JP2004525909A - 脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質と共に骨髄細胞を含む組成物並びに骨髄移植におけるその使用 - Google Patents
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Abstract
骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質(DBM)及び/又は石灰化骨基質(MBM)とを含み、そして任意選択で骨形態形成タンパク質(BMP)を含み、骨髄腔内又は骨外性部位内への骨髄移植において特に使用される組成物、並びにその移植/埋込み方法。本発明の組成物及び方法は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化させることができ、そして幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症、異常な幹細胞及び/又は生成物をもたらす遺伝的状態、悪性起源又は非悪性起源の造血障害などの様々な造血障害の処置において有用である。本発明の組成物及び方法はまた、移植片寛容性を誘導させるために、すなわち、移植片対宿主疾患を防止するために使用することができる。本発明の組成物及び方法は、造血を維持及び調節する間質微小環境に一次的又は二次的に影響を及ぼす疾患を処置するために適用できることは非常に重要である。さらに、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植するためのキットが提供される。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質(それぞれ、DBM及びMBM)とを含む組成物、並びに骨髄移植におけるその新規な使用に関する。本発明の組成物は、間質微小環境を回復させること、造血を維持すること、そして造血組織を発達させることにおいて特に効果的であると考えられる。
【背景技術】
【0002】
造血系の発達及び機能が間質起源のその微小環境によって維持され、かつ調節されていることが広く知られている(出生後、造血は骨格骨に完全に限定される)[Dorshkind,K.(1990)、Ann Rev Immunol、8:111;Bentley,S.A.(1981)、Exp Hematol、9:303;Smith,B.R.(1990)、Yale J.Biol Med、63:371〜380]。
【0003】
正常な骨髄機能は、正常な造血幹細胞及びその微小環境(これらはほとんどが骨の髄質部に存在する)が同時に存在することに依存する。幹細胞は、十分な微小環境がない場合には正しく機能することができない。幹細胞の不足又は異常な幹細胞によって引き起こされる悪性又は非悪性の血液学的疾患では、幹細胞移植が、治癒をもたらす最良の処置であるのに対して、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症、及び異常な微小環境に関連する他の状態などの疾患では、細胞遺伝学的な異常を全くを認めることができない明らかに正常な造血細胞が存在するにもかかわらず、汎血球減少症が生じることがある。実際、そのような患者では、不応性貧血の正常化がときには自家骨髄移植後に達成され得るが、成功率は、他の血液学的悪性腫瘍における移植組織の結果と比較してかなり悪い。過剰な芽球を伴うMDS(これはまた芽球過剰性不応性貧血(RAEB)として知られている)、芽球の形質変換を伴うMDS(RAEB−T)、又は完全に顕性化した白血病(overt lukemia)を伴うMDSでは、疾患は、通常、悪性の骨髄幹細胞と異常な骨髄微小環境との組合せによって引き起こされる。MDS患者における生着及び無疾患生存に関する成功率は、急性白血病及び慢性白血病の患者において認められる成功率よりも低い。この理由としては、適正な生着及び正常な骨髄機能のためには、幹細胞だけを置換しても不十分であるかもしれないということが最も考えられる。理論的には、異常な幹細胞を置換し、かつ新しい微小環境を提供することによって、骨髄移植(BMT)の結果は改善することができると考えられる。
【0004】
同種BMTでは、健康なドナーから得られた同種骨髄幹細胞を、必要としている患者に移入することが伴う。BMT後、患者の骨及び造血領域はドナーの細胞で再構成され、赤血球、血小板、有核細胞を含む造血系全体、循環性及び組織結合型細網内皮系並びに免疫系全体がドナー起源のものに変換される[Slavin S.及びNagler A.(1991)、Curr Opin Oncol、3(2):254〜71]。BMTは、骨髄生成物のいずれかにおける不全症を含む非常に多くの造血障害を処置及び正常化するために、異常な幹細胞の置換を必要とする場合に、そして非常に多くの遺伝的障害に広範囲に適用することができる[Buckley R.H.(1993)他、Semin Hematol、30(4、増刊4):92〜101;Brochstein J.A.(1992)、Oncology(Huntingt)、6(3):51〜8;考察58、63〜6]。あるいは、BMTは、ガン治療のために、そして骨髄破壊性化学放射線療法を受けている患者の救剤のために広く使用されている[Slavin S.及びNagler A.(1991)、上掲]。BMTには多くのさらなる潜在的な適用がある。例えば、臓器移植における移植寛容性の誘導[Sykes M.及びSacks D.H.(1990)、Semin Immunol、2:401〜417]などがあり、そしてドナーリンパ球の注入に関連する免疫療法に対する基盤としての適用[Champlin R.(1991)、Transplant Proc、23(4):2123〜7;Brenner M.K.及びHeslop H.E.(1991)、Baillieres Clin Haematol、4(3):727〜49;Slavin S.他(1991)、Baillieres Clin Haematol、4(3):715〜25]がある。骨髄破壊性前処置後、宿主の免疫造血系のすべてをドナータイプの細胞で置換するためにBMTを使用することができる。あるいは、非骨髄破壊性前処置の後、混合キメラ現象を誘導するために宿主の造血と併存してドナー造血の永続した生着を達成するよう、BMTの役割を向かわせることができる。
【0005】
残念なことに、BMTの適用性は、下記のようないくつかの制約によって制限されている:
1.BMTが適応される特定の血液学的疾患はまた、骨髄の微小環境にも影響を及ぼすことがあり、したがって、幹細胞移植だけでは、完全な血液学的回復を得るためには不十分なことがある[Enright H.及びMcGlave P.B.(1995)、Curr Opin Hematol、2(4):293〜9;Koijima S.(1998)、Int J Hematol、68(1):19〜28;Gidali J.他(1996)、Stem Cells、14(5):577〜583]。
【0006】
2.同種骨髄細胞(BMC)(特に、純化された幹細胞又はT細胞除去幹細胞)の効率的な安定した生着には、得ることが困難であり得るか、又は得ることさえできない、非常に多くの幹細胞(例えば、細胞数が限られている臍帯血幹細胞、小児から成人への輸血、など)の移入を必要とする[Reisner Y.及びMartelli M.F.(1995)、Immunol Today、16:437;Rowe J.M.他(1994)、Ann Intern Med、120(2):143〜58]。
【0007】
3.造血障害の患者における幹細胞の生着、特に、放射線照射又は化学療法による強制的な前処置の後に処置される患者における幹細胞の生着は、造血微小環境が損傷しているために、効率がかなり低い[Enright H.及びMcGlave P.B.(1995)、上掲;O’Flaherty E.他(1995)、Bone Marrow Transplant、15:207]。
【0008】
4.血液学的障害の患者において今日まで適用されているような同種BMTは、多くの場合、手法に関連した毒性、生着不良、及び移植片対宿主疾患(GVHD)をもたらす抗宿主反応によって複雑化している[Lazarus H.M.他(1997)、Bone Marrow Transplant、19:577;Quinones R.R.(1993)、American J.Pediatric Hematology/Oncology、15(1):3〜17]。
【0009】
上記の制約を考慮して、本発明の主要な目的の1つは、造血微小環境が損傷しているレシピエントにおけるBMCの改善された生着である。本発明者らが最近明らかにしたように、ドナーの造血微小環境の中におけるBMCの移植はGVHDの発生率を低下させた[Gurevitch O.A.他(1999)、Transplantation、68:1362〜1368]。したがって、GVHDを処置するために免疫抑制剤を使用することによる手法関連毒性が同種BMTに伴うとき、合併症を避けることができる。さらに、移植手法の改善により、移植のために必要とされるBMCの数の削減がもたらされた。
【0010】
本発明者らは、脱灰した骨基質又は歯基質を異所的に移植した後、マウスにおいて発達した誘導された骨及び造血微小環境が、骨格骨の主な性質を示すことを以前に明らかにしている[Gurevitch O.A.(1990)、Int.J.Cell.Clon.8:130〜137;Gurevitch O.A.及びFabian I.(1993)、Stem Cells、11:56〜61]。下記の観測結果が得られた:
a.誘導された骨における造血微小環境は、完全に発達した3系統の造血を持続させることができる。
b.誘導された骨における造血微小環境は、脾臓におけるコロニー形成単位(CFU−S)によって最も良く表すことができるように、造血幹細胞の増殖能力を維持することができる。
c.de novoで誘導された造血微小環境は、何らかの外部からの補充物をさらに加えることなく、長期間の維持及びリモデリング及び自己更新が可能である。一旦発達すると、誘導された骨は、機能的に活性な造血領域を有する異所的な位置における永続的な構造体になる。
【0011】
これらの観察結果は、造血微小環境の誘導が、造血を強化するためだけでなく、間質障害及び造血障害を正常化するための有望な方法であり得ることを示唆している。
【0012】
移植されたBMCの生着は、造血細胞が骨移植片と一緒に移入されたとき[Ishida T.他(1994)、J Immunol、152:3119〜3127;Hisha H.他(1995)、Exp Hematol、23:347〜352;Sandhu J.S.他(1996)、Blood、88(6):1973〜1982;Nakagawa T.他(1993)、Arthritis and Rheumatism、36:263〜268]、又は造血細胞がドナー起源の間質細胞の注射と一緒に移入されたとき[Lazarus,H.M.他(1995)、Bone Marrow Transplantation、16:557〜564;El−Badri,N.S.他(1998)、Exp Hematol、26:110〜116]に改善される。1999年に、本発明者らは、造血BMCがそれら自身の造血微小環境の中に移入された場合、GVHDが抑制されることを示している[Gurevitch O.A.(1999)、上掲]。同種骨髄は、造血幹細胞のみが生着することができる単一細胞懸濁物の通常の形態においてではなく、ドナーマウスの大腿骨骨髄腔から取り出された乱されていない骨髄栓子の形態で移植した。ドナーの骨髄栓子はレピシエントの腎臓被膜下に置いた。ほとんど臨床的には適用することができないこのケースでは、乱されていない多細胞構造体の形態にある移植組織に存在する間葉性細胞により、移植された造血細胞に対する異所性(骨外性)の微小環境が、同じ骨髄栓子の中にもたらされる。
【0013】
しかし、骨の骨芽細胞又は骨髄栓子の移植は、多くの技術的制約のために、臨床的実施においては未だ広く受け入れられていない。
【0014】
現行のBMC移植法のすべてに対する1つの大きな欠点は、造血細胞と、造血を維持させる間質微小環境との両方を同時に移入することができないということである。血液学的操作において現在使用されているBMC移植法では、実際、ドナーから得られた造血細胞のみがレピシエントにおいて生着しているだけである。
【0015】
BMCは、造血細胞と、誘導された骨生成が可能である間葉性幹細胞との両方の供給源を提供し得るという考えに基づいて、本発明者らは、ドナーBMC移植組織から生じる造血組織及び間質組織を同時に発達させることを可能にする、BMCとDBM及び/又はMBM(間葉性前駆細胞の骨生成発達を刺激し、かつ維持する物質)とを含む組成物の移植を提案する。
【0016】
より詳細には、(BMCとDBM及び/又はMBMとを含む)本発明の組成物は、レピシエントの骨髄腔内又は骨外性的に直接移植され、これにより、造血を持続させる間質微小環境と、同じ移植されたBMC懸濁物に由来する造血組織とのde novo形成がもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の主要な目的の1つは、例えば、血液学的障害に罹患している患者のような、そのような処置を必要としている患者への移植のために使用される、骨髄細胞と脱灰骨基質又は石灰化骨基質との混合物である。
【0018】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、本説明を読んだときに明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質(それぞれ、DBM及びMBM)とを含む組成物、並びに骨髄移植におけるその新規な使用に関する。
【0020】
したがって、第1の態様において、本発明は、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む組成物に関する。
【0021】
別の態様において、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む前記組成物は、ヒトであってもよい哺乳動物への骨髄移植(BMT)のために使用されるためのものである。好ましくは、本発明の組成物は、哺乳動物(好ましくはヒト)へのBMTのために使用されるBMCとDBMとを含む。
【0022】
本発明の組成物の移植部位は骨髄腔であり得る。あるいは、前記移植部位は、患者の腎臓被膜下空間、筋肉、腹腔壁、並びに寛容性誘導のための同種移植片の腎臓又は肝臓又は心臓被膜からなる群から選択される骨外性部位であり得る。
【0023】
別の実施形態において、本発明の組成物は骨形態形成タンパク質(BMP)をさらに含む。
【0024】
さらに別の実施形態において、本発明の組成物に含まれるDBM及び/又はMBMは脊椎動物起源であり、そしてヒト起源であってもよい。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明の組成物に由来するDBM及び/又はMBMは粉末形態又は薄片形態である。本発明の組成物において使用されるDBMは、粒子サイズが約50μ〜2500μであり得る。好ましくは、DBMの粒子サイズは約250μ〜500μである。
【0026】
本発明の組成物に含まれるBMCとDBMとの比率は、0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)であり、好ましくは、1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)である。
【0027】
さらにさらなる実施形態において、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化させるために骨髄腔内に移植されるためのものである。さらに、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を発達させるために骨外性部位内に移植されるためのものである。新しく形成された造血微小環境が、移植されたBMC懸濁物に存在する間葉性前駆細胞の分化から生じる。
【0028】
したがって、さらなる実施形態において、本発明の組成物は、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症、異常な幹細胞及び/又は生成物をもたらす遺伝的状態、悪性起源の造血障害、並びに、骨構造及び/又は骨組成のいずれか(すなわち、造血を維持及び調節する間質微小環境)に主に影響を及ぼす疾患、骨形成不全症、ムコ多糖症及びムコリピドーシスから選択される血液学的障害に罹患している患者の処置に使用されるためのものである。
【0029】
別の態様において、本発明は、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植/埋込みするための方法に関する。この場合、この方法は、BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物に導入することを含み、前混合物は任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含む。
【0030】
1つの実施形態において、本発明の混合物は、任意選択で、正常な組織膜内及び/又は栄養物、サイトカイン及び細胞の浸透を可能にし、かつDBM粒子及び/又はMBM粒子がその中に保持される選択的な生体適合性膜内にカプセル化される。
【0031】
別の実施形態において、前記混合物は、前記哺乳動物の骨髄腔内及び/又は前記哺乳動物の骨外性部位内に導入される。骨外性の移植部位は、腎臓被膜、筋肉、肝臓、腹腔壁及び血管からなる群から選択される。
【0032】
さらにさらなる実施形態において、本発明の移植方法において使用される混合物はBMPをさらに含む。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、骨髄移植が必要とされる、造血障害、並びに/或いは骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を、そのような障害の処置を必要とする哺乳動物に対して、処置する方法に関する。前記本発明の方法は、BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物の骨髄腔又は骨外性部位の中に投与することを含み、前記混合物は任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含む。
【0034】
1つの実施形態において、本発明の前記方法において使用される前記混合物は、任意選択でBMPをさらに含む。
【0035】
別の実施形態において、本発明の前記方法は、好ましくは静脈内注入及び骨内注入との組合せで、微小環境の発達を高めるBMP及び/又は他の因子(例えば、造血性増殖因子など)とともに、或いはそれらを用いることなく、前記患者に幹細胞懸濁物を投与することをさらに含む。
【0036】
