JP2004527971A - ラウドスピーカ - Google Patents
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Abstract
動作可能な周波数レンジと、部材の幾何形状、撓み剛性、面積質量分布、減衰、引張係数、圧縮係数、及び剪断係数のパラメータの値に依存する音響出力とを有するラウドスピーカの音響部材を作るための方法であって、
周波数に応じて変化する少なくとも1つの周波数依存パラメータを有する音響部材を準備し、周波数依存パラメータの変化を選択して、ラウドスピーカからの所望の音響出力をもたらし、音響部材に選択された変化を持たせることを含む方法。本方法は、スピーカの動作可能周波数レンジにおけるガラスからゴムへの転移Tgを有する周波数依存材料で作られた構成要素を有する音響部材を選択することを含む。
周波数に応じて変化する少なくとも1つの周波数依存パラメータを有する音響部材を準備し、周波数依存パラメータの変化を選択して、ラウドスピーカからの所望の音響出力をもたらし、音響部材に選択された変化を持たせることを含む方法。本方法は、スピーカの動作可能周波数レンジにおけるガラスからゴムへの転移Tgを有する周波数依存材料で作られた構成要素を有する音響部材を選択することを含む。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明はラウドスピーカに関し、より詳細には、例えばWO097/09842に記載された種類の撓み波パネル形状ラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
撓み波ラウドスピーカは、一般に、音響パネルと、該パネルに取り付けられた少なくとも1つの励振器とからなる。パネルは、振動パネルをフレームから分離するコンプライアント端部終端によってフレーム上に支持することができる。パネル、端部終端、及び励振器取付の機械的特性がラウドスピーカの音響特性に影響をもたらす。
【0003】
撓み波パネルの分野では、パネルの撓み波挙動は、連動するパラメータの操作セットによって調整できることが知られている。WO097/09842で教示されるように、パネルの幾何形状、撓み剛性、面積質量分布、及び減衰、これらの物理的パラメータの値は、共振撓み波モードの所望の分布を得るように選択することができる。パネルは、良質の材料の比較的大きなパネルを選択することによって、最大8オクターブまでの広範な周波数レンジにわたって有効であるように設計することができる。しかしながら、撓み波パネルラウドスピーカの帯域幅は、高周波数と低周波数の両方において良好な特性を実現する要求が競合する結果として制限される可能性がある。一般的に、より良好な高周波数性能は軽量で剛性があり低減衰性の高剪断特性を有するパネルを用いることによって実現されるのに対し、より良好な低周波数性能は、低剛性で高密度のパネルを用いることによって実現される。
【0004】
高周波数の放射効率は、コインシデンス周波数をラウドスピーカの動作可能な帯域幅(動作可能な帯域幅の低い部分でも)に配置することにより改善することができる。これは、コインシデンス周波数が剛性に相互比例するので、パネルが高い撓み剛性を有することを保証することによって実現できる。しかしながら、パネルの撓み剛性を高くするとパネルの低周波数能力が低下するが、これはパネルの面積及び/又は面積質量密度を増大させることによって対応することができる。或いは、特に低いモード密度のある動作可能領域において、減衰を付加して低周波数応答を制御し平滑化することができる。しかしながら、このような減衰は特に低周波数の出力を低下させる可能性がある。
【0005】
【特許文献1】
WO097/09842公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
考慮される必要のある別の競合する要求は、効果的で拡張された高周波数性能を実現することである。上述のように、良好な高周波数性能は低密度で高剛性のパネルによって実現される。しかしながら、この結果として、パネルが比較的高い機械的インピーダンスを有することになり、従って、パネルを有用な音量まで駆動するためにより多くの力が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、動作可能な周波数レンジを有するラウドスピーカの音響部材であって、該部材が周波数の関数として変化する少なくとも1つのパラメータを有する周波数依存材料で作られる構成要素を含むことを特徴とする音響部材が提供される。パラメータは、減衰、撓み剛性、引張係数、圧縮係数、及び剪断係数からなるグループから選択することができる。パラメータ間に相互作用があるので、1つ又はそれ以上のパラメータの変化は別のパラメータに影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
ラウドスピーカは、撓み波振動を支持する音響ラジエータと、サスペンションによって音響ラジエータに取り付けられ、該ラジエータの中に撓み波振動を励振して音響出力を生成する変換器とを備える撓み波ラウドスピーカとすることができる。音響部材は音響ラジエータであり、例えば動作可能な周波数レンジの少なくとも一部、好適には全体の周波数に分布された共振撓み波モードを支持する分布モードパネルのようなパネル形状とすることができる。
【0009】
音響部材は、支持体、スタンド、又は壁にラウドスピーカを取り付けるためのサスペンションであり、周波数依存材料を用いて、該サスペンション上の音響部材の結合からの不要な振動を制御することができる。
【0010】
音響部材はフレーム又はバッフル内に音響ラジエータを支持するサスペンションとすることができる。サスペンションはラジエータ周縁の周りに延びるか、又はラジエータの特定の位置に適用することができる。音響部材は、変換器を該音響部材上で支持するか、又は変換器をフレーム上で支持する変換器のサスペンションとすることができる。例えば、変換器は、音響ラジエータの周波数依存材料に直接接着されたボイスコイルと、周波数依存パラメータを有する構成要素である弾性サスペンションによってボイスコイルに取り付けられたマグネット組立体とを有する慣性可動コイル励振器とすることができる。或いは、音響部材は、例えば質量体が装荷された発泡ポリマーパッドである、音響ラジエータに取り付けられた少なくとも1つの小さな質量体の形態とすることができる。
【0011】
このように撓み波ラウドスピーカにおける音響部材は、音響ラジエータ、変換器サスペンション、又は音響ラジエータ上に取り付けられた質量体から選択することができる。周波数依存材料の使用は、分布モードラウドスピーカのパネルの一部として使用することに限定されない。
【0012】
ラウドスピーカは、コンプライアント端部終端によってフレームに取り付けられたコーン形内の音響ラジエータと、スパイダによってフレーム上に支持された駆動ユニットと、コーンと駆動ユニットを収容するエンクロージャとを備えるピストン式ラウドスピーカとすることができる。音響部材はスパイダ内に組み込んでもよく、又はコンプライアント端部終端とすることができる。或いは、音響部材は、コーンであってもよく、又は駆動ユニットをエンクロージャに結合するコンプライアント・サスペンションでもよい。
【0013】
周波数の関数として変化するパラメータは撓み剛性であり、該剛性は低周波数(すなわち1kHzより低い)の方が高周波数(1kHzを超える)におけるよりも低いものとすることができる。該撓み剛性は、高周波数におけるよりも低周波数において、好ましくは少なくとも20%低い。
【0014】
撓み波パネル形の音響部材においては、別記の式1から計算された基本周波数(F0)は低周波数下限の近似を与える。F0は撓み剛性に正比例するので、低周波数において剛性がより低い音響部材は、所定のサイズの拡張された低レンジ性能を有することができる。
【0015】
また、高周波数性能は、音響ラジエータに取り付けられた可動コイル変換器のコイルの直径内で第2の共振が生じる既知の「開口効果」に対処することによって改善することができる。開口共振周波数FRは、別記の式2乃至4を使用する、撓み波共振周波数FBと剪断波共振周波数FSとから求められる。
【0016】
