JP2004537273A - 分泌タンパク質 - Google Patents
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Abstract
本発明はヒトの分泌タンパク質(SECP)、およびSECPを同定しコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。本発明はまた、SECPの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、分泌タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管障害、神経障害、および発生障害の、診断・治療・予防に関する。本発明は更に、分泌タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の輸送および分泌は、細胞機能のために必須である。タンパク質の輸送は、タンパク質のアミノ末端のシグナルペプチドによって媒介されて、輸送若しくは分泌される。シグナルペプチドは、約10から20の疎水性アミノ酸群からなり、新生タンパク質をリボソームから小胞体(ER)のような特定の膜で囲まれた区画まで導く。ERを標的とするタンパク質には、分泌経路を進むものや、ER、ゴルジ体若しくはリソソームなど、分泌細胞器官に残るものがある。分泌経路を進むタンパク質は、細胞外空間へ分泌されるか、または原形質膜内に残る。原形質膜内に保持されるタンパク質は1つ以上の膜貫通ドメインを有し、その各々が約20の疎水性アミノ酸残基からなる。分泌タンパク質は、通常、不活性の前駆体として合成され、分泌経路を移動する際に翻訳後プロセシングイベントによって活性化される。そのようなイベントの例として、グリコシル化、タンパク質分解、およびシグナルペプチダーゼによるシグナルペプチドの除去が挙げられる。タンパク質の運搬の間に起こり得るその他のイベントの例として、新生タンパク質のシャペロン依存アンフォールディングおよびフォールディング、および受容体若しくは細孔複合体を有するタンパク質の相互作用が挙げられる。アミノ末端シグナルペプチドを有する分泌タンパク質の例は以下に述べられるが、これらには細胞間シグナル伝達において重要な役割を有するタンパク質を含む。そのようなタンパク質の例として、膜貫通受容体および細胞表面マーカー、細胞外基質分子、サイトカイン、ホルモン、成長因子および分化因子、酵素、ニューロペプチド、血管介在物質(vasomediators)、細胞表面マーカー、および抗原認識分子がある(Alberts, B.他(1994)Molecular Biology of The Cell, Garland Publishing, New York, NY, 557-560,582, 582-592ページの概説を参照)。
【0003】
細胞表面マーカーの例として、免疫系の白血球細胞上で同定される細胞表面抗原がある。これら抗原は、系統的なモノクローナル抗体(mAb)ベースの「ショットガン(shot gun)」技術を用いて同定されてきた。これらの技術によって、未知の細胞表面白血球抗原に対する数百のmAbが生成された。それら抗原は、様々な分化白血球細胞型および未分化白血球細胞型の通常の免疫細胞化学の局在性パターンを基に、「分化のクラスター群」へとグループ分けされた。ある与えられたクラスター内の抗原群は単一の細胞表面タンパク質を識別すると仮定され、「分化クラスター」すなわち「CD(cluster of differentiation)」名が指定されている。CD抗原によって識別されたタンパク質をコードする遺伝子のいくつかは、通常の分子生物学技術によってクローン化され実証されている。CD抗原は、膜貫通タンパク質、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)のような脂肪酸含有糖脂質への共有結合付加によって原形質膜にアンカーされた細胞表面タンパク質の双方として特徴づけられてきた(Barclay, A. N. 他(1995) The Leucocyte Antigen Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 17-20ページの概説を参照)。
【0004】
基質タンパク質(MP)は、膜貫通タンパク質および細胞外タンパク質であり、組織の形成、成長、再形成、および維持において機能し、炎症反応の重要な介在物質および制御因子として働く。MPの発現およびバランスは、先天的疾患、後成的疾患、若しくは感染性疾患の結果として生じる生化学的変化によって乱されることがある。また、MPは、免疫応答における白血球の遊走、増殖、分化、および活性化に影響を与える。MPは、1つ以上のドメインの存在によってしばしば特徴づけられ、それらのドメインの内にはコラーゲン様ドメイン、EGF様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、およびフィブロネクチン様ドメインが含まれ得る。加えて、MPは重度にグリコシル化されることがある。また、接着相互作用の役割を果たすことのあるアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)トリペプチドモチーフを含むことがある。MPの例としては、細胞外タンパク質として、フィブロネクチン、コラーゲン、ガレクチン(galectin)、ビトロネクチンおよびそのタンパク質分解誘導体ソマトメジンBがあり、また細胞接着受容体として、細胞接着分子(CAM)、カドヘリン、およびインテグリンがある(概説に関しては、Ayad, S. 他(1994)The Extracellular Matrix Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 2-16ページ; Ruoslahti, E.(1997)Kidney Int. 51: 1413-1417; Sjaastad, M. D. および Nelson, W. J.(1997)BioEssays 19:47-55を参照)。
【0005】
ムチンは、非常にグリコシル化された糖タンパクで、粘液ゲルの主要な構造成分である。ムチンの生理学的機能は、細胞保護、機械的保護、分泌液の粘性維持、および細胞認識である。MUC6はヒトの胃ムチンであり、胆嚢、膵臓、精液小胞、および女性の生殖管にも見つけられる(Toribara, N.W. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:16398-16403)。MUC6遺伝子は、ヒトの染色体11にマップされている(Toribara, N.W. 他 (1993) J. Biol. Chem. 268:5879-5885)。ヘモムチンは新規なショウジョウバエ表面ムチンであり、抗菌エフェクター分子の誘導に関与し得る(Theopold, U. 他(1996)J. Biol. Chem. 217:12708-12715)。
【0006】
タフテリン類(tuftelin)は、これまでに同定された、異なる4つのエナメル基質タンパク質の1つである。他の3つの既知のエナメル基質タンパク質は、アメロゲニン、エナメリンおよびアメロブラスチンである。これらの成分タンパク質群からのエナメル細胞外基質の構築は、無機質置換を受けるのに適格な基質の産生において重要であると考えられている(Paine C.T.他(1998)Connect Tissue Res.38:257-267)。タフテリンmRNAは非ミネラル化歯原性腫瘍であるヒトエナメル上皮腫において発現されることが知られている(Deutsch D. 他(1998)Connect Tissue Res. 39:177-184)。
【0007】
オルファクトメジン(olfactomedin)関連タンパク質群は、保存されたC末端モチーフを有する分泌性糖タンパク質たる細胞外基質である。これらは、多様な組織に、それも線虫からヒトにいたる広範囲の種にわたって発現される。オルファクトメジン関連タンパク質群には、ヒトにおいて少なくとも5つのファミリーメンバーを持つ遺伝子ファミリーを有する。この5つのうちの1つであるTIGR/ミオシリン(myocilin)タンパク質は眼において発現され、緑内障の病原と関連している(Kulkarni, N.H. 他(2000)Genet. Res. 76:41-50)。Yokoyama 他(1996)による研究では、神経芽細胞腫細胞系cDNAライブラリで、ラット神経細胞のオルファクトメジンに関連し、ERに局在するタンパク質に、AMYと呼ぶ135アミノ酸のタンパク質が96%の配列同一性を有することが発見され、これはAMYの神経組織における役割が重要であることを示している(Yokoyama, M. 他(1996)DNA Res. 3:311-320)。ラット脳のcDNAライブラリから単離された神経細胞特異的オルファクトメジン関連糖タンパク質は、オルファクトメジンとの強い配列類似性を示す。この類似性は、神経細胞と神経分泌細胞において、これらの糖タンパク質が基質に関連した機能があることを示唆している(Danielson, P.E.他(1994)J. Neurosci. Res. 38:468-478)。
【0008】
Mac-2 結合タンパク質は90KDaの血清タンパク質(90K)であり、ヒト乳癌細胞系SK-BR-3およびヒト母乳の両方から単離された分泌性糖タンパク質である。これは、ヒトマクロファージ関連レクチンであるMac-2に特異的に結合する。構造的には、成熟したタンパク質は長さが567アミノ酸で、18アミノ酸リーダーが、その前に付いている。16のシステイン群と、7つの潜在的N連結グリコシル化部位とがある。最初の106アミノ酸は、マクロファージスカベンジャー受容体高システインリッチドメインによって定義される古代のタンパク質スーパファミリに極めて類似するドメインを示す(Koths,K. 他 (1993) J. Biol. Chem. 268:14245-14249)。90Kはエイズ患者の亜集団群の血清中で上昇し、初代腫瘍サンプルと腫瘍細胞株とにおいて多様なレベルで発現される。Ullrich 他(1994)は90Kが複数の宿主防御系を刺激し、インターロイキン2の分泌を誘発し得ることを実証した。この免疫刺激の原因は、発癌性形質転換、ウイルス感染または病原性侵襲であると提起されている(Ullrich, A., 他(1994)J. Biol. Chem. 269:18401-18407)。
【0009】
セマフォリン類は少なくとも30の異なるメンバーからなる軸索誘導分子の大きなグループであり、脊椎動物、非脊椎動物、更にはある種のウィルスにおいても見つかっている。すべてのセマフォリンは長さが約500アミノ酸のセマ(sema)ドメインを有する。セマフォリン受容体であるニューロピリン(neuropilin)は、in vitroで神経突起の進展を促進することが示されている。ニューロピリンの細胞外領域はCUB、ディスコイディン(discoidin)、およびMAMドメインという3つの異なるドメインから成っている。ニューロピリンのCUBモチーフおよびMAMモチーフはタンパク質間相互作用において幾つかの役割を果たすことが示唆されており、更にセマドメインおよびC末端ドメインを介してセマフォリン類の結合に関与していると考えられる(Raper, J.A.(2000)Curr. Opin. Neurobiol. 10:8894の概説を参照)。プレキシン(plexin)類は神経細胞表面分子であり、カルシウムイオンの存在下で同種親和性結合メカニズムにより細胞接着を媒介する。プレキシン類は、特定の感覚系の受容体や神経細胞において発現されることがわかっている(Ohta, K. 他(1995)Cell 14:1189-1199)。いくつかのプレキシンが、発生段階の神経系において運動神経軸索や中枢神経軸索の誘導を制御するよう機能することを示す証拠もある。プレキシンは、それ自体完全なセマフォリンドメインを有しており、古典的セマフォリンとセマフォリンの結合パートナーの両方の祖先であり得る(Winberg, M.L.他(1998)Cell 95:903-916)。
【0010】
ヒト妊娠特異的β1糖タンパク質(PSG)は、分子量が72KDa、64KDa、62KDaおよび54KDaの、密接に関連する糖タンパク質類の1ファミリーである。PSGは、癌胎児性抗原と共に、免疫グロブリンスーパーファミリー内の1サブファミリーを構成する(Plouzek C.A. およびChou J.Y.(1991)Endocrinology 129:950958)。PSGの様々な亜集団が、ヒト胎盤の栄養胚葉、および羊膜や漿膜によって産生されることが発見されている(Plouzek C.A. 他(1993)Placenta 14:277285)。
【0011】
精子細胞と卵子との相互作用は、最終的に2つの配偶子が融合して1つの接合子を生み出すが、その相互作用もまたいくつかの分泌タンパク質を伴う。融合過程は、4つのステップに分けることができる。(I)無傷の先体(先端の分泌性小胞、下記参照)を有する精子が卵子の細胞外基質(透明帯(zona pellucida)、ZP)と相互作用する(Eddy, E. および O'brian, D. (1994) The Physiology of Reproduction, Knobil, E. および Neill, J.編集 New York, NY Raven Press 29-78ページ)、(ii)精子が先体反応を起こし、ZPに貫通する、(iii)静止が卵子の原形質膜に結合する、(iv)静止が卵子と融合し接合体を形成する。これらの過程の分析に関連する有望な研究の多くは、哺乳類受精のモデルシステムとしてマウスを使用して行われている。マウスのZPは、N−グリコシル化とO−グリコシル化された3つの分泌タンパク質であるZP1(200 kDa二量体タンパク質)、ZP2(120 kDa)、およびZP3(83 kDa)から構成される(Wassarman, P. (1988) Annu. Rev. Biochem. 57:415-442)。ZP2とZP3のポリペプチドは、構造的リピートから成るフィラメントを形成する。ZP2/ZP3のフィラメントは、ZP1によってクロスリンクされてZPマトリックスを形成する(Wassarman, P. (1999) Cell 96:175-183)。
【0012】
Nグリコシル化に欠陥のあるマウスは受精能力があり、Nグリコシル化がZP機能に必須ではないことを示唆する(Rosiere, T. および Wassarman, P. (1992) Dev. Biol. 154:309-317; Snell, W. および White, J. (1996) Cell 85:629-637; and Wassarman, P. 前出 に概説されている)。しかし、メスのマウスでの両ZP3対立遺伝子の標的破壊は、ZPの厚さと受精能力の減少をもたらした(Liu, C. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5431-5436; Rankin, T. 他 (1996) Development 122:2903-2910)。ZP1とZP2はZP3ほど広範に研究されていない。(i)限定的なタンパク質分解実験(Rosiere, T. および Wassarman, P. 前出)、(ii)ZP3糖タンパク質の限定した領域に対する抗体を用いた不活性化実験(Millar, S. (1989) Science 246:935-938)、エキソンスワッピング実験(Kinloch, R. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:263-267)から得られた結果に基づくと、マウスZP3遺伝子中の第7と第8のエクソンによってコードされる推定上のO−グリコシル化部位が先体結合に関与していた。粗雑な部位特異的変異導入実験は更に、424残基のZP3ポリペプチドで、必須のO−グリコシル化部位を328〜343の位置(両端を含む)中の5つのセリン残基(トレオニン残基は含まれない)に限定した(Kinloch, R. 他、前出)。興味深いことに、マウスとヒトのZP3ポリペプチドは、全体的に67%同一であり全ての認識されたドメインを共有するが、この重要な領域でほんの28%の同一である。このような系統発生データは、ZP3がポリペプチド分子として生物学的相互作用に参加するよりは、正しい糖部分の表示のための足場として主に機能している可能性がある(Rosiere, T. 前出、 Snell, W. および White, J. 前出、 Wassarman, P. 前出)。ZP3ポリペプチドの一次アミノ酸配列は、エクソン7領域で起こる特定のグリコシル化ほど先体結合に重要でない(Kinloch, R. 他 前出)。
【0013】
自己分泌型運動促進因子(AMF)は腫瘍細胞の遊走を調節する運動性サイトカインの1つであり、したがって、それに伴うシグナル伝達経路の同定は決定的に重要である。自己分泌型運動促進因子受容体(AMFR)の発現は、胸腺腫における腫瘍の進行に関連することが発見された(Ohta Y. 他(2000) Int. J. Oncol. 17:259264)。AMFRは、分子量78KDaの細胞表面糖タンパク質である。
【0014】
ホルモンは、血液循環により運ばれ、標的細胞の表面のまたは内部の特異的受容体に結合する分泌分子である。ホルモンは多様な生化学的組成や作用機構を持っているが、2つのカテゴリーに分類し得る。第1のカテゴリーは小さい親油性ホルモンで、標的細胞の原形質膜を通過して拡散し、サイトゾル内受容体または核内受容体に結合し、複合体を形成して遺伝子発現を改変する。これらの分子としては、レチノイン酸やチロキシンが、更には、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン、コルチゾール、アルドステロンなどの、コレステロール由来ステロイドホルモンがある。第2のカテゴリーに含まれる親水性ホルモンは、原形質膜の内側へ信号を伝達する細胞表面受容体に結合することで機能する。そのようなホルモンの例としては、アミノ酸の誘導体としてカテコールアミン類(エピネフリン、ノルエピネフリン)およびヒスタミンが、ペプチドホルモンとしてグルカゴン、インスリン、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、およびバソプレッシンがある(Lodish 他(1995)Molecular Cell Biology, Scientific American Books Inc., New York, NY, 856-864ページなど参照)。
【0015】
プロオピオメラノコルチン(POMC)は、脳下垂体前葉が合成するホルモンであるコルチコトロピン(ACTH)の前駆体ポリペプチドであり、副腎皮質の刺激で機能する。POMCはまた、βリポトロピンホルモン(β-LPH)の前駆体ポリペプチドでもある。各ホルモンは、固有の生物活性を持つより小さいペプチド群を含む。α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)と副腎皮質刺激ホルモン様中葉ペプチド(CLIP)はACTHから形成され、γ-リポトロピン(γ-LPH)とβ-エンドルフィンはβ-LPHのペプチド成分であるが、β-MSHはγ-LPH中に含有される。POMCのエキソン2および3における遺伝子突然変異に起因する、ACTH欠乏による副腎不全は、早期発症肥満症、副腎不全および赤毛色素沈着を特徴とする、内分泌障害を生じる(Chretien, M.他(1979)Can. J. Biochem. 57:1111-1121, Krude, H. 他(1998)Nat. Genet. 19:155-157, Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)176830)。
【0016】
成長因子および分化因子は、細胞間伝達の中で機能する分泌タンパク質である。いくつかの因子の活動には、オリゴマー形成が、または膜タンパク質との会合が必要である。それらの因子とそれらの受容体間の複雑な相互作用は、細胞分裂、細胞分化、細胞シグナル伝達および細胞運動性を刺激または抑制する、細胞内信号伝達経路の引き金となる。殆どの成長および分化因子は、その局所環境にある細胞に作用する(パラ分泌シグナル伝達)。成長因子および分化因子には3つの主要なクラスがある。第1のクラスには、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子、インシュリン様成長因子、および血小板由来の成長因子など、大きなポリペプチド成長因子を含む。第2のクラスには、コロニー刺激因子(CSF)のような造血性成長因子を含む。造血性成長因子類は、Bリンパ球、Tリンパ球、赤血球、血小板、好酸球、好塩基球、好中球、マクロファージ、およびそれらの幹細胞前駆体など、血液細胞の増殖および分化を刺激する。第3のクラスには、ボンベシン、バソプレッシン、オキシトシン、エンドセリン、トランスフェリン、アンジオテンシンII、血管作用性小腸ペプチド、およびブラジキニンなど、小さなペプチド因子類を含み、これらは増殖以外の細胞機能を調節するホルモンとして機能する。
【0017】
成長因子および分化因子は、in vitroでの細胞の腫瘍性転換、およびin vivoでの腫瘍進行において、幾つかの重大な役割を果たす。腫瘍細胞による、成長因子の不適正な発現は、腫瘍の血管新生および転移に寄与し得る。造血時の成長因子の調節異常によっては、貧血、白血病、およびリンパ腫が生じ得る。インターフェロンなど幾つかの成長因子は、in vitroおよびin vivoの双方で、腫瘍細胞群に対し細胞毒性を持つ。更に、幾つかの成長因子および成長因子受容体は、構造的にも機能的にも腫瘍性タンパク質類と関連する。加えて、成長因子は癌原遺伝子群および腫瘍抑制遺伝子群の双方の転写調節に影響を与える(Pimentel, E. (1994) Handbook of Growth Factors, CRC Press, Ann Arbor, MI, 1-9ページの概説を参照)。
【0018】
最初にショウジョウバエにおいて同定されたSlitタンパク質は、中枢神経系正中線形成およびおそらく神経組織の組織発生と軸索の誘導において重要である。Itoh他((1998) Brain Res. Mol. Brain Res. 62:175-186)は、slit遺伝子の哺乳類相同体(ヒト Slit-1、Slit-2、Slit-3 およびラット Slit-1)を同定した。コードされるタンパク質群は推定上の分泌タンパク質であり、EFG様モチーフおよびロイシンリッチリピートを持つが、これらは共に、保存されたタンパク質間相互作用ドメインである。Slit-1 mRNA、Slit-2 mRNAおよび Slit-3 mRNAは、それぞれ脳、脊髄、甲状腺に発現される(Itoh, A. 他、上記)。タンパク質のSlit ファミリーは神経組織内のglypican-1の機能性リガンドであることが示されており、それらの相互作用は中枢神経系の組織発生時の幾つかの段階において重要であり得ると示唆される(Liang, Y. 他(1999)J. Biol. Chem. 274:17885-17892)。
【0019】
神経ペプチドおよび血管介在物質(NP/VM)は、内因性シグナル伝達分子の1大ファミリーを構成する。NP/VMファミリーに含まれる分子は、神経ペプチドおよび神経ペプチドホルモンとして、ボンベシン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、ニューロメディンN、メラノコルチン類、オピオイド類、ガラニン、ソマトスタチン、タキキニン類、ウロテンシンIIおよび平滑筋刺激に関する関連ペプチド類、バソプレッシン、および血管作用性小腸ペプチドがある。また、循環系に運ばれるシグナル伝達分子として、アンジオテンシン、補体、カルシトニン、エンドセリン類、ホルミルメチオニルペプチド類、グルカゴン、コレシストキニン、およびガストリンがある。NP/VMは直接に信号を伝達し得る他、別の神経伝達物質およびホルモンの活性若しくは放出をモジュレートしたり、またカスケードで触媒酵素として機能することができる。NP/VMの効果は、ごく短時間のものから長期間持続するものまで幅広い(Martin, C.R. 他(1985)Endocrine Physiology, Oxford University Press, New York, NY, 57-62ページの概説を参照)。
【0020】
NP/VMは、多くの神経障害および心血管障害に関与する。例えば、神経ペプチドYは、高血圧症、鬱血心不全、情動障害、食欲調節に関与する。ソマトスタチンは、下垂体前葉での成長ホルモンおよびプロラクチンの分泌を阻害し、また、腸、膵臓腺房細胞、および膵臓β細胞内の分泌も阻害する。ソマトスタチンレベルの低下は、アルツハイマー病およびパーキンソン病で報告された。バソプレッシンは、腎臓内で水分吸収およびナトリウム吸収を増加させ、また高濃度では、血管平滑筋の収縮、血小板活性化、および肝臓内でのグリコーゲン分解を刺激する。バソプレッシンおよびその類似体は、尿崩症の治療のため臨床的に用いられる。エンドセリンおよびアンジオテンシンは高血圧症に関与し、アンジオテンシンの血漿レベルを減少させるカプトプリルなどの薬剤は、血圧を下げるのに用いられる(Watson, S.および S. Arkinstall(1994)The G-protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, 194、252、284、55、および111の各ページ)。
【0021】
神経ペプチドはまた、侵害受容(痛覚)にも役割を幾つか持つことが示されている。血管作用性小腸ペプチドは、慢性神経障害痛において重要な役割を果たすようである。オピオイド受容体様1受容体に対する内因性リガンドであるノシセプチンは、主に抗侵害受容作用を有すると考えられ、持続性の痛み若しくは慢性痛の、様々な動物モデルにおいて鎮痛特性を有している事が示された(Dickinson, T. および Fleetwood-Walker, S. M.(1998)Trends Pharmacol. Sci. 19:346-348)。
【0022】
シグナルペプチドを有する他のタンパク質として、酵素活性を持つ分泌タンパク質類がある。酵素活性としては、例えば、オキシドレダクターゼ/デヒドロゲナーゼ活性、トランスフェラーゼ活性、加水分解酵素活性、リアーゼ活性、異性化酵素活性、若しくはリガーゼ活性がある。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ類は細胞外マトリックスを分解する分泌性加水分解酵素であり、したがって、腫瘍転移、組織形態形成、および関節炎において或る重要な役割を果たす(Reponen, P. 他(1995)Dev. Dyn. 202:388-396; Firestein, G. S.(1992)Curr. Opin. Rheumatol. 4:348-354; Ray, J. M. およびStetler-Stevenson, W. G.(1994)Eur. Respir. J. 7:2062-2072; Mignatti, P.および Rifkin, D. B.(1993)Physiol. Rev. 73:161-195)。別の例は、脂質合成にまたはエネルギー生成に用いる酢酸を活性化するアセチルCoA合成酵素である(Luong, A. 他(2000)J. Biol. Chem. 275:26458-26466)。アセチルCoA合成酵素が活性化されると、酢酸とCoAからアセチルCoAが形成される。アセチルCoA合成酵素は、AMP結合ドメインシグネチャとして同定される或る配列類似性領域を共有する。アセチルCoA合成酵素は、高血圧との関連が示されている(Toh, H. (1991)Protein Seq. Data Anal. 4:111-117 およびIwai, N. 他(1994)Hypertension 23:375-380)。
【0023】
多くの異性化酵素は、タンパク質の折りたたみ、光伝達、および種々のタンパク質同化経路や異化経路における諸段階を触媒する。或るクラスの異性化酵素は、ペプチジルプロリルシス−トランス異性化酵素(PPIアーゼ)として知られる。PPIアーゼ類は、タンパク質内の特定のプロリンイミド結合の、シスからトランスへの異性化を触媒する。PPIアーゼの2つのファミリーが、FK506結合タンパク質(FKBP)とシクロフィリン(CyP)である。FKBP類が、共に強力な免疫抑制薬であるFK506とラパマイシンとに結合することにより、T細胞内の複数のシグナル伝達経路が抑制される。特に、FKBPのPPIアーゼ活性は、FK506 あるいはラパマイシンの結合によって阻害される。算出した分子量にしたがって名付けたFKBPファミリーの5つのメンバー(FKBP12、FKBP13、FKBP25、FKBP52および FKBP65)は、細胞の様々な領域に局在し、それらの領域で様々なタンパク質複合体と会合する、(Coss, M.他(1995)J. Biol. Chem. 270:29336-29341; Schreiber, S.L.(1991)Science 251:283-287)。
【0024】
CyPのペプチジルプロリル異性化酵素活性は、T細胞活性化につながるシグナル伝達経路の一部である可能性がある。CyP異性化酵素活性はタンパク質折りたたみおよびタンパク質輸送に関連しており、またタンパク質複合体の構築または分解、およびタンパク質活性の調節にも関与している可能性がある。例えば、ショウジョウバエにおいてCyP NinaA はロドプシンの正確な局在化に必要であり、哺乳類のCyP(Cyp40)はステロイド受容体に結合するHsp90/Hsc70 複合体の一部である。哺乳類CypAはヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)からのgagタンパク質と結合するが、この相互作用はシクロスポリンによって抑制し得ることが示されている。シクロスポリンは強力な抗HIV-1活性を有するので、CypAはHIV-1の複製において重要な機能を果たし得る。最後に、Cyp40は転写因子c-Mybに結合し、これを不活化することが示されているが、この作用はシクロスポリンによって逆転される。この作用は、転写、形質転換および分化の調節でのCyp類の関与を意味する(Bergsma, D.J. 他(1991)J. Biol. Chem. 266:23204 -23214; Hunter, T.(1998)Cell 92: 141-143; Leverson, J.D. および Ness, S.A.(1998)Mol. Cell. 1:203-211)。
【0025】
プロリンリッチγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)タンパク質(PRGP)類は、ビタミンK依存性1回貫通型膜内在性タンパク質ファミリーのメンバーである。PRGPタンパク質はGlaリッチなほぼ45アミノ酸の細胞外アミノ末端ドメインを特徴とする。細胞内カルボキシル末端領域には配列PPXYの1つまたは2つのコピーがあり、PPXYは、シグナル伝達、細胞周期進行、およびタンパク質代謝回転のような、細胞の多様な機能に関与する種々のタンパク質に存在するモチーフである(Kulman, J.D. 他, (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1370-1375)。Glaを形成するグルタミン酸残基の翻訳後修飾過程は、ビタミンK依存性のカルボキシル化である。Glaを含むタンパク質としては、血液凝固に関与する血漿タンパク質類がある。これらのタンパク質とは、プロトロンビン、タンパク質C、SおよびZ、並びに血液凝固第VII因子、第IX因子および第X因子である。オステオカルシン(骨-Glaタンパク質、BGP)およびマトリックスGlaタンパク質(MGP)もまた、Glaを含む(Friedman, P.A.および C.T. Przysiecki(1987)Int. J. Biochem. 19:1-7; C. Vermeer(1990)Biochem. J. 266:625-636)。
【0026】
ショウジョウバエ遺伝子crossveinless 2の特徴は、まず、推定上のシグナル配列または膜貫通配列を持つことである。また、部分的なVon Willebrand (フォンウィルブランド)因子Dドメインをも持つが、このドメインは分子内結合と分子間結合の形成を調節することが知られるドメイン群に類似している。また、5ヶ所のシステインリッチドメインをも持つが、これらはBMP(骨形成タンパク質)様リガンド群を結合するとされている。これらの特徴は、crossveinless 2 が細胞外で作用するか、または分泌経路において、直接にリガンドのシグナル伝達を可能にするように作用し、したがって、翅脈特異化(vein specification)において或る役割を果たすとされているBMP様シグナル伝達経路に関与することを示唆する(Conley, C.A. 他(2000)Development 127:3947-3959)。脊椎動物およびショウジョウバエの胚における背腹軸形成(dorsal-ventral patterning)には、位置情報勾配(a positional informational gradient)を発生させるための細胞外タンパク質群の保存されたシステムを必要とする。
【0027】
免疫グロブリン
抗原認識分子群は、すべての脊椎動物が、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫による感染を防ぐために発達させてきた高度且つ複雑な免疫系において重要な役割を果たす。免疫系の主な特徴は、「自己」分子と外来分子すなわち抗原とを区別する能力である。認識、接着または結合などの機能を仲介する多くの細胞表面分子および可溶性分子は、進化における共通の前駆体から進化したものである(すなわち、これらのタンパク質は構造的類似性を示す)。同様の機能を持つ免疫系以外の数多くの分子も、この同じ進化上の前駆体に由来する。この能力は、リンパ球、顆粒球および単球のような白血球によって発現される分泌タンパク質および膜貫通タンパク質によって主に媒介される。これらのタンパク質の多くは、保存された構造ドメインの1つ以上のリピートを持つメンバーたる免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する。このIgドメインは、Igフォールド(折りたたみ)と呼ばれる或る配列でのジスルフィド結合によって接合されている、逆平行のβシート群から構成されている。タンパク質がIgスーパーファミリーのメンバーであるための基準は、1つ以上のIgドメインを持ち、それが70〜110アミノ酸残基の長さの領域であり、Ig可変領域様(V)ドメインまたはIg定常領域様(C)ドメインと相同であることである。Igスーパーファミリーのメンバーには抗体(Ab)、T細胞受容体(TCR)、クラスIおよびIIの主要組織適合性(MHC)タンパク質が、さらに、「分化クラスター」抗原すなわちCD抗原のCD2、CD3、CD4、CD8、ポリIg受容体、Fc受容体、 神経細胞接着分子(NCAM)および血小板由来成長因子受容体(PDGFR)など、免疫細胞特異的表面マーカー群が含まれる。これらの抗原を同定するには、系統的な、モノクローナル抗体(mAb)ベースの「ショットガン(shot gun)」技術が利用される。これらの技術によって、数百種のmAbが、未知の細胞表面白血球抗原類に対して産生されている。それらの抗原は「分化のクラスター群」へとグループ分けされている。分類は、多様な分化白血球細胞型と未分化白血球細胞型とで共通の、免疫細胞化学的な局在パターンに基づく。或るクラスター内の抗原群は或る単一の細胞表面タンパク質を同定すると仮定され、「分化クラスター」すなわち「CD(cluster of differentiation)」名が指定されている。CD抗原類が同定するタンパク質類をコードするいくつかの遺伝子が、標準的な分子生物学技術によってクローン化され、確証されている。CD抗原類の特徴は、膜貫通タンパク質であることと、細胞表面タンパク質であって脂肪酸含有糖脂質、例えばグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)への共有結合性の接着を介して原形質膜に固着されていることである(Barclay, A. N.他(1995) The Leucocyte Antigen Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 17-20ページの概説を参照)。
【0028】
Igドメイン(VおよびC)は保存されたアミノ酸残基の領域であり、ポリペプチドに、免疫グロブリン(または抗体)フォールドと呼ばれる球状3次構造を与える。これは、ほぼ平行なβシートの2層からなる。55〜75アミノ酸残基の長さをもつ、鎖内ジスルフィド結合ループを保存的なシステイン残基が形成し、2層のβシートを接続する。各βシートは、3または4本の逆平行βストランドを持ち、各ストランドは5〜10アミノ酸残基の長さである。βストランド群内のアミノ酸残基の疎水性および親水性の相互作用がIgフォールドを安定させる(疎水性領域はストランドの内向きに面しているアミノ酸残基にあり、親水性領域は外向きに面している部分のアミノ酸残基にある)。VドメインはCドメインより長いポリペプチドで構成され、Igフォールド内に、付加的な1対のβストランドを持つ。
【0029】
Igスーパーファミリー遺伝子の一貫した特徴は、あるIgドメインの各配列が1つのエキソンによってコードされることである。Igスーパーファミリーは、細胞間相互作用の仲介に関与する1つのIgドメインをコードする遺伝子から進化した可能性がある。そしてスーパーファミリーの新たなメンバーは、エキソンおよび遺伝子の複製によって生じた。現代のIgスーパーファミリータンパク質は、それぞれVおよび/またはCドメインの数が異なる。このスーパーファミリーの進化上の別の特徴は、DNAの再編成を起こす能力である。これは独自の機能で、ファミリーの抗原受容体メンバーが保持している。
【0030】
Igスーパーファミリーのメンバーの多くは膜内在性の形質膜タンパク質であり、細胞外Igドメインを持つ。それらの膜貫通ドメインおよびそれらの細胞質内尾部の疎水性アミノ酸残基は非常に多様で、Igファミリーのメンバー内または既知のシグナル伝達をする構造との相同性は少ないかまたは欠いている。スーパーファミリーに関するこの一般的な記述には例外がいくつかある。例えば、PDGFRの細胞質内尾部は、チロシンキナーゼ活性を持つ。また、Thy-1は、胸腺細胞およびT細胞で見られる糖タンパク質である。このタンパク質は細胞質内尾部を持たないが、その代わりに原形質膜に共有結合によるグリコシルホスファチジルイノシトール結合で固着している。
【0031】
Igスーパーファミリータンパク質の多くはまた、これらの分子の機能に必須の、Igドメイン間の相互作用という共通の特徴を持っている。多量体タンパク質のIgドメイン間の相互作用には、同種親和性のものと異種親和性(すなわち、同じIgドメイン間の作用、または異なるIgドメイン間の作用)のものがある。抗体は多量体タンパク質であり、Igドメイン間の同種親和性と異種親和性の双方の相互作用を持つ。重鎖の定常領域の対が抗体のFc領域を形成し、軽鎖および重鎖の可変領域の対が抗体の抗原結合部位を形成する。異種親和性の相互作用はまた、異なる分子のIgドメイン間でも起こる。これらの相互作用は免疫系における、または発生中および成熟した神経系における重要な細胞間相互作用のための細胞間の接着を提供する。(Abbas, A.K. 他(1991)Cellular and Molecular Immunology, W.B. Saunders Company, Philadelphia, PA, 142-145ページの概説を参照)。
【0032】
抗体
MHCタンパク質群は、外来抗原に結合し、これらをT細胞に提示する細胞表面マーカーである。MHC分子はクラスIまたはIIのどちらかに分類される。クラスIのMHC分子(MHC I)はほとんどすべての細胞表面に発現され、またキラーT細胞に対する抗原の提示に関与する。例えば、ウイルスに感染した細胞は細胞内ウイルスタンパク質を分解し、細胞表面のMHCI分子に結合したタンパク質断片を表現する。MHC I/抗原複合体はキラーT細胞によって認識され、キラーT細胞が感染した細胞とその中のウイルスを破壊する。クラスIIMHC分子はB細胞およびマクロファージのような免疫系の分化した抗原提示細胞で主に発現する。これらの細胞は細胞外液から外来タンパク質を取り込み、細胞表面にMHC II/抗原複合体を発現する。この複合体はヘルパーT細胞を活性化し、次にヘルパーT細胞が、免疫反応を刺激するサイトカインおよび他の因子を分泌する。MHC分子はまた、臓器移植後の臓器拒絶反応において重要な役割を果たす。拒絶反応は、移植受容者のT細胞群が、移植された臓器の外来MHC分子群に対し、外来抗原に結合した自己MHC分子群に対するのと同様に応答する場合に発生する(Alberts, B. 他 (1994) Molecular Biology of the Cell, Garland Publishing, New York, NY, 1229-1246ページの概説を参照)
抗体はIgスーパーファミリーの多量体メンバーであり、B細胞の表面で発現されるか、または、B細胞によって分泌されて血液循環に入る。抗体は、血液中や他の細胞外液中で外来抗原に結合し、それらを中和する。プロトタイプの抗体は、ジスルフィド結合によって連結された2つの同じポリペプチド重鎖(H鎖)と2つの同じポリペプチド軽鎖(L鎖)からなる四量体である。この配列は、抗体分子に対して特徴的なY型を形成する。抗体はH鎖組成に基づいて分類される。抗体の5つのクラスであるIgA, IgD, IgE, IgG およびIgMは、α、δ、ε、 γおよびμのH鎖型によって定義される。L鎖にはκとλの2つのタイプがあり、どちらも、対としていずれかのH鎖対に会合し得る。血液循環内に見られる抗体の最も一般的なクラスであるIgGは四量体であるが、抗体の他のクラスのものは一般にこの基本的構造の変異体か、または多量体である。
【0033】
H鎖とL鎖は各々、N末端可変領域とC末端定常領域を有する。定常領域はL鎖の約110のアミノ酸と、H鎖の約330または440のアミノ酸から構成される。定常領域のアミノ酸配列は、或る特定クラスのH鎖またはL鎖群の内では、ほぼ同一である。可変領域は約110のアミノ酸からなり、H鎖とL鎖の両方にある。しかし、可変領域のアミノ酸配列は、特定クラスのH鎖またはL鎖群の中でも異なる。H鎖またはL鎖の可変領域のそれぞれに、広範な配列多様性を持つ3つの高頻度可変領域があり、各々約5〜10のアミノ酸からなる。抗体分子において、H鎖およびL鎖の高頻度可変領域は1つになり、抗原認識部位を形成する( 前出のAlberts, B. 他1206-1213 ページと 1216-1217ページの概説を参照)。
【0034】
H鎖とL鎖は共に、Igスーパーファミリーのメンバーの、反復したIgドメインを含む。例えば、典型的なH鎖は4つのIgドメインを含んでおり、そのうちの3つは定常領域内に発生し、1つは可変領域内に発生して抗原認識部位の形成に寄与している。同様にして、典型的なL鎖は2つのIgドメインを含み、そのうちの1つは定常領域内に発生し、他の1つは可変領域内に発生する。
【0035】
免疫系は体内に入る外来分子を認識し、それに応答する能力を持っている。したがって、免疫系はすべての可能性のある抗原に対する抗体の完全な蓄積で武装していなければならない。このような抗体の多様性は、可変領域と定常領域とをコードする遺伝子セグメント群の体細胞性再配列によって作られる。これらの遺伝子セグメント群は、各々の遺伝子セグメントが隣接する高度に保存されたDNA配列間で生じる、部位特異的組換えによって連結されている。何百という異なった遺伝子セグメントがあるため、何百万という独自の遺伝子が、組み合わせにより作成され得る。その上、これらのセグメントの不正確な連結とこれらのセグメント内での異常に高頻度の体細胞性突然変異が、多様な抗体集団の産生に更に寄与している。
【0036】
新規の分泌タンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチド群の発見により、新規の組成物群を提供することで、当分野の要望に応えることができる。これら新規の組成物は、細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管疾患、神経系疾患、および発達障害の、診断・治療・予防において有用であり、また、分泌タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列の発現における外来性化合物群の効果についての算定にも有用である。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0037】
本発明は、総称して「SECP」、個別にはそれぞれ「SECP-1」、「SECP-2」、「SECP-3」、「SECP-4」、「SECP-5」、「SECP-6」、「SECP-7」、「SECP-8」、「SECP-9」、「SECP-10」、「SECP-11」、「SECP-12」、「SECP-13」、「SECP-14」、「SECP-15」、「SECP-16」、「SECP-17」、「SECP-18」、「SECP-19」、「SECP-20」、「SECP-21」、「SECP-22」、「SECP-23」、および「SECP-24」と呼ぶ分泌タンパク質である精製されたポリペプチドを提供する。或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一実施態様では、SEQ ID NO:1-24のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
【0038】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドをコードするような単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-24を有する群から選択したポリペプチドをコードする。 別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:25-48を有する群から選択される。
【0039】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0040】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。 製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0041】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0042】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
【0043】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。 ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:25-48を有する群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:25-48を有する群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一な天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、または(e)(a)〜(d)のRNA等価物を含む群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)サンプル中の前記の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む、少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)そのハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、プローブと標的ポリヌクレオチドあるいはその断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む。
【0044】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一の天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)増幅された標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0045】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。そのポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群から選択される。一実施例では、その組成物は、SEQ ID NO:1−24からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む。 更に、本発明は、機能的SECPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0046】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1−24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−24からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを有するサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、機能的SECPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0047】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列のポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。一実施態様で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、機能的SECPの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0048】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0049】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0050】
更に本発明は、SEQ ID NO:25−48からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法を提供し、その方法には、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップと、(c)可変量の化合物の存在下と化合物の非存在下で標的ポリヌクレオチドの発現を比較するステップが含まれる。
【0051】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程を含む、試験化合物の毒性の算定方法を提供し、そのヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択したポリヌクレオチド、を含む群から選択される。ハイブリダイゼーションは、前記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、前記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(v)(I)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片と、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量との差は、試験化合物の毒性を意味する。
【0052】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0053】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には単数または複数の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物等についても言及しているのである。
【0054】
本明細書中で用いる全ての専門用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係があるであろう細胞、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0055】
(定義)
用語「SECP」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたSECPのアミノ酸配列を指す。
【0056】
用語「アゴニスト」は、SECPの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。このアゴニストは、SECPに直接相互作用するか、或いはSECPが関与する生物学的経路の成分と作用して、SECPの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0057】
用語「対立遺伝子変異配列」は、SECPをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNAまたはポリペプチドからも作製し得る。ポリペプチドの構造または機能は、変異することもしないこともある。遺伝子は、天然の対立遺伝子変異体を全く有しないか、1個若しくは数個の天然の対立遺伝子変異体を有し得る。一般に対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は、ヌクレオチドの自然欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0058】
SECPをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、SECPと同じポリペプチド或いはSECPの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにSECPをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされたタンパク質も「変異」し得るものであり、サイレント変化を生ぜしめて結果的に機能的に等価なSECPとなるようなアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にSECPの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似している非荷電極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似している非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0059】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0060】
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅は通常、当業者によく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
【0061】
用語「アンタゴニスト」は、SECPの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、SECPに直接相互作用するか、或いはSECPが関与する生物学的経路の成分と作用して、SECPの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0062】
用語「抗体」は、エピトープの決定基と結合することができる、そのままの免疫グロブリンやその断片、例えばFa、F(ab')2 及びFv断片を指す。SECPポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、そのままのポリペプチド、または関心のある小ペプチドを含む断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアータンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアーであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0063】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体に結合するための無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0064】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸またはオリゴヌクレオチドを指す。アプタマーはin vitroの進化過程(例えば米国特許番号第5,270,163号に記載されたSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法))から由来するもので、そのような過程は大きな組み合わせライブラリから標的特異的なアプタマー配列を選択する。アプタマー組成は、2本鎖または1本鎖であってもよく、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、または他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド成分は、修飾された糖基(例えばリボヌクレオチドの2'-OH基が2'-Fまたは2'-NH2で置換し得る)を有することが可能で、そのような糖基はヌクレアーゼへの抵抗性または血液中でのより長い寿命などの望ましい性質に改善し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリアー等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、たとえば架橋剤の光活性化によって各々のリガンドと特異的に架橋させることができる(Brody, E.N. および L. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0065】
「イントラマー(intramer)」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味するたとえば、ワクシニアウィルスに基づくRNA発現系は、白血球の細胞質で特定のRNAアプタマーが高レベルで発現するために使用されている(Blind, M. 他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0066】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性のヌクレオチドを含むアプタマーは右旋性ヌクレオチドに作用する天然の酵素による分解に対して耐性がある。
