JP2004529153A - 保護されたタキサンエステルのパクリタキセルへの2工程転化 - Google Patents
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Abstract
本発明は、式(I)を有する、保護されたカップリングエステル化合物(式中、P1は水素化可能な保護基である)からパクリタキセルを製造する方法であって、その化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を酸の存在下で脱保護して式(II)を有する第一中間体化合物(式中、HAは上記の酸である)を形成し、そしてその第一中間体化合物を3’−N−位においてベンゾイル化し、それによってパクリタキセルを生成させる工程を含む上記の方法に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍化合物であるパクリタキセルの製造に関する。さらに詳しくは、本発明は、保護されたバッカチンIIIの骨格(back bone)を適切に保護された側鎖酸でエステル化することにより形成することができる、保護されたカップリングエステル中間体からのパクリタキセルの製造に関する。特に、本発明は、7−CBZバッカチンIIIを、3−N−CBZ−2−O−保護−(2R,3S)−3−フェニルイソセリンによりエステル化して、保護されたカップリングエステル中間体を生成させることによる、パクリタキセルの製造に関するものであり、当該中間体は、その生成後に脱保護およびN−ベンゾイル化して、パクリタキセルを生成することができる。
【背景技術】
【0002】
様々なタキサン化合物が抗腫瘍活性を示すことは公知である。この活性により、タキサン類は科学界および医療界で増々注目を浴びてきている。これらの内で主たるものは「パクリタキセル」として知られる化合物であって、それは文献では「タキソール」とも称されている。パクリタキセルは、幾つかの異なる種類の腫瘍の化学療法治療について認可されており、その臨床試験は、パクリタキセルに対し広範囲の高い抗白血病活性および腫瘍抑制活性が見込まれることを示している。
【0003】
パクリタキセルは下記式を有するものである。
【化1】
【0004】
パクリタキセルは、イチイ(属名Taxus、科名Taxaceae)の幾つかの種に見いだされる天然産のタキサンジテルペノイドである。残念ながら、この化合物のイチイ中における濃度は非常に低く、しかも常緑植物種は成長が遅い。一般的にイチイの木の樹皮はパクリタキセルの最高濃度を示すとされているが、1キログラムのパクリタキセルの製造にはおおよそ16,000ポンドの樹皮が必要とされる。かくして、単離によるパクリタキセルの入手に対する長期的な見通しは悲観的である。
【0005】
イチイの木に存在するパクリタキセルは極めて低濃度であるが、バッカチンIII、セファロマニン(cephalomanine)、10−デアセチルバッカチンIII等の多様な他のタキサン化合物が存在し、それらもイチイの樹皮および葉から抽出することができる。これら他のタキサン化合物の一部は、より高い収率でより容易に抽出される。実際、比較的高濃度の10−デアセチルバッカチンIIIを、イチイの葉から、継続可能な供給源として抽出することができる。
【0006】
このため、その関心は前駆体化合物からのパクリタキセルの半合成へと変わっている。パクリタキセルを首尾よく合成するためには、キラルな非ラセミ側鎖酸を容易に入取できることおよび利用可能バッカチンIII骨格の天然資源が豊富なことのみならず、この2つの化合物を結びつける有効な手段が必要である。しかし、保護されたバッカチンIII骨格(back bone)に側鎖酸をエステル化することは、半球状のバッカチンIII骨格構造における凹状領域内のバッカチンIII骨格(back bone)に位置する13−水酸基の立体障害のために困難である。
【0007】
パクリタキセルの半合成における初期の合成ルートは、例えばSwindell等の米国特許第5,770,745号に記載されている。タキサン骨格および側鎖酸を様々な位置で保護するための保護基の使用が、パクリタキセルを形成する化学的プロセス、特にエステル化工程を改善する手段として調査された。
【0008】
パクリタキセルを半合成する技術が、Sisti等に付与された米国特許第5,750,737号に示されている。その中で述べられているように、パクリタキセルは、下記式で示される7−CBZバッカチンIIIを、
【化2】
(式中、CBZは「ベンジルオキシカルボニル」基、即ち-CO2CH2Phである。)
下記式で示される3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリンと結合させることによって合成することができる。
【化3】
(式中、2−水酸基は、ベンジルオキシメチル(BOM)またはベンジルのような水素化可能なベンジルタイプの基P1によって保護されている。)
【0009】
7−CBZバッカチンIIIは、例えばSisti等の米国特許第5,750,737号および同第5,973,170号に記載されるように、バッカチンIIIの7−金属アルコキシド中間体および類似体を合成し使用することにより形成することができる。3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリンの製造は、例えばSisti等の米国特許第5,684,175号に教示されている。
【0010】
保護されたバッカチンIIIを保護側鎖とエステル化して、下記式の保護されたカップリングエステルを形成し、
【化4】
次いで、得られた化合物を、適切に脱保護し、アシル化し、さらに脱保護して、パクリタキセルを生成させ得るものである。
具体的に述べると、7−O位および3’−N位のCBZ保護基が除去され、ベンゾイル基が3’−N位において付加され、2’−O−位の保護基が除去される。米国特許第5,750,737号は、最終の目的生成物に到達するための様々な工程を含む脱保護およびアシル化の手順について記載している。特に、この特許はそれぞれの工程間における回収および精製工程(濾過、真空下における残留物への減縮、有機相の分離等)を含む処理(work-ups)の利用を教示している。さらに、その中で記載されているように、パールマン触媒(Pearlman’s catalyst)によるカップリングエステルの水素化分解は、2個のCBZ基の除去による7−O位および3’−N位における脱保護の手順を完了するのに約1日を要するものである。その上、3’−アミノ基のベンゾイル化後の2’−O−BOMパクリタキセルの水素化分解は、完了まで数日を要し、触媒の置換、さらには2’−O−BOMパクリタキセル中間体の単離および精製を伴う。さらに、2’−O−BOMパクリタキセル中間体の予備精製並びに触媒および反応媒体の交換といった因子により、水素化プロセスの高コスト化を伴うものである。
【0011】
パクリタキセルを合成する現存技術には確かにメリットはあるが、この抗癌化合物、並びにその合成および半合成で有用な中間体を製造することができる化学的方法に対する改善の必要性は依然として存在する。特に、パクリタキセルの半合成において許容できる収率を維持しながら、より短時間およびより少ない工程による効率的な方法を提供することが望まれている。従って、本発明は、保護されたカップリングエステル中間体からパクリタキセルまたは他のタキサン類を合成する方法の改良に関する。本発明は、保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの転化を単一反応容器中で行うことができる、新規で、有用かつより効率的な転化方法を教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(発明の概要)
本発明の一つの目的は、パクリタキセルを合成する新規かつ有用な方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、パクリタキセルの製造で有用な新規な中間体化合物を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、下記式に示す保護されたカップリングエステル(当該エステルは、脱保護およびN−アシル化してパクリタキセルを生成させることができる。)からパクリタキセルを製造することである。
【化5】
【0015】
本発明の更に他の目的は、単純化され、抗腫瘍化合物用のパクリタキセルの大規模製造に適応することができる、パクリタキセルの製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の更に他の目的は、保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの水素化分解による転化の効率を改善することである。
【0017】
本発明の更に他の目的は、単一の容器中で、2’−O−保護パクリタキセル中間体の単離または精製なしで、保護されたカップリングエステルをパクリタキセルに転化することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明によれば、下記式を有する、保護されたカップリングエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法が提供される。
【化6】
(式中、P1はベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルおよびベンゾイルのような水素化可能な保護基である。)
