JP2004533849A - Cyp74酵素及びそれらをコードするヌクレオチド配列、並びに病原体抵抗性植物細胞及びそれらの子孫の作製方法 - Google Patents

Cyp74酵素及びそれらをコードするヌクレオチド配列、並びに病原体抵抗性植物細胞及びそれらの子孫の作製方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、シトクロムP450クラスの酵素、これらの酵素をコードするヌクレオチド配列、及び病原体抵抗性植物の作製方法におけるそれらの使用に関する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、シトクロムP450クラスに由来する酵素、対応するコード化ヌクレオチド配列の単離、並びに病原体抵抗性植物細胞及びそれらの子孫の作製方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シトクロムP450酵素クラスは、酵素であるアレン酸化物シンターゼ(AOS)、ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)及びジビニルエーテルシンターゼ(DES)を包含する。それらはCYP74と呼ばれる別のサブファミリーを形成する。
【0003】
多様なシトクロムP450酵素があるために、このクラスの各タンパク質にその一次構造に基づいて特定のファミリー及びサブファミリーを割り当てる命名法が開発された。従って、AOSの全てはそれら独自のサブファミリーCYP74Aを形成する一方で、CYP74Bは13−HPL類を含み、CYP74Cは9/13−HPL類を含み、そしてCYP74Dは9−DES類を含む(Feussnerら;2001,Trends Plant Sci.6,268−273)。同じサブファミリーに由来するタンパク質には年代順に番号が付与される。
【0004】
CYP74酵素は、補欠分子族の血球分子を有するモノオキシゲナーゼである。それらは補欠分子族として結合したプロトポルフィリンIX型(ヘムb)も有するが、それらはCOに対して極めて低い親和性を有する(Matsui,1998,Belgian Journal of Botany.131,50−62)。
【0005】
それらは、リポキシゲナーゼ(LOX)経路として知られているポリエン脂肪酸の代謝において重要な酵素を構成する(Feussner及びWasternack,1998,Fett/Lipid.100,146−152)。
【0006】
LOXは、触媒中心の鉄がアミノ酸側鎖に結合したジオキシゲナーゼである(Brash,1999,J.Biol.Chem.274,23679−23682)。それらは、多価不飽和脂肪酸の(1Z,4Z)−ペンタジエン系内への分子状酸素の導入を触媒する。植物において、これらは主としてリノール酸及びα−リノレン酸である。採用されるLOXの部位選択性(regioselectivity)に応じて、生成物として、ヒドロペルオキシダーゼの2つの異なる位置異性体、すなわち(9S)異性体又は(13S)異性体が生成しうる。例えば、α−リノレン酸は、(13S,9Z,11E,15Z)−13−ヒドロペルオキシ−9,11,15−オクタデカトリエン酸(13S−HPOTE)を生じ、そしてリノール酸は、(13S,9Z,11E)−13−ヒドロペルオキシ−9,11−オクタデカジエン酸(13S−HPODE)を生じる。
【0007】
植物において、これらのヒドロペルオキシドは、多数の酵素によって急速にさらに反応する。現在、ヒドロペルオキシドを変換し、そしてLOX生成物と競合する7種の異なる酵素ファミリーが植物界において知られている。すなわち、アレン酸化物シンターゼ(AOS)反応、ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)反応、ジビニルエーテルシンターゼ(DES)反応、レダクターゼ反応、ペルオキシゲナーゼ反応、エポキシアルコールシンターゼ(EAS)反応及びLOX反応それ自体(Feussnerら;2001,Trends Plant Sci.6,268−273)。
【0008】
酵素アレン酸化物シクラーゼ(AOC)の存在下において13−HPOTEが反応する場合には、12−オキソフィトジエン酸(12−oxo−PDA)を与える環化反応が起こり(Zieglerら;2000,J.Biol.Chem.275,19132−8)、これ自身はジャスモン酸(ここでは植物ホルモンと考えられる)の前駆体である。
【0009】
AOS(EC4.2.1.92;CYP74A)は、記載された最初のCYP74酵素であった。均質なタンパク質は亜麻から初めて単離された(Song及びBrash,1991,Science.253,781−784)。それは不安定なアレン酸化物を与える反応を触媒し、該酸化物は水の存在下で対応するα−及びγ−ケトールに分解しうる。AOSはジャスモン酸の生合成に関与する(Vick及びZimmerman,1983,Biochem.Biophys.Res.Commun.111,470−7)。ジャスモン酸それ自体は、特定のmRNAの転写の誘導、及びジャスモネート誘導タンパク質(JIP)、例えばLOX、AOS及びプロテイナーゼ阻害剤の翻訳の調節に関与する。これにより、ジャスモン酸は植物ストレス応答における重要なシグナル物質となっている(Wasternack及びParthier, 1997, Trends Plant Sci.2,302−307)。成長調節プロセス及び老化促進における関与も同様に記載されている(Sembdner及びParthier,1993,Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.44,569−589)。
【0010】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トマト(Lycopersicon esculentum)、アマ(Linum usitatissium)及びオオムギ(Hordeum vulgare)のAOSを含む多数のAOSが既にクローニングされており、かつ大腸菌において機能的に発現されている。オオムギAOSは別として、今日までにクローニングされた全てのAOSは、(13S)−ヒドロペルオキシドに対して基質特異性を示す(Maucherら;2000,Plant J.21,199−213)。
【0011】
HPL(CYP74B及びC)は、ヒドロペルオキシドを切断して(3Z)−アルデヒド及びω−オキソ酸にする(Matsui,1998,Belgian Journal of Botany.131,50−62)。この酵素自体が発見される以前でさえも、HPL反応生成物は、植物および果実の特徴的な臭いに寄与する「葉アルデヒド」として知られていた(Hatanaka,1996,Food Rev.Int.12,303−350)。基質が13−HPOTEである場合には、(3Z)−ヘキサナール及び(9Z)−12−オキソ−9−ドデセン酸が生成され、そのうち後者は異性化して(10E)−12−オキソ−10−ドデセン酸(トラウマチン)を与え、これは傷害ホルモンとして論じられている。植物メッセンジャー物質としての機能も論じられている(Bate及びRothstein,1998,Plant J.16,561−569)。トラウマチンはさらに酸化されて外傷酸を与えることができ、これも同様に植物傷害応答に関与するようである(Zimmerman及びVick,1970,Plant Physiol.46,445−453)。クローニングされ、そして大腸菌において活性タンパク質として発現されたHPLは、特にシロイヌナズナ、キュウリ(Cucumis sativus)、アルファルファ(Medicago sativus)及びトマトのHPLであった。ここでもまた、これらの酵素の大部分は(13S)−ヒドロペルオキシドに対して基質特異性を示す。キュウリ由来のHPLのうち1つのみ及びメロン由来の1つは基質特異性を示さず、それ故に9/13−HPLと呼ばれる(McIntyreら;1999,J.Biol.Chem.274,25189−25192;Matsuiら;2000,FEBS Lett.481,183−188)。CYP74ファミリーの他のメンバーを用いた両者の配列の関係についての研究は、AOSとの相同性が13−HPLよりも高程度であることを示した。これは、これらの酵素が別のサブファミリーCYP74Cとして分類される理由である(Matsuiら;2000,FEBS Lett.481,183−188)。アラビドプシスHPLが傷害によって誘導されることが実証されている。
