JP2004515453A - 癌を化学療法および放射線療法に付する間に細胞を保護するための組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
癌治療または骨髄移植過程の間に、癌の化学療法剤または放射線療法によって引き起こされる損傷から非新生物細胞を保護するための組成物、医薬調製物および方法が開示される。これらは、標的細胞集団において細胞性解毒酵素の生産を誘導または増加させる化学保護誘導剤の使用に基づく。組成物および方法は、一般に癌治療を受けている患者において起こる毛髪喪失、胃腸の不快感ならびに皮膚および口腔粘膜の障害の軽減または予防に有用である。また、新規な化学保護誘導剤を同定するための新規なアッセイ系も開示される。
Description
【0001】
35U.S.C.§202(c)にしたがって、合衆国政府は、一部、国立衛生研究所からの基金(交付番号CA22484)によってなされた本明細書に記載の発明において、ある特定の権利を有することが認められる。
本出願は、2000年5月5日に出願された米国出願第09/565714号を優先権主張し、その全てが出典明示により本明細書の一部とされる。
【0002】
(技術分野)
本発明は癌治療の分野に関する。特に、本発明は、放射線療法および癌の化学療法剤の毒性作用から非新生物細胞を保護するための新規な組成物および方法を提供する。
【0003】
(背景技術)
本発明が属する分野の現状をより詳しく説明するために、いくつかの出版物が本出願において引用される。これらの出版物の各々における開示は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0004】
過去数十年にわたり、外科手術と組み合わせた化学療法および放射線療法が癌死亡率の著しい減少に寄与してきた。しかしながら、癌の治療における化学療法薬の潜在的な有用性は、これらの薬剤の非特異的細胞毒性に関連した不都合な効果のために十分に活用されていない。単独または他の化学療法剤と組み合わせて使用されるアルキル化剤は、全ての化学療法処理のうち約半分において使用される。アルキル化剤は、DNA複製を阻害することによって癌性細胞の増殖を妨害する。アルキル化剤以外の癌化学療法薬もまた、哺乳動物細胞に対して毒性である。それらは、2つだけ挙げるとすれば、(1)DNA複製に必要なヌクレオチドの合成および(2)有糸分裂に必要な微小管機能などの複製中の細胞内の複数の部位を阻害することができる。細胞内で酸素ラジカルを生じることによってその細胞致死特性のほとんどを達成する放射線療法もまた、哺乳動物細胞を効率よく殺すことができる。これら3つの一般に使用される薬剤の毒性作用は、一般的に、癌細胞に特異的ではないので、それらは正常細胞、特に有糸分裂が活発な正常細胞の増殖にも影響を及ぼす。結果として、これらの癌治療の1以上で治療されている患者は一般に、非常に多くの臨床上の合併症を発現する。
【0005】
上皮細胞の多くの集団は、早い代謝回転速度を有する。上皮細胞に対する癌治療の毒性は、化学療法または放射線療法を受けている患者が一般に被る副作用の多くの原因である。これらは、胃腸の不快感(distress)、悪心、嘔吐、下痢、食欲喪失、毛髪喪失、骨髄抑制および照射部位の皮膚発疹または潰瘍化を包含する。これらの合併症に耐えることは非常に困難であり、患者が該問題を避けるために癌治療処理を見合わせたり、または中止することは稀なことではない。胃腸の障害は、患者の闘病能力を最も効果的にするために必要な食物を得ることを困難にするので、患者の回復のチャンスを傷つけるかもしれない。
【0006】
典型的には、化学療法の過程の間中、毒性を最小限にし、正常な薬物感受性細胞を保護するために、化学療法剤は最適量より少ない投与量で投与される。正常細胞の化学療法剤に対する感受性を減らすことは、より多くの薬物投与量の投与を可能にし、化学療法をより効果的にすることができる。
放射能療法または化学療法剤の存在下で正常細胞の通常の成長および増殖を促進する保護療法の好結果の手段は、より高投与量の攻撃的な化学療法の使用を可能にするであろう。かかる療法の発展のための2つの重要な標的は、(1)口腔粘膜を包含する胃腸(GI)管全体の内面を覆う上皮細胞、および(2)毛包および表皮を包含する皮膚の上皮である。
【0007】
GI管腔細胞の化学療法および放射線療法に関連する死および脱落は、GI損傷関連分子の脈管構造中への放出をもたらすようである。これらの血液に運搬される分子は、脳内の部位によって検出される場合、化学療法を受けている患者において非常に一般的である悪心応答を引き起こす。オンダンセトロン(Ondansetron)のような薬物での現在の治療は、これらの脳中枢を抑制し、それにより悪心応答を減少させるように働く。しかしながら、GI内面の最初の崩壊が今だ、化学療法の最も有効な使用を制限している。これらの患者において悪心を減少させるためのより良好な機構は、GI表面の最初の崩壊を排除することであり、それにより、脳において損傷に関連した悪心誘導性分子の効果を抑制するというよりもむしろ、これらの分子の放出を防ぐことである。
【0008】
正常細胞に対し何らかの保護を提供し、これらの細胞により作られる組織の無欠性および機能を維持する新規な胃腸療法が開発されている。正常細胞を保護し、正常細胞の増殖を刺激するための現行のアプローチは、栄養分刺激および増殖因子の摂取を最大化することを含む。かかる方法は、毒性の重篤度を減少し、および/または薬物処理の過程を短縮した。しかしながら、これらの改善点にもかかわらず、深刻な副作用が今だ存続し、より有効な療法が所望される。
【0009】
化学療法に誘導される脱毛症の治療も研究されている。脱毛症または毛髪喪失は、ヒトにおける最も一般的な毛髪成長障害であり、しばしば、冒された個体において大きな心配事である。癌の化学療法また放射線療法に付随した後天的脱毛症に罹患した患者において、毛髪の喪失は重要な心配事として嘔吐の上位にくる。該状態は一般的に可逆性であり、毛髪成長の再生は治療の中止後1−2ヶ月以内に起こるが、毛髪喪失は、身体イメージにおける負の変化、社会的活動の減少および対人関係の変化を引き起こす可能性のある、さらなる化学療法の拒絶を導きかねない心理学的苦悩を与えるような影響を示す。
【0010】
化学療法誘導性脱毛の現象は、毛包に対する細胞毒性およびアポトーシスに関連する損傷に起因すると考えられる。いくつかの研究は、化学療法誘導性毛包損傷の根底にある病理生物学的機構が皮膚乳頭の隆起、毛包管のよじれおよび膨大、およびメラニン生成装置の崩壊によって特徴付けられるという証拠を示した。
【0011】
化学療法誘導性脱毛症から患者を保護する試みにおいて、種々のアプローチが行われた。これらは、頭皮の血流および毛包との薬物接触時間を一時的に減少させる物理的モジュールを包含したが、患者の耐性は非常に乏しかった。これらの不十分な結果は、毛包の幹細胞の代謝速度と毛包マトリックスへの血流の両方を減少させる頭皮冷却法の開発を導いたが、該戦略は失敗であることがわかった。フリーラジカルスカベンジャーであるα−トコフェロールの食事での使用は、ウサギにおいて保護効果を有することを示したが、ヒトでは示さなかった。ミノキシジル(minoxidil)2%溶液もまた、化学療法誘導性脱毛症の治療において効果的ではないことが見出された。増殖因子およびサイトカインでのげっ歯動物の前処理は、ARA−C(シトシンアラビノシド)によって誘導された脱毛症に対してある程度の保護を提供したが、一般に使用される癌治療薬シトキサン(cytoxan)では提供しなかった。
【0012】
非経口投与されたか、またはリポソーム中において局所的に塗布されたN−アセチルシステイン(NAC)またはNAC/Immu Vertによるシクロホスファミドまたはシクロホスファミド/シタラビン(cytarabine)誘導性脱毛症の逆転は、ラットモデル系において報告された(Jimenezら、Cancer Investigation 10: 271−276, 1992)。NACはグルタチオンの前駆体であり、それ自体、細胞内GSHレベルを増加させることによって解毒剤として機能すると考えられる。この種の治療は、外来性NACを添加することによって細胞内GSHレベルが細胞中およそ2倍にだけなることができることが示されたので、効力が制限される(Ho & Fahl, J. Biol. Chem. 259, 11231−11235, 1984; Carcinogenesis 5: 143−148, 1984参照)。
【0013】
米国特許第5753263号(Lishkoら)は、ある種の化学療法剤によって誘導される脱毛症を治療するための方法および組成物を開示し、それは、リポソーム担体中における有効量のp−糖蛋白、またはかかる蛋白をコードしているMDR遺伝子の局所的適用を特徴とする。該療法は、p−糖蛋白ポンプを介して細胞から運び出されることのできる特定の化学療法剤に限定される。該リストから著しく外れるものは、アルキル化化学療法剤である。
【0014】
したがって、上記に概説した型の治療は、化学療法誘導性毛髪喪失から何らかの軽減を提供するが、それらの有用性は制限され、さらなる効果的な療法が要望される。
【0015】
(発明の開示)
本発明によると、癌を治療するための放射線療法または化学療法の過程の間、迅速に分裂している正常細胞を損傷から保護するための新規で有効な戦略が見出された。該戦略は、放射線または化学療法を適用したとき、細胞中に存在する天然の解毒系が活性化されるようにそれらを刺激することを基礎とし、それにより、細胞を損傷から保護することができる。
【0016】
本発明の一の態様によると、癌の化学療法または放射線療法の間、非新生物細胞を損傷から保護するための組成物が提供される。該組成物は、下記に定義されるような1以上の化学保護誘導剤および該薬剤を非新生物細胞の標的集団に送達するためのデリバリービヒクルを含む。一の好ましい具体例において、標的細胞集団は、毛包内面を覆うかまたは皮膚表皮を含む上皮細胞よりなる。もう一つ別の好ましい具体例において、標的細胞集団は口腔粘膜および胃腸管腔の上皮細胞よりなる。
【0017】
本発明のもう一つ別の態様によると、癌の化学療法または放射線療法の間、非新生物細胞を損傷から保護するための方法が提供される。該方法は、上皮細胞の集団に上記の組成物を、癌の化学療法または放射線療法の間、非新生物細胞を損傷から保護するのに十分な時間および量で投与することを特徴とする。好ましい具体例において、該方法は、頭皮に該組成物を塗布することによって、癌治療の間の禿頭を予防するために使用される。もう一つ別の好ましい具体例において、該方法は、該組成物を経口投与することによって、癌治療に起因する胃腸の不快感を予防するために使用される。またもう一つ別の好ましい具体例において、該方法は、該組成物を皮膚に塗布することによって、照射部位での皮膚発疹および潰瘍化を予防するために使用される。
【0018】
本発明の上記態様の好ましい具体例において、化学療法剤は、アルカリ化剤、DNA合成の代謝拮抗物質阻害剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂紡錘体毒およびビンカアルカロイドよりなる群から選択される一つまたは組み合わせである。限定するものではないが、例えば、アルトレタミン(altretamine)、アウパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、カルムスチン(carmustine)、クロラムブシル(chlorambucil)、シクロホスファミド(シトキサン(cytoxan))、シタラビン、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドクソルビシン(doxorubicin)、エトポシド(etoposide)、フロックスウリジン(floxuridine)、フルダラビン(fludarabine)ホスフェート、フルオロウラシル、ヒドロキシウリア、イダルビシン(idarubicin)、イホスファミド(ifosfamide)、ロムスチン(lomustine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、ナイトロジェン・マスタード(nitrogen mustard)、メルファラン(melphalan)、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、マイトキサントロン(mitoxantrone)、パクリタキセル(paclitaxel)、ペントスタチン(pentostatin)、プリアマイシン(pliamycin)、プロカルバジン(procarbazine)、ストレプトゾシン(streptozocin)、テニポシド(teniposide)、チオグアニン、チオテパ(thiotepa)、ビンブラスチンおよびビンクリスチンが挙げられる。放射線療法は、X線、γ線、電子ビーム、光子、α−粒子および中性子よりなる群から選択される。
【0019】
好ましい具体例において、化学保護誘導剤は、第I相およびII相薬物代謝酵素を誘導するものである。かかる薬剤は、当該分野で既知であり(例えば、Hayesら、Biochem. Soc. Symp. 64, 141−168, 2000)、クマリン、ラクトン、ジテルペン、ジチオレチオンフラボン、インドール、イソチオシアネート、オルガノスルフィドおよびフェノールのようなクラスの化合物を包含する。特定の例は、限定するものではないが、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼン、2−tert−ブチルヒドロキノン、4−ヒドロキシアニソール、エトキシクイン(ethoxyquin)、α−アンジェリカラクトン、β−ナフトフラボン(napthoflavone)(β−NF)、p−メトキシフェノール、オルチプラズ、インドール−3−カルビノール、オメプラゾール、クマリン、カフェストール、カーウェオール(kahweol)、ケルセチン、インドール−3−アセトニトリル、アリルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、オイゲノール、フェネチルイソチオシアネート、スルフォラフェン(sulphoraphane)、アリルメチルジスルフィド、ジアリルスルフィド、ブチルヒドロキシトルエン、エラグ酸およびフェルラ酸を包含する。
【0020】
もう一つ別の具体例において、化学保護誘導剤は、抗−増殖機能のような第二の機能を有していてもよい。該性質の化合物は、限定するものではないが、3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベン(レスベラトロール(Resveratrol))および(R)−(+)−リモネンを包含する。
【0021】
本発明のもう一つ別の態様によると、下記に定義されるように、化学保護誘導剤を同定するためのアッセイが提供される。該アッセイは、(a)プロモーターおよび1以上のEpRE調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むDNA構築物で形質転換された細胞を提供し、(b)化学保護誘導剤としての可能な有用性についてスクリーンされるべき試験化合物に該細胞を曝露し、次いで(c)レポーター遺伝子の発現を測定し、ここに、試験化合物の不在下での発現と比較した試験化合物の存在下での発現の増加は、該試験化合物が化学保護誘導剤であることを示す工程を含む。また、本発明の該態様にしたがって、該アッセイの実行を容易にするためのキットも提供される。
【0022】
本発明のもう一つ別の態様によると、環境性発癌物質への細胞の曝露によって引き起こされる癌の予防方法が提供される。該方法は、通常の食事摂生の一部として、1以上の化学保護誘導剤を細胞解毒酵素の発現を刺激するのに十分な量で提供し、それにより、環境性発癌物質への曝露時に環境性発癌物質の影響から細胞を保護することを特徴とする。
【0023】
本発明の他の特徴および利益は、下記の図面、詳細な記載および実施例から理解されるであろう。
【0024】
発明の詳細な記載
本発明は、患者に施された化学療法剤または放射線療法の毒性作用から患者の体内の非癌性の迅速に分裂している細胞を保護するための組成物および方法を提供する。特に、本発明の組成物および方法は、上皮細胞を保護するために設計される。最も詳細には、標的は毛包内面を覆う上皮細胞および胃腸管の上皮細胞である。
【0025】
また、患者が化学療法または放射線療法を受ける場合に影響を及ぼされる他の細胞部位での本発明のさらなる応用も予測される。例えば、いくつかの皮膚病変が、化学療法および/または放射線療法の激しい療法を受ける患者において観察された。これらは、典型的に、基礎的な器官における腫瘍を標的とする放射線療法の分野内で皮膚に起こる。一例として、胸部皮膚病変がしばしば、肺癌のために照射された患者において起こる。別例は、頭部および首部の放射線治療を受けている患者における粘膜炎症の発症、すなわち、口腔ただれの発現である。さらに、以前に問題なく放射線治療を受けた患者において、患者がその後にシトキサンで処理されるときに皮膚病変が起こるという「放射線リコール」と呼ばれる現象がときどき現れる。
【0026】
皮膚病変は一般に、皮膚炎の変形であり;それらは皮膚破壊および腫瘍化(上記の口腔ただれを包含する)、全身に広がった皮膚発疹、または繰り返して照射した皮膚領域における散乱した赤い病変よりなることができる。これらの癌治療によって誘導される病変の形成は、正常な皮膚の表皮層内で常に起きている高レベルの細胞分裂と一致する。本発明の組成物は、可能な同時的全身性化学療法はもちろん、繰り返しの放射線によって危険にさらされているこれらの皮膚領域を治療するのに非常に有用であると考えられる。
【0027】
図3に示されるように、いくつかの化学保護誘導剤のいずれかへの皮膚の曝露後に、非常に多数のストレス応答遺伝子の発現が活性化される。活性化された遺伝子の群は、薬物の第II相解毒および反応性酸素種に直接関与する蛋白質、例えば、2、3挙げるならば、いくつかのGSTイソ型、カタラーゼおよびキノンレダクターゼ、ならびにmdr−2、MRPなどのような細胞からの薬物分子の輸送に関与する蛋白質をコードする。また、DNA修復酵素も包含される。この幅広いアップレギュレートされた応答のため、発明者らは、アルカリ化剤分子を包含するが、多くの他の癌化学療法剤群、例えば、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、有糸分裂紡錘体毒、抗腫瘍抗生物質およびビンカアルカロイドにまで及ぶ幅広く種々の薬物に対する耐性表現型を予測する。薬物はストレス応答遺伝子産物の一つによって直接代謝されなくても、まだ、1以上のアップレギュレートされた膜薬物輸送ポンプによって細胞からより迅速に輸送されるようである。正常細胞においてその耐性を誘導しうる化学療法剤の例は、限定するものではないが、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クラドリビン、シクロホスファミド(シトキサン)、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドクソルビシン、エトポシド、フロックスウリジン、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、ヒドロキシウリア、イダルビシン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、ナイトロジェン・マスタード、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、マイトキサントロン、パクリタキセル、ペントスタチン、プリアマイシン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、ビンブラスチンおよびビンクリスチンを包含する。シトキサン、シタラビン、ドクソルビシンおよび放射能の毒性作用に対して保護するための化学保護誘導剤の使用は、実施例においてより詳細に記載される。
【0028】
したがって、本発明は、細胞のために解毒剤として作用する生物学的分子を生産することのできる細胞の能力を利用する。本明細書で用いる場合、「解毒剤」なる語は、直接または間接的に、1以上の化学療法剤または放射線療法の毒性作用を軽減または排除できる薬剤をいう。解毒剤のいくつかのカテゴリーが細胞において生産される。薬剤の1のカテゴリーは、毒性化合物を修飾することによって、その毒性を減少させるか、または影響を受けやすくして、その後に細胞から排除するように作用する。例えば、化学療法において使用されるアルキル化剤のほとんどは、主要な疎水性領域を有する脂肪親和性親電子物質である。これらの薬剤を細胞から除去するための直接的な輸送機構の不在は、これらの疎水性親電子物質の漸次的な細胞内蓄積をもたらす。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は、種々の抗新生物アルキル化薬を不活性化することのできるその能力についてよく知られている。GSTは、親電子化合物によって引き起こされる損傷から細胞を保護することにおいて重要な役割を有する酵素の一群である。化学療法剤をより毒性の低い形態または細胞からより容易に除去される形態に変換することによって作用する別の薬剤は、アルデヒドデヒドロゲナーゼである。該分子は、カルボプラチンおよびオキサザホスホリンを包含するアルキル化剤、例えば、シクロホスファミドおよび4−ヒドロペルオキシシクロホスファミドの影響に対する細胞の増加した耐性と関連することが示されている(Tannerら、Gyn. Oncol. 65: 54−62, 1997; Bunting & Townsend, J. Biol. Chem. 271: 11884−11890, 1996)。アルデヒドデヒドロゲナーゼは、オキサザホスホリンの活性化経路の重要な中間体であるアルドホスファミドの酸化を触媒し、それにより、これらの薬剤を解毒する(Sreerama & Sladek, Drug Metabolism and Disposition 23: 1080−1084, 1995)。
【0029】
解毒剤のもう一つ別のカテゴリーは、(上記のように輸送用に修飾されたか、または修飾されていない)毒性薬剤の細胞の外への輸送を容易にすることによって作用する。例えば、ある特定のATP−結合カセット(ABC)トランスポーターは、哺乳動物を包含する幅広く種々の生物において同定されており、このように作用するようである。各々、mdrおよびmrp遺伝子によってコードされたABCトランスポーターの2つのよく研究された群は、哺乳動物の腫瘍細胞において観察された多剤耐性現象と関連する。mdr遺伝子は、細胞からのある特定の脂肪親和性薬剤(例えば、アドリアマイシン、ビンブラスチン、タキソール)のエネルギー依存性流出の媒介となるP−糖蛋白のファミリーをコードする。mrp遺伝子は、その特異性がmdr遺伝子産物のそれと重複するが、また、グルタチオンとの結合後に種々の有機化合物の排出の媒介となるトランスポーターのファミリーをコードする。
【0030】
上皮細胞における1以上これらの解毒剤の増加が、上記に列挙した化学療法剤のうち1つまたはそれ以上の毒性作用に対して細胞を保護し、同様に、放射線療法の過程の間、損傷から細胞を保護するように働くことが、本発明によって見出された。したがって、本発明はその最も基本的な態様において、化学療法および/または放射線療法の前またはその初期の過程の間に、上皮細胞においてかかる薬剤を送達して、またはかかる薬剤の生産を増加して、癌治療に付随する損傷から細胞を保護することに向けられる。
【0031】
しかしながら、上記に列挙した解毒剤のほとんどが酵素であることに注目されたい。有効量の解毒酵素が細胞中に存在するようにポリペプチドまたはポリペプチドをコードしている遺伝子を選択された細胞集団へ送達することは困難であり、予測不可能である。したがって、本発明は、1以上の細胞性解毒剤の生産の増加を誘導するために、既知または見出された小型分子の投与によって標的細胞におけるその酵素の生産の増加を誘導することに依存する。これらの分子は、本明細書において、「化学保護誘導剤」または分子と称される。したがって、本明細書で定義される「化学保護誘導剤」は、上記のように、細胞への送達時に、細胞の内在性解毒剤の生産を誘導または増加する薬剤である。
【0032】
本発明によると、化学保護誘導剤が標的細胞集団へ効率よく送達され、細胞に侵入し、種々の手段により、例えば、酵素をコードしている遺伝子の発現増加を誘導することにより、1以上の解毒酵素の生産を誘導または増加させることができることが見出された。得られた利益は、下記により詳細に論じられるように、化学療法または放射線療法に関連する症状、最も顕著には、毛髪喪失および胃腸の不快感の緩和である。
【0033】
本発明の組成物は、内在性解毒分子の生産を誘導することによって上記の1以上の化学療法剤に対する解毒効果を示す1以上の化学保護誘導剤、および化学保護誘導剤を保護の標的とされる細胞および組織に送達するためのデリバリービヒクルを含む。
【0034】
化学保護誘導剤
本発明の目的の場合、「化学保護誘導剤」は、上皮細胞への送達時に、細胞内における解毒分子(上記に定義される)の生産を誘導または増加させるいずれの薬剤であってもよい。作用機構に関するいずれの説明によっても制限されるものではなく、本明細書において示される実験結果は、これらの化学保護誘導剤が一連のストレス応答分子を生産するように細胞を刺激する穏かな酸化ストレスを提供し、その結果、化学療法または放射線療法のより重篤なストレスが強要されるとき、該分子がすでに増加しているかまたは活性化されているので、これらの化学保護誘導剤が有効であることを示唆する。該機構は、ワクチン接種法に対するその機能的類似のため、ときどき、本明細書において「代謝ワクチン接種(metabolic vaccination)」と称される。
【0035】
「化学保護誘導剤」として包含されるべき単独または上記の化合物と組み合わせる第2群の化合物は、アリール炭化水素(Ah)受容体の機能的リガンドである化合物を包含する。いくつかの場合、活性化されたAh受容体に起因するシトクロムP450 1A1遺伝子の保証される誘導発現は、薬物の解毒における第I相代謝工程を提供することができ、次いで、ストレス応答遺伝子群の不可欠な部分である1以上の誘導されたGSTによる代謝産物の抱合が起こる。次いで、本質において、これらの化合物は、細胞から毒性薬物を除去するために、細胞が代謝的「ワンツーパンチ」を発揮する機会を提供する。該能力において使用できるAh受容体リガンドの例は、限定するものではないが、アブラナ科植物由来のインドール−3−カルビノール、およびオメルプラゾール(omerprazole)を包含する(Jellinkら、Biochem. Pharmacol. 45: 1129−1136, 1993; Dzeletovicら、J. Biol. Chem. 272: 12705−12713, 1997)。他の適当なAhリガンドは当該分野で既知である。
【0036】
当該分野で知られている多くの化学保護誘導剤は、本発明において使用に適する(例えば、DeLongら、Cancer Res. 45: 546−551, 1985; Ioannouら、Cancer Res. 42: 1199−1204, 1982; Chungら、Cancer Res. 46: 165−168, 1986; Watternbergら、Cancer Res. 40: 2820−2823, 1980; およびKenslerら、Cancer Res. 46: 3924−3931, 1986)。限定するものではないが、例えば、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(3−BHA)、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2−BHA)、2−tert−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼン(メチル−BHA)、2−tert−ブチルヒドロキシキノン(t−BHQ)、4−ヒドロキシアニソール、エトキシクイン、α−アンジェリカラクトン、β−ナフトフラボン(β−NF)、p−メトキシフェノールおよびオルチプラズが挙げられる。これらに加えて、本発明によると本明細書に開示される方法を用いて、ChemBridge Corporation(San Diego, CA)の小型分子ライブラリーから同定された図15に示される分子を包含する他の化学保護誘導剤が同定された。図15に示されるように、これまでに同定された最も強力な化学保護誘導剤は、Chembridgeライブラリー由来のCG09である(図15の構造1)。
