JP2004512012A - 細胞検出法 - Google Patents
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Abstract
本発明者らは、細胞が検出可能なシグナルを発生するように誘導する方法を記載する。本発明の方法は、構成要素を含む細胞を得る工程と、第1のレポーターおよび第2のレポーターを得る工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって検出可能なシグナルの発生を得る工程とを含む。前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを前記構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる。シグナルは、好ましくは、細胞致死機構の活性化である。
Description
【0001】
[発明の分野]
本発明は、細胞内のタンパク質および他の構成要素、特に異常細胞に関連する構成要素の検出法に関する。
【0002】
[発明の背景]
癌は、細胞の成長制御、分化、および生存に影響を与える遺伝的異常によって特徴付けられる(Vogelstein,B.& Kinzler,K.W.,「ヒト癌の遺伝的根拠」、McGraw−Hill、1998)。オンコジーンまたはキメラ融合タンパク質の発現を増強する、癌遺伝子および染色体転座における変異は、複数の腫瘍で頻繁に認められている(Rabbitts,T.H.,1994、Nature、372,143〜149)。これらの異常遺伝子のタンパク質産物は癌細胞特有であるので、腫瘍特異的抗原である。変異タンパク質の排除またはその機能の阻害が、癌の成長および進行の制御において有効であることが示されている(Chinら,1999,Nature,400,468〜472;Felsherら,1999,Mol.Cell 4,199〜207;Huettnerら,2000,Nat.Genet.,24、57〜60)。しかし、このようなタンパク質が治療介入用の潜在的な標的であるにもかかわらず、これらは主に細胞内タンパク質であるので、治療のストラテジーの設計は現実的には困難である。
【0003】
1つのアプローチは、変異タンパク質の中和(Cochetら,1998,Cancer Res.,58、1170〜6)、またはその効果を発揮するために必要な細胞区画への到達の防止(Wrightら,1997,Gene Ther.,4、317〜22)のいずれかによる変異タンパク質を不活化させるための抗体または抗体フラグメントの細胞内発現であった。しかし、特に細胞の内部環境内で、抗体が特定のタンパク質に結合するかどうかをいつも事前に予想することは可能ではない。細胞内で抗原に結合することができる抗体を直接識別する選択方法が提案されている(哺乳動物細胞内で結合能力を有する抗体を選択するためのインビボ2ハイブリッド系(two−hybrid system)など)。このような方法は、本発明者らの先の英国特許出願番号9905510.5および国際特許出願番号PCT/GB00/00876(引用することにより、本明細書の一部をなすものとする。)に記載されている。
【0004】
しかし、インビボで結合すると考えられる候補抗体が識別されたとしても、この抗体が腫瘍タンパク質を中和させるかその細胞内局在化を防止することができるという保証はない。さらに、腫瘍表現型は1つ以上のタンパク質の変異によって誘導され得るので、変異タンパク質を中和させることは、必ずしも腫瘍細胞増殖の停止に有効ではない。したがって、抗体を用いて腫瘍細胞を殺傷する有効な方法が必要である。
【0005】
腫瘍関連抗原は癌細胞の特徴であり、これらの抗原の検出は、患者の癌診断のための手段として使用することができる。抗原の発現を、個体の遺伝子型分類手段として検出することもできる。さらに、特異的マーカーの検出を、組織分類手段として使用することができる。これら全ての場合、抗原の存在を、標識抗体の疑いのある細胞への曝露および抗体と抗原との結合の検出によって識別することができる。しかし、この方法は細胞外で発現した抗原の検出のみに適切である。したがって、細胞内マーカーの有効な検出手段が必要である。
【0006】
[発明の要旨]
本発明者らは、中和抗体の直接的標的として、細胞内腫瘍特異的抗原を使用する代わりに、細胞内で構成要素に結合し、協力して検出可能なシグナルを発生させる1対のレポーターの使用によって細胞を検出可能であることを見出した。このシグナルを使用して細胞を識別することができる。検出された細胞が腫瘍細胞または他の疾患細胞である場合、シグナルは細胞致死機構(cell killing mechanism)の活性化に有利であり、腫瘍細胞または疾患細胞をこの方法で排除することができる。
【0007】
したがって、本発明の1つの態様では、本発明者らは、細胞が、検出可能なシグナルを発生するように誘導する方法であって、(a)ある構成要素を含む細胞を提供する工程と、(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって検出可能なシグナルの発生を得る工程と、(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる工程とを含む方法を提供する。
【0008】
本発明者らは、本発明の別の第2の態様により、細胞内のある構成要素の検出方法であって、(a)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって、検出可能なシグナルを発生させる工程と、(b)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを前記構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる工程と、(c)前記シグナルの監視によって前記構成要素を検出する工程とを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の第3および他の態様により、細胞を死滅させる方法であって、(a)構成要素を含む細胞を提供する工程と、(b)第1の免疫グロブリンを含む第1のレポーターおよび第2の免疫グロブリンを含む第2のレポーターを提供する工程と、(c)前記第1の免疫グロブリンに連結した第1のカスパーゼ分子および前記第2の免疫グロブリンに連結した第2のカスパーゼ分子を提供する工程であって、前記第1のカスパーゼ分子と前記第2のカスパーゼ分子とが安定に相互作用して細胞中にアポトーシスを生じるためのカスパーゼ活性を発生させることができ、(d)前記第1の免疫グロブリンおよび前記第2の免疫グロブリンを前記構成要素に結合させて、前記レポーターの前記構成要素への結合により前記カスパーゼ分子と安定に相互作用して細胞中にカスパーゼ活性を発生させてアポトーシスを誘導する工程とを含む方法が得られる。
【0010】
「構成要素」とは、任意の細胞成分を意味する。この構成要素は、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、転移RNA、亜細胞構造、または細胞内病原体である。新生ポリペプチドおよび細胞内ポリペプチド前駆体もまた、用語「構成要素」の範囲に含まれる。好ましくは、この構成要素は、細胞または細胞に由来する生物の所定の病態に関連するポリペプチドである。
【0011】
細胞は、分化した細胞、または腫瘍細胞などの異常細胞、疾患細胞、または感染した細胞であり得る。「異常細胞」とは、罹患しているか、感染しているか、正常な細胞の特徴または挙動を示さない細胞を意味する。したがって、構成要素は、アルツハイマー病またはダウン症候群(例えば、神経原線維変化または老人斑)に関連する細胞成分であり得る。構成要素はまた、変異βアミロイド前駆体タンパク質または変異ユビキチンBタンパク質であり得る。βアミロイド前駆体タンパク質またはユビキチンBタンパク質をコードするRNAのフレームシフト変異はアルツハイマー病およびダウン症候群に関連することが既知であるので、本発明の構成要素はこのようなタンパク質をコードするフレームシフトRNAであり得る。構成要素はまた、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、新規の異型CJD、またはウシ海綿状脳症(BSEまたは狂牛病)などの哺乳動物海面状脳症に関連する、プリオンタンパク質の感染形態(PrPSc)であり得る。構成要素はまた、AIDS(後天性免疫不全症候群)または自己免疫疾患に関連するタンパク質または他の分子であり得る。
【0012】
好ましくは、構成要素は、癌関連または腫瘍関連タンパクまたは疾患特異的タンパク質である。最も好ましくは、構成要素は、細胞または細胞中の前駆体に起因するオンコジーンタンパク質である。変異オンコジーンタンパク質は、p21rasであり得る。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターのうちの一方が変異オンコジーンタンパク質に存在する標的には結合するが、対応する野生型タンパク質には結合せず、第1のレポーターおよび第2のレポーターのうちの他方が、変異オンコジーンタンパク質および野生型タンパク質のいずれにも存在する標的に結合する。
【0013】
あるいは、変異オンコジーンタンパク質は、染色体転座に起因するキメラ融合タンパク質である。染色体転移の例は、BCR−ABL融合タンパク質を発現するフィラデルフィア転座である。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターの一方がSH2ドメインを含む標的に結合し、第1のレポーターおよび第2のレポーターの他方が、SH2結合部位を含む標的に結合する。
【0014】
変異オンコジーンタンパク質はまた、変異p53タンパク質であり得る。好ましくは、p53タンパク質はp53サブユニットから構成される四量体である。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、変異p53タンパク質の同一の標的に結合する。
【0015】
一般に、構成要素が多量体を形成した天然の細胞成分である場合、第1および第2の分子は同一であり、構成要素の多量体形成によって会合し得る。構成要素が変異構成要素である場合、多量体形成能力が維持されることが好ましい。好ましくは、第1および第2の分子の一方または両方、またはさらなる第3の分子は、多量体形成する構成要素中でのより密接な集合によって、レポーター群の協力を改善する拘束能力を有し得る。
【0016】
本明細書中で使用される、「シグナル」とは、任意の検出可能な事象、好ましくは細胞致死機構(cell killing mechanism)の活性化である。本発明の好ましい実施形態では、細胞致死機構は、アポトーシスまたはプログラムされた細胞死である。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれカスパーゼ分子を含み、レポーターのその標的への結合により、アポトーシスが誘導されるようにカスパーゼ分子を自己活性化させる。あるいは、シグナルは、プロテアーゼ活性、転写活性、または発光誘導活性などの酵素活性の発生であり得る。
【0017】
「安定な相互作用」とは、第1および第2のレポーターを機能的に協力させて検出可能なシグナルを発生させる相互作用と定義することができる。好ましくは、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターは、シグナルを発生することができる分子の形成に関連するポリペプチドを含む。
【0018】
「プロテアーゼ活性」とは、プロテアーゼまたはタンパク質またはペプチドを分解することができる任意の他の酵素の活性を意味する。プロテアーゼを、当該分野で既知の方法による適切な基質の分解の監視によってアッセイすることができる。好ましくは、ポリペプチド基質は、検出される構成要素からなるか、これを含む。プロテアーゼ活性は、システインプロテアーゼ活性(例えば、カスパーゼ活性)であり得る。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、プロテアーゼ活性は、カスパーゼ活性を含む。好ましくは、カスパーゼ活性は、第1のレポーターと第2のレポーターとの安定な相互作用によって発生する。したがって、この実施形態では、第1のレポーターと第2のレポーターとの安定な相互作用によって、プロテアーゼ活性化が直接発生する。好ましくは、カスパーゼ3またはカスパーゼ8である。さらに好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれカスパーゼ分子を含む。さらにより好ましくは、レポーターのその標的への結合により、カスパーゼ分子が自己活性化し、細胞中でアポトーシスが活性化する。最も好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれカスパーゼ3を含む。カスパーゼは、アポトーシスの誘導に関連するタンパク質群であり、用語「カスパーゼ」は、当該分野で公知である。カスパーゼの例は、Takahashi,Int.J.Hematol.,1999 Dec;70(4):226〜32に記載されているものである。
【0020】
さらなる実施形態では、プロテアーゼ活性を、ユビキチン媒介タンパク質分解の一部としてタンパク質を分解するプロテアソームと関連付けることができる。好ましくは、プロテアソームは26Sプロテアソームである。第1および第2のレポーターは、ユビキチン媒介タンパク質分解経路に関連する成分のドメイン、好ましくは、F−boxタンパク質のドメインを含み得る。検出すべき構成要素の結合による第1および第2のレポーターの安定な相互作用による成分(例えば、F−box)の再構成により、構成要素または構成要素を含むポリペプチドにユビキチンが標識される。構成要素および/またはポリペプチドを破壊のために標的化され、その後プロテアソーム(好ましくは26Sプロテアソーム)によって破壊し、そのシグナルを当該分野で既知の手段によって検出することができる。この実施形態では、第1および第2のレポーターの会合自体は直接プロテアーゼ活性を発生しないが、このプロテアーゼ活性は、このような会合によって間接的に発生することが認識される。破壊されたポリペプチドが細胞の生存に不可欠である場合(代謝酵素、転写因子、膜タンパク質などの構造タンパク質など)、細胞死(これ自体を検出可能)を得ることができることがさらに認識される。例えば、アポトーシスの誘発によって別のポリペプチドの破壊が細胞死を誘導する場合、同一の状況が得られる。
【0021】
酵素活性は転写活性であってよく、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、好ましくは、転写因子のドメインを含み得る。「転写活性」は、転写単位からのメッセンジャーRNAの産生を誘導する活性を意味する。例えば、転写活性は、転写因子または細胞内の遺伝子発現を調整する任意の他の調節分子によって証明される。好ましくは、第1のレポーターまたは第2のレポーターのいずれかはGal4のDNA結合ドメイン(DBD)を含み、第1のレポーターまたは第2のレポーターの他方はVP16活性化ドメインを含む。シグナルを、レポーター遺伝子発現の監視によって検出することができる。レポーター遺伝子は、検出可能な終点での酵素反応を触媒しうる酵素をコードする。あるいは、レポーター遺伝子は、細胞増殖を調節することができる(必要な栄養を得ることができる)分子をコードする。好ましくは、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする。最も好ましくは、レポーター遺伝子は、CD4である。
【0022】
本発明は、さらに、レポーター系として転写調節機構の使用を含む。例えば、ジフテリア毒素発現の転写調節は、第1および第2のレポーターの協力に依存し得る。したがって、第1のレポーターは、わずかなバックグラウンド発現レベルを有する最小プロモーターの調節下で毒素をコードするコード配列を含み得る。第2のレポーターは内因的または外因的のいずれかで転写因子発現を調節する(つまり、毒素発現を情報制御する)ことができる。
【0023】
酵素活性は、発光誘導活性であり得る。「発光」とは、化学反応による光または他の放射物の発生をいい、これは生物発光および化学発光を含む。好ましくは、発光誘導活性は、ルシフェラーゼによって得られることが好ましい。より好ましくは、第1および第2のレポーターはルシフェラーゼのポリペプチドドメインを含み、これらが集結した場合にルシフェラーゼ活性を発生する。
【0024】
シグナルは、電磁放射(例えば、光)の放出または吸収であり得る。好ましくは、シグナルは、蛍光シグナルである。より好ましくは、蛍光化学物質または蛍光タンパク質から蛍光シグナルを発生する。好ましい蛍光化学物質は、フルオレセインイソチオシアネートおよびローダミンであり、好ましい蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、または赤色蛍光タンパク質である。最も好ましくは、蛍光シグナルは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって調整される。蛍光シグナルは、好ましくは、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって検出する。
【0025】
第1のレポーターおよび第2のレポーターは、同一の標的部位に結合することができる。これが事実である場合、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、同一の標的部位に実質的に同時または連続して結合することができる。あるいは、好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは異なる標的部位に結合する。レポーターが異なる標的部位に結合する場合、本発明にしたがってレポーターが機能的に協力することができるように標的部位は隣接することが有利である。
【0026】
好ましくは、第1のレポーターは第1の会合手段を含み、第2のレポーターは第2の会合手段を含み、第1および第2のレポーターはその各会合手段によって相互作用する。より好ましくは、第1のレポーターは構成要素上の第1の標的に結合する第1の結合手段を含み、第2のレポーターは、構成要素上の第2の標的に結合する第2の結合手段を含む。最も好ましくは、第1のレポーターは第1の結合手段に連結した第1の会合手段を含み、第2のレポーターは第2の結合手段に連結した第2の会合手段を含む。
【0027】
用語「連結」は、2つの部分の間の共有結合または非共有結合の任意の形態(例えば、結合手段および会合手段)を意味する。連結の例は、融合タンパク質中のペプチド結合である。部分の間の化学的なカップリングおよび結合も明らかに含まれる。さらに、結合手段および会合手段は直接的連結である必要はなく、リンカーペプチドを介して連結し得る。リンカーペプチドは、可動性のまたは構造化リンカーペプチドであり得る。適切な可動性リンカーペプチドは、任意選択的に他のアミノ酸残基と組み合わせた1つまたは複数のグリシン残基を含み得る。構造化リンカーは、1つまたは複数のプロリン残基を含み、規定の二次構造を含み得る。
【0028】
「結合手段」とは、標的に特異的に結合することができる全てのものを意味する。好ましくは、結合手段は分子である。より好ましくは、結合手段はポリペプチドまたはタンパク質である。
【0029】
最も好ましくは、第1の結合手段および/または第2の結合手段は、免疫グロブリン(例えば、抗体またはT細胞受容体またはそのフラグメント)を含む。好ましくは、抗体は、Fv、一本鎖Fv(ScFv)、Fab、またはF(ab’)2から選択される。より好ましくは、抗体は一本鎖Fvである。最も好ましくは、抗体は細胞内一本鎖Fvである。構成要素がタンパク質またはポリペプチドを含む場合、免疫グロブリンを含むレポーターの使用が好ましい。したがって、構成要素は免疫グロブリンによって認識されるエピトープを含み得る。
【0030】
用語「免疫グロブリン」とは、T細胞受容体および抗体を含む免疫グロブリンスーパーファミリーの任意のメンバーをいい、これには、標的に結合することができる天然の免疫グロブリンの任意のフラグメントが含まれる。免疫グロブリンの総説は、Maleら,1987,Advanced Immunology,、J.B.,Lippinocott Company,Philadelphiaに記載されている。Fv、一本鎖Fv(ScFv)、Fab、またはF(ab’)2と同様に、インタクトな免疫グロブリンも用語「免疫グロブリン」の範囲内である。本明細書中で使用される、「細胞内」は、細胞の内側を意味する。「細胞内抗体」は、細胞環境内または細胞内環境を模倣した環境下でその標的または同族抗原に結合することができる抗体である。
【0031】
会合手段および結合手段が共にタンパク質を含む場合、レポーターは、好ましくは、結合手段に連結した各会合手段を含む融合タンパク質として得られる。好ましくは、細胞内の核酸の発現によって、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターが得られる。結合手段が抗体またはT細胞受容体を含む場合、核酸は、抗体またはT細胞受容体のレパートリーをコードするファージライブラリーから得ることが好ましい。「レパートリー」は、複数の結合特異性を得るために核酸レベルで1つまたは複数のテンプレート分子の無作為、半無作為、または定方向変異によって得られた1組の分子をいう。
【0032】
より好ましくは、ライブラリーを、抗原に曝露された生物から単離された核酸から構築する。あるいは、会合手段は、化学的カップリングによる結合手段に連結している。
【0033】
構成要素が核酸を含む場合、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターは、構成要素中に局在する配列を含む標的に結合することができる。好ましくは、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターの各標的への結合は核酸ハイブリッド形成によって起こる。より好ましくは、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターは、標的配列とハイブリッド形成することができる核酸結合手段を含む。最も好ましくは、核酸結合手段は、RNAまたは一本鎖DNAを含む。
【0034】
第1および/または第2のレポーターは、核酸配列を含む会合手段を介して相互作用することができる。レポーターの安定な相互作用は、この場合、照射(例えば、紫外線照射)の吸収の監視によって検出することができる。あるいは、核酸会合手段を、本明細書中に記載のシグナルを発生させることができる任意の成分に連結することができ、レポーター間の相互作用を、発生した特定のシグナルの監視によって検出することができる。
【0035】
会合手段および結合手段が共に核酸を含む場合、第1および/または第2のレポーターを、会合手段および結合手段を含む近接した核酸配列の形態で得ることができる。
【0036】
あるいは、第1および/または第2のレポーターを、核酸およびタンパク質を含むハイブリッドの形態で得ることができる。したがって、レポーターは、タンパク質を含む結合手段および核酸を含む会合手段を含むか、その逆に核酸を含む結合手段およびタンパク質を含む会合手段を含むことができる。重要なのは、第1のレポーターの結合手段のその標的への結合により第1のレポーターの会合手段が第2のレポーターの会合手段に安定に会合され、標的に結合した場合にシグナルを発生するという点だけである。
【0037】
本発明の第4の態様によれば、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と共に免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物が得られる。
【0038】
本発明の第5の態様では、本発明者らは、ヒトもしくは動物の癌の治療方法または予防方法に使用するための、免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0039】
本発明の第6の態様によれば、ヒトまたは動物の癌の治療方法または予防方法用の薬剤を調製するための、免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸の使用が得られる。
【0040】
本発明の第7の態様では、細胞中のポリペプチドの分解方法であって、(a)ポリペプチドを含む細胞を得る工程と、(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを得る工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によってプロテアーゼ活性を発生させる工程と、(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記ポリペプチドに結合させることによって、前記ポリペプチドへの前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、プロテアーゼ活性を誘発させてポリペプチドをタンパク質分解させる工程とを含む方法を提供する。
【0041】
本発明の第8の態様によれば、本発明者らは、遺伝子機能の識別方法であって、(a)ポリペプチドをコードする遺伝子を含む細胞を提供する工程と、(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって、プロテアーゼ活性を誘発させる工程と、(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記ポリペプチドに結合させることによって、前記ポリペプチドへの前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、プロテアーゼ活性を発生させてポリペプチドをタンパク質分解させる工程と、(d)表現型を観察する工程とを含む方法を提供する。
【0042】
この態様の方法は、機能的ゲノム研究に有用である。任意のタンパク質構成要素を標的することができる適切な結合構成要素を、その崩壊によってタンパク質機能を破壊するために本明細書中に記載の詳細な説明にしたがって構築することができる。したがって、機能的「ノックアウト」を容易に作製することができる。次いで、細胞または細胞を含む動物もしくは植物の表現型を観察して、ポリペプチドまたは遺伝子の機能の指標を得ることができる。したがって、例えば、標的化された細胞が細胞周期表現型の停止を示す場合、例えば、標的化された問題のタンパク質は細胞周期機能の役割を果たすと結論付けることができる。以下にさらに詳細に説明されている適切にデザインされたレポーターの使用による任意のタンパク質の標的能力の適用により広範な有用性を得ることができる。
【0043】
好ましくは、シグナルは、プロテアソーム、好ましくは26Sプロテアソームに関連するプロテアーゼ活性の発生である。より好ましくは、第1および第2のレポーターがそれぞれF−boxモチーフの1つまたは複数のドメインを含む。好ましくは、レポーターの構成要素への結合により構成要素または構成要素を含むポリペプチドがユビキチン化される。本発明の非常に好ましい実施形態では、レポーターの構成要素への結合により構成要素または構成要素を含むポリペプチドがタンパク質分解される。このようなタンパク質分解により、細胞が死滅することが好ましい。
【0044】
本発明の実施には、特記しない限り、当業者の能力の範囲内の従来の化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学技術を使用する。このような技術は、文献で説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F,Fritsch,and T.Maniatis,1989,「分子クローニング:実験マニュアル」,第2版,第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら,1995および定期増補版,「現代の分子生物学プロトコール」,第9,13,および16章,John Wiley & Sons、New York,N.Y.;B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn,1996,「DNA単離および配列決定:基本的技術」,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee、1990、「in situハイブリッド形成:原理と実践」;Oxford University Press;M.J.Gait(編),1984,「オリゴヌクレオチド合成:実践アプローチ」,Irl Press;およびD.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,「酵素学方法論(Methods of Enzymology):DNA合成パートA:DNAの合成および物理分析」,Methods in Enzymology,Academic Pressを参照のこと。これらの各一般書を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0045】
[発明の詳細な説明]
本発明の方法により、構成要素を含む細胞中でシグナルが誘導され、細胞内で構成要素が検出され、構成要素を含む細胞が死滅する。本発明は、構成要素への第1および第2のレポーターの結合に依存する。したがって、第1のレポーターが構成要素への第1および第2のレポーターの結合を介して第2のレポーターと安定に相互作用する場合、シグナルが発生する。有利には、第1および第2のレポーター間の安定な相互作用は、レポーターがレポーターのその各標的への結合を伴わない限り起こらない。所望ならは、シグナルを検出することができる。したがって、第1および第2のレポーターは、相互作用によってシグナルを発生することができるシグナル発生因子の2つの部分である。
【0046】
本発明の方法を、一般に、任意の細胞を正常か異常かの識別(例えば、癌細胞または疾患細胞)に使用することができることに留意すべきである。したがって、一般に、本発明者らの方法を使用して、細胞内の任意のタンパク質、核酸、または他の構成要素を検出するか、さらに細胞内の任意の構成要素の亜細胞の位置を識別することができる。したがって、本発明者らの方法は、病態に関連する構成要素の有無によって細胞の病態を検出することができる。識別された細胞の排除を所望する場合、従来の手段によってこれを行うことができる。その他で好ましくは、シグナルが細胞死であるように、レポーターの結合により細胞致死機構が直接活性化される。有利には、細胞死は、アポトーシスまたはプログラム細胞死に起因する。
【0047】
特定のアミノ酸配列を認識してアスパラギン酸後に標的タンパク質を切断するカスパーゼとして公知のシステインプロテアーゼのファミリーによってアポトーシスを行う(Thornberryら,1998、Science、281、1312〜6)。カスパーゼファミリーの1つのメンバーであるカスパーゼ3は、いわゆるアポトーシス経路の実行者であり、生存細胞の完全性の維持に重要な多数のタンパク質のタンパク質分解性切断を担う(Earnshawら,1999、Ann.Rev.Biochem.,68、383〜424)。カスパーゼ3を酵素前駆体として合成し、イニシエーターまたは上流カスパーゼ(カスパーゼ8(Srinivasulaら,1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93、14486〜91)およびカスパーゼ9(Liら,1997、Cell,91、479〜89)など)によって活性化して、活性四量体酵素を形成させる(Rotondaら,1996、Nat.Struct.Biol.,3、619〜25)。2つのカスパーゼ3分子が非常に近接する場合、強制的な二量化によって、これらは自己活性化して不可逆的に細胞死を招くことが示されている(Colussiら,1998、J.Biol.Chem.,273、26566〜70;MacCorkleら,1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95、3655〜60;Fanら,1999、Hum Gene Ther.,10、2273〜85)。
【0048】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、カスパーゼ3分子を含む。第1および第2のレポーターの構成要素への結合により、第1および第2のレポーター間で安定に相互作用し、カスパーゼ3分子が自己活性化し、カスパーゼ活性を発生する。これにより、細胞内でアポトーシスが誘発される。以下に記載のように、有利には、第1および第2のレポーターは抗体を介して各標的に結合し、好ましい実施形態では、細胞内抗体−カスパーゼ融合タンパク質の形態でカスパーゼ3が得られる。
【0049】
本明細書中で使用される、「カスパーゼ分子」または「カスパーゼ」には、カスパーゼ活性が保持されている限り、カスパーゼのポリペプチド配列のいくつかまたは全部を含むポリペプチド配列が含まれる。したがって、第1および第2の分子は、他のポリペプチド配列と共にカスパーゼ由来のポリペプチド配列を含み得る。カスパーゼ配列は、分子内または分子上に部分を形成することができる。
【0050】
カスパーゼのポリペプチド配列を、タンパク質の活性および機能に実質的に影響を与えない保存的アミノ酸置換を用いて変更することができる。その他で好ましくは、カスパーゼの自己中毒を減少させ、そして/またはアポトーシスの活性化により有効なカスパーゼを作製するための変異を移入することができる。カスパーゼ分子を、検出すべき構成要素の非存在下で二量体形成するカスパーゼ分子の傾向を防止するか低減させるように操作することもできる。カスパーゼのこのような変異型および変異体を、当該分野で公知の方法によって作製し、有効性について試験することができる。
【0051】
シグナルは、電磁放射(EM)(例えば、光)の放出または吸収であり得る。これには、蛍光、燐光、または照射の放出または吸収の強度または周波数の調整に関連する他のシグナル(例えば、FRETシグナル)が含まれる(以下にさらに詳細に記載する)。第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれ蛍光タンパク質または蛍光化学物質などの蛍光発色団を含み得る。蛍光化学物質の例には、アロフィコシアニン、フィコシアニン、フィコエリスリン、ローダミン、テトラメチルローダミン、7−ニトロ−ベンゾフラザンローダミンイソチオシアネート、オキサジン、クマリン、フルオレセイン誘導体(例えば、FAM(6−カルボキシ−フルオレセイン)、TET(6−カルボキシ−4,7,2’,7’−テトラクロロフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、およびカルボキシフルオレセインジアセテート)、テキサスレッド、アクリジンイエロー/オレンジ、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、およびbis−ベンズアミド(HoechstからH33258の商標名で市販されている)が含まれる。
【0052】
好ましくは、第1および第2のレポーターは、蛍光ポリペプチドを含む。蛍光ポリペプチドおよびタンパク質の例には、Aequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)、Discosoma spp由来の赤色蛍光タンパク質(RFP)が含まれる。これらのタンパク質の誘導体および変異型(シアン蛍光タンパク質青色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP;GFPmut1;Yang,T.T.ら,1996,Nucrelic Acids Res.,24(22),4592〜4593;Cormack,B.P.ら,1996、Gene、173,33〜38)、増強青色蛍光タンパク質(EBFP)、増強黄色蛍光タンパク質(EYFP;Ormoら,1996,Science,273,1392〜1395)、不安定化増強緑色蛍光タンパク質(d2EGFP;Living Colors不安定化EGFPベクター(1998年4月)、CLONTECHniques XIII(2)、16〜17)、増強シアン蛍光タンパク質(ECFP)、およびGFPuv(Haas,J.ら,1996、Curr.Biol.,6、315〜324)など)も使用することができる。これらの蛍光タンパク質は、CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto、California、USA)から市販されている。あるいは、第1および第2のレポーターは、蛍光ポリペプチドのポリペプチドドメインを含む。
【0053】
シグナルは、活性を誘導する発光であり得る。発光の間に光が発生するので、シグナルは同時に活性を誘導する発光および電磁放射線の放射であり得ることが認識される。
【0054】
シグナルはまた、酵素活性(例えば、転写活性)の発生であり得る。転写活性を、例えば蛍光抗体およびFACSによるCD4などのレポーター遺伝子の発現のアッセイによって検出することができる。
【0055】
あるいは、シグナルを、細胞増殖、細胞分裂、または細胞の分化として検出することができる。第1および第2のレポーターが安定に相互作用して、分化または細胞増殖のプログラムを活性化することができる転写活性を得ることができる。例えば、VEGF(血管内皮成長因子)および/または他の脈管形成成長因子を発現して血管新生を誘導することもできる。Lmo2 LIMのみのタンパク質は、血管新生に特異的に必要であることが示されているので(Yamadaら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、320〜324)、転写活性はLmo2活性であり得る。細胞の増殖および検出を、当該分野で公知のように顕微鏡によって適切な細胞表面マーカーを検出することができる。
【0056】
細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。好ましくは、細胞は、動物細胞またはヒト細胞である。好ましくは、細胞はヒト細胞である。構成要素は、任意の細胞区画、好ましくは細胞質または核に存在し得る。
【0057】
