JP2004533268A - 間充織幹細胞のための細胞種類特異性を有する遺伝子送達ベクタ - Google Patents

間充織幹細胞のための細胞種類特異性を有する遺伝子送達ベクタ Download PDF

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Abstract

【解決手段】本発明は、組換えアデノウイルスベクタの提供によって、目的とする異質な核酸を間充織幹細胞に送達さるための新規な方法及び手段を提供する。この組換えアデノウイルスベクタは、間充織細胞幹細胞のための自然な親和性を、代表的には他の種類の細胞、特に肝細胞のための減少している親和性との組合せで備えるか、又は有する。また、本発明は、本発明に従う組換えアデノウイルスベクタの使用による異質の核酸を備える間充織幹細胞を提供し、及び多発性硬化症、リウマチ様関節炎、血管形成及び骨関連疾患の処置のための、例えば、骨の形成(再生)を含む処置において、薬を調製するためのかかる間充織幹細胞の使用を提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、遺伝子治療の分野に関し、更に特に、間充織幹細胞(mesenchymal stem cell間葉性幹細胞)のための自然な親和性(tropism向性)を備えるか又は有するアデノウイルスを用いる遺伝子治療に関する。さらに、本発明は、所望の核酸での間充織幹細胞の形質導入のための方法及び手段に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
遺伝子治療では、遺伝情報が、宿主細胞中の遺伝的欠損の修正(補充)、宿主細胞での不必要な機能の抑制又は宿主細胞の除去のいずれかのために、宿主細胞に送達される。もちろん、遺伝情報はまた、所望の機能を有する宿主細胞を、例えば、分泌タンパク質を供給して宿主の他の細胞を処置するために提供することを目的とすることができる。したがって、遺伝子治療において、基本的に3つの異なるアプローチがあり、第1のアプローチは(ほ乳類)宿主に存在する欠損の補償に対して行われ;第2のアプローチは不必要な物質(生物又は細胞)の除去又は排除に対して行われ及び第3のアプローチは必要な機能を有する細胞の提供に対して行われる。上記に示す目的のいずれかのための対象の遺伝子(核酸)を有する細胞を提供するために、前記遺伝子を機能的な形式で宿主細胞に送達することができる媒体(ビヒクル)が必要である。ある例では、一時的な発現(数週間又はそれよりも若干長い期間まで)が求められ、他の例では、宿主細胞の永久的な形質導入が必要と思われる。これらの目的を達成するために、種々の媒体が利用可能である。アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス(AAV)はそれらの例であり、それらのゲノム(対象の遺伝子を含む)を宿主細胞のゲノムに組み込むことができる一方でアデノウイルスはエピソームのままである。しかし、アデノウイルスは、多くの種類の細胞により一層良好に感染することができる一方、レトロウイルスはある種の特定の細胞のみに感染することができる。異なるウイルスの組合せ(キメラウイルス)が提案され、異なる種類のウイルスの利点が用いられている。もちろん、非ウイルス性の送達系も利用でき、合成ウイルスでは、それらのすべてがまた、目前にある特定の標的にも適する場合がある。これらのすべての系を本発明に適用することができる。
【0003】
遺伝子治療の目的のために、アデノウイルスが、遺伝子の宿主細胞への搬送に適した媒体として提案されてきた。アデノウイルス由来の遺伝子−移動ベクタ(いわゆるアデノウイルスベクタ)は、それらを遺伝子の移動のために特に有用にする下記の多くの特徴を有する。1)アデノウイルスの生物学が詳細に特徴づけられており、2)アデノウイルスはヒトの重篤な症状と関連しておらず、3)このウイルスはそのDNAを宿主細胞中に導入する際に極めて効率的であり、4)このウイルスは多種多様な細胞に感染することができ、広い宿主域を有し、5)このウイルスは高ウイルス力価で大量に生産することができ、及び6)このウイルスはウイルスゲノムの初期領域(early-region)1(E1)の欠失により複製不全にすることができる〔Brody(ブロディ)等、1994〕。しかし、アデノウイルスベクタ、特に、よく研究された血清型の亜群Cアデノウイルスの使用に関連する欠点がある。これらの血清型は、感染を成功させるために、細胞上にコクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)の存在を必要とする。このタンパク質は多くの細胞及び樹立細胞系によって発現されるが、このタンパク質は多くの他の一次細胞及び細胞系上には存在せず、後者の細胞が血清型1、2、5、及び6に感染するのを困難にする。
【0004】
アデノウイルスゲノムは、約36000の塩基対の線状二本鎖DNA分子である。アデノウイルスDNAは、血清型に依存する正確な長さを有する約90〜140の塩基対の同一の逆方向末端反復(ITR)を含む。ウイルスの複製起点は、ゲノム端で正確にITRsの範囲内にある。現在、遺伝子治療において用いられているほとんどのアデノウイルスベクタは、E1領域での欠失を有し、そこで新しい遺伝情報を導入することができる。E1欠失はその組換えウイルスを複製不全にする〔Levrero(レヴレノ)等、1991〕〕。組換えアデノウイルス、特に、血清型5が、肝臓、気道上皮及び動物モデルにおける充実性腫瘍並びに免疫不全マウスにおけるヒト異種移植片へのインビボでの効率的な遺伝子の移動に適切であることが、広く示された〔Bout(ボウト)1996;Blaese(ブラーゼ)等1995〕。このように、インビボでの標的細胞への遺伝子移動のための好ましい方法では、アデノウイルスベクタを遺伝子送達媒体として利用する。
【0005】
現在、ヒトアデノウイルスの6つの異なる亜群が提案されており、それらは全体で51種の異なったアデノウイルス血清型を包含する。これらのヒトアデノウイルスの他に、多数の動物アデノウイルスが確認されている(イシバシ等1983)。血清型は、動物の抗血清(ウマ、ウサギ)を用いる定量的な中和によって決定されるようなその免疫学的特殊性に基づいて定義される。中和がある程度の交差反応を2種のウイルス間で示す場合、血清型の特殊性は、A)血球凝集阻止反応上の交差反応の欠如により示されるように、血球凝集素と無関係か、又はB)DNAにおける十分な生物物理学的/生化学的な違いが存在するかどうかで仮定される〔Francki(フランキー)等1991〕。最後に確認される9種の血清型(42〜51)は、HIV感染した患者から初めて単離された〔Hierholzer(ハイエールホルザー)等1988;Schnurr(シュナー)等1993; De Jong(デ・ジョング)等1999〕。十分理解されなかった理由により、かかる免疫不全の大部分の患者は、免疫適格個体から希にしか単離されないか又は全く単離されないアデノウイルスを放出した〔Hierholzer等1988及び1992;Khoo(クー)等1995;De Jong等1999〕。アデノウイルス血清型5(Ad5)は遺伝子治療の目的のために広く使用されている。血清型2、4及び7と同様に、Ad5は肺上皮及び他の呼吸器組織への自然な認定(affiliation)(親和性:tropism)を有する。対照的に、例えば、血清型40及び41が消化管に対して自然な認定を有するのが知られている。異なるアデノウイルス血清型の疾病関連性の詳細については表1を参照。この表には文献からの逸脱が1つある。異なる種からの赤血球を使用して行った配列分析及び血球凝集アッセイは、文献(De Jong等1999)と対照的に、アデノウイルス50がD群ベクタであるのに対し、アデノウイルス51がB群ベクタであるのが分かったことを示す。
【0006】
特定の器官又は細胞種類への所定の血清型の自然な認定は、感染経路、異なる受容体分子の使用における違いによるか、又は異なる内在化経路による。しかしながら、それは、血清型が多くの組織/器官に感染することができるという事実による場合もあるが、複製のための何らかの細胞因子の要求及びそれゆえの臨床疾病のため、1つの器官においてのみ複製することができる。現在、上述の機構がヒト疾病関連性において観察された違いに原因があるかは知られていない。しかし、異なるアデノウイルス血清型が、カプシドタンパク質、ヘキソン、ペントン、及び線維の配列の相違により、異なる受容体に結合可能であることは知られている。例えば、Ad2及びAd5のような亜群Cのアデノウイルスが、Ad3のような亜群Bからのアデノウイルスと比較して異なる受容体に結合することが示されている〔Defer(デファー)等1990〕。同様に、受容体特異性が、Ad3をAd5瘤(knob)タンパク質に変換することにより、及びその逆も同様に、変化可能であることが示された〔Krasnykh(クラスニク)等1996;Stevenson(スティーヴンソン)等1995及び1997〕。
【0007】
ヒトの体内で、循環血液細胞は予め定められた期間生存し;その長さは、細胞種類によって数時間から数ヶ月までさまざまであり得る。したがって、赤血球、血小板、リンパ球、単球、及び顆粒球は絶え間なく必要とされる。これらの細胞プールは、骨髄から導かれる造血性幹細胞(HSC’s)の分裂及び分化を通じて、一定の程度に保たれる。HSC’sの特徴の1つは、それらがエキソビボの培養条件下でプラスチック培養皿に付着しないことである。HSC以外に、近年、別の幹細胞様細胞が骨髄において確認されており、これは、非造血性起源のものでかつプラスチック支持体に付着する。この幹細胞様細胞は、間充織起源のものであることから、‘間充織幹細胞’(MSC’s)と表される。また、MSC’sは、骨髄間質細胞、髄間質細胞、又は骨髄間充織前駆細胞とも称される。MSC’sの多くの属性は今だ決定されていないが、それらの多重の潜在性(multi-potentiality)は、MSC’sが破骨細胞、軟骨芽細胞、線維芽細胞、含脂肪細胞及び筋芽細胞に分化することができるという知見〔Prockop(プロコップ)等1997〕によって立証されている。HSC’s及びMSC’sは骨髄から単離することができるが、後者だけが骨格筋〔Jackson(ジャクソン)等1999〕、肝臓〔Crosbie(クロスビー)等1999〕〕、及び脳〔Bjornson(ビョルソン)等1999〕〕のような他の組織から導くことができる。MSC’sの多分化能(pluripotency)は、脳から導かれるMSC’sが骨髄系細胞及びリンパ系細胞を含む種々の血液細胞種類を産生することができるという知見によって更に強調された(Bjornson等1999)。HSC’sと同様に、MSC’sも、細胞−療法、及び遺伝子療法のための媒体として探求されている。MSC’sは、局部麻酔下での小量の骨髄穿刺液から比較的容易に得ることができ、それらの幹細胞としての特性を失うことなくエキソビボでの条件下で容易に培養することができる。MSC’sは、エキソビボで、組織工学の分野において、並びに後天性又は先天性疾病のインビボでの処置の双方で治療行為のために適用されている。MSC’sの使用で考えられる例の一つは、例えば、変性性関節炎で苦しむ患者の骨髄からMSC’sを単離し、これらの細胞を培養中で増やし、例えば、滑膜細胞の増殖又は炎症を妨げる因子を発現するように、これらを遺伝学的に修飾し、更にその後に、患っている関節に直接これらの細胞を移植することである。滑膜細胞の増殖又は炎症のどちらかを妨げる遺伝子の例は、限定されないが、IL−10〔Dechanet(デチャネット)等1995〕及び可溶性VCAM−1〔Chen(チェン)1995〕である。別の適用は、MSC’sの内移植(implantation)であり、これらが、骨関連障害を処置するために、例えば、骨再生の刺激物質(stimulator)を発現させるために、遺伝学的に修飾される。かかる遺伝子の例は、限定されないが、骨形態形成タンパク質(bone morphogenesis protein)−2(BMP−2)、及びLIM鉱質形成タンパク質(mineralisation protein)(LMP−1)〔Lou(ルー)等1999,Boden(ボーデン)等2000〕である。これら遺伝子的に修飾されたMSC’sは、その後、骨形成を誘発するために局所的に移植される。
【0008】