FB及び、従ってFRは撓み剛性に依存するので、より高い周波数においてより高い剛性を有する撓み波パネルは、より高い周波数において発生する開口共振周波数を有し、従って、拡張された高レンジ性能を有する。このように本発明は、低周波数においてより低い撓み波剛性を有し、高周波数においてより高い撓み剛性を有すことにより、一定の撓み剛性を有する部材よりも広範な周波数レンジを有する撓み波パネルを提供する。撓み剛性は、より低い周波数(すなわち1kHzを下回る)よりもより高い周波数(すなわち1kHzを超える)における方が少なくとも20%高い。パネル効率もまた、周波数レンジの特定領域において改善することができる。
【0017】
撓み剛性は、周波数の増加に伴って安定的に上昇し、すなわち周波数に正比例する。或いは、撓み剛性は周波数レンジの選択された点において比較的急激な転移を有してもよい。このように、音響部材は、2つの独立した低周波数音響部材と高周波数音響部材として動作するものとみなすことができる。例えば、撓み波音響ラジエータの形態の音響部材において、パラメータにより固有共振周波数と低周波数部材の使用可能な周波数レンジとを決定することができる。一方、高周波数部材においては、剛性が大きい程、最大要求周波数に対して効率よく機能することができ、所望のコインシデンス周波数が設定可能となる。
【0018】
周波数の関数として変化するパラメータはコンプライアンスとすることができる。ピストン式スピーカのコーン周りのコンプライアント端部終端の形態の音響部材において、該終端は低周波数において高いコンプライアンスを有し、高周波数においてより低いコンプライアンスを有する。このようにして、低周波数におけるコーンの動きはおおむね妨げられることは無く、同時に高周波数において音響エネルギーはより良好に終端されることになり、これにより反射干渉を最小限にすることができる。コーンは、例えばポリマーのブレンドを適切に選択することにより、又は製造後にコーンを処理することによって、可変コンプライアンスを有することができる。コーンは低周波数において高い減衰を有し、及びより高い周波数において剛性を強化することができ、これはスピーカ性能を向上させるために使用することができる。減衰は高周波数において低周波数におけるよりも少なくとも20%高く、剛性は高周波数において低周波数におけるよりも少なくとも20%高い。
【0019】
撓み波スピーカの変換器のコイルとマグネット組立体の間にコンプライアント・サスペンションを使用すると、スピーカの低周波数レンジでの変換器共振を生じる場合があることが分かっている。これは慣性共振として知られている。コンプライアント・サスペンションは高い減衰を有するので、共振の振幅を拡大することができ、及び/又は該共振を選択的に特定周波数に同調させることができる。このようにして、低周波数特性の改善を実現することができる。同様に、変換器とフレーム間のコンプライアント変換器サスペンションの減衰は、変換器のこの基本共振の振幅を拡大し、又は該基本共振の周波数を変化させるように選択することができる。
【0020】
周波数の関数として変化するパラメータは減衰とすることができる。材料の減衰は、化学的性質、ポリマー構成、及び/又は材料内部の固有の損失メカニズムに依存するものとすることができる。周波数の増加に伴って減衰は上昇又は降下することができ、これにより音響特性を改善することができる。減衰は、音響部材の全体にわたって、又は一部に適用することができる。EP0621931B1は、特定の温度範囲において減衰係数が高い減衰材料を使用することを記載しており、該材料は周波数の関数として変化する減衰を有するように変更することができる。
【0021】
質量体の形態の音響部材は、音響ラジエータの固有モードに連成するように位置付けることができる。該質量体は、低周波数において高い減衰を有し、高周波数において低い減衰を有することにより、大きな高周波数共振モードを引き起こすこと無く、特定の低周波数共振モードを効果的に減衰することができる。例えば変換器の位置のような音響ラジエータ構造内の特定位置に適用された周波数依存材料を有する音響ラジエータの形態の音響部材を使用することにより、同様の効果を実現することができる。例えば、音響ラジエータは、特定のセルに射出成形された周波数依存材料のハニカムコアを備えることができる。或いは音響部材の表面は、矩形、三角形、又は多角形ブロックのフォーマット、又は同心のフォーマットで構成することができる周波数依存材料の領域を有する。
【0022】
撓み波音響ラジエータの形態の音響部材は、特定の周波数においてより高いレベルの減衰、すなわち少なくとも20%を超える減衰を有することができるので、この特定周波数周辺のモード分布が改善される。減衰が増加すると共振モードがより広くなり、該モードはより均一に周波数中に分布することができる。従って、この特定の周波数周辺でより平滑な応答を得ることができる。
【0023】
音響部材は2つ以上の周波数依存パラメータを含むことができる。例えば、撓み波音響ラジエータの周縁の周りに延びるラジエータサスペンションの形態の音響部材は、より高い周波数では低減衰で低コンプライアンスを有し、より低い周波数では高減衰で高コンプライアンスを有することができる。減衰のレベルを増大させると低周波数モードを拡大することができ、従って、低周波数におけるモードの広がりを改善することができる。減衰のレベルを増大させると、境界における撓み波振動の吸収も増加させることができる。これはラジエータの残響を制御できることから、低い減衰を有する音響ラジエータにおいて特に有用である。低周波数においてコンプライアンスを増大させることにより、音響ラジエータをほぼ自由に懸架することができ、音響ラジエータの低周波数モードはより低い周波数へとシフトされる。高周波数におけるコンプライアンスを減少させることにより、音響ラジエータをほぼ拘束又は境界終端することができ、音響ラジエータの高周波数モードはより低い周波数へとシフトされる。
【0024】
拘束及び境界終端の効果及び利点については、New Transducers Ltd.のWO99/52324において説明されている。しかしながら、端部の制御によっても低周波数出力を減少させることができる。従って、周波数依存材料を使用することにより、特性を有効に組み合わせることができる。
【0025】
音響部材は少なくとも2つの構成要素を含む複合構造体とすることができる。複合構造体の1つだけの構成要素、或いは全ての構成要素が周波数依存パラメータを有することができる。このように、構成要素のパラメータは、個々に又は組み合わせて選択され性能を向上させることができる。例えば、音響部材はサンドイッチ構造又は積層構造を有することができる。従って該部材は、低密度材料のコア(例えばフォーム又はハニカム)と、該コアの両面に接着層によって接着された2つのスキンとを備えることができる。コア、スキン、及び/又は接着層は、周波数依存パラメータを有する周波数依存材料で作ることができる。スキンは連続する被膜としてスプレー又は塗布することができる。
【0026】
周波数依存パラメータを有するスキンを使用する1つの利点は、幾つかのコア材料における剪断作用を相殺できることである。このような剪断作用は該構造体の高周波数における全体の撓み剛性を著しく低下させるので、この帯域幅における性能を制限する可能性がある。従って、周波数に伴って撓み剛性が増大するスキンを選択することにより、パネル剛性を維持することができ、従って高周波数性能を改善することができる。
【0027】
或いは、音響部材はモノリシック構造体、すなわちコア及びスキン構造ではなく、例えば固体ポリマー(例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル)、発泡プラスチック、金属、木材、又はフェルト紙で作られた構造体とすることができる。モノリシック構造体は周波数依存パラメータを有する周波数依存材料から作られる。
【0028】
モノシリックパネルにおいては、撓み剛性は別記の式5に示されるようにヤング係数に正比例する。従って周波数依存パラメータは、周波数依存材料のヤング係数(以下係数)とすることができる。従って上述のように、音響パネル用のより広い帯域幅は、低周波数においてより低く高周波数においてより高い該係数の材料を使用することによって実現することができる。例えばサンドイッチパネルのような複合構造体の撓み剛性に関する式はより複雑であるが、それでも該係数に依存するので、該係数は周波数依存パラメータとすることができる。
【0029】
音響部材は周波数依存パラメータを有する表面層を含むことができる。表面層はスプレーコーティングか、フィルム層のいずれかとして塗布することができ、透明塗布において反射防止コーティングとして作用することができる。表面層はモノシリック又はサンドイッチ部材に適用される。
【0030】
