JP2004520080A - 凝塊蛋白に結合するための組成物および方法 - Google Patents

凝塊蛋白に結合するための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本明細書においてはアンプリボディ組成物および凝塊蛋白と相互作用を起こすために用いられる方法を開示する。本発明における組成物は凝塊蛋白の少なくとも1つに対して親和性を有するDNAまたはDNA分子1つ以上を有する。核酸成分はヌクレオチド塩基20個以上を有する天然または非天然の分子である。RNAについてはそのRNA分子のヌクレオチド配列部分少なくとも1つは凝塊RNA結合蛋白中に存在するコンセンサス配列少なくとも1つに対して親和性を有する。凝塊蛋白に対して親和性を有するRNAのヌクレオチド配列の部分は何れかのRNAウイルスに由来する配列であり、そしてRNA凝塊蛋白は何れかのRNAウィルス、RNAファージ、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られる配列、またはこれらの組み合わせに由来する配列である。本明細書に開示する方法は本明細書に記載するアンプリボディ組成物を用いた試料マトリックスにおける凝塊蛋白1つ以上の存在を検出することに関する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
(関連出願)
本出願は2001年5月31日に出願された暫定出願60/294,8222の利益を請求する。
【0002】
本発明は蛋白と相互作用させるために用いる組成物および方法に関する。特に本発明は組織内の蛋白凝塊またはプラーク形成に関与すると推測される蛋白と相互作用させるために使用する組成物および方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
本質的に生細胞中に存在する核酸には2つの種類が存在する。1つはデオキシリボ核酸(DNA)であり、もう1つはリボ核酸(RNA)である。正常な生理学的条件下では、これらの核酸分子の双方が蛋白と会合している。これらの蛋白にはスカフォールド蛋白、酵素、リガーゼ、テロメラーゼ等が包含される。このような核酸結合蛋白は正常な代謝および細胞/組織の生存性のために必要な機能を果たす。
【0004】
RNA結合蛋白(RNP)の有意な部分が遺伝子発現の翻訳後の調節を媒介する。ヘテロ核酸RNA(hnRNA)は蛋白コード遺伝子の一次転写物である。これらの転写物(hnRNA)は真核生物の細胞の核内でプロセシングされ、このようなhnRNAの少なくとも一部はメッセンジャーRNA(mRNA)となる。転写複合体からhnRNAが出現した時点から、それらが核内にある時間を通じて、それらはhnRNA蛋白と称される蛋白と会合している。この蛋白ファミリーの構成員は、前mRNAプロセシングおよびmRNA局在化、翻訳および安定を含むmRNAの代謝の間の複数の段階に必要である。RNAと会合した蛋白の大部分はhnRNAとhnRNA中のmRNA、mRNAの複合体と会合していると考えられる。
【0005】
しかしながら、幾つかの疾患の過程にはRNA媒介蛋白凝塊の形成が関与していると考えられる。このような凝塊は神経細胞死および脳の消耗病と関わりがあることが解かっている。特定の神経細胞死および脳消耗症候群に関与している場合が多い海綿状脳障害は切開により顕在化する蛋白プラークまたは凝塊を有するという特徴がある。海綿状脳障害においては、プリオンが病因物質であると考えられている。プリオン型の疾患は蛋白凝塊に関与する「感染性蛋白」によるものである。
【0006】
これらの蛋白凝塊病は特定のRNA分子と関係があると考えられている。例えばウィルスRNPおよびその付随するRNAおよび蛋白の成分はウィルス病原性(例えばHIV、デングウィルス等)に関与する疾患過程の多くを特徴付ける。このことに鑑み、細菌およびウィルスのRNP複合体は興味深い診断標的であると考えられる。
【0007】
病原性の凝塊過程に関与する蛋白の検出において用いることができる組成物および方法が現在必要とされている。
【0008】
【発明が解決する課題】
本発明は蛋白と相互作用させるために用いる組成物および方法に関する。特に本発明は組織、特に脳組織内の蛋白凝塊またはプラーク形成に関与すると推測される蛋白と相互作用させるために用いる組成物および方法に関する。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明の組成物は凝塊蛋白少なくとも1つに対して親和性を有する1つ以上の核酸分子、例えばリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)を含んでいる。RNAまたはDNA成分はヌクレオチド塩基20個以上を有する天然または非天然の分子である。(「非天然」という用語は、自然にはあり得ない純度または工程において組成物が使用されることを指すべく意味するものとする。)この核酸分子のヌクレオチド配列の部分の少なくとも1つは凝塊核酸結合蛋白中に存在するコンセンサス配列少なくとも1つに対して親和性を有する。1つの実施態様においては、凝塊蛋白に対する親和性を有するRNAの部分はRNAウィルス、RNAファージ、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られる配列、またはこれらの組み合わせに由来する配列である。
【0010】
本発明のコンセンサス配列はヘアピンループ、バルジ(bulge)ループ、内部ループ、または一重鎖領域のような一重鎖RNAの二次構造要素を認識する蛋白中に存在するRNA結合モチーフを指す。大部分のRNA結合蛋白(RNP)はRNA結合ドメイン(RBD)1つ以上および他の蛋白との相互作用を媒介する別のドメインを有するモジュラー構造を有する。RNPモチーフの特質はアミノ酸約百〜数百個よりなるRBDから約30アミノ酸の位置にあるコンセンサス配列である。RNA結合に関与するアミノ酸の大部分はβ−プリーツシート内に位置する。RBDのこのような構造要素はRNAの結合相手となる露出したプラットホームを与えると考えられる。RNAは、結合時には(折り込み部やポケット部に埋没するのではなく)曝露された状態で残存し、他の細胞因子に接触可能となる。多くのRNPが複数のRBDを含んでおり、このため、1つより多いRNA分子に同時に結合できるのである。
【0011】
本明細書においては、「親和性」という用語は誘引性または結合能力を示すという意味を有する。特異的親和性は分子の特定の性質または配列を指向した誘引性である。
【0012】
本発明の方法は、試料マトリックス内の凝塊蛋白1つ以上の存在を検出することを意図している。親和性複合体はプローブ1つ以上に試料マトリックスを接触させることにより形成される。本実施態様のプローブは本発明の核酸組成物である。
【0013】
本発明の方法のプローブは凝塊蛋白の少なくとも1つに対する親和性を有する核酸分子を1つ以上含む。RNAまたはDNA成分はヌクレオチド塩基20個以上を有する天然または非天然の分子である。この核酸分子のヌクレオチド配列部分の少なくとも1つは凝塊核酸結合蛋白中に存在するコンセンサス配列少なくとも1つに対して親和性を有する。1つの実施態様によれば、凝塊蛋白に対して親和性を有するRNAの部分はRNAウィルス、RNAファージ、mRNA、rRNA、tRNAR、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られる配列、またはこれらの組み合わせに由来する。
【0014】
本発明の方法は形成された何れかの親和性複合体の検出を含む。親和性複合体の検出はもとの試料マトリックス中に存在する凝塊蛋白1つ以上の存在を示す。
【0015】
試料マトリックス内の凝塊蛋白の1つ以上の存在または非存在を調べるためのキットも本明細書に開示する。キットはプローブ1つ以上を含む。これらのプローブはヌクレオチド20個以上を有する天然または非天然のRNAおよび/またはDNAを含み、ここでヌクレオチドの配列部分の少なくとも1つは凝塊蛋白の1つ以上に対する親和性を有する。1つの実施態様において、プローブの親和性配列部分はRNAウィルス、RNAファージ、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られるヌクレオチド配列、mRNA、rRNA、tRNA、またはこれらの組み合わせに由来する。本発明のキットは本発明の方法と組み合わせて使用することを意図している。
【0016】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は凝塊蛋白に対する親和性を有する増幅可能な核酸抗体に関する。本発明はまた本発明の組成物を用いてこのような蛋白と相互作用させるために用いる方法に関する。更にまた試料マトリックス中の凝塊蛋白の存在または非存在を検出するためのキットに関する。
【0017】
蛋白は核酸、即ちDNAまたはRNAの何れかに結合する。この結合は核酸により推測される二次構造により促進される場合が多い。例えば、ヌクレオチドのループおよびバルジは蛋白結合に関与する場合が多い。蛋白凝塊はこのような核酸結合により促進することができる。凝塊蛋白に対する親和性を有する核酸の単離および定性は蛋白凝塊に関与する疾患を解明し、治療する際の助けとなる。本発明はこのことを目的としている。
【0018】
RNAに結合する蛋白(以降、本明細書においてはRNPと称する)は典型的にはRNA結合モチーフを有する。適切な条件下、RNPは特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列とは無関係に蛋白により認識される全体的な特徴を有する核酸に非特異的に結合する。核酸のこれ以上の高次構造は蛋白に結合認識を与えると一般的に考えられている。例えば、RNAはRNPと結合するために用いる構造モチーフとして機能する二次構造様ループをプロセシングすることが解かっている。この考え方は、単に特定の蛋白に結合するRNA分子の一次ヌクレオチド配列を求め、ループのような特定の二次構造のヌクレオチド配列を変化させる事によりその構造をノックアウトし、突然変異したRNAと蛋白との間の結合能力を測定することによる分析法と矛盾していない。
【0019】
ストリンジェントなin vitroの試験によればヘテロ核RNA結合蛋白(hnRNP)は特定のRNA配列に対して様々な好適度を有することがわかっている。1つの試験では2M NaCl条件下種々のRNAへの種々のhnRNAの結合を調べたところ、hnRNPはそれらが好適とするRNAに対して照準設定(striking)能力を有することが判明した。これらの試験によれば、種々のhnRNPおよび見かけ上は別のRNPは種々のRNAを識別できることが解かった。この識別特性は種々のグループのRNPの単離、精製および分類において利用されている。
【0020】
RNPの分子構造様式はhnRNPを用いて詳細に研究されている。しかしながら、hnRNP系を調べることにより得られる一般的な原理は他のRNPにも適用される。大部分のRNPはRNA結合ドメイン(RBD)1つ以上および他の蛋白との相互作用を媒介する特殊なドメインを有するモジュラー構造を有する。RNPにおけるRBDの特質は約30個のアミノ酸の列により相互に分断されている個々のコンセンサス配列である。RNAの結合に関与するアミノ酸の大部分はβプリーツシート中に位置している。RBDのこのような特定の構造を有する要素はRNA分子が結合できるプラットフォームとして機能することのできる露出した表面を与えると考えられる。RNAは結合時には(蛋白のポケット部に埋没するのではなく)曝露された状態で残存し、他の蛋白に接触可能となる。多くのRNPが1つより多いRBDを含んでおり、このため、同時に複数のRNA配列に結合したり、複数のRNA分子に対して相互作用を示すことができる。
【0021】
RNAおよびRNPとの間の相互作用は、それらの相互の親和性および特異性の点において、抗体とその対応する認識抗原との間の相互作用と類似していると考えられる。本発明はこの類似系に基づいている。本発明のRNA組成物はその親和性が凝塊蛋白1つ以上に対するものである抗体のように機能する。これらの抗体様RNA組成物は本明細書においては「アンプリボディー」と称する。アンプリボディーは本質的には核酸抗体である。「アンプリボディー」という用語は同じ機能を有するDNA分子も指すものとする。これらのアンプリボディーは分子生物学で開発された方法により増幅可能である。これらの核酸抗体またはアンプリボディーは如何なる数の標的も指向することができる。例えば、アンプリボディーは海綿状脳障害のような神経学的疾患に関与するプリオン蛋白を指向することができる。アンプリボディーは当該分野でよく知られた方法により当業者が挿入することのできる人工、合成のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0022】
上記した通り、アンプリボディーはRNA依存性RANポリメラーゼを用いて増幅することができる。本発明の1つの実施態様においては、ポリメラーゼはQ−Ampである。Q−AmpはQ−ベータレプリカーゼ由来である。Q−ベータレプリカーゼはQ−ベータバクテリオファージから単離精製することができる。バクテリオファージはプラス鎖RNAを含む。このプラス鎖はウィルス蛋白合成のためのmRNAとして、および、RNA依存性RNAポリメラーゼ、Q−ベータレプリカーゼのための鋳型としての双方の機能を有する。プラス鎖および他のコファクターの存在下、酵素Q−ベータレプリカーゼは相補的なマイナス鎖RNAを合成する。次にマイナス鎖はプラス鎖合成のための鋳型として機能する。Q−AmpはQ−ベータレプリカーゼ由来であり、真核生物伸長因子Ts(Ef−Ts)、真核生物伸長因子Tu(Ef−Tu)、S1ヌクレアーゼおよびレプリカーゼ成分を含む。(Q−AmpはQ−RNA、Inc.,New York,New Yorkより入手可能である。)Q−Ampは特異的なRNA鋳型を認識し、そして等温条件下15分でそれらを指数的に、例えば10億倍にまで増幅することができる。Q−Ampのための鋳型は特異的な機能用途を有する配列インサート、例えばアンプリボディーと凝塊蛋白との間の結合性を増大させる配列を含むことができる。当業者の知るとおり、Q−AmpおよびQ−ベータレプリカーゼ以外のレプリカーゼも使用して良く、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0023】
本発明のアンプリボディー組成物は凝塊蛋白の少なくとも1つに対して親和性を有するRNAまたはDNA分子1つ以上を含む。核酸組成物はヌクレオチド塩基20個以上を有する天然または非天然の分子である。1つの実施態様において、コのRNA分子のヌクレオチド配列部分の少なくとも1つは凝塊RNA結合蛋白中に存在するコンセンサス配列少なくとも1つに対して親和性を有する。本発明において「コンセンサス配列」とはヘアピンループ、バルジループ、内部ループ、または一重鎖領域のような一重鎖RNAの二次構造要素を認識する蛋白中に存在するRNA結合モチーフを指す。本発明の1つの実施態様において、凝塊蛋白に対して親和性を有するRNAポリヌクレオチドの部分は、RNAウィルス、RNAファージ、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られる配列、またはこれらの組み合わせに由来する配列である。
【0024】
「ウィルス」および「ファージ」という用語は本開示全体を通じて互換に使用され、「ウィルスおよびファージ」の意味を有するものとする。本発明1つの特徴において、RNAウィルスはレトロウィルスである。RNAウィルスはヒト免疫不全ウィルス(HIV)、ポリオウィルス、インフルエンザウィルス、スモールポックスウィルス、水痘(chickin pox)ウィルス、ヘルペスウィルス、水痘(varicella zoster)ウィルス、エプスタイン・バーウィルス、サイトメガロウィルス、ネコ白血病ウィルス(FeLV)、ヒトT細胞白血病ウィルス(HTLV)、サル免疫不全ウィルス(SIV)、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0025】
