JP2004512001A - 真菌の遺伝子発現の制御 - Google Patents
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Abstract
【課題】
【解決手段】本明細書には、真菌の遺伝子発現を制御する方法、及びこの方法を実施するための試薬が開示されている。
【解決手段】本明細書には、真菌の遺伝子発現を制御する方法、及びこの方法を実施するための試薬が開示されている。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真菌遺伝子発現の制御に関わる遺伝子を同定し、単離する方法に関する。本発明は、真菌のビルレンスファクターを同定するのに有用な方法にも関する。本発明は、さらに、真菌の病原を制御し、又は真菌の病原に必要とされる遺伝子の発現又は活性を増加又は減少させる因子を同定する方法に関する。本発明は、殺真菌剤又は静真菌剤としてのこのような因子の使用にも関する。
【0002】
真菌は、ヒトに対して大きな重要性を有する大きく多様な生物群である。病原性の真菌は、とりわけ、その割合が急速に増加しつつある、疾病、化学療法、又は免疫抑制剤によって疾病が損なわれた集団において、ヒトの疾病の重要な原因である。様々な植物病原性真菌(例えば、焼枯れ(blights)、赤星病(rusts)、かび(mold)、黒穂病(smut)、うどん粉病)は、莫大な穀物の損失及び鑑賞用植物への損害を引き起こす。植物の疾病は、多くの属、例えば:軟腐病(例えば、クモノスカビ(Rhizopus)、縮葉病(例えば、タフリナ(Taphrina)、うどんこ病(例えば、スファエロセカ(Sphaerotheca)、オモト赤星病(例えば、ファルビア(Fulvia)、焼枯れ(例えば、アルターナリア(Alternaria))、いもち病(例えば、マグナポルス(Magnaporthe))、黒腐病(例えば、ギニャルディア(Guignardia))、赤カビ病(例えば、ベンチュリア(Venturia))、萎ちょう(例えば、フサリウム)、赤星病(例えば、プッチニア(Puccinia))、黒穂病(例えば、ウスティラゴ(Ustilago))、及び潰瘍(例えば、リゾクトニア(Rhizoctonia))に属する無数の侵襲性の真菌病原体によって引き起こされる。さらに、真菌種は、抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、及びそれらの誘導体のようなβラクタム抗生物質)、抗高コレステロール血症剤(例えば、ロバスタチン及びコンパクチン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、及び抗真菌薬剤(例えば、ニューモカンディン(pneumocandin)及びエチノカンディン(echinocandin))のような極めて多くの医学的に有用な製品の商業用製造源である。これらの薬物は、全て、真菌の二次代謝産物−真菌がそれらの微生物学的環境中の競合者に対して使用する小さな被分泌分子−である。最後に、真菌は、商業的に重要な酵素(例えば、セルラーゼ、プロテアーゼ、及びリパーゼ)並びにその他の産物(例えば、クエン酸、ジベレリン酸(gibberellic acid)、天然色素、及び薬味(flavorings))も産生する。
【0003】
真菌が、それらの生育基質に侵入する詳細は、詳しくは理解されていない。しかしながら、真菌の侵入過程に関する二つの重要なテーマが、近年判明した。第一に、カンジダ種、アスペルギルス種、ムコール種、クモノスカビ種、フサリウム種、ペニシリウム・マルネファイ(Penicillium marneffei)、ミクロスポラム種、及びトリコフィトン(Trichophyton)種のような重要なヒトの真菌性病原体は、線状菌糸として宿主の組織から侵入する。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のビルレンスは、宿主組織の侵入に依存していることが示されている。すなわち、侵入性の生育に必要とされる幾つかの遺伝子の何れかが突然変異すると、全身感染のマウスモデルでビルレンスが相当減少する。植物の真菌性病原体であるウスティラゴ・メイディス(Ustilago maydis)の病原も侵入を要する。第二に、サッカロミセス・セレビシアエにおいて寒天の侵入を制御する遺伝子と病原性の酵母において侵入を制御する遺伝子には相関がある。サッカロミセス・セレビシアエは、遺伝学的研究に好適なので、真菌の侵入の遺伝学的性質を分子的に分析するのに利用できる。
【0004】
侵入に必要とされるある種のサッカロミセス・セレビシアエの遺伝子の相同体は、他の真菌において、二次代謝産物及び分泌異化酵素の産生も調節する。例えば、サッカロミセス・セレビシアエのINV遺伝子のアスペルギルス相同体中の突然変異を活性化すると、二次代謝産物であるペニシリンと、分泌アルカリフォスファターゼ産生の増加を引き起こす(Orejas et al., Genes Dev. 1995, 9:1662)。
【0005】
【発明の実施の形態】
ある側面では、本発明は、候補化合物が、真菌のインベイシン(invasin)遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子の発現を減少するかどうかを決定するための方法に関する。該方法は、一般的には、(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;(b)前記真菌を候補化合物と接触させる工程と;(c)前記真菌を前記候補化合物に接触させた後に、前記遺伝子の発現を検出又は測定する工程とを備える。
【0006】
好ましい態様では、真菌は、野生型株(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ、カンジダ・アルビカンス、又はアスペルギルス・ニードランス);変異株;又はトレンスジェニック真菌である。他の好ましい態様では、本発明の方法に使用される遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子である。真菌のインベイシン遺伝子には、例えば、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, FLO11, IRA1, MCM1, MGA1, MUC1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, RIM1, 又はYPR1が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
他の好ましい態様では、本発明の方法に使用される遺伝子は、レポーター遺伝子である。本発明の方法に有用なレポーター遺伝子には、例えば、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ、URA3、又はHIS3が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
好ましい態様では、本発明の方法に使用される真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターに由来する。他の好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターには、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターに由来するプロモーター配列が含まれる。好ましくは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片又は欠失(例えば、FLO11遺伝子プロモーターの断片)であり;所望であれば、該断片は、基本プロモーター(basal promoter)(例えば、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子からの基本プロモーター)に融合される。
【0009】
典型的には、遺伝子(例えば、内在性FLO11、又はFLO11遺伝子プロモーターの制御下で発現される組換えリポーター遺伝子、又はその断片)の発現は、発現される遺伝子のRNA又はタンパク質レベル又は両者をアッセイすることによって測定される。例えば、真菌のインベイシン遺伝子によって、又はレポーター遺伝子によって発現されるポリペプチドは、化合物が、産生されるべき測定可能なシグナルを生ぜしめるような条件下で、検出可能なシグナルを生ぜしめる。生じたシグナルの量を量的に決定するには、テストされている化合物が全く存在しない状態で、又は本明細書に記載されている他の任意の化合物に細胞を接触させたときに検出されたシグナルの量と生じたシグナルの量とを比較することを要する。この比較によって、発現された遺伝子によって生じた検出可能なシグナルの変化(例えば、RNA又はタンパクレベルで)を引き起こすものとして化合物が同定され、これにより、真菌の侵入を阻害し得る化合物を同定することが可能となる。真菌インベイシン遺伝子の発現の減少は、一般的には、真菌の侵入の阻害によって、又は酵母型から偽菌糸体の生育への発達のスイッチの阻害、又は両者を伴う。
【0010】
関連する側面では、本発明は、候補化合物が、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子の発現を増加するかどうかを決定するための方法にも関する。該方法は、一般的には、(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;(b)前記真菌を候補化合物と接触させる工程と;(c)前記真菌を前記候補化合物に接触させた後に、前記遺伝子の発現を検出又は測定する工程とを備える。好ましい態様では、本発明は、さらに、候補化合物が、真菌の二次代謝産物の産生を増加するかどうかを決定することを備える。
【0011】
別の側面では、本発明は、候補化合物が、真菌の侵入を阻害するかどうかを決定する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)侵入に適した条件下で真菌と候補化合物を接触させる工程と、(b)候補化合物と接触させた後に、真菌による侵入を測定又は検出する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、カンジタ・アルビカンス又はサッカロミセス・セレビシアエである。
【0012】
別の側面では、本発明は、候補化合物が、真菌の侵入を促進するかどうかを決定する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)侵入に適した条件下で真菌と候補化合物を接触させる工程と、(b)候補化合物と接触させた後に、真菌による侵入を測定又は検出する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、カンジタ・アルビカンス又はサッカロミセス・セレビシアエ、又はアスペルギルス・ニードランスである。
【0013】
さらに別の側面では、本発明は、真菌の侵入促進遺伝子を同定する方法に関する。該方法は、一般的に、(a)真菌に、(1)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された第一の遺伝子、及び(2)第二の候補遺伝子又はその断片を発現させる工程と;(b)前記第一の遺伝子の発現をモニタリングする工程とを備え、前記第一の遺伝子の発現の増加により、前記第二の候補遺伝子が真菌の侵入促進遺伝子として同定される。好ましい態様では、真菌は、野生型株(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ、アスペルギルス・ニードランス、ペニシリウム・クリソジェナム(Penicillium chrysogenum)、又はアクレモニウム・クリソジェナム(Acremonium chrysogenum);変異株;又はトレンスジェニック真菌である。他の好ましい態様では、本発明の方法に使用される遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子である。
【0014】
好ましくは、第一の遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子を含む(例えば、FLO11又はMUC1)。さらに別の好ましい態様では、第一の遺伝子は、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, RIM1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3,又はYPR1に由来する真菌のインベイシン遺伝子を含む;又は前記第一の遺伝子は、レポーター遺伝子(例えば、lacZ、URA3、又はHIS3)を含む。
【0015】
好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターに由来する。他の好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、AFL1, DHH1, INV1, RIM1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターに由来し;又は上記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片若しくは欠失である。好ましくは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片は、基本プロモーター (例えば、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子の基本プロモーター)に融合される。
【0016】
好ましくは、本発明の方法に利用される遺伝子の発現は、発現された第一の遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって、又は発現された第一の遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される。
【0017】
関連した側面では、本発明は、真菌の侵入阻害遺伝子を同定する方法にも関する。該方法は、一般的に、真菌に、(1)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された第一の遺伝子、及び(2)第二の候補遺伝子又はその断片を発現させる工程と;(b)前記第一の遺伝子の発現をモニタリングする工程とを備え、前記第一の遺伝子の発現の減少により、前記第二の候補遺伝子が真菌の侵入阻害遺伝子として同定される。
【0018】
さらに別の側面では、本発明は、真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する;該方法は、一般的に、真菌細胞を真菌の侵入促進化合物と接触させる工程と;二次代謝産物の増加した合成を促進する条件下で、細胞を培養する工程とを備える。
【0019】
別の側面では、本発明は、真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する;該方法は、一般的に、真菌の侵入阻害遺伝子の発現を減少させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入阻害遺伝子(例えば、HOG1, BEM2, RIM15, SFL1, IRA1, SSDI, SRB11, SWI4,又はTPK3)の減少した発現は、真菌の侵入阻害遺伝子の不活化からもたらされる。別の好ましい態様では、二次代謝産物の増加した産生は、変異した真菌の侵入阻害遺伝子の発現からもたらされる。
【0020】
さらに別の側面では、本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的に、真菌の侵入促進遺伝子の発現を増加させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入促進遺伝子は、AFL1, DHH1, INV7, INV8, STE21, PET9, MEP2, INV1, INV5, INV6, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, CDC25, MCM1, MGA1, PHD2, PHO23, PTC1, RIM1, STP22, TPK2又はYRP1である。別の好ましい態様では、真菌の侵入促進遺伝子の増加した発現は、真菌の侵入促進遺伝子を構成的に発現させることにより、又はこのような遺伝子を過剰発現させることにより達成される。さらに別の好ましい態様では、真菌の侵入促進遺伝子は、変異している。
【0021】
別の側面では、本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、活性化された形態の侵入促進ポリペプチドをコードする遺伝子又はその断片を発現させる工程を含む。好ましい態様では、活性化された形態の侵入促進ポリペプチドは、侵入促進ポリペプチドと、侵入促進ポリペプチドの活性をさらに増大させる第二のポリペプチドとの融合を含む。別の好ましい態様では、遺伝子は、変異を有する。
【0022】
別の側面では、本発明は、真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、真菌の侵入阻害ポリペプチドの活性を減少させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入阻害ポリペプチドは、変異(例えば、優性非活性(dominant−inactive)ポリペプチド)を有する。別の好ましい態様では、真菌の侵入阻害ポリペプチドは、Hog1, Bem2, Rim15, Ira1, Sfl1, Ssd1, Srb11, Swi4,又はTpk3である。
【0023】