【0067】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖または2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシルまたは7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドがある。アンチセンス分子は、化学合成または転写を含む任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、ひとたび細胞に導入されたら、細胞が形成した天然の核酸配列と塩基対を形成し、転写または翻訳を妨害する二重鎖を形成する。「負」または「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」または「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味する。
【0068】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のSECP、合成のSECPまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0069】
用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5'A-G-T3'」は、相補配列「3'T-C-A5'」と対を形成する。
【0070】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この成分には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。SECP若しくはSECPの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0071】
「コンセンサス配列」は、不確実な塩基を解決するために、DNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5'及び/または3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を決定する配列もある。
【0072】
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸と、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0073】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分を保持する。
【0074】
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0075】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチド配列の化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0076】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0077】
「示差発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または遺伝子発現の欠損またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、治療後サンプルと未治療のサンプルまたは病態のサンプルと正常サンプルの間で行われ得る。
【0078】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンがコードされたタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャーを再分類することによって、新しいタンパク質が組立てられることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0079】
用語「断片」は、SECPまたはSECPをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば、或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、分子の特定領域から選択的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すような最初の250または500アミノ酸(またはポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施例では、配列表、表及び図面を含む明細書に裏付けされた任意の長さであってよい。
【0080】
SEQ ID NO:25−48の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:25−48を特定に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:25−48のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:25−48を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:25−48のある断片の正確な長さ及びその断片に対応するSEQ ID NO:25−48の領域は、その断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0081】
SEQ ID NO:1−24のある断片は、SEQ ID NO:25−48のある断片によってコードされる。SEQ ID NO:1−24のある断片は、SEQ ID NO:1−24を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−24のある断片は、SEQ ID NO:1−24を特異的に認識する抗体の開発における免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1−24のある断片の正確な長さ及びその断片に対応するSEQ ID NO:1−24の領域は、その断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0082】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0083】
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、または配列同一性を意味する。
【0084】
ポリヌクレオチド配列についての用語「一致率」または「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するために比較する配列において、標準化された再現性のある方法でギャップを挿入するので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0085】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、一式の分子生物学分析プログラム(DNASTAR, Madison WI)であるLASERGENEソフトウェアパッケージの一部である。CLUSTAL Vについては、Higgins, D.G.およびP.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151-153及びHiggins, D.G.他 (1992) CABIOS 8:189-191の文献に記載されている。ポリヌクレオチド配列のペアワイズアラインメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。デフォルトとして「重みづけされた」残基の重みづけ表を選択する。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0086】
或いは、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の直接のペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に考察)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及びデフォルト設定に設定された他のパラメータと共に用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較する場合、ある者は「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)をデフォルトパラメータに設定して、blastnを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0087】
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さの一致率、例えば、より大きな定義されたポリペプチド配列から得られたある断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0088】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0089】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0090】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリぺプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定する。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスを選択する。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「類似率」として一致率を報告する。
【0091】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0092】
Matrix:BLOSUM62
Open Gap: 11 及び Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、ある限定された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さの一致率、例えば、より大きな限定されたポリペプチド配列から得られたある断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、または150の連続した残基)の長さの一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片が、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0093】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全ての要素を含む直鎖状の微小染色体である。
【0094】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0095】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することを示すものである。アニーリングが許容される条件下で、特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成され、「洗浄」過程の後もハイブリダイズしたままになる。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、更にストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、本技術分野における当業者が慣例的に決定できる。許容条件はハイブリダイゼーション実験の間は一定でよいが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験中に変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0096】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄ステップを実行する温度を基準にしてある程度表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0097】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約0.1%のSDSの存在の下、68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異的ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlの変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%(v/v)の濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。このような類似性は、ヌクレオチド及びヌクレオチドにコードされるポリペプチドに対する類似の役割を強く示唆している。
【0098】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0099】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0100】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0101】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすSECPのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあらゆる抗体生産方法に有用なSECPのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を含む。
【0102】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0103】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0104】
用語「調節」は、SECPの活性の変化を指す。例えば、調節によって、SECPのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0105】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語は、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるか或いはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0106】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。同一のリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を接続する必要がある場合、一般に、機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。
【0107】
「ペプチド核酸(PNA)」は、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指し、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに連結した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む。末端のリシンは、組成物に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに選択的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0108】
SECPの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、SECPの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0109】
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、SECPやそれらの相補体、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に結合したものである。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬、及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0110】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書に裏付けされた任意の長さのヌクレオチドを用いることができるものと理解されたい。
【0111】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J. 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M. 他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis 他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0112】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得たものを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、従ってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように変更してもよい)。PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0113】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばのSambrookらの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部を付加、置換または欠失した変異核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0114】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物ないで防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0115】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を調節する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0116】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分がある。
【0117】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0118】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。SECP、SECPをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0119】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存していることを意味している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0120】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0121】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0122】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0123】
「転写イメージ」または「発現プロフィール」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0124】
「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、ウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0125】
ここで用いる「遺伝形質転換体」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個若しくは数個の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られている形質転換技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの導入によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いは試験管内受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合(transconjugation)によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他 (1989) 等の参考文献に与えられている。
【0126】
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の同一性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体または「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子とかなりの同一性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、ヌクレオチドがより多くまたはより少数の塩基を有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメインを有するか或いは参照分子に存在するドメインが欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸同一性を有する。多型性変異体は、与えられた種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
【0127】
特定のポリペプチド配列の「変異体」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (1999年5月7日)を用いるblastpによって、ある核酸配列のある長さに対する該特定のポリペプチド配列の同一性が、少なくとも40%と決定されたポリペプチド配列のことである。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0128】
(発明)
本発明は、新規のヒト分泌タンパク質群(SECP)および、SECPをコードするポリヌクレオチド群の発見に基づく。また、これらの組成物を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性障害、心血管障害、神経障害、および発達障害の、診断、治療、および予防の開発に基づく。
【0129】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)と相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0130】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースに対するBLAST分析によって同定された、SEQ ID NO:1-2、SEQ ID NO:10-13およびSEQ ID NO:17-22のポリペプチドとの相同性を有する配列を示している。列1および列2は、SEQ ID NO:1-2、SEQ ID NO:10-13およびSEQ ID NO:17-22のポリペプチド、および、それらに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO :)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、GenBankデータベース相同体の注釈を示し、更に該当箇所には適当な引用文も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0131】
表3は、本発明の各ポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyteポリペプチド ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。これには、シグナルペプチドの位置(「シグナルペプチド」および/または「signal_cleavage」として示す)を含む。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0132】
表2および3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が、請求の範囲に記載されたポリペプチドが分泌タンパク質であることを確立している。例えば、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)で決定されるように、SEQ ID NO:1は、C101残基からC449残基までシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のペクチンアセチルエステラーゼ(GenBank ID g6478931)と30%同一である(図2参照)。BLAST確率スコアは1.1e-22であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、シグナルペプチドを有するが、これは、保存されたタンパク質ファミリードメインのHMMERデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。別の例において、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定されるようにSEQ ID NO:2 はM1残基からD185残基までヒトの膵炎関連タンパク質(PAP) (GenBank ID g482909) に76%同一である(表2参照)。BLAST確率スコアは7e-76であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:2はまた、1つのレクチンCタイプドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:2 が膵炎関連タンパク質である、さらに実証的な証拠を提供する。CタイプのレクチンドメインがPAPで見つけられることに注目されたい。別の例として、SEQ ID NO:7-9はシグナルペプチドを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて統計的に有意な一致の検索をHMMERアルゴリズムを用いて決定された。Spscanからのデータは、SEQ ID NO:7-9が分泌タンパク質であることを示す更に確証的な証拠を提供する。また他の例として、SEQ ID NO:13は、M1残基からF331残基まで、ヒトの妊娠特異的β-1−糖タンパク質(GenBank ID g190647)と99%同一であることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは4.1e-181であり、それは偶然に観測されたポリペプチド配列を得る確率を示す。SEQ ID NO:13はまた、免疫グロブリンドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3を参照)。代わりの例として、SEQ ID NO:19は、S177残基からP317残基まで、マウス分泌ポリペプチドのZSIG37(GenBank ID g6274477)に40%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは6.6e-18であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:19はまた、C1qドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3を参照)。BLIMPS及びMOTIFS解析よりのデータは、SEQ ID NO:19がC1qドメインをもつ分泌ポリペプチドであることをさらに確証する証拠を提供する。他の例においてSEQ ID NO:20 はW9残基からA631残基まで、ラットのマウスの透明帯(ZP)1 糖タンパク(GenBank ID g2804566)に68%の同一性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは3.7e-230であった。また、SEQ ID NO:20 は1つのZPドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:20 がZP関連蛋白質である、さらに実証的な証拠を提供する。他の例においてSEQ ID NO:21 は、L11残基からS320残基まで、ヒトの免疫グロブリンスーパーファミリーメンバータンパク質(GenBank ID g7767239)に42%の同一性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは5.9e-77であった。また、SEQ ID NO:21 は免疫グロブリンドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS解析よりのデータは、SEQ ID NO:21 が免疫グロブリンスーパーファミリのメンバーある、さらに実証的な証拠を提供する。他の例においてSEQ ID NO:22 は、M1残基からD225残基まで、マウスのgliacolin(グリア細胞で発現されるC1q様タンパク質)(GenBank ID g10566471)に96%の同一性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは1.2e-137であった。また、SEQ ID NO:22 は1つのC1qドメイン、およびC1qタンパク質に特徴的な1つのコラーゲンリピートモチーフを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS及びMOTIFS解析よりのデータは、SEQ ID NO:22がC1q関連ポリペプチドであることをさらに確証する証拠を提供する。SEQ ID NO:3−6、SEQ ID NO:10−12、SEQ ID NO:14−18、およびSEQ ID NO:23−24 は同様にして解析し、注釈付けをされた。SEQ ID NO:1−24の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
【0133】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築した。列1は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)、本発明の各ポリヌクレオチドに対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、および各ポリヌクレオチド配列の長さを塩基対で示している。列2は、本発明の全長ポリヌクレオチド配列を構築するために使われたcDNA配列および/またはゲノム配列のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示し、またSEQ ID NO:25−48を同定するための、またはSEQ ID NO:25−48と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するための技術(例えば、ハイブリダイゼーション技術または増幅技術)で有用なポリヌクレオチド配列の断片のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示す。
【0134】
表4の列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、例えば組織特異的なcDNAライブラリから由来したIncyte cDNA、またはプールしたからcDNAライブラリから由来したIncyte cDNAを特異的に指す場合もある。或いは列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチド配列の構築に寄与するGenBank cDNAまたはESTを指す場合もある。さらに、列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、英国ケンブリッジ)データベース(即ち「ENST」命名を含む配列)から由来した配列を同定する場合がある。或いは、列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列2記載されたポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方からなる群を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 のように識別されたポリヌクレオチド配列は「スティッチされた」配列であり、その内、XXXXXXはアルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号であり、YYYYYはアルゴリズムにより生み出される予測の数であり、N1,2,3...がある場合には、解析中に手動で編集された特定のエキソンを表す(実施例5参照)。または、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nのように識別されるポリヌクレオチド配列は「ストレッチ」配列の識別番号である。ここでXXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号、またはNCBI RefSeq識別番号、Nは特定のエキソンである(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別番号(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0135】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、または組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0136】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0137】
表5は、Incyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列を構築及び確認するために用いられるIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表されるIncyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0138】
本発明はまた、SECPの変異体も含む。好適なSECPの変異体は、SECPアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、あるいは少なくとも約90%、さらには少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有し、SECPの機能的または構造的特徴を少なくとも1つ含む変異体である。
【0139】
本発明はまた、SECPをコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施例において、本発明は、SECPをコードするSEQ ID NO:25-48からなる群から選択した配列を含むポリヌクレオチド配列を含む。配列表に示したSEQ ID NO:25-48のポリヌクレオチド配列は、窒素系塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる等価RNA配列を含む。
【0140】
本発明はまた、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の或る実施態様では、SEQ ID NO:25−48からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、または少なくとも約95%もの一致率を有するようなSEQ ID NO:25−48からなる群から選択された配列を有するポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。上記の任意のポリヌクレオチドの変異体は、SECPの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するアミノ酸配列をコードし得る。
【0141】
さらに、或いは別法では、本発明のポリヌクレオチド変異体は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列のスプライス変異体である。スプライス変異体は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列と有意な配列同一性をもつ部分であり得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって生じるブロックの配列の追加または欠損のため、その変異体は通常、より多くまたはより少数のヌクレオチドを有することになる。スプライス変異体は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列とその全長にわたって、約70%以下の、或いは約60%以下の、或いは約50%以下のポリヌクレオチド同一性を有することがありうるが、スプライス変異体の部分は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の部分に、少なくとも約70%の、或いは少なくとも約85%の、或いは100%のポリヌクレオチドの配列同一性を有することになる。例えば、SEQ ID NO:36の配列を持つ或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:47の配列を持つポリヌクレオチドのスプライス変異体であり、またSEQ ID NO:42の配列を持つ或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:48の配列を持つポリヌクレオチドのスプライス変異体である。上記のスプライス変異配列は何れも、SECPの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードすることができる。
【0142】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るSECPをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、自然発生する任意の既知の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るようなありとあらゆる可能性のあるポリヌクレオチド配列変異体を網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のSECPのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全てのそのような変異が明確に開示されているとみなす。
【0143】
SECPをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のSECPのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するSECP或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えないで、SECP及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0144】
本発明はまた、SECP及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、SECPまたはその任意の断片をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0145】
更に本発明には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:25-48およびそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511等を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0146】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(例えば、Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, 7.7ユニット、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページを参照)。
【0147】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、SECPをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する方法である(Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic 2:318-322等を参照)。別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列からなる制限酵素断片から得る(Triglia, T.他 (1988) Nucleic Acids Res 16:8186等を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(Lagerstrom, M.他(1991) PCR Methods Applic 1:111-119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及び連結反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、未知の配列を検索するために用い得る別の方法については当分野で知られている(Parker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060等を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を見付けるのに有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0148】
完全長cDNAをスクリーニングする際は、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5'領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5'非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0149】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0150】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にSECP、その断片または機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号に固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をSECPの発現に利用可能である。
【0151】
種々の目的でSECPをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0152】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.-C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、SECPの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのSECPの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。ライブラリはその後、その遺伝子変異体を所望の特性に同定するような選択またはスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所定の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、指図された制御可能な方法で最大化させることができる。
【0153】
別の実施例によれば、SECPをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215-223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225-232を参照)。別法として、化学的方法を用いてSECP自体またはその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ、Roberge, J.Y. 他 (1995) Science 269:202-204等を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にSECPのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または他のタンパク質の配列または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0154】
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.及び F.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0155】
生物学的に活性なSECPを発現させるために、SECPをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要な要素を含む。これらの要素には、ベクター及びSECPをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。このような要素は、長さ及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、SECPをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。SECPをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。発現の効率は、用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを包含することによって高めることができる(Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162.等を参照)。
【0156】
当業者に周知の方法を用いて、SECPをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16-17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章及び13章1−4章を参照)。
【0157】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、SECPをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物等や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルスTMV)または細菌発現ベクター(例えばTiプラスミドまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系がある(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. 及び S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307-311、『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ、Logan, J. 及び T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクターまたは種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ポリヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M. 他 (1985) Nature 317(6040):813-815; McGregor, D.P. 他 (1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M. および N. Somia (1997) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0158】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはPSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。ベクターのマルチクローニング部位にSECPをコードする配列を連結反応するとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509 等を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のSECPが必要な場合は、SECPの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0159】
酵母の発現系を使用してSECPを産出し得る。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質を分泌或いは細胞内への保持のいずれかに誘導し、安定した増殖のために外来配列の宿主ゲノムへの組込みを可能にする(前出のAusubel (1995)、Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol. 153:516544、 Scorer, C.A. 他 (1994) Bio/Technology 12:181-184等を参照)。
【0160】
植物系を使用してSECPを発現することも可能である。SECPをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独あるいはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合せて用いられるようなCaMV由来の35Sおよび19Sプロモーターによって促進される(Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307311)。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを用いてもよい(Coruzzi, G. 他 (1984) EMBO J. 3:16711680、 Broglie, R. 他 (1984) Science 224:838843、 Winter, J. 他 (1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85105等を参照)。これらの構成物は、直接DNA形質転換または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ等を参照)。
【0161】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にSECPをコードする配列を連結し得る。アデノウイルスゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入することにより、感染した宿主細胞にSECPを発現する生ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0162】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を輸送することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345-355.を参照)。
【0163】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるSECPの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、SECPをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素及び/または内因性の発現要素や、同じベクター上に或いは別のベクター上に選択マーカー遺伝子を含み得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0164】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223-232、Lowy, I. 他 (1980) Cell 22:817-823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(Wigler, M. 他 (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567-3570、Colbere-Garapin, F. 他 (1981) J. Mol. Biol. 150:1-14 等を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C.及び R.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、形質転換体を同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することも可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0165】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、SECPをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、SECPをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がSECPをコードする配列とタンデムに配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子も発現していることを意味する。
【0166】
一般に、SECPをコードする核酸配列を含み且つSECPを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNAハイブリダイゼーション或いはDNA-RNAハイブリダイゼーション、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出、定量、或いはその両方を行うための膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含むタンパク質の生物学的検定法または免疫学的検定法がある。
【0167】
特異的ポリクローナル抗体または特異的モノクローナル抗体を用いてSECPの発現の検出及び計測を行うための免疫学的方法は、当分野で公知である。このような技術の例としては、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメーター(FACS)などが挙げられる。SECP上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. 他 (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ等を参照)。
【0168】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。SECPをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、SECPをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブの生成のためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、およびU.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子の他、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤等がある。
【0169】
SECPをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養され得る。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。SECPをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過してのSECPの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0170】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、フォールディング及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0171】
本発明の別の実施例では、SECPをコードする天然の核酸配列、変更された核酸配列、または組換えの核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に連結させ得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラSECPタンパク質が、SECP活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販されているモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、SECPをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、SECPが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0172】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したSECPの合成が可能である。これらの系は、機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳を、T7、T3またはSP6プロモーターとカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0173】