細胞は、正常な細胞であり得るので、本発明者らの方法は、例えば、特定の発生系統に関連する構成要素の検出による組織分類手段として使用することができる。あるいは、本方法を、例えば、細胞が癌性であるかどうかを細胞内の腫瘍関連構成要素の検出による、細胞の病態の識別手段として使用することができる。したがって、構成要素は、ポリペプチドをコードする核酸の点変異、欠失、挿入、または染色体転座による野生型タンパク質由来の変異癌タンパク質またはポリペプチドであり得る。例としては、対応する野生型タンパク質の1つまたは複数の変異に起因するp21rasである。腫瘍サプレッサー遺伝子の変異はしばしば癌細胞および癌細胞に関連し、この癌細胞によって産生されるタンパク質(例えば、変異p53タンパク質)を、本発明の方法を使用して検出することもできる。あるいは、癌タンパク質は、染色体転座に起因するキメラ融合タンパク質であり得る(フィラデルフィア転座由来のBCR−ABL融合体など)。
【0058】
構成要素はまた、異常細胞に関連するタンパク質または核酸であり得る。このような細胞は、正常な細胞では見出されない異常なタンパク質(例えば、感染の結果として発現するウイルスまたは最近特異的タンパク質)を発現し得る。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)インテグラーゼタンパク質により、細胞がHIVに感染しているかどうかを識別する。したがって、本発明者らの方法を使用して、細胞が罹患しているか、感染しているか、または異常であるのかどうかを識別することができる。他で好ましくは、罹患しているか、感染しているか、異常な細胞は、上記のアポトーシスの活性化によって死滅する。この場合、シグナルを検出する必要は全くないことが認識される。
【0059】
タンパク質を産生する対応核酸の検出によってタンパク質を検出することもできることが認識される。例えば、変異を有し、腫瘍関連タンパク質をコードするメッセンジャーRNAまたはDNA配列を検出することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、第1および第2のレポーターは、結合手段を有し、この結合手段は細胞内での核酸の発現によって得られる免疫グロブリンである。核酸を、構成要素の検出に適切な亜細胞区画に局在化させることができる。例えば、構成要素が細胞質タンパク質である場合、核酸は細胞の細胞質に局在化し、そこで転写および/または翻訳される。分子はまた、任意の所望の亜細胞区画(核(例えば、核局在化シグナルへの融合による)、ER(ER保持シグナルの使用)、ミトコンドリア(ミトコンドリア標的配列(MTS)の使用)、原形質膜、または原形質膜などの他の場所など)に局在化することができる。このような標的配列については、一般に、Bakerら,1996、Biol.Rev.Camb.Philos.Soc.,71、637〜702に記載されている。
【0061】
ミトコンドリア標的配列およびミトコンドリア膜によるタンパク質の指示および転座機構は、例えば、Omura,1998,Biochem(Tokyo) 123,1010〜6,Glaserら,1998,Plant Mol Biol,38,311〜38,およびVoosら,1999,Biochim Biophys Acta 1422,235〜54で考察されている。生物活性化合物のミトコンドリア標的は、Murphy,1997,Trends Biotechnol 15,326〜30に概説されている。ミトコンドリアが多くの重要な細胞プロセスに関連しているので、本発明を使用して異常なミトコンドリアタンパク質またはミトコンドリアDNA疾患に関連するDNAを含む構成要素を検出することができる。異常なミトコンドリアタンパク質または変異mtDNAを含む細胞を、検出し、任意選択的に死滅させることができる。
【0062】
核局在化配列には、SV40巨大T抗原コンセンサス配列PKKKRKV(Dingwallら,1991,Trends Biochem.Sci.16、478〜481に概説)または2つの核局在化配列(例として核質タンパク質)(Dingwallら,1987,EMBO J.6、69〜74;Robbinsら,1991,Cell 64,615〜623)が含まれる。
【0063】
レポーターを原形質膜に標的化して、原形質膜に存在する構成要素(膜タンパク質など)を検出することもできる。p21−ras癌遺伝子産物を原形質膜に局在化し、標的化レポーターを適切に使用してrasタンパク質を検出することができることが公知である。レポーターを膜貫通タンパク質または膜局在化が可能な膜貫通タンパク質の一部(当該分野で公知の膜貫通αヘリックスなど)への連結によって、原形質膜への標的化を行うことができる。
【0064】
レポーターが組換えタンパク質として発現された場合、核標的配列、ミトコンドリア標的配列、ER保持シグナルなどを、発現構築物への適切な配列のクローニングによってレポーターに操作することができる。
【0065】
免疫グロブリンをコードする核酸を、複数のこのような分子をコードするライブラリーから得ることができる。例えば、抗体分子のファージディスプレイライブラリーは公知であり、このプロセスに使用することができる。有利には、ライブラリーは免疫グロブリン分子のレパートリーをコードする。レパートリーの産生方法は当該分野で十分に特徴付けられている。
【0066】
ライブラリーを、抗原に曝露された生物から単離された核酸からさらに構築することができる。抗原曝露により、通常、免疫グロブリンのポリクローナル集団が産生され、それぞれ抗原に結合することができるがエピトープ特異性または他の特徴について他と異なり得る。生物からの抗体遺伝子のクローニングにより、免疫グロブリンのポリクローナル抗体を選択に供して、本発明の方法に適切な免疫グロブリンを単離することができる。
【0067】
上記のように、第1および/または第2のレパートリーは、ポリペプチドを含んでもよい会合手段を含み得る。会合手段がポリペプチドである場合、第1および第2のレパートリーの一方または両方を、免疫グロブリンおよびポリペプチドを含む融合タンパク質の形態で得ることができる。本発明の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、細胞内抗体カスパーゼ3融合体である。融合タンパク質の一方または両方を、転写して第1または第2のポリペプチドと共に第1または第2の免疫グロブリンが得られる適切な核酸構築物から発現させることができる。核酸構築物を、上記のように細胞内で標的化することができる。核酸構築物は、本発明の方法が行われる細胞内の融合タンパク質をコードする核酸の発現を指示することができる発現ベクターであり得る。
【0068】
[結合部分]
本発明のレポーターは、好ましくは、上記の細胞構成要素に結合することができる部分を含む。これらは、免疫グロブリン、特に上記の細胞内抗体であり得るが、本発明はまた、細胞内で標的に結合することができるポリペプチドおよび核酸結合分子の使用を含む。このような結合分子は、典型的には抗体より小さいほうが有利であるので、細胞内でのレポーターを構成要素により良好に標的化することができる。
【0069】
したがって、本発明は、1つまたは複数の細胞標的に第1および/または第2のレポーターを指示するための標的特異的結合ポリペプチドおよび/または核酸アプタマーの使用を提供する。本明細書中で使用される、「標的特異的結合ポリペプチドおよび/または核酸アプタマー」は、細胞内で分子標的に特異的に結合することができるポリペプチドまたは核酸分子である。このようなペプチドまたはアプタマーを免疫グロブリンの代わりに使用して本発明の細胞内の構成要素へのレポーターの標的化を行うことができる。
【0070】
結合活性を有するポリペプチドを、例えば、無作為なペプチド構造の組換えライブラリーから開発することができる。ファージディスプレイ、SELEX、mRNAディスプレイ、または表面プラスモン共鳴、必要であれば、その後の変異および選択のラウンドの反復による結合特異性および親和性の精密化などの技術による所望の標的結合親和性を有するポリペプチドの選択は、当業者に公知の技術である。
【0071】
例えば、mRNA選択による結合ポリペプチドの選択は、Wilsonら、Proc Natl Acad Sci U S A、2001 Mar 27;98(7)、3750〜3755に記載されている。Srebalus and Clemmer、Proc Natl Acad Sci U S A、2001 Mar 27,98(7):3750〜3755は、標的分子へのポリペプチドライブラリーの結合を特徴付けるためのMALDI−TOFMSの使用を記載している。ファージディスプレイの使用は、Nilssonら、Adv Drug Deliv Rev 2000 Sep 30;43(2−3):165〜96およびMcGregor、Mol Biotechnol 1996 Oct;6(2):155〜62に概説されている。核酸アプタマーの使用は、Hermann and Patel、Science 2000 Feb 4;287(5454):820〜5に概説されている。SELEXは、標的分子への高度に特異的な結合をする核酸分子のインビトロ進化法である。例えば、米国特許第5654151号、同第5503978号、同第5567588号、および同第5270163号ならびにPCT公開パンフレットWO96/38579に記載されている。
【0072】
ファージディスプレイおよびSELEXなどの反復選択法は、多数の可能な配列および構造を含むライブラリー中に所与の標的についての広範な種々の結合親和性が存在するという原理に基づく。例えば、20個のサブユニット無作為化ポリペプチドまたは核酸ポリマーを含むライブラリーは、420種の構造の可能性を有し得る。標的についてより高い親和定数を有するものは、ほぼ結合していると考えられる。分画、解離、および増幅プロセスによって、より多数の結合親和性候補が豊富な第2の核酸ライブラリーを産生される。さらなる選択ラウンドにより、得られたライブラリーが1つまたはいくかの配列のみから支配的に構成されるまで最良のリガンドが徐々に優先される。次いで、これをクローン化し、配列決定し、それぞれ純粋なリガンドとして結合親和性について試験することができる。
【0073】
選択および/または変異/増幅サイクルを、所望の目的が達成されるまで繰り返す。最も一般的な例では、サイクルの反復で結合強度が有意に改善されなくなるまで、選択/増幅を継続する。反復選択/増幅法は、少なくとも104個の配列を含むライブラリー中の1つの配列変異体の単離に十分な感受性を示す。原則的にこの方法を使用して、約1018個もの異なる核酸種をサンプリングする。ライブラリーのメンバーは、好ましくは、有効な増幅に必要な無作為化配列部分および保存配列を含む。無作為化核酸配列の合成および無作為に切断した細胞核酸からのサイズ選択を含む多数の方法において、配列変異体を産生することができる。変更可能な配列部分は、完全または部分的に無作為な配列を含み得る。無作為化配列を組み込んだ保存配列の下位部分(subportion)もまた含み得る。試験核酸の配列変形形態を、選択/増幅反復前またはその間の変異誘発および特異的改変によって導入または増加することができる。
【0074】
結合ポリペプチドおよびアプタマーの選択方法を、以下でさらに説明する。一般に、免疫グロブリン分子の選択技術を、本発明での使用のためにペプチド選択に容易に適用することができる。
【0075】
[免疫グロブリン]
免疫グロブリン分子は、広義では、免疫グロブリンスーパーファミリー(2つのβシートおよび通常は保存されたジスルフィド結合を含む抗体分子の免疫グロブリン折りたたみ特性を含むポリペプチドファミリー)のメンバーである。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(例えば、抗体、T細胞受容体分子など)の広範な役割、細胞接着への関与(例えば、ICAM分子)、および細胞内シグナル伝達(例えば、PDGF受容体などの受容体分子)を含むインビボでの細胞および非細胞相互作用の多数の局面に関連する。したがって、本発明の方法は、標的に結合することができる任意の免疫グロブリンスーパーファミリー分子を使用することができる。免疫グロブリン由来のペプチドまたはフラグメントも使用することができる。
【0076】
本明細書中で使用される、「抗体」は、選択した標的に結合することができる完全な抗体または抗体フラグメントをいい、これには、Fv、ScFv、Fab’、およびF(ab)2、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラを含む操作抗体、CDR移植およびヒト化抗体、ファージディスプレイまたは別の技術を使用して産生された人為的に選択された抗体が含まれる。FvおよびScFvなどの小さなフラグメントは、その小さなサイズおよびそれによる優れた組織分散により診断および治療への適用に有利な性質を有する。好ましくは、抗体は、一本鎖抗体またはscFvである。
【0077】
抗体は、毒素または標識などのエフェクタータンパク質を含む変化した抗体であり得る。標識抗体の使用により、インビボでの抗体の分布が画像化される。このような標識は、患者の体内で容易に視覚可能な金属粒子などの放射性標識または放射性不透明標識であり得る。さらに、これらは、蛍光標識(本明細書中に記載のものなど)または患者から取り出した組織サンプルで視覚可能な他の標識であり得る。エフェクター群を有する抗体を、上記の任意の会合手段と連結することができる。
【0078】
抗体を、動物の血清から得るか、モノクローナル抗体またはそのフラグメントの場合、細胞培養により産生させることができる。組換えDNA技術を使用して、確立された手順にしたがって、細菌性、酵母、昆虫、または好ましくは哺乳動物細胞培養において抗体を産生させることができる。選択された細胞培養系は、好ましくは、抗体産物を分泌する。
【0079】
インビトロでのハイブリドーマ細胞または哺乳動物宿主細胞の増殖を、通例の標準的培養培地である適切な培養培地(例えば、任意選択的に哺乳動物血清(例えば、ウシ胎児血清)または微量元素および増殖維持補助物質(例えば、正常なマウス腹腔滲出細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージなどの支持細胞、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸など)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)またはRPMI1640培地)で行う。細菌細胞または酵母細胞である宿主細胞の増殖を、当該分野で公知の適切な培養培地(例えば、細菌についてはLB、NZCYM、NZYM、NZM、Terrific Broth、SOB、SOC、2× YT、またはM9最少培地、酵母についてはYPD、YEPD、最少培地、または完全最少ドロップアウト培地)で同様に行う。
【0080】
タンパク質発現用の宿主としての昆虫細胞の使用は、クローニングおよび発現プロセスが比較的容易で迅速であるという点で有利である。さらに、細菌または酵母発現と比較して、正確に折りたたまれた生物活性タンパク質が得られる可能性が高い。昆虫細胞を、血清含有培地と比較して安価で安全な無血清培地で培養することができる。組換えバキュロウイルスを発現ベクターとして使用することができ、この構築物を使用して任意の多数の鱗翅目細胞株、特に当該分野で公知のSpodoptera frugiperda Sf9であってもよい宿主細胞株にトランスフェクトする。昆虫宿主細胞における組換えタンパク質発現の総説は、Altmannら,1999,Glycoconj J 1999,16,109〜23およびKost and Condreay1999,Curr Opin Biotechnol,10,428〜33に記載されている。
【0081】
インビトロ産生により、比較的純粋な抗体調製物が得られ、スケールアップにより大量の所望の抗体が得られる。細菌細胞、酵母、昆虫、および哺乳動物細胞培養技術は当該分野で公知であり、均一な浮遊培養(例えば、エアリフト反応器もしくは連続的撹拌反応または固定もしくは気体ため込み式(entrapped)細胞培養(例えば、中空糸、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジ))が含まれる。
【0082】
大量の所望の抗体を、インビボでの哺乳動物細胞の増殖によって得ることもできる。この目的のために、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、組織適合哺乳動物に注射して、抗体産生腫瘍を増殖させる。任意選択的に、動物を、注射前に炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油で感作する。1〜3週間後、これらの哺乳動物の体液から抗体を単離する。例えば、適切な骨髄腫細胞のBalb/cマウス由来の抗体産生脾臓細胞との融合によって得たハイブリドーマ細胞または所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株Sp2/0由来のトランスフェクト細胞を、任意選択的にプリスタンで前処理したBalb/cマウスに腹腔内注射し、1〜2週間後、動物から腹水を取り出す。
【0083】
上記および他の技術は、例えば、Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495〜497;米国特許第4,376,110号;Harlow and Lane,「抗体:実験マニュアル」,1988,Cold Spring Harbor(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に考察されている。組換え抗体分子の調製技術は、上記引例および、例えば、EP 0623679、EP 0368684、及びEP 0436597(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)にも記載されている。
【0084】
細胞培養上清を、好ましくは免疫ブロッティングによる所望の標的を発現する細胞の免疫蛍光、酵素免疫アッセイ(例えば、サンドイッチアッセイまたはドットアッセイ)または放射免疫アッセイによって所望の抗体についてスクリーニングする。
【0085】
抗体の単離のために、腹水中の培養上清中の免疫グロブリンを、硫酸アンモニウムでの沈殿、ポリエチレングリコールなどの吸湿性物質に対する透析、選択膜による濾過などによって濃縮することができる。必要および/または所望である場合、抗体を、日常的なクロマトグラフィー法(例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー(例えば、標的を含むタンパク質またはプロテインAでのアフィニティークロマトグラフィー))で精製する。
【0086】
上記手順で産生した抗体を、標準的手順によって細胞から核酸の単離によってクローン化することができる。通常、抗体の核酸可変ドメインを単離し、これを使用してscFvなどの抗体フラグメントを構築することができる。
【0087】
したがって、本発明は、好ましくは、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換え核酸を使用する。定義によって、このような核酸は、コード核酸およびその相補的核酸またはこれらの法補的(一本鎖)核酸自体からなるコード一本鎖核酸、二本鎖核酸を含む。
【0088】
さらに、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、天然に存在する重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインまたはその変異体をコードする真の(authentic)配列を有する酵素合成または化学合成核酸であり得る。真の配列の変異体は、1つまたは複数のアミノ酸が欠失しているか1つまたは複数の他のアミノ酸と交換されている上記抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする核酸である。好ましくは、前記改変は、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。このような変異核酸は、1つまたは複数のヌクレオチドが同一のアミノ酸をコードする新規のコドンを有する他のヌクレオチドに置換されるサイレント変異であることも意図される。このような変異配列はまた、縮重配列である。縮重配列は、無制限のヌクレオチドが元のコードされたアミノ酸配列を変化することなく他のヌクレオチドと置換されるという点での遺伝コードの意味の範囲内で縮重している。このような縮重配列は、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインの任意選択的発現を得るための特定の宿主(特に、酵母、細菌、または哺乳動物細胞)によって好まれる特定のコドンのその異なる制限部位および/または頻度により有用であり得る。
【0089】
用語「変異」は、当該分野で公知のDNAのインビトロまたはインビボ変異誘発によって得られるDNA変異を含むことを意図する。
【0090】
組換えDNA技術を使用して、本発明の抗体を改良することができる。したがって、診断または治療への適用において免疫原性を減少させるためにキメラ抗体を構築することができる。さらに、免疫原性を、CDR移植(欧州特許第0239400(Winter))および任意選択的にフレームワークの改変(欧州特許第0239400;Riechmannら,1988、Nature 322:323〜327,および国際特許出願WO 90/07861(Protein Design Labs)に概説されている)によるヒト化抗体によって最小にすることができる。
【0091】
したがって、本発明はまた、ヒト定常ドメインγ(例えばγ1、γ2、γ3、またはγ4、好ましくはγ1またはγ4)に融合した抗体の重鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換え核酸を使用する。同様に、本発明は、ヒト定常ドメイン(κまたはλ、好ましくはκ)に融合した抗体の軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAに関する。
【0092】
より好ましくは、本発明は、好ましくはCDR移植軽鎖および重鎖可変ドメインのみであるCDR色抗体を使用する。有利には、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、任意選択的に宿主細胞中の抗体のプロセシングを容易にするシグナル配列および/または抗体の精製を容易にするペプチドをコードするDNAおよび/または切断部位および/またはペプチドスペーサーおよび/または効果分子を含むスペーサー基によって連結している。このような抗体はscFvである。
【0093】
抗体を、抗体を抗体遺伝子の変異誘発によってさらに作製して、抗体の人工レパートリーを産生させることができる。下記にさらに考察されているように、この技術により抗体ライブラリーが調製される。抗体ライブラリーはまた、市販されている。したがって、本発明は、免疫グロブリン源として免疫グロブリンの人工レパートリー、好ましくは人工ScFvレパートリーを使用することが有利である。
【0094】
単離またはクローン化抗体を、他の分子(例えば、当該分野で公知のプロトコールを使用した化学的カップリングによる核酸またはタンパク質会合手段)に連結することができる(例えば、Harlow and Lane,「抗体:実験マニュアル」,1988,Cold Spring Harbor,and Maniatis,T.,Fritsch,E.F.and Sambrook,J.,1991,「分子クローニング:実験マニュアル」,Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0095】
[ライブラリーおよび選択系]
本発明で使用する免疫グロブリンを、免疫グロブリンポリペプチドの人工レパートリーを含むライブラリーから単離することができる。有利には、免疫グロブリンを所望の標的に対するスクリーニングによって予め選択して、実質的に全てが意図する標的に特異的な免疫グロブリンを使用して本発明の方法を行う。
【0096】
任意のライブラリー選択系を、本発明と共に使用することができる。巨大ライブラリーの所望のメンバーの単離のための選択プロトコールは当該分野で公知であり、代表的にはファージディスプレイ技術である。種々のペプチド配列が糸状バクテリオファージ(Scott and Smith(前出)の表面上に表示されるこのような系は、標的抗原に結合する特異的抗体フラグメントのインビトロ選択および増幅用の抗体フラグメント(およびこれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーの作製に有用であると証明されている。VHおよびVL領域をコードするヌクレオチド配列を、大腸菌のペリプラズム領域に指向するリーダーシグナルをコードする遺伝子フラグメントに連結して、その結果得られた抗体フラグメントは、典型的にはバクテリオファージ被覆タンパク質(例えば、pIIIまたはpVIII)としてバクテリオファージの表面上に表示される。あるいは、抗体フラグメントは、λファージキャプシド(ファージボディ)上に外来的に表示される。ファージベースのディスプレイ系の利点は、これらは生物系であるので、選択したライブラリーメンバーを細菌細胞中の選択したライブラリーメンバーを含むファージの増殖によって簡単に増幅することができる点である。さらに、ポリペプチドライブラリーメンバーをコードするヌクレオチド配列をファージまたはファージミドベクターに含むので、配列決定、発現、およびその後の遺伝子操作が比較的単純である。
【0097】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリーおよびλファージ発現ライブラリーの構築法は、当該分野で周知である(McCaffertyら,1990、前出;Kangら,1991、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88,4363;Clacksonら,1991,Nature,352、624;Lowmanら,1991、Biochemistry,30,10832;Burtonら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,88、10134;Hoogenboomら,1991,Nucleic Acids Res.,19、4133;Changら,1991、J.Immunol.,147,3610;Breitlingら,1991,Gene,104,147,Marksら,1991,前出;Barbasら,1992,前出;Hawkins and Winter,1992,J.Immunol.,22、867;Marksら,1992,J.Biol.Chem.,267,16007;Lernerら,1992,Science,258:1313(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。
【0098】
1つの特に有利なアプローチは、scFvファージライブラリーの使用であった(Bird,R.E.ら,1988,Science 242:423〜6,Hustonら,1988、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,85:5879〜5883;Chaudharyら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,87:1066〜1070;McCaffertyら,1990、前出;Clacksonら,1991,前出;Marksら,1991,前出;Chiswellら,1992,Trends Biotech.,10:80;Marksら,1992,前出)。バクテリオファージ被覆タンパク質上に表示されるscFvライブラリーの種々の実施形態が記載されている。ファージディスプレイアプローチの精密化も公知であり、例えば、WO96/06213およびWO92/01047(Medical Research Councilら)ならびにWO97/08320(Morphosys、前出)(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。
【0099】
別のライブラリー選択技術には、バクテリオファージプラークとしてか溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングすることができるバクテリオファージλ発現系(共に、先に記載されている(Huseら,1989,Science,246:1275;Caton and Koprowski,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87;Mullinaxら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87:8095;Perssonら,1991、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:2432)が含まれ、本発明で使用されている。これらの発現系を使用して、約106またはそれ以上のオーダーでライブラリーの多数の異なるメンバーをスクリーニングすることができる。他のスクリーニング系は、例えば、ライブラリーメンバーの直接的な化学合成に依存する。1つの以前の方法は、WO84/03564などに記載の1組のピンまたはロッド上でのペプチドの合成を含む。各ビーズが各ライブラリーメンバーであるペプチドライブラリーを形成するビーズ上でのペプチド合成を含む類似の方法は、米国特許第4,631,211号に記載されており、関連する方法は、WO92/00091に記載されている。ビーズベースの方法の有意な改良は、各ライブラリーメンバーのアミノ酸配列の識別を容易にするための固有の識別タグ(オリゴヌクレオチドなど)を使用した各ビーズのタグ化を含む。これらの改良ビーズに基づく方法は、WO93/06121に記載されている。
【0100】
別の化学合成法は、アレイ上の異なる所定の位置でそれぞれ異なるライブラリーメンバー(例えば、固有のペプチド配列)を位置付ける様式での表面上でのペプチド(またはペプチド模倣物)のアレイ合成を含む。各ライブラリーメンバーの同一性をアレイ中のその空間的位置によって識別する。所定の分子(例えば、受容体)と反応ライブラリーメンバーとの間に結合相互作用が起こった場合アレイ中の位置を識別し、それにより、空間的位置を基本とした反応性ライブラリーメンバーの配列が識別される。これらの方法は、米国特許第5,143,854号;WO90/15070およびWO92/10092;Fodorら,1991、Science、251:767;Dower and Fodor、1991、Ann.Rep.Med.Chem.,26:271に記載されている。
【0101】
ポリペプチドまたはヌクレオチドライブラリーの他の作製系は、ライブラリーメンバーのインビトロ合成用の無細胞機構の使用を含む。1つの方法では、RNA分子を、標的リガンドに対する別の選択ラウンドおよびPCR増幅によって選択する(Tuerk and Gold,1990,Science,249:505;Ellington and Szostak、1990),Nature,346:818)。類似の技術を使用して、所定のヒト転写因子に結合するDNA配列を識別することができる(Thiesen and Bach、1990、Nucleic Acids Res.,18:3203;Beaudry and Joyce、1992、Science、257:635;WO92/05258およびWO92/14843)。巨大ライブラリーの作製方法と類似の方法で、インビトロ翻訳を使用して、ポリペプチドを合成することができる。一般に安定化ポリソームを含むこれらの方法は、WO88/08453、WO90/05785、WO90/07003、WO91/02076、WO91/05058、およびWO92/02536にさらに記載されている。ファージに基づくものではない別のディスプレイ系は、WO95/22625などに開示されているものであり、WO95/11922(Affymax)は、選択のためにポリペプチドを表示するためのポリソームを使用している。これらおよび全ての上記の文献もまた、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0102】
ファージまたは他のクローン化ライブラリーの使用の代わりは、選択標的で免疫化された動物の脾臓由来の核酸、好ましくはRNAの使用である。このようにして得られたRNAは、免疫グロブリンの天然のライブラリーを示す。本発明によれば、V領域およびC領域のmRNAの単離により、抗体フラグメント(FabまたはFvなど)を細胞内に発現させることができる。
【0103】
簡単に述べれば、RNAを免疫化動物の脾臓から単離し、RNAプール由来のVHおよびVLcDNAの選択的増幅のためにPCRプライマーを使用する。このようにして得られたVHおよびVL配列を連結してscFv抗体を作製する。PCRプライマー配列は、公開したVHおよびVL配列に基づき、これらはキットの形態で市販されている。
【0104】
本発明の好ましい態様は、細胞内免疫グロブリン(例えば、細胞内抗体)の使用である。細胞内抗体または内部物質(intrabody)は、高等生物の細胞中での抗原認識において機能することが示されている(Cattaneo,A.& Biocca,S.,1997、「細胞内抗体:開発および適用」,Landes and Springer−Verlagに概説されている)。この相互作用は、細胞質、核、または分泌経路で首尾よく阻害される細胞タンパク質機能に影響を与えることができる。この効果は、植物生物工学におけるウイルス耐性で証明されており(Tavladoraki、P.ら,1993)、Nature 366:469〜472)、HIVウイルスタンパク質(Mhashilkar,A.M.ら,1995)、EMBO J 14:1542〜51;Duan,L.& Pomerantz,R.J.,1994)、Nucleic Acids Res 22:5433〜8;Maciejewski,J.P.ら,1995,Nat Med 1:667〜73;Levy−Mintz,P.ら,1996,J.Virol.70:8821〜8832)および癌産物(Biocca,S.,Pierandrei−Amaldi,P.& Cattaneo,A.,1993,Biochem Biophys Res Commun 197:422〜7;Biocca,S.,Pierandrei−Amaldi,P.,Campioni,N.& Cattaneo,A.,1994,Biotechnology(N Y) 12:396〜9;Cochet,O.ら,1998,Cancer Res 58:1170〜6)への細胞内抗体結合のいくつかの適用が報告されている。
【0105】
scFvライブラリー由来の細胞内免疫グロブリンの選択方法が記載されている(国際特許出願WO0054057を参照のこと)。この選択方法(Visintin,M.,Tse,E.,Axelson,H.,Rabbitts,T.H.and Cattaneo,A.,1999も参照のこと)。2ハイブリッドインビボ系を使用した細胞内機能についての抗体の選択(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11723〜11728)は、酵素2ハイブリッド系などで認められる細胞環境内で検出されるべきタンパク質相互作用能力を利用している。これは、いくつかの抗体scFvフラグメントはインビボで有利に折りたたまれてVH−VL依存様式(すなわち、抗体結合部位を介する)で抗原に結合し、それにより、十分なscFvがスクリーニングされた場合に、種々の抗体特異性のライブラリーを使用してその識別が容易になるという事実に基づいている。スクリーニング系は、LexA DNA結合ドメインに融合した「バイト(bait)」抗原の酵母細胞発現およびVP16転写活性化ドメインに融合した「プレイ(prey)」scFvのライブラリーを含む。酵母細胞内環境中での抗原バイトと任意の特異的抗体scFvフラグメントとの相互作用により、DNA結合ドメインおよび活性化ドメインが隣接するタンパク質複合体が形成される。これにより、HIS3およびLacZなどの染色体レポーター遺伝子が活性化されて識別が容易になるので、scFvをコードするDNAベクターを含む酵母の単離される(すなわち、単離して抗原特異的scFvのDNA配列を得ることができる)。このアプローチの主な制限は、酵母抗体と抗原との相互作用系でスクリーニングすることができるscFv−VP16融合プレイの数(便利には、2〜5×106個)である。しかし、例えば1つまたは複数のインビトロファージscFvライブラリースクリーニング(パンニング)の使用によって有効なライブラリーサイズを増加させることができる。例えば、インビボ酵母抗体−抗原相互作用スクリーニング前の表面上に被覆された細菌産生抗原の使用。
【0106】
[レポーターの細胞への送達]
第1のレポーターおよび第2のレポーターを細胞内の構成要素に結合させるために、細胞の細胞内環境内にレポーターを得る必要がある。第1および/または第2のレポーターがポリペプチド(「ポリペプチドレポーター」)(例えば、抗体カスパーゼ3融合タンパク質)である場合、これを、第1および/または第2のレポーターをコードする適切な核酸での細胞のトランスフェクションによって行うことが好ましい。レポーターのいずれかまたは両方が核酸からなる場合(「核酸レポーター」)、核酸自体を細胞にトランスフェクトすることができる。
【0107】
ポリペプチドレポーターをコードする核酸を、発現用のベクターに組み込むことができる。本明細書中で使用される、「ベクター(またはプラスミド)」は、発現細胞への外来DNAの移入に使用される個別のエレメントをいう。このような伝達体の選択および使用は、十分に当業者の範囲内である。多数のベクターを利用可能であり、適切なベクターの選択は、意図するベクターの用途、ベクターに挿入される核酸のサイズ、およびベクターで形質転換される宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能に依存する種々の成分および適合する宿主細胞を含む。ベクター成分には、一般に、1つまたは複数の以下のものが含まれるが、これらに限定されない。複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、転写終止配列、およびシグナル配列。
【0108】
ベクターはまた、1つまたは複数の内部リボゾーム結合部位(IRES)、を含んでよく、これらの部位は、好ましくは、遺伝子を挿入することができる1つまたは複数のマルチクローニング部位(MCS)に隣接するベクター中に配置されている。したがって、このようなベクターの使用により、発現構築物にクローン化される1つを超えるインサートが得られ、この構築物の転写により内部リボゾーム結合部位を含む各リボゾーム結合部位から転写が起こり、二シストロンまたは多シストロンメッセンジャーRNAが得られる。これにより、1つの発現構築物から1つを超える発現ポリペプチドが得られる。