あるいは、これらの細胞は、生物反応器中のコラーゲン骨格(collagen scaffold)上においてエキソビボで培養され、外科的に移植可能な人工骨を形成する。局所的に注入されたMSC’sは、ウサギの膝軟骨における外科的切開の修復を促進することが明らかとなり、また、セラミックビーズにおけるMSC’sは動物モデルで骨折治癒を促進することが明らかとなった〔Goldberg(ゴールドバーグ)等1994,Bruder(ブルーダー)等1994,ワキタニ等1994〕。同じ戦略は、例えば、多発性硬化症の処置に適用することができる。ここでは、自己由来のMSC’sを遺伝子的に修飾して、横紋筋への移植前にジストロフィンを発現させる。もう1つの例は、心不全の処置であり、脈管形成誘発因子を発現しているMSC’sを、罹患心臓の虚血領域に移植する。後者の場合、一酸化窒素シンターゼ(NOS1−3)、血管内皮増殖因子(VEGF)、又はC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)のような遺伝子を用いることができる。
【0009】
MSC’sの適用に関する他の非限定例は、分泌タンパク質を発現するように細胞を遺伝子的に修飾した後、MSC’sを全身的に注入することである。MSC’sは、体のさまざまな場所を拠点として、治療上のタンパク質を分泌し、特異的(遠位)部位でそれぞれの機能を発揮する。かかる設定において用いることができる興味深い遺伝子の非限定例は、第VIII因子、第IX因子、β−グルコセレブロシダーゼ(の突然変異遺伝子)、エリスロポイエチン(EPO)、新しい赤血球形成刺激タンパク質(NESP)、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸塩スルファターゼ、N−スルファターゼ、N−アセチルα−D−グルコサミニダーゼ、α−グルコサミン−N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチル−α−D−グルコサミナイド−6−サルファターゼ、ガラクトサミン−6−硫酸塩スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチル−アラクトサミン−4−スルファターゼ、酸セラミニダーゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、ガラクトセレブロシド−β−ガラクトシダーゼ、アリールスルファターゼA、アデノシンデアミナーゼ、α−L−フコシダーゼ、サイトカイン、インターロイキン群やG−CSFやインシュリン及びヒト成長ホルモンのような成長因子、一酸化窒素シンターゼ(NOS1−3)や血管内皮増殖因子(VEGF)、及びアンジオスタチン1−7のような脈管形成刺激又は抑制因子をコード化する核酸である。遺伝子的に修飾されたMSC’sの直接注入の他に、細胞ではないが、タンパク質の拡散を可能にする不活性物質内に細胞を封入できる。少なくとも第IX因子によるこの手法の実行可能性は、ヒトMSC’sを移植された免疫不全マウスで明らかとなった。これらのマウスは全身注入後少なくとも8ヶ月間第IX因子を発現した。
【0010】
HSC’sに勝るMSC’sの主な利点の1つは、MSC’sがエキソビボの条件下で多能性(multipotency)の損失なしに多数に培養することができることである。後者は、先に述べた戦略を、単に多数の遺伝子的に修飾された細胞が注入できるという理由で、骨髄切除による処理の必要なく患者に適用することができることを示している。ここでは、MSC’sが多くの異なった治療的戦略の興味の対象であり、従ってこの細胞種類の遺伝子的修飾はかなりの重要性を持つことが示される。多くの適用にとって、外因性遺伝子の一時的な発現は、MSC’sが分化するか又は周期的に分泌されるタンパク質を発現させるのを誘発するのに十分である。プロセスが誘発される必要がある場合、すなわち、脈管形成、軟骨形成、骨形成のプロセスの場合、一時的発現で十分である。他の適用では、持続的発現、すなわち、タンパク質の欠乏を上昇させるタンパク質の分泌(第VIII因子、第IX因子、糖レベルを減少させる酵素、等)が必要である。すべての適用のために、遺伝子送達媒体としてのアデノウイルスを用いることができ、その理由は、アデノウイルスを宿主細胞ゲノムに組み込むか又は組み込まないように設計することができるからである〔Concalves(コンカーブス)等2000〕。組込み及び従って長期発現を得るための代替戦略が発表されている〔Feng(フェン)等1997、Zheng(チェン)等2000〕。これらの研究では、アデノウイルスが用いられ、アデノウイルスゲノム内にレトロウイルスゲノムをクローン化することによって、組込みベクタ(レトロウイルス)が送達される。レトロウイルスを用いてMSC’sを伝達した例は、Marx(マークス)等によって提供された(1999)。レトロウイルスによる形質導入の増強は、レトロウイルスによって認識されるレセプターをコード化する遺伝子を持つアデノウイルスベクタの感染の後に観察された。MSC’sを効果的に伝達すると思われるアデノウイルスは、上述の任意の戦略の臨床適用を提供すると思われる。したがって、アデノウイルスの結合及び内在化の分子的機序を理解することは重要である。この理由から、アデノウイルス血清型5について現時点で明らかになっているアデノウイルスの結合に関与する工程について、ここで説明する。
【0011】
感染を成功させるための最初の工程は、アデノウイルスによるその標的細胞への結合であり、線維タンパク質を介して媒介される工程である。線維タンパク質は、ウイルス血清型によって異なる長さを有する〔Signas(シグナス)等1985;Kidd(キッド)等1993〕三量体構造を持つ〔Stouten(ストウテン)等1992〕。異なる血清型は、構造的に似たN及びC末端を持つポリペプチドを有するが、中間幹領域(middle stem regions)は異なっている。N末端で、最初の30個のアミノ酸、特に、テール部分で保存されたFNPVYP領域〔Arnberg(アーンバーグ)等1997〕が、ペントン塩基への線維の固定に関与している〔Chroboczek(クロボシェック)等1995〕。C末端、又は瘤は、細胞のアデノウイルス受容体との最初の相互作用を担う。この最初の結合の後、カプシドペントン塩基と細胞表面インテグリンとの間の第2の結合が提案され、被覆小窩及びエンドサイトーシスにおけるウイルス粒子の内在化をもたらす〔Morgan(モーガン)等1969;Svensson(スベソン)等1984;Varga(バーガ)等1992;Greber(グレバー)等1993;Wickham(ウィクハム)等1995〕。インテグリンはαβ−ヘテロ二量体であり、その少なくとも14個のα−サブユニット及び8個のβ−サブユニットが同定されている〔Hynes(ハイネス)等1992〕。細胞で発現されるインテグリンの配置は複雑で、細胞種類及び細胞環境によって変化する。瘤はいくらかの保存された領域を含むが、血清型間で、瘤タンパク質が高度な変動性を示し、このことは異なるアデノウイルス受容体が存在するかもしれないことを示唆する。例えば、亜群Cのアデノウイルス(Ad2、Ad5)及び亜群Bのアデノウイルス(Ad3)が異なる受容体と結合することが証明された(Defer1990)。アデノウイルスに産生された可溶性CAR及びアデノウイルス血清型5の瘤タンパク質を用いることによって、Roelvink(ロエルビンク)等は、干渉に関する研究を通して亜群Bの血清型を除くすべてのアデノウイルス血清型はCARを通して細胞に入ると結論を下した(1998)。
【0012】
細胞結合への関与以外に、線維タンパク質は、また、種類特異的γ−抗原をも含み、これはヘキソンのε−抗原と共に血清型特異性を決定する。γ−抗原は、線維上で局在し、17個のアミノ酸からなることが知られている。したがって、宿主の抗−線維抗体は、瘤の三量体構造へと導かれる。組換えアデノウイルス血清型5の向け直された感染を得るために、いくつかの手法が研究されているか、又は依然研究中である。Wickham等は、αβ及び/又はαβインテグリンのペントン塩基への結合の原因になっていると考えられるペントン塩基中のRGD(Arg、Gly、Asp、)モチーフに変更を加えた(1993及び1995)。彼らは、このRGDモチーフを、αβ受容体に特異的な別のペプチドモチーフで置換した。この方法で、アデノウイルスの特異的標的細胞への標的化が成し遂げられる。Krasnykh等は、瘤内で利用可能なHIループを用いている。このループは、X線結晶学によれば、瘤の三量体構造の外側に位置するために、瘤での分子内相互作用には貢献しないと考えられる。FLAGコード配列のHIループへの挿入は、FLAGエピトープ及び細胞受容体の双方を認識する抗体を用いることによって、アデノウルスの標的細胞への標的化を招いた(Krasnykh等1998)。しかし、CARから独立した完全な感染は観察されなかった。
【0013】
結論として、一般に、アデノウイルスが遺伝子治療の目的のための適切なプラットフォームを提供すると思われる。それにもかかわらず、また、アデノウイルスを用いることの不利な点の1つが、Ad5のような一般的に用いられるアデノウイルスの制限された向性であるということも認識されていた。インビトロでの研究は、ある種の細胞がAd5に効果的に感染される一方、他の細胞は不十分にしか伝達されないことを示した。明らかに、Ad5は間充織幹細胞に不十分にしか感染しない。何人かの研究者達は、アデノウイルスがMSC’sを感染させ得るが、低い形質導入効率しか得られないことを示し〔Conget(コンジェット)等2000;Turgeman(タージェマン)等2000〕、ヒト及び/又は動物の体内に存在する特異的細胞種類に感染し、及び異質な核酸(非アデノウイルス性のタンパク質及び/又は治療上のタンパク質をコード化する)を送達することができるアデノウイルスベクタのような遺伝子送達の媒体(例えば、MSC’s)がこの技術分野で明らかに必要であることを支持している。既に述べたように、幹細胞には、代表的に、この技術分野の遺伝子送達の媒体を十分な範囲に感染させることは困難である。感染が成功した場合、特に、十分な量の時間に及ぶ機能的な発現を達成することは困難である。幹細胞の感染は遺伝子治療のより一層失望的な側面の1つであると考えられており、その一方、かかる遺伝子的に修飾されたMSC’sを用いることの可能な治療上の恩恵は大きい。Ad2、Ad5又はAAV’sのような、遺伝子治療に一般的に用いられる代表的な遺伝子送達媒体は、本明細書で開示するように、間充織幹細胞に対する特定の向性を持たない。この技術分野における遺伝子治療の明らかな必要性は、効果的でかつ適当な方法によって間充織幹細胞の認識及び感染のために適用できる遺伝子送達媒体について存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図面及び表の簡単な説明
図1は:一次ヒト間充織幹細胞の形質導入により一層良好に適したウイルスの存在のための線維キメラウイルスをスクリーニングすることを示す。用いる投与量は、細胞につき1000のウイルス粒子である。ルシフェラーゼ活性を相対的光量(RLU)で表わす(y軸)。
図2は:Ad5Fibl6を有するヒト骨髄ストローマ(間質)細胞(HBSC’s又はMSC’s)の形質導入を示す。(A):HBSC’sを100、500、又は1000vp/細胞のAd5又はAd5.Fib16に1時間曝した。48時間後、細胞を、GFPの発現に関して流動細胞計測機を用いてスクリーニングした。GFPが陽性である細胞の平均±標準偏差率(N=3)を示す。(B):HBSC’sを、5000vp/細胞に曝露し、高分子骨格中に播種した。ウイルスの露出の48時間後に、細胞をLacZ発現に関し染色した。LacZ着色反応の対照として、非形質導入細胞(ウイルスなし)を一緒にした。
図3は:間充織幹細胞上のAd5Fibl6のマーカ遺伝子発現の持続時間及び毒性を示す。(A)は、1000又は5000vp/細胞のAd5Fibl6lacZに1時間曝露したものである。LacZ発現についてウイルスの曝露後の異なる時間点で細胞を着色した。(B)細胞への感染を1000又は5000vp/細胞で1時間行った。Ad5Fibl6細胞への曝露後の異なる時間点で細胞を収集し、細胞集団の生存度を測定した。ウイルスに曝露されない対照細胞(0)を一緒にした。
表1は:異なるヒトアデノウイルス血清型のヒト疾病との関連性を示す。
表2は:組換え線維キメラアデノウイルスの産生結果を示す。HPLCによって測定される1ml毎のウイルス粒子での結果である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要約
