細胞表面タンパク質であって脂肪酸含有糖脂質、例えばグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)への共有結合性の接着を介して原形質膜に固着されていることである(Barclay, A. N. 他(1995) The Leucocyte Antigen Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 17-20ページに概説されている)。
【0011】
マトリックスタンパク質(MP)類は、膜貫通タンパク質及び細胞外タンパク質であり、各組織の形成、成長、再形成、及び維持において機能し、炎症反応の重要な介在物質及び制御因子として働く。MP類の発現及びバランスを乱し得る生化学的変化の原因としては、先天的疾患、後成的疾患、若しくは感染性疾患がある。また、MP類は、免疫応答における白血球の遊走、増殖、分化、及び活性化に影響する。しばしばMP類は、1つ以上のドメインの存在によって特徴付けられ、そのようなドメインにはコラーゲン様ドメイン、EGF様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、及びフィブロネクチン様ドメインが含まれ得る。加えて、MP類は重度にグリコシル化され得る。また、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)トリペプチドモチーフを持つことがあり、これは接着相互作用において、或る役割を果たし得る。MPの例としては、細胞外タンパク質として、フィブロネクチン、コラーゲン、ガレクチン(galectin)、ビトロネクチン及びそのタンパク質分解誘導体ソマトメジンBがあり、また細胞接着受容体として、細胞接着分子(CAM)、カドヘリン、及びインテグリンがある(Ayad, S. 他(1994)The Extracellular Matrix Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 2-16ページ、Ruoslahti, E.(1997)Kidney Int. 51: 1413-1417、Sjaastad, M. D.及び Nelson, W. J.(1997)BioEssays 19:47-55に概説されている)。
【0012】
ムチン類は高度にグリコシル化された糖タンパク質であり、粘液ゲルの主要な構造成分である。ムチン類の生理機能は、細胞保護、機械的保護、分泌物の粘性の保持、及び細胞認識である。MUC6はヒトの胃ムチンであり、胆嚢、膵臓、精嚢、及び女性の生殖管にも見つけられる(Toribara, N.W. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:16398-16403)。MUC6の遺伝子はヒト染色体11にマップされている(Toribara, N.W.,他 (1993) J. Biol. Chem. 268:5879-5885)。ヘモムチンは新しいショウジョウバエ表面ムチンであり、抗菌エフェクター分子類の誘導に関与している可能性がある(Theopold, U., 他 (1996) J. Biol. Chem. 217:12708-12715)。
【0013】
タフテリン(tuftelin)類は、これまでに同定された4種のエナメルマトリックスタンパク質の1つである。他3種の既知のエナメルマトリックスタンパク質は、アメロゲニン、エナメリン及びアメロブラスチンである。これらの成分タンパク質群からのエナメル細胞外マトリックスの構築は、無機質置換を受けるのに適格なマトリックスを産生する中で重要であると考えられている(Paine, C.T. 他 (1998) Connect Tissue Res. 38:257-267)。タフテリンmRNAは、非ミネラル化歯原性腫瘍であるヒトエナメル上皮腫において発現されることが発見されている(Deutsch D. 他(1998)Connect. Tissue Res. 39:177-184)。
【0014】
オルファクトメジン(olfactomedin)関連タンパク質類は細胞外マトリックスの分泌糖タンパク質であり、保存されたC末端モチーフ群を持つ。これらのタンパク質は、線虫(Caenorhabditis elegans)からヒトにいたる広範囲の種の多様な組織に発現される。オルファクトメジン関連タンパク質類には、ヒトにおいて少なくともファミリメンバー5種を持つ遺伝子ファミリがある。この5つのうちの一つであるTIGR/ミオシリン(myocilin )タンパク質は眼で発現し、緑内障の病原と関連している(Kulkarni, N.H. 他 (2000) Genet. Res. 76:41-50)。Yokoyama 他 (1996) による研究では、AMYと呼ぶ135アミノ酸のタンパク質は、神経芽細胞腫細胞系cDNAライブラリにおけるラットの神経細胞のオルファクトメジン関連ER局在性タンパク質に96%の配列同一性を有することが発見され、これはAMYの神経組織における役割が重要であることを示している(Yokoyama, M. 他, (1996) DNA Res. 3:311-320)。ラット脳cDNAライブラリ群から単離された神経細胞特異的オルファクトメジン関連糖タンパク質群は、オルファクトメジンとの強い配列類似性を示す。この類似性は、神経細胞と神経分泌細胞において、これらの糖タンパク質が、基質に関連した機能を持つことを示唆している(Danielson, P.E.他(1994)J. Neurosci. Res. 38:468-478)。
【0015】
Mac-2 結合タンパク質は90kDaの血清タンパク質(90K)であり、ヒト乳癌細胞株SK-BR-3とヒト母乳との両方から単離された分泌糖タンパク質である。90Kは、ヒトマクロファージ関連レクチンであるMac-2に特異的に結合する。構造的には、成熟したタンパク質は長さが567アミノ酸で、その前に18アミノ酸リーダーが付いている。16のシステイン群と、7つの潜在的N連結グリコシル化部位とがある。最初の106アミノ酸は、マクロファージスカベンジャー受容体のシステインリッチドメインによって定義される古いタンパク質スーパーファミリに極めて類似したドメインを示す(Koths,K. 他(1993)J. Biol. Chem. 268:14245-14249)。90Kはエイズ患者の亜集団群の血清中で上昇し、原発腫瘍サンプルと腫瘍細胞株とにおいて多様なレベルで発現される。Ullrich 他(1994)は、90Kが宿主防御系を刺激し、インターロイキン2の分泌を誘発し得ることを実証した。この免疫刺激は、発癌性形質転換、ウイルス感染又は病原性侵襲の結果であると提起されている(Ullrich,A., 他(1994)J. Biol. Chem. 269:18401-18407)。
【0016】
セマフォリン類は少なくとも30の異なるメンバーからなる軸索誘導分子の大きなグループであり、脊椎動物、非脊椎動物、更にはある種のウイルスにおいても見つかっている。すべてのセマフォリンは長さが約500アミノ酸のセマ(sema)ドメインを有する。セマフォリン受容体であるニューロピリン(neuropilin)は、in vitroで神経突起の進展を促進することが示されている。ニューロピリンの細胞外領域はCUB、discoidin、及びMAMドメインという3つの異なるドメインから成っている。ニューロピリンのCUBモチーフ及びMAMモチーフはタンパク質間相互作用において幾つかの役割を果たすことが示唆されており、更にセマドメイン及びC末端ドメインを介してセマフォリン類の結合に関与していると考えられる(Raper, J.A.(2000)Curr. Opin. Neurobiol. 10:88-94の概説を参照)。プレキシン(plexin)類は神経細胞表面分子であり、カルシウムイオンの存在下で同種親和性結合メカニズムにより細胞接着を媒介する。プレキシン類は、特定の感覚系の受容体や神経細胞において発現することがわかっている(Ohta, K. 他(1995)Cell 14:1189-1199)。いくつかのプレキシンが、発生段階の神経系において運動神経軸索や中枢神経軸索の誘導を制御するよう機能することを示す証拠もある。プレキシンは、それ自体完全なセマフォリンドメインを有しており、古典的セマフォリンとセマフォリンの結合パートナーの両方の祖先であり得る(Winberg, M.L.他(1998)Cell 95:903-916)。
【0017】
ヒトの妊娠特異的β1糖タンパク質(PSG)は、分子量が72KDa、64KDa、62KDa及び54KDaの、密接に関連する糖タンパク質類の1ファミリである。これらは、癌胎児性抗原と共に、免疫グロブリンスーパーファミリ内のサブファミリを構成する(Plouzek C.A.及びChou J.Y.(1991)Endocrinology 129:950-958)。PSGの様々な亜集団が、ヒト胎盤の栄養胚葉(trophoblasts)、及び羊膜や漿膜によって産生されることが発見されている(Plouzek C.A. 他(1993)Placenta 14:277-285)。
【0018】
自己分泌型運動促進因子(AMF)は腫瘍細胞の遊走を調節する運動性サイトカインの1つであり、したがって、それに伴うシグナル伝達経路の同定は決定的に重要である。自己分泌型運動促進因子受容体(AMFR)の発現は、胸腺腫における腫瘍の進行に関連することがわかっている(Ohta Y. 他(2000) Int. J. Oncol. 17:259264)。AMFRは、分子量78KDaの細胞表面糖タンパク質である。
【0019】
ホルモンは、血液循環により運ばれ、標的細胞の表面又は内部の特異的受容体に結合する分泌分子である。ホルモンは多様な生化学的組成や作用機構を持っているが、2つのカテゴリーに分類し得る。第1のカテゴリーは小さい親油性ホルモンで、標的細胞の原形質膜を通過して拡散し、サイトゾル内受容体又は核内受容体に結合し、複合体を形成して遺伝子発現を改変する。これらの分子としては、レチノイン酸やチロキシンが、更には、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン、コルチゾール、アルドステロンなどの、コレステロール由来ステロイドホルモンがある。第2のカテゴリーに含まれる親水性ホルモンは、原形質膜の内側へ信号を伝達する細胞表面受容体に結合することで機能する。そのようなホルモンの例としては、アミノ酸の誘導体としてカテコールアミン類(エピネフリン、ノルエピネフリン)及びヒスタミンが、ペプチドホルモンとしてグルカゴン、インスリン、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、及びバソプレッシンがある(Lodish 他(1995)Molecular Cell Biology, Scientific American Books Inc., New York, NY, 856-864ページ等を参照)。
【0020】
プロオピオメラノコルチン(POMC)は、脳下垂体前葉が合成するホルモンであるコルチコトロピン(ACTH)の前駆体ポリペプチドであり、副腎皮質の刺激で機能する。POMCはまた、βリポトロピンホルモン(β-LPH)の前駆体ポリペプチドでもある。各ホルモンは、固有の生物活性を持つ、より小さいペプチド群を持つ。α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)と副腎皮質刺激ホルモン様中葉ペプチド(CLIP)はACTHから形成され、γ-リポトロピン(γ-LPH)とβ-エンドルフィンはβ-LPHのペプチド成分であるが、β-MSHはγ-LPH中に含有される。POMCのエキソン2及び3における遺伝子突然変異に起因するACTH欠乏による副腎不全は、早期発症肥満症、副腎不全及び赤毛色素沈着を特徴とする内分泌性疾患を生じる(Chretien, M.他(1979)Can. J. Biochem. 57:1111-1121、Krude, H. 他(1998)Nat. Genet. 19:155-157, Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)176830)。
【0021】
成長因子及び分化因子は、細胞間伝達の中で機能する分泌タンパク質である。いくつかの因子の活動には、オリゴマー形成が、又は膜タンパク質との会合が必要である。それらの因子とそれらの受容体間の複雑な相互作用は、細胞分裂、細胞分化、細胞シグナル伝達及び細胞運動性を刺激又は抑制する、細胞内信号伝達経路の引き金となる。殆どの成長及び分化因子は、その局所環境にある細胞に作用する(パラ分泌シグナル伝達)。成長因子及び分化因子には3つの主要なクラスがある。第1のクラスには、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子、インシュリン様成長因子、及び血小板由来の成長因子など、大きなポリペプチド成長因子を含む。第2のクラスには、コロニー刺激因子(CSF)のような造血性成長因子を含む。造血性成長因子類は、Bリンパ球、Tリンパ球、赤血球、血小板、好酸球、好塩基球、好中球、マクロファージ、及びそれらの幹細胞前駆体など、血液細胞の増殖及び分化を刺激する。第3のクラスには、ボンベシン、バソプレッシン、オキシトシン、エンドセリン、トランスフェリン、アンジオテンシン2、血管作用性小腸ペプチド、及びブラジキニンなど、小さなペプチド因子を含み、これらは増殖以外の細胞機能を調節するホルモンとして機能する。
【0022】
成長因子及び分化因子は、in vitroでの細胞の腫瘍性転換、及びin vivoでの腫瘍進行において、幾つかの重大な役割を果たす。腫瘍細胞による成長因子の不適正な発現は、腫瘍の血管新生及び転移に寄与し得る。造血時の成長因子の調節異常によっては、貧血、白血病、及びリンパ腫が生じ得る。インターフェロンなど幾つかの成長因子は、in vitro及びin vivoの双方で、腫瘍細胞群に対し細胞毒性を持つ。更に、幾つかの成長因子及び成長因子受容体は、構造的にも機能的にも腫瘍性タンパク質類と関連する。加えて、成長因子は癌原遺伝子群及び腫瘍抑制遺伝子群の双方の転写調節に影響を与える(Pimentel, E. (1994) Handbook of Growth Factors, CRC Press, Ann Arbor, MI, 1-9ページの概説を参照)。
【0023】
最初にショウジョウバエにおいて同定されたSlitタンパク質は、中枢神経系正中線形成及びおそらく神経組織の組織発生と軸索の誘導において重要である。Itoh他((1998) Brain Res. Mol. Brain Res. 62:175-186)は、Slit遺伝子の哺乳類相同体(ヒト Slit-1、Slit-2、Slit-3 及びラット Slit-1)を同定した。コードされるタンパク質群は推定上の分泌タンパク質であり、EFG様モチーフ及びロイシンリッチリピートを持つが、これらは共に、保存されたタンパク質間相互作用ドメインである。Slit-1 mRNA、Slit-2 mRNA及び Slit-3 mRNAは、それぞれ脳、脊髄、甲状腺に発現される(Itoh, A. 他、前出)。タンパク質のSlit ファミリは神経組織内のglypican-1の機能性リガンドであることが示されており、このことは、それらの相互作用は中枢神経系の組織発生時の特定の段階において重要であることを意味する(Liang, Y. 他(1999)J. Biol. Chem. 274:17885-17892)。
【0024】
神経ペプチド及び血管介在物質(NP/VM)は、内在性シグナル伝達分子の1大ファミリを構成する。NP/VMファミリに含まれる分子は、神経ペプチド及び神経ペプチドホルモンとして、ボンベシン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、ニューロメディンN、メラノコルチン類、オピオイド類、ガラニン、ソマトスタチン、タキキニン類、ウロテンシン2及び平滑筋刺激に関する関連ペプチド類、バソプレッシン、及び血管作用性小腸ペプチドがある。また、循環系に運ばれるシグナル伝達分子として、アンジオテンシン、補体、カルシトニン、エンドセリン類、ホルミルメチオニルペプチド類、グルカゴン、コレシストキニン、及びガストリンがある。NP/VMは直接に信号を伝達し得る他、別の神経伝達物質及びホルモンの活性若しくは放出を調節したり、またカスケードで触媒酵素として機能することができる。NP/VMの効果は、ごく短時間のものから長期間持続するものまで幅広い(Martin, C.R. 他(1985)Endocrine Physiology, Oxford University Press, New York, NY, 57-62ページの概説を参照)。
【0025】
NP/VMは、多くの神経障害及び心血管障害に関与する。例えば、神経ペプチドYは、高血圧症、鬱血心不全、情動障害、食欲調節に関与する。ソマトスタチンは、下垂体前葉での成長ホルモン及びプロラクチンの分泌を阻害し、また、腸、膵臓腺房細胞、及び膵臓β細胞内の分泌も阻害する。ソマトスタチンレベルの低下は、アルツハイマー病及びパーキンソン病で報告された。バソプレッシンは、腎臓内で水分吸収及びナトリウム吸収を増加させ、また高濃度では、血管平滑筋の収縮、血小板活性化、及び肝臓内でのグリコーゲン分解を刺激する。バソプレッシン及びその類似体は、尿崩症の治療のため臨床的に用いられる。エンドセリン及びアンジオテンシンは高血圧症に関与し、アンジオテンシンの血漿レベルを減少させるカプトプリルのような薬剤は、血圧を下げるのに用いられる(Watson, S.及びS. Arkinstall、(1994)The G-protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, 194、252、284、55、及び111の各ページ)。
【0026】
神経ペプチドはまた、侵害受容(痛覚)にも役割を幾つか持つことが示された。血管作用性小腸ペプチドは、慢性神経障害痛において重要な役割を果たすようである。オピオイド受容体様1受容体に対する内在性リガンドであるノシセプチンは、主に抗侵害受容作用を有すると考えられ、持続性の痛み若しくは慢性痛の、様々な動物モデルにおいて鎮痛特性を有している事が示された(Dickinson, T.及び Fleetwood-Walker, S. M.(1998)Trends Pharmacol. Sci. 19:346-348)。
【0027】
シグナルペプチドを有する他のタンパク質として、酵素活性を持つ分泌タンパク質類がある。酵素活性としては、例えば、オキシドレダクターゼ/デヒドロゲナーゼ活性、トランスフェラーゼ活性、加水分解酵素活性、リアーゼ活性、異性化酵素活性、若しくはリガーゼ活性がある。例えば、基質メタロプロテイナーゼは細胞外基質を分解する分泌性加水分解酵素であり、したがって、腫瘍転移、組織形態形成、及び関節炎において重要な役割を果たす(Reponen, P. 他(1995)Dev. Dyn. 202 :388-396、Firestein, G. S.(1992)Curr. Opin. Rheumatol. 4 : 348-354、Ray, J. M.及びStetler-Stevenson, W. G.(1994)Eur. Respir. J. 7:2062-2072、Mignatti, P.及びRifkin, D. B.(1993)Physiol. Rev. 73:161-195)。別の例は、脂質合成に又はエネルギー生成に用いる酢酸を活性化するアセチルCoA 合成酵素である(Luong, A. 他(2000)J. Biol. Chem. 275:26458-26466)。アセチルCoA合成酵素が活性化されると、酢酸とCoAからアセチルCoAが形成される。アセチルCoA合成酵素はAMP結合ドメインシグネチャとして同定される或る配列類似性領域を共有する。アセチルCoA合成酵素は高血圧と関連性があることが示されている(Toh, H. (1991) Protein Seq. Data Anal. 4:111-117、Iwai, N. 他 (1994) Hypertension 23:375-380)。
【0028】
多くの異性化酵素は、タンパク質の折りたたみ、光伝達、及び種々のタンパク質同化経路や異化経路における諸段階を触媒する。或るクラスの異性化酵素は、ペプチジルプロリルシス−トランス異性化酵素(PPIアーゼ)として知られる。PPIアーゼ類は、タンパク質内の特定のプロリンイミド結合の、シスからトランスへの異性化を触媒する。PPIアーゼの2つのファミリが、FK506結合タンパク質(FKBP)とシクロフィリン(CyP)である。FKBP類が、共に強力な免疫抑制薬であるFK506とラパマイシンとに結合することにより、T細胞内の複数のシグナル伝達経路が抑制される。特に、FKBPのPPIアーゼ活性は、FK506或いはラパマイシンの結合によって阻害される。算出した分子量にしたがって名付けたFKBPファミリの5つのメンバー(FKBP12、FKBP13、FKBP25、FKBP52及び FKBP65)があり、それらは、様々なタンパク質複合体に関連する、細胞の様々な領域に局在している(Coss, M.他(1995)J. Biol. Chem. 270:2933629341、Schreiber, S.L.(1991)Science 251:283-287)。
【0029】
CyPのペプチジルプロリル異性化酵素活性は、T細胞活性化につながるシグナル伝達経路の一部である可能性がある。CyP異性化酵素活性はタンパク質折りたたみ及びタンパク質輸送に関連しており、またタンパク質複合体の構築又は分解、及びタンパク質活性の調節にも関与し得る。例えば、ショウジョウバエにおいてCyP NinaA はロドプシンの正確な局在化に必要であり、哺乳類のCyP(Cyp40)はステロイド受容体に結合するHsp90/Hsc70 複合体の一部である。哺乳類CypAはヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)からのgagタンパク質と結合するが、この相互作用はシクロスポリンによって抑制し得ることが示されている。シクロスポリンは強力な抗HIV-1活性を有するので、CypAはHIV-1の複製において重要な機能を果たし得る。最後に、Cyp40は転写因子c-Mybに結合し、これを不活化するが、この作用はシクロスポリンによって逆転されることが示されている。この作用は、転写、形質転換及び分化の調節でのCyp類の関与を意味する(Bergsma, D.J. 他(1991)J. Biol. Chem. 266:2320423214、Hunter, T.(1998)Cell 92:141-143、Leverson, J.D.及びNess, S.A.(1998)Mol. Cell. 1:203-211)。
【0030】
プロリンリッチγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)タンパク質(PRGP)類は、ビタミンK依存性1回貫通型膜内在性タンパク質ファミリのメンバーである。PRGPタンパク質はGlaリッチなほぼ45アミノ酸の細胞外アミノ末端ドメインを特徴とする。細胞内カルボキシル末端領域には配列PPXYの1つ又は2つのコピーがあり、この配列PPXYはシグナル伝達、細胞周期進行、及びタンパク質代謝回転のような、細胞の多様な機能に関与する種々のタンパク質に存在するモチーフである(Kulman, J.D.他. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1370-1375)。Glaを形成するグルタミン酸残基の翻訳後修飾過程は、ビタミンK依存性のカルボキシル化である。Glaを含むタンパク質としては、血液凝固に関与する血漿タンパク質類がある。これらのタンパク質とは、プロトロンビン、タンパク質C、S及びZ、並びに血液凝固第VII因子、第IX因子及び第X因子である。オステオカルシン(骨-Glaタンパク質、BGP)及び基質Glaタンパク質(MGP)もまたGlaを含む(Friedman, P.A.及びC.T. Przysiecki(1987)Int. J. Biochem. 19:1-7、C. Vermeer(1990)Biochem. J. 266:625-636)。
【0031】
新規の疾患検出及び治療用完全長ヒト分子、並びにそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。この新規の組成物は、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、発達障害、神経疾患、及び心血管障害の診断・治療・予防において有用であり、また、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価にも有用である。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0032】
本発明は、総称して「MDDT」、個別にはそれぞれ「MDDT-1」、「MDDT-2」、「MDDT-3」、「MDDT-4」、「MDDT-5」、「MDDT-6」、「MDDT-7」、「MDDT-8」、「MDDT-9」、「MDDT-10」、「MDDT-11」、「MDDT-12」、「MDDT-13」、「MDDT-14」、「MDDT-15」、「MDDT-16」、「MDDT-17」、「MDDT-18」、「MDDT-19」及び「MDDT-20」と呼ぶ、精製されたポリペプチドである、疾患検出及び治療用完全長ヒト分子を提供する。或る態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一態様では、SEQ ID NO:1-20のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0033】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を持つ或る天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする。別の態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:21-40からなる群から選択される。
【0034】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。一態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0035】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0036】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドに特異結合する、単離された抗体を提供する。
【0037】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
【0038】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、又は(e)(a)〜(d)のRNA等価物を含む群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなる或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、複合体が存在すればオプションでその量を検出する過程からなる。該プローブと該標的ポリヌクレオチド或いはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。一態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチド群からなる。
【0039】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する一方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、及び(e)(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択した、或るポリヌクレオチドの配列を持つ。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、(b)増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチド又はその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0040】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群から選択される。一実施態様では、SEQ ID NO:1-20からなる一群から選択されたアミノ酸配列を持つ組成物を提供する。更に、本発明は、この組成物を機能的MDDTの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療を必要とする患者に投与する過程を含む方法を提供する。
【0041】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを有するサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程からなる。別法では、本発明は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤とを有する、或る組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、機能的MDDTの発現の低下を伴う疾患や症状の治療を要する患者への、この組成物の投与方法を提供する。
【0042】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性につき、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを含むサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程からなる。
【0043】
別法で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0044】