さらに別の実施形態において、本発明の前記方法において使用されるBMCは同種であるか、又は前記哺乳動物自身のものである。
【0037】
さらにさらなる実施形態において、本発明の前記方法において使用されるDBM又はMBMは、それぞれ、脱灰骨薄片及び/又は石灰化骨薄片を含む。
【0038】
本発明の最後の態様は、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植するためのキットに関する。このキットは、
(a)圧縮された形態にあるDBM及び/又はMBM;
(b)BM吸引ニードル;
(c)骨内骨穿孔用バー;
(d)骨髄−DBMの粘性混合物を注入するための肉厚内腔ニードル;
(e)BMC及びDBMを同時に混合するための二方内腔コネクター;
(f)混合物を希釈するための希釈剤;
(g)BMCを維持するための培地;そして任意選択で、
(h)BMCを、又はDBMと一緒にBMCを取扱い、かつ維持するための低温手段、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
下記の略号が本明細書中を通して用いられる:
・BM:骨髄
・BMC:骨髄細胞
・BMP:骨形態形成タンパク質
・BMT:骨髄移植
・CFU−S:脾臓コロニー形成単位
・DBM:脱灰骨基質
・GVHD:移植片対宿主疾患
・HVGD:宿主対移植片疾患
・LCM:レーザー捕捉顕微解剖
・MBM:石灰化骨基質
・MDS:骨髄異形成症候群
・RAEB:芽球過剰性不応性貧血(MDSの1つのタイプ)
・RAEB−T:芽球の形質変換を伴う不応性貧血
【0040】
骨髄移植法を改善する研究において、本発明者らは、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む組成物を使用することにより、同じドナーから生じる造血組織及び間質組織(造血微小環境を含む)が同時に発達することを見出した。さらに、同種骨髄移植におけるBMC−DBM混合物のさらなる利点は、同種造血幹細胞の生着と、同じドナーに由来する間質前駆体細胞から生じる間質微小環境を同時に発達させることによって維持される造血の再構成とを促進することにある。
【0041】
本発明者らの研究成果の結果として、本発明者らは、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質(それぞれ、DBM及びMBM)との混合物を含む組成物、及び骨髄移植におけるその新規な使用に関する本発明に到達した。
【0042】
したがって、第1の態様において、本発明は、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質(DBM)及び/又は石灰化骨基質(MBM)とを含み、任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含む組成物に関する。
【0043】
本発明の組成物において、DBM及びMBMは、組み合わせて又は別々に使用することができる。BMCを、DBMではなく、MBMと組み合わせて使用する実験(図1)において、本発明者らは、2つの骨基質の間の大きな違いが、MBMを用いた場合の遅れた骨形成であることを認めた。これらの2つ(DBM及びMBM)の混合物をBMCと一緒に移植することにより、両者の利点を組み合わせることができるはずであり、すなわち、(早く作用するDBMと、遅れて使用するMBMとを用いて)骨生成活性の期間を著しく延ばすことができるはずである。また、MBM粒子は、DBM粒子と比較したとき、はるかに高密度で、硬いので、MBMの混合物は、新しい組織が形成されている期間を通してインプラントの形状保持が必要とされるときには有用であり得る。したがって、BMC:MBMの比率及びBMC:DBM:MBMの比率は特定の必要性に依存する。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明の組成物に由来するDBM及び/又はMBMは粉末形態又は薄片形態である。本発明の組成物において使用されるDBMは、粒子サイズが約50μ〜2500μであり得る。好ましくは、DBMの粒子サイズは約250μ〜500μである。
【0045】
それにもかかわらず、DBMは、DBMを間葉性前駆細胞に対する優れたキャリアにするために必要とされる特徴のすべてを合わせ持つその好都合な能力を考慮すると、本発明の組成物における好ましい成分である。
【0046】
1.DBMは、間葉性前駆細胞の生着並びにその増殖及び分化のために不可欠な、伝導性の足場を形成する様々な性質を示す。
2.さらに、DBMは、造血環境の発達を刺激することにおいて活性である様々なBMP(骨形態形成タンパク質)の天然の供給源であり、したがって誘導性の機能をも果たす。
3.DBMは、異種移植片として使用されたときには非常に低い免疫原性を有し、同種の組合せで使用されたときには免疫原性を全く有しない。
4.DBMは、大きな外科的介入を伴うことなく、局所的に、好ましくは骨内に注射することができる非晶質粉末として得ることができる。
【0047】
本発明の組成物に含まれるBMCとDBMとの比率は、0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)であり得るが、好ましくは、1部のDBMに対して5部のBMC濃縮物(体積/体積)である。本発明者らは、最も好ましくは、前記比率が1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)であることを明らかにしている。
【0048】
別の態様において、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む前記組成物は、好ましくはヒトである哺乳動物への骨髄移植のために使用されるためのものである。
【0049】
本発明の組成物の移植部位は、腎臓被膜、筋肉及び腹腔壁からなる群から選択される骨外性部位であり得る。実施例1Aに示されるように、腎臓の被膜下空間は、埋め込まれた細胞から発達する骨−造血複合体の形成を維持する必要な局所的条件のすべてを満たしている。したがって、腎臓の被膜下空間は、埋め込まれた細胞の活性を追跡することを可能にする一種の「in vitro管」として役立ち得る。骨髄細胞の懸濁物には、DBMの誘導的及び伝導的な支持体とともに腎臓被膜下に移植されたとき、完全に発達した造血微小環境を組み立てることができる間葉性前駆細胞が含まれる。したがって、骨髄細胞懸濁物に存在する間葉性前駆細胞から発達する新しい造血微小環境は、DBMの誘導的及び伝導的な影響のために、正常な3系統の造血を維持するだけでなく、長期間の維持及びリモデリング及び自己更新が、この場合には実験哺乳動物の寿命に匹敵する少なくとも1年間にわたって可能である。
【0050】
あるいは、前記移植部位は骨髄腔であってもよい。実施例1Bに示されるように、摘出処理後の骨髄腔内にBMCと一緒にDBMを移植したときに、活発な造血の広範囲の発達が認められる(図3B及び図3D)。小柱骨、造血微小環境(間質起源)及び造血組織からなる完全な骨−造血複合体を、1段階の移植法で、摘出処理後の骨髄腔内に直接移入することに成功したことは初めてである。この実験により、造血微小環境を発達させるために誘導性かつ促進性の様々な性質を有する、造血前駆細胞及び間葉性前駆細胞の両方を含有する骨髄細胞懸濁物をDBMと一緒に大腿骨内に移植することが可能であることが証明された。この造血微小環境は、造血組織の発達及び機能化のために不可欠な維持的及び調節的な役割を果たしている。新しく形成されたドナー由来の骨−造血複合体は、活発な造血産生だけでなく、長期間の維持及びリモデリング及び自己更新が可能である。
【0051】
別の実施形態において、本発明の組成物は骨形態形成タンパク質(BMP)をさらに含む。
【0052】
本発明者らが示すように、いくつかの造血領域が、BMCをDBMと一緒に移植した後に認められる(例えば、図2Bを参照のこと)。しかし、これらの領域は、BMPが移植混合物に添加されたときにはさらにより顕著になる(例えば、図2Cを参照のこと)。したがって、BMPの添加は、造血を維持する間質微小環境の発達を促進することによって本発明の組成物の活性を高める。
【0053】
BMCとDBM及び/又はMBMとを含む本発明の組成物は、ドナーの多機能細胞集団がレピシエントの骨髄腔内又は骨外性的に直接移植されるという大きな利点を有している。これにより、ドナー起源の自己維持される骨−造血複合体の完全な発達がレピシエントの骨又は骨外性部位の内部においてもたらされる。成人では、長骨内の赤色(造血)骨髄は黄色(脂肪)骨髄によって置換されやすい。本発明の新しい方法は、脂肪質の骨髄支質、又は線維形成性の骨髄支質、又はそうでなければ機能不全の骨髄支質のヒト骨における置換をさらに容易にする。間質幹細胞及び造血幹細胞の混合移植は、1段階手法を使用した場合、骨髄移植(BMT)の適用可能性の拡大が、臨床的実施において、特に、造血を改善又は強化することにおいて、移植寛容性を誘導することなどにおいてもたらされることがさらに予想される。
【0054】
さらに別の実施形態において、本発明の組成物に含まれるDBM及び/又はMBMは脊椎動物起源であり、ヒト起源であってもよい。
【0055】
さらなる実施において、本発明の組成物に由来するDBM及び/又はMBMは粉末形態又は薄片形態である。
【0056】
さらにさらなる実施形態において、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化させるために骨髄腔内に移植されるためのものである。さらに、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境を発達させるために骨外性部位内に移植されるためのものである。
【0057】
本発明の組成物は、骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を処置するために、移植されたBMC内の移入された造血前駆体細胞の生着を改善するはずである。
【0058】
したがって、さらにさらなる実施形態において、本発明の組成物は、造血障害及び/又は骨障害に罹患している患者の処置において使用されるためのものである。この場合、前記造血障害は、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症又は異常又は悪性体、異常な幹細胞及び/又はその生成物をもたらす遺伝的状態、異常な骨構造(すなわち、一体性又は組成)、並びに悪性起源の造血障害から選択される。
【0059】
前記に述べられたように、本発明の組成物は、任意選択で、薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含むことができる。
【0060】
薬学的に受容可能(又は生理学的に受容可能)な添加剤及び/又はキャリア及び/又は希釈剤は、用いられた投薬量及び濃度においてレピシエントに対して非治療的かつ非毒性であり、そして活性な薬剤の薬理学的又は生理学的な活性に影響を及ぼさない任意の添加剤又はキャリア又は希釈剤を意味する。
【0061】
医薬組成物の調製は、この分野では広く知られており、多くの論文及び教本に記載されている。例えば、レミントン製薬科学(Reminghton’s Pharmaceutical Sciences)(Gennaro A.R.編、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、1990)、特にその1521頁〜1712頁を参照のこと。
【0062】
本発明の組成物は、任意選択で、さらなる活性な薬剤をさらに含むことさえできる。特に注目される活性な薬剤は、増殖因子などの、組織の分化又は侵入を促進するそのような薬剤である。一例が、本発明の組成物の活性を高めることができるBMPである。この目的のための他の例示的な増殖因子には、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、白血病阻害因子(LIF)、インスリン様増殖因子(IGF)及び成長ホルモンが含まれる。他の活性な薬剤には、骨髄移植の成功のためには重要であり得る抗拒絶反応剤又は寛容性誘導剤(例えば、免疫抑制薬又は免疫調節薬など)を挙げることができる。
【0063】
本発明の組成物を使用する骨内BMC移植法は大きな利点をいくつか有している:なかでも、
1.静脈内注射されたとき、非造血系器官に留められる造血幹細胞の非特異的な相当の喪失が回避されること。
2.新しく形成された間質微小環境と、同じドナーから生じる造血細胞との適合性及び接触が改善されること。
3.脂肪質の骨髄空間、又は線維性の骨髄空間、又はそうでなければ異常な骨髄空間が、活発な多系統の造血を維持する活性な小柱系で置換されること。
4.ドナータイプ及びレピシエントタイプの支質上に一緒に生じたドナーの免疫適格細胞とレピシエントの免疫適格細胞との適合性が良好になるために、移植片対宿主疾患(GVHD)及び宿主対移植片疾患(HVGD)をほとんど伴わない混合造血を誘導することが可能であること。
【0064】
別の局面において、本発明は、間葉性幹細胞を含有するBMCを、間葉性幹細胞の発達を維持及び刺激するDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植/埋込みするための方法に関する。この方法は、薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤を任意選択でさらに含むBMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物に導入することを含む。
【0065】
本発明の移植方法は、造血を維持する間質微小環境を誘導するはずである。この場合、そのような間質微小環境は、移植されたBMCから生じ、より詳細にはBMCに存在する間葉性幹細胞から生じる。
【0066】
1つの実施形態において、本発明の混合物は、任意選択で、正常な組織膜内及び/又は、栄養物、サイトカイン及び細胞の浸透を可能にし、かつDBM粒子及び/又はMBM粒子がその中に保持される選択的な生体適合性膜内にカプセル化される。そのような膜は、不全障害の処置において造血細胞又は間質微小環境によって分泌される生物学的生成物を提供又は濃縮するために、そしてドナー細胞の生着を高めるために、そして移植寛容性の誘導のために重要である混合キメラ現象を誘導するために有用である。
【0067】
別の実施形態において、前記混合物は、前記哺乳動物の骨髄腔内及び/又は前記哺乳動物の骨外性部位内に導入される。骨外性の移植部位は、患者の腎臓被膜、筋肉、腹腔壁、並びに寛容性誘導のための同種移植片の腎臓又は肝臓又は心臓被膜からなる群から選択される。
【0068】
さらに別の実施形態において、本発明の移植方法において使用される混合物はBMPをさらに含む。
【0069】
さらなる態様において、本発明は、骨髄移植が必要とされる、造血障害、並びに/或いは骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を、そのような障害の処置を必要とする哺乳動物に対して処置する方法に関する。本発明のこの方法はBMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物の骨髄腔又は骨外性部位の中に投与することを含み、前記混合物は任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤を任意選択でさらに含む。
【0070】
1つの実施形態において、本発明の前記方法において使用される前記混合物は、任意選択でBMPをさらに含む。
【0071】
本発明の組成物を骨外性部位内又はBM腔内のいずれかに適用する手法は下記のステップを含む:
1.BMC源を選択するステップ。ドナーは同種タイプであり得るか、又はBMCを、処置されている同じ被験者から得ることができる(自家移植)。BMCは、標準的な手法によってドナーから吸引される。吸引された総量から、一部が、本発明の組成物に含まれるBMCになり、別の一部を、任意選択で、その処置を必要とする患者に静脈内(i.v.)注射することができる。吸引されたBMCのこれらの2つの部分は任意の割合で分けることができる。好ましくは、2部の吸引されたBMCをi.v.注射し、その一方で、1部を遠心分離して、その体積を減らし、BMC濃縮物とする。その後、この濃縮物を、下記に示される比率でDBMと混合する。
2.DBM及び/又はMBMの供給源を選択するステップ。DBMは商業的に供給されており、そしてDBMは免疫原性がないので、特定のドナーに対する制約はない。DBM及び/又はMBMは粉末又は顆粒又は薄片形態であり得る。本発明の組成物において使用されるDBMは、粒子サイズが約50μ〜2500μであり得る。好ましくは、DBMの粒子サイズは約250μ〜500μである。
3.BMC及び/又はDBM及び/又はMBMの懸濁物を含む組成物を調製するステップ。本発明の組成物に含まれるBMCとDBMとの比率は、0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)であり得るが、好ましくは、1部のDBMに対して5部のBMC濃縮物(体積/体積)であり得る。本発明者らは、最も好ましくは、前記比率が1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)であることを明らかにしている。任意選択で、組成物はBMPを含有することができる。組成物は、外科的手法によって、又は非侵襲的な注射によって、そのいずれでも投与することができる。あるいは、組成物は、正常な組織膜の内部においてカプセル化されるように投与することができる。さらにあるいは、組成物は、細胞、栄養物、サイトカインなどがデバイスに浸透することができ、同時にDBM粒子及び/又はMBM粒子をデバイス内に保持する選択的な生体適合性膜から作製された膜デバイスに含有させることができる。そのような膜デバイスは、好ましくは、手術により導入される。
4.インプラント組成物を埋込み部位において固定し、かつ/又は再形成するために使用される、好ましくはフィブリノーゲン及びトロンビンからなる生物学的な接着剤又は足場を提供するステップ。
【0072】
別の実施形態において、本発明の前記方法は、好ましくは静脈内注入及び骨内注入の組合せによって骨髄幹細胞の懸濁物を前記患者に投与すること、あるいは骨外性の造血領域を産生させるために、コンパートメントの1つ(すなわち、膜デバイス)の中に、又は腎臓の被膜下空間などの骨外性部位である足場の中に静脈投与することをさらに含む。
【0073】
さらに別の実施形態において、本発明の前記方法において使用されるBMCは同種であるか、又は前記哺乳動物自身のものである。
【0074】
さらにさらなる実施形態において、本発明の前記方法において使用されるDBM又はMBMは脱灰骨薄片及び/又は石灰化骨薄片をそれぞれ含む。
【0075】
