JP2004528459A - ポリアミドを抽出する方法およびそのための装置 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドから低分子量化合物を抽出により取り除く方法に関する。更に、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドから低分子量化合物を抽出により取り除く装置に関する。更に、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを生成する方法およびその方法を実施するための装置に関する。
Description
【0001】
本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドから低分子量成分を抽出により除去する方法(またはプロセス)を提供する。
【0002】
また、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドから低分子量成分を抽出により除去する装置(またはデバイス)を提供する。
【0003】
また、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法、およびそのような方法を実施するための装置を提供する。
【0004】
ポリアミド、その調製法およびそれを工業プラスチックとして使用することは、既知である。それらは、例えば、ジー・ダブル・ベッカー(G.W.Becker)およびディー・ブラウン(D.Braun)によって編集された「プラスチック・ハンドブック(Kunststoff−Handbuch)」(ミュンヘンおよびウィーンのハンサー出版社(Hanser−Verlag)出版(1998年))の第3巻「工業熱可塑性プラスチック(Technische Thermoplaste)」のセクション4の「ポリアミド」に開示されている。
【0005】
本発明は、ポリアミド6およびカプロラクタムに基づくコポリアミドを提供する。ポリアミド6は、カプロラクタムのホモポリマーである。本発明の説明に際して、カプロラクタムに基づくコポリアミドは、カプロラクタムに由来するモノマー単位を少なくとも50重量%含むコポリアミドである。更に、このようなカプロラクタムに基づくコポリアミドは、アミド基を介して結合される他の繰返し単位を含む。例えば、そのような繰返し単位は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとに由来する繰返し単位、即ちポリアミド6,6単位であってよい。また、そのような繰返し単位は、他のジカルボン酸と他のジアミンとに由来する他の繰返し単位であってよい。また、そのような繰返し単位は、アミノカルボン酸に由来する繰返し単位、例えば、ポリアミド11またはポリアミド12の繰返し単位であってよい。
【0006】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、多くの方法によって調製することができる。例えば、それらは、水を用いてカプロラクタムを重合することによって調製できる。このような方法は、最も重要とされる工業スケールの方法である。また、このような方法は、本発明に好ましい方法である。更に、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、アルカリを用いてラクタムを重合すること(alkaline lactam polymerisation)によって調製してもよい。ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法は、例えば、上述の便覧「プラスチック・ハンドブック」の第3巻「工業熱可塑性プラスチック」のセクション4の「ポリアミド」(第22頁〜第75頁)に開示されている。
【0007】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、一般に水を用いてカプロラクタムを重合によって調製される。カプロラクタムに基づくコポリアミドを調製することを目的とする場合には、必要とされるコモノマーが加えられる。コモノマーは、ジカルボン酸とジアミンとの混合物、アミノカルボン酸またはラクタムであることが好ましい。
【0008】
上述の水を用いた重合は、例えば、上述の便覧「プラスチック・ハンドブック」の第3巻「工業熱可塑性プラスチック」のセクション4の「ポリアミド」のサブセクション2.2.2.2.4に記載されており、大気中の酸素を排除して、通常240〜270℃の温度において、通常1〜5重量%の水を加えることによって、大気圧下の重合として一般的に行われる。アミノカルボン酸またはAH塩(アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの塩)等の水を除去する化合物を用いて反応を開始させることができる。そのような反応は、通常、水を用いて開始される。ポリアミドの分子量は、水の含量によって予め決められるものの、実際には、調整剤(regulator)、例えばカルボン酸またはアミンによって、適切に一定にされる。
【0009】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、通常、連続的に調製される。このような連続的な調製法は、いわゆるVKチューブという垂直チューブリアクター(vertical tube reactor)で行われるのが通常である(なお、VKとは「連続的」ということを簡略化したものである)。VKチューブでは、水溶性カプロラクタムが頂部から充填される(必要に応じてコモノマー、また、必要に応じて例えば分子量調整剤等の更なる補助物質と一緒に充填される)。この場合、十分に高い分子量が達成されるように、余分な水は留去することにより取り除かれる。そして、溶融材料が、大気圧にて通常15〜30時間、通常240〜270℃の温度に維持されるチューブを通るように流れることになる。VKチューブの端部において、溶融ポリアミドは、例えばギア・ポンプが用いられることによって、丸い断面を有するダイを糸状に通過するように水槽へと送られた後、冷却され、粒状化される。
【0010】
低分子量化合物は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する間にて副生成物として生成される。このような化合物は、特に、カプロラクタムから生成されるオリゴマー化合物であり、場合によってはコモノマーからも生成されるオリゴマー化合物である。このような低分子量化合物は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの一般的な特性に不利益な影響を及ぼすので通常除去される。特にカプロラクタムの環状ダイマー(または環状二量体)は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの一般的な性質に不利益な影響を及ぼす。
【0011】
ポリアミドから調製される製品、例えば射出成形品またはフィルム等は、低分子量フラクションが表面に拡散し、その表面でベトベトしたフィルムを形成するので、低分子量フラクションによって品質が不十分となってしまう。更に、表面に拡散する低分子量フラクションによって、ポリアミドにより形成されるプロダクトの表面の品質が低下する。光沢が減り、色自体が損なわれることになる。
【0012】
フィルムを形成するように処理することを目的とするポリアミドは、低分子量化合物の濃度が特に低いことが必要とされる。重合の直後、ポリアミド6およびカプロラクタムに基づくコポリアミドは、5重量%よりも多い割合の低分子量化合物(カプロラクタムおよびそのオリゴマーおよび場合によってはコモノマーのオリゴマー)を典型的に含む。処理して射出成形品を形成することを目的とされるポリアミドは、1重量%よりも少ない低分子量化合物の濃度、好ましくは0.5重量%よりも少ない低分子量化合物の濃度を通常有する。フィルムを形成するように処理することを目的とされるポリアミドは、更により厳しい条件が課せられるのが通常である。この場合、低分子量化合物の濃度を0.1重量%、より好ましくは0.05重量%を超えないようにしなければならない。
【0013】
低分子量化合物は、例えば抽出によって取り除くことができる。抽出は、水または主に水を含む液体を用いることによって通常行われる。
【0014】
