JP2004529322A - がんの診断方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、細胞又は組織検体においてがん細胞の検出を可能とする方法である。本発明における第一段階は、検体中に細胞周期のS期あるいはG2期にあり、“サイクリンE型タンパク質”を含有する細胞が存在するかどうか決定することである。本発明の方法は、検体中の個々の細胞において、“G1期以降発現物質”、すなわちS期及び/又はG2期にのみ存在する物質のレベルの決定と共に、“サイクリンE型タンパク質”レベルの決定をすることに基づいている。“サイクリンE型タンパク質”がS期及び/又はG2期の細胞に存在した場合、その検体はがん細胞を有すると考えられる。S期及び/又はG2期にある細胞において“サイクリンE型タンパク質”を含む細胞の割合が高いことは、腫瘍細胞の悪性度が高いことの指標である。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
【0001】
技術分野
本発明は、組織及び細胞検体においてがん及び前がん病変を診断し、及びがんであるとすでに診断されている場合に予後の判断及び予測情報を得る方法である。
【0002】
がん診断の現状
現在、日常的に行われているがんの診断は、腫瘍や腫瘍の疑いがある組織からの細胞や組織の顕微鏡的分析に基づいている。通常の診断は、組織を各細胞や細胞塊が同定できるように染色し、形態学的特性、すなわち形状や大きさの変化、細胞の染色上の特徴、組織構造の不規則性、に基づいて行われる。このように、がんの診断は、対応する正常組織との形態学的変化に対する主観的評価に基づいている。
【0003】
十分な確実性を持って正確な診断できるようになるには、長い訓練と多くの経験が要求される。がんと前がん病変、及び前がん病変と非がん病変の境界にある症例は、多くの経験を積んだ病理学者や細胞学者にさえその診断が難しい。今日多くの腫瘍が早期に検出されるようになるにつれ、診断上の問題点も増加しており、それゆえ、がんに対する形態学的診断基準が完全には確立していない。形態学的分析のもうひとつの側面は、腫瘍の悪性度(腫瘍度)の評価であり、これはしばしば腫瘍治療方法の選択基準となる。しかし、問題なのは、多くの症例において、腫瘍の形態がその腫瘍の真の悪性度を反映していないことである。これらを踏まえると、腫瘍の悪性度を客観的かつ定量的に診断、評価できる新しい方法が、がん診断において大きな進歩となるであろうことは明らかである。
【0004】
正常細胞からがん細胞への移行は、一般的にトランスフォーメーションといわれ、正常細胞におけるいくつかの特定の遺伝子の一連の変異による。トランスフォーメーションの過程で、細胞はがん細胞としての性質を獲得する、すなわち周囲組織へ浸潤し、娘腫瘍を形成(転移)する。過去20年で、実験的ながん研究において、がん細胞において変異しうる約50の制御遺伝子が同定されるという大きな進歩がみられた。これらには、がん細胞で高度に活性化し過剰な細胞分裂のシグナルをひき起こす遺伝子(がん遺伝子)と、がん細胞においてしばしば不活性化している遺伝子(がん抑制遺伝子)がある。正常細胞において、がん抑制遺伝子は、一般にがん遺伝子からの成長刺激シグナルとバランスをとっている。完全にがんに特異的な遺伝子変異は、現在までには同定されていない。それゆえ我々は、がん細胞において異常である特性の組み合わせを発見することに焦点を合わせてきた。
【0005】
細胞周期の研究、すなわちゲノム複製と細胞分裂の間の同調に関する研究、において重要な進歩が過去10年間になされた。それは、細胞周期機構の中心的な構成要素が同定され、過去10億年の進化の間保存されてきたことが見出されたことである。構成要素は、酵母、植物、動物のすべてにおいて普遍的に重要である。細胞周期制御に関わる過程の概要がわかってきた。2つの根本的に異なる生化学的過程が細胞周期を制御している。ひとつは、可逆的なリン酸化、すなわちリン酸基が標的タンパク質に結合又は標的タンパク質から除去されて、これらのタンパク質の構造と機能に変化を及ぼす過程である。この過程は、キナーゼと呼ばれるタンパク質によって制御されている。細胞周期制御における主なキナーゼは、いわゆる サイクリン依存性キナーゼ(CDKs)であリ、その活性はサイクリンタンパク質によって制御されている。もうひとつの過程は、サイクリンタンパク質の高度に制御された合成と分解である。この出願に関する二つのサイクリンはサイクリンE及びサイクリンAである。
【0006】
以前は、がん細胞と正常細胞において、細胞周期は同様に制御され、欠陥があるのは主として増殖制御機構(細胞外から細胞核のゲノムへの増殖制御シグナルの伝達)と考えられていた。がんでは細胞周期自体が変化しており、それががん細胞において見られる染色体不安定性の原因となりうるという驚くべき発見は、またたく間にがん研究の最重要点になった。このように、腫瘍細胞における、制御から逸脱した増殖及び染色体不安定性は、不完全な細胞周期制御によるらしい。腫瘍細胞における細胞周期と不完全な細胞周期制御についての新しい見解は、今後のがん診断に応用される潜在性を持っている。
【0007】
細胞周期はゲノム複製と細胞分裂に基づいて異なる時期に分けられる。染色体が二つの娘細胞に分かれる細胞分裂期はM期(有糸分裂(mitosis))と呼ばれる。各M期とM期の間に、細胞はDNA合成(DNA複製ともいう)を通してそのゲノムを複製する。DNAが複製される時期はS期(DNA合成期)と呼ばれる。M期とS期の間にはもう二つの段階が同定されることができる。まず、M期とS期の間期は、G1と呼ばれ、次に、S期とM期の間期はG2と呼ばれる。このように、完全な細胞周期はM−G1−S−G2−Mからなる(図1)。分裂により生じたばかりの細胞は、その新しい細胞周期をG1から始める。その細胞が再度分裂することを決定すると、細胞はG1を経てS期に進み、DNAを複製する。完全にゲノムが複製されると、細胞はG2へ進み有糸分裂(M期)への準備をする。そして細胞はM期へ進み、染色体は細胞分裂により形成されるそれぞれの新しい娘細胞へと分かれる。これらの娘細胞はこの段階でG1期に戻り、細胞周期は完了する。正常細胞もがん細胞もこのような細胞周期の過程を経る。
【0008】
多細胞生物、例えばヒト、の細胞の多くはG0と呼ばれる静止期(あるいは休止期)にある。細胞は長くG0に留まることができ、そして増殖刺激シグナルに反応してG1に入る。筋細胞や神経細胞のように、事実上すべての細胞がG0に休止している組織もある。他の組織、例えば、腸、皮膚、骨髄、胚細胞、腫瘍細胞などは、G0期の細胞と細胞周期(G1、S、G2、M期)にある細胞の両方を含む。
【0009】
G1期からS期への移行など、細胞周期のひとつの段階から次の段階への進行を制御する要因や過程を見つけるためにこれまで多くの研究がなされてきた。細胞周期のある特定な時期にのみ発現するタンパク質が同定された。これらのひとつは1991年Lewらによって発見されたサイクリンEである(Lew DJ, Dulic V, Reed S.I.,Isolation of three novel human cyclins by rescue of G1 cyclin (Cln) function in yeast. Cell 66,p.1197−1206,1991.)。このタンパク質サイクリンEは細胞周期に特異的な様式で発現する。研究により、正常細胞ではサイクリンEはG1後期からS期の始めにのみ細胞核に存在することが証明された。もうひとつの細胞周期に特異的に発現するタンパク質はサイクリンAであり、これは細胞がS期に入る時に出現しM期まで細胞核に存在する(Pines J, Hunter T.,Human cyclin A is adenovirus E1A−associated protein p60 and behaves differently from cyclin B,Nature 346,p.760−763,1990,及びErlandsson F.,Linnman,C.,Ekholm,S.,Bengtsson,E.,Zetterberg,A.,A detailed investigation of cyclin A accumulation at the G1/S border in normal and transformed cells,Experimental Cell Research 259,p.86−95,2000.)。
【0010】
サイクリンEは、いくつかの腫瘍ならびに腫瘍由来の細胞株において異常に高いレベルで存在することがわかってきた(Keyomarsi,K.,Pardee,A.B.Redundant cyclin overexpression and gene amplification in breast cancer cells,Proc Natl Acad Sci U S A 90,p.1112−1116,1993.)。サイクリンEのレベルは細胞周期の異なる段階に同調させた培養細胞において計測された。細胞周期は同調させることにより乱れが生じるものの、データはサイクリンEは培養腫瘍細胞のG1期にのみ発現したわけではないことを示した。しかしながら、用いられた方法は腫瘍組織における細胞周期上のサイクリンEの発現パターンの研究には用いることができない。それは実験上の培養腫瘍細胞にのみ適用しうるものである。