別の側面では、本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、真菌の侵入促進ポリペプチドの活性を増加させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入促進ポリペプチドは、変異(例えば、優性活性ポリペプチド)を有する。別の好ましい態様では、真菌の侵入促進ポリペプチドは、Afl1, Dhh1, Inv1, Inv5, Inv6, Inv9, Inv10, Inv11, Inv12, Inv13, Inv14, Rim1, Inv15, Cdc25, Inv7, Mcm1, Mga1, Phd2, Pho23, Ptc1, Inv8, Ste2, Pet9, Mep2, Stp22, Tpk2,又はYpr1である。
【0024】
別の側面では、本発明は真菌のインベイシン遺伝子を単離する方法に関する。本発明は、一般的には、(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;(b)前記真菌に変異を誘発させる工程と、(c)前記遺伝子の発現を測定し、前記遺伝子の発現の増加又は減少により、前記インベイシン遺伝子の変異を同定する工程と;(d)前記インベイシン遺伝子を単離するためのマーカーとして前記変異を使用する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、野生型株(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ)、又は変異株である。好ましい態様では、本方法に使用される遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子(例えば、FLO11, MUC1, AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, RIM1, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1)を含む。別の好ましい態様では、遺伝子は、レポーター遺伝子(例えば、lacZ、URA3、又はHIS3)を含む。さらに別の好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターから得られる;又は、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, RIM1, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターから得られる。別の好ましい態様では、真菌のインベイシンプロモーターは、上記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片若しくは欠失である。好ましくは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片は、基本プロモーター (例えば、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子の基本プロモーター)に融合される。
【0025】
別の側面では、本発明は、カンジダ・アルビカンスの遺伝子プロモーターからの発現を制御する遺伝子を同定するために、細胞(例えば、真菌細胞)を使用する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)カンジダ・アルビカンスの遺伝子プロモーターに作用可能に連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞を準備する工程と;(b)前記細胞中の候補遺伝子を発現させる工程と;(c)前記レポーター遺伝子の発現を検出又は測定する工程とを備える。好ましい態様では、真菌細胞は、サッカロミセス・セレビシアエである。
【0026】
別の側面では、本発明は、増加した二次代謝産物産生を有するトランスジェニック真菌細胞を調製する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)トランス遺伝子(例えば、真菌細胞中で発現するように配置されたAFL1, DHH1, INV7, INV8, STE21, PET9, MEP2, INV1, INV5, INV6, INV9, INV10, INV11, RIM1, INV12, INV13, INV14, INV15, CDC25, MCM1, MGA1, PHD2, PHO23, PTC1, STP22, TPK2, YRP1のようなインベイシン遺伝子をコードするトランス遺伝子、又はその断片)を導入する工程と、(b)前記トランス遺伝子を発現する細胞を選択する工程とを備える。好ましい態様では、トランス遺伝子は、変異(例えば、優性活性変異又は優性非活性変異)を有する。
【0027】
別の側面では、本発明は、真菌中の二次代謝産物を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、(a)二次代謝産物の産生を可能とする条件で、培養物(culture)中の真菌を培養する工程と;(b)前記培養物に、真菌の侵入促進化合物を加える工程と;(c)前記培養物から代謝産物を単離する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、変異を有する。別の好ましい態様では、真菌は、野生型株である。
【0028】
さらに別の側面では、本発明は、インベイシン遺伝子の活性を阻害する変異をインベイシン遺伝子中に含むトランスジェニック真菌(例えば、糸状菌(filamentous fungi))に関する。好ましくは、本発明は、HOG1, SWI4, BEM2, SRB11, SSD1, TPK3, SFL1又はIRA1遺伝子、又は任意のこれらの組み合わせの中に変異を有するトランスジェニック糸状菌に関する。好ましくは、このような変異は、発現されたタンパク質(例えば、Hog1, Swi4, Bem2, Srb11, Ssd1, Tpk3, Sfl1, 又はIra1, 又は任意のそれらの組み合わせ)の活性を阻害する。別の好ましい態様では、トランスジェニック真菌は、増加した二次代謝産物の産生(例えば、増加した抗生物質の産生)を有する。
【0029】
別の側面では、本発明は、実質的に、純粋なInv9ポリペプチドに関する。好ましくは、Inv9ポリペプチドは、図6B(配列番号6)のアミノ酸配列と少なくとも55%の同一である。好ましい態様では、Inv9ポリペプチドは、真菌(例えば、サッカロミセスのような酵母)から得られる。他の好ましい態様では、Inv9は、侵入促進活性を有する。
【0030】
関連する側面では、本発明は、Inv9ポリペプチドをコードする単離された核酸(例えば、DNA)に関する。好ましくは、このような単離された核酸配列は、図6A(配列番号5)のINV9遺伝子を含み、サッカロミセス・セレビシアエのINV9変異を相補する。
【0031】
別の側面では、本発明は、実質的に純粋なRim1ポリペプチドに関する。好ましくは、Rim1ポリペプチドのジンクフィンガードメインは、図5A(配列番号4)のアミノ酸配列のジンクフィンガーと少なくとも75%同一であり、ポリペプチドのアミノ酸配列全長にわたっては、少なくとも25%同一である。好ましい態様では、Rim1ポリペプチドは、真菌(例えば、サッカロッミセスのような酵母)から得られる。別の好ましい態様では、Rim1ポリペプチドは、侵入促進活性を有する。
【0032】
関連する側面では、本発明は、Rim1ポリペプチドをコードする単離された核酸(例えば、DNA)に関する。好ましくは、このような単離された核酸は、図5A(配列番号3)のRIM1遺伝子を含み、本明細書に記載されているように、サッカロミセス・セレビシアエ中のRIM1変異を相補する。
【0033】
関連する側面では、本発明は、さらに、細胞又はベクター(例えば、真菌発現ベクター)に関し、各々は、本発明の単離された核酸分子を含む。好ましい態様では、本発明は、真菌細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ)である。さらに別の好ましい態様では、単離された本発明の核酸分子は、核酸分子によってコードされるポリペプチドの発現を媒介するプロモーターに作用可能に連結される。本発明は、さらに、本発明のベクターを含有する細胞(例えば、真菌細胞)に関する。
【0034】
さらに別の側面では、本発明は、本発明の任意の上記核酸分子を含むトランスジェニック真菌に関する。前記核酸分子は、トランスジェニック真菌中で発現される。
【0035】
関連する側面では、本発明は、Inv9又はRim1ポリペプチドを産生する方法にも関する。該方法は、(a)細胞で発現するように配置された本発明の核酸分子で形質転換された細胞を提供する工程と;(b)前記核酸分子を発現させる条件下で前記形質転換された細胞を培養する工程と;(c)Inv9又はRim1ポリペプチドを回収する工程とを備える。本発明は、さらに、本発明の単離された核酸分子のこのような発現によって産生された組換えInv9又はRim1ポリペプチド、及びこれらの各ポリペプチド又はその一部を特異的に認識し、結合する実質的に純粋な抗体に関する。
【0036】
「真菌の侵入」とは、真菌が、基質(substrate)を貫通し、掘り込む(dig)、接着(adhere)し、又は付着(attach)する過程を意味する。真菌による基質の侵入は、本明細書に記載されているような標準的方法に従って測定し得る。
【0037】
「真菌インベイシン」遺伝子は、真菌による基質への侵入を促進又は阻害することができるポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。この応答は、転写レベルで起こり得る。又は、これは、実際には、酵素又は構造的なものであり得る。真菌のインベイシン遺伝子は、本分野で公知の慣用法を組み合わせ、本明細書で開示された任意の配列を使用して任意の真菌種から同定、単離され得る。
【0038】
「ポリペプチド」は、任意のアミノ酸の鎖を意味し、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)にかかわらない。
【0039】
「レポーター遺伝子」は、その発現をアッセイし得る遺伝子を意味する。このような遺伝子には、βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ(β−glucoronidase)、β−グルコシダーゼ、及びインベルターゼをコードする遺伝子、アミノ酸生合成遺伝子、例えば酵母のLEU2, HIS3, LYS2, TRP1遺伝子、核酸生合成遺伝子、例えば酵母のURA3およびADE2遺伝子、哺乳類のクロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)遺伝子、又はそれに対する特異的な抗体を利用できる任意の表面抗原の遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク(GFP)のような発光又は蛍光によって検出し得るタンパク質をコードし得る。レポーター遺伝子は、表現型マーカー、例えば、細胞の生育又は生存に必要とされるタンパク、又は細胞死を誘導する毒性タンパクを与える任意のタンパク質もコードし得、あるいは、レポーター遺伝子は、色の存在又は不存在をもたらす、カラーアッセイによって検出できるタンパク質をコードし得る。あるいは、レポーター遺伝子は、サプレッサーtRNA(その発現は、アッセイ可能な表現型を与える)をコードし得る。本発明のレポーター遺伝子は、レポーター遺伝子機能に必要なエレメント(例えば、全てのプロモーターエレメント)を含む。
【0040】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸配列(例えば、図5A(配列番号4)に示されたアミノ酸配列)、又は核酸配列(図5Aに示された核酸配列;配列番号3)と少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは80%、最も好ましくは90%、さらには95%の同一性を示すポリペプチド又は核酸を意味する。ポリペプチドの場合、比較配列の長さは、一般的には、少なくとも16アミノ酸、好ましくは20アミノ酸、より好ましくは少なくとも25アミノ酸、最も好ましくは35アミノ酸以上であろう。核酸の場合、一般的には、比較配列の長さは、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも75ヌクレオチド、最も好ましくは110ヌクレオチド以上である。
【0041】
配列の同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI53705, BLAST, BEAUTY, or PILEUP/PRETTYBOX programs)を用いて測定される。このようなソフトウェアは、相同性の程度を様々な置換、欠失、及び/又は他の修飾に割り当てることによって、同一又は類似の配にとマッチさせる。典型的には、保存的な置換には、以下の群(グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン)内部での置換が含まれる。
【0042】
「実質的に純粋なポリペプチド」は、自然の状態ではそれを伴う成分から分離されたポリペプチド(例えば、Inv9又はRim1ポリペプチドのようなインベイシンポリペプチド)を意味する。典型的には、少なくとも60重量%であり、自然の状態では付随するタンパク質及び天然に存在する有機分子がなければ、実質的に純粋である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%がインベイシンポリペプチドである。実質的に純粋なインベイシンポリペプチドは、例えば、天然の採取源(例えば、真菌細胞)から抽出することによって;インベイシンポリペプチドをコードする組換え核酸を発現することによって;該タンパク質を化学的に合成することによって取得し得る。純度は、任意の適切な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定できる。
【0043】
「由来する(derived from)」とは、天然に存在する配列(例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成又はそれらの組み合わせ)から単離されるか、又は天然に存在する配列を有することを意味する。
【0044】
「単離されたDNA」とは、本発明のDNAが由来する生物の天然に存在するゲノムで、遺伝子と相隣する遺伝子が除かれたDNAを意味する。それ故、この用語には、例えば、ベクター、自己複製プラスミド、又はウイルス、;又は原核細胞若しくは真核細胞のゲノムDNAに取り込まれた組換えDNA;又は他の配列から独立した別個の分子(例えば、cDNA、又はPCR若しくは制限エンドヌクレアーゼ消化によって作成されたゲノム若しくはcDNA断片)として存在する組換えDNAが含まれる。付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
【0045】
「トランスジェニック真菌細胞」とは、組換えDNA技術によって、インベイシンポリペプチドをコードする(本明細書で使用されているように)DNA分子が導入された真菌細胞(又はその先祖)を意味する。
【0046】
「発現するように配置」とは、DNA分子が、該配列の転写及び翻訳を誘導する(すなわち、例えば、インベイシンポリペプチド、組換えタンパク質、又はRNA分子の産生を促進する)DNA配列に隣接するように配置されていることを意味する。
【0047】
「プロモーター配列」とは、転写を誘導するのに十分な任意の最小配列を意味する。本発明では、プロモーター依存性遺伝子の発現を調節するのに十分な遺伝死発現用のプロモーターエレメント、又は外部シグナル若しくは因子によって誘導可能なエレメントが含まれ、このようなエレメントは、ネイティブの遺伝子の5’又は3’領域に配置され、又はトランス遺伝子構築物中に工作され得る。
【0048】
「作用可能に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク)が制御配列に結合したときに、遺伝子発現が可能となるように遺伝子及び制御配列が結合されていることを意味する。
【0049】
「候補遺伝子」とは、細工(artifice)によって、細胞中に挿入され、細胞中で発現される任意のDNAを意味する。候補遺伝子には、一部又は全体がトランススジェニック生物に異種(すなわち、外来)の遺伝子が含まれ得、生物の内在性遺伝子と相同な遺伝子を表し得る。
【0050】
「トランス遺伝子」とは、細工によって細胞中に挿入され、その細胞から発達する生物のゲノムの一部となったDNAを意味する。このようなトランス遺伝子には、一部又は全体がトランスジェニック生物に異種(すなわち、外来)の遺伝子が含まれ得、生物の内在性遺伝子と相同な遺伝子を表し得る。
【0051】
「トランスジェニック」とは、細工によって細胞中に挿入され、その細胞から発達する生物のゲノムの一部となったDNA配列を含む任意の細胞を意味する。本明細書で使用する場合、トランスジェニック生物は、一般的には、トランスジェニック真菌細胞である。本発明のトランスジェニック真菌細胞は、一以上のインベイシン遺伝子を含有し得る。
【0052】
「二次代謝産物の増加した産生」とは、対照真菌(例えば、非トランスジェニック真菌)の産生レベルより、本発明のトランスジェニック真菌中の二次代謝産物の産生レベルが多いことを意味する。好ましい態様では、本発明のトランスジェニック真菌中の二次代謝産物レベルは、対照真菌中のレベルより、少なくとも10%多い(より好ましくは、30%又は50%)。二次代謝産物の産生レベルは、慣用法を用いて測定される。
【0053】
「検出可能にラベルされた」とは、分子の存在をマークし同定するための任意の直接又は間接的な手段、例えば、オリゴヌクレオチドプローブ又はプライマー、遺伝子又はその断片、又はcDNA分子若しくはその断片を意味する。分子を検出可能にラベルする方法は、本分野において周知であり、(例えば、32P又は35Sのようなアイソトープによる)放射能ラベル、及び非放射能ラベル(例えば、化学発光ラベル、例えばフルオレセインラベル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