重合後に抽出が行われた後、得られるポリアミド6または得られるカプロラクタムに基づくコポリアミドは、通常乾燥される。このような乾燥は、例えば不活性ガスのストリーム中で90〜130℃の温度で行われる。例えば、窒素を用いることができる。特別の用途の場合、いわゆる後縮合(post−condensation)によって、乾燥温度を例えば180〜190℃に増加させることによって、ポリアミドの分子量を更に増加させることができる。
【0015】
上述の1工程のVKチューブの代わりとして、複数(もしくは多数)工程のVKチューブが含まれるプラントまたは上流に圧力がより低い予備重合工程(prepolymerisation)が組み込まれたプラントを用いることができる。
【0016】
従来技術では、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの抽出は、大気圧における水の沸点より低い温度(即ち、100℃より低い温度)にて水を用いてバッチ式または連続式で行われる。
【0017】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの抽出が含まれる、ポリアミド6およびカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する従来技術で開示される方法は、不利益な点を有する。特に、既知の方法の1つの不利益な点は、抽出されたポリアミド中の低分子量フラクションの特定の濃度に達しないようにするために、抽出デバイスに大きい滞留時間が必要とされることである。このことは、抽出プロセスの空間−時間収率(または空時収率)が低いことを意味する。更に、既知の工業プロセスによる抽出は、しばしば、それほど十分といえない結果となっている。特に、ポリアミド中に残存する低分子量物質の割合は高すぎる。特に、ポリアミド中に残存するカプロラクタムの環状ダイマーの割合は高すぎる。
【0018】
更に、従来技術より既知の抽出方法は、抽出されるポリアミドの単位重量当たりに必要とされる水の量が多すぎるという不利益な点を有する。抽出するための水の量がより少ないことは、使用する設備をより小さいスケールに設計でき、また、プロセスのコストがより少なくなるので望ましいことである。向流システムで抽出方法を実施することは有利である。ポリアミド6の密度およびカプロラクタムに基づくコポリアミドの密度は、水の密度または抽出に用いられる水性液の密度よりも大きいので、ポリアミドが重力の作用下で下方向に移動するようにして向流抽出がより適切に行われる一方、抽出に用いられる液体(当該液体は通常水である)は、重力に逆らうようにしてポリアミドに対して向流に上方向に通されることになる。このような手法が用いられる際、ポリアミドの単位重量当たりに用いる水の量が少ない場合、抽出された低分子量化合物を含む水の重量は、抽出工程の最後では、用いられる水の量が少ないほど、大きくなるという不利益な点が存在する。このように低分子量化合物が含まれることによって、水と抽出された低分子化合物との混合物の密度が増加する。上述の向流方式では、低い密度を有する液体層(抽出される化合物を少ない割合で有する水)が高い密度を有する液体層の下に存在することになる。従って、重力の作用によって、頂部に存在する高い密度を有する液体層が、その下に存在する低い密度を有する液体層へと移動するので不利益な逆混合がもたらされることになる。このようにして、向流プロセスが阻害され、抽出工程の効率が減少することになる。それゆえ、本発明では、抽出工程の間で生じる密度差によって抽出が阻害されるという上述のような問題点を回避する方法が好ましい。
【0019】
本発明を説明するに際して、時間−空間収率とは、単位時間当たりおよび装置の単位体積当たりのポリアミドを抽出する装置を通過するポリアミド量と解される。
【0020】
従って、本発明の目的は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する改善された方法を提供することに基づいており、それによって、上述の従来技術の不利益な点を解消し、高い空間−時間収率で抽出を実施することができ、従って、抽出の後、ポリアミド中の低分子量物質、特にカプロラクタムおよびオリゴマーの濃度が小さいものを生成することができる。
【0021】
このような目的は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する方法によって達成され、そこでは、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドが、少なくとも80重量%の水を含む液体を用いて、大気圧におけるその液体の沸点より高い温度で抽出される。
【0022】
更に、本発明には、ポリアミドまたはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する装置が含まれる。当該装置は、予備抽出機(1)(または抽出を予め行う装置、preextractor)、加圧抽出機(2)、および予備抽出機の下流に設けられ、抽出されるポリアミドを予備抽出機から加圧抽出機に移送できるインゼクター(5)を含む。
【0023】
更に、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する本発明の装置を含む、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する装置を提供する。
【0024】
このような抽出プロセスではよくあることであるが、大気圧で液体の沸点よりも高い温度で抽出操作を実施するには、抽出液体が蒸発しないように高圧下で抽出を実施する必要がある。
【0025】
本発明の説明では、「高圧下」という用語は、圧力が1バールよりも高いことを意味する。
【0026】
本発明の方法は多くの利点を有する。本発明の抽出方法は、高い空間−時間収率で進行する。本発明の抽出方法では、ポリアミドの単位重量当たりの水が僅かな量だけ必要とされる。このような抽出方法によって、低分子量不純物を非常に少ない割合で含んだポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドがもたらされる。特に、抽出されたポリアミド6または抽出されたカプロラクタムに基づくコポリアミド中のカプロラクタムの環状ダイマーは、非常に少ない割合である。空間−時間収率が小さいために、小さいデバイスにおいて工業的スケールで本抽出方法を実施することができる。従って、本発明の抽出方法は、従来技術で既知の方法よりも経済的に実施することができ、コスト的に効率がよいものである。更に、本発明の方法は、粒状形態で抽出プロセスに通常供給されるポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドが、抽出の間で一体的に付着せず、また塊を形成しないという利点を有する(なお、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを、長時間、高い温度で水性液体と接触させる場合にはそのような付着や塊形成が通常生じる)。本発明の方法では、付着または塊の形成が生じないように、達する上限温度を慎重に制限することによって、上述の利点が達成される。
【0027】
本発明の抽出方法は、向流システムで実施される場合、抽出液体の密度差に起因する不利益な逆混合によっては損なわれないという利点を有する。
【0028】
抽出後に水を再処理する必要があるので、抽出の間での水の消費が減じることも有利である。これは、水を蒸発により取り出すことによって通常実施される。そして、留去する水を抽出プロセスの新しい水として再使用することができる。蒸留ベッセルに残存する相当に濃縮された混合物であって、水、カプロラクタム、そのオリゴマーおよび他の低分子量化合物から成る混合物は、ポリアミド調製プロセスに供給することができる。または、そのような混合物は廃棄物として処分されなければならない。
【0029】
本発明の抽出用装置は、多くの利点を有する。密度差による逆混合に関する問題を生じさせることなく、連続的な抽出プロセスが簡単になる。
【0030】
本発明の抽出装置によって、空間−時間収率を高くすることができ、抽出後で低分子量化合物の残留濃度を低くすることができ、また、抽出の間でポリアミドが粘着することまたはポリアミドの塊が形成されることが防止される。
【0031】
本発明の方法は、連続的に実施することが好ましい。
【0032】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドと液体とは、相互に向流で通される(または流される)ことが好ましい。