周波数依存材料は、例えば時間依存特性を有する粘弾性の材料とすることができる。例えば、粘弾性材料は、これまでは振動減衰、音響減衰、又は絶縁の目的で使用されてきた。このような材料及びその製造方法は、例えばMinesota Mining and Manufacturing CompanyのWO93/15333に記載されている。多くの粘弾性材料は周波数励振に伴って変化する機械的特性を有し、従って特定周波数において最大エネルギー吸収を有するように設計することができる。
【0031】
周波数依存材料は、該材料の減衰が鋭いピークを有し及び材料の保存係数が数桁、例えば3桁減少する、ガラスからゴムへの転移を有するのが好ましい。このような転移は材料中の周波数依存の程度を与える臨界としてみなすことができる。該転移は、好ましくはスピーカの動作可能周波数レンジにおいて生じるので、エネルギー吸収又は減衰を最小限にすることができる。転移は−20℃乃至50℃の温度範囲で、0.1Hz乃至1kHzの間の周波数で生じることができる。音響部材は、各々が異なる周波数の転移を有する別個の領域を有することができる。
【0032】
周波数依存材料は、例えばポリウレタン又はエポキシのような、要求された周波数レンジ内の周波数のガラス−ゴム転移を有する樹脂とすることができ、これにより該材料は、低周波数では低い係数又は剛性を有するが、より高い周波数ではより高い係数を有する。パネル形態の音響部材においては、これによりパネルの最低動作モードの周波数を有利に低下させるはずであるが、同時により高い周波数におけるパネルの剛性が増大される。
【0033】
周波数依存材料は、減衰及び/又は他の機械的特性が温度及び/又は周波数に依存する熱可塑性ポリマーとすることができる。周波数依存材料は発泡材料とすることができ、これにより可変の減衰特性を備えた低密度材料を得ることができる。発泡材料はコアとして、又は別の表面に載置される小さな個別の減衰質量体として用いることができる。周波数依存材料は、音響部材が射出成形又は押し出し成形により製造されるポリマーブレンドとすることができる。
【0034】
周波数依存材料は、非周波数依存材料と組み合わせて用いることができる。該周波数依存材料は、炭素又はガラス繊維のような高係数の繊維強化を封入するポリマー材料とすることができる。ポリマー材料の該係数が変化すると、ポリマー材料に対する繊維の比率及び対応する特性に依存する、音響部材全体の係数が変化する可能性がある。或いは、ポリマー材料は金属又はセラミックを封入することができるので、音響部材にとっては金属又はセラミックの高質量体と、ポリマー材料の可変減衰とによる利点を得ることができる。
【0035】
音響部材は、音響ラジエータの形態とすることができ、その幅及び/又は長さにわたって先細とすることができる。ラジエータの厚みは、その中心から周縁に向けて増大させるか又は減少させることができる。厚みを減少させることにより、音響ラジエータの中心領域に剛性を持たせて撓み波音響ラジエータとして作動することができ、該ラジエータの端部領域が高コンプライアンスを有することができるので、音響ラジエータは、例えば別個の端部サスペンション無しで支持フレームに直接取り付けることができる。音響ラジエータにわたって係数を変化させる別のメカニズムによって同様の効果を得ることができる。
【0036】
周波数依存材料を使用することにより、スピーカの性能を改善するために用いることができる別のパラメータが得られる。従って、本発明の第2の態様により、動作可能な周波数レンジと、部材の幾何形状、撓み剛性、面積質量分布、減衰、引張係数、圧縮係数、及び剪断係数のパラメータの値に依存する音響出力とを有するラウドスピーカの音響部材を作る方法が提供され、該方法は、周波数に依存して変化する少なくとも1つの周波数依存パラメータを有する音響部材を準備し、周波数依存パラメータの変化を選択して、ラウドスピーカから所望の音響出力をもたらし、前記音響部材に前記選択された変化を持たせることを特徴とする。
【0037】
音響部材は、好ましくはスピーカの動作可能な周波数レンジで生じる、ガラスからゴムへの転移を有する周波数依存材料で作られた構成要素を有するように選択することができる。該方法は、周波数依存材料を変更して転移が生じる温度及び/又は周波数を調節することを含むことができる。該材料はポリマーとすることができ、材料の変更は、分子量(すなわち、分子内の全原子の重量の合計をポリマー内の分子数で除算した値)、分子分布、立体効果(すなわち、ポリマー鎖に付加される側鎖の効果)、側鎖の極性、及び架橋密度から成るグループの少なくとも1つのパラメータの変更を含むことができる。転移温度を下げるためにポリマーに可塑剤を添加することができる。
【0038】
分子量を増大させて転移温度を高くすることができ、或いはこの逆も可能である。交絡、すなわち互いの周りの鎖のラッピングを生じる傾向を強くするために、従って転移温度を高くするために分布を変更することができ、或いはこの逆も可能である。嵩高の側鎖又は複雑な側鎖の付加により、転移温度を高くすることができ、或いはこの逆も可能である。例えば、ポリ(シス−1,4)ブタジエンの水素側鎖をメチル基で置換すると、天然ゴム(ポリ(シス−1,4)イソプレン)が得られ、転移温度が−108℃から−73℃に上昇する。
【0039】
側鎖を適切に分極された(すなわち負極又は正極に)側鎖と置換することにより、主鎖との二次結合を増強させ、従って転移温度を高くすることができ、或いはこの逆も可能である。例えば、天然ゴムのメチル基を塩素原子で置換すると、ポリクロロプレン(ネオプレン(登録商標))が生成され、メチル基がより大きくとも、転移温度は−123℃から−50℃まで上昇する。これらの原理は、室温すなわち約21℃を超える温度に近い値の転移温度を示すポリマーを設計するために適用することができる。
【0040】
幾つかのポリマー材料では、2つの隣接する分子は、強固な結合、すなわち架橋を形成することができる。架橋の数、従って架橋密度を増大することによって、転移温度を上昇させることができ、或いはこの逆も可能である。ポリマーの架橋の調整は、例えばポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル(不飽和及び飽和)、ビスマレイミド樹脂、フェノール、ビニールエステルなどの、熱硬化性及び熱可塑性プラスチック材料の両方の領域を含む、架橋を示す全てのポリマーに対して適用することができる。
【0041】
ポリマーは、非晶質構造と結晶構造の領域、すなわち分子のランダムな交絡を有する領域と、規則正しくパックされ再現可能な分子の領域とをそれぞれ有することができる。このようなポリマーは、2つの転移温度、すなわちガラス転移と、結晶構造中の結合が破壊される温度である結晶溶融温度とを有することができる。非晶質構造を有する領域のパラメータを調整することにより、ガラス転移温度が融点より低いままであることを条件として、転移温度を調整することができる。
【0042】
ポリマーは、例えば、ポリプロピレンとポリエチレンの2つの別個のモノマーから成るコポリマーとすることができる。転移温度及び/又は転移周波数は、2つのモノマーの相対的な比率を変更することによって、及び/又は2つのモノマーを異なる方法、例えば交互構造で又はモノマー種のブロックなどで配列することによって調整することができる。コポリマーは、それぞれが異なる温度で高い減衰特性を有する、幾つかの別のポリマーを組み合わせることができる。高い減衰特性を示すポリマーは、以下の引用文献:Nielsen L. E.の「Mechanical Polymers」において説明されている。
幾つかの小さな大きさの非線形性が、このような周波数依存材料を用いること
により生じる可能性があり、これはラウドスピーカの設計者によって考慮されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、本発明をより理解するため及び単に例示の目的で、本発明の特定の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1を参照すると、パネル11は関係する動作可能な周波数レンジで共振撓み波モードの分布を有するように形成される。パネルのパラメータの値は、モードの「バンチング」又はクラスタリングに起因する、周波数応答のピークを平滑化するように選択される。従って、結果として生じる共振撓み波モードの分布は、特に低周波数モードでは、クラスタリング及び間隔の不均一さが実質的に最小であるようにすることができる。パネル形状部材の各概念的な軸に関連する共振撓み波モードは、周波数内にインターリーブされるように配置されることにより、実質的に均一な分布を達成することができる。
