JP2004512812A - 特発性全身てんかんについてのローカス、当該ローカスのミューテーション、及びてんかんの評価、診断、予後、または治療のための当該ローカスの使用方法 - Google Patents

特発性全身てんかんについてのローカス、当該ローカスのミューテーション、及びてんかんの評価、診断、予後、または治療のための当該ローカスの使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、特発性全身てんかんについてのローカス、当該ローカスのミューテーション、及びてんかんの評価、診断、予後、または治療のための当該ローカスの使用方法を提供し、特に、患者のSCN1A、SCN2A及びSCN3Aから選択される少なくとも一つの遺伝子、またはそれらと連鎖不均衡を示すDNA変異体、同等物またはミューテーションの遺伝子型を測定し、それによって患者のてんかんに対する素因及び/またはてんかんの罹患を測定する工程を含む、患者のてんかんに対する素因及び/またはてんかんの罹患を測定する方法、並びに医薬に対する患者の応答を予測する方法を提供する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、てんかんに関する。とりわけ本発明は、特発性全身てんかん(IGE)に関し、及び患者におけるてんかんとの結びつきを示す第2染色体にマッピングする3のローカスの同定に関する。本発明はさらに、これらのローカスの核酸配列及びタンパク質配列、これらの配列における変異体及びミューテーション、並びにてんかんの評価、診断、予後、または治療のためのその使用に関する。本発明はさらに、てんかん及び関連する神経学的疾患に対する治療上の利益を有する化合物を同定できる、SCN1A、SCN2A及び/またはSCN3Aを使用するスクリーニングアッセイを提供する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
てんかんは、全体の集団の約0.1%に生ずる、最も一般的な神経学的疾患の一つである。この疾患は、痙攣の形態で一過的な大脳機能不全を導く脳における発作性の異常な電気的放電によって特徴付けられる。痙攣は、てんかん性の放電が脳の一方の半球の一部に制限される場合部分的であり、それが開始時に脳の両方の半球に関与する場合全身性であると考慮される。てんかん症候群の現在の分類は、二つの基準に分けられる:1)臨床上及びEEGの特徴に従って、開始時に全身性または部分的である痙攣タイプ;並びに2)特発性、原因不明、且つ症候性である病因。症候性の痙攣は、脳傷害、CNS感染、移動性の疾患、及び代謝性の疾患を含む、複数の異種の原因を有する。全身性であれ部分的であれてんかんを有する患者の大多数(65%)において、基礎となる原因が存在せず(特発性)、または原因は隠されているか謎であると解される(原因不明)。また、特発性のてんかん症候群においては、痙攣以外の大脳の機能不全の証拠が存在せず、神経学的調査は正常である。この後者の群において、特に特発性全身てんかん(IGE)については遺伝的な要素が重要であるという証拠が現在増大している。最近の研究では、Berkovic等(1998)が、てんかんについて一卵性双生児全体で62%の一致割合を示した。この研究では、IGEについての76%という一致割合で、部分的なてんかんと比較して全身性のてんかんでより高い一致割合が見出された。分子遺伝学的アプローチを使用する最近の研究は、ヒトにおけるてんかんについての多くの可能性のある遺伝子が、膜イオンチャンネル及び関連タンパク質に関与することを示している。これらの研究は、二つのローカス[第20染色体のEBN1、KCNQ2遺伝子(カリウムチャンネル);並びに第8染色体のEBN2、KCNQ3遺伝子(これもカリウムチャンネル)]が同定されている良性家族性新生児痙攣の症候群(Bievert等, 1998; Charlier等, 1998; Singh等, 1998)、並びに常染色体優性夜行性前頭葉てんかん[ADNFLE−第20染色体、及びCHRNA4遺伝子(ニューロン性ニコチン酸アセチルコリンレセプターアルファ4サブユニット)]を含む(Steinlein等, 1995)。より最近、熱性痙攣を有する全身性てんかんよりなる新しい症候群(GEFS)の臨床上の記載が存在した。てんかん症候群の現在の分類に従って、この症候群は、痙攣特性と脳波記録的特性に基づいて、IGEのカテゴリーに含まれるであろう。しかしながら、熱性痙攣は、GEFSを有する全ての発端者に存在し、遺伝的形質のパターンは、明らかに常染色体優性であり、それは通常のIGE表現型の一部ではない。この独特のGEFS症候群は、脳電位型ナトリウムチャンネル(SCN1B)遺伝子のベータ−1サブユニットにおけるミューテーションと関連していることを示した(Wallace等, 1998)。さらに、本発明者らのグループを含む3の異なるグループが、この特異的な症候群(GEFS)を有する大きな血縁関係において第2染色体の別のローカスを同定した。この領域は、ナトリウムチャンネルのアルファサブユニット(SCNA)のクラスターを含む、多くの候補の遺伝子を含む。電位型ナトリウムチャンネルは、神経細胞及び筋肉における作用電位の生産において重要な役割を果たす。このアルファサブユニット(SCNA)は、このチャンネルの主要な構成成分であり、in vitroで細胞において発現される場合、有効なチャンネルを生産するために十分であろう。実際、ベータ−1及び2サブユニットは、アルファサブユニットを効果的なチャンネルにするのに必要である。3種のサブユニットの役割は、主にナトリウムの流れの迅速な不活性化により、チャンネルの運動特性を変更することであろう。SCN1B遺伝子においてGEFS症候群で見出されるミューテーションは、アルファサブユニットと共発現された場合、正常なSCNB1に比較してナトリウムチャンネルの迅速な不活性化を減少することが示された。これは、ミューテーションが、ヒトにおける痙攣を導く脳の超興奮状態を誘導するメカニズムであろう。興味深いことに、抗痙攣薬のほとんどの作用のメカニズムは、ニューロンの反復性の刺激化の減少を通じて生じるものであり、これは迅速な不活性化に依存することが周知である。これらの発見は、さらなるてんかん遺伝子がイオンチャンネルのミューテーションによって同定される可能性を導く。
【0003】
かくして、IGEがナトリウムチャンネル(SCNA)におけるミューテーションによって引き起こされるかどうかを同定する必要性が存在する。SCNAのミューテーションがGEFと関連するかどうかを評価する必要性も存在する。GEFSまたはIGEの特定の表現型を与える、ナトリウムチャンネルの迅速な不活性化に影響するミューテーションが、SCNA遺伝子を含む領域にリンクしているかどうかを決定する必要性も存在する。
【0004】
本発明は、これら及び他の必要性を適合することを求める。
【0005】
この記載は、数多くの文献を参照し、それらの内容は完全にここに参考として取り込まれる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一つの実施態様では、本発明は、てんかんの素因を測定するための遺伝学的アッセイに関する。
【0007】
別の実施態様では、本発明は、てんかん及びその最適な治療を決定する(例えば、治療モダリティーをガイドし、それによって特定の臨床上の状態に治療を最適化する)ためのマーカーとしての、本発明のローカスの少なくとも一つまたはその同等物(例えば、本発明のローカスと連鎖不均衡を示すローカス)の使用に関する。
【0008】
また別の実施態様では、本発明は、てんかんの治療及び/または予防のための薬剤をスクリーニングするアッセイに関する。特定の実施態様では、そのようなアッセイは、本発明のローカスの一つでの周知の遺伝子型を有する患者から得た細胞を使用してデザインできる。組換えベクターを有するこれらの細胞は、SCN1A及び/またはSCN2A及び/またはSCN3A及びその組み合わせの機能性の評価を可能とすることができる。本発明に従って使用できるアッセイの非制限的な例は、米国特許第4,981,784号に記載されたものと同等なcis−transアッセイを含む。
【0009】
本発明のローカスの少なくとも一つの対立遺伝子変異の測定は、てんかんに関する素因とリンクした他の遺伝子/マーカーにおける対立遺伝子変異の測定と組み合わせることができると解されるであろう。この遺伝子型分析の組み合わせは、てんかんのより優れた診断プログラム及び/または治療を導くであろう。そのようなマーカーの非制限的な例は、SCN1B、EBN1、KCNQ2、EBN2、KCNQ3、ADNFLE及びCHRA4を含む。
【0010】
それ故、本発明に従って、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aからなる群から選択される少なくとも一つのローカスの遺伝子型を測定することを含む、てんかんに関する患者の素因を測定する方法が提供される。一つの特定の実施態様では、本発明は、患者の生物学的サンプル中の多型を測定し、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aから選択されるローカスの少なくとも一つの対立遺伝子変異を分析し、それによっててんかんに関する患者の素因を測定することを含む、てんかんに関する患者の素因を決定する方法を提供する。
【0011】
本発明に従って、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の測定可能な生物学的活性を含むスクリーニングアッセイを実行し;試験化合物とスクリーニングアッセイを接触させ;並びに試験化合物がSCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の生物学的活性を調節するかどうかを検出することを含み、ここで生物学的活性を調節する試験化合物は、治療上の効果を有する化合物である、てんかんまたは他の神経学的疾患に対する治療効果を有する化合物を、化合物のライブラリーから同定するための方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の測定可能な生物学的活性を含むスクリーニングアッセイを実行し;試験化合物とスクリーニングアッセイを接触させ;並びに試験化合物がSCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の生物学的活性を調節するかどうかを検出することを含み、ここで生物学的活性を調節する試験化合物は、治療上の効果を有する化合物である方法によって同定される、てんかんまたは他の神経学的疾患に対する治療上の効果を有する化合物を提供する。
【0013】
SCN1A、SCN2A及びSCN3Aは、ナトリウムチャンネル、ニューロン性タイプI、アルファサブユニットアイソフォームについての遺伝子及びタンパク質を指し、OMIM # 182389(Online Mendelian Inheritance in Man)で記載される。これらの遺伝子は、それぞれ脳タイプI、II及びIIIとしても周知である、脳における構造的に別個のナトリウムチャンネルアルファサブユニットアイソフォームである。各種のアイソフォームについての遺伝子、cDNA及びタンパク質配列は、配列番号1−98に示されている。
【0014】
遺伝子型を測定するための数多くの方法が、両業者に周知であり利用可能である。全てのこれらの遺伝子型測定法が、本発明の範囲内にある。本発明の方法の特定の実施態様では、遺伝子型の測定は、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aからなる群から選択されるローカスの一つの部分の増幅を含み、特定の好ましい実施態様では、前記増幅はポリメラーゼ連鎖反応を使用して実施される。
【0015】
特定の実施態様では、プライマーのペアが、本発明のマーカーの一つの部分を特異的に増幅するようにデザインされる。このプライマーのペアは好ましくは、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの部分を増幅するために(または本発明のローカスの少なくとも一つと連鎖不均衡を示すローカスの部分を増幅するために)SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの核酸配列から、またはこれらの遺伝子の隣接配列から由来する。数多くのプライマーがここで例示される一方、以下に記載されるSCN1A、SCN2A及びSCN3A核酸分子の配列を使用して、他のプライマーペアがデザインできる。同様のものは、本発明のマーカーと連鎖不均衡を示すローカスから得られるプライマーペアにも適用されるであろう。
【0016】
制限断片長多型は、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aローカス(及びその同等物)での多型を測定するために使用できる。
【0017】
ヒトSCN1A、SCN2A及びSCN3Aは、本発明に従った好ましい配列(核酸及びタンパク質)である一方、本発明はそれに制限されるべきではない。実際、進化を通じたこれらの遺伝子の有意な変換の観点から、異なる種、好ましくは哺乳動物種から得た配列が、本発明のアッセイにおいて使用できるであろう。一つの非制限的な例は、ヒトSCN1A遺伝子と95%の同一性を示すラットSCN1Aオーソローグ遺伝子である。マウスSCN1A遺伝子の有意な変換もまた、OMIMで観察できる(前記参照)。
【0018】
ここでの記載に使用される用語の明確で一致した理解を提供するための、数多くの定義を以下に提供する。
【0019】
ここで使用される用語、「RFLP」は、制限断片長多型を指す。
【0020】
用語、「多型」「DNA多型」等は、集団において一つより多い変形または変異で存在するヒトゲノムにおけるいずれかの配列を指す。
【0021】
用語、「連鎖非平衡」は、二つのローカスの物理的近接性のため、二つの異なる多型DNA配列の一つ以上の対立遺伝子の間のいずれかの度合いのランダムでない遺伝学的会合を指す。非平衡なリンクは、一つの部分におけるDNA多型(またはマーカー)の対立遺伝子が、近接する他のDNA部分に位置する異なるDNA多型(またはマーカー)の対立遺伝子とランダムでない会合を示す結果として、所定の染色体上で互いに非常に近接した二つのDNA部分が、数世代の間で分離しないことを維持する傾向にある場合に存在する。よって、SCN1A、SCN2A及び/またはSCN3A遺伝子での本発明の多型と連鎖不均衡を示すマーカーの試験(間接的試験)は、直接的なSCN1A、SCN2A及びSCN3A多型についての試験とほぼ同じ情報を与えるであろう。互いに非常に近接する二つのDNA多型が研究される場合に、ヒトゲノムを通じてこの状況に遭遇する。連鎖不均衡は、当該技術分野で周知であり、各種の度合いの連鎖不均衡が、あるものが他のものとより緊密に会合するように、二つの遺伝学的マーカーの間で遭遇することができる。
【0022】