【0011】
1994年、Keyomarsiらは欠陥サイクリンE分子が腫瘍に存在し、この存在が予後不良の指標といえるかもしれないと発表した(Keyomarsi,K.,O’Leary,N.,Molnar,G.,Lees,E.,Fingert,H.J.,Pardee,A.B.,Cyclin E,a potential prognostic marker for breast cancer,Cancer Reseach 54,p.380−385,1994.)。この研究において、Keyomarsiらはヒトのがんからの組織生検材料を用い、腫瘍組織が周囲の正常組織より多くのサイクリンEを含むこと、及びいくつかの腫瘍組織において欠陥型サイクリンE分子が存在することを発見した。著者らは腫瘍悪性度と、腫瘍組織におけるサイクリンEレベル及び欠陥サイクリンEレベルの関連を示唆した。しかしながら、彼らの方法ではサイクリンEレベルの上昇が、単に腫瘍において細胞周期にある細胞数の増加によるものか、又はサイクリンEの異常な発現によるものかは決定できなかった。研究は、ウエスタンブロット法と呼ばれる生化学的免疫学的方法によってなされた。この方法によれば、腫瘍の疑いがある組織の検体は増殖期ならびに静止期にある正常及びがん細胞の混合物を含む。組織の検体は均一化され、そこからタンパク質混合物が分離される。次にこのタンパク質混合物は異なるタンパク質をその分子量及び/又は電荷に基づいて分離するゲルを通過させられる。その後、目的のタンパク質はそのタンパク質に特異的な抗体により標識され、放射性アイソトープ又は色素によってラベルされる。この方法の主な欠点は、臨床的な腫瘍の疑いがある検体に適用する際、測定されたサイクリンEが検査された組織検体の正常細胞由来か又は腫瘍細胞由来か判断できないことである。
【0012】
最近5年間、組織検体中のサイクリンEレベルの診断手段としての利用について、いくつかの研究がなされた。これらの研究は、前述のように検体中の総タンパク質レベルを測定するウエスタンブロット法か、もしくは腫瘍組織におけるサイクリンEを含有する細胞の頻度を調べる免疫組織化学法によってなされる。ウエスタンブロット法の主な欠点は、腫瘍検体における高レベルのサイクリンEが、過剰発現によるのか又は細胞周期異常によるのか、区別できないことである。さらに、しばしば臨床組織検体においてみられるような、正常細胞が大部分を占める検体中の少数のがん細胞を検出するために用いることはできない。腫瘍細胞のみを含有する検体を得るため、いくつかの研究グループはマイクロディセクション法を用いて大部分は腫瘍細胞が占める部分的に精製された検体を得ている。しかしながら、マイクロディセクション法は極めて時間のかかる方法であり、形態学的診断法に基づいている。効率のよい診断技術が、腫瘍細胞を含むことがまだわかっていない検体においても適用可能でなければならない。さまざまな変形ウエスタンブロット法は科学的に非常に興味深いところであるが、その方法は一般的に時間がかかり精度の点からも臨床診断に利用できるものではない。
【0013】
サイクリンEの存在を調べるもうひとつの方法は、免疫組織化学染色法の利用である。この方法では、検体はサイクリンEに対する抗体であって着色されることができる抗体と共にインキュベートされる。続いて、検体中のサイクリンEを含む細胞が顕微鏡を用いて検出される。検体中のサイクリンEを含む細胞数の増加は、増殖している細胞、すなわち細胞周期中にある細胞の数の増加、もしくはサイクリンE発現に関与する細胞周期の異常、すなわちG1以外の細胞周期におけるサイクリンE発現を意味し得る。このふたつの可能性のうちどちらであるかを区別することはサイクリンEを含む細胞が細胞周期のどこにあるかを知らずに、サイクリンEを分析することだけでは不可能である。そこで平行して検体を、サイクリンAのようなもうひとつの細胞周期マーカーで染色することにより増殖についての情報を得ようとする試みがなされた(Dutta,A.,Chandra,R.,Leiter,L.M.,Lester,S,1995 Cyclins as markers of tumor proliferation: immunocytochemical studies in breast cancer. Proc Natl Acad Sci U S A 92,p.5386−5390.)。これは腫瘍における増殖活性について付加的情報を与えるかもしれないが、サイクリンEの発現パターンにおける細胞周期異常についての情報は、以下に我々が提唱するように、各細胞におけるサイクリンE染色と細胞周期マーカーの染色を組み合わせることによってのみ得られることができる。
【0014】
本発明の要旨
本発明の基本は、サイクリンEはがん細胞の細胞周期上で異常に制御されている、すなわち、サイクリンEが本来見られない細胞周期上で発現している、という事実である。正常細胞においてサイクリンEはG1後期からS期始めにかけてのみ細胞核に出現し、S期の間存在するが、がん細胞ではG2においてもその存在をみる。これにより、がん細胞において細胞周期後期(S後期及びG2期)にサイクリンEが異常に存在することに基づいた診断手段の開発の可能性がでてきた。
【0015】
それゆえ本発明は、同一細胞におけるサイクリンE型の一種以上のタンパク質と、サイクリンAのようなG1期以降発現物質の存在が、がん関連疾患の指標となるようながん疾患の分析方法に関する。また、本発明はサイクリンE型タンパク質及びG1期以降発現物質がともに存在する細胞の量を調べることで悪性度を評価する方法に関する。
【0016】
発明の説明
本発明のひとつの側面は、個々の細胞において“サイクリンE型タンパク質”の異常細胞周期的な発現が存在するかどうかを測定することによって、組織検体中のがんを診断できる方法である。これは“サイクリンE型タンパク質”が細胞周期の後半に存在する、すなわち“サイクリンE型タンパク質”がS期の大部分を通して存在し、及び/またはG2期にも存在することを意味する。このように、この方法は、正常細胞ではS期の早期に“サイクリンE型タンパク質”は減少し、がんの細胞核のみがS期を通じ、時にはG2期にさえも“サイクリンE型タンパク質”を含有するということに基づいている。この方法では、同一細胞において、二つの測定が免疫組織化学法などを用いて行われる。すなわち、個々の細胞における“サイクリンE型タンパク質”レベルの測定と、検査された細胞の各々についてその細胞が細胞周期のどの段階(G1、S、あるいはG2期)にあるかの決定を組み合わせるのである。検査された細胞あるいは組織検体において、S期後期及び/又はG2期の細胞における“サイクリンE型タンパク質”の出現細胞数が増加している場合、がん細胞が存在する。“サイクリンE型タンパク質”を含むS期後期あるいはG2期の細胞の割合に関する情報は、正確な診断のためだけでなく、予後の判断にも役立つ。すなわち腫瘍細胞の悪性度に関する情報を与えることができる。これは、細胞周期制御が乱れた細胞をより多く含む腫瘍細胞集団の方が、細胞周期制御に乱れのより少ない細胞を含む腫瘍細胞集団に比べ、より悪性度が高いので、間違いない。個々の腫瘍の悪性度を知ることは、治療法選択の上でも大変重要なことである。
【0017】
本明細書を通して、“サイクリンE型タンパク質”の定義を、サイクリンEタンパク質(正常及び欠陥サイクリンE分子の両方を含む)ならびにサイクリンEタンパク質と同様にS期早期に細胞核から除去されるが、がん細胞では長く留まる他のタンパク質とする。このように、すべての“サイクリンE型タンパク質”は、正常細胞の細胞核において、G1期からS期の始めにおいてのみ存在する。前述の“サイクリンE型タンパク質”には、主としてふたつのサイクリンEアイソフォーム、サイクリンE1とサイクリンE2がある。正常細胞ならびに腫瘍細胞におけるサイクリンEの発現パターンを図2に示す。その他の“サイクリンE型タンパク質”の例として、前述のように、Keyomarsiによって報告された分子量42kDaと35kDaの変異型サイクリンE、そしてサイクリンEに関連はないが正常細胞とがん細胞における発現パターンがサイクリンEに類似しているタンパク質がある。
【0018】