本発明のSECPまたはその断片を用いて、SECPに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つ以上の試験化合物を用いて、SECPへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
【0174】
ある実施態様では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのSECPの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的に擬似のパートナーまたは天然の結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2): 5章などを参照)。同様に、化合物は、SECPが結合する天然受容体、あるいは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連する場合がある。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。ある実施態様では、このような化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質あるいは細胞膜上のタンパク質のいずれか一方としてSECPを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。SECPを発現する細胞またはSECPを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、SECPまたは化合物のいずれかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0175】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識によりその結合を検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中のあるいは固体支持物に固定されたSECPと混合させるステップと、SECPとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0176】
本発明のSECPまたはその断片を用いて、SECPの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト、または逆アゴニスト等が含まれる。ある実施態様では、SECPの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物をSECPと混合し、試験化合物の存在下でSECPの活性を試験化合物不在下でのSECPの活性と比較する。試験化合物の存在下でのSECPの活性の変化は、SECPの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別の実施態様において、試験化合物をSECPの活性に適した条件下でSECPを含むin vitroまたは無細胞再構成系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイのいずれかにおいて、SECPの活性を調整する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0177】
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを用いて動物モデル系内で、SECPまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288-1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-43 30)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0178】
SECPをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145-1 147)。
【0179】
SECPをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組み換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、SECPをコードするポリヌクレオチドのある領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別の実施態様において、例えばSECPを乳汁内に分泌するなどSECPを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0180】
(治療)
SECPのいくつかの領域と分泌タンパク質群との間には、例えば配列およびモチーフの文脈における、化学的および構造的類似性が存在する。また、SECPを発現する組織の数例は、表6を見られたい。このように、SECPは、細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管疾患、神経系疾患、および発達異常において、或る役割を果たすと考えられる。SECPの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、SECPの発現または活性を低下させることが望ましい。また、SECPの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、SECPの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0181】
したがって、一実施態様において、SECPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にSECPまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないが、そのような疾患のうち、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症性疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血症、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー皮膚炎、皮膚筋炎、真性糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、胎児赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、慢性関節リウマチ炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、心血管疾患の中には、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化、僧帽弁逸脱、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、及び心臓移植の合併症、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、大動脈冠状動脈バイパス手術が含まれ、神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核部変性症、及び家族性の前頭側頭性健忘症が含まれ、また発達障害の中には、尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれる。
【0182】
別の実施態様では、SECPまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与して、上記しだけに限られるものではないが疾患を含むSECPの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0183】
さらに別の実施態様では、実質的に精製されたSECPを含む組成物を好適な医薬用キャリアと共に患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むSECPの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0184】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むSECPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、SECPの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0185】
更なる実施例では、SECPの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にSECPのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管疾患、神経系疾患、および発達異常が含まれる。一実施態様では、SECPと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはSECPを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶ標的化機構、或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0186】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むSECPの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、SECPをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0187】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従ってを選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0188】
SECPのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。詳しくは、精製されたSECPを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてSECPと特異的に結合するものの同定が可能である。SECPに対する抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えばラクダまたはラマから)は、強力な酵素阻害剤となる可能性があり、ペプチドミメティックの設計と免疫吸着体とバイオセンサーの開発で有益と成り得る(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0189】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、SECPまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0190】
SECPに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。SECPのアミノ酸群の短い区間を、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体を産生し得る。
【0191】
SECPに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D. 他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P. 他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0192】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの、「キメラ抗体」作製のために発達した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81−4851−4855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604-608; Takeda, S.他 (1985) Nature 314:452,454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、SECP特異的一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0193】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンライブラリまたはパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他 (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837、Winter, G. 他 (1991) Nature 349:293-299等を参照)。
【0194】
SECPに対する特異的な結合部位を含む抗体も得ることができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、モノクローナルFab断片を所望の特異性と迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. 他 (1989) Science 246:1275-1281等を参照)。
【0195】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的結合アッセイ、または免疫放射定量測定法のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。通常このような免疫測定法には、SECPとその特異性抗体との間の複合体の計測が含まれる。二つの非干渉性SECPエピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0196】
放射免疫測定法技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、SECPに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でSECP抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。多数のSECPエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体試薬のKaは、SECPに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のSECPエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体試薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012liter/molの高親和性抗体試薬は、SECP抗体複合体が過酷な処理に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107liter/molの低親和性抗体試薬は、SECPが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. 及び Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0197】
ポリクローナル抗体試薬の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体試薬は一般に、SECP抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(例えば、Catty、前出、Coligan 他、前出を参照)。
【0198】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、SECPをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、または修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはより大きな断片が、SECPをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S.編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ 等を参照)。
【0199】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に送達することが可能である(Slater, J.E. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475 及び Scanlon, K.J. 他 (1995)9(13):1288-1296.等を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W. 及び W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347等を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217-225; Boado、R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736. 等を参照)。
【0200】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M.他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損症(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損症(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475-480、Bordignon, C.他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J.他 (1993) Cell 75:207-216: Crystal、R.G.他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G.他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. および Somia. N. (1997) Nature 389:239-242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生生物(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV))(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poescbla, E.他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生菌、並びに熱帯熱マラリア原虫及びクルーズトリパノソーマ等の原虫寄生生物に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。SECPの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からSECPを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0201】
本発明の更なる実施例では、SECPの欠損による疾患や異常症は、SECPをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってSECP欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用がある(Morgan, R.A. 及び W.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501-510; Boulay, J-L. 及びH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)。
【0202】
SECPの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。SECPを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. 及び H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769; Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するSECPをコードする内因性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0203】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修飾が必要である。
【0204】
本発明の別の実施例では、SECPの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でSECPをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A. および A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0205】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、SECPの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にSECPをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングについては、当業者に公知である。複製に欠陥のあるアデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島内に導入するのに融通がきくことが証明された(Csete, M.E. 他 (1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544 及び Verma, I.M. 及び N. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0206】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、SECPの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にSECPをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純ヘルペスウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にSECPを導入する際に特に有用であり得る。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519-532 及び Xu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0207】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてSECPをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターがSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. 及び K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのキャプシッドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてキャプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、SECPをコードする配列をαウイルスゲノムのキャプシッドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のSECPをコードするRNAが産生され、高いレベルでSECPが合成される。αウイルスの感染は、通常、数日以内での細胞溶解に関係するが、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解複製を遺伝子治療に適用できるように好適に変更可能であることを示唆している(Dryga, S.A. 他 (1997) Virology 228 :74-83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にSECPを導入することできる。或る集団におけるサブセットの細胞の特定形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0208】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位とは例えば開始部位から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので、三重らせん塩基対形成は有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E. 他 (1994) in: Huber, B.E.及び B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163-177ページ等を参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0209】
リボザイムは酵素性RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、人工的に作製されたハンマーヘッド型リボザイム分子が、SECPをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0210】
任意のRNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対して標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
【0211】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。任意の方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、SECPをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞系、細胞または組織内に導入することができる。
【0212】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5'末端、3'末端、あるいはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオネートまたは2' O-メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、これら全ての分子に拡大することができる。それには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものの他、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を加えることでできる。
【0213】
本発明の更なる実施例は、SECPをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、SECPの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、SECPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、SECPの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、SECPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0214】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販のまたは専売の、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。SECPをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、未処理のそのままの細胞、透過化処理した細胞、無細胞再構成系または再構成生化学系があり得る。SECPをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、SECPをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ若しくは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を変異する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの変異発現に有効な化合物に対して、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性のためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0215】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(Goldman, C.K. 他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466.等を参照)。
【0216】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0217】
本発明の追加実施例は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、SECP、SECPの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはSECPのインヒビターなどからなる。
【0218】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0219】
肺から投与する組成物は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば従来の低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0220】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する成分が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0221】
SECPまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に送達するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。別法では、SECPまたはその断片をHIV Tat-1タンパク質の陽イオン性N末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質は、マウスモデル系で、脳を含む全ての組織の細胞に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569-1572)。
【0222】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌ、サルまたはブタ等において、先ず治療有効量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0223】
治療有効量は、症状や容態を回復させる活性処方成分(例えば、SECPまたはその断片、SECPの抗体、SECPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなど)量を意味する。治療有効度及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を調剤するのに用いられる。このような組成物が含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0224】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の通常の健康状態、患者の年齢、体重及び性別、投与の時間及び頻度、薬剤の配合、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0225】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0226】
(診断)
別の実施例では、SECPに特異的に結合する抗体が、SECPの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはSECPやSECPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合される。SECPの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからSECPを検出する方法が含まれる。抗体は、修飾して或いは修飾しないで使用し、レポーター分子の共有結合性或いは非共有結合性の付着によって標識化し得る。多様なレポーター分子が本技術分野で知られており、それらを用いることができる。幾つかのレポーター分子については上記した。
【0227】
SECPを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのSECPの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なSECPの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とSECPに対する抗体とを混合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者、対照、及び疾患生検組織からの各サンプルのSECPの発現の量が基準値と比較される。標準値と被験者との偏差が疾患を診断するパラメータとなる。
【0228】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るSECPを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、SECPの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のSECP値の調節を監視する。
【0229】
一実施形態では、SECPまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、SECPをコードする核酸配列を同定することが可能である。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントによって、そのプローブがSECPをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかが決まるであろう。
【0230】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、SECPをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:25−48の配列、或いはSECP遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0231】
SECPをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、SECP及びSECP誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
SECPをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、SECPの発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定するものではないが、そのような疾患のうち、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症性疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血症、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー皮膚炎、皮膚筋炎、真性糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、胎児赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、慢性関節リウマチ炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、心血管疾患の中には、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化、僧帽弁逸脱、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、及び心臓移植の合併症、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、大動脈冠状動脈バイパス手術が含まれ、神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核部変性症、及び家族性の前頭側頭性健忘症が含まれ、また発達障害の中には、尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれる。変異SECPの発現を検出するために、患者から採取した体液或いは組織を利用して、SECPをコードするポリヌクレオチド配列を、サザン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法と、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、およびマルチフォーマトのELISA様アッセイ、及びマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0232】
ある実施態様では、SECPをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。SECPをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変わっている場合は、サンプル内のSECPをコードするヌクレオチド配列の変異レベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0233】
SECPの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件下で、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、SECPをコードする配列或いはその断片とを結合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0234】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0235】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0236】
SECPをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはSECPをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはSECPをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0237】
或る実施態様において、SECPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型性(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、SECPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々の重畳するDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調整及び統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0238】
SNPはヒト疾患の遺伝的基礎を研究するために有益であり得る。例えば、少なくとも16のありふれたSNPが、非インスリン依存性真性糖尿病に関連している。SNPは、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、または慢性肉芽腫病のような単一遺伝子疾患での病気の現れ方の差異を調べるのにも有用である。例えば、マンノース結合レクチンのMBL2での変異体は、嚢胞性線維症の有害な肺での現れ方と相関することが示されている。SNPはまた、薬理ゲノミックスで有用性がある。薬理ゲノミックスは、生命にかかわる毒性のように、ある薬剤への患者の応答に影響する遺伝的変異体を同定する。例えば、N-アセチルトランフェラーゼのある変異体は、抗結核薬剤イソニアジドに応答しての高頻度の末梢神経障害と関連があり、またALOX5遺伝子のコアプロモーターでのある変異体は、5-リポキシゲナーゼを標的とするある抗喘息薬剤での処置への臨床的応答が減少する。異なる集団におけるSNP分布の分析は、遺伝的浮動、突然変異、組換え、選択の研究において、また集団の起源と移動の追跡にも有用である(Taylor, J.G. 他 (2001) Trends Mol. Med. 7:507-512; Kwok, P.-Y. および Z. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543; Nowotny, P. 他 (2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0239】
SECPの発現を定量するために用い得る別の方法の例としては、ヌクレオチド群の放射標識またはビオチン標識、対照核酸の共増幅(coamplification)、および、標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、 Melby, P.C. 他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235244; Duplaa, C. 他 (1993) Anal. Biochem. 212:229236を参照)。目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0240】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0241】
別の実施例では、SECP、SECPの断片、SECPに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニターまたは測定することが可能である。
【0242】
或る実施例は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプにより遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写または逆転写全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0243】
転写イメージは、組織、株化細胞、生検またはその生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写イメージは従って、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0244】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを暗示する、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性シグネチャと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S. 及び N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合には、最も有用且つ正確である。理想的には、発現のゲノム全域にわたる測定が最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データを標準化するために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。標準化手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素への遺伝子機能を割り当てることは毒性機構の解明に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的な一致には遺伝子機能の知識は必要ではない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0245】
或る実施例では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0246】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常クーマシーブルーまたは銀染色液または蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独特な位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0247】
プロテオームのプロファイルは、SECPに特異的な抗体を用いてSECP発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他 (1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G. 他 (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオールまたはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0248】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。或る組織の或るタンパク質に対しては、転写とタンパク質の存在量の相関が乏しいこともあるので(Anderson, N.L. 及び J. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中での転写の分析はmRNAの急速な分解のため困難であるので、プロテオームのプロフィール作成はこのような場合により信頼でき、情報価値がある。
【0249】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0250】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。
【0251】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(Brennan, T.M. 他 (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他の (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他の (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他の (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。 該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0252】
本発明の別の実施例ではまた、SECPをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列より非コード配列の方が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat Genet. 15:345-355、Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149-154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて、例えば病状の遺伝と特定の染色体領域やまたは制限酵素断片長多型(RFLP)の遺伝とが相関するような遺伝子連鎖地図を作成可能である(Lander, E.S. 及び D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0253】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(Heinz-Ulrich, 他 (1995) 前出のMeyers, 965-968ページ等を参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のSECPをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、あるいは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、位置を決定するクローニングの作業を促進し得る。
【0254】
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患を探す研究者にとって価値がある。疾患または症候群が、血管拡張性失調症の11q22-23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域に対する任意のマッピングにより更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を表すことができる(Gatti, R.A.他 (1988) Nature 336:577-580等を参照)。転座、反転等に起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を発見するために本発明のヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0255】
本発明の別の実施例では、SECP、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することになろう。SECPと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0256】
別の薬剤スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen,他 (1984) PCT出願番号 WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、SECP、或いはその断片と反応してから洗浄される。次に、本技術分野でよく知られている方法で、結合したSECPを検出する。精製したSECPはまた、上記した薬剤のスクリーニング技術において用いるプレート上で直接コーティングすることもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0257】
別の実施例では、SECPと特異結合可能な中和抗体がSECPとの結合について試験用化合物と競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。このようにして、SECPと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在をも、抗体を使って検出できる。
【0258】
別の実施例では、将来に開発される分子生物学技術が、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存しているならば、SECPをコードするヌクレオチド配列をその新技術に用い得る。
【0259】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0260】
前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、特に米国特許出願第60/267,924号、同第60/266,195号、同第60/268,112号、同第60/267,816号、同第60/271,639号、同第60/317,818号、および同第60/343,553号に言及することをもって本明細書の一部とする。
【実施例】
【0261】
1 cDNA ライブラリの作製
Incyte cDNAは、LIFESEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたDNAライブラリから由来した。ホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解した組織もあり、また、ホモジナイズしてフェノールまたは好適な変性剤の混合液に溶解した組織もある。変性剤の混合液は、例えばフェノールとグアニジニウムイソチオシアネートの単相溶液であるTRIZOL(Life Technologies)等である結果として得られた溶解物は、塩化セシウムにおいて遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0262】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0263】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で公知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, unit 5.1-6.6等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは調製用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。CDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位で連結された。 好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Life Technologies)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2−TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics、Palo Alto CA)、pRARE(Incyte Genomics)、またはplNCY(Incyte Genomics)、またはこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRFまたはSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10BまたはELECTROMAX DH10Bを含む大腸菌細胞に形質転換した。
【0264】
2 cDNA クローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミドキットの中から少なくとも1つを用いて、プラスミドを精製した。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0265】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKANII蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0266】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野でよく知られている配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, 7.7ユニットに概説)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0267】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列の除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。IncyteのcDNA配列、またはその翻訳を公共のデータベース(例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、および鵞口瘡カンジダ(Candida albicans )からの配列を含むPROTEOMEデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース、及びSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベースに対して問い合わせた(Schultz 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864; Letunic, I. 他 (2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361-365を参照)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築された。或いは、GenBank cDNA、GenBank EST、ステッチされた配列、ストレッチされた配列またはGenscan予測コード配列(実施例4及び5を参照)を用いてIncyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。Phred、Phrap及びConsedに基づくプログラムを用いて構築し、GenMark、BLAST及びFASTAに基づくプログラムを用いてcDNAの集団をオープンリーディングフレームに対してスクリーニングした。対応する完全長ポリペプチド配列を誘導するべく完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳した。或いは、本発明のポリペプチドは完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。引き続いて、GenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータ-ベース、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベース、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた、タンパク質ファミリーデータベース、及びSMART等のHMMに基づいたタンパク質ドメインデータベースに対する問合せによって完全長ポリペプチド配列を分析した。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて作製する。