【0019】
この方法は、当該保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を、酸の存在下で脱保護して、下記式を有する第一中間体化合物を形成し;
【化7】
(式中、HAは上記の酸である。)
当該第一中間体化合物の3’−N−位をベンゾイル化することによって、パクリタキセルを生成させる工程を含む。
酸は無機酸でも有機酸でもよいが、塩酸が好ましい。保護されたカップリングエステル化合物は、その7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程の前に、溶媒に溶解して第一溶液を形成するものが好ましい。溶媒は、THF、酢酸エチル、メタノールまたはイソプロパノールのような、エーテル、エステルまたはアルコール官能基を含むものとすることができる。上記第一溶液中には、上記溶媒の10〜25%(v/v)で水が存在することが好ましく、上記第一溶液には、第一反応混合物を形成するために、5〜20モル当量の酸がパールマン触媒または炭素上パラジウム触媒のような水素化触媒と共に加えられることが好ましい。触媒としては、上記の保護されたカップリングエステルの30〜80%質量当量の量の10%Pd/C50%湿性(10%Pd/C50% wet)が好ましい。
【0020】
保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程は、第一反応混合物を水素雰囲気下で30〜60分間攪拌する水素化分解による脱保護で成し遂げられる。
【0021】
第一中間体化合物をベンゾイル化する工程は、ベンゾイルクロリドおよびトリエチルアミンを第一中間体化合物と混合して、第二反応混合物を形成することにより行うことができる。好ましくは、1.20モル当量のベンゾイルクロリドを第一中間体化合物と混合し、トリエチルアミンの添加後、第二反応混合物を窒素雰囲気のような不活性雰囲気下で30分間攪拌する。
【0022】
本発明はまた、溶媒、酸、水素化触媒および下記式を有する保護されたカップリングエステル化合物を含む第一反応混合物を、反応容器中で水素雰囲気下において攪拌し;
【化8】
当該反応容器にベンゾイルクロリドおよびトリエチルアミンのようなベンゾイル化剤を加えて第二反応混合物を形成し;当該第二反応混合物を、不活性雰囲気のような雰囲気下で攪拌することによってパクリタキセルを生成させる工程を含む、パクリタキセルの製造方法に関する。
反応容器中では、第一反応混合物を水素雰囲気下で攪拌する工程中に、下記式を有する化合物、および
【化9】
下記式を有する化合物が形成され得る。
【化10】
【0023】
さらに、本発明は、下記式を有する、パクリタキセルの製造に有用な化合物に関する。
【化11】
(式中、P1は水素化可能な保護基であり、HAは塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸等のような無機酸または有機酸である。)
【0024】
本発明の上記および他の目的は、次の具体的な実施の態様についての詳細な説明並びに添付図面を考察することにより、さらに容易に認識および理解されるようになるだろう。
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、広く、パクリタキセルおよびその類似体を、保護されたカップリングエステル中間体から製造するための新規かつ有用な化学的方法に関する。さらに具体的には、本発明は、Sisti等の米国特許第5,750,737号に記載されているような、保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの化学的転化に対する改善方法を提供するものである。
【0026】
Sisti等は、特に、下記式を有することができる、保護されたカップリングエステル中間体の形成を述べている。
【化12】
(式中、P1は水素化可能なベンジルタイプの保護基である。)
【0027】
カップリングエステル中間体は、次に、7−O−CBZおよび3’−N−CBZ保護基を除去され、3’位にあるアミノ基をベンゾイル化され、2’−O−ベンジルタイプ保護基を除去されることによってパクリタキセルに転化される。この転化は、Sisti等の特許明細書で述べられているように、まずカップリングエステルをイソプロパノールに溶解し、パールマン触媒を加え、24時間水素化することによって行われる。その後、その混合物を珪藻土を通して濾過し、真空下で残留物へと減縮する。次にこの残留物は、トルエンに吸収され、無水の炭酸カリウムが加えられるか、或いは酢酸エチル若しくはトルエンに吸収され、トリエチルアミンのような第三級アミン塩基が加えられる。次にベンゾイルクロリドを加え、2時間攪拌した後、その混合物を水および塩性溶液で洗浄し、得られた有機相を分離、乾燥し、真空下で濃縮する。得られた生成物を、イソプロパノールに溶解し、それにパールマン触媒を加え、その混合物を40psiの水素下で24時間水素化してパクリタキセルを生成する。
【0028】
カップリングエステルのパクリタキセルへの化学的転化を改善する試みにおいて、触媒のタイプと量、水素圧力、溶媒、酸の存在、反応の温度と時間を含む、水素化分解プロセスに関する様々なパラメーターを調査した。デグッサ(Degussa)タイプのPd(OH)2/C触媒が最も有効な触媒の1つであり、パールマン触媒および炭素上パラジウム触媒に比較して、このプロセスを有意に促進した。このプロセスをさらに調べると、Pd/C触媒との組み合わせによる水性THFの導入が、反応の収率および速度を共に高め、同時に、より安価な触媒の使用および高価な無水溶媒の使用の排除による、転化コストの低下をもたらすことが示された。
【0029】
その結果、「保護されたタキサンエステルのパクリタキセルへの3工程転化」と題される同時係属中の米国特許出願第09/843,235号で述べられているように、無水安息香酸をベンゾイル化試薬として用いる単一容器・3工程転化法が開発された。この3工程転化法は、まず、7−O位および3’−N位において脱保護し、次に、3’−N位においてベンゾイル化し、その後、2’−O位において脱保護することを含む。この方法は、全3工程を、同じ反応容器中で、触媒および反応媒体を変えずに、かつ2’−O−BOMパクリタキセル中間体を単離および精製せずに行うことによって、カップリングされたエステルのパクリタキセルへの転化効率を有意に改善した。
【0030】
上記3工程法は従前の転化法に対して有意な利点を提示するが、本発明は合成プロセスにおける化学処理工程の数を少なくし、それら工程に要する総時間を減少する改善された2工程法を提供する。さらに、本発明の2工程法は、副生成物としての安息香酸が生成すること、および反応混合物中に塩酸等の酸を高濃度で必要とすること、といった3工程法の幾つかの問題も取り扱う。
【0031】
[I.カップリングされたエステルのパクリタキセルへの転化]
具体的には、図1に示されるように、本発明は、広く、7−O、3’−Nおよび2’−Oが保護されているカップリングエステルのパクリタキセルへの単一容器・2工程転化法であって、第一工程において、その7−O、3’−Nおよび2’−O位が脱保護され、第二工程において、3’−N位がベンゾイル化される上記方法に関する。
【0032】
図2に示すように、本発明は、典型的なプロセスにおいて、7−O、3’−N−ジ−(CBZ)、2’−O−BOM保護カップリングエステルを、その分子の7−O、3’−Nおよび2’−O位における水素化分解による脱保護(2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体を形成する)、それに続くその遊離3’−アミノ基のベンゾイル化によるパクリタキセルの形成によって、パクリタキセルに転化する方法を提供する。
【0033】
図2は、米国特許第5,750,737号の教示に従って形成されるような、2’−O−BOM保護カップリングエステル中間体を示しているが、他の保護されたカップリングエステル中間体も、図2に示すプロセスによってパクリタキセルに転化できることが理解されるべきである。例えば、この典型的な方法において、BOMが2’−O位の保護基として示されているが、この方法は、下記一般式に示す保護されたカップリングエステルにも適用することができる。
【化13】
(式中、P1はベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、ベンゾイル等のような水素化可能な保護基である。)
【0034】
さらに、本発明は、他の2’−O−を水素化可能な保護基の使用に加えて、7−Oおよび3’−N位における他の適切な保護基の使用も当業者によって理解される範囲で企図することも理解されるべきである。
【0035】
1.第一工程:7−O、3’−Nおよび2’−O脱保護
7−O,3’−N−ジ−(CBZ)−2’−O−BOM保護カップリングエステル中間体は、まず、7−O、3’−Nおよび2’−O位において、以下のように、水素化分解による脱保護を受けてCBZ基およびBOM基が除去される。
【化14】
【0036】
図2に示すように、下記式に示す3’−N−CBZ−2’−O−BOM−7−ヒドロキシ中間体が、この工程中に形成され得ることが理解されるべきである。
【化15】
【0037】
さらに、この工程中に、下記式で示される3’−N−アミノ−2’−O−BOM−7−O−CBZパクリタキセル中間体も形成され得ると理解されるべきである。
【化16】
【0038】
