JP2004514690A - 薬剤の溶媒系 - Google Patents

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Abstract

本発明は、難溶性の化合物を可溶化させるための組成物、溶媒系および方法を提供する。本発明は、極性溶媒と、脂質または界面活性剤と、精油または溶解/可溶化剤とを有する、構造を有する流体(例えば、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルションまたはマイクロエマルション)の使用を含む。

Description

【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、難溶性の化合物の可溶化に関する。特に、本発明は、そのような化合物を可溶化させるための組成物、溶媒系(solvent system)および方法を提供する。
【0002】
発明の背景
潜在的医薬活性および用途を有する化合物には、水に難溶のものが多くある。中でも、多くのものは、医薬製品の賦形剤(excipient)として、使用が承認され、使用が好適である液体および界面活性剤にも可溶化するのが難しい。例えば、医薬活性体は、最も望ましい形態が口から運ぶための丸薬であり、これまでのところ、それがまだ最も一般的な薬剤の形態であるが、ほとんどの液体溶媒は、そして界面活性剤でさえ、最も単純なタブレットの製造方法ともなじまない。これはこれらの方法が一般に固体および粉末を念頭において発展してきたからである。更に、液体または界面活性剤の使用なしでのこれらの方法による貧溶な薬物の適用は、投与されたときに極めて限定された生物学的利用率しか達成することができないという結果をもたらすことが多い。また、低可溶性の薬物は、酸性塩(例えば、塩酸塩)または塩基性塩(例えば、ナトリウム塩)の形態で可溶性となることが多いが、そのような塩は、酸性塩を脱プロトン化し、または塩基性塩をプロトン化するpH条件になった場合に、体内で沈殿しうるということも指摘すべきである。
【0003】
投与により運搬されるべき活性体については、そのような化合物の可溶化は、薬物を可溶化させることを要求されている程度で投与することを承認された、液体および界面活性剤の選択が極めて限定されていることにより、困難になっている。水混和性の液体賦形剤、最も顕著にはエタノールは、薬剤がエタノールそのものに溶解する場合であっても、水、即ち、注射(投入)のための希釈水または血液のような体液の水性媒質のいずれの添加によっても沈殿することが多いため、その価値が限定されている。
【0004】
難溶性の化合物の可溶化を可能とするための組成物、溶媒系および方法が、高く望まれる。
【0005】
発明の概要
本発明は、構造を有する流体と、前記構造を有する流体の中に存在し、大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物とを含有する組成物を提供する。構造を有する流体は、極性溶媒と、脂質または界面活性剤と、精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方とを有する。
前記溶解/可溶化剤は、ゲンチシン酸、安息香酸、サリチル酸、N−アルキル化アミノ酸またはそれらの塩;脂溶性ビタミンまたはその塩;水溶性ビタミンの両親媒性誘導体またはその塩;8−ヒドロキシキノリン;または水低溶解性アミノ酸またはその塩とすることができる。構造を有する流体は、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションまたはそれらの組み合わせである。
【0006】
本発明は、更に、構造を有する流体と、前記構造を有する流体の中に存在し、大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物とを含有する組成物を提供する。構造を有する流体は、極性溶媒と、脂質または界面活性剤と、精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方とを有する。溶解/可溶化剤は、その分子構造中の少なくとも一つの極性基、約50から約500ダルトンの分子量および約10よりも大きいオクタノール−水分配係数を有する。構造を有する流体は、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションまたはそれらの組み合わせである。
【0007】
本発明は、更に、極性溶媒、脂質または界面活性剤および精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方から形成される、構造を有する流体を含有する初期管理可能な溶媒系を提供する。溶解/可溶化剤は、ゲンチシン酸、安息香酸、サリチル酸、N−アルキル化アミノ酸またはそれらの塩;脂溶性ビタミンまたはその塩;水溶性ビタミンの両親媒性誘導体またはその塩;8−ヒドロキシキノリン;または水低溶解性アミノ酸またはその塩とすることができる。構造を有する流体は、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションまたはそれらの組み合わせである。
【0008】
本発明は、更に、極性溶媒、脂質または界面活性剤および精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方から形成される、構造を有する流体を含有する初期管理可能な溶媒系を提供する。溶解/可溶化剤は、その分子構造中の少なくとも一つの極性基、約50から約500ダルトンの分子量および約10よりも大きいオクタノール−水分配係数を有する。
【0009】
本発明は、更に、大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物を可溶化させる方法を提供する。この方法は、溶媒系に、前記化合物を混合させる工程と、前記化合物が前記溶媒系に組み込まれることを可能にする工程とを具備する。溶媒系は、極性溶媒と、脂質または界面活性剤と、精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方とを有する。溶解/可溶化剤は、ゲンチシン酸、安息香酸、サリチル酸、N−アルキル化アミノ酸またはそれらの塩;脂溶性ビタミンまたはその塩;水溶性ビタミンの両親媒性誘導体またはその塩;8−ヒドロキシキノリン;または水低溶解性アミノ酸またはその塩とすることができる。構造を有する流体は、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションまたはそれらの組み合わせである。
【0010】
好ましい実施形態の説明
本発明は、難溶性の化合物(即ち、大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物)を可溶化させるのに有用な、組成物、溶媒系および方法を提供する。本発明の組成物、溶媒系および方法は、ある化合物が界面活性剤−水、特に、脂質−水混合物の溶解特性を変えるのに劇的な効果を有すること、即ち、前記化合物が溶解/可溶化剤として作用するという驚くべき発見に基づく。
【0011】
本発明の理解を容易にするために、本明細書で用いられる用語の定義および説明が以下に与えられる。
【0012】
定義/説明
溶解(Dissolution):考慮の対象の化合物が溶解することが、溶解をするという意味である。
【0013】
可溶化させる(Solubilize):本質的に「溶解する(dissolve)」または「溶解(dissolution)」という用語と同義語であるが、含意が異なる。即ち、考慮の対象の化合物が液体または液晶物質に可溶化されるのは、化合物の分子が液体または液晶物質の中で個々の分子として分散することができ、そのような化合物の物質が単一の熱力学的相を形成する場合であり、その場合に限られる。「溶解する」および「可溶化させる」という用語の僅かに異なる含意が理解されるべきである。典型的には、「溶解する」という用語は、結晶化合物を液体または液晶物質に入れて、化合物が壊れ、物質の中に溶解することを可能にし、または促進する単純な作用を記述する。「可溶化させる」または「可溶化」という用語が、一般的に、そのような化合物を溶解させることができる適当な液体または液晶物質を見つけるのに協力された努力に関するにもかかわらずである。
【0014】
マトリックス:本文脈では、「マトリックス」は、活性化合物のためのホスト物質の役割を果たす物質を意味する。
【0015】
調整できる(Tunable):本文脈では、マトリックスの可溶化特性は、考慮の対象の組成物および/またはマトリックスの構造が活性化合物の可溶性を実質的に変えるために慎重に調節されうる場合に、そしてその場合に限り、「調整できる」と言うことができる。
【0016】
難溶性である(Difficulty−soluble):本文脈では、化合物(例えば、医薬のまたは栄養学上活性体)が水に難溶性であると言うことができるのは、一回の活性体の投与量がそれ可溶化させるのに約100mLより多くの水または緩衝液を必要とする場合である。油に難溶性であると言うことができるのは、一回の活性体の投与量が約10mL以下のオクタノールに可溶化されえない場合、または、大豆油への溶解度が重量で5%未満である場合である。
【0017】
医薬活性体(Pharmaceutical active):栄養学的、栄養補給的(nutriceutical)および/または薬理学的活性を含む生物学的活性を示す化合物または薬剤。
【0018】
両親媒性物質(Amphiphile):両親媒性物質は、親水性基および親油性基の両方を含有する化合物として定義することができる。D.H.Everett,Pure and Applied Chemistry,vol.31,no.6,p.611,1972参照。すべての両親媒性物質が界面活性剤であるということではないということに留意することは重要である。例えば、ブタノールは、ブチル基が親油性基であり、ヒドロキシ基が親水性基であるから両親媒性物質であるが、後述する定義を満たさないから界面活性剤ではない。高い極性を有し、測定可能な程度で水和している官能基を有するが、界面活性剤の作用を示すことができない、極めて多くの両親媒性分子が存在する。R.Laughlin,Advances in liquid crystals,vol.3,p.41,1978参照。
【0019】
界面活性剤(Surfactant):界面活性剤は、二つの追加の特性を有する両親媒性物質である。第一に、通常、非界面活性剤に比べて低い濃度で水相(気−水だけでなく、油−水および固体−水界面においてもである)の界面物性を十分に変更させる。第二に、界面活性剤の分子は、互いに(そして極めて多くの他の分子と)、可逆的に、極めて高い程度で会合し、熱力学的に安定な、巨視的に単一相の凝集体またはミセルの溶液を形成する。ミセルは、典型的には、多くの界面活性剤分子(数十から数千)から構成され、コロイドの大きさを有する。R.Laughlin,Advances in liquid crystals,vol.3,p.41,1978参照。脂質、特に極性を有する脂質は、本明細書における議論の目的のためには、界面活性剤として考えられることが多いが、「脂質」という用語は、通常、日常の議論において、通常、界面活性剤と呼ばれる化合物とはわずかに異なる性質を有する、界面活性剤の下位区分(subclass)に属することを示す。脂質が常にではないがよく有している二つの特性は、第一に、生物的起源をよく有するということ、第二に、水よりも油および脂肪に可溶であるという傾向があることである。実際、脂質として言及される多くの化合物は、極めて低い水への可溶性を有し、したがって、界面張力を減少させる特性、および、脂質にとってそれが本当に界面活性剤であることの最も明らかな証拠となる可逆的な自己会合のためには、疎水性の溶媒の存在が必要である。したがって、例えば、そのような化合物は、油および水の間の界面張力を、低濃度で、強く減少させる。極端に低い水への可溶性が、水系での表面張力の減少の観察を困難にしたとしてもである。同様に、疎水性溶媒の脂質−水系への添加が、ナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相への自己会合の決定を、より単純なことにする。高温で会合することの困難さが、脂質−水系においてそれを困難にするにもかかわらずである。
【0020】
実際、ナノ構造の液晶構造の研究においては、従来本質的に異なると考えられてきたもの−「脂質」および「界面活性剤」−の間の共通性が注目を浴び、また、二つの学界(生物学的な側面からの脂質およびより工業的な側面からの界面活性剤)が一緒になって、界面活性剤と同様のナノ構造が脂質で観察された。それに加えて、完全に合成の、生物起源のものではない、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムブロマイド等の、ある合成界面活性剤が、疎水性溶媒が界面活性の適当な実現のために必要とされるときに、「脂質のような」作用を示すことも注目を浴びた。一方、明らかに生物起源である、リソリピッド(lysolipids)等の、ある脂質は、水溶性界面活性剤の多少典型的な相作用(phase behavior)を示す。結局、自己会合および界面張力減少特性を議論し、比較する目的に対しては、より意味のある差異が一つの末端を有する化合物および二つの末端を有する化合物の間にあり、一つの末端を有することが一般に水溶性を意味し、二つの末端を有することが一般に油溶性を意味するということが、明らかになった。
【0021】
したがって、本文脈では、極めて低濃度で、水と疎水性物質との間の界面張力を低下させる、すべての両親媒性物質は、疎水性物質が空気であると油であるとにかかわらず、また、水もしくは油またはその両方において、可逆性の自己会合がナノ構造のミセルの形態、逆ミセルの形態または両連続の(bicontinuous)形態を表すかにかかわらず、界面活性剤である。脂質の分類は、単純に、生物起源の界面活性剤のサブクラスを包含する。
【0022】
脂質(Lipid):脂質は親水性部分と親油性部分とにより形成されており、その二つのかなり独立した作用をもたらすのに十分に柔軟な結合により連結されている分子であると考えられる。Luzzati,in Biological Membranes,Chapter 3,page 72(D.Chapman,ed.1968)参照。「脂質」および「界面活性剤」という用語は、本明細書において、互換的に用いられる。