「精製された抗体」とは、少なくとも60重量%であり、天然の状態ではこれに随伴するタンパク質及び天然に存在する有機分子がない抗体を意味する。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が抗体、例えば、後天的耐性ポリペプチド特異的抗体(acquired resistance polypeptide specific antibody)である。精製されたインベイシン抗体(例えば、Inv9又はRim1)は、例えば、組換えで作成した後天的耐性ポリペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィー及び標準的な手法によって取得し得る。
【0055】
「特異的に結合する」とは、インベイシンポリペプチドを認識し、結合するが、天然にInv9又はRim1のようなインベイシンポリペプチドを含んだサンプル、例えば生物学的サンプル中に存在する他の分子を実質的に認識及び結合しない抗体を意味する。
【0056】
「変異」とは、位置指定又はランダム変異誘発の何れかによる配列中の変化を意味する。変異した形態のタンパク質には、点変異及び挿入、欠失、又は転位(rearrangement)が包含される。変異体とは、変異を含有する生物である。
【0057】
本発明は、真菌病原体中の遺伝子発現の制御における化合物の効力を区別し、評価するために使用される様々な標準的スクリーニング法に比べて、長く待ち望まれた利点を有する。例えば、該方法は、高情報量フォーマットでの遺伝的選別によって、真菌の侵入を特異的に活性化又は阻害するペプチド及び化合物を同定することが可能となる。これらの方法によれば、このような因子の作用様式を迅速に描出することも可能となる。さらに、これらの方法は、最初の当たり(hits and leads)から、より効率的な化合物の発展を可能とする反復的な化合物の修飾及び再テストプロセスに向いている。
【0058】
真菌の侵入を阻害する化合物は、真菌のビルレンスも阻止することが多いであろう。これらの化合物は、植物又は動物の真菌性疾病を治療するのに治療的価値を有し得る。真菌の侵入を促進する化合物は、商業的に重要な真菌の二次代謝産物の収率を増加させるのに有用であり得る。
【0059】
本発明は、病原に重要な新規真菌遺伝子を単離するアプローチも提供する。これらの新規遺伝子及びそれらがコードするタンパク質は、さらなる化合物の標的を含む。
【0060】
さらに、本発明は、真菌生物自体の遺伝的操作によって、商業的に重要な二次代謝産物の収率を増加させる手段を与える。これにより、これまでは不可能であった真菌産物の大規模生産が容易になる。さらに、それにより、真菌に接触させ、又は真菌中で発現されたときに、二次代謝産物の産生を活性化することができる「増強物質(potentiators)」(すなわち、化合物及びペプチド)の容易な同定が可能となる。真菌の二次代謝産物の生産を増加し得ることには、少なくとも二つの重要な応用がある。第一に、二次代謝産物の生産の増加により、増加がなければ、実験室で検出できないレベルのこれらの化合物を作り出す真菌から、新規な抗微生物化合物を同定することが容易になるであろう。第二に、臨床的に、又は研究に有用である既存の二次代謝産物の産生を増加させることができるであろう。
【0061】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の好適な態様の記載、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0062】
我々は、真菌の侵入及び偽菌糸体の生育を制御する相互に接続された一連のシグナル伝達カスケードを発見した。我々は、サッカロミセス・セレビシアエから、以前に特徴づけられた遺伝子の新しい役割、侵入及び偽菌糸体の生育を同定した(AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, YPR1)。遺伝学的及び生化学的分析によって、我々は、これらの遺伝子、及び侵入を制御することが知られた他の遺伝子を一連の並列的シグナル伝達カスケードに位置付けることができた。下表1は、サッカロミセス・セレビシアエの侵入及び/又は偽菌糸体の生育を制御する、我々が同定した遺伝子のリストである。これらの遺伝子は、サッカロミセスゲノムデータベースによって表記される対応する配列名で相互参照される。これらの遺伝子の配列及びそれらの転写制御エレメント候補もサッカロミセスゲノムデータベースでみることができる(http://genome−www.stanford.edu/ Saccharomyses/)。
【表1】
【0063】
我々は、これらのシグナル伝達カスケードの「樹形図(wiring diagram)」を構築し、これらの遺伝子の多くが、少なくとも、一部は、単一の遺伝子FLO11の制御を介して、真菌の侵入を直接制御することを示した。単一の標的に収束するシグナルの同定により、動物又は植物宿主の何れかで真菌の病原を阻害するのに有用な治療因子を評価し、同定するようにデザインされた改良スクリーニング法が容易となった。さらに、我々の発見は、様々な新規真菌ビルレンス因子を同定するのに有用なスクリーニング法の基礎を与える。さらに、このようなビルレンス因子の同定は、抗病原体として使用するための標的化された試薬の開発を促進する。さらに、改良されたスクリーニング法は、重要な真菌の二次代謝産物の産生を増加させる因子を同定するための基礎を与える。
【0064】
以下の実験例は、説明を意図したものであり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することを意図したものではない。
偽菌糸体の生育及び侵入に関与する遺伝子を単離するためのスクリーニング
以下、我々は、一連のシグナル伝達カスケードが、協働して作動し、偽菌糸体の生育、及び固体培地、サッカロミセス・セレビシアエ中への一倍体の掘り込みを制御するという実験的な証拠を記載する。
【0065】
高グルコースと低窒素を含有する固体培地上で、サッカロミセス・セレビシアエの二倍体細胞は、侵入糸(invasive filament)を形成する伸長した細胞の鎖からなる偽菌糸体を形成する(Gimeno et al., Cell 1992, 68:1077−1090)。リッチな培地上では、一倍体細胞は、「掘り込み(digging)」と称されている侵入性の生育を示すが、二倍体細胞は示さない(Roberts and Fink, Genes Dev. 1994, 8:2974−85)。偽菌糸体の生育と一倍体の侵入性生育(invasive growth)の両者に行き着く栄養的なシグナルは、幾つかの経路を含んでいる。これらの動態に関与するサッカロミセス・セレビシアエの遺伝子を単離するために、我々は、偽菌糸体生育又は一倍体の侵入の何れかが欠損した変異体を求めて一連のスクリーニングを行った。これらのスクリーニングを以下に記載する。
スクリーニング1.偽菌糸体生育中の侵入を喪失した変異体の同定
酵母の突然変異導入とスクリーニングは、MoschとFinkに記載されているように実施した(Genetics 1997, 145:671−684)。簡潔に述べれば、低窒素SLAD寒天上で生育させたときに寒天に侵入できないトランスポゾンで誘導した変異体を探すための直接的な視覚的スクリーニングは、偽菌糸体生育が可能なMATa/α一倍体株で行った。二次スクリーニングによって、長い細胞を作り、侵入以外の偽菌糸体生育の全側面が可能である変異体のサブセットを同定した。
スクリーニング2.掘り込み欠損変異体の同定
(Roberts and Fink、上記)に記載されたプレート洗浄アッセイを用いて、一倍体の侵入性生育が欠損したサッカロミセス・セレビシアエの変異体を同定した。MoschとFink(Genetics 1997, 145:671−84, and Burns et al., Genes Dev. 1994 8:1087−105)の記載に従って構築した、トランスポゾンで変異誘発した一倍体をYPD上に播種し、よく分離した単一コロニーを形成せしめた。3〜5日、30℃で生育させた後、プレートをレプリカプレーティングして、マスタープレートの表面を水流で洗浄した。侵入欠損変異体のコロニーは、完全に(又はほとんど完全に)寒天から洗浄されたのに対して、野生型株の多くの細胞は、洗浄後も寒天中に残存していた。続いて、侵入欠損表現型を示すコロニーのレプリカから変異株を摘み取った。
スクリーニング3.高侵入性変異体の同定
トランスポゾンで変異誘発した一倍体をYPDに播種し、上記スクリーニング2に記載したように生育させた。野生型コロニーよりも「粗く」見える表面形態を有するコロニーを選び出した−粗いコロニー表面は、高侵入性の指標である。続いて、二次試験により、野生型対照に比べて、洗浄後に、より多くの細胞が寒天中に残存している変異体を同定した。このような変異体は、高侵入性変異体として保有された。
スクリーニング4.INV経路に特異的に影響を与える変異の同定
該スクリーニングは、偽菌糸体の生育に必要とされる他の特徴付けられた遺伝子に影響を与える変異とは異なり、inv変異体は、野生型変異体に比べて、漂白剤カルコフラワー(calcoflour)に対してより耐性があるという我々の観察に基づいていた。さらに、全ての侵入欠損変異体に当てはまることであるが、inv一倍体は、YPD寒天上で生育させたときに、野生型コロニーに比べて、より滑らかに見えるコロニー表面形態を示した。YPD寒天上で生育させたときに、滑らかなコロニー形態を示すトランスポゾンで誘導したカルコフラワー耐性変異体の集合体も同定された。
【0066】
トランスポゾン挿入によって誘導された全ての変異について、慣用法により、トランスポゾン挿入部位に隣接するゲノムcDNAを単離し、配列決定された。続いて、影響を受けた遺伝子を同定するために、隣接DNAのヌクレオチド配列をサッカロミセス・セレビシアエのゲノム配列と比較した。
スクリーニング5.侵入欠損変異体の高コピー抑制因子の同定
酵母ゲノムDNAを含有するプラスミドのライブラリーを侵入欠損(Inv−)二倍体whi3株に形質転換した。これらのライブラリープラスミドは、
高コピー数で維持を促進する複製起点を含有していた(2μ起点)。選択培地(SC−URA)上に形質転換体を播種し、1〜2日間プレートをインキュベートした後、プレート洗浄アッセイを行った。Inv表現型を抑圧した高コピープラスミドは、合成培地中への一過性の侵入性生育を促進した。この生育は、プレート洗浄アッセイ後に、寒天中に残存した小さな窪みのコロニーとして同定された。MCM1とPHD2を含む、幾つかの遺伝子が、whi3変異体のInv−表現型の高コピー抑制因子として同定された。続いて、Phd2が欠失した、mcm1部分的機能喪失変異体の分析によって、これらの遺伝子は、侵入とFLO11発現を制御することが実証された。
【0067】
上記スクリーニングから、我々は、偽菌糸体生育又はサッカロミセス・セレビシアエの一倍体の侵入を制御する60の遺伝子を同定した。インベイシンと呼ばれる、これらの遺伝子は、さらに、少なくとも6つのシグナル伝達カスケードに分類されてきた。変異又は過剰発現後に生じた表現型に基づいて、これらの遺伝子は、さらに、「真菌侵入促進」又は「真菌侵入阻害」として分類することができる。例えば、AFL1の完全な欠失を含有するサッカロミセス・セレビシアエ株は、野生型株が糸を形成し、又は侵入する条件下で、糸の形成、又は侵入がなく、通常は、偽菌糸体生育又は一倍体の掘り込み中に侵入を誘導する条件下で、侵入が観察されない。シグナル伝達カスケードの例は、以下に記載されている。
【0068】
寒天の侵入に必要とされるこのシグナル伝達経路を含む12のサッカロミセス・セレビシアエ遺伝子が、同定、クローニング、特性決定された。その活性が、タンパク分解によって制御される転写因子をコードするJNV8は、該経路の最も下流に位置するメンバーである。他の12のメンバー(INV1, INV3, INV5, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, INV16, 及びSTP22)は、全て、Inv8のタンパク分解制御に必要とされる。図1に示されているように、これまでに調べられた他の全てのインベイシン遺伝子の変異と異なり、これらの遺伝子の変異は、Inv8のプロセッシングをブロックする。INVメンバーの一つ、Inv14は、カルパインファミリーの細胞質システインプロテアーゼである。このシグナル伝達経路が、真菌で保存されており、他の真菌で、二次代謝産物及び細胞外基質を分解し得る分泌酵素の産生を制御できることは驚くべきことであった。サッカロミセス・セレビシアエ遺伝子の相同体は、例えば、アスペルギルス・ニードランス(ここでは、一群の類似した遺伝子が、細胞外pHに応答して多数の分泌異化酵素の転写を制御する);ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(多数の分泌アルカリプロテアーゼの転写制御因子として);ペニシリウム・クリソジェナムとアスペルギルス・ニガー(アスペルギルス・ニードランスに見出されたのと類似の役割を有する)に見出されている。アスペルギルス・ニードランスとペニシリウム・クリソジェナムでは、該経路は、直接ペニシリンの産生を制御する(ペニシリンの産生は、活性化された形態の転写因子によって制御される)。
【0069】
これらのシグナル伝達カスケード他の更なるメンバーは、様々な標準的手法を通じて同定される。第一に、変異株の表現型のエンハンサーとサプレッサーは、当業者に公知の標準的な手法を用いて単離される(Ausubel、上記)。第二に、経路のメンバーと相互作用するタンパク質は、酵母ツーハイブリッド法を用いて単離される(Fields and Song, Nature 1989, 240:245−246; Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991, 88:9578−9582; Brent and Finley, Annu. Rev. Genet. 1997, 31:663−704)。一つの例では、Aキナーゼの触媒サブユニットTpk2と特異的に相互作用し、関連タンパク質Tpk1及びTpk3とは相互作用しないタンパク質が同定され、偽菌糸体の発育に重要であることが示された。SLAD(低窒素培地)上で生育された二倍体tpk2株は、偽菌糸体の発育が完全に欠損しているのに対して、tpk3二倍体株は、線状化が非常に増大していた(図2B)。同様に、一倍体tpk2変異体は、侵入性生育が欠損しており、tpk3変異体は、高侵入性であった(図2A)。tpk1変異体は、一倍体と二倍体の何れとしても、野生型株から区別できなかった。tpk2 tpk3変異体は、tpk2一重変異体と同じ表現型を有していたので、tpk3変異体の強調された線状化と侵入表現型には、機能的なTpk2が必要であった。Tpk2は、偽菌糸体の生育のみに必要とされるようなので、我々は、Tpk2と特異的に相互作用するタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドスクリーニングを使用した。そのままの状態のTPK2のオープンリーディングフレームをGal4 DNA結合のコーディング配列に融合し、Gal4転写活性ドメインのコーディング配列に融合した酵母ゲノム断片のライブラリーをスクリーニングするのに使用した。ade−株のアデニン非依存性生育をもたらすGAL4−ADE2レポーターの活性化を、Gal4 DNA結合ドメイン:Tpk2融合体とGal4活性化ドメインに融合されたTpk2相互作用タンパク質との相互作用に対する予備的な証拠とした。次に、Gal4 DNA結合ドメインに融合されたTpk1、Tpk2、Tpk3、又はDph1を用いて、陽性クローンに対してツーハイブリッドアッセイを再びテストした。ジフタミド(diphthamide)の生合成に必要とされる遺伝子、DPH1、PKAイソフォームに特異的ではない相互作用を制御するために使用した。
【0070】
二つのクラスのタンパク質が、ツーハイブリッドアッセイでTpk2と相互作用した:第一のクラスは、無差別であり、Tpk1、Tpk2、及びTpk3と相互作用した:第二のクラスは、選択的であり、Tpk2と優先的に相互作用した(図3)。三つの全ての触媒サブユニットと相互作用したタンパク質の一つは、以前Tpk1、Tpk2、及びTpk3に結合することが示された、PKAの負の制御サブユニットBcy1である。第二のクラスは、ヘリックス−ターン−ヘリックスDNA結合モチーフを含有する一群の5つの酵母タンパク質(Mga1、SflI、Hsf1、Skn7、及びHms2)に属する転写因子候補であるSfl1とMga1からなる。Skn7以外は全て、少なくとも一つのコンセンサスPKAリン酸化部位([R/K][R/K]X[S/T])を含有する:Sfl1は五つ、Mga1は二つ、Hsf1は四つ、及びHms2は一つ有する。
【0071】
我々は、MGA1とSFL1のオープンリーディングフレームを共に欠失させた。sfl1変異体は、劇的な表現型を有していた:sfl1の一倍体株は、非常に房状(flocculent)であり、高侵入性であったのに対して、sfl1の欠失がホモ接合である二倍体は、非常に線状化が増強されていた(図4A−4B)。我々は、tpk2の偽菌糸体欠損が、Sfl1機能の喪失によってブロックされるかどうかを見るために、sfl1 tpk2二重変異体を構築した。sfl1 tpk2二重変異体は、sfl1一重変異体と同一の表現型を有しており、Sfl1が、Tpk2の下流で作用することが示唆された(図4A−B)。我々は、mga1ヌル変異変異体では、偽菌糸体欠損形成に劇的な欠損を検出することができなかった。
【0072】