本発明のRNA鋳型はQ−ベータレプリカーゼ、Q−AmpおよびDNAまたはRNAの核酸レプリカーゼにより受け取られ増幅されることのできるRNAである。当業者の知るとおり、本発明のアンプリボディーを増幅するRNA依存性RNAポリメラーゼ(PNApol)は本発明の範囲に包含される。本発明の1つの実施態様において、RNA鋳型はミディ(midi)変異RNA(MDV RNA)、ミニ(mini)変異RNA(MNV RNA)、MNV−AP1 RNA、MNVUP RNA、MNVLO RAN、RQ RNAおよびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。
【0026】
MDV RNAをコードするDNA配列(配列番号1)は下記の通りである。
Figure 2004520080
【0027】
MNV RNAをコードするDNA配列(配列番号2)は下記の通りである。
Figure 2004520080
【0028】
MNV AP1 RNAをコードするDNA配列(配列番号3)は下記の通りである。
Figure 2004520080
【0029】
MNVUP RNAをコードするDNA配列(配列番号4)は下記の通りである。
Figure 2004520080
【0030】
MNVLO RNAをコードするDNA配列(配列番号5)は下記の通りである。
Figure 2004520080
【0031】
RNA配列はRNA配列についてコードしているDNAを用いて得ることができる。DNAを適切なベクター内に入れ、当業者の知る方法を用いてベクターを適切な宿主にトランスフェクトすることができる。その後転写物を当業者の知る方法で単離することができる。
【0032】
本発明の1つの特徴において、RNApol(レプリカーゼ)のためのこのような鋳型は凝塊蛋白に対する親和性を有するオリヌケレオチド配列少なくとも1つを有する。例えば、MDV、MNVおよびRQ RNA鋳型は一連のグアニンヌクレオチドをその対応する配列内に組み込んでおくことができる。RQ11+12がこのような鋳型である。RQ11+12に対するRNA配列(配列番号6)は以下の通りである。
Figure 2004520080
【0033】
本発明のRNAは好ましくは、非ワトソンクリック対を特徴とするループまたはバルジ1つ以上を有する(図1〜6参照)。非ワトソンクリック対とはヌクレオチドが対になっていないか、または対が従来型のワトソンクリック塩基対ではない領域が存在するという以外は正常なワトソンクリック型塩基対である領域を指す。例えば、ヌクレオチドは同じヌクレオチド(例えばプリン−プリンまたはピリミジン−ピリミジン)とともに近接して保持される。好ましいバルジまたはループは一連、例えば4個連続のグアニンヌクレオチドの群を有する。このグアニンの様相はRNApol内の認識配列に相当する場合が多い。例えばRQ11+12は一連のグアニンヌクレオチドを与えるRev蛋白結合部位およびサルシン認識部位に由来する配列を含む。Iwai,S.等、NAR20(24):6465−6472,1992が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる。
【0034】
関与するポリヌクレオチド配列については絶対長の条件がある。しかしながら、好ましい範囲は約20〜約10,000ヌクレオチドである。本発明のRNAアンプリボディーを使用するための適切な長さのヌクレオチド配列は当業者が決定することができる。本発明のポリヌクレオチド配列はより長い鎖の核酸の内部に包埋されるか、または他の分子と会合していることができる。
【0035】
個々の塩基対の相補的塩基対形成は一般的にアデニンがウラシル(またはDNAの場合はチミン)と対になり、そして、グアニンがシトシンと対になるというChargaffの法則に従う。しかしながら、非従来型の塩基対形成を説明する修飾された塩基が存在する。修飾された核酸とは、本明細書においては化学的に修飾されたヌクレオチドを含むDNAまたはRNAの核酸分子を意味するものとする。「核酸類縁体」とは本明細書においては、従来の核酸との塩基対形成相互作用に関与できる「PNA」またはモルホリノのような非核酸分子を意味するものとする。このような修飾された塩基および核酸類縁体は本発明の範囲内に包含されるものとする。例えば、デアザグアニンおよびウラシル塩基を含むヌクレオチドはそれぞれグアニンおよびチミンの代わりに使用することができ、これによりプローブの熱安定性を低減することができる。同様に5−メチル−シトシンはより高い熱安定性が望まれる場合に複合体中でシトシンの代替となることができる。糖部分の修飾も可能であり、本発明の範囲に包含される。例えばRNA分子のヌクレアーゼ感受性を低減するために用いることができる2’−O−メチル基の付加によるリボース糖部分の修飾が挙げられる。核酸骨格の種々の部分を用いて行なわれる修飾もまた本発明の範囲内に包含される。例えば、メチルホスフェート、メチルホスホネートまたはホスホロチオエート結合を用いてホスホジエステル骨格から負電荷を除去することが可能である。
【0036】
本発明者等は同じ凝塊蛋白上の複数の結合部位を示す実験を実施した。これらの部位は種々のRNAポリヌクレオチド組成物に対する親和性を有することがわかっている。試験した凝塊蛋白はプリオン蛋白(PrP)であり、Weiss, S.等、J.Virol.1997,Nov:71(11):8790−7が参照でき、その内容全体が参考により本明細書に組み込まれる。2つのRNAポリヌクレオチドを試験したが、その1つはMNV RNAであり、もう1つはAP1 RNA配列をその内部にクローニングされたMNV RNAである(Weiss等参照)。クローニングされたMNV RNAはPrPアンプリボディー(PrP−Amp)と称する。
【0037】
PrP−Ampを増幅する能力をQ−Ampを用いて調べた。増幅に適する条件下、MNVとPrP−Ampを個々にQ−Ampに付した。図7はMNVに添ってPrP−AmpをQ−Ampレプリカーゼにより増幅できることを示すデータを示している。Q−Amp増幅のための適切なプロトコルの例は20mM MgCl、2mMジチオスレイトール、200 μM rNTPおよび200nMレプリカーゼを含有する80mM Tris−HCl緩衝液、pH7.5である。20μLの反応溶液中、RNAを添加し、37℃で30分間インキュベートする。ある状況下では、1μL[α−P32]CTP(3000Ci/mmol)を反応混合物に添加することにより初期のRNAを標識する。或いは増幅産物の検出はこれらをポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、例えばSYBR Gold(Molecular Probes,Eugene,ORより入手)を用いてゲル中の核酸を染色することにより行なう。
【0038】
次にPrP−Ampの結合特異性を調べ、MNVと比較する。図8aは結合データを示す。この図を十分理解するために、この実験において2つの膜を用いた理由に留意しなければならない。Weiss,S.等、J.Virol.1997,Nov:71(11):8790−8797が参照でき、その内容全体が参考により本明細書に組み込まれる。蛋白および結合RNAはPVDF膜に結合させる。結合したRNAは蛋白に結合するRNAである。遊離または未結合のRNAはPVDF膜を通過し、ナイロン膜に結合する。従って、RNAが標識され、蛋白と結合しない場合、これはPVDF膜を通過し、遊離の標識RNAが結合しているナイロン膜からシグナルが発せられる。逆に、標識されたRNAが蛋白と結合すれば、シグナルはPVFD膜から発せられる。PrP−Ampに関しては、2つのシグナルがPVDF膜上に観察され、このアンプリボディーがプリオン蛋白に結合することがわかり、さらにtRNAの存在がこの結合に影響しないこともわかる。PrP−Ampと異なり、プリオン蛋白へのMNVの結合はtRNAの存在に影響される。tRNAの存在下、標識されたMNV RNAはPVDF膜を通過し、ナイロン膜に至るので、tRNA存在下でプリオン蛋白への結合がないことが示される。図8bは図8aに示したものと同じデータであるが、ただし図8bではグラフにより示した。表1に示した結合解離定数(kd)は(a)プリオン蛋白へのPrP−Ampの結合はtRNAの存在とは無関係であるが、MNVの結合はtRNAの存在下で劇的に減少したこと、および(b)PrP−Ampはプリオン蛋白に対して高い親和性を有することを定量的に示している。
表1
Figure 2004520080
【0039】
この表によれば明らかに、PrP−Ampの結合は極めて安定であるのに対しMNVの結合安定性はtRNAの存在または非存在に依存している。
【0040】
上記の結合データはプリオン蛋白上の結合部位は少なくとも2つ存在することを示唆している。図9によれば、先ずtRNA非存在下でMNVが結合する低親和性部位が存在する。また、PrP−Ampが結合する高親和性部位が存在する。
【0041】
この複数の結合の理論について更に、競合試験により検討した。プリオン蛋白に対するPrP−Ampの結合をAP1またはMNVの何れかを用いて妨害した。図10によれば、AP1は効果的にPrP−Amp結合を抑制したが、MNVはPrP−Ampの結合に対しては僅かな作用を有するか、全く作用を有さなかった。即ちプリオン蛋白上には少なくとも二種のRNA結合部位があるはずである。
【0042】
結合部位間の相違を明らかにするための道具としてtRNAを用いながら、他のRNAがtRNAの存在下にプリオン蛋白に対して結合親和性を有するかどうか調べた。観察結果を表2にまとめた。
表2
Figure 2004520080
【0043】
RQ11+12に対する好ましいK値に基づいて、次に存在下または非存在下のプリオン蛋白に対する結合を調べた。表3はそのデータを示す。表3に示されたデータによれば、tRNA非存在下におけるプリオン蛋白へのRQ11+12の結合はtRNA存在下の結合と比較して約4倍堅固であることがわかる。
表3
Figure 2004520080
【0044】
RQ11+12の結合を更に調べるために、AR1 RNAを用いてRQ11+12のプリオン蛋白への結合に競合させた。図11はAp1が効果的にRQ11+12の結合を抑制することを示している。このデータはまたRQ11+12がプリオン蛋白の高い親和性部位に結合していることを示している。
【0045】
即ち更に呈示したデータによれば、高親和性部位への結合には特異的RNA構造要素の存在が必要であることが示唆される。高親和性部位への安定な結合(tRNA存在下)のためのRNAの構造要素を調べるために、発明者等はプリオン蛋白への他のRNAの結合を調べた。MNV由来のRNAをこの実験のために選択した。MNV誘導体は20ヌクレオチドのランダムインサートを含んでいた。表4は実験で得られたデータを示している。データによれば、同じ長さであるが二次構造が異なるRNAの間で高親和性部位への結合に大きな多様性があることが解かる。恐らくは、単一の幹部の構造における多様性が高親和性部位への結合の相違を説明できると思われる。従って、高親和性部位への堅固な結合を発生させている特異的RNA構造要素が存在すると考えられる。
表4
Figure 2004520080
【0046】
本発明の方法は試料マトリックス内の凝塊蛋白の1つ以上の存在または非存在を検出することを目的としている。親和性複合体は本発明のプローブ1つ以上に試料マトリックスを接触させることにより形成する。「接触」という用語は本明細書においては混合物を形成することと矛盾しない方法において2種以上の物質を共存させることを意味するものとする。本実施態様のプローブは本発明のアンプリボディーを含む。
【0047】
本明細書においては、「試料マトリックス」とは蛋白を含有するいかなる試料も包含する。例えば、血液、尿、他の体液、細胞、細胞抽出液、組織および組織抽出液(特に神経学的組織)が本発明の範囲に包含される。
【0048】
本発明のアンプリボディープローブは凝塊蛋白の少なくとも1つに対して親和性を有する核酸アンプリボディー分子1つ以上を含む。1つの実施態様においてはRNAポリヌクレオチド成分はリボヌクレオチド塩基20個以上を有する天然または非天然の分子である。このRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも1つは凝塊RNA結合蛋白の存在下コンセンサス配列の少なくとも1つに対して親和性を有する。本実施態様においては、凝塊蛋白に対する親和性を有するRNAの部分はRNAウィルス、RNAファージ、mRNA、rRNA、tRNAR、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られる配列、またはこれらの組み合わせに由来する配列である。
【0049】
アンプリボディーの調製はアンプリボディーの均質な回収である。この均質な調製はモノクローナル抗体の調製と同様である。或いは、アンプリボディーの調製は抗体のポリクローナル調製と同様に異種であることができる。
【0050】
本発明の方法はまたアンプリボディーの異種回収を用いることを包含する。この回収とは同じかまたは異なる凝塊蛋白上の種々の結合部位に対する親和性を有する種々のアンプリボディーを指す。アンプリボディーの異種回収物は試料マトリックスに導入される。親和性複合体は単一の凝塊蛋白と凝塊蛋白に添った種々の部位において結合した種々のアンプリボディーとの間に形成することができる。更にまた、親和性複合体は1つの試料マトリックス内に存在する種々のアンプリボディーと種々の凝塊蛋白との間に形成することもできる。
【0051】
本発明の方法は形成された如何なる親和性複合体の検出も包含する。親和性複合体の検出はもとの試料マトリックス中に存在する凝塊蛋白の1つ以上の存在を示すものである。親和性複合体の検出は質量または密度の測定、質量スペクトル分析、プラズモン共鳴、光学的発光または吸光、蛍光、りん光、ルミネセンス、化学ルミネセンス、ポーラリゼーション、屈折率の変化、電気伝導度、放射能、粘度、濁度および旋光度よりなる群から選択される方法により行なわれる。
【0052】
アンプリボディープローブの1つ以上を標識することができる。標識はイオン結合、共有結合または吸着を介して結合させることができる。好ましくは、標識は目的の配列を含むが凝塊蛋白への結合を妨害しないアンプリボディーポリヌクレオチドの何れかの領域に対して共有結合させる。標識としては、例えば、放射性同位体、例えば放射性リン原子、親和性試薬、例えばビオチン、インターカレーション蛍光染料またはアンプリボディーに結合した蛍光部分、りん光染料またはキレート、質量スペクトル分析で検出するための電子団(electrophore)、化学ルミネセンス発色団が挙げられるがこれらに限定されない。
【0053】
Photodyod Array(PDA)検出器を用いながら、如何なる標識自体も用いずにスペクトル分析を行うことができる。親和性複合体(並びにアンプリボディー)はPDA検出器を用いてその独特のスペクトル像によりモニタリングし、検出することができる。複合アンプリボディー(凝塊蛋白との複合体)からの遊離のアンプリボディーの分離は、当業者の知る方法を用いて、例えばサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー、濾過、電気泳動等を用いて行なうことができる。
【0054】
本発明はまた固定化されたアンプリボディープローブの1つ以上を用いた試料マトリックス内の凝塊蛋白の1つ以上の検出方法に関する。本実施態様においては、RNAポリヌクレオチドの少なくとも1つを固相表面に固定化する。固定化されたポリヌクレオチドはアンプリボディーであることができるが、また、アンプリボディーである第2のRNAポリヌクレオチドにハイブリダイズすることもできる。この方法はまた、異なる凝塊蛋白に対する親和性を有する各アンプリボディー、または、同じ凝塊蛋白上の異なる部位に対する親和性を有する各アンプリボディーまたはこれらの組み合わせであるアンプリボディーの異種回収も意図している。
