JP2004513879A - ワクチン送達系における植物油体の使用 - Google Patents

ワクチン送達系における植物油体の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、ワクチンアジュバント、並びに非経口、粘膜(経口、経鼻、経肺)および経皮経路によるワクチン投与のための送達系としての油体の使用に関する。加えて本発明は、油体−抗原複合体を該哺乳類に投与することにより、動物において免疫応答を誘起する方法に関する。最後に、本発明は、油体−抗原複合体を調製する方法に関する。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、植物油体および所望の抗原を含有するワクチンの製造法を提供する。本発明の方法で製造されたワクチンは、動物における免疫応答を誘起するために使用することができる。
【0002】
発明の背景
ワクチン開発
過去20年間にわたるヒトおよび獣医学の疾患管理のためのサブユニットワクチンの開発に対し多大な努力が払われている。サブユニットワクチンは、免疫応答の引き金をひく感染性病原体に由来した個々の成分をベースにしている。適当な抗原の同定は、サブユニットワクチン開発の第一工程でしかなく、有効なアジュバントおよび送達系、並びに望ましい抗原の生成および精製の経済的手段が必要とされている。
【0003】
アジュバントは、抗原に対する特異的な(複数の)体液性および/または細胞性反応を増強することができる物質である。このやや広範な定義は、アジュバントとして認識される化合物の高度に異種性の収集をもたらしている。従って、全てのアジュバントに共通である作用の正確な様式を定義することは困難である。多くのアジュバント(すなわち、乳剤、ミョウバン)が、抗原を免疫系の細胞へ緩徐に放出する接種部位に抗原性沈着を形成することにより作用することは広く信じられている。この抗原の緩徐な放出は、延長された期間の免疫系の持続刺激を生じる。この沈着の微粒子の特徴も同じく、免疫系の完全な刺激に関する重要な工程である、抗原処理細胞による抗原の取込みを増強することができる。加えて一部のアジュバントは、免疫系の細胞を刺激する成分を含み、その結果製剤に含まれた抗原に対する応答を増強する。より最近になって、特異的細胞を刺激するかもしくは特異的細胞に対して抗原を標的化することができ、その結果より多くの指定された作用および予測可能な作用を有する可能性があるような分子アジュバントが開発されている。正確な機序とは関係なく、細胞媒介型および体液性免疫の両方が、含まれる抗原、アジュバント、プロトコールおよび種に応じて程度が変動するように刺激され得る。
【0004】
注射後に持続性の免疫学的反応を誘起するために非常に有効なアジュバントの古典的例は、フロイント(J. Freund)により説明された(J. Immunol.、60:383−98(1948))。フロイントの完全アジュバントは、鉱油乳剤および死滅菌体の組合せである。フロイントのアジュバントおよびフロイントの不完全アジュバント(放線菌を除く)は抗血清または免疫学的試薬の調製のための実験動物の免疫処置において広く使用されているが、注射部位の壊死のような副作用のために、いずれもヒト臨床用途には許容されていない。延長された反応を実現するその他のアジュバントは、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムのようなタンパク質吸着剤である。これらの物質は、緩徐な放出を提供するが、抗原それ自身の免疫原性には寄与しない。
【0005】
多くの公知のアジュバントを、1から4の範疇に分けることができる:(i)油ベースのアジュバント、(ii)ミネラルベースのアジュバント、(iii)細菌生成物、または(iv)サポニンおよび免疫刺激する複合体。油ベースのアジュバントは、通常代謝不可能である薬学的等級の鉱油を使用する、油中水型または水中油型乳剤として調製される。フロイントの不完全アジュバントが一例である。ミネラルベースのアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびリン酸カルシウムを含む。細菌抽出物が免疫系を刺激する能力は、場合によってはわかっている(すなわちフロイントのアジュバント内の放線菌抽出物)。細菌抽出物中の免疫刺激作用に寄与するいくつかの成分が同定されており(すなわちムラミルジペプチド)、これらの化合物の誘導体が、これらの化合物を使用する際に望ましくない副作用を低下しようとして開発されている。QuilAは、強力な免疫刺激特性を有する植物から単離されたサポニンの例であるが、高用量では副作用も有し得る。コール酸塩およびリン脂質が特異的に製剤化された調製物中に含まれており、これは免疫刺激複合体(ISCOM)と称されているものを形成する。
【0006】
ISCOMという例外はあるものの、ほとんどの従来型のアジュバントは、非経口免疫処置についてのみ有用であり、粘膜免疫処置の増強のためには別の戦略が考慮されなければならない。ISCOM、生分解性ミクロスフェアおよびリポソームは、粘膜免疫処置のために開発され試験されている系の例の一部である(Sjolanderら、J. Leukocyte Biol.、64:713−723(1998))。
【0007】
商業的価値のある有効なワクチンを開発するために、選択された抗原性物質およびアジュバント送達系の大量生産には、費用効果がなければならない。この状況は、感染性病原体に対する適切な防御を提供するために、しばしば1種よりも多い代表的抗原(または1種よりも多い抗原の変種)が必要とされるという事実により一層ひどくなっている。加えて、異なる病原体に対して開発されている特異的ワクチン数の増加により、複数の抗原による免疫処置が必要である。これは、様々な抗原およびワクチン製剤の適合性に関する問題を生じ、かつワクチン開発の経費を著しく増大している。小児の包括的免疫処置プログラムに必要な注射回数の増加の可能性は、一連の注射全てを完了しようとする意欲を低下し、これは次に免疫処置プログラムの効能を低下するという更なる懸念を生じている。従って、ワクチンにとってより適した(palatable)投与の代替経路、特に経皮塗布は、初回免疫処置、追加免疫処置または恐らく非経口免疫処置の完全な代替として理想的であることは明白である。
【0008】
ほとんどの病原生物の進入経路は、粘膜表面経由であり、かつ多くの感染症が、主に粘膜および粘膜下組織に局在化されている。免疫学の進歩は、潜在的病原体に対して免疫応答を指示することが可能である精巧かつ一体化された粘膜免疫系が存在することを明らかにしている。従来型の非経口ワクチン(注射可能)は、粘膜の免疫応答を誘導するにはあまり効果的ではない。最適な粘膜の免疫処置のための系開発に向けてかなりの努力が示されている。このような方法は、抗原の粘膜下組織中の免疫細胞への送達を増強する比較的大きい粒子(リポソーム、免疫刺激複合体、ミクロスフェア)への抗原の組込みを含む。粘膜経路の投与は、患者にとっては魅力的であり、全身感染症に関する粘膜免疫処置の考察を促すことさえある。しかし最近の研究は、粘膜的免疫処置は一部の状況においては有効であるが、粘膜および非経口の両方の免疫処置の組合せが、多くの感染症に関する効果的免疫応答の最適な誘導に必要であることを指摘している。現時点で、全身投与と粘膜投与のためのワクチン製剤は別個であり、従ってこの免疫処置戦略のための個別の製剤の開発の費用は、費用効果履行に関する障壁となる可能性がある。
【0009】
皮膚は、病原体に対する効果的な障壁であり、従って感染症に対する保護レベルを提供する。しかし、病原体が皮膚層を通っての侵入成功を成し遂げた場合、効果的免疫応答を開始することが可能である皮膚に存在する様々な免疫学的活性細胞(すなわち、樹状細胞)がある。これは、ヒトにおいて臨床的におよび動物において実験的に、慣習的に使用されている皮下非経口免疫処置の基本である。しかし、皮膚の障壁機能は、経皮的免疫処置戦略の開発に対する障壁としても役目を果たす。小分子治療薬の皮膚を通る送達手段に関するかなり広範な科学文献および特許文献があるが、経皮的(経皮下的)免疫処置に関する文献はほとんどない。ほとんどのタンパク質抗原とは異なり、ある種の細菌毒の経皮下的適用は免疫応答の誘導を生じることができるが(Glennら、Infect Immunity、67:1100−1106(1999))、タンパク質抗原の一般的送達系は説明されていない。皮膚表面への抗原含有調製物の適用に関与し、かつ抗原を皮内樹状細胞へ効果的に送達する系には明らかに多くの利点がある。
【0010】
最近、免疫応答の分子および細胞の局面の理解は途方もなく進歩した。これは、特定の感染病原体に対して適切に免疫応答を増強しかつ指示する機会を提供している。従って、細胞外病原体に対する抗体(体液性、Th2)応答を主に誘導するか、もしくは細胞内病原体について細胞媒介型(Th1)機構への免疫応答指示することが可能である。アジュバント作用は抗原の適当な抗原処理細胞への効果的標的化および送達に頼ることがあるので、いくつかの分子アジュバントは抗原へ物理的に連結した場合に、これらがより有効であることを研究が明らかにしている。加えて、標的化分子がリポソームのような送達媒体に組込まれることで、会合した抗原へアジュバント作用を提供することができる(Harokopakisら、J. Immunol. Methods、185:31−42(1995))。しかし分子アジュバントのワクチンへの組込みは、成分の生成および/または精製ならびにワクチン製剤への最適組込み(すなわち接合)のために、かなりの追加経費を生じることがある。
【0011】
先に説明された情報を考慮し、理想的ワクチンは、複数の抗原を含有し、経皮的、粘膜または全身性の投与し易く、免疫応答を適切に変調しかつ目標とするために成分を組み込むことは明らかである。植物の油体系は、複合多価ワクチン製剤を生成する簡単および安価な手段を提供し、その結果許容できる経費で改善されたワクチン製剤を開発する手段を提供する。
【0012】
植物油体
油体は、植物種子においてトリアシルグリセリド(油;中性脂質)が貯蔵されている細胞小器官である。植物油体は、全ての油料種子植物(すなわち、キャノーラ、亜麻、ヒマワリ、ダイズおよびトウモロコシ)において認められる直径約0.5〜2mの球形粒子である。これらの油体は、主にリン脂質単層およびオレオシンと称されるタンパク質からなる外被に取り囲まれた中心の油(トリグリセリド)の液滴からなる。植物油体の一般的構造は図1に示している。オレオシンおよび油体は、ほとんど専ら種子発生の期間に生成され、油料種子植物の種子内に非常に高レベルに蓄積される。油体は、ほぼ小さい細菌のサイズであり、従って同様の様式において免疫系により処理(すなわち、抗原処理細胞による食作用)される傾向がある。油体の組成および構造はある程度、ワクチン産業により考慮される合成ワクチンアジュバント/送達系と似ており(GarconおよびSix、1991;Sjolander、Coxら、1998)、その結果天然のアジュバント/送達系として使用することができる。油体は、それらのサイズのために、粘膜(M)細胞により容易に採取され、かつ粘膜免疫系に寄与している細胞へ効果的に送達される。油体は、安定した構造であり、かつ鼻または肺粘膜に送達するために効果的にエアロゾル化されるのに適当なサイズである。油体の濃縮懸濁液は、クリームまたはローションの粘度を有し、その結果皮膚表面へ塗布するのに都合がよい。油体は、多くの植物種から大量に単離することができ、一旦単離されると比較的安定した構造であるように見える。
【0013】
アジュバントとしての植物油
免疫を賦活するためのアジュバント中の油の使用に関する実質的特許文献が存在し、これは植物種子由来の油を使用するものを含む。これらの特許の大半は、化学的に純粋な組成物の混合により調製される、油中水型または水中油型乳剤の製剤および使用を開示している。植物由来の油ベースのアジュバントの鉱油ベースのアジュバントに勝る主な利点は、これらが代謝可能であり、かつその結果より良い耐容性がある可能性があることである。しかし、これはアジュバントとしての効能の低下も生じ得る。オーディベルト(Audibert)らの米国特許第4,125,603号のような、安定化剤として作用する乳剤形成時に非免疫原性タンパク質(ウシ血清アルブミン)を含むものに関するいくつかの特許もある。しかしこの特許は、植物油体のそれに真に類似しているか、もしくは植物油体に特徴的である均質な構造特徴を提供するような組成物は説明していない。国際公開公報第98/53698号は、様々な食品、パーソナルケア製品および医薬品における油体の使用を説明している。国際公開公報第00/30602号は、例えば一般に化粧品化合物および治療的活性物質(therapeutic active)のための、活性物質の局所送達媒体としての油体の使用を開示している。本発明者らの知識の限りにおいて、油体のアジュバント系としての直接の使用を説明する特許文献は存在しない。
【0014】
植物タンパク質生成系
植物は、商業的価値のある組換えタンパク質の大規模製造のための動物、昆虫および細胞培養物プラットフォームの魅力的代替品を提供する。過去数年間に「分子農業」と称されることが多い化合物の植物生成に、劇的に関心が高まりつつあり、多くの様々な生産プラットフォームが説明されている。植物は、安全かつ信頼できる大規模の、比較的高価ではない生産の可能性を提供する。かなり多数の様々な商業的価値のあるタンパク質の生産が植物において実行されているが、抗原として機能するタンパク質の製造は、ワクチンの商業的価値ならびに動物およびヒトがそれらの食餌の一部として消費することができる植物に基づくワクチン製造の可能性のある簡便性のために、著しく興味深い。
【0015】
植物における商業的価値のある外来タンパク質の生産は、最初にグッドマン(Goodman)らの一群の特許により記載され(米国特許第4,956,282号;米国特許第5,550,038号;米国;米国特許第5,629,175号、欧州特許第233915号、カナダ特許第1340696号)、これは植物細胞における哺乳類ペプチド発現を説明している。これらの特許請求の範囲は、双子葉植物種における哺乳類ペプチドの生成に向けられているが、ワクチン製造において抗原として使用されるようなタンパク質の生成の可能性が、この明細書においては説明されている。これらの特許は、抗原(例えば白血病およびリンパ指向性(lymphotropic)レトロウイルスのエンベロープタンパク質、単純ヘルペスウイルスまたはB型肝炎ウイルスの表面抗原)は、植物において製造することができることを示唆しているが、このような植物に基づくワクチンの製造および効能を明らかにする例は提供していない。加えて説明された方法は、ワクチン製剤において使用することができる十分な抗原を単離するためには、複雑で高価な精製法を含む。これらの特許は、抗原であるペプチドの製造のみを説明しているが、追加されたアジュバントによる免疫応答の刺激を提供する指示は含んでいない。
【0016】
植物における外来タンパク質製造の更なる例は以下を含む:ヴァンダカークホーブ(J. S. Vandekerckhove)らの米国特許第5,487,991号、「トランスジェニック植物における修飾された貯蔵種子タンパク質遺伝子の発現による生物学的活性ペプチド生成法(A Process for the Production of Biologically Active Peptide Via the Expression of Modified Storage Seed Protein Genes in Transgenic Plants)」。この発明は、種子貯蔵タンパク質およびインフレームで結合された関心のある外来タンパク質の生成を説明している。これらの2種のタンパク質の結合部がタンパク質分解性の切断配列により形成されたとする場合には、商業的に関心のあるアミノ酸配列は貯蔵タンパク質とは無関係に切断され得る。説明された発明は、外来タンパク質発現レベル、生成物の安定性および回収の容易さが改善されることが提唱されている。しかしこの方法の限界は、三次元構造、従って貯蔵容量および安定性を乱すことなく融合タンパク質内に外来配列を収容することである。受け入れることができるペプチドのサイズは小さく、この明細書は抗原性ペプチドおよびワクチンの生成は、明確には説明していない。
【0017】
カーティス(R. Curtiss)およびカーディニュー(G. A. Cardineau)の3種の関連する特許の米国特許第5,654,184号、米国特許第5,679,880号、米国特許第5,686,079号、「トランスジェニック植物による経口免疫処置(Oral Immunization by Transgenic Plants)」は、抗原のための送達媒体としての植物の商業的活用および免疫処置のための経口ワクチンとしての使用を説明している。しかし、この方法は、経口免疫処置に制限されており、従って胃を通過する際の抗原の安定性に関する可能性のある問題点に直面している。
【0018】
追加の関連した特許は、オージェン(J. J. van Ooijen)らの米国特許第5,543,576号、米国特許第5,714,474号の「種子における酵素生成およびそれらの使用(Production of Enzymes in Seeds and Their use)」であり、これは組換え酵素を含有する種子を用いて反応を触媒する方法を説明している。圧搾した種子を直接用い、酵素を回収または精製するための試みはおこなわない。この発明は、抗原性物質の生成は企図していない。シモンズ(P. C. Sijmons)らの別の特許(米国特許第5,650,307号、米国特許第5,716,802号、米国特許第5,763,748号)、名称「植物における異種タンパク質の生成(Production of heterologous proteins in plants)」も、植物における異種タンパク質の単離法を説明している。これらの発明は、植物細胞由来のタンパク質を処理および排泄する植物の能力を使用する、植物におけるタンパク質の生成を開示している。この基本的方法は、植物が認識し、その結果組換えタンパク質を細胞外空隙へと向かわせるようなリーダー配列の使用を含む。特にこれらの方法は、デンプンの加工処理のような、産業プロセスと混合するための、植物種に合わせたタンパク質排泄の作製を説明している。この発明は、ジャガイモにおけるヒト血清アルブミン(HSA)の生成を例証している。
【0019】
穀物の糊粉組織の合成能を調べることにより植物において価値のあるタンパク質を生成する方法は、ロジャーズ(J. C. Rogers)の米国特許第5,677,474号、「遺伝的に形質転換された内胚乳組織による商業的価値のあるポリペプチドの生成(Producing Commercially Valuable Polypeptides with Genetically Transformed Endosperm Tissue)」と題する特許の主題となる。この特許は、穀物におけるタンパク質の異種生成に特に関連しているが、抗原の生成およびワクチンの形成は考察していない。
【0020】
植物における抗体産生に関する技術は、ヘイン(Hein)らの米国特許第5,202,422号、米国特許第5,639,947号、米国特許第5,959,177号に開示されている。これらの特許は、多量体タンパク質である抗体を発現するための植物の使用を開示している。次にこのような植物は、該免疫グロブリンの投与により、病原体に対する受動免疫を形成する方法において使用される。
【0021】
トランスジェニック植物は経口ワクチン送達のための媒体として使用することができるという概念は、ラム(D. Lam)およびアーンゼン(C. Arntzen)の記した発行された米国特許において説明されている(米国特許第5,484,719号;米国特許第5,612,487号;米国特許第5,914,123号;米国特許第6,034,298号)。これらの特許は、植物細胞において発現するプロモーターに連結されたウイルス病原体の表面抗原の発現をコードしているDNA配列による植物の形質転換を説明している。この発明の好ましい態様は、経口摂取することができる果実またはジュースのような、ヒトまたは動物により可食性の植物の一部における発現である。この方法は、いくつかの細菌毒(コレラ毒素βサブユニット)またはウイルス粒子のような経口免疫処置に適している抗原について有用であることができるが、広範な抗原には適していない可能性がある。加えて、実践に際し、粘膜免疫系へ送達された抗原の量を制御し、かつ経口耐性の発生などの望ましくない結果を完全に避けることは困難である。
【0022】
ゴム植物のラテックス液中の関心対象の組換えタンパク質の生成法は、ボフェイ(Boffey)らの米国特許第5,580,768号、名称「植物液体中でのタンパク質生成法(Method for Production of Proteins in Plant Fluids)」に開示されている。ラテックスに特異的プロモーターの使用により、商業的価値のある組換えタンパク質の生成が、ゴムの木により行うことができ、かつ確立された簡単な方法により簡便に収穫される。この明細書は、かなりの数の薬学的に重要なタンパク質が、このような方法により製造することができることを示しているが、抗原性タンパク質の生成は開示していない。
【0023】
損傷またはその他の機械的刺激により誘導されるプロモーターの制御下での外来遺伝子の発現をベースにした異種タンパク質生成系が、クレーマー(C. L. Cramer)およびウェイセンボーン(D. L. Weissenborn)の特許「HMG2プロモーター発現系ならびに植物および植物細胞培養物における遺伝子産物の収穫後生成(HMG2 Promoter Expression System and Post−harvest Production of Gene Products in Plants and Plant Cell Cultures)」の主題となる(米国特許第5,670,349号および米国特許第5,689,056号)。このHMG2プロモーターエレメントは、病原体感染症、害虫の集団発生(pest−infestation)、創傷、誘導因子、化学的処理に寄与している。これらのプロモーターエレメントは、多くの様々な植物種に由来するが、これらは医学的価値があるタンパク質を含む様々な外因性遺伝子の発現を駆動するために使用することができる。例証されているこの発明の適用は、酵素生成に関連している。更なる特許であるラディン(Radin)らの米国特許第5,929,304号「植物に基づく発現系におけるリソソーム酵素の生成(Production of lysosomal enzymes in plant−based expression systems)」が最近発行された。
【0024】