更なる別法で本発明は、機能的MDDTの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療を必要とする患者への、この組成物の投与を含む方法を提供する。
【0045】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、又は(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0046】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択したアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、及び(d)SEQ ID NO:1-20からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドの活性を調節する或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドの活性にとり許容し得る条件下で、該ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の不存在下での該ポリペプチドの活性と比較する過程からなり、この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性の変化は、該ポリペプチドの活性を調節する化合物を標示する。
【0047】
更に本発明は、SEQ ID NO:21-40からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変する効果につき、或る化合物をスクリーニングする一方法を提供する。この方法は、(a)この標的ポリヌクレオチドを有するサンプルを或る化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の改変を検出する過程と、(c)可変量のこの化合物の存在下でのこの標的ポリヌクレオチドの発現と、この化合物の不在下での発現とを比較する過程とからなる。
【0048】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)(i)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物を含む群から選択したポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチドから構成されるプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程とを含む試験化合物の毒性の算定方法を提供する。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:21-40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物を含む群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片を有する。毒性の算定方法には更に(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量の差は、試験化合物の毒性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、修正され得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施態様を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0050】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」は複数の宿主細胞を含み、その「抗体」は複数の抗体が含まれ、当業者には周知の等価物なども含まれる。
【0051】
本明細書中で用いる全ての技術用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似或いは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施又は試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係して用いられうる細胞株、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0052】
(定義)
用語「MDDT」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などからの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたMDDTのアミノ酸配列を指す。
【0053】
用語「アゴニスト」は、MDDTの生物学的活性を強める、或いは模倣する分子を指す。アゴニストの例としては、タンパク質、核酸、糖質、小分子その他の任意の化合物や組成物の内、MDDTと直接に相互作用することによって、或いはMDDTが関与する生物学的経路の種々の構成成分に作用することによってMDDTの活性を調節するものを含みうる。
【0054】
「対立遺伝子変異配列」は、MDDTをコードする遺伝子の、別の形態である。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNA又はポリペプチドを作製し得る。ポリペプチドの構造又は機能は、変異することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異配列を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異配列を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加又は置換による。これら各種の変化は、単独で或いは他の変化と共に、或る配列内で1回以上、生じ得る。
【0055】
MDDTをコードする「変容した/改変された」核酸配列としては、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換の結果、MDDTと同じポリペプチド、或いはMDDTの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドをもたらす配列もある。この定義には、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列にとって正常な染色体の遺伝子座ではない位置での、対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーションを含み、また、MDDTをコードするポリヌクレオチドの或る特定オリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、また、サイレント変化を生じて機能的には等価なMDDTと成るような、アミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を持ち得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にMDDTの活性が保持される範囲で、残基の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似した非荷電極性側鎖を持つアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似した非荷電側鎖を持つアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0056】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0057】
「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅には通常、当業者に公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いる。
【0058】
用語「アンタゴニスト」は、MDDTの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子を指す。アンタゴニストとしては、MDDTと直接相互作用すること、或いはMDDTが関与する生物学的経路の諸成分に作用することによってMDDTの活性を調節する、抗体などタンパク質、核酸、糖質、小分子、又は任意の他の化合物や組成物があり得る。
【0059】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、無傷の免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab、F(ab')2 及びFv断片を指す。MDDTポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、無傷のポリペプチドを用いて、又は、目的の小ペプチドを持つ断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット或いはウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチド又はオリゴペプチドは、RNAの翻訳、又は化学合成によって得られるポリペプチド又はオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアタンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドを、動物を免疫化するために用いる。
【0060】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質又はタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域又は3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体への結合について、無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0061】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸又はオリゴヌクレオチド分子を指す。アプタマーはin vitroの進化過程(例えば米国特許番号第5,270,163号に記載されたSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment))から由来するもので、そのような過程は大きな組み合わせライブラリから標的特異的なアプタマー配列を選択する。アプタマーの構成は二本鎖又は一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体又は他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド成分は、修飾された糖基(例えばリボヌクレオチドの2'-OH基が2'-F又は2'-NH2で置換し得る)を有することが可能で、そのような糖基はヌクレアーゼへの抵抗性又は血液中でのより長い寿命などの望ましい性質に改善し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリア等の分子に抱合させることができる。アプタマー類は、例えば或る架橋剤の光活性化によって、それらの同種リガンド群と特異的に架橋させ得る(Brody, E.N.及びL. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0062】
「イントラマー(intramer)」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する。例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0063】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体又はヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性のヌクレオチドを含むアプタマーは右旋性ヌクレオチドに作用する天然の酵素による分解に対して耐性がある。
【0064】
用語「アンチセンス」は、特定の核酸配列の「センス」(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸又はベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖又は2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシル又は7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドを含みうる。アンチセンス分子は、化学合成又は転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、二重鎖を形成して転写又は翻訳を妨害する。「負」又は「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」又は「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味しうる。
【0065】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、「免疫学的に活性」又は「免疫原性」は、天然或いは組換え体のMDDT、合成のMDDT、又はそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物の或いは細胞の特異的免疫応答を誘発して特異抗体群と結合する能力を指す。
【0066】
「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5'-AGT-3'」は、相補配列「3'-TCA-5'」と対を形成する。
【0067】
「〜のポリヌクレオチド配列を含む(有する)組成物」又は「〜のアミノ酸配列を含む(有する)組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤又は水溶液が含まれ得る。MDDTをコード、若しくはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を持つ組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることも可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケ精子DNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0068】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems, Foster City CA)を用いて5'及び/又は3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、又はGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)又はPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上のオーバーラップするcDNAやEST、又はゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を決定する配列もある。
【0069】
「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸であり、保存的アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0070】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷又は疎水性、及び/又は(c)側鎖の大部分を保持する。
【0071】
「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0072】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的又は免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0073】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子又は酵素を指す。
【0074】
「差次的発現」は、少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、或いは減少(下方調節)、又は遺伝子発現の欠損又はタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、又は病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
【0075】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンはコードされるタンパク質の1つの構造的又は機能的ドメインを代表し得るため、安定した基礎構造の新規な再構築(reassortment)を介して新しいタンパク質が組立てられることが可能であり、これにより新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0076】
「断片」は、MDDTの、又はそれをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一であるが親配列より長さが短いものを指す。或る断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチド又はアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基の長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すようなポリペプチドの最初の250又は500アミノ酸(又は最初の25%又は50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表及び図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
【0077】
SEQ ID NO:21-40の断片には、固有のポリヌクレオチド配列領域が含まれる。この領域は、SEQ ID NO:21-40を特異的に同定するものであり、例えば断片が得られる同一ゲノム中の他すべての配列とは異なるものである。SEQ NO ID:21-40の断片は、例えば、ハイブリダイゼーション及び増幅技術において、或いは関連するポリヌクレオチド配列からSEQ NO ID:21-40を区別する類似の方法において有用である。SEQ ID NO:21-40の断片の正確な長さ及び、断片が対応するSEQ ID NO:21-40の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0078】
SEQ ID NO:1-20 の断片は、SEQ ID NO:21-40の断片によってコードされる。 SEQ ID NO:1-20 の断片には、SEQ ID NO:1-20を特異的に同定する固有のアミノ酸配列領域が含まれている。 例えば、SEQ ID NO:1-20 の断片は、SEQ ID NO:1-20を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1-20 の断片及び、断片が対応するSEQ ID NO:1-20 の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0079】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)と、それに続く1オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。或る「完全長」ポリヌクレオチド配列は、或る「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0080】
「相同性」は、2つ以上のポリヌクレオチド配列又は2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、又は配列同一性を意味する。
【0081】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」又は「%一致」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた、2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0082】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウエアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.及びP.M. Sharp(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins, D.G. 他 (1992) CABIOS 8:189-191に記載されている。ポリヌクレオチド配列を2つ1組(ペアワイズ)でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定される。「weighted(重み付けされた)」残基重み付け表が、デフォルトとして選択される。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「percent similarity(類似性パーセント)」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0083】
或いは、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。
【0084】
このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールも入手可能であり、2つのヌクレオチド配列を直接にペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ(gap)などのパラメータをデフォルト設定にセットして用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0085】
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap:5 及びExtension Gap:2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100又は200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0086】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0087】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」又は「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0088】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスが選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「percent similarity」として一致率を報告する。
【0089】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0090】
Matrix:BLOSUM62
Open Gap:11 及びExtension Gap:1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、又は150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に支持された任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0091】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の微小染色体である。
【0092】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつ、よりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0093】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容的アニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングのための許容的条件は、当業者が慣例的に決定できる。許容的条件は、どのハイブリダイゼーション実験でも一定でありうるが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験によって変更されうる。許容的アニーリング条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAの存在下である。
【0094】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook, J. 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0095】
本発明のポリヌクレオチド間の高ストリンジェンシー条件のハイブリダイゼーションには、約0.2×SSC及び約0.1%のSDSの存在下、68℃で1時間の洗浄条件を含む。別法では、温度は約65℃、60℃、55℃、又は42℃を用い得る。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、及びヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
【0096】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって形成された、2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0t又はR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フイルタ、チップ、ピン又はガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0097】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0098】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患又は遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0099】
「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物など生物に導入すると免疫応答を引き起こし得る、MDDTのポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」にはまた、本明細書で開示する又は当分野で既知のあらゆる抗体生産方法に有用なMDDTのあらゆるポリペプチド断片又はオリゴペプチド断片をも含む。
【0100】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド又はその他の化合物の構成を指す。
【0101】
用語「エレメント」又は「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の定義された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はその他の化合物を指す。
【0102】
用語「モジュレート」又は「活性を調節」は、MDDTの活性を変化させることを指す。例えば、モジュレートによって、MDDTのタンパク質活性の増減が、或いは結合特性の、又はその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起き得る。
【0103】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源又は合成起源のDNA又はRNAであって一本鎖又は二本鎖であるか或いはセンス鎖又はアンチセンス鎖を表し得るようなDNA又はRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様又はRNA様物質を指すこともある。
【0104】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は、同一のリーディングフレーム内に在り得る。
【0105】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを有する、アンチセンス分子又は抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、組成物に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNA又はRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0106】
MDDTの「翻訳後修飾」としては、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解的切断及びその他の当分野で既知の修飾を含み得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、MDDTの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なることとなる。