“サイクリンE型タンパク質”のレベルは好ましくは免疫組織化学法により、個々の細胞において計測される。種々の免疫組織化学法が以下に紹介されている:Brandtzaeg,P.,Halstensen,T.S.,Huitfeldt,H.S.,and Valnes,K.N.(1997)Immunohistochemistry:A practical approach 2.Editors Johnstone,A.P.and Turner,M.W.,IRL,Oxford,page 71−130。“サイクリンE型タンパク質”を含む個々の細胞は、顕微鏡を用いてあるいはフローサイトメトリー法を用いて、組織検体においても細胞懸濁液においても検出することができる。細胞周期中の“サイクリンE型タンパク質”の発現パターンは理論的には様々な方法でみることができる。Gongらは各細胞のDNA量をサイクリンEレベルの測定と組合わせて用いて細胞周期上の位置づけをした(Gong,J.et al.(1994)Cancer Res.54(16):p.4285−4288.)。しかしながら、彼らの方法には大きな問題点があった。それは、厳密に2倍体の細胞においてのみ、すなわち、G1期には2倍体のDNA量(2c、約6pg DNA)を有し、G2期には4倍体のDNA量(4c)を有する46本の染色体を有する細胞でのみ、細胞中のDNA量から細胞周期上の位置付けができるということである。S期の細胞はDNA複製が進行中であり2cと4cの中間のDNA量を有する。問題となるのは、腫瘍細胞は非常に多くの例において異数体であり、すなわち厳密に46本の染色体をもたず、それゆえG1期に正確な2cDNAを含有しないことである。さらに、腫瘍細胞集団における異数性の程度はしばしば大きく変化に富み、ひとつの腫瘍塊中のG1期の細胞におけるDNA量は1,5cから6c以上にまでわたる(例えばForsslund et al.,Cancer,1996 Oct 15;78(8):p.1748−55.又はAuer G.et al.,Anal Quant Cytol Histol,1987 May;9(2):p.138−46.を参照)。このような理由で、当然ながらGongらの方法は大多数のヒトの腫瘍に適用することはできず、それがGongらの研究が本願と関連がない主たる理由である。そこで我々は、DNA含有量に依存しない細胞周期決定の方法を開発した。この方法は、がん細胞においてS期及び/又はG2期にのみ存在する物質を染色することにより細胞周期に特異的なマーカーの含有量を分析することに基づいている。S期及び/又はG2期にのみ細胞内あるいは細胞核に存在するタンパク質を、ここでは“G1期以降発現物質”と呼ぶ。“G1期以降発現物質”の例としてサイクリンA、PCNA、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を取り込ませた細胞集団におけるBrdUなどがある。
【0019】
“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”を同時に染色することで、イメージサイトメトリーやフローサイトメトリーによって、同じ細胞核における“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”を測定することが可能となる。イメージサイトメトリーやフローサイトメトリーによる測定方法は、原理的に多くの異なる方法を用いて分析することができる。イメージは、たとえば単純グレーレベル閾値、最大推定分類、又は分水界(watershed)アルゴリズムによって分割されることができる。イメージ分割の現在用いられている方法については以下を参照:Gonzales,R.C.,Woods,R.E.,1993,Digital Image Processing, Addison−Wesley, New York, chapter 7。検査された細胞が各染色について陽性か陰性の分類は、多くの簡単に入手できる方法(Bayes 分類やニューラルネットワークに基づいた分類)、我々が発表した分類法(Erlandsson,F.,Linnman,C.,Ekholm,S.,Bengtsson,E.,Zetterberg,A.,2000,Exp Cell Res.259,p.86−95.)、又はその他の確実に陰性細胞、陽性細胞を鑑別できる方法によって行うことができる。最もよく知られた分類法については以下を参照:Gonzales,R.C.,Woods,R.E.,1993,Digital Image Processing,Addison−Wesley,New York,chapter 9。さらに、このように分類することは必ずしも必要ではなく、そのかわりに各細胞における染色強度の実測値を直接、統計学的に分析することができる。“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”の測定レベルの相関関係を求めることで、例えば、がん細胞集団から正常細胞集団を区別したり、より悪性度の高い細胞集団から悪性度の低い細胞集団を区別したりすることが可能になる。フローサイトメーターにはしばしば計測された染色強度の分析を行うために適当なアルゴリズムを含有するソフトウエア−が装備されている。最終的に、染色された検体の評価は、観察者によって手動的になされる。つまり、観察者が単純に細胞を数え、視覚的に細胞が“サイクリンE型タンパク質”及び/又は“G1期以降発現物質”を含有するかどうか主観的な判断をするのである。
【0020】
集団中の“サイクリンE型タンパク質”及び“G1期以降発現物質”を発現する細胞の割合が増加しているかどうかの統計学的分析に基づき、その検体にがん細胞が存在するかどうか、またがん細胞の悪性度はどの程度か判断されることができる。サイクリンEを含むS期あるいはG2期の細胞の割合は、悪性度の高いがん細胞集団で高く、正常細胞集団では低い。一般に、悪性度の高い腫瘍では40%以上を示し、正常組織では10%以下である。その正確な割合は腫瘍のタイプや、検体の採集方法、用いられた染色方法及び分析方法などにより異なる。これらの変数は、その方法が日常的に用いられるようになる前に前もって確立されなければならない。本発明の方法の主な長所は、この方法は検査する組織の増殖に依存しないということである。代わりに、この方法は“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”について同時に陽性である細胞の割合により、それ故、異常制御された細胞周期にある細胞の存在を測定する。我々はサイクリンEががん細胞においてS期にも存在するということを初めて確証したが、注意していただきたいのは、我々はその発見に対して特許をとろうとしているのではないということである。この特許出願は、“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”を同時に染色することで組織検体における細胞周期の異常性を検出するという我々独自の方法を保護することのみを目的としている。
【0021】
本発明の方法の主な長所は、がんが存在するかどうかを客観的かつ定量的に判断できることである。それゆえこの方法は、大きな処理能力を備えた、自動迅速がんテストとして開発することができる。さらにもうひとつの長所として、この方法の高感度性がある。即ち、この方法によれば“サイクリンE型タンパク質”を含有するS期の細胞が非常に少数でも十分検出可能である。さらに、ここで紹介するように行えば、検体は検査手順を通して破壊されないので、“サイクリンE型タンパク質”を含有するS期あるいはG2期の細胞を検査することができる従来の顕微鏡的検査を行った後、特に興味のある症例をフォローアップすることが可能である。これらの特性、自動化及び高感度への適性により、この方法はスクリーニング目的に理想的であるといえる。一例として、少数の異常細胞が検出されなければならないような子宮頸スメアーの検査があげられる。
【0022】
図の説明
図1は、細胞周期及びその時期について図式的に示したものである。
図2は、正常細胞(上段)ならびにがん細胞(下段)の細胞周期中のサイクリンEとサイクリンAの発現パターンを示す。注目すべき点は、サイクリンEとサイクリンAは正常細胞では順序に従って発現するのに対し、がん細胞ではこのふたつのサイクリンの発現パターンは重複し、すなわちS期において両者の同時発現がみられるということである。
図3は、正常な子宮頸上皮におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。各ドットは個々の細胞をあらわす。図2と比較参照されたい。
図4は、悪性度の低い子宮頸がん腫瘍におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。患者は治療の6年後、元気に生存中である。各ドットは個々の細胞をあらわす。図2及び3と比較参照されたい。
図5は、悪性度の高い子宮頸がんにおけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。患者は一回目の治療後3年以内に死亡した。各ドットは個々の細胞をあらわす。図2、3及び4と比較参照されたい。
【0023】
適用の説明
以下に、本発明により説明され、図によって支持される方法の実施例をいくつか紹介する。下記の実施例において、サイクリンEは“サイクリンE型タンパク質”の例として、またサイクリンAは“G1期以降発現物質”の例として用いられている。
【0024】