【0109】
さらに、ポリペプチドをコードする核酸または核酸レポーターまたはこれらの任意の成分を、一般的操作および核酸増幅目的でクローニングベクターに組み込むことができる。
【0110】
発現ベクターおよびクローニングベクターの両方は、1つまたは複数の宿主細胞中でベクターを複製することができる核酸配列を含む。典型的には、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAと独立して複製することができる配列であり、複製起点または自己複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスで周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適切であり、2ミクロンのプラスミド起点は酵母に適切であり、種々のウイルス起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス)は、哺乳動物細胞のクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、これらが高レベルDNA複製と競合する哺乳動物細胞(COS細胞など)で使用されない場合、哺乳動物発現ベクターに必要ではない。
【0111】
ほとんどの発現ベクターは、シャトルベクターである(すなわち、少なくとも1つの生物クラスで複製することができるが、発現用の別の生物クラスにトランスフェクトすることができる)。例えば、ベクターは、クローン化された大腸菌であり、宿主細胞の染色体で独立して複製することができないにもかかわらず、このベクターを酵母または哺乳動物細胞にトランスフェクトする。DNAを、宿主ゲノムへの挿入によって複製することもできる。しかし、核酸の切り出しに制限酵素消化が必要であるので、ゲノムDNAの回収は、外因的に複製したベクターの回収よりも複雑である。DNAをPCRによって増幅し、いかなる複製成分を使用することなく宿主細胞に直接トランスフェクトすることができる。
【0112】
有利には、発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーともいわれる選択遺伝子を含み得る。この遺伝子は、選択培養培地で成長する形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培養培地で生存しない。典型的な選択遺伝子は、抗生物質および他の毒素(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリン)への耐性を付与するか、栄養要求性欠損症を補足するか、天然培地から利用不可能な必須の栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0113】
酵母に適切な選択遺伝子マーカーに関して、マーカー遺伝子の表現型発現のための転写についての選択を容易にする任意のマーカー遺伝子を使用することができる。酵母の適切なマーカーは、例えば、抗生物質G418、ハイグロマイシン、またはブレオマイシンへの耐性を付与し、栄養要求性酵母変異体の表現型を提供する(URA3、LEU2、LYS2、TRP1、またはHIS3遺伝子)マーカーである。
【0114】
ベクターの複製が大腸菌で都合よく行われるので、大腸菌遺伝子マーカーおよび大腸菌の複製起点を有利に含む。これらは、大腸菌複製起点およびアンピシリンなどの抗生物質への耐性を付与する大腸菌遺伝子マーカーの両方を含む大腸菌プラスミド(pBR322)、Bluescript(登録商標)、またはpUCプラスミド(例えばpUC18またはpUC19)から得ることができる。
【0115】
哺乳動物用の適切な選択マーカーは、所望の核酸を発現する細胞の識別が可能なマーカーである(ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR、メトトレキセート耐性)、チミジンキナーゼ、またはG418もしくはハイグロマイシンへの耐性を付与する遺伝子など)。取り込まれてマーカーを発現する形質転換体のみが固有に生存に適応する選択下に哺乳動物細胞形質転換体を置く。DHFRまたはグルタミンシンターゼ(GS)マーカーの場合、選択圧が段階的に増加して、両選択遺伝子および連結した核酸が(その染色体組み込み部位で)増幅する条件下での形質転換体の培養によって選択圧に課すことができる。増幅は、所望のタンパク質をコードすることができる密接に関連する遺伝子と共に、増殖に重要なタンパク質の産生が要求される遺伝子を組換え細胞の染色体内にタンデムに反復しているプロセスである。所望のタンパク質の増加は、通常、増幅されたDNAから合成される。
【0116】
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主細胞によって認識され、所望の核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。このようなプロモーターは、誘導性または構成性であり得る。プロモーターは、元のDNAからのプロモーターの除去およびベクターへの単離されたプロモーター配列の挿入によって作動可能に連結されている。天然のプロモーター配列および多数の異種プロモーターの両方を使用して、任意選択的に適切な会合手段と共に免疫グロブリンをコードする核酸の増幅および/または発現を指示することができる。用語「作動可能に連結した」は、記載の成分がその意図する様式で機能する関係である並列をいう。コード配列に「作動可能に連結した」調節配列は、コード配列の発現が調節配列と適合する条件下で行われるような方法でライゲートする。
【0117】
原核宿主での使用に適切なプロモーターには、例えば、βラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。これらのヌクレオチド配列は公表されているので、当業者は、リンカーまたはアダプターを使用して所望の核酸にこれらをライゲートして、任意の必要な制限部位を得ることができる。細菌系用のプロモーターもまた、一般に、核酸に作動可能に連結したシャイン・ダルカルノ配列を含む。
【0118】
好ましい発現ベクターは、細菌中で機能することができるλファージまたはT7などのバクテリオファージのプロモーターを含む細菌発現ベクターである。最も広く使用されている発現形のうちの1つでは、融合タンパク質をコードする核酸を、T7 RNAポリメラーゼによってベクターから転写することができる(Studierら,Methods in Enzymol.185;60〜89,1990)。pETベクターでの結合で使用される大腸菌 BL21(DE3)宿主株では、T7 RNAポリメラーゼを、宿主細菌中でλ溶原菌DE3から産生され、IPTG誘導lacUV5プロモーターの調節下で発現する。この系は、多数のタンパク質の過剰産生に首尾よく使用されている。あるいは、ポリメラーゼ遺伝子を、市販のCE6ファージ(Novagen,Madison,USA)などのintファージでの感染によってλファージに移入することができる。他のベクターには、PLEX(Invitrogen,NL)などのλPLプロモーターを含むベクター、pTrcHisXpressTm(Invitrogen)またはpTrc99(Pharmacia Biotech,SE)などのtrcプロモーターを含むベクター、またはpKK223−3(Pharmacia Biotech) またはPMAL(New England Biolabs,MA,USA)などのtacプロモーターを含むベクターが含まれる。
【0119】
酵母宿主に使用する適切なプロモーターを調節することができるか構成性であり、好ましくは、高度に発現された酵母遺伝子、特にサッカロマイセス・セレヴィシエ遺伝子由来である。したがって、TRP1遺伝子、ADHIまたはADHII遺伝子、酸ホスファターゼ(PH05)遺伝子のプロモーター、aまたはα因子をコードする酵母交配表現型遺伝子のプロモーターまたは解糖酵素をコードする遺伝子由来のプロモーター(エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒトロゲナーゼ(GAP)、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、またはグルコキナーゼ遺伝子、サッカロマイセス・セレヴィシエGAL4遺伝子、S.pombe nmt1遺伝子など)またはTATA結合タンパク質(TBP)由来のプロモーターを使用することができる。さらに、ある酵母の上流活性化配列(UAS)および別の酵母遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーターエレメントを含むハイブリッドプロモーター(例えば、酵母PH05遺伝子のUASおよび酵母GAP遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーターエレメントを含むハイブリッドプロモーター)を使用することが可能である。適切な構成性PH05プロモーターは、例えば、PH05遺伝子のヌクレオチド−173から始まってヌクレオチド−9で終わるPH05(−173)プロモーターエレメントなどの上流調節エレメント(UAS)を欠く短縮酸ホスファターゼPH05プロモーターである。
【0120】
哺乳動物宿主中のベクター由来の遺伝子転写を、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、およびサルウイルス40(SV40)などのウイルスゲノム由来のプロモーター、アクチンプロモーターまたは強力プロモーター(例えば、リボゾームタンパク質プロモーター)などの異種哺乳動物プロモーターおよび免疫グロブリン配列と正常に関連するプロモーターによって調節することができる。
【0121】
高等真核生物由来の核酸の転写を、ベクターへのエンハンサー配列の挿入によって増加することができる。例えば、pEF−BOSベクター(Mizushimaら,1990,Nucl.Acids Res.18,5322)は、クローン化遺伝子の発現レベルを上昇させる伸長因子1α(EF−1α)プロモーターおよびエンハンサーを含む。エンハンサーは比較的配向および位置依存性である。哺乳動物遺伝子由来の多数のエンハンサー配列(エラスターゼおよびグロビン)が公知である。しかし、典型的には、真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。例には、複製起点の後期側(bp100〜270)のSV40エンハンサーおよびCMV初期プロモーターエンハンサーが含まれる。エンハンサーを、所望の核酸の5’または3’の位置で(好ましくは、プロモーターから5’部位に存在する)ベクターにスプライシングすることができる。
【0122】
有利には、真核生物発現ベクターは、遺伝子座調節領域(LCR)を含み得る。LCRは、ベクターの染色体取り込みが起こる恒久的にトランスフェクトされた真核細胞の状況で遺伝子が発現された場合に特に重要である、宿主細胞クロマチンに取り込まれた導入遺伝子の高レベル取り込み部位依存性発現を指示することができる。
【0123】
真核生物発現ベクターはまた、転写の終結またはmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、一般に、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および3’非翻訳領域から利用可能である。これらの領域は、免疫グロブリンをコードするmRNAの非翻訳部分のポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
【0124】
哺乳動物細胞中で核酸を一過性に発現する発現ベクターが本発明の実施で特に有用である。一過性発現は、通常、宿主細胞が多数の発現ベクターのコピーを蓄積する(つまり、高レベルで所望の遺伝子産物を合成する)ように、宿主細胞で有効に複製することができる発現ベクターの使用を含む。
【0125】
本発明のベクターの構築には、従来のライゲーション技術を使用することができる。単離したプラスミドまたはDNAフラグメントを、切断し、構成変更し、所望の形態にライゲートし必要なプラスミドを作製する。所望ならば、公知の様式で構築したプラスミドの正確な配列を確認する分析を行う。適切な発現ベクターの構築法、インビトロ転写物の調製法、宿主へのDNAの移入法、および遺伝子産物発現および機能を評価するための分析法は、当業者に公知である。遺伝子の存在、増幅、および/または発現を、例えば、本明細書中に記載の配列に基づき得る適切な標識プローブを使用して、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはin situハイブリッド形成サンプルを直接測定することができる。当業者は、所望ならばどのようにしてこれらの方法を改変することができるのかを予見することができる。
【0126】
第1および/または第2のレポーター、免疫グロブリン、ペプチドフラグメントなどを、微量注入法または細胞膜と融合することができるリポソームなどの小胞を使用した送達によって直接移入することができる。ウイルスおよび他の融合誘導ペプチドを使用して、膜融合を促進し、細胞の原形質に送達させることができる。
【0127】
他で好ましくは、レポーターなどを、原形質膜および/または核膜を通過することができるタンパク質とのタンパク質融合体または接合体として細胞に送達させることができる。好ましくは、レポーターを、転座活性を担うこのようなタンパク質由来のドメインまたは配列に融合するか結合する。好ましい転座ドメインおよび配列には、HIV−1トランス活性化タンパク質(Tat)、ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質および単純ヘルペス1型ウイルスVP22タンパク質が含まれる。
【0128】
外来的に付加されたHIV−1トランス活性化タンパク質(Tat)は、原形質膜を介して転座して、核に到達してウイルスゲノムをトランス活性化することができる。転座活性は、アミノ酸37〜72(Fawellら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,664〜668)、37〜62(Andersonら,1993,Biochem.Biophys.Res.Commun.194,876〜884)、および49〜58(HIV−Tatの塩基配列RKKRRQRRRを有する)で識別されている。Vivesら,1997,J Biol Chem 272,16010〜7は、細胞遺伝子の転座、核局在化、およびトランス活性化に重要であると考えられるアミノ酸48〜60(CGRKKRRQRRRPPQC)からなる配列を同定した。βガラクトシダーゼおよびHIV−TATタンパク質形質導入ドメインからなる融合タンパク質の腹腔内注射により、マウスの全ての組織に生物活性融合タンパク質が送達される(Schwarzeら,1999,Science 285,1569〜72)。
【0129】
ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質の第3のヘリックスはまた、類似の性質を有することが示されている(Prochiantz,A.,1999,Ann N Y Acad Sci,886,172〜9に概説)。アンテナペディアの転座を担うドメインは、配列RQIKIWFQNRRMKWKKを有する塩基性アミノ酸に豊富な16個のアミノ酸長ペプチド(long peptide)に局在している(Derossiら,1994,J Biol Chem,269,10444〜50)。このペプチドを使用して、生物活性物質を細胞内の細胞の原形質および核に向けている(Theodoreら,1995,J.Neurosci 15,7158〜7167)。ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインの第3のヘリックスの細胞内面化は、レセプター独立性であるようであり、転座プロセスは膜リン脂質との直接的相互作用を含むと示唆されている(Derossiら,1996,J Biol Chem,271,18188〜93)。単純ヘルペスウイルスのVP22外被タンパク質は細胞内輸送が可能であり、細胞の下位集団で発現するVP22タンパク質が集団中の他の細胞に広がる(Elliot and O’Hare,1997,Cell 88,223〜33)。融合タンパク質は、GFP(Elliott and O’Hare,1999,Gene Ther 6,149〜51)、チミジンキナーゼタンパク質(Dilberら,1999,Gene Ther 6,12〜21)、またはp53(Phelanら,1998,Nat Biotechnol 16,440〜3)からなり、VP22は、この様式で細胞に標的化されている。
【0130】
核および/または原形質膜を介して転座することができるタンパク質由来の特定のドメインまたは配列を、変異誘発または欠失を研究することによって識別することができる。あるいは、候補配列を有する合成または発現ペプチドを、レポーターに連結し、転座アッセイを行うことができる。例えば、合成ペプチドを、Vivesら,1997,J Biol Chem 272,16010〜7に記載の方法によって蛍光に結合させ、転座を蛍光顕微鏡によって監視することができる。あるいは、レポーターとして緑色蛍光タンパク質を使用することができる(Phelanら,1998,Nat Biotechnol 16,440〜3)。
【0131】
任意のドメインまたは配列または上記または転座活性を有すると同定されているものを使用して、第1および/または第2のレポーターを細胞の細胞質または核に方向付けることができる。
【0132】
[シグナルの発生]
本発明の方法では、シグナルを、構成要素へのレポーターの結合と共に2つのレポーターの相互作用によって発生させることが有利である。したがって、発生したシグナルは、本発明の方法で使用した分子の性質に依存する。
【0133】
第1の実施形態では、シグナルは、細胞内のアポトーシスまたはプログラム細胞死の活性化である。第1および第2のレポーター上にそれぞれ配列した2つのカスパーゼ3部分の安定な相互作用は、カスパーゼ活性を自己活性化し、細胞内のアポトーシスが開始される。アポトーシス細胞死は、細胞の収縮、クロマチン濃縮、細胞質の気泡、膜浸透性の増加、および染色体内DNAの切断によって特徴付けられ(Kerrら,1992,FASEB J.6:2450;and Cohen and Duke,1992,Ann.Rev.Immunol.10:267)、シグナルを検出する必要がある場合、これらの任意の特徴を使用することができる。
【0134】
上記の実施形態では、細胞内のカスパーゼ活性のアッセイによってシグナルを検出することもできることが認識される。
【0135】
別の実施形態では、シグナルは、細部内のプロテアーゼ活性の発生であり得る。カスパーゼ活性は、上述のように、この方法で検出される。さらに、プロテアーゼ活性は、ユビキチン媒介タンパク質分解に関連する活性、好ましくはプロテアソーム活性、最も好ましくは26Sプロテアソーム活性であり得る。
【0136】
ユビキチン媒介タンパク質分解は、「細胞のユビキチン化および生物学」に概説されている(Jan−Michael Peters,J.Robin Harris and Dan Finley編,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,the Netherlands)。ユビキチン媒介タンパク質分解では、ユビキチンとの共有結合の改変によってタンパク質を標的化する。ユビキチン活性化(E1)酵素、ユビキチン結合(E2)酵素、およびユビキチンライゲーション(E3)酵素を含む3つの型の酵素がこの作業に関連する。ユビキチンは、標的タンパク質上でリジン残基と共有結合している(標識するため)小型で高度に保存されたタンパク質である。ユビキチン関連酵素は、タンパク質構造およびアミノ酸配列の変化によって損傷またはミスフォールディングタンパク質を認識することができる。次いで、ユビキチン結合酵素が元の酵素にさらなるユビキチン分子を付加するように、標的タンパク質の結合部位でユビキチン分子の鎖が形成される。得られたポリユビキチン鎖を、プロテアソーム(プロテアソームのいずれかの末端でのタンパク質複合体は、認識プロセスに関連する)によって認識し、次いで、標識タンパク質を分解する。
【0137】
したがって、この実施形態を、ユビキチン媒介タンパク質分解経路の成分のドメインを含む第1のレポーターおよび第2のレポーターによって実現することができ、安定な相互作用の際にその成分に関連する活性を発生してタンパク質分解を誘導する。成分は、ユビキチン活性化酵素、ユビキチン結合酵素、またはユビキチンリガーゼ(SCFなど)を含み得る。本発明の特に好ましい実施形態では、第1および第2のレポーターは、F−boxタンパク質またはモチーフのドメインを含む。
【0138】
F−boxモチーフは、タンパク質−タンパク質相互作用を媒介するように機能する。F−boxタンパク質は、SCFユビキチン−リガーゼ(E3)複合体として最初に説明されていた(Skowyraら,Cell 1997,91:209〜219;Feldmanら,Cell 1997,91:221〜230)。SCF複合体は、以下の4つの成分を含む。Skp1、クリン、Rbx1/Roc/Hrt1、およびF−boxタンパク質(Tyers and Jorgensen,Curr Opin Genet Dev 2000,10:54〜64;Deshaies,Annu Rev Cell Dev Biol 1999,15:435〜467;Craig and Tyers,Prog Biophys Mol Biol 1999,72:299〜328)。SCF複合体は、基質とユビキチン結合酵素との間の相互作用を容易にし、基質にユビキチンを共有結合によって導入する。その後、ポリユビキチン化基質は26Sプロテアソームによって分解される(Hershko and Ciechanover,Annu Rev Biochem 1998,67:425〜479)。F−boxタンパク質は、特異的基質に結合するSCF複合体のサブユニットであり、これは、F−box自体によるSkp1の結合によって複合体に連結する。F−boxの詳細な概説およびユビキチン媒介タンパク質分解におけるその役割は、Kipreos and Pagano、2000、Genome Biology、1(5)、reviews 3002、1−3002.7に記載されている。したがって、F−boxは、タンパク質分解のためのプロテアソームの利用に重要な役割を果たしている。
【0139】
第1および/または第2のレポーターは、F−boxモチーフを含み得る。しかし、F−boxモチーフが3つのヘリックスを含むので、第1のレポーターは1つまたは複数のヘリックスを含み、第2のレポーターは、残りのヘリックスを含むことが好ましい。好ましくは、第1のレポーターは第1のヘリックスを含み、第2のレポーターは第2および第3のヘリックスを含む。あるいは、第1のレポーターは第1および第2のヘリックスを含み、第2のレポーターは第3のヘリックスを含む。さらに、F−boxの他の部分は分裂していてよく、完全なヘリックスを作製する必要はない。F−box部分のヘリックスドメインを含むこのようなレポーターの構築に、当該分野で公知の標準的な技術を使用することができる。
【0140】
構成要素への結合を介した第1のレポーターと第2のレポーターとの間の安定な相互作用により、種々のヘリックスドメインとF−boxモチーフ活性の再構築物との間で会合が可能である。これにより、構成要素または構成要素を含むポリペプチドがユビキチン標識され、構成要素/ポリペプチドのタンパク質分解を介して分解される。上記のように、このようなタンパク質分解を、当該分野で公知の手段によって容易に検出することができる。
【0141】
例えば、TRCPなどのF−boxタンパク質を、哺乳動物および/または単細胞もしくは組織からクローン化し、直接またはProリンカー(Pro10)またはGly−Serリンカー((Gly4−Ser)3)などのリンカーを介してscFvに融合することができる。scFvは、有利には、構築物のN末端に存在する。F−boxおよびWDドメインを共に含む構築物もまた使用することができる。F−boxの各ヘリックスを使用する場合、第1のレポーターは、有利には、H1またはH1およびH2を含み、第2のレポーターは、有利にはH2およびH3またはH3をそれぞれ含む。F−boxの構造についての詳細は、Schulmanら,2000,Nature 408:381に記載されている。
【0142】
任意の公知のF−boxモチーフを、本発明の態様の基本として使用することができる。さらに、F−boxコンセンサス配列、
KPFPLLRLPEEILRKILEKLDPIDLLRLRKVSKKWRSLVDSLNIWFKFIE
を使用することもできる。F−boxタンパク質のリストを、その配列のアクセッション番号とともに、以下の表に示す。
【0143】
【表1】
【表1(つづき)】
【0144】
好ましくは、F−boxドメインはレポーターのC末端に存在するので、本発明の特に好ましい実施形態では、レポーターは、F−boxドメインへのscFv融合されたN−Cを含む。
【0145】
第2の実施形態では、シグナルは、電磁放射の放出または吸収であり、シグナル発生分子は蛍光発色団であり得る。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与する蛍光分子が特に好ましい。
【0146】
FRETは、異なる周波数で蛍光を発する2つの蛍光が一方の標識から他方へエネルギーを移動することができるのに十分に互いに隣接している場合に検出可能である。FRETは、当該分野で広く知られている(概説については、Matyus,1992,J.Photochem.Photobiol.B:Biol.,12:323〜337(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照のこと)。FRETは、エネルギーが励起したドナー分子から受容体分子への移動である無放射プロセスである;この移動の効率は、下記のようにドナーと受容体分子との間の距離に依存する。エネルギー移動速度は、ドナーと受容体との間の距離の第6の力に反比例し、エネルギー移動効率は、距離の変化に非常に感度が高い。エネルギー移動は、1〜10nmの距離範囲で検出可能な効率が得られるといわれているが、典型的には、ドナーと受容体との好ましい対には4〜6nmである。
【0147】
したがって、第1および第2のレポーターの一方がドナー分子を含み、第1および第2のレポーターの他方が受容体分子を含むように、ドナーと受容体分子との適切な対の選択によって本発明を実施することができる。レポーターが構成要素に結合する場合、ドナー分子および受容体分子がエネルギー移動が起こるように合わせる。
【0148】
無放射エネルギー移動は、蛍光発色団の生物物理学的性質に基づく。これらの原理は、他で概説されている(Lakowicz,1983,「蛍光スペクトルの原理」、Plenum Press,New York;Jovin and Jovin,1989,「顕微分光蛍光分析による細胞構造および機能」、E.Kohen and J.G.Hirschberg編,Academic Press(その両方を引用することにより本明細書の一部をなすものとする))。簡単に述べれば、蛍光発色団は特徴的な波長で光エネルギーを吸収する。この波長は、励起波長としても公知である。次いで、蛍光色素によって吸収されたエネルギーは、種々の経路によって放出され、そのうちの1つは蛍光を発生する光量子の放射である。放出した光の波長は、放射波長として公知であり、得意低の蛍光発色団の固有の特徴である。放射エネルギー移動は、1つの蛍光発色団の励起状態のエネルギーが実際に光量子を放射せずに第2の蛍光発色団に移動する。次いで、このエネルギーは、第2の蛍光発色団の放射波長で放出することができる。第1の蛍光発色団を、一般に、ドナー(D)とよび、第2の蛍光発色団(アクセプター(A)と呼ぶ)よりも高いエネルギーの励起状態を有する。このプロセスの不可欠の特徴は、ドナーの発光スペクトルが受容体の励起スペクトルと重複し、ドナーおよび受容体が十分に近接していることである。無放射エネルギー移動が有効な距離は、ドナーの蛍光量子効率、受容体の減衰係数、これらの各スペクトルの重複度、培地の屈折率、および2つの蛍光発色団の遷移モーメントの相対的配向(orientation)を含む多数の因子に依存する。他の蛍光発色団の励起波長に重複する至適放射範囲を有することに加えて、DとAとの間の距離は、蛍光発色団間のエネルギーの無放射移動が可能なように十分に短くなければならない。
【0149】
FRETアッセイでは、分子の1つ(受容体分子)の励起スペクトルが励起蛍光分子(ドナー分子)の発光スペクトルと重複するように蛍光分子を選択する。ドナー分子を、ドナーの励起スペクトルの範囲内での適切な強度の光によって励起させる。次いで、ドナーは、吸収したエネルギーのいくつかを蛍光として放射し、受容体蛍光分子に対するFRETによっていくらかのエネルギーを分散する。得られた蛍光エネルギーを、受容体蛍光分子によって消光する。FRETを、ドナー由来の蛍光シグナル強度の減少、その励起状態の寿命の短縮、および受容体の特徴的な長波長(低エネルギー)での蛍光の再放出として明らかにすることができる。ドナーおよび受容体分子が空間的に分離されると、FRETは減少、または除去される。
【0150】
適切な蛍光発色団は当該分野で公知であり、異なる波長または強度の蛍光を発する化学蛍光発色団および蛍光ポリペプチド(GFPなど)およびその変異体が含まれる(WO97/28261を参照のこと)。化学蛍光発色団を、合成中の免疫グロブリンへの結合部位の組み込みによって免疫グロブリンに結合させることができる。
【0151】
しかし、好ましくは、蛍光発色団は、有利にはGFPまたはその変異体である蛍光タンパク質である。GFPおよびその変異体を、当該分野で周知の方法によって融合ポリペプチドとしての発現により結合手段(これが免疫グロブリンなどのポリペプチドである場合)とともに合成することができる。例えば、転写単位を、所望のGFPと免疫グロブリンとのインフレームでの融合体として構築し、上記のように従来のPCRクローニングおよびライゲーション技術を使用してベクターに挿入することができる。
【0152】
第3の実施形態では、結合ドメインを、生物学的シグナルを発生することができる会合ドメインに連結する。好ましい会合ドメインは、有利に相互作用して転写因子または細胞内での遺伝子発現を調整する別の調節分子を形成するポリペプチド分子である。
【0153】
転写因子分子の例は、文献(例えば、Fields & Song,1989,Nature 340:245〜246(引用することにより本明細書の一部をなすものとする))に記載されている。好ましい実施形態では、免疫グロブリン分子は、HSV1 VP16分子の活性化ドメイン内の融合タンパク質として発現する。この転写因子ドメインは、DNA結合活性を介して結合したプロモーター由来の遺伝子の転写をアップレギュレーションすることができる。後者は、免疫グロブリンポリペプチド内で融合タンパク質として発現するE.coli LexAポリペプチドのDNA結合ドメインによって得られる。
【0154】
生物学的シグナルは、検出可能な遺伝子産物発現の誘導などの任意の検出可能なシグナルであり得る。検出可能な遺伝子産物の例には、ルシフェラーゼなどの生物発光ポリペプチド、GFPなどの蛍光ポリペプチド、βガラクトシダーゼおよびCATなどの特定のアッセイによって検出されるポリペプチド、およびHIS3などの代謝に必要な酵素などの宿主細胞の特徴的な増殖を調整するポリペプチド、G418などの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。本発明の好ましい態様では、シグナルは、細胞表面で検出可能である。例えば、シグナルは、細胞外から検出可能であり、FACSまたは他の光学分取技術によって分取可能な発光または蛍光シグナルであり得る。あるいは、シグナルは、例えば蛍光基で自己標識できるか、標識抗体を使用して検出可能なCD分子(例えば、CD4またはCD8)などの細胞表面マーカーの発現を含み得る。FACSなどの光学分取を使用して、パンされる(panned)細胞を回収し、構成要素を含む細胞を選択することができる。
【0155】
以下の実施例は例示のみを目的とし、これらの実施例において本発明をさらに記載する。
【0156】
[実施例]
<実施例1:発現プラスミドの構築>
pM−βgal、pNL−scFvR4−VP16、pNL−scFvF8−VP16、およびpNL−scFv−IN33−VP16は以前に記載されている(Visintinら,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11723〜11728)。pRSV−Luc(ホタルルシフェラーゼ発現ベクター)もまた以前に記載されており(de Wet,J.R.,1987,Mol Cell Biol 7,725〜37)、pEGFP−N1(増強緑色蛍光タンパク質、GFP発現ベクター)は、CLONTECH Laboratories、Inc.(Palo Alto,California,USA)から市販されている。
【0157】
pEF−βgal(βガラクトシダーゼ発現ベクター)を、pEF−BOS哺乳動物発現ベクター(Mizushimaら,1990,Nucl.Acids Res.18,5322)へのβガラクトシダーゼおよびpBSpt−βgal由来のβガラクトシダーゼおよびSV40ポリA(Greenbergら,1990,Nature 344,158〜160)のコード配列のサブクローニングによって作製する。
【0158】
シャトルベクターpBS−R4を、pBSptへのpNL−scFvR4−VP16およびpNL−scFvF8−VP16のClaI−EcoRIフラグメントのクローニングによって作製する。
【0159】
pEF−R4−DBD(scFvR4−GAL4DBD融合発現ベクター)を、以下のように構築する。Gal4 DNA結合ドメイン配列(pGALOから増幅したPCR,Dangら,1991,Mol.Cell.Biol.11,954〜962)を、pBS−R4のEcoRI部位中でscFvR4を用いてインフレームへクローン化する。pEF−R4−DBDを、pEF−BOSへのR4−Gal4 DNA結合ドメイン融合体のCla−SpeIフラグメントのクローニングによって作製する。
【0160】
pEF−R4−CP3および pEF−F8−CP3(scFvR4およびscFvF8−カスパーゼ3融合発現ベクター):ヒトカスパーゼ3配列を、GENBANKアクセッション番号U26943およびU13737として寄託されている。ヒトカスパーゼ3配列を、cDNAクローン(Marion MacFarlaneから譲渡)からPCR増幅し、pBS−R4およびpBS−F8のscFv配列の3’末端でEcoRI−Spe1フラグメントとしてインフレームでサブクローン化する。scFv−カスパーゼ3融合体のClaI−SpeIフラグメントを、pEF−BOSでクローン化して、それぞれpEF−R4−CP3およびpEF−F8−CP3を得る。
【0161】
pEF−R4−CP3(C163S)(scFvR4−カスパーゼ3変異融合発現ベクター)を、製造者の指示にしたがってQuickChange(商標)部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を使用した部位特異的変異誘発によるセリン(TCC)への野生型カスパーゼ3の163番目でのシステイン(TGC)の変異によって作製する。
【0162】
pEF−IN33−CP3およびpEF−IN33−CP3(C163S)(scFvIN33−カスパーゼ3および変異発現ベクター):pNL−scFvIN33−VP16のXhoI−EcoRIフラグメントを、XhoIおよびEcoRIで消化したpBS−R4−CP3およびpBS−R4−CP3(C163S)のベクター骨格にクローン化して、それぞれpBS−IN33−CP3およびpBS−IN33−CP3(C163S)を作製する。pEF−IN33−CP3およびpEF−IN33−CP3(C163S)を、pEFBOSへのpBS−IN33−CP3およびpBS−IN33−CP3(C163S)のXhoI−SpIフラグメントのクローニングによって構築する。
【0163】
pEF−HIVIN−βgal(HIVインテグラーゼ(アミノ酸259〜288)−βガラクトシダーゼ融合発現ベクター):pBlueScript−βgalのNcoI−SalIフラグメントを、pEF/myc/cyto(Invitorogen)にサブクローン化し、PCR増幅HIV−1インテグラーゼエピトープ(アミノ酸番号259〜288)を、β−gal配列の5’末端でのNcoIフラグメントとしてのインフレームでのクローン化によりpEF−HIVIN−βgalが得られる。
【0164】
<実施例2:哺乳動物細胞培養およびトランスフェクション>
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、10%のウシ胎児血清、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含むα最少必須培地(GIBCO BRL)で増殖させる。トランスフェクションの16〜24時間前に、35mmのぺトリ皿に2×105個のCHO細胞を播種する。50ngのpEF−IN33−CP3/CP3(C163S)を使用する以外は製造者の指示に従って500ngの pEF−βgal、pEF−HIVIN−βgalおよびpRSV−Luc、50ngのpEGFP−N1および250ngのpEF−scFv−CP3/CP3(C163S)を使用するLipofectamine(登録商標)(GIBCO BRL)を使用してトランスフェクションを行う。トランスフェクションから60時間後またはさらなる分析のために経時変化実験の間(12、24、36、48、および60時間後)に細胞を回収する。
【0165】
CHO−CD4株は、C.V.Dang博士から譲渡され、これは以前に記載されている(Fearonら,1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,7958〜7962)。これを、α最少必須培地、10%のウシ胎児血清、および1mg/mlのG418(GIBCOBRL)と共に維持する。100mm皿に50〜60%の密集度に増殖させたCHO/CD4細胞のLipfectamine(商品名)トランスフェクションを、特記しない限り5μgの各プラスミドを使用して行う。
【0166】
<実施例3:CD4発現のFACS分析>