同様のツーハイブリッドスクリーニングは、本明細書に記載された任意のシグナル伝達カスケードのさらなるメンバーを同定するためにも使用することができる。次に、変異株又は過剰発現の構築のような当業者に公知の様々な手法を用いて、候補遺伝子を分析する。Inv8又はSfl1のような菌体シグナル伝達経路中の遺伝子の転写標的の同定は、細胞外基質の分解又は侵入に直接必要とされる遺伝子産物を同定するために使用される。例えば、Inv8転写標的の同定は、寒天への侵入に直接必要とされる遺伝子産物を同定するのに有用である。このような標的遺伝子の同定は、INV経路の優れたレポーターとなり、非プロセッシングvsタンパク分解されたInv8タンパク質の相対活性を明らかにし、Inv8が、標的遺伝子を活性化し、抑制する機序を決定することを可能にする。あるいは、例えば、サッカロミセス・セレビシアエの表現型の相補性をスクリーニングすることによる、他の真菌中の相同体の同定は、抗生物質、抗高コレステロール血症剤、免疫抑制剤、又は抗真菌剤のような二次代謝産物の産生を調節する真菌の遺伝子産物を同定するために実施することができる。
【0073】
本明細書に記載した研究に基づけば、新規抗真菌治療薬を発見し、開発すること;新規真菌二次代謝産物を同定し、商業化すること;現在入手できる真菌産物の収量を改善すること;および未知の真菌に挑戦するための手法と産物を開発することが可能となる。シグナル伝達機構は、真菌間で保存されているものと思われる。従って、本明細書に記載した発見に基づけば、これらの各シグナル伝達カスケードは、抗真菌薬及び/又は二次代謝産物の制御の標的となる。これらの中の何れかの遺伝子の変異した対立遺伝子を担持するサッカロミセス・セレビシアエ株は、アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマ(Phaffia rhodozyma)のような重要な病原性真菌及び商業的に重要な真菌からの相同体を含む、真菌の相同体であって、変異した表現型を相補し、又は救出し得る相同体をスクリーニングするために使用できる。これらの株は、救出された生物が、増加した生育又は生存をし得るように、これらの生物は、本明細書に記載したセレクションをベースとするスクリーニングを用いて単離するように、遺伝的に修飾することができる。セレクションをベースとするスクリーニングは、高情報量を可能にし、このため、現在使用されているアプローチよりもさらに迅速に遺伝子を単離するアプローチを与える。さらに、変異した表現型を相補する遺伝子のスクリーニングは、機能的な特性を共有するが、ヌクレオチド又はアミノ酸レベルで高度の類似性を含有しない遺伝子の単離を可能とする。
インベイシン相同体の単離
任意の真菌細胞は、インベイシン相同体の分子クローニングの核酸源として用いることができる。インベイシン相同体(例えば、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1)の単離には、真菌の侵入の促進又は阻害を伴う特性又は活性を示すポリペプチドをコードするDNA配列の単離が含まれる。本明細書に記載されているインベイシン遺伝子及びポリペプチドの配列に基づき、当業者に周知の標準的な戦略と手法を用いて、様々な真菌(例えば、カンジダ、アスペルギルス、ペニシリウム、ムコール、モナスカス、トリコデルマ、フサリウム、トリポクラダム、アクレモニウム、クリプトコッカス、ウスティラゴ、マグネポルス(Magneporthe)、アクレモニウム、ヤロウィア、及びファフィア)から、さらなるインベイシン相同体の制御及びコーディング配列を単離することが可能となる。
【0074】
ある例では、核酸ハイブリダイゼーションスクリーニングの慣用的スクリーニング法とともに、本明細書に記載された任意のインベイシン配列を使用してもよい。このようなハイブリダイゼーション手法とスクリーニング操作は、当業者に周知であり、例えば、「Benton and Davis, Science 1977, 196:180; Grunstein and Hogness, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 1975, 72:3961; Ausubel et al., 1997, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York; Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York;及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York」に記載されている。ある例では、カンジダ・アルビカンスのRIM1 cDNA(本明細書に記載されている)の全部又は一部は、カンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子と配列同一性を有する相同体を見出すために、組換え真菌DNAライブラリー(例えば、アスペルギルス・ニードランスから調製された組換え発現ライブラリー)をスクリーニングするためのプローブとして使用され得る。ハイブリダイジングしている配列は、以下に記載されている方法に従って、プラーク又はコロニーハイブリダイゼーションによって検出される。
【0075】
あるいは、Rim1ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を用いて、
Rim1 “degenerate”オリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、あるアミノ酸配列のための全ての可能なコーディング配列の混合物)を含むRim1特異的オリゴヌクレオチドプローブを容易にデザインし得る。これらのオリゴヌクレオチドは、Rim1配列のDNAストランド及び任意の適切な一部の配列に基づき得る。このようなプローブをデザインし、調製するための一般的な方法は、例えば、Ausubelら(上記)とBerger及びKimmel(上記)に記載されている。これらのオリゴヌクレオチドは、RIM1相補配列にハイブリダイズし得るプローブとして、又は様々な増幅技術、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング戦略用のプライマーとしてのそれらの使用の何れかを通じて、RIM1相同体の単離に有用である。所望であれば、様々なオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせを組換えDNAライブラリーのスクリーニング用に使用し得る。オリゴヌクレオチドは、本分野で公知の方法を用いて検出可能にラベルされ得、組換えDNAライブラリーからのフィルターレプリカをプローブするために使用し得る。組換えDNAライブラリーは、本分野で周知の方法、例えば、Ausubelら(上記)に記載されているような方法に従って調製される。又は、それらは、市販の採取源から得られ得る。
【0076】
該アプローチの一例では、75%を超える同一性を有する相同なRIM1配列は、高ストリンジェンシー条件を用いて検出又は単離される。高ストリンジェンシー条件には、約42℃、及び約50%のホルムアミド、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、1% SDS、2×SSC、10%デキストランサルフェートでのハイブリダイゼーション、約65℃、約2×SSC、及び1% SDSでの第一の洗浄後の約65℃、及び約0.1×SSCでの第二の洗浄が含まれ得る。あるいは、高ストリンジェンシー条件には、約42℃、及び約50%のホルムアミド、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、0.5% SDS、5×SSPE、1×デンハルト(Denhardt’s)でのハイブリダイゼーション後の、室温、2×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄、及び55〜60℃、0.2×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄が含まれ得る。
【0077】
別のアプローチでは、本明細書に記載されているカンジダ・アルビカンスのRIM1遺伝子と約25%以上の配列同一性を有するRIM1相同体を検出するための低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件には、例えば、約42℃、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、1% SDS、2×SSC、及び10%デキストランサルフェート(ホルムアミドなし)でのハイブリダイゼーション、及び約37℃、6×SSC、約1% SDSでの洗浄が含まれる。あるいは、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、約42℃、及び約40%のホルムアミド、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、0.5% SDS、5×SSPE、1×デンハルトで、その後室温、2×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄、及び室温、0.5×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄で実施し得る。これらのストリンジェンシーの条件は、例示である;他の適切な条件は、当業者によって決定し得る。
【0078】
所望であれば、慣用法を用いて、RIM1転写物の存在又は不存在を決定するために、任意の真菌(例えば、本明細書に記載されている真菌)から単離した全RNA又はポリ(A+)RNAのRNAゲルブロット分析を使用し得る。一例として、アスペルギルス・ニードランスRNAのノーザンブロットは、標準的な方法に従って調製され、50%のホルムアミド、5×SSC、2.5×デンハルトの溶液、及び300μg/mLのサケ精子DNAを含有するハイブリダイゼーション溶液中にて、37℃で、RIM1遺伝子断片を用いてプローブされる。一晩ハイブリダイゼーションを行った後、該ブロットを10分間、各回1×SSC、0.2% SDSを含有する溶液中において、37℃で二度洗浄する。ブロットのオートラジオグラムは、真菌RNAサンプルにRIM1ハイブリダイジングRNAが存在することを実証するために使用される。ハイブリダイズしているバンドは、この真菌が、C.アルビカンスRIM1相同体を発現していることの指標とされる。このハイブリダイズしている転写物の単離は、標準的なcDNAクローニング手法を用いて行われる。他の真菌の侵入は、類似の様式で評価され、クローニングし得る。
【0079】
上述のように、インベイシンオリゴヌクレオチド(例えば、カンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子から調製したオリゴヌクレオチド)は、例えば、PCRを用いた増幅クローニング戦略でのプライマーとしても使用し得る。PCR法は、本分野において周知であり、例えば、「PCR technology, Erlich, ed., Stockton Press, London, 1989; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds., Academic Press, Inc., New York, 1990; 及びAusubel et al.(上記)」に記載されている。プライマーは、必要に応じて、例えば、(本明細書に記載されているような)増幅された断片の5’及び3’末端の適切な制限部位を含有せしめることによって、適切なベクターに増幅された産物がクローニングされるようにデザインされる。所望であれば、RIM1配列は、PCR「RACE」手法、すなわち「Rapid Amplification of cDNA Ends(例えば、Innis et al.(上記)参照)」を用いて、単離し得る。この方法により、カンジダ・アルビカンスのRIM1配列に基づくオリゴヌクレオチドプライマーは、3’及び5’方向に向けられ、重複するPCR断片を作成するために使用される。これらの重複する3’と5’末端RACEの産物は、元の完全長cDNAを産生するために結合される。該方法は、Innisら(上記);及びFrohmanら, Proc. Natl. Acad. Sci, USA 85:8998, 1988に記載されている。RIM1相同配列を増幅するのに有用なオリゴヌクレオチドプライマーの例には、
が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
上記各配列において、Nは、A、T、G、又はCである。
【0081】
あるいは、任意の真菌cDNA又はcDNA発現ライブラリーは、本明細書に記載された標準的方法に従って、インベイシン変異体(例えば、本明細書に記載されているRIM1及びAFL1変異体)の機能的な相補によってスクリーニングされ得る。
【0082】
配列のインベイシンポリペプチドとの関連性の確認は、機能的相補性アッセイ、及び相同体及び発現された産物の配列比較を含む様々な慣用法によってなし得るが、これらに限定されない。さらに、遺伝子産物の活性は、本明細書に記載された手法の何れか、、例えば、そのコードされた産物の機能的又は免疫学的特性に従って、評価し得る。
【0083】
一度インベイシン相同体が同定されれば、それは、標準的な方法にしたがってクローニングされ、標準的な方法に従って、真菌発現ベクターの構築に使用される。
相互作用するポリペプチド
インベイシンタンパク質配列の単離は、インベイシンタンパク質と作用するポリペプチドの同定も促進する。このようなポリペプチドをコードする配列は、任意の標準的なツーハイブリッドシステムによって単離される(例えば、Fields et al., Nature 1989, 240:245−246; Yang et al., Science 1992, 257:680−682; Zervos et al., Cell 1993, 72:223−232)。例えば、Tpk2配列の全部又は一部は、(GAL4又はLexA DNA結合ドメインのような)DNA結合ドメインに融合され得る。この誘導タンパク質が、それ自身、適切なDNA結合部位を有するレポーター遺伝子(例えば、lacZ又はLEU2レポーター遺伝子)の発現を活性化しないことを確定した後に、該融合タンパク質を相互作用の標的として使用する。続いて、活性化ドメイン(例えば、酸性活性化ドメイン)に融合されたタンパク質と相互作用する候補を宿主細胞中でTpk2融合体と同時発現させ、それらがTpk2配列と接触し、レポーター遺伝子の発現を刺激する能力によって、相互作用するタンパク質を同定する。このスクリーニング法を用いて同定されたTpk2と相互作用するタンパク質は、後天的な耐性シグナル伝達経路に含まれるタンパク質のよい候補となる。該方法の例は、本明細書に記載されている(下記)。
サッカロミセス・セレビシアエの変異を相補する真菌の相同体の単離
サッカロミセス・セレビシアエ変異株の使用の一つは、サッカロミセスセレビシアエの変異を相補できる他の真菌の相同体をスクリーニングすることである。ここで、我々は、このようなアプローチの効果に対する証拠を与える。我々は、INV8のC.アルビカンスの相同体(RIM1(図5A;配列番号3)と表記される)を同定した。完全長のRIM1が、サッカロミセス・セレビシアエinv8株中のプラスミドから発現されると、細胞は、まだinv8表現型を示していた。しかしながら、RIM1の相同体(サッカロミセス・セレビシアエのINV8、ヤロウィワ・リポリティカのRIM101、及びアスペルギルス・ニードランスのpacC)は、活性化のためにタンパク分解によるプロセッシングを必要とする。サッカロミセス・セレビシアエのプロテアーゼは、カンジダ・アルビカンスのRim1(図5A;配列番号4)を切除することができないようである。これを支持するように、プロテアーゼ切断部位の直前で末端切断されたRIM1遺伝子は、サッカロミセス・セレビシアエのinv8表現型を相補することが見出された(図5B)。これによれば、Rim1プロテアーゼは、カンジダ・アルビカンス中に存在するようであり、該プロテアーゼは、INV14の相同体と考えられるであろう。サッカロミセス・セレビシアエの侵入と他の真菌による二次代謝産物の産生との相関という我々の発見に基づけば、全てではないにしても、多くのサッカロミセス・セレビシアエINV遺伝子が、様々な真菌に相同体を有するものと思われる。実際、INV5、INV9及びINV4は、それぞれ、アスペルギスル・ニードランス遺伝子のpalA、palF、及びpalBの産物と高いアミノ酸類似性を有するタンパク質をコードすると予想される。我々は、INV9近傍のゲノム領域の公開された配列が、幾つかの誤りを含有していることを見出した。INV9の正しいDNA配列(配列番号5)と予想されるポリヌクレオチドの配列(配列番号6)は、図6A−Bに示されている。INV5/palA、INV9/palF、及びINV14/palBは、それぞれの生物中でInv8/PacCを活性化させるのに必要とされる。このようにこれらの遺伝子は、構造的及び機能的に保存された遺伝子である。さらに、INV9の相同体、INV11及びINV13は、部分的に配列決定されたカンジダ・アルビカンスの遺伝子のリストに見出される(http://alces.med.umn.edu.)。真菌スキゾサッカロミセス・ポンベのINV1の相同体(GENBANK locus:SPBC3B9)、INV13の相同体(GENBANK locus: SPBC4B4)、及びINV15の相同体(GENBANK locus: SPACC1B3)と同様に、真菌クルベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)のINV11の相同体(GENBANK locus: KLAJ9848)も部分的に配列決定されている。STP22の相同体(GENBANK locus; SCZ86109)は、真菌サッカロミセス・カールスベルジェンエシス(Saccharomyces carlsbergenesis)において同定されている。INV経路の12のクローニングされた遺伝子のうち、六つ(INV5、INV8、及びINV12−15)は、真菌界の外に、明白な構造的相同性を有している。病原性の真菌、カンジダ・アルビカンス、及び重要な二次代謝産物であるペニシリンを産生する真菌、アスペルギルス・ニードランスを含む様々な真菌にINV相同体が存在することは、様々な真菌の病原および二次代謝産物の産生に影響を与えるために、これらの遺伝子及び/又はそれらの活性を操作することの潜在的な有用性を強調するものである。さらなる相同体は、サッカロミセス・セレビシアエの変異株中で真菌のcDNA又はゲノムライブラリーから遺伝子を発現させ、変異表現型が相補又は増強されている形質転換体を選択することによって単離することができる。