【0033】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、重力の影響下、下方向に移動することが好ましく、それに対して向流の液体は、重力に反して上方向に通されることが好ましい。
【0034】
液体が流れる方向に反して逆混合されるという不利益なことが実質的に生じないように、抽出プロセスの開始時と抽出プロセスの終了時との液体の密度差を十分に小さく保つことが好ましい。
【0035】
2工程の抽出を実施することによって、その密度差を小さく保つことを達成することが好ましい。液体の沸点よりも低い温度で実施され得る第1工程で、抽出可能成分の幾らかを取り除き、液体の沸点よりも高い温度で実施される第2工程で、ポリアミドに対する水の浴比(または比率、liquor ratio)が小さくても、密度差を小さいままに維持する。
【0036】
このようなプロセスでは、抽出されるポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの1kg当たりに対して使用される液体の量は、1〜3kg、好ましくは2〜3kgであることが好ましい。
【0037】
液体は、実質的に水から成ることが好ましい。
【0038】
抽出方法は、100〜130℃の温度で実施することが好ましい。
【0039】
特に好ましい方法は、120℃〜125℃の温度にて、好ましくは1kg:2kg〜1kg:3kgのポリアミド:液体の浴比でもって、好ましくは10〜14時間、抽出を実施する方法である。
【0040】
好ましい装置では、第2インゼクター(9)が、加圧抽出機の下流に配置されており、その結果、加圧抽出機から生成物を取り出すように移送できるようになっている。
【0041】
このような場合、装置は、加圧抽出機(2)の上端部から予備抽出機(1)に液体を運ぶために、パイプ(4)を含む装置が好ましい。
【0042】
本発明の装置で本発明の方法を行うことが好ましい。
【0043】
また、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法であって、本発明の方法のいずれか1つによって行われる抽出を含む方法を提供する。
【0044】
本発明の好ましいポリアミドは、ポリアミド6、およびカプロラクタムに基づくコポリアミドであって、カプロラクタムに基づくモノマー単位を少なくとも90重量%含むコポリアミドから成る群から選択される。残りの10重量%は、ポリアミド6,6、ポリアミド11またはポリアミド12の繰返し単位に由来することが好ましい。
【0045】
本発明では、ポリアミド6が特に好ましい。
【0046】
本発明では、少なくとも80重量%が水から成る液体を用いて、抽出を行うことが好ましい。抽出は水で行うことが好ましい。脱塩水(またはミネラルが除去された水、demineralised water)が特に好ましい。
【0047】
いわゆるインゼクターは、好ましくは本発明のプロセスに存在する水中のポリアミド粒状物の懸濁液を運ぶのに用いられることが好ましい。インゼクターは、吸引作用を用いて操作されるポンピング・コンプレッサー(または羽根車を有するコンプレッサー、pumping compressor)であり、エゼクターとも呼ばれる。そのようなインゼクターは、固形物用のウォータージェットポンプ(water jet solid pump)のグループに属する。このようなインゼクターでは、輸送物質(または移送物質)として水が用いられる。水は、輸送すべきポリアミド粒状物を輸送する。ポリアミド粒状物は、水中の懸濁液としてインゼクターから出ることになる。インゼクターによる輸送は、大気圧下の領域から圧力のより高い領域に物質を問題なく移送できるという利点を有する。例えばセルラー・ホイール・スルース(cellular wheel sluice)等の他の移送デバイスが使用される場合では、低い圧力の領域から高い圧力の領域へと水中のポリアミド粒状物の懸濁液を移送することができない。輸送プロセスの間でインゼクターによって移送される量は、水の流れまたはインゼクターの下流の背圧(counterpressure)によって調節することができる。本発明の方法では、輸送される方向に1〜2バール高い圧力差、特に1.5バール高い圧力差が典型的に存在する。更に、インゼクターは、可動パーツを有さず、それゆえ、簡便でコスト的に効率の良い方法で作ることができ、また、磨耗することがほとんどないという利点を有する。驚くべきことに、移送される量を調節するために、従来技術で必要とされる計量デバイスをインゼクターの上流に取り付ける必要はない。
【0048】
インゼクターを用いて、(輸送媒体として水を用いて)水中のプラスチック粒状物の懸濁液、好ましくはポリアミド粒状物の懸濁液を移送できることについては従来技術でこれまで開示されていない。更に、圧力のより低い領域から圧力のより高い領域へと移送できることも開示されていない。更に、輸送物質の流れ(即ち、単位時間当りに輸送ストリームとして供給される水の量)、または、懸濁液を抜き出すインゼクターの側部に作用する圧力によって、移送される量を調節することができることも開示されていない。移送されるプラスチック粒状物は、無水状態、即ち乾燥させることができ、または、そのようなプラスチック粒状物は輸送する前に少ない割合の水と混合することができる。
【0049】
従って、本発明の別の要旨として、本発明は、輸送媒体として水を用いるインゼクターを用いることによって、水中のプラスチック粒状物の懸濁液、好ましくはポリアミド粒状物の懸濁液を移送する方法を提供する。
【0050】
圧力のより低い領域から圧力のより高い領域へと材料を移送することが好ましい。圧力差は、好ましくは0.5〜5バール、特に好ましくは1〜1.5バールであることが好ましい。
【0051】
圧力のより低い領域から圧力のより高い領域に材料が移送される場合、本方法の好ましい態様は、水の輸送流れによって移送される量が調節されることが含まれる。この場合の本方法の別の好ましい態様は、懸濁液を抜き出すインゼクターの側部に作用する圧力によって、移送される量が調節される態様である。このような態様は、例えば圧力保持バルブを用いることによって達成することができ、その結果、材料が送り出される領域と材料が送り込まれる領域との間の圧力差がどのようなものであっても、輸送を調節することができる。
【0052】
図面は、本発明の好ましい態様を示す。
【0053】
重合プロセスからの未抽出のポリアミド粒状物3は、大気圧下で操作される予備抽出機1に供給される。水4が抽出媒体として用いられる。この水は加圧抽出機2から生じる。ポリアミド粒状物は、輸送媒体として水6を用いて操作されるインゼクター5を経由して、デバイス7において水が分離された後、ポリアミド粒状物に対して向流の水8で操作される加圧抽出機2に供給される。抽出されたポリアミドは、第2インゼクター9によって加圧抽出機から排出された後、回収され乾燥される。輸送媒体の流れによって、または、懸濁液を抜き出すのに用いられるパイプ内の圧力によって、インゼクターで移送される量を調節することができる。このような目的のために、そのようなパイプ(図面では図示せず)には圧力保持バルブが組み込まれている。
【0054】
図1の装置は、生じる低分子量化合物の幾らかを予備抽出機1で除去することによって、加圧抽出機2では、ポリアミドに対する水の浴比が小さくても、抽出液体の密度差に起因する不利益な逆混合が生じないという利点を有する。
【0055】
実施例1および実施例2
以下の実施例1および実施例2は、連続操作の下、図1の装置で得られたものである。挙げられる数値は、試験過程を通じて見られた範囲である。約8.5〜10重量%の低分子量化合物(抽出物)の濃度を有するポリアミド6を、95℃、大気圧で操作された予備抽出機に供給した。予備抽出機の滞留時間は3時間であった。
【0056】
実施例1
ポリアミドは、予備抽出機に通した後、100〜120℃で操作された加圧抽出機に送った。加圧抽出機の滞留時間は、6時間であった。水とポリアミドとの比は、1.3:1であった。加圧抽出機を経た後の抽出物濃度は、0.3〜0.6重量%であった。ダイマー濃度は、予備抽出機へ送られる前の0.6〜1重量%から加圧抽出機を経た後の0.075〜0.3重量%にまで下がった。
【0057】
実施例2
ポリアミドは、予備抽出機を通過した後、120〜125℃で操作された加圧抽出機に送った。加圧抽出機の滞留時間は、10〜14時間であった。水とポリアミドとの比は、2.5:1であった。加圧抽出機を経た後の抽出物濃度は、0.25〜0.4重量%であった。ダイマー濃度は、予備抽出機へ送られる前の0.4〜0.8重量%から加圧抽出機を経た後の0.01〜0.03重量%にまで下がった。