【0044】
変換器13は、WO97/09842に記載されたような、すなわち(4/9Lx,3/7Ly)の位置のような、共振撓み波モードに対して良好に結合する位置に設けられる。つまり変換器は、振動的にアクティブな共振アンチノードの数が比較的多く、反対に共振ノードの数が比較的少ない位置にある。変換器は直径が25mmのボイスコイルを有する電気力学的励振器である。
【0045】
パネルはポリメタクリル酸メチル(n−ブチル)PMMAから作られたモノリスであり、この材料はガラスからゴムへの転移温度Tgが27℃である。従って、ガラス状態からゴム状態への反応は室温(25℃)で生じ始める。このような転移の作用を図4ないし図6を参照して説明する。該材料のパラメータは、ポリカーボネートのパラメータと共に下表に示され、このポリカーボネートは比較の目的で、寸法、変換器の配置、及び変換器の種類が同じである第2のパネルを作るために使用される。
【0046】
図2はPMMAとポリカーボネートから作られたラウドスピーカにおける周波数に伴うヤング係数の変化43及び41をそれぞれ示す。ヤング係数Eの値は、各周波数に対して撓み波速度CBを計測し、式6を適用することにより計算される。
【0047】
図2は、ポリカーボネートパネルがより大きな静的ヤング係数の値を有するにもかかわらず(1.9GPAに対して2.3GPA)、周波数に伴うヤング係数の増加率は、ポリカーボネートパネルの場合よりもPMMAパネルの方が大きいことを示している。すなわち、PMMAのヤング係数は、低周波数におけるよりも高周波数における方が大きく、また高周波数においてはポリカーボネートのパネルよりも大きい。
【0048】
図3は、PMMAパネルとポリカーボネートパネルを使用したラウドスピーカの周波数応答47及び45をそれぞれ示している。PMMAパネルを使用するラウドスピーカの開口共振は、PMMAパネルを使用するラウドスピーカの開口周波数よりも高い周波数で発生し、16.04kHzに対して約18.1kHzである。従って、PMMAパネルは、周波数に伴うヤング係数の増加率が低いポリカーボネートパネルと比較して、より高い周波数限界をもたらす。
【0049】
PMMAパネルは、ポリカーボネートパネルにおける値よりも約13%小さい静的ヤング係数と密度値とを有する。従って、PMMAパネルのモード周波数はこれに応じてより低いものと推測される。しかしながら、図3に示されるように、周波数に伴うヤング係数がポリカーボネートよりもPMMAの方が大きく変化するので、PMMAパネルの局部的なモード周波数は、ポリカーボネートパネルのモード周波数よりも高い。
【0050】
図4は、粘弾性材料の応力(σ)と歪み(ε)のそれぞれの正弦曲線変化15及び17と、並びに応力成分と歪み成分間の位相遅れパラメータ(δ)を示す。時間遅れ成分は、式7に示されるように、減衰係数又は損失係数(η)を導き出すために使用される。また、式7は、エネルギーを保存又は損失する材料の能力をそれぞれ表し、複素ヤング係数のそれぞれ実数部と虚数部である、保存係数(E’)と損失係数(E’’)間の関係を示す。減衰係数は、エネルギー吸収の程度を制御し、等方性の均質な材料における寸法によって変化しない材料パラメータである。複素ヤング係数により構成要素の剛性が決まる。
【0051】
図5は、一定の周波数における熱可塑性ポリマー材料の減衰係数19、21dE及び保存係数E’の温度に伴う変化をそれぞれ示す。低温、すなわちT0を下回る温度では材料はガラス状を示す。保存係数が高いと材料は剛性を有し、一般に減衰係数は一定して低い。より高温、すなわちT1を上回る温度では、材料はゴム状を示す。材料はよりコンプライアントで、保存係数は低く、一般に減衰係数は一定して低い。温度がさらに上昇してT2を超えると、材料は流れ始める。
【0052】
ガラスからゴムへの転移は温度T0とT1の間で生じる。転移の間に、保存係数の値が急激に降下し、減衰係数がピークまで急激に上昇した後、急激に下降する。減衰係数の最大値はガラス転移温度Tgで生じる。この温度では、歪みは最大エネルギー放散を引き起こす分だけ応力よりも遅れる。
【0053】
温度による保存係数の変化は、周波数による保存係数の変化と等しいものとすることができる。高い温度は低い周波数に対応し、高い周波数は低い温度に対応する。
【0054】
ガラス転移温度が発生する周波数は、式8に従って、基準周波数f0から別の周波数fにシフトすることができる。図6に示されるように、式8は、温度の逆数に対してlog fのグラフをプロットすることによって再構成することができる。それぞれの転移プロセスの活性化エネルギーは、グラフの勾配から導出することができる。グラフの勾配が一定であるので、活性化エネルギーは一定であるが、これは転移期間においてのみ当てはまる。すなわち、周波数がF0からより高い周波数F2にシフトされると、これに対応して転移温度はT0からT2に上昇する。周波数がf1に低下すると、これに対応して転移温度はT1に下降する。
【0055】
周波数のシフトは保存係数E’と減衰係数dEに影響を及ぼす。これは、周波数F0とF
2における保存係数E’のそれぞれの変化23、25と、周波数F0とF2における減衰係
数dEのそれぞれの変化27、29を示す図7に示されている。転移温度Tgをより高い値にシフトすることにより、保存係数の値はどのような動作温度においてもより高くなる。
【0056】
減衰係数の変化がより複雑であり、転移温度のTgからより高い値へシフトすると、動作温度に応じて減衰係数が増加又は減少することができる。動作温度T3では、周波数F2の減衰係数は周波数F0の減衰係数よりも小さく、値が増加するのではなく、一定になる。しかしながら、動作温度T4では、減衰係数の値はほぼ等しいが、周波数F0に対して減衰係数は減少し、周波数F2に関しては増加する。
【0057】
これは、周波数に伴う減衰係数及び保存係数の変化29、31、及び33を表すグラフである図8に示される。減衰係数は、変化29によって示されるように周波数に伴って減少し、或いは変化31によって示されるように周波数に伴って増加する。保存係数は変化33によって示されるように、周波数に伴って増加する。従って、これらの材料を用いて製造されたパネルの減衰挙動と剛性においては2つの実行可能な選択肢がある。
すなわち、低周波数では低剛性/高減衰性であるが、高周波数では高剛性/低減衰性である。
低周波数では低剛性/低減衰性であるが、高周波数では高剛性/高減衰性である。
【0058】
従って、特定のポリマーの転移温度又は周波数を変えることによって、機械的な特性を変更して、保存係数及び減衰係数の特定の値を得ることができる。周波数により性能が変化するように設計されたこれらの材料が、音響装置とラウドスピーカのためのパネル及び関連する構成要素を作るために使用されるので、周波数帯域と性能の改善を達成することができる。
【0059】
別記
【0060】
ここで
F0:基本周波数(Hz)
A:パネル面積(m2)
B:平均撓み剛性(Nm)=1/2(Bx+By)
μ:面積/表面密度(kgm-2)
【0061】
【0062】
ここで
FB:撓み波共振周波数
DE:励振器直径
【0063】
【0064】
ここで
FS:剪断波共振周波数
G:貫通厚み剪断係数
【0065】
【0066】
ここで
FR:累積共振周波数
【0067】
【0068】
ここで
B:撓み剛性
t:厚み
E:ヤング係数(Pa)
v:ポアソン比
【0069】
【0070】
ここで
CB:撓み波速度(mS-1)
ω:周波数(ラジアン)
B:撓み剛性(Nm)
μ:面積密度(kgm-2)
【0071】
【0072】
ここで
E’:保存係数/実数部係数(GPa)
E”:損失係数/虚数部係数(GPa)
δ:位相遅れパラメータ
η:減衰又は損失係数
【0073】
【0074】
ここで
f:周波数(Hz)
f0:材料の周波数定数(Hz)
ΔH:プロセスの活性エネルギー
R:ガス定数
T:温度(K)
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による分布モードラウドスピーカを示す。
【図2】従来技術により作られたラウドスピーカと比較した、図1のラウドスピーカにおける周波数に伴うヤング係数の変化を示すグラフである。
【図3】図2のラウドスピーカにおける周波数応答(周波数Hzに対するdBで表した音圧)である。
【図4】材料に関する正弦波荷重ωtに対する応力σと歪みεのグラフである。
【図5】ガラスからゴムへの転移を表す温度に対する保存係数(log E’)と減衰係数(dE)の変化の両方を示すグラフである。
【図6】ポリマーの温度の逆数に対する周波数の対数を示すグラフである。