【0055】
本実施態様の1つの特徴において、第2のポリヌクレオチド(アンプリボディー)に対して適切な条件下でハイブリダイズするために十分な配列を有する第1のポリヌクレオチド(DNAまたはRNAの何れであることもできる)を表面に固定化する。米国出願08/971,845;06/016,708;および08/812,105が参照でき、その内容は全て参考により本明細書に組み込まれる。固定化に用いる第1のポリヌクレオチドの部分は第2のポリヌクレオチド(またはアンプリボディー)にハイブリダイズさせるために用いる配列の領域とは異なる。本発明のこの特徴において方法は順次、または単一の段階として行なうことができる。第1に試料マトリックスをアンプリボディと凝塊蛋白の相互作用により親和性複合体が形成されるのに適する条件下、適切なアンプリボディー混合物、即ちアンプリボディーの同種または異種の混合物の何れかと試料マトリックスを混合する。この段階の後、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションに適する条件下、表面に固定化された第1のポリヌクレオチドと親和性複合体と推定されるものを混合することができる。第2に、第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズされた第1のポリヌクレオチドから形成されたハイブリダイゼーション複合体と試料マトリックスを混合するが、その際第1のポリヌクレオチドは表面に固定化されている。このような条件下、親和性複合体の形成は固定化されたアンプリボディーと共に起こる。好ましくは、如何なる遊離の親和性複合体も、固定化された第1のポリヌクレオチドとの第2のポリヌクレオチド(アンプリボディー)凝塊複合体のハイブリダイゼーションにより、最終的には固定化される。
【0056】
本実施態様の別の特徴において、固定化されたアンプリボディーは凝塊蛋白との相互作用のためのアンプリボディーの能力に影響しないポリヌクレオチドの領域を用いて表面に固定化される。凝塊蛋白は固定化されたアンプリボディーと親和性複合体を直接形成する。
【0057】
表面支持体のような固相表面への核酸の結合手段は単なる吸着であることができる。好ましくは、結合は核酸と支持体表面に会合している何らかの化学的部分、例えばアミンまたはカルボキシル基またはアクリルアミドとの間の共有結合を介して行なわれる。化学的な交差結合を用いて核酸を表面に固定化することができる。このような化学的交差結合剤の例はカルボジイミド(例えば1−エチル−3,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)であり、これは核酸の5’末端上のホスフェート基を支持体表面上のアミン基と結合するために用いることができる。更にまた、イオン相互作用もまた核酸のこのような固定化を促進することができる。結合は核酸と表面との間に直接、または、核酸と表面との間に中間分子を置くなど間接的に行なうことができる。中間分子は特に厳密な長さを有する必要はない。
【0058】
親和性試薬はまた表面への核酸の固定化のために用いることもできる。例えば同属の部分を含む表面にアビジンまたはビオチン部分を運ぶ核酸はその表面に核酸を結合させる。親和性に基づいた固定化法を用いる別の例は親和性リガンド、例えばビオチンまたはアビジンに目的の核酸を同時広範囲に連結させることである。例えばビオチンがリガンドである場合はアビジンが同属受容体となる、リガンドに対する同属受容体は磁気粒子をそれに結合させて保有する。磁場が表面に適用されると、磁気粒子はそれに結合しているものと共に表面に固定化されるのである。
【0059】
支持体マトリックスは、ビーズまたは粒子、棒、繊維、容器、薄層プレート、膜、ゲル様ポリアクリルアミド、澱粉、アガロース、セルロースまたは他の重合体ゲルの形態のクロマトグラフィー支持体であることができる。
【0060】
試料マトリックス内の凝塊蛋白の1つ以上の存在または非存在を測定するためのキットも本明細書に開示する。キットはアンプリボディープローブの1つ以上を含む。これらのプローブはヌクレオチド20個以上を有する非天然のRNAを含み、個々でヌクレオチドの配列部分の少なくとも1つは凝塊蛋白に対する親和性を有する。1つの実施態様において、アンプリボディーの親和性配列部分はRNAウィルス、RNAファージ、RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られるヌクレオチド配列、mRNA、rRNA、tRNAR、またはこれらの組み合わせに由来する。実際は本キットは本発明の方法を用いる。
【0061】
1つの実施態様において、キットは、各々が凝塊蛋白上の異なる部位に結合するアンプリボディーの少なくとも2つを有している。本実施態様におけるアンプリボディーの少なくとも1つは従来の方法により検出することのできる標識を有している。特定の特徴において、キットのアンプリボディーの1つは固相に固定化されている。この特定の特徴における別のアンプリボディーは凝塊蛋白に対する親和性を有することができ、固定化されたアンプリボディーにハイブリダイズする能力を有する。本発明のこの特定の特徴において、好ましくは遊離のアンプリボディーを標識する。
【0062】
キットは更に、アンプリボディーの1つ以上および凝塊蛋白の少なくとも1つを含む親和性複合体を、遊離のアンプリボディーから分離するための手段を有する。分離手段にはサイズベースの膜、濾過ユニットなどが包含されるがこれらに限定されない。
【0063】
伝染性海綿状脳障害(TSE)は中枢神経系(CNS)に罹患する神経変性性の感染性疾患である。TSEにはヒツジスクラピー、ウシにおけるウシ海綿状脳障害(BSE)およびクロイツフェルトヤコブ病(CJD)、Guerstmann−Straussler−Scheinker症候群(GSS),ヒトにおけるクールー病および致命的家族性不眠症(FFI)が包含される(Prusiner,1982)。全てのこれらの致命的疾患に共通なものは、インキュベーション期間が長くアミロイド様の棒状物およびスクラピー関連のフィブリル(SAF)の蓄積である。SAFの形成は感染性を伴う内因性で無害のPrPのイソフォームであるPrPSCの広範なフィブリル化の結果である。可溶性PrPから不溶性のPrPScイソフォールへの構造的変換が臨床的プリオン疾患の発症と進行を決定する。
【0064】
PrPをコードする遺伝子は高度に保存されており、35kDAの糖蛋白としてprnP座に構成的に発現される(Chesebro等、1985,Nature,315:331−33;Oesch等、1985,Cell.40:735−46が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。翻訳されたPrPの約半分は細胞外膜にプロセシングされ、ここでC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより原形質幕に係留される。しかしながら、PrPはまた2つの膜貫通型としても存在しており、その1つはER管腔の内部のN末端(PrPNtm;40〜50%)に、そしてもう1つはER管腔の内部のC末端(PrPCtm;10%)に逆方向で存在する。これらのプロセシングの差がこれらのPrP型の機能的特性を反映しているかどうかは不明である。
【0065】
PrP蛋白は興味深い構造的特徴、特にその生来の野生型立体配座のPrPから感染性のPrPSCへの通常でない変換を有している。蛋白の構造における変化は感染性を伴うイソフォームのC末端ドメインのベータシートに富む領域へαへリックスリッチのPrPからの遷移により特徴付けられる(Pan等、1993, PNAS, USA90:10962−66が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。幾つかの生化学的特色、例えば生理学的溶液中のPrPScの不溶性およびプロテイナーゼKによる消化に対するそのC末端ドメイン(アミノ酸90〜231)の耐性がイソフォームを特徴付けている。PrPの非プロテアーゼ処理完全長N末端の構造は極めて可撓性に富み、NMR構造解析によれば単一の安定な構造は有していない。従って、PrPのこの領域は細胞およびスクラピーイソフォームの間で最も識別困難である。
【0066】
核酸へのPrPの結合は精製された蛋白を用いた直接のin vitroの複合体形成の観察を通じて、感染組織から分離したスクラピー関連フィブリル(SAF)由来の核酸の同時精製により多数が明らかにされている(Merz等、1981,Acta Neuropathol(Berl)54(1):63−74が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。例えばIAPのウィルスRNAゲノムの数千塩基を感染組織からSAFと共に同時精製している(Murdoch等、1990,Virology 64(4):1477−86;Akowitz等、1994,NAR 22(6):1101−07が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。このような観察は、このような遺伝子的な関連性は現在まで実験的に明らかにされていないものの、核酸がTSEの伝染における必要な遺伝子成分であるという可能性を調べる研究に影響した。PrPとウィルス成分との間のin vivoの関連性の間接的証拠はPrPSc形成速度がモロニーネズミ白血病ウィルスに感染した細胞において加速されるという観察結果である(Carp等、1999,J.GenVirol 80(Pt1):5−10が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。更にまたE.coli中で発現される組み換え哺乳類PrP蛋白を用いたin vitroの試験から、PrPとウィルス核酸との間の相互作用の証拠もある。シリアンゴールデンハムスター組み換えPrP(srPrP)は意外にもHIV由来のヌクレオカプシド蛋白(Ncp7)とin vitroの活性の相同性を有している(Tanchou等、1995,J.Mol.Biol.252:563−71;Gabus等、2001a,J.Mol.Biol.307(4):1011−21;Gabus等、2001b J.Biol.Chem.276(22):19301−9が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。srPrPはDNA鎖転移、核酸シャペロニング、HIV−RTプライミングおよび縮合蛋白/核酸構造の形成のプロセシングにおいてNcp7と実質的に同じレベルの活性を有している。2重鎖DNAもまた同様に縮合されたPrP構造の形成並びにプロテイナーゼK消化に対する耐性を誘発する(Nandi,1998,Arch.Virol.143(7):1251−63;Nandi and Leclerc,1999 Arch.Virol.144(9):1751−63;Nandi and Sizaret,2001,Arch.Virol.146:327−45が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。最近2つの小型RNAアプタマーがPrP蛋白に結合するその能力に基づいて単離された。1つのアプタマー、AP1(29nt)は組み換えsrPrPを用いて単離され、srPrPへの結合において重要であることが示唆されている構造である3つのスタッキングG4カルテットを含むコンパクト構造に折り込まれていると予測されている(図12a;Weiss等、1997,J.Virol.71(11):8790−97が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。一連のsrPrP切断を用いることにより、著者等はアミノ酸23〜39内に可変性N末端へのAP1の結合を局在化させている。
【0067】
プリオンのフィブリル化の開始および進行の特定の機序は十分理解されていない。これまでの研究においてRNAまたはDNAがプリオン疾患の伝染において遺伝的役割を果たすかどうか検討されていた(Akowitz等、1994;Nandi and Leclerc,1999;Cordeiro等、2001,J.Biol.Chem.276(52):49400−09;Narang,1998,Res.Virol.149(6):375−82;Narang,2002,Exp.Biol.Med.227(1):4−19が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。
【0068】
本発明者等はhrPrPへのRNAの結合の物理的な相互作用と影響に着目した研究を実施した。実験は実施例において後述する。
【0069】
本発明の特性および他の詳細は実施例においてより特定して記載し、明確化する。本発明の特定の実施態様は例示を目的としており、本発明を限定するものではない。本発明の原則的な特徴は本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の実施態様において用いることができる。
【0070】
(実施例)
プリオンのフィブリル化の開始および進行の特定の機序は十分理解されていない。これまでの研究においてRNAまたはDNAがプリオン疾患の伝染において遺伝的役割を果たすかどうか検討されていた(Akowitz等、1994,NAR,22(6):1101−07;Nandi and Leclerc,1999,Arch.Viol.144(9):1751−1763;Cordeiro等、2001,J.Biol.Chem.276(52):49400−09;Narang,1998,Res.Virol.149(6):375−82;Narang,2002,Exp.Biol.Med.227(1):4−19が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。本試験においては発明者等はプリオンの伝染の遺伝的特徴ではなくhrPrPへのRNAの結合の物理的な相互作用と影響に着目した。このためin vitroの組み換えヒトPrP(hrPrP)のRNA結合活性を特性化するために配列の明らかにされている小型RNAを使用した。得られた結果によれば、hrPrPはアミノ酸23〜90(N末端)に残存する小型RNA分子種に対して高い親和性を有することが解かる。PrPとRNAとの間の複合体形成の程度はRNaseAによる分解からRNA分子種を保護することにより明らかにされる。更にまた、非特異的競合物質であるRNAの大過剰量の存在下でHrPrPに堅固に結合するRNAのクラスが発見されている。このクラスに属するものとして新たに報告されたRNAであるRQ11+12もまたマウス脳ホモジネート中の内因性PrPに特異的に結合してRNA−PrP複合体を生成するする能力を示している。
【0071】
