JP2004526666A - アポトーシスの選択的誘導によって腫瘍を治療するための組成物及び方法 - Google Patents

アポトーシスの選択的誘導によって腫瘍を治療するための組成物及び方法 Download PDF

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Abstract

死リガンド、TRAILによって媒介されるアポトーシスを通じて癌細胞の死を誘導するための組成物及び方法が提供される。本方法は、以下の工程:TRAIL用レセプターを発現する細胞を含んでなる細胞群に発現ベクターを導入する工程を含む。発現ベクターは、その発現が好ましくベクター内の条件プロモーターによって調節されるTRAILをコードするポリヌクレオチド配列を含む。発現ベクターが導入される細胞は、条件プロモーターの活性化に適した条件のときTRAILを発現する。発現されたTRAILが、TRAILとDR4及びDR5のようなレセプターとの間の相互作用を通じてTRAILレセプターを発現する当該細胞内で細胞死を誘導する。本方法は、部位特異的かつ用量調整様式で腫瘍を治療するのに使用することができる。

Description

【0001】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、癌細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を誘導するための組成物及び方法に係り、さらに詳細には、Fasリガンド(Apo−1リガンド)及びTRAIL(Apo−2リガンド)のようなアポトーシス信号発信リガンドを発現させる発現ベクターを用いることで腫瘍を治療するための組成物及び方法に関する。アポトーシス信号発信リガンドは、Fas(Fasリガンド用レセプター)、及びDR4又はDR5(TRAIL用レセプター)のようなアポトーシス媒介レセプターを発現する細胞内でアポトーシスを誘導する。
【0002】
発明の背景
現在、癌性腫瘍の主な治療は、組織、器官、又は腺の患部の外科的除去である。例えば、現在の乳癌治療は、患部乳腺を除去後、化学及び放射線療法の併用に焦点が当てられている。しかし、高い再生率が癌性細胞の完全な根絶の主な障害である。悪性腫瘍内の癌細胞は外科的に除去できるが、周囲の組織又はリンパ節を浸潤している癌性細胞は腫瘍の再生を頻繁に引き起こすと考えられている。頻繁な腫瘍再生の1つの理由は、原発癌の発生時にすべての癌細胞を完全に除去することは非常に困難なことである。残存癌細胞は、しばしば長期間静止状態のままであり、腫瘍の休止状態と言われる。Meltzerら(1990)“休止状態と乳癌”J.Surg.Oncol.43:181−188。一度原発性組織が外科的に除去されると、外科的損傷がその創傷部における迅速な組織及び血管再生を刺激しうる。これら再生プロセスが、例えば組織及び血管成長因子によってポジティブ信号を周囲組織に送る。これら因子及び迅速な増殖環境が残存腫瘍細胞の休止状態から迅速な増殖への転移を誘導し、ひいては癌の再生を引き起こす。
【0003】
2つの基本的特徴は、すべての癌細胞で共有し;無制御細胞周期;及びプログラム細胞死、アポトーシスの経路に入れないことである。アポトーシス、つまりプログラム細胞死(PCD)は、細胞が自殺を犯す遺伝的に制御された応答である。アポトーシスの徴候は、細胞毒性煮沸、染色質凝縮、及びDNA断片化に伴う生存力喪失である。Wyllieら(1980)“細胞死:アポトーシスの意義”Int.Rev.Cytol.68:251−306。アポトーシスプロセスは、組織の発生、器官の大きさと形状、及び細胞の寿命の調節に重要な役割を有する。組織及び器官発生のプロセスにおいて、アポトーシスは、脊椎動物の発生で組織モデリングの原因であるPCDのほとんど又はすべてが正常組織のうちに物理的な細胞死のために始動する理由となる。アポトーシスは、免疫応答におけるネガティブ選択時のB及びT細胞血統の細胞の盛んな排除の原因でもある。
【0004】
アポトーシスはセーフガードとして作用し、細胞及び組織の過剰成長を防止する。PCD機構で欠陥が発生すると、細胞の寿命を延ばし、かつ腫瘍性細胞増殖に寄与しうる。また、PCDの欠陥は、免疫に基づいた破壊に対する耐性を促進し、細胞毒性薬物及び放射線に対する耐性を与える遺伝子突然変異という遺伝的な不安定性及び蓄積を許容することで発癌に寄与しうる。この徴候は、これら療法に応答しない悪性細胞内で確かに見られる。照射法、化学療法及び適切なホルモン療法はすべてある程度腫瘍細胞内にアポトーシスを誘導するが、癌細胞の成長を抑制するためには高用量の薬物又は放射線が必要であり、患者に重篤な副作用もまた及ぼしうる。
【0005】
(発明の概要)
本発明は、癌、特に固形腫瘍を、部位特異的かつ制御された様式でFasL及びTRAILのようなアポトーシス信号発信リガンドを発現させることによって治療するための新規な方法及び組成物を提供する。
一局面では、本発明は、アポトーシス媒介レセプターを発現する細胞内で死を誘導する方法を提供する。
【0006】
一局面では、本方法は、以下の工程:アポトーシス媒介レセプターを発現する細胞を含んでなる細胞群に発現ベクターを導入する工程を含む。発現ベクターは、アポトーシス信号発信リガンドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、その発現は、好ましくは該ベクター内の条件プロモーターによって調節される。発現ベクターが導入される細胞は、条件プロモーターの活性化に適した条件のとき、アポトーシス信号発信リガンドを発現する。発現されたアポトーシス信号発信リガンドは、アポトーシス信号発信リガンドとアポトーシス媒介レセプターとの間の相互作用を通じてアポトーシス媒介レセプターを発現する当該細胞内で細胞死を誘導する。
この実施形態によれば、アポトーシス媒介レセプターは、Fasリガンド、Fas用レセプター、及びTRAIL、DR4及びDR5のレセプターのような膜結合型レセプターでよい。任意に、アポトーシス媒介レセプターは、腫瘍壊死因子(TNF)のレセプターでよいが、TNFはFas及びTRAILより高い全身毒性を有しうる。
【0007】
また、この実施形態によれば、アポトーシス媒介リガンドは、アポトーシス媒介レセプターに結合可能ないずれのタンパク質でもよい。例えば、アポトーシス媒介リガンドは、Fas(又はDR4/DR5)に結合でき、かつFas(又はDR4/DR5)を発現する細胞内でFas(又はDR4/DR5)媒介アポトーシスを発信する抗体である。この抗体は、本発明の発現ベクターによって一本鎖抗体として発現し、アポトーシス媒介レセプター上のその同族抗原に結合する。
好ましくは、アポトーシス信号発信リガンドは、FasL及びTRAILのような膜タンパク質である。任意に、アポトーシス信号発信リガンドはTNFでよいが、TNFはFas及びTRAILより高い全身毒性を有しうる。
【0008】
また、任意に、アポトーシス信号発信リガンドは、細胞内で発現されるとアポトーシスを誘導できる非膜結合型タンパク質でもよい。このような細胞内アポトーシス信号発信リガンドの例としては、限定するものではないが、Bax、Bad、Bak、及びBikが挙げられる。
本実施形態によれば、発現ベクターはプラスミドでもよい。プラスミドはリポソーム媒介送達又は形質移入の他の方法によって癌細胞に形質移入することができる。
好ましくは、発現ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニア、レトロウイルス、又は単純ヘルペスウイルスベクターでよい。
最も好ましくは、発現ベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスウイルスベクターは、複製−適格性又は複製−非適格性でよく、腫瘍部位内に投与されるアポトーシス信号発信リガンドの用量によって決まる。
【0009】
アポトーシス信号発信リガンドの発現は、発現ベクター内の条件プロモーターによって調節される。条件プロモーターは、前立腺特異的プロモーター、乳房特異的プロモーター、膵臓特異的プロモーター、大腸特異的プロモーター、脳特異的プロモーター、腎臓特異的プロモーター、膀胱特異的プロモーター、肺特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、甲状腺特異的プロモーター、胃特異的プロモーター、卵巣特異的プロモーター、及び頚部特異的プロモーターのような組織特異的プロモーターでよい。
前立腺特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、前立腺特異的抗原(PSA)プロモーター及びその突然変異体ΔPSA、ARR2PB及びプロバシン(probasin)(PB)プロモーター、gp91−phox遺伝子プロモーター、及び前立腺特異的カリクレイン(hKLK2)プロモーターが挙げられる。
【0010】
肝臓特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、肝臓アルブミンプロモーター、α−フェトプロテインプロモーター、α−抗トリプシンプロモーター、及びトランスフェリントランスサイレチンプロモーターが挙げられる。
大腸特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、炭酸脱水酵素Iプロモーター及び癌胎児性抗原プロモーターが挙げられる。
卵巣又は胎盤特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、エストロゲン応答性プロモーター、アロマターゼチトクロームP450プロモーター、コレステロール側鎖切断P450プロモーター、17α−ヒドロキシラーゼP450プロモーターが挙げられる。
乳房特異的プロモーターとしては、限定するものではないが、G.I.erb−B2プロモーター、erb−B3プロモーター、β−カゼイン、β−ラクト−グロブリン、及びWAB(ホエー酸性タンパク質)プロモーターが挙げられる。
【0011】
肺特異的プロモーターとしては、限定するものではないが、サーファクタントタンパク質Cウログロビン(cc−10、Cllacell 10 kd タンパク質)プロモーターが挙げられる。
皮膚特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、K−14−ケラチンプロモーター、ヒトケラチン1又は6プロモーター、及びロイクリン(roicrin)プロモーターが挙げられる。
脳特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、神経膠線維酸性タンパク質プロモーター、成熟星状膠細胞特異的タンパク質プロモーター、ミエリンプロモーター、及びチロシンヒドロキシラーゼプロモーターが挙げられる。
膵臓特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、ビリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、及びインスリン島アミロイドポリペプチド(アミリン)プロモーターが挙げられる。
甲状腺特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、チログロブリンプロモーター、及びカルシトニンプロモーターが挙げられる。
【0012】
骨特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、α1(I)コラーゲンプロモーター、オステオカルシンプロモーター、及び骨シアロ糖タンパク質プロモーターが挙げられる。
腎臓特異的プロモーターの例としては、限定するものではないが、レニンプロモーター、肝臓/骨/腎臓アルカリ性ホスファターゼプロモーター、及びエリスロポイエチン(epo)プロモーターが挙げられる。
代わりに、条件プロモーターは、テトラサイクリン及びその誘導体若しくは類似体(例えばドキシサイクリン)、グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲン、及びプロゲステロンのようなステロイドのような誘導物質の存在下で活性化又は抑制される誘導性プロモーターでよい。
【0013】
また、実施形態によれば、本方法は、さらに、細胞群にテトラサイクリン又はドキシサイクリンを送達する工程、及び細胞群に、グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲン、及びプロゲステロンから成る群より選択されるステロイドを送達する工程のような、条件プロモーターの活性化に適した条件を引き起こす工程を含む。
また、実施形態によれば、発現ベクターは、さらにリポーター遺伝子を含む。発現ベクターは、リポーター遺伝子をアポトーシス信号発信リガンドとの融合タンパク質として発現させることができる。代わりに、発現ベクターは、リポーター遺伝子を内部リボゾーム侵入部位(IRES)又はスプライシング供与体/受容体部位の機構によってアポトーシス信号発信リガンドを有する二シストロン的な単一タンパク質として発現させることができる。
【0014】
リポーター遺伝子は、好ましくは緑色、黄色及び青色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質、さらに好ましくは緑色蛍光タンパク質をコードする。
本実施形態によれば、発現ベクターは、さらに調節タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。調節タンパク質は、アポトーシス信号発信リガンドとの融合タンパク質として、又は発現ベクター上の異なるプロモーターからの単一タンパク質として発現させることができる。任意に、調節タンパク質は、内部リボゾーム侵入部位(IRES)及びスプライシング供与体/受容体部位の機構によってアポトーシス信号発信リガンドを有する二シストロン的な単一タンパク質として発現させることができる。
【0015】
例えば、調節タンパク質は、アポトーシス信号発信リガンドの組織特異的局在化を引き起こすタンパク質でよい。
本発明の方法を用いて腫瘍を治療することができる。従って、アポトーシスを受けるように誘導される細胞群は固形腫瘍内に含まれる。固形腫瘍の例としては、限定するものではないが、乳房、前立腺、脳、膀胱、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、頭頸部、大腸、胃、気管支及び腎臓腫瘍が挙げられる。
発現ベクターは、薬学的に許容性のいずれの投与経路を用いても導入することができる。例えば、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポゾームに、吸入によって、膣に、眼内に、カテーテル若しくはステントによる局所送達によって、皮下に、脂肪内に、関節内に、クモ膜下腔内に、又は遅延放出剤形で、腫瘍細胞群中に発現ベクターを投与することができる。
【0016】
好ましくは、発現ベクターは、腫瘍座中に該発現ベクターを直接注入することで腫瘍内に導入される。
任意に、発現ベクターが導入される細胞群が、癌を有する患者から採取した試料内に含まれるか、又は細胞培養内に含まれる場合、生体外で本方法を行うことができる。
Fasを発現する細胞とFasを発現しない細胞との混合物に発現ベクターを導入することができる。
任意に、Fasを発現しない細胞に発現ベクターを導入することができる。
また、任意にFasを発現する細胞に発現ベクターを導入することもできる。
任意に、Fasを発現しない細胞及びFasを発現する細胞に導入することもできる。“傍観者効果”により、発現ベクターによって形質導入された当該細胞の近傍でFasを発現する当該癌細胞は、Fas−FasL相互作用によって殺される。
【0017】
別の局面では、本発明は、癌細胞のアポトーシスを誘導するのに使用可能なアデノウイルス発現ベクターを提供する。本アデノウイルスベクターは、以下:条件プロモーター、及びその発現がベクター内の該条件プロモーターによって調節される膜結合型リガンドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、このリガンドはアポトーシス媒介レセプターを発現する細胞内でアポトーシスを発信する。
また、本実施形態によれば、膜結合型リガンドは、癌細胞の表面上のアポトーシス媒介レセプターに結合できるいずれのタンパク質でもよい。好ましくは、該膜結合型タンパク質はFasL又はTRAILである。任意に、膜結合型タンパク質はTNFでよいが、TNFはFas及びTRAILよりも高い全身毒性を有しうる。
【0018】
本実施形態によれば、アデノウイルスベクターは複製−適格性又は複製−非適格性でよく、腫瘍部位に投与されるリガンドの用量によって決まる。
リガンドの発現は、アデノウイルス発現ベクター内の条件プロモーターによって調節される。条件プロモーターは、前立腺特異的プロモーター、乳房特異的プロモーター、膵臓特異的プロモーター、大腸特異的プロモーター、脳特異的プロモーター、腎臓特異的プロモーター、膀胱特異的プロモーター、肺特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、甲状腺特異的プロモーター、胃特異的プロモーター、卵巣特異的プロモーター、及び頚部特異的プロモーターのような組織特異的プロモーターでよい。
【0019】
さらに別の実施形態では、本発明は、テトラサイクリンに応答して標的タンパク質の発現を厳密に制御するためのアデノウイルス発現ベクターを提供する。本アデノウイルス発現ベクターは、以下:テトラサイクリン応答性要素;テトラサイクリン応答性要素に結合可能なトランス活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;及びその発現がテトラサイクリン応答性要素へのトランス活性化タンパク質の結合性によって調節される標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
この実施形態によれば、テトラサイクリン応答性要素とトランス活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、アデノウイルスベクターと反対の末端に位置づけられる。例えば、テトラサイクリン応答性要素はアデノウイルスベクターのE4領域に位置づけられ、トランス活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列はアデノウイルスベクターのE1に位置づけられる。
【0020】
任意に、本アデノウイルスベクターはE3領域を含まない。
任意に、本アデノウイルスベクターはE4領域のOrf6以外は、アデノウイルスのE4領域を含まない。
標的タンパク質の発現は、テトラサイクリン又はドキシサイクリンの存在で抑制することができる。代わりに、標的タンパク質の発現は、ドキシサイクリンの存在で活性化することができる。
本実施形態によれば、標的タンパク質はFasL及びTRAILのような膜結合型アポトーシス信号発信タンパク質でもよい。
本実施形態によれば、ウイルス発現ベクターは、さらにリポータータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むことができる。リポータータンパク質と標的タンパク質は、融合タンパク質としてコードされ、又は内部リボゾーム侵入部位(IRES)又はスプライシング供与体/受容体部位の機構によって標的タンパク質を有する二シストロン的な単一タンパク質として発現されうる。
リポーター遺伝子は、好ましくは緑色、黄色及び青色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質、さらに好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする。
【0021】
本実施形態によれば、発現ベクターはさらに調節タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むこともできる。調節タンパク質は、アポトーシス信号発信リガンドとの融合タンパク質として発現され、又は該発現ベクター上の異なるプロモーター由来の単一タンパク質として発現されうる。任意に、調節タンパク質は、内部リボゾーム侵入部位(IRES)又はスプライシング供与体/受容体部位の機構によってアポトーシス信号発信リガンドを有する二シストロン的な単一タンパク質として発現されうる。