【0058】
実施例1および実施例2では、少ない水の投入量であっても、射出成形分野で常套的に用いるのに十分な高性能な抽出プロセスを達成できることが示される。実施例2においては、水の量、温度および滞留時間が増加することによって、特に濃度の低い抽出物が必要とされる食料のパッケージ用フィルム領域に適用するのに適した抽出プロセス性能がもたらされる。
【0059】
他の実施例
試験シリーズ3〜6
水およびカプロラクタムを含む水を用いてポリアミド6(PA6)の抽出を行う実験室スケールの試験を以下で説明する。
【0060】
これらの試験では、本発明の方法および本発明の装置の利点が示される。
【0061】
試験は、未抽出のPA6と比較することで、真空脱ラクタムPA6(vacuum delactamised PA6)からのカプロラクタムの環状ダイマーの抽出速度を測定することに関する。「真空脱ラクタム」とは、高温にて真空下で蒸留することによって、幾らかのラクタムがPA6から取り除かれたことを意味する。
【0062】
試験の結果は、以下のように要約することができる:
【0063】
大部分のモノマーのカプロラクタムが既に取り除かれたPA6(真空脱ラクタムPA6)からダイマーおよびより分子量が多いオリゴマー(higher oligomer)を抽出する速度は、温度に強く依存する。カプロラクタムを含むPA6(未抽出PA6)からオリゴマーが抽出される速度と比較することによって、次のことが得られる:抽出温度が95℃では、ダイマーは、未抽出PA6よりも相当にゆっくりと真空でラクタムが除かれたPA6から抽出される一方、抽出温度が125℃では、オリゴマーの抽出は、上述の双方の種類のPA6から等しく迅速に進行する。
【0064】
このような結果は、大部分の割合のカプロラクタムが予め抽出される予備抽出と、引き続いて行われる、特にオリゴマーの割合を必要な程度にまで減少させる必要がある最終的な抽出のために高圧下で行われる向流抽出とから成る2工程抽出の設計にとって重要である。このような種類の抽出設計は、1工程の水による抽出の間で生じる逆混合(当該逆混合は密度勾配によって引き起こされる)の問題は生じることがないという利点を有する。このことは、抽出されるPA6の単位重量当たりの水の比消費量がより少なくなり、それによって、エネルギーが節約され、抽出プロセスの空間−時間収率が増加するという最終的な効果がもたらされることを意味する。
【0065】
このような結果によると、ラクタムが除去されたPA6からであってもダイマーの抽出は十分迅速に進行するので、かかる抽出設計を実現することができる。水による予備抽出プロセスの代わりに、ラクタムを蒸発させるプロセスまたは真空でラクタムを除去させるプロセスを適用することも可能である。
【0066】
試験シリーズ3:真空でラクタムが除去されたポリアミド6の95℃における抽出
50gの真空でラクタムが除去されたPA6と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に95℃にまで加熱した。粒状物は、吸引濾過で分離後、100gの水で洗浄した。乾燥した粒状物中のモノマーおよびダイマーの濃度は、HPLCによって測定した。その結果を以下の表にまとめた。
【0067】
【表1】
【0068】
試験シリーズ4:真空でラクタムが除去されたPA6の125℃における抽出
50gの真空でラクタムが除去されたPA6と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に125℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ3と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0069】
【表2】
【0070】
試験シリーズ5:未抽出PA6の95℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に95℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ3と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0071】
【表3】
【0072】
試験シリーズ6:未抽出ポリアミドの125℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に125℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ3と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0073】
【表4】
【0074】
他の実施例
試験シリーズ7およびそれに続く試験シリーズ
高圧下の抽出に関する試験シリーズ7〜9は、95〜125℃の温度範囲で行った。125℃は約2.5バールの過圧(または大気圧を超える圧力)に相当するものであった。
【0075】
これらの試験シリーズの出発材料は、重合後に生成するものと同様に、未抽出PA6であった。1:10という抽出されるPA6と抽出水との比によって、連続抽出で抽出媒体中のモノマーおよびオリゴマーは僅かに濃度が増加しただけであり、それゆえ、抽出の過程は、主に、抽出の速度論で決まり、粒状物と抽出媒体との間のモノマーおよびオリゴマーの分配平衡は、抽出の最後の段階でのみ重要であった。
【0076】
試験シリーズ7:未抽出PA6の95℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に95℃にまで加熱した。粒状物は、吸引濾過した後、水で洗浄した。90℃で乾燥された粒状物中のモノマーおよびダイマーの濃度は、HPLCによって測定した。その結果を以下の表にまとめた。
【0077】
【表5】
【0078】
試験シリーズ8:未抽出PA6の110℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間オートクレーブで110℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ7と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0079】
【表6】
【0080】
試験シリーズ9:未抽出PA6の125℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間オートクレーブで125℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ7と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0081】
【表7】
【0082】
抽出温度を95℃から110℃まで上げた後、125℃にまで上げることによって、抽出速度が相当に増加することが試験シリーズ7〜9から極めて明らかである。このことは、カプロラクタムおよびダイマーに等しく当てはまることである。従って、所定の試験装置の下、125℃にて、1時間の抽出時間の後では、射出成形品質(または射出成形法の性能)に相当する抽出性能である0.36%のカプロラクタム濃度および0.073%のダイマー濃度が達成される。これとは対照的に、95℃の抽出時間では4〜8時間後にしか、それに相当するような値が得られない。
【0083】
試験シリーズ7〜9では、95℃から110℃に、そして、125℃にまで変化すると抽出速度が大きく増加することが示される。135℃の温度では、粒状物は塊を形成する。それゆえ、135℃では抽出を行うことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する本発明の好ましい装置を示す。
本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドから低分子量成分を抽出により除去する方法(またはプロセス)を提供する。
【0002】
また、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドから低分子量成分を抽出により除去する装置(またはデバイス)を提供する。
【0003】
また、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法、およびそのような方法を実施するための装置を提供する。
【0004】