本発明のさらなる目的の1つは、BMTが、非血液学的目的のために、例えば、臓器移植のための移植寛容性の誘導などのために、そしてドナーのナイーブリンパ球又は免疫リンパ球をレピシエントに注入することによる養子的同種細胞媒介の免疫療法のための基盤として使用されるそのような場合においてもまたBMTを容易にすることである。
【0076】
本発明はまた、DBM又はMBMと組み合わせられた前記ドナー由来骨髄が、混合キメラ現象の状態を確立することによる寛容性の誘導のために作製された同種移植片又は異種移植片又は異所性オルガネラの中に投与されたとき、灌流後又は細胞性の同種移植片又は異種移植片の環境において、ドナーの同種抗原に対する宿主対移植片の移植寛容性を誘導することを目的とする。
【0077】
本発明の最後の態様は、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植するためのキットに関する。この場合、前記キットは、
(a)圧縮された形態にあるDBM及び/又はMBM;
(b)BM吸引ニードル;
(c)骨内骨穿孔用バー;
(d)BMC−DBM又はBMC−DBMの粘性混合物を注入するための肉厚内腔ニードル;
(e)BMC−DBMを、本発明の組成物を希釈するための希釈剤と同時に混合するための二方内腔コネクター;
(f)BMCを維持するための培地;そして任意選択で、
(g)BMCを、或いはBMCをDBM又はMBMと一緒に取扱い、かつ維持するための低温手段、
を含む。
【0078】
本発明のキットは、任意選択で、静脈内注射用のニードルを含むことができる。
【0079】
骨髄細胞と脱灰骨基質又は石灰化骨基質との混合物を骨内に投与することを含む本発明の主要な利点は、移植片とともに提供された前駆細胞に由来する新しい微小環境及び造血系を生じさせることができることにある。悪性の幹細胞又はその後代によって引き起こされる血液学的悪性腫瘍の患者の処置であって、すべての悪性細胞に対する放射線照射と同時に行われる骨髄幹細胞の置換が治癒をもたらし得る処置とは異なり、異常な幹細胞及び骨髄微小環境の両方を伴う問題を有する患者では、幹細胞移植だけでは、基礎的疾患を治すためには十分でないと考えられる。すなわち、いくつかの血液学的悪性腫瘍では、「種」の置換が十分であると考えられるのに対して、正常な成熟化及び分化のための適正なシグナルを新しく移植された幹細胞にもたらすことができない異常な環境が関連している患者では、「種及び土」の置換が必要とされ、そして不可欠であると考えられる。このことが、拒絶反応の徴候を全く伴わずに生着問題が観測されることがある場合において、そのような患者に対するBMT後の不成功の原因であるようである。したがって、正常な細胞遺伝学的分析を有し、かつ悪性幹細胞疾患の証拠を有しない患者では、自己のBMCをDBMとともに含む本発明の組成物は、造血を正常化するために十分であり得ると予測することができる。これに対して、前悪性の幹細胞又は明らかに悪性の幹細胞を有する患者では、本発明の組成物に含まれるBMCは、de novoでの造血再構成を最適に促進させるために同種ドナーに由来しなければならない。MDS患者の小さい割合における自家BMTの有益な作用は、実施例2に示される結果と合わせて、そのような方法が実際に有効であり、そして実施形態可能であり得ることを示唆している。まとめると、提案された処置に対する好適な候補者は、非常に悪性の支質を有するMDS患者であってもよく、そして同様に、二次的又は原発性の骨髄線維症を伴う血液学的悪性腫瘍に罹患している患者、並びに、何らかの原発性又は二次的な骨疾患によるか、或いは化学療法又は放射線による骨髄微小環境の他の一次的又は二次的な関与を伴う患者が好適であり得る。
【0080】
多くの刊行物が本明細書中に引用される。これらの参考文献の内容は全体が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0081】
本明細書中及び下記の請求項を通して、文脈が他の事項を要求しない限り、用語「含む(comprise)」及び変化形(「comprises」及び「comprising」など)は、述べられた整数又はステップ又は整数群又はステップ群を含み、任意の他の整数又はステップ又は整数群又はステップ群を排除しないことを意味することが理解される。
【0082】
本明細書中及び添付された請求項において使用される場合、「a」、「an」及び「the」の単数形態は、文脈が明らかにそれ以外のことを規定していない限り、複数の指示事項を含むことに留意しなければならない。
【0083】
下記の実施例は、本発明の様々な態様を実施する際に本発明者らによって用いられた技術を表している。これらの技術は、本発明を実施するための好ましい実施形態を例示する一方で、当業者は、本開示を考慮に入れて、本発明の精神及び意図された範囲から逸脱することなく、数多くの改変が行われ得ることを認識することを理解しなければならない。
【0084】
(実施例)
材料及び方法
1.動物
体重が180g〜200gである8週齢のC57BL/6雄性マウス及びLewis雄性ラットを、基質調製及びBMCの両方のために、骨ドナーとして使用した。同じバッチに由来するマウス及びラットをレピシエントとして使用した。
【0085】
2.脱灰骨基質(DBM)及び石灰化骨基質(MBM)の調製
脱灰骨基質(DBM)を、本発明者らによって改変されたが、記載[Reddi及びHuggins(1973)、上掲]のようにして調製した。ラットの骨幹皮質骨柱体を骨髄及び周囲の軟組織から除いて、砕き、磁気撹拌しながら広口瓶に入れた。骨チップを蒸留水中で2時間〜3時間洗浄し、無水アルコール中に1時間、そしてジエチルエーテル中に0.5時間入れ、その後、層流中で乾燥して、液体窒素とともに乳鉢において粉砕し、ふるい分けして、400μ〜1,000μの間の粒子を選択した。得られた粉末を0.6MHCl中で一晩脱灰し、数回洗浄して酸を除き、無水エタノール及びジエチルエーテルで脱水し、乾燥した。
【0086】
石灰化骨基質(MBM)を、HClを用いた脱灰化ステップを行うことなく、同じ手順に従って調製した。
【0087】
マウスを用いた実験を、以前の記載[Gurevitch他(1999)、上掲]のように、成体マウスの切除門歯から調製された脱灰歯基質を使用して行った。ラット及び大型動物の場合、長骨の皮質が、DBMを調製するための適した材料である。しかし、マウスでは、象牙質から調製されたDBMのみが十分に活性であり、再現性のある結果をもたらす。
【0088】
乾燥ステップを除くすべてのステップは、内因性のタンパク質分解酵素による骨形態形成タンパク質(BMP)の分解を防止するために4℃で行われた。これらの基質は−20℃で保存された。
【0089】
3.埋め込まれた材料の調製
移植用ドナーBMC懸濁物の調製:
ドナーマウス又はドナーラットの大腿骨から筋肉を除いた。骨髄栓子をマンドリンによって大腿骨管から機械的に押し出した。BMCの濃縮された単一細胞懸濁物を、4個〜5個の大腿骨栓子を100μlのRPMI1640培地(Biological Industries、Beit Haemek、イスラエル)中で破砕することによって調製した。大腿骨骨髄栓子あたりの有核細胞の数は、通常、かなり安定している(C57BL/6の雄性8週齢マウスについては約107細胞/栓子)。数回の再現し得る確認により、移植のために調製されたBMCの単一細胞懸濁物は約3x108個/mlの細胞を含有することが示された。
【0090】
移植片の組成物:
下記の成分を移植片に存在させることができる(各移植片は、図及び実施例に示されるようにその自身の組合せを有した):
1.20μlのBMC懸濁物(3x108細胞/ml);
2.4mgのDBM(又はMBM)が、ラットを用いた実験で使用された;2mgが、マウスを用いた実験で使用された;
3.0.5μgのBMP−2(R&D systems、アメリカ)が一部の実験では混合物に添加された。
【0091】
必要に応じて本発明の組成物に添加された外因性BMPは必須成分ではない。DBMは、BMC懸濁物内の移植された間葉性前駆細胞の生着を促す様々な性質、すなわち、骨及び軟骨の形成の途中におけるそれらの増殖及び分化を促す様々な性質を示す。同時に、DBMは、骨生成及び軟骨生成を刺激することにおいて活性である様々なBMPの天然の供給源であり、したがって、その誘導機能をも果たす。外因性BMPの添加により、その誘導効率を高めることができる。
【0092】
4.腎臓被膜下部位における移植
麻酔したラット又はマウスをレピシエントとして使用した。小さい切開を腎臓被膜において行い、そして移植物を、凹型スパチュラを使用して挿入した。
【0093】
5.骨の髄腔内のレピシエント骨髄の局所的摘出処理
ラットに麻酔し、右脚に1,000cGyの放射線を照射した。放射線は、0.2mmのCuフィルターを使用して、70cGy/分の割合でPhillips社のX線装置(250kV、20mA)によって送達された。線源から皮膚までの距離は40cmであった。
【0094】
局所的な放射線照射の後、小さい切開を右脚の膝関節の上に行った。大腿骨の髄腔に骨髄吸引ニードルを入れ、骨髄を吸い出した。残った骨髄を、19ゲージのニードルを付けたシリンジを使用して、3mlのリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)で洗い出した。
【0095】
6.骨の摘出処理された髄腔内へのBMCと脱灰骨基質との混合物の埋込み
麻酔後、膝関節を内側膝蓋傍部の切開によって露出させ、膝蓋骨を一時的に側方に移動させ、BMの局所的な摘出処理を記載の通りに行い、所望の材料を骨腔内に埋め込んだ。細胞及び骨基質を小さいマイクロピペットチップに入れて、それを骨内の穴に挿入し、そして移植物をマンドリンにより骨腔の内部に押し出した。切開部位をフィブリノーゲン−トロンビン組織接着剤で覆い、膝蓋骨を所定位置に戻し、切開部を生体吸収性糸で縫合した。皮膚をステンレス製クリップで閉じた。
【0096】
7.摘出処理された骨髄腔内にBMC及び脱灰骨基質を埋め込んだ後における再構成された骨−造血複合体のレーザー捕捉顕微解剖(LCM)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析
DBMと混合された雄性ドナーのBMCを雌性レピシエントの大腿骨の摘出処理された骨髄腔内に移植した実験において、PCR分析によって、新しく形成された小柱骨がドナー起源であること、並びに再構成された造血組織がドナー起源であることが、確認された[An,J.他(1997)、J Androl.、18(3):289〜93]。正確な顕微鏡コントロール下で組織断面から個々の細胞を単離することを可能にするレーザー捕捉顕微解剖(LCM)の新しい技術を使用して、新しく形成された骨組織及び造血組織から細胞を別々に集めた。集めた細胞(試験あたり約200細胞〜300細胞)のPCR分析を、Sry遺伝子(Y染色体の性決定領域)に特異的なプライマー組を使用して行った。
【0097】
8.組織学的評価
剖検材料を4%中性緩衝化ホルムアルデヒドで固定し、脱灰して、一連のエタノール段階物及びキシレンに通し、その後、パラフィンに包埋した。5ミクロン〜7ミクロンの連続切片を作製して、1組の代表的な連続切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、他方をピクロインジゴカルミンで染色した。
【実施例1】
【0098】
ラットにおける骨髄腔内又は腎臓の被膜下空間内への脱灰(又は石灰化)骨基質と一緒のBMCの移植
下記の実施例(本発明の組成物の開発に伴って行われた実験)では、DBMと一緒に骨髄腔内又は骨外に腎臓の被膜下空間内に移植されたとき、骨髄(BM)中に持続する間葉性幹細胞が誘導されて、骨及び維持可能な造血微小環境が形成され得ることが示される。一方がラットで行われ、もう一方がマウスで行われた2組の実験では、DBM又はMBMが単独で埋め込まれ、あるいは、さらなる骨形態形成タンパク質−2(BMP−2)が補充されたBMCと一緒に、又はBMP−2が補充されることなくBMCと一緒に埋め込まれた(群あたり少なくとも12個の移植片)。
【0099】
1段階の移植法を確立した。この移植法では、(a)小柱骨の形成、(b)維持可能な造血微小環境、そして(c)移植された骨髄に存在する間葉性前駆体細胞及び造血前駆体細胞から生じる造血を誘導するために、BMCと脱灰(又は石灰化)骨基質粉末(DBM又はMBM)との組成物が骨髄腔内又は骨外性的(腎臓の被膜下空間内)に挿入された。
【0100】
A.腎臓の被膜下空間内への移植
腎臓被膜下空間には、少なくとも2カ月〜3カ月の期間内で、骨生成状態に、そして骨を組み立てるように誘導され得る細胞が存在しないことが以前に示されていた[Gurevitch,O.A.他(1989)、Hematol Transfusiol、34:43〜45(ロシア語)]ので、腎臓被膜下空間が移植部位として選択された。
【0101】
ラットにおいて、BMCを伴うことなくDBM(又はMBM)を移植した1カ月後、造血の徴候が全くないことが観測された。埋め込まれた基質粒子は、移植部位に依然として存在しており、分解していなかった(図1A及び図1C)。これに対して、DBMがBMCと一緒に移植された部位では、活発な多系統の造血が観測され、そして移植された基質粒子の顕著な分解もまた認めることができる(図1B)。造血を維持することができる新しい骨の形成もまた、BMCと一緒にMBMが腎臓被膜下に埋め込まれたときに観測された(図1D)。しかし、移植されたMBM粒子の分解、並びに小柱系の発達は、BM細胞がDBMと一緒に移植された場合と比較して、わずかに遅れていた。
【0102】
興味深いことに、外因性BMPをBMC+DBMの移植片に添加することにより、造血を維持する間質微小環境の発達が促進された。BMCだけの移植では、造血組織の発達は生じなかった(図1J)。
【0103】
BMCを伴うことなくDBM(又はMBM)を移植した6カ月後、依然として造血の徴候は全く見られなかった。埋め込まれた基質粒子は、依然として移植部位に存在していた(図1E及び図1G)。これに対して、DBMをBMCと一緒に移植した6カ月後では、新しく形成された造血部位が自己維持及びリモデリングを続けていた。十分に発達した造血領域について特徴的な活発な造血を有する広範囲の腔が観測された(図1F)。MBMをBMCと一緒に移植した6カ月後、新しく形成された造血部位は、DBMをBMCと一緒に移植したときに発達した造血部位と形態学的にほとんど区別することができない(図1H)。1年後、DBM(又はMBM)をBMCと一緒に移植した結果として発達した新しい造血部位は、変性の徴候を何ら伴うことなく、自己維持を続けていた(図1I)。
【0104】
マウスで行われた類似する1組の実験は類似した結果をもたらした。すなわち、DBMとBMCとの混合移植は、腎臓被膜下において生涯にわたって自己維持することができる新しい機能的に活発な造血部位の発達を誘導し(図5B、図5E及び図5H)、その一方で、DBM又はBMCの単独移植は同じ結果を示さず、すなわち、新しい造血組織の形成は観測されなかった(図5A、図5D及び図5G)。BMP−2の添加により、新しい造血部位の発達が高められた(図5C、図5F及び図5I)。
【0105】
B.骨髄腔内への移植
ラットで行われた別の1組の実験において、DBMが、BMCと一緒に、又はBMC及びBMPと一緒に、局所的に放射線照射された脚の摘出処理された大腿骨の骨髄腔内に直接埋め込まれた(各実験群において少なくとも6匹の動物)。BMCを伴わないDBMの大腿骨内への埋め込みを行った2週間後、新しい造血組織がかすかに認められた(図2A)。これに対して、DBMがBMCと一緒に埋め込まれたとき、新しく形成された活発な造血組織が観測された(図2B)。DBM及びBMCからなる移植片へのBMPの添加により、造血複合体の発達が高められた(図2C)。
【0106】
摘出処理された骨髄腔内にBMCと一緒にDBMを直接移植した1カ月後、活発な造血の広範囲の発達が認められたが、部分的に分解したDBM粒子が大腿骨腔の骨幹領域には依然として存在していた(図3B)。BMPが移植混合物に補充されたとき、骨造血複合体の発達プロセスが促進され、DBMの小さい粒子のみが大腿骨骨幹において依然として認められるだけである(図3C)。DBM−BMCの混合物を大腿骨内に移植した2カ月後、処置された骨の大腿骨骨幹の骨造血複合体は、損傷を受けていない骨造血複合体とほとんど区別することができない(それぞれ、図3D及び3F)。移植の5カ月後、新しい骨造血複合体は、変性の徴候を何ら伴うことなく、自己維持を続けていた(図3E)。大腿骨骨幹の十分に発達した、活発に機能する骨造血複合体は、レピシエントの全寿命期間を通して、自己維持及びリモデリングを続けた。
【0107】
DBMと混合された雄性ドナーのBMCが雌性レピシエントの大腿骨の摘出処理された骨髄腔内に移植された実験において、新しく形成された造血組織がドナー起源であることが、LCM技術を使用して正確な顕微鏡制御のもとで組織断面から単離された個々の細胞(試験あたり約70細胞〜100細胞)のPCR分析によって明らかにされた(図4)。
【実施例2】
【0108】
末期疾患患者の処置
実施例1において理解されるように、適正な条件のもとでは、造血幹細胞は、正常な骨髄間質細胞と一緒に接種された場合にだけ、完全に機能的な造血性の骨を作り出すことができる。同様に、骨形態形成タンパク質(BMP)は、骨髄細胞性、幹細胞生着、及び骨髄機能が除去されたレピシエントの救済効率を高めることができる。腎臓被膜下におけるDBMと骨髄幹細胞との混合物に由来する新しく生じた骨の組織学的検査により、完全に機能的な造血性の骨が2週間〜4週間で生じたことが特徴として明らかにされた。髄外造血の誘導が可能であることは、患者自身の微小環境が損傷しているか、又は存在しない状況において微小環境を誘導するために、本発明者らの新しい方法が適用可能であり得ることを示唆した。上記の観測結果に基づいて、本発明者らは、微小環境及び活発な造血を伴う新しい骨形成は、異常な幹細胞を有する、進行した段階のMDS(骨髄異形成症候群)患者については、微小環境を正常化させるために、そして同様に、異常な幹細胞を置換するために有用であるかもしれないという仮説を立てた。
【0109】
前臨床動物モデルにおける予備的経験:
致死量の放射線が照射され、そして幹細胞の量を増大させながら、幹細胞の単独注入又は骨髄微小環境と一緒の注入により処置されたマウスにおいて得られた結果は、幹細胞が単独で与えられた場合と比較して、微小環境と組み合わせられたとき、より少ない数の幹細胞が、すべてのレピシエントを救済するために十分であったことを示していた(データ示さず)。これらのデータは、微小環境の本質的な役割、そして最適なBMTのために幹細胞と微小環境とを組み合わせることのさらなる利点を裏づけている。
【0110】
症例1
