JP2004529386A - 減衰位相シフトフォトマスクブランクを製造するためのイオンビーム蒸着法 - Google Patents

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Abstract

一般式MzSiOxNyまたはMzAlOxNyの材料の少なくとも1つの層を含む、<400nmの選択されたリソグラフィ波長で180°の位相シフトを生じることができると共に調整可能な光透過性を提供することができる減衰位相シフトフォトマスクブランク、を製造するためのイオンビーム蒸着法が記載される。

Description

【技術分野】
【0001】
この発明は、イオンビーム蒸着技術を用いて、減衰(埋め込み)タイプとして本技術分野に周知の、フォトリソグラフィにおける位相シフトフォトマスクブランクの製造に関する。より具体的には、この発明は、入射光に対して180°で透過された光の位相を減衰および変化させると共に調整可能な光透過性を提供する、短い波長(すなわち、<400ナノメートル)で用いられるフォトマスクブランクに関する。更に、この発明は、ブランクの上に一般式MxSiOyNz又はMxAlOyNzの単一または多層被覆を有するフォトマスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロリソグラフィは、通常、フォトマスク通して、顕微鏡的回路パターンまたは画像をシリコンウエハ上に転写する方法である。コンピュータのマイクロプロセッサおよび記憶装置の集積回路の製造において、電子回路の画像は、感光性層またはレジスト上にマスクまたはステンシルを通して、通常、電磁波供給源によって映写され、シリコンウエハに適用される。一般に、マスクは、透明な石英基板上にこれらの回路の形(features)でパターン化された「クロム」の層である。しばしば「バイナリ」マスクと称される、「クロム」マスクは、「クロム」が除去されたパターンを通して画像形成放射線を透過する。前記放射線は、「クロム」層が存在している領域で阻止される。
【0003】
電子機器業界は、100nmより小さい臨界寸法まで高密度集積回路を製造するために光学リソグラフィを拡張しようと目指している。しかしながら、形のサイズが小さくなるとき、光の特定の波長でウエハ上に形の最小サイズを画像形成するための解像度が光の回折によって制限される。このため、短い波長の光、すなわち、<400nmが、より微細な形を画像形成するために必要とされる。光学リソグラフィの次世代に目標を定めた波長には、248nm(KrFレーザー波長)、193nm(ArFレーザー波長)、および157nm(Fレーザー波長)以下、が挙げられる。しかしながら、入射光の波長が小さくなるとき、「焦点深度」(DoF)またはプロセスの許容度もまた、次の式:
DoF=k(λ/NA
によって減少し、
式中、kが、所与のリソグラフィのプロセスの定数であり、λが画像形成光の波長であり、NA=sinθが、映写レンズの開口数である。より大きいDoFは、ウエハ平面度およびフォトレジスト厚さの均一性の逸脱に対するプロセス許容度がより大きいことを意味する。
【0004】
解像度およびDoFは、破壊的な光学干渉によって、小さい回路の形のパターン化の対比を増強する、位相シフトフォトマスクで所定の波長について改善されてもよい。位相シフトマスクは、多くの場合DOFを増加させることができる。このため、集積回路の形の最小サイズが縮小し続けるとき、「位相シフトマスク」が、「バイナリ」マスクによる従来のフォトリソグラフィの適用を補い、且つ拡張するのにますます重要になる。例えば、減衰(埋め込み)位相シフトマスクにおいて、電磁放射線は、完全に阻止されるのではなく、同時に180°位相シフトされる間に、(減衰)非パターン化領域を通して洩れる。石英マスク上の「クロム」と比較して、位相シフトマスクは、微細な形の印刷解像度および印刷方法の焦点深度を改善する。
【0005】