トランスフェクションから48時間後、CHO−CD4細胞を、細胞分離溶液(Sigma)で分離して、1つの細胞のPBS懸濁液を作製する。CD4発現を、1:50倍希釈のマウス抗ヒトCD4抗体(Pharmingen)とフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Pharmingen)の1:100希釈物で標識した二次抗血清ヤギ抗マウスポリクローナル抗体との結合によって分析する。細胞の相対蛍光を、FACSCalibur(Becton Dickinson)を使用して測定し、データをソフトウェアCELLQuest(Becton Dickinson)によってさらに分析する。
【0167】
<実施例4:ウェスタンブロッティング>
CHO細胞を、scFvR4カスパーゼ3、scFvR40カスパーゼ(C163S)、およびscFvF8カスパーゼ3発現ベクターでトランスフェクトする。トランスフェクトから48時間後、細胞を、10mMのHepes(pH7.6)、250mMのNaCl、5mMのEDTA、および0.5%のNoniet P40を含む緩衝液で溶解する。溶解物を、12%のSDS−PAGEで分画し、ニトロセルロース膜に移す。膜を、抗ヒトカスパーゼ3抗体(Santa Cruz Biotechnology)および二次HRP結合抗ヤギ抗体(Santa Cruz Biotechnology)とインキュベートする。ECLウェスタンブロッティング検出試薬(Amersham)を用いて検出を行う。
【0168】
<実施例5:βガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼ活性アッセイ>
トランスフェクトCHO細胞を、トランスフェクションから特定の測定点で、35mmのぺトリ皿あたり300μlのレポーター溶解緩衝液(Promega)を使用して溶解する。βガラクトシダーゼ活性を、製造者の指示に従ってβガラクトシダーゼ酵素アッセイ系(Promega)を使用して測定する。ルシフェラーゼアッセイ系(Promega)および照度計を使用してルシフェラーゼ活性の測定を行う。2つの異なる独立したトランスフェクションを行い、平均値を示す。
【0169】
<実施例6:アポトーシスアッセイ>
CHO細胞を、pEF−βgalの存在下または非存在下で、緑色蛍光タンパク質発現ベクターpEGFP−N1および種々のscFv融合発現ベクターと同時トランスフェクトする。トランスフェクションから36時間後、GFP陽性CHO細胞を、フローサイトメーターで分取する。約5000個の細胞からゲノムDNAを抽出する。ApoAlert LM−PCRラダーアッセイキット(Clontech)を使用して、核DNA産物の有無を検出する。アポトーシスに起因するクロマチンビーズから得られるDNAを増幅するApoAlertプライマーを使用して、ゲノムDNAを増幅する。1.5%のアガロースゲルでの分画後、PCR産物を、臭化エチジウム染色によって視覚化する。FACS分取細胞の各組で得られたDNAのコントロールとして、チャイニーズハムスターアクチンに特異的なプライマー(5’GGCGTGATGGTGGGCATGGGCCAG3’および5’CTGGTCATCTTTTCACGGTTGGC3’)をPCRで使用する。PCR反応は、94℃で1分間の変性、65℃で1分間のアニーリング、よび72℃で1分間の伸長の35サイクルからなる。産物を、1.5%のアガロースゲルで視覚化する。
【0170】
<実施例7:抗原に結合した抗βガラクトシダーゼScFv−VP16の近さによる転写の活性化>
βガラクトシダーゼの結晶構造は公知であり、四量体には酵素活性が必要であることが示されている(Jacobsonら,1994,Nature 369,761〜766)。したがって、βガラクトシダーゼに結合する抗体は、活性酵素あたり4つの異なる抗原部位で結合することができる。抗βガラクトシダーゼscFvは、細菌(Martineauら,1998,J Mol Biol 280,117〜127)および哺乳動物(Visintinら,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11723〜11728)の両方においてβガラクトシダーゼに結合するが、βガラクトシダーゼ機能に影響を与えないscFv−R4が記載されている。このモデル細胞内抗体系を使用して、インビボでのscFv抗体フラグメントの近さによって測定可能な生化学的効果が得られるかどうかを識別する。この評価のために、転写トランス活性化が抗原へのscFv−R4結合によって媒介することができるかどうかを最初に識別する。本発明者らのアッセイは、Gal4DNA結合ドメイン(DBD)と融合したscFv−R4およびVP16転写トランス活性化ドメインと融合したscFv−R4を有するβガラクトシダーゼのGAL4プロモーターによって調節されるCD4レポーター遺伝子を含むCHO細胞株での同時発現からなる(Fearonら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,7958〜7962)。レポーター遺伝子が活性化されている場合、CHO−CD4細胞は、その細胞表面上にCD4を発現する。したがって、細胞内抗体scFv−R4−DBDおよびscFv−R4−VP16は、CHO−CD4細胞中でβガラクトシダーゼと結合し、CD4遺伝子を活性化させる転写複合体を産生するはずである(図1Aを参照のこと)。
【0171】
種々のプラスミドの組み合わせを、CHO−CD4細胞中でトランスフェクトし、トランスフェクションから60時間後に、細胞表面CD4を、FACS分析によって測定する(図1B)。βガラクトシダーゼ自体がGAL4−DBDに直接連結するので、scFv−R4−VP16融合体の発現により有効なCD4表面発現が得られる(パネル2)一方で、βガラクトシダーゼ抗原の非存在下でのGAL4 DBDまたはVP16へのscFv−R4の同時発現はCD4を活性化できなかった(パネル3)。したがって、DBD−βガラクトシダーゼ融合体は、CD4レポーターのDNA結合部位と相互作用することができ、転写複合体が産生される。VP16活性化ドメインに連結したscFv−R4もまたDBD−βガラクトシダーゼ四量体上でβガラクトシダーゼエピトープを結合する。
【0172】
次に、βガラクトシダーゼを、DNA結合ドメインおよびVP16活性化ドメインと融合したscFv−R4で同時発現させて、DNAが結合している複合体の形成を評価する。これを有効にするために、scFv−DBDおよびscFv−VP16は共に同一のβガラクトシダーゼの異なる部位に結合していなければならない。したがって、本発明者らは、異なる量の発現ベクターを滴定して、scFv−DBDおよびscFv−VP16融合タンパク質の比を変化させる(図1Bのパネル4〜9)。全ての細胞でCD4レポーター遺伝子の活性化が認められるが、DBD−βガラクトシダーゼ同時発現よりも効果が低い(0.24%〜2.8%の範囲のこれらの一過性アッセイにおけるCD4発現細胞の割合)。相対的な無効性は、おそらく転写アッセイにおけるタンパク質複合体のかさ高さを反映しており、各βガラクトシダーゼに複数の結合部位が必要である。CD4発現の程度はscFvR4−VP16とsvFvR4−DBDとの間の比に依存し(図1B、パネル6、7、および8)、これにより、2つの異なるscFvR4融合タンパク質がβガラクトシダーゼ四量体上の同一の結合部位を競合すると予想される。βガラクトシダーゼの非存在下でscFvR4−VP16およびscFvR4−DBDが発現する場合、CD4活性化は起こらないので、scFvR4の間に二量体は形成されないことが確認される(図1B、パネル3)。本発明者らは、scFvR4に連結したタンパク質ドメインは、scFvR4がβガラクトシダーゼエピトープにインビボで結合する場合、生化学的相互作用のために極めて近接して存在し得ると結論付けた。
【0173】
上記の実験は、本発明の第1の態様の方法を使用して、細胞に検出可能なシグナルを誘導することが可能であることを示す。さらに、本発明の第2の態様の方法を使用して、転写活性からなるシグナルの検出によって細胞内タンパク質を含む構成要素を検出することができる。第1のレポーターから得られるVP16活性化ドメインと第2のレポーターから得られるGAL4 DBDとの安定な相互作用によって転写活性が発現され、この安定な相互作用は、第1のレポーターおよび第2のレポーターの細胞内タンパク質上でのその標的との結合によって得られる。
【0174】
<実施例8:scFv−カスパーゼ3融合により、抗原結合後にアポトーシスを起こす>
転写複合体に必要な成分をβガラクトシダーゼ四量体の活性を得るのに十分に近接させることができるので、scFv−R4抗原部位間の分子の距離は、カスパーゼ3部分が互いに近接して自己活性化およびアポトーシスの誘発にするのに十分に短いと示唆された(図2Aに例示)。
【0175】
レポーターβガラクトシダーゼ発現プラスミドと種々のscFv−R4発現プラスミド(scFvR4とカスパーゼ3との融合体をコードするプラスミドを含む)とのCHO細胞への同時トランスフェクションによってこれを評価する。各scFv融合タンパク質の発現を、発現ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞由来のタンパク質抽出物のウェスタンブロットにおいて抗カスパーゼ3抗体を使用して確認する(図2B)。トランスフェクションから60時間後、細胞を、βガラクトシダーゼ活性についてアッセイする(図2C)。
【0176】
βガラクトシダーゼがコントロールのトランスフェクションで検出される一方で(パネル1)、scFv−R4がカスパーゼ3に連結する場合、βガラクトシダーゼ活性レベルはほとんど認められない(パネル3)。このβガラクトシダーゼの損失は、触媒システインをセリンに変異させる(C163S、パネル4)カスパーゼ3変異の不活化効果によって判断したところ、カスパーゼ3の活性に依存する(MacCorkleら,1998,Proc Natl Acad Sci U S A 95,3655〜60)。さらに、βガラクトシダーゼレポーターをVP16のみと融合したscFv−R4で同時発現させた場合(パネル2)、有意差は認められない。βガラクトシダーゼ活性の欠損に起因する抗体特異性は、カスパーゼ3と融合した非特異的scFvの同時トランスフェクションによって示された(scFv−F8,Tavladorakiら,1993,Nature 366,469〜472)。この組み合わせは、βガラクトシダーゼレベルに対する効果はない。したがって、これらのデータにより、scFv−R4−カスパーゼ3を同時トランスフェクトした場合、βガラクトシダーゼ活性の減少は、βガラクトシダーゼに対する中和効果によることが示唆される。むしろ、トランスフェクト細胞にアポトーシスを引き起こす活性化カスパーゼ3のタンパク質分解活性による。以前の報告と一致して(MacCorkleら,1998,Proc Natl Acad Sci U S A 95,3655〜60;Fanら,1999,Hum Gene Ther 10,2273〜85;Yoshiokaら,1999,Gene Ther 6,1952〜9)、scFv−カスパーゼ3融合体のみでは細胞に有毒ではない(パネル5)ことも留意される。
【0177】
<実施例9:ScFv−カスパーゼ融合体によって誘導されたアポトーシスのルシフェラーゼアッセイ>
特異的scFvR4−カスパーゼ3とβガラクトシダーゼ抗原との相互作用に依存するscFv−カスパーゼ3融合体分子による細胞死滅の誘導を、scFvR4抗体が結合しない独立したレポーターを使用して確認する。
【0178】
CHO細胞を、βガラクトシダーゼ発現(すなわち、scFv−R4抗原)の存在下または非存在下でのホタルルシフェラーゼを構成的に発現するレポーターpRSV−LucとscFvR4−カスパーゼ3、scFvR4−VP16、変異scFvR4−カスパーゼ3(C163s)、またはscFvF8−カスパーゼ3のいずれかとトランスフェクトする。ルシフェラーゼ活性を、scFv融合タンパク質の存在下での細胞の生存度の測定としてトランスフェクションから60時間後に測定する(図3A)。
【0179】
これらのデータは、βガラクトシダーゼと共にscFvR4−カスパーゼ3が発現された場合にルシフェラーゼ活性が約80%減少したことを示す(パネル3、前列)。しかし、これは、scFv−R4−カスパーゼ3がβガラクトシダーゼを含まない独立したレポーターで発現した場合は生存度は減少しないので、scFv−R4−カスパーゼ3でトランスフェクトした細胞中のβガラクトシダーゼ活性の欠如は、scFv−R4−カスパーゼ3のみの毒性よりも抗原依存性細胞死によるようである(パネル3後列)。カスパーゼ依存を、scFvR4−カスパーゼ変異タンパク質融合体を発現する構築物でのトランスフェクションによって示され、βガラクトシダーゼ発現の存在下および非存在下のいずれでもトランスフェクト細胞はルシフェラーゼ活性の減少が認められない。最後に、抗体特異性を、レポーター遺伝子活性に影響を受けない非特異性scFv−F8を使用して確認する。
【0180】
トランスフェクトCHO細胞を使用して、βガラクトシダーゼベクターを使用するか使用しないトランスフェクション後の種々の時間でアッセイしたルシフェラーゼ活性の経時変化を行う(それぞれ図3Bおよび3C)。scFvR4−カスパーゼ3およびβガラクトシダーゼの両方を発現する細胞では、ルシフェラーゼレベルは、scFvR4−カスパーゼ3(C163S)またはscFvF8−カスパーゼおよびβガラクトシダーゼを発現する2つのコントロール中での対応するレベルよりも低いピークまでゆっくりと最初の36時間で上昇する(図3B)。さらに、ルシフェラーゼレベルが上昇しつづける2つのコントロールとは異なり、scFvR4−カスパーゼ3およびβガラクトシダーゼでの同時トランスフェクト細胞における酵素レベルが低下する。それに対して、βガラクトシダーゼの非存在下では、scFvR4−カスパーゼ3は、ルシフェラーゼレベルに影響を与えず、scFvR4−カスパーゼ3(C163S)およびscFvF8−カスパーゼ3に匹敵する(図3C)。これらの結果は、誘導されたアポトーシスは抗体および抗原特異的であり、カスパーゼ3活性に依存することを示す。
【0181】
<実施例10:クロマチン分解によってアッセイされたScFv−カスパーゼ3融合体によって誘導されたアポトーシス>
本発明者らの結果は、βガラクトシダーゼを用いた以前の結果が得られ、ルシフェラーゼアッセイは、アポトーシスが活性なカスパーゼ3に依存し、scFv−カスパーゼ3により抗原への結合後にアポトーシスを引き起こすことを示す。これらの結果を、クロマチンビーズラダーの存在についてのトランスフェクト細胞のアッセイによって確認する。クロマチンビーズラダーの存在は、アポトーシス性細胞死の特徴であり、クロマチンのヌクレアーゼ消化によって引き起こされる(Wyllieら,1980,Nature 284,555〜6)。
【0182】
CHO細胞を、種々のscFv融合タンパク質を発現するプラスミドと共に、βガラクトシダーゼ発現ベクターを用いるか用いないで、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するマーカープラスミドpEGFP−N1でトランスフェクトする。36時間後、GFP(したがって、scFvおよびβガラクトシダーゼも)を発現するトランスフェクト細胞を、蛍光活性化細胞分取を用いた選択によって富化する。ゲノムDNAを、分取細胞から抽出する。アポトーシスに媒介されるクロマチン消化から拡大したDNAフラグメントを、ライゲーション媒介PCR手順によって発現する(Staleyら,1996 Cell Death & Differen.4,66〜75)(図4)。
【0183】
本発明者らは、scFvR4−カスパーゼ3およびβガラクトシダーゼ(レーン2)での同時トランスフェクトした細胞から調製したDNA中でクロマチンビーズの証拠のみを見出したが、βガラクトシダーゼおよびscFvR4−VP16(レーン1)、scFvR4−カスパーゼ3(CD163S)(レーン3)、またはscFvF8−カスパーゼ3(レーン4)でトランスフェクトした細胞では見出されない。それぞれのDNAの収量は、アクチン遺伝子プライマーを使用したPCRによって同定したものに匹敵する(図4B)。さらに、βガラクトシダーゼの非存在下でトランスフェクトされたscFvR4−カスパーゼ3は、DNAラダーを産生せず(レーン5)、これは、アポトーシスが細胞内抗体−カスパーゼ融合体(scFv−R4−カスパーゼ3)と抗原(βガラクトシダーゼ)との間の特異的相互作用に依存することを示す。
【0184】
したがって、本発明者らは、それぞれ細胞内標的およびカスパーゼ3分子に結合する抗体を含む第1および第2のレポーターの使用によって細胞内にアポトーシスを誘導することができることを示す。したがって、本発明の第3の態様による方法を使用して、構成要素に含まれる任意の細胞を死滅させることができる。
【0185】
<実施例11:細胞内抗体媒介アポトーシスの一般的な適用>
細胞内抗体媒介アポトーシスアプローチの一般的適用性を確立するために、異なる高原および細胞内抗体対、すなわち、HIV−1インテグラーゼの小さな抗原エピトープおよびインビボでこのエピトープを認識する特異的抗体を使用して第2の系を開発する(scFvIN33;Levy−Mintzら,1996,J.Virol.70,8821〜8832)。
【0186】
βガラクトシダーゼの構造は、公知である(Jacobsonら,1994,Nature 369,761〜766)。この構造からの予測は、βガラクトシダーゼ単量体のN末端で連結する任意のタンパク質は、四量体βガラクトシダーゼ分子の境界面に存在することである。結果として、連結部分の間の物理的距離は、これらに結合する特異的抗体の間の距離と同様に短いと予想される。したがって、HIV−1インテグラーゼアミノ酸259〜288(すなわち、scFvIN33で認識される;Bizub−Benderら,1994,AIDS Res Hum Retroviruses 10,1105〜15)をβガラクトシダーゼのN末端で融合する発現構築物pEF−HIVIN−β−galを作製する。この構築物を、CHO細胞中でscFvIN33−カスパーゼ3融合タンパク質で同時発現する。図5Aに記載のように、抗体と抗原との相互作用により、カスパーゼ媒介アポトーシスが生じるはずである。
【0187】
トランスフェクションから60時間後、βガラクトシダーゼ活性をアッセイして細胞の生存度を識別する。抗βガラクトシダーゼscFvを使用した本発明者らの所見に応じて、HIV−インテグラーゼ−βガラクトシダーゼ機能がHIV−インテグラーゼ−β−ガラクトシダーゼ融合体のみと比較してscFvN33−カスパーゼ3で同時発現した場合(図5A、パネル2、前列)、βガラクトシダーゼの発現は顕著に減少する(パネル1、前列)。さらに、野生型βガラクトシダーゼでのscFvIN33−カスパーゼ3の発現により、βガラクトシダーゼ活性は有意に減少せず(図5A、パネル2、後列)、これは、HIV−インテグラーゼ−β−ガラクトシダーゼ融合体に対する部位への結合後にscFv−カスパーゼ3の二量体形成に反応し(図5Aに示す)、scFvIN33−カスパーゼ3の自己毒性によって細胞死が起こることを示している。
【0188】
活性なカスパーゼ3の要件を、変異scFv−カスパーゼ、scFvIN33−カスパーゼ3(C168S)(パネル3)の使用によって証明し、非特異性抗体scFvF8−カスパーゼ3を使用して抗体特異性を示す(パネル5)。これらの融合タンパク質で、βガラクトシダーゼレベルに影響を与えることがみとめられたものはない。それに対して、抗βガラクトシダーゼ抗体融合体scFvR4−カスパーゼ3は、予想されたように野生型βガラクトシダーゼおよびHIVインテグラーゼβガラクトシダーゼ融合体を発現する細胞において細胞死を引き起こす(パネル4、前列および後列)。したがって、このモデル系における細胞死は、抗原特異的、抗体特異的、および活性カスパーゼ3依存性である。
【0189】
<実施例12:蛍光シグナルの発生による細胞の検出>
細胞内の構成要素の存在を、蛍光に連結した抗体からなる融合タンパク質の使用および蛍光シグナルの監視によって識別することができる。2つの構築物(一方は黄色蛍光タンパク質(YFP)と融合したscFv−R4からなる融合タンパク質を発現するものであり、他方はシアン蛍光タンパク質(CFP)と融合したscFv−R4からなる融合タンパク質を発現するものである)を作製する。これらの構築物を、pNL−scFvR4へのpYFP−N1由来のフラグメントをコードするYPFまたはpCFP−N1(CLONTECH Laboratories)由来のフラグメントをコードするCFPのサブクローニングによって作製する。
【0190】
構築物を、βガラクトシダーゼを発現するpEF−βgalプラスミドとともにCHO細胞にトランスフェクトする。コントロールとして、CHO細胞をscFv−R4−YFPを発現する構築物およびscFv−R4−CFPのみを発現するがpEF−βgalプラスミドを含まない構築物でもトランスフェクトする。さらなるコントロールには、pEF−βgalプラスミドを使用するか使用しない、CFPおよびYFPと融合した非特異的scFvでのトランスフェクションが含まれる。
【0191】
トランスフェクションから60時間後、細胞をFACS分取に供する。CFP/YFP FRETフィルターセット(Omega Optical Incorporated)を使用して、FRETシグナルと通常の蛍光シグナルとを区別する。βガラクトシダーゼ、scFv−R4−CFP融合体、およびscFv−R4−YFPを発現するプラスミドでトランスフェクトした細胞は、FRETを示すことが見出される一方で、scFv−R4−CFP融合体およびscFv−R4−YFPのみ(βガラクトシダーゼなし)でトランスフェクトした細胞はFRETを示さない。さらに、scFv−F8−CFPおよびscFv−F8−YFP発現構築物(βガラクトシダーゼを発現する構築物を使用してもしなくても)でトランスフェクトした細胞は、FRETを示さない。
【0192】
本発明者らは、2つまたはそれ以上のscFv−カスパーゼ3融合タンパク質が近接した抗原のエピトープに結合する場合、カスパーゼ3部分を活性化してアポトーシスを誘発することができることを示す。この方法では、標的抗原を発現する細胞は選択的に死滅する。このプロセスの妥当性を、2対のモデル抗体(すなわち、抗βガラクトシダーゼscFvR4−カスパーゼ3融合体および抗HIVインテグラーゼscFvIN33−カスパーゼ融合体)を使用して証明した。βガラクトシダーゼが生理学的条件下で四量体として存在するので(Jacobsonら,1994,Nature 369,761〜766)、四量体中にscFvR4の4つの結合部位が存在する。scFvR4がカスパーゼ3のN末端で連結している場合、四量体βガラクトシダーゼへのscFvR4−カスパーゼ3融合タンパク質の結合により、連結したカスパーゼ3部分が近接し得る。この結果により、カスパーゼ3が活性化されて、アポトーシスが誘発される。βガラクトシダーゼに連結したHIVインテグラーゼエピトープを使用した第2のモデルでは、本発明者らは、細胞内抗体−カスパーゼ3融合タンパク質と各抗原との間の特異的結合によってアポトーシス誘発のさらなる証拠をさらに提供する。それぞれの場合、標的抗原を特異的に発現する細胞が死滅するので、これは、細胞内抗体媒介細胞死の一般的な適用性および特異性を示す。
【0193】
上記の各出願書類および特許書類および上記の各出願書類および特許書類中で引用または参照された各文献(上記各出願および特許の遂行中を含む)(「出願引例」)ならびに上記の各出願書類および特許書類に引用または記載されている製品の任意の製造者の説明書またはカタログは、本明細書中で引用することにより本明細書の一部をなすものとする。さらに、本明細書中で引用した全ての書類、本明細書中で引用した全ての書類または引用した書類中の参考文献、本明細書中で引用または言及した任意の製品の任意の製造者の説明書またはカタログは、本明細書中で引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0194】
本発明に記載の方法および系の種々の修正形態および変形形態は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明白である。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記載しているが、特許請求の範囲に記載の本発明はこのような特定の実施形態に過度に限定されないと理解すべきである。実際、分子生物学または関連分野の当業者に明白な本発明の遂行のために記載された方法の種々の修正形態は、特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
哺乳動物の2ハイブリッド(two−hybrid)ScFv−βガラクトシダーゼ転写アッセイ。
図1Aは、CHO−CD4レポーター細胞株において抗βガラクトシダーゼ抗体フラグメントscFvR4−DBD融合タンパク質(DNA結合ドメイン)およびscFvR4−VP16(VP16転写トランス活性化ドメイン)融合タンパク質をコードする同時トランスフェクト発現ベクターの効果を示す図である。scFvR4−DBDおよびscFvR4−VP16融合タンパク質は、βガラクトシダーゼ四量体に結合した場合、CD4レポーター遺伝子の転写を調節する染色体GAL4 DNA結合部位(DBS)に結合することができる転写複合体を形成することができる(Fearonら,1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、7958〜7962)。この後、CD4タンパク質分子が細胞表面に出現し、これを、蛍光活性化細胞分取器を使用してアッセイすることができる。
このような実験の結果を、図1Bに示す。パネルA〜Iは、種々の発現ベクターとともにβガラクトシダーゼ発現クローンpEF−βgalと同時トランスフェクトしたCHO−CD4細胞のFACS分析を示す。パネル1:pEF−BOSベクターのみ;パネル2:DBD−βgal、およびscFvR4−VP16;パネル3:scFvR4−VP16およびscFvR4−DBD;パネル4〜9:表示の種々の量のscFvR4−VP16およびscFvR4−DBD。pEF−βgalプラスミド(5μg)は、変化していない。
DBD=GAL4 DNA結合ドメイン;VP=16活性化ドメイン;DBS=DNA結合部位。
細胞表面CD4発現の誘導を、抗ヒトCD4抗体を使用して60時間後にアッセイする。48時間後の表示のCD4+細胞の割合をFACSCalibur装置を使用して評価する。
【図2】
βガラクトシダーゼに結合する細胞内抗体ScFv4−カスパーゼ3によって媒介される細胞死。
図2Aは、カスパーゼ3の二量体形成およびアポトーシスを誘発するその自己活性化を起こすβガラクトシダーゼ(β−gal)四量体へのscFvR4−カスパーゼ3融合の可能な結合モデル(scFv−CP3)を示す図である。
図2Bは、CHO細胞内で発現したscFv融合タンパク質のウェスタン分析の結果を示す。CHO細胞を、scFv−カスパーゼ3、svFvR4−カスパーゼ3(C163S)、またはscFvF8−カスパーゼ3発現ベクターで48時間トランスフェクトする。タンパク質抽出物を、調製し、分画し、ニトロセルロース膜に移す。これらを抗カスパーゼ3抗体および二次HRP結合抗ヤギ抗体とインキュベートする。ECL(増強化学発光)を使用して検出を行う。予め染色したタンパク質の分子量標準との同時電気泳動によって分子量を識別する。
図2Cは、CHO細胞をβgalを発現するプラスミド(pEF−βgal)および種々のscFv融合タンパク質でトランスフェクトした結果を柱状図に示す。トランスフェクションから60時間後のβガラクトシダーゼレベルを測定し、データはそれぞれ二回行った2つの独立した代表的な実験である。βガラクトシダーゼレベルを、pEF−BOSベクターのみで同時トランスフェクトしたpEF−βgalで得られたレベル(100%とする)と比較して示す。レーン1は空のベクターであり、レーン2はscFvR4−VP16であり、レーン3はscFvR4−カスパーゼ3であり、レーン4はscFv−カスパーゼ3(C163S)であり、レーン5はscFvF8−カスパーゼ3である。
【図3】
scFv融合およびβガラクトシダーゼを同時発現するCHO細胞中のルシフェラーゼ活性。
図3Aは、CHO細胞を、特異的な細胞内抗原を得るために使用されるβガラクトシダーゼ発現ベクターpEF−βgalの存在下(前列)または非存在下(後列)で種々のscFv融合発現プラスミドと共にRSVluc、ルシフェラーゼ発現プラスミドでトランスフェクトした実験の結果を示す(de Wetら,1987,Mol Cell Biol 7,725〜37)。トランスフェクションから60時間後にルシフェラーゼレベルを測定する。このレベルを、pEF−BOSベクターのみと同時トランスフェクトしたルシフェラーゼ発現で得られたレベル(100%)に基準化する。レーン1は空のベクターであり、レーン2はscFvR4−VP16であり、レーン3はscFvR4−カスパーゼ3であり、レーン4はscFv−カスパーゼ3(C163S)であり、レーン5はscFvF8−カスパーゼ3である。
図3Bは、特異的抗原の存在下でのルシフェラーゼ活性化の経時変化を示す。RSVluc、pEF−βgal発現プラスミド、表示の3つの異なるscFv融合タンパク質発現プラスミドでの同時トランスフェクションから12、24、36、48、および60時間後のルシフェラーゼ活性を測定する。三角はscFvR4−カスパーゼ3(C163S)であり、四角はscFvF8−カスパーゼ3であり、丸はscFvR4−カスパーゼ3である。
図3Cは、特異的抗原の非存在下でのルシフェラーゼ活性化の経時変化を示す。ルシフェラーゼ活性を図3Bのように測定するが、細胞をβガラクトシダーゼ発現構築物の非存在下でトランスフェクトする。三角はscFvR4−カスパーゼ3(C163S)であり、四角はscFvF8−カスパーゼ3であり、丸はscFvR4−カスパーゼ3である。
【図4】
scFv−カスパーゼを発現するCHO細胞および特異的抗原を使用したアポトーシスアッセイ。
図4Bは、CHO細胞をpEGFP−N1(緑色蛍光タンパク質を発現する)、種々のscFv融合体をコードするクローンと同時トランスフェクトした実験の結果を示す。トランスフェクトした細胞を蛍光によって識別し、FACSscalibur細胞分取器を使用して分取する。ゲノムDNAを、選択した細胞から抽出し、ApoAlert LM−PCR Ladderアッセイキットを使用してPCR増幅を行う。産物を1.5%アガロースゲル上で分画し、臭化エチジウム染色によって視覚化する。レーンは、scFvR4−VP16+β−gal(レーン1)、scFvR4−カスパーゼ3+β−gal(レーン2)、scFvR4−カスパーゼ3(C163S)+βgal(レーン3)、scFvF8−カスパーゼ3+βgal(レーン4)、およびscFvR4−カスパーゼ3のみ(レーン5)を発現するプラスミドでトランスフェクトした細胞のDNA由来のPCR反応に対応する。ネガティブPCRコントロールは、テンプレートDNAを使用しない反応由来の産物を示す。
図4Bは、図4Aと同一のDNAサンプルを使用するが、チャイニーズハムスターアクチン遺伝子に特異的なプライマーを使用して行ったPCR反応の結果を示す。ネガティブコントロールは図4Aに記載の通りである。ポジティブコントロールは精製CHOゲノムDNAでのPCR増幅から得た反応産物である。
サイズマーカーは、HindIIIで消化したλDNAとHaeIIIで消化したΨX174DNAとの混合物である。
【図5】
βガラクトシダーゼ−インテグラーゼ活性に対する抗HIVインテグラーゼ−カスパーゼ3融合体の効果。
図5Aは、抗HIVインテグラーゼscFvIN33−カスパーゼ3融合体とβガラクトシダーゼ四量体に融合したHIV−1インテグラーゼ部分との間の特異的な相互作用によって、どのようにしてアポトーシスを誘発することができるのかを示す図である。
図5Bは、βガラクトシダーゼに融合したHIVインテグラーゼエピトープ(HIVIN−βgal)をコードする発現クローンの存在下、または野生型βガラクトシダーゼを発現するクローン(クローンpEF−βgal)の存在下での表示の種々のタンパク質を発現するプラスミドでCHOをトランスフェクトした実験の結果を示す。トランスフェクションから60時間後、細胞抽出物を作製し、βガラクトシダーゼレベルを測定する。データを、βガラクトシダーゼの比較活性として示す。各βガラクトシダーゼ発現クローン(HIVIN−βgalおよびpEF−βgal)をpEF−BOS(空のベクター)でトランスフェクトして得られたレベルを100%として、データをベータガラクトシダーゼの比較活性で示す。
前列の1は、pEF−BOSであり、2は、ScFvIN33−カスパーゼ3であり、3は、ScFvIN33−カスパーゼ3(C163S)であり、4は、ScFvR4−カスパーゼ3であり、5は、ScFvF8−カスパーゼ3でのHIVIN−βgalである。後列は、HIVIN−βgalの代わりにpEF−βgalを同時トランスフェクトした以外は前列と同一である。
[発明の分野]
本発明は、細胞内のタンパク質および他の構成要素、特に異常細胞に関連する構成要素の検出法に関する。
【0002】
[発明の背景]
癌は、細胞の成長制御、分化、および生存に影響を与える遺伝的異常によって特徴付けられる(Vogelstein,B.& Kinzler,K.W.,「ヒト癌の遺伝的根拠」、McGraw−Hill、1998)。オンコジーンまたはキメラ融合タンパク質の発現を増強する、癌遺伝子および染色体転座における変異は、複数の腫瘍で頻繁に認められている(Rabbitts,T.H.,1994、Nature、372,143〜149)。これらの異常遺伝子のタンパク質産物は癌細胞特有であるので、腫瘍特異的抗原である。変異タンパク質の排除またはその機能の阻害が、癌の成長および進行の制御において有効であることが示されている(Chinら,1999,Nature,400,468〜472;Felsherら,1999,Mol.Cell 4,199〜207;Huettnerら,2000,Nat.Genet.,24、57〜60)。しかし、このようなタンパク質が治療介入用の潜在的な標的であるにもかかわらず、これらは主に細胞内タンパク質であるので、治療のストラテジーの設計は現実的には困難である。
【0003】
1つのアプローチは、変異タンパク質の中和(Cochetら,1998,Cancer Res.,58、1170〜6)、またはその効果を発揮するために必要な細胞区画への到達の防止(Wrightら,1997,Gene Ther.,4、317〜22)のいずれかによる変異タンパク質を不活化させるための抗体または抗体フラグメントの細胞内発現であった。しかし、特に細胞の内部環境内で、抗体が特定のタンパク質に結合するかどうかをいつも事前に予想することは可能ではない。細胞内で抗原に結合することができる抗体を直接識別する選択方法が提案されている(哺乳動物細胞内で結合能力を有する抗体を選択するためのインビボ2ハイブリッド系(two−hybrid system)など)。このような方法は、本発明者らの先の英国特許出願番号9905510.5および国際特許出願番号PCT/GB00/00876(引用することにより、本明細書の一部をなすものとする。)に記載されている。
【0004】
しかし、インビボで結合すると考えられる候補抗体が識別されたとしても、この抗体が腫瘍タンパク質を中和させるかその細胞内局在化を防止することができるという保証はない。さらに、腫瘍表現型は1つ以上のタンパク質の変異によって誘導され得るので、変異タンパク質を中和させることは、必ずしも腫瘍細胞増殖の停止に有効ではない。したがって、抗体を用いて腫瘍細胞を殺傷する有効な方法が必要である。
【0005】
腫瘍関連抗原は癌細胞の特徴であり、これらの抗原の検出は、患者の癌診断のための手段として使用することができる。抗原の発現を、個体の遺伝子型分類手段として検出することもできる。さらに、特異的マーカーの検出を、組織分類手段として使用することができる。これら全ての場合、抗原の存在を、標識抗体の疑いのある細胞への曝露および抗体と抗原との結合の検出によって識別することができる。しかし、この方法は細胞外で発現した抗原の検出のみに適切である。したがって、細胞内マーカーの有効な検出手段が必要である。
【0006】
[発明の要旨]
本発明者らは、中和抗体の直接的標的として、細胞内腫瘍特異的抗原を使用する代わりに、細胞内で構成要素に結合し、協力して検出可能なシグナルを発生させる1対のレポーターの使用によって細胞を検出可能であることを見出した。このシグナルを使用して細胞を識別することができる。検出された細胞が腫瘍細胞または他の疾患細胞である場合、シグナルは細胞致死機構(cell killing mechanism)の活性化に有利であり、腫瘍細胞または疾患細胞をこの方法で排除することができる。
【0007】
したがって、本発明の1つの態様では、本発明者らは、細胞が、検出可能なシグナルを発生するように誘導する方法であって、(a)ある構成要素を含む細胞を提供する工程と、(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって検出可能なシグナルの発生を得る工程と、(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる工程とを含む方法を提供する。
【0008】
本発明者らは、本発明の別の第2の態様により、細胞内のある構成要素の検出方法であって、(a)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって、検出可能なシグナルを発生させる工程と、(b)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを前記構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる工程と、(c)前記シグナルの監視によって前記構成要素を検出する工程とを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の第3および他の態様により、細胞を死滅させる方法であって、(a)構成要素を含む細胞を提供する工程と、(b)第1の免疫グロブリンを含む第1のレポーターおよび第2の免疫グロブリンを含む第2のレポーターを提供する工程と、(c)前記第1の免疫グロブリンに連結した第1のカスパーゼ分子および前記第2の免疫グロブリンに連結した第2のカスパーゼ分子を提供する工程であって、前記第1のカスパーゼ分子と前記第2のカスパーゼ分子とが安定に相互作用して細胞中にアポトーシスを生じるためのカスパーゼ活性を発生させることができ、(d)前記第1の免疫グロブリンおよび前記第2の免疫グロブリンを前記構成要素に結合させて、前記レポーターの前記構成要素への結合により前記カスパーゼ分子と安定に相互作用して細胞中にカスパーゼ活性を発生させてアポトーシスを誘導する工程とを含む方法が得られる。
【0010】