別の最近発行された特許群は、穀物種子および穀物植物由来の細胞培養物において組換えタンパク質を作製する2工程法を説明している。米国特許第5,693,506号、米国特許第5,888,789号、米国特許第5,889,189号、米国特許第5,994,628号、名称「植物におけるタンパク質生成法(Process for Protein Production in Plants)」は、ロドリゲス(R. L. Rodriguez)により記された。組換えタンパク質をコードしている遺伝子は、ふたつの個別の発現構築物に挿入される。ひとつの構築物は、種子の発芽または麦芽にする(malt)際にプロモーター活性を使用する。別の構築物は、麦芽にされた種子における発現を達成するために、調和のとれた調節されたプロモーターを使用する。加えて両方の構築物は、標的タンパク質の排泄を可能にする調節配列を使用する。この発明は、麦芽されたコメにおけるαアミラーゼプロモーターにより駆動されたGUS発現を例証し、抗原またはワクチンの生成の例が提供されている。
【0025】
植物における異種タンパク質生成を説明している別の特許は以下を含む:マーク・フォーティン(Marc Fortin)の米国特許第5,723,755号「ヒトまたは動物タンパク質の植物バイオリアクターを使用する大規模生成(Large Scale Production of Human or Animal Proteins using Plant Bioreactors)」、ヴェジナ(Vezina)らに発行された米国特許第5,990,385号「トランスジェニックアルファルファ植物におけるタンパク質生成(Protein production in transgenic alfalfa plants)」、バスクジンスキー(Baszczynski)らの米国特許第5,824,870号「植物におけるアプロチニンの商業的製造(Commercial production of aprotinin in plants)」;バスクジンスキー(Baszczynski)らの米国特許第5,767,379号「植物におけるアビジンの商業的製造(Commercial production of avidin in plants)」、ならびに、ブルース(Bruce)らの米国特許第5,804,694号「植物におけるB−グルクロニダーゼの商業的製造(Commercial production of B−glucuronidase in plants)」。
【0026】
まとめると、商業的および医学的に価値のあるタンパク質の異種生成に関する多くのタンパク質生成のプラットフォームが、文献および発行された特許において説明されている。これらの発明の一部は、抗原性であるかおよびワクチン製剤において使用される可能性があるようなタンパク質の生成を明らかにしている。特定の発明では、形質転換された植物組織または抗原性タンパク質を発現している細胞は、可食性ワクチンとして直接消費できることを明らかにしている。しかし先に説明した系の実践上の制限は、生成され得る中等度レベルの異種タンパク質またはタンパク質の従来型ワクチンへの封入に適した純粋な形状での回収の経費および難しさに起因している。そのように説明された系で、免疫原性反応を刺激しかつ延長するために必要なアジュバントを天然に含むものはない。
【0027】
本発明の主題は、油体表面に提示された抗原を含む植物油体で構成されたワクチン送達系である。本発明のひとつの態様は、抗原が主な油体表面タンパク質であるオレオシンとの融合タンパク質として発現されている植物油体に由来したタンパク質生成プラットフォームを含む。植物油体に会合されたキメラ異種タンパク質の作製は、モロニー(M. Moloney)が記した以下の特許に説明されている:米国特許第5,650,554号「植物における高価値のペプチドの担体としての油体タンパク質(Oil−body proteins as carriers of high value peptides in plants)」;米国特許第5,792,922号「調節シグナルとしての油体タンパク質シスエレメント(Oil−body protein cis−elements as regulatory signals)」;米国特許第5,856,452号「アフィニティーマトリックスとしての油体および会合したタンパク質(Oil bodies and associated proteins as affinity matrices)」;米国特許第5,948,682号「油体上の異種タンパク質の調製(Preparation of heterologous proteins on oil bodies)」。
【0028】
オレオシンタンパク質は、総細胞タンパク質を2〜10%含み、および発達している種子細胞の油体と密に会合している(Huang, A. H. C.、Ann Rev Plant Physiol and Plant Mol Biol、43:177−200(1992);Murphy, D. J.、Prog. Lipid Res、29:229−324(1991))。他の細胞タンパク質とは異なり、オレオシンは種子細胞抽出物の油画分に区分化される。従って浮遊遠心、または静置によってさえも、オレオシンは、他の全ての細胞タンパク質から容易に分離される(Parmenterら、Plant Mol. Biol.、29:1167−1180(1995))。油体に物理的に結合した任意のタンパク質、特にオレオシンに共有結合したタンパク質は、油体画分に分離されると考えられるということを、研究が明らかにしている(van Rooijen, G. J. H.およびモロニー(Moloney, M. M.)、Bio/Technology、13:72−77(1995);van Rooijen, G. J. H.およびモロニー(Moloney, M. M.)、Plant Physiol.、109:1353−1361(1995))。これは、組換えタンパク質の精製のための効率的機械的機構を提供する。植物生育の経済性を考慮すると、これはタンパク質生成の非常に安価な手段を提供する。
【0029】
下記の刊行物が当技術分野の状況を説明し、かつ本明細書に参照として組入れられている。
ガーコン(Garcon, N. M. J.)およびシックス(H. R. Six.)、1991、「万能ワクチン担体:弱抗原に対するT−依存型補助を提供するリポソーム(Universal vaccine carrier: Liposomes that provide T−dependent help to weak antigens)」、J.Immunol.、146:3697−3702。
グレン(Glenn, G. M.)ら、1999、「抗原およびアジュバントとしての細菌ADP−リボシル化外毒素による経皮的免疫処置(Trancutaneous immunization with bacterial ADP−ribosylating exotoxins as antigens and ajuvants)」、Infection and Immunity、67(3):1100−1106。
ハロコパキス(Harokopakis, E.)ら、1995、「抗原の標的化された送達のためのコレラ毒素またはそのBサブユニットのリポソームへの接合(Conjugation of cholera toxin or its B subunit to liposomes for targeted delivery of antigens)」、J.Immunol.Methods、185:31−42。
イサーテル(Issartel, J.−P.)ら、1991、「アシル担体タンパク質依存型脂質アシル化による大腸菌プロハエモライシンの成熟毒への活性化(Activation of Escherichia coli prohaemolysin to the mature toxin by acyl carrier protein−dependent fatty acylation)」、Nature、351:759−761。
ショランダー(Sjolander, A.)ら、1998、ISCOM:「複数の機能を伴うアジュバント(ISCOMs: an adjuvant with multiple functions)」、J.Leukocyte Biol、64:713−723。
ウー(Wu, H. C.)およびトクナガ(M. Tokunaga)、1986、「細菌のリポタンパク質生合成(Biogenesis of lipoproteins in bacteria)」、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、125:127−157。
チェン(Chen, J.C.)ら、1999、「植物種子油体の独特なカルシウム結合タンパク質であるカレオシンのクローニングおよび二次構造分析(Cloning and secondary structure analysis of caleosin, a unique calcium−binding protein in oil bodies of plant seeds)」、Plant Cell Physiol、40:1079−86。
ベクトールド(Bechtold, N.)ら、1993、「成体植物体の浸潤による植物アグロバクテリウムを介する遺伝子導入(In planta Agrobacterium−mediated gene transfer by infiltration of adult plants)」、C.R. Acad. Sci. Paris, Life Sciences、316:1194−1199。
ダンブ(Danve, B.)、リッソーロ(Lissolo, L.)、ギネット(Guinet, F.)、ボウトリー(Boutry, E.)、スペック(Speck, D.)、カドス(Cadoz, M.)、ナシフ(Nassif, X.)、クエンティン−ミレット(Quentin−Millet, M. J.)、「成人におけるナイセリア・メニンギティディス群Bトランスフェリン結合タンパク質ワクチンの安全性および免疫原性(Safety and immunogenicity of a Neisseria meningitidis group B transferrin binding protein vaccine in adults)」、ナシフ(Nassif, X.)、クエンティン−ミレット(Quentin−Millet, M.−J.)、およびタハ(Taha, M.−K.)、53.98.(Eleventh International Pathogenic Neisseria Conference)。
フロイント(Freund, J.)、1948、J. Immunol.、60:383−98。
ハートランド(Harland, R. J.)ら、1992、「畜舎乳牛の呼吸器疾患予防のためのサブユニットまたは改変された生ウシヘルペスウイルス−1ワクチンの組換えパスツレラ・ハエモリチカワクチン効能に対する作用(The effect of subunit or modified live bovine herpesvirus−1 vaccines on the efficacy of a recombinant Pasteurella haemolytica vaccine for the prevention of respiratory disease in feedlot calves)」、Can. Vet. J. 33:734−741。
ハルパーン(Halpern, J. L.)ら、1990、「破傷風毒素の機能断片Cのクローニングおよび発現(Cloning and expression of functional fragment C of tetanus toxin)」、Infect Immun.、58:1004−1009。
ハロコパキス(Harokopakis, E.)ら、1995、「抗原の標的化された送達のためのコレラ毒またはそのBサブユニットのリポソームへの接合(Conjugation of cholera toxin or its B subunit to liposomes for targeted delivery of antigens.)」、J. Immunol. Methods、185:31−42。
ハング(Huang, A. H. C.)、1991、「種子の油体およびオレオシン(Oil−bodies and oleosins in seeds)」、Ann Rev Plant Physiol and Plant Mol Biol、43:177−200。
クーネル(Kuhnel, B.)ら、1996、「固定されたb−グルクロニダーゼの供給源としてのトランスジェニックアブラナの油体(Oil bodies of transgenic アブラナ as a source of immobilized b−glucuronidase)」、JAOCS、73:1533−1538。
マーフィー(Murphy, D. J.)、1991、「植物における貯蔵油体およびオレオシンの構造、機能および生合成(Structure, function and biogenesis of storage lipid bodies and oleosins in plants)」、Prog, Lipid Res.、29:299−324。
パーメンター(Parmenter, D.L.)ら、1995、「植物種子における生物学的活性ヒルジンの生成(Production of biologically active hirudin in plant seeds)」、Plant Mol. Biol.、29:1167−1180。
リッグス(Riggs, P.)、1994、「マルトース結合タンパク質融合体の発現および精製(Expression and purification of maltose binding protein fusions)」、p. 16−6−1−16−6−14: アウスベル(F. M. Ausubel)、 ブレント(R. Brent)、 キングストン(R. E. Kingston)、ムーア(D. D. Moore)、シードマン(J. G. Seidman)、スミス(J. A. Smith)およびスタール(K. Struhl)(編集)、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、Wiley、ニューヨーク。
シャンツ(Schantz, P. J.)、1993、「ペプチド修飾酵素基質特異性のマッピングのためのペプチドライブラリーの使用:大腸菌におけるビオチン化を特定するA13残基共通ペプチド(Use of peptide libraries to map the substrate specificity of a peptide−modifying enzyme: A 13 residue consensus peptide specifies biotinylation in Escherichia coli)」、Bio/Technology、11:1138−1143)。
ツァオ(Tsao, K. L.)ら、1996、「大腸菌における部位特異的酵素修飾によるビオチン化されたタンパク質生成のための可変性プラスミド発現ベクター(A versatile plasmid expression vector for the production of biotinylated proteins by site−spesific, enzymatic modification in Escherichia coli.)」、Gene、169:59−64。
ルージェン(van Rooijen, G. J. H.)およびモロニー(Moloney, M. M.)、1995、「外来タンパク質の担体としての植物種子油体(Plant seed oil−bodies as carriers for foreign proteins)」、Bio/Technology、13:72−77。
ルージェン(van Rooijen, G. J. H.)およびモロニー(Moloney, M. M.)、1995、「油体へ細胞下標的化するためのオレオシンドメインの構造要件(Structural requirements of oleosin domains for subcellular targeting to the oil body)」、Plant Physiol.、109:1353−1361。
アーンゼン(Arntzen, C. J.)ら、米国特許第5,914,123号、「植物で発現されたワクチン(Vaccines expressed in Plants)」。
バスクジンスキー(Baszczynski, C.)ら、米国特許第5,824,870号、「植物におけるアプロチニンの商業的生産(Commercial production of aprotinin in plants)」。
バスクジンスキー(Baszczynski, C.)ら、米国特許第5,767,379号、「植物におけるアビジンの商業的生産(Commercial production of avidin in plants)」。
ボフェイ(Boffey, S. A.)ら、米国特許第5,580,768号、「植物液中でのタンパク質生成法(Method for the production of proteins in plant fluids)」。
ブルース(Bruce, W. B.)ら、米国特許第5,804,694号、「植物におけるB−グルクロニダーゼの商業的製造(Commercial production of B−glucuronidase in plants)」。
クレーマー(Cramer, C. L.)ら、米国特許第5,670,349号、「HMG2プロモーター発現系および植物および植物細胞培養物中での遺伝子産物の収穫後産生(HMG2 promoter expression system and post−harvest production of gene products in plants and plant cell cultures)」。
クレーマー(Cramer, C. L.)ら、米国特許第5,689,056号、「HMG2プロモーター発現系(HMG2 promoter expression system)」。
カーティス(Curtiss, R. III)ら、米国特許第5,654,184号、「トランスジェニック植物による経口免疫処置(Oral immunization by transgenic plants)」。
カーティス(Curtiss, R. III)ら、米国特許第5,679,880号、「トランスジェニック植物による経口免疫処置(Oral immunization by transgenic plants)」。
カーティス(Curtiss, R. III)ら、米国特許第5,686,079号、「トランスジェニック植物による経口免疫処置(Oral immunization by transgenic plants)」。
フォーティン(Fortin, M. G.)、米国特許第5,723,755号、「植物バイオリアクターを使用するヒトまたは動物タンパク質の大規模製造(Large scale production of human or animal proteins using plant bioreactors)」。
グッドマン(Goodman, R. M.)ら、米国特許第4,956,282号、「植物細胞における哺乳類ペプチド発現(Mammalian peptide expression in plant cells)」。
グッドマン(Goodman, R. M.)ら、欧州特許第233915B1号、1993年2月3日、「分子農場(Molecular Farming)」。
グッドマン(Goodman, R. M.)ら、米国特許第5,550,038号、「分子農場(Molecular Farming)」。
グッドマン(Goodman, R. M.)ら、米国特許第5,629,175号、「分子農場(Molecular Farming)」。
ヘイン(Hein, M. B.)ら、米国特許第5,959,177号、「集成された分泌抗体を発現しているトランスジェニック植物(Transgenic plants expressing assembled secretory antibodies)」。
ハイアット(Hiatt, A. C.)ら、米国特許第5,202,422号、「植物が生成した糖ポリペプチド多量体、多量体タンパク質を含有する組成物およびそれらの使用法(Compositions containing plant−produced glycopolypeptide multimers, multimeric proteins and method of their use)」。
ハイアット(Hiatt, A. C.)ら、米国特許第5,639,947号、「糖タンパク質多量体を含有する組成物およびその植物における製法(Compositions containing glycoprotein multimers and methods of making same in plants)」。
ナーフ(Knauf, V. C.)ら、カナダ特許第1340696号、1999年8月10日、「植物細胞における哺乳類ペプチド発現(Mammalian peptide expression in plant cells)」。
ラム(Lam, D. M.)ら、米国特許第5,484,719号、「可食性植物により生成されかつ投与されるワクチン(Vaccines produced and administered through edible plants)」。
ラム(Lam, D. M.)ら、米国特許第5,612,487号、「植物において発現された抗ウイルスワクチン(Anti−viral vaccines expressed in plants)」。
ラム(Lam, D. M.)ら、米国特許第6,034,298号、「植物において発現されたワクチン(Vaccines expressed in plants)」。
モロニー(Moloney, M. M.)、米国特許第5,650,554号、「植物における高価値ペプチドの担体としての油体タンパク質(Oil−body proteins as carriers of high−value peptides in plants)」。
モロニー(Moloney, M. M.)、米国特許第5,792,922号、「調節シグナルとしての油体タンパク質シス−エレメント(Oil−body cis−elements as regulatory signals)」。
モロニー(Moloney, M. M.)、米国特許第5,948,682号、「油体上の異種タンパク質の調製(Preparation of heterologous proteins on oil bodies)」。
モロニー(Moloney, M. M.)ら、米国特許第5,188,958号、「アブラナ種における形質転換および外来遺伝子発現(Transformation and foreign gene expression in Brassica species)」。
モロニー(Moloney, M. M.)ら、米国特許第5,463,174号、「アブラナ種における形質転換および外来遺伝子発現(Transformation and foreign gene expression in Brassica species)」。
モロニー(Moloney, M. M.)ら、米国特許第5,750,871号、「アブラナ種における形質転換および外来遺伝子発現(Transformation and foreign gene expression in Brassica species)」。