典型的なプロセスにおいて、5.05g(4.44mmol)の式1に示す保護されたカップリングエステルを、マグネットスターラーを備える0.5Lの丸底フラスコのような反応容器中の90.0mLのTHFに溶解し、その反応容器へ、6.10mLの3.62M塩酸(22.08mmol)および8.10gの10%Pd/C50%湿性を加えた。この反応容器を窒素で3回、水素で2回洗浄し、その反応混合物を水素充填バルーンにより付与された雰囲気下、室温で約1時間強く攪拌した。図2に示すように、この工程により、式1に示す保護されたカップリングエステルに、7−O、3’−Nおよび2’−Oの水素化分解による脱保護を生じさせ、式2を有する第一中間体化合物が形成された。
【0039】
ここでは典型的方法においてTHFが用いられているが、他の溶媒も使用できることが認識されるべきである。例えば、本発明は、エーテル官能基を有する溶媒(例えばTHF)、エステル官能基を有する溶媒(例えば酢酸エチル)またはアルコール官能基を有する溶媒(例えばメタノール、イソプロパノール等)の使用も想定する。さらに、典型的な水素化反応において炭素上パラジウム触媒が用いられているが、本発明は、当業者であれば理解するように、パラジウムの他の水素化触媒も想定する。さらに、典型的な方法においては塩酸が用いられているが、本発明は硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸等のような他の無機および有機の酸を含む、他の酸の使用も想定する。
【0040】
水素化反応のための水素は、この技術分野で理解されるように、大気圧またはそれより高い圧力の水素ラインを経由する圧縮ガスシリンダー、または化学的プロセスからの生成等の、様々な方法によって供給することができる。例えば、接触水素転移還元法(catalytic hydrogen transfer reduction process)または転移水素法(transfer hydrogen process)を使用することができる。特に、本発明は、Pd/C水素化触媒の存在下におけるギ酸アンモニウム、シクロヘキセン、ギ酸、1,4−シクロヘキサジエンおよびシスデカリンのような水素供与体の使用を想定する。
【0041】
本発明においては、溶媒中の水濃度を10〜25%(v/v)とすることを企図するが、THF中においては、水の濃度を10%とすることが好ましい。水素化触媒の使用については、30〜80%質量当量とすることを企図するが、炭素上パラジウム触媒においては、80%質量当量とすることが好ましい。酸は、5〜20モル当量で使用することが好ましく、5モル当量の塩酸を使用することが最も好ましい。反応混合物は、水素充填バルーンにより付与される雰囲気下、室温またはその溶媒の沸騰温度までの温度で、60分間以下強く攪拌することが好ましい。
【0042】
2.第二工程:3’−Nベンゾイル化
次に、式2に示す2’−ヒドロキシ−3’−アミンを、以下のように3’−N位においてベンゾイル化する。:
【化17】
【0043】
この工程では、水素を(反応容器を窒素で3回洗浄することによって)窒素で置換し、反応混合物に、4.65mLのトリエチルアミン(99%、5.33ミリモル)を加え、引き続き2分後に、0.625mLのベンゾイルクロリド(98%、5.33ミリモル)を添加し、得られた混合物を30分間攪拌した。
【0044】
次に、反応混合物をセライト(Celite;2.5g)を通して濾過し、そのセライトケーキを酢酸エチル(200mL)で洗浄し、元の濾液と洗液とを合わせて1Lの分液漏斗に入れ、水(3x50mL)および塩性溶液(20mL)で洗浄し、次いで無水の硫酸マグネシウム(2g)で乾燥した。濾過および回転蒸発後に、生成物を真空オーブン中で40℃において40時間以上乾燥して3.89gの粗製パクリタキセルを白色固体として得た。
【0045】
反応生成物の試料を酸性化したメタノールに溶解し、HPLCで分析して、転化率93.1%の真収率についてHPLC重量%で78.7%のパクリタキセルを得た。
【0046】
本発明は、過剰のベンゾイルクロリド、特に約1.0〜2.0モル当量、とりわけ1.2モル当量のベンゾイルクロリドの使用を想定するものである。さらに本発明は、ベンゾイルクロリドを好ましいベンゾイル化剤として使用するが、当業者であれば理解するように、他のアシル化剤、特にベンゾイル化剤の使用も想定することが認識されるべきである。さらに、典型的な第二工程において、その2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体は、トリエチルアミンの存在下で、約30分間攪拌しながらベンゾイルクロリドと反応させることによって、パクリタキセルに円滑に転化されることに留意すべきである。かくして、同じ反応容器中で、第一工程で使用される触媒を除去せずにパクリタキセルを形成する効率的な方法が提供される。
【0047】
[II.実験結果]
式1に示すカップリングエステルの水素化は、塩酸の存在下において、3つの保護基全ての円滑な除去をもたらした。式2に示す得られた2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のN−ベンゾイル化は、直接パクリタキセルをもたらす。従って、カップリングエステルのパクリタキセルへの単一容器転化における工程の数は、3から2に減少され、中間体としての2’−O−BOMパクリタキセルの形成を排除した。
【0048】
混合物中の酸および水の量を変えることによる効果を調べるために、追加の反応を行った。総ての水素化反応は、水素充填バルーンによって供給された雰囲気下、周囲温度で行った。以下において議論される全ての小規模実験は、0.20g(86.77HPLC重量%)の結晶化カップリングエステルを用いて行われた。全てのN−ベンゾイル化反応において、過剰のトリエチルアミンおよびベンゾイルクロリドを適用し、2’−O−ベンゾイルパクリタキセルの形成を最小とした。
【0049】
1.保護されたカップリングエステルの2’−ヒドロキシ−3’−アミンへの転化に対する異なる量の酸による効果
式1で示す0.20gのカップリングエステル、並びに0〜20モル当量の異なる量の塩酸を用いて1組の反応を行い、以下の表1および図3にHPLCデータで示される結果を得た。
【表1】
【0050】
表1および図3の実験は、25%THF水溶液中における80%質量当量の10%Pd/Cを用いて行われた。反応は1時間行われ、15分毎にサンプリングしてHPLC分析した。反応混合物中に存在する塩酸は、5〜20モル当量の範囲で、式1に示すカップリングエステルからの2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の形成速度に顕著な増加をもたらした。特に、5〜20モル当量の塩酸が用いられたとき、全3つの保護基(7−O−CBZ、3’−N−CBZおよび2’−O−BOM)が30〜60分で除去され、式2に示す2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体を生成した。表1および図3から明らかなように、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体を2モル当量のわずかな酸を用いて形成したときには、反応はよりゆっくり進んだ。
【0051】
従って、式1に示す保護されたカップリングエステルの水素化は、25%(v/v)のTHF水溶液中における5〜20モル当量の塩酸および80%質量当量のPd/C触媒の存在下、大気圧及び室温(RT)で、水素化分解反応による3つの保護基総てを急速に除去することが見いだされた。実際、幾つかの実験において、反応は、30分後または15分後でさえも有効に完了し、その結果工程1の水素化分解反応は、1時間より実質的に短い時間で適切に行うことができると考えられた。
【0052】
2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の水素化条件に対する化学的安定性は、少なくとも1時間は、一般に申し分ないものであった。しかし、20モル当量の塩酸を用いたときは、反応混合物中における2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体濃度のわずかな減少が時間の経過に従って観察された。
【0053】
2.2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のパクリタキセルへの転化に対する異なる量の酸による効果
水素化および窒素による水素置換の完了後に、反応混合物に過剰のトリエチルアミンおよび1.2モル当量のベンゾイルクロリドを直接加えて、N−ベンゾイル化反応を30分間行い、以下の表2にHPLCデータで示される結果を得た。
【表2】
【0054】
表2に示すように、第二工程である2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のパクリタキセルへの転化は、第一工程で使用される酸のモル当量数によって影響されるが、酸は第二工程には関係がなく、酸はN−ベンゾイル化が開始される前にトリエチルアミンによって中和されるので、そのようなことは、予想外なことである。第一転化工程におけるより少ないモル当量の塩酸の使用は、25分の保持時間でより多くの不純物の形成をもたらす。そのうえ、より多くの2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体が、N−ベンゾイル化反応混合物中で未反応のままとなる。
【0055】
不純物の化学構造は、LC-MSデータ、及び可能な形成機構の考察から、以下のように予測される:
【化18】
(式中、RはバッカチンIII部分を表す。)