「構成要素」とは、任意の細胞成分を意味する。この構成要素は、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、転移RNA、亜細胞構造、または細胞内病原体である。新生ポリペプチドおよび細胞内ポリペプチド前駆体もまた、用語「構成要素」の範囲に含まれる。好ましくは、この構成要素は、細胞または細胞に由来する生物の所定の病態に関連するポリペプチドである。
【0011】
細胞は、分化した細胞、または腫瘍細胞などの異常細胞、疾患細胞、または感染した細胞であり得る。「異常細胞」とは、罹患しているか、感染しているか、正常な細胞の特徴または挙動を示さない細胞を意味する。したがって、構成要素は、アルツハイマー病またはダウン症候群(例えば、神経原線維変化または老人斑)に関連する細胞成分であり得る。構成要素はまた、変異βアミロイド前駆体タンパク質または変異ユビキチンBタンパク質であり得る。βアミロイド前駆体タンパク質またはユビキチンBタンパク質をコードするRNAのフレームシフト変異はアルツハイマー病およびダウン症候群に関連することが既知であるので、本発明の構成要素はこのようなタンパク質をコードするフレームシフトRNAであり得る。構成要素はまた、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、新規の異型CJD、またはウシ海綿状脳症(BSEまたは狂牛病)などの哺乳動物海面状脳症に関連する、プリオンタンパク質の感染形態(PrPSc)であり得る。構成要素はまた、AIDS(後天性免疫不全症候群)または自己免疫疾患に関連するタンパク質または他の分子であり得る。
【0012】
好ましくは、構成要素は、癌関連または腫瘍関連タンパクまたは疾患特異的タンパク質である。最も好ましくは、構成要素は、細胞または細胞中の前駆体に起因するオンコジーンタンパク質である。変異オンコジーンタンパク質は、p21rasであり得る。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターのうちの一方が変異オンコジーンタンパク質に存在する標的には結合するが、対応する野生型タンパク質には結合せず、第1のレポーターおよび第2のレポーターのうちの他方が、変異オンコジーンタンパク質および野生型タンパク質のいずれにも存在する標的に結合する。
【0013】
あるいは、変異オンコジーンタンパク質は、染色体転座に起因するキメラ融合タンパク質である。染色体転移の例は、BCR−ABL融合タンパク質を発現するフィラデルフィア転座である。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターの一方がSH2ドメインを含む標的に結合し、第1のレポーターおよび第2のレポーターの他方が、SH2結合部位を含む標的に結合する。
【0014】
変異オンコジーンタンパク質はまた、変異p53タンパク質であり得る。好ましくは、p53タンパク質はp53サブユニットから構成される四量体である。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、変異p53タンパク質の同一の標的に結合する。
【0015】
一般に、構成要素が多量体を形成した天然の細胞成分である場合、第1および第2の分子は同一であり、構成要素の多量体形成によって会合し得る。構成要素が変異構成要素である場合、多量体形成能力が維持されることが好ましい。好ましくは、第1および第2の分子の一方または両方、またはさらなる第3の分子は、多量体形成する構成要素中でのより密接な集合によって、レポーター群の協力を改善する拘束能力を有し得る。
【0016】
本明細書中で使用される、「シグナル」とは、任意の検出可能な事象、好ましくは細胞致死機構(cell killing mechanism)の活性化である。本発明の好ましい実施形態では、細胞致死機構は、アポトーシスまたはプログラムされた細胞死である。好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれカスパーゼ分子を含み、レポーターのその標的への結合により、アポトーシスが誘導されるようにカスパーゼ分子を自己活性化させる。あるいは、シグナルは、プロテアーゼ活性、転写活性、または発光誘導活性などの酵素活性の発生であり得る。
【0017】
「安定な相互作用」とは、第1および第2のレポーターを機能的に協力させて検出可能なシグナルを発生させる相互作用と定義することができる。好ましくは、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターは、シグナルを発生することができる分子の形成に関連するポリペプチドを含む。
【0018】
「プロテアーゼ活性」とは、プロテアーゼまたはタンパク質またはペプチドを分解することができる任意の他の酵素の活性を意味する。プロテアーゼを、当該分野で既知の方法による適切な基質の分解の監視によってアッセイすることができる。好ましくは、ポリペプチド基質は、検出される構成要素からなるか、これを含む。プロテアーゼ活性は、システインプロテアーゼ活性(例えば、カスパーゼ活性)であり得る。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、プロテアーゼ活性は、カスパーゼ活性を含む。好ましくは、カスパーゼ活性は、第1のレポーターと第2のレポーターとの安定な相互作用によって発生する。したがって、この実施形態では、第1のレポーターと第2のレポーターとの安定な相互作用によって、プロテアーゼ活性化が直接発生する。好ましくは、カスパーゼ3またはカスパーゼ8である。さらに好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれカスパーゼ分子を含む。さらにより好ましくは、レポーターのその標的への結合により、カスパーゼ分子が自己活性化し、細胞中でアポトーシスが活性化する。最も好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれカスパーゼ3を含む。カスパーゼは、アポトーシスの誘導に関連するタンパク質群であり、用語「カスパーゼ」は、当該分野で公知である。カスパーゼの例は、Takahashi,Int.J.Hematol.,1999 Dec;70(4):226〜32に記載されているものである。
【0020】
さらなる実施形態では、プロテアーゼ活性を、ユビキチン媒介タンパク質分解の一部としてタンパク質を分解するプロテアソームと関連付けることができる。好ましくは、プロテアソームは26Sプロテアソームである。第1および第2のレポーターは、ユビキチン媒介タンパク質分解経路に関連する成分のドメイン、好ましくは、F−boxタンパク質のドメインを含み得る。検出すべき構成要素の結合による第1および第2のレポーターの安定な相互作用による成分(例えば、F−box)の再構成により、構成要素または構成要素を含むポリペプチドにユビキチンが標識される。構成要素および/またはポリペプチドを破壊のために標的化され、その後プロテアソーム(好ましくは26Sプロテアソーム)によって破壊し、そのシグナルを当該分野で既知の手段によって検出することができる。この実施形態では、第1および第2のレポーターの会合自体は直接プロテアーゼ活性を発生しないが、このプロテアーゼ活性は、このような会合によって間接的に発生することが認識される。破壊されたポリペプチドが細胞の生存に不可欠である場合(代謝酵素、転写因子、膜タンパク質などの構造タンパク質など)、細胞死(これ自体を検出可能)を得ることができることがさらに認識される。例えば、アポトーシスの誘発によって別のポリペプチドの破壊が細胞死を誘導する場合、同一の状況が得られる。
【0021】
酵素活性は転写活性であってよく、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、好ましくは、転写因子のドメインを含み得る。「転写活性」は、転写単位からのメッセンジャーRNAの産生を誘導する活性を意味する。例えば、転写活性は、転写因子または細胞内の遺伝子発現を調整する任意の他の調節分子によって証明される。好ましくは、第1のレポーターまたは第2のレポーターのいずれかはGal4のDNA結合ドメイン(DBD)を含み、第1のレポーターまたは第2のレポーターの他方はVP16活性化ドメインを含む。シグナルを、レポーター遺伝子発現の監視によって検出することができる。レポーター遺伝子は、検出可能な終点での酵素反応を触媒しうる酵素をコードする。あるいは、レポーター遺伝子は、細胞増殖を調節することができる(必要な栄養を得ることができる)分子をコードする。好ましくは、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする。最も好ましくは、レポーター遺伝子は、CD4である。
【0022】
本発明は、さらに、レポーター系として転写調節機構の使用を含む。例えば、ジフテリア毒素発現の転写調節は、第1および第2のレポーターの協力に依存し得る。したがって、第1のレポーターは、わずかなバックグラウンド発現レベルを有する最小プロモーターの調節下で毒素をコードするコード配列を含み得る。第2のレポーターは内因的または外因的のいずれかで転写因子発現を調節する(つまり、毒素発現を情報制御する)ことができる。
【0023】
酵素活性は、発光誘導活性であり得る。「発光」とは、化学反応による光または他の放射物の発生をいい、これは生物発光および化学発光を含む。好ましくは、発光誘導活性は、ルシフェラーゼによって得られることが好ましい。より好ましくは、第1および第2のレポーターはルシフェラーゼのポリペプチドドメインを含み、これらが集結した場合にルシフェラーゼ活性を発生する。
【0024】
シグナルは、電磁放射(例えば、光)の放出または吸収であり得る。好ましくは、シグナルは、蛍光シグナルである。より好ましくは、蛍光化学物質または蛍光タンパク質から蛍光シグナルを発生する。好ましい蛍光化学物質は、フルオレセインイソチオシアネートおよびローダミンであり、好ましい蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、または赤色蛍光タンパク質である。最も好ましくは、蛍光シグナルは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって調整される。蛍光シグナルは、好ましくは、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって検出する。
【0025】
第1のレポーターおよび第2のレポーターは、同一の標的部位に結合することができる。これが事実である場合、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、同一の標的部位に実質的に同時または連続して結合することができる。あるいは、好ましくは、第1のレポーターおよび第2のレポーターは異なる標的部位に結合する。レポーターが異なる標的部位に結合する場合、本発明にしたがってレポーターが機能的に協力することができるように標的部位は隣接することが有利である。
【0026】
好ましくは、第1のレポーターは第1の会合手段を含み、第2のレポーターは第2の会合手段を含み、第1および第2のレポーターはその各会合手段によって相互作用する。より好ましくは、第1のレポーターは構成要素上の第1の標的に結合する第1の結合手段を含み、第2のレポーターは、構成要素上の第2の標的に結合する第2の結合手段を含む。最も好ましくは、第1のレポーターは第1の結合手段に連結した第1の会合手段を含み、第2のレポーターは第2の結合手段に連結した第2の会合手段を含む。
【0027】
用語「連結」は、2つの部分の間の共有結合または非共有結合の任意の形態(例えば、結合手段および会合手段)を意味する。連結の例は、融合タンパク質中のペプチド結合である。部分の間の化学的なカップリングおよび結合も明らかに含まれる。さらに、結合手段および会合手段は直接的連結である必要はなく、リンカーペプチドを介して連結し得る。リンカーペプチドは、可動性のまたは構造化リンカーペプチドであり得る。適切な可動性リンカーペプチドは、任意選択的に他のアミノ酸残基と組み合わせた1つまたは複数のグリシン残基を含み得る。構造化リンカーは、1つまたは複数のプロリン残基を含み、規定の二次構造を含み得る。
【0028】
「結合手段」とは、標的に特異的に結合することができる全てのものを意味する。好ましくは、結合手段は分子である。より好ましくは、結合手段はポリペプチドまたはタンパク質である。
【0029】
最も好ましくは、第1の結合手段および/または第2の結合手段は、免疫グロブリン(例えば、抗体またはT細胞受容体またはそのフラグメント)を含む。好ましくは、抗体は、Fv、一本鎖Fv(ScFv)、Fab、またはF(ab’)2から選択される。より好ましくは、抗体は一本鎖Fvである。最も好ましくは、抗体は細胞内一本鎖Fvである。構成要素がタンパク質またはポリペプチドを含む場合、免疫グロブリンを含むレポーターの使用が好ましい。したがって、構成要素は免疫グロブリンによって認識されるエピトープを含み得る。
【0030】
用語「免疫グロブリン」とは、T細胞受容体および抗体を含む免疫グロブリンスーパーファミリーの任意のメンバーをいい、これには、標的に結合することができる天然の免疫グロブリンの任意のフラグメントが含まれる。免疫グロブリンの総説は、Maleら,1987,Advanced Immunology,、J.B.,Lippinocott Company,Philadelphiaに記載されている。Fv、一本鎖Fv(ScFv)、Fab、またはF(ab’)2と同様に、インタクトな免疫グロブリンも用語「免疫グロブリン」の範囲内である。本明細書中で使用される、「細胞内」は、細胞の内側を意味する。「細胞内抗体」は、細胞環境内または細胞内環境を模倣した環境下でその標的または同族抗原に結合することができる抗体である。
【0031】
会合手段および結合手段が共にタンパク質を含む場合、レポーターは、好ましくは、結合手段に連結した各会合手段を含む融合タンパク質として得られる。好ましくは、細胞内の核酸の発現によって、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターが得られる。結合手段が抗体またはT細胞受容体を含む場合、核酸は、抗体またはT細胞受容体のレパートリーをコードするファージライブラリーから得ることが好ましい。「レパートリー」は、複数の結合特異性を得るために核酸レベルで1つまたは複数のテンプレート分子の無作為、半無作為、または定方向変異によって得られた1組の分子をいう。
【0032】
より好ましくは、ライブラリーを、抗原に曝露された生物から単離された核酸から構築する。あるいは、会合手段は、化学的カップリングによる結合手段に連結している。
【0033】
構成要素が核酸を含む場合、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターは、構成要素中に局在する配列を含む標的に結合することができる。好ましくは、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターの各標的への結合は核酸ハイブリッド形成によって起こる。より好ましくは、第1のレポーターおよび/または第2のレポーターは、標的配列とハイブリッド形成することができる核酸結合手段を含む。最も好ましくは、核酸結合手段は、RNAまたは一本鎖DNAを含む。
【0034】
第1および/または第2のレポーターは、核酸配列を含む会合手段を介して相互作用することができる。レポーターの安定な相互作用は、この場合、照射(例えば、紫外線照射)の吸収の監視によって検出することができる。あるいは、核酸会合手段を、本明細書中に記載のシグナルを発生させることができる任意の成分に連結することができ、レポーター間の相互作用を、発生した特定のシグナルの監視によって検出することができる。
【0035】
会合手段および結合手段が共に核酸を含む場合、第1および/または第2のレポーターを、会合手段および結合手段を含む近接した核酸配列の形態で得ることができる。
【0036】
あるいは、第1および/または第2のレポーターを、核酸およびタンパク質を含むハイブリッドの形態で得ることができる。したがって、レポーターは、タンパク質を含む結合手段および核酸を含む会合手段を含むか、その逆に核酸を含む結合手段およびタンパク質を含む会合手段を含むことができる。重要なのは、第1のレポーターの結合手段のその標的への結合により第1のレポーターの会合手段が第2のレポーターの会合手段に安定に会合され、標的に結合した場合にシグナルを発生するという点だけである。
【0037】
本発明の第4の態様によれば、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と共に免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物が得られる。
【0038】
本発明の第5の態様では、本発明者らは、ヒトもしくは動物の癌の治療方法または予防方法に使用するための、免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0039】
本発明の第6の態様によれば、ヒトまたは動物の癌の治療方法または予防方法用の薬剤を調製するための、免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸の使用が得られる。
【0040】
本発明の第7の態様では、細胞中のポリペプチドの分解方法であって、(a)ポリペプチドを含む細胞を得る工程と、(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを得る工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によってプロテアーゼ活性を発生させる工程と、(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記ポリペプチドに結合させることによって、前記ポリペプチドへの前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、プロテアーゼ活性を誘発させてポリペプチドをタンパク質分解させる工程とを含む方法を提供する。
【0041】
本発明の第8の態様によれば、本発明者らは、遺伝子機能の識別方法であって、(a)ポリペプチドをコードする遺伝子を含む細胞を提供する工程と、(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって、プロテアーゼ活性を誘発させる工程と、(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記ポリペプチドに結合させることによって、前記ポリペプチドへの前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを安定に相互作用させ、プロテアーゼ活性を発生させてポリペプチドをタンパク質分解させる工程と、(d)表現型を観察する工程とを含む方法を提供する。
【0042】
この態様の方法は、機能的ゲノム研究に有用である。任意のタンパク質構成要素を標的することができる適切な結合構成要素を、その崩壊によってタンパク質機能を破壊するために本明細書中に記載の詳細な説明にしたがって構築することができる。したがって、機能的「ノックアウト」を容易に作製することができる。次いで、細胞または細胞を含む動物もしくは植物の表現型を観察して、ポリペプチドまたは遺伝子の機能の指標を得ることができる。したがって、例えば、標的化された細胞が細胞周期表現型の停止を示す場合、例えば、標的化された問題のタンパク質は細胞周期機能の役割を果たすと結論付けることができる。以下にさらに詳細に説明されている適切にデザインされたレポーターの使用による任意のタンパク質の標的能力の適用により広範な有用性を得ることができる。
【0043】
好ましくは、シグナルは、プロテアソーム、好ましくは26Sプロテアソームに関連するプロテアーゼ活性の発生である。より好ましくは、第1および第2のレポーターがそれぞれF−boxモチーフの1つまたは複数のドメインを含む。好ましくは、レポーターの構成要素への結合により構成要素または構成要素を含むポリペプチドがユビキチン化される。本発明の非常に好ましい実施形態では、レポーターの構成要素への結合により構成要素または構成要素を含むポリペプチドがタンパク質分解される。このようなタンパク質分解により、細胞が死滅することが好ましい。
【0044】
本発明の実施には、特記しない限り、当業者の能力の範囲内の従来の化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学技術を使用する。このような技術は、文献で説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F,Fritsch,and T.Maniatis,1989,「分子クローニング:実験マニュアル」,第2版,第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.ら,1995および定期増補版,「現代の分子生物学プロトコール」,第9,13,および16章,John Wiley & Sons、New York,N.Y.;B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn,1996,「DNA単離および配列決定:基本的技術」,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee、1990、「in situハイブリッド形成:原理と実践」;Oxford University Press;M.J.Gait(編),1984,「オリゴヌクレオチド合成:実践アプローチ」,Irl Press;およびD.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,「酵素学方法論(Methods of Enzymology):DNA合成パートA:DNAの合成および物理分析」,Methods in Enzymology,Academic Pressを参照のこと。これらの各一般書を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0045】
[発明の詳細な説明]
本発明の方法により、構成要素を含む細胞中でシグナルが誘導され、細胞内で構成要素が検出され、構成要素を含む細胞が死滅する。本発明は、構成要素への第1および第2のレポーターの結合に依存する。したがって、第1のレポーターが構成要素への第1および第2のレポーターの結合を介して第2のレポーターと安定に相互作用する場合、シグナルが発生する。有利には、第1および第2のレポーター間の安定な相互作用は、レポーターがレポーターのその各標的への結合を伴わない限り起こらない。所望ならは、シグナルを検出することができる。したがって、第1および第2のレポーターは、相互作用によってシグナルを発生することができるシグナル発生因子の2つの部分である。
【0046】
本発明の方法を、一般に、任意の細胞を正常か異常かの識別(例えば、癌細胞または疾患細胞)に使用することができることに留意すべきである。したがって、一般に、本発明者らの方法を使用して、細胞内の任意のタンパク質、核酸、または他の構成要素を検出するか、さらに細胞内の任意の構成要素の亜細胞の位置を識別することができる。したがって、本発明者らの方法は、病態に関連する構成要素の有無によって細胞の病態を検出することができる。識別された細胞の排除を所望する場合、従来の手段によってこれを行うことができる。その他で好ましくは、シグナルが細胞死であるように、レポーターの結合により細胞致死機構が直接活性化される。有利には、細胞死は、アポトーシスまたはプログラム細胞死に起因する。
【0047】
特定のアミノ酸配列を認識してアスパラギン酸後に標的タンパク質を切断するカスパーゼとして公知のシステインプロテアーゼのファミリーによってアポトーシスを行う(Thornberryら,1998、Science、281、1312〜6)。カスパーゼファミリーの1つのメンバーであるカスパーゼ3は、いわゆるアポトーシス経路の実行者であり、生存細胞の完全性の維持に重要な多数のタンパク質のタンパク質分解性切断を担う(Earnshawら,1999、Ann.Rev.Biochem.,68、383〜424)。カスパーゼ3を酵素前駆体として合成し、イニシエーターまたは上流カスパーゼ(カスパーゼ8(Srinivasulaら,1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93、14486〜91)およびカスパーゼ9(Liら,1997、Cell,91、479〜89)など)によって活性化して、活性四量体酵素を形成させる(Rotondaら,1996、Nat.Struct.Biol.,3、619〜25)。2つのカスパーゼ3分子が非常に近接する場合、強制的な二量化によって、これらは自己活性化して不可逆的に細胞死を招くことが示されている(Colussiら,1998、J.Biol.Chem.,273、26566〜70;MacCorkleら,1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95、3655〜60;Fanら,1999、Hum Gene Ther.,10、2273〜85)。
【0048】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、第1のレポーターおよび第2のレポーターは、カスパーゼ3分子を含む。第1および第2のレポーターの構成要素への結合により、第1および第2のレポーター間で安定に相互作用し、カスパーゼ3分子が自己活性化し、カスパーゼ活性を発生する。これにより、細胞内でアポトーシスが誘発される。以下に記載のように、有利には、第1および第2のレポーターは抗体を介して各標的に結合し、好ましい実施形態では、細胞内抗体−カスパーゼ融合タンパク質の形態でカスパーゼ3が得られる。
【0049】
本明細書中で使用される、「カスパーゼ分子」または「カスパーゼ」には、カスパーゼ活性が保持されている限り、カスパーゼのポリペプチド配列のいくつかまたは全部を含むポリペプチド配列が含まれる。したがって、第1および第2の分子は、他のポリペプチド配列と共にカスパーゼ由来のポリペプチド配列を含み得る。カスパーゼ配列は、分子内または分子上に部分を形成することができる。
【0050】
カスパーゼのポリペプチド配列を、タンパク質の活性および機能に実質的に影響を与えない保存的アミノ酸置換を用いて変更することができる。その他で好ましくは、カスパーゼの自己中毒を減少させ、そして/またはアポトーシスの活性化により有効なカスパーゼを作製するための変異を移入することができる。カスパーゼ分子を、検出すべき構成要素の非存在下で二量体形成するカスパーゼ分子の傾向を防止するか低減させるように操作することもできる。カスパーゼのこのような変異型および変異体を、当該分野で公知の方法によって作製し、有効性について試験することができる。
【0051】
シグナルは、電磁放射(EM)(例えば、光)の放出または吸収であり得る。これには、蛍光、燐光、または照射の放出または吸収の強度または周波数の調整に関連する他のシグナル(例えば、FRETシグナル)が含まれる(以下にさらに詳細に記載する)。第1のレポーターおよび第2のレポーターは、それぞれ蛍光タンパク質または蛍光化学物質などの蛍光発色団を含み得る。蛍光化学物質の例には、アロフィコシアニン、フィコシアニン、フィコエリスリン、ローダミン、テトラメチルローダミン、7−ニトロ−ベンゾフラザンローダミンイソチオシアネート、オキサジン、クマリン、フルオレセイン誘導体(例えば、FAM(6−カルボキシ−フルオレセイン)、TET(6−カルボキシ−4,7,2’,7’−テトラクロロフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、およびカルボキシフルオレセインジアセテート)、テキサスレッド、アクリジンイエロー/オレンジ、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、およびbis−ベンズアミド(HoechstからH33258の商標名で市販されている)が含まれる。
【0052】
好ましくは、第1および第2のレポーターは、蛍光ポリペプチドを含む。蛍光ポリペプチドおよびタンパク質の例には、Aequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)、Discosoma spp由来の赤色蛍光タンパク質(RFP)が含まれる。これらのタンパク質の誘導体および変異型(シアン蛍光タンパク質青色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP;GFPmut1;Yang,T.T.ら,1996,Nucrelic Acids Res.,24(22),4592〜4593;Cormack,B.P.ら,1996、Gene、173,33〜38)、増強青色蛍光タンパク質(EBFP)、増強黄色蛍光タンパク質(EYFP;Ormoら,1996,Science,273,1392〜1395)、不安定化増強緑色蛍光タンパク質(d2EGFP;Living Colors不安定化EGFPベクター(1998年4月)、CLONTECHniques XIII(2)、16〜17)、増強シアン蛍光タンパク質(ECFP)、およびGFPuv(Haas,J.ら,1996、Curr.Biol.,6、315〜324)など)も使用することができる。これらの蛍光タンパク質は、CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto、California、USA)から市販されている。あるいは、第1および第2のレポーターは、蛍光ポリペプチドのポリペプチドドメインを含む。
【0053】
シグナルは、活性を誘導する発光であり得る。発光の間に光が発生するので、シグナルは同時に活性を誘導する発光および電磁放射線の放射であり得ることが認識される。
【0054】
シグナルはまた、酵素活性(例えば、転写活性)の発生であり得る。転写活性を、例えば蛍光抗体およびFACSによるCD4などのレポーター遺伝子の発現のアッセイによって検出することができる。
【0055】
あるいは、シグナルを、細胞増殖、細胞分裂、または細胞の分化として検出することができる。第1および第2のレポーターが安定に相互作用して、分化または細胞増殖のプログラムを活性化することができる転写活性を得ることができる。例えば、VEGF(血管内皮成長因子)および/または他の脈管形成成長因子を発現して血管新生を誘導することもできる。Lmo2 LIMのみのタンパク質は、血管新生に特異的に必要であることが示されているので(Yamadaら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、320〜324)、転写活性はLmo2活性であり得る。細胞の増殖および検出を、当該分野で公知のように顕微鏡によって適切な細胞表面マーカーを検出することができる。
【0056】
細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。好ましくは、細胞は、動物細胞またはヒト細胞である。好ましくは、細胞はヒト細胞である。構成要素は、任意の細胞区画、好ましくは細胞質または核に存在し得る。
【0057】
細胞は、正常な細胞であり得るので、本発明者らの方法は、例えば、特定の発生系統に関連する構成要素の検出による組織分類手段として使用することができる。あるいは、本方法を、例えば、細胞が癌性であるかどうかを細胞内の腫瘍関連構成要素の検出による、細胞の病態の識別手段として使用することができる。したがって、構成要素は、ポリペプチドをコードする核酸の点変異、欠失、挿入、または染色体転座による野生型タンパク質由来の変異癌タンパク質またはポリペプチドであり得る。例としては、対応する野生型タンパク質の1つまたは複数の変異に起因するp21rasである。腫瘍サプレッサー遺伝子の変異はしばしば癌細胞および癌細胞に関連し、この癌細胞によって産生されるタンパク質(例えば、変異p53タンパク質)を、本発明の方法を使用して検出することもできる。あるいは、癌タンパク質は、染色体転座に起因するキメラ融合タンパク質であり得る(フィラデルフィア転座由来のBCR−ABL融合体など)。
【0058】
構成要素はまた、異常細胞に関連するタンパク質または核酸であり得る。このような細胞は、正常な細胞では見出されない異常なタンパク質(例えば、感染の結果として発現するウイルスまたは最近特異的タンパク質)を発現し得る。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)インテグラーゼタンパク質により、細胞がHIVに感染しているかどうかを識別する。したがって、本発明者らの方法を使用して、細胞が罹患しているか、感染しているか、または異常であるのかどうかを識別することができる。他で好ましくは、罹患しているか、感染しているか、異常な細胞は、上記のアポトーシスの活性化によって死滅する。この場合、シグナルを検出する必要は全くないことが認識される。
【0059】
タンパク質を産生する対応核酸の検出によってタンパク質を検出することもできることが認識される。例えば、変異を有し、腫瘍関連タンパク質をコードするメッセンジャーRNAまたはDNA配列を検出することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、第1および第2のレポーターは、結合手段を有し、この結合手段は細胞内での核酸の発現によって得られる免疫グロブリンである。核酸を、構成要素の検出に適切な亜細胞区画に局在化させることができる。例えば、構成要素が細胞質タンパク質である場合、核酸は細胞の細胞質に局在化し、そこで転写および/または翻訳される。分子はまた、任意の所望の亜細胞区画(核(例えば、核局在化シグナルへの融合による)、ER(ER保持シグナルの使用)、ミトコンドリア(ミトコンドリア標的配列(MTS)の使用)、原形質膜、または原形質膜などの他の場所など)に局在化することができる。このような標的配列については、一般に、Bakerら,1996、Biol.Rev.Camb.Philos.Soc.,71、637〜702に記載されている。
【0061】
ミトコンドリア標的配列およびミトコンドリア膜によるタンパク質の指示および転座機構は、例えば、Omura,1998,Biochem(Tokyo) 123,1010〜6,Glaserら,1998,Plant Mol Biol,38,311〜38,およびVoosら,1999,Biochim Biophys Acta 1422,235〜54で考察されている。生物活性化合物のミトコンドリア標的は、Murphy,1997,Trends Biotechnol 15,326〜30に概説されている。ミトコンドリアが多くの重要な細胞プロセスに関連しているので、本発明を使用して異常なミトコンドリアタンパク質またはミトコンドリアDNA疾患に関連するDNAを含む構成要素を検出することができる。異常なミトコンドリアタンパク質または変異mtDNAを含む細胞を、検出し、任意選択的に死滅させることができる。
【0062】
核局在化配列には、SV40巨大T抗原コンセンサス配列PKKKRKV(Dingwallら,1991,Trends Biochem.Sci.16、478〜481に概説)または2つの核局在化配列(例として核質タンパク質)(Dingwallら,1987,EMBO J.6、69〜74;Robbinsら,1991,Cell 64,615〜623)が含まれる。
【0063】
レポーターを原形質膜に標的化して、原形質膜に存在する構成要素(膜タンパク質など)を検出することもできる。p21−ras癌遺伝子産物を原形質膜に局在化し、標的化レポーターを適切に使用してrasタンパク質を検出することができることが公知である。レポーターを膜貫通タンパク質または膜局在化が可能な膜貫通タンパク質の一部(当該分野で公知の膜貫通αヘリックスなど)への連結によって、原形質膜への標的化を行うことができる。
【0064】
レポーターが組換えタンパク質として発現された場合、核標的配列、ミトコンドリア標的配列、ER保持シグナルなどを、発現構築物への適切な配列のクローニングによってレポーターに操作することができる。
【0065】
免疫グロブリンをコードする核酸を、複数のこのような分子をコードするライブラリーから得ることができる。例えば、抗体分子のファージディスプレイライブラリーは公知であり、このプロセスに使用することができる。有利には、ライブラリーは免疫グロブリン分子のレパートリーをコードする。レパートリーの産生方法は当該分野で十分に特徴付けられている。
【0066】
ライブラリーを、抗原に曝露された生物から単離された核酸からさらに構築することができる。抗原曝露により、通常、免疫グロブリンのポリクローナル集団が産生され、それぞれ抗原に結合することができるがエピトープ特異性または他の特徴について他と異なり得る。生物からの抗体遺伝子のクローニングにより、免疫グロブリンのポリクローナル抗体を選択に供して、本発明の方法に適切な免疫グロブリンを単離することができる。
【0067】
上記のように、第1および/または第2のレパートリーは、ポリペプチドを含んでもよい会合手段を含み得る。会合手段がポリペプチドである場合、第1および第2のレパートリーの一方または両方を、免疫グロブリンおよびポリペプチドを含む融合タンパク質の形態で得ることができる。本発明の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、細胞内抗体カスパーゼ3融合体である。融合タンパク質の一方または両方を、転写して第1または第2のポリペプチドと共に第1または第2の免疫グロブリンが得られる適切な核酸構築物から発現させることができる。核酸構築物を、上記のように細胞内で標的化することができる。核酸構築物は、本発明の方法が行われる細胞内の融合タンパク質をコードする核酸の発現を指示することができる発現ベクターであり得る。
【0068】
[結合部分]
本発明のレポーターは、好ましくは、上記の細胞構成要素に結合することができる部分を含む。これらは、免疫グロブリン、特に上記の細胞内抗体であり得るが、本発明はまた、細胞内で標的に結合することができるポリペプチドおよび核酸結合分子の使用を含む。このような結合分子は、典型的には抗体より小さいほうが有利であるので、細胞内でのレポーターを構成要素により良好に標的化することができる。
【0069】
したがって、本発明は、1つまたは複数の細胞標的に第1および/または第2のレポーターを指示するための標的特異的結合ポリペプチドおよび/または核酸アプタマーの使用を提供する。本明細書中で使用される、「標的特異的結合ポリペプチドおよび/または核酸アプタマー」は、細胞内で分子標的に特異的に結合することができるポリペプチドまたは核酸分子である。このようなペプチドまたはアプタマーを免疫グロブリンの代わりに使用して本発明の細胞内の構成要素へのレポーターの標的化を行うことができる。