モロニー(Moloney, M. M.)ら、米国特許第5,856,452号、「アフィニティーマトリックスとしての油体および会合タンパク質(oil bodies and associated proteins as affinity matrices)」。
ラディン(Radin, D. N.)ら、米国特許第5,929,304号、「植物に基づく発現系におけるリソソーム酵素の生成(Production of lysosomal enzymes in plant−based expression systems)」。
ロドリゲス(Rodriguez, R. L.)、米国特許第5,693,506号、「植物におけるタンパク質生成法(Process for protein production in plants)」。
ロドリゲス(Rodriguez, R. L.)、米国特許第5,888,789号、「植物におけるタンパク質生成法(Process for protein production in plants)」。
ロドリゲス(Rodriguez, R. L.)、米国特許第5,889,189号、「植物におけるタンパク質生成法(Process for protein production in plants)」。
ロドリゲス(Rodriguez, R. L.)、米国特許第5,994,628号、「植物におけるタンパク質生成法(Process for protein production in plants)」。
ロジャーズ(Rogers, J. C.)、米国特許第5,677,474号、1997年10月14日、「遺伝的に形質転換された内胚乳組織を用いた商業的価値のあるポリペプチドの製造(Producing commercially valuable polypeptides with genetically transformed endosperm tissue)」。
シルパルート(Schilperoort, R. A.)ら、米国特許第4,940,838号、「双子葉植物ゲノムへの外来DNAの組込み法(Process for incorporation of foreign DNA into the genome of dicotyledonous plants)」。
シルパルート(Schilperoort, R. A.)ら、米国特許第5,464,763号、「双子葉植物ゲノムへの外来DNAの組込み法(Process for the incorporation of foreign DNA into the genome of dicotyledonous plants)」。
シモンズ(Sijmons, P. C.)ら、米国特許第5,650,307号、「植物および植物細胞における異種タンパク質の生成(Production of heterologous proteins in plants and plant cells)」。
シモンズ(Sijmons, P. C.)ら、米国特許第5,716,802号、「植物および植物細胞における異種タンパク質の生成(Production of heterologous proteins in plants and plant cells)」。
シモンズ(Sijmons, P. C.)ら、米国特許第5,763,748号、「植物および植物細胞における異種タンパク質の生成(Production of heterologous proteins in plants and plant cells)」。
オージェン(Van Ooijen, A. J. J.)ら、米国特許第5,543,576号、「種子中の酵素生成およびそれらの使用(Production of enzymes in seeds and their use)」。
オージェン(Van Ooijen, A. J. J.)、米国特許第5,714,474号、「種子中の酵素生成およびそれらの使用(Production of enzymes in seeds and their use)」。
ヴァンダカークホーブ(Vandekerckhove, J.S.)ら、米国特許第5,487,991号、「トランスジェニック植物における改変された貯蔵種子タンパク質遺伝子の発現を介した生体活性ペプチドの生成法(A Process for the production of biologically active peptide via the expression of modified storage seed protein genes in transgenic plants)」。
ヴェジナ(Vezina, L−P.)ら、米国特許第5,990,385号、1999年11月23日、「トランスジェニックアルファルファ植物におけるタンパク質生成(Protein production in transgenic alfalfa plants)」。
【0030】
発明の概要
本方法は、植物油体および所望の抗原を含有するワクチン製造の手段を提供する。植物油体の使用は、抗原に対する免疫応答を増強しかつ追加アジュバントの必要性を排除する都合良くかつ安全なアジュバントを提供する。この方法は、注射を含む様々な手段により投与することができる、1種または複数の抗原を含むワクチン組成物、更には経皮的または粘膜を通して投与することができるワクチンの製造を可能にする。この方法は更に、抗原の油体タンパク質への融合および組換え植物宿主における発現を介して、抗原が植物油体の一部として生成されるワクチンの製造を可能にする。この方法は更に、油体および化学的手段により油体にカップリングされた抗原を含有するワクチン組成物の製造を可能にする。
【0031】
本発明の好ましい態様は、動物において免疫応答を誘起する方法であり、該方法は、油体および抗原を含有する製剤を該動物へ投与することを含む。
【0032】
本発明の別の態様は、動物において免疫応答を誘起する方法であり、該方法は、下記の工程を含む方法により生成された油体−抗原複合体を投与することを含む:
a)油体を単離および精製する工程;
b)抗原を該油体に連結し、油体−抗原複合体を形成する工程;および
c)該油体−抗原複合体を該動物へ投与する工程。
【0033】
本発明の別の態様は、動物において免疫応答を誘起する方法であり、該方法は、下記の工程を含む方法により生成された油体−抗原複合体を投与することを含む:
a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
1)機能的に連結された該細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
2)(ii)3)に機能的に連結されたリンカー分子をコードしている第二の核酸配列に(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
b)該融合ポリペプチドの油体を含む後代細胞における発現を可能にする条件下での該細胞を増殖する工程;
c)リンカー分子を含む該油体を単離する工程;
d)抗原の該油体への該リンカー分子を介した連結により、油体−抗原複合体を形成する工程;および
e)該油体−抗原複合体を該動物へ投与する工程。
【0034】
更なる本発明の態様は、動物において免疫応答を誘起する方法であり、該方法は、下記の工程を含む方法により生成された油体−抗原複合体を投与することを含む:
a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
1)機能的に連結された該細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
2)(ii)3)に機能的に連結された抗原をコードしている第二の核酸配列に(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
b)該抗原の後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖し、油体−抗原複合体の形成を生じる工程;
c)該油体−抗原複合体を単離する工程;
d)該植物油体−抗原複合体を該動物に投与する工程。
【0035】
本発明の別の態様は、下記の工程を含む油体−抗原複合体を調製する方法である:
a)油体を単離する工程;および
b)抗原を該油体に連結し、油体−抗原複合体を形成する工程。
【0036】
本発明の別の態様は、下記の工程を含む油体−抗原複合体を調製する方法である:
a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
1)機能的に連結された該細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
2)(ii)3)に機能的に連結されたリンカー分子をコードしている第二の核酸配列に(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
b)該融合ポリペプチドの油体を含む後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖する工程;
c)リンカー分子を含む該油体を単離する工程;
d)抗原の該油体への該リンカー分子を介した連結により、油体−抗原複合体を形成する工程;および
e)該油体−抗原複合体を該動物に投与する工程。
【0037】
その上更なる本発明の態様は、下記の工程を含む油体−抗原複合体を調製する方法である:
a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
1)機能的に連結された該細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
2)(ii)3)に機能的に連結された抗原をコードしている第二の核酸配列に(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
b)該抗原の後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖し、油体−抗原複合体の形成を生じる工程;
c)該油体−抗原複合体を単離する工程。
d)該植物の油体−抗原複合体を該動物に投与する工程。
【0038】
更に本発明の別の好ましい態様は、油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤である。
【0039】
本発明の別の好ましい態様は、細菌、ウイルスまたは寄生病原体による感染症に対して免疫化するための;癌細胞に対して動物を免疫処置するための;自己免疫反応に関連した免疫応答を変調するために動物を免疫処置するための;および、アレルギー反応に関連した免疫応答を変調するため動物を免疫処置するための、油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤の使用である。
【0040】
発明の詳細な説明
I.アジュバントとしての油体
一般的説明
本発明の方法は、油体および所望の抗原を含有するワクチン製造の手段を提供する。抗原は、免疫応答の産物と反応することが可能な実体である。抗原は、通常効果的免疫応答を誘導するために追加の要因を必要としている。アジュバントは、抗原に対する特異的体液性および/または細胞性反応を増大することができる任意の物質である。ワクチンは、抗原およびアジュバントおよび有効投与に必要ないずれか他の成分により構成される。植物油体は、通常のアジュバントの安全かつ有効な代替品を提供することがわかっており、かつ大規模で安価に製造することができる。
【0041】
本発明のひとつの態様において、ワクチンは、油体−抗原複合体により構成される。油体−抗原複合体は、油体および抗原の混合物であり、ここで該抗原は、油体表面へ共有的または非共有的相互作用により付着されている。抗原の油体への付着は、化学的、酵素的もしくは遺伝的手段またはこれらの方法の組合せにより実現することができる。従って抗原は、様々な異なる供給源から単離することができ、これは油体タンパク質に直接融合された抗原の生成を含む。
【0042】
抗体産生を誘導する抗原決定基(B細胞決定基)は、含まれるアミノ酸によってのみではなく、それらの三次元配向によっても定義されることが多い。対照的に、T細胞の決定基は、主に線状配列をベースにしている。タンパク質またはポリペプチド配列は、強力な特異的相互作用により、油体タンパク質への共有的連結により、またはオレオシン融合配列としての発現により、油体に会合され得る。オレオシンタンパク質のいずれかの末端での融合により、免疫系への適当な提示を維持することができる。
【0043】
ハプテンは、単独の抗原決定基に対応している小さい官能基である。ハプテンは、担体にカップリングしなければ免疫原性であることはできない。短鎖ペプチドまたは糖質(CHO)は、これらが強力な担体および/またはアジュバントを伴わないと免疫応答を誘導することができないので、ハプテンと分類される。全タンパク質由来の抗原決定基をベースにしたペプチドは、これらは最高の純度で合成することができ、その結果組換え生成から生物学的夾雑を減らすことができるので非常に興味がある。抗原性ペプチド配列は、全タンパク質のエピトープマッピングまたはファージディスプレーライブラリーから単離されたファージDNAからの配列の推定に由来することができる。ペプチドおよびCHOは、ビオチンまたは脂質アシル基(ラウロイル、ミリスタル(myristal)など)のような担体への抗原付着のために含まれる反応性N末端基またはC末端基を伴い、合成することができる。ペプチドは、抗原全体の3D構造により似せるためにペプチドの立体的に拘束することができるアミノ酸残基を伴い、合成することもできる。
【0044】
ハプテンの使用は、免疫化系としての油体の使用に特に重要である場合がある。ペプチドは、強力な会合(ストレプトアビジン−ビオチン相互作用)または反応基の使用により共有的に付着することができるか、もしくはオレオシン融合配列として発現することができる。オレオシンタンパク質のいずれかの末端での融合により、免疫系への適切な提示が維持され得る。これらのペプチド配列は、公知のタンパク質配列を基にした抗体の産生を誘導することがわかっているもののみではなく、CHO配列、ヘルパーT細胞および細胞障害性T細胞を誘導することが可能な特異的および非特異的配列のペプチド模倣性も必要とし、もしくは抗原提示細胞;マクロファージ、樹状細胞およびB細胞による抗原取込みを増大する。これらの方法に使用されるペプチドの具体例は(各々)、N.メニンギティディス多糖莢膜のペプチド−擬態;特異的ヘルパーTエピトープ、例えばHbsAg、HIVおよびマラリアエピトープなど、ならびに特異的細胞障害性T配列、例えば現在臨床試験中の黒色腫ペプチド;Pan−DR(全てヘルパーT)結合[PaDRe]配列、Pan−HLA−A2(全て細胞障害性T)結合配列、またはインターロイキン−1受容体刺激による非免疫刺激(IL−1ペプチド);ならびに、補体成分断片、例えばC5aおよびC3dを含む。
【0045】
免疫処置のためのペプチド配列の具体例は以下を含む;MARTおよびGP−100黒色腫ペプチド、乳癌ペプチド、B型肝炎ペプチド、HCVペプチド、リウマチ様関節炎、CEAペプチド(消化器癌)、アレルゲンのペプチド配列をベースにしたアレルギーワクチン、多発性硬化症TCRペプチド、およびシュードモナス(Pseudomonas)接着ペプチド。
【0046】
これらの抗原は、感染性病原体(細菌、ウイルス、寄生体)の分子に由来するかもしくはこれを表し、かつ感染性病原体による感染作用を除去または低下する免疫応答を生じるために使用することができる。抗原は、癌細胞の成分に由来するかもしくはこれを表し、かつ癌細胞除去を補助するため免疫応答を生じるために使用することができる。抗原は、直接または間接的に自己免疫応答に関連した分子に由来するかもしくはこれを表し、かつ自己免疫疾患の望ましくない作用を低下するよう免疫応答を変調するために使用することができる。
【0047】
油体の調製および特性
油体は、リン脂質単層により被包されたトリアシルグリセリドマトリックスおよび油体タンパク質からなる。油体、または油体様細胞小器官は、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、酵母細胞(Leber, R.ら、Yeast、10:1421−1428(1994))、細菌細胞(Pieper−Furstら、J. Bacteriol.、176:4328−4337(1994))および藻類細胞(Rossler, P.G.、J. Physiol.(ロンドン)、24:394−400(1988))に存在する。本発明は、下記の工程を含む、アジュバントとして使用するための油体の調製法を提供する:1)細胞から油体を得る工程;2)油体を洗浄する工程;および、3)洗浄した油体をアジュバントとして使用するために乳剤に製剤化する工程。洗浄した油体調製物の粘度は、様々な異なる投与経路に適するように含水量を変動することにより調節することができる。含水量が比較的高い油体調製物は、各々、非経口または粘膜投与に適した、注射剤またはエアゾール剤形成に使用することができる。含水量が比較的低い油体調製物は、クリームまたは軟膏の粘度を有し、かつ局所投与に適している。洗浄した油体調製物は、油体または油体様細胞小器官を含むあらゆる細胞から得ることができる。
【0048】
本発明の好ましい態様において、油体は、油体または油体様細胞小器官が存在する花粉、胞子、種子および植物栄養器官からの細胞を含む植物細胞から得られる(Huang、Ann. Rev. Plant Physiol.、43:177−200(1992))。油体は、油体の構造的完全性を実質的に損なうことなく細胞構成要素を放出する任意の方法を用い、植物細胞膜および細胞壁を破裂させることにより、植物細胞から得ることができる。より好ましくは、本発明の洗浄された油体調製物は、植物種子から調製される。従って、本発明は更に下記の工程を含む、乳剤製剤を調製する方法を提供する:
(1)下記工程を含む方法により、植物種子から油体を得る工程:
(a)植物種子を粉砕し、実質的に無傷の油体を含む粉砕した種子を得る工程;
(b)粉砕した種子から固形物を取除く工程;および
(c)水相から油体相を分離する工程;
(2)油体相を洗浄し、洗浄した油体調製物を得る工程;ならびに
(3)洗浄した油体調製物をワクチン製剤においてアジュバントとして使用するために乳剤に製剤化する工程。
【0049】
本発明の好ましい態様においては、種子粉砕の前またはその途中で、液相が種子に添加される。
【0050】
本発明の状況において、植物油体は、常法により、植物供給源または植物組織から回収および精製することができる。本発明の好ましい態様において、油体は、油体または油体様細胞小器官が存在する花粉、胞子、種子および植物栄養器官からの細胞を含む植物細胞から得られる(Huang、Ann. Rev. Plant Physiol.、43:177−200(1992))。
【0051】
本明細書で使用するのに好ましい油体は、ブラジルナッツ(Bertholletia excelsa);トウゴマ(Ricinus communis);ココナッツ(Cocus nucifera);コリアンダー(Coriandrum sativum);綿実(Gossypium spp.);ラッカセイ(Arachis hypogaea);ホホバ(Simmondsia chinensis);亜麻仁/亜麻(Linum usitatissimum);トウモロコシ(Zea mays);カラシナ(Brassica spp.およびSinapis alba);油ヤシ(Elaeis guineeis);オリーブ(Olea europaea);ナタネ(Brassica spp.);ベニバナ(Carthamus tinctorius);ダイズ(Glycine max);スカッシュ(Cucurbita maxima);ヒマワリ(Helianthus annuus);およびそれらの混合物からなる植物種の群から選択された植物種子から得られる。
【0052】
本明細書で使用するのに最も好ましいのは、油料種子ナタネまたはキャノーラおよび関連種(アブラナ、カブおよび他のアブラナならびに関連種)、亜麻(Linum usitatisimum)、ダイズ(Glycine max)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)などの油料種子から調製した油体である。
【0053】
植物は、当業者には周知の農業栽培の実践を用いて、生育され、かつ種子を生じる。種子の収穫、および必要に応じて、例えば篩い分けまたはすすぎにより、小石または種子外被(外被除去)のような物質を取除き、および選択的に種子を乾燥した後、引き続き種子を機械的圧迫、粉砕または圧搾により処理する。好ましい態様において、液相が、種子の粉砕の前またはその途中で添加される。これは湿式製粉として公知である。好ましくはこの液体は水であるが、エタノールのような有機溶媒も使用することができる。油抽出法における湿式製粉は、以下を含む様々な植物種の種子について報告されている:カラシナ(Aguilarら、Journal of Texture studies、22:59−84(1990))、ダイズ(米国特許第3,971,856号;Carterら、J. Am. Oil Chem. Soc.、51:137−141(1974))、ピーナッツ(米国特許第4,025,658号;米国特許第4,362,759号)、綿実(Lawhonら、J. Am. Oil, Chem. Soc.、63:533−534(1977))およびココナッツ(Kumarら、INFORM、6(11):1217−1240(1995))。粉砕前に、約15分から約2日間の期間、液相中で種子を吸収膨潤することも有利であることができる。吸収膨潤は、細胞壁を柔らかくし、かつ粉砕工程を容易にする。より長い時間の吸収膨潤は、発芽工程を模倣することができ、種子構成要素の組成のある種の有利な変更を生じる。添加される液相は、水であることが好ましい。
【0054】
種子は、MZ13O(Fryma社)のようなコロイドミルを用い粉砕されることが好ましい。コロイドミルに加え、以下を含む、種子の産業規模の量の加工処理が可能である他の製粉および粉砕装置も、本明細書で説明された発明に使用することができる:フレーク化ロール、ディスクミル、コロイドミル、ピンミル、オービタルミル、IKAミルおよび産業規模のホモジナイザー。ミルの選択は、種子の処理能力の要件に加え、使用される種子の供給源に応じて決まる。一般に粉砕工程時に種子油体が実質的に無傷であり続けることが好ましい。従って種子の粉砕は、遊離油の形で総種子含油量の好ましくは約50%(v/v)未満の、より好ましくは約20%(v/v)未満の、および最も好ましくは約10%(w/w)未満の放出を生じる。油体を破壊する傾向がある油体加工において通常使用される操作条件は、本発明の方法における使用には適していない。製粉温度は、好ましくは10℃〜90℃であり、より好ましくは26℃〜30℃であり、一方でpHは好ましくは2.0〜10に維持される。
【0055】