ポリアミド、その調製法およびそれを工業プラスチックとして使用することは、既知である。それらは、例えば、ジー・ダブル・ベッカー(G.W.Becker)およびディー・ブラウン(D.Braun)によって編集された「プラスチック・ハンドブック(Kunststoff−Handbuch)」(ミュンヘンおよびウィーンのハンサー出版社(Hanser−Verlag)出版(1998年))の第3巻「工業熱可塑性プラスチック(Technische Thermoplaste)」のセクション4の「ポリアミド」に開示されている。
【0005】
本発明は、ポリアミド6およびカプロラクタムに基づくコポリアミドを提供する。ポリアミド6は、カプロラクタムのホモポリマーである。本発明の説明に際して、カプロラクタムに基づくコポリアミドは、カプロラクタムに由来するモノマー単位を少なくとも50重量%含むコポリアミドである。更に、このようなカプロラクタムに基づくコポリアミドは、アミド基を介して結合される他の繰返し単位を含む。例えば、そのような繰返し単位は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとに由来する繰返し単位、即ちポリアミド6,6単位であってよい。また、そのような繰返し単位は、他のジカルボン酸と他のジアミンとに由来する他の繰返し単位であってよい。また、そのような繰返し単位は、アミノカルボン酸に由来する繰返し単位、例えば、ポリアミド11またはポリアミド12の繰返し単位であってよい。
【0006】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、多くの方法によって調製することができる。例えば、それらは、水を用いてカプロラクタムを重合することによって調製できる。このような方法は、最も重要とされる工業スケールの方法である。また、このような方法は、本発明に好ましい方法である。更に、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、アルカリを用いてラクタムを重合すること(alkaline lactam polymerisation)によって調製してもよい。ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法は、例えば、上述の便覧「プラスチック・ハンドブック」の第3巻「工業熱可塑性プラスチック」のセクション4の「ポリアミド」(第22頁〜第75頁)に開示されている。
【0007】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、一般に水を用いてカプロラクタムを重合によって調製される。カプロラクタムに基づくコポリアミドを調製することを目的とする場合には、必要とされるコモノマーが加えられる。コモノマーは、ジカルボン酸とジアミンとの混合物、アミノカルボン酸またはラクタムであることが好ましい。
【0008】
上述の水を用いた重合は、例えば、上述の便覧「プラスチック・ハンドブック」の第3巻「工業熱可塑性プラスチック」のセクション4の「ポリアミド」のサブセクション2.2.2.2.4に記載されており、大気中の酸素を排除して、通常240〜270℃の温度において、通常1〜5重量%の水を加えることによって、大気圧下の重合として一般的に行われる。アミノカルボン酸またはAH塩(アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの塩)等の水を除去する化合物を用いて反応を開始させることができる。そのような反応は、通常、水を用いて開始される。ポリアミドの分子量は、水の含量によって予め決められるものの、実際には、調整剤(regulator)、例えばカルボン酸またはアミンによって、適切に一定にされる。
【0009】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、通常、連続的に調製される。このような連続的な調製法は、いわゆるVKチューブという垂直チューブリアクター(vertical tube reactor)で行われるのが通常である(なお、VKとは「連続的」ということを簡略化したものである)。VKチューブでは、水溶性カプロラクタムが頂部から充填される(必要に応じてコモノマー、また、必要に応じて例えば分子量調整剤等の更なる補助物質と一緒に充填される)。この場合、十分に高い分子量が達成されるように、余分な水は留去することにより取り除かれる。そして、溶融材料が、大気圧にて通常15〜30時間、通常240〜270℃の温度に維持されるチューブを通るように流れることになる。VKチューブの端部において、溶融ポリアミドは、例えばギア・ポンプが用いられることによって、丸い断面を有するダイを糸状に通過するように水槽へと送られた後、冷却され、粒状化される。
【0010】
低分子量化合物は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する間にて副生成物として生成される。このような化合物は、特に、カプロラクタムから生成されるオリゴマー化合物であり、場合によってはコモノマーからも生成されるオリゴマー化合物である。このような低分子量化合物は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの一般的な特性に不利益な影響を及ぼすので通常除去される。特にカプロラクタムの環状ダイマー(または環状二量体)は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの一般的な性質に不利益な影響を及ぼす。
【0011】
ポリアミドから調製される製品、例えば射出成形品またはフィルム等は、低分子量フラクションが表面に拡散し、その表面でベトベトしたフィルムを形成するので、低分子量フラクションによって品質が不十分となってしまう。更に、表面に拡散する低分子量フラクションによって、ポリアミドにより形成されるプロダクトの表面の品質が低下する。光沢が減り、色自体が損なわれることになる。
【0012】
フィルムを形成するように処理することを目的とするポリアミドは、低分子量化合物の濃度が特に低いことが必要とされる。重合の直後、ポリアミド6およびカプロラクタムに基づくコポリアミドは、5重量%よりも多い割合の低分子量化合物(カプロラクタムおよびそのオリゴマーおよび場合によってはコモノマーのオリゴマー)を典型的に含む。処理して射出成形品を形成することを目的とされるポリアミドは、1重量%よりも少ない低分子量化合物の濃度、好ましくは0.5重量%よりも少ない低分子量化合物の濃度を通常有する。フィルムを形成するように処理することを目的とされるポリアミドは、更により厳しい条件が課せられるのが通常である。この場合、低分子量化合物の濃度を0.1重量%、より好ましくは0.05重量%を超えないようにしなければならない。
【0013】
低分子量化合物は、例えば抽出によって取り除くことができる。抽出は、水または主に水を含む液体を用いることによって通常行われる。
【0014】
重合後に抽出が行われた後、得られるポリアミド6または得られるカプロラクタムに基づくコポリアミドは、通常乾燥される。このような乾燥は、例えば不活性ガスのストリーム中で90〜130℃の温度で行われる。例えば、窒素を用いることができる。特別の用途の場合、いわゆる後縮合(post−condensation)によって、乾燥温度を例えば180〜190℃に増加させることによって、ポリアミドの分子量を更に増加させることができる。
【0015】
上述の1工程のVKチューブの代わりとして、複数(もしくは多数)工程のVKチューブが含まれるプラントまたは上流に圧力がより低い予備重合工程(prepolymerisation)が組み込まれたプラントを用いることができる。
【0016】
従来技術では、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの抽出は、大気圧における水の沸点より低い温度(即ち、100℃より低い温度)にて水を用いてバッチ式または連続式で行われる。
【0017】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの抽出が含まれる、ポリアミド6およびカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する従来技術で開示される方法は、不利益な点を有する。特に、既知の方法の1つの不利益な点は、抽出されたポリアミド中の低分子量フラクションの特定の濃度に達しないようにするために、抽出デバイスに大きい滞留時間が必要とされることである。このことは、抽出プロセスの空間−時間収率(または空時収率)が低いことを意味する。更に、既知の工業プロセスによる抽出は、しばしば、それほど十分といえない結果となっている。特に、ポリアミド中に残存する低分子量物質の割合は高すぎる。特に、ポリアミド中に残存するカプロラクタムの環状ダイマーの割合は高すぎる。