SCN1A、SCN2A及び/またはSCN3A遺伝子においてここで同定された多型またはミューテーションのいくつかが、前記遺伝子のコード領域内に存在し、それ故発現されるため、本発明はDNAのレベル(ゲノムDNA、増幅化DNA、cDNA等のいずれかで)での多型/ミューテーションの同定に制限されるべきではないことは、当業者に認識されるであろう。実際、ここで同定される多型及び/またはミューテーションは、mRNAまたはタンパク質のレベルで検出することができる。そのようなmRNAまたはタンパク質での多型の同定の検出は、本発明が属する技術分野で周知である。非制限的な例として、mRNAにハイブリダイズするように定められたオリゴ、またはコードされる多型に特異的(即ち、別個の多型によってコードされるタンパク質断片に特異的な)な抗体のようなリガンドに基づく検出が含まれる。
【0023】
ヌクレオチド配列は、当該技術分野で一般的に使用され、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionの推奨に従って、一文字ヌクレオチド記号を使用して、左から右に5’から3’方向で、一本の鎖によってここで提示される。
【0024】
他に規定がなければ、ここで使用される化学的及び技術的な用語及び命名は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、細胞培養の方法、感染、分子生物学的方法等は、当該技術分野で使用される一般的方法である。そのような標準法は、例えばSambrook等(1989, Molecular Cloning − A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories)及びAusubel等(1994, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, New York)のような参考文献に見出すことができる。
【0025】
ここでの記載は、通常使用される数多くの組換えDNA(rDNA)技術の用語を指す。言うまでもなく、そのようなrDNAの用語の選択された例の定義は、明確性及び一致性のため提供される。
【0026】
ここで使用される用語、「核酸分子」は、ヌクレオチドのポリマーを指す。その非制限的な例は、DNA(即ち、ゲノムDNA、cDNA)、RNA分子(即ちmRNA)及びDNAとRNAのキメラを含む。核酸分子は、クローニング法によって得られ、合成によっても得られ得る。DNAは二本鎖でも一本鎖(コード鎖または非コード鎖[アンチセンス])でも良い。
【0027】
当該技術分野で周知の用語、「組換えDNA」は、DNA部分の結合から生じたDNA分子を指す。これは、遺伝学的操作をしばしば指す。
【0028】
用語、「DNA部分」は、ヌクレオチドの直線状ストレッチまたは配列を含むDNA分子を指すようにここで使用される。遺伝学的コードに従って読み取られる配列は、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質断片等と称され得るアミノ酸の直線状ストレッチまたは配列をコードできる。
【0029】
用語、「増幅ペア」は、本発明のオリゴヌクレオチド(オリゴ)のペアをここで指し、それは各種のタイプの増幅法の一つ、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応によって選択された核酸配列を増幅する際に共に使用されるように選択される。他のタイプの増幅法は、以下により詳細に説明される、リガーゼ連鎖反応、鎖脱着増幅、核酸配列ベース増幅が含まれる。当該技術分野で周知のように、オリゴは選択された条件の下で相補的配列に結合するようにデザインされる。
【0030】
本発明を実施するための核酸(即ちDNA、RNAまたはそれらのキメラ)は、周知の方法に従って得られて良い。
【0031】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、特定のアッセイフォーマット、及び特定の必要性、及び使用される標的ゲノムに依存して、いずれかの適切な長さを有して良い。一般的に、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、少なくとも12ヌクレオチドの長さ、好ましくは15から24分子の間であり、それらは選択された核酸増幅システムに特に適するように採用されて良い。当該技術分野で一般的に周知のように、オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーは、その標的化配列とのはハイブリダイゼーションの融点を考慮することによってデザインできる(以下参照、及びSambrook等, 1989, Molecular Cloning − A Laboratory Manual, 第2版, CSH Laboratories; Ausubel等, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc., N.Y.参照)。
【0032】
用語、「DNA」分子または配列(並びに場合により用語、「オリゴヌクレオチド」)は、デオキシリボヌクレオチド、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)及び/またはシトシン(C)を含む分子を指す。場合により、二本鎖形態において、それはここで定義される用語である、本発明に従った「調節エレメント」を含むまたは取り込む。用語、「オリゴヌクレオチド」または「DNA」は、直鎖状DNA分子または断片、ウイルス、プラスミド、ベクター、染色体または合成由来のDNAにおいて見出すことができる。ここで使用されるような特定の二本鎖DNA配列は、5’から3’方向の配列のみを与える通常の変換に従って記載されて良い。もちろん周知なように、DNA分子または配列はしばしば一本鎖形態で存在する。
【0033】
「核酸ハイブリダイゼーション」は一般的に、適切な条件の下で熱力学的に嗜好する二本鎖構造を形成する、相補的塩基配列を有する二つの一本鎖核酸分子のハイブリダイゼーションを指す。ハイブリダイゼーション条件の例は、前述の二つの実験室マニュアルに見出され(Sambrook等, 1989, 前記参照及びAusubel等, 1989, 前記参照)、当該技術分野で一般的に周知である。例えば周知のサザンブロッティング法において、ニトロセルロースフィルターへのハイブリダイゼーションの場合、50%ホルムアミド、高い塩(5×SSCまたは5×SSPE)、5×デンハルト溶液、1% SDS、及び100μg/ml変性キャリアーDNA(即ちサケ精子DNA)を含む溶液において、ニトロセルロースフィルターをラベル化プローブと共に65℃で一晩インキュベートすることができる。次いで非特異的に結合するプローブは、所望の厳密性の観点で選択された温度:室温(低い厳密性)、42℃(中程度の厳密性)または65℃(高い厳密性)で、0.2×SSC/0.1% SDSにおける数回の洗浄によってフィルターから洗い流すことができる。選択された温度は、DNAハイブリッドの融点(Tm)に基づく。もちろん、RNA−DNAハイブリッドは、形成し検出することができる。そのような場合、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、当業者によって周知の方法に従って採用できる。厳密な条件が、好ましくは使用される(Sambrook等, 1989, 前記参照)。
【0034】
本発明のプローブは、天然で存在する糖−リン酸骨格、並びにホスホロチオアート、ジチオナート、アルキルホスホナート、及びアルファ−ヌクレオチド等を含む修飾骨格で使用できる。変性糖−リン酸骨格は、Miller, 1988, Ann. Reports Med. Chem. 23: 295及びMoran等, 1987, Nucleic Acids Res., 14: 5019によって一般的に教示される。本発明のプローブは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のぞれぞれより構築することができ、好ましくはDNAより構築できる。
【0035】
プローブが使用できる検出方法のタイプは、サザンブロット(DNA検出)、ドットまたはスロットブロット(DNA、RNA)及びノーザンブロット(RNA検出)を含む。あまり好ましくはないが、ラベル化タンパク質もまた、それが結合する特定の核酸配列を検出するために使用できる。より最近、PNAが記載されている(Nielsen等, 1999, Current Opin. Biotechnol. 10: 71−75)。PNAは、本発明の多型を検出するために使用できる。他の検出法は、ディップスティックセットアップにプローブを含むキット等を含む。
【0036】
本発明は、特定の核酸配列の検出ためのラベルの使用に特に依存しないが、そのようなラベルは、検出の感度を増大することによって有益であろう。さらに、それは自動化を可能にする。プローブは、多くの周知に方法に従ってラベルできる(Sambrook等, 1989, 前記参照)。ラベルの非制限的な例は、H、14C、32P及び35Sを含む。検出可能なマーカーの非制限的な例は、リガンド、フルオロホア、化学発光薬、酵素、及び抗体を含む。本発明の方法の感度を増大可能である、プローブと共に使用するための他の検出可能なマーカーは、ビオチン及び放射性ヌクレオチドを含む。特定のラベルの選択は、それはプローブに結合する態様に支配されることは当業者に明白であろう。
【0037】
一般的に周知なように、放射性活性ヌクレオチドは、いくつかの方法によって本発明にプローブ内に取り込むことができる。その非制限的な例は、ガンマ32P ATPとポリヌクレオチドキナーゼを使用するプローブの5’末端へのリン酸化、放射性活性dNTPの存在下で大腸菌のPol Iのクレノー断片の使用(即ち、低融解性ゲルにおけるランダムオリゴヌクレオチドプライマーを使用する不均一にラベル化されたDNAプローブ)、一つ以上の放射性活性NTPの存在下でのDNA部分の転写のためのSP6/T7システムの使用等を含む。
【0038】
ここで使用される、「オリゴヌクレオチド」または「オリゴ」は、二つ以上のヌクレオチド(リボまたはデオキシリボヌクレオチド)を有する分子を規定する。オリゴのサイズは、特定の状況によって支配され、最終的にその特定の使用に依存し、従って当業者によって採用されるであろう。オリゴヌクレオチドは、周知の方法に従って化学的に合成でき、またはクローニングによって由来できる。
【0039】
ここで使用される「プライマー」は、標的配列にアニールし、それによって適切な条件下で核酸合成のための開始点として機能できる二本鎖領域を作製できるオリゴヌクレオチドを規定する。
【0040】
選択されたまたは標的核酸配列の増幅は、数多くの適切な方法によって実行されて良い。一般的にKwoh等, 1999, Am. Biotechnol. Lab. 8: 14−25参照。数多くの増幅法が記載されており、当業者の特定の必要性に適合するように容易に採用できる。増幅法の非制限的な例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖脱着増幅(SDA)、転写ベース増幅、Q−ベータレプリカーゼシステム、及びNASBAを含む(Kwoh等, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 1173−1177; Lizardi等, 1988, BioTechnology 6: 1197−1202; Malek等, 1994, Methods Mol. Biol., 28: 253−260;並びにSambrook等, 1989, 前記参照)。好ましくは、増幅はPCRを使用して実施されるであろう。
【0041】
ポリメラーゼ連鎖反応は、周知の方法に従って実施される。例えば米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;及び第4,965,188号参照(全ての三種の米国特許の開示は、参考としてここに取り込まれる)。一般的にPCRは、検出される特異的配列の各鎖に対する一つのオリゴヌクレオチドプライマーでの、ハイブリダイゼーション条件下での核酸サンプル(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼの存在下で)の処理を含む。合成される各プライマーの伸長産物は、ハイブリダイズする特異的配列の各鎖に十分相補的なプライマーと、二つの核酸鎖のそれぞれに対して相補的である。各プライマーから合成された伸長産物はまた、同じプライマーを使用する伸長産物のさらなる合成のためのテンプレートとして機能できる。伸長産物の合成の十分に多いラウンドに引き続き、検出される配列または配列類が存在するかどうかを評価するためにサンプルを分析する。増幅か配列の検出は、ゲル電気泳動に引き続くEtBrでの染色の後の視覚化、または周知の方法に従った検出可能なラベルの使用等によって実施されて良い(PCR Protocols, A guide to Methods and Amplifications, Michael等編, Acad. Press, 1990)。
【0042】
リガーゼ連鎖反応(LCR)は、周知の方法に従って実施される(Weiss, 1991, Science 254: 1292)。所望の必要性に適合するプロトコールの採用は、当業者によって実施できる。鎖脱着増幅(SDA)もまた、周知の方法に従って実施され、特定の必要性に適合するようにそれを採用できる(Walker等, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 392−396;並びにibid., 1992, Nucleic Acids Res. 20: 1691−1696)。
【0043】
ここで使用される用語、「遺伝子」は、当該技術分野で周知であり、単一のタンパク質またはポリペプチドを規定する核酸配列に関する。「構造的遺伝子」は、特異的なアミノ酸配列を有し、それによって特異的なポリペプチドまたはタンパク質を生じる、RNAに転写されてタンパク質補翻訳されるDNA配列を規定する。本発明の核酸配列は、当該技術分野で周知である数多くの確立されたキットフォーマットのいずれかにおいて取り込まれ得ることは、当業者に容易に認識されるであろう。
【0044】
DNA分子の「異種」(即ち異種遺伝子)領域は、天然でそれと会合していると見出されないより大きい部分内のDNAの一部分である。用語、「異種」は、天然で共に結合していない二つのポリペプチド部分を規定するために同じように使用できる。異種遺伝子の非制限的な例は、異種コントロール領域または異種ポリペプチドに並列または結合できる、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ等のようなレポーター遺伝子を含む。
【0045】
用語、「ベクター」は、当該技術分野で一般的に周知であり、プラスミドDNA、ファージDNA、ウイルスDNA等を規定し、それらは本発明のDNAをクローン化できるDNAビヒクルとして機能できる。
【0046】
用語、「発現」は、遺伝子がmRNAに転写され(転写)、次いでmRNAが一つ以上のポリペプチド(またはタンパク質)に翻訳される(翻訳)プロセスを規定する。
【0047】
用語、「発現ベクター」は、宿主内へのトランスフォーメーションに引き続き、挿入された配列の発現を可能にするように定められた、前述のベクターまたはビヒクルを指す。クローン化遺伝子(挿入された配列)は、プロモーター配列のようなコントロールエレメント配列の制御の下に通常配置される。そのようなコントロール配列の下へのクローン化遺伝子の配置は、コントロールエレメントまたは配列に機能的に結合しているとしばしば称される。