種子外被、繊維物質、溶解しない糖質およびタンパク質のような固形夾雑物、ならびに他の不溶性夾雑物は、圧搾した種子画分から取除かれる。固形夾雑物の分離は、HASCO 200 2相デカンテーション遠心機(HASCO 200 2−phase decantation centrifuge)またはNX31OB(Alpha Laval社)などの、デカンテーション遠心機を使用し実現することができる。種子処理能力要件に応じて、デカンテーション遠心機の能力を、3相デカンターのような、他のデカンテーション遠心機モデルを用い変更することができる。操作条件は、使用される具体的遠心機に応じて変動し、かつ不溶性の夾雑物質が、沈積しデカンテーション時にも沈積し続けるように調節されなければならない。油体相および液相の部分的分離は、これらの条件下で認めることができる。
【0056】
不溶性夾雑物を除去した後、油体相が水相から分離される。本発明の好ましい態様において、管状ボウル遠心機(tubular bowl centrifuge)が使用される。別の態様において、液体サイクロン、ディスクスタック(disc stack)遠心機、または自然重力もしくはいずれか他の重力ベースの分離法下での相沈降を使用することができる。膜限外濾過およびクロスフロー微量濾過のような、サイズ排除法を用い、油体画分を水相から分離することも可能である。好ましい態様において、管状ボウル遠心機は、シャープレス モデルAS−16(Sharples model AS−16)(Alpha Laval社)またはAS−46 シャープレス(AS−46 Sharples)(Alpha Laval社)である。重要なパラメータは、遠心機を操作するために使用したリングダム(ring dam)のサイズである。リングダムは、AS−16の場合、28〜36mmを変動する中心の円形開口部を伴う取り外し可能なリングであり、油体相からの水相の分離を調節し、その結果得られる油体画分の純度を規定する。好ましい態様において、AS−16を使用する場合、リングダムサイズ29mmまたは30mmが使用される。使用される正確なリングダムサイズは、使用される油料種子の型に加え、油体調製物の望ましい最終粘度に依存する。分離効率は、更に流量に影響される。AS−16が使用される場合、流量は典型的には750〜1000ml/分(リングダムサイズ29)または400〜600ml/分(リングダムサイズ30)であり、かつ温度は、好ましくは26℃〜30℃に維持される。使用されるモデル遠心機に応じて、流量およびリングダムサイズは、油体画分の水相からの最適な分離が達成されるように調節されなければならない。これらの調節は、当業者には容易に明らかであると思われる。
【0057】
油体画分からの固形物の分離および水相の分離は、3相管状ボウル遠心機のような重力ベースの分離法またはデカンターまたは液体サイクロンまたはサイズ排除ベースの分離法を用い同時に行うこともできる。
【0058】
前述の方法のこの段階で得られた組成物は、一般に比較的粗であり、多くの内因性種子タンパク質を含有しており、これはグリコシル化されたおよびグリコシル化されていないタンパク質およびデンプンもしくはグルコシニレート(glucosinilate)のような他の夾雑物またはそれらの分解産物を含有している。本発明に従い、かなりの量の種子夾雑物が除去されることが、概して好ましい。夾雑している種子物質の除去を達成するために、水相からの分離時に得られた油体調製物は、油体画分を再懸濁し、かつ再懸濁した画分を遠心することにより、少なくとも1回洗浄される。この方法は、この用途の目的のために、洗浄した油体調製物と称されるものを生じる。洗浄の回数は一般に油体画分の望ましい純度次第であると考えられる。使用される洗浄条件に応じて、本質的に純粋な油体調製物を得ることができる。このような調製物において、存在する唯一のタンパク質は油体タンパク質である。油体画分を洗浄するために、管状ボウル遠心機もしくは液体サイクロンまたはディスクスタック遠心機のようなその他の遠心機を使用することができる。油体の洗浄は、水、緩衝系、例えば濃度0.01M〜少なくとも2Mの間の塩化ナトリウム、高pH(11−12)の0.1M炭酸ナトリウム、低塩緩衝液、例えば50mMトリス−HCl(pH7.5)、有機溶媒、界面活性剤、またはいずれか他の液相を用いて行うことができる。好ましい態様において、洗浄は高pH(11−12)で行うことができる。洗浄に使用される液相に加えpHおよび温度のような洗浄条件は、使用される種子の種類に応じて変動することができる。pH2とpH11−12の間の多くの異なるpHでの洗浄は、夾雑物、特にタンパク質の段階的除去を可能にするので有益である。好ましくは洗浄条件は、洗浄された油体調製物が、全ての内因的に存在する非油体種子タンパク質の約75%(w/w)未満、より好ましくは内因的に存在する非油体種子タンパク質の約50%(w/w)未満、および最も好ましくは内因的に存在する非油体種子タンパク質の約10%(w/w)未満を含むように選択される。洗浄条件は、洗浄工程が、油体の構造的完全性を損なうことなく、著しい量の夾雑物の除去を生じるように選択される。二工程以上の洗浄工程が実行される態様において、洗浄条件は、異なる洗浄工程で変動することができる。SDSゲル電気泳動または他の分析技術は、油体洗浄時の内因性種子タンパク質および他の夾雑物の除去をモニタリングするために都合良く使用することができる。洗浄工程間で水相を全て除去する必要はなく、かつ最終的な洗浄された油体調製物は、水、例えば50mMトリス−HCl(pH7.5)のような緩衝系、または任意の他の液相中に懸濁することができ、必要に応じてpHは、pH2〜pH10の間の任意のpHに調節することができる。
【0059】
油体調製物を製造する方法は、バッチ操作または連続フロー法において行うことができる。特に管状ボウル遠心機を使用する場合、処理システムを通じて工程(a)と工程(b)、工程(b)と工程(c)、および工程(c)と工程(d)の間で連続フローを操作するポンプシステムが形成される。好ましい態様において、ポンプは、1インチ(2.54cm)M2 ウィルデン空気圧式二重隔膜ポンプ(M2 Wilden air operated double diaphragm pump)である。別の態様において、水圧式ポンプまたは蠕動ポンプのようなポンプを使用することができる。デカンテーション遠心機および管状ボウル遠心機に均質な粘度の供給を維持するために、IKAホモジナイザー(IKA homogenizer)のようなホモジナイザーを、分離工程の間に追加することができる。直列に並べたホモジナイザーも、様々な遠心機または油体調製物を洗浄するために使用されるサイズ排除を基にした分離装置の間に追加することができる。リングダムサイズ、緩衝液組成、温度およびpHは、各洗浄工程において、最初の洗浄工程において使用されたリングダムサイズと異なることができる。
【0060】
油体が例えばオリーブの中果皮のような比較的柔らかい組織から単離される本発明の態様において、細胞のこじ開け(break open)に適用される技術は、より硬い種子の破壊に使用されるものとは若干異なることができる。例えば圧力ベースの技術は、圧搾技術よりも好ましいことがある。小規模で油体を単離する方法論は、オリーブ(Olea europaea)およびアボガド(Persea americana)において中果皮組織から(Rossら、Plant Science、93:203−210(1993))、ならびにナタネ(アブラナ)のミクロスフェア由来の胚から(Holbrookら、Plant Physiol.、97:1051−1058(1991))の油体の単離について報告されている。
【0061】
油画分の化学的および物理的特性は、少なくとも二つの方法で変動することができる。最初に、様々な植物種は、様々な油組成物を伴う油体を含む。例えば、ココナッツは、ラウリル油(C12)が豊富であるのに対し、エルカ酸油(C22)は一部のアブラナ種に豊富に存在する。第二に、油の相対量は、当業者に公知の繁殖および遺伝子操作技術を適用することにより、特定の植物種において変更することができる。これらの技術は両方とも、油の合成に関連した代謝経路を制御する酵素の相対活性の変更を目的としている。これらの技術の適用を通じて、様々な油分の精巧なセットを伴う種子が入手可能である。例えば繁殖の努力は、低いエルカ酸含量のナタネ(キャノーラ)の開発をもたらし(Bestor, T. H.、Dev. Genet.、15:458(1994))、ならびに二重結合の位置および数の変更、脂肪酸鎖長さの変動および所望の官能基の導入を伴う油分を持つ植物系が遺伝子操作を通じて作出されている(Topferら、Science、268:681−685(1995))。同様の方法を用い、当業者は、現在入手できる油体供給源を更に拡張することができると考えられる。変種油組成物は、油体の異なる物理および化学特性を生じると考えられる。従って様々な種または植物系から油体供給源として油料種子またはそれらの混合物を選択することにより、もしくは様々な種または植物系から得られた油体を混合することにより、様々な風合い(texture)、皮膚に有益である様々な特性、および様々な粘度を伴う乳剤の広範なレパートリーを獲得することができる。油体は、典型的には多くの種子の種類に広く行きわたっており、かつ油料種子ナタネまたはキャノーラおよび関連種(アブラナ、カブおよび他のアブラナ種ならびに関連種)、亜麻(Linum usitatisimum)、ダイズ(Glycine max)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)またはシロイヌナズナのような油料種子から都合良く単離することができる。
【0062】
油体への抗原カップリング
本発明の一つの態様において、ワクチンは、抗原が油体表面に付着されている油体−抗原複合体で構成される。抗原の油体表面への付着または連結は、1種または複数の共有的または非共有的相互作用を含み、リンカーを含むことができる。リンカーは、油体または抗原に天然に会合され、かつ油体と抗原の間の相互作用を媒介する分子である。リンカーは、化学的、酵素的または遺伝的手段により導入することができ、いくつかのリンカー分子は、油体および抗原の連結を含むことができる。油体と抗原の間の会合は、電荷または疎水性相互作用を基にした、特異的な結合の相互作用を含むことができ、かつ油体、抗原および/またはリンカー分子の固有の特性に起因することができる。本発明の別の態様において、油体、抗原および/またはリンカー分子は、抗原を油体に付着するために、化学的または酵素的手段により修飾する。
【0063】
本発明のひとつの態様において、抗原を油体へ連結する方法は、以下を含む:
1.天然の油体の油料種子植物からの単離および精製;
2.油体に結合することが可能であるリンカーを伴う抗原の調製;および
3.抗原の油体への連結。
【0064】
ある特定の態様において、抗原は、油体タンパク質へ強力に結合するペプチドまたはポリペプチドとの融合体として調製される。ある態様において、このポリペプチドは、オレオシンに対して調製された抗体に由来している。
【0065】
本発明の別の態様において、抗原を油体へ連結する方法は、以下を含む:
1.天然の油体の油料種子植物からの単離および精製;
2.抗原を付着する手段を提供するための、油体の修飾;
3.油体に付着する手段を提供するためのリンカーを伴う抗原の調製;
4.油体への付着を可能にするためのリンカーの修飾;
5.抗原および油体のカップリング。
【0066】
ある特定の態様において、油体は、ビオチン基を表面に導入するように化学的に修飾され、抗原は、ビオチン基を導入するために酵素的に修飾されたペプチド領域を持つ融合タンパク質として産生され、かつ抗原の油体へのカップリングは、多価ビオチン結合タンパク質であるストレプトアビジンの添加により達成される。図3は、この態様の例証を提供している。
【0067】
更に本発明の別の態様において、1種または複数の油体タンパク質が、特異的抗原決定基への結合またはカップリングが可能であるタンパク質配列を含む組換えタンパク質であるような単離された油体を含有するワクチン組成物の生成についての方法および組成物が提供される。この方法は以下を含む:
1.オレオシン遺伝子および抗原決定基に結合またはカップリングすることが可能であるポリペプチド配列を含む組換えキメラオレオシン遺伝子を含む植物の形質転換に作用するのに必要なDNA配列で構成された植物形質転換ベクターの構築;
2.該キメラオレオシン遺伝子を発現している組換え植物の形質転換および回収;
3.該組換え植物の生育および組換え油体を含む種子の回収;
4.キメラオレオシンを含む組換え油体の単離および精製;
5.抗原決定基の該油体へのカップリング。
【0068】
前述の特定の態様において、抗原決定基に結合することが可能なタンパク質配列は、抗原決定基のクラスに結合することが可能な配列であることができ;例えば、抗体の保存領域に結合することが可能な配列、または微生物病原体の表面糖質(レクチン)に結合することが可能なタンパク質であることができる。抗原決定基に結合することが可能なタンパク質配列はまた、アビジンまたはストレプトアビジンタンパク質配列の発現によるビオチンの結合のような、特異的化学部分に結合することが可能なタンパク質配列であることもできる。このタンパク質は、ビオチン分子を含むように修飾された抗原決定基に結合するために使用することができる。または、この配列は、修飾された抗原またはカップリングタンパク質にカップリングするための酵素的手段により容易に修飾することができる。例えば、ビオチン化された共通配列は、酵素的にビオチン化され、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン−抗原複合体にカップリングすることができる。別の例は、酵素的にグリコシル化されかつレクチンにカップリングされるタンパク質由来のグリコシル化部位を含むと考えられる。特異的抗原に結合することが可能な他のタンパク質配列も、例えば特異抗原への選択的結合が可能な抗体由来の抗原結合領域の発現のために使用することができる。この抗原決定基にカップリングすることが可能なタンパク質配列も、別の化学部分を含む抗原に共有結合している特異的化学部分を生成することができるものを含むことができる。
【0069】
本発明の方法は、組換えDNA法を用いる油体抗原複合体の作製を企図している。これらの方法は、化学的または他の手段を通じて天然の油体へカップリングすることが可能な抗原の組換え生成、該抗原が1種または複数の油体タンパク質に対する融合タンパク質として生成されるような組換え抗原を含む油体の生成、または1種または複数の抗原へ結合することが可能な組換えタンパク質を含む油体の生成を含む。方法の組合せを、油体にカップリングされた抗原を含有するワクチン組成物を製造するために使用することができることは容易に明らかである。
【0070】
本明細書において「形質転換」としても称される組換え発現ベクターを植物細胞へ導入する方法論は、当技術分野において周知であり、かつ選択される植物細胞型に応じて変動する。組換え発現ベクターを植物細胞へ移入する一般的技術は、電気穿孔;例えばCaClを介する核酸取込みのような化学的に媒介された技術;微粒子銃(遺伝子銃);例えばウイルスに由来した核酸配列もしくはアグロバクテリウムまたは根粒菌由来の核酸配列のような、天然に感染性の核酸配列の使用;PEGを介する核酸取込み、微量注入、およびシリコン炭化物ウイスカの使用(Kaepplerら、Plant Cell Rep.、9:415−418(1990))を含み、これらは全て本発明に従い使用することができる。
【0071】
組換え発現ベクターの細胞への導入は、染色体DNAまたは色素体ゲノムを含む宿主細胞ゲノムへの全体の組込みまたは一部の取込みを生じることがある。またはこの組換え発現ベクターは、ゲノムへ組込まれることななく、および宿主細胞のゲノムDNAとは独立して複製することができる。核酸配列のゲノムへ組込みは、細胞の生成および細胞、植物または動物系統の引き続きの作出による、導入された核酸配列の安定した遺伝を可能にするので、一般に好ましい。
【0072】
本発明の好ましい態様は、植物細胞の使用を含む。本発明に従い使用されることが好ましい植物細胞は、ブラジルナッツ(Bertholletia excelsa);トウゴマ(Riccinus communis);ココナッツ(Cocus nucifera);コリアンダー(Coriandrum sativum);綿実(Gossypium spp.);ラッカセイ(Arachis hypogaea);ホホバ(Simmondsia chinensis);亜麻仁/亜麻(Linum usitatissimum);トウモロコシ(Zea mays);カラシナ(Brassica spp.およびSinapis alba);油ヤシ(Elaeis guineeis);オリーブ(Olea europaea);ナタネ(Brassica spp.);ベニバナ(Carthamus tinctorius);ダイズ(Glycine max);スカッシュ(Cucurbita maxima);オオムギ(Hordeum vulgare);コムギ(Traeticum aestivum);ヒマワリ(Helianthus annuus)から入手可能な細胞を含む。
【0073】
双子葉植物種の形質転換法は、周知である。一般にアグロバクテリウムを介する形質転換は、その高い効率に加え、全てではなくとも多くの双子葉植物種の全般的感受性のために好ましい。アグロバクテリウムの形質転換は一般に、例えば組換えバイナリーベクターを有する大腸菌株および標的アグロバクテリウム株へのバイナリーベクターの移動を可能にするヘルパープラスミドを保有する大腸菌株との三親(tri−parental)交配による、もしくはアグロバクテリウム株のDNA形質転換による、関心のあるDNAを含むバイナリーベクター(例えばpBIN19)の適当なアグロバクテリウム株(例えばCIB542)への導入を含む(Hofgenら、Nucl. Acids. Res.、16:9877(1988))。双子葉植物種の形質転換に使用することができる他の形質転換方法論は、微粒子銃(Sanford、Trends in Biotech.、6:299−302(1988));電気穿孔法(Frommら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82:5824−5828(1985));PEGを介するDNA取込み(Potrykusら、Mol. Gen. Genetics、199:169−177(1985));微量注入法(Reichら、Bio/Techn.、4:1001−1004(1986))およびシリコン炭化物ウイスカ(Kaepplerら、Plant Cell Rep.、9:415−418(1990))を含む。正確な形質転換方法論は、典型的には使用される植物種に応じて若干変動する。
【0074】
特に好ましい態様において、油体は、ベニバナから得られ、かつ組換えタンパク質がベニバナにおいて発現される。ベニバナの形質転換は、ベイカー(Baker)およびダイヤー(Dyer)の論文(Plant Cell Rep.、16:106−110(1996))に記されている。
【0075】
単子葉植物種も現時点では、微粒子銃(Christouら、Biotechn.、9:957−962(1991);Weeksら、Plant Physiol.、102:1077−1084(1993);Gordon−Kammら、Plant Cell、2:603−618(1990))、PEGを介するDNA取込み(欧州特許第0 292 435号;第0 392 225号、またはアグロバクテリウム媒介形質転換(Goto−Fumiyukiら、Nature−Biotech.、17:282−286(1999))を含む様々な方法論を用い、形質転換することができる。
【0076】
色素体形質転換は、米国特許第5,451,513号;第5,545,817号および第5,545,818号;ならびに、PCT特許出願国際第95/16783号;第98/11235号および第00/39313号に記載されている。基本的クロロプラスト形質転換は、例えば遺伝子銃またはプロトプラスト形質転換を用いる、関心のある核酸配列と共に選択マーカーに隣接しているクローニングされた色素体DNAの適当な標的組織への導入を含む。使用することができる選択マーカーは、例えば細菌のaadA遺伝子を含む(Svabら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:913−917(1993))。使用することができる色素体プロモーターは、例えばタバコclpP遺伝子プロモーターを含む(PCT特許出願第97/06250号)。
【0077】
植物は、当業者に一般に公知の植物組織培養技術を用い成熟植物体へと再生することができる。種子は、形質転換された成熟植物体から収穫されかつその植物系統の繁殖に使用することができる。植物は、交配することもでき、この方法において遺伝的背景が異なる系統を繁殖するために本発明に従うことが可能である。更に酸化還元融合ポリペプチドを含む植物系統を、油体標的化タンパク質を含む植物系統と交配することも可能である。
【0078】
本発明の別の態様において、1種または複数の油体タンパク質がオレオシンおよび抗原決定基を含む組換えタンパク質であるような単離された油体を含むワクチン組成物の製造のための方法および組成物が提供される。この方法は以下を含む:
1.オレオシン遺伝子および抗原決定基をコードしている遺伝子を含む組換えキメラオレオシン遺伝子を含む、植物の形質転換に作用するのに必要なDNA配列で構成された、植物の形質転換ベクターの構築;
2.該キメラオレオシン遺伝子を発現している組換え植物の形質転換および回収;
3.該組換え植物の生育および組換え油体を含む種子の回収;
4.キメラオレオシンを含む組換え油体の単離および精製。
【0079】
この特定の態様において、抗原は、組換え油体の一部として生成される。組換えタンパク質は、オレオシンまたは油体表面を標的化することに関連した同様の特性を有する他の油体タンパク質との融合を含む場合がある。該組換え油体は、更に修飾することなく免疫処置に使用することができ、もしくはより大きい免疫応答を提供するように修飾することができる。
【0080】
本発明の好ましい態様において、抗原性部分と組合せられた組換えオレオシンタンパク質を含む組換え油体で構成されたワクチンの生成のための方法および組成物が提供される。図2は、この態様の例証を提供する。
【0081】
ワクチンの製剤化
本発明は、免疫処置に有用な油体−抗原複合体を誘導する様々な手段を企図している。植物油体を用いて製造されたワクチン組成物は、1種または複数の抗原を含むことができる。このワクチン組成物はまた、1種または複数の免疫刺激分子を含むことができる。この免疫刺激分子は、油体を、免疫応答の誘導を増強すると考えられる特定の細胞へ標的化することが可能な分子を含むことができる。一例は、樹状細胞のような抗原処理細胞の特異的受容体へ結合する標的化分子である。ある免疫刺激分子の具体例は、粘膜表面に投与された抗原に対する免疫応答を増強することがわかっているコレラ毒βサブユニットである。
【0082】