【0107】
「プローブ」とは、核酸配列の内、MDDTやそれらの相補配列、又はそれらの断片をコードし、同一配列や対立遺伝子核酸配列、又は関連する核酸配列の検出に用いる配列を指す。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであって、検出可能な標識又はレポーター分子に結合した配列である。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0108】
本発明に用いるプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の、少なくとも15の連続したヌクレオチド群からなる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又は少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
【0109】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J.他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻、Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M.他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis, M.他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0110】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野で既知のソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列からオリゴヌクレオチド及び最大5,000ヌクレオチドまでの大きめのポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチドを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンター(英国ケンブリッジ)から一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域又は最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有なもの、及び保存されたもの双方のオリゴヌクレオチドとポリヌクレオチド断片との同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRプライマー又はシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全又は部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0111】
「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組み合わせはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメント群の人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換又は欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えば細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0112】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0113】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳又はRNA安定性を制御する宿主タンパク質又はウイルスタンパク質と相互作用する。
【0114】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸又は抗体の標識化に用いられる化学的又は生化学的な部分である。レポーター分子としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分を含む。
【0115】
DNA配列に対する「RNA等価物」は、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、全ての窒素性塩基のチミンがウラシルで置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0116】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。MDDT、それをコードする核酸群、又はその断片群を含むと推定されるサンプルとしては、体液と、細胞や細胞から単離した染色体や細胞内小器官(オルガネラ)や膜からの抽出物と、細胞と、溶液中に存在する又は基板に固定されたゲノムDNA、RNA、又はcDNAと、組織と、組織プリントなどがあり得る。
【0117】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識する構造が存在するか否かに依存する。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0118】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましくは90%以上除去されたものを指す。
【0119】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸残基又はヌクレオチドに置き換えることである。
【0120】
「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフイルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気又は非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0121】
「転写物イメージ」或いは「発現プロフィール」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類又は組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0122】
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件又は人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞又は真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージ或いはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。用語「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。更に、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0123】
ここで用いる「遺伝形質転換体(transgenic organism)」とは任意の有機体(生物体)であり、限定するものではないが動植物を含み、有機体の1個以上の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られているトランスジェニック(transgenic)技術によって導入された異種核酸を有する。 核酸の細胞への導入は、直接又は間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスでの感染によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換又はトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他(1989)等の参考文献に記載されている。
【0124】
特定の核酸配列の「変異体/変異配列」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の同一性を有する核酸配列であると定義する。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体又は「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子との有意な同一性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多く又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、或いは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互に有意なアミノ酸同一性を有する。多型性変異体は、所与の種の個体間での特定遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチド塩基が異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状又は病状性向を示し得る。
【0125】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0126】
(発明)
本発明は、新規のヒト疾患検出及び治療用完全長ヒト分子群(MDDT)及び、MDDTをコードするポリヌクレオチド群の発見に基づく。また、これらの組成物を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性障害、発達障害、神経障害、及び心血管障害の診断、治療、及び予防の開発に基づく。
【0127】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0128】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)及びそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte ポリペプチド ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO:)とPROTEOMEデータベースの最も近い相同体のPROTEOMEデータベース識別番号(PROTEOME ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5は、GenBank相同体とPROTEOMEデータベース相同体との注釈を示す。更に該当箇所には適当な引用文も示す。 これら全てを、引用することを以って特に本明細書の一部とする。
【0129】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1及び列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)及びそれに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4及び列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウエアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化及びグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、及びモチーフを有するアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0130】
表2及び表3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が、請求の範囲に記載されたポリペプチドが疾患検出及び治療用完全長ヒト分子であることを確立している。例えば、残基M1より残基V725まで、SEQ ID NO:3は、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)での決定では、ラット角膜創傷治癒関連タンパク質(GenBank ID g8926320)と96%同一である(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。BLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:3が疾患検出及び治療用完全長ヒト分子である、更に確証的な証拠を提供する。別の例において、SEQ ID NO:7はE214残基からT735残基までトウモロコシのカルモジュリン結合タンパク質MPCBP(GenBank ID g10086260)に24%の同一性を有するが、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された。(表2参照)。BLAST確率スコアは1.2e-21であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:7はまた、TPRドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLIMPS解析からのデータは、SEQ ID NO:7が疾患検出及び治療用完全長ヒト分子である、更に確証的な証拠を提供する。別の例として、SEQ ID NO:10はP239残基からV1461残基までラットperiaxin(GenBank ID g505297)と63%の同一性を有す、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:10はまた、1つのPDZドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメイン群のPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。BLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:10 がperiaxinである、更に実証的な証拠を提供する。別の例において、SEQ ID NO:14はシロイヌナズナの推定ホスファチジルイノシトール-4-リン酸5-キナーゼ(GenBank ID g2739367)に対して残基Y20から残基V203まで36%の同一性があることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された(表2参照)。BLAST確率スコアは2.0e-25であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:14はまた1つのMORNモチーフを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリドメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLAST解析よりのデータは、SEQ ID NO:14 がキナーゼである、更に実証的な証拠を提供する。SEQ ID NO:1-2、SEQ ID NO:4-6、SEQ ID NO:8-9、SEQ ID NO:11-13、SEQ ID NO:15-20 は同様にして解析され、注釈付けをされた。SEQ ID NO:1-20の解析用のアルゴリズム及びパラメータを表7に記載した。
【0131】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列又はゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築(assemble)した。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)及び対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、及び塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列を構築するのに用いたcDNA配列及び/又はゲノム配列の、また、例えばSEQ ID NO:21−40を同定するため、或いはSEQ ID NO:21−40と、関連するポリヌクレオチド配列群とを区別するためのハイブリダイゼーション技術又は増幅技術に有用なポリヌクレオチド配列の断片の、開始ヌクレオチド(5')位置及び終了ヌクレオチド(3')位置を示す。
【0132】
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は特に、例えば組織特異的cDNAライブラリ或いはプールしたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合もある。或いは列2のポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチド配列のアセンブリに寄与したGenBank cDNA又はESTを指す場合もある。更に、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、(英国ケンブリッジ))データベースから由来した配列を同定し得る(即ち「ENST」命名を含む配列)。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」又は「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。又は列2のポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方の集合を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4と同定されるポリヌクレオチドは、アルゴリズムが適用される配列のクラスタの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「縫合された(stitched)」配列である(実施例5参照)。又は、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は、「ストレッチされた」配列である。XXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号又はNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別子(「NM」、「NP」、又は「NT」によって表される)が、GenBank識別子(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0133】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、又は組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0134】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために、表4に示すような配列カバレッジと重複するIncyte cDNAカバレッジが得られたが、該当するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0135】
表5は、Incyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列群を構築及び確認するために用いられたIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表される、Incyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0136】
本発明には、また、MDDTの変異配列群をも含む。好適なMDDT変異体は、MDDTの機能的或いは構造的特徴を少なくとも1つ有し、かつ、MDDTアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
【0137】
本発明はまた、MDDTをコードするポリヌクレオチドを提供する。特定の実施態様において、本発明は、MDDTをコードする、SEQ ID NO:21-40からなる一群から選択された1配列を持つポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ ID NO:21-40のポリヌクレオチド配列には、配列表に示したように等価RNA配列をも含むが、そこでは窒素塩基チミンの出現はウラシルで置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくリボースで構成される。
【0138】
本発明はまた、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このような変異体ポリヌクレオチド配列は、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列との、少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を持つこととなる。本発明の或る特定の態様は、SEQ ID NO:21-40からなる群から選択された1核酸配列との少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する、SEQ ID NO:21-40からなる群から選択された1配列を持つポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。上記のポリヌクレオチド変異配列は何れも、MDDTの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るアミノ酸配列をコードし得る。
【0139】
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異配列は、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列のスプライス変異配列である。或るスプライス変異配列はMDDTをコードするポリヌクレオチド配列との顕著な配列同一性を持つ部分複数を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって生ずる、配列の数ブロックの付加又は欠失により、通常より多数又はより少数のポリヌクレオチドを有することになる。或るスプライス変異配列には、約70%未満、又は約60%未満、或いは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列との間で全長にわたって見られるが、このスプライス変異配列のいくつかの部分には、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の各部との、少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、又は少なくとも約95%、なお又は100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。例えば、SEQ ID NO:21の配列を含むポリヌクレオチドはSEQ ID NO:39の配列を含むポリヌクレオチドのスプライス変異体であり、SEQ ID NO:34の配列を含むポリヌクレオチドはSEQ ID NO:40の配列を含むポリヌクレオチドのスプライス変異体である。上記したスプライス変異配列は何れも、MDDTの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るアミノ酸配列をコードし得る。
【0140】
遺伝暗号の縮重により、MDDTをコードする種々のポリヌクレオチド配列が作り出され、中には、既知のいかなる天然遺伝子のポリヌクレオチド配列群とも最小の類似性しか有しない配列もあることは、当業者には理解されよう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組み合わせの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然MDDTのポリヌクレオチド配列に適用される標準トリプレット遺伝暗号を基に成されるものであり、このような変異は全て明確に開示されていると考慮されたい。
【0141】
MDDTとその変異配列とをコードするヌクレオチド配列は一般に、好適に選択されたストリンジェンシー条件下で天然MDDTのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然コドン群を含めるなどの実質的に異なるコドン使用を有する、MDDT或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作り出すことは、有益であり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされるアミノ酸配列を改変せずに、MDDT及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に改変する別の理由には、天然配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることもある。
【0142】
本発明にはまた、MDDTとその誘導体とをコードするDNA配列又はそれらの断片の、完全に合成化学による作製も含む。作製後にこの合成配列を、当分野で周知の試薬類を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入できる。更に、合成化学を用いて、MDDTをコード、又はその任意の断片をコードする或る配列の中に突然変異を導入できる。
【0143】
更に本発明には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列に、特に、SEQ ID NO:21-40及びそれらの断片群にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列群が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger(1987)Methods Enzymol. 152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載した。
【0144】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)又は当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページ等を参照)。
【0145】
当分野で既知の、PCR法をベースにした種々の方法と、部分的ヌクレオチド配列とを利用して、MDDTをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなど、上流にある配列を検出し得る。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322を参照)。別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(例えばTriglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186) (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。
第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(例えばLagerstrom, M. 他 (1991) PCR Methods Applic. 1:111-119)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。未知の配列群を検索するために用い得る他の複数の方法も当分野で既知である(例えばParker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー類、及びPROMOTERFINDERライブラリ類(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングし得る。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法については、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0146】
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、遺伝子群の5'領域を有する配列をしばしば含んでおり、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5'非転写調節領域への配列の伸長に有用でありうる。
【0147】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシング産物又はPCR産物のサイズを分析し、又はそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで刺激される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0148】
本発明の別の実施例では、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にMDDT、その断片又は機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列を産生し、これらの配列をMDDTの発現に利用し得る。
【0149】
