JP2004518437A - 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法 - Google Patents

肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004518437A
JP2004518437A JP2002563282A JP2002563282A JP2004518437A JP 2004518437 A JP2004518437 A JP 2004518437A JP 2002563282 A JP2002563282 A JP 2002563282A JP 2002563282 A JP2002563282 A JP 2002563282A JP 2004518437 A JP2004518437 A JP 2004518437A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nucleic acid
acid molecule
polypeptide
protein
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002563282A
Other languages
English (en)
Inventor
レシポン,ハーヴ
スン,ヨンミン
チェン,セイ−ユ
リュー,チェングァ
アール. ターナー,リー
Original Assignee
ディアデクサス インコーポレーテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ディアデクサス インコーポレーテッド filed Critical ディアデクサス インコーポレーテッド
Publication of JP2004518437A publication Critical patent/JP2004518437A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/46Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • C07K14/47Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P11/00Drugs for disorders of the respiratory system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Pulmonology (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

本発明は、正常および癌性肺細胞に存在する新規に同定された核酸およびポリペプチドに関し、これには、当該核酸およびポリペプチドの断片、変異体および誘導体が含まれる。本発明はまた、本発明のポリペプチドに対する抗体、ならびに本発明のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストにも関する。本発明はまた、本発明の核酸、ポリペプチド、抗体、変異体、誘導体、アゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにこれらの組成物を使用する方法にも関する。これらの使用は、肺癌および肺における非癌性の疾患状態の同定、診断、モニタリング、病期分類、画像化および処置、肺組織の同定、本発明のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストのモニタリングおよび同定および/または設計を含む。当該使用はまた、遺伝子治療、トランスジェニック動物および細胞の作製、および処置および研究用の操作された肺組織の作製を含む。