【0268】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、引用文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な引用文献であり、全ての文献はそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、または確率値が低いほど、2配列間の同一性が高くなる)。
【0269】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:25−48のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
【0270】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定及び編集
推定上の分泌タンパク質は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からのゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. 及び S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C. 及び S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8:346-354を参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから終止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が分泌タンパク質をコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて分泌タンパク質について問合せて分析した。潜在的な分泌タンパク質はまた、分泌タンパク質として注釈が付けられていたIncyte cDNA配列への相同性を基に同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析によりgenpept及びgbpriの公共データベースと比較した。必要であれば、genpeptからのトップのBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは取り除かれたエキソンなどのGenscanにより予測された配列のエラーを修正する。BLAST分析はまた、任意のIncyte cDNAまたはGenscan予測配列の公共cDNA適用範囲の発見に用いられるので、転写の証拠を提供する。Incyte cDNA適用範囲が利用できる場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を修正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載された構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/または公共のcDNA配列でGenscan予測コード配列を構築することにより得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は編集または未編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0271】
5 cDNA 配列データとゲノム配列データとの統合
ステッチ配列( Stiched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライシング変異体を生み出した。区間全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された区間は推移により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列にある区間が存在する場合、3つの区間は全て等しいと考えられる。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した区間と区間との連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるステッチ配列は、BLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriに翻訳されて比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップのBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0272】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体をBLAST分析によりIncyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に関連して、キメラタンパク質内で挿入または削除が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを決定した。
【0273】
6 SECP をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:25−48を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:25−48と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどの構築アルゴリズム(表7)を使用して、連続的配列及びオーバーラップした配列のクラスターに構築した。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が前もってマッピングされたかを決定した。マッピングされた配列がクラスタに含まれている場合は、個々の配列番号を含めてそのクラスタの全配列が地図上の位置に割り当てられた。
【0274】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または区間として表される。センチモルガン区間の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、配列が各クラスタ内に含まれるような放射線ハイブリッドマーカーに対して境界を提供するようなGenethonによってマッピングされた遺伝マーカーに基づく。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0275】
この方法で、SEQ ID NO:36は3番染色体の142.20センチモルガンから148.70センチモルガンの区間内にマップされた。SEQ ID NO:37 は、19番染色体に51.00 から 51.70センチモルガンの区間内に、また62.00 から69.90センチモルガンの区間内にマップされ、さらに5番染色体に141.40 から142.60センチモルガンの区間にマップされた。SEQ ID NO:37については一つ以上のマップ位置が報告され、異なったマップ位置を持つ配列が、一つのクラスターに構築されたことを示す。この状態は、例えば、極めて類似しているが、完全に同一でない配列が一つのクラスターに構築される場合に発生する。
【0276】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技術であり、特定の細胞種或いは組織からのRNAが結合されている膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(例えば、Sambrook,前出, 7章; 及び Ausubel. F.M. 他、前出, 4章及び16章を参照)。
【0277】
BLASTを適用した類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一または関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の一致を厳密な一致、或いは類似的な一致として分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0278】
【数1】
【0279】
積スコアは、2つの配列間の類似度及び配列が一致する長さの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の規準化された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離され得る)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的重畳とBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、他端が79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0280】
或いは、SECPをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば或る完全長配列は、Incyte cDNA配列(実施例3を参照)と少なくとも一部はオーバーラップするように構築される。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肺、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの1つの生物/組織のカテゴリーに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/病状カテゴリー、即ち癌、細胞株系、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、SECPをコードするcDNAの組織特異的および疾患特異的な発現を反映する。cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0281】
8 SECP をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列もまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。一方のプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、他方のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマーの設計は、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの区間は全て回避した。
【0282】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0283】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液には、DNA鋳型、各プライマー200nmolと、Mg2+、(NH4)2SO4 及びβ-メルカプトエタノールを含む反応緩衝液と、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)と、ELONGASE酵素(Life Technologies)と、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)が含まれていた。 プライマー対PCI A、PCI Bに対して用いたパラメータは次の通りである。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒間
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保存
別法では、プライマー対、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒間
ステップ3 57℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保存
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量するべくプレートをFluoroskanII(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコート5〜10μlを1%アガロースミニゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを決定した。
【0284】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理またはせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0285】
細胞を溶解し、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いてPCRによってDNAを増幅した。 その際用いたパラメータは次の通りである。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒間
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 72℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す
ステップ6 72℃で5分間
ステップ7 4℃で保存
DNAは、上記のPICOGREEN試薬(Molecular Probes)によって定量した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0286】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5'調節配列を得る。
【0287】
9 SECP をコードするポリヌクレオチドの一塩基多型の同定
一塩基多型(SNP)として知られる、ありふれたDNA配列変異体が、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:25-48中で同定された。実施例3に記述されているように同じ遺伝子からの配列は共にクラスター化され、構築されて、遺伝子内の全ての配列変異体を同定できるようにする。一連のフィルタから成るアルゴリズムは、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられる。予備フィルタが、最小限のPhredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、配列アラインメントエラーとベクター配列、キメラ、スプライス変異体の不適切なトリミングに起因するエラーを除去した。最新の染色体分析の自動化手順により、推定上のSNPの近傍の本来のクロマトグラムファイルを分析した。クローンエラ−フィルタは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼあるいは体細胞性突然変異によって引き起こされる等の実験プロセッシング中に導入されたエラ−を同定した。クラスタリングエラ−フィルタは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近い相同体あるいは偽遺伝子のクラスタリングに起因するエラー、または非ヒト配列によるコンタミネーションによるエラ−を同定した。フィルタの最終セットは、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に見出される重複とSNPを除去した。
【0288】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人集団(男性46人、女性46人)は92人から成り、そのうち83人はユタ州、4人はフランス、3人はベネズエラ、2人はアーミッシュ派の出身である。黒人集団は194人(男性97人、女性97人)から成り、全て米国の黒人である。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)から成り、全てメキシコ出身である。アジア系の集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、中国人43%、日本人31%、韓国人13%、ベトナム人5%、他のアジア系8%の親の構成が報告されている。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で分析された。この集団で対立遺伝子変異を示さないSNPの時には他の3つの集団で更に試験されない場合もあった。
【0289】
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識及び使用
SEQ ID NO:25−48由来のハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても事実上同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸 (Amersham Pharmacia Biotech)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて十分に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0290】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0291】
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合または合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一且つ非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. 他 (1995) Science 270:467-470、Shalon. D. 他 (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall, A. および J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31.を参照)。
【0292】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメントは、生物学的サンプル中でポリヌクレオチドを用いてハイブリダイズされる。生物学的サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに抱合される。ハイブリダイゼーション後、生物学的サンプルからハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおいてハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の度合及び相対存在度は、算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0293】
組織または細胞サンプルの準備
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖合成バッファー、0.03単位/μlのRNA分解酵素の阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)またはdCTP-Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて、200ngのポリ(A)+RNAを含む25ml容量で行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。混合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール析出させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0294】
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートによりベクター含有細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製される。
【0295】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理中及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波処理をかけ、蒸留水で非常に良く洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で非常に良く洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0296】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速ロボット装置により開口キャピラリープリントエレメントに充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0297】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0298】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間ずつ3回洗浄して乾燥させる。
【0299】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザ光の焦点を当てる。アレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通過してラスタースキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンした。
【0300】
2つの異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を順に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つの蛍光色素に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。アレイと光電子増倍管間に設置された好適なフィルターを用いて、シグナルをフィルターする。用いる蛍光色素の最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0301】
スキャンの感度は通常、既知濃度でサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により発生されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を重量比1:100,000でハイブリダイゼーション種と相関させる。異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、2つの蛍光色素で較正するcDNAのサンプルを標識し、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えることによって較正を行う。
【0302】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起および測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、データはまず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0303】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0304】
12 相補的ポリヌクレオチド
SECPをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のSECPの発現を検出、低下、または阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びSECPのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5' 配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがSECPをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0305】
13 SECP の発現
SECPの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でSECPが発現するために、抗生物質耐性遺伝子及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp-lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとSECPを発現する。真核細胞でのSECPの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須の多角体遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、SECPをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強い多角体プロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945.等を参照)。
【0306】
殆どの発現系では、SECPが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化グルタチオン上で融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でSECPからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いて免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂(QIAGEN)上での精製を可能にする。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したSECPを直接用いて以下の実施例 17 、 18 および 19のアッセイを行うことができる。
【0307】
14 機能的アッセイ
SECP機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのSECPをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターには、PCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びPCR 3.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入された細胞と形質移入されていない細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64、またはCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、プロピジウムヨウ化物によるDNA染色によって計測される核DNA内容物の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと顆粒状性の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及び蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M. G. (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記述がある。
【0308】
遺伝子発現におけるSECPの影響は、SECPをコードする配列とCD64またはCD64-GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64-GFPは、形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。SECP及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0309】
15 SECP に特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488-495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたSECPを用いて、標準的なプロトコールで動物(例えば、ウサギやマウス等)を免疫化して抗体を作り出す。
【0310】
或いは、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてSECPアミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域等の、適切なエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel, 1995, 11章等を参照)。
【0311】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995 等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいてオリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗SECP活性を検査するには、ペプチドまたはSECPを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0312】
16 特異的抗体を用いる天然 SECP の精製
天然SECP或いは組換えSECPを、SECPに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用樹脂と抗SECP抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従って樹脂をブロックし、洗浄する。
【0313】
SECPを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、SECPを選択的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とSECPとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、SECPを回収する。
【0314】
17 SECP と相互作用する分子の同定
SECPまたは生物学的に活性なその断片を、125I ボルトンハンター試薬で標識する(例えば、Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したSECPと共にインキュベートし、洗浄して、標識したSECP複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なSECP濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したSECPの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0315】
別法では、SECPと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステムやMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0316】
SECPはまた、高処理型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0317】
18 SECP 活性の実証
SECPの成長刺激活性若しくは成長阻害活性のためのアッセイでは、スイスマウス3T3細胞におけるDNA合成の量を測定する(McKay, I. および Leigh, I., 編集(1993)Growth Factors : A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY)。このアッセイにおいては、様々な量のSECPが、放射性DNA前駆物質である[3H]チミジンの存在中で静止状態3T3培養細胞へと加えられる。このアッセイのためのSECPを得る手段は、組換えでも良く、生化学的な調製より得ても良い。酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの組み込みが、適切な時間間隔で測定され、組み込まれた量は新規に合成されたDNAの量に直接比例する。少なくとも100倍のSECP濃度範囲にわたる線形の用量‐応答曲線は、成長の調節活性を示す。ミリリットルあたりの1単位の活性は、50%の応答レベルを提供するSECPの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの最大の組み込みを表す。
【0318】
別法では、SECP活性のためのアッセイで、培養細胞中の神経伝達の刺激若しくは抑制を測定する。培養CHO繊維芽細胞をSECPに曝す。エンドサイトーシスによるSECP取込後に、これらの細胞を新鮮培養液で洗浄し、細胞全膜電位固定したアフリカツメガエル筋細胞を操作して、SECPを含まない媒質中で前記の繊維芽細胞の1つと接触させる。膜電流を、この筋細胞から記録する。対照値に対し増加若しくは減少した電流は、SECPの神経調節効果を示す(Morimoto, T.他(1995)Neuron 15:689-696)。
【0319】
別法では、SECP活性のアッセイで、分泌性の膜で囲まれた細胞小器官におけるSECPの量を測定する。上述したように形質移入された細胞を採取し、溶解する。ライセートは、当業者に既知の、ショ糖密度勾配超遠心法などの方法で分画する。そのような方法は、ゴルジ体、ER、小さい膜で囲まれた小胞、およびその他の分泌細胞小器官のような、細胞内区画の単離を可能とする。分画した細胞ライセートおよび全体の細胞ライセートよりの免疫沈降は、SECP特異抗体を用いて実行され、また免疫沈降サンプルは、SDS-PAGEおよび免疫ブロット技術を用いて解析される。全細胞ライセート中のSECPに対する分泌性細胞小器官中のSECP濃度は、分泌経路を通るSECPの量に比例する。
【0320】
別法では、AMP結合活性の測定を、SECPと32P標識したAMPとを混合させて行う。この反応溶液を37℃でインキュベートし、反応はトリクロロ酢酸の添加で終了させる。酸抽出物を中和し、ゲル電気泳動にかけて非結合標識を除去する。ゲル内に留まる放射活性が、SECPの活性に比例する。
【0321】
19 免疫グロブリン活性の実証
SECP活性の或るアッセイでは、SECPが血清からの抗原類を認識し沈殿させる能力を測定する。この活性の測定は、定量沈降反応で成し得る(Golub, E. S. 他(1987)Immunology: A Synthesis, Sinauer Associates, Sunderland, MA, 113-115ページ)。SECPを、当分野で既知の方法で同位体標識する。一定量の標識SECPに種々の血清濃度を加える。SECP-抗原複合体を溶液から沈殿させ、遠心分離で収集する。沈殿性SECP-抗原複合体の量は、沈殿物中に検出される放射性同位元素の量に比例する。沈殿性SECP-抗原複合体の量を、血清濃度に対してプロットする。多様な血清中濃度に対しての特徴的沈降素曲線が得られ、沈殿性SECP-抗原複合体の量は、初め血清中濃度の増加に比例して増加し、当量点を頂点とし、その後は血清中濃度の増加に比例して減少する。このように、沈澱性SECP-抗原複合体の量は、抗原の制限量と過剰量の両方に対する感受性によって特徴付けられるSECP活性の測定量である。
【0322】
別法として、SECP活性の或るアッセイは、細胞表面におけるSECPの発現を測定する。 SECPをコードするcDNAを、非白血球細胞株に形質移入する。細胞表面タンパク質は、ビオチンで標識される(de la Fuente, M.A. 他 (1997) Blood 90:2398-2405)。SECP特異的抗体群を用いて免疫沈降を行い、免疫沈降したサンプルをSDS-PAGEと免疫ブロット法で分析する。標識した免疫沈降剤と未標識免疫沈降剤の比は、細胞表面に発現したSECPの量に比例する。
【0323】
別法で、SECP活性の或るアッセイは、SECPの過剰発現が誘発する、細胞凝集の量を測定する。このアッセイにおいては、NIH3T3などの培養細胞にSECPをコードするcDNAで形質移入する。このcDNAは、或る強力なプロモーターの制御下にある或る適切な哺乳類発現ベクター内に含まれるようにする。緑色蛍光タンパク質(CLONTECH)などの蛍光標識タンパク質をコードするcDNAとの共形質移入を行うと、安定な形質移入体を同定するのに役立つ。形質移入された細胞と形質移入されない細胞で細胞の凝集(塊化)量を比較する。細胞の凝集量が、SECPの活性の直接の測定値となる。
【0324】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行い得る。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0325】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0326】
表2は、GenBank識別番号及び本発明のポリペプチドに最も近いGenBank相同体の注釈を示す。各ポリペプチドとその相同体との一致の確率スコアも併せて示す。
【0327】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0328】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0329】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0330】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0331】
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0332】
【表1】
【0333】
【表2】
【0334】
【表3−1】
【0335】
【表3−2】
【0336】
【表3−3】
【0337】
【表3−4】
【0338】
【表3−5】
【0339】
【表3−6】
【0340】
【表3−7】
【0341】
【表3−8】
【0342】
【表4−1】
【0343】
【表4−2】
【0344】
【表4−3】
【0345】
【表4−4】
【0346】
【表4−5】
【0347】
【表4−6】
【0348】
【表4−7】
【0349】
【表4−8】
【0350】
【表4−9】
【0351】
【表5】
【0352】
【表6−1】
【0353】
【表6−2】
【0354】
【表6−3】
【0355】
【表7−1】
【0356】
【表7−2】
【0001】
本発明は、分泌タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管障害、神経障害、および発生障害の、診断・治療・予防に関する。本発明は更に、分泌タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の輸送および分泌は、細胞機能のために必須である。タンパク質の輸送は、タンパク質のアミノ末端のシグナルペプチドによって媒介されて、輸送若しくは分泌される。シグナルペプチドは、約10から20の疎水性アミノ酸群からなり、新生タンパク質をリボソームから小胞体(ER)のような特定の膜で囲まれた区画まで導く。ERを標的とするタンパク質には、分泌経路を進むものや、ER、ゴルジ体若しくはリソソームなど、分泌細胞器官に残るものがある。分泌経路を進むタンパク質は、細胞外空間へ分泌されるか、または原形質膜内に残る。原形質膜内に保持されるタンパク質は1つ以上の膜貫通ドメインを有し、その各々が約20の疎水性アミノ酸残基からなる。分泌タンパク質は、通常、不活性の前駆体として合成され、分泌経路を移動する際に翻訳後プロセシングイベントによって活性化される。そのようなイベントの例として、グリコシル化、タンパク質分解、およびシグナルペプチダーゼによるシグナルペプチドの除去が挙げられる。タンパク質の運搬の間に起こり得るその他のイベントの例として、新生タンパク質のシャペロン依存アンフォールディングおよびフォールディング、および受容体若しくは細孔複合体を有するタンパク質の相互作用が挙げられる。アミノ末端シグナルペプチドを有する分泌タンパク質の例は以下に述べられるが、これらには細胞間シグナル伝達において重要な役割を有するタンパク質を含む。そのようなタンパク質の例として、膜貫通受容体および細胞表面マーカー、細胞外基質分子、サイトカイン、ホルモン、成長因子および分化因子、酵素、ニューロペプチド、血管介在物質(vasomediators)、細胞表面マーカー、および抗原認識分子がある(Alberts, B.他(1994)Molecular Biology of The Cell, Garland Publishing, New York, NY, 557-560,582, 582-592ページの概説を参照)。
【0003】
細胞表面マーカーの例として、免疫系の白血球細胞上で同定される細胞表面抗原がある。これら抗原は、系統的なモノクローナル抗体(mAb)ベースの「ショットガン(shot gun)」技術を用いて同定されてきた。これらの技術によって、未知の細胞表面白血球抗原に対する数百のmAbが生成された。それら抗原は、様々な分化白血球細胞型および未分化白血球細胞型の通常の免疫細胞化学の局在性パターンを基に、「分化のクラスター群」へとグループ分けされた。ある与えられたクラスター内の抗原群は単一の細胞表面タンパク質を識別すると仮定され、「分化クラスター」すなわち「CD(cluster of differentiation)」名が指定されている。CD抗原によって識別されたタンパク質をコードする遺伝子のいくつかは、通常の分子生物学技術によってクローン化され実証されている。CD抗原は、膜貫通タンパク質、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)のような脂肪酸含有糖脂質への共有結合付加によって原形質膜にアンカーされた細胞表面タンパク質の双方として特徴づけられてきた(Barclay, A. N. 他(1995) The Leucocyte Antigen Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 17-20ページの概説を参照)。
【0004】
基質タンパク質(MP)は、膜貫通タンパク質および細胞外タンパク質であり、組織の形成、成長、再形成、および維持において機能し、炎症反応の重要な介在物質および制御因子として働く。MPの発現およびバランスは、先天的疾患、後成的疾患、若しくは感染性疾患の結果として生じる生化学的変化によって乱されることがある。また、MPは、免疫応答における白血球の遊走、増殖、分化、および活性化に影響を与える。MPは、1つ以上のドメインの存在によってしばしば特徴づけられ、それらのドメインの内にはコラーゲン様ドメイン、EGF様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、およびフィブロネクチン様ドメインが含まれ得る。加えて、MPは重度にグリコシル化されることがある。また、接着相互作用の役割を果たすことのあるアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)トリペプチドモチーフを含むことがある。MPの例としては、細胞外タンパク質として、フィブロネクチン、コラーゲン、ガレクチン(galectin)、ビトロネクチンおよびそのタンパク質分解誘導体ソマトメジンBがあり、また細胞接着受容体として、細胞接着分子(CAM)、カドヘリン、およびインテグリンがある(概説に関しては、Ayad, S. 他(1994)The Extracellular Matrix Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 2-16ページ; Ruoslahti, E.(1997)Kidney Int. 51: 1413-1417; Sjaastad, M. D. および Nelson, W. J.(1997)BioEssays 19:47-55を参照)。
【0005】
ムチンは、非常にグリコシル化された糖タンパクで、粘液ゲルの主要な構造成分である。ムチンの生理学的機能は、細胞保護、機械的保護、分泌液の粘性維持、および細胞認識である。MUC6はヒトの胃ムチンであり、胆嚢、膵臓、精液小胞、および女性の生殖管にも見つけられる(Toribara, N.W. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:16398-16403)。MUC6遺伝子は、ヒトの染色体11にマップされている(Toribara, N.W. 他 (1993) J. Biol. Chem. 268:5879-5885)。ヘモムチンは新規なショウジョウバエ表面ムチンであり、抗菌エフェクター分子の誘導に関与し得る(Theopold, U. 他(1996)J. Biol. Chem. 217:12708-12715)。
【0006】
タフテリン類(tuftelin)は、これまでに同定された、異なる4つのエナメル基質タンパク質の1つである。他の3つの既知のエナメル基質タンパク質は、アメロゲニン、エナメリンおよびアメロブラスチンである。これらの成分タンパク質群からのエナメル細胞外基質の構築は、無機質置換を受けるのに適格な基質の産生において重要であると考えられている(Paine C.T.他(1998)Connect Tissue Res.38:257-267)。タフテリンmRNAは非ミネラル化歯原性腫瘍であるヒトエナメル上皮腫において発現されることが知られている(Deutsch D. 他(1998)Connect Tissue Res. 39:177-184)。
【0007】
オルファクトメジン(olfactomedin)関連タンパク質群は、保存されたC末端モチーフを有する分泌性糖タンパク質たる細胞外基質である。これらは、多様な組織に、それも線虫からヒトにいたる広範囲の種にわたって発現される。オルファクトメジン関連タンパク質群には、ヒトにおいて少なくとも5つのファミリーメンバーを持つ遺伝子ファミリーを有する。この5つのうちの1つであるTIGR/ミオシリン(myocilin)タンパク質は眼において発現され、緑内障の病原と関連している(Kulkarni, N.H. 他(2000)Genet. Res. 76:41-50)。Yokoyama 他(1996)による研究では、神経芽細胞腫細胞系cDNAライブラリで、ラット神経細胞のオルファクトメジンに関連し、ERに局在するタンパク質に、AMYと呼ぶ135アミノ酸のタンパク質が96%の配列同一性を有することが発見され、これはAMYの神経組織における役割が重要であることを示している(Yokoyama, M. 他(1996)DNA Res. 3:311-320)。ラット脳のcDNAライブラリから単離された神経細胞特異的オルファクトメジン関連糖タンパク質は、オルファクトメジンとの強い配列類似性を示す。この類似性は、神経細胞と神経分泌細胞において、これらの糖タンパク質が基質に関連した機能があることを示唆している(Danielson, P.E.他(1994)J. Neurosci. Res. 38:468-478)。
【0008】
Mac-2 結合タンパク質は90KDaの血清タンパク質(90K)であり、ヒト乳癌細胞系SK-BR-3およびヒト母乳の両方から単離された分泌性糖タンパク質である。これは、ヒトマクロファージ関連レクチンであるMac-2に特異的に結合する。構造的には、成熟したタンパク質は長さが567アミノ酸で、18アミノ酸リーダーが、その前に付いている。16のシステイン群と、7つの潜在的N連結グリコシル化部位とがある。最初の106アミノ酸は、マクロファージスカベンジャー受容体高システインリッチドメインによって定義される古代のタンパク質スーパファミリに極めて類似するドメインを示す(Koths,K. 他 (1993) J. Biol. Chem. 268:14245-14249)。90Kはエイズ患者の亜集団群の血清中で上昇し、初代腫瘍サンプルと腫瘍細胞株とにおいて多様なレベルで発現される。Ullrich 他(1994)は90Kが複数の宿主防御系を刺激し、インターロイキン2の分泌を誘発し得ることを実証した。この免疫刺激の原因は、発癌性形質転換、ウイルス感染または病原性侵襲であると提起されている(Ullrich, A., 他(1994)J. Biol. Chem. 269:18401-18407)。
【0009】
セマフォリン類は少なくとも30の異なるメンバーからなる軸索誘導分子の大きなグループであり、脊椎動物、非脊椎動物、更にはある種のウィルスにおいても見つかっている。すべてのセマフォリンは長さが約500アミノ酸のセマ(sema)ドメインを有する。セマフォリン受容体であるニューロピリン(neuropilin)は、in vitroで神経突起の進展を促進することが示されている。ニューロピリンの細胞外領域はCUB、ディスコイディン(discoidin)、およびMAMドメインという3つの異なるドメインから成っている。ニューロピリンのCUBモチーフおよびMAMモチーフはタンパク質間相互作用において幾つかの役割を果たすことが示唆されており、更にセマドメインおよびC末端ドメインを介してセマフォリン類の結合に関与していると考えられる(Raper, J.A.(2000)Curr. Opin. Neurobiol. 10:8894の概説を参照)。プレキシン(plexin)類は神経細胞表面分子であり、カルシウムイオンの存在下で同種親和性結合メカニズムにより細胞接着を媒介する。プレキシン類は、特定の感覚系の受容体や神経細胞において発現されることがわかっている(Ohta, K. 他(1995)Cell 14:1189-1199)。いくつかのプレキシンが、発生段階の神経系において運動神経軸索や中枢神経軸索の誘導を制御するよう機能することを示す証拠もある。プレキシンは、それ自体完全なセマフォリンドメインを有しており、古典的セマフォリンとセマフォリンの結合パートナーの両方の祖先であり得る(Winberg, M.L.他(1998)Cell 95:903-916)。
【0010】
ヒト妊娠特異的β1糖タンパク質(PSG)は、分子量が72KDa、64KDa、62KDaおよび54KDaの、密接に関連する糖タンパク質類の1ファミリーである。PSGは、癌胎児性抗原と共に、免疫グロブリンスーパーファミリー内の1サブファミリーを構成する(Plouzek C.A. およびChou J.Y.(1991)Endocrinology 129:950958)。PSGの様々な亜集団が、ヒト胎盤の栄養胚葉、および羊膜や漿膜によって産生されることが発見されている(Plouzek C.A. 他(1993)Placenta 14:277285)。
【0011】
精子細胞と卵子との相互作用は、最終的に2つの配偶子が融合して1つの接合子を生み出すが、その相互作用もまたいくつかの分泌タンパク質を伴う。融合過程は、4つのステップに分けることができる。(I)無傷の先体(先端の分泌性小胞、下記参照)を有する精子が卵子の細胞外基質(透明帯(zona pellucida)、ZP)と相互作用する(Eddy, E. および O'brian, D. (1994) The Physiology of Reproduction, Knobil, E. および Neill, J.編集 New York, NY Raven Press 29-78ページ)、(ii)精子が先体反応を起こし、ZPに貫通する、(iii)静止が卵子の原形質膜に結合する、(iv)静止が卵子と融合し接合体を形成する。これらの過程の分析に関連する有望な研究の多くは、哺乳類受精のモデルシステムとしてマウスを使用して行われている。マウスのZPは、N−グリコシル化とO−グリコシル化された3つの分泌タンパク質であるZP1(200 kDa二量体タンパク質)、ZP2(120 kDa)、およびZP3(83 kDa)から構成される(Wassarman, P. (1988) Annu. Rev. Biochem. 57:415-442)。ZP2とZP3のポリペプチドは、構造的リピートから成るフィラメントを形成する。ZP2/ZP3のフィラメントは、ZP1によってクロスリンクされてZPマトリックスを形成する(Wassarman, P. (1999) Cell 96:175-183)。
【0012】
Nグリコシル化に欠陥のあるマウスは受精能力があり、Nグリコシル化がZP機能に必須ではないことを示唆する(Rosiere, T. および Wassarman, P. (1992) Dev. Biol. 154:309-317; Snell, W. および White, J. (1996) Cell 85:629-637; and Wassarman, P. 前出 に概説されている)。しかし、メスのマウスでの両ZP3対立遺伝子の標的破壊は、ZPの厚さと受精能力の減少をもたらした(Liu, C. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5431-5436; Rankin, T. 他 (1996) Development 122:2903-2910)。ZP1とZP2はZP3ほど広範に研究されていない。(i)限定的なタンパク質分解実験(Rosiere, T. および Wassarman, P. 前出)、(ii)ZP3糖タンパク質の限定した領域に対する抗体を用いた不活性化実験(Millar, S. (1989) Science 246:935-938)、エキソンスワッピング実験(Kinloch, R. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:263-267)から得られた結果に基づくと、マウスZP3遺伝子中の第7と第8のエクソンによってコードされる推定上のO−グリコシル化部位が先体結合に関与していた。粗雑な部位特異的変異導入実験は更に、424残基のZP3ポリペプチドで、必須のO−グリコシル化部位を328〜343の位置(両端を含む)中の5つのセリン残基(トレオニン残基は含まれない)に限定した(Kinloch, R. 他、前出)。興味深いことに、マウスとヒトのZP3ポリペプチドは、全体的に67%同一であり全ての認識されたドメインを共有するが、この重要な領域でほんの28%の同一である。このような系統発生データは、ZP3がポリペプチド分子として生物学的相互作用に参加するよりは、正しい糖部分の表示のための足場として主に機能している可能性がある(Rosiere, T. 前出、 Snell, W. および White, J. 前出、 Wassarman, P. 前出)。ZP3ポリペプチドの一次アミノ酸配列は、エクソン7領域で起こる特定のグリコシル化ほど先体結合に重要でない(Kinloch, R. 他 前出)。
【0013】
自己分泌型運動促進因子(AMF)は腫瘍細胞の遊走を調節する運動性サイトカインの1つであり、したがって、それに伴うシグナル伝達経路の同定は決定的に重要である。自己分泌型運動促進因子受容体(AMFR)の発現は、胸腺腫における腫瘍の進行に関連することが発見された(Ohta Y. 他(2000) Int. J. Oncol. 17:259264)。AMFRは、分子量78KDaの細胞表面糖タンパク質である。
【0014】
ホルモンは、血液循環により運ばれ、標的細胞の表面のまたは内部の特異的受容体に結合する分泌分子である。ホルモンは多様な生化学的組成や作用機構を持っているが、2つのカテゴリーに分類し得る。第1のカテゴリーは小さい親油性ホルモンで、標的細胞の原形質膜を通過して拡散し、サイトゾル内受容体または核内受容体に結合し、複合体を形成して遺伝子発現を改変する。これらの分子としては、レチノイン酸やチロキシンが、更には、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン、コルチゾール、アルドステロンなどの、コレステロール由来ステロイドホルモンがある。第2のカテゴリーに含まれる親水性ホルモンは、原形質膜の内側へ信号を伝達する細胞表面受容体に結合することで機能する。そのようなホルモンの例としては、アミノ酸の誘導体としてカテコールアミン類(エピネフリン、ノルエピネフリン)およびヒスタミンが、ペプチドホルモンとしてグルカゴン、インスリン、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、およびバソプレッシンがある(Lodish 他(1995)Molecular Cell Biology, Scientific American Books Inc., New York, NY, 856-864ページなど参照)。
【0015】
プロオピオメラノコルチン(POMC)は、脳下垂体前葉が合成するホルモンであるコルチコトロピン(ACTH)の前駆体ポリペプチドであり、副腎皮質の刺激で機能する。POMCはまた、βリポトロピンホルモン(β-LPH)の前駆体ポリペプチドでもある。各ホルモンは、固有の生物活性を持つより小さいペプチド群を含む。α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)と副腎皮質刺激ホルモン様中葉ペプチド(CLIP)はACTHから形成され、γ-リポトロピン(γ-LPH)とβ-エンドルフィンはβ-LPHのペプチド成分であるが、β-MSHはγ-LPH中に含有される。POMCのエキソン2および3における遺伝子突然変異に起因する、ACTH欠乏による副腎不全は、早期発症肥満症、副腎不全および赤毛色素沈着を特徴とする、内分泌障害を生じる(Chretien, M.他(1979)Can. J. Biochem. 57:1111-1121, Krude, H. 他(1998)Nat. Genet. 19:155-157, Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)176830)。
【0016】