侵入におけるそれらの役割を決定するための他の真菌遺伝子の変異生成
任意の真菌種から、侵入に関与するサッカロミセス・セレビシアエ・遺伝子の任意の特異的な相同体を単離した後、我々は、病原又はその真菌による侵入における遺伝子の役割を決定することができる。侵入を活性化又は増加させる任意のこのような遺伝子は、ビルレンスも活性化又は増加させるであろう。これらの遺伝子の機能の欠失又は不活化は、その真菌株のビルレンスを減少させるであろう。以下の遺伝子欠失の例は、前節からのカンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子を利用する。
【0084】
我々は、カンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子が、カンジダ・アルビカンス中での侵入性の菌糸の成長に必要であるかどうかをテストした。ホモ接合のrim1/rim1欠失を作った。カンジダ・アルビカンスのrim1/rim1変異体は、寒天上、37℃、血清の存在下で侵入性の菌糸を形成しないのに対して、非変異カンジダアルビカンスは侵入性の菌糸を形成する(図7)。変異した株のビルレンスは、様々な動物モデルを用いて決定することができる。全身感染のモデルの一つを一例として記載する。正常な「野生型」株と比較したカンジダの変異株の相対的なビルレンス(感染性)をテストするために、変異及び正常カンジダ細胞を別々の健康なマウスの尾静脈の中に注射する。次に、2週間から1月の間、マウスを観察する。変異したカンジダによって死んだマウスと正常なカンジダによって死んだマウスとの相対数が、ビルレンス指標を与える(Lo et al., Cell 1997, 90: 939−949参照)。さらに、侵入を阻害し、又は減少する任意の真菌遺伝子も二次代謝産物の産生を阻害又は減少させる可能性がある。このような遺伝子のうちの何れかの機能を欠失又は崩壊すれば、二次代謝産物の産生が増大するであろう。形質転換及び相同的組換え手法を含む遺伝子工学的な方法が、多くの真菌で実施されている(Punt and vqn den Hondel, Methods Enzymol. 1992, 216:447−457; Timberlake and Marshall, Science, 1989, 244: 1313−1317; Fincham, Microbiol Rev. 1989, 53: 148−170)。現在、遺伝子欠失手法は、カンジダ・アルビカンス(Fonzi and Irwin, Genetics 1993, 134:717−728)、ウスティラゴ・メイディス(Fotheringham and Hollman, Mol. Cell Biol. 1989, 9:4052−4055; Bolker et al., Mol. Gen. Genet. 1995, 248:547−552)、ヤロウィア・リポリティカ(Neuveglise et al., Gene 1998, 213: 37−46; Chen et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 1997, 48:232−235; Cordero et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 1996, 46:143−148)、アクレモニウム・クリソジェナム(Skatrud et al., Curr. Genet. 1987, 12:337−348; Walz and Kuck, Curr. Genet. 1993, 24; 421−427)、マグナポルセ・グリージー(Magnaporthe grisea)(Sweigard et al., Mol. Gen. Genet. 1992, 232: 183−190);Kershaw et al., EMBO J. 1998, 17: 3838−3849)、ヒストプラズマ・カプシュレイタム(Histoplsma capsulatum)(Woods et al., J. Bacteriol. 1998, 180:5135−5143)、及びアスペルギルス種(Miller et al., Mol. Cell Biol. 1985, 5: 1714−1721; de Ruiter−Jacobs et al., Curr. Genet. 1989, 16: 159−163; Gouka et al., Curr. Genet. 1995, 27: 536−540; van den Hombergh et al., Mol. Gen. Genet. 1996, 251: 542−550; D’Enfert, Curr. Genet. 1996, 30:76−82; Weidner et al., Curr. Genet. 1998, 33:378−385)を含む多くの真菌で実施されているが、これらに限定されない。
【0085】
この遺伝子欠失手法は、最強の表現型を与える真菌の相同体及び侵入特異的な相同体の選別を可能とする。遺伝子破壊の幾つかは、非病原性真菌をもたらすであろう。これらの遺伝子及びコードされるタンパク質は、化合物で標的とするための優れた候補である。他の破壊は、高侵入性真菌をもたらすであろう。アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマのような真菌中に存在するこれらの遺伝子の変異は、βラクタム抗生物質及びそれらの誘導体又はスタチンのような抗高コレステロール血症剤等の商業的価値のある二次代謝産物の産生を増加せしめるはずである。
二次代謝産物の産生を増加するための系
真菌は、彼らの生存に好ましい環境を作り出すために二次代謝産物を分泌する。これらの代謝産物は、極めて多くの商業的用途を有することも示されている。我々は、二次代謝産物の産生と侵入の制御との間に相関を発見した。ペニシリン産生の制御に関与するアスペルギルス・ニードランスのpacC遺伝子は、侵入に役割を有する相同体がサッカロミセス・セレビシアエとカンジダ・アルビカンスの両者に存在する。ペニシリン産生の制御に関与するアスペルギルス・ニードランスの遺伝子palA、palD、及びpalFも、侵入に必要とされる相同体がサッカロミセス・セレビシアエに存在する。さらに、上述のように、我々は、カンジダ・アルビカンスにpacCの相同体を同定し(RIM1)、これも侵入に必要であることを示した。同様に、サッカロミセス・セレビシアエによる基質への侵入を誘導する栄養状態の多くも、アスペルギルス・ニードランスに増加したペニシリンの産生をもたらす。例えば、限られた量のアンモニアの存在下における生育は、サッカロミセス・セレビシアエにおける偽菌糸体の生育とアスペルギルス・ニードランスにおけるペニシリンの産生の両者に重要である(Gimeno et al, 上記、及び、Brakhage. A. A., Micro. Mol. Biol. Rev. 1998, 62:547−585参照)。我々が、侵入及びFLO11プロモーターからの発現(下記)を制御することを示した遺伝子の多くは、アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマのような真菌中で二次代謝産物の産生も制御するであろう。この知見は、その多くが、商業的に価値が高い、より多量のこれらの二次代謝産物を産生する真菌株を作り出すために使用することができる。
【0086】
遺伝学的な操作で二次代謝産物の産生を増加させる方法の一例は、真菌の侵入阻害遺伝子HOG1を利用することである。我々は、HOG1が、サッカロミセス・セレビシアエにおける一倍体の侵入と偽菌糸体の生育の負の制御因子であることを示した。サッカロミセス・セレビシアエのHOG1を変異又は欠失させると、野生型株が侵入し得ない条件で、基質に侵入するトランスジェニック株が得られる。アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマのような真菌中のHog1タンパク質の活性を減少させると、シグナル伝達経路の脱抑制を介して、二次代謝産物の産生の増加をもたらす。タンパク質活性を減少させるための様々な方法が存在する。一つの方法は、本明細書に記載したように、真菌に適用し得ることが知られている相同的組換え手法を用いて、HOG1遺伝子全体又はその一部を欠失させることである。どうように、遺伝子の変異誘発は、減少したタンパク質活性ももたらし得る。別の方法は、直接又は間接に、HOG1の発現又はHog1の活性を阻害する遺伝子又は化合物を適用することであろう。これらの遺伝子及び化合物は、本明細書に記載されたスクリーニング手法を用いて単離することができる。HOG1に関して記載した方法は、同様に、GRR1, IRA1, BEM2, TPK3, SFL1, SSD1, RIM15, CDC55, SWI4及びELM1を含む任意の真菌の抗侵入遺伝子に適用できるが、これらに限定されない。
【0087】
産生を増加させるための第二の機構は、INV8の相同体又は他の任意の真菌侵入促進遺伝子のような真菌侵入促進遺伝子の活性を増加させることである。一つの方法は、構成的に活性なプロモーターからこのような遺伝子を発現させることである。アスペルギルス・ニードランスのgpdA遺伝子、アクレモニウム・クリソジェナムのipnS遺伝子、又はペニシリウム・クリソジェナムphoA遺伝子の何れかから得たプロモーター配列からの遺伝子の発現を誘導する発現システムのような発現システムは、当業者に周知である(Skatrud et al., Curr. Genet. 1987, 12:337−348; Kolar et al, Gene 1988, 62:127−134; de Ruiter−Jacobs et al., Curr. Genet. 1989, 16: 159−163: Smith et al., Gene 1988, 114:211−216; Graessle et al., Appl. Environ. Microbiol. 1997, 63:753−756)。
【0088】
真菌の侵入促進遺伝子の活性を増加させるための別の方法は、活性化変異の導入を介して、又は活性の増加をもたらす他の遺伝子への融合を作出することにより、遺伝的に真菌侵入遺伝子を変化させることである。融合タンパク質は、好ましくは、構成的に活性である。第三の方法は、コードされたタンパク質の活性が増加するように真菌の侵入遺伝子を変異させることである。例えば、サッカロミセス・セレビシアエのInv8とその相同体PacCは、転写活性特性にタンパク分解による切断を必要とする。我々は、この切断には、Inv8の核への局在化が必要なことを示した。Inv8を末端切断することができないと、Inv8の細胞質への蓄積をもたらす。これらのデータは、Inv8とその相同体の活性化が、タンパク質が核内に存在するその標的遺伝子に接近できるようになった結果であろうと示唆している。このように、プロテアーゼ切断部位のコーディング配列の上流へのストップコドンの導入によって引き起こされるInv8又はPacCの末端切断は、構成的に活性な転写因子を作り出すであろう。別の方法は、直接又は間接に、INV8の発現又はInv8の活性を増加させる化合物を適用することである。これらの化合物は、本明細書に記載したスクリーニング手法を用いて単離し得る。サッカロミセス・セレビシアエのINV8は、ヤロウィア・リポリティカのRIM101、並びにアスペルギルス・ニードランス、アスペルギルス・ニガー及びペニシリウム・クリソジェナムのpacCと相同である。pacCは、直接ペニシリンの産生を制御することが知られている。ペニシリンの産生は、活性化された形態の転写因子によって制御される。このように、記載した何れかの方法を用いてPacC活性を増加させれば、ペニシリン産生の増加がもたらされるであろう。
FLO11 プロモーターは、真菌侵入のレポーターである
細胞表面タンパク質Flo11は、侵入性生育と線状生育(filamentous growth)に必要であることが報告されている(Lambrechts et al., 1996; Liu et al., 1996; Lo and Dranganis, 1996; Lo and Dranganis, 1998; S. cerevisiae var. diataticusでは、Flo11は、Muc1と呼ばれている)。FLO遺伝子は、細胞−細胞接着に必要とされるタンパク質をコードする(Teunissen and Steensma, 1995)。四つのプロテインキナーゼ(Ste20, Ste11, Ste7及びKss1)が関与するMAPキナーゼ経路は、転写因子Ste12/Tec1の活性を制御する。このシグナル伝達カスケードによって制御される遺伝子の一つがFLO11である。
【0089】
我々は、FLO11が、二倍体の線状生育及び一倍体の侵入を制御する他のシグナル伝達経路に対する下流の標的であることを発見した。これらの表現型を制御する一つの経路が、FLO11の発現も制御することは知られていたが、FLO11が、数個のシグナル伝達経路によるこのような複雑な制御の下にあると思われるのは驚くべきことであった。これらの発見を以下に概説する。
【0090】
FLO11発現を制御する別のシグナル伝達カスケードの例は、cAMP/PKA経路である。FLO11がcAMP経路の標的であることを示唆する証拠は、以下のとおりである。MAPK経路とcAMP/PKA経路は共に、同一の活性化因子Ras2により、線状化のために活性化されるので、線状生育に対するcAMPの別個の役割の分析には、Rasとは独立して、PKAの分岐を活性化する能力が必要とされる。この最終目標を達成するために、我々は、RAS遺伝子(RAS1とRAS2)と高親和性cAMPホスホジエステラーゼPDE2を共に欠損する株(ras1 ras2 pde2)を構築した。Ras1とRas2は、アデニレート・シクラーゼCyr1の活性化に必要とされ、PDE2は、cAMPの加水分解に必要とされるホスホジエステラーゼをコードしているので、ras1 ras2 pde2株は、cAMPの合成と分解が損なわれている。Rasに誘導されたシグナルが、MAPKカスケードに伝達できないので、このような株は、Aキナーゼを誘導するための外来cAMPに依存するはずであり、線状化に対するcAMPの効果は、Ras/MAPKシグナルに依存しないはずである。
【0091】
ras1 ras2 pde2株(SR957)は、YPD(酵母抽出物、ペプトン、デキストロース)上での生育にcAMPを必要とするが、SC(synthetic complete)、SLAD(synthetic low ammonia dertrose)、及びYNB(yeast nitrogen base)培地上では、cAMPがなくても生育し、低cAMPレベルの指標であるグリコーゲンの高蓄積を示す。我々は、他者によって観察されているように(Nikawa et al., 1987)、cAMPを添加しなくても、この三重変異体が生育できるのは、内部cAMPを与えるのに十分な基礎シクラーゼ活性があるからと推測する。この見解を支持するように、我々は、我々のras1 ras2 pde2株の生育が、機能的シクラーゼ(CYR1)遺伝子に依存することを観察した。
【0092】
二倍体ras1 ras2 pde2株(SR959)は、cAMPがなくてもSLAD培地上で生育するが、偽菌糸体を形成しない。しかしながら、cAMPを含有するSLAD培地上では、該株は、非常に線状性である。さらに、cAMPの添加は、線状化の誘導のみならず、基質の侵入をもたらす。CAMPの存在下では、ras1 ras2 pde2株(SRS59)は、テストした全ての培地(YPD, SC, SLAD)上で侵入性である。侵入性の生育は、YPD上で一倍体株を用いると通常観察されるので、細胞の種類のシグナルと栄養学的なシグナルの両者が、細胞内の高いcAMPレベルによって回避され得る。
【0093】
MAPK経路を活性化することによってcAMPが、線状化を誘導するかどうかを決定するために、我々は、線状化を誘導する濃度のcAMPを含有するSLADプレート上で培養されたras1 ras2 pde2株におけるKss1 MAPK経路特異的なレポーターFG::Ty1−lacZ(Mosch et al.,上記)の発現を測定した。ras1 ras2 pde2株(SR959)中のFG::Ty1−lacZレポーターの発現レベルは、これらのcAMPレベルによって変化しなかった。さらに、cAMPは、ste12 ras1 ras2 pde2欠失株(SR1088)に線状化を誘導したので、cAMP/PKA経路は、MAPK経路と並列的に作用していることを示している。
【0094】
我々は、cAMPによって、ras1 ras2 pde2株でFLO11 mRNAが誘導されるが、野生型バックグラウンドでは誘導されないことを実証した。cAMPなしで三重変異株が生育するときには、FLO11転写物が検出できず、2mM cAMPの存在下では強く誘導された。房状化(flocculation)に必要とされ、Flo11と26%同一である別の細胞表面タンパク質Flo1をコードするFLO1の発現は、同一の条件下で1.4倍しか誘導されない。この結果は、FLO11の強力な誘導は、全ての房状化遺伝子の一般的な特徴ではないことを示している。FLO11のcAMP誘導とcAMPの存在下で細胞が培養されるときに観察される形態的な変化との対応は、さらに、FLO11欠失の表現型によって支持される;flo11 ras1 ras2 pde2株(SR1121)では、cAMPは、侵入も線状化も誘導できない。これらのデータは、FLO11が、侵入性及び線状生育の誘導に必要とされるcAMP依存性シグナル経路の中心的な標的であることを示唆している。
【0095】