本発明は、間充織幹細胞のための親和性を、代表的には他の種類の細胞、特に肝細胞のための減少している親和性との組合せで有する組換えアデノウイルスベクタのような遺伝子送達媒体を提供することによって、対象となる異質な核酸を間充織幹細胞に送達するための方法及び手段を提供する。本発明によって、かかる遺伝子送達媒体の使用が間充織幹細胞への異質な核酸の送達のために提供され、ここで、前記組換えアデノウイルスベクタは、間充織幹細胞のための自然な親和性を備えるか、又は有している。
【0016】
本発明は、本発明に従う組換えアデノウイルスベクタのような媒体を生産するための細胞を提供すると共に、本発明に従う媒体を製造するための方法を提供し、これらは、細胞に前記媒体の構築のための手段を提供することを含み、ここで、前記手段はアデノウイルス線維タンパク質を生産するための手段を含み、ここで、前記線維タンパク質は、亜群Bのアデノウイルス、特にアデノウイルス血清型11、−16、−35及び/又は−51のアデノウイルス線維タンパク質又はその機能的誘導体及び/又は類似体の少なくとも組織親和性決定部分を含む。
【0017】
本発明はまた、治療上のタンパク質又はその機能的な等価物、又はRNAをコード化する異質な核酸の間充織幹細胞への移動によって処置可能な疾病の処置のために、本発明に従う遺伝子送達媒体の使用をも提供する。本発明の手段及び方法で処置することができる疾病の例には、多発性硬化症及び変形関節炎(rheumatoid arthritis)があるが、その方法及び手段は、また、骨再生を必要とするような骨関連疾患の処置、脈管形成を刺激する目的及び組織工学に適用することもできる。
【0018】
本発明は、また、本発明に従う組換えアデノウイルスベクタの使用を介して、異質な核酸を備える間充織幹細胞を提供するが、本発明は更に間充織幹細胞に形質導入をするための方法を提供し、これは、次の工程:間充織幹細胞を培養すること;及び前記間充織幹細胞を、異質な核酸を含む組換えアデノウイルスベクタと接触させることを含み、ここで、前記組換えアデノウイルスベクタは間充織幹細胞のための親和性を備えるか、又は前記組換えアデノウイルスベクタは亜群Bアデノウイルスから導かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、遺伝子送達媒体に間充織幹細胞のための親和性を、代表的には他の種類の細胞、特に肝細胞のための減少した親和性との組合せで提供することによって、間充織幹細胞に遺伝子(対象の核酸)を送達するための方法及び手段を提供する。したがって、本発明は、間充織幹細胞のための組織親和性を少なくとも持っており、好ましくは、少なくとも遺伝子送達媒体が宿主内で接触し得る肝細胞及び他の細胞に対する組織親和性を部分的に減少させた核酸送達媒体を提供する。代表的には、本発明に従う前記送達媒体は、少なくともウイルスのカプシド(又はエンベロープ)の一部又はその機能的誘導体及び/又は類似体によって、前記組織親和性が提供される。カプシドは、同じ種ではあるが異なったサブタイプの1種又はそれより多い種類のウイルス又は異なったウイルスからのタンパク質、又はその機能的な部分、誘導体及び/又は類似体を含むことができる。前記ウイルスのうち少なくとも1種は、アデノウイルス、代表的には亜群Bのアデノウイルスであることが好ましい。代表的には、前記カプシドから導かれる前記タンパク質のうち少なくとも1種は、亜群Bアデノウイルスから、特に、血清型11、16、35及び/又は51のアデノウイルス又はその機能的誘導体及び/又は類似体から導かれる線維タンパク質の組織親和性決定部分を含む。本発明は、アデノウイルスB型線維の組織親和性決定部分を備えた本発明に従った遺伝子送達媒体が、間充織幹細胞のための増大した親和性を有することを示す。特定の適切な親和性決定部分は、アデノウイルス16の線維タンパク質に由来することもある。好ましくは、アデノウイルス16の線維のかかる部分を含むアデノウイルスの線維タンパク質全体を用いる。
【0020】
キメラアデノウイルスは間充織幹細胞を標的とするのに特に適していることが見出された。したがって、本発明は、亜群Bに属さないアデノウイルス、又はその機能的な部分、誘導体及び/又は類似体から導かれる、少なくとも1種のタンパク質を更に含む本発明に従う遺伝子送達媒体を更に提供する。好ましくは、亜群Bのアデノウイルス由来ではない前記タンパク質又はその機能的な部分、誘導体及び/又は類似体は、亜群Cのアデノウイルスから導かれ、以下に述べる理由によって、好ましくは、アデノウイルス5のものである。また、送達されるべき対象の核酸(遺伝子)を含む核酸は、好ましくは、アデノウイルス起源のものであり、それは1種又はそれより多い種類の異なったアデノウイルスのものである。代表的に、アデノウイルス由来の核酸は、亜群Bアデノウイルスの線維タンパク質、特に、血清型11、16、35及び/又は51の、好ましくは、アデノウイルス16のもの又はその機能的誘導体及び/又は類似体の少なくとも組織親和性決定部分を含む線維タンパク質をコード化する。機能的誘導体及び類似体は、本明細書で用いる際、それが化学的に導かれるか、理論的に導かれるか又は実験的に設計され、同じ機能(同種であって、同量である必要はない)を持つようにされたものであれ、本明細書に開示された分子に基づいて分子を解釈することを意図している。これには、核酸及び/又はタンパク様分子に関しては、開示した特定の分子(断片及び誘導体の双方)に高い相同性を有しており、かつ類似の機能を提供する分子が含まれる。いくつかの実施形態において、核酸送達媒体は、標的細胞内で複製してはならない。かかる例では、好ましくは、前記アデノウイルスの核酸は、修飾された核酸であり、前記アデノウイルスの核酸が標的細胞内で複製する能力が、好ましくは、少なくとも1部分のアデノウイルスのE1−領域の欠失によって減少するか、又は不活化される。対象とする遺伝子の発現を十分な量の時間にわたり達成するには、好ましくは、ある程度の範囲に対して免疫反応を回避することができる遺伝子送達媒体を提供する。したがって、本発明は、本発明に従う媒体を提供し、ここで、前記アデノウイルス核酸は、前記アデノウイルス核酸によってコード化されるアデノウイルスタンパク質に対する免疫反応を行う宿主免疫系の能力が、好ましくは、アデノウイルスE2A及び/又は少なくとも1部分のE4−領域の欠失を介して、減少するか、又は不活性にされるように修飾された核酸である。本発明はまた、最小のアデノウイルスベクタ又はAd/AAVキメラベクタを含む本発明に従う媒体をも提供する。
【0021】
本発明は更に、本発明に従う媒体を製造する方法も提供し、これは、細胞に媒体の構築のための手段を提供することを含み、ここで、前記手段は、アデノウイルス線維タンパク質の生産のための手段を含み、ここで、前記線維タンパク質は、亜群Bアデノウイルス、特に、血清型11、−16、−35及び/又は−51アデノウイルスの線維タンパク質又はその機能的誘導体及び/又は類似体の少なくとも1種の組織親和性決定部分を含む。
【0022】
本発明は更に、本発明に従う媒体の生産のための細胞を提供し、これは、前記媒体の構築のための手段を含み、ここで、前記手段はアデノウイルス線維タンパク質の製造のための手段を含み、ここで、前記線維タンパク質は、亜群Bアデノウイルスの線維タンパク質、特に、血清型11、−16、−35及び/又は−51アデノウイルスのもの又はその機能的誘導体及び/又は類似体の少なくとも1種の組織親和性決定部分を含み、好ましくは、前記細胞は、PER.C6TM(商標)細胞(ECACC受託番号96022940)であるか、又はこれから導かれる。本発明は、異なったアデノウイルスの血清型がヒトの異なった疾病関連性を有するという知見を用い、異なった疾病関連性は、細胞宿主範囲における差異の結果かもしれず、同様に、その差異は、カプシドタンパク質、特に線維タンパク質における差異の結果かもしれない。本発明はまた、アデノウイルスのライブラリを提供し、ここでは、別の血清型からの線維タンパク質をコード化する配列が、アデノウイルス血清型5幹(backbone)の中にクローン化されており、それによってキメラアデノウイルスを生成する。したがって、このキメラアデノウイルスは、線維配列がクローン化されたアデノウイルス血清型の宿主範囲を有するものであるが、一方、他の全ての側面はアデノウイルス血清型5から導かれる。
【0023】
もちろん、また、対象の遺伝子は、例えば、元のアデノウイルスのE1の部位に挿入することもでき、これからベクタが導かれる。この対象の遺伝子は、治療上のタンパク質のように、異質な核酸であることもある。本明細書で用いる‘異質な’は、概して、非アデノウイルスを意味する。このようにして、製造すべきキメラアデノウイルスは、ある種の疾患のための遺伝子治療の必要から、ある種の宿主の要求及び必要に適合することができる。必然的に、キメラアデノウイルスの生産を可能にするには、概して、十分な量の安全なキメラアデノウイルスを生産するために、パッケージング細胞が必要となる。
【0024】
本発明の重要な特徴は、キメラウイルスを生産するための手段である。代表的には、人は、これがいつも正しいとは限らないが、複製能力のあるアデノウイルスを含有する宿主細胞にアデノウイルスのバッチを投与させたがらない。したがって、概して、キメラウイルスをコード化するベクタ上のアデノウイルスゲノムから、多くの遺伝子(少なくとも1個であるが)を除去し、そして、これらの遺伝子を細胞のゲノム内に供給し、そこで、ベクタを持ち込み、キメラアデノウイルスを生産するのが望ましい。かかる細胞は、通常、パッケージング細胞と呼ばれる。したがって、本発明はまた、本発明に従うキメラアデノウイルスを製造するためのパッケージング細胞を提供し、これは、本発明に従うアデノウイルスベクタ上に存在しないアデノウイルスの生産に必要なすべての要素を途中(in trans)に含む。代表的には、ベクタ及びパッケージング細胞は、互いに適合しなければならず、それらはすべての必要要素を持っているが、それらは組み換えにより複製能力のあるウイルスになるよう導く重複要素を持っていない。
【0025】
本発明の1種の目的は、アデノウイルスが初期のヒト間充織幹細胞に感染する方法及び手段を提供することである。したがって、1実施形態において、修飾された線維遺伝子を有するアデノウイルス血清型5に基づくキメラアデノウイルスの生成を説明する。この目的のために、2又は3種のプラスミドで、共に完全なアデノウイルス血清型5ゲノムを有するものを構成した。これらのプラスミドの1種から、アデノウイルス血清型5線維タンパク質をコード化するDNAを除去し、容易なクローン化を促進するリンカDNA配列により置換した。天然のアデノウイルス血清型5線維配列が部分的に除去されたプラスミドは、続いて、異なるアデノウイルス血清型(ヒト又は動物)から導かれる線維タンパク質をコード化するDNAの挿入のための鋳型として使われた。異なる血清型から導かれるDNAは、〔縮重(degenerate)〕オリゴ−ヌクレオチドと組合せて、ポリメラーゼ連鎖反応技術を用いて得られた。アデノウイルス血清型5のゲノム内における以前のE1の位置で、対象とする任意の遺伝子をクローン化することができる。2又は3種のプラスミドの単一のトランスフェクション方法は、共に、組換えの、線維キメラアデノウイルスの形成を招く。アデノウイルス血清型5線維及びペントン塩基における変化の、好首尾の導入が他の者によって報告されているが、瘤の複雑な構造及びCARと相互作用する正確なアミノ酸の知識が限られていることによって、かかる標的化手法は骨の折れる、困難なものになっている。
【0026】
上述した限界を克服するため、既存のアデノウイルス線維を用い、組換えアデノウイルスを得る機会を最大にするのが好ましく、この組換えアデノウイルスは、通常、産生細胞の核内で構築され、また、既存のパッケージング細胞上で生産することができる。他のすべてのヒトアデノウイルス血清型の線維タンパク質を含む、キメラアデノウイルス血清型5に基づく線維ライブラリを生成することによって、初期のヒト間充織幹細胞に対する好ましい感染特徴を有する組換えアデノウイルスベクタのための迅速なスクリーニングを可能にする技術が開発された。
【0027】