Description

【0001】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組込まれる2000年10月25日提出の米国仮出願第60/242,998号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、正常のおよび腫瘍性の肺細胞に存在する、新たに同定された核酸分子およびポリペプチド(該核酸およびポリペプチドの断片、変異体並びに誘導体を含む)に関する。また本発明は、本発明のポリペプチドに対する抗体並びに本発明のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストに関する。また本発明は、本発明の核酸、ポリペプチド、抗体、変異体、誘導体、アゴニストおよびアンタゴニストを含む組成物並びにこれら組成物の使用のための方法に関する。これらの使用には、肺癌および肺における非癌性疾患状態の同定、診断、モニタリング、病期分類、画像化および処置、並びに肺組織の同定およびモニタリング、並びに本発明のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストの同定および/または設計を含む。該使用はまた、遺伝子治療、形質転換動物および細胞の作出並びに処置および調査のための操作された肺組織の作出を含む。
【0003】
発明の背景
過去100年を通じて肺癌の発生率は着実に増加し、現在、多くの国々では、それが最も一般的な癌となっている。実際、肺癌は、アメリカで男性および女性の両方に対して、2番目に蔓延したタイプの癌で、両性の癌による死の最も一般的な原因である。肺癌死は、まず、タバコの喫煙の増加により、また、ヒ素、アスベスト、クロム酸塩、クロロメチルエーテル、ニッケル、多環式芳香族炭化水素および他の試薬に対する暴露により、1930年以来、男性および女性の両方において10倍に増加した。スコット(Scott)、肺癌:診断と治療のガイド(Lung Cancer: A Guide to Diagnosis and Treatment)、Addicus Books (2000)、およびアルベルグ(Alberg)ら(ケーン(Kane)ら編)、肺癌の生物学(Biology of Lung Cancer)pp. 11−52、Marcel Dekker, Inc. (1998)参照。肺癌は、肺から起こる原発腫瘍または腸や乳房などの別の器官から広がった二次性腫瘍に起因し得る。1ダースを超えるタイプの肺癌があるが、90%以上は2つのカテゴリー:小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)に分けられる。前記スコット参照。全ての肺癌の約20〜25%は、SCLCであると特徴付けられ、一方、70〜80%は、NSCLCと診断される。同書。まれなタイプの肺癌は、一般にアスベストへの接触によって引き起こされ、肺の胸膜を冒す中皮腫である。肺癌は、通常、胸部X線、CATスキャン、PETスキャンによって、または、喀痰細胞診によって、診断されるか、スクリーニングされる。肺癌の診断は、通常、組織のバイオプシーによって確認される。同書。
【0004】
SCLC腫瘍は、高度に転移性であり、急速に増殖する。患者がSCLCと診断された時までに、癌はリンパ節、副腎、肝臓、骨、脳および骨髄を含む身体の他の部分に既に広がっている。前記スコット;ファン・ホッテ(Van Houtte)ら編、肺癌の治療における進展および展望(Progress and Perspective in the Treatment of Lung Cancer)、Springer−Verlag (1999)参照。疾患は、通常、手術が選択肢とならない程度に広がっているので、現在の処置の選択は、化学療法に胸部照射を加えたものである。前記ファン・ホッテ参照。疾患の病期は、長期生存の主要な予測因子である。1つの肺およびリンパ節の周囲を越えて広がった広範囲疾患を有する患者の5%未満しか2年以上生存しない。同書。しかしながら、未だ限定的な病期、すなわち、1つの肺を越えて広がっていない場合、疾患を診断し、処置すれば、5年生存率が、3から4倍高くなる。同書。
【0005】
NSCLCは、一般に、3つのタイプ:扁平上皮癌、腺癌および大細胞癌に分類される。扁平上皮癌および腺癌の両方は、気道を裏打ちする細胞から発生する;しかしながら、腺癌は粘液を産生する杯細胞から発生する。大細胞肺癌は、顕微鏡学的に見たとき細胞が大きく、丸まって見えることからこのように名付けられ、一般的に、比較的未分化であると考えられる。イエスナー(Yesner)、肺癌アトラス(Atlas of Lung Cancer)、Lippincott−Raven (1998)参照。
二次性肺癌は、身体の他所で発生し、肺へ広がった癌である。肺に転移する癌は、これに限定されないが、乳癌、メラノーマ、腸癌およびホジキンリンパ腫を含む。二次性肺癌の処置は、起源の癌のソースに依存し得る。換言すれば、乳癌に起源する肺癌は、乳癌の処置により反応し得、腸癌に起源する肺癌は、腸癌の処置により反応し得る。
【0006】
癌の病期は、それがどの程度広がったかを示し、進行の重要な指標である。加えて、病期分類は、処置がしばしば癌の病期にしたがって決定されることから、重要である。SCLCは、2つの病期:限定された疾患、即ち、1つの肺および近くのリンパ節にだけ見られる癌;および、広範囲疾患、即ち、胸部または身体の他の部分へ肺の外へ広がった癌に分けられる。SCLCを有するほとんどの患者について、診断時には、疾患は、既にリンパ節または身体の他所に進行している。前記スコット参照。広がりがスキャン上に明らかでない場合であっても、いくつかの癌細胞は、広がっていき、血流またはリンパ系を介して移動し得るであろう。一般的に、放射線治療を伴なうまたは伴なわない化学治療が、しばしば好ましい処置である。最初に行なわれる初期スキャンおよび検査は、患者が処置に対して如何によく反応しているかを知るために、後に用いられる。
【0007】
対照的に、非小細胞癌は、4つの病期に分けられ得る。病期Iは、リンパ節には癌はなく、高度に限局した癌である。病期IIの癌は、冒された肺の頂部のリンパ節へ広がっている。病期IIIの癌は、癌が始まった場所の近くへ広がっている。これは、胸壁、肺の被膜(胸膜)、胸部中央(縦隔)またはその他のリンパ節であり得る。病期IVの癌は、身体の他の部分まで広がっている。病期I〜IIIの癌は、通常、化学治療を伴なうかまたは伴なわないで、手術によって処置される。病期IVの癌は、通常、化学治療および/または苦痛緩和医療(palliative care)で処置される。
多数の染色体および遺伝的異常が肺癌において観察されてきた。NSCLCにおいて、染色体異常が3p、9p、11p、15pおよび17p上に記述されており、染色体の欠損が、染色体7、11、13および19上で見られた。スカリン(Skarin)編、肺癌の多様な処置(Multimodality Treatment of Lung Cancer)、Marcel Dekker, Inc. (2000);ジェミル(Gemmill)ら、前記ケーン中、pp. 465−502;ベイリー−ウイルソン(Bailey−Wilson)ら、前記ケーン中、pp. 53−98参照。SCLCにおいて、染色体異常は、1p、3p、5q、6q、8q、13qおよび17p上に記述されている。同書。染色体3p短腕の欠損もまた、SCLC腫瘍の90%より多く、NSCLC腫瘍のおよそ50%において見られた。同書。
【0008】
多数の癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子が、肺癌に関連付けられてきた。マブリー(Mabry)、前記ケーン中、pp. 391−412およびスクラファニ(Sclafani)ら、前記ケーン中、pp. 295−316参照。SCLCおよびNSCLCの両方において、p53腫瘍抑制遺伝子は、肺癌の50%を超えて変異している。前記イエスナー参照。他の腫瘍抑制遺伝子、染色体3pで見出されたFHITは、タバコの喫煙によって変異している。同書;前記スカリン。加えて、SCLCの95%より多くおよびNSCLCの約20〜60%が、別の腫瘍抑制遺伝子である網膜芽細胞腫(Rb)タンパク質の欠損または異常なを有する。ras癌遺伝子(特に、K−ras)は、NSCLC標本の20〜30%で変異しており、c−erbB2癌遺伝子は、病期2のNSCLCの18%および病期4のNSCLCの60%の標本において発現していた。前記ファン・ホッテ参照。染色体9の領域、特に、9p21の領域で見出された他の腫瘍抑制遺伝子は、多くの癌細胞で、p16INK4Aおよびp15INK4Bを含めて欠失している。前記ベイリー−ウイルソン;スクラファニら参照。これらの腫瘍抑制遺伝子は、肺癌の病因に関連し得る。
【0009】
さらに、多くの肺癌細胞は、肺癌細胞に自己分泌形態で作用し得る増殖因子を産生する。前記ケーン中、ジークフリード(Siegfried)ら、pp. 317−336;前記ケーン中、ムーディ(Moody)、pp. 337−370および前記ケーン中、ヘスレー(Heasley)ら、pp. 371−390参照。SCLCにおいて、多くの腫瘍細胞は、これら細胞の増殖性の増殖因子である、ガストリン放出ペプチド(GRP)を産生する。前記スカリン参照。多くのNSCLC腫瘍は、上皮増殖因子(EGF)レセプターを発現し、EGFに対する応答において、NSCLC細胞を増殖させる。インシュリン様増殖因子(IGF−I)は、SCLC腫瘍の95%超およびNSCLC腫瘍の80%超において高められている;それは自己分泌増殖因子のような機能と考えられる。同書。最後に、幹細胞因子(SCF、steel因子またはkitリガンドとして知られている)およびc−Kit(SCFに対する前癌タンパク質チロシンキナーゼレセプター)の両方が、SCLCにおいて高レベルで発現し、したがって、増殖を増大する自己分泌ループを形成し得る。同書。
【0010】
大多数の肺癌の場合は、タバコの喫煙に起因するが、大部分の喫煙者は肺癌を発生しない。疫学的な証拠は、肺癌への感受性がメンデル法則の様式で遺伝し、したがって、遺伝した遺伝要素を有しているであろうことを示唆した。前記ベイリー−ウイルソン。したがって、いくつかの遺伝子座での、ある対立遺伝子変異体が、肺癌への感受性に影響し得ると考えられる。同書。他の疾患に対する感受性と同様に、どの対立遺伝子の変異体が肺癌感受性に関係するか同定する1つの方法は、肺において高度に発現される遺伝子の対立形質の変異体に注目することである。
肺は、他の多数の衰弱性の疾患(特に限定されないが、肺気腫、肺炎、嚢胞性線維症および喘息)にも同様に感受性である。ストックリー(Stockley)編、肺の分子生物学(Molecular Biology of the Lung)第I巻、Birkhauser Verlag (1999)(以下、ストックリーIという)およびストックリー編、肺の分子生物学第II巻:喘息および癌(Asthma and Cancer)、Birkhauser Verlag (1999)(以下、ストックリーIIという)参照。多くのこれらの障害の原因は、未だ十分に理解されておらず、あったとしても、多くの非癌性肺障害の多数の良好な処置オプションがあるだけである。したがって、種々の非癌性肺障害を理解し、これらの疾患の処置を同定する必要がある。
【0011】
胚発生の間の肺組織の発達および分化もまた極めて重要である。肺および細気管支のものを含む気道の全ての上皮細胞は、胚性突起(embryonic outpouching)に並ぶ原始的な内胚葉細胞に由来する。前記イエスナー参照。胚発生の間、多能性の(multipotent)内胚葉幹細胞は、様々なタイプの特化した細胞(吸入された粒子を移動させるための繊毛細胞、粘液を産生するための杯細胞、内分泌機能のためのクルチツキー(Kulchitsky’s)細胞、およびクララ細胞、および界面活性タンパク質を分泌するためのII型肺胞上皮細胞を含む)へ分化する。同書。不適当な発達および分化は、生まれたとき肺が十分な界面活性物質を生産することができない幼児、特に未熟児において、呼吸器障害および苦痛を引き起こし得る。さらに、いくつかの肺癌細胞、特に小細胞癌は多能のようであり、小細胞癌、腺癌および扁平上皮癌を含む、多くの細胞種に自然に分化する可能性がある。同書。したがって、肺発達および分化についてのよりよい理解は、肺癌の発症および進行についての理解の促進を助けるだろう。
【0012】
したがって、ヒトが肺癌が発生しやすいかを予見するための、肺癌を診断するための、該疾患の進行をモニターするための、肺癌を病期分類するための、肺癌が転移したかどうか決定するための、および肺癌を画像化するための、より感受性が高く、正確な方法に対する大きな必要性がある。さらに、肺癌のよりよい処置が必要とされる。肺気腫、肺炎、肺感染症、肺線維症、嚢胞性線維症および喘息などの非癌性肺障害を診断することおよび処置することに対する大きな必要性がある。また、組成物、並びに法医学的な目的のためおよび特定の細胞または組織が肺特異的特性を示すか否か決定するために肺組織を同定することが可能な組成物を用いる方法に対する必要性がある。
【0013】
発明の要約
本発明は、肺癌および肺における非癌性の疾患状態を同定、診断、モニタリング、病期分類、画像化および処置するため、肺組織を同定およびモニタリングするため、そして、本発明のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを同定および設計するために用いることができる、核酸分子およびポリペプチドならびにその抗体、アゴニストおよびアンタゴニストを提供することによって、当該技術分野におけるこれらおよび他のニーズを解決する。本発明はまた、遺伝子治療、トランスジェニック動物および細胞の作製方法、および処置および研究用の操作された肺組織の作製方法を提供する。
従って、本発明の目的の1つは、肺細胞、肺組織および/または肺器官に特異的な核酸分子を提供することである。これらの肺特異的核酸(LSNA)は、天然に存在するcDNA、ゲノムDNA、RNAもしくはこれらの核酸のうちの1つの断片であってもよく、または天然に存在しない核酸分子であってもよい。LSNAがゲノムDNAである場合、LSNAは肺特異的遺伝子(LSG)である。好ましい態様では、核酸分子は、肺に特異的なポリペプチドをコードする。より好ましい態様では、核酸分子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。別の非常に好ましい態様では、核酸分子は配列番号1〜142の核酸配列を含む。核酸分子はまた、LSPをコードする核酸分子に選択的にハイブリダイズするかまたはそれと実質的な配列類似性を示す配列、またはLSNAをコードする核酸分子に選択的にハイブリダイズするかまたは実質的な配列類似性を示す配列、並びにLSPをコードする核酸分子の相同変異体およびLSNAの相同変異体を含むこととする。LSPをコードする核酸配列の部分を含む核酸分子、またはLSNAの核酸配列の部分を含む核酸分子もまた提供される。
本発明に関連する目的は、LSNAの全部または一部の転写および/または翻訳を制御する1または2以上の発現制御配列を含む核酸分子を提供することである。好ましい態様では、核酸分子は、LSPの全部または断片をコードする核酸分子の転写および/または翻訳を制御する1または2以上の発現制御配列を含む。
【0014】
本発明の他の目的は、本発明の核酸分子を含むベクターおよび/または宿主細胞を提供することである。好ましい態様では、核酸分子はLSPの全部または断片をコードする。他の好ましい態様では、核酸分子はLSNAの全部または一部を含む。
本発明の他の目的は、本発明のポリペプチドを組換え的に製造するために、本発明の核酸分子を含むベクターまたは宿主細胞を用いる方法を提供することである。
本発明の他の目的は、本発明の核酸分子によりコードされたポリペプチドを提供することである。好ましい態様では、ポリペプチドはLSPである。ポリペプチドは、断片または全長タンパク質のいずれか、並びに突然変異タンパク質(ミューテイン)、融合タンパク質、相同タンパク質またはLSPの対立遺伝子変異体によりコードされるポリペプチドを含み得る。
本発明の他の目的は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供することである。
本発明の他の目的は、本発明の核酸分子およびポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを提供することである。
本発明の他の目的は、核酸分子を用い、本明細書中に記載された核酸分子に比較して類似または同一の核酸配列を有する核酸分子を検出または増幅するための方法を提供することである。好ましい態様では、本発明は、肺癌および肺における非癌性の疾病状態を同定、診断、モニタリング、病期分類、画像化および処置するために核酸分子を用いる方法を提供する。他の好ましい態様では、本発明は、肺組織を同定および/またはモニタリングするために本発明の核酸分子を用いる方法を提供する。本発明の核酸分子はまた、遺伝子治療に、トランスジェニック動物および細胞を作製するために、そして、処置および研究用に操作された肺組織を作製するために用いることができる。
本発明のポリペプチドおよび/または抗体はまた、肺癌および肺における非癌性の疾病状態を同定、診断、モニタリング、病期分類、画像化および処置するために用いることができる。本発明は、肺組織を同定および/またはモニタリングするために、および操作された肺組織を作製するために、本発明のポリペプチドを用いる方法を提供する。
本発明のアゴニストおよびアンタゴニストは、肺癌および肺における非癌性の疾病状態を処置するために、および操作された肺組織を作製するために用いることができる。
本発明のさらに別の目的は、本発明の核酸およびアミノ酸配列を保存するためのコンピュータ可読な手段を提供することである。コンピュータ可読な記録は、本発明の配列と他の配列との比較、アラインメントおよびオーダリングの目的で、配列を読み込みそして表示するためにアクセスすることができる。
【0015】
発明の詳細な説明
定義および一般的な技術
本明細書中に別記のない限り、本発明に関して用いられる科学的および技術的用語は、当業者に通常理解されている意味を有するものとする。さらに、状況により特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般的に、本明細書中に記載された細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関して用いられる用語、およびその技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものとする。一般的に、別記のない限り、本発明の方法および技術は、当該技術分野においてよく知られた慣用の方法に従って、本明細書中で引用され、議論されている種々の一般的なおよびより専門的な参考文献に記載されたとおりに行われる。参照により、そのそれぞれが全体として本明細書に組み込まれる、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) および Sambrook et al., Molecular Cloning: Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press (2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992, および2000の補遺); Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology th Ed., Wiley & Sons (1999); Harlow and Lane, Antibodies: Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1990); および Harlow and Lane, Using Antibodies: Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)を参照。
酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従い、当該技術分野において通常なされているとおりに、または本明細書に記載のとおりに行う。本明細書中に記載された分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学に関して用いられる用語、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、薬剤の製造、製剤および送達、ならびに患者の処置に用いる。
【0016】
以下の用語は、別記のない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
本発明の「核酸分子」は、ヌクレオチドの重合形態を指し、RNA、cDNA、ゲノムDNAのセンスおよびアンチセンス鎖の両方、ならびに上記の合成形態および混合重合体を含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を指す。本明細書中で用いる「核酸分子」は、「核酸」および「ポリヌクレオチド」の類義語である。「核酸分子」は、別記のない限り、通常、少なくとも10塩基長の分子を指す。この用語は、DNAの一本鎖および二本鎖形態を含む。加えて、ポリヌクレオチドは、天然に存在するおよび/または天然に存在しないヌクレオチド結合によって結合した天然に存在するヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドの一方または両方を含み得る。
核酸分子は、化学的または生化学的に修飾されてもよく、または非天然のまたは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでもよく、これらは当業者によって容易に評価されるだろう。かかる修飾は、例えば、標識、メチル化、1または2以上の天然に存在するヌクレオチドの、類縁体による置換、無電荷結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)、電荷結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレータ、アルキレータ、および修飾された結合(例えば、アルファアノマー核酸など)などのヌクレオチド間修飾を含む。「核酸分子」の用語はまた、一本鎖構造、二本鎖構造、部分的に二重化された構造、三重化された構造、ヘアピン状の構造、環状構造およびパドロック構造を含む、任意のトポロジー構造を含む。水素結合および他の化学的相互作用を介して所定の配列と結合するその能力について、ポリヌクレオチドを模倣する合成分子もまた含まれる。かかる分子は当該技術分野で知られており、例えば、分子の主鎖においてリン酸結合がペプチド結合で置換されているもの含む。
【0017】
「遺伝子」は、ポリペプチドをコードする核酸配列、およびポリペプチドをコードする核酸配列の周囲の発現制御配列を含む核酸分子として定義される。例えば、遺伝子は、プロモーター、1または2以上のエンハンサー、ポリペプチドをコードする核酸配列、下流の調節配列、および、場合によっては、RNAの発現の調節に関与する他の核酸配列を含み得る。当該技術分野でよく知られているとおり、真核生物の遺伝子は、通常エクソンおよびイントロンの両方を含有する。「エクソン」の用語は、ゲノムDNA中に見出される核酸配列であって、成熟mRNA転写物のコンティグ配列に寄与することが生物情報学的に予測され、および/または実験的に確認されているものを指す。「イントロン」の用語は、ゲノムDNA中に見出される核酸配列であって、成熟mRNA転写物のコンティグ配列に寄与しないが、むしろ転写の過程中に「スプライスアウト」されることが予測され、および/または確認されているものを指す。
核酸分子またはポリペプチドは、核酸分子またはポリペプチドが特定の種から単離された場合、または、核酸分子またはポリペプチドが特定の種から単離した核酸分子またはポリペプチドと相同である場合は、その特定の種に「由来」する。
「単離された」または「実質的に純粋な」核酸またはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNAまたは混合された重合体)は、本来の宿主細胞において、ネイティブなポリヌクレオチドに本来付随していた他の細胞成分、例えばリボソーム、ポリメラーゼ、またはそれが本来結びついていたゲノム配列から実質的に分離されたものである。この用語は、(1)天然に存在する環境から取り出された、(2)「単離ポリヌクレオチド」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全部または部分と結びついていない、(3)天然では連結していないポリヌクレオチドと作動可能に連結している、(4)天然ではより長い配列の部分として存在しない、または(5)天然では見出せないヌクレオチドまたはヌクレオシド間結合を含む、核酸またはポリヌクレオチドを包含する。用語「単離された」または「実質的に純粋な」はまた、組換えまたはクローンDNA単離物、化学的に合成されたポリヌクレオチド類縁体、または異種の系で生物学的に合成されたポリヌクレオチド類縁体に関して用いることができる。用語「単離核酸分子」は、宿主染色体の非相同的な部位に組み込まれたか、ネイティブ断片の非相同配列への組換え的融合体、エピソームまたは宿主細胞染色体に組み込まれたものとして存在する組換えベクターを含む。
【0018】
核酸分子の「部分」は、参照核酸分子の少なくとも10塩基の部分的なコンティグ配列を含む核酸分子を指す。好ましくは、1つの部分は参照核酸分子の少なくとも15〜20塩基を含む。理論的には、17ヌクレオチドの核酸配列は、3ギガ塩基のヒトゲノムにおいて1回より少ない頻度でランダムに存在し、従って、複雑なゲノムの核酸混合物において参照配列をユニークに同定することができる核酸プローブを提供するのに十分な長さである。好ましい部分は、少なくとも6個の連続したアミノ酸配列(少なくとも18ヌクレオチドの断片)をコードできる核酸配列を含むものである。なぜなら、それらは参照核酸によってコードされたポリペプチドのエピトープをマッピングするのに有用である、ペプチドの発現または合成を導くのに有用だからである。その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えばGeysen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998−4002 (1984)および米国特許第4,708,871号および第5,595,915号を参照。部分はまた、参照核酸分子の少なくとも25、30、35または40ヌクレオチド、または、参照核酸分子の少なくとも50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400または500ヌクレオチドを含み得る。核酸分子の部分は、他の核酸配列を含まなくてもよい。あるいは、核酸の部分は、他の核酸分子からの他の核酸配列を含んでもよい。
用語「オリゴヌクレオチド」は、一般的に200塩基またはそれより短い長さを含む核酸分子を指す。この用語は、しばしば一本鎖デオキシリボヌクレオチドをさすが、同様に、とりわけ、一本鎖または二本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、および二本鎖DNAを指すことができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドは10〜60塩基長であり、最も好ましくは12、13、14、15、16、17、18、19または20塩基長である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、25、30、35、40、45、50、55または60塩基長である。オリゴヌクレオチドは一本鎖でもよく(例えばプローブまたはプライマーとして用いるため)、または二本鎖であってもよい(例えば変異遺伝子の構築に用いるため)。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかであることができる。オリゴヌクレオチドは、核酸分子について上記で論じたとおり、誘導体化または修飾されることができる。
【0019】
一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドは、しばしば、自動オリゴヌクレオチド合成装置において実行されるものなどの化学的方法により合成される。しかしながら、オリゴヌクレオチドは、例えばin vitro組換えDNA媒介技術を含む種々の他の方法、ならびに細胞および生体でのDNA発現により作製することができる。まず化学的に合成したDNAは、典型的に、5’ホスフェートなしで得られる。かかるオリゴヌクレオチドの5’末端は、組換えDNA分子形成に典型的に用いられるDNAリガーゼを使用する連結反応によるホスホジエステル結合形成の基質ではない。かかるオリゴヌクレオチドの連結が望ましい場合には、キナーゼおよびATPを使用するような標準的技術によりホスフェートを付加することができる。化学的に合成したオリゴヌクレオチドの3’末端は、遊離の水酸基を一般的に有しており、T4DNAリガーゼなどのリガーゼの存在下において、別のオリゴヌクレオチドなどの別のポリヌクレオチドの5’ホスフェートと容易にホスホジエステル結合を形成するだろう。周知の様に、この反応は、望ましい場合、連結前に当該他のポリヌクレオチドの5’ホスフェートを除去することで選択的に阻止することができる。
本明細書中で用いられている用語「天然に存在するヌクレオチド」は、天然に存在するデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書中で用いる用語「修飾ヌクレオチド」は、修飾または置換糖基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書中で用いる用語「核酸結合」は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロアミデートなどを含む。その開示が参照により本明細書に組み込まれる、例えば、LaPlanche et al. Nucl. Acids Res. 14:9081−9093 (1986); Stein et al. Nucl. Acids Res. 16:3209−3221 (1988); Zon et al. AntiCancer Drug Design 6:539−568 (1991); Zon et al., in Eckstein (ed.) Oligonucleotides and Analogues: Practical Approach, pp. 87−108, Oxford University Press (1991); 米国特許第5,151,510号; Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照。
【0020】
他に特定されていない限り、センス方向におけるポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり、配列の右端は3’末端である。加えて、センス方向におけるポリヌクレオチド配列の左方向は5’方向と呼び、一方、ポリヌクレオチド配列の右方向は、3’方向と呼ぶ。さらに、他に指示のない限り、本明細書中では、各ヌクレオチド配列は、デオキシリボヌクレオチドの配列として記載されている。しかしながら、与えられた配列は、ポリヌクレオチド組成に適切であるように解釈されることが意図される。例えば、単離された核酸がRNAの組成であれば、与えられた配列は、ウリジンがチミジンについて置換したリボヌクレオチドを意味する。
用語「対立遺伝子変異体」は、2または3以上の代替的に天然に存在する遺伝子の形態の1つであって、各遺伝子がユニークなヌクレオチド配列を保有するものを指す。好ましい態様では、所定の遺伝子の異なる対立遺伝子は、類似または同一の生物学的特性を有する。
核酸配列の場合における、用語「配列同一性パーセント」は、最大に一致するように並べた場合に同一である2つの配列中の残基を指す。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチドの長さを超えてもよく、普通は少なくとも約20ヌクレオチド、より普通には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、そして好ましくは少なくとも36ヌクレオチドまたは38ヌクレオチド以上であり得る。核酸配列の同一性を測定するのに用いることができる、当該技術分野に知られている数多くの種々のアルゴリズムがある。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, Wisconsin中のプログラムであるFASTA、GapまたはBestfitを用いて比較することができる。例えば、プログラムFASTA2およびFASTA3を含むFASTAは、照会配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域の配列および配列同一性パーセントを提供する(本明細書中に参照により組み込むPearson, Methods Enzymol. 183: 63−98 (1990); Pearson, Methods Mol. Biol. 132: 185−219 (2000); Pearson, Methods Enzymol. 266: 227−258 (1996); Pearson, J. Mol. Biol. 276: 71−84 (1998))。他に特定しない限り、特定のプログラムまたはアルゴリズムのデフォルトパラメータを用いた。例えば、核酸配列同士の配列同一性パーセントは、FASTAを用い、そのデフォルトパラメータ(文字サイズ6およびスコアリングマトリックスについてはNOPAMファクター)により、または、Gapを用いて、GCG Version 6.1で提供されているとおりのデフォルトパラメータにより決定することができ、これらは本明細書中に参照により組み込まれる。
【0021】
核酸配列への参照は、他に特定しない限り、その相補体を包含する。従って、特定の配列を有する核酸分子への参照は、その相補的な配列を有するその相補鎖を包含する。相補鎖はまた、アンチセンス療法、ハイブリダイゼーションプローブおよびPCRプライマーにも有用である。
分子生物学の分野において、研究者は、用語「配列同一性パーセント」、「配列類似性パーセント」および「配列相同性パーセント」を同様の意味に用いている。本出願においては、これらの用語は、核酸配列のみに関して、同様の意味を有するものとする。
用語「実質的な類似性」または「実質的な配列類似性」は、核酸またはその断片を指す場合、適切なヌクレオチドの挿入または欠失とともに、他の核酸(またはその相補鎖)と最適に整列した場合、上記で論じたFASTA、BLASTまたはGapなどの、任意の周知の配列同一性のアルゴリズムにより測定したときに、ヌクレオチド塩基の少なくとも約50%、より好ましくは約60%、普通にはヌクレオチド塩基の少なくとも約70%、より普通には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95〜98%に、ヌクレオチド配列同一性があることを示す。
あるいは、実質的な類似性は、選択的なハイブリダイゼーション条件下で、核酸またはその断片が、他の核酸、他の核酸の鎖、またはその相補鎖にハイブリダイズする場合に存する。典型的には、選択的なハイブリダイゼーションは、少なくとも約14ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも20、25、30、35、40、50、60、70、80、90または100ヌクレオチドの範囲にわたり、少なくとも約55%の配列同一性、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、そして最も好ましくは少なくとも約90%の配列同一性がある場合に生じる。
【0022】
核酸ハイブリダイゼーションは、塩濃度、温度、溶媒、ハイブリダイズする種の塩基組成、相補領域の長さ、およびハイブリダイズする核酸同士のヌクレオチド塩基のミスマッチなどの条件により影響を受け、これらは当業者によって容易に評価される。核酸ハイブリダイゼーション実験の場面における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントな洗浄条件」は、多数の異なる物理学的パラメータに依存する。最も重要なパラメータは、ハイブリダイゼーションの温度、核酸の塩基組成、塩濃度および核酸の長さを含む。当業者は、いかにしてこれらのパラメータを変化させて特定のハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを達成するかを知っている。一般的に、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、具体的なDNAハイブリッドの融解温度(Tm)より約25℃下で、特定の条件のセットの下で行われる。「ストリンジェントな洗浄」は、具体的なDNAハイブリッドのTmより約5℃低い温度で、特定の条件のセットの下で行われる。Tmは、標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度である。本明細書中に参照により組み込まれるSambrook (1989)、前出、p. 9.51を参照。
特定のDNA−DNAハイブリッドのTmは、式:
= 81.5°C + 16.6 (log10[Na]) + 0.41 (フラクションG + C) − 0.63 (% ホルムアミド) − (600/l)
式中、lは塩基対で表したハイブリッドの長さである、
により予測することができる。
特定のRNA−RNAハイブリッドのTmは、式:
= 79.8°C + 18.5 (log10[Na]) + 0.58 (フラクションG + C) + 11.8 (フラクションG + C) − 0.35
により予測することができる。
特定のRNA−DNAハイブリッドのTmは、式:
= 79.8°C + 18.5(log10[Na]) + 0.58 (フラクションG + C) + 11.8 (フラクションG + C) − 0.50 (% ホルムアミド) − (820/l)
により予測することができる。
一般的に、Tmは、2つの核酸配列同士のミスマッチ1%ごとに、1〜1.5℃ずつ低下する。従って、当業者は、標的核酸に対し、より高いまたは低い程度の配列同一性を得るために、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を変えることができる。例えば、標的核酸配列に対し10%までのミスマッチを含むハイブリダイズする核酸を得るには、完全にマッチするハイブリッドの計算されたTmから10〜15℃を減じ、次にそれに従って、ハイブリダイゼーションおよび洗浄温度を調節する。プローブ配列もまた、ある条件の下で2量体DNAに特異的にハイブリダイズし、3量体または他の高次DNA複合体を形成し得る。かかるプローブの調製および好適なハイブリダイゼーション条件は当該技術分野でよく知られている。
【0023】
サザンもしくはノザンブロットにおける、またはライブラリーをスクリーニングするための、100を超える相補的な残基を有する相補核酸配列のフィルタ上でのハイブリダイゼーションのための、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃での、少なくとも10時間、好ましくは1晩(約16時間)の50%ホルムアミド/6×SSCである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の他の例は、68℃、ホルムアミドなしでの、少なくとも10時間および好ましくは1晩の6×SSCである。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例は、55℃、ホルムアミドなしでの、少なくとも10時間および好ましくは1晩の6×SSCである。サザンもしくはノザンブロットにおける、またはライブラリーをスクリーニングするための、100を超える相補的な残基を有する相補核酸配列のフィルタ上でのハイブリダイゼーションのための、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例は、42℃での、少なくとも10時間の6×SSCである。類似だが同一でない核酸配列を同定するためのハイブリダイゼーション条件は、実験的に、塩濃度を一定に(6×SSC)保ちながらハイブリダイゼーション温度を68℃から42℃に変化させること、または、ハイブリダイゼーション温度および塩濃度を一定に(例えば42℃および6×SSC)保ち、ホルムアミド濃度を50%から0%に変化させることによって同定することができる。ハイブリダイゼーションバッファーはまた、バックグラウンドを下げるためのブロッキング剤を含み得る。これらの剤は、当該技術分野においてよく知られている。本明細書中に参照により組み込まれる、上記Sambrook et al. (1989), pages 8.46 and 9.46−9.58を参照。また、上記Ausubel (1992)、上記Ausubel (1999)、および上記Sambrook (2001)も参照。
洗浄条件もまた、ストリンジェンシー条件を変化させるために変えることができる。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃で15分間の0.2×SSC洗浄である(SSCバッファーについては、上記Sambrook et al. (1989)を参照)。しばしば、高いストリンジェンシーの洗浄の前に、過剰なプローブを除去するために、低いストリンジェンシーの洗浄がなされる。100塩基対より多い2量体DNAのための中程度のストリンジェンシーの洗浄の例は、45℃での15分間の1×SSCである。かかる2量体のための低ストリンジェンシーの洗浄の例は、40℃での15分間の4×SSCである。一般的に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおける無関係なプローブについて観察されたものより2倍以上高いシグナル対ノイズ比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。
本明細書で定義するとおり、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸分子は、互いに実質的に同一のポリペプチドをコードする場合は、依然として互いに実質的に類似である。これは、例えば、遺伝子コードの冗長性により許容される高度のコドンの縮重を用い、合成的にまたは組換え的に創出された場合に生じる。
【0024】
100ヌクレオチド長より短い核酸分子のための(例えばオリゴヌクレオチドのための)ハイブリダイゼーション条件は、式:
= 81.5°C + 16.6(log10[Na]) + 0.41(フラクション G+C) −(600/N)
式中、Nは長さの変化であり、[Na]は1M以下である、
により計算することができる。上記Sambrook et al. (1989), p. 11.46を参照。100ヌクレオチドより短いプローブのハイブリダイゼーションに関しては、ハイブリダイゼーションは、通常、ストリンジェントな条件(Tmより5〜10℃下)のもと、高濃度(0.1〜1.0 pmol/ml)のプローブを用いて行う。同書、p. 11.45。ミスマッチプローブ、縮重プローブのプールまたは「ゲスマー(guessmer)」を用いたハイブリダイゼーションの決定、ならびにハイブリダイゼーション溶液および実験的にハイブリダイゼーション条件を決定する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、上記Ausubel (1999)、上記Sambrook (1989), pp. 11.45−11.57参照。
用語「消化」または「DNAの消化」は、DNA中のある配列にのみ作用する制限酵素によるDNAの酵素的開裂を指す。本明細書中で参照する種々の制限酵素は、市販されており、その反応条件、コファクターおよび使用上の他の必要事項は知られており、当業者には日常的である。分析の目的では、典型的には、1μgのプラスミドまたはDNA断片が、約20μlの反応バッファー中の約2単位の酵素で消化される。プラスミドの構築のためにDNA断片を単離する目的では、典型的に5〜50μgのDNAが、比例した大きな容積の20〜250単位の酵素で消化される。特定の制限酵素のための適切なバッファーおよび基質量は、下記に参照するものなどの標準的な実験室マニュアルに記載されており、それらは販売者によって特定されている。37℃での約1時間のインキュベーション時間が通常用いられるが、条件は、標準的な手順、供給者の説明および反応の細目に応じて変わることがある。消化の後、反応を分析することができ、断片は、アガロースまたはポリアクリルアミドゲルを介した電気泳動により、当業者に日常的なよく知られた方法を用いて、精製することができる。
用語「連結」は、2または3以上のポリヌクレオチド(最も頻繁には2本鎖DNA)の間にホスホジエステル結合を形成する過程を指す。連結のための技術は当該技術分野でよく知られており、連結のためのプロトコルは標準的な実験室マニュアルおよび上記Sambrook (1989)などの参考文献に記載されている。
【0025】
ゲノム由来の「シングルエクソンプローブ」は、少なくとも1つのエクソン(「参照エクソン」)を含み、高ストリンジェンシーの条件下、参照エクソンを含む転写物由来の核酸に検出可能にハイブリダイズすることができるが、参照エクソンを欠く核酸とは高ストリンジェンシーの条件下で検出可能にハイブリダイズしないプローブである。シングルエクソンプローブは、典型的には、さらに、エクソン部分の最初の末端に隣接した、ゲノム中のエクソンに同様に隣接する第1のイントロン配列および/または遺伝子間配列を含み、ゲノム中のエクソンに同様に隣接する第2のイントロン配列および/または遺伝子間配列を含み得る。ゲノム由来のシングルエクソンプローブの最小長は、上記で論じたとおり、エクソン部分が、転写物由来核酸に高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするのに十分な長さであるための要件により決められる。ゲノム由来のシングルエクソンプローブの最大長は、プローブが、1エクソン以下の部分を含むための要件により決められる。シングルエクソンプローブは、ゲノム中のプローブ配列の残りに連続して見出されないプライミング配列であって、PCRおよび他の増幅ベースの技術に有用なプライミング配列を含んでもよい。
用語「マイクロアレイ」または「核酸マイクロアレイ」は、基体に結合した多数の核酸の集合を指し、結合した多数の核酸のそれぞれへのハイブリダイゼーションは、個別に検出可能である。基体は非孔質または多孔質でも、平坦または非平坦でも、ユニット型(unitary)または分散型(distributed)でもよい。マイクロアレイまたは核酸マイクロアレイは、Schena (ed.), DNA Microarrays: Practical Approach (Practical Approach Series), Oxford University Press (1999); Nature Genet. 21(1)(suppl.):1 − 60 (1999); Schena (ed.), Microarray Biochip: Tools and Technology, Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division (2000)でそのように呼ばれているすべてのデバイスを含む。これらのマイクロアレイは、基体に結合した多数の核酸の集合体であって、該多数の核酸が、とりわけBrenner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(4):1665−1670 (2000)に記載のとおり、単一の平坦な基体上ではなく、むしろ多数のビーズ上に配置されているものを含む。
用語「変異した」は、核酸分子に適用される場合、核酸分子の核酸配列中のヌクレオチドが、参照核酸配列に比べ、挿入、欠失または変化を受け得ることを意味する。1つの座に単一の変化が生じてもよく(点突然変異)、または複数のヌクレオチドが、単一の座において挿入され、欠失しまたは変更されてもよい。さらに、1または2以上の変化が、核酸配列中の任意の数の座で生じてもよい。好ましい態様においては、核酸分子は、LSPをコードする野生型の核酸配列を含むか、またはLSNAである。核酸分子は、下記に記載の変異導入技術の方法を含む、当該技術分野で知られた任意の方法によって変異させることができる。
【0026】
用語「エラープローンPCR」は、DNAポリメラーゼのコピー信頼性が低い、例えばPCR産物の全長にわたり高率の点突然変異が得られるような条件下でPCRを行う方法を指す。例えば、Leung et al., Technique 1: 11−15 (1989)およCaldwell et al., PCR Methods Applic. 2: 28−33 (1992)を参照。
用語「オリゴヌクレオチドを利用した突然変異導入」は、対象となる任意のクローンDNAセグメントにおける部位特異的突然変異の創出を可能にする方法を指す。例えば、Reidhaar−Olson et al., Science 241: 53−57 (1988)を参照。
用語「アセンブリPCR」は、小DNA断片の混合物からのPCR産物のアセンブリを伴う方法を指す。多数の異なるPCR反応が、同一のバイアル中で平行して生じ、1つの反応の産物が、他の反応の産物をプライミングする。
用語「セクシャルPCR変異導入」または「DNAシャッフリング」は、異なるが高度に関連したDNA配列のDNA分子同士のin vitroでの強制的な相同組換えと組合わされたエラープローンPCR法を指し、これは、配列類似性に基づくDNA分子のランダムな断片化と、それに引き続くエラープローンPCR反応におけるプライマー伸長による交差の固定によりもたらされる、。例えばStemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 10747−10751 (1994)を参照。DNAシャッフリングは、いくつかの関連遺伝子の間で行うことができる(「ファミリーシャッフリング」)。
用語「in vivo変異導入」は、対象となる任意のクローンDNAにおけるランダム突然変異を創出する方法を指し、これは、1または2以上のDNA修復経路に突然変異を有する大腸菌などの細菌株におけるDNAの増殖を伴う。これらの「ミューテーター」株は、野生型の親よりも高いランダム変異率を有する。ミューテーター株でのDNAの増殖は、最終的にDNA中にランダム変異を生じさせる。
用語「カセット変異導入」は、二本鎖DNA分子の小領域を、天然配列とは異なる合成オリゴヌクレオチド「カセット」で置き換える任意の方法を指す。オリゴヌクレオチドは、しばしば完全におよび/または部分的にランダム化された天然配列を含む。
【0027】
用語「リカーシブアンサンブル変異導入」は、フェノタイプが関連する変異体の多様な集団であって、その構成要素のアミノ酸配列が異なるものを作出するために開発された、タンパク質操作(タンパク質変異導入)用のアルゴリズムを指す。この方法は、連続する一連のコンビナトリアルカセット変異導入を制御するために、フィードバック機構を用いる。例えば、Arkin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 7811−7815 (1992)を参照。
用語「エクスポネンシャルアンサンブル変異導入」は、ユニークで機能的な突然変異体の高いパーセンテージを有するコンビナトリアルライブラリーを創出するための方法を指し、ここでは、残基の小さな群が並行してランダム化され、そのそれぞれの変化位置において、機能的タンパク質をもたらすアミノ酸を同定する。例えば、Delegrave et al., Biotechnology Research 11: 1548−1552 (1993); Arnold, Current Opinion in Biotechnology 4: 450−455 (1993)を参照。上記に記載した各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
「作動可能に連結された」発現制御配列は、発現制御配列が、対象遺伝子を制御するために対象遺伝子に隣接している結合、ならびに、対象遺伝子を制御するためにtransで、または、離れて作用する発現制御配列を指す。
本明細書中で用いる用語「発現制御配列」は、それが作動可能に連結しているコード配列の発現に影響するのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後イベントおよび翻訳を制御する配列である。発現制御配列は、適切な転写開始配列、終止配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの有効なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質の安定性を増強する配列;および所望により、タンパク質分泌を増強する配列を含む。かかる制御配列の性質は、宿主生物に依存して異なる。原核生物においては、かかる制御配列は、一般的にプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終止配列を含む。用語「制御配列」は、最小限、その存在が発現に必須なすべての要素を含むこととし、また、その存在が有利な追加の要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列を含むことができる。
【0028】
本明細書中で用いる用語「ベクター」は、それが連結した他の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すものとする。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループを指す。他のベクターは、コスミド、細菌人工染色体(BAC)および酵母人工染色体(YAC)を含む。他のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、ここでは、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中に連結することができる。細菌細胞に感染するウイルスベクターをバクテリオファージと呼ぶ。ある種のベクターは、導入された宿主細胞中で自律的に複製することが可能である(例えば、細菌由来の複製を有する細菌ベクター)。他のベクターは、宿主細胞への導入によって、宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それによって宿主ゲノムとともに複製する。さらにまた、ある種のベクターは、それが作動可能に連結している遺伝子の発現を導くことができる。かかるベクターを本明細書中では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ぶ。一般的に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書中では、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが、最も多く用いられるベクター形態であることから、同じ意味に用いることができる。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクターを含むものとする。
本明細書中で用いる用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、その中に発現ベクターが導入された細胞を指すものとする。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫を指すものと理解されるべきである。突然変異かまたは環境的な影響によって、後続の世代にある種の変更が生じ得るため、かかる子孫は、実際のところ、親細胞と同一でない場合があり得るが、それでも依然として本明細書中で用いる用語「宿主細胞」の範囲に含まれる。
本明細書中で用いる熟語「オープンリーディングフレーム」およびその同等の略語である「ORF」は、その全体を連続したアミノ酸配列に翻訳することができる、転写物由来の核酸の部分を指す。そのように定義されているので、ORFは、ヌクレオチドで測った場合、正確に3で割り切れる長さを有する。そのように定義されているので、ORFは、天然タンパク質の全体をコードする必要はない。
本明細書中で用いられている熟語「ORFコードペプチド」は、ORFの予想されたまたは実際の翻訳物である。
本明細書中で用いる熟語である、参照核酸配列の「縮重変異体」は、標準的な遺伝子コードを用いて直接翻訳され、参照核酸配列から翻訳されたのと同一のアミノ酸配列を提供できる、すべての核酸配列を意味する。
【0029】
用語「ポリペプチド」は、天然に存在するおよび天然に存在しないタンパク質およびポリペプチド、ポリペプチド断片およびポリペプチドの突然変異体、誘導体および類縁体を包含する。ポリペプチドは、モノマーであってもポリマーであってもよい。さらに、ポリペプチドは単一のポリペプチド中に、そのそれぞれが1または2以上の異なる活性を有する、多数の異なるモジュールを含んでもよい。本発明の好ましいポリペプチドは、本発明の核酸分子によってコードされたLSP、ならびにその断片、突然変異体、類縁体および誘導体を含む。
用語「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」は、その起源または由来する給源に起因して、(1)ネイティブな状態でそれに随伴する天然に結びついた要素に結びついておらず、(2)同一の種からの他のタンパク質を含まず、(3)異なる種からの細胞によって発現されており、または(4)天然に存在しない、タンパク質またはポリペプチドである。従って、化学的に合成された、またはそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、その天然に結びついた要素から「単離」されている。ポリペプチドまたはタンパク質はまた、当該技術分野でよく知られているタンパク質精製技術を用いて、単離によって、天然に結びついた要素から実質的にフリーにすることができる。
タンパク質またはポリペプチドは、試料の少なくとも約60%〜75%が、単一の種類のポリペプチドを示す場合は、「実質的に純粋」であり、「実質的に均一」であり、または「実質的に純化」されている。ポリペプチドまたはタンパク質は、単量体であっても多量体であってもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、典型的には、約50%、60%、70%、80%または90% W/W、より普通には約95%のタンパク質試料を含み、そして好ましくは、99%を超えて純粋である。タンパク質の純度または均一性は、当該技術分野でよく知られている多くの手段、例えば、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動と、それに引き続く当該技術分野でよく知られている染色でゲルを染色することによる、単一のポリペプチドバンドの視覚化などによって示すことができる。ある目的のためには、HPLCまたは精製のための当該技術分野でよく知られた他の手段を用いることによって、より高い解像度を提供することができる。
本明細書中で用いる用語「ポリペプチド断片」は、全長ポリペプチドに比較して、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有する本発明のポリペプチドを指す。好ましい態様では、ポリペプチド断片は、断片のアミノ酸が、天然に存在する配列中の対応する位置と同一である、コンティグ配列である。断片は、典型的には、少なくとも5、6、7、8、9または10アミノ酸長、好ましくは少なくとも12、14、16または18アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長、より好ましくは少なくとも25、30、35、40または45アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも50または60アミノ酸長、そしてさらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0030】
「誘導体」は、一次構造配列では実質的に類似しているが、例えばネイティブなポリペプチドでは見出されないin vivoまたはin vitroの化学的および生化学的修飾を含むポリペプチドまたはその断片を指す。かかる修飾としては、例えば、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合的な付着、ヘム部分の共有結合的な付着、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合的な付着、脂質または脂質誘導体の共有結合的な付着、ホスファチジルイノシトールの共有結合的な付着、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫化、アルギニン化などの転移RNA誘導性のタンパク質へのアミノ酸付加、およびユビキチン化が挙げられる。他の修飾としては、例えば、放射性核種による標識、および種々の酵素的修飾が挙げられ、これらは当業者によって容易に認識できる。ポリペプチドを標識するための多様な方法、および、かかる目的に有用な多様な置換基または標識は当該技術分野で知られており、125I、32P、35SおよびHなどの放射性同位体、標識化抗リガンド(antiligand)に結合するリガンド(例えば抗体)、フルオロフォア、化学発光剤、酵素および標識リガンドの特異的結合対の構成要素として機能することができる抗リガンドを含む。標識の選択は、要求される感度、プライマーとの結合の容易性、安定性の要件、および利用可能な機材に依存する。ポリペプチドを標識するための方法は当該技術分野でよく知られている。本明細書中に参照により組み込まれる、上記Ausubel (1992)、上記Ausubel (1999)を参照。
【0031】
用語「融合タンパク質」は、異種のアミノ酸配列に結合したポリペプチドまたは断片を含む、本発明のポリペプチドを指す。融合タンパク質は、それらが、2または3以上の異なるタンパク質から2または3以上の所望の機能的要素を含むように構築することができるため、有用である。融合タンパク質は、対象となるポリペプチドからの少なくとも10の連続したアミノ酸、より好ましくは20または30のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも40、50または60のアミノ酸、より一層好ましくは少なくとも75、100または125のアミノ酸を含む。融合タンパク質は、異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列とフレームになったポリペプチドまたはその断片をコードする核酸配列を構築し、その後融合タンパク質を発現することにより、組換え的に製造することができる。あるいは、融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片を他のタンパク質と架橋することにより、化学的に製造することができる。
用語「類縁体」は、ポリペプチド類縁体および非ペプチド類縁体の両方を指す。本明細書中で用いる用語「ポリペプチド類縁体」は、アミノ酸配列の部分と実質的な同一性を有するが、非天然アミノ酸または非天然残基間結合を含む、少なくとも25アミノ酸のセグメントを含む、本発明のポリペプチドを指す。好ましい態様では、類縁体は、天然のポリペプチドと同じかまたは類似の生物活性を有する。典型的には、ポリペプチド類縁体は、天然に存在する配列に対して保存的アミノ酸置換(または挿入または欠失)を含む。類縁体は、典型的には、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長以上であり、しばしば天然に存在する全長ポリペプチドと同じ長さであることができる。
用語「非ペプチド類縁体」は、本発明の参照ポリペプチドと類似の特性の化合物を指す。非ペプチド化合物はまた、「ペプチドの模倣体」または「ペプチド模倣体」と呼ばれることもある。かかる化合物は、しばしばコンピュータ化された分子モデリングによって開発される。有用なペプチドと構造的に類似しているペプチドの模倣体は、同等の効果をもたらすために用いることができる。一般的に、ペプチド模倣体は、模範となる(paradigm)ポリペプチド(つまり、所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似であるが、当該技術分野でよく知られている方法により、−CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHSO−からなる群から選択される結合で任意に置換されている、1または2以上のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1または2以上のアミノ酸の、同タイプのD−アミノ酸(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)での系統的な置換はまた、より安定なペプチドを創出するのに用いることもできる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列の変種を含む制限された(constrained)ペプチドは、当該技術分野で知られた方法によって創出することができる(本明細書中に参照により組み込まれるRizo et al., Ann. Rev. Biochem. 61:387−418 (1992))。例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することが可能な内部システイン残基を付加することができる。
【0032】
「ポリペプチド突然変異体」または「ミューテイン」は、配列が、天然または野生型タンパク質のアミノ酸配列に比べ、1または2以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む、本発明のポリペプチドを指す。ミューテインは、ある位置の単一のアミノ酸が別のアミノ酸に変わっている、1または2以上のアミノ酸点置換、1または2以上のアミノ酸が、天然に存在するタンパク質の配列中で、それぞれ挿入または欠失している、1または2以上の挿入および/または欠失、および/またはアミノ末端またはカルボキシ末端の一方または両方におけるアミノ酸配列の切断を有し得る。さらに、ミューテインは、天然に存在するタンパク質と同一または異なる生物活性を有し得る。例えば、ミューテインは、増大したまたは低減した生物活性を有し得る。ミューテインは野生型タンパク質に対し少なくとも50%の配列類似性を有し、好ましいのは、60%の配列類似性、より好ましいのは70%の配列類似性である。さらにまた好ましいのは、野生型タンパク質に対し、80%、85%または90%の配列類似性を有するミューテインである。さらにより好ましい態様においては、ミューテインは95%の配列同一性を示し、さらにより好ましくは97%、さらにより好ましくは98%、さらにより好ましくは99%である。配列類似性は、GapまたはBestfitなどの任意の一般的な配列分析アルゴリズムによって測定することができる。
好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解への感受性を減らすもの、(2)酸化への感受性を減らすもの、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させるもの、(4)結合親和性または酵素活性を変化させるもの、および(5)かかる類縁体の別の物理化学的または機能的特性を付与しまたは変更するものである。例えば、単一または多数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)が、天然に存在する配列(好ましくは、分子間接触を形成するドメインの外部のポリペプチド部分)になされ得る。好ましい態様では、アミノ酸置換は中程度の保存的置換または保存的置換である。より好ましい態様では、アミノ酸置換は保存的置換である。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変えてはならない(例えば、代わりのアミノ酸は、親配列に存在するヘリックスを乱し、または、親配列を特徴付ける別のタイプの二次構造を乱す傾向があってはならない)。当該技術分野で認識されているポリペプチドの二次および三次構造の例は、そのそれぞれが参照によって本明細書に組み込まれる、Creighton (ed.), Proteins, Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman and Company (1984); Branden et al. (ed.), Introduction to Protein Structure, Garland Publishing (1991); Thornton et al., Nature 354:105−106 (1991)に記載されている。
【0033】
本明細書で用いる場合、20種の通常アミノ酸およびその略称は、従来の用法に従う。参照によって本明細書に組み込まれるGolub et al. (eds.), Immunology Synthesisnd Ed., Sinauer Associates (1991)を参照。20種の通常アミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)、 −, −二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸などの非天然アミノ酸、および他の非通常アミノ酸もまた、本発明のポリペプチドの好適な構成要素である。非通常アミノ酸の例としては、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、 −N,N,N−トリメチルリジン、 −N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、s−N−メチルアルギニン、および他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で用いられるポリペプチド表記法では、標準的な用法および慣習に従い、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
タンパク質は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列が、異なる生物のタンパク質のコードされたアミノ酸配列と類似した配列を有し、類似の生物活性または機能を有する場合、別の生物のタンパク質に対し「相同性」を有し、または「相同」である。あるいは、タンパク質は、2つのタンパク質が類似のアミノ酸配列を有し類似の生物活性または機能を有する場合、他方のタンパク質に対し相同性を有しまたは相同である。2つのタンパク質は「相同」であるといわれるが、これは、タンパク質同士の進化論上の関連性を必ずしも暗示しない。その代わり、用語「相同」は、2つのタンパク質が類似のアミノ酸配列および類似の生物活性または機能を有することを意味すると定義される。好ましい態様では、相同なタンパク質は、野生型タンパク質に対し50%の配列類似性を示すものであり、好ましいのは60%の配列類似性、より好ましいのは70%の配列類似性である。さらにより好ましいのは、野生型タンパク質に対し80%、85%または90%の配列類似性を示す相同タンパク質である。より一層好ましい態様では、相同タンパク質は95%、97%、98%または99%の配列類似性を示す。
【0034】
「配列類似性」が、タンパク質またはペプチドに関して用いられる場合、同一でない残基の位置は、しばしば保存的アミノ酸置換によって異なることが認められている。好ましい態様では、「配列類似性」を有するポリペプチドは、保存的または中程度に保存的なアミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(たとえば電荷または疎水性)の側鎖(R基)を有する他のアミノ酸残基で置換されたものである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的には変化させないだろう。2または3以上のアミノ酸配列が、保存的置換によって互いに異なる場合、置換の保存的性質について修正するために、配列同一性パーセントまたは類似の程度を、上方修正できる。この修正をマークする手段は、当業者によく知られている。本明細書に参照によって組み込まれる、例えばPearson, Methods Mol. Biol. 24: 307−31 (1994)を参照。
例えば、以下の6の群は、それぞれ互いに保存的置換であるアミノ酸を含んでいる:
1)セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
あるいは、保存的置換は、本明細書に参照によって組み込まれるGonnet et al., Science 256: 1443−45 (1992)に開示されたPAM250対数尤度マトリクス中で正の値を有する任意の変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度マトリクス中で負でない値を有する任意の変化である。
配列同一性とも呼ばれる、ポリペプチドについての配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトを用いて測定する。タンパク質分析ソフトは、保存的アミノ酸置換を含む、種々の置換、欠失および他の変更に割当てた類似性尺度を用いて、類似配列をマッチングする。例えば、GCGは、異なる種の生物からの相同ポリペプチドなどの関連性の深いポリペプチド同士、または野生型タンパク質とそのミューテインとの間の配列相同性または配列同一性を決定するために、デフォルトパラメータで用いることができる「Gap」および「Bestfit」などのプログラムを備えている。例えば、GCG Version 6.1を参照。他のプログラムとしては、上記で論じたFASTAが挙げられる。
【0035】
本発明の配列を他の生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合に好ましいアルゴリズムは、コンピュータプログラムBLAST、特にblastpまたはtblastnである。本明細書に参照により組み込まれる、例えば、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403−410 (1990); Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389−402 (1997)を参照。blastp用の好ましいパラメータは:
期待値:10(デフォルト)
フィルター:seg(デフォルト)
ギャップを開くための負担(cost):11(デフォルト)
ギャップを広げるための負担:1(デフォルト)
最大アラインメント:100(デフォルト)
文字サイズ:11(デフォルト)
表示数(No. of descriptions):100(デフォルト)
ペナルティマトリクス:BLOSUM62
相同性のために比較されるポリペプチド配列の長さは、一般的には少なくとも約16アミノ酸残基、普通は少なくとも約20残基、より普通には少なくとも約24残基、典型的には少なくとも約28残基であり、そして好ましくは約35残基より多い。多数の異なる生物からの配列を含むデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較するのが好ましい。
blastp以外のアルゴリズムによって測定することができるアミノ酸配列を用いたデータベース検索は、当該技術分野で知られている。例えば、ポリペプチド配列は、GCG Version 6.1中のプログラムであるFASTAを用いて比較することができる。FASTA(例えばFASTA2およびFASTA3)は、照会配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域のアラインメントと配列同一性パーセントを提供する。例えば、アミノ酸配列同士の配列同一性パーセントは、FASTAを用いて、参照により本明細書に組み込むGCG Version 6.1で提供されるそのデフォルトまたは推奨パラメータ(文字サイズ2およびPAM250スコアリングマトリクス)で決定することができる。
【0036】
「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン、または、分子種、例えば本発明のポリペプチドへの特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、またはインタクト抗体の酵素的または化学的開裂により作製することができる。抗原結合部分は、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’) Fv、dAbおよび相補性決定領域断片、一本鎖抗体、キメラ抗体、ダイアボディ(diabody)、および、ポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの部分を少なくとも含むポリペプチドを含む。Fab断片は、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる単価断片であり、F(ab’)断片は、ヒンジ領域のジスルフィド結合によって架橋した2個のFab断片を含む二価の断片であり、Fd断片は、VHおよびCH1ドメインからなり、Fv断片は、抗体の短腕のVLおよびVHドメインからなり、そしてdAb断片は、VHドメインからなる。例えば、Ward et al., Nature 341: 544−546 (1989)を参照。
本明細書中で、「特異的に結合する」および「特異的結合」とは、抗体および第一の分子種とともに混合されている他の分子種への結合に優先して、第一の分子種に結合する抗体の能力を意味する。抗体は、それが第一の分子種に特異的に結合する場合、特別に、第一の分子種を「認識する」という。
一本鎖抗体(scFv)は、VLおよびVH領域が組になり、これらを単一のタンパク質鎖として作出されること可能にする合成リンカーを介して、単価分子を形成している抗体である。例えば、Bird et al., Science 242: 423−426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879−5883 (1988)を参照。ダイアボディは、二価の両特異的抗体であって、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されているが、同一鎖上の2つのドメイン間の対合を許容するには短すぎるリンカーを用いており、これによって、該ドメインを他の鎖の相補ドメインと対合することを余儀なくさせ、2つの抗原結合部位が創出されるものである。例えば、Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444−6448 (1993); Poljak et al., Structure 2: 1121−1123 (1994)を参照。1または2以上のCDRは、共有結合的に、または非共有結合的に分子中に組み込まれ、それを免疫付着因子(immunoadhesin)にすることができる。免疫付着因子は、CDRをより大きなポリペプチド鎖の部分として組み込んでもよく、CDRを他のポリペプチド鎖に共有結合させてもよく、または、CDRを非共有結合的に組み込んでもよい。CDRにより、免疫付着因子は、対象となる特定の抗原に特異的に結合することができる。キメラ抗体は、1の抗体からの1または2以上の領域と1または2以上の他の抗体の1または2以上の領域とを含む抗体である。
【0037】
抗体は、1または2以上の結合部位を有することができる。1以上の結合部位がある場合、該結合部位は互いに同一でもよく、または異なっていてもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、一本鎖抗体またはFab断片は、1つの結合部位を有するが、「二重特異性」または「二重機能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
「単離抗体」は、(1)その天然の状態で随伴している、他の天然に結び付いた抗体を含む、天然に結び付いた構成要素と結び付いていない抗体、(2)同一の種からの他のタンパク質からフリーな抗体、(3)異なる種からの細胞によって発現されている抗体、または(4)天然に存在しない抗体である。精製抗体を含む精製タンパク質を、天然には結び付いていない構成要素によって安定化できることが知られている。天然には結び付いていない構成要素は、アルブミン(例えばBSA)などのタンパク質、またはポリエチレングリコール(PEG)などの化学物質であってもよい。
「中和抗体」または「阻害抗体」は、ポリペプチドの活性を阻害し、または通常それに結合するリガンドへのポリペプチドの結合を遮断する抗体である。「活性化抗体」は、ポリペプチドの活性を増大させる抗体である。
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞レセプターに特異的に結合することが可能な任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常アミノ酸または糖側鎖などの、化学的に活性な表面分子群からなり、通常は、特異的な三次元構造的特性ならびに特異的な電荷特性を有する。抗体は、解離定数が1μMより低く、好ましくは100nMより低く、そして最も好ましくは10nMより低い場合に抗原を特異的に結合するという。
本明細書中で用いる用語「患者」は、ヒトおよび動物対象を含む。
本明細書および特許請求の範囲を通して、単語「含む」、または「含み」または「含んでいる」などの変化形は、記載された整数または整数の群を包含することを意味するが、いずれの整数または整数の群の排除も意味しないと理解される。
用語「肺特異的」は、体内の他の組織に比較して、肺に優勢に発現されている核酸分子またはポリペプチドを指す。好ましい態様では、「肺特異的」核酸分子またはポリペプチドは、体内のいずれの他の組織よりも5倍高いレベルで発現される。より好ましい態様では、「肺特異的」核酸分子またはポリペプチドは、体内のいずれの他の組織よりも10倍高いレベルで、より好ましくは体内のいずれの他の組織よりも少なくとも15倍、20倍、25倍、50倍または100倍高く発現される。核酸分子レベルは、ノザンブロットハイブリダイゼーションなどの核酸ハイブリダイゼーション、または定量的PCRによって測定することができる。ポリペプチドレベルは、ウェスタンブロット分析などの、タンパク質レベルを正確に定量することで知られている任意の方法によって測定することができる。
【0038】
核酸分子、調節配列、ベクター、宿主細胞およびポリペプチド作製のための組換え的方法
核酸分子
本発明の1つの側面は、肺または肺細胞もしくは組織に特異的な単離核酸分子、またはかかる核酸分子に由来する単離核酸分子を提供する。これらの単離された肺特異的核酸(LSNA)は、cDNA、ゲノムDNA、RNA、またはこれらの核酸のうちの1つの断片を含んでもよく、または、天然に存在しない核酸分子であってもよい。好ましい態様では、核酸分子は、肺に特異的なポリペプチドである、肺特異的ポリペプチド(LSP)をコードする。より好ましい態様では、核酸分子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。他の極めて好ましい態様では、核酸分子は、配列番号1〜142の核酸配列の1つを含む。
