JP2004528013A - 変化した免疫反応をもたらすタンパク質及びその作成または使用方法 - Google Patents

変化した免疫反応をもたらすタンパク質及びその作成または使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、過剰アレルギー性及び低アレルギー性組成物を作成するための新規な方法及び組成物に関する。具体的には、本発明はエピトープを認識するT細胞の能力を中和または低下させ、従ってタンパク質に対するヒトの感作を防ぐことを含む。あるいは、強化した免疫反応を引き起こすためにT細胞エピトープを変異させる。
【選択図】図21

Description

【0001】
発明の背景
工業的、医薬的そして商業的に使用されるタンパク質は急速に普及している。その結果、このような普及によりそれらに暴露される機会が増え、特定の人々はこれらのペプチドに対して感作を引き起こし、そこにさらにさらされることで有害で致命的にさえなり得る過剰なアレルギー反応を引き起こすという安全上の問題の原因ともなっている。例えば、プロテアーゼは特定の個人にとっては危険な過敏症を引き起こすことが知られている。その結果、例えば洗濯用洗剤、化粧品、織物加工等の産業においてプロテアーゼが有用であり、例えばより効果的な染み抜き能を有する洗剤としての改良型プロテアーゼを提供するために、その分野において広範囲の研究が成されているにも関らず、産業上のプロテアーゼの使用は、特定の人々に過敏性アレルギー反応を生じさせる可能性があるため問題となっている。
【0002】
これらの問題を解決するために多くの研究が行われてきた。プロテアーゼによる免疫原性の可能性を減らすために研究されてきた方法の中で、空中でプロテアーゼを運ぶ粉塵やエアゾールの仕事場における濃度を制御したり最小限に抑えることで接触の可能性を減らすように改良された製造工程、実際にプロテアーゼ製品から生じる粉塵やエアゾールの量を減らすために改良された造粒工程、そして最終製品による潜在的なアレルギー性汚染物質のレベルを減らすために改良された回収工程が使用されてきた。しかしながら、プロテアーゼのアレルギー性を減らす試みは、それ自体は、比較的失敗している。代わりに、過敏症の人の免疫グロブリンE(IgE)によって認識されるプロテアーゼのエピトープを隠す試みや(国際特許出願公開第WO92/10755号)、問題のプロテアーゼにポリマーやペプチド/タンパク質を付加することにより抗原決定基の性質を拡張させたり変化させたりする試みが成されてきた。
【0003】
適応性免疫反応が過剰または不適切なかたちで起こると、それを体験する人は過敏症になっているという。過敏反応は、通常は有益である免疫反応が不適当に作用した結果であり、時には炎症反応や組織の損傷を引き起こす。それらの過敏反応は多くの抗原によって引き起こされる。そして過敏反応の原因は各個人によってさまざまである。過敏症は通常、抗原との最初の接触では生じないが、ほとんどの場合、その後接触を続けると生じる。過敏症の1つの形態は、花粉、チリダニまたは動物のふけのような無害な環境抗原に対してIgG反応が向けられた時に生じる。IgG感作肥満細胞による薬理学的伝達物質の、結果的に生じる放出によって、喘息または鼻炎のような症状を有する急性炎症反応が引き起こされる。
【0004】
それでもなお、IgG部位を修飾する等の方法では最初の感作反応の発生を抑制することは一般的には成功しないだろう。従って、そのような方法は、続いて起こる過敏反応の重症度を中和したり低下させたりするかもしれないが,実際に感作される人の数は減少しない。例えば、ある人が特定の抗原に対して過敏症であることがわかっている場合、このような状況で取り得る一般的で唯一安全な方法は、その過敏症の人をできるだけ完全に抗原から隔離することである。実際に、他のいずれの方法を採っても過敏症の人の健康には悪い。従って、過敏症の人にとって特定のタンパク質の危険性を減少させることは重要であるが、産業上の目的のためには、タンパク質が最初の段階で過敏反応を開始できないようにすることが遥かに有益である。
【0005】
Tリンパ球(T細胞)は免疫反応の誘発及び調節、並びに免疫エフェクター機能の遂行において中心的存在である。病原菌や腫瘍に対する特異的な免疫はこれらのT細胞に依存することは公知であり、さらにT細胞は傷の治癒に寄与していると信じられている。一方、これらの反応の制御に失敗すると、自己攻撃を引き起こす可能性がある。一般的に、抗原は、多様な細胞表面構造を介して、T細胞による抗原認識に適した形で抗原または部分抗原を捕獲し、提示している抗原提示細胞の形をとって、T細胞に提示される。T細胞(T細胞レセプター)の表面にあるレセプターによる特異的エピトープの認識に基づき、T細胞は細胞増殖を含む一連の複雑な相互作用を開始し、それが結果としてB細胞による抗体の産生となる。T細胞及びB細胞は共に、所定のタンパク質やペプチド上に存在する抗原エピトープによって活性化されるが、これらの単核細胞により認識される実際のエピトープは、一般的に同定されていない。実際に、免疫多様性を生じさせるT細胞を活性化させるエピトープは、免疫反応中にB細胞によって後になって認識されるエピトープと同じでないことが極めて多い。従って、過敏症に関して、T細胞と抗原間における特異的抗原相互作用は抗原暴露に対する免疫反応の開始の重要な要素ではあるが、その相互作用の詳細、すなわち認識されるエピトープは、その後に続いて起こる、完全なアレルギー反応への発展とはたいてい無関係である。
【0006】
国際特許出願公開第WO96/40791号は、ポリアルキレン酸化物を出発物質として用いて、アレルギー性が低下したポリアルキレン酸化物−ポリペプチド結合体を作成する方法を開示している。
【0007】
国際特許出願公開代WO97/30148号は、2つ以上のポリペプチド分子が共有結合している1つの高分子キャリアー分子を含む、アレルギー性が低下したポリペプチド結合体を開示している。
【0008】
国際特許出願公開第WO96/17929号は、1〜30の多分子を前駆体ポリペプチドに結合させるステップを含む、アレルギー性が低下したポリペプチドを作成する方法を開示している。
【0009】
国際特許出願公開第WO92/10755号は、動物において、低下した免疫反応を誘導する変異タンパク質を作成する方法を開示している。この出願では、目的タンパク質、すなわち一連のプロテアーゼ及びそれらの変異体を用いてラットに免疫性を与えている。そのラットの血清は、その後、免疫性を与えられた血清中に産生し、存在しているポリクローナル抗体の目的タンパク質やそれらの変異体に対する反応性を測定するために用いられた。これらの結果から、その血清中の抗体がそのタンパク質やそれらの変異体と比較的よく反応するか否かを決定することができ、従って、タンパク質中のどの変化が、Ig(免疫グロブリン)の結合能を中和もしくは低下させることができそうなのかを分析することが可能となる。これらのラットの試験から、127、128、129、130、131、136、151、152、153、154、161、162、163、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、186、193、194、195、196、197、247、251、261番残基に対応するいずれかのズブチリシン309残基を改変させると、結果として免疫原性が変化するであろうという結論に達した。
【0010】
国際特許出願公開第WO94/10191号は、前駆体である単量体タンパク質のオリゴマーの形態を含む低アレルギー性タンパク質であり、そのオリゴマーは実質的にその活性を維持しているタンパク質を開示している。
【0011】
これまでの研究により、特定のタンパク質のアレルギー性を低下させる方法や特定の人にアレルギー反応を引き起こすエピトープの同定方法が提供されてきたが、これらのエピトープを同定する検出方法は、一般的に、すでに抗原に暴露されている血清中のIgE及びIgGの測定であることが必要である。しかしながら、いったんIg反応が開始されてしまうと、すでに感作が生じてしまっている。従って、これらのエピトープを中和すれば、結果として感作が起こる可能性が明らかに低下し、最初の感作の可能性が減るであろうから、最初の段階で感作を引き起こすエピトープを特定する方法が必要とされている。さらに、増進された免疫反応を引き起こすタンパク質の作成や、低免疫反応を引き起こす天然タンパク質の同定もまた必要とされている。本発明はこれら及びその他の要求を満たすものである。
【0012】
発明の概要
本発明は、望ましい免疫反応を引き起こすことができるタンパク質、かかるタンパク質を同定し、かつ作成する方法及びかかるタンパク質を使用する方法を提供する。例えば、下記の詳細な説明からも明らかになるように、提供される方法及び組成物は、過剰アレルギー性及び低アレルギー性組成物の形態として有用である。ここで用いられる、過剰及び低アレルギー性とはそれぞれ、その組成物が本発明のタンパク質を含まない同じ組成物よりも、多くのまたは少ない免疫反応を引き起こすことを意味する。かかる組成物として、洗剤組成物、織物加工、コンタクトレンズ洗浄液や洗浄剤、ペプチド加水分解物、廃棄物処理製品、肌、髪及び口腔用を含む化粧品製剤、血栓除去剤のような薬剤、酵素のような調査薬並びにワクチンを含む治療剤を挙げることができる。
【0013】
本発明の特徴の1つは、目的ポリペプチドが選択され、かつ提供されることである。目的ペプチドはT細胞エピトープを持つものが好ましく、下記に記載するように様々である。しかしながら、天然特性に基づいて目的ペプチドを選択することもでき、改変させなくてもよい。さらに、T細胞エピトープを持たない目的ペプチドを選択することもでき、T細胞エピトープを持つように改変させることができる。
【0014】
ここで提供される本発明の特徴の1つとして、T細胞エピトープを含んだ目的ペプチドの変異体がある。この変異体は、変化させたT細胞エピトープを持つことにより前記目的ペプチドとは異なり、このような該変異体や該ポリペプチドは、ヒトによって異なる免疫反応を引き起こす。かかる変異体は、前記目的ペプチドよりも多くのまたは少ない免疫反応を誘導するために調製され、選択される。
【0015】
目的ポリペプチドは任意の目的ポリペプチドでよい。特徴の1つとして、かかるポリペプチドは、酵素、ホルモン、因子、ワクチン及びサイトカインからなる群より選択される。実施形態の1つとしては、目的のポリペプチドは特定のヒトには、その特定のヒトに内生的なものとして認識されず、或いは自分自身として認識されない。ここで示されるように、目的ポリペプチドは酵素でもよい。また、実施形態の1つとして、その酵素はリパーゼ、セルラーゼ、エンド‐グルコシダーゼH、プロテアーゼ、カルボヒドラーゼ、レダクターゼ、酸化酵素、イソメラーゼ、転移酵素、キナーゼ及びホスファターゼからなる群より選択される。好ましい実施形態としては、目的ポリペプチド及びその変異体はそれぞれ、少なくともいくつかの同じ活性を含む。例えば、あるプロテアーゼの変異体が提供されると、前記変異体は免疫反応を変化させて引き起こす。しかし、その変異体は依然として検出可能であり、好ましくはプロテアーゼ活性が比較可能である。
【0016】
目的ポリペプチド変異体が提供されると、T細胞エピトープはアミノ酸置換、欠失、付加及びそれらの組み合わせを含む多数の方法に改変され得る。好ましくは、T細胞エピトープはアミノ酸置換を有するように改変される。ここで1つの実施形態として、アミノ酸置換物は目的ポリペプチドの同族体のアミノ酸に対応するように作られ、ここでその同族体は目的ポリペプチドの対応する位置に同じT細胞エピトープを含まない。特徴の1つとして、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む目的ポリペプチドの末端部分は、目的ポリペプチドの同族体の対応する末端部分に置換され、その置換物は前記の異なる免疫反応を引き起こす。
【0017】
また、他の実施形態としては、望ましい免疫反応を引き起こすポリペプチドをコードする核酸がここで提供されている。さらに、本発明は、本発明で提供される核酸を含有する発現ベクター及び宿主細胞を含む。さらに、いったん本発明のポリペプチド及びそれらの変異体が同定されると、実質的に相同な配列やポリペプチドや変異体をハイブリダイズする配列を同定することができ、それらが本発明で提供される。相同性はさらに下記に定義され、好ましいとされる同一性と共に、類似性または同一性についても言及することができる。好ましくは、相同配列は、ここで提供されるポリペプチド及び変異体の活性を有するペプチドをコードするアミノ酸配列または核酸である。
【0018】
本発明のさらにもう1つの特徴は、あるタンパク質によって引き起こされる免疫反応を特定する方法である。実施形態の1つは、以下のステップを含む方法である:(a)単一の血液供給源から樹状細胞液及びナイーブCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞液を調製する;(b)前記樹状細胞液における分化を促進させる;(c)前記分化樹状細胞液と前記ナイーブCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞を前記タンパク質と混合させる;及び(d)前記ステップ(c)におけるT細胞の増殖を測定する。