1側面において、本発明は、アデノウイルス血清型5の特異な部分からなるプラスミドの構成及び使用を説明し、ここでは、線維タンパク質をコード化する遺伝子が別のヒト又は動物血清型から導かれるDNAに置換されている。この組合せの構成体は、全体で、完全なアデノウイルスゲノムを含み、特定の細胞種類又は器官(諸器官)の形質導入のために特注で製作される独特なキメラアデノウイルスの構成を可能にする。また、本発明の手段及び方法のこの部分で、線維キメラアデノウイルスを増殖させ、生産し、及び精製することを説明する。本発明の他の側面において、ヒト間充織幹細胞における好ましい感染特徴を有するキメラウイルスを説明する。アデノウイルスベクタは、亜群Bアデノウイルスから導かれるか、又は少なくとも線維タンパク質の結合成分(moiety)を含む亜群Bからのアデノウイルス由来の線維タンパク質の少なくとも機能的部分を含むのが好ましい。更に好ましい実施形態において、アデノウイルスベクタは、アデノウイルス血清型5に基づくキメラベクタであり、及び少なくともアデノウイルスの種類16、35、又は51からの線維タンパク質の機能的部分を含む。すべての実施形態において、アデノウイルスベクタを望ましい特性を有する血清型から導いてよいこと、又はアデノウイルスベクタが1種の血清型からのアデノウイルスに基づき、及び別の血清型の望ましい機能を含む配列で、前記血清型内で天然配列と入れ替わるこれらの配列を含むことを理解すべきである。
【0028】
本発明の別の側面において、キメラアデノウイルスは、E1領域における欠失、及びプロモータに結び付いているか又は結び付いていない異質な遺伝子の挿入を含んでよいし、又は含まなくてもいい。さらに、キメラアデノウイルスは、E3領域における欠失、及びプロモータに結び付いている異質な遺伝子の挿入を含んでよいし、又は含まなくてもいい。さらに、キメラアデノウイルスは、E2及び/又はE4領域における欠失、及びプロモータに結び付いている異質な遺伝子の挿入を含んでよいし、又は含まなくてもいい。後者の場合、E2及び/又はE4を補う細胞系は、組換えアデノウイルスを生成する必要がある。
【0029】
本発明は、間充織幹細胞へ異質な核酸を送達するための組換えアデノウイルスベクタの使用を提供し、ここでは、前記組換えアデノウイルスベクタは間充織幹細胞のための親和性が備わっている。前記組換えアデノウイルスベクタは、肝細胞に対する少なくとも部分的に減少した親和性を有しているのが好ましい。好ましい実施形態において、間充織幹細胞に対する前記親和性は、少なくともウイルスカプシドの一部分、又はその機能的誘導体及び/又は類似体によってもたらされ、ここで、前記ウイルスカプシドは、少なくとも2種の異なるアデノウイルスからのタンパク質、又はその機能的誘導体及び/又は類似体を含むのが好ましい。更に好ましいのは、前記アデノウイルスのうち少なくとも1種が亜群Bのアデノウイルスである組換えアデノウイルスベクタである。好ましくは、亜群Bからの前記アデノウイルスは、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれる。高度に好ましいのは、前記亜群Bアデノウイルスがアデノウイルス16である本発明に従う組換えアデノウイルスベクタである。Ad16はある種類の細胞のための自然な親和性を有する。Ad16(及び/又はAd11、Ad35又はAd51)が、間充織幹細胞に異質な核酸を送達する遺伝子送達媒体として利用できることは、本発明の重要な側面である。これは、亜群Bアデノウイルスを組換えアデノウイルスベクタの幹として使うことによるか、又は1種又はそれより多い種類のこれらのアデノウイルスの親和性決定要素(又はその部分)を特定の親和性を持たない他のアデノウイルス内で使うことによって、達成することができる。かかる組換えアデノウイルスベクタの非限定的な例は、Ad5アデノウイルスであり、Ad5線維(その部分)は、Ad16線維(その部分)と入れ替わっている(Ad5fib16)。他の非限定的な例は、 Ad5fib35、 Ad5fibll、 Ad35fibll、 Adllfib35、 Adllfibl6、 Ad35fibl6、 Adl6fib35、等のような組合せである。亜群Bウイルスの間充織幹細胞のための自然な親和性が、かかる亜群Bウイルスを、非複製ウイルスにするために、分子生物学の技術によって処置することができるといった意味で利用することができ、ここでは、例えば、Ad35、Adll、Adl6、又はAd51のE1領域は、削除され、及び間充織幹細胞に送達されるべきである治療上の非アデノウイルス(異質)の対象の遺伝子に置換されている。したがって、本発明は、キメラウイルス(少なくとも2種のアデノウイルスからの要素を含む)並びに亜群Bアデノウイルスに基づくか、又はこれから導かれる組換え(非複製)アデノウイルスベクタの使用を提供する。分子生物学の技術が、核酸配列の無限の組合せを構成することを可能にした。異なった配列の組合せが、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)並びに直接サブクローン化のような異なった分子技術を実行されることは、分子生物学の当業者には明らかである。本発明において用いられる配列の多くは、この技術分野で知られている配列及びキメラ構成体と同様、異なったアデノウイルス血清型から導かれる。本明細書で用いる‘から導く’は、従って、かかる配列の組合せが、野生型ウイルスから得られた野生型配列からの直接クローン化を介して得ることができることを意味し、一方、それらはまた、例えば、DNAの異なった小片を鋳型として用いることによるPCRを介して得ることもできる。これはまた、かかる配列が野生型の形態並びに変形した形態においてでもよいことを意味する。同じ結果に到達するもう1つの選択肢は、合成DNAを結合することである。‘から導く’が必ずしも野生型DNAの直接クローン化を意味するのではないということを理解すべきである。当業者はまた、核酸のある種の小片の変異体の形態を得るための分子生物学の可能性に気付くであろう。これらの変異は異なる機能性を与えるが、それらはまた、ある種の変異がそのDNAの特定の小片及びそのコード化したタンパク質の機能性を変えないような方法で沈黙していることもある。したがって、‘その機能的な部分、誘導体及び/又は類似体’の用語は、それらが関係する核酸の等価物として理解されなければならない。当業者は、ある欠失、交換、(点)変異、付加、等が、元の核酸と類似の機能を有する核酸にもまだ生じることもあるという事実を認めるであろう。したがって、かかる変形が、本発明にかかるカプシドタンパク質のようなタンパク質の機能性をそれほど変えるものではないことを理解すべきである。
【0030】
本明細書で用いられる‘自然の親和性’は、ただ単に、現実生活において、アデノウイルスによって自然に見られるような組織又は細胞の認識を単に意味するのではない。この用語にはまた、哺乳類の体内のどこにあろうと、対象のアデノウイルスベクタによって結合される受容体を持ち運ぶすべての組織及び細胞の認識、認定及び感染が含まれる。
【0031】
上述のように、本発明は、キメラウイルスと同様に亜群Bウイルスの使用を提供する。したがって、本発明は、また、組換えアデノウイルスの使用を提供し、ここでは、前記ウイルスカプシドは、更に、亜群B、又はその機能的な部分、誘導体及び/又は類似体に属さない、アデノウイルスから導かれる少なくとも1種の他のタンパク質を含む。前記他のタンパク質は亜群Cのアデノウイルスから導かれるのが好ましく、前記他のタンパク質はアデノウイルス5から導かれるのが更に好ましい。
【0032】
本発明の1側面において、本発明の方法で用いる組換えアデノウイルスベクタは、少なくとも2種の異なるアデノウイルスからのタンパク質をコード化する核酸を含み、ここでは、前記核酸は亜群Bアデノウイルス線維タンパク質の親和性決定部分をコード化するのが好ましい。更に好ましい実施形態は、前記アデノウイルス線維タンパク質が、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれるアデノウイルスのものである。
【0033】
本発明の重要な側面において、本発明の方法で用いる組換えアデノウイルスベクタよりなる核酸は、好ましくは、少なくともE1−領域の1部分の欠失を介して、前記核酸の標的細胞内における複製能力が減少するか、又は無能になるように修飾されている核酸である。別の側面において、前記核酸は、好ましくは、E2A及び/又は少なくともE4−領域の1部分の欠失を介して、前記核酸によってコード化されるアデノウイルスタンパク質に対する免疫応答を始める宿主免疫系の能力が減少するか、又は無能になるように修飾されている核酸である。
【0034】
重要なことであるが、組換えアデノウイルスベクタは、間充織幹細胞に遺伝子を送達するのに用いることができる。したがって、本発明は、本発明に従う使用を提供し、ここでは、前記組換えアデノウイルスベクタが更に、少なくとも1種の異質な核酸を有する。前記組換えアデノウイルスベクタは、亜群Bアデノウイルスカプシド及び少なくとも1種の異質な核酸を有することが好ましい。更に好ましい実施形態は、前記亜群Bアデノウイルスが、アデノウイルス11、−16、−35又は−51のものである。
【0035】
本発明は、間充織幹細胞へ異質な核酸を送達するための組換えアデノウイルスベクタの使用を提供する。前記組換えアデノウイルスベクタは、間充織幹細胞に対する自然な親和性を有するアデノウイルスから導く。間充織幹細胞に対する自然な親和性を有するアデノウイルスは、本明細書で開示するように、亜群Bのアデノウイルスであるのが好ましい。更に好ましいかかる使用は、前記組換えアデノウイルスベクタが、11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれるアデノウイルスから導かれる。本発明は、間充織幹細胞への異質な核酸の送達のために、本発明に従う組換えアデノウイルスベクタの使用を提供する。間充織幹細胞は、多重の潜在性を有し、及び明らかに成長して異なった種類の細胞になることができるので、かかる細胞を用いる遺伝子治療のための多くの様々な応用方法が、本発明を用いることによって、いまや可能である。本発明を適用できる応用方法の1つが、組織工学である。本発明は、治療用タンパク質又はその機能的等価物、又はRNAをコード化する異質な核酸を間充織幹細胞に移動させることによって治療できる疾病の処置のための使用を提供する。好ましくは、変形関節炎又は多発性硬化症が、本発明のこれらの側面を用いて処置することができる疾病である。更に好ましい側面においては、送達すべき前記異質な核酸は、IL−10タンパク質をコード化する。
【0036】
本発明の側面を用いて、遺伝子組換え間充織幹細胞が得られる。本発明の特定の実施様態において、本発明はまた、本発明の提供された方法及び手段に従う組換えアデノウイルスベクタの使用を介し、異質な核酸を具備した間充織幹細胞を提供する。かかる間充織幹細胞は、多くの異なった治療上の設定において適用可能であることを理解すべきである。本発明の別の実施形態において、本発明は、例えば、骨形成(再生)の提供のために、骨に関連した疾患の処置用の薬を調製するために、本発明に従って得られる間充織幹細胞の使用を提供する。本明細書において、好ましくは、前記異質な核酸は骨形態形成タンパク質−2及び/又は骨LIM鉱質形成タンパク質−1をコード化する。得られる前記間充織幹細胞はまた、多発性硬化症の処置のための、脈管形成促進のための、又は変形関節炎の処置のための薬の調製にも適用することができる。
【0037】
上述のように、カプシドタンパク質はアデノウイルスの親和性を決定するのに重要な役割を果たす。特に、線維タンパク質は、宿主細胞の表面に提示された細胞受容体(群)の認識において必須である。別の実施形態において、本発明は、間充織幹細胞に異質な核酸を送達するために、亜群Bのアデノウイルスから導かれる、線維タンパク質、又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体の使用を提供する。好ましくは、前記線維タンパク質を、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれるアデノウイルスから導く。
【0038】
本発明は更に、間充織幹細胞に形質導入をするための方法を提供し、この方法は、以下の工程:間充織幹細胞を培養すること;及び前記間充織幹細胞を、異質な核酸を含む組換えアデノウイルスベクタと接触させることを含み、ここで、前記組換えアデノウイルスベクタは間充織幹細胞に対する親和性を具備する。本発明はまた、次の工程:間充織幹細胞を培養すること;及び前記間充織幹細胞を、異質な核酸を含む組換えアデノウイルスベクタと接触させることを含む間充織幹細胞に形質導入する方法を提供し、ここでは、前記組換えアデノウイルスベクタを亜群Bアデノウイルスから導く。本発明の方法において用いる好ましいアデノウイルスは、組換えAdll、Adl6、Ad35及びAd51であるか、又は亜群B由来ではない組換えアデノウイルスベクタであるが、それらのカプシド内で間充織幹細胞の親和性決定要素を発現するものである。