MDDTをコードする配列を種々の目的で改変するために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/又は発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0150】
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA。 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797、Christians, F.C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264、Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319に記載)等のDNAシャッフリング技術の対象となり、MDDTの生物学的特性、例えば生物活性、酵素活性、或いは他の分子や化合物との結合力等を変更又は向上させ得る。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを生成するプロセスである。ライブラリをその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体を同定するような選択又はスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。かくして、「人工的な」育種及び急速な分子進化によって遺伝的多様性が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所与遺伝子の断片を同種又は異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリの相同遺伝子の断片と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝的多様性を、定方向の、制御可能な方法で最大化させることができる。
【0151】
別の実施態様によれば、MDDTをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部を合成可能である(例えば、Caruthers, M.H.他 (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215-223、Horn, T.他 (1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225-232等を参照)。別法として、化学的方法を用いてMDDT自体又はその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相又は固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(例えばCreighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ、Roberge, J.Y. 他. (1995) Science 269:202-204等を参照)。
自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更に、MDDTのアミノ酸配列、又は任意のその一部を、直接合成の際に改変することにより、及び/又は他のタンパク質からの配列群又は任意のその一部と組み合わせることにより、変異体ポリペプチドを作製、又は、或る天然ポリペプチドの1配列を有するポリペプチドを作製し得る。
【0152】
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィを用いて実質的に精製し得る(Chiez, R.M.及びF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0153】
生物学的に活性なMDDTを発現させるために、MDDTをコードするヌクレオチド配列又はそれらの誘導体を好適な発現ベクターに挿入することができる。好適な発現ベクターとは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写と翻訳との制御に必要なエレメント群を持つベクターである。必要なエレメントの例には、ベクターに、またMDDTをコードするポリヌクレオチド配列における調節配列、例えばエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域などが含まれる。このようなエレメントは、強度及び特異性が様々である。特定の開始シグナル類によって、MDDTをコードする配列の、より効果的な翻訳を達成することも可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。MDDTをコードする配列、及びその開始コドンや、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要ないこともある。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(例えばScharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162等を参照)。
【0154】
当業者に周知の方法を用いて、MDDTをコードする配列と、好適な転写及び翻訳制御エレメントとを持つ発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章、8章及び16-17章、Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY,9章、13章及び16章等を参照)。
【0155】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、MDDTをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物等や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMV又はタバコモザイクウイルスTMV)又は細菌発現ベクター(例えばTiプラスミド又はpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系又は動物細胞系がある(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Engelhard、E.K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他(1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311、;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス又はヘルペスウイルス又はワクシニアウイルス由来の発現ベクター、又は種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織又は細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813-815、McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0156】
細菌系では、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて多数のクローニングベクター及び発現ベクターを選択し得る。例えば、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列の慣例的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)又はPSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターのマルチクローニング部位に、MDDTをコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を持つ形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G.及びS.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509等を参照)。例えば抗体類の産生などに多量のMDDTが必要な場合は、MDDTの発現をハイレベルで指示するベクター類が使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーター又は誘導T7バクテリオファージプロモーターを有するベクターが使用できる。
【0157】
酵母の発現系を使用してMDDTを産出することもできる。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae )又はピキア酵母(Pichia pastoris )に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の分泌か細胞内での保持のどちらかを指示する。また、安定した繁殖のために宿主ゲノムの中に外来配列を組み込むことを可能にする(例えば前出のAusubel, 1995; Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol. 153:516-544、Scorer, C.A. 他. (1994) Bio/Technology 12:181-184等を参照)。
【0158】
植物系もMDDTの発現に使用可能である。MDDTをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独或いはTMV(Takamatsu, N. (1987) EMBO J 6:307-311)由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるような、CaMV由来の35S及び19Sプロモーターによって駆動し得る。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーター又は熱ショックプロモーターを用いてもよい(例えばCoruzzi, G.他 (1984) EMBO J. 3:1671-1680、Broglie, R. 他 (1984) Science 224:838-843、Winter, J. 他. (1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85-105等を参照)。これらの作製物は、直接DNA形質転換に又は病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY,191-196ページ等を参照)。
【0159】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、後期プロモーターと3連リーダー配列とを持つアデノウイルス転写/翻訳複合体に、MDDTをコードする配列を結合し得る。アデノウイルスゲノムの非必須E1又はE3領域へ挿入することにより、宿主細胞内でMDDTを発現する感染ウイルスを得ることができる(例えば、Logan, J.及びT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659等を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40又はEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0160】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を送達することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、又はベシクル)で送達する(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。
【0161】
哺乳類系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、細胞株におけるMDDTの安定した発現が望ましい。例えば、MDDTをコードする配列を細胞株に形質転換するために、発現ベクター類と、同じ或いは別のベクター上の選択可能マーカー遺伝子とを用い得る。用いる発現ベクターは、複製のウイルス起源、及び/又は内因性の発現エレメント群を持ち得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0162】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えばWigler, M.他 (1977) Cell 11:223-232、Lowy, I.他. (1980) Cell 22:817-823等を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(Wigler, M. 他 (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567-3570、Colbere-Garapin, F. 他 (1981) J. Mol. Biol. 150:1-14等を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝物のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDが、文献に記載されている(Hartman, S.C.及びR.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、又はルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを特定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することが可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0163】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、MDDTをコードする配列が或るマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、MDDTをコードする配列群を有する形質転換された細胞群は、マーカー遺伝子機能の欠落により特定できる。又は、1つのプロモーターの制御下で、或るマーカー遺伝子が、MDDTをコードする配列とタンデムに配置されることも可能である。誘導又は選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0164】
一般に、MDDTをコードする核酸配列を含み且つMDDTを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNA或いはDNA-RNAハイブリダイゼーションと、PCR増幅とがあり、また、核酸配列或いはタンパク質配列の検出、定量、或いはその両方を行うための、膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含む、タンパク質の生物学的検定法又は免疫学的検定法もある。
【0165】
特異的ポリクローナル抗体又は特異的モノクローナル抗体を用いてMDDTの発現の検出と計測とを行うための免疫学的方法は、当分野で既知である。このような技術の例としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)などが挙げられる。MDDT上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合試験を用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. 他 (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St. Paul MN, Sect. IV、Coligan, J. E. 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ等を参照)。
【0166】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイ及びアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。MDDTをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、エンドラベリング(末端標識化)、又は標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、MDDTをコードする配列、又はその任意の断片を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3又はSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、又は発色剤等がある。
【0167】
MDDTをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。MDDTをコードするポリヌクレオチドを持つ発現ベクターは、原核細胞膜又は真核細胞膜を通してのMDDTの分泌を誘導するシグナル配列群を持つように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0168】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力又は発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」又は「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/又は活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0169】
本発明の別の実施態様では、MDDTをコードする、天然の核酸配列、修飾された核酸配列、又は組換えの核酸配列を、或る異種配列に結合させることができ、この結果、上記した任意の宿主系の、或る融合タンパク質の翻訳を生じる。例えば、市販されている抗体を用いて認識可能な異種部分を含むキメラMDDTタンパク質は、MDDT活性阻害剤に対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販されているモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、MDDTをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が持つように遺伝子操作すると、MDDTが、精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0170】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液又はコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで、放射能標識したMDDTの合成が可能である。これらの系は、T7、T3又はSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0171】
本発明のMDDT又はその断片を用いて、MDDTに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つ又は複数の試験化合物を用いて、MDDTへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)又は小分子が挙げられる。
【0172】
或る実施態様では、このように同定された化合物は、MDDTの天然リガンドに密接に関連し、例えばリガンドやその断片であり、又は天然基質や、構造的又は機能的な擬態物質(mimetic)、或いは自然結合パートナーである(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。同様に、この化合物は、MDDTが結合する天然受容体に、或いは例えばリガンド結合部位など少なくともこの受容体の或る断片に密接に関連し得る。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。一実施態様では、このような化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてMDDTを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、大腸菌からの細胞が含まれる。MDDTを発現する細胞又はMDDTを含有する細胞膜分画を試験化合物と接触させて、MDDT又はこの化合物のどちらかの結合、刺激、又は活性の阻害を分析する。
【0173】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、フルオロフォア、放射性同位体、酵素抱合体又はその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたMDDTと混合するステップと、MDDTとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、アッセイでは標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリ又は天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0174】
本発明のMDDT又はその断片を用いて、MDDTの活性をモジュレートする化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、又は部分的アゴニスト、或いは逆アゴニスト等が含まれる。一実施態様では、MDDTが少なくとも1つの試験化合物と結合する、MDDTの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、試験化合物の存在下でのMDDTの活性を、試験化合物不在下でのMDDTの活性と比較する。試験化合物の存在下でのMDDTの活性の変化は、MDDTの活性をモジュレートする化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物を、MDDTの活性に適した条件下で、DMEを有するin vitro系すなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れにおいても、MDDTの活性をモジュレートする試験化合物は間接的にモジュレートする場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、又は複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0175】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、MDDT又はその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの産生に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288-1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的又は発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002; Wagner, K.U.他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-4330)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系又はホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0176】
MDDTをコードするポリヌクレオチドを、in vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することも可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他 (1998) Science 282:1145-1147)。
【0177】
MDDTをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)又は遺伝子組換え動物(マウス又はラット)を作製することも可能である。ノックイン技術を用いて、MDDTをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫又は近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばMDDTを乳汁内に分泌するなどMDDTを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0178】
(治療)
MDDTの各領域と疾患検出及び治療用完全長ヒト分子類との間には、例えば配列及びモチーフの文脈における、化学的及び構造的類似性が存在する。また、MDDTを発現する組織の数例は、表6を見られたい。このように、MDDTは、細胞増殖異常、自己免疫/炎症の疾患、発生又は発達障害、神経障害、及び心血管疾患において、或る役割を果たすと考えられる。MDDTの発現又は活性の増大に関連する疾患の治療においては、MDDTの発現又は活性を低下させることが望ましい。また、MDDTの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、MDDTの発現又は活性を亢進させることが望ましい。
【0179】
したがって、一実施態様において、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にMDDT又はその断片や誘導体を投与し得る。限定するものではないが、このような疾患として、細胞増殖異常の中には光線性角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症疾患には、炎症、光線性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、滑液包炎、胆嚢炎、硬変、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、発作性夜間血色素尿症、肝炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、混合結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜炎症、骨髄線維症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、真性赤血球増加症、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、リンパ腫、白血病、骨髄腫等の造血癌、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィ、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。神経障害には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄疾患、筋ジストロフィ他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/分裂病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、及び家族性前頭側頭型痴呆とが含まれ、また心血管疾患として、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪部石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、冠動脈バイパス手術が含まれる。
【0180】
別の実施態様では、限定するものではないが上記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、MDDT又はその断片や誘導体を発現し得るベクターを被験者に投与しうる。
【0181】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、実質的に精製されたMDDTを有する組成物を、好適な医薬用キャリアと共に被験者に投与し得る。
【0182】
更に別の実施態様では、限定するものではないが上に列記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の低下に関連した疾患の治療又は予防のために、MDDTの活性を調節するアゴニストを被験者に投与し得る。
【0183】
更なる実施例では、MDDTの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防のために、被験者にMDDTのアンタゴニストを投与し得る。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、発生/発達障害、神経障害、及び心血管疾患が含まれる。一態様では、MDDTと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはMDDTを発現する細胞又は組織に薬剤を運ぶターゲッティング機構或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0184】
別の実施態様では、MDDTをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを被験者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含む、MDDTの発現又は活性の増大に関連した疾患の治療又は予防を成し得る。