例えば、調節タンパク質は、アポトーシス信号発信リガンドの組織特異的局在化を引き起こすタンパク質でよい。
本実施形態のアデノウイルスベクターの例としては、限定するものではないが、pAdTET及びAd/FasL−GFPTETが挙げられる。
【0022】
本発明の発現ベクターは、化学療法薬(例えばアルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、ホルモン剤及び植物誘導物質)及び生体物質(例えばサイトカイン、癌ワクチン、及び遺伝療法送達腫瘍抑制遺伝子)のような他の抗癌物質と併用することもできる。例えば、癌患者に、TRAILをコードする発現ベクターと、ドキソルビシンのような抗癌薬を共投与すると、該薬物によるアポトーシス阻害分子の抑制又はプロ−アポトーシス分子の上方制御を通じて、相乗的に癌細胞をTRAIL媒介アポトーシスに感作することで、その耐性を克服するだろう。従って、本発明の併用療法を用いることで、毒性水準下量の化学療法薬によって癌患者を治療し、なおかつ高用量の化学療法薬の使用に伴う重篤な副作用を患うことなくより良い臨床効力を達成することができる。
【0023】
(図面の簡単な説明)
図1A、1B、及び1Cは、それぞれpLAd−C.tTAベクター、pRAd.T.GFsLベクター、及びrAd/FasL−GFPTETベクターを模式的に示す。図1Aには、pLAd−C.tTAベクターが示される。このプラスミドは、Ad5ゲノムの最左の450bp、次いで強力なCMVieエンハンサー/プロモーター及びMCSに挿入されたpUHD15−1由来のtTA遺伝子を含む。アダプターは、制限部位Xba1、Avr2及びSpe1を含み、すべてXba1と適合性の付着末端を生成する。rAdベクターへの構築後、効率的なtTA発現のためE1AポリAを利用する。同様の戦略を用いて他の導入遺伝子を含有するpLAdベクターを構築した。図1Bには、pRAd.T.GFsLベクターが示される。このプラスミドは、唯一のEcoR1部位(27333bp)から右側ITR(35935bp)のAd5(sub360)配列を含み、E3及びE4を欠失している(E4のOrf6Aは保持されている)。このダイアグラムは、TREプロモーターと、FasL−GFP融合タンパク質と、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリAとから成る調節性FasL−GFP発現カセットの構造を示す。このカセットをMCSに35810bpで挿入した。rAd/FasL−GFPTETベクターの試験管内構築は図1Cに示される。GFPとFasL読み枠との間の接合部が拡大されている。同様の戦略によって他のrAdベクターを生成した。
【0024】
図2は、 293及び293CrmA細胞におけるrAdベクターのタイターとFasL活性の比較を示すグラフである。12−ウェルプレートに10個の293又は293CrmA細胞を接種し、1日後、5のMOIでr−Ad/FasL、rAdFasL−GFPTET、又はrAd/LacZにより感染させた。形質導入48時間後、細胞を収集かつ溶解させた。ライセートを滴定して293CrmA細胞についてPFU/mlを決定した。結果は、2セットの独立実験の平均値と平均誤差を示す。
図3は、TRAIL及びGFP遺伝子が、これら2つの遺伝子の二シストロン発現を容易にするIRESによって分離されていること以外は、図1の説明で述べたのと同様の方法によって構築されるTRAIL発現ベクターAd.TRAIL/GFPTETの構成を示す。
【0025】
図4は、FasL−及びTRAIL−誘導アポトーシスに対する癌細胞の異なる感度を示す。癌細胞、A459、HeLa、LnCP、及びC3Aを、アデノウイルス感染に対する感受性及びFasL−及びTRAIL−誘導アポトーシスに対する感度について解析した。細胞を、10のMOIでAdGFP(左から第1列及び第2列のパネル)、Ad/FasL−GFPTEP(第3列)及びAd.TRAIL/GFPTEP(第4列)によって感染させた。細胞のアデノウイルス感染の感受性は、GFP発現細胞の数(第1列)に示され、細胞の形態は、明視野ビューに示される(第2列)。Ad/FasL−GFPTET及びAd.TRAIL/GFPTETで感染された細胞の形態は、それぞれ第3及び第4列のパネルに示される。
【0026】
図5は、TRAIL発現が非形質転換線維芽細胞内でアポトーシスを誘導しないことを示す。TRAIL発現が正常細胞内でアポトーシスを誘導するかを決定するため、低継代ヒト包皮線維芽細胞を約10のMOIで、AdGFP、Ad/FasL−GFPTET、及びAd.TRAIL/GFPTETによって感染させた。明視野ビューは、AdGFPで形質導入した線維芽細胞の正常形態を示す(パネルGFP hFF)。GFP発現細胞の低数によって示されるように、線維芽細胞はアデノウイルスによる不十分な感染度を示した(パネルGFP)。しかし、これら細胞はFasL誘導アポトーシスに対しては高い感受性である(パネルFasL)。対照的に、TRAIL形質導入細胞では、5倍のMOIでさえ明白なアポトーシスが観察されない(パネルTRAIL×5)。
【0027】
図6は、Fasリガンドを含む本発明のアデノウイルスベクター(Ad/FasL−GFPTETベクター)の注射でヌードマウスに移植されたヒト乳癌の成長の抑制を示す。同数の乳癌細胞を6匹のマウスの各脇腹に移植した。マウスの右脇腹の腫瘍にAd/FasL−GFPTETベクターを注射し、同一マウスの左脇腹の腫瘍に対照ベクター、Ad/LacZを注射した。6匹のうち4匹のマウスで、1回の注射後に腫瘍集団のほとんどが消滅した(黄色矢印で示される)。2匹のマウスでは、同一マウスの対照部位上の腫瘍と比較して80%より多く腫瘍の成長が抑制された(黒色矢印)。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、部位特異的かつ制御された様式でFasL及びTRAILのようなアポトーシス信号発信リガンドを発現させることによって、癌、特に固形腫瘍を治療するための新規な方法及び発現ベクターを提供する。これらアポトーシス信号発信リガンドの制御された発現は、これらリガンドの非制御全身投与に伴う細胞毒性を有意に減少させるだろう。
【0029】
本発明によれば、アポトーシス信号発信リガンド(例えばFasL及びTRAIL)をコードする遺伝子を運ぶアデノウイルスベクターのような発現ベクターを薬学的に許容性の多くの投与経路によって腫瘍部位内に導入することができる。アデノウイルスによって形質導入された細胞は、好ましくは膜結合型タンパク質としてリガンドを発現する。細胞内におけるアポトーシス信号発信リガンド(例えばTRAIL)とアポトーシス媒介レセプター(例えばDR4及びDR5)との相互作用を通じて、信号伝達のカスケードが生じる。この現象が、アポトーシス信号がプロテアーゼ及びエンドヌクレアーゼのような複数のアポトーシス酵素の発現によって増幅される複数のアポトーシス経路を誘導する。リガンドとレセプターとの間の相互作用が2細胞間で起こるので、アデノウイルスで形質導入されていない腫瘍細胞は、“傍観者効果”により誘導されてアポトーシスを受けうる。この効果は、アデノウイルスで基質導入された細胞内で発現されるアポトーシス信号発信リガンドと、形質導入されていない腫瘍細胞の表面上で発現されるアポトーシス媒介レセプターとの間の特異的な相互作用に起因する。従って、本発明の方法を用いることで、細胞死滅効率は、タンパク質としてのリガンド又は該リガンドを発現する細胞の直接注入を伴う当該アプローチより高いだろう。
【0030】
本発明の1つの重要な特徴は、アポトーシス信号発信リガンドの発現が組織特異的又は誘導性プロモーターのような条件プロモーターによって制御されることである。リガンドの発現を部位特異的に制御すること(例えば組織特異的プロモーターを用いて)及び/又は用量の柔軟な調整によって、リガンドの潜在的な全身毒性が有意に減少するだろう。
【0031】
特に、該リガンドをコードするアデノウイルスウイルスを腫瘍部位に直接注入し、腫瘍細胞内に該リガンドを局所的に伝達することができる。送達されるリガンドの用量により、アデノウイルスベクターは複製−適格性又は複製−非適格性でよい。腫瘍内に注入されると、アデノウイルスは腫瘍細胞を形質導入し、結果として、局所的に高レベルのリガンドを発現させる。リガンドと腫瘍細胞の表面上で発現されたレセプターとの間の相互作用を通じ、リガンド誘導アポトーシスの経路に沿って複数のタンパク質と酵素の発現によってアポトーシス信号が増幅される。こうして、周囲の健康な組織損傷を最小にしながら大量の腫瘍細胞を根絶することができる。ある意味では、本発明によって提供されるこのアプローチは、“分子外科術”のようであり、癌療法薬の無差別的な非制御投与に伴う従来のアプローチよりも貴重かつ安全である。
【0032】
本発明の方法を用いることで、初生腫瘍を根絶することができ、その間に腫瘍部位における癌細胞アポトーシスを活性化することで癌の再発を防止することができる。
一局面では、本発明は、アポトーシス媒介レセプターを発現する細胞内で死を誘導する方法を提供する。死の態様は、壊死、アポトーシス又は両者の組合せでよい。
本方法は、以下の工程:アポトーシス媒介レセプターを発現する細胞を含んでなる細胞群に発現ベクターを導入する工程を含む。発現ベクターは、その発現が好ましくは該ベクター内の条件プロモーターによって調節されるアポトーシス信号発信リガンドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。発現ベクターが導入される細胞は、条件プロモーターの活性化に適する条件のときに、アポトーシス信号発信リガンドを発現する。発現したアポトーシス信号発信リガンドは、アポトーシス信号発信リガンドとアポトーシス媒介レセプターとの間の相互作用を通じてアポトーシス媒介レセプターを発現する当該細胞内で細胞死を誘導する。
【0033】
本実施形態によれば、アポトーシス媒介レセプターは、Fasリガンド、Fas用のレセプター、及びTRAIL、DR4及びDR5のレセプターのような膜結合型レセプターでよい。任意にアポトーシス媒介レセプターは腫瘍壊死因子(TNF)でよいが、TNFはFas及びTRAILより高い全身毒性を有しうる。
また、本実施形態によれば、アポトーシス信号発信リガンドは、アポトーシス媒介レセプターに結合できるいずれのタンパク質でもよい。例えば、アポトーシス信号発信リガンドは、Fas(又はDR4/DR5)に結合でき、Fas(又はDR4/DR5)を発現する細胞内にFas(又はDR4/DR5)媒介アポトーシスを発信する抗体である。抗体は、本発明の発現ベクターによって一本鎖抗体として発現し、アポトーシス媒介レセプター上の該抗体の同族抗原に結合することができる。
好ましくは、アポトーシス信号発信リガンドは、FasL及びTRAILのような膜タンパク質である。任意にアポトーシス信号発信リガンドはTNFでよいが、TNFはFas及びTRAILよりも高い全身毒性を有しうる。
【0034】
1.アポトーシス媒介レセプター及びアポトーシス信号発信リガンド
本発明によれば、アポトーシス媒介レセプターは、アポトーシス信号発信リガンドと結合するとプログラム細胞死を媒介する死レセプターである。本レセプターは、膜結合型である細胞表面レセプターでよく、又は細胞質若しくは核内にある。好ましい実施形態では、アポトーシス媒介レセプターは細胞膜結合型レセプターである。このようなアポトーシス媒介レセプターの重要な例は、腫瘍壊死因子(TNF)レセプタースーパーファミリーに属する。
【0035】
TNFレセプタースーパーファミリーは、関連するシステインリッチの細胞外ドメインの存在によって定義される。TNFレセプターの例としては、限定するものではないが、NGF、BDNF、NT−3及びNT−4のようなNTR/GFR(p75)、TNF−R1(CD120a)、TNF−R2(CD120b)、Fas(CD5/Apo−1)DR3(TRAMP/WSL−1)、DR4(TRAIL−R1)、DR5(TRAIL−R2)、DcR1(TRAIL−R3)、DcR2(TRAIL−R4)、CD30、CD40、Cd27、4−1BB(CD137)、OX−40、LT−βR、ヒトHVEM(ヘルペスウイルス初期媒介物質)、ORG(オステオプロテゲリン(osteoprotegerin))/OC1F、及びRANKが挙げられる。Ashkenazi及びDixit(1999)“死及びおとりレセプターによるアポトーシス制御”Curr.Opin.Cell Biol.11:255−260。
【0036】
すべてのレセプターは、メンバー間に約25%の同一性があり、リガンド結合に寄与する2−6システインリッチドメインで構成される細胞外領域を有するI型膜貫通タンパク質である。Fas、TNF−R1、TRAIL−DR4、DR5、TRAMP(DR3)、CAR1は、同様の細胞質ドメインを有する。これらレセプターの細胞内領域の配列比較が、死ドメインと呼ばれる約80個のアミノ酸の相同的な、よく保存された領域を明らかにした。Orlinck及びChao(1998)“TNF関連リガンド及びそのレセプター”Cell Signal 10:543−551。死ドメインは、アポトーシスに係わる細胞性信号発信分子(アダプタータンパク質)の特異的な補充に必要である。Nagata(1997)“死因子によるアポトーシス”Cell 88:355−365。
【0037】
TNFレセプタースーパーファミリー内のレセプターに結合するリガンドとしては、限定するものではないが、ネオロトロフィン(neorotrophin)、TNF−α、Fasリガンド(FasL/CD−95L/Apo−1L)、TRAIL/Apo−2L、CD30L、CD40L、CD27L、4−1BBL、OX−40L、及びリンホトキシン(LT)α,βが挙げられる。LT−αを除き、すべてのリガンドはII型膜タンパク質として合成され;そのN末端は細胞質内にあり、そのC末端は細胞外領域に伸長している。Nagata(1997)“死因子によるアポトーシス”Cell 88:355−365。細胞外ドメイン内にある約150個のアミノ酸の領域は、TNFファミリーのメンバー間で20〜25%の相同性がある。
【0038】
リガンドの共通の特徴は、すべての活性リガンドが3つの同一サブユニットで構成され(三量体)、オリゴマー形成によってそれぞれのレセプターを活性化することである。Schulze−Osthoffら(1998)“死レセプターによるアポトーシス”Eur.J.Biochem.254;439−459。ほとんどのメンバーが膜結合型分子として見つけられ;特異的メタロプロテアーゼが可溶形態を生成することができる。TACEと呼ばれるTNF−a用の亜鉛依存性メタロプロテアーゼは、このような特異的メタロプロテアーゼの一例である。Orlinck及びChao(1998)“TNF−関連リガンド及びそのレセプター”Cell Signal 10:543−551。
【0039】
2.Fasリガンド媒介アポトーシス
好ましい実施形態では、アポトーシス信号発信リガンドはFasリガンドである、本発明によれば、腫瘍部位内の発現ベクターによるFasリガンドの制御された発現が、Fas−FasL相互作用を通じてFasを発現する細胞内でアポトーシスを誘導しながら、やはりFasを発現する当該正常細胞へのFasリガンドの無差別攻撃に伴う副作用を最小化するだろう。
Fas(APO−1、CD95)、つまりFasリガンドレセプターは、45kDaのI型膜タンパク質であり、TNF/神経成長因子レセプタースーパーファミリーに属する。Bajorath,J.及びA.Aruffo.(1997)“比較分子モデリングによるヒトFasレセプターの三次元構造の予測”J.Comput Aided Mol Des 11:3−8;及びWatanabe−Fukunaga,R.,C.I.Brannan,N.Itoh,S.Yonehara,N.G.Copeland,N.A.Jenkins及びS.Nagata“マウスFas抗原のcDNA構造、発現、及び染色体配置”J.Immunol.148:1274−9。
【0040】
Fasのリガンド、FasLは、腫瘍壊死因子ファミリーに属する40−kDaのII型膜タンパク質である。Takahashi,T.,M.Tanaka,J.Inazawa,T.Abe,T.Suda及びS.Nagata.(1994)“ヒトFasリガンド:遺伝子構造、染色体配置及び種特異性”Int.Immunol.6:1567−74。FasL(及び特定の抗−Fas抗体)のFasへの結合性は、レセプターのオリゴマー形成を引き起こし、caspase経路を通じて信号を送り、その結果アポトーシスによるレセプター担持細胞の迅速な死となる。Larsen,C.P.,D.Z.Alexander,R.Hendrix,S.C.Ritchie及びT.C.Pearson.(1995)“Fas−媒介細胞毒性。T細胞−媒介免疫応答における免疫エフェクター又は免疫調節性経路?”Transplantation 60:221−4;Longthorne,V.L.及びG.T.Williams.(1997)“Fas−媒介アポトーシスへの関係づけにはcaspase活性が必要である”EMBO.J.16:3805−12;Nagata,S.及びP.Golstein.(1995)“Fas死因子”Science 267:1449−56;及びOgasawara,J.R.Watanabe−Fukunaga,M.Adachi,A.Matsuzawa,T.Kasugai,Y.Kitamura,N.Itoh,T.Suda及びS.Nagata.(1993)“マウス内の抗−Fas抗体の致死的効果”[(1993)Nature Oct 7;365(6446):568に正誤表発表]Nature 364:806−9。
【0041】
Fasはほとんどすべての細胞型で発現される。FasがFasLに結合すると、それはインターロイキン結合酵素(ICE)又はcaspasesのカスケード発現を通じて遺伝的にプログラムされた細胞死を活性化する。Chandlerら(1998)“マウス肝臓内におけるFas−誘導アポトーシスに従うcaspase−3及びcaspase−7の異なる細胞内分布”J.Biol.Chem.273:10815−10818;Jonesら(1998)“マウス肝細胞内のFas−媒介アポトーシスはcaspasesのプロセシング及び活性化に関与する”Hepatology 27:1632−1642。
リガンドとレセプターの両方が膜タンパク質なので、Fas−誘導アポトーシスは通常細胞−細胞連絡を通じて媒介される。しかし、FasLの可溶形態は、いくつかの細胞によっても生成され、標的細胞によっては、いくらか変化した活性を有することが分かっている。Tanaka.M.,T.Itai,M.Adachi及びS.Nagata(1998)“Fasリガンドのシェディング(shedding)による下方制御”[注釈参照],Nat.Med.4:31−6;及びTanaka,M.,T.Suda,T.Takahashi及びS.Nagata(1995)“活性化リンパ球内におけるヒトFasリガンドの機能性可溶形態の発現”EMBO.J.14:1129−35。
【0042】
例えば、本発明は、細胞へのFasリガンドのベクター媒介遺伝子伝達によってFasを発現する腫瘍細胞(Fas細胞)の死を誘導する方法を提供する。この方法では、Fasリガンドを発現するベクター形質導入細胞が、Fas腫瘍細胞にアポトーシスを受けさせて死亡させる。ベクターは、注射器又はマイクロポンプで腫瘍内に注入することができ、従って腫瘍を除去するための従来の外科手術の必要を排除することができる。
ベクターによって形質導入された癌細胞によりFasLが発現される機構は多数あるだろう。癌細胞死は、いくつかの方法で誘導することができる:1)FasLが隣接腫瘍細胞上のFasに結合し、そのアポトーシスを誘導する;2)FasLが内皮細胞のアポトーシスを誘導し、腫瘍を供給する血管を殺す;3)腫瘍細胞上のFasLの発現が周囲組織のアポトーシスを誘導し、いずれの苗床担体の腫瘍細胞も取り除く;及び4)アポトーシスが、癌再発の原因である静止腫瘍細胞を再活性化しうるポジティブ因子の放出を阻止する。
【0043】