Z.S.(53歳の女性患者)は、白血病に転化したMDSの処置のために、2001年9月初旬、Hadassah大学病院(Jerusalem、イスラエル)の骨髄移植部門に入院した。患者は細胞遺伝学的異常及び骨髄線維症を示したが、骨髄線維症は、静脈切開(phlebolomy)、ブスルファン、ヒドロキシウレア及びインターフェロンで以前に処置された真性赤血球増加症の後に発症したものであった。細胞遺伝学的分析により、13の有糸分裂のうちの4つにおいて、46XX+1、der(1;7)(q10;p10)が明らかにされた。同種BMTが最良の処置であり、一致した血縁者が実際に存在していた。患者は、移植の4日前から開始して、フルダラビン(30mg/m2で6回)、ブスルファン(4mg/Kgで4回)及びシクロスポリン(3mg/Kg)で前処置された。このプロトコルは、これまでに処置されたすべての患者において、即座の生着と、3系統の造血の迅速な発達とをもたらしていた。残念なことに、患者は十分な数のドナー幹細胞(35.7x108個/Kgの有核細胞)を受けたが、生着は、移植後22日までは観測されなかった。完全な形成不全症のために、患者の状態が悪化し始めたので、抗生物質の投与と、逆分離での血小板輸血で維持することとが必要となった。ドナーの骨髄細胞と混合されたDBMを含む本発明の組成物を用いた実験的な骨内移植を行う許可を、Hadassah医学機構(Hadassah大学病院(Jerusalem、イスラエル)付属)のInternal Helsinki委員会及びイスラエル保健省に申請した。Internal Helsinki委員会及び保健省からの承認、並びに患者によるインフォームドコンセントを得た後、DBMと組み合わせたドナーBMCの骨内移植が下記のように行われた。2001年11月5日、患者に、硬膜外麻酔のもとで得られた、同じドナーに由来する合計で2.93x108個/kgの骨髄由来細胞が投与された。このとき、抗GVHD予防は何ら行われなかった。市販のDBMをPacific Coast Tissue Bank(Los Angeles、CA、アメリカ)から購入した(粒子サイズ:250μ〜500μ)。2.17x108個/kgの骨髄幹細胞を静脈内注入した。合計で20ml(乾燥体積)の粉末DBMをドナーBM濃縮物(X5)の懸濁物と1対4の比率(体積/体積)で混合して、4カ所に注射した(脛骨の上部部分の両側及び仙骨の2カ所)。DBMと0.76x108個/kgの骨髄細胞との混合物を、混合物の粘度を低下させるためにBMC−DBMと希釈剤とを同時に混合するための二方内腔コネクターに接続された、日常的な臨床実施における骨髄生検のために使用されているニードルを用いて注射した。この手順は鎮静下及び局所麻酔下で行われ、したがって完全に無痛であった。手順当日を0日目と見なした。活発かつ迅速な3系統の造血が5日目に始まり、すべての血液計測値が正常なレベルに迅速に戻った。患者は、2001年11月9日に絶対好塩基球数が1x109/Lに達し、そして2001年11月11日に血小板数が25x109/Lを越え、50x109/Lを越える血小板数が11月15日から始まった。幹細胞及びDBMの注入後38日目に、患者は、優れた全身的状態で退院した。ドナー造血細胞の100%の生着が、Y染色体特異的なアメロゲニン遺伝子のPCRにより検出される男性DNAが末梢血細胞に存在することによって確認された。診療科への最後の診察まで、患者は、完全に再構成された3系統の生着を伴って元気であり、優れた臨床的状態であった。移植後に調べられた合計で20個の有糸分裂は、正常な46XYの核型が明らかにされた。
【0111】
まとめると、この症例は、造血微小環境を正常化することにより、同種幹細胞が維持され得ること、そしてこれが、DBMと混合されたドナー骨髄細胞の骨内移植によって可能であることを示唆する最初の症例である。したがって、この症例は、骨髄微小環境が損なわれている患者では、幹細胞移植が、幹細胞をDBMとともに混合投与することによって高められ得ることを示唆している。
【0112】
症例2
Y.V.(22歳の男性患者)は、芽球過剰性MDS(RAEB)のための、2001年に行われた適合した血縁者からの骨髄移植の後における汎血球減少症の処置のために、2002年1月、Hadassah大学病院(Jerusalem、イスラエル)の骨髄移植部門に入院した。1997年、16歳のときに、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)と診断されたが、1999年まで、標準的な寛解導入及び維持プロトコルでの処置に成功していた。2001年7月に、患者は、衰弱の増悪、倦怠感及び進行性汎血球減少症によって特徴づけられる二次的なMDSを発症した。骨髄生検でRAEBが確認された。細胞遺伝学的研究により、MDSの典型的な染色体異常である第5染色体の欠失が示された。患者は、この状態の唯一の可能な治療法である骨髄移植のために入院した。2001年9月に、患者は、フルダラビン(30mg/m2で6日間)及びブスルファン(4mg/kgで4日間)による骨髄破壊性前処置の後、完全にHLAが一致した兄弟からの同種幹細胞移植を受けた。0日目に、患者は、G−CSFで動員した血液幹細胞を、合計で54x108個/kgの有核細胞でそのドナーから受けた。シクロスポリンA(CSA)(3mg/Kg)が、単独の抗GVHD予防として、移植法の4日前から開始して与えられた。移植後の経過は併発症を伴わなかった。患者は、14日目に生着し、大きな併発症を伴うことなく退院した。患者は急性GVHDの徴候を何ら示さず、外来診療科で追跡調査した。
【0113】
1カ月後、患者は、サイトメガロウイルス(CMV)抗原血症を伴う長期の進行性汎血球減少症を発症した。ガンシクロビルによる静脈内処置の後、CMV感染の徴候は消失したが、汎血球減少は持続した。血液DNA分析により、患者はドナー/レピシエントの混合キメラ現象の特徴を有することが示された。このことは、宿主の造血が共存していることを示唆している。骨髄吸引により、明らかな骨髄性白血病に転換しているMDSが明らかにされ、患者は骨髄移植部門に再入院した。GVHDの徴候又は症状は全く見られず、したがって、CSAを中止した。高用量のAra−C及びミトキサントロンからなる化学療法を行った。2001年12月23日に、患者は、同じドナーに由来する非常に多数(26x108個/kgの単核細胞)のG−CSFで動員した血液幹細胞によるその後の救済を受けた。このとき、抗GVHD予防は何ら行われなかった。これは、ドナーの同種反応性T細胞によって媒介される最大の移植片対白血病(GVL)効果を誘導するために移植後の再発を処置するための好ましいプロトコルである。化学療法により誘導される形成不全(+7日目までの0.3x109/L未満のWBC)の後、白血球数は0.4x109/Lと0.6x109/Lとの間の範囲であり、末梢血塗抹標本には顆粒球がほとんど見られなかった。同じドナーからの凍結血液幹細胞(9.3x108個/kgの単核細胞)による追加注入は、好中球数の増大を何ら示さなかった。G−CSFを用いた処置(5μg/kg、次いで10μg/kg)も、絶対的好中球数を同様に増大させなかった。患者は、4日間にわたって40℃に進行した、軽度の持続性の発熱を移植後3週間にわたって示した。重症の汎血球減少症にもかかわらず、2002年1月13日に行われた、宿主によるキメラ現象に対する最後のアッセイ及びドナーDNA分析(VNTR−PCR)により、100%のドナー造血が確認され、したがって、形成不全の考えられる原因としての拒絶反応がないことが確認された。同じ日に行われた骨髄吸引により、前駆体がほとんどない重度の低細胞性が示された。このことは、骨髄生検によってもまた確認された。まとめると、これらのデータは、ドナー造血細胞の生着の確固たる証拠にもかかわらず、骨髄形成不全を示唆していた。これは、造血性増殖因子に全く応答しない損なわれた骨髄微小環境、すなわち、骨髄形成不全を生じさせる命を脅かす臨床的状態のためであることが最も考えられる。そこで、ドナー幹細胞の迅速な生着を可能にすることを目指して、DMBと混合されたドナー骨髄細胞を骨髄腔内に再注入することを決定した。
【0114】
2002年1月28日に、患者によるインフォームドコンセントとともにInternal Helsinki委員会及び保健省からの承認の後、合計で2.48x108単核細胞/kgの新鮮な骨髄細胞を硬膜外麻酔のもとで同じドナーから吸引した。市販のDBMをPacific Coast Tissue Bank(Los Angeles、アメリカ)から購入した(粒子サイズ:250μ〜500μ)。合計で20ml(乾燥体積)の粉末DBMをドナー骨髄濃縮物(X5)の懸濁物と1対4の比率(体積/体積)で混合して、4カ所に注射した(脛骨の上部部分の両側及び仙骨の2カ所)。2/3の細胞(1.65x108/Kg)を静脈内投与し、そして0.83x108個/kgの有核細胞を含有するDBMと混合された1/3の細胞を骨内に接種したが、ほとんどが上後腸骨棘内に接種された。BMC−DBM混合物は、ニードルから骨髄腔内への流れの閉塞を防止するために希釈しなければならなかった。手順は、プロポホル麻酔を使用して患者の部屋での軽い麻酔のもとで行われた。DBMと骨髄細胞との混合物は、混合物の粘度を低下させるためにDBM及び骨髄細胞を希釈剤としての緩衝化生理的食塩水と同時に混合するための二方内腔コネクターに接続された、日常的な臨床実施における骨髄生検のために使用されているニードルを用いて注射された。この手順は鎮静下及び局所麻酔下で行われ、したがって完全に無痛であった。手順当日を0日目と見なした。移植後、造血の早い再構成が観測され、4日〜5日以内に白血球数が2倍以上になり、8日目には4.9x109/Lまでのレベルに達した。血小板数は、8日目には10x109/Lから49x109/Lに増大し、11日目には83x109/Lに倍増した。同時に、ヘモグロビンレベルが8.0g%から10.1g%に自発的に増大した。さらに、患者の状態が劇的に改善され、患者の元気が改善され、そして患者はベッドから移動することができた。生着には、33IUへのビリルビンの穏やかな上昇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の16IUから62IUへの上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の23IUから90IUへの上昇、そして乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の338IUから618IUへの上昇を伴う移植片対宿主疾患の様々な徴候が付随していた。下痢はコルチコステロイドで処置した。最後の検査まで、白血球の示差的な計数は、84.6%までが顆粒球であることを示し、リンパ球が10%〜23%の間であり、単球が10%〜21%の間であった。芽球の証拠はなく、すべての血液細胞は、VNTR−PCRによって確認されるように、ドナー起源であった。
【0115】
まとめると、静脈内骨髄細胞と、DBMと混合された同種骨髄細胞の骨内への移植との混合使用を伴う新しい移植法は、異常な骨髄微小環境を以前に有していた2名のMDS患者において、ドナー造血細胞の迅速かつ完全な再構成をもたらした。本発明者らのデータは、類似する手法が、異常な骨髄微小環境に関連する他の疾患、又は異常な骨髄微小環境によって引き起こされる他の疾患を処置するために有用であることが証明され得ることを示唆している。これは、上記に示された2つの症例において例示されたように、正常な幹細胞を有する患者については自家骨髄移植後の宿主幹細胞の投与との組合せであるか、又は骨髄細胞及び微小環境の混合異常を有する患者については同種骨髄移植との組合せであるかのいずれかであると考えられる。
【0116】
さらに、DBMと一緒のBMCによる造血再構成が、DBM中に天然に存在する骨形態形成タンパク質(BMP)などの形態形成性の増殖因子でこの混合物を外部から富化することによってさらに高められ得ると推定することは妥当であるようである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】腎臓被膜下移植後のラット腎臓切片の光学顕微鏡写真を示す(図1A〜図1J)。図1A:DBMだけを移植した1カ月後(ピクロインジゴカルミン(PIC)染色)。図1B:BMC+DBMを移植した1カ月後(ヘマトキシリン−エオシン、H&E)。図1C:MBMだけを移植した1カ月後(PIC染色)。図1D:BMC+MDMを移植した1カ月後(H&E)。図1E:DBMだけを移植した6カ月後(PIC染色)。図1F:BMC+DBMを移植した6カ月後(PIC染色)。図1G:MBMだけを移植した6カ月後(PIC染色)。図1H:BMC+MDMを移植した1カ月後(PIC染色)。図1I:BMC+DBMを移植した1年後(PIC染色)。図1J:BMCのみをを移植した1年後(PIC染色)。略号:Al.、単独;Mo.、月数。
【図2】埋込み後15日目の局所放射線照射ラット大腿骨の摘出処理された骨髄腔の長さ方向の切片を示す(H&E)(図2A〜図2C)。図2A:DBMのみを用いた移植。図2B:DBM+BMCを用いた移植。図2C:DBM+BMC+BMPを用いた移植。略号:BMC、骨髄細胞;BMP、骨形態形成タンパク質;DBM、脱灰骨基質;HT、造血組織。略号:HT、造血組織;H&E、ヘマトキシリン及びエオシン。
【図3】摘出処理された骨髄腔における損傷した骨−造血複合体が脱灰骨基質及び骨髄細胞の移植によって正常化したことを示す(ラット大腿骨の摘出処理された骨髄腔の長さ方向の切片、ピクロインジゴカルミン染色、全体写真−8倍/顕微鏡写真−100倍)(図3A〜図3F)。図3A:摘出処理直後。図3B:DBMをBMCと一緒に移植した30日後。図3C:BMPが補充されたDBMとBMCとの混合物を移植した30日後。図3D:DBMをBMCと一緒に移植した60日後。図3E:DBMをBMCと一緒に移植した150日後。図3F:コントロール、非摘出処理大腿骨。略号:D.、日数;Po.Abl.、摘出処理後;Po.Transpl.、移植後;N.Abl.Fe.Bo.、非摘出処理大腿骨。
【図4】摘出処理された骨髄腔の新しく再構成された造血複合体から捕捉された細胞のレーザー捕捉顕微解剖(LCM)及びPCR分析(DBM+BMCを移植した1カ月後)(図4A〜図4E)。図4A:左、ラットの摘出処理された大腿骨。右、大腿骨の摘出処理された骨髄腔におけるLCMのための目的領域の顕微鏡写真。図4B:再構成された骨髄のレーザー照射領域。図4C:レーザー照射されたキャップ部(PCR分析のために捕捉された細胞)。図4D:レーザー照射されたキャップ部の高倍率(10倍)。図4E:LCMによって集められたドナー由来細胞のPCR分析。レーン:1、DNAサイズマーカー(HaeIIIによるφX714切断物)、左側の上の矢印及び下の矢印は194bp長のバンド及び118bp長のバンドをそれぞれ示す;2、雌性ラットの摘出処理された骨髄腔の小柱骨領域に由来する雄性ラットDNA;3、雌性ラットの摘出処理された骨髄腔の骨髄領域に由来する雄性ラットDNA;4、内部陽性コントロール、雄性血液に由来するDNA。PCRの結果により、新しく再構成された造血複合体にドナー由来の細胞が存在することが確認される。略号:D.日数;Po.Abl.Mar.Cav.、摘出処理後の骨髄腔;Targ.Ar.LCM AMC、摘出処理された骨髄腔のレーザー捕捉顕微解剖のための目的領域;Mar.骨髄;Lan.、レーン;Det.Don.Der.Cel.PCR Anal.、PCR分析によるドナー由来細胞の検出。
【図5】腎臓被膜下移植後のマウス腎臓切片の光学顕微鏡写真を示す(ピクロインジゴカルミン(PIC)染色)(図5A〜図5J)。図5A:DBMだけを移植した1カ月後。図5B:BMC+DBMを移植した1カ月後。図5C:BMC+DBMをBMPと一緒に移植した1カ月後。図5D:DBMだけを移植した4カ月後。図5E:BMC+DBMを移植した4カ月後。図5F:BMC+DBMをBMPと一緒に移植した4カ月後。図5G:DBMだけを移植した12カ月後。図5H:BMC+DBMを移植した12カ月後。図5I:BMC+DBMをBMPと一緒に移植した12カ月後。図5J:BMCのみをを移植した4カ月後。略号:Al.、単独;Mo.、月数。
【0001】
本発明は、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質(それぞれ、DBM及びMBM)とを含む組成物、並びに骨髄移植におけるその新規な使用に関する。本発明の組成物は、間質微小環境を回復させること、造血を維持すること、そして造血組織を発達させることにおいて特に効果的であると考えられる。
【背景技術】
【0002】
造血系の発達及び機能が間質起源のその微小環境によって維持され、かつ調節されていることが広く知られている(出生後、造血は骨格骨に完全に限定される)[Dorshkind,K.(1990)、Ann Rev Immunol、8:111;Bentley,S.A.(1981)、Exp Hematol、9:303;Smith,B.R.(1990)、Yale J.Biol Med、63:371〜380]。
【0003】
正常な骨髄機能は、正常な造血幹細胞及びその微小環境(これらはほとんどが骨の髄質部に存在する)が同時に存在することに依存する。幹細胞は、十分な微小環境がない場合には正しく機能することができない。幹細胞の不足又は異常な幹細胞によって引き起こされる悪性又は非悪性の血液学的疾患では、幹細胞移植が、治癒をもたらす最良の処置であるのに対して、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症、及び異常な微小環境に関連する他の状態などの疾患では、細胞遺伝学的な異常を全くを認めることができない明らかに正常な造血細胞が存在するにもかかわらず、汎血球減少症が生じることがある。実際、そのような患者では、不応性貧血の正常化がときには自家骨髄移植後に達成され得るが、成功率は、他の血液学的悪性腫瘍における移植組織の結果と比較してかなり悪い。過剰な芽球を伴うMDS(これはまた芽球過剰性不応性貧血(RAEB)として知られている)、芽球の形質変換を伴うMDS(RAEB−T)、又は完全に顕性化した白血病(overt lukemia)を伴うMDSでは、疾患は、通常、悪性の骨髄幹細胞と異常な骨髄微小環境との組合せによって引き起こされる。MDS患者における生着及び無疾患生存に関する成功率は、急性白血病及び慢性白血病の患者において認められる成功率よりも低い。この理由としては、適正な生着及び正常な骨髄機能のためには、幹細胞だけを置換しても不十分であるかもしれないということが最も考えられる。理論的には、異常な幹細胞を置換し、かつ新しい微小環境を提供することによって、骨髄移植(BMT)の結果は改善することができると考えられる。
【0004】