【0037】
上記に列挙した分子のいくつか(例えばBHA)は、食物産業において化学的抗酸化剤として使用される。しかしながら、本発明において明らかにされるように、その効果は体内での代謝におけるオキシダントとしてである。例えば、BHAを哺乳動物に投与すると、代謝されて、1次代謝産物としてtert−ブチルヒドロキノン(t−BHQ)が生じる。細胞系における大抵のヒドロキノンと同様に、t−BHQは自発的に、キノンとヒドロキノン形態間の環変換、すなわち、細胞中での酸化還元循環を起こす。酸化還元循環の副産物は、1以上の形態の酸素フリーラジカルの形成である。細胞は、これらの酸素フリーラジカルを環境ストレスとして感知し、ストレス応答遺伝子の発現を引き起こす。このように、BHAのような化学的抗酸化剤は、本明細書で定義されるような化学保護誘導剤として作用するように、細胞中で効果的なオキシダントになりうる。
【0038】
実施例に記載されるように、いくつかの化学保護誘導剤を種々の動物モデル系、特に仔ラットにおける脱毛症モデルにおける効力について試験した。したがって、上記に列挙した化合物の確認において、または上記化合物に加えて、これらの化合物は本発明における使用に特に好ましい。それらは、化学療法または放射線誘導性脱毛症の治療における使用に特に好ましい。これらの化合物は、ChemBridgeライブラリー由来の化合物CG09、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2−BHA)、β−ナフトフラボン(β−NF)、オルチプラズ、ベンジルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート、3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベン(レスベラトロール)および(R)−(+)−リモネンを包含する。
【0039】
これらの後者の2つの化合物(レスベラトロールおよび(R)−(+)−リモネン)は、抗増殖剤として機能することも知られている。したがって、化学療法および放射線療法の間に迅速に分裂している細胞を保護することにおけるそれらの効力は、それらの化学保護誘導機能または抗増殖機能のいずれか、あるいはその両方の機能に帰することが可能かもしれない。これらの分子がその効果を示す機構にかかわらず、それらは、脱毛症モデルの仔ラットにおいて効果的であることが明らかになり、本発明の他の具体例において特に有用であることが予測される。
【0040】
デリバリービヒクル
本発明の組成物は、また、デリバリービヒクルを含む。デリバリービヒクルの主要な機能は、化学保護誘導剤を化学療法剤からの保護の標的とされる細胞集団または組織に運搬することである。
【0041】
非侵襲性担体系を用いる皮膚を介する有機および生物学的物質のデリバリーは、その手法の非侵襲性による患者許容性ならびに胃腸障害および送達された分子の初回通過代謝の回避を包含する多くの魅力を有する。しかしながら、皮膚デリバリーにおける主要な問題は、皮膚角質層の障壁に対するほとんどの物質の低い浸透率である。皮膚は真皮と表皮の二層からなる。真皮は、結合組織、神経、血管およびリンパ管、毛包、皮脂腺および汗腺よりなる。表皮は、分化のいくつかの段階の細胞よりなる;この分化の間、細胞は基底層から表面へ移動し、角化して角質層を形成する。角質層の脂質マトリックスは、コレステロール、遊離脂肪酸およびセラミドよりなる二重層になった脂質膜より形成される。角質層は経皮的吸収に対する主要な障壁であると考えられるが、それはまた、浸透の主要経路でもある。したがって、角質層の脂質マトリックスを緩めるまたは流動化する化合物は、皮膚に対する物質の浸透を増加させうる。これは通常、アルブミン結合体、レシチン、糖蛋白、多糖類およびリポソームのような担体分子を用いることによって達成される。
【0042】
これらの選択肢のうち、リポソーム処方は、より慣用的な処方を超えるいくつかの利益を提供する。主要な利益は、(1)望ましくなく高い全身性吸収由来の深刻な副作用および配合禁忌の減少;(2)リポソームと角質層の高い融和性による、投与部位での送達された物質の有意に高い蓄積;(3)幅広く種々の疎水性および親水性分子の皮膚中への容易な取り込み;(4)捕獲した化合物の代謝分解からの保護;および(5)天然の膜構造に対する密接な類似およびそれに関連する生体適合性および生物分解性である。
【0043】
リポソームは、リン脂質が水性媒体中に分散されるときに形成されるリン脂質分子の高度に精密な自己集合から作成される球形同心流動モザイクとして定義され得る。脂質が水性媒体中に置かれるとき、脂質頭部群と水との親水性相互作用が、球形外皮の形態の生物膜に似た多重層状および単層状の系または小胞の形成をもたらす。これらの基本的なリポソームは、ときどき、「従来のリポソーム」と称される。いくつかの他の型のリポソーム調製物が存在し、それは、(1)ポリエチレングリコールのような不活性親水性ポリマーで被覆された表面である、立体安定化されたリポソーム;(2)抗体またはそのフラグメント、レクチン、オリゴ糖またはペプチドのような標的リガンドが結合する、標的とされるリポソーム(下記に論じられるように、コレラ毒B(CTB)を用いて、胃腸上皮にリポソームを向ける);および(3)特定の相互作用に応答してその相および構造を変化する、反応性または「多形」リポソーム(該群は、刺激のなかでも特に、イオン(pH、カチオン)、熱および光に感受性のリポソームを包含する)を包含する。上記の異なる型のリポソームの概説については、D. Lasic, Liposomes in Gene Delivery, CRC Press, 1994の第6章を参照のこと。
【0044】
化学保護分子の皮膚への効果的なデリバリーを達成するために、リポソームの種々の処方(リン脂質を基礎とする小胞、カチオン性リポソーム、非イオン性リポソーム、非イオン性/カチオン性リポソーム、PEG化リポソーム(pegylated liposomes))、PINCポリマー、およびプロピレングリコールおよびエタノール混合物(ミノキシジルの投与用に一般に使用されるビヒクル)、および非イオン性リポソーム/プロピレングリコールおよびエタノール混合物が試験された(実施例参照)。非イオン性リポソームまたは非イオン性リポソームおよびプロピレングリコール/エタノールの混合物が特に効果的な経皮担体であることが決定された。
【0045】
反応性リポソームは、本発明の他の具体例に好ましい。リポソームの微量成分としてのカチオン性両親媒性化合物の封入は、負に荷電した溶質との会合、リポソームの細胞表面への迅速な結合、およびリポソームの細胞取り込みを容易にする。pH感受性リポソームは、抗腫瘍薬剤、蛋白質および核酸の細胞質デリバリーの効率を改善するために開発されてきた。ほとんどのpH感受性リポソームは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を用いて調製された。PEは単独でリポソームを形成せず、反転した六辺形相(HII)を形成する傾向がある。しかしながら、リポソームは、PEに別の二重層安定性の両親媒性脂質成分を加えることによって調製することができる。カルボキシル基を有する滴定可能な両親媒性物質は、pH感受性リポソームの調製のための成分として使用されてきた。これらの滴定可能な両親媒性物質によって二重層膜を安定化することのできる能力は、酸性条件下で減少するので、不安定化がリポソームの融合をもたらす。pH感受性リポソームは、生理学的pHにて安定であり、エンドサイトーシス経路を通じて細胞によって内在化され、それによりリポソームが酸性pHに曝露される。エンドソーム内のリポソームは不安定化され、おそらく、エンドソーム膜と融合し、その結果、リソソーム酵素による分解を伴うことなく細胞質中にその内容物を放出する。
【0046】
本発明の他の具体例において、立体的に安定化した不活性リポソームが特に適当である。また他の具体例において、標的とされるリポソームを用いて利益を得てもよい。
本発明の他の具体例において、特に化学保護誘導剤の表皮への投与のために、脂質を基礎とする「クリーム」が特によく適する。クリームは一般に、水、アルコール、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび白蝋を含むように処方される。別の処方において、それらは水、アルコール、グリセロール、ホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリンおよびトリグリセリドを含む。
【0047】
局所投与に有効であると証明されたもう一つ別のデリバリービヒクルは、水性アルコール溶液である。エタノール、メタノール、プロピレングリコールまたはブタンジオールのようなアルコール類は、10−100%アルコールを含む水性溶液において調製され、活性薬剤を該溶液中に溶解させる。該型のデリバリービヒクルは、実施例7−9に記載のプロトコールにおいて用いられる。
他のデリバリービヒクルもまた、本発明における使用、特に、胃腸管腔への解毒剤の投与に適当である。限定するものではないが、(1)植物油または魚油などの油(標準的なゲルカプセル中に入れることができる);および(2)ポリオキシエチレンエーテル、例えば、10−ステアリルエーテル(Brij 76)を水性バッファー中で分散させることによって調製されたエマルジョンが挙げられる。
【0048】
GI管腔に適当なデリバリービヒクルの他の例は、ポリ乳酸ポリグリコール酸の生物分解性微粒子(直径0.1−10μM)を包含し、それは、経口ドラッグデリバリーを介する胃腸内取り込みのイン・ビトロでのモデル系として、蛋白質をCaco−2細胞へ送達するために使用された(Desaiら、Pharm. Res. 14: 1568−1573, 1997)。他に、ポリスチレン粒子によって運搬される蛋白質のラットの小腸内面細胞中への有意な取り込みが示された(Hilleryら、J. Drug Targeting 2: 151−156, 1994)。実際、蛋白質含有微粒子のデリバリーは、GI管腔から粘膜下組織脈管構造までさまざまに報告された(Aphramaianら、Biol. Cell 61: 69−76, 1987)。したがって、かかるポリマー微粒子は、GI管腔の表面に見出される胃腸上皮細胞への化学保護誘導剤の経口デリバリーに極めて適当である。
【0049】
化学保護誘導剤を含む医薬調製物の投与
保護の標的とされる細胞集団または組織に依存して、下記の本発明の組成物の投与様式が考えられる:局所、経口、鼻腔、眼、直腸、膣、経皮、腹腔内および静脈内。標的とされるデリバリーが意図されるので、これらの投与様式のうち若干数が標的とされるデリバリービヒクル(例えば、CTB−または抗体−散在リポソーム)に最も適当である。
【0050】
本発明の組成物は、一般に、医薬調製物として患者に投与される。本明細書で使用される場合、「患者」なる語はヒトまたは動物対象をいう(動物は特に、特定の組成物の臨床上の効力に関するモデルとして有用である)。適当な医薬調製物の選択は、選択された投与法に依存し、医化学者によく知られたプロトコールにしたがって作成され得る。
【0051】
本発明の組成物を含む医薬調製物は、従来、水、緩衝化セーライン、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、界面活性剤、懸濁化剤またはその適当な混合物などの許容される媒体と共に投与するために処方される。選択された媒体中における特定の組成物の濃度は、デリバリービヒクルおよびその中に配置された活性薬剤の特異的性質と共に、媒体の疎水性または親水性の性質に依存するであろう。溶解性限界は当業者によって容易に決定されうる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「生物学的に許容される媒体」なる語は、上記の段落で例示されたような、医薬調製物の望ましい投与経路に適当でありうるあらゆる溶媒、分散媒体などを包含する。医薬上活性な物質のためのかかる媒体の使用は、当該分野で既知である。いずれかの慣用的な媒体または薬剤が投与されるべき組成物と配合禁忌である場合を除いて、医薬調製物中におけるその使用が意図される。
【0053】
医薬調製物は、投与の簡便性および適用量の均一性のために、投与単位形態で処方される。本明細書中で使用される場合、投与単位形態なる語は、治療を受けている患者に適当な医薬調製物の物理的に分離した単位をいう。各適用量は、選択された医薬担体と関連して所望の保護効果を生じるように計算された量の化学保護誘導剤を含有する。適当な投与単位を決定するための手法は当業者によく知られている。
【0054】
投与単位は、患者の体重に基づいて比例的に増減させてもよい。特定の化学療法剤の毒性作用からの標的細胞集団または組織の保護を達成するための適当な濃度は、当該分野で知られているように、用量濃度曲線計算によって決定され得る。
一例として、局所塗布の場合、化学保護誘導剤は、頭皮または他の皮膚部位に塗布される適当な担体(例えば、リポソームエマルジョン)中5−100mMの濃度範囲で使用されうる。該用量は、げっ歯動物モデルを用いる実験の結果から得られ(実施例1−3参照)、用量の範囲は、用量効果において変動したいくつかの異なる分子を用いる実験から得られた結果の相関的要素である。皮膚に塗布される材料の容量は、被覆されるべき表面積の大きさによって変化する;例えば、小さな子供の頭皮処理では3−5mlを要し、成人においてその量は、1回の塗布につき10−20mlまで増加する。
【0055】
もう一つ別の例として、胃腸内投与の場合、適当な媒体(例えば、リポソームエマルジョン)中における化学保護誘導剤の経口投与は、胃および十二指腸の管腔表面積に対して標準化される。これは、患者が朝起きたときに空の胃において材料を消費すると仮定した。
【0056】
また、本発明の医薬処方が1以上の化学誘導剤を含有しうることは当業者に明らかであろう。かかる薬剤の種々の組み合わせはある特定の適用に有用であり、かかる組み合わせの処方は上記の一般的なガイドラインによって調製されたであろう。さらに、1以上の化学保護誘導剤は、2つの異なる作用様式によって効果のある医薬処方を提供するために、抗増殖薬のような他の薬剤と組み合わせてもよい。かかる使用に適当な抗増殖剤は、2000年12月28日にWO00/78289として公開されたPCT出願US00/05186において記載されたサイクリン依存性キナーゼII阻害剤である。さらに、本明細書に記載された化学保護誘導剤のうち若干数は抗増殖活性も有する。
【0057】
医薬調製物の投与方針
本発明の組成物を含む医薬調製物は、化学療法および/または放射線療法と適当な間隔をおいて、化学療法および/または放射線療法の前、化学療法および/または放射線療法の間または化学療法および/または放射線療法の後に投与してもよい。特定の場合、適当な間隔は通常、化学療法または放射線療法および保護の標的とされる細胞集団の性質に依存するであろう。
【0058】
例えば、化学療法に誘導される脱毛症の予防の場合、化学保護誘導剤を含有するリポソームまたは他のデリバリービヒクルは、例えば、局所クリームとして、化学療法の予定された適用前に患者の頭皮に送達させるように処方することができる。毛包の曝露面の内面を覆う上皮細胞を化学療法薬から保護することによって、一般に癌化学療法に付随する毛髪の喪失を予防することができる。実施例においてより詳細に記載されるように、化学療法の適用時に誘導された解毒遺伝子産物が毛包の上皮細胞中で完全に活性化されることを保証するために、局所処方は好ましくは化学療法の1−5日前に開始する。次いで、化学療法の過程の間、該処方を塗布しつづけてもよい。
【0059】
胃腸上皮の保護の場合、化学保護誘導剤は、化学療法の予定された適用前に患者に経口的に送達させるように処方される。したがって、化学療法剤の注入の1−5日前での保護処方の投与は、影響されやすい上皮細胞に保護を与える。例えば、患者は、化学療法の1−5日前の朝の朝食前に、化学保護誘導剤/リポソームエマルジョンを含有する「シェイク」を消費するように指示されるであろう。結果として、ストレス応答遺伝子産物のレベルは、化学療法薬がGI管腔上皮に浸透するとき、その誘導される最大値になるであろう。
【0060】
新規な化学保護誘導剤の同定
上記のように、種々の分子が細胞においてストレス応答遺伝子を誘導することが知られており、それにより、本発明において利用される化学保護誘導効果を提供する。しかしながら、同等または上回る活性を有する新規な化学保護誘導剤を同定するための単純な方法を見出すことは、当該分野における前進であろう。したがって、本発明は、また、有害な化学療法剤または放射線療法の副産物の細胞解毒が可能な1以上のストレス応答分子の生産または活性を誘導または増加させることのできる能力について、候補分子をスクリーニングするための迅速かつ単純なアッセイ系を提供する。該方法は実施例4に詳細に記載される。アッセイは、親電子応答エレメント(EpRE)が、種々の環境因子からの細胞保護の重要な機構を構成する第II相解毒酵素および酸化ストレス蛋白質の誘導発現の媒介となるという実例に基づいている(Wassermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 5361−5366, 1997)。該アッセイは、プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子およびプロモーターに隣接して挿入された1以上のEpRE調節エレメントを含むDNA構築物を利用する。細胞を該DNA構築物で形質転換し、発現されたレポーター遺伝子産物の低い存在および活性を展示するクローン(負の対照)、第II相解毒酵素の既知の誘導剤に細胞を曝露したとき、レポーター遺伝子産物の高い存在または活性を誘導可能なクローン(正の対照)を選択する。次いで、細胞を候補試験化合物に曝露し、レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。該アッセイは、多くの試験化合物の同時試験のためのマルチプルウェル系において組み立てることができる。
【0061】
本発明の好ましい具体例において、レポーター遺伝子は、実施例4に記載のように、チミジンキナーゼプロモーターおよびEpRE調節エレメントのコンカテマーの調節下で緑色蛍光蛋白質をコードする。
また、本発明によると、スクリーニングアッセイの実施を容易にするためのキットも提供される。該キットは、DNA構築物およびアッセイを行うための説明書を含む。さらに、キットは、形質転換に適当な培養細胞、アッセイにおいて対照として使用するための試薬、レポーター遺伝子の発現量を検出するための試薬、および他の種々の培養培地または生物化学試薬を適宜含んでいてもよい。
【0062】
癌を予防するための化学保護誘導剤の使用
癌の病因は完全には理解されていないが、ある種の化学的または環境的因子が突然変異原および発癌物質として作用することがよく知られている。この理由で、本発明は、癌予防としての化学保護誘導剤処方の使用も意図する。毎日の食事摂生の一部としてのこれらの薬剤の予防的消費は、正常な器官、例えば、胃および小腸、ならびに胸部のような非GI組織の宿主において化学保護遺伝子の慢性的な誘導発現をもたらすであろう。解毒細胞蛋白質の慢性的な増加は、それらの細胞がよりいっそう、一般に喫煙および食物副産物から生じる発癌物質のような毎日の生活において遭遇する化学発癌物質を解毒できるようにするであろう。
【0063】
下記の実施例は、本発明を説明するために提供される。それらはいかなる方法においても本発明を制限しようとするものではない。
【0064】
実施例1
化学保護遺伝子産物の発現を誘導する分子の局所塗布による化学療法誘導性脱毛症の予防
発明者らは、細胞毒に対して細胞を保護することが知られているGST、MRP、MDR、ALDH3などの化学保護遺伝子産物を発現することによる毛包の選択的保護によって薬物誘導性脱毛症が大いに首尾よく予防できると仮定した。MRPおよびGST P1の組み合わせた増加した発現は、抗癌剤の細胞毒性に対し高レベルの耐性を与えることが見出された(Morrowら、1998)。しかしながら、MRPおよびGSTの遺伝子産物は抗癌剤の細胞からの除去においてその協同作用により細胞毒性に対して癌細胞を保護するように共同で働くので、MRPまたはGSTのいずれか単独の発現はあまり好結果ではないことが見出された。
【0065】
該実施例に示される実験は、上記の化学保護遺伝子の発現を誘導することが知られている分子を送達することによって、毛包細胞においてこれらの保護遺伝子を過剰発現させるという考えで設計された。脱毛症は、シトキサンを投与することにより、7日齢の仔ラットにおいて誘導された(図1)。シトキサン投与の前および投与の間に、非イオン性リポソームを毛包中に侵入させるためのビヒクルとして用いてラットを化学保護分子で処理し、脱毛症の予防における各化学保護剤の効力を決定した。
【0066】
材料および方法
シトキサン(CTX)による脱毛症の誘導
1匹の母親につき12匹の仔を有する泌乳性スプレーグ・ドーリー(Sprague−Dawley)ラットをハーラン・スプレーグ・ドーリー(Harlan Sprague Dawley)から購入した。CTX誘導性脱毛症を生ずるために、数種類の濃度(35、40、45μg/g体重)の水中におけるCTXを7日齢の仔に腹腔内注射した。CTX処理の7日後、仔を検査して体毛喪失の程度を決定した。仔の背に穏かにブラシをかけて、皮膚に刺さっている固定していない体毛を除去し、写真撮影した。次いで、仔の体毛密度を決定した。100%の体毛密度は、非処理の対照の仔において見出された密度を示し、一方、0%は全体毛を喪失した仔を示す。40μg/gのCTXが7日齢の仔において100%体毛喪失を誘導するのに十分であったことが観察され、該濃度を次の実験に使用した。
【0067】
化学保護剤での処理;デリバリーのためのビヒクルとしての非イオン性リポソームの調製
非イオン性リポソーム調製物は、ジラウリン酸グリセリル(GDL)、コレステロール、ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル(POE−10)を58:15:27の重量パーセント比で含有した。脂質混合物は、また、1%α−トコフェロールを含有した。適当な量の脂質を混合し(100mg/ml全脂質)、滅菌ポリスチレンチューブ中70℃で融解した。脂質混合物を滅菌シリンジ中に引入れた。滅菌PBSを含有する第2のシリンジを70℃に予め加熱し、二路活栓を介して脂質相シリンジに連結した。次いで水相をゆっくりと脂質相シリンジ中に注入した。混合物が室温に達するまで、冷たい水道水の流水下で冷却しながら、混合物をすみやかに2つのシリンジ間を行ったり来たり移動させた。最終的な調製物を顕微鏡下で調べて、リポソームの無欠性および質を確認した。使用直前に、リポソームを室温で2分間超音波処理し、等量の適当な溶媒(典型的にはDMSO)中における化学保護剤と混合し、室温で45分間インキュベートした。
【0068】
下記の化学保護剤を含有するいくつかの非イオン性リポソーム調製物を調製した。
5mM β−NF
10mM β−NF
15mM β−NF
5mM CG09
10mM CG09
15mM CG09
20mM CG09
25mM BHA
50mM BHA
25mM tBHQ
50mM tBHQ
5mM スルフォラフェン
10mM スルフォラフェン
15mM オルチプラズ
20mM オルチプラズ
【0069】
実験の2日前から開始して、7日齢の仔ラットの背中の皮膚1平方センチメートルにリポソーム処方をミクロピペットによって塗布した。実験0日目に、動物に40μg/g CTXを注射した。リポソーム調製物の塗布は実験6日目まで続けた。対照動物は空のリポソームのみを与えられた。実験7日目に、動物にスコアをつけて脱毛の程度を決定した。仔の背中を穏かにこすって固定していない体毛を除去し、写真撮影した。図1は、体毛喪失の予防に対する化学保護分子の影響を示す。
【0070】
結果:
既知の化学保護化合物のなかでも、β−NFは80%の保護効果を有し、次いで、BHA(60%)、オルチプラズ(50%)、tBHQ(10%)およびスルフォラフェン(5%)であった。新たに見出された化合物CG09は、〜97%の最も高い保護レベルを示した(図1、挿入図)。また、体毛の手触りは、非処理の仔ラットのそれに匹敵することがわかった。DMSOを担体として用いて化学保護分子を送達させた場合、仔はCTX処理後に体毛を保持したが、その皮膚はざらざらで鱗状であることが観察された。ミノキシジル担体であるプロピレングリコール:エタノール:水混合物は、これらの化学保護分子の効果的な担体として作用しなかった。ミノキシジルビヒクル中におけるβ−NFまたはCG09で処理された仔における脱毛症は、非処理のCTX処理仔ラットと同様の重篤度であった(図2)。
【0071】
実施例2
皮膚における化学保護遺伝子発現に対する化学保護遺伝子の小型分子誘導剤の影響
β−NFおよびCG09の保護効果の基礎をなす基本的機構を解明するために、発明者らは、GSTs、MDR、MRPおよびALDH3などの化学保護遺伝子の発現レベルを先の実施例に記載したのと同じ局所処理条件下で研究した。
【0072】
簡単に言うと、仔ラットをCTXまたはβ−NFのいずれかで処理し、異なる時間間隔をおいて皮膚試料を収集し、全RNAをそこから抽出した。RNAを逆転写して、32P dATPの存在下、ストレス関連遺伝子に特異的なプライマーを用いて各cDNAを生成した。合成された放射能標識cDNAを用いて、207個のストレス関連遺伝子よりなるラットストレス遺伝子cDNA発現アレイ(Clontech)を製造者のプロトコールにしたがってプローブした。ハイブリダイズした膜をホスファーイメージャースクリーン(phosphorimager screen)に曝露し、得られた画像をオリエンテーショングリッドに並べて、発現される遺伝子を同定した。対照、CTX処理およびβ−NF処理動物由来の画像を比較して、もしあれば、これらの実験条件下での化学保護遺伝子の発現パターンにおける変化を決定した。
【0073】
図3は、β−NFおよびシトキサンで処理した仔ラットにおけるストレス遺伝子の発現パターンを示す。15mM β−NFの仔ラットへの5日間の局所投与は、シトキサンで処理した仔ラットと比較した場合、GST−PI、GST−Mu2、GST−YaおよびGST(ヒトのラット相同物)の発現レベルにおいて有意な増加をもたらした。
【0074】
図6は、ラット皮膚細胞(その大部分は毛包細胞である)におけるその発現が、β−NF/非イオン性リポソームエマルジョンの仔ラット皮膚への毎日の塗布後1−6日で(β−NF1−β−NF6、5日目に安定期に達する)誘導される一連の遺伝子を示す。グラフの注目すべき点は:(1)β−NFまたはCG09はシトキサン処理の前日に塗布されただけだが、にもかかわらず、実質的な保護効果が達成されたこと;(2)データが、0日目にシトキサンを投与する5日前に局所的頭皮処理を開始し、次いで、シトキサン処理後の数日間、局所処理を続けて、患者の体からシトキサンを一掃させることに関する強い主張を提供すること;(3)発現が誘導される遺伝子のリスト(すなわち、垂直バーの下の名前)が、なぜシトキサンの毒性が毛包細胞においてほとんど除去されるのかを明らかにすることである。これらの遺伝子、いくつかのGSTおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼは、シトキサンおよび他のアルキル化剤を代謝および解毒することが知られている。mdr−2遺伝子発現の増加は、動物をアドリアマイシン、シトシンアラビノシドおよび脱毛症を誘導することが知られており、かつ、mdr−2膜流出ポンプの基質であることも知られているいる他の薬剤で処理したとき、毛包細胞における耐性または保護表現型が展示されるであろうことを強く示唆する。
【0075】