【0185】
別の実施態様では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、又はベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療又は予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0186】
MDDTのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造できる。詳しくは、精製されたMDDTを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリ群をスクリーニングしたりしてMDDTと特異結合する薬物を同定できる。MDDTに対する抗体も、本技術分野で公知の方法を用いて製造することが可能である。限定するものではないがこのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれ得る。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えばラクダ又はラマに由来する)は強力な酵素インヒビターであり得る。またペプチド擬態物質の設計及び免疫吸着剤とバイオセンサーの開発に長所を有し得る(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0187】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒトその他の種々の宿主が、MDDT又は任意の断片の注入、又は免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0188】
MDDTに対する抗体を誘導するために用いるオリゴペプチド、ペプチド、又は断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を持つものが好ましく、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものとなる。これらのオリゴペプチド、ペプチド又は断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることも望ましい。MDDTアミノ酸類の短いストレッチ群は、KLHなど他のタンパク質の配列と融合され、このキメラ分子に対する抗体群が産生され得る。
【0189】
MDDTに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D.他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P.他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0190】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの「キメラ抗体」作製のために開発した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604-608、Takeda, S.他. (1985) Nature 314:452-454を参照)。別法では、当分野で既知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、MDDT特異的一本鎖抗体を生成し得る。関連する特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0191】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリ又はパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他 (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837、Winter, G.他 (1991) Nature 349:293-299等を参照)。
【0192】
MDDTに対する特異結合部位を持つ抗体断片をも産生し得る。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって産出されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって産生されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D他 (1989) Science 246:1275-1281等を参照)。
【0193】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れかを用いる免疫放射定量測定法又は競合結合試験に対する数々のプロトコルは、本技術分野において公知である。このようなイムノアッセイは通常、MDDTとその特異抗体との間の複合体形成の計測を含む。2つの非干渉性MDDTエピトープに対して反応性を持つモノクローナル抗体群を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合結合試験も利用できる(Pound、前出)。
【0194】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、MDDTに対する抗体の親和性を評価し得る。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態下でのMDDT-抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原とのモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体類は多様なMDDTエピトープに対する親和性が不均一であり、或るポリクローナル抗体製剤に関して判定したKaは、MDDT抗体群の平均親和性又は結合活性を表す。特定のMDDTエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体製剤のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012L/molの高親和性抗体製剤は、MDDT-抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107liter/molの低親和性抗体製剤は、MDDTが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I:A Practical Approach, IRL Press, Washington DC; Liddell, J.E及びA. Cryer (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0195】
ポリクローナル抗体製剤の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような製剤の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体製剤は一般に、MDDT-抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(前出のCattyの文献、同Coligan他の文献等を参照)。
【0196】
本発明の別の実施例では、MDDTをコードするポリヌクレオチド、又はその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用できる。ある態様では、MDDTをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、又は修飾したオリゴヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はより大きな断片が、MDDTをコードする配列の制御領域から、又はコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S.編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ等を参照)。
【0197】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で、細胞内に送達し得る(例えばSlater, J.E.. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475、 Scanlon, K.J.他 (1995) 9(13):1288-1296を参照)。
アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W.及びW. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347等を参照)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(例えばRossi, J.J.(1995)Br. Med. Bull. 51(1):217-225、Boado、R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、 Morris, M.C. 他. (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736を参照)。
【0198】
本発明の別の実施態様では、MDDTをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体連鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重症複合型免疫欠損(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重症複合型免疫欠損(Blaese, R.M. 他(1995) Science 270:475-480、Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207-216: Crystal、R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G. 他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. 及びN. Somia. (1997) Nature 389:239-242)を補正し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生体(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)などヒトのレトロウイルス(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poeschla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生体、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体)に対する防御機能をもたらすタンパク質を発現させることができる。MDDTの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からMDDTを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0199】
本発明の更なる実施態様では、MDDTの欠損による疾患や異常症を、MDDTをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってMDDT欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用(Morgan, R.A.及びW.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501-510、Boulay,J-L.及びH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)がある。
【0200】
MDDTの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。MDDTを発現させるために、(i)構成的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. 及び H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769; Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、又はRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau, 前出)、又は(iii)正常な個体に由来するMDDTをコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0201】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者はポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に送達することが可能になる。また、実験パラメータ群を最適化するのに必要な努力が最小限になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L.及びA.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B.他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修正が必要である。
【0202】
本発明の別の実施態様では、MDDTの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や障害を、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは或る独立プロモーターのコントロール下でMDDTをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナル群と、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列と、効率的なベクター増殖に必要なコーディング配列とを伴うRev応答性エレメント(RRE)と、からなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子又はVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A.及びA.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G.他(1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U.他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0203】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の或る送達系を用いて、MDDTの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する細胞群に、MDDTをコードするポリヌクレオチド群を送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製及びパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内にインポートする目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E.他 (1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544、Verma, I.M.及びN. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0204】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の或る送達系を用いて、MDDTの発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を持つ標的細胞群に、MDDTをコードするポリヌクレオチド群を送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターの利用は、HSVが向性を持つ中枢神経細胞にMDDTを導入する際に特に有用たり得る。ヘルペス系ベクター類の作製及びパッケージングは、当業者に公知である。或る複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターが、或るレポーター遺伝子の、霊長類の眼への送達に用いられている(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res. 169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus strains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92の使用についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F.他 (1999) J. Virol. 73:519-532及びXu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった各部分を有する多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0205】
別法では、或るαウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いて、MDDTをコードするポリヌクレオチド群を標的細胞群に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターはSFVゲノムに基づいている(Garoff, H.及びK.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、ウイルスのカプシッドタンパク質を通常はコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてカプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、MDDTをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に挿入することによって、ベクター形質導入細胞において多数のMDDTをコードするRNAが産生され、高いレベルでMDDTが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群が持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他 (1997) Virology 228:74-83)。αウイルスの宿主域は広いので、様々なタイプの細胞にMDDTを導入できることとなる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0206】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位(transcription initiation site)とは例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子又は調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E.他 (1994) in: Huber、B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, 163-177ページ等を参照)。相補配列又はアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0207】
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、その後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、人工的に作製されたハンマーヘッド型リボザイム分子が、MDDTをコードする配列の、内ヌクレオチド鎖切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0208】
任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対する標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
【0209】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、MDDTをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞株、細胞又は組織内に導入することができる。
【0210】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5'末端、3'末端、或いはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート又は2' O-メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであるが、これら全ての分子に拡大することができる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものや、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を含める。
【0211】
本発明の更なる実施態様には、MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現の改変に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビター又はエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。このように、MDDTの発現又は活性の増加に関連する疾患の治療においては、MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、MDDTの発現又は活性の低下に関連する疾患の治療においては、MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0212】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、商用の又は専用の、天然又は非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/又は構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組み合わせ的に又は無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。MDDTをコードするポリヌクレオチドを持つサンプルを、このようにして得た試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、無傷細胞、又は透過化処理した細胞、或いはin vitro 無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。MDDTをコードするポリヌクレオチドの発現における改変は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常は、MDDTをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ若しくは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの発現改変に有効な化合物について、例えばSchizosaccharomyces pombe遺伝子発現系(Atkins, D.他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M.他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)又はHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施態様は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性のためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド等)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0213】
ベクターを細胞又は組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、又はリポソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(例えばGoldman, C.K.他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466)。
【0214】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0215】
本発明のさらなる実施態様は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、MDDT、その抗体、擬態物質、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターなどからなる。
【0216】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下又は直腸がある。
【0217】
肺から投与する組成物は、液状又は乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0218】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0219】
MDDT又はその断片を含む高分子を直接細胞内に輸送するべく、特殊な種々の形状の組成物が調製され得る。例えば、細胞不透過性高分子を有するリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。別法では、MDDT又はその断片を、HIV Tat-1タンパク質から得た短い陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569-1572)。
【0220】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はブタ等において、先ず治療上の有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0221】
治療有効量とは、症状や容態を回復させる、たとえばMDDT又はその断片、MDDTの抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターなど活性成分の量を指す。治療有効度及び毒性は、細胞培養又は動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)又はLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を策定するのに用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0222】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、被験者の全身健康状態、被験者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、薬剤の併用、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮しうる。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって、3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0223】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質又はインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0224】
(診断)
別の実施態様では、MDDTに特異的に結合する抗体を、MDDTの発現によって特徴付けられる障害の診断に、又は、MDDTやそのアゴニスト又はアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用い得る。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合されうる。MDDTの診断アッセイには、ヒトの体液から、或いは細胞や組織の抽出物から、抗体及び標識を用いてMDDTを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合又は非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0225】
