JP2004534667A - プラスチックガラスの製造方法 - Google Patents

Abstract

本発明は、少なくとも部分的に透明であり、窓ガラスの光学品質と同等となりうる高い光学品質を有する製品の製造方法に関し、この方法では、対応する形状の断熱されたシートが成形型の一部、少なくとも成形型の底部に配置され、上記製品中でシートと接合させることが可能な熱可塑性材料が前記成形型に注入される。本発明の方法は、シートが供給される底部を有する成形型の部分が、要求される光学品質を得るために前記シートがない場合に必要な温度よりも低温に維持されることを特徴とする。本発明は、こうして得られた製品、その窓ガラスとしての使用、こうして得られた自動車用窓ガラスにも関する。

Description

【技術分野】
【０００１】
本発明は、比較的複雑な形状を有し、少なくとも部分的に透明であり、光学品質が高いため窓ガラスなどの用途に好適である、主として二次元的でありほぼ平坦なプラスチック製品に関する。
【背景技術】
【０００２】
建造物、家具、家庭用電化製品（オーブンの扉など）、アーバンファーニチャー、または輸送機関におけるガラスの用途の大部分を別のもので置き換えることは困難となりうるが、特に透明プラスチックによる代替品がこれらの用途の一部で想定されるようになっている。
【０００３】
ガラスと比較して、ポリカーボネート型のこのようなプラスチックの利点としては、より多様で複雑な形状を有し、平面形状からさらに逸脱させ、製品により多くの機能が組み込まれた製品の製造の可能性が特に挙げられる。この可能性は、特に射出成型法に固有のものである。
【０００４】
必要となる窓ガラスの光学品質と機械的性質を維持することも当然ながら必要である。この目的のため、プラスチックはガラスとは異なり傷つきやすいので、耐擦傷性コーティングの使用が必要であり、ガラスよりも剛性が劣っているため、より厚く製造するか金属挿入物やそれに相当するものなどを使用して窓ガラスに剛性をもたせる必要があるが、逆に、窓ガラスの変形が可能であるか、あるいは金属製突起などの形態の取付用周辺部挿入物の取付が容易であるという理由で、特に本体の開口部への取り付けが簡単になりうる。
【０００５】
本発明の状況では、
実質的に平坦なポリカーボネートフィルムまたは同等物の上に、できるかぎり硬化途中の状態の耐擦傷性コーティングを形成する工程と、
耐擦傷性コーティングの硬化をできるかぎり続けながらこのフィルムを熱成型する工程と、
耐擦傷性コーティングが成形型の壁と接触するように成形型の底部にフィルムを置く工程と、
射出成形、ホットプレスなどによって窓ガラスのコアを形成する材料とフィルムを組み合わせる工程と、
からなる一連の操作によって得られるプラスチックガラスが特に関連がある。
【０００６】
別の方法では、成形が終わってから、ポリカーボネートフィルムに耐擦傷性コーティングが形成される。
【０００７】
この技術は、文献ＷＯ９９／０３６７８号およびＷＯ９９／６５６７８号に記載されており、後者の文献はさらに、二重または多重射出成形の実施が可能となる１つの改良された成形型による、化学的性質を有し異なる性質を有する追加材料の射出成形にも関する。この追加材料は、例えば周辺部のエラストマーシール、バックミラー取り付け部などになる。
【０００８】
この技術が使用される状況では、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が射出される場合、９０℃から１２０℃の範囲の温度で循環する加圧された水によって成形型の壁を加熱する必要があるが、その理由は、３００℃の射出された材料がこれより低温の成形型の壁と接触して急冷されると、射出された材料にむらが生じて、製品の光学性質に確実に影響しうるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
予期せぬことに、上記文献ＷＯ９９／０３６７８号およびＷＯ９９／６５６７８号の教示を実施する際に、成形型の底部において、窓ガラスの透明性および高い光学品質が要求される部品中に熱成形されたフィルムを配置することによって、フィルムが断熱材となる場合には、成形型の壁の温度を実質的に低下させ、最高の光学品質を維持できることが分かった。したがって、例えばポリカーボネートの射出成形の場合には、成形型の温度を１２０℃から６０℃に低下させることによって、高温流体（水、油など）を循環させることによる熱供給が減少し、エネルギーを削減できる。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