【0019】
対照となるタンパク質の免疫反応を同定するために、タンパク質によって引き起こされる免疫反応を特定する方法もまた使用され得る。従って、1つの特徴としては、タンパク質の免疫反応を特定する方法は、対照となる1つ以上のタンパク質の免疫反応をもさらに含む。同じタンパク質における変異体や同じタンパク質における別の型などのタンパク質、例えば同じタンパク質における異なるプロテアーゼまたは異なるペプチドは、それぞれが同族体になり得る。
【0020】
本発明はさらに、目的ポリペプチドの免疫原性を変化させる方法を提供する。すなわち;前記ポリペプチドの免疫原性を特定し;前記ポリペプチド中のT細胞エピトープを同定し;そして前記ポリペプチドの免疫原性を変化させるためにT細胞エピトープを改変させる方法を提供する。ここで記載されるように、単一のアミノ酸を改変させたり、または目的ポリペプチドのある部分を同族体の対応する部分と交換させて、その交換部分が変化した免疫反応を引き起こすようにして、前記変化を起こすことができる。
【0021】
本発明の別の特徴は、以下の記載により当業者に理解される。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明に従って、T細胞エピトープを同定する方法を提供する。さらに、本発明の方法に従って、比較的効果のない、または効果のあるT細胞エピトープを持つ天然タンパク質またはT細胞エピトープのない天然タンパク質を含んだタンパク質を同定することができる。従って、本発明により、適切な反応を引き起こすために変異させたタンパク質だけでなく天然タンパク質も含む、望ましい免疫反応を引き起こすタンパク質の同定及び作成が可能となる。当然のことながら、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの語は時に交換しての使用が可能である。ペプチドがタンパク質の一部分であることは、その用語が使われている分野において、当業者は当然に知っていることである。
【0023】
実施形態の1つとして、本発明は、以下のようにエピトープ及びエピトープ以外のものを同定する測定法を提供する:分化樹状細胞をナイーブヒトCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞並びに目的ペプチドと混合させる。より詳細には、以下のステップを含むT細胞エピトープを認識する方法を提供する:(a)単一の血液供給源から樹状細胞液及びナイーブCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞液を調製する;(b)前記樹状細胞液における分化を促進させる;(c)前記分化樹状細胞液と前記ナイーブCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞を目的ペプチドと混合させる;(d)前記ステップ(c)におけるT細胞の増殖を測定する。
【0024】
実施形態の1つとして、分析される目的ペプチドは、目的ポリペプチドから得られる。本発明の実施により、ヒトまたはヒトの採取試料において感作を引き起こし得るエピトープの位置を正確に同定することが可能となる。本発明の好ましい実施形態は、目的ポリペプチドの全部または一部に対応する一連のペプチドオリゴマーを調製することである。例えば、そのタンパク質の関連部分または全体を網羅するペプチドライブラリーが作成される。また、1つの実施形態として、ペプチドを作成するための方法は、ペプチドライブラリーに重複部分を取り入れることであり、例えば、1番目のペプチドは対象タンパク質の1−10番アミノ酸配列に対応し、2番目のペプチドは対象タンパク質の4−14番アミノ酸配列に対応し、3番目のペプチドは対象タンパク質の7−17番アミノ酸配列に対応し、4番目のペプチドは対象タンパク質の10−20番アミノ酸配列に対応する等のようにして作成し、全分子に対応する代表的ペプチドを作成するまで続ける。ここで提供した測定法で、各ペプチドをそれぞれ分析することによって、T細胞によって認識されるエピトープの位置を正確に同定することが可能である。上記の実施例において、1つの特定のペプチドがその隣のペプチドよりも大きく反応すると、3つのアミノ酸内にエピトープ・アンカー部分を容易に同定できるだろう。これらのエピトープの位置を特定した後、そのペプチドが元のタンパク質と異なるT細胞反応を引き起こすまで、各エピトープ内のアミノ酸を改変させることが可能である。もう1つの方法として、例えば病原菌または腫瘍細胞のような標的に対する免疫反応を活性化するエピトープを原型で使用することである。さらに、天然の形態で用いることができ、望ましい高または低アレルギー潜在性のT細胞エピトープを有する、タンパク質が本発明において同定され得る。
【0025】
ここで用いられている“抗原提示細胞”とは、その表面に、T細胞表面にあるレセプターによって認識される抗原を提示する免疫系の細胞を意味する。抗原提示細胞の例としては、樹状細胞、樹枝状細胞(interdigitating cells)、活性化B細胞およびマクロファージが挙げられる。
【0026】
ここで用いられている“T細胞増殖”とは、抗原存在下または抗原非存在下において、T細胞を抗原提示細胞とインキュベーションする間に生じるT細胞の数を意味する。
【0027】
ここで用いられている“基準T細胞増殖”とは、ペプチドまたはタンパク質抗原が存在しない状態で、抗原提示細胞に対する暴露に反応して、ヒトにおいて通常認められるT細胞増殖を意味する。この目的のために、各ヒトの試料ごとの形で、抗原が存在しない状態における抗原提示細胞に反応するT細胞増殖として、基準T細胞増殖レベルを特定する。
【0028】
“T細胞エピトープ”とは、その抗原を構成するペプチドに対する免疫反応の開始において、T細胞レセプターによって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴部分を意味する。T細胞によるT細胞エピトープの認識は、抗原提示細胞に発現されている主要組織適合分子(MHC)クラスIまたはクラスIIに結合している抗原のペプチド断片をT細胞が認識する作用機構を介すると一般的に考えられている(例えば、Moeller、G. 編集,“Antigenic Requirements for Activation of MHC−Restricted Responses,”Immunological Review,Vol.98,P.187(Copenhagen;Munksgaard)(1987))。
【0029】
ここで用いられている“試料”とは、未刺激である(naive)、すなわち問題の抗原に対して感作されていない単核細胞を含む。
【0030】
ここで用いられている“同族体”とは、同様の触媒作用、構造及び/または目的タンパク質としての用途を有するタンパク質または酵素を意味する。本発明の目的として、例えば異なる種由来の同じ機能タンパク質のように、同族体と目的タンパク質は必ずしも進化論的に関連しない。目的タンパク質内のエピトープを、同族体由来類似断片で置換すると、その改変による混乱が減るであろうから、目的タンパク質と同様の三次及び/または一次構造を有する同族体を発見することが望ましい。従って、相同性の高い酵素は、エピトープ置換体の最も望ましい供給源を提供するであろう。あるいは、もし可能であれば、特定のタンパク質のヒト類似物に関心を向けることは都合のよいことである。例えば、細菌ズブチリシン内の特異的エピトープを、ズブチリシンに対するヒト類似物(すなわちヒトズブチリシン)由来配列で置換すると、結果的に、細菌タンパク質におけるアレルギー性が低下するであろう。
【0031】
“類似”配列は、その置換アミノ酸が、目的タンパク質におけるエピトープまたはそれに近接する部分に対して、同様の機能、三次構造及び/または保存残基を示すことを確認することによって特定できる。従って、そのエピトープ領域が、例えばαヘリックスまたはβシート構造を含む場合には、その置換アミノ酸は、その特異的構造を維持しなければならない。
【0032】
本発明で提供される測定法に従って特定されるエピトープは、目的タンパク質の免疫潜在力を減少または増大させるために、その後修飾される。好ましい実施形態としては、修飾すべきエピトープが引き起こすT細胞増殖レベルが、試料における基準T細胞増殖よりも3倍多い。修飾した場合、そのエピトープが引き起こす基準増殖は、試料中の基準増殖の3倍未満であり、好ましくは2倍未満、最も好ましくは、実質的に試料中の基準増殖以下である。
【0033】
好ましくは、そのエピトープは以下の方法の1つで修飾する:(a) エピトープのアミノ酸配列を、目的タンパク質に対するヒト同族体由来の類似配列で置換する;(b)エピトープのアミノ酸配列を、目的タンパク質に対する非ヒト同族体由来であり、かつ目的タンパク質のアミノ酸配列よりもT細胞認識により生じる例えばアレルギーのような免疫反応が少ない類似配列で置換する;(c) エピトープのアミノ酸配列を、実質的にエピトープの主要三次構造特性を模倣する配列であるが、目的タンパク質のアミノ酸配列よりもT細胞認識により生じる例えばアレルギーのような免疫反応が少ない配列で置換する;または(d)目的タンパク質のアミノ酸配列よりもT細胞認識により生じる例えばアレルギーのような免疫反応が少ない任意の配列で置換する。
【0034】
しかしながら、エピトープは望まれる結果次第で他の方法で修飾され得ることが、当業者によって容易に認識されるだろう。例えば、T細胞ワクチンが要求される場合、エピトープのアミノ酸配列は、強いMHC結合及び/またはT細胞認識を介してペプチドへの免疫反応を増大させるアミノ酸で置換されると考えられる。また、別の実施例において、自己抗原に対する自己免疫反応を変化させたい場合、エピトープのアミノ酸配列は、炎症またはその他の免疫反応の減少或いは変化を引き起こすアミノ酸で置換されると考えられる。
【0035】
本発明は、免疫反応を調節することが望まれるすべてのタンパク質に適用される。例えば、T細胞ワクチンとして使われるペプチド、または癌、伝染病そして自己免疫疾患等に対する治療薬として使われるペプチドまたはタンパク質である。本発明のタンパク質及びペプチドは必ずしもナイーブなタンパク質及びペプチドではないことは当業者に容易に認識される。実際に、本発明の1つの実施形態において、ここに記載される測定法は、混ぜ合わせた遺伝子由来タンパク質の免疫反応を特定するために使用される。混ぜ合わせた遺伝子の記述及びそのような遺伝子の表示は以下を参照、Stemmer,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 91:10747(1994);Patten,et al.,Current Opinion in Biotechnol.8:724 (1997):Kuchner&Arnold,Trends Biotechnol.15:523 (1997); Moore,et al.,J.Mol,Biol.272:336 (1997);Zhao,et al.,Nature Biotechnol. 16:258 (1998);Giver,et al.,Proc.Nat’lAcad.Sci.USA 95:12809(1998); Harayama,Trends Biotechnol.16:76(1998); Lin,et al.,Biotechnol.,Prog. 15:467(1999); 及び Sun,J.Comput.Biol.6:77(1999)。該測定法は混ぜ合わせた遺伝子がコードするタンパク質の免疫反応を予測するために使われる。タンパク質が特定されると、該タンパク質に対する免疫反応を調節するためにそのタンパク質を改変させることができる。
【0036】
上記タンパク質及びペプチドに加えて、本発明はタンパク質のアレルギー性を減少させるために使用することができる。これらのタンパク質は、グルカナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、エンド‐グルコシダーゼH(endo‐H)、プロテアーゼ、カルボヒドラーゼ、レダクダーゼ、酸化酵素、イソメラーゼ、転移酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、アミラーゼ等を含むが、これらに限定されるものではない。天然アミノ酸配列の動物、例えばヒトに対するアレルギー性の減少に加えて、本発明は、例えばその機能的活動を変化させるために改変したタンパク質のような、ヒトタンパク質変異体のアレルギー性の減少を含む。多くの場合、例えば活動を増加させるヒトタンパク質の突然変異体は、結果として該変異タンパク質中の新しいT細胞エピトープが結合する。本発明の測定法は、該新しいT細胞エピトープの存在を特定し、該変異タンパク質のアレルギー性を減少させる置換アミノ酸を特定するために使用することができる。
【0037】