【0048】
機能的に結合した配列は、同じRNA転写産物に転写される二つの部分を含んでも良い。かくして、プロモーターと「レポーター配列」のような二つの配列は、プロモーターに指導される転写が、レポーター配列のRNA転写物を生産する場合に、機能的に結合している。「機能的に結合している」ためには、二つの配列が互いにすぐ隣接していることは必要ではない。
【0049】
発現コントロール配列は、ベクターが原核生物または真核生物宿主または両者(シャトルベクター)において、機能的に結合した遺伝子を発現するようにデザインされるかどうかに依存して変化し、エンハンサーエレメント、終結配列、組織特異的エレメント、及び/または翻訳開始部位及び終結部位のような転写エレメントをさらに含んでも良い。
【0050】
原核生物での発現は、興味あるDNA配列によってコードされるタンパク質を大量に調製するために有用である。このタンパク質は、サイズ及び電荷のようなその固有の特性を利用する標準的プロトコール(即ち、SDSゲル電気泳動、ゲル濾過、遠心分離、イオン交換クロマトグラフィー等)に従って精製できる。さらに興味あるタンパク質は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより精製できる。精製されたタンパク質は、治療上の応用のために使用できる。
【0051】
DNA構築物は、本発明のオリゴヌクレオチド配列に機能的に結合したプロモーターを含むベクターであっても良く、それは次に、ルシフェラーゼレポーター分子のための遺伝子のような異種遺伝子に機能的に結合する。「プロモーター」は、細胞内のRNAポリメラーゼに直接または間接に結合でき、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始することができるDNA調節領域を指す。本発明の目的のために、プロモーターはその3’末端で転写開始部位に結合し、検出可能な前述のバックグランドのレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に延びる。プロモーターの内部では、転写開始部位(S1ヌクレアーゼでマッピングすることにより簡便に規定される)、並びにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。真核生物プロモーターは、常にではないがしばしば「TATA」ボックス及び「CCAT」ボックスを含むであろう。原核生物プロモーターは、−10及び−35コンセンサス配列に加えてシャインダルガノ配列を含む。
【0052】
本発明の一つの実施態様に従って、発現ベクターは、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aナトリウムチャンネルの特異的対立遺伝子の機能性を評価するように構築できる。そのような発現ベクターの非制限的な例は、本発明に従ったナトリウムチャンネル(またはその一部)の一つをコードする核酸配列を含むベクターを含む。これらのベクターは、細胞内にトランスフェクトできる。本発明に従ったナトリウムチャンネルのアルファサブユニットの配列、並びにそれらの構造−機能相関関係は、当業者に周知の数多くの方法によって評価できる。一つの非制限的な例は、β−1及びβ−2サブユニットと、本発明に従ったアルファサブユニットの配列を発現する細胞の使用を含む。例えば、てんかんにリンクしたミューテーションを有するアルファサブユニットを、コントロールとして当該ミューテーションを欠く配列と比較できる。そのような細胞において、ナトリウムチャンネルの機能性を、当業者に周知なように試験でき、これらの細胞は、ナトリウムチャンネルの活性を調節できる試薬のスクリーニングのために使用できる。例えば、ナトリウムチャンネルの超興奮状態を減少するであろう試薬を試験し選択できる(例えば、迅速な不活性化の減少)。他のナトリウムチャンネルに影響することが当業者に周知である試薬が、例えば分離的にまたはバッチで試験できる。もちろん、これらの細胞によって発現されるSCN1A、SCN2A及び/またはSCN3A遺伝子は、随意に修飾できる(例えば、in vitroミュータジェネシス等によって)と解されるであろう。
【0053】
ここで使用される用語、「機能的な誘導体」は、核酸またはアミノ酸配列であれ配列、起源となる配列のものと実質的に同等である生物学的活性(機能または構造のいずれか;例えばナトリウムチャンネル機能または構造)を維持する分子の機能的な誘導体の意味を表す。この機能的な誘導体または同等物は、天然誘導体でも良く、または合成的に調製されても良い。そのような誘導体は、タンパク質の生物学的活性が保存されていることを条件に、一つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するアミノ酸配列を含む。同じことは、配列の生物学的活性が一般的に維持されていることを条件に、一つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、または付加を有することができる核酸配列の誘導体にも当てはまる。タンパク質配列に関する場合、置換しているアミノ酸は一般的に、置換されたアミノ酸のものと同様である物理化学的特性を有する。同様な物理化学的特性は、電荷の同等性、大きさ、疎水性、親水性等を含む。用語、「機能的な誘導体」は、本発明の主題の「断片」、「部分」、「変異体」、「類似体」または「化学的誘導体を含むように企図される。アミノ酸の遺伝学的コード、物理化学的特徴、保存的ミューテーションと非保存的ミューテーションに関する教示は、当該技術分野で周知である。そのような情報を教示する文献の非制限的な例は、Stryer, Biochemistry, 第3版;及びLehninger, Biochemistry, 第3版である。本発明の機能的な誘導体は、化学的に合成することができ、または組換えDNA法を通じて生産することができ、全てのこれらの方法は当該技術分野で周知である。
【0054】
用語、「変異体」は、本発明のタンパク質または核酸と構造及び生物学的活性において実質的に同等であるタンパク質または核酸分子をここで指す。
【0055】
ここで使用される「化学的誘導体」は、本発明の主題の通常は一部ではないさらなる化学的部分を包含するように意味する。そのような部分は、誘導体の物理化学的特性に影響するであろう(即ち、可溶性、吸着性、半減期、毒性の減少等)。そのような部分は、Remington’s Pharmaceutical Science (1980)に例示されている。ポリペプチドまたは核酸配列にこれらの物理化学的部分を結合する方法は、当該技術分野で周知である。
【0056】
用語、「対立遺伝子」は、染色体の所定のローカスを示す遺伝の別の形態を規定する。
【0057】
通常知られているように、「ミューテーション」は、娘細胞に伝達できる遺伝学的物質中の検出可能な変化である。周知のように、ミューテーションは、例えば一つ以上のデオキシリボヌクレオチドにおける検出可能な変化であっても良い。例えばヌクレオチドは、新たな部分の付加、欠失、置換、逆転、またはトランスポーズであって良い。自発的なミューテーション、及び実験的に誘導されたミューテーションが存在する。核酸分子のミューテーションの結果は、ミュータント核酸分子である。ミュータントポリペプチドは、このミュータント核酸分子からコードされることができる。
【0058】
ここで使用される用語、「精製された」は、細胞構成成分から分離されている分子を指す。かくして例えば、「精製タンパク質」は、天然で見出されないレベルに精製されている。「実質的に精製された」分子は、全ての他の細胞構成成分を欠いている分子である。
【0059】
ここで使用される「SCNA生物学的活性」は、SCN1A、SCN2AまたはSCN3A遺伝子またはタンパク質(ここでは場合によりSCNA遺伝子またはSCNAタンパク質を集合的に称される)のいずれかの検出可能な生物学的活性を指す。これは、SCNA遺伝子またはタンパク質に寄与可能ないずれかの生理学的機能を含む。それは、ナトリウムまたは関連イオンの流失であるSCNAタンパク質の特異的な生物学的活性を含むことができる。これは、1)チャンネルを開くのに必要な膜脱分極の強さの測定値である活性化の電位差依存性、2)残余の膜電位で開くのに利用可能なチャンネルの分画の測定値である定常状態の不活性化の電位差依存性、並びに3)不活性化のタイムコースを制限することなく含むチャンネル特性の測定を含む。ラージスケールで、SCNA生物学的活性は、細胞を通じた衝撃の伝達を含み、ここでSCNAタンパク質のモジュレーターによって引き起こされる伝達特性の変化が同定できる。そのようなこれらの生物学的活性の測定の非制限的な例は、細胞内のイオンの一過的な蓄積、膜脱分極のダイナミクス等を通じて直接または間接に実施されて良い。しかしながら、SCNA生物学的活性は、ここで同定されるこれらの最も重要な生物学的活性に制限されない。生物学的活性は、化合物、基質、相互作用タンパク質等とのSCNAの単純な結合またはpKa分析を含んでも良い。例えば、そのようなSCNA結合または相互作用を増大または阻害する能力に対する試験化合物の効果を測定することによって、本発明に従ったSCNAの生物学的活性が測定される。SCNA生物学的活性は、当該技術分野で周知の方法で測定することができる構造変化、リン酸化状態、またはタンパク質のいずれかの他の特性のような、SCMAんも標準的な生化学的測定を含む。最後にSCNAS生物学的活性はまた、SCNA遺伝子の転写若しくは翻訳に関する活性、またはそのような転写若しくは翻訳産物のいずれかの生物学的活性を含む。
【0060】
ここで使用される用語、「分子」、「化合物」、「薬剤」または「リガンド」は互換的に使用され、天然、合成、または半合成分子または化合物を広く指す。それ故用語、「分子」は、例えば化学分子、マクロ分子、細胞、または組織抽出物(食物または動物由来の)等を表す。分子の非制限的な例は、核酸分子、ペプチド、リガンド(例えば抗体及び炭水化物を含む)、及び製薬学的薬剤を含む。前記薬剤は、ランダムスクリーニング、合理的選択を含む各種の手段によって、並びに例えばコンピューターモデリングのようなタンパク質またはリガンドモデリング法を使用する合理的デザインによって、選択されスクリーニングできる。用語、「合理的に選択される」または「合理的にデザインされる」は、本発明の相互作用ドメインの構造に基づいて選択されている化合物を規定するように意味する。当業者に理解されるように、天然に存在しない修飾を有するマクロ分子もまた、用語、「分子」の範囲に含まれる。例えば、製薬産業で周知であり、一般的にペプチド類似体と称されるペプチド模倣体は、前述のようなモデリングによって生産できる。同様に好ましい実施態様として、本発明のポリペプチドは、その安定性を増大するために修飾される。ほとんどの場合で、この修飾はタンパク質の生物学的活性を改変すべきでないと理解されるはずである。本発明の教示に従って同定される分子は、ナトリウムチャンネルを通じたナトリウム輸送が、本発明に従って同定された遺伝子の一つにおいてミューテーション(またはその組み合わせ)により影響を受けている疾患または疾病において治療上の価値を有する。別法として、本発明の教示に従って同定された分子は、アルファサブユニットナトリウムチャンネルの活性、及び/または神経細胞及び筋細胞における作用電位を調節できる化合物の開発において有用性が見出される(例えば、正常レベルへのナトリウムチャンネルの迅速な不活性化を回復する)。
【0061】
ここで使用される、アゴニスト及びアンタゴニストは、そのようなアゴニストまたはアンタゴニスト特性を有する周知の化合物の増強剤を含む。一つの実施態様として、本発明に従ったナトリウムチャンネルの迅速な不活性化の調節剤は、固定期間で化合物または分子の混合物若しくはライブラリーと、インディケーター細胞を接触させることによって同定され選択できる。
【0062】
ここで使用される用語、「インディケーター細胞」は、本発明に従った少なくとも一つのナトリウムチャンネルアルファサブユニット(SCNA)を発現する細胞を指す。前述のように、そのようなインディケーター細胞は、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用できる。特定の実施態様では、インディケーター細胞は、本発明の遺伝子型の組み合わせの選択された誘導体、断片、ホモローグまたはミュータントを発現するように操作されている。細胞は、酵母細胞、または哺乳動物細胞のような高等真核生物細胞であっても良い。一つの特定の実施態様として、インディケーター細胞は、当該技術分野で周知のトゥーハイブリッドシステムの使用を可能にする酵母細胞含有ベクターであり(Ausubel等, 1994, 前記参照)、化合物またはそのライブラリーを試験するために使用できる。別の実施態様として、米国特許第4,981,784に記載されたcis−transアッセイを採用でき、本発明に従って使用できる。そのようなインディケーター細胞は、広範囲の試験分子をハイスループットで迅速にスクリーニングするために使用できる。特定の実施態様として、レポーター遺伝子はルシフェラーゼまたはベータ−Galである。
【0063】
「in vivo」実験モデルを、「in vitro」アッセイを実施するために使用できることが理解されるであろう。例えば、インディケーター細胞からの細胞抽出物を準備し、「in vitro」試験において使用できる、その非制限的な例は、結合アッセイを含む。
【0064】
ある実施態様では、融合タンパク質を発現することが有益であろう。その構築物のデザイン、及び融合タンパク質の発現と生産は、当該技術分野で周知である(Sambrook等, 1989, 前記参照;及びAusubel等, 1994, 前記参照)。
【0065】
そのような融合タンパク質の非制限的な例は、ヘマグルチン融合物、及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合物、及びマルトース結合タンパク質(MBP)融合物を含む。特定の実施態様では、融合されている二つのポリペプチド配列の間でプロテアーゼ切断部位を導入することが有益であろう。そのような二つの異種融合ポリペプチドの間でのプロテアーゼ切断部位は、当該技術分野で周知である。
【0066】
特定の実施態様では、宿主細胞からの融合タンパク質の分泌を可能にするシグナルペプチド配列に、本発明のタンパク質を融合することが有益であろう。多様な生物由来のシグナルペプチドが、当該技術分野で周知である。細菌OmpA及びコ酵母Suc2は、シグナル配列を含むタンパク質の二つの非制限的な例である。特定の実施態様では、相互作用ドメインと異種ポリペプチド部分の間でリンカー(一般的に周知)を導入することが有益であろう。そのような融合タンパク質は、本発明のアッセイ、並びに精製目的、検出目的等において有用性が見出される。
【0067】
確かに、本発明を実施するのに有用な配列及びポリペプチドは、ミュータント、ホモローグ、サブタイプ、対立遺伝子等を制限されることなく含む。一般的に、本発明の配列は、ナトリウムチャンネルの機能的な(例え欠損型であれ)アルファサブユニット(SCNA)をコードすべきである。本発明のSCNA配列、変異体、誘導体、またはその断片がその機能を維持するかどうかを、本発明の教示とアッセイ、及び当該技術分野での一般的な教示を使用することによって測定することができることは、当業者に明らかであろう。
