JP2004530273A - 質量分析計及び質量分析法 - Google Patents
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Abstract
【手段】試料分子(26)をイオン化し、真空チャンバ(20)内の2個の電極(12、14)の間に形成された電界を反射させて前後に振動させる、新規の質量分析計。メッシュ状の電子発生手段(16)がリフレクタ電極(12、14)の間に配置されており、振動イオンのいくつかがメッシュに衝突するとき振動イオンがメッシュを通過する毎に第2発生により電子を発生させる。第2発生電子は、同様にメッシュ状のリフレクタ電極(12)を通過後、検出される(18)。イオンの振動周波数はその質量に依存し、電子発生毎に生じる信号の周波数分布から異なる質量のイオンを同定することができる。
【効果】本発明によって、飛行時間型質量分析計に比べて極めてコンパクトであり、イオンサイクロトン共鳴を用いたフーリエ変換質量分析計よりも低価格である、質量分析装置が可能となる。
【選択図】図1
【効果】本発明によって、飛行時間型質量分析計に比べて極めてコンパクトであり、イオンサイクロトン共鳴を用いたフーリエ変換質量分析計よりも低価格である、質量分析装置が可能となる。
【選択図】図1
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計と質量分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法は、比較的単純な分析コンセプトであり、この方法では、試料の分子をイオン化した後、質量分析計においてこれらのイオンをほぼそれらの質量に応じて電荷比に分離させて、検出する。磁界型、電界・磁界結合型、四極型、イオンサイクロトロン共鳴型、4極イオン蓄積トラップ型および飛行時間型質量分析計など、多くのタイプの質量分析計が利用できる。これらのうち、飛行時間型質量分析計(TOFMS)は、高感度を有し且つ広汎な(ほぼ無限の)質量範囲の測定が可能である。したがってこの質量分析計は、バイオおよび合成ポリマの質量分析に理想的である。あらゆる方法でのイオン化から完全なマススペクトルが得られるという点でもまた、TOFNSは他の質量分析方法よりも有利である。しかしながら、異なる質量のイオンの分離に必要な無電界ドリフト域が長い(約0.5〜1mの長さ)ため、TOFMS装置は大型で高真空状態(10-6Torr)を必要とする。ドリフト域を通ってイオンを後方へ反射するために、ドリフト域の端部にリフレクトロン(イオンミラー)が設けられていて、これによって質量分解能を向上させることができる。しかしながら、TOFMS装置が大型で極めて高度の真空装置であるという問題は残っている。
【0003】
すぐれた分解能を有するもう1つの高感度質量分析計は、たとえばフーリエ変換質量分析計(FTMS)のようなイオンサイクロトロン(ICR)現象を用いた質量分析計である。FTMSにおいて、イオンは、長時間にわたって限定された軌道のイオントラップ内を循環させられる。ac入力信号が印加され、それによって、イオン軌道がイオンの質量/電荷比に応じて変更される。イオンは、それらが電極を通過するときの「イメージ電流」の発生により検出される。発生した時間分域信号は、周波数分域信号に、次いで対応するマススペクトルにフーリエ変換される。しかしながら、FTMS装置は、高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の背景に関するこれらの議論は、本発明の文脈を説明するためのものである。ここに述べた事柄が請求項の優先権日におけるオーストラリアの当該技術における共通の一般的知識であると承認されていると、受け取るべきでない。
本発明の目的は、高感度と高分解能を有し広い質量範囲の測定が可能であり、且つTOFMとFTMSとの上記欠点を低減できる質量分析計および質量分析法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の局面によれば、本発明は、
分子のイオンを発生させるイオン化手段と、
前記イオンに作用して前記イオンを前後に振動させ、イオンの振動周波数をその質量に依存させる手段と、
振動イオンのいくつかが、当該電子発生手段にイオンの振動周波数により決定される周波数で電子を発生させるように、振動イオンに関連して配置された電子発生手段と、
その周波数で振動しているイオンの質量を計算するために電子とその発生周波数とを検出するディテクタとを含む、
分子の質量を測定するための質量分析計を提供する。
【0006】
第2の局面によれば、本発明はまた、
(i) 試料の分子をイオン化してそのイオンを発生させる段階と、
(ii) 前記イオンに作用して前記イオンを前後に振動させ、イオンの振動周波数をその質量に依存させる段階と、
(iii)振動イオンのいくつかを電子発生手段に作用させて、イオンの振動周波数により決定される周波数で電子を発生させる段階と、
(iv)発生した電子とその発生周波数とを検出する段階と、
(v)(iv)段階の周波数決定からその周波数で振動しているイオンの質量を計算する段階とを含む、
質量分析法を提供する。
【0007】
本発明は、イオンの振動周波数がイオンの質量(実際には質量/電荷比)に依存するという事実と、FTMSの測定法よりも単純な、異なる質量のイオンの振動周波数を測定するメカニズムの発見とによるものである。この「メカニズム」は、特定の質量/電荷比を有する振動イオンが固定位置(この位置は電子発生手段により決定される)を通過する毎に電子を発生し、時間に関する表現としての信号(電子「爆発」)を得ることを含む。この表現における各電子発生からの信号の周波数分布によって、異なる質量を有するイオンの同定が可能になる。
【0008】