したがって、本発明の主題は、成形型の底部の少なくとも一部にシートを配置し、前記シートは対応する形状であり断熱されており、続いて、製品に前記シートを固定することができる熱可塑性樹脂をこの成形型に射出する、少なくとも部分的に透明であり窓ガラスと同等の高い光学的品質を有する製品の製造方法であり、この方法は、必要な光学品質を得るために、前記シートが供給される底部を有する前記成形型の一部は、前記シートがない場合に必要となる温度よりも低温に維持されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明で使用される場合、成形型の底部に対応する形状のシートを配置することは、一般に、成形型の底部にぴったりと一致するようにあらかじめシートを位置調整し、成形型と接触する表面上でこのシートは、硬化の途中または完全に硬化した状態の耐擦傷性コーティングを保持することができることを意味する。さらに、このシートの形成に使用されることが多いポリカーボネート、ならびに多くの同様のポリマーは、当業者には公知の方法で断熱される。
【００１２】
成形型の底部に１枚以上のシートを配置することが可能であり、使用頻度の高い２つの実施形態によると、成形型の移動可能な部分の底部に１枚のシートが配置され、必要であれば固定部分の底部にもう１枚が配置される。
【００１３】
成形型の壁への熱エネルギーの供給を実質的に減少させながら、優れた光学品質の製品が得られる。さらに、より低温の成形型底部にシートを供給することがより容易になる。
【００１４】
本発明によって得られるさらに別の利点は、射出作業の前に静電的手段によって成形型底部にシートを付着させる場合に、この付着力が実質的に増加することである。
【００１５】
前記シートの厚さは好都合には少なくとも１００μｍであり、好ましくは少なくとも２００μｍであり、特に好ましい方法では少なくとも２５０μｍである。これらの値は重要ではないが、本発明の前述の顕著な効果が高い割合で得られることが保証される。
【００１６】
別の特徴によると、シートの厚さは最大１０００μｍであり、好ましくは最大８５０μｍであり、特に好ましい方法では最大７５０μｍであり、これらの厚さは後述の所望の機能のすべてを組み込むために十分であり、シートの操作および熱成形も容易に実施することができる。
【００１７】
好ましくは、シートは一体式または多層であり、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン／酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン／ノルボルネン型またはエチレン／シクロペンタジエン型のシクロオレフィンコポリマー、ポリカーボネート／ポリエステルコポリマー、ポリアミンで中和したエチレン／（メタ）アクリル酸コポリマーなどのアイオノマー樹脂ナドから選択される１種類以上のポリマーを単独または混合物として含む。
【００１８】
射出成形される熱可塑性樹脂は、これと接触する熱成形性シート層を構成する樹脂と同種の場合も異種の場合もあるが、好ましくは、ポリプロピレンおよびポリビニルブチラールを除いた上述のシート用樹脂から選択され単独または混合物で使用される。実用的な利点の大きい実施形態の１つによると、この材料はポリカーボネート系であり、前記シートが底部に供給される成形型の一部の温度は最高１００℃、好ましくは最高８０℃、特に好ましい方法では最高６５℃の温度に維持される。
【００１９】
さらに、本発明の方法において、成形型の底部が実質的に平坦でない場合、必要に応じてシートをあらかじめ熱成形し、熱可塑性樹脂を注入する前に、任意の好適な手段、特に吸引手段および／または吹き込み手段、および／または好ましくは静電作用によって成形型底部に維持することによって、製品の高い光学品質が向上する。この最後の処置は、折れ曲がらずにシートと成形型底部がぴったりと接触させることが目的であり、静電作用を使用する場合にこのような接触はより十分となり、この接触は前述のように本発明により成形型底部の温度が低下するとより効果的となる。