同種BMTでは、健康なドナーから得られた同種骨髄幹細胞を、必要としている患者に移入することが伴う。BMT後、患者の骨及び造血領域はドナーの細胞で再構成され、赤血球、血小板、有核細胞を含む造血系全体、循環性及び組織結合型細網内皮系並びに免疫系全体がドナー起源のものに変換される[Slavin S.及びNagler A.(1991)、Curr Opin Oncol、3(2):254〜71]。BMTは、骨髄生成物のいずれかにおける不全症を含む非常に多くの造血障害を処置及び正常化するために、異常な幹細胞の置換を必要とする場合に、そして非常に多くの遺伝的障害に広範囲に適用することができる[Buckley R.H.(1993)他、Semin Hematol、30(4、増刊4):92〜101;Brochstein J.A.(1992)、Oncology(Huntingt)、6(3):51〜8;考察58、63〜6]。あるいは、BMTは、ガン治療のために、そして骨髄破壊性化学放射線療法を受けている患者の救剤のために広く使用されている[Slavin S.及びNagler A.(1991)、上掲]。BMTには多くのさらなる潜在的な適用がある。例えば、臓器移植における移植寛容性の誘導[Sykes M.及びSacks D.H.(1990)、Semin Immunol、2:401〜417]などがあり、そしてドナーリンパ球の注入に関連する免疫療法に対する基盤としての適用[Champlin R.(1991)、Transplant Proc、23(4):2123〜7;Brenner M.K.及びHeslop H.E.(1991)、Baillieres Clin Haematol、4(3):727〜49;Slavin S.他(1991)、Baillieres Clin Haematol、4(3):715〜25]がある。骨髄破壊性前処置後、宿主の免疫造血系のすべてをドナータイプの細胞で置換するためにBMTを使用することができる。あるいは、非骨髄破壊性前処置の後、混合キメラ現象を誘導するために宿主の造血と併存してドナー造血の永続した生着を達成するよう、BMTの役割を向かわせることができる。
【0005】
残念なことに、BMTの適用性は、下記のようないくつかの制約によって制限されている:
1.BMTが適応される特定の血液学的疾患はまた、骨髄の微小環境にも影響を及ぼすことがあり、したがって、幹細胞移植だけでは、完全な血液学的回復を得るためには不十分なことがある[Enright H.及びMcGlave P.B.(1995)、Curr Opin Hematol、2(4):293〜9;Koijima S.(1998)、Int J Hematol、68(1):19〜28;Gidali J.他(1996)、Stem Cells、14(5):577〜583]。
【0006】
2.同種骨髄細胞(BMC)(特に、純化された幹細胞又はT細胞除去幹細胞)の効率的な安定した生着には、得ることが困難であり得るか、又は得ることさえできない、非常に多くの幹細胞(例えば、細胞数が限られている臍帯血幹細胞、小児から成人への輸血、など)の移入を必要とする[Reisner Y.及びMartelli M.F.(1995)、Immunol Today、16:437;Rowe J.M.他(1994)、Ann Intern Med、120(2):143〜58]。
【0007】
3.造血障害の患者における幹細胞の生着、特に、放射線照射又は化学療法による強制的な前処置の後に処置される患者における幹細胞の生着は、造血微小環境が損傷しているために、効率がかなり低い[Enright H.及びMcGlave P.B.(1995)、上掲;O’Flaherty E.他(1995)、Bone Marrow Transplant、15:207]。
【0008】
4.血液学的障害の患者において今日まで適用されているような同種BMTは、多くの場合、手法に関連した毒性、生着不良、及び移植片対宿主疾患(GVHD)をもたらす抗宿主反応によって複雑化している[Lazarus H.M.他(1997)、Bone Marrow Transplant、19:577;Quinones R.R.(1993)、American J.Pediatric Hematology/Oncology、15(1):3〜17]。
【0009】
上記の制約を考慮して、本発明の主要な目的の1つは、造血微小環境が損傷しているレシピエントにおけるBMCの改善された生着である。本発明者らが最近明らかにしたように、ドナーの造血微小環境の中におけるBMCの移植はGVHDの発生率を低下させた[Gurevitch O.A.他(1999)、Transplantation、68:1362〜1368]。したがって、GVHDを処置するために免疫抑制剤を使用することによる手法関連毒性が同種BMTに伴うとき、合併症を避けることができる。さらに、移植手法の改善により、移植のために必要とされるBMCの数の削減がもたらされた。
【0010】
本発明者らは、脱灰した骨基質又は歯基質を異所的に移植した後、マウスにおいて発達した誘導された骨及び造血微小環境が、骨格骨の主な性質を示すことを以前に明らかにしている[Gurevitch O.A.(1990)、Int.J.Cell.Clon.8:130〜137;Gurevitch O.A.及びFabian I.(1993)、Stem Cells、11:56〜61]。下記の観測結果が得られた:
a.誘導された骨における造血微小環境は、完全に発達した3系統の造血を持続させることができる。
b.誘導された骨における造血微小環境は、脾臓におけるコロニー形成単位(CFU−S)によって最も良く表すことができるように、造血幹細胞の増殖能力を維持することができる。
c.de novoで誘導された造血微小環境は、何らかの外部からの補充物をさらに加えることなく、長期間の維持及びリモデリング及び自己更新が可能である。一旦発達すると、誘導された骨は、機能的に活性な造血領域を有する異所的な位置における永続的な構造体になる。
【0011】
これらの観察結果は、造血微小環境の誘導が、造血を強化するためだけでなく、間質障害及び造血障害を正常化するための有望な方法であり得ることを示唆している。
【0012】
移植されたBMCの生着は、造血細胞が骨移植片と一緒に移入されたとき[Ishida T.他(1994)、J Immunol、152:3119〜3127;Hisha H.他(1995)、Exp Hematol、23:347〜352;Sandhu J.S.他(1996)、Blood、88(6):1973〜1982;Nakagawa T.他(1993)、Arthritis and Rheumatism、36:263〜268]、又は造血細胞がドナー起源の間質細胞の注射と一緒に移入されたとき[Lazarus,H.M.他(1995)、Bone Marrow Transplantation、16:557〜564;El−Badri,N.S.他(1998)、Exp Hematol、26:110〜116]に改善される。1999年に、本発明者らは、造血BMCがそれら自身の造血微小環境の中に移入された場合、GVHDが抑制されることを示している[Gurevitch O.A.(1999)、上掲]。同種骨髄は、造血幹細胞のみが生着することができる単一細胞懸濁物の通常の形態においてではなく、ドナーマウスの大腿骨骨髄腔から取り出された乱されていない骨髄栓子の形態で移植した。ドナーの骨髄栓子はレピシエントの腎臓被膜下に置いた。ほとんど臨床的には適用することができないこのケースでは、乱されていない多細胞構造体の形態にある移植組織に存在する間葉性細胞により、移植された造血細胞に対する異所性(骨外性)の微小環境が、同じ骨髄栓子の中にもたらされる。
【0013】
しかし、骨の骨芽細胞又は骨髄栓子の移植は、多くの技術的制約のために、臨床的実施においては未だ広く受け入れられていない。
【0014】
現行のBMC移植法のすべてに対する1つの大きな欠点は、造血細胞と、造血を維持させる間質微小環境との両方を同時に移入することができないということである。血液学的操作において現在使用されているBMC移植法では、実際、ドナーから得られた造血細胞のみがレピシエントにおいて生着しているだけである。
【0015】
BMCは、造血細胞と、誘導された骨生成が可能である間葉性幹細胞との両方の供給源を提供し得るという考えに基づいて、本発明者らは、ドナーBMC移植組織から生じる造血組織及び間質組織を同時に発達させることを可能にする、BMCとDBM及び/又はMBM(間葉性前駆細胞の骨生成発達を刺激し、かつ維持する物質)とを含む組成物の移植を提案する。
【0016】
より詳細には、(BMCとDBM及び/又はMBMとを含む)本発明の組成物は、レピシエントの骨髄腔内又は骨外性的に直接移植され、これにより、造血を持続させる間質微小環境と、同じ移植されたBMC懸濁物に由来する造血組織とのde novo形成がもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の主要な目的の1つは、例えば、血液学的障害に罹患している患者のような、そのような処置を必要としている患者への移植のために使用される、骨髄細胞と脱灰骨基質又は石灰化骨基質との混合物である。
【0018】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、本説明を読んだときに明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質(それぞれ、DBM及びMBM)とを含む組成物、並びに骨髄移植におけるその新規な使用に関する。
【0020】
したがって、第1の態様において、本発明は、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む組成物に関する。
【0021】
別の態様において、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む前記組成物は、ヒトであってもよい哺乳動物への骨髄移植(BMT)のために使用されるためのものである。好ましくは、本発明の組成物は、哺乳動物(好ましくはヒト)へのBMTのために使用されるBMCとDBMとを含む。
【0022】
本発明の組成物の移植部位は骨髄腔であり得る。あるいは、前記移植部位は、患者の腎臓被膜下空間、筋肉、腹腔壁、並びに寛容性誘導のための同種移植片の腎臓又は肝臓又は心臓被膜からなる群から選択される骨外性部位であり得る。
【0023】
別の実施形態において、本発明の組成物は骨形態形成タンパク質(BMP)をさらに含む。
【0024】
さらに別の実施形態において、本発明の組成物に含まれるDBM及び/又はMBMは脊椎動物起源であり、そしてヒト起源であってもよい。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明の組成物に由来するDBM及び/又はMBMは粉末形態又は薄片形態である。本発明の組成物において使用されるDBMは、粒子サイズが約50μ〜2500μであり得る。好ましくは、DBMの粒子サイズは約250μ〜500μである。
【0026】
本発明の組成物に含まれるBMCとDBMとの比率は、0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)であり、好ましくは、1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)である。
【0027】
さらにさらなる実施形態において、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化させるために骨髄腔内に移植されるためのものである。さらに、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を発達させるために骨外性部位内に移植されるためのものである。新しく形成された造血微小環境が、移植されたBMC懸濁物に存在する間葉性前駆細胞の分化から生じる。
【0028】
したがって、さらなる実施形態において、本発明の組成物は、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症、異常な幹細胞及び/又は生成物をもたらす遺伝的状態、悪性起源の造血障害、並びに、骨構造及び/又は骨組成のいずれか(すなわち、造血を維持及び調節する間質微小環境)に主に影響を及ぼす疾患、骨形成不全症、ムコ多糖症及びムコリピドーシスから選択される血液学的障害に罹患している患者の処置に使用されるためのものである。
【0029】
別の態様において、本発明は、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植/埋込みするための方法に関する。この場合、この方法は、BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物に導入することを含み、前混合物は任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含む。
【0030】
1つの実施形態において、本発明の混合物は、任意選択で、正常な組織膜内及び/又は栄養物、サイトカイン及び細胞の浸透を可能にし、かつDBM粒子及び/又はMBM粒子がその中に保持される選択的な生体適合性膜内にカプセル化される。
【0031】
別の実施形態において、前記混合物は、前記哺乳動物の骨髄腔内及び/又は前記哺乳動物の骨外性部位内に導入される。骨外性の移植部位は、腎臓被膜、筋肉、肝臓、腹腔壁及び血管からなる群から選択される。
【0032】
さらにさらなる実施形態において、本発明の移植方法において使用される混合物はBMPをさらに含む。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、骨髄移植が必要とされる、造血障害、並びに/或いは骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を、そのような障害の処置を必要とする哺乳動物に対して、処置する方法に関する。前記本発明の方法は、BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物の骨髄腔又は骨外性部位の中に投与することを含み、前記混合物は任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含む。
【0034】
1つの実施形態において、本発明の前記方法において使用される前記混合物は、任意選択でBMPをさらに含む。
【0035】
別の実施形態において、本発明の前記方法は、好ましくは静脈内注入及び骨内注入との組合せで、微小環境の発達を高めるBMP及び/又は他の因子(例えば、造血性増殖因子など)とともに、或いはそれらを用いることなく、前記患者に幹細胞懸濁物を投与することをさらに含む。
【0036】
さらに別の実施形態において、本発明の前記方法において使用されるBMCは同種であるか、又は前記哺乳動物自身のものである。
【0037】
さらにさらなる実施形態において、本発明の前記方法において使用されるDBM又はMBMは、それぞれ、脱灰骨薄片及び/又は石灰化骨薄片を含む。
【0038】
本発明の最後の態様は、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植するためのキットに関する。このキットは、
(a)圧縮された形態にあるDBM及び/又はMBM;
(b)BM吸引ニードル;
(c)骨内骨穿孔用バー;
(d)骨髄−DBMの粘性混合物を注入するための肉厚内腔ニードル;
(e)BMC及びDBMを同時に混合するための二方内腔コネクター;
(f)混合物を希釈するための希釈剤;
(g)BMCを維持するための培地;そして任意選択で、
(h)BMCを、又はDBMと一緒にBMCを取扱い、かつ維持するための低温手段、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
下記の略号が本明細書中を通して用いられる:
・BM:骨髄
・BMC:骨髄細胞
・BMP:骨形態形成タンパク質
・BMT:骨髄移植
・CFU−S:脾臓コロニー形成単位
・DBM:脱灰骨基質
・GVHD:移植片対宿主疾患
・HVGD:宿主対移植片疾患
・LCM:レーザー捕捉顕微解剖
・MBM:石灰化骨基質
・MDS:骨髄異形成症候群
・RAEB:芽球過剰性不応性貧血(MDSの1つのタイプ)
・RAEB−T:芽球の形質変換を伴う不応性貧血
【0040】
骨髄移植法を改善する研究において、本発明者らは、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む組成物を使用することにより、同じドナーから生じる造血組織及び間質組織(造血微小環境を含む)が同時に発達することを見出した。さらに、同種骨髄移植におけるBMC−DBM混合物のさらなる利点は、同種造血幹細胞の生着と、同じドナーに由来する間質前駆体細胞から生じる間質微小環境を同時に発達させることによって維持される造血の再構成とを促進することにある。
【0041】
本発明者らの研究成果の結果として、本発明者らは、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質及び/又は石灰化骨基質(それぞれ、DBM及びMBM)との混合物を含む組成物、及び骨髄移植におけるその新規な使用に関する本発明に到達した。
【0042】
したがって、第1の態様において、本発明は、骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質(DBM)及び/又は石灰化骨基質(MBM)とを含み、任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含む組成物に関する。
【0043】
本発明の組成物において、DBM及びMBMは、組み合わせて又は別々に使用することができる。BMCを、DBMではなく、MBMと組み合わせて使用する実験(図1)において、本発明者らは、2つの骨基質の間の大きな違いが、MBMを用いた場合の遅れた骨形成であることを認めた。これらの2つ(DBM及びMBM)の混合物をBMCと一緒に移植することにより、両者の利点を組み合わせることができるはずであり、すなわち、(早く作用するDBMと、遅れて使用するMBMとを用いて)骨生成活性の期間を著しく延ばすことができるはずである。また、MBM粒子は、DBM粒子と比較したとき、はるかに高密度で、硬いので、MBMの混合物は、新しい組織が形成されている期間を通してインプラントの形状保持が必要とされるときには有用であり得る。したがって、BMC:MBMの比率及びBMC:DBM:MBMの比率は特定の必要性に依存する。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明の組成物に由来するDBM及び/又はMBMは粉末形態又は薄片形態である。本発明の組成物において使用されるDBMは、粒子サイズが約50μ〜2500μであり得る。好ましくは、DBMの粒子サイズは約250μ〜500μである。
【0045】
それにもかかわらず、DBMは、DBMを間葉性前駆細胞に対する優れたキャリアにするために必要とされる特徴のすべてを合わせ持つその好都合な能力を考慮すると、本発明の組成物における好ましい成分である。
【0046】
1.DBMは、間葉性前駆細胞の生着並びにその増殖及び分化のために不可欠な、伝導性の足場を形成する様々な性質を示す。
2.さらに、DBMは、造血環境の発達を刺激することにおいて活性である様々なBMP(骨形態形成タンパク質)の天然の供給源であり、したがって誘導性の機能をも果たす。
3.DBMは、異種移植片として使用されたときには非常に低い免疫原性を有し、同種の組合せで使用されたときには免疫原性を全く有しない。
4.DBMは、大きな外科的介入を伴うことなく、局所的に、好ましくは骨内に注射することができる非晶質粉末として得ることができる。