油体抗原調製物は、所望の投与経路に適した粘度を達成するために、含水量を調節することができる。従って、相対的に希薄な調製物(高含水量)が、鼻または肺の粘膜への投与のためのエアロゾルの形成に適している。中間の調製物は、非経口または経口投与に適している。濃厚な(低含水量)調製物は、クリームまたは軟膏の粘度を有し、かつ局所塗布に適していると考えられる。同様に、免疫刺激分子の選択は、望ましい免疫応答の誘導を最適化するのに望ましい投与経路について調節することができる。
【0083】
本発明の好ましい局面において、組換え油体は形質転換されたキャノーラ(アブラナ)植物の圧搾された種子から調製される。複数の形質転換現象によるか、もしくは異なる組換えオレオシン遺伝子を発現している植物の有性交配により、複数の異なる抗原を発現する植物を作出することができる。
【0084】
本発明の好ましい態様において、シルパルート(R. Schilperoort)らの米国特許第4,940,838号、米国特許第5,464,763号の「外来DNAの双子葉植物ゲノムへの組込み法(Process for the incorporation of foreign DNA into the genome of dicotyledonous plants)」に説明されているように、アグロバクテリウム媒介型形質転換のための形質転換ベクターは、安全化した(disarmed)バイナリーベクターとして調製される。本発明の範囲は、稔性のある形質転換植物が十分量回収される場合には、形質転換ベクター系による制限はない。組込まれた外来遺伝子についてヘテロ接合性である初代形質転換体は、自家受粉後の選択、もしくは葯由来の二本鎖半数体による、または初代形質転換体の小胞子培養による選択のような確立された手法により、問題の形質についてホモ接合性とすることができる。
【0085】
本発明の範囲は、組換え油体の表面に発現され得る様々な抗原決定基の数により制限されない。複数の組換え遺伝子を、同じ形質転換ベクターに同時にまたは複数の形質転換現象により連続して導入することができる。複数の抗原決定基を有する植物は、異なる抗原を発現している個々の植物の有性交配により作製することもできる。
【0086】
本発明の別の好ましい態様において、油体の表面に存在するオレオシンは、抗原決定基に連結される。好ましい抗原の油体への連結法は、以下の工程を含む:
1.油体タンパク質のビオチン化;
2.精製された組換え抗原のビオチン化;
3.ビオチン化された油体および抗原のストレプトアビジンの存在下でのカップリング。
【0087】
図3は、この態様の例証を提供している。好ましい本発明の局面において、油体は、キャノーラ(アブラナ)の圧搾された種子から調製され、および組換え大腸菌により作出された抗原部分の化学的付着は、ビオチン/ストレプトアビジンのカップリング反応により実行される。
【0088】
本発明の好ましい態様において、抗原は、抗原をコードしている組換えDNAを含む大腸菌株BL21のような細菌により作製される。組換えDNAは、生成された場合に、抗原の都合の良い単離および精製を提供するように構築される(例えば、金属キレートまたはアフィニティークロマトグラフィーを可能にする配列の付加により)。
【0089】
本発明の範囲は、抗原が単離、精製、および油体オレオシンタンパク質へ任意の手段により付着されうる場合には、抗原の供給源または性質により限定されない。抗原は、当業者には容易に理解されるように、様々な大腸菌株、様々な細菌、酵母のような他の微生物、または動物、植物、真菌および細胞培養物を含む任意の他のタンパク質生成プラットフォームにより、もしくは化学合成のような非生物学的手段により作製することができる。
【0090】
油体表面の上の組換えタンパク質としての抗原の発現および油体表面への抗原のカップリングの場合、同様の抗原の提示が達成される。これは図4に例示している。
【0091】
化学的に付着された抗原決定基を含む油体を用いて調製されたワクチンまたは前述のような組換え油体を用いて調製されたワクチンは、以下を含む任意の適当な方法で投与することができる:注射、粘膜表面への提示または皮膚への適用。本発明は、抗原性物質の提示および送達のプラットフォームとして機能する植物油体を含むワクチンの製造に指向している。
【0092】
本発明の範囲は、抗原決定基の油体のオレオシンタンパク質への付着の機構により制限されず、結合を生じる任意の機構を使用することができる。
【0093】
本発明の範囲は、付着過程のパラメータは複数の抗原を標的油体に導入するように操作することができるので、単独の抗原型の添加に制限されない。
【0094】
本発明の範囲は、油体調製物のアジュバント作用は様々な異なる方法で改変されるので、油体および抗原の組合せに限定されない。この油体調製物は、タンパク質または免疫変調分子を標的化するための、オレオシンまたは他の油体タンパク質の遺伝的融合体を包含することによって改変することができる。油体調製物の修飾は、例えばグリコシル化のような、化学的または酵素的修飾を含むか、もしくは親油性免疫刺激分子の付加を含むことができる。免疫刺激特性を伴う様々な比較的小さい疎水性分子(すなわち、サポニン、Quil A)が存在するので、これらを油体調製物へ組込み、および疎水性トリグリセリドコアを区切ることができる。
【0095】
広範な本発明の方法は、油体および抗原を含有するワクチン製剤を製造する手段を提供する。油体は、安全なアジュバント機能を提供し、かつアジュバントの追加の必要性をなくす。
【0096】
II.ワクチン製剤
ワクチンにおいてアジュバントとして使用するための油体製剤は、広範なワクチン製剤において製剤化することができる。従って本発明は、油体および少なくとも1種の抗原を含有するワクチン製剤を提供する。
【0097】
本発明はまた、油体および抗原を含有するワクチン製剤の調製物を含む。従って本発明は、下記を含む、ワクチン製剤の調製法を提供する:
(1)油体を細胞から得る工程;
(2)油体を洗浄し、洗浄した油体調製物を得る工程;および
(3)抗原を洗浄した油体調製物へ添加し、かつワクチンを製剤化する工程。
【0098】
ひとつの態様において、本発明は、以下を含むワクチン製剤を調製する方法を提供する:
(1)下記を含む方法により、油体を植物種子から得る工程:
(a)植物種子を粉砕し、実質的に無傷の油体を含む粉砕した種子を得る工程;
(b)一群の種子から固形物を取除く工程;および
(c)水相から油体相を分離する工程;
(2)油体相を洗浄し、洗浄した油体調製物を得る工程;ならびに
(3)抗原を洗浄された油体調製物へ添加し、かつワクチン製剤を製剤化する工程。
【0099】
多種多様な抗原を、本発明の洗浄した油体と共に製剤化することができる。製剤化した抗原量は、所望の作用および選択された抗原によって決まると考えられる。一般に抗原量(トランスジェニック抗原/オレオシン融合体を基に)は、約0.0001%〜約50%を変動する。しかしより好ましくは、最終組成物中の抗原量は、約0.01%〜約20%を、および最も好ましくは約0.1%〜約10%を変動する。抗原は、任意の望ましい条件下(例えば加熱;加圧下)および任意の所望の形(例えば液体、固体、ゲル、結晶、懸濁液)で、任意の所望の方法(例えば混合、攪拌)で洗浄した油体製剤へ製剤化することができる。活性物質の化学的性質および製剤の方法論に応じて、抗原は、様々な方法で最終製剤に組み込むことができ、例えば抗原は溶液中に懸濁され続けるか、または油体が分散された懸濁液を形成するか、もしくは抗原成分は、油体を取り囲んでいるリン脂質単層または油体のトリアシルグリセリドマトリックスを貫通することができる。
【0100】
好ましい態様において、この抗原は、油体に会合されている。本明細書において使用される「油体との会合」という用語は、油体と抗原の間の共有結合の形成を含む任意の相互作用に加え、油体と抗原の間の例えばイオン結合のような非共有結合の形成を含む相互作用を含む、抗原と油体の間の特異的相互作用を意味する。抗原は、油体と直接、または1種または複数の中間分子を介して間接的に会合することができる。本明細書において使用される「架橋剤」または「架橋物質」は、活性成分を油体と間接的に会合することが可能である任意の単独の分子または複数の内部連結した分子を意味する。活性物質に架橋された油体は、複数の共有および非共有相互作用またはそれらの混合を含むことができる。一般に抗原の油体への架橋への反応は、反応基としてのオレオシンタンパク質または油体リン脂質を含むと考えられる。
【0101】
抗原の油体への会合に関し特に有用な架橋物質は、油体タンパク質と反応することが可能であるような架橋物質である。これらは、ホモ二官能性(すなわち2個の同じ反応基を有する)架橋剤、例えばホモ二官能性イミドエステルおよびホモ二官能性N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステル;ならびに、ヘテロ二官能性架橋剤(すなわち2個の異なる反応基を有する)、例えばアミン反応基を含む架橋剤;スルフヒドリル反応性N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、例えばマレイミドピリジルジスルフィドおよびα−ハロアセチル;または、カルボキシル反応基を含む。架橋剤の非限定的例は、特に、ジメチルアジピミデート、ジスクシニジルグルタレート;スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、ビスマレイミドヘキサン;スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート;N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオン)−プロピオネート;および、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド;グルタールアルデヒド;および、グリオキサールがある。
【0102】
他の有用な架橋剤は、光反応性架橋剤、例えばアリールアジド由来化合物、例えばp−アジドフェニルグリオキサール一水和物;n−ヒドロスルホ−スクシンイミジル4−アジドベンゾエート;および、スルホスクシンイミジル(4−アジドフェニルジチオ)プロピオネートがある。
【0103】
更に抗原の油体への会合のための架橋剤として特に有用な他の成分は、ビオチン−ストレプトアビジンおよびビオチン−アビジン架橋剤(Pierce社から入手)がある。抗原をストレプトアビジンまたはアビジンに連結しおよび油体のビオチン化により、またはその逆の、抗原のビオチン化およびアビジンまたはストレプトアビジンの油体への連結により、抗原は油体へ、2個の内部連結した分子を介して架橋される。好ましい態様において、油体および抗原はビオチン化され、ストレプトアビジンの添加により、互いに会合される。この態様は、概略的に図2に示されている。
【0104】
従って本発明は、油体および抗原を含有するワクチン製剤を調製する方法を提供し、該方法は下記の工程を含む:
(a)細胞において抗原を生成する工程;
(b)該抗原および該油体を会合することが可能な油体標的化タンパク質により、該抗原を油体と会合する工程;
(c)抗原と会合した油体を得る工程;
(d)油体を洗浄し、抗原を含む洗浄した油体調製物を得る工程;および
(e)抗原に会合した洗浄した油体を、ワクチン製剤へ製剤化する工程。
【0105】
本明細書において使用される「油体標的化タンパク質」という用語は、油体に会合することが可能である任意のタンパク質、タンパク質断片またはペプチドを意味する。本発明により、使用される油体標的化タンパク質は、抗原と会合することも可能である。本明細書において使用される「抗原と会合することが可能である」という用語は、油体標的化タンパク質と抗原の間の共有的相互作用(すなわちタンパク質融合)に加え、非共有的相互作用を意味する。本発明において使用される油体標的化タンパク質は、抗原ポリペプチドと油体の会合が可能な油体標的化タンパク質、タンパク質断片またはペプチドであることができる。油体標的化ペプチドをコードしている核酸配列は、合成するかまたは生物学的供給源から得ることができる。
【0106】
更に本発明において使用される更なる油体標的化タンパク質は、1種または複数の内部連結抗体である。これに関して特に有用なものは、オレオシンに親和性を有する抗体である。組合わせた内部連結抗体−アビジン−ビオチンまたは抗体−ストレプトアビジン−ビオチン架橋剤も、本発明において使用することができる。ある態様において、油体標的化タンパク質は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン由来の分子、例えば二重特異性1本鎖抗体である。1本鎖抗体および二重特異性1本鎖抗体の作製は、当技術分野において公知である(米国特許第5,763,733号、米国特許第5,767,260号および米国特許第5,260,203号)。油体標的化タンパク質として機能する1本鎖抗体をコードしている核酸配列は、アルティン−ミーズ(Alting−Mees)ら(2000年、IBCの抗体操作の年次国際会議(IBC’s Annual International Conference on Antibody Engineering)、ポスター1)が説明したように、オレオシンに対して生じたモノクローナル抗体を発現しているハイブリドーマ細胞系から調製することができる。抗原ポリペプチドに対する特異性を得るために、この抗原ポリペプチドに対して生じたモノクローナル抗体から調製した第二の1本鎖抗体をコードする核酸配列を調製しかつ抗オレオシン1本鎖抗体と連結することができる。この態様において、油体は、抗原ポリペプチドおよび油体との油体標的化タンパク質の非共有相互作用を介して抗原ポリペプチドと会合している。または、抗原ポリペプチドは、油体標的化タンパク質との融合タンパク質として調製することができる。例えばオレオシンに対して生じた1本鎖抗体をコードしている核酸配列は、抗原ポリペプチドをコードしている核酸配列に融合することができる。
【0107】
抗原ポリペプチドと会合することが可能な非免疫グロブリンベースの油体標的化タンパク質が発見され、かつ例えばファージディスプレー技術を用いて調製されている(Pharmacia Biotech社カタログ番号27−9401−011、組換えファージ抗体系発現キット)。
【0108】
油体標的化タンパク質は更に、化学的に修飾することもできる。例えばオレオシンは、ビオチン化と称される工程を生じるビオチニル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのような化学物質を使用するリシン残基の化学修飾の変化により修飾することができる。都合の良いことにこれは、油体のインビトロビオチン化により達成される。インビボビオチン化は、大腸菌アセチル−CoAカルボキシラーゼのビオチンカルボキシ担体タンパク質由来のビオチン化ドメインペプチドを用いて実現され得る(Smithら、Nucl. Acids. Res.、26:1414−1420(1998))。アビジンまたはストレプトアビジンは引き続き、抗原の油体との会合を実現するために使用されることができる。
【0109】
好ましい態様において、油体標的化タンパク質は、例えばオレオシンまたはそれに由来する油体を標的化できるのに十分な部分のような油体タンパク質である。オレオシンをコードしている核酸配列は当技術分野において公知である。これらは、例えば、シロイヌナズナオレオシン(Van Rooijenら、Plant Mol. Bio.、18:1177−1179(1991));トウモロコシオレオシン(QuおよびHuang、J. Biol. Chem.、vol.265(4):2238−2243(1990));ナタネオレオシン(LeeおよびHuang、Plant Physiol.、96:1395−1397(1991));および、ニンジンオレオシン(Hatzopoulosら、Plant Cell、2:457−467(1990))を含む。本発明の好ましい態様において、抗原ポリペプチドは、油体タンパク質に融合されている。この方法論は更に、米国特許第5,650,554号に開示されており、これはその全体が本明細書に参照として組入れられている。このような態様において、油体および会合した抗原ポリペプチドは、都合の良いことに一工程で単離される。この抗原ポリペプチドは、油体タンパク質のN末端に加えC末端に融合することができ(van RooijenおよびMoloney、Plant Physiol.、109:1353−1361(1995)に説明されたように)、および例えばオレオシン分子の中心ドメインなどの油体タンパク質の断片、または油体タンパク質の改変された変種を使用することができる。この態様は、概略的に図3に示されている。
【0110】
新規油体タンパク質は、例えば油体(以下により詳細に説明する)を調製し、および例えばSDSゲル電気泳動を用いこれらの調製物中のタンパク質を同定することにより発見することができる。ポリクローナル抗体は、これらのタンパク質に対して生じ、および油体タンパク質をコードしている核酸配列を同定するためのcDNAライブラリーのスクリーニングに使用することができる。この方法論は、当業者にはよく知られている(Huynhら、1985年、「DNAクローニング(DNA Cloning)」、1巻、実際のアプローチ(Practical Approach)、DM Glover編集、IRL Press社、49−78頁)。新規油体タンパク質は更に、油体タンパク質をコードしている核酸配列の存在についてcDNAおよびゲノムのライブラリーを探索するために、既知の油体タンパク質をコードしている核酸配列(例えば、シロイヌナズナ、ナタネ、ニンジンおよびトウモロコシの核酸配列)を用い発見することができる。
【0111】
従って、特異的態様において、本発明は、下記の工程を含む、ワクチン製剤を調製する方法を提供する:
a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
1)機能的に連結された該細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
2)(ii)3)に機能的に連結された抗原をコードしている第二の核酸配列に(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列、を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
b)該抗原の油体を含む後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖する工程;
c)該抗原を含む該油体を単離する工程;
d)該油体を洗浄し、抗原を含む洗浄した油体調製物を得る工程;および
e)抗原を含有する該油体をワクチン製剤へ製剤化する工程。
【0112】
当業者は、本発明のワクチンにおいて使用される抗原が、それに対する免疫応答を生じることを望まれる任意の抗原であることができることを理解すると思われる。本発明の範囲は、使用される抗原の種類または抗原が生成される手段に限定されない。抗原は、ペプチド、タンパク質、糖質または合成により生成された化学物質からなることができる。この抗原は、それに対する免疫応答が望まれる天然の分子と類似または同じであるか、もしくは天然の分子に対する反応を誘導するのに十分に天然の分子に単に似ることができる。抗原の生成および使用の広範な可能性のために、油体による免疫処置に含まれる可能性のある抗原の包括的一覧を提供することは不可能であり、従って考えられる抗原の型を反映し得るわずかな例が提供される。
【0113】
これらの抗原は、感染性病原体(細菌、ウイルス、寄生体)から得た分子に由来するかもしくはこれを表すことができ、かつ感染性病原体による感染作用を誘起または低下する免疫応答を形成するために使用することができる。この抗原は、癌細胞の成分に由来するかもしくはこれを表すことができ、かつ癌細胞を排除することを補助する免疫応答を形成するために使用することができる。この抗原は、自己免疫反応に直接または間接に関わっている分子に由来するかもしくはこれを提示することができ、かつ自己免疫疾患の望ましくない作用を低下するため免疫応答を変調するために使用することができる。
【0114】
ペプチドおよびタンパク質の抗原は、病原性生物由来の様々な種類のタンパク質に由来するかもしくはこれを表すことができ、かつ病原体または病原体が宿主に対して持つ作用を低下または除去する免疫応答を誘導するために使用することができる。様々な種類のタンパク質を、いかにこれらが生成されるかを基に、またはこのタンパク質が病原体と宿主との相互作用において果たす役割を基に分類することができる。
【0115】
ある種類のタンパク質は、細菌性または寄生性病原体により分泌され、かつその機能または役割を基に下位分類することができる。分泌されたタンパク質は、細菌性または寄生性病原体により分泌された毒素を含む。分泌された細菌性毒素の例は、中でも、ジフテリア毒、百日咳毒、真皮壊死毒、破傷風毒、大腸菌易熱性毒、コレラ毒、志賀毒、ブドウ球菌毒、および毒素ショック症候群毒を含む。抗原として使用することができる分泌されたタンパク質の別の例は、プロテアーゼ、例えばエラスターゼ、メタロプロテアーゼ、IgAプロテアーゼ(インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae)、ナイセリア(Neisseria)種または肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)由来)またはヒアルロニダーゼ(連鎖球菌(Streptococcus)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus)由来)を含む。有用な抗原として使用することができる分泌されたタンパク質の別の例は、パスツエラ・ハエモリチカ、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)またはアクチノバシラス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetenomitans)に由来する、ストレプトリシンOまたはS、ニューモリシンまたはロイコトキシンを含む溶血毒または白血球毒がある。分泌されたタンパク質の更なる例は、ストレプトキナーゼおよびスタフィロキナーゼを含む、キナーゼのような酵素である。分泌されたタンパク質の別の例は、細菌III型分泌系により真核宿主細胞へ分泌され得るものであり、かつエルシニア(Yersinia)(インベーシン)、リステリア(Listeria)(インターナリン)およびサルモネラ(Salmonella)(サブバーシン(subversin))を含む多くのグラム陰性菌種由来のエフェクタータンパク質を含む。
【0116】