【0056】
図4は、酸濃度との関係において、パクリタキセルに対する不純物の相対パーセントを示す。
【0057】
表2および図4から明らかなように、第一工程におけるより少ないモル当量の酸の使用は、第二工程でより多くの不純物の形成をもたらす。第一工程で使用される酸が15〜20モル当量の場合には、たった1.0〜0.3%の不純物しか形成されなかった。但し、水素化分解反応速度および2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の安定性は、一般に高いレベルの酸で許容できるものの(表1)、コストの観点からは、より低い酸濃度を利用しても低濃度の不純物を生成させるような条件を見いだすことが望ましい。
【0058】
3.保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの転化に対する異なる量の水による効果
より希薄な溶液はベンゾイル化剤(トリエチルアミン/ベンゾイルクロリド)の活性を低下させ得ると仮定して、反応に対する異なる量の水による効果を調べるために実験を行った。2組の反応を、式1に示す0.20gのカップリングエステル、80%質量当量の触媒および5モル当量の塩酸を用いて、それぞれ水10%および28%として行った。以下において、水素化反応の結果を、HPLCデータにより表3に示し、30分後のN−ベンゾイル化の結果をHPLCデータにより表4に示す。
【表3】
【表4】
【0059】
表3および4に示すように、水素化反応混合物中の水濃度を10%まで減少させることは両工程においてポジティブな効果をもたらす。水素化反応においては、水10%で反応速度が促進される。N−ベンゾイル化工程においては、より低い水の濃度は、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の転化を増加させ、不純物の形成を減少させるため、パクリタキセルの収率を改善する。これに対して、水濃度を28%まで増加させることは、水素化工程の速度を低減し、N−ベンゾイル化工程での、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の転化、およびパクリタキセルの形成を低減する。
【0060】
この実験の結果を証明するために、5グラムのカップリングエステルによるスケールアップした実験を、5モル当量の塩酸、80%質量当量の10Pd/C触媒および10%THF水溶液(v/v)を用いて、室温で1時間行った。HPLC分析によれば、水素化工程は30分後に完了した。完了後30分間、反応混合物中で2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の分解は観察されなかった。水素を窒素に交換し、過剰のトリエチルアミンを添加し、引き続き1.2モル当量のベンゾイルクロリドを添加した後に、N−ベンゾイル化工程を30分間行った。HPLCのデータにより、91%のパクリタキセルおよび2.9%の不純物が形成されたことが示された。反応混合物中に残っている2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の濃度は1%未満であった。得られたパクリタキセルの転化の真収率は93.1%と計算された。
【0061】
4.トリエチルアミンおよびベンゾイルクロリドの逆添加による、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のパクリタキセルへの転化に対する効果
反応の効率を改善するさらにもう1つのアプローチは、N−ベンゾイル化工程の試薬の添加順序を逆にすることに基づく。前の全ての反応においてはトリエチルアミンがまず添加され、続いてベンゾイルクロリドが添加されたのに対して、トリエチルアミンの添加に先立ってベンゾイルクロリドを逆の順に添加する工程について調べた。カップリングエステルのパクリタキセルへの2つの転化を平行して行い、各々の転化を、10%の水、5モル当量の塩酸および80%質量当量の触媒の存在下において10gの未精製のカップリングエステルを用いて行い、以下で、HPLCデータにより表5に示す30分後の結果を得た。結晶化されていない未精製のカップリングエステルは、前記で述べたSisti等に記載されるようなカップリング反応手順から直接誘導した。
【表5】
【0062】
N−ベンゾイル化工程において試薬の標準の添加順序から逆の添加順序へ変更すると、不純物の形成が8.6%から1.1%まで有意に低下し、同時にパクリタキセルの収率が60.1%から74.1%まで増加した。両ケースにおいて、反応混合物中には2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体が同様の相対量で未反応のままであった。
【0063】
この実験の結果を証明するために、10gの未精製カップリングエステルによるスケールアップした実験を平行して行い、各実験は、5モル当量の塩酸、80%質量当量の10Pd/C触媒および10%THF水溶液(v/v)を用い、室温で1時間行った。未精製カップリングエステルの使用は、水素化分解反応を遅くした。しかし、3つの保護基総てを完全に除去するために、依然として1時間しか要しなかった。水素と窒素との交換後に、第一の平行反応を過剰のトリエチルアミンの添加と、それに続く1.2モル当量のベンゾイルクロリドの添加という標準の順序に付し、また第二平行反応を1.2モル当量のベンゾイルクロリドの添加と、それに続く過剰のトリエチルアミンの添加という逆の順序に付した。N−ベンゾイル化工程は30分間行われた。
【0064】
標準の添加順序を用いた反応は69.9%の真転化収率を示したが、これに対して逆の添加順序を用いた反応は92.8%の真転化収率を示した。さらに、逆の添加順序を用いた反応は1.1%の不純物をもたらしたが、これは標準の添加順序を用いた反応における8.6%不純物の形成に対し、有意に低下していた。
【0065】
本発明は、かくして、7−O,3’−N−ジ−CBZ,2’−O−を保護されたカップリングエステル中間体からパクリタキセルを形成する改善された方法を提供する。本発明において提供される2工程法は単純であり、短いサイクル時間を有し、過度に多い量の酸および水を必要とせず、しかも副生成物として安息香酸を生成させない。第一工程のための溶媒中における水の濃度の低下、および第二工程における逆の順序の試薬添加の利用は、副生成物の形成を減少させるのに有効であることが見いだされた。
【0066】
以上のように、本発明を、本発明の典型的態様に向けた特定のいくつかのレベルについて説明した。しかしながら、本発明は、従来技術に照らして解されるその特許請求の範囲によって定義されることが理解されるべきであり、その結果本発明の典型的態様には特許請求の範囲に含まれる発明の思想から逸脱することなく、修正または変更がなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による、一般化された、単一容器・2工程法を示す。
【図2】本発明による、保護されたカップリングエステル化合物からのパクリタキセルの典型的な製造を示す。
【図3】異なる量の塩酸の存在下におけるカップリングエステルの水素化分解による2’−ヒドロキシ−3’−アミン形成速度を示すグラフである。
【図4】水素化工程で使用された塩酸濃度との関係において、ベンゾイル化後の混合物中における不純物の相対パーセントを示すグラフである。
【0001】
本発明は、抗腫瘍化合物であるパクリタキセルの製造に関する。さらに詳しくは、本発明は、保護されたバッカチンIIIの骨格(back bone)を適切に保護された側鎖酸でエステル化することにより形成することができる、保護されたカップリングエステル中間体からのパクリタキセルの製造に関する。特に、本発明は、7−CBZバッカチンIIIを、3−N−CBZ−2−O−保護−(2R,3S)−3−フェニルイソセリンによりエステル化して、保護されたカップリングエステル中間体を生成させることによる、パクリタキセルの製造に関するものであり、当該中間体は、その生成後に脱保護およびN−ベンゾイル化して、パクリタキセルを生成することができる。
【背景技術】
【0002】
様々なタキサン化合物が抗腫瘍活性を示すことは公知である。この活性により、タキサン類は科学界および医療界で増々注目を浴びてきている。これらの内で主たるものは「パクリタキセル」として知られる化合物であって、それは文献では「タキソール」とも称されている。パクリタキセルは、幾つかの異なる種類の腫瘍の化学療法治療について認可されており、その臨床試験は、パクリタキセルに対し広範囲の高い抗白血病活性および腫瘍抑制活性が見込まれることを示している。
【0003】
パクリタキセルは下記式を有するものである。
【化1】
【0004】
パクリタキセルは、イチイ(属名Taxus、科名Taxaceae)の幾つかの種に見いだされる天然産のタキサンジテルペノイドである。残念ながら、この化合物のイチイ中における濃度は非常に低く、しかも常緑植物種は成長が遅い。一般的にイチイの木の樹皮はパクリタキセルの最高濃度を示すとされているが、1キログラムのパクリタキセルの製造にはおおよそ16,000ポンドの樹皮が必要とされる。かくして、単離によるパクリタキセルの入手に対する長期的な見通しは悲観的である。
【0005】
イチイの木に存在するパクリタキセルは極めて低濃度であるが、バッカチンIII、セファロマニン(cephalomanine)、10−デアセチルバッカチンIII等の多様な他のタキサン化合物が存在し、それらもイチイの樹皮および葉から抽出することができる。これら他のタキサン化合物の一部は、より高い収率でより容易に抽出される。実際、比較的高濃度の10−デアセチルバッカチンIIIを、イチイの葉から、継続可能な供給源として抽出することができる。