図7は、β−NF処理(単独)の5日目またはシトキサン(単独)の全身投与後5日目に皮膚組織において誘導されるストレス応答遺伝子を示す。全身性シトキサン投与は、皮膚細胞におけるストレス応答遺伝子のサブセットを誘導する。不運にも、シトキサンは取り除かれてから久しく、シトキサン誘導性ストレス応答遺伝子が有意に発現される前にその損傷が起こる。したがって、本発明は、β−NFのようなより穏かなストレス誘導剤を化学療法剤の投与の1−5日前に適用し、その結果、化学療法剤の送達時にこれらの酵素の発現および解毒活性がピークに達するようにする「分子ワクチン処理」技術を利用する。
【0076】
実施例3
上皮細胞への化学保護遺伝子誘導剤のデリバリーのための担体の同定
皮膚中への化学保護分子の効果的なデリバリーを達成するために、種々の処方のリポソーム(リン脂質を基礎とする小胞、カチオン性リポソーム、非イオン性リポソーム、非イオン性/カチオン性リポソーム、PEG化リポソーム)、PINCポリマー、ならびにプロピレングリコールおよびエタノール混合物(ミノキシジルを投与するために一般に使用されるビヒクル))を用いて研究を行った。まず、これらの処方を用いて、マーカー蛋白質ルシフェラーゼまたはβ−ガラクトシダーゼをコードするようなレポーター遺伝子、または蛍光プローブ(ナイル・レッド(Nile Red))を捕獲し、送達されたマーカー蛋白質の機能アッセイによって、またはナイル・レッドの場合、蛍光発光によって、標的組織においてそのデリバリーを追跡した。リポソームは下記のように調製した。
【0077】
リン脂質を基礎とするビヒクル
調製物は、1:0.5:0.1モル比における下記の脂質混合物を含有した。
1.DSPC:コレステロール:DOTAP
2.DOPE:コレステロール:DSPC
3.DOPE−2000:コレステロール:DSPC
脂質をクロロホルム中に溶解し、回転蒸発器中50℃で蒸発させた。乾燥した脂質薄膜を室温で30分間、DNA(β−galまたはルシフェラーゼ)または1mgのナイル・レッドを含有するHEPESバッファーで水和した。得られた懸濁液を冷凍および解凍の5サイクルに付した。最終的な懸濁液を0.22μmフィルターに7回通過させた。ビヒクルを4℃で保管した。
【0078】
非イオン性リポソーム
非イオン性リポソーム調製物は、ジラウリル酸グリセリル(GDL)、コレステロール、ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル(POE−10)を58:15:27の重量パーセント比で含有した。脂質混合物は1%α−トコフェロールも含有した。適当な量の脂質を混合し(100mg全脂質)、滅菌ポリスチレンチューブ中70℃で溶融した。脂質混合物を滅菌シリンジ中に引入れた。滅菌PBSを含有する第2のシリンジを70℃に予め加熱し、二路活栓を介して脂質相シリンジに連結した。次いで、水相をゆっくりと脂質相シリンジ中に注入した。混合物が室温に達するまで、冷たい水道水の流水下で冷却しながら、混合物をすみやかに2つのシリンジ間を行ったり来たり移動させた。最終的な調製物を顕微鏡下で調べて、リポソームの無欠性および質を確認した。使用直前に、リポソーム調製物を室温で2分間超音波処理し、等量のレポーターDNA(250μg)を加え、室温で1時間インキュベートした。
【0079】
非イオン性/カチオン性リポソーム
非イオン性/カチオン性調製物は、GDL、POE−10、コレステロール、DOTAP(1,2ジオレイルオキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロパン)を100mg/ml調製物中50:23:15:12の重量パーセント比で含有した。適当な量の脂質を混合し、ポリスチレンチューブ中70℃で溶融し、70℃に予め加熱したシリンジ中に引入れた。滅菌PBSを含有する第2のシリンジを70℃に予め加熱し、二路活栓を介して脂質相シリンジに連結した。水相をゆっくりと脂質相シリンジ中に注入した。混合物が室温に達するまで、冷たい水道水の流水下で冷却しながら、混合物をすみやかに2つのシリンジ間を行ったり来たり移動させた。使用直前に、リポソーム懸濁液を室温で2分間超音波処理し、等量のDNA(250μg)および非イオン性/カチオン性リポソームを混合し、室温で1時間インキュベートした。
【0080】
PINC(保護的、相互作用的、および不凝性(Protective, Interactive and Non Condensing))ポリマー
70%PVP、30%酢酸ビニルおよび250μgプラスミドDNAを0.9%NaCl中で混合し、室温で15分間インキュベートすることによって処方を作成した。
【0081】
PG(プロピレングリコール):エタノール−プラスミドDNA複合体(ミノキシジルビヒクル)
250μgのプラスミドDNAを60%PG、20%エタノールおよび20%水と混合し、使用前に室温で15分間インキュベートした。
レポーター遺伝子の捕獲の効率を決定するために、エチジウムブロマイドを用いるDNAインターカレーション研究を行って、加えられたDNAがリポソーム中に捕獲されたことを確認した。簡単に言うと、1mlのエチジウムブロマイド(2μg/ml)をDNAを含有するリポソーム調製物のアリコートに加え、ボルテックスミキサーで3秒間混合した。正および負の対照として、DNAおよびエチジウムブロマイドならびにエチジウムブロマイド単独を用いた。全試料のエチジウムブロマイドに基づく蛍光を蛍光計において発光波長595nmでモニターした。
【0082】
仔ラットにおけるイン・ビボ実験
動物実験は、6日齢のハーラン・スプレーグ・ドーリー仔ラットにおいて行った。ルシフェラーゼ遺伝子またはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子または1mgのナイル・レッド(蛍光プローブ)を含有する100μlのリポソーム処方を30分間隔で、1平方センチメートルの背中の皮膚に塗布した。対照の仔は空のリポソームのみを与えられた。24、48および72時間後、仔を殺し、処理した皮膚セクションを切開し、レポーター遺伝子の発現または蛍光プローブのレベルを分析するために用いた。
【0083】
イン・サイトゥβ−ガラクトシダーゼアッセイ
皮膚セクションの部分をOCT中に埋め込み、切断し、5μm細片として超冷凍スライド上に、氷冷したPBS中における1%ホルムアルデヒド、0.2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2を用いて固定した。固定した組織を室温で2時間、2mM MgCl2、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.02% NP40を含有するPBSを3回交換して洗浄した。次いで、これらを暗所中37℃で16時間、PBS中における2mg/ml 4−Cl−5−Br−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−Gal)、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、2mM MgCl2、0.02%NP40および0.1%デオキシコール酸ナトリウム中で染色した。インキュベーション期間の最後に、スライドをPBSで洗浄し、組織学的研究のためにヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン中で対比染色した。
【0084】
組織ホモジェネートの調製
切開した皮膚セクションを小片に切断し、Polytronホモジナイザーを用いて2mlのレポーター溶解バッファー(Promega)中でホモジナイズした。ホモジェネートを最大速度で15分間遠心分離し、上清をさらなる分析に用いた。ホモジェネートの蛋白質含量をBCA(Pierce)法を用いて測定した。
【0085】
β−ガラクトシダーゼ活性の定量分析
β−ガラクトシダーゼ活性は、基質(o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド)を含有する等量の2xアッセイバッファー(Promega)に組織ホモジェネートのアリコートを加えることによって測定した。試料を37℃で30分間インキュベートし、その間、β−ガラクトシダーゼ酵素は無色の基質を黄色のo−ニトロフェノールに加水分解する。1M炭酸ナトリウムの添加によって反応を停止し、分光光度計において420nmで吸光度を測定した。活性は単位/mg蛋白質として表した。
【0086】
ルシフェラーゼ活性の定量分析
ルシフェラーゼ活性を、デュアル・ルシフェラーゼアッセイキット(Dual Luciferase assay Kit (Promega))を用い、製造者の説明書にしたがって測定した。簡単に言うと、100μlの試料に基質を含有する100μlのルシフェラーゼアッセイバッファーを加え、Stop&Gloバッファーの添加直後に、発光された光を照度計で測定した。活性はRLU/mg蛋白質として表した。
ナイル・レッド
ナイル・レッドの蛍光発光は、皮膚セクション上、蛍光顕微鏡下で観察された。
【0087】
結果:
使用したデリバリー系の効率の比較
リポソームデリバリー系の効率を、処理した皮膚セクションにおける発現した生産物β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼに関して、抽出された蛋白質1mgあたりの組織ホモジェネート中におけるこれら2つの酵素の活性を測定することによって比較した。図4は、リポソーム処方で処理されたラットにおける外来性ルシフェラーゼの発現を示す。250μgのルシフェラーゼDNAを入れている非イオン性(NI)リポソームで処理された仔ラットは、NI+DOTAPおよびPL処方に対し、処理の24時間後に最大の発現(95000RLU/mg蛋白質)を示した。興味深いことに、PINCポリマー、PEGおよびミノキシジル担体系は、上記の系において効率が悪いことが見出された。同様の傾向が、β−ガラクトシダーゼ遺伝子および蛍光ナイル・レッドのデリバリーにおいて観察された。非イオン性リポソーム処方は、他のデリバリー系と比べたとき、最も効率のよいデリバリー系であることが見出された(図5)。PEGを基礎とするミノキシジル担体系は単独で、効率の悪い担体系であることが見出されたが、その後の実験は、非イオン性リポソーム処方およびミノキシジル担体の1:1混合物が、ナイル・レッド染料の毛包および表皮細胞へのデリバリーにおいて、非イオン性リポソーム処方単独と同等かまたはそれ以上に効率がよいことを明らかにした。
これらの観察は、Niemicら(1997)によて報告された知見に類似する。彼らは、リポソーム−プラスミドDNA処方の局所適用後のヒトインターロイキン−1レポーターアンタゴニスト蛋白質の毛包周囲での発現がリン脂質を基礎とするリポソームより非イオン性リポソームで有意に高かったことを報告した。
【0088】
化学保護分子を毛包中に送達するための好ましい担体物質の組成
非イオン性リポソームが経皮デリバリーに有効なビヒクルとして同定されたので、担体分子として非イオン性リポソームを用いて種々の化学保護分子を送達するための研究を行い、化学療法誘導性脱毛症に対して保護を与えることにおける各化学保護分子の効率をシトキサンで処理した仔ラットにおいて測定した。
非イオン性リポソーム調製物は上記と同様に調製された。使用直前に、適当な溶媒中における等量の化学保護誘導分子(β−NF、BHA、CG09、オルチプラズ、スルフォラフェン、およびBHQ)をリポソームと混合し、使用する前に室温で45分間放置した。
【0089】
実施例4
化学保護誘導剤の迅速なスクリーニングのためのミクロプレートアッセイ
親電子物質応答エレメント(EpRE)は、癌の化学予防の重要な機構を構成する第II相解毒酵素および酸化ストレス蛋白質の誘導発現の媒介となることが明らかにされた。該実施例は、化学保護誘導活性を有する天然または合成化学物質をスクリーンおよび同定するための迅速な細胞に基づく機能的アッセイの開発を記載する。
【0090】
材料および方法
化学物質および試薬
BHAおよびtBHQは、Fluka Chemicals(Milwaukee,WI)から購入した。DMSO、b−NF、3−MCおよびPDTCは、Sigma Chemicalから購入した。オルチプラズはMcKesson BioServices(Rockville, Maryland)から入手した。スルフォラフェンはLKA Laboratories,Inc.(St. Paul, MN)から購入した。合成EpREオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA)へ注文した。緑色蛍光蛋白質発現ベクターpEGFPは、Clontech(Palo Alto, CA)から購入した。1100個の小型の手動合成分子を含有するDIVERSeta化学ライブラリーの一部は、ChemBridge Corporation(San Diego, CA)から購入した。
【0091】
細胞培養
ヒトHepG2肝癌細胞系をAmerican Type Culture Collection (Rockville, MD)から入手し、0.1%ゲンタマイシン(Life Technologies Inc., Gaithersburg, MD)を補足した10%胎仔ウシ血清を含有する高含量グルコースのDMEM中で維持した。細胞を加湿した5%CO2/95%空気雰囲気中37℃で増殖させた。
【0092】
EpRE−TK−GFPレポーター遺伝子の構築
41bp EpREモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチドをアニールし、精製し、次いで、123bpチミジン−キナーゼ(TK)プロモーターフラグメントを用いるかまたは用いずにpEGFPのマルチプルクローニングサイト中に挿入し、各々、EpRE/TK/pEGFPおよびTK/pEGFP構築物を作成した。41bp EpREをコンカテマー化することによって、複数のEpREモチーフコピーをまた、pEGFP中にサブクローン化した。構築されたプラスミドをQiagenカラム(Qiagen Inc, Santa Clarita, CA)によって精製し、その配列を制限分析および配列決定によって確認し、それは、プラスミドがEpREおよび/またはTKをセンス方向で含有したことを示した。
【0093】
トランスフェクションアッセイ
HepG2細胞をトランスフェクションの24時間前に105細胞/60mmプレート密度で播種した。リポフェクチン(Lipofectin)(Life Technologies, Gainthersburg, MD)を用い、製造者の説明書にしたがって、細胞を2mgのEpRE/TK/pEGFPまたはTK/pEGFPプラスミドでトランスフェクトした。1mg/mlG418(Life Technologies, Grand Island, NY)に耐性のクローンを単離した。2−3週間後、顕微鏡を用いてコロニーを拾い、膨張のために24−ウェルプレートのウェル中に移した。
【0094】
GFPの測定およびスクリーニング方法
HepG2細胞(5x104)を黒色の透明底面の組織培養表面96−ウェルプレート(Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)のウェル中に播種してバックグラウンド蛍光を最小限にし、次いで24時間後、既知の化学物質または試験化合物でさらに24時間処理した。DIVERSet化学ライブラリー化合物は、1001/4g/ウェルで96ウェルプレート中の乾燥フィルムとして包装され;シュリンク包装カバーを除去後、それらを直接、ウェルあたり1001/4lのDMSO中に溶解し、次いで、化合物溶液の一部をさらに、細胞培養培地を用いて希釈プレート中で希釈した。HepG2細胞ウェル中における試験化合物の最終濃度は、約501/4Mであった。試験化合物に使用される平均分子量は300であった。正の対照としてb−NFおよびtBHQを各々、101/4Mおよび901/4MでHepG2プレートのウェルに加えた。DMSOを単独で対照培養物に加え、その濃度は決して正対照において0.1%および試験化合物ウェルにおいて1.6%を越えなかった。化合物への曝露の24時間後、培地を除去し、200mlの100mg/mlEtBrを含有するPBSを加えてHepG2細胞を室温で20分間染色した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、200mlのPBSをウェルに加えた後、蛍光を測定した。GFPまたはEtBr蛍光の測定は、蛍光ミクロプレートリーダー(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を用い、各々、485nm/530nmおよび485nm/612nmの励起/発光を用いて行った。獲得したデータを直接、直接的データ分析のためにエクセルコンピューターファイルに移した。
【0095】
結果:
レポーター遺伝子の構築およびトランスフェクション
該スクリーニング系のために構築されたレポーター遺伝子において、EpRE調節エレメントおよびTKプロモーターをGFPレポーター遺伝子の前に挿入した。化学予防(chemopreventive)薬曝露に起因する刺激に対するレポーター遺伝子の感受性を高めるために、EpREエレメントの増加コピー数を含有する構築物も作成し、1X、2Xおよび4Xコピーの41bp EpREインサートを含有した(図8)。該スクリーニング系における基本的仮定は、EpREを活性化する化学予防分子に細胞を曝露するとき、遺伝子発現の増加の程度を反映する細胞内GFPのレベルが試験化合物の誘導能力を反映するということである。該試験系の構築への最終工程において、基底のおよび誘導された安定なGFP発現を示すトランスフェクトされたHepG2細胞クローンを単離し、その後のスクリーニング工程に用いた。
【0096】
HepG2細胞におけるGFPの基底および誘導可能レベル
異なるコピー数のEpREと共に安定にレポーター遺伝子を運搬したHepG2細胞クローンにおけるGFPの基底および誘導可能な発現レベルを図2に示す。該実験において、発明者らは、EpRE−依存性遺伝子の発現の強力な誘導剤であることが以前に示されていたので(Wasserman & Fahl, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94: 5361−5366, 1997)、tBHQ、BHAの1次代謝産物の一つを誘導分子として使用した。tBHQの代謝的形成は、一般に、BHAの抗発癌効果の原因となる工程であると考えられる。親のHepG2細胞とGFPレポーター遺伝子を安定に発現した選択されたクローンのいずれかとの間の細胞増殖率において、識別可能な差異はなかった。4xEpREレポーター遺伝子を有する24個の独立したクローンにおいて基底のおよび誘導されたGFPレベルを測定後、GFPの最も高い誘導可能な発現を有するコロニーおよび最も低い基底レベルをその後の化学ライブラリースクリーニングアッセイに用いた。
【0097】
内部標準としてのDNA含量
既知の化学予防分子およびライブラリー試験化合物はある濃度で毒性になり、かくして、薬物曝露が2日を超えると、試験プレートの所定のウェル中の細胞増殖を抑制するので、観察されたGFPレベルを各ミクロタイターウェル中の細胞数の何らかのインジケーターに標準化することが望まれた。各ウェルのDNA含量を測定することが内部細胞標準として採用された。スクリーニングの単純性を維持することを最初の目標として、発明者らは、GFP発光波長の重複および細胞DNA含量を検出するために用いられる他の利用可能な方法を考慮したとき、DNA含量の迅速な定量測定のための挿入分子EtBrのDNA染色能を用いることに決定した。蛍光ミクロプレートリーダーにおいて励起/発光波長を切り換えることによってEtBrシグナルのみを測定することは、非常に容易であった。相関分析は、EtBr強度と細胞数との間に優秀な相関があることを示した(図10、r=0.9)。したがって、各標準および試験化合物のGFP発現レベルは、各ウェルにおいて見出されたEtBr蛍光レベルに標準化されて、細胞あたりの最終GFP値を与えた。
【0098】
GFPの発現レベルは既知の化学予防分子によって有意に増加する
新規な化学予防分子を同定するために該細胞を基礎とするアッセイを用いることができることを明らかにするために、発明者らは、現在研究されている化学予防分子のうちいくつかを試験して、その検出において該スクリーニング系がどの程度感受性であるかを測定した。第一の工程として、tBHQ処理後のGFP応答の用量および時間依存を決定した(図11)。90mM tBHQまたは10mM b−NFで24時間処理したHepG2レポーター細胞に見られる緑色蛍光のレベルを蛍光画像において示す(図5)。8個の異なる分子についてのレポーター遺伝子発現の用量依存誘導を示すプロフィールを図12に示す。b−NFは二官能性誘導剤であり、それは、第I相およびII相薬物代謝遺伝子の調節の研究において幅広く使用されてきた。BHA、合成フェノール性抗酸化剤は、食物保存料として幅広く使用されている。BHAのより多くの用量の食事投与もまた、種々の化学発癌物質に対する保護を与えることが見出され、該効果は、げっ歯動物において多くの第II相解毒酵素、例えば、GST、エポキシドヒドロラーゼ、およびNQO1の誘導に起因した(Bensonら、Cancer Res., 38(12): 4486−95, 1978; Bensonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 5216−20, 1980)。ブロッコリーから単離されたスルフォラフェンは、第II相解毒酵素の既知の誘導剤であり、ラットにおいて発癌物質に誘導される乳癌を阻害することが見出された(Zhangら、Proc. Natl. Acad,. Sci. USA, 91: 3147−50, 1994; Fahey & Talalay, Food & Chem. Toxicol., 37: 973−9, 1999)。オルチプラズ、置換1,2−ジチオール−3−チオンである抗−住血虫薬分子は、多くのげっ歯動物組織において発癌性物質の有効な阻害剤であり、ヒトおよびげっ歯動物の両方において第II相酵素のイン・ビボでの有効な誘導剤である(Clapper, Pharmacol. Therapeutics, 78: 17−27, 1998)。
【0099】
化学ライブラリーのスクリーニング
化学予防誘導化合物を同定するためのレポーターアッセイの能力の直接的試験において、発明者らは、記載のラピッドスクリーニングアッセイを用いて化学ライブラリーをスクリーンした。図7は、コンピューター分析によって処理された典型的な3Dグラフを示し、典型的なスクリーニングプレート上での試験化合物ならびに正および負の対照各々の誘導能力を示す。b−NF正対照について見られたよりも1.6倍大きい誘導されたGFP発現を示すスクリーニングアッセイにおけるヒット(化合物#09G06)が同定され、図14に示される。
【0100】
実施例5
アルキル化化学療法剤の毒性作用から哺乳動物上皮細胞を保護するためにリポソーム中に入れられたグルタチオン−S−トランスフェラーゼの使用
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は、細胞中で二量体として存在し、サブユニット分子量が約22−30kDaの範囲であり、細胞膜を横切ることができない。したがって、GSTの標的細胞への細胞内デリバリーのための機構は、アルキル化剤処理の過程の間中、その保護効果を増強する必要がある。
【0101】
リポソームは、薬物、免疫原性蛋白質、抗体、DNA、RNAおよび酵素のイン・ビボおよび培養細胞中へのデリバリーに適当な無毒性ビヒクルであることが知られている。該実施例において、発明者らは、大量のGSTを哺乳動物細胞中へ導入するための有効なデリバリー機構としてのリポソームの有用性、および該処理によって与えられるアルキル化化学療法剤の有害な影響からの保護を明らかにする。
【0102】
哺乳動物細胞の細胞質中へのGSTの有効なデリバリーの媒介となるカチオン性pH感受性リポソームの使用を下記する。該研究は、培養哺乳動物上皮細胞、薬物毒性からの保護を細胞に与えることにおけるリポソーム中に入れられた解毒蛋白質の有効性を試験するための適当なモデル系を用いて行われた。
【0103】
材料および方法
リポソームの調製
ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジオレオキシルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、1,2−ジオレオイル−sn−3−スクシニルグリセロール(DOSC)、1,2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール(DPSG)はAvanti Polar Lipids(Birmingham, AL)から入手した。ラット肝臓グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)は、Sigma Chemicals Co.(St. Louis, MO)から購入した。
【0104】
脂質薄層は、アルゴンガス下、クロロホルム溶液中において脂質を回転蒸発させることによって作成された。大きな多重層小胞は、150mM NaCl、0.2−5mgの精製ラット肝臓GSTまたはFITC−結合型ラット肝臓GST(200ng)を含有する20mM HEPES(pH7.4)中において乾燥脂質薄層を水和(ボルテックス混合)することによって調製された。バッファー温度は、リン脂質のゲルから液体−結晶相への移行温度を約10℃上回った温度で維持された。50mg/mlバッファーの脂質濃度が一般に使用された。冷凍および解凍された多重層小胞は、大きな多重層小胞を液体窒素中で上方から冷凍し、水和に使用するのと同じ温度で水浴中で試料を解凍することによって得られた。
【0105】
冷凍および解凍された大きな多重層小胞は、高温での押出を可能にする循環性水浴に取りつけられた10ml水−ジャケット化バレルを装備したステンレススチール押し出し装置を用いて押し出された(Lipex Biomembranes, Vancouver, BC)。小胞は、押出前に適温で少なくとも15分間平衡化された。押出は、800psiまでの窒素圧にて直径100−400nm範囲の孔サイズの2つのポリカーボネートフィルターを通過させて行った。調製物は使用前に押出機により10回繰り返しサイクルに付された。
得られたリポソームは、Bio−Gel A−15mゲル(Bio−Rad, CA)カラム(20cm長さx2cm直径)上でのゲルろ過によって被包されていないGSTから分離された。リポソームを含有するフラクションをcentriprep−500濃縮機(Amicon, Inc., MA)上で30分間スピンすることによって濃縮した。
【0106】
リポソームの細胞取り込み
COS−7およびAGS細胞の単層を、50mm培養皿中における高グルコースのダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)/10%(vol/vol)胎仔ウシ血清中、37℃で増殖させた。リポソーム曝露前に、細胞単層をDMEMで2回洗浄した。次いで、細胞をリポソームを含有する培地中において37℃で種々の時間(0.5−5時間)インキュベートした。細胞単層をPBS(リン酸緩衝化セーライン)で4回洗浄した。リポソーム中のFITC標識したGSTの細胞による取り込みを定量的に測定するために、細胞単層をPBSで徹底的に洗浄し、培養皿をこすり落とし、1mlの溶解バッファー(10mM Tris−HCl+1%Triton x−100)中で溶解した。エッペンドルフ遠心機中で10分間遠心分離後、細胞抽出物の透明になった上清を保持した。次いで、該サイトソル抽出物に関連する蛍光を蛍光分光光度計を用いて測定し、既知量のFITC標識ラット肝臓GSTで得られた標準曲線に基づいて内在化された単位FITC−GSTに換算した。
【0107】
GST含有細胞の抗新生物薬への暴露