電子発生手段は、振動イオンが電子発生手段と衝突するときに電子を発生するように構成されていることが好ましい。したがって、この手段は複数個の開口部を有する電極であって、いくつかの振動イオンはこれらの開口部を通過することが可能であり、他の振動イオンはこの電極に衝突するようになっていてもよい。電子発生手段は、比較的細かい金属メッシュまたは格子であることが好ましい。1実施形態において、金属メッシュまたは格子は、振動イオンの約15%が金属メッシュまたは格子に衝突して電子を発生するように構成されている。
【0009】
上記のような実施形態において、検出「メカニズム」は、イオンが電子発生電極を通過して振動する毎にいくつかのイオンが破壊されることを含んでいることは理解されるであろう。これはFTMS(軌道を移動するイオンの検出によってイオンの破壊は起こらない)の場合ほど理想的ではないが、イオンの検出によってすべてのイオンが破壊されるTOFMSの場合よりも良好である。勿論、電子発生電極のメッシュまたは格子は、必要に応じて選択された透過率を有してもよく、たとえば、振動イオンに対する高い透過率は、イオンが通過する毎に発生したイオン(したがって検出された信号)を減少させるが、測定すべきイオンを非常に多く通過させ、その結果より良好な質量分解能が得られる。
【0010】
本発明の利点の1つは、イオン発生場所に極めて近いところでイオンが振動させられ、且つ電子発生手段は必然的に振動イオンの近くに位置し、したがって質量分析計の主要部品をコンパクトに配置することが可能で、極めてコンパクトな質量分析計装置を開発できる。さらに、本発明は10-5Torrまたはそれ以下の真空を必要とし、この数字は、従来のTOFMSが耐えられる最高圧よりも約10大きい係数である。したがって、本発明による質量分析計に必要な真空システムは、TOFMSに必要な真空システムよりも真空度が低い。したがって、本発明はTOFMSの問題点を減らすことができる。
【0011】
好ましくは、イオンに作用してイオンを前後に振動させる手段は、イオンを反射してそのように振動させる電界を提供するための電極(以下リフレクタ電極と呼ぶ)である。好ましくはイオンを反射するこれらの電極は1対のほぼ並行に離間した電極であって、電子を発生するメッシュまたは格子電極がこの1対のリフレクタ電極の間に配置されている。好ましくは、電子発生電極が前記1対のリフレクタ電極の中間においてそれらとほぼ並行に配置されている。
【0012】
好ましくは、リフレクタ電極の一方は、かなりの数の発生電子がその電極を通過できるように複数個の開口部を有しており、この電極を通過した電子を検出できるようにディテクタが配置されている。好ましくは、このリフレクタ電極は比較的細かい金属メッシュまたは格子である。
直前のパラグラフに記載した本発明の局面の他の実施形態において、リフレクタ電極の他方は、振動イオンのいくつかが通過できる複数個の開口部を有しているのが好ましく、質量分析計はこの他方のリフレクタ電極の電位を低下させる電子手段を含んでおり、異なる質量の振動イオンから振動周波数の違いにより分離された、選択された質量の振動イオンが電位低下したこの電極を介して抽出される。好ましくは、この電子手段は、この他方のリフレクタ電極に比較的高い陰電圧パルスを印加するように作用する。好ましくは、この他方のリフレクタ電極もまた比較的細かい金属メッシュまたは格子である。
【0013】
作動時には、リフレクタ電極と電子発生電極とは別個にある電位に荷電され、その結果、電子発生電極はリフレクタ電極よりも低い(より陰性の)電位を有する。1例において、リフレクタ電極は約0ボルトであり、電子発生電極はたとえば−4000ボルトのような比較的高い陰電圧に荷電される。この電圧状態は、発生電子が前記一方の電極のメッシュまたは格子を通過してディテクタに入るのを加速する効果を有する。リフレクタ電極の一方の電位を低下させてイオンを抽出する電子手段は、電極(前記他方のリフレクタ電極)をパルスさせて比較的短期間に比較的高い陰電位にする。1実施形態において、この陰電位は約―4000ボルトである。
【0014】
好ましくは、ディテクタはチャンネルトロンディテクタである。
好ましくは、質量分析計は、イオン化手段によりイオン化するために分子を質量分析計に導入するための、ノズルタイプ試料インジェクタまたはパルスノズルタイプ試料インジェクタの形状の手段を含む。好ましくは、そのようなインジェクタは、1対のリフレクタ電極の一方と電子発生電極との間に分子を射出するように設計されている。
【0015】
好ましくは、イオン化手段は、マルチフォトンイオン化(MPI)により分子をイオン化するパルスレーザである。
本発明をさらによく理解できるようにし且つ本発明の実施方法を示すために、単に非限定的な例を介し添付図面を参照して好ましい実施形態を次に述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態による質量分析計10(図1参照)は、1対のほぼ並行に離間したリフレクタ電極12、14と、前記リフレクタ電極12、14の中間にリフレクタ電極12、14と平行に配置された電子発生手段である電子発生電極16とを含む。チャンネルトロンイオンディテクタ18であるディテクタが、電極12の背後に配置されている。3個の電極12、14、16とディテクタ18とは真空チャンバ20内に配置されている。質量分析計10はまた、パルス弁またはパルスノズルの形状の試料インジェクタ22を含んでいる。熟練者には知られているように、試料源24から試料分子が試料インジェクタ22に供給される。試料分子の経路は、図1において矢印26により示されている。質量分析計10はさらに、パルスレーザ28の形状の分子イオン化手段を含んでいる。このパルスレーザ28は、パルス試料インジェクタ22により分子がリフレクタ電極12と電子発生電極16との間に導入されるとき、これらの分子をイオン化する。パルスレーザ28は、図1の星印で表される点において分子のビームと交差する強力な収束レーザビームを提供し、マルチフォトンイオン化(MPI)により分子をイオン化する。