成長因子および分化因子は、細胞間伝達の中で機能する分泌タンパク質である。いくつかの因子の活動には、オリゴマー形成が、または膜タンパク質との会合が必要である。それらの因子とそれらの受容体間の複雑な相互作用は、細胞分裂、細胞分化、細胞シグナル伝達および細胞運動性を刺激または抑制する、細胞内信号伝達経路の引き金となる。殆どの成長および分化因子は、その局所環境にある細胞に作用する(パラ分泌シグナル伝達)。成長因子および分化因子には3つの主要なクラスがある。第1のクラスには、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子、インシュリン様成長因子、および血小板由来の成長因子など、大きなポリペプチド成長因子を含む。第2のクラスには、コロニー刺激因子(CSF)のような造血性成長因子を含む。造血性成長因子類は、Bリンパ球、Tリンパ球、赤血球、血小板、好酸球、好塩基球、好中球、マクロファージ、およびそれらの幹細胞前駆体など、血液細胞の増殖および分化を刺激する。第3のクラスには、ボンベシン、バソプレッシン、オキシトシン、エンドセリン、トランスフェリン、アンジオテンシンII、血管作用性小腸ペプチド、およびブラジキニンなど、小さなペプチド因子類を含み、これらは増殖以外の細胞機能を調節するホルモンとして機能する。
【0017】
成長因子および分化因子は、in vitroでの細胞の腫瘍性転換、およびin vivoでの腫瘍進行において、幾つかの重大な役割を果たす。腫瘍細胞による、成長因子の不適正な発現は、腫瘍の血管新生および転移に寄与し得る。造血時の成長因子の調節異常によっては、貧血、白血病、およびリンパ腫が生じ得る。インターフェロンなど幾つかの成長因子は、in vitroおよびin vivoの双方で、腫瘍細胞群に対し細胞毒性を持つ。更に、幾つかの成長因子および成長因子受容体は、構造的にも機能的にも腫瘍性タンパク質類と関連する。加えて、成長因子は癌原遺伝子群および腫瘍抑制遺伝子群の双方の転写調節に影響を与える(Pimentel, E. (1994) Handbook of Growth Factors, CRC Press, Ann Arbor, MI, 1-9ページの概説を参照)。
【0018】
最初にショウジョウバエにおいて同定されたSlitタンパク質は、中枢神経系正中線形成およびおそらく神経組織の組織発生と軸索の誘導において重要である。Itoh他((1998) Brain Res. Mol. Brain Res. 62:175-186)は、slit遺伝子の哺乳類相同体(ヒト Slit-1、Slit-2、Slit-3 およびラット Slit-1)を同定した。コードされるタンパク質群は推定上の分泌タンパク質であり、EFG様モチーフおよびロイシンリッチリピートを持つが、これらは共に、保存されたタンパク質間相互作用ドメインである。Slit-1 mRNA、Slit-2 mRNAおよび Slit-3 mRNAは、それぞれ脳、脊髄、甲状腺に発現される(Itoh, A. 他、上記)。タンパク質のSlit ファミリーは神経組織内のglypican-1の機能性リガンドであることが示されており、それらの相互作用は中枢神経系の組織発生時の幾つかの段階において重要であり得ると示唆される(Liang, Y. 他(1999)J. Biol. Chem. 274:17885-17892)。
【0019】
神経ペプチドおよび血管介在物質(NP/VM)は、内因性シグナル伝達分子の1大ファミリーを構成する。NP/VMファミリーに含まれる分子は、神経ペプチドおよび神経ペプチドホルモンとして、ボンベシン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、ニューロメディンN、メラノコルチン類、オピオイド類、ガラニン、ソマトスタチン、タキキニン類、ウロテンシンIIおよび平滑筋刺激に関する関連ペプチド類、バソプレッシン、および血管作用性小腸ペプチドがある。また、循環系に運ばれるシグナル伝達分子として、アンジオテンシン、補体、カルシトニン、エンドセリン類、ホルミルメチオニルペプチド類、グルカゴン、コレシストキニン、およびガストリンがある。NP/VMは直接に信号を伝達し得る他、別の神経伝達物質およびホルモンの活性若しくは放出をモジュレートしたり、またカスケードで触媒酵素として機能することができる。NP/VMの効果は、ごく短時間のものから長期間持続するものまで幅広い(Martin, C.R. 他(1985)Endocrine Physiology, Oxford University Press, New York, NY, 57-62ページの概説を参照)。
【0020】
NP/VMは、多くの神経障害および心血管障害に関与する。例えば、神経ペプチドYは、高血圧症、鬱血心不全、情動障害、食欲調節に関与する。ソマトスタチンは、下垂体前葉での成長ホルモンおよびプロラクチンの分泌を阻害し、また、腸、膵臓腺房細胞、および膵臓β細胞内の分泌も阻害する。ソマトスタチンレベルの低下は、アルツハイマー病およびパーキンソン病で報告された。バソプレッシンは、腎臓内で水分吸収およびナトリウム吸収を増加させ、また高濃度では、血管平滑筋の収縮、血小板活性化、および肝臓内でのグリコーゲン分解を刺激する。バソプレッシンおよびその類似体は、尿崩症の治療のため臨床的に用いられる。エンドセリンおよびアンジオテンシンは高血圧症に関与し、アンジオテンシンの血漿レベルを減少させるカプトプリルなどの薬剤は、血圧を下げるのに用いられる(Watson, S.および S. Arkinstall(1994)The G-protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, 194、252、284、55、および111の各ページ)。
【0021】
神経ペプチドはまた、侵害受容(痛覚)にも役割を幾つか持つことが示されている。血管作用性小腸ペプチドは、慢性神経障害痛において重要な役割を果たすようである。オピオイド受容体様1受容体に対する内因性リガンドであるノシセプチンは、主に抗侵害受容作用を有すると考えられ、持続性の痛み若しくは慢性痛の、様々な動物モデルにおいて鎮痛特性を有している事が示された(Dickinson, T. および Fleetwood-Walker, S. M.(1998)Trends Pharmacol. Sci. 19:346-348)。
【0022】
シグナルペプチドを有する他のタンパク質として、酵素活性を持つ分泌タンパク質類がある。酵素活性としては、例えば、オキシドレダクターゼ/デヒドロゲナーゼ活性、トランスフェラーゼ活性、加水分解酵素活性、リアーゼ活性、異性化酵素活性、若しくはリガーゼ活性がある。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ類は細胞外マトリックスを分解する分泌性加水分解酵素であり、したがって、腫瘍転移、組織形態形成、および関節炎において或る重要な役割を果たす(Reponen, P. 他(1995)Dev. Dyn. 202:388-396; Firestein, G. S.(1992)Curr. Opin. Rheumatol. 4:348-354; Ray, J. M. およびStetler-Stevenson, W. G.(1994)Eur. Respir. J. 7:2062-2072; Mignatti, P.および Rifkin, D. B.(1993)Physiol. Rev. 73:161-195)。別の例は、脂質合成にまたはエネルギー生成に用いる酢酸を活性化するアセチルCoA合成酵素である(Luong, A. 他(2000)J. Biol. Chem. 275:26458-26466)。アセチルCoA合成酵素が活性化されると、酢酸とCoAからアセチルCoAが形成される。アセチルCoA合成酵素は、AMP結合ドメインシグネチャとして同定される或る配列類似性領域を共有する。アセチルCoA合成酵素は、高血圧との関連が示されている(Toh, H. (1991)Protein Seq. Data Anal. 4:111-117 およびIwai, N. 他(1994)Hypertension 23:375-380)。
【0023】
多くの異性化酵素は、タンパク質の折りたたみ、光伝達、および種々のタンパク質同化経路や異化経路における諸段階を触媒する。或るクラスの異性化酵素は、ペプチジルプロリルシス−トランス異性化酵素(PPIアーゼ)として知られる。PPIアーゼ類は、タンパク質内の特定のプロリンイミド結合の、シスからトランスへの異性化を触媒する。PPIアーゼの2つのファミリーが、FK506結合タンパク質(FKBP)とシクロフィリン(CyP)である。FKBP類が、共に強力な免疫抑制薬であるFK506とラパマイシンとに結合することにより、T細胞内の複数のシグナル伝達経路が抑制される。特に、FKBPのPPIアーゼ活性は、FK506 あるいはラパマイシンの結合によって阻害される。算出した分子量にしたがって名付けたFKBPファミリーの5つのメンバー(FKBP12、FKBP13、FKBP25、FKBP52および FKBP65)は、細胞の様々な領域に局在し、それらの領域で様々なタンパク質複合体と会合する、(Coss, M.他(1995)J. Biol. Chem. 270:29336-29341; Schreiber, S.L.(1991)Science 251:283-287)。
【0024】
CyPのペプチジルプロリル異性化酵素活性は、T細胞活性化につながるシグナル伝達経路の一部である可能性がある。CyP異性化酵素活性はタンパク質折りたたみおよびタンパク質輸送に関連しており、またタンパク質複合体の構築または分解、およびタンパク質活性の調節にも関与している可能性がある。例えば、ショウジョウバエにおいてCyP NinaA はロドプシンの正確な局在化に必要であり、哺乳類のCyP(Cyp40)はステロイド受容体に結合するHsp90/Hsc70 複合体の一部である。哺乳類CypAはヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)からのgagタンパク質と結合するが、この相互作用はシクロスポリンによって抑制し得ることが示されている。シクロスポリンは強力な抗HIV-1活性を有するので、CypAはHIV-1の複製において重要な機能を果たし得る。最後に、Cyp40は転写因子c-Mybに結合し、これを不活化することが示されているが、この作用はシクロスポリンによって逆転される。この作用は、転写、形質転換および分化の調節でのCyp類の関与を意味する(Bergsma, D.J. 他(1991)J. Biol. Chem. 266:23204 -23214; Hunter, T.(1998)Cell 92: 141-143; Leverson, J.D. および Ness, S.A.(1998)Mol. Cell. 1:203-211)。
【0025】
プロリンリッチγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)タンパク質(PRGP)類は、ビタミンK依存性1回貫通型膜内在性タンパク質ファミリーのメンバーである。PRGPタンパク質はGlaリッチなほぼ45アミノ酸の細胞外アミノ末端ドメインを特徴とする。細胞内カルボキシル末端領域には配列PPXYの1つまたは2つのコピーがあり、PPXYは、シグナル伝達、細胞周期進行、およびタンパク質代謝回転のような、細胞の多様な機能に関与する種々のタンパク質に存在するモチーフである(Kulman, J.D. 他, (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:1370-1375)。Glaを形成するグルタミン酸残基の翻訳後修飾過程は、ビタミンK依存性のカルボキシル化である。Glaを含むタンパク質としては、血液凝固に関与する血漿タンパク質類がある。これらのタンパク質とは、プロトロンビン、タンパク質C、SおよびZ、並びに血液凝固第VII因子、第IX因子および第X因子である。オステオカルシン(骨-Glaタンパク質、BGP)およびマトリックスGlaタンパク質(MGP)もまた、Glaを含む(Friedman, P.A.および C.T. Przysiecki(1987)Int. J. Biochem. 19:1-7; C. Vermeer(1990)Biochem. J. 266:625-636)。
【0026】
ショウジョウバエ遺伝子crossveinless 2の特徴は、まず、推定上のシグナル配列または膜貫通配列を持つことである。また、部分的なVon Willebrand (フォンウィルブランド)因子Dドメインをも持つが、このドメインは分子内結合と分子間結合の形成を調節することが知られるドメイン群に類似している。また、5ヶ所のシステインリッチドメインをも持つが、これらはBMP(骨形成タンパク質)様リガンド群を結合するとされている。これらの特徴は、crossveinless 2 が細胞外で作用するか、または分泌経路において、直接にリガンドのシグナル伝達を可能にするように作用し、したがって、翅脈特異化(vein specification)において或る役割を果たすとされているBMP様シグナル伝達経路に関与することを示唆する(Conley, C.A. 他(2000)Development 127:3947-3959)。脊椎動物およびショウジョウバエの胚における背腹軸形成(dorsal-ventral patterning)には、位置情報勾配(a positional informational gradient)を発生させるための細胞外タンパク質群の保存されたシステムを必要とする。
【0027】
免疫グロブリン
抗原認識分子群は、すべての脊椎動物が、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫による感染を防ぐために発達させてきた高度且つ複雑な免疫系において重要な役割を果たす。免疫系の主な特徴は、「自己」分子と外来分子すなわち抗原とを区別する能力である。認識、接着または結合などの機能を仲介する多くの細胞表面分子および可溶性分子は、進化における共通の前駆体から進化したものである(すなわち、これらのタンパク質は構造的類似性を示す)。同様の機能を持つ免疫系以外の数多くの分子も、この同じ進化上の前駆体に由来する。この能力は、リンパ球、顆粒球および単球のような白血球によって発現される分泌タンパク質および膜貫通タンパク質によって主に媒介される。これらのタンパク質の多くは、保存された構造ドメインの1つ以上のリピートを持つメンバーたる免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する。このIgドメインは、Igフォールド(折りたたみ)と呼ばれる或る配列でのジスルフィド結合によって接合されている、逆平行のβシート群から構成されている。タンパク質がIgスーパーファミリーのメンバーであるための基準は、1つ以上のIgドメインを持ち、それが70〜110アミノ酸残基の長さの領域であり、Ig可変領域様(V)ドメインまたはIg定常領域様(C)ドメインと相同であることである。Igスーパーファミリーのメンバーには抗体(Ab)、T細胞受容体(TCR)、クラスIおよびIIの主要組織適合性(MHC)タンパク質が、さらに、「分化クラスター」抗原すなわちCD抗原のCD2、CD3、CD4、CD8、ポリIg受容体、Fc受容体、 神経細胞接着分子(NCAM)および血小板由来成長因子受容体(PDGFR)など、免疫細胞特異的表面マーカー群が含まれる。これらの抗原を同定するには、系統的な、モノクローナル抗体(mAb)ベースの「ショットガン(shot gun)」技術が利用される。これらの技術によって、数百種のmAbが、未知の細胞表面白血球抗原類に対して産生されている。それらの抗原は「分化のクラスター群」へとグループ分けされている。分類は、多様な分化白血球細胞型と未分化白血球細胞型とで共通の、免疫細胞化学的な局在パターンに基づく。或るクラスター内の抗原群は或る単一の細胞表面タンパク質を同定すると仮定され、「分化クラスター」すなわち「CD(cluster of differentiation)」名が指定されている。CD抗原類が同定するタンパク質類をコードするいくつかの遺伝子が、標準的な分子生物学技術によってクローン化され、確証されている。CD抗原類の特徴は、膜貫通タンパク質であることと、細胞表面タンパク質であって脂肪酸含有糖脂質、例えばグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)への共有結合性の接着を介して原形質膜に固着されていることである(Barclay, A. N.他(1995) The Leucocyte Antigen Facts Book, Academic Press, San Diego, CA, 17-20ページの概説を参照)。
【0028】
Igドメイン(VおよびC)は保存されたアミノ酸残基の領域であり、ポリペプチドに、免疫グロブリン(または抗体)フォールドと呼ばれる球状3次構造を与える。これは、ほぼ平行なβシートの2層からなる。55〜75アミノ酸残基の長さをもつ、鎖内ジスルフィド結合ループを保存的なシステイン残基が形成し、2層のβシートを接続する。各βシートは、3または4本の逆平行βストランドを持ち、各ストランドは5〜10アミノ酸残基の長さである。βストランド群内のアミノ酸残基の疎水性および親水性の相互作用がIgフォールドを安定させる(疎水性領域はストランドの内向きに面しているアミノ酸残基にあり、親水性領域は外向きに面している部分のアミノ酸残基にある)。VドメインはCドメインより長いポリペプチドで構成され、Igフォールド内に、付加的な1対のβストランドを持つ。
【0029】
Igスーパーファミリー遺伝子の一貫した特徴は、あるIgドメインの各配列が1つのエキソンによってコードされることである。Igスーパーファミリーは、細胞間相互作用の仲介に関与する1つのIgドメインをコードする遺伝子から進化した可能性がある。そしてスーパーファミリーの新たなメンバーは、エキソンおよび遺伝子の複製によって生じた。現代のIgスーパーファミリータンパク質は、それぞれVおよび/またはCドメインの数が異なる。このスーパーファミリーの進化上の別の特徴は、DNAの再編成を起こす能力である。これは独自の機能で、ファミリーの抗原受容体メンバーが保持している。
【0030】
Igスーパーファミリーのメンバーの多くは膜内在性の形質膜タンパク質であり、細胞外Igドメインを持つ。それらの膜貫通ドメインおよびそれらの細胞質内尾部の疎水性アミノ酸残基は非常に多様で、Igファミリーのメンバー内または既知のシグナル伝達をする構造との相同性は少ないかまたは欠いている。スーパーファミリーに関するこの一般的な記述には例外がいくつかある。例えば、PDGFRの細胞質内尾部は、チロシンキナーゼ活性を持つ。また、Thy-1は、胸腺細胞およびT細胞で見られる糖タンパク質である。このタンパク質は細胞質内尾部を持たないが、その代わりに原形質膜に共有結合によるグリコシルホスファチジルイノシトール結合で固着している。
【0031】
Igスーパーファミリータンパク質の多くはまた、これらの分子の機能に必須の、Igドメイン間の相互作用という共通の特徴を持っている。多量体タンパク質のIgドメイン間の相互作用には、同種親和性のものと異種親和性(すなわち、同じIgドメイン間の作用、または異なるIgドメイン間の作用)のものがある。抗体は多量体タンパク質であり、Igドメイン間の同種親和性と異種親和性の双方の相互作用を持つ。重鎖の定常領域の対が抗体のFc領域を形成し、軽鎖および重鎖の可変領域の対が抗体の抗原結合部位を形成する。異種親和性の相互作用はまた、異なる分子のIgドメイン間でも起こる。これらの相互作用は免疫系における、または発生中および成熟した神経系における重要な細胞間相互作用のための細胞間の接着を提供する。(Abbas, A.K. 他(1991)Cellular and Molecular Immunology, W.B. Saunders Company, Philadelphia, PA, 142-145ページの概説を参照)。
【0032】
抗体
MHCタンパク質群は、外来抗原に結合し、これらをT細胞に提示する細胞表面マーカーである。MHC分子はクラスIまたはIIのどちらかに分類される。クラスIのMHC分子(MHC I)はほとんどすべての細胞表面に発現され、またキラーT細胞に対する抗原の提示に関与する。例えば、ウイルスに感染した細胞は細胞内ウイルスタンパク質を分解し、細胞表面のMHCI分子に結合したタンパク質断片を表現する。MHC I/抗原複合体はキラーT細胞によって認識され、キラーT細胞が感染した細胞とその中のウイルスを破壊する。クラスIIMHC分子はB細胞およびマクロファージのような免疫系の分化した抗原提示細胞で主に発現する。これらの細胞は細胞外液から外来タンパク質を取り込み、細胞表面にMHC II/抗原複合体を発現する。この複合体はヘルパーT細胞を活性化し、次にヘルパーT細胞が、免疫反応を刺激するサイトカインおよび他の因子を分泌する。MHC分子はまた、臓器移植後の臓器拒絶反応において重要な役割を果たす。拒絶反応は、移植受容者のT細胞群が、移植された臓器の外来MHC分子群に対し、外来抗原に結合した自己MHC分子群に対するのと同様に応答する場合に発生する(Alberts, B. 他 (1994) Molecular Biology of the Cell, Garland Publishing, New York, NY, 1229-1246ページの概説を参照)
抗体はIgスーパーファミリーの多量体メンバーであり、B細胞の表面で発現されるか、または、B細胞によって分泌されて血液循環に入る。抗体は、血液中や他の細胞外液中で外来抗原に結合し、それらを中和する。プロトタイプの抗体は、ジスルフィド結合によって連結された2つの同じポリペプチド重鎖(H鎖)と2つの同じポリペプチド軽鎖(L鎖)からなる四量体である。この配列は、抗体分子に対して特徴的なY型を形成する。抗体はH鎖組成に基づいて分類される。抗体の5つのクラスであるIgA, IgD, IgE, IgG およびIgMは、α、δ、ε、 γおよびμのH鎖型によって定義される。L鎖にはκとλの2つのタイプがあり、どちらも、対としていずれかのH鎖対に会合し得る。血液循環内に見られる抗体の最も一般的なクラスであるIgGは四量体であるが、抗体の他のクラスのものは一般にこの基本的構造の変異体か、または多量体である。
【0033】
H鎖とL鎖は各々、N末端可変領域とC末端定常領域を有する。定常領域はL鎖の約110のアミノ酸と、H鎖の約330または440のアミノ酸から構成される。定常領域のアミノ酸配列は、或る特定クラスのH鎖またはL鎖群の内では、ほぼ同一である。可変領域は約110のアミノ酸からなり、H鎖とL鎖の両方にある。しかし、可変領域のアミノ酸配列は、特定クラスのH鎖またはL鎖群の中でも異なる。H鎖またはL鎖の可変領域のそれぞれに、広範な配列多様性を持つ3つの高頻度可変領域があり、各々約5〜10のアミノ酸からなる。抗体分子において、H鎖およびL鎖の高頻度可変領域は1つになり、抗原認識部位を形成する( 前出のAlberts, B. 他1206-1213 ページと 1216-1217ページの概説を参照)。
【0034】
H鎖とL鎖は共に、Igスーパーファミリーのメンバーの、反復したIgドメインを含む。例えば、典型的なH鎖は4つのIgドメインを含んでおり、そのうちの3つは定常領域内に発生し、1つは可変領域内に発生して抗原認識部位の形成に寄与している。同様にして、典型的なL鎖は2つのIgドメインを含み、そのうちの1つは定常領域内に発生し、他の1つは可変領域内に発生する。
【0035】
免疫系は体内に入る外来分子を認識し、それに応答する能力を持っている。したがって、免疫系はすべての可能性のある抗原に対する抗体の完全な蓄積で武装していなければならない。このような抗体の多様性は、可変領域と定常領域とをコードする遺伝子セグメント群の体細胞性再配列によって作られる。これらの遺伝子セグメント群は、各々の遺伝子セグメントが隣接する高度に保存されたDNA配列間で生じる、部位特異的組換えによって連結されている。何百という異なった遺伝子セグメントがあるため、何百万という独自の遺伝子が、組み合わせにより作成され得る。その上、これらのセグメントの不正確な連結とこれらのセグメント内での異常に高頻度の体細胞性突然変異が、多様な抗体集団の産生に更に寄与している。
【0036】
新規の分泌タンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチド群の発見により、新規の組成物群を提供することで、当分野の要望に応えることができる。これら新規の組成物は、細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管疾患、神経系疾患、および発達障害の、診断・治療・予防において有用であり、また、分泌タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列の発現における外来性化合物群の効果についての算定にも有用である。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0037】
本発明は、総称して「SECP」、個別にはそれぞれ「SECP-1」、「SECP-2」、「SECP-3」、「SECP-4」、「SECP-5」、「SECP-6」、「SECP-7」、「SECP-8」、「SECP-9」、「SECP-10」、「SECP-11」、「SECP-12」、「SECP-13」、「SECP-14」、「SECP-15」、「SECP-16」、「SECP-17」、「SECP-18」、「SECP-19」、「SECP-20」、「SECP-21」、「SECP-22」、「SECP-23」、および「SECP-24」と呼ぶ分泌タンパク質である精製されたポリペプチドを提供する。或る実施態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一実施態様では、SEQ ID NO:1-24のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
【0038】
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドをコードするような単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-24を有する群から選択したポリペプチドをコードする。 別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:25-48を有する群から選択される。
【0039】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドをコードするようなポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を有する組換えポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体を提供する。
【0040】
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。 製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
【0041】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0042】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
【0043】
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。 ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:25-48を有する群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:25-48を有する群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一な天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、または(e)(a)〜(d)のRNA等価物を含む群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)サンプル中の前記の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む、少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)そのハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、プローブと標的ポリヌクレオチドあるいはその断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む。
【0044】
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一の天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)増幅された標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
【0045】
本発明は更に、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。そのポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群から選択される。一実施例では、その組成物は、SEQ ID NO:1−24からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む。 更に、本発明は、機能的SECPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0046】
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1−24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1−24からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを有するサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程とを含む。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、機能的SECPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0047】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列のポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択されたポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程とを含む。一実施態様で本発明は、この方法によって同定したアンタゴニスト化合物と薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、機能的SECPの過剰な発現に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、その内にはそのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0048】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-24からなる群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0049】
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0050】
更に本発明は、SEQ ID NO:25−48からなる群から選択されたポリヌクレオチド配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法を提供し、その方法には、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の変化を検出するステップと、(c)可変量の化合物の存在下と化合物の非存在下で標的ポリヌクレオチドの発現を比較するステップが含まれる。
【0051】
本発明は更に、(a)核酸を含む生物学的サンプルを試験化合物で処理する過程と、(b)少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて、処理した生物学的サンプルの核酸をハイブリダイズする過程を含む、試験化合物の毒性の算定方法を提供し、そのヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択したポリヌクレオチド、を含む群から選択される。ハイブリダイゼーションは、前記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、前記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:25-48からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(v)(I)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片と、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量との差は、試験化合物の毒性を意味する。
【0052】
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0053】
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には単数または複数の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物等についても言及しているのである。
【0054】
本明細書中で用いる全ての専門用語及び科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係があるであろう細胞、プロトコル、試薬及びベクターについて説明及び開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0055】
(定義)
用語「SECP」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたSECPのアミノ酸配列を指す。
【0056】
用語「アゴニスト」は、SECPの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。このアゴニストは、SECPに直接相互作用するか、或いはSECPが関与する生物学的経路の成分と作用して、SECPの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0057】
用語「対立遺伝子変異配列」は、SECPをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNAまたはポリペプチドからも作製し得る。ポリペプチドの構造または機能は、変異することもしないこともある。遺伝子は、天然の対立遺伝子変異体を全く有しないか、1個若しくは数個の天然の対立遺伝子変異体を有し得る。一般に対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は、ヌクレオチドの自然欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0058】
SECPをコードする「変異」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換が起こっても、SECPと同じポリペプチド或いはSECPの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当或いは予期しないハイブリダイゼーション、並びにSECPをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性を含む。コードされたタンパク質も「変異」し得るものであり、サイレント変化を生ぜしめて結果的に機能的に等価なSECPとなるようなアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にSECPの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似している非荷電極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似している非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンがある。
【0059】
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
【0060】
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅は通常、当業者によく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
【0061】
用語「アンタゴニスト」は、SECPの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、SECPに直接相互作用するか、或いはSECPが関与する生物学的経路の成分と作用して、SECPの活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
【0062】
用語「抗体」は、エピトープの決定基と結合することができる、そのままの免疫グロブリンやその断片、例えばFa、F(ab')2 及びFv断片を指す。SECPポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、そのままのポリペプチド、または関心のある小ペプチドを含む断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアータンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアーであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0063】
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体に結合するための無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0064】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸またはオリゴヌクレオチドを指す。アプタマーはin vitroの進化過程(例えば米国特許番号第5,270,163号に記載されたSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法))から由来するもので、そのような過程は大きな組み合わせライブラリから標的特異的なアプタマー配列を選択する。アプタマー組成は、2本鎖または1本鎖であってもよく、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、または他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド成分は、修飾された糖基(例えばリボヌクレオチドの2'-OH基が2'-Fまたは2'-NH2で置換し得る)を有することが可能で、そのような糖基はヌクレアーゼへの抵抗性または血液中でのより長い寿命などの望ましい性質に改善し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリアー等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、たとえば架橋剤の光活性化によって各々のリガンドと特異的に架橋させることができる(Brody, E.N. および L. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
【0065】
「イントラマー(intramer)」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味するたとえば、ワクシニアウィルスに基づくRNA発現系は、白血球の細胞質で特定のRNAアプタマーが高レベルで発現するために使用されている(Blind, M. 他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0066】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性のヌクレオチドを含むアプタマーは右旋性ヌクレオチドに作用する天然の酵素による分解に対して耐性がある。
【0067】
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖または2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシルまたは7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドがある。アンチセンス分子は、化学合成または転写を含む任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、ひとたび細胞に導入されたら、細胞が形成した天然の核酸配列と塩基対を形成し、転写または翻訳を妨害する二重鎖を形成する。「負」または「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」または「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味する。
【0068】
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のSECP、合成のSECPまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0069】
用語「相補的」は、塩基対合によってアニールする2つの一本鎖核酸配列間の関係を指す。例えば、配列「5'A-G-T3'」は、相補配列「3'T-C-A5'」と対を形成する。
【0070】
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この成分には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。SECP若しくはSECPの断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0071】
「コンセンサス配列」は、不確実な塩基を解決するために、DNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5'及び/または3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片構築システム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片構築用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片から構築された核酸配列を指す。伸長及び構築の両方を行ってコンセンサス配列を決定する配列もある。
【0072】
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換され得るアミノ酸と、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
【0073】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分を保持する。
【0074】
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
【0075】
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチド配列の化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
【0076】
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
【0077】
「示差発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または遺伝子発現の欠損またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、治療後サンプルと未治療のサンプルまたは病態のサンプルと正常サンプルの間で行われ得る。
【0078】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンがコードされたタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャーを再分類することによって、新しいタンパク質が組立てられることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0079】
用語「断片」は、SECPまたはSECPをコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば、或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、分子の特定領域から選択的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すような最初の250または500アミノ酸(またはポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施例では、配列表、表及び図面を含む明細書に裏付けされた任意の長さであってよい。
【0080】
SEQ ID NO:25−48の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:25−48を特定に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:25−48のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:25−48を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:25−48のある断片の正確な長さ及びその断片に対応するSEQ ID NO:25−48の領域は、その断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0081】
SEQ ID NO:1−24のある断片は、SEQ ID NO:25−48のある断片によってコードされる。SEQ ID NO:1−24のある断片は、SEQ ID NO:1−24を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1−24のある断片は、SEQ ID NO:1−24を特異的に認識する抗体の開発における免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1−24のある断片の正確な長さ及びその断片に対応するSEQ ID NO:1−24の領域は、その断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0082】
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0083】
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、または配列同一性を意味する。
【0084】
ポリヌクレオチド配列についての用語「一致率」または「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するために比較する配列において、標準化された再現性のある方法でギャップを挿入するので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0085】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、一式の分子生物学分析プログラム(DNASTAR, Madison WI)であるLASERGENEソフトウェアパッケージの一部である。CLUSTAL Vについては、Higgins, D.G.およびP.M. Sharp (1989) CABIOS 5:151-153及びHiggins, D.G.他 (1992) CABIOS 8:189-191の文献に記載されている。ポリヌクレオチド配列のペアワイズアラインメントの場合、デフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。デフォルトとして「重みづけされた」残基の重みづけ表を選択する。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vによって報告される。
【0086】
或いは、一般的に用いられ且つ自由に入手できる配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)から提供されており(Altschul, S.F. 他 (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410)、これはメリーランド州ベセスダにあるNCBI及びインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を含む幾つかの情報源から入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の直接のペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/b12.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に考察)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及びデフォルト設定に設定された他のパラメータと共に用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較する場合、ある者は「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)をデフォルトパラメータに設定して、blastnを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0087】
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さの一致率、例えば、より大きな定義されたポリペプチド配列から得られたある断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0088】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0089】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「%一致」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の酸性度及び疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(従って機能も)保存する。
【0090】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリぺプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定する。デフォルトの残基重み付け表としてPAM250マトリクスを選択する。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「類似率」として一致率を報告する。
【0091】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較をする場合、ある者は、デフォルトパラメータで設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12 (2000年4月21日)でblastpを使用するであろう。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0092】
Matrix:BLOSUM62
Open Gap: 11 及び Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、ある限定された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さの一致率、例えば、より大きな限定されたポリペプチド配列から得られたある断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、または150の連続した残基)の長さの一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片が、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0093】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全ての要素を含む直鎖状の微小染色体である。
【0094】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0095】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することを示すものである。アニーリングが許容される条件下で、特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成され、「洗浄」過程の後もハイブリダイズしたままになる。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、更にストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、本技術分野における当業者が慣例的に決定できる。許容条件はハイブリダイゼーション実験の間は一定でよいが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験中に変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0096】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄ステップを実行する温度を基準にしてある程度表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特異配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0097】
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約0.1%のSDSの存在の下、68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異的ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlの変性サケ精子DNAがある。例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションのような特定条件下では、有機溶剤、例えば約35〜50%(v/v)の濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。このような類似性は、ヌクレオチド及びヌクレオチドにコードされるポリペプチドに対する類似の役割を強く示唆している。
【0098】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
【0099】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
【0100】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0101】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすSECPのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。用語「免疫原性断片」はまた、本明細書で開示するまたは当分野で周知のあらゆる抗体生産方法に有用なSECPのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を含む。
【0102】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
【0103】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
【0104】
用語「調節」は、SECPの活性の変化を指す。例えば、調節によって、SECPのタンパク質活性、或いは結合特性、またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0105】
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語は、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるか或いはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0106】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。同一のリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を接続する必要がある場合、一般に、機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。
【0107】
「ペプチド核酸(PNA)」は、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指し、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに連結した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む。末端のリシンは、組成物に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに選択的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0108】
SECPの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾を含まれ得る。これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、SECPの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
【0109】
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、SECPやそれらの相補体、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に結合したものである。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬、及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