CAMPの存在下での増強されたFLO11転写は、細胞の形態的変化と相関する。2mMのcAMPが存在する液体SCで培養された細胞は、偽菌糸体様の細胞の鎖を示すのに対して、cAMPが存在しない液体SCで培養された細胞の多くは、単一の細胞であるか、又は単一の芽(bud)を有する細胞の何れかである。細胞−細胞接着に対するcAMPの効果は、細胞の伸長に対する環状ヌクレオチドの影響よりもずっと顕著である。
【0096】
侵入性及び線状生育のレポーターとしてのFLO11プロモーターの使用は、普遍的なようである。図9に示されているように、FLO11プロモーターは、侵入性及び偽菌糸体生育の良好なレポーターである。侵入又は偽菌糸体生育を減少させる変異体の場合、afl1, ste12, tec1, flo8, inv8, ras2, tpk2, phd1, phd2, inv6, inv7, whi3, dhh1, mep2, ptc1, mcm1, inv1, inv13及びinv14に対して、FLO11の発現と侵入/偽菌糸体生育には直接的な相関が存在した。さらに、侵入/偽菌糸体の生育の増加を示したhog1、grr1、ira1、tpk3、及びsfl1変異体も、増加したFLO11発現を示した。例えば、FLO11は、Tpk2とSfl1の両者によって転写的に制御されている。tpk2変異体のFLO11発現は、1/10に減少を示したのに対して、tpk3変異体は、
3倍の上昇を有していた。FLO11 mRNAのレベルは、tpk2 tpk3二重変異体でも10倍減少していた。FLO11 mRNAのレベルは、sfl1変異体でも3倍増加し、sfl1 tpk2変異体で同じように増加した。sfl1 tpk3二重変異体のFLO11 mRNAレベルは、何れの一重変異体のレベルをも超えていた。
【0097】
FLO11は、偽菌糸体生育と侵入の優れたレポーターであるのみならず、侵入及び偽菌糸体生育にも重要である。sfl1 flo11一倍体変異株は、リッチ培地上での侵入性生育ができず、sfl1 flo11ホモ接合二倍体変異体は、偽菌糸体の発育ができなかった。このように、flo11機能喪失は、sfl1機能喪失の高侵入性及び高線状表現型をブロックした。しかしながら、sfl1 flo11二重変異体の喪失は、flo11一重変異体のそれに比べて顕著ではなく、FLO11が、偽菌糸体の発育と一倍体の侵入に関与する、唯一のSfl1の下流標的でないことを示唆している。
【0098】
図10に示された遺伝子を含む、シグナル伝達経路に位置する他の多くの遺伝子も、FLO11発現に必要とされるであろうと仮定するのが合理的である。これらの結果と侵入(そして、おそらくは、FLO11の発現)を制御する多数の更なる遺伝子の我々の近年の同定に基づいて、我々は、FLO11を制御する遺伝的な回路の樹形図を構築した(図10)。表1に掲載されたこれらの遺伝子は全て、侵入及び/又は二形性の生育をブロックすることによって作用する新規抗真菌剤の候補標的である。
【0099】
FLO11の制御された発現に、FLO11の該5’領域がどの程度必要であるかを決定するために、我々は、この非コーディング領域中に欠失を含有するプラスミドベースのFLO11::lacZレポーター構築物の発現を調べた。FLO11の開始コドンから2800塩基(bp−2800)上流の領域に及ぶ14の連続する200bpの欠失を構築した。BglII部位を末端に含有するプライマーを使用し、YEp355中にクローニングするPCRにより、ATGの5’の3kb領域を増幅することによって、FLO11−lacZレポータープラスミドを構築した(用いたプライマーの配列は、5’−CGCACACTATGCAAAGACCGAGATCTTCC−3’)(配列番号7)と5’−GAAGATCTTCTC CACATACCAATCACTCG−3’)(配列番号8)。該レポーター中の各14の欠失は、3kbのFLO11−プロモーター領域(EcoRI/HindIII断片としてYEp355−FLO11::lacZからサブクローニングされた)を含有するKS+ブルースクリプトプラスミドを使用して、プライマー重複法によって構築された。変異誘発後、部分的に欠失されたflo11−nnプロモーター配列をYEp355に再クローニングした。この目的で使用したプライマーは、
得られた欠失シリーズのための14のプラスミドを株10560−2Bに形質転換した。βガラクトシダーゼの等価発現について、フィルターアッセイを用いて、少なくとも3つの独立したクローンをテストした。二倍体株は、10560−2B flo11−nn形質転換体と株10560−5Bをそれぞれ交配することにより、添加成分としてロイシンのみを含有するYNB上で選択することによって作出した。
【0100】
400bpの配列エレメントを含有する14のプラスミドを10560−2B、L5795、L5816、L6149、L6150、及びSR957に形質転換した。βガラクトシダーゼの等価発現について、フィルターアッセイを使用して、少なくとも三つの独立したクローンをテストした。フィルターアッセイは、α−因子(5μM)の効果をテストするために使用した。
【0101】
FLO11プロモーターエレメントが多数存在し、これらのエレメントに影響を与える複数の条件があるために、実験のデザインには、いくつかの節約が必要であった。これらの各エレメントを含有する我々のプラスミドベースのレポーターからβガラクトシダーゼを測定することにより、迅速な株の構築とレポーター活性の再現性ある測定が可能となった。我々は、株がプラスミドを保持するように、分析を選択培地に限定した。我々のβガラクトシダーゼアッセイは、一般的に、二倍体株に対するより一倍体株に対してより高い活性を示す。リッチ培地の場合、この結果は、定常状態のmRNAレベルを測定することにより、FLO11の発現をモニターしたときに以前観察された結果と一致している。我々が、24−26時間後(ディオキシ生育後)に、又はSLAD培地上で、FLO11::lacZを測定すると、一倍体細胞は10倍、二倍体細胞は、5倍を超える誘導を示す。SLAD上での一倍体細胞に対するFLO11::lacZのこの大きな誘導は、FLO11のmRNAを測定した実験では観察されなかった。この差は、mRNAとタンパク質の安定性の差、又は培養をサンプリングした時間の差の何れかによるものであり得る。何れかの方法で測定したFLO11の発現は、生育条件と生育期に極めて敏感である。
【0102】
総RNAは、熱い酸フェノールを用いて調製し、ノーザンブロットは、Ausubelら(上記)に記載されているように実施した。OD600=1.0になるまで、ras1 ras2 pde2を欠失した株をSC+1mM cAMPの中でプレ培養した。SCを用いて2度細胞を洗浄し、新鮮なSC培地又はSC培地+2mM cAMP中に、OD600=0.3になるように希釈した。該細胞をOD600=1.0になるまで、培養し、採集した。ホルムアルデヒドを含有するアガロースゲル上で、10〜15μgのRNAを分離した。FLO11 mRNAへのハイブリダイゼーションについては、FLO11 ORFのbp 3502−4093に対応するプローブを使用した。
【0103】
FG::TyA−lacZのβガラクトシダーゼアッセイのための細胞を三日間SLAD−プレート上でインキュベートした;FLO11::lacZ発現研究のための細胞を、それぞれの液体培地中で培養し、Moschら(上記)に従って定量した。
【0104】
20時間生育した集密培養から、指数生育相にあるFLO11::lacZ発現を定量するための細胞を新鮮な培地にI:20で播種し、4〜6時間培養した。ディオキシシフト後に、FLO11::lacZ発現を定量するための細胞を24〜26時間生育させた。指数生育する培養に播種するために、同じ培養を使用した。SLAD培地でFLO11::lacZ発現を定量するための細胞をSC培地中で20時間プレ生育させ、2%のグルコースで二度洗浄し、SLAD培地中に1;5で希釈し、4〜6時間生育させた。cAMPにより誘導されたFLO11プロモーターセグメントを検出するために、各プラスミドを保有する株SR957を、1mM cAMPを含有する選択培地で一晩生育させ、cAMPを全く含有しない培地に10時間移して2mMのcAMPを含有するか、又は全くcAMPを含有する二つの培養に分割し、採集前に四時間生育させた。
【0105】
一倍体と二倍体の株で、欠失の発現をアッセイした。FLO11の発現は、細胞の生育相とともに変動するので、我々は、SC上で指数生育している細胞、グルコースが枯渇するまでSC上で生育された細胞(ポスト−ディオキシ)、及びSLAD(グルコースが多く、窒素が少ない培地)上の細胞を調べた。
【0106】
各FLO11::lacZプロモーター欠失に対する酵素アッセイにより、多くの部位を有する異常に長いプロモーターが明らかとなる。もし、その欠失が、少なくとも三倍lacZの発現を増加せしめれば、次のセクションでは、暫定的に、この部位を上流抑制部位(URS)と呼び、もし、その欠失が少なくとも30%の発現減少をもたらせば、上流活性化部位(UAS)と呼ぶ。
【0107】
各flo11−lacZプロモーター欠失の酵素アッセイによるシス−エレメントの分析によって、本来のFLO11プロモーターが、非常に抑制されていることが明らかになる。該欠失には、その活性が生育状態、栄養条件、及び細胞の種類に依存する少なくとも九個のURSエレメントが明らかとなる。URSエレメントの一つは、flo11−14(bp −2600−2800)によって規定され、シス−エレメントが、FLO11のコーディング領域の候補から少なくとも2800塩基対離れたところに存在していることを示している。一般的に、一倍体株は、二倍体株より強い抑制を示す。
【0108】
抑制部位の活性を可視化するための明瞭な方法は、各々の条件に対するlacZ活性とSLAD上で生育された一倍体のlacZ活性を比較することである。この比較により、flo11−4,−5, −7, −8, −12, −13及びflo11−14内のURSエレメントが明らかになる。これらサブセットのエレメントは、全ての培地上での抑制に対する鍵であるが、SLAD上で生育された一倍体における効果が最強である。一倍体特異的な効果は、欠失flo11−4,−10, −11, −12及びflo11−13に対して見出される。明らかに、flo11−4, −11, −12及びflo11−13には、一倍体特異的なFLO11の窒素抑制で機能する部位が存在する。
【0109】
一倍体と二倍体株には、その他の差異が存在し、最も顕著なのが、:1)SC上での二倍体で(指数生育)、flo11−4は、2倍減少した発現レベルを有するのに対して、一倍体では、33倍上昇した発現を有すること;2)ディオキシシフト後の二倍体では、flo11−11は、3倍減少したレベルを有しているのに対して、一倍体では、12倍上昇した発現を有している。二倍体細胞では、flo11−4、flo11−10、及びflo11−11は、UASエレメントとして作用する。flo11−5は、一倍体と二倍体の両者において、強力に窒素制御された部位である。
【0110】
欠失分析は、FLO11の発現に必要とされる配列エレメントも明らかにした。テストした全ての条件下で、flo11−6は、発現が劇的に減少し、flo11−6(−1200〜−1000)中の欠失した配列は、強いUASを含有することを示唆している。さらに、flo11−1、flo11−2、及びflo11−3は、一貫して、野生型のFLO11−lacZレポーター構築物に比べて、より低い活性を示し、これらは、FLO11プロモーター中のUASエレメントとして同定されている。flo11−1の発現が減少しているのは、この構築物からTATAA領域が欠失している結果であろう。
【0111】
我々は、染色体のFLO11遺伝子座に二つのflo11プロモーター変異を作成した。そのうちの一つflo11−16では、我々は、実質的にプロモーター領域全体(−150〜−2947)を欠失させた。残りの一つでは、我々は、野生型プロモーター全体をflo11−6と置き換えた。FLO11プロモーターの染色体欠失は、塩基対−2947〜−150をURA3と置きかえることによって行い(使用したプライマーの配列は:
【0112】
染色体FLO11プロモーター領域にflo11−6を作成するために、形質転換により、URA3遺伝子をEcoRI/HindIIIで消化したKS+flo11−D6と置き換えて、5−FOA上での選別により、塩基対−1000〜−1200(SR1174)の欠失を得た。
【0113】
flo11−16又はflo11−6の何れかを担持する株は、完全に一倍体侵入性生育を欠損しており、二倍体(例えば、flo11−6/flo11−6)のように、非常に減少した線状化を示す。一倍体の侵入欠損は、FLO11コーディング領域の欠失のそれと同程度に著しいものである。flo11−6構築物が欠失したセグメントをFLO11発現用の必須UASとして同定したflo11−6を用いた結果は、lacZプラスミド構築物からのデータに基づく我々の結論を支持している。
【0114】
FLO11プロモーターのUASエレメントを同定するための第二のアプローチでは、我々は、基礎転写ユニットに融合されたlacZレポーターの活性化をテストするために、約400塩基対の14個の各配列エレメントをデザインした(図11)。UAS配列エレメントを決定するために、200bp重複する14の各400bpエレメントをPCRによって増幅し、pLG669Zの中にクローニングした。このベクターは、lacZ遺伝子に融合されたCYC1遺伝子のコドンを一つ含有し、この融合された遺伝子の前には、CYC1の上流に横たわる1100のヌクレオチドがある。プロモーター断片は、−683〜−249位にXhoI制限部位を有する。XhoI断片を切り出し、FLO11プロモーターからの断片と置き換えた。該断片は、FLO11の開始コドンに対して、以下の位置に対応する:FLO11:−1〜−421(FLO11−2/1),−181〜−618(FLO11−3/2),−380〜−819(FLO11−4/3),−580〜−10l7(FLO11−5/4),−778〜−1219(FLO11−6/5),−980〜−1420(FLO11−7/6),−1181〜−1619(FLO11−8/7),−1380〜−1819(FLO11−9/8),−1572〜−2019(FLO11−10/9),−1780〜−2219(FLO11−11/10),−1980〜−2419(FLO11−12/11),−2180〜−2619(FLO11−13/12),−2380〜−2819(FLO11−14/13),−2580〜−2983(FLO11−15/14)。クローニングの目的で、PCRプライマーの5’末端に制限部位(XhoI)を導入した。この目的で使用したプライマーは:
であった。
【0115】
このレポーター構築物シリーズは、bp−200〜−400の間で重複するセグメントFLO11−2/1とFLO11−3/2、bp−1200〜−1000の間で重複するFLO11−6/5とFLO11−7/6、及びbp−2000〜−1800の間で重複するFLO11−10/9とFLO11−11/10にUASエレメント同定された。これらの配列エレメントは、基礎転写ユニットを含有するが、挿入をもたないレポータープラスミドと比較して、βガラクトシダーゼ活性に2倍を超える増加を示している。FLO11−2/1、FLO11−3/2、及びFLO11−11/10の活性は、ポスト−ディオキシの細胞中で誘導される。200倍にも及ぶ誘導をもたらす。これらの結果は、エレメントFLO11−2、FLO11−3、及びFLO11−11が、生育の後期段階におけるFLO11の発現に必要とされることを示唆した。欠失分析と合わせれば、これらのデータは、FLO11プロモーターには、少なくとも四つのUASエレメントが存在することを示唆していた。FLO11プロモーターは、サッカロミセス・セレビシアエ・バール・ディアスタティカスのMUC1, STA1, STA2及びSTA3遺伝子のプロモーター領域と非常に相同性を有している。
【0116】
上記のプロモーター分析のタイプは、二倍体の線状生育又は一倍体の侵入に欠損を有する同定された一連の変異株と組み合わせると、トランス−エレメント(tans−acting element)及びそれらによって標的とされるFLO11プロモーターの領域の同定が可能となる。ある例では、我々は、FLO8、STE12、TEC1が欠失した株、又はSTE12とTEC1の両者を欠失した株に、14個の各400bp配列エレメントを形質転換した。
【0117】
FLO8の欠失は、指数(それぞれ、8倍と4倍の減少)、及びポスト−ディオキシ生育(両エレメントともに5倍の減少)の両者で、FLO11−6/5とFLO11−7/6の発現を著しく減少せしめる。これらのエレメントは、高cAPMレベルによっても誘導される。FLO8機能は、ポスト−ディオキシ生育相におけるFLO11−3/2とFLO11−8/7の最大発現にも必要とされるが、指数生育においては必要とされず、この結果は、Flo8が、栄養条件に応じて異なって機能し得ることを示唆している。
【0118】
STE12の欠失は、ポスト−ディオキシ細胞よりも、指数生育細胞で、より強い効果を有していた。Ste12を欠く指数生育細胞では、FLO11−6/5、FLO11/10/9、及びFLO11−11/10セグメントは、少なくとも発現が3倍の減少を示した。ポスト−ディオキシ細胞では、FLO11−10/9のみが、STE12欠失株減少した発現を示した。
【0119】
TEC1の欠失は、FLO11挿入レポーターシリーズの発現に対して顕著な影響を与えたが、この減少は、指数生育細胞のみで観察することができ、STE12又はFLO8が欠失された株で観察されたものに比べて、顕著でなかった。この観察は、本来のFLO11プロモーターのノーザン分析と一致しており、FLO11 mRNAレベルは、STE12(L5795)又はFLO8(L5816)が欠失した株での減少に比べて、TEC1(L6149)が欠失した株ではより低い減少を示した。FLO11−6/5、FLO11−10/9、及びFLO11−11/12は、指数生育細胞では、TEC1に依存していた。ste12株中のTEC1の欠失は、一重変異株に比べて、FLO11−10/9の発現に中程度の減少を示した。しかしながら、STE12の欠失は、TEC1の欠失に比べて、10倍を超える強い効果をもたらしたので、この結果は、この部位におけるSte12のTec1非依存性の役割を示唆し得る。