COS−7またはAGS細胞を96ウェルプレート中に播種し、10%(vol/vol)胎仔ウシ血清(FBS)を補足した高グルコースのダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM−HG)中で一晩増殖させた。次の日、細胞を血清不含DMEM−HGで洗浄した。DMEM−HG中のリポソームを細胞単層に加え、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、10%FBSを補足したDMEM−HGで単層を洗浄して、遊離のリポソームを除去した。抗新生物薬メルファランを10%FBSを所望の濃度で含有するフェノールレッド不含DMEM−HG中で希釈し、細胞単層に加えた。次いで、マルチウェルプレートを37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション期間の完了時、薬物含有培地を除去し、細胞をフェノールレッド不含およびFBS不含のDMEM−HGで洗浄して残留している血清を除去した。細胞増殖は、生存細胞による可溶性黄色染料MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(Sigma chemiclas, St. Louis, MO))の不溶性紫色沈殿物への変換を測定することにとって評価された。MTTをPBS中に5mg/mlで溶解し、20μmフィルターを通過させて不純物を除去した。MTTストック溶液をフェノールレッド不含FBS不含DMEM−HG中に1:4希釈し、200μlの該希釈液をプレートの各ウェルに加えた。プレートは暗所中37℃で4時間インキュベートし、次いで、吸い取ってMTT溶液を除去した。変換した染料を200μlの酸性イソプロパノール(500mlイソプロパノール中における1.6ml濃HCl)のプレートの各ウェルへの添加によって可溶化した。変換した染料の吸光度を、690nmでバックグラウンドを引き算して570nm波長で測定した。
【0108】
結果
リポソーム中に入れられた解毒蛋白質の細胞へのデリバリー
解毒蛋白質の細胞へのデリバリーの効率をサイトソル中に見出された標識蛋白質の蛍光を定量することによって評価した。細胞は、PCリポソームを用いた場合、リポソームを用いなかった場合よりも約60−175%多くの蛍光標識した蛋白質を受け取った。カチオン性リポソーム(PC+DOTAP)によるデリバリーは、PCリポソームによるデリバリーと比較して約6から8倍の蛍光増加をもたらした。
【0109】
リポソーム中に入れられた解毒蛋白質への曝露による細胞の保護
CSO細胞のリポソーム中に入れられたGSTとのインキュベーションおよびその後のメルファラン、アルキル化抗新生物剤での処理は、細胞に保護を与えた。高MTT吸光度は細胞死の低い割合に相関する。リポソーム中に入れられたGSTで処理されなかった細胞は、リポソーム中に入れられたGSTで前処理された細胞の約2から25倍低いMTT吸光度を有した。
【0110】
これらの結果は、抗新生物剤への曝露前のGST含有リポソームでの上皮細胞の前処理が、これらの薬剤の細胞毒性作用に対して細胞を保護することを明らかにする。GSTを単独で用いる細胞の保護における成功を考慮して、さらに、GSTの活性率を増加させるために基質の付加的な供給を提供することによって、GSTおよびグルタチオンの両方を含むリポソームが、アルキル化化学療法剤の毒性作用から細胞を保護することにおいてよりいっそう有効であることが予測される。
【0111】
実施例6
胃腸上皮を標的とするためのリポソームの修飾
消化管の設定において、上皮細胞表面へのリポソームの付着を可能にするための付加的な手段の組み込みは、リポソーム内容物のこれらの細胞へのデリバリーを容易にしたであろう。胃および小腸上部の内面を覆う管腔上皮細胞に関するリポソームの特異性を増加するために、コレラ毒B(CTB)サブユニットをリポソームの表面に共有結合させてもよい。リポソーム表面に結合したCTBサブユニットを有するリポソームは、M1ガングリオシド受容体分子をその表面に発現する細胞に特異的に結合する。通常、該細胞表面分子を発現する細胞は、胃および小腸上部の内面を覆う管腔上皮細胞を包含する。これは、コレラ細菌細胞が自然感染においてこれらの細胞に結合するという手段である。コレラ毒のBサブユニットは、M1ガングリオシド受容体結合を与えるが、Aサブユニットの不在下では毒性を与えない。
【0112】
材料および方法
コレラ毒Bサブユニットへの抱合のためのリポソーム調製物
精製ラット肝臓GSTおよび微量FITC結合型ラット肝臓GSTを含有するリポソームを、脂質:ホスファチジルコリン(PC):ホスファチジルエタノールアミン(PE):1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファエタノールアミン−N−[4]−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(N−MBP−PE)、70:20:10モル%の混合物を用いて、実施例1に記載の標準的な押出プロトコールによって調製および精製した。
【0113】
リポソームへの架橋のためのコレラ毒Bサブユニット(CTB)の化学修飾
第一アミン反応試薬を用いてチオール基をCTBのリジン残基に付加した。チオール基は、N−MPB−PE含有リポソーム上のマレイミド基との反応に必要であった。これを達成するために、CTB(100μg)をHEPES−セーラインバッファー中に溶解し、暗所中、室温にて1時間、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDF)と一緒に1:100モル比でインキュベートした。10μlの20mM Tris−HCl(pH6.8)中における20mM L−リジンを加えることによって反応をクエンチし、次いで、反応産物を5μlの水中における7.7mg/mlジチオトレイトールを加えることによって還元した。反応混合物をサイズ排除Sephadex G25カラムを通過させることにより、反応しなかった基質を除去した。排除したフラクション中における活性化CTBの濃度をクーマシー蛋白質アッセイ試薬(Pierce Biochemical, Rockford, IL)によって測定した。
【0114】
活性化CTBのリポソームへの架橋
GSTおよび微量FITC結合型GSTを含有するリポソームへの活性化CTBの抱合は、還元したCTB(50μg)を1mL N−MBP−PE含有リポソームの懸濁液と一緒に5℃で一晩インキュベートすることによって行った。10μlのL−システインバッファー(20mM Tris−HClバッファー、pH7.2中における20mM L−システイン)を加えることによってカップリング反応を止めた。CTB抱合型リポソームをHEPES−セーラインバッファーで予め平衡化したサイズ排除ゲルろ過カラム(Biogel−A−15mゲル、Bio−Rad Laboratories, CA; 15cm長さx2cm直径)上で非抱合型CTBから精製した。リポソームを0.5mlフラクション中において溶出し、各フラクションのリポソーム含量を蛍光およびGST活性によって測定した。リポソーム含有フラクションをプールし(フラクション番号5−9)、Centriprep500濃縮機(Amicon Inc., Beverly MA)を用いて1000xgで30分間遠心分離することによって1mlに濃縮した。
【0115】
CTBリポソームの細胞取り込み
細胞(6x106HuTuまたはCOS細胞)を60mm皿に播種し、10%CO2の加湿雰囲気中、10%胎仔ウシ血清(FCS)を補足した高グルコースのDMEM(DMEM w/HG)中において一晩、増殖させた。次いで、単層を5mlのDMEM w/HG+HEPESセーライン(50mM HEPES+50mM NaCl、pH7.5)で3回洗浄した。CTB抱合型リポソームのGM1ガングリオシド受容体を有する細胞へ特異的に結合できる能力を試験するために、いくつかの皿をGM1ガングリオシド受容体の市販の試料(20μg)で10分間前処理した。CTB抱合型リポソームの100μl試料(FITC結合型GSTの5000蛍光単位を含有する)を5ml DMEM w/HG+HEPESセーラインバッファーと一緒に各単層に加え、37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞単層を5ml PBSで4回洗浄して、結合しなかったCTB抱合型リポソームを除去した。細胞に結合した/内在化したCTB抱合型リポソームの量は、まず、細胞を培養皿からこすり落とし、0.3ml PBS中に再懸濁し、30秒間超音波処理することによって定量した。各細胞溶解物の20μlアリコートを2mlのPBSに加え、細胞に関連する蛍光の量を蛍光計において測定した(励起/発光最大494/520nm)。細胞溶解物中における蛋白質の濃度は、クーマシー蛋白質推定キットを用いて決定された。
【0116】
結果:
リポソーム表面に結合したCTBサブユニットを有するリポソームの使用は、腎臓細管上皮細胞(COS細胞)へではなく、胃腸癌細胞(HuTu細胞)への標識蛋白質のデリバリーの増加をもたらした。CTBサブユニットによって与えられた効率の増加は、過剰の遊離M1ガングリオシド受容体の存在下でクエンチされた。これらの結果は、リポソームがCTBサブユニットのその表面への組み込みによって、胃腸上皮の細胞を標的とするように有効に修飾されることを明らかにする。
【0117】
実施例7
化学療法誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおける化学保護誘導剤のさらなる試験
該実施例に示される実験は、化学療法誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおいて種々の化学保護誘導剤の効力を試験するために設計された。
【0118】
材料および方法
仔ラットを有する泌乳性スプレーグ・ドーリー母ラットをHarlan Sprague Dawley(Indianapolis, IN)から購入した。全ての化学保護誘導化合物はSigma/Aldrichから購入した。それらを、もともとHussein A.M.ら、Science: 249, 1564 (1990)によって記載された、実施例1に記載の化学療法誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおいて試験した。シトキサン(CTX)によって誘導される脱毛症を生ずるために、7ないし10日齢の仔ラットにリン酸緩衝化セーライン中で調製された35mg/mlのCTXを腹腔内注射した。化学保護誘導剤は、100%エタノールよりなるデリバリービヒクル中で調製した。エタノール中における化学保護剤の50−150μlを仔の背中に1日1回、CTX攻撃の前後に局所投与した。特に、仔は、CTX攻撃前の5日間、CTX攻撃日の数時間前、およびその後5日間、毎日1回処理された。デリバリービヒクル対照の仔は、エタノールのみを与えられた。CTX処理の約7ないし10日後、仔を脱毛症の存在について評価した。体毛喪失は、Chen G.ら、Int. J. Cancer: 75, 303 (1998)によって記載された修飾脱毛症スコアリング指標を用いて評価された。スコア0=体毛喪失なし;スコア1=10−30%体毛喪失;スコア2=40−60%体毛喪失;スコア3=70−90%体毛喪失;およびスコア4=100%体毛喪失。
【0119】
結果
第IおよびII相解毒分子のいくつかの誘導剤は、仔ラットにおけるCTX誘導性脱毛症モデルにおいて体毛喪失の予防に有効であることが見出された。化学療法誘導性仔ラットモデルにおいて異なる誘導化学保護剤を用いる結果を下記の表に示す。表1は、10mMの単一濃度で投与された化学保護誘導剤の結果を示す。わかるように、該濃度にて、いくつかの化合物は他よりも大きな効力を示した。しかしながら、投与量または担体ビヒクルの改変の効果は、これらの実験において試験されなかった。これらのパラメーターのいずれかにおける変化は、エタノール中10mMにて送達されたあまり有効ではない薬剤の効力に影響を及ぼすことができた。
【0120】
【表1】
【0121】
表2における結果は、レスベラトロールおよびリモネンのような、細胞増殖の阻害のような他の生物学的効果を誘導することができるある特定の第II相誘導剤もまた、脱毛症モデルにおける体毛喪失の保護において非常に有効であったことを示す。表3の結果は、異なる濃度のレスベラトロールを用いるときの動物モデルにおける用量応答を明らかにする。50mMの局所的レスベラトロール用量は、CTX攻撃後の仔ラットにおける脱毛症の予防に非常に有効であった。投与量が低ければ低いほど、脱毛症の予防に対する効力が減少することが見出された。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
実施例8
第I−II相化学保護誘導剤での処理は化学療法誘導性脱毛症モデルにおいて異なる化学療法剤に対して有効である
β−ナフトフラボン(β−NF)は、異なる化学療法剤を用いる脱毛症仔ラットモデルにおける体毛喪失の予防に有効であることが見出された。結果を表4に示す。仔は、シトキサン(35mg/kg)またはシタラビン(15mg/kg)またはドクソルビシン(2mg/kg)のいずれかの単一投与量を6日間、1日1回投与で与えられた。仔は1日1回局所的に、実施例1に記載のように調製された非イオン性リポソームビヒクル中における10mMのβ−NFで処理された。非処理の仔を対照とした。シタラビンおよびドクソルビシン処理の仔の場合、β−NF処理を化学療法処理期間の間中、行った。シトキサン処理の仔の場合、β−NFをシトキサン処理前の2日間および処理後の6日間投与した。β−NF処理の終了後の2日間、Chenらによって記載されたスケールを用いて脱毛症の程度をスコア付した。β−NFは、3つ(シトキサン、シタラビンおよびドクソルビシン)の化学療法の全てに対して仔ラットにおける体毛喪失を有効に予防することが見出された。非処理の仔は全て、重篤な体毛喪失を生じ、全て、脱毛症スコアは4であった(100%体毛喪失)。全体的に、結果は、β−NFのような単一の化学保護剤が異なる作用様式を有する複数の化学療法剤に対して有効でありうることを示す。
【0125】
【表4】
【0126】
実施例9
放射線誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおける化学保護誘導剤処理
化学保護誘導剤処理が放射線誘導性脱毛症を有効に予防できたかどうかを決定するために、β−NFで局所処理した仔ラットを次いで、脱毛症を誘導するレベルで全身放射線に曝露した。Mark I、Model 30、Cs137イラジエーター(J.L. Sheppard & Associates)を用いてスプレーグ・ドーリー仔ラットを照射した。2、5および7.5Gy(1グレイ(Gy)=100mrem)での最初の全身放射線線量応答研究は、7.5Gyの線量が照射された仔の背中に脱毛症を有効に引き起こしたことを示した。仔は、7.5Gyでの放射能攻撃の前に、非イオン性リポソームデリバリービヒクル中における10mM β−NFで6日間、1日1回局所的に処理された。非処理の仔を対照とした。照射の7日後に、仔における脱毛症の程度をChenらによって記載されたスコアリングスケールを用いて評価した。結果を表5に示す。β−ナフトフラボンは、仔ラットにおいて放射線誘導性脱毛症の予防に有効であることが見出された。7.5Gyに曝露された非処理の子の背中は、7日後に完全に禿げた。対照的に、β−NFでの処理は、仔における重篤な体毛喪失を予防した。これらの結果は、局所的化学保護剤が放射線誘導性脱毛症を有効に予防できることを示す。
【0127】
【表5】
【0128】
本発明は、上記に記載および例示された具体例に限定されないが、付随の特許請求の範囲の範囲から逸脱することのない変更および修飾が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】シトキサンで処理した仔ラットにおける体毛喪失に対する化学保護誘導剤の効果。化学保護剤は、脂質小滴懸濁またはDMSO中においてデリバリー用に調製された(実施例1)。上方挿入図:実験プロトコール(実施例1);下方挿入図:異なる化学保護誘導剤で前処理したシトキサン処理仔ラットにおける体毛密度を示すヒストグラム;写真(左から右へ、上方から下方へ):対照(シトキサンまたは化学保護誘導剤で処理されない);シトキサン処理した;シトキサン処理し、かつ、(1)β−NFで前処理した(3つのパネル)、(2)オルチプラズで前処理した(2つのパネル)、(3)BHAで前処理した(1つのパネル)、(4)tBHQで前処理した(1つのパネル)、(5)スルフォラフェンで前処理した(1つのパネル)および(6)CG09で前処理した(2つのパネル)。
【図2】シトキサンで処理した仔ラットにおける体毛喪失に対する化学保護誘導剤の効果。化学保護誘導剤は、ミノキシジルのデリバリーに用いられた型のプロピレングリコール:エタノール:水混合物中においてデリバリー用に調製された(実施例1)。結果は、ミノキシジル担体が化学保護誘導剤のデリバリーにおいて効果的でなかったことを示す。ミノキシジル担体中のCG09またはβ−NFで処理した仔ラットは、化学保護誘導剤で前処理されなかったシトキサン処理動物において観察されたのと同等の体毛喪失を被った。
【図3】β−NFおよびシトキサンで処理した仔ラットにおけるストレス遺伝子の遺伝子発現パターン。仔ラットは、担体のみ(対照)、シトキサン、またはβ−NFのいずれかで処理された。異なる時間間隔にて、試料を収集し、cDNA試料を試料から抽出したmRNAから調製した。合成された放射能標識cDNAを用いて、製造者のプロトコールにしたがい、207個のストレス関連遺伝子よりなるラットストレス遺伝子cDNA発現アレイ(Clontech)をプローブした。
【図4】2つのリポソーム処方で処理したラットにおける外来性ルシフェラーゼの発現を示すヒストグラム。非イオン性(NI)リポソームまたはNI+DOTAPを250μgルシフェラーゼDNAおよび250μgβ−ガラクトシダーゼDNAを包むように処方した。ルシフェラーゼ活性をリポソーム処方の投与後0、4、8、16および24時間で測定した。
【図5】異なるリポソーム処方で処理したラットにおける外来性β−ガラクトシダーゼ活性の発現を示すヒストグラム(実施例2)。リポソームまたは他の担体を250μgルシフェラーゼDNAおよび250μgβ−ガラクトシダーゼDNAを包むように処方した。ルシフェラーゼ活性を該処方の投与後0、4、8、16および24時間で測定した。
【図6】ラットの皮膚細胞における発現が毎日のβ−NF/非イオン性リポソームエマルジョンの皮膚への塗布後1−6(β−NF1−β−NF6)日で誘導される、ラットにおける一連の遺伝子の発現を示すヒストグラム。バーは、左から右へ、対照およびβ−NF1−β−NF6を示す。
【図7】ラットの皮膚細胞における発現が毎日のβ−NF/非イオン性リポソームエマルジョンの皮膚への塗布後5日で誘導される、ラットにおける一連の遺伝子の発現を示すヒストグラム。1回のシトキサンの腹腔内注射後の遺伝子発現と比較する。左から右へ、対照、シトキサン、βNF。
【図8】GFPレポータープラスミドの構築。単一またはコンカテマー化した41bp EpREモチーフおよび/またはTKプロモーターフラグメントを含有するフラグメントをGFPベクター中のマルチプルクローニングサイト中に挿入した。
【図9】示されるGFPレポーター遺伝子を安定に有するHepG2細胞クローンにおけるGFP発現の基底および誘導レベル。細胞を90mM tBHQで24時間、または対照としてDMSO(0.1%最終濃度)で処理した。細胞は下記の発現遺伝子を有したた:TK−GFP、1xEpRE/TK−GFP、2xEpRE/TK−GFP、4xEpRE/TK−GFP。GFP発現レベルは、蛍光プレートリーダーを用いて測定された。値は平均±S.D.として示される。
【図10】播種された細胞数とEtBrまたはGFP蛍光に基づくウェル中のDNA含量との間の相関。ウェルあたりの蛍光強度を実施例4に記載のように測定した。値は3つの測定値の平均±S.D.として示される。
【図11】tBHQ処理したHepG2細胞中でのGFP発現の時間および用量依存。組み込まれた4xEpRE/TKレポーター構築物を有する細胞を(A)90mM tBHQで所定の時間、または(B)所定のtBHQ濃度で24時間処理した。GFP発現レベルは、蛍光プレートリーダーを用いて測定された。値は3つの測定値の平均±S.D.として示される。
【図12】既知の化学予防誘導分子によるGFP発現の用量依存性誘導。HepG2細胞を96ウェルミクロタイタープレート(5x104細胞/ウェル)中に24時間播種し、次いで、材料および方法に記載のように、所定の化学物質で処理した。データは3つの平行培養の平均±SDとして示される。相対蛍光強度率を対照皿を1として算出した。
【図13】試験プレートから得られ、正の対照(tBHQ、レーン1およびb−NF、レーン12)および各試験化合物の誘導レベルを示すためにコンピューターによって分析された蛍光データを示すスクリーニング試験由来の典型的な3Dグラフ。化合物CG09をレーン6に示す。
【図14】既知の誘導剤および化学ライブラリースクリーニング由来のヒット化合物(09G06)の両方から誘導されたGFP発現のレベル。データは3つの測定値の平均±SDとして示される。
【図15】化学保護誘導活性を展示するChemBridgeライブラリー由来のある特定の分子の構造。化合物CG09は構造1である。
35U.S.C.§202(c)にしたがって、合衆国政府は、一部、国立衛生研究所からの基金(交付番号CA22484)によってなされた本明細書に記載の発明において、ある特定の権利を有することが認められる。
本出願は、2000年5月5日に出願された米国出願第09/565714号を優先権主張し、その全てが出典明示により本明細書の一部とされる。
【0002】
(技術分野)
本発明は癌治療の分野に関する。特に、本発明は、放射線療法および癌の化学療法剤の毒性作用から非新生物細胞を保護するための新規な組成物および方法を提供する。
【0003】
(背景技術)
本発明が属する分野の現状をより詳しく説明するために、いくつかの出版物が本出願において引用される。これらの出版物の各々における開示は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0004】
過去数十年にわたり、外科手術と組み合わせた化学療法および放射線療法が癌死亡率の著しい減少に寄与してきた。しかしながら、癌の治療における化学療法薬の潜在的な有用性は、これらの薬剤の非特異的細胞毒性に関連した不都合な効果のために十分に活用されていない。単独または他の化学療法剤と組み合わせて使用されるアルキル化剤は、全ての化学療法処理のうち約半分において使用される。アルキル化剤は、DNA複製を阻害することによって癌性細胞の増殖を妨害する。アルキル化剤以外の癌化学療法薬もまた、哺乳動物細胞に対して毒性である。それらは、2つだけ挙げるとすれば、(1)DNA複製に必要なヌクレオチドの合成および(2)有糸分裂に必要な微小管機能などの複製中の細胞内の複数の部位を阻害することができる。細胞内で酸素ラジカルを生じることによってその細胞致死特性のほとんどを達成する放射線療法もまた、哺乳動物細胞を効率よく殺すことができる。これら3つの一般に使用される薬剤の毒性作用は、一般的に、癌細胞に特異的ではないので、それらは正常細胞、特に有糸分裂が活発な正常細胞の増殖にも影響を及ぼす。結果として、これらの癌治療の1以上で治療されている患者は一般に、非常に多くの臨床上の合併症を発現する。
【0005】
上皮細胞の多くの集団は、早い代謝回転速度を有する。上皮細胞に対する癌治療の毒性は、化学療法または放射線療法を受けている患者が一般に被る副作用の多くの原因である。これらは、胃腸の不快感(distress)、悪心、嘔吐、下痢、食欲喪失、毛髪喪失、骨髄抑制および照射部位の皮膚発疹または潰瘍化を包含する。これらの合併症に耐えることは非常に困難であり、患者が該問題を避けるために癌治療処理を見合わせたり、または中止することは稀なことではない。胃腸の障害は、患者の闘病能力を最も効果的にするために必要な食物を得ることを困難にするので、患者の回復のチャンスを傷つけるかもしれない。
【0006】
典型的には、化学療法の過程の間中、毒性を最小限にし、正常な薬物感受性細胞を保護するために、化学療法剤は最適量より少ない投与量で投与される。正常細胞の化学療法剤に対する感受性を減らすことは、より多くの薬物投与量の投与を可能にし、化学療法をより効果的にすることができる。
放射能療法または化学療法剤の存在下で正常細胞の通常の成長および増殖を促進する保護療法の好結果の手段は、より高投与量の攻撃的な化学療法の使用を可能にするであろう。かかる療法の発展のための2つの重要な標的は、(1)口腔粘膜を包含する胃腸(GI)管全体の内面を覆う上皮細胞、および(2)毛包および表皮を包含する皮膚の上皮である。
【0007】
GI管腔細胞の化学療法および放射線療法に関連する死および脱落は、GI損傷関連分子の脈管構造中への放出をもたらすようである。これらの血液に運搬される分子は、脳内の部位によって検出される場合、化学療法を受けている患者において非常に一般的である悪心応答を引き起こす。オンダンセトロン(Ondansetron)のような薬物での現在の治療は、これらの脳中枢を抑制し、それにより悪心応答を減少させるように働く。しかしながら、GI内面の最初の崩壊が今だ、化学療法の最も有効な使用を制限している。これらの患者において悪心を減少させるためのより良好な機構は、GI表面の最初の崩壊を排除することであり、それにより、脳において損傷に関連した悪心誘導性分子の効果を抑制するというよりもむしろ、これらの分子の放出を防ぐことである。
【0008】
正常細胞に対し何らかの保護を提供し、これらの細胞により作られる組織の無欠性および機能を維持する新規な胃腸療法が開発されている。正常細胞を保護し、正常細胞の増殖を刺激するための現行のアプローチは、栄養分刺激および増殖因子の摂取を最大化することを含む。かかる方法は、毒性の重篤度を減少し、および/または薬物処理の過程を短縮した。しかしながら、これらの改善点にもかかわらず、深刻な副作用が今だ存続し、より有効な療法が所望される。
【0009】
化学療法に誘導される脱毛症の治療も研究されている。脱毛症または毛髪喪失は、ヒトにおける最も一般的な毛髪成長障害であり、しばしば、冒された個体において大きな心配事である。癌の化学療法また放射線療法に付随した後天的脱毛症に罹患した患者において、毛髪の喪失は重要な心配事として嘔吐の上位にくる。該状態は一般的に可逆性であり、毛髪成長の再生は治療の中止後1−2ヶ月以内に起こるが、毛髪喪失は、身体イメージにおける負の変化、社会的活動の減少および対人関係の変化を引き起こす可能性のある、さらなる化学療法の拒絶を導きかねない心理学的苦悩を与えるような影響を示す。
【0010】
化学療法誘導性脱毛の現象は、毛包に対する細胞毒性およびアポトーシスに関連する損傷に起因すると考えられる。いくつかの研究は、化学療法誘導性毛包損傷の根底にある病理生物学的機構が皮膚乳頭の隆起、毛包管のよじれおよび膨大、およびメラニン生成装置の崩壊によって特徴付けられるという証拠を示した。
【0011】
化学療法誘導性脱毛症から患者を保護する試みにおいて、種々のアプローチが行われた。これらは、頭皮の血流および毛包との薬物接触時間を一時的に減少させる物理的モジュールを包含したが、患者の耐性は非常に乏しかった。これらの不十分な結果は、毛包の幹細胞の代謝速度と毛包マトリックスへの血流の両方を減少させる頭皮冷却法の開発を導いたが、該戦略は失敗であることがわかった。フリーラジカルスカベンジャーであるα−トコフェロールの食事での使用は、ウサギにおいて保護効果を有することを示したが、ヒトでは示さなかった。ミノキシジル(minoxidil)2%溶液もまた、化学療法誘導性脱毛症の治療において効果的ではないことが見出された。増殖因子およびサイトカインでのげっ歯動物の前処理は、ARA−C(シトシンアラビノシド)によって誘導された脱毛症に対してある程度の保護を提供したが、一般に使用される癌治療薬シトキサン(cytoxan)では提供しなかった。
【0012】
非経口投与されたか、またはリポソーム中において局所的に塗布されたN−アセチルシステイン(NAC)またはNAC/Immu Vertによるシクロホスファミドまたはシクロホスファミド/シタラビン(cytarabine)誘導性脱毛症の逆転は、ラットモデル系において報告された(Jimenezら、Cancer Investigation 10: 271−276, 1992)。NACはグルタチオンの前駆体であり、それ自体、細胞内GSHレベルを増加させることによって解毒剤として機能すると考えられる。この種の治療は、外来性NACを添加することによって細胞内GSHレベルが細胞中およそ2倍にだけなることができることが示されたので、効力が制限される(Ho & Fahl, J. Biol. Chem. 259, 11231−11235, 1984; Carcinogenesis 5: 143−148, 1984参照)。