【実施例】
【0039】
例1:アデノウイルス血清型5ゲノムプラスミドクローンの産生
アデノウイルス血清型5の完全ゲノムを、種々のプラスミド又はコスミドにクローン化し、アデノウイルス血清型5ゲノムの部分が容易に修飾されるようにする一方で、組換えウイルスを生産する能力が依然として保たれるようにした。この目的のため、以下のプラスミドを産生させた:
【0040】
1.pBr/Ad.Bam−rITR(ECACC受託番号P97082122)
ITR配列の平滑端クローン化を容易にするために、野生型ヒトアデノウイルス5型(Ad5)DNAを、過剰のdNTP存在下にクレノ酵素で処理した。クレノ酵素の不活性化及びフェノール/クロロホルム抽出とそれに次ぐエタノール沈殿とによる精製の後、DNAをBamHIで消化した。このDNA調製物を、更に精製することなく、以下のようにして調製したpBr322由来ベクタDNAとの連結反応に用いた:pBr322DNAをEcoRV及びBamHIで消化し、TSAP酵素〔Life Technologies(ライフ・テクノロジー社)〕処理によって脱リン酸化し、更にLMPアガロースゲル〔SeaPlaque(シープラーク)GTG社〕で精製した。受容性E.coliDH5a〔Life Tech.(ライフ・テック社)〕への形質転換及びアンピシリン耐性コロニの分析の後、Ad5中のBamHI部位から右側ITRへ伸びる挿入断片について予想通りに消化パターンを示す1種のクローンを選定した。右側ITRでのクローン化辺縁(cloning border)の配列分析によって、ITRの最も3´側のG残基が失われて、ITRの残りの部分が正しいことを明らかにした。前記欠損G残基は、複製の間に他のITRにより補完される。
【0041】
2.pBr/Ad.Sal−rITR(ECACC受託番号P97082119)
pBr/Ad.Bam−rITRをBamHI及びSalIで消化した。アデノウイルス挿入断片を含むベクタ断片をLMPアガロース(SeaPlaque GTG)において分離し、wtAd5DNAから得た4.8kbのSalI−BamHI断片に連結し、更にGeneclean(ジーンクリーン)IIキット〔Bio101, Inc.(バイオ101社)〕により精製した。1種のクローンを選び、Ad5配列の完全性を制限酵素分析によって決定した。クローンpBr/Ad.Sal−rITRは、16746番目の塩基対にあるSalI部位からrITR(最も3´側のG残基を欠損)までの、及びこれを含むアデノ5型配列を含む。
【0042】
3.pBr/Ad.Cla−Bam(ECACC受託番号P97082117)
野生型Ad5DNAをClaI及びBamHIで消化し、20.6kbの断片を電気泳動溶出(electro-elution)によってゲルから単離した。pBr322を同じ酵素で消化し、Genecleanによってアガロースゲルから精製した。両断片を連結し、及び受容性DH5aへの形質転換をさせた。得られるクローンpBr/Ad.Cla−Bamを制限酵素消化よって分析し、塩基対919から21566番目までのアデノウイルス配列所有の挿入断片が含まれることを示した。
【0043】
4.pBr/Ad.AflII−Bam(ECACC受託番号P97082114)
クローンpBr/Ad.Cla−BamをEcoRI(pBr322内)で直線状にし、更にAflIIで部分的に消化した。AflIIを20分間65℃の加熱により不活性化した後、断片の末端をクレノ酵素を用い充填した。次いで、前記DNAをPacI部位(5´−AATTGTCTTAATTAACCGCTTAA−3´)含有の平滑端化二重鎖オリゴリンカに連結させた。このリンカは、次の2本のオリゴヌクレオチド:5´−AATTGTCTTAATTAACCGC−3´及び5´−AATTGCGGTTAATTAAGAC−3´をアニーリングすること、次いでクレノ酵素よる平滑端化によって作製された。連結されたDNAを沈殿させて緩衝液を変えた後、過剰のPacI酵素を用い連結物を消化し、オリゴの鎖状体(concatamere)を除去した。塩基対が3534番目から21566番目までのAd5配列及びベクタ配列を含む22016塩基対の部分断片をLMPアガロース(SeaPlaque GTG)において単離し、再連結し、更に受容性DH5aへの形質転換をさせた。PacI部位を含むことが見出され、及び大きなアデノ断片を保持していた1種のクローンを選定し、5´端の配列を決定して、(喪失した)AflII部位へのPacIリンカの正しい挿入を確認した。
【0044】
5.pBr/Ad.Bam−rITRpac#2(ECACC受託番号P97082120)及びpBr/Ad.Bam−rITR#8(ECACC受託番号P97082121)
Ad5のITR近傍にあるPacI部位をクローンpBr/Ad.Bam−rITRに挿入可能とするために、約190個のヌクレオチドを、pBr322幹中のClaI部位とITR配列の開始部位との間で除去した。これは、以下のようにして行った:pBr/Ad.Bam−rITRをClaIで消化し、時間の長さを変えて(2分、5分、10分及び15分)、核酸分解酵素Bal31で処理した。ヌクレオチド除去の範囲は、同一の緩衝液及び条件を用いるpBr322DNAでの分離反応に従った(ClaI部位でも消化)。75℃10分間でのインキュベーション(温置)によりBal31酵素を不活性化させ、DNAを沈殿させ、及び小容量のTE緩衝液中に再懸濁させた。平滑端を確保するために、更にDNAを過剰のdNTP存在下にT4DNA重合酵素で処理した。(対照)pBr322DNAのSalIを用いる消化後、10分又は15分間処理した試料において申し分のない分解(〜150塩基対)が観察された。次に、10分又は15分処理したpBr/Ad.Bam−rITR試料を上述の平滑端化PacIリンカ(pBr/Ad.AflII−Bam参照)に連結した。連結物を沈殿によって精製し、過剰のPacIで消化し、更にLMPアガロースゲル上でリンカから分離した。再連結後、DNAを受容性DH5aへ形質転換させ、コロニを分析した。10種のコロニはおよそ所望の長さの欠失が観察されたものを選定し、更にこれらをT−トラック配列決定〔T7配列決定キット、Pharmacia Biotech(ファーマシア・バイオテック社)〕により分析した。2種のクローンがrITRの直下流に挿入されたPacIリンカを有することが見出された。PacIによる消化後、クローン#2は、ITRに付着した28塩基対を有し、更にクローン#8は27塩基対を有する。
【0045】
pWE/Ad.Af1II−rITR(ECACC受託番号P97082116)
コスミドベクタpWE15〔Clontech(クローンテック社)〕を用いて、より一層大きいAd5挿入断片をクローン化した。最初に、特有のPacI部位を含むリンカをpWE15のEcoRI部位に挿入してpWE.pacを作り出した。この目的のため、pBr/Ad.AflII−BamHIについて説明したような二重鎖PacIオリゴを用いたが、ここではそのEcoRI突出末端による。次に、電気泳動溶出によりアガロースゲルから以下の断片を単離した:PacIによって消化されたpWE.pac、PacI及びBamHIにより消化されたpBr/AflII−Bam及びBamHI及びPacIにより消化されたpBr/Ad.Bam−rITR#2。これらの断片を一緒に連結し、1ファージパッケージング抽出〔Stratagene(ストラタジーン社)〕を製造元のプロトコルに従って用いパッケージングした。宿主細菌への感染後、コロニをプレート上で増殖させ、完全挿入断片の存在について分析した。pWE/Ad.AflII−rITRは、3534番目の塩基対(AflII部位)から右側ITR(最も3´側のG残基を欠損)に至るとともに該rITRを含むすべてのアデノウイルス5型配列を含む。
【0046】
pBr/Ad.lITR−Sal(9.4)(ECACC受託番号P97082115)
Ad5野生型DNAを過剰なdNTP存在下でクレノ酵素と反応させた後、SalIで消化した。得られた断片のうち2種を、それぞれ左側ITR−Sal(9.4)及びSal(16.7)−右側ITRと表し、これらをLMPアガロース(Seaplaque GTG)において単離した。pBr322DNAをEcoRV及びSalIで消化し、更に脱リン酸酵素(Life Technologies)で処理した。ベクタ断片を、Geneclean法(BIO 101, Inc.)を用い単離し、Ad5SalI断片に連結させた。9.4kb断片による連結物のみが挿入断片を有するコロニを与えた。クローン化辺縁の分析及び配列決定後、十分なITR配列を有し、及び9462番目の塩基対にあるSalI部位へ伸びるクローンを選定した。
【0047】
pBr/Ad.1ITR−Sal(16.7)(ECACC受託番号P97082118)
pBr/Ad.lITR−Sal(9.4)をSalIで消化し、更に脱リン酸化した(TSAP、Life Technologies)。このクローンをAd5中の第3SalI部位まで伸張させるために、pBr/Ad.Cla−BamをBamHIにより直線状にし、更にSalIで部分的に消化した。9462〜16746からのアデノウイルス配列を含む7.3kbのSalI断片をLMPアガロースゲルにおいて単離し、SalI−消化pBr/Ad.lITR−Sal(9.4)ベクタ断片に連結した。
【0048】
pWE/Ad.AflII−EcoRI
pWE.pacをClaIで消化し、5´突出末端をクレノ酵素を用いて充填した。次に、DNAをPacIで消化して、アガロースゲルから単離した。pWE/AflII−rITRをEcoRIで消化し、クレノ酵素による処理の後PacIで消化した。アデノウイルス配列を含む大きな24kb断片をアガロースゲルから単離し、ClaI−消化し及び平滑端化されたpWE.pacベクタに、ClontechからのLigation ExpressTM(リゲーション・エクスプレス、商標)キットを用いて連結した。StratageneからのUltracompetent XL10-Gold(ウルトラコンピテントXL10−ゴールド)細胞を形質転換した後、予測した挿入断片を含むクローンを同定した。pWE/AflII−EcoRIは、3534から27336番目までの塩基対からなるAd5配列を含む。
【0049】
新規アダプタプラスミドの構築
パッケージング細胞系で組換え体のアデノウイルスとE1配列との間の配列重複が存在しないことは、新しい組換え体ウイルスの生成及び増殖を安全で、RCA無しで行う上で必須である。アダプタプラスミドpMLPI.TKは、本発明の改良されたパッケージング細胞系と組み合わせて本発明に従う使用のために設計されたアダプタプラスミドの1例である。このプラスミドを出発材料として用い、特定のプロモータ及び遺伝子配列を含む核酸分子が容易に交換される新しいベクタを作製した。最初に、以下のプライマを用いてpZipΔMo+PyF101(N)鋳型DNA(PCT/NL96/00195)からPCR断片を生成させた:LTR−1:5´−CTG TAC GTA CCA GTG CAC TGG CCT AGG CAT GGA AAA ATA CAT AAC TG−3´及びLTR−2:5´−GCG GAT CCT TCG AAC CAT GGT AAG CTT GGT ACC GCT AGC GTT AAC CGG GCG ACT CAG TCA ATC G−3´。PwoDNA重合酵素〔Boehringer Mannheim(ベーリンガー・マンハイム社)〕を、製造元のプロトコルに従い以下の温度サイクルで用いた:95℃で5分間;55℃で3分間;及び72℃で1分間を1回、及び95℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間の30回のサイクル、その後72℃で10分間を1回。次に、PCR生産物をBamHIで消化し、PvuII及びBamHIにより消化したpMLP10(Levrero等1991)ベクタに連結し、それによって、ベクタpLTR10を生成した。このベクタは、1番目の塩基対から454番目の塩基対に至るまでのアデニノウイルス配列と、それに続き、Mo−MuLV LTRであって、変異体ポリオーマウイルス(PyF101)からのエンハンサによって置換されたその野生型エンハンサ配列を持つものの1部からなるプロモータとを含む。プロモータ断片をL420で表す。次に、ネズミHSA遺伝子の翻訳領域を挿入した。pLTR10をBstBIで消化し、続いてクレノ処理及びNcoIによる消化を行った。HSA遺伝子は、以下のプライマを用いてpUC18−HSA〔Kay(カイ)等1990〕上のPCR増幅により得た:HSA1、5´−GCG CCA CCA TGG GCA GAG CGA TGG TGG C−3´及びHSA2、5´−GTT AGA TCT AAG CTT GTC GAC ATC GAT CTA CTA ACA GTA GAG ATG TAG AA−3´。269塩基対増幅断片を、NcoI及びBglII部位を用いて、シャトルベクタ中にサブクローン化した。配列決定によってHSA遺伝子の正しいコード配列の取り込みが確認されたが、付加的なTAG挿入断片によりTAG停止コドンが直後に続いた。次に、HSA遺伝子の翻訳領域は、TAGの重複を含み、NcoI(粘着性)−SalI(平滑性)断片として切除され、plTR10からの3.5kbNcoI(粘着性)/BatBI(平滑性)断片にクローン化され、pLTR−HSA10が得られた。