【0006】
このため、その関心は前駆体化合物からのパクリタキセルの半合成へと変わっている。パクリタキセルを首尾よく合成するためには、キラルな非ラセミ側鎖酸を容易に入取できることおよび利用可能バッカチンIII骨格の天然資源が豊富なことのみならず、この2つの化合物を結びつける有効な手段が必要である。しかし、保護されたバッカチンIII骨格(back bone)に側鎖酸をエステル化することは、半球状のバッカチンIII骨格構造における凹状領域内のバッカチンIII骨格(back bone)に位置する13−水酸基の立体障害のために困難である。
【0007】
パクリタキセルの半合成における初期の合成ルートは、例えばSwindell等の米国特許第5,770,745号に記載されている。タキサン骨格および側鎖酸を様々な位置で保護するための保護基の使用が、パクリタキセルを形成する化学的プロセス、特にエステル化工程を改善する手段として調査された。
【0008】
パクリタキセルを半合成する技術が、Sisti等に付与された米国特許第5,750,737号に示されている。その中で述べられているように、パクリタキセルは、下記式で示される7−CBZバッカチンIIIを、
【化2】
(式中、CBZは「ベンジルオキシカルボニル」基、即ち-CO2CH2Phである。)
下記式で示される3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリンと結合させることによって合成することができる。
【化3】
(式中、2−水酸基は、ベンジルオキシメチル(BOM)またはベンジルのような水素化可能なベンジルタイプの基P1によって保護されている。)
【0009】
7−CBZバッカチンIIIは、例えばSisti等の米国特許第5,750,737号および同第5,973,170号に記載されるように、バッカチンIIIの7−金属アルコキシド中間体および類似体を合成し使用することにより形成することができる。3−N−CBZ−2−O−保護(2R,3S)−3−フェニルイソセリンの製造は、例えばSisti等の米国特許第5,684,175号に教示されている。
【0010】
保護されたバッカチンIIIを保護側鎖とエステル化して、下記式の保護されたカップリングエステルを形成し、
【化4】
次いで、得られた化合物を、適切に脱保護し、アシル化し、さらに脱保護して、パクリタキセルを生成させ得るものである。
具体的に述べると、7−O位および3’−N位のCBZ保護基が除去され、ベンゾイル基が3’−N位において付加され、2’−O−位の保護基が除去される。米国特許第5,750,737号は、最終の目的生成物に到達するための様々な工程を含む脱保護およびアシル化の手順について記載している。特に、この特許はそれぞれの工程間における回収および精製工程(濾過、真空下における残留物への減縮、有機相の分離等)を含む処理(work-ups)の利用を教示している。さらに、その中で記載されているように、パールマン触媒(Pearlman’s catalyst)によるカップリングエステルの水素化分解は、2個のCBZ基の除去による7−O位および3’−N位における脱保護の手順を完了するのに約1日を要するものである。その上、3’−アミノ基のベンゾイル化後の2’−O−BOMパクリタキセルの水素化分解は、完了まで数日を要し、触媒の置換、さらには2’−O−BOMパクリタキセル中間体の単離および精製を伴う。さらに、2’−O−BOMパクリタキセル中間体の予備精製並びに触媒および反応媒体の交換といった因子により、水素化プロセスの高コスト化を伴うものである。
【0011】
パクリタキセルを合成する現存技術には確かにメリットはあるが、この抗癌化合物、並びにその合成および半合成で有用な中間体を製造することができる化学的方法に対する改善の必要性は依然として存在する。特に、パクリタキセルの半合成において許容できる収率を維持しながら、より短時間およびより少ない工程による効率的な方法を提供することが望まれている。従って、本発明は、保護されたカップリングエステル中間体からパクリタキセルまたは他のタキサン類を合成する方法の改良に関する。本発明は、保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの転化を単一反応容器中で行うことができる、新規で、有用かつより効率的な転化方法を教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(発明の概要)
本発明の一つの目的は、パクリタキセルを合成する新規かつ有用な方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、パクリタキセルの製造で有用な新規な中間体化合物を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、下記式に示す保護されたカップリングエステル(当該エステルは、脱保護およびN−アシル化してパクリタキセルを生成させることができる。)からパクリタキセルを製造することである。
【化5】
【0015】
本発明の更に他の目的は、単純化され、抗腫瘍化合物用のパクリタキセルの大規模製造に適応することができる、パクリタキセルの製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の更に他の目的は、保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの水素化分解による転化の効率を改善することである。
【0017】
本発明の更に他の目的は、単一の容器中で、2’−O−保護パクリタキセル中間体の単離または精製なしで、保護されたカップリングエステルをパクリタキセルに転化することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明によれば、下記式を有する、保護されたカップリングエステル化合物からパクリタキセルを製造する方法が提供される。
【化6】
(式中、P1はベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルおよびベンゾイルのような水素化可能な保護基である。)
【0019】
この方法は、当該保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を、酸の存在下で脱保護して、下記式を有する第一中間体化合物を形成し;
【化7】
(式中、HAは上記の酸である。)
当該第一中間体化合物の3’−N−位をベンゾイル化することによって、パクリタキセルを生成させる工程を含む。
酸は無機酸でも有機酸でもよいが、塩酸が好ましい。保護されたカップリングエステル化合物は、その7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程の前に、溶媒に溶解して第一溶液を形成するものが好ましい。溶媒は、THF、酢酸エチル、メタノールまたはイソプロパノールのような、エーテル、エステルまたはアルコール官能基を含むものとすることができる。上記第一溶液中には、上記溶媒の10〜25%(v/v)で水が存在することが好ましく、上記第一溶液には、第一反応混合物を形成するために、5〜20モル当量の酸がパールマン触媒または炭素上パラジウム触媒のような水素化触媒と共に加えられることが好ましい。触媒としては、上記の保護されたカップリングエステルの30〜80%質量当量の量の10%Pd/C50%湿性(10%Pd/C50% wet)が好ましい。
【0020】
保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程は、第一反応混合物を水素雰囲気下で30〜60分間攪拌する水素化分解による脱保護で成し遂げられる。
【0021】
第一中間体化合物をベンゾイル化する工程は、ベンゾイルクロリドおよびトリエチルアミンを第一中間体化合物と混合して、第二反応混合物を形成することにより行うことができる。好ましくは、1.20モル当量のベンゾイルクロリドを第一中間体化合物と混合し、トリエチルアミンの添加後、第二反応混合物を窒素雰囲気のような不活性雰囲気下で30分間攪拌する。
【0022】
本発明はまた、溶媒、酸、水素化触媒および下記式を有する保護されたカップリングエステル化合物を含む第一反応混合物を、反応容器中で水素雰囲気下において攪拌し;
【化8】
当該反応容器にベンゾイルクロリドおよびトリエチルアミンのようなベンゾイル化剤を加えて第二反応混合物を形成し;当該第二反応混合物を、不活性雰囲気のような雰囲気下で攪拌することによってパクリタキセルを生成させる工程を含む、パクリタキセルの製造方法に関する。
反応容器中では、第一反応混合物を水素雰囲気下で攪拌する工程中に、下記式を有する化合物、および
【化9】
下記式を有する化合物が形成され得る。
【化10】
【0023】
さらに、本発明は、下記式を有する、パクリタキセルの製造に有用な化合物に関する。
【化11】
(式中、P1は水素化可能な保護基であり、HAは塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸等のような無機酸または有機酸である。)
【0024】
本発明の上記および他の目的は、次の具体的な実施の態様についての詳細な説明並びに添付図面を考察することにより、さらに容易に認識および理解されるようになるだろう。