【0023】
極性−非極性界面(Polar−apolar interface):界面活性剤分子においては、分子中に、分子の極性部分を非極性部分から分離する分離点(いくつかの場合には、極性基が各端部にあるときには、2点であり、また、七つのアシル鎖を有し、したがって、分子あたり七つの分離点を有するLipid Aのようなものにおいては、二つよりも多い。)がある。すべてのナノ構造の液相またはナノ構造の液晶相において、界面活性剤は単層または2層の膜を形成する。そのような膜においては、分子の分離点の位置が、極性領域を非極性領域から分離する面を描く。これが「極性−非極性界面」または「極性−非極性分離面」と呼ばれる。例えば、球状のミセルの場合、この面は、ミセルの外表面の内部に存在する球により近似される。ここでは、界面活性剤分子の極性基が面の外側に、非極性鎖がその内側になっている。この微視的な界面を、二つのバルク相を分離し、裸眼で見ることができる巨視的な界面と混同しないように留意すべきである。
【0024】
構造を有する流体(Structured fluid):界面活性剤と極性溶媒とを含有する系において起こるマイクロカプセル化および薬物輸送の観点から、特に有用な混合物が、構造を有する流体である。本開示の目的のために、構造を有する流体としては、原子の大きさよりもかなり大きい長さの構造形態を有する流体、特に、ナノ構造の液体、ナノ構造の液晶およびエマルションのような流体が挙げられる。例えば、L1、L2およびL3相、リオトロピック液晶相、エマルションならびにマイクロエマルションである。
【0025】
L1相:界面活性剤に基づく系で起こるL1相においては、極性−非極性界面の湾曲は非極性領域に向かい、一般に、水−連続媒体(water−continuous medium)中に存在する粒子−通常のミセル−という結果を生じる。(ここで、「水」はすべての極性溶媒を意味する)。条件または組成物の変化に従い、これらのミセルが球状から円柱状へと転換する場合、互いに融解し始めることができ、両連続性(bicontinuity)の結果を得ることができる。水連続性(water−continuity)に加えて、疎水性領域は連結して、サンプルスパンニングネットワーク(sample spanning network)を形成することができる。これはまだL1相でありうる。また、少しのミクロ構造も有しないという証拠を示すL1相の例がある。即ち、ミセルがなく、はっきりと規定された領域がなく、構造のない、単一の相の溶液に混合されているただの界面活性剤分子、したがって、ナノ構造物質でないものがある。これらの「構造のない溶液」は、ときに、いかなる相変化もなく組成の単純な変化により、ナノ構造の相に変化しうる。換言すれば、熱力学的に、構造のない溶液とナノ構造の相との間での相の境界は規定されない。もちろん、これは、長い範囲のオーダーを有する相(液晶または結晶)と、長い範囲のオーダーを欠く相(液体)との間の転移の場合と対照的である。この場合、熱力学的に、相の境界が要求される。
【0026】
ブロックコポリマーに基づく系において生じるL1相に対しては、「極性」および「非極性」という用語は適用されないが、どのような場合であっても、二つの(またはときのはそれより多い)領域の種類が存在する。ここで、A/B界面の湾曲をA向き領域と規定し、これによれば、典型的なナノ構造は、B領域の連続体中の、多くの場合、球のような、領域タイプAの微粒子から構成される。例えば、ポリスチレン−ポリイソプレンジブロックコポリマーにおいては、ポリスチレンの体積分画が極めて低い場合、例えば、10%である場合、通常のミクロ構造は、連続するポリイソプレンマトリックス中で、ポリスチレンの多い球体となるであろう。逆に、ポリスチレンの連続マトリックス中でのポリイソプレンの多い球体は、10%ポリイソプレンPS−PIジブロックが採りやすい構造である。
【0027】
ナノ構造L1相の同定。L1相は液相であるから、ナノ構造L1相を構造のない溶液相から区別する技術が開発されてきた。後述する実験用プローブに加え、単純な構造のない溶液の代わりにナノ構造相を形成することが予測されるか否かを演繹的に決定することができる基準を与える、周知の知識がある。
【0028】
ナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相の形成が界面活性剤の定義の一つの要求であるから、構造のない溶液からナノ構造の液体を区別することにおいて、与えられた化合物が本当に界面活性剤であるか否かを決定するための基準を有することは極めて価値がある。即ち、問題の液体を直接分析するための後述する方法以外の、界面活性のための多数の試験を与える基準である。多数の基準がRobert Laughlin in Advances in liquid crystals,3:41,1978において議論されてきた。まず、Laughlinは与えられた化合物が界面活性剤であるか否かを演繹的に決定するための化学的基準を列挙しており、それは上記で詳細に議論された。これらの基準により化合物が本当の界面活性剤であると期待されれば、その化合物は水中でナノ構造相を形成すると期待される。加えて、そのような化合物が水および疎水性物質中にある場合、ナノ構造相は、通常、存在する疎水性物質の少なくとも一部を組み入れて形成されるとも期待される。
【0029】
非界面活性剤の両親媒性物質がそのような系に加えられた場合、特に、短鎖のアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等のような両親媒性有機溶媒の場合、構造のない液体が形成されうる。その有機溶媒の作用が、一般にコロイド状凝集を破壊し、すべての成分を共可溶化させるものであるからである。
【0030】
Laughlinはまた、物理的観察に基づく多数の基準についても議論を進める。一つの周知の基準は、表面張力の測定により観察される臨界ミセル濃度(CMC)である。問題の化合物の水溶液の表面張力が濃度の関数としてプロットされる場合、極めて低い濃度においては、添加された化合物が本当に界面活性剤であると、表面張力が鋭く落ちるのが見えるようになる。そして、CMCとして知られている特定の濃度において、このプロットにおいて鋭い断絶が発生し、線の傾きがちょうどCMCのところで劇的に減少し、表面張力が添加した界面活性剤によるのより多く減少する。その理由は、CMCの上では、添加された界面活性剤のほとんど全部が、気−液界面にいくよりも、ミセルの生成に用いられるからである。
【0031】
Laughlinにより作成された第二の基準は、液晶基準である。化合物が高濃度で液晶を形成する場合、それは界面活性剤に違いなく、その発生よりも低い濃度で液晶相を形成する。特に、L1相は、正六方晶相液晶、または、いくつかの場合には正非両連続立方晶相液晶を形成するよりも僅かに低い界面活性剤濃度で、通常、見られる。
【0032】
Laughlinにより議論された他の基準は、クラフト(Krafft)境界水準の上限と無水化合物の融点との間の差異の温度に基づく。クラフト境界は、化合物と水との二成分系の相図における曲線である。クラフト線より下が結晶であり、クラフト線より上が溶融した結晶である。したがって、クラフト線に沿って極めて狭い温度範囲において、可溶性の劇的な増加がある。本当の界面活性剤の場合、この温度の差異が実在する。例えば、パルミチン酸ナトリウムにおいては、無水化合物の融点は288℃であるが、クラフト線はその境界を69℃に有しており、したがって、差異は219℃である。Laughlinはドデシルアミンの場合に議論を進める。それは14℃の温度の差異を有し、したがって、穏やかな会合コロイド作用を示す。対照的に、ドデシルメチルアミンもドデカノールも、界面活性剤的な会合作用を示さず、両者は温度の差異も有しない。
【0033】
ここで議論した液晶の場合のように、物質が与えられると、その物質、この場合は液体が、ナノ構造であるか否かを決定するのに用いることができる多数の実験的プローブがあり、これらはL1相の文脈において議論される。それらが適当な修正とともに、すべてのナノ構造の液体に対して適用されるのにもかかわらずである。そのような決定においては、これらの特性を適宜組み合わせるのが最もよい。
【0034】
すべての液晶の場合のように、流れがないときにおいては、L1相は光学的に等方性である。それは重水素化された界面活性剤の H NMRバンドシェープ(bandshape)においてスプリットを与えない。
【0035】
また、十字偏光フィルタでの試験においては、界面活性剤系のL1相は、一般に、穏やかな流れ条件のもとでさえ、複屈折を与えない。ブロックコポリマーに基づく系の場合の複屈折に関する状況は、ひずみ複屈折の可能性により複雑になっており、したがって、その場合、これは信頼できる方法ではない。
【0036】
界面活性剤に基づくL1相に戻ると、粘度は、通常、かなり低く、同様の系のあらゆる液晶よりも相当低い。
【0037】
パルス勾配NMRを用いて種々の成分の有効自己拡散係数を測定すると、界面活性剤およびすべての添加された疎水性物質の自己拡散が極めて低く、典型的には10−13 /秒以下のオーダーであることが分かる(相が両連続でない場合。以下参照。)。これは、界面活性剤および疎水性物質の拡散の主な手段が、極めて遅いミセル全体の拡散によるからである。また、界面活性剤および疎水性物質の拡散速度はほぼ同じであり、同様の理由による。
【0038】
当然ながら、小角度X線散乱法(SAXS)は、ナノメータの範囲(またいかなる範囲でも)において鋭いブラッグ(Bragg)ピークを与えない。しかしながら、文献のいくつかの方法による全体の曲線の分析は、ナノ構造の長さの尺度を与えることができる。低波数(ただし、界面活性剤分子の長さの逆数に比べて低すぎない)での強度の低下を分析すると、明確な回転半径を決定することができる。強度を波数の平方に対してプロットし、傾きを取り、Rgを演繹する(いわゆるギネー(Guinier)プロット)。回転半径は、標準の周知の式により、ミセル単位の大きさに関連付けられる。これによりナノメータの範囲になる。更に、強度と波数の平方との積を波数に対してプロットすることにより−いわゆるホーゼマン(Hosemann)プロット−、また、ミセルの大きさに関連付けられるピークが得られる。これは、回転半径よりもミセル間の相互作用に対して感度が低いという利点を有する。
【0039】
両連続である、界面活性剤に基づくL1相に対しては、上記は後述するように変わる。第一に、両連続性が生じた場合、粘度は相当増加することができ、連続的な界面活性剤の膜の剛性を出すことができる。また、界面活性剤の自己拡散速度および添加された疎水性物質(標識として2成分系に意図的に添加することができる)のそれさえも、劇的に増加することができ、同じ系におけるラメラ相の値に近づき、または超えさえする。SAXS分析、即ち、回転半径およびホーゼマンプロットの両方が、ナノメータの領域の大きさを結果として与える一方で、これらは、個々の粒子としてよりもむしろ両連続領域構造の特性的な長さであると解釈されなければならない。(著者の理論の連結された筒状モデルや、タルモン−プラーガー(Talmon−Prager)モデルのようないくつかのモデルにおいては、両連続領域構造は、単位の組み立てのように現れる。それらは、外観上「粒子」のように見えるが、実際にはモデル的両連続形状の構造のための基本要素にすぎない。)
【0040】
ブロックコポリマーに基づく系におけるL1相に対しては、この同じSAXS分析が保持される。対照的に、一般のNMRバンドシェープおよび自己拡散測定は持ち込むことはできないし、表面張力測定も行うことができない。しかしながら、気相輸送測定は、NMR自己拡散の代わりに従来用いられてきた。特に、領域の種類の一つに優先的に可溶であるが、その他には可溶でない気体を見つけることができれば、サンプルを通じてその気体の輸送を測定することにより、それらの領域の連続性を試験することができる。
これが可能であれば、ミセル相における連続領域(タイプB)を通じた輸送は、純粋なBポリマーにおけるのよりも僅かに遅くなるであろう。A領域に閉じこめられる気体の気体輸送が極めて低くなるにもかかわらずである。
【0041】
ブロックコポリマーに基づくミセル相のせん断弾性係数は、主として、連続領域、即ち、我々の定義におけるポリマーBを形成するポリマーブロックのそれにより決定される。したがって、例えば、10%PSであり、PSミセルが連続PIマトリックスを形成するPS−PIジブロックにおいては、せん断弾性係数は純粋なポリイソプレンのそれに近くなり、PSミセルの存在により僅かに増加するだけである。興味深いことに、逆の場合、即ち、90%PSであり、したがって、PIミセルが連続PSマトリックス中にある場合においては、ゴム性PIミセルは、純粋なガラス質のポリスチレンの成分に対して、破壊特性を改善することができる衝撃吸収成分を与えることができる。
【0042】
L2相:この相は極性領域と非極性領域との役割が反対である以外は、L1相と同様である。極性−非極性界面の湾曲は極性領域に向かっており、ミセル(存在する場合)の内部は水および/または他の極性部分であり、非極性領域(典型的には脂質のアルカン鎖)は連続マトリックスを形成するが、極性領域もまた連続L2相を形成するために連結することができる。上記のように、この相は、ナノ構造を有するか、ナノ構造がないかのいずれとなることもできる。
【0043】
ナノ構造のL2相の同定。ナノ構造のL2相の同定を行うための指針は、L1相に対して与えられた上記と同様であるが、後述する修正がある。我々は界面活性剤に基づくL2相を議論することだけが必要である。ブロックコポリマーに基づく系においては、二つの種類のミセル相(B中のAおよびA中のB)が等価であり、ブロックコポリマー系におけるミセル相の同定を上記で議論したからである。
【0044】
第一に、L2相は、一般に、HLBが低い場合、より目立つ。例えば、少数のエチレンオキシド基(通常5以下、典型的なアルキル鎖の長さで)を有するエトキシル化されたアルコールの界面活性剤または二重鎖の界面活性剤の場合である。相作用の点からは、一般に、逆液晶相よりも高い界面活性剤濃度で生じる。L2相にとって極めて一般的な位置は、高い界面活性剤濃度で、逆六方晶相に接する位置である。両連続でないL2相に対しては、それは極めて低い水自己拡散であり、(例えば、パルス勾配NMRによる)拡散係数の測定は、10−11 /秒以下のオーダーの値を与える。また、ホーゼマンプロットは逆ミセルの大きさを与え、それは実質的に水領域の大きさである。