【0013】
米国特許第5753263号(Lishkoら)は、ある種の化学療法剤によって誘導される脱毛症を治療するための方法および組成物を開示し、それは、リポソーム担体中における有効量のp−糖蛋白、またはかかる蛋白をコードしているMDR遺伝子の局所的適用を特徴とする。該療法は、p−糖蛋白ポンプを介して細胞から運び出されることのできる特定の化学療法剤に限定される。該リストから著しく外れるものは、アルキル化化学療法剤である。
【0014】
したがって、上記に概説した型の治療は、化学療法誘導性毛髪喪失から何らかの軽減を提供するが、それらの有用性は制限され、さらなる効果的な療法が要望される。
【0015】
(発明の開示)
本発明によると、癌を治療するための放射線療法または化学療法の過程の間、迅速に分裂している正常細胞を損傷から保護するための新規で有効な戦略が見出された。該戦略は、放射線または化学療法を適用したとき、細胞中に存在する天然の解毒系が活性化されるようにそれらを刺激することを基礎とし、それにより、細胞を損傷から保護することができる。
【0016】
本発明の一の態様によると、癌の化学療法または放射線療法の間、非新生物細胞を損傷から保護するための組成物が提供される。該組成物は、下記に定義されるような1以上の化学保護誘導剤および該薬剤を非新生物細胞の標的集団に送達するためのデリバリービヒクルを含む。一の好ましい具体例において、標的細胞集団は、毛包内面を覆うかまたは皮膚表皮を含む上皮細胞よりなる。もう一つ別の好ましい具体例において、標的細胞集団は口腔粘膜および胃腸管腔の上皮細胞よりなる。
【0017】
本発明のもう一つ別の態様によると、癌の化学療法または放射線療法の間、非新生物細胞を損傷から保護するための方法が提供される。該方法は、上皮細胞の集団に上記の組成物を、癌の化学療法または放射線療法の間、非新生物細胞を損傷から保護するのに十分な時間および量で投与することを特徴とする。好ましい具体例において、該方法は、頭皮に該組成物を塗布することによって、癌治療の間の禿頭を予防するために使用される。もう一つ別の好ましい具体例において、該方法は、該組成物を経口投与することによって、癌治療に起因する胃腸の不快感を予防するために使用される。またもう一つ別の好ましい具体例において、該方法は、該組成物を皮膚に塗布することによって、照射部位での皮膚発疹および潰瘍化を予防するために使用される。
【0018】
本発明の上記態様の好ましい具体例において、化学療法剤は、アルカリ化剤、DNA合成の代謝拮抗物質阻害剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂紡錘体毒およびビンカアルカロイドよりなる群から選択される一つまたは組み合わせである。限定するものではないが、例えば、アルトレタミン(altretamine)、アウパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、カルムスチン(carmustine)、クロラムブシル(chlorambucil)、シクロホスファミド(シトキサン(cytoxan))、シタラビン、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドクソルビシン(doxorubicin)、エトポシド(etoposide)、フロックスウリジン(floxuridine)、フルダラビン(fludarabine)ホスフェート、フルオロウラシル、ヒドロキシウリア、イダルビシン(idarubicin)、イホスファミド(ifosfamide)、ロムスチン(lomustine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、ナイトロジェン・マスタード(nitrogen mustard)、メルファラン(melphalan)、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、マイトキサントロン(mitoxantrone)、パクリタキセル(paclitaxel)、ペントスタチン(pentostatin)、プリアマイシン(pliamycin)、プロカルバジン(procarbazine)、ストレプトゾシン(streptozocin)、テニポシド(teniposide)、チオグアニン、チオテパ(thiotepa)、ビンブラスチンおよびビンクリスチンが挙げられる。放射線療法は、X線、γ線、電子ビーム、光子、α−粒子および中性子よりなる群から選択される。
【0019】
好ましい具体例において、化学保護誘導剤は、第I相およびII相薬物代謝酵素を誘導するものである。かかる薬剤は、当該分野で既知であり(例えば、Hayesら、Biochem. Soc. Symp. 64, 141−168, 2000)、クマリン、ラクトン、ジテルペン、ジチオレチオンフラボン、インドール、イソチオシアネート、オルガノスルフィドおよびフェノールのようなクラスの化合物を包含する。特定の例は、限定するものではないが、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼン、2−tert−ブチルヒドロキノン、4−ヒドロキシアニソール、エトキシクイン(ethoxyquin)、α−アンジェリカラクトン、β−ナフトフラボン(napthoflavone)(β−NF)、p−メトキシフェノール、オルチプラズ、インドール−3−カルビノール、オメプラゾール、クマリン、カフェストール、カーウェオール(kahweol)、ケルセチン、インドール−3−アセトニトリル、アリルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、オイゲノール、フェネチルイソチオシアネート、スルフォラフェン(sulphoraphane)、アリルメチルジスルフィド、ジアリルスルフィド、ブチルヒドロキシトルエン、エラグ酸およびフェルラ酸を包含する。
【0020】
もう一つ別の具体例において、化学保護誘導剤は、抗−増殖機能のような第二の機能を有していてもよい。該性質の化合物は、限定するものではないが、3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベン(レスベラトロール(Resveratrol))および(R)−(+)−リモネンを包含する。
【0021】
本発明のもう一つ別の態様によると、下記に定義されるように、化学保護誘導剤を同定するためのアッセイが提供される。該アッセイは、(a)プロモーターおよび1以上のEpRE調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むDNA構築物で形質転換された細胞を提供し、(b)化学保護誘導剤としての可能な有用性についてスクリーンされるべき試験化合物に該細胞を曝露し、次いで(c)レポーター遺伝子の発現を測定し、ここに、試験化合物の不在下での発現と比較した試験化合物の存在下での発現の増加は、該試験化合物が化学保護誘導剤であることを示す工程を含む。また、本発明の該態様にしたがって、該アッセイの実行を容易にするためのキットも提供される。
【0022】
本発明のもう一つ別の態様によると、環境性発癌物質への細胞の曝露によって引き起こされる癌の予防方法が提供される。該方法は、通常の食事摂生の一部として、1以上の化学保護誘導剤を細胞解毒酵素の発現を刺激するのに十分な量で提供し、それにより、環境性発癌物質への曝露時に環境性発癌物質の影響から細胞を保護することを特徴とする。
【0023】
本発明の他の特徴および利益は、下記の図面、詳細な記載および実施例から理解されるであろう。
【0024】
発明の詳細な記載
本発明は、患者に施された化学療法剤または放射線療法の毒性作用から患者の体内の非癌性の迅速に分裂している細胞を保護するための組成物および方法を提供する。特に、本発明の組成物および方法は、上皮細胞を保護するために設計される。最も詳細には、標的は毛包内面を覆う上皮細胞および胃腸管の上皮細胞である。
【0025】
また、患者が化学療法または放射線療法を受ける場合に影響を及ぼされる他の細胞部位での本発明のさらなる応用も予測される。例えば、いくつかの皮膚病変が、化学療法および/または放射線療法の激しい療法を受ける患者において観察された。これらは、典型的に、基礎的な器官における腫瘍を標的とする放射線療法の分野内で皮膚に起こる。一例として、胸部皮膚病変がしばしば、肺癌のために照射された患者において起こる。別例は、頭部および首部の放射線治療を受けている患者における粘膜炎症の発症、すなわち、口腔ただれの発現である。さらに、以前に問題なく放射線治療を受けた患者において、患者がその後にシトキサンで処理されるときに皮膚病変が起こるという「放射線リコール」と呼ばれる現象がときどき現れる。
【0026】
皮膚病変は一般に、皮膚炎の変形であり;それらは皮膚破壊および腫瘍化(上記の口腔ただれを包含する)、全身に広がった皮膚発疹、または繰り返して照射した皮膚領域における散乱した赤い病変よりなることができる。これらの癌治療によって誘導される病変の形成は、正常な皮膚の表皮層内で常に起きている高レベルの細胞分裂と一致する。本発明の組成物は、可能な同時的全身性化学療法はもちろん、繰り返しの放射線によって危険にさらされているこれらの皮膚領域を治療するのに非常に有用であると考えられる。
【0027】
図3に示されるように、いくつかの化学保護誘導剤のいずれかへの皮膚の曝露後に、非常に多数のストレス応答遺伝子の発現が活性化される。活性化された遺伝子の群は、薬物の第II相解毒および反応性酸素種に直接関与する蛋白質、例えば、2、3挙げるならば、いくつかのGSTイソ型、カタラーゼおよびキノンレダクターゼ、ならびにmdr−2、MRPなどのような細胞からの薬物分子の輸送に関与する蛋白質をコードする。また、DNA修復酵素も包含される。この幅広いアップレギュレートされた応答のため、発明者らは、アルカリ化剤分子を包含するが、多くの他の癌化学療法剤群、例えば、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、有糸分裂紡錘体毒、抗腫瘍抗生物質およびビンカアルカロイドにまで及ぶ幅広く種々の薬物に対する耐性表現型を予測する。薬物はストレス応答遺伝子産物の一つによって直接代謝されなくても、まだ、1以上のアップレギュレートされた膜薬物輸送ポンプによって細胞からより迅速に輸送されるようである。正常細胞においてその耐性を誘導しうる化学療法剤の例は、限定するものではないが、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、クラドリビン、シクロホスファミド(シトキサン)、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドクソルビシン、エトポシド、フロックスウリジン、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、ヒドロキシウリア、イダルビシン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、ナイトロジェン・マスタード、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、マイトキサントロン、パクリタキセル、ペントスタチン、プリアマイシン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、ビンブラスチンおよびビンクリスチンを包含する。シトキサン、シタラビン、ドクソルビシンおよび放射能の毒性作用に対して保護するための化学保護誘導剤の使用は、実施例においてより詳細に記載される。
【0028】
したがって、本発明は、細胞のために解毒剤として作用する生物学的分子を生産することのできる細胞の能力を利用する。本明細書で用いる場合、「解毒剤」なる語は、直接または間接的に、1以上の化学療法剤または放射線療法の毒性作用を軽減または排除できる薬剤をいう。解毒剤のいくつかのカテゴリーが細胞において生産される。薬剤の1のカテゴリーは、毒性化合物を修飾することによって、その毒性を減少させるか、または影響を受けやすくして、その後に細胞から排除するように作用する。例えば、化学療法において使用されるアルキル化剤のほとんどは、主要な疎水性領域を有する脂肪親和性親電子物質である。これらの薬剤を細胞から除去するための直接的な輸送機構の不在は、これらの疎水性親電子物質の漸次的な細胞内蓄積をもたらす。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は、種々の抗新生物アルキル化薬を不活性化することのできるその能力についてよく知られている。GSTは、親電子化合物によって引き起こされる損傷から細胞を保護することにおいて重要な役割を有する酵素の一群である。化学療法剤をより毒性の低い形態または細胞からより容易に除去される形態に変換することによって作用する別の薬剤は、アルデヒドデヒドロゲナーゼである。該分子は、カルボプラチンおよびオキサザホスホリンを包含するアルキル化剤、例えば、シクロホスファミドおよび4−ヒドロペルオキシシクロホスファミドの影響に対する細胞の増加した耐性と関連することが示されている(Tannerら、Gyn. Oncol. 65: 54−62, 1997; Bunting & Townsend, J. Biol. Chem. 271: 11884−11890, 1996)。アルデヒドデヒドロゲナーゼは、オキサザホスホリンの活性化経路の重要な中間体であるアルドホスファミドの酸化を触媒し、それにより、これらの薬剤を解毒する(Sreerama & Sladek, Drug Metabolism and Disposition 23: 1080−1084, 1995)。
【0029】
解毒剤のもう一つ別のカテゴリーは、(上記のように輸送用に修飾されたか、または修飾されていない)毒性薬剤の細胞の外への輸送を容易にすることによって作用する。例えば、ある特定のATP−結合カセット(ABC)トランスポーターは、哺乳動物を包含する幅広く種々の生物において同定されており、このように作用するようである。各々、mdrおよびmrp遺伝子によってコードされたABCトランスポーターの2つのよく研究された群は、哺乳動物の腫瘍細胞において観察された多剤耐性現象と関連する。mdr遺伝子は、細胞からのある特定の脂肪親和性薬剤(例えば、アドリアマイシン、ビンブラスチン、タキソール)のエネルギー依存性流出の媒介となるP−糖蛋白のファミリーをコードする。mrp遺伝子は、その特異性がmdr遺伝子産物のそれと重複するが、また、グルタチオンとの結合後に種々の有機化合物の排出の媒介となるトランスポーターのファミリーをコードする。
【0030】
上皮細胞における1以上これらの解毒剤の増加が、上記に列挙した化学療法剤のうち1つまたはそれ以上の毒性作用に対して細胞を保護し、同様に、放射線療法の過程の間、損傷から細胞を保護するように働くことが、本発明によって見出された。したがって、本発明はその最も基本的な態様において、化学療法および/または放射線療法の前またはその初期の過程の間に、上皮細胞においてかかる薬剤を送達して、またはかかる薬剤の生産を増加して、癌治療に付随する損傷から細胞を保護することに向けられる。
【0031】
しかしながら、上記に列挙した解毒剤のほとんどが酵素であることに注目されたい。有効量の解毒酵素が細胞中に存在するようにポリペプチドまたはポリペプチドをコードしている遺伝子を選択された細胞集団へ送達することは困難であり、予測不可能である。したがって、本発明は、1以上の細胞性解毒剤の生産の増加を誘導するために、既知または見出された小型分子の投与によって標的細胞におけるその酵素の生産の増加を誘導することに依存する。これらの分子は、本明細書において、「化学保護誘導剤」または分子と称される。したがって、本明細書で定義される「化学保護誘導剤」は、上記のように、細胞への送達時に、細胞の内在性解毒剤の生産を誘導または増加する薬剤である。
【0032】
本発明によると、化学保護誘導剤が標的細胞集団へ効率よく送達され、細胞に侵入し、種々の手段により、例えば、酵素をコードしている遺伝子の発現増加を誘導することにより、1以上の解毒酵素の生産を誘導または増加させることができることが見出された。得られた利益は、下記により詳細に論じられるように、化学療法または放射線療法に関連する症状、最も顕著には、毛髪喪失および胃腸の不快感の緩和である。
【0033】
本発明の組成物は、内在性解毒分子の生産を誘導することによって上記の1以上の化学療法剤に対する解毒効果を示す1以上の化学保護誘導剤、および化学保護誘導剤を保護の標的とされる細胞および組織に送達するためのデリバリービヒクルを含む。
【0034】
化学保護誘導剤
本発明の目的の場合、「化学保護誘導剤」は、上皮細胞への送達時に、細胞内における解毒分子(上記に定義される)の生産を誘導または増加させるいずれの薬剤であってもよい。作用機構に関するいずれの説明によっても制限されるものではなく、本明細書において示される実験結果は、これらの化学保護誘導剤が一連のストレス応答分子を生産するように細胞を刺激する穏かな酸化ストレスを提供し、その結果、化学療法または放射線療法のより重篤なストレスが強要されるとき、該分子がすでに増加しているかまたは活性化されているので、これらの化学保護誘導剤が有効であることを示唆する。該機構は、ワクチン接種法に対するその機能的類似のため、ときどき、本明細書において「代謝ワクチン接種(metabolic vaccination)」と称される。
【0035】
「化学保護誘導剤」として包含されるべき単独または上記の化合物と組み合わせる第2群の化合物は、アリール炭化水素(Ah)受容体の機能的リガンドである化合物を包含する。いくつかの場合、活性化されたAh受容体に起因するシトクロムP450 1A1遺伝子の保証される誘導発現は、薬物の解毒における第I相代謝工程を提供することができ、次いで、ストレス応答遺伝子群の不可欠な部分である1以上の誘導されたGSTによる代謝産物の抱合が起こる。次いで、本質において、これらの化合物は、細胞から毒性薬物を除去するために、細胞が代謝的「ワンツーパンチ」を発揮する機会を提供する。該能力において使用できるAh受容体リガンドの例は、限定するものではないが、アブラナ科植物由来のインドール−3−カルビノール、およびオメルプラゾール(omerprazole)を包含する(Jellinkら、Biochem. Pharmacol. 45: 1129−1136, 1993; Dzeletovicら、J. Biol. Chem. 272: 12705−12713, 1997)。他の適当なAhリガンドは当該分野で既知である。
【0036】
当該分野で知られている多くの化学保護誘導剤は、本発明において使用に適する(例えば、DeLongら、Cancer Res. 45: 546−551, 1985; Ioannouら、Cancer Res. 42: 1199−1204, 1982; Chungら、Cancer Res. 46: 165−168, 1986; Watternbergら、Cancer Res. 40: 2820−2823, 1980; およびKenslerら、Cancer Res. 46: 3924−3931, 1986)。限定するものではないが、例えば、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(3−BHA)、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2−BHA)、2−tert−ブチル−1,4−ジメトキシベンゼン(メチル−BHA)、2−tert−ブチルヒドロキシキノン(t−BHQ)、4−ヒドロキシアニソール、エトキシクイン、α−アンジェリカラクトン、β−ナフトフラボン(β−NF)、p−メトキシフェノールおよびオルチプラズが挙げられる。これらに加えて、本発明によると本明細書に開示される方法を用いて、ChemBridge Corporation(San Diego, CA)の小型分子ライブラリーから同定された図15に示される分子を包含する他の化学保護誘導剤が同定された。図15に示されるように、これまでに同定された最も強力な化学保護誘導剤は、Chembridgeライブラリー由来のCG09である(図15の構造1)。
【0037】
上記に列挙した分子のいくつか(例えばBHA)は、食物産業において化学的抗酸化剤として使用される。しかしながら、本発明において明らかにされるように、その効果は体内での代謝におけるオキシダントとしてである。例えば、BHAを哺乳動物に投与すると、代謝されて、1次代謝産物としてtert−ブチルヒドロキノン(t−BHQ)が生じる。細胞系における大抵のヒドロキノンと同様に、t−BHQは自発的に、キノンとヒドロキノン形態間の環変換、すなわち、細胞中での酸化還元循環を起こす。酸化還元循環の副産物は、1以上の形態の酸素フリーラジカルの形成である。細胞は、これらの酸素フリーラジカルを環境ストレスとして感知し、ストレス応答遺伝子の発現を引き起こす。このように、BHAのような化学的抗酸化剤は、本明細書で定義されるような化学保護誘導剤として作用するように、細胞中で効果的なオキシダントになりうる。
【0038】
実施例に記載されるように、いくつかの化学保護誘導剤を種々の動物モデル系、特に仔ラットにおける脱毛症モデルにおける効力について試験した。したがって、上記に列挙した化合物の確認において、または上記化合物に加えて、これらの化合物は本発明における使用に特に好ましい。それらは、化学療法または放射線誘導性脱毛症の治療における使用に特に好ましい。これらの化合物は、ChemBridgeライブラリー由来の化合物CG09、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2−BHA)、β−ナフトフラボン(β−NF)、オルチプラズ、ベンジルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート、3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベン(レスベラトロール)および(R)−(+)−リモネンを包含する。
【0039】
これらの後者の2つの化合物(レスベラトロールおよび(R)−(+)−リモネン)は、抗増殖剤として機能することも知られている。したがって、化学療法および放射線療法の間に迅速に分裂している細胞を保護することにおけるそれらの効力は、それらの化学保護誘導機能または抗増殖機能のいずれか、あるいはその両方の機能に帰することが可能かもしれない。これらの分子がその効果を示す機構にかかわらず、それらは、脱毛症モデルの仔ラットにおいて効果的であることが明らかになり、本発明の他の具体例において特に有用であることが予測される。
【0040】
デリバリービヒクル
本発明の組成物は、また、デリバリービヒクルを含む。デリバリービヒクルの主要な機能は、化学保護誘導剤を化学療法剤からの保護の標的とされる細胞集団または組織に運搬することである。
【0041】
非侵襲性担体系を用いる皮膚を介する有機および生物学的物質のデリバリーは、その手法の非侵襲性による患者許容性ならびに胃腸障害および送達された分子の初回通過代謝の回避を包含する多くの魅力を有する。しかしながら、皮膚デリバリーにおける主要な問題は、皮膚角質層の障壁に対するほとんどの物質の低い浸透率である。皮膚は真皮と表皮の二層からなる。真皮は、結合組織、神経、血管およびリンパ管、毛包、皮脂腺および汗腺よりなる。表皮は、分化のいくつかの段階の細胞よりなる;この分化の間、細胞は基底層から表面へ移動し、角化して角質層を形成する。角質層の脂質マトリックスは、コレステロール、遊離脂肪酸およびセラミドよりなる二重層になった脂質膜より形成される。角質層は経皮的吸収に対する主要な障壁であると考えられるが、それはまた、浸透の主要経路でもある。したがって、角質層の脂質マトリックスを緩めるまたは流動化する化合物は、皮膚に対する物質の浸透を増加させうる。これは通常、アルブミン結合体、レシチン、糖蛋白、多糖類およびリポソームのような担体分子を用いることによって達成される。
【0042】
これらの選択肢のうち、リポソーム処方は、より慣用的な処方を超えるいくつかの利益を提供する。主要な利益は、(1)望ましくなく高い全身性吸収由来の深刻な副作用および配合禁忌の減少;(2)リポソームと角質層の高い融和性による、投与部位での送達された物質の有意に高い蓄積;(3)幅広く種々の疎水性および親水性分子の皮膚中への容易な取り込み;(4)捕獲した化合物の代謝分解からの保護;および(5)天然の膜構造に対する密接な類似およびそれに関連する生体適合性および生物分解性である。
【0043】
リポソームは、リン脂質が水性媒体中に分散されるときに形成されるリン脂質分子の高度に精密な自己集合から作成される球形同心流動モザイクとして定義され得る。脂質が水性媒体中に置かれるとき、脂質頭部群と水との親水性相互作用が、球形外皮の形態の生物膜に似た多重層状および単層状の系または小胞の形成をもたらす。これらの基本的なリポソームは、ときどき、「従来のリポソーム」と称される。いくつかの他の型のリポソーム調製物が存在し、それは、(1)ポリエチレングリコールのような不活性親水性ポリマーで被覆された表面である、立体安定化されたリポソーム;(2)抗体またはそのフラグメント、レクチン、オリゴ糖またはペプチドのような標的リガンドが結合する、標的とされるリポソーム(下記に論じられるように、コレラ毒B(CTB)を用いて、胃腸上皮にリポソームを向ける);および(3)特定の相互作用に応答してその相および構造を変化する、反応性または「多形」リポソーム(該群は、刺激のなかでも特に、イオン(pH、カチオン)、熱および光に感受性のリポソームを包含する)を包含する。上記の異なる型のリポソームの概説については、D. Lasic, Liposomes in Gene Delivery, CRC Press, 1994の第6章を参照のこと。
【0044】
化学保護分子の皮膚への効果的なデリバリーを達成するために、リポソームの種々の処方(リン脂質を基礎とする小胞、カチオン性リポソーム、非イオン性リポソーム、非イオン性/カチオン性リポソーム、PEG化リポソーム(pegylated liposomes))、PINCポリマー、およびプロピレングリコールおよびエタノール混合物(ミノキシジルの投与用に一般に使用されるビヒクル)、および非イオン性リポソーム/プロピレングリコールおよびエタノール混合物が試験された(実施例参照)。非イオン性リポソームまたは非イオン性リポソームおよびプロピレングリコール/エタノールの混合物が特に効果的な経皮担体であることが決定された。
【0045】
反応性リポソームは、本発明の他の具体例に好ましい。リポソームの微量成分としてのカチオン性両親媒性化合物の封入は、負に荷電した溶質との会合、リポソームの細胞表面への迅速な結合、およびリポソームの細胞取り込みを容易にする。pH感受性リポソームは、抗腫瘍薬剤、蛋白質および核酸の細胞質デリバリーの効率を改善するために開発されてきた。ほとんどのpH感受性リポソームは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を用いて調製された。PEは単独でリポソームを形成せず、反転した六辺形相(HII)を形成する傾向がある。しかしながら、リポソームは、PEに別の二重層安定性の両親媒性脂質成分を加えることによって調製することができる。カルボキシル基を有する滴定可能な両親媒性物質は、pH感受性リポソームの調製のための成分として使用されてきた。これらの滴定可能な両親媒性物質によって二重層膜を安定化することのできる能力は、酸性条件下で減少するので、不安定化がリポソームの融合をもたらす。pH感受性リポソームは、生理学的pHにて安定であり、エンドサイトーシス経路を通じて細胞によって内在化され、それによりリポソームが酸性pHに曝露される。エンドソーム内のリポソームは不安定化され、おそらく、エンドソーム膜と融合し、その結果、リソソーム酵素による分解を伴うことなく細胞質中にその内容物を放出する。