【0017】
電極12、14は、イオンに作用してそれらのイオンを前後に振動させる手段を構成している。これらの電極12、14と電子発生電極16とは、イオンおよび電子が透過または通過できるサイズの細かいメッシュまたは格子構造の金属ディスクである。典型的には、イオンおよび電子は約85%の効率でメッシュまたは格子状の電極12、14、16を通過する。質量分析計10は電圧源手段30を含んでいる。この電圧源手段30により電極12、14、16は独立してたとえば高い陽または陰電圧のような所定の電位になるように荷電され、そのようにして形成された電界の影響によりイオンはリフレクタ電極12、14の間で振動する。すなわち、リフレクタ電極12、14は、イオンを引き付ける電極16の電位に助けられて、イオンを電極12、14間で前後に反射させる電界を提供する。
【0018】
質量分析計10の他の部品は、ディテクタ18に連結された電子信号増幅・デジタル化手段32と、質量分析計10の作動を制御および同期し、且つ検出された信号を処理し適切な質量分析結果を出力するためのコンピュータ34とである。
質量分析計10の作動は、図2A〜2Dに示されている。図2Aは陽イオンの曲線を示し、図2Cは電子の曲線を示している。図2Bおよび図2Dのプロットはそれぞれイオンまたは電子が「ダウンヒル」走行する(すなわち陽イオンは陰電位に向かって走行し、電子はさらに小さい陰電位に向かって走行する)ことを示すために描いた1次元電位を示している。チャンネルトロンディテクタ18に衝突した陽イオンまたは電子はいずれも増幅された電流信号を発し、この信号は電子手段32とコンピュータ34とにより処理される。試料インジェクタ22は、ガス相の揮発成分をリフレクタ電極12と電子発生電極16との間の領域に導入する役割を果たす。パルスレーザ28は、図2Aに4個の星印36で示した点においてMPIにより分子をイオン化する。この例におけるレーザパルスは非常に短く5nsである。それによって光電子が生じ、レーザの焦点からリフレクタ電極12へ加速される。光電子が2keVより大きい運動エネルギーを受け取ると、光電子はディテクタ18に達する。そうでない場合には、光電子は減速、停止し逆方向に進み、最終的に電極12、14または16または真空チャンバ20の壁に衝突する。光電子のディテクタ18への到達はほとんど瞬間的なものであり、質量分析計10に対して内部時計として作用する。
【0019】
陽イオンは電子発生電極16(−4000voltsの電位)に向かって加速され、イオンのいずれかがこの電極16のメッシュまたは格子に衝突すると、第2発生により電子が生じる。これらの第2発生電子は、質量分析計10におけるイオン検出の基礎を形成する。この例においては、約15%のイオンが電極16のメッシュまたは格子のワイヤに衝突する。イオン衝突の運動エネルギーは電極16の金属の仕事関数を超え、1個またはそれ以上の第2電子が放出される。これらの電子はリフレクタ電極12のメッシュまたは格子(0ボルトであり、即ち電子に関して正である)に向かいこれらを通過して加速され、チャンネルトロンディテクタ18(図2Cの番号38を参照)により検出される。電子の加速によりそれらの運動エネルギーが増加し、それによって質量分析計10の感度が向上される。
【0020】
電極16のメッシュまたは格子(以後、メッシュまたは格子という意味で「格子」のみを使用する)を通過して進行する陽イオンは電極16と電極14間の増加する陽電位により減速され、電極16に向かって反転される(図2Aの番号40を参照)。再度約15%のイオンが電極16の格子のワイヤに衝突すると、さらに電子が発生する。これらのさらなる第2電子はほとんどリフレクタ電極14に向かって加速され(図2Cの番号42を参照)、したがって検出されない。しかしながら、感度を向上させるためにリフレクタ電極14の背後に第2ディテクタを加え得ることが考慮される。
【0021】
電極16の格子に侵入したイオンは、電極12と電極16との間の増加する陽電界(図2Aの番号44参照)により再度反転され、このとき他の約15%のイオンは電極16の格子に衝突し、チャンネルトロンディテクタ18においてもう1つの検出可能な電子ピーク(図2Cの番号46を参照)を生じる。イオンの振動と電極16からの電子の発生は、イオンが質量分析計10に残存する間じゅう継続する。イオンは、電極12と16および電極16と14との中間点の間において、それらの質量に応じた周波数で振動する。すべての質量は、同一点、この実施形態においては電極12と16および電極16と14との中間点において方向転換することが理解される。
【0022】
図3は、p−ジフルオロベンゼン(pDFB、 質量=114amu)の振動マススペクトルを示す。第1ピークは、t=0で起こる光電子ピークである。それ以後のピークは、すべて等間隔で起こり、すべて図2AにおいてpDFBが左から右へ中央の電子発生電極とぶつかることに対応している。図4は、2つの異なる種即ちpDFBとフルオロベンゼン(FB、 質量=96amu)とを含む試料の振動マススペクトルを示す。振動イオン信号は、明確に見ることができる。また、2つの異なる種の質量が質量分析計10を通って振動し続けるにつれて、それらが異なる振動周波数を有するとした場合に予期される通り、質量間の分離が増加することも観察される。この図のスペクトルの第1ピークはFBの9番目の振動である。
【0023】
図5のスペクトルは、3種、すなわちFB、pDFBおよびブロモフルオロベンゼン(BFB)の混合物のスペクトルを示す。臭素原子は、2つの自然に生じるアイソトープ、m=79およびm=81をほとんど同量有している。2つの対応BFB質量174および175.9amuもまた明確に分解したことが理解される。これはイオンの第7経路のみを示し、わかり易くするためにその前後の経路は省略されている。しかしながら、このパターン全体は、全スペクトルにおいて振動していることを理解すべきである。より高い経路において且つさらに注意深いレーザフォーカシングによって、すべての大ピークの近くに自然に生じるD−アイソトープ種を観察することができる(それは、全体として陽子化された分子から1amuだけ離れている)。