本試験において使用される転写試薬(T7RNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、rNTP、緩衝液)はAmbion(Austin,TX)またはMBI Fermentas(Hanover,MD)の何れかより入手した。Ultrapure BSAおよびNuc−AwayスピンカラムはやはりAmbionから、Schleicher and Scheull 0.45μBA85ニトロセルロース膜はVWR(Bridgeport,NJ)より入手した。Perkin Elmer (Boston,MA)からPVDFおよびNylon膜と放射性同位体を入手した。分析とRNA定量のために使用した核酸挿入染料RiboGreenおよびSYBR GoldはMolecular Proves(Eugene,OR)より入手した。一般的な塩類、緩衝液および電気泳動用製品はVWRおよびSigma(St.Louis,MO)より入手した。(組み換えヒトPrP23−231、PrP23−144、PrP90−231はMan−Sun Sy,Case Western Universityより寄贈された。) ホモジネートはマウス全脳から調製した。野生マウスおよびPrPノックアウトマウス(PrP0/0)由来の10%(wt/vol)の脳ホモジネートは以下に記載の通り調製した。脳を0.5%Nonidet P−40、0.5%デオキシコール酸およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)を添加したPBS9容量中でホモゲナイズした。遠心分離(12000xg、30分)の後、上澄みを小分けにし、−70℃で保存した。蛋白の濃度はVWRから入手したPierce試薬を用いてBradford試験により測定した。
【0072】
RNAの構築:
RNAはT7RNAポリメラーゼおよびPCR発生DNA鋳型を用いて合成した。PCR鋳型は5’末端にT7ポリメラーゼプロモーターを付加し、ランオフ転写により3’末端が定義されているプライマーを用いて配列決定されているプラスミドまたは合成のオリゴヌクレオチドの何れかから作成した。プラスミド鋳型の調製において用いた全てのDNAクローニング工程は標準的な分子生物学の手法に従った(Sambrook等、1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Springs Harvor Laboratory Press,Cold Springs Harbor,NYが参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。DNAクローニングでは典型的には合成オリゴヌクレオチドのアニーリング、次いでそれらの連結およびpUC19へのクローニングを行なった。内部標識されたRNAは用途に応じて種々の比活性で[α−32P]GTPまたはCTPを取り込むことにより行なった。本試験で使用したRNAは全て、12%ポリアクリルアミド/7M尿素変性ゲルからゲル精製し、その後IBI V−チャンネル電子溶離装置を用いてRNAを回収した。ゲル精製前、放射標識転写反応をNuc−Awayスピンカラム(Ambion)を用いて行ない、一方未標識反応はフェノール:クロロホルム抽出、エタノール沈殿およびTE中の再懸濁(10mM Tris−HCl,pH7.4,1mM EDTA)により行なった。RNAの濃度はBioScan XER−200による同位体取り込み量の関数として、または、Sequoia−Turner Model 450蛍光光度計を用いたRiboGreen(Molecular Probes)蛍光結合試験により、測定した。
【0073】
MDV、MNV(Preuss等、1997,J.Mol.Biol.,Oct.31,273(3):600−13 が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)およびAP1(Weiss等、1997,J.Virol.Nov.71(11):8790−8797が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)のヌクレオチド配列および予測される二次構造は報告されている。5’→3’の方向に示した下記のRNAは今回始めて報告するものである。
(1)AP46(Gカルテット1つが除去されたAP1)(配列番号7)
Figure 2004520080
(2)AP49−(Gカルテット1つが置きかえられたAP1)(配列番号8)
Figure 2004520080
(非特異的RNA;以下の(3)の配列を含む)
(3)Bacillus subtilis 23SrRNAの1577領域;Ash and Collins,1992(配列番号9)
Figure 2004520080
(4)RQT157(Q−ベータレプリカーゼベクターRNA)(配列番号10)
Figure 2004520080
(5)RQ11+12(HIV−Rev結合要素(下線部)(Iwai等、1992)およびSarcin/Ricin切断ドメイン(斜体)(Endo and Wool,1982)を含むQ−ベータレプリカーゼ鋳型)
Figure 2004520080
(6)MNV:AP1(MNVベクターRNA中のAP1(斜体))
Figure 2004520080
(7)MNVLO(Q−ベータレプリカーゼ鋳型RNA)
Figure 2004520080
(8)MNVUP(Q−ベータレプリカーゼ鋳型RNA)
Figure 2004520080
【0074】
フィルター結合試験:
種々のRNAリガンドに対するhrPrPの結合親和性を本質的には文献記載の2フィルター結合法により測定した(Lochrie等、1997,NAR 25(14):2902−10;Battle and Doudna, 2001, RNA 7:123−32が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。蛋白濃度(典型的には50pM)より常に少なくとも10倍低値の濃度の内部標識されたRNAを、37℃で30分間、結合緩衝液(10mM Tris−OAc,pH7.5,2mM MgCl,250mM NaCl,1μg/μL BSAおよび2mM DTT)中20μL〜100μLの反応系において漸増量のhrPrPとともにインキュベートした。tRNAを存在させる場合は濃度は10ng/μL(〜400nM)とした。未標識のRNA(tRNA、競合体RNA)はhrPrPと共に15分間インキュベートした後に、何れかの標識RNAを添加した。蛋白へのRNAの結合の後、Schleicher and Schuell Minifold II Slot Blotハイブリダイゼーション装置を用いて、反応系を蛋白結合膜(PVDFまたはニトロセルロース)、次いで核酸結合膜(陽荷電Nylon)で真空濾過した。蛋白非含有の反応系もインキュベートして濾過することにより蛋白非存在下でフィルターに結合するRNAの量を測定した。Molecular Dynamics Storm 820リン画像化装置およびプログラムであるImageQuantを用いてフィルターを画像化した。バックグラウンド値を差し引いた後、蛋白依存的にPVDFまたはニトロセルロース膜に結合したRNAの存在を両方のフィルターのシグナル強度の合計で蛋白結合フィルターのシグナル強度を割ることにより求めた。結合したインプットRNAの%を各hrPrP濃度において少なくとも3回の測定の平均値として計算した。平均の標準偏差は常時インプットRNAの2%未満であった。蛋白に結合したRNAの%をMicrosoft Excelを用いて蛋白濃度に対してプロットした。見かけのK値は最大RNA結合の50%が起こる蛋白濃度として定義される。
【0075】
ゲルシフト試験:
tRNAゲルシフト実験は30分間37℃で結合緩衝液中で行なった。上記した通り、競合体tRNAをhrPrPを含有する反応系中で15分間前インキュベートした。試料緩衝液(30%グリセロール、0.01%キシレンシアノール/ブロモフェノールブルー)2μLを各試料に添加した後に4℃キャビネット中で泳動させる6%ポリアクリルアミド/TBEゲル上に適用した。ゲルを乾燥させ、オートラジオグラフィーにより可視化した。
【0076】
マウス抽出液試験を用いたゲルシフト実験は遅延緩衝液(0.05%デオキシコール酸および0.05%NP−40中、50mM MOPS,pH7.4,5mM MgCl,50mM LiCI,1mM DTT,1μg tRNAおよび1μLウシ血清(Invitrogen))中総容量20μL中で32P標識ゲル精製MNVまたはRQ11+12の何れか50フェムトモルをインキュベートすることにより実施した。RNAおよび緩衝液に対し、hrPrP、野生型マウスの脳抽出液、またはPrP0/0ノックアウトマウスの脳抽出液のいずれかを添加した。反応混合物を室温で20分間インキュベートし、次に試料を4M尿素含有6%ポリアクリルアミドゲルに適用した。電気泳動はTBE緩衝液(50mM Tris−ホウ酸塩、pH8.3,1mM EDTA)中室温で35分間行なった。ゲルを乾燥し、X線フィルムに露光し、リン画像化分析により分析した。
【0077】
RNaseA保護試験:
反応混合物(20μL)を10mM Tris−HCl,pH7.4,100mM NaClおよび1mM EDTA中37℃で30分間インキュベートした。RNAの濃度は500pM、hrPrPの濃度は20nMであった。30分後、反応混合物の濃度を1pg/μL RNaseAに調節した。37℃で更に15分の後、等容量の泳動用緩衝液を添加し(94%ホルムアルデヒド、40mM EDTA,0.001%ブロモフェノールブルー/キシレンシアノール)、即座に試料を加熱して95℃で3分間保持し、その後即座に6%PA/7M尿素・TBE変性ゲル上で分離した。画像の分析はMolecular Dynamics Storm 820 Phosphorimagerにより行なった。
【0078】
in vitroの小型RNAのhrPrPへの結合:
PrP蛋白と核酸との間の安定な複合体の形成はin vitroで組み換えおよび天然のPrPの両方を用いたもの(Nandi,1998,Arch.Virol.143(7):1251−63;Nandi and Leclerc,1999 Arch.Virol.144(9):1751−63;Nandi and Sizaret,2001,Arch.Virol.146:327−45;Weiss等、1997,J.Virol.Nov.71(11):8790−97が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)およびin vivoでPrPScを用いたもの(Merz等、1981,Acta Neuropathol.(Berl).54(1):63−74;Murdoch等、1990,Virology 64(4):1477−86;Akowitz等,1994,NAR 22(6):1101−07が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)が多数報告されている。この試験においては、小型の人工RNA(56〜242nt)収集物を用いてhrPrPのRNA結合活性を更に特性化している。結合試験そのものに直接関係ないが、これらのRNAのいくつかはRNA依存性RNAポリメラーゼ、Q−ベータレプリカーゼによる指数的増幅のための可変鋳型に加工されている(Preuss等、1997, J.Mol.Biol., 273(3):600−13が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。
【0079】
RNAとhrPrPとの間の見かけの解離定数(K)を2フィルター結合試験により求めた(Lochrie等、1997,NAR 25(14):2902−10;Battle and Doudna,2001,RNA 7:123−32が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。ゲル精製されたRNAおよびhrPrPを、組み換えシリアンゴールデンハムスターPrP(srPrP)(weiss等、1997)に対する親和性を有するランダムライブラリからのRNAアプタマーの選択において用いるものと同様の高塩濃度緩衝液(結合緩衝液A;2mM MgCl,250mM NaCl)中37℃でインキュベートした。これらの実験により3つのスタッキングしたGカルテットにより同定される特異的なPrP結合RNAのファミリーが得られた。特に、アプタマーAP1(図12a)はsrPrPに特異的に結合する能力を示し、相互作用は更に16N末端アミノ酸(23〜39)に局在化していた。発明者等はまたAP1を構築し、これを陽性対照として使用することにより我々の収集物のRNA分子種を評価した。独自に開発された系を用いたところ、hrPrPに対するAP1の見かけの解離定数(K)は5.0nMであった(表5)。
表5
Figure 2004520080
【0080】
次にかなりの量の二次構造を含んでいることが各々推測されているhrPrPと小型RNA収集物との間のKを求めた(図12)。反応系は30分間インキュベートすることにより確実に平衡に達するようにした(データ示さず)。意外にも試験したRNAの各々はかなりの親和性をhrPrPに対して示した(表5)。AP46はAP1マイナス1個のGカルテットであり、AP49は配列GAAAによりAP1の最初のGカルテットが置きかえられている。MDVおよびMNV、構造が既に発表されているRNA、はQ−ベータレプリカーゼの鋳型RNAである(Preuss等、1997)。MNVUおよびMNVLOはMNVの5’ループに挿入されている20個のランダムヌクレオチドを含むライブラリより得る。BS1577はBacillus subtilisの1577rRNA領域を含む小型RNAである(Ash and Collins,1992 FEMS Micro.Letters,94:75−80が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。最も堅固に結合しているRNA、MNV:AP1は3.8nMのKを有し、Q−ベータレプリカーゼ鋳型RNA MNVにクローニングされたAP1アプタマーを含む複合RNAである。MNV:AP1はhrPrPに対する特異性を有する増幅可能なRNAとしてのその用途を調べるために開発された。大型であることからAP1よりも生成が容易である。Q−ベータレプリカーゼにより増幅することができ、hrPrPに堅固に結合するその他のRNAはRQ11+12である。RQ11+12は本来RNA切断植物毒素サルシンによる2分割プローブへのプロセシング後のHIV−1 Rev蛋白の検出において使用するために設計された(Zeiler等、2000、Proceedings of SPIE Aerosense 2000,4036:103−14が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。このような理由のため、RQ11+12の幹ループ構造の1つは植物毒素サルシンおよびリシン(S/R)に対するコンセンサス切断部位(図12d)(Endo and Wool,1982,J.Biol.Chem.,257(15):9054−60が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)に隣接するHIV−1 Rev結合要素(RBE)に対するコンセンサス配列を含んでいる(Iwai等、1992、NAR20(24):6465−72が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。これらの付加的な配列がhrPrPへの結合親和性の上昇と関連性があると考えられる理由は、本質的にRBEおよびS/Rドメインを含む幹ループを有さないRQ11+12であるRQT157が56nMという特徴的な見かけのK値を有しているにも関わらずhrPrPと最も安定性の低い複合体を形成したためである。そしてRQT157は、RQ135、即ちQ−ベータレプリカーゼにより効率的に複製されるRNAに由来するものである(Munishkin等、1991,J.Mol.Bio.221(2):463−72が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。
【0081】
hrPrP結合特異性のtRNAによる示差:
RNAの全てが100nMより小さいhrPrPとの見かけの解離定数を有していたことから、本発明者等は結合相互作用には特異性が欠けているという仮説を立てた。この観察結果に対抗するため、非特異的結合部位を封鎖するためにRNA結合試験において用いられる場合のある精製されたtRNAの存在下にhrPrPに対する収集物中のRNAの結合親和性を試験した(Battle and Doudna,2001)。しかしながら、tRNAのアンチコドンの間の相互作用は相補RNAと極めて安定な複合体を形成できることがわかっている(Grosjean等、1976,J.Mol.Biol.103:499−519が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。従って、先ず、RNAを封鎖することによって、tRNAが我々の被験RNAに直接結合せず、そしてRNAによるhrPrPへのその結合を妨害しないということを明らかにする必要があった。