【0068】
本発明のSCNAタンパク質は、その構造−機能相関関係を分析し、調節化合物のより優れたデザインと同定を可能にするため、例えばin vitroミュータジェネシスによって修飾できる。しかしながら、その生物学的機能を損失しているいくつかの誘導体または類似体は、例えば抗体を生産するために未だ有用性が見出される。これらの抗体は、検出または精製目的で使用できる。さらにこれらの抗体は、競合的または非競合的なインヒビターとして機能でき、本発明のSCNAタンパク質の活性の調節剤であることが見出される。
【0069】
宿主細胞またはインディケーター細胞は、DNAが細胞の内部に導入された場合、その外因性または異種DNA(例えばDNA構築物)によって「トランスフェクト」されている。トランスフェクトDNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNA内に挿入(共有結合で結合)されてもされなくても良い。例えば原核生物、酵母、及び哺乳動物細胞では、トランスフェクトDNAは、プラスミドのようなエピソーマルなエレメントで維持されても良い。真核生物細胞に関しては、安定にトランスフェクトされた細胞は、染色体複製を通じて娘細胞によって遺伝されるように、トランスフェクトDNAが染色体内に挿入されているものである。この安定性は、トランスフェクトDNAを含む娘細胞の集団を含む細胞系またはクローンを確立する、真核生物細胞の能力によって示されてる。トランスフェクション法は、当該技術分野で周知である(Sambrook等, 1989, 前記参照;Ausubel等, 1994, 前記参照)。インディケーターとしての哺乳動物細胞の使用は、中間因子を備えるという利点を提供でき、それは低級真核生物または原核生物では存在しない、例えば試験される二つのポリペプチドの相互作用を可能にする。例えば哺乳動物細胞からの抽出物は、特定の因子を欠如を補償するために、特定の実施態様で使用できると解されよう。
【0070】
一般的に、抗体(モノクローナル抗体及びハイブリドーマを含む)を調製する方法、及び抗体を使用する抗原の検出方法は、当該技術分野で周知である(Campbell, 1984, ”Monoclonal Antibodies Technology: Laboratory Techniques in Biochmistry and Molecular Biology”, Elsevier Science Publisher, Amsterdam, The Netherlands; Harlow等, 1988, Antibodies−A Laboratory Manual, CSH Laboratories)。本発明はまた、そのそれぞれの相互作用ドメインを阻害または中和し、及び/またはそれに特異的であるポリクローナル、モノクローナル抗体、またはヒト化バージョン、キメラ抗体等を提供する。
【0071】
この明細書及び添付の特許請求の範囲から、用語、治療剤は、少なくとも二つのそのような治療剤の組み合わせを含むように、広い意味で作用されるはずである。さらに、本発明に従ったDNA部分またはタンパク質は、数多くの方法で患者内に導入できる。例えば細胞を罹患患者から単離し、本発明に従ったDNA構築物でトランスフォームし、数多くの方法で罹患患者に再導入することができる。別法としてDNA構築物は、罹患患者に直接投与できる。DNA構築物はまた、リポソームのようなビヒクルを通じて輸送することもでき、特異的細胞タイプに対して標的化するようにデザインでき、異なる経路を通じて投与するように操作できる。
【0072】
ヒトに対する投与のため、指定された専門医は、所定の患者に対する適切な形態及び投与量を最終的に決定し、これは選択された治療摂生(即ちDNA構築物、タンパク質、細胞)、患者の応答と状態、並びに疾患のひどさに従って変化すると予測できる。
【0073】
本発明の範囲内の組成物は、副作用を避ける一方で所望の治療効果を達成するのに有効な量で活性剤(即ち分子、ホルモン)を含むべきである。典型的に、本発明に従った核酸は、0.005から1mg/治療される哺乳動物の体重/日の範囲の投与量で、哺乳動物(即ちヒト)に投与できる。活性剤の製薬学的に許容可能な調製物及び塩は、本発明の範囲に入り、当該技術分野で周知である(Remington’s Pharmaceutical Science, 第16版, Mack Ed.)。ポリペプチド、アンタゴニスト、アゴニスト等の投与のため、投与される量は、副作用を避けるように選択されるべきである。投与量は、疾患の程度及び患者からの異なるパラメーターのような従来のファクターに従って、臨床医によって決定されるであろう。典型的に、0.001から50mg/mg/日が哺乳動物に投与されるであろう。
【0074】
本発明は、本発明に従った核酸断片、タンパク質またはリガンド、制限酵素等を使用して、本発明のSCNAローカス(またはそれと連鎖不均衡を示すローカス)での遺伝子型の評価を含む、てんかんの診断及び/または予後、及び/または薬物療法に対する応答の予測のためにキットに関する。例えば、本発明に従った区画化されたキットは、試薬を別個の容器に含むいずれかのキットを含む。そのような容器は、小さなガラス容器、プラスチック容器、またはプラスチック若しくは紙の断片を含む。そのような容器は、サンプル及び試薬が交差混合せず、欠く容器の試薬または溶液が一つの区画から別の区画へ量的に加えることができるように、一つの区画から別の区画への試薬の有効な移動を可能にする。そのような容器は、一つの特定の実施態様として、試験サンプル(DNA、タンパク質または細胞)を許容可能な容器、アッセイにおいて使用されるプライマーを含む容器、酵素を含む容器、洗浄試薬を含む容器、並びに伸長産物を検出するために使用される試薬を含む容器を含むであろう。
【0075】
かくして本発明を一般的に記載するために、本発明の好ましい実施態様を説明的に示す添付された図面が参考にされるであろう。
【0076】
配列はまた、配列表にも示される。例えば配列番号1は、SCN1Aの成人形態の核酸配列を示す;配列番号2は、SCN1Aの新生児形態の核酸配列を示す;配列番号3は、SCN1Aの成人形態のタンパク質配列を示す;配列番号4は、SCN1Aの新生児形態のタンパク質配列を示す;配列番号5−32は、SCN1Aのゲノム配列を示す;配列番号33は、SCN2Aの成人形態のcDNA配列を示す;配列番号34は、SCN2Aの新生児形態のcDNA配列を示す;配列番号35は、SCN2Aの成人形態のタンパク質配列を示す;配列番号36は、SCN2Aの新生児形態のタンパク質配列を示す;配列番号37−64は、SCN2Aのゲノム配列を示す;配列番号65は、SCN3Aの成人形態のcDNA配列を示す;配列番号66は、SCN3Aの新生児形態のcDNA配列を示す;配列番号67は、SCN3Aの成人形態のタンパク質配列を示す;配列番号68は、SCN3Aの新生児形態のタンパク質配列を示す;並びに配列番号69−98は、SCN3Aのゲノム配列を示す。ラットSCNA配列は、登録番号M22253及びX03638の下で、GenBankにおいて見出すことができる。
【0077】
本発明の他の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参考にして、好ましい実施態様の以下の非制限的な記載を読むことでより明確になるが、以下の記載は例示的なものであり、本発明の範囲を制限するものとは企図されるべきではない。
【0078】
【発明の実施の形態】
てんかんは、全集団の1−2%に罹患している最も一般的な神経学的疾患の一つである。家族集団の研究により、各種のタイプのてんかん、特に特発性全身てんかん(IGE)を有する発端者の親族においててんかんの増大した危険が示されている。今日まで同定されたてんかん遺伝子は、全てのてんかんの非常に小さな割合のみを説明する。さらにそれらは、遺伝のパターンが明らかにメンデル法則に従うまれな症候群において同定されている。しかしながらこれは、遺伝のパターンが単純なメンデルモデルと一致しない非常に多数のてんかん患者には当てはまらない。実際ほとんどの著者が、てんかんは多くの各種の遺伝的及び環境的因子、複雑な特性の特徴の組み合わせの結果であると考えている。遺伝のパターンがメンデルモデルに当てはまらない一方、散発性のIGEの場合は、同じ遺伝子における特異的なミューテーションによって引き起こされるであろう。この仮説に基づいて、IGE患者の大きな集団を、SCNA遺伝子におけるミューテーションについて試験した。
【0079】
IGEの常染色体優性形態を分離する大きなファミリーにおけるてんかんを引き起こす遺伝子を局在化するために、21の罹患患者を含む41のファミリーのメンバーを遺伝子型に分けた。このファミリーの詳細な臨床上の記載は、別のところで報告されている(Scheffer及びBerkovic, 1997)。このファミリーにおける患者の多数は、幼少自体に発症し、熱と常に関連するわけではない:熱痙攣プラス(FS+)と称される症候群である、良性の頻繁な全身性の緊張性−間代性痙攣によって特徴付けられる、良性てんかん症候群を提示する。しかしながらいくらかの患者は、筋間代痙攣及びアプサンスのような他のタイプの全身痙攣(GTCS)を同様に提示した(Scheffer及びBerkovic, 1997)。罹患の平均年齢は2.2歳であり、治癒の平均年齢は11.7歳であった。神経学的検査及び知能は、一人を除いて全ての患者で正常であり、その一人は中程度の知能障害を有した。EEGレコーディングは、ほとんどの患者で正常であった。しかしながら3人の患者において、全身てんかん活性が見出され、4人の患者が、わずかなまたは中程度の散在性バックグランドスローイングを有した。表1は、この研究に含まれる21の患者で見出された各種のタイプの痙攣を示す。
【0080】
【表1】
Figure 2004512812
【0081】
190のマーカーを調べるゲノムワイドサーチにより、マーカーD2S294 (Z=4.4, (=0)についての初期のポジティブロッドスコアに基づいて、第2染色体(ch)に対してIGEのリンクが同定された。全部で24のマーカーを、ch 2qについて試験し、最小のIGE候補領域を規定した。表2は、IGE候補領域を横断する17のマーカーについての2点ロッドスコアを示す。最も高いロッドスコア(Zmax=5.29; (=0)が、マーカーD2S324で得られた。必須の組換え現象は、マーカーD2S156とD2S311に隣接する29cM領域に対してIGE遺伝子をマップし、ch 2Q23−Q31に対するIGEローカスを割り当てた(図1)。FS+と他のIGE表現型の関係が不明であるが、このファミリーにおいて、いくらかの罹患した患者が異なるタイプの全身痙攣を有するという観察は、ch 2Q−IGE遺伝子によって決定された痙攣の素因が、他の遺伝子及び/または環境因子によって改変され、各種の痙攣タイプを生産することを示唆する。
【0082】
【表2】
Figure 2004512812
【0083】
IGE候補領域を横切る17のマーカーを使用するハプロタイプを構築した(データ示さず)。セントロメア境界を、マーカーD2S156とD2S354の間の組換え現象によって規定した;一方でマーカーD2S152とD2S311の間の組換えは、テロメア境界を示した。これらの必須の組換え現象は、IGE遺伝子をマーカーD2S156とD2S311によって隣接する29cM領域に局在させた(図1)。
【0084】
ここ40年の間で、ファミリーの研究は、痙攣に対する感受性を測定する遺伝学的因子の役割をサポートする二つの重要な証拠の断片を提供した:1)家族集団の研究は、各種のタイプの痙攣を有する発端者の親族におけるてんかんの増大したリスクに対する証拠を示している。二つの研究において、特発性の幼少に発病したてんかんを有する患者の親族におけるいわれのない痙攣に対する標準化した罹患率は、兄弟について2.5から3.4、子孫について6.7に変化する(Anneger等, 1982; Ottman等, 1989);並びに2)二卵性双生児より一卵性双生児において、てんかんに対する高い高い一致割合が存在する。各種の研究により、一致割合は一卵性双生児において54から11%、二卵性双生児において10から5%に変化することが示された(Inouye, 1960; Lennox, 1960; Harvald及びHauge, 1965; Corey等, 1991; Silanpaa等, 1991)。
【0085】
痙攣の感受性は、神経の興奮能力に影響する複数の因子の複雑な相互作用を反映し、最も一般的な遺伝学的てんかんは、単一の常染色体遺伝子の分離によって説明されない家族集団パターンを示すことが一般的に受け入れられている(Andermann, 1982; Ottman等, 1995)。これはもちろん、てんかんの素因を作るまたは誘導する遺伝子を単離する研究者の能力をより複雑にする。しかしながら、家族において集団化するいくつかの特異的なてんかん症候群が、定義可能な単一遺伝子の異常から生じるであろう。これらの家族は、痙攣に対する素因を測定する点で役割を果たす遺伝子を容易にマップする独特の機会を提供する。
【0086】
今日まで全部で6のローカスが存在し(Greenberg等, 1988; Leppert等, 1989; Lewis等, 1993; Elmsile等, 1997; Guipponi等, 1987; Wallace等, 1998)、その中で3の遺伝子が特異的IGE症候群において同定されている(Bievert等, 1998; Singh等, 1998; Wallace等, 1998)。興味深いことに、全てのこれらの遺伝子は、Na+チャンネルにおいて見出されるミューテーションを含むイオンチャンネルである(熱性痙攣及び全身てんかんを有するタスマニアファミリーにおける1)(Wallace等, 1998)。我々の血縁において同定された候補の間隔は大きいままである一方、数多くの興味ある遺伝子がこの領域にマップされる。これらは、Na+チャンネル遺伝子とK+チャンネル遺伝子のクラスター(電気的データベースサーチ)、並びにγ−アミノ酪酸(GABA)の合成に関与する酵素であるグルタマートでカルボキシラーゼをコードするGAD1遺伝子を含む(Bu及びTobin, 1994)。GABAは、中枢神経系におけるシナプスの阻害に関与する主要な神経伝達物質の一つである(Barnard等, 1987)。しかしながら候補の間隔の大きなサイズは、ここで研究された血縁におけるIGEに関与する遺伝子の同定の前に、ローカスのさらなる洗練を必要とするであろう。
【0087】
痙攣で分類すると、ここに記載された大きなIGEファミリーにおける罹患患者の53%(9/17)のみが、熱性痙攣を有した。しかしながら、患者の41%(7/17)は、各種のタイプの全身痙攣を提示した。これらの発見は、このファミリーにおけるIGEの素因がch2q23−q31に局在する単一の遺伝子によって決定されるが、同じファミリーで存在する各種のタイプの全身痙攣が、遺伝学的及び/または環境的修飾因子の間での相互作用から生じることを示すであろう。
【0088】
結論として、IGEについてのローカスは、ch 2q23−q31にマップされた。このローカスは、特異的IGE症候群、FS+と関連するようである。しかしながら、FS+と他のIGE表現型との関係、及び他のFS+ファミリーと他のIGEの形態におけるch 2qローカスの役割は未決定である。