【0012】
DES(CYP74D)は、殺真菌活性を有するジビニルエーテルの生成を触媒する(Weberら,1999)。病原性真菌及び細菌に対する防御にジビニルエーテルが関与することも、HPL生成物の場合のアルデヒドと同様に論じられている(Weberら;1999,Plant Cell.11,485−493;Goebelら;2000,J.Biol.Chem.726,6267−6273)。最初のトマトDESは、2001年にItoh及びHoweによってクローニングされた。それにより配列についてAOS及びHPLと高い程度の相同性を有することが明らかになった。それ故に、それはシトクロムP450クラス、サブファミリーCYP74Dに属するとも考えられる。さらに、DESが9S−ヒドロペルオキシドに対して高度に特異的である唯一の酵素である限りにおいて、DESはCYP74群で独特である(Itoh及びHowe,2001,J.Biol.Chem.276,3620−3627)。
【0013】
本質的に、P450酵素は多数の内因性物質の生合成及び代謝に多くの様式で関与する。それらが生体異物の解毒に関与することは特に重要である。さらに、植物P450酵素は傷害シグナル(ジャスモン酸、サリチル酸、トラウマチン)及びホルモン(ジベレリン、ブラシノステロイド)の生合成に関与する。
【0014】
植物における傷害シグナル及びその後のシグナル伝達カスケードを引き起こす物質は多くの形態で生じる。それらは植物への損傷又は外傷によって引き起こされうるが、外部の化学物質によっても(人工的に)誘導されうる。
【0015】
しかしながら、そのうえに、それは特に、植物病の発生及び中でもこのような病原体に対する植物の防御反応の促進であり、これらは農業経済学的に莫大な関連がある。病原体に対する植物の応答は、植物がそれ自体を外傷によるストレスに対して防御する場合とは著しく異なった経路を伴うであろう。例えば、ウイルス、細菌又は真菌によって引き起こされる植物病の発生は、農作物の劇的な量的又は質的減少と一緒になって、植物全体の相当な損傷又は実際にその死を一般的にもたらす。
【0016】
収率損失が経済的に許容できる程度に限定されるならば、植物保護対策を行うことが肝要である。特に、土壌、地下水及び使用者にとって追加の汚染物となる化学薬品を用いることなく、病原体及び/又は有害寄生物に対する植物の防御反応を改善することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、増強された病原体抵抗性を示すトランスジェニック植物細胞、植物及びそれらの子孫、並びに対応する改善されたそれらの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するアレン酸化物シンターゼ若しくはそのイソ酵素、及び/又は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するジビニルエーテルシンターゼ若しくはそのイソ酵素によって達成される。
【0019】
上記の2つの酵素はCYP74酵素ファミリーに属する。これらのCYP74酵素の比活性の増大は、単独で又は組み合わせて、植物細胞におけるこれらの酵素の内因性比活性に関して、植物細胞における病原体抵抗性の増強をもたらす。
【0020】
ここで、本発明により増大されるCYP酵素比活性は、植物細胞又は植物における内因性酵素比活性に対して20〜90%、好ましくは30〜80%、特に好ましくは40〜70%増強されている植物細胞又は植物の病原体抵抗性を生じさせる。植物の抵抗性は、侵入頻度の低下によって決定される。
【0021】
本発明の目的のために、侵入頻度とは、首尾よく侵入された表皮細胞を有する感染部位の数を感染部位の総数で除した値を意味するものと理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るCYP74酵素は、単独で又は組み合わせて、例えば、生物栄養真菌のような病原体に対する植物の抵抗性の増強を有利に生じさせる。本発明に係るCYP74タンパク質の濃度上昇(比活性上昇)は、ウドンコ病(ベト病)菌、特に好ましくはオオムギウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニスf.sp.ホルデイ)又はコムギウドンコ病菌(f.sp.トリチシ)に対する抵抗性の増強を生じさせる。しかしながら、これは他の植物病原体に対する抵抗性の増強を排除するものではない。
【0023】
このような植物病原体のさらなる例は、ピチウム(Pythium)属の種、アルブゴ(Albugo)属の種、ツノ担子菌(リゾクトニア・ソラニ;Rhizoctonia solani)、ベト菌(ペロノスポラ・パラシティカ;Peronospora parasitica)、ウドンコ菌(エリシフェ・クルシフェラウム;Erysiphe crucifearum)、ウドンコ菌(E.シコレアセアルム;E.cichoreacearum)、黒斑病菌(アルテルナリア・ブラッシコーラ;Alternaria brassicicola)、灰色かび病菌(ボトリチス・シネレア;Botrytis cinerea)、白絹病菌(スクレロチウム・ロルフシイ;Sclerotium rolfsii)、菌核病菌(スクレロチニア・スクレロチウム;Sclerotinia sclerotium)、萎ちょう病菌(フザリウム・オキシスポルム;Fuzarium oxysporum)、赤かび病菌(F.クルモルム;F.culmorum、F.グラミネアルム;F.graminearum)、ムギ赤かび病菌(F.ニバレ;F.nivale)、疫病菌(フィトフトラ・インフェスタンス;phytophtora infestans)又はつる枯細菌(シュードモナス・シリンガエ;Pseudomonas syringae)である。
【0024】
本発明に係る上記のCYP74酵素は、このクラスに由来する従来公知のCYP酵素よりも著しく広い基質スペクトルを示すことに注目すべきである。本発明に係るCYP74酵素は、基質として9−HPOD/TEだけでなく13−HPOD/TEも変換することができる。
【0025】
本発明によれば、本発明のCYP74酵素はコケ又は高等植物に由来するものである。好ましくは、本発明に係るCYP74酵素はヒメツリガネゴケ(フィスコミトレラ・パテンス)に由来するものである。
【0026】
本発明はまた、植物細胞又は植物の病原体抵抗性を増強するための多価不飽和脂肪酸の生合成に関与する上記種類のアレン酸化物シンターゼをコードする、以下から選択される単離されたヌクレオチド配列に関する:
a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、
b)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、
c)a)又はb)に対し相補的なヌクレオチド配列
【0027】
本発明はまた、a)又はb)とハイブリダイズするヌクレオチド配列を包含する。
【0028】
同様に、本発明は、植物細胞又は植物の病原体抵抗性を増強するための多価不飽和脂肪酸の生合成に関与する上記種類のジビニルエーテルシンターゼをコードする、以下から選択される単離されたヌクレオチド配列に関する:
a)配列番号3に示されるヌクレオチド配列、
b)配列番号3に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、
c)a)又はb)に対し相補的なヌクレオチド配列
【0029】
本発明はまた、a)又はb)とハイブリダイズするヌクレオチド配列を包含する。
【0030】
本発明によれば、単離された核酸又は単離された核酸断片は、一本鎖又は二本鎖であってよく、そして場合により天然の、化学的に合成された、改変された又は人工のヌクレオチドを含んでいてもよいRNA又はDNAポリマーを意味するものと理解される。これに関して、DNAポリマーという用語は、ゲノムDNA、cDNA又はこれらの混合物をも包含する。
【0031】