【0120】
我々の結果は、Flo8とSte12/Tec1が、大部分が重複していないFLO11プロモーター中の複数の部位を介して作用することを示唆している。Flo8とSte12の最強の効果は、指数及びポストディオキシ細胞の何れにおいても、FLO11プロモーターの二つの異なる配列エレメントで観察された。Flo8は、flo11−6(bp−1200〜−1000)で規定された配列エレメントに作用したのい対して、Ste12は、FLO11−10/9に対して作用した(bp−1800〜1600)。FLO11−12/11とFLO11−10/9は、Tec1とSte12の両者により標的とされた。異なる転写因子に対して空間的に離れた部位が存在することは、FLO11の転写に対して、複合的なコントロール(combinatorial control)が行われていることを支持する強力な証左である。
【0121】
第二の例では、我々は、AFL1の変異株におけるFLO11プロモーターの断片からのlacZの発現を測定した。この変異株の二倍体は、野生型酵母が糸を形成する条件下で、糸を形成せず、あるいは侵入しない。我々は、あるエレメントFLO11−11/10が、発現に関して、完全にAFL1に依存することを発見した。我々は、酵母細胞が、対数期生育から定常期生育に変化するにつれて、FLO11プロモーター断片11/10からの発現は、15倍以上誘導されることも見出した。さらに、この定常期のFLO11−11/10からの転写の誘導は、完全にAFL1に依存していた。
【0122】
上述のように、FLO11の発現は、偽菌糸体生育と一倍体の侵入に関与する多くの遺伝子に依存している。このため、FLO11プロモーターの分析を様々な変異株と組み合わせることにより、我々は、FLO11を制御するトランス−エレメント及び標的として機能する重要なプロモーターエレメントをマップすることができるだろう。サッカロミセス・セレビシアエ遺伝子の多くは、他の真菌に相同体を有しているので、この分析により、真菌の侵入を阻害し、又は二次代謝産物の産生を促進する化合物に対する標的の候補を同定することが可能となろう。
【0123】
変異株と組み合わせて、FLO11プロモーター断片及び欠失を用いる別の例では、cAMPシグナルが、FLO11転写を活性化するプロモーター中の部位
を決定した。我々は、培地にcAMPを添加することによって内部cAMPレベルを操作し得る株であるras1 ras2 pde2変異株(SR957)の中に400bpのレポーターシリーズを形質転換した。SR957に2mM cAMPを添加すれば、cAMPなしで生育したSR957に比べて、FLO11−6/5が3倍誘導され、FLO11−7/6、FLO11−8/7、及びFLO11−10/9が2倍誘導された。これらの結果は、トランス−エレメントが、一より多いシス−エレメントを介して、cAMPを介するシグナルを通じて、FLO11の発現をアップレギュレートされることを示唆している。cAMPによって最も強く誘導されたセグメントは、重複するエレメントFLO11−6/5とFLO11−7/6(bp −1200〜−1000)によって規定され、同エレメントは、Flo8の標的となる。先に示したように、このエレメントは、侵入及び線状生育の誘導にも必要とされる。
【0124】
上述のように、FLO11転写物は、FLO8遺伝子の欠失を含有する株(L5816、flo8−2)では検出されなかった。さらに、cAMPによるFLO11の誘導は、FLO8の欠失を担持するras1 ras2 pde2変異株(SR1081)ではブロックされる。ste12 ras1 ras2 pde2変異株(SR1088)は、flo8 ras1 ras2 pde2変異株(SR1081)のように、劇的に減少したFLO11発現を有する。しかしながら、FLO11の転写は、ste12 ras1 ras2 pde2株では、cAMPによって誘導され得る。ste12変異体では、cAMPによってFLO11が誘導されるが、flo8変異体では誘導されないことは、対応するこれらの株の表現型と整合する。すなわち、flo8 ras1 ras2 pde2株は、cAMPの存在下において、SLADプレート上で糸を形成できないか、又はYPDプレート上で寒天に侵入するのに対して、ste12 ras1 ras2 pde2は、侵入性であり、且つ2mM cAMPを含有するYPD又はSLADプレート上で糸を形成することができる。このため、高cAMPレベルは、FLO11の転写の活性化において、MAPKカスケードの転写因子Ste12要求性を回避できるが、Flo8要求性は回避できない。これらの実験は、幾つかのシグナル伝達カスケードが、FLO11のプロモーターに収束するモデルを支持する。
【0125】
それぞれ、FLO8とSTE12の過剰発現によるste12とflo8変異体の抑制パターンは、FLO11に対するそれらの共同コントロールのモデルを支持する。ste12株(SR1021)におけるFLO8の過剰発現とflo8株(SR1134)におけるSTE12の過剰発現は、該変異体の偽菌糸体と侵入欠損を抑圧した。「抑圧された」株の偽菌糸体の形態は、野生型のそれとは同一でなかった。STE12を過剰発現するflo8株では、各偽菌糸体鎖の細胞は、野生型偽菌糸体の細胞に比べて、より伸長しているようにみえる。FLO8を過剰発現するste12株では、細胞が、野生型よりも長くない。しかしながら、それらは、より高密度の線状ネットワークを有している。このコロニーの形状は、cAMPによって糸を形成するように誘導された株(SR959)と同様の形状である。
【0126】
過剰発現による抑圧のパターンは、FLO11の発現パターンに反映されていた。FLO8の過剰発現は、ste12変異体(SR1021)において、FLO11の発現を10倍増加した。高レベルのSte12は、有毒なので、STE12を過剰発現した逆の実験はより困難である。STE12のレベルを制御するために、我々は、ガラクトースによって制御され得るGAL::STE12構築物を使用した。プラスミド上にGAL::STE12構築物を含有するflo8株(SR1134)では、FLO11転写物のレベルは、対照プラスミド(SR1097)を形質転換した株と比較して、SCグルコース培地上で3倍増加した。この増加は、おそらく、GALプロモーターの不完全な抑制を表していた。SCガラクトース培地中で四時間インキュベートすることによって、STE12が誘導されれば、FLO11の発現は、10倍増加した。
【0127】
高レベルの内部cAMPが、FLO11の転写を刺激するかどうかを決定するために、我々は、それ以外は野生型である株のIRA1を欠失させた。Ira1は、RsS−GTPをRas−GDPに転換することによって、RasGTPを非活性化させるRas−GAPである。Ira1の機能が失われると、活性化されたRasの割合が高くなり、このため、細胞内のcAMPレベルの上昇がもたらされる(Tanaka et al, 1989)。ira1変異株(SR599)では、FLO11転写物は、強く誘導された。このFLO11の誘導は、IRA1機能を欠如した株の高侵入性表現型に反映されれいた。ste12 ira1変異体(SR1133)は、まだ高侵入性であり、少なくとも幾つかのcAMPシグナルが、MAPK経路とは独立していることを示している。しかしながら、flo11 ira1(SR1079)又はflo8 ira1(SR1132)株は、侵入できなかった。これらの結果は、高い内部及び外部cAMPレベルによるFLO11の誘導に、Flo8が必要とされるという解釈と合致する。FLO8とIRA1を共に欠如する株(SR1132)は、FLO11転写物のレベルを劇的に減少していたのに対して、ira1バックグラウンド(SR1133)中のSTE12の欠失は、まだ野生型と同等のFLO11転写物レベルを示していた。これらの結果は、ira1 ste12株の高侵入性表現型及びira1 flo8株の非侵入性表現型と合致している。
【0128】
サッカロミセス・セレビシアエのFLO11プロモーターの制御の分析によって、様々な真菌種における侵入の制御及び二次代謝産物の産生に関する価値ある情報が与えられ、そして与えられ続けるであろう。サッカロミセス・セレビシアエ又は他の真菌種の侵入又は二次代謝産物の産生に関わる他の遺伝子のプロモーターは、同様に、侵入と二次代謝産物の制御に関するさらに価値ある情報を与えるであろう。このようなプロモーターの例は、カンジダ・アルビカンスからのECE1遺伝子プロモーターである。カンジダ・アルビカンスのECE1遺伝子の発現は、非侵入性の酵母の生育から侵入性の菌糸の生育への転換中に、高度に誘導される。カンジダの侵入性生育の制御因子をクローニングするために、ECE1プロモーターと大腸菌のlacZ遺伝子の融合体を構築した。具体的には、ECE1の開始コドンの上流の706塩基とECE1遺伝子の最初の10コドンからなるDNA断片を作成するために、PCRプライマーをデザインした。酵母2μ/LEU2シャトルベクター上に担持されたlacZとのインフレームな翻訳融合体を作り出すために、その断片をクローニングした。融合プラスミドは、ホモ接合のleu2/leu2とura3/ura3であった二倍体サッカロミセス・セレビシアエ株を形質転換するために使用した。続いて、酵母2μ/URA3ベクター中にクローニングされたカンジダ・アルビカンスのゲノムDNA断片のライブラリーを用いて該株を形質転換した。得られた二重形質転換体は、補充アミノ酸を欠く選択培地上で回収され、プールされた後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)と.003% w/vXGALを含有した最小培地上に、低密度で再プレーティングされた(200−300コロニー/プレート)。該プレートを一週間インキュベートし、クローニングされたカンジダの侵入制御因子は、ECE1プロモーターを介したlacZの転写を活性化すると考えて、濃青色のコロニーを取り出した。2μ/URA3プラスミドは、青い形質転換体から単離し、再テストした後、クローニングしたDNAの配列を決定した。同定された遺伝子の一つが、かんじだAFL1であった。サッカロミセス・セレビシアエ中でのカンジダAFL1遺伝子の発現は、通常であれば、基質に侵入しないリッチ培地条件下で、二倍体に対して、増大した侵入性の行動を付与した。カンジタAFL1遺伝子の相同体を標準的にデータベースで検索することにより、サッカロミセス・セレビシアエ相同体が明らかになった。AFL1の完全な欠失を含有するサッカロミセス・セレビシアエ株は、野生型酵母が糸を形成し、又は侵入する条件下で、糸を形成せず、又は侵入しなかった。
【0129】
AFL1は、サッカロミセス・セレビシアエFLO11(上記)とカンジダECE1の両者の発現を制御する。FLO11を制御する他のサッカロミセス・セレビシアエ遺伝子の相同体は、他の真菌においてそれ自体菌糸の生育又は侵入を制御する遺伝子プロモーターを制御するようである。下流の遺伝子は、当業者に公知の多くの手法によって決定できる。一つの例は、「DeRisi et al. Science 1997, 278:680」に記載されているようなマイクロアレー分析を使用することである。
【0130】
その機能をスクリーニングすることによって、カンジダの遺伝子をクローニングするために、カンジダECE1遺伝子転写の誘導因子としてサッカロミセスを使用することは、侵入又は二次代謝産物の産生に関与する重要な真菌遺伝子を単離するための別のアプローチの例である。この実験で重要なカンジダの侵入制御因子をクローニングすることに成功すれば、その中でスクリーニングするための異種宿主としてサッカロミセスを使用することによって、潜在的に多様な種から転写の制御因子をクローニングできるという概念が証明される。この手法は、他の生物には利用できないが、サッカロミセスには利用できる洗練された分子遺伝学的なツールという利点を与える。これは、カンジダのような真菌に対してのみならず、潜在的には、哺乳動物種のような極めてかけ離れた種に対する示唆も有する。この方法は、非サッカロミセス種からの転写の制御因子の機能をより詳細に分析する上でも有用であり得る。異種宿主としてのサッカロミセスの使用は、カンジタ又は他の任意の生物の転写制御因子を単離するために、cDNA又はゲノムライブラリーを迅速にスクリーニングするための選択をベースとするスクリーニングと組み合わせることができる。
遺伝子と化合物用のスクリーニングアッセイ
上述のように、我々は、病原性に関与し、それ故、病原性真菌及び他の微生物病原体のビルレンスを減少させる化合物をスクリーニングするために、又は、あるいは、二次代謝産物の産生を増加させるために使用し得る多数の真菌の侵入促進及び侵入抑制因子を同定した。このようなスクリーニングアッセイを実施するためには、任意の数の方法を利用し得る。一つのアプローチによれば、候補化合物は、本明細書に記載された核酸配列の一つを発現する病原性真菌細胞の培地に様々な濃度で添加される。次に、例えば、核酸分子から調製された任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いて、標準的なノーザンブロット分析(Ausubelら、上記)により、遺伝子発現を測定する。候補化合物の存在下での遺伝子発現のレベルは、候補分子を欠いた対照培地中で測定されたレベルと比較される。侵入促進因子の発現の減少を促進する化合物は、本発明において有用であると考えられる;このような分子は、例えば、感染性生物の病原性と闘うための治療剤として使用し得る。侵入促進因子の発現の増加を促進する化合物は、本発明において有用であると考えられる;このような分子は、例えば、商業的に重要な二次代謝産物の産生を増加させる増強物質として使用し得る。
【0131】
所望であれば、候補化合物又は遺伝子の影響は、代わりに、タンパク質ポリペプチドレベルをアッセイすることによって測定し得る。インベイシンポリペプチドに特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティング又は免疫沈降のような標準的な免疫学的手法を含む、好ましいタンパク質アッセイが多数存在する。例えば、免疫アッセイは、病原性生物中に存在する本発明のポリペプチドの少なくとも一つの発現を検出又はモニターするために使用し得る。このようなポリペプチドに結合し得るポリクローナル又はモノクローナル抗体(Harlow and Lane, Antibodies, a laboratory manual 1988m Cold Spring Harbor Pressの記載に従って製造される)は、病原性ポリペプチドのレベルを測定するために、任意の標準的な免疫アッセイフォーマット(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、又はRIAアッセイ)に使用し得る。別の例では、ポリペプチドレベルは、標準的なアッセイで、酵素活性を使用して決定し得る。例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)及びβガラクトシダーゼ(lacZ遺伝子によってコードされる)の酵素活性の測定を可能とする標準的なキットを利用できる(例えば、Tropix, Inc., Bedford Mass.から入手できる、Galacto−Plus and Gus light systems)。タンパク質レベルは、蛍光活性化セルソーター(FACS)、分光光度計、又は発光のような手法を用いても決定できる。インベイシン促進ポリペプチドの発現の減少を促進する化合物は、有用であると考えられる。このような分子も、例えば、感染性生物の病原性と闘うための治療剤として使用し得る。インベイシン促進ポリペプチドの活性の増加を促進する化合物も有用であると考えられる。このような分子は、例えば、商業的に重要な二次代謝産物の産生を増加させる増強物質としても使用し得る。
【0132】
これに代えて、又はこれに加えて、本発明のインベイシンポリペプチドに特異的に結合し、阻害する化合物を探索するために、候補化合物をスクリーニングしてもよい。このような化合物の効力は、インベイシンポリペプチドと相互作用する能力に依存する。このような相互作用は、任意の数の標準的な結合手法及び機能的なアッセイを用いて、容易にアッセイし得る(例えば、Ausubelらに記載されたもの、上記)。例えば、候補化合物は、本発明のポリペプチドとの相互作用及び結合についてインビトロでテストし得、病原性をモジュレートする能力は、任意の標準的なアッセイ(例えば、本明細書に記載されたもの)によってアッセイし得る。
【0133】
ある例では、インベイシンポリペプチドに結合する候補化合物は、クロマトグラフィーをベースとする手法を用いて同定し得る。例えば、本発明の組換えポリペプチドは、該ポリペプチドを発現するように改変された細胞から標準的な手法(例えば、上記のもの)によって精製し得、カラム上に固相し得る。次に、候補化合物の溶液をカラムに通して、インベイシンポリペプチドに結合する能力に基づいて、インベイシンポリペプチドに特異的な化合物が同定され、カラムに固定化される。化合物を単離するためには、非特異的に結合した分子を除去するためにカラムを洗浄し、続いて、目的とする化合物をカラムから放出し、採取する。この方法(又は、他の任意の適切な方法)によって単離された化合物は、所望であれば、(例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより)さらに精製してもよい。さらに、これらの候補化合物は、病原体のビルレンスを低下させる能力についてテストし得る(例えば、本明細書に記載したように)。このアプローチによって単離された化合物は、例えば、病原性の感染、疾病、又は双方の開始を治療し、または阻止するための治療剤としても使用し得る。10mM以下の親和定数で病原性ポリペプチドに結合するものとして同定された化合物は、本発明において特に有用と考えられる。
【0134】