【図7】2つの異なる周波数における温度に対する保存係数(log E’)と減衰係数(dE)の変化を示すグラフである。
【図8】周波数に伴う減衰係数と保存係数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0076】
11.パネル
13.変換器
【0001】
本発明はラウドスピーカに関し、より詳細には、例えばWO097/09842に記載された種類の撓み波パネル形状ラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
撓み波ラウドスピーカは、一般に、音響パネルと、該パネルに取り付けられた少なくとも1つの励振器とからなる。パネルは、振動パネルをフレームから分離するコンプライアント端部終端によってフレーム上に支持することができる。パネル、端部終端、及び励振器取付の機械的特性がラウドスピーカの音響特性に影響をもたらす。
【0003】
撓み波パネルの分野では、パネルの撓み波挙動は、連動するパラメータの操作セットによって調整できることが知られている。WO097/09842で教示されるように、パネルの幾何形状、撓み剛性、面積質量分布、及び減衰、これらの物理的パラメータの値は、共振撓み波モードの所望の分布を得るように選択することができる。パネルは、良質の材料の比較的大きなパネルを選択することによって、最大8オクターブまでの広範な周波数レンジにわたって有効であるように設計することができる。しかしながら、撓み波パネルラウドスピーカの帯域幅は、高周波数と低周波数の両方において良好な特性を実現する要求が競合する結果として制限される可能性がある。一般的に、より良好な高周波数性能は軽量で剛性があり低減衰性の高剪断特性を有するパネルを用いることによって実現されるのに対し、より良好な低周波数性能は、低剛性で高密度のパネルを用いることによって実現される。
【0004】
高周波数の放射効率は、コインシデンス周波数をラウドスピーカの動作可能な帯域幅(動作可能な帯域幅の低い部分でも)に配置することにより改善することができる。これは、コインシデンス周波数が剛性に相互比例するので、パネルが高い撓み剛性を有することを保証することによって実現できる。しかしながら、パネルの撓み剛性を高くするとパネルの低周波数能力が低下するが、これはパネルの面積及び/又は面積質量密度を増大させることによって対応することができる。或いは、特に低いモード密度のある動作可能領域において、減衰を付加して低周波数応答を制御し平滑化することができる。しかしながら、このような減衰は特に低周波数の出力を低下させる可能性がある。
【0005】
【特許文献1】
WO097/09842公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
考慮される必要のある別の競合する要求は、効果的で拡張された高周波数性能を実現することである。上述のように、良好な高周波数性能は低密度で高剛性のパネルによって実現される。しかしながら、この結果として、パネルが比較的高い機械的インピーダンスを有することになり、従って、パネルを有用な音量まで駆動するためにより多くの力が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、動作可能な周波数レンジを有するラウドスピーカの音響部材であって、該部材が周波数の関数として変化する少なくとも1つのパラメータを有する周波数依存材料で作られる構成要素を含むことを特徴とする音響部材が提供される。パラメータは、減衰、撓み剛性、引張係数、圧縮係数、及び剪断係数からなるグループから選択することができる。パラメータ間に相互作用があるので、1つ又はそれ以上のパラメータの変化は別のパラメータに影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
ラウドスピーカは、撓み波振動を支持する音響ラジエータと、サスペンションによって音響ラジエータに取り付けられ、該ラジエータの中に撓み波振動を励振して音響出力を生成する変換器とを備える撓み波ラウドスピーカとすることができる。音響部材は音響ラジエータであり、例えば動作可能な周波数レンジの少なくとも一部、好適には全体の周波数に分布された共振撓み波モードを支持する分布モードパネルのようなパネル形状とすることができる。
【0009】
音響部材は、支持体、スタンド、又は壁にラウドスピーカを取り付けるためのサスペンションであり、周波数依存材料を用いて、該サスペンション上の音響部材の結合からの不要な振動を制御することができる。
【0010】
音響部材はフレーム又はバッフル内に音響ラジエータを支持するサスペンションとすることができる。サスペンションはラジエータ周縁の周りに延びるか、又はラジエータの特定の位置に適用することができる。音響部材は、変換器を該音響部材上で支持するか、又は変換器をフレーム上で支持する変換器のサスペンションとすることができる。例えば、変換器は、音響ラジエータの周波数依存材料に直接接着されたボイスコイルと、周波数依存パラメータを有する構成要素である弾性サスペンションによってボイスコイルに取り付けられたマグネット組立体とを有する慣性可動コイル励振器とすることができる。或いは、音響部材は、例えば質量体が装荷された発泡ポリマーパッドである、音響ラジエータに取り付けられた少なくとも1つの小さな質量体の形態とすることができる。
【0011】
このように撓み波ラウドスピーカにおける音響部材は、音響ラジエータ、変換器サスペンション、又は音響ラジエータ上に取り付けられた質量体から選択することができる。周波数依存材料の使用は、分布モードラウドスピーカのパネルの一部として使用することに限定されない。
【0012】
ラウドスピーカは、コンプライアント端部終端によってフレームに取り付けられたコーン形内の音響ラジエータと、スパイダによってフレーム上に支持された駆動ユニットと、コーンと駆動ユニットを収容するエンクロージャとを備えるピストン式ラウドスピーカとすることができる。音響部材はスパイダ内に組み込んでもよく、又はコンプライアント端部終端とすることができる。或いは、音響部材は、コーンであってもよく、又は駆動ユニットをエンクロージャに結合するコンプライアント・サスペンションでもよい。
【0013】
周波数の関数として変化するパラメータは撓み剛性であり、該剛性は低周波数(すなわち1kHzより低い)の方が高周波数(1kHzを超える)におけるよりも低いものとすることができる。該撓み剛性は、高周波数におけるよりも低周波数において、好ましくは少なくとも20%低い。
【0014】
撓み波パネル形の音響部材においては、別記の式1から計算された基本周波数(F0)は低周波数下限の近似を与える。F0は撓み剛性に正比例するので、低周波数において剛性がより低い音響部材は、所定のサイズの拡張された低レンジ性能を有することができる。
【0015】
また、高周波数性能は、音響ラジエータに取り付けられた可動コイル変換器のコイルの直径内で第2の共振が生じる既知の「開口効果」に対処することによって改善することができる。開口共振周波数FRは、別記の式2乃至4を使用する、撓み波共振周波数FBと剪断波共振周波数FSとから求められる。
【0016】
FB及び、従ってFRは撓み剛性に依存するので、より高い周波数においてより高い剛性を有する撓み波パネルは、より高い周波数において発生する開口共振周波数を有し、従って、拡張された高レンジ性能を有する。このように本発明は、低周波数においてより低い撓み波剛性を有し、高周波数においてより高い撓み剛性を有すことにより、一定の撓み剛性を有する部材よりも広範な周波数レンジを有する撓み波パネルを提供する。撓み剛性は、より低い周波数(すなわち1kHzを下回る)よりもより高い周波数(すなわち1kHzを超える)における方が少なくとも20%高い。パネル効率もまた、周波数レンジの特定領域において改善することができる。
【0017】
撓み剛性は、周波数の増加に伴って安定的に上昇し、すなわち周波数に正比例する。或いは、撓み剛性は周波数レンジの選択された点において比較的急激な転移を有してもよい。このように、音響部材は、2つの独立した低周波数音響部材と高周波数音響部材として動作するものとみなすことができる。例えば、撓み波音響ラジエータの形態の音響部材において、パラメータにより固有共振周波数と低周波数部材の使用可能な周波数レンジとを決定することができる。一方、高周波数部材においては、剛性が大きい程、最大要求周波数に対して効率よく機能することができ、所望のコインシデンス周波数が設定可能となる。
【0018】