【0018】
更に、従来技術より既知の抽出方法は、抽出されるポリアミドの単位重量当たりに必要とされる水の量が多すぎるという不利益な点を有する。抽出するための水の量がより少ないことは、使用する設備をより小さいスケールに設計でき、また、プロセスのコストがより少なくなるので望ましいことである。向流システムで抽出方法を実施することは有利である。ポリアミド6の密度およびカプロラクタムに基づくコポリアミドの密度は、水の密度または抽出に用いられる水性液の密度よりも大きいので、ポリアミドが重力の作用下で下方向に移動するようにして向流抽出がより適切に行われる一方、抽出に用いられる液体(当該液体は通常水である)は、重力に逆らうようにしてポリアミドに対して向流に上方向に通されることになる。このような手法が用いられる際、ポリアミドの単位重量当たりに用いる水の量が少ない場合、抽出された低分子量化合物を含む水の重量は、抽出工程の最後では、用いられる水の量が少ないほど、大きくなるという不利益な点が存在する。このように低分子量化合物が含まれることによって、水と抽出された低分子化合物との混合物の密度が増加する。上述の向流方式では、低い密度を有する液体層(抽出される化合物を少ない割合で有する水)が高い密度を有する液体層の下に存在することになる。従って、重力の作用によって、頂部に存在する高い密度を有する液体層が、その下に存在する低い密度を有する液体層へと移動するので不利益な逆混合がもたらされることになる。このようにして、向流プロセスが阻害され、抽出工程の効率が減少することになる。それゆえ、本発明では、抽出工程の間で生じる密度差によって抽出が阻害されるという上述のような問題点を回避する方法が好ましい。
【0019】
本発明を説明するに際して、時間−空間収率とは、単位時間当たりおよび装置の単位体積当たりのポリアミドを抽出する装置を通過するポリアミド量と解される。
【0020】
従って、本発明の目的は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する改善された方法を提供することに基づいており、それによって、上述の従来技術の不利益な点を解消し、高い空間−時間収率で抽出を実施することができ、従って、抽出の後、ポリアミド中の低分子量物質、特にカプロラクタムおよびオリゴマーの濃度が小さいものを生成することができる。
【0021】
このような目的は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する方法によって達成され、そこでは、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドが、少なくとも80重量%の水を含む液体を用いて、大気圧におけるその液体の沸点より高い温度で抽出される。
【0022】
更に、本発明には、ポリアミドまたはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する装置が含まれる。当該装置は、予備抽出機(1)(または抽出を予め行う装置、preextractor)、加圧抽出機(2)、および予備抽出機の下流に設けられ、抽出されるポリアミドを予備抽出機から加圧抽出機に移送できるインゼクター(5)を含む。
【0023】
更に、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する本発明の装置を含む、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する装置を提供する。
【0024】
このような抽出プロセスではよくあることであるが、大気圧で液体の沸点よりも高い温度で抽出操作を実施するには、抽出液体が蒸発しないように高圧下で抽出を実施する必要がある。
【0025】
本発明の説明では、「高圧下」という用語は、圧力が1バールよりも高いことを意味する。
【0026】
本発明の方法は多くの利点を有する。本発明の抽出方法は、高い空間−時間収率で進行する。本発明の抽出方法では、ポリアミドの単位重量当たりの水が僅かな量だけ必要とされる。このような抽出方法によって、低分子量不純物を非常に少ない割合で含んだポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドがもたらされる。特に、抽出されたポリアミド6または抽出されたカプロラクタムに基づくコポリアミド中のカプロラクタムの環状ダイマーは、非常に少ない割合である。空間−時間収率が小さいために、小さいデバイスにおいて工業的スケールで本抽出方法を実施することができる。従って、本発明の抽出方法は、従来技術で既知の方法よりも経済的に実施することができ、コスト的に効率がよいものである。更に、本発明の方法は、粒状形態で抽出プロセスに通常供給されるポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドが、抽出の間で一体的に付着せず、また塊を形成しないという利点を有する(なお、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを、長時間、高い温度で水性液体と接触させる場合にはそのような付着や塊形成が通常生じる)。本発明の方法では、付着または塊の形成が生じないように、達する上限温度を慎重に制限することによって、上述の利点が達成される。
【0027】
本発明の抽出方法は、向流システムで実施される場合、抽出液体の密度差に起因する不利益な逆混合によっては損なわれないという利点を有する。
【0028】
抽出後に水を再処理する必要があるので、抽出の間での水の消費が減じることも有利である。これは、水を蒸発により取り出すことによって通常実施される。そして、留去する水を抽出プロセスの新しい水として再使用することができる。蒸留ベッセルに残存する相当に濃縮された混合物であって、水、カプロラクタム、そのオリゴマーおよび他の低分子量化合物から成る混合物は、ポリアミド調製プロセスに供給することができる。または、そのような混合物は廃棄物として処分されなければならない。
【0029】
本発明の抽出用装置は、多くの利点を有する。密度差による逆混合に関する問題を生じさせることなく、連続的な抽出プロセスが簡単になる。
【0030】
本発明の抽出装置によって、空間−時間収率を高くすることができ、抽出後で低分子量化合物の残留濃度を低くすることができ、また、抽出の間でポリアミドが粘着することまたはポリアミドの塊が形成されることが防止される。
【0031】
本発明の方法は、連続的に実施することが好ましい。
【0032】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドと液体とは、相互に向流で通される(または流される)ことが好ましい。
【0033】
ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドは、重力の影響下、下方向に移動することが好ましく、それに対して向流の液体は、重力に反して上方向に通されることが好ましい。
【0034】
液体が流れる方向に反して逆混合されるという不利益なことが実質的に生じないように、抽出プロセスの開始時と抽出プロセスの終了時との液体の密度差を十分に小さく保つことが好ましい。
【0035】
2工程の抽出を実施することによって、その密度差を小さく保つことを達成することが好ましい。液体の沸点よりも低い温度で実施され得る第1工程で、抽出可能成分の幾らかを取り除き、液体の沸点よりも高い温度で実施される第2工程で、ポリアミドに対する水の浴比(または比率、liquor ratio)が小さくても、密度差を小さいままに維持する。
【0036】
このようなプロセスでは、抽出されるポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドの1kg当たりに対して使用される液体の量は、1〜3kg、好ましくは2〜3kgであることが好ましい。
【0037】
液体は、実質的に水から成ることが好ましい。
【0038】
抽出方法は、100〜130℃の温度で実施することが好ましい。
【0039】
特に好ましい方法は、120℃〜125℃の温度にて、好ましくは1kg:2kg〜1kg:3kgのポリアミド:液体の浴比でもって、好ましくは10〜14時間、抽出を実施する方法である。