【0089】
染色体2q23−q31上のIGEについてのローカスを同定し、次にミューテーション及び/または多型がてんかんにリンクするかどうかを確認した。この染色体の領域中の可能性のある遺伝子を同定するために、公のデータベースをスクリーニングした。マウス及びヒトにおける痙攣は、膜チャンネルと関連することが周知であるため、とりわけ膜チャンネルを同定するために、データベースのブラストを適応させた。コンピューターサーチによって膜チャンネルコード配列またはその一部を同定し、てんかんに関与する可能性のある候補遺伝子を、疾患に関する疑いのある遺伝子として評価しなければならなかった。二つのアプローチを使用した。第一のものは、疾患を有するメンバーを含むファミリーにおけるミューテーションについて候補遺伝子を試験することであった(データ示さず)。第二のアプローチは以下のものであった。てんかんはより低い痙攣の域値から生じ、全身てんかんは多くの場合、痙攣の域値の全身の低下から生ずることが周知であるため、以下の仮説をうち立てた。大きなファミリーにおいててんかんを引き起こす遺伝子(それは染色体2q23−q31に絞られる)は、てんかんの弱い家族の系譜のみを有する人々においててんかんを引き起こすであろう他のよりひどくないミューテーションを有するはずである。鍵となる電気的機能に関与し、それ故適切な候補であると考えられるナトリウムチャンネル遺伝子を選択した。この仮説を正式に試験するために、てんかんの多くの(60から70)非関連の場合を、これらの候補遺伝子におけるミューテーションについて試験した。驚くべきことに、全ての三つの候補遺伝子においてミューテーションが見出された。
【0090】
ミューテーション/多型がてんかんにおいて同定され協調するかどうかを評価するために、70から80のてんかん患者(IGE)のパネルを、一本鎖構造多型(SSCP)を使用して、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aにおけるミューテーションについて試験した。SSCP分析は、一塩基置換程度の小さなミューテーションの検出が可能である。実際そのような置換は、一本鎖DNA分子の構造を改変することにより、非変性ゲルでのその電気泳動移動度に影響する。かくして、所定のローカスの野生型(wt)、ミュータントDNA、または異なる対立遺伝子の移動度を比較することにより、配列間を区別することができる。SSCPを使用する遺伝子の一塩基置換の同定は当該技術分野で周知であり、数多くのプロトコールがそれについて入手可能である。その非制限的な例は、増幅することが所望されるDNA領域に特異的な蛍光ベースプライマーを使用して実施されるPCRに引き続く、蛍光ベースSSCP分析を含む。
【0091】
本発明のSCNAローカスの一つについての正常とてんかんの移動度の間の差異の同定に際して、増幅断片を配列決定し、正常患者とてんかん患者(IGE)の間の核酸配列を比較した。この比較は、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aにおけるミューテーションの同定を可能にした。配列またはミューテーションの差異が、疾患と有意に関連するかを調べるために、大きな集団の正常患者を使用して、SSCP分析をもう一度実施した。この分析は、SSCPによって同定され、配列分析によって確認されたミューテーションが、試験された大きな集団の正常患者に存在しないことを示すことができ、それによって同定されたミューテーションが試験された集団についてIGEと相関することを示した。
【0092】
共に考慮すると、これらの結果は、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aが、てんかん、特にIGEと関連する遺伝子であることを確認することを示す。
【0093】
本発明は、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aが、特定のヒト集団における特発性全身てんかん(IGE)に直接的に関与することを初めて確立する。さらにこの発見は、SCN1A,SCN2A及びSCN3Aの活性を調節する化合物が、IGEを有するファミリーの小さなグループ辛さらに広く応用でき、てんかん及び関連する神経学的疾患の多くまたは全ての形態を治療するための応用可能性を有することを示唆する。それ故、てんかん及び関連する神経学的疾患に対する治療上の利益を有する化合物を同定できるSCN1A、SCN2A及び/またはSCN3Aを使用するスクリーニングアッセイを提供することは、本発明の一つの目的である。本発明はまた、これらの化合物、てんかん及び関連する神経学的疾患を治療する際のこれらの化合物の使用、並びにてんかん及び関連する神経学的疾患の治療におけるそのようなスクリーニングアッセイを使用して同定されるいずれかの化合物のいずれかの使用に関する。
【0094】
一般的に、一つ以上のSCN1A、SCN2AまたはSCN3A(ここで集合的にSCNAと称する)ナトリウムチャンネル調節剤、即ち候補または試験化合物または薬剤(例えばペプチド、ペプチド模倣体、小分子または他の薬剤)についてのハイスループットスクリーニングは、SCNAの生物学的活性を測定するアッセイに基づいても良い。それ故本発明は、例えばSCNA生物学的活性または発現に対する刺激または阻害効果を有する、あるいはSCNAタンパク質に結合または相互作用する、あるいは例えばSCNA相互作用タンパク質(標的)または基質の発現または活性に対する刺激または阻害効果を有する調節剤を同定するための方法(ここで「スクリーニングアッセイ」としても称される)を提供する。
【0095】
イオンチャンネル標的をスクリーニングするための細胞ベースのアッセイに利用される方法及び装置の例は、Gonzalez等 (Drug Discov. Today 4: 431−439, 1999)によるレビューにおいて記載され、イオンチャンネル薬剤についてのハイスループットスクリーニングは、Denyer等 (Drug Discov. Today 3: 323−332, 1998)に記載されている。そのようなアッセイは、ナトリウムインディケーター色素と電位差感作色素の両者を使用する蛍光ベースのアッセイを使用する細胞系(組換えまたは非組換え)において測定できるナトリウムまたは関連イオンの流出量を含む。好ましいアッセイは、14Cグアニジン流動及び/またはSBFIのようなナトリウムインディケーター色素、及びDiBACのような電位差感作色素を使用する。DiBACのようなオキソナル色素は、膜脱分極に応答性である。超分極は、受動的な拡散による細胞からの色素の除去を引き起こす一方、脱分極は細胞内の色素の濃縮を引き起こす。
【0096】
一つの実施態様では、本発明は、SCNAタンパク質またはその生物学的活性な一部の基質と相互作用する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0097】
別の実施態様では、本発明は、SCNAタンパク質若しくはポリペプチドまたはその生物学的に活性な一部に結合するまたはそれらの活性を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0098】
一つの実施態様では、アッセイは、起源が天然または組換えのいずれかであるSCNAタンパク質またはその生物学的に活性な部分を発現する細胞が、試験化合物と接触され、例えばナトリウム流量活性の調節、またはナトリウムチャンネル若しくはその一部に対する結合、またはSCNAのいずれかの他の測定可能な生物学的活性といったSCNA生物学的活性を調節する試験化合物の能力が測定される細胞ベースのアッセイである。SCNA活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば細胞に試験化合物をさらした際の黒質ニューロン細胞または心臓細胞といったニューロン細胞のようなSCNAを発現する細胞からの、神経伝達物質または他の化合物の放出をモニターすることによって達成できる。さらに、SCNA活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば試験化合物にさらした際のSCNAを発現すいる細胞からの神経伝達物質の流量の変化または放出の変化をモニターすることによって達成できる。細胞内の流量は、例えばHamill等, 1981 Pfluegers Arch. 391: 85−100に記載された方法を使用して、以下の実施例に記載されたようなパッチクランプ法を使用して測定できる。別法として流量の変化は、以下に記載された色素ベースの蛍光アッセイによって測定できる。
【0099】
基質に対するSCNAの結合を調節する試験化合物の能力の測定は、例えばSCNAに対するSCNA基質の結合が、複合体においてラベル化SCNA基質を検出することにより測定できるように、放射性同位元素または酵素的ラベルとSCNA薬剤または基質をカップリングすることによって達成できる。例えば化合物(例えばSCNA薬剤または基質)を、直接または間接のいずれかで125I、35S、14CまたはHで、及び放射線放出の直接的カウントまたはシンチレーションカウントによって検出される放射性同位元素でラベルできる。別法として化合物は、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼで酵素的にラベルできる。これらのアッセイでは、SCNAに結合する基質を阻害または増大する化合物が、本発明の治療目的のために有用である。
【0100】
いずれかの相互作用物質をラベルすることなく、SCNAと相互作用する化合物(例えばSCNA基質)の能力を測定することもまた本発明の範囲内にある。例えば、化合物またはSCNAのいずれかをラベリングすることなく、SCNAと化合物の相互作用を検出するために、ミクロフィジオメーターを使用することができる(McConnell H.M.等, (1992), Science 257: 1906−1912)。ここで使用される「ミクロフィジオメーター」(例えばCytosensor)は、光接近可能な電位差計センサー(LAPS)を使用して、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析装置である。この酸性加速度の変化は、化合物とSCNAの間の相互作用のインディケーターとして使用できる。
【0101】
SCNAの調節剤はまた、それらが膜電位差において誘導する変化を通じても同定できる。そのような変化を測定する適切な装置は、Aurora Biosciences社のVIPR (voltage ion probe reader; 登録商標)である。この装置は、一連の電位差感作イオンプローブアッセイを共に作動させる。プローブは、アクセプター蛍光放出に対するドナー蛍光放出の割合が、ナトリウム及びカリウムチャンネルの両者の細胞脱分極の度合いを表す電位差感作性ERETメカニズムを通じて、膜貫通電気的ポテンシャルの変化を感作する。脱分極は、膜を横切って、初期のクエンチングを和らげエミッターの放射波長で光を生産する膜結合蛍光エミッターから十分に離れてクエンチャーの輸送を引き起こす。このシステムは、細胞脱分極の間で強度の割合変化の両者の二つの波長で蛍光を生ずる。リーダーは、ミクロプレートフォーマットにおける生存細胞からの秒以下のリアルタイム光学的シグナルの検出を可能にする。このシステムは、アッセイの段階のための手動操作、またはハイスループットスクリーニングのためのロボットを介する自動化に変更できる。
【0102】
別の実施態様では、前記アッセイは、標的分子(例えばSCNAと相互作用するまたはSCNAに結合する別の分子、基質またはタンパク質)を含む細胞を試験化合物と接触させ、標的分子との結合または相互作用によりSCNAの生物学的活性を間接的に調節(例えば刺激または阻害)する試験化合物の能力を測定することを含む細胞ベースのアッセイである。SCNAの活性を間接的に調節する試験化合物の能力の測定は、例えば標的分子を結合またはそれと相互作用し、それによってSCNAを間接的に調節する、ナトリウム流出を調節する、またはSCNAの他の生物学的活性を調節する試験化合物の能力を測定することによって達成できる。標的分子を結合またはそれと相互作用する、SCNAタンパク質またはその生物学的に活性な断片の能力の測定は、直接的な結合を測定するための前述の方法または当該技術分野で周知の方法の一つによって達成できる。好ましい実施態様では、標的分子を結合しまたはそれと相互作用し、それによってSCNAタンパク質を調節する試験化合物の能力の測定は、標的分子の二次活性を測定することによって達成できる。例えば標的分子の活性は、標的の細胞セカンドメッセンジャー(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3等)の誘導の検出、適切な基質に対する標的の触媒/酵素活性の検出、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼのような検出可能なマーカーをコードする核酸に機能的に結合した標的応答性調節エレメントを含む)の誘導の検出、または神経伝達物質の放出のような標的調節化細胞応答の検出によって測定できる。別法として組換え細胞系は、ナトリウム流出または当該技術分野で全て周知の二次メッセンジャーに対して直接または間接のいずれかで応答する組換えレポータータンパク質を使用しても良い。
【0103】
別の実施態様では、本発明のアッセイは、起源が天然に存在するまたは組換えのいずれかであるSCNAタンパク質またはその生物学的に活性な一部を試験化合物と接触させ、SCNAタンパク質またはその生物学的に活性な一部に結合する、さもなければそれの生物学的活性を調節する試験化合物の能力を測定するセルフリーアッセイである。本発明のアッセイにおいて使用されるSCNAタンパク質の好ましい生物学的に活性な一部は、非SCNA分子(例えばナトリウム、カリウム若しくはCa2+に対する他のチャンネル、またはその断片、またはタンパク質−タンパク質若しくはタンパク質−基質相互作用に対する高い表面の記録の可能性を有する断片)との相互作用において沈殿する断片を含む。SCNAタンパク質に対する試験化合物の結合は、前述のように直接または間接のいずれかで測定できる。好ましい実施態様では、前記アッセイは、SCNAタンパク質またはその生物学的に活性な一部を、SCNAを結合してアッセイ混合物を形成する周知の化合物と接触させ、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、SCNAタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を測定することを含み、ここでSCNAタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を測定は、周知の化合物と比較したSCNAまたはその生物学的に活性な一部を選択的に結合する試験化合物の能力の測定を含む。
【0104】