周波数の関数として変化するパラメータはコンプライアンスとすることができる。ピストン式スピーカのコーン周りのコンプライアント端部終端の形態の音響部材において、該終端は低周波数において高いコンプライアンスを有し、高周波数においてより低いコンプライアンスを有する。このようにして、低周波数におけるコーンの動きはおおむね妨げられることは無く、同時に高周波数において音響エネルギーはより良好に終端されることになり、これにより反射干渉を最小限にすることができる。コーンは、例えばポリマーのブレンドを適切に選択することにより、又は製造後にコーンを処理することによって、可変コンプライアンスを有することができる。コーンは低周波数において高い減衰を有し、及びより高い周波数において剛性を強化することができ、これはスピーカ性能を向上させるために使用することができる。減衰は高周波数において低周波数におけるよりも少なくとも20%高く、剛性は高周波数において低周波数におけるよりも少なくとも20%高い。
【0019】
撓み波スピーカの変換器のコイルとマグネット組立体の間にコンプライアント・サスペンションを使用すると、スピーカの低周波数レンジでの変換器共振を生じる場合があることが分かっている。これは慣性共振として知られている。コンプライアント・サスペンションは高い減衰を有するので、共振の振幅を拡大することができ、及び/又は該共振を選択的に特定周波数に同調させることができる。このようにして、低周波数特性の改善を実現することができる。同様に、変換器とフレーム間のコンプライアント変換器サスペンションの減衰は、変換器のこの基本共振の振幅を拡大し、又は該基本共振の周波数を変化させるように選択することができる。
【0020】
周波数の関数として変化するパラメータは減衰とすることができる。材料の減衰は、化学的性質、ポリマー構成、及び/又は材料内部の固有の損失メカニズムに依存するものとすることができる。周波数の増加に伴って減衰は上昇又は降下することができ、これにより音響特性を改善することができる。減衰は、音響部材の全体にわたって、又は一部に適用することができる。EP0621931B1は、特定の温度範囲において減衰係数が高い減衰材料を使用することを記載しており、該材料は周波数の関数として変化する減衰を有するように変更することができる。
【0021】
質量体の形態の音響部材は、音響ラジエータの固有モードに連成するように位置付けることができる。該質量体は、低周波数において高い減衰を有し、高周波数において低い減衰を有することにより、大きな高周波数共振モードを引き起こすこと無く、特定の低周波数共振モードを効果的に減衰することができる。例えば変換器の位置のような音響ラジエータ構造内の特定位置に適用された周波数依存材料を有する音響ラジエータの形態の音響部材を使用することにより、同様の効果を実現することができる。例えば、音響ラジエータは、特定のセルに射出成形された周波数依存材料のハニカムコアを備えることができる。或いは音響部材の表面は、矩形、三角形、又は多角形ブロックのフォーマット、又は同心のフォーマットで構成することができる周波数依存材料の領域を有する。
【0022】
撓み波音響ラジエータの形態の音響部材は、特定の周波数においてより高いレベルの減衰、すなわち少なくとも20%を超える減衰を有することができるので、この特定周波数周辺のモード分布が改善される。減衰が増加すると共振モードがより広くなり、該モードはより均一に周波数中に分布することができる。従って、この特定の周波数周辺でより平滑な応答を得ることができる。
【0023】
音響部材は2つ以上の周波数依存パラメータを含むことができる。例えば、撓み波音響ラジエータの周縁の周りに延びるラジエータサスペンションの形態の音響部材は、より高い周波数では低減衰で低コンプライアンスを有し、より低い周波数では高減衰で高コンプライアンスを有することができる。減衰のレベルを増大させると低周波数モードを拡大することができ、従って、低周波数におけるモードの広がりを改善することができる。減衰のレベルを増大させると、境界における撓み波振動の吸収も増加させることができる。これはラジエータの残響を制御できることから、低い減衰を有する音響ラジエータにおいて特に有用である。低周波数においてコンプライアンスを増大させることにより、音響ラジエータをほぼ自由に懸架することができ、音響ラジエータの低周波数モードはより低い周波数へとシフトされる。高周波数におけるコンプライアンスを減少させることにより、音響ラジエータをほぼ拘束又は境界終端することができ、音響ラジエータの高周波数モードはより低い周波数へとシフトされる。
【0024】
拘束及び境界終端の効果及び利点については、New Transducers Ltd.のWO99/52324において説明されている。しかしながら、端部の制御によっても低周波数出力を減少させることができる。従って、周波数依存材料を使用することにより、特性を有効に組み合わせることができる。
【0025】
音響部材は少なくとも2つの構成要素を含む複合構造体とすることができる。複合構造体の1つだけの構成要素、或いは全ての構成要素が周波数依存パラメータを有することができる。このように、構成要素のパラメータは、個々に又は組み合わせて選択され性能を向上させることができる。例えば、音響部材はサンドイッチ構造又は積層構造を有することができる。従って該部材は、低密度材料のコア(例えばフォーム又はハニカム)と、該コアの両面に接着層によって接着された2つのスキンとを備えることができる。コア、スキン、及び/又は接着層は、周波数依存パラメータを有する周波数依存材料で作ることができる。スキンは連続する被膜としてスプレー又は塗布することができる。
【0026】
周波数依存パラメータを有するスキンを使用する1つの利点は、幾つかのコア材料における剪断作用を相殺できることである。このような剪断作用は該構造体の高周波数における全体の撓み剛性を著しく低下させるので、この帯域幅における性能を制限する可能性がある。従って、周波数に伴って撓み剛性が増大するスキンを選択することにより、パネル剛性を維持することができ、従って高周波数性能を改善することができる。
【0027】
或いは、音響部材はモノリシック構造体、すなわちコア及びスキン構造ではなく、例えば固体ポリマー(例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル)、発泡プラスチック、金属、木材、又はフェルト紙で作られた構造体とすることができる。モノリシック構造体は周波数依存パラメータを有する周波数依存材料から作られる。
【0028】
モノシリックパネルにおいては、撓み剛性は別記の式5に示されるようにヤング係数に正比例する。従って周波数依存パラメータは、周波数依存材料のヤング係数(以下係数)とすることができる。従って上述のように、音響パネル用のより広い帯域幅は、低周波数においてより低く高周波数においてより高い該係数の材料を使用することによって実現することができる。例えばサンドイッチパネルのような複合構造体の撓み剛性に関する式はより複雑であるが、それでも該係数に依存するので、該係数は周波数依存パラメータとすることができる。
【0029】
音響部材は周波数依存パラメータを有する表面層を含むことができる。表面層はスプレーコーティングか、フィルム層のいずれかとして塗布することができ、透明塗布において反射防止コーティングとして作用することができる。表面層はモノシリック又はサンドイッチ部材に適用される。
【0030】
周波数依存材料は、例えば時間依存特性を有する粘弾性の材料とすることができる。例えば、粘弾性材料は、これまでは振動減衰、音響減衰、又は絶縁の目的で使用されてきた。このような材料及びその製造方法は、例えばMinesota Mining and Manufacturing CompanyのWO93/15333に記載されている。多くの粘弾性材料は周波数励振に伴って変化する機械的特性を有し、従って特定周波数において最大エネルギー吸収を有するように設計することができる。
【0031】
周波数依存材料は、該材料の減衰が鋭いピークを有し及び材料の保存係数が数桁、例えば3桁減少する、ガラスからゴムへの転移を有するのが好ましい。このような転移は材料中の周波数依存の程度を与える臨界としてみなすことができる。該転移は、好ましくはスピーカの動作可能周波数レンジにおいて生じるので、エネルギー吸収又は減衰を最小限にすることができる。転移は−20℃乃至50℃の温度範囲で、0.1Hz乃至1kHzの間の周波数で生じることができる。音響部材は、各々が異なる周波数の転移を有する別個の領域を有することができる。