本発明の目的のために、ハイブリダイズするヌクレオチド配列は、CYP74酵素をコードする本発明に係る対応するヌクレオチド配列と標準的なハイブリダイゼーション条件下で結合するオリゴ−又はポリヌクレオチドを意味するとものと理解される。標準的なハイブリダイゼーション条件という用語は、広義に解釈すべきであり、そしてストリンジェントな又はより低いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を指す。このような条件は、特にSambrookらによって記載されている(1989,Molecular Cloning,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。本発明によれば、ハイブリダイズするヌクレオチド配列という用語は、本来公知の標準的ハイブリダイゼーション条件下で本発明に係るヌクレオチド配列と特異的な相互作用(結合)を行うDNA又はRNA群に由来する実質的に類似のヌクレオチド配列を包含する。これらはまた、例えば10〜30、好ましくは12〜15のヌクレオチド長を有する短鎖ヌクレオチド配列も包含する。本発明によれば、これはまた、特にプライマー又はプローブとして知られているものも包含する。
【0032】
本発明によれば、相補的ヌクレオチド配列は、塩基対合規則による問題の出発配列の転写の構成要素となるDNA又はRNA(mRNA)配列を意味するものと理解される。
【0033】
本発明によれば、アレン類は機能的に同等のヌクレオチド配列、すなわち、本質的に同じタイプの作用を有するヌクレオチド配列であるものと理解される。機能的同等配列は、例えば、遺伝子暗号の縮重のためにヌクレオチド配列が異なるにもかかわらず、所望の機能を保持している配列である。従って、機能的同等物は、本明細書に記載した配列の天然の変種、並びに人工ヌクレオチド配列、例えば化学的合成によって得られ、かつ適切ならば宿主生物のコドン用法に適合化されているヌクレオチド配列を包含する。加えて、機能的に同等の配列は、例えば、阻害剤に対する脱感作性又は抵抗性をタンパク質に与える改変されたヌクレオチド配列を有するものを包含する。
【0034】
機能的同等物はまた、特に、所望の機能を保持している最初に単離された配列の自然の又は人工的な突然変異を意味するものと理解される。突然変異は、1以上のヌクレオチド残基の置換、付加、欠失、転換又は挿入を包含する。
【0035】
ここで同様に包含されるのは、センス変異として知られているものであり、これらはタンパク質レベルで、例えば、保存されたアミノ酸の置換に導きうるがタンパク質の機能性の根本的変化に導かないもの、すなわち、機能的に中性の変異である。これはまた、タンパク質レベルで、タンパク質のN又はC末端に関連するがタンパク質の機能に実質的には有害な影響を及ぼすことのないヌクレオチド配列の改変を包含する。実際に、これらの改変はタンパク質構造に対して安定化させる影響を有することができる。機能的同等物はまた、その活性が元の遺伝子又は遺伝子断片と比較して弱化又は強化されている変種を包含する。
【0036】
人工DNA配列もまた、それらが上記のように所望の特性を与える限り、本発明に含まれる。このような人工DNA配列は、例えば、分子モデリングによって作成されたタンパク質の逆翻訳によるか、又はインビトロ選択により決定することができる。特に好適なDNA配列は、宿主−生物−特異的コドン用法に従ってポリペプチド配列を逆翻訳することによって得られるコード化DNA配列である。特異的なコドン用法は、分子遺伝学的方法に精通した当業者によって、形質転換すべき生物の他の既知遺伝子のコンピュータ評価により容易に決定することができる。
【0037】
「機能的に同等な」という用語はまた、問題のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質を指す。この場合、「機能的に同等な」という用語は、そのアミノ酸配列が基準タンパク質(この場合はCYP74酵素)のアミノ酸配列と一定のパーセンテージの相同性を示すことを説明するものである。このパーセンテージは少なくとも75%、好ましくは80%、特に好ましくは90〜95%、特に99.9%である。
【0038】
さらに、本発明はまた、例えば、対応する誘導体を生じさせるヌクレオチド配列の改変によって得られるヌクレオチド配列を包含する。このような改変の目的は、例えば、それに存在するコード化配列のさらなる限定、又はそのほかに、例えば、さらなる制限酵素切断部位の挿入でありうる。
【0039】
さらに、本発明に係るヌクレオチド配列は、それらがコケ又は高等植物に由来するという事実によって区別される。好ましくは、それらはヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)に由来するものである。
【0040】
用語を明確にするために、配列番号1によりコードされるタンパク質はクラスCYP74AシトクロムP450酵素(アレン酸化物シンターゼ;AOS)であることを指摘すべきである。その基質特異性により、特に配列番号3によりコードされる酵素はCYP74Eクラス(ジビニルエーテルシンターゼ;DES)に割り当てられる。
【0041】
本発明はさらに、配列番号1に示されるヌクレオチド配列及び/又は配列番号3に示されるヌクレオチド配列、並びにそれらと機能しうる形で連結された調節ヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物に関する。
【0042】
本発明に係る遺伝子構築物はまた、配列番号1及び/若しくは配列番号3に示されるヌクレオチド配列の誘導体、対立遺伝子又は部分を包含する。これに関して、コード領域は単独で又は組み合わせて(結合して)、同じ調節配列または種々の別々の調節配列の制御下にある。
【0043】
機能的連結は、例えば、プロモーター、コード配列、ターミネーター、及び適切ならば、コード配列が発現されるときに調節エレメントの各々が、その意図される機能を果たしうるような他の調節エレメントの連続的配置を意味するものと理解される。これらの調節ヌクレオチド配列は、天然起源のもの又は化学的合成により得られるものであってよい。好適なプロモーターは、原則として、問題の宿主生物において遺伝子発現を調節可能な全てのプロモーターである。本発明によれば、このようなプロモーターは、それによって支配される遺伝子の発現が宿主細胞において特定の時点で制御されうる、天然の又は合成的に生成された化学的に誘導可能なプロモーターの形態をとることもできる。これらはまた、組織特異的プロモーターを包含する。遺伝子構造物は、例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch及びJ.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)に記載された慣用の組換え及びクローニング技術を使用して、好適なプロモーターを本発明に係るヌクレオチド配列の少なくとも1つに融合させることによって構築される。DNA断片を相互に結合させるために、アダプターまたはリンカーを断片に付加することができる。
【0044】
本発明によって同様に包含されるものは、コード領域の上流に存在する配列領域(構造遺伝子;5’又は上流配列領域)及び/又はそれらの下流に存在する配列領域(3’又は下流配列領域)である。同様に包含されるものは、特に、調節機能を有する配列領域である。それらは転写、RNA安定性又はRNAプロセッシング及び翻訳に影響を与えることができる。調節配列の例は、特に、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、ターミネーター又は翻訳エンハンサーである。
【0045】
本発明によって同様に包含されるものは、配列番号1に示される単離されたヌクレオチド配列、その対立遺伝子、誘導体若しくは部分、及び/又は配列番号3に示される単離されたヌクレオチド配列、その対立遺伝子、誘導体若しくは部分、及び/又は上記種類の遺伝子構築物、並びに宿主細胞において選択及び/若しくは複製するための、及び/又は宿主細胞のゲノム内へ組込むのための別のヌクレオチド配列を含むベクターである。
【0046】
一般的に、本発明により好適な宿主細胞は、高等植物の細胞でありうる。好ましい細胞は、有用植物、好ましくは単子葉有用植物、特に好ましくは穀類、特にオオムギ及び/又はコムギの細胞である。双子葉有用植物の好ましい細胞は、ナス科に由来するものである。
【0047】
従って、本発明はまた、配列番号1に示される単離されたヌクレオチド配列、その対立遺伝子、誘導体及び/又は部分、及び/又は配列番号3に示される単離されたヌクレオチド配列、その対立遺伝子、誘導体及び/又は部分、及び/又は上記種類の遺伝子構築物、及び/又は上記種類のベクターを複製可能な形態で含むトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫の少なくとも1つであって、内因性遺伝子発現(すなわち、例えば非形質転換植物又は植物細胞において見出される天然遺伝子発現)と比較して、アレン酸化物シンターゼをコードするヌクレオチド配列及び/又はジビニルエーテルシンターゼをコードするヌクレオチド配列の発現の増大を示し、該発現が植物の病原体抵抗性の増強をもたらす、上記トランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫を包含する。