光を減衰させてその位相を変化させる位相シフトフォトマスクおよびフォトマスクブランクの概念は、(特許文献1)(「Pi−移相減衰器を有するリソグラフィマスク」(“Lithography Mask with a Pi−Phase Shifting Attenuator”))においてH・I・スミスによって明らかにされた。周知の減衰埋め込み位相シフトフォトマスクブランクの一般的なカテゴリーには、(1)Cr,Cr−酸化物、Cr−炭化物、Cr−窒化物、Cr−フッ化物またはそれらの組合せを含有するCrベースのフォトマスクブランク、および(2)SiOまたはSiをMoなどの不透明な金属でドープして酸化ケイ素モリブデン、窒化ケイ素モリブデン、またはオキシ窒化物を形成する、SiOまたはSiベースのフォトマスクブランク、がある。
【0006】
薄膜蒸着の物理的な方法が、フォトマスクブランクを製造するために好ましい。通常、真空室で行われるこれらの方法には、グロー放電スパッタ蒸着、シリンダーマグネトロンスパッタリング、平板型マグネトロンスパッタリング、およびイオンビーム蒸着法などがある。各方法の詳細な説明を、(非特許文献1)に見いだすことができる)。薄膜マスクの製造方法は、ほとんど例外なく平板型マグネトロンスパッタリングである。
【0007】
平板型マグネトロンスパッタリング構成は2つの平行なプレート電極からなる。すなわち、一方の電極は、スパッタリングによって蒸着される材料を保持し、陰極と呼ばれるのに対し、第2の電極または陽極は、被覆される基板が配置される場所である。ガス(例えば、Ar)またはガスの混合物(例えば、Ar+O)の存在下で負の陰極と正の陽極との間に印加された、RFまたはDCのどちらかの電位が、そこからイオンが移動して陰極まで加速されるプラズマ放電(正のイオン化ガス種および負に帯電した電子)をつくり、そこにおいて、それらが基板上のターゲット材料をスパッタリングするかまたは蒸着する。陰極の近くに磁界が存在することにより(マグネトロンスパッタリング)、プラズマ密度、従ってスパッタ蒸着の速度を増す。
【0008】
スパッタリングターゲットがケイ素(Si)などの元素である場合、Arなどの不活性ガスでスパッタリングすることにより、基板上にSiの膜を製造する。放電がO、N、またはCOなどの反応性ガスを含有するとき、それらは、ターゲットと結合/または成長膜表面において結合し、薄膜酸化物、窒化物、炭化物、またはそれらの組合せを基板上に形成する。
【0009】
マスクが「バイナリ」である場合も位相シフト性である場合も、マスク膜を含む材料は通常化学的に複合しており、時々、化学的性質は膜厚によって等級付けられ、または層状にされる。単純な「クロム」マスクでさえも、膜の上面において酸化物リッチであり、膜の深部内により窒化物リッチである場合があるクロムオキシ−カルボ−ニトリド(CrOxCyNz)組成物である。上面の化学的性質が反射防止特性を与えるが、他方、化学的等級付け(chemical grading)が、興味深い非等方湿潤腐蝕性質を提供する。
【0010】
イオンビーム蒸着法(IBD)において、プラズマ放電は、別個のチャンバー内に収容され(イオン「ガン」または供給源)、ガンの「出口孔」の一連のグリッドに印加された電位によってイオンが一般に抽出および加速される(グリッドがない他のイオン抽出方法もまた、可能である)。基板に荷電粒子を捕捉および移動させるプラズマが成長膜に近接しないので、IBD方法は、平板型マグネトロンスパッタリングと比較したとき、成長膜の表面により清浄なプロセス(付加された粒子がより少ない)を提供する。更に、IBD方法は、従来のマグネトロンスパッタリングプロセスの少なくとも10倍低い全ガス圧力で操作する(IBDの代表的な圧力は、〜10−4トールである)。これは、化学物質の混入レベルの低減をもたらす。例えば、酸化物含有量の最小または全く無い窒化物膜を、IBDプロセスによって蒸着することができる。更に、IBD方法は、蒸着フラックスおよび反応性ガスイオンフラックス(電流)およびエネルギーを独立に制御する能力を有するが、それらは、平板型マグネトロンスパッタリングにおいて独立に制御可能でない。低エネルギー且つ高フラックスの酸素または窒素イオンで成長膜を衝撃させる単独のイオンガンで酸化物または窒化物または他の化合物を成長させる能力は、IBD方法に固有であり、広いプロセス範囲にわたって膜の化学的性質および他の膜の性質の精密な制御を提供する。更に、複合イオンビーム蒸着法において、ターゲット、基板、およびイオンガンの間の角度を調節して膜の均一性および膜の応力に最適にすることができるのに対して、マグネトロンスパッタリングの幾何学的配置は、平行プレート電極システムに制約される。