第二の種類のタンパク質は、病原性生物の表面分子である。分泌されたタンパク質のように、表面タンパク質は、タンパク質が病原体に提供する機能を基に下位分類される。グラム陰性菌において、外膜を超える小分子の運動に関連したポーリンタンパク質は、とりわけナイセリア種、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)および大腸菌による感染症に対する可能性のあるワクチン抗原として評価される。表面タンパク質の第二の型は、表面受容体または宿主細胞外マトリックスタンパク質への輸送機能もしくは結合に関連した結合タンパク質である。これらは、ナイセリア種、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、パスツレラ・ハエモリチカ、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、および他の多くの種に由来したトランスフェリンおよびラクトフェリン受容体タンパク質、ヘムまたはヘモグロビンタンパク質およびシデロフォア受容体および連鎖球菌由来のフィブリノーゲン結合タンパク質を含む。第三の表面タンパク質型は、アドヘシンであり、これは宿主細胞への直接または細胞外宿主タンパク質を介した接着を含む。これらは、ナイセリア、ヘモフィルス(Haemophilus)、シュードモナス、大腸菌、連鎖球菌ならびに他の多くのグラム陰性菌およびグラム陽性菌の線毛またはフィムブリアの成分を含む。これらはまた、大腸菌由来のインチミン、連鎖球菌種由来のMタンパク質、非定型インフルエンザ桿菌由来の高分子量アドヘシンおよびモラクセラ・カタラーリス由来のUspタンパク質のような表面アドヘシンを含む。別の種類の表面抗原は、シュードモナスおよびバークホルデリア(Barkholderia)種における鞭毛タンパク質のような運動性、ならびに腸内細菌および多くの他の細菌種の膜に関連している。更に可能性のあるワクチン抗原として評価される機能が不明である多くの表面タンパク質も存在する。
【0117】
別の種類の表面タンパク質は、ウイルス粒子表面に見出されタンパク質である。これは、ポリオカプシドタンパク質のようなカプシドタンパク質、群特異性抗原、およびB型肝炎表面抗原のようなエンベロープタンパク質、糖タンパク質およびヘマグルチニンを含む。
【0118】
糖質は、病原性生物および宿主細胞の重要な表面分子であり、かつ感染症および癌の重要な抗原である。糖質に対する抗体反応は、他の分子と混合または複合された糖質による免疫処置により達成することができ、または糖質抗原を模倣するタンパク質により免疫処置することができる。
【0119】
多くの病原性生物は、糖質ポリマーからなる表面莢膜を有する。ナイセリア・メニンギティディス、肺炎双球菌、連鎖球菌群AおよびBならびにインフルエンザ桿菌由来の細菌莢膜は、ワクチンの作製および開発に使用される莢膜の例である。精製された莢膜糖質を、莢膜ワクチンの第一の作製に使用し、かつこれらのワクチンの改良型を入手するか(インフルエンザ桿菌)もしくは試験する(ナイセリア・メニンギティディス、肺炎双球菌)。莢膜ワクチンは、ヒストプラスマ症およびクリプトコッカス症のような真菌疾患についても考慮されている。リポ多糖およびリポオリゴ糖は、全てのグラム陰性菌種に顕著な表面成分であり、かつこれは免疫応答がこれらの分子の固有の毒性についてでない場合に非常に有用な標的である。糖脂質は、放線菌(すなわち結核菌(Mycobacterium tuberculosis))およびマイコプラスマの表面の顕著な成分であり、かつ可能性のあるワクチン抗原である。血液型抗原、例えばルイス式血液型抗原(乳癌転移について)は、癌療法におけるワクチン考察にとって重要である。
【0120】
タンパク質またはペプチド抗原は、抗原をコードしている核酸としてワクチン製剤において投与することもできる。このような核酸は、遊離または裸のRNAもしくはDNAを含み、またはベクター内であることができる。好ましい態様において、核酸配列は、ベクターまたはプラスミドに含まれる。ある態様において、ベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルスまたはαウイルスのようなウイルスであることができる。ウイルスベクターは好ましくは、レシピエント動物細胞に組込まれることが不可能である。該ベクター由来の発現のためのエレメントは、レシピエント動物細胞における発現に適したプロモーターを含むことができる。
【0121】
下記の任意の成分およびそれらの混合物は、ワクチン製剤を調製するために、油体および抗原と追加的に製剤化することができる成分の非限定的例を表している。
【0122】
担体/助剤
本発明のワクチンは、適当な担体、希釈剤、または無菌水、生理食塩水、ブドウ糖などの賦形剤と混合し、適当なワクチン製剤を形成することができる。これらのワクチンは、更に凍結乾燥することもできる。これらのワクチンは、望ましい投与経路および調製に応じて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化剤または増粘剤、保存剤、矯味矯臭剤、着色剤などのような補助物質を含有することもできる。これに関して、米国特許第5,843,456号を参照することができる。下記の教科書も参照することができる:「ワクチンデザイン:サブユニットおよびアジュバント法(Vaccine Design: the Subunit and Adjuvant Approach)」、マイケル F. ポーウェル(Michael F. Powell)およびマーク J. ニューマン(Mark J. Newman)編集、Plenum Press社、ニューヨーク、1995年。
【0123】
アジュバント
油体それ自身は本発明のワクチンにおいてアジュバントとして作用するが、このワクチンは追加的に他のアジュバントを含むこともできる。広範な非本質的なアジュバントは、抗原に対する強力な免疫応答を惹起することができる。これらは、膜タンパク質抗原に複合体形成されたサポニン(免疫刺激複合体)、鉱油を伴うプルロニックポリマー、死滅菌および鉱油、フロイント完全アジュバント、細菌生成物、例えばムラミルジペプチド(MDP)およびリポ多糖(LPS)、更にはリピドA、およびリポソームを含む。
【0124】
1989年8月8日にロックホッフ(Lockhoff)らに付与された米国特許第4,855,283号は、免疫変調剤またはアジュバントとして、各々糖残基においてアミノ酸と置換されている、N−グリコシルアミド、N−グリコシル尿素およびN−グリコシルカルバメートを含む糖脂質類似体を開示しており、これは本明細書に参照として組入れられている。従ってロックホッフ(Lockhoff)ら(Chem. Int. Ed. Engl.、30:1611−1620(1991))は、単純ヘルペスウイルスワクチンおよび仮性狂犬病ウイルスワクチンの両方において、糖リン脂質および糖グリセロ脂質のような天然の糖脂質と構造的類似性を示しているN−糖脂質類似体が、強力な免疫応答を誘起することが可能であることを報告した。一部の糖脂質は、合成され(長鎖アルキルアミンおよび芳香族炭素原子を介して糖に直接連結された脂肪酸から)、天然の脂質残基の機能を模倣している。
【0125】
モロニー(Moloney)に付与され本明細書に参照として組入れられている米国特許第4,258,029号は、オクタデシルチロシン塩酸塩(OTH)が、破傷風毒素およびホルマリン失活型I、II、IIIポリオウイルスワクチンと複合された場合に、アジュバントとして機能することを開示している。ニクソン−ジョージ(Nixon−George)ら(J. Immunol.、14:4798−4802(1990))は、組換えB型肝炎表面抗原に複合された芳香族アミノ酸のオクタデシルエステルが、B型肝炎ウイルスに対する宿主の免疫応答を増強することも報告している。
【0126】
アジュバント化合物は、アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーならびに無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーから選択される。アジュバント化合物は、特に糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルと架橋結合したアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーとして公知である(Phameuropa、8:2、1996年6月)。好ましくは、本発明に係るアジュバント溶液、特にカルボマー溶液は、蒸留水中、好ましくは塩化ナトリウムの存在下で調製され、得られた溶液は酸性pHである。この保存液は、NaClを加えた水、好ましくは生理食塩水(NaCl 9g/l)の望ましい量(望ましい最終濃度を得るため)、またはそれらの実質的な部分への、いくつかの部分において全て同時の添加により希釈され、同時にまたは引き続き、好ましくはNaOHにより中和される(pH7.3〜7.4)。生理的pHにおいてこの溶液は、ワクチンと混合するために使用され、これは特に凍結乾燥、液体または凍結型で保存される。最終ワクチン組成物中のポリマー濃度は、0.01%〜2%(w/v)、より特定すると0.06〜1%(w/v)、好ましくは0.1〜0.6%(w/v)である。
【0127】
当業者は、少なくとも3個のヒドロキシル基(好ましくは8個を超えない)を有するポリヒドロキシル化された化合物と架橋されたこのようなアクリル酸ポリマーであり、少なくとも3個のヒドロキシル基の水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルにより置換されているものを説明している、米国特許第2,909,462号(本明細書に参照として組入れられている)も参照することができる。好ましいラジカルは、2〜4個の炭素原子を含むものである(例えば、ビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基)。不飽和ラジカルは、それ自身メチルのような他の置換基を含むことができる。カルボプール(Carbopol)(BF Goodrich社、オハイオ、USA)の名称で販売されるこれらの製品は、特に適している。これらは、アリルショ糖またはアリルペンタエリスリトールと架橋されている。とりわけ、カルボプール(Carbopol)(例えば、974P、934Pおよび971P)を挙げることができる。無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーの中で、コポリマーEMA(Monsanto社;無水マレイン酸とエチレンのコポリマーであり、直鎖または架橋されている(例えばジビニルエーテルとの架橋))が好ましい。これらの化学物質に関する更なる詳細は、フィールズ(J. Fields)らの論文(Nature、186:778−780(1960))を参照とすることができる(本明細書に参照として組入れられている)。
【0128】
本発明のひとつの局面において、本明細書において説明された本発明の態様において有用なアジュバントは以下のものである。非経口免疫処置のためのアジュバントは、アルミニウム化合物(例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムリン酸)を含む。抗原は、標準的プロトコールに従い、アルミニウム化合物と共に沈殿、もしくはそれに吸着することができる。RIBI(ImmunoChem社、ハミルトン、MT)のような他のアジュバントも、非経口投与に使用することができる。
【0129】
粘膜の免疫処置のためのアジュバントは、細菌毒(例えば、コレラ毒(CT)、大腸菌易熱性毒(LT)、クロストリジウム・ディフィシール(Clostridium difficile)毒Aおよび百日咳毒(PT)、またはそれらの組合せ、サブユニット、トキソイドまたは変異体)を含む。例えば、天然のコレラ毒サブユニットB(CTB)の精製された調製物を使用することができる。これらの毒素のいずれかに対する断片、相同体、誘導体および融合体も、これらがアジュバント活性を維持している場合には、適している。毒性を減じた変異体が使用されることが好ましい。適当な変異体は説明されている(例えば、国際公開公報第95/17211号(Arg−7−Lys CT変異体)、国際公開公報第96/6627号(Arg−192−Gly LT変異体)、および国際公開公報第95/34323号(Arg−9−LysおよびGlu−129−Gly PT変異体))。本発明の方法および組成物において使用することができるLT変異体の追加は、例えば、Ser−63−Lys、Ala−69−Gly、Glu−110−Asp、およびGlu−112−Asp変異体を含む。他のアジュバント(例えば、様々な供給源(例えば、大腸菌、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、またはシゲラ・フレキシネリー(Shigell flexneri)、サポニンまたはポリラクチドグリコリド(PLGA)ミクロスフェア)の細菌モノホスホリルリピドA(MPLA)も、粘膜投与において使用することができる。
【0130】
粘膜および非経口の両免疫処置において有用なアジュバントは、ポリホスファゼン(例えば、国際公開公報第95/2415号)、DC−chol(3 b−(N(N’,N’−ジメチルアミノメタン)−カルバモイル)コレステロール(例えば米国特許第5,283,185号および国際公開公報第96/14831号)およびQS−21(例えば国際公開公報第88/9336号)を含む。
【0131】
乳剤安定化剤
本発明の好ましい態様において、洗浄した油体調製物は、長期間貯蔵することができる乳剤が得られるように、安定化される。本発明の適用の目的について、「安定化された油体調製物」という用語は、油体乳剤が長期間貯蔵される場合に、油体乳剤が望ましくない物理的または化学的変更を受けないように調製される油体乳剤を意味する。油体調製物は、室温で貯蔵された場合に、好ましくは少なくとも1ヶ月間は安定であるように、より好ましくは調製物は少なくとも1年は安定であるように、最も好ましくは調製物は少なくとも2年間は安定であるように調製される。更に好ましい態様において、油体乳剤は、調製物が更に例えば輸送時に起こるような、典型的には温度制御されない環境において生じる温度変動に耐えられるように調製される。安定した油体調製物において、色、臭気、粘度、風合い、pHおよび細菌増殖に関する経時変化は、最小であるかもしくは無い。
【0132】
一般に、乳剤製剤は、細菌、真菌、マイコプラズマ、ウイルスなどの夾雑物または酸化反応のような望ましくない化学反応が防止されるように処理すると考えられる。好ましい態様において、これは保存剤、例えばメタ亜硫酸ナトリウム;グリダント プラス(Glydant Plus);フェノニップ(Phenonip);メチルパラベン;プロピルパラベン;ジャーマル(Germall) 115;ジャーマベン(Germaben) II;フィチン酸;およびそれらの混合物の添加により達成される。この調製物は、放射線照射、例えばコバルト−60またはセシウム−137放射のような電離放射または紫外線照射により、もしくはおよそ65℃で20分間の定温水浴での低温殺菌などによる熱処理により、安定化することもできる。低温殺菌温度は、好ましくは50℃〜90℃の範囲であり、低温殺菌の時間は、好ましくは15秒〜35分の間である。
【0133】
酸化反応は、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT);ブチルヒドロキシアニソール(BHA);アスコルビン酸(ビタミンC);トコフェロール;フィチン酸;クエン酸;プロビタミンA;およびそれらの混合物などの、酸化防止剤の添加により防止することができる。
【0134】
この製剤の物理的安定性は、更に例えばアーラセル(Arlacel) 165のようなアーラセルまたはグルカメート(Glucamate) LTなどの乳化剤の添加により、もしくはセチルアルコール;グリセロールまたはケルトール(Keltrol)などの粘度調整剤の添加により増強されうる。乳剤は、セルロースおよび誘導体;カルボプール(Carbopol)および誘導体;カラブ(carob);カラゲナンおよび誘導体;キサンタンガム;スクラレンガム;長鎖アルカノールアミド;ベントンおよび誘導体;米国薬局方カオリン;ヴィーガム ウルトラ(Veegum Ultra);グリーンクレイ;ベントナイトNFBC;およびそれらの混合物などのゲル化剤を用い、増粘および安定化することができる。これらの物質は典型的には約2重量%未満の濃度で存在する。
【0135】
油体調製物はまた、pHの修飾により、および例えばカルシウムまたはナトリウムイオンの濃度を調節することによる、イオン強度の変更により安定化される。
【0136】
下記の追加成分は、安定化された油体製剤と共に製剤化され得る。本発明の好ましい態様において、油体は、これらの追加成分との製剤化前に安定化されるが、それにもかかわらず油体調製物を製剤化しかつ最終製剤を安定化することは可能である。
【0137】
III.ワクチン製剤の使用
本発明は、ワクチン製剤中にアジュバントとして含む、多種多様な用途において有用な油体調製物の作製に指向する。
【0138】
従って、本発明は、油体および抗原を含有するワクチン製剤の有効量をそれを必要とする動物に投与することを含む免疫応答を誘起する方法を提供する。
【0139】
「免疫応答の誘起」という用語は、例えば体液性または細胞媒介型のいずれかの特徴の免疫系の任意の反応を引き起す、増強するまたは改善することとして定義される。ワクチンまたは抗原が免疫応答を誘起するかどうかは、当業者に公知のアッセイ法を用いアッセイすることができ、これは抗体アッセイ法(例えばELISA法)、抗原特異的細胞障害アッセイ法およびサイトカイン生成(例えばELISPOTアッセイ法)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0140】
本発明のワクチンの「有効量」という用語は、所望の結果(例えば免疫応答の誘起)を達成するのに必要な用量および期間での有効量として定義される。本発明の化合物の有効量は、動物の病態、年齢、性別、および体重のような要因に従い変動することができる。用法は、最適の治療的反応を提供するように調節することができる。例えば分割量を毎日投与することができ、もしくはこの用量を、治療状況の緊急性により示されるように比例的に減少することができる。
【0141】
本明細書において使用される「抗原」という用語は、免疫応答を誘起することが求められる任意の分子を意味する。
【0142】
本明細書において使用される「ワクチン」という用語は、免疫応答を誘起することが可能な任意の組成物を意味する。
【0143】
本明細書において使用される「動物」という用語は、ヒトを含む動物界の全てのメンバーを意味する。好ましくは、処置される動物は、ヒトである。
【0144】
本明細書において使用される「投与」という用語は、当業者には公知であるようなワクチン分野において使用される抗原を動物へ投与するための通常の経路と定義される。これは、例えば局所的、経口および非経口(すなわち、皮下、皮内、筋肉内など)経路での投与を含むことができ、更に経口摂取、吸引および大腸末端部分を通して接近可能な膜を介して達成される粘膜送達を含む、経皮および経粘膜送達を含む。
【0145】
特に好ましい動物のこのワクチンによる免疫処置の方法は、初回追加免疫プロトコールを包含している。典型的には、初回追加免疫プロトコールは、ワクチンの初回投与、それに続くワクチン追加免疫投与を含む。このプロトコールは、単にワクチンの1回投与後に認められる反応と比べ、増強された免疫応答を誘起すると考えられる。初回追加免疫方法論/プロトコールの例は、国際公開公報第98/58956号に説明されており、これは本明細書に参照として組入れられている。初回追加免疫プロトコールにおいて、初回投与の投与経路は、追加免疫で使用されるものと同じである必要はない。実施例11に示したように、初回は、非経口的に投与し、追加免疫は経皮的に投与することができる。
【0146】
このワクチン製剤は、他のアジュバントに加え、サイトカインを含む免疫刺激分子を含む他の物質と共に投与することができる。
【0147】
下記実施例は、本発明の範囲を例証しているが限定するものではない。
【0148】
実施例1:抗原結合のための天然の油体の修飾
この実施例において、抗原送達のための非トランスジェニック植物由来の天然の油体の使用が説明されている。単離された天然の油体は、オレオシンのような油体タンパク質に共有的に連結されたビオチン分子を含むように化学的に修飾される。これらの修飾された油体は、抗原−抗原複合体を結合することができ、その結果油体、抗原およびストレプトアビジンカップリング部分を含むワクチン組成物を提供した。油体の化学修飾を行うために、油料種子植物アブラナから得た植物種子を用い、油体を単離した。全ての手法を無菌状態下で行った。典型的には、成熟種子2〜3gを、70%エタノールを用い室温で15分間処理することにより、無菌化された第一の表面とした。これらの種子を、無菌生理食塩水で2〜3回洗浄し、その後予め滅菌した乳棒・乳鉢で、液体粘度を維持するのに十分な無菌生理食塩水を用い圧搾した。圧搾した種子懸濁液を、生理食塩水で40mlまで希釈し、50mlポリプロピレン製チューブに移し、3500rpm(10,000xg)で30分間遠心した。「脂肪パッド(fat pad)」(油体を含む)を、40mlの無菌生理食塩水緩衝液が入った50mlポリプロピレンに移し、再遠心した。この洗浄工程を2回繰り返し、その後最終脂肪パッドを、少量の無菌生理食塩水中に再懸濁した。タンパク質含量を決定し、溶液を濃度およそ10mgオレオシン(油体タンパク質)/ml溶液に調節した。ジメチルホルムアミドに濃度12.5mg/mlで溶解したビオチン化試薬N−ヒドロキシスクシンイミドビオチン(NHS−ビオチン)総量20mlを、オレオシン1mgにつき添加した。緩やかに30分〜1時間攪拌した後、ビオチン化された油体を20分間遠心し、かつ下部層を除去した。ビオチン化された油体は、生理食塩水中に再懸濁し、再遠心した。この洗浄を繰り返し、脂肪層を生理食塩水に再懸濁し、最終濃度10mgオレオシン(油体タンパク質)/mlとした。これらの修飾された油体を次に、抗原−抗原複合体へのカップリングに使用した。
【0149】
実施例2:組換え抗原の作製