【0048】
遺伝子発現の増大の理由は、問題のヌクレオチド配列のコピー数が増加するためであろう。あるいは、それは、例えば、ヌクレオチド配列のコード領域が、遺伝子発現の開始の増強をもたらす1以上の調節配列と機能しうる形で連結されているという事実に基づいている。これは、例えば、強い及び/又は誘導性のプロモーター及び/又はエンハンサー及び/又は他の調節配列によって生じさせることができる。
【0049】
コピー数に関しては、上記のヌクレオチド配列の一方又は双方は、本発明の種々の形態において、2〜100、好ましくは5〜50、特に好ましくは2〜15のコピーとして存在しうる。
【0050】
本発明に係る上記のトランスジェニック植物細胞、植物及び/又はそれらの子孫において、本発明に係るヌクレオチド配列(単独で又は組み合わせて)、その対立遺伝子、誘導体若しくは部分、及び/又は上記種類の遺伝子構築物、及び/又はベクターは、染色体外に存在していてもよく、及び/又は植物ゲノム内に安定的に組込まれていてもよい。
【0051】
ヌクレオチド配列を植物ゲノム内に組込むために好適な手法及び補助物質、例えば遺伝子構築物又はベクター及び好適な使用生物は当業者に公知であり、さらに詳述されない。
【0052】
配列番号2に示されるアレン酸化物シンターゼ及び/又は配列番号4に示されるジビニルエーテルシンターゼ、及び/又はそれらの相当するイソ酵素、誘導体及び/又は部分を有するトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫であって、トランスジェニック宿主細胞系における酵素の相対比活性が、相対内因性酵素活性(例えば、野生型細胞におけるもの)と比較して増大されているものも、同様に本発明に包含される。
【0053】
イソ酵素は、同一又は類似の基質特異性及び作用特異性を有するが、一次構造が異なる酵素を意味するものと理解される。
【0054】
本発明によれば、誘導体は、配列内に、例えばポリペプチドのN及び/若しくはC末端で、又は保存されたアミノ酸領域内に改変を有するが、しかし酵素の機能に有害作用を及ぼすことのない酵素を意味するものと理解される。これらの改変は、本来公知の方法によりアミノ酸置換の形で行うことができる。
【0055】
本発明の特定の実施形態は、その活性がアミノ酸置換によって、問題の出発タンパク質と比較して低下又は増大した酵素の変種を包含する。同じことは、本発明に係る酵素の安定性にも適用され、これらの細胞においては、例えばプロテアーゼによる分解に対する感受性が上昇又は低下している。
【0056】
さらに、本発明は、アレン酸化物シンターゼ又はジビニルエーテルシンターゼの機能を有する酵素であって、それらのアミノ酸配列が調節化合物、例えばそれらの活性を調節する異化代謝産物に対して脱感受性(フィードバック脱感受性)を有するように修飾されている酵素に関する。
【0057】
本発明によれば、上記のトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫は、有用植物又はその細胞、好ましくはナス科又は穀物科、特に好ましくはジャガイモ、オオムギ又はコムギの形態をとる。
【0058】
本発明はまた、配列番号1に示されるヌクレオチド配列及び/又は配列番号3に示されるヌクレオチド配列、及び/又は上記で詳述した種類の遺伝子構築物、及び/又はベクターを、複製可能な形態で植物細胞に移入し、こうして形質転換された植物細胞から植物個体を再生させることを含む、植物細胞又は植物の病原体抵抗性を増強する方法を包含する。
【0059】
本発明に係るこのようなトランスジェニック植物の再生方法は、標準的な実験室の慣用手法である。本発明の有利な変法において、ヌクレオチド配列及び/又は遺伝子構築物及び/又はベクターは、「粒子ボンバードメント」として知られている方法及び/又はアグロバクテリウム媒介形質転換によって植物又は植物の部分若しくは細胞に移入される。
【0060】
本発明によって得られるトランスジェニック植物及びその子孫の特別な利点は、本発明に係るヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピー数の増加、又は同様に、対応してコードされたタンパク質の少なくとも1つが高められた濃度で存在することが、実質的に増強された疾病抵抗性に導くことである。これは、本発明に係る遺伝子及び/又はコードされたタンパク質が病原性寄生物に対する抵抗性の発生の原因となることを意味する。
【0061】
病原性寄生物の例は、特に、オオムギウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニスf.sp.ホルデイ)若しくはコムギウドンコ病菌(f.sp.トリチシ)、ピチウム属の種、アルブゴ属の種、ツノ担子菌(リゾクトニア・ソラニ)、ベト菌(ペロノスポラ・パラシティカ)、ウドンコ菌(エリシフェ・クルシフェラウム)、ウドンコ菌(E.シコレアセアルム)、黒斑病菌(アルテルナリア・ブラッシコーラ)、灰色かび病菌(ボトリチス・シネレア)、白絹病菌(スクレロチウム・ロルフシイ)、菌核病菌(スクレロチニア・スクレロチウム)、萎ちょう病菌(フザリウム・オキシスポルム)、赤かび病菌(F.クルモルム、F.グラミネアルム)、ムギ赤かび病菌(F.ニバレ)、疫病菌(フィトフトラ・インフェスタンス)又はつる枯細菌(シュードモナス・シリンガエ)である。
【0062】
本発明に係る方法の好ましい変法において、使用される植物細胞は有用植物の細胞、好ましくはナス科又は穀物科、特に好ましくはジャガイモ、オオムギ又はコムギに由来する細胞である。
【0063】
本発明はさらに、トランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫の病原体抵抗性を増強するための、配列番号1に示されるヌクレオチド配列及び/又は配列番号3に示されるヌクレオチド配列及び/又はそれらの対立遺伝子、それらの誘導体および/または部分の使用に関する。
【0064】
本発明はまた、トランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫の病原体抵抗性を増強するための、配列番号2に示されるポリペプチド及び/又は配列番号3に示されるポリペプチド及び/又はそれらのイソ酵素及び/又は誘導体のうち少なくとも1つの使用に関する。
【0065】
本発明により同様に包含されるのは、少なくとも1つの酵素の比活性の増大が、対応する内因性酵素比活性と比較して20〜90%、好ましくは30〜80%、特に好ましくは40〜70%増強された植物細胞又は植物の病原体抵抗性をもたらす、上記酵素の少なくとも1つの使用である。
【0066】
これに関して、本発明に係る酵素の少なくとも1つの使用は、例えば、ウドンコ病菌、好ましくはオオムギウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニスf.sp.ホルデイ)若しくはコムギウドンコ病菌(f.sp.トリチシ)及び/又は疫病菌(フィトフトラ・インフェスタンス)に対する抵抗性の増強を生じさせる。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は本発明の説明を意図するものであって、限定的なものではない。
【0068】
一般的方法:
一般的なDNA及びクローニング技術、ゲル電気泳動、配列決定、PCR、ノーザンブロット法、組換えタンパク質の発現及び精製、ウェスタンブロット法、HPLC及びGC分析、並びに微生物の培養は、従来の実験室方法であり、特にSambrookら(Molecular cloning.A laboratory manual(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている。
【0069】
コケ及び植物材料の処理も同様に実験室の慣用手法であり、特にGelvinら(Plant Molecular Biology Manual,1995,Dovdrecht/Holland,Kluwer Academic Publ.)に記載されている。