このアプローチの主要な利点は、Fas−FasL相互作用が、p53−依存性及び非依存性経路の両方に従ういくつかのアポトーシス経路を活性化する主な信号発信現象であることである。Callera(1998)“再生不良性貧血由来のリンパ球内におけるbcl−2及びp53の正常発現によるFas−媒介アポトーシス”Br.J.Haematol.100:698−703。従って、アポトーシス信号発信は、1より多くの酵素発現のカスケードによって増幅され、アポトーシスはp53又は他の細胞周期チェックポイントタンパク質に依存しない。例えば、p53遺伝子による遺伝子療法は、癌治療に非常に有望であることが分かっており(Boulikas(1997)“前立腺癌の遺伝子療法:p53、自殺遺伝子、及び他の標的”Anticancer Res.17:1471−1505)、p53遺伝子療法は、p53突然変異を有する腫瘍細胞の約50〜60%で有効である。Iwayaら(1997)“節−ネガティブ乳癌の初期再発の指標としての組織学的悪性度及びp53免疫反応”Jpn J Clin Oncol 27:6−12。
【0044】
他の利点は、FasLが、通常p53及びcaspasesのような細胞内タンパク質ではなく膜結合型信号発信タンパク質であることである。細胞表面上のFasL発現は、強力な“傍観者効果”によってアポトーシス信号を周囲の癌細胞に発信し、すべての癌細胞に治療遺伝子を送達する必要がない。従って、本発明は、現在の遺伝子療法を超えた有意な改良を与え、毒性薬物の使用を回避し、かつ腫瘍再発の防止を助ける癌治療の非外科的方法の要求を満たす。
Fasリガンドを制御された様式で発現させることによって、例えば、組織特異的又は誘導性プロモーターの制御によって、腫瘍内におけるアポトーシスを選択的に促することで腫瘍の成長を抑制でき、Fasリガンドの全身毒性を減少させることができる。
【0045】
3.癌細胞のTRAIL−媒介選択的アポトーシス
TRAIL、つまりApo−2リガンドは、281アミノ酸、II型膜貫通タンパク質であり、FasLに最も密接に関連する(28%アミノ酸相同性)。FasLと同様に、TRAILは多くの感受性腫瘍細胞系を4〜8時間で殺すことができる。対照的に、TNFは24時間以上で腫瘍細胞系を殺す。Wileyら(1995)“アポトーシスを誘導するTNFファミリーの新メンバーの同定及び特徴づけ”Immunity 3:673−682。TRAILレセプター、DR4及びDR5は、全長Fasレセプターのように、アポトーシス信号を媒介するためのアダプター分子(例えばFADD(Fas関連死ドメイン)様のアダプター)と相互作用しうる死ドメインを含有する。
【0046】
TRAIL−媒介アポトーシスの開始は、リガンド(TRAIL)でレセプターを架橋させることによる標的細胞上のこれらDR4又はDR5のクラスター形成に関与する。レセプターのオリゴマー形成により、FADDと同様のアダプター分子が、死ドメイン相互作用によって、DR4又はDR5レセプタークラスターに補充される。Chinnaiyanら(1996)“TNFR−1及びCD95に関連する死−ドメイン−含有レセプター、DR3による信号伝達”Science 274:990−992。反発的レセプターDR4及びDR5のTRAILへの架橋は、おとりレセプター(DcR1及びDcR2)で阻害することができる。Sheridanら(1997) “信号発信及びおとりレセプターのファミリーによるTRAIL誘導アポトーシスの制御”Science 277:818−821。おとりレセプターは、死信号を媒介するための機能性死ドメインを欠き、かつDR4及びDR5によるTRAILへの結合と競合できるので、TRAIL−媒介アポトーシスを阻害することができる。Griffithら(1999)“モノクロナール抗体を用いたTRAILレセプターの機能解析”J.Immunol.162:2597−2605。
【0047】
FADDと同様のTRAILアダプター分子は、おそらくFLICE(capase−8)、すなわち最終アポトーシス表現型につながるcaspase増幅カスケードを開始するアスパラギン酸特異的システインプロテアーゼに結合する死エフェクタードメインを含むだろう。Muzio(1998)“タンパク質分解による信号発信:死アダプターがアポトーシスを誘導する”Int.J.Clin.Lab.Res.28:141−147。アダプターがTRAILレセプターDR4又はDR5の死ドメインに補充されると、FLICEチモーゲンがFADD様アダプターによって接触させられ、FLICEの自動切断によって活性化される。TRAILレセプター−アダプター−FLICEから成るFLICE活性化複合体は、DISC(死誘導信号発信複合体(death inducing signaling complex))と呼ばれる。Kischkelら(1995)“細胞毒性−関連依存性APO−1(Fas/CD95)−関連タンパク質は、レセプターと死誘導信号発信複合体(DISC)を形成する”EMBO J.14;5579−5588。FLICE酵素は、引き続きそのチモーゲン型を切断することによって、caspase−3及び他のcaspasesを活性化する。Martinez−Lorenzoら(1998)“Jarkat及びヒト末梢血液T細胞の活性化誘導死におけるApo−2リガンド/TRAILの関与”Euro.J.Immunol.28:2714−2725。活性caspase−3は、ICAD(caspase−活性化デオキシ−リボヌクレアーゼのインヒビター)を切断することができ、その結果、アポトーシスの典型的な特徴である180〜220bpの断片にDNAを切断する活性ヌクレアーゼが遊離する。
【0048】
TRAIL発現は、種々多様なヒト組織内で検出されており、脾臓、肺及び前立腺内で最高レベルである。Wileyら(1995)“アポトーシスを誘導するTNFファミリーの新メンバーの同定及び特徴づけ”Immunity 3:673−682。本発明では、正常細胞に比し、癌細胞がTRAIL誘導アポトーシスに対して選択的な感受性を有することが示される。例えば、LNCAP(前立腺)、Hela(頸部)、A549(肺)、及びC3A(肝臓)のようなヒト癌細胞系は、TRAIL−媒介アポトーシスに感受性であるが、包皮試料由来の初生ヒト線維芽細胞は、同レベルのTRAILが細胞内で発現されても基本的に影響されない。従って、TRAILは、FasLに比し、より腫瘍特異的様式でアポトーシスを誘導し、ひいては生体内発現時に全身毒性が低くなりうる。
【0049】
腫瘍細胞がTRAIL−媒介アポトーシスに特に感受性であることの多くの可能な理由があるだろう。1つの可能性は、健康な正常細胞が、細胞死につながる生化学的な信号発信経路を遮断するFLICE−阻害タンパク質(FLIPs)のような細胞内調節因子を発現しうることである。Griffithsら(1998)“ヒトメラノーマ細胞内におけるTRAIL−誘導アポトーシスの細胞内調節”J.Immunol.161:2833−2840。正常細胞上のTRAILの細胞毒性効果の欠如が、TRAILへの結合でDR4又はDR5と競合することでTRAIL−媒介アポトーシスを阻害するDcR1及びDcR2のようなおとりレセプターの発現に起因する可能性もある。
本発明の方法を用いることで、アデノウイルスベクターのような条件発現ベクターによって癌細胞中にTRAILを導入することができ、選択的に癌細胞のアポトーシスを誘導する。TRAILは正常細胞にほとんど毒性を及ぼさず、その発現は部位特異的かつ用量依存的に制御できるので、このリガンドの全身毒性は低減するだろう。
【0050】
4.アポトーシス信号発信リガンド用発現ベクター
本発明の方法の実施に使用可能な発現ベクターは、いずれの遺伝子伝達ベクターでもよい。発現ベクターは、アポトーシス信号発信リガンド(例えばTRAIL)をコードするプラスミドでよい。プラスミドは、リボゾーム媒介送達又は形質移入の他の方法によって癌細胞中に形質移入することができる。
好ましくは、発現ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニア、レトロウイルス、又は単純ヘルペスウイルスベクターでよい。
【0051】
本発明は、好ましくは部位特異的かつ制御様式で癌細胞の死を誘導するために使用するアデノウイルスベクターを提供する。アポトーシス信号発信リガンドの発現は、組織特異的プロモーター又は誘導性プロモーターを用いることで制御することができる。代わりに、アポトーシス信号発信リガンドの発現は、形質導入された細胞内で構成的でよい。アデノウイルス発現ベクターは、試験官内及び生体内の両方で広範な細胞型にアポトーシス信号発信リガンドを送達するために使用することができる。さらに、アポトーシス信号発信の発現を厳密に調節することができ、アポトーシス信号発信リガンドをコードするアデノウイルス発現ベクターの産生を促すのみならず、該リガンドの生体内発現を制御して全身毒性を最小にする手段を提供する。さらに、本発明は、外因性アポトーシス信号発信リガンドのレベル及び細胞局在化を容易かつ確実に定量化する手段をも提供する。
【0052】
好ましい実施形態では、アデノウイルスベクターは以下:条件プロモーター、及びベクター内の該条件プロモーターによって、その発現が制御される膜結合型リガンドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、該リガンドがアポトーシス媒介レセプターを発現する細胞内でアポトーシスを発信する。アデノウイルスベクターは、複製−適格性又は複製−非適格性でよく、腫瘍部位中に投与されるアポトーシス信号発信リガンドの用量によって決まる。
膜結合型リガンドは、癌細胞の表面上のアポトーシス媒介レセプターに結合できるいずれのタンパク質でもよい。好ましくは、膜結合型タンパク質は、FasL又はTRAILである。任意に膜結合型タンパク質はTNFでよいが、TNFはFas及びTRAILよりも高い全身毒性を有しうる。
【0053】
これとは別に、アデノウイルスベクターは、該リガンドが細胞に導入されると、その伝達された細胞が該リガンドを細胞内で発現するような別のタイプのアポトーシス信号発信リガンドをコードしてもよい。リガンドとアポトーシス媒介レセプターとの相互作用が細胞にアポトーシスを受けさせる。このような細胞内アポトーシス信号発信分子の例としては、限定するものではないが、Bax、Bad、Bak、及びBikが挙げられる。Adamsら“細胞死の制御”WEHI Annual Report 1996/1997。
【0054】
本発明の他の実施形態では、アポトーシス信号発信リガンドをコードする発現ベクターは、該リガンドの発現を調節するために使用しうる調節タンパク質のような他のタンパク質をコードすることもできる。例えば、調節タンパク質は、細胞膜上のFasリガンドの組織特異的局在化をもたらし、又は代わりに非標的細胞内のFasリガンドの早発性代謝回転を引き起こし、又は転写及び/又は翻訳の調節によってFasLの発現を調節することができる。
【0055】
調節タンパク質は、発現されるタンパク質をコードする核酸と同時に、又は連続的に、細胞に送達される別の発現ベクターによってコードすることもできる。この実施形態では、2つの発現ベクターは、異なるプロモーターのような異なる配列を有して、ステロイドホルモン、例えば、当該ホルモンによって誘導されるプロモーターを調節できるグルココルチコイドホルモンの使用によってのように、該プロモーターの一方又は両方の発現を選択的に調節する薬物の投与によってのように、独立的に調節することができる。使用可能な他のステロイドホルモンとしては、限定するものではないが、エストロゲン、アンドロゲン、及びプロゲステロンが挙げられる。
【0056】
アポトーシス信号発信リガンドは、別のタンパク質との融合タンパク質として発現してもよい。リガンドと融合されたこのタンパク質は、タンパク質の局在化、リガンドの活性化又は不活性化、リガンドの位置の監視、リガンドの単離、及びリガンドの量の定量化のような目的で使用することができる。
一実施形態では、融合タンパク質は、Fasリガンドと、蛍光タンパク質(FP)のようなリポータータンパク質とを含む。リポータータンパク質の例としては、限定するものではないが、GFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子、YFP(黄色蛍光タンパク質)遺伝子、BFP(青色蛍光タンパク質)遺伝子、CAT遺伝子、ネオ遺伝子、ハイグロマイシン遺伝子等が挙げられる。FasL−GFP融合タンパク質発現構成物の例が図1に示され、さらに本明細書で説明される。
【0057】
これとは別に、リポーター遺伝子は、内部リボゾーム侵入部位(IRES)又はスプライシング供与体/受容体部位の機構によってアポトーシス信号発信リガンドを有する二シストロン的な単一タンパク質として発現されうる。
発現ベクターは、さらにアポトーシス信号発信リガンドの発現を調節できる配列をコードすることができる。例えば、該ベクターは、グルココルチコイド調節要素(GRE)を含有し、グルココルチコイドホルモンを用いてFasリガンドの発現を調節することができる。
隣接遺伝子の発現を調節できる調節配列の別の例は、H10及びH19のようなRNAアプタマーを該プロモーター領域にクローン化することでHoechst染料33258のような薬物の投与によって該遺伝子の生体内発現を遮断することができる。Werstruckら(1998)“小分子−RNA相互作用による生細胞内の遺伝子発現の制御”Science 282:296−298。
【0058】
本発明の他の実施形態では、調節配列は、Tet−オペロン若しくはlacオペロン、又は真核細胞内で調節配列として機能しうる他のいずれかのオペロンを含む。
好ましい実施形態では、アポトーシス信号発信リガンドの発現は、テトラサイクリン調節遺伝子発現系の制御下、リガンドの発現がtet−応答性要素によって制御され、該リガンド発現は、tet−応答性要素とtetトランス活性化因子の相互作用を必要とする。
さらに好ましい実施形態では、リガンド発現の厳密な制御は、Adベクターを用いて達成され、tet−応答性要素及びトランス活性化要素は、同一ベクターの反対の端部に作られ、エンハンサーの干渉を回避する。発現は、テトラサイクリン又は、限定するものではないが、ドキシサイクリンを含むそのいずれの誘導体によっても、用量依存的様式で好都合に調節することができる。例えば、該ベクターが、FasL−GFP遺伝子を細胞に効率的に試験管内送達し、その融合タンパク質の発現レベルを培養液中のドキシサイクリンの濃度によって調節することができる。このような調節系の例については、本明細書で詳細述べられる。
【0059】
本発明の一実施形態では、プロモーターは、当業者には明かな組織特異的プロモーターであり、FasL及びTRAILのようなアポトーシス信号発信リガンドをコードする核酸の発現に対して組織特異性を与えることができる。
例えば、組織特異的プロモーターは、前立腺特異的、乳房組織特異的、大腸組織特異的、膵臓特異的、脳特異的、腎臓特異的、肝臓特異的、膀胱特異的、骨特異的、肺特異的、甲状腺特異的、胃特異的、卵巣特異的、又は頚部特異的プロモーターでよい。
組織特異的プロモーターが前立腺特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、PSAプロモーター、ΔPSAプロモーター、ARR2PBプロモーター、PBプロモーター、gp91−phox遺伝子プロモーター、及び前立腺特異的カリクレイン(hKLK2)プロモーターが挙げられる。
【0060】
組織特異的プロモーターが乳房特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、MMTVプロモーター、G.I.erb−B2プロモーター、erb−B3プロモーター、β−カゼイン、β−ラクト−グロブリン、及びWAB(ホエー酸性タンパク質)プロモーターが挙げられる。組織特異的プロモーターが肝臓特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、肝臓アルブミンプロモーター、α−フェトプロテインプロモーター、α−抗トリプシンプロモーター、及びトランスフェリントランスサイレチンプロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが脳特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、JCウイルス初期プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、ドーパミンヒドロキシラーゼプロモーター、脳特異的エノラーゼプロモーター、神経膠線維酸性タンパク質プロモーター、成熟星状膠細胞特異的タンパク質プロモーター、及びミエリンプロモーターが挙げられる。
【0061】
組織特異的プロモーターが大腸特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、MUC1プロモーター、炭酸脱水酵素Iプロモーター及び癌胎児性抗原プロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが卵巣特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、エストロゲン応答性プロモーター、アロマターゼチトクロームP450プロモーター、コレステロール側鎖切断P450プロモーター、及び17α−ヒドロキシラーゼP450プロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが肺特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、サーファクタントタンパク質Cウログロビン(cc−10、Cllacell 10 kd タンパク質)プロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが皮膚特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、K−14−ケラチンプロモーター、ヒトケラチン1又は6プロモーター、及びロイクリン(loicrin)プロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが膵臓特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、ビリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、及びインスリン島アミロイドポリペプチド(アミリン)プロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが甲状腺特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、チログロブリンプロモーター、及びカルシトニンプロモーターが挙げられる。
【0062】
組織特異的プロモーターが骨特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、α1(I)コラーゲンプロモーター、オステオカルシンプロモーター、及び骨シアロ糖タンパク質プロモーターが挙げられる。
組織特異的プロモーターが腎臓特異的プロモーターである場合、プロモーターとしては、限定するものではないが、レニンプロモーター、肝臓/骨/腎臓アルカリ性ホスファターゼプロモーター、及びエリスロポイエチン(epo)プロモーターが挙げられる。
他の組織特異的プロモーターが、ヒトゲノム計画及びヒト遺伝子発見の試みで明らかにされるだろうことに留意すべきである。これらプロモーターは、本発明の発現ベクターから組織特異的な発現を方向づけるための適切な手段として使用できるだろう。
【0063】
さらに、当業者は、特定の細胞型に特異的なプロモーターの同定のしかたが容易にわかるだろう。例えば、異なる組織型内の遺伝子の差別的な発現を比較することで、例えば遺伝子チップ技術を用いて、1つの特定組織型でのみ発現される遺伝子を同定することができる。そして、これら遺伝子を単離し、配列決定し、異種遺伝子の組織特異的発現を作動させる能力について動物モデルで試験することができる。このような方法は、本技術の当業者の十分能力内である。組織特異的プロモーターを同定できる方法の例は、Greenbergら(1994)Molecular Endocrinology 8:230−239で見出すことができる。