【0046】
本発明の他の具体例において、立体的に安定化した不活性リポソームが特に適当である。また他の具体例において、標的とされるリポソームを用いて利益を得てもよい。
本発明の他の具体例において、特に化学保護誘導剤の表皮への投与のために、脂質を基礎とする「クリーム」が特によく適する。クリームは一般に、水、アルコール、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび白蝋を含むように処方される。別の処方において、それらは水、アルコール、グリセロール、ホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリンおよびトリグリセリドを含む。
【0047】
局所投与に有効であると証明されたもう一つ別のデリバリービヒクルは、水性アルコール溶液である。エタノール、メタノール、プロピレングリコールまたはブタンジオールのようなアルコール類は、10−100%アルコールを含む水性溶液において調製され、活性薬剤を該溶液中に溶解させる。該型のデリバリービヒクルは、実施例7−9に記載のプロトコールにおいて用いられる。
他のデリバリービヒクルもまた、本発明における使用、特に、胃腸管腔への解毒剤の投与に適当である。限定するものではないが、(1)植物油または魚油などの油(標準的なゲルカプセル中に入れることができる);および(2)ポリオキシエチレンエーテル、例えば、10−ステアリルエーテル(Brij 76)を水性バッファー中で分散させることによって調製されたエマルジョンが挙げられる。
【0048】
GI管腔に適当なデリバリービヒクルの他の例は、ポリ乳酸ポリグリコール酸の生物分解性微粒子(直径0.1−10μM)を包含し、それは、経口ドラッグデリバリーを介する胃腸内取り込みのイン・ビトロでのモデル系として、蛋白質をCaco−2細胞へ送達するために使用された(Desaiら、Pharm. Res. 14: 1568−1573, 1997)。他に、ポリスチレン粒子によって運搬される蛋白質のラットの小腸内面細胞中への有意な取り込みが示された(Hilleryら、J. Drug Targeting 2: 151−156, 1994)。実際、蛋白質含有微粒子のデリバリーは、GI管腔から粘膜下組織脈管構造までさまざまに報告された(Aphramaianら、Biol. Cell 61: 69−76, 1987)。したがって、かかるポリマー微粒子は、GI管腔の表面に見出される胃腸上皮細胞への化学保護誘導剤の経口デリバリーに極めて適当である。
【0049】
化学保護誘導剤を含む医薬調製物の投与
保護の標的とされる細胞集団または組織に依存して、下記の本発明の組成物の投与様式が考えられる:局所、経口、鼻腔、眼、直腸、膣、経皮、腹腔内および静脈内。標的とされるデリバリーが意図されるので、これらの投与様式のうち若干数が標的とされるデリバリービヒクル(例えば、CTB−または抗体−散在リポソーム)に最も適当である。
【0050】
本発明の組成物は、一般に、医薬調製物として患者に投与される。本明細書で使用される場合、「患者」なる語はヒトまたは動物対象をいう(動物は特に、特定の組成物の臨床上の効力に関するモデルとして有用である)。適当な医薬調製物の選択は、選択された投与法に依存し、医化学者によく知られたプロトコールにしたがって作成され得る。
【0051】
本発明の組成物を含む医薬調製物は、従来、水、緩衝化セーライン、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、界面活性剤、懸濁化剤またはその適当な混合物などの許容される媒体と共に投与するために処方される。選択された媒体中における特定の組成物の濃度は、デリバリービヒクルおよびその中に配置された活性薬剤の特異的性質と共に、媒体の疎水性または親水性の性質に依存するであろう。溶解性限界は当業者によって容易に決定されうる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「生物学的に許容される媒体」なる語は、上記の段落で例示されたような、医薬調製物の望ましい投与経路に適当でありうるあらゆる溶媒、分散媒体などを包含する。医薬上活性な物質のためのかかる媒体の使用は、当該分野で既知である。いずれかの慣用的な媒体または薬剤が投与されるべき組成物と配合禁忌である場合を除いて、医薬調製物中におけるその使用が意図される。
【0053】
医薬調製物は、投与の簡便性および適用量の均一性のために、投与単位形態で処方される。本明細書中で使用される場合、投与単位形態なる語は、治療を受けている患者に適当な医薬調製物の物理的に分離した単位をいう。各適用量は、選択された医薬担体と関連して所望の保護効果を生じるように計算された量の化学保護誘導剤を含有する。適当な投与単位を決定するための手法は当業者によく知られている。
【0054】
投与単位は、患者の体重に基づいて比例的に増減させてもよい。特定の化学療法剤の毒性作用からの標的細胞集団または組織の保護を達成するための適当な濃度は、当該分野で知られているように、用量濃度曲線計算によって決定され得る。
一例として、局所塗布の場合、化学保護誘導剤は、頭皮または他の皮膚部位に塗布される適当な担体(例えば、リポソームエマルジョン)中5−100mMの濃度範囲で使用されうる。該用量は、げっ歯動物モデルを用いる実験の結果から得られ(実施例1−3参照)、用量の範囲は、用量効果において変動したいくつかの異なる分子を用いる実験から得られた結果の相関的要素である。皮膚に塗布される材料の容量は、被覆されるべき表面積の大きさによって変化する;例えば、小さな子供の頭皮処理では3−5mlを要し、成人においてその量は、1回の塗布につき10−20mlまで増加する。
【0055】
もう一つ別の例として、胃腸内投与の場合、適当な媒体(例えば、リポソームエマルジョン)中における化学保護誘導剤の経口投与は、胃および十二指腸の管腔表面積に対して標準化される。これは、患者が朝起きたときに空の胃において材料を消費すると仮定した。
【0056】
また、本発明の医薬処方が1以上の化学誘導剤を含有しうることは当業者に明らかであろう。かかる薬剤の種々の組み合わせはある特定の適用に有用であり、かかる組み合わせの処方は上記の一般的なガイドラインによって調製されたであろう。さらに、1以上の化学保護誘導剤は、2つの異なる作用様式によって効果のある医薬処方を提供するために、抗増殖薬のような他の薬剤と組み合わせてもよい。かかる使用に適当な抗増殖剤は、2000年12月28日にWO00/78289として公開されたPCT出願US00/05186において記載されたサイクリン依存性キナーゼII阻害剤である。さらに、本明細書に記載された化学保護誘導剤のうち若干数は抗増殖活性も有する。
【0057】
医薬調製物の投与方針
本発明の組成物を含む医薬調製物は、化学療法および/または放射線療法と適当な間隔をおいて、化学療法および/または放射線療法の前、化学療法および/または放射線療法の間または化学療法および/または放射線療法の後に投与してもよい。特定の場合、適当な間隔は通常、化学療法または放射線療法および保護の標的とされる細胞集団の性質に依存するであろう。
【0058】
例えば、化学療法に誘導される脱毛症の予防の場合、化学保護誘導剤を含有するリポソームまたは他のデリバリービヒクルは、例えば、局所クリームとして、化学療法の予定された適用前に患者の頭皮に送達させるように処方することができる。毛包の曝露面の内面を覆う上皮細胞を化学療法薬から保護することによって、一般に癌化学療法に付随する毛髪の喪失を予防することができる。実施例においてより詳細に記載されるように、化学療法の適用時に誘導された解毒遺伝子産物が毛包の上皮細胞中で完全に活性化されることを保証するために、局所処方は好ましくは化学療法の1−5日前に開始する。次いで、化学療法の過程の間、該処方を塗布しつづけてもよい。
【0059】
胃腸上皮の保護の場合、化学保護誘導剤は、化学療法の予定された適用前に患者に経口的に送達させるように処方される。したがって、化学療法剤の注入の1−5日前での保護処方の投与は、影響されやすい上皮細胞に保護を与える。例えば、患者は、化学療法の1−5日前の朝の朝食前に、化学保護誘導剤/リポソームエマルジョンを含有する「シェイク」を消費するように指示されるであろう。結果として、ストレス応答遺伝子産物のレベルは、化学療法薬がGI管腔上皮に浸透するとき、その誘導される最大値になるであろう。
【0060】
新規な化学保護誘導剤の同定
上記のように、種々の分子が細胞においてストレス応答遺伝子を誘導することが知られており、それにより、本発明において利用される化学保護誘導効果を提供する。しかしながら、同等または上回る活性を有する新規な化学保護誘導剤を同定するための単純な方法を見出すことは、当該分野における前進であろう。したがって、本発明は、また、有害な化学療法剤または放射線療法の副産物の細胞解毒が可能な1以上のストレス応答分子の生産または活性を誘導または増加させることのできる能力について、候補分子をスクリーニングするための迅速かつ単純なアッセイ系を提供する。該方法は実施例4に詳細に記載される。アッセイは、親電子応答エレメント(EpRE)が、種々の環境因子からの細胞保護の重要な機構を構成する第II相解毒酵素および酸化ストレス蛋白質の誘導発現の媒介となるという実例に基づいている(Wassermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 5361−5366, 1997)。該アッセイは、プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子およびプロモーターに隣接して挿入された1以上のEpRE調節エレメントを含むDNA構築物を利用する。細胞を該DNA構築物で形質転換し、発現されたレポーター遺伝子産物の低い存在および活性を展示するクローン(負の対照)、第II相解毒酵素の既知の誘導剤に細胞を曝露したとき、レポーター遺伝子産物の高い存在または活性を誘導可能なクローン(正の対照)を選択する。次いで、細胞を候補試験化合物に曝露し、レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。該アッセイは、多くの試験化合物の同時試験のためのマルチプルウェル系において組み立てることができる。
【0061】
本発明の好ましい具体例において、レポーター遺伝子は、実施例4に記載のように、チミジンキナーゼプロモーターおよびEpRE調節エレメントのコンカテマーの調節下で緑色蛍光蛋白質をコードする。
また、本発明によると、スクリーニングアッセイの実施を容易にするためのキットも提供される。該キットは、DNA構築物およびアッセイを行うための説明書を含む。さらに、キットは、形質転換に適当な培養細胞、アッセイにおいて対照として使用するための試薬、レポーター遺伝子の発現量を検出するための試薬、および他の種々の培養培地または生物化学試薬を適宜含んでいてもよい。
【0062】
癌を予防するための化学保護誘導剤の使用
癌の病因は完全には理解されていないが、ある種の化学的または環境的因子が突然変異原および発癌物質として作用することがよく知られている。この理由で、本発明は、癌予防としての化学保護誘導剤処方の使用も意図する。毎日の食事摂生の一部としてのこれらの薬剤の予防的消費は、正常な器官、例えば、胃および小腸、ならびに胸部のような非GI組織の宿主において化学保護遺伝子の慢性的な誘導発現をもたらすであろう。解毒細胞蛋白質の慢性的な増加は、それらの細胞がよりいっそう、一般に喫煙および食物副産物から生じる発癌物質のような毎日の生活において遭遇する化学発癌物質を解毒できるようにするであろう。
【0063】
下記の実施例は、本発明を説明するために提供される。それらはいかなる方法においても本発明を制限しようとするものではない。
【0064】
実施例1
化学保護遺伝子産物の発現を誘導する分子の局所塗布による化学療法誘導性脱毛症の予防
発明者らは、細胞毒に対して細胞を保護することが知られているGST、MRP、MDR、ALDH3などの化学保護遺伝子産物を発現することによる毛包の選択的保護によって薬物誘導性脱毛症が大いに首尾よく予防できると仮定した。MRPおよびGST P1の組み合わせた増加した発現は、抗癌剤の細胞毒性に対し高レベルの耐性を与えることが見出された(Morrowら、1998)。しかしながら、MRPおよびGSTの遺伝子産物は抗癌剤の細胞からの除去においてその協同作用により細胞毒性に対して癌細胞を保護するように共同で働くので、MRPまたはGSTのいずれか単独の発現はあまり好結果ではないことが見出された。
【0065】
該実施例に示される実験は、上記の化学保護遺伝子の発現を誘導することが知られている分子を送達することによって、毛包細胞においてこれらの保護遺伝子を過剰発現させるという考えで設計された。脱毛症は、シトキサンを投与することにより、7日齢の仔ラットにおいて誘導された(図1)。シトキサン投与の前および投与の間に、非イオン性リポソームを毛包中に侵入させるためのビヒクルとして用いてラットを化学保護分子で処理し、脱毛症の予防における各化学保護剤の効力を決定した。
【0066】
材料および方法
シトキサン(CTX)による脱毛症の誘導
1匹の母親につき12匹の仔を有する泌乳性スプレーグ・ドーリー(Sprague−Dawley)ラットをハーラン・スプレーグ・ドーリー(Harlan Sprague Dawley)から購入した。CTX誘導性脱毛症を生ずるために、数種類の濃度(35、40、45μg/g体重)の水中におけるCTXを7日齢の仔に腹腔内注射した。CTX処理の7日後、仔を検査して体毛喪失の程度を決定した。仔の背に穏かにブラシをかけて、皮膚に刺さっている固定していない体毛を除去し、写真撮影した。次いで、仔の体毛密度を決定した。100%の体毛密度は、非処理の対照の仔において見出された密度を示し、一方、0%は全体毛を喪失した仔を示す。40μg/gのCTXが7日齢の仔において100%体毛喪失を誘導するのに十分であったことが観察され、該濃度を次の実験に使用した。
【0067】
化学保護剤での処理;デリバリーのためのビヒクルとしての非イオン性リポソームの調製
非イオン性リポソーム調製物は、ジラウリン酸グリセリル(GDL)、コレステロール、ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル(POE−10)を58:15:27の重量パーセント比で含有した。脂質混合物は、また、1%α−トコフェロールを含有した。適当な量の脂質を混合し(100mg/ml全脂質)、滅菌ポリスチレンチューブ中70℃で融解した。脂質混合物を滅菌シリンジ中に引入れた。滅菌PBSを含有する第2のシリンジを70℃に予め加熱し、二路活栓を介して脂質相シリンジに連結した。次いで水相をゆっくりと脂質相シリンジ中に注入した。混合物が室温に達するまで、冷たい水道水の流水下で冷却しながら、混合物をすみやかに2つのシリンジ間を行ったり来たり移動させた。最終的な調製物を顕微鏡下で調べて、リポソームの無欠性および質を確認した。使用直前に、リポソームを室温で2分間超音波処理し、等量の適当な溶媒(典型的にはDMSO)中における化学保護剤と混合し、室温で45分間インキュベートした。
【0068】
下記の化学保護剤を含有するいくつかの非イオン性リポソーム調製物を調製した。
5mM β−NF
10mM β−NF
15mM β−NF
5mM CG09
10mM CG09
15mM CG09
20mM CG09
25mM BHA
50mM BHA
25mM tBHQ
50mM tBHQ
5mM スルフォラフェン
10mM スルフォラフェン
15mM オルチプラズ
20mM オルチプラズ
【0069】
実験の2日前から開始して、7日齢の仔ラットの背中の皮膚1平方センチメートルにリポソーム処方をミクロピペットによって塗布した。実験0日目に、動物に40μg/g CTXを注射した。リポソーム調製物の塗布は実験6日目まで続けた。対照動物は空のリポソームのみを与えられた。実験7日目に、動物にスコアをつけて脱毛の程度を決定した。仔の背中を穏かにこすって固定していない体毛を除去し、写真撮影した。図1は、体毛喪失の予防に対する化学保護分子の影響を示す。
【0070】
結果:
既知の化学保護化合物のなかでも、β−NFは80%の保護効果を有し、次いで、BHA(60%)、オルチプラズ(50%)、tBHQ(10%)およびスルフォラフェン(5%)であった。新たに見出された化合物CG09は、〜97%の最も高い保護レベルを示した(図1、挿入図)。また、体毛の手触りは、非処理の仔ラットのそれに匹敵することがわかった。DMSOを担体として用いて化学保護分子を送達させた場合、仔はCTX処理後に体毛を保持したが、その皮膚はざらざらで鱗状であることが観察された。ミノキシジル担体であるプロピレングリコール:エタノール:水混合物は、これらの化学保護分子の効果的な担体として作用しなかった。ミノキシジルビヒクル中におけるβ−NFまたはCG09で処理された仔における脱毛症は、非処理のCTX処理仔ラットと同様の重篤度であった(図2)。
【0071】
実施例2
皮膚における化学保護遺伝子発現に対する化学保護遺伝子の小型分子誘導剤の影響
β−NFおよびCG09の保護効果の基礎をなす基本的機構を解明するために、発明者らは、GSTs、MDR、MRPおよびALDH3などの化学保護遺伝子の発現レベルを先の実施例に記載したのと同じ局所処理条件下で研究した。
【0072】
簡単に言うと、仔ラットをCTXまたはβ−NFのいずれかで処理し、異なる時間間隔をおいて皮膚試料を収集し、全RNAをそこから抽出した。RNAを逆転写して、32P dATPの存在下、ストレス関連遺伝子に特異的なプライマーを用いて各cDNAを生成した。合成された放射能標識cDNAを用いて、207個のストレス関連遺伝子よりなるラットストレス遺伝子cDNA発現アレイ(Clontech)を製造者のプロトコールにしたがってプローブした。ハイブリダイズした膜をホスファーイメージャースクリーン(phosphorimager screen)に曝露し、得られた画像をオリエンテーショングリッドに並べて、発現される遺伝子を同定した。対照、CTX処理およびβ−NF処理動物由来の画像を比較して、もしあれば、これらの実験条件下での化学保護遺伝子の発現パターンにおける変化を決定した。
【0073】
図3は、β−NFおよびシトキサンで処理した仔ラットにおけるストレス遺伝子の発現パターンを示す。15mM β−NFの仔ラットへの5日間の局所投与は、シトキサンで処理した仔ラットと比較した場合、GST−PI、GST−Mu2、GST−YaおよびGST(ヒトのラット相同物)の発現レベルにおいて有意な増加をもたらした。
【0074】
図6は、ラット皮膚細胞(その大部分は毛包細胞である)におけるその発現が、β−NF/非イオン性リポソームエマルジョンの仔ラット皮膚への毎日の塗布後1−6日で(β−NF1−β−NF6、5日目に安定期に達する)誘導される一連の遺伝子を示す。グラフの注目すべき点は:(1)β−NFまたはCG09はシトキサン処理の前日に塗布されただけだが、にもかかわらず、実質的な保護効果が達成されたこと;(2)データが、0日目にシトキサンを投与する5日前に局所的頭皮処理を開始し、次いで、シトキサン処理後の数日間、局所処理を続けて、患者の体からシトキサンを一掃させることに関する強い主張を提供すること;(3)発現が誘導される遺伝子のリスト(すなわち、垂直バーの下の名前)が、なぜシトキサンの毒性が毛包細胞においてほとんど除去されるのかを明らかにすることである。これらの遺伝子、いくつかのGSTおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼは、シトキサンおよび他のアルキル化剤を代謝および解毒することが知られている。mdr−2遺伝子発現の増加は、動物をアドリアマイシン、シトシンアラビノシドおよび脱毛症を誘導することが知られており、かつ、mdr−2膜流出ポンプの基質であることも知られているいる他の薬剤で処理したとき、毛包細胞における耐性または保護表現型が展示されるであろうことを強く示唆する。
【0075】
図7は、β−NF処理(単独)の5日目またはシトキサン(単独)の全身投与後5日目に皮膚組織において誘導されるストレス応答遺伝子を示す。全身性シトキサン投与は、皮膚細胞におけるストレス応答遺伝子のサブセットを誘導する。不運にも、シトキサンは取り除かれてから久しく、シトキサン誘導性ストレス応答遺伝子が有意に発現される前にその損傷が起こる。したがって、本発明は、β−NFのようなより穏かなストレス誘導剤を化学療法剤の投与の1−5日前に適用し、その結果、化学療法剤の送達時にこれらの酵素の発現および解毒活性がピークに達するようにする「分子ワクチン処理」技術を利用する。
【0076】
実施例3
上皮細胞への化学保護遺伝子誘導剤のデリバリーのための担体の同定
皮膚中への化学保護分子の効果的なデリバリーを達成するために、種々の処方のリポソーム(リン脂質を基礎とする小胞、カチオン性リポソーム、非イオン性リポソーム、非イオン性/カチオン性リポソーム、PEG化リポソーム)、PINCポリマー、ならびにプロピレングリコールおよびエタノール混合物(ミノキシジルを投与するために一般に使用されるビヒクル))を用いて研究を行った。まず、これらの処方を用いて、マーカー蛋白質ルシフェラーゼまたはβ−ガラクトシダーゼをコードするようなレポーター遺伝子、または蛍光プローブ(ナイル・レッド(Nile Red))を捕獲し、送達されたマーカー蛋白質の機能アッセイによって、またはナイル・レッドの場合、蛍光発光によって、標的組織においてそのデリバリーを追跡した。リポソームは下記のように調製した。
【0077】
リン脂質を基礎とするビヒクル
調製物は、1:0.5:0.1モル比における下記の脂質混合物を含有した。
1.DSPC:コレステロール:DOTAP
2.DOPE:コレステロール:DSPC
3.DOPE−2000:コレステロール:DSPC
脂質をクロロホルム中に溶解し、回転蒸発器中50℃で蒸発させた。乾燥した脂質薄膜を室温で30分間、DNA(β−galまたはルシフェラーゼ)または1mgのナイル・レッドを含有するHEPESバッファーで水和した。得られた懸濁液を冷凍および解凍の5サイクルに付した。最終的な懸濁液を0.22μmフィルターに7回通過させた。ビヒクルを4℃で保管した。
【0078】
非イオン性リポソーム
非イオン性リポソーム調製物は、ジラウリル酸グリセリル(GDL)、コレステロール、ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル(POE−10)を58:15:27の重量パーセント比で含有した。脂質混合物は1%α−トコフェロールも含有した。適当な量の脂質を混合し(100mg全脂質)、滅菌ポリスチレンチューブ中70℃で溶融した。脂質混合物を滅菌シリンジ中に引入れた。滅菌PBSを含有する第2のシリンジを70℃に予め加熱し、二路活栓を介して脂質相シリンジに連結した。次いで、水相をゆっくりと脂質相シリンジ中に注入した。混合物が室温に達するまで、冷たい水道水の流水下で冷却しながら、混合物をすみやかに2つのシリンジ間を行ったり来たり移動させた。最終的な調製物を顕微鏡下で調べて、リポソームの無欠性および質を確認した。使用直前に、リポソーム調製物を室温で2分間超音波処理し、等量のレポーターDNA(250μg)を加え、室温で1時間インキュベートした。
【0079】
非イオン性/カチオン性リポソーム
非イオン性/カチオン性調製物は、GDL、POE−10、コレステロール、DOTAP(1,2ジオレイルオキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロパン)を100mg/ml調製物中50:23:15:12の重量パーセント比で含有した。適当な量の脂質を混合し、ポリスチレンチューブ中70℃で溶融し、70℃に予め加熱したシリンジ中に引入れた。滅菌PBSを含有する第2のシリンジを70℃に予め加熱し、二路活栓を介して脂質相シリンジに連結した。水相をゆっくりと脂質相シリンジ中に注入した。混合物が室温に達するまで、冷たい水道水の流水下で冷却しながら、混合物をすみやかに2つのシリンジ間を行ったり来たり移動させた。使用直前に、リポソーム懸濁液を室温で2分間超音波処理し、等量のDNA(250μg)および非イオン性/カチオン性リポソームを混合し、室温で1時間インキュベートした。
【0080】
PINC(保護的、相互作用的、および不凝性(Protective, Interactive and Non Condensing))ポリマー
70%PVP、30%酢酸ビニルおよび250μgプラスミドDNAを0.9%NaCl中で混合し、室温で15分間インキュベートすることによって処方を作成した。
【0081】
PG(プロピレングリコール):エタノール−プラスミドDNA複合体(ミノキシジルビヒクル)
250μgのプラスミドDNAを60%PG、20%エタノールおよび20%水と混合し、使用前に室温で15分間インキュベートした。
レポーター遺伝子の捕獲の効率を決定するために、エチジウムブロマイドを用いるDNAインターカレーション研究を行って、加えられたDNAがリポソーム中に捕獲されたことを確認した。簡単に言うと、1mlのエチジウムブロマイド(2μg/ml)をDNAを含有するリポソーム調製物のアリコートに加え、ボルテックスミキサーで3秒間混合した。正および負の対照として、DNAおよびエチジウムブロマイドならびにエチジウムブロマイド単独を用いた。全試料のエチジウムブロマイドに基づく蛍光を蛍光計において発光波長595nmでモニターした。
【0082】
仔ラットにおけるイン・ビボ実験
動物実験は、6日齢のハーラン・スプレーグ・ドーリー仔ラットにおいて行った。ルシフェラーゼ遺伝子またはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子または1mgのナイル・レッド(蛍光プローブ)を含有する100μlのリポソーム処方を30分間隔で、1平方センチメートルの背中の皮膚に塗布した。対照の仔は空のリポソームのみを与えられた。24、48および72時間後、仔を殺し、処理した皮膚セクションを切開し、レポーター遺伝子の発現または蛍光プローブのレベルを分析するために用いた。
【0083】
イン・サイトゥβ−ガラクトシダーゼアッセイ
皮膚セクションの部分をOCT中に埋め込み、切断し、5μm細片として超冷凍スライド上に、氷冷したPBS中における1%ホルムアルデヒド、0.2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2を用いて固定した。固定した組織を室温で2時間、2mM MgCl2、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.02% NP40を含有するPBSを3回交換して洗浄した。次いで、これらを暗所中37℃で16時間、PBS中における2mg/ml 4−Cl−5−Br−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−Gal)、5mMフェリシアン化カリウム、5mMフェロシアン化カリウム、2mM MgCl2、0.02%NP40および0.1%デオキシコール酸ナトリウム中で染色した。インキュベーション期間の最後に、スライドをPBSで洗浄し、組織学的研究のためにヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン中で対比染色した。
【0084】
組織ホモジェネートの調製
切開した皮膚セクションを小片に切断し、Polytronホモジナイザーを用いて2mlのレポーター溶解バッファー(Promega)中でホモジナイズした。ホモジェネートを最大速度で15分間遠心分離し、上清をさらなる分析に用いた。ホモジェネートの蛋白質含量をBCA(Pierce)法を用いて測定した。
【0085】
β−ガラクトシダーゼ活性の定量分析
β−ガラクトシダーゼ活性は、基質(o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド)を含有する等量の2xアッセイバッファー(Promega)に組織ホモジェネートのアリコートを加えることによって測定した。試料を37℃で30分間インキュベートし、その間、β−ガラクトシダーゼ酵素は無色の基質を黄色のo−ニトロフェノールに加水分解する。1M炭酸ナトリウムの添加によって反応を停止し、分光光度計において420nmで吸光度を測定した。活性は単位/mg蛋白質として表した。