【００２０】
さらなる本発明の主題は、前述の方法によって製造される、少なくとも部分的に透明であり窓ガラスと同等の高い光学的品質を有する製品であって、この製品では、前記製品の透明部分に、１ｍｍから１０ｍｍの厚さで前記熱可塑性樹脂が射出成形される。これらの値は、ガラスと比較して、単位面積当たりの面積において十分かつ向上した機械的性質（特に剛性）が得られる。
【００２１】
実際的な利点の多い製品のさらに別の特徴としては、
前記製品の周辺部の補強のため、および／または前記製品および／または要素、特に電気接続用に挿入される金属要素との位置合わせ用または固定用のつまみなどの突起の形成のため、前記熱可塑性樹脂が過剰な厚さで射出されること、
前記シートが耐擦傷性層を支持し、前記シートが、前記耐擦傷性層に組み込まれた疎水性／疎油性機能を含むか、あるいは疎水性／疎油性層を支持するプラスチックフィルムを挿入することによって前記耐擦傷性層上に接合するかまたは前記耐擦傷性層を被覆する疎水性／疎油性機能を含むこと、
前記シートが、表面層、装飾層および／または遮蔽層の全体またはその一部を含み、好ましくは前記耐擦傷性層を支持する前記シートを構成する層の直下にあること、
前記シートが、１つ以上の任意に選択される層を含むこと、
前記シートが、勾配を有する混合層、または反射防止層の積層体を含むこと、
前記シートが、加熱による曇り取り／霜取機能、またはアンテナ機能を付与することができる電線の層または回路網を含むこと、
が挙げられる。
【００２２】
成形型の温度を低下させることからなる本発明の具体的な特徴は、前述の２つの出願を含む多くの文献に詳細に記載されておりそのため当業者には公知であり容易のそれらの文献の範囲内となる、これらの特徴が得られる任意の特定の開発とは関係していない。本発明のその他の目的は、
建築物、家具（陳列棚、棚、シャワー室など）、家庭用電化製品、アーバンファーニチャー（バス停、広告パネルなど）、ならびに陸上、航洋、および航空輸送機関のための窓ガラスとしての上記製品の利用、
上記方法で得られる自動車用窓ガラス、特にフロントガラス、好ましくは側窓または後部窓、サンルーフ、および／またはパノラマルーフ、
である。
【００２３】
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例】
【００２４】
ビスフェノールＡより調製される標準的ポリカーボネートの厚さ８０μｍのフィルム（ゼネラル・エレクトリック（Ｇｅｎｅｒａｌ Ｅｌｅｃｔｒｉｃ）より登録商標「マクロロン」（Ｍａｋｒｏｌｏｎ）で販売され、ガラス転位温度は１４５℃に相当するＴ_ｇである）上に、フローコーティングによって特許出願ＥＰＰ−Ａ１−０ ７１８ ３４８号の実施例に記載される耐擦傷性コーティングを厚さ２０μｍの液体皮膜として適用する。乾燥後には、厚さは５ｍｍとなる。
【００２５】
次に、このようにコーティングされた支持フィルムを、耐擦傷性層が上向きになるように成形型底部に入れ、これらを１５５℃で３０分間熱処理する。こうして、熱成形されたシートが形成される。
【００２６】
次に、このシートを射出成形型の底部に入れて、水流で６０℃に加熱された成形型の壁と耐擦傷性層を接触させる。耐擦傷性層を支持するフィルムと同じ構成の標準的ポリカーボネートの厚さ５μｍの熱可塑性樹脂層を射出する。
【００２７】
得られる層状構造は、優れた透明性と光学品質を有する。
【００２８】
熱成形されたシートを使用せず、その他の操作条件は同一で製造を実施すると、この射出成形によって、透明性が失われ光の歪みや散乱が起こるな表面が不規則で平凡な光学品質を有する製品のみを得ることができる。

Claims (17)

1. 成形型の底部の少なくとも一部にシートを配置し、前記シートは対応する形状であり断熱されており、続いて、前記製品に前記シートを固定することができる熱可塑性樹脂をこの成形型に射出する、少なくとも部分的に透明であり窓ガラスと同等の高い光学的品質を有する製品の製造方法であって、必要な光学品質を得るために、前記シートが供給される底部を有する前記成形型の一部は、前記シートがない場合に必要となる温度よりも低温に維持されることを特徴とする方法。