別の実施態様では、前記アッセイは、SCNAタンパク質またはその生物学的に活性な一部を試験化合物と接触させ、SCNAタンパク質またはその生物学的に活性な一部の能力を調節(例えば刺激または阻害)する試験化合物の能力を測定するセルフリーアッセイである。SCNAタンパク質の活性を調節する試験化合物の能力の測定は、例えば直接的な結合を測定するための前述の方法の一つによって、SCNA標的分子に結合するSCNAタンパク質の能力を測定することによって達成できる。SCNA標的分子に結合するSCNAタンパク質の能力の測定はまた、リアルタイムBiomolecular Interaction Analysis (BIA, Sjolander,S.及びUrbaniczky,C. (1991) Anal. Chem. 63: 2338−2345並びにSzabom等 (1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5: 699−705)のような方法を使用して達成できる。ここで使用される「BIA」は、いずれの相互作用物質(例えばBIAコア)もラベリングすることなくリアルタイムで生体特異的な相互作用を試験するための方法を指す。表面プラスモン共鳴(SPR)の光学的現象の変化が、生物学的物質の間のリアルタイムの反応の指標として使用できる。
【0105】
別の実施態様では、SCNAタンパク質のの応力を調節する試験化合物の能力の測定は、SCNA標的分子の上流または下流エフェクターの活性を調節する試験化合物の能力を測定することによって達成できる。例えば、エフェクター分子に対する試験化合物の能力が測定でき、またはSCNAに対するエフェクターの結合が前述のように測定できる。
【0106】
本発明のセルフリーアッセイは、単離されたタンパク質の可溶性形態及び/または膜結合形態の両者の使用に応用できる。単離されたタンパク質の膜結合形態(例えばナトリウムチャンネル)が使用されるセルフリーアッセイの場合、単離されたタンパク質の膜結合形態が溶液において維持されるように、可溶化剤を使用することが所望されるであろう。そのような可溶化剤の例は、n−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton(登録商標)X−100、Triton(登録商標)X−114、Thesit(登録商標)、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−クラミドプロピル)ジメチル−アミノ]−l−プロパンスルホナート(CHAPS)、3−[(3−クラミドプロピル)ジメチルアミノ]−2−ヒドロキシ−l−プロパンスルホナート(CHAPSO)、またはN−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−l−プロパンスルホナートのような非イオン性界面活性剤を含む。
【0107】
本発明の前述のアッセイ方法の一つより多い実施態様では、SCNAまたはその標的分子のいずれかを固定化し、タンパク質の一方または両方の非複合体形態からの複合体形態の分離を容易にすること、並びにアッセイの自動化を適応させることが所望されて良い。候補化合物の存在下及び不存在下でのSCNAタンパク質への試験化合物の結合、または標的分子とのSCNAタンパク質の相互作用は、反応物を含むのに適切ないずれかの容器において達成できる。そのような容器の例は、ミクロタイタープレート、試験チューブ、及びミクロ遠心チューブを含む。一つの実施態様では、タンパク質の一方または両方をマトリックスに結合させるドメインを付加する融合タンパク質が提供できる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/SCNA融合タンパク質、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導化ミクロタイタープレートに吸着でき、次いでそれらを試験化合物、または試験化合物と非吸着標的タンパク質若しくはSCNAタンパク質と組み合わせ、混合物を複合体形成に適合した条件(例えば塩及びpHについての生理条件)下でインキュベートする。インキュベーションに引き続き、ビーズまたはミクロタイタープレートのウェルを洗浄していずれの非結合構成成分をも除去し、ビーズの場合マトリックスを固定化し、例えば前述のように直接または間接のいずれかで複合体を測定する。別法として複合体はマトリックスから解離でき、SCNA結合または仮性のレベルを標準法を使用して測定できる。
【0108】
マトリックスに対してタンパク質を固定化する他の方法(当該技術分野で周知である)もまた、本発明のスクリーニングアッセイで使用できる。例えば、SCNAタンパク質またはSCNA標的分子のいずれかを、ビオチンとストレプタビジンの接合物を使用して固定化できる。ビオチン化SCNAタンパク質または標的分子は、当該技術分野で周知の方法を使用して、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製でき(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)、ストレプラビジン被覆化96穴プレートの壁に固定化できる(Pierce Chemical)。別法として、SCNAタンパク質または標的分子と反応性であるが、標的分子に対するSCNAタンパク質の結合を妨げない抗体を、プレートのウェルに誘導化でき、非結合標的またはSCNAタンパク質を抗体接合物によってウェルにトラップできる。GST固定化複合体についての前述のものに加えて、そのような複合体を検出する方法は、SCNAタンパク質または標的分子と反応性の抗体を使用する複合体の免疫検出、並びにSCNAタンパク質または標的分子と会合する酵素活性を検出することによる酵素結合アッセイを含む。
【0109】
好ましい実施態様として、候補または試験化合物または試薬を、例えばKomada M等 (1999) Genes Dev. 13(11): 1475−85、及びRoth M.G.等 (1999) Chem. Phys. Lipids. 98(12): 141−52に記載されたアッセイを使用して、ニューロン細胞または心臓債のといった細胞におけるベシクル輸送及びタンパク質輸送を調節するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験する。
【0110】
別の好ましい実施態様では、候補または試験化合物または試薬を、例えばin vitroキナーゼアッセイを使用して、SCNAチャンネルタンパク質若しくはその一部、または上流または下流標的タンパク質のリン酸化状態を阻害または刺激または調節する能力について試験する。略記すると、SCNA標的分子(例えば、そのような分子を発現する細胞系から得た免疫沈降ナトリウムチャンネル)を、例えば10mM MgCl2及び5mM MnCl2といったMgCl2及びMnCl2を副バッファーにおいて、例えば[ガンマ−32P]−ATPといった放射性ATPとインキュベートできる。インキュベーションに引き続き、免疫沈降SCNA標的分子(例えばナトリウムチャンネル)を、還元条件の下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、例えばPVDF膜と行った膜に移し、オートラジオグラフで検出できる。オートラジオグラフで検出可能なバンドの外観は、例えばナトリウムチャンネルといったSCNA基質がリン酸化されていることを示す。リン酸化基質のホスホアミノ酸分析はまた、SCNA基質上のどの残基がリン酸化されているかを測定するために実施できる。略記すると、放射性リン酸化タンパク質バンドを、SDSゲルから摘出し、部分的酸加水分解にかけることができる。次いで産物を一次元電気泳動によって分離し、例えばホスホイメージャーで分析し、ニンヒドリン染色ホスホアミノ酸スタンダードと比較できる。そのようなアッセイは、例えばTamaskovic R等, (1999) Biol. Chem. 380(5): 569−78に記載されている。
【0111】
別の好ましい実施態様では、候補または試験化合物または薬剤は、例えばLiu L. (1999) Cell Signal. 11(5): 317−24及びKawai T.等, (1999) Oncogene 18(23): 3471−80に記載されたアッセイを使用して、カルシウムとの会合(例えば結合)するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験される。
【0112】
別の好ましい実施態様では、候補または試験化合物または薬剤は、例えばOkuwaki M.等 (1988) J. Biol. Chem. 273(51): 34511−8及びMiyaki− Yamaguchi M. (1999) J. Nol. Biol. 290(2): 547−557に記載されたアッセイを使用して、細胞におけるクロマチン形成を調節するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験される。)
【0113】
また別の好ましい実施態様では、候補または試験化合物または薬剤は、例えばBaker F.L.等, (1995) Cell Prolif. 28(1): 1−15, Cheviron N.等, (1996) Cell Prolif. 29(8): 437−46, Hu Z.W.等, (1999) J: Pharmacol. Exp. Ther. 290(1): 28−37並びにElliott K.等, (1999) Oncogene 18(24): 3564−73に記載されたアッセイを使用して、細胞増殖を調節するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験される。
【0114】
好ましい実施態様では、候補または試験化合物または薬剤は、例えばGonzalez C.等, (1998) Cell Mol. Biol. 44(7): 1117−27及びChia C.P.等, (1998) Exp. Cell. Res. 244(1): 340−9に記載されたものと同じアッセイを使用して、細胞骨格との関連を調節するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験される。
【0115】
別の好ましい実施態様では、候補または試験化合物または薬剤は、例えばBar−Sagi D.等, (1985) J. Biol. Chem. 260(8): 4740−4及びBarker J.L.等, (1984) Nuerosci. Lett. 47(3): 313−8に記載されたアッセイを使用して、膜の興奮を調節するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験される。
【0116】
別の好ましい実施態様では、候補または試験化合物または薬剤は、Nakashima Y.等 (1999) J: Bone Joint Surg. Am. 81(5): 603−15に記載されたアッセイを使用して、細胞(例えばニューロン細胞または心臓細胞)におけるサイトカインシグナリングを調節するSCNA分子の能力を阻害または刺激する能力について試験される。
【0117】
別の実施態様では、SCNA発現の調節剤が、細胞が候補化合物と接触され、細胞におけるSCNA mRNAまたはタンパク質の発現が測定される方法において同定される。候補化合物の存在下でのSCNA mRNAまたはタンパク質の発現のレベルが、候補化合物の不存在下でのSCNA mRNAまたはタンパク質の発現のレベルと比較される。次いで候補化合物は、この比較に基づいてSCNA発現の調節剤として同定できる。例えば、候補化合物の不存在下より存在下で、SCNA mRNAまたはタンパク質の発現が大きい(実質的に有意に大きい)場合、候補化合物は、SCNA mRNAまたはタンパク質発現の刺激物質として同定される。これに対して、候補化合物の不存在下より存在下で、SCNA mRNAまたはタンパク質の発現が小さい(実質的に有意に小さい)場合、候補化合物は、SCNA mRNAまたはタンパク質発現のインヒビターとして同定される。細胞におけるSCNA mRNAまたはタンパク質発現のレベルは、SCNA mRNAまたはタンパク質を検出するためのここに記載された方法または当該技術分野で周知の方法によって測定できる。
【0118】
前述のアッセイは、リード化合物のさらなる開発を約束することを検出する最初のまたは一次スクリーニングとして使用されても良い。しばしばリード化合物は、さらなる異なるスクリーニングにおいてさらに評価されるであろう。それ故本発明はまた、パッチクランプ法、または二つの電極の電位差クランプ及びFRETベースの電位差センサーのような、SCNAチャンネルを発現する哺乳動物細胞系を利用する電気生理的アッセイを含む二次SCNAスクリーニングを含む。標準的なパッチクランプアッセイは、ゼノパス卵母細胞における野生型及びミュータントチャンネルを表し、電位差クランプ電気生理的レコーディングを使用してその特性を調べる。野生型ナトリウムチャンネルは、超分極膜ポテンシャルで閉じる。膜の脱分極に応答して、チャンネルは数100マイクロ秒以内で開き、ナトリウムの内部流入を生じ、それはチャンネルの不活性化によって数ミリ秒以内で終結する。細胞全体のレコーディングにおいて、細胞膜中に配置された数千のナトリウムチャンネルの迅速な活性化と不活性化が、迅速にピークの大きさに上昇し、次いで数ミリ秒以内でベースラインに回復する一過的なナトリウム内部流入を生じる。
【0119】
三次スクリーニングは、てんかんについてのラット及びマウスモデルにおける同定された調節剤の研究を含む。従って、適切な動物モデルにおいてここに記載されたような同定された薬剤をさらに使用することも、本発明の範囲内にある。例えば、ここに記載されたような同定された試験化合物(例えばSCNA調節薬剤、アンチセンスSCNA核酸分子、SCNA特異的抗体、またはSCNA結合パートナー)は、そのような薬剤での治療の効力、毒性または副作用を測定するために、動物モデルで使用できる。別法として、ここに記載されたような同定された薬剤は、そのような薬剤の作用のメカニズムを測定するために、動物モデルにおいて使用できる。さらに本発明は、ここに記載されたような治療(例えば各種のタイプのてんかんまたはCNS疾患の治療)のための前述のスクリーニングアッセイによって同定された新規な薬剤の使用に関する。
【0120】