【0045】
L3相(「異常相」としても知られる):相図におけるL2−相領域は、そこから突出した「舌」を示すことがある。通常の単純なL2相領域の出現のようでない長く、薄い突出部である。後述するように、これはいくつかのL1領域においても同様に出現する。これらを綿密に調査すれば、特に、X線および中性子散乱を用いれば、L2相から基本的なところで異なる。L2相においては、界面活性剤の膜は、一般に、単層の形態であり、油(非極性溶媒)が一方の側に、水(極性溶媒)が他方の側にある。対照的に、このナノ構造の液体の「L3相」においては、これらの相が呼ばれるように、界面活性剤は二重層の形態にあり、水(極性溶媒)が両側にある。L3相は、一般に、両連続であると考えられ、実際に、立方晶相と他の特性を共有する。二つの明確な水系ネットワークがあり、これらは絡み合っているが、二重層により分離されている。したがって、L3相は実際に六方晶相に極めて似ているが、六方晶相の長い範囲のオーダーを欠いている。L2相から生じるL3相とL1相から生じるL3相とは、異なる名前を与えられている。「L3相」がL2相に関連するものに用いられ、「L3 相」がL1相に関連するものに用いられる。
【0046】
ナノ構造のL3相の同定。ここで議論された他の液相と区別されるL3相の同定は、複雑な問題であり、いくつかの分析の組み合わせが必要となる。これらのうち最も重要な技術は、以下に議論される。
【0047】
通常時の光学的な等方性と液体であるという事実とにかかわらず、L3相は、流れ複屈折(flow birefringence)を示すことができるという興味深い特性を有することができる。これはかなり高い粘度となることが多く、L1およびL2相において観察されるよりも相当高く、そしてラメラ相におけるのと同等以上となりうる。これらの特性はもちろん、ナノ構造の位相および形状に大きな抑制を与える連続二重層膜の結果である。したがって、せん断力は、二重層膜の大部分の協同的な変形(およびその結果の配列)という結果になりうる。対照的に、例えば、ミセルのL1相は独立したミセル単位が単純にせん断力に置き換わることができ、いかなる場合であっても単層は一般に二重層よりもせん断力のもと大きく変形しうる。この解釈は、L3相の粘度が典型的には界面活性剤の体積分画の線形関数であるという事実により支持される。Snabre,P.and Porte,G.(1990)Europhys.Lett.13:641。
【0048】
複雑な光線、中性子およびX線散乱法が、ナノ構造のL3相の決定のために開発されてきた。Safinya,C.R.,Roux,D.,Smith,G.S.,Sinha,S.K.,Dimon,P.,Clark,N.A. and Bellocq,A.M.(1986)Phys.Rev.Lett.57:2718;Roux,D. and Safinya,C.R.(1988)J.Phys.France 49:307;Nallet,F.Roux,D. and Prost,J.(1989)J.Phys.France 50:3147。Roux,D.,Cates,M.E.,Olsson,U.,Ball,R.C.,Nallet,F. and Bellocq,A.M.,Europhys.Lett.におけるRouxらの分析は、ナノ構造が二つの水系のネットワークを有し、界面活性剤の二重層により分離され、二つのネットワークの等価によるある対称性を与えるということを決定することができるとされている。
【0049】
幸運なことに、相作用に基づくL3相のナノ構造の性質の決定は、典型的なL1、L2の場合より、またはマイクロエマルション相の場合よりさえ、確実にすることができる。これは第一に、L3相は、ラメラまたは両連続六方晶相に対する少量(数パーセント)の油または他の化合物の添加、またはこれらの同じ相の少しの増加の温度により得られることが多いからである。これらの液晶相はナノ構造を見せやすいため(特に、X線のブラッグピーク)、組成が液晶相にかなり近いときには、液相もナノ構造であるということが確かとなりうる。結局、ナノ構造の液晶相への数パーセントの油の添加が液晶を構造のない液体に変換することは極めて起こりにくい。実際、エアロゾルOT−塩水系におけるパルス勾配NMR自己拡散測定法は、L3相における自己拡散作用が極めて明確に逆両連続立方晶相のそれに外挿することを示す。この同じL3相は結合されたSANS、自己拡散および凍結割断電子顕微調査の主題となってきた。Strey,R.,Jahn,W.,Skouri,M.,Porte,G.,Marignan,J. and Olsson,U.,「Structue and Dynamics of Supramolecular Aggregates」、S.H.Chen,J.S.Huang and P.Tartaglia,Eds.,Kluwer Academic Publishers,The Netherlands。実際、L3相のSANSおよびSAXS散乱分析においては、広い干渉ピークが、相図におけるのと近い両連続立方晶相のと同程度の規模の格子面間隔に対応する波数ベクトルでよく観察され、著者は、両連続立方晶相の公知の構造の外挿であるL3相のナノ構造についてのモデルを開発してきた。Anderson,D.M.,Wennerstrom,H. and Olsson,U.(1989)J.Phys.Chem.93:4532。
【0050】
マイクロエマルション:マイクロエマルションは、熱力学的に安定であり、低粘度で、光学的に等方性を有する、油(非極性液体)、水(極性液体)および界面活性剤を含有するミクロ構造の液相と規定することができる。Danielsson,I. and Lindman,B.(1981)Colloids and Surfaces,3:391参照。熱力学的に安定である、界面活性剤、水および油の混合液は、通常、マイクロエマルションと呼ばれる。巨視的に均一であっても、これらは、微視的な長さ(10−1,000オングストローム)では、界面活性剤の多い膜により分離された水性および油性の微小領域の構造を採っている。Skurtveit,R. and Olsson,U.(1991)J.Phys.Chem.95:5353参照。マイクロエマルションの特性を規定する鍵は、それが水および界面活性剤に加えて、「油」(非極性溶媒または液体)を含有するということである。これは常に定義によりミクロ構造を採っている。一般に、油および水の相分離への強い傾向のため、油および水を共可溶することができる有機溶媒(例えば、エタノール、THF、ジオキサン、DMF、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびその他のいくつか)がない場合においては、油、水および界面活性剤を含有する、透明な、単相の液体は、マイクロエマルションであるはずであり、相がナノ構造であるという基準のみで安全に結論付けることができる。マイクロエマルションは、特に、明確なミセルを含有する場合には、L1またはL2相でもありうる。しかしながら、L1相であると、ミセルは油に膨潤する必要がある。マイクロエマルションはナノ構造の液相である。「油」、水および界面活性剤を含有する液体がナノメータ範囲より大きい、即ち、ミクロン範囲の特性領域を有する場合、すでにマイクロエマルションではなく、「ミニエマルション」または普通のエマルションである。後者は両方とも安定でない。L1およびL2相が油を含有することができ、両連続でさえなりうるという事実にもかかわらず、マイクロエマルションという用語が導入される。3成分の油−水−界面活性剤/脂質系にとって、水−連続から両連続、油−連続へとその間に相の境界なく展開することは、かなり一般的だからである。この場合、相図の「L1」および「L2」領域の分離点を決定しようとするのは意味がない。その代わり、全体の領域を「マイクロエマルション」としてみなすだけであり、この領域の水を多く含有する端においては構造は油−膨潤L1相のそれであり、この領域の油を多く含有する端においては構造はL2相のそれであると認識する。(ベン図の点では、マイクロエマルションとL1およびL2相との間には重なりがあるが、L1相とL2相との間にはない。)後述するように、マイクロエマルションのミクロ構造は、かなり一般的に、油の多い領域を水の多い領域から分離する界面活性剤の単層膜の点で記述することができる。この界面活性剤/脂質の多い分離膜は、囲んでミセルを形成することができ、または、連結してネットワーク構造となり連続マイクロエマルションを形成することができる。
【0051】
本明細書において用いられる用語として、エマルションはナノ構造の液体ではないということが指摘されなければならない。初めに、エマルションの特有の長さ、本質的にはエマルション滴の平均の大きさは、一般に、ナノ構造の液体の特有の長さよりもかなり大きく、ナノメータではなくミクロンの範囲にある。サブミクロンの滴の大きさのエマルションを生産するための最近の努力が、より小さい滴のエマルションを生み、「ミニエマルション」という用語を出現させたが、マイクロエマルションの領域からエマルションおよびミニエマルションを除外する決定的な差異が残っている。本明細書に記載されているナノ構造の液相は、マイクロエマルションを含有し、熱力学的に安定に存在する。これに対し、エマルションは安定な相ではなく準安定の物質である。更に、安定で完全に平衡なナノ構造の液体は、光学的に透明である。エマルションは一般的に不透明であるにもかかわらずである。例えば、通常の牛乳はエマルションである。
【0052】
ナノ構造のマイクロエマルションの決定。上記で議論された、ナノ構造のL1相の決定のための方法および基準は、ナノ構造のマイクロエマルション相の決定に持ち込まれるが、後述する修正がある。
【0053】
L1相またはL2相の記載のいずれかであるかが明らかには分からないマイクロエマルション−これはここで扱う残りの場合である−については、ほとんどではなくとも、これらの多くが両連続であり、油、水および界面活性剤を含有する単一の液相の文脈において、両連続性は相がナノ構造であることの強い証明を与える。エマルションおよびその他の一般の液体が両連続であることは決してないからである。この問題は、「On the demonstration of bicontinuous structures in microemulsions」Lindman,B.,Shinoda,K.,Olsson,U.,Anderson,D.M.,Karlstrom,G. and Wennerstrom,H.(1989)Colloids and Surfaces 38:205において提示されていた。両連続性を示す、時の検証を受けた方法は、パルス勾配NMRを用い、油および水の両方の有効自己拡散係数を分離して測定するものである。水の連続性を確立するためには電気伝導度を用いることもできるが、「ホッピング(hopping)」法と関連する問題が生じやすい。蛍光消光法もまた、連続性の決定に用いることができる。Sanchez−Rubio,M.,Santos−Vidal,L.M.,Rushforth,D.S. and Puig,J.E.(1985)J.Phys.Chem.89:411。小角度中性子およびX線散乱分析は、両連続性を調査するのに用いられてきた。Auvray,L.,Cotton,R.,Ober,R. and Taupin,J.(1984)J.Phys.Chem.88:4586。SAXS曲線のポロド(Porod)解析は、界面の存在を推定するのに用いられてきており、ナノ構造が存在するとしてきた。Martino,A. and Kaler,E.W.(1990)J.Phys.Chem.94:1627。極めて急速に冷凍させる凍結割断電子顕微法は、マイクロエマルションの研究に用いられてきており、それはナノ構造の液体のための固定方法の数十年の発展の結果である。その方法および結果の信頼性を議論した評論がある。Talmon,Y.,in K.L.Mittal and P.Bothorel(Eds),Vol.6,Plenum Press,New York,1986,p.1581。
【0054】
油−水−界面活性剤液相が明らかにはL1またはL2相でなく、両親媒性の強い証拠も示さない場合には、それがナノ構造であることを示すための解析は、かなり複雑となりえ、一つの技術では十分でない。一般に、SANSまたはSAXS、NMR自己拡散法、cryoEM等のこの項で議論された測定は、モデルナノ構造の文脈の中でデータを合理化する試みに適用することができる。
【0055】
エマルション:いくつかの液の他の混合しない液の中における滴の分散として規定され、用途に応じて多少の安定性を示す[J.−L.Salager in Pharmaceutical Emulsions and Suspensions,eds.F.Nielloud and G.Marti−Mestres,from the series Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Vol.105,Marcel Dekker,NY,NY(2000),pp.19−72]。ほとんどのエマルションにおいて、分散した液滴は、液滴の表面、実際にはよく「油−水」界面と呼ばれる極性−非極性界面に局在化した界面活性剤の存在により安定化される。単純なエマルションは水中の油、即ち、o/wまたは油中の水、即ち、w/oエマルションに分類され、二重または三重のエマルションはo/w/oまたはw/o/wエマルションに分類される。「ビエマルション(biemulsion)」は、更に、別の種類のエマルションであり、二つの異なる種類の油滴が同じ連続極性(即ち、「水」)相に分散されている。マイクロエマルションとは対照的に、定義により、熱力学的に安定であり、すべてのエマルションは準安定であり、いずれ二つの(またはそれより多い)相になり、したがって、よく2相系と呼ばれる。
【0056】