【0086】
ルシフェラーゼ活性の定量分析
ルシフェラーゼ活性を、デュアル・ルシフェラーゼアッセイキット(Dual Luciferase assay Kit (Promega))を用い、製造者の説明書にしたがって測定した。簡単に言うと、100μlの試料に基質を含有する100μlのルシフェラーゼアッセイバッファーを加え、Stop&Gloバッファーの添加直後に、発光された光を照度計で測定した。活性はRLU/mg蛋白質として表した。
ナイル・レッド
ナイル・レッドの蛍光発光は、皮膚セクション上、蛍光顕微鏡下で観察された。
【0087】
結果:
使用したデリバリー系の効率の比較
リポソームデリバリー系の効率を、処理した皮膚セクションにおける発現した生産物β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼに関して、抽出された蛋白質1mgあたりの組織ホモジェネート中におけるこれら2つの酵素の活性を測定することによって比較した。図4は、リポソーム処方で処理されたラットにおける外来性ルシフェラーゼの発現を示す。250μgのルシフェラーゼDNAを入れている非イオン性(NI)リポソームで処理された仔ラットは、NI+DOTAPおよびPL処方に対し、処理の24時間後に最大の発現(95000RLU/mg蛋白質)を示した。興味深いことに、PINCポリマー、PEGおよびミノキシジル担体系は、上記の系において効率が悪いことが見出された。同様の傾向が、β−ガラクトシダーゼ遺伝子および蛍光ナイル・レッドのデリバリーにおいて観察された。非イオン性リポソーム処方は、他のデリバリー系と比べたとき、最も効率のよいデリバリー系であることが見出された(図5)。PEGを基礎とするミノキシジル担体系は単独で、効率の悪い担体系であることが見出されたが、その後の実験は、非イオン性リポソーム処方およびミノキシジル担体の1:1混合物が、ナイル・レッド染料の毛包および表皮細胞へのデリバリーにおいて、非イオン性リポソーム処方単独と同等かまたはそれ以上に効率がよいことを明らかにした。
これらの観察は、Niemicら(1997)によて報告された知見に類似する。彼らは、リポソーム−プラスミドDNA処方の局所適用後のヒトインターロイキン−1レポーターアンタゴニスト蛋白質の毛包周囲での発現がリン脂質を基礎とするリポソームより非イオン性リポソームで有意に高かったことを報告した。
【0088】
化学保護分子を毛包中に送達するための好ましい担体物質の組成
非イオン性リポソームが経皮デリバリーに有効なビヒクルとして同定されたので、担体分子として非イオン性リポソームを用いて種々の化学保護分子を送達するための研究を行い、化学療法誘導性脱毛症に対して保護を与えることにおける各化学保護分子の効率をシトキサンで処理した仔ラットにおいて測定した。
非イオン性リポソーム調製物は上記と同様に調製された。使用直前に、適当な溶媒中における等量の化学保護誘導分子(β−NF、BHA、CG09、オルチプラズ、スルフォラフェン、およびBHQ)をリポソームと混合し、使用する前に室温で45分間放置した。
【0089】
実施例4
化学保護誘導剤の迅速なスクリーニングのためのミクロプレートアッセイ
親電子物質応答エレメント(EpRE)は、癌の化学予防の重要な機構を構成する第II相解毒酵素および酸化ストレス蛋白質の誘導発現の媒介となることが明らかにされた。該実施例は、化学保護誘導活性を有する天然または合成化学物質をスクリーンおよび同定するための迅速な細胞に基づく機能的アッセイの開発を記載する。
【0090】
材料および方法
化学物質および試薬
BHAおよびtBHQは、Fluka Chemicals(Milwaukee,WI)から購入した。DMSO、b−NF、3−MCおよびPDTCは、Sigma Chemicalから購入した。オルチプラズはMcKesson BioServices(Rockville, Maryland)から入手した。スルフォラフェンはLKA Laboratories,Inc.(St. Paul, MN)から購入した。合成EpREオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA)へ注文した。緑色蛍光蛋白質発現ベクターpEGFPは、Clontech(Palo Alto, CA)から購入した。1100個の小型の手動合成分子を含有するDIVERSeta化学ライブラリーの一部は、ChemBridge Corporation(San Diego, CA)から購入した。
【0091】
細胞培養
ヒトHepG2肝癌細胞系をAmerican Type Culture Collection (Rockville, MD)から入手し、0.1%ゲンタマイシン(Life Technologies Inc., Gaithersburg, MD)を補足した10%胎仔ウシ血清を含有する高含量グルコースのDMEM中で維持した。細胞を加湿した5%CO2/95%空気雰囲気中37℃で増殖させた。
【0092】
EpRE−TK−GFPレポーター遺伝子の構築
41bp EpREモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチドをアニールし、精製し、次いで、123bpチミジン−キナーゼ(TK)プロモーターフラグメントを用いるかまたは用いずにpEGFPのマルチプルクローニングサイト中に挿入し、各々、EpRE/TK/pEGFPおよびTK/pEGFP構築物を作成した。41bp EpREをコンカテマー化することによって、複数のEpREモチーフコピーをまた、pEGFP中にサブクローン化した。構築されたプラスミドをQiagenカラム(Qiagen Inc, Santa Clarita, CA)によって精製し、その配列を制限分析および配列決定によって確認し、それは、プラスミドがEpREおよび/またはTKをセンス方向で含有したことを示した。
【0093】
トランスフェクションアッセイ
HepG2細胞をトランスフェクションの24時間前に105細胞/60mmプレート密度で播種した。リポフェクチン(Lipofectin)(Life Technologies, Gainthersburg, MD)を用い、製造者の説明書にしたがって、細胞を2mgのEpRE/TK/pEGFPまたはTK/pEGFPプラスミドでトランスフェクトした。1mg/mlG418(Life Technologies, Grand Island, NY)に耐性のクローンを単離した。2−3週間後、顕微鏡を用いてコロニーを拾い、膨張のために24−ウェルプレートのウェル中に移した。
【0094】
GFPの測定およびスクリーニング方法
HepG2細胞(5x104)を黒色の透明底面の組織培養表面96−ウェルプレート(Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)のウェル中に播種してバックグラウンド蛍光を最小限にし、次いで24時間後、既知の化学物質または試験化合物でさらに24時間処理した。DIVERSet化学ライブラリー化合物は、1001/4g/ウェルで96ウェルプレート中の乾燥フィルムとして包装され;シュリンク包装カバーを除去後、それらを直接、ウェルあたり1001/4lのDMSO中に溶解し、次いで、化合物溶液の一部をさらに、細胞培養培地を用いて希釈プレート中で希釈した。HepG2細胞ウェル中における試験化合物の最終濃度は、約501/4Mであった。試験化合物に使用される平均分子量は300であった。正の対照としてb−NFおよびtBHQを各々、101/4Mおよび901/4MでHepG2プレートのウェルに加えた。DMSOを単独で対照培養物に加え、その濃度は決して正対照において0.1%および試験化合物ウェルにおいて1.6%を越えなかった。化合物への曝露の24時間後、培地を除去し、200mlの100mg/mlEtBrを含有するPBSを加えてHepG2細胞を室温で20分間染色した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、200mlのPBSをウェルに加えた後、蛍光を測定した。GFPまたはEtBr蛍光の測定は、蛍光ミクロプレートリーダー(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を用い、各々、485nm/530nmおよび485nm/612nmの励起/発光を用いて行った。獲得したデータを直接、直接的データ分析のためにエクセルコンピューターファイルに移した。
【0095】
結果:
レポーター遺伝子の構築およびトランスフェクション
該スクリーニング系のために構築されたレポーター遺伝子において、EpRE調節エレメントおよびTKプロモーターをGFPレポーター遺伝子の前に挿入した。化学予防(chemopreventive)薬曝露に起因する刺激に対するレポーター遺伝子の感受性を高めるために、EpREエレメントの増加コピー数を含有する構築物も作成し、1X、2Xおよび4Xコピーの41bp EpREインサートを含有した(図8)。該スクリーニング系における基本的仮定は、EpREを活性化する化学予防分子に細胞を曝露するとき、遺伝子発現の増加の程度を反映する細胞内GFPのレベルが試験化合物の誘導能力を反映するということである。該試験系の構築への最終工程において、基底のおよび誘導された安定なGFP発現を示すトランスフェクトされたHepG2細胞クローンを単離し、その後のスクリーニング工程に用いた。
【0096】
HepG2細胞におけるGFPの基底および誘導可能レベル
異なるコピー数のEpREと共に安定にレポーター遺伝子を運搬したHepG2細胞クローンにおけるGFPの基底および誘導可能な発現レベルを図2に示す。該実験において、発明者らは、EpRE−依存性遺伝子の発現の強力な誘導剤であることが以前に示されていたので(Wasserman & Fahl, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 94: 5361−5366, 1997)、tBHQ、BHAの1次代謝産物の一つを誘導分子として使用した。tBHQの代謝的形成は、一般に、BHAの抗発癌効果の原因となる工程であると考えられる。親のHepG2細胞とGFPレポーター遺伝子を安定に発現した選択されたクローンのいずれかとの間の細胞増殖率において、識別可能な差異はなかった。4xEpREレポーター遺伝子を有する24個の独立したクローンにおいて基底のおよび誘導されたGFPレベルを測定後、GFPの最も高い誘導可能な発現を有するコロニーおよび最も低い基底レベルをその後の化学ライブラリースクリーニングアッセイに用いた。
【0097】
内部標準としてのDNA含量
既知の化学予防分子およびライブラリー試験化合物はある濃度で毒性になり、かくして、薬物曝露が2日を超えると、試験プレートの所定のウェル中の細胞増殖を抑制するので、観察されたGFPレベルを各ミクロタイターウェル中の細胞数の何らかのインジケーターに標準化することが望まれた。各ウェルのDNA含量を測定することが内部細胞標準として採用された。スクリーニングの単純性を維持することを最初の目標として、発明者らは、GFP発光波長の重複および細胞DNA含量を検出するために用いられる他の利用可能な方法を考慮したとき、DNA含量の迅速な定量測定のための挿入分子EtBrのDNA染色能を用いることに決定した。蛍光ミクロプレートリーダーにおいて励起/発光波長を切り換えることによってEtBrシグナルのみを測定することは、非常に容易であった。相関分析は、EtBr強度と細胞数との間に優秀な相関があることを示した(図10、r=0.9)。したがって、各標準および試験化合物のGFP発現レベルは、各ウェルにおいて見出されたEtBr蛍光レベルに標準化されて、細胞あたりの最終GFP値を与えた。
【0098】
GFPの発現レベルは既知の化学予防分子によって有意に増加する
新規な化学予防分子を同定するために該細胞を基礎とするアッセイを用いることができることを明らかにするために、発明者らは、現在研究されている化学予防分子のうちいくつかを試験して、その検出において該スクリーニング系がどの程度感受性であるかを測定した。第一の工程として、tBHQ処理後のGFP応答の用量および時間依存を決定した(図11)。90mM tBHQまたは10mM b−NFで24時間処理したHepG2レポーター細胞に見られる緑色蛍光のレベルを蛍光画像において示す(図5)。8個の異なる分子についてのレポーター遺伝子発現の用量依存誘導を示すプロフィールを図12に示す。b−NFは二官能性誘導剤であり、それは、第I相およびII相薬物代謝遺伝子の調節の研究において幅広く使用されてきた。BHA、合成フェノール性抗酸化剤は、食物保存料として幅広く使用されている。BHAのより多くの用量の食事投与もまた、種々の化学発癌物質に対する保護を与えることが見出され、該効果は、げっ歯動物において多くの第II相解毒酵素、例えば、GST、エポキシドヒドロラーゼ、およびNQO1の誘導に起因した(Bensonら、Cancer Res., 38(12): 4486−95, 1978; Bensonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 5216−20, 1980)。ブロッコリーから単離されたスルフォラフェンは、第II相解毒酵素の既知の誘導剤であり、ラットにおいて発癌物質に誘導される乳癌を阻害することが見出された(Zhangら、Proc. Natl. Acad,. Sci. USA, 91: 3147−50, 1994; Fahey & Talalay, Food & Chem. Toxicol., 37: 973−9, 1999)。オルチプラズ、置換1,2−ジチオール−3−チオンである抗−住血虫薬分子は、多くのげっ歯動物組織において発癌性物質の有効な阻害剤であり、ヒトおよびげっ歯動物の両方において第II相酵素のイン・ビボでの有効な誘導剤である(Clapper, Pharmacol. Therapeutics, 78: 17−27, 1998)。
【0099】
化学ライブラリーのスクリーニング
化学予防誘導化合物を同定するためのレポーターアッセイの能力の直接的試験において、発明者らは、記載のラピッドスクリーニングアッセイを用いて化学ライブラリーをスクリーンした。図7は、コンピューター分析によって処理された典型的な3Dグラフを示し、典型的なスクリーニングプレート上での試験化合物ならびに正および負の対照各々の誘導能力を示す。b−NF正対照について見られたよりも1.6倍大きい誘導されたGFP発現を示すスクリーニングアッセイにおけるヒット(化合物#09G06)が同定され、図14に示される。
【0100】
実施例5
アルキル化化学療法剤の毒性作用から哺乳動物上皮細胞を保護するためにリポソーム中に入れられたグルタチオン−S−トランスフェラーゼの使用
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は、細胞中で二量体として存在し、サブユニット分子量が約22−30kDaの範囲であり、細胞膜を横切ることができない。したがって、GSTの標的細胞への細胞内デリバリーのための機構は、アルキル化剤処理の過程の間中、その保護効果を増強する必要がある。
【0101】
リポソームは、薬物、免疫原性蛋白質、抗体、DNA、RNAおよび酵素のイン・ビボおよび培養細胞中へのデリバリーに適当な無毒性ビヒクルであることが知られている。該実施例において、発明者らは、大量のGSTを哺乳動物細胞中へ導入するための有効なデリバリー機構としてのリポソームの有用性、および該処理によって与えられるアルキル化化学療法剤の有害な影響からの保護を明らかにする。
【0102】
哺乳動物細胞の細胞質中へのGSTの有効なデリバリーの媒介となるカチオン性pH感受性リポソームの使用を下記する。該研究は、培養哺乳動物上皮細胞、薬物毒性からの保護を細胞に与えることにおけるリポソーム中に入れられた解毒蛋白質の有効性を試験するための適当なモデル系を用いて行われた。
【0103】
材料および方法
リポソームの調製
ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジオレオキシルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、1,2−ジオレオイル−sn−3−スクシニルグリセロール(DOSC)、1,2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール(DPSG)はAvanti Polar Lipids(Birmingham, AL)から入手した。ラット肝臓グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)は、Sigma Chemicals Co.(St. Louis, MO)から購入した。
【0104】
脂質薄層は、アルゴンガス下、クロロホルム溶液中において脂質を回転蒸発させることによって作成された。大きな多重層小胞は、150mM NaCl、0.2−5mgの精製ラット肝臓GSTまたはFITC−結合型ラット肝臓GST(200ng)を含有する20mM HEPES(pH7.4)中において乾燥脂質薄層を水和(ボルテックス混合)することによって調製された。バッファー温度は、リン脂質のゲルから液体−結晶相への移行温度を約10℃上回った温度で維持された。50mg/mlバッファーの脂質濃度が一般に使用された。冷凍および解凍された多重層小胞は、大きな多重層小胞を液体窒素中で上方から冷凍し、水和に使用するのと同じ温度で水浴中で試料を解凍することによって得られた。
【0105】
冷凍および解凍された大きな多重層小胞は、高温での押出を可能にする循環性水浴に取りつけられた10ml水−ジャケット化バレルを装備したステンレススチール押し出し装置を用いて押し出された(Lipex Biomembranes, Vancouver, BC)。小胞は、押出前に適温で少なくとも15分間平衡化された。押出は、800psiまでの窒素圧にて直径100−400nm範囲の孔サイズの2つのポリカーボネートフィルターを通過させて行った。調製物は使用前に押出機により10回繰り返しサイクルに付された。
得られたリポソームは、Bio−Gel A−15mゲル(Bio−Rad, CA)カラム(20cm長さx2cm直径)上でのゲルろ過によって被包されていないGSTから分離された。リポソームを含有するフラクションをcentriprep−500濃縮機(Amicon, Inc., MA)上で30分間スピンすることによって濃縮した。
【0106】
リポソームの細胞取り込み
COS−7およびAGS細胞の単層を、50mm培養皿中における高グルコースのダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)/10%(vol/vol)胎仔ウシ血清中、37℃で増殖させた。リポソーム曝露前に、細胞単層をDMEMで2回洗浄した。次いで、細胞をリポソームを含有する培地中において37℃で種々の時間(0.5−5時間)インキュベートした。細胞単層をPBS(リン酸緩衝化セーライン)で4回洗浄した。リポソーム中のFITC標識したGSTの細胞による取り込みを定量的に測定するために、細胞単層をPBSで徹底的に洗浄し、培養皿をこすり落とし、1mlの溶解バッファー(10mM Tris−HCl+1%Triton x−100)中で溶解した。エッペンドルフ遠心機中で10分間遠心分離後、細胞抽出物の透明になった上清を保持した。次いで、該サイトソル抽出物に関連する蛍光を蛍光分光光度計を用いて測定し、既知量のFITC標識ラット肝臓GSTで得られた標準曲線に基づいて内在化された単位FITC−GSTに換算した。
【0107】
GST含有細胞の抗新生物薬への暴露
COS−7またはAGS細胞を96ウェルプレート中に播種し、10%(vol/vol)胎仔ウシ血清(FBS)を補足した高グルコースのダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM−HG)中で一晩増殖させた。次の日、細胞を血清不含DMEM−HGで洗浄した。DMEM−HG中のリポソームを細胞単層に加え、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、10%FBSを補足したDMEM−HGで単層を洗浄して、遊離のリポソームを除去した。抗新生物薬メルファランを10%FBSを所望の濃度で含有するフェノールレッド不含DMEM−HG中で希釈し、細胞単層に加えた。次いで、マルチウェルプレートを37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション期間の完了時、薬物含有培地を除去し、細胞をフェノールレッド不含およびFBS不含のDMEM−HGで洗浄して残留している血清を除去した。細胞増殖は、生存細胞による可溶性黄色染料MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(Sigma chemiclas, St. Louis, MO))の不溶性紫色沈殿物への変換を測定することにとって評価された。MTTをPBS中に5mg/mlで溶解し、20μmフィルターを通過させて不純物を除去した。MTTストック溶液をフェノールレッド不含FBS不含DMEM−HG中に1:4希釈し、200μlの該希釈液をプレートの各ウェルに加えた。プレートは暗所中37℃で4時間インキュベートし、次いで、吸い取ってMTT溶液を除去した。変換した染料を200μlの酸性イソプロパノール(500mlイソプロパノール中における1.6ml濃HCl)のプレートの各ウェルへの添加によって可溶化した。変換した染料の吸光度を、690nmでバックグラウンドを引き算して570nm波長で測定した。
【0108】
結果
リポソーム中に入れられた解毒蛋白質の細胞へのデリバリー
解毒蛋白質の細胞へのデリバリーの効率をサイトソル中に見出された標識蛋白質の蛍光を定量することによって評価した。細胞は、PCリポソームを用いた場合、リポソームを用いなかった場合よりも約60−175%多くの蛍光標識した蛋白質を受け取った。カチオン性リポソーム(PC+DOTAP)によるデリバリーは、PCリポソームによるデリバリーと比較して約6から8倍の蛍光増加をもたらした。
【0109】
リポソーム中に入れられた解毒蛋白質への曝露による細胞の保護
CSO細胞のリポソーム中に入れられたGSTとのインキュベーションおよびその後のメルファラン、アルキル化抗新生物剤での処理は、細胞に保護を与えた。高MTT吸光度は細胞死の低い割合に相関する。リポソーム中に入れられたGSTで処理されなかった細胞は、リポソーム中に入れられたGSTで前処理された細胞の約2から25倍低いMTT吸光度を有した。
【0110】
これらの結果は、抗新生物剤への曝露前のGST含有リポソームでの上皮細胞の前処理が、これらの薬剤の細胞毒性作用に対して細胞を保護することを明らかにする。GSTを単独で用いる細胞の保護における成功を考慮して、さらに、GSTの活性率を増加させるために基質の付加的な供給を提供することによって、GSTおよびグルタチオンの両方を含むリポソームが、アルキル化化学療法剤の毒性作用から細胞を保護することにおいてよりいっそう有効であることが予測される。
【0111】
実施例6
胃腸上皮を標的とするためのリポソームの修飾
消化管の設定において、上皮細胞表面へのリポソームの付着を可能にするための付加的な手段の組み込みは、リポソーム内容物のこれらの細胞へのデリバリーを容易にしたであろう。胃および小腸上部の内面を覆う管腔上皮細胞に関するリポソームの特異性を増加するために、コレラ毒B(CTB)サブユニットをリポソームの表面に共有結合させてもよい。リポソーム表面に結合したCTBサブユニットを有するリポソームは、M1ガングリオシド受容体分子をその表面に発現する細胞に特異的に結合する。通常、該細胞表面分子を発現する細胞は、胃および小腸上部の内面を覆う管腔上皮細胞を包含する。これは、コレラ細菌細胞が自然感染においてこれらの細胞に結合するという手段である。コレラ毒のBサブユニットは、M1ガングリオシド受容体結合を与えるが、Aサブユニットの不在下では毒性を与えない。
【0112】
材料および方法
コレラ毒Bサブユニットへの抱合のためのリポソーム調製物
精製ラット肝臓GSTおよび微量FITC結合型ラット肝臓GSTを含有するリポソームを、脂質:ホスファチジルコリン(PC):ホスファチジルエタノールアミン(PE):1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファエタノールアミン−N−[4]−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(N−MBP−PE)、70:20:10モル%の混合物を用いて、実施例1に記載の標準的な押出プロトコールによって調製および精製した。
【0113】
リポソームへの架橋のためのコレラ毒Bサブユニット(CTB)の化学修飾
第一アミン反応試薬を用いてチオール基をCTBのリジン残基に付加した。チオール基は、N−MPB−PE含有リポソーム上のマレイミド基との反応に必要であった。これを達成するために、CTB(100μg)をHEPES−セーラインバッファー中に溶解し、暗所中、室温にて1時間、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDF)と一緒に1:100モル比でインキュベートした。10μlの20mM Tris−HCl(pH6.8)中における20mM L−リジンを加えることによって反応をクエンチし、次いで、反応産物を5μlの水中における7.7mg/mlジチオトレイトールを加えることによって還元した。反応混合物をサイズ排除Sephadex G25カラムを通過させることにより、反応しなかった基質を除去した。排除したフラクション中における活性化CTBの濃度をクーマシー蛋白質アッセイ試薬(Pierce Biochemical, Rockford, IL)によって測定した。
【0114】
活性化CTBのリポソームへの架橋
GSTおよび微量FITC結合型GSTを含有するリポソームへの活性化CTBの抱合は、還元したCTB(50μg)を1mL N−MBP−PE含有リポソームの懸濁液と一緒に5℃で一晩インキュベートすることによって行った。10μlのL−システインバッファー(20mM Tris−HClバッファー、pH7.2中における20mM L−システイン)を加えることによってカップリング反応を止めた。CTB抱合型リポソームをHEPES−セーラインバッファーで予め平衡化したサイズ排除ゲルろ過カラム(Biogel−A−15mゲル、Bio−Rad Laboratories, CA; 15cm長さx2cm直径)上で非抱合型CTBから精製した。リポソームを0.5mlフラクション中において溶出し、各フラクションのリポソーム含量を蛍光およびGST活性によって測定した。リポソーム含有フラクションをプールし(フラクション番号5−9)、Centriprep500濃縮機(Amicon Inc., Beverly MA)を用いて1000xgで30分間遠心分離することによって1mlに濃縮した。
【0115】
CTBリポソームの細胞取り込み
細胞(6x106HuTuまたはCOS細胞)を60mm皿に播種し、10%CO2の加湿雰囲気中、10%胎仔ウシ血清(FCS)を補足した高グルコースのDMEM(DMEM w/HG)中において一晩、増殖させた。次いで、単層を5mlのDMEM w/HG+HEPESセーライン(50mM HEPES+50mM NaCl、pH7.5)で3回洗浄した。CTB抱合型リポソームのGM1ガングリオシド受容体を有する細胞へ特異的に結合できる能力を試験するために、いくつかの皿をGM1ガングリオシド受容体の市販の試料(20μg)で10分間前処理した。CTB抱合型リポソームの100μl試料(FITC結合型GSTの5000蛍光単位を含有する)を5ml DMEM w/HG+HEPESセーラインバッファーと一緒に各単層に加え、37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞単層を5ml PBSで4回洗浄して、結合しなかったCTB抱合型リポソームを除去した。細胞に結合した/内在化したCTB抱合型リポソームの量は、まず、細胞を培養皿からこすり落とし、0.3ml PBS中に再懸濁し、30秒間超音波処理することによって定量した。各細胞溶解物の20μlアリコートを2mlのPBSに加え、細胞に関連する蛍光の量を蛍光計において測定した(励起/発光最大494/520nm)。細胞溶解物中における蛋白質の濃度は、クーマシー蛋白質推定キットを用いて決定された。