本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー;空間的に接近可能なパラレル固相または溶液相ライブラリー;回旋を必要としない合成ライブラリー法;「一ビーズ一化合物」ライブラリー法;並びにアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当該技術分野で周知のコンビナトリアルライブラリー法における数多くのアプローチのいずれかを使用して得られる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに制限されない一方、他の4種のアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー、または小分子ライブラリーに適用できる(Lam, Abticancer Drug Des. 12: 145, 1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は当該技術分野で見出され、例えば以下のものに見出される:DeWitt等, (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90: 6909; Erb等, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422; Zuckermann等, (1994), J. Med. Chem. 37: 2678; Cho等, (1993) Science 261: 1303; Carrell等, (1994) Angew. Chem, Int. Ed Engl. 33: 2059; Carell等 (1994) Angew. Chem. Jnl. Ed. Engl. 33: 2061; 及びGallop等, (1994) Med. Chem. 37: 1233。化合物のライブラリーは、溶液(例えばHoughten (1992) Biotechniques 13: 412−421)またはビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82−84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555−556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、スポア(Ladner USP ’409)、プラスミド(Cull等, (1992) Proc. Natl. Acad. Sci USA 89: 1865−1869)、またはファージ(Scott及びSmith (1990); Science 249: 386−390)において提供されても良い。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該技術分野において見出され、例えば以下に見出される:DeWitt等, (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90: 6909; Erb等, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422; Zuckermann等, (1994), J: Med. Chem. 37: 2678; Cho等, (1993), Science 261: 1303; Carrell等, (1994) Angew. Chem Int. Ed. Engl. 33: 2059。またはルシフェラーゼ、及び適切な基質の産物への変換を測定することによって検出される酵素ラベルも使用できる。
【0121】
特定の治療薬が、心臓、筋肉、慢性の痛み、急性の痛み、及び他の疾患、並びにナトリウムチャンネルの調節剤である鎮痛剤及び麻酔剤について同定されていることは、本発明者によって認識されている。てんかん及び関連神経学的疾患を治療するための、これらのナトリウムチャンネルの調節剤の使用は、本発明の範囲内にはいる。本発明の一つの実施態様として、ナトリウムチャンネルブロッカーが、ニューロンのSCNAタンパク質及び遺伝子に対する直接的な効果を有するため、血液脳障壁を横切って改良された輸送を達成するために修飾される。そのような化合物の記載は、Hunter, JC等, Current Opinion in CPNS Invest. Drugs. 1999 1(1): 72−81; Muir KW等, 2000, Cerebrovasc. Disc. 10(6): 431−436; Winterer, G. 2000, Pharmacopsychiatry 33(5): 182−8; Clare等, 2000, Drug Discov. Today 5(11): 506−520; Taylor CP等, 2000, Adv. Pharmacol. 39: 47−98,及びPugsley MK等, 1998, Eur. J. Pharmacol. 342(1): 93−104で見出される。
【0122】
SCNA遺伝子の転写と翻訳を調節する(即ち、上流調節か下流調節のいずれか)化合物は、てんかんまたは関連神経学的疾患を治療するために有用であることも、本発明者によって認識されている。本発明に従って、ナトリウムチャンネル遺伝子のプロモーターエレメント及び調節エレメントの活性を調節する試験化合物が、これらの疾患を治療するために有用である。
【0123】
要約すると、ここでの開示に基づいて、SCNA発現細胞の増殖に関連するてんかん及び他の疾患を治療するのに有用である化合物を同定するのに役立つSCNAを、当業者は開発できる。本発明のアッセイは、ロースループット、ハイスループット、または超ハイスループットスクリーニングフォーマットのために開発されても良い。
【0124】
本発明のアッセイは、天然または組換えSCNAタンパク質のいずれかを使用する。SCNA生物学的活性の調節剤のための細胞分画またはセルフリースクリーニングアッセイは、in situ、精製、または精製組換えSCNAタンパク質を使用できる。細胞ベースのアッセイは、SCNAタンパク質を天然で発現する細胞、または誘導可能なプロモーター配列を任意に含む、組換えSCNA遺伝子構築物を含む細胞を使用できる。全ての場合で、SCNAの生物学的活性は、直接または間接に測定できる;かくしてSCNA生物学的活性の調節剤が同定できる。調節剤自体は、元々同定された化合物の改良された類似体を生産するために、標準的なコンビナトリアルケミストリー法によってさらに改変されても良い。
【0125】
最後に、ここで同定されたSCNA cDNA配列(及び対応する完全な遺伝子配列)の一部または断片は、ポリヌクレオチド試薬として多くの方法で使用できる。例えばこれらの配列は、(i)染色体上にそれぞれの遺伝子をマップし、かくしててんかんまたはSCNAを直接若しくは間接に含むCNS疾患に関連する遺伝学的疾患(ミューテーション/多型)と関連する遺伝子領域を配置すること;(ii)即席の生物学的サンプルから患者を同定すること(組織タイピング);並びに(iii)生物学的サンプルの法定での同定を補助することで使用できる。
【0126】
本発明は、以下の非制限的な実施例により、さらに詳細に説明される。
【0127】
【実施例】
実施例1:分子的分析
ゲノムDNAを、各患者から得た血液サンプル(Smabrook等, 1989)またはリンパ芽細胞系(Anderson及びGusella, 1984)から抽出した。高い異種接合性(75%)を有する210ジヌクレオチド(CA)nリピート多型マーカーのパネルを、1993−94Genethonマップ(Gyapay等, 1994)から選択した。ジヌクレオチドマーカーは、22の常染色体を通じて高いに20cMの平均スペースを有した。
【0128】
マイクロサテライトマーカーのジェノタイピングを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって達成した。反応混合物を、80ngのゲノムDNA;1.5mM MgCl2;0.65μlのBSA(2.0mg/ml);100ngの各オリゴヌクレオチドプライマー;200mM dCTP、 dGTP及びdTTP;25mM dATP;1.5mCiの[35S] dATP;及び0.5ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer)を有する1.25μlの10×バッファーを使用して、13μlの全容量で調製した。反応サンプルを96穴プレートに移し、以下のサイクルにかけた:94℃で30秒の変性、オリゴヌクレオチドプライマーの特異性に依存して55℃から57℃で変化する温度で30秒のアニリング、72℃で30秒の伸長の35サイクル。PCR反応産物を、6%変性ポリアクリルアミドシークエンシングゲルで電気泳動した。
【0129】
実施例2:遺伝学的分析
2点連結分析を、LINKAGEコンピューターパッケージ(Lathrop等, 1984)から得たMLINKプログラムバージョン5.1を使用して実施した。Zmaxの正確な値を、同じコンピューターパッケージから得たILINKプログラムで計算した。Lodスコアを、コンピュータープログラムILINKを使用して、80%浸透度の遺伝の常染色体優性モード、1:500の疾患遺伝子頻度、及び家系図から計算された全ての対立遺伝子マーカーに対する対立遺伝子頻度に基づいて標準化した(Lathrop等, 1984)。
【0130】
実施例3:IGE患者におけるSCN1Aのミューテーション
IGEおよび正常患者から得たゲノムDNAを従来法により得た。ゲノムDNAを増幅するために使用されるプライマーは図2に示される。PCRに引き続き、SSCP分析を実施し、SCN1Aのミューテーションを以下のように同定した(図3):
(1)Glu1238Asp;正常:GCA TTT GAA GAT ATA;特発性全身てんかん(IGE)を有する患者R10191:GCA TTT GAC GAT ATA(70のIGE患者の1で見出された)。かくしてミューテーションは、III−S1とIII−S2の間の細胞外ドメインにおける保存的アミノ酸変化である。さらにこの残基は、TMドメインと細胞外ドメインの間の接合部で位置する。かくしてそれは、開閉活性に影響するであろう。成人と新生児のアイソフォームの間のアミノ酸変化は、同様なTMドメイン近傍の位置(I−S3とI−S4の間)で存在する。
(2)Ser1773Tyr;正常:ATC ATA TcC TTC CTG;患者R9049(IGEに罹患した):ATC ATA TmC TTC CTG:(TCC>TAC)。このミューテーションは、IV−S6 TMドメインの中央に位置し、1/70のIGE患者で見出され、0/150の試験されたコントロール患者で見出される。このミューテーションは、多くの理由のため生物学的観点から興味深い。第一に、SCN遺伝子のこの領域(IV−S6)は、ラットSCNでのミュータジェネシス実験により、SCNの迅速な不活性化において必須の役割を果たすことが示されている(McPhee等, 1998)。これはニューロン性の超興奮を増大するであろうため、てんかんの病態生理学に非常に関連する。さらに、GEFを有する患者において、SCNの迅速な不活性化の欠陥を引き起こすSCNB1サブユニットにおけるミューテーションが見出されている(Wallace等, 1999)。最後に抗痙攣薬の多く(例えばフェニトイン、カルバマゼピン)が、ニューロンのリピート刺激化を減少することによって主に機能し、それはSCNの迅速な不活性化に関与する。
【0131】
実施例4:IGE患者におけるSCN2Aのミューテーション
IGEおよび正常患者から得たゲノムDNAを従来法により得た。ゲノムDNAを増幅するために使用されるプライマーは図4に示される。PCRに引き続き、SSCP分析を実施し、SCN2Aのミューテーションを以下のように同定した(図5):
(1)Lys908Arg:正常:Rが常に先行する患者の数についてTAC AAA GAA;R9782(IGEを有する患者):TAC AGA GAA。かくしてミューテーションは、TMドメインIIS5とIIS6の間の細胞外ドメインに位置する保存的アミノ酸変化であり、1/70のIGE患者と、0/96の正常コントロールに存在する。S5とS6部分は、ナトリウムを細胞内に侵入させる膜貫通孔の壁を形成すると解されるため、このミューテーションは、SCN遺伝子の重要な構成成分を含む。これは、孔の開閉制御に影響を有するであろう。
(2)R8197、R9062及びR9822(全てIGE患者)患者におけるLeu768Val(3/70のIGE患者と0/65のコントロール患者で見出される)。このミューテーションは、チャンネルの不活性化において重要であるナトリウムチャンネルのIV−S6構成成分に存在する(詳細について前記参照)。
【0132】
実施例5:IGE患者におけるSCN3Aのミューテーション
IGEおよび正常患者から得たゲノムDNAを従来法により得た。ゲノムDNAを増幅するために使用されるプライマーは図6に示される。PCRに引き続き、SSCP分析を実施し、SCN3Aのミューテーションを以下のように同定した(図7):
(1)Asn43DEL:対立遺伝子1:CAA GAT AAT GAT GAT GAG;対立遺伝子2:CAA GAT −−− GAT GAT GAG;オープンリーディングフレームにおいて1アミノ酸の欠失:DNDDEN−>QDDDEN、細胞質N末端部分に存在;IGE患者において、対立遺伝子1の頻度=131/146(0.90);対立遺伝子2の頻度=15/146(0.10);IGE患者について:同型接合体(22):R3658、R9632;異種接合体(12):R9049、R9152、R9649、R9710、R9896、R10069、R10191、R10213、R9993、R10009、R10256。2の患者は、レアな対立遺伝子について同型接合体であり、全ての患者がIGEを有することに注意。コントロールにおいて:対立遺伝子1=145/154(0.94);対立遺伝子2=9/154(0.06)及び22の同型接合体が見出されなかった。
(2)正常:tggtgtaaggtag、R10670(IGE患者):tggtataaggtag、5N&5Aエキソンの間の保存的イントロンにおいて、有意な不特定性。
(3)正常:ccccttatatctccaac、R10250(IGE患者):ccccttatayctccaac;5N&5Aエキソンの間の保存的イントロンにおいて、有意な不特定性。
(4)Val1035Ile:正常:AAA TAC GTA ATC GAT、R9269(IGE患者):AAA TAC RTA ATC GAT;(GTA>ATA=Val>Ile)。かくしてミューテーションは、SnaBl部位を破壊する保存的アミノ酸変化である(かくしてこれは、制限酵素切断によって同定可能な多型として使用できる)。SCN1Aにおいて、このValはIleであり、それ故原因となるミューテーションではない。細胞質ドメインbw II−S6&III−S1における;1/70のIGE対立遺伝子、及び0/70のコントロールで見出される。
【0133】
実施例6:SCN1Aは特発性全身てんかんに関与する
SCN1A遺伝子が、ヒトにおける特発性全身てんかんに関与するという仮説は、多くの一連の証拠に基づく。第一に、常染色体優性てんかんを有する多くのオーストラリア人ファミリーにおいて、ミューテーションが見出されている。この表現型は、熱性痙攣と関連する特発性全身てんかん(GEFS症候群)である。このファミリーの遺伝子は、第2染色体の長腕に以前にマッピングされている。最大のlodスコアは、マーカーD2S111について6.83である。候補の領域は、マーカーD2S156とD2S311の間の21cMに存在して非常に大きい。しかしながら、この間隔内で、疾患に対する候補遺伝子と仮説付けられるSCN1Aを含むナトリウムチャンネル遺伝子のクラスターが存在する。
【0134】
ファミリーから得られた3の罹患患者と3の正常コントロールの小パネルのSSCPによるスクリーニングを最初に実施した。SCN1A遺伝子の全てのエキソンをPCRにより増幅し、エキソン4におけるSSCP変異は全ての罹患患者に見出され、コントロールでは見出されなかった。罹患患者とコントロールのシークエンシングにより、ヌクレオチド565でのA−T置換が見出された。この変異は、BamH1制限部位を破壊し、かくしてこの酵素は、ファミリーから全ての罹患患者をスクリーニングする診断試験として、並びにさらなるコントロールの場合として使用された。ファミリーから得た全ての罹患患者がA565T置換を有し、同じ家系の非罹患患者においては見出されなかった。A565T置換は、400のコントロール染色体より多くは見出されなかった。