【0011】
マグネトロンスパッタリングは、あらゆる種類の被覆を再現可能に蒸着させるために電子機器業界で広く用いられるが、成長膜上に入射するイオンの方向、エネルギー、およびフラックスを調節することができないため、プラズマをスパッタリングするプロセス制御は正確ではない。多層の複雑な化学的性質を有するマスクを製造する新規な別のアプローチである、ここで提案されたイオンビーム蒸着法(IBD)において、これらの蒸着パラメータの独立の制御が可能である。
【0012】
【特許文献1】
米国特許第4,890,309号明細書
【非特許文献1】
ヴォッセン(Vossen)およびカーン(Kern)編、「薄膜プロセス」(“Thin Film Processes”)、アカデミックプレス ニューヨーク、1978年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、400ナノメートルより小さいリソグラフィ波長で180°の位相シフトを生じることができる減衰埋込み位相シフトフォトマスクブランクを作製するためのイオンビーム蒸着法に関し、前記方法が、MSiOまたはMAlOの一般式の(式中、MがIVB族、VB族、VIB族の遷移金属の群、およびそれらの組合せから選択される)化合物の少なくとも1つの層を基板上に、ガス群からのイオンによってMおよびSiまたはMおよびAlのターゲット混合物、合金または化合物からイオンビーム蒸着法によって、蒸着させる工程、を含み、
xが約0.00〜約2.00の範囲であり、
yが約0.00〜約2.00の範囲であり、および
zが約0.00〜約2.00の範囲である。
【0014】
より具体的には、この発明は、400ナノメートルより小さいリソグラフィ波長で180°の位相シフトを生じることができる減衰埋込み位相シフトフォトマスクブランクを作製するための複合イオンビーム蒸着法に関し、前記方法が、MSiOの一般式の(式中、MがIVB族、VB族、VIB族の遷移金属の群、およびそれらの組合せから選択される)化合物の少なくとも1つの層を基板上に、
(a)ガス群からのイオンによってMおよびSiのターゲット混合物、合金または化合物からイオンビーム蒸着法によって、および、
(b)ガス群を含む補助供給源からの二次イオンビームによって前記基板を衝撃させ、補助供給源のガスからの衝撃ガスイオンとターゲットから前記基板上に蒸着された材料との化学結合によって前記層が形成されることによって、
蒸着させる工程、を含み、
xが約0.00〜約2.00の範囲であり、
yが約0.00〜約2.00の範囲であり、および
zが約0.00〜約2.00の範囲である。
【0015】
この発明はまた、400ナノメートルより小さいリソグラフィ波長で180°の位相シフトを生じることができる減衰埋込み位相シフトフォトマスクブランクを作製するための複合イオンビーム蒸着法に関し、前記方法が、MAlOの一般式の(式中、MがIVB族、VB族、VIB族の遷移金属の群、およびそれらの組合せから選択される)化合物の少なくとも1つの層を基板上に、
(a)ガス群からのイオンによってMおよびAlのターゲット混合物、合金または化合物からイオンビーム蒸着法によって、および、
(b)ガス群を含む補助供給源からの二次イオンビームによって前記基板を衝撃させ、補助供給源のガスからの衝撃ガスイオンとターゲットから前記基板上に蒸着された材料との化学結合によって前記層が形成されることによって、
蒸着させる工程、を含み、
xが約0.00〜約2.00の範囲であり、
yが約0.00〜約2.00の範囲であり、および
zが約0.00〜約2.00の範囲である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書中で用いられる特定の用語を以下に定義する。
【0017】
この発明において、用語「フォトマスク」(photomask)または用語「フォトマスクブランク」(photomask blank)は、パターン化および非パターン化フォトマスクブランクの両方を含める最も広い意味で本明細書中で用いられることが理解されねばならない。
【0018】
ビーム蒸着法