界面活性剤の単層が液滴の表面に存在するという、エマルションの安定化の極度に単純化された視点は、普及した概念であるが、少なくとも多くの場合、そしておそらくかなり一般的には、状況は、ナノ構造のリオトロピック液晶相が液滴表面に存在することを許容する。Stig Friberg[Larsson,K.,and S.Friberg,Eds.1990,Food Emulsions,2nd Edition,Marcel Dekker,Inc.NY参照]により進化したエマルションの構造のモデルに従えば、ラメラ液晶または一般にラメラ結晶塗膜が、油滴を水中の油のエマルションにおいて安定化させ、水滴を油中の水のエマルションにおいて安定化させる。
【0057】
ナノ構造のリオトロピック液晶がエマルションの液滴の安定化に関連しているという他の報告が出版されており、ラメラ以外の液晶相も記載されている。ウンデシルグリセリルエーテルで修飾されたシリコーン界面活性剤が、逆六方晶相が過剰の水および油相において安定であるという領域で、エマルションを形成するということが発見された[Nagatani N,Fukuda K,Suzuki T.,J.Colloid Interface Sci.2001 Feb 15;234(2):337−343]。本著者は、大豆のホスファチジルコリン−ベンゼン−水系において、ベンゼン:PCの比が約0.8:1で、かつ、過剰の水のもとで、エマルションを鋭意観察してきた。そこでは、逆分離立方晶が過剰の水の中で安定している。他の著者は、立方晶相が安定化層として関連する安定なエマルションを観察してきた[Rodriguez C,Shigeta K,Kunieda H.,J.Colloid Interface Sci.2000 Mar 15223(2):197−204]。注意深く研究された一つの系においては、エマルション安定性が液晶相が現れる濃度で実質的に増加することが観察された[Vaziri A,Warburton B.,J.Microencapsul 1995 Jan−Feb;12(1):1−5]。よく「ゲル」と呼ばれる粘性液晶相は、過剰の「油」および「水」相で安定である場合、高安定性のエマルションをもたらすと報告されてきている[Ali AA,Mulley BA,J.Pharm.Pharmacol.1978 Apr;30(4):205−13]。
【0058】
リオトロピック液晶相。リオトロピック液晶相は、正六方晶、正両連続立方晶、正分離立方晶、ラメラ、逆六方晶、逆両連続立方および逆分離立方の液晶相を、それらより定着していない通常および逆中間液晶相とともに含む。
【0059】
ナノ構造の液晶相は、領域構造により特徴付けられ、少なくとも第一の種類および第二の種類の領域(いくつかの場合には三またはそれより多い種類の領域)により構成され、後述する特性を有する。
a)第一の種類の領域における化学的部分が、第二の種類の領域におけるそれとは不相溶であり(一般に、異なる種類の領域の各対は相互に不相溶である)、与えられた条件下で混合せず、むしろ分離した領域として残る。(例えば、第一の種類の領域が水および脂質頭基(head group)のような極性部分により実質的に構成されうる一方、第二の種類の領域が炭化水素鎖のような非極性部分により実質的に構成されうる。または、第一の種類の領域がポリスチレンが多くなりうる一方、第二の種類の領域がポリイソプレンが多く、第三の種類の領域がポリビニルピロリドンが多い。)
b)各領域内の原子配列は、固体のようというよりはむしろ液体のようであり、原子の格子状配列を欠く。(これは、広角X線散乱法における鋭いブラッグピーク像の欠如により証拠付けられる。)
c)実質的にすべての領域の最小の大きさ(例えば、層の場合の厚さ、筒または球の場合の直径)が、ナノメータの範囲(即ち、約1から約100nm)にある。
d)領域の構成は、格子に一致する。つまり、一次元、二次元または三次元であり、格子定数(または単位格子の大きさ)がナノメータの範囲(即ち、約5から約200nm)にある。したがって、領域の構成は、International Tables of Crystallographyに記載されている230の空間群の一つに一致し、うまく設計された小角度X線散乱(SAXS)測定において、最低のオーダーの反射が3−200nmの範囲である格子面間隔で、鋭いブラッグ反射の存在により、証拠付けられる。
【0060】
ラメラ相:ラメラ相は以下により特徴付けられる。
1.小角度X線が波数において1:2:3:4:5:...のように目盛りを付けられるピークを示す。
2.裸眼では、相は透明であるか、軽いまたは穏やかな濁りを示しているかである。
3.偏光光学顕微鏡においては、相は複屈折であり、周知の構成がローズヴェール(Rosevear)により、また、ウィンザー(Winsor)により、よく記載されてきた(例えば、Chem.Rev.1968,p.1)。最もよく発表された三つの構成は、「マルタ十字」、「モザイク」パターンおよび「油性の筋(oily streaks)」パターンである。マルタ十字は、光のほぼ円形の片の上の相互にほぼ垂直の二つのくらいバンド(干渉縞)の重ね合わせ(複屈折)であり、第一次世界大戦のドイツ軍の象徴を連想させる特徴的なパターンを形成する。この構成の種類は、その起源と同様に、J.Bellare,Ph.D.Thesis,Univ.of Minnesota,1987に十分に記載されている。「モザイク」構成は、変形したマルタ十字の密集した配列を一緒にしっかりとまとめた結果から想像することができ、不規則にまだら模様になるように一緒にされた暗いおよび明るい片がもたらされる。「油性の筋」パターンは、典型的には、(低粘度の)ラメラ相がガラスとカバーガラスとの間で流れる場合に見られる。このパターンにおいては、倍率(例えば、400倍)における接近した調査により、長い曲線が見られ、曲線にほぼ垂直に走る小さな筋により構成される。枕木が鉄道の線路を構成するようにである(後に議論する六方晶構成と対称される)。いくつかの場合においては、特に、相がガラスとカバーガラスとの間で穏やかに、ある時間、マッサージされた場合には、ラメラ相は光軸を顕微鏡の視線に平行にして整列し、その結果、複屈折は消滅する。
【0061】
界面活性剤−水系の中のラメラ相は以下のとおりである。
1.粘度は低く、物質は流れることができる(例えば、相を含有する管が上下逆にひっくり返された場合)。
2.すべての成分の自己拡散速度は速く、バルクにおけるそれらの値と同等である。例えば、ラメラ相における水の有効自己拡散係数は、純水の中におけるそれと同等である。液晶からの界面活性剤は、通常、周囲温度で液体でないため、界面活性剤の自己拡散係数のための参照点は明確ではなく、実際、ラメラ相における界面活性剤の(測定された)有効自己拡散係数は、他の相における測定を解釈するための参照点に用いられることが多い。
3.界面活性剤が頭基において重水素化されて H NMRバンドシェープが測定されると、六方晶相における場合の2倍のスパイクがスプリットを伴って現れる。
4.相作用の点で、ラメラ相は、一般に、一つの尾を有する(single−tailed)界面活性剤/水系における界面活性剤濃度が高く、典型的には、約70%の界面活性剤となる。二つの尾を有する(double−tailed)界面活性剤の場合は、より濃度が低く、50%以下であることが多い。一般に、相図において発生しうる他の液晶相に比べてかなり高い温度となる。
【0062】
1成分−ブロックコポリマーにおけるラメラ相は以下のとおりである。
1.せん断弾性係数は、一般に、同じ系の他の液晶相と比べて低い。
2.相作用の点で、ラメラ相は、一般に、二つのブロックの体積分画がほぼ50:50で生じる。
【0063】
正六方晶相:正六方晶相は以下のように特徴付けられる。
1.小角度X線が波数において1:√3:2:√7:3...、即ち、一般にhおよびkを整数として√(h +hk+k )−2次元の対称性群のミラー指数−のように目盛りを付けられるピークを示す。
2.裸眼では、相は完全に安定であるときには一般に透明であり、したがって、他の類似のラメラ相と比べてかなり透明性が大きいことが多い。
3.偏光光学顕微鏡においては、相は複屈折であり、周知の構成がローズヴェールにより、また、ウィンザーにより、よく記載されてきた(例えば、Chem.Rev.1968,p.1)。これらの最も特徴的な構成は、「扇形の」構成である。この構成は、複屈折の片を連結して現れ、与えられた片の内部で細かい筋が扇形に広がり、東洋の扇を連想させる外観となる。隣接する片における扇の方向は、互いに不規則に位置する。ラメラと六方晶パターンとを区別する重要な差異は、六方晶相における筋は、高倍率での接近した調査で、大きい筋の方向に垂直に走る細い筋により構成されていることが証明されていないが、ラメラ相においてはされている。
【0064】
界面活性剤−水系における正六方晶相は以下のとおりである。
1.粘度は中くらいであり、ラメラ相よりも粘度が高く、典型的な立方晶相(数百万センチポイズの粘度を有する)よりもかなり粘度が低い。
2.界面活性剤の自己拡散係数はラメラ相のそれと比べて遅い。水のそれはバルクの水のそれと同等である。
3.重水素化された界面活性剤を用いた H NMRバンドシェープは、スプリットを示し、それはラメラ相において観察されたスプリットの1.5倍である。
4.相作用の点で、正六方晶相は、一般に、一つの尾を有する界面活性剤/水系において、中くらいの界面活性剤濃度であり、典型的には、約50%の程度の界面活性剤となる。正六方晶相領域は、通常、ミセルの(L1)相領域に隣接しているが、非両連続立方晶相はときどきその間に生じうる。二つの尾を有する界面活性剤の場合は、一般に、2成分の界面活性剤−水系においては、全く発生しない。
【0065】
1成分ブロックコポリマー系における六方晶相については、「正(normal)」および「逆(reversed)」という用語は、一般に適用されない(ただし、一つのブロックが極性で他が非極性である場合は、原理的にその資格がありうる。)。そのような六方晶相では、せん断弾性係数は、一般に、同じ系において、ラメラ相よりも高く、両連続立方晶相よりも低い。相作用の点で、六方晶相は、一般に、二つのブロックが35:65の程度の体積分画で発生する。典型的には、二つの六方晶相はラメラ相にまたがり、いずれの場合も、少ない成分が筒の内側になる(この記載は界面活性剤系の「正/逆」という用語集と置き換えられる。)
【0066】
逆六方晶相:界面活性剤−水系において、逆六方晶相の同定は、上記正六方晶相の同定と二つの点でのみ異なる。
1.逆六方晶相の粘度は、通常、かなり高く、典型的な正六方晶相よりも高く、逆立方晶相のそれに近づいている。
2.相作用の点で、逆六方晶相は、一般に、二つの尾を有する界面活性剤/水系において界面活性剤濃度が高く、100%の界面活性剤かそれに近いことが多い。逆六方晶相は、通常、より低い界面活性剤濃度で発生するラメラ相領域に隣接しているが、両連続逆立方相がその間に発生することが多い。逆六方晶相は、いくらか驚いたことに、一つの尾を有する界面活性剤、例えば、多くのモノグリセリド(グリセロールモノオレエートを含む)を有する多数の2成分系、および、多数の非イオン性PEGに基づく、低HLBの界面活性剤においては、発生しない。
【0067】
正六方晶相の議論において上述したように、「正」および「逆」六方晶相は、界面活性剤系においてのみ意味をなし、一般に、1成分ブロックコポリマー六方晶相においては意味をなさない。
【0068】
正両連続立方晶相:正両連続立方晶相は以下のように特徴付けられる。
1.小角度X線が、立方晶系の外観を有する三次元の空間群に目盛りを付けるピークを示す。最も一般的に見られる空間群は、目盛りに沿って、目盛り√6:√8:√14:4:...のIa3d(#230)、目盛り√2:√3:2:√6:√8:...のPn3m(#224)および目盛り√2:√4:√6:√8:√10...のIm3m(#229)である。
2.裸眼では、相は完全に安定であるときには一般に透明であり、したがって、他の類似のラメラ相と比べてかなり透明性が大きいことが多い。
3.偏光光学顕微鏡においては、相は非複屈折であり、したがって、光学的構成はない。
【0069】
界面活性剤−水系における正両連続立方晶相は以下のとおりである。
1.粘度は高く、ラメラ相よりもかなり粘度が高く、典型的な正立方晶相よりさえも粘度が高い。ほとんどの立方晶相は、数百万センチポイズの粘度を有する。
2.NMRバンドシェープにおいては、スプリットが観察されず、等方性の動きに相当する一つのピークが観察されるのみである。
3.相作用の点で、正両連続立方晶相は、一般に、一つの尾を有する界面活性剤/水系において、かなり高い界面活性剤濃度で発生し、典型的には、イオン性界面活性剤の場合、約70%の程度の界面活性剤となる。正両連続立方晶相領域は、通常、ラメラおよび正六方晶相領域の間にあるが、それに加えて、その高い粘度および非複屈折によりその決定がかなり単純になっている。二つの尾を有する界面活性剤の場合は、一般に、2成分の界面活性剤−水系においては、全く発生しない。
【0070】
1成分ブロックコポリマー系における両連続立方晶相については、「正」および「逆」という用語は、一般に適用されない(ただし、一つのブロックが極性で他が非極性である場合は、原理的にその資格がありうる。)。そのような両連続立方晶相では、せん断弾性係数は、一般に、同じ系において、ラメラ相よりもかなり高く、六方晶相よりも有意に高い。相作用の点で、両連続立方晶相は、一般に、二つのブロックが26:74の程度の体積分画で発生する。いくつかの場合には、二つの両連続立方晶相はラメラ相にまたがり、いずれの場合も、少ない成分が筒の内側になり(この記載は界面活性剤系の「正/逆」という用語集と置き換えられる。)、六方晶相が立方−ラメラ−立方の発達にまたがる。
【0071】
逆両連続立方晶相:逆両連続立方晶相は以下のように特徴付けられる。
界面活性剤−水系においては、逆両連続立方晶相の同定は、上記正両連続立方晶相の同定と一つの点でのみ異なる。相作用の点で、逆両連続立方晶相は、ラメラ相と逆六方晶相との間にあるが、正両連続立方晶相はラメラ相と正六方晶相との間にある。したがって、正六方晶を逆六方晶から区別する上記議論を参照しなければならない。立方晶相がラメラ相よりも水濃度が高い場合にはそれは正であるが、立方晶相がラメラ相よりも界面活性剤濃度が高い場合にはそれは逆であるというよい規則がある。逆立方晶相は、一般に、二つの尾を有する界面活性剤/水系においては高い界面活性剤濃度で発生するが、逆立方晶相が添加された疎水性物質または両親媒性物質の存在下でのみ見られうるという事実により、複雑になることが多い。逆両連続立方晶相は、一つの尾を有する界面活性剤、例えば、多くのモノグリセリド(グリセロールモノオレエートを含む)を有する界面活性剤を有する多数の2成分系、および、多数の非イオン性PEGに基づく、低HLBの界面活性剤において、発生する。