LSNAは、ヒトまたは他の動物に由来してもよい。好ましい態様では、LSNAは、ヒトまたは他の哺乳類に由来する。より好ましい態様では、LSNAはヒトまたは他の霊長類に由来する。さらにより好ましい態様では、LSNAはヒトに由来する。
本発明に関して、「核酸分子」はまた、LSNAをコードする核酸分子またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸配列を含むものとする。ハイブリダイズする核酸分子は、ポリペプチドをコードしてもよく、もしくはしなくてもよく、またはLSPをコードしなくてもよい。しかしながら、好ましい態様では、ハイブリダイズする核酸分子はLSPをコードする。より好ましい態様では、本発明は、配列番号142〜277のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子と選択的にハイブリダイズする核酸分子を提供する。さらにより好ましい態様では、本発明は、配列番号1〜142のアミノ酸配列を含む核酸分子と選択的にハイブリダイズする核酸分子を提供する。
【0039】
好ましい態様では、核酸分子は、LSPをコードする核酸分子と、低いストリンジェンシーの条件下で選択的にハイブリダイズする。より好ましい態様では、核酸分子は、LSPをコードする核酸分子と、中程度のストリンジェンシーの条件下で選択的にハイブリダイズする。より好ましい態様では、核酸分子は、LSPをコードする核酸分子と、高いストリンジェンシーの条件下で選択的にハイブリダイズする。さらにより好ましい態様では、核酸分子は、低い、中程度の、または高いストリンジェンシーの条件下で、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子とハイブリダイズする。より一層好ましい態様では、核酸分子は、LSPをコードする核酸分子と、高いストリンジェンシーの条件下で選択的にハイブリダイズする。さらにより好ましい態様では、核酸分子は、低い、中程度の、または高いストリンジェンシーの条件下で、配列番号1〜142の核酸配列の1つを含む核酸分子とハイブリダイズする。本発明の好ましい態様では、ハイブリダイズする核酸分子は、本発明のポリペプチドを組換え的に発現するために用いることができる。
本明細書中で用いる「核酸分子」は、LSPをコードする核酸または該コードする核酸分子の相補体と実質的な配列類似性を示す配列を含むものとする。好ましい態様では、核酸分子は、ヒトLSPをコードする核酸分子と実質的な配列類似性を示す。より好ましい態様では、核酸分子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子と実質的な配列類似性を示す。好ましい態様では、類似の核酸分子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するポリペプチドなどのLSPをコードする核酸分子と少なくとも60%の配列同一性を有するものであり、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そしてさらにより好ましくは少なくとも85%である。より好ましい態様では、類似の核酸分子は、LSPをコードする核酸分子と少なくとも90%の配列同一性を有するものであり、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、さらにより好ましくは少なくとも98%、そしてなお一層好ましくは少なくとも99%である。他の極めて好ましい態様では、核酸分子は、LSPをコードする核酸分子と少なくとも99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%の配列同一性を有するものである。
【0040】
他の好ましい態様では、核酸分子は、LSNAまたはその相補体と実質的な配列類似性を示す。より好ましい態様では、核酸分子は、配列番号1〜142の核酸配列を含む核酸分子と実質的な配列類似性を示す。好ましい態様では、核酸分子は、LSNA、例えば配列番号1〜142の核酸配列を有するものと少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そして、さらにより好ましくは85%の配列同一性を有するものである。より好ましい態様では、核酸分子は、LSNAと少なくとも90%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも97%、さらにより好ましくは少なくとも98%、そしてより一層好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するものである。別の極めて好ましい態様では、核酸分子は、少なくとも99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%LSNAとの配列同一性を有するものである。
実質的な配列類似性を示す核酸分子は、LSNAまたはLSPをコードする核酸分子と、その全長にわたり配列同一性を示すものであってもよく、または、その全長の一部分のみにわたって類似するものであってもよい。この場合、該部分は、LSNAまたはLSPをコードする核酸分子の少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも150または200ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも250または300ヌクレオチド、より一層好ましくは少なくとも400または500ヌクレオチドである。
【0041】
実質的に類似の核酸分子は、他の種に由来する天然に存在するもの、とりわけ他の霊長類に由来するものであって、該類似の核酸分子が、配列番号143〜277と顕著な配列同一性を示すアミノ酸配列をコードする、または、配列番号1〜142のヌクレオチド配列と顕著な配列同一性を示すものである。この類似の核酸分子はまた、LSNAが遺伝子ファミリーの成員である場合、ヒトからの天然に存在する核酸分子であってもよい。この類似の核酸分子はまた、家畜化種、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ウシ、ウマおよびブタ、および、例えばサル、キツネ、ライオン、トラ、クマ、キリン、シマウマなどの野生動物を含む、霊長類ではない哺乳類種に由来する天然に存在する核酸分子であってもよい。実質的に類似の核酸分子はまた、鳥類または爬虫類などの、非哺乳類種に由来する天然に存在する核酸分子であってもよい。天然に存在する実質的に類似の核酸分子は、ヒトまたは他の種から直接単離することができる。別の態様では、実質的に類似の核酸分子は、核酸分子のランダム突然変異によって実験的に製造されたものであってもよい。別の態様では、実質的に類似の核酸分子は、LSNAの指向性(directed)突然変異によって実験的に作製されたものであってもよい。さらに、実質的に類似の核酸分子は、LSNAであってもなくてもよい。しかしながら、好ましい態様では、実質的に類似の核酸分子はLSNAである。
「核酸分子」は、LSNAまたはLSPをコードする核酸の対立遺伝子変異体を含むものとする。例えば、真核生物のゲノムにおいては、一塩基多型(SNPs)がしばしば起こる。実際、1400万のSNPsがすでにヒトゲノムにおいて同定されている(International Human Genome Sequencing Consortium, Nature 409: 860−921 (2001))。従って、1つの種の1個体から決定された配列は、集団内に存在する他の対立遺伝子形態と異なり得る。さらに、微小な欠失および挿入は、一般的な集団において一塩基多型よりもむしろ稀ではなく、そしてしばしばタンパク質の機能を変えない。さらに、アミノ酸置換は、天然の対立遺伝子変異体の中で頻繁に生じ、しばしばタンパク質機能を実質的に変化させない。
好ましい態様では、対立遺伝子変異体を含む核酸分子は、遺伝子の変異体であって、該遺伝子がLSPをコードするmRNAに転写されているものである。より好ましい態様では、遺伝子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPをコードするmRNAに転写されている。別の好ましい態様では、対立遺伝子変異体は、遺伝子の変異体であって、遺伝子が、LSNAであるmRNAに転写されているものである。より好ましい態様では、遺伝子は、配列番号1〜142の核酸配列を含むmRNAに転写されている。好ましい態様では、対立遺伝子変異体は、対象となる種の天然に存在する対立遺伝子変異体である。より好ましい態様では、対象となる種はヒトである。
【0042】
「核酸分子」はまた、本発明の核酸配列の部分を含むものとする。該部分は、ポリペプチドをコードしてもしていなくてもよく、そして、LSPであるポリペプチドをコードしてもしなくてもよい。しかしながら、好ましい態様では、該部分はLSPをコードする。1つの側面では、本発明は、LSNAの部分を含む。第2の側面では、本発明は、LSNAにハイブリダイスするまたは、LSNAに対し実質的な配列類似性を示す核酸分子の部分を含む。第3の側面では、本発明は、LSNAの対立遺伝子である核酸分子の部分を含む。第4の側面では、LSPをコードする核酸分子の部分を含む。1つの部分は、少なくとも10ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも15、17、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400または500ヌクレオチドを含む。核酸の部分の最大サイズは、全長タンパク質をコードする核酸分子の配列より1ヌクレオチド短いものである。
「核酸分子」はまた、下記の融合タンパク質、相同タンパク質、タンパク質断片、ミューテイン、またはポリペプチド類縁体をコードする配列を含むものとする。
本明細書記載の核酸のヌクレオチド配列は、少なくとも1つの酵素的重合反応(例えば、逆転写および/またはポリメラーゼ連鎖反応)から、自動シークエンサー(MegaBACE(登録商標)1000, Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA, USAなど)を用いて、直接または間接にもたらされるDNA分子をシークエンシングして決定した。さらに、本発明のポリペプチドのすべてのアミノ酸配列は、他に特記のない限り、そのように決定された核酸配列からの翻訳によって予測した。
本発明の好ましい態様では、核酸分子は天然核酸分子の修飾を含む。これらの修飾は、非天然のヌクレオシド間結合、合成後修飾、または変化したヌクレオチド類縁体を含む。当業者は、行うことができる修飾のタイプが、核酸分子の意図された使用に依存することを認識している。例えば、核酸分子がハイブリダイゼーションプローブとして用いられる場合、かかる修飾は、もたらされる核酸の配列を識別する塩基対合を許容するものに限定される。in vitroまたはin vivoで、RNAまたはタンパク質の発現を導入するのに用いる場合、かかる修飾の範囲は、核酸が、重合基質として正しく機能することを許容するものに限定される。単離核酸が治療剤として用いられる場合、修飾は単離核酸に毒性を付与しないものに限定される。
【0043】
好ましい態様では、単離核酸分子は、放射性標識またはフルオロフォアなどの直接検出可能な標識を組み込んだヌクレオチド類縁体、またはビオチンまたは種々のハプテンなどの、その後の反応によって視覚化できる標識を組み込んだヌクレオチド類縁体を含むことができる。より好ましい態様では、標識核酸分子をハイブリダイゼーションプローブとして用いてもよい。
一般的な放射性標識類縁体は、α−32P−dATP、α−32P−dCTP、α−32P−dGTP、α−32P−dTTP、α−32P−3’dATP、α−32P−ATP、α−32P−CTP、α−32P−GTP、α−32P−UTP、α−35S−dATP、α−35S−GTP、α−33P−dATPなどのように、33P、32Pおよび35Sで標識されたものを含む。
本発明の核酸に容易に組み込まれる市販の蛍光ヌクレオチド類縁体は、Cy3−dCTP、Cy3−dUTP、Cy5−dCTP、Cy3−dUTP (Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, New Jersey, USA)、フルオレセイン−12−dUTP、テトラメチルローダミン−6−dUTP、テキサスレッド(登録商標)−5−dUTP、カスケードブルー(登録商標)−7−dUTP、BODIPY(登録商標)FL−14−dUTP、BODIPY(登録商標)TMR−14−dUTP、BODIPY(登録商標)TR−14−dUTP、ローダミングリーン(登録商標)−5−dUTP、オレゴングリーン(登録商標)488−5−dUTP、テキサスレッド(登録商標)−12−dUTP、BODIPY(登録商標)630/650−14−dUTP、BODIPY(登録商標)650/665−14−dUTP、アレクサフルオール(Alexa Fluor)(登録商標)488−5−dUTP、アレクサフルオール(登録商標)532−5−dUTP、アレクサフルオール(登録商標)568−5−dUTP、アレクサフルオール(登録商標)594−5−dUTP、アレクサフルオール(登録商標)546−14−dUTP、フルオレセイン−12−UTP、テトラメチルローダミン−6−UTP、テキサスレッド(登録商標)−5−UTP、カスケードブルー(登録商標)−7−UTP、BODIPY(登録商標) FL−14−UTP、BODIPY(登録商標)TMR−14−UTP、BODIPY(登録商標)TR−14−UTP、ローダミングリーン(登録商標)−5−UTP、アレクサフルオール(登録商標)488−5−UTP、アレクサフルオール(登録商標)546−14−UTP (Molecular Probes, Inc. Eugene, OR, USA)を含む。また、他のフルオロフォアを有するヌクレオチドをカスタム合成することもできる。開示がその全体として参照により本明細書に組み込まれるHenegariu et al., Nature Biotechnol. 18: 345−348 (2000)を参照。
その後の標識のためにヌクレオチドに一般的に結合されるハプテンは、ビオチン(ビオチン−11−dUTP、Molecular Probes, Inc., Eugene, OR, USA、ビオチン−21−UTP、ビオチン−21−dUTP、Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA, USA)、ジゴキシゲニン(DIG−11−dUTP、アルカリ不安定、DIG−11−UTP、Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN, USA)、およびジニトロフェニル(ジニトロフェニル−11−dUTP、Molecular Probes, Inc., Eugene, OR, USA)を含む。
【0044】
核酸分子は、核酸中への標識ヌクレオチド類縁体の組み込みによって標識できる。かかる類縁体は、DNA分子については、ニックトランスレーション、ランダムプライミング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、末端トランスフェラーゼテーリング、およびオーバーハングのエンドフィリング、ならびに、RNA分子については、例えばT7、T3およびSP6などのファージプロモーターから誘導されるin vitroでの転写などによる、酵素重合によって組み込むことができる。このような各標識手法のために、市販のキットが容易に入手可能である。類縁体は、自動化された固相化学合成の最中に組み込むこともできる。標識はまた、核酸合成後に組み込むこともでき、5’リン酸塩および3’ヒドロキシルは検出可能な標識の合成後の共有結合による付着に好都合な部位を提供する。
他の合成後の手法はまた、核酸の内部標識を可能にする。例えば、DNA、RNAおよびPNA中のグアニン残基のN7(および、より少ない程度ではあるが、アデニン塩基)と反応するシスプラチン試薬を用い、核酸とフルオロフォア標識間に安定した配位複合体を提供することで、フルオロフォアを付着させることができる(Universal Linkage System)(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR, USA およびAmersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ, USAから入手可能)。本明細書中に参照によって組み込まれるAlers et al., Genes, Chromosomes & Cancer 25: 301− 305 (1999); Jelsma et al., J. NIH Res. 5: 82 (1994); Van Belkum et al., BioTechniques 16: 148−153 (1994)を参照。他の例としては、核酸は、アリールアザイド化学を用いて、標識核酸に光学的または熱的に結合しているジスルフィド含有リンカー(FastTag(登録商標)試薬, Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA, USA)を用いて標識することができる。還元後、遊離チオールが、ハプテン、フルオロフォア、糖、アフィニティーリガンドまたは他のマーカーとの結合に利用できる。
1または2以上の独立のまたは相互作用性の標識を、本発明の核酸分子に組み込むことができる。たとえば、フルオロフォア、およびその近くでは蛍光を消光するように作用する部分の両方を組み込み、蛍光消光のリリースを介して特異的ハイブリダイゼーションを報告し、またはヌクレオチド外(exonucleotidic)除去を報告することができる。その開示の全体が参照により本明細書中に組み込まれる、例えばTyagi et al., Nature Biotechnol. 14: 303−308 (1996); Tyagi et al., Nature Biotechnol. 16: 49−53 (1998); Sokol et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 11538−11543 (1998); Kostrikis et al., Science 279: 1228−1229 (1998); Marras et al., Genet. Anal. 14: 151−156 (1999); 米国特許第5,846,726号; 第5,925,517号; 第5,723,591号および第5,538,848号; Holland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7276−7280 (1991); Heid et al., Genome Res. 6(10): 986−94 (1996); Kuimelis et al., Nucleic Acids Symp. Ser. (37): 255−6 (1997)を参照。
【0045】
本発明の核酸分子は、1または2以上の天然のホスホジエステルヌクレオシド間結合を、よりヌクレアーゼ耐性のヌクレオシド間結合に変更することによって修飾することができる。その開示の全体が参照により本明細書中に組み込まれる、Hartmann et al. (eds.), Manual of Antisense Methodology: Perspectives in Antisense Science, Kluwer Law International (1999); Stein et al. (eds.), Applied Antisense Oligonucleotide Technology, Wiley−Liss (1998); Chadwick et al. (eds.), Oligonucleotides as Therapeutic Agents Symposium No. 209, John Wiley & Son Ltd (1997)を参照。かかる変更されたヌクレオシド間結合は、しばしば、アンチセンス技術または標的遺伝子修正のために望まれる。その開示の全体が参照により本明細書中に組み込まれる、Gamper et al., Nucl. Acids Res. 28(21): 4332−4339 (2000)を参照。
修飾オリゴヌクレオチド主鎖としては、限定されることなく、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステルならびにボラノホスフェートであって、通常の3’−5’結合を有するもの、これらの2’−5’結合類縁体、およびヌクレオシド単位の隣接した組が3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2’に結合したものがあげられる。上記のリン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許としては、限定されることなく、米国特許第3,687,808号、第4,469,863号、第4,476,301号、第5,023,243号、第5,177,196号、第5,188,897号、第5,264,423号、第5,276,019号、第5,278,302号、第5,286,717号、第5,321,131号、第5,399,676号、第5,405,939号、第5,453,496号、第5,455,233号、第5,466,677号、第5,476,925号、第5,519,126号、第5,536,821号、第5,541,306号、第5,550,111号、第5,563,253号、第5,571,799号、第5,587,361号、第5,625,050号が挙げられ、その開示の全体は、参照により本明細書中に組み込まれる。好ましい態様では、修飾ヌクレオシド間結合は、アンチセンス技術用に用いることができる。
【0046】
他の修飾オリゴヌクレオチド主鎖は、リン原子は含まないが、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合されたヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1または2以上の短鎖へテロ原子または複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される主鎖を有する。これらは、モルホリノ結合(一部ヌクレオシドの糖部分から形成されている)を有するもの、シロキサン主鎖、スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、アルケン含有主鎖、スルファメート主鎖、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖、スルホネートおよびスルホンアミド主鎖、アミド主鎖、および混合されたN、O、SおよびCHの構成部分を有するその他のものを含む。上記主鎖の調製を教示する代表的な米国特許としては、限定されることなく、米国特許第5,034,506号、第5,166,315号、第5,185,444号、第5,214,134号、第5,216,141号、第5,235,033号、第5,264,562号、第5,264,564号、第5,405,938号、第5,434,257号、第5,466,677号、第5,470,967号、第5,489,677号、第5,541,307号、第5,561,225号、第5,596,086号、第5,602,240号、第5,610,289号、第5,602,240号、第5,608,046号、第5,610,289号、第5,618,704号、第5,623,070号、第5,663,312号、第5,633,360号、第5,677,437号および第5,677,439号が挙げられ、その開示の全体は、参照により本明細書中に組み込まれる。
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣体においては、糖およびヌクレオシド間結合の両方が、ペプチド核酸(PNA)などの新規な基で置換されている。PNA化合物では、核酸のホスホジエステル主鎖は、アミド含有主鎖で、特にアミド結合で連結された反復するN−(2−アミノエチル)グリシンユニットによって置換されている。核酸塩基は、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に、典型的には、メチレンカルボニル結合で結合している。PNAは、ペプチド合成プロトコル変法を用いて合成することができる。PNAオリゴマーは、FmocおよびtBoc法の両方によって合成することができる。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、限定されることなく、米国特許第5,539,082、5,714,331および5,719,262号が挙げられ、その開示の全体は、参照により本明細書中に組み込まれる。自動PNA合成は、市販の合成機で容易に達成できる(例えば、“PNA User’s Guide,” Rev. 2, February 1998, Perseptive Biosystems Part No. 60138, Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA参照)。
【0047】
PNA分子は、多数の理由で有利である。第1に、PNA主鎖は非荷電なので、PNA/DNAおよびPNA/RNA2量体は、DNA/DNAおよびDNA/RNA2量体でみられるより、高い熱安定性を有する。PNA/DNAまたはPNA/RNA2量体のTmは、一般的に、対応するDNA/DNAまたはDNA/RNA2量体のTmよりも1塩基対当たり1℃高い(100mMのNaCl中で)。第2に、PNA分子はまた、DNA/DNA2量体形成が起こらない条件下、低いイオン強度で、安定なPNA/DNA複合体を形成することができる。第3に、PNAはまた、PNA/DNAのミスマッチが、DNA/DNAのミスマッチより不安定であるため、相補DNAへの結合における高い特異性を示す。混合したPNA/DNAの15マーにおける単一のミスマッチは、Tmを8〜20℃(平均15℃)下げる。対応するDNA/DNA2量体では、単一のミスマッチは、Tmを4〜16℃(平均11℃)下げる。PNAプローブは、DNAプローブより顕著に短くすることができるので、その特異性は高い。第4に、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼは核酸塩基側鎖を有するPNAポリアミド主鎖を認識しないので、PNAオリゴマーは、酵素による分解に抵抗性であり、これらの化合物の半減期はin vivoおよびin vitroで長くなる。その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、例えば、Ray et al., FASEB J. 14(9): 1041−60 (2000); Nielsen et al., Pharmacol Toxicol. 86(1): 3−7 (2000); Larsen et al., Biochim Biophys Acta. 1489(1): 159−66 (1999); Nielsen, Curr. Opin. Struct. Biol. 9(3): 353−7 (1999), and Nielsen, Curr. Opin. Biotechnol. 10(1): 71−5 (1999)を参照。
核酸分子は、核酸分子の全長にわたってその天然の構造に比べて修飾されていてもよく、または、その不連続な部分に限局されていてもよい。後者の例としては、不連続なDNAおよびRNAドメインを有し、標的遺伝子修復およびPCR反応変法に用いることができるキメラ核酸を合成することができ、これは、その開示の全体が参照によって本明細書中に組み込まれる米国特許第5,760,012号および第5,731,181号、Misra et al., Biochem. 37: 1917−1925 (1998)およびFinn et al., Nucl. Acids Res. 24: 3357−3363 (1996)にさらに記載されている。
他に特記のない限り、本発明の核酸は、所望の用途に適切な任意の位相構造を含むことができる。この用語は、従って、とりわけ、1本鎖、2本鎖、3量体、4量体、部分的2本鎖、部分的3量体、部分的4量体、分枝状、ヘアピン状、環状およびパドロック状構造を明白に包含する。パドロック構造およびその有用性は、その開示の全体が参照によって本明細書中に組み込まれるBaneur et al., Curr. Opin. Biotechnol. 12: 11−15 (2001); Escude et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 14: 96(19):10603−7 (1999); Nilsson et al., Science 265(5181): 2085−8 (1994)にさらに記載されている。3量体および4量体構造、およびその有用性は、その開示の全体が参照によって本明細書中に組み込まれるPraseuth et al., Biochim. Biophys. Acta. 1489(1): 181−206 (1999); Fox, Curr. Med. Chem. 7(1): 17−37 (2000); Kochetkova et al., Methods Mol. Biol. 130: 189−201 (2000); Chan et al., J. Mol. Med. 75(4): 267−82 (1997)に総括されている。
【0048】
核酸分子をプローブおよびプライマーとして用いる方法
本発明の単離核酸分子は、ゲノムおよび転写物由来核酸試料の両方において、ハイブリダイズする核酸を検出、特徴付けおよび定量し、そこからハイブリダイズする核酸を単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。溶液中で遊離している場合、かかるプローブは、典型的には、常にではないが、検出可能に標識されている。マイクロアレイにおけるように、基体に結合している場合、かかるプローブは、典型的には、常にではないが、標識されていない。
1つの態様では、本発明の単離核酸は、LSNAの遺伝子中の総変化、例えば欠失、挿入、転座およびLSNA遺伝子座の重複を、染色体のスプレッド(chromosome spreads)に対する蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)を介して、検出および特徴付けするためのプローブとして用いることができる。その開示の全体が参照によって本明細書中に組み込まれる、例えばAndreeff et al. (eds.), Introduction to Fluorescence In Situ Hybridization: Principles and Clinical Applications, John Wiley & Sons (1999)を参照。本発明の単離核酸は、例えば制限断片長多型のサザンブロットによる検出を用いて、微小なゲノムの変化を評価するためのプローブとして用いることができる。本発明の単離核酸分子は、本発明の核酸分子を含むゲノムクローンを単離するためのプローブとして用いることができ、それをその後配列レベルで欠失、挿入、転座および置換(1塩基多型、SNPs)を同定するために制限マッピングおよびシークエンシングすることができる。
他の態様では、本発明の単離核酸分子は、転写由来核酸試料においてLSNAを検出、特徴付けおよび定量し、およびそこからLSNAを単離するためのプローブとして用いることができる。1つの側面では、本発明の単離核酸分子は、全RNA試料またはポリ−A+選択RNA試料のノザンブロットによって、mRNAを検出し、長さによって特徴付けし、そして定量するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。他の側面では、本発明の単離核酸分子は、組織切片に対するin situハイブリダイゼーションによって、mRNAを検出し、位置によって特徴付けし、そして定量化するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、例えば、Schwarchzacher et al., In Situ Hybridization, Springer−Verlag New York (2000)を参照。他の好ましい態様では、本発明の単離核酸分子は、cDNAライブラリー中のクローンの発現を測定するための、またはcDNAライブラリーからハイブリダイズする核酸分子を単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして用いることができ、これにより、限定されることなく、欠失、挿入、置換、切断、代替的なスプライス形態および1塩基多型の同定を含む、LSNAにハイブリダイズするmRNAの配列レベルでの特徴付けが可能になる。さらに他の好ましい態様では、本発明の核酸分子は、マイクロアレイに用いることができる。
【0049】
上述のすべてのプローブ技術は、当業者の間で好適であり、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Sambrook (2001), supra; Ausubel (1999), supra; および Walker et al. (eds.), The Nucleic Acids Protocols Handbook, Humana Press (2000)などの標準的なテキストに、より詳細に記載されている。
従って、1つの態様では、本発明の核酸分子は、本発明の核酸分子に選択的にハイブリダイズする第2の核酸分子を同定または増幅するためのプローブまたはプライマーとして用いることができる。好ましい態様では、プローブまたはプライマーはLSPをコードする核酸分子に由来する。より好ましい態様では、プローブまたはプライマーは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子に由来する。他の好ましい態様では、プローブまたはプライマーは、LSNAに由来する。より好ましい態様では、プローブまたはプライマーは、配列番号1〜142の核酸配列の1つを有する核酸分子に由来する。
一般的に、プローブまたはプライマーは、少なくとも10ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも14、そしてより一層好ましくは少なくとも16または17ヌクレオチド長である。より一層好ましい態様では、プローブまたはプライマーは、少なくとも18ヌクレオチド長、より一層好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、そしてより一層好ましくは少なくとも22ヌクレオチド長である。プライマーおよびプローブはまた、長さにおいてより長くてもよい。例えば、プローブまたはプライマーは、25ヌクレオチド長、または30、40または50ヌクレオチド長であってもよい。オリゴヌクレオチドプローブを用いて核酸ハイブリダイゼーションを達成する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、上記Sambrook et al., 1989中、短いプローブの放射性標識を説明した第11章、およびpp. 11.31−11.32および11.40−11.44、ならびにプローブハイブリダイゼーションのための具体的な条件(pp. 11.50−11.51)を含む、オリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーション条件を説明したpp. 11.45−11.53を参照。
【0050】
プライマーを用いた増幅を達成する方法もまた、当該技術分野でよく知られている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法は、とりわけ、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、McPherson, PCR Basics: From Background to Bench, Springer Verlag (2000); Innis et al. (eds.), PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press (1999); Gelfand et al. (eds.), PCR Strategies, Academic Press (1998); Newton et al., PCR, Springer−Verlag New York (1997); Burke (ed.), PCR: Essential Techniques, John Wiley & Son Ltd (1996); White (ed.), PCR Cloning Protocols: From Molecular Cloning to Genetic Engineering, Vol. 67, Humana Press (1996); McPherson et al. (eds.), PCR 2: Practical Approach, Oxford University Press, Inc. (1995)にまとめてある。RT−PCRを行うための方法は、例えば、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるSiebert et al. (eds.), Gene Cloning and Analysis by RT−PCR, Eaton Publishing Company/Bio Techniques Books Division, 1998; Siebert (ed.), PCR Technique:RT−PCR, Eaton Publishing Company/ BioTechniques Books (1995)に集められている。
PCRおよびハイブリダイゼーション法は、本発明の核酸分子の対立遺伝子変異体、相同核酸分子および断片を同定および/または単離するのに用いることができる。PCRおよびハイブリダイゼーション法はまた、本発明の相同タンパク質、類縁体、融合タンパク質またはミューテインをコードする核酸分子を同定、増幅および/または単離するために用いることができる。本発明の核酸プライマーは、転写由来またはゲノムDNAをテンプレートとして用い、本発明の核酸分子の増幅をプライミングするのに用いることができる。
本発明の核酸プライマーはまた、例えば、SNP検出のための1塩基伸長(SBE)をプライミングするのに用いることができる(例えば、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,004,744号を参照)。
ローリングサークル増幅などの等温増幅法もまた、現在ではよく記載されている。例えば、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるSchweitzer et al., Curr. Opin. Biotechnol. 12(1): 21−7 (2001)、米国特許第5,854,033号および第5,714,320号、ならびに国際公開WO 97/19193およびWO 00/15779を参照。ローリングサークル増幅は、SNP検出を容易にするために、他の技術と組合わせることができる。例えば、Lizardi et al., Nature Genet. 19(3): 225−32 (1998)を参照。
【0051】
本発明の核酸分子は、基体と共有結合で、または非共有結合で結合していてもよい。基体は非孔質または多孔質でも、平坦または非平坦でも、ユニット型または分散型でもよい。結合した核酸分子は、ハイブリダイゼーションプローブとして用いることができ、標識されていても非標識でもよい。好ましい態様では、結合した核酸分子は非標識である。
1つの態様では、本発明の核酸分子は、多孔質の基体、例えば、典型的には、ニトロセルロース、ナイロンまたは正電荷誘導体化ナイロン(positively−charged derivatized nylon)を含む膜に結合している。本発明の核酸分子は、標識された核酸試料、例えば、転写物由来の核酸試料中に存在するハイブリダイズする核酸分子を検出するのに用いることができる。他の態様では、核酸分子は、限定されることなくガラス、アモルファスシリコン、結晶シリコンまたはプラスチックを含む、固体基体に結合している。プラスチックの例としては、限定されることなく、ポリメチルアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ニトロセルロース、またはこれらの混合物が挙げられる。固体基体は、長方形、円盤状および球状を含む、任意の形態であることができる。
本発明の核酸分子は、支持基体の表面に共有結合で付着させ、または、予想される非共有結合相互作用またはその組み合わせによって、変性および接着を容易にするカオトロピック剤中で、誘導体化した表面に適用することができる。本発明の核酸分子は、他の核酸が競合的に結合した基体に結合することができ、多数の結合核酸のそれぞれへのハイブリダイゼーションを個別に検出できる。低い密度、例えば、多孔質の膜では、これらの基体に結合した集合体は、典型的にはマイクロアレイと呼ばれる。高い密度、典型的には、ガラスなどの固体支持体では、これらの基体に結合した多数の核酸の集合体は、口語的にマイクロアレイと呼ばれる。本明細書で用いる場合、用語マイクロアレイは、すべての密度のアレイを含む。従って、本発明の他の側面は、本発明の核酸を含むマイクロアレイを提供することである。
【0052】
発現ベクター、宿主細胞およびポリペプチドを作製するための組換え的方法
本発明の他の側面は、1または2以上の本発明の単離核酸分子を含むベクター、およびかかるベクターが導入された宿主細胞に関する。
ベクターは、とりわけ、本発明の核酸を宿主細胞内で増殖するため(クローニングベクター)、本発明の核酸を異種生物に由来する宿主細胞間で受け渡すため(シャトルベクター)、本発明の核酸を宿主細胞の染色体中に挿入するため(挿入ベクター)、本発明の核酸のセンスまたはアンチセンスRNA転写物をin vitroまたは宿主細胞内で発現させるため、および本発明の核酸によってコードされるポリペプチドを、単独で、またはポリペプチドとの融合体として発現させるため(発現ベクター)に用いることができる。本発明のベクターは、しばしば数種のかかる使用に好適だろう。
ベクターはこれまでに当該技術分野でよく知られており、とりわけ、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるJones et al. (eds.), Vectors: Cloning Applications: Essential Techniques (Essential Techniques Series), John Wiley & Son Ltd. (1998); Jones et al. (eds.), Vectors: Expression Systems: Essential Techniques (Essential Techniques Series), John Wiley & Son Ltd. (1998); Gacesa et al., Vectors: Essential Data, John Wiley & Sons Ltd. (1995); Cid−Arregui (eds.), Viral Vectors: Basic Science and Gene Therapy, Eaton Publishing Co. (2000); 上記Sambrook (2001); 上記Ausubel (1999)に記載されている。さらにまた、膨大な種類のベクターが市販されている。既存のベクターの使用およびその改変は当業者の間で好適であり、本明細書では、基本的な特徴しか説明する必要はない。
核酸配列は、それを適切な発現ベクター中の発現制御配列に作動可能に連結し、この発現ベクターを、適切な単細胞宿主を形質転換するために用いることによって、発現させることができる。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後イベントおよび翻訳を制御する配列である。この発明の核酸配列の、発現制御配列へのかかる作動可能な連結は、勿論、すでに該核酸配列の一部とはなっていない場合は、翻訳開始コドン、ATGまたはGTGの、該核酸配列の上流の正しいリーディングフレームにおける提供を含む。
多様な宿主/発現ベクターの組み合わせを、この発明の核酸配列の発現に用いることができる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体性、非染色体性、および合成核酸配列のセグメントからなってもよい。
【0053】
1つの態様では、原核細胞を、適切なベクターとともに用いることができる。原核宿主細胞は、しばしば、クローニングおよび発現に用いられる。好ましい態様では、原核宿主細胞は、大腸菌、シュードモナス属、バチルス属およびストレプトマイセス属を含む。好ましい態様では、本発明の核酸分子を発現させるために、細菌性宿主細胞を用いる。細菌性宿主用の有用な発現ベクターは、大腸菌、バチルス属またはストレプトマイセス属からのものなどの、細菌性プラスミド、例えば、pBluescript、pGEX−2T、pUCベクター、col E1、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの派生物、広宿主域プラスミド、例えばRP4、ファージDNA、例えば、NM989、λGT10およびλGT11などのラムダファージの多数の派生物、および例えばM13および線状1本鎖ファージDNAなどを含む。大腸菌が宿主として用いられる場合、選択マーカーは、同様に、グラム陰性細菌での選択性について選ばれる。例えば、典型的なマーカーは、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシンおよびゼオシンなどの抗生剤への耐性を付与する。栄養要求性のマーカーもまた用いることができる。
他の態様では、酵母、昆虫、哺乳類または植物細胞などの真核宿主細胞を用いることができる。酵母細胞、典型的にはcerevisiaeは、相同性組換えによる遺伝子変化のターゲティングの容易性、および組換え的に発現したタンパク質を用いて遺伝的欠陥を容易に補充する能力のために、真核生物の遺伝子研究に有用である。酵母細胞は、相互作用するタンパク質成分を、例えば、ツーハイブリッドシステムの使用を介して、同定するのに有用である。好ましい態様では、酵母細胞は、タンパク質発現に有用である。酵母に用いるための本発明のベクターは、常にではないが、典型的には、酵母で用いるのに好適な複製起点、および酵母で機能する選択マーカーを含む。酵母ベクターは、酵母組み込みプラスミド(例えばYIp5)および酵母複製プラスミド(YRpおよびYEp型プラスミド)、酵母中心体プラスミド(YCp型プラスミド)、YLpと呼ばれる酵母線状プラスミド、pGPD−2、2μプラスミドおよびこれらの派生物、およびGietz et al., Gene, 74: 527−34 (1988)に記載されているような(YIplac、YEplacおよびYCplac)改善されたシャトルベクターを含む。酵母ベクターにおける選択マーカーは、種々の栄養要求性マーカーを含み、その最も一般的なものは、(Saccharomyces cerevisiaeにおいて)URA3、HIS3、LEU2、TRP1およびLYS2であり、これは、ura3−52、his3−D1、leu2−D1、trp1−D1およびlys2−201などの特異的な栄養要求性の突然変異を補充する。
【0054】
昆虫細胞は、しばしば高効率のタンパク質発現用に選ばれる。宿主細胞がSpodoptera frugiperdaからのもの、例えば、Sf9およびSf21細胞系、およびexpresSF(登録商標)細胞(Protein Sciences Corp., Meriden, CT, USA)である場合、ベクター複製方法は、典型的にはバキュロウイルスの生活環に基づく。典型的には、バキュロウイルストランスファーベクターは、野生型AcMNPVポリヘドリン遺伝子を、対象となる異種遺伝子で置換するために用いられる。野生型ゲノムにおいてポリヘドリン遺伝子に隣接する配列は、トランスファーベクターの発現カセットの5’および3’に位置している。AcMNPV DNAでのトランスフェクションの後、相同性組換えイベントがこれらの配列間で生じ、対象となる遺伝子およびポリヘドリンまたはp10プロモータを担持する組換えウイルスがもたらされる。選択は、lacZ融合活性の視覚的なスクリーニングに基づくことができる。
他の態様では、宿主細胞は哺乳類細胞であってもよく、これらは、薬剤として意図されているタンパク質の発現のため、およびタンパク質または生理学的経路の潜在的なアゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニングのために特に有用である。自律的な染色体外での複製を対象とする哺乳類ベクターは、典型的には、ウイルス性の起源、例えば、SV40起源(広いT抗原を発現している、例えばCOS1およびCOS7細胞などの細胞系での複製用)、パピローマウイルス起源、または長期エピソーム性の複製ためのEBV起源(例えば、EBV EBNA−1遺伝子産物およびアデノウイルスE1Aを構成的に発現している293−EBNA細胞で用いるため)を含むだろう。組込み、および従って哺乳類染色体の部分としての複製を対象とするベクターは、SV40起源などの、哺乳類細胞で機能的な複製起点を含むことができるが、必須ではない。アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、および種々の哺乳類レトロウイルスなどのウイルスに基づくベクターは、典型的には、ウイルスの複製方法に従って複製するだろう。哺乳類細胞で用いるための選択マーカーは、ネオマイシン、ブラスチシジン、ヒグロマイシンおよびゼオシンへの耐性、およびHAT培地を用いたプリンサルベージ経路に基づく選択を含む。
哺乳類細胞での発現は、種々のプラスミド、例えばpSV2、pBC12BIおよびp91023など、ならびに溶菌性ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスおよびバキュロウイルス)、エピソームウイルスベクター(例えば、ウシパピローマウイルス)、およびレトロウイルスベクター(例えば、マウスのレトロウイルス)を用いて達成することができる。昆虫細胞に有用なベクターは、バキュロウイルスベクターおよびpVL 941を含む。
植物細胞もまた、典型的には植物ウイルス(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)由来のベクターレプリコン、および植物における好適性について選ばれた選択マーカーによる発現に用いることができる。
【0055】
異なる宿主細胞のコドンの使用は異なり得ることが知られている。例えば、植物細胞およびヒト細胞は、特定のアミノ酸をコードするためのコドンの選好において異なり得る。結果として、ヒトmRNAは、植物、細菌または昆虫宿主細胞に、有効に翻訳されないことがある。従って、本発明の他の態様は、コドンの最適化を対象とする。本発明の核酸分子のコドンは、該核酸分子でコードされたアミノ酸配列を変化させることなく、可能な限り、宿主細胞内に天然に含まれている遺伝子に類似するように、変更することができる。
本発明のDNA配列を発現させるために、多種多様な発現制御配列のいずれをも、これらのベクターに使用することができる。かかる有益な発現制御配列は、上述の発現ベクターの構造遺伝子に結びついた発現制御配列を含む。転写を制御する発現制御配列は、例えば、プロモーター、エンハンサーおよび転写終止部位を含む。真核細胞において、転写後イベントを制御する発現制御配列は、スプライシング供与および受容部位、および転写されたRNAの半減期を変更する配列、例えば、ポリ(A)付加を導く配列またはRNA結合タンパク質のための結合部位を含む。翻訳を制御する発現制御配列は、リボソーム結合部位、特定の細胞区画への、またはその内部でのポリペプチドの標的化された発現を導く配列、および翻訳の速度または効率を変更する5’および3’非翻訳領域中の配列を含む。
原核生物、例えば大腸菌のための有用な発現制御配列の例は、プロモーター、しばしば、ファージプロモーター、例えば、ラムダファージpLプロモーター、trcプロモーター、trpおよびlacプロモーターに由来するハイブリッド、バクテリオファージT7プロモーター(T7ポリメラーゼを発現するために操作された大腸菌において)、TACまたはTRCシステム、ラムダファージの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、またはaraBADオペロンなどを含むだろう。原核生物発現ベクターは、ターミネーターなどの転写ターミネーター、コンセンサスリボソーム結合部位および翻訳終止コドンなどの、翻訳を促進する要素をさらに含み得る(Schomer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 8506−8510 (1986))。
【0056】
酵母細胞、典型的にはcerevisiaeのための発現制御配列は、CYC1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH1プロモーター、酵母α接合系のプロモーターまたはGPDプロモーターなどの酵母プロモーターを含み、典型的には、CYC1またはADH1遺伝子からの転写終止シグナルなどの、転写の終止を促進する要素を有する。
哺乳類細胞におけるタンパク質発現に有用な発現ベクターは、哺乳類細胞中で活性のあるプロモーターを含む。これらのプロモーターは、哺乳類ウイルスに由来するもの、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期遺伝子からのエンハンサー−プロモーター配列、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列(RSV LTR)からのエンハンサー−プロモーター配列、SV40からのエンハンサー−プロモーター、またはアデノウイルスの初期および後期プロモーターなどを含む。他の発現制御配列は、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の解糖酵素のためのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーターを含む。他の発現制御配列は、対象となるLSNAを含む遺伝子からのものを含む。しばしば、後期SV40ポリアデニル化部位、およびウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子からのポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列などのポリアデニル化部位、ならびにリボソーム結合部位の組込みによって増強される。さらにまた、ベクターはウサギβ−グロビン遺伝子のイントロンIIなどのイントロン、およびSV40スプライスエレメントを含むことができる。
好ましい核酸ベクターはまた、選択的または増幅可能なマーカー遺伝子、および対象遺伝子のコピー数を増幅するための手段を含む。かかるマーカー遺伝子は、当該技術分野でよく知られている。核酸ベクターは、安定化配列(例えば、oriまたはARS様配列およびテロメア様配列)をまた含んでもよく、または、代替的に宿主細胞ゲノムへの指向性または非指向性組込み(directed or non−directed integration)を促進するように設計してもよい。好ましい態様では、この発明の核酸配列は、対象となるコードされた核酸配列を含むタンパク質をコードするRNAの高レベルの発現を可能にする発現ベクター中のフレームに挿入される。核酸クローニングおよびシークエンシング方法は、当業者によく知られており、上記Sambrook (1989)、上記Sambrook (2000)、および上記Ausubel (1992)、上記Ausubel (1999)を含む、各種の実験室マニュアルに記載されている。生物学的試薬、化学試薬および免疫学的試薬の製造者からの製品情報もまた、有用な情報を提供する。
【0057】
発現ベクターは、構成型(constitutive)または誘導型のいずれかであることができる。誘導型ベクターは、lacオペロンで調節されているtrcプロモーター、およびトリプトファンで調節されるpLプロモーター、デキサメタゾンで誘導されるMMTV−LTRプロモーターなどの天然誘導型(naturally inducible)のプロモーターを含み、または、合成プロモーター、および/または隣接プロモーターに誘導型の制御を付与する付加要素を含むことができる。誘導型の合成プロモーターの例は、ハイブリッドPlac/ara−1プロモーターおよびPLtetO−1プロモーターである。PLtetO−1プロモーターは、ラムダファージのPLプロモーターからの高い発現レベルを利用するが、ラムダ抑制部位を、Tn10テトラサイクリン耐性オペロンのオペレーター2の2つのコピーで置き換え、このプロモーターは、Tet抑制タンパク質によって厳密に抑制され、テトラサイクリン(Tc)および無水テトラサイクリンなどのTc誘導体に応答して誘導される。ベクターはまた、グルココルチコイド応答要素(GRE)およびエストロゲン応答要素(ERE)などの、ベクターがそれぞれのホルモンレセプターを有する細胞での発現のために用いられた場合にホルモン誘導性を付与することができる、ホルモン応答要素を含むことによって、誘導型となってもよい。発現のバックグラウンドのレベルを低減するために、昆虫ホルモンであるエクジソンに応答する要素を、エクジソンレセプターの共発現と共に、代わりに用いることができる。
本発明の1つの側面では、発現ベクターは、発現されたポリペプチドを、精製および/または視覚化を容易にする小タンパク質タグに融合するように設計することができる。精製を容易にするタグは、例えばNiNTA樹脂(Qiagen Inc., Valencia, CA, USA)またはTALON(登録商標)樹脂(コバルト固定化アフィニティクロマトグラフィー溶媒、Clontech Labs, Palo Alto, CA, USA)を用いた、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の精製を容易にするポリヒスチジンタグを含む。融合タンパク質は、キチン結合タグおよび自己切断性のインテインを含むことができ、これにより、融合タグの自己除去(self−removal)を伴うキチンベースの精製が可能になる(IMPACT(登録商標)システム、New England Biolabs, Inc., Beverley, MA, USA)。あるいは、融合タンパク質は、カルモジュリンアフィニティ樹脂による精製を可能にするカルモジュリン結合ペプチドタグ(Stratagene, La Jolla, CA, USA)、または、アビジン樹脂とその後のタグの除去によるin vivoでビオチン化されたタンパク質の精製を可能にするビオチンカルボキシラーゼキャリアタンパク質の特異的に切断可能な断片(Promega, Madison, WI, USA)を含むことができる。他の有用な代替物として、本発明のタンパク質は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとの融合タンパク質として発現されることができ、グルタチオンへの結合の親和性および特異性により、グルタチオン−スーパーフロー樹脂(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)などのグルタチオンアフィニティ樹脂と、その後の遊離グルタチオンの溶離による精製が可能になる。他のタグはとしては、例えば、抗Xpress抗体で検出可能なXpressエピトープ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、抗mycタグ抗体で検出可能なmycタグ、抗V5抗体で検出可能なV5エピトープ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、抗FLAG(登録商標)抗体で検出可能なFLAG(登録商標)エピトープ(Stratagene, La Jolla, CA, USA)、およびHAエピトープが挙げられる。
【0058】
発現されたタンパク質の分泌のために、ベクターは、リーダーペプチドなどの、分泌シグナルをコードする適切な配列を含むことができる。例えば、pSecTag2ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)は、種々の哺乳類細胞系からの組換えタンパク質の有効な分泌のための、マウスIgカッパー鎖のV−J2−C領域からの分泌シグナルを担持する、5.2 kbの哺乳類発現ベクターである。
発現ベクターはまた、精製および/または同定タグよりも大きなポリペプチドへの異種核酸インサートによってコードされるタンパク質を融合するように設計することができる。有用な融合タンパク質としては、コードされたタンパク質をファージまたは細胞の表面への提示、緑色蛍光タンパク質(GFP)様クロモフォアを有するものなどの本来的な蛍光タンパク質への融合、IgGFc領域への融合を可能にするもの、およびツーハイブリッドシステムで用いるための融合タンパク質が挙げられる。
ファージディスプレイ用のベクターは、コードされたポリペプチドを、例えば、M13などの線状ファージの表面に提示するために、遺伝子IIIタンパク質(pIII)または遺伝子VIIIタンパク質(pVIII)に融合する。Barbas et al., Phage Display: Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001); Kay et al. (eds.), Phage Display of Peptides and Proteins: Laboratory Manual, Academic Press, Inc., (1996); Abelson et al. (eds.), Combinatorial Chemistry (Methods in Enzymology, Vol. 267) Academic Press (1996)を参照。酵母ディスプレイ用のベクター、例えばpYD1酵母ディスプレイベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)は、α−アグルチニン酵母接着レセプターを用いてS. cerevisiaeの表面に組換えタンパク質を提示する。哺乳類ディスプレイ用のベクター、例えば、pDisplay(登録商標)ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)は、N−末端細胞表面標的化シグナル、および血小板由来増殖因子のC−末端膜貫通アンカリングドメインを用いて、組換えタンパク質を標的化する。
【0059】
異種核酸によってコードされたタンパク質を、基質非依存性の、本来的に蛍光な、Aequorea victoriaからの緑色蛍光タンパク質(「GFP」)およびその変異体に融合する、広範な種類のベクターが現在存在する。GFP様クロモフォアは、A. victoriaGFP(GenBankアクセッション番号AAA27721、Renilla reniformis GFP、FP583 (GenBankアクセッション番号AF168419) (DsRed)、FP593 (AF272711)、FP483 (AF168420)、FP484 (AF168424)、FP595 (AF246709)、FP486 (AF168421)、FP538 (AF168423)およびFP506 (AF168422)などの天然に存在するタンパク質において見出されたGFP様クロモフォアから選択することができ、クロモフォアの内在的な蛍光を保つ必要があるために、必要とされるネイティブタンパク質は限られている。蛍光に必要な最小のドメインを決定する方法は、当該技術分野で知られている。Li et al., J. Biol. Chem. 272: 28545−28549 (1997)を参照。あるいは、GFP様クロモフォアは、天然で見出されたものから改変されたGFP様クロモフォアから選択することができる。かかる改変GFP様クロモフォアを作出し、単独でのおよび融合タンパク質の一部としての蛍光活性についてテストする方法は、当該技術分野でよく知られている。その全体が参照によって本明細書に組み込まれるHeim et al., Curr. Biol. 6: 178−182 (1996)およびPalm et al., Methods Enzymol. 302: 378−394 (1999)を参照。多様なかかる改変クロモフォアは、現在市販されており、本発明の融合タンパク質に容易に用いることができる。これらは、EGFP(「増強GFP」)、EBFP(「増強青色蛍光タンパク質」)、BFP2、EYFP(「増強黄色蛍光タンパク質」)、ECFP(「増強シアン蛍光タンパク質」)またはシトリンを含む。EGFP(例えば、Cormack et al., Gene 173: 33−38 (1996)、米国特許第6,090,919および5,804,387号を参照)は、プラスミドおよびウイルス両方の種々のベクターで見出され、市販されている(Clontech Labs, Palo Alto, CA, USA)。EBFPは哺乳類細胞での発現用に最適化されている一方、本来のクラゲのコドンを保っているBFP2は、細菌で発現することができる(例えば、Heim et al., Curr. Biol. 6: 178−182 (1996)およびCormack et al., Gene 173: 33−38 (1996)を参照)。これらの青方シフト(blue−shifted)変異体を含むベクターは、Clontech Labs(Palo Alto, CA, USA)から入手可能である。EYFP、ECFP(例えばHeim et al., Curr. Biol. 6: 178−182 (1996)、Miyawaki et al., Nature 388: 882−887 (1997)を参照)およびシトリン(例えばHeikal et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 11996−12001 (2000)を参照)もまたClontech Labsから入手可能である。GFP用クロモフォアはまた、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,124,128号、第6,096,865号、第6,090,919号、第6,066,476号、第6,054,321号、第6,027,881号、第5,968,750号、第5,874,304号、第5,804,387号、第5,777,079号、第5,741,668号、および第5,625,048号に記載されたものを含む、タンパク質の改変GFPから得ることができる。また、Conn (ed.), Green Fluorescent Protein (Methods in Enzymology, Vol. 302), Academic Press, Inc. (1999)を参照。これらのGFP変異体のそれぞれのGFP様クロモフォアは、本発明の融合タンパク質に有効に含めることができる。
【0060】
IgGFc領域への融合は、FcRnレセプター(FcRpレセプターおよびブランベルレセプター、FcRbとも呼ばれる)との相互作用を介して、タンパク質医薬製品の血清半減期を増加させ、これは、国際特許出願第WO 97/43316号、第WO 97/34631号、第WO 96/32478号、第WO 96/18412にさらに記載されている。
本発明のタンパク質、タンパク質融合体およびタンパク質断片を、長期間、高収率で組換えにより作製するためには、安定発現が好ましい。安定発現は、選択マーカーを有するベクターの宿主細胞への組込みと、それに引き続くこれら組込み体(integrants)の選択によって容易に達成できる。pUB6/V5−His A、BおよびC(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)などのベクターは、広範な哺乳類組織タイプおよび細胞系での、異種タンパク質の高レベルの安定発現のために設計されている。pUB6/V5−Hisは、ヒトユビキチンC遺伝子のプロモーター/エンハンサー配列を用い、組換えタンパク質の発現を導く。293、CHO、およびNIH3T3細胞での発現レベルは、CMVおよびヒトEF−1aプロモーターのレベルに匹敵する。bsd遺伝子は、有効な抗生剤ブラスチシジンによって、安定にトランスフェクトされた哺乳類細胞の迅速な選択を可能にする。典型的にはモロニーマウス白血病ウイルスに由来する、複製能力のないレトロウイルスベクターもまた、組み込まれたプロウイルスを有する安定なトランスフェクタントを創出するのに有用である。レトロウイルスの高効率の形質導入機構は、RetroPack(登録商標)PT 67、EcoPack2(登録商標)293、AmphoPack−293およびGP2−293細胞系(すべてClontech Laboratories, Palo Alto, CA, USAから入手可能)などの種々のパッケージング細胞系の利用可能性と相俟って、広い宿主域に高効率で感染することを可能にする。感染の多重度を変えることにより、組み込まれたプロウイルスのコピー数が容易に調節される。
【0061】
勿論、すべてのベクターおよび発現制御配列が、この発明の核酸配列を発現するために、等しく良好に機能するわけではない。また、すべての宿主が同じ発現系で、等しく良好に機能するわけでもない。しかしながら、当業者は、過度の実験なしに、そして、この発明の範囲から離れることなく、これらのベクター、発現制御配列および宿主の中から、選択をなしえる。例えば、ベクターの選択においては、宿主を考慮に入れなければならない。なぜなら、ベクターはその中で複製する必要があるからである。ベクターのコピー数、このコピー数を制御する能力、もしある場合は、組込みを制御する能力、および、ベクターによってコードされる、抗生剤または他の選択マーカーなどの任意の他のタンパク質の発現もまた考慮するべきである。本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞を包含し、該ベクターは細胞中にエピソームで存在するか、または宿主細胞の染色体に全部または一部が組み込まれる。他の考慮すべき事項の中で、そのいくつかは上記されているが、宿主細胞株は、発現されたタンパク質を所望の様式でプロセシングするその能力について選択することができる。かかるポリペプチドの翻訳後修飾としては、限定されることなく、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられ、そして、かかる翻訳後修飾を伴うLSPを提供するのが、本発明の1つの側面である。
本発明のポリペプチドは、翻訳後修飾を受けていてもよい。翻訳後修飾としては、アミノ酸残基セリン、トレオニンおよび/またはチロシンのリン酸化、N−結合型および/またはO−結合型グリコシル化、メチル化、アセチル化、プレニル化、アルギニル化、ユビキチン化およびラセミ化が挙げられる。翻訳後修飾のための部位を表すペプチドモチーフがあるかどうかを決定するために、ポリペプチドの配列を分析することによって、本発明のポリペプチドが翻訳後修飾を受けそうかどうかを決定することができる。翻訳後修飾の予測を可能にする多数のコンピュータープログラムが存在する。例えば、タンパク質ソートシグナルおよび局在化部位の予測のためのPSORT、シグナルペプチド開裂部位の予測のためのSignalP、ミトコンドリア移行配列の予測のためのMITOPROTおよびPredotar、哺乳類タンパク質におけるO型グリコシル化部位の予測のためのNetOGlyc、プレニル化アンカーおよび開裂部位の予測のためのbig−PI PredictorおよびDGPI、および真核生物タンパク質におけるSer、ThrおよびTyrリン酸化部位の予測のためのNetPhosを含む、www.expasy.org(2001年8月31にアクセス)を参照。他のコンピュータープログラム、例えば、GCGに包含されるものなども、翻訳後修飾ペプチドモチーフを決定するのに用いることができる。
【0062】
翻訳後修飾のタイプの一般的な例は、the Delta Mass database http://www.abrf.org/ABRF/Research Committees/deltamass/deltamass.html (2001年10月19日にアクセス)、”GlycoSuiteDB: a new curated relational database of glycoprotein glycan structures and their biological sources” Cooper et al. Nucleic Acids Res. 29; 332−335 (2001)およびhttp://www.glycosuite.com/ (2001年10月19日にアクセス)、“O−GLYCBASE version 4.0: a revised database of O−glycosylated proteins” Gupta et al. Nucleic Acids Research, 27: 370−372 (1999)およびhttp://www.cbs.dtu.dk/databases/OGLYCBASE/ (2001年10月19日にアクセス)、”PhosphoBase, a database of phosphorylation sites: release 2.0.”, Kreegipuu et al. Nucleic Acids Res 27(1):237−239 (1999)およびhttp://www.cbs.dtu.dk/ databases/PhosphoBase/ (2001年10月19日にアクセス)またはhttp://pir.georgetown.edu/ pirwww/search/textresid.html (2001年10月19日にアクセス)などのウェブサイトで見出すことができる。
腫瘍原性は、しばしば、タンパク質の翻訳後修飾の変化を伴う。従って、他の態様では、本発明は、正常細胞または組織からのポリペプチドの翻訳後修飾に比べて変化した翻訳後修飾を有する、癌性細胞または組織からのポリペプチドを提供する。多数の変化した翻訳後修飾が知られている。1つのよく見られる変化はリン酸化状態の変化であり、癌性細胞または組織からのポリペプチドは、正常組織からのポリペプチドに比べ過リン酸化または低リン酸化されているか、または、該ポリペプチドは、正常細胞からのポリペプチドとは異なる残基がリン酸化されている。他のよく見られる変化は、グリコシル化状態の変化であり、ここで、癌性細胞または組織からのポリペプチドは、正常組織からのポリペプチドに対しより多くのまたはより少ないグリコシル化を有し、および/または癌性細胞または組織からのポリペプチドは、非癌性細胞または組織からのポリペプチドとは異なるタイプのグリコシル化を有する。グリコシル化の変化は重大である。なぜなら、炭水化物−タンパク質または炭水化物−炭水化物相互作用が、ガン細胞の進行、播種および浸潤に重要だからである。例えば、Barchi, Curr. Pharm. Des. 6: 485−501 (2000)、Verma, Cancer Biochem. Biophys. 14: 151−162 (1994)およびDennis et al., Bioessays 5: 412−421 (1999)を参照。
ガン細胞で変化し得る他の翻訳後修飾は、プレニル化である。プレニル化は、疎水性プレニル基(ファルネシルかまたはゲラニルゲラニル)のポリペプチドへの共有結合による付着である。プレニル化は、タンパク質を細胞膜に局在化するために必要であり、しばしば、ポリペプチド機能のために必要である。例えば、GTPアーゼシグナリングタンパク質のRasスーパーファミリーは、細胞内で機能するためにプレニル化されなければならない。例えば、Prendergast et al., Semin. Cancer Biol. 10: 443−452 (2000)およびKhwaja et al., Lancet 355: 741−744 (2000)を参照。
【0063】
ガン細胞で変化し得る他の翻訳後修飾としては、限定されることなく、ポリペプチドのメチル化、アセチル化、アルギニル化またはアミノ酸残基のラセミ化が挙げられる。これらのケースでは、癌性細胞からのポリペプチドは、非癌性細胞からの対応するポリペプチドに比べ、増加した、または減少した量の翻訳後修飾を示し得る。
ガン細胞でのタンパク質のポリペプチド変化としては、タンパク質の異常なポリペプチドの開裂および異常なタンパク質−タンパク質相互作用が挙げられる。異常なポリペプチドの開裂は、正常細胞では通常生じないガン細胞におけるポリペプチドの開裂、または、癌性細胞での開裂の欠如であって正常細胞ではポリペプチドが開裂しているものであり得る。異常なタンパク質−タンパク質相互作用は、通常は互いに結合しないタンパク質同士の共有結合による架橋または非共有結合であり得る。あるいは、癌性細胞では、タンパク質が、非癌性細胞では結合している他のタンパク質に結合しないことがあり得る。開裂またはタンパク質−タンパク質相互作用における変化は、正常細胞に対する癌性細胞でのポリペプチドの産生過剰または産生不足に起因し得、または、癌性細胞における1または2以上の他の翻訳後修飾における変化(上記参照)に起因し得る。例えば、Henschen−Edman, Ann. N.Y. Acad. Sci. 936: 580−593 (2001)を参照。
ポリペプチドの翻訳後修飾における変化、ならびにポリペプチドの開裂およびタンパク質−タンパク質相互作用における変化は、当該技術分野で知られる任意の方法により決定することができる。例えば、リン酸化における変化は、抗ホスホセリン、抗ホスホトレオニンまたは抗ホスホチロシン抗体を用いることによって、またはアミノ酸分析によって決定することができる。グリコシル化の変化は、異なる糖残基に特異的な抗体を用いて、炭水化物シークエンシングによって、または、例えばSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により決定することができる糖タンパク質のサイズの変化によって決定することができる。プレニル化、ラセミ化、メチル化、アセチル化およびアルギニル化などのタンパク質の翻訳後修飾の変化は、化学分析、タンパク質シークエンシング、アミノ酸分析によって、または特定の翻訳後修飾に特異的な抗体を用いることによって決定することができる。タンパク質−タンパク質相互作用およびポリペプチド開裂における変化は、限定されることなく、非変性PAGE(非共有結合性タンパク質−タンパク質相互作用用)、SDSPAGE(共有結合性タンパク質−タンパク質相互作用およびタンパク質開裂用)、化学開裂、タンパク質シークエンシングまたはイムノアッセイを含む、当該技術分野で知られた任意の方法によって分析することができる。
【0064】
他の態様では、本発明は翻訳後に修飾されたポリペプチドを提供する。1つの態様では、ポリペプチドは、翻訳後修飾の付加または除去によって、酵素的または化学的に修飾することができる。例えば、ポリペプチドは酵素的にグリコシル化または脱グリコシル化することができる。同様に、ポリペプチドは、MAPキナーゼ(例えばp38、ERKまたはJNK)またはチロシンキナーゼ(例えば、SrcまたはerbB2)などの精製キナーゼを用いてリン酸化することができる。ポリペプチドはまた、合成化学を介して修飾することができる。あるいは、所望の翻訳後修飾を伴うポリペプチドを発現している細胞または組織から、対象となるポリペプチドを単離することができる。他の態様では、対象となるポリペプチドをコードする核酸分子は、所望の様式でコードされたポリペプチドを翻訳後修飾することができる宿主細胞中に導入される。ポリペプチドが所望の翻訳後修飾のためのモチーフを含まない場合は、ポリペプチドが所望の翻訳後修飾のための部位を含むように、ポリペプチドをコードする核酸分子の核酸配列を変異させることによって、翻訳後修飾を変化させることができる。翻訳後修飾され得るアミノ酸配列は、当該技術分野で知られている。例えば、ウェブサイトwww.expasy.org上の上記プログラムを参照。核酸分子は次に、コードされたポリペプチドを翻訳後修飾することが可能な宿主細胞に導入される。同様に、コードされたポリペプチドが翻訳後修飾モチーフを含まないように核酸配列を変異させるか、またはコードされたポリペプチドを翻訳後修飾することができない宿主細胞にネイティブ核酸分子を導入することによって、翻訳後修飾された部位を除去することができる。
発現制御配列を選択する際には、多様な因子を考慮に入れるべきである。これらは、例えば、配列の相対的強度、その制御性、および、特に潜在的な二次構造に関する、この発明の核酸配列とのその適合性を含む。単細胞宿主は、選択したベクターとのその適合性、この発明の核酸配列によってコードされた産物の毒性、その分泌特性、ポリペプチドを正しく折りたたむその能力、その発酵または培養の要求性、およびこの発明の核酸配列によってコードされた産物のそれらからの精製の容易性を考慮して選択すべきである。
【0065】
組換え核酸分子、そして特に、この発明の発現ベクターは、この発明のポリペプチドを、異種宿主細胞で、組換えポリペプチドとして発現させるのに用いることができる。この発明のポリペプチドは全長であってもよく、または、この発明による核酸配列から組換え的に発現した全長より短いポリペプチド断片であってもよい。かかるポリペプチドは、類縁体、誘導体およびミューテインを含み、生物活性を有しても有しなくてもよい。
本発明のベクターはまた、挿入された異種核酸からのRNAのin vitroでの転写を可能にする要素をしばしば含む。かかるベクターは、典型的には、核酸インサートに隣接するファージプロモーター、例えば、T7、T3またはSP6からのものなどを含む。しばしば、2つの異なるかかるプロモーターが、挿入された核酸に隣接し、センス鎖およびアンチセンス鎖両方のin vitroでの個別の産生を可能にする。
形質転換および宿主細胞に核酸を導入する他の方法(例えば、接合、プロトプラスト形質転換または融合、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコートペレット(high velocity DNA−coated pellets)、ウイルス感染およびプロトプラスト融合)は、当該技術分野でよく知られた多様な方法によって達成することができる(例えば、上記Ausubelおよび上記Sambrook et alを参照)。細菌、酵母、植物または哺乳類細胞は、発現ベクター、例えばプラスミド、コスミドなどで形質転換またはトランスフェクトされ、該発現ベクターは対象となる核酸を含む。あるいは、細胞は、対象となる核酸を含むウイルス発現ベクターで感染させることができる。宿主細胞、ベクターおよび用いる形質転換方法に依存して、ポリペプチドの一過性または安定発現は、構成型または誘導型となるだろう。当業者は、ポリペプチドを一過性にまたは安定的に発現させるかどうか、および、タンパク質を構成的にまたは誘導的に発現させるかどうかを決めることができる。
【0066】