本発明は上記タンパク質及び他の多くを含むが、便宜上、以下に本発明の特に好ましい実施形態であるプロテアーゼの修飾について記載する。プロテアーゼとは、一般的に、タンパク質またはペプチドのペプチド結合を切断するために作用するカルボニル加水分解酵素である。ここで用いられている“プロテアーゼ”とは、天然のプロテアーゼまたは組換えプロテアーゼを意味する。天然プロテアーゼとして、α−アミノアシルペプチド加水分解酵素、ペプチジルアミノ酸加水分解酵素、アシルアミノ酸加水分解酵素、セリンカルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、チオールプロテイナーゼ、カルボキシルプロテイナーゼ及びメタロプロテイナーゼが挙げられる。エンド及びエキソプロテアーゼと同様、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、チオールプロテアーゼおよび酸性プロテアーゼも含まれる。
【0038】
本発明の実施形態の1つとして、ハイブリッドポリペプチドが提供される。“ハイブリッドポリペプチド”とは、少なくとも2つの異なるタンパク質、好ましくは互いに同族体であるタンパク質に由来する改変タンパク質である。好ましい実施形態において、その2つの末端は完全長活性タンパク質に対応して結合させることができる。また、好ましい実施形態において、該同族体は実質的な類似点を共有するが、同一のT細胞エピトープは持たない。従って、実施形態の1つにおいて、例えば、C末端に1つ以上のT細胞エピトープを持つ目的ポリペプチドは、該C末端を影響力の少ないT細胞エピトープをC末端に持つ同族体のC末端、T細胞エピトープをC末端にほとんど持たない、またはT細胞エピトープをC末端に持たない同族体のC末端と置換することが可能である。このようにして、同族体間のT細胞エピトープを特定できることにより、種々の免疫反応を引き起こす変異体を多様なものにすることができることが当業者に理解される。さらに、本発明の変異体を作成するために、配列の内部や、2つ以上の同族体が使用できることは当然である。
【0039】
より一般的には、ここで提供される変異体は、前駆体アミノ酸配列からなる1つ以上のアミノ酸における置換、欠失、挿入またはそれらの組み合わせによって、前駆体アミノ酸配列から得られる。このような修飾は、前駆体タンパク質の操作によるのではなく、むしろその前駆体酵素のアミノ酸配列をコードする“前駆体DNA配列”の修飾である。このような前駆体DNA配列の操作のための適当な方法として、当業者に公知の方法(例えば、欧州特許出願第0 328299号、国際特許出願第WO89/06279号、並びに、この中で既に参照されている米国特許および特許出願を参照)と同様に、この中に開示されている方法が挙げられる。
【0040】
ズブチリシンは、通常タンパク質またはペプチドのペプチド結合を切断するために作用する細菌または真菌のプロテアーゼである。ここで用いられている“ズブチリシン”とは、天然ズブチリシンまたは組換えズブチリシンを意味する。一連の天然ズブチリシンは、各種細菌種によって産生され、かつしばしば分泌されることが知られている。この系列のメンバーのアミノ酸配列は、完全には相同でない。しかしながら、この系列のズブチリシンは、同じ、または類似の型のタンパク質分解活性を示す。このクラスのセリンプロテアーゼは、それらをキモトリプシン関連クラスのセリンプロテアーゼと区別する触媒三つ組残基を特徴づける共通のアミノ酸配列を共有する。ズブチリシンとキモトリプシン関連セリンプロテアーゼは共に、アスパラギン酸塩、ヒスチジン及びセリンを含有する触媒三つ組残基を有する。ズブチリシン関連プロテアーゼにおいて、これらのアミノ酸の相対配列は、アミノ末端からカルボキシル末端への方向でみると、アスパラギン酸塩−ヒスチジン−セリンである。しかしながら、キモトリプシン関連プロテアーゼにおいては、相対配列は、ヒスチジン−アスパラギン酸塩−セリンである。従って、ここでズブチリシンとは、ズブチリシン関連プロテアーゼの触媒三つ組残基を有するセリンプロテアーゼをいう。実施例は、図3において特定されているズブチリシンを含むが、それらに限定されない。一般的に、本発明の目的のために、プロテアーゼ内のアミノ酸の番号付けは、図1に示されている成熟バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシン配列に割り当てられている番号に対応する。
【0041】
“組換え体”、“組換え型ズブチリシン”または“組換え型プロテアーゼ”とは、天然アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入をコードする変異体(または突然変異体)DNA配列を作成することで、ズブチリシンまたはプロテアーゼをコードするDNA配列が修飾されているズブチリシンまたはプロテアーゼをいう。このような修飾を形成する適当な方法であって、この中に開示されている方法と組み合わせ得る方法として、米国特許第4,760,025号(RE34,606)、米国特許第5,204,015号、及び米国特許第5,185,258号に開示されている方法が挙げられる。
【0042】
“非ヒトズブチリシン”、及びそれらをコードするDNAは、多くの原核生物及び真核生物から得ることができる。適当な原核生物の例として、大腸菌(E.coli)またはシュ−ドモナスのようなグラム陰性菌、及びミクロコッカスまたはバシラスのようなグラム陽性バクテリアが挙げられる。ズブチリシン及びそれらの遺伝子を入手できる真核生物の例として、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母菌、アスペルギルス(Aspergillus)種のような真菌が挙げられる。
【0043】
“ヒトズブチリシン”とは、例えばヒト由来プロテアーゼのケキシンファミリーのようなズブチリシン型の触媒活性を有するヒト由来タンパク質を意味する。かかるタンパク質の例が図7の配列に示されている。さらに、例えばペプチド結合を加水分解する能力等といったペプチドの本質的な活性を維持し、マウスまたはウサギのようなヒト以外の供給源に由来するものを含んだここで提供されるタンパク質の誘導体または同族体は、目的ポリペプチドに対して少なくとも50%以上、好ましくは少なくとも65%以上、そして最も好ましくは少なくとも80%以上、さらに好ましくは少なくとも90%以上、そして場合によっては95または98%程度の相同性を有することが好ましい。実施形態の1つとしては、前記図に目的ポリペプチドを示す。
【0044】
ここで用いられているアミノ酸位置番号は、図1に示されている成熟バシラス・アミロリケエファシエンス・ズブチリシン配列に対して割り当てられている番号をいう。しかしながら、本発明は、この特定のズブチリシンの変異体に限定されるものではなく、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンにおける特定の同定された残基に対して、“等価”の位置にあるアミノ酸残基を含む前駆体プロテアーゼにまで及ぶ。本発明の好ましい実施形態において、前駆体プロテアーゼはバシラス・レンタス・ズブチリシンであり、その置換、欠失または挿入は、上記のアミノ酸残基に対応するバシラス・レンタス(以下、「B.レンタス」と記すときもある)における等価なアミノ酸残基において作成される。
【0045】
前駆体プロテアーゼの残基(アミノ酸)は、もしそれがバシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンにおける特定の残基もしくはその残基の一部に対して、相同(すなわち、一次または三次構造での位置において対応する)または類似(すなわち、化学的に結合し、反応し、または相互作用する同じまたは類似の機能的能力を有する)であれば、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの残基に対して等価である。ここで使われる“対応する”とは、一般的に、ペプチドにおける類似の位置をいう。
【0046】
一次構造における相同性を評価するために、前駆体プロテアーゼのアミノ酸配列を、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの一次配列、及び特にその配列が公知であるズブチリシンの不変残基であることが知られている一連の残基と直接比較する。例えば、ここで図2は、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシンとB.レンタス・ズブチリシン間の保存残基を示す。保存残基を並べ、配列を維持するために必要な挿入及び欠失を考慮に入れた後(すなわち、任意の欠失または挿入による保存残基の除去を避ける)、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの一次配列における特定のアミノ酸配列に等価である残基を明確にする。保存残基の配列は、好ましくは、そのような残基の100%を保存するべきである。しかしながら、保存残基の75%より多い、または50%程度の配列が保存されていれば、同一残基配列を特定するのに十分である。触媒三つ組残基であるAsp32/His64/Ser221の保存は維持されているべきである。
【0047】
例えば、バシラス・アミロリケファシエンス、枯草菌、バシラス・リケニフォルミス(carlsbergensis)及びバシラス・レンタス由来ズブチリシンのアミノ酸配列を、アミノ酸配列間に最大値の相同性を与えるように並べる。これらの配列を比較すると、各配列中に多くの保存残基が含まれていることが分かる。図2は、BPN’とB.レンタス間の保存残基を特定する。
【0048】
これらの保存残基は、上に述べたように、例えばバシラス・レンタス由来ズブチリシン(1989年7月13日に公開された国際特許出願公開第WO89/06279号)、この明細書中の好ましいプロテア−ゼ前駆体酵素、または好ましいバシラス・レンタス・ズブチリシンに対して相同性が高く、PB92(欧州特許出願第0 328 299号)として言及されているズブチリシンのような、他のズブチリシンにおいて、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンに対応する等価アミノ酸残基を特定するために使用できる。特定のこれらズブチリシンのアミノ酸配列を、保存残基の相同性が最大となるように、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの配列と共に、図3A及び3Bに並べた。それらから分かるように、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンと比較して、バシラス・レンタスの配列には多くの欠失がある。従って、例えば、他のズブチリシンにおけるバシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのVal165に対応する等価アミノ酸は、B.レンタス及びB.リケニフォルミスではイソロイシンである。
【0049】
従って、例えば、+170番位置におけるアミノ酸は、B.アミロリケファシエンスおよびB.リケニフォルミス・ズブチリシンではいずれもリジン(K)であり、サビナーゼではアルギニン(R)である。本発明における変異プロテアーゼの1つの実施形態において、しかしながら、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの+170番に対する等価アミノ酸は、アスパラギン酸(D)である。本発明において、全てのアミノ酸の略語および1文字表記は、the Patentln User Manual(GenBank, Mountain View, CA)1990,p.101の記載に従う。
【0050】
相同配列は、“配列比較アルゴリズム”を用いることによっても特定できる。例えば、局所ホモロジーアルゴリズム (Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981))、ホモロジー配列アルゴリズム( Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443 (1970))、類似検索(Pearson & Lipman,Proc.Nat’L Acad.Sci. USA 85:2444(1988))、これらアルゴリズムのコンピュータ処理の実行 (GAP,BESTFIT,FASTA,及び TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science DR.,Madison,Wl)、または外観検査により、比較のための最良の配列の並べ方を処理することができる。
【0051】