【0072】
逆両連続立方晶相においては、正でないにもかかわらず、空間群#212が観察されたことにも留意すべきである。この相は空間群#230のそれに由来する。正両連続立方晶相の議論において上述したように、「正」および「逆」両連続立方晶相は、界面活性剤系においてのみ意味をなし、一般に、1成分ブロックコポリマー両連続立方晶相においては意味をなさない。
【0073】
正分離(非両連続)立方晶相:正非両連続立方晶相は以下のように特徴付けられる。
1.小角度X線が、立方晶系の外観を有する三次元の空間群に目盛りを付けるピークを示す。界面活性剤系において最も一般的に見られる空間群は、目盛り√2:√4:√5...のPm3n(#223)である。1成分ブロックコポリマーにおいて一般的に見られる空間群は、目盛り√2:√4:√6:√8...のIm3mであり、体心の球の詰め込みに相当する。
2.裸眼では、相は完全に安定であるときには一般に透明であり、したがって、他の関連するラメラ相と比べてかなり透明性が大きいことが多い。
3.偏光光学顕微鏡においては、相は非複屈折であり、したがって、光学的構成はない。
【0074】
界面活性剤−水系における正分離立方晶相は以下のとおりである。
1.粘度は高く、ラメラ相よりもかなり粘度が高く、典型的な正立方晶相よりさえも粘度が高い。ほとんどの立方晶相は、数百万センチポイズの粘度を有し、それは分離または両連続にかかわらない。
2.これも両連続立方晶相と同様に、NMRバンドシェープにおいては、スプリットがなく、一つの等方性のピークのみがある。
3.相作用の点で、正分離立方晶相は、一般に、一つの尾を有する界面活性剤/水系において、かなり低い界面活性剤濃度で発生し、典型的には、イオン性界面活性剤の場合、約40%の程度の界面活性剤となる。正分離立方晶相領域は、通常、正ミセルおよび正六方晶相領域の間にあるが、それに加えて、その高い粘度および非複屈折によりその決定がかなり単純になっている。二つの尾を有する界面活性剤の場合は、一般に、2成分の界面活性剤−水系においては、全く発生しない。
【0075】
1成分ブロックコポリマー系における分離立方晶相については、「正」および「逆」という用語は、一般に適用されない(ただし、一つのブロックが極性で他が非極性である場合は、原理的にその資格がありうる。)。そのような分離立方晶相では、せん断弾性係数は、一般に、両連続相においてブロックを形成するポリマーのせん断弾性係数にほとんど完全い依存する。相作用の点で、分離立方晶相は、一般に、二つのブロックの一方または他方の体積分画が極めて低い、20%以下の程度で発生する。
【0076】
逆分離立方晶相:逆分離立方晶相は以下のように特徴付けられる。
界面活性剤−水系においては、逆分離立方晶相の同定は、上記正分離立方晶相の同定と三つの点でのみ異なる。
1.相作用の点で、逆分離立方晶相は、ラメラ相と逆六方晶相との間にあるが、正分離立方晶相はラメラ相と正六方晶相との間にある。したがって、正六方晶を逆六方晶から区別する上記議論を参照しなければならない。立方晶相がラメラ相よりも水濃度が高い場合にはそれは正であるが、立方晶相がラメラ相よりも界面活性剤濃度が高い場合にはそれは逆であるというよい規則がある。逆立方晶相は、一般に、二つの尾を有する界面活性剤/水系においては高い界面活性剤濃度で発生するが、逆立方晶相が添加された疎水性物質または両親媒性物質の存在下でのみ見られうるという事実により、複雑になることが多い。逆分離立方晶相は、一つの尾を有する界面活性剤、例えば、多くのモノグリセリド(グリセロールモノオレエートを含む)を有する界面活性剤を有する多数の2成分系、および、多数の非イオン性PEGに基づく、低HLBの界面活性剤において、発生する。
2.観察される空間群は、通常、Fd3m、#227である。
3.水の自己拡散は極めて低いが、存在するいかなる疎水性物質のそれは高い。界面活性剤のそれは一般的にかなり高く、ラメラ相のそれと同等である。
【0077】
正分離立方晶相の議論において上述したように、「正」および「逆」分離立方晶相は、界面活性剤系においてのみ意味をなし、一般に、1成分ブロックコポリマー分離立方晶相においては意味をなさない。
【0078】
中間相:中間相は、かなりまれに発生し、見つかる場合には、一般に、相図において極めて狭い領域を占める。よって、それらの多くの構造は知られておらず、または議論されていない。中間層は以下のように分類することができる。
【0079】
正中間相(1)は、正両連続立方晶相よりも低い界面活性剤濃度で、六方晶相に隣接して発生する。粘度は、一般に、低いか中くらいの低さであるかであり、正六方晶相のそれよりも高くはない。相は複屈折であり、典型的には、六方晶相と同様の構成を有する。成分の自己拡散は、六方晶相と極めて似ている。小角度X線は立方晶相よりも低い対称性の空間群を示し、典型的には、単斜晶系である。この相を正六方晶相から区別するために、かなり複雑なNMRバンドシェープおよびSAXS分析を用いることができる。Henriksson,U.,Blackmore,E.S.,Tiddy,G.J.T. and Soderman,O.(1992)J.Phys.Chem.96:3894参照。典型的なバンドシェープのスプリットは、六方晶相とスプリットのない等方性相との中間であり、それにより中間層のよい証拠が与えられる。
【0080】
正中間相(2)は、正両連続立方晶相よりも高い濃度で、ラメラ相に隣接して発生する。複屈折であり、NMRバンドシェープおよびSAXS分析で差異を示すこと以外は、正両連続立方晶相と、特性の点でおよびおそらく構造の点でも、近い類似点を有する。光学的構成はいくらか異常であり、いくつかの場合には、ラメラの構成と類似し、いくつかの場合には、六方晶の構成と類似するが、より一般的な相のいずれよりもかなり粗くなりうる。中間層(1)と同様に、空間群は対称性が低く、典型的には、菱面体晶系または正方晶系であり、特定に二つの単位格子定数を必要とし、SAXS分析が困難となっている。一般に、格子面間隔の比の二乗が単純な積分法に適しない場合には、中間相構造が疑われる。
【0081】
逆中間相(2)は、逆両連続立方晶相よりも低い濃度で、ラメラ相に隣接して発生する。複屈折であり、NMRバンドシェープおよびSAXS分析で異常を示す、中間層(1)および中間相(2)と同様に、空間群は対称性が低く、典型的には、菱面体晶系または正方晶系であり、特定に二つの単位格子定数を必要とし、SAXS分析が困難となっている。そして、立方格子または六方格子(これらは単に一つの格子定数を有する)に目盛りを付けないSAXスペクトルにおけるブラッグピークの存在が、光学的複屈折とともに、中間相を示す。両連続中間相にあると思われる空間群は、本著者による出版において議論されてきた。D.M.Anderso,supplement to J.Physique,Proceedings of Workshop on Geometry and Interfaces,Aussois,France,Sept.1990,C7−1−C7−18。
【0082】
薬物輸送の特定の価値を有するのは、過剰の希釈水性溶液とともに安定に存在しうる相であり、したがって、少なくとも、可溶化された活性体が可溶化された状態で残り、感知することができる程度の沈殿を生じないという点で、体液中で完全性を維持することができるものである。これらの「不溶性」相は、機能上、ラメラ相と逆液晶相とに分けることができる。
【0083】
希釈水性溶液と共存することができるこれらのラメラ相は、多くの場合、リポソームを形成することができ、それは、水を含有する(最も一般的には)球状の形状にまとめられる一つ以上の二重層を本質的に含有する。一つ以上の活性体化合物(例えば、薬物)が、(水性コアではなく)脂質二重層領域に組み込まれる場合には、本発明の可溶化技術が極めて実用的となりうることが多い。
【0084】
逆液晶相は、薬物輸送において潜在的に極めて重要な数種の粒子に形成することができる。
【0085】
更に、すべての液晶相は、バルク(即ち、微粒子ではなく)の形態での使用の可能性がある。局所用の塗布、注入、摂取、または、それらの粘度が許す場合には、非経口の、皮下のもしくは腹膜内の投与のための「ゲル状」物質としてである。これらの場合にも、本発明の可溶化技術は、極めて有用となりうることが多い。
【0086】
極性溶媒。本発明の実施に用いられる極性溶媒は、以下のものを含むが、これらに限定されない。
a.水
b.グリセロール
c.エチレングリコールまたはプロピレングリコール
d.硝酸エチルアンモニウム
e.アセトアミド系の一つ、即ち、アセトアミド、N−メチルアセトアミドまたはジメチルアセトアミド
f.低分子量ポリエチレングリコール(PEG)
g.上記の二つ以上の混合物
【0087】
特に好ましい極性溶媒は、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルアセトアミドおよびポリエチレングリコールである。
【0088】
水および脂質の両方に不溶な化合物
水不溶性化合物は脂質に可溶である、即ち、「疎水性」および「親油性」という用語が等価であるという黙示の仮定は、誤りである。確かに、水不溶性分子を、ごく少数(一般に3以下)の明確な極性および非極性領域にかなり明確に分けることができる場合、化合物は脂質に可溶である。しかしながら、特に、医薬活性体の世界では、多数の極性および非極性基が一つの分子中に分散していることが一般的である。そのような場合、脂質二重層中に薬物を可溶化させる一つの戦略は、極性基、特に電荷を有する基を含有する脂溶性化合物を導入することである。ゲンチシン酸および関連する酸と、パルミチン酸アスコルビルとの塩を有する場合のようにである。
【0089】
例えば、ダントロレンの構造を考える。ダントロレンの分子構造図の長さに沿っていくと、極性基(ニトロ基)、低極性基(芳香環)、中くらいの極性基(フラン環)、極性基(メチルアミノ)、および、最後に、pHにより荷電したりしなかったりするヒダントイン基が見られる。この化合物は、可溶性が水中に約150mg/Lであり、そのナトリウム塩でさえ、可溶性が300mg/Lである。更に、そのリン脂質−水系における可溶性も極めて低く、実際に薬物として重要となるためには低すぎる。少なくとも極性基の一つとリン脂質のアシル鎖との間で直接接触することを避けるであろう脂質二重層中の薬物の形態を想像することは困難である。
【0090】
パクリタクセルの場合は、極性および非極性部分に整然と分けることができない分子のより明確な証拠となる。その分子は、47個の炭素原子を有し、3個の別個の芳香環を含有し、水に対する可溶性が極めて低い。しかしながら、重要な数の極性基が存在する。一つのアミド基、3個のヒドロキシル基、4個のエステル結合、その他のカルボニル基、およびシクロプロポキシ環である。
【0091】
第1表は、水に低可溶性である、主な治療分野のいくつかからの薬物化合物を示し(パーセント可溶性の文画)、分子の極性基の数を表中に記載する。表は、ほとんどではないが、多くの水不溶性薬物を示し、これらは、少なくとも3個の極性基を含有し、単純な脂質−水混合物中に低可溶性であると考えられる。本発明に従う溶解/可溶化剤の組み込みが、これを改善する。これらの各化合物の化学構造の試験は、更に、極性基が分子中に広がっていることを明らかにし、これにより、まれな場合にのみ、分子が、単純な(脂質−水)二重層中に、界面活性剤と同様の配置で、位置取ることができる。これらの薬物のほとんどはまた、薬物を、例えば、塩酸塩またはナトリウム塩のような塩に変えることによって薬物を水に可溶化させるという試みがなされた場合に、問題がある。例えば、いくつかは体内の環境のpHで沈殿し、他は分解するなどである。
【0092】
【表1】
Figure 2004514690
【0093】
【表2】
Figure 2004514690
【0094】
第2表も、本発明に用いられる薬剤の候補を列挙する。
【0095】
【表3】
Figure 2004514690
【0096】
【表4】
Figure 2004514690
【0097】
更に、後述する医薬活性体は、本発明に含まれると考えてよい。
【0098】
抗新生物薬
アルキル化剤
アルキルスルホン酸化合物−ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、
アジリジン類−ベンゾデパ、カルボコン、メツレデパ、ウレデパ;
抗生物質−カルビシン、カルジノフィリン、ダウノルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン類、マイコフェノール酸、ツベルシジン、ウベニメックス、ゾルビシン。
【0099】
代謝拮抗剤
葉酸類似体−デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキセート;
プリン類似体−フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン;
ピリミジン類似体−アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、テガフール;
その他−アセグラトン、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、カルボプラチン、シスプラチン、デメコルシン、ジアジコン、エフロールニチン、エトグルシド、エトポシド、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、フェナメト、ピラルビシン、ポドフィリン酸、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、タキソール、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジコン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン。
【0100】
抗新生物薬(ホルモン系
アンドロゲン−カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;
抗副腎皮質薬−ミトタン、トリロスタン;