多種多様な単細胞性宿主細胞が、この発明のDNA配列を発現するのに有用である。これらの宿主は、よく知られた原核生物宿主および真核生物宿主、例えば、真菌、酵母の菌株、Spodoptera frugiperda (SF9)などの昆虫細胞、CHOなどの動物細胞、ならびに組織培養における植物細胞を含むことができる。適切な宿主細胞の代表的な例としては、限定されることなく、大腸菌、Caulobacter crescentus、ストレプトマイセス種、およびSalmonella typhimuriumなどの細菌細胞、Saccharomyces cerevisiaeSchizosaccharomyces pombePichia pastorisPichia methanolicaなどの酵母細胞、Spodoptera frugiperdaからのもの、例えば、Sf9およびSf21細胞系、およびexpresSF(登録商標)細胞(Protein Sciences Corp., Meriden, CT, USA)、Drosophila S2細胞、およびTrichoplusia ni High Five(登録商標)細胞 (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)などの昆虫細胞系、および哺乳類細胞が挙げられる。典型的な哺乳類細胞としては、BHK細胞、BSC 1細胞、BSC 40細胞、BMT 10細胞、VERO細胞、COS1細胞、COS7細胞、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO)細胞、3T3細胞、NIH 3T3細胞、293細胞、HEPG2細胞、HeLa細胞、L細胞、MDCK細胞、HEK293細胞、WI38細胞、マウスES細胞系(例えば、129/SV、C57/BL6、DBA−1、129/SVJ系統からのもの)、K562細胞、Jurkat細胞、およびBW5147細胞が挙げられる。他の哺乳類細胞系はよく知られており、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC) (Manassas, VA, USA) およびCoriell Cell Repositories(Camden, NJ, USA)の国立一般医学研究所(NIGMS) Human Genetic Cell Repositoryから容易に入手できる。肺に由来する細胞または細胞系が特に好ましい。なぜなら、それらはよりネイティブな翻訳後プロセシングを提供し得るからである。特に好ましいのはヒト肺細胞である。
組換えタンパク質のトランスフェクション、発現および精製の詳細は、十分に文書化されており、当業者に理解されている。細菌細胞発現系における外来遺伝子の組換え的産生に用いるそれぞれの工程の種々の技術的側面についてのさらなる詳細は、当該技術分野の多数のテキストおよび実験室マニュアルに見出すことができる。本明細書に参照によって組み込まれる、例えば、上記Ausubel (1992)、上記Ausubel (1999)、上記Sambrook (1989)、および上記Sambrook (2001)を参照。
本発明のベクターおよび核酸を宿主細胞に導入するための方法は、当該技術分野でよく知られている。技術の選択は、第一に、導入する具体的なベクターおよび選択した宿主細胞に依存する。
核酸分子およびベクターは、多数の方法で、大腸菌などの原核生物に導入することができる。例えば、ラムダファージベクターは、典型的には、パッケージング抽出物(例えば、Gigapack(登録商標)パッケージング抽出物、Stratagene, La Jolla, CA, USA)を用いてパッケージングされ、そしてパッケージングされたウイルスを用いて大腸菌を感染させる。
【0067】
プラスミドベクターは、典型的には、ケミカルコンピテントまたはエレクトロコンピテント細菌細胞に導入される。大腸菌細胞は、例えばCaCl、またはMg2+、Mn2+、Ca2+、RbまたはKの溶液、ジメチルスルホキシド、ジチオトレイトールおよびヘキサミンコバルト(III)での処置でケミカルコンピテントにすることができ、Hanahan, J. Mol. Biol. 166(4):557−80 (1983)、そして、ベクターはヒートショックにより導入する。多種多様なケミカルコンピテント株は市販されてもいる(例えば、Epicurian Coli(登録商標)XL10−Gold(登録商標)ウルトラコンピテント細胞(Stratagene, La Jolla, CA, USA)、DH5αコンピテント細胞(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)、およびTOP10ケミカルコンピテント大腸菌キット(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA))。細菌細胞は、エレクトロコンピテント、即ち、種々のプレパルス処置によって、エレクトロポレーションによる外生的DNAの取込みについてコンピテントにすることができる。ベクターは、エレクトロポレーションにより導入され、その後引き続き選択培地中で成長する。膨大な種類のプロトコルが、Electroprotocols (BioRad, Richmond, CA, USA) (http://www.biorad.com/LifeScience/pdf/ New_Gene_Pulser.pdf)でオンラインで提供されている。
ベクターは、酵母細胞に、スフェロプラスト化(spheroplasting)、リチウム塩での処置、エレクトロポレーション、またはプロトプラスト融合によって導入することができる。スフェロプラストは、通常はグルスラーゼ(Glusulase)と呼ばれる、巻貝の腸の抽出物(snail−gut extract)、またはArthrobacter luteusからの酵素であるザイモリアーゼなどの加水分解酵素の、浸透圧安定剤、典型的には1Mのソルビトールの存在下における細胞壁の部分を除去する作用によって調製される。DNAをスフェロプラストに加え、混合物をポリエチレングリコール(PEG)とCa2+との溶液で共沈殿する。続いて、細胞をソルビトールの溶液に再懸濁し、溶融寒天(molten agar)と混合し、その後、ソルビトールを含む選択プレートの表面に層化する。
リチウム媒介性形質転換では、酵母細胞を、細胞壁を明らかに透過性にする酢酸リチウムで処理し、DNAを加え、細胞をPEGで共沈殿する。細胞を短時間のヒートショックに供し、PEGおよび酢酸リチウムがなくなるまで洗浄し、続いて、通常の選択培地を含むプレートに播種する。特別に調製した1本鎖キャリアDNAおよびある種の有機溶媒を用いることにより、増大した形質転換頻度を得ることができる。Schiestl et al., Curr. Genet. 16(5−6): 339−46 (1989)。
エレクトロポレーションでは、新たに成長した酵母の培養物を、典型的には洗浄し、ソルビトールなどの浸透圧保護剤中に懸濁し、DNAと混合し、そして細胞懸濁液をエレクトロポレーションデバイスでパルスする。続いて、細胞を選択培地を含むプレートの表面に播種する。Becker et al., Methods Enzymol. 194: 182−187 (1991)。エレクトロポレーションによる形質転換の効率は、PEG、1本鎖キャリアDNAおよび対数増殖期後期にある細胞を用いることにより、100倍以上高めることができる。YACなどの大型の構築物は、プロトプラスト融合によって導入することができる。
【0068】
哺乳類細胞および昆虫細胞は、パッケージングされたウイルスベクターによって直接感染させ、または、化学的もしくは電気的手段によってトランスフェクトすることができる。化学的トランスフェクションでは、DNAはCaPOで共沈殿するか、またはリポソーム系および非リポソーム系の脂質ベースの剤を用いて導入することができる。CaPOトランスフェクションについては市販のキットが入手可能であり(CalPhos(登録商標)哺乳類トランスフェクションキット、Clontech Laboratories, Palo Alto, CA, USA)、脂質媒介性トランスフェクションは、LIPOFECTAMINE(登録商標)2000、LIPOFECTAMINE(登録商標)試薬、CELLFECTIN(登録商標)試薬およびLIPOFECTIN(登録商標)試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、DOTAPリポソーム系トランスフェクション試薬、FuGENE 6、X−tremeGENE Q2、DOSPER、(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN USA)、Effectene(登録商標)、PolyFect(登録商標)、Superfect(登録商標)(Qiagen, Inc., Valencia, CA, USA)などの市販の試薬を用いて行うことができる。哺乳類細胞をエレクトロポレーションするためのプロトコルは、オンラインでエレクトロプロトコル(Bio−Rad, Richmond, CA, USA) (http://www.bio−rad.com/LifeScience/pdf/ New_Gene_Pulser.pdf)、Norton et al. (eds.), Gene Transfer Methods: Introducing DNA into Living Cells and Organisms, BioTechniques Books, Eaton Publishing Co. (2000)に見出すことができ、その全体は参照によって本明細書に組み込まれる。他のトランスフェクション技術としては、粒子衝撃によるトランスフェクションおよびマイクロインジェクションが挙げられる。例えば、Cheng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(10): 4455−9 (1993)、Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(24): 9568−72 (1990)を参照。
組換え的に作製された本発明のタンパク質の作製の後に、任意に精製を行うことができる。
組換え的に発現されたタンパク質の精製は、現在当業者によく知られている。その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれ、従って本明細書では詳細に述べる必要のない、例えば、Thorner et al. (eds.), Applications of Chimeric Genes and Hybrid Proteins, Part A: Gene Expression and Protein Purification (Methods in Enzymology, Vol. 326), Academic Press (2000)、Harbin (ed.), Cloning, Gene Expression and Protein Purification Experimental Procedures and Process Rationale, Oxford Univ. Press (2001)、Marshak et al., Strategies for Protein Purification and Characterization: Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996)、およびRoe (ed.), Protein Purification Applications, Oxford University Press (2001)を参照。
しかしながら、簡潔に述べると、精製タグが、かかるタグの付加した発現ベクターの使用を介して融合されている場合、精製は、少なくとも部分的には、該タグに適切な手段、例えば、ポリヒスチジンタグのための固定化金属アフィニティクロマトグラフィーの使用などによって行うことができる。当該技術分野に一般的な他の技術としては、硫酸アンモニウム分画、免疫沈降、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(fast protein liquid chromatography)(FPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および分取ゲル電気泳動が挙げられる。
【0069】
ポリペプチド
本発明の他の目的は、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチドを提供することである。好ましい態様では、ポリペプチドは、肺特異的ポリペプチド(LSP)である。より一層好ましい態様では、ポリペプチドは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むポリペプチドに由来する。本明細書で定義されるポリペプチドは、上記で論じたように組換え的に作製してもよく、天然にタンパク質を発現している細胞から単離してもよく、または、本明細書の教示にしたがい、そして当業者によく知られた方法を用いて化学的に合成してもよい。
他の側面では、ポリペプチドは、ポリペプチドの断片を含んでもよく、ここで該断片は本明細書に記載されているとおりのものである。好ましい態様では、ポリペプチド断片はLSPの断片である。より好ましい態様では、断片は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むポリペプチドに由来する。LSP全体の断片のみを含むポリペプチドはまた、LSPであるポリペプチドであってもなくてもよい。例えば、全長ポリペプチドは肺特異的であってもよく、一方、その断片は肺と同様に他の組織に見出されてもよい。LSPではないポリペプチドは、それが断片、類縁体、ミューテイン、相同タンパク質または誘導体であるかどうかにかかわらず、特に動物を免疫し抗LSP抗体を調製するのに有用である。しかしながら、好ましい態様では、該部分または断片はLSPである。ポリペプチドがLSPかどうかを決定する方法は、下記で説明してある。
少なくとも6個の連続したアミノ酸の断片が、参照タンパク質のB細胞およびT細胞エピトープのマッピングに有用である。その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、例えばGeysen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3998−4002 (1984)、および米国特許第4,708,871号および第5,595,915号を参照。かかるエピトープマッピングに有用であるために、該断片は、それ自身、免疫原性であり、イムノドミナントエピトープの一部であり、またネイティブな抗体に認識される必要はないので、本発明の他の少なくとも6アミノ酸の断片は、かかる研究において有用性を有する。
【0070】
少なくとも8個の連続したアミノ酸、しばしば少なくとも15個の連続したアミノ酸の断片は、本発明のタンパク質を認識する抗体を惹起するためのイムノゲンとして有用である。その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、例えばLerner, Nature 299: 592−596 (1982); Shinnick et al., Annu. Rev. Microbiol. 37: 425−46 (1983); Sutcliffe et al., Science 219: 660−6 (1983)を参照。上述の参考文献にさらに記載されているとおり、タンパク質などのキャリアに結合したすべての8マーは、事実上免疫原性を示す。これは、それらが、結合したペプチドについての抗体を惹起することができることを示す。従って、本発明のタンパク質の少なくとも8アミノ酸の断片のすべては、イムノゲンとしての有用性を有する。
少なくとも8、9、10または12個の連続したアミノ酸の断片はまた、抗体への(エピトープマッピングでのように)、および多量体複合体におけるサブユニットなどの天然の結合パートナーへのまたは対象タンパク質のレセプターもしくはリガンドへの、タンパク質全体またはその一部の結合の競合阻害剤として有用である。この競合阻害は、対象となるタンパク質に特異的に結合する分子の同定および分離を可能にする。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,084号および第5,783,674号。
本発明のタンパク質またはタンパク質断片は、従って、少なくとも6アミノ酸長、典型的には、少なくとも8、9、10または12アミノ酸長、そして、しばしば少なくとも15アミノ酸長である。しばしば、本発明のタンパク質またはその断片は、少なくとも20アミノ酸長、さらには25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸または50アミノ酸長以上である。勿論、少なくとも75個のアミノ酸、100個のアミノ酸、またはさらには150個のアミノ酸を有する大型の断片もまた有用であり、ときには好ましい。当業者は、ポリペプチドをコードする核酸分子、例えばLSNAを切断し、ついでそれを組換え的に発現させることによってポリペプチドの断片を作製することができる。あるいは、全長ポリペプチドの一部を化学的に合成することによって断片を作製することができる。また、組換えポリペプチドまたは単離された天然に存在するポリペプチドを酵素的に開裂させることによって、断片を作製することもできる。ポリペプチド断片を作成する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば上記Sambrook (1989)、上記Sambrook (2001)、上記Ausubel (1992) 、および上記Ausubel (1999)を参照。1つの態様では、本発明のポリペプチドの断片のみを含むポリペプチド、好ましくはLSPを、ポリペプチドの化学的または酵素的開裂によって作製することができる。好ましい態様では、ポリペプチド断片は、ポリペプチドの断片、好ましくはLSPをコードする核酸分子を、宿主細胞中で発現させることによって作製される。
【0071】
「ポリペプチド」はまた、本明細書で用いられる場合、具体的に例示されたポリペプチドのミュータント、融合タンパク質、相同タンパク質および対立遺伝子変異体を含むものとする。
変異タンパク質またはミューテインは、天然に存在するポリペプチドと同一のまたは異なる特性を有してもよく、ネイティブなタンパク質のアミノ酸配列と比べて、少なくとも1つのアミノ酸の挿入、重複、欠失、再編成または置換を含む。タンパク質の機能を変化させない微小な欠失および挿入はしばしばみられる。1つの態様では、ミューテインは肺特異的であってもなくてもよい。好ましい態様では、ミューテインは肺特異的である。好ましい態様では、ミューテインは、配列番号143〜277のアミノ酸配列の1つと比べて、少なくとも1つのアミノ酸の挿入、重複、欠失、再編成または置換を含む。より好ましい態様では、ミューテインは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPに対し、少なくとも50%の配列同一性、より好ましくは少なくとも60%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも70%の配列同一性、より一層好ましくは少なくとも80%の配列同一性を示すものである。より一層好ましい態様では、ミューテインは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPに対し、少なくとも85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%または96%、そしてより一層好ましくは少なくとも97%、98%、99%または99.5%の配列同一性を示す。
【0072】
ミューテインは、天然に存在する変異細胞、組織または生物から単離することによって作製することができる。ミューテインは、実験的に変異導入された細胞、組織または生物から単離することによって作製することができる。あるいは、ミューテインは、ポリペプチドの化学的操作によって、例えば、合成的または半合成的な化学的技法を用いてアミノ酸残基をタンパク質のアミノ酸残基に変化させることによって作製することができる。好ましい態様では、ミューテインは、天然に存在する核酸分子に比べて変化した核酸分子を含む宿主細胞から作製することができる。例えば、本発明の核酸配列に1または2以上の変異を導入し、次いでそれを組換え的に発現させることによってポリペプチドのミューテインを作製することができる。これらの変異は標的化することができ、この場合は特別にコードされたアミノ酸が変化しており、または非標的化することができ、この場合は、ポリペプチド内のランダムにコードされたアミノ酸が変化している。ランダムアミノ酸変化を伴うミューテインは、以下に説明するとおり、具体的な生物活性または特性について、特に該ポリペプチドが肺特異的かどうかをスクリーニングすることができる。複数のランダム変異を、当該技術分野でよく知られた方法によって、例えば、エラープローンPCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチドを用いた変異導入、アセンブリPCR、セクシャルPCR変異導入、in vivo変異導入、カセット変異導入、エクスポネンシャルアンサンブル変異導入、リカーシブアンサンブル変異導入および部位特異的変異導入によって、遺伝子に導入することができる。標的化されたアミノ酸変化またはランダムアミノ酸変化を有するミューテインを作製する方法は、当該技術分野でよく知られている。それぞれが参照よって本明細書に組み込まれる、例えば上記Sambrook (1989)、上記Sambrook (2001)、上記Ausubel (1992)および上記Ausubel (1999)、米国特許第 5,223,408号、および上記で論じた参考文献を参照。
「ポリペプチド」は、本明細書中で用いる場合には、本明細書中で例示されたポリペプチドと相同なポリペプチドをも含むものとする。好ましい態様では、ポリペプチドはLSPと相同である。より一層好ましい態様では、ポリペプチドは、配列番号143〜277のアミノ酸配列からなる群から選択されるLSPと相同である。好ましい態様では、相同ポリペプチドは、LSPと顕著な配列同一性を示すものである。より好ましい態様では、ポリペプチドは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPと顕著な配列同一性を示すものである。より一層好ましい態様では、相同ポリペプチドは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPと、少なくとも50%の配列同一性、より好ましくは少なくとも60%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも70%の配列同一性、より一層好ましくは少なくとも80%の配列同一性を示すものである。より一層好ましい態様では、相同ポリペプチドは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPに対し、少なくとも85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%または96%、そしてより一層好ましくは少なくとも97%または98%の配列同一性を示すものである他の好ましい態様では、相同ポリペプチドは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を含むLSPに対し、少なくとも99%、より好ましくは99.5%、さらにより好ましくは99.6%、99.7%、99.8%または99.9%の配列同一性を示すものである。好ましい態様では、アミノ酸置換は、上記で論じたとおり、保存的なアミノ酸置換である。
【0073】
他の態様では、相同ポリペプチドは、LSNAに選択的にハイブリダイズする核酸分子によってコードされたものである。好ましい態様では、相同ポリペプチドは、本明細書で定義された低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシーまたは高いストリンジェンシー条件下で、LSNAにハイブリダイズする核酸分子によってコードされる。より好ましい態様では、LSNAは、配列番号1〜142からなる群から選択される。他の好ましい態様では、相同ポリペプチドは、本明細書で定義された低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシーまたは高いストリンジェンシー条件下で、LSPをコードする核酸分子にハイブリダイズする核酸分子によってコードされる。より好ましい態様では、LSPは、配列番号143〜277からなる群から選択される。
相同ポリペプチドは、他の種に由来する天然に存在するもの、特に、チンパンジー、アカゲザル、ヒヒまたはゴリラなどの他の霊長類に由来するものであって、相同性ポリペプチドが、配列番号143〜277のものと顕著な配列同一性を示すアミノ酸配列を含むものであってもよい。相同ポリペプチドはまた、LSPがポリペプチドのファミリーの成員である場合には、ヒトの天然に存在するポリペプチドであってもよい。相同性ポリペプチドはまた、限定されずに、家畜種、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ヤギまたはブタを含む、霊長類ではない哺乳類種に由来する、天然に存在するポリペプチドであってもよい。相同ポリペプチドはまた、鳥類または爬虫類などの哺乳類ではない種に由来する、天然に存在するポリペプチドであってもよい。天然に存在する相同タンパク質は、ヒトまたは他の種から直接単離してもよい。あるいは、天然に存在する相同ポリペプチドをコードする核酸分子を単離し、相同ポリペプチドを組換え的に発現させるために用いてもよい。他の態様では、相同ポリペプチドは、核酸分子のランダム突然変異とその後の核酸分子の発現によって、実験的に作製されたものであってもよい。他の態様では、相同ポリペプチドは、LSPのコードされたアミノ酸を変化させるための1または2以上のコドンの特異的変異(directed mutation)によって実験的に作製されたものであってもよい。さらに、相同タンパク質は、LSPであるポリペプチドをコードしてもしなくてもよい。しかしながら、好ましい態様では、相同ポリペプチドはLSPであるポリペプチドをコードする。
【0074】
タンパク質の関連性はまた、第2の機能的テストである、第1のタンパク質が、第2のタンパク質の抗体への結合を競合的に阻害する能力を用いて特徴付けすることができる。従って、本発明の他の側面は、本明細書中で詳細に説明したものと配列が同一である単離タンパク質を提供するだけでなく、本発明の種々の単離ポリペプチドの全部または一部への抗体の結合を競合的に阻害する単離タンパク質(「交差反応性タンパク質」)を提供する。かかる競合阻害は、当該技術分野でよく知られているイムノアッセイを用いて容易に決定することができる。
上記で論じたとおり、1塩基多型(SNPs)は真核生物のゲノムで頻繁に生じ、1つの種の1つの個体から決定された配列は、集団内に存在する他の対立遺伝子の形態と異なり得る。従って、「ポリペプチド」は、本明細書中で用いる場合は、LSPをコードする核酸分子の対立遺伝子変異体によってコードされるポリペプチドをも含むものとする。好ましい態様では、ポリペプチドは、配列番号143〜277からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子の対立遺伝子変異体によってコードされる。より一層好ましい態様では、ポリペプチドは、配列番号1〜142からなる群から選択される核酸配列を有する遺伝子の対立遺伝子変異体によってコードされる。
他の態様では、本発明は、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチドの誘導体を含むポリペプチドを提供する。好ましい態様では、ポリペプチドはLSPである。好ましい態様では、ポリペプチドは、配列番号143〜277からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、またはそのミューテイン、対立遺伝子変異体、相同タンパク質または断片である。好ましい態様では、誘導体は、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化またはユビキチン化されている。他の好ましい態様では、誘導体は、例えば125I、32P、35SおよびHなどの放射性同位体によって標識されている。他の好ましい態様では、誘導体は、フルオロフォア、化学発光剤、酵素、および標識されたリガンドの特異的結合対の成員として機能する抗リガンドによって標識されている。
【0075】
ポリペプチド修飾は当業者によく知られており、科学的文献に詳細に記載されている。数種の特に一般的な修飾である、例えば、グリコシル化、脂質付加、硫化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP−リボシル化は、最も基本的なテキスト、例えば、Creighton, Protein Structure and Molecular Properties, 2nd ed., W. H. Freeman and Company (1993)などに記載されている。多数の詳細な総説がこの主題について利用可能であり、例えば、Johnson (ed.), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, pgs. 1−12, Academic Press (1983)中、Woldによって提供されているもの、Seifter et al., Meth. Enzymol. 182: 626−646 (1990)およびRattan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 663: 48−62 (1992)などがある。
よく知られているように、そして上記の通り、ポリペプチドは常には全体が線状ではないと理解される。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝状であることができ、そして、一般的に、天然のプロセシングイベントおよび天然には生じないヒトの操作によってなされたイベントを含む翻訳後イベントの結果として、分子を有するまたは有しない環状であることができる。環状、分枝状および分枝環状ポリペプチドは、非翻訳的な天然のプロセスによって、および同様に、完全に合成的な方法によって合成することができる。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含む、ポリペプチドのどこでも生じ得る。実際、共有結合的な修飾による、ポリペプチド中のアミノ基もしくはカルボキシル基またはその両方のブロックは、天然に存在するポリペプチドおよび合成ポリペプチドにおいてよく見られ、そしてかかる修飾は本発明のポリペプチドにも同様に存在し得る。例えば、大腸菌で産生されたポリペプチドのアミノ末端残基は、タンパク溶解プロセシングの前は、殆ど常にN−ホルミルメチオニンである。
有用な合成後(および翻訳後)修飾は、フルオロフォアなどの検出可能な標識への結合を含む。多種多様なアミン反応性およびチオール反応性のフルオロフォアが合成され、これらは、非変性条件下で、一方では、リジン残基のN−末端アミノ基およびイプシロンアミノ基と、他方では、システイン残基のチオール基と反応する。
【0076】
タンパク質の、種々のアミン反応性またはチオール反応性フルオロフォアとの結合を可能にするキットが市販されている。例えばMolecular Probes, Inc. (Eugene, OR, USA)は、アレクサフルオール350、アレクサフルオール430、フルオレセイン−EX、アレクサフルオール488、オレゴングリーン488、アレクサフルオール532、アレクサフルオール546、アレクサフルオール546、アレクサフルオール568、アレクサフルオール594およびテキサスレッド−Xへタンパク質を結合するためのキットを提供している。
多種多様なタンパク質のアミノ反応性およびチオール反応性フルオロフォアが市販されており、これは、アレクサフルオール(登録商標)350、アレクサフルオール(登録商標)488、アレクサフルオール(登録商標)532、アレクサフルオール(登録商標)546、アレクサフルオール(登録商標)568、アレクサフルオール(登録商標)594、アレクサフルオール(登録商標)647(モノクローナル抗体標識キットがから入手可能)、BODIPY色素、例えば、BODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 558/568、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、カスケードブルー、カスケードイエロー、ダンシル、リサミンローダミンB、マリナブルー、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、テキサスレッド(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR, USAから入手可能)を含む。
本発明のポリペプチドはまた、二価性架橋試薬を用いて、フルオロフォア、他のタンパク質、および他の巨大分子に結合することができる。一般的なホモ二価性試薬としては、例えば、APG、AEDP、BASED、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BM[PEO]3、BM[PEO]4、BS3、BSOCOES、DFDNB、DMA、DMP、DMS、DPDPB、DSG、DSP (Lomant’s Reagent)、DSS、DST、DTBP、DTME、DTSSP、EGS、HBVS、Sulfo−BSOCOES、Sulfo−DST、Sulfo−EGS(すべてPierce, Rockford, IL, USAから入手可能)が挙げられ、一般的なヘテロ二価性架橋剤としては、ABH、AMAS、ANB−NOS、APDP、ASBA、BMPA、BMPH、BMPS、EDC、EMCA、EMCH、EMCS、KMUA、KMUH、GMBS、LC−SMCC、LC−SPDP、MBS、M2C2H、MPBH、MSA、NHS−ASA、PDPH、PMPI、SADP、SAED、SAND、SANPAH、SASD、SATP、SBAP、SFAD、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、SMPT、SPDP、Sulfo−EMCS、Sulfo−GMBS、Sulfo−HSAB、Sulfo−KMUS、Sulfo−LC−SPDP、Sulfo−MBS、Sulfo−NHS−LC−ASA、Sulfo−SADP、Sulfo−SANPAH、Sulfo−SIAB、Sulfo−SMCC、Sulfo−SMPB、Sulfo−LC−SMPT、SVSB、TFCS (すべてPierce, Rockford, IL, USAから入手可能)が挙げられる。
本発明のポリペプチド、断片および融合タンパク質は、かかる架橋剤を用いて、アミンまたはチオール反応性ではないフルオロフォアに結合させることができる。本発明のポリペプチド、断片および融合タンパク質に有効に結合させることができるタンパク質の標識としては、放射性標識、超音波検査用造影試薬およびMRI造影剤が挙げられる。
【0077】
本発明のポリペプチド、断片および融合タンパク質はまた、架橋剤を用いて、KLH、ウシチログロブリン、およびさらにはウシ血清アルブミン(BSA)などのキャリアタンパク質に、抗LSP抗体を惹起するための免疫原性を高めるために、有効に結合させることができる。
本発明のポリペプチド、断片および融合タンパク質はまた、ポリエチレングリコール(PEG)に有効に結合させることができる。PEG化は、補充療法のために静脈内投与されたタンパク質の血清半減期を増大させる。Delgado et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 9(3−4): 249−304 (1992)、Scott et al., Curr. Pharm. Des. 4(6): 423−38 (1998)、DeSantis et al., Curr. Opin. Biotechnol. 10(4): 324−30 (1999)。これらの全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。PEGモノマーは、緩和な条件下で直接的な付着を可能にするトレシルクロライド(2,2,2−トリフルオロエタンスルホニルクロライド)で活性化されたPEGモノマーを用いるPEG化によって、タンパク質に直接またはリンカーを介して付着させることができる。
さらに他の態様では、本発明は、本発明の核酸分子によってコードされるポリペプチドの類縁体を提供する。好ましい態様では、ポリペプチドはLSPである。より好ましい態様では、類縁体は、配列番号143〜277の1つのアミノ酸配列の一部または全部を有するポリペプチドに由来する。好ましい態様では、類縁体は、天然に存在するポリペプチドに比べ、1または2以上の、非天然アミノ酸の置換または非天然の残基間結合を含むものである。一般的に、非ペプチド類縁体は、LSPと構造的に類似するが、1または2以上のペプチド結合が、−CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−および−CHSO−からなる群から選択される結合に置換されている。他の態様では、非ペプチド類縁体は、より安定なペプチドを創出するために、LSPの1または2以上のアミノ酸の、同型のD−アミノ酸とのまたは他の非天然アミノ酸との置換を含む。D−アミノ酸は、化学的なペプチド合成の最中に容易に組み込むことができる。D−アミノ酸で構成されたペプチドは、タンパク溶解性の攻撃により抵抗性である。D−アミノ酸の組込みはまた、ペプチドに特定の3次元コンホメーションを付与するために用いることができる。化学合成の最中に一般的に添加される他のアミノ酸類縁体としては、オルニチン、ノルロイシン、リン酸化アミノ酸(典型的には、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン)、L−マロニルチロシン(L−malonyltyrosine)、ホスホチロシンの非加水分解性類縁体(例えばKole et al., Biochem. Biophys. Res. Com. 209: 817−821 (1995)を参照)、および種々のハロゲン化フェニルアラニン誘導体が挙げられる。
【0078】
非天然アミノ酸は、固相化学合成の最中に、または組換え技術によって組み込むことができるが、前者の方が典型的で、より一般的である。ペプチドの固相化学合成は、当該技術分野で十分に確立されている。手順は、とりわけ、Chan et al. (eds.), Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis: Practical Approach (Practical Approach Series), Oxford Univ. Press (March 2000)、Jones, Amino Acid and Peptide Synthesis (Oxford Chemistry Primers, No 7), Oxford Univ. Press (1992)、およびBodanszky, Principles of Peptide Synthesis (Springer Laboratory), Springer Verlag (1993)に記載されており、これらの開示の全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
また、検出可能な標識を有するアミノ酸類縁体を、誘導体および類縁体を提供するために、合成の最中に有効に組み込むこともできる。例えば、ビオチンは、ビオチノイル−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−リジン(FMOCビオシチン)(Molecular Probes, Eugene, OR, USA)を用いて付加することができる。ビオチンはまた、大腸菌BirA基質ペプチドの融合タンパク質への組込みによって、酵素的に付加することもできる。ダブシル−L−リジンのFMOCおよびtBOC誘導体(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR, USA)は、ダブシルクロモフォアを、合成の最中に、ペプチド配列の選択した部位に組み込むために用いることができる。蛍光共鳴エネルギートランスファー(FRET)システムにおいて、ダブシルクエンチャーとの対合のための最も一般的なフルオロフォアである、アミノナフタレン誘導体EDANSは、EDANS−FMOC−L−グルタミン酸または対応するtBOC誘導体(両方ともMolecular Probes, Inc., Eugene, OR, USAから)を用いることによって、ペプチドの自動合成の最中に導入することができる。テトラメチルローダミンフルオロフォアは、(FMOC)−TMR−L−リジン(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR, USA)を用いて、ペプチドの自動FMOC合成の最中に組み込むことができる。
化学合成の最中に組込むことができる他の有用なアミノ酸類縁体としては、アリル側鎖保護を有するアスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびチロシンの類縁体(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA, USA)が挙げられる。アリル側鎖により、環状、分枝鎖状、スルホン化、グリコシル化およびリン酸化ペプチドの合成が可能になる。
【0079】
化学合成の最中に組込むことが可能な多数の他のFMOC保護非天然アミノ酸類縁体が市販されており、例えば、Fmoc−2−アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸、Fmoc−3−エンド−アミノビシクロ[2.2.1] ヘプタン−2−エンド−カルボン酸、Fmoc−3−エキソ−アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−エキソ−カルボン酸、Fmoc−3−エンド−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−エンド−カルボン酸、Fmoc−3−エキソ−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−エキソ−カルボン酸、Fmoc−シス−2−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸、Fmoc−トランス−2−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸、Fmoc−1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸、Fmoc−シス−2−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸、Fmoc−1−アミノ−1−シクロプロパンカルボン酸、Fmoc−D−2−アミノ−4−(エチルチオ)酪酸、Fmoc−L−2−アミノ−4−(エチルチオ)酪酸、Fmoc−L−ブチオニン、Fmoc−S−メチル−L−システイン、Fmoc−2−アミノ安息香酸(アントラニル酸)、Fmoc−3−アミノ安息香酸、Fmoc−4−アミノ安息香酸、Fmoc−2−アミノベンゾフェノン−2’−カルボン酸、Fmoc−N−(4−アミノベンゾイル)−β−アラニン、Fmoc−2−アミノ−4,5−ジメトキシ安息香酸、Fmoc−4−アミノ馬尿酸、Fmoc−2−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、Fmoc−2−アミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、Fmoc−3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、Fmoc−4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、Fmoc−4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、Fmoc−5−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、Fmoc−2−アミノ−3−メトキシ安息香酸、Fmoc−4−アミノ−3−メトキシ安息香酸、Fmoc−2−アミノ−3−メチル安息香酸、Fmoc−2−アミノ−5−メチル安息香酸、Fmoc−2−アミノ−6−メチル安息香酸、Fmoc−3−アミノ−2−メチル安息香酸、Fmoc−3−アミノ−4−メチル安息香酸、Fmoc−4−アミノ−3−メチル安息香酸、Fmoc−3−アミノ−2−ナフトエ酸、Fmoc−D,L−3−アミノ−3−フェニルプロピオン酸、Fmoc−L−メチルドパ、Fmoc−2−アミノ−4,6−ジメチル−3−ピリジンカルボン酸、Fmoc−D,L−アミノ−2−チオフェン酢酸、Fmoc−4−(カルボキシメチル)ピペラジン、Fmoc−4−カルボキシピペラジン、Fmoc−4−(カルボキシメチル)ホモピペラジン、Fmoc−4−フェニル−4−ピペリジンカルボン酸、Fmoc−L−1,2,3,4−テトラヒドロノルハルマン−3−カルボン酸、Fmoc−L−チアゾリジン−4−カルボン酸が挙げられ、これらはすべてPeptide Laboratory (Richmond, CA, USA)から入手可能である。
非天然残基はまた、サプレッサーtRNA、典型的にはUAG終止コドンを認識するものを、所望の非天然アミノ酸の化学的アミノアシル化により操作することによって、生合成的に付加することができる。選択した終止コドンUAGをタンパク質遺伝子の対象となる部位に導入するために、慣用の部位特異的変異導入を用いる。アシル化サプレッサーtRNAと変異遺伝子とがin vitroの転写/翻訳系で混合された場合、非天然アミノ酸はUAGに応答して組込まれ、このアミノ酸を特定の位置に含むタンパク質を与える。Liu et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 96(9): 4780−5 (1999)、Wang et al., Science 292(5516): 498−500 (2001)。
【0080】
融合タンパク質
本発明はまた、本発明によるポリペプチドおよび断片それぞれの非相同性ポリペプチドへの融合体を提供する。好適態様において、このポリペプチドはLSPである。さらに好適な態様において、非相同性ポリペプチドに融合されるポリペプチドは、配列番号142〜277のアミノ酸配列の一部または全部を含有するか、またはその突然変異タンパク質、相同性ポリペプチド、類縁体または誘導体である。さらにまた好適な態様において、融合タンパク質をコードする核酸分子は、配列番号1〜142の核酸配列の一部または全部を包含するか、または選択的にハイブリダイズする核酸配列の一部または全部を包含するか、または配列番号1〜142の核酸配列を包含する核酸分子に対して相同性である。
本発明による融合タンパク質は、本発明のタンパク質の少なくとも一個の断片を包含し、この断片は少なくとも6、代表的に少なくとも8、多くの場合に少なくとも15、また通常少なくとも16、17、18、19、または20のアミノ酸長を有する。融合体に包含させる本発明によるタンパク質の断片は、通常少なくとも25アミノ酸長、少なくとも50アミノ酸長であることができ、また少なくとも75、100アミノ酸長または150アミノ酸長であることさえできる。本発明のタンパク質全体を包含する融合体は、特に有用である。
本発明の融合タンパク質内に包含される非相同性ポリペプチドは、少なくとも6アミノ酸の長さ、多くの場合に少なくとも8アミノ酸の長さ、また通常少なくとも15、20、および25アミノ酸の長さを有する。さらに長いポリペプチド、例えばIgG Fc領域を、また完全タンパク質(例えば、GFPクロモホール含有タンパク質)さえもを包含する融合体は、特に有用である。
本発明のベクターおよび発現ベクターの説明について上記したように(この説明は、その全体を引用してここに組入れる)、本発明の融合タンパク質に包含させる非相同性ポリペプチドは通常、組換え発現されたタンパク質の精製および/または可視化が促進されるようにデザインされているポリペプチドを包含することができる。例えば、Ausubelによる上記文献、16章(1992年)。精製標識(tag)はまた、化学合成される融合体中に挿入することができるが、化学合成は代表的に、HPLCによる追加の精製で充分である充分な純度を提供する。しかしながら、上記可視化標識は、タンパク質が化学合成によって生成された場合でさえも、それらの有用性を保有し、またこのような包含は、本発明の融合タンパク質を本発明によるポリペプチドの存在の直接的検出可能マーカーとして有用にする。
【0081】
上記でまた説明したように、本発明の融合タンパク質に包含させる非相同性ポリペプチドは通常、分泌シグナルおよび/またはリーダー配列の配合によって、組換え発現タンパク質の−原核生物宿主の細胞周辺腔または細胞外環境中への、真核細胞の培養培地への−分泌を促進する非相同性ポリペプチドを包含する。一例として、Hisタグ付けしたタンパク質は、Niアフィニティカラムで精製することができ、またGST融合タンパク質はグルタチオンアフィニティカラムで精製することができる。同様に、IgGのFcドメインを包含する融合タンパク質は、プロテインAまたはプロテインGカラムで精製することができ、またエピトープ標識、例えばmycを含有する融合タンパク質は、抗−c−myc抗体を含有する免疫親和性カラムを用いて精製することができる。このエピトープ標識は、精製後に開裂させることができる酵素開裂部位によって、必須遺伝子によりコードされるタンパク質から分離されていると好ましい。細胞表面上で発現させることができる融合タンパク質をコードする核酸分子にかかわる説明をまた、参照することができる。
別の本発明による有用なタンパク質融合体は、本発明のタンパク質を酵母ツーハイブリッド系におけるベイトとして使用することを可能にするタンパク質融合体を包含する。下記文献を参照することができる:Bartel et al. (eds.), The Yeast Two−Hybrid System, Oxford University Press (1997); Zhu et al., Yeast Hybrid Technologies, Eaton Publishing (2000); Fields et al., Trends Genet. 10(8): 286−92 (1994); Mendelsohn et al., Curr. Opin. Biotechnol. 5(5): 482−6 (1994); Luban et al., Curr. Opin. Biotechnol. 6(1): 59−64 (1995); Allen et al., Trends Biochem. Sci. 20(12): 511−6 (1995); Drees, Curr. Opin. Chem. Biol. 3(1): 64−70 (1999); Topcu et al., Pharm. Res. 17(9): 1049−55 (2000); Fashena et al., Gene 250(1−2): 1−14 (2000); ; Colas et al., (1996) Genetic selection of peptide aptamers that recognize and inhibit cyclin−dependent kinase 2. Nature 380, 548−550; Norman, T. et al., (1999) Genetic selection of peptide inhibitors of biological pathways. Science 285, 591−595, Fabbrizio et al., (1999) Inhibition of mammalian cell proliferation by genetically selected peptide aptamers that functionally antagonize E2F activity. Oncogene 18, 4357−4363; Xu et al., (1997) Cells that register logical relationships among proteins. Proc Natl Acad Sci U S A. 94, 12473−12478; Yang, et al., (1995) Protein−peptide interactions analyzed with the yeast two−hybrid system. Nuc. Acids Res. 23, 1152−1156; Kolonin et al., (1998) Targeting cyclin−dependent kinases in Drosophila with peptide aptamers. Proc Natl Acad Sci U S A 95, 14266−14271; Cohen et al., (1998) An artificial cell−cycle inhibitor isolated from a combinatorial library. Proc Natl Acad Sci U S A 95, 14272−14277; Uetz, P.; Giot, L.; al, e.; Fields, S.; Rothberg, J. M. (2000) A comprehensive analysis of protein−protein interactions in Saccharomyces cerevisiae. Nature 403, 623−627; Ito, et al., (2001) A comprehensive two−hybrid analysis to explore the yeast protein interactome. Proc Natl Acad Sci U S A 98, 4569−4574、これらの刊行物の全記載を、ここに引用して本明細書に組入れる。代表的に、このような融合は、大腸菌(E.coli)LexAまたは酵母GAL4DNA結合性ドメインに対してなされる。核局限化シグナルに融合したベイトを発現する関連ベイトプラスミドを利用することができる。
【0082】
その他の有用な融合タンパク質は、上記されているように、ファージまたは細胞の表面にコードされたタンパク質の表示、内在性蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))への融合、およびIgGFc領域への融合を可能にする融合タンパク質を包含する(これらの説明を、その全体を引用しここに組入れる)。
本発明のポリペプチドおよび断片はまた、タンパク質毒素、例えばシュードモナス外毒素A、ジフテリア毒素、シガ毒素A、炭疽菌毒素致死因子、リシン(ricin)へ有用に融合することができ、これにより本発明のタンパク質を結合しまたは取り込む細胞の除去を行うことができる。
融合相手には、中でも、下記相手が包含される:myc、ヘマグルチニン(HA)、GST、免疫グロブリン、β−ガラクトシダーゼ、ビオチンtrpE、プロテインA、β−ラクタマーゼ、−アミラーゼ、−マルトース結合性タンパク質、アルコールデヒドロゲナーゼ、ポリヒスチジン(例えば、当該ポリペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端の6個のヒスチジン)、lacZ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、酵母交配因子、GAL4転写活性化またはDNA結合性ドメイン、ルシフェラーゼ、および血清タンパク質、例えばオボアルブミン、アルブミンおよびIgGの定常ドメイン。一例として、Ausubelによる上記文献(1992年)およびAusubelによる上記文献(1999年)を参照することができる。融合タンパク質はまた、特異的酵素開裂にかかわる部位、例えばファクターXIII、トリプシン、ペプシン、またはいずれかその他の当該技術分野で公知の酵素により認識される部位を含有することができる。上記したように、融合タンパク質は代表的に、当該技術分野で周知の技術(例えば、メリフィールド(Merrifield)合成)を用いて化学的に合成されるか、または化学架橋により生成される組換え核酸法によって形成される。
融合タンパク質のもう一つの利点は、エピトープ標識を使用し、結合タンパク質またはLSPに結合するその他の分子のスクリーニング用アフィニティ結合によって、融合タンパク質をプレートまたはカラムに結合させることができることにある。
以下でさらに説明するように、本発明による単離されたポリペプチド、突然変異タンパク質、融合タンパク質、相同性タンパク質または対立遺伝子変異体は、LSP、それらの対立遺伝子変異体および相同体を特異的に認識する抗体を作製するための特異的免疫原として容易に使用することができる。これらの抗体は次いで、中でも、本発明のポリペプチド、特にLSPにかかわる特異的試験(例えば血清などのタンパク質液体試料検出用ELISAによる、もしくは組織試料中のタンパク質検出用免疫組織化学またはレーザー走査サイトメトリーによる)、または細胞懸濁液中の細胞内タンパク質検出、または例えば免疫沈澱法によるなどのLSPの抗体媒介単離および/または精製、およびLSPの特異的アゴニストまたはアンタゴニストとして使用するためのフローサイトメトリーによる分析に使用することができる。
【0083】
突然変異タンパク質、融合タンパク質、相同性タンパク質または対立遺伝子変異体を包含するポリペプチドが当該技術分野で公知の方法によって機能するかを測定することができる。一例として、機能を保有しながら、変化に耐性である残基は、当該技術分野で公知の方法、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発法(Cunningham et al., Science 244(4908): 1081−5 (1989));トランスポゾンリンカースキャニング突然変異誘発法(Chen et al., Gene 263(1−2): 39−48 (2001));ホモログ−およびアラニン−スキャニング突然変異誘発法(Jin et al., J. Mol. Biol. 226(3): 851−65 (1992));コンビナトリアルアラニンスキャニング法(Weiss et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 97(16): 8950−4 (2000))を使用し、公知残基部位でタンパク質を変更し、引続き機能分析することにより、同定することができる。トランスポゾンリンカー走査キットは、市販されている(New England Biolabs, Beverly, MA, USA, カタログ番号 E7−102S; EZ::TN(登録商標) In−Frame Linker Insertion Kit, カタログ番号 EZI04KN, Epicentre Technologies Corporation, Madison, WI, USA)。
断片、相同性ポリペプチド、突然変異タンパク質、類縁体、誘導体および融合タンパク質を包含するポリペプチドの精製は周知であり、当業者の技術範囲内にある。例えば、Scopes, Protein Purification, 2d ed. (1987)を参照することができる。組換え発現ポリペプチドの精製は、上記で説明されている。化学合成されたペプチドの精製は、例えばHPLCによって容易に行うことができる。
従って、本発明の単離タンパク質を、安定剤の存在または不存在下に、純粋な状態で、または実質的に純粋な状態で提供することは、本発明の1つの側面である。安定剤は、タンパク質様材料または非タンパク質様材料の両方を包含し、当該技術分野で周知である。アルブミンおよびポリエチレングリコール(PEG)などの安定剤は公知であり、また市販されている。
本発明による単離タンパク質を治療剤として、例えばワクチンに、また代用治療剤として使用する場合、高レベルの純度が好適であるが、本発明による単離タンパク質はまた、より低い純度でも有用である。一例として、本発明による部分的に精製されたタンパク質は、免疫原として使用することができ、これにより実験動物に抗体を産生させることができる。
好適態様において、本発明の精製されたタンパク質および実質的に精製されたタンパク質は、検出可能な両性電解質、アクリルアミドモノマー、ビス−アクリルアミドモノマーおよびポリアクリルアミドを欠く組成物の状態である。
【0084】
本発明によるポリペプチド、断片、類縁体、誘導体および融合体は、基体に有用に結合させることができる。この基体は、多孔質または非孔質の、平坦または非平坦形態であることができ、結合は共有または非共有状態であることができる。
一例として、本発明によるポリペプチド、断片、類縁体、誘導体および融合体は、有孔基体、代表的にニトロセルロース、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、またはカチオン性に誘導体化されている親水性PVDFを包含する慣用の膜に有用に結合させることができる;このように結合された本発明によるタンパク質、断片および融合体を使用し、例えば血清中の本発明の不動化タンパク質に対して特異的に結合する抗体を検出および定量することができる。
もう一つの例として、本発明によるポリペプチド、断片、類縁体、誘導体および融合体は、プラスティックなどの実質的に無孔基体に有用に結合させることができ、これにより本発明の不動化タンパク質に対して特異的に結合する抗体、例えば血清中のものを検出および定量することができる。このようなプラスティックには、ポメチルアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、セルロースアセテート、セルロースナイトレート、ニトロセルロース、またはその混合物が包含される。この分析を標準的マイクロタイターディッシュで行う場合、このプラスティックは代表的に、ポリスチレンである。
本発明によるポリペプチド、断片、類縁体、誘導体および融合体はまた、表面増強レーザー脱着イオン化源として使用するのに適する基体に結合させることもできる;このように結合された本発明によるタンパク質、断片または融合体は、表面結合タンパク質に対して充分な親和性または結合活性をもって結合する二次タンパク質の結合、引続く検出に有用であり、これによりこれらの間の生物学的相互作用が示される。本発明によるポリペプチド、断片および融合体はまた、表面プラスモン共鳴検出法で使用するのに適する基体に結合させることができる;このように結合された本発明によるタンパク質、断片または融合体は、表面結合タンパク質に対して充分な親和性または結合活性をもって結合する二次タンパク質の結合、引続く検出に有用であり、これによりこれらの間の生物学的相互作用が示される。
【0085】
抗体
他の側面において、本発明は、本発明による核酸分子によりコードされるポリペプチドに対し特異的に結合するその断片および誘導体を包含する抗体、ならびに当該ポリペプチドの断片、変異体、誘導体および類縁体に結合する抗体を提供する。好適態様において、これらの抗体は、LSPであるポリペプチド、またはその断片、変異体、誘導体、類縁体または融合タンパク質に対し特異的である。さらに好適な態様において、これらの抗体は、配列番号143〜277を包含するポリペプチド、またはその断片、変異体、誘導体、類縁体または融合タンパク質に対し特異的である。
本発明による抗体は、そのネイティブな配座でタンパク質上に存在するか、またはいくつかの場合、例えばSDS中における可溶化によるなどして変性されたものとしてタンパク質上に存在する、線状エピトープ、不連続エピトープ、またはこのようなタンパク質またはタンパク質断片の立体配座エピトープに対し特異的であることができる。新規エピトープはまた、翻訳後修飾(PTM)についての疾患の組織対正常組織の差異による場合もある。一例として、LSPの特定の部位は、癌性細胞ではグリコシル化されている場合があるが、正常細胞ではグリコシル化されている場合はなく、その逆もある。さらに、別のスプライス形態のLSPは癌を示唆することができる。LSPのC−またはN−末端の差別的分解はまた、抗癌治療用のマーカーまたは標的であることができる。一例として、LSPは、抗体が診断または治療用途で選択的に結合することができる新しいエピトープに暴露される癌細胞において分解されるN−末端であることができる。
当該技術分野で周知のように、抗体が混合物中の分子種中で識別することができる度合は、部分的に、混合物中の分子種の配座関連性に依存する;代表的に、本発明による抗体は、非LSPポリペプチドに対する優勢結合を越えて、少なくとも2倍、さらに代表的には少なくとも5倍、典型的に10倍、25倍、50倍、75倍以上、また多くの場合、100倍以上、また場合により、500倍または1000倍以上で識別するものとされる。本発明のタンパク質またはタンパク質断片の検出に使用する場合、この抗体をヒト肺に由来する試料中の本発明によるタンパク質の存在の決定に使用することができるならば、本発明の抗体は充分に特異的である。
【0086】
代表的に、本発明によるタンパク質またはタンパク質断片に対する本発明の抗体(またはIgMペンタマーの場合などでは抗体マルチマー)の親和性または結合活性は、少なくとも約1x10−6モル(M)、代表的に少なくとも約5x10−7Mであり、少なくとも約1x10−8M、5x10−9M、1x10−10M、および1x10−13Mまでの親和性および結合活性は特別の有用性を提供する。
本発明の抗体は、いずれかの鳥類、爬虫類、または哺乳動物種からの天然産生形態、例えばIgG、IgM、IgD、IgE、IgY、およびIgAであることができる。
頻度は低いが、ヒト抗体はヒトドナーまたはヒト細胞から直接採取することができる。この場合、本発明のタンパク質に対する抗体は代表的に、本発明のタンパク質またはタンパク質断片による偶発的免疫感作、例えば自己免疫免疫感作から生成される。頻度は低いが、このような抗体は代表的に、ポリクローナルである。さらに、各ポリクローナル抗体は、単離し、次いでクローン化し、モノクローナルを生成することができる。
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニック動物を用いてさらにしばしば得られ、このトランスジェニック動物は本発明のタンパク質免疫原により肯定的に(affirmatively)免疫感作することができる。ヒト抗体を産生することができるヒトIgトランスジェニックマウスおよびそこからのヒト抗体の産生方法は、中でも、下記刊行物に開示されており、これらの刊行物を、それらの全体の引用によってここに組入れる:米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、同第6,075,181号、同第5,939,598号、同第5,877,397号、同第5,874,299号、同第5,814,318号、同第5,789,650号、同第5,770,429号、同第5,661,016号、同第5,633,425号、同第5,625,126号、同第5,569,825号、同第5,545,807号、同第5,545,806号および同第5,591,669号。このような抗体は代表的に、モノクローナルであり、代表的にマウス抗体の作製にかかわり開発された技術を用いて作製される。
投与された抗体に対するレシピエントの免疫応答はしばしば、別種、例えばマウスから誘導された抗体の投与による場合に比較して実質的に小さいことから、本発明による抗体をin vivo診断または治療剤としてヒトに投与する場合、ヒト抗体が特に有用であり、またしばしば好適である。
【0087】
本発明によるIgG、IgM、IgD、IgE、IgY、およびIgA抗体はまた、齧歯類(代表的にマウス、およびラット、モルモットおよびハムスター)、ウサギ目(代表的にウサギ)、およびまたさらに大型の哺乳動物(例えば、ヒツジ、ヤギ、ウシ、およびウマ)、および別種の産卵する鳥類または爬虫類(例えば、ニワトリまたはワニ)を包含する別種から得ることもできる。一例として、鳥類抗体は2000年5月25日付けで公開されたWO00/29444に記載の技術を用いて産生させることができる(これらの刊行物を、その全体の引用によって、ここに組入れる)。このような場合、トランスジェニックヒト抗体産生性非ヒト哺乳動物を用いると、偶発的免疫感作は不必要であり、またこの非ヒト哺乳動物は代表的に、本発明のタンパク質またはタンパク質断片を用い、標準的免疫感作方法に従い肯定的に免疫感作させることができる。
上記したように、キャリア、代表的にウシチログロブリン、キーホールリンペットヘモシアニン、またはウシ血清アルブミンなどのタンパク質に共有結合させる場合、上記いずれかの刊行物(これらの記載を、その全体の引用によってここに組入れる)に開示されているような二官能性リンカーを都合良く使用して、本発明のタンパク質の8個またはそれ以上の隣接アミノ酸を免疫原として効果的に使用することができる。
免疫原性はまた、本発明によるタンパク質および断片を別の分子に融合させることによって授与することができる。一例として、本発明のペプチドは、分枝したポリリジンコアマトリクスに対する固相合成により生成させることができる;これらの多重抗原性ペプチド(MAP)は、ワクチン作製において、高い純度、増大した活性、正確な化学的定義、および改良された安全性を備えている。Tam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5409−5413 (1988); Posnett et al., J. Biol. Chem. 263: 1719−1725 (1988)。
非ヒト哺乳動物または鳥類を免疫感作するための方法は、当該技術分野で充分に確立されている。下記刊行物を参照することができ、これらの記載を引用してここに組入れる:Harlow et al. (eds.), Using Antibodies: Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1998); Coligan et al. (eds.), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc. (2001); Zola, Monoclonal Antibodies: Preparation and Use of Monoclonal Antibodies and Engineered Antibody Derivatives (Basics: From Background to Bench), Springer Verlag (2000); Gross M, Speck J.Dtsch. Tierarztl. Wochenschr. 103: 417−422 (1996)。免疫感作法はしばしば、フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントなどのアジュバントを用いるか、用いない、多重免疫感作を包含し、また裸のDNA免疫感作を包含することができる(Moss, Semin. Immunol. 2: 317−327 (1990).)。
【0088】
非ヒト哺乳動物および鳥類からの抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、ポリクローナル抗体は本発明によるタンパク質の免疫組織化学的検出において或る利点を有し、他方、モノクローナル抗体は本発明によるタンパク質の特定のエピトープの同定および識別に利点を有する。鳥類からの抗体は、ヒト血清または組織における本発明によるタンパク質の検出に特別の利点を有することがある(Vikinge et al., Biosens. Bioelectron. 13: 1257−1262 (1998))。
免疫感作後、本発明の抗体は、いずれか当該技術分野で許容される技法を用いて産生させることができる。このような技術は当該技術分野で周知であり、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れることから、ここでは詳細は不必要である:Coligan, 前出; Zola, supra; Howard et al. (eds.), Basic Methods in Antibody Production and Characterization, CRC Press (2000); Harlow, 前出; Davis (ed.), Monoclonal Antibody Protocols, Vol. 45, Humana Press (1995); Delves (ed.), Antibody Production: Essential Techniques, John Wiley & Son Ltd (1997); Kenney, Antibody Solution: An Antibody Methods Manual, Chapman & Hall (1997)。
しかしながら、簡単に説明すると、このような技術は、中でも、ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の生成および免疫グロブリン遺伝子またはその断片を発現するように操作された宿主細胞からの抗体もしくはその断片または誘導体の発現を包含する。これら2種の生成方法は、相互に排他的ではない:本発明によるタンパク質またはタンパク質断片に特異的な抗体をコードする遺伝子は、ハイブリドーマからクローン化することができ、次いで別の宿主細胞で発現させることができる。これら2種の方法を一緒に行う必要はない。例えば、本発明によるタンパク質またはタンパク質断片に特異的な抗体をコードする遺伝子は、米国特許第5,627,052号(この記載を、その全体の引用によりここに組入れる)に詳細に記載されているように、所望のタンパク質に特異的であることが知られているB細胞から、または抗体−ディスプレイファージから、直接にクローン化することができる。
宿主細胞における組換え発現は、本発明による抗体の断片または誘導体が所望される場合、特に有用である。
完全抗体、抗体断片または抗体誘導体の組換え生成用の宿主細胞は、真核生物または原核生物であることができる。
原核生物宿主は、本発明のファージディスプレイ抗体の生成に特に有用である。
【0089】
ファージディスプレイ抗体技法は現時点で充分に確立されており、この方法では、抗体可変領域断片を、例えば遺伝子IIIタンパク質(pIII)または遺伝子VIIIタンパク質(pVIII)に融合させ、M13などの線状ファージの表面上に表示させる。例えば、下記刊行物を参照することができる:Sidhu, Curr. Opin. Biotechnol. 11(6): 610−6 (2000); Griffiths et al., Curr. Opin. Biotechnol. 9(1): 102−8 (1998); Hoogenboom et al., Immunotechnology, 4(1): 1−20 (1998); Rader et al., Current Opinion in Biotechnology 8: 503−508 (1997); Aujame et al., Human Antibodies 8: 155−168 (1997); Hoogenboom, Trends in Biotechnol. 15: 62−70 (1997); de Kruif et al., 17: 453−455 (1996); Barbas et al., Trends in Biotechnol. 14: 230−234 (1996); Winter et al., Ann. Rev. Immunol. 433−455 (1994)。最近になって、このようなライブラリーからの抗体断片の産生、増殖、選別(pan)、および使用に要する技術および方法は承認されている。一例として下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、その全体の引用によりここに組入れる:Barbasによる上記文献(2001年);Kayによる上記文献;Abelsonによる上記文献。
代表的に、ファージディスプレイ抗体断片は、scFv断片またはFab断片であり、所望により、ディスプレイファージから完全抗体への可変領域のクローン化および追加の真核生物または原核生物宿主細胞における充分な長さを有する抗体の発現により、充分な長さの抗体を生成させることができる。
真核細胞はまた、本発明による抗体、抗体断片および抗体誘導体の発現に有用であることができる。
一例として、本発明の抗体断片は、ピチア パストリス(Pichia pastoris)およびサッカロマイセス セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)で生成させることができる。例えば、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それら全体の引用によりここに組入れる:Takahashi et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 64(10): 2138−44 (2000); Freyre et al., J. Biotechnol. 76(2−3):1 57−63 (2000); Fischer et al., Biotechnol. Appl. Biochem. 30 (Pt 2): 117−20 (1999); Pennell et al., Res. Immunol. 149(6): 599−603 (1998); Eldin et al., J. Immunol. Methods. 201(1): 67−75 (1997);, Frenken et al., Res. Immunol. 149(6): 589−99 (1998); Shusta et al., Nature Biotechnol. 16(8): 773−7 (1998)。
本発明の抗体断片および誘導体を包含する抗体は、昆虫細胞で生成させることもできる。例えば、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Li et al., Protein Expr. Purif. 21(1): 121−8 (2001); Ailor et al., Biotechnol. Bioeng. 58(2−3): 196−203 (1998); Hsu et al., Biotechnol. Prog. 13(1): 96−104 (1997); Edelman et al., Immunology 91(1): 13−9 (1997); および Nesbit et al., J. Immunol. Methods 151(1−2): 201−8 (1992)。
【0090】
本発明による抗体、ならびにその断片および誘導体はまた、植物細胞、特にトウモロコシまたはタバコにおいて産生させることもでき、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Giddings et al., Nature Biotechnol. 18(11): 1151−5 (2000); Gavilondo et al., Biotechniques 29(1): 128−38 (2000); Fischer et al., J. Biol. Regul. Homeost. Agents 14(2): 83−92 (2000); Fischer et al., Biotechnol. Appl. Biochem. 30 (Pt 2): 113−6 (1999); Fischer et al., Biol. Chem. 380(7−8): 825−39 (1999); Russell, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 240: 119−38 (1999); および Ma et al., Plant Physiol. 109(2): 341−6 (1995)。
本発明による抗体断片および誘導体を包含する抗体は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物ミルクで産生させることもできる。例えば、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Pollock et al., J. Immunol Methods. 231: 147−57 (1999); Young et al., Res. Immunol. 149: 609−10 (1998); Limonta et al., Immunotechnology 1: 107−13 (1995)。
本発明による抗体、抗体断片および抗体誘導体の組換え発現に有用な哺乳動物細胞は、CHO細胞、COS細胞、293細胞および骨髄腫細胞を包含する。
Verma et al., J. Immunol. Methods 216(1−2):165−81 (1998)(これらの記載を引用してここに組入れる)には、抗体の発現にかかわる細菌、酵母、昆虫および哺乳動物発現系を発表し、比較している。
本発明による抗体はまた、Merk et al., J. Biochem. (Tokyo) 125(2): 328−33 (1999)およびRyabova et al., Nature Biotechnol. 15(1): 79−84 (1997)にさらに説明されているように、無細胞翻訳によって生成させることもでき、またPollock et al., J. Immunol. Methods 231(1−2): 147−57 (1999)にさらに説明されているように、トランスジェニック動物のミルクで生成させることもできる(これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる)。
本発明はさらに、1種または2種以上の本発明によるタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する抗体断片、本発明の単離核酸によりコードされた1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する抗体断片、もしくはその結合を1種または2種以上の本発明のタンパク質およびタンパク質断片により、または本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片により競合的に阻害することができる抗体断片を提供する。
このような有用な断片の中には、Fab、Fab’、Fv、F(ab)’および単鎖Fv(scFv)断片がある。その他有用な断片は、Hudson, Curr. Opin. Biotechnol. 9(4): 395−402 (1998)に記載されている。
【0091】
もう一つの側面において、本発明は、本発明によるタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する抗体誘導体、本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する抗体誘導体、もしくはその結合を1種または2種以上の本発明のタンパク質およびタンパク質断片により、または本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片により競合的に阻害することができる抗体誘導体を提供する。
このような有用な誘導体の中には、キメラ、霊長類化、およびヒト化抗体があり、このような誘導体はヒトにおいては免疫原性に乏しく、従って非ヒト哺乳動物種からの未修飾抗体に比較して、in vivo投与に適している。