【0064】
組織特異性は、高度の組織特異性を有する発現ベクターを選択することによっても達成することができる。例えば、選択的に大腸癌に関連する細胞のような粘膜細胞を感染させるベクターを選択し、任意に座薬の使用によってのように特異的な送達手段と併用し、Fas及びTRAILのようなアポトーシス信号発信リガンドをコードする核酸を当該所望の細胞に選択的に送達することができる。
【0065】
当業者は、種々のベクターが多かれ少なかれ特定宿主に依存する適応性を有することを認識している。核酸を特定宿主に導入する特定の技法の一例は、組換えレトロウイルスゲノムをパッケージできるレトロウイルスベクター系の使用である。例えば、Pastanら(1988)“MDR1 cDNAを運ぶレトロウイルスは多剤耐性及びMDCK細胞内におけるP−糖タンパク質の極性発現を与える”Proc.Nat.Acad.Sci.85:4486;及びMillerら(1986)“ヘルパーウイルス産生につながる組換えを回避するためのレトロウイルスパッケージング細胞系の再設計”Mol.Cell.Biol.6:2895。そして、生成された組換えレトロウイルスを用いて感染させ、それによってその感染細胞にアポトーシス信号発信リガンドをコードする核酸配列を送達することができる。当然、核酸を哺乳類細胞に導入する的確な方法は、レトロウイルスベクターの使用に限定されない。アデノウイルスベクター(Mitaniら“アデノウイルスベクターによるヒト骨髄の形質導入”Human Gene Therapy 5:941−948(1994))、アデノ関連ウイルスベクター(Goodmanら“造血性前駆細胞への組換えアデノ関連ウイルス媒介遺伝子伝達”Blood 84:1492−1500(1994))、レンチウイルスベクター(Naidiniら“レンチウイルスベクターによる非分裂細胞の生体内遺伝子送達及び安定な形質導入”Science 272:263−267(1996))、偽型レトロウイルスベクター(Agrawalら“血液由来CD34細胞内における細胞周期キネティクス及びVSV−G偽型レトロウイルス媒介遺伝子伝達”Exp.Hematol.24:738−747(1996))、ワクシニアベクター、及び物理的形質移入法(Schwarzenbergerら“c−kitレセプターを通じたヒト造血性前駆体細胞系への標的遺伝子伝達”Blood 87:472−478(1996))の使用を含め、この手順には他の技術を広範に使用可能である。この発明は、これら又は他の通常使用される遺伝子伝達法のいずれとも併用することができる。本発明の好ましい実施形態では、Fasリガンドをコードする核酸を送達するための特異的なベクターは、アデノウイルスベクターを含む。
【0066】
5.トランス調節タンパク質をコードする発現ベクター
アポトーシス信号発信リガンドの発現を調節できることが望ましいので、本発明は、標的タンパク質(例えばFasL及びTRAIL)の発現を厳密に制御するために調節可能な発現用の発現ベクターをも提供する。
この発現ベクターは以下:転写調節配列;この転写調節配列に結合可能なトランス作動性調節タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;及びその発現がトランス作動性調節タンパク質の転写調節配列への結合性によって調節される標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
転写調節配列と、トランス作動性調節タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、アデノウイルスベクターの反対に位置づけられる。例えば、転写調節配列がアデノウイルスベクターのE4領域内に位置づけられ、トランス作動性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列がアデノウイルスベクターのE1内に位置づけられる。
【0067】
このベクターでは、標的タンパク質をコードする核酸は、操作的に転写調節配列に連結される。この標的タンパク質の発現は誘導性であり、例えば、特定の転写調節配列用の適切な活性化因子が存在しなければ、FasLの発現又はFasL融合は進行しないだろう。
代わりに、標的タンパク質の発現は抑制性でよく、すなわち、特定の転写調節配列用の適切なリプレッサーが存在しなければ、FasLの発現又はFasL融合が進行するだろう。
トランス作動性調節タンパク質が転写調節配列と相互作用して標的タンパク質の転写に作用する。転写調節配列が誘導性の場合、トランス作動性調節タンパク質はトランス活性化因子である。転写調節配列が抑制性の場合、トランス作動性因子はトランス−リプレッサーである。
【0068】
さらに好ましい実施形態では、転写調節配列は、tet応答性要素(TRE)であり、トランス作動性因子はtet応答性トランス作動性発現要素(tTA)である。
最も好ましい実施形態では、本発明は、ベクターAd/FasL−GFPTETを利用する。これは、マウスFasLと緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合を発現させる複製−欠失アデノウイルスベクターである。FasL−GFPは、野生型FasLの全活性を保持し、同時に生細胞と固定細胞の両方で容易な可視化及び定量化を可能にする。この融合タンパク質は、テトラサイクリン調節遺伝子発現系の条件下にある。このtet応答性要素とトランス活性化要素が同一ベクターの反対の末端に作られ、エンハンサーの干渉を回避する新規な“二重組換え体”アデノウイルスベクターを作製することで、厳密な制御が達成される。
【0069】
FasL−GFP融合の発現は、テトラサイクリン又は、限定するものではないが、ドキシサイクリンを含むそのいずれの誘導体によっても、用量依存的様式で好都合に調節することができる。このベクターは、生体内及び試験管内で効率的にFasL−GFP遺伝子を細胞に送達し、融合タンパク質の発現レベルは、培養液に添加され、又は被験者に投与されるドキシサイクリンの濃度によって調節することができる。以下の実施例で分かるように、Ad/FasL−GFPTETは、FasL−GFPを形質転換された初生細胞系に送達し、培地内のドキシサイクリンのレベルを変えることによって当該細胞内における融合タンパク質の発現を調節することができる。FasL−GFPの量は、そのGFP成分の蛍光を通じて容易に検出かつ定量することができ、標的細胞及び隣接細胞内のアポトーシスのレベルと相関させることができる。
【0070】
この全体的なtet調節遺伝子発現系を送達するベクターデザインは、複数のベクターを用いる戦略よりも有効かつ経済的であり、タンパク質発現の調節が望まれるいずれの状況にも適用することができる。
従って、本発明は、テトラサイクリン又はテトラヒドロフラン誘導体に応じて標的タンパク質の発現を厳密に制御するための発現ベクターを提供する。この発現ベクターは以下:テトラサイクリン応答性要素;このテトラサイクリン応答性要素に結合可能なトランス活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列;及びその発現がトランス活性化タンパク質のテトラサイクリン応答性要素への結合性によって調節される標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。さらに好ましい実施形態では、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。このアデノウイルスベクターでは、テトラサイクリン応答性要素とトランス活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、該アデノウイルスベクターの反対の末端に位置づけられる。例えば、テトラサイクリン応答性要素がアデノウイルスベクターのE4領域内に位置づけられ、トランス活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列がアデノウイルスベクターのE1内に位置づけられる。任意に、アデノウイルスベクターはアデノウイルスのE3領域を含まない。また任意に、アデノウイルスベクターはE4領域のOrf6を除きE4領域を含まない。
【0072】
標的タンパク質の発現は、テトラサイクリン又はドキシサイクリンの存在で抑制することができる。代わりに、標的タンパク質の発現は、ドキシサイクリンの存在で活性化することができる。
該ベクターは、限定するものではないが、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はレトロウイルスベクターを含む他のいずれのタイプのウイルスベクターでもよいことに留意すべきである。
発現ベクターは、さらにリポータータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むことができる。リポータータンパク質と標的タンパク質を融合タンパク質としてコードし、又は内部リボゾーム侵入部位(IRES)又はスプライシング供与体/受容体部位の機構によって標的タンパク質を有する二シストロン的な単一タンパク質として発現させることができる。
リポーター遺伝子は、好ましくは緑色、黄色及び青色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質、さらに好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする。
例えば、アデノウイルスベクターは、pLAd−C.tTAとpRAd−TGFsLをAd5ゲノムの一部(snb 360)に連結し、後述するように、また図1A〜Cに示されるようなベクターAd/FasL−GFPTETを生成することによって、融合タンパク質、FasL−GFPの発現用に構築することができる。
【0073】
FasL−GFP融合以外の標的タンパク質の発現は、該標的配列をコードするポリヌクレオチドでFasL−GFP融合配列を置き換えた同様のアデノウイルスベクター(pAdTETと呼ばれる)を用いることで調節することができる。ベクターpAdTETは、図1A〜CでベクターAd/FasL−GFPTETの生成について述べたのと同様な方法で、FasL−GFP融合配列をベクターpRAd−TGFsLから除去し、この部位に標的配列を挿入し、かつその結果生じたベクターをpLAd−C.tTAに連結することで構築できる。ベクターpAdTETを利用して、厳密な調節が望まれる無制限な種々の異種タンパク質を発現させることができる。
【0074】
発現ベクターは、さらに該ベクターを含有し、かつ選択マーカーを発現する当該細胞のスクリーニングに使用できる選択マーカーを含むことができる。この方法では、該核酸又は該ベクターを含有し、かつ該選択マーカーを発現する当該細胞を、該核酸又は該ベクターを含有するが、該選択マーカーを発現しない細胞、及び該核酸又は該ベクターを含有しない細胞から容易に分離することができる。使用する特異的な選択マーカーは、当然、選択マーカーを含有せず、かつ発現しない真核細胞に対して選択するのに使用できるいずれの選択マーカーでもよい。選択は、選択マーカーが薬物耐性タンパク質をコードする遺伝子である場合のような、選択マーカーを含有かつ発現しない細胞の死に基づくことができる。真核細胞のこのような薬物耐性遺伝子の例は、ネオマイシン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞は、抗生物質G418、つまりジェネテシン7の存在下で生存できるが、ネオマイシン耐性遺伝子を含有しないか又は発現しない真核細胞は、G418の存在下に反して選択される。当業者は、抗生物質ハイグロマイシンBで選択されうるhph遺伝子、又は抗生物質ミコフェノール酸によって選択されうる大腸菌Ecogpt遺伝子のような選択マーカーの他の例があることを認識している。従って、使用する特異的な選択マーカーは可変である。
【0075】
選択マーカーは、該選択マーカー遺伝子を含有かつ発現する細胞を、抗生物質の存在下で成長する能力以外の手段で、該選択マーカー遺伝子を含有しないか及び/又は発現しない細胞から分離するのに使用できるマーカーでもよい。例えば、選択マーカーは、発現されると、該マーカーをコードする選択マーカーを発現する当該細胞の同定を可能にするタンパク質をコードすることができる。例えば、選択マーカーは、ルシフェラーゼタンパク質又は緑色蛍光タンパク質のような発光タンパク質をコードすることができ、該発光タンパク質をコードする選択マーカーを発現する細胞は、発光タンパク質をコードする選択マーカーを含有しないか又は発現しない当該細胞から同定することができる。代わりに、選択マーカーは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のようなタンパク質をコードする配列でよい。技術的に周知の方法により、CATを産生する細胞は、CATを産生しない細胞から容易に同定かつ区別することができる。
【0076】
6.本発明の発現ベクターの構築
本発明の発現ベクターは、組換えDNA技術を用いることで構築できる。例えば、上述した調節性アデノウイルスベクターは、アデノウイルス5型から誘導し、アポトーシス信号発信リガンド(例えばFas及びTRAIL)及び転写調節配列をコードする異種配列を含むように修飾することができる。
【0077】
当業者は、アポトーシス信号発信リガンド、及び任意に、1種又は2種以上の転写調節配列のような追加配列をコードする核酸配列を得ることができる利用可能な多くの方法があることを認識している。核酸を得る1つの方法は、組換えDNA分子を合成することで核酸を作製することによる。例えば、オリゴヌクレオチド合成手順は、本技術では日常的であり、特定タンパク質又は調節領域のオリゴヌクレオチドコーティングは、自動DNA合成によって容易に得られる。二本鎖分子の一本鎖用核酸を合成し、その相補鎖にハイブリダイズすることができる。これらオリゴヌクレオチドを、結果として生じる二本鎖分子が、内部制限部位又は適切なベクターにクローン化するため末端に適切な5’若しくは3’オーバーハングを有するように設計することができる。相対的に大きいタンパク質又は調節領域の二本鎖分子コーティングは、まず該タンパク質又は該調節領域の特定領域をコードする数種の二本鎖分子を作製し、その後これらDNA分子を一緒に連結することで合成することができる。例えば、Cunninghamら(1989)“相同体−走査突然変異誘発によって同定されたヒト成長ホルモンのレセプター及び抗体エピトープ”Science Vol.243,pp.1330−1336は、まずオーバーラップ及び相補合成オリゴヌクレオチドを作製し、これら断片を一緒に連結することによって、ヒト成長ホルモン遺伝子をコードする合成遺伝子を作製した。合成オリゴヌクレオチドからの1057塩基対合成ウシロドプシン遺伝子の合成が開示されている、Ferrittiら(1986)Proc.Nat.Acad.Sci.82:599−603も参照せよ。一度適切なDNA分子が合成されると、このDNAを適切なプロモーターの下流にクローン化できる。このような技法は、本技術では日常的であり、十分実証されている。
【0078】
アポトーシス信号発信リガンドをコードする核酸を得る別の方法の例は、対応する野生型核酸が見出されている生体からそれを単離し、かつそれを適切なベクター内でクローン化することである。例えば、DNA又はcDNAライブラリーを作製し、関心のある核酸の存在をスクリーニングすることができる。このようなライブラリーの作製及びスクリーニング方法は、技術的に周知であり、作製及びスクリーニング工程を実施するためのキットが商業的に入手可能である(例えば、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,CA)。一度単離されると、その核酸を直接適宜のベクターにクローン化し、又は必要ならば、修飾して次のクローン化工程を容易にすることができる。このような修飾工程は日常的であり、一例は、制限部位を含有するオリゴヌクレオチドリンカーの核酸末端への付加である。一般的な方法は、Sambrookら“分子クローニング、実験室マニュアル”Cold Spring Harabor Press(1989)で述べられている。一度単離されると、標準的な実験室法、例えばPCRを用いて選択されたコドンを変えることができる。
【0079】
アポトーシス信号発信リガンドをコードする核酸を得る方法のさらに別の例は、対応する野生型核酸を含有する宿主生体内に見られる野生型核酸を前記核酸から増幅し、その増幅した核酸を適切なベクター内でクローン化することである。本技術の当業者は、標的核酸に完全には相同性でないプライマーを用いて、増幅工程が突然変異工程、例えば同時に核酸を増幅し、かつ核酸の特異的位置を変えることと併用できることを認識している。
これら組換えDNA技術を用いることで、アポトーシス信号発信リガンドをコードする複製−非適格性アデノウイルスベクターを構築することができる。例えば、TRAILをコードする複合アデノウイルスベクターを構築し、腫瘍細胞の感染に使用することができる。さらにTRAILを有して二シストロン的に発現されるGFPを含むベクターは、Ad.TRAIL/GFPTETと呼ばれる。
【0080】
ベクター、Ad.TRAIL/GFPTETは、複数の遺伝子及び調節機構を発現させる複合アデノウイルスベクターである。このアデノウイルスベクターの構成は、図3に示される。IRESによって分離されたTRAILとGFPをコードする配列が、シャトルベクターによって5型アデノウイルスゲノムの右末端(E4領域)にクローン化され、結果としてシャトルベクターpRAdTRE−TRAIL/GFPが生じる。このpRAdTRE−TRAIL/GFPシャトルベクターは、右ロングターミナルリピートR−TRを含む、アデノウイルスゲノムの右末端を含有する。
別のシャトルベクター、pLAd−C.tTAは、5型アデノウイルスゲノムのE1領域内にテトラサイクリントランス活性化遺伝子tTAを含有する。このベクターpLAd−C.tTAは、左ロングターミナルリピートL−TRを含む、アデノウイルスゲノムの左末端と、アデノウイルスパッケージングシグナルΨをも含有する。ベクターpRAdTRE−TRAIL/GFPとpLAd−C.tTAは、両方とも線状化され、アデノウイルスのバックボーンに連結されて組換えアデノウイルスベクター、Ad.TRAIL/GFPTETが生成される。
【0081】
7.投与経路及び製剤形態
アポトーシス信号発信リガンドをコードする発現ベクターは、薬学的に許容性のいずれの与経路によっても腫瘍内に導入することができる。例えば、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポゾームに、吸入によって、膣に、眼内に、カテーテル若しくはステントによる局所送達によって、皮下に、脂肪内に、関節内に、クモ膜下腔内に、又は遅延放出剤形で、腫瘍群中に発現ベクターを投与することができる。
当業者は、本方法のこの局面が、アポトーシス信号発信リガンド(例えばFasL及びTRAIL)をコードする配列の細胞内への安定した又は一過性の導入を含むことができることを認識している。さらに、安定的又は過渡的に導入されたリガンド−コード配列は、宿主のゲノムに組み込まれるようになり又は組み込まれない。
【0082】
当業者は、細胞中に発現ベクターを導入する正確な手順は、当然に変えることができ、かつ細胞の特有の型又はアイデンティティによって決まることを認識している。発現ベクターの細胞内への導入方法の例としては、限定するものではないが、エレクトロポレーション、細胞融合、DEAE−デキストラン媒介形質移入、リン酸カルシウム媒介形質移入、ウイルスベクターによる形質移入、マイクロインジェクション、リポフェクション媒介形質移入、リポソーム送達、及び微粒子銃法が挙げられ、“裸のDNA”送達の種々の手順を含む。任意に、本方法は、発現ベクターが導入される細胞群が、癌を有する患者から採取した試料内にあるか又は細胞培養内にある場合、生体外で行うことができる。
【0083】