アンダンドロゲン−フルタミド、ニルタミド;
抗エストロゲン薬−タモキシフェン、トレミフェン;
エストロゲン−フォスフェストロール、ヘキセストロール、リン酸ポリエストラジオール;
LH−RH類似体−ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン;
プロゲストーゲン−酢酸クロルマジノン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メレンゲストロール。
【0101】
抗新生物薬(放射線源
131I−エチルヨウ化油。
【0102】
抗新生物薬補助剤
葉酸補充剤−フォリン酸;
尿路保護剤−メズナ。
【0103】
本発明は、脂質に基づく可溶化系の範囲、特に、液晶混合物、中でも逆六方晶および逆立方晶相混合物を提供する。これらは可溶化特性が広い範囲に変わりうる。水および単純な脂質−水混合物の両方に対して低可溶性である活性体の可溶化において重要な特性は、本発明においては、好ましくは脂質二重層または極性−非極性界面に位置する極性基の濃度および種類であると認識される。
【0104】
ここで、医薬活性体は、治療のための活性体の投与が、可溶化のために約100mLより多い水を必要とする場合、水可溶性が低いとされる。同様に、医薬活性体は、治療のための活性体の投与が、可溶化のために約10mLより多いオクタノールを必要とする場合、脂質可溶性が低いとされる。オクタノールの選択は、重要なオクタノール−水分配係数KOWの規定において標準の溶媒であるから、自然である。更に、化合物は、大豆油への溶解度が重量で5%未満である場合に、脂質可溶性が低いと考えられる。
【0105】
芳香性、即ち、芳香環の存在、不飽和性、即ち、炭素−炭素二重結合および/または分子構造中の極性基を有し、かつ、分子量が約50から500ダルトン、好ましくは約100から約200ダルトンの範囲であり、かなり高い油−水分配係数(一般に、約10より大きく、好ましくは約100より大きく、より好ましくは約1000より大きい)を有する化合物は、本発明の溶解/可溶化剤に望まれる機能を満たすことができる。本発明の溶解/可溶化剤としての使用に望ましい化合物は、例えば、フェノール基、カルボキシル基、第一アルコール基およびアミノ基のような多数の極性基を含有する分子構造を有し、更に、脂質−水系の脂質二重層中で有意な程度に仕切りを作る。これは脂肪族または芳香族炭化水素基の存在のためだと信じられている。これは、極性−非極性界面から二重層へと貫通している、二重層中の極性基の有意の濃度の結果である。(界面活性剤の膜を含有するミクロ構造の液体または液晶においては、極性−非極性界面は、一般に、分離点の位置を通る想像上の数学的表面により記述される。それは各界面活性剤分子の上で、極性基を分子の非極性部分から分離する。これにより、表面の一方の側の上の微環境は極性が支配的となり、表面の他方の側の上の微環境は非極性が支配的となる。)そのような極性基の存在は、二重層の疎水性部分における微環境の特性に影響を与え、脂質不溶性および水不溶性の両方の化合物の可溶性を大きく増大させるという結果をもたらすことができる。
【0106】
極性基の例を以下に挙げる。
アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸、イソシアネート、アミド、アシルシアノグアニジン、アシルグアニルウレア、アシルビュレット、N,N−ジメチルアミド、ニトロソアルカン、ニトロアルカン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロン、ニトロソアミン、N−酸化ピリジン、ニトリル、イソニトリル、アミンボラン、アミンハロボラン、スルホン、ホスフィンスルフィド、アルシンスルフィド、スルホンアミド、スルホンアミドメチルイミン、アルコール(単官能)、エステル(単官能)、第二アミン、第三アミン、メルカプタン、チオエーテル、第一ホスフィン、第二ホスフィンおよび第三ホスフィン。
【0107】
界面活性剤の頭基として作用し、したがって、例えば、これらの極性基の一つに結合するアルカン鎖がナノ構造の液体または液晶相を形成すると考えられるいくつかの極性基を以下に挙げる。
a.陰イオン:カルボキシレート(石けん)、サルフェート、サルファメート、スルフォネート、チオサルフェート、サルフィネート
b.陽イオン:アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、スルホキソニウム
c.両性イオン:アンモニオアセテート、ホスホニオプロパンスフホネート、ピリジニオエチルサルフェート
d.半極性:アミンオキシド、ホスホリル、ホスフィンオキシド、アルシンオキシド、スルホキシド、スルホキシイミン、スルホンジイミン、アンモニオアミデ−ト。
【0108】
ラフリン(Laughlin)も、一般則として、与えられた極性基のフェノール(水素結合供与体)との1:1結合錯体の形成のエンタルピーが5kcal未満である場合に、極性基は界面活性剤の頭基として作用しないと示した。
【0109】
可溶化させるのが困難である薬物を可溶化させるのに加え、本明細書で開示された溶解/可溶化剤および方法も、他の重要な役割を果たすことができる。その中で医薬活性体化合物が分離する可溶化マトリックスを、好ましくは水または体液(例えば、血液等)にわたって与えるという役割である。例えば、ある薬物は水可溶性が小さくなく、また、ある状況の下、即ち、水に可溶化されるのではなく、疎水性または両親媒性環境に可溶化される場合ではより効率的である。特に、より疎水性の環境における可溶化は、マトリックスが正しい場所または環境に達するまで薬物を保持することにより、持続する放出または目標を持った放出をもたらすこと、および/または、薬物の保護環境を与え、もしくはより一般的には、局所的微環境に、生産、保管または適用に対する、より好ましい化学または物理特性を与えることを可能とする。
【0110】
例として、本明細書で報告される実験11においては、局所麻酔薬であるブピバカインが、その低可溶性の遊離塩基のかたちで、可溶化剤として精油を組み入れた液晶中に、可溶化されている。より多く用いられる塩酸塩が水可溶性であるという事実にもかかわらずである。そのように可溶化された遊離の塩基のかたちを有するこの液晶の形態は、ブピバカインが強く仕切りを作る環境を与える。これはKOWの値が約1500だからである。これは、マトリックスの処理が過剰の水との接触を含む場合でさえも薬物がマトリックス中に残るカプセル化方法を与える。更に、麻酔薬の持続する放出を与えるが、水可溶化された塩酸塩のかたちにおいては薬学的半減期が数時間だけである。
【0111】
望ましい溶解/可溶化剤は、ゲンチシン酸エタノールアミンおよびその関連物質、α−トコフェロールおよびその関連物質、パルミチン酸アスコルビルおよびその関連物質、8−ヒドロキシキノリンならびにトリプトファンである。追加の望ましい溶解/可溶化剤は、精油およびそれらの成分である。
【0112】
ゲンチシン酸エタノールアミンおよびその関連物質
ゲンチシン酸エタノールアミンは、多数の極性基−フェノール基、カルボキシル基、第一アルコール基およびアミノ基−を含有する分子であり、また、脂質−水系の脂質二重層中で有意な程度に仕切りを作る。これは脂肪族または芳香族炭化水素基の存在のためだと信じられている。これは、極性−非極性界面から二重層へと貫通している、二重層中の極性基の有意の濃度の結果である。そのような基の存在は、二重層の疎水性部分における微環境の特性に影響を与え、脂質不溶性および水不溶性の両方の化合物の可溶性を大きく増大させるという結果をもたらすことができる。
【0113】
ゲンチシン酸の関連物質は、芳香環に共有結合した−接続基を介することもできる−酸基を含有する酸である。そこでは、これらの二つの基(酸基および芳香族基)のそれぞれが、分子の分子量の少なくとも5%で結合している。また、そのような酸を塩基と反応させて形成される塩、特に、これらの酸のナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、第一鉄、亜鉛、アルミニウムおよびビスマス塩も含む。
【0114】
この賦形剤は、ある存在形態で抗酸化剤として用いられ、特に、複数のビタミンを投与することができる製品であるM.V.I.−12TMの中で、投与あたり100mgの程度で用いられ、化合物と関連して、高い程度の安全性および低い毒性を示す。この化合物は塩である。しかしながら、脂質−水系の中に組み入れられる場合、化合物は、上記極性基を二重層中にまたは少なくとも極性−非極性界面の極めて近くに導入することにより、脂質の特性に影響を与える。
【0115】
ゲンチシン酸エタノールアミンおよび/またはその関連物質が脂質および精油または精油の一つ以上の成分を含有する系に組み入れられた場合、精油はゲンチシン酸塩の可溶化を助け、ゲンチシン酸塩は精油と相乗的に働き、困難な活性体を可溶化することができる。
【0116】
芳香環および極性基を有し、分子量が約50から約500ダルトン、好ましくは約100から約200ダルトンの範囲であり、かなり高い油−水分配係数(一般に、約10より大きく、好ましくは約100より大きく、より好ましくは約1000より大きい)を有する化合物は、本文脈のゲンチシン酸およびその塩と同様の機能を充たすことができる。安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、N−アセチルトリプトファン、その他のN−アルキル化アミノ酸およびこれらの化合物の誘導体が、この範疇に入る。エタノールアミンに加えて、これらの酸と反応しうる他の低毒性塩基には、トロメタミン(トリス[ヒドロキシエチル]メチルアミン)、ジエタノールアミン、アンモニア、ジエチルアミン、グアニジン、8−ヒドロキシキノリンおよびエチレンジアミンが含まれる。
【0117】
α−トコフェロールおよびその関連物質
α−トコフェロールまたはビタミンEは、水への可溶性が極めて低く、不飽和鎖を有する脂質を有する脂質二重層への可溶性が極めて高い液体である。分子の一つの末端でヒドロキシル基を有する長鎖化合物であり、ヒドロキシル基は極めて支配的に極性−非極性界面に位置する。α−トコフェロールは、リン脂質二重層中の不飽和結合と強く相互作用し、二重層の流動性に大きな影響を与える。これらの特性は、環境温度で液体である単純な飽和アルコールの通常の無秩序にさせる効果に関し、α−トコフェロールが二重層中の秩序の程度を増加させるのに効果があることを意味する。この効果に重ね合わせられるのは、置換する単層の水に向かう湾曲を増加させる効果であり、これらの要素の全体の効果は、ホスファチジルコリン−水系中のラメラ相へのα−トコフェロールの添加が逆六方晶および立方晶液晶相への変換を誘発し、驚くことに、これらの逆液晶相に対して高い融点を有することである。これが逆液晶相の有用性の点でもたらす利点に加えて、この高い融点は、活性体または活性体の可溶化剤を、別の方法よりも高い濃度で組み込ませることを可能にすることが多い。
【0118】
例えば、α−トコフェロールおよび/またはその関連物質が液晶相に基づく形態で精油またはその成分と混合して用いられる場合、α−トコフェロールは、溶融液晶中の精油の効果を逆にすることにより、精油の使用を可能にすることができる。したがって、α−トコフェロールは、典型的には、精油と脂質の比が、トコフェロールなしで可能な比にくらべて、極めて高くなることを可能とし、この増加した比は薬物のより大きな可溶性へとつながる。
【0119】
α−トコフェロールは極めて低毒性の化合物であり、栄養および医薬製品における使用に長い歴史がある。例えば、非経口使用のためのLentaronTMの250mg溶液は、α−トコフェロールが投与可能な形態で用いられている薬用の形態の一例である。
【0120】
パルミチン酸アスコルビル。
このビタミンCの両親媒性誘導体(ビタミンC活性を有する)は、二つの重要な機能を、脂質に基づく可溶化系において提供することができる。第一に、脂質二重層の微環境を調整すること、特に、脂質二重層の極性−非極性界面の付近の極性基の濃度を増加させること、中でも、その界面の非極性側において増加させることができる、有効な極性基を有する。これらの極性基はビタミンC自体(アスコルビン酸)を入手可能な固体有機化合物の中で最も水溶解性が高い一つにしているのと同じ基である。アスコルビン酸は約30wt/wt%まで水に可溶であり(例えば、塩化ナトリウムの可溶性に極めて近い)、カルシウムまたは第一鉄のような多価イオンを有する塩としてさえ、高い可溶性を有する。第二に、パルミチン酸アスコルビルの分画がより可溶性の高い塩、例えば、アスコルビン酸パルミチン酸ナトリウム(sodium ascorbyl palmitate)に変換されるようにpHを増加させた場合、この変換された分画は本当の界面活性剤であり、それは炭素数16の飽和鎖を有し、液晶相の融点を上げる効果を有することが多い。
【0121】
8−ヒドロキシキノリン。
パルミチン酸アスコルビルとともに、この化合物は、脂質二重層における極性基(フェノール基およびアミノ基)の濃度と、液晶相の融点との両方を増加させる。これらの効果は、両方とも、液晶相が水不溶性、脂質不溶性の活性体化合物を感知することができる濃度で組み入れる可能性を増加させることができる。
【0122】
精油およびその成分。
植物由来の精油(より完全に後述するように、「精油」は、精油、それらの抽出物および成分、ならびにそれらの混合物を意味する)は、多くの低毒性油および成分を含む液体の、かなり広く、かつ、化学的に多様な群を含む。「精油」という用語は、以下のものを含むものとする。
オールスパイスの実、コハク精油、アニスの果実、アルニカ、ペルーバルサム、バジル、ゲッケイジュ、ベイリーフ、ベルガモット、ボアドローズ(ローズウッド)、カユプテ、キンセンカ(マリゴールドポット)、白ショウノウ、ヒメウイキョウの実、ショウズク、ニンジンの実、シーダー、セロリ、ドイツまたはハンガリーのカミルレ、ローマまたはイギリスのカミルレ、シナモン、コウスイガヤ、オニサルビア、カーネーションのつぼみ、コリアンダー、クミン、イトスギ、ユーカリノキ、ウイキョウ、シベリアのモミの葉、乳香(オリバナム油)、ニンニク、テンジクアオイ、ショウガ、グレープフルーツ、ヒソップ、ジャスミン、ホホバ、ネズの実、ラベンダー、レモン、レモングラス、ライム、マヨラナ、ヨモギ、モウズイカの花、ミルラガム、ダイダイネロリ、ナツメグ、ダイダイ、スウィートオレンジ、オレガノパルマローザ、パチョリ、メグハッカ、黒コショウ、ペパーミント、小さい穀粒、松葉、ヨウシュの根、純バラ油、バラの実、ローズマリー、サルビア、ダルメシアンサルビア、ビャクダン油、サッサフラスノキ、スペアミント、カンショウ、スプルース(ヘムロック)、タンジェリン、チャノキ、ニオイヒバ(シーダーの葉)、タイム、バニラ抽出物、ベチバー、トウリョクジュ、マンサク(ハマメリア)抽出物またはイランイラン(カナンガ)抽出物。