【0135】
A565T置換は、非保存的アミノ酸変化(D188V)に対応する。このアミノ酸は、全ての種でこれまで同定されたナトリウムチャンネルの全てにおいて保存されている。唯一の例外は、Numa等によりラットにおいて同定されたSCN2Aであり、個々ではアスパラギン酸がアスパラギンに置換されている。しかしながら、他の研究者ラットにおいては同じ遺伝子をクローン化し、アスパラギン酸が188胃で保存されていることを見出しているため、これはcDNAの複製の間のエラーを表すようである。さらに、同じグループは、D188Nが卵母細胞におけるチャンネル活性化に機能的な効果を有することを示している(Escayg等, Nature Genetics. 24(4): 343−5, 2000)。このA565T置換は、150のてんかん患者と200のコントロール患者において見出されていないことに注意。かくしてこの置換は、700の染色体評価の後に同定されているものである。
【0136】
研究された多くのオーストラリア人ファミリーで同定された、SCN1AにおけるD188Vが暴言性ミューテーションであることを証明するために、オリゴヌクレオチドミスマッチミュータジェネシス法を、ラットSCN1Aクローンにミューテーションを導入するために使用した。ミュータント及び野生型クローンからRNAを単離し、卵母細胞に注射し、パッチクランプ法によりナトリウム流量を記録した。流量の大きさは、ミュータントについて劇的に減少した。また、不活性化曲線における小さなシフトが、野生型と比較してミュータントについて観察された。共に考慮すると、これらの予備的結果は、SCN1A遺伝子に対するD188Vミューテーションの機能的効果を確認する(以下の詳細参照)。
【0137】
ここで提示された結果を、他の研究者による研究と協調する。例えば、いくつかの他のグループが、GEFSまたは非常に類似する症候群を有するファミリーについて第2染色体上の同じローカスへのリンクを見出している。SCN1Aのミューテーション(Thr875Metミューテーション;Arg1648His)が、これらのファミリーの少なくとも二つ(2)におけるてんかん症候群の原因であることが見出されている(Escayg等, Nature Genetics. 24(4): 343−5, 2000)。また、GEFS症候群は、SCN1B遺伝子におけるミューテーションによって原因とされることが示されている。ベータサブユニットは、電位型ナトリウムチャンネルのアルファサブユニットと相互作用し、細胞内のナトリウム流量の速度を改変することが示されている。これらのデータは、特発性全身てんかんを有する患者の脳において異常なニューロン性放電を生産する一般的なメカニズムを示唆する。
【0138】
最後に、前述のGEFSを有する多くの家系から患者をスクリーニングする方法において、特発性全身てんかんを有する患者の大きな団体をSSCPによるスクリーニングした。後にシークエンスされる二つの(2)SSCP変異がそれによって同定された。観察された変異は、表3に示される:
【0139】
【表3】
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以前の基礎的研究により、SCN2AのIV−S6膜貫通ドメインにおけるアミノ酸置換が、チャンネルの不活性化の速度に有意に影響することが示されている。それ故、Ser1773Tyrは、SCN1A遺伝子機能に効果を有するであろう。そのような機能的研究は、現在実施中である。
【0140】
実施例7:IGEと一般的なてんかんにおける、SCN1A、SCN2A、SCN3A及びそれらの特異的なミューテーションの役割のさらなる確認
IGEにおけるSCN1A、SCN2A、SCN3A及びそれらの特異的なミューテーションの役割をさらに確認するために、数多くの方法が使用できる。例えば、さらなる患者を、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aのミューテーションについてスクリーニングすることができる。さらに、IGEにリンクしない多型を反映することとは対照的に、同定されたミューテーションが疾患と有意に相関関係を有することを確認するために、さらなる正常な患者をスクリーニングできる。IGEに直接リンクしない多型は、IGEにリンクした機能的ミューテーションと連鎖不均衡を示すのであれば、診断及び/または予後のアッセイにおいて有用であろう。さらに、機能的な研究を実施できる。多くの方法は、当業者に従う。一つの特に好ましい機能的アッセイは、ゼノパス卵母細胞と、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの正常またはミュータント配列を有する組換え構築物の使用を含む。ゼノパス卵母細胞は、組換えKCNQ2とKCNQ3を使用するサイクリックAMP調節カリウムチャンネルの構造−機能相関関係を分析する機能的アッセイにおいて使用されている(Schroeder等, 1998)。同様にそれは、ナトリウムチャンネルのベータサブユニットの構造−機能相関関係を分析するために使用されている(SCN1B遺伝子;Wallace等, 1998)。
【0141】
機能的研究の一つの前記例は、ラット正常SCN1A遺伝子をコードするcDNA内にミューテーションを導入することにより、ナトリウムチャンネル機能に対するSCN1A遺伝子中のD188Vミューテーションの効果を評価することによって調べられる。この評価遺伝子は、ヒトSCN1A遺伝子と>95%の同一性を有する。ゼノパス卵母細胞における野生型及びミュータントチャンネルの発現、並びに電位差−クランプ電気生理学的レコーディングを使用するそれらの特性の評価は、このゼノパス系に適用される。野生型ナトリウムチャンネルは、過分極電位で閉じる。膜の脱分極応答して、このチャンネルは数100マイクロ秒以内で開き、ナトリウム流入を導き、それはチャンネルの不活性化により数ミリ秒以内で終結する。細胞全体のレコーディングにおいて、細胞膜全体に配置された数千のナトリウムチャンネルの迅速な活性化と不活性化は、迅速にピークの大きさに上昇し、次いで数ミリ秒以内にベースラインに減少する一過的なナトリウム流入を導く。チャンネルの特性の中で、てんかんにリンクするミューテーションによって改変されそうなものは、1)チャンネルを開くのに必要な膜の脱分極の強度の測定値である、活性化の電位差依存性、2)残存する膜電位で開くために利用可能なチャンネルの分画の測定値である、定常状態の不活性化の電位差依存性、並びに3)不活性化のタイムコースである。予備的な結果により、D188Vミュータントチャンネルが、活性化の電位差依存性と不活性化のタイムコースについて野生型チャンネルと同等であることが示されている。しかしながら、ミュータントチャンネルの定常状態の不活性化は、野生型チャンネルで観察されるものよりわずかに正である膜電位にシフトする。この正のシフトは、静止して開くために利用可能なチャンネルの分画を増大するはずである。これは、ニューロンの興奮性を増大し、てんかん誘発に寄与するであろう。かくして、ナトリウムチャンネル遺伝子で天然に生じるミューテーションの機能的な重要性が、試験的に同定されている。かくして、D188Mミュータントの機能的な重要性は、てんかんにおけるその役割を少なくとも一部として説明するであろう。そのような機能的な重要性は、SCN1A、SCN2A及びSCN3Aにおける前記同定された他のミューテーションで観察されると予測される。
【0142】
本発明は、その好ましい実施態様によって前述のように記載されているが、添付された特許請求の範囲に規定される主題となる発明の精神及び性質から離れることなく、本発明を改変することは可能である。
【0143】
〔参考文献〕
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【0144】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ch 2q23−q31上のIGE候補領域を示す。マーカーの順序とマーカー間の距離は、Gyapay等, 1994に従う。
【図2a】図2aは、SCN1AのゲノムPCR−SSCPについて使用されるPCRプライマーを示す。
【図2b】図2bは図2aの続きである。
【図2c】図2cは図2bの続きである。
【図2d】図2dは図2cの続きである。
【図2e】図2eは図2dの続きである。
【図2f】図2fは図2eの続きである。
【図3】図3は、てんかん患者において見出されるSCN1Aミューテーションの配列を示す。
【図4a】図4aは、SCN2AのゲノムPCR−SSCPについて使用されるPCRプライマーを示す。
【図4b】図4bは図4aの続きである。
【図4c】図4cは図4bの続きである。
【図4d】図4dは図4cの続きである。
【図4e】図4eは図4dの続きである。
【図4f】図4fは図4eの続きである。
【図5】図5は、SCN2Aにおいててんかん患者で見出されるミューテーションを示す。
【図6a】図6aは、SCN3AのゲノムPCR−SSCPについて使用されるPCRプライマーを示す。
【図6b】図6bは図6aの続きである。
【図6c】図6cは図6bの続きである。
【図6d】図6dは図6cの続きである。
【図6e】図6eは図6dの続きである。
【図7】図7は、SCN3Aにおいててんかん患者で見出されるミューテーションを示す。

Claims (13)

  1. 患者のSCN1A、SCN2A及びSCN3Aから選択される少なくとも一つの遺伝子、またはそれらと連鎖不均衡を示すDNA変異体、同等物またはミューテーションの遺伝子型を測定し、それによって患者のてんかんに対する素因及び/またはてんかんの罹患を測定する工程を含む、患者のてんかんに対する素因及び/またはてんかんの罹患を測定する方法、並びに医薬に対する患者の応答を予測する方法。
  2. SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの遺伝子型を測定する工程が、制限エンドヌクレアーゼ切断を含む、請求項1記載の方法。
  3. SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの遺伝子型を測定する工程が、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることを含む、請求項1または2記載の方法。
  4. SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの遺伝子型の測定の前に、ポリメラーゼ連鎖反応を使用してSCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの部分を増幅する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
  5. SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの遺伝子型を測定する工程が、SCN1A、SCN2AまたはSCN3A、あるいはその一部のシークエンシングを含む、請求項1記載の方法。
  6. SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aの遺伝子型が、本発明に従って同定された少なくとも一つの対立遺伝子変異体またはミュータントと連鎖不均衡を示す多型変異部位を使用して測定される、請求項1記載の方法。
  7. a)ナトリウムチャンネルのアルファサブユニットまたはその機能的な断片をコードする組換えSCN1A、SCN2AまたはSCN3A遺伝子;並びに
    b)前記ナトリウムチャンネルの機能のアッセイ;
    を含む、試験薬剤をスクリーニングし、てんかんに関与するナトリウムチャンネルの不活性化を調節する薬剤を選択するアッセイであって、
    前記試験薬剤の不存在下と存在下の間で、前記ナトリウムチャンネルの不活性化の差異が観察される場合に薬剤が選択でき、前記ナトリウムチャンネルの機能不全がてんかんと関連しているアッセイ。
  8. a)ナトリウムチャンネルのアルファサブユニットまたはその機能的な断片をコードする組換えSCN1A、SCN2AまたはSCN3A遺伝子;並びに
    b)前記ナトリウムチャンネルの活性のアッセイ;
    を含む、試験薬剤をスクリーニングし、てんかんに関与するナトリウムチャンネルの活性を調節する薬剤を選択するアッセイであって、
    前記試験薬剤の不存在下と存在下の間で、前記ナトリウムチャンネルの活性の差異が観察される場合に薬剤が選択でき、前記ナトリウムチャンネルの機能不全がてんかんと関連しているアッセイ。
  9. てんかんの治療における応用を有する薬剤を同定する目的で、ナトリウムチャンネルの機能を調節するように定められた薬剤についてのスクリーニングアッセイをセットアップするために、SCN1A、SCN2AまたはSCN3A遺伝子の特異的対立遺伝子、あるいはそれと連鎖不均衡を示すそれらの変異体、同等物、またはミューテーションを使用する方法。
  10. 化合物のライブラリーから、てんかんまたは他の神経学的疾患に対する治療効果を有する化合物を同定する方法であって、
    a) SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の測定可能な生物学的活性を含むスクリーニングアッセイを準備する工程;
    b) 試験化合物と前記スクリーニングアッセイを接触させる工程;並びに
    c) 前記試験化合物が、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の生物学的活性を調節するかどうかを検出する工程;
    を含み、前記生物学的活性を調節する試験化合物が、前記治療効果を有する化合物である方法。
  11. 前記治療効果を有する試験化合物が、前記治療効果を有する前記試験化合物のさらなる類似体を提供するために、コンビナトリアルケミストリーまたは医薬的ケミストリーによってさらに改変される、請求項10記載の方法。
  12. てんかんまたは他の神経学的疾患に対する治療効果を有する化合物であって、
    a) SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の測定可能な生物学的活性を含むスクリーニングアッセイを準備する工程;
    b) 試験化合物と前記スクリーニングアッセイを接触させる工程;並びに
    c) 前記試験化合物が、SCN1A、SCN2AまたはSCN3Aタンパク質または遺伝子の生物学的活性を調節するかどうかを検出する工程;
    を含む方法によって同定され、前記生物学的活性を調節する試験化合物が、前記治療効果を有する化合物である化合物。
  13. 前記治療効果を有する化合物が、前記治療効果を有する前記化合物の類似体を提供するために、コンビナトリアルケミストリーまたは医薬的ケミストリーによってさらに改変される、請求項12記載の化合物。
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