【0040】
好ましい装置では、第2インゼクター(9)が、加圧抽出機の下流に配置されており、その結果、加圧抽出機から生成物を取り出すように移送できるようになっている。
【0041】
このような場合、装置は、加圧抽出機(2)の上端部から予備抽出機(1)に液体を運ぶために、パイプ(4)を含む装置が好ましい。
【0042】
本発明の装置で本発明の方法を行うことが好ましい。
【0043】
また、本発明は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法であって、本発明の方法のいずれか1つによって行われる抽出を含む方法を提供する。
【0044】
本発明の好ましいポリアミドは、ポリアミド6、およびカプロラクタムに基づくコポリアミドであって、カプロラクタムに基づくモノマー単位を少なくとも90重量%含むコポリアミドから成る群から選択される。残りの10重量%は、ポリアミド6,6、ポリアミド11またはポリアミド12の繰返し単位に由来することが好ましい。
【0045】
本発明では、ポリアミド6が特に好ましい。
【0046】
本発明では、少なくとも80重量%が水から成る液体を用いて、抽出を行うことが好ましい。抽出は水で行うことが好ましい。脱塩水(またはミネラルが除去された水、demineralised water)が特に好ましい。
【0047】
いわゆるインゼクターは、好ましくは本発明のプロセスに存在する水中のポリアミド粒状物の懸濁液を運ぶのに用いられることが好ましい。インゼクターは、吸引作用を用いて操作されるポンピング・コンプレッサー(または羽根車を有するコンプレッサー、pumping compressor)であり、エゼクターとも呼ばれる。そのようなインゼクターは、固形物用のウォータージェットポンプ(water jet solid pump)のグループに属する。このようなインゼクターでは、輸送物質(または移送物質)として水が用いられる。水は、輸送すべきポリアミド粒状物を輸送する。ポリアミド粒状物は、水中の懸濁液としてインゼクターから出ることになる。インゼクターによる輸送は、大気圧下の領域から圧力のより高い領域に物質を問題なく移送できるという利点を有する。例えばセルラー・ホイール・スルース(cellular wheel sluice)等の他の移送デバイスが使用される場合では、低い圧力の領域から高い圧力の領域へと水中のポリアミド粒状物の懸濁液を移送することができない。輸送プロセスの間でインゼクターによって移送される量は、水の流れまたはインゼクターの下流の背圧(counterpressure)によって調節することができる。本発明の方法では、輸送される方向に1〜2バール高い圧力差、特に1.5バール高い圧力差が典型的に存在する。更に、インゼクターは、可動パーツを有さず、それゆえ、簡便でコスト的に効率の良い方法で作ることができ、また、磨耗することがほとんどないという利点を有する。驚くべきことに、移送される量を調節するために、従来技術で必要とされる計量デバイスをインゼクターの上流に取り付ける必要はない。
【0048】
インゼクターを用いて、(輸送媒体として水を用いて)水中のプラスチック粒状物の懸濁液、好ましくはポリアミド粒状物の懸濁液を移送できることについては従来技術でこれまで開示されていない。更に、圧力のより低い領域から圧力のより高い領域へと移送できることも開示されていない。更に、輸送物質の流れ(即ち、単位時間当りに輸送ストリームとして供給される水の量)、または、懸濁液を抜き出すインゼクターの側部に作用する圧力によって、移送される量を調節することができることも開示されていない。移送されるプラスチック粒状物は、無水状態、即ち乾燥させることができ、または、そのようなプラスチック粒状物は輸送する前に少ない割合の水と混合することができる。
【0049】
従って、本発明の別の要旨として、本発明は、輸送媒体として水を用いるインゼクターを用いることによって、水中のプラスチック粒状物の懸濁液、好ましくはポリアミド粒状物の懸濁液を移送する方法を提供する。
【0050】
圧力のより低い領域から圧力のより高い領域へと材料を移送することが好ましい。圧力差は、好ましくは0.5〜5バール、特に好ましくは1〜1.5バールであることが好ましい。
【0051】
圧力のより低い領域から圧力のより高い領域に材料が移送される場合、本方法の好ましい態様は、水の輸送流れによって移送される量が調節されることが含まれる。この場合の本方法の別の好ましい態様は、懸濁液を抜き出すインゼクターの側部に作用する圧力によって、移送される量が調節される態様である。このような態様は、例えば圧力保持バルブを用いることによって達成することができ、その結果、材料が送り出される領域と材料が送り込まれる領域との間の圧力差がどのようなものであっても、輸送を調節することができる。
【0052】
図面は、本発明の好ましい態様を示す。
【0053】
重合プロセスからの未抽出のポリアミド粒状物3は、大気圧下で操作される予備抽出機1に供給される。水4が抽出媒体として用いられる。この水は加圧抽出機2から生じる。ポリアミド粒状物は、輸送媒体として水6を用いて操作されるインゼクター5を経由して、デバイス7において水が分離された後、ポリアミド粒状物に対して向流の水8で操作される加圧抽出機2に供給される。抽出されたポリアミドは、第2インゼクター9によって加圧抽出機から排出された後、回収され乾燥される。輸送媒体の流れによって、または、懸濁液を抜き出すのに用いられるパイプ内の圧力によって、インゼクターで移送される量を調節することができる。このような目的のために、そのようなパイプ(図面では図示せず)には圧力保持バルブが組み込まれている。
【0054】
図1の装置は、生じる低分子量化合物の幾らかを予備抽出機1で除去することによって、加圧抽出機2では、ポリアミドに対する水の浴比が小さくても、抽出液体の密度差に起因する不利益な逆混合が生じないという利点を有する。
【0055】
実施例1および実施例2
以下の実施例1および実施例2は、連続操作の下、図1の装置で得られたものである。挙げられる数値は、試験過程を通じて見られた範囲である。約8.5〜10重量%の低分子量化合物(抽出物)の濃度を有するポリアミド6を、95℃、大気圧で操作された予備抽出機に供給した。予備抽出機の滞留時間は3時間であった。
【0056】
実施例1
ポリアミドは、予備抽出機に通した後、100〜120℃で操作された加圧抽出機に送った。加圧抽出機の滞留時間は、6時間であった。水とポリアミドとの比は、1.3:1であった。加圧抽出機を経た後の抽出物濃度は、0.3〜0.6重量%であった。ダイマー濃度は、予備抽出機へ送られる前の0.6〜1重量%から加圧抽出機を経た後の0.075〜0.3重量%にまで下がった。
【0057】
実施例2
ポリアミドは、予備抽出機を通過した後、120〜125℃で操作された加圧抽出機に送った。加圧抽出機の滞留時間は、10〜14時間であった。水とポリアミドとの比は、2.5:1であった。加圧抽出機を経た後の抽出物濃度は、0.25〜0.4重量%であった。ダイマー濃度は、予備抽出機へ送られる前の0.4〜0.8重量%から加圧抽出機を経た後の0.01〜0.03重量%にまで下がった。
【0058】
実施例1および実施例2では、少ない水の投入量であっても、射出成形分野で常套的に用いるのに十分な高性能な抽出プロセスを達成できることが示される。実施例2においては、水の量、温度および滞留時間が増加することによって、特に濃度の低い抽出物が必要とされる食料のパッケージ用フィルム領域に適用するのに適した抽出プロセス性能がもたらされる。
【0059】
他の実施例
試験シリーズ3〜6
水およびカプロラクタムを含む水を用いてポリアミド6(PA6)の抽出を行う実験室スケールの試験を以下で説明する。
【0060】
これらの試験では、本発明の方法および本発明の装置の利点が示される。
【0061】
試験は、未抽出のPA6と比較することで、真空脱ラクタムPA6(vacuum delactamised PA6)からのカプロラクタムの環状ダイマーの抽出速度を測定することに関する。「真空脱ラクタム」とは、高温にて真空下で蒸留することによって、幾らかのラクタムがPA6から取り除かれたことを意味する。
【0062】
試験の結果は、以下のように要約することができる:
【0063】
大部分のモノマーのカプロラクタムが既に取り除かれたPA6(真空脱ラクタムPA6)からダイマーおよびより分子量が多いオリゴマー(higher oligomer)を抽出する速度は、温度に強く依存する。カプロラクタムを含むPA6(未抽出PA6)からオリゴマーが抽出される速度と比較することによって、次のことが得られる:抽出温度が95℃では、ダイマーは、未抽出PA6よりも相当にゆっくりと真空でラクタムが除かれたPA6から抽出される一方、抽出温度が125℃では、オリゴマーの抽出は、上述の双方の種類のPA6から等しく迅速に進行する。