【0032】
周波数依存材料は、例えばポリウレタン又はエポキシのような、要求された周波数レンジ内の周波数のガラス−ゴム転移を有する樹脂とすることができ、これにより該材料は、低周波数では低い係数又は剛性を有するが、より高い周波数ではより高い係数を有する。パネル形態の音響部材においては、これによりパネルの最低動作モードの周波数を有利に低下させるはずであるが、同時により高い周波数におけるパネルの剛性が増大される。
【0033】
周波数依存材料は、減衰及び/又は他の機械的特性が温度及び/又は周波数に依存する熱可塑性ポリマーとすることができる。周波数依存材料は発泡材料とすることができ、これにより可変の減衰特性を備えた低密度材料を得ることができる。発泡材料はコアとして、又は別の表面に載置される小さな個別の減衰質量体として用いることができる。周波数依存材料は、音響部材が射出成形又は押し出し成形により製造されるポリマーブレンドとすることができる。
【0034】
周波数依存材料は、非周波数依存材料と組み合わせて用いることができる。該周波数依存材料は、炭素又はガラス繊維のような高係数の繊維強化を封入するポリマー材料とすることができる。ポリマー材料の該係数が変化すると、ポリマー材料に対する繊維の比率及び対応する特性に依存する、音響部材全体の係数が変化する可能性がある。或いは、ポリマー材料は金属又はセラミックを封入することができるので、音響部材にとっては金属又はセラミックの高質量体と、ポリマー材料の可変減衰とによる利点を得ることができる。
【0035】
音響部材は、音響ラジエータの形態とすることができ、その幅及び/又は長さにわたって先細とすることができる。ラジエータの厚みは、その中心から周縁に向けて増大させるか又は減少させることができる。厚みを減少させることにより、音響ラジエータの中心領域に剛性を持たせて撓み波音響ラジエータとして作動することができ、該ラジエータの端部領域が高コンプライアンスを有することができるので、音響ラジエータは、例えば別個の端部サスペンション無しで支持フレームに直接取り付けることができる。音響ラジエータにわたって係数を変化させる別のメカニズムによって同様の効果を得ることができる。
【0036】
周波数依存材料を使用することにより、スピーカの性能を改善するために用いることができる別のパラメータが得られる。従って、本発明の第2の態様により、動作可能な周波数レンジと、部材の幾何形状、撓み剛性、面積質量分布、減衰、引張係数、圧縮係数、及び剪断係数のパラメータの値に依存する音響出力とを有するラウドスピーカの音響部材を作る方法が提供され、該方法は、周波数に依存して変化する少なくとも1つの周波数依存パラメータを有する音響部材を準備し、周波数依存パラメータの変化を選択して、ラウドスピーカから所望の音響出力をもたらし、前記音響部材に前記選択された変化を持たせることを特徴とする。
【0037】
音響部材は、好ましくはスピーカの動作可能な周波数レンジで生じる、ガラスからゴムへの転移を有する周波数依存材料で作られた構成要素を有するように選択することができる。該方法は、周波数依存材料を変更して転移が生じる温度及び/又は周波数を調節することを含むことができる。該材料はポリマーとすることができ、材料の変更は、分子量(すなわち、分子内の全原子の重量の合計をポリマー内の分子数で除算した値)、分子分布、立体効果(すなわち、ポリマー鎖に付加される側鎖の効果)、側鎖の極性、及び架橋密度から成るグループの少なくとも1つのパラメータの変更を含むことができる。転移温度を下げるためにポリマーに可塑剤を添加することができる。
【0038】
分子量を増大させて転移温度を高くすることができ、或いはこの逆も可能である。交絡、すなわち互いの周りの鎖のラッピングを生じる傾向を強くするために、従って転移温度を高くするために分布を変更することができ、或いはこの逆も可能である。嵩高の側鎖又は複雑な側鎖の付加により、転移温度を高くすることができ、或いはこの逆も可能である。例えば、ポリ(シス−1,4)ブタジエンの水素側鎖をメチル基で置換すると、天然ゴム(ポリ(シス−1,4)イソプレン)が得られ、転移温度が−108℃から−73℃に上昇する。
【0039】
側鎖を適切に分極された(すなわち負極又は正極に)側鎖と置換することにより、主鎖との二次結合を増強させ、従って転移温度を高くすることができ、或いはこの逆も可能である。例えば、天然ゴムのメチル基を塩素原子で置換すると、ポリクロロプレン(ネオプレン(登録商標))が生成され、メチル基がより大きくとも、転移温度は−123℃から−50℃まで上昇する。これらの原理は、室温すなわち約21℃を超える温度に近い値の転移温度を示すポリマーを設計するために適用することができる。
【0040】
幾つかのポリマー材料では、2つの隣接する分子は、強固な結合、すなわち架橋を形成することができる。架橋の数、従って架橋密度を増大することによって、転移温度を上昇させることができ、或いはこの逆も可能である。ポリマーの架橋の調整は、例えばポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル(不飽和及び飽和)、ビスマレイミド樹脂、フェノール、ビニールエステルなどの、熱硬化性及び熱可塑性プラスチック材料の両方の領域を含む、架橋を示す全てのポリマーに対して適用することができる。
【0041】
ポリマーは、非晶質構造と結晶構造の領域、すなわち分子のランダムな交絡を有する領域と、規則正しくパックされ再現可能な分子の領域とをそれぞれ有することができる。このようなポリマーは、2つの転移温度、すなわちガラス転移と、結晶構造中の結合が破壊される温度である結晶溶融温度とを有することができる。非晶質構造を有する領域のパラメータを調整することにより、ガラス転移温度が融点より低いままであることを条件として、転移温度を調整することができる。
【0042】
ポリマーは、例えば、ポリプロピレンとポリエチレンの2つの別個のモノマーから成るコポリマーとすることができる。転移温度及び/又は転移周波数は、2つのモノマーの相対的な比率を変更することによって、及び/又は2つのモノマーを異なる方法、例えば交互構造で又はモノマー種のブロックなどで配列することによって調整することができる。コポリマーは、それぞれが異なる温度で高い減衰特性を有する、幾つかの別のポリマーを組み合わせることができる。高い減衰特性を示すポリマーは、以下の引用文献:Nielsen L. E.の「Mechanical Polymers」において説明されている。
幾つかの小さな大きさの非線形性が、このような周波数依存材料を用いること
により生じる可能性があり、これはラウドスピーカの設計者によって考慮されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、本発明をより理解するため及び単に例示の目的で、本発明の特定の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1を参照すると、パネル11は関係する動作可能な周波数レンジで共振撓み波モードの分布を有するように形成される。パネルのパラメータの値は、モードの「バンチング」又はクラスタリングに起因する、周波数応答のピークを平滑化するように選択される。従って、結果として生じる共振撓み波モードの分布は、特に低周波数モードでは、クラスタリング及び間隔の不均一さが実質的に最小であるようにすることができる。パネル形状部材の各概念的な軸に関連する共振撓み波モードは、周波数内にインターリーブされるように配置されることにより、実質的に均一な分布を達成することができる。
【0044】
変換器13は、WO97/09842に記載されたような、すなわち(4/9Lx,3/7Ly)の位置のような、共振撓み波モードに対して良好に結合する位置に設けられる。つまり変換器は、振動的にアクティブな共振アンチノードの数が比較的多く、反対に共振ノードの数が比較的少ない位置にある。変換器は直径が25mmのボイスコイルを有する電気力学的励振器である。
【0045】
パネルはポリメタクリル酸メチル(n−ブチル)PMMAから作られたモノリスであり、この材料はガラスからゴムへの転移温度Tgが27℃である。従って、ガラス状態からゴム状態への反応は室温(25℃)で生じ始める。このような転移の作用を図4ないし図6を参照して説明する。該材料のパラメータは、ポリカーボネートのパラメータと共に下表に示され、このポリカーボネートは比較の目的で、寸法、変換器の配置、及び変換器の種類が同じである第2のパネルを作るために使用される。
【0046】