手順は、検査される個々の細胞においてサイクリンEレベルを決定し、それらの各細胞の細胞周期上の位置を決定するという本発明による方法の使用からなる。一つの実施例においては、治療前の患者から得られた子宮頸がん生検の細胞を染色するために免疫組織化学的二重染色法が用いられている。単層培養の細胞、細胞学的検体中の細胞、あるいは組織切片検体中の細胞のいずれに対しても、検査手技上、大きく異なる点はない。従来どおり処理された、すなわちフォルマリン固定されパラフィン包埋された子宮頸がん患者の組織切片において、in vivo でのサイクリンEの発現パターンが調べられた。組織切片は厚さ0.4mmに切断され、Superfrost Plus 顕微鏡スライド(Menzler Glaeser)に接着させるため47℃で一晩インキュベートされた。切片は−20℃で保存され、染色前に等級化されたアルコールで段階的に脱パラフィン化された。pH6.0のクエン酸バッファー中で5分間、2回のマイクロウエーブ処理をすることで抗原を賦活化させた。
【0025】
組織切片は、サイクリンEモノクロナール抗体(HE12)とサイクリンAに対して指向されたウサギポリクロナール抗体(H−432)で染色された(ともにSanta Cruz Biotechnology製)。使用された二次抗体は、FITC標識抗ウサギ抗体とCy3標識抗マウス抗体である(ともにJackson ImmunoResearch製)。以下の手順は断りのない限りすべて室温下で実施された。染色に先だち、スライドを洗浄バッファー(0.3mM NaCl及び0.02% Tween20を含むpH 7.6、0.05mM Tris−Hcl バッファー)中で10分間洗浄し、続いてブロッキングバッファー(1% 子ウシ血清アルブミン及び0.5% Tween20を含むPBS)中で15分間インキュベートして一次抗体の非特異的結合を防いだ。その後、スライドをブロッキングバッファーに希釈した一次抗体と4℃下で48時間インキュベートした。スライドを洗浄バッファーで、15分間3回よく洗浄することにより、未結合の抗体及び非特異的結合をした抗体を取り除いた。
【0026】
二次抗体の非特異的結合を防ぐために、カバー顕微鏡スライドは4% ロバ血清を含むブロッキングバッファー中で30分間インキュベートされた。4% ロバ血清に希釈した二次抗体を、室温で30分間のインキュベーション中に添加した。この後、顕微鏡スライドを洗浄バッファーで15分間3回洗浄した。
【0027】
最後に、顕微鏡スライドは蛍光顕微鏡用にDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を含むVectashield封入液(H−1200, Vector Laboratories Inc製)で封入された。DAPIはDNAに結合し、それにより検体中の個々の細胞核の同定を可能とする。これはこの実施例で用いられた蛍光色素の最終数を3つにする:即ち、サイクリンAに対するFITC、サイクリンEに対するCy3、DNAに対するDAPIの3種類である。
【0028】
各蛍光色素は、特定波長の光を用いて照射あるいは励起させると、別の特定の波長で蛍光を発することにより応答する。各蛍光色素が発した蛍光のレベルは、交換可能な励起フィルター及び発光フィルターとカメラを備えた顕微鏡で計測可能である。このように、各細胞核におけるサイクリンEとサイクリンAの濃度の半定量的な計測が可能である。すべての染色された顕微鏡スライドには、細胞のタイプ、固定時間、保管時間などを考慮に入れ、検体と同じ顕微鏡スライドを用いた陰性コントロールが用意された。陰性コントロールは、一次抗体を排除してかわりにブロッキングバッファーを用いた以外は検体と同様に染色された。すべての陰性コントロールは、染色した顕微鏡スライドと比較して、非常に弱いレベルの非特異的な核染色を示した。
【0029】
腫瘍のイメージはZeiss Plan−Neofluar 63倍の油浸レンズを用いてDelta Vision System(Applied Precision INC,Issaquah,WA製)により得られた。このシステムは、光ファイバー照明システムを備えた水銀ランプ、従来の顕微鏡光学レンズ、励起と発光への選択的フィルター及び冷却CCDカメラ(Photometrics Ltd,Tucson,AZ製)からなる。得られたイメージの解像度は0.2μmであった。イメージ分割及びデータの抽出はIMPイメージ処理ソフトウエアによってなされ、染色強度はMatlabあるいはExcelソフトウエアパッケージによって分析された。各検体において、800〜3000の細胞が分析された。
【0030】
イメージ分析はイメージのバックグラウンド蛍光を取り除くことから始まった。その後、DAPIイメージを用いて分割が行われ、その間にイメージ中の各細胞の核が同定された。次に、分割の間に作り出されたマスクがFITC(サイクリンA)とCy3(サイクリンE)イメージに適用され、それによりこれらの蛍光色素の各々から発光される蛍光が個々の細胞について計算されることができた。注意すべきは、DNAを染色するDAPIは細胞核の確認にのみ用いられ、細胞周期の位置決定には関与していない点である。
【0031】
ここで我々は検査された細胞のうちどの細胞がS期あるいはG2期にあるかをサイクリンA含有量を指標に決定することができる。図3、4及び5は主な結果を示している。グラフは異なる組織検体3例からのサイクインAとサイクリンEの分布をあらわしている。図3は正常子宮頸上皮、図4は悪性度の低い腫瘍(患者は治療6年後なお生存中)、図5は悪性度の高い腫瘍(患者は治療後3年以内に死亡)を示す。
【0032】
図3から5に示されたグラフは3例のそれぞれにおいてどのようにサイクリンEとサイクリンAが関係しているかにおける相違を示している。サイクリンAを多く含有する細胞(すなわちS期あるいはG2期の細胞)を含む子宮頸がん細胞は、正常子宮頸上皮と比較して明らかにより多くのサイクリンEを含有している。より悪性度の高い腫瘍細胞はより異常なサイクリンEの発現パターンを示す。S期及びG2期にある細胞の割合が高いとサイクリンEレベルも高い。ここに提示した方法は、細胞周期上でのサイクリンE発現パターンの相違を明確に検出しうるものであり、それが本発明の本質である。
【0033】
以上に述べてきたようにがん細胞における異常性は非常に明白であり、また、本発明の方法はきわめて簡単に実施できるため、本発明の方法は、日常の診断方法において近い将来、急速に極めて有用となる可能性を秘めている。サイクリンE、サイクリンAをともに高レベルに含有する細胞は正常な細胞集団に全く存在しないようであるから、本発明の方法がさらに洗練されれば、数百万の細胞からなる細胞集団の中で、ひとつのあるいはほんの数個のがん細胞を検知できるかもしれない。また、本発明の方法は腫瘍の悪性度を判断する際にも非常に有用であることが証明されるだろう。本発明の方法は非常に容易に自動化でき、またサンプルは本発明の方法で評価した後、例えば従来のHTX−エオシン染色で染色することができるので、従来の診断技術とも簡単に組み合わせることができる。このような方法で処理された検体を調べている病理学者や細胞学者は、検出された細胞周期異常を示す細胞を選択することができるか又はかかる細胞に注目をおくことができる。本発明の方法は本発明により、特許請求の範囲内で様々に変化されうる。このように、ここに紹介した具体的手順は単に本発明の適用の一例とみなされるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】細胞周期及びその時期について図式的に示したものである。
【図2】正常細胞(上段)ならびにがん細胞(下段)の細胞周期中のサイクリンEとサイクリンAの発現パターンを示す。
【図3】正常な子宮頸上皮におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。
【図4】悪性度の低い子宮頸がん腫瘍におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。
【図5】悪性度の高い子宮頸がんにおけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。
技術分野
本発明は、組織及び細胞検体においてがん及び前がん病変を診断し、及びがんであるとすでに診断されている場合に予後の判断及び予測情報を得る方法である。
【0002】
がん診断の現状
現在、日常的に行われているがんの診断は、腫瘍や腫瘍の疑いがある組織からの細胞や組織の顕微鏡的分析に基づいている。通常の診断は、組織を各細胞や細胞塊が同定できるように染色し、形態学的特性、すなわち形状や大きさの変化、細胞の染色上の特徴、組織構造の不規則性、に基づいて行われる。このように、がんの診断は、対応する正常組織との形態学的変化に対する主観的評価に基づいている。
【0003】
十分な確実性を持って正確な診断できるようになるには、長い訓練と多くの経験が要求される。がんと前がん病変、及び前がん病変と非がん病変の境界にある症例は、多くの経験を積んだ病理学者や細胞学者にさえその診断が難しい。今日多くの腫瘍が早期に検出されるようになるにつれ、診断上の問題点も増加しており、それゆえ、がんに対する形態学的診断基準が完全には確立していない。形態学的分析のもうひとつの側面は、腫瘍の悪性度(腫瘍度)の評価であり、これはしばしば腫瘍治療方法の選択基準となる。しかし、問題なのは、多くの症例において、腫瘍の形態がその腫瘍の真の悪性度を反映していないことである。これらを踏まえると、腫瘍の悪性度を客観的かつ定量的に診断、評価できる新しい方法が、がん診断において大きな進歩となるであろうことは明らかである。