キメラ抗体は代表的に、1種の動物、代表的にヒトの定常領域に融合された別の1種の動物、代表的にマウスの免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖可変領域(CDRおよびフレームワーク残部(residues)を包含する)を含有する。例えば、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それら全体の引用によりここに組入れる:米国特許第5,807,715号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA.81(21): 6851−5 (1984); Sharon et al., Nature 309(5966): 364−7 (1984); Takeda et al., Nature 314(6010): 452−4 (1985)。霊長類化およびヒト化抗体は代表的に、非霊長類またはヒト抗体のV領域フレームワーク中にグラフトされたマウス抗体からの重鎖および/または軽鎖CDRを包含し、通常ヒト定常領域をさらに包含する。下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それら全体の引用によりここに組入れる:Riechmann et al., Nature 332(6162): 323−7 (1988); Co et al., Nature 351(6326): 501−2 (1991); 米国特許第6,054,297号;同第5,821,337号;同第5,770,196号;同第5,766,886号;同第5,821,123号;同第5,869,619号;同第6,180,377号;同第6,013,256号;同第5,693,761号;および同第6,180,370号。
本発明によるもう1種の有用な抗体誘導体は、ヘテロマー状抗体複合体および抗体融合体、例えばダイアボディ(二重特異性抗体)、単鎖ダイアボディ、およびイントラボディ(intrabodies)を包含する。
【0092】
本発明の抗体をコードする核酸は、本発明の抗体のクローン化または発現用の組換えベクターを形成する別の核酸に作動可能に結合させることができるものと考えられる。本発明は、真核生物の形質導入用であるか、トランスフェクション用であるかまたは遺伝子治療用であるかに関係なく、コード配列またはその一部を含有する全部の組換えベクターを包含する。このようなベクターは、当業者に公知である慣用の分子生物学的技術を用いて調製することができ、またフレームワークおよびCDRまたはその一部を包含する免疫グロブリンV−領域用のDNAコード配列、および細胞内移送用のシグナル配列を伴うか、または伴わない適当なプロモーターを含有することができる。このようなベクターは、当業者に公知である慣用の技術によって真核細胞中に形質導入することができ、またはトランスフェクションすることができる(Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 90: 7889−7893 (1993); Duan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 91: 5075−5079 (1994))。
その断片および誘導体を包含する本発明による抗体は、有用に標識することができる。従って、もう一つの態様において、本発明は1種または2種以上の本発明によるタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する標識した抗体、本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する標識した抗体、もしくはその結合を1種または2種以上の本発明のタンパク質およびタンパク質断片により、または本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片により競合的に阻害することができる標識した抗体を提供する。
この標識の選択は、部分的に、所望の用途に依存する。
一例として、本発明の抗体を組織試料の免疫組織化学的染色に用いる場合、この標識は好ましくは、検出可能な生成物の生成および局所的沈着を触媒する酵素である。
抗体に共有結合し、それらの免疫組織化学的可視化を可能にする代表的酵素は周知であり、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびウレアーゼを包含する。目視で検出できる生成物の生成および沈着用の代表的基質は、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG);o−フェニレンジアミンジヒドロクロライド(OPD);p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP);p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(PNPG);3’,3’−ジアミノベンジジン(DAB);3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC);4−クロロ−1−ナフトール(CN);5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート(BCIP);ABTS(登録商標);BluoGal;ヨードニトロテトラゾリウム(INT);ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT);フェナジンメソサルフェート(PMS);フェノールフタレインモノホスフェート(PMP);テトラメチルベンジジン(TMB);テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT);X−Gal;X−Gluc;およびX−グルコシドを包含する。
【0093】
別種の基質を用いて、発光性である局所沈着生成物を生成させることもできる。一例として、過酸化水素(H)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を存在させ、環状ジアシルヒドラジド化合物、例えばルミノールの酸化を触媒させることができる。この酸化の直後、ルミノールは励起状態(中間反応生成物)であり、光を放射することによって基底状態に減衰する。この光放射の強力な増強は、増強剤、例えばフェノール系化合物によってもたらされる。利点には、放射線を用いることなく、また少量のみの抗体を要して、高感度、高解像力、および迅速な検出が得られることが包含される。一例として、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Thorpe et al., Methods Enzymol. 133: 331−53 (1986); Kricka et al., J. Immunoassay 17(1): 67−83 (1996);およびLundqvist et al., J. Biolumin. Chemilumin. 10(6): 353−9 (1995)。このような強化化学発光検出(ECL)用キットは市販されている。
抗体はまた、コロイド状金を用いて標識することができる。
もう一つの例として、本発明の抗体を、例えばフローサイトメトリーによる検出、走査性レーザーサイトメトリーによる検出、または蛍光免疫分析に使用する場合、これらはフルオロフォアにより標識すると有用であることができる。
本発明の抗体に有用に結合させることができるフルオロフォア標識には、広く種々のフルオロフォアが存在する。
フローサイトメトリー用途の場合、細胞外検出用および細胞内検出用の両方において、共通して有用なフルオロフォアは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC);アロフィコシアニン(APC);R−フィコエリトリン(PE);ぺリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP);テキサスレッド(Texas Red);Cy3、Cy5、蛍光共鳴エネルギータンデムフルオロフォア、例えば、PerCP−Cy5.5、PE−Cy5、PE−Cy5.5、PE−Cy7、PE−テキサスレッド、およびAPC−Cy7であることができる。
別種のフルオロフォアは、中でも、アレクサフルオール(登録商標)350、アレクサフルオール(登録商標)488、アレクサフルオール(登録商標)532、アレクサフルオール(登録商標)546、アレクサフルオール(登録商標)568、アレクサフルオール(登録商標)594、アレクサフルオール(登録商標)647(Molecular Probes,Inc.Eugene,OR,USAから入手することができるモノクローナル抗体標識キット);BODIPY染料、例えばBODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 558/568、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、カスケードブルー、カスケードイエロー、ダンシル、リッサミンローダミンB(Iissamin rhodamine B)、マリナブルー、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、テキサスレッド(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR, USAから入手することができる)、およびCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7を包含し、これら全部が本発明の抗体の蛍光標識に有用である。
【0094】
標識したアビジン、ストレプトアビジン、カプトアピジンまたはニュートラアビジンを用いる二次検出の場合、本発明の抗体はビオチンにより有用に標識することができる。
本発明による抗体を、例えばウエスタンブロット用途に用いる場合、これらは放射性同位元素、例えば33P、32P、35S、H、および125Iにより有用に標識することができる。
別の例として、本発明による抗体を放射性免疫治療に用いる場合、この標識は有利には、228Th、227Ac、225Ac、223Ra、213Bi、212Pb、212Bi、211At、203Pb、194Os、188Re、186Re、153Sm、149Tb、131I、125I、111In、105Rh、99mTc、97Ru、90Y、90Sr、88Y、72Se、67Cuまたは47Scであることができる。
もう一つの例として、本発明による抗体をin vivo診断用途に用いる場合、これらはMRI造影剤、例えばガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)に共有結合させることによって(Lauffer et al., Radiology 207(2): 529−38 (1998))、または放射性同位元素標識することによって検出可能にすることができる。
理解されるように、上記標識の使用は、その用途が記載されている用途に制限されない。
その断片および誘導体を包含する本発明による抗体はまた、毒素に結合させることができ、これにより本発明によるタンパク質を表示および/または発現する細胞に対して毒素の除去作用を標的化することができる。通常、このようなイムノトキシンにおける抗体は、シュードモナス外毒素A、ジフテリア毒素、シガ毒素A、炭疽菌毒素致死因子、またはリシンに結合させる。下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Hall (ed.), Immunotoxin Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology, vol. 166), Humana Press (2000);およびFrankel et al. (eds.), Clinical Applications of Immunotoxins, Springer−Verlag (1998)。
本発明による抗体は、基体に有利に結合させることができ、従ってもう一つの側面において、本発明は、基体に結合されている1種または2種以上の本発明によるタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する抗体、本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片に特異的に結合する抗体、もしくはその結合を1種または2種以上の本発明のタンパク質およびタンパク質断片により、または本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片により競合的に阻害することができる抗体を提供する。
【0095】
基体は、多孔質または非多孔質で平坦または非平坦であることができる。
一例として、本発明による抗体は、濾過媒体、例えば免疫親和性クロマトグラフィー目的用のNHS−活性セファロースまたはCNBr−活性化セファロースに有用に結合させることができる。
一例として、本発明による抗体は、代表的にビオチン−ストレプトアビジン相互反応によって、常磁性微小球体に結合させることができ、この微小球体は次いで、本発明によるタンパク質を発現または表示する細胞の単離に使用することができる。もう一つの例において、本発明による抗体は、ELISA用の微量滴定板の表面上に有用に結合させることができる。
上記したように、本発明による抗体は真核生物および原核生物細胞で産生することができる。従って、もう一つの側面において、本発明は本発明による抗体を発現する細胞を提供し、これら細胞にはハイブリドーマ細胞、B細胞、形質細胞、および本発明による抗体を発現させるために組換えにより修飾された宿主細胞が包含される。
さらにもう一つの側面において、本発明は、1種または2種以上の本発明によるタンパク質およびタンパク質断片に対する特異的結合、本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片に対する特異的結合、もしくはその結合を1種または2種以上の本発明のタンパク質およびタンパク質断片により、または本発明の単離核酸によりコードされる1種または2種以上のタンパク質およびタンパク質断片により競合的に阻害することができる特異的結合を惹起するアプタマーを提供する。
要約すると、本発明の教示が提供されることによって、当業者は本発明による抗体の生物学的性質の変更に使用することができる、所定の抗体分子の安定性または寿命、免疫原性、毒性、親和性または収率を増加または減少させる方法を含む、種々の方法、または特定の用途にさらに適するようにすることができるいずれか別の方法によってそれを変更する方法を入手することができる。
【0096】
トランスジェニック動物および細胞
他の側面では、本発明は、本発明の核酸分子を含むトランスジェニック細胞および非ヒト生物を提供する。好ましい態様では、トランスジェニック細胞および非ヒト生物は、LSPをコードする核酸分子を含む。好ましい態様では、LSPは配列番号143〜277から選択されるアミノ酸配列、またはその断片、ミューテイン、相同タンパク質または対立遺伝子変異体を含む。他の好ましい態様では、トランスジェニック細胞および非ヒト生物は、本発明のLSNA、好ましくは配列番号1〜142からなる群から選択される核酸配列、またはその部分、実質的に類似の核酸分子、対立遺伝子変異体もしくはハイブリダイズする核酸分子を含む、LSNAを含む。
他の態様では、トランスジェニック細胞および非ヒト生物は、ヒトLSGの内在性オーソログの標的化された破壊または置換を有する。トランスジェニック細胞は、胚性幹細胞または体細胞であることができる。トランスジェニック非ヒト生物は、キメラ、非キメラへテロ接合体、および非キメラホモ接合体であることができる。トランスジェニック動物を作製する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo: Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Press (1999)、Jackson et al., Mouse Genetics and Transgenics: Practical Approach, Oxford University Press (2000)およびPinkert, Transgenic Animal Technology: Laboratory Handbook, Academic Press (1999)を参照。
本発明の核酸分子を動物に導入し、トランスジェニック動物の創始系統を作製するために、当該技術分野で知られている任意の技術を用いることができる。かかる技法としては、前核(pronuclear)マイクロインジェクション(例えばPaterson et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 40: 691−698 (1994)、Carver et al., Biotechnology (NY) 11:1263−1270 (1993)、Wright et al., Biotechnology (NY) 9: 830−834 (1991)および米国特許第4,873,191号(1989))、生殖系列、胚盤胞または胚へのレトロウイルス媒介性遺伝子移入(例えば、Van der Putten et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 82: 6148−6152 (1985)を参照)、胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング(例えば、Thompson et al., Cell 56: 313−321 (1989)を参照)、細胞または胚のエレクトロポレーション(例えば、Lo, 1983, Mol Cell. Biol. 3: 1803−1814 (1983)を参照)、遺伝子銃を用いた導入(例えば、Ulmer et al., Science 259: 1745 (1993)を参照)、胚性多能性幹細胞への核酸構築物の導入および胚盤胞への幹細胞の移し戻し、および精子媒介性遺伝子移入(例えば、Lavitrano et al., Cell 57: 717−723 (1989)を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
他の技術としては、例えば、静止状態にした培養胚、胎児または成人細胞からの核の、除核卵母細胞への核移入が挙げられる(例えば、Campell et al., Nature 380: 64−66 (1996); Wilmut et al., Nature 385: 810−813 (1997)を参照)。本発明は、そのすべての細胞に導入遺伝子(即ち、本発明の核酸分子)を持つトランスジェニック動物、ならびに、その細胞のすべてではないが、いくつかに移入遺伝子を持つ動物、即ちモザイク動物またはキメラ動物を提供する。
導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、または、コンカテマー状、例えば頭−頭タンデムまたは頭−尾タンデム状に、複数のコピーとして組込むことができる。導入遺伝子はまた、たとえばLasko et al. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 6232−6236 (1992)の教示にしたがい、特定の細胞タイプに選択的に導入し、活性化させることができる。かかる細胞タイプ特異的な活性化に必要な調節配列は、対象となる特定の細胞タイプに依存し、それは当業者には明らかであろう。
トランスジェニック動物が一旦創出されれば、組換え遺伝子の発現は、標準的な技法を利用してアッセイされ得る。初期スクリーニングは、導入遺伝子の組み込みが起ったことを確認すべく動物組織を分析するために、サザンブロット分析またはPCR技法により達成され得る。トランスジェニック動物の組織における導入遺伝子のmRNA発現レベルはまた、動物から得られた組織試料のノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析、および逆転写酵素PCR(RT−PCR)が含まれるが、これらに限定されない技法を用いて評価してもよい。トランスジェニック遺伝子発現組織の試料はまた、導入遺伝子産物に特異的な抗体を用いて、免疫細胞化学的に、または免疫組織化学的に評価してもよい。
創始動物が一旦作製されれば、それらを、繁殖、同系交配、異系交配、または交雑させて、特定の動物コロニーを作製してもよい。かかる繁殖戦略の例としては、別個の系統を樹立するために、1つよりも多い組み込み部位を有する創始動物を異系交配すること、各導入遺伝子の付加的発現の効果が理由で、高いレベルで導入遺伝子を発現する複合遺伝子導入をもたらすために、別個の系統を同系交配させること、発現を増大させ、かつDNA分析による動物のスクリーニングの必要性をなくすために、対象となる組み込み部位に関してホモ接合性の動物を生産するために、ヘテロ接合性のトランスジェニック動物を交雑させること、複合へテロ接合性またはホモ接合性系統を生産するために、別個のホモ接合性系統を交雑させること、および対象となる実験モデルに適切な、明瞭なバックグラウンドに導入遺伝子を配置させるために繁殖させることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明のトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドの生物機能を説明し、異常発現に関連した症状および/または疾患を研究し、かかる症状および/または疾患を改善するのに効果的な化合物をスクリーニングするのに有用な動物モデル系を含むが、これに限定されない用途を有する。
トランスジェニック動物を標的遺伝子の破壊によって創出する方法も、当該技術分野でよく知られている。一般的に、内在性標的遺伝子に相同ないくつかのヌクレオチド配列を含むようにベクターを設計する。ベクターを細胞に導入し、それが、染色体の配列との相同組換えを介して、内在性遺伝子に組込まれ、それによって内在性遺伝子の機能を破壊できるようにする。導入遺伝子はまた、特定の細胞タイプに選択的に導入することができ、こうしてこの細胞タイプでのみ、内在性遺伝子が不活性化される。かかる細胞タイプ特異的な不活性化に必要な調節配列は、対象となる特定の細胞タイプに依存しており、当業者には明らかだろう。例えば、Smithies et al., Nature 317: 230−234 (1985)、Thomas et al., Cell 51: 503−512 (1987)、Thompson et al., Cell 5: 313−321 (1989)を参照。
1つの態様では、選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーを用いて、あるいは用いずに、内在性核酸配列(遺伝子のコード領域または調節領域)に相同的なDNAに隣接した突然変異体である本発明の非機能性核酸分子(または完全に非関連のDNA配列)を使用して、in vivoで本発明のポリペプチドを発現する細胞をトランスフェクトすることができる。別の態様では、当該技術分野にて既知の技法を用いて、対象となる遺伝子を含有するが、発現はしない細胞におけるノックアウトを創出する。標的相同組換えを介したDNA構築物の挿入は、結果として標的遺伝子の不活性化を招く。かかるアプローチは、研究および農業の分野に特に適しており、そこで胚性幹細胞の改変によって、不活性な標的遺伝子を有する動物の子孫を創出することができる。例えば、上記Thomasおよび上記Thompsonを参照。しかしながら、組換えDNA構築物が、当業者には明らかであろう適切なウイルスベクターを用いて、必要とされる部位にin vivoで直接的に投与されるか、または標的化されるという条件で、このアプローチは、ヒトにおける使用にルーチンで適合され得る。
【0099】
本発明のさらなる態様では、本発明のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞、あるいは本発明のポリペプチドを発現しないように遺伝子操作された(例えば、ノックアウト)細胞は、患者にin vivoで投与される。かかる細胞は、動物、または患者、またはMHC適合ドナーから得てもよく、線維芽細胞、骨髄細胞、血液細胞(例えば、リンパ球)、脂肪細胞、筋細胞、内皮細胞などを含むことができるが、これらに限定されない。細胞は、組換えDNA技法を用いて、in vitroで遺伝子操作され、細胞に本発明のポリペプチドのコード配列を導入するか、あるいは例えば形質導入(ウイルスベクター、および好ましくは細胞ゲノムに導入遺伝子を組み込むベクターを用いて)、またはプラスミド、コスミド、YAC、裸のDNA、エレクトロポレーション、リポソーム等の使用を含むが、これらに限定されないトランスフェクション手法により、本発明のポリペプチドに関するコード配列および/または内在性調節配列を崩壊させる。
本発明のポリペプチドのコード配列は、強力な構成型もしくは誘導型プロモーターまたはプロモーター/エンハンサーの制御下に置くことにより、本発明のポリペプチドの発現、好ましくは分泌を達成することができる。本発明のポリペプチドを発現、好ましくは分泌する操作細胞を全身的に、例えば、循環にて、または腹腔内にて患者に導入することができる。
あるいは、細胞をマトリックス中に組み込み、体内へ移植することができ、例えば、遺伝子操作した線維芽細胞を、皮膚移植片の一部として移植することができ、または、遺伝子操作した内皮細胞を、リンパ管または血管移植片の一部として移植することができる。例えば、各々その全体が参照により本明細書に組込まれる米国特許第5,399,349号および第5,460,959号を参照。
投与されるべき細胞が非自系または非MHC適合細胞である場合、それらは、導入細胞に対する宿主免疫応答の発生を防ぐ既知の技法を用いて、投与され得る。例えば、細胞は、直に接している細胞外環境との構成成分の交換が可能であるものの、導入細胞が宿主免疫系により認識されることが不可能なカプセル化形態で導入されてもよい。
本発明のトランスジェニックおよび「ノックアウト」動物は、本発明のポリペプチドの生物機能を説明し、異常な発現に関連した症状および/または疾患を研究し、かかる症状および/または疾患を改善するのに効果的な化合物をスクリーニングするのに有用な動物モデル系を含むが、これらに限定されない用途を有する。
【0100】
コンピュータ可読な手段
本発明のもう一つの側面は、本発明の核酸およびアミノ酸配列を保存するためのコンピュータ可読な手段に関する。好適態様において、本発明は、本明細書に記載されている配列番号1〜142および配列番号143〜277の一組の完全配列またはいずれかの組合せ配列を保存するためのコンピュータ可読な手段を提供する。このコンピュータ可読な手段の記録は、読取りおよび表示のため、ならびに、或る基準に適合するデータ、配列の比較、一組の基準に適合する配列の整列または順序などにかかわる質問に対するデータのロケーションを可能にするプログラムを適用するためのコンピュータに接続させるためにアクセスすることができる。
本発明の核酸およびアミノ酸配列は、検索分析に有用であるデータベースにおける、また配列分析アルゴリズムにおける構成要素として特に有用である。本明細書で用いられている「本発明の核酸配列」および「本発明のアミノ酸配列」の用語は、コンピュータ可読な形態に縮小されるか、または縮小することができるか、もしくは保存することができる、本発明によるポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれかの検出可能な化学的または物理的特徴を意味する。これらに制限されないものとして、これらにはクロマトグラフィー走査データまたはピークデータ、写真データまたはそこからの走査データ、および質量分析のデータが包含される。
本発明は、本発明による配列がそこに保存されているコンピュータ可読な媒体を提供する。コンピュータ可読な媒体は、1種または2種以上の下記のものを包含することができる:本発明の核酸配列の配列を包含する核酸配列;本発明のアミノ酸配列の配列を包含するアミノ酸配列;少なくとも一つの上記配列が本発明の核酸配列の配列を包含する一組の核酸配列;少なくとも一つの上記配列が本発明のアミノ酸配列の配列を包含する一組のアミノ酸配列;1種または2種以上の本発明による核酸配列の配列を包含する核酸配列を表わす一組のデータ;本発明のアミノ酸配列の配列を包含するアミノ酸配列をコードする核酸配列を表わす一組のデータ;少なくとも一つの上記配列が本発明の核酸配列の配列を包含する一組の核酸配列;少なくとも一つの上記配列が本発明のアミノ酸配列の配列を包含する一組のアミノ酸配列;本発明の核酸配列の配列を包含する核酸配列を表わす一組のデータ;本発明のアミノ酸配列の配列を包含するアミノ酸配列をコードする核酸配列を表わす一組のデータ。コンピュータ可読な媒体は、情報またはデータの保存に用いられるいずれかの要素であることができ、例えば市販のフロッピー(登録商標)ディスク、テープ、ハードドライブ、コンパクトディスクおよびビデオディスクを包含する。
【0101】
本発明によりまた、文字配列、特に遺伝子配列の分析方法が提供される。好適な配列分析方法は、例えば配列相同性分析(例えば、同一性および類似性の分析)、RNA構造分析、配列のアセンブリ、分岐論的分析、配列モチーフ分析、オープンリーディングフレーム決定、核酸塩基の呼び出し、およびシークエンシングクロマトグラムピーク分析の方法を包含する。
コンピューターベースの方法は、核酸配列の同一性または類似性の特定を行う方法を提供する。この方法は、コンピュータ可読な媒体において本発明の核酸の配列を包含する核酸配列を用意する工程;およびこの核酸配列を少なくとも1種の核酸またはアミノ酸配列と比較し、配列同一性または類似性を確定する工程;を包含する。
コンピューターベースの方法はまた、アミノ酸相同性の同定を行う方法を提供し、この方法は、コンピュータ可読な媒体において本発明のアミノ酸の配列を包含するアミノ酸配列を用意する工程;およびこのアミノ酸配列を少なくとも1種の核酸またはアミノ酸配列と比較し、相同性を確定する工程;を包含する。
コンピューターベースの方法はさらにまた、単一核酸配列中に核酸配列を重複させるアセンブリ方法を提供する。この方法は、コンピュータ可読な媒体において本発明の核酸の配列を包含する第一の核酸配列を用意する工程;およびこの第一の核酸配列と第二の核酸配列との間の少なくとも一つの重複領域についてスクリーニングする工程;を包含する。
【0102】
肺癌の診断方法
本発明はまた、癌の定量的および定性的診断分析方法、ならびに、肺癌を有するか、または有する恐れがあるヒト患者における、もしくは肺癌を発病する危険性を有する患者におけるLSNAまたはLSPの発現と、正常ヒト対照におけるLSNAまたはLSPの発現とを比較することによって、癌を検出、診断、モニタリング、病期分類および予見する方法を提供する。本発明の目的に関して、「LSNAの発現」または「PSNP発現」の用語は、当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができるLSGmRNAの量または患者の細胞、組織または患者自身において当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができる転写のレベルを意味する。同様に、「LSPの発現」または「LSP発現」の用語は、当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができるLSPの量または当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができる転写のレベルを意味する。
本発明は、患者における肺癌、特に扁平上皮癌の診断方法を提供し、この方法は、細胞、組織、臓器または体液中のLSNAまたはLSPレベルの変化について、好ましくは同一タイプの正常ヒト対照の細胞、組織、臓器または体液中のLSNAまたはLSPのレベルと比較することによって分析する方法であり、この方法において、或る場合の患者におけるLSNAまたはLSPのレベルに対する正常ヒト対照に対する増加または減少は、肺癌の存在に関連するか、または疾患の好発性に関連する。もう一つの好適態様において、本発明は、正常対照からのmRNAに比較したLSGのmRNAの構造における変化を分析することによる患者における肺癌の診断方法を提供する。これらの変化には、これらに制限されないものとして、異常スプライシング、ポリアデニル化における変化および/または5’ヌクレオチドキャッピングにおける変化が包含される。さらにもう一つの好適態様において、本発明はLSPの変化を正常対照からのLSPに比較して分析することによる患者の肺癌の診断方法を提供する。これらの変化には、例えばLSPのグリコシル化および/またはリン酸化における変化、もしくは細胞内のLSP局在化が包含される。
【0103】
好適態様において、LSNAの発現は、配列番号143〜277から選択されるアミノ酸配列、その相同体、対立遺伝子変異体または断片をコードするmRNAの量を測定することにより測定される。さらに好適な態様において、測定されるLSNA発現は、配列番号1〜142、もしくはそのハイブリダイズする核酸、相同性核酸または対立遺伝子変異体、またはこれらの核酸のいずれかの一部から選択されるLSNAmRNAの発現レベルである。LSNA発現は、当該技術分野で公知のいずれかの方法、例えば上述の方法によって測定することができ、このような方法にはノーザンブロットによるmRNA発現の測定、定量的または定性的逆転写酵素PCR(RT−PCR)の測定、マイクロアレイ法、ドットブロットまたはスロットブロット法、またはin situハイブリダイゼーション法が包含される。
一例として、Ausubelによる上記文献(1992年);Ausubelによる上記文献(1999年);Sambrookによる上記文献(1989年);およびSambrookによる上記文献(2001年)を参照することができる。LSNA転写は、対象となるLSGのプロモーターまでフックされたレセプター遺伝子を用いるか、または核ラン−オフアッセイを行う方法を包含する当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができる。mRNA構造の変化、例えば異常スプライシング変異体は、当業者に公知のいずれかの方法により測定することができ、このような方法にはRT−PCR、引続くシークエンシング分析または制限分析が包含される。必要に応じて、LSNA発現は、公知対照、例えば正常肺核酸と比較し、発現の変化を検出することができる。
もう一つの好適態様において、LSPの発現は、配列番号143〜277、もしくはその相同体、対立遺伝子変異体または断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLSPのレベルを測定することによって測定される。このようなレベルは好ましくは、正常および異常レベルの測定を包含し、少なくとも1種の細胞、組織、臓器および/または体液で測定する。すなわち、一例として、正常対照の体液、細胞または組織試料に比較したLSNAまたはLSPの過剰または過少発現を診断する本発明による診断方法は、肺癌の存在の診断に使用することができる。LSPの発現レベルは、当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができ、このような方法には上記記載の方法が包含される。好適態様において、LSP発現レベルは、放射性免疫検定法、競合−結合検定法、ELISA、ウエスタンブロッティング、FACS、免疫組織化学法、免疫沈降法、プロテオミクス手法:二次元ゲル電気泳動(2D電気泳動)および無ゲルベースの手法、例えば質量分析またはタンパク質相互作用プロファイリングにより測定することができる。一例として、Harlowによる上記文献(1999年);Ausubelによる上記文献(1992年);およびAusubelによる上記文献(1999年)を参照することができる。LSP構造における変化は、当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができ、このような方法は、例えばホスホセリン、ホスホトレオニンまたはホスホチロシン残基を特異的に認識する抗体を使用する方法、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2DPAGE)を使用する方法および/またはタンパク質のアミノ酸残基を化学的に分析する方法を包含する。同上。
【0104】
好適態様において、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはELISAが用いられる。LSPに特異的な抗体は、これがすでに利用できる状態にない場合には調製する。好適態様において、この抗体はモノクローナル抗体である。抗−LSP抗体を固体支持体に結合させ、次いでこの固体支持体上のいずれかの遊離タンパク質結合部位をタンパク質、例えばウシ血清アルブミンによりブロックする。LSPが抗−LSP抗体に結合する条件下に、この固体支持体上で抗体とともに対象となる試料をインキュベートする。試料を取り除き、この固体支持体を洗浄し、未結合物質を除去し、次いでこの固体支持体に検出可能な試薬(RIAの場合、放射性物質、またELISAの場合、酵素)に結合されている抗−LSP抗体を添加し、次いで標識した抗体に対するLSPの結合が生じる条件下にインキュベートする。ELISAの場合、1種または2種以上の基質を添加し、試料中のLSPの量に基づく着色した反応生成物を生成させる。RIAの場合、この固体支持体を当該技術分野で公知のいずれかの方法により放射能減衰シグナルについて計量する。RIAおよびELISAの両方にかかわる定量的結果は代表的に、標準曲線を引用して得られる。
LSPレベルの別の測定方法は当該技術分野で公知である。一例として、競合アッセイを用いることができ、この方法では、抗−LSP抗体を固体支持体に結合させ、次いでこの固体支持体とともに割当てられた量の標識されたLSPおよび対象となる試料をインキュベートする。固体支持体に結合された標識したLSPの検出量は、試料中のLSPの量と相関させることができる。
プロテオミクス手法の場合、2D PAGEは周知の技術である。血清などの試料からの各タンパク質の単離は、等電点および分子量によるタンパク質の順次的分離を用いて達成される。代表的に、ポリペプチドが等電点により先ず分離され(第一次元)、次いで電流を用いてサイズにより分離される(第二次元)。一般に、第二次元分離は第一次元分離に対して直角である。相違する配列を有する2種のタンパク質は、サイズおよび電荷の両方に基づき同一であることから、2D PAGEの結果は、各タンパク質が特別のスポットを占有する略短形のゲルである。化学的または抗体プローブによるスポットの分析、または引続くタンパク質マイクロシークエンシングは、所定のタンパク質の相対的存在量および試料中のタンパク質の同定を明らかにすることができる。
【0105】
LSNAの発現レベルは、当該技術分野で公知のいずれかの方法により測定することができ、かかる方法には、PCRおよびその他の核酸法、例えば診断および種々の悪性腫瘍のモニタリングのための悪性細胞の検出に使用することができるリガーゼ連鎖反応(LCR)および核酸配列ベースの増幅(NASBA)が包含される。一例として、逆転写酵素PCR(RT−PCR)は、数千の別種のmRNA種の複合混合物中における特定のmRNA集団の存在の検出に使用することができる強力な技術である。RT−PCRにおいて、mRNA種を先ず、酵素、逆転写酵素を用いて相補性DNA(cDNA)に逆転写する;このcDNAを次いで、標準PCR反応でのように増幅させる。
固体支持体上に整列された特定のDNA分子(例えば、オリゴヌクレオチド)は、対象となる1種または2種以上のLSNAの発現の検出および発現レベルの定量の両方に使用することができる。この方法において、1種または2種以上のLSNAの全部または一部を基体に固定する。RNAを含有し得る対象となる試料を、ハイブリダイゼーションが固体支持体上のDNAと対象となる試料中の核酸分子との間で生じる条件下に、固体支持体とともにインキュベートする。基体に結合したDNAと試料中の核酸分子との間のハイブリダイゼーションは、数種の手段により検出し、また定量することができ、このような手段は、これらに制限されないものとして、核酸分子またはハイブリットが検出されるようにデザインされた二次分子に対する放射能標識または蛍光標識を包含する。
【0106】
上記試験は、種々の細胞、体液および/または組織抽出物、例えば患者から得られたホモジネートまたは可溶化組織に由来する試料に対し行うことができる。組織抽出物は、組織生検および解剖材料から日常的に得られる。本発明において有用な体液は、血液、尿、唾液またはいずれか他の身体分泌液またはその派生物を包含する。血液の用語は、全血、血漿、血清またはいずれかの血液の派生物を包含することを意味する。好適態様において、LSNAまたはLSPの発現にかかわり試験される試料は、これらに制限されないものとして、肺組織、気管支胞洗浄(BAL)により得られる液体、痰、細胞培養で増殖した肺細胞、血液、血清、リンパ節組織およびリンパ液を包含する。もう一つの好適態様において、特に原発性肺癌の転移が知られているか、または予測される場合、この試料には、これらに制限されないものとして、脳、骨、骨髄、肝臓、副腎および大腸からの組織が包含される。一般に、これらの組織は、生検により試料採取することができ、この生検には、これらに制限されないものとして、針生検、例えば経胸腔針吸引、頚部縦隔鏡検査、内視鏡リンパ節生検、ビデオ補助胸腔鏡、試験開胸、骨髄生検、および骨髄吸引が包含される。Scottによる上記文献およびKaneによる上記文献中のFranklinによる529−570頁を参照することができる。早期の安価な検出の場合、喀痰試料中の細胞のLSNAまたはLSPにおける変化にかかわる分析は特に有用である。喀痰試料の採取方法および分析方法は、Franklinによる上記文献に記載されている。
本発明による全方法は、場合により、LSNAまたはLSPの発現レベルの測定に加え、1種または2種以上の別種癌マーカーの発現レベルの測定を包含することができる。かなりの場合、さらに1種の癌マーカーの使用は誤った陽性または誤った陰性の可能性を減少させる。一態様において、1種または2種以上の別種の癌マーカーは、本明細書に記載されているような別種のLSNAまたはLSPを包含する。本発明で有用な別種の癌マーカーは、検査される癌に依存し、当業者にとって公知である。好適態様において、特定のLSNAまたはLSPに加え、少なくとも1種の別種の癌マーカーを測定する。さらに好適な態様において、少なくとも2種の別種の癌マーカーを使用する。さらにまた好適態様において、少なくとも3種、さらに好ましくは少なくとも5種、さらにまた好ましいものとして少なくとも10種の癌マーカーを使用する。
【0107】
診断
一態様において、本発明は肺癌を有するものと予測される患者からの試料中の1種または2種以上のLSNAまたはLSPの発現レベルおよび/または構造変化を測定する方法を提供する。一般に、この方法は、患者から試料を得る工程、LSNAおよび/またはLSPの発現レベルまたは構造変化を測定する工程、および次いでLSNAまたはLSPの発現レベルから患者が肺癌を有するかを推定する工程を包含する。一般に、LSNAまたはLSPの発現が対照に比較して高い場合、肺癌が示唆され、またLSNAまたはLSPの発現レベルが、好ましくは正常ヒト対照の同一細胞、組織または体液に比較し、少なくとも2倍またはそれ以上である場合、さらに好ましくは少なくとも5倍高い場合、さらにまた好ましくは少なくとも10倍高い場合、診断は陽性であると考えられる。これに対して、対照に比較して低いLSNAまたはLSP発現が肺癌を示唆する場合、LSNAまたはLSPの発現レベルが、好ましくは正常ヒト対照の同一細胞、組織または体液に比較し、少なくとも2倍低い、さらに好ましくは少なくとも5倍低い、さらにまた好ましくは少なくとも10倍低いならば、この診断分析は陽性であると考えられる。正常ヒト対照は、相違する患者から、または同一患者の冒されていない組織からのものであることができる。
本発明はまた、肺癌が患者において転移された癌であるかを診断する方法を提供する。その肺癌が転移された癌であるかは、種々の組織の1種または2種以上のLSNAまたはLSPの発現レベルおよび/または構造変化を測定することによって特定することができる。或る組織に対応する非癌組織(別の個人からの同一組織)よりも高レベルでLSNAまたはLSPが存在する場合であって、高レベルのLSNAまたはLSP発現が肺癌に関連する場合、転移が示唆される。同様に、或る組織に対応する非癌組織よりも低レベルでLSNAまたはLSP発現が存在する場合であって、低レベルのLSNAまたはLSP発現が肺癌に関連する場合、転移が示唆される。さらにまた、肺癌に関連するLSNAまたはLSPの構造変化の存在はまた、転移を示唆する。
一般に、対照に比較してLSNAまたはLSPの高発現が転移を示唆する場合であって、正常ヒト対照の好ましくは同一細胞、組織または体液に比較し、LSNAまたはLSPの発現レベルが少なくとも2倍高い、さらに好ましくは少なくとも5倍高い、さらに一層好ましくは少なくとも10倍高いならば、転移にかかわる検査は陽性であると考えられる。これに対して、対照に対して低いLSNAまたはLSPの発現が転移を示唆する場合であって、正常ヒト対照の好ましくは同一細胞、組織または体液に比較し、LSNAまたはLSPの発現レベルが少なくとも2倍低い、さらに好ましくは少なくとも5倍低い、さらに一層好ましくは少なくとも10倍低いならば、転移にかかわる検査は陽性であると考えられる。
本発明のLSNAまたはLSPは、肺癌または別の肺関連障害が関連する発現パターンを認識するアレイまたは多検体試験における要素として使用することができる。さらに、核酸またはタンパク質の配列は、肺障害のパターン認識用のコンピュータープログラムにおける要素として使用することができる。
【0108】
病期分類
本発明はまた、ヒト患者における肺癌の病期分類方法を提供する。この方法は、肺癌を有するヒト患者を特定し、次いでこのようなヒト患者からの細胞、組織または体液を1種または2種以上のLSNAまたはLSPの発現レベルおよび/または構造変化について分析することを包含する。先ず、種々の患者からの1種または2種以上の腫瘍を、当該技術分野で周知の方法に従い病期分類し、次いで1種または2種以上のLSNAまたはLSPの発現レベルを各病期について測定し、LSNAおよびLSPのそれぞれにかかわる標準発現レベルを得る。次いで、その病期が不明である患者からの生物学的試料において、そのLSNAまたはLSP発現レベルを測定する。この患者からのLSNAまたはLSP発現レベルを次いで、標準発現レベルと比較する。患者からのLSNAおよびLSPの発現レベルと標準発現レベルとを比較することによって、当該腫瘍の病期を決定することができる。同一方法を、LSNAまたはLSPの構造変化を用いて行い、肺癌の病期を決定することができる。
【0109】
モニタリング
本発明はさらに、ヒト患者における肺癌のモニタリング方法を提供する。転移が存在するかを決定するために、または転移が存在したとして、転移が生じ始めた時点を決定するために、ヒト患者をモニタリングすることができる。また、前癌病変が癌になるか否かを決定するために、ヒト患者をモニタリングすることができる。また、治療、例えば化学療法、放射線治療または手術が肺癌を減少または消滅させたか否かを決定するために、ヒト患者をモニタリングすることができる。この方法は、肺癌についてモニタリングすることを望むヒト患者を特定し、このヒト患者からの細胞、組織または体液を1種または2種以上のLSNAまたはLSPの発現レベルについて定期的に評価し、次いで予め得たLSNAまたはLSP発現レベルに対し、経過時間にわたってそのLSNAまたはLSPレベルを比較することを包含する。患者はまた、肺癌に関連するLSNAまたはLSPの1種または2種以上の構造変化を測定することによってモニタリングすることもできる。
LSNAまたはLSPの増加した発現が、転移、処置の失敗、または前癌病変の癌病変への転化に関連する場合、LSNAまたはLSPの発現レベルの増加の検出は、それぞれこの腫瘍が転移癌であること、処置は失敗であること、または病変は癌であることを示唆する。これが真実である場合、減少した発現レベルは、転移がないこと、治療が効果的であること、または新生物病変への進行が失敗に終わっていることを示唆するものと、当業者は認識するものと見なされる。LSNAまたはLSPの発現減少が、転移、治療の失敗、前癌病変の癌病変への転化に関連する場合、LSNAまたはLSP発現レベルの減少の検出は、それぞれこの腫瘍が転移であること、処置は失敗であること、または病変は癌であることを示唆する。好適態様において、LSNAまたはLSPのレベルは、前の患者と同一の細胞種、組織または体液から測定される。肺癌転移の開始にかかわる患者のモニタリングは、定期的に行い、好ましくは一年四回行うが、この頻度は多くても、または少なくてもよい。
本明細書に記載されている方法はまた、LSNAまたはLSPの発現レベルの増加または減少を伴う疾患または障害の発生または発生の危険性について対象を特定するための予後検査として利用することができる。本発明は、被験試料をヒト患者から採取し、次いで1種または2種以上のLSNAおよび/またはLSPを検出する方法を提供する。正常ヒト対照に比較した高レベル(または低レベル)のLSNAおよび/またはLSPの存在によって、当該ヒト患者における癌、特に肺癌の発病にかかわる危険性が診断される。本発明の1種または2種以上のLSNAおよび/またはLSPの減少した(または増加した)発現または活性に対する治療剤の効果はまた、臨床試験におけるヒト患者のLSNAおよび/またはLSPの発現レベルの分析によって、またはヒト細胞におけるなどのin vitroスクリーニングアッセイによって、モニタリングすることができる。この方法で、遺伝子発現パターンは、このような場合があるとして、試験される治療剤に対するヒト患者または細胞の生理学的応答を示すマーカーとしての役目を果たすことができる。
【0110】
遺伝子欠陥または変異の検出
本発明の方法はまた、LSGにおける遺伝子欠陥または変異の検出に使用し、これにより遺伝子欠陥を有するヒトが肺癌を発病しやすいかを測定することができ、または遺伝子欠陥がヒトに存在する肺癌に対し応答性であるか、または部分的に応答性であるかを測定することができる。遺伝子欠陥は、一例として、本発明のLSGからの1種または2種以上のヌクレオチドの欠失、挿入および/または置換の存在、LSGの染色体再構成、LSGの異常修飾(例えば、ゲノムDNAのメチル化パターン)、またはLSGの対立遺伝子の喪失を確認することによって検出することができる。本発明のLSGにおける、このような欠陥の検出方法は、本明細書の教示に従い当業者に知られている。
【0111】
非癌性肺疾病の検出方法
本発明はまた、非癌性肺疾病を有することが予測されるか、または有することが知られている患者からの試料中の1種または2種以上のLSNAおよび/またはLSPの発現レベルおよび/または構造変化の測定方法を提供する。一般に、この方法は、患者から試料を採取する工程、LSNAおよび/またはLSPの発現レベルおよび/または構造変化を測定する工程、このLSNAおよび/またはLSPの発現レベルおよび/または構造変化を、正常肺対照と比較する工程、および次いで、当該患者が非癌性肺疾病を有するか否かを確認する工程を包含する。一般に、対照に比較して高レベルのLSNAまたはLSP発現が特定の非癌性肺疾病を示唆する場合であって、LSNAまたはLSPの発現レベルが、正常ヒト対照の、好ましくは同一細胞、組織または体液中よりも少なくとも2倍高い、好ましくは5倍高い、さらに好ましくは少なくとも10倍高い場合、この診断試験は陽性であると考えられる。これに対して、LSNAまたはLSPの低い発現レベルが非癌性肺疾病を示唆する場合であって、LSNAまたはLSPの発現レベルが、正常ヒト対照の、好ましくは同一細胞、組織または体液中よりも少なくとも2倍低い、好ましくは5倍低い、さらに好ましくは少なくとも10倍低い場合、この診断試験は陽性であると考えられる。
当業者は、LSNAおよび/またはLSPを特定の非癌性肺疾病と関係付けられるかは、対象となる非癌性肺疾病を有する患者からの肺組織を採取し、次いでこの組織において、LSNAおよび/またはLSPが正常肺組織に比較して高レベルまたは低レベルで発現していることを測定することによって決定することができる。もう一つの例において、LSNAまたはLSPが特定の非癌性肺疾病において構造変化を示すかは、対象となる非癌性肺疾病を有する患者からの肺組織を採取し、正常肺組織に比較して1種または2種以上のLSNAおよび/またはLSPの構造変化を測定することによって決定することができる。
【0112】
肺組織の同定方法
もう一つの側面において、本発明は肺組織の同定方法を提供する。これらの方法は、例えば法医学、肺細胞の分化、および発育において、また組織工学において特に有用である。
一態様において、本発明は、試料が肺組織であるか、または肺組織様特徴を有するかを測定する方法を提供する。この方法は、肺組織または肺組織様特徴を有する組織であると予想される試料を採取する工程、この試料が1種または2種以上のLSNAおよび/またはLSPを発現するかを測定する工程、および試料が1種または2種以上のLSNAおよび/またはLSPを発現した場合、試料は肺組織を含有するものと結論する工程を包含する。好適態様において、LSNAは配列番号143〜277、もしくはその相同体、対立遺伝子変異体または断片から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
さらに好適な態様において、LSNAは配列番号1〜142、もしくはそのハイブリダイズする核酸、対立遺伝子変異体または一部から選択されるヌクレオチド配列を有する。試料がLSNAを発現するかにかかわる測定は、当該技術分野で公知のいずれかの方法によって達成することができる。好適方法は、マイクロアレイに対するハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、および定量的または定性的RT−PCRを包含する。もう一つの好適態様において、この方法は、LSPが発現されるかについて測定することによって実施することができる。試料がLSPを発現するかにかかわる測定は、当該技術分野で公知のいずれかの方法によって実施することができる。好適方法は、ウエスタンブロット、ELISA、RIAおよび2DPAGEを包含する。一態様において、LSPは配列番号143〜277、もしくはその相同体、対立遺伝子変異体または断片から選択されるアミノ酸配列を有する。もう一つの好適態様において、少なくとも2種のLSNAおよび/またはLSPの発現を測定する。さらに好適な態様において、少なくとも3種、さらに好ましくは4種、さらにまた好ましくは5種のLSNAおよび/またはLSPの発現を測定する。
一態様において、この方法は、未知試料が肺組織であるかについての決定に使用することができる。これは法医学において特に有用であり、この場合、顕微鏡またはその他の手段によって同定することができない組織の小さい損傷した組織を犯罪または事故現場から採取する。もう一つの態様において、この方法は、組織が肺組織に分化または成長するかについての測定に使用することができる。これは、種々の作用物質の細胞または組織培養物への添加効果のモニタリングに、例えば組織操作による新しい肺組織の生成に、重要である。これらの作用物質には、例えば成長および分化因子、細胞外マトリックスタンパク質および培地が包含される。組織発生および分化に対する効果を測定することができる別種の因子には、細胞または組織中への遺伝子転移、pHの変更、水:空気界面および種々の別の培養条件が包含される。
【0113】
肺組織の生成および修飾方法
もう一つの側面において、本発明は操作された(engineered)肺組織または細胞の生成方法を提供する。一態様において、この方法は、細胞を用意する工程、この細胞中にLSNAまたはLSGを導入する工程、およびこれらの細胞が肺組織細胞の1種または2種以上の特徴を示す条件下に、これらの細胞を成長させる工程を包含する。好適態様において、これらの細胞は多分化能を有する。当該技術分野で周知のように、正常肺組織は、多数の相違する細胞種を包含する。従って、一態様において、この操作された肺組織または細胞は、これらの細胞種の1種を包含する。もう一つの態様において、操作された肺組織または細胞は、1種以上の肺細胞を含有する。さらに、これらの細胞または組織の培養条件は、肺細胞組織の完全な分化および成長を達成するための操作を必要とすることがある。培養条件の取り扱い方法は、当該技術分野で周知である。
1種または2種以上のLSPをコードする核酸分子は、細胞、好ましくは多能性細胞中に導入される。好適態様において、この核酸分子は、配列番号143〜277、もしくはその相同タンパク質、類縁体、対立遺伝子変異体または断片から選択されるアミノ酸配列を有するLSPをコードする。さらに好適な態様において、この核酸分子は、配列番号1〜142、もしくはそのハイブリダイズする核酸、対立遺伝子変異体または一部から選択されるヌクレオチド配列を有する。もう一つのさらに好適な態様において、LSGが細胞中に導入される。細胞中への核酸分子の導入方法および発現ベクターは、当該技術分野で周知であり、上記文献に詳細に記載されている。
人工肺組織は、彼等の肺機能のいくらか、または全部を失った患者の処置に使用することができる。
【0114】
医薬組成物
他の側面において、本発明は、本発明による核酸分子、ポリペプチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、アゴニスト、アンタゴニストおよびインヒビターを含有する医薬組成物を提供する。好適態様において、この医薬組成物は、LSNAまたはその一部を含有する。さらに好適な態様において、LSNAは配列番号1〜142、そこにハイブリダイズする核酸、その対立遺伝子変異体、またはこれと実質的に同一の配列を有する核酸からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。もう一つの好適態様において、医薬組成物は、LSPまたはその断片を含有する。さらに好適な態様において、LSPは、配列番号143〜277、これと相同性であるポリペプチド、このポリペプチドの全部または一部を包含する融合タンパク質、もしくはその類縁体または誘導体からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。もう一つの好適態様において、医薬組成物は、抗LSP抗体、好ましくは配列番号143〜277からなる群から選択されるアミノ酸を有するLSP、これと相同性であるポリペプチドに結合する抗体、このポリペプチドの全部または一部を含有する融合タンパク質、もしくはその類縁体または誘導体を含有する。
このような組成物は代表的に、薬学的に許容される担体または賦形剤中に、および/または薬学的に許容される担体または賦形剤を用いて、本発明の治療剤を約0.1〜90重量%の量で含有する。
医薬組成物は充分に確立された技術であり、下記刊行物に開示されており、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000); Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th ed., Lippincott Williams & Wilkins (1999);およびKibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association, 3rd ed. (2000)。
【0115】
簡単には、本発明の医薬組成物の組成は、投与のために選択される経路に依存する。本発明で利用される医薬組成物は、経腸および非経口の両方を包含する種々の経路によって投与することができ、このような経路には、経口、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、局所、舌下、直腸、動脈内、脊髄内、くも膜下、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内、および子宮内が包含される。
経口剤型は、患者によって消化される錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして調剤することができる。
経口投与用組成物の固形製剤は、適当な担体または賦形剤、例えば炭水化物またはタンパク質充填剤、例えば、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを包含する糖;トウモロコシ、麦、米、ジャガイモ、またはその他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、または微結晶セルロースなどのセルロース類;アラビアゴムおよびトラガカントガムを包含するガム類;ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質類;カオリン、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機化合物;およびアカシアおよびアルギン酸などの助剤を含有することができる。
分解および/または溶解を促進する助剤を添加することができ、例えば架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム塩、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、ナトリウムデンプングリコレート、およびアルギン酸を添加することができる。
使用することができる錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン(Povidone)(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖、デンプンおよびエチルセルロースを包含する。
使用することができる滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリコーン液、タルク、ワックス類、油類、およびコロイド状シリカを包含する。
前記材料を包含する充填剤、分解および/または溶解を促進する助剤、錠剤結合剤および滑剤は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
固形経口剤型は、全体的に均一である必要はない。一例として、糖衣錠芯部を適当なコーティング、例えば濃縮糖溶液コーティング(これはまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンを含有することができる)、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物と組合せて使用することができる。
【0116】
本発明の経口剤型は、ゼラチンから形成されているプッシュ−フィット型(push−fit)カプセル剤、ならびにゼラチンおよびコーティング、例えばグリセロールまたはソルビトールから形成されている軟質のシールされたカプセル剤を包含する。プッシュ−フィット型カプセル剤は、充填剤または結合剤(例えば、乳糖またはデンプン)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)、および必要に応じて、安定剤と混合された活性成分を含有することができる。軟質カプセル剤において、活性成分は安定剤を含有するか、または含有していない適当な液体、例えば脂肪油、液体、液状ポリエチレングリコールに溶解または懸濁することができる。
さらに、錠剤または糖衣錠コーティングには染料または顔料を添加することができ、これにより製品を確認することができ、または活性化合物の量、すなわち用量を特定することができる。
経口(経腸)投与用の医薬組成物の液体製剤は、水または水性媒質中で調製され、種々の懸濁剤、例えばメチルセルロース、アルギネート、トラガカントガム、ペクチン、ケルジン(Kelgin)、カラゲニン、アカシア、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールを含有することができる。液体製剤はまた、溶液、エマルジョン、シロップ、およびエリキシルを包含し、活性成分(1種または2種以上)とともに湿潤剤(1種または2種以上)、甘味剤および着色剤、ならびに風味付与剤を含有することができる。
本発明の医薬組成物はまた、非経口投与用に調剤することができる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌注射溶液または懸濁液の形態であることができる。
静脈注射の場合、水溶性形態の本発明による化合物を生理学的に許容される液状媒質、例えば5%デキストロース(「D5」)、生理学的に緩衝されている塩類溶液、0.9%塩類溶液、ハンクス溶液(Hanks’ solution)、またはリンゲル溶液中で調剤され、または凍結乾燥物である場合、これらの液体と混合される。静脈用製剤は、担体、賦形剤または安定剤を含有することができ、これらには、これらに制限されないものとして、カルシウム、ヒト血清アルブミン、クエン酸塩、酢酸塩、塩化カルシウム、炭酸塩またはその他の塩が包含される。
筋肉内製剤、例えば適当な可溶性形態の本発明による化合物の無菌製剤は、医薬用賦形剤、例えば注射用水、0.9%塩類溶液、または5%グルコース溶液に溶解し、次いで投与することができる。別法として、適当な不溶性形態の化合物を調製し、水性基剤または医薬として許容される油性基剤、例えば長鎖状脂肪酸のエステル(例えば、オレイン酸エチル)、脂肪油(例えば、ゴマ油)、トリグリセライド類またはリポソーム中の懸濁液として投与することができる。
【0117】
組成物の非経口製剤は、種々の担体、例えば植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)を含有することができる。
水性注射用懸濁液はまた、懸濁液の粘度を高める物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランを含有することができる。非脂質ポリカチオンアミノポリマー類はまた、送達用に使用することができる。必要に応じて、この懸濁液はまた、適当な安定剤または僅かに濃厚な溶液の生成を可能にするために化合物の溶解度を高める助剤を含有することができる。
本発明の医薬組成物はまた、注射可能な長期間貯蔵製剤の形態に調剤することができる。この注射可能なデポ製剤は、生体分解性ポリマー、例えばポリ乳酸−ポリグリコライド中で化合物の微小カプセル封入マトリックスを形成することによって製造することができる。ポリマーに対する医薬の割合および使用される特定のポリマーの性質に応じて、医薬放出速度を制御することができる。別の生体分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を包含する。デポ型注射用製剤はまた、身体組織に適合することができる微小エマルジョン中に医薬をトラップさせることによって製造される。
本発明の医薬組成物は、局所投与することができる。
局所使用の場合、本発明の化合物はまた、皮膚または鼻および喉の粘膜に施用するのに適する形態に調製することができ、またローション、クリーム、軟膏、液体スプレイまたは吸入液、点眼剤、チンキ、トローチ、または喉塗布剤の形態をとることができる。このような局所用製剤はまた、活性成分の表面浸透を容易にするために、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような化学化合物を含有することができる。別の経皮製剤、代表的に貼布型放出製剤において、医薬活性化合物は1種または2種以上の皮膚浸透剤、例えば2−N−メチル−ピロリドン(NMP)またはアゾン(Azone)を用いて調剤することができる。局所用半固体軟膏製剤は代表的に、約1%〜20%、例えば5〜10%の濃度の活性成分を担体、例えば医薬用クリーム基剤中に含有する。
眼または耳に施用する場合、本発明の化合物は、軟膏、クリーム、ローション、ペイントまたは粉末として、疎水性または親水性基剤中で調剤される液状または半液状形態に調製することができる。
【0118】
直腸投与の場合、本発明の化合物は慣用の担体、例えばカカオ脂、ワックスまたはその他のグリセリドと混合されている座薬の形態で投与することができる。 吸入製剤はまた、容易に調剤することができる。吸入剤の場合、種々の粉末および液体製剤を調製することができる。エアロゾル製剤の場合、化合物または塩形態の化合物の無菌製剤を吸入器、例えば計量剤型吸入器およびネブライザーで使用することができる。エアゾル化形態は、呼吸器障害の処置に特に有用であることができる。
あるいは、本発明による化合物は、供給時点で適当な薬学的に許容される担体中で再構成するのに適する粉末形態であることができる。
本発明の医薬組成物中の薬学的に活性な化合物は、種々の酸の塩として提供することができ、これらに制限されないものとして、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩およびコハク酸塩を包含する。これらの塩は、対応する遊離塩基形態に比較し、水性または別のプロトン性溶媒中にさらに溶解性である傾向を有する。
医薬組成物を調製した後、これらは適当な容器内に包装することができ、適応症状の処置用にラベルを付けることができる。
活性化合物は、意図する目的の達成に有効な量で存在させる。有効用量の決定は充分に、当業者の能力の範囲内にある。
「治療有効用量」の用語は、活性成分、例えばLSPポリペプチド、融合タンパク質またはその断片、LSPに特異的な抗体、LSPのアゴニスト、アンタゴニストまたはインヒビターの、疾患の兆候または症状を軽減するか、またはその進行を防止する量である。医療分野で理解されているように、治癒は、望ましいが必要ではない。
本発明の医薬剤の治療有効量は、最初にin vitro試験、例えば細胞培養試験により推定することができ、次いでモデル動物、通常マウス、ラット、イヌまたはブタにおいて試験する。動物モデルはまた、初期好適濃度範囲および投与経路の決定に使用することができる。
【0119】
一例として、ED50(全体の50%で治療的に有効な用量)およびLD50(全体の50%を致死させる用量)は、動物モデル系の1種または2種以上の細胞培養により決定することができる。治療効果に対する毒性の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50として表わすことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物は好適である。
細胞培養試験および動物実験から得られるデータは、ヒト用途用の初期用量範囲の組成に使用され、好ましくは僅かな毒性または無毒性のED50を包含する循環濃度範囲を提供する。投与後、または順次投与の間、この活性剤の循環濃度は、当業者に周知の医薬動態因子、例えば使用される剤型、患者の感受性、および投与経路に依存して、この範囲内で変化する。
正確な用量は、処置を要する患者に特異的な因子の観点から、実施者によって決定される。実施者が考慮することができる因子は、疾患状態の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時期および頻度、医薬の組合せ、反応への感受性、および治療に対する耐容/応答を包含する。長期作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランスに応じて、3〜4日間置きに、一週間置きに、または2週間置きに一回、投与することができる。
通常の用量は、投与経路に依存して、約1gの総量まで0.1から100,000マイクログラムまで変えることができ、治療剤が本発明によるタンパク質または抗体である場合、治療性タンパク質または抗体製剤は代表的に、0.01mg〜30mg/患者の体重kg(例えば、1mg/kg〜5mg/kg)の一日薬用量で投与される。医薬製剤は、所望により、一日多回の用量で投与することができ、これにより所望の総合一日薬用量を得ることができる。
特定の剤型および供給方法にかかわる指針は、刊行物に提供されており、また一般に当該技術分野の実施者に利用することができる。当業者はタンパク質またはそれらのインヒビターについてよりも、ヌクレオチドについて相違する製剤を使用することができるものと見なされる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの放出は、特定の細胞、状態、場所などに特異的なものと見なされる。
医療技術の当業者にとって公知である慣用の方法を使用し、本発明の医薬製剤(1種または2種以上)を患者に投与することができる。本発明の医薬組成物は単独で、または別種の治療剤と組合せて、または別種の治療剤を介在させて投与することができる。
【0120】
治療方法
本発明はまた、本発明の遺伝子における欠陥、例えば発現、活性、分布、場所および/または溶解性にかかわる欠陥を有する対象の処置方法を提供する。これらの欠陥は肺機能障害として現れる。本明細書で使用するものとして、「処置」の用語は、疾患の一時的軽減および予防(防止)を包含する医学的に許容される全てのタイプの治療的介入を包含する。「処置」の用語は、僅かな改善を包含する疾患のいずれかの改善を包含する。これらの方法は、以下で説明する。
【0121】
遺伝子治療およびワクチン
本発明の単離核酸はまた、本発明によるポリペプチドのin vivo発現の誘導に使用することができる。in vivo発現は、遺伝子治療目的用のベクター、代表的にウイルスベクター、多くの場合、複製不全レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクターから誘導することができる。in vivo発現はまた、「裸の」核酸ワクチン注射目的で、核酸に対して内因性のシグナルから誘導することができ、またはベクター、多くの場合、プラスミドベクター、例えばpVAXI(Invitrogen, Carlsbad,CA,USA)から誘導することができ、さらに下記刊行物に開示されており、これらの記載を、それら全体の引用によりここに組入れる:米国特許第5,589,466号;同第5,679,647号;同第5,804,566号;同第5,830,877号;同第5,843,913号;同第5,880,104号;同第5,958,891号;同第5,985,847号;同第6,017,897号;同第6,110,898号;および同第6,204,250号。癌治療の場合、ベクターはまた、腫瘍選択性であると好ましい。一例として、Doronin et al., J. Virol. 75: 3314−24 (2001)を参照することができる。
本発明の治療方法のもう一つの態様において、本発明の核酸を含有する治療有効量の医薬組成物を投与する。この核酸は、LSP、融合タンパク質またはその断片の発現を誘導するベクターにおいて、またはこのようなベクターを用いることなく、産生させることができる。LSPの発現を誘導することができる核酸組成物を投与し、例えば天然LSPにおける欠陥を補足することができ、またはDNAワクチンとして投与することができる。ウイルス、複製欠失レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴(AAV)ウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルスから誘導される発現ベクターは、canプラスミドとして使用することができる。例えば、Cid−Arreguiによる上記文献を参照することができる。好適態様において、この核酸分子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するLSP、もしくはその断片、融合タンパク質、対立遺伝子変異体または相同体をコードする。
さらにもう一つの本発明による治療方法において、LSP、その融合体またはその断片を発現する宿主細胞を含有する医薬組成物を投与することができる。このような場合、細胞は代表的に、異種間または同種間拒絶が回避されるようにオーソロガスであり、またLSP産生または活性にかかわる欠陥を補足するために投与される。好適態様において、この細胞中の核酸分子は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するLSP、もしくはその断片、融合タンパク質、対立遺伝子変異体または相同体をコードする。
【0122】
アンチセンス投与
アンチセンス核酸組成物またはLSGアンチセンス核酸の発現を誘導するベクターは、疾患の病理学的基礎として過剰産生または異常タンパク質が存在する状況において、LSGの転写および/または翻訳を下方調節するために投与される。
治療に有用なアンチセンス組成物は、LSGのコード領域または非コード領域に対し相補性である配列を有することができる。一例として、転写開始部位から誘導されるオリゴヌクレオチド、例えば出発部位から−10〜+10のオリゴヌクレオチドは好適である。
触媒的アンチセンス組成物、例えばLSG転写体に配列特異的にハイブリダイズすることができるリボザイム類はまた、治療に有用である。一例として、下記刊行物を参照することができ、これらの記載を、それらの全体の引用によりここに組入れる:Phylactou, Adv. Drug Deliv. Rev. 44(2−3): 97−108 (2000); Phylactou et al., Hum. Mol. Genet. 7(10): 1649−53 (1998); Rossi, Ciba Found. Symp. 209: 195−204 (1997);およびSigurdsson et al., Trends Biotechnol. 13(8): 286−9 (1995)。
本発明による治療方法に有用な別種の核酸は、LSGゲノム座中またはその付近で三重らせんを形成することができる核酸である。このような三重らせん状オリゴヌクレオチドは、転写を抑制することができる。例えば、下記文献を参照することができ、これらの記載を、その全体の引用によりここに組入れる:Intody et al., Nucleic Acids Res. 28(21): 4283−90 (2000); McGuffie et al., Cancer Res. 60(14): 3790−9 (2000)。このような3量体形成オリゴ(TFO)を含有する医薬組成物は、疾患の病態生理学的基礎として過剰発現または異常タンパク質の生成が存在する状況で投与される。
好適態様において、アンチセンス分子はLSP、好ましくは配列番号143〜277のアミノ酸配列、もしくはその断片、対立遺伝子変異体または相同体を包含するLSPをコードする核酸分子から誘導される。さらに好適な態様において、アンチセンス分子は、配列番号1〜142のヌクレオチド配列、もしくはその一部、対立遺伝子変異体、実質的に類似のまたはハイブリダイズする核酸を有する核酸分子から誘導される。
【0123】
ポリペプチド投与
本発明による治療方法の一態様において、LSP、融合タンパク質、もしくはその類縁体または誘導体を含有する治療有効量の医薬組成物を、臨床的に重大なLSP欠陥を有する対象に投与する。
タンパク質組成物は、例えば天然LSPの欠陥を補足するために投与される。別の態様において、タンパク質組成物はワクチンとして投与され、これによりLSPに対する体液および/または細胞における免疫応答が惹起される。この免疫応答はLSP活性の調節に使用することができ、または免疫原に応じて、異常形態または異常に発現された形態、例えば突然変異体または不適当に発現したイソ型に対し免疫感作するために使用することができる。さらに別の態様において、毒素分子を含有するタンパク質融合体を投与し、LSPが異常蓄積する細胞を除去することができる。
好適態様において、ポリペプチドは配列番号143〜277のアミノ酸配列、もしくはその融合タンパク質、対立遺伝子変異体、相同体、類縁体または誘導体を包含するLSPである。さらに好適な態様において、このポリペプチドは、配列番号1〜142のヌクレオチド配列を有する核酸分子、もしくはその一部、対立遺伝子変異体、実質的に類似の核酸、またはハイブリダイズする核酸によってコードされる。
【0124】
抗体、アゴニストおよびアンタゴニスト投与
本発明による治療方法の別の態様において、治療有効量の本発明の抗体(その断片または誘導体を包含する)を含有する本発明による医薬組成物が投与される。周知のように、抗体組成物は、例えばLSP活性に拮抗させるために、または治療剤をLSPが存在および/または蓄積している部位に標的化するために、投与される。好適態様において、この抗体は、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するLSP、もしくはその融合タンパク質、対立遺伝子変異体、相同体、類縁体または誘導体に特異的に結合する。さらに好適な態様において、この抗体は、配列番号1〜142のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされるLSP、もしくはその一部、対立遺伝子変異体、実質的に類似の核酸、またはハイブリダイズする核酸に特異的に結合する。
本発明はまた、LSPに結合するか、またはLSPの発現または活性に対し調節効果を有するモジュレーターの特定方法を提供する。LSPの発現または活性を減少させるモジュレーター(アンタゴニスト)は、肺癌の処置に有用であると信じられている。このような選別試験は、当業者にとって公知であり、これらに制限されないものとして、細胞に基づく試験法および無細胞試験法を包含する。LSPの領域に対し特異的に結合することがコンピュータ画像化により予測される小型分子をまた、肺癌の画像化および処置に使用するために、デザインし、合成し、また試験することができる。さらに、分子ライブラリーを、本発明により同定されたLSPに結合する分子の能力の評価によって抗癌剤について選別することができる。このライブラリーにおいて、LSPに対し結合可能性であるものと同定された分子は、肺癌処置における使用をさらに評価するための鍵となる候補である。好適態様において、これらの分子は細胞におけるLSPの発現および/または活性を下方調節するものと見なされる。
本発明による治療方法の別の態様において、LSPの非抗体アンタゴニストを含有する医薬組成物が投与される。LSPのアンタゴニストは、当該技術分野で一般的に知られている方法を用いて生成させることができる。特に、精製LSPを使用し、医薬剤のライブラリー、多くの場合に小型分子のライブラリーを選別することができ、これによりLSPに特異的に結合し、LSPの少なくとも1種の活性に拮抗することができるものを特定することができる。
別の態様において、LSPのアゴニストを含有する医薬組成物が投与される。アゴニストは、アンタゴニストの同定に用いられる方法と類似の方法を用いて同定することができる。
好適態様において、これらのアンタゴニストまたはアゴニストは、配列番号143〜277のアミノ酸配列を有するLSP、もしくはその融合タンパク質、対立遺伝子変異体、相同体、類縁体または誘導体に特異的に結合し、それぞれ拮抗または作用する。さらに好適な態様において、これらのアンタゴニストまたはアゴニストは、配列番号1〜142のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされるLSP、もしくはその一部、対立遺伝子変異体、実質的に類似の核酸、またはハイブリダイズする核酸に特異的に結合し、それぞれ拮抗または作用する。
【0125】
肺組織のターゲティング
本発明はまた、本発明によるポリペプチドまたはそれに対する抗体を治療剤に結合させ、治療剤を肺または肺の特定の細胞に送達できるようにする方法を提供する。好適態様において、抗LSP抗体を治療剤と結合させ、次いでこのような治療剤を必要とする患者に投与する。肺組織が選択的に破壊されることが求められる場合、これらの治療剤は毒素であることができる。この方法は、肺癌細胞をターゲティングし、これらを殺滅するのに有用である。もう一つの態様において、この治療剤は成長因子または分化因子であることができる。これらは肺細胞の機能促進に有用である。
もう一つの態様において、抗LSP抗体は、例えば磁気共鳴画像化、CTまたはPETを用いて検出することができる画像化剤に結合させることができる。この方法は、肺機能の測定およびモニタリングに、肺腫瘍の確定に、および非癌性肺疾病の確定に有用である。
【0126】