例えば、発現ベクターは、Fasを発現する細胞とFasを発現しない細胞の混合物に導入することができる。任意に、発現ベクターは、Fasを発現しない細胞に導入することができる。任意に、発現ベクターは、Fasを発現する細胞に導入することもできる。また任意に、発現ベクターは、Fasを発現しない細胞とFasを発現する細胞に導入することができる。“傍観者効果”によって、発現ベクターで形質導入された細胞近傍のFasを発現する癌細胞が、Fas−FasL相互作用によって殺される。
アポトーシス信号発信リガンドを発現させるために使用する種々のベクター及び宿主を用いて細胞培養内又は試験管内でリガンドを発現させることができる。例えば、Fasリガンドをコードする発現ベクターは、COS細胞のような組織培養細胞系内に導入し、該細胞培養内で発現させることができる。この方法では、当業者は、宿主が、標的でない周囲の細胞又は組織に及ぼすアポトーシスの如何なる可能性も最小にできるような時間で、アポトーシス信号発信リガンドを発現する細胞を効率的に排除できるような、宿主生体内で制限された寿命を有する細胞型を選択することができる。
【0084】
これとは別に、被験者の細胞を被験者から取りだし、アポトーシス信号発信リガンドをコードする発現ベクターを投与してから被験者に戻すことができる。この生体外処理手順では、被験者に不必要な副作用を及ぼすことなく、細胞を操作して、アポトーシス信号発信リガンドをコードする核酸の摂取を容易にすることができる。
アポトーシス信号発信リガンドを発現させるために用いる種々のベクターと宿主を使用して、核酸を生体内で発現させることができる。例えば、FasLをコードする発現ベクターを真核生物宿主の細胞、好ましくは腫瘍細胞内に導入し、Fas腫瘍細胞を生体内原位置で治療することができる。
【0085】
簡単に上述したように、当業者は、宿主にベクターを選択的に投与することで特定組織を治療できることを理解している。例えば、吸入器の使用によってのようなエアロゾルを介してアデノウイルスベクターを投与すると、ベクターを選択的に肺に投与することができる。任意に、座薬を使用して、ベクターを大腸の細胞に選択的に投与することができる。
また、任意に、クリーム内のようにベクターを局所的に送達すると、ベクター又は核酸を皮膚細胞又は頚部に選択的に送達することができる。
【0086】
当業者は、発現ベクターを特定の器官又は細胞に選択的に送達するために通常使用することができる種々の方法を理解している。例えば、発現ベクターの送達は、ベクターの選択部位への注射のような方法によって手で容易に行うことができる。例えば、直接注射を使用して、特定の脳及び/又は乳房位置にベクターを送達することができる。本発明の一実施形態では、乳癌集団内への送達にFasリガンド又はTRAILをコードするベクターの直接注射を使用する。
本発明の方法及びベクターを用いてアポトーシス信号発信リガンドを細胞又は被験者、最も好ましくはヒトに投与して、病気状態、好ましくは癌を治療できると考えられる。本ベクターは、単独であるか、別の化合物若しくは組成物(例えば、化学療法薬)と併用するか、又はベクターに基づいた送達系の一部としてであろうが、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射で、腹腔内注射で、局所的に、経皮的等によって投与できるが、局所投与が特に好ましい。
【0087】
このような核酸、組成物、ベクター等の正確な必要量は、被験者ごとに変わり、被験者の種、年齢、質量及び全身状態、治療すべき病気又は状態の重症度、使用する特定の化合物又は組成物、その投与態様等によって決まる。従って、正確な量を特定することは不可能であり或いは必要ない。しかし、当業者は、技術的に周知の方法によって適量を決定することができる。
局所投与では、本発明の組成物は、例えば、粉末、液体、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル等のような固形、半固形又は液状剤形で、好ましくは正確な一投与量に適した剤形の医薬組成物でよい。本組成物は、通常、製薬的に許容性のキャリヤーと組み合わせて、有効量の選択された核酸、組成物、又はベクターを含むことができ、さらに他の薬剤、調合剤、キャリヤー、アジュバント、希釈剤等を含むことができる。
【0088】
“製薬的に許容性の”とは、生物学的に又はその他の点で望ましくなくない物質、すなわち、個体に、如何なる望ましくない生物学的効果を生じさせることなく或いはそれが含まれる医薬組成物の他のいずれの成分とも有害な様式で相互作用することなく、選択された核酸、その組成物、又はベクターと共に投与することができる物質を意味する。
代替的又は追加的に、非経口投与の場合は、一般的に注射、例えば、標的細胞を有する組織又は器官に供給する血管を通じた局所潅流を含む静脈内注射を特徴とする。注射剤は、従来の形態で、液状溶液若しくは懸濁液、注射前に液体に溶解若しくは懸濁させるのに適した固体形態、又はエマルジョンとして調製することができる。非経口投与は、一定レベルの用量が維持されるような遅延放出又は持続放出系の使用にも利用できる(例えば、米国特許第3,710,795号参照)。本化合物は、Fas表現型を発現する細胞若しくは組織の部位に直接注射するか、又はそれらがFas表現型細胞の部位に拡散若しくは循環するように注入することができる。
【0089】
用量は、投与形態、治療すべき病気又は状態、及び個々の被験者の状態によって決まる。用量は、投与される物質、例えば核酸、核酸を含むベクター、又は他のタイプの化合物若しくは組成物にも依存する。このような用量は技術的に公知である。さらに、用量は、治療すべき特定の病気又は状態に典型的な用量に従って調整することができる。
さらに、標的細胞型の培養細胞を用いて標的細胞の生体内用量を最適化することができ、標的細胞型として同一型の培養細胞内で達成される用量を変えることによる変化を監視することができる。1回服用で十分なことが多く;しかし、所望により服用を繰り返すことができる。用量は、副作用を引き起こすほど多くてはいけない。一般的に、用量は年齢、状態、性及び患者の病気の程度にって変わり、当業者は決定することができる。用量は、如何なる合併症という場合に備えても個々の医者によって調整される。非ヒト動物の有効用量の例が実施例で提供される。技術承認処方に基づき、ヒトの有効用量は、有効と規定かつ示されている用量から日常的に計算することができる。
【0090】
被験者の細胞への投与では、化合物又は組成物が被験者内に投与されると、当然被験者の体温に順応する。生体外投与では、化合物又は組成物は、それを培養液(標的細胞に適した)に添加し、この培地を直接細胞に添加することによってのような、細胞の生存度を維持するいずれの標準的な方法によっても投与することができる。技術的に公知なように、この方法で用いるいずれの培地も細胞が生存できなくならないように水性かつ無毒である。さらに、所望により培地は細胞の生存度を維持するための標準的な栄養物を含有することができる。
生体内投与では、本複合体を、例えば患者由来の血液試料若しくは組織試料に、又は製薬的に許容性のキャリヤー、例えば食塩水及び緩衝食塩水に添加し、かつ技術的に公知ないくつかの手段のいずれによっても投与することができる。
【0091】
投与の他の例としては、エアロゾルの吸入、皮下若しくは筋肉内注射、該化合物が核酸若しくはタンパク質である場合、該化合物をコードする核酸配列の、被験者に移植及び後で移植するために調製された骨髄細胞中への直接形質移入、及び被験者に後で移植される器官への直接形質移入が挙げられる。
さらなる投与方法としては、特に組成物が被包されている場合の経口投与、又は特に組成物が座薬形態である場合の直腸投与が挙げられる。製薬的に許容性のキャリヤーとしては、生物学的又はその他の点で望ましくなくないいずれの物質でもよく、すなわち該物質は、如何なる望ましくない生物学的効果をも引き起こすことなく、かつそれが含まれる医薬組成物の他のいずれの成分とも有毒な様式で相互作用することなく、選択された複合物と共に個体に投与しうる。
【0092】
特に、特定の細胞型が生体内で標的とされる場合、本明細書で述べ、かつ技術的に公知なように、例えば器官若しくは腫瘍の局所潅流によって、標的組織由来の細胞を生検し、該複合物の当該組織への移入の最適用量を試験管内で決定し、濃度及び時間長を含め、生体内用量を最適化することができる。
これとは別に、同一細胞型の培養細胞を用いて標的細胞の生体内用量を最適化することができる。例えば、腫瘍内注射の量及び割合を、コンピュータ制御ポンプ又はマイクロサーマルポンプのような制御可能ポンプを用いて制御し、腫瘍又は組織内の核酸又はベクターの割合及び分布を制御することができる。実施例4は、マウスの乳癌と脳腫瘍の両方の生体内治療で使用するAd/FasL−GFPTETの有効用量を例示する。当業者は、これらの数字を外挿して有効なヒト用量を決定する方法が簡単に分かる。
【0093】
生体外又は生体内使用のため、核酸、ベクター、又は組成物は、いずれの有効濃度でも投与することができる。有効濃度は、結果として形質転換表現型細胞の死滅、減少、阻害、又は防止となる当該量である。
本発明の発現ベクターは、組成物内で投与することができる。例えば、本組成物は、さらに他の薬物、調合剤、キャリヤー、アジュバント、希釈剤等を含むことができる。さらに、本組成物は、核酸又はベクターに加え、カチオン性リポソーム(例えば、DOTMA、DOPE、DC−コレステロール)若しくはアニオン性リポソームのようなリポソームのような脂質を含むことができる。リポソームは、さらに所望により、特定細胞を標的にしやすくするためにタンパク質を含むことができる。核酸若しくはベクター及びカチオン性リポソームを含む組成物の投与は、標的器官に求心性の血管に投与し、又は気道内に吸入させて、気道の細胞を標的にすることができる。リポソームについては、例えば、Brighamら,Am.J.Resp.Cell.Mol.Biol.1:95−100(1989);Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417(1987);米国特許第4,897,355号を参照せよ。さらに、核酸若しくはベクターは、マクロファージのような特異的な細胞型に標的されうるマイクロカプセルの成分として投与することができ、つまり該マイクロカプセルからの該化合物の拡散若しくは該化合物の送達が特定速度若しくは用量に設計されている。
【0094】
アポトーシス媒介レセプターを発現するいずれの細胞も、特に腫瘍細胞を、本発明の方法で治療することができる。例えば、Fasは、本来表面タンパク質であり、FasLを発現する細胞を用いて、アポトーシスのFas−FasL誘導により、Fas発現細胞を治療することができる。FasLを発現する細胞は、該細胞の表面上におけるFasとFasLとの相互作用によってFas発現細胞と相互作用することができ、ひいては、FasL発現細胞が連絡をとれるFas発現細胞を治療することができる。さらに、FasL産生細胞は、Fasと相互作用し、かつFas発現細胞のアポトーシスも誘導する可溶性FasLを産生することで、Fas発現細胞を調節することもできる。
【0095】
FasとFasLの相互作用は、典型的にはリガンド−レセプター結合であるが、この相互作用は、それ自体が結合していなくてもよいが、FasとFasLのいずれかの相互作用の結果として生じる何らかの細胞反応を包含する。この結果、当該同一細胞又はFasリガンドを発現する二次細胞よるFasLの発現の結果生じるFasによるいずれの細胞アポトーシスも考えられる。
Fasを発現するいずれも細胞も本発明の方法を用いてアポトーシスを受けさせることができるが、好ましい実施形態は、本方法を用いてFas腫瘍細胞にアポトーシスを受けさせることである。この実施形態では、選択的にこれら腫瘍細胞にアポトーシスを受けさせ、そして死亡させることによって腫瘍を治療することができる。
【0096】
別の好ましい実施形態では、腫瘍は固形腫瘍であり、腫瘍の細胞を感染させ、それによってFasLを発現させることができる組換えウイルスを腫瘍に注射し、そして、FasL発現細胞とFas発現細胞との相互作用によって、Fas細胞にアポトーシスを受けさせる。
通常アポトーシス信号発信を達成するには細胞間の連絡が必要なので、FasL発現細胞の作用を受けるFas発現細胞は、通常FasL発現細胞に隣接した細胞である。しかし、FasL発現細胞が周囲から分離されている場合及び/又はFasL発現細胞が可溶性FasLを産生する場合のように、作用を受けたFas細胞をFasL発現細胞の中間の周囲物から取り除くことができる。
FasL発現細胞は、当該細胞がFas細胞でもある場合、自殺を引き起こすこともある。このアプローチでは、本発明の方法は、Fas細胞を死亡させるが、現在FasLを発現している腫瘍細胞も死に、それによって、そうでなければ腫瘍の復帰を引き起こしたであろう当該腫瘍細胞を除去する。
【0097】
8.併用療法
本発明は、アポトーシス信号発信リガンドの発現と抗癌剤の投与を組み合わせた併用療法を利用する方法をも提供する。抗癌薬を共投与することで、特にFasL又はTRAIL媒介アポトーシスに耐性な癌細胞内で癌細胞のアポトーシスを増強し、或いは感作できると考えられる。
癌治療の主な障害は、腫瘍細胞の薬物に対する耐性の発生及びアポトーシスに対するFasL又はTRAIL感受性を呪縛しうる抗アポトーシス機構の発生である。TRAIL(又はFas)耐性腫瘍細胞に、毒性水準下濃度の化学療法薬及びTRAIL(又はFas)を投与することが望ましく、その結果最大の腫瘍抑制と、高用量の化学療法薬の投与に伴う副作用の最小化となるだろう。
【0098】
本発明の併用療法は、複数機構の作用によってFas又はTRAIL媒介アポトーシスに対する腫瘍耐性を克服することができる。化学療法薬又はサイトカインのような抗癌薬は、Fas又はTRAIL媒介アポトーシスを、1)抗アポトーシス分子の抑制、及び/又は2)プロアポトーシス分子の上方制御によって感作することができる。例えば、Bcl−x及びBcl−2、すなわちミトコンドリアアポトーシス経路の主要インヒビターを抗癌薬によって制御することができる。植物由来の抗癌薬パクリタキセルは、Bcl−2のリン酸化を誘導することにより、低レベルでBcl−2の活性を減じることができる。
【0099】
さらに、薬物及びサイトカインは、プロアポトーシス分子の発現を上方制御して、TRAIL媒介アポトーシスの誘導に必要な信号発信許容限界を低くすることができる。例えば、死誘導TRAILレセプターの1種であるDR5の発現は、遺伝毒性薬物及びTNF−αによって誘導することができる。DR5の誘導は、p53−依存及び非依存機構の両方で制御されるようである。Sheikhら(1998)“死レセプターKILLER/DR5遺伝子発現の遺伝毒性ストレス及び腫瘍壊死因子αに応じたp53−依存性及び非依存性制御”Cancer Res.58:1593−1598。さらに、caspases(caspases−1,−2,−6,−8,及び−9)のmRNAは、γ−インターフェロンによって上方制御することができる。これらcaspasesの上方制御は、本発明のアポトーシス信号発信リガンドの発現で誘導されるアポトーシスに対する感受性を増強するだろう。
【0100】
種々多様な抗癌剤を本発明の発現ベクターと共に投与することができる。抗癌剤の例としては、限定するものではないが、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、ホルモン剤及び植物誘導物質及び生体物質が挙げられる。
アルキル化剤の例としては、限定するものではないが、ビスクロロエチラミン(窒素マスタード、例えばクロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えばチオテパ)、アルキルアルカンスルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン(altretamine)、ダカルバジン、及びプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチン及びシスプラチン)が挙げられる。
【0101】
抗生物質の例としては、限定するものではないが、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンが挙げられる。
代謝拮抗薬の例としては、限定するものではないが、フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(floxuridine)(5−FUdR)、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、フルダラビンホスフェート、クラドリビン(cladribine)(2−CDA)、アスパラギナーゼ、及びゲムシタビン(gemcitabine)が挙げられる。
【0102】
このようなホルモン剤の例は、合成エストロゲン(例えばジエチルスチベストロール)、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール及びラロキシフェン(raloxifene))、抗アンドロゲン(ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼインヒビター(例えばアミノグルテチミド、アナストロゾール及びテトラゾール)、ケトコナゾール、ゴセレリンアセテート、ロイプロリド、メゲストロールアセテート及びミフェプリストンである。
植物誘導物質の例としては、限定するものではないが、ビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン及びビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えばエトポシド(VP−16)及びテニポシド(VM−26))、カンプトセシン及びその誘導体(例えば9−ニトロ−カンプトセシン及び9−アミノ−カンプトセシン)、及びタキサン(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)が挙げられる。
【0103】
生体物質の例としては、限定するものではないが、サイトカイン、腫瘍抗原に対抗するモノクロナール抗体、腫瘍抑制遺伝子、及び癌ワクチンのような免疫調節タンパク質が挙げられる。本発明の組成物と併用可能なインターロイキンの例としては、限定するものではないが、インターロイキン2(IL−2)、及びインターロイキン4(IL−4)、インターロイキン12(IL−12)が挙げられる。CPTと併用可能なインターフェロンの例としては、限定するものではないが、インターフェロンα、インターフェロンβ(線維芽細胞インターフェロン)及びインターフェロンγ(線維芽細胞インターフェロン)が挙げられる。このようなサイトカインの例としては、限定するものではないが、エリスロポイエチン(エポイチンα)、顆粒球−CSF(フィルグラスチム)、及び顆粒球、マクロファージ−CSF(サルグラモスチム)が挙げられる。サイトカイン以外の他の免疫調節剤としては、限定するものではないが、バシラスCalmette−Guerin、レバミゾール、及びオクトレオチドが挙げられる。
【0104】
CPTと併用可能な腫瘍抗原に対抗するモノクロナール抗体の例としては、限定するものではないが、HERCEPTIN(登録商標)(Trastruzumab)及びRITUXAN(登録商標)(Rituximab)が挙げられる。
腫瘍抑制遺伝子の例としては、限定するものではないが、DPC−4、NF−1、NF−2、RB、p53、WT1、BRCA1及びBRCA2が挙げられる。
癌ワクチンの例としては、限定するものではないが、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(大腸癌及び他の腺癌、例えば乳癌、肺癌、胃癌、及び膵臓癌によって産生される)、メラノーマ関連抗原(MART−1、gp100、MAGE1,3チロシナーゼ)、パピローマウイルスE6及びE7断片、自己(antologous)腫瘍細胞及び同種異系腫瘍細胞の全細胞又は一部/ライセートが挙げられる。
【0105】
アジュバントを用いて、TAAsに対する免疫応答を増強することができる。アジュバントの例としては、限定するものではないが、バシラスCalmette−Gurin(BCG)。エンドトキシンリポ多糖類、鍵穴笠貝ヘモシアニン(GKLH)、インターロイキン−2(IL−2)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)及びシトキサン(cytoxan)、低用量で与えた場合腫瘍誘導抑制を低減すると考えられている化学療法薬が挙げられる。