【0004】
正常細胞からがん細胞への移行は、一般的にトランスフォーメーションといわれ、正常細胞におけるいくつかの特定の遺伝子の一連の変異による。トランスフォーメーションの過程で、細胞はがん細胞としての性質を獲得する、すなわち周囲組織へ浸潤し、娘腫瘍を形成(転移)する。過去20年で、実験的ながん研究において、がん細胞において変異しうる約50の制御遺伝子が同定されるという大きな進歩がみられた。これらには、がん細胞で高度に活性化し過剰な細胞分裂のシグナルをひき起こす遺伝子(がん遺伝子)と、がん細胞においてしばしば不活性化している遺伝子(がん抑制遺伝子)がある。正常細胞において、がん抑制遺伝子は、一般にがん遺伝子からの成長刺激シグナルとバランスをとっている。完全にがんに特異的な遺伝子変異は、現在までには同定されていない。それゆえ我々は、がん細胞において異常である特性の組み合わせを発見することに焦点を合わせてきた。
【0005】
細胞周期の研究、すなわちゲノム複製と細胞分裂の間の同調に関する研究、において重要な進歩が過去10年間になされた。それは、細胞周期機構の中心的な構成要素が同定され、過去10億年の進化の間保存されてきたことが見出されたことである。構成要素は、酵母、植物、動物のすべてにおいて普遍的に重要である。細胞周期制御に関わる過程の概要がわかってきた。2つの根本的に異なる生化学的過程が細胞周期を制御している。ひとつは、可逆的なリン酸化、すなわちリン酸基が標的タンパク質に結合又は標的タンパク質から除去されて、これらのタンパク質の構造と機能に変化を及ぼす過程である。この過程は、キナーゼと呼ばれるタンパク質によって制御されている。細胞周期制御における主なキナーゼは、いわゆる サイクリン依存性キナーゼ(CDKs)であリ、その活性はサイクリンタンパク質によって制御されている。もうひとつの過程は、サイクリンタンパク質の高度に制御された合成と分解である。この出願に関する二つのサイクリンはサイクリンE及びサイクリンAである。
【0006】
以前は、がん細胞と正常細胞において、細胞周期は同様に制御され、欠陥があるのは主として増殖制御機構(細胞外から細胞核のゲノムへの増殖制御シグナルの伝達)と考えられていた。がんでは細胞周期自体が変化しており、それががん細胞において見られる染色体不安定性の原因となりうるという驚くべき発見は、またたく間にがん研究の最重要点になった。このように、腫瘍細胞における、制御から逸脱した増殖及び染色体不安定性は、不完全な細胞周期制御によるらしい。腫瘍細胞における細胞周期と不完全な細胞周期制御についての新しい見解は、今後のがん診断に応用される潜在性を持っている。
【0007】
細胞周期はゲノム複製と細胞分裂に基づいて異なる時期に分けられる。染色体が二つの娘細胞に分かれる細胞分裂期はM期(有糸分裂(mitosis))と呼ばれる。各M期とM期の間に、細胞はDNA合成(DNA複製ともいう)を通してそのゲノムを複製する。DNAが複製される時期はS期(DNA合成期)と呼ばれる。M期とS期の間にはもう二つの段階が同定されることができる。まず、M期とS期の間期は、G1と呼ばれ、次に、S期とM期の間期はG2と呼ばれる。このように、完全な細胞周期はM−G1−S−G2−Mからなる(図1)。分裂により生じたばかりの細胞は、その新しい細胞周期をG1から始める。その細胞が再度分裂することを決定すると、細胞はG1を経てS期に進み、DNAを複製する。完全にゲノムが複製されると、細胞はG2へ進み有糸分裂(M期)への準備をする。そして細胞はM期へ進み、染色体は細胞分裂により形成されるそれぞれの新しい娘細胞へと分かれる。これらの娘細胞はこの段階でG1期に戻り、細胞周期は完了する。正常細胞もがん細胞もこのような細胞周期の過程を経る。
【0008】
多細胞生物、例えばヒト、の細胞の多くはG0と呼ばれる静止期(あるいは休止期)にある。細胞は長くG0に留まることができ、そして増殖刺激シグナルに反応してG1に入る。筋細胞や神経細胞のように、事実上すべての細胞がG0に休止している組織もある。他の組織、例えば、腸、皮膚、骨髄、胚細胞、腫瘍細胞などは、G0期の細胞と細胞周期(G1、S、G2、M期)にある細胞の両方を含む。
【0009】
G1期からS期への移行など、細胞周期のひとつの段階から次の段階への進行を制御する要因や過程を見つけるためにこれまで多くの研究がなされてきた。細胞周期のある特定な時期にのみ発現するタンパク質が同定された。これらのひとつは1991年Lewらによって発見されたサイクリンEである(Lew DJ, Dulic V, Reed S.I.,Isolation of three novel human cyclins by rescue of G1 cyclin (Cln) function in yeast. Cell 66,p.1197−1206,1991.)。このタンパク質サイクリンEは細胞周期に特異的な様式で発現する。研究により、正常細胞ではサイクリンEはG1後期からS期の始めにのみ細胞核に存在することが証明された。もうひとつの細胞周期に特異的に発現するタンパク質はサイクリンAであり、これは細胞がS期に入る時に出現しM期まで細胞核に存在する(Pines J, Hunter T.,Human cyclin A is adenovirus E1A−associated protein p60 and behaves differently from cyclin B,Nature 346,p.760−763,1990,及びErlandsson F.,Linnman,C.,Ekholm,S.,Bengtsson,E.,Zetterberg,A.,A detailed investigation of cyclin A accumulation at the G1/S border in normal and transformed cells,Experimental Cell Research 259,p.86−95,2000.)。
【0010】
サイクリンEは、いくつかの腫瘍ならびに腫瘍由来の細胞株において異常に高いレベルで存在することがわかってきた(Keyomarsi,K.,Pardee,A.B.Redundant cyclin overexpression and gene amplification in breast cancer cells,Proc Natl Acad Sci U S A 90,p.1112−1116,1993.)。サイクリンEのレベルは細胞周期の異なる段階に同調させた培養細胞において計測された。細胞周期は同調させることにより乱れが生じるものの、データはサイクリンEは培養腫瘍細胞のG1期にのみ発現したわけではないことを示した。しかしながら、用いられた方法は腫瘍組織における細胞周期上のサイクリンEの発現パターンの研究には用いることができない。それは実験上の培養腫瘍細胞にのみ適用しうるものである。
【0011】
1994年、Keyomarsiらは欠陥サイクリンE分子が腫瘍に存在し、この存在が予後不良の指標といえるかもしれないと発表した(Keyomarsi,K.,O’Leary,N.,Molnar,G.,Lees,E.,Fingert,H.J.,Pardee,A.B.,Cyclin E,a potential prognostic marker for breast cancer,Cancer Reseach 54,p.380−385,1994.)。この研究において、Keyomarsiらはヒトのがんからの組織生検材料を用い、腫瘍組織が周囲の正常組織より多くのサイクリンEを含むこと、及びいくつかの腫瘍組織において欠陥型サイクリンE分子が存在することを発見した。著者らは腫瘍悪性度と、腫瘍組織におけるサイクリンEレベル及び欠陥サイクリンEレベルの関連を示唆した。しかしながら、彼らの方法ではサイクリンEレベルの上昇が、単に腫瘍において細胞周期にある細胞数の増加によるものか、又はサイクリンEの異常な発現によるものかは決定できなかった。研究は、ウエスタンブロット法と呼ばれる生化学的免疫学的方法によってなされた。この方法によれば、腫瘍の疑いがある組織の検体は増殖期ならびに静止期にある正常及びがん細胞の混合物を含む。組織の検体は均一化され、そこからタンパク質混合物が分離される。次にこのタンパク質混合物は異なるタンパク質をその分子量及び/又は電荷に基づいて分離するゲルを通過させられる。その後、目的のタンパク質はそのタンパク質に特異的な抗体により標識され、放射性アイソトープ又は色素によってラベルされる。この方法の主な欠点は、臨床的な腫瘍の疑いがある検体に適用する際、測定されたサイクリンEが検査された組織検体の正常細胞由来か又は腫瘍細胞由来か判断できないことである。
【0012】