例1:遺伝子発現分析
LSGは、データマイニングソフトウェアパッケージCLASP(登録商標)(候補リード自動検索プログラム(Candidate Lead Automatic Search Program))を用いた、Incyte Genomics Inc (Palo Alto, CA)から入手可能なLIFESEQ(登録商標)Goldデータベースにおける遺伝子発現の系統的分析によって同定した。CLASP(登録商標)は、Incyteのデータベースを照会し、特定の組織に特異的で、かつ癌を有する患者からの組織に差別的に発現されている遺伝子を同定する1組のアルゴリズムである。LifeSeq(登録商標)Goldは、どの遺伝子が、体内の種々の組織で発現されているかについての情報、ならびに正常な状態および病的な状態の両方における発現の動態についての情報を含んでいる。CLASP(登録商標)は、最初にLifeSeq(登録商標)Goldデータベースを乳房、卵巣および前立腺などの所定の組織種に並べ替える。LifeSeq(登録商標)Goldデータベースの疾患試料の半数以上は癌に関係しているが、異なる癌の間では、患者試料数の顕著な違いがある。CLASP(登録商標)は、各組織試料を疾患の状態によって類別する。疾患の状態は、「健康」、「癌」、「癌に関連」、「他の疾患」および「その他」を含む。疾患の状態を類別することで、組織および癌特異的分子標的を同定する能力を損ない得るデータが除外される。CLASP(登録商標)は次に、(1)所定の組織種に、他の組織種に比べて選択的に発現され、かつ(2)同一または異なる組織に関して、「癌」の疾患状態において、他の疾患状態に比べて差別的に発現されている遺伝子について同時並行検索を行う。この並べ替えは、発現レベルにおける最小の変化、および差別的発現パターンが、遺伝子に関する組織試料全域で、統計的に有意とみなされるように観察される最小の頻度を特定する数学的および統計学的フィルターを用いて行われる。CLASP(登録商標)アルゴリズムは、各組織種および各疾患状態における特定の遺伝子の相対的な存在量を定量する。
本発明のLSGを見出すために、次の具体的なCLASP(登録商標)プロファイル、癌組織でのみ検出可能な発現(CLASP2)、癌組織において差別的な発現(CLASP5)、組織特異的発現(CLASP1)、を用いる。cDNAライブラリーは60のユニークな組織種(LifeSeq(登録商標)の以前のバージョンは、48の組織種を有した)に分けられた。遺伝子は「遺伝子ビン(gene bin)」にグループ化され、各ビンは、共通のコンティグを共有する配列のクラスターを一緒にグループ化したものである。各遺伝子の発現レベルは、各組織種について計算した。差別的発現の有意性は、サンプルサイズ、ならびに異なるライブラリーおよび各ライブラリー内における相対的な遺伝子の存在量の変動を考慮に入れた、厳密な統計学的有意性検定によって計算した(統計学的に有意な発現を決定するのに用いる等式については、987頁の等式1および988頁の等式2を含む、Audic and Claverie ”The significance of digital gene expression profiles,” Genome Res 7(10): 986−995 (1997)を参照。その内容は参照によって組込まれる)。差別的に発現された組織特異的遺伝子は、標的組織の存在量レベルの、他のすべての組織に対するパーセンテージに基づいて選択した(組織特異性)。正常組織ライブラリーにおける各遺伝子の発現レベルは、腫瘍もしくは疾患に関連する組織ライブラリーでの発現レベルと比較した(癌特異性)。結果は、統計学的有意性について分析した。
【0127】
厳密なCLASP(登録商標)プロファイルの基準に合致する標的遺伝子の選択は以下の通りであった。
(a)CLASP2:癌組織でのみ検出可能な発現:CLASP2H(高)候補となるためには、遺伝子は、腫瘍組織で検出可能な発現を、そして正常個体からのライブラリーおよび罹病患者から得た正常組織からのライブラリーでの検出不能な発現を示さなければならない。加えて、かかる遺伝子はまた、さらに、肺腫瘍組織に対して特異性を示さなければならない。
(b)CLASP5:癌組織における差別的発現:CLASP5H(高)候補となるためには、遺伝子は、標的組織の腫瘍ライブラリーにおいて、すべての組織についての正常ライブラリーに比べ、差別的に発現されていなければならない。遺伝子は、90%の信頼度で癌特異的な差別的発現を示す場合のみ、CLASP5Hリードとして選択される。
(c)CLASP1:組織特異的発現:CLASP1H(高)候補になるには、遺伝子は、統計学的に有意な組織特異的発現を示さなければならない。まず、各遺伝子の各組織における存在量レベルのパーセンテージを計算し、発現パーセンテージレベルの最も高い組織を同定した。遺伝子が、4種より多い組織種で発現を示している場合、候補は、それが標的組織において、第2位の組織に比べ5倍の絶対的存在量を、および、標的組織において、第2位の組織に比べ1.5倍の相対的存在量を示す場合にのみ、CLASP1H候補とされる。候補遺伝子が、4よりも少ない組織で発現を示している場合、候補の優先順位決定のために、3つの状況が考慮される。
a.標的組織について3つより少ないライブラリーがある場合、候補は、それが少なくとも1つの腫瘍ライブラリーで発現を示す場合にのみ高優先順位(1H)の候補とされ、それ以外の場合は、それは中位の優先順位(M)の候補とされ、それ以上は考慮されない。
b.標的組織について3つまたは4つの腫瘍ライブラリーがあり、そして少なくとも1つの腫瘍ライブラリーにおいて候補が発現を示す場合、該候補は、腫瘍組織において、正常組織に比べ高い発現パーセンテージを示す場合にのみ、高優先順位(1H)の候補とされる。それ以外の場合は、それは中位の優先順位(M)の候補とされ、それ以上は考慮されない。
c.対象となる組織の腫瘍ライブラリーが4つより多くあり、候補が40%より少ない腫瘍ライブラリーにおいて発現を示し、そして腫瘍における存在量のパーセンテージが正常におけるよりも3倍大きい場合、該候補は1H候補とされる。該候補が、0.00001よりも少ない発現パーセンテージを示す場合、それは低優先順位(L)の候補とされる。それ以外の場合は、それは中位の優先順位(M)の候補とされる。
【0128】
配列番号1〜142についてのCLASPスコアを以下に列挙する。
【外1】
Figure 2004518437
【0129】
【外2】
Figure 2004518437
【0130】
【外3】
Figure 2004518437
【0131】
【外4】
Figure 2004518437
【0132】
【外5】
Figure 2004518437
【0133】
例2:遺伝子発現の相対的定量
蛍光性タックマン(Taqman)プローブを用いたリアルタイム定量的PCRは、Taq DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性を利用する定量検出システムである。この方法は、5’をレポーター色素で、下流の3’をクエンチャー色素で標識した内部蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(タックマン)を用いる。PCRの間にTaq DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性がレポーターを放出し、次にその蛍光がモデル7700シークエンス検出システム(PE Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)のレーザー検出器により検出することができる。内在性対照の増幅を使用し、反応に添加された試料RNAの量が標準化され、逆転写酵素(RT)の効率が正規化される。シクロフィリン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ATPase、または18SリボソームRNA(rRNA)のいずれかが内部対照として用いられる。研究される全試料間の相対定量化を計算するために、1つのサンプル試料のための標的RNAレベルを結果比較のためのベース(キャリブレーター)として用いた。「キャリブレーター」に対する定量化は、標準曲線法または比較法(User Bulletin #2:ABI PRISM 7700シークエンス検出システム)を用いて得ることができる。
標的遺伝子の組織分布およびレベルを、正常組織および癌組織の全ての試料について評価した。全RNAは、正常組織、癌組織、および癌とそれに対応する対応隣接組織から抽出された。続いて逆転写酵素を用いて第1鎖cDNAが調製され、各標的遺伝子に特異的なプライマーとタックマンプローブとを用いてポリメラーゼ連鎖反応が行われた。結果は、ABI PRISM 7700シークエンス検出装置を用いて分析された。無名数は、キャリブレーター組織と比較した場合の特定組織中にある標的遺伝子の相対発現レベルである。
当業者は、適切なプライマーを設計することができる。こうして、正常組織および他の癌組織に対するLSNAの相対発現レベルを決定することができる。すべての数値は、正常胸腺(キャリブレータ)と比較してある。これらのRNA試料は市販のプールであり、異なる個体からの特定の組織の試料をプールすることによって作出されている。
【0134】
対応試料のペアおよび1つの癌および1つの正常/組織の正常隣接部分におけるLSNAの相対発現レベルもまた決定できる。すべての数値は、正常胸腺(キャリブレータ)と比較してある。対応ペアは、特定の組織についての癌試料からのmRNA、およびその同一の個体からの同一の組織についての正常隣接試料からのmRNAによって形成される。
対応試料の分析において、LSNAは、対象となる組織に対して高度の組織特異性を示す。これらの結果は、正常プール試料で得られた組織特異性の結果を確認するものである。
さらに、癌試料、および同一の個体からの同系の正常隣接組織におけるmRNA発現のレベルが比較される。この比較は、癌の病期についての具体的な指標を与える(例えば、癌試料における、正常隣接試料に比べて高いレベルのmRNA発現)。
結局、高レベルの組織特異性に加えて、テストした対応試料におけるmRNAの過剰発現は、配列番号1〜142が、癌についての診断マーカーであることを示すものである。
【外6】
Figure 2004518437
【0135】
表1
無名数は、24の異なる正常な組織におけるLng179の相対発現レベルである。すべての数値は、正常脳(キャリブレータ)と比較してある。これらのRNA試料は市販のプールであり、異なる個体からの特定の組織の試料をプールすることによって作出されている。
【表1】
Figure 2004518437
表1の相対発現レベルは、Lng179mRNAの発現が肺において、分析した他の殆どの正常組織に比べ相対的に高いことを示している。
表1の無名数は、異なる個体からの特定の組織の試料のプールを分析して得た。これらは、表2の、単一の個体の組織試料から得たRNAに由来する無名数とは比較できない。
【0136】
表2
無名数は、20組の対応試料におけるLng179の相対発現レベルである。すべての数値は、正常脳(キャリブレータ)と比較してある。対応ペアは、特定の組織についての癌試料からのmRNA、およびその同一の個体からの同一の組織についての正常隣接試料からのmRNAによって形成されている。
【表2】
Figure 2004518437
【0137】
対応試料の分析では、より高いLng179の発現が肺試料で検出され、肺組織に対する高度の組織特異性を示している。これらの結果は、正常プール試料で得られた組織特異性の結果(表1)を確認するものである。
さらにまた、癌試料および同一の個体からの同系の正常隣接組織におけるmRNA発現のレベルを比較した。この比較は、癌の病期についての具体的な指標を与える(例えば、癌試料における、正常隣接試料に比べて高いレベルのmRNA発現)。表2は、10の肺癌組織における、それぞれの正常隣接組織に対するLng179の過剰発現を示す(肺試料#1、2、3、5、7、9および10)。テストした肺対応試料の70%について、癌組織における過剰発現がある(合計10の肺対応試料のうちの7)。
結局、高レベルの組織特異性に加えて、テストした対応試料におけるmRNAの過剰発現により、Lng179は、肺癌を診断、モニタリング、病期分類、画像化および処置するための良好なマーカーであると思われる。
【表3】
Figure 2004518437
【0138】
例2 :カスタムマイクロアレイ実験
カスタムオリゴヌクレオチドマイクロアレイは、Agilent Technologies, Inc. (Palo Alto, CA)によって提供された。マイクロアレイは、Agilentによって、その60マーオリゴヌクレオチドのin situ合成についての技術を用いて作製された(Hughes, et al. 2001, Nature Biotechnology 19:342−347)。60マーのマイクロアレイプローブは、diaDexusによって提供された遺伝子配列から、Agilent によって、Agilentの所有するアルゴリズムを用いて設計された。可能な場合は、2つの異なる60マーを対象となる各遺伝子について設計した。
すべてのマイクロアレイ実験は2色実験であり、Agilentの推奨する手法および試薬を用いて行った。簡潔に説明すると、各マイクロアレイを、癌および正常組織から単離されたポリA+RNAから合成され、線形増幅法(linear amplification method)(Agilent)を用いて蛍光色素シアニン3およびシアニン5(NEN Life Science Products, Inc., Boston, MA)で標識されたcRNAとハイブリダイズさせた。各実験において、実験試料は、単一の個体からの癌組織から単離されたポリA+RNAであり、参照試料は、癌性組織と同じ器官の正常組織(即ち、肺癌試料での実験においては正常肺組織)から単離されたポリA+RNAであった。ハイブリダイゼーションは60℃で1晩、Agilentのin−situハイブリダイゼーションバッファーを用いて行った。洗浄後、アレイをGenePix 4000Bマイクロアレイスキャナ(Axon Instruments, Inc., Union City, CA)で走査した。得られた画像を、GenePix Pro 3.0マイクロアレイ取込み・分析ソフトウェア(Axon)で分析した。肺癌由来のポリA+RNA(15の扁平上皮癌、14の腺癌)の発現パターンを、12の正常肺組織のプールから単離したポリA+RNAと比較する合計29の実験が分析された。
【0139】
データの標準化および発現のプロファイリングは、GeneData Inc. (Daly City, CA/Basel, Switzerland)のExpressionistソフトウェアでなされた。遺伝子発現分析は、ある質的な基準を充足する実験のみを用いて行った。実験が充足しなければならない質的な基準は、Expressionistソフトウェアによってなされた評価と、粗データおよび標準化データを用いて手作業でなされた評価との組み合わせである。粗データの質を評価するために、各チャネルの検出限界(複製した陰性対照の平均シグナル+2標準偏差(SD))を計算した。検出限界は、非特異的ハイブリダイゼーションの指標である。不良な検出限界のアレイは分析せず、実験を繰り返した。標準化されたデータの質を評価するために、アレイに含めた陽性対照要素を用いた。これらのアレイ構成は、平均比1(mean ratio of 1)(差別的発現なし)を有するべきである。これらの構成が、上方または下方に1.5倍より大きい平均比を有している場合は、実験をそれ以上分析せず、繰り返した。各実験におけるシグナルの分散を示す従来のスキャッタープロットに加え、Expressionistソフトウェアはまた、質的なデータを同定するためのユーザー定義パラメータを用いる最低閾値基準を有する。閾値基準を充足するこれらの構成のみを、Expressionistによって行われるフィルタリングおよび分析に含めた。用いた閾値設定は、60%の最小面積パーセント[(%ピクセル>バックグラウンド+2SD)−(%飽和ピクセル)]および、両チャンネルにおけるノイズ比2.0の最小シグナルを要する。これらの基準によって、極めて低い発現体(expressor)および飽和された構成は、分析に含めなかった。
【0140】
相対発現データは、Expressionistから、フィルタリングおよびクラスター分析に基づいて収集した。上方および下方調節遺伝子は、得られた有効値のパーセンテージについての基準、および遺伝子が上方または下方調節された実験のパーセンテージを用いて同定した。これらの基準は、各データのセットについて、該データセットのサイズおよび性質に応じて個別に設定した。統計学的に有意な、上方調節および下方調節された遺伝子についての結果を表1に示す。表の最初の3つの列は、配列自体の情報(オリゴID、親ID、および特許#)を含み、次の3つの列は得られた結果を示す。「%有効」は、合計29のユニークな実験において有効な発現値が得られたパーセンテージを示し、「%上方」は、29の実験において少なくとも2.5倍の上方調節が観察されたパーセンテージを示し、そして、「%下方」は、29の実験において、少なくとも2.5倍の下方調節が観察されたパーセンテージを示す。表1の最後の列は、親配列に対する、マイクロアレイプローブ(オリゴ)の位置を記述している。さらなる配列を検査したが、データは決定的ではなかった。
表1 DEX0241系列のマイクロアレイ構成についての感受性データ
【表4】
Figure 2004518437
【0141】
例3:タンパク質発現
LSNAはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅され、LSNAをコードする増幅DNA断片が大腸菌での発現のためのpET−21d内にサブクローニングされた。LSNAのコード配列に加え、LSNAのコード配列のNH末端に隣接する2個のアミノ酸、Met−AlaおよびLSNAのコード配列のCOOH末端に隣接する6個のヒスチジンが、それぞれ開始Met/制限部位および精製タグとして用いるために組み込まれた。適切な分子量の過剰発現タンパク質バンドが、クマシーブルー染色されたポリアクリルアミドゲル上で容易に観察された。このタンパク質バンドは、6×ヒスチジンタグに対するモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット分析により確認された。
LSPの大規模な精製は、6リットルの細菌培養物から得た細胞ペーストを用いて達成され、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用して精製された。全細胞溶解産物より分離された可溶性分画はニッケルキレート樹脂とともにインキュベートされた。カラムを充填し、カラム容量の5倍量の洗浄緩衝液で洗浄した。LSPは、各種濃度のイミダゾール緩衝液により段階的に溶出された。
【0142】
例4:タンパク質融合
簡単に述べると、IgG分子のヒトFc部分は、下記配列の5’および3’末端に及ぶプライマーを用い、PCR増幅することができる。これらプライマーはまた、発現ベクター、好ましくは哺乳動物発現ベクターへのクローニングを容易にするのに好都合な制限酵素部位を持つべきである。例えば、pC4(受託番号209646)を用いる場合、ヒトFc部分はBamHIクローニング部位に連結できる。3’BamHI部位が破壊されるべきであることに留意されたい。次に、ヒトFc部分を含むベクターはBamHIにより再度制限処理され、ベクターは直線化され、実施例1に記載のPCR法により単離された本発明のポリヌクレオチドがこのBamHI部位に連結される。このポリヌクレオチドは終止コドンなしにクローニングされ、さもなければ融合タンパク質は産生されないことに留意されたい。天然に存在するシグナル配列を用いて分泌タンパク質を産生する場合には、pC4は第2シグナルペプチドを必要としない。あるいは、天然に存在するシグナル配列を使用しない場合には、ベクターは異種シグナル配列を含むように改変することができる。例えば、国際公開第96/34891号を参照。
【0143】
例5:ポリペプチド由来の抗体の産生
一般に、かかる手法は、ポリペプチド、またはより好ましくは分泌ペプチド発現細胞で、動物(好ましくは、マウス)を免疫化することを包含する。かかる細胞は、任意の適切な組織培養培地にて培養されてもよいが、10%のウシ胎児血清(約56℃にて不活性化される)で、ならびに非必須アミノ酸約10g/l、ペニシリン約1,000U/ml、およびストレプトマイシン約100μg/mlを補充したアール変法イーグル培地にて細胞を培養することが好ましい。
かかるマウスの脾細胞を摘出し、適切な骨髄腫細胞系と融合させる。本発明によれば、いかなる適切な骨髄腫細胞系を用いてもよいが、ATCCから入手可能な親骨髄腫細胞系(SP20)を用いることが好ましい。融合後、得られたハイブリドーマ細胞は、HAT培地にて選択的に保持され、続いてWands et al., Gastroenterology 80: 225−232 (1981)に記載されるように、限界希釈によりクローニングされる。
次に、かかる選択により得られたハイブリドーマ細胞をアッセイして、ポリペプチドを結合することが可能な抗体を分泌するクローンを同定する。あるいは、ポリペプチドに結合することが可能なさらなる抗体を、抗イディオタイプ抗体を用いた二段階手法にて産生することができる。かかる方法は、抗体自身が抗原であるという事実を利用するものであり、したがって、二次抗体に結合する抗体を得ることが可能である。この方法に従って、タンパク質特異的抗体を用いて、動物、好ましくはマウスを免疫化する。次に、かかる動物の脾細胞を用いて、ハイブリドーマ細胞を生産し、ハイブリドーマ細胞をスクリーニングして、タンパク質特異的抗体に結合する能力が、ポリペプチドにより阻止され得る抗体を産生するクローンを同定する。かかる抗体は、タンパク質特異的抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、それを用いて、動物を免疫化し、さらなるタンパク質特異的抗体の形成を誘発することができる。Jameson−Wolf法を用い、以下のエピトープを予測した。(Jameson and Wolf, CABIOS, 4(1), 181−186, 1988。その内容は参照によって組込まれる)。
【0144】
本発明のLSPの翻訳後修飾(PTM)の例を以下に列挙する。さらに、かかる翻訳後修飾に特異的に結合する抗体は、診断薬としてまたは治療薬として有用でありえる。ProSiteデータベース(Bairoch et al., Nucleic Acids Res. 25(1):217−221 (1997) 。その内容は参照によって組込まれる)を用いて、次のPTMが、本発明のLSPについて予測された(http://npsa−pbil.ibcp.fr/cgi−bin/npsa_automat.pl?page=npsa_prosite.html、最も最近アクセスしたのは2001年10月23日)。
【外7】
Figure 2004518437
【0145】
【外8】
Figure 2004518437
【0146】
【外9】
Figure 2004518437
【0147】
【外10】
Figure 2004518437
【0148】
【外11】
Figure 2004518437
【0149】
【外12】
Figure 2004518437
【0150】
【外13】
Figure 2004518437
【0151】
例6:ポリヌクレオチドに対応する遺伝子における変化の決定方法
RNAは、対象となる表現型を有する個々の患者または個体の家族からのRNAの単離によって決定される。次に、当該技術分野において既知のプロトコルを用いて、これらのRNA試料からcDNAが生成される。これらの技法を詳述した多くの実験室マニュアルの代表例である、例えば、上記Sambrook (2001)を参照。次いで、cDNAを、配列番号1〜142において対象となる領域を取り囲むプライマーを用いるPCR用の鋳型として使用する。PCR条件は、Sidransky et al., Science 252(5006): 706−9 (1991)に記載される緩衝溶液を用いて、95℃での30秒間、52〜58℃での60〜120秒、および70℃での60〜120秒の35サイクルから構成される。Sidransky et al., Science 278(5340): 1054−9 (1997)も参照。
次に、SequiThermポリメラーゼ(Epicentre Technologies)を用いて、T4ポリヌクレオチドキナーゼで5�末端において標識したプライマーを使用して、PCR産物を配列決定する。選択エクソンのイントロン−エクソン境界もまた決定され、ゲノムPCR産物を分析して、結果を確認する。次に、突然変異が疑われるPCR産物をクローニングして、配列決定して、直接シークエンスの結果を確認する。Holton et al., Nucleic Acids Res., 19: 1156 (1991)に記載されるように、PCR産物をT尾状(T−tailed)ベクターにクローニングし、T7ポリメラーゼ(United States Biochemical)を用いて配列決定する。病気に冒されていない個体に存在しない突然変異により、病気に冒された個体を同定する。
ゲノム再配列もまた決定することができる。ゲノムクローンを、ジゴキシゲニンデオキシ−ウリジン5�−三リン酸塩(Boehringer Manheim)でニックトランスレーションし、Johnson, C, et al., Methods Cell Biol. 35: 73−99 (1991)に記載されるように、FISHを実施する。標識プローブを用いたハイブリダイゼーションは、対応するゲノム座への特異的ハイブリダイゼーションのための、大過剰のヒトcot−1DNAを用いて行なわれる。4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールおよびヨウ化プロピジウムで染色体を対比染色し、CおよびRバンドの組合せを生じさせる。正確なマッピングのための整列画像(aligned image)は、冷却電荷結合素子カメラ(Photometrics, Tucson, AZ)および可変励起波長フィルターを併合したトリプルバンドフィルターセット(Chroma Technology, Brattleboro, VT)を用いて得られる。同書。画像取込み、分析および染色体分画長測定は、ISee Graphicalプログラムシステム(Inovision Corporation, Durham, NC)を用いて行なう。プローブによりハイブリダイズされるゲノム領域の染色体変化は、挿入、欠失および転座として同定される。これらの変化は、関連疾患用診断マーカーとして用いられる。
【0152】
例7:生物学的試料においてポリペプチドの異常レベルを検出する方法
抗体−サンドイッチELISAを用いて、試料中、好ましくは生物試料中のポリペプチドを検出する。マイクロタイタープレートのウェルを、最終濃度0.2〜10μg/mlで、特異抗体により被覆する。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり、上記の方法により産生される。ウェルへのポリペプチドの非特異的結合が低減するように、ウェルをブロッキングする。次に、被覆したウェルを、ポリペプチドを含有する試料とともに、室温にて2時間より長い時間インキュベートする。好ましくは、試料の連続希釈物を用いて、結果を確認すべきである。次に、プレートを脱イオン水または蒸留水で3回洗浄して、未結合のポリペプチドを除去する。次に、25〜400ngの濃度の特異抗体−アルカリホスファターゼ複合体50μlを添加して、室温にて2時間インキュベートする。再びプレートを脱イオン水または蒸留水で3回洗浄し、未結合の複合体を除去する。次に、各ウェルに、75μlの4−メチルウンベリフェリルホスフェート(MUP)またはp−ニトロフェニルホスフェート(NPP)基質溶液を添加し、室温にて1時間インキュベートする。
マイクロタイタープレートリーダーにより、反応を測定する。対照試料の連続希釈物を用いて、標準曲線を作成し、X軸上にポリペプチド濃度を(対数目盛)、Y軸上に蛍光または吸光度(均等目盛)をプロットする。標準曲線を用いて、試料中のポリペプチド濃度を計算する。
【0153】
例8:ポリペプチドの製剤化
分泌ポリペプチド組成物は、個々の患者の臨床状態(特に、分泌ポリペプチド単独での処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および開業医に既知の他の要素を考慮して、良質の医療のための原則(good medical practice)に沿った様式で、処方されて、投薬される。したがって、本明細書の目的に関する「有効量」は、かかる考慮により決定される。
一般的な提案として、1回用量あたり非経口的に投与される分泌ポリペプチドの薬学的総有効量は、約1μg/kg(患者の体重)/日〜10mg/kg(患者の体重)/日の範囲であろうが、上述するように、これは治療上の判断に左右されるであろう。より好ましくは、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日であり、ヒトに関して最も好ましくは、ホルモンに関して約0.01〜1mg/kg/日である。連続的に与えられる場合、分泌ポリペプチドは、典型的には、1日あたり1〜4回の注射により、または連続皮下注入により(例えば、ミニポンプを用いて)、約1μg/kg/時〜約50mg/kg/時の用量速度にて投与される。点滴バッグ(intravenous bag)溶液もまた、用いてもよい。変化を観察するのに必要な処置の期間、および処置後に応答が生じる間隔は、所望の効果に依存して変わるようである。
本発明の分泌タンパク質を含有する薬学的組成物は、経口的に、経直腸的に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(パウダー、軟膏、ジェル、滴薬または経皮パッチによるものなど)、口腔に、または口腔もしくは鼻スプレーとして、投与される。「薬学的に許容し得る担体」は、無毒性の固形、半固形または液体賦形剤、希釈剤、カプセル用材料または任意のタイプの配合助剤を指す。本明細書で使用する「非経口」という用語は、静脈内、筋内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内注射ならびに注入を含む投与様式を指す。
【0154】
分泌ポリペプチドはまた、持続放出系により適切に投与される。持続放出性組成物の適切な例としては、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。持続放出性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号およびEP 58481)、L−グルタミン酸およびガンマ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman, U. et al., Biopolymers 22: 547−556 (1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(R. Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15: 167−277 (1981)、およびR. Langer, Chem. Tech. 12: 98−105 (1982))、エチレンビニルアセテート(R. Langer et al.)、またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられる。持続放出性組成物はまた、リポソームエントラップポリペプチドを包含する。分泌ポリペプチドを含有するリポソームは、自体公知の方法により調製される(Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 3688−3692 (1985)、Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4030−4034 (1980)、EP 52,322、EP 36,676、EP 88,046、EP 143,949、EP 142,641、日本国特許出願第83−118008号、米国特許第4,485,045号および第4,544,545号、ならびにEP 102,324)。通常、リポソームは、小さい(約200〜800オングストローム)単層型であり、そこでの脂質含量は、約30molパーセントのコレステロールよりも高く、選択比率は、最適な分泌ポリペプチド治療に関して調節される。
【0155】
非経口投与に関して、一態様では、分泌ポリペプチドは、一般的に所望の純度にて、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、またはエマルジョン)で、薬学的に許容し得る担体、すなわち、使用する投与量および濃度にてレシピエントに無毒性であり、配合物の他の成分と併用可能(compatible)であるもの)と混合することにより配合される。例えば、配合物は、好ましくは、酸化剤、およびポリペプチドにとって有害であると知られている他の化合物を含まない。一般に、配合物は、液体の担体または微細固体の担体、あるいはその両方と、均一かつ緊密にポリペプチドを接触させることにより調製される。次に、必要な場合には、生成物を所望の配合物に成形する。好ましくは、担体は、非経口担体、より好ましくは、レシピエントの血液と等張である溶液である。かかる担体媒質の例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液、およびブドウ糖溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性媒質、ならびにリポソームもまた、本発明に有用である。
担体は適切に、等張性および化学的安定性を高める物質などの、少量の添加剤を含有する。かかる物質は、用いる投与量および濃度にて、レシピエントに対して無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩などの緩衝液、アスコルビン酸などの酸化防止剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンなどのアミノ酸、セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含めた単糖類、二糖類、および他の炭化水素、EDTAなどのキレート剤、マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの対イオン、および/またはポリソルベート、ポロクサマー、またはPEGなどの非イオン性界面活性剤を含む。
分泌ポリペプチドは、典型的に、約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mlの濃度で、約3〜8のpHにて、かかるビヒクル中で配合される。先述の賦形剤、担体または安定剤のうちのあるものの使用は、結果としてポリペプチド塩の形成を生じる結果となろうことは理解されるであろう。
【0156】
治療用投与のために使用されるべきポリペプチドはいずれも無菌であることができる。無菌状態は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロンの膜)を通した濾過により容易に達成される。治療用ポリペプチド組成物は一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により突き刺すことが可能なストッパーを有する点滴溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
ポリペプチドは通常、単用量または複数用量容器(例えば、密封アンプルまたはバイアル)中に、水溶液として、または再構成用凍結乾燥配合物として、保管されるであろう。凍結乾燥配合物の例として、10mlバイアルを滅菌濾過した1%(w/v)ポリペプチド水溶液5mlで充填し、得られた混合物を凍結乾燥する。注入溶液は、注射用静菌水を用いて、凍結乾燥ポリペプチドを再構成することにより調製される。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1または2以上の成分で充填された1または2以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。1または2以上のかかる容器には、医薬品または生物製品の製造、使用または販売を管轄する政府機関が定めた形式で書かれた、該機関による、ヒトへの投与に関する製品の製造、使用または販売の承認を示す通知を添付することができる。さらに、本発明のポリペプチドは、タンパク質の治療的化合物と組合わせて用いることができる。
【0157】
例9:ポリペプチドの減少したレベルを処置する方法
個体において分泌タンパク質の標準または正常発現レベルにおける減少により引き起こされる症状は、好ましくは分泌形態にある、本発明のポリペプチドを投与することにより処置できることが理解されるであろう。したがって、本発明はまた、ポリペプチドレベルの増加を必要とする個体を処置する方法であって、かかる個体においてポリペプチドの活性レベルを増加させるためのポリペプチドの量を含む医薬組成物を、かかる個体に投与することを含む方法を提供する。
例えば、減少したポリペプチドレベルを有する患者は、1日用量0.1〜100μg/kgのポリペプチドを6日間連続で受けてもよい。好ましくは、ポリペプチドは分泌形態である。投与および処方に基づく投薬スキームの正確な詳細は、上記に提供されている。
例10:ポリペプチドの増加したレベルを処置する方法
アンチセンス技術を、本発明のポリペプチドの産生を抑制するために用いる。この技術は、癌などの様々な病因に起因するポリペプチド、好ましくは分泌形態のもののレベルを減少させる方法の一例である。
例えば、異常に増加したポリペプチドレベルを有すると診断された患者に、0.5、1.0、1.5、2.0および3.0mg/kg/日にて、21日間、アンチセンスポリヌクレオチドを静脈内に投与することができる。この処置が十分に耐容された場合、処置は7日の休止期間後に繰り返される。アンチセンスポリヌクレオチドの製剤化は、上記に提供されている。
【0158】
例11:遺伝子療法を用いた処置の方法
遺伝子治療の一方法では、ポリペプチドを発現することが可能な線維芽細胞を、患者に移植する。一般に、線維芽細胞は、皮膚生検により対象から得られる。得られた組織を組織培養培地に置き、小片に分離する。組織の小片を組織培養フラスコの湿った表面上へ載せ、各フラスコにおいて約10片を載せる。フラスコを上下ひっくり返し、きつく閉めて、室温で一晩放置する。室温にて24時間後、フラスコをひっくり返し、組織片をフラスコの底に固定させたままで、新鮮な培地(例えば、Ham�s F12培地、10%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシン加)を添加する。次に、フラスコを37℃にて約1週間インキュベートする。
この時点で、新鮮な培地を添加し、続いて数日毎に取り換える。さらに2週間の培養の後、線維芽細胞の単層が現れる。単層をトリプシン処理し、大きなフラスコへはがし取る。モロニーマウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列に隣接したpMV−7(Kirschmeier, P. T. et al., DNA, 7: 219−25 (1988))をEcoRIおよびHindIIIで消化した後、仔ウシ腸ホスファターゼ(calf intestinal phosphatase)で処理する。アガロースゲル上で線状ベクターを分画し、ガラスビーズを用いて精製する。
本発明のポリペプチドをコードするcDNAを、例1に記載のとおり、それぞれ5’および3’末端配列に相当するPCRプライマー用いて増幅することができる。好ましくは、5’プライマーは、EcoRI部位を含有し、3’プライマーは、HindIII部位を含む。等量のモロニーマウス肉腫ウイルス線状主鎖ならびに増幅したEcoRIおよびHindIII断片を、T4DNAリガーゼの存在下、一緒に添加する。得られた混合物を、2つの断片の連結に適した条件下において保持する。次に、連結混合物を用いて、バクテリアHB 101を形質転換した後、ベクターが適切に挿入された所定の遺伝子を有することを確認する目的で、カナマイシンを含有する寒天上に蒔く。
【0159】
両栄養性pA317またはGP+am12パッケージング細胞を、10%の仔ウシ血清(CS)、ペニシリンおよびストレプトマイシン加ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、コンフルエント密度に、組織培養で増殖させる。次に、遺伝子を含有するMSVベクターを培地に添加し、パケージング細胞にベクターで形質導入する。すると、パッケージング細胞は、遺伝子を含有する感染ウイルス粒子を生産する(パッケージング細胞は、今度はプロデューサー細胞と称される)。
形質導入したプロデューサー細胞に、新鮮な培地を添加し、続いて、コンフルエントなプロデューサー細胞の10cmプレートから、培地を採取する。ミリポアフィルターを通して感染ウイルス粒子を含有する使用済培地を濾過し、剥離したプロデューサー細胞を除去し、続いてこの培地を用いて、線維芽細胞を感染させる。線維芽細胞のサブコンフルエントなプレートから、培地を除去し、プロデューサー細胞からの培地とすばやく入れ換える。この培地を除去し、新鮮な培地と入れ換える。ウイルスの力価が高い場合、実質的にすべての線維芽細胞は感染し、選択は必要ない。力価が非常に低い場合、neoまたはhisのような選択マーカーを有するレトロウイルスベクターを使用する必要がある。線維芽細胞がいったん効果的に感染したら、線維芽細胞を分析して、タンパク質が産生されるかどうかを決定する。次に、操作した線維芽細胞を、単独で、またはcytodex3マイクロキャリアビーズ上においてコンフルエントまで増殖させた後に、宿主に移植する。
【0160】
例12: in vivo 遺伝子治療を用いた処置の方法
本発明の他の側面は、障害、疾患および症状を処置するために、in vivo遺伝子治療方法を用いることである。遺伝子治療方法は、ポリペプチドの発現を増加または減少させるための、裸の核酸(DNA、RNA、およびアンチセンスDNAまたはRNA)配列の動物への導入に関する。
本発明のポリヌクレオチドは、プロモーターに、または標的組織によって、ポリペプチド発現に必要な任意の他の遺伝要素に作動可能に連結されてもよい。かかる遺伝子治療ならびに送達技術および方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、WO 90/11092、WO 98/11779、米国特許第5,693,622号、第5,705,151号、第5,580,859号、Tabata H. et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35 (3): 470−479、Chao J et al. (1997) Pharmacol. Res. 35(6): 517−522、Wolff J. A. (1997) Neuromuscul. Disord. 7 (5): 314−318、Schwartz B. et al. (1996) Gene Ther. 3 (5): 405−411, Tsurumi Y. et al. (1996) Circulation 94 (12): 3281−3290(参照により本明細書に組込まれる)を参照されたい。
ポリヌクレオチド構築物は、組織(心臓、筋肉、皮膚、肺、肝臓、腸など)の間質腔への注射などの、動物細胞へ注入可能な物質を送達するいかなる方法により送達されてもよい。ポリヌクレオチド構築物は、薬学的に許容し得る液体または水性担体中で送達することができる。
「裸の」ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAという用語は、細胞への侵入を補佐、促進または助長するよう作用する、ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム配合物、リポフェクチンまたは沈殿剤などを含むいかなる送達ビヒクルも含まない配列を指す。しかしながら、本発明のポリヌクレオチドはまた、当業者に既知の方法により調製され得るリポソーム配合物(例えば、Felgner P. L. et al. (1995) Ann. NY Acad. Sci. 772: 126−139、およびAbdallah B. et al. (1995) Biol. Cell 85 (1): 1−7に教示されているもの)にて送達されてもよい。
遺伝子治療方法において使用されるポリヌクレオチドベクター構築物は、好ましくは、宿主ゲノムに組み込まれない構築物であり、またそれらは、複製が可能な配列を含有しないであろう。当業者に既知のいかなる強力なプロモーターも、DNA発現を促進するために使用することができる。他の遺伝子治療技術と異なり、標的細胞へ裸の核酸配列を導入することの1つの主要な利点は、細胞におけるポリヌクレオチド合成の一過性の性質である。研究により、非複製DNA配列が細胞に導入されて、最大6ヶ月の期間、所望のポリペプチドの産生を提供することができることがわかった。
【0161】
ポリヌクレオチド構築物は、筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺、および結合組織を含む、動物内組織の間質腔へ送達され得る。組織の間質腔は、細胞間液、器官組織の細網線維間のムコ多糖マトリックス、管または房の壁における弾性線維、線維性組織のコラーゲン線維、または筋細胞を覆う結合組織内もしくは骨小腔中にある同じマトリックスを含む。循環血漿およびリンパ管のリンパ液により占有される腔も同様である。下記で論じる理由により、筋組織の間質腔への送達が好ましい。それらは、これらの細胞を含む組織への注射により利便性よく送達され得る。送達および発現は、未分化またはあまり完全には分化していない細胞、例えば、血液の幹細胞または皮膚線維芽細胞などにおいて達成され得るが、それらは、好ましくは、分化した永続性の非分裂細胞に送達され、そこで発現される。in vivoの筋細胞は特に、ポリヌクレオチドを取り込み、発現するそれらの能力に優れている。
裸のポリヌクレオチド注射に関して、有効投与量のDNAまたはRNAは、約0.05μg/体重kg〜約50mg/体重kgの範囲であろう。好ましくは、投与量は、0.005mg/kg〜約20mg/kgであり、より好ましくは約0.05mg/kg〜約5mg/kgであろう。当然のことながら、当業者が理解するように、この投与量は、注射の組織部位により変化するであろう。適切かつ有効な投与量の核酸配列は、当業者により容易に決定することができ、それは、処置する症状および投与経路に依存し得る。好ましい投与経路は、組織の間質腔への注射の非経口経路によるものである。しかしながら、特に肺もしくは気管支組織、咽喉または鼻の粘膜への送達用のエアロゾル配合物の吸入などの、他の非経口経路もまた使用してもよい。さらに、裸のポリヌクレオチド構築物は、血管形成中に、当該手順で使用されるカテーテルにより、動脈へ送達することができる。
【0162】
筋肉中に注射されたポリヌクレオチドのin vivoでの用量反応効果は以下のように決定される。本発明のポリペプチドをコードするmRNAの産生のための適切な鋳型DNAを、標準的な組換えDNA方法論にしたがって調製する。鋳型DNAは、環状または線状のいずれであってもよく、それは裸のDNAとして用いられるか、あるいはリポソームと複合体を形成する。次に、マウスの四頭筋に、様々な量の鋳型DNAを注射する。
5〜6週齢の雌および雄Balb/Cマウスを、2.5%アベルチン0.3mlの腹腔内注射により麻酔する。腹側大腿上に1.5cmの切開を施し、四頭筋を直接見えるようにする。筋肉の膝への遠位付着部位から約0.5cmかつ約0.2cmの深さで、1分にわたり、27ゲージ針を通じて、1ccの注射器内の担体0.1ml中の鋳型DNAを注射する。将来の位置確認のために注入部位上に縫合糸を設置し、皮膚をステンレス製クリップで閉じる。
適切なインキュベーション時間後(例えば、7日)、四頭筋全体を切除することにより、筋肉摘出物を調製する。個々の四頭筋のすべての5番目の15μm断面を、タンパク質発現のために組織化学的に染色する。タンパク質発現に関するタイムコースは、種々のマウス由来の四頭筋が異なる時間にて採取されることを除いて、同様の様式にて行なわれ得る。注射後の筋肉中のDNAの永続性は、注射したマウスおよび対照マウスから全細胞DNAおよびHIRT上清を調製した後に、サザンブロット分析により確定されてもよい。
マウスでの上記実験の結果を用いて、裸のDNAを用いた、ヒトおよび他の動物における適切な投与量および他の治療パラメータを外挿することができる。
【0163】
例13:トランスジェニック動物
本発明のポリペプチドはまた、トランスジェニック動物にて発現させることもでできる。マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ブタ、小型ブタ(micro−pig)、ヤギ、ヒツジ、ウシ、および非ヒト霊長類、例えば、ヒヒ、サル、およびチンパンジーが含まれるが、これらに限定されないあらゆる種の動物を用いて、トランスジェニック動物を生み出してもよい。特定の態様では、本明細書中に記載された技術、またはその他当該技術分野で知られている技術が、本発明のポリペプチドを、遺伝子治療手法の一環として、ヒトに発現させるのに用いられる。
当該技術分野で既知の任意の技法を用いて、動物に導入遺伝子(すなわち、本発明のポリペプチド)を導入して、トランスジェニック動物の創始系統を生産してもよい。かかる技法としては、前核(pronuclear)マイクロインジェクション(Paterson et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 40: 691−698 (1994)、Carver et al., Biotechnology (NY) 11:1263−1270 (1993)、Wright et al., Biotechnology (NY) 9: 830−834 (1991); およびHoppe et al., 米国特許第4,873,191号(1989))、生殖系列(Van der Putten et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 82: 6148−6152 (1985))、胚盤胞または胚へのレトロウイルス媒介性遺伝子移入、胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング(Thompson et al., Cell 56: 313−321 (1989))、細胞または胚へのエレクトロポレーション(Lo, 1983, Mol Cell. Biol. 3: 1803−1814 (1983))、遺伝子銃を用いた本発明のポリヌクレオチドの導入(例えば、Ulmer et al., Science 259: 1745 (1993)を参照)、胚性多能性幹細胞への核酸構築物の導入および胚盤胞への幹細胞の移し戻し、および精子媒介性遺伝子移入(Lavitrano et al., Cell 57: 717−723 (1989))などが挙げられるが、これらに限定されない。かかる技法のレビューとして、Gordon, ”Transgenic Animals”, Intl. Rev. Cytol. 115: 171−229 (1989)を参照されたい(それは、参照により全体が本明細書に組込まれる)。
【0164】
当該技術分野において既知のいかなる技法、例えば、静止状態へ誘導された培養胚細胞、胎児細胞または成人細胞からの核の、脱核卵母細胞への核移入(Campell et al., Nature 380: 64−66 (1966), Wilmut et al., Nature 385: 810813 (1997))を用いて、本発明のポリヌクレオチドを含有するトランスジェニッククローンを生産してもよい。
【0165】
本発明は、すべての動物細胞において導入遺伝子を持つトランスジェニック動物、ならびに、すべてではないが幾つかの細胞において導入遺伝子を持つ動物、すなわちモザイク動物またはキメラ動物を提供する。導入遺伝子は、単一導入遺伝子として、またはコンカテマー(例えば、頭−頭タンデム、もしくは頭−尾タンデム)のような多重コピーとして、組み込まれてもよい。導入遺伝子はまた、例えば、Lasko et al.の教示(Lasko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 6232−6236 (1992))にしたがって、特定の細胞タイプに選択的に導入されて、そこで活性化されてもよい。かかる細胞タイプ特異的な活性化に必要な調節遺伝子は、所定の特定細胞タイプに依存し、それは当業者には明らかであろう。
ポリヌクレオチド導入遺伝子が内因性遺伝子の染色体部位に組み込まれることが望ましい場合、遺伝子ターゲティングが好ましい。簡潔に述べると、かかる技法を利用する場合、内因性遺伝子に相同的な幾つかのヌクレオチド配列を含有するベクターを、内因性遺伝子のヌクレオチド配列へ、染色体配列との相同組換えにより組み込み、その機能を崩壊させる目的で設計する。導入遺伝子はまた、特定の細胞タイプへ選択的に導入されてもよく、したがって、例えばGu et al. (Gu et al., Science 265: 103−106 (1994))の教示にしたがって、その細胞タイプのみで内因性遺伝子を不活性化させる。かかる細胞タイプに特異的な不活性化に必要な調節配列は、所定の特定細胞タイプに依存し、それは当業者には明らかであろう。
トランスジェニック動物がいったん創出されれば、組換え遺伝子の発現は、標準的な技法を利用してアッセイされ得る。初期スクリーニングは、導入遺伝子の組み込みが起ったことを確認すべく動物組織を分析するために、サザンブロット分析またはPCR技法により達成され得る。トランスジェニック動物の組織における導入遺伝子のmRNA発現レベルはまた、動物から得られた組織試料のノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析、および逆転写酵素PCR(rt−PCR)が含まれるが、これらに限定されない技法を用いて評価してもよい。トランスジェニック遺伝子発現組織の試料はまた、導入遺伝子産物に特異的な抗体を用いて、免疫細胞化学的に、または免疫組織化学的に評価さてもよい。
【0166】
創始動物がいったん生産されれば、それらを、繁殖、同系交配、異系交配、または交雑させて、特定の動物コロニーを生産してもよい。かかる繁殖戦略の例としては、別個の系統を樹立するために、1つよりも多い組み込み部位を有する創始動物を異系交配すること、各導入遺伝子の付加的発現の効果が理由で、高いレベルで導入遺伝子を発現する複合遺伝子導入をもたらすために、別個の系統を同系交配させること、発現を増大させ、かつDNA分析による動物のスクリーニングの必要性をなくすために、所定の組み込み部位に関してホモ接合性の動物を生産するために、ヘテロ接合性のトランスジェニック動物を交雑させること、複合へテロ接合性またはホモ接合性系統を生産するために、別個のホモ接合性系統を交雑させること、および当該実験モデルに適切な明瞭なバックグラウンドに導入遺伝子を配置させるために繁殖させることが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のトランスジェニック動物は、本発明のポリペプチドの生物機能を説明し、異常発現に関連した症状および/または疾患を研究し、かかる症状および/または疾患を回復するのに効果的な化合物をスクリーニングするのに有用な動物モデル系を含むが、これに限定されない用途を有する。
【0167】
例14:ノックアウト動物
内因性の遺伝子発現はまた、標的(targeted)相同組換えを用いて、遺伝子および/もしくはそのプロモーターを不活性化または「ノックアウト」することにより低減することができる(例えば、Smithies et al., Nature 317: 230−234 (1985)、Thomas & Capecchi, Cell 51: 503512 (1987)、Thompson et al., Cell 5: 313−321 (1989)を参照。それらはそれぞれ、その全体が、参照により本明細書に組込まれる)。例えば、内在性のポリヌクレオチド配列(遺伝子のコード領域または調節領域)に相同的なDNAに隣接した突然変異体である本発明の非機能性ポリヌクレオチド(または完全に非関連のDNA配列)を、選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーを用いて、あるいは用いずに使用して、in vivoで本発明のポリペプチドを発現する細胞をトランスフェクトすることができる。別の態様では、当該技術分野にて既知の技法を用いて、所定の遺伝子を含有するが、発現はしない細胞におけるノックアウトを生成する。標的相同組換えを介したDNA構築物の挿入は、結果として標的遺伝子の不活性化を招く。かかるアプローチは、研究および農業の分野に特に適しており、そこで胚性幹細胞の改変を用いて、不活性な標的遺伝子を有する動物の子孫を発生させることができる(例えば、上述のThomas & Capecchi 1987およびThompson 1989を参照)。しかしながら、組換えDNA構築物が、当業者には明らかであろう適切なウイルスベクターを用いて、in vivoにおいて、必要とされる部位に直接的に投与されるか、または標的にされるという条件で、このアプローチは、ヒトにおける使用にルーチンで適合され得る。
【0168】
本発明のさらなる態様では、本発明のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞、あるいは本発明のポリペプチドを発現しないように遺伝子操作された(例えば、ノックアウト)細胞を、in vivoにおいて患者に投与する。かかる細胞は、患者(即ち、ヒトを含む動物)、またはMHC適合ドナーから得てもよく、線維芽細胞、骨髄細胞、血液細胞(例えば、リンパ球)、脂肪細胞、筋細胞、内皮細胞などを含むことができるが、これらに限定されない。細胞は、組換えDNA技法を用いて、in vitroにおいて遺伝子操作され、細胞に本発明のポリペプチドのコード配列を導入するか、あるいは例えば形質導入(ウイルスベクター、好ましくは細胞ゲノムに導入遺伝子を組み込むベクターを用いて)またはプラスミド、コスミド、YAC、裸のDNA、エレクトロポレーション、リポソーム等の使用を含むが、これらに限定されないトランスフェクション手法により、本発明のポリペプチドに関するコード配列および/または内因性調節配列を崩壊させる。
本発明のポリペプチドのコード配列は、強力な構成もしくは誘導プロモーターまたはプロモーター/エンハンサーの制御下に置くことにより、本発明のポリペプチドの発現、好ましくは分泌を達成することができる。本発明のポリペプチドを発現、好ましくは分泌する操作細胞を全身的に、例えば、循環にて、または腹腔内にて患者に導入することができる。
あるいは、細胞をマトリックス中に組み込み、体内へ移植することができ、例えば、遺伝子操作した線維芽細胞は、皮膚移植片の一部として移植することができる。遺伝子操作した内皮細胞は、リンパ管または血管移植片の一部として移植することができる(例えば、各々その全体が参照により本明細書に組込まれるAnderson et al.米国特許第5,399,349号、およびMulligan & Wilson、米国特許第5,460,959号を参照)。
【0169】
投与されるべき細胞が非自系または非MHC適合細胞である場合、それらは、導入細胞に対する宿主免疫応答の発生を防ぐ既知の技法を用いて、投与され得る。例えば、細胞は、直に接している細胞外環境との構成成分の交換が可能であるものの、導入細胞が宿主免疫系により認識されることが不可能なカプセル化形態で導入されてもよい。
本発明のトランスジェニックおよび「ノックアウト」動物は、本発明のポリペプチドの生物機能を説明し、異常な発現に関連した症状および/または障害を研究し、かかる症状および/または疾患を改善するのに効果的な化合物をスクリーニングするのに有用な動物モデル系を含むが、これらに限定されない用途を有する。
本明細書に引用されたすべての特許、特許文献および他の出版された参考文献は、そのそれぞれが、本明細書に参照によって個別的かつ具体的に組込まれたかのように、その全体が参照によって本明細書に組込まれる。本発明の好ましい代表的な態様が記載されているが、当業者は、本発明が、限定のためではなく、例示の目的でのみ提示された、記載された以外の態様で実施できることを理解するだろう。本発明は、請求の範囲によってのみ限定される。