【0050】
最後に、pLTR−HSA10をEcoRI及びBamHIで消化し、しかる後、左側ITR、パッケージング信号、L420プロモータ及びHSA遺伝子を含む断片を、同じ酵素で消化したベクタpMLPI.TKに挿入し、それによって、プロモータ及び遺伝子配列を置換した。これにより、種々の制限酵素のための好都合な認識部位をプロモータ及び遺伝子配列の周囲に含む新しいアダプタプラスミドpAd/L420−HSAが得られた。SnaBI及びAvrIIを、HpaI、NheI、KpnI、HindIIIと合わせて、プロモータ配列を交換することができ、一方、後者の部位をHSA翻訳領域から3´側のClaI又はBamHI部位と合わせることで、この構成体内で遺伝子を置き換えることができる。核酸分子の交換を容易にするように設計された他のアダプタプラスミドは、pAd/L420−HSA中のプロモータ、遺伝子、及びポリ(A)配列を、CMVプロモータ、多重クローン化部位、イントロン及びポリ(A)信号と置換することにより作製した。この目的のため、pAd/L420−HSAをAvrII及びBglIIで消化した後にクレノで処理することで、平滑端が得られた。pBr322ベクタ及びアデノウイルス配列を有する5.1kb断片を単離し、HhaI及びAvrIIにより消化した後にT4DNA重合酵素により処理することで得られたpcDNA1/amp〔Invitrogen(インビトロゲン社)〕からの平滑端化1570塩基対断片に連結した。このアダプタプラスミドをpCLIPと命名した。
【0051】
組換え体アデノウイルスの生成
新しいプラスミドを基とする系によるE1欠失組換えアデノウイルスを生成するために、以下の構成体を調製する:
(a)重複アデノウイルスゲノム断片の3´側で切断する制限酵素によって直線状になった対象の遺伝子を有する発現カセットを含み、好ましくは任意のpBr322ベクタ配列を含まないアダプタ構成体、及び
(b)PacIによって消化された補完的(complementing)アデノウイルスゲノム構成体pWE/Ad.AflII−rITR。
【0052】
これらの2種のDNA分子を、更にフェノール/クロロホルム抽出及びエタノール(EtOH)沈殿によって精製する。これらのプラスミドのアデノウイルスパッケージング細胞系、好ましくは本発明にかかる細胞系への同時形質移入は、アダプタと補完的構成体との間の1工程相同組換えによって、組換え複製欠失アデノウイルスを生成する。
【0053】
あるいはまた、pBWE/Ad.AflIII−rITRの代わりに、他の断片を使用することができる。例えば、EcoRI及びBamHIで消化したpBr/Ad.Cla−Bam又はPacI及びBamHIで消化したpBr/Ad.AflII−BamHIを、SalIで消化したpBr/Ad.Sal−rITRと合わせることができる。この場合、3種類のプラスミドが合わされ、組換えアデノウイルスを得るために2種の相同組換えが必要となる。本発明から逸脱することなく、当業者であれば、アダプタ及び補完的プラスミドの他の組合せを用いることができることを理解すべきである。以下に本発明の非限定的な例として概略し、意味される一般的なプロトコルを実行することで、種々のアダプタプラスミド及びAd.AflII−rITR断片を用いる組換えアデノウイルスが生産される。アデノウイルスパッケージング細胞(PER.C6)を、25cmのフラスコに播種し、集密度(confluency)が〜80%となった翌日に、DNAとリポフェクタミン剤(Life Techn.)との混合物で製造元の記載通りに形質移入した。日常的に、40μlのリポフェクタミン、4μgのアダプタプラスミド、及び4μgの補完的アデノウイルスゲノム断片AflII−rITR(又は二重相同組換えに対して2μgのすべての3類のプラスミド)を用いる。これらの条件下で、pAd/CMV−LacZアダプタを用いた対照形質移入により決定されるように、〜50%(形質移入後48時間)の一時的な形質移入効率が得られる。2日後、細胞を80cmのフラスコに継代し更に培養した。約5日(単一の相同組換えに対して)乃至11日(二重の相同組換えに対して)後、細胞変性効果(CPE)が見られ、機能性アデノウイルスが形成されたことを示す。十分なCPE状態で細胞及び培地を収集し、組換えウイルスを凍結/解凍によって放出させる。日常的に、80cmのフラスコでの付加的増幅工程を実行し、収量を高める。なぜなら、初期段階では、十分なCPEが生じたにもかかわらず力価が変わり易いためである。増幅後、ウイルスを収集し、PER.C6細胞上でプラークを精製する。活性な導入遺伝子を有するウイルスについて、個々のプラークを試験する。
【0054】
E1領域での置換に加え、アデノウイルスでのE3領域(の部分)を欠失又は置換することができる。なぜなら、E3は、(組換え体)ウイルスの複製、パッケージング及び感染にとって不要だからである。これによって、最大パッケージ寸法(wtゲノム長さの約105%)を超えないで、より一層大きな挿入断片を用いるか、又は1種よりも多い遺伝子を挿入する機会が作り出される。このことは、例えば、XbaIによる消化及び再連結によってpBr/Ad.Bam−rITRクローン中のE3領域の部分を欠失させることによって行うことができる。これによって、既知のE3翻訳領域のすべてを含むAd5wt配列28592〜30470が除去される。別の例は、E3領域内のgpl9Kの翻訳領域をポリリンカによって正確に置換することであり、新たな配列の挿入を可能にする。これは、(1)他の翻訳領域すべてを損なわずに残し、及び(2)異質なプロモータの必要性を取り除く。なぜなら、導入遺伝子がE3プロモータ及びpA配列によって駆動され、コード配列のための空間が残るからである。
【0055】
この目的のため、E3領域の5´部分を含むwtAd5からの2.7kbEcoRI断片を、pBluescript(ブルースクリプト)(KS)(Stratagene)のEcoRI部位にクローン化した。次いで、ポリリンカ中のHindIII部位を、EcoRV及びHincIIによる消化及びそれに続く再連結によって除去した。得られたクローンpBS.Eco−Eco/ad5DHIIIを用い、gp19K翻訳領域を削除した。プライマ1(5´−GGG TAT TAG GCC AA AGG CGC A3´)及びプライマ2(5´−GAT CCC ATG GAA GCT TGG GTG GCG ACC CCA GCG−3´)を用い、wtAd5DNA中の配列28511〜28734に相当するpBS.Eco−Eco/Ad5DHIIIからの配列を増幅させた。プライマ3(5´−GAT CCC ATG GGG ATC CTT TAC TAA GTT ACA AAG CTA−3´)及びプライマ4(5´−GTC GCT GTA GTT GGA CTG G−3´)を同じDNA上で用い、29217から29476までのAd5配列を増幅させた。得られた2種類のPCR断片を新しい導入されたNcoI部位によって互いに連結し、次いでXbaI及びMunIで消化した。次に、この断片を、XbaI(部分的)及びMunIで消化したpBS.Eco−Eco/ad5ΔHIIIベクタに連結し、pBS.Eco−Eco/ad5ΔHIII.Δgp19Kを生成させた。HindIII及びBamHI部位への外来遺伝子導入を可能とするために、pBS.Eco−Eco/ad5ΔHIII.Δgp19K中にXbaI欠失を生じさせ、Bluescriptポリリンカ中のBamHI部位を除去した。得られるプラスミドpBS.Eco−Eco/ad5ΔHIIIΔgp19KΔXbaIは、Ad5中の配列28733(HindIII)及び29218(BamHI)に相当する独特なHindIII及びBamHI部位を含む。外来遺伝子をこれらの部位に導入した後に、欠失XbaI断片を再び導入するか、又は挿入断片を、HindIII及び例えばMunIを用いて、pBS.Eco−Eco/ad5ΔHIII.Δgp19K中に再クローン化した。この方法を用いることにより、本発明者等は、HSV−TK、hIL−1a、ラットIL−3、ルシフェラーゼ又はLacZを発現するプラスミドを生成した。pBS.Eco−Eco/ad5ΔHIII.Δgp19Kプラスミド(対象の挿入された遺伝子の有無にかかわりなく)中の独特なSrfI及びNotI部位を用いて、対象の遺伝子を含む領域をpBr/Ad.Bam−rITRの相当する領域に移すことで、構成体pBr/Ad.Bam−rITRΔgp19K(対象の挿入された遺伝子の有無にかかわりなく)が得られる。この構成体を前記のように用いて組換えアデノウイルスを生産する。このウイルスの状況では、挿入遺伝子の発現はアデノウイルスE3プロモータによって駆動される。
【0056】
E1及びE3の双方が欠失している組換えウイルスを、以下のプラスミドを基とする系を用いて、E1−置換ベクタのための上述したような二重相同組換え方法によって生成させる:(a)対象の第1の遺伝子の挿入の有無にかかわらず、本発明に従うE1置換のためのアダプタプラスミド;(b)pWE/Ad.AflII−EcoRI断片;及び(c)対象の第2の遺伝子の挿入の有無にかかわらず、pBr/Ad.Bam−rITRΔgp19Kプラスミド。E3領域での操作に加え、E4領域(の部分)の変化は、pBr/Ad.Bam−rITRで容易に遂行し得る。しかし、かかるウイルスの生成及び増殖は、場合によっては途中で相補性を要求する。
【0057】
例2:キメラ線維タンパク質を有するアデノウイルス血清型5系ウイルスの生成
以下に説明する方法によって、2種又はそれより多い種類の別々のクローン化アデノウイルス配列を同時形質移入することにより、組換えアデノウイルスを生成する。これらのクローン化アデノウイルス配列の1種を、アデノウイルス血清型5線維DNAを欠失させ独特な制限部位と置換されるように修飾し、それによって、他のアデノウイルス血清型から導かれる線維タンパク質をコード化するDNA配列の導入を容易にする‘鋳型クローン’を生成した。
【0058】
線維をコード化するDNAを欠くアデノウイルス鋳型クローンの生成