MDDTを測定するための、ELISA,RIA,及びFACSなど、種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変容した或いは異常なレベルのMDDT発現を診断するための基盤を提供する。正常或いは標準的なMDDTの発現の値は、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験体から採取した体液又は細胞とMDDTに対する抗体とを複合体の形成に適した条件の下で結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験体、対照及び生検組織からの疾患サンプル中で発現するMDDTの量を標準値と比較する。標準値と被験者の値との偏差が、疾患を診断するパラメータとなる。
【0226】
本発明の別の実施態様によれば、MDDTをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。これらのポリヌクレオチドを用いて、MDDTの発現が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子発現を検出し定量し得る。この診断アッセイを用いて、MDDTの存在の有無、更には過剰な発現を判定し、治療時のMDDTレベルの調節を監視する。
【0227】
一実施形態では、MDDTをコード又は近縁の分子をコードするポリヌクレオチド配列(例えばゲノム配列)を検出可能なPCRプローブ類とのハイブリダイゼーションによって、MDDTをコードする核酸配列を同定できる。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているという、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントによって、プローブがMDDTをコードする天然配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列を同定するかどうかが決まることとなる。
【0228】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用でき、また、MDDTをコードする任意の配列との少なくとも50%の配列同一性を有し得る。本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNA或いはRNAが可能であり、SEQ ID NO:21-40の配列、或いはMDDT遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0229】
MDDTをコードするDNA群に対して特異的なハイブリダイゼーションプローブ群の作製方法としては、MDDTをコード又はその誘導体群をコードするポリヌクレオチド配列群を、mRNAプローブ群の作製のためのベクター類にクローニングする方法を含む。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。 レポーター集団の例としては、32P又は35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0230】
MDDTをコードするポリヌクレオチド配列は、MDDTの発現に関係する疾患の診断の為に用い得る。限定するものではないが、このような疾患として、細胞増殖異常の中には光線性角化症、動脈硬化、アテローム硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症疾患には、炎症、光線性角化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、滑液包炎、胆嚢炎、硬変、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、発作性夜間血色素尿症、肝炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、混合結合組織病(MCTD)、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋又は心膜炎症、骨髄線維症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、真性赤血球増加症、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、原発性血小板血症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、リンパ腫、白血病、骨髄腫等の造血癌、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれる。発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィ、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれる。神経障害には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞及び他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄疾患、筋ジストロフィ他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/分裂病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、及び家族性前頭側頭型痴呆とが含まれ、また心血管疾患として、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪部石灰化(mitral annular calcification)、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性紅斑性狼瘡の心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、心臓移植の合併症などの心疾患、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、冠動脈バイパス手術が含まれる。MDDTをコードするポリヌクレオチド配列は、変容したMDDT発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、及びマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用可能である。このような定性方法又は定量方法は、当分野で公知である。
【0231】
或る特定の態様では、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて、MDDTをコードするヌクレオチド配列が有用であり得る。MDDTをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化されうる。又はイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく改変された場合は、サンプル内のMDDTをコードするヌクレオチド配列の変容したレベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0232】
MDDTの発現に関連する疾患の診断の基礎を提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロフィールが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件の下、動物或いはヒトのいずれかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、MDDTをコードする配列或いはその断片とを混合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0233】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0234】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現又は過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法又は積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生又は更なる進行を防止することが可能となる。
【0235】
MDDTをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、MDDTをコードするポリヌクレオチドの断片を、或いはMDDTをコードするポリヌクレオチドに対し相補的なポリヌクレオチドの断片を好ましくは含む。また、最適化した条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0236】
或る特定の態様において、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列群由来のオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性又は後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)法がある。SSCPでは、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列群に由来のオリゴヌクレオチドプライマー類とポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)とを用いた、DNAの増幅を行う。DNAは例えば、病変組織又は正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、また統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフイルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0237】
ヒト疾患の遺伝的根拠を研究するためにSNPを用いることができる。例えば、少なくとも16の一般的SNPが、非インスリン依存型真性糖尿病と関連がある。SNPは、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血或いは慢性肉芽腫症等の単一遺伝子病の転帰の差異を研究する面でも有用である。例えば、マンノース結合レクチンの変異体であるMBL2は、嚢胞性線維症の肺での有害な転帰と相関することが示されてきた。SNPはまた、生命に関わる毒性等の薬剤への患者の反応に影響する遺伝変異体の同定という薬理ゲノミックスにおいても有用性がある。例えば、ALOX5遺伝子のコア・プロモーターにおける或る変異は5-リポキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息剤を用いた治療への臨床反応の減少につながるが、Nアセチルトランスフェラーゼの或る変異は抗結核薬剤イソニアジドに反応する末梢神経障害の高発生率と関連する。異なる集団におけるSNP分布の分析は、集団の起源と移動の追跡以外にも遺伝的浮動、突然変異、組換え、選択の調査において有用である(Taylor, J.G.他 (2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.及びZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P.他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0238】
MDDTの発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識又はビオチン標識、対照核酸の共増幅(coamplification)、及び標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、Melby, P.C.他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235-244、Duplaa, C.他 (1993) Anal. Biochem. 212:229-236を参照)。目的のオリゴマー又はポリヌクレオチドが種々の希釈液中に存在し、分光光度法又は比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0239】
更に別の実施態様では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチド又はより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写物イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0240】
別の実施態様では、MDDT、その断片群又は、MDDTに特異的な抗体類を、或るマイクロアレイ上のエレメント群として用い得る。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニター又は測定することが可能である。
【0241】
或る実施態様は、或る組織又は細胞タイプの転写物イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写物イメージは、特定の組織又は細胞タイプによる遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照。当該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。従って、特定の組織又は細胞タイプの転写又は逆転写全体に本発明のポリヌクレオチド又はその補体をハイブリダイズすることにより、転写物イメージを生成し得る。或る実施態様では、本発明のポリヌクレオチド又はその相補配列がマイクロアレイ上の複数のエレメント群の或るサブセットを含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写物イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0242】
転写物イメージは、組織、細胞株、生検又は他の生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写物イメージは従って、組織又は生検サンプルの場合にはin vivo、又は細胞株の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0243】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写物イメージはまた、工業的又は天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを表示する、しばしば分子フィンガープリント又は毒物シグネチャと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S.及びN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が既知の毒性を有する化合物のシグネチャと類似のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリント又はシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリからの発現情報を含んでいる場合には、最も有用且つ正確である。理想的には、発現のゲノム全域にわたる測定が最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。ノーマライズ手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒物シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながる、シグネチャを統計的に一致させる過程に、遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒物シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0244】
或る実施態様では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0245】
別の実施態様は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織又は細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織又は細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織又は細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施態様では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、次に2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner及びAnderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、或いは銀染色液又は蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物又は治療薬で処理又は未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られる同等に位置するタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的又は酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
【0246】
プロテオームのプロフィールは、MDDTに特異的な抗体を用いてMDDT発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施態様では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他(1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G. 他 (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール又はアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0247】
プロテオームレベルでの毒物シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒物シグネチャと並行に分析するべきである。数種の組織の数種のタンパク質に対しては、転写物とタンパク質との存在量の相関が乏しいので(Anderson, N.L.及びJ. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写物イメージには有意に影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒物シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロフィール作成はこのような場合により信頼し得、情報価値があり得る。
【0248】
別の実施態様では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0249】
別の実施態様では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、非処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。
【0250】
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法を用いて調製し、使用し、そして分析しうる(Brennan, T.M. 他 (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他 (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他 (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他 (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。 該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0251】
本発明の別の実施態様では、MDDTをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列又は非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列よりも非コード配列が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。配列は、或る特定の染色体に、又は或る染色体の或る特定領域に、又は人為形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1作製物、或いは単一染色体cDNAライブラリ群に対してマッピングされうる(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355、Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149-154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて例えば病状の遺伝を特定の染色体領域の遺伝又は制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を発生させ得る(例えば、 Lander, E.S及びD. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0252】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(例えば前出Meyers, 965-968ページのHeinz-Ulrich, 他 (1995)を参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌或いはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的染色体地図上の、MDDTをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、或いは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、位置を決定するクローニングの作業を促進し得る。
【0253】
確定した染色体マーカーを用いた結合分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。いったん疾患又は症候群に関与する遺伝子(群)が、血管拡張性失調症の11q22-23領域など、特定のゲノム領域への遺伝的連鎖によって、大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされる任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を提示している可能性がある(例えばGatti, R.A. 他 (1988) Nature 336:577-580を参照)。転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
【0254】
本発明の別の実施態様では、MDDT、その触媒作用断片群、或いは免疫原断片群、又はそのオリゴペプチド群を、種々の任意の薬物スクリーニング技術における、化合物群のライブラリ類のスクリーニングに用い得る。薬物スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することができる。MDDTと試験する薬剤との結合による複合体の形成を測定し得る。
【0255】
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen,他 (1984) PCT application WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、MDDT、或いはその断片と反応してから洗浄される。結合したMDDTを次に、当分野で周知の種々の方法で検出する。精製したMDDTはまた、上記した薬物スクリーニング技術に用いるプレート上に直接コーティングもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0256】
別の実施態様では、MDDTと特異結合可能な中和抗体がMDDTとの結合について試験化合物と競合する、競合的薬物スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体を用いて、1つ以上の抗原決定基をMDDTと共有するどのペプチドの存在をも検出できる。
【0257】
別の実施態様では、MDDTをコードするヌクレオチド配列群を、将来に開発される分子生物学技術であり、現在知られているヌクレオチド配列群の諸特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存するあらゆる新技術に用い得る。
【0258】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0259】
前述しまた後述の全ての特許、特許出願及び刊行物の開示は、特に米国特許出願第60/268,117、第60/269,618、第60/271,118、第60/274,436、第60/274,486、第60/344,229及び2002年2月1日に提出、米国弁護士側管理番号No.PF-1352Pは、言及することをもって本明細書の一部となす。
【実施例】
【0260】
1 cDNAライブラリの作製
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールに又は変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Life Technologies)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムクッション上で遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0261】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNアーゼでRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)又はOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0262】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)又はSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で既知の推奨方法又は類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, 5.1-6.6ユニットなどを参照)。逆転写は、オリゴd(T)又はランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素又は酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2B又はSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは分取アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位へ連結された。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1 プラスミド(Life Technologies)、PCDNA2.1 プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMV プラスミド(Stratagene)、PCR2-TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN (Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)又はplNCY(Incyte Genomics)等及びその誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRF又はSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10B又はElectroMAX DH10Bを含む適格な大腸菌細胞に形質転換した。
【0263】