Claims (17)

  1. (a)配列番号143〜277のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸分子、
    (b)配列番号1〜142の核酸配列を含む核酸分子、
    (c)(a)または(b)の核酸分子に選択的にハイブリダイズする核酸分子、または
    (d)(a)または(b)の核酸分子と少なくとも60%の配列同一性を有する核酸分子、
    を含む、単離核酸分子。
  2. 核酸分子がcDNAである、請求項1に記載の核酸分子。
  3. 核酸分子がゲノムDNAである、請求項1に記載の核酸分子。
  4. 核酸分子が哺乳類の核酸分子である、請求項1に記載の核酸分子。
  5. 核酸分子がヒトの核酸分子である、請求項4に記載の核酸分子。
  6. 試料中の肺特異的核酸(LSNA)の存在を決定する方法であって、
    (a)請求項1に記載の核酸分子を、該核酸分子が肺特異的核酸に選択的にハイブリダイズする条件下で、試料と接触させる工程、および
    (b)該核酸分子の試料中のLSNAへのハイブリダイゼーションを検出する工程、
    を含み、ハイブリダイゼーションの検出が、試料中のLSNAの存在を示す、前記方法。
  7. 請求項1に記載の核酸分子を含む、ベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターを含む、宿主細胞。
  9. 請求項1に記載の核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生する方法であって、(a)1または2以上の発現制御配列に作動可能に連結した核酸分子を含む宿主細胞を提供する工程、および(b)ポリペプチドが産生される条件下で宿主細胞を培養する工程、を含む、前記方法。
  10. 請求項1に記載の核酸分子によってコードされるポリペプチド。
  11. (a)配列番号143〜277と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、または
    (b)配列番号1〜142の核酸配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
    からなる群から選択される単離ポリペプチド。
  12. 請求項11に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片。
  13. 試料中の肺特異的タンパク質の存在を決定する方法であって、
    (a)請求項12に記載の抗体を、該抗体が肺特異的タンパク質に選択的に結合する条件下で、試料と接触させる工程、および
    (b)試料中の肺特異的タンパク質への抗体の結合を検出する工程、
    を含み、結合の検出が試料中の肺特異的タンパク質の存在を示す、前記方法。
  14. 患者における肺癌の存在および転移を診断およびモニタリングする方法であって、
    (a)患者試料中の請求項1の核酸分子または請求項6のポリペプチドの量を決定する工程、および
    (b)患者試料中の決定された核酸分子またはポリペプチドの量を、正常対象中の肺特異的マーカーの量と比較する工程
    を含み、試料中の核酸分子またはポリペプチドの量の、正常対照における核酸分子またはポリペプチドの量に対する差が、肺癌の存在に関連している、前記方法。
  15. 患者における癌の危険性または癌の存在を検出するためのキットであって、該キットが、患者試料中の請求項1の核酸分子または請求項6のポリペプチドの存在を決定するための手段を含む、前記キット。
  16. 肺癌を有する患者を処置する方法であって、請求項12に記載の組成物を患者に投与する工程を含み、該投与が、核酸分子またはポリペプチドを発現している肺癌細胞に対する免疫応答を誘発する、前記方法。
  17. 請求項11に記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸を含むワクチン。
JP2002563282A 2000-10-25 2001-10-25 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法 Pending JP2004518437A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US24299800P 2000-10-25 2000-10-25
PCT/US2001/045541 WO2002062945A2 (en) 2000-10-25 2001-10-25 Compositions and methods relating to lung specific genes and proteins