単一イオンビーム蒸着法の代表的な構成を図5に示す。この装置は、大気ガスがバキュームポンプによって排気されたチャンバー内にあることが理解される。単一IBD方法において、電圧の印加されたイオンビーム(通常、電子供給源によって中和された)を、蒸着ガン(1)から、ターゲットホルダー(3)によって支持されたターゲット材料(2)に誘導し、衝撃イオンがその特定材料のスパッタリングしきいエネルギー、典型的には〜50eV、よりも高いエネルギー、を有するとき、ターゲット材料(2)がスパッタされる。蒸着ガン(1)からのイオンは通常、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの不活性ガス供給源から得られるが、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せなど反応性ガスもまた用いることができる。これらのイオンが不活性ガス供給源から得られるとき、ターゲット材料(2)をスパッタリングし、次いで基板ホルダー(5)の上の基板(4)上に膜として蒸着させる。これらのイオンが反応性ガス供給源から得られるとき、それらはターゲット材料(2)と結合することができ、この化学結合の生成物は、スパッタされて基板(4)上に膜として蒸着される生成物である。
【0019】
一般に、衝撃イオンは数百eVのエネルギーを有するのがよい。200eV〜10keVの範囲が好ましい。イオンフラックスまたは流れは、実用的な蒸着速度(>0.1nm/分)を維持するために十分に高いのがよい(>1013イオン/cm/s)。典型的には、プロセス圧力は、約10−4トールであり、好ましい範囲は、10−3〜10−5トールである。ターゲット材料は、Si、Ti、Mo、Cr、などの元素であってもよく、またはそれがMoSiなどの多成分であってもよく、またはそれがSiOなどの化合物であってもよい。基板を、厚さ、均一性および最小応力などの膜性質を最適にするターゲットまでの距離および向きで配置することができる。
【0020】
1つの膜性質、例えば、光学透明性を達成するためのプロセス期間または許容度を、下に記載したように、複合イオンビーム蒸着法によって広げることができる。同様に、1つの特定の膜性質を、複合イオンビームプロセスによって性質の他の組とは独立に変化させることができる。
【0021】
複合イオンビーム蒸着法
当該イオンビーム方法は、フォトマスクの製造において、付加された(欠陥)粒子がより少なく、特にリソグラフィ波長<400nmについて、光散乱の低減された、すぐれた不透明度、およびすぐれた平滑度を有するより大きな膜密度の方法を具体化する。複合イオンガンの構成を図解的に図4に示す。このプロセスにおいて、電圧の印加されたイオンビーム(通常、電子供給源によって中和された)を、蒸着ガン(1)からターゲット(2)に誘導し、それが、衝撃イオンがスパッタリングしきいエネルギー、典型的には〜50eV、よりも高いエネルギー、を有するとき、スパッタされる。蒸着ガンからのイオンは通常、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの不活性ガス供給源から得られるが、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せなど反応性ガスもまた用いることができる。これらのイオンが不活性ガス供給源から得られるとき、それらは、ターゲット材料、例えば、ケイ素をスパッタし、それが、基板上に膜として蒸着する。これらのガスイオンが反応性ガス供給源、例えば、酸素から得られるとき、それらはターゲットの表面で化合することができ、そして、この化合の生成物は、スパッタされて基板上に膜として蒸着される生成物である。複合イオンビーム蒸着法において、第2のガンまたは補助供給源(6)からの、電圧の印加されたイオンが基板(4)を衝撃する。一般に、アシストガン(6)からのイオンは、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せなどであるがそれらに制限されない反応性ガスの群から選択され、それらは、ターゲット(2)からスパッタされた材料のフラックスと基材(4)において化合する。このため、補助供給源からの酸素イオンが成長膜を衝撃する間に、蒸着ガンからのArイオンを用いてケイ素ターゲットをスパッタする場合、Siフラックスが、基板において強力な酸素イオンと化合し、酸化ケイ素膜を形成する。