類似配列を特定するために適したアルゴリズムの例は、Altschulらの J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されている、BLASTアルゴリズムである。BLAST解析を実行するソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初にデータベース配列中の同じ長さの単語に並べられると、何らかの陽性の閾値Tに一致するか、または満たす問合せ配列の長さWの短い単語を識別することにより、高スコア配列ペア(HSPs)の識別を伴う。これらの最初にヒットした近傍文字は、これらを含んだより長いHSPsを発見するための出発点として行動する。ヒットした単語は、累積する整列スコアが増加することができる所まで、比較されている各々2つの配列の両方向に延ばされる。ヒットした単語の延長は以下の場合に停止する:累積整列スコアが最大達成値から数量Xだけ低下した時;累積スコアが0またはそれ以下に達した時;もしくは、いずれかの配列の末端に達した時。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、配列の感受性と速度とを決定する。BLASTプログラムは、単語長さ(W)を11、BLOSUM62 scoring matrix(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)、整列(B)を50、期待値(E)を10、M’5、N’−4及び両ストランドの比較値をデフォルト値として使用する。
【0052】
それから、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似に関する統計分析を実行する(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat‘l.Acad.Sci.USA90:5873−5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似の指標の1つは、最小の和確立(P(N))であり、この最小の和確立(P(N))は、2つのヌクレオチド配列間または2つのアミノ酸配列間に偶然に起きるであろう一致の確率の目安を与える。例えば、プロテアーゼアミノ酸配列のようなタンパク質に対する試験アミノ酸配列の比較における最小の和確率が、約0.1より小さい、好ましくは約0.01より小さい、最も好ましくは約0.001より小さい場合に、アミノ酸配列はプロテアーゼのようなタンパク質と類似すると考えられる。
【0053】
また“同一残基”は、その三次構造がX線結晶構造解析によって確認されている前駆体タンパク質の三次構造レベルにおける相同性を特定することによって、割り出すことができる。同一残基は、プロテアーゼのような前駆体タンパク質及びバシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの特定アミノ酸残基における2つ以上の主鎖原子の原子座標(NとN、CAとCA、CとC、OとO)が、配列後0.13nm内であり、好ましくは0.1nm内であるアミノ酸残基として特定される。配列は、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンに対して、問題のプロテアーゼのようなタンパク質の水素以外のタンパク質原子の原子座標の重なりを最大にするように、そのベストモデルを配向させ、配置させた後に達成される。ベストモデルとは、利用可能な最高の分解能での実験回折データにおいて、最小のR因子を与えるような結晶モデルである。
【0054】
バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの特定残基に対して、機能的に類似する同一残基は、ある意味で、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの特定残基によって確定され、かつそれに帰属しているタンパク質構造、基質認識または触媒作用を、変化させ、修飾し、またはそれらに寄与する配置を取り得るような、プロテアーゼのような前駆体タンパク質のアミノ酸として特定される。さらに、それらは、所定残基の主鎖原子が相同的位置を占めることに基づく等価の基準を満足するものではないが、その残基の2つ以上の側鎖原子の原子座標が、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの対応側鎖原子の0.13nm内にある程度の類似の位置を占める、プロテアーゼのような前駆体タンパク質(その三次構造はX線結晶構造解析によって特定されている)の残基である。バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの三次構造の座標は、欧州特許出願公開第0 251 466号(米国特許第5,182,204号に等しく、かかる公報はこの中に引例として組み込まれている)に開示されており、先に概説したように、三次構造のレベルにおいて同一残基を特定するために使用できる。
【0055】
置換、挿入または欠失させるために特定される残基のいくつかは、保存残基である。それに対し他は保存残基ではない。保存残基でない場合、1つ以上のアミノ酸の置換は、天然に見出されるアミノ酸配列に対応しないアミノ酸配列を有する変異体を作成する置換に限定される。保存残基の場合、このような置換は結果として天然の配列とはならないだろう。本発明の変異体は、このような変異タンパク質のプロ及びプレプロ型と同様に、変異タンパク質の成熟体を含む。プレプロ型は、その変異タンパク質の発現、分泌及び成熟を促進するため、好ましい構造である。
【0056】
“プロ配列(prosequence)”とは、除去された場合に結果としてタンパク質の“成熟”体が生じる、タンパク質成熟体のN末端部分に結合しているアミノ酸配列をいう。多くのタンパク質分解酵素は、翻訳上のプロ酵素産物として天然に見出されており、翻訳後のプロセシングがない場合にはこの形態で発現している。変異プロテアーゼのような変異タンパク質を作成するための好ましいプロ配列は、他のプロ配列も使用できるが、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンの推定上のプロ配列である。
【0057】
“シグナル配列”または“プレ配列(presequence)”とは、タンパク質の成熟体または前駆体の分泌に関与し得るタンパク質のN末端部分またはプロタンパク質のN末端部分に対して、結合するアミノ酸の任意の配列をいう。このシグナル配列の定義は、機能的な定義であり、天然の状態で、タンパク質分泌の遂行に関与しているタンパク質遺伝子のN末端部分によってコードされる全てのアミノ酸配列を含むことを意味する。本発明は、この中で明らかにされているような変異タンパク質の分泌をもたらすための配列を利用する。1つの可能なシグナル配列は、バシラス・レンタス(ATCC 21536)由来ズブチリシンのシグナル配列残基と融合している枯草菌ズブチリシン由来シグナル配列の最初の7個のアミノ酸残基を含む。
【0058】
変異タンパク質の“プレプロ”型は、そのタンパク質のアミノ末端に動作可能に連結したプロ配列及びそのプロ配列のアミノ末端に動作可能に連結した“プレ”または“シグナル”配列を有するタンパク質の成熟体から成る。
【0059】
“発現ベクター”とは、適当な宿主において、前記DNAを発現し得る適当な制御配列に、動作可能に連結しているDNA配列を包含するDNA構造をいう。このような制御配列として、転写をもたらすためのプロモーター、このような転写を制御するための任意のオペレーター配列、適当なmRNAのリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写および翻訳の終了を制御する配列が挙げられる。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、または単に潜在的なゲノム挿入であってもよい。いったん適当な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムとは関係なく複製及び機能することができ、または、ある場合には、ゲノム自身に一体化し得る。プラスミドは、現在最も一般的に用いられているベクターの形態であるため、本明細書において、“プラスミド”と“ベクター”は、時に同じ意味で用いる。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たし、当業者に公知である、または公知となったような発現ベクターの別の形態を含むことを意図する。
【0060】
本発明で使用されている“宿主細胞”は、一般的に、酵素的に活性のあるエンドプロテアーゼを分泌できないようにするため、米国特許第4,760,025号(RE34,606)に開示されている方法によって、好ましくは操作されている原核細胞または真核細胞である。タンパク質を発現させるために好ましい宿主細胞は、酵素的に活性な中性タンパク質及びアルカリプロテアーゼ(ズブチリシン)が欠損しているバシラス菌株BG2036である。BG2036株の構造は、米国特許第5,264,366号に詳細に記載されている。タンパク質を発現させるための他の宿主細胞として、B.リケニフォルミス、B.レンタス等のような任意の適当なバシラス菌株と同様に、枯草菌I168(米国特許第4,760,025号(RE34,606)及び米国特許第5,264,366号に記載されており、その公報がこの中に引例によって組み込まれている)が含まれる。
【0061】
宿主細胞は、組換えDNA技術を用いて構築したベクターで形質転換させ、または核酸導入する。これらの技術は、いずれの分子生物学の標準手引書からも知ることができる。例えば、Sambrook らの Molecular Cloning ‐ A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol. 1−3, Cold Springs Harbor Publishing(1989)(”Sambrook”); そして Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel ら。(eds.), Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.,(1997 Supplement)(”Ausubel”)である。このような形質転換宿主細胞は、変異タンパク質をコードするベクターを複製できるか、または望ましい変異タンパク質を発現できる。変異タンパク質のプレ、またはプレプロ型をコードするベクターの場合、このような変異体が発現される場合、該変異体は通常、宿主細胞から宿主細胞培養液へ分泌される。
【0062】
“動作可能に連結する”とは、2つのDNA領域間の関係を説明する場合には、単にそれらが機能的にお互いに関連しあっていることを意味する。例えば、プレ配列は、もしそれがシグナル配列として機能する場合には、ほとんどの場合シグナル配列の分裂を伴うタンパク質成熟体の分泌に関係するペプチドに動作可能に連結する。プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合に、コード配列に対して動作可能に連結しており;リボソーム結合部位は、それが翻訳を可能とするために配置されている場合に、コード配列に対して動作可能に連結している。
【0063】
天然の前駆体タンパク質をコードする遺伝子は、当業者に公知の一般的な方法に従って得られる。その方法は、一般的には、目的プタンパク質領域をコードする推定上の配列を有する標識されたプローブを合成し、そのタンパク質を発現している生物体からゲノムライブラリーを調製し、該プローブにハイブリダイズさせて目的遺伝子のためにライブラリーをスクリーニングすることを含む。陽性にハイブリダイズしたクローンを、その後マッピングし、そして配列決定する。
【0064】
“ハイブリッド形成”は、ここで記載されるDNA配列と所定のDNA断片または遺伝子が一致するかどうか、すなわち本発明の範囲内に収まるかどうかを分析するために使用する。ハイブリダイズさせるべき試料を、DNA断片が目に見えるサイズに分離できるように、アガロースゲル(例えば、0.8%アガロース)を通して電気泳動させる。DNA断片は、一般的には、臭化エチジウム染色により目に見えるようになる。前記ゲルは、蒸留水で簡単にすすぐことができ、その次に適当な溶液(例えば、0.25M HCl)中で穏やかに振とうさせながら脱プリン化し、さらに、(例えば、0.4M NaOH中で)30分間穏やかに振とうさせながら変性させる。また、前記ゲルを1.5M NaCl、1Mトリス、pH7.0中で30分間穏やかに振とうさせることで、再生ステップを含むことができる。
【0065】