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、広く、パクリタキセルおよびその類似体を、保護されたカップリングエステル中間体から製造するための新規かつ有用な化学的方法に関する。さらに具体的には、本発明は、Sisti等の米国特許第5,750,737号に記載されているような、保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの化学的転化に対する改善方法を提供するものである。
【0026】
Sisti等は、特に、下記式を有することができる、保護されたカップリングエステル中間体の形成を述べている。
【化12】
(式中、P1は水素化可能なベンジルタイプの保護基である。)
【0027】
カップリングエステル中間体は、次に、7−O−CBZおよび3’−N−CBZ保護基を除去され、3’位にあるアミノ基をベンゾイル化され、2’−O−ベンジルタイプ保護基を除去されることによってパクリタキセルに転化される。この転化は、Sisti等の特許明細書で述べられているように、まずカップリングエステルをイソプロパノールに溶解し、パールマン触媒を加え、24時間水素化することによって行われる。その後、その混合物を珪藻土を通して濾過し、真空下で残留物へと減縮する。次にこの残留物は、トルエンに吸収され、無水の炭酸カリウムが加えられるか、或いは酢酸エチル若しくはトルエンに吸収され、トリエチルアミンのような第三級アミン塩基が加えられる。次にベンゾイルクロリドを加え、2時間攪拌した後、その混合物を水および塩性溶液で洗浄し、得られた有機相を分離、乾燥し、真空下で濃縮する。得られた生成物を、イソプロパノールに溶解し、それにパールマン触媒を加え、その混合物を40psiの水素下で24時間水素化してパクリタキセルを生成する。
【0028】
カップリングエステルのパクリタキセルへの化学的転化を改善する試みにおいて、触媒のタイプと量、水素圧力、溶媒、酸の存在、反応の温度と時間を含む、水素化分解プロセスに関する様々なパラメーターを調査した。デグッサ(Degussa)タイプのPd(OH)2/C触媒が最も有効な触媒の1つであり、パールマン触媒および炭素上パラジウム触媒に比較して、このプロセスを有意に促進した。このプロセスをさらに調べると、Pd/C触媒との組み合わせによる水性THFの導入が、反応の収率および速度を共に高め、同時に、より安価な触媒の使用および高価な無水溶媒の使用の排除による、転化コストの低下をもたらすことが示された。
【0029】
その結果、「保護されたタキサンエステルのパクリタキセルへの3工程転化」と題される同時係属中の米国特許出願第09/843,235号で述べられているように、無水安息香酸をベンゾイル化試薬として用いる単一容器・3工程転化法が開発された。この3工程転化法は、まず、7−O位および3’−N位において脱保護し、次に、3’−N位においてベンゾイル化し、その後、2’−O位において脱保護することを含む。この方法は、全3工程を、同じ反応容器中で、触媒および反応媒体を変えずに、かつ2’−O−BOMパクリタキセル中間体を単離および精製せずに行うことによって、カップリングされたエステルのパクリタキセルへの転化効率を有意に改善した。
【0030】
上記3工程法は従前の転化法に対して有意な利点を提示するが、本発明は合成プロセスにおける化学処理工程の数を少なくし、それら工程に要する総時間を減少する改善された2工程法を提供する。さらに、本発明の2工程法は、副生成物としての安息香酸が生成すること、および反応混合物中に塩酸等の酸を高濃度で必要とすること、といった3工程法の幾つかの問題も取り扱う。
【0031】
[I.カップリングされたエステルのパクリタキセルへの転化]
具体的には、図1に示されるように、本発明は、広く、7−O、3’−Nおよび2’−Oが保護されているカップリングエステルのパクリタキセルへの単一容器・2工程転化法であって、第一工程において、その7−O、3’−Nおよび2’−O位が脱保護され、第二工程において、3’−N位がベンゾイル化される上記方法に関する。
【0032】
図2に示すように、本発明は、典型的なプロセスにおいて、7−O、3’−N−ジ−(CBZ)、2’−O−BOM保護カップリングエステルを、その分子の7−O、3’−Nおよび2’−O位における水素化分解による脱保護(2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体を形成する)、それに続くその遊離3’−アミノ基のベンゾイル化によるパクリタキセルの形成によって、パクリタキセルに転化する方法を提供する。
【0033】
図2は、米国特許第5,750,737号の教示に従って形成されるような、2’−O−BOM保護カップリングエステル中間体を示しているが、他の保護されたカップリングエステル中間体も、図2に示すプロセスによってパクリタキセルに転化できることが理解されるべきである。例えば、この典型的な方法において、BOMが2’−O位の保護基として示されているが、この方法は、下記一般式に示す保護されたカップリングエステルにも適用することができる。
【化13】
(式中、P1はベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチル、ベンゾイル等のような水素化可能な保護基である。)
【0034】
さらに、本発明は、他の2’−O−を水素化可能な保護基の使用に加えて、7−Oおよび3’−N位における他の適切な保護基の使用も当業者によって理解される範囲で企図することも理解されるべきである。
【0035】
1.第一工程:7−O、3’−Nおよび2’−O脱保護
7−O,3’−N−ジ−(CBZ)−2’−O−BOM保護カップリングエステル中間体は、まず、7−O、3’−Nおよび2’−O位において、以下のように、水素化分解による脱保護を受けてCBZ基およびBOM基が除去される。
【化14】
【0036】
図2に示すように、下記式に示す3’−N−CBZ−2’−O−BOM−7−ヒドロキシ中間体が、この工程中に形成され得ることが理解されるべきである。
【化15】
【0037】
さらに、この工程中に、下記式で示される3’−N−アミノ−2’−O−BOM−7−O−CBZパクリタキセル中間体も形成され得ると理解されるべきである。
【化16】
【0038】
典型的なプロセスにおいて、5.05g(4.44mmol)の式1に示す保護されたカップリングエステルを、マグネットスターラーを備える0.5Lの丸底フラスコのような反応容器中の90.0mLのTHFに溶解し、その反応容器へ、6.10mLの3.62M塩酸(22.08mmol)および8.10gの10%Pd/C50%湿性を加えた。この反応容器を窒素で3回、水素で2回洗浄し、その反応混合物を水素充填バルーンにより付与された雰囲気下、室温で約1時間強く攪拌した。図2に示すように、この工程により、式1に示す保護されたカップリングエステルに、7−O、3’−Nおよび2’−Oの水素化分解による脱保護を生じさせ、式2を有する第一中間体化合物が形成された。
【0039】
ここでは典型的方法においてTHFが用いられているが、他の溶媒も使用できることが認識されるべきである。例えば、本発明は、エーテル官能基を有する溶媒(例えばTHF)、エステル官能基を有する溶媒(例えば酢酸エチル)またはアルコール官能基を有する溶媒(例えばメタノール、イソプロパノール等)の使用も想定する。さらに、典型的な水素化反応において炭素上パラジウム触媒が用いられているが、本発明は、当業者であれば理解するように、パラジウムの他の水素化触媒も想定する。さらに、典型的な方法においては塩酸が用いられているが、本発明は硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸等のような他の無機および有機の酸を含む、他の酸の使用も想定する。
【0040】
水素化反応のための水素は、この技術分野で理解されるように、大気圧またはそれより高い圧力の水素ラインを経由する圧縮ガスシリンダー、または化学的プロセスからの生成等の、様々な方法によって供給することができる。例えば、接触水素転移還元法(catalytic hydrogen transfer reduction process)または転移水素法(transfer hydrogen process)を使用することができる。特に、本発明は、Pd/C水素化触媒の存在下におけるギ酸アンモニウム、シクロヘキセン、ギ酸、1,4−シクロヘキサジエンおよびシスデカリンのような水素供与体の使用を想定する。
【0041】
本発明においては、溶媒中の水濃度を10〜25%(v/v)とすることを企図するが、THF中においては、水の濃度を10%とすることが好ましい。水素化触媒の使用については、30〜80%質量当量とすることを企図するが、炭素上パラジウム触媒においては、80%質量当量とすることが好ましい。酸は、5〜20モル当量で使用することが好ましく、5モル当量の塩酸を使用することが最も好ましい。反応混合物は、水素充填バルーンにより付与される雰囲気下、室温またはその溶媒の沸騰温度までの温度で、60分間以下強く攪拌することが好ましい。
【0042】
2.第二工程:3’−Nベンゾイル化
次に、式2に示す2’−ヒドロキシ−3’−アミンを、以下のように3’−N位においてベンゾイル化する。:
【化17】
【0043】
この工程では、水素を(反応容器を窒素で3回洗浄することによって)窒素で置換し、反応混合物に、4.65mLのトリエチルアミン(99%、5.33ミリモル)を加え、引き続き2分後に、0.625mLのベンゾイルクロリド(98%、5.33ミリモル)を添加し、得られた混合物を30分間攪拌した。