【0022】
一般に、蒸着源からの衝撃イオンは数百eVのエネルギーを有するのがよく、200eV〜10keVの範囲が好ましい。イオンフラックスまたは流れは、実用的な蒸着速度(>0.1nm/分)を維持するために十分に高いのがよい(>1013イオン/cm/s)。典型的には、プロセス圧力は、約10−4トルであり、好ましい範囲は、10−3〜10−5トルである。)この発明の好ましいターゲット材料は、ケイ素またはアルミニウムと周期表のIVB族、VB族、VIB族の金属との混合物、合金、または化合物である。基板を、層厚の均一性、最小応力などの膜の性質を最適にするターゲットまでの距離および向きで配置することができる。補助ガンからのイオンのエネルギーは通常、蒸着ガンより低い。補助ガンは、成長膜表面でスパッタされた原子と反応する低エネルギーイオンの調節可能なフラックスを提供する。「補助」イオンについては、より低いエネルギー、典型的には<500eVが好ましく、ほかの場合ならイオンは膜の望ましくない腐蝕または剥離を起こすことがある。剥離速度(removal rate)の非常に高い極端な場合では、剥離速度が蓄積または成長速度を超えるため、膜の成長はごくわずかである。しかしながら、いくつかの場合、より高い補助エネルギーが、低減された応力など、成長膜に有益な性質を与えることがあるが、これらのより強力なイオンの好ましいフラックスは通常、蒸着原子のフラックスより少ないことが必要とされる。
【0023】
フォトマスクブランクの複合イオンビーム蒸着法において、蒸着方法のガスイオン供給源が好ましくは、He、Ne、Ar、Kr、Xeまたはそれらの組合せなどであるがそれらに制限されない不活性ガスの群から選択され、他方、補助衝撃のためのガスイオン供給源が好ましくは、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せなどであるがそれらに制限されない反応性ガスの群から選択される。しかしながら、特別な場合において、蒸着ガス供給源はまた、特に、ターゲットにおける化合物の形成が前記プロセスのために望ましいとき、特定の比率の反応性ガスを含有してもよい。逆に、補助ガス供給源が特定の比率の不活性ガスからなる特別な場合、特に、成長膜の強力な衝撃が、内部膜応力の低減など、膜性質を改良するために望ましい特別な場合があることがある。
【0024】
低エネルギーであるが、高フラックスの酸素または窒素イオンで成長膜を衝撃させる単独の補助イオンガンで酸化物または窒化物または他の化合物を成長させる能力は、IBD方法に固有であり、広いプロセス範囲にわたって膜の化学的性質および他の膜の性質の精密な制御を提供する。更に、複合イオンビーム蒸着法において、ターゲット、基板、およびイオンガンの間の角度を調節して膜の均一性および膜の応力に最適にすることができるのに対して、マグネトロンスパッタリングの幾何学的配置は、平行プレート電極システムに制約される。
【0025】
複合IBD方法によって、これらの蒸着操作の何れかを組み合わせてより複雑な構造体を作製することができる。例えば、膜が連続的に、最初に補助ガンからの反応性窒素イオンをによって衝撃され、その後に、酸素イオンによって衝撃されるとき、SiOx/SiNy積層体を元素のSiターゲットから蒸着することによって作製することができる。積層体中の層がSiOx/SiNyにおけるように酸化物から窒化物に交互に並ぶ場合、単一Siターゲットによる複合イオンビーム蒸着法は、従来のマグネトロンスパッタリング技術よりも有意の利点を提供する。Si原子が蒸着されるときに複合IBD内の補助供給源をOとNとの間で急速に切り替えることができるのに対して、反応性マグネトロンスパッタリングは、窒化物層をスパッタリングするために窒化物リッチ表面を形成する前に移動させられなくてはならないターゲット表面上の酸化物層を生じる。更に、酸化物層に窒化物を組み合わせることは、石英に対してパターン化フォトマスクの検査のために重要な、より長い波長での光学対比を改善することができる。金属酸化物および窒化物の光学的性質がリソグラフィ波長で等しいことがあり、従って光透過性が同じであるのに対して、金属窒化物がそれらの相応する酸化物より光学的に吸収性であるより長い波長、例えば488nmおよび365nmで扱う現在の検査用具は、従ってそこでより高い光学対比、パターン化フォトマスクの検査および修復の利点を提供する。