【0082】
複合体がtRNAとそのRNA収集物のサブセットとの間に形成されるかどうか調べるためにゲルシフト試験を用いた(図13)。結合緩衝液 A中37℃で30分間インキュベートした後、MNV:AP1は主に単一のバンドとして非変性ゲル上を移行する(レーン1)。インキュベーションに10ng/μLまたは100ng/μLのtRNAを添加してもMNV:AP1の電気泳動上の泳動性は変化しなかった(レーン2および3)。しかしながらtRNA濃度を1μg/μLに上昇させるとMNV:AP1の移行のパターンは変化し、存在するRNAの少なくとも半分を含む2番目のより遅く移行するバンドが出現した(レーン4)。このバンド形成パターンはtRNAが1μg/μLの濃度で存在する場合にtRNAとMNV:AP1との間に複合体が形成されることを示唆している。これとは対照的に、RQ11+12およびMNVは如何なるtRNA濃度でも複合体を形成しなかった(図13bおよびc)。tRNAの濃度がより低くなると相互作用は観察されないことから、発明者等は非特異的RNA相互作用の抑制剤として10ng/μLの濃度で作業を行なうこととした。この濃度はtRNAの約400nMの濃度に相当し、これは実施中の試験の如何なるRNAよりも大モル過剰量であるが、結合の抑制がRNAの封鎖によるものではないことを確保しておくために十分低値である。
【0083】
種々のRNA分子種の結合をtRNAの存在下に再度検討したところ、結合親和性のより大きい相違が観察された(表5、コラム2)。非特異的阻害剤の存在下、測定されたK値は12nM〜2500nMであった。tRNAの存在による影響が最小限であり100nM未満のK値を維持していたRNAにはAP1、対照RNA、並びにMNV:AP1およびRQ11+12が含まれていた。残りのRNAはより強くtRNAの影響を受けており、一部では2桁を超える差が認められた。これらのRNAの数種はマイクロモル範囲で測定される乖離定数(K)を有している。競合的結合のデータによれば、hrPrPへのRNAの結合の特異性の水準は極めて変動性が高い。ただしRQ11+12およびMNV:AP1のような明らかに異なる構造を有するRNAに対してこのような水準の特異性を示すものが何かという問題の解決手段はほとんどない。少なくとも、この分析により非特異的競合体RNAの大過剰量の存在下でのhrPrPへの安定した結合を予測する因子としてはRNAの長さと全体的な熱力学的安定性は除外できる。hrPrP親和性に対するRNAの二次構造の作用は、小型の幹ループ構造のみ異なるにもかかわらずそのK値は7倍を超えた差があるMNVLOおよびMNVUPにより裏付けられている(図12bおよびc)。
【0084】
hrPrPへの高い親和性と特異的結合をもたらすRNAファミリー:
高い親和性と特異性を有するhrPrPにより結合されることが必要なRNAにおける条件を解明する試みにおいて、発明者等はヌクレオチド組成の異なる4種のRNAのサブセットを分析し、その構造様式を予測した。AP1を選択した理由はそれがN末端PrPに結合するためである(Weiss等、1997)。MNVの選択理由もまた、その親和性がtRNAの存在により大きく影響され、従って非差別的態様でhrPrPに結合するRNAとなるためである。従って、この試験の初期に使用したtRNAは異種の集団であり、hrPrPへの結合における各RNA分子種の作用は不明瞭であったため、競合実験においては非特異的tRNAに等価なものとしてMNVを使用する。特に、hrPrPはtRNALysと相互作用する能力を有することがわかっている(Gabus等、2001,J.Biol.Chem.2001b,Jun 1,276(22):19301−9が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。MNV:AP1およびRQ11+12は、両RNAがQ−ベータレプリカーゼにより増幅可能であり、高い親和性でhrPrPに特異的に結合し、そしてtRNAによる影響が最小であることから選択した。
【0085】
これらのRNA分子種の結合特異性を、放射標識RNAおよび未標識の競合体RNAを用いる競合実験において対抗させた(図14)。標識されたMNV:AP1(50pM)のhrPrP(50nM)への結合は濃度5nM〜120nMの範囲に渡り競合体RNAであるAP1またはMNVの存在下で測定した。競合体RNAがhrPrPと相互作用する機会を確保するために、常時、標識RNAよりも15分前に反応系に添加するようにした。30分のインキュベートの後、結合の範囲を2フィルター試験で調べた。上記条件下、AP1は効果的にMNV:AP1の結合を抑制した。120nMのAP1の濃度において、MNV:AP1の結合は25%未満に低下した。これとは対照的に、競合体MNVが120nMの濃度で存在する場合は、MNV:AP1のhrPrPへの結合はわずか5%しか低下しない。この観察結果は、MNV:AP1のhrPrPへの結合の95%がAP1配列を介して起こったモデルの場合と合致している。これらの結果はまた、AP1配列はhrPrPへの特異的な高い親和性での結合に関与しているが、MNVはそうではないことを示唆している。この結論はtRNA存在下にMNVおよびAP1について測定されたK値と合致している(表5)。
【0086】
RQ11+12のhrPrPへの結合を同じ実験方法を用いて調べた。同じMNVおよびAP1競合体を用いたhrPrPへのRQ11+12の結合の抑制のパターンはMNV:AP1の場合とほぼ同様である。MNVおよびAP1は共に、それらがhrPrPへのMNV:AP1の結合に対して示したより僅かに高度にhrPrPへのRQ11+12の結合を抑制する。この観察結果はMNV:AP1と比較した場合のhrPrPへのRQ11+12の親和性が僅かに低値であることと合致している。この競合データは、RQ11+12およびMNV:AP1がhrPrPへの結合の共通の様式を有していることを証明するわけではないが、その可能性を示唆しているといえる。
【0087】
hrPrPのアミノ末端へのRNAの結合:
hrPrPに対して十分高い親和性で結合し、tRNAまたはMNVによる非特異的競合に対して耐性を示すことから、RQ11+12を用いて更に特性化を行なった。更に、RQ11+12はMNV:AP1とは異なり、高濃度(40μMまで)においてもtRNAと相互作用を示さない。またRQ11+12はQ−ベータレプリカーゼにより急速に増幅される。数種の緩衝液を試験した後、tRNA非存在下のhrPrPへのRQ11+12の結合は10mM Tris−OAc,pH7.5,100mM NaCl,1mM DTT(緩衝液B;データ示さず)中でほぼ10倍(K=2.2nM)向上することが解かった。hrPrPへの結合はまた緩衝液B中でMNVについても向上した(2.6nM)。興味深いことに、緩衝液B中ではRQ11+12とMNVはtRNA非存在下で同様のK値を有している。
【0088】
切断されたhrPrP蛋白を用いてRNA結合活性の物理的位置を調べた。完全長の組み換え蛋白hrPrP23−231のほかに、本発明者等はまたtRNAの存在下、結合緩衝液B中、フィルター結合試験を用いてN末端部分(hrPrP23−144)およびC末端部分(PrP90−231)を調べた(図15)。競合実験の結果から推定された通り、RQ11+12とMNV:AP1は共に完全長hrPrPおよびN末端切断部にのみ結合した(図16b)。蛋白濃度はこのセットの実験では20nMであったため、MNVは10ng/μLのtRNAの存在下でhrPrPに結合できなかった。しかしながら、tRNAを結合緩衝液から除去するとMNVの結合はPrPの完全長またはN末端部分の何れに対しても起こった。C末端切断部であるPrP90−231に対してはどのRNAの結合も検出できなかった。このデータはアミノ酸23〜90内のhrPrPのN末端中に残存するhrPrPの差別的または非差別的なRNA結合活性の双方を示している。
【0089】
RNaseA分解からの保護と結合との相関:
リボヌクレアーゼ保護試験を用いてhrPrPとRNAとの間の相互作用の性質を調べた。hrPrPがRNA構造と最小限しか相互作用を示さず、RNA構造をそれほど封鎖しない場合、RNAはリボヌクレアーゼによる分解を受けやすいはずである。しかしながら、RNA/蛋白複合体が全体のRNA分子を含んでおりhrPrPとの相互作用がRNAの大部分を封鎖する場合、リボヌクレアーゼによる分解に対抗してRNAを安定化させなければならない。
【0090】
hrPrP/RNA複合体を調べるために、RQ11+12およびMNVを過剰のhrPrPと共にインキュベートし、30分間相互作用を起こさせた。RQ11+12は代表的な差別的結合として選択し、MNVは非差別的結合として選択した。次にRNaseAを添加し、更に15分間継続してインキュベートした(図16)。この処理の後、RNAのほぼ半分がhrPrPを含有する試料中に残存したのに対し、RNAのみを含有する試料中ではRNAの95%を超える量が分解した。tRNA(10ng/μL)を初期のインキュベーションに含めるとhrPrPにより付与されるMNVの保護の水準はtRNA非存在下の約半分となるのに対し、RQ11+12の保護の水準は不変である。RQ11+12およびMNVの保護のパターンはhrPrPへのそれらの結合パターンと直接相関しており、hrPrPとの複合体の形成が結合RNAを保護することが示唆される。
【0091】
PrPに特異的に結合するRQ11+12:
生物学的複雑性の漸増する溶液中における結合試験を用いてPrPへのRQ11+12結合の特異性を調べた。hrPrP23−231の理論的等電点は9.39(ExPASy分子生物学サーバー、Swiss Institute of Bioinfomatics)であり、従って蛋白は結合試験の条件下では陽電荷を有している。そのヌクレオチド組成の結果として、RQ11+12は負荷電されている。従って、hrPrPの陽電荷およびRQ11+12の負電荷は、RQ11+12とhrPrPの間の結合が電荷に基づいている可能性を生じさせている。この可能性に対抗するために、その理論的pIが9.9(ExPASy)であり、試験条件下で陽荷電しているはずであることから、蛋白リソシームをRQ11+12との結合試験において使用した(図17a)。試験条件はRNA(2nM)および蛋白(20nM)の濃度がRQ11+12の広範な結合は可能とするがNMVに対してはそうならないように調節した(表5の結果に基づく)(10ng/μLのtRNAの存在下の結合緩衝液A)。全ての場合において、MNVの結合はバックグラウンド値であった。hrPrPへのRQ11+12の結合は約90%であったのに対し、BSAおよびリゾチームへの結合はバックグラウンド値であった。これらの結果は、RQ11+12が陽荷電されたリゾシーム蛋白と非特異的に相互作用しないことを示している。
【0092】
PrPに対するRQ11+12の特異性は更にゲルシフト試験を用いたマウス脳抽出液中での結合を調べることにより確認した。抽出液は生理学的に多様な蛋白類が含まれており、これによりPrPに対するRQ11+12の特異性のストリンジェントな試験が可能となる。hrPrP40ngと共にインキュベートした後、標識されたRQ11+12の移行は電気泳動の間ポリアクリルアミドゲルを通過させながら遅延させ、一方MNVの移行には影響がないようにする(図17b、レーン5および6vs1および2)。PrPへのRQ11+12の特異性は野生型マウス脳抽出液またはマウスPrPノックアウト脳抽出液の何れかの等量(20μg)と共にインキュベートした後に明らかにされる(レーン7および8)。野生型マウスにおいてのみシフトが観察され、レーン7で観察されたシフトは野生型抽出液中に存在する内因性PrPの存在のみによるものであることが示唆される。レーン6よりもレーン7においてRQ11+12の遅延が大きいことは、恐らくは天然のPrPには存在するがhrPrPには存在しない翻訳後の修飾、宿主蛋白とのPrPの会合またはin vivoで形成されるが精製された組み換えprP中では形成されないPrPの2量体の存在の何れかによるものと考えらえる(Yeheily1等、1997,Neurobiology of Disease 3:339−355;Meyer等、2000,J.Biol.Chem.Dec.1,275(48):38081−7が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。抽出液中の天然のマウスPrPとRNAとの間の相互作用のパターンはRQ11+12が高い特異性を示したがMNVは示さなかったtRNA存在下に実施したフィルター結合実験を想到させる。
【0093】
RQ11+12によるhrPrPのフィブリル化の促進:
最近発表された研究において、DNAはin vitroで組み換えPrPのフィブリル化を誘発することができることが報告された(Nandi and LeClerc,1999)。この実験において、G−C塩基対(gcDNA)を全体的に保有する1500ntの2重鎖DNAを精製された組み換え蛋白と共に低いpH(5.0)でインキュベートしている。凝集特異的染料であるコンゴレッドを用いることにより、本発明者等はDNA依存性のフィブリル化を明らかにした。更にまた、このPrP/DNA凝集物はPrP構造転換の特質であるプロテイナーゼKによる消化に対する耐性を有していた。
【0094】
本発明者等はRQ11+12が同じ能力を有するとしたら興味深いと考えた。Nandiの研究において使用されたgcDNAとは異なり、RQ11+12は自己凝集しないため、電子顕微鏡観察によりhrPrP/RQ11+12複合体形成の結果を明らかにするために選択した(図18)。Nandiの酸性条件を用いる代わりに、生理学的pHの緩衝液(50mM MOPS,pH7.5,0.1μg/μLtRNA,8μg/μLウシ血清、0.05%NP−40/デオキシコール酸)を選択した。室温で16時間インキュベートした後、8.9pmolのhrPrPは識別可能な上層構造を形成しなかった(図18a)。しかしながら、0.16pmolのRQ11+12が反応系に存在する場合、凝集構造を観察することができる(図18b)。個々の棒状の構造を形成するスクラピー感染組織から回収されるSAFとは対照的に、hrPrP間に形成される上層構造は格子様の凝集物を形成すると考えられるが、hrPrP凝集に対するRQ11+12の作用は明らかで顕在化している。
【0095】