【0070】
CYP74酵素をコードする遺伝子のPCRによるクローニング
ヒメツリガネゴケ(フィスコミトレラ・パテンス)の2つのλZapII cDNAライブラリー(1つは糸状体組織に由来し、1つは配偶体組織に由来する)をRACE−PCRのために利用した。T7−langプライマー(5’−GTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG CGA ATT GGG−3’)を5’−RACE−PCRのためのベクタープライマーとして作用させた。標準的方法を用いた。
【0071】
ネステッドRACE−PCRのために、M13revプライマー(5’−GGA AAC AGC TAT GAC CAT G−3’)及びRACEプライマーを用いて第一PCRを行った。この混合物を鋳型として、T7−langプライマー及び以下のプライマーから選択された(遺伝子特異的)ネステッド−RACEプライマーを用いる第二PCRのために作用させた:
Figure 2004533849
【0072】
完全な断片をクローニングするために、後者をExpandTMPCR系により増幅させた。Tagポリメラーゼに加えて、この系はプルーフリーディング活性を有するPwoポリメラーゼを含有する。この第二ポリメラーゼの目的は、クローニングすべきDNAにおいて可能な限り少ない突然変異体を得るために、リーディングの誤差率を低く保つことである。鋳型として次のcDNAライブラリーを用いた:糸状体ヒメツリガネゴケcDNAλZapII及び配偶体ヒメツリガネゴケcDNAλZapII。下記のプライマーを使用した:
Figure 2004533849
【0073】
RACE及び完全なcDNAのクローニング中にクローンを調べるために、これに関しては誤差率は重要でなかったので、Tf1ポリメラーゼによる「コロニー」PCRとして知られている方法を行った。プライマーを保持し、そして標準的設定を用いてプログラムを実行した。
【0074】
CYP74酵素の単離
CYP74をコードする2つの遺伝子を、2つのヒメツリガネゴケλZapII cDNAライブラリーから単離した。
【0075】
クローンPp291
単離されたクローンPp291は、322アミノ酸のオープンリーディングフレームを有していた。このタンパク質はグアユール(Parthenium argentatum)AOSと48%の同一性を有していた(Panら;1995,J.Biol.Chem.270,8487−8494)。しかしながら、そのヌクレオチド配列を他の公知のAOSと比較したところ、5’末端に約500〜650bpが依然として失われていたことが明らかになった。これは、糸状体組織由来のλZapII cDNAライブラリー及び配偶体組織由来のλZapII cDNAライブラリーを用いて5’−RACE−PCRを行ったためである。RACEプライマーPP291AOS5R(上記参照)及び60℃のアニーリング温度を用いて、糸状体ライブラリーから3つの異なる長さの断片を首尾よく増幅させた。断片長の評価は、アガロースゲルに導入されたサイズ標準物との比較によって可能であった。断片長は600bp、700bp及び800bpであった。2つの長い方の断片をベクターpGEM−T内にクローニングし、そして配列決定した。生成した配列の両方は、出発クローンの5’末端を延長するものであった。停止コドンを両方の配列における最初の開始コドン(ATG)の15bp上流に配置させた。完全なcDNAをクローニングするために、SphI及びPstIに対する制限切断部位を有する発現プライマー(PP291/5’SphI及びPP291/3’PstI、上記参照)を、RACE−PCRのcDNA配列から誘導した。得られた完全なcDNA配列は配列番号1に示されており、そして475アミノ酸を有するタンパク質(配列番号2)をコードする。
【0076】
クローンPp364
第二のcDNAクローンは489アミノ酸を有するタンパク質をコードしたオープンリーディングフレームを含有していた。このタンパク質はシロイヌナズナAOSと42%の同一性(Laudertら;1996, Plant Mol. Biol. 31, 323−335)、及びアマAOSと41%の同一性(両者ともアミノ酸レベルで)を有していた。この長さにもかかわらず、このクローンは出発コドンを含有していなかった。BamHI及びHindIIIに対する制限切断部位を有する発現プライマーPP364/5’BamHI及びPP364/3’HindIIIを、公知のクローン配列から誘導した。完全なcDNA配列をRACE−PCR及び逆PCRによって得た。完全なcDNA配列は配列番号3に示されており、そして532アミノ酸を有するタンパク質(配列番号4)をコードする。
【0077】
組換えタンパク質の発現及び精製
単離されたcDNAを発現させるために、それらを発現ベクターに連結する必要があった。N−末端His−Tagを有するタンパク質を発現させるために、ベクターpQE30(Qiagen, Hilden)を用いた。T4−DNAリガーゼを用いて、切断前のpQE30及びドナーDNA(比率は約1:3)の間の連結を行った。
【0078】
組換えタンパク質を大腸菌株SG13009において発現させた(Gottesmannら;1981,J.Bacteriol.148,265−73)。最初に、発現クローンをLB培地(カルベニシリン及びカナマイシンを含む)中37℃で、OD600が0.6〜0.8に達するまでインキュベートした。IPTG(最終濃度1mM)を用いて誘導したのち、細菌を10℃でさらに2〜3日間増殖させた。
【0079】
精製は可能な限り氷上で行い、遠心段階は4℃で行った。4000×gで15分間の遠心によって細胞を沈降させた。
【0080】
この細胞沈降物を50mMリン酸ナトリウム、pH8に完全に再懸濁させ、そして50%強度及び50%パルスで5×1分間、音波処理した(Sonopuls GM70,Bandelin,Berlin)。4000×gで15分間の遠心によって細胞破片を除去し、そしてさらなる遠心(100000×gで1時間)によって細胞膜を上清から沈降させた。
【0081】
両方のクローンPp291及びPp364の場合、組換え産生されたタンパク質をアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。これに続いて、pH勾配(図1A)、及びその代わりにイミダゾール勾配(図1B)を用いて溶出させた。全ての洗浄及び溶出ステップにおいて、同一体積(1ml)を沈殿させ、そしてゲルにアプライした。
【0082】
図1Aから分かるように、純粋なPp291タンパク質はpH4でカラムから溶出された。イミダゾール勾配の場合には、100mM以上のイミダゾール濃度でタンパク質が比較的に純粋な形態で溶出した。両方の方法を比較すると、相違は認められなかった。このために、以下ではpH勾配だけを用いてタンパク質を精製した。
【0083】
活性アッセイ
配列アラインメントは触媒活性に関する結論を考慮しないので、光度計測法活性アッセイ並びにHPLC及びGC分析(これらは全て標準的方法で行った)によって、酵素の触媒作用中に生成した生成物を分析した。
【0084】
光度計測法活性アッセイにおいて、吸収の低下を234nmで測定する。この低下は、CYP74酵素との反応中にヒドロペルオキシドの共役ジエン系の分解に基づくものである。この目的のために、それぞれの基質を(純粋な活性アッセイの目的では、一般的に20μMの13−HPOTE又は9−HPODEの最終濃度となるように)リン酸緩衝液(pHは酵素の最適pHに依存する)に溶解し、そして酵素の添加により反応を開始させた。基質濃度を234nmでの吸収による光度計測法でモニターした。モル吸収係数(λ234nm)は25000M−1cm−1である。
【0085】
両方の基質(13−HPOTE又は9−HPODE)は、クローンPp291でコードされる酵素、及びPp364でコードされる酵素の両者によって変換された。グラフを図2に示す。
【0086】
ヒドロペルオキシドとDESとの反応はジビニルエーテルを生じさせ、これは酸性環境で加水分解してアルデヒドを与える。これらのアルデヒドは揮発性である。生成したこれらのアルデヒドを同定するために、それらをDNPHで誘導体化することができる(Kohlmannら;1999,Eur.J.Biochem.260,885−895)。こうして生成したヒドラゾンは、もはや揮発性でなく、そしてHPLC分析によってそれらの保持時間から同定することができる。図3に示すように、ジビニルエーテルは誘導体化試薬で処理すると、アルデヒドに分解することもでき、次いでこれらをDNPH誘導体の形態で検出することができる。