前記DNAは、その後、転写液を用いて(例えば、6XSSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウム)、例えば、Maximum Strength Nytran Plus メンブレン (Schleicher & Schuell, Keene, N.H.)のような適当な陽性に荷電した薄膜上に転用するのがよい。いったん、転用が完結すると、一般的には約2時間後、該薄膜を、例えば2X SSC(2X SSC=300mM NaCl、30mM クエン酸三ナトリウム)ですすぎ、かつ室温で空気乾燥する。それから、該薄膜は、適当なプレハイブリダイズ溶液中(例えば、100 mLあたり以下のものを含む水溶液:ホルムアミド 20−50 mL、20X SSPE (1X SSPE = 0.18 M NaCl、1mM EDTA、10 mM NaHPO、pH 7.7)25 mL、20%SDS 2.5 mL及び 10mg/mLの剪毛したニシンまたはサケの精子のDNA 1mL )で、プレハイブリダイズする。当業者に公知の通り、プレハイブリダイズ溶液中のホルムアミドの量は、所定の手順に従って得られる自然反応によって様々である。従って、ホルムアミドの量が少ない場合の方が、同じ手順でより多い量のホルムアミドを使った場合よりも、ハイブリダイズした分子の特定という点に関しては、結果としてより完全なハイブリッド形成となる。一方、より多くのホルムアミドを用いることにより、強力なハイブリッドバンドがより簡単に視覚的に検出できる。
【0066】
目的DNA配列に相補的またはほぼ相補的であり、かつ一般的に長さ100から1000塩基であるDNAプローブを、DNAの32Pと混合するために、標識する(例えば、製品の取扱説明書に従ったラベリングシステム(Megaprime Labeling System)を用いて)。標識されたプローブを、5分間95℃に加熱することにより変性させ、直ちに薄膜及びプレハイブリッド溶液に加える。ハイブリッド反応は適当な条件下、適当な時間で進行させるべきである。例えば、18時間、37℃で穏やかに振とうまたは回転させる。前期薄膜をすすぎ(例えば、2X SSC/0.3% SDS中で)、その後、緩やかに攪拌しながら適当な洗浄液で洗浄した。望ましいストリンジェンシーは薄膜(フィルター)の洗浄条件に反映する。
【0067】
具体的に言うと、所定の反応におけるストリンジェンシー(すなわち、ハイブリッド形成の成功に必要な相同性の程度:厳密度)は、ハイブリッド形成の後にフィルターが受ける洗浄条件による。ここで定義される“低ストリンジェンシー”条件は、15分間、20℃で、0.2X SSC/0.1% SDS溶液を用いてフィルターを洗浄することを含む。“高ストリンジェンシー”条件は、さらに、30分間、37℃で、0.2X SSC/0.1% SDS溶液を用いてフィルターを2回洗浄する洗浄ステップを含む。
【0068】
洗浄後、薄膜を乾燥させ、結合プローブを検出する。もし、標識剤として32Pまたは他の放射性同位元素を使用すると、結合プローブはオートラジオグラフィーによって検出できる。その他のプローブの視覚化のための他の技術は、当業者に公知である。核酸配列を示す結合プローブの検出は、望ましい相同性を有し、また、本発明の範囲内に含まれる。
【0069】
クローン化タンパク質は、その後タンパク質を発現させる目的で、宿主細胞を形質転換させるために使用する。タンパク質遺伝子は、多コピープラスミドに連結させる。このプラスミドは、以下のプラスミドの複製に必要である周知の要素を含むことで、宿主において複製する:問題の遺伝子に対して動作可能に連結しているプロモーター(もしそれが宿主によって認識、すなわち転写される場合、その遺伝子自身の相同プロモーターとして提供され得る)、外因性、またはタンパク質遺伝子の内因性の終止領域によって提供される転写終了領域とポリアデニル化領域(ある真核宿主細胞において、タンパク質遺伝子から宿主細胞によって転写されたmRNAの安定性のために必要である)、及び、望ましくは、抗生物質含有培地において培養することによるプラスミド−感染宿主細胞の連続培養維持を可能とする抗生物質耐性遺伝子のような選択遺伝子。また、多コピープラスミドは、宿主のための複製起点を含み、従って多くのプラスミドは染色体の制限なしに細胞質内で発生することが可能となる。しかしながら、宿主ゲノムにタンパク質遺伝子の多様なコピーを一体化させることは、本発明の範囲内である。これは、特に相同的組換えを受けやすい原核生物及び真核生物によって容易になされる。
【0070】
1つの実施形態において、その遺伝子はB.レンタスまたはB.アミロリケファシエンス由来遺伝子のような天然の遺伝子であってよい。或いは、天然の、または変異の前駆体タンパク質をコードする合成遺伝子を作成してもよい。このようなやり方の中で、前駆体タンパク質のDNA及び/またはアミノ酸配列が特定される。そしてその後、ハイブリッド形成及び連結反応によって、前駆体タンパク質をコードする合成DNAを作成するような、多様で、重複した合成1本鎖DNA断片を合成する。合成遺伝子構造の例が、米国特許第5,204,015号の実施例3に公開されており、その公報が引例として本発明の中に組み込まれている。
【0071】
いったん天然または合成の前駆体タンパク質遺伝子がクローン化されると、天然の前駆体タンパク質を合成する域を越えて、その遺伝子の使用を増進するために、多くの修飾が開始される。このような修飾は、米国特許第4,760,025号(RE34,606)及び欧州特許出願公開第0 251 446号に開示されている組換えタンパク質の作成、及びこの中に記載されている変異タンパク質の作成を含む。
【0072】
他の方法も使用できるが、本発明の変異タンパク質の構築を容易にするため、以下のカセット変異誘発法が使用できる。最初に、該タンパク質をコードする天然の遺伝子を入手し、その全体または一部の配列を決定する。次に、コードされている酵素中における1つ以上のアミノ酸の変異(欠失、挿入または置換)を生じさせることが望ましい地点を示すために、その配列をスキャンする。発現された場合に種々の変異体をコードするオリゴヌクレオチドプールで、その遺伝子の短い断片を置換するための制限酵素認識部位を導入するために、この地点に隣接する配列を評価する。このような制限酵素認識部位は、好ましくは、遺伝子断片の置換を容易にするために、タンパク質遺伝子内の特定の部位に存在する。しかしながら、タンパク質遺伝子内の過度に冗長でない任意の都合のよい制限酵素認識部位を使用でき、制限消化によって作成される遺伝子断片を適当な配列中に再構築できる。もし制限酵素認識部位が、選択された地点から都合のよい距離内(10から15ヌクレオチド)の位置に存在しない場合には、最終構造においてリーディング・フレームまたはコードされているアミノ酸のいずれもが変化しないような方法で、その遺伝子中のヌクレオチドを置換することによって、そのような認識部位を作成する。望ましい配列に適合させる目的でその配列を変化させるための遺伝子の変異は、公知の方法に従って、M13プライマーの伸長によって達成される。適当な隣接領域の位置の特定、及び2つの都合の良い制限酵素認識部位配列を導入するために必要な変化を評価する作業は、遺伝暗号の冗長性、遺伝子の制限酵素地図、及び多くの異なった制限酵素に基づく、機械的なものとなっている。ここで留意すべきは、もし都合の良い隣接制限酵素認識部位が利用可能であれば、認識部位を含まない隣接領域に関連してのみ上記方法を使用する必要があることである。
【0073】
いったん天然DNAまたは合成DNAがクローン化されると、変異させるべき位置に隣接する制限酵素認識部位を同起源の制限酵素で消化し、多数の最終末端−相補的オリゴヌクレオチドカセット(end termini−complementary oligonucleotide cassettes)をその遺伝子に連結させる。この方法によると、すべてのオリゴヌクレオチドが同じ制限酵素認識部位を持つように合成でき、制限酵素認識部位を作成するために合成リンカーを必要としないため、突然変異誘発が簡素化される。
【0074】
本発明の1つの特徴において、その目的は、アレルギー性が低下するとその酵素をより安全に使用できるため、前駆体タンパク質と比較してアレルギー性が変化した変異タンパク質を得ることである。本発明はアレルギー性を低下させるのに有用であるが、この中で明確にされる変異は、熱安定性及び/または基質特異性、修飾活性またはアルカリ安定性を結果として変化させる当業界で公知の変異と組み合わせて利用できる。
【0075】
従って、本発明は、T細胞増殖を誘導するバシラス・レンタスにおける170−173番残基を含むT細胞エピトープの性質を変化させることを目的としている。本発明の特に好ましい1つの実施形態は、R170D、Y171Q及び/またはN173Dのうちの1つまたは全てに修飾を加えることを含む。同様に、先に詳細に説明したように、任意のタンパク質における対応残基の修飾は、結果として、該タンパク質における主要T細胞エピトープを中和すると考えられる。従って、本発明の変異タンパク質のアレルギー性を低下させることに加え、170−173番アミノ酸残基に対応する領域における現在開示されている変異と組み合わせて、全体的に酵素の安定性及び/またはタンパク質分解活性を調節するために、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのV68A、T213R、A232V、Q236H、Q245R及びT260Aに対応する位置からなる群より選択される1つ以上の置換と必要に応じて組み合わせて、N76D/S103A/V104I/G159Dに対応する位置における置換を用いることができる。同様に、結果として生じる変異酵素の安定性及び/または活性を高めさせるために、S103A/V104I/G159Dの変異と組み合わせ、及び必要に応じてバシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのV68A、T213R、A232V、Q236H、Q245R及びT260Aに対応する位置からなる群より選択された1つ以上の置換と組み合わせて、この中で提供される置換と、+76の同じ位置おけるバシラス・レンタス・ズブチリシンのアスパラギン(N)をアスパラギン酸(D)にする変異と組み合わせることができる。
【0076】
本発明の最も好ましい実施例は、以下の位置に対応する残基の置換における具体的な組み合わせを含む:バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのN76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D;
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/Q236H;
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/Q236H/Q245R;
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/A232V/Q236H/Q245R;及び
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/T213R/A232V/Q236H/Q245R/T260A
これらの置換は、任意のバシラス菌タンパク質おいて実施できるが、好ましくはバシラス・レンタス(組換え型又は天然型)において実施する。
【0077】
変異タンパク質を用いて得られたスクリーニング結果によると、上記のバシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンにおいて言及した注目の変異が、これら酵素におけるタンパク質分解活性、性能及び/または安定性、並びにこのような変異酵素における浄化または洗浄能力にとって重要である。
【0078】
本発明の多くの変異タンパク質は、種々の洗剤組成物の形成において有用である。多くの公知の化合物は、本発明の変異タンパク質を含む組成物において有用で適当な界面活性剤となる。米国特許第4,404,128号(Barry J.Anderson)及び米国特許第4,261,868号(Jiri Flora ら)に開示されているように、これらの界面活性剤は、非イオン、陰イオン、陽イオンまたは両性イオン洗剤を含む。適当な洗剤処方は、米国特許第5,204,015号(すでに引例として記載している)の実施例7に記載されている。この技術は、洗濯組成物として使用することができるような種々の剤形に通じている。典型的な洗濯組成物に加えて、天然型または野生型タンパク質が使用されるいずれの目的においても、本発明の変異タンパク質を使用できることは当然のことである。従って、これらの変異体は、例えば、固形または液状石鹸の用途、食器用洗剤の形態、コンタクトレンズ洗浄液または手入れ用品、ペプチド加水分解、廃棄物処理、織物製品用途において、またはタンパク質生成における融合−分解酵素等として使用できる。本発明の変異体は、アレルギー性の低下に加えて、洗剤組成物において、強化された性能を持つことができる(前駆体と比較して)。ここで用いられている、高められた洗剤の性能は、標準の洗濯サイクルを行った後に通常の評価をして決定したとき、草または血液のような特定の酵素に敏感な汚れの洗浄力の強化として確認される。
【0079】
本発明のタンパク質、特にプロテアーゼは、約0.01〜約5重量%(好ましくは0.1重量%〜0.5重量%)で、pHが6.5〜12.0の間である公知の粉末及び液体洗剤に処方できる。また、これらの洗剤組成物は、ビルダー及び安定剤と同様に、公知のプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼまたはエンドグリコシダーゼのような他の酵素を含んでいてもよい。