【0024】
質量分析計10における所定数の振動の後、異なる質量の種は、2分の1振動だけ位相が異なる。このとき、質量(m1)と質量(m2)とは、質量分析計10の反対側の半分に存在する(図6A参照)。次にリフレクタ電極14の格子が迅速に高い陰電位にパルスされると、質量分析計10の半分にある陽イオンm1は図6Cに示すように抽出される。それから他のイオンm2が質量分析計10のそのステージに入る前にリフレクタ電極14の格子がグラウンド電位(すなわち、0volt)に戻ることができると、イオンm2は何事も起こらなかったように振動しつづける。図7は、この動作の例を示している。このグラフの一番上のスペクトル全体は、FBおよびpDFBが中央電極16を9度目に通過したときに始まり、このステージにおいてそれらは約2分の1振動だけ位相が異なる。、
抽出パルスは、FBかpDFBかが電極16と電極14との間に存在するときに生じるように時間設定されている。図7における他の2つのスペクトルは、1つまたは残りの種は、残りに影響を与えることなく除去され得ることを示している。したがって、電圧源手段30を制御するコンピュータ34を用いて、高電圧パルス列をリフレクタ電極14の格子に送り、化学物質の混合「スープ」からたいていの種を除去することができる。これによってマススペクトルが単純化でき、さらに研究するために関心のある種を選択できる。
【0025】
出願人は、さらに、質量分析計10における電界の広汎な三次元理論的モデリングを実施し、これらの電界を通過してイオン軌道を走行させた。出願人は、このモデリングを通じて、イオンが上記のように行動することを確認した。
本技術の熟練者は、本発明が上記の詳細な説明以外の変形を含むことを理解するであろう。たとえば、チャンネルトロンディテクタ18の代わりに、それよりも高感度で小型のマルチチャネルプレート(MCP)を用いてもよい。このようなMCPを用いることによって質量分析計10の全体的デザインをさらに小さくすることができ、このことは質量分析計1のデザインにおける大きな利点である。さらに、上記のようなレーザによるイオン化28の代わりに、直接のワンフォトン真空紫外光(VUV)イオン化を実施してもよい。VUV光は、高い効率でほとんどいずれの分子をもイオン化すると理解されている。上記のパルスノズル22は、連続源や電気スプレイ源のような多数の射出装置の1つにすぎず、連続源や電気スプレイ源を本発明に用いてもよい。また、リフレクタ電極12、14および/または電子発生電極16の格子は、上記とは異なる透過率を有してもよいことを理解すべきである。たとえば95%の処理量は、2度目の電子発生を減少させそれによってイオンの通過時の信号を減少させるが、さらに多くのイオンの通過を生じ、それによってより良好なイオン分解能が実現できる。本発明のこのような変形屋変更および他の変形や変更はすべて、本発明の特許請求項の範囲内で理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1実施形態による質量分析計の概略線図である。
【図2A】図1の質量分析計におけるイオン軌道の概略図である。
【図2B】図2Aのイオン軌道のグラフである。
【図2C】図1の質量分析計における電子軌道の概略図である。
【図2D】図2Cのイオン軌道のグラフである。
【図3】図1の質量分析計のp−ジフルオロベンゼン(pDFB)のマススペクトルである。
【図4】図1の質量分析計のpDFBとフルオロベンゼン(FB)とのマススペクトルである。
【図5】図1の質量分析計のpDFBとFBとブロモフロオロベンゼン(BFB)とのマススペクトルである。
【図6】図6A〜6Fは、図2A〜2Dと同様なイオン軌道および電子軌道の概略図およびグラフであるが、分析計から選択したイオンを抽出するための電子のパルシングを図示している。
【図7】図6のように波動状態にある質量分析計のpDFBとFBとのマススペクトルである。
【0001】
本発明は、質量分析計と質量分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法は、比較的単純な分析コンセプトであり、この方法では、試料の分子をイオン化した後、質量分析計においてこれらのイオンをほぼそれらの質量に応じて電荷比に分離させて、検出する。磁界型、電界・磁界結合型、四極型、イオンサイクロトロン共鳴型、4極イオン蓄積トラップ型および飛行時間型質量分析計など、多くのタイプの質量分析計が利用できる。これらのうち、飛行時間型質量分析計(TOFMS)は、高感度を有し且つ広汎な(ほぼ無限の)質量範囲の測定が可能である。したがってこの質量分析計は、バイオおよび合成ポリマの質量分析に理想的である。あらゆる方法でのイオン化から完全なマススペクトルが得られるという点でもまた、TOFNSは他の質量分析方法よりも有利である。しかしながら、異なる質量のイオンの分離に必要な無電界ドリフト域が長い(約0.5〜1mの長さ)ため、TOFMS装置は大型で高真空状態(10-6Torr)を必要とする。ドリフト域を通ってイオンを後方へ反射するために、ドリフト域の端部にリフレクトロン(イオンミラー)が設けられていて、これによって質量分解能を向上させることができる。しかしながら、TOFMS装置が大型で極めて高度の真空装置であるという問題は残っている。
【0003】