最近5年間、組織検体中のサイクリンEレベルの診断手段としての利用について、いくつかの研究がなされた。これらの研究は、前述のように検体中の総タンパク質レベルを測定するウエスタンブロット法か、もしくは腫瘍組織におけるサイクリンEを含有する細胞の頻度を調べる免疫組織化学法によってなされる。ウエスタンブロット法の主な欠点は、腫瘍検体における高レベルのサイクリンEが、過剰発現によるのか又は細胞周期異常によるのか、区別できないことである。さらに、しばしば臨床組織検体においてみられるような、正常細胞が大部分を占める検体中の少数のがん細胞を検出するために用いることはできない。腫瘍細胞のみを含有する検体を得るため、いくつかの研究グループはマイクロディセクション法を用いて大部分は腫瘍細胞が占める部分的に精製された検体を得ている。しかしながら、マイクロディセクション法は極めて時間のかかる方法であり、形態学的診断法に基づいている。効率のよい診断技術が、腫瘍細胞を含むことがまだわかっていない検体においても適用可能でなければならない。さまざまな変形ウエスタンブロット法は科学的に非常に興味深いところであるが、その方法は一般的に時間がかかり精度の点からも臨床診断に利用できるものではない。
【0013】
サイクリンEの存在を調べるもうひとつの方法は、免疫組織化学染色法の利用である。この方法では、検体はサイクリンEに対する抗体であって着色されることができる抗体と共にインキュベートされる。続いて、検体中のサイクリンEを含む細胞が顕微鏡を用いて検出される。検体中のサイクリンEを含む細胞数の増加は、増殖している細胞、すなわち細胞周期中にある細胞の数の増加、もしくはサイクリンE発現に関与する細胞周期の異常、すなわちG1以外の細胞周期におけるサイクリンE発現を意味し得る。このふたつの可能性のうちどちらであるかを区別することはサイクリンEを含む細胞が細胞周期のどこにあるかを知らずに、サイクリンEを分析することだけでは不可能である。そこで平行して検体を、サイクリンAのようなもうひとつの細胞周期マーカーで染色することにより増殖についての情報を得ようとする試みがなされた(Dutta,A.,Chandra,R.,Leiter,L.M.,Lester,S,1995 Cyclins as markers of tumor proliferation: immunocytochemical studies in breast cancer. Proc Natl Acad Sci U S A 92,p.5386−5390.)。これは腫瘍における増殖活性について付加的情報を与えるかもしれないが、サイクリンEの発現パターンにおける細胞周期異常についての情報は、以下に我々が提唱するように、各細胞におけるサイクリンE染色と細胞周期マーカーの染色を組み合わせることによってのみ得られることができる。
【0014】
本発明の要旨
本発明の基本は、サイクリンEはがん細胞の細胞周期上で異常に制御されている、すなわち、サイクリンEが本来見られない細胞周期上で発現している、という事実である。正常細胞においてサイクリンEはG1後期からS期始めにかけてのみ細胞核に出現し、S期の間存在するが、がん細胞ではG2においてもその存在をみる。これにより、がん細胞において細胞周期後期(S後期及びG2期)にサイクリンEが異常に存在することに基づいた診断手段の開発の可能性がでてきた。
【0015】
それゆえ本発明は、同一細胞におけるサイクリンE型の一種以上のタンパク質と、サイクリンAのようなG1期以降発現物質の存在が、がん関連疾患の指標となるようながん疾患の分析方法に関する。また、本発明はサイクリンE型タンパク質及びG1期以降発現物質がともに存在する細胞の量を調べることで悪性度を評価する方法に関する。
【0016】
発明の説明
本発明のひとつの側面は、個々の細胞において“サイクリンE型タンパク質”の異常細胞周期的な発現が存在するかどうかを測定することによって、組織検体中のがんを診断できる方法である。これは“サイクリンE型タンパク質”が細胞周期の後半に存在する、すなわち“サイクリンE型タンパク質”がS期の大部分を通して存在し、及び/またはG2期にも存在することを意味する。このように、この方法は、正常細胞ではS期の早期に“サイクリンE型タンパク質”は減少し、がんの細胞核のみがS期を通じ、時にはG2期にさえも“サイクリンE型タンパク質”を含有するということに基づいている。この方法では、同一細胞において、二つの測定が免疫組織化学法などを用いて行われる。すなわち、個々の細胞における“サイクリンE型タンパク質”レベルの測定と、検査された細胞の各々についてその細胞が細胞周期のどの段階(G1、S、あるいはG2期)にあるかの決定を組み合わせるのである。検査された細胞あるいは組織検体において、S期後期及び/又はG2期の細胞における“サイクリンE型タンパク質”の出現細胞数が増加している場合、がん細胞が存在する。“サイクリンE型タンパク質”を含むS期後期あるいはG2期の細胞の割合に関する情報は、正確な診断のためだけでなく、予後の判断にも役立つ。すなわち腫瘍細胞の悪性度に関する情報を与えることができる。これは、細胞周期制御が乱れた細胞をより多く含む腫瘍細胞集団の方が、細胞周期制御に乱れのより少ない細胞を含む腫瘍細胞集団に比べ、より悪性度が高いので、間違いない。個々の腫瘍の悪性度を知ることは、治療法選択の上でも大変重要なことである。
【0017】
本明細書を通して、“サイクリンE型タンパク質”の定義を、サイクリンEタンパク質(正常及び欠陥サイクリンE分子の両方を含む)ならびにサイクリンEタンパク質と同様にS期早期に細胞核から除去されるが、がん細胞では長く留まる他のタンパク質とする。このように、すべての“サイクリンE型タンパク質”は、正常細胞の細胞核において、G1期からS期の始めにおいてのみ存在する。前述の“サイクリンE型タンパク質”には、主としてふたつのサイクリンEアイソフォーム、サイクリンE1とサイクリンE2がある。正常細胞ならびに腫瘍細胞におけるサイクリンEの発現パターンを図2に示す。その他の“サイクリンE型タンパク質”の例として、前述のように、Keyomarsiによって報告された分子量42kDaと35kDaの変異型サイクリンE、そしてサイクリンEに関連はないが正常細胞とがん細胞における発現パターンがサイクリンEに類似しているタンパク質がある。
【0018】
“サイクリンE型タンパク質”のレベルは好ましくは免疫組織化学法により、個々の細胞において計測される。種々の免疫組織化学法が以下に紹介されている:Brandtzaeg,P.,Halstensen,T.S.,Huitfeldt,H.S.,and Valnes,K.N.(1997)Immunohistochemistry:A practical approach 2.Editors Johnstone,A.P.and Turner,M.W.,IRL,Oxford,page 71−130。“サイクリンE型タンパク質”を含む個々の細胞は、顕微鏡を用いてあるいはフローサイトメトリー法を用いて、組織検体においても細胞懸濁液においても検出することができる。細胞周期中の“サイクリンE型タンパク質”の発現パターンは理論的には様々な方法でみることができる。Gongらは各細胞のDNA量をサイクリンEレベルの測定と組合わせて用いて細胞周期上の位置づけをした(Gong,J.et al.(1994)Cancer Res.54(16):p.4285−4288.)。しかしながら、彼らの方法には大きな問題点があった。それは、厳密に2倍体の細胞においてのみ、すなわち、G1期には2倍体のDNA量(2c、約6pg DNA)を有し、G2期には4倍体のDNA量(4c)を有する46本の染色体を有する細胞でのみ、細胞中のDNA量から細胞周期上の位置付けができるということである。S期の細胞はDNA複製が進行中であり2cと4cの中間のDNA量を有する。問題となるのは、腫瘍細胞は非常に多くの例において異数体であり、すなわち厳密に46本の染色体をもたず、それゆえG1期に正確な2cDNAを含有しないことである。さらに、腫瘍細胞集団における異数性の程度はしばしば大きく変化に富み、ひとつの腫瘍塊中のG1期の細胞におけるDNA量は1,5cから6c以上にまでわたる(例えばForsslund et al.,Cancer,1996 Oct 15;78(8):p.1748−55.又はAuer G.et al.,Anal Quant Cytol Histol,1987 May;9(2):p.138−46.を参照)。このような理由で、当然ながらGongらの方法は大多数のヒトの腫瘍に適用することはできず、それがGongらの研究が本願と関連がない主たる理由である。そこで我々は、DNA含有量に依存しない細胞周期決定の方法を開発した。この方法は、がん細胞においてS期及び/又はG2期にのみ存在する物質を染色することにより細胞周期に特異的なマーカーの含有量を分析することに基づいている。S期及び/又はG2期にのみ細胞内あるいは細胞核に存在するタンパク質を、ここでは“G1期以降発現物質”と呼ぶ。“G1期以降発現物質”の例としてサイクリンA、PCNA、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を取り込ませた細胞集団におけるBrdUなどがある。
【0019】