図2はPMMAとポリカーボネートから作られたラウドスピーカにおける周波数に伴うヤング係数の変化43及び41をそれぞれ示す。ヤング係数Eの値は、各周波数に対して撓み波速度CBを計測し、式6を適用することにより計算される。
【0047】
図2は、ポリカーボネートパネルがより大きな静的ヤング係数の値を有するにもかかわらず(1.9GPAに対して2.3GPA)、周波数に伴うヤング係数の増加率は、ポリカーボネートパネルの場合よりもPMMAパネルの方が大きいことを示している。すなわち、PMMAのヤング係数は、低周波数におけるよりも高周波数における方が大きく、また高周波数においてはポリカーボネートのパネルよりも大きい。
【0048】
図3は、PMMAパネルとポリカーボネートパネルを使用したラウドスピーカの周波数応答47及び45をそれぞれ示している。PMMAパネルを使用するラウドスピーカの開口共振は、PMMAパネルを使用するラウドスピーカの開口周波数よりも高い周波数で発生し、16.04kHzに対して約18.1kHzである。従って、PMMAパネルは、周波数に伴うヤング係数の増加率が低いポリカーボネートパネルと比較して、より高い周波数限界をもたらす。
【0049】
PMMAパネルは、ポリカーボネートパネルにおける値よりも約13%小さい静的ヤング係数と密度値とを有する。従って、PMMAパネルのモード周波数はこれに応じてより低いものと推測される。しかしながら、図3に示されるように、周波数に伴うヤング係数がポリカーボネートよりもPMMAの方が大きく変化するので、PMMAパネルの局部的なモード周波数は、ポリカーボネートパネルのモード周波数よりも高い。
【0050】
図4は、粘弾性材料の応力(σ)と歪み(ε)のそれぞれの正弦曲線変化15及び17と、並びに応力成分と歪み成分間の位相遅れパラメータ(δ)を示す。時間遅れ成分は、式7に示されるように、減衰係数又は損失係数(η)を導き出すために使用される。また、式7は、エネルギーを保存又は損失する材料の能力をそれぞれ表し、複素ヤング係数のそれぞれ実数部と虚数部である、保存係数(E’)と損失係数(E’’)間の関係を示す。減衰係数は、エネルギー吸収の程度を制御し、等方性の均質な材料における寸法によって変化しない材料パラメータである。複素ヤング係数により構成要素の剛性が決まる。
【0051】
図5は、一定の周波数における熱可塑性ポリマー材料の減衰係数19、21dE及び保存係数E’の温度に伴う変化をそれぞれ示す。低温、すなわちT0を下回る温度では材料はガラス状を示す。保存係数が高いと材料は剛性を有し、一般に減衰係数は一定して低い。より高温、すなわちT1を上回る温度では、材料はゴム状を示す。材料はよりコンプライアントで、保存係数は低く、一般に減衰係数は一定して低い。温度がさらに上昇してT2を超えると、材料は流れ始める。
【0052】
ガラスからゴムへの転移は温度T0とT1の間で生じる。転移の間に、保存係数の値が急激に降下し、減衰係数がピークまで急激に上昇した後、急激に下降する。減衰係数の最大値はガラス転移温度Tgで生じる。この温度では、歪みは最大エネルギー放散を引き起こす分だけ応力よりも遅れる。
【0053】
温度による保存係数の変化は、周波数による保存係数の変化と等しいものとすることができる。高い温度は低い周波数に対応し、高い周波数は低い温度に対応する。
【0054】
ガラス転移温度が発生する周波数は、式8に従って、基準周波数f0から別の周波数fにシフトすることができる。図6に示されるように、式8は、温度の逆数に対してlog fのグラフをプロットすることによって再構成することができる。それぞれの転移プロセスの活性化エネルギーは、グラフの勾配から導出することができる。グラフの勾配が一定であるので、活性化エネルギーは一定であるが、これは転移期間においてのみ当てはまる。すなわち、周波数がF0からより高い周波数F2にシフトされると、これに対応して転移温度はT0からT2に上昇する。周波数がf1に低下すると、これに対応して転移温度はT1に下降する。
【0055】
周波数のシフトは保存係数E’と減衰係数dEに影響を及ぼす。これは、周波数F0とF
2における保存係数E’のそれぞれの変化23、25と、周波数F0とF2における減衰係
数dEのそれぞれの変化27、29を示す図7に示されている。転移温度Tgをより高い値にシフトすることにより、保存係数の値はどのような動作温度においてもより高くなる。
【0056】
減衰係数の変化がより複雑であり、転移温度のTgからより高い値へシフトすると、動作温度に応じて減衰係数が増加又は減少することができる。動作温度T3では、周波数F2の減衰係数は周波数F0の減衰係数よりも小さく、値が増加するのではなく、一定になる。しかしながら、動作温度T4では、減衰係数の値はほぼ等しいが、周波数F0に対して減衰係数は減少し、周波数F2に関しては増加する。
【0057】
これは、周波数に伴う減衰係数及び保存係数の変化29、31、及び33を表すグラフである図8に示される。減衰係数は、変化29によって示されるように周波数に伴って減少し、或いは変化31によって示されるように周波数に伴って増加する。保存係数は変化33によって示されるように、周波数に伴って増加する。従って、これらの材料を用いて製造されたパネルの減衰挙動と剛性においては2つの実行可能な選択肢がある。
すなわち、低周波数では低剛性/高減衰性であるが、高周波数では高剛性/低減衰性である。
低周波数では低剛性/低減衰性であるが、高周波数では高剛性/高減衰性である。
【0058】
従って、特定のポリマーの転移温度又は周波数を変えることによって、機械的な特性を変更して、保存係数及び減衰係数の特定の値を得ることができる。周波数により性能が変化するように設計されたこれらの材料が、音響装置とラウドスピーカのためのパネル及び関連する構成要素を作るために使用されるので、周波数帯域と性能の改善を達成することができる。
【0059】
別記
【0060】
ここで
F0:基本周波数(Hz)
A:パネル面積(m2)
B:平均撓み剛性(Nm)=1/2(Bx+By)
μ:面積/表面密度(kgm-2)
【0061】
【0062】
ここで
FB:撓み波共振周波数
DE:励振器直径
【0063】
【0064】
ここで
FS:剪断波共振周波数
G:貫通厚み剪断係数
【0065】
【0066】
ここで
FR:累積共振周波数
【0067】
【0068】
ここで
B:撓み剛性
t:厚み
E:ヤング係数(Pa)
v:ポアソン比
【0069】
【0070】
ここで
CB:撓み波速度(mS-1)
ω:周波数(ラジアン)
B:撓み剛性(Nm)
μ:面積密度(kgm-2)
【0071】
【0072】
ここで
E’:保存係数/実数部係数(GPa)
E”:損失係数/虚数部係数(GPa)
δ:位相遅れパラメータ
η:減衰又は損失係数
【0073】
【0074】
ここで
f:周波数(Hz)
f0:材料の周波数定数(Hz)
ΔH:プロセスの活性エネルギー
R:ガス定数
T:温度(K)
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明による分布モードラウドスピーカを示す。
【図2】従来技術により作られたラウドスピーカと比較した、図1のラウドスピーカにおける周波数に伴うヤング係数の変化を示すグラフである。
【図3】図2のラウドスピーカにおける周波数応答(周波数Hzに対するdBで表した音圧)である。
【図4】材料に関する正弦波荷重ωtに対する応力σと歪みεのグラフである。
【図5】ガラスからゴムへの転移を表す温度に対する保存係数(log E’)と減衰係数(dE)の変化の両方を示すグラフである。
【図6】ポリマーの温度の逆数に対する周波数の対数を示すグラフである。
【図7】2つの異なる周波数における温度に対する保存係数(log E’)と減衰係数(dE)の変化を示すグラフである。
【図8】周波数に伴う減衰係数と保存係数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0076】
11.パネル
13.変換器
Claims (1)
- 動作可能な周波数レンジと、部材の幾何形状、撓み剛性、面積質量分布、減衰、引張係数、圧縮係数、及び剪断係数のパラメータの値に依存する音響出力とを有するラウドスピーカの音響部材を作る方法であって、
周波数に応じて変化する少なくとも1つの周波数依存パラメータを有する音響部材を準備し、
前記周波数依存パラメータの変化を選択して、前記ラウドスピーカからの所望の音響出力をもたらし、
前記音響部材に前記選択された変化を持たせる、
ことを含む方法。
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