【0047】
本発明の組成物に含まれるBMCとDBMとの比率は、0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)であり得るが、好ましくは、1部のDBMに対して5部のBMC濃縮物(体積/体積)である。本発明者らは、最も好ましくは、前記比率が1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)であることを明らかにしている。
【0048】
別の態様において、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む前記組成物は、好ましくはヒトである哺乳動物への骨髄移植のために使用されるためのものである。
【0049】
本発明の組成物の移植部位は、腎臓被膜、筋肉及び腹腔壁からなる群から選択される骨外性部位であり得る。実施例1Aに示されるように、腎臓の被膜下空間は、埋め込まれた細胞から発達する骨−造血複合体の形成を維持する必要な局所的条件のすべてを満たしている。したがって、腎臓の被膜下空間は、埋め込まれた細胞の活性を追跡することを可能にする一種の「in vitro管」として役立ち得る。骨髄細胞の懸濁物には、DBMの誘導的及び伝導的な支持体とともに腎臓被膜下に移植されたとき、完全に発達した造血微小環境を組み立てることができる間葉性前駆細胞が含まれる。したがって、骨髄細胞懸濁物に存在する間葉性前駆細胞から発達する新しい造血微小環境は、DBMの誘導的及び伝導的な影響のために、正常な3系統の造血を維持するだけでなく、長期間の維持及びリモデリング及び自己更新が、この場合には実験哺乳動物の寿命に匹敵する少なくとも1年間にわたって可能である。
【0050】
あるいは、前記移植部位は骨髄腔であってもよい。実施例1Bに示されるように、摘出処理後の骨髄腔内にBMCと一緒にDBMを移植したときに、活発な造血の広範囲の発達が認められる(図3B及び図3D)。小柱骨、造血微小環境(間質起源)及び造血組織からなる完全な骨−造血複合体を、1段階の移植法で、摘出処理後の骨髄腔内に直接移入することに成功したことは初めてである。この実験により、造血微小環境を発達させるために誘導性かつ促進性の様々な性質を有する、造血前駆細胞及び間葉性前駆細胞の両方を含有する骨髄細胞懸濁物をDBMと一緒に大腿骨内に移植することが可能であることが証明された。この造血微小環境は、造血組織の発達及び機能化のために不可欠な維持的及び調節的な役割を果たしている。新しく形成されたドナー由来の骨−造血複合体は、活発な造血産生だけでなく、長期間の維持及びリモデリング及び自己更新が可能である。
【0051】
別の実施形態において、本発明の組成物は骨形態形成タンパク質(BMP)をさらに含む。
【0052】
本発明者らが示すように、いくつかの造血領域が、BMCをDBMと一緒に移植した後に認められる(例えば、図2Bを参照のこと)。しかし、これらの領域は、BMPが移植混合物に添加されたときにはさらにより顕著になる(例えば、図2Cを参照のこと)。したがって、BMPの添加は、造血を維持する間質微小環境の発達を促進することによって本発明の組成物の活性を高める。
【0053】
BMCとDBM及び/又はMBMとを含む本発明の組成物は、ドナーの多機能細胞集団がレピシエントの骨髄腔内又は骨外性的に直接移植されるという大きな利点を有している。これにより、ドナー起源の自己維持される骨−造血複合体の完全な発達がレピシエントの骨又は骨外性部位の内部においてもたらされる。成人では、長骨内の赤色(造血)骨髄は黄色(脂肪)骨髄によって置換されやすい。本発明の新しい方法は、脂肪質の骨髄支質、又は線維形成性の骨髄支質、又はそうでなければ機能不全の骨髄支質のヒト骨における置換をさらに容易にする。間質幹細胞及び造血幹細胞の混合移植は、1段階手法を使用した場合、骨髄移植(BMT)の適用可能性の拡大が、臨床的実施において、特に、造血を改善又は強化することにおいて、移植寛容性を誘導することなどにおいてもたらされることがさらに予想される。
【0054】
さらに別の実施形態において、本発明の組成物に含まれるDBM及び/又はMBMは脊椎動物起源であり、ヒト起源であってもよい。
【0055】
さらなる実施において、本発明の組成物に由来するDBM及び/又はMBMは粉末形態又は薄片形態である。
【0056】
さらにさらなる実施形態において、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化させるために骨髄腔内に移植されるためのものである。さらに、本発明の組成物は、移植されたBMCから生じる造血微小環境を発達させるために骨外性部位内に移植されるためのものである。
【0057】
本発明の組成物は、骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を処置するために、移植されたBMC内の移入された造血前駆体細胞の生着を改善するはずである。
【0058】
したがって、さらにさらなる実施形態において、本発明の組成物は、造血障害及び/又は骨障害に罹患している患者の処置において使用されるためのものである。この場合、前記造血障害は、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症又は異常又は悪性体、異常な幹細胞及び/又はその生成物をもたらす遺伝的状態、異常な骨構造(すなわち、一体性又は組成)、並びに悪性起源の造血障害から選択される。
【0059】
前記に述べられたように、本発明の組成物は、任意選択で、薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含むことができる。
【0060】
薬学的に受容可能(又は生理学的に受容可能)な添加剤及び/又はキャリア及び/又は希釈剤は、用いられた投薬量及び濃度においてレピシエントに対して非治療的かつ非毒性であり、そして活性な薬剤の薬理学的又は生理学的な活性に影響を及ぼさない任意の添加剤又はキャリア又は希釈剤を意味する。
【0061】
医薬組成物の調製は、この分野では広く知られており、多くの論文及び教本に記載されている。例えば、レミントン製薬科学(Reminghton’s Pharmaceutical Sciences)(Gennaro A.R.編、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、1990)、特にその1521頁〜1712頁を参照のこと。
【0062】
本発明の組成物は、任意選択で、さらなる活性な薬剤をさらに含むことさえできる。特に注目される活性な薬剤は、増殖因子などの、組織の分化又は侵入を促進するそのような薬剤である。一例が、本発明の組成物の活性を高めることができるBMPである。この目的のための他の例示的な増殖因子には、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、白血病阻害因子(LIF)、インスリン様増殖因子(IGF)及び成長ホルモンが含まれる。他の活性な薬剤には、骨髄移植の成功のためには重要であり得る抗拒絶反応剤又は寛容性誘導剤(例えば、免疫抑制薬又は免疫調節薬など)を挙げることができる。
【0063】
本発明の組成物を使用する骨内BMC移植法は大きな利点をいくつか有している:なかでも、
1.静脈内注射されたとき、非造血系器官に留められる造血幹細胞の非特異的な相当の喪失が回避されること。
2.新しく形成された間質微小環境と、同じドナーから生じる造血細胞との適合性及び接触が改善されること。
3.脂肪質の骨髄空間、又は線維性の骨髄空間、又はそうでなければ異常な骨髄空間が、活発な多系統の造血を維持する活性な小柱系で置換されること。
4.ドナータイプ及びレピシエントタイプの支質上に一緒に生じたドナーの免疫適格細胞とレピシエントの免疫適格細胞との適合性が良好になるために、移植片対宿主疾患(GVHD)及び宿主対移植片疾患(HVGD)をほとんど伴わない混合造血を誘導することが可能であること。
【0064】
別の局面において、本発明は、間葉性幹細胞を含有するBMCを、間葉性幹細胞の発達を維持及び刺激するDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植/埋込みするための方法に関する。この方法は、薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤を任意選択でさらに含むBMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物に導入することを含む。
【0065】
本発明の移植方法は、造血を維持する間質微小環境を誘導するはずである。この場合、そのような間質微小環境は、移植されたBMCから生じ、より詳細にはBMCに存在する間葉性幹細胞から生じる。
【0066】
1つの実施形態において、本発明の混合物は、任意選択で、正常な組織膜内及び/又は、栄養物、サイトカイン及び細胞の浸透を可能にし、かつDBM粒子及び/又はMBM粒子がその中に保持される選択的な生体適合性膜内にカプセル化される。そのような膜は、不全障害の処置において造血細胞又は間質微小環境によって分泌される生物学的生成物を提供又は濃縮するために、そしてドナー細胞の生着を高めるために、そして移植寛容性の誘導のために重要である混合キメラ現象を誘導するために有用である。
【0067】
別の実施形態において、前記混合物は、前記哺乳動物の骨髄腔内及び/又は前記哺乳動物の骨外性部位内に導入される。骨外性の移植部位は、患者の腎臓被膜、筋肉、腹腔壁、並びに寛容性誘導のための同種移植片の腎臓又は肝臓又は心臓被膜からなる群から選択される。
【0068】
さらに別の実施形態において、本発明の移植方法において使用される混合物はBMPをさらに含む。
【0069】
さらなる態様において、本発明は、骨髄移植が必要とされる、造血障害、並びに/或いは骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を、そのような障害の処置を必要とする哺乳動物に対して処置する方法に関する。本発明のこの方法はBMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物の骨髄腔又は骨外性部位の中に投与することを含み、前記混合物は任意選択で薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤を任意選択でさらに含む。
【0070】
1つの実施形態において、本発明の前記方法において使用される前記混合物は、任意選択でBMPをさらに含む。
【0071】
本発明の組成物を骨外性部位内又はBM腔内のいずれかに適用する手法は下記のステップを含む:
1.BMC源を選択するステップ。ドナーは同種タイプであり得るか、又はBMCを、処置されている同じ被験者から得ることができる(自家移植)。BMCは、標準的な手法によってドナーから吸引される。吸引された総量から、一部が、本発明の組成物に含まれるBMCになり、別の一部を、任意選択で、その処置を必要とする患者に静脈内(i.v.)注射することができる。吸引されたBMCのこれらの2つの部分は任意の割合で分けることができる。好ましくは、2部の吸引されたBMCをi.v.注射し、その一方で、1部を遠心分離して、その体積を減らし、BMC濃縮物とする。その後、この濃縮物を、下記に示される比率でDBMと混合する。
2.DBM及び/又はMBMの供給源を選択するステップ。DBMは商業的に供給されており、そしてDBMは免疫原性がないので、特定のドナーに対する制約はない。DBM及び/又はMBMは粉末又は顆粒又は薄片形態であり得る。本発明の組成物において使用されるDBMは、粒子サイズが約50μ〜2500μであり得る。好ましくは、DBMの粒子サイズは約250μ〜500μである。
3.BMC及び/又はDBM及び/又はMBMの懸濁物を含む組成物を調製するステップ。本発明の組成物に含まれるBMCとDBMとの比率は、0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)であり得るが、好ましくは、1部のDBMに対して5部のBMC濃縮物(体積/体積)であり得る。本発明者らは、最も好ましくは、前記比率が1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)であることを明らかにしている。任意選択で、組成物はBMPを含有することができる。組成物は、外科的手法によって、又は非侵襲的な注射によって、そのいずれでも投与することができる。あるいは、組成物は、正常な組織膜の内部においてカプセル化されるように投与することができる。さらにあるいは、組成物は、細胞、栄養物、サイトカインなどがデバイスに浸透することができ、同時にDBM粒子及び/又はMBM粒子をデバイス内に保持する選択的な生体適合性膜から作製された膜デバイスに含有させることができる。そのような膜デバイスは、好ましくは、手術により導入される。
4.インプラント組成物を埋込み部位において固定し、かつ/又は再形成するために使用される、好ましくはフィブリノーゲン及びトロンビンからなる生物学的な接着剤又は足場を提供するステップ。
【0072】
別の実施形態において、本発明の前記方法は、好ましくは静脈内注入及び骨内注入の組合せによって骨髄幹細胞の懸濁物を前記患者に投与すること、あるいは骨外性の造血領域を産生させるために、コンパートメントの1つ(すなわち、膜デバイス)の中に、又は腎臓の被膜下空間などの骨外性部位である足場の中に静脈投与することをさらに含む。
【0073】
さらに別の実施形態において、本発明の前記方法において使用されるBMCは同種であるか、又は前記哺乳動物自身のものである。
【0074】
さらにさらなる実施形態において、本発明の前記方法において使用されるDBM又はMBMは脱灰骨薄片及び/又は石灰化骨薄片をそれぞれ含む。
【0075】
本発明のさらなる目的の1つは、BMTが、非血液学的目的のために、例えば、臓器移植のための移植寛容性の誘導などのために、そしてドナーのナイーブリンパ球又は免疫リンパ球をレピシエントに注入することによる養子的同種細胞媒介の免疫療法のための基盤として使用されるそのような場合においてもまたBMTを容易にすることである。
【0076】
本発明はまた、DBM又はMBMと組み合わせられた前記ドナー由来骨髄が、混合キメラ現象の状態を確立することによる寛容性の誘導のために作製された同種移植片又は異種移植片又は異所性オルガネラの中に投与されたとき、灌流後又は細胞性の同種移植片又は異種移植片の環境において、ドナーの同種抗原に対する宿主対移植片の移植寛容性を誘導することを目的とする。
【0077】
本発明の最後の態様は、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植するためのキットに関する。この場合、前記キットは、
(a)圧縮された形態にあるDBM及び/又はMBM;
(b)BM吸引ニードル;
(c)骨内骨穿孔用バー;
(d)BMC−DBM又はBMC−DBMの粘性混合物を注入するための肉厚内腔ニードル;
(e)BMC−DBMを、本発明の組成物を希釈するための希釈剤と同時に混合するための二方内腔コネクター;
(f)BMCを維持するための培地;そして任意選択で、
(g)BMCを、或いはBMCをDBM又はMBMと一緒に取扱い、かつ維持するための低温手段、
を含む。
【0078】
本発明のキットは、任意選択で、静脈内注射用のニードルを含むことができる。
【0079】
骨髄細胞と脱灰骨基質又は石灰化骨基質との混合物を骨内に投与することを含む本発明の主要な利点は、移植片とともに提供された前駆細胞に由来する新しい微小環境及び造血系を生じさせることができることにある。悪性の幹細胞又はその後代によって引き起こされる血液学的悪性腫瘍の患者の処置であって、すべての悪性細胞に対する放射線照射と同時に行われる骨髄幹細胞の置換が治癒をもたらし得る処置とは異なり、異常な幹細胞及び骨髄微小環境の両方を伴う問題を有する患者では、幹細胞移植だけでは、基礎的疾患を治すためには十分でないと考えられる。すなわち、いくつかの血液学的悪性腫瘍では、「種」の置換が十分であると考えられるのに対して、正常な成熟化及び分化のための適正なシグナルを新しく移植された幹細胞にもたらすことができない異常な環境が関連している患者では、「種及び土」の置換が必要とされ、そして不可欠であると考えられる。このことが、拒絶反応の徴候を全く伴わずに生着問題が観測されることがある場合において、そのような患者に対するBMT後の不成功の原因であるようである。したがって、正常な細胞遺伝学的分析を有し、かつ悪性幹細胞疾患の証拠を有しない患者では、自己のBMCをDBMとともに含む本発明の組成物は、造血を正常化するために十分であり得ると予測することができる。これに対して、前悪性の幹細胞又は明らかに悪性の幹細胞を有する患者では、本発明の組成物に含まれるBMCは、de novoでの造血再構成を最適に促進させるために同種ドナーに由来しなければならない。MDS患者の小さい割合における自家BMTの有益な作用は、実施例2に示される結果と合わせて、そのような方法が実際に有効であり、そして実施形態可能であり得ることを示唆している。まとめると、提案された処置に対する好適な候補者は、非常に悪性の支質を有するMDS患者であってもよく、そして同様に、二次的又は原発性の骨髄線維症を伴う血液学的悪性腫瘍に罹患している患者、並びに、何らかの原発性又は二次的な骨疾患によるか、或いは化学療法又は放射線による骨髄微小環境の他の一次的又は二次的な関与を伴う患者が好適であり得る。
【0080】
多くの刊行物が本明細書中に引用される。これらの参考文献の内容は全体が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0081】
本明細書中及び下記の請求項を通して、文脈が他の事項を要求しない限り、用語「含む(comprise)」及び変化形(「comprises」及び「comprising」など)は、述べられた整数又はステップ又は整数群又はステップ群を含み、任意の他の整数又はステップ又は整数群又はステップ群を排除しないことを意味することが理解される。
【0082】
本明細書中及び添付された請求項において使用される場合、「a」、「an」及び「the」の単数形態は、文脈が明らかにそれ以外のことを規定していない限り、複数の指示事項を含むことに留意しなければならない。
【0083】
下記の実施例は、本発明の様々な態様を実施する際に本発明者らによって用いられた技術を表している。これらの技術は、本発明を実施するための好ましい実施形態を例示する一方で、当業者は、本開示を考慮に入れて、本発明の精神及び意図された範囲から逸脱することなく、数多くの改変が行われ得ることを認識することを理解しなければならない。
【0084】
(実施例)
材料及び方法
1.動物
体重が180g〜200gである8週齢のC57BL/6雄性マウス及びLewis雄性ラットを、基質調製及びBMCの両方のために、骨ドナーとして使用した。同じバッチに由来するマウス及びラットをレピシエントとして使用した。
【0085】