【0106】
一実施形態では、アクチノマイシンD、すなわちRNA合成を阻害しかつBcl−xの発現を減少させる薬物を用いて、癌細胞、例えば、AIDSに関連するカポジ肉腫(KS)内におけるTRAIL媒介アポトーシスを感作することができる。KSは、HIV感染によって人々に生じる最も一般的な悪性腫瘍である(AIDS−KS)。15年間多くの様相が使用されてきたが、KSからの治癒又は長期の完全な寛解は、現在利用できる療法様相では見込みない。Lee及びMitsuyasu(1996)“AIDS関連カポジ肉腫の化学療法”Hematol.Oncol.Clin.North Am.10:1051−1068。AIDS−KS病変で高レベルのBcl−x及びBcl−xが検出され、それらはKS細胞の化学療法薬及びNK細胞による殺害に対する耐性に寄与しうる。従って、KS患者に、TRAILをコードする発現ベクターと、1種又は2種以上の遺伝毒性薬を共投与すると、遺伝毒性薬によるBcl−x及びBcl−xレベルの抑制を通じ、相乗的にTRAIL媒介アポトーシスに対して癌細胞を感作することで、耐性を克服するだろう。
【0107】
別の実施形態では、TRAILを発現させる発現ベクターとドキソルビシンを併用して、前立腺癌の患者を治療することができる。前立腺癌は、米国男性で最も流行している癌であり、一般的に進行性前立腺癌患者の生存率は低い。Landisら“癌統計”CA Cancer J.Clin.49:8−31。外科手術、ホルモン療法、及び化学療法により大多数の前立腺癌を根絶できるが、進行性癌転移の再発が起こりうる。ホルモン不応性の前立腺細胞は、放射線療法及び化学療法にも非感受性なので、おそらくこれら細胞は、それらが進行してさらに悪性になりながら種々の刺激によって誘発されるすべてのアポトーシスプログラムに対する耐性を発現するだろう。しかし、遺伝毒性薬とTRAILをコードする発現ベクターとを共投与すると、アポトーシス阻害分子の抑制又はプロアポトーシス分子の上方制御を通じてTRAIL媒介アポトーシスに対して前立腺癌細胞を感作することでその耐性を克服するだろう。
【0108】
本発明の発現ベクターは、癌(又は他の病気)を治療するためにアポトーシス信号発信リガンドを発現させる場合、癌(又は他の治療すべき病気)に対抗する他の治療薬と併用することができ、他療法薬の投与の前、その時、又はその後に投与することができる。これら療法薬は、有効であると知られ或いは決定された用量で投与することができ、また本発明のベクターによって発現されるアポトーシス信号発信リガンドの存在のため、低減用量で投与してよい。
以下の実施例で本発明をさらに詳細に説明するが、実施例には多くの変更及び変形があることが当業者には明白なので、実施例は単なる例示を意図している。
【0109】
(実施例)
実施例1 Fasリガンド用発現ベクター
上述しかつ図1に示される方法の例では、マウスFasリガンドをコードする核酸を含有する組換えアデノウイルスを構築した。さらに、最終的に融合タンパク質が翻訳されるように、マウスFasリガンドをコードし、かつクラゲ緑色蛍光タンパク質(GFP)をもコードする核酸を含有する組換えアデノウイルスを構築した。この融合タンパク質を用い、該アデノウイルスベクターによる形質導入後の培養細胞内及び動物組織内における該タンパク質の発現及び局在化を監視した。
【0110】
3種の腫瘍細胞系を乳癌患者から単離したが、これらはすべて該アデノウイルスベクターによるFasリガンド処理に対して高度の感受性を示した。このことは、この方法を用いて腫瘍細胞を効率的に処理、つまり殺すことができることを示している。平行実験も、Fasリガンドをコードする核酸の前立腺癌細胞内へのアデノウイルス媒介導入によって、これら細胞が完全に死滅したので、重症の前立腺癌細胞系がFas媒介アポトーシスに対して極度に感受性であることを示した。
【0111】
実施例2:複合アデノウイルスベクターによるFasL−GFP融合タンパク質の制御送達
Fasリガンド(FasL)は、Fasレセプターを発現する細胞内でアポトーシスを誘導し、かつ免疫応答性、変性及びリンパ球増殖性疾患及び腫瘍形成性に重要な役割を演じる。それは免疫特権部位の産生にも関与し、それゆえに遺伝子療法の分野にとって興味深い。我々は、マウスFasLと緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合を発現させる複製−欠失アデノウイルスベクターの構築及び特徴づけについて述べる。FasL−GFPは野生型FasLの全活性を保持し、同時に生細胞と固定細胞の両者で容易に可視化及び定量化を可能にする。この融合タンパク質は、テトラサイクリン調節遺伝子発現系の制御下にある。厳密な制御は、新規なA二重組換えAdベクターを創製することで達成され、このベクターではtet−応答性要素とトランス活性化要素が同一ベクターの反対の末端に組み込まれ、エンハンサー干渉を回避している。発現は、テトラサイクリン又はその誘導体によって用量依存様式で好都合に調節することができる。このベクターは、試験管内で効率的にFasL−GFP遺伝子を送達することができ、融合タンパク質の発現レベルは、培養液内のドキシサイクリンの濃度で調節した。この調節により、CrmA発現細胞系内でFasL発現を阻害することにより、該ベクターの高タイターを実現することができた。アポトーシスの誘導は、試験したすべての細胞系で示された。これら結果は、本ベクターが、癌のFasLベース遺伝子療法及びFasL/Fas媒介アポトーシスと免疫特権の研究の潜在的に有益なツールであることを示している。
【0112】
(材料及び方法)
細胞:Hela及び293細胞は、米国代表菌株培養コレクションから得(それぞれ、ATCC CCL−2.1及びATCC CRL−1573)、10%子ウシ血清(BCS;HyClone)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Cellgro)で補充したダルベッコの変性イーグル培地(DMEM;Gibco BRL)内で37℃5%CO下単層として維持した。培養ラット筋芽細胞を20%胎児ウシ血清(FBS:HyClone)と各1%のペニシリン/ストレプトマイシン及びファンギゾンで補充したH−21(Cellgro)培地内で維持した。
【0113】
DNA形質移入では、6−ウェルプレート(Greiner)上にウェル毎に5×10個の細胞を接種し、24時間後、製造業者の指示に従ってLipofectAMINE(Gibco BRL)により形質移入した。
サイトカイン応答性修飾因子A(CrmA)発現293細胞系を生成するため、pCrmA−I−NeoをHEK293細胞に形質移入した。G418を0.4g/Lで4週間培地に添加することでNeo−ポジティブクローンを選択し、最後に個々のクローンを拾い上げ、増殖させ、FasL誘導アポトーシスに対する耐性によるCrmA発現について分析した。
【0114】
プラスミド及び組換えアデノウイルスベクターの構築:ベクターpEGFP−1及びpEGFP1−C1はClontechから得た。これらは、より明るい蛍光と“ヒト化”コドン用法を有する、野生型緑色蛍光タンパク質(wtGFP)遺伝子の赤色シフト変異体を含んでいた。(Zhang,G.,V.Gurtu及びS.R.Kain.1996“強化緑色蛍光タンパク質は、哺乳類細胞内の遺伝子伝達の高感度検出を可能にする”(Biochem Biophys Res Commun 227:707−11)。この実施例ではこのタンパク質を“GFP”という。Genbankで入手可能なマウスFasL cDNA配列は、Bluescript(Invitrogen)ベクター内だった。ベクターpUHD10−3及びpUHD15−1(Gossen,M.及びH.Bujard,“テトラサイクリン応答性プロモーターによる哺乳類細胞内の遺伝子発現の厳密な制御”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−51,1992は、Clontechから入手可能である。GFP−FasL融合遺伝子は、マウスFasリガンドのaa 11からaa 279のDNAコーティングをpEGFP−C1内のGFP配列のインフレーム下流に挿入して、pC.GFslを生成することによって構築した。pC.GFslからの融合遺伝子をpUHD10−3に挿入し、p10−3.GFslを生成した。pcDNA3ベクター内の牛痘ウイルス(Chordopoxvirinae)サイトカイン応答性修飾因子A(crmA;CPV−W2)cDNAは、Genetechから入手可能である。CrmA遺伝子をpcDNA3から切除し、pIRES−Neoベクター(Clontech)に挿入してpCrmA−I−Neoを生成した。
【0115】
GFP、FasL、FasL−GFP及びlacZ遺伝子をE1シャトルベクター、pLAd−CMVにクローン化し、それぞれpLAd−C.Gf、pLAd−C.Fsl、pLAd−C.Gfsl及びpLAd−C.Lz構成物を生成した(図1A)。Tet−OFF融合活性化タンパク質発現カセットをpUHD15−1から抽出し、pLAd−CMVieに挿入し、pLAd−C.tTAを生成した。GFP−FasL融合遺伝子発現カセットをp10−3.GFslから切除し、pRAd.mcs、すなわちAd5のE4と右ITRとの間の導入遺伝子挿入用シャトルベクターに挿入した。その結果生じた構成物をpRAd−T.GFslと命名した(図1B)。
【0116】
Ad/FasL−GFPTETベクターの構築は、図1Cに示される。この研究で使用した他のrAdゲノムは、同様の戦略を用いて構築した。すべてのベクターは、ORF6を除きすべてのE4 ORFsを欠失しているAd5sub360(ΔE3)に基づいている(Huang,M.M.及びP.Hearing.1989)。アデノウイルスの初期領域4読み枠6/7タンパク質が、直接複合体を通じて細胞転写因子、E2FのDNA結合活性を調節する。(Genes Dev 3:1699−710)。
【0117】
ウイルスベクターの増殖:Ad5E1a及びE1b機能をトランスに与える293細胞(Graham,F.L.,J.Smiley,W.C.Russell及びR.Nairn;“ヒトアデノウイルス5型由来のDNAで形質転換されたヒト細胞系の特徴”(J Gen Virol 36:59−74,1977)をLipofectAMINE法によってrAdベクターDNAを含有する連結混合物で形質移入した。形質移入された細胞をアデノウイルス関連細胞変性効果(CPE)が観察されるまで(通常7〜14日)維持し、観察された時点で細胞を収集した。そして、標準法でベクターの増殖及び増幅を行った。株を293又は293CrmA細胞について滴定し、プラークを記録し、PFU/mlとしてベクター収量を決定した。妥当な場合、GFP蛍光又はX−ガル染色によってもベクターを滴定した。両ケースで、タイター推定値はPFU/mlと良く一致した。
【0118】
ウエスタンブロット解析:10cmプレート(Greiner)に10個の初生ラット筋芽細胞を接種した。24時間後、プレートをAd/FasL−GFPTET又は対照ベクターにより、2の感染多重度(MOI)で感染させた。感染後24時間でプレートをPBSで2回洗浄した。細胞を集め、50mMトリス−HCl(pH7.8)、1mM EDTA、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、1mM PMSF(Sigma)、50μg/mlロイペプチン(Sigma)、2μg/mlアプロチニン(Sigma)及び1ng/mlペプスタチン(Sigma)を含有する200μlの細胞溶解緩衝液に溶解させた。試料を5分間煮沸し、8%SDS−PAGEミニゲル(BioRad)のレーン毎に初期量(10細胞)の1/10を装填し、20mAで3時間流した。ヒト組換えFasL(C末端)はSanta Cruz研究室から得た。このタンパク質を半乾燥ゲル伝達装置(BioRad)を用いてニトロセルロース膜(Pharmacia Biotech)に伝達した。10mMトリス−HCl(pH7.5)、140mM NaCl、3%(w/v)BSA、5%(w/v)粉乳、0.2%(v/v)Tween−20(Amresco,Solon,OH)及び0.02%(w/v)ナトリウムアジド(Sigma)を含有する溶液内でのインキュベーション(37℃で2時間)によって膜を遮断した。ポリクロナールウサギ抗−FasL抗体(Santa Cruz)を遮断溶液で1:100に希釈し、周囲温度で2時間、膜と共にインキュベートした。ブロットを10mMトリス−HCl(pH7.5)及び140mM NaCl溶液で2回洗浄してから、1:10000希釈したHRPO(Caltag,Burlingame,CA)と接合されたヤギ抗−ウサギIgGと共にインキュベートした。ブロットをECL試薬内(Amersham Life Science)で一晩中発育させ、Kodak X線フィルムで可視化した。
【0119】
アポトーシスの検出:培養付着細胞内でのアポトーシスの初期検出は、インサイツ細胞死検出キット,AP(Boehringer Mannheim)を利用して製造業者の指示に従って達成した。このキットは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端−標識化(TUNEL)プロセスを利用してフリー3’−OH DNA末端にフルオレッセインを取り込み、それをアルカリ性ホスファターゼに接合された抗−フルオレッセイン抗体で検出した。基質反応後、染色された細胞は、光学顕微鏡を用いて可視化できる。
【0120】
結果:
FasL及びFasL−GFPタンパク質の機能解析:Fasリガンド−GFP(FasL−GFP)融合タンパク質が全FasL活性を保持することを実証するため、Fas媒介アポトーシスに感受性の細胞内への一過性DNA形質移入を用いて、FasL及びFasL−GFPタンパク質の機能を解析かつ比較した。Hela細胞の三通りのウェルを、FasL、GFP−FasL又は対照としてのガラクトシダーゼを発現させるベクターで形質移入した。形質移入24時間後、細胞を固定し、TUNELキットを用いてアポトーシスについて解析した。典型的には、pcDNA3−LacZで形質移入された細胞のX−ガル染色によって決定されるように、10〜25%の形質移入効率が達成された。FasL又はFasL−GFPのどちらかを発現させるベクターで形質移入された多数のHela細胞が典型的なアポトーシス形態(膜小疱形成及び付着の喪失のような)を示し、かつTUNEL分析でポジティブ染色した。対照プラスミドで形質移入された細胞はほとんどアポトーシスを受けなかった。FasL−GFPベクターで形質移入されたウェル内のアポトーシス細胞の数は、FasLベクターで形質移入されたアポトーシス細胞の数と同様に再現性があり、野生型タンパク質と融合タンパク質が比較可能な活性を有することを示唆している。
【0121】
アデノウイルスベクターの構築及び特徴づけ:我々の目標は、FasL発現を調節できる大量のアデノウイルスベクターを生成することだった。この調節は、標的細胞内におけるFasL発現のレベルの制御を可能にし、ひいてはその生物学的効果の研究を促進させた。さらに、293細胞内で構成的にFasL又はFasL−GFPを発現させるrAdベクターの増幅は、FasL発現がウイルス産生細胞のアポトーシスを引き起こすので、低タイターを生じさせると予想される。Muruve,D.A.,A.G.Nicolson,R.C.Manfro,T.B.Strom,V.P.Sukhatme及びT.A.Libermann(1997)“Fasリガンドのアデノウイルス媒介発現は、全身投与後の肝臓アポトーシス及び生体外感染膵島同種異系移植片及び同系移植片のアポトーシスを誘導する”Hum Gene Ther 8:955−63。制御されたFasL−GFP発現を達成するため、FasL−GFPがTREプロモーターから発現されるAd/FasL−GFPTETベクターを設計した。Gossen,M.及びH.Bujard(1992)“テトラサイクリン応答性プロモーターによる哺乳類細胞内の遺伝子発現の厳密な制御”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−51。我々は、CMVieプロモーター作動型tTA遺伝子(“tet−off”要素)をAd5 E1領域及び右ITR近傍のTRE制御FasL−GFP融合遺伝子に挿入した。
【0122】
この戦略は、以下の考察に基づいている。第1に、この戦略は、以前に述べられていたように2つのAdベクターを用いるのではなく、単一のベクターによって全体的なtet調節発現系を送達する。Harding,T.C.,B.J.Geddes,D.Murphy,D.Knight及びJ.B.Uney(1998)“アデノウイルステトラサイクリン調節系による脳内のスイッチング導入遺伝子発現”注釈参照、Nat Biotechnol 16:553−5。単一ベクターの使用は、標的細胞へのより効率的な送達及びタンパク質発現のより均一な調節を可能にする。この戦略は、CMVieプロモーターとTREプロモーターとのエンハンサー要素間の最高の可能な分離をも達成し、FasL−GFPタンパク質のバックグラウンド(非調節)発現を最小化する(図1B及び1C)。Ad5ゲノムの右端にTREプロモーターを配置することで、Ad5パッケージング信号内に位置するE1Aエンハンサー要素について同様の結果を得た。Hearing,P.及びT.Shenk,1983。アデノウイルス5型のE1A転写制御領域は、重複したエンハンサー要素を含有する。Cell 33:695−703。これら要素は、E1領域にクローン化されているいくつかのプロモーターと相互作用すると報告されている。Shi,Q.,Y.Wang及びR.Worton(1997)“アデノウイルスベクター内における細胞性プロモーターの特異性及び活性の調節”Hum Gene Ther 8:403−10。
【0123】
本発明で使用する組換えアデノウイルスベクターのゲノムは、図1Cに概略的に図示されているように、試験管内大規模連結反応で構築した。これらゲノムをゲル精製し、293細胞に形質移入し、結果として生じた培養をウイルス誘導CPEが観察されるまで増殖させた。β−ガラクトシダーゼ又はGFPを発現させるベクターの場合、FasL又はFasL−GFPを発現させるベクターよりもかなり初期の時点でCPEが現れ、おそらくアデノウイルスベクター複製がFasL活性によって有害的に影響されたことを示しているだろう。確立した方法に従って初生ベクター株を増幅し、組換えアデノウイルスDNAを抽出し、制限酵素消化による構造的統合性について調べた。
293細胞内のAd/FasL及びAd/FasL−GFPTETのタイターは、Ad/LacZ又はAd/GFPのタイターより通常30〜100倍低い。AdベクターのタイターとFasL活性の比較は、これらベクターが293CrmA細胞内で産生される場合の該ベクターの収率の実質的な改善(8〜12倍)を示した(図2)。図2に示されるように、293又は293CrmA細胞内の対照ベクターAd/LacZの増幅は、基本的に同じ収率となった。引き続き、FasL活性による全ベクターの生成及び増幅を293CrmA細胞内で行った。
【0124】
アデノウイルス媒介FasL発現によるアポトーシスの誘導:当該アデノウイルス媒介FasL発現を機能的に説明するため、Hela細胞に異なったMOIでAd/FasL−GFPTETを形質導入した。形質導入後24時間で、アポトーシスについて細胞を解析した。Ad/FasL−GFPTETで感染された細胞は、典型的なアポトーシス形態を示した。アポトーシス細胞の数はベクタータイターの増加と共に上昇した。対照的に、同一MOIで対照ベクターAd/LacZにより形質導入したプレートは過剰の未形質導入対照内でアポトーシス細胞を生成しなかった。形質導入の全体的な効率は、X−ガル染色によって決定し、MOIの増加によるβ−ガラクトシダーゼポジティブ細胞数の増加を示した。アポトーシス細胞の数が、検出可能なGFPフルオレッセイン、又は同時に形質導入されたX−ガル染色細胞の数よりも顕著に多いことを観察した。従って、該ベクターで感染されないが、感染された細胞に隣接する細胞のアポトーシスは、感染細胞の表面上のFasLと隣接細胞上のFasレセプターとの相互作用によって引き起こされる。