【0080】
本発明のタンパク質、特にプロテアーゼを従来の洗濯用組成物に添加することは、特別の用途限定とはならない。言い換えると、その洗剤に適した任意の温度及びpHは、そのpHが上記の範囲にあり、かつその温度が記載されているタンパク質の変性温度より低い限りにおいては、該組成物にも適している。さらに、本発明のタンパク質は、洗浄剤を含まない洗剤組成物において、この場合も同様に、単独またはビルダー及び安定剤と組み合わせて用いることができる。
【0081】
本発明の変異タンパク質は、例えば、米国特許第5,612,055号;米国特許第5,314,692号;及び米国特許第5,147,642号に記載されているように、動物飼料添加物の一部として、動物飼料に含めることができる。
【0082】
本発明の特徴の1つは、本発明の変異タンパク質を含む織物加工用の組成物である。該組成物は、RD216,034;欧州特許第134,267号;米国特許第4,533,359号;及び欧州特許第344,259号のような公開公報に記載されているように、例えば、絹織物、毛織物を手入れするために使用できる。
【0083】
前記変異体は、当業者に公知の方法に従って、タンパク質分解活性についてスクリーニングできる。好ましい変異プロテアーゼは、以下に対応する位置に多様な置換を含む:バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンのN76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D;
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/Q236H;
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/Q236H/Q245R;
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/A232V/Q236H/Q245R;及び
V68A/N76D/S103A/V104I/G159D/K170D/Y171Q/S173D/T213R/A232V/Q236H/Q245R/T260A
【0084】
本発明のタンパク質は、それらの前駆体タンパク質と比較すると、修正された免疫原性を示す。好ましい実施形態においては、該タンパク質は減少したアレルギー性を示す。他の実施形態においては、該タンパク質は増加した免疫原性を示す。この免疫原性の増加は、B細胞または体液免疫反応の増加、T細胞または細胞免疫反応、またはB及びT細胞免疫反応の両方における増加によって明示される。本発明のタンパク質の使用は、主に、該タンパク質の免疫特性によって決定されることが、当業者は容易に理解できるであろう。例えば、減少したアレルギー性を示す酵素は洗剤組成物に使用できる。“洗剤組成物”とは、例えば織物、皿、コンタクトレンズ、その他の固体基質、毛髪(シャンプー)、肌(石鹸及びクリーム)等のような基質から望ましくない化合物を取り除くために用いることができる組成物をいう。アレルギー性の減少したタンパク質、特にセルラーゼ、プロテアーゼ及びアミラーゼもまた、織物加工に用いることができる。“織物加工”とは、織物において、編み込んだり、フェルト加工またはニット加工して布地や衣服にできるような特定の毛糸または繊維を、望ましい特性をもたらすように加工する方法を含む。このような望ましい特性の例としては、“ストーンウオッシュ”、毛羽取り(depilling)、脱毛、のり抜き、柔軟加工及び当業者に公知のその他の織物加工がある。
【0085】
また、免疫反応を起こす特定のヒトに対する治療用タンパク質も本発明に含まれる。特に、該タンパク質の内生的製造を十分にできない特定のヒトは、中和抗体を形成しやすく、治療しにくい。同様に、タンパク質の修飾は、潜在的免疫原性である新しいエピトープを取り込むことができる。本発明の方法は、例えば、反応の中和を防ぐヒト因子VIIIのようなエピトープを同定及び修飾するために用いることができる。
【0086】
薬剤組成物は、例えば顆粒、タブレット、錠剤、座剤、カプセル、懸濁液、軟膏、ローション、及び類似の形態のような、種々の形状で調製できる。経口及び局所使用に適当な薬剤レベルの有機または無機の運搬剤及び/または希釈剤は、薬剤活性化合物を含む組成物を製造するために使用できる。希釈剤は、公知のものとして、水溶性媒体、植物性及び動物性油並びに油脂が挙げられる。助剤としては、安定化剤、湿潤及び乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、または適切なpH値を得るための緩衝液、及び経皮浸透促進剤を用いることができる。また、薬剤組成物は以下の1つ以上を含むことができる:血清アルブミンのような運搬タンパク質;緩衝液;マイクロクリスタリン・セルロース、ラクトース、穀類及びその他でんぷんのような充填剤;結合剤;甘味料及びその他の香料添加剤;着色剤;並びにポリエチレングリコール。添加剤は公知のものを、種々の剤形において使用する。
【0087】
この中で引用されているすべての出版物及び特許は、そのすべてを参考のためこの明細書に添付する。以下の実施例によって本発明を示しているが、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0088】
実施例
実施例 ナイーブヒトT細胞を用いたペプチドT細胞エピトープを同定するための測定法
バシラス・レンタス由来プロテアーゼ及びヒトズブチリシンにおける抗原エピトープを特定するために、“未刺激(naive)”のヒト、すなわちバシラス・レンタスプロテアーゼに対して暴露されまたは感作されたことが知られていないヒトから、新鮮なヒト末梢血細胞を採取する。未刺激のヒトとは、過去にプロテアーゼに対する暴露、または反応を開始していることが知られていないヒトを意味する。末梢血単核細胞(室温で保存し、採取後24時間以上たっていない)は以下のように調製した:単一の全血由来である軟膜調製物(buffy coat preparation)の溶液約30mlを、ダルベッコのリン酸緩衝液(DPBS)で50mlとし、さらに2本のチューブに分けた。その試料を室温で12.5mlリンフォプレップ密度分離媒体(lymphoprep density separation media)(ニコメッド(Nycomed)密度 1.077g/ml)下に置いた。そのチューブを600Gで30分間遠心分離機にかけた。2つの層の境界部分を回収し、溜めてから、さらにDPBSで洗浄した。その結果として生じた溶液中の細胞密度を血球計算盤で測定した。生存率をトリパンブルー排除によって測定した。
【0089】
結果として生じた溶液の、75ml培養フラスコ当たり10の細胞密度を有する末梢血単核細胞試料から、以下のように、分化樹状細胞培地を調製した:
(1)50mlの無血清AIM V培地(Gibco)に1:100希釈したβ−メルカプトエタノール(Gibco)を足した。フラスコ壁に単核球を吸着させるために、5%CO中、37℃で2時間、そのフラスコを平面に横にして置いた。
【0090】
(2)単核細胞の樹状細胞への分化は、以下の通りである:非吸着細胞を除去し、残った吸着細胞(単核球)に30mlのAIM V、800units/mlのGM−CSF(内因性(Endogen))、及び500units/mlのIL−4(Endogen)を混合した;その混合液を5%CO中、37℃の条件下で5日間培養した。5日後、サイトカインTNFα(Endogen)を0.2units/mlになるまで添加し、さらにサイトカインIL−1α(Endogen)を最終濃度50units/mlとなるまで添加し、その混合液を5%CO中、37℃でさらに2日間インキュベーションした。
【0091】
(3)7日目に、分化樹状細胞培地の成長を止めるために、マイトマイシンCを50μg/mlの濃度になるまで添加した。その溶液を5%CO中、37℃で60分間インキュベーションした。樹状細胞を、セルスクレーパーを用いてフラスコ底から吸着細胞を優しくこすり取ることによって回収した。吸着細胞及び非吸着細胞は、その後600Gで5分間遠心分離機にかけ、DPBSで洗浄し、さらに細胞数を数えた。
【0092】
(4)調製した樹状細胞を、全容積100μl AIM V培地中、2×10/wellで、96ウェル丸底プレートに分注した。
【0093】
CD4陽性T細胞は、ヒトCD4陽性セレクトキット(human CD4+ Cellect Kit)(Biotex)を用いて、製品の取扱説明書の方法に以下の変更を加えて、樹状細胞の調製に用いた末梢血細胞試料の凍結分取した部分(frozen aliquots)より調製した:その凍結分取した部分を解凍し、セレクトカラム(Cellect column)当たり約10細胞が添加されるように洗浄した;その細胞をDPBS4ml及びセレクトキットからの細胞試薬1ml中に再懸濁させ、その溶液を室温で20分間保持した。その結果として生じた溶液を室温、600Gで5分間遠心分離し、そのペレットをDPBS2mlに再懸濁させ、さらにセレクトカラムに充填した。カラムからの溶出液を、2%ヒト血清含有DPBS中に回収した。生じたCD4陽性細胞溶液を遠心分離し、AIMV培地に再懸濁させ、そして細胞密度を測定した。
【0094】
前記CD4陽性T細胞懸濁液は、96ウェルプレ−トの効率的な操作を容易にするため、AIM V培地中において2×10/mlとなるように再懸濁させた。
【0095】
ペプチド抗原は、AIM V培地中に1:10の比率で希釈することによって、DMSO中の1Mの原液から調製した。原液10μlを、分化樹状細胞を含む96ウェルプレートの各ウェルに添加した。上記のように調製した希釈CD4陽性T細胞溶液100μlを、さらに各ウェルに加えた。有用なコントロールとして、希釈したDMSOブランク、及び破傷風トキソイドの陽性コントロールが挙げられる。
【0096】
総容積210μlにおける各ウェルの最終的な濃度は以下の通りである:
2×10 CD4陽性
2×10 樹状細胞(R:Sは10:1)
5mM ペプチド
【0097】
実施例2 バシラス・レンタス由来プロテアーゼ及びヒトズブチリシンにおけるT細胞エピトープの同定
実施例1に記載の測定法において使用するためのペプチドは、バシラス・レンタスのアミノ酸配列及びヒトズブチリシンのアミノ酸配列に基づき調製した。ペプチド抗原は、以下のように設計した。図1に示されているヒトズブチリシン、またはバシラス・レンタスプロテアーゼの完全長アミノ酸配列から、15配列(15mers)が合成によって調製され、各15配列は、3つの残基を除いて、その前の15配列及びその後の15配列と重複する。
【0098】
使用されるペプチドは、図8に示されているバシラス・レンタスのアミノ酸残基列に対応し、そしてペプチドは、図7に示されているヒトズブチリシンのアミノ酸残基に対応する。プロテアーゼに対応して用いられるペプチドは、図6に示す。すべての試験は少なくとも2重に行った。報告されたすべての試験は、破傷風トキソイド抗原に対して強い陽性コントロール反応を示した。反応は、各実験の範囲内において平均化し、基準となる反応に対して標準化した。もしその反応が基準反応の3倍より大きい場合は、陽性の事象が記録される。
【0099】
ヒトズブチリシン及びバシラス・レンタス由来調製ペプチドに対する免疫反応(すなわちT細胞増殖)を記録し、それぞれ図4及び図5に示した。T細胞増殖は、トリチウム法を組み込んで測定した。その結果が、種々のペプチドに対する10人の検体(図4)及び16人の検体(図5)における免疫付加反応の比較として、図4及び図5に示されている。反応は、各試料の基準反応を1.0とした付加反応として示す。従って、図4では、10.0以下が基準反応であり、図5では16.0以下が基準反応であると解釈できる。反応が大きいほど、T細胞エピトープのアレルギー性も高まると考えられる。
【0100】
図4及び図5に示すように、感作されていないヒト由来未刺激血液試料の免疫反応は、バシラス・アミロリケファシエンスプロテアーゼの170−173番残基に対応するバシラス・レンタス由来ペプチド断片に対して、顕著なアレルギー反応を示した。予想される通り、ヒトズブチリシンにおける対応断片は、単に基本反応を引き起こしただけである。
【0101】
図9は、バシラス・レンタスプロテアーゼに対して過敏症であることが分かっているヒトから採取した試料における、バシラス・レンタスプロテアーゼ由来ペプチドに対するT細胞反応を示す。ペプチドE05は、バシラス・アミロリケファシエンス由来プロテアーゼにおける170−173番残基に対応する領域を表わす。図9に示すように、過敏症のヒトは、ペプチドE05によって表わされているT細胞エピトープに対して極めて反応しやすい。この結果は、本発明に基づく測定法を実施することによって、過敏症のヒトのT細胞によって認識される主なエピトープの予測が可能であることを確認する。
【0102】