【0087】
この方法を用いて、Pp364でコードされる酵素、並びに基質13−HPOTE及び9−HPODEの反応混合物中でアルデヒドが生成することを示すことができる(図4)。これらのアルデヒドは、それらの保持時間から(2E)−ヘキサナール及び(2E)−ノネナールであると同定された。それらは、アルデヒド−DNPH誘導体に典型的なUVスペクトルを示した。Pp291の場合には、アルデヒドは検出されなかった(データは示さない)。
【0088】
不揮発性化合物のHPLC分析においては、1−14C−標識ヒドロペルオキシドを反応させる。UV検出器の代わりに放射能検出器により可視化できる標識生成物が生成する。このようにして、典型的なUV極大を有しない物質でさえも、それらの保持時間から同定することができる。もう一つの利点は、この種の検出がUV検出よりも感度が高いという事実である。[1−14C−13−HPOTEを酵素反応における基質として使用すれば、図5に示したクロマトグラムは、オオムギ9/13−AOS1と同じPp291の溶出プロフィールを示し(Maucherら;2000,Plant J.21,199−213)、これを参照として用いた。他のAOSについては、アレン酸化物シクラーゼが存在しない場合の主反応生成物はα−ケトールであることが既に示されている。
【0089】
Pp364の発現及び後続の変換のクロマトグラムは、約30分でシグナルを示した(図6)。このシグナルはキュウリ9/13−HPL又はオオムギ9/13−AOS1のいずれにも認められなかった。Pp364はさらに、キュウリ9/13−HPLの生成物と同じ保持時間を有する他のシグナルを示した。
【0090】
放射性HPLCにおいてはカラム溶出物に液体シンチレーターが添加されるので、生成物を採取し、それらをさらに分析するために、未標識基質を用いて同じHPLC試験を行った。α−ケトールは典型的なUV極大を有しないので、この場合は210nmで検出を行った(Gardner,1997,Advances in Lipid Methodology−four(Christie,W.W.偏)pp.1−43,The Oily Press,Dundee)。
【0091】
Pp291の場合には、13−HPOTEから生成したα−ケトールに対する標準物と同じ保持時間を有する基質を採取し、誘導体化し、そしてGC/MSにより研究した。(図7に)示したクロマトグラムが得られた。質量スペクトルは対応するα−ケトール標準物のものと同一である。
【0092】
酵素特性の決定
最適pH
クローンPp291のための最適pHを光度測定法で決定した。この目的で、13−HPOTEを基質として用いた(適切なpHを有する50mMリン酸ナトリウム中約25μM)。最高活性は5.0〜6.6.0のpH範囲の酵素によって示される。これを図8に示す。
【0093】
酵素動力学的パラメーター
Pp291をその基質特異性、特にアラキドン酸のヒドロペルオキシド(HPETE)に関して研究した。なぜならば、これがこの生物の主要な脂肪酸だからである(Girkeら;1998,Plant J.15,39−48)。図9に示す変換速度比が見出された。これに関して研究したヒドロペルオキシドの中で、8−HPETEが最も速く変換される基質であることを明らかである。これに続き、13−HPOTE、9−HPODE及び11−HPETEであり、8−HPETE:13−HPOTE:9−HPODE:11−HPETEの比は100:70:60:57である。
【0094】
増強された病原体抵抗性を生じさせるための過剰発現
Pp291及びPp364 cDNAをバイナリーベクターにクローニングするために、それらをBamHI及びNotIで制限し、そしてBamHI−及びNotIで切断されたpCRScriptベクターに移入した。次いでSalIを用いてそれらをこのベクターから切り出し、そして適切にSalIで切断されたpBinARベクターに連結した。遺伝子がセンス方向にあるクローンを、BamHIによるコントロール切り出し及び配列決定によって決定した。
【0095】
シロイヌナズナへの形質転換
各実験でセンス方向のPp291及びPp364 cDNAを含むこれらのpBinARベクターを用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(C58C1 pMP90)を形質転換する。そののち、野生型シロイヌナズナ植物(cv. Columbia)を、Clough及びBent(Clough S.及びBent A., Plant J 1998,16(6):735−43)及びBechtoldら(Bechtold N.ら,CRAcad Sci Paris 1993,1144(2):204−212)の真空浸潤方法の改変法に基づいて、それぞれ形質転換されたアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を用いて形質転換する。
【0096】
カナマイシン含有MSプレート(40mg/lのカナマイシン、10mg/lのベノミル及び100mg/lのチメチンを添加したMS培地(Sigma))上での種子の栽培によるカナマイシン耐性に基づいて、一次形質転換物の種子をスクリーニングした。2週間ののち、カナマイシン耐性実生を土壌に移し、それらが完全に発達した植物に成長したとき、それらを用いて表現型分析及び分子分析を行った。
【0097】
センス方向のPp291及びPp364で形質転換されたトランスジェニック植物のうち、共抑制効果が観察されなかったものを選択した。この目的で、全RNAを植物から単離し、そしてメッセンジャーの存在をリアルタイムPCR(Perkin−Elmer)により検出する。こうして同定されたトランスジェニック植物を種々の病原体に感染させた。これらにはオオムギウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニスf.sp.ホルデイ)若しくはコムギウドンコ病菌(f.sp.トリチシ)、ピチウム属の種、アルブゴ属の種、ツノ担子菌(リゾクトニア・ソラニ)、ベト菌(ペロノスポラ・パラシティカ)、ウドンコ菌(エリシフェ・クルシフェラウム)、ウドンコ菌(E.シコレアセアルム)、黒斑病菌(アルテルナリア・ブラッシコーラ)、灰色かび病菌(ボトリチス・シネレア)、白絹病菌(スクレロチウム・ロルフシイ)、菌核病菌(スクレロチニア・スクレロチウム)、萎ちょう病菌(フザリウム・オキシスポルム)、赤かび病菌(F.クルモルム、F.グラミネアルム)、ムギ赤かび病菌(F.ニバレ)、又はつる枯細菌(シュードモナス・シリンガエ)が含まれた。
【0098】
結果、すなわち植物の病原性真菌又は細菌抵抗性の肉眼観察度を、特に蛍光及び光学顕微鏡により分析した。それにより、Pp291−及びPp364−トランスジェニックアラビドプシス植物が野生型と比較して増強された上記病原体抵抗性を示したことが明らかとなった。
【0099】
オオムギへの形質転換
オオムギcv.パラス(Pallas)の葉の切片を、GFP発現ベクター(緑色蛍光タンパク質)に存在するPp291又はPp364のcDNAで形質転換した。次いで葉を病原性真菌オオムギウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニスf.sp.ホルデイ)に感染させ、そして結果を48時間後に光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡により分析した。GFP発現性細胞内への侵入を、生細胞の吸収管の検出及びまさにそれらの細胞における真菌の発育の評価によって評価した。6つの実験全てにおいて、Pp291又はPp364によるオオムギcv.パラスのボンバードメントによって、外来コントロールcDNA(ヒト甲状腺ホルモン受容体dsRNA、TR)でボンバードメントを行った細胞と比較して、オオムギウドンコ病菌が首尾よく侵入した細胞数が減少した。Pp291及びPp364 cDNAの抵抗性誘導効果は、オオムギウドンコ病菌による侵入効率を平均で44%低下した。
【0100】