【0125】
FasL−GFP融合タンパク質の検出及び細胞局在化:野生型FasLはII型膜タンパク質である。FasL−GFP融合タンパク質も細胞膜に標的にされることを実証するため、FITCフィルターセットを備えた蛍光顕微鏡を用いて生細胞内で検出できる、そのGFP成分の蛍光を利用した。この方法を用い、rAdベクターから発現されるときにFasL−GFP融合タンパク質の発現及び細胞局在化を観察した。Hela細胞内では、FasL−GFPの発現がGFPの検知許容限界に近いタンパク質レベルでアポトーシスを引き起こす。その結果、FasL−GFPの発現を初生ラット筋芽細胞内で解析し、FasL誘導アポトーシスに対してかなり耐性であることが分かった。高レベルのFasL−GFP発現は、10のMOIでAd/FasL−GFPTETを感染後24時間の筋芽細胞内で検出することができる。FasL−GFPの膜関連発現は、大多数の形質導入細胞内で明かである。対照的に、GFP自体の蛍光パターンは、細胞の細胞質内に一様に分布し、しばしば核から排除される。この局在化の相異は、高倍率の形質導入293CrmA細胞内でも明白である。これら結果は、FasL−GFP融合タンパク質が細胞表面に方向づけられ、そこで野生型FasLの様式と類似の様式でFasレセプターと相互作用できることを示している。
【0126】
rAdベクター由来のFasL−GFP発現の調節:本ベクターが標的細胞内でrAdベクターによって生成されるFasL活性の量を調節する能力を有することを示すため、タンパク質の合成と機能の両レベルについて、誘導又は非誘導下のFasL発現のレベルを実証するための実験を行った。Ad/FasL−GFPTETベクターでは、FasL−GFP融合タンパク質の発現は、tetR−VP16融合タンパク質(構成的に同一ベクターから発現される;図1C参照)の最小CMVieプロモーターのtet−オペレーター上流の七量体への結合によって活性化されるように設計される。Gossenn,M.及びH.Bujard(1992) “テトラサイクリン応答性プロモーターによる哺乳類細胞内の遺伝子発現の厳密な制御”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5547−51。細胞内のドキシサイクリンの存在が、濃度依存様式でこの結合ひいてはFasL−GFPの発現を阻害するだろう。
【0127】
まず、ウエスタンブロット解析を用いて形質導入細胞内で産生されるFasL−GFPの量を決定した。初生ラット筋芽細胞をAd/FasL−GFPTETにより2のMOIで感染させ、この細胞をドキシサイクリン、すなわちテトラサイクリン誘導体の非存在下又は存在下で培養した。低いMOIを選択して、該ベクターの単一コピーで形質導入される細胞数を最大にした。48時間後、細胞を溶解させ、そのライセートを、FasLの細胞外ドメインに対抗するポリクロナール抗体を用いてウエスタンブロット法で解析した。wtFasLの予想サイズより大きい単一の特異バンドが検出された。このバンドの強度は、ドキシサイクリンの濃度増加により低減し、0.5mg/L以上の濃度のドキシサイクリン存在下で培養した細胞ライセートではバンドを検出できなかった。対照ベクターで形質導入した細胞ではFasL−特異性バンドは観察されなかった。分解又は切断産物に対応するより小さいバンドは、細胞ライセート内でも培養液上清内でも検出されなかった。これらの結果は、Ad/FasL−GFPTETベクターから細胞内で産生されたGFP−FasLタンパク質は、培養液内のドキシサイクリンの濃度によって調節することができ、かつこのタンパク質は安定で、細胞表面上で一度も明白な切断を受けないことを示している。
【0128】
我々は、FasL活性、すなわちFasポジティブ標的細胞内でのアポトーシスの誘導の調節をも解析した。Hela細胞のウェルをAd/FasL−GFPTETにより2のMOIで形質導入し、種々の濃度のドキシサイクリン存在下で培養した。形質導入後24時間で、アポトーシス表現型について細胞を解析した。結果は、Ad/FasL−GFPTETで形質導入した細胞内におけるアポトーシスの誘導は、ドキシサイクリンによって調節できることを確証している。
【0129】
我々が選択する調節タンパク質発現系では、ドキシサイクリンの存在が用量依存様式でtTAのTREへの結合を阻害し、かつFasL−GFP転写を止める。我々は、E1領域に構成的に発現される活性化因子を挿入し、かつFasL−GFP発現カセットをAd5のE4プロモーターと右ITRとの間の新規なクローニング部位に挿入することを選んだ。これは、この配置が、アデノウイルスのパッケージング領域内に存在するE1Aエンハンサー及びTRE上のtTAプロモーター内のCMVieエンハンサーの効果を最小にし、それゆえにインヒビターの存在下で該融合タンパク質のバックグラウンド発現を減少させるからである。この系は、アデノウイルスベクターの関係で見事に遂行し、FasL−GFPの発現は、細胞培養液内のドキシサイクリン濃度を変えることで効率的に調節することができる。
【0130】
実験中に、293細胞がFasL誘導アポトーシスに感受性であることを観察した。この効果が作用して、FasLを発現させるrAdベクターのタイターを有意に制限する。このことは、調節し、或いは組織特異的プロモーターを使用してFasLタンパク質を発現させる場合でさえ、293細胞内におけるベクター複製中の高レベルのタンパク質発現は避けられないので真実である。この問題を克服するため、構成的にCrmAを発現する293細胞系を生成した。このタンパク質は特異的に作用して、Fasアポトーシス経路に欠くことができない調節性caspasesの活性を阻害する。この細胞内でFasL含有ベクターを生成することでベクタータイターを有意に改善した。
【0131】
要するに、我々はテトラサイクリン調節遺伝子発現系の制御下で新規なFasL−GFP融合タンパク質を発現させるrAdベクターを開発かつ試験した。このベクターは、タンパク質発現を好都合に調節しながら、多種の分裂及び非分裂細胞へ高いタイターと効率で導入遺伝子送達すること、及び生細胞と固定細胞の両方で該融合タンパク質を容易に検出することを併せ持つ。このベクターは、免疫学、移植術及び癌療法による病気の治療用の有益なツールである。
【0132】
実施例3:Fasリガンド融合遺伝子のアデノウイルス送達による傍観者遺伝子療法
この実施例は、前立腺癌にパラ分泌/自己分泌機構を通じてアポトーシス(プログラム細胞死)を受けさせるFasリガンド融合遺伝子アプローチを利用する1種の傍観者遺伝子療法について述べる。この研究は、前立腺癌(PCa)の治療の新規かつ強力な療法を提供する。さらに、転移性病気の治療用ウイルスの非経口送達を可能にする組織特異的プロモーターを用いて、前立腺又は他のいずれの組織に対する特異性も達成することができる。
【0133】
我々の療法アプローチは、E1A、E3及びE4について欠失された第2世代アデノウイルスで、Fasリガンド(CD95L−融合遺伝子)を送達かつ発現させることである。CD95L発現は、Tetオペレーターによって制御され、試験管内及び生体内ドキシサイクリン調節を可能にする。この提案で使用するCD95Lは、そのN末端で10個のアミノ酸が切断され、かつ強化GFPのC末端への4−アミノ酸リンカーで枠内に融合されているマウスCD95L cDNAである。
表1は、5種のPCa細胞系を用いたデータを示し、一般的にPCa細胞系はCH−11アゴニスト活性に対して耐性であることを示す文献報告を確証する(Hedlundら The Prostate 36:92−101,1998;及びRokhlinらCan.Res.57:1758−1768,1997)。対照的に、我々は、現在までに試験した全5種のPCa細胞系におけるAdGFP−FasL及びC2−セラミドの感受性を実証する。
【0134】
細胞毒性の割合はMTS分析によって決定した。要するに、細胞を1mlの培養液を有する12−ウェルプレート内に接種した。処理前に、細胞を75%集密に成長させ、500ng/mlのCH−11抗−Fas抗体、500ng/mlの正常マウス血清又は30μMのC2−セラミドのどれかで処理した。アデノウイルス形質導入のため、約1×10個の細胞/ウェルをAd/CMVGFP又はAd/GFP−FasLTETによって10〜1000のMOIで処理した。各細胞系で、ポジティブ対照は未処理のままにし、1mlの培地をネガティブ対照として用いた。細胞を最大の細胞死滅のため37℃で48時間インキュベートした。培養液を吸引し、1ウェル当たり0.5mlの新鮮な培養液+100μlのCell Titer 967 Aqueous One Solution Reagenttと交換した。細胞をさらに1〜3時間37℃でインキュベートした。インキュベーション後、120μlの培養液を96−ウェルプレート内に入れ、Vmaxキネティックマイクロプレートリーダーを用いて490nmにおける吸収示度を得た。細胞毒性の割合は以下のように計算した:%細胞毒性=[1−(実験ウェルのOD/ポジティブ対照ウェルのOD)]×100。セラミド分析のため、1×10個の細胞/ウェルを96−ウェルプレート内に接種した。翌朝細胞を洗浄し、血清のないRPMI1640内で100μlの30μMジヒドロ−又はC2−セラミド(10mMの原料からメタノールに希釈した)と共にインキュベートした。24時間後、20μlのCelltiter 967 Aqueous One Solution Reagentを各ウェルに添加し、プレートをさらに1〜4時間インキュベートした。上述したように吸収度及び%細胞毒性を決定した。各実験で、データ点は3通り行った。
【0135】
結果:
明らかに、表1で解析した5種のPCa細胞系は大部分CH−11に対して非感受性である。C2−セラミドに対する感受性は、30μM用量で比較的均一であり、該アポトーシス経路が無傷であることを示唆している。最も重要なことは、すべての細胞系がAdGFP−FasL投与に応答性であり、DU145は最低の感受性であることである。
【0136】
これら実験でいくつかの重要な点が達成さてる。まず、我々はFACS解析により、使用したすべての系で、CD95(Fasレセプター)がすべての候補PCa細胞系について発現されたことを示す。第2に、我々は、Fasレセプター遮断抗体(ZB4)がAdGFP−FasLによるアポトーシスの誘導を阻止しないことを示す。我々は、この実験を数回種々の用量のZB4で行い、その結果常に該ウイルスは該抗体の存在下又は非存在下で同程度のアポトーシスを誘導した。これは、新規に合成したCD95−CD95Lがおそらくゴルジ体内で(Bennettら Science 2842:290−293,1998)原形質膜に近づいて或いは細胞表面に到着してプレフォーム型かつ機能性アポトーシス信号発信複合体として相互作用しうることを示唆している。第3に我々の結果はPCa内のアポトーシスの誘導を促進したアデノウイルスの固有特性がないことを示す。これは、対照ウイルス(AdCMVGFP)プラス500ng/mlのCH−11でPCaを感染させることによって実証した。結果は、CH−11でもやはりアポトーシスの誘導に失敗したことと示す。これら結果は、アポトーシスは、CD95Lの細胞内発現に向けられたウイルスが生じ、かつこれがウイルス依存性でない場合、CD95−CH−11耐性PCa細胞系内でのみアポトーシスが生じることを示している。
【0137】
情報の最後かつ最適な部分は、被験者に致死性を与えずにAdGFP−FasLTETを投与できるかどうかに関係する。このことは、2×10pfu程度の低用量のウイルスが非経口投与された場合マウスを殺すので、非常に重要である。この問題に焦点を当てるため、PPC1の異種移植片をBalbc nu/nuマウス内で発育させ、種々の用量のAdCMVGFP対照又はAdGFP−FasLウイルスで処理した。この単一用量研究から、腫瘍細胞成長が遅延され或いは停止されることが判った。さらに、ウイルスで処理した14匹の動物は、該ウイルスによって死亡しなかった。要するに、我々は、我々のAd5送達系内のGFP−FasL融合タンパク質がPCa治療に有望な強力な療法を有すると結論する。
【0138】
ドキシサイクリンによって上方制御されているAdGFP−FasLの変形の発生
本ウイルスは、PCaの正所に投与されるように設計される。ウイルスが腫瘍を逃れて体に入る場合、十分なウイルスが細網内皮系(ほとんど肝臓)に達するとそれは致命的だろう。ドキシサイクリン(dox)の投与によって、AdGFP−FasLからのCD95Lの発現を下方制御し、この危険を回避することができる。“非常に低い”基礎活性を示すドキシサイクリンによって誘導されるウイルスベクターは、実施例1で述べたTet調節性要素を用いて構築される。このベクターは、doxの非存在下でGFP−FasL発現に関して完全に抑制され、10ng/mlで誘導が開始され、100〜500ng/mlで最大誘導される。これは、ヒトで容易に達成できる用量である(典型的な投与量レベルで1〜3μg/ml)。副作用が観察された場合、dox投与を終了する。しかし、ドキシサイクリンは16時間という血清半減期を有しており、doxをFasリガンドの下方制御発現に加えることは、非経口投与で数分以内に有効量のドキシサイクリン用量を迅速に達成できるので、患者の副作用の治療に良いと考えられる。必要ならば、PEST信号を加えると分解を早めることができる(Clontechカタログ参照)。
【0139】
方法:
我々は、本Tetレセプター及びオペレーター系をrTSkidB/C及びrtTA系(Freundliebら,J.Gene Med.1:4−12,1999)と交換する。既に前立腺特異的プロモーター(PSA、PSADBam、PB及びARRPB2、Appendix)をウイルス(CMVieを交換)に挿入して、前立腺上皮細胞のみがrtTAを調節可能な組織特異性を達成できることを指摘した。すべてのウイルスは野生型アデノウイルスに対してネガティブであるとPCRで判断される3Xプラーク精製試料から標準的な方法で成長させる。すべてのウイルスは、構成的に牛痘ウイルスサイトカイン応答性修飾因子、crmAを発現するHEK293パッケージング細胞系内で1μg/mlのドキシサイクリンの存在下で成長させる。Rubinchikら。これは、パッケージング細胞系内におけるGFP−FasL誘導アポトーシスの阻止に必要である。ウイルスは、常にCsCl上の等密度遠心法で精製し、クロマトグラフィーで脱塩し、ろ過で濃縮して−80℃で小アリコートのPBS 10%グリセロール内で凍結保存した。ウイルスは一度だけ解凍し、麻酔下、上述したように15μl/分で注入によって、又はツベルクリンシリンジで尾静脈を介して動物に投与される。腫瘍及び動物組織を凍結切片用に収集し、妥当な場合は、固定かつ包埋し、かつH&Eにより、アポトーシスについてTUNEL分析により解析し、適切な場合は、免疫染色によって好中球浸潤及びGFP発現を決定する。
【0140】
Balbc nu/nuマウスにおける前立腺癌異種移植片上の最初のAdGFP−FasLTetd(dox下方制御された)の試験。この実験は、毒性及び効率パラメーターの両方を立証するために行う。具体的には、75〜100mmの腫瘍内に用量を1×10〜5×1010pfuに増やしてAdGFP−FasLTetdを注入して以下のことを決定する:A)1回用量及び4日ごとに投与して3回用量で正所投与後75%以上腫瘍体積を減少させるのに必要な最低成功用量。腫瘍は、CD95L感受性PPC1、中間的な感受性のLnCAP C2−4、及びより耐性のDu145細胞系から発生される。投与の他のパラメーターは、常に腫瘍寛解である終末点を有する結果に基づいて発生する。B)正所性投与後の最高耐性ウイルス用量(5×1010pfuまで)。C)腫瘍が後に(6〜12カ月)同一又は別の部位(C4−2)に再発するかどうかの決定。D)50%のマウスが生存する静脈内(尾静脈)投与される最高用量。E)Dのデータを用いて、ドキシサイクリン投与の動物生存に及ぼす影響及びドキシサイクリン保護の持続時間(Balbc nu/nuマウスはCTL応答性を持たないので、アデノウイルスは長時間生存しうる)。片側t−検定を用いる統計解析を利用する。F)FACS解析を用いて経時的に1μg/ml doxの存在下GFP(GFP−FasL融合として)を監視することによるK562細胞(CD95L耐性、表1参照)内でのGFP−FasLの半減期の決定。
上記B1と同セットの実験を上述したように構築したTet誘導性ウイルスについて行う。
【0141】
正常な実験室ビーグルに投与したAdGFP−FasLTetu(上方制御されている)及びAdGFP−FasLTetd(下方制御されている)の毒性試験。PCaでは多数の動物モデルがあるが、イヌモデル以外に病理学及び解剖学でヒト病気を良く表すモデルはない。最近、ヒトAdRSVbgal(血清型5)アデノウイルスが前立腺癌細胞を含むイヌ上皮細胞を試験管内及び生体内の両方で感染することが示された。Andrawissら Prosratic Can.Prostatic Dis.2:25−35,1999。免疫無防備状態マウス(Balbc nu/nu)に対してイヌ(免疫適格性)内での本発明のAd/GFP−FasTETの比較は、この遺伝子療法アプローチのヒトI相治験をさらに援助する。
【0142】
次のセクションでは、Ad/GFP−FasLTETのホルモン前立腺への正所送達が、側枝損傷が最小又は無く安全であるかを調べるために性的に成熟な正常イヌについて実験を行う。
精製濃縮アデノウイルス(上方及び下方の両制御されたAdGFP−FasLTET及びリポーターウイルスAd/CMV−LacZすべて血清型5)を腹部外科的アプローチによってイヌ前立腺の一葉に注入する。このアプローチは、前立腺の直接可視化がこの最初の一連の実験でウイルスをより正確に導入できると考えられるので、経直腸的導入にとって好ましい。第2に、イヌ前立腺の高い血管性特質のため、直接可視化は、針跡を局所的な組織粘着及び指圧で封止して注入部位からのウイルス漏れを防止することを可能にする。これら結果に基づき、3D超音波誘導経直腸導入を用い、本提案ヒトアプローチの1つを模倣する。
【0143】
一定の400ulの容積で5×10、1×1010、及び5×1010のウイルス用量を用い:2匹のイヌの1セットはAd/CMV−LacZを5×1010pfuで受け、ウイルス伝播の組織化学的監視を可能にする。最初の72時間、苦痛の如何なる徴候についてもイヌを精密に監視する。糞便を集め、PCRでウイルス発散について解析する。尿もfoleyカテーテルで集め、発散ウイルスに対してかつPCRによって293細胞について分析する。7日目に(ウイルス用量ごとに2匹のイヌ)ナトリウムペントバルビタールで安楽死させ、上述したように処理する。(Andrawissら,Prostatic Can.Prostatic Dis.2:25−35,1999)。全組織の試料をOCT内で凍結させ、残りを固定かつ組織学のために処理するか(tunel、免疫組織化学)、又はDNA抽出及びウイルス特異的プライマーを用いるPCR用に−80℃で凍結保存する。Ad/CMV−LacZ群のLacZの発現を調べ、全身性ウイルス伝播を監視する。
【0144】
実施例4:Ad/GFP−FasLTETの腫瘍内導入は、マウスの乳癌及び脳腫瘍成長を抑制する。
この実験では、10個のMCF−7細胞をBalbc nu/nuマウスの左右対称に移植した(図6)。腫瘍サイズが直径5mmに達したとき、Harvard注入ポンプを用いて10分にわたって1分当たり15μlで2×10pfu Ad/GFP−FasLTETをマウスの右側の腫瘍に、又は2×10pfu AdLacZを左側に注入した。注入後3週間で、Ad/FasL−GFPTETを注入した全腫瘍が、対照処理腫瘍に比し、腫瘍の約80〜100%の退化を示した。特に、処理した6匹のマウスのうち4匹で、1回の注射後ほとんどの腫瘍集団が消失した(黄色矢印で示される)。6匹のマウスの他の2匹では、同一マウスの対照側の腫瘍と比べて80%より多く腫瘍成長小塊を抑制した。対照的に、Ad/LacZを注入したすべての腫瘍は、移植後3週間で直径約2cmに成長した。数匹のマウスの残留腫瘍の組織学的解析は、浸潤性免疫細胞及び見掛け上癌細胞が残存していない線維芽細胞のみ示した。このことは、FasL誘導アポトーシスを乳癌の新規な治療として使用できることを実証している。