2. 前記シートの厚さが少なくとも１００μｍであり、好ましくは少なくとも２００μｍであり、特に好ましい方法では少なくとも２５０μｍであることを特徴とする請求項１に記載の方法。
3. 前記シートの厚さが最大１０００μｍであり、好ましくは最大８５０μｍであり、特に好ましい方法では最大７５０μｍであることを特徴とする請求項１または２に記載の方法。
4. 前記シートが一体式または多層であり、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン／酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン／ノルボルネン型またはエチレン／シクロペンタジエン型のシクロオレフィンコポリマー、ポリカーボネート／ポリエステルコポリマー、ポリアミンで中和したエチレン／（メタ）アクリル酸コポリマーなどのアイオノマー樹脂などから選択される１種類以上のポリマーを単独または混合物として含むことを特徴とする先行する請求項のいずれか１項に記載の方法。
5. 前記射出される熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、エチレン／酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリブチレングリコールテレフタレート、ポリカーボネート／ポリエステルコポリマー、ポリウレタン、エチレン／ノルボルネン型またはエチレン／シクロペンタジエン型のシクロオレフィンコポリマー、ポリアミンで中和したエチレン／（メタ）アクリル酸コポリマーなどのアイオノマー樹脂などの単体または混合物から選択されることを特徴とする先行する請求項のいずれか１項に記載の方法。
6. 前記射出成形される熱可塑性樹脂がポリカーボネート系であり、前記シートが供給される底部を有する前記成形型の一部は最高１００℃、好ましくは最高８０℃、特に好ましい方法では最高６５℃の温度に維持されることを特徴とする請求項５に記載の方法。
7. 必要に応じてあらかじめ熱成形されている前記シートが、前記熱可塑性樹脂が射出される前に、任意の好適な手段、特に吸引手段および／または吹き込み手段、および／または好ましくは静電作用によって前記成形型の底部に維持されることを特徴とする先行する請求項のいずれか１項に記載の方法。
8. 先行する請求項のいずれか１項に記載の方法によって製造される、少なくとも部分的に透明であり窓ガラスと同等の高い光学的品質を有する製品であって、前記製品の透明部分に、１ｍｍから１０ｍｍの厚さで前記熱可塑性樹脂が射出成形される製品。
9. 前記製品の周辺部の補強のため、および／または前記製品および／または要素、特に電気接続用に挿入される金属要素との位置合わせ用または固定用のつまみなどの突起の形成のため、前記熱可塑性樹脂が過剰な厚さで射出されることを特徴とする請求項８に記載の製品。
10. 前記シートが耐擦傷性層を支持することを特徴とする請求項８または９に記載の製品。
11. 前記シートが、前記耐擦傷性層に組み込まれた疎水性／疎油性機能を含むか、あるいは疎水性／疎油性層を支持するプラスチックフィルムを挿入することによって前記耐擦傷性層上に接合するかまたは前記耐擦傷性層を被覆する疎水性／疎油性機能を含むことを特徴とする請求項１０に記載の製品。
12. 前記シートが、表面層、装飾層および／または遮蔽層の全体またはその一部を含み、好ましくは前記耐擦傷性層を支持する前記シートを構成する層の直下にあることを特徴とする請求項１０に記載の製品。
13. 前記シートが、１つ以上の任意に選択される層を含むことを特徴とする請求項８から１２のいずれか１項に記載の製品。
14. 前記シートが、勾配を有する混合層、または反射防止層の積層体を含むことを特徴とする請求項８から１３のいずれか１項に記載の製品。
15. 前記シートが導電性回路網を含むことを特徴とする請求項８から１４のいずれか１項に記載の製品。
16. 建造物、家具、家庭用電化製品、アーバンファーニチャー、ならびに陸上、航洋、および航空輸送機関のための窓ガラスとしての請求項８から１５のいずれか１項に記載の製品の使用。
17. 請求項１から７のいずれか１項に記載の方法によって得られる自動車用窓ガラス。