2 cDNAクローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、下記の少なくとも1つを用いた。すなわちMagic又はWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットのいずれかである。沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0264】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384ウェルプレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFluoroskan II蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0265】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)又はPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)又はMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬、又はABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373又は377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, unit 7.7に概説)を用いて同定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0266】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に公共のデータベース、例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベース群とBLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM、ヒト、ラット、マウス、線虫、出芽酵母菌( Saccharomyces cerevisiae )、分裂酵母( Schizosaccaromyces pombe)、Candida albicans 由来の配列を有するPROTEOMEデータベース群(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、並びにPFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリデータベース、SMART(Schultz 他. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864、Letunic, I.他 (2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベースから選択したデータベースに対してIncyte cDNA配列又はその翻訳を問い合わせた(HMMは、遺伝子ファミリのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361-365を参照のこと)。問い合わせは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築された。或いは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、又はGenscan予測コード配列群(実施例4及び5を参照)を用い、Incyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いて構築し、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAの集団を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を誘導した。或いは、本発明のポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベースや、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリデータベース、SMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベースに対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて生成する。
【0267】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は適切な参照文献であり、全ての文献は全体を引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、また確率値が低いほど、2配列間の同一性が高くなる)。
【0268】
完全長ポリヌクレオチド配列群とポリペプチド配列群との構築と分析とに用いた上記プログラム群は、SEQ ID NO:21-40のポリヌクレオチド配列断片群の同定にも利用した。ハイブリダイゼーション技術と増幅技術とに有用な約20〜約4000ヌクレオチドの断片群を、表4の列2に示した。
【0269】
4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集
推定上の疾患検出及び治療用完全長ヒト分子類の同定には、先ずGenscan遺伝子同定プログラムを、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)に対して実行した。Genscanは、様々な生物からゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C.及びS. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C及びS. Karlin (1998) Cuff. Opin. Struct. Biol. 8:346-354参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan予測cDNA配列の内、どの配列が疾患検出及び治療用完全長ヒト分子をコードするかを決定するために、コードされるポリペプチドを、PFAMモデル群に対し疾患検出及び治療用完全長ヒト分子について問い合わせて分析した。潜在的な疾患検出及び治療用完全長ヒト分子はまた、既に疾患検出及び治療用完全長ヒト分子として注釈が付けられたIncyte cDNA配列群に対する相同性により、同定した。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分な又は省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNA又は公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正又は確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載した構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/又は公共cDNA配列でGenscan予測コード配列を構築して得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集した、又は非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0270】
5 cDNA配列データとのゲノム配列データの統合(assembly)
スティッチ配列( Stitched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集又は伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。間隔全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移性により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられた。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定した区間を、それらの親配列(parent sequences)に沿って現われる順にスティッチアルゴリズムで「縫い合わせ」、可能な限り最長の配列と変異配列群とを生成した。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNA又はゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得たスティッチ配列群を翻訳し、BLAST分析で公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0271】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列又は実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に対し、キメラタンパク質内では挿入又は欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質又はその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を試験し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
【0272】
6 MDDTをコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:21-40を構築するために用いた配列群を、BLAST他のSmith-Watermanアルゴリズムの実装群を用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共ドメインデータベース群の配列と比較した。SEQ ID NO:21-40と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどの構築アルゴリズム(表7)を使用して、連続しオーバーラップする配列のクラスタ群に組み入れた。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethonなどの公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、いずれかのクラスタ化された配列が既にマッピングされているかを判定した。マッピングされた配列が或るクラスタに含まれている場合、そのクラスタの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
【0273】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲又は間隔として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。
【0274】
NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップ及びその他の情報源を用いて、既に同定されている疾患遺伝子群が、上記した区間内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0275】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種又は組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している(例えば前出のSambrook, 7章、同Ausubel (1995) 4章及び16章を参照)。
【0276】
BLASTを適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLIFESEQ(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一又は関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、任意の特定の一致を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を修正することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0277】
【数1】
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の正規化(normalize)された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。BLASTスコアを計算するには、或る高スコアリングセグメント対(HSP)内の一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基に-4を割り当てる。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0278】
或いは、MDDTをコードするポリヌクレオチド配列を、由来する組織源について分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いて構築される(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。すなわち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性又は尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリーすなわち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、MDDTをコードするcDNAの、組織特異的発現及び疾患特異的発現を反映する。cDNA配列及びcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0279】
8 ポリヌクレオチドをコードするMDDTの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列はまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマー群の設計にはOLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用い、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜約72℃の温度で標的配列にアニーリングするようにした。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチド群の伸長は、全て回避した。
【0280】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要又は望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0281】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマー、Mg2 +と(NH4)2SO4と2−メルカプトエタノールを含む反応バッファ、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマー対、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。別法では、プライマー対であるT7とSK+とに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:57℃で1分間、ステップ4:68℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を20回繰り返す、ステップ6:68℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。
【0282】
各ウェルのDNA濃度は、1× TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配し、DNAが試薬と結合できるようにして測定した。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II (Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
【0283】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理又はせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質転換した細胞の選択を抗生物質を有する培地で行い、それぞれのコロニーを切りとってLB/2xカルベニシリン培養液の384穴プレートに37℃で一晩培養した。
【0284】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1:94℃で3分間、ステップ2:94℃で15秒間、ステップ3:60℃で1分間、ステップ4:72℃で2分間、ステップ5:ステップ2、3及び4を29回繰り返す、ステップ6:72℃で5分間、ステップ7:4℃で保存。上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量化した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)又はABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシングレディ反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0285】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5'調節配列を得る。
【0286】
9 MDDTをコードするポリヌクレオチドの一塩基多型の同定
一塩基多型性(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体は、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:21-40において同定された。実施例3に記述されているように同じ遺伝子からの配列は共にクラスタ化され、構築され、遺伝子内の全ての配列変異体を同定することができた。一連のフイルタから成るアルゴリズムが、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられた。前段フイルタ群が、最小限のPhredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アラインメントエラーと、ベクター配列、キメラ、スプライス変異体の、不適切なトリミングに起因するエラーを除去した。先進の染色体分析の自動化した手順により、推定上のSNPの近傍の本来のクロマトグラムファイルを分析した。クローンエラーフイルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ或いは体細胞性突然変異によって引き起こされる等の、実験プロセッシング中に導入されたエラ−を同定した。クラスタリングエラーフイルタ群は、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体或いは偽遺伝子のクラスタリングに起因するエラー、又は非ヒト配列によるコンタミネーションによるエラーを同定した。フイルタの最終セットは、免疫グロブリン又はT細胞受容体に見出される重複とSNPを除去した。
【0287】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために、高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって、更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人集団は92人(男性46人、女性46人)から成り、そのうち83人はユタ州、4人はフランス、3人はベネズエラ、2人はアーミッシュの出身である。アフリカ系集団は194人(男性97人、女性97人)から成り、全てアフリカ系米国人である。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)から成り、全てメキシコ出身である。アジア系の集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、中国人43%、日本人31%、コリアン13%、ベトナム人5%、他のアジア系8%の親の構成が報告されている。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で分析された。この集団で対立遺伝子変異を示さないSNPの時には他の3つの集団で更に試験されない場合もあった。
【0288】
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用
SEQ ID NO:21-40から得たハイブリダイゼーションプローブを利用して、cDNA、ゲノムDNA又はmRNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドを、OLIGO4.06ソフトウェア(National Bioscience)のような最新式のソフトウェアを用いてデザインし、50pmolの各オリゴマーと、250μCiの[γ-32P] アデノシン三リン酸(Amersham Pharmacia Biotech)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN、Boston MA)とを組み合わせて用いることにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて実質的に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1又はPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0289】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。非特異的シグナルを除去するため、最大で例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムの条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィー又はそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0290】
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合又は合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一な、無孔の表面を持つ固体とすべきである(Schena(1999)前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法又はスロットブロット法に類似した手順を利用して、熱的、紫外線的、化学的又は機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(例えばSchena, M. 他. (1995) Science 270:467-470、Shalon, D.他. (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31等を参照)。
【0291】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、又はその断片又はオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片又はオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。一実施態様におけるマイクロアレイの調製及び使用について、以下に詳述する。
【0292】
組織又は細胞サンプルの調製
グアニジニウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖バッファ、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)又はdCTP-Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用い、200ngのポリ(A)+RNAを含有する体積25mlで行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。混合後、2つの反応サンプルはエタノール沈殿される。沈殿には、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて完全に乾燥させ、14μlの5×SSC/0.2%SDS中で再懸濁する。
【0293】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを生成する。各アレイエレメントは、クローン化したcDNAインサートを有するベクターを含有する細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。
【0294】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、0.1%のSDS及びアセトン中で超音波洗浄し、処理の間及び処理後に充分に蒸留水で洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で充分に洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドは、110℃のオーブンで硬化させる。
【0295】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを、高速ロボット装置(robotic apparatus)により、開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0296】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0297】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液中のCy3及びCy5標識したcDNA合成生成物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を有する。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上へ等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC、0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において各々45℃で10分間、3度洗浄して乾燥させる。
【0298】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova 70混合ガス10 Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。励起レーザ光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡のコンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
【0299】
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つのフルオロフォアを連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。適切なフイルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフイルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方のフルオロフォアからのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフイルタを用いて、フルオロフォア1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0300】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を、ハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なるフルオロフォアで標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、較正するcDNAのサンプルを2つのフルオロフォアで標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0301】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なるフルオロフォアを同時に励起及び測定する場合には、各フルオロフォアの発光スペクトルを用いて、データは先ずフルオロフォア間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0302】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0303】
12 相補的ポリヌクレオチド
MDDTをコードする配列群或いはその任意の部分に対する相補配列群を用いることにより、天然MDDTの発現が検出、低減、又は阻害される。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。適切なオリゴヌクレオチドを設計するため、Oligo 4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びMDDTのコーディング配列を用いる。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、MDDTをコードする転写物にリボソームが結合するのを防ぐ。
【0304】
13 MDDTの発現