【0145】
同様に、10個のSF767細胞をBalbc nu/nuマウスに左右対称に移植した。腫瘍サイズが直径5mmに達したとき、Harvard注入ポンプを用いて10分にわたって1分当たり15μlで2×10pfu Ad/GFP−FasLTETをマウスの右側の腫瘍に、又は2×10pfu AdLacZを左側に注入した。腫瘍の抑制は、未処理腫瘍に比べ処理腫瘍内で約80〜100%だった。対照的に、Ad/LacZを注入したすべての腫瘍は、移植後3週間で直径約2cmに成長した。このことは、FasL誘導アポトーシスを脳癌の新規な治療として使用できることを示している。
【0146】
実施例5:試験管内でのFasL−及びTRAIL−誘導アポトーシスに対する癌細胞の感受性の比較
この実験では、種々の癌細胞系(前立腺、頸部及び肝臓癌由来)のFasL−及びTRAIL−誘導アポトーシスに対する感受性を試験管内で比較した。
TRAIL用発現ベクター、Ad.TRAIL/GFPTETを用いてこれら癌細胞内でTRAILを発現させた。Ad.TRAIL/GFPTETの構成は図3に示されている。Ad/FasL−GFPTETと同様、このベクターはE1領域内のCMVプロモーターで作動されるトランス活性化因子と、E4領域内のTREプロモーターの制御下のTRAIL−IRES−GFP発現カセットとを含有するので、培養液へのドキシサイクリンの添加で、TRAILとGFPの両発現を調節することができる。脳心筋炎ウイルスの内部リボゾーム侵入部位(IRES)は、同一mRNA転写物由来の2個の遺伝子の発現を可能にする。GFPはアポトーシスタンパク質TRAILに融合されないが、その発現はTRAILの発現に相関する。TRAILはGFP及びIRES配列の前にあるので、その発現レベルは、GFPの数倍になるはずである。Liuら(2000)“所定レベルで複数遺伝子を安定的に発現する哺乳類細胞の生成”Anal.Biochem.280:20−28。このことは、GFP発現をUV顕微鏡で観察できる細胞内における高レベルのTRAIL発現を保証する。
【0147】
TRAIL発現が癌細胞のアポトーシスを誘導できるかどうかを決定するため、TRAILを4種の癌細胞系:LNCaP(前立腺)、Hela(頸部)、A549(肺)、及びC3A(肝臓)に形質導入した。これら細胞をAd/FasL−GFPTETにより、10の同一MOIで感染させた。これらすべての細胞は、TRAIL誘導アポトーシスに対して異なるレベルの感度で感受性を示し、感受性は癌細胞のFasLに対する感受性より低かった。この観察を確認するため、FasL−GFPとTRAILのアポトーシスを誘導する効率を平行実験で比較した。癌細胞をAd/GFP、Ad/FasL−GFPTET及びAd.TRAIL/GFPTETによって類似のMOIで感染させた。FasL感受性の研究と同様に(前述した)、これら細胞の感度をGFP発現細胞の数によって解析し、FasL及びTRAIL誘導アポトーシスに対する感度は、この最初の実験の細胞形態学に基づいて決定した。図4にパネル“TRAIL”示されるように、細胞は異なるレベルのアポトーシスを示した。試験した全細胞で、Ad.TRAIL/GFPTET感染ウェル内でAd/FasL−GFPTET(“FasL”と標識されるパネル)で感染された細胞よりも少ない細胞がアポトーシスを受けており、LNCaP、Hela、A549及びC3A細胞がTRAIL誘導アポトーシスよりFasLに対して感受性であることを示唆している。
【0148】
実施例6.アデノウイルス媒介TRAIL発現は癌細胞内でアポトーシスを誘導するが、正常線維芽細胞内では誘導しない。
TRAIL腫瘍療法の主な利点の1つは、TRAIL発現は、正常細胞に対する毒性がFasLの毒性よりずっと低いにもかかわらず、腫瘍細胞内でアポトーシスを誘導すると想定されることである。この“腫瘍特異性”を試験するため、正常なヒト線維芽細胞をAd.TRAIL/GFPTETにより約10のMOIで形質導入した。包皮試料から初生初期継代ヒト線維芽細胞を得、そのAd/FasL−GFPTET及びAd.TRAIL/GFPTETベクターによって誘導されるアポトーシスに対する感受性について試験した。初生ヒト線維芽細胞はFasL−GFP誘導アポトーシスに対してかなり感受性なので、低形質導入効率でさえ、その大部分が標準的なアポトーシス形態を示した(図5、パネルFasL)。対照的に、TRAILを発現させるアデノウイルスベクターで形質導入した初生線維芽細胞は、FasL−GFPの送達に用いたMOIより5倍高いMOIでさえ、基本的に影響を受けなかった(図5,パネルTRAILX5)。従って、TRAILは、本アデノウイルスベクター由来の高い発現レベルでさえ、正常細胞内で有意なアポトーシスを誘導しないという知見を確証する。この結果は、TRAILのベクター媒介腫瘍内送達はFasLよりずっと安全であることを示唆している。
【0149】
本発明を、その特定実施形態の特有な詳細に関連して述べたが、このような詳細は、特許請求の範囲に包含される範囲通りかつその範囲まで以外に、本発明の範囲に関する制限とみなすことを意図いたものではない。
この出願全体を通じ、種々の出版物が参照されている。この発明が関係する技術の状態をより完全に述べるため、これら出版物の開示はその全体が参照によってこの出願に取り込まれる。
【0150】
表1:抗−Fas抗体、C2−セラミド(22時間)又はAd/GFP−FasLTETのどれかで48時間処理した前立腺癌細胞系内のFas媒介細胞毒性(%細胞毒性として表現される−SD)
【表1】
Figure 2004526666
MOI 10、MOI 1000。全実験で、N=3(TSU及びPC−3を用いるセラミド実験のN=2以外)。細胞毒性のパーセントはMTS分析を用いて決定した。要するに、細胞を1mlの培養液を有する12−ウェルプレート内に接種した。処理前に細胞を75%集密まで成長させ、500mg/ml CH−11 抗−Fas抗体、500ng/mlの正常マウス血清又は30μM C2−セラミドで処理した。アデノウイルス形質導入のため、約1×10個の細胞/ウェルをAdCMVGFP又はAdGFPFasLTETにより10〜1000のMOIで処理した。各細胞系で、ポジティブ対照を未処理のまま残し、1mlの培養液をネガティブ対照として使用した。最大の細胞死滅のため、細胞を18時間37℃でインキュベートした。培養液を吸引し、ウェル当たり0.5mlの新鮮な培養液+100μlのCellTiter 96 AQueous One Solution Reagentと交換した。インキュベーション後120μlの培養液を96ウェルプレートに入れ、Vmaxキネティックマイクロプレートリーダーを用いて490nmにおける吸収示度を得た。細胞毒性の割合は以下のように計算した:%細胞毒性=[1−(実験ウェルのOD/ポジティブ対照ウェルのOD)]×100。セラミド分析のため、1×10個の細胞/ウェルを96−ウェルプレートに接種した。翌朝細胞を洗浄し、血清のないRPMI 1640内で100μlの30μMジヒドロ−又はC2−セラミド(10mMの原料からメタノールに希釈した)と共にインキュベートした。24時間後、20μlのCelltiter 96 AQueous One Solution Reagentを各ウェルに添加し、プレートをさらに1〜4時間インキュベートした。上述したように吸収度及び%細胞毒性を決定した。各実験で、データ点は三通り行った。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
pLAd−C.tTAベクターを模式的に示す。
【図1B】
pRAd.T.GFsLベクターを模式的に示す。
【図1C】
rAd/FasL−GFPTETベクターを模式的に示す。
【図2】
293及び293CrmA細胞におけるrAdベクターのタイターとFasL活性の比較を示すグラフである。
【図3】
TRAIL発現ベクターAd.TRAIL/GFPTETの構成を示す。
【図4】
FasL−及びTRAIL−誘導アポトーシスに対する癌細胞の異なる感度を示す。
【図5】
TRAIL発現が非形質転換線維芽細胞内でアポトーシスを誘導しないことを示す。
【図6】
ヌードマウスに移植された乳癌のアポトーシス誘導を示す。

Claims (58)

  1. 癌細胞のTRAIL媒介死を誘導する方法であって、以下の工程:
    TRAIL用レセプターを発現する細胞を含んでなる細胞群に、TRAILをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入し、発現されたTRAILが、TRAILと前記レセプターとの間の相互作用を通じて該TRAILレセプターを発現する当該細胞内で細胞死を誘導する工程を含む方法。
  2. 前記TRAILレセプターが膜結合型レセプターである、請求項1の方法。
  3. 前記TRAILレセプターがDR4又はDR5である、請求項2の方法。
  4. 前記発現ベクターが導入される前記細胞群が、前記TRAILレセプターを発現する細胞と、前記TRAILレセプターを発現しない細胞との混合物を含む、請求項1の方法。
  5. 前記発現ベクターが、前記TRAILレセプターを発現しない細胞に導入される、請求項4の方法。
  6. 前記発現ベクターが、前記TRAILレセプターを発現する細胞に導入される、請求項4の方法。
  7. 前記発現ベクターが、前記TRAILレセプターを発現しない細胞と、前記TRAILレセプターを発現する細胞に導入される、請求項4の方法。
  8. 前記細胞群が固形腫瘍内に含まれている、請求項1の方法。
  9. 前記固形腫瘍が、乳房、前立腺、脳、膀胱、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、頭頚部、大腸、胃、気管支及び腎臓腫瘍から成る群より選択される、請求項8の方法。
  10. 前記細胞群への発現ベクターの導入が、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポゾームに、吸入によって、膣に、眼内に、カテーテル若しくはステントによる局所送達によって、皮下に、脂肪内に、関節内に、クモ膜下腔内に、又は遅延放出剤形で行われる、請求項1の方法。
  11. 前記発現ベクターの導入が、前記細胞群間への該発現ベクターの直接注入によって行われる、請求項1の方法。
  12. 前記発現ベクターがプラスミドである、請求項1の方法。
  13. 前記発現ベクターがウイルスベクターである、請求項1の方法。
  14. 前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニア、レトロウイルス、及び単純ヘルペスウイルスベクターから成る群より選択される、請求項13の方法。
  15. 前記発現ベクターが、複製−適格性又は複製−非適格性のアデノウイルスベクターである、請求項13の方法。
  16. 前記TRAILの発現が、前記ベクター内の条件プロモーターによって調節され、この条件プロモーターの活性化に適した条件のとき、前記発現ベクターが導入される細胞がTRAILを発現する、請求項1の方法。
  17. 前記条件プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  18. 前記組織特異的プロモーターが、前立腺特異的プロモーター、乳房特異的プロモーター、膵臓特異的プロモーター、大腸特異的プロモーター、脳特異的プロモーター、腎臓特異的プロモーター、膀胱特異的プロモーター、肺特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、甲状腺特異的プロモーター、胃特異的プロモーター、卵巣特異的プロモーター、及び頚部特異的プロモーターから成る群より選択される、請求項17の方法。
  19. 前記細胞群が前立腺癌細胞であり、かつ前記発現ベクターの前記条件プロモーターが前立腺特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  20. 前記前立腺特異的プロモーターが、PSAプロモーター、ΔPSAプロモーター、ARR2PBプロモーター、プロバシン(probasin)プロモーター、gp91−phox遺伝子プロモーター、及び前立腺特異的カリクレインプロモーターから成る群より選択される、請求項19の方法。
  21. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが肝臓特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  22. 前記肝臓特異的プロモーターが、肝臓アルブミンプロモーター、α−フェトプロテインプロモーター、α−抗トリプシンプロモーター、及びトランスフェリントランスサイレチンプロモーターから成る群より選択される、請求項21の方法。
  23. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが大腸特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  24. 前記大腸特異的プロモーターが、炭酸脱水酵素Iプロモーター及び癌胎児性抗原プロモーターから成る群より選択される、請求項23の方法。
  25. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが卵巣又は胎盤特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  26. 前記卵巣又は胎盤特異的プロモーターが、エストロゲン応答性プロモーター、アロマターゼチトクロームP450プロモーター、コレステロール側鎖切断P450プロモーター、及び17α−ヒドロキシラーゼP450プロモーターから成る群より選択される、請求項25の方法。
  27. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが乳房特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  28. 前記乳房特異的プロモーターが、G.I.erb−B2プロモーター、erb−B3プロモーター、β−カゼイン、β−ラクト−グロブリン、及びホエー酸性タンパク質プロモーターから成る群より選択される、請求項27の方法。
  29. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが肺特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  30. 前記肺特異的プロモーターが、サーファクタントタンパク質Cウログロビンプロモーターである、請求項29の方法。
  31. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが皮膚特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  32. 前記皮膚特異的プロモーターが、K−14−ケラチンプロモーター、ヒトケラチン1プロモーター、ヒトケラチン6プロモーター、及びロイクリン(loicrin)プロモーターから成る群より選択される、請求項31の方法。
  33. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが脳特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  34. 前記脳特異的プロモーターが、神経膠線維酸性タンパク質プロモーター、成熟星状膠細胞特異的タンパク質プロモーター、ミエリンプロモーター、及びチロシンヒドロキシラーゼプロモーターから成る群より選択される、請求項33の方法。
  35. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが膵臓特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  36. 前記膵臓特異的プロモーターが、ビリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、及びインスリン島アミロイドポリペプチドプロモーターから成る群より選択される、請求項35の方法。
  37. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが甲状腺特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  38. 前記甲状腺特異的プロモーターが、チログロブリンプロモーター及びカルシトニンプロモーターから成る群より選択される、請求項37の方法。
  39. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが骨特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  40. 前記骨特異的プロモーターが、α1コラーゲンプロモーター、オステオカルシンプロモーター、及び骨シアロ糖タンパク質プロモーターから成る群より選択される、請求項39の方法。
  41. 前記発現ベクターの前記条件プロモーターが腎臓特異的プロモーターである、請求項16の方法。
  42. 前記腎臓特異的プロモーターが、レニンプロモーター、肝臓/骨/腎臓アルカリ性ホスファターゼプロモーター、及びエリスロポイエチンプロモーターから成る群より選択される、請求項41の方法。
  43. 前記条件プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項16の方法。
  44. 前記誘導性プロモーターが、テトラサイクリン又はドキシサイクリンによる誘導性プロモーターである、請求項43の方法。
  45. 前記誘導性プロモーターが、ステロイドによる誘導性プロモーターである、請求項43の方法。
  46. 前記ステロイドが、グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲン、及びプロゲステロンから成る群より選択される、請求項45の方法。
  47. 該方法が、さらに前記条件プロモーターの活性化に適した条件を引き起こす工程を含む、請求項16の方法。
  48. 前記条件プロモーターの活性化に適した条件を引き起こす工程が、前記細胞群にテトラサイクリン又はドキシサイクリンを送達する工程を含む、請求項47の方法。
  49. 前記条件プロモーターの活性化に適した条件を引き起こす工程が、前記細胞群に、グルココルチコイド、エストロゲン、アンドロゲン、及びプロゲステロンから成る群より選択されるステロイドを送達する工程を含む、請求項47の方法。
  50. 前記発現ベクターが、さらにリポーター遺伝子を含む、請求項1の方法。
  51. 前記発現ベクターが、TRAILとの融合タンパク質として前記リポーター遺伝子を発現させる、請求項50の方法。
  52. 前記発現ベクターが、内部リボゾーム侵入部位(IRES)又はスプライシング供与体/受容体部位の機構によってTRAILを有する二シストロン的な単一タンパク質として前記リポーター遺伝子を発現させる、請求項50の方法。
  53. 前記リポーター遺伝子が緑色蛍光タンパク質をコードする、請求項50の方法。
  54. 前記発現ベクターが、さらに調節タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1の方法。
  55. 前記発現ベクターが、TRAILとの融合タンパク質として前記調節タンパク質を発現させる、請求項54の方法。
  56. 前記融合タンパク質内の前記調節タンパク質が、アポトーシス信号発信リガンドの組織特異的局在化を引き起こすタンパク質である、請求項55の方法。
  57. 前記発現ベクターが導入される前記細胞群が、癌を有する患者から採取した試料内に含まれている場合、該方法が生体外で行われる、請求項1の方法。
  58. 前記発現ベクターが導入される前記細胞群が、細胞培養内に含まれている場合、該方法が試験管内で行われる、請求項1の方法。
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