【0110】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書に裏付けされた任意の長さのヌクレオチドを用いることができるものと理解されたい。
【0111】
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J. 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M. 他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis 他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0112】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得たものを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、従ってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「ミスプライミングライブラリ」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように変更してもよい)。PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0113】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばのSambrookらの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部を付加、置換または欠失した変異核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
【0114】
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物ないで防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0115】
「調節エレメント」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を調節する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0116】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分がある。
【0117】
本明細書において、DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0118】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。SECP、SECPをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0119】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存していることを意味している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
【0120】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましいくは90%以上除去されたものを指す。
【0121】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0122】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0123】
「転写イメージ」または「発現プロフィール」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0124】
「形質転換」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、ウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0125】
ここで用いる「遺伝形質転換体」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個若しくは数個の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られている形質転換技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの導入によって行う。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いは試験管内受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合(transconjugation)によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他 (1989) 等の参考文献に与えられている。
【0126】
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の同一性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体または「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子とかなりの同一性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、ヌクレオチドがより多くまたはより少数の塩基を有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメインを有するか或いは参照分子に存在するドメインが欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸同一性を有する。多型性変異体は、与えられた種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
【0127】
特定のポリペプチド配列の「変異体」とは、デフォルトパラメータ設定の「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9 (1999年5月7日)を用いるblastpによって、ある核酸配列のある長さに対する該特定のポリペプチド配列の同一性が、少なくとも40%と決定されたポリペプチド配列のことである。このようなポリペプチド対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0128】
(発明)
本発明は、新規のヒト分泌タンパク質群(SECP)および、SECPをコードするポリヌクレオチド群の発見に基づく。また、これらの組成物を利用した、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性障害、心血管障害、神経障害、および発達障害の、診断、治療、および予防の開発に基づく。
【0129】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)と相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。
【0130】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースに対するBLAST分析によって同定された、SEQ ID NO:1-2、SEQ ID NO:10-13およびSEQ ID NO:17-22のポリペプチドとの相同性を有する配列を示している。列1および列2は、SEQ ID NO:1-2、SEQ ID NO:10-13およびSEQ ID NO:17-22のポリペプチド、および、それらに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBankの識別番号(Genbank ID NO :)を示す。列4は、各ポリペプチドとそのGenBank相同体との間の一致を表す確率スコアを示す。列5は、GenBankデータベース相同体の注釈を示し、更に該当箇所には適当な引用文も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0131】
表3は、本発明の各ポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyteポリペプチド ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。これには、シグナルペプチドの位置(「シグナルペプチド」および/または「signal_cleavage」として示す)を含む。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0132】
表2および3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が、請求の範囲に記載されたポリペプチドが分泌タンパク質であることを確立している。例えば、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)で決定されるように、SEQ ID NO:1は、C101残基からC449残基までシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のペクチンアセチルエステラーゼ(GenBank ID g6478931)と30%同一である(図2参照)。BLAST確率スコアは1.1e-22であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、シグナルペプチドを有するが、これは、保存されたタンパク質ファミリードメインのHMMERデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。別の例において、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定されるようにSEQ ID NO:2 はM1残基からD185残基までヒトの膵炎関連タンパク質(PAP) (GenBank ID g482909) に76%同一である(表2参照)。BLAST確率スコアは7e-76であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:2はまた、1つのレクチンCタイプドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:2 が膵炎関連タンパク質である、さらに実証的な証拠を提供する。CタイプのレクチンドメインがPAPで見つけられることに注目されたい。別の例として、SEQ ID NO:7-9はシグナルペプチドを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて統計的に有意な一致の検索をHMMERアルゴリズムを用いて決定された。Spscanからのデータは、SEQ ID NO:7-9が分泌タンパク質であることを示す更に確証的な証拠を提供する。また他の例として、SEQ ID NO:13は、M1残基からF331残基まで、ヒトの妊娠特異的β-1−糖タンパク質(GenBank ID g190647)と99%同一であることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは4.1e-181であり、それは偶然に観測されたポリペプチド配列を得る確率を示す。SEQ ID NO:13はまた、免疫グロブリンドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3を参照)。代わりの例として、SEQ ID NO:19は、S177残基からP317残基まで、マウス分泌ポリペプチドのZSIG37(GenBank ID g6274477)に40%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは6.6e-18であり、これは観察されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:19はまた、C1qドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3を参照)。BLIMPS及びMOTIFS解析よりのデータは、SEQ ID NO:19がC1qドメインをもつ分泌ポリペプチドであることをさらに確証する証拠を提供する。他の例においてSEQ ID NO:20 はW9残基からA631残基まで、ラットのマウスの透明帯(ZP)1 糖タンパク(GenBank ID g2804566)に68%の同一性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは3.7e-230であった。また、SEQ ID NO:20 は1つのZPドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:20 がZP関連蛋白質である、さらに実証的な証拠を提供する。他の例においてSEQ ID NO:21 は、L11残基からS320残基まで、ヒトの免疫グロブリンスーパーファミリーメンバータンパク質(GenBank ID g7767239)に42%の同一性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは5.9e-77であった。また、SEQ ID NO:21 は免疫グロブリンドメインを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS解析よりのデータは、SEQ ID NO:21 が免疫グロブリンスーパーファミリのメンバーある、さらに実証的な証拠を提供する。他の例においてSEQ ID NO:22 は、M1残基からD225残基まで、マウスのgliacolin(グリア細胞で発現されるC1q様タンパク質)(GenBank ID g10566471)に96%の同一性があるが、これはBLAST 分析によって確認され、その確率スコアは1.2e-137であった。また、SEQ ID NO:22 は1つのC1qドメイン、およびC1qタンパク質に特徴的な1つのコラーゲンリピートモチーフを有し、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された。BLIMPS及びMOTIFS解析よりのデータは、SEQ ID NO:22がC1q関連ポリペプチドであることをさらに確証する証拠を提供する。SEQ ID NO:3−6、SEQ ID NO:10−12、SEQ ID NO:14−18、およびSEQ ID NO:23−24 は同様にして解析し、注釈付けをされた。SEQ ID NO:1−24の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
【0133】
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせて構築した。列1は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)、本発明の各ポリヌクレオチドに対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、および各ポリヌクレオチド配列の長さを塩基対で示している。列2は、本発明の全長ポリヌクレオチド配列を構築するために使われたcDNA配列および/またはゲノム配列のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示し、またSEQ ID NO:25−48を同定するための、またはSEQ ID NO:25−48と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するための技術(例えば、ハイブリダイゼーション技術または増幅技術)で有用なポリヌクレオチド配列の断片のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示す。
【0134】
表4の列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、例えば組織特異的なcDNAライブラリから由来したIncyte cDNA、またはプールしたからcDNAライブラリから由来したIncyte cDNAを特異的に指す場合もある。或いは列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチド配列の構築に寄与するGenBank cDNAまたはESTを指す場合もある。さらに、列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、英国ケンブリッジ)データベース(即ち「ENST」命名を含む配列)から由来した配列を同定する場合がある。或いは、列2に記載されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列2記載されたポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方からなる群を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 のように識別されたポリヌクレオチド配列は「スティッチされた」配列であり、その内、XXXXXXはアルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号であり、YYYYYはアルゴリズムにより生み出される予測の数であり、N1,2,3...がある場合には、解析中に手動で編集された特定のエキソンを表す(実施例5参照)。または、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンの集合を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nのように識別されるポリヌクレオチド配列は「ストレッチ」配列の識別番号である。ここでXXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号、またはNCBI RefSeq識別番号、Nは特定のエキソンである(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別番号(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0135】
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、または組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
【0136】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0137】
表5は、Incyte cDNA配列を用いて構築された完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列を構築及び確認するために用いられるIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表されるIncyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織及びベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0138】
本発明はまた、SECPの変異体も含む。好適なSECPの変異体は、SECPアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、あるいは少なくとも約90%、さらには少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有し、SECPの機能的または構造的特徴を少なくとも1つ含む変異体である。
【0139】
本発明はまた、SECPをコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施例において、本発明は、SECPをコードするSEQ ID NO:25-48からなる群から選択した配列を含むポリヌクレオチド配列を含む。配列表に示したSEQ ID NO:25-48のポリヌクレオチド配列は、窒素系塩基のチミンがウラシルに置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる等価RNA配列を含む。
【0140】
本発明はまた、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の或る実施態様では、SEQ ID NO:25−48からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、または少なくとも約95%もの一致率を有するようなSEQ ID NO:25−48からなる群から選択された配列を有するポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。上記の任意のポリヌクレオチドの変異体は、SECPの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するアミノ酸配列をコードし得る。
【0141】
さらに、或いは別法では、本発明のポリヌクレオチド変異体は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列のスプライス変異体である。スプライス変異体は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列と有意な配列同一性をもつ部分であり得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって生じるブロックの配列の追加または欠損のため、その変異体は通常、より多くまたはより少数のヌクレオチドを有することになる。スプライス変異体は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列とその全長にわたって、約70%以下の、或いは約60%以下の、或いは約50%以下のポリヌクレオチド同一性を有することがありうるが、スプライス変異体の部分は、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の部分に、少なくとも約70%の、或いは少なくとも約85%の、或いは100%のポリヌクレオチドの配列同一性を有することになる。例えば、SEQ ID NO:36の配列を持つ或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:47の配列を持つポリヌクレオチドのスプライス変異体であり、またSEQ ID NO:42の配列を持つ或るポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:48の配列を持つポリヌクレオチドのスプライス変異体である。上記のスプライス変異配列は何れも、SECPの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードすることができる。
【0142】
遺伝暗号の縮重により作り出され得るSECPをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、自然発生する任意の既知の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るようなありとあらゆる可能性のあるポリヌクレオチド配列変異体を網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のSECPのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全てのそのような変異が明確に開示されているとみなす。
【0143】
SECPをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、好適に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のSECPのヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するSECP或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えないで、SECP及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
【0144】
本発明はまた、SECP及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後にこの合成配列を、当分野で良く知られた試薬を用いて、種々の入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、SECPまたはその任意の断片をコードする配列の中に突然変異を導入することも可能である。
【0145】
更に本発明には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:25-48およびそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511等を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
【0146】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Pharmacia Biotech, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Life Technologies, Gaithersburg MD)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics, Sunnyvale CA)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(例えば、Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, 7.7ユニット、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページを参照)。
【0147】
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法で、部分的なヌクレオチド配列を利用して、SECPをコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する方法である(Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic 2:318-322等を参照)。別の方法に逆PCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、既知のゲノム遺伝子座及びその周辺の配列からなる制限酵素断片から得る(Triglia, T.他 (1988) Nucleic Acids Res 16:8186等を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(Lagerstrom, M.他(1991) PCR Methods Applic 1:111-119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及び連結反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、未知の配列を検索するために用い得る別の方法については当分野で知られている(Parker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060等を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリをスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部を見付けるのに有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0148】
完全長cDNAをスクリーニングする際は、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5'領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリは、5'非転写調節領域への配列の伸長に有用であろう。
【0149】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0150】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を組換えDNA分子にクローニングして、適切な宿主細胞内にSECP、その断片または機能的等価物を発現させることが可能である。遺伝暗号に固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をSECPの発現に利用可能である。
【0151】
種々の目的でSECPをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0152】
本発明のヌクレオチドを、MOLECULARBREEDING (Maxygen Inc., Santa Clara CA; 米国特許第5,837,458号; Chang, C.-C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797; Christians, F.C. 他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264; Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319)などのDNAシャフリング技術を用いてシャフリングして、SECPの生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのSECPの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。ライブラリはその後、その遺伝子変異体を所望の特性に同定するような選択またはスクリーニングにかける。次にこれらの好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリング及び選択/スクリーニングを行ってもよい。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を有する単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングすることができる。或いは、所定の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、指図された制御可能な方法で最大化させることができる。
【0153】
別の実施例によれば、SECPをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215-223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225-232を参照)。別法として、化学的方法を用いてSECP自体またはその断片を合成することが可能である。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ、Roberge, J.Y. 他 (1995) Science 269:202-204等を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にSECPのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の変更、及び/または他のタンパク質の配列または任意のその一部からの配列との組み合わせにより、天然のポリペプチド配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0154】
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.及び F.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421等を参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
【0155】
生物学的に活性なSECPを発現させるために、SECPをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳の調節に必要な要素を含む。これらの要素には、ベクター及びSECPをコードするポリヌクレオチド配列におけるエンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域などの調節配列が含まれる。このような要素は、長さ及び特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、SECPをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。このようなシグナルには、ATG開始コドンと、コザック配列などの近傍の配列が含まれる。SECPをコードする配列及びその開始コドン、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写調節シグナルや翻訳調節シグナルは必要なくなるであろう。しかしながら、コーディング配列或いはその断片のみが挿入された場合は、インフレームのATG開始コドンを含む外来性の翻訳調節シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳要素及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。発現の効率は、用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを包含することによって高めることができる(Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162.等を参照)。
【0156】
当業者に周知の方法を用いて、SECPをコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, 及び16-17章; 及び Ausubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章及び13章1−4章を参照)。
【0157】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、SECPをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌などの微生物等や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルスTMV)または細菌発現ベクター(例えばTiプラスミドまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系がある(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. 及び S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307-311、『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ、Logan, J. 及び T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクターまたは種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ポリヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他 (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M. 他 (1985) Nature 317(6040):813-815; McGregor, D.P. 他 (1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M. および N. Somia (1997) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
【0158】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、SECPをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはPSPORT1プラスミド(Life Technologies)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。ベクターのマルチクローニング部位にSECPをコードする配列を連結反応するとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509 等を参照)。例えば、抗体の産生のためなどに多量のSECPが必要な場合は、SECPの発現をハイレベルで誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0159】
酵母の発現系を使用してSECPを産出し得る。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質を分泌或いは細胞内への保持のいずれかに誘導し、安定した増殖のために外来配列の宿主ゲノムへの組込みを可能にする(前出のAusubel (1995)、Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol. 153:516544、 Scorer, C.A. 他 (1994) Bio/Technology 12:181-184等を参照)。
【0160】
植物系を使用してSECPを発現することも可能である。SECPをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独あるいはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合せて用いられるようなCaMV由来の35Sおよび19Sプロモーターによって促進される(Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307311)。或いは、RUBISCOの小サブユニット等の植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを用いてもよい(Coruzzi, G. 他 (1984) EMBO J. 3:16711680、 Broglie, R. 他 (1984) Science 224:838843、 Winter, J. 他 (1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85105等を参照)。これらの構成物は、直接DNA形質転換または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ等を参照)。
【0161】
哺乳動物細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にSECPをコードする配列を連結し得る。アデノウイルスゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入することにより、感染した宿主細胞にSECPを発現する生ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0162】
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ且つプラスミドから発現するものより大きなDNAの断片を輸送することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACを作製し、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat Genet.15:345-355.を参照)。
【0163】
哺乳動物系の組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるSECPの安定した発現が望ましい。例えば、発現ベクターを用いて、SECPをコードする配列を株化細胞に形質転換することが可能である。このような発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素及び/または内因性の発現要素や、同じベクター上に或いは別のベクター上に選択マーカー遺伝子を含み得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間細胞を増殖させることができる。選択可能マーカーの目的は選択培地への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーが存在することにより、導入された配列をうまく発現するような細胞の成長及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
【0164】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr−細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223-232、Lowy, I. 他 (1980) Cell 22:817-823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質或いは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシッドネオマイシン及びG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(Wigler, M. 他 (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567-3570、Colbere-Garapin, F. 他 (1981) J. Mol. Biol. 150:1-14 等を参照)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C.及び R.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051等を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、形質転換体を同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することも可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131等を参照)。
【0165】
マーカー遺伝子発現の存在/不存在によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在及び発現の確認が必要な場合もある。例えば、SECPをコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、SECPをコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定可能である。または、1つのプロモーターの制御下でマーカー遺伝子がSECPをコードする配列とタンデムに配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子も発現していることを意味する。
【0166】
一般に、SECPをコードする核酸配列を含み且つSECPを発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNAハイブリダイゼーション或いはDNA-RNAハイブリダイゼーション、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出、定量、或いはその両方を行うための膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含むタンパク質の生物学的検定法または免疫学的検定法がある。
【0167】
特異的ポリクローナル抗体または特異的モノクローナル抗体を用いてSECPの発現の検出及び計測を行うための免疫学的方法は、当分野で公知である。このような技術の例としては、酵素に結合した免疫吸着剤検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメーター(FACS)などが挙げられる。SECP上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. 他 (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ等を参照)。
【0168】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。SECPをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、SECPをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブの生成のためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6等の好適なRNAポリメラーゼ及び標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Pharmacia Biotech、Promega(Madison WI)、およびU.S. Biochemical等から市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子或いは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子の他、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤等がある。
【0169】
SECPをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養され得る。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、或いはその両者に依存する。SECPをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過してのSECPの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0170】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現を調節する能力または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、フォールディング及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
【0171】
本発明の別の実施例では、SECPをコードする天然の核酸配列、変更された核酸配列、または組換えの核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列に連結させ得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラSECPタンパク質が、SECP活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分及び異種ペプチド部分も、市販されている親和性基質を用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-myc及び赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販されているモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、SECPをコードする配列と異種タンパク質配列との間にあるタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、SECPが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現及び精製方法は、前出のAusubel (1995) 10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現及び精製を促進することもできる。
【0172】
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したSECPの合成が可能である。これらの系は、機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳を、T7、T3またはSP6プロモーターとカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0173】
本発明のSECPまたはその断片を用いて、SECPに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つ以上の試験化合物を用いて、SECPへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物の例には、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)または小分子が挙げられる。
【0174】
ある実施態様では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのSECPの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的に擬似のパートナーまたは天然の結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2): 5章などを参照)。同様に、化合物は、SECPが結合する天然受容体、あるいは例えばリガンド結合部位などの少なくとも受容体のある断片に密接に関連する場合がある。何れの場合も、既知の技術を用いてこの化合物を合理的に設計することができる。ある実施態様では、このような化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質あるいは細胞膜上のタンパク質のいずれか一方としてSECPを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。SECPを発現する細胞またはSECPを含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、SECPまたは化合物のいずれかの結合、刺激または阻害を分析する。
【0175】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識によりその結合を検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中のあるいは固体支持物に固定されたSECPと混合させるステップと、SECPとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
【0176】
本発明のSECPまたはその断片を用いて、SECPの活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト、または逆アゴニスト等が含まれる。ある実施態様では、SECPの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物をSECPと混合し、試験化合物の存在下でSECPの活性を試験化合物不在下でのSECPの活性と比較する。試験化合物の存在下でのSECPの活性の変化は、SECPの活性を調整する化合物の存在を示唆する。別の実施態様において、試験化合物をSECPの活性に適した条件下でSECPを含むin vitroまたは無細胞再構成系と結合させてアッセイを実施する。これらアッセイのいずれかにおいて、SECPの活性を調整する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0177】
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを用いて動物モデル系内で、SECPまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R. (1989) Science 244:1288-1292)等のマーカー遺伝子で破壊した目的の遺伝子を含むベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-43 30)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、可能性のある治療薬や毒性薬剤で検査することができる。
【0178】
SECPをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145-1 147)。
【0179】
SECPをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組み換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、SECPをコードするポリヌクレオチドのある領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別の実施態様において、例えばSECPを乳汁内に分泌するなどSECPを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0180】
(治療)
SECPのいくつかの領域と分泌タンパク質群との間には、例えば配列およびモチーフの文脈における、化学的および構造的類似性が存在する。また、SECPを発現する組織の数例は、表6を見られたい。このように、SECPは、細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管疾患、神経系疾患、および発達異常において、或る役割を果たすと考えられる。SECPの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、SECPの発現または活性を低下させることが望ましい。また、SECPの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、SECPの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0181】
したがって、一実施態様において、SECPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にSECPまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないが、そのような疾患のうち、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症性疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血症、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー皮膚炎、皮膚筋炎、真性糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、胎児赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、慢性関節リウマチ炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、心血管疾患の中には、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化、僧帽弁逸脱、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、及び心臓移植の合併症、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、大動脈冠状動脈バイパス手術が含まれ、神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核部変性症、及び家族性の前頭側頭性健忘症が含まれ、また発達障害の中には、尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれる。
【0182】
別の実施態様では、SECPまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与して、上記しだけに限られるものではないが疾患を含むSECPの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0183】
さらに別の実施態様では、実質的に精製されたSECPを含む組成物を好適な医薬用キャリアと共に患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むSECPの発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
【0184】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むSECPの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、SECPの活性を調節するアゴニストを患者に投与することも可能である。
【0185】
更なる実施例では、SECPの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にSECPのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した細胞増殖異常、自己免疫/炎症疾患、心血管疾患、神経系疾患、および発達異常が含まれる。一実施態様では、SECPと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはSECPを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶ標的化機構、或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0186】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むSECPの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、SECPをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを患者に投与することも可能である。