“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”を同時に染色することで、イメージサイトメトリーやフローサイトメトリーによって、同じ細胞核における“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”を測定することが可能となる。イメージサイトメトリーやフローサイトメトリーによる測定方法は、原理的に多くの異なる方法を用いて分析することができる。イメージは、たとえば単純グレーレベル閾値、最大推定分類、又は分水界(watershed)アルゴリズムによって分割されることができる。イメージ分割の現在用いられている方法については以下を参照:Gonzales,R.C.,Woods,R.E.,1993,Digital Image Processing, Addison−Wesley, New York, chapter 7。検査された細胞が各染色について陽性か陰性の分類は、多くの簡単に入手できる方法(Bayes 分類やニューラルネットワークに基づいた分類)、我々が発表した分類法(Erlandsson,F.,Linnman,C.,Ekholm,S.,Bengtsson,E.,Zetterberg,A.,2000,Exp Cell Res.259,p.86−95.)、又はその他の確実に陰性細胞、陽性細胞を鑑別できる方法によって行うことができる。最もよく知られた分類法については以下を参照:Gonzales,R.C.,Woods,R.E.,1993,Digital Image Processing,Addison−Wesley,New York,chapter 9。さらに、このように分類することは必ずしも必要ではなく、そのかわりに各細胞における染色強度の実測値を直接、統計学的に分析することができる。“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”の測定レベルの相関関係を求めることで、例えば、がん細胞集団から正常細胞集団を区別したり、より悪性度の高い細胞集団から悪性度の低い細胞集団を区別したりすることが可能になる。フローサイトメーターにはしばしば計測された染色強度の分析を行うために適当なアルゴリズムを含有するソフトウエア−が装備されている。最終的に、染色された検体の評価は、観察者によって手動的になされる。つまり、観察者が単純に細胞を数え、視覚的に細胞が“サイクリンE型タンパク質”及び/又は“G1期以降発現物質”を含有するかどうか主観的な判断をするのである。
【0020】
集団中の“サイクリンE型タンパク質”及び“G1期以降発現物質”を発現する細胞の割合が増加しているかどうかの統計学的分析に基づき、その検体にがん細胞が存在するかどうか、またがん細胞の悪性度はどの程度か判断されることができる。サイクリンEを含むS期あるいはG2期の細胞の割合は、悪性度の高いがん細胞集団で高く、正常細胞集団では低い。一般に、悪性度の高い腫瘍では40%以上を示し、正常組織では10%以下である。その正確な割合は腫瘍のタイプや、検体の採集方法、用いられた染色方法及び分析方法などにより異なる。これらの変数は、その方法が日常的に用いられるようになる前に前もって確立されなければならない。本発明の方法の主な長所は、この方法は検査する組織の増殖に依存しないということである。代わりに、この方法は“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”について同時に陽性である細胞の割合により、それ故、異常制御された細胞周期にある細胞の存在を測定する。我々はサイクリンEががん細胞においてS期にも存在するということを初めて確証したが、注意していただきたいのは、我々はその発見に対して特許をとろうとしているのではないということである。この特許出願は、“サイクリンE型タンパク質”と“G1期以降発現物質”を同時に染色することで組織検体における細胞周期の異常性を検出するという我々独自の方法を保護することのみを目的としている。
【0021】
本発明の方法の主な長所は、がんが存在するかどうかを客観的かつ定量的に判断できることである。それゆえこの方法は、大きな処理能力を備えた、自動迅速がんテストとして開発することができる。さらにもうひとつの長所として、この方法の高感度性がある。即ち、この方法によれば“サイクリンE型タンパク質”を含有するS期の細胞が非常に少数でも十分検出可能である。さらに、ここで紹介するように行えば、検体は検査手順を通して破壊されないので、“サイクリンE型タンパク質”を含有するS期あるいはG2期の細胞を検査することができる従来の顕微鏡的検査を行った後、特に興味のある症例をフォローアップすることが可能である。これらの特性、自動化及び高感度への適性により、この方法はスクリーニング目的に理想的であるといえる。一例として、少数の異常細胞が検出されなければならないような子宮頸スメアーの検査があげられる。
【0022】
図の説明
図1は、細胞周期及びその時期について図式的に示したものである。
図2は、正常細胞(上段)ならびにがん細胞(下段)の細胞周期中のサイクリンEとサイクリンAの発現パターンを示す。注目すべき点は、サイクリンEとサイクリンAは正常細胞では順序に従って発現するのに対し、がん細胞ではこのふたつのサイクリンの発現パターンは重複し、すなわちS期において両者の同時発現がみられるということである。
図3は、正常な子宮頸上皮におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。各ドットは個々の細胞をあらわす。図2と比較参照されたい。
図4は、悪性度の低い子宮頸がん腫瘍におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。患者は治療の6年後、元気に生存中である。各ドットは個々の細胞をあらわす。図2及び3と比較参照されたい。
図5は、悪性度の高い子宮頸がんにおけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。患者は一回目の治療後3年以内に死亡した。各ドットは個々の細胞をあらわす。図2、3及び4と比較参照されたい。
【0023】
適用の説明
以下に、本発明により説明され、図によって支持される方法の実施例をいくつか紹介する。下記の実施例において、サイクリンEは“サイクリンE型タンパク質”の例として、またサイクリンAは“G1期以降発現物質”の例として用いられている。
【0024】
手順は、検査される個々の細胞においてサイクリンEレベルを決定し、それらの各細胞の細胞周期上の位置を決定するという本発明による方法の使用からなる。一つの実施例においては、治療前の患者から得られた子宮頸がん生検の細胞を染色するために免疫組織化学的二重染色法が用いられている。単層培養の細胞、細胞学的検体中の細胞、あるいは組織切片検体中の細胞のいずれに対しても、検査手技上、大きく異なる点はない。従来どおり処理された、すなわちフォルマリン固定されパラフィン包埋された子宮頸がん患者の組織切片において、in vivo でのサイクリンEの発現パターンが調べられた。組織切片は厚さ0.4mmに切断され、Superfrost Plus 顕微鏡スライド(Menzler Glaeser)に接着させるため47℃で一晩インキュベートされた。切片は−20℃で保存され、染色前に等級化されたアルコールで段階的に脱パラフィン化された。pH6.0のクエン酸バッファー中で5分間、2回のマイクロウエーブ処理をすることで抗原を賦活化させた。
【0025】
組織切片は、サイクリンEモノクロナール抗体(HE12)とサイクリンAに対して指向されたウサギポリクロナール抗体(H−432)で染色された(ともにSanta Cruz Biotechnology製)。使用された二次抗体は、FITC標識抗ウサギ抗体とCy3標識抗マウス抗体である(ともにJackson ImmunoResearch製)。以下の手順は断りのない限りすべて室温下で実施された。染色に先だち、スライドを洗浄バッファー(0.3mM NaCl及び0.02% Tween20を含むpH 7.6、0.05mM Tris−Hcl バッファー)中で10分間洗浄し、続いてブロッキングバッファー(1% 子ウシ血清アルブミン及び0.5% Tween20を含むPBS)中で15分間インキュベートして一次抗体の非特異的結合を防いだ。その後、スライドをブロッキングバッファーに希釈した一次抗体と4℃下で48時間インキュベートした。スライドを洗浄バッファーで、15分間3回よく洗浄することにより、未結合の抗体及び非特異的結合をした抗体を取り除いた。
【0026】
二次抗体の非特異的結合を防ぐために、カバー顕微鏡スライドは4% ロバ血清を含むブロッキングバッファー中で30分間インキュベートされた。4% ロバ血清に希釈した二次抗体を、室温で30分間のインキュベーション中に添加した。この後、顕微鏡スライドを洗浄バッファーで15分間3回洗浄した。
【0027】
最後に、顕微鏡スライドは蛍光顕微鏡用にDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を含むVectashield封入液(H−1200, Vector Laboratories Inc製)で封入された。DAPIはDNAに結合し、それにより検体中の個々の細胞核の同定を可能とする。これはこの実施例で用いられた蛍光色素の最終数を3つにする:即ち、サイクリンAに対するFITC、サイクリンEに対するCy3、DNAに対するDAPIの3種類である。