この試験はリボ核酸が組み換えPrPに結合するという以前に報告された観察結果を確認し、拡張するものである。本明細書に記載した結果は、hrPrPが数種類のRNAと極めて安定した複合体を形成でき、その解離定数は低いナノモル領域にあることを明らかにしている。2つのRNA、RQ11+12とMNV:AP1はきわめて堅固にhrPrPに結合し、他のRNAからの競合に対して耐性を示し、これによりその試験群中の他のRNAの一部と比較して結合活性が顕著に異なっていた。更にまた、RQ11+12は恐らくは全マウス脳抽出液中の内因性PrPに特異的に結合した。MNV:AP1とRQ11+12との間にはhrPrPへの特異的結合を説明する明らかな類似性は少ないものの、両者は共に蛋白結合RNAに共通な特徴である熱力学的に安定な非規範的な塩基対を含む二次構造要素を有することが推測される。非ワトソンクリック型の塩基対はRNAの深溝を拡張することができ、これにより拡大した蛋白ドメインとの相互作用に適応し、蛋白リガンド結合特異性において役割を果たすと考えられる別の水素結合基を露出させることができる(Ye等、1999,Nat.Struct.Biol.3(12):1026−33;Jiang等、1999,Structure Fold Des.7(12):1461−72;Hermann and Westhof,1999,Chem.Biol.6(12):R335−43;Patel,1999,Curr.Opin.Struct.Biol.9(1):74−87;Puglisi and Williamson,1999,the RNA World,RF Gesteland,TR Cech,JF Atkins,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2nd,1999,pp403−25;Hermann and Patel,2000,Science,287(5454):820−5が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。以前に記載したMNV:AP1中のAP1構造は3つのスタッキングしたgカルテットを有している(Weiss等、1997)のに対し、RQ11+12は非ワトソンクリック型塩基対であるRev結合要素(RBE)および18S rRNAに由来するサリシン/リシン切断ドメインを含むことが解かっている2つのRNAドメインを含んでいる(図12d)(Iwai等、1992;Endo and Wool,1982,J.Biol.Chem.257(15):9054−60が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。これらのRNAの二次構造により与えられる熱力学的安定性はhrPrPの可変N末端とのより広範な相互作用を可能とする場合がある。非構造性ペプチドはその立体配座を安定なRNAの構造様式に変化させることにより、HIV−1 Rev蛋白に由来するペプチドとそのRNAアプタマーとの間の結合の場合と同様、安定な複合体を形成する場合がある(Ye等、1996;Ye等、1999,Chem.Biol.6(9):657−69;Tan等、1993,Cell 73(5):1031−40が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。
【0096】
DNAはDNA/蛋白複合体の形成を通じてPrP中間体を安定化させることによりPrPScへのPrPCの変換における活性化エネルギーを低下させることができる。本試験においては、発明者等はRNA様RQ11+12の同様の役割を示唆すると考えられるデータを呈示する。これによれば、PrPへのRQ11+12の結合は、競合体RNAの大モル過剰量の存在下、極めて低濃度で高い親和性および特異性で起こる。hrPrPへの結合はまたRNaseAによる分解からRQ11+12を保護している。これらの結果は、hrPrPとのRQ11+12の相互作用により特徴付けられる特異的なRNAの相互作用がRNA/PrP複合体の形成を開始させ、さらにPrP凝凝塊の形成をも触媒するモデルを与えるものである。このような凝凝塊はフィブリル性であり不溶性であると予測される。このような凝凝塊の形成は図16のレーン3および4中の変性ゲル中の原点に蓄積している試料の量を説明すると考えらえる。このことはまた、RQ11+12はhrPrPへのそれ自体の結合にために競合する際に、MNVがそれ自体の結合のために競合するよりも効率的である自己競合結合実験の結果も説明している(図16b)。PrPのRNAに対する比率が、1個より多いhrPrPの分子にRQ11+12が結合している場合に予測される1:1に近いほど作用はより顕著になる。以前に、核酸により触媒されるPrPの凝凝塊のin vitroの形成を酸性条件下DNAを用いて明らかにされている(Nandi and Leclerc,1999;Nandi and Sizaret,2001;Cordeiro等、2001,J,Biol.Chem.276(52):49400−09が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。RQ11+12がRNA/PrP凝凝塊の形成を触媒すると示唆することは興味深い。作用は速度論的であり、即ち、RQ11+12のようなRNAは構造転換を効率的に触媒できる極めて特別な方法においてPrPと相互作用することができる。相互作用の特異性のため、低い濃度でも起こり得る。この活性はRQ11+12のようなRNAとMNVのようなRNAとの間の結合活性の相違に関係していると考えられる。
【0097】
プリオン疾患の伝染の複雑性のために、幾つかの最近の研究はプリオン疾患の発症または進行を助けるコファクターが存在する可能性に着目している(Weissmann,1991,Nature,352:679−83が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。PrPからプリオン疾患の特質であるPrPScへの転換を触媒する「ファクターX」蛋白の検索は幾つかの可能性のある蛋白の候補を明らかにしている(Yehiely等、1997)。最近、DNAがin vitroでPrPに結合し、特殊な条件下でフィブリル化を誘発することができることがわかった(Nandi,1998;Nandi and Leclerc,1999;Nandi and Sizaret,2001;Cordeiro等、2001)。この観察結果によりDNAがプリオン疾患の進行に関与している可能性があることが示唆される。本データはRQ11+12のようなRNAがプリオン疾患に関与するより可能性の高い候補であることを示唆している。hrPrPに対するRQ11+12のKはdsDNAについて測定したものよりも3桁低値であり、結合は生理的条件下に起き、RNAは原形質内の細網構造内部にそのN末端が延びているPrPNtmと相互作用する機会が与えられる(Hedge等、1998,Science 279(5352):827−34が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。PrPの凝集の誘導のためのモデルは特異的RNAリガンド結合時にPrPのN末端が起こす構造的変化の周囲に形成することができる。N末端の新しい立体配座は、PrPの保存されたアミロイド形成性の領域(アミノ酸106〜126)のフィブリル化活性を、その溶媒曝露により活性化させる。内部の42個のアミノ酸β−アミロイドペプチドがAPPから切り出され溶媒曝露された後にのみ凝集する90kDaのアミロイド前駆蛋白(APP)のフィブリル化も同様の機序に従う(Rochet and Lansbury,2000,Curr.Opin.Struct.Biol.10:60−8が参照でき、その内容は参考により本明細書に組み込まれる)。このモデルが正しい場合、この結果はRNA分子がプリオン疾患においてフィブリルの形成を誘発ないしは加速することができることを示唆している。
【0098】
プリオン疾患におけるPrPの結合の機序や特異的RNAの役割とは無関係に発明者等はRNAであるRQ11+12がPrP蛋白に対する有用なプローブであることを明らかにする。更にまた、RQ11+12はRNA依存性RNAポリメラーゼ、Q−ベータレプリカーゼに対する強力な鋳型である。この新しい種類の2官能性のRNA分子またはアンプリボディーは蛋白標的に特異的に結合し、Q−ベータレプリカーゼにより直接増幅される能力を有している。RQ11+12のような分子はプリオンの生物学を研究する際のみならず、より新しくより感度の高い診断方法を開発する際にも有用である。
【0099】
本発明をより理解するために、多くの用語および表現を以下の通り定義する。
【0100】
本明細書においては、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの類縁体の何れかである如何なる長さのヌクレオチドの重合体型も包含するものとする。ポリヌクレオチドは何らかの3次元構造を有し、既知または未知の何らかの機能を果たす。非限定的なポリヌクレオチドの例としては、以下のもの、即ち:遺伝子または遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝鎖ポリヌクレオチド 、プラスミド、ベクター、何れかの配列の単離DNA、何れかの配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドの類縁体も包含する。あり得る場合は、重合体の組み立ての前後にヌクレオチド構造を修飾することができる。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されていても良い。ポリヌクレオチドは標識成分とのコンジュゲート形成によるなどして重合後に更に修飾されても良い。この用語はまた二重鎖および一重鎖のヌクレオチド両方を包含する。特段の記載や条件が無い限り、ポリヌクレオチドである本発明の如何なる実施態様も二重鎖型および二重鎖型を形成することが解かっているか予測される2つの相補的一重鎖型の組み合わせの双方を包含する。
【0101】
ポリヌクレオチドはヌクレオチド塩基4種、即ち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)および、ポリヌクレオチドがRNAである場合は値にンに対してウラシル(U)の特異的配列よりなる。即ち、「ポリヌクレオチド配列」という用語はポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。このアルファベット表示は中央処理装置を有するコンピューターのデータベースに入力し、機能的ゲノミックスおよびホモロジーの検索のようなバイオインフォマティクス用途に使用することができる。
【0102】
「遺伝子」とは転写され翻訳された後に特定のポリペプチドまたは蛋白をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを包含する。本明細書に記載したポリヌクレオチド配列の何れも、それらが会合している遺伝子のより大きいフラグメントまたは完全長のコード配列を同定するために使用して良い。より大きいフラグメントの配列を単離する方法は当業者のよく知るとおりであり、その一部を本明細書に記載する。
【0103】
「遺伝子産物」とは遺伝子が転写され、次に翻訳された場合に発生するアミノ酸、例えばペプチドまたはポリペプチドを包含する。
【0104】
「プライマー」は標的とハイブリダイズし、その後標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進することにより、対象となる試料中に存在する標的または「鋳型」と結合する遊離の3’−OH基を一般的に有する短いポリヌクレオチドを包含する。「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」とは「上流」および「下流」のプライマーよりなる「プライマー対」または「プライマーセット」および重合触媒、例えばDNAポリメラーゼ、典型的には熱的に安定なポリメラーゼ酵素を用いて標的ポリヌクレオチドから複製コピーを作成する反応である。PCRの方法は当該分野でよく知られており、例えばMacPherson等のIRL Press,Oxford University Press(1991)に記載されている。PCRや遺伝子クローニングのようなポリヌクレオチドの複製コピーを作成する全ての方法はここではまとめて「複製」と称する。プライマーはまたサザンブロットまたはノーザンブロット分析のようなハイブリダイゼーション反応におけるプローブとしても使用できる(例えば、Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY,1989が参照できる)。
【0105】
「cDNA」という用語は逆転写酵素のような酵素でcDNAとすることができる細胞または生物中に存在する相補DNA、即ちmRNA分子を含む。「cDNAライブラリ」とは、酵素である逆転写酵素によりcDNA分子に変換され、次に「ベクター」(外来DNA添加後に複製を継続できる他のDNA分子)に挿入される、細胞または生物中に存在するmRNA分子の収集物を包含する。ライブラリのためのベクターの例はバクテリオファージ、細菌感染ウィルス、例えばλファージを包含する。次に目的の特定のcDNA(そしてすなわちmRNA)に対してライブラリをプローブすることができる。
【0106】
「デリバリーベヒクル」とは宿主細胞に内にポリヌクレオチド1つ以上を挿入する事のできる分子を包含する。デリバリーベヒクルの例はリポソーム、生体適合性重合体、例えば天然の重合体および合成の重合体;リポ蛋白;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖類;人工のウィルスエンベロープ;金属粒子;および細菌、ウィルスおよびウィルスベクター、例えばバキュロウィルス、アデノウィルスおよびレトロウィルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、カビベクターおよび種々の真核生物および原核生物の宿主中で複製および/または発現することが解かっている当該分野で典型的に使用されている他の組み換えベヒクルである。デリバリーベヒクルは挿入ポリヌクレオチドの複製、遺伝子治療並びに単にポリペプチドと蛋白の発現のために使用して良い。
【0107】
「ベクター」とは挿入されたポリヌクレオチドを宿主細胞内および/または宿主細胞間に転移させる自己複製可能な核酸分子を包含する。用語には細胞への核酸分子の挿入のために主に機能するベクター、核酸の複製のために主に機能する複製ベクターおよびDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを包含するものとする。更にまた、上記機能の1つより多くを与えるベクターも意図している。
【0108】
「宿主細胞」とはベクターのための、または、外来性核酸分子、ポリヌクレオチドおよび/または蛋白の取り込みのためのレシピエントとなり得るか、レシピエントであった何れかの個々の細胞または細胞培養物を包含するものとする。更にまた単細胞の子孫も包含する。子孫は天然、偶発的または意図的な突然変異により元の親細胞と(形態学的またはゲノムまたは全DNA相補物において)完全に同一である必要はない。細胞は細菌細胞を含む原核生物であってよい。
【0109】
「遺伝子的に修飾された」という用語は、細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を修飾する外来性遺伝子または核酸の配列を含む、そして/または発現する細胞を包含する。この用語は細胞の内因性ヌクレオチドの如何なる付加、欠失または破壊も包含する。
【0110】
本明細書においては「発現」とはポリヌクレオチドがmRNAに転写され、ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白に翻訳される過程を包含する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来するものである場合、適切な真核生物の宿主を選択するとすれば発現はmRNAのスプライシングを包含する。発現に必要な調節要素はRNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列およびリボソーム結合のための転写開始配列を包含する。例えば、細菌の発現ベクターにはlacプロモーターのようなプロモーター転写開始のためのShine−Dalgarno配列および開始コドンAUGが包含される(Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)。同様に、真核生物の発現ベクターにはRNAポリメラーゼIIのための異種または同種のプロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUGおよびリボソームの脱着のための終止コドンが包含される。このようなベクターは市販のものを用いるか、または、当該分野でよく知られている方法、例えば、一般的にベクターを構築するための後述する方法に記載されている配列番号により組み立てることができる。