【0026】
単一イオン供給源を用いるイオンビーム蒸着法によってSiなどの複合的な化学化合物を有する膜を作製することが可能であるが、前記プロセスは、複合イオンビーム蒸着法についてはより制約が多い。例えば、ファング(Huang)らの「単一イオンビームスパッタ蒸着法によって蒸着された窒化ケイ素薄膜の構造および組成の研究」(Structure and composition studies for silicon nitride thin films deposited by single ion beam sputter deposition)Thin Solid Films 299(1997年)104−109は、ビーム電圧が約800Vの周囲の狭い範囲であるとき、Siの性質を有する膜が形成されるにすぎないことを明らかにした。複合イオンビームスパッタリングするときに、補助供給源からの窒素原子のフラックスを独立に調節して、広範囲のプロセス条件にわたっておよび実用的な蒸着速度で蒸着イオン供給源からの蒸着ターゲット原子のフラックスを整合させることができる。
【0027】
この発明は、MzSiOxNyまたはMzAlOxNyの一般式の(式中、MがIVB族、VB族、およびVIB族の遷移金属の群から選択される)化合物の単一層または多層を蒸着させるための複合イオンビーム蒸着法に関し、xが約0.00〜約2.00の範囲であり、yが約0.00〜約2.00の範囲であり、およびzが約0.00〜約2.00の範囲である。
【0028】
好ましい複合イオンビーム蒸着法において、蒸着ガンからのイオンは、He、Ne、Ar、Kr、Xe、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せからなるガス群から得られる。より好ましい複合イオンビーム蒸着法において、蒸着ガンからのイオンは、He、Ne、Ar、Kr、Xe、O、N、またはそれらの組合せからなるガス群から得られる。更に好ましい複合イオンビーム蒸着法において、蒸着ガンからのイオンは、He、Ne、Ar、Kr、Xe、またはそれらの組合せからなるガス群から得られる。
【0029】
好ましい複合イオンビーム蒸着法において、補助ガンからのイオンは、He、Ne、Ar、Kr、Xe、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せからなるガス群から得られる。より好ましい複合イオンビーム蒸着法において、補助ガンからのイオンは、O、N、CO、F、CH、またはそれらの組合せからなるガス群から得られる。更に好ましい複合イオンビーム蒸着法において、補助ガンからのイオンは、O、N、またはそれらの組合せからなるガス群から得られる。
【0030】
この発明は、400nmより小さい入射波長についてフォトマスクブランクの単一または多層膜の新規な蒸着技術を提供する。基板は、用いられた入射光の波長に対して透明である何れの機械的安定性材料であってもよい。石英および融解シリカ(ガラス)、およびCaFなどの基板が利用度およびコストのために好ましい。
【0031】
光学的性質
光学的性質(屈折率「n」および吸光係数「k」)は、光の反射および透過性のデータと共に、1.5−6.65eVのエネルギー範囲に相応する、186−800nmから3つの入射角で可変角分光楕円偏光法(variable angle spectroscopic ellipsometry)により確認された。光学的性質のスペクトル依存の知識から、180°の位相シフト、光透過率(optical transmissivity)、および反射率に相応する膜厚を計算することができる。概して、O・S・ヘブンズ(O.S.Heavens)著、Optical Properties of Thin Solid Films、ニューヨーク州、ドーバー、55−62ページ、1991年(本願明細書にその内容を引用したものとする)を参照のこと。
【実施例1】
【0032】
実施例