【0028】
各蛍光色素は、特定波長の光を用いて照射あるいは励起させると、別の特定の波長で蛍光を発することにより応答する。各蛍光色素が発した蛍光のレベルは、交換可能な励起フィルター及び発光フィルターとカメラを備えた顕微鏡で計測可能である。このように、各細胞核におけるサイクリンEとサイクリンAの濃度の半定量的な計測が可能である。すべての染色された顕微鏡スライドには、細胞のタイプ、固定時間、保管時間などを考慮に入れ、検体と同じ顕微鏡スライドを用いた陰性コントロールが用意された。陰性コントロールは、一次抗体を排除してかわりにブロッキングバッファーを用いた以外は検体と同様に染色された。すべての陰性コントロールは、染色した顕微鏡スライドと比較して、非常に弱いレベルの非特異的な核染色を示した。
【0029】
腫瘍のイメージはZeiss Plan−Neofluar 63倍の油浸レンズを用いてDelta Vision System(Applied Precision INC,Issaquah,WA製)により得られた。このシステムは、光ファイバー照明システムを備えた水銀ランプ、従来の顕微鏡光学レンズ、励起と発光への選択的フィルター及び冷却CCDカメラ(Photometrics Ltd,Tucson,AZ製)からなる。得られたイメージの解像度は0.2μmであった。イメージ分割及びデータの抽出はIMPイメージ処理ソフトウエアによってなされ、染色強度はMatlabあるいはExcelソフトウエアパッケージによって分析された。各検体において、800〜3000の細胞が分析された。
【0030】
イメージ分析はイメージのバックグラウンド蛍光を取り除くことから始まった。その後、DAPIイメージを用いて分割が行われ、その間にイメージ中の各細胞の核が同定された。次に、分割の間に作り出されたマスクがFITC(サイクリンA)とCy3(サイクリンE)イメージに適用され、それによりこれらの蛍光色素の各々から発光される蛍光が個々の細胞について計算されることができた。注意すべきは、DNAを染色するDAPIは細胞核の確認にのみ用いられ、細胞周期の位置決定には関与していない点である。
【0031】
ここで我々は検査された細胞のうちどの細胞がS期あるいはG2期にあるかをサイクリンA含有量を指標に決定することができる。図3、4及び5は主な結果を示している。グラフは異なる組織検体3例からのサイクインAとサイクリンEの分布をあらわしている。図3は正常子宮頸上皮、図4は悪性度の低い腫瘍(患者は治療6年後なお生存中)、図5は悪性度の高い腫瘍(患者は治療後3年以内に死亡)を示す。
【0032】
図3から5に示されたグラフは3例のそれぞれにおいてどのようにサイクリンEとサイクリンAが関係しているかにおける相違を示している。サイクリンAを多く含有する細胞(すなわちS期あるいはG2期の細胞)を含む子宮頸がん細胞は、正常子宮頸上皮と比較して明らかにより多くのサイクリンEを含有している。より悪性度の高い腫瘍細胞はより異常なサイクリンEの発現パターンを示す。S期及びG2期にある細胞の割合が高いとサイクリンEレベルも高い。ここに提示した方法は、細胞周期上でのサイクリンE発現パターンの相違を明確に検出しうるものであり、それが本発明の本質である。
【0033】
以上に述べてきたようにがん細胞における異常性は非常に明白であり、また、本発明の方法はきわめて簡単に実施できるため、本発明の方法は、日常の診断方法において近い将来、急速に極めて有用となる可能性を秘めている。サイクリンE、サイクリンAをともに高レベルに含有する細胞は正常な細胞集団に全く存在しないようであるから、本発明の方法がさらに洗練されれば、数百万の細胞からなる細胞集団の中で、ひとつのあるいはほんの数個のがん細胞を検知できるかもしれない。また、本発明の方法は腫瘍の悪性度を判断する際にも非常に有用であることが証明されるだろう。本発明の方法は非常に容易に自動化でき、またサンプルは本発明の方法で評価した後、例えば従来のHTX−エオシン染色で染色することができるので、従来の診断技術とも簡単に組み合わせることができる。このような方法で処理された検体を調べている病理学者や細胞学者は、検出された細胞周期異常を示す細胞を選択することができるか又はかかる細胞に注目をおくことができる。本発明の方法は本発明により、特許請求の範囲内で様々に変化されうる。このように、ここに紹介した具体的手順は単に本発明の適用の一例とみなされるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】細胞周期及びその時期について図式的に示したものである。
【図2】正常細胞(上段)ならびにがん細胞(下段)の細胞周期中のサイクリンEとサイクリンAの発現パターンを示す。
【図3】正常な子宮頸上皮におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。
【図4】悪性度の低い子宮頸がん腫瘍におけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。
【図5】悪性度の高い子宮頸がんにおけるサイクリンAとサイクリンEの発現分布を示す。
Claims (15)
- 以下の手順を含むことを特徴とする、細胞又は組織検体においてがん又は前がん病変を診断するために、又は診断が確定しているがんの予後判断のために、個々の細胞において細胞周期制御の乱れを検出する方法:
− 検体の分離した細胞においてサイクリンE型タンパク質を検出する
− 検体の分離した細胞においてG1期以降発現物質を検出する
− 細胞核内にサイクリンE型タンパク質を有する細胞を検出する
− G1期以降発現物質の含有量に基づいてS期又はG2期にある細胞を同定する
− それによって、細胞核中のサイクリンE型タンパク質の含有量が増加し、同時に同一の細胞がS期又はG2期にある細胞の数が増加していることは、検体中に細胞周期制御が乱れた細胞が存在することの指標であり、これはがんの診断上及び予後の判断上価値がある。 - サイクリンE型タンパク質の検出はタンパク質の染色によってなされることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 選択されたサイクリンE型タンパク質の染色は、その選択されたサイクリンE型タンパク質に対して指向された抗体によってなされることを特徴とする請求項2記載の方法。
- サイクリンEが好ましくはサイクリンE型タンパク質として選択されることを特徴とする請求項3記載の方法。
- G1期以降発現物質の含有量がS期又はG2期にある細胞を同定するために用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
- G1期以降発現物質の含有量の決定はその染色によってなされることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 選択されたG1期以降発現物質の染色は、その選択されたG1期以降発現物質に対して指向された抗体によってなされることを特徴とする請求項6記載の方法。
- サイクリンAが好ましくはG1期以降発現物質として選択されることを特徴とする請求項7記載の方法。
- a) サイクリンE型タンパク質の含有量、および
b) G1期以降発現物質の含有量
について染色された細胞は、ふたつの異なる色素、ひとつはa)に特異的な色素で、もうひとつはb)に特異的な色素、を用いて染色されることを特徴とする請求項2又は6記載の方法。 - 細胞は照射され、タイプa)とb)の細胞は、それぞれに典型的かつ特異的な波長の光の発光又は吸収により同定されることを特徴とする請求項9記載の方法。
- a)とb)それぞれに対し着色された細胞に対応する輝度あるいは光吸収を分析することにより、各個々の細胞におけるサイクリンE型タンパク質とG1期以降発現物質の含有量の指標が得られることを特徴とする請求項10記載の方法。
- 細胞核は、検体を細胞核に特異的な色素で染色し、その結果、細胞核が照射された時、使用された色素に特有な波長の光を発光又は吸収することにより同定されることを特徴とする請求項9記載の方法。
- 検体により発光又は吸収された光は、細胞核からの光とa)とb)について染色された細胞からの光を分離するように適合されたフィルターを備えたCCDカメラにより撮影又は検出され、各細胞核からのそれぞれの光の波長の輝度に関するデータは、イメージ分析のためコンピュータープログラムに抽出され、各細胞核中のサイクリンE型タンパク質とG1期以降発現物質の両方の含有量の計測値を与えることを特徴とする請求項12記載の方法。
- 検体をフローサイトメトリー分析することで、各細胞核におけるサイクリンE型タンパク質とG1期以降発現物質の含有量が与えられることを特徴とする請求項12記載の方法。
- S期及び/又はG2期にサイクリンE型タンパク質の含有量が増加した細胞を含む検体は、細胞周期制御が乱れた細胞を含む検体であることの指標であり、それはがんの診断上ならびに予後の判断上価値があることを特徴とする請求項13又は14記載の方法。
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