【0044】
次に、反応混合物をセライト(Celite;2.5g)を通して濾過し、そのセライトケーキを酢酸エチル(200mL)で洗浄し、元の濾液と洗液とを合わせて1Lの分液漏斗に入れ、水(3x50mL)および塩性溶液(20mL)で洗浄し、次いで無水の硫酸マグネシウム(2g)で乾燥した。濾過および回転蒸発後に、生成物を真空オーブン中で40℃において40時間以上乾燥して3.89gの粗製パクリタキセルを白色固体として得た。
【0045】
反応生成物の試料を酸性化したメタノールに溶解し、HPLCで分析して、転化率93.1%の真収率についてHPLC重量%で78.7%のパクリタキセルを得た。
【0046】
本発明は、過剰のベンゾイルクロリド、特に約1.0〜2.0モル当量、とりわけ1.2モル当量のベンゾイルクロリドの使用を想定するものである。さらに本発明は、ベンゾイルクロリドを好ましいベンゾイル化剤として使用するが、当業者であれば理解するように、他のアシル化剤、特にベンゾイル化剤の使用も想定することが認識されるべきである。さらに、典型的な第二工程において、その2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体は、トリエチルアミンの存在下で、約30分間攪拌しながらベンゾイルクロリドと反応させることによって、パクリタキセルに円滑に転化されることに留意すべきである。かくして、同じ反応容器中で、第一工程で使用される触媒を除去せずにパクリタキセルを形成する効率的な方法が提供される。
【0047】
[II.実験結果]
式1に示すカップリングエステルの水素化は、塩酸の存在下において、3つの保護基全ての円滑な除去をもたらした。式2に示す得られた2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のN−ベンゾイル化は、直接パクリタキセルをもたらす。従って、カップリングエステルのパクリタキセルへの単一容器転化における工程の数は、3から2に減少され、中間体としての2’−O−BOMパクリタキセルの形成を排除した。
【0048】
混合物中の酸および水の量を変えることによる効果を調べるために、追加の反応を行った。総ての水素化反応は、水素充填バルーンによって供給された雰囲気下、周囲温度で行った。以下において議論される全ての小規模実験は、0.20g(86.77HPLC重量%)の結晶化カップリングエステルを用いて行われた。全てのN−ベンゾイル化反応において、過剰のトリエチルアミンおよびベンゾイルクロリドを適用し、2’−O−ベンゾイルパクリタキセルの形成を最小とした。
【0049】
1.保護されたカップリングエステルの2’−ヒドロキシ−3’−アミンへの転化に対する異なる量の酸による効果
式1で示す0.20gのカップリングエステル、並びに0〜20モル当量の異なる量の塩酸を用いて1組の反応を行い、以下の表1および図3にHPLCデータで示される結果を得た。
【表1】
【0050】
表1および図3の実験は、25%THF水溶液中における80%質量当量の10%Pd/Cを用いて行われた。反応は1時間行われ、15分毎にサンプリングしてHPLC分析した。反応混合物中に存在する塩酸は、5〜20モル当量の範囲で、式1に示すカップリングエステルからの2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の形成速度に顕著な増加をもたらした。特に、5〜20モル当量の塩酸が用いられたとき、全3つの保護基(7−O−CBZ、3’−N−CBZおよび2’−O−BOM)が30〜60分で除去され、式2に示す2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体を生成した。表1および図3から明らかなように、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体を2モル当量のわずかな酸を用いて形成したときには、反応はよりゆっくり進んだ。
【0051】
従って、式1に示す保護されたカップリングエステルの水素化は、25%(v/v)のTHF水溶液中における5〜20モル当量の塩酸および80%質量当量のPd/C触媒の存在下、大気圧及び室温(RT)で、水素化分解反応による3つの保護基総てを急速に除去することが見いだされた。実際、幾つかの実験において、反応は、30分後または15分後でさえも有効に完了し、その結果工程1の水素化分解反応は、1時間より実質的に短い時間で適切に行うことができると考えられた。
【0052】
2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の水素化条件に対する化学的安定性は、少なくとも1時間は、一般に申し分ないものであった。しかし、20モル当量の塩酸を用いたときは、反応混合物中における2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体濃度のわずかな減少が時間の経過に従って観察された。
【0053】
2.2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のパクリタキセルへの転化に対する異なる量の酸による効果
水素化および窒素による水素置換の完了後に、反応混合物に過剰のトリエチルアミンおよび1.2モル当量のベンゾイルクロリドを直接加えて、N−ベンゾイル化反応を30分間行い、以下の表2にHPLCデータで示される結果を得た。
【表2】
【0054】
表2に示すように、第二工程である2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のパクリタキセルへの転化は、第一工程で使用される酸のモル当量数によって影響されるが、酸は第二工程には関係がなく、酸はN−ベンゾイル化が開始される前にトリエチルアミンによって中和されるので、そのようなことは、予想外なことである。第一転化工程におけるより少ないモル当量の塩酸の使用は、25分の保持時間でより多くの不純物の形成をもたらす。そのうえ、より多くの2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体が、N−ベンゾイル化反応混合物中で未反応のままとなる。
【0055】
不純物の化学構造は、LC-MSデータ、及び可能な形成機構の考察から、以下のように予測される:
【化18】
(式中、RはバッカチンIII部分を表す。)
【0056】
図4は、酸濃度との関係において、パクリタキセルに対する不純物の相対パーセントを示す。
【0057】
表2および図4から明らかなように、第一工程におけるより少ないモル当量の酸の使用は、第二工程でより多くの不純物の形成をもたらす。第一工程で使用される酸が15〜20モル当量の場合には、たった1.0〜0.3%の不純物しか形成されなかった。但し、水素化分解反応速度および2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の安定性は、一般に高いレベルの酸で許容できるものの(表1)、コストの観点からは、より低い酸濃度を利用しても低濃度の不純物を生成させるような条件を見いだすことが望ましい。
【0058】
3.保護されたカップリングエステルのパクリタキセルへの転化に対する異なる量の水による効果
より希薄な溶液はベンゾイル化剤(トリエチルアミン/ベンゾイルクロリド)の活性を低下させ得ると仮定して、反応に対する異なる量の水による効果を調べるために実験を行った。2組の反応を、式1に示す0.20gのカップリングエステル、80%質量当量の触媒および5モル当量の塩酸を用いて、それぞれ水10%および28%として行った。以下において、水素化反応の結果を、HPLCデータにより表3に示し、30分後のN−ベンゾイル化の結果をHPLCデータにより表4に示す。
【表3】
【表4】
【0059】
表3および4に示すように、水素化反応混合物中の水濃度を10%まで減少させることは両工程においてポジティブな効果をもたらす。水素化反応においては、水10%で反応速度が促進される。N−ベンゾイル化工程においては、より低い水の濃度は、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の転化を増加させ、不純物の形成を減少させるため、パクリタキセルの収率を改善する。これに対して、水濃度を28%まで増加させることは、水素化工程の速度を低減し、N−ベンゾイル化工程での、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の転化、およびパクリタキセルの形成を低減する。
【0060】
この実験の結果を証明するために、5グラムのカップリングエステルによるスケールアップした実験を、5モル当量の塩酸、80%質量当量の10Pd/C触媒および10%THF水溶液(v/v)を用いて、室温で1時間行った。HPLC分析によれば、水素化工程は30分後に完了した。完了後30分間、反応混合物中で2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の分解は観察されなかった。水素を窒素に交換し、過剰のトリエチルアミンを添加し、引き続き1.2モル当量のベンゾイルクロリドを添加した後に、N−ベンゾイル化工程を30分間行った。HPLCのデータにより、91%のパクリタキセルおよび2.9%の不純物が形成されたことが示された。反応混合物中に残っている2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体の濃度は1%未満であった。得られたパクリタキセルの転化の真収率は93.1%と計算された。