【0111】
「示差的に発現される」とは遺伝子に適用した場合は遺伝子から転写されるmRNAまたは遺伝子によりコードされる蛋白産物の示差的生産を含む。示差的に発現された遺伝子は正常または対照の細胞の発現濃度と比較して過剰発現または過少発現される。1つの特徴において、それは対照試料中に検出される発現濃度よりも2.5倍、好ましくは5倍または好ましくは10倍、高値または低値となる差を包含する。「示差的に発現される」とはまた、対照細胞ではサイレントであるが発現される、または、対照細胞では発現されるが発現されない細胞または組織中のヌクレオチド配列を包含する。
【0112】
「ポリペプチド」という用語は2個以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類縁体またはペプチド擬似物の化合物である。サブユニットはペプチド結合により連結される。別の実施態様においては、サブユニットは他の結合、例えばエステル、エーテル等を解して連結される。本明細書においては、「アミノ酸」とはグリシンおよびDまたはLの双方の光学異性体およびアミノ酸類縁体およびペプチド擬似物を包含する何れかの天然および/または非天然または合成のアミノ酸を包含する。アミノ酸3個以上のペプチドを一般的にオリゴペプチドと称する。3個より多いかそれ以上のアミノ酸のペプチド鎖はポリペプチドまたは蛋白と称する。
【0113】
「ハイブリダイゼーション」はポリヌクレオチド1つ以上が反応することによりヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を包含する。水素結合はワトソンクリック型塩基対形成、フーグスティーン型結合によるか、または何らか別の配列番号特異的態様において起こる。複合体は2重らせん構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖またはこれらの組み合わせの何れかを含む。ハイブリダイゼーション反応はPCR反応の開始またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断のようなより広範な過程における段階を構成する。
【0114】
ハイブリダイゼーション反応は異なる「ストリンジェンシー」の条件下に行うことができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーには何れかの2個の核酸分子が相互にハイブリダイズする際の困難度が包含される。ストリンジェントな条件下では、相互に少なくとも60%、65%、70%、75%同一である核酸分子が相互にハイブリダイズされた状態で残存し、低い同一性の分子はハイブリダイズされた状態では残存できない。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中45℃、次いで0.2XSSC、0.1%SDS中の洗浄1回以上を50℃、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、更に好ましくは65℃で行なうハイブリダイゼーションである。
【0115】
2つの一重鎖ポリヌクレオチドの間で逆平行の立体配置においてハイブリダイゼーションが起こる場合、反応は「アニーリング」と称され、これらのポリヌクレオチドは「相補的」と記載される。二重鎖ポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドの鎖の一方と第2のものとの間にハイブリダイゼーションが起こり得る場合には、もう一方のポリヌクレオチドに対して「相補的」または「相同」であることができる。「相補性」または「相同性」(1つのポリヌクレオチドがもう1つと相補的である程度)は一般的に許容されている塩基対形成規則に従って相互に水素結合すると予測される対向する鎖内の塩基の比率に基づいて定量される。
【0116】
本明細書においては、「核酸分子」という用語はDNA分子、例えばcDNAまたはゲノムDNA,およびRNA分子、例えばmRNAおよびヌクレオチド類縁体を用いて発生したDNAまたはRNAの類縁体を包含するものとする。核酸分子は一重鎖または二重鎖であることができるが、好ましくは二重鎖DNAである。
【0117】
「単離された核酸分子」とは核酸の天然の原料中に存在する他の核酸分子から分離される核酸分子を包含する。例えば、ゲノムDNAに関しては、「単離された」という用語はゲノムDNAが本来会合している染色体から分離される核酸分子を包含する。好ましくは、「単離された」核酸は核酸が由来する生物のゲノムDNA中の核酸を天然に切断している配列(即ち核酸の5’および3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、種々の実施態様において、本発明の単離されたマーカー核酸分子、または本発明のポリペプチドマーカーをコードする核酸分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNA中の核酸分子を天然に切断している約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kbより小さいヌクレオチド配列を含むことができる。更にまた、「単離された」核酸分子、例えばcDNA分子は、組み換え技術により製造された場合は他の細胞内物質または培地を実質的に含有せず、或いは、化学合成された場合は化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含有しない。
【0118】
本発明の核酸分子、例えば配列番号1〜10のヌクレオチド配列またはその部分を有する核酸分子は、標準的な分子生物学の手法および本明細書に記載する配列の情報を用いて単離することができる。ハイブリダイゼーションプローブとして配列番号1〜10の核酸配列の全てまたは一部を用いながら、Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed, Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載の標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニング技術を用いて配列番号1〜10を有する分子を単離することができる。
【0119】
本発明の核酸は標準的なPCR増幅技術に従って、鋳型としてのcDNA、mRNAあるいはゲノムDNA、および、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅することができる。このようにして増幅された核酸は適切なベクター内にクローニング、DNA配列分析により同定することができる。更にまた、マーカーヌクレオチド配列または本発明のマーカーをコードするヌクレオチド配列に相当するオリゴヌクレオチドは標準的な合成方法、例えば自動DNAシンセサイザーを用いるなどして調製することができる。
【0120】
別の実施態様においては、本発明の単離された核酸分子は配列番号1〜10のヌクレオチド配列またはその部分に相補的な核酸分子を包含する。そのようなヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、それがそのヌクレオチド配列にハイブリダイズできる程度に十分そのヌクレオチド配列番号に対して相補的であり、これにより安定な二重らせんを形成するものである。
【0121】
本発明の核酸分子は更に、プローブまたはプライマーとして使用することのできる、本発明の配列番号1〜10の核酸配列の僅か一部、またはフラグメントを包含する。プローブ/プライマーは典型的には実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0122】
配列番号1〜10をコードする核酸分子のヌクレオチド配列に基づいたプローブは凝塊蛋白を検出するために使用することができる。別の実施態様において、プローブはそこに連結される標識基を含み、例えば、標識基は放射性同位体、蛍光物質、酵素または酵素コファクターであることができる。このようなプローブは、本発明のポリペプチドを誤発現、例えば過剰発現または過少発現するか、または、本発明の遺伝子のより多いまたは少ないコピーを有する細胞または組織を同定するための診断用試験キットの一部として用いることができる。
【0123】
本明細書においては、「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズする」とは、相互に少なくとも60%の相同性であるヌクレオチド配列が典型的には相互にハイブリダイズされた状態で残存するハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を指すものとする。好ましくは、条件は、相互に少なくとも70%、より好ましくは少なくとも約80%、更に好ましくは少なくとも85%または90%の相同性である配列が典型的には相互にハイブリダイズされた状態で残存するようなものである。このようなストリンジェントな条件は当業者が知るとおりであり、Current Protocols in Molecular Biology,Jhon Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中約45℃、次いで0.2XSSC、0.1%SDS中の洗浄1回以上を50℃、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、更に好ましくは65℃で行なうハイブリダイゼーションである。好ましくは、配列番号1〜10の配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子である。本明細書においては「天然の」核酸分子とは自然界に存在する、例えば天然の蛋白をコードするヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子を包含する。
【0124】
他の実施態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは例えばin vivoの宿主細胞受容体をターゲティングするためのペプチド、または細胞膜(例えばLetsinger等、(1989),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:6553−6556;Lemaitre等、(1987),Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84:648−652;PCT出願公開WO88/09810参照)または脳血管関門(例えばPCT出願公開WO89/10134参照)を通過する輸送を促進する物質のような、他の付随的物質群も包含できる。更にまた、オリゴヌクレオチドはハイブリダイゼーション誘発切断試薬(例えばKrol等、(1988),Bio−Techniques 6:958−976参照)または挿入試薬(例えばZon,(1988),Pharm.Res.,5:539:549参照)を用いて修飾することができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドを別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発交差結合剤、輸送剤、またはハイブリダイゼーション誘発切断剤とコンジュゲートしてよい。最後にオリゴヌクレオチドは、検出可能に標識され、それによりその標識が別の試薬、例えば酵素標識に対する基質の添加により検出されるか、または、ヌクレオチドのハイブリダイゼーション時に即座に検出される、例えば放射標識または蛍光標識、例えば米国特許5876930に記載の分子ビーコンとしてよい。
【0125】
本発明の別の特徴は、本発明のマーカー蛋白(またはその蛋白)をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書においては「ベクター」という用語はそれが連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を包含する。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これには別のDNA断片をライゲーションすることができる環状二重鎖DNAループも包含される。ベクターのもう1つの種類は別のDNA断片をウィルスゲノム内にライゲーションすることができるウィルスベクターである。特定のベクターはそれらが導入されている宿主細胞、例えば複製の細菌性の起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類細胞において自律複製できる。その他のベクター、例えば非エピソーム哺乳類ベクターは宿主への導入によりその宿主のゲノムに組み込まれ、これにより宿主ゲノムと共に複製される。更にまた、特定のベクターはそれらが支配可能に連結されている遺伝子の発現を意図することができる。このようなベクターは本明細書では「発現ベクター」と称する。一般的に組み換えDNA技術において利用される発現ベクターはプラスミドの形態である場合が多い。プラスミドは最も一般的に使用されている形態のベクターであることから、本明細書においては、「プラスミド」と「ベクター」は互換的に使用できるものとする。
【0126】
本発明の組み換え発現ベクターは宿主中の核酸の発現に適する形態の本発明の核酸を含み、このことは組み換え発現ベクターには発現すべき核酸配列に支配可能に連結されている発現のために用いるべき宿主に基づいて選択された調節配列1つ以上が含まれることを意味する。組み換え発現ベクター内部において、「支配可能に連結された」とは、対象となるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能とする態様で、例えばin vitroの転写/翻訳系内、またはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞で調節配列に連結されていることを意味するものとする。「調節配列」という用語はプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素、例えばポリアデニル化シグナルを包含するものとする。このような調節配列は例えばGoeddelのGene Expression Technology:Methods in Enzymology,185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。調節配列は宿主細胞の多くの種類におけるヌクレオチド配列の構成的な発現を意図するもの、および、特定の宿主細胞のみにおけるヌクレオチド配列、例えば組織特異的調節配列の発現を意図するものを包含する。当業者の知るとおり、発現ベクターの設計は転写されるべき宿主細胞の選択、所望の蛋白の発現濃度等のような要因により異なる。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより本明細書に記載した核酸によりコードされる融合蛋白またはペプチドを含む蛋白またはペプチド、例えば、マーカー蛋白、マーカー蛋白の突然変異型、融合蛋白等を生産することができる。
【0127】
本発明の組み換え発現ベクターは原核細胞または真核細胞におけるマーカー蛋白の発現のために設計することができる。例えば、蛋白はE.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウィルス発現ベクター使用)、酵母細胞または哺乳類細胞中で発現することができる。適切な宿主細胞は更に、GoeddelのGene Expression Technology:Methods in Enzymology,185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。或いは、組み換え発現ベクターは例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いてin vitroで転写および翻訳することができる。