【0123】
これらの精油は、一般の不溶性の脂質および水と一緒になって、油:脂質の比が約1:2と1:1の間で、逆六方晶および両連続立方晶相を形成する強い傾向を有し、逆液晶を含む用途に好ましい。例えば、イランイラン、カーネーションのつぼみ、シーダー、スペアミント、ショウガ、パチョリ、ビャクダン、ニンジンの実、モミの葉、ペパーミントおよびペパーミントとタイムとの混合物が挙げられる。
【0124】
これらの精油の中でも、ある態様の用途についてGRAS(Generally Regarded As Safe:一般に安全であるとみなされている)として分類されているものは、特に好ましい。例えば、
イランイラン、カーネーションのつぼみ、スペアミント、ショウガ、パチョリ、ビャクダン、ニンジンの実、モミの葉、ペパーミントおよびペパーミントとタイムとの混合物が挙げられる。
【0125】
精油の成分の例を以下に挙げる。
2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、4−プロペニルアニソール、ベンジル−3−フェニルプロペン酸、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、2,2−ジメチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トランス−8−メチル−n−バニリル−6−ノネンアミド、2,2,5−トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプト−5−エン、5−イソプロピル−2−メチルフェノール、p−メンタ−6,8−ジエン−2−オール、p−メンタ−6,8−ジエン−2−オン、β−カリオフィレン、3−フェニルプロペンアルデヒド、グラニアールおよびネラールの混合物、3,7−ジメチル−6−オクテナール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール、4−アリルアニソール、エチル3−フェニルプロペン酸、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、1,8−シネオール、4−アリル−2−メトキシフェノール、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール、1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン、トランス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール、トランス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−イルアセテート、3−メチル−2−(2−ペンテニル)−2−シクロペンテン−1−オン、p−メンタ−1,8−ジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−イルアセテート、p−メンタン−3−オール、p−メンタン−3−オン、メチル2−アミノベンゾエート、メチル−3−オキソ−2−(2−ペンテニル)−シクロペンタンアセテート、メチル2−ヒドロキシベンゾエート、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、シス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール、2,6,6−トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン、6,6−ジメチル−2−メチレンビシクロ[3.1.1]ヘプタン、p−メント−4(8)−エン−3−オン、p−メント−1−エン−4−オール、p−メンタ−1,3−ジエン、p−メント−1−エン−8−オール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール。
【0126】
これらの精油の十分に多くが、FDAにより一般に安全であるとみなされたGRASである。精油が脂質(または界面活性剤)および極性溶媒と、約1:2および約1.5:1の間、最も好ましくは0.7:1および1.2:1の間の割合で混合された場合には、脂質が多い相が、一般に、液体または液晶となる。多数のGRAS精油がこれらの条件下で液晶相を形成することが分かってきている。例えば、
ペパーミント、
スペアミント、
スウィートバジル、
タイム、
ショウガ、
ローズマリー、
ウイキョウ、
セージ、
ジャスミンおよび
チョウジが挙げられる。
したがって、例えば、ホスファチジルコリンが、水および上記油の一つと、ホスファチジルコリン:油:水比が約42:34:24で混合された場合には、液晶が一般に環境温度で得られる(油の由来および純度による)。脂質−水混合物を液化させるこれらのGRAS油は、例えば、
マヨラナ、
パルマローザおよび
ボアドローズ(ローズウッド)が挙げられる。
ゲッケイジュの油およびバニラの油は、これらの二つの間の境界にある。
【0127】
多数のこれらのGRAS油の難溶性薬物を可溶化させる能力は、油中にパクリタクセルを可溶化させることにより示されてきた。選択された結果をここに挙げる。
精油       パクリタクセルの可溶性(w/w、約)
ゲッケイジュの油  16%
ペパーミント    >5%
タイム       10%
スウィートバジル   7%
パルマローザ    >10%
これらのGRAS油に加え、いくつかの非GRAS油は、パクリタクセルの良溶媒であり、特定のビャクダン油が含まれる。非GRAS油であるにもかかわらず、ビャクダン油は、非経口の経路が用いられた実験を含む動物実験において低毒性を示す。パクリタクセルはビャクダン油に少なくとも5%の程度まで可溶である。
【0128】
脂溶性ビタミンおよびその塩。ビタミンA、D、EおよびKの多様な形態およびプロビタミンの形態は、脂溶性ビタミンと考えられており、これらに加えて、他のビタミンおよびビタミン起源物質または類似の関連物質もまた、脂溶性であり、極性基を有しており、比較的高いオクタノール−水分配係数を有し、分子量が約50から500である。
明らかに、一般的に分類されたそのような化合物は、歴史上、安全に使用され、危険に対する利益の比が高いとされ、賦形剤として潜在的に使用され、機能性賦形剤として潜在的に使用されてきた。これらの化合物およびその塩は、本発明における溶解/可溶化剤として特に有用となりえ、特に、上記構造を有する流体中に存在する界面活性剤を多く有する膜の極性の特性を調整するのに、有用である。メルクインデックス(第11版)によれば、医薬分野の「ビタミン/ビタミン起源物質」は、後述する脂溶性化合物を含む。
α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、トコフェロールアセテート、エルゴステロール、1−α−ヒドロキシコレカルシフェロール、ビタミンD2、ビタミンD3、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、ビタミンA、フルスルチアミン、メチロールリボフラビン、オクトチアミン、プロスルチアミン、リボフラビン、ビンチアモール(vintiamol)、ジヒドロビタミンK1、メナジオールジアセテート、メナジオールジブチレート、メナジオールジサルフェート、メナジオール、ビタミンK1、ビタミンK1オキシド、ビタミンK2およびビタミンK−S(II)。
葉酸もまたこの種類であり、これは生理的pHで水可溶性であるにもかかわらず、Kowが高い化合物として遊離酸の形態で現れうる。
これらの多くが、酸または塩基の添加により滴定可能な化学基(アミノ基、酸性基等)を含有しており、本発明において、そのように作成された塩の形態のいくつかは、有用である。特に、塩の(荷電された)形態においても高い分配係数を保持している場合である。本発明における溶解/可溶化剤としてのα−トコフェロール(ビタミンE)の使用は、実験1、2および4に記載される。
【0129】
水可溶性ビタミンの両親媒性誘導体およびその塩。ビタミンB、C、U、パントテン酸、葉酸およびいくつかのメナジオン関連ビタミン/プロビタミンは、多様な形態において、水可溶性ビタミンと考えられているが、疎水性部分または多価イオンと共役し、または錯体を形成した場合には、比較的高いオクタノール−水分配係数を有し、極性基を有し、分子量が約50から500である、両親媒性の形態となりうる。また、そのような化合物は低毒性となり、危険に対する利益の比を高くすることができ、賦形剤として潜在的に使用され、機能性賦形剤として潜在的に使用されうる。これらの化合物およびその塩は、本発明における溶解/可溶化剤として特に有用となりえ、特に、上記構造を有する流体中に存在する極性−非極性界面付近の極性の特性を調整するのに、有用である。メルクインデックス(第11版)によれば、医薬分野の「ビタミン/ビタミン起源物質」は、後述する水可溶性化合物を含む。
アセチアミン(acetiamine)、ベンホチアミン、パントテン酸、セトチアミン、シコチアミン、デキスパンテノール、ナイアシンアミド、ニコチン酸、ピリドキサール5−ホスフェート、ニコチンアミドアスコルベート、リボフラビンホスフェート、チアミン、葉酸、メナジオールジホスフェート、メナジオンソジウムビサルフェート、メナドオキシム(menadoxime)、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK6およびビタミンU。
また、上述したように、葉酸は、生理的pHを含む広いpH範囲にわたり、塩として、水可溶性である。
したがって、アミノ基またはその他の塩基性基が列挙されたこれらの化合物の中でも、Kowが高い化合物は、疎水性基を含有する酸、例えば、脂肪酸(特に、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸または2−エチルヘキサン酸)、ゲンチシン酸、低可溶性アミノ酸、安息香酸、サリチル酸、酸性脂溶性ビタミン(例えば、リボフラビン)または精油の酸性成分を用いて、単純な酸−塩基反応により作成することができる。他の方法は、そのような酸をヒドロキシル基のようなビタミンの他の基と反応させて、エステル結合等の結合を形成させる方法である。逆に、酸性基を含有する水可溶性ビタミンは、例えば、ステアリルアミンまたはリボフラビンのような疎水性基を含有する反応物と反応することができ、本発明に従う潜在的使用のためのKowが高い化合物が得られる。パルミチン酸塩鎖のビタミンCへの結合は、パルミチン酸アスコルビルをもたらす。その化合物(「脂溶性形態のビタミンC」と呼ばれることがある)は、実験10において例示されるように、本発明において極めて有用な化合物である。
【0130】
低水可溶性アミノ酸およびその塩。あるアミノ酸は、その両性イオンの形態および/または1価または多価イオンとの塩の形態で、極性基を有し、比較的高いオクタノール−水分配係数を有し、分子量が約50から500であり、本発明において極めて有用である。本開示の文脈において、「低可溶性アミノ酸」は、緩衝液で処理されていない水中の可溶性が約4%(40mg/mL)未満であるアミノ酸を意味する。例えば、以下のものが挙げられる。
シスチン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸および/またはメチオニン。
【0131】
投与可能な製品であるネフラミン(Nephramine)は、安全な使用の長い歴史を有する非経口栄養製品であり、多数のアミノ酸をそれぞれ1グラムを超える量で含有し、注射を経る場合においてでさえ、低可溶性アミノ酸を含む遊離のアミノ酸の低毒性を強める。
【0132】
分子量が約500未満のオリゴペプチドもまた、この点で有用となりうるが、これらのアミノ酸の多価イオン塩およびより可溶性の高いものさえと同様である。したがって、4%より高い可溶性を有する他のアミノ酸を本発明において用いることができ、多価イオン塩または低可溶性アミノ酸を有するオリゴマーにおけるのと同様である。
【0133】
実験6で見られるように、トリプトファンは、望ましい溶解/可溶化剤である。実際、トリプトファンは、脂質二重層中に分割された場合に特に有用であり、広いpH範囲にわたり、広い範囲の種類の脂質および界面活性剤に対し、二重層中で高い可溶性を示す。
【0134】
相乗効果。
上記成分が組み合わせられた場合、多数の相乗効果が生じる。特に、リオトロピック液体および特にリオトロピック液晶系との関係で組み合わせられた場合である。例えば、ホスファチジルコリン−水混合物が精油またはその他の化合物の添加により非ラメラ相に転換された場合、ゲンチシン酸エタノールアミンのようなゲンチシン酸塩および上述した関連物質の添加は、混合物がラメラ相に再び転換することを引き起こす傾向を有し、そのようなとき、トコフェロールの添加は、極めて有効で医薬的に受け入れられる、逆立方晶相のような非ラメラ相に戻る方法を与える。他の例としては、多数のゲンチシン酸塩はリン脂質系に可溶ではないが、比較的少量の精油の添加により、可溶となりうる。これは実験10に記載される。また、高い極性基(例えば、荷電された)と芳香基および/または非極性基との両方を含有する医薬化合物については、適当に設計された、リン脂質、芳香族精油および荷電された塩、例えば、ゲンチシン酸塩が、化合物に有効な可溶化を与える。
【0135】
輸送経路。
本発明の組成物は、当業者に周知の種々の手段のいずれによって投与されてもよい。これらの手段は、経口経路(例えば、丸薬(pill)、平たい錠剤(tablet)、菱形の錠剤(lozenges)、カプセル、トローチ、シロップおよび懸濁液等)および非経口経路(例えば、腸管外、静脈内、眼内、経皮および吸入等)を含むが、、これらに限定されない。本発明の組成物は、特に、内服(即ち、非外用)の投与に特に適している。
【0136】
実施例
実験1.