すぐれた分解能を有するもう1つの高感度質量分析計は、たとえばフーリエ変換質量分析計(FTMS)のようなイオンサイクロトロン(ICR)現象を用いた質量分析計である。FTMSにおいて、イオンは、長時間にわたって限定された軌道のイオントラップ内を循環させられる。ac入力信号が印加され、それによって、イオン軌道がイオンの質量/電荷比に応じて変更される。イオンは、それらが電極を通過するときの「イメージ電流」の発生により検出される。発生した時間分域信号は、周波数分域信号に、次いで対応するマススペクトルにフーリエ変換される。しかしながら、FTMS装置は、高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の背景に関するこれらの議論は、本発明の文脈を説明するためのものである。ここに述べた事柄が請求項の優先権日におけるオーストラリアの当該技術における共通の一般的知識であると承認されていると、受け取るべきでない。
本発明の目的は、高感度と高分解能を有し広い質量範囲の測定が可能であり、且つTOFMとFTMSとの上記欠点を低減できる質量分析計および質量分析法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の局面によれば、本発明は、
分子のイオンを発生させるイオン化手段と、
前記イオンに作用して前記イオンを前後に振動させ、イオンの振動周波数をその質量に依存させる手段と、
振動イオンのいくつかが、当該電子発生手段にイオンの振動周波数により決定される周波数で電子を発生させるように、振動イオンに関連して配置された電子発生手段と、
その周波数で振動しているイオンの質量を計算するために電子とその発生周波数とを検出するディテクタとを含む、
分子の質量を測定するための質量分析計を提供する。
【0006】
第2の局面によれば、本発明はまた、
(i) 試料の分子をイオン化してそのイオンを発生させる段階と、
(ii) 前記イオンに作用して前記イオンを前後に振動させ、イオンの振動周波数をその質量に依存させる段階と、
(iii)振動イオンのいくつかを電子発生手段に作用させて、イオンの振動周波数により決定される周波数で電子を発生させる段階と、
(iv)発生した電子とその発生周波数とを検出する段階と、
(v)(iv)段階の周波数決定からその周波数で振動しているイオンの質量を計算する段階とを含む、
質量分析法を提供する。
【0007】
本発明は、イオンの振動周波数がイオンの質量(実際には質量/電荷比)に依存するという事実と、FTMSの測定法よりも単純な、異なる質量のイオンの振動周波数を測定するメカニズムの発見とによるものである。この「メカニズム」は、特定の質量/電荷比を有する振動イオンが固定位置(この位置は電子発生手段により決定される)を通過する毎に電子を発生し、時間に関する表現としての信号(電子「爆発」)を得ることを含む。この表現における各電子発生からの信号の周波数分布によって、異なる質量を有するイオンの同定が可能になる。
【0008】
電子発生手段は、振動イオンが電子発生手段と衝突するときに電子を発生するように構成されていることが好ましい。したがって、この手段は複数個の開口部を有する電極であって、いくつかの振動イオンはこれらの開口部を通過することが可能であり、他の振動イオンはこの電極に衝突するようになっていてもよい。電子発生手段は、比較的細かい金属メッシュまたは格子であることが好ましい。1実施形態において、金属メッシュまたは格子は、振動イオンの約15%が金属メッシュまたは格子に衝突して電子を発生するように構成されている。
【0009】
上記のような実施形態において、検出「メカニズム」は、イオンが電子発生電極を通過して振動する毎にいくつかのイオンが破壊されることを含んでいることは理解されるであろう。これはFTMS(軌道を移動するイオンの検出によってイオンの破壊は起こらない)の場合ほど理想的ではないが、イオンの検出によってすべてのイオンが破壊されるTOFMSの場合よりも良好である。勿論、電子発生電極のメッシュまたは格子は、必要に応じて選択された透過率を有してもよく、たとえば、振動イオンに対する高い透過率は、イオンが通過する毎に発生したイオン(したがって検出された信号)を減少させるが、測定すべきイオンを非常に多く通過させ、その結果より良好な質量分解能が得られる。
【0010】
本発明の利点の1つは、イオン発生場所に極めて近いところでイオンが振動させられ、且つ電子発生手段は必然的に振動イオンの近くに位置し、したがって質量分析計の主要部品をコンパクトに配置することが可能で、極めてコンパクトな質量分析計装置を開発できる。さらに、本発明は10-5Torrまたはそれ以下の真空を必要とし、この数字は、従来のTOFMSが耐えられる最高圧よりも約10大きい係数である。したがって、本発明による質量分析計に必要な真空システムは、TOFMSに必要な真空システムよりも真空度が低い。したがって、本発明はTOFMSの問題点を減らすことができる。
【0011】
好ましくは、イオンに作用してイオンを前後に振動させる手段は、イオンを反射してそのように振動させる電界を提供するための電極(以下リフレクタ電極と呼ぶ)である。好ましくはイオンを反射するこれらの電極は1対のほぼ並行に離間した電極であって、電子を発生するメッシュまたは格子電極がこの1対のリフレクタ電極の間に配置されている。好ましくは、電子発生電極が前記1対のリフレクタ電極の中間においてそれらとほぼ並行に配置されている。
【0012】
好ましくは、リフレクタ電極の一方は、かなりの数の発生電子がその電極を通過できるように複数個の開口部を有しており、この電極を通過した電子を検出できるようにディテクタが配置されている。好ましくは、このリフレクタ電極は比較的細かい金属メッシュまたは格子である。
直前のパラグラフに記載した本発明の局面の他の実施形態において、リフレクタ電極の他方は、振動イオンのいくつかが通過できる複数個の開口部を有しているのが好ましく、質量分析計はこの他方のリフレクタ電極の電位を低下させる電子手段を含んでおり、異なる質量の振動イオンから振動周波数の違いにより分離された、選択された質量の振動イオンが電位低下したこの電極を介して抽出される。好ましくは、この電子手段は、この他方のリフレクタ電極に比較的高い陰電圧パルスを印加するように作用する。好ましくは、この他方のリフレクタ電極もまた比較的細かい金属メッシュまたは格子である。