【0128】
原核生物における蛋白の発現は融合蛋白または非融合蛋白の何れかの発現を意図した構成または誘導プロモーターを含むベクターを用いてE.coliにおいて最も頻繁に行なわれている。融合ベクターは、多くのアミノ酸をそこにコードされる蛋白に対し、通常は組み換え蛋白のアミノ末端に対して付加する。このような融合ベクターは典型的には3つの目的、即ち、1)組み換え蛋白の発現を増大させるため、2)組み換え蛋白の溶解度を増大させるため、および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより組み換え蛋白の精製に寄与するために機能する。多くの場合、融合発現ベクターにおいては、原核細胞の切断部位が融合部分と組み換え蛋白との接合部において導入され、これにより融合蛋白の精製の後の融合部分からの組み換え蛋白の分離が可能となる。このような酵素およびその同属認識配列はXa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを包含する。典型的な融合発現ベクターにはpGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith,D.B.and Johnson,K.S.(1988),Gene,67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)が包含され、これらはそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合蛋白または蛋白Aを標的組み換え蛋白に融合させる。
【0129】
精製された融合蛋白はマーカー活性試験、例えば後に詳述する直接試験または競合試験において、或いは、例えばマーカー蛋白に特異的な抗体を生成するために利用することができる。
【0130】
適切な誘導非融合E.coli発現ベクターの例には、pTrc(Amann等、(1988),Gene 69:301−315)およびpET11d(Studier等、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,185,Academic Press,San Diego,California(1990)60−89)が包含される。PTrcベクターからの標的遺伝子発現はハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存している。pET11dベクターからの標的遺伝子発現は同時発現ウィルスRNAポリメラーゼにより媒介されるT7gn10−lac融合プロモーター(T7gnl)からの転写に依存している。このウィルスポリメラーゼはLacUV5プロモーターの転写制御下にT7gnl遺伝子を与えるレジデントプロファージから宿主細胞株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)により与えられる。
【0131】
E.coliにおける組み換え蛋白の発現を最大限とするための1つの方法は組み換え蛋白を蛋白分解的に切断する能力が損なわれている宿主細菌において蛋白を発現することである(Gottesman,S.,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,185,Academic Press,San Diego,California(1990),119−128)。別の方法は、発現ベクターに挿入されるべき核酸の核酸配列を、各アミノ酸に対する個別のコドンがE.coliにおいて好適に利用されるように変化させることである(Wada等、(1992),Nucleic Acids Res.20:2111−2118)。このような本発明の核酸配列の変化は標準的なDNA合成方法により行なうことができる。
【0132】
本発明の別の特徴は、組み換え発現ベクター内に本発明の核酸分子を導入された宿主細胞、または、宿主細胞のゲノムの特定の部位に相同的に組み込むことを可能とする配列を含む本発明の核酸分子に関する。「宿主細胞」および「組み換え宿主細胞」とは、本明細書では互換に使用する。このような用語は特定の対象となる細胞のみならず、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も指すものとする。特定の修飾は突然変異または環境の影響により連続した世代において起こる場合があるため、このような子孫は実際は、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用する用語の範囲にはなお包含されるものとする。
【0133】
宿主細胞は原核細胞または真核細胞の何れであることもできる。好ましくは、宿主細胞は原核細胞である。例えば、本発明はE.coliのような細菌細胞中で発現させることができる。他の適切な宿主細胞は当業者の知るとおりである。
【0134】
ベクターDNAは従来の形質転換法またはトランスフェクション法により宿主細胞に導入することができる。本明細書においては「形質転換」と「トランスフェクション」という用語は外来の核酸、例えばDNAを宿主細胞に導入するための当該分野で知られた種々の方法を指すものとし、例えば、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム同時沈殿法、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを包含する。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのための適切な方法はSambrook等(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)および他の実験マニュアルに記載されている。
【0135】
培養における宿主細胞のような本発明の宿主細胞は組み換え蛋白の製造、即ち発現のために使用できる。従って、本発明は更に本発明の宿主細胞を用いて蛋白を製造するための方法を提供する。1つの実施態様において、方法は、本発明の蛋白が製造されるような適切な培地中で本発明の宿主細胞(蛋白をコードする組み換え発現ベクターが導入されているもの)を培養することを包含する。別の実施態様においては、方法は更に培地または宿主細胞から蛋白を単離することを包含する。
【0136】
当然ながら、当業者は上記した実施態様に基づいて本発明の別の特徴や利点を知ることができる。従って本発明は、請求項により示されたものを除き、特に提示または記載したものにより制限されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はMDV RNAの二次構造の1つの実施態様を示し、(b)はMDV RNAの二次構造の第2の実施態様を示す。
【図2】MNV RNAの二次構造を示す。
【図3】MNV:AP1 RNAの二次構造を示す。
【図4】MNV−1 RNAの二次構造を示す。
【図5】MNV−2 RNAの二次構造を示す。
【図6】RQ11+12RNAの二次構造を示す。
【図7】MNVおよびPrP−Ampの増幅を示すゲルである。
【図8】(a)はMNVおよびプリオン蛋白に結合するPrP−Ampの特異性を示すゲルであり、(b)は同じ結合データをグラフで示したものである。
【図9】プリオン蛋白の2つの結合部位を示す模式図である。
【図10】PrP−AmpとAP1またはMNVの何れかとの間の競合的結合データを示すグラフである。
【図11】RQ11+12とAP1十間の競合的結合データを示すグラフである。
【図12】(a)AP1、(b)MNVLOのヌクレオチド22〜53。(c)MNVUP,(d)BS1577、(e)MNV、(f)RQT157、および(g)RQ11+12の二次構造を示す。
【図13】RNA−RNAゲルシフトである。
【図14】AP1およびNMVによるhrPrPに結合するMNV:AP1およびRQ11+12の競合的試験の結果を示すグラフである。
【図15】(a)はhrPrPのトポロジー、(b)は切断されたhrPrPへのRNAの結合のデータのグラフである。
【図16】RnaseA保護試験の結果である。
【図17】RQ11+12がPrPに特異的に結合することを示すデータであり、(a)はフィルター結合試験の結果であり、(b)はゲルシフト試験の結果である。
【図18】(a)hrPrP、(b)hrPrPおよびRQ11+12RNAを有した場合の電子顕微鏡写真を示す。

Claims (24)

  1. 凝塊蛋白1つ以上に対する親和性を有する組成物であって、下記成分:
    ヌクレオチド20個以上を有する非天然のRNA、ただし該ヌクレオチドの配列部分の少なくとも1つは該凝塊蛋白1つ以上に対して親和性を有し、該ヌクレオチドの配列部分の該少なくとも1つは下記成分:
    (a)RNAウィルスに由来するヌクレオチド配列、
    (b)RNAファージに由来するヌクレオチド配列、
    (c)RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られるヌクレオチド配列、
    (d)メッセンジャーRNAに由来するヌクレオチド配列、
    (e)リボソームRNAに由来するヌクレオチド配列、
    (f)転移RNAに由来するヌクレオチド配列、および、
    (g)これらの組み合わせ、
    よりなる群から選択されるもの、
    を含む上記組成物。
  2. 該非天然のRNAは一連のグアニンヌクレオチドの少なくとも3つを有するループを少なくとも1つは有する請求項1記載の組成物。
  3. 凝塊蛋白の該1つ以上に対して親和性を有する該ヌクレオチドの配列部分の該少なくとも1つが約20〜約10,000のヌクレオチド長である請求項1記載の組成物。
  4. 該RNAウィルスがレトロウィルスである請求項1記載の組成物。
  5. 該ウィルスがヒト免疫不全ウィルス、ポリオウィルス、インフルエンザウィルス、スモールポックスウィルス、水痘(chickin pox)ウィルス、ヘルペスウィルス、水痘(varicella zoster)ウィルス、エプスタイン・バーウィルス、サイトメガロウィルス、ネコ白血病ウィルス、ヒトT細胞白血病ウィルス、サル免疫不全ウィルス、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
  6. 該RNA依存性RNAポリメラーゼがQ−ベータレプリカーゼおよびQ−Ampよりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
  7. RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られる該ヌクレオチド配列がミディ(midi)変異RNA、ミニ(mini)変異RNA、RQRNAおよびこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
  8. 該RQRNAがRQ11+12RNAである請求項7記載の組成物。
  9. 試料中の凝塊蛋白の検出方法であって、下記工程:
    該試料をプローブに接触させることにより親和性複合体を形成すること、ただしここで該プローブはヌクレオチド20個以上を有する非天然のRNAであるものであり、該ヌクレオチドの配列部分の少なくとも1つは該凝塊蛋白1つ以上に対して親和性を有し、そして該ヌクレオチドの配列部分の該少なくとも1つは下記成分:
    (a)RNAウィルスに由来するヌクレオチド配列、
    (b)RNAファージに由来するヌクレオチド配列、
    (c)RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られるヌクレオチド配列、
    (d)メッセンジャーRNAに由来するヌクレオチド配列、
    (e)リボソームRNAに由来するヌクレオチド配列、
    (f)転移RNAに由来するヌクレオチド配列、および、
    (g)これらの組み合わせ、
    よりなる群から選択されるものであること、
    および、
    該親和性複合体を検出すること、ただしここで該親和性複合体の該検出は該試料中に存在する凝塊蛋白1つ以上を示すものであること、
    を包含する上記検出方法。
  10. 該試料をプローブの少なくとも2つと接触させ、そして、各プローブは凝塊蛋白の該1つ以上の異なる結合座に結合する、請求項9記載の方法。
  11. プローブの該少なくとも2つは第1のプローブを有し、該第1のプローブは固相上に固定化されている請求項10記載の方法。
  12. 該固相がゲル、ガラス、プラスチック、セルロース、磁気ビーズ、膜、ラテックスビーズ、シリカ、クロマトグラフィー支持体、重合体物質およびワックス系のものよりなる群から選択される請求項11記載の方法。
  13. 該ゲルがポリアクリルアミド、澱粉およびアガロースよりなる群から選択される請求項12記載の方法。
  14. プローブの該少なくとも2つのうち少なくとも1つが標識されている請求項11記載の方法。
  15. 該標識が放射性同位体、親和性試薬、例えばビオチン、インターカレーション蛍光染料、親和性組成物に結合した蛍光部分、りん光染料、電子団(electrophore)、化学ルミネセンス発色団およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項14記載の方法。
  16. 該親和性複合体の該検出が、質量または密度の測定、質量スペクトル分析、プラズモン共鳴、光学的発光または吸光、蛍光、りん光、ルミネセンス、化学ルミネセンス、ポーラリゼーション、屈折率の変化、電気伝導度、放射能、粘度、濁度および旋光度よりなる群から選択される検出方法により行なわれる請求項10記載の方法。
  17. 凝塊蛋白の該1つ以上に対する親和性を有する該ヌクレオチドの配列部分の該少なくとも1つが約20〜約10,000ヌクレオチド長である請求項10記載の方法。
  18. 試料中の凝塊蛋白1つ以上の存在または非存在を測定するためのキットであって、下記成分、
    プローブ1つ以上、ただしここでプローブの該1つ以上はヌクレオチド20個以上を有する非天然のRNAであるものであり、該ヌクレオチドの配列部分の少なくとも1つは該凝塊蛋白1つ以上に対して親和性を有し、そして該ヌクレオチドの配列部分の該少なくとも1つは下記成分:
    (a)RNAウィルスに由来するヌクレオチド配列、
    (b)RNAファージに由来するヌクレオチド配列、
    (c)RNA依存性RNAポリメラーゼ1つ以上により鋳型として受け取られるヌクレオチド配列、
    (d)メッセンジャーRNAに由来するヌクレオチド配列、
    (e)リボソームRNAに由来するヌクレオチド配列、
    (f)転移RNAに由来するヌクレオチド配列、および、
    (g)これらの組み合わせ、
    よりなる群から選択されるもの、
    を含む上記キット。
  19. プローブの該1つ以上のうちの少なくとも1つが標識されている請求項18記載のキット。
  20. 該キットがプローブの少なくとも2つを含む請求項18記載のキット。
  21. 親和性プローブの該少なくとも2つのうちの少なくとも1つが標識されている請求項20記載のキット。
  22. プローブの該少なくとも2つの各々が異なる部位において凝塊蛋白1つ以上と結合する請求項20記載のキット。
  23. プローブの該少なくとも2つが第1のプローブを有し、該第1のプローブが固相に固定化されている請求項20記載のキット。
  24. 凝塊蛋白の該1つ以上に対する親和性を有する該ヌクレオチドの配列部分の該少なくとも1つが約20〜約10,000ヌクレオチド長である請求項18記載の組成物。
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