【0187】
別の実施例では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従ってを選択し得る。治療薬と組み合わせることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0188】
SECPのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。詳しくは、精製されたSECPを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてSECPと特異的に結合するものの同定が可能である。SECPに対する抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えばラクダまたはラマから)は、強力な酵素阻害剤となる可能性があり、ペプチドミメティックの設計と免疫吸着体とバイオセンサーの開発で有益と成り得る(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0189】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、SECPまたは任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0190】
SECPに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなり、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものが好ましい。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。SECPのアミノ酸群の短い区間を、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、キメラ分子に対する抗体を産生し得る。
【0191】
SECPに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D. 他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P. 他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
【0192】
更に、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの、「キメラ抗体」作製のために発達した技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81−4851−4855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604-608; Takeda, S.他 (1985) Nature 314:452,454を参照)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、SECP特異的一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
【0193】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンライブラリまたはパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他 (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837、Winter, G. 他 (1991) Nature 349:293-299等を参照)。
【0194】
SECPに対する特異的な結合部位を含む抗体も得ることができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、モノクローナルFab断片を所望の特異性と迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. 他 (1989) Science 246:1275-1281等を参照)。
【0195】
種々のイムノアッセイを用いてスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的結合アッセイ、または免疫放射定量測定法のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。通常このような免疫測定法には、SECPとその特異性抗体との間の複合体の計測が含まれる。二つの非干渉性SECPエピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0196】
放射免疫測定法技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、SECPに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でSECP抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。多数のSECPエピトープに対して親和性が不均一なポリクローナル抗体試薬のKaは、SECPに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。特定のSECPエピトープに単一特異的なモノクローナル抗体試薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012liter/molの高親和性抗体試薬は、SECP抗体複合体が過酷な処理に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が106〜107liter/molの低親和性抗体試薬は、SECPが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. 及び Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0197】
ポリクローナル抗体試薬の抗体価及び結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質及び適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体試薬は一般に、SECP抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(例えば、Catty、前出、Coligan 他、前出を参照)。
【0198】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列が、治療目的で使用することができる。ある実施態様では、SECPをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、または修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはより大きな断片が、SECPをコードする配列の制御領域から、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S.編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ 等を参照)。
【0199】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を好適な標的細胞に導入するのに好適な任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を発現する発現プラスミドの形で細胞内に送達することが可能である(Slater, J.E. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475 及び Scanlon, K.J. 他 (1995)9(13):1288-1296.等を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W. 及び W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347等を参照)。その他の遺伝送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217-225; Boado、R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736. 等を参照)。
【0200】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M.他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損症(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損症(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475-480、Bordignon, C.他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J.他 (1993) Cell 75:207-216: Crystal、R.G.他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G.他. (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. および Somia. N. (1997) Nature 389:239-242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生生物(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV))(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poescbla, E.他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生菌、並びに熱帯熱マラリア原虫及びクルーズトリパノソーマ等の原虫寄生生物に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。SECPの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からSECPを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0201】
本発明の更なる実施例では、SECPの欠損による疾患や異常症は、SECPをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってSECP欠損細胞に導入することによって治療する。in vivo或いはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、及び(v)DNAトランスポソンの使用がある(Morgan, R.A. 及び W.F. Anderson (1993) Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z. (1997) Cell 91:501-510; Boulay, J-L. 及びH. Recipon (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)。
【0202】
SECPの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、限定するものではないが、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV (Stratagene, La Jolla CA)、PTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG (Clontech, Palo Alto CA)が含まれる。SECPを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. 及び H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769; Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するSECPをコードする内因性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0203】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPerFect Lipid Transfection Kit)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修飾が必要である。
【0204】
本発明の別の実施例では、SECPの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症は、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でSECPをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A. および A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。RIGGに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞系を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0205】
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、SECPの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にSECPをコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングについては、当業者に公知である。複製に欠陥のあるアデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島内に導入するのに融通がきくことが証明された(Csete, M.E. 他 (1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544 及び Verma, I.M. 及び N. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
【0206】
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、SECPの発現に関連する1つ或いは複数の遺伝子異常を有する標的細胞にSECPをコードするポリヌクレオチドを送達する。単純ヘルペスウイルス(HSV)系のベクターは、HSV親和性の中枢神経細胞にSECPを導入する際に特に有用であり得る。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519-532 及び Xu, H. 他 (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0207】
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてSECPをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターがSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. 及び K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのキャプシッドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてキャプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、SECPをコードする配列をαウイルスゲノムのキャプシッドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のSECPをコードするRNAが産生され、高いレベルでSECPが合成される。αウイルスの感染は、通常、数日以内での細胞溶解に関係するが、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解複製を遺伝子治療に適用できるように好適に変更可能であることを示唆している(Dryga, S.A. 他 (1997) Virology 228 :74-83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にSECPを導入することできる。或る集団におけるサブセットの細胞の特定形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0208】
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位とは例えば開始部位から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために十分に開くような二重らせんの能力を阻害するので、三重らせん塩基対形成は有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E. 他 (1994) in: Huber, B.E.及び B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163-177ページ等を参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
【0209】
リボザイムは酵素性RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、人工的に作製されたハンマーヘッド型リボザイム分子が、SECPをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒できる可能性がある。
【0210】
任意のRNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対して標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
【0211】
本発明の相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。任意の方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、SECPをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞系、細胞または組織内に導入することができる。
【0212】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾には、分子の5'末端、3'末端、あるいはその両方においてフランキング配列を追加したり、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオネートまたは2' O-メチルを使用したりすることが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、これら全ての分子に拡大することができる。それには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものの他、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を加えることでできる。
【0213】
本発明の更なる実施例は、SECPをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、SECPの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、SECPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、SECPの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、SECPをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0214】
特異ポリヌクレオチドの変異発現における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販のまたは専売の、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。SECPをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルには例えば、未処理のそのままの細胞、透過化処理した細胞、無細胞再構成系または再構成生化学系があり得る。SECPをコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、SECPをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ若しくは複数の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を変異する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの変異発現に有効な化合物に対して、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞系(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の特定の実施例は、特異的ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性のためのオリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾オリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングすることに関与している(Bruice, T.W. 他 (1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W. 他 (2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0215】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(Goldman, C.K. 他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466.等を参照)。
【0216】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル等の哺乳動物を含めて治療が必要な全ての対象に適用できる。
【0217】
本発明の追加実施例は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、SECP、SECPの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはSECPのインヒビターなどからなる。
【0218】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0219】
肺から投与する組成物は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば従来の低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0220】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する成分が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0221】
SECPまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に送達するべく、特殊な形態に組成物が調製されるのが好ましい。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。別法では、SECPまたはその断片をHIV Tat-1タンパク質の陽イオン性N末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質は、マウスモデル系で、脳を含む全ての組織の細胞に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569-1572)。
【0222】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌ、サルまたはブタ等において、先ず治療有効量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0223】
治療有効量は、症状や容態を回復させる活性処方成分(例えば、SECPまたはその断片、SECPの抗体、SECPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなど)量を意味する。治療有効度及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトに用いるための投与量の範囲を調剤するのに用いられる。このような組成物が含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
【0224】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の通常の健康状態、患者の年齢、体重及び性別、投与の時間及び頻度、薬剤の配合、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0225】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
【0226】
(診断)
別の実施例では、SECPに特異的に結合する抗体が、SECPの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはSECPやSECPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合される。SECPの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織から採取されたものからSECPを検出する方法が含まれる。抗体は、修飾して或いは修飾しないで使用し、レポーター分子の共有結合性或いは非共有結合性の付着によって標識化し得る。多様なレポーター分子が本技術分野で知られており、それらを用いることができる。幾つかのレポーター分子については上記した。
【0227】
SECPを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変わった或いは異常なレベルのSECPの発現を診断する元となるものを提供する。正常或いは標準的なSECPの発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とSECPに対する抗体とを混合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者、対照、及び疾患生検組織からの各サンプルのSECPの発現の量が基準値と比較される。標準値と被験者との偏差が疾患を診断するパラメータとなる。
【0228】
本発明の別の実施例では、SECPをコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るSECPを発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、SECPの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のSECP値の調節を監視する。
【0229】
一実施形態では、SECPまたは近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、SECPをコードする核酸配列を同定することが可能である。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントによって、そのプローブがSECPをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかが決まるであろう。
【0230】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、SECPをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:25−48の配列、或いはSECP遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0231】
SECPをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、SECP及びSECP誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
SECPをコードするポリヌクレオチド配列を用いて、SECPの発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定するものではないが、そのような疾患のうち、細胞増殖異常の中には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ、自己免疫/炎症性疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血症、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ性外胚葉ジストロフィ(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー皮膚炎、皮膚筋炎、真性糖尿病、肺気腫、リンパ球毒素性一時性リンパ球減少症、胎児赤芽球症、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性大腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、慢性関節リウマチ炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、血小板減少症、潰瘍性大腸炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ、心血管疾患の中には、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪状石灰化、僧帽弁逸脱、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、及び心臓移植の合併症、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、動脈瘤、動脈解離、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、大動脈冠状動脈バイパス手術が含まれ、神経系疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側策硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、ゲルストマン症候群、及びGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症候群を含む中枢神経系性の精神薄弱及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄障害、筋ジストロフィー及びその他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性の筋疾患、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神病(気分性、不安性の障害、分裂病性疾患)、季節性障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、錐体外路性終末欠陥症候群、ジストニー、分裂病性精神障害、帯状疱疹後神経痛、及びトゥーレット病と、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核部変性症、及び家族性の前頭側頭性健忘症が含まれ、また発達障害の中には、尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ‐ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神薄弱)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、脊髄形成異常症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症、シャルコー‐マリー‐ツース病及び神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)及び脳性小児麻痺などの発作障害、脊髄二分裂、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感覚神経性聴力損失が含まれる。変異SECPの発現を検出するために、患者から採取した体液或いは組織を利用して、SECPをコードするポリヌクレオチド配列を、サザン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術、PCR法と、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、およびマルチフォーマトのELISA様アッセイ、及びマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0232】
ある実施態様では、SECPをコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。SECPをコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変わっている場合は、サンプル内のSECPをコードするヌクレオチド配列の変異レベルにより、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を推定するため、或いは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0233】
SECPの発現に関連する疾患の診断の基準となるものを提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件下で、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、SECPをコードする配列或いはその断片とを結合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0234】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを通常ベースで繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0235】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供したりし得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0236】
SECPをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはSECPをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはSECPをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0237】
或る実施態様において、SECPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、一塩基多型性(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、SECPをコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列に配列されるような個々の重畳するDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調整及び統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0238】
SNPはヒト疾患の遺伝的基礎を研究するために有益であり得る。例えば、少なくとも16のありふれたSNPが、非インスリン依存性真性糖尿病に関連している。SNPは、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、または慢性肉芽腫病のような単一遺伝子疾患での病気の現れ方の差異を調べるのにも有用である。例えば、マンノース結合レクチンのMBL2での変異体は、嚢胞性線維症の有害な肺での現れ方と相関することが示されている。SNPはまた、薬理ゲノミックスで有用性がある。薬理ゲノミックスは、生命にかかわる毒性のように、ある薬剤への患者の応答に影響する遺伝的変異体を同定する。例えば、N-アセチルトランフェラーゼのある変異体は、抗結核薬剤イソニアジドに応答しての高頻度の末梢神経障害と関連があり、またALOX5遺伝子のコアプロモーターでのある変異体は、5-リポキシゲナーゼを標的とするある抗喘息薬剤での処置への臨床的応答が減少する。異なる集団におけるSNP分布の分析は、遺伝的浮動、突然変異、組換え、選択の研究において、また集団の起源と移動の追跡にも有用である(Taylor, J.G. 他 (2001) Trends Mol. Med. 7:507-512; Kwok, P.-Y. および Z. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543; Nowotny, P. 他 (2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0239】
SECPの発現を定量するために用い得る別の方法の例としては、ヌクレオチド群の放射標識またはビオチン標識、対照核酸の共増幅(coamplification)、および、標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、 Melby, P.C. 他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235244; Duplaa, C. 他 (1993) Anal. Biochem. 212:229236を参照)。目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0240】
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロフィールに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
【0241】
別の実施例では、SECP、SECPの断片、SECPに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニターまたは測定することが可能である。
【0242】
或る実施例は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを生成するような本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプにより遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写または逆転写全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロフィールを提供し得る。
【0243】
転写イメージは、組織、株化細胞、生検またはその生物学的サンプルから単離した転写物を用いて生成し得る。転写イメージは従って、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0244】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価に関連して使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを暗示する、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性シグネチャと称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S. 及び N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子及び遺伝子ファミリーからの発現情報を含んでいる場合には、最も有用且つ正確である。理想的には、発現のゲノム全域にわたる測定が最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データを標準化するために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。標準化手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素への遺伝子機能を割り当てることは毒性機構の解明に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的な一致には遺伝子機能の知識は必要ではない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
【0245】
或る実施例では、核酸を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0246】
別の実施例は、本発明のポリペプチド配列を用いて組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関連する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常クーマシーブルーまたは銀染色液または蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独特な位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
【0247】
プロテオームのプロファイルは、SECPに特異的な抗体を用いてSECP発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他 (1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G. 他 (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオールまたはアミノ反応性蛍光化合物を用いてサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイのエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0248】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。或る組織の或るタンパク質に対しては、転写とタンパク質の存在量の相関が乏しいこともあるので(Anderson, N.L. 及び J. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中での転写の分析はmRNAの急速な分解のため困難であるので、プロテオームのプロフィール作成はこのような場合により信頼でき、情報価値がある。
【0249】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0250】
別の実施例では、タンパク質を含有する生物学的サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。
【0251】
マイクロアレイは、本技術分野でよく知られている方法を用いて調製し、使用し、そして分析する(Brennan, T.M. 他 (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他の (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他の (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他の (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。 該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
【0252】
本発明の別の実施例ではまた、SECPをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列より非コード配列の方が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J. 他 (1997) Nat Genet. 15:345-355、Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127-134、Trask, B.J. (1991) Trends Genet. 7:149-154等を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて、例えば病状の遺伝と特定の染色体領域やまたは制限酵素断片長多型(RFLP)の遺伝とが相関するような遺伝子連鎖地図を作成可能である(Lander, E.S. 及び D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
【0253】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る(Heinz-Ulrich, 他 (1995) 前出のMeyers, 965-968ページ等を参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のSECPをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、あるいは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、位置を決定するクローニングの作業を促進し得る。
【0254】
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、位置クローニングその他の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患を探す研究者にとって価値がある。疾患または症候群が、血管拡張性失調症の11q22-23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域に対する任意のマッピングにより更なる調査のための関連遺伝子或いは調節遺伝子を表すことができる(Gatti, R.A.他 (1988) Nature 336:577-580等を参照)。転座、反転等に起因する、健常者、保有者、感染者の三者間における染色体位置の相違を発見するために本発明のヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0255】
本発明の別の実施例では、SECP、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することになろう。SECPと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0256】
別の薬剤スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen,他 (1984) PCT出願番号 WO84/03564等を参照)。この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、SECP、或いはその断片と反応してから洗浄される。次に、本技術分野でよく知られている方法で、結合したSECPを検出する。精製したSECPはまた、上記した薬剤のスクリーニング技術において用いるプレート上で直接コーティングすることもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0257】
別の実施例では、SECPと特異結合可能な中和抗体がSECPとの結合について試験用化合物と競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。このようにして、SECPと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在をも、抗体を使って検出できる。
【0258】
別の実施例では、将来に開発される分子生物学技術が、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存しているならば、SECPをコードするヌクレオチド配列をその新技術に用い得る。
【0259】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0260】
前述した及び以下に記載する全ての特許出願、特許、刊行物、特に米国特許出願第60/267,924号、同第60/266,195号、同第60/268,112号、同第60/267,816号、同第60/271,639号、同第60/317,818号、および同第60/343,553号に言及することをもって本明細書の一部とする。
【実施例】
【0261】
1 cDNA ライブラリの作製
Incyte cDNAは、LIFESEQ GOLDデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたDNAライブラリから由来した。ホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解した組織もあり、また、ホモジナイズしてフェノールまたは好適な変性剤の混合液に溶解した組織もある。変性剤の混合液は、例えばフェノールとグアニジニウムイソチオシアネートの単相溶液であるTRIZOL(Life Technologies)等である結果として得られた溶解物は、塩化セシウムにおいて遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0262】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0263】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)を用いて本技術分野で公知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, unit 5.1-6.6等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Pharmacia Biotech)、或いは調製用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。CDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの適合する制限酵素部位で連結された。 好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Life Technologies)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2−TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics、Palo Alto CA)、pRARE(Incyte Genomics)、またはplNCY(Incyte Genomics)、またはこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRFまたはSOLR、或いはLife Technologies社のDH5α、DH10BまたはELECTROMAX DH10Bを含む大腸菌細胞に形質転換した。
【0264】
2 cDNA クローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例 1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus Plasmid及びQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミドキットの中から少なくとも1つを用いて、プラスミドを精製した。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
【0265】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解及び熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKANII蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0266】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Pharmacia Biotech社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Molecular Dynamics)か、標準ABIプロトコル及び塩基対呼び出しソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野でよく知られている配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, 7.7ユニットに概説)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0267】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列の除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。IncyteのcDNA配列、またはその翻訳を公共のデータベース(例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、および鵞口瘡カンジダ(Candida albicans )からの配列を含むPROTEOMEデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース、及びSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベースに対して問い合わせた(Schultz 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864; Letunic, I. 他 (2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えば、Eddy, S.R. (1996) Curr. Opin. Struct. Biol. 6:361-365を参照)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するように構築された。或いは、GenBank cDNA、GenBank EST、ステッチされた配列、ストレッチされた配列またはGenscan予測コード配列(実施例4及び5を参照)を用いてIncyte cDNAの集団を完全長まで伸長させた。Phred、Phrap及びConsedに基づくプログラムを用いて構築し、GenMark、BLAST及びFASTAに基づくプログラムを用いてcDNAの集団をオープンリーディングフレームに対してスクリーニングした。対応する完全長ポリペプチド配列を誘導するべく完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳した。或いは、本発明のポリペプチドは完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。引き続いて、GenBankタンパク質データベース(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータ-ベース、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM及びProsite等のデータベース、PFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた、タンパク質ファミリーデータベース、及びSMART等のHMMに基づいたタンパク質ドメインデータベースに対する問合せによって完全長ポリペプチド配列を分析した。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)及びLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析した。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて作製する。
【0268】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、引用文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な引用文献であり、全ての文献はそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、または確率値が低いほど、2配列間の同一性が高くなる)。
【0269】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の組み立て及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:25−48のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