図10は、バシラス・レンタスプロテアーゼに対して過敏症であることが分かっているヒトから採取した試料における、バシラス・レンタスプロテアーゼ由来E05ペプチドの種々のアラニン置換体に対する、T細胞反応を示す。アラニン置換は、エピトープ内における任意の特定残基の役割を特定するための置換として用いた。図10の凡例(legend)は、アラニンで置換されているペプチドの位置を示しており、すなわち、ペプチドE06(配列 GSISYPARYANAMAV)において、以下の置換をした;GをA=2、SをA=3、IをA=4、SをA=5、YをA=6、PをA=7、RをA=8、YをA=9、NをA=10、MをA=11、VをA=12。図10に示すように、バシラス・レンタス由来プロテアーゼにおいてR170A、Y171A及び/またはN173A残基のいずれかを置換すると、結果として、過敏症のヒトの血液試料において反応が劇的に低下する。
【0103】
これらの結果から、170、171及び173番残基は、バシラス・レンタス由来プロテアーゼ内において、アレルギー反応の開始のために大きな役割を担っていることが明らかである。
【0104】
実施例3 フミコーラ・インソレンス(ケアザイム(登録商標)(Carezyme 登録商標 ))由来セルラーゼにおけるT細胞エピトープの同定
上記と同様の手順をフミコーラ・インソレンス(ケアザイム(登録商用)、ノボ ノルディスク(Novo Nordisk)社製)由来セルラーゼから得られるペプチドに行った。図13からわかるように、2つのT細胞エピトープ、すなわちA01及びF06が見つかった。
【0105】
実施例4 サーモマイセス・ラヌギノーサ(リポラーゼ(登録商標)(Lipolase 登録商標))由来リパーゼにおけるT細胞エピトープの同定
実施例2に記載と同様の手順をサーモマイセス・ラヌギノーサ(リポラーゼ(登録商標)、ノボ ノルディスク社製)由来リパーゼから得られるペプチドに行った。図14からわかるように、2つのT細胞エピトープ、すなわちA12及びC06が見つかった。ペプチドE03は、未刺激のドナーにおいてT細胞増殖の若干の増加をもたらした。しかしながら、このペプチドはA12まで連続しており、1つのエピトープを示す。この点で、エピトープの長さは様々であり、天然または変異のいずれにおいてもそのエピトープの正確なアレルギー潜在性が、この中に記載されている方法によって特定できることは、当業者にとって容易に理解される。
【0106】
実施例5 ストレプトマイセス・プリケイタス(Streptomyces plicatus)由来エンドグルカナーゼHにおけるT細胞エピトープの同定
実施例2に記載と同様の手順をストレプトマイセス・プリケイタス由来エンドグルカナーゼHから得られるペプチドに行った。図15からわかるように、1つのT細胞エピトープ、すなわちC06が見つかった。
【0107】
実施例6 混合プロテアーゼ(GG36−BPN’)におけるT細胞エピトープの同定
T細胞エピトープの位置を特定した後、従来のタンパク質工学技術を用いて混合プロテアーゼを作成した。かかる混合は、タンパク質の高アレルギー性アミノ酸配列を、対応する低アレルギー性相同物由来配列に置換するように作成した。この場合に、プロテアーゼの最初の122個のアミノ酸はGG36から、そして残りのアミノ酸配列はBPN’から得た。
【0108】
前記混合プロテアーゼはまず、100ppmの試料から試験を行い、北アメリカの気候条件で、0.5ppmで24ウェル測定、superfixed swatches、3K swatchesを用いた24ウェル測定において液体(タイドKT(Tide KT))0.5を試験し、さらにN’N’−ジメチル カゼイン測定、DMC5g/lを含むNA洗剤、TNBS検出法を行った。
【0109】
図16、17及び18に結果を示す。
【0110】
実施例7 低免疫原性である天然タンパク質の同定
この中に記載されている方法を用いて、他の市販のプロテアーゼよりも低い免疫反応を生じさせるものとして、プロテイナーゼKを同定した。ここで同定したプロテイナーゼKはTritirachium Album limberに由来する。プロテアーゼ及び手順の概要は、Mathew、C.G.P.Isolation of high molecular weight eukaryotic DNA、in Methods in Molecular Biology、vol2:Nucleic Acids(Walker、J.M.,ed.)、Humana、Clifton、NJ、(1984) p.31−34を参照。
【0111】
実施例8 非アレルギー性タンパク質へ導入するT細胞エピトープ
バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシンはハートレイ系モルモットで試験した場合、比較的、免疫原性を示さないことがわかった。バシラス・レンティス由来の関連タンパク質は高い免疫原性を示す。目的の配列が高い相同性を示すことにかかわらず、我々はB.アミロリケファシエンス分子中にはないB.レンティス分子の機能的T細胞エピトープをあらかじめ特定した。機能的T細胞エピトープが存在すると抗体作成の相対レベルを制御できるという原理を試験するために、我々はB.アミロリケファシエンス分子中にB.レンティス様のT細胞エピトープを作成した。この変化は、B.アミロリケファシエンス配列中のただ1つのアミノ酸の置換により実現できた。B.アミロリケファシエンス・ズブチリシン及びB.アミロリケファシエンス・ズブチリシンの変異体を修飾するT細胞エピトープは、免疫原性のモデルとなるモルモットにおいて試験した。
【0112】
B.レンティス及びB.アミロリケファシエンス・ズブチリシンT細胞エピトープのマッピング:モルモットに、バシラス・レンティス又はバシラス・アミロリケファシエンスいずれかから得られたズブチリシン20μg/回の免疫付与で、免疫性を与えた。補助的に、2週間ごとに10〜12週間、モルモットの皮下に免疫性を与えた。モルモット脾細胞の単個細胞浮遊液(single cell suspension)を各モルモットの脾臓から作成する。細胞は、丸底96ウェルプレートにおいて、ウェル当たり5×10脾細胞をプレートした。3アミノ酸を除いた15マー(mers)のペプチドをMimotopesによって合成した。ペプチドをDMSO中1mMになるまで再懸濁した。そして、最終濃度が5μMになるようにペプチドを前記細胞に添加した。培地を5日間、37℃、5%COでインキュベーションした。ウェルは0.5μCiトリチウムチミジンでパルスして、さらに18時間インキュベーションさせた。ウェルを収穫し、そしてチミジン結合を評価した。
【0113】
2つのT細胞エピトープがB.レンティス・ズブチリシン中に見つかった、そして、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシン中には見つからなかった(これらのエピトープのために10匹未満を試験した)。B.レンティスT細胞エピトープは以下の配列を含むことがわかった:IAALNNSIGVLGVAP(SEQ ID NO:237)及び LEWAGNNGMHVANLSLGS (SEQ ID NO:238)。
【0114】
SEQ ID NO:237に対して、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシンにおける類似配列はVAALNNSIGVLGVAP(SEQ ID NO:239)である。SEQ ID NO:238に対するB.アミロリケファシエンス・ズブチリシンの類似領域はほとんど相同性がなかった:IEWAIANNMDVINMSLG (SEQ ID NO:240)。
【0115】
SEQ ID NO:237及びB.アミロリケファシエンス・ズブチリシン分子の相同領域(SEQ ID NO:239)はアミノ酸が1つ異なる:最初のアミノ酸はバシラス・アミロリケファシエンスではVだが、B.レンティス・ズブチリシンにおいてはIである。従って、もしB.アミロリケファシエンス配列においてVをIに変えれば、バシラス・アミロリケファシエンスを基幹としてバシラス・レンティスT細胞エピトープを作成できると推論した。
【0116】
この分子は、標準的な分子生物学技術によって作成し、かかる分子をB.アミロリケファシエンスV721とした。これはGP002としても知られる。
【0117】
モルモット免疫付与:メスの成体ハートレイ系モルモットにB.アミロリケファシエンス・ズブチリシン及びGP002を様々に投与して免疫性を与えた。投与量は1、5、10及び20μg/投与とした。各投与に対して4匹用意した。モルモットは最初の免疫付与において、完全フロイントアジュバントの酵素を用いて皮下から免疫性を与えた。その後に続くすべての免疫付与は、不完全フロイントアジュバントによって実施した。モルモットに免疫性を与え、そして2週間毎に血清試料を採取した。
【0118】
ELISA(酵素免疫測定法):直接吸着ELISA法を実施した。Costart EIAプレートをPIBの免疫酵素10μg/mlで、4℃、一晩中コーティングした。プレートを洗浄し、PBSの1%BSAで塞いだ。血清試料は1%BSA/PBSで希釈し、1時間、酵素でコーティングされたプレート上でインキュベーションした。血清試料を洗い落とし、ビオチン化抗モルモットIgGを1%BSA/PBS中1:10,000に希釈して加えた。派生的試薬を1時間インキュベーションした。ウェルを洗浄し、アビジンを結合した西洋ワサビ・ペルオキシダーゼを1%BSA/PBS中1:1000に希釈して、ウェルに加えた。30分後、基質(ABTS)を加え、OD405を30分後に読み取った。
【0119】
滴定量の計算:読み取ったOD値からバックグラウンドを差し引き、それぞれのモルモット検体毎にその結果をプロットした。曲線の直線部に線形回帰分析を行った。OD=0.5に対する線形回帰方程式から滴定値を計算した。それから、これら個々の滴定量を平均した。
【0120】
実験中、10μgのGP001を投与したモルモット2匹が2週間で死亡した。従って、10μg投与量のデータは破棄した。
【0121】
2つの結論が直ちに明らかとなった:まず、GP002変異体は、すべての時間経過にわたって、より少ない酵素投与に対し、抗原特異的抗体の滴定量を増加させた;さらに、GP002変異体は、早い時点でのすべての酵素投与に対し、抗原特異的抗体の滴定量を増加させた。
【0122】
長時間が経った時点及びより多く投与した時点においては、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシンとその変異体の間における違いはもはや明白ではない。図19及び20を参照。
【0123】
図より、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシンのアミノ酸配列のたった1つの変化でその免疫原性が顕著に変化したということが明らかである。
【0124】
実施例9 in Vivoによるアレルギー性の減少
ヒトT細胞エピトープの同定が可能であるとすると、T細胞の活性化及びそれに続いて起こるタンパク質に対する免疫反応を減少させるために、それらのアミノ酸配列を修飾することが可能である。しかしながら、これらの変化におけるin vivo効果を評価するために、エピトープを提示するヒトHLA分子の能力を示す、動物モデルを使用することが必要である。例えば、ヒトT細胞エピトープはBPN’分子の70−84及び109−122番残基領域(2000年2月8日に出願された米国特許出願第09/500,135号;図16を参照)中に同定されている。
【0125】
これら主題におけるアミノ酸配列の置換は、広範囲のヒトHLAハプロタイプを示すヒト細胞を用いたin vitroにおけるT細胞増殖を結果として減少させた。EBV形質転換B細胞株を用いたin vitro結合測定法は、HLA DQ2分子に結合したペプチドの70−84番及び109−123番を明示した。T細胞増殖を減少させることがわかった置換は、低免疫原性FNA変異体を作成するためにFNA(Y217Lを置換したBPN’)をコードする配列に導入した。
【0126】
ヒトHLA遺伝子を発現する遺伝子導入マウスは、in vivoにおいて免疫系を提示するエピトープを調査するために使われてきた。反応する免疫細胞はマウス由来のものだが、ヒト及びマウスに認識されるエピトープの間には強い相関関係がある。しかしながら、HLA遺伝子電子導入マウスの新規な使用は、変異タンパク質をテストする際に、どの程度ヒトが反応するかの予測として、アレルギー潜在性を減少させるために用いることができる。
【0127】