窒化ケイ素チタン膜を、TiSiから市販用具(コモンウェルスサイエンティフィック(Commonwealth Scientific))で複合イオンビーム蒸着法によって作製した。70Vで操作する、第2の補助イオンビーム供給源からのNイオンで成長膜を同時に窒化しながら、TiSiからの蒸着を、1200Vの電圧および25mAのビーム電流で操作する一つのイオンビーム蒸着源によって実施した。Arの20.6sccmを蒸着源内で用い、他方、7sccmのNを補助供給源内で用いた。基板は、Siおよび石英であった。X線光電子分光分析法により確認したとき、90分の蒸着が、Ti(0.77)SiN(1.88)O(0.08)の化学組成を有する厚さ1175Aの膜を生じた。図1は、分光楕円偏光法によって確認した、光学定数のスペクトル依存を示す。
【実施例2】
【0033】
オキシ窒化ケイ素チタン膜を、TiSiターゲットから市販用具(コモンウェルスサイエンティフィック(Commonwealth Scientific))で複合イオンビーム蒸着法によって作製した。70Vで操作する、第2の補助イオンビーム供給源からの10%のO/90%のNガス混合物からのイオンで成長膜を衝撃しながら、TiSiからの蒸着を、1200Vの電圧および25mAのビーム電流で操作する一つのイオンビーム蒸着源によって実施した。Arの16.6sccmを蒸着源内で用い、他方、O/N混合物の流量は補助供給源において2.9sccmであった。基板は、Siおよび石英であった。X線光電子分光分析法により確認したとき、61分の蒸着が、Ti(0.71)SiN(1.3)O(1.2)の化学組成を有する厚さ840Aの膜を生じた。図2は、分光楕円偏光法によって確認した、光学定数のスペクトル依存を示す。
【実施例3】
【0034】
酸化ケイ素チタン膜を、TiSiターゲットから市販用具(コモンウェルスサイエンティフィック(Commonwealth Scientific))で複合イオンビーム蒸着法によって作製した。70Vで操作する、第2の補助イオンビーム供給源からの酸素イオンで成長膜を同時に酸化しながら、TiSiからの蒸着を、1200Vの電圧および25mAのビーム電流で操作する一つのイオンビーム蒸着源によって実施した。Arの16.6sccmを蒸着源内で用い、他方、Oの流量は補助供給源において3sccmであった。基板は、Siおよび石英であった。X線光電子分光分析法により確認したとき、58分の蒸着が、Ti(0.57)SiO(3.1)の化学組成を有する厚さ208Aの膜を生じた。図3は、分光楕円偏光法によって確認した、光学定数のスペクトル依存を示す。
【0035】
これらの3つの実施例は、オキシ窒化ケイ素チタン膜中の酸化物含有量を増大させることにより、屈折率を低減し、吸光係数もまた低減するという、400nmより小さいかまたはエネルギーが3.1eVより大きい場合についての光学的性質の傾向に沿う結果となっている。
【0036】
表1において、実施例1、2、および3に相当する化学的性質および光学定数(n、k)を有する248nm(5eV)での位相シフトマスクの設計のために180°の位相シフトのための厚さおよび光透過性を計算する。これらの設計のために式:
d=λ/2(n−1)
および
T=(1−R)exp(−4πkd/λ)
を用い、
dが蒸着層の厚さであり、Tが入射放射に対しての透過性の%であり、nおよびkが材料の光学定数であり、Rが約10%であると推定された反射係数であり、λが波長であり、248nmであるように選択される。これらのデータから、これらの化学的性質を有する位相シフトマスクが248nm(5eV)について、埋込み位相シフトマスクとしての適用に有用な、1−12%の範囲の光透過性を有するように設計可能であることは明白である。このおよび他の波長での光透過性を、ターゲット中の金属(Ti)含有量を低減させることによって更に増大させることができる。
【0037】
【表1】
Figure 2004529386

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の、複合イオンビーム蒸着法によって作製されたオキシ窒化ケイ素チタン膜の光学定数(n、k)である。
【図2】実施例2の、複合イオンビーム蒸着法によって作製されたオキシ窒化ケイ素チタン膜の光学定数(n、k)である。
【図3】実施例3の、複合イオンビーム蒸着法によって作製されたオキシ窒化ケイ素チタン膜の光学定数(n、k)である。
【図4】複合イオンビーム蒸着法の概略図である。