組換え抗原作製のための新規発現系を用い、容易に精製されかつ選択された領域に1個のビオチン部分を含む抗原を作製した。この発現ベクターは、大腸菌において発現を誘導することができ、かつ外来遺伝子のインフレーム融合を容易にするために、T7プロモーターおよびN末端ビオチン共通配列をコードしている領域(Schatz, P. J.、「ペプチド修飾酵素の基質特異性をマッピングするためのペプチドライブラリーの使用:A13残基共通ペプチドは大腸菌におけるビオチン化を特定する(Use of peptide libraries to map the substrate specificity of a peptide−modifying enzyme: A 13 residue consensus peptide specifies biotinylation in Escherichia coli)」、Bio/Technology、11:1138−1143(1993))、ポリヒスチジンセグメントおよびマルチクローニング部位(MCS)を含む。このベクターは、pT7ビオヒスタグ(pT7biohistag)と称した。このベクターの制限地図を図5に示す。MCSにインフレームで挿入されたコード配列を含むこのベクターからの大腸菌における発現は、ポリヒスチジン領域のために、金属キレートクロマトグラフィーにより容易に精製することができる組換え融合タンパク質を生じる。この組換えタンパク質は、N末端ビオチン共通配列に存在するリシン残基に付着したビオチン部分も含み、そのビオチン化は大腸菌細胞においてBirAタンパク質で実行される。場合によっては、特にこの系において組換えタンパク質発現が非常に高いような場合、完全にビオチン化された組換えタンパク質の割合は低下される場合があることが注目される。従って、これらの場合、精製されたタンパク質は、ビオチン、ATPおよびBirAタンパク質の組換え型の添加により、完全にビオチン化され得る(Tsao, K. L.ら、Gene、169:59−64(1996))。組換え抗原は、大腸菌株HMSl74DE3 pLysSにおいて作出される。細菌細胞は増殖され、かつ組換え遺伝子の発現が、0.5mM IPTGにより誘導され、これはpT7ビオヒスタグベクターの発現を引き起す。誘導および一定期間の増殖後、細胞を収集し、フレンチプレス溶解を施し、遠心し、細胞破片および膜を除去し、かつ上清から抗原をニッケルキレートアフィニティマトリックスクロマトグラフィーにより精製した。精製した抗原は、ビオチンおよびATPを添加したGST−BirA(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)融合タンパク質の存在下でのインキュベーションにより完全にビオチン化された。BirAを、GSTアフィニティクロマトグラフィーカラムにより除去し、かつ完全にビオチン化された抗原を、前記金属キレートクロマトグラフィーにより再精製した。この手法は、ビオチン部分を含む組換え抗原の作製を可能にした。
【0150】
実施例3:油体および抗原のカップリング
この実施例において、ビオチン化された油体およびビオチン化された抗原が、ストレプトアビジンの存在下で組合わされ、油体−抗原複合体を形成した。ストレプトアビジン1molは、ビオチン4molと結合することができ、従ってストレプトアビジンを用い、ビオチン化された抗原をビオチン化された油体に連結またはカップリングすることができる。ビオチン化された抗原をビオチン化された油体にカップリングするために、ビオチン化された抗原を、ストレプトアビジンと予備混合し、かつこの混合液をその後ビオチン化された油体に添加した。この段階的カップリングは、油体表面にカップリングされる抗原の量の制御を可能にする。対照としての過剰量の遊離ビオチンの添加は、付着された抗原を伴わないビオチン化された油体の単離を可能にした。抗原、ストレプトアビジンおよび油体の全ての調製物は、無菌生理食塩水中で作製した。特定しない調製物は、濾過滅菌した。ビオチン化された抗原は、ストレプトアビジン(SA)とモル比2.5:1で一緒にし、その後抗原−SA複合体をビオチン化された油体に添加し、かつ激しく混合した。ビオチン化された油体に添加された抗原−SA複合体の量は、典型的にはトランスジェニック油体においてオレオシン融合タンパク質の1〜10%発現と競うように調節した。従って抗原:オレオシンのモル比は、ほとんどの実験において1.25:100または2.5:100であり、一部の実験において最大1:10であった。カップリングした油体−抗原−SA混合物を、被験動物の免疫処置に使用した。
【0151】
実施例4:組換え表面抗原を含有する油体−抗原複合体の作製
この実施例において、代表的表面抗原を、ベクターpT7ビオヒスタグにクローニングし、発現した。ナイセリア・メニンギティディス由来のトランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)を、これは髄膜炎菌性髄膜炎のワクチンの候補である(Danve, B.ら、53. 1998年、第11回国際病原性ナイセリア会議)ので、代表的表面抗原として使用した。トランスフェリン結合タンパク質のコード領域を、pT7ビオヒスタグベクターへのクローニングに都合の良い制限部位を含むように修飾されたプライマーを用いる、PCRにより単離した。得られたpT7BioHisM982TbpBと称されるベクターは大腸菌へ形質転換した。このクローニングした遺伝子の配列は、DNA配列決定により確認し、制限地図を図6に示した。このベクターを含む大腸菌株は、中間対数期で増殖し、実施例2において説明したように抗原発現を誘導しかつ組換え抗原を精製した。組換え抗原は、実施例2に示したように完全にビオチン化され、かつ実施例3に説明したようにビオチン化された油体へカップリングした。TbpB−油体−ストレプトアビジン複合体を用いて、動物を免疫処置した。
【0152】
実施例5:油料種子植物におけるオレオシン融合体としての抗原の発現
この実施例において、本発明者らは、油体に会合しているオレオシン−M982 TbpB N−lobe融合体を発現しているトランスジェニック植物を調製した。この実施例において使用した油料種子植物はシロイヌナズナである。種子特異的プロモーターの制御下でのオレオシン18kDaおよびM982 TbpB N−lobeコード領域の間の翻訳融合体は、バイナリーベクターpSBS2004へクローニングした。図8に示した得られたベクターpSBS2004−92 M982TbpB N−lobeを用い、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株EHA1O1を形質転換した。次にこの形質転換したアグロバクテリウム株を用い、シロイヌナズナを形質転換した(Bechtold, N.、Ellis J.、およびPelletier, C.、[成体植物体の浸潤による植物におけるアグロバクテリウム媒介遺伝子導入(In planta Agrobacterium−mediated gene transfer by infiltration of adult plants)]、C.R. Acad. Sci. Paris、Life Sciences、316:1194−1199(1993))。感染した植物は、成熟させ、種子を生じた。推定トランスジェニック種子を、除草剤ホスフィノスリシン(phosphinothricin)(PPT)の存在する適当な発芽培地上に蒔いた。選択で生存したトランスジェニック植物は、成熟し種子を生じることができる。オレオシン融合体としてM982TbpB N−lobeを発現しているトランスジェニック油体は、実施例1に説明されたように単離した。図7Aは、M982 TbpB N−lobeをオレオシン融合体として発現しているトランスジェニック種子から単離したランスジェニック油体タンパク質のクーマシーブルー染色したゲルを示している。図7Aは、オレオシン−M982 TbpB融合体が分子量およそ58.0kDaを有することを示している。図7Bは、M982 TbpBに対する抗体を用いるSDSゲルのウェスタンブロットを示している。これらの図は、オレオシン−M982 TbpB N−lobe融合体が、M982 TbpBに対するポリクローナル抗体により認識することができることを示している。加えて、M982TbpB N−lobeは、図8に示したように、西洋ワサビペルオキシダーゼに接合したヒトトランスフェリンに対する結合活性を維持している。これらの結果は、オレオシンおよびM982 TbpB N−lobeを含む融合体は、油料種子植物の油体表面上に発現しかつ標的化することができ、かつM982 TbpB N−lobeは結合活性を維持していることを示している。
【0153】
加えて、本発明は更に、アブラナにおいてオレオシン融合体としてグルクロニダーゼ(GUS)を発現しているトランスジェニック油体も使用した。この実験において、GUS(β−グルクロニダーゼ)酵素およびオレオシン遺伝子を含む融合タンパク質を、免疫処置に使用した。この組換え遺伝子は、植物細胞へ挿入し、トランスジェニック植物を得た(Kuhnel, B.、L. A. Holbrook、M. M. Moloney、およびG. J. H. van Rooijen.、「固定したβ−グルクロニダーゼ供給源としてのトランスジェニックアブラナの油体(Oil bodies of transgenic Brassica napus as a source of immobilized beta−glucuronidase)、JAOCS 73:1533−1538(1996))。得られたトランスジェニックアブラナは、油体表面にGUS酵素を伴う油体を産生する。GUSを発現しているトランスジェニック油体は、実施例1に説明したように単離し、かつ免疫処置した動物に使用した。
【0154】
実施例6:油体−抗原複合体を用いる動物の免疫処置
この実施例において、雌のBalb/Cマウス(3〜6週齢)群を、油体−抗原複合体で免疫処置した。マウスは、抗原調製物の腹腔内注射を、2週間の間をあけて2回受け取り、血清試料を、毎週尾からの出血により得た。この血清の希釈物を、抗TbpB抗体について、固定した組換えTbpBを用いるELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ法)により分析した。結合した抗体は、抗マウスIgG(γ−特異的)接合体および適当な基質により検出した。血清中の特異的抗体の濃度を決定するために、これらの曲線を、濃度がわかっているマウスIgG標準およびVSA3−免疫処置したマウスから得た(プールした)抗TbpBマウス血清により得たものと比較した。マウス(n=3/群)に、下記の調製物のひとつを注射した:
(i)組換えTbpB 10g、
(ii)1:4のVSA3アジュバント/生理食塩水中の組換えTbpB 10g(VSA3は、例えばHarland, R. J.ら、1992、実験的獣医学ワクチン接種実験のために使用された最適のアジュバントである。「家畜の呼吸器疾患予防のためのサブユニットまたは修飾されたウシ肝臓のヘルペスウイルス−1ワクチンの組換えパスツレラ・ハエモリチカワクチンの効能に対する作用」、Can. Vet. J. 33:734−741)、
(iii)オレオシン200gを含有するビオチン化された油体調製物(モル比1.25:100)にカップリングされた組換えTbpBタンパク質10g、
(iv)オレオシン20gを含有するビオチン化された油体調製物(モル比12.5:100)にカップリングされた組換えTbpBタンパク質10g、
(v)オレオシン200gを含有するカップリングしていない油体調製物中の組換えTbpB 10g、および
(vi)オレオシン20gを含有するカップリングしていない油体調製物中の組換えTbpB 10g。
【0155】
TbpBに対する特異的抗体レベルにより測定した、動物の免疫応答を示す。
【0156】
【表1】TbpB抗原および油体による免疫処置後の抗体レベル
Figure 2004513879
抗原/SAのビオチン化された油体へのカップリングを防止するためにビオチンを用いる油体調製物。
TbpB対オレオシンのモル比1/10の代わりにおよそ1/100
スチューデントT検定によりモデル油体調製物よりも有意に低い応答。
nd−検出されず
【0157】
これらの結果は、油体−ストレプトアビジン−TbpB複合体が、TbpB単独を使用する場合と比べTbpBに対する抗体応答の実質的増加を提供することを明らかにしている。アジュバントとしての1:4のVSA3懸濁液により得られた結果の比較は、油体−TbpB−TbpB複合体が4週間で同様の反応を提供することを示している。これらの結果は同じく、ビオチン化された抗原のビオチン化された油体の低い比を伴う結果が、抗原に対する免疫応答を低下せず、かつより大きいアジュバント作用を提供し得ることも明らかにしている。
【0158】
実施例7:全身免疫処置における油体の安全性
油体がワクチン送達系として有用であるためには、油体の投与は、急性毒性または有害な免疫応答のような、任意の望ましくない副作用をひきおこしてはならない。非経口(全身)経路の投与を、急性毒性を最も引き起す可能性があるものとして選択した。油体は、本質的に前述のような無菌条件下で調製した。最終の脂肪パッドを、無菌生理食塩水中に再懸濁し、最終タンパク質濃度20mg/mlとした。懸濁液のアリコートを、SDS−PAGE分析し、油体調製物の純度を確認した。
【0159】
これまでウサギがワクチン毒性試験に使用されてきたので、ウサギを適当なモデルとして選択した。ワクチン適用に必要と予想される用量は、ウサギについて抗原用量が2〜50g/注射であることおよびオレオシン1〜5%は、トランスジェニック種子融合タンパク質であるという予想を基にした。50kDa抗原に関して、予想されるワクチン用量(2〜50g)は、融合タンパク質中のオレオシン0.4〜10gに相当していた。従って、有効な免疫処置用量は、1%発現で40g〜1mg総タンパク質(オレオシン)および5%発現で8g〜200gと考えられる。従って、投与量20mgオレオシン/注射は、免疫処置よりも20〜100倍高い投与量を示している。8匹の健常成体雌ニュージーランド白ウサギ(およそ2.5〜3kg)に、油体を、0日目、14日目および28日目に、大腿部に筋肉内注射し(油体タンパク質20mgを含有する1ml)および背側首領域に皮下注射(油体タンパク質20mgを含有する1ml)した。対照ウサギ3匹には、通常の生理食塩水1mlを、同じ領域に同じスケジュールを用いて注射した。これらのウサギは、実験期間中は毎日、体温および全身の健康状態についてモニタリングした。3回目の注射後、ウサギを屠殺し、かつ組織試料を組織病理学的分析のために採取した。
【0160】
処置したウサギは、体温の上昇(対照動物と比べ)も、窮迫に対する生理的徴候(毛の風合いの変化など)も示さなかった。肝臓、脾臓、心臓および筋肉の組織病理学的検査は、如何なる病態生理学的変化を明らかにしなかった。注射部位に、残存する病態生理学的特徴(すなわち、炎症浸潤、瘢痕化など)はなかった。これらの結果は、植物由来の油体の、免疫学的目的にこれまで使用されたものよりもかなり高用量での全身投与に起因した急性の毒性徴候がないことを示している。加えて、これらの結果は、油体の全身投与による局所または全身の病態生理学的変化がないことを明らかにしている。
【0161】
オレオシンに対する免疫応答が存在するかどうかを決定し、かつこの反応が特異的抗原に対する応答を妨害または低下したかどうかを調べるために、前述の実施例6のマウスから得た血清を、オレオシンに対する抗体反応について試験した。天然の油体を、疎水性タンパク質結合したマイクロタイタープレート上に固定し、かつ前述のようにELISAを行った。抗オレオシン抗体レベルを、公知のマウスIgG標準と比較し算出した。結果を以下に示した。
【0162】
【表2】油体による免疫処置後のオレオシン抗体レベル
Figure 2004513879
抗原/SAのビオチン化された油体へのカップリングを防止するためにビオチンを用いる油体調製物。
TbpB対オレオシンのモル比1/10の代わりにおよそ1/100
【0163】
これらの結果は、抗オレオシン抗体応答は低く、一部の群の用量において他を上回る10倍の増加とは無関係に大きく変動することはない(群iiiおよびvを上回る群ivおよびvi)ということ、ならびに抗オレオシン応答は特異的抗原に対する特異的応答(実施例6におけるTbpB応答)に有害に作用しないことを示している。同様に、抗原カップリングした油体または抗原−ストレプトアビジンを受けたマウスにおいて、低いが妨害しない応答が、ストレプトアビジンに対して認められた(結果は示さず)。油体(対照としてまたは抗原にカップリングした)で処置した動物は、罹患(即時型または遅延型のアレルギー反応のないことを含む)も死亡も示さなかった。比較として、1:3 VSA3懸濁液を用いた最初の実験は、処置したマウスにおいて100%致死率を生じた。従って、VSA3アジュバントは、広範な用途には適していない。
【0164】
実施例8:1種より多い抗原による動物の免疫処置
この実施例において、複数の抗原を油体へカップリングし組合わせて用いた。破傷風毒素(TTC)のC末端細断片は、毒性活性を欠き、依然その免疫学的特性が維持され、かつ組換えタンパク質として大腸菌において発現することができることがこれまでに示されているので、このC末端細断片を用いた(Halpern, J. L.、W. H. Habig、E. A. Neale、およびS. Stibitz、「破傷風毒素の機能的断片のクローニングおよび発現(Cloning and expression of functional fragment C of tetanus toxin)」、Infect Immun.、58:1004−1009(1990))。C末端断片は実施例2に説明したように、PCRによりクローニングし、pT7ビオヒスタグベクターへ挿入し、かつ組換え抗原を精製した。TbpB抗原も使用した。抗原は、実施例3に説明したようにビオチン化された油体へカップリングした。複数の抗原を試験する実験において、マウス群を、以下の調製物のひとつによる2週間間隔をあけた腹腔内投与により免疫処置した:
(i)オレオシン200gを含有するビオチン化された油体調製物にカップリングした組換えTTC 10g(n=4)、
(ii)オレオシン200gを含有するビオチン化された油体調製物にカップリングした組換えTTC 10gおよび組換えTbpB 10g(n=4)、
(iii)オレオシン200gを含有するビオチン化された油体調製物にカップリングした組換えTbpB 10g(n=4)。
【0165】
血清試料を、尾部の出血により隔週入手した。抗TTCまたは抗TbpB抗体レベルを、前述のような、固定した組換えTTCまたはTbpBおよび適当な標準を用いるELISAにより決定した。複数の抗原による免疫処置を評価する免疫処置実験の結果は、TTCまたはTbpB単独を含むモデル油体と両抗原を伴う油体を比較する。これらの結果は、1種よりも多い抗原を含有するモデル油体調製物は、個々の抗原に対する応答を損なわなかったことを示している。実際に、個々の抗原に対する免疫応答は、両方の抗原が存在した場合に増加した。結果を示す。
【0166】
【表3】複数の抗原による免疫処置後の抗体レベル
Figure 2004513879
【0167】
実施例9:オレオシン組換え融合体を含有する油体調製物による免疫処置
この実験において、オレオシンに融合したβ−グルクロニダーゼ(GUS)酵素を発現しているトランスジェニック植物由来の油体調製物を、免疫処置に用いた。オレオシンおよびGUSをコードしている組換え遺伝子を、植物細胞へ挿入し、かつトランスジェニック植物を得た(Kuhnel, B.、L. A. Holbrook、M. M. MoloneyおよびG. J. H. van Rooijen.、「固定されたβ−グルクロニダーゼ供給源としてのトランスジェニックアブラナの油体(Oil bodies of transgenic Brassica napus as a source of immobilized beta−glucuronidase)」、JAOCS 73:1533−1538(1996))。得られたトランスジェニックアブラナは、油体表面にGUS酵素を伴う油体を生成した。別の組換えGUS酵素の供給源は、細菌においてGUS酵素を発現することができる細菌発現ベクターpT7BHGusの使用により得た。発現されたGUS酵素はまた、ビオチン化ペプチド配列およびポリヒスチジンタグを含み、組換え酵素の精製およびこの酵素のビオチン化油体へのカップリングを可能にする。pT7BHGusのベクター地図を図7に示した。モデル抗原としてGUSを使用する実験において、マウス群を、以下の調製物のひとつによる2週間間隔をあけた腹腔内投与により免疫処置した:
(i)組換えGUS 10g(n=3)、
(ii)組換え精製したGUS 10gおよびミョウバン(リン酸アルミニウム)3mg/ml(0.6mg/投与量)(n=2)、
(iii)オレオシン200gを含有するカップリングした油体調製物中の組換えビオチン化されたGUS 10g(n=4)、
(iv)オレオシン200gおよびGUS約10gを含有するトランスジェニック油体調製物(各n=4)。
【0168】
血清試料を、尾部の出血により隔週入手した。抗GUS抗体レベルを、前述のような、固定した組換えGUSおよび適当な標準を用いるELISAにより決定した。この実験の結果は、組換え抗原がオレオシンとの融合産物として作製された油体と、抗原が油体へビオチン化を用いてカップリングされた油体の間の反応は類似していたことを示している。
【0169】
【表4】GUSタンパク質による免疫処置後の抗体レベル
Figure 2004513879
【0170】
両方の油体調製物は、GUS単独と比べ、GUSに対する抗体応答の実質的増加を生じる。これらの結果のアジュバントとしてミョウバンを使用し得られた結果との比較は、油体が、ミョウバンよりもアジュバントとしてより有効であることを示している。これらの結果は更に、トランスジェニック抗原油体による結果は、カップリングした抗原油体により得られた結果に類似していることも示しており、これは、全身免疫処置実験においてカップリングした抗原油体が機能的にトランスジェニック油体に類似していることを示唆している。
【0171】
実施例10:粘膜免疫処置(初回および初回/追加免疫)のための送達媒体としての植物油体の効能
抗原の粘膜投与の効能を評価するために、経鼻的免疫処置経路は、粘膜免疫処置に有効部位でありかつ経口免疫処置と同じ問題点のセットには直面しないことが示されているので、この免疫処置経路を用いた。経口/胃腸管投与経路を、比較のために試験した。ナイセリア・メニンギティディス由来のトランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)を抗原として用い、およびコレラ毒βサブユニット(CTB)を、このタンパク質の油体へのカップリングが粘膜免疫処置により達成された免疫応答を増強するかどうかを決定するための可能性のある標的化/免疫変調タンパク質として含有した。粘膜調製物について、全ての成分を、実施例2および3に説明したように集成し、かつカップリングした油体を、遠心により濃縮し、容量を減少しかつ粘度を増加した。
【0172】
CTBの添加について、pT7BioHis標準発現系を用いビオチン化されたタンパク質を作業可能な量得ることは困難であることが証明された。従って、代わりの発現系を使用した。この代替系は、pMalc2ベクター(Riggs, P.、1994. 「マルトース結合タンパク質融合体の発現および精製(Expression and purification of maltose binding protein fusions)」、p.16−6−1−16−6−14、アウスベル(F. M. Ausubel)、 ブレント(R. Brent)、キングストン(R. E. Kingston)、ムーア(D. D. Moore)、シードマン(J. G. Seidman)、スミス(J. A. Smith)およびスタール(K. Struhl)(編集)、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、Wiley社、ニューヨーク)。pMalc2ベクターは、pT7BioHisベクター同様、大腸菌における発現を可能にするが、同じく組換えタンパク質のN末端にマルトース結合タンパク質配列も含む。pMalc2ベクターは、実施例2に説明したような本質的にpT7BioHisベクターに含まれるビオチン化およびポリヒスチジンコード領域を含むように修飾した。修飾したpMalc2ベクターは、pMalc2BioHisと称し、かつ組換えタンパク質を発現する手段としてのpT7BioHisベクターの置換体を提供する。コレラ毒βサブユニット遺伝子は、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)の臨床的単離体由来のTaqポリメラーゼによりPCR増幅した。このPCR産物は、pMalc2BioHisベクターへの容易な挿入を可能にするXmnIおよびHindIII部位を含んだ。従って全体の構築物は、コレラ毒βサブユニットを含む組換えコード領域、ビオチン化共通ペプチド領域、ポリヒスチジン領域およびマルトース結合タンパク質領域を含んでいた。この発現系は誘導され、かつビオチン化された組換え抗原が作出された。このタンパク質は、金属キレートクロマトグラフィーにより容易に単離することができ、かつストレプトアビジンによりビオチン化された油体へカップリングすることができる。