【0013】
作動時には、リフレクタ電極と電子発生電極とは別個にある電位に荷電され、その結果、電子発生電極はリフレクタ電極よりも低い(より陰性の)電位を有する。1例において、リフレクタ電極は約0ボルトであり、電子発生電極はたとえば−4000ボルトのような比較的高い陰電圧に荷電される。この電圧状態は、発生電子が前記一方の電極のメッシュまたは格子を通過してディテクタに入るのを加速する効果を有する。リフレクタ電極の一方の電位を低下させてイオンを抽出する電子手段は、電極(前記他方のリフレクタ電極)をパルスさせて比較的短期間に比較的高い陰電位にする。1実施形態において、この陰電位は約―4000ボルトである。
【0014】
好ましくは、ディテクタはチャンネルトロンディテクタである。
好ましくは、質量分析計は、イオン化手段によりイオン化するために分子を質量分析計に導入するための、ノズルタイプ試料インジェクタまたはパルスノズルタイプ試料インジェクタの形状の手段を含む。好ましくは、そのようなインジェクタは、1対のリフレクタ電極の一方と電子発生電極との間に分子を射出するように設計されている。
【0015】
好ましくは、イオン化手段は、マルチフォトンイオン化(MPI)により分子をイオン化するパルスレーザである。
本発明をさらによく理解できるようにし且つ本発明の実施方法を示すために、単に非限定的な例を介し添付図面を参照して好ましい実施形態を次に述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態による質量分析計10(図1参照)は、1対のほぼ並行に離間したリフレクタ電極12、14と、前記リフレクタ電極12、14の中間にリフレクタ電極12、14と平行に配置された電子発生手段である電子発生電極16とを含む。チャンネルトロンイオンディテクタ18であるディテクタが、電極12の背後に配置されている。3個の電極12、14、16とディテクタ18とは真空チャンバ20内に配置されている。質量分析計10はまた、パルス弁またはパルスノズルの形状の試料インジェクタ22を含んでいる。熟練者には知られているように、試料源24から試料分子が試料インジェクタ22に供給される。試料分子の経路は、図1において矢印26により示されている。質量分析計10はさらに、パルスレーザ28の形状の分子イオン化手段を含んでいる。このパルスレーザ28は、パルス試料インジェクタ22により分子がリフレクタ電極12と電子発生電極16との間に導入されるとき、これらの分子をイオン化する。パルスレーザ28は、図1の星印で表される点において分子のビームと交差する強力な収束レーザビームを提供し、マルチフォトンイオン化(MPI)により分子をイオン化する。
【0017】
電極12、14は、イオンに作用してそれらのイオンを前後に振動させる手段を構成している。これらの電極12、14と電子発生電極16とは、イオンおよび電子が透過または通過できるサイズの細かいメッシュまたは格子構造の金属ディスクである。典型的には、イオンおよび電子は約85%の効率でメッシュまたは格子状の電極12、14、16を通過する。質量分析計10は電圧源手段30を含んでいる。この電圧源手段30により電極12、14、16は独立してたとえば高い陽または陰電圧のような所定の電位になるように荷電され、そのようにして形成された電界の影響によりイオンはリフレクタ電極12、14の間で振動する。すなわち、リフレクタ電極12、14は、イオンを引き付ける電極16の電位に助けられて、イオンを電極12、14間で前後に反射させる電界を提供する。
【0018】
質量分析計10の他の部品は、ディテクタ18に連結された電子信号増幅・デジタル化手段32と、質量分析計10の作動を制御および同期し、且つ検出された信号を処理し適切な質量分析結果を出力するためのコンピュータ34とである。
質量分析計10の作動は、図2A〜2Dに示されている。図2Aは陽イオンの曲線を示し、図2Cは電子の曲線を示している。図2Bおよび図2Dのプロットはそれぞれイオンまたは電子が「ダウンヒル」走行する(すなわち陽イオンは陰電位に向かって走行し、電子はさらに小さい陰電位に向かって走行する)ことを示すために描いた1次元電位を示している。チャンネルトロンディテクタ18に衝突した陽イオンまたは電子はいずれも増幅された電流信号を発し、この信号は電子手段32とコンピュータ34とにより処理される。試料インジェクタ22は、ガス相の揮発成分をリフレクタ電極12と電子発生電極16との間の領域に導入する役割を果たす。パルスレーザ28は、図2Aに4個の星印36で示した点においてMPIにより分子をイオン化する。この例におけるレーザパルスは非常に短く5nsである。それによって光電子が生じ、レーザの焦点からリフレクタ電極12へ加速される。光電子が2keVより大きい運動エネルギーを受け取ると、光電子はディテクタ18に達する。そうでない場合には、光電子は減速、停止し逆方向に進み、最終的に電極12、14または16または真空チャンバ20の壁に衝突する。光電子のディテクタ18への到達はほとんど瞬間的なものであり、質量分析計10に対して内部時計として作用する。
【0019】
陽イオンは電子発生電極16(−4000voltsの電位)に向かって加速され、イオンのいずれかがこの電極16のメッシュまたは格子に衝突すると、第2発生により電子が生じる。これらの第2発生電子は、質量分析計10におけるイオン検出の基礎を形成する。この例においては、約15%のイオンが電極16のメッシュまたは格子のワイヤに衝突する。イオン衝突の運動エネルギーは電極16の金属の仕事関数を超え、1個またはそれ以上の第2電子が放出される。これらの電子はリフレクタ電極12のメッシュまたは格子(0ボルトであり、即ち電子に関して正である)に向かいこれらを通過して加速され、チャンネルトロンディテクタ18(図2Cの番号38を参照)により検出される。電子の加速によりそれらの運動エネルギーが増加し、それによって質量分析計10の感度が向上される。