【図5】単一イオン供給源または「ガン」からの窒素およびアルゴンイオンによってスパッタされるケイ素(Si)ターゲットを用いる、窒化ケイ素の単一イオンビーム蒸着法の図である。

Claims (8)

  1. 400ナノメートルより小さいリソグラフィ波長で180°の位相シフトを生じることができる減衰埋込み位相シフトフォトマスクブランクを作製するための複合イオンビーム蒸着法であって、MzSiOxNyの一般式の(式中、MがIVB族、VB族、VIB族の遷移金属の群、およびそれらの組合せから選択される)化合物の少なくとも1つの層を基板上に、
    (a)ガス群からのイオンによってMおよびSiのターゲット混合物、合金または化合物からイオンビーム蒸着法によって、および、
    (b)ガス群を含む補助供給源からの二次イオンビームによって前記基板を衝撃させ、補助供給源のガスからの衝撃ガスイオンとターゲットから前記基板上に蒸着された材料との化学結合によって前記層が形成されることによって、
    蒸着させる工程、を含み、
    xが約0.00〜約2.00の範囲であり、
    yが約0.00〜約2.00の範囲であり、および
    zが約0.00〜約2.00の範囲である、
    複合イオンビーム蒸着法。
  2. 400ナノメートルより小さいリソグラフィ波長で180°の位相シフトを生じることができる減衰埋込み位相シフトフォトマスクブランクを作製するための複合イオンビーム蒸着法であって、MzAlOxNyの一般式の(式中、MがIVB族、VB族、VIB族の遷移金属の群、およびそれらの組合せから選択される)化合物の少なくとも1つの層を基板上に、
    (a)ガス群からのイオンによってMおよびAlのターゲット混合物、合金または化合物からイオンビーム蒸着法によって、および、
    (b)ガス群を含む補助供給源からの二次イオンビームによって前記基板を衝撃させ、補助供給源のガスからの衝撃ガスイオンとターゲットから前記基板上に蒸着された材料との化学結合によって前記層が形成されることによって、
    蒸着させる工程、を含み、
    xが約0.00〜約2.00の範囲であり、
    yが約0.00〜約2.00の範囲であり、および
    zが約0.00〜約2.00の範囲である、
    複合イオンビーム蒸着法。
  3. 工程(a)の前記ガスが、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、O、CO、NO、HO、NH、CF、CH、C、CH、およびそれらのガスの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 工程(b)の前記ガスが、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、O、CO、NO、HO、NH、CF、CH、C、CH、およびそれらのガスの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 工程(a)の前記ガスが、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、O、CO、NO、HO、NH、CF、CH、C、CH、およびそれらのガスの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  6. 工程(b)の前記ガスが、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N、O、CO、NO、HO、NH、CF、CH、C、CH、およびそれらのガスの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  7. 前記選択されたリソグラフィ波長が、157nm、193nm、248nm、および365nmからなる群から選択される、請求項1に記載されたように作製されたフォトマスクブランク。
  8. 前記選択されたリソグラフィ波長が、157nm、193nm、248nm、および365nmからなる群から選択される、請求項2に記載されたように作製されたフォトマスクブランク。
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