【0070】
結合活性を有するポリペプチドを、例えば、無作為なペプチド構造の組換えライブラリーから開発することができる。ファージディスプレイ、SELEX、mRNAディスプレイ、または表面プラスモン共鳴、必要であれば、その後の変異および選択のラウンドの反復による結合特異性および親和性の精密化などの技術による所望の標的結合親和性を有するポリペプチドの選択は、当業者に公知の技術である。
【0071】
例えば、mRNA選択による結合ポリペプチドの選択は、Wilsonら、Proc Natl Acad Sci U S A、2001 Mar 27;98(7)、3750〜3755に記載されている。Srebalus and Clemmer、Proc Natl Acad Sci U S A、2001 Mar 27,98(7):3750〜3755は、標的分子へのポリペプチドライブラリーの結合を特徴付けるためのMALDI−TOFMSの使用を記載している。ファージディスプレイの使用は、Nilssonら、Adv Drug Deliv Rev 2000 Sep 30;43(2−3):165〜96およびMcGregor、Mol Biotechnol 1996 Oct;6(2):155〜62に概説されている。核酸アプタマーの使用は、Hermann and Patel、Science 2000 Feb 4;287(5454):820〜5に概説されている。SELEXは、標的分子への高度に特異的な結合をする核酸分子のインビトロ進化法である。例えば、米国特許第5654151号、同第5503978号、同第5567588号、および同第5270163号ならびにPCT公開パンフレットWO96/38579に記載されている。
【0072】
ファージディスプレイおよびSELEXなどの反復選択法は、多数の可能な配列および構造を含むライブラリー中に所与の標的についての広範な種々の結合親和性が存在するという原理に基づく。例えば、20個のサブユニット無作為化ポリペプチドまたは核酸ポリマーを含むライブラリーは、420種の構造の可能性を有し得る。標的についてより高い親和定数を有するものは、ほぼ結合していると考えられる。分画、解離、および増幅プロセスによって、より多数の結合親和性候補が豊富な第2の核酸ライブラリーを産生される。さらなる選択ラウンドにより、得られたライブラリーが1つまたはいくかの配列のみから支配的に構成されるまで最良のリガンドが徐々に優先される。次いで、これをクローン化し、配列決定し、それぞれ純粋なリガンドとして結合親和性について試験することができる。
【0073】
選択および/または変異/増幅サイクルを、所望の目的が達成されるまで繰り返す。最も一般的な例では、サイクルの反復で結合強度が有意に改善されなくなるまで、選択/増幅を継続する。反復選択/増幅法は、少なくとも104個の配列を含むライブラリー中の1つの配列変異体の単離に十分な感受性を示す。原則的にこの方法を使用して、約1018個もの異なる核酸種をサンプリングする。ライブラリーのメンバーは、好ましくは、有効な増幅に必要な無作為化配列部分および保存配列を含む。無作為化核酸配列の合成および無作為に切断した細胞核酸からのサイズ選択を含む多数の方法において、配列変異体を産生することができる。変更可能な配列部分は、完全または部分的に無作為な配列を含み得る。無作為化配列を組み込んだ保存配列の下位部分(subportion)もまた含み得る。試験核酸の配列変形形態を、選択/増幅反復前またはその間の変異誘発および特異的改変によって導入または増加することができる。
【0074】
結合ポリペプチドおよびアプタマーの選択方法を、以下でさらに説明する。一般に、免疫グロブリン分子の選択技術を、本発明での使用のためにペプチド選択に容易に適用することができる。
【0075】
[免疫グロブリン]
免疫グロブリン分子は、広義では、免疫グロブリンスーパーファミリー(2つのβシートおよび通常は保存されたジスルフィド結合を含む抗体分子の免疫グロブリン折りたたみ特性を含むポリペプチドファミリー)のメンバーである。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(例えば、抗体、T細胞受容体分子など)の広範な役割、細胞接着への関与(例えば、ICAM分子)、および細胞内シグナル伝達(例えば、PDGF受容体などの受容体分子)を含むインビボでの細胞および非細胞相互作用の多数の局面に関連する。したがって、本発明の方法は、標的に結合することができる任意の免疫グロブリンスーパーファミリー分子を使用することができる。免疫グロブリン由来のペプチドまたはフラグメントも使用することができる。
【0076】
本明細書中で使用される、「抗体」は、選択した標的に結合することができる完全な抗体または抗体フラグメントをいい、これには、Fv、ScFv、Fab’、およびF(ab)2、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラを含む操作抗体、CDR移植およびヒト化抗体、ファージディスプレイまたは別の技術を使用して産生された人為的に選択された抗体が含まれる。FvおよびScFvなどの小さなフラグメントは、その小さなサイズおよびそれによる優れた組織分散により診断および治療への適用に有利な性質を有する。好ましくは、抗体は、一本鎖抗体またはscFvである。
【0077】
抗体は、毒素または標識などのエフェクタータンパク質を含む変化した抗体であり得る。標識抗体の使用により、インビボでの抗体の分布が画像化される。このような標識は、患者の体内で容易に視覚可能な金属粒子などの放射性標識または放射性不透明標識であり得る。さらに、これらは、蛍光標識(本明細書中に記載のものなど)または患者から取り出した組織サンプルで視覚可能な他の標識であり得る。エフェクター群を有する抗体を、上記の任意の会合手段と連結することができる。
【0078】
抗体を、動物の血清から得るか、モノクローナル抗体またはそのフラグメントの場合、細胞培養により産生させることができる。組換えDNA技術を使用して、確立された手順にしたがって、細菌性、酵母、昆虫、または好ましくは哺乳動物細胞培養において抗体を産生させることができる。選択された細胞培養系は、好ましくは、抗体産物を分泌する。
【0079】
インビトロでのハイブリドーマ細胞または哺乳動物宿主細胞の増殖を、通例の標準的培養培地である適切な培養培地(例えば、任意選択的に哺乳動物血清(例えば、ウシ胎児血清)または微量元素および増殖維持補助物質(例えば、正常なマウス腹腔滲出細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージなどの支持細胞、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸など)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)またはRPMI1640培地)で行う。細菌細胞または酵母細胞である宿主細胞の増殖を、当該分野で公知の適切な培養培地(例えば、細菌についてはLB、NZCYM、NZYM、NZM、Terrific Broth、SOB、SOC、2× YT、またはM9最少培地、酵母についてはYPD、YEPD、最少培地、または完全最少ドロップアウト培地)で同様に行う。
【0080】
タンパク質発現用の宿主としての昆虫細胞の使用は、クローニングおよび発現プロセスが比較的容易で迅速であるという点で有利である。さらに、細菌または酵母発現と比較して、正確に折りたたまれた生物活性タンパク質が得られる可能性が高い。昆虫細胞を、血清含有培地と比較して安価で安全な無血清培地で培養することができる。組換えバキュロウイルスを発現ベクターとして使用することができ、この構築物を使用して任意の多数の鱗翅目細胞株、特に当該分野で公知のSpodoptera frugiperda Sf9であってもよい宿主細胞株にトランスフェクトする。昆虫宿主細胞における組換えタンパク質発現の総説は、Altmannら,1999,Glycoconj J 1999,16,109〜23およびKost and Condreay1999,Curr Opin Biotechnol,10,428〜33に記載されている。
【0081】
インビトロ産生により、比較的純粋な抗体調製物が得られ、スケールアップにより大量の所望の抗体が得られる。細菌細胞、酵母、昆虫、および哺乳動物細胞培養技術は当該分野で公知であり、均一な浮遊培養(例えば、エアリフト反応器もしくは連続的撹拌反応または固定もしくは気体ため込み式(entrapped)細胞培養(例えば、中空糸、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジ))が含まれる。
【0082】
大量の所望の抗体を、インビボでの哺乳動物細胞の増殖によって得ることもできる。この目的のために、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、組織適合哺乳動物に注射して、抗体産生腫瘍を増殖させる。任意選択的に、動物を、注射前に炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油で感作する。1〜3週間後、これらの哺乳動物の体液から抗体を単離する。例えば、適切な骨髄腫細胞のBalb/cマウス由来の抗体産生脾臓細胞との融合によって得たハイブリドーマ細胞または所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株Sp2/0由来のトランスフェクト細胞を、任意選択的にプリスタンで前処理したBalb/cマウスに腹腔内注射し、1〜2週間後、動物から腹水を取り出す。
【0083】
上記および他の技術は、例えば、Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495〜497;米国特許第4,376,110号;Harlow and Lane,「抗体:実験マニュアル」,1988,Cold Spring Harbor(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に考察されている。組換え抗体分子の調製技術は、上記引例および、例えば、EP 0623679、EP 0368684、及びEP 0436597(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)にも記載されている。
【0084】
細胞培養上清を、好ましくは免疫ブロッティングによる所望の標的を発現する細胞の免疫蛍光、酵素免疫アッセイ(例えば、サンドイッチアッセイまたはドットアッセイ)または放射免疫アッセイによって所望の抗体についてスクリーニングする。
【0085】
抗体の単離のために、腹水中の培養上清中の免疫グロブリンを、硫酸アンモニウムでの沈殿、ポリエチレングリコールなどの吸湿性物質に対する透析、選択膜による濾過などによって濃縮することができる。必要および/または所望である場合、抗体を、日常的なクロマトグラフィー法(例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー(例えば、標的を含むタンパク質またはプロテインAでのアフィニティークロマトグラフィー))で精製する。
【0086】
上記手順で産生した抗体を、標準的手順によって細胞から核酸の単離によってクローン化することができる。通常、抗体の核酸可変ドメインを単離し、これを使用してscFvなどの抗体フラグメントを構築することができる。
【0087】
したがって、本発明は、好ましくは、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換え核酸を使用する。定義によって、このような核酸は、コード核酸およびその相補的核酸またはこれらの法補的(一本鎖)核酸自体からなるコード一本鎖核酸、二本鎖核酸を含む。
【0088】
さらに、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、天然に存在する重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインまたはその変異体をコードする真の(authentic)配列を有する酵素合成または化学合成核酸であり得る。真の配列の変異体は、1つまたは複数のアミノ酸が欠失しているか1つまたは複数の他のアミノ酸と交換されている上記抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする核酸である。好ましくは、前記改変は、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。このような変異核酸は、1つまたは複数のヌクレオチドが同一のアミノ酸をコードする新規のコドンを有する他のヌクレオチドに置換されるサイレント変異であることも意図される。このような変異配列はまた、縮重配列である。縮重配列は、無制限のヌクレオチドが元のコードされたアミノ酸配列を変化することなく他のヌクレオチドと置換されるという点での遺伝コードの意味の範囲内で縮重している。このような縮重配列は、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインの任意選択的発現を得るための特定の宿主(特に、酵母、細菌、または哺乳動物細胞)によって好まれる特定のコドンのその異なる制限部位および/または頻度により有用であり得る。
【0089】
用語「変異」は、当該分野で公知のDNAのインビトロまたはインビボ変異誘発によって得られるDNA変異を含むことを意図する。
【0090】
組換えDNA技術を使用して、本発明の抗体を改良することができる。したがって、診断または治療への適用において免疫原性を減少させるためにキメラ抗体を構築することができる。さらに、免疫原性を、CDR移植(欧州特許第0239400(Winter))および任意選択的にフレームワークの改変(欧州特許第0239400;Riechmannら,1988、Nature 322:323〜327,および国際特許出願WO 90/07861(Protein Design Labs)に概説されている)によるヒト化抗体によって最小にすることができる。
【0091】
したがって、本発明はまた、ヒト定常ドメインγ(例えばγ1、γ2、γ3、またはγ4、好ましくはγ1またはγ4)に融合した抗体の重鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換え核酸を使用する。同様に、本発明は、ヒト定常ドメイン(κまたはλ、好ましくはκ)に融合した抗体の軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAに関する。
【0092】
より好ましくは、本発明は、好ましくはCDR移植軽鎖および重鎖可変ドメインのみであるCDR色抗体を使用する。有利には、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、任意選択的に宿主細胞中の抗体のプロセシングを容易にするシグナル配列および/または抗体の精製を容易にするペプチドをコードするDNAおよび/または切断部位および/またはペプチドスペーサーおよび/または効果分子を含むスペーサー基によって連結している。このような抗体はscFvである。
【0093】
抗体を、抗体を抗体遺伝子の変異誘発によってさらに作製して、抗体の人工レパートリーを産生させることができる。下記にさらに考察されているように、この技術により抗体ライブラリーが調製される。抗体ライブラリーはまた、市販されている。したがって、本発明は、免疫グロブリン源として免疫グロブリンの人工レパートリー、好ましくは人工ScFvレパートリーを使用することが有利である。
【0094】
単離またはクローン化抗体を、他の分子(例えば、当該分野で公知のプロトコールを使用した化学的カップリングによる核酸またはタンパク質会合手段)に連結することができる(例えば、Harlow and Lane,「抗体:実験マニュアル」,1988,Cold Spring Harbor,and Maniatis,T.,Fritsch,E.F.and Sambrook,J.,1991,「分子クローニング:実験マニュアル」,Cold Spring Harbor,New York,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0095】
[ライブラリーおよび選択系]
本発明で使用する免疫グロブリンを、免疫グロブリンポリペプチドの人工レパートリーを含むライブラリーから単離することができる。有利には、免疫グロブリンを所望の標的に対するスクリーニングによって予め選択して、実質的に全てが意図する標的に特異的な免疫グロブリンを使用して本発明の方法を行う。
【0096】
任意のライブラリー選択系を、本発明と共に使用することができる。巨大ライブラリーの所望のメンバーの単離のための選択プロトコールは当該分野で公知であり、代表的にはファージディスプレイ技術である。種々のペプチド配列が糸状バクテリオファージ(Scott and Smith(前出)の表面上に表示されるこのような系は、標的抗原に結合する特異的抗体フラグメントのインビトロ選択および増幅用の抗体フラグメント(およびこれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーの作製に有用であると証明されている。VHおよびVL領域をコードするヌクレオチド配列を、大腸菌のペリプラズム領域に指向するリーダーシグナルをコードする遺伝子フラグメントに連結して、その結果得られた抗体フラグメントは、典型的にはバクテリオファージ被覆タンパク質(例えば、pIIIまたはpVIII)としてバクテリオファージの表面上に表示される。あるいは、抗体フラグメントは、λファージキャプシド(ファージボディ)上に外来的に表示される。ファージベースのディスプレイ系の利点は、これらは生物系であるので、選択したライブラリーメンバーを細菌細胞中の選択したライブラリーメンバーを含むファージの増殖によって簡単に増幅することができる点である。さらに、ポリペプチドライブラリーメンバーをコードするヌクレオチド配列をファージまたはファージミドベクターに含むので、配列決定、発現、およびその後の遺伝子操作が比較的単純である。
【0097】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリーおよびλファージ発現ライブラリーの構築法は、当該分野で周知である(McCaffertyら,1990、前出;Kangら,1991、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88,4363;Clacksonら,1991,Nature,352、624;Lowmanら,1991、Biochemistry,30,10832;Burtonら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,88、10134;Hoogenboomら,1991,Nucleic Acids Res.,19、4133;Changら,1991、J.Immunol.,147,3610;Breitlingら,1991,Gene,104,147,Marksら,1991,前出;Barbasら,1992,前出;Hawkins and Winter,1992,J.Immunol.,22、867;Marksら,1992,J.Biol.Chem.,267,16007;Lernerら,1992,Science,258:1313(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。
【0098】
1つの特に有利なアプローチは、scFvファージライブラリーの使用であった(Bird,R.E.ら,1988,Science 242:423〜6,Hustonら,1988、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,85:5879〜5883;Chaudharyら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,87:1066〜1070;McCaffertyら,1990、前出;Clacksonら,1991,前出;Marksら,1991,前出;Chiswellら,1992,Trends Biotech.,10:80;Marksら,1992,前出)。バクテリオファージ被覆タンパク質上に表示されるscFvライブラリーの種々の実施形態が記載されている。ファージディスプレイアプローチの精密化も公知であり、例えば、WO96/06213およびWO92/01047(Medical Research Councilら)ならびにWO97/08320(Morphosys、前出)(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。
【0099】
別のライブラリー選択技術には、バクテリオファージプラークとしてか溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングすることができるバクテリオファージλ発現系(共に、先に記載されている(Huseら,1989,Science,246:1275;Caton and Koprowski,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87;Mullinaxら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87:8095;Perssonら,1991、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:2432)が含まれ、本発明で使用されている。これらの発現系を使用して、約106またはそれ以上のオーダーでライブラリーの多数の異なるメンバーをスクリーニングすることができる。他のスクリーニング系は、例えば、ライブラリーメンバーの直接的な化学合成に依存する。1つの以前の方法は、WO84/03564などに記載の1組のピンまたはロッド上でのペプチドの合成を含む。各ビーズが各ライブラリーメンバーであるペプチドライブラリーを形成するビーズ上でのペプチド合成を含む類似の方法は、米国特許第4,631,211号に記載されており、関連する方法は、WO92/00091に記載されている。ビーズベースの方法の有意な改良は、各ライブラリーメンバーのアミノ酸配列の識別を容易にするための固有の識別タグ(オリゴヌクレオチドなど)を使用した各ビーズのタグ化を含む。これらの改良ビーズに基づく方法は、WO93/06121に記載されている。
【0100】
別の化学合成法は、アレイ上の異なる所定の位置でそれぞれ異なるライブラリーメンバー(例えば、固有のペプチド配列)を位置付ける様式での表面上でのペプチド(またはペプチド模倣物)のアレイ合成を含む。各ライブラリーメンバーの同一性をアレイ中のその空間的位置によって識別する。所定の分子(例えば、受容体)と反応ライブラリーメンバーとの間に結合相互作用が起こった場合アレイ中の位置を識別し、それにより、空間的位置を基本とした反応性ライブラリーメンバーの配列が識別される。これらの方法は、米国特許第5,143,854号;WO90/15070およびWO92/10092;Fodorら,1991、Science、251:767;Dower and Fodor、1991、Ann.Rep.Med.Chem.,26:271に記載されている。
【0101】
ポリペプチドまたはヌクレオチドライブラリーの他の作製系は、ライブラリーメンバーのインビトロ合成用の無細胞機構の使用を含む。1つの方法では、RNA分子を、標的リガンドに対する別の選択ラウンドおよびPCR増幅によって選択する(Tuerk and Gold,1990,Science,249:505;Ellington and Szostak、1990),Nature,346:818)。類似の技術を使用して、所定のヒト転写因子に結合するDNA配列を識別することができる(Thiesen and Bach、1990、Nucleic Acids Res.,18:3203;Beaudry and Joyce、1992、Science、257:635;WO92/05258およびWO92/14843)。巨大ライブラリーの作製方法と類似の方法で、インビトロ翻訳を使用して、ポリペプチドを合成することができる。一般に安定化ポリソームを含むこれらの方法は、WO88/08453、WO90/05785、WO90/07003、WO91/02076、WO91/05058、およびWO92/02536にさらに記載されている。ファージに基づくものではない別のディスプレイ系は、WO95/22625などに開示されているものであり、WO95/11922(Affymax)は、選択のためにポリペプチドを表示するためのポリソームを使用している。これらおよび全ての上記の文献もまた、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0102】
ファージまたは他のクローン化ライブラリーの使用の代わりは、選択標的で免疫化された動物の脾臓由来の核酸、好ましくはRNAの使用である。このようにして得られたRNAは、免疫グロブリンの天然のライブラリーを示す。本発明によれば、V領域およびC領域のmRNAの単離により、抗体フラグメント(FabまたはFvなど)を細胞内に発現させることができる。
【0103】
簡単に述べれば、RNAを免疫化動物の脾臓から単離し、RNAプール由来のVHおよびVLcDNAの選択的増幅のためにPCRプライマーを使用する。このようにして得られたVHおよびVL配列を連結してscFv抗体を作製する。PCRプライマー配列は、公開したVHおよびVL配列に基づき、これらはキットの形態で市販されている。
【0104】
本発明の好ましい態様は、細胞内免疫グロブリン(例えば、細胞内抗体)の使用である。細胞内抗体または内部物質(intrabody)は、高等生物の細胞中での抗原認識において機能することが示されている(Cattaneo,A.& Biocca,S.,1997、「細胞内抗体:開発および適用」,Landes and Springer−Verlagに概説されている)。この相互作用は、細胞質、核、または分泌経路で首尾よく阻害される細胞タンパク質機能に影響を与えることができる。この効果は、植物生物工学におけるウイルス耐性で証明されており(Tavladoraki、P.ら,1993)、Nature 366:469〜472)、HIVウイルスタンパク質(Mhashilkar,A.M.ら,1995)、EMBO J 14:1542〜51;Duan,L.& Pomerantz,R.J.,1994)、Nucleic Acids Res 22:5433〜8;Maciejewski,J.P.ら,1995,Nat Med 1:667〜73;Levy−Mintz,P.ら,1996,J.Virol.70:8821〜8832)および癌産物(Biocca,S.,Pierandrei−Amaldi,P.& Cattaneo,A.,1993,Biochem Biophys Res Commun 197:422〜7;Biocca,S.,Pierandrei−Amaldi,P.,Campioni,N.& Cattaneo,A.,1994,Biotechnology(N Y) 12:396〜9;Cochet,O.ら,1998,Cancer Res 58:1170〜6)への細胞内抗体結合のいくつかの適用が報告されている。
【0105】
scFvライブラリー由来の細胞内免疫グロブリンの選択方法が記載されている(国際特許出願WO0054057を参照のこと)。この選択方法(Visintin,M.,Tse,E.,Axelson,H.,Rabbitts,T.H.and Cattaneo,A.,1999も参照のこと)。2ハイブリッドインビボ系を使用した細胞内機能についての抗体の選択(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11723〜11728)は、酵素2ハイブリッド系などで認められる細胞環境内で検出されるべきタンパク質相互作用能力を利用している。これは、いくつかの抗体scFvフラグメントはインビボで有利に折りたたまれてVH−VL依存様式(すなわち、抗体結合部位を介する)で抗原に結合し、それにより、十分なscFvがスクリーニングされた場合に、種々の抗体特異性のライブラリーを使用してその識別が容易になるという事実に基づいている。スクリーニング系は、LexA DNA結合ドメインに融合した「バイト(bait)」抗原の酵母細胞発現およびVP16転写活性化ドメインに融合した「プレイ(prey)」scFvのライブラリーを含む。酵母細胞内環境中での抗原バイトと任意の特異的抗体scFvフラグメントとの相互作用により、DNA結合ドメインおよび活性化ドメインが隣接するタンパク質複合体が形成される。これにより、HIS3およびLacZなどの染色体レポーター遺伝子が活性化されて識別が容易になるので、scFvをコードするDNAベクターを含む酵母の単離される(すなわち、単離して抗原特異的scFvのDNA配列を得ることができる)。このアプローチの主な制限は、酵母抗体と抗原との相互作用系でスクリーニングすることができるscFv−VP16融合プレイの数(便利には、2〜5×106個)である。しかし、例えば1つまたは複数のインビトロファージscFvライブラリースクリーニング(パンニング)の使用によって有効なライブラリーサイズを増加させることができる。例えば、インビボ酵母抗体−抗原相互作用スクリーニング前の表面上に被覆された細菌産生抗原の使用。
【0106】
[レポーターの細胞への送達]
第1のレポーターおよび第2のレポーターを細胞内の構成要素に結合させるために、細胞の細胞内環境内にレポーターを得る必要がある。第1および/または第2のレポーターがポリペプチド(「ポリペプチドレポーター」)(例えば、抗体カスパーゼ3融合タンパク質)である場合、これを、第1および/または第2のレポーターをコードする適切な核酸での細胞のトランスフェクションによって行うことが好ましい。レポーターのいずれかまたは両方が核酸からなる場合(「核酸レポーター」)、核酸自体を細胞にトランスフェクトすることができる。
【0107】
ポリペプチドレポーターをコードする核酸を、発現用のベクターに組み込むことができる。本明細書中で使用される、「ベクター(またはプラスミド)」は、発現細胞への外来DNAの移入に使用される個別のエレメントをいう。このような伝達体の選択および使用は、十分に当業者の範囲内である。多数のベクターを利用可能であり、適切なベクターの選択は、意図するベクターの用途、ベクターに挿入される核酸のサイズ、およびベクターで形質転換される宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能に依存する種々の成分および適合する宿主細胞を含む。ベクター成分には、一般に、1つまたは複数の以下のものが含まれるが、これらに限定されない。複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、転写終止配列、およびシグナル配列。
【0108】
ベクターはまた、1つまたは複数の内部リボゾーム結合部位(IRES)、を含んでよく、これらの部位は、好ましくは、遺伝子を挿入することができる1つまたは複数のマルチクローニング部位(MCS)に隣接するベクター中に配置されている。したがって、このようなベクターの使用により、発現構築物にクローン化される1つを超えるインサートが得られ、この構築物の転写により内部リボゾーム結合部位を含む各リボゾーム結合部位から転写が起こり、二シストロンまたは多シストロンメッセンジャーRNAが得られる。これにより、1つの発現構築物から1つを超える発現ポリペプチドが得られる。
【0109】
さらに、ポリペプチドをコードする核酸または核酸レポーターまたはこれらの任意の成分を、一般的操作および核酸増幅目的でクローニングベクターに組み込むことができる。
【0110】
発現ベクターおよびクローニングベクターの両方は、1つまたは複数の宿主細胞中でベクターを複製することができる核酸配列を含む。典型的には、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAと独立して複製することができる配列であり、複製起点または自己複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスで周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適切であり、2ミクロンのプラスミド起点は酵母に適切であり、種々のウイルス起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス)は、哺乳動物細胞のクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、これらが高レベルDNA複製と競合する哺乳動物細胞(COS細胞など)で使用されない場合、哺乳動物発現ベクターに必要ではない。
【0111】
ほとんどの発現ベクターは、シャトルベクターである(すなわち、少なくとも1つの生物クラスで複製することができるが、発現用の別の生物クラスにトランスフェクトすることができる)。例えば、ベクターは、クローン化された大腸菌であり、宿主細胞の染色体で独立して複製することができないにもかかわらず、このベクターを酵母または哺乳動物細胞にトランスフェクトする。DNAを、宿主ゲノムへの挿入によって複製することもできる。しかし、核酸の切り出しに制限酵素消化が必要であるので、ゲノムDNAの回収は、外因的に複製したベクターの回収よりも複雑である。DNAをPCRによって増幅し、いかなる複製成分を使用することなく宿主細胞に直接トランスフェクトすることができる。
【0112】
有利には、発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーともいわれる選択遺伝子を含み得る。この遺伝子は、選択培養培地で成長する形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培養培地で生存しない。典型的な選択遺伝子は、抗生物質および他の毒素(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリン)への耐性を付与するか、栄養要求性欠損症を補足するか、天然培地から利用不可能な必須の栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0113】
酵母に適切な選択遺伝子マーカーに関して、マーカー遺伝子の表現型発現のための転写についての選択を容易にする任意のマーカー遺伝子を使用することができる。酵母の適切なマーカーは、例えば、抗生物質G418、ハイグロマイシン、またはブレオマイシンへの耐性を付与し、栄養要求性酵母変異体の表現型を提供する(URA3、LEU2、LYS2、TRP1、またはHIS3遺伝子)マーカーである。
【0114】
ベクターの複製が大腸菌で都合よく行われるので、大腸菌遺伝子マーカーおよび大腸菌の複製起点を有利に含む。これらは、大腸菌複製起点およびアンピシリンなどの抗生物質への耐性を付与する大腸菌遺伝子マーカーの両方を含む大腸菌プラスミド(pBR322)、Bluescript(登録商標)、またはpUCプラスミド(例えばpUC18またはpUC19)から得ることができる。
【0115】
哺乳動物用の適切な選択マーカーは、所望の核酸を発現する細胞の識別が可能なマーカーである(ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR、メトトレキセート耐性)、チミジンキナーゼ、またはG418もしくはハイグロマイシンへの耐性を付与する遺伝子など)。取り込まれてマーカーを発現する形質転換体のみが固有に生存に適応する選択下に哺乳動物細胞形質転換体を置く。DHFRまたはグルタミンシンターゼ(GS)マーカーの場合、選択圧が段階的に増加して、両選択遺伝子および連結した核酸が(その染色体組み込み部位で)増幅する条件下での形質転換体の培養によって選択圧に課すことができる。増幅は、所望のタンパク質をコードすることができる密接に関連する遺伝子と共に、増殖に重要なタンパク質の産生が要求される遺伝子を組換え細胞の染色体内にタンデムに反復しているプロセスである。所望のタンパク質の増加は、通常、増幅されたDNAから合成される。
【0116】
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主細胞によって認識され、所望の核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。このようなプロモーターは、誘導性または構成性であり得る。プロモーターは、元のDNAからのプロモーターの除去およびベクターへの単離されたプロモーター配列の挿入によって作動可能に連結されている。天然のプロモーター配列および多数の異種プロモーターの両方を使用して、任意選択的に適切な会合手段と共に免疫グロブリンをコードする核酸の増幅および/または発現を指示することができる。用語「作動可能に連結した」は、記載の成分がその意図する様式で機能する関係である並列をいう。コード配列に「作動可能に連結した」調節配列は、コード配列の発現が調節配列と適合する条件下で行われるような方法でライゲートする。
【0117】
原核宿主での使用に適切なプロモーターには、例えば、βラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。これらのヌクレオチド配列は公表されているので、当業者は、リンカーまたはアダプターを使用して所望の核酸にこれらをライゲートして、任意の必要な制限部位を得ることができる。細菌系用のプロモーターもまた、一般に、核酸に作動可能に連結したシャイン・ダルカルノ配列を含む。
【0118】
好ましい発現ベクターは、細菌中で機能することができるλファージまたはT7などのバクテリオファージのプロモーターを含む細菌発現ベクターである。最も広く使用されている発現形のうちの1つでは、融合タンパク質をコードする核酸を、T7 RNAポリメラーゼによってベクターから転写することができる(Studierら,Methods in Enzymol.185;60〜89,1990)。pETベクターでの結合で使用される大腸菌 BL21(DE3)宿主株では、T7 RNAポリメラーゼを、宿主細菌中でλ溶原菌DE3から産生され、IPTG誘導lacUV5プロモーターの調節下で発現する。この系は、多数のタンパク質の過剰産生に首尾よく使用されている。あるいは、ポリメラーゼ遺伝子を、市販のCE6ファージ(Novagen,Madison,USA)などのintファージでの感染によってλファージに移入することができる。他のベクターには、PLEX(Invitrogen,NL)などのλPLプロモーターを含むベクター、pTrcHisXpressTm(Invitrogen)またはpTrc99(Pharmacia Biotech,SE)などのtrcプロモーターを含むベクター、またはpKK223−3(Pharmacia Biotech) またはPMAL(New England Biolabs,MA,USA)などのtacプロモーターを含むベクターが含まれる。