アデノウイルス血清型5の線維コード配列は、ヌクレオチド31042と32787との間に位置している。線維をコード化しているアデノウイルス血清型5DNAを除去するために、本発明者等は構成体pBr/Ad.Bam−rITRから始めた。最初に、この構成体からNdeI部位を除去した。この目的のために、pBr322プラスミドDNA配列をNdeIで消化し、しかる後突出末端を、クレノ酵素を用いて充填した。次に、このpBr322プラスミドを再連結し、NdeIで消化し、及びE.coliDH5αに形質転換させた。得られたpBr/ΔNdeIプラスミドをScaI及びSalIで消化し、結果として生じた3198bpベクタ断片をpBr/Ad.BamrITRから導く15349bpのScaI−SalI断片に連結することで、独特なNdeI部位が含まれるプラスミドpBr/Ad.Bam−rITRΔNdeIを生じさせた。次に、オリゴヌクレオチドNY−up:5´−CGA CAT ATG TAG ATG CAT TAG TTT GTG TTA TGT TTC AAC GTG−3´及びNY−down:5´−GGA GAC CAC TGC CAT GTT−3´を用いてPCRを実行した。増幅の間、NdeI制限部位(太文字、上記「NY−up:5´−・・・CAT ATG ・・・−3´」)及びNsiI制限部位(下線)を導入して、増幅する線維DNAのクローン化を容易にした。増幅は、それぞれが94℃で45秒間、60℃で1分間、及び72℃で45秒間の25サイクルからなった。PCR反応は、25ピコモルのオリゴヌクレオチドNY−up又はNY−down、2mMのdNTP、1.5mMのMgClを含むPCR緩衝液、及び1単位のElongase(エロンガーゼ)熱安定性ポリメラーゼ〔Gibco(ギブコ社)、オランダ国〕を含むものであった。PCR産物の10分の1をアガロースゲル上で泳動させることで、±2200bpからなる予測したDNA断片が増幅した。次いで、このPCR断片をGeneclean kit system(Bio101 Inc.)を用いて精製した。次に、構成体pBr/Ad.Bam−rITRΔNdeI及びPCR産物の双方を制限酵素NdeI及びSbfIで消化した。その後、T4リガーゼ酵素を用いて、PCR断片をNdeI及びSbfI消化pBr/Ad.Bam−rITRΔNdeI中にクローン化することで、pBr/Ad.BamRΔFibを生成した。このプラスミドは、除去された線維配列の代わりに挿入される独特なNdeI及びNsiI部位を介して、任意のPCR増幅された線維配列の挿入を可能とする。ウイルスは、後述するパッケージング細胞において、アダプタプラスミド、PacI及びEcoRIにより消化された構成体pBr/Ad.AflII−EcoRI及び異質な線維配列が挿入されているpBr/Ad.BamRΔFib構成体を用いる二重相同組換えによって生成することができる。ウイルスの生成効率を高めるために、構成体pBr/Ad.BamRΔFibを修飾して、PacI部位を生成し、右側ITRに隣接させた。これに関して、pBr/Ad.BamRΔFibをAvrIIで消化し、5kbアデノ断片を単離し、及びベクタpBr/Ad.Bam−rITR.pac#8に導入することで、相当するAvrII断片を置換した。結果として生じる構成体をpBr/Ad.BamRΔFib.pacと命名した。ひとたび異質な線維配列がpBr/Ad.BamRΔFib.pacに導入されれば、線維修飾右側アデノウイルスクローンを、例1においてpWE/Ad.AflII−rITRについて説明したように、大きなコスミドクローンに導入することができる。かかる大きなコスミドクローンは、1回の相同組換えのみによってアデノウイルスの生成を可能とし、プロセスを非常に効率的なものにする。
【0059】
アデノウイルス血清型由来の線維配列の増幅
選択可能な複数の血清型から導かれる線維タンパク質をコード化するDNAの増幅を可能とするために、縮重オリゴヌクレオチドを合成した。この目的のために、選択可能な複数の血清型の線維タンパク質をコード化する最初の複数の既知DNA配列を整列させて、線維タンパク質の瘤−領域及び尾(tail)−領域の双方に保存領域を同定した。6種の亜群すべてを現す19種の異なる血清型のヌクレオチド配列を含む配列比較(alignment)から、(縮重)オリゴヌクレオチドを合成した。増幅反応(50μl)は、2mMのdNTP、25ピコモルの各オリゴヌクレオチド、標準1xPCR緩衝液、1.5mMのMgCl、及び1反応あたり1単位のPwo(1 Unit Pwo)熱安定性ポリメラーゼ(Boehringer)を含んだ。サイクラープログラムは20サイクルを含んでおり、各々のサイクルは、94℃30秒間、60〜64℃60秒間、及び72℃120秒間からなった。PCR産物の1/10をアガロースゲル上で泳動したところ、DNA断片が増幅したことが示された。各々の異なる鋳型のうち、PCR反応をそれぞれ別個に2回実施し、しかる後、得られた個々のPCR断片の塩基配列を決定して、ヌクレオチド配列を確定した。11種の異なる血清型から、ヌクレオチド配列をgenbank(ジーンバンク)にある配列と比較することができた。他のすべての血清型のうち、線維タンパク質をコード化するDNAは今まで知られておらず、従って他の亜群の一員からの既知配列と配列比較することで、相同性、すなわち配列分散を決定した。現在まで知られている51種のヒト血清型のうち、血清型1、6、18、及び26を除くすべての線維配列が増幅され、及び配列決定された。
【0060】
線維キメラアデノウイルスDNA構成体の生成
ベクタ(pBr/Ad.BamRΔFib)と同様にすべての増幅した線維DNAをNdeI及びNsiIで消化した。次いで、消化DNAをアガロースゲル上で泳動し、しかる後、ゲルから断片を単離し、及びGeneclean kit (Bio101 Inc.)を用いて精製した。次に、PCR断片をpBr/AdBamRΔFibのNdeI及びNsiI部位中にクローン化し、このようにしてpBr/AdBamRFibXX(式中、XXは、線維DNAが単離された血清型数を表す)を生成させた。これまでに、血清型5/7/8/9/10/11/12/13/14/16/17/19/21/24/27/28/29/30/32/33/34/35/36/37/38/40−S/40−L/41−S/42/45/47/49/51の線維配列をpBr/AdBamRFibXX中にクローン化した。pBr/AdBamRFibXX(式中、XXは、5/8/9/10/1l/13/16/17/24/27/30/32/33/34/35/38/40−S/40−L/45/47/49/51である)から、pWE/Ad.AflII−rITR中のコスミドクローン(例1参照)を生成し、効率的なウイルス生成を促進した。このコスミドクローン化によって、構成体pWE/Ad.AflII−rITR/FibXX(式中、XXは、線維DNAが単離された血清型数を表す)が形成された。
【0061】
線維タンパク質に対してキメラである組換え体アデノウイルスの生成
血清型12、16、28、40−L、51、及び5を所有する組換えAd5ウイルスを生成するために、3種の構成体、pCLIP/ルシフェラーゼ、pWE/AdAflII−Eco及びpBr/AdBamrITR.pac/fibXX(XX=12、16、28、40−L、51、及び5)をアデノウイルス生産細胞中に形質移入させた。線維の5/7/8/9/10/11/12/13/14/16/17/19/21/24/27/28/29/30/32/33/34/35/36/37/38/40−S/40−L/41−S/42/45/47/49/51を所有する組換えAd5ウイルスを生成するために、2種類の構成体pCLIP/ルシフェラーゼ及びpWE/Ad.AflII−rITR/FibXXをアデノウイルス生産細胞中に形質移入させた。形質移入のために、2μgのpCLIP/ルシフェラーゼ、及びpWE/AdAflII−Eco及びpBr/AdBamrITR.pac/fibXXの双方の4μg(又はコスミドの場合、4μgのpCLIP/ルシフェラーゼに加え4μgのpWE/Ad.AflII−rITR/FibXX)を、無血清のDMEM中で希釈して全体の容量を100μlにした。このDNA懸濁液100μlに対して、1倍希釈したリポフェクタミン(Gibco)を添加した。室温で30分置いた後、DNA−リポフェクタミン複合体溶液を、後にT25cm組織培養フラスコに加えられる2.5mlの無血清DMEMに添加した。このフラスコは、形質移入の24時間前に播種された2×10個のPER.C6細胞を含んだ。2時間後、DNA−リポフェクタミン複合体含有培地を、20%ウシ胎児血清が補充された2.5mlのDMEMを加えることによって1回希釈した。再び24時間後、培地を10%ウシ胎児血清が補充された新鮮なDMEMと交換した。細胞を6〜8日間培養した後に収集し、凍結/解凍を3回行った。5分間、3000rpm室温の遠心分離によって、細胞破片を除去した。上清(12.5ml)のうち、3〜5mlを用いて、感染PER.C6細胞(T80cm組織培養フラスコ)を再び感染させた。この再感染によって、5〜6日後に十分な細胞変性効果(CPE)が得られ、しかる後アデノウイルスを上記のようにして収集した。
【0062】
例3:線維キメラアデノウイルスの生産、精製、及び滴定
形質移入したPER.C6細胞から得た上清のうち、10mlを使用して、懸濁液中の増殖に特に適応させた1〜1.5×10個細胞/mlのRER.C6を含む1リットルの発酵槽に接種した。接種後3日目、室温で10分間、1750rpmで遠心分離することにより、細胞を収集し及び沈殿化(pellet)させた。次いで、沈殿化させた細胞に存在するキメラアデノウイルスを、以下のような下流処理(downstream processing)プロトコルを用いて抽出及び精製した。沈殿物を50mlの10mMのNaP0 中に溶解し、しかる後、−20℃で凍結させた。37℃で解凍した後、5.6mlのデオキシコレート(5%w/v)を添加し、しかる後、溶液をホモゲナイズ(均質化)した。次いで、溶液を37℃で15分間インキュベートして細胞を完全に分解した。溶液をホモゲナイズした後、1875μl(1M)のMgCl を添加し、及び100%のグリセロール5mlを加えた。DNA分解酵素(10mg/ml)375μlを加えた後、溶液を37℃で30分間インキュベートした。室温で30分間、制動をかけることなく1880×gで遠心分離して細胞破片を除去した。その後、10mlのフレオン上にロードすることにより、上清をタンパク質から精製した。室温で15分間、制動をかけることなく2000rpmで遠心分離することで、上側バンドがアデノウイルスを示す3種のバンドが見えるようになる。このバンドをピペットで取ることで分離し、しかる後、それを、Tris/HC1(1M)緩衝化塩化セシウムの段階勾配(blockgradient)(範囲:1.2乃至1.4g/ml)上に装填した。他の成分とは対照的に、ウイルスは1.4g/mlのCsCl溶液中に移らないことから、10℃で2.5時間、21000rpmで遠心分離する際、ウイルスを残留タンパク質及び細胞破片から精製した。ウイルスのバンドを単離し、しかる後、2回目の精製を1.33g/mlのCsClのTris/HCl(1M)緩衝化連続勾配を用いて実行する。この勾配の頂上でのウイルスの負荷の後、ウイルスを10℃、55000rpmで17時間遠心分離する。次いで、ウイルスバンドを単離し、ショ糖(50w/v)30μlを加えた後、1ラウンド1時間を含む透析を3ラウンド行うことによって、余分なCsClを除去する。透析のため、ウイルスを透析スライド〔Slide-a-lizer、カットオフ10000kD、Pierce(ピアス社)、米国〕に移動させる。透析に使用する緩衝液は、PBSであり、このPBSにショ糖が濃度を増加させながら補充される(1〜3ラウンド:30ml、60ml、及び150mlのショ糖(50%w/v)/1.5リットルPBS、すべて7.5mlの2%(w/v)CaMgC1を補充)。透析後、Slide-a-lizerからウイルスを除去し、しかる後、それを分けて25μl及び100μlの部分とし、ウイルスを−85℃で貯蔵する。1ml当たりのウイルス粒子数を決定するために、ウイルスバッチ100μlを高圧液体クロマトグラフ(HPLC)にかける。アデノウイルスをカラム(アニオン交換)に結合させ、しかる後、それをNaCl勾配(範囲300〜600mM)を用いて溶出させる。ウイルスのピーク下面積の決定によって、ウイルス粒子の数を計算することができる。1つのウイルスのバッチに存在する1ml当たりの感染単位(IU)の数を決定するために、911細胞に対して滴定を実行した。この目的のために、96穴プレートの1穴当たりに、4×10個の911細胞を、1穴あたり100μlを全量として列B、D、及びFに播種する。播種後3時間で、細胞がプラスチック支持体に付着するので、その後に培地を除去することができる。細胞に対して、繰り返して、200μlの容量を添加し、異なる希釈のウイルスを含有させる(範囲:2×10まで10倍希釈)。CPEについてのスクリーニングによって、14日後でもCPEを与える最も高いウイルス希釈が少なくとも1感染単位を含むと考えられる。この観察を用いることは、これらの穴に存在するウイルス容量の計算値と共に、所定のウイルスバッチ1ml当たりの感染単位の数を表す。生産結果、すなわち、1ml当たりのウイルス粒子及び1ml当たりのIU、又は生産されたそれらのキメラアデノウイルスは、すべてがマーカとしてのルシフェラーゼcDNAを有し、それらを表2に示す。
【0063】
例4:ヒト間充織幹細胞の形質導入