【0061】
4.トリエチルアミンおよびベンゾイルクロリドの逆添加による、2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体のパクリタキセルへの転化に対する効果
反応の効率を改善するさらにもう1つのアプローチは、N−ベンゾイル化工程の試薬の添加順序を逆にすることに基づく。前の全ての反応においてはトリエチルアミンがまず添加され、続いてベンゾイルクロリドが添加されたのに対して、トリエチルアミンの添加に先立ってベンゾイルクロリドを逆の順に添加する工程について調べた。カップリングエステルのパクリタキセルへの2つの転化を平行して行い、各々の転化を、10%の水、5モル当量の塩酸および80%質量当量の触媒の存在下において10gの未精製のカップリングエステルを用いて行い、以下で、HPLCデータにより表5に示す30分後の結果を得た。結晶化されていない未精製のカップリングエステルは、前記で述べたSisti等に記載されるようなカップリング反応手順から直接誘導した。
【表5】
【0062】
N−ベンゾイル化工程において試薬の標準の添加順序から逆の添加順序へ変更すると、不純物の形成が8.6%から1.1%まで有意に低下し、同時にパクリタキセルの収率が60.1%から74.1%まで増加した。両ケースにおいて、反応混合物中には2’−ヒドロキシ−3’−アミン中間体が同様の相対量で未反応のままであった。
【0063】
この実験の結果を証明するために、10gの未精製カップリングエステルによるスケールアップした実験を平行して行い、各実験は、5モル当量の塩酸、80%質量当量の10Pd/C触媒および10%THF水溶液(v/v)を用い、室温で1時間行った。未精製カップリングエステルの使用は、水素化分解反応を遅くした。しかし、3つの保護基総てを完全に除去するために、依然として1時間しか要しなかった。水素と窒素との交換後に、第一の平行反応を過剰のトリエチルアミンの添加と、それに続く1.2モル当量のベンゾイルクロリドの添加という標準の順序に付し、また第二平行反応を1.2モル当量のベンゾイルクロリドの添加と、それに続く過剰のトリエチルアミンの添加という逆の順序に付した。N−ベンゾイル化工程は30分間行われた。
【0064】
標準の添加順序を用いた反応は69.9%の真転化収率を示したが、これに対して逆の添加順序を用いた反応は92.8%の真転化収率を示した。さらに、逆の添加順序を用いた反応は1.1%の不純物をもたらしたが、これは標準の添加順序を用いた反応における8.6%不純物の形成に対し、有意に低下していた。
【0065】
本発明は、かくして、7−O,3’−N−ジ−CBZ,2’−O−を保護されたカップリングエステル中間体からパクリタキセルを形成する改善された方法を提供する。本発明において提供される2工程法は単純であり、短いサイクル時間を有し、過度に多い量の酸および水を必要とせず、しかも副生成物として安息香酸を生成させない。第一工程のための溶媒中における水の濃度の低下、および第二工程における逆の順序の試薬添加の利用は、副生成物の形成を減少させるのに有効であることが見いだされた。
【0066】
以上のように、本発明を、本発明の典型的態様に向けた特定のいくつかのレベルについて説明した。しかしながら、本発明は、従来技術に照らして解されるその特許請求の範囲によって定義されることが理解されるべきであり、その結果本発明の典型的態様には特許請求の範囲に含まれる発明の思想から逸脱することなく、修正または変更がなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による、一般化された、単一容器・2工程法を示す。
【図2】本発明による、保護されたカップリングエステル化合物からのパクリタキセルの典型的な製造を示す。
【図3】異なる量の塩酸の存在下におけるカップリングエステルの水素化分解による2’−ヒドロキシ−3’−アミン形成速度を示すグラフである。
【図4】水素化工程で使用された塩酸濃度との関係において、ベンゾイル化後の混合物中における不純物の相対パーセントを示すグラフである。
Claims (41)
- P1が、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルおよびベンゾイルより成る群から選ばれる、請求項1記載の方法。
- 前記酸が、無機酸および有機酸より成る群から選ばれる、請求項1記載の方法。
- 前記酸が、塩酸である、請求項1記載の方法。
- 前記保護されたカップリングエステル化合物を、該保護されたカップリングエステル化合の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程の前に、溶媒に溶解して第一溶液を形成する、請求項1記載の方法。
- 前記溶媒が、エーテル、エステルおよびアルコールより成る群から選ばれる官能基を含む、請求項5記載の方法。
- 前記溶媒が、THF、酢酸エチル、メタノールおよびイソプロパノールより成る群から選ばれる、請求項6記載の方法。
- 前記第一溶液中に、前記溶媒の10〜25%(v/v)で水が存在する、請求項5記載の方法。
- 前記保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程の前に、前記第一溶液に、5〜20モル当量の前記酸を加える、請求項5記載の方法。
- 前記保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程の前に、前記第一溶液に、水素化触媒を加える、請求項5記載の方法。
- 前記触媒が、パールマン触媒および炭素上パラジウムより成る群から選ばれる、請求項10記載の方法。
- 前記触媒が、Pd10%/C50%(湿性(wet))である、請求項10記載の方法。
- 前記触媒が、前記保護されたカップリングエステル化合物の30〜80%質量当量の量で加えられる、請求項10記載の方法。
- 前記保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程が、水素化分解による脱保護によって行われる、請求項1記載の方法。
- 前記保護されたカップリングエステル化合物をTHFに溶解して第一溶液を形成し、該第一溶液に、該保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程の前に、前記酸および水素化触媒を加えて第一反応混合物を形成し、該第一反応混合物を水素雰囲気下で30〜60分間攪拌することによって、該保護されたカップリングエステル化合物の7−O−位、3’−N−位および2’−O−位を脱保護する工程を行う、請求項1記載の方法。
- 前記第一溶液に、5〜20モル当量の塩酸を加え、且つ該第一溶液に、10%Pd/C50%(湿性(wet))を、保護されたカップリングエステルに対して30〜80%質量当量で加えて、前記第一反応混合物を形成する、請求項15記載の方法。
- 前記第一中間体化合物をベンゾイル化する工程が、ベンゾイルクロリドおよびトリエチルアミンを前記第一中間体化合物と混合して、第二反応混合物を形成することによって行われる、請求項1記載の方法。
- 1.20モル当量の前記ベンゾイルクロリドを、前記第一中間体化合物と混合する、請求項17記載の方法。
- 前記第二反応混合物を、不活性雰囲気下で30分間攪拌する、請求項17記載の方法。
- 前記不活性雰囲気が窒素雰囲気である、請求項19記載の方法。
- P1が、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシメチルおよびベンゾイルより成る群から選ばれる、請求項21記載の方法。
- P1が、ベンジルオキシメチルである、請求項21記載の方法。
- 前記第一反応混合物中に、5〜20モル当量の前記酸が存在する、請求項21記載の方法。
- 前記酸が塩酸である、請求項24記載の方法。
- 前記第一反応混合物中に、前記溶媒の10〜25%(v/v)で水が存在する、請求項21記載の方法。
- 前記溶媒がTHFである、請求項26記載の方法。
- 前記第一反応混合物中に、前記保護されたカップリングエステルの30〜80%質量当量で、前記触媒が存在する、請求項21記載の方法。
- 前記触媒が、パラジウム−炭素触媒およびパールマン触媒より成る群から選ばれる、請求項28記載の方法。
- 前記第一反応混合物中に、前記溶媒の10容量%で水が存在し、該第一反応混合物中に、5モル当量の前記酸が存在し、該第一反応混合物中に、前記保護されたカップリングエステルの80%質量当量で触媒が存在し、該第一反応混合物を水素の雰囲気下、室温で30〜60分間攪拌する、請求項21記載の方法。
- 前記溶媒がTHFであり、前記酸が塩酸であり、前記触媒がPd10%/C50%(湿性(wet))である、請求項30記載の方法。
- 前記ベンゾイル化剤が、ベンゾイルクロリドおよびトリエチルアミンである、請求項21記載の方法。
- 前記ベンゾイル化剤を加える工程が、前記ベンゾイルクロリドを反応容器に加え、その後に前記トリエチルアミンを該反応容器に加えることを含む、請求項32記載の方法。
- 前記ベンゾイル化剤を加える工程が、前記トリエチルアミンを反応容器に加え、その後に前記ベンゾイルクロリドを該反応容器に加えることを含む、請求項32記載の方法。
- 前記第二反応混合物を、不活性雰囲気下で30分間攪拌する、請求項21記載の方法。
- HAが塩酸であり、P1がベンジルオキシメチルである、請求項40記載の化合物。
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