【0119】
酵母宿主に使用する適切なプロモーターを調節することができるか構成性であり、好ましくは、高度に発現された酵母遺伝子、特にサッカロマイセス・セレヴィシエ遺伝子由来である。したがって、TRP1遺伝子、ADHIまたはADHII遺伝子、酸ホスファターゼ(PH05)遺伝子のプロモーター、aまたはα因子をコードする酵母交配表現型遺伝子のプロモーターまたは解糖酵素をコードする遺伝子由来のプロモーター(エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒトロゲナーゼ(GAP)、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、またはグルコキナーゼ遺伝子、サッカロマイセス・セレヴィシエGAL4遺伝子、S.pombe nmt1遺伝子など)またはTATA結合タンパク質(TBP)由来のプロモーターを使用することができる。さらに、ある酵母の上流活性化配列(UAS)および別の酵母遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーターエレメントを含むハイブリッドプロモーター(例えば、酵母PH05遺伝子のUASおよび酵母GAP遺伝子の機能的TATAボックスを含む下流プロモーターエレメントを含むハイブリッドプロモーター)を使用することが可能である。適切な構成性PH05プロモーターは、例えば、PH05遺伝子のヌクレオチド−173から始まってヌクレオチド−9で終わるPH05(−173)プロモーターエレメントなどの上流調節エレメント(UAS)を欠く短縮酸ホスファターゼPH05プロモーターである。
【0120】
哺乳動物宿主中のベクター由来の遺伝子転写を、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、およびサルウイルス40(SV40)などのウイルスゲノム由来のプロモーター、アクチンプロモーターまたは強力プロモーター(例えば、リボゾームタンパク質プロモーター)などの異種哺乳動物プロモーターおよび免疫グロブリン配列と正常に関連するプロモーターによって調節することができる。
【0121】
高等真核生物由来の核酸の転写を、ベクターへのエンハンサー配列の挿入によって増加することができる。例えば、pEF−BOSベクター(Mizushimaら,1990,Nucl.Acids Res.18,5322)は、クローン化遺伝子の発現レベルを上昇させる伸長因子1α(EF−1α)プロモーターおよびエンハンサーを含む。エンハンサーは比較的配向および位置依存性である。哺乳動物遺伝子由来の多数のエンハンサー配列(エラスターゼおよびグロビン)が公知である。しかし、典型的には、真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。例には、複製起点の後期側(bp100〜270)のSV40エンハンサーおよびCMV初期プロモーターエンハンサーが含まれる。エンハンサーを、所望の核酸の5’または3’の位置で(好ましくは、プロモーターから5’部位に存在する)ベクターにスプライシングすることができる。
【0122】
有利には、真核生物発現ベクターは、遺伝子座調節領域(LCR)を含み得る。LCRは、ベクターの染色体取り込みが起こる恒久的にトランスフェクトされた真核細胞の状況で遺伝子が発現された場合に特に重要である、宿主細胞クロマチンに取り込まれた導入遺伝子の高レベル取り込み部位依存性発現を指示することができる。
【0123】
真核生物発現ベクターはまた、転写の終結またはmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、一般に、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および3’非翻訳領域から利用可能である。これらの領域は、免疫グロブリンをコードするmRNAの非翻訳部分のポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
【0124】
哺乳動物細胞中で核酸を一過性に発現する発現ベクターが本発明の実施で特に有用である。一過性発現は、通常、宿主細胞が多数の発現ベクターのコピーを蓄積する(つまり、高レベルで所望の遺伝子産物を合成する)ように、宿主細胞で有効に複製することができる発現ベクターの使用を含む。
【0125】
本発明のベクターの構築には、従来のライゲーション技術を使用することができる。単離したプラスミドまたはDNAフラグメントを、切断し、構成変更し、所望の形態にライゲートし必要なプラスミドを作製する。所望ならば、公知の様式で構築したプラスミドの正確な配列を確認する分析を行う。適切な発現ベクターの構築法、インビトロ転写物の調製法、宿主へのDNAの移入法、および遺伝子産物発現および機能を評価するための分析法は、当業者に公知である。遺伝子の存在、増幅、および/または発現を、例えば、本明細書中に記載の配列に基づき得る適切な標識プローブを使用して、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはin situハイブリッド形成サンプルを直接測定することができる。当業者は、所望ならばどのようにしてこれらの方法を改変することができるのかを予見することができる。
【0126】
第1および/または第2のレポーター、免疫グロブリン、ペプチドフラグメントなどを、微量注入法または細胞膜と融合することができるリポソームなどの小胞を使用した送達によって直接移入することができる。ウイルスおよび他の融合誘導ペプチドを使用して、膜融合を促進し、細胞の原形質に送達させることができる。
【0127】
他で好ましくは、レポーターなどを、原形質膜および/または核膜を通過することができるタンパク質とのタンパク質融合体または接合体として細胞に送達させることができる。好ましくは、レポーターを、転座活性を担うこのようなタンパク質由来のドメインまたは配列に融合するか結合する。好ましい転座ドメインおよび配列には、HIV−1トランス活性化タンパク質(Tat)、ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質および単純ヘルペス1型ウイルスVP22タンパク質が含まれる。
【0128】
外来的に付加されたHIV−1トランス活性化タンパク質(Tat)は、原形質膜を介して転座して、核に到達してウイルスゲノムをトランス活性化することができる。転座活性は、アミノ酸37〜72(Fawellら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,664〜668)、37〜62(Andersonら,1993,Biochem.Biophys.Res.Commun.194,876〜884)、および49〜58(HIV−Tatの塩基配列RKKRRQRRRを有する)で識別されている。Vivesら,1997,J Biol Chem 272,16010〜7は、細胞遺伝子の転座、核局在化、およびトランス活性化に重要であると考えられるアミノ酸48〜60(CGRKKRRQRRRPPQC)からなる配列を同定した。βガラクトシダーゼおよびHIV−TATタンパク質形質導入ドメインからなる融合タンパク質の腹腔内注射により、マウスの全ての組織に生物活性融合タンパク質が送達される(Schwarzeら,1999,Science 285,1569〜72)。
【0129】
ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインタンパク質の第3のヘリックスはまた、類似の性質を有することが示されている(Prochiantz,A.,1999,Ann N Y Acad Sci,886,172〜9に概説)。アンテナペディアの転座を担うドメインは、配列RQIKIWFQNRRMKWKKを有する塩基性アミノ酸に豊富な16個のアミノ酸長ペプチド(long peptide)に局在している(Derossiら,1994,J Biol Chem,269,10444〜50)。このペプチドを使用して、生物活性物質を細胞内の細胞の原形質および核に向けている(Theodoreら,1995,J.Neurosci 15,7158〜7167)。ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインの第3のヘリックスの細胞内面化は、レセプター独立性であるようであり、転座プロセスは膜リン脂質との直接的相互作用を含むと示唆されている(Derossiら,1996,J Biol Chem,271,18188〜93)。単純ヘルペスウイルスのVP22外被タンパク質は細胞内輸送が可能であり、細胞の下位集団で発現するVP22タンパク質が集団中の他の細胞に広がる(Elliot and O’Hare,1997,Cell 88,223〜33)。融合タンパク質は、GFP(Elliott and O’Hare,1999,Gene Ther 6,149〜51)、チミジンキナーゼタンパク質(Dilberら,1999,Gene Ther 6,12〜21)、またはp53(Phelanら,1998,Nat Biotechnol 16,440〜3)からなり、VP22は、この様式で細胞に標的化されている。
【0130】
核および/または原形質膜を介して転座することができるタンパク質由来の特定のドメインまたは配列を、変異誘発または欠失を研究することによって識別することができる。あるいは、候補配列を有する合成または発現ペプチドを、レポーターに連結し、転座アッセイを行うことができる。例えば、合成ペプチドを、Vivesら,1997,J Biol Chem 272,16010〜7に記載の方法によって蛍光に結合させ、転座を蛍光顕微鏡によって監視することができる。あるいは、レポーターとして緑色蛍光タンパク質を使用することができる(Phelanら,1998,Nat Biotechnol 16,440〜3)。
【0131】
任意のドメインまたは配列または上記または転座活性を有すると同定されているものを使用して、第1および/または第2のレポーターを細胞の細胞質または核に方向付けることができる。
【0132】
[シグナルの発生]
本発明の方法では、シグナルを、構成要素へのレポーターの結合と共に2つのレポーターの相互作用によって発生させることが有利である。したがって、発生したシグナルは、本発明の方法で使用した分子の性質に依存する。
【0133】
第1の実施形態では、シグナルは、細胞内のアポトーシスまたはプログラム細胞死の活性化である。第1および第2のレポーター上にそれぞれ配列した2つのカスパーゼ3部分の安定な相互作用は、カスパーゼ活性を自己活性化し、細胞内のアポトーシスが開始される。アポトーシス細胞死は、細胞の収縮、クロマチン濃縮、細胞質の気泡、膜浸透性の増加、および染色体内DNAの切断によって特徴付けられ(Kerrら,1992,FASEB J.6:2450;and Cohen and Duke,1992,Ann.Rev.Immunol.10:267)、シグナルを検出する必要がある場合、これらの任意の特徴を使用することができる。
【0134】
上記の実施形態では、細胞内のカスパーゼ活性のアッセイによってシグナルを検出することもできることが認識される。
【0135】
別の実施形態では、シグナルは、細部内のプロテアーゼ活性の発生であり得る。カスパーゼ活性は、上述のように、この方法で検出される。さらに、プロテアーゼ活性は、ユビキチン媒介タンパク質分解に関連する活性、好ましくはプロテアソーム活性、最も好ましくは26Sプロテアソーム活性であり得る。
【0136】
ユビキチン媒介タンパク質分解は、「細胞のユビキチン化および生物学」に概説されている(Jan−Michael Peters,J.Robin Harris and Dan Finley編,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,the Netherlands)。ユビキチン媒介タンパク質分解では、ユビキチンとの共有結合の改変によってタンパク質を標的化する。ユビキチン活性化(E1)酵素、ユビキチン結合(E2)酵素、およびユビキチンライゲーション(E3)酵素を含む3つの型の酵素がこの作業に関連する。ユビキチンは、標的タンパク質上でリジン残基と共有結合している(標識するため)小型で高度に保存されたタンパク質である。ユビキチン関連酵素は、タンパク質構造およびアミノ酸配列の変化によって損傷またはミスフォールディングタンパク質を認識することができる。次いで、ユビキチン結合酵素が元の酵素にさらなるユビキチン分子を付加するように、標的タンパク質の結合部位でユビキチン分子の鎖が形成される。得られたポリユビキチン鎖を、プロテアソーム(プロテアソームのいずれかの末端でのタンパク質複合体は、認識プロセスに関連する)によって認識し、次いで、標識タンパク質を分解する。
【0137】
したがって、この実施形態を、ユビキチン媒介タンパク質分解経路の成分のドメインを含む第1のレポーターおよび第2のレポーターによって実現することができ、安定な相互作用の際にその成分に関連する活性を発生してタンパク質分解を誘導する。成分は、ユビキチン活性化酵素、ユビキチン結合酵素、またはユビキチンリガーゼ(SCFなど)を含み得る。本発明の特に好ましい実施形態では、第1および第2のレポーターは、F−boxタンパク質またはモチーフのドメインを含む。
【0138】
F−boxモチーフは、タンパク質−タンパク質相互作用を媒介するように機能する。F−boxタンパク質は、SCFユビキチン−リガーゼ(E3)複合体として最初に説明されていた(Skowyraら,Cell 1997,91:209〜219;Feldmanら,Cell 1997,91:221〜230)。SCF複合体は、以下の4つの成分を含む。Skp1、クリン、Rbx1/Roc/Hrt1、およびF−boxタンパク質(Tyers and Jorgensen,Curr Opin Genet Dev 2000,10:54〜64;Deshaies,Annu Rev Cell Dev Biol 1999,15:435〜467;Craig and Tyers,Prog Biophys Mol Biol 1999,72:299〜328)。SCF複合体は、基質とユビキチン結合酵素との間の相互作用を容易にし、基質にユビキチンを共有結合によって導入する。その後、ポリユビキチン化基質は26Sプロテアソームによって分解される(Hershko and Ciechanover,Annu Rev Biochem 1998,67:425〜479)。F−boxタンパク質は、特異的基質に結合するSCF複合体のサブユニットであり、これは、F−box自体によるSkp1の結合によって複合体に連結する。F−boxの詳細な概説およびユビキチン媒介タンパク質分解におけるその役割は、Kipreos and Pagano、2000、Genome Biology、1(5)、reviews 3002、1−3002.7に記載されている。したがって、F−boxは、タンパク質分解のためのプロテアソームの利用に重要な役割を果たしている。
【0139】
第1および/または第2のレポーターは、F−boxモチーフを含み得る。しかし、F−boxモチーフが3つのヘリックスを含むので、第1のレポーターは1つまたは複数のヘリックスを含み、第2のレポーターは、残りのヘリックスを含むことが好ましい。好ましくは、第1のレポーターは第1のヘリックスを含み、第2のレポーターは第2および第3のヘリックスを含む。あるいは、第1のレポーターは第1および第2のヘリックスを含み、第2のレポーターは第3のヘリックスを含む。さらに、F−boxの他の部分は分裂していてよく、完全なヘリックスを作製する必要はない。F−box部分のヘリックスドメインを含むこのようなレポーターの構築に、当該分野で公知の標準的な技術を使用することができる。
【0140】
構成要素への結合を介した第1のレポーターと第2のレポーターとの間の安定な相互作用により、種々のヘリックスドメインとF−boxモチーフ活性の再構築物との間で会合が可能である。これにより、構成要素または構成要素を含むポリペプチドがユビキチン標識され、構成要素/ポリペプチドのタンパク質分解を介して分解される。上記のように、このようなタンパク質分解を、当該分野で公知の手段によって容易に検出することができる。
【0141】
例えば、TRCPなどのF−boxタンパク質を、哺乳動物および/または単細胞もしくは組織からクローン化し、直接またはProリンカー(Pro10)またはGly−Serリンカー((Gly4−Ser)3)などのリンカーを介してscFvに融合することができる。scFvは、有利には、構築物のN末端に存在する。F−boxおよびWDドメインを共に含む構築物もまた使用することができる。F−boxの各ヘリックスを使用する場合、第1のレポーターは、有利には、H1またはH1およびH2を含み、第2のレポーターは、有利にはH2およびH3またはH3をそれぞれ含む。F−boxの構造についての詳細は、Schulmanら,2000,Nature 408:381に記載されている。
【0142】
任意の公知のF−boxモチーフを、本発明の態様の基本として使用することができる。さらに、F−boxコンセンサス配列、
KPFPLLRLPEEILRKILEKLDPIDLLRLRKVSKKWRSLVDSLNIWFKFIE
を使用することもできる。F−boxタンパク質のリストを、その配列のアクセッション番号とともに、以下の表に示す。
【0143】
【表1】
【表1(つづき)】
【0144】
好ましくは、F−boxドメインはレポーターのC末端に存在するので、本発明の特に好ましい実施形態では、レポーターは、F−boxドメインへのscFv融合されたN−Cを含む。
【0145】
第2の実施形態では、シグナルは、電磁放射の放出または吸収であり、シグナル発生分子は蛍光発色団であり得る。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与する蛍光分子が特に好ましい。
【0146】
FRETは、異なる周波数で蛍光を発する2つの蛍光が一方の標識から他方へエネルギーを移動することができるのに十分に互いに隣接している場合に検出可能である。FRETは、当該分野で広く知られている(概説については、Matyus,1992,J.Photochem.Photobiol.B:Biol.,12:323〜337(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照のこと)。FRETは、エネルギーが励起したドナー分子から受容体分子への移動である無放射プロセスである;この移動の効率は、下記のようにドナーと受容体分子との間の距離に依存する。エネルギー移動速度は、ドナーと受容体との間の距離の第6の力に反比例し、エネルギー移動効率は、距離の変化に非常に感度が高い。エネルギー移動は、1〜10nmの距離範囲で検出可能な効率が得られるといわれているが、典型的には、ドナーと受容体との好ましい対には4〜6nmである。
【0147】
したがって、第1および第2のレポーターの一方がドナー分子を含み、第1および第2のレポーターの他方が受容体分子を含むように、ドナーと受容体分子との適切な対の選択によって本発明を実施することができる。レポーターが構成要素に結合する場合、ドナー分子および受容体分子がエネルギー移動が起こるように合わせる。
【0148】
無放射エネルギー移動は、蛍光発色団の生物物理学的性質に基づく。これらの原理は、他で概説されている(Lakowicz,1983,「蛍光スペクトルの原理」、Plenum Press,New York;Jovin and Jovin,1989,「顕微分光蛍光分析による細胞構造および機能」、E.Kohen and J.G.Hirschberg編,Academic Press(その両方を引用することにより本明細書の一部をなすものとする))。簡単に述べれば、蛍光発色団は特徴的な波長で光エネルギーを吸収する。この波長は、励起波長としても公知である。次いで、蛍光色素によって吸収されたエネルギーは、種々の経路によって放出され、そのうちの1つは蛍光を発生する光量子の放射である。放出した光の波長は、放射波長として公知であり、得意低の蛍光発色団の固有の特徴である。放射エネルギー移動は、1つの蛍光発色団の励起状態のエネルギーが実際に光量子を放射せずに第2の蛍光発色団に移動する。次いで、このエネルギーは、第2の蛍光発色団の放射波長で放出することができる。第1の蛍光発色団を、一般に、ドナー(D)とよび、第2の蛍光発色団(アクセプター(A)と呼ぶ)よりも高いエネルギーの励起状態を有する。このプロセスの不可欠の特徴は、ドナーの発光スペクトルが受容体の励起スペクトルと重複し、ドナーおよび受容体が十分に近接していることである。無放射エネルギー移動が有効な距離は、ドナーの蛍光量子効率、受容体の減衰係数、これらの各スペクトルの重複度、培地の屈折率、および2つの蛍光発色団の遷移モーメントの相対的配向(orientation)を含む多数の因子に依存する。他の蛍光発色団の励起波長に重複する至適放射範囲を有することに加えて、DとAとの間の距離は、蛍光発色団間のエネルギーの無放射移動が可能なように十分に短くなければならない。
【0149】
FRETアッセイでは、分子の1つ(受容体分子)の励起スペクトルが励起蛍光分子(ドナー分子)の発光スペクトルと重複するように蛍光分子を選択する。ドナー分子を、ドナーの励起スペクトルの範囲内での適切な強度の光によって励起させる。次いで、ドナーは、吸収したエネルギーのいくつかを蛍光として放射し、受容体蛍光分子に対するFRETによっていくらかのエネルギーを分散する。得られた蛍光エネルギーを、受容体蛍光分子によって消光する。FRETを、ドナー由来の蛍光シグナル強度の減少、その励起状態の寿命の短縮、および受容体の特徴的な長波長(低エネルギー)での蛍光の再放出として明らかにすることができる。ドナーおよび受容体分子が空間的に分離されると、FRETは減少、または除去される。
【0150】
適切な蛍光発色団は当該分野で公知であり、異なる波長または強度の蛍光を発する化学蛍光発色団および蛍光ポリペプチド(GFPなど)およびその変異体が含まれる(WO97/28261を参照のこと)。化学蛍光発色団を、合成中の免疫グロブリンへの結合部位の組み込みによって免疫グロブリンに結合させることができる。
【0151】
しかし、好ましくは、蛍光発色団は、有利にはGFPまたはその変異体である蛍光タンパク質である。GFPおよびその変異体を、当該分野で周知の方法によって融合ポリペプチドとしての発現により結合手段(これが免疫グロブリンなどのポリペプチドである場合)とともに合成することができる。例えば、転写単位を、所望のGFPと免疫グロブリンとのインフレームでの融合体として構築し、上記のように従来のPCRクローニングおよびライゲーション技術を使用してベクターに挿入することができる。
【0152】
第3の実施形態では、結合ドメインを、生物学的シグナルを発生することができる会合ドメインに連結する。好ましい会合ドメインは、有利に相互作用して転写因子または細胞内での遺伝子発現を調整する別の調節分子を形成するポリペプチド分子である。
【0153】
転写因子分子の例は、文献(例えば、Fields & Song,1989,Nature 340:245〜246(引用することにより本明細書の一部をなすものとする))に記載されている。好ましい実施形態では、免疫グロブリン分子は、HSV1 VP16分子の活性化ドメイン内の融合タンパク質として発現する。この転写因子ドメインは、DNA結合活性を介して結合したプロモーター由来の遺伝子の転写をアップレギュレーションすることができる。後者は、免疫グロブリンポリペプチド内で融合タンパク質として発現するE.coli LexAポリペプチドのDNA結合ドメインによって得られる。
【0154】
生物学的シグナルは、検出可能な遺伝子産物発現の誘導などの任意の検出可能なシグナルであり得る。検出可能な遺伝子産物の例には、ルシフェラーゼなどの生物発光ポリペプチド、GFPなどの蛍光ポリペプチド、βガラクトシダーゼおよびCATなどの特定のアッセイによって検出されるポリペプチド、およびHIS3などの代謝に必要な酵素などの宿主細胞の特徴的な増殖を調整するポリペプチド、G418などの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。本発明の好ましい態様では、シグナルは、細胞表面で検出可能である。例えば、シグナルは、細胞外から検出可能であり、FACSまたは他の光学分取技術によって分取可能な発光または蛍光シグナルであり得る。あるいは、シグナルは、例えば蛍光基で自己標識できるか、標識抗体を使用して検出可能なCD分子(例えば、CD4またはCD8)などの細胞表面マーカーの発現を含み得る。FACSなどの光学分取を使用して、パンされる(panned)細胞を回収し、構成要素を含む細胞を選択することができる。
【0155】
以下の実施例は例示のみを目的とし、これらの実施例において本発明をさらに記載する。
【0156】
[実施例]
<実施例1:発現プラスミドの構築>
pM−βgal、pNL−scFvR4−VP16、pNL−scFvF8−VP16、およびpNL−scFv−IN33−VP16は以前に記載されている(Visintinら,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11723〜11728)。pRSV−Luc(ホタルルシフェラーゼ発現ベクター)もまた以前に記載されており(de Wet,J.R.,1987,Mol Cell Biol 7,725〜37)、pEGFP−N1(増強緑色蛍光タンパク質、GFP発現ベクター)は、CLONTECH Laboratories、Inc.(Palo Alto,California,USA)から市販されている。
【0157】
pEF−βgal(βガラクトシダーゼ発現ベクター)を、pEF−BOS哺乳動物発現ベクター(Mizushimaら,1990,Nucl.Acids Res.18,5322)へのβガラクトシダーゼおよびpBSpt−βgal由来のβガラクトシダーゼおよびSV40ポリA(Greenbergら,1990,Nature 344,158〜160)のコード配列のサブクローニングによって作製する。
【0158】
シャトルベクターpBS−R4を、pBSptへのpNL−scFvR4−VP16およびpNL−scFvF8−VP16のClaI−EcoRIフラグメントのクローニングによって作製する。
【0159】
pEF−R4−DBD(scFvR4−GAL4DBD融合発現ベクター)を、以下のように構築する。Gal4 DNA結合ドメイン配列(pGALOから増幅したPCR,Dangら,1991,Mol.Cell.Biol.11,954〜962)を、pBS−R4のEcoRI部位中でscFvR4を用いてインフレームへクローン化する。pEF−R4−DBDを、pEF−BOSへのR4−Gal4 DNA結合ドメイン融合体のCla−SpeIフラグメントのクローニングによって作製する。
【0160】
pEF−R4−CP3および pEF−F8−CP3(scFvR4およびscFvF8−カスパーゼ3融合発現ベクター):ヒトカスパーゼ3配列を、GENBANKアクセッション番号U26943およびU13737として寄託されている。ヒトカスパーゼ3配列を、cDNAクローン(Marion MacFarlaneから譲渡)からPCR増幅し、pBS−R4およびpBS−F8のscFv配列の3’末端でEcoRI−Spe1フラグメントとしてインフレームでサブクローン化する。scFv−カスパーゼ3融合体のClaI−SpeIフラグメントを、pEF−BOSでクローン化して、それぞれpEF−R4−CP3およびpEF−F8−CP3を得る。
【0161】
pEF−R4−CP3(C163S)(scFvR4−カスパーゼ3変異融合発現ベクター)を、製造者の指示にしたがってQuickChange(商標)部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を使用した部位特異的変異誘発によるセリン(TCC)への野生型カスパーゼ3の163番目でのシステイン(TGC)の変異によって作製する。
【0162】
pEF−IN33−CP3およびpEF−IN33−CP3(C163S)(scFvIN33−カスパーゼ3および変異発現ベクター):pNL−scFvIN33−VP16のXhoI−EcoRIフラグメントを、XhoIおよびEcoRIで消化したpBS−R4−CP3およびpBS−R4−CP3(C163S)のベクター骨格にクローン化して、それぞれpBS−IN33−CP3およびpBS−IN33−CP3(C163S)を作製する。pEF−IN33−CP3およびpEF−IN33−CP3(C163S)を、pEFBOSへのpBS−IN33−CP3およびpBS−IN33−CP3(C163S)のXhoI−SpIフラグメントのクローニングによって構築する。
【0163】
pEF−HIVIN−βgal(HIVインテグラーゼ(アミノ酸259〜288)−βガラクトシダーゼ融合発現ベクター):pBlueScript−βgalのNcoI−SalIフラグメントを、pEF/myc/cyto(Invitorogen)にサブクローン化し、PCR増幅HIV−1インテグラーゼエピトープ(アミノ酸番号259〜288)を、β−gal配列の5’末端でのNcoIフラグメントとしてのインフレームでのクローン化によりpEF−HIVIN−βgalが得られる。
【0164】
<実施例2:哺乳動物細胞培養およびトランスフェクション>
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、10%のウシ胎児血清、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含むα最少必須培地(GIBCO BRL)で増殖させる。トランスフェクションの16〜24時間前に、35mmのぺトリ皿に2×105個のCHO細胞を播種する。50ngのpEF−IN33−CP3/CP3(C163S)を使用する以外は製造者の指示に従って500ngの pEF−βgal、pEF−HIVIN−βgalおよびpRSV−Luc、50ngのpEGFP−N1および250ngのpEF−scFv−CP3/CP3(C163S)を使用するLipofectamine(登録商標)(GIBCO BRL)を使用してトランスフェクションを行う。トランスフェクションから60時間後またはさらなる分析のために経時変化実験の間(12、24、36、48、および60時間後)に細胞を回収する。
【0165】
CHO−CD4株は、C.V.Dang博士から譲渡され、これは以前に記載されている(Fearonら,1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,7958〜7962)。これを、α最少必須培地、10%のウシ胎児血清、および1mg/mlのG418(GIBCOBRL)と共に維持する。100mm皿に50〜60%の密集度に増殖させたCHO/CD4細胞のLipfectamine(商品名)トランスフェクションを、特記しない限り5μgの各プラスミドを使用して行う。
【0166】
<実施例3:CD4発現のFACS分析>
トランスフェクションから48時間後、CHO−CD4細胞を、細胞分離溶液(Sigma)で分離して、1つの細胞のPBS懸濁液を作製する。CD4発現を、1:50倍希釈のマウス抗ヒトCD4抗体(Pharmingen)とフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Pharmingen)の1:100希釈物で標識した二次抗血清ヤギ抗マウスポリクローナル抗体との結合によって分析する。細胞の相対蛍光を、FACSCalibur(Becton Dickinson)を使用して測定し、データをソフトウェアCELLQuest(Becton Dickinson)によってさらに分析する。
【0167】
<実施例4:ウェスタンブロッティング>
CHO細胞を、scFvR4カスパーゼ3、scFvR40カスパーゼ(C163S)、およびscFvF8カスパーゼ3発現ベクターでトランスフェクトする。トランスフェクトから48時間後、細胞を、10mMのHepes(pH7.6)、250mMのNaCl、5mMのEDTA、および0.5%のNoniet P40を含む緩衝液で溶解する。溶解物を、12%のSDS−PAGEで分画し、ニトロセルロース膜に移す。膜を、抗ヒトカスパーゼ3抗体(Santa Cruz Biotechnology)および二次HRP結合抗ヤギ抗体(Santa Cruz Biotechnology)とインキュベートする。ECLウェスタンブロッティング検出試薬(Amersham)を用いて検出を行う。
【0168】
<実施例5:βガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼ活性アッセイ>
トランスフェクトCHO細胞を、トランスフェクションから特定の測定点で、35mmのぺトリ皿あたり300μlのレポーター溶解緩衝液(Promega)を使用して溶解する。βガラクトシダーゼ活性を、製造者の指示に従ってβガラクトシダーゼ酵素アッセイ系(Promega)を使用して測定する。ルシフェラーゼアッセイ系(Promega)および照度計を使用してルシフェラーゼ活性の測定を行う。2つの異なる独立したトランスフェクションを行い、平均値を示す。
【0169】
<実施例6:アポトーシスアッセイ>
CHO細胞を、pEF−βgalの存在下または非存在下で、緑色蛍光タンパク質発現ベクターpEGFP−N1および種々のscFv融合発現ベクターと同時トランスフェクトする。トランスフェクションから36時間後、GFP陽性CHO細胞を、フローサイトメーターで分取する。約5000個の細胞からゲノムDNAを抽出する。ApoAlert LM−PCRラダーアッセイキット(Clontech)を使用して、核DNA産物の有無を検出する。アポトーシスに起因するクロマチンビーズから得られるDNAを増幅するApoAlertプライマーを使用して、ゲノムDNAを増幅する。1.5%のアガロースゲルでの分画後、PCR産物を、臭化エチジウム染色によって視覚化する。FACS分取細胞の各組で得られたDNAのコントロールとして、チャイニーズハムスターアクチンに特異的なプライマー(5’GGCGTGATGGTGGGCATGGGCCAG3’および5’CTGGTCATCTTTTCACGGTTGGC3’)をPCRで使用する。PCR反応は、94℃で1分間の変性、65℃で1分間のアニーリング、よび72℃で1分間の伸長の35サイクルからなる。産物を、1.5%のアガロースゲルで視覚化する。
【0170】
<実施例7:抗原に結合した抗βガラクトシダーゼScFv−VP16の近さによる転写の活性化>
βガラクトシダーゼの結晶構造は公知であり、四量体には酵素活性が必要であることが示されている(Jacobsonら,1994,Nature 369,761〜766)。したがって、βガラクトシダーゼに結合する抗体は、活性酵素あたり4つの異なる抗原部位で結合することができる。抗βガラクトシダーゼscFvは、細菌(Martineauら,1998,J Mol Biol 280,117〜127)および哺乳動物(Visintinら,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11723〜11728)の両方においてβガラクトシダーゼに結合するが、βガラクトシダーゼ機能に影響を与えないscFv−R4が記載されている。このモデル細胞内抗体系を使用して、インビボでのscFv抗体フラグメントの近さによって測定可能な生化学的効果が得られるかどうかを識別する。この評価のために、転写トランス活性化が抗原へのscFv−R4結合によって媒介することができるかどうかを最初に識別する。本発明者らのアッセイは、Gal4DNA結合ドメイン(DBD)と融合したscFv−R4およびVP16転写トランス活性化ドメインと融合したscFv−R4を有するβガラクトシダーゼのGAL4プロモーターによって調節されるCD4レポーター遺伝子を含むCHO細胞株での同時発現からなる(Fearonら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,7958〜7962)。レポーター遺伝子が活性化されている場合、CHO−CD4細胞は、その細胞表面上にCD4を発現する。したがって、細胞内抗体scFv−R4−DBDおよびscFv−R4−VP16は、CHO−CD4細胞中でβガラクトシダーゼと結合し、CD4遺伝子を活性化させる転写複合体を産生するはずである(図1Aを参照のこと)。
【0171】
種々のプラスミドの組み合わせを、CHO−CD4細胞中でトランスフェクトし、トランスフェクションから60時間後に、細胞表面CD4を、FACS分析によって測定する(図1B)。βガラクトシダーゼ自体がGAL4−DBDに直接連結するので、scFv−R4−VP16融合体の発現により有効なCD4表面発現が得られる(パネル2)一方で、βガラクトシダーゼ抗原の非存在下でのGAL4 DBDまたはVP16へのscFv−R4の同時発現はCD4を活性化できなかった(パネル3)。したがって、DBD−βガラクトシダーゼ融合体は、CD4レポーターのDNA結合部位と相互作用することができ、転写複合体が産生される。VP16活性化ドメインに連結したscFv−R4もまたDBD−βガラクトシダーゼ四量体上でβガラクトシダーゼエピトープを結合する。
【0172】
次に、βガラクトシダーゼを、DNA結合ドメインおよびVP16活性化ドメインと融合したscFv−R4で同時発現させて、DNAが結合している複合体の形成を評価する。これを有効にするために、scFv−DBDおよびscFv−VP16は共に同一のβガラクトシダーゼの異なる部位に結合していなければならない。したがって、本発明者らは、異なる量の発現ベクターを滴定して、scFv−DBDおよびscFv−VP16融合タンパク質の比を変化させる(図1Bのパネル4〜9)。全ての細胞でCD4レポーター遺伝子の活性化が認められるが、DBD−βガラクトシダーゼ同時発現よりも効果が低い(0.24%〜2.8%の範囲のこれらの一過性アッセイにおけるCD4発現細胞の割合)。相対的な無効性は、おそらく転写アッセイにおけるタンパク質複合体のかさ高さを反映しており、各βガラクトシダーゼに複数の結合部位が必要である。CD4発現の程度はscFvR4−VP16とsvFvR4−DBDとの間の比に依存し(図1B、パネル6、7、および8)、これにより、2つの異なるscFvR4融合タンパク質がβガラクトシダーゼ四量体上の同一の結合部位を競合すると予想される。βガラクトシダーゼの非存在下でscFvR4−VP16およびscFvR4−DBDが発現する場合、CD4活性化は起こらないので、scFvR4の間に二量体は形成されないことが確認される(図1B、パネル3)。本発明者らは、scFvR4に連結したタンパク質ドメインは、scFvR4がβガラクトシダーゼエピトープにインビボで結合する場合、生化学的相互作用のために極めて近接して存在し得ると結論付けた。