MDDTの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌内でMDDTを発現するには、cDNAを好適なベクターにサブクローニングする。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子と、cDNA転写レベルを高める誘導性プロモーターとを持つものを用いる。このようなプロモーターの例には、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5又はT7バクテリオファージプロモーター及び、trp-lac (tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性細菌にMDDTを発現させるには、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発する。真核細胞でのMDDTの発現は、昆虫細胞株又は哺乳動物細胞株に、一般にバキュロウイルスとして知られるAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子をMDDTをコードするcDNAで置換するには、相同組換えを行うか、或いは、転移プラスミドの媒介を伴う、細菌の媒介による遺伝子転移を行う。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高レベルのcDNA転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合は夜蛾の1種Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いるが、ヒト肝細胞への感染に用いることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945を参照)。
【0305】
殆どの発現系では、MDDTが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、又はFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製を、迅速に1ステップで行い得る。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を、特異的に操作した部位でMDDTからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したMDDTを直接用いて以下の実施例17及び18の、適用可能なアッセイを行うことができる。
【0306】
14 機能的アッセイ
MDDTの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理的に高められたレベルでの、MDDTをコードする配列の発現によって算定する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを持つ哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターには、pCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びpCR 3.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来又は造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。 また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64又はCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザ光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFP又はCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、それらの細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取り込みを検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方光散乱と90°側方光散乱によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G.(1994)Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
【0307】
遺伝子発現へのMDDTの影響は、MDDTをコードする配列と、CD64又はCD64-GFPのどちらかが形質移入された、高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64又はCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質移入された細胞と形質移入されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて効率的に分離することができる(DYNAL, Lake Success NY)。mRNAは、当業者に周知の方法で細胞から精製することができる。MDDTと、目的とする他の遺伝子とをコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0308】
15 MDDTに特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G.(1990)Methods Enzymol 182:488-495を参照)又は他の精製技術を用いて実質的に精製されたMDDTを用いて、標準プロトコルで動物(ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を産出する。
【0309】
別法では、MDDTアミノ酸配列をLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて解析して免疫原性の高い領域を決定し、対応するオリゴペプチドを合成してこれを用いて当業者に周知の方法で抗体を生産する。C末端付近の、或いは隣接する親水性領域内のエピトープなどの適切なエピトープの選択については、当分野で周知である(例えば、前出のAusubel, 1995,11章を参照)。
【0310】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗MDDT活性を検査するには例えば、ペプチド又はMDDTを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、更に、放射性ヨウ素標識したヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0311】
16 特異的抗体を用いる天然MDDTの精製
天然MDDT或いは組換えMDDTを実質的に精製するため、MDDTに特異的な抗体類を用いるイムノアフィニティー(免疫親和性)クロマトグラフィを行う。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化したSEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィ用レジンと抗MDDT抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
【0312】
MDDTを有する培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、MDDTを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とMDDTとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファ、或いは高濃度の尿素又はチオシアン酸イオンのようなカオトロープで)溶出させ、MDDTを収集する。
【0313】
17 MDDTと相互作用する分子の同定
MDDT又は生物学的に活性なMDDT断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(例えばBolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。マルチウェルプレートの各ウェルに予め配列しておいた候補の分子群を、標識したMDDTと共にインキュベートし、洗浄して、標識されたMDDT複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なMDDT濃度で得られたデータを用いて、MDDTの数量、候補分子との親和性、及び会合についての値を計算する。
【0314】
別法では、MDDTと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)や、MATCHMAKERシステム(Clontech)などの、2−ハイブリッドシステムに基づく市販のキットを用いて分析する。
【0315】
MDDTは又はイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定し得る(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0316】
18 MDDT活性の実証
MDDTの成長刺激活性若しくは阻害活性の為の或るアッセイは、スイスマウスの3T3細胞におけるDNA合成の量を測定する(McKay, I.及びLeigh, I,編集 (1993) Growth Factors : A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY)。このアッセイにおいては、可変量のMDDTが、放射性DNA前駆物質である[3H]チミジンの存在中で静止状態3T3培養細胞へと加えられる。このアッセイのためのMDDTを得る手段は、組み替えでも良く、生化学的な標本より得ても良い。酸−沈殿可能DNAへの[3H]チミジンの取り込みは、適切な時間間隔で測定され、取り込み量は新規に合成されたDNAの量に正比例する。少なくとも100倍のMDDT濃度レンジにわたる線形の(linear)用量反応曲線は、成長モジュレート活性を示す。ミリリットルあたりの活性のユニットは、50%の応答レベルを生じるMDDTの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸によって沈殿されるDNAへの[3H]チミジンの最大の取り込みを意味している。
【0317】
別法では、MDDT活性のためのアッセイで、培養細胞中の神経伝達の、刺激作用若しくは抑制を測定する。培養CHO繊維芽細胞をMDDTに曝す。エンドサイトーシスによるMDDT取り込み後に、これらの細胞を新鮮培養液で洗浄し、細胞全膜電位固定したアフリカツメガエル筋細胞を、MDDTを含まない媒質中の線維芽細胞の1つと接触させる。膜電流を、この筋細胞から記録する。対照値に対し増加若しくは減少した電流は、MDDTの神経修飾性効果を示している(Morimoto, T.他(1995)Neuron 15 : 689-696)。
【0318】
別法では、MDDT活性のアッセイで、分泌性の膜結合オルガネラ(細胞小器官)におけるMDDTの量を測定する。上述したように形質移入された細胞を採取し、溶解する。ライセートは、当業者に既知の、ショ糖密度勾配超遠心法などの方法で分画する。そのような方法は、ゴルジ体、ER、膜結合小胞、及びその他の分泌細胞小器官のような、細胞内要素の単離を可能とする。分画された細胞ライセート及び全体の細胞ライセートよりの免疫沈降は、MDDT特異抗体を用いて実行され、また免疫沈降サンプルはSDS-PAGE及び免疫ブロット技術を用いて解析される。全細胞ライセート中MDDTに対する分泌オルガネラ中MDDT濃度は、分泌経路を通るMDDTの量に比例する。
【0319】
別法では、AMP結合活性の測定を、MDDTと32P標識したAMPとを混合して行う。この反応溶液を37℃でインキュベートし、反応はトリクロロ酢酸の添加で終了させる。酸抽出物を中和し、ゲル電気泳動にかけて非結合標識を除去する。ゲル内に留まる放射活性が、MDDTの活性に比例する。
【0320】
当業者には、本発明の要旨及び精神から逸脱しない範囲での、記載した本発明の方法及びシステムの、種々の修正及び変更については自明であろう。本発明について説明するにあたり幾つかの実施例に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。分子生物学又は関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載する本発明の実施方法の様々な修正は、明確に特許請求の範囲内にあるものとする。
【0321】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0322】
表2は、本発明のポリペプチド群のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。また、各ポリペプチドとその相同体(1つ以上)が一致する確率スコアも併せて示す。
【0323】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリペプチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0324】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0325】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0326】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0327】
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0328】
【表1】
【0329】
【表2】
【0330】
【表3−1】
【0331】
【表3−2】
【0332】
【表3−3】
【0333】
【表3−4】
【0334】
【表3−5】
【0335】
【表3−6】
【0336】
【表4−1】
【0337】
【表4−2】
【0338】
【表4−3】
【0339】
【表4−4】
【0340】
【表4−5】
【0341】
【表4−6】
【0342】
【表4−7】
【0343】
【表4−8】
【0344】
【表4−9】
【0345】
【表4−10】
【0346】
【表4−11】
【0347】
【表4−12】
【0348】
【表4−13】
【0349】
【表5】
【0350】
【表6−1】
【0351】
【表6−2】
【0352】
【表6−3】
【0353】
【表7−1】
【0354】
【表7−2】
Claims (95)
- 以下の(a)乃至(d)からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
(a)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
(c)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片
(d)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片 - SEQ ID NO:1−20からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項2に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:21−40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有する、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
- 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
(a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1に記載されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換される細胞を培養する過程と、
(b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とからなる方法。 - 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を持つことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体。
- 以下の(a)乃至(e)からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
(a)SEQ ID NO:21−40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(b)SEQ ID NO:21−40からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(e)(a)〜(d)のRNA等価物 - 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を持つ少なくとも20の連続したヌクレオチドを持つプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程であって、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドあるいはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることを特徴とする過程と、
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程とを含む方法。 - 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
- 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチド又はその断片を増幅する過程と、
(b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチド又はその断片の有無を検出し、該標的ポリヌクレオチド又はその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択されたアミノ酸配列を持つことを特徴とする、請求項17の組成物。
- 機能的MDDTの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項17の組成物の投与を含む治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、
(b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
- 機能的MDDTの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項21に記載の組成物の投与を含む治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、
(b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 機能的MDDTの過剰発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療を要する患者への請求項24に記載の組成物の投与を含む治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
(b)請求項1のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程を含む方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
(c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程を含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。 - 請求項5に記載の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を改変するのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、該標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
(b)前記標的ポリヌクレオチドの発現改変を検出する過程と、
(c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
(a)核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
(b)処理した前記生物学的サンプルの核酸と、請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを持つプローブをハイブリダイズさせる過程であって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12に記載のポリヌクレオチド又はその断片のポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドである過程と、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量する過程と、
(d)前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示するような方法。 - 生物学的サンプル中のMDDTの発現に関連する症状又は疾患に対する診断試験法であって、
(a)前記生物学的サンプルと請求項11に記載の抗体との混合を、前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体を形成するのに適した条件下で行う過程と、
(b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。 - 請求項11の抗体であって、
(a)キメラ抗体
(b)単鎖抗体
(c)Fab断片
(d)F(ab')2断片
(e)ヒト化抗体のいずれかである抗体。 - 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 被検者におけるMDDTの発現に関連する症状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
- 被検者におけるMDDTの発現に関連する症状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列又はその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体を単離する過程と、
(c)前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するポリクローナル抗体を同定する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項36に記載の方法で産出したポリクローナル抗体。
- 請求項37に記載のポリクローナル抗体及び適切なキャリアを含む組成物。
- 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列又はその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
(c)前記抗体産出細胞と不死化した細胞とを融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
(d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
(e)SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
- 請求項40に記載のモノクローナル抗体及び適切なキャリアを含む組成物。
- Fab発現ライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドをサンプル中に検出する方法であって、
(a)請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
(b)特異結合を検出する過程とを含み、
該特異結合が、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1−20 からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドをサンプルから精製する方法であって、
(a)請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
(b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1−20からなる群から選択したアミノ酸配列を含む精製したポリペプチドを得る過程とを含むことを特徴とする方法。 - マイクロアレイの少なくとも1つのエレメントが請求項13に記載のポリヌクレオチドであるマイクロアレイ。
- ポリヌクレオチドを含むサンプルの発現プロフィールを作製する方法であって、
(a)サンプル中のポリヌクレオチドを標識化する過程
(b)ハイブリダイゼーション複合体が形成されるのに適した条件下で請求項46に記載のマイクロアレイのエレメントとサンプル中の標識化ポリヌクレオチドを接触させる過程
(c)サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量する過程を含む方法 - 固体基板上の別個の物理的位置に固定した、異なるヌクレオチド分子群を含むアレイであり、該ヌクレオチド分子の少なくとも1つが標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続するヌクレオチドと特異的にハイブリダイゼーション可能な最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を含み、前記標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、前記最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列が前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続するヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、前記最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列は前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続するヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、前記最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列が前記標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、マイクロアレイであるアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、前記最初のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子にハイブリダイズされた前記標的ポリヌクレオチドをも含むアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、リンカーが少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子を前記固体基板に接合するアレイ。
- 請求項48に記載のアレイであり、基板上のそれぞれ固有の物理的位置には複数のヌクレオチド分子を含み、またいかなる単一の固有の物理位置の該複数のヌクレオチド分子も同じ配列を有し、基板上の各固有物理的位置には基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子の配列と異なる配列を持つヌクレオチド分子が含まれるアレイ。
- SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:21のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:22のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:23のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:24のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:25のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:26のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:35のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:36のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:37のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:38のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:39のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:40のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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