この効果を実証するために、FNA及びエピトープ70−84及び109−123番におけるアミノ酸配列の変化を含むFNA変異体の両方を、1−Abノックアウトマウス(C2Dとして言及した、内生的I−AクラスII分子の発現性が欠如しているマウス)に戻し交配させたHLA DR3/DQ2遺伝子導入マウスに、免疫性を与えるために用いた。オスの成体HLA‐DR3/DQ2/C2Dマウスに、完全フロイントアジュバントのFNAまたはFNA乳化変異体50μgを用いて、免疫性を与えた。免疫付与は腹腔内に投与した。2週間後、マウスに、さらに50μgの不完全フロイントアジュバントにおけるFNAまたはその乳化変異体の免疫付与を腹腔内に与えた。1週間後、球後ブロック手段(retro‐orbital route)によってマウスを出血させ、血清を回収した。血清は、直接吸着ELISAプロトコルにおいて、抗原特異的IgG抗体を確認した。簡単に言うと、96ウェル平底EIAプレートを10μg/mlの変性FNAで一晩中コーティングした。プレートを洗浄し、1%のウシ胎仔血清で塞いだ。そして、血清を滴定して1:10に希釈した。血清をウェルから洗い落とし、抗マウス免疫グロブリンGと結合した西洋ワサビ・ペルオキシダーゼを用いて抗原特異的IgGを検出した。結果を平均光学濃度(×1000)に対する血清希釈率として、表1及び図21に示す。
【0128】
【表1】
Figure 2004528013
【0129】
本結果は、70−84及び109−123番領域に導入した変化が、DQ2遺伝子導入マウスのその変異体に対して体液反応を開始する可能性を著しく減少させることを示し、そして、ヒトの免疫原性の減少を示すために本発明の方法を用いて予測した人工タンパク質のin vivo特定のための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1A、B1、B2及びB3は、バシラス・アミロリケファシエンス・ズブチリシン(Bacillus amyloliquefaciens subtilisin)(BPN’)のDNA配列(SEQ ID:NO1)及びアミノ酸配列(SEQ ID:NO2)、並びにこの遺伝子の部分的制限酵素地図を示す。
【図2】
図2は、バシラス・アミロリケファシエンス(SEQ ID:NO3)とバシラス・レンタス(野生型)(SEQ ID:NO4)由来ズブチリシン間の保存アミノ酸残基を示す。
【図3】
図3A及び3Bは、バシラス・アミロリケファシエンス(BPN’)、枯草菌、バシラス・リケニフォルミス(SEQ ID:NO5)及びバシラス・レンタスに由来する、ズブチリシン様プロテアーゼのアミノ酸配列を並べて示す。*印は、BPN’ズブチリシンに照らして、特定のアミノ酸残基の欠失を示す。
【図4】
図4は、バシラス・レンタスプロテアーゼ(GG36)に対応するペプチドに対する、16の末梢血単核細胞試料の付加T細胞反応を示す。ペプチドE05は、バシラス・アミロリケファシエンス由来プロテアーゼにおける170−173番残基に対応する残基を含む領域を包含する。
【図5】
図5は、ヒトズブチリシン分子に対応するペプチドに対する、10の末梢血単核細胞試料の付加T細胞反応を示す。ペプチドF10、F9、F8及びF7はいずれも、図3のアミノ酸配列において、バシラス・アミロリケファシエンス由来プロテアーゼにおける170−173番残基に対応する残基を含む領域に対応するアミノ酸配列DQMDを包含する。
【図6】
図6A及び6B/6Cは、それぞれ、バシラス・レンタスプロテアーゼ配列及びヒトズブチリシン配列に由来するペプチドに対応するアミノ酸配列を示す。
【図7】
図7は、ヒトズブチリシンのアミノ酸配列(SEQ ID:NO6)を示す。
【図8】
図8は、BPN’( バシラス・アミロリケファシエンス)プロテアーゼ、サビナーゼ(SAVINASE)(バシラス・レンタス)プロテアーゼ及びヒトズブチリシン(S2HSBT)のアミノ酸配列を並べて示す。
【図9】
図9は、バシラス・レンタスプロテアーゼに対して過敏症であることが分かっているヒトから採取した試料における、バシラス・レンタスプロテアーゼ由来ペプチドに対するT細胞反応を示す。ペプチドE05は、バシラス・アミロリケファシエンス由来プロテアーゼにおける170−173番残基に対応する領域を示す。
【図10】
図10は、バシラス・レンタスプロテアーゼに対して過敏症であることが分かっているヒトから採取した試料において生じる、バシラス・レンタスプロテアーゼペプチドE05の種々のアラニン置換体に対するT細胞反応を示す。
【図11】
図11は、プロテアーゼに対して過敏症であることが分かっているヒトから採取した試料において生じる、プロテアーゼペプチドE05(未修飾配列によって示されるT細胞エピトープの実施形態)の種々のアラニン置換体に対するT細胞反応を示す。また、各ペプチドの配列を示す。
【図12】
図12は、ヒトズブチリシン分子に対する反応率を示す。
【図13】
図13は、フミコーラ・インソレンス・エンドグルカナーゼ(Humicola insolens endogluconase)(寄託番号 A23635)由来ペプチドのT細胞反応を示す。ペプチドA02及びF06はそれぞれ、フミコーラ・インソレンス・エンドグルカナーゼの、T細胞エピトープの実施形態における、70−84及び37−51番残基に対応する領域を示す。ここで、図13Bはその全長配列を示し、下線かつ太字はA02及びF06を示している。
【図14】
図14は、サーモマイセス・ラヌギノーサ・リパーゼ(Thermomyces lanuginosa lipase)(寄託番号 AAC08588及びPID番号 g2997733)由来ペプチドに対するT細胞反応を示す。ペプチドB02及びC06はそれぞれ、サーモマイセス・ラヌギノーサ・リパーゼの、T細胞エピトープの実施形態における、83−100及び108−121番残基に対応する領域を示す。ここで、図14Bはその全長配列を示し、下線かつ太字はB02及びC06を示している。
【図15】
図15は、ストレプトマイセス・プリケイタス・エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(Streptomyces plicatus endo−beta−N−acetylglucosaminidase)(寄託番号 P04067)由来ペプチドに対するT細胞反応を示す。ペプチドC06は、ストレプトマイセス・プリケイタス・エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの、T細胞エピトープの実施形態における、126−140番残基に対応する領域を示す。ここで、図15Bはその全長配列を示し、下線かつ太字はC06を示している。
【図16】
図16は、22人の検体における混合BPN’由来ペプチドに対するT細胞反応を示す。ここで、好ましいT細胞エピトープの配列が示されている。
【図17】
図17は、22人の検体における混合GG36由来ペプチドに対するT細胞反応を示す。ここで、T細胞エピトープの実施形態における配列が示され、GSISYPARYANAMAVGA及びGAGLDIVAPGVNVQSが好ましい。
【図18】
図18は、N末端がN末端GG36配列を含み、C末端がC末端BPN’配列を含む、本発明で提供されるハイブリッドタンパク質の実施形態である。また、図8に表したそれらの配列の比較は、ハイブリッド型がそれぞれのタンパク質の好ましいT細胞エピトープを除外することを示す。
【図19】
図19は、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシンとB.レンティス・ズブチリシン由来T細胞エピトープを含むよう改変された同じズブチリシンとのELISA滴定量の比較である。図19aは、4週間後、図19bは6週間後、図19cは8週間後、図19dは10週間後における滴定量を示す。
【図20】
図20は、B.アミロリケファシエンス・ズブチリシンとB.レンティス・ズブチリシン由来T細胞エピトープを含むよう改変された同じズブチリシンとのELISA滴定量の時間的経過調査である。図20aは酵素1μg投与、図20bは5μg投与、図20cは20μg投与における滴定量を示す。

Claims (22)

  1. 以下のステップを含む、人工タンパク質のアレルギー潜在性を特定する方法、
    a)第1の遺伝子導入マウスへの目的タンパク質を用いた免疫付与、及び第2の遺伝子導入マウスへの前記目的タンパク質の変異体である人工タンパク質を用いた免疫付与。さらに、前記目的タンパク質はT細胞エピトープを含み、前記変異体と前記目的タンパク質は変化したT細胞エピトープを有することにより異なる;
    b)前記第1及び前記第2の免疫性を与えられた遺伝子導入マウスの血清の回収;
    c)血清の抗原特異的免疫グロブリンの測定;及び
    d)前記遺伝子導入マウスにおいて異なる免疫反応を引き起こす前記目的タンパク質と前記その変異体における、該目的タンパク質と該その変異体との免疫反応の比較。
  2. 前記目的タンパク質が酵素である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酵素がプロテアーゼである、請求項2に記載の方法。
  4. 抗原特異的免疫グロブリンが免疫グロブリンG(IgG)である、請求項1に記載の方法。
  5. 第1の遺伝子導入マウス及び第2の遺伝子導入マウスがHLA DR3/DQ2である、請求項1に記載の方法。
  6. HLA DR3/DQ2遺伝子導入マウスが、内生的I−AクラスII分子の発現が欠如しているマウスと戻し交配されている、請求項5に記載の方法。
  7. 前記T細胞エピトープをアミノ酸置換によって変化させる、請求項1に記載の方法。
  8. 前記T細胞エピトープを、前記目的タンパク質の同族体の末端部分に対応する部分に置き換えられた前記T細胞エピトープを含有する前記目的タンパク質の末端部分を有することにより変化させる、請求項1に記載の方法であって、前記同族体は前記置換T細胞エピトープと同一のT細胞エピトープを含まない、請求項1に記載の方法。
  9. 変異体によって引き起こされる免疫反応が、目的タンパク質によって引き起こされる免疫反応より少ない、請求項1に記載の方法。
  10. 変異体によって引き起こされる免疫反応が、目的タンパク質によって引き起こされる免疫反応より大きい、請求項1に記載の方法。
  11. 以下のステップを含む、人工タンパク質に対するヒトのアレルギー反応を予測するために、遺伝子導入マウスを使用する方法、
    a)第1の遺伝子導入マウスへの目的タンパク質を用いた免疫付与、及び第2の遺伝子導入マウスへの前記目的タンパク質の変異体である人工タンパク質を用いた免疫付与。さらに、該目的タンパク質はT細胞エピトープを含み、該変異体と該目的タンパク質は変化したT細胞エピトープを有することにより異なる;
    b)前記第1及び前記第2の免疫性を与えられた遺伝子導入マウスの血清の回収;
    c)血清の抗原特異的免疫グロブリンの測定;及び
    d)前記遺伝子導入マウスにおいて異なる免疫反応を引き起こす該目的タンパク質と該その変異体における、該目的タンパク質と該その変異体との免疫反応を比較。前記免疫反応はヒトにおけるアレルギー反応を予測する。
  12. 前記目的タンパク質がプロテアーゼである、請求項11に記載の方法。
  13. T細胞エピトープを含む目的ポリペプチドの変異体であって、前記変異体と前記目的ポリペプチドがヒトにおいて異なる免疫反応を引き起こすようにT細胞エピトープを変化させたことにより、前記目的ポリペプチドと異なる前記変異体。
  14. 前記変異体によって引き起こされる免疫反応が前記目的タンパク質によって引き起こされる免疫反応よりも大きい、請求項13に記載の変異体。
  15. 以下を含む、タンパク質によって引き起こされる免疫反応を特定する方法、
    a)単一の血液を起源として樹状細胞液及びナイーブCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞液を得る;
    b)前記樹状細胞の増殖を促進させる;
    c)前記分化樹状細胞液及び前記ナイーブCD4陽性及び/またはCD8陽性T細胞を前記タンパク質と結合させる;及び
    d)ステップc)におけるT細胞の増殖を測定。
  16. さらに、前記T細胞の増殖と第2のタンパク質の増殖とを比較することを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 目的タンパク質及び第2のタンパク質が互いに同族体である、請求項16に記載の方法。
  18. 目的タンパク質及び第2のタンパク質がプロテアーゼである、請求項17に記載の方法。
  19. 目的タンパク質及び第2のタンパク質がそれぞれ同じタンパク質の異なるペプチドである、請求項18に記載の方法。
  20. 以下を含む、目的ポリペプチドの免疫原性を変化させる方法、a)前記ポリペプチドの免疫原性の特定;b)前記ポリペプチドにおけるT細胞エピトープの同定;及びc)前記ポリペプチドの免疫原性を変化させるために前記T細胞エピトープを変化させる。
  21. 前記T細胞エピトープを、少なくとも1つのアミノ酸置換を有することにより変化させる、請求項20に記載の方法。
  22. 前記T細胞エピトープを前記目的ポリペプチドの一部と置き換えることにより変化させる、請求項20に記載の方法であって、その目的ポリペプチドの一部は、該目的ポリペプチドの同族体において前記T細胞エピトープを含まない部分との対応部分に前記T細胞エピトープを含む。
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