2.脱灰骨基質(DBM)及び石灰化骨基質(MBM)の調製
脱灰骨基質(DBM)を、本発明者らによって改変されたが、記載[Reddi及びHuggins(1973)、上掲]のようにして調製した。ラットの骨幹皮質骨柱体を骨髄及び周囲の軟組織から除いて、砕き、磁気撹拌しながら広口瓶に入れた。骨チップを蒸留水中で2時間〜3時間洗浄し、無水アルコール中に1時間、そしてジエチルエーテル中に0.5時間入れ、その後、層流中で乾燥して、液体窒素とともに乳鉢において粉砕し、ふるい分けして、400μ〜1,000μの間の粒子を選択した。得られた粉末を0.6MHCl中で一晩脱灰し、数回洗浄して酸を除き、無水エタノール及びジエチルエーテルで脱水し、乾燥した。
【0086】
石灰化骨基質(MBM)を、HClを用いた脱灰化ステップを行うことなく、同じ手順に従って調製した。
【0087】
マウスを用いた実験を、以前の記載[Gurevitch他(1999)、上掲]のように、成体マウスの切除門歯から調製された脱灰歯基質を使用して行った。ラット及び大型動物の場合、長骨の皮質が、DBMを調製するための適した材料である。しかし、マウスでは、象牙質から調製されたDBMのみが十分に活性であり、再現性のある結果をもたらす。
【0088】
乾燥ステップを除くすべてのステップは、内因性のタンパク質分解酵素による骨形態形成タンパク質(BMP)の分解を防止するために4℃で行われた。これらの基質は−20℃で保存された。
【0089】
3.埋め込まれた材料の調製
移植用ドナーBMC懸濁物の調製:
ドナーマウス又はドナーラットの大腿骨から筋肉を除いた。骨髄栓子をマンドリンによって大腿骨管から機械的に押し出した。BMCの濃縮された単一細胞懸濁物を、4個〜5個の大腿骨栓子を100μlのRPMI1640培地(Biological Industries、Beit Haemek、イスラエル)中で破砕することによって調製した。大腿骨骨髄栓子あたりの有核細胞の数は、通常、かなり安定している(C57BL/6の雄性8週齢マウスについては約107細胞/栓子)。数回の再現し得る確認により、移植のために調製されたBMCの単一細胞懸濁物は約3x108個/mlの細胞を含有することが示された。
【0090】
移植片の組成物:
下記の成分を移植片に存在させることができる(各移植片は、図及び実施例に示されるようにその自身の組合せを有した):
1.20μlのBMC懸濁物(3x108細胞/ml);
2.4mgのDBM(又はMBM)が、ラットを用いた実験で使用された;2mgが、マウスを用いた実験で使用された;
3.0.5μgのBMP−2(R&D systems、アメリカ)が一部の実験では混合物に添加された。
【0091】
必要に応じて本発明の組成物に添加された外因性BMPは必須成分ではない。DBMは、BMC懸濁物内の移植された間葉性前駆細胞の生着を促す様々な性質、すなわち、骨及び軟骨の形成の途中におけるそれらの増殖及び分化を促す様々な性質を示す。同時に、DBMは、骨生成及び軟骨生成を刺激することにおいて活性である様々なBMPの天然の供給源であり、したがって、その誘導機能をも果たす。外因性BMPの添加により、その誘導効率を高めることができる。
【0092】
4.腎臓被膜下部位における移植
麻酔したラット又はマウスをレピシエントとして使用した。小さい切開を腎臓被膜において行い、そして移植物を、凹型スパチュラを使用して挿入した。
【0093】
5.骨の髄腔内のレピシエント骨髄の局所的摘出処理
ラットに麻酔し、右脚に1,000cGyの放射線を照射した。放射線は、0.2mmのCuフィルターを使用して、70cGy/分の割合でPhillips社のX線装置(250kV、20mA)によって送達された。線源から皮膚までの距離は40cmであった。
【0094】
局所的な放射線照射の後、小さい切開を右脚の膝関節の上に行った。大腿骨の髄腔に骨髄吸引ニードルを入れ、骨髄を吸い出した。残った骨髄を、19ゲージのニードルを付けたシリンジを使用して、3mlのリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)で洗い出した。
【0095】
6.骨の摘出処理された髄腔内へのBMCと脱灰骨基質との混合物の埋込み
麻酔後、膝関節を内側膝蓋傍部の切開によって露出させ、膝蓋骨を一時的に側方に移動させ、BMの局所的な摘出処理を記載の通りに行い、所望の材料を骨腔内に埋め込んだ。細胞及び骨基質を小さいマイクロピペットチップに入れて、それを骨内の穴に挿入し、そして移植物をマンドリンにより骨腔の内部に押し出した。切開部位をフィブリノーゲン−トロンビン組織接着剤で覆い、膝蓋骨を所定位置に戻し、切開部を生体吸収性糸で縫合した。皮膚をステンレス製クリップで閉じた。
【0096】
7.摘出処理された骨髄腔内にBMC及び脱灰骨基質を埋め込んだ後における再構成された骨−造血複合体のレーザー捕捉顕微解剖(LCM)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析
DBMと混合された雄性ドナーのBMCを雌性レピシエントの大腿骨の摘出処理された骨髄腔内に移植した実験において、PCR分析によって、新しく形成された小柱骨がドナー起源であること、並びに再構成された造血組織がドナー起源であることが、確認された[An,J.他(1997)、J Androl.、18(3):289〜93]。正確な顕微鏡コントロール下で組織断面から個々の細胞を単離することを可能にするレーザー捕捉顕微解剖(LCM)の新しい技術を使用して、新しく形成された骨組織及び造血組織から細胞を別々に集めた。集めた細胞(試験あたり約200細胞〜300細胞)のPCR分析を、Sry遺伝子(Y染色体の性決定領域)に特異的なプライマー組を使用して行った。
【0097】
8.組織学的評価
剖検材料を4%中性緩衝化ホルムアルデヒドで固定し、脱灰して、一連のエタノール段階物及びキシレンに通し、その後、パラフィンに包埋した。5ミクロン〜7ミクロンの連続切片を作製して、1組の代表的な連続切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、他方をピクロインジゴカルミンで染色した。
【実施例1】
【0098】
ラットにおける骨髄腔内又は腎臓の被膜下空間内への脱灰(又は石灰化)骨基質と一緒のBMCの移植
下記の実施例(本発明の組成物の開発に伴って行われた実験)では、DBMと一緒に骨髄腔内又は骨外に腎臓の被膜下空間内に移植されたとき、骨髄(BM)中に持続する間葉性幹細胞が誘導されて、骨及び維持可能な造血微小環境が形成され得ることが示される。一方がラットで行われ、もう一方がマウスで行われた2組の実験では、DBM又はMBMが単独で埋め込まれ、あるいは、さらなる骨形態形成タンパク質−2(BMP−2)が補充されたBMCと一緒に、又はBMP−2が補充されることなくBMCと一緒に埋め込まれた(群あたり少なくとも12個の移植片)。
【0099】
1段階の移植法を確立した。この移植法では、(a)小柱骨の形成、(b)維持可能な造血微小環境、そして(c)移植された骨髄に存在する間葉性前駆体細胞及び造血前駆体細胞から生じる造血を誘導するために、BMCと脱灰(又は石灰化)骨基質粉末(DBM又はMBM)との組成物が骨髄腔内又は骨外性的(腎臓の被膜下空間内)に挿入された。
【0100】
A.腎臓の被膜下空間内への移植
腎臓被膜下空間には、少なくとも2カ月〜3カ月の期間内で、骨生成状態に、そして骨を組み立てるように誘導され得る細胞が存在しないことが以前に示されていた[Gurevitch,O.A.他(1989)、Hematol Transfusiol、34:43〜45(ロシア語)]ので、腎臓被膜下空間が移植部位として選択された。
【0101】
ラットにおいて、BMCを伴うことなくDBM(又はMBM)を移植した1カ月後、造血の徴候が全くないことが観測された。埋め込まれた基質粒子は、移植部位に依然として存在しており、分解していなかった(図1A及び図1C)。これに対して、DBMがBMCと一緒に移植された部位では、活発な多系統の造血が観測され、そして移植された基質粒子の顕著な分解もまた認めることができる(図1B)。造血を維持することができる新しい骨の形成もまた、BMCと一緒にMBMが腎臓被膜下に埋め込まれたときに観測された(図1D)。しかし、移植されたMBM粒子の分解、並びに小柱系の発達は、BM細胞がDBMと一緒に移植された場合と比較して、わずかに遅れていた。
【0102】
興味深いことに、外因性BMPをBMC+DBMの移植片に添加することにより、造血を維持する間質微小環境の発達が促進された。BMCだけの移植では、造血組織の発達は生じなかった(図1J)。
【0103】
BMCを伴うことなくDBM(又はMBM)を移植した6カ月後、依然として造血の徴候は全く見られなかった。埋め込まれた基質粒子は、依然として移植部位に存在していた(図1E及び図1G)。これに対して、DBMをBMCと一緒に移植した6カ月後では、新しく形成された造血部位が自己維持及びリモデリングを続けていた。十分に発達した造血領域について特徴的な活発な造血を有する広範囲の腔が観測された(図1F)。MBMをBMCと一緒に移植した6カ月後、新しく形成された造血部位は、DBMをBMCと一緒に移植したときに発達した造血部位と形態学的にほとんど区別することができない(図1H)。1年後、DBM(又はMBM)をBMCと一緒に移植した結果として発達した新しい造血部位は、変性の徴候を何ら伴うことなく、自己維持を続けていた(図1I)。
【0104】
マウスで行われた類似する1組の実験は類似した結果をもたらした。すなわち、DBMとBMCとの混合移植は、腎臓被膜下において生涯にわたって自己維持することができる新しい機能的に活発な造血部位の発達を誘導し(図5B、図5E及び図5H)、その一方で、DBM又はBMCの単独移植は同じ結果を示さず、すなわち、新しい造血組織の形成は観測されなかった(図5A、図5D及び図5G)。BMP−2の添加により、新しい造血部位の発達が高められた(図5C、図5F及び図5I)。
【0105】
B.骨髄腔内への移植
ラットで行われた別の1組の実験において、DBMが、BMCと一緒に、又はBMC及びBMPと一緒に、局所的に放射線照射された脚の摘出処理された大腿骨の骨髄腔内に直接埋め込まれた(各実験群において少なくとも6匹の動物)。BMCを伴わないDBMの大腿骨内への埋め込みを行った2週間後、新しい造血組織がかすかに認められた(図2A)。これに対して、DBMがBMCと一緒に埋め込まれたとき、新しく形成された活発な造血組織が観測された(図2B)。DBM及びBMCからなる移植片へのBMPの添加により、造血複合体の発達が高められた(図2C)。
【0106】
摘出処理された骨髄腔内にBMCと一緒にDBMを直接移植した1カ月後、活発な造血の広範囲の発達が認められたが、部分的に分解したDBM粒子が大腿骨腔の骨幹領域には依然として存在していた(図3B)。BMPが移植混合物に補充されたとき、骨造血複合体の発達プロセスが促進され、DBMの小さい粒子のみが大腿骨骨幹において依然として認められるだけである(図3C)。DBM−BMCの混合物を大腿骨内に移植した2カ月後、処置された骨の大腿骨骨幹の骨造血複合体は、損傷を受けていない骨造血複合体とほとんど区別することができない(それぞれ、図3D及び3F)。移植の5カ月後、新しい骨造血複合体は、変性の徴候を何ら伴うことなく、自己維持を続けていた(図3E)。大腿骨骨幹の十分に発達した、活発に機能する骨造血複合体は、レピシエントの全寿命期間を通して、自己維持及びリモデリングを続けた。
【0107】
DBMと混合された雄性ドナーのBMCが雌性レピシエントの大腿骨の摘出処理された骨髄腔内に移植された実験において、新しく形成された造血組織がドナー起源であることが、LCM技術を使用して正確な顕微鏡制御のもとで組織断面から単離された個々の細胞(試験あたり約70細胞〜100細胞)のPCR分析によって明らかにされた(図4)。
【実施例2】
【0108】
末期疾患患者の処置
実施例1において理解されるように、適正な条件のもとでは、造血幹細胞は、正常な骨髄間質細胞と一緒に接種された場合にだけ、完全に機能的な造血性の骨を作り出すことができる。同様に、骨形態形成タンパク質(BMP)は、骨髄細胞性、幹細胞生着、及び骨髄機能が除去されたレピシエントの救済効率を高めることができる。腎臓被膜下におけるDBMと骨髄幹細胞との混合物に由来する新しく生じた骨の組織学的検査により、完全に機能的な造血性の骨が2週間〜4週間で生じたことが特徴として明らかにされた。髄外造血の誘導が可能であることは、患者自身の微小環境が損傷しているか、又は存在しない状況において微小環境を誘導するために、本発明者らの新しい方法が適用可能であり得ることを示唆した。上記の観測結果に基づいて、本発明者らは、微小環境及び活発な造血を伴う新しい骨形成は、異常な幹細胞を有する、進行した段階のMDS(骨髄異形成症候群)患者については、微小環境を正常化させるために、そして同様に、異常な幹細胞を置換するために有用であるかもしれないという仮説を立てた。
【0109】
前臨床動物モデルにおける予備的経験:
致死量の放射線が照射され、そして幹細胞の量を増大させながら、幹細胞の単独注入又は骨髄微小環境と一緒の注入により処置されたマウスにおいて得られた結果は、幹細胞が単独で与えられた場合と比較して、微小環境と組み合わせられたとき、より少ない数の幹細胞が、すべてのレピシエントを救済するために十分であったことを示していた(データ示さず)。これらのデータは、微小環境の本質的な役割、そして最適なBMTのために幹細胞と微小環境とを組み合わせることのさらなる利点を裏づけている。
【0110】
症例1
Z.S.(53歳の女性患者)は、白血病に転化したMDSの処置のために、2001年9月初旬、Hadassah大学病院(Jerusalem、イスラエル)の骨髄移植部門に入院した。患者は細胞遺伝学的異常及び骨髄線維症を示したが、骨髄線維症は、静脈切開(phlebolomy)、ブスルファン、ヒドロキシウレア及びインターフェロンで以前に処置された真性赤血球増加症の後に発症したものであった。細胞遺伝学的分析により、13の有糸分裂のうちの4つにおいて、46XX+1、der(1;7)(q10;p10)が明らかにされた。同種BMTが最良の処置であり、一致した血縁者が実際に存在していた。患者は、移植の4日前から開始して、フルダラビン(30mg/m2で6回)、ブスルファン(4mg/Kgで4回)及びシクロスポリン(3mg/Kg)で前処置された。このプロトコルは、これまでに処置されたすべての患者において、即座の生着と、3系統の造血の迅速な発達とをもたらしていた。残念なことに、患者は十分な数のドナー幹細胞(35.7x108個/Kgの有核細胞)を受けたが、生着は、移植後22日までは観測されなかった。完全な形成不全症のために、患者の状態が悪化し始めたので、抗生物質の投与と、逆分離での血小板輸血で維持することとが必要となった。ドナーの骨髄細胞と混合されたDBMを含む本発明の組成物を用いた実験的な骨内移植を行う許可を、Hadassah医学機構(Hadassah大学病院(Jerusalem、イスラエル)付属)のInternal Helsinki委員会及びイスラエル保健省に申請した。Internal Helsinki委員会及び保健省からの承認、並びに患者によるインフォームドコンセントを得た後、DBMと組み合わせたドナーBMCの骨内移植が下記のように行われた。2001年11月5日、患者に、硬膜外麻酔のもとで得られた、同じドナーに由来する合計で2.93x108個/kgの骨髄由来細胞が投与された。このとき、抗GVHD予防は何ら行われなかった。市販のDBMをPacific Coast Tissue Bank(Los Angeles、CA、アメリカ)から購入した(粒子サイズ:250μ〜500μ)。2.17x108個/kgの骨髄幹細胞を静脈内注入した。合計で20ml(乾燥体積)の粉末DBMをドナーBM濃縮物(X5)の懸濁物と1対4の比率(体積/体積)で混合して、4カ所に注射した(脛骨の上部部分の両側及び仙骨の2カ所)。DBMと0.76x108個/kgの骨髄細胞との混合物を、混合物の粘度を低下させるためにBMC−DBMと希釈剤とを同時に混合するための二方内腔コネクターに接続された、日常的な臨床実施における骨髄生検のために使用されているニードルを用いて注射した。この手順は鎮静下及び局所麻酔下で行われ、したがって完全に無痛であった。手順当日を0日目と見なした。活発かつ迅速な3系統の造血が5日目に始まり、すべての血液計測値が正常なレベルに迅速に戻った。患者は、2001年11月9日に絶対好塩基球数が1x109/Lに達し、そして2001年11月11日に血小板数が25x109/Lを越え、50x109/Lを越える血小板数が11月15日から始まった。幹細胞及びDBMの注入後38日目に、患者は、優れた全身的状態で退院した。ドナー造血細胞の100%の生着が、Y染色体特異的なアメロゲニン遺伝子のPCRにより検出される男性DNAが末梢血細胞に存在することによって確認された。診療科への最後の診察まで、患者は、完全に再構成された3系統の生着を伴って元気であり、優れた臨床的状態であった。移植後に調べられた合計で20個の有糸分裂は、正常な46XYの核型が明らかにされた。
【0111】
まとめると、この症例は、造血微小環境を正常化することにより、同種幹細胞が維持され得ること、そしてこれが、DBMと混合されたドナー骨髄細胞の骨内移植によって可能であることを示唆する最初の症例である。したがって、この症例は、骨髄微小環境が損なわれている患者では、幹細胞移植が、幹細胞をDBMとともに混合投与することによって高められ得ることを示唆している。
【0112】
症例2
Y.V.(22歳の男性患者)は、芽球過剰性MDS(RAEB)のための、2001年に行われた適合した血縁者からの骨髄移植の後における汎血球減少症の処置のために、2002年1月、Hadassah大学病院(Jerusalem、イスラエル)の骨髄移植部門に入院した。1997年、16歳のときに、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)と診断されたが、1999年まで、標準的な寛解導入及び維持プロトコルでの処置に成功していた。2001年7月に、患者は、衰弱の増悪、倦怠感及び進行性汎血球減少症によって特徴づけられる二次的なMDSを発症した。骨髄生検でRAEBが確認された。細胞遺伝学的研究により、MDSの典型的な染色体異常である第5染色体の欠失が示された。患者は、この状態の唯一の可能な治療法である骨髄移植のために入院した。2001年9月に、患者は、フルダラビン(30mg/m2で6日間)及びブスルファン(4mg/kgで4日間)による骨髄破壊性前処置の後、完全にHLAが一致した兄弟からの同種幹細胞移植を受けた。0日目に、患者は、G−CSFで動員した血液幹細胞を、合計で54x108個/kgの有核細胞でそのドナーから受けた。シクロスポリンA(CSA)(3mg/Kg)が、単独の抗GVHD予防として、移植法の4日前から開始して与えられた。移植後の経過は併発症を伴わなかった。患者は、14日目に生着し、大きな併発症を伴うことなく退院した。患者は急性GVHDの徴候を何ら示さず、外来診療科で追跡調査した。