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004518437A true JP2004518437A (ja) 2004-06-24

Family

ID=22916940

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002563282A Pending JP2004518437A (ja) 2000-10-25 2001-10-25 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法

Country Status (5)

Country Link
US (2) US6846650B2 (ja)
EP (1) EP1385861A2 (ja)
JP (1) JP2004518437A (ja)
AU (1) AU2002249787A1 (ja)
WO (1) WO2002062945A2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008528024A (ja) * 2005-01-31 2008-07-31 ディジタルジェノミクスインコーポレーション 肺癌診断用マーカー遺伝子
JP2021192036A (ja) * 2013-03-14 2021-12-16 ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド Als関連ジアミノ酸リピート含有タンパク質
US11903910B2 (en) 2017-09-26 2024-02-20 University Of Florida Research Foundation, Incorporated Use of metformin and analogs thereof to reduce RAN protein levels in the treatment of neurological disorders

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2001281136A1 (en) * 2000-08-04 2002-02-18 Board Of Regents, The University Of Texas System Detection and diagnosis of smoking related cancers
JP2004518437A (ja) 2000-10-25 2004-06-24 ディアデクサス インコーポレーテッド 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
WO2005089524A2 (en) * 2004-03-19 2005-09-29 U.S. Genomics, Inc. Compositions and methods for detection of single molecules
US20060216524A1 (en) * 2005-03-23 2006-09-28 3M Innovative Properties Company Perfluoropolyether urethane additives having (meth)acryl groups and hard coats
WO2007005769A1 (en) * 2005-06-30 2007-01-11 Applera Corporation Automated quality control method and system for genetic analysis
US20070218480A1 (en) * 2006-01-25 2007-09-20 The Board Of Regents Of The University Of Texas System Detection and diagnosis of smoking related cancers
CN101454339A (zh) * 2006-05-05 2009-06-10 马斯特里赫特大学/马斯特里赫特心血管研究院 用于诊断个体中破裂的动脉粥样硬化损伤的存在的肽
US11298113B2 (en) 2008-10-01 2022-04-12 Covidien Lp Device for needle biopsy with integrated needle protection
US9186128B2 (en) 2008-10-01 2015-11-17 Covidien Lp Needle biopsy device
US9332973B2 (en) 2008-10-01 2016-05-10 Covidien Lp Needle biopsy device with exchangeable needle and integrated needle protection
US9782565B2 (en) 2008-10-01 2017-10-10 Covidien Lp Endoscopic ultrasound-guided biliary access system
US8968210B2 (en) * 2008-10-01 2015-03-03 Covidien LLP Device for needle biopsy with integrated needle protection
US8449842B2 (en) * 2009-03-19 2013-05-28 Thermo Scientific Portable Analytical Instruments Inc. Molecular reader
EP3013963B1 (en) * 2013-06-24 2017-07-05 Azargen Biotechnologies (Pty) Ltd. Production of human pulmonary surfactant protein b in plants
CN106282385B (zh) * 2016-10-14 2019-06-04 天津医科大学肿瘤医院 长链非编码rna xloc_000090在肺癌中的鉴定和用途

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
SK165197A3 (en) * 1995-06-07 1999-01-11 Astra Ab Nucleic acid and amino acid sequences relating to helicobacter pylori for diagnostics and therapeutics
CA2339047A1 (en) 1998-08-14 2000-02-24 Genetics Institute, Inc. Secreted proteins and polynucleotides encoding them
US20020068277A1 (en) 1998-11-20 2002-06-06 Simpson Andrew John George Method for determining nucleotide sequences using arbitrary primers and low stringency
US20030022279A1 (en) 1999-06-14 2003-01-30 Fraser Christopher C. Novel genes encoding proteins having prognostic, diagnostic, preventive, therapeutic, and other uses
EP1074617A3 (en) 1999-07-29 2004-04-21 Research Association for Biotechnology Primers for synthesising full-length cDNA and their use
AU2001241418A1 (en) 2000-01-31 2001-08-07 Human Genome Sciences, Inc. Nucleic acids, proteins, and antibodies
JP2004518437A (ja) 2000-10-25 2004-06-24 ディアデクサス インコーポレーテッド 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
JP2004531249A (ja) 2001-02-14 2004-10-14 プロテイン デザイン ラブス インコーポレイティド 血管新生の診断方法、組成物、及び血管新生モジュレータのスクリーニング方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008528024A (ja) * 2005-01-31 2008-07-31 ディジタルジェノミクスインコーポレーション 肺癌診断用マーカー遺伝子
US7871774B2 (en) 2005-01-31 2011-01-18 Digital Genomics Inc. Markers for the diagnosis of lung cancer
JP2021192036A (ja) * 2013-03-14 2021-12-16 ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド Als関連ジアミノ酸リピート含有タンパク質
US11903910B2 (en) 2017-09-26 2024-02-20 University Of Florida Research Foundation, Incorporated Use of metformin and analogs thereof to reduce RAN protein levels in the treatment of neurological disorders

Also Published As

Publication number Publication date
AU2002249787A1 (en) 2002-08-19
WO2002062945A3 (en) 2003-11-06
WO2002062945A2 (en) 2002-08-15
EP1385861A2 (en) 2004-02-04
US6846650B2 (en) 2005-01-25
US20020172959A1 (en) 2002-11-21
US20050037419A1 (en) 2005-02-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20060019322A1 (en) Compositions and methods relating to prostate specific genes and proteins
US6846650B2 (en) Compositions and methods relating to lung specific genes and proteins
US6855517B2 (en) Compositions and methods relating to breast specific genes and proteins
WO2002055735A2 (en) Compositions and methods relating to prostate specific genes and proteins
WO2002064741A2 (en) Compositions and methods relating to breast specific genes and proteins
US20020160388A1 (en) Compositions and methods relating to lung specific genes and proteins
JP2004535785A (ja) 乳房特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
US20050136473A1 (en) Compositions and methods relating to breast specific genes and proteins
WO2003093510A1 (en) Compositions and methods relating to colon specific genes and proteins
JP2004520831A (ja) 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
US7361475B2 (en) Compositions and methods relating to colon specific genes and proteins
EP1368471A2 (en) Compositions and methods relating to prostate specific genes and proteins
JP2004530413A (ja) 前立腺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
US20030175707A1 (en) Compositions and methods relating to prostate specific genes and proteins
JP2004520821A (ja) 肺特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
WO2002066605A2 (en) Compositions and methods relating to breast specific genes and proteins
US20020177696A1 (en) Compositions and methods relating to breast specific genes and proteins
WO2002077234A2 (en) Compositions and methods relating to colon specific genes and proteins
US20050181413A1 (en) Compositions and methods relating to ovary specific genes and proteins
US20030064378A1 (en) Compositions and methods relating to lung specific genes and proteins
JP2004528816A (ja) 乳房特異的遺伝子およびタンパク質に関する組成物および方法
WO2002036808A2 (en) Compositions and methods relating to prostate specific genes and proteins
EP1356038A2 (en) Compositions and methods relating to lung specific genes and proteins
WO2002066488A1 (en) Compositions and methods relating to prostate specific genes and proteins
WO2002064744A2 (en) Compositions and methods relating to colon specific genes and proteins