【0173】
モデル抗原としてTbpBを使用するマウス実験において、TbpBにまたはTbpB+CTBにカップリングしたビオチン化された油体を使用した。2〜3匹のマウスの群を、以下の調製物および経路のひとつで免疫処置した。血清を隔週採取し、かつ前述のように抗TbpB抗体について試験した。
【0174】
【表5】粘膜免疫処置に使用した経路
Figure 2004513879
in−経鼻投与;ig−胃内(胃内挿管による)投与;ip−腹腔内投与
【0175】
マウス実験の結果は、カップリングしたビオチン化された油体調製物が経鼻的(3g/ml、4週間)または胃内経路(5g/ml、4週間)で送達された場合の、比較的低い全身の抗TbpB抗体応答を示した。この反応は、CTBが油体調製物中に含まれる場合に、実質的に増強された(経鼻的および胃内経路について、各々、64g/mlおよび7.3g/ml)。油体の粘膜投与は全身的抗体の実質的レベルを誘導しなかった(初回および追加免疫)が、引き続きの非経口免疫処置に対し免疫応答を増強した(ip免疫処置後2週間での37g/mlと比べ、inおよびigについて259g/mlおよび139g/ml全身的IgG)。これは、粘膜免疫処置がその後の非経口免疫処置について免疫系を効果的に開始したことを示している。
【0176】
実施例11:経皮的免疫処置(初回および初回/追加免疫)のための送達媒体としての植物油体の効能
この実施例は、経皮的に適用された油体にカップリングした抗原が、被験抗原に対する増強された免疫応答を生じたことを説明している。経皮的投与は、おそらく増強された粘膜免疫応答を生じるので、全身および粘膜の両方の抗体産生の評価を行った。全身投与と組合わせた経皮的免疫処置を試験し、例えその全身または粘膜の抗体の誘導が制限されてる場合であっても、経皮的免疫処置が免疫系を効果的にプライミングするかどうかを確認し調べた。組換え抗原の産生および抗原カップリングした油体の調製物の調製は、本質的に実施例2および3に説明したものである。経皮的適用に適した油体調製物を提供するために、抗原カップリングした油体を、最小容量の緩衝液中に懸濁し、油体懸濁液の粘度をクリームまたはローション様にした。全身投与よりも高用量の抗原(100g)および油体(2mg)を、経皮的適用のために選択した。経皮的適用について、抗原にカップリングした油体調製物を、マウスの背中/首/肩領域の2cmの剃毛した領域に適用した。この調製物を塗布後、マウスを、背中領域へ触れることのないように、1時間あつらえた装置に個別に拘束した。このマウス実験には、モデル抗原としてTbpBを使用した。2〜3匹のマウス群は、下記の調製物のひとつで2週間間隔をあけて免疫処置した:
(i)組換えTbpB 100g(経皮)、
(ii)オレオシン2mgを含有するビオチン化された油体調製物にカップリングした組換えTbpB 100g(経皮的)、または
(iii)組換えTbpB 10g(ip追加免疫)、
(iv)オレオシン200gを含有するビオチン化された油体調製物にカップリングした組換えTbpB 10g(ip追加免疫)、
(v)油体単独またはPBSで免疫処置したマウスを含む対照群。
【0177】
マウスは、経皮的または腹腔内経路で、0週目および2週目に免疫処置し(以下に示す)、かつ2、4および8週目に血清抗体を評価した。
【0178】
【表6】TbpBの経皮的免疫処置後の抗体レベル
Figure 2004513879
【0179】
これらのマウス実験から得た結果は、経皮的経路により送達されたモデル油体調製物は、TbpB単独投与とは対照的に、低いが検出可能な全身性(血清IgG)抗体反応を提供することを示している。血清抗体力価が、最終適用後6週目まで(8週目試料)上昇し続けた点は特に興味深く、これはより延長されたまたは持続された免疫系の刺激が生じたことを示唆している。この投与経路は、かなり期待されること並びに適用の時期および回数の変動が更なる免疫応答最適化の機会を提供することが明らかに示されている。
【0180】
加えて、モデル油体の経皮的投与は、引き続きの非経口免疫処置のための免疫系のプライミングを明らかにした。従って、td/ip群の4週目の反応(445g/ml)は、ip/ip群の2週目の反応(37g/ml)よりも実質的には大きく、これらは両方とも初回非経口免疫処置後2週目に相当する。
【0181】
実施例12:粘膜および経皮的追加免疫処置のための送達媒体としての植物油体の効能
先の実験から、有用な適用であると考えられる投与経路の組合せを試験することは価値があることが明らかである。例えば、経皮的免疫処置は、初回非経口免疫処置の追加免疫の有効な手段であることを証明し、これはヒトワクチン適用についてかなり魅力的である場合がある。この方法に対処するために、Balb/Cマウス群(n=5)に、ミョウバン中の組換えGUSタンパク質(10g GUS)の初回皮下(sc)注射を投与した。その後前述のような経鼻または経皮的経路のいずれかにより、4週目、6週目、および8週目にGUSカップリングした油体(100g GUS、2mgオレオシン)を用い追加免疫した。血清を、sc初回免疫処置後4週目、6週目、8週目および11週目に採取し、前述のようにELISAを用い、全身の抗GUS抗体について試験した。
【0182】
【表7】GUSタンパク質の経鼻/経皮的追加免疫後の抗体レベル
Figure 2004513879
0週目のSC後、4、6、8週目にtdまたは追加免疫した。
GUS Sc/−に勝る有意な増加
GUS Sc/−を下回る有意な減少
【0183】
これらのデータは、抗原カップリングされた油体が、現在承認されたアジュバントミョウバンによる全身初回免疫処置後の追加免疫処置に特に有用であることを示唆している。ヒト追加免疫ワクチン戦略としての使用するための抗原カップリングした油体の有用性には、いくつかの可能性のある利点がある。経皮または経鼻経路は、全身投与に比べ非侵襲性であり、その結果特に非経口にはより侵襲性の追加免疫注射に関する懸念があるが、患者の服薬遵守がより容易に達成される。加えて、特に経皮的製剤の適用の容易さは、所定の日時での適用のための自宅でのローションまたは湿貼付剤による追加免疫の自己投与につながる場合がある。これは、追加免疫のための数回の来院を否定することにより、全般的に医療費を大きく削減する。最後に、このようなワクチン製剤は、より長期にわたり反復投与することができ、これは持続的抗原曝露に起因したより高い抗原レベルにつながる。
【0184】
本発明は、本明細書において様々な具体的材料、手法および実施例を参照し説明および例証されているが、本発明は、その目的のために選択された特定の材料、材料の組合せ、および手法に制限されないことは理解されるべきである。このような詳細の多くの変更が含意されており、これは当業者により理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】植物油体の図画による説明である。
【図2】ビオチンおよびストレプトアビジン分子を使用することにより油体にカップリングされた抗原の図画による説明である。
【図3】油体表面に発現されている抗原決定基を伴う組換えオレオシンタンパク質を含む植物油体の図画による説明である。
【図4】2種の油体調製の図画による説明であり、油体表面に抗原を発現している組換えオレオシン油体タンパク質遺伝子、ならびにストレプトアビジンおよびビオチンの使用により油体にカップリングされた抗原を含む、トランスジェニック植物由来の油体。
【図5】発現ベクターpT7BioHisのプラスミド地図である。
【図6】組換えベクターpSBS2004−92 M982 TbpB N−lobeのプラスミド地図である。
【図7】タンパク質について電気ブロット染色された(A)または抗オレオシン抗体により検出された(B)、オレオシン融合タンパク質としてのナイセリア・メニンギティディスTbpB N−lobeの発現を示している、複合図である。
【図8】オレオシンおよびナイセリア・メニンギティディスTbpB N−lobeの融合タンパク質がヒトトランスフェリンについての結合活性を維持していることを示している電気ブロットである。

Claims (54)

  1. 動物において免疫応答を誘起する方法であって、方法が油体および抗原を含有する製剤を動物へ投与することを含む、方法。
  2. 請求項1記載の動物において免疫応答を誘起する方法であって、油体および抗原が油体−抗原複合体を形成する、方法。
  3. 油体−抗原複合体が、下記の工程を含む方法により産生される、請求項2記載の動物において免疫応答を誘起する方法:
    a)油体を単離する工程;
    b)抗原を油体に連結し、油体−抗原複合体を形成する工程;および
    c)該油体−抗原複合体を動物へ投与する工程。
  4. 連結が、油体が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、化学的または酵素的手段により油体を修飾することを含む、請求項3記載の方法。
  5. 連結が、抗原が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、化学的または酵素的手段により抗原を修飾することを含む、請求項3記載の方法。
  6. 連結が、抗原および油体が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、化学的または酵素的手段により抗原および油体を修飾することを含む、請求項3記載の方法。
  7. 連結が、抗原が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、抗原を遺伝子改変することを含む、請求項3記載の方法。
  8. 連結が、(i)抗原の遺伝子改変、および(ii)抗原の油体−抗原複合体の形成が可能であるための、該抗原の化学的または酵素的修飾を含む、請求項3記載の方法。
  9. 油体の化学的修飾が、油体上に発現されたタンパク質のビオチン化であり、抗原もビオチン化され、かつビオチン化された油体が該ビオチン化された抗原にストレプトアビジンにより結合されている、請求項3〜8のいずれか1項記載の方法。
  10. 動物において免疫応答を誘起する方法であり、下記の工程を含む方法により作製された油体−抗原複合体を投与することを含む、方法:
    a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
    1)機能的に連結された細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
    2)(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列、(ii)機能的に連結されたリンカー分子をコードしている第二の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
    3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
    b)融合ポリペプチドの油体を含む後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖する工程;
    c)リンカー分子を含む油体を単離する工程;
    d)抗原の該油体へのリンカー分子を介した連結により、油体−抗原複合体を形成する工程;および
    e)油体−抗原複合体を動物へ投与する工程。
  11. 連結が、油体が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、化学的または酵素的手段によるリンカー分子を修飾することを含む、請求項10記載の方法。
  12. 連結が、抗原が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、化学的または酵素的手段による抗原を修飾することを含む、請求項10記載の方法。
  13. 連結が、抗原および油体が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、化学的または酵素的手段による抗原およびリンカー分子を修飾することを含む、請求項10記載の方法。
  14. 連結が、抗原が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、抗原を遺伝子改変することを含む、請求項10記載の方法。
  15. 連結が、(i)抗原の遺伝子改変、および(ii)抗原の油体−抗原複合体の形成が可能であるように、該抗原の化学的または酵素的修飾を含む、請求項10記載の方法。
  16. 動物において免疫応答を誘起する方法であり、下記の工程を含む方法により作製された油体−抗原複合体を投与することを含む、方法:
    a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
    1)機能的に連結された細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
    2)(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列、(ii)機能的に連結された抗原をコードしている第二の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
    3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
    b)抗原の後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖し、油体−抗原複合体の形成を生じる工程;
    c)油体−抗原複合体を単離する工程;
    d)該植物油体−抗原複合体を動物に投与する工程。
  17. 油体タンパク質がオレオシンである、請求項10〜16のいずれか1項記載の方法。
  18. 油体が植物から得られる、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
  19. 油体が油料種子植物の種子から得られる、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
  20. 油料種子植物が、アブラナ(Brassica)属の植物、アマ(Limum)属の植物、ダイズ(Glycine)属の植物、ベニバナ(Carthamus)属の植物、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis)属の植物からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
  21. 油体−抗原複合体が非経口的に投与される、請求項1〜20のいずれか1項記載の方法。
  22. 油体−抗原複合体が粘膜表面に投与される、請求項1〜20のいずれか1項記載の方法。
  23. 油体−抗原複合体が局所的に投与される、請求項1〜20のいずれか1項記載の方法。
  24. 免疫刺激分子が、油体−抗原複合体と共に投与される、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
  25. 下記の工程を含む、油体−抗原複合体の調製法:
    a)油体を単離する工程;および
    b)抗原を油体に連結し、油体−抗原複合体を形成する工程。
  26. 連結が、油体が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、化学的または酵素的手段により油体を修飾することを含む、請求項25記載の方法。
  27. 連結が、抗原が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、化学的または酵素的手段により抗原を修飾することを含む、請求項25記載の方法。
  28. 連結が、抗原および油体が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、化学的または酵素的手段により抗原および油体を修飾することを含む、請求項25記載の方法。
  29. 連結が、抗原が油体−抗原複合体を形成することが可能であるように、抗原を遺伝子改変することを含む、請求項25記載の方法。
  30. 連結が、(i)抗原の遺伝子改変、および(ii)抗原の油体−抗原複合体の形成が可能であるための、該抗原の化学的または酵素的修飾を含む、請求項25記載の方法。
  31. 油体の化学的修飾が、油体上に発現されたタンパク質のビオチン化であり、抗原もビオチン化され、かつビオチン化された油体がビオチン化された抗原にストレプトアビジンにより結合されている、請求項25〜30のいずれか1項記載の方法。
  32. 下記の工程を含む油体−抗原複合体を調製する方法:
    a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
    1)機能的に連結された細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
    2)(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列、(ii)機能的に連結されたリンカー分子をコードしている第二の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
    3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
    b)融合ポリペプチドの油体を含む後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖する工程;
    c)リンカー分子を含む該油体を単離する工程;
    d)抗原の該油体へのリンカー分子を介した連結により、油体−抗原複合体を形成する工程。
  33. 連結が、油体が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、化学的または酵素的手段によりリンカー分子を修飾することを含む、請求項32記載の方法。
  34. 連結が、抗原が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、化学的または酵素的手段により抗原を修飾することを含む、請求項32記載の方法。
  35. 連結が、抗原および油体が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、化学的または酵素的手段により抗原およびリンカー分子を修飾することを含む、請求項32記載の方法。
  36. 連結が、抗原が油体−抗原複合体の形成が可能であるように、抗原を遺伝子改変することを含む、請求項32記載の方法。
  37. 連結が、(i)抗原の遺伝子改変、および(ii)抗原の油体−抗原複合体の形成が可能であるように、該抗原の化学的または酵素的修飾を含む、請求項32記載の方法。
  38. 下記の工程を含む油体−抗原複合体を調製する方法:
    a)細胞へ下記を含むキメラ核酸配列を導入する工程:
    1)機能的に連結された細胞における転写の調節が可能である、第一の核酸配列;
    2)(i)リーディングフレーム内で連結された油体への標的化を提供するのに十分な油体タンパク質の部分をコードしている第一の核酸配列、(ii)機能的に連結された抗原をコードしている第二の核酸配列を含む組換え融合ポリペプチドをコードしている、第二の核酸配列;
    3)該細胞における転写終結が可能である、第三の核酸配列;
    b)抗原の後代細胞における発現を可能にする条件下で該細胞を増殖し、油体−抗原複合体の形成を生じる工程;
    c)油体−抗原複合体を単離する工程。
  39. 油体タンパク質がオレオシンである、請求項32〜38のいずれか1項記載の方法。
  40. 油体が植物から得られる、請求項25〜39のいずれか1項記載の方法。
  41. 油体が油料種子植物の種子から得られる、請求項25〜40のいずれか1項記載の方法。
  42. 油料種子植物が、アブラナ属の植物、アマ属の植物、ダイズ属の植物、ベニバナ属の植物、およびシロイヌナズナ属の植物からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
  43. 油体−抗原複合体を含有する、ワクチン製剤。
  44. 油体−抗原複合体が非経口投与に適している、請求項43記載のワクチン製剤。
  45. 油体−抗原複合体が経粘膜投与に適している、請求項43記載のワクチン製剤。
  46. 油体−抗原複合体が局所投与に適している、請求項43記載のワクチン製剤。
  47. 油体−抗原複合体および免疫刺激分子を含有する、ワクチン製剤。
  48. 請求項25〜42のいずれか1項に従い調製された油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤。
  49. 細菌、ウイルスまたは寄生病原体による感染症に対して動物を免疫処置する油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤の使用。
  50. 動物を癌細胞に対して免疫処置するための、油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤の使用。
  51. 自己免疫反応に関連した免疫応答を変調するために動物を免疫処置するための、油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤の使用。
  52. アレルギー反応に関連した免疫応答を変調するために動物を免疫処置するための、油体−抗原複合体を含有するワクチン製剤の使用。
  53. 請求項25〜42記載の方法のいずれか1項に従い調製した油体−抗原複合体を伴う、請求項49〜52記載のワクチン製剤の使用。
  54. 請求項25〜42記載の方法により調製されたワクチン製剤の使用。
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