オオムギの葉の表皮細胞内へのcDNAの加速(biloistic)導入について既に記載されている方法(Schweizer Pら(1999)Mol Plant Microbe Interact 12:647−54;Schweizer Pら(2000)Plant J 2000 24:895−903)を用いて、オオムギの一過性形質転換を行った。形質転換マーカーとして、ベクターpGFP(CaMV 35Sプロモーターの制御下のGFP)のプラスミドDNAと一緒にcDNAを用いて、直径1.1mmのタングステン粒子(粒子密度25mg/ml)を被覆した。この目的で、以下の量のcDNA及びリポータープラスミドを各ボンバードメントのために被覆目的に用いた:1mgのpGFP及び2mgのcDNA。これらのマイクロキャリアを調製するために、55mgのタングステン粒子(M17,直径1.1mm;Bio−Rad,Munich)を1mlのオートクレーブ蒸留水で2回、及び1mlの無水エタノールで1回洗浄し、乾燥し、そして1mlの50%濃度グリセロール(約50mg/mlのストック溶液)に吸収させた。この溶液を50%濃度グリセロールで25mg/mlに希釈し、使用前によく混合し、そして超音波浴中で懸濁させた。マイクロキャリアを被覆するために、ボンバードメント当たり1mgのプラスミド、2mgのcDNA(1mL)、12.5mlのタングステン粒子懸濁液(25mg/ml)12.5mlの1M Ca(NO溶液(pH10)を、絶えず混合しながら滴下して混合し、室温で10分間放置し、簡単に遠心し、そして20mlの上清を分離した。タングステン粒子を含む残余を再懸濁させ(超音波浴)、そして実験に使用した。
【0101】
約4cm長さのオオムギの本葉切片を用いた。ペトリ皿(直径6.5cm)に入れた20mg/mlのベンズイミダゾールを添加した0.5%Phytagar(GibcoBRLt Life Technologiest,Karlsruhe)の上に組織を置き、粒子ボンバードメントの直前に、大きさ2.2cm×2.3cmの長方形スロットを有するステンシルでその端を覆った。真空チャンバ(その上には、粒子凝集物の拡散及び粒子流の減速のための拡散器として機能する有孔ボード(底の上5cm、マクロキャリアの上11cm、以下参照)にナイロンメッシュ(メッシュサイズ0.2mm,Millipore,Eschborn)が挿入されている)の底に、皿を次々に置いた(Schweizer Pら(1999)Mol Plant Microbe Interact 12:647−54)。各ボンバードメントのために、チャンバの上部に取り付けたマクロキャリア(プラスチック製無菌フィルターホルダー13mm、Gelman Sciences,Swinney,UK)に、5.8mlのDNA被覆タングステン粒子(マイクロキャリア、以下参照)を負荷した。膜真空ポンプ(Vacuubrand,Wertheim)を用いてチャンバ内の圧力を0.9barだけ低下させ、そして植物組織の表面に対しタングステン粒子で9バールのヘリウムガス圧においてボンバードメントを行った。その直後にチャンバを換気した。
【0102】
形質転換された細胞を標識するために、葉をプラスミドでボンバードメントした(pGFP;pUC18系ベクター、挿入されたGFP遺伝子を有するCaMV 35Sプロモーター/ターミネーターカセット;Schweizer Pら(1999)Mol Plant Microbe Interact 12:647−54;Schweizer,P,Institute of Plant Genetics IPK,Gatersleben,GermanyのDr P.Schweizerから提供を受けた)。別のプラスミドでボンバードメントを行う前に、それぞれの実験でマクロキャリアを水でよく洗浄した。ボンバードメント後に、日光中でペトリ皿を僅かにあけたままにして、葉を4時間室温でインキュベートしたのち、それらに100分生胞子器/mmのオオムギ真菌のウドンコ病菌を(系統A6)接種し、そして同一条件下でさらに40〜48時間インキュベートした。
【0103】
粒子流入銃を用いて葉の切片に被覆粒子をボンバードメントした。各ボンバードメントのために、312mgのタングステン粒子を適用した。ボンバードメントの4時間後に、葉にブルメリア・グラミニスウドンコ病菌(系統A6)を接種し、そしてさらに40時間後に感染症状について評価した。結果(例えば、成熟した吸収管及び二次的延長菌糸を形成する、攻撃された細胞のパーセンテージとして定義される侵入効率;計算:以下参照)を、蛍光顕微鏡及び光学顕微鏡により分析した。100分生胞子器/mmの接種により、形質転換細胞の約50%の攻撃頻度を生じた。最小100の相互作用部位を各実験それぞれについて評価した。形質転換(GFP発現)細胞を、青色光で励起して同定した。形質転換細胞の3つの異なるカテゴリーが識別された:
1. 容易に認識できる吸収管を含む侵入された細胞。1以上の吸収管を含む細胞を1細胞と評価した
2. 真菌の付着器によって攻撃されるが、吸収管を含まない細胞。オオムギウドンコ病菌によって繰り返し攻撃されているが、吸収管を含まない細胞を1細胞と評価した
3. オオムギウドンコ病菌によって攻撃されない細胞。
【0104】
評価には細孔細胞及び副細胞を含めなかった。オオムギウドンコ病菌の表面構造を、光学顕微鏡及び0.1%カルコフルオル(Calcofluor)(水中のw/v)による真菌の30秒間の蛍光染色によって分析した。真菌の発育は、カルコフルオル染色後に蛍光顕微鏡で容易に評価することができる。真菌は、Pp291−又はPp364−dsRNA形質転換細胞の一次及び付着器胚管を発生するが、吸収管の発育は起こらない。吸収管の発生は二次菌糸が発育するための条件である。
【0105】
相対侵入効率(RPE)は、形質転換細胞(Pp291又はPp364 cDNAで形質転換)の侵入効率と非形質転換細胞の侵入効率(この場合:平均侵入効率57%)との差として計算される。パーセントで表したRPE(%RPE)は、RPEから1を引いた値に100を乗じることによって計算される:
RPE=[形質転換細胞のPE]
[非形質転換細胞のPE]
%RPE=100×(RPE−1)
【0106】
%RPE値(コントロールの平均侵入効率からの偏差)は、Pp291又はPp364 cDNAで形質転換された細胞の感受性の決定に役立つ。
【0107】
5つの独立した実験において、コントロールcDNAは、オオムギウドンコ病菌の侵入効率に関して、コントロールcDNAでの形質転換と水での形質転換との間で差異がないことを明らかにした。
【0108】
攻撃された細胞の形質転換率又は生存率に対するcDNAの効果を除外するために、コントロールcDNAと、Pp291又はPp364 cDNAとの実験間でGFP発現性細胞の数を比較した。Pp291及びPp364 cDNAは、GFP発現細胞の総数又は攻撃されたGFP発現細胞の数に対して影響を及ぼさなかった。
【0109】
Pp291及びPp364によるトランスフェクション率は、オオムギウドンコ病菌の侵入頻度の劇的な低下を生じさせた(平均%RPE値=−30%)。
【0110】
図面の説明
図1:クローンPp291のアフィニティー精製
(A);pH勾配で溶出:M=マーカー;1=ブランクベクターpQE30(非誘導);2=pQE30(IPTG誘導);3=非誘導Pp291;4=誘導Pp291;5=1の超遠心後の上清;6=2の超遠心後の上清;7=溶出液;8、9、10=洗浄ステップpH8、pH7、pH6;11、12=溶出ステップpH5、pH4;
(B);イミダゾール勾配で溶出;M=マーカー;1〜11=上昇するイミダゾール濃度(mM):0、20、40、60、80、100、125、150、200、250、300。
【0111】
図2:光度測定活性アッセイ:クローンPp291の細胞溶解物(C)、この細胞溶解物の1:50希釈物(B)及びブランクベクターpQE30(A)を添加した後のヒドロペルオキシド溶液の234nmにおける吸収の低下が示される。
【0112】
図3:ヒドロペルオキシドとジビニルエーテルシンターゼとの反応中に生成した揮発性アルデヒドの誘導体としてのヒドラゾンのHPLC分析の溶出プロフィール:コルネレイック(colneleic)(ジビニルエーテルの1種)をアルデヒド誘導体化試薬で処理したのちの(2E)−ノネナールの検出。
【0113】
図4:基質13−HPOTE及び9−HPODEを用いた、クローンPp364によってコードされるDES酵素の触媒作用生成物(アルデヒド)のHPLC分析の溶出プロフィール。それらは、それらの保持時間に基づいて(2E)−ヘキサナール及び(2E)−ノネナールと同定された。
【0114】
図5:クローンPp291によってコードされるAOS酵素によるヒドロペルオキシドの変換の不揮発性生成物のHPLC分析の溶出プロフィール。
【0115】
図6:クローンPp364によってコードされるDES酵素によるヒドロペルオキシドの変換の不揮発性生成物のHPLC分析の溶出プロフィール;