【0020】
電極16のメッシュまたは格子(以後、メッシュまたは格子という意味で「格子」のみを使用する)を通過して進行する陽イオンは電極16と電極14間の増加する陽電位により減速され、電極16に向かって反転される(図2Aの番号40を参照)。再度約15%のイオンが電極16の格子のワイヤに衝突すると、さらに電子が発生する。これらのさらなる第2電子はほとんどリフレクタ電極14に向かって加速され(図2Cの番号42を参照)、したがって検出されない。しかしながら、感度を向上させるためにリフレクタ電極14の背後に第2ディテクタを加え得ることが考慮される。
【0021】
電極16の格子に侵入したイオンは、電極12と電極16との間の増加する陽電界(図2Aの番号44参照)により再度反転され、このとき他の約15%のイオンは電極16の格子に衝突し、チャンネルトロンディテクタ18においてもう1つの検出可能な電子ピーク(図2Cの番号46を参照)を生じる。イオンの振動と電極16からの電子の発生は、イオンが質量分析計10に残存する間じゅう継続する。イオンは、電極12と16および電極16と14との中間点の間において、それらの質量に応じた周波数で振動する。すべての質量は、同一点、この実施形態においては電極12と16および電極16と14との中間点において方向転換することが理解される。
【0022】
図3は、p−ジフルオロベンゼン(pDFB、 質量=114amu)の振動マススペクトルを示す。第1ピークは、t=0で起こる光電子ピークである。それ以後のピークは、すべて等間隔で起こり、すべて図2AにおいてpDFBが左から右へ中央の電子発生電極とぶつかることに対応している。図4は、2つの異なる種即ちpDFBとフルオロベンゼン(FB、 質量=96amu)とを含む試料の振動マススペクトルを示す。振動イオン信号は、明確に見ることができる。また、2つの異なる種の質量が質量分析計10を通って振動し続けるにつれて、それらが異なる振動周波数を有するとした場合に予期される通り、質量間の分離が増加することも観察される。この図のスペクトルの第1ピークはFBの9番目の振動である。
【0023】
図5のスペクトルは、3種、すなわちFB、pDFBおよびブロモフルオロベンゼン(BFB)の混合物のスペクトルを示す。臭素原子は、2つの自然に生じるアイソトープ、m=79およびm=81をほとんど同量有している。2つの対応BFB質量174および175.9amuもまた明確に分解したことが理解される。これはイオンの第7経路のみを示し、わかり易くするためにその前後の経路は省略されている。しかしながら、このパターン全体は、全スペクトルにおいて振動していることを理解すべきである。より高い経路において且つさらに注意深いレーザフォーカシングによって、すべての大ピークの近くに自然に生じるD−アイソトープ種を観察することができる(それは、全体として陽子化された分子から1amuだけ離れている)。
【0024】
質量分析計10における所定数の振動の後、異なる質量の種は、2分の1振動だけ位相が異なる。このとき、質量(m1)と質量(m2)とは、質量分析計10の反対側の半分に存在する(図6A参照)。次にリフレクタ電極14の格子が迅速に高い陰電位にパルスされると、質量分析計10の半分にある陽イオンm1は図6Cに示すように抽出される。それから他のイオンm2が質量分析計10のそのステージに入る前にリフレクタ電極14の格子がグラウンド電位(すなわち、0volt)に戻ることができると、イオンm2は何事も起こらなかったように振動しつづける。図7は、この動作の例を示している。このグラフの一番上のスペクトル全体は、FBおよびpDFBが中央電極16を9度目に通過したときに始まり、このステージにおいてそれらは約2分の1振動だけ位相が異なる。、
抽出パルスは、FBかpDFBかが電極16と電極14との間に存在するときに生じるように時間設定されている。図7における他の2つのスペクトルは、1つまたは残りの種は、残りに影響を与えることなく除去され得ることを示している。したがって、電圧源手段30を制御するコンピュータ34を用いて、高電圧パルス列をリフレクタ電極14の格子に送り、化学物質の混合「スープ」からたいていの種を除去することができる。これによってマススペクトルが単純化でき、さらに研究するために関心のある種を選択できる。
【0025】
出願人は、さらに、質量分析計10における電界の広汎な三次元理論的モデリングを実施し、これらの電界を通過してイオン軌道を走行させた。出願人は、このモデリングを通じて、イオンが上記のように行動することを確認した。
本技術の熟練者は、本発明が上記の詳細な説明以外の変形を含むことを理解するであろう。たとえば、チャンネルトロンディテクタ18の代わりに、それよりも高感度で小型のマルチチャネルプレート(MCP)を用いてもよい。このようなMCPを用いることによって質量分析計10の全体的デザインをさらに小さくすることができ、このことは質量分析計1のデザインにおける大きな利点である。さらに、上記のようなレーザによるイオン化28の代わりに、直接のワンフォトン真空紫外光(VUV)イオン化を実施してもよい。VUV光は、高い効率でほとんどいずれの分子をもイオン化すると理解されている。上記のパルスノズル22は、連続源や電気スプレイ源のような多数の射出装置の1つにすぎず、連続源や電気スプレイ源を本発明に用いてもよい。また、リフレクタ電極12、14および/または電子発生電極16の格子は、上記とは異なる透過率を有してもよいことを理解すべきである。たとえば95%の処理量は、2度目の電子発生を減少させそれによってイオンの通過時の信号を減少させるが、さらに多くのイオンの通過を生じ、それによってより良好なイオン分解能が実現できる。本発明のこのような変形屋変更および他の変形や変更はすべて、本発明の特許請求項の範囲内で理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1実施形態による質量分析計の概略線図である。