【0113】
1カ月後、患者は、サイトメガロウイルス(CMV)抗原血症を伴う長期の進行性汎血球減少症を発症した。ガンシクロビルによる静脈内処置の後、CMV感染の徴候は消失したが、汎血球減少は持続した。血液DNA分析により、患者はドナー/レピシエントの混合キメラ現象の特徴を有することが示された。このことは、宿主の造血が共存していることを示唆している。骨髄吸引により、明らかな骨髄性白血病に転換しているMDSが明らかにされ、患者は骨髄移植部門に再入院した。GVHDの徴候又は症状は全く見られず、したがって、CSAを中止した。高用量のAra−C及びミトキサントロンからなる化学療法を行った。2001年12月23日に、患者は、同じドナーに由来する非常に多数(26x108個/kgの単核細胞)のG−CSFで動員した血液幹細胞によるその後の救済を受けた。このとき、抗GVHD予防は何ら行われなかった。これは、ドナーの同種反応性T細胞によって媒介される最大の移植片対白血病(GVL)効果を誘導するために移植後の再発を処置するための好ましいプロトコルである。化学療法により誘導される形成不全(+7日目までの0.3x109/L未満のWBC)の後、白血球数は0.4x109/Lと0.6x109/Lとの間の範囲であり、末梢血塗抹標本には顆粒球がほとんど見られなかった。同じドナーからの凍結血液幹細胞(9.3x108個/kgの単核細胞)による追加注入は、好中球数の増大を何ら示さなかった。G−CSFを用いた処置(5μg/kg、次いで10μg/kg)も、絶対的好中球数を同様に増大させなかった。患者は、4日間にわたって40℃に進行した、軽度の持続性の発熱を移植後3週間にわたって示した。重症の汎血球減少症にもかかわらず、2002年1月13日に行われた、宿主によるキメラ現象に対する最後のアッセイ及びドナーDNA分析(VNTR−PCR)により、100%のドナー造血が確認され、したがって、形成不全の考えられる原因としての拒絶反応がないことが確認された。同じ日に行われた骨髄吸引により、前駆体がほとんどない重度の低細胞性が示された。このことは、骨髄生検によってもまた確認された。まとめると、これらのデータは、ドナー造血細胞の生着の確固たる証拠にもかかわらず、骨髄形成不全を示唆していた。これは、造血性増殖因子に全く応答しない損なわれた骨髄微小環境、すなわち、骨髄形成不全を生じさせる命を脅かす臨床的状態のためであることが最も考えられる。そこで、ドナー幹細胞の迅速な生着を可能にすることを目指して、DMBと混合されたドナー骨髄細胞を骨髄腔内に再注入することを決定した。
【0114】
2002年1月28日に、患者によるインフォームドコンセントとともにInternal Helsinki委員会及び保健省からの承認の後、合計で2.48x108単核細胞/kgの新鮮な骨髄細胞を硬膜外麻酔のもとで同じドナーから吸引した。市販のDBMをPacific Coast Tissue Bank(Los Angeles、アメリカ)から購入した(粒子サイズ:250μ〜500μ)。合計で20ml(乾燥体積)の粉末DBMをドナー骨髄濃縮物(X5)の懸濁物と1対4の比率(体積/体積)で混合して、4カ所に注射した(脛骨の上部部分の両側及び仙骨の2カ所)。2/3の細胞(1.65x108/Kg)を静脈内投与し、そして0.83x108個/kgの有核細胞を含有するDBMと混合された1/3の細胞を骨内に接種したが、ほとんどが上後腸骨棘内に接種された。BMC−DBM混合物は、ニードルから骨髄腔内への流れの閉塞を防止するために希釈しなければならなかった。手順は、プロポホル麻酔を使用して患者の部屋での軽い麻酔のもとで行われた。DBMと骨髄細胞との混合物は、混合物の粘度を低下させるためにDBM及び骨髄細胞を希釈剤としての緩衝化生理的食塩水と同時に混合するための二方内腔コネクターに接続された、日常的な臨床実施における骨髄生検のために使用されているニードルを用いて注射された。この手順は鎮静下及び局所麻酔下で行われ、したがって完全に無痛であった。手順当日を0日目と見なした。移植後、造血の早い再構成が観測され、4日〜5日以内に白血球数が2倍以上になり、8日目には4.9x109/Lまでのレベルに達した。血小板数は、8日目には10x109/Lから49x109/Lに増大し、11日目には83x109/Lに倍増した。同時に、ヘモグロビンレベルが8.0g%から10.1g%に自発的に増大した。さらに、患者の状態が劇的に改善され、患者の元気が改善され、そして患者はベッドから移動することができた。生着には、33IUへのビリルビンの穏やかな上昇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の16IUから62IUへの上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の23IUから90IUへの上昇、そして乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の338IUから618IUへの上昇を伴う移植片対宿主疾患の様々な徴候が付随していた。下痢はコルチコステロイドで処置した。最後の検査まで、白血球の示差的な計数は、84.6%までが顆粒球であることを示し、リンパ球が10%〜23%の間であり、単球が10%〜21%の間であった。芽球の証拠はなく、すべての血液細胞は、VNTR−PCRによって確認されるように、ドナー起源であった。
【0115】
まとめると、静脈内骨髄細胞と、DBMと混合された同種骨髄細胞の骨内への移植との混合使用を伴う新しい移植法は、異常な骨髄微小環境を以前に有していた2名のMDS患者において、ドナー造血細胞の迅速かつ完全な再構成をもたらした。本発明者らのデータは、類似する手法が、異常な骨髄微小環境に関連する他の疾患、又は異常な骨髄微小環境によって引き起こされる他の疾患を処置するために有用であることが証明され得ることを示唆している。これは、上記に示された2つの症例において例示されたように、正常な幹細胞を有する患者については自家骨髄移植後の宿主幹細胞の投与との組合せであるか、又は骨髄細胞及び微小環境の混合異常を有する患者については同種骨髄移植との組合せであるかのいずれかであると考えられる。
【0116】
さらに、DBMと一緒のBMCによる造血再構成が、DBM中に天然に存在する骨形態形成タンパク質(BMP)などの形態形成性の増殖因子でこの混合物を外部から富化することによってさらに高められ得ると推定することは妥当であるようである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】腎臓被膜下移植後のラット腎臓切片の光学顕微鏡写真を示す(図1A〜図1J)。図1A:DBMだけを移植した1カ月後(ピクロインジゴカルミン(PIC)染色)。図1B:BMC+DBMを移植した1カ月後(ヘマトキシリン−エオシン、H&E)。図1C:MBMだけを移植した1カ月後(PIC染色)。図1D:BMC+MDMを移植した1カ月後(H&E)。図1E:DBMだけを移植した6カ月後(PIC染色)。図1F:BMC+DBMを移植した6カ月後(PIC染色)。図1G:MBMだけを移植した6カ月後(PIC染色)。図1H:BMC+MDMを移植した1カ月後(PIC染色)。図1I:BMC+DBMを移植した1年後(PIC染色)。図1J:BMCのみをを移植した1年後(PIC染色)。略号:Al.、単独;Mo.、月数。
【図2】埋込み後15日目の局所放射線照射ラット大腿骨の摘出処理された骨髄腔の長さ方向の切片を示す(H&E)(図2A〜図2C)。図2A:DBMのみを用いた移植。図2B:DBM+BMCを用いた移植。図2C:DBM+BMC+BMPを用いた移植。略号:BMC、骨髄細胞;BMP、骨形態形成タンパク質;DBM、脱灰骨基質;HT、造血組織。略号:HT、造血組織;H&E、ヘマトキシリン及びエオシン。
【図3】摘出処理された骨髄腔における損傷した骨−造血複合体が脱灰骨基質及び骨髄細胞の移植によって正常化したことを示す(ラット大腿骨の摘出処理された骨髄腔の長さ方向の切片、ピクロインジゴカルミン染色、全体写真−8倍/顕微鏡写真−100倍)(図3A〜図3F)。図3A:摘出処理直後。図3B:DBMをBMCと一緒に移植した30日後。図3C:BMPが補充されたDBMとBMCとの混合物を移植した30日後。図3D:DBMをBMCと一緒に移植した60日後。図3E:DBMをBMCと一緒に移植した150日後。図3F:コントロール、非摘出処理大腿骨。略号:D.、日数;Po.Abl.、摘出処理後;Po.Transpl.、移植後;N.Abl.Fe.Bo.、非摘出処理大腿骨。
【図4】摘出処理された骨髄腔の新しく再構成された造血複合体から捕捉された細胞のレーザー捕捉顕微解剖(LCM)及びPCR分析(DBM+BMCを移植した1カ月後)(図4A〜図4E)。図4A:左、ラットの摘出処理された大腿骨。右、大腿骨の摘出処理された骨髄腔におけるLCMのための目的領域の顕微鏡写真。図4B:再構成された骨髄のレーザー照射領域。図4C:レーザー照射されたキャップ部(PCR分析のために捕捉された細胞)。図4D:レーザー照射されたキャップ部の高倍率(10倍)。図4E:LCMによって集められたドナー由来細胞のPCR分析。レーン:1、DNAサイズマーカー(HaeIIIによるφX714切断物)、左側の上の矢印及び下の矢印は194bp長のバンド及び118bp長のバンドをそれぞれ示す;2、雌性ラットの摘出処理された骨髄腔の小柱骨領域に由来する雄性ラットDNA;3、雌性ラットの摘出処理された骨髄腔の骨髄領域に由来する雄性ラットDNA;4、内部陽性コントロール、雄性血液に由来するDNA。PCRの結果により、新しく再構成された造血複合体にドナー由来の細胞が存在することが確認される。略号:D.日数;Po.Abl.Mar.Cav.、摘出処理後の骨髄腔;Targ.Ar.LCM AMC、摘出処理された骨髄腔のレーザー捕捉顕微解剖のための目的領域;Mar.骨髄;Lan.、レーン;Det.Don.Der.Cel.PCR Anal.、PCR分析によるドナー由来細胞の検出。
【図5】腎臓被膜下移植後のマウス腎臓切片の光学顕微鏡写真を示す(ピクロインジゴカルミン(PIC)染色)(図5A〜図5J)。図5A:DBMだけを移植した1カ月後。図5B:BMC+DBMを移植した1カ月後。図5C:BMC+DBMをBMPと一緒に移植した1カ月後。図5D:DBMだけを移植した4カ月後。図5E:BMC+DBMを移植した4カ月後。図5F:BMC+DBMをBMPと一緒に移植した4カ月後。図5G:DBMだけを移植した12カ月後。図5H:BMC+DBMを移植した12カ月後。図5I:BMC+DBMをBMPと一緒に移植した12カ月後。図5J:BMCのみをを移植した4カ月後。略号:Al.、単独;Mo.、月数。
Claims (49)
- 骨髄細胞(BMC)と脱灰骨基質(DBM)及び/又は石灰化骨基質(MBM)とを含む組成物。
- 哺乳動物への骨髄移植のために使用される、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む組成物。
- 哺乳動物への骨髄移植のために使用される、BMCとDBMとを含む組成物。
- 移植が骨外性部位内である請求項2又は3に記載の組成物。
- 骨外性部位が、腎臓被膜、筋肉、肝臓、腹腔壁からなる群から選択される請求項4記載の組成物。
- 移植が骨髄腔内である請求項2又は3に記載の組成物。
- 骨形態形成タンパク質(BMP)をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
- DBM及び/又はMBMが脊椎動物起源である請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
- DBM及び/又はMBMがヒト起源である請求項8記載の組成物。
- DBM及び/又はMBMが粉末形態である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
- DBMの粒子サイズが約50μ〜2500μである請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
- DBMの粒子サイズが約250μ〜500μである請求項11記載の組成物。
- BMCとDBMとの比率が0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)である請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- BMCとDBMとの比率が1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)である請求項13記載の組成物。
- 前記哺乳動物がヒトである請求項2〜14のいずれか一項に記載の組成物。
- 移植されたBMCから生じる造血微小環境を発達させるために骨外性部位内に移植される請求項2〜5及び7〜14のいずれか一項に記載の組成物。
- 移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化するために骨髄腔内に移植される請求項2、3及び6〜14のいずれか一項に記載の組成物。
- 造血障害に罹患している患者の処置に使用される請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記造血障害が、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症、異常な幹細胞及び/又は生成物をもたらす遺伝的状態、悪性起源又は非悪性起源の造血障害、先天性又は遺伝性の骨障害、骨感染症、骨形成不全症、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、並びに骨の非新生物性障害から選択される請求項18記載の組成物。
- 哺乳動物に移植される骨髄移植片としての、BMCとDBM及び/又はMBMとを含む組成物の使用。
- 移植が、患者の腎臓被膜、筋肉、肝臓及び腹腔壁からなる群から好ましくは選択される骨外性部位の中である請求項20記載の使用。
- 移植部位が、混合キメラ現象の状態を確立することによる寛容性誘導のために作製された同種移植片又は異種移植片又はヘテロ移植片の中である請求項21記載の使用。
- 移植が骨髄腔内である請求項22記載の使用。
- 前記組成物がBMPをさらに含む請求項20〜23のいずれか一項に記載の使用。
- DBM及び/又はMBMが脊椎動物起源である請求項20〜24のいずれか一項に記載の使用。
- DBM及び/又はMBMがヒト起源である請求項25記載の使用。
- DBM及び/又はMBMが粉末形態である請求項20〜26のいずれか一項に記載の使用。
- DBMの粒子サイズが約50μ〜2500μである請求項20〜27のいずれか一項に記載の使用。
- DBMの粒子サイズが約250μ〜500μである請求項28記載の使用。
- BMCとDBMとの比率が0.5部のDBMに対して10部のBMC濃縮物(体積/体積)である請求項20〜29のいずれか一項に記載の使用。
- BMCとDBMとの比率が1部のDBMに対して4部のBMC濃縮物(体積/体積)である請求項30記載の使用。
- 前記哺乳動物がヒトである請求項20〜31のいずれか一項に記載の使用。
- 前記骨外性移植が、移植されたBMCから生じる造血微小環境を発達させるためのものである請求項20〜22及び24〜32のいずれか一項に記載の使用。
- 前記骨髄腔内移植が、移植されたBMCから生じる造血微小環境の形成を回復及び/又は強化するためのものである請求項23〜32のいずれか一項に記載の使用。
- 造血障害に罹患している患者を処置するための請求項20〜34のいずれか一項に記載の使用。
- 前記造血障害が、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症、異常な幹細胞及び/又は生成物をもたらす遺伝的状態、悪性起源の造血障害、先天性又は遺伝性の骨障害、骨感染症、骨形成不全症、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、並びに骨の非新生物性障害から選択される請求項35記載の使用。
- 造血障害を処置するための骨髄移植片を調製することにおける、BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物の使用。
- 前記混合物がBMPをさらに含んでいてもよい請求項37記載の使用。
- 前記造血障害が、幹細胞及び/又はその生成物の欠乏症、異常な幹細胞及び/又は生成物をもたらす遺伝的状態、並びに悪性起源の造血障害から選択される請求項38記載の使用。
- BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物に導入することを含む、BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植/埋込みするための方法であって、前記混合物が薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含んでいてもよい方法。
- 前記混合物が、正常な組織膜内及び/又は栄養物、サイトカイン及び細胞の浸透を可能にし、並びにDBM粒子及び/又はMBM粒子がその中に保持される選択的な生体適合性膜内にカプセル化されていてもよい請求項40記載の方法。
- 前記混合物が前記哺乳動物の骨外性部位内に導入される請求項41記載の移植方法。
- 前記混合物が前記哺乳動物の骨髄腔内に導入される請求項41記載の移植方法。
- 前記混合物がBMPをさらに含む請求項40〜43のいずれか一項に記載の移植方法。
- 骨髄移植が必要とされる、造血障害、並びに/或いは骨髄の奇形及び/又は悪性腫瘍及び/又は機能不全に関連する障害を、そのような障害の処置を必要とする哺乳動物に対して処置する、BMCとDBM及び/又はMBMとの混合物を前記哺乳動物の骨髄腔又は骨外性部位の中に投与することを含む方法であって、前記混合物が、薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤をさらに含んでいてもよい方法。
- 前記混合物がBMPをさらに含んでいてもよい請求項45記載の方法。
- 幹細胞懸濁物を好ましくは静脈内注入によって前記患者に投与することをさらに含む請求項45又は46に記載の方法。
- BMCが同種であるか、又は前記哺乳動物自身のものである請求項43〜47のいずれか一項に記載の方法。
- BMCをDBM及び/又はMBMとの混合で哺乳動物に移植するためのキットであって、
a.圧縮された形態にあるDBM及び/又はMBM;
b.BM吸引ニードル;
c.骨内骨穿孔用バー;
d.骨髄−DBM又は骨髄−MBMの粘性混合物を注入するための肉厚内腔ニードル;
e.BMC−DBM又はBMC−MBMを希釈剤と同時に混合するための二方内腔コネクター;
f.BMCを維持するための培地、
を含み、及び
g.BMCを、又はDBMと一緒にBMCを取扱い、及び維持するための低温手段、
を含んでいてもよいキット。
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