【0173】
上記の実験は、本発明の第1の態様の方法を使用して、細胞に検出可能なシグナルを誘導することが可能であることを示す。さらに、本発明の第2の態様の方法を使用して、転写活性からなるシグナルの検出によって細胞内タンパク質を含む構成要素を検出することができる。第1のレポーターから得られるVP16活性化ドメインと第2のレポーターから得られるGAL4 DBDとの安定な相互作用によって転写活性が発現され、この安定な相互作用は、第1のレポーターおよび第2のレポーターの細胞内タンパク質上でのその標的との結合によって得られる。
【0174】
<実施例8:scFv−カスパーゼ3融合により、抗原結合後にアポトーシスを起こす>
転写複合体に必要な成分をβガラクトシダーゼ四量体の活性を得るのに十分に近接させることができるので、scFv−R4抗原部位間の分子の距離は、カスパーゼ3部分が互いに近接して自己活性化およびアポトーシスの誘発にするのに十分に短いと示唆された(図2Aに例示)。
【0175】
レポーターβガラクトシダーゼ発現プラスミドと種々のscFv−R4発現プラスミド(scFvR4とカスパーゼ3との融合体をコードするプラスミドを含む)とのCHO細胞への同時トランスフェクションによってこれを評価する。各scFv融合タンパク質の発現を、発現ベクターでトランスフェクトしたCHO細胞由来のタンパク質抽出物のウェスタンブロットにおいて抗カスパーゼ3抗体を使用して確認する(図2B)。トランスフェクションから60時間後、細胞を、βガラクトシダーゼ活性についてアッセイする(図2C)。
【0176】
βガラクトシダーゼがコントロールのトランスフェクションで検出される一方で(パネル1)、scFv−R4がカスパーゼ3に連結する場合、βガラクトシダーゼ活性レベルはほとんど認められない(パネル3)。このβガラクトシダーゼの損失は、触媒システインをセリンに変異させる(C163S、パネル4)カスパーゼ3変異の不活化効果によって判断したところ、カスパーゼ3の活性に依存する(MacCorkleら,1998,Proc Natl Acad Sci U S A 95,3655〜60)。さらに、βガラクトシダーゼレポーターをVP16のみと融合したscFv−R4で同時発現させた場合(パネル2)、有意差は認められない。βガラクトシダーゼ活性の欠損に起因する抗体特異性は、カスパーゼ3と融合した非特異的scFvの同時トランスフェクションによって示された(scFv−F8,Tavladorakiら,1993,Nature 366,469〜472)。この組み合わせは、βガラクトシダーゼレベルに対する効果はない。したがって、これらのデータにより、scFv−R4−カスパーゼ3を同時トランスフェクトした場合、βガラクトシダーゼ活性の減少は、βガラクトシダーゼに対する中和効果によることが示唆される。むしろ、トランスフェクト細胞にアポトーシスを引き起こす活性化カスパーゼ3のタンパク質分解活性による。以前の報告と一致して(MacCorkleら,1998,Proc Natl Acad Sci U S A 95,3655〜60;Fanら,1999,Hum Gene Ther 10,2273〜85;Yoshiokaら,1999,Gene Ther 6,1952〜9)、scFv−カスパーゼ3融合体のみでは細胞に有毒ではない(パネル5)ことも留意される。
【0177】
<実施例9:ScFv−カスパーゼ融合体によって誘導されたアポトーシスのルシフェラーゼアッセイ>
特異的scFvR4−カスパーゼ3とβガラクトシダーゼ抗原との相互作用に依存するscFv−カスパーゼ3融合体分子による細胞死滅の誘導を、scFvR4抗体が結合しない独立したレポーターを使用して確認する。
【0178】
CHO細胞を、βガラクトシダーゼ発現(すなわち、scFv−R4抗原)の存在下または非存在下でのホタルルシフェラーゼを構成的に発現するレポーターpRSV−LucとscFvR4−カスパーゼ3、scFvR4−VP16、変異scFvR4−カスパーゼ3(C163s)、またはscFvF8−カスパーゼ3のいずれかとトランスフェクトする。ルシフェラーゼ活性を、scFv融合タンパク質の存在下での細胞の生存度の測定としてトランスフェクションから60時間後に測定する(図3A)。
【0179】
これらのデータは、βガラクトシダーゼと共にscFvR4−カスパーゼ3が発現された場合にルシフェラーゼ活性が約80%減少したことを示す(パネル3、前列)。しかし、これは、scFv−R4−カスパーゼ3がβガラクトシダーゼを含まない独立したレポーターで発現した場合は生存度は減少しないので、scFv−R4−カスパーゼ3でトランスフェクトした細胞中のβガラクトシダーゼ活性の欠如は、scFv−R4−カスパーゼ3のみの毒性よりも抗原依存性細胞死によるようである(パネル3後列)。カスパーゼ依存を、scFvR4−カスパーゼ変異タンパク質融合体を発現する構築物でのトランスフェクションによって示され、βガラクトシダーゼ発現の存在下および非存在下のいずれでもトランスフェクト細胞はルシフェラーゼ活性の減少が認められない。最後に、抗体特異性を、レポーター遺伝子活性に影響を受けない非特異性scFv−F8を使用して確認する。
【0180】
トランスフェクトCHO細胞を使用して、βガラクトシダーゼベクターを使用するか使用しないトランスフェクション後の種々の時間でアッセイしたルシフェラーゼ活性の経時変化を行う(それぞれ図3Bおよび3C)。scFvR4−カスパーゼ3およびβガラクトシダーゼの両方を発現する細胞では、ルシフェラーゼレベルは、scFvR4−カスパーゼ3(C163S)またはscFvF8−カスパーゼおよびβガラクトシダーゼを発現する2つのコントロール中での対応するレベルよりも低いピークまでゆっくりと最初の36時間で上昇する(図3B)。さらに、ルシフェラーゼレベルが上昇しつづける2つのコントロールとは異なり、scFvR4−カスパーゼ3およびβガラクトシダーゼでの同時トランスフェクト細胞における酵素レベルが低下する。それに対して、βガラクトシダーゼの非存在下では、scFvR4−カスパーゼ3は、ルシフェラーゼレベルに影響を与えず、scFvR4−カスパーゼ3(C163S)およびscFvF8−カスパーゼ3に匹敵する(図3C)。これらの結果は、誘導されたアポトーシスは抗体および抗原特異的であり、カスパーゼ3活性に依存することを示す。
【0181】
<実施例10:クロマチン分解によってアッセイされたScFv−カスパーゼ3融合体によって誘導されたアポトーシス>
本発明者らの結果は、βガラクトシダーゼを用いた以前の結果が得られ、ルシフェラーゼアッセイは、アポトーシスが活性なカスパーゼ3に依存し、scFv−カスパーゼ3により抗原への結合後にアポトーシスを引き起こすことを示す。これらの結果を、クロマチンビーズラダーの存在についてのトランスフェクト細胞のアッセイによって確認する。クロマチンビーズラダーの存在は、アポトーシス性細胞死の特徴であり、クロマチンのヌクレアーゼ消化によって引き起こされる(Wyllieら,1980,Nature 284,555〜6)。
【0182】
CHO細胞を、種々のscFv融合タンパク質を発現するプラスミドと共に、βガラクトシダーゼ発現ベクターを用いるか用いないで、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するマーカープラスミドpEGFP−N1でトランスフェクトする。36時間後、GFP(したがって、scFvおよびβガラクトシダーゼも)を発現するトランスフェクト細胞を、蛍光活性化細胞分取を用いた選択によって富化する。ゲノムDNAを、分取細胞から抽出する。アポトーシスに媒介されるクロマチン消化から拡大したDNAフラグメントを、ライゲーション媒介PCR手順によって発現する(Staleyら,1996 Cell Death & Differen.4,66〜75)(図4)。
【0183】
本発明者らは、scFvR4−カスパーゼ3およびβガラクトシダーゼ(レーン2)での同時トランスフェクトした細胞から調製したDNA中でクロマチンビーズの証拠のみを見出したが、βガラクトシダーゼおよびscFvR4−VP16(レーン1)、scFvR4−カスパーゼ3(CD163S)(レーン3)、またはscFvF8−カスパーゼ3(レーン4)でトランスフェクトした細胞では見出されない。それぞれのDNAの収量は、アクチン遺伝子プライマーを使用したPCRによって同定したものに匹敵する(図4B)。さらに、βガラクトシダーゼの非存在下でトランスフェクトされたscFvR4−カスパーゼ3は、DNAラダーを産生せず(レーン5)、これは、アポトーシスが細胞内抗体−カスパーゼ融合体(scFv−R4−カスパーゼ3)と抗原(βガラクトシダーゼ)との間の特異的相互作用に依存することを示す。
【0184】
したがって、本発明者らは、それぞれ細胞内標的およびカスパーゼ3分子に結合する抗体を含む第1および第2のレポーターの使用によって細胞内にアポトーシスを誘導することができることを示す。したがって、本発明の第3の態様による方法を使用して、構成要素に含まれる任意の細胞を死滅させることができる。
【0185】
<実施例11:細胞内抗体媒介アポトーシスの一般的な適用>
細胞内抗体媒介アポトーシスアプローチの一般的適用性を確立するために、異なる高原および細胞内抗体対、すなわち、HIV−1インテグラーゼの小さな抗原エピトープおよびインビボでこのエピトープを認識する特異的抗体を使用して第2の系を開発する(scFvIN33;Levy−Mintzら,1996,J.Virol.70,8821〜8832)。
【0186】
βガラクトシダーゼの構造は、公知である(Jacobsonら,1994,Nature 369,761〜766)。この構造からの予測は、βガラクトシダーゼ単量体のN末端で連結する任意のタンパク質は、四量体βガラクトシダーゼ分子の境界面に存在することである。結果として、連結部分の間の物理的距離は、これらに結合する特異的抗体の間の距離と同様に短いと予想される。したがって、HIV−1インテグラーゼアミノ酸259〜288(すなわち、scFvIN33で認識される;Bizub−Benderら,1994,AIDS Res Hum Retroviruses 10,1105〜15)をβガラクトシダーゼのN末端で融合する発現構築物pEF−HIVIN−β−galを作製する。この構築物を、CHO細胞中でscFvIN33−カスパーゼ3融合タンパク質で同時発現する。図5Aに記載のように、抗体と抗原との相互作用により、カスパーゼ媒介アポトーシスが生じるはずである。
【0187】
トランスフェクションから60時間後、βガラクトシダーゼ活性をアッセイして細胞の生存度を識別する。抗βガラクトシダーゼscFvを使用した本発明者らの所見に応じて、HIV−インテグラーゼ−βガラクトシダーゼ機能がHIV−インテグラーゼ−β−ガラクトシダーゼ融合体のみと比較してscFvN33−カスパーゼ3で同時発現した場合(図5A、パネル2、前列)、βガラクトシダーゼの発現は顕著に減少する(パネル1、前列)。さらに、野生型βガラクトシダーゼでのscFvIN33−カスパーゼ3の発現により、βガラクトシダーゼ活性は有意に減少せず(図5A、パネル2、後列)、これは、HIV−インテグラーゼ−β−ガラクトシダーゼ融合体に対する部位への結合後にscFv−カスパーゼ3の二量体形成に反応し(図5Aに示す)、scFvIN33−カスパーゼ3の自己毒性によって細胞死が起こることを示している。
【0188】
活性なカスパーゼ3の要件を、変異scFv−カスパーゼ、scFvIN33−カスパーゼ3(C168S)(パネル3)の使用によって証明し、非特異性抗体scFvF8−カスパーゼ3を使用して抗体特異性を示す(パネル5)。これらの融合タンパク質で、βガラクトシダーゼレベルに影響を与えることがみとめられたものはない。それに対して、抗βガラクトシダーゼ抗体融合体scFvR4−カスパーゼ3は、予想されたように野生型βガラクトシダーゼおよびHIVインテグラーゼβガラクトシダーゼ融合体を発現する細胞において細胞死を引き起こす(パネル4、前列および後列)。したがって、このモデル系における細胞死は、抗原特異的、抗体特異的、および活性カスパーゼ3依存性である。
【0189】
<実施例12:蛍光シグナルの発生による細胞の検出>
細胞内の構成要素の存在を、蛍光に連結した抗体からなる融合タンパク質の使用および蛍光シグナルの監視によって識別することができる。2つの構築物(一方は黄色蛍光タンパク質(YFP)と融合したscFv−R4からなる融合タンパク質を発現するものであり、他方はシアン蛍光タンパク質(CFP)と融合したscFv−R4からなる融合タンパク質を発現するものである)を作製する。これらの構築物を、pNL−scFvR4へのpYFP−N1由来のフラグメントをコードするYPFまたはpCFP−N1(CLONTECH Laboratories)由来のフラグメントをコードするCFPのサブクローニングによって作製する。
【0190】
構築物を、βガラクトシダーゼを発現するpEF−βgalプラスミドとともにCHO細胞にトランスフェクトする。コントロールとして、CHO細胞をscFv−R4−YFPを発現する構築物およびscFv−R4−CFPのみを発現するがpEF−βgalプラスミドを含まない構築物でもトランスフェクトする。さらなるコントロールには、pEF−βgalプラスミドを使用するか使用しない、CFPおよびYFPと融合した非特異的scFvでのトランスフェクションが含まれる。
【0191】
トランスフェクションから60時間後、細胞をFACS分取に供する。CFP/YFP FRETフィルターセット(Omega Optical Incorporated)を使用して、FRETシグナルと通常の蛍光シグナルとを区別する。βガラクトシダーゼ、scFv−R4−CFP融合体、およびscFv−R4−YFPを発現するプラスミドでトランスフェクトした細胞は、FRETを示すことが見出される一方で、scFv−R4−CFP融合体およびscFv−R4−YFPのみ(βガラクトシダーゼなし)でトランスフェクトした細胞はFRETを示さない。さらに、scFv−F8−CFPおよびscFv−F8−YFP発現構築物(βガラクトシダーゼを発現する構築物を使用してもしなくても)でトランスフェクトした細胞は、FRETを示さない。
【0192】
本発明者らは、2つまたはそれ以上のscFv−カスパーゼ3融合タンパク質が近接した抗原のエピトープに結合する場合、カスパーゼ3部分を活性化してアポトーシスを誘発することができることを示す。この方法では、標的抗原を発現する細胞は選択的に死滅する。このプロセスの妥当性を、2対のモデル抗体(すなわち、抗βガラクトシダーゼscFvR4−カスパーゼ3融合体および抗HIVインテグラーゼscFvIN33−カスパーゼ融合体)を使用して証明した。βガラクトシダーゼが生理学的条件下で四量体として存在するので(Jacobsonら,1994,Nature 369,761〜766)、四量体中にscFvR4の4つの結合部位が存在する。scFvR4がカスパーゼ3のN末端で連結している場合、四量体βガラクトシダーゼへのscFvR4−カスパーゼ3融合タンパク質の結合により、連結したカスパーゼ3部分が近接し得る。この結果により、カスパーゼ3が活性化されて、アポトーシスが誘発される。βガラクトシダーゼに連結したHIVインテグラーゼエピトープを使用した第2のモデルでは、本発明者らは、細胞内抗体−カスパーゼ3融合タンパク質と各抗原との間の特異的結合によってアポトーシス誘発のさらなる証拠をさらに提供する。それぞれの場合、標的抗原を特異的に発現する細胞が死滅するので、これは、細胞内抗体媒介細胞死の一般的な適用性および特異性を示す。
【0193】
上記の各出願書類および特許書類および上記の各出願書類および特許書類中で引用または参照された各文献(上記各出願および特許の遂行中を含む)(「出願引例」)ならびに上記の各出願書類および特許書類に引用または記載されている製品の任意の製造者の説明書またはカタログは、本明細書中で引用することにより本明細書の一部をなすものとする。さらに、本明細書中で引用した全ての書類、本明細書中で引用した全ての書類または引用した書類中の参考文献、本明細書中で引用または言及した任意の製品の任意の製造者の説明書またはカタログは、本明細書中で引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0194】
本発明に記載の方法および系の種々の修正形態および変形形態は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明白である。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記載しているが、特許請求の範囲に記載の本発明はこのような特定の実施形態に過度に限定されないと理解すべきである。実際、分子生物学または関連分野の当業者に明白な本発明の遂行のために記載された方法の種々の修正形態は、特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
哺乳動物の2ハイブリッド(two−hybrid)ScFv−βガラクトシダーゼ転写アッセイ。
図1Aは、CHO−CD4レポーター細胞株において抗βガラクトシダーゼ抗体フラグメントscFvR4−DBD融合タンパク質(DNA結合ドメイン)およびscFvR4−VP16(VP16転写トランス活性化ドメイン)融合タンパク質をコードする同時トランスフェクト発現ベクターの効果を示す図である。scFvR4−DBDおよびscFvR4−VP16融合タンパク質は、βガラクトシダーゼ四量体に結合した場合、CD4レポーター遺伝子の転写を調節する染色体GAL4 DNA結合部位(DBS)に結合することができる転写複合体を形成することができる(Fearonら,1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、7958〜7962)。この後、CD4タンパク質分子が細胞表面に出現し、これを、蛍光活性化細胞分取器を使用してアッセイすることができる。
このような実験の結果を、図1Bに示す。パネルA〜Iは、種々の発現ベクターとともにβガラクトシダーゼ発現クローンpEF−βgalと同時トランスフェクトしたCHO−CD4細胞のFACS分析を示す。パネル1:pEF−BOSベクターのみ;パネル2:DBD−βgal、およびscFvR4−VP16;パネル3:scFvR4−VP16およびscFvR4−DBD;パネル4〜9:表示の種々の量のscFvR4−VP16およびscFvR4−DBD。pEF−βgalプラスミド(5μg)は、変化していない。
DBD=GAL4 DNA結合ドメイン;VP=16活性化ドメイン;DBS=DNA結合部位。
細胞表面CD4発現の誘導を、抗ヒトCD4抗体を使用して60時間後にアッセイする。48時間後の表示のCD4+細胞の割合をFACSCalibur装置を使用して評価する。
【図2】
βガラクトシダーゼに結合する細胞内抗体ScFv4−カスパーゼ3によって媒介される細胞死。
図2Aは、カスパーゼ3の二量体形成およびアポトーシスを誘発するその自己活性化を起こすβガラクトシダーゼ(β−gal)四量体へのscFvR4−カスパーゼ3融合の可能な結合モデル(scFv−CP3)を示す図である。
図2Bは、CHO細胞内で発現したscFv融合タンパク質のウェスタン分析の結果を示す。CHO細胞を、scFv−カスパーゼ3、svFvR4−カスパーゼ3(C163S)、またはscFvF8−カスパーゼ3発現ベクターで48時間トランスフェクトする。タンパク質抽出物を、調製し、分画し、ニトロセルロース膜に移す。これらを抗カスパーゼ3抗体および二次HRP結合抗ヤギ抗体とインキュベートする。ECL(増強化学発光)を使用して検出を行う。予め染色したタンパク質の分子量標準との同時電気泳動によって分子量を識別する。
図2Cは、CHO細胞をβgalを発現するプラスミド(pEF−βgal)および種々のscFv融合タンパク質でトランスフェクトした結果を柱状図に示す。トランスフェクションから60時間後のβガラクトシダーゼレベルを測定し、データはそれぞれ二回行った2つの独立した代表的な実験である。βガラクトシダーゼレベルを、pEF−BOSベクターのみで同時トランスフェクトしたpEF−βgalで得られたレベル(100%とする)と比較して示す。レーン1は空のベクターであり、レーン2はscFvR4−VP16であり、レーン3はscFvR4−カスパーゼ3であり、レーン4はscFv−カスパーゼ3(C163S)であり、レーン5はscFvF8−カスパーゼ3である。
【図3】
scFv融合およびβガラクトシダーゼを同時発現するCHO細胞中のルシフェラーゼ活性。
図3Aは、CHO細胞を、特異的な細胞内抗原を得るために使用されるβガラクトシダーゼ発現ベクターpEF−βgalの存在下(前列)または非存在下(後列)で種々のscFv融合発現プラスミドと共にRSVluc、ルシフェラーゼ発現プラスミドでトランスフェクトした実験の結果を示す(de Wetら,1987,Mol Cell Biol 7,725〜37)。トランスフェクションから60時間後にルシフェラーゼレベルを測定する。このレベルを、pEF−BOSベクターのみと同時トランスフェクトしたルシフェラーゼ発現で得られたレベル(100%)に基準化する。レーン1は空のベクターであり、レーン2はscFvR4−VP16であり、レーン3はscFvR4−カスパーゼ3であり、レーン4はscFv−カスパーゼ3(C163S)であり、レーン5はscFvF8−カスパーゼ3である。
図3Bは、特異的抗原の存在下でのルシフェラーゼ活性化の経時変化を示す。RSVluc、pEF−βgal発現プラスミド、表示の3つの異なるscFv融合タンパク質発現プラスミドでの同時トランスフェクションから12、24、36、48、および60時間後のルシフェラーゼ活性を測定する。三角はscFvR4−カスパーゼ3(C163S)であり、四角はscFvF8−カスパーゼ3であり、丸はscFvR4−カスパーゼ3である。
図3Cは、特異的抗原の非存在下でのルシフェラーゼ活性化の経時変化を示す。ルシフェラーゼ活性を図3Bのように測定するが、細胞をβガラクトシダーゼ発現構築物の非存在下でトランスフェクトする。三角はscFvR4−カスパーゼ3(C163S)であり、四角はscFvF8−カスパーゼ3であり、丸はscFvR4−カスパーゼ3である。
【図4】
scFv−カスパーゼを発現するCHO細胞および特異的抗原を使用したアポトーシスアッセイ。
図4Bは、CHO細胞をpEGFP−N1(緑色蛍光タンパク質を発現する)、種々のscFv融合体をコードするクローンと同時トランスフェクトした実験の結果を示す。トランスフェクトした細胞を蛍光によって識別し、FACSscalibur細胞分取器を使用して分取する。ゲノムDNAを、選択した細胞から抽出し、ApoAlert LM−PCR Ladderアッセイキットを使用してPCR増幅を行う。産物を1.5%アガロースゲル上で分画し、臭化エチジウム染色によって視覚化する。レーンは、scFvR4−VP16+β−gal(レーン1)、scFvR4−カスパーゼ3+β−gal(レーン2)、scFvR4−カスパーゼ3(C163S)+βgal(レーン3)、scFvF8−カスパーゼ3+βgal(レーン4)、およびscFvR4−カスパーゼ3のみ(レーン5)を発現するプラスミドでトランスフェクトした細胞のDNA由来のPCR反応に対応する。ネガティブPCRコントロールは、テンプレートDNAを使用しない反応由来の産物を示す。
図4Bは、図4Aと同一のDNAサンプルを使用するが、チャイニーズハムスターアクチン遺伝子に特異的なプライマーを使用して行ったPCR反応の結果を示す。ネガティブコントロールは図4Aに記載の通りである。ポジティブコントロールは精製CHOゲノムDNAでのPCR増幅から得た反応産物である。
サイズマーカーは、HindIIIで消化したλDNAとHaeIIIで消化したΨX174DNAとの混合物である。
【図5】
βガラクトシダーゼ−インテグラーゼ活性に対する抗HIVインテグラーゼ−カスパーゼ3融合体の効果。
図5Aは、抗HIVインテグラーゼscFvIN33−カスパーゼ3融合体とβガラクトシダーゼ四量体に融合したHIV−1インテグラーゼ部分との間の特異的な相互作用によって、どのようにしてアポトーシスを誘発することができるのかを示す図である。
図5Bは、βガラクトシダーゼに融合したHIVインテグラーゼエピトープ(HIVIN−βgal)をコードする発現クローンの存在下、または野生型βガラクトシダーゼを発現するクローン(クローンpEF−βgal)の存在下での表示の種々のタンパク質を発現するプラスミドでCHOをトランスフェクトした実験の結果を示す。トランスフェクションから60時間後、細胞抽出物を作製し、βガラクトシダーゼレベルを測定する。データを、βガラクトシダーゼの比較活性として示す。各βガラクトシダーゼ発現クローン(HIVIN−βgalおよびpEF−βgal)をpEF−BOS(空のベクター)でトランスフェクトして得られたレベルを100%として、データをベータガラクトシダーゼの比較活性で示す。
前列の1は、pEF−BOSであり、2は、ScFvIN33−カスパーゼ3であり、3は、ScFvIN33−カスパーゼ3(C163S)であり、4は、ScFvR4−カスパーゼ3であり、5は、ScFvF8−カスパーゼ3でのHIVIN−βgalである。後列は、HIVIN−βgalの代わりにpEF−βgalを同時トランスフェクトした以外は前列と同一である。
Claims (56)
- (a)ある構成要素を含む細胞を提供する工程と、
(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって検出可能なシグナルが発生し、
(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを前記構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる工程と
を含む細胞が検出可能なシグナルを発生するように誘導する方法。 - (a)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によって、検出可能なシグナルが発生し、
(b)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを細胞内のある構成要素に結合させることによって、前記構成要素への前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを安定に相互作用させ、シグナルを発生させる工程と、
(c)前記シグナルをモニタリングすることによって前記構成要素を検出する工程と
を含む細胞内の構成要素の検出方法。 - 前記シグナルが細胞致死機構の活性化である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記細胞致死機構がアポトーシスである、請求項3に記載の方法。
- 前記シグナルがシステインプロテアーゼ活性の発生である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記システインプロテアーゼ活性が、カスパーゼ活性である、請求項5に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターのそれぞれが、カスパーゼ3およびカスパーゼ8から選択されるカスパーゼ分子を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 前記レポーターの前記構成要素への結合により、前記細胞内での前記カスパーゼ分子の自己活性化およびアポトーシスの活性化が誘導される、請求項7に記載の方法。
- 前記カスパーゼ分子がカスパーゼ3である、請求項8に記載の方法。
- 前記シグナルが転写活性の発生である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび第2のレポーターが転写因子のドメインを含む、請求項10に記載の方法。
- 前記第1のレポーターまたは前記第2のレポーターのいずれかが、Gal4のDNA結合ドメイン(DBD)を含み、前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの他方がVP16活性化ドメインを含む、請求項10または11に記載の方法。
- 前記シグナルをレポーター遺伝子発現のモニタリングにより検出する、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
- 前記レポーター遺伝子がCD4である、請求項13に記載の方法。
- 前記シグナルが発光誘導活性の発生である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記シグナルが蛍光シグナルである、請求項1または2に記載の方法。
- 前記蛍光シグナルがフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、または赤色蛍光タンパク質によって発される、請求項16に記載の方法。
- 前記蛍光シグナルが蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって調整される、請求項16または17に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの1つまたは両方が標的に特異的に結合するポリペプチドまたは核酸アプタマーを含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの1つまたは両方が免疫グロブリンを含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
- (a)ある構成要素を含む細胞を提供する工程と、
(b)第1の免疫グロブリンを含む第1のレポーターおよび第2の免疫グロブリンを含む第2のレポーターを提供する工程と、
(c)前記第1の免疫グロブリンに連結した第1のカスパーゼ分子および前記第2の免疫グロブリンに連結した第2のカスパーゼを提供する工程であって、前記第1のカスパーゼ分子と前記第2のカスパーゼ分子が安定に相互作用して前記細胞中にアポトーシスを生じさせるカスパーゼ活性を発生させることができ、
(d)前記第1の免疫グロブリンおよび前記第2の免疫グロブリンを前記構成要素に結合させて、前記レポーターの前記構成要素への結合により前記カスパーゼ分子が安定に相互作用して、前記細胞中にカスパーゼ活性およびアポトーシスを生じさせる工程と
を含む細胞を死滅させる方法。 - 前記カスパーゼがカスパーゼ3である、請求項21に記載の方法。
- 前記免疫グロブリンが、抗体、T細胞受容体、またはそれらのフラグメントである、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 前記免疫グロブリンが、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、またはF(ab’)2から選択される抗体である、請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
- 前記免疫グロブリンが、細胞内一本鎖Fvである、請求項20〜24のいずれかに記載の方法。
- 前記構成要素が、前記免疫グロブリンによって認識されるエピトープを含む、請求項20〜25のいずれかに記載の方法。
- 前記免疫グロブリンが、前記細胞内の核酸の発現によって得られる、請求項20〜26のいずれかに記載の方法。
- 前記核酸が、抗体またはT細胞受容体のレパートリーをコードするファージライブラリーから得られる、請求項27に記載の方法。
- 前記ライブラリーが、抗原にさらされた生物から単離された核酸から構築される、請求項28に記載の方法。
- 前記構成要素が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、新生ポリペプチド、細胞内ポリペプチド前駆体、ゲノムDNA、メッセンジャーRNA、転移RNA、亜細胞構造体、および細胞内病原体から選択される、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
- 前記構成要素が、前記細胞または前記細胞に由来する生物の所定の病態に関連する、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
- 前記病態がアルツハイマー病またはダウン症候群であり、前記構成要素が、神経原線維濃縮体、老人斑、変異βアミロイド前駆体タンパク質、変異ユビキチンBタンパク質、変異βアミロイド前駆体タンパク質をコードするフレームシフトRNA、および変異ユビキチンBタンパク質をコードするフレームシフトRNAから選択される、請求項31に記載の方法。
- 前記病態が、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、新規の異型CJD、またはウシ海綿状脳症であり、前記構成要素がプリオンタンパク質の感染形態(PrPSc)である、請求項31に記載の方法。
- 前記病態が、AIDSまたは自己免疫疾患である、請求項31に記載の方法。
- 前記構成要素が変異オンコジーンタンパク質である、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
- 前記変異オンコジーンタンパク質がp21rasである、請求項35に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの一方が前記変異オンコジーンタンパク質に存在する標的には結合するが、対応する野生型タンパク質には結合せず、前記第1のレポーターおよび第2のレポーターの他方が、前記変異オンコジーンタンパク質と前記野生型タンパク質との両方に存在する標的に結合する、請求項34または35に記載の方法。
- 前記構成要素が染色体転座に起因するキメラ融合タンパク質である、請求項1〜31および請求項35のいずれかに記載の方法。
- 前記キメラ融合タンパク質がBCR−ABL融合タンパク質である、請求項38に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの一方がSH2ドメインを含む標的に結合し、前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの他方がSH2結合部位を含む標的に結合する、請求項38または39に記載の方法。
- 前記構成要素が変異p53タンパク質である、請求項1〜31および請求項35のいずれかに記載の方法。
- 前記p53タンパク質がp53サブユニットから形成された四量体である、請求項41に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターが前記変異p53タンパク質の同一の標的に結合する、請求項41または42に記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの一方またはこれらの両方が融合タンパク質として提供される、請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターの一方または両方が化学結合によって連結された2つの部分を含む、請求項1〜43のいずれかに記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターが異なる標的に結合する、請求項1〜45のいずれかに記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターが同一の標的に結合する、請求項1〜45のいずれかに記載の方法。
- 薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と共に免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物。
- ヒトもしくは動物の癌の治療方法または予防方法における使用のための、免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸。
- ヒトもしくは動物の癌の治療方法または予防方法に用いる薬物を調製するための、免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質もしくは接合体、または免疫グロブリンカスパーゼ融合タンパク質をコードする核酸の使用。
- (a)ポリペプチドを含む細胞を提供する工程と、
(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとの安定な相互作用によってプロテアーゼ活性が発生し、
(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとを前記ポリペプチドに結合させることによって、前記ポリペプチドへの前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを安定に相互作用させ、プロテアーゼ活性を発生させてポリペプチドをタンパク質分解させる工程と
を含む細胞中のポリペプチドの分解方法。 - (a)ポリペプチドをコードする遺伝子を含む細胞を提供する工程と、
(b)第1のレポーターおよび第2のレポーターを提供する工程であって、前記第1のレポーターと前記第2のレポーターの安定な相互作用によって、プロテアーゼ活性が発生し、
(c)前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを前記ポリペプチドに結合させることによって、前記ポリペプチドへの前記レポーターの結合により前記第1のレポーターと前記第2のレポーターを安定に相互作用させ、プロテアーゼ活性を発生させてポリペプチドをタンパク質分解させる工程と、
(d)表現型を観察する工程と
を含む遺伝子機能の識別方法。 - 前記シグナルがプロテアソーム、好ましくは26Sプロテアソームに関連するプロテアーゼ活性の発生である、請求項1〜52のいずれかに記載の方法。
- 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターがそれぞれF−boxモチーフの1つまたは複数のドメインを含む、請求項53に記載の方法。
- 前記レポーターの前記構成要素への結合により前記構成要素または前記構成要素を含むポリペプチドがユビキチン化される、請求項53または54に記載の方法。
- 前記レポーターの前記構成要素への結合により、前記構成要素または前記構成要素を含むポリペプチドがタンパク質分解される、請求項53〜55のいずれかに記載の方法。
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