健康なドナーから得られる骨髄穿刺液から導かれる付着画分を、D−グルコース(1g/l)、ピルビン酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム(4.4g/l)、L−グルタミン(2mM)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、及び10%熱不活化ウシ胎児血清を補足したDulbecco’s modified(ダルベッコ変法)イーグル培地(DMEM)中で培養した。細胞を1:2の割合で培養飽和密度に達するまで継代した。形質導入のために、24穴プレートの1穴あたり5×10細胞の濃度で、細胞を播種し、24時間付着させた。その後、1細胞当たり1000ウイルス粒子のAd5又は線維キメラウイルスAd5.Fib12、Ad5.Fib16、Ad5.Fib32、Ad5.Fib35、Ad5.Fib40−S、Ad5.Fib40−L,Ad5.Fib45、又はAd5.Fib51に曝した。線維40−S及び40−Lは、血清型40の短線維及び長線維をそれぞれ示している。ウイルス添加後48時間で、細胞を収集し、100μlの細胞−溶解緩衝液(PBS/1%トリトン−X100)の添加によって溶解した。ルシフェラーゼ活性の測定は、生物発光装置、Promega(プロメガ社)(カタログ番号E−1501)からのルシフェラーゼアッセイキット及び製造元から提供される使用説明書を用いて行った。線維キメラウイルスのパネルで形質移入後に間充織幹細胞において測定されたルシフェラーゼ導入遺伝子発現の結果を、図1に示す。結果は、いくつかの線維キメラウイルスが親ベクタ(Ad5)と比較して線維芽細胞に対して良好に作用することを示している。これらのウイルスは、亜群Bウイルス、すなわち16、35、及び51からの線維を運ぶ。また、1種の亜群Dウイルス(Ad5.Fib32)は、より良く間充織幹細胞を形質導入するための用意があるようである。Ad5.Fib40−S及びAd5.Fib40−L(亜群F)の双方は、Ad5と比べて類似か、又は若干良好に機能する。次の実験では、本発明者等は他のマーカ遺伝子を運んで間充織幹細胞を感染させるAd5Fib16の能力を試験した。これに関して、細胞を2時間にわたり、マーカとしての緑色蛍光タンパク質を所有するA5又はAd5Fib16の増大するベクタ用量に曝した(図2a)。48時間後、細胞を収集し、細胞を、フォローサイトメータを用いて、GFP発現について調べた。得られた結果は、マーカ遺伝子に対して陽性の細胞の比率に基づいて、間充織幹細胞の遺伝的修飾に関して、Ad5.Fib16がAd5に比べ、はるかに強力であることを示した。また、間充織幹細胞は生分解性の高分子骨格中に播種され、及びマーカ遺伝子としてのLacZを所有するAd5.Fib16に曝される。再び48時間後に、LacZ発現について細胞を染色した(図2b)。明らかに、細胞は、Ad5.Fib16による形質導入後に青く染まり、再び効率を示し、それによって、Ad5.Fib16が間充織幹細胞に感染する。最後に、時間の経過に伴うマーカ遺伝子の発現を試験し、発現の継続について調べた。これに関して、LacZを所有するAd5.Fib16の細胞当たり1000まで又は500のウイルス粒子にHBSC’sを1時間にわたって曝した。LacZに関して陽性と記録された細胞の数は、1時間ウイルスに曝露後、24、48、72,120、144、及び168時間で監視した。1細胞当たりのウイルス用量が5000で、すべての細胞が感染した。なぜなら、ウイルス曝露後48時間の時点で100%の細胞がLacZについて陽性に染色されたからである(図3a)。概して、感染後に最適な発現を得るのに必要な時間は、48時間である。試験した時点のすべてにおいて、すなわち、感染後168時間まで、LacZ陽性細胞の数が100%のままであったことから、各細胞の核にAd5Fib16ゲノムが少なくとも4コピー含まれると結論することができる。なぜなら、4回の細胞倍加ではウイルスが希釈されなかったからである。後者の実験では、本発明者等は、1000又は5000Vp/細胞のいずれかにより感染した形質導入細胞の生存度も監視した。対照として、非形質導入細胞を分析した。Ad5Fib16による形質導入後の生存細胞の割合に基づいて、1細胞当たり5000ウイルス粒子の用量であっても細胞の生存力を著しく変えることはないと結論することができる。同時に、これらの結果は、同定された改良型ベクタが細胞生存力を損なうことなくヒト骨髄間質細胞又は間充織幹細胞に対して非常に高い感染力があることを示す。したがって、これらの結果は、生物人工的な改変骨(bio-artificial engineered bone)の量及び質の最適化を目的とした研究を開始するための道を開く。
【0064】
【表1】
Figure 2004533268
【0065】
【表2】
Figure 2004533268
【0066】
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【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】線維キメラウイルスのスクリーニングを示す図である。
【図2】(A)はGFPの発現に関するスクリーニングを示す図であり、(B)はLacZ発現に関し染色した図である。
【図3】(A)はLacZ発現の持続時間を示す図であり、(B)は細胞集団の生存度を示す図である。

Claims (37)

  1. 異質の核酸を間充織幹細胞に送達するための組換えアデノウイルスベクタの使用であって、前記組換えアデノウイルスベクタが間充織幹細胞のための親和性を備えることを特徴とする使用。
  2. 前記組換えアデノウイルスベクタが、肝細胞のための少なくとも部分的に減少している親和性を有することを特徴とする請求項1記載の使用。
  3. 間充織幹細胞のための前記親和性が、ウイルスカプシド又はその機能的誘導体及び/又は類似体の少なくとも1部分によって提供されることを特徴とする請求項1又は2記載の使用。
  4. 前記ウイルスカプシドが、少なくとも2種の異なるアデノウイルスからのタンパク質、又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体を含むことを特徴とする請求項3記載の使用。
  5. 少なくとも1種の前記アデノウイルスが亜群Bのアデノウイルスであることを特徴とする請求項4記載の使用。
  6. 亜群Bの前記アデノウイルスが、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれることを特徴とする請求項5記載の使用。
  7. 前記亜群Bのアデノウイルスがアデノウイルス16であることを特徴とする請求項6記載の使用。
  8. 前記ウイルスカプシドが、亜群Bに属さないアデノウイルスから導かれる少なくとも1種の他のタンパク質、又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体を更に含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項記載の使用。
  9. 前記他のタンパク質が亜群Cのアデノウイルスから導かれることを特徴とする請求項8記載の使用。
  10. 前記他のタンパク質がアデノウイルス5から導かれることを特徴とする請求項9記載の使用。
  11. 前記組換えアデノウイルスベクタが、少なくとも2種の異なるアデノウイルスからのタンパク質をコード化する核酸を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項記載の使用。
  12. 前記核酸が、亜群Bアデノウイルス線維タンパク質の親和性決定部分をコード化することを特徴とする請求項11記載の使用。
  13. 前記アデノウイルス線維タンパク質が、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれるアデノウイルスのものであることを特徴とする請求項12記載の使用。
  14. 前記核酸が修飾された核酸であり、前記核酸の標的細胞内で複製する能力が、好ましくは、E1−領域の少なくとも1部分の欠失を介して、減少するか又は不活化されることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項記載の使用。
  15. 前記核酸が修飾された核酸であり、前記核酸によってコード化されるアデノウイルスタンパク質に対する免疫反応を行う宿主免疫系の能力が、好ましくは、E2A及び/又はE4−領域の少なくとも1部分の欠失を介して、減少するか又は不活化されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項記載の使用。
  16. 前記組換えアデノウイルスベクタが少なくとも1種の異質な核酸を更に含む請求項1乃至15のいずれか一項記載の使用。
  17. 前記組換えアデノウイルスベクタが、亜群Bアデノウイルスカプシド及び少なくとも1種の異質な核酸を含むことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項記載の使用。
  18. 前記亜群Bアデノウイルスが、アデノウイルス11、−16、−35又は−51であることを特徴とする請求項17記載の使用。
  19. 異質な核酸を間充織幹細胞に送達するための組換えアデノウイルスベクタの使用であって、前記組換えアデノウイルスベクタが亜群Bアデノウイルスから導かれることを特徴とする使用。
  20. 前記組換えアデノウイルスベクタが、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれるアデノウイルスから導かれることを特徴とする請求項19記載の使用。
  21. 異質な核酸を間充織幹細胞に送達するためであることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項記載の使用。
  22. 組織工学で用いることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項記載の使用。
  23. 疾病の処置のためであり、治療用タンパク質又はその機能的等価物、又はRNAをコード化する異質な核酸を間充織幹細胞に移動させることによって治療可能であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項記載の使用。
  24. 前記疾病が変形関節炎又は多発性硬化症であることを特徴とする請求項23記載の使用。
  25. 前記異質な核酸がIL−10をコード化することを特徴とする請求項24記載の使用。
  26. 間充織幹細胞であって、請求項1乃至25のいずれか一項記載の組換えアデノウイルスベクタの使用を介する異質な核酸を備えることを特徴とする間充織幹細胞。
  27. 請求項26記載の間充織幹細胞の使用であって、骨関連疾患の処置用の薬を調製するためであることを特徴とする使用。
  28. 前記異質な核酸が骨形態形成タンパク質−2をコード化することを特徴とする請求項27記載の使用。
  29. 前記異質な核酸が骨LIM鉱質形成タンパク質−1をコード化することを特徴とする請求項27又は28記載の使用。
  30. 請求項26記載の間充織幹細胞の使用であって、多発性硬化症の処置用の薬を調製するためであることを特徴とする使用。
  31. 請求項26記載の間充織幹細胞の使用であって、脈管形成を促進するための薬の調製で用いることを特徴とする使用。
  32. 請求項26記載の間充織幹細胞の使用であって、変形関節炎を処置するための薬の調製で用いることを特徴とする使用。
  33. 前記異質な核酸がIL−10をコード化することを特徴とする請求項32記載の使用。
  34. 亜群Bのアデノウイルスから導かれる線維タンパク質、又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体の使用であって、異質な核酸を間充織幹細胞に送達するためであることを特徴とする使用。
  35. 前記線維タンパク質が、アデノウイルス11、−16、−35及び−51:からなる群より選ばれるアデノウイルスから導かれることを特徴とする請求項34記載の使用。
  36. 間充織幹細胞の形質導入のための方法であって、次の工程:
    −間充織幹細胞を培養すること;及び
    −前記間充織幹細胞を、異質な核酸を含む組換えアデノウイルスベクタと接触させること;
    を含み、
    前記組換えアデノウイルスベクタが間充織幹細胞のための親和性を備えることを特徴とする方法。
  37. 間充織幹細胞の形質導入のための方法であって、次の工程:
    −間充織幹細胞を培養すること;及び
    −前記間充織幹細胞を、異質な核酸を含む組換えアデノウイルスベクタと接触させること;
    を含み、
    前記組換えアデノウイルスベクタが亜群Bアデノウイルスから導かれることを特徴とする方法。
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