【0116】
結果:
リポソーム表面に結合したCTBサブユニットを有するリポソームの使用は、腎臓細管上皮細胞(COS細胞)へではなく、胃腸癌細胞(HuTu細胞)への標識蛋白質のデリバリーの増加をもたらした。CTBサブユニットによって与えられた効率の増加は、過剰の遊離M1ガングリオシド受容体の存在下でクエンチされた。これらの結果は、リポソームがCTBサブユニットのその表面への組み込みによって、胃腸上皮の細胞を標的とするように有効に修飾されることを明らかにする。
【0117】
実施例7
化学療法誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおける化学保護誘導剤のさらなる試験
該実施例に示される実験は、化学療法誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおいて種々の化学保護誘導剤の効力を試験するために設計された。
【0118】
材料および方法
仔ラットを有する泌乳性スプレーグ・ドーリー母ラットをHarlan Sprague Dawley(Indianapolis, IN)から購入した。全ての化学保護誘導化合物はSigma/Aldrichから購入した。それらを、もともとHussein A.M.ら、Science: 249, 1564 (1990)によって記載された、実施例1に記載の化学療法誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおいて試験した。シトキサン(CTX)によって誘導される脱毛症を生ずるために、7ないし10日齢の仔ラットにリン酸緩衝化セーライン中で調製された35mg/mlのCTXを腹腔内注射した。化学保護誘導剤は、100%エタノールよりなるデリバリービヒクル中で調製した。エタノール中における化学保護剤の50−150μlを仔の背中に1日1回、CTX攻撃の前後に局所投与した。特に、仔は、CTX攻撃前の5日間、CTX攻撃日の数時間前、およびその後5日間、毎日1回処理された。デリバリービヒクル対照の仔は、エタノールのみを与えられた。CTX処理の約7ないし10日後、仔を脱毛症の存在について評価した。体毛喪失は、Chen G.ら、Int. J. Cancer: 75, 303 (1998)によって記載された修飾脱毛症スコアリング指標を用いて評価された。スコア0=体毛喪失なし;スコア1=10−30%体毛喪失;スコア2=40−60%体毛喪失;スコア3=70−90%体毛喪失;およびスコア4=100%体毛喪失。
【0119】
結果
第IおよびII相解毒分子のいくつかの誘導剤は、仔ラットにおけるCTX誘導性脱毛症モデルにおいて体毛喪失の予防に有効であることが見出された。化学療法誘導性仔ラットモデルにおいて異なる誘導化学保護剤を用いる結果を下記の表に示す。表1は、10mMの単一濃度で投与された化学保護誘導剤の結果を示す。わかるように、該濃度にて、いくつかの化合物は他よりも大きな効力を示した。しかしながら、投与量または担体ビヒクルの改変の効果は、これらの実験において試験されなかった。これらのパラメーターのいずれかにおける変化は、エタノール中10mMにて送達されたあまり有効ではない薬剤の効力に影響を及ぼすことができた。
【0120】
【表1】
【0121】
表2における結果は、レスベラトロールおよびリモネンのような、細胞増殖の阻害のような他の生物学的効果を誘導することができるある特定の第II相誘導剤もまた、脱毛症モデルにおける体毛喪失の保護において非常に有効であったことを示す。表3の結果は、異なる濃度のレスベラトロールを用いるときの動物モデルにおける用量応答を明らかにする。50mMの局所的レスベラトロール用量は、CTX攻撃後の仔ラットにおける脱毛症の予防に非常に有効であった。投与量が低ければ低いほど、脱毛症の予防に対する効力が減少することが見出された。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
実施例8
第I−II相化学保護誘導剤での処理は化学療法誘導性脱毛症モデルにおいて異なる化学療法剤に対して有効である
β−ナフトフラボン(β−NF)は、異なる化学療法剤を用いる脱毛症仔ラットモデルにおける体毛喪失の予防に有効であることが見出された。結果を表4に示す。仔は、シトキサン(35mg/kg)またはシタラビン(15mg/kg)またはドクソルビシン(2mg/kg)のいずれかの単一投与量を6日間、1日1回投与で与えられた。仔は1日1回局所的に、実施例1に記載のように調製された非イオン性リポソームビヒクル中における10mMのβ−NFで処理された。非処理の仔を対照とした。シタラビンおよびドクソルビシン処理の仔の場合、β−NF処理を化学療法処理期間の間中、行った。シトキサン処理の仔の場合、β−NFをシトキサン処理前の2日間および処理後の6日間投与した。β−NF処理の終了後の2日間、Chenらによって記載されたスケールを用いて脱毛症の程度をスコア付した。β−NFは、3つ(シトキサン、シタラビンおよびドクソルビシン)の化学療法の全てに対して仔ラットにおける体毛喪失を有効に予防することが見出された。非処理の仔は全て、重篤な体毛喪失を生じ、全て、脱毛症スコアは4であった(100%体毛喪失)。全体的に、結果は、β−NFのような単一の化学保護剤が異なる作用様式を有する複数の化学療法剤に対して有効でありうることを示す。
【0125】
【表4】
【0126】
実施例9
放射線誘導性脱毛症の仔ラットモデルにおける化学保護誘導剤処理
化学保護誘導剤処理が放射線誘導性脱毛症を有効に予防できたかどうかを決定するために、β−NFで局所処理した仔ラットを次いで、脱毛症を誘導するレベルで全身放射線に曝露した。Mark I、Model 30、Cs137イラジエーター(J.L. Sheppard & Associates)を用いてスプレーグ・ドーリー仔ラットを照射した。2、5および7.5Gy(1グレイ(Gy)=100mrem)での最初の全身放射線線量応答研究は、7.5Gyの線量が照射された仔の背中に脱毛症を有効に引き起こしたことを示した。仔は、7.5Gyでの放射能攻撃の前に、非イオン性リポソームデリバリービヒクル中における10mM β−NFで6日間、1日1回局所的に処理された。非処理の仔を対照とした。照射の7日後に、仔における脱毛症の程度をChenらによって記載されたスコアリングスケールを用いて評価した。結果を表5に示す。β−ナフトフラボンは、仔ラットにおいて放射線誘導性脱毛症の予防に有効であることが見出された。7.5Gyに曝露された非処理の子の背中は、7日後に完全に禿げた。対照的に、β−NFでの処理は、仔における重篤な体毛喪失を予防した。これらの結果は、局所的化学保護剤が放射線誘導性脱毛症を有効に予防できることを示す。
【0127】
【表5】
【0128】
本発明は、上記に記載および例示された具体例に限定されないが、付随の特許請求の範囲の範囲から逸脱することのない変更および修飾が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】シトキサンで処理した仔ラットにおける体毛喪失に対する化学保護誘導剤の効果。化学保護剤は、脂質小滴懸濁またはDMSO中においてデリバリー用に調製された(実施例1)。上方挿入図:実験プロトコール(実施例1);下方挿入図:異なる化学保護誘導剤で前処理したシトキサン処理仔ラットにおける体毛密度を示すヒストグラム;写真(左から右へ、上方から下方へ):対照(シトキサンまたは化学保護誘導剤で処理されない);シトキサン処理した;シトキサン処理し、かつ、(1)β−NFで前処理した(3つのパネル)、(2)オルチプラズで前処理した(2つのパネル)、(3)BHAで前処理した(1つのパネル)、(4)tBHQで前処理した(1つのパネル)、(5)スルフォラフェンで前処理した(1つのパネル)および(6)CG09で前処理した(2つのパネル)。
【図2】シトキサンで処理した仔ラットにおける体毛喪失に対する化学保護誘導剤の効果。化学保護誘導剤は、ミノキシジルのデリバリーに用いられた型のプロピレングリコール:エタノール:水混合物中においてデリバリー用に調製された(実施例1)。結果は、ミノキシジル担体が化学保護誘導剤のデリバリーにおいて効果的でなかったことを示す。ミノキシジル担体中のCG09またはβ−NFで処理した仔ラットは、化学保護誘導剤で前処理されなかったシトキサン処理動物において観察されたのと同等の体毛喪失を被った。
【図3】β−NFおよびシトキサンで処理した仔ラットにおけるストレス遺伝子の遺伝子発現パターン。仔ラットは、担体のみ(対照)、シトキサン、またはβ−NFのいずれかで処理された。異なる時間間隔にて、試料を収集し、cDNA試料を試料から抽出したmRNAから調製した。合成された放射能標識cDNAを用いて、製造者のプロトコールにしたがい、207個のストレス関連遺伝子よりなるラットストレス遺伝子cDNA発現アレイ(Clontech)をプローブした。
【図4】2つのリポソーム処方で処理したラットにおける外来性ルシフェラーゼの発現を示すヒストグラム。非イオン性(NI)リポソームまたはNI+DOTAPを250μgルシフェラーゼDNAおよび250μgβ−ガラクトシダーゼDNAを包むように処方した。ルシフェラーゼ活性をリポソーム処方の投与後0、4、8、16および24時間で測定した。
【図5】異なるリポソーム処方で処理したラットにおける外来性β−ガラクトシダーゼ活性の発現を示すヒストグラム(実施例2)。リポソームまたは他の担体を250μgルシフェラーゼDNAおよび250μgβ−ガラクトシダーゼDNAを包むように処方した。ルシフェラーゼ活性を該処方の投与後0、4、8、16および24時間で測定した。
【図6】ラットの皮膚細胞における発現が毎日のβ−NF/非イオン性リポソームエマルジョンの皮膚への塗布後1−6(β−NF1−β−NF6)日で誘導される、ラットにおける一連の遺伝子の発現を示すヒストグラム。バーは、左から右へ、対照およびβ−NF1−β−NF6を示す。
【図7】ラットの皮膚細胞における発現が毎日のβ−NF/非イオン性リポソームエマルジョンの皮膚への塗布後5日で誘導される、ラットにおける一連の遺伝子の発現を示すヒストグラム。1回のシトキサンの腹腔内注射後の遺伝子発現と比較する。左から右へ、対照、シトキサン、βNF。
【図8】GFPレポータープラスミドの構築。単一またはコンカテマー化した41bp EpREモチーフおよび/またはTKプロモーターフラグメントを含有するフラグメントをGFPベクター中のマルチプルクローニングサイト中に挿入した。
【図9】示されるGFPレポーター遺伝子を安定に有するHepG2細胞クローンにおけるGFP発現の基底および誘導レベル。細胞を90mM tBHQで24時間、または対照としてDMSO(0.1%最終濃度)で処理した。細胞は下記の発現遺伝子を有したた:TK−GFP、1xEpRE/TK−GFP、2xEpRE/TK−GFP、4xEpRE/TK−GFP。GFP発現レベルは、蛍光プレートリーダーを用いて測定された。値は平均±S.D.として示される。
【図10】播種された細胞数とEtBrまたはGFP蛍光に基づくウェル中のDNA含量との間の相関。ウェルあたりの蛍光強度を実施例4に記載のように測定した。値は3つの測定値の平均±S.D.として示される。
【図11】tBHQ処理したHepG2細胞中でのGFP発現の時間および用量依存。組み込まれた4xEpRE/TKレポーター構築物を有する細胞を(A)90mM tBHQで所定の時間、または(B)所定のtBHQ濃度で24時間処理した。GFP発現レベルは、蛍光プレートリーダーを用いて測定された。値は3つの測定値の平均±S.D.として示される。
【図12】既知の化学予防誘導分子によるGFP発現の用量依存性誘導。HepG2細胞を96ウェルミクロタイタープレート(5x104細胞/ウェル)中に24時間播種し、次いで、材料および方法に記載のように、所定の化学物質で処理した。データは3つの平行培養の平均±SDとして示される。相対蛍光強度率を対照皿を1として算出した。
【図13】試験プレートから得られ、正の対照(tBHQ、レーン1およびb−NF、レーン12)および各試験化合物の誘導レベルを示すためにコンピューターによって分析された蛍光データを示すスクリーニング試験由来の典型的な3Dグラフ。化合物CG09をレーン6に示す。
【図14】既知の誘導剤および化学ライブラリースクリーニング由来のヒット化合物(09G06)の両方から誘導されたGFP発現のレベル。データは3つの測定値の平均±SDとして示される。
【図15】化学保護誘導活性を展示するChemBridgeライブラリー由来のある特定の分子の構造。化合物CG09は構造1である。
Claims (81)
- 少なくとも1種の化学保護誘導剤および化学保護誘導剤を非新生物細胞へ送達するためのデリバリービヒクルを含む、化学療法剤または放射線療法の毒性作用から非新生物細胞を保護するための組成物。
- 非新生物細胞が上皮細胞である請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤がβ−ナフトフラボン(β−NF)である請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が図15に示す構造を有するCG09である請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤がベンジルイソチオシアネートである請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤がフェネチルイソチオシアネートである請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤がオルチプラズである請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールである請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が第I相または第II相薬物代謝酵素の生産を誘導または増加させる請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が解毒遺伝子産物の生産を誘導または増加させる請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が抗増殖剤でもある請求項1記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベンである請求項11記載の組成物。
- 化学保護誘導剤が(R)−(+)−リモネンである請求項11記載の組成物。
- デリバリービヒクルがリポソーム、脂質小滴エマルジョン、油、ポリオキシエチレンエーテルの水性エマルジョン、水性アルコール混合物、プロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリンおよびトリグリセリドを含有する水性エタノール混合物、および生物分解性微粒子よりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
- デリバリービヒクルが非イオン性リポソームを含み、プロピレングリコールを含有する水性タノール性混合物を任意に含む、局所投与用に処方された請求項14記載の組成物。
- デリバリービヒクルが水性エタノール混合物を含む請求項14記載の組成物。
- 癌治療または骨髄移植を受けている患者において化学療法剤または放射線療法の毒性作用から非新生物細胞を保護する方法であって、該患者に請求項1記載の組成物を含んでなる医薬調製物を、化学療法剤または放射線療法から患者の非新生物細胞を保護するのに十分な量および時間で投与することを特徴とする方法。
- 非新生物細胞が上皮細胞である請求項17記載の方法。
- 医薬処方が経口、鼻腔内、局所、尿道膣、直腸、腹腔内、筋内および静脈内よりなる群から選択される経路によって投与される請求項17記載の方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の少なくとも1日前の始めに投与される請求項17記載の方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の過程の間中、投与される請求項17記載の方法。
- (a)プロモーターおよび1以上のEpRE調節エレメントに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むDNA構築物で形質転換された細胞を提供し;
(b)該細胞を、その化学保護誘導活性について試験されるべき試験化合物に曝露し;
(c)レポーター遺伝子の発現を測定し、ここに、試験化合物の不在下でのレポーター遺伝子の発現と比較した試験化合物の存在下でのレポーター遺伝子の発現の増加は、試験化合物が化学保護誘導剤であることを示している
ことを特徴とする、化学保護誘導剤を同定するためのアッセイ。 - リポーター遺伝子が緑色蛍光蛋白質をコードする請求項22記載のアッセイ。
- DNA構築物が複数のEpRE調節エレメントを含む請求項22記載のアッセイ。
- 細胞が哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞および植物細胞よりなる群から選択される型である請求項22記載のアッセイ。
- 細胞がヒトHepG2細胞である請求項25記載のアッセイ。
- a)プロモーターおよび1以上のEpRE調節エレメントと作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含むDNA構築物;および
b)形質転換細胞中の該DNA構築物を用いてアッセイを行うための説明書
を含有する容器を含む、化学保護誘導剤を同定するためのアッセイを行うためのキット。 - さらに1以上の
a)アッセイに使用するための細胞培養物;
b)レポーター遺伝子の生産物を検出するための試薬;および
c)細胞を培養するための試薬
を含む請求項27記載のキット。 - 通常の食事摂生の一部として、1以上の化学保護誘導剤を細胞性解毒酵素の発現を刺激するのに十分な量で提供し、それにより、環境性発癌物質への曝露時に環境性発癌物質の影響から細胞を保護することを特徴とする、環境性発癌物質への細胞の曝露によって引き起こされる癌を予防する方法。
- 少なくとも1種の化学保護誘導剤および化学保護誘導剤を毛包の内面を覆う細胞へ送達するためのデリバリービヒクルを含む、化学療法剤または放射線療法での治療によって引き起こされる毛髪喪失を軽減または予防するための医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がβ−ナフトフラボン(β−NF)である請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が図15に示される構造を有するCG09である請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がベンジルイソチオシアネートである請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がフェネチルイソチオシアネートである請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がオルチプラズである請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールである請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が第I相または第II相薬物代謝酵素の生産を誘導または増加させる請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が解毒遺伝子産物の生産を誘導または増加させる請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が抗増殖剤でもある請求項30記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベンである請求項39記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が(R)−(+)−リモネンである請求項39記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルが非イオン性リポソームを含む、局所投与用に処方された請求項30記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルが非イオン性リポソームおよびプロピレングリコールを含有する水性エタノール性混合物の組み合わせを含む、局所デリバリー用に処方された請求項42記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルが水性エタノール混合物を含む請求項30記載の医薬調製物。
- 化学療法剤または放射線療法での治療によって引き起こされる毛髪喪失を軽減または予防するための方法であって、該患者に請求項30記載の医薬調製物を、毛髪喪失を軽減または予防するのに十分な量および時間で投与することを特徴とする方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の少なくとも1日前の始めに投与される請求項45記載の方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の過程の間中、投与される請求項45記載の方法。
- 少なくとも1種の化学保護誘導剤および化学保護誘導剤を胃腸管の上皮細胞へ送達するためのデリバリービヒクルを含んでなる、化学療法剤または放射線療法によって引き起こされる胃腸の不快感を軽減または予防するための医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がβ−ナフトフラボン(β−NF)である請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が図15に示される構造を有するCG09である請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がベンジルイソチオシアネートである請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がフェネチルイソチオシアネートである請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がオルチプラズである請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールである請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が第I相またはII層薬物代謝酵素の生産を誘導または増加させる請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が解毒遺伝子産物の生産を誘導または増加させる請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が抗増殖剤でもある請求項48記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベンである請求項57記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が(R)−(+)−リモネンである請求項57記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルがリポソーム、脂質小滴エマルジョン、油、ポリオキシエチレンエーテルの水性エマルジョン、水性エタノール混合物、プロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリンおよびトリグリセリドを含有する水性エタノール混合物、および生物分解性微粒子よりなる群から選択される請求項48記載の医薬調製物。
- 癌治療または骨髄移植を受けている患者において化学療法剤または放射線療法によって引き起こされる胃腸の不快感を軽減または予防する方法であって、該患者に請求項48記載の医薬調製物を、胃腸の不快感を軽減または予防するのに十分な量および時間で投与することを特徴とする方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の少なくとも1日前の始めに投与される請求項61記載の方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の過程の間中、投与される請求項61記載の方法。
- 少なくとも1種の化学保護誘導剤および化学保護誘導剤を皮膚細胞へ送達するためのデリバリービヒクルを含む、化学療法剤または放射線療法での治療によって引き起こされる皮膚または粘膜細胞への損傷を軽減または予防するための医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がβ―ナフトフラボン(β−NF)である請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が図15に示される構造を有するCG09である請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がベンジルイソチオシアネートである請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がフェネチルイソチオシアネートである請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤がオルチプラズである請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールである請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が第I相またはII相薬物代謝酵素の生産を誘導または増加させる請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が解毒遺伝子産物の生産を誘導または増加させる請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が抗増殖剤でもある請求項64記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が3,4,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベンである請求項73記載の医薬調製物。
- 化学保護誘導剤が(R)−(+)−リモネンである請求項73記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルが非イオン性リポソームを含む、局所投与用に処方された請求項64記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルが非イオン性リポソームおよびプロピレングリコールを含有する水性エタノール性混合物の組み合わせを含む、局所デリバリー用に処方された請求項76記載の医薬調製物。
- デリバリービヒクルが水性エタノール混合物を含む請求項64記載の医薬調製物。
- 癌治療または骨髄移植を受けている患者において化学療法剤または放射線療法での治療によって引き起こされる皮膚または粘膜細胞への損傷を軽減または予防する方法であって、該患者に請求項43記載の医薬調製物を、皮膚または粘膜細胞への損傷を軽減または予防するのに十分な量および時間で投与することを特徴とする方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の少なくとも1日前の始めに投与される請求項79記載の方法。
- 医薬調製物が化学療法または放射線療法の過程の間中、投与される請求項79記載の方法。
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