【図2A】図1の質量分析計におけるイオン軌道の概略図である。
【図2B】図2Aのイオン軌道のグラフである。
【図2C】図1の質量分析計における電子軌道の概略図である。
【図2D】図2Cのイオン軌道のグラフである。
【図3】図1の質量分析計のp−ジフルオロベンゼン(pDFB)のマススペクトルである。
【図4】図1の質量分析計のpDFBとフルオロベンゼン(FB)とのマススペクトルである。
【図5】図1の質量分析計のpDFBとFBとブロモフロオロベンゼン(BFB)とのマススペクトルである。
【図6】図6A〜6Fは、図2A〜2Dと同様なイオン軌道および電子軌道の概略図およびグラフであるが、分析計から選択したイオンを抽出するための電子のパルシングを図示している。
【図7】図6のように波動状態にある質量分析計のpDFBとFBとのマススペクトルである。
Claims (22)
- 分子のイオンを発生させるイオン化手段と、
前記イオンに作用して前記イオンを前後に振動させ、イオンの振動周波数をその質量に依存させる手段と、
振動イオンのいくつかが、当該電子発生手段にイオンの振動周波数により決定される周波数で電子を発生させるように、振動イオンに関連して配置された電子発生手段と、
その周波数で振動しているイオンの質量を計算できる、電子とその発生周波数とを検出するためのディテクタとを含む、
分子の質量を測定するための質量分析計。 - 前記電子発生手段は、振動イオンが当該電子発生装置と衝突したときに電子を発生する、請求項1に記載の質量分析計。
- 前記電子発生手段は複数個の開口部を有する電極であって、いくつかの振動イオンはこれらの開口部を通過することが可能であり、他の振動イオンはこの電極に衝突する、請求項2に記載の質量分析計。
- 前記電極は、比較的細かい金属メッシュまたは格子である、請求項3に記載の質量分析計。
- イオンに作用してイオンを前後に振動させる前記手段は、イオンを反射してそれらを前後に振動させるための電界を提供する電極である、請求項1に記載の質量分析計。
- 前記電極は1対のほぼ並行に離間した電極であり、前記電子発生手段は前記1対の電極の間に配置された別の電極であり、前記別の電極は複数個の開口部を有しており、振動イオンのいくつかは前記複数個の開口部を通過でき、他の振動イオンは前記他の電極と衝突してこの電極が電子を発生する、請求項5に記載の質量分析計。
- 前記別の電極は、前記1対の電極のほぼ中間に前記1対の電極とほぼ並行に配置されている、請求項6に記載の質量分析計。
- 前記1対のほぼ並行に離間した電極の少なくとも一方は、振動イオンのいくつかが通過できる複数個の開口部を有しており、当該質量分析計は少なくとも1個の電極の電位を低下させる電子手段を含んでおり、異なる質量の振動イオンから振動周波数の違いにより分離された、選択された質量の振動イオンが前記電位低下された少なくとも1個の電極を介して抽出される、請求項6に記載の質量分析計。
- 前記電子手段は、前記少なくとも1個の電極に比較的高い陰電圧パルスを印加するように作用する、請求項8に記載の質量分析計。
- 前記少なくとも1個の電極が比較的細かい金属メッシュまたは格子である、請求項8または9に記載の質量分析計。
- 前記1対のほぼ並行に離間した電極の少なくとも1個は、かなりの数の発生電子がその電極を通過できるように複数個の開口部を有しており、前記少なくとも1個の電極を通過した電子を検出できるようにディテクタが配置されている、請求項6に記載の質量分析計。
- 前記少なくとも1個の電極は比較的細かい金属メッシュまたは格子である、請求項11に記載の質量分析計。
- 前記ディテクタがチャンネルトロンディテクタである、請求項1から12のいずれかに記載の質量分析計。
- イオン化手段によりイオン化するために分子を質量分析計に導入する手段を含む、請求項1から13のいずれかに記載の質量分析計。
- 前記分子を質量分析計に導入する手段がノズルタイプ試料インジェクタである、請求項14に記載の質量分析計。
- 前記分子を質量分析計に導入する手段がパルスノズルタイプ試料インジェクタである、請求項15に記載の質量分析計。
- 前記イオン化手段がパルスレーザである、請求項14〜16のいずれかに記載の質量分析計。
- (i) 試料の分子をイオン化してそのイオンを発生させる段階と、
(ii) 前記イオンに作用して前記イオンを前後に振動させ、イオンの振動周波数をその質量に依存させる段階と、
(iii)振動イオンのいくつかを電子発生手段に作用させて、イオンの振動周波数により決定される周波数で電子を発生させる段階と、
(iv)発生した電子とその発生周波数とを検出する段階と、
(v)(iv)段階の周波数決定からその周波数で振動しているイオンの質量を計算する段階とを含む、
質量分析法。 - (ii)の段階が、イオンを反射して前後に振動させるための電界を形成することを含む、請求項18に記載の質量分析法。
- (iii)の段階が、振動イオンのいくつかを電子発生手段と衝突させて電子発生手段に電子を発生させることを含む、請求項18または19に記載の質量分析法。
- 異なる質量の振動イオンから振動周波数の違いにより分離された、選択された質量の振動イオンを抽出する段階をさらに含む、請求項18から20のいずれかに記載の質量分析法。
- 前記抽出段階は、選択された質量のイオンが反射されずに電界を通過するように電界を一時的に変更することを含む、請求項19に従属する請求項21に記載の質量分析法。
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