【0270】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定及び編集
推定上の分泌タンパク質は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からのゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. 及び S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C. 及び S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8:346-354を参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから終止コドンに及ぶ構築されたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan推定cDNA配列の内、どの配列が分泌タンパク質をコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて分泌タンパク質について問合せて分析した。潜在的な分泌タンパク質はまた、分泌タンパク質として注釈が付けられていたIncyte cDNA配列への相同性を基に同定された。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析によりgenpept及びgbpriの公共データベースと比較した。必要であれば、genpeptからのトップのBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは取り除かれたエキソンなどのGenscanにより予測された配列のエラーを修正する。BLAST分析はまた、任意のIncyte cDNAまたはGenscan予測配列の公共cDNA適用範囲の発見に用いられるので、転写の証拠を提供する。Incyte cDNA適用範囲が利用できる場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を修正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載された構築プロセスを用いて、Incyte cDNA配列及び/または公共のcDNA配列でGenscan予測コード配列を構築することにより得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は編集または未編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0271】
5 cDNA 配列データとゲノム配列データとの統合
ステッチ配列( Stiched Sequence )
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたように構築された部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライシング変異体を生み出した。区間全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された区間は推移により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列にある区間が存在する場合、3つの区間は全て等しいと考えられる。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した区間と区間との連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得られるステッチ配列は、BLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriに翻訳されて比較された。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップのBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0272】
ストレッチ配列( Stretched Sequence )
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたように構築された部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体をBLAST分析によりIncyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に関連して、キメラタンパク質内で挿入または削除が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを決定した。
【0273】
6 SECP をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:25−48を構築するために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:25−48と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどの構築アルゴリズム(表7)を使用して、連続的配列及びオーバーラップした配列のクラスターに構築した。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が前もってマッピングされたかを決定した。マッピングされた配列がクラスタに含まれている場合は、個々の配列番号を含めてそのクラスタの全配列が地図上の位置に割り当てられた。
【0274】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または区間として表される。センチモルガン区間の地図上の位置は、染色体のpアームの末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、配列が各クラスタ内に含まれるような放射線ハイブリッドマーカーに対して境界を提供するようなGenethonによってマッピングされた遺伝マーカーに基づく。NCBI「GeneMap99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、上記した区間が既に同定されている疾患遺伝子マップ内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0275】
この方法で、SEQ ID NO:36は3番染色体の142.20センチモルガンから148.70センチモルガンの区間内にマップされた。SEQ ID NO:37 は、19番染色体に51.00 から 51.70センチモルガンの区間内に、また62.00 から69.90センチモルガンの区間内にマップされ、さらに5番染色体に141.40 から142.60センチモルガンの区間にマップされた。SEQ ID NO:37については一つ以上のマップ位置が報告され、異なったマップ位置を持つ配列が、一つのクラスターに構築されたことを示す。この状態は、例えば、極めて類似しているが、完全に同一でない配列が一つのクラスターに構築される場合に発生する。
【0276】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技術であり、特定の細胞種或いは組織からのRNAが結合されている膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(例えば、Sambrook,前出, 7章; 及び Ausubel. F.M. 他、前出, 4章及び16章を参照)。
【0277】
BLASTを適用した類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一または関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の一致を厳密な一致、或いは類似的な一致として分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0278】
【数1】
【0279】
積スコアは、2つの配列間の類似度及び配列が一致する長さの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の規準化された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。高スコアリングセグメント対(HSP)に一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不適性塩基対に−4を割り当てることにより、BLASTスコアを計算する。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離され得る)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的重畳とBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、他端が79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0280】
或いは、SECPをコードするポリヌクレオチド配列は、由来する組織に対して分析する。例えば或る完全長配列は、Incyte cDNA配列(実施例3を参照)と少なくとも一部はオーバーラップするように構築される。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、心血管系、結合組織、消化系、胚構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肺、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、分類不能/混合、または尿管などの1つの生物/組織のカテゴリーに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/病状カテゴリー、即ち癌、細胞株系、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、SECPをコードするcDNAの組織特異的および疾患特異的な発現を反映する。cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0281】
8 SECP をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列もまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。一方のプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、他方のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマーの設計は、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの区間は全て回避した。
【0282】
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマー或いはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0283】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液には、DNA鋳型、各プライマー200nmolと、Mg2+、(NH4)2SO4 及びβ-メルカプトエタノールを含む反応緩衝液と、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)と、ELONGASE酵素(Life Technologies)と、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)が含まれていた。 プライマー対PCI A、PCI Bに対して用いたパラメータは次の通りである。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒間
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保存
別法では、プライマー対、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒間
ステップ3 57℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保存
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量するべくプレートをFluoroskanII(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコート5〜10μlを1%アガロースミニゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを決定した。
【0284】
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)への再連結反応前に音波処理またはせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0285】
細胞を溶解し、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いてPCRによってDNAを増幅した。 その際用いたパラメータは次の通りである。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒間
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 72℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す
ステップ6 72℃で5分間
ステップ7 4℃で保存
DNAは、上記のPICOGREEN試薬(Molecular Probes)によって定量した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0286】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5'調節配列を得る。
【0287】
9 SECP をコードするポリヌクレオチドの一塩基多型の同定
一塩基多型(SNP)として知られる、ありふれたDNA配列変異体が、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:25-48中で同定された。実施例3に記述されているように同じ遺伝子からの配列は共にクラスター化され、構築されて、遺伝子内の全ての配列変異体を同定できるようにする。一連のフィルタから成るアルゴリズムは、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられる。予備フィルタが、最小限のPhredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、配列アラインメントエラーとベクター配列、キメラ、スプライス変異体の不適切なトリミングに起因するエラーを除去した。最新の染色体分析の自動化手順により、推定上のSNPの近傍の本来のクロマトグラムファイルを分析した。クローンエラ−フィルタは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼあるいは体細胞性突然変異によって引き起こされる等の実験プロセッシング中に導入されたエラ−を同定した。クラスタリングエラ−フィルタは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近い相同体あるいは偽遺伝子のクラスタリングに起因するエラー、または非ヒト配列によるコンタミネーションによるエラ−を同定した。フィルタの最終セットは、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に見出される重複とSNPを除去した。
【0288】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人集団(男性46人、女性46人)は92人から成り、そのうち83人はユタ州、4人はフランス、3人はベネズエラ、2人はアーミッシュ派の出身である。黒人集団は194人(男性97人、女性97人)から成り、全て米国の黒人である。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)から成り、全てメキシコ出身である。アジア系の集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、中国人43%、日本人31%、韓国人13%、ベトナム人5%、他のアジア系8%の親の構成が報告されている。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で分析された。この集団で対立遺伝子変異を示さないSNPの時には他の3つの集団で更に試験されない場合もあった。
【0289】
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識及び使用
SEQ ID NO:25−48由来のハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても事実上同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸 (Amersham Pharmacia Biotech)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて十分に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0290】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0291】
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合または合成は、フォトリソグラフィ、圧電印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一且つ非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な方法や機械を用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. 他 (1995) Science 270:467-470、Shalon. D. 他 (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall, A. および J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31.を参照)。
【0292】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメントは、生物学的サンプル中でポリヌクレオチドを用いてハイブリダイズされる。生物学的サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識またはその他の分子タグに抱合される。ハイブリダイゼーション後、生物学的サンプルからハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントにおいてハイブリダイゼーションを検出する。或いは、レーザ脱離及び質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上のエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの相補性の度合及び相対存在度は、算定し得る。 一実施例におけるマイクロアレイの調整及び使用について、以下に詳述する。
【0293】
組織または細胞サンプルの準備
グアニジウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖合成バッファー、0.03単位/μlのRNA分解酵素の阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)またはdCTP-Cy5(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いて、200ngのポリ(A)+RNAを含む25ml容量で行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。混合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール析出させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0294】
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートによりベクター含有細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートの側面に位置するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅されたアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製される。
【0295】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理中及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波処理をかけ、蒸留水で非常に良く洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で非常に良く洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃の天火で硬化させる。
【0296】
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速ロボット装置により開口キャピラリープリントエレメントに充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
【0297】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0298】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡用スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間ずつ3回洗浄して乾燥させる。
【0299】
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いて、アレイ上に励起レーザ光の焦点を当てる。アレイを含むスライドを顕微鏡のコンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通過してラスタースキャンする。本実施例で用いた1.8cm×1.8cmのアレイは、20μmの解像度でスキャンした。
【0300】
2つの異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を順に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つの蛍光色素に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。アレイと光電子増倍管間に設置された好適なフィルターを用いて、シグナルをフィルターする。用いる蛍光色素の最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0301】
スキャンの感度は通常、既知濃度でサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により発生されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を重量比1:100,000でハイブリダイゼーション種と相関させる。異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、2つの蛍光色素で較正するcDNAのサンプルを標識し、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えることによって較正を行う。
【0302】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起および測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、データはまず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
【0303】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
【0304】
12 相補的ポリヌクレオチド
SECPをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のSECPの発現を検出、低下、または阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さな或いは大きな配列の断片の場合でも本質的に同じ方法を用いることができる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びSECPのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5' 配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いてプロモーターがコーディング配列に結合するのを阻害する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがSECPをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0305】
13 SECP の発現
SECPの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でSECPが発現するために、抗生物質耐性遺伝子及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターには、lacオペレーター調節エレメントに関連するT5またはT7バクテリオファージプロモーター及びtrp-lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとSECPを発現する。真核細胞でのSECPの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須の多角体遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、SECPをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強い多角体プロモーターによって高いレベルのcDNAの転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞に感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945.等を参照)。
【0306】
殆どの発現系では、SECPが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性及び抗原性を維持した状態で、固定化グルタチオン上で融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Pharmacia Biotech)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でSECPからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いて免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂(QIAGEN)上での精製を可能にする。タンパク質の発現及び精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で精製したSECPを直接用いて以下の実施例 17 、 18 および 19のアッセイを行うことができる。
【0307】
14 機能的アッセイ
SECP機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのSECPをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにcDNAをサブクローニングする。選択されるベクターには、PCMV SPORTプラスミド(Life Technologies)及びPCR 3.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤或いは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入された細胞と形質移入されていない細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64、またはCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、プロピジウムヨウ化物によるDNA染色によって計測される核DNA内容物の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと顆粒状性の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及び蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M. G. (1994) Flow Cytometry Oxford, New York, NY.に記述がある。
【0308】
遺伝子発現におけるSECPの影響は、SECPをコードする配列とCD64またはCD64-GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64-GFPは、形質転換された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存領域と結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。SECP及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0309】
15 SECP に特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488-495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたSECPを用いて、標準的なプロトコールで動物(例えば、ウサギやマウス等)を免疫化して抗体を作り出す。
【0310】
或いは、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてSECPアミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域等の、適切なエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel, 1995, 11章等を参照)。
【0311】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、Fmocケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995 等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいてオリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗SECP活性を検査するには、ペプチドまたはSECPを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0312】
16 特異的抗体を用いる天然 SECP の精製
天然SECP或いは組換えSECPを、SECPに特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化SEPHAROSE(Amersham Pharmacia Biotech)のような活性化クロマトグラフィー用樹脂と抗SECP抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従って樹脂をブロックし、洗浄する。
【0313】
SECPを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、SECPを選択的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とSECPとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、SECPを回収する。
【0314】
17 SECP と相互作用する分子の同定
SECPまたは生物学的に活性なその断片を、125I ボルトンハンター試薬で標識する(例えば、Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529を参照)。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したSECPと共にインキュベートし、洗浄して、標識したSECP複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なSECP濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したSECPの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0315】
別法では、SECPと相互作用する分子を、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステムやMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0316】
SECPはまた、高処理型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0317】
18 SECP 活性の実証
SECPの成長刺激活性若しくは成長阻害活性のためのアッセイでは、スイスマウス3T3細胞におけるDNA合成の量を測定する(McKay, I. および Leigh, I., 編集(1993)Growth Factors : A Practical Approach, Oxford University Press, New York, NY)。このアッセイにおいては、様々な量のSECPが、放射性DNA前駆物質である[3H]チミジンの存在中で静止状態3T3培養細胞へと加えられる。このアッセイのためのSECPを得る手段は、組換えでも良く、生化学的な調製より得ても良い。酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの組み込みが、適切な時間間隔で測定され、組み込まれた量は新規に合成されたDNAの量に直接比例する。少なくとも100倍のSECP濃度範囲にわたる線形の用量‐応答曲線は、成長の調節活性を示す。ミリリットルあたりの1単位の活性は、50%の応答レベルを提供するSECPの濃度として定義される。ここで、100%の応答レベルは、酸沈殿し得るDNAへの[3H]チミジンの最大の組み込みを表す。
【0318】
別法では、SECP活性のためのアッセイで、培養細胞中の神経伝達の刺激若しくは抑制を測定する。培養CHO繊維芽細胞をSECPに曝す。エンドサイトーシスによるSECP取込後に、これらの細胞を新鮮培養液で洗浄し、細胞全膜電位固定したアフリカツメガエル筋細胞を操作して、SECPを含まない媒質中で前記の繊維芽細胞の1つと接触させる。膜電流を、この筋細胞から記録する。対照値に対し増加若しくは減少した電流は、SECPの神経調節効果を示す(Morimoto, T.他(1995)Neuron 15:689-696)。
【0319】
別法では、SECP活性のアッセイで、分泌性の膜で囲まれた細胞小器官におけるSECPの量を測定する。上述したように形質移入された細胞を採取し、溶解する。ライセートは、当業者に既知の、ショ糖密度勾配超遠心法などの方法で分画する。そのような方法は、ゴルジ体、ER、小さい膜で囲まれた小胞、およびその他の分泌細胞小器官のような、細胞内区画の単離を可能とする。分画した細胞ライセートおよび全体の細胞ライセートよりの免疫沈降は、SECP特異抗体を用いて実行され、また免疫沈降サンプルは、SDS-PAGEおよび免疫ブロット技術を用いて解析される。全細胞ライセート中のSECPに対する分泌性細胞小器官中のSECP濃度は、分泌経路を通るSECPの量に比例する。
【0320】
別法では、AMP結合活性の測定を、SECPと32P標識したAMPとを混合させて行う。この反応溶液を37℃でインキュベートし、反応はトリクロロ酢酸の添加で終了させる。酸抽出物を中和し、ゲル電気泳動にかけて非結合標識を除去する。ゲル内に留まる放射活性が、SECPの活性に比例する。
【0321】
19 免疫グロブリン活性の実証
SECP活性の或るアッセイでは、SECPが血清からの抗原類を認識し沈殿させる能力を測定する。この活性の測定は、定量沈降反応で成し得る(Golub, E. S. 他(1987)Immunology: A Synthesis, Sinauer Associates, Sunderland, MA, 113-115ページ)。SECPを、当分野で既知の方法で同位体標識する。一定量の標識SECPに種々の血清濃度を加える。SECP-抗原複合体を溶液から沈殿させ、遠心分離で収集する。沈殿性SECP-抗原複合体の量は、沈殿物中に検出される放射性同位元素の量に比例する。沈殿性SECP-抗原複合体の量を、血清濃度に対してプロットする。多様な血清中濃度に対しての特徴的沈降素曲線が得られ、沈殿性SECP-抗原複合体の量は、初め血清中濃度の増加に比例して増加し、当量点を頂点とし、その後は血清中濃度の増加に比例して減少する。このように、沈澱性SECP-抗原複合体の量は、抗原の制限量と過剰量の両方に対する感受性によって特徴付けられるSECP活性の測定量である。
【0322】
別法として、SECP活性の或るアッセイは、細胞表面におけるSECPの発現を測定する。 SECPをコードするcDNAを、非白血球細胞株に形質移入する。細胞表面タンパク質は、ビオチンで標識される(de la Fuente, M.A. 他 (1997) Blood 90:2398-2405)。SECP特異的抗体群を用いて免疫沈降を行い、免疫沈降したサンプルをSDS-PAGEと免疫ブロット法で分析する。標識した免疫沈降剤と未標識免疫沈降剤の比は、細胞表面に発現したSECPの量に比例する。
【0323】
別法で、SECP活性の或るアッセイは、SECPの過剰発現が誘発する、細胞凝集の量を測定する。このアッセイにおいては、NIH3T3などの培養細胞にSECPをコードするcDNAで形質移入する。このcDNAは、或る強力なプロモーターの制御下にある或る適切な哺乳類発現ベクター内に含まれるようにする。緑色蛍光タンパク質(CLONTECH)などの蛍光標識タンパク質をコードするcDNAとの共形質移入を行うと、安定な形質移入体を同定するのに役立つ。形質移入された細胞と形質移入されない細胞で細胞の凝集(塊化)量を比較する。細胞の凝集量が、SECPの活性の直接の測定値となる。
【0324】
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行い得る。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載されている本発明の実施方法の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0325】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
【0326】
表2は、GenBank識別番号及び本発明のポリペプチドに最も近いGenBank相同体の注釈を示す。各ポリペプチドとその相同体との一致の確率スコアも併せて示す。
【0327】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0328】
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列を構築するために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
【0329】
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
【0330】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0331】
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0332】
【表1】
【0333】
【表2】
【0334】
【表3−1】
【0335】
【表3−2】
【0336】
【表3−3】
【0337】
【表3−4】
【0338】
【表3−5】
【0339】
【表3−6】
【0340】
【表3−7】
【0341】
【表3−8】
【0342】
【表4−1】
【0343】
【表4−2】
【0344】
【表4−3】
【0345】
【表4−4】
【0346】
【表4−5】
【0347】
【表4−6】
【0348】
【表4−7】
【0349】
【表4−8】
【0350】
【表4−9】
【0351】
【表5】
【0352】
【表6−1】
【0353】
【表6−2】
【0354】
【表6−3】
【0355】
【表7−1】
【0356】
【表7−2】
Claims (103)
- 以下の(a)乃至(f)を有する群から選択した単離されたポリペプチド。
(a)SEQ ID NO:1-24(配列番号1乃至24)を有する群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド
(b)SEQ ID NO:1−20を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
(c)SEQ ID NO:21−22を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも97%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
(d)SEQ ID NO:23−24を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列から本質的に構成されるポリペプチド
(e)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片
(f)SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片 - SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:25-48(配列番号25乃至48)を有する群から選択したポリヌクレオチド配列を有する、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
- 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
- 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
(a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を培養するステップと、
(b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とから成る。 - 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドと特異結合するような単離された抗体。
- 以下の(a)乃至(g)を有する群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
(a)SEQ ID NO:25-48を有する群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(b)SEQ ID NO:25-44とSEQ ID NO:47-48を有する群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一であるような天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(c)SEQ ID NO:45-46を有する群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも97%が同一であるような天然のポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
(d)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(e)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(f)(c)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
(g)(a)〜(f)のRNA等価物 - 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を有する少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて、そのプローブと前記標的ポリヌクレオチド、またはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で前記サンプルをハイブリダイズする過程と、
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、前記複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する方法を含む。 - 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
- 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
(b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。 - 有効量の請求項1のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを有することを特徴とする組成物。
- 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
- 機能的なSECPの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項17の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
(b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
- 機能的なSECPの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項21の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
(b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。 - 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
- 機能的なSECPの過剰な発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項24の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
- 請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)適切な条件下で請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に混合させる過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1に記載のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物に混合させる過程と、
(b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
(c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。 - 請求項5の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変化させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露するステップと、
(b)前記標的ポリヌクレオチドの変異発現を検出する過程と、
(c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
(a)核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
(b)処理した前記生体サンプルの核酸と、請求項12のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを含むプローブをハイブリダイズさせるステップであって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生体サンプルの標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12のポリヌクレオチドまたはその断片のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである、前記ステップと、
(c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量するステップと、
(d)前記処理された生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中の前記ハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示することを特徴とする方法。 - 生物学的サンプル中のSECPの発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
(a)前記抗体が前記ポリペプチドと結合し、抗体とポリペプチドとの複合体を形成するのに適した条件下で、前記生物学的サンプルを請求項11に記載の抗体と混合する過程と、
(b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。 - 前記抗体が、
(a)キメラ抗体
(b)単鎖抗体
(c)Fab断片
(d)F(ab')2断片
(e)ヒト化抗体 のいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の抗体。 - 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む組成物。
- 被検者のSECPの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
- 被検者のSECPの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列含むポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体を単離する過程と、
(c)前記単離された抗体をポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するようなポリクローナル抗体を同定する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項36に記載の方法で産出したポリクローナル抗体。
- 請求項37に記載のポリクローナル抗体及び適切なキャリアを含む組成物。
- 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列含むポリペプチドまたはその免疫原性断片を用いて動物を免疫化する過程と、
(b)前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
(c)不死化細胞と前記抗体産出細胞を融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
(d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
(e)SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。 - 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
- 請求項40に記載のモノクローナル抗体及び適切なキャリアを含む組成物。
- Fab発現ライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプル中で検出する方法であって、
(a)前記抗体と前記ポリペプチドの特異結合を許容する条件下で、サンプルを用いて請求項11に記載の抗体をインキュベートする過程と、
(b)特異結合を検出する過程とを含み、該特異結合が、SEQ ID NO:1−24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを示すことを特徴とする方法。 - SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプルから精製する方法であって、
(a)前記抗体と前記ポリペプチドの特異結合を許容する条件下で、サンプルを用いて請求項11に記載の抗体をインキュベートする過程と、
(b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1-24を有する群から選択したアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドを得る過程を含むことを特徴とする方法。 - マイクロアレイの少なくとも1つが請求項13に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするマイクロアレイ。
- ポリヌクレオチドを含むサンプルの発現プロフィールを作製する方法であって、
a) サンプルのポリヌクレオチドを標識する過程と、
b) ハイブリダイゼーション複合体形成に適した条件下で請求項46に記載のマイクロアレイのエレメントをサンプルの標識されたポリヌクレオチドと接触させる過程と、
c)サンプルのポリヌクレオチドの発現を定量化する過程を含むことを特徴とする方法。 - 固体基板上の固有の物理的位置に付着された種々のヌクレオチド分子を含むアレイであって、少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子が、標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドと特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを有し、前記の標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、マイクロアレイであることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列を有するヌクレオチド分子にハイブリダイズした前記の標的ポリヌクレオチドを有することを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、リンカーが少なくとも1つの前記のヌクレオチド分子と前記の固体基板を連結していることを特徴とするアレイ。
- 請求項48に記載のアレイで、基板上の固有の物理的位置の各々が複数のヌクレオチド分子を含み、任意の単一の固有の物理的位置でのその複数のヌクレオチド分子は同一の配列を有し、基板上の固有の物理的位置の各々は、基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子の配列とは異なる配列を有するヌクレオチド分子を含むことを特徴とするアレイ。
- SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を有する請求項1に記載のポリペプチド。
- SEQ ID NO:25のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:26のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:35のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:36のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:37のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:38のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:39のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:40のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:41のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:43のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:45のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:46のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:47のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
- SEQ ID NO:48のポリヌクレオチド配列を有する請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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