高ホスファチジルコリンレシチンEpikuron 200TM(Lucas−Mayer社)が0.351gの量で、0.371gのゲンチシン酸エタノールアミン、0.201gの水、0.156gのグリセロールおよび0.127gのα−トコフェロールと混合され、混合および平衡のうちに、逆立方晶相を形成した。この立方晶相は、ダントロレンナトリウムを体温で可溶化させることが可能であった。したがって、0.233gのこの立方晶相に、9mgのダントロレンナトリウムが添加され、加熱およびその後の37℃への冷却の後、得られた立方晶相は、偏光光学顕微鏡を用い、十字型偏光フィルタを通して、低倍率(約2倍)の光学設定で行われた観察によれば、透明で、光学的に等方性を有し、ダントロレン結晶がなかった。
【0137】
実験2.
高ホスファチジルコリンレシチンAEpikuron 200TMが0.351gの量で、0.314gのゲンチシン酸エタノールアミン、0.199gの水、0.146gのグリセロールおよび0.125gのα−トコフェロールと混合され、混合および平衡のうちに、逆立方晶相を形成した。この立方晶相は、トランス−白金抗腫瘍性化合物であるtrans−[Pt(II)Cl (NH )(thiazole)]を約2.4%の程度で可溶化させることが可能であった。したがって、0.028gのこの白金化合物が立方晶相に添加され、平衡のうちに、実質的にすべての白金化合物が立方晶相の中に溶解した。この立方晶相は、実験1のものとほぼ同一の組成を有する。種々の異なる薬剤を可溶化させるという、この組成物の汎用性は強調される。更に、ゲンチシン酸エタノールアミン濃度の少しの増加は、ラメラ相をもたらし、パクリタクセルおよびその他の薬剤を組み込むことができるリポソームを形成するのに有用となりうる。
【0138】
実験3.
この例は、α−トコフェロールを、リン脂質、精油および水(または水とグリセロール)混合物と組み合わせることの有用性を例示する。約17gのEpikuron 200、0.7gのスウィートバジルの精油、0.25gの水および0.25gのグリセロールが混合され、混合物が遠心分離された。得られた3相系は、中小の液晶相を形成しただけであり、ほとんどは過剰の油および過剰の水/グリセロールであった。ついで、約0.33gのαートコフェロールの添加により、液晶相は、より多くの物質を吸収した。それは、平衡において、過剰の水相および油相とほぼ同じ体積であった。この液晶相は、少なくとも約5mg/mLの程度のパクリタクセルを可溶化させることができた。
【0139】
実験4.
高ホスファチジルコリンレシチンEpikuron 200TMが0.909gの量で、0.408gのバジルの精油、0.424gのショウガの精油および0.586gの水が混合され、そこに66mgの活性Coenzyme Q10が添加された。混合および平衡のうちに、混合物は、Coenzyme Q10が完全に可溶化された逆立方晶相を形成した。
【0140】
実験5.
高ホスファチジルコリンレシチンEpikuron 200TMが0.354gの量で、0.128gのリナロール、0.379gのゲンチシン酸エタノールアミン、0.090gのバニラの精油および0.273gの水と混合された。得られた平衡混合物は立方晶相であった。リナロールは、近年、過剰毒性調査を受け、口からの経路だけでなく、筋肉内の経路および腹腔内の経路によっても、極めて低い毒性を示した。ゲンチシン酸エタノールアミンは、数十年の間、投与あたり100mgの程度で投与可能な製品、特に、非経口的栄養製品として用いられてきたので、この混合物は薬物輸送にとって極めて良性の成分で構成されている。
【0141】
実験6.
この例は、ホスファチジルコリン系において逆液晶相を引き起こすことに対する、アミノ酸であるトリプトファンの有効性を示す。0.549gのEpikuron 200が、0.166gのグリセロールおよび0.318gの水と混合され、過剰の水の中でラメラ相を形成し、たった0.023gだけのL−トリプトファンの添加により、逆立方晶相が得られた。例えば、活性α−リポ酸を、この立方晶相において相当の程度まで可溶化させることができる。
【0142】
実験7.
従来の手段では可溶化させるのに問題があった、LH Syn 01と呼ばれるAntex Biologics社の抗生物質が、6.028gのショウガの精油に、抗酸化剤としての6mgのBHTおよび5mgのBHAとともに、溶解された。7.852gのこの溶液に、8.746gの高ホスファチジルコリンレシチンEpikuron 200TMおよび4.687gの水が添加された。混合物は、平衡において、逆立方晶相を形成し、LH Syn 01活性体は完全に可溶化された。
【0143】
実験8.
この実験では、ショウガの精油およびスウィートバジルの精油が、リン脂質の多い逆立方晶相において、生物活性化合物であるユビキノン(coenzyme Q10)を可溶化させるために混合された。Coenzyme Q10は、66mgの量で、0.408gのバジルの油および0.424gのショウガの油の混合物中に、可溶化された。これに、0.909gのEpikuron 200および0.586gの水が添加された。Q10は、得られた両連続の逆立方晶相液晶中に可溶化された。
【0144】
実験9.
この例では、抗菌性化合物である8−ヒドロキシキノリンが、立方晶相中に可溶化された。62mgの量の8−ヒドロキシキノリンが0.311gのペパーミントの油に溶解され、これに0.392gのEpikuron 200、0.160gのグリセロールおよび0.221gの水が添加された。キノリン化合物は、得られた両連続の逆立方晶相液晶中に可溶化された。
【0145】
8−ヒドロキシキノリンが、投与可能な調合物における不活性の賦形剤としての使用を、FDAにより承認されていることも言及すべきである。したがって、このような立方晶相において、8−HQは、共可溶化剤(co−solubilizer)の役割を果たすことができる。共可溶化剤は、アミノ基を二重層に導入することにより、多数の活性体の可溶化において実質的に強める効果を有することができる。
【0146】
実験10.
0.360gの量のEpikuron 200、0.289gのパルミチン酸アスコルビル、0.141gのゲンチシン酸、0.205gのアミノカプロン酸、0.106gのエタノールアミンおよび0.461gの水が混合され、十分に混合された。結果物は、相対比性能を備える偏光光学顕微鏡による調査によれば、溶解していない結晶と1以上の脂質含有相との不透明な混合物であった。0.517gの量のこの混合物が移され、0.109gのショウガの油の添加の後、すべての結晶成分が溶解し、結果物は透明な逆立方晶液晶相であった。ダントロレンナトリウムは、3mgの量で、この相に溶解し、したがって、薬学的に受け入れられる、脂質を基にした、薬理化合物のための液晶可溶化マトリックスを含む。
【0147】
実験11.
局所麻酔薬であるブピバカインが、遊離塩基のかたちで、かつ、0.096gの量で、0.376gのリナロール、0.375gのPluronic P103および0.354gの水と混合された。これは、少量の水の吸収により過剰の水と共存することができる逆立方晶相を形成する。リナロール(多数の精油の成分)およびPluronic P103は、極めて毒性が低く、この立方晶相を、局所麻酔薬に対する蓄積薬物輸送(depot delivery system)として、魅力的な候補にする。ブピバカインの作用の持続時間の増加は、外科的創傷を含む創傷の治療において重要な恩恵となりうる。ブピバカインの高オクタノール−水分配係数は、ブピバカインが体液中にゆっくりと放出されることを引き起こす。
【0148】
実験12.
ベンゾイン樹脂(Penta Chemicals社の「Siam」種の(機能的賦形剤としての)活性体)が、1.0%の程度で、イランイラン油、Pluronic P103および水からなる立方晶相に可溶化された。立方晶相は、更に、微粒子として分散することができ、公開されたPCT特許出願PCT/US98/18639に記載されているような、増加した薬剤吸収に対する経口または非経口の薬剤調合物において調合されうる種々の被覆で被覆されうる。

Claims (8)

  1. 極性溶媒と、
    脂質または界面活性剤と、
    精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方と
    を有し、前記溶解/可溶化剤が、
    a.ゲンチシン酸、安息香酸、サリチル酸、N−アルキル化アミノ酸またはそれらの塩
    b.脂溶性ビタミンまたはその塩
    c.水溶性ビタミンの両親媒性誘導体またはその塩
    d.8−ヒドロキシキノリン;および
    e.水低溶解性アミノ酸またはその塩
    からなる群から選ばれる、構造を有する流体と、
    前記構造を有する流体の中に存在し、大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物と
    を含有する組成物。
  2. 前記構造を有する流体が、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
  3. 極性溶媒と、
    脂質または界面活性剤と、
    精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方と
    を有し、前記溶解/可溶化剤が、
    a.その分子構造中の少なくとも一つの極性基
    b.約50から約500ダルトンの分子量および
    c.約10よりも大きいオクタノール−水分配係数
    を有する、構造を有する流体と、
    前記構造を有する流体の中に存在し、大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物と
    を含有する組成物。
  4. 前記構造を有する流体が、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項3に記載の組成物。
  5. a.極性溶媒、
    b.脂質または界面活性剤および
    c.精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方から形成される、構造を有する流体を含有する初期管理可能な溶媒系であって、
    前記溶解/可溶化剤が、
    d.ゲンチシン酸、安息香酸、サリチル酸、N−アルキル化アミノ酸またはそれらの塩
    e.脂溶性ビタミンまたはその塩
    f.水溶性ビタミンの両親媒性誘導体またはその塩
    g.8−ヒドロキシキノリン;および
    e.水低溶解性アミノ酸またはその塩
    からなる群から選ばれる、初期管理可能な溶媒系。
  6. a.極性溶媒、
    b.脂質または界面活性剤および
    c.精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方から形成される、構造を有する流体を含有する初期管理可能な溶媒系であって、
    前記溶解/可溶化剤が、
    i.その分子構造中の少なくとも一つの極性基
    ii.約50から約500ダルトンの分子量および
    iii.約10よりも大きいオクタノール−水分配係数
    を有する、初期管理可能な溶媒系。
  7. 大豆油への溶解度が重量で5%未満である化合物を可溶化させる方法であって、
    極性溶媒と、
    脂質または界面活性剤と、
    精油もしくは溶解/可溶化剤または精油および溶解/可溶化剤の両方と
    を有し、前記溶解/可溶化剤が、
    a.ゲンチシン酸、安息香酸、サリチル酸、N−アルキル化アミノ酸またはそれらの塩
    b.脂溶性ビタミンまたはその塩
    c.水溶性ビタミンの両親媒性誘導体またはその塩
    d.8−ヒドロキシキノリン;および
    e.水低溶解性アミノ酸またはその塩
    からなる群から選ばれる、構造を有する流体
    を含有する溶媒系に、前記化合物を混合させる工程と、
    前記化合物が前記溶媒系に組み込まれることを可能にする工程と
    を具備する、化合物を可溶化させる方法。
  8. 前記構造を有する流体が、液晶相、L1相、L2相、L3相、エマルション、マイクロエマルションおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
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