a=細胞溶解物;b=精製酵素。
【0116】
図7:クローンPp291によってコードされるCYP74酵素の触媒作用による生成物のGC/MSクロマトグラムが作成される。18.2分におけるシグナルは枠内に示す質量スペクトルを有する。
【0117】
図8:pHの関数としての、クローンPp291によってコードされるCYP74酵素の相対酵素活性。
【0118】
図9:クローンPp291によってコードされるCYP74酵素による種々の基質の相対変換速度(基質特異性);各実験の基質濃度20μM;測定は光度測定法で行った;n.d.=検出できず。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】クローンPp291のアフィニティー精製(A);pH勾配で溶出;(B);イミダゾール勾配で溶出。
【図2】光度測定活性アッセイ:クローンPp291の細胞溶解物(C)、この細胞溶解物の1:50希釈物(B)及びブランクベクターpQE30(A)を添加した後のヒドロペルオキシド溶液の234nmにおける吸収の低下。
【図3】ヒドロペルオキシドとジビニルエーテルシンターゼとの反応中に生成した揮発性アルデヒドの誘導体としてのヒドラゾンのHPLC分析の溶出プロフィール。
【図4】基質13−HPOTE及び9−HPODEを用いた、クローンPp364によってコードされるDES酵素の触媒作用生成物(アルデヒド)のHPLC分析の溶出プロフィール。
【図5】クローンPp291によってコードされるAOS酵素によるヒドロペルオキシドの変換の不揮発性生成物のHPLC分析の溶出プロフィール。
【図6】クローンPp364によってコードされるDES酵素によるヒドロペルオキシドの変換の不揮発性生成物のHPLC分析の溶出プロフィール。
【図7】クローンPp291によってコードされるCYP74酵素の触媒作用による生成物のGC/MSクロマトグラム。
【図8】pHの関数としての、クローンPp291によってコードされるCYP74酵素の相対酵素活性。
【図9】クローンPp291によってコードされるCYP74酵素による種々の基質の相対変換速度(基質特異性)。

Claims (21)

  1. 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するアレン酸化物シンターゼ又はそのイソ酵素。
  2. 配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するジビニルエーテルシンターゼ又はそのイソ酵素。
  3. 基質として9−HPOD/TE及び13−HPOD/TEの両者を変換する請求項1又は2に記載の酵素。
  4. コケ又は高等植物に由来する請求項1〜3のいずれかに記載の酵素。
  5. ヒメツリガネゴケに由来する請求項1〜4のいずれかに記載の酵素。
  6. 多価不飽和脂肪酸の生合成に関与する請求項1に記載のアレン酸化物シンターゼをコードする、以下の(a)〜(c)から選択される単離されたヌクレオチド配列:
    a)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、
    b)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、
    c)a)又はb)に対し相補的なヌクレオチド配列
  7. 多価不飽和脂肪酸の生合成に関与する請求項2に記載のジビニルエーテルシンターゼをコードする、以下の(a)〜(c)から選択される単離されたヌクレオチド配列:
    a)配列番号3に示されるヌクレオチド配列、
    b)配列番号3に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、
    c)a)又はb)に対し相補的なヌクレオチド配列
  8. コケ又は高等植物に由来する請求項6又は7に記載の単離されたヌクレオチド配列。
  9. ヒメツリガネゴケに由来する請求項6〜8のいずれかに記載の単離されたヌクレオチド配列。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載のヌクレオチド配列の少なくとも1つ、その対立遺伝子、誘導体又は部分、並びにそれと機能しうる形で連結された調節ヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物。
  11. 請求項6〜9のいずれかに記載の単離されたヌクレオチド配列の少なくとも1つ、その対立遺伝子、誘導体及び/若しくは部分、並びに/又は請求項10に記載の遺伝子構築物、並びに宿主細胞における選択及び/若しくは複製のため、及び/又は宿主細胞のゲノム内への組込みのための別のヌクレオチド配列を含むベクター。
  12. 請求項6〜9のいずれかに記載の単離されたヌクレオチド配列の少なくとも1つ、その対立遺伝子、誘導体及び/若しくは部分、及び/又は請求項10に記載の遺伝子構築物、及び/又は請求項11に記載のベクターを複製可能な形態で含むトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫であって、内因性遺伝子発現と比較してアレン酸化物シンターゼをコードするヌクレオチド配列及び/又はジビニルエーテルシンターゼをコードするヌクレオチド配列の発現の増大を示し、該発現が植物の病原体抵抗性の増強をもたらす、上記トランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫。
  13. 請求項6〜9のいずれかに記載のヌクレオチド配列の少なくとも1つ、その対立遺伝子、誘導体及び/若しくは部分、及び/又は請求項10に記載の遺伝子構築物、及び/又は請求項11に記載のベクターが、染色体外の形態で存在する、及び/又は宿主植物ゲノム内に安定的に組込まれている、請求項12に記載のトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫。
  14. 請求項1に記載のアレン酸化物シンターゼ、そのイソ酵素、誘導体及び/若しくは部分、及び/又は請求項2に記載のジビニルエーテルシンターゼ、そのイソ酵素、誘導体及び/若しくは部分を含み、植物細胞において対応する内因性酵素比活性と比較して比活性の増大を示すものである、請求項12又は13に記載のトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫。
  15. 有用植物又はその細胞であり、好ましくはナス科又は穀物科の植物、特に好ましくはジャガイモ、オオムギ又はコムギである、請求項12〜14のいずれかに記載のトランスジェニック植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫。
  16. 請求項6〜9のいずれかに記載のヌクレオチド配列の単独若しくは組み合わせ、及び/又は請求項10に記載の遺伝子構築物、及び/又は請求項11に記載のベクターを、複製可能な形態で植物細胞に移入し、こうして形質転換された植物細胞から植物個体を再生させることを含む、植物の病原体抵抗性の増強方法。
  17. 使用される植物細胞が、有用植物に由来する細胞、好ましくはナス科又は穀物科の植物、特に好ましくはジャガイモ、オオムギ又はコムギに由来する細胞である、請求項16に記載の方法。
  18. 植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫の病原体抵抗性を増強するための、請求項6〜9のいずれかに記載のヌクレオチド配列の少なくとも1つの使用。
  19. 植物細胞、植物個体及び/又はそれらの子孫の病原体抵抗性を増強するための、請求項1〜8のいずれかに記載の酵素の少なくとも1つの使用。
  20. 少なくとも1つの酵素の比活性の増大が、対応する内因性酵素比活性と比較して20〜90%、好ましくは30〜80%、特に好ましくは40〜70%増強された植物細胞又は植物の病原体抵抗性を生じさせる、請求項19に記載の使用。
  21. 少なくとも1つの酵素が、ウドンコ病菌、好ましくはオオムギウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニスf.sp.ホルデイ)若しくはコムギウドンコ病菌(f.sp.トリチシ)、及び/又は疫病菌(フィトフトラ・インフェスタンス)に対する抵抗性の増強を生じさせる、請求項19又は20に記載の使用。
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