【0064】
このような結果は、大部分の割合のカプロラクタムが予め抽出される予備抽出と、引き続いて行われる、特にオリゴマーの割合を必要な程度にまで減少させる必要がある最終的な抽出のために高圧下で行われる向流抽出とから成る2工程抽出の設計にとって重要である。このような種類の抽出設計は、1工程の水による抽出の間で生じる逆混合(当該逆混合は密度勾配によって引き起こされる)の問題は生じることがないという利点を有する。このことは、抽出されるPA6の単位重量当たりの水の比消費量がより少なくなり、それによって、エネルギーが節約され、抽出プロセスの空間−時間収率が増加するという最終的な効果がもたらされることを意味する。
【0065】
このような結果によると、ラクタムが除去されたPA6からであってもダイマーの抽出は十分迅速に進行するので、かかる抽出設計を実現することができる。水による予備抽出プロセスの代わりに、ラクタムを蒸発させるプロセスまたは真空でラクタムを除去させるプロセスを適用することも可能である。
【0066】
試験シリーズ3:真空でラクタムが除去されたポリアミド6の95℃における抽出
50gの真空でラクタムが除去されたPA6と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に95℃にまで加熱した。粒状物は、吸引濾過で分離後、100gの水で洗浄した。乾燥した粒状物中のモノマーおよびダイマーの濃度は、HPLCによって測定した。その結果を以下の表にまとめた。
【0067】
【表1】
【0068】
試験シリーズ4:真空でラクタムが除去されたPA6の125℃における抽出
50gの真空でラクタムが除去されたPA6と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に125℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ3と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0069】
【表2】
【0070】
試験シリーズ5:未抽出PA6の95℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に95℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ3と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0071】
【表3】
【0072】
試験シリーズ6:未抽出ポリアミドの125℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に125℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ3と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0073】
【表4】
【0074】
他の実施例
試験シリーズ7およびそれに続く試験シリーズ
高圧下の抽出に関する試験シリーズ7〜9は、95〜125℃の温度範囲で行った。125℃は約2.5バールの過圧(または大気圧を超える圧力)に相当するものであった。
【0075】
これらの試験シリーズの出発材料は、重合後に生成するものと同様に、未抽出PA6であった。1:10という抽出されるPA6と抽出水との比によって、連続抽出で抽出媒体中のモノマーおよびオリゴマーは僅かに濃度が増加しただけであり、それゆえ、抽出の過程は、主に、抽出の速度論で決まり、粒状物と抽出媒体との間のモノマーおよびオリゴマーの分配平衡は、抽出の最後の段階でのみ重要であった。
【0076】
試験シリーズ7:未抽出PA6の95℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間攪拌すると共に95℃にまで加熱した。粒状物は、吸引濾過した後、水で洗浄した。90℃で乾燥された粒状物中のモノマーおよびダイマーの濃度は、HPLCによって測定した。その結果を以下の表にまとめた。
【0077】
【表5】
【0078】
試験シリーズ8:未抽出PA6の110℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間オートクレーブで110℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ7と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0079】
【表6】
【0080】
試験シリーズ9:未抽出PA6の125℃における抽出
50gのポリアミド(未抽出ポリアミド)と500gの水とを、30分間、1時間、2時間、4時間および8時間オートクレーブで125℃にまで加熱した。処理は、試験シリーズ7と同様な方法で行った。モノマーおよびダイマーの濃度を測定した結果を以下の表にまとめた。
【0081】
【表7】
【0082】
抽出温度を95℃から110℃まで上げた後、125℃にまで上げることによって、抽出速度が相当に増加することが試験シリーズ7〜9から極めて明らかである。このことは、カプロラクタムおよびダイマーに等しく当てはまることである。従って、所定の試験装置の下、125℃にて、1時間の抽出時間の後では、射出成形品質(または射出成形法の性能)に相当する抽出性能である0.36%のカプロラクタム濃度および0.073%のダイマー濃度が達成される。これとは対照的に、95℃の抽出時間では4〜8時間後にしか、それに相当するような値が得られない。
【0083】
試験シリーズ7〜9では、95℃から110℃に、そして、125℃にまで変化すると抽出速度が大きく増加することが示される。135℃の温度では、粒状物は塊を形成する。それゆえ、135℃では抽出を行うことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する本発明の好ましい装置を示す。
Claims (9)
- ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する方法であって、少なくとも80重量%が水から成る液体を用いることによって、大気圧における該液体の沸点よりも高い温度で、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する方法。
- 液体およびポリアミドを向流で連続的に操作する方法であって、液体を重力に反するように上方向へと移送し、液体の流れる方向とは反対方向に液体の不利益な逆混合が実質的に生じないように、抽出の開始時の液体と抽出の終了時の液体との密度差を十分に小さく維持する、請求項1に記載の方法。
- 2工程で抽出を行うことによって小さい密度差を維持することを達成し、液体の沸点よりも低い温度で実施してもよい第1工程で、幾らかの抽出可能成分を取り除き、それによって、液体の沸点よりも高い温度で実施する第2工程で、ポリアミドに対する水の浴比が小さくても、密度差を小さいままに維持する、請求項2に記載の方法。
- ポリアミドまたはカプロラクタムに基づくコポリアミドを抽出する装置であって、予備抽出機(1)、加圧抽出機(2)、および該予備抽出機の下流に配置され、抽出すべきポリアミドを該予備抽出機から該加圧抽出機に移送するインゼクター(5)を有して成る装置。
- 第2インゼクター(9)が加圧抽出機の下流に配置され、それによって、材料を加圧抽出機から抜き出すことができる、請求項4に記載の装置。
- 加圧抽出機(2)の上端部から予備抽出機(1)に液体を移送するためにパイプを含む、請求項4または請求項5に記載の装置。
- 請求項4〜6のいずれかに記載の装置で実施される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜3または請求項7のいずれかに記載の抽出方法を含む、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する方法。
- 請求項4〜6のいずれかに記載の装置を含む、ポリアミド6またはカプロラクタムに基づくコポリアミドを調製する装置。
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