さらに別のアプローチでは、候補遺伝子及び化合物は、線状の侵入、菌糸体の生育、偽菌糸体の生育、又は一倍体の掘り込み中に、正又は負に制御されることが知られているプロモーターエレメントからの発現をモニターすることにより、真菌細胞のビルレンスを阻害する能力についてスクリーニングされる。これらの同じく選別をベースとするシステムは、FLO11プロモーター(PFLO11)からの発現の増加をもたらす遺伝子又は化合物をスクリーニングするために、設計し得る。ある例では、PFLO11は、発現が増加したときに、優れた生育を与える遺伝子に融合される。例えば、his3変異体中に存在するときに、SC−HIS上での生育を可能とするPFLO11−HIS3融合体が作成された。該融合体は、化合物3−アミノトリアゾール(3−AT)によって、発現レベルを滴定できるというさらなる利点を有する。3−ATは、十分な量で存在すれば、PFLO11から発現されたHis3を阻害し、この株をSC−HIS上で生育できなくするHis3の拮抗阻害剤である。それ故、PFLO11−HIS3を含有する株の生育は、PFLO11−HIS3の発現が増加して3−ATによるHis3の拮抗阻害が克服されたときに播種されたSC−HIS+3−AT上だけで起こる。転写因子Tec1の発現の増加は、このような株に3−ATに対する耐性の増加を与える。異なる量の3−ATを使用することによって、生育に必要なPFLO11−HIS3の増加の程度をモジュレートすることができる。このような正の選別システムには、URA3, TRP1, ADE2, LEU2を含む多くのマーカーを使用することができるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の正の選別システムも該システムで機能することが理解できるであろう。
【0135】
別の例では、FLO11の発現をダウンレギュレートする遺伝子及び化合物を選別するために、劣った生育(その最極端な場合は−死滅)を与える遺伝子産物にPFLO11をリンクした遺伝子融合体を用いることができる。この場合、FLO11発現を減少及び/又は喪失させる任意の条件が、劣った生育を改善し、株を生育せしめるであろう。例えば、PFLO11依存的にSC−URA上での生育を可能とするURA3オ−プンリーディングフレームへのPFLO11の融合体が作成された。URA3の発現は、5−フルオロオロチン酸(5−FOA;5−fluoro−orotic acid)の存在下において、有毒なので、FLO11が発現していないことの選別は、PFLO11 URA3融合体を担持する株のSC+5−FOA上での生育をスクリーニングすることによって達成し得る。当業者であれば、、他の負の選別システムも該システムで機能することが理解できるであろう。
【0136】
上記システムは、FLO11の発現の有無の選別を可能にするが、同様の手法は、FLO11の発現の変化をスクリーニングするために使用し得る。定量できる有用なPFLO11のレポーター遺伝子融合体の他の例には、lacZ及び緑色蛍光タンパク(GFP)のような酵素又は蛍光レポーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
ここに記載した選別及びスクリーニングシステムは、上述したもの以外に多くの潜在的な応用を有する。例えば、それらは、選別方法によって、FLO11を制御する多くの遺伝子の機能的相同体を同定するために使用できる。例えば、his3が欠失され、且つPFLO11HIS3融合体を担持する株でFLO11の発現を喪失させる遺伝子の変異は、この株をヒスジチジン栄養要求体にする(ヒスチジンが欠損した培地中では生育できない)。しかしながら、このような株に(相補又は変異対立遺伝子の抑圧による)FLO11の発現を復活させる他の生物からのcDNA又はゲノムDNAクローンは、ヒスチジン欠損培地上での生育を選別することによって、直接選別することができる。同様に、サッカロミセス・セレビシアエ及び異種の生物からのFLO11発現の新規制御因子は、同じ選別スキームを用いて同定し得る。
【0138】
菌糸体又は偽菌糸体の生育中に制御されることが知られているプロモーターを使用することの他の応用では、各シグナル伝達経路に必要とされるシス−エレメントをマッピングするために、欠失構築物を作成することができる。一例として、FLO11 ORFの上流の3kb領域から200bpずつのnested欠失が作成される、FLO11プロモーターのスクリーニングと選別アッセイが、様々な野生型および変異バックグラウンド株におけるlacZ発現に対する影響について分析されている。別の例では、FLO11プロモーターの重複する400bpの断片が、CYC1転写ユニットにクローニングされる(図11)。共に、これらの例は、どのDNA領域が発現に必要とされるか(及びこれらの各領域がどの程度必要とされるか)を実証するであろう。さらに、FLO11プロモーターのような菌糸体生育又は偽菌糸体生育中に制御されるサブクローニングされたプロモーター片とのレポーター遺伝子融合体は、別個の経路をブロックする(又は活性化する)様々な変異体での発現について評価され得る。当業者であれば、本明細書に記載したものを含む、他のインベイシンからの制御エレメントは、Ausubelら(上記)に記載された標準的な手法と共に、本明細書に記載した方法を用いて、記載に従って単離し得ることが理解できるであろう。これらの方法には、制御又はプロモーター領域候補からのDNAセグメントのレポーター遺伝子への融合、及び欠失分析が含まれる。さらに、任意のインベイシンプロモーターの経路特異性は、野生型及び変異宿主株の使用によって決定し得る。あるDNAセグメントが、野生型株でレポーター発現を与えるが、特定の変異体で全く発現しないか、又は増加した発現を示せば、この配列は、変異体が規定する経路によるインベイシンの発現を媒介すると推測される。このアプローチを用いて、FLO11を制御する別個の経路をレポートする一群の遺伝子融合体を作成することができる。CYC1, PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25及びCUP1を含む様々な基本又は誘導性プロモーターエレメントをこの手法に適用することができるが、これらに限定されない。上記システムを用いて、任意の処置について、FLO11の発現に対する作用様式を割り付けることができる。経路特異的なレポーターに対する化学的又は遺伝学的処置の影響を評価すれば、どの経路が、この処置によって変化したかを決定することが可能となろう。例えば、一つは、STE経路を介したFLO11の発現をレポートするレポーター(レポーター1)、もう一つは、FLO11のINV経路を介した発現をレポートするレポーター(レポーター2)という二つの異なるレポーター融合体を考える。もし、完全長のPFLO11の発現を消失させる能力によって同定された化合物Xが、レポーター1に影響を与えるが、レポーター2には影響を与えないことが示されれば、化合物Xは、STE経路の活性に影響を与えることによって、FLO11発現をブロックすると推定される。同様に、経路特異的なPFLO11レポーター構築物及びあるシグナル成分の活性化された対立遺伝子を用いれば、ある経路のどこで、化合物が影響を与えているかについても詳細が明らかとなるであろう。例えば、変異体STE11−4及びSTE12の過剰発現は、共にFLO11の発現を増加すると予測される。もし化合物Xが、STE11−4によって媒介されるFLO11の増加した発現をブロックするが、STE12の過剰発現をブロックしなければ、化合物Xは、STE12の前だが、STE11において又はSTE11以降でSTE経路を拮抗すると推定し得る。様々な欠失変異体でのレポーターの発現を評価すれば、FLO11の発現を活性化する化合物の効果を評価するための同様のアプローチが可能となろう。
【0139】
これらの実験で用いたレポーターは、正と負の選別及び様々なスクリーニング法を可能とするために、完全長のFLO11プロモーターについて記載したのと同様の方法で、利用することができる。これは、FLO11の発現の経路特異的モジュレーター(異種の遺伝子、化合物、ペプチド等)の同定を可能とするであろう。このようなシステムは、他の生物からこれらの制御遺伝子の重要な相同体のモジュレーターを同定する上でも有用である。例えば、小さなGタンパク質Rasは、多種類のヒト腫瘍で活性化され、抗腫瘍因子の候補としてRASの阻害剤を同定するのは興味深い。酵母(例えば、二つの酵母RAS遺伝子が欠失され、ヒトRASを発現する酵母株)中のヒトRASの活性をレポートするFLO11プロモーター断片融合体を入手すれば、酵母で、ヒトRasのモジュレーターを選別し、及び/又はスクリーニングすることが可能となろう。
【0140】
スクリーニングの別の例は、リッチ(YPD)培地上で生育させると、一倍体のサッカロミセス・セレビシアエ由来の酵母が、偽菌糸体を形成せずに、寒天に侵入するという観察に基づいている。この非線状の侵入行動は、「掘り込み」と名付けられ、この行動を検出するために使用されるアッセイは、「掘り込みアッセイ(dig assay)」と名付けられている(RobertsとFink(上記))。リッチ培地上での一倍体のサッカロミセス・セレビシアエの掘り込みをブロックする変異は、低窒素条件下で、二倍体サッカロミセス・セレビシアエの偽菌糸体の成長及びに寒天への侵入も阻害する。掘り込みを欠失した変異株は、「掘り込みマイナス」、又は「掘り込み−」と称される。偽菌糸体の侵入と掘り込みアッセイでの行動との相関は、このスクリーニングの不可欠な側面である。掘り込みアッセイは、偽菌糸体侵入アッセイに比べて、比較的実施が容易であり、一倍体細胞で起こるので、劣性変異に依存する遺伝的アプローチにより向いている。
【0141】
我々は、病原性真菌が、所定の基質中への増加した侵入又は接着を特徴とする類似の掘り込み行動を示し得ることを発見した。例えば、カンジダ・アルビカンスは、種々の適切な条件(例えば、YPD、及びSPIDER)で、基質の非線状侵入を示す。この行動は、報告されたサッカロミセス・セレビシアエの掘り込み行動と似ている。サッカロミセス・セレビシアエと同じく、任意のカンジダ・アルビカンス変異株による非菌糸性の寒天への侵入は、線状誘導条件下(例えば、寒天+血清)で、その株が糸を形成能力と相関する。このため、真菌の掘り込み表現型をブロックする化合物をスクリーニングすれば、糸の形成をブロックし、その結果、発症をブロックする化合物の同定が可能となろう。これらの化合物は、抗真菌剤又は静真菌剤として有用と考えられる。同様に、基質への侵入を増加させる化合物のスクリーニングは、二次代謝産物の産生又は収量も増加させ得る化合物の同定を可能とするであろう。
【0142】
掘り込みアッセイの例を以下に示す。ある化合物が、最低生育阻害濃度よりずっと低い濃度で、非変異サッカロミセス・セレビシアエ又はカンジダ・アルビカンスの非線状の寒天への侵入に影響を与えるかどうかを調べるために、リッチ培地(YPD)及び抗真菌剤フルコナゾールの勾配を含有する寒天プレート上に、これらの真菌をスポッティングした。次に、至適生育温度で二日間、該プレートをインキュベートし、水で洗浄した。両真菌ともに、生育を阻害するのに必要とされる濃度より有意に低いフルコナゾール濃度で、寒天の侵入の阻害を示した(図12)。このアッセイは、U.maydisのような他の二形性真菌及びその他の真菌に対して行い得る。全てのケースで、侵入アッセイは、侵入を阻害する化合物、又は侵入を促進する化合物を単離するために使用し得る。各種の化合物は、本明細書に記載した価値ある用途を有するであろう。
【0143】
必要に応じて、上記アッセイの何れかで同定された侵入阻害化合物は、任意の標準的な動物モデルに、病原性感染の進行に対する保護を与えるのに有用であると確認され得る。ここに、一例を記載する。もし成功すれば、候補化合物は、抗病原体治療剤として使用し得る。侵入促進化合物は、二次代謝産物の産生を評価することによって確認し得る。もし成功すれば、候補化合物は、これらの又は他の二次代謝産物の産生又は収量を増加させるための増強物質として使用し得る。
テスト化合物と抽出物
一般的に、本分野で公知の方法に従って、天然の産物と合成(又は半合成)抽出物の両者の大規模なライブラリから、又は化学ライブラリーから化合物が同定される。薬物の発見と開発の分野の当業者であれば、テスト抽出物又は化合物の正確な採取源は、本発明のスクリーニング操作にとって決定的なものではないことが理解できよう。従って、本明細書に記載した方法を用いて、実質的に任意の数の化学的抽出物又は化合物をスクリーニングすることができる。このような抽出物又は化合物の例には、植物、真菌、原核細胞、又は動物をベースとする抽出物、醗酵ブロス、及び合成化合物、並びに既存の化合物の修飾物が含まれるが、これらに限定されない。糖質、脂質、ペプチド、及び核酸をベースとする化合物を含む任意の数(これらに限定されない)の化学物質のランダムな、又は指向的な合成(例えば、半合成又は全合成)をもたらすためにも、多くの方法を利用し得る。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates (Merrimack, NH)、及びAldrich Chemical(Milwaukee, WI)から商業的に購入し得る。あるいは、細菌、真菌、植物、及び動物の抽出物の形態である天然の化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institue(Ft. Pierce, FL)、及びPharmaMar, U.S.A. (Cambridge, MA)を含む多くの供給元から商業的に購入し得る。さらに、所望であれば、本分野で公知の方法に従って、例えば、標準的な抽出と分画法によって、天然の及び合成的に製造したライブラリーが作成される。さらに、所望であれば、任意のライブラリー又は化合物は、標準的な化学的、物理的、又は生化学的方法を用いて容易に修飾され得る。
【0144】
さらに、薬物の発見と開発の分野の当業者であれば、可能であればいつでも、脱複製(dereplication)(例えば、分類学的な脱複製、生物学的な脱複製、及び化学的な脱複製、または任意のそれらの組み合わせ)(すなわちレプリケートすなわち抗病原活性が既に知られた物質のリピートを除去すること)する方法を利用し得ることを容易に理解できるであろう。
【0145】
ある粗抽出物が、侵入促進、又は侵入抑制活性、又は結合活性を有することが見出されたら、観察された効果に必要とされる化学的成分を単離するために、ポジティブリード抽出物のさらなる分画が必要である。このように、抽出、分画、及び精製工程のゴールは、所望の活性を有する粗抽出物中の化学的な実体(entity)を慎重に特性決定し、同定することである。このような異種抽出物の分画及び精製法は、本分野において公知である。所望であれば、疾病の発症の治療、又は二次代謝産物の増加した産生に有用な因子であることが示された化合物は、本分野で公知の方法に従って、化学的に修飾される。
薬学的治療剤と植物保護剤
本発明は、病原体の病原性又はビルレンスを阻害し得る化合物(ペプチド、小分子阻害剤、及び模倣物(mimetics)を含む)を同定するための簡便な手段を提供する。従って、本明細書に記載された方法を用いて、医学的又は農学的に価値を有することが発見された化学的実体は、薬物、植物保護剤の何れかとして、又は、例えば、論理的ドラッグデザインにより、既存の抗病原体化合物の構造的修飾に関する情報として有用である。このような方法は、細菌、ウイルス、真菌、アネライド、線虫、プラチヘルミンセス(Platyhelminthes)、及び原生動物を含む(これらに限定されない)様々な病原体に対して影響を有する化合物をスクリーニングするのに有用である。病原性真菌の例には、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス種、ムコール種、クモノスカビ種、フサリウム種、ペニシリウム・マルネファイ、ミクロスポラム種、クリプトコッカス・ネオファルマンス・ニューモシスチス・カリニ、及びトリコフィトン種が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
治療的に使用する場合、本明細書に開示した方法を用いて同定された組成物又は因子(agent)は、例えば、生理的食塩水のような薬学的に許容される緩衝液中に調合して、全身投与し得る。処置は、例えば、病原性ポリペプチドに伴う生物学的現象を崩壊、抑圧、減弱、又は中和するアンタゴニストで動物を処置することによって、直接達成され得る。好ましい投与ルートには、例えば、患者に継続的、持続的な薬物レベルを与える吸入、又は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、、又は皮内注射が含まれる。ヒト患者又は他の動物の治療は、生理的に許容される担体中の治療的有効量の抗病原因子を用いて実施されるであろう。適切な担体及びそれらの調合は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences by E.W. Martin」に記載されている。投与すべき抗病原因子の量は、投与様式、年齢、及び患者の体重、疾病の種類、及び疾病の範囲に応じて変わる。一般的に、量は、他の微生物疾病の治療に使用される他の因子に使用される量の範囲内であろうが、ある場合には、化合物の特異性の増加故に、より少ない量が必要とされる。化合物は、微生物の生育を阻害する用量で投与される。例えば、全身投与の場合、化合物は、典型的には、0.1ng〜10g/kg体重の範囲で投与される。
【0147】
農業に使用する場合には、本明細書に開示した方法を用いて同定された組成物又は因子は、植物の葉にスプレー又は粉末として、又は灌漑システムに化学物質として適用される。典型的には、このような因子は、感染を防ぐために、病原体に先立って、植物の表面に投与されるべきである。それらの上に担持された、又は植栽部位の土壌中に存在する病原体を抑制することによって、植栽後に病原体に襲われるのを防ぐために、種、球根、根、塊茎、及び球茎も処理される。様々な微生物病原体を抑制するために、野菜、観葉植物、かん木、又は木を植える土壌を化学的消毒薬で処理してもよい。処理は、好ましくは、植栽の数日又は数週間前に行われる。化学物質は、例えば、トラクターのような機械ルート、又は手で蒔くかの何れかによって適用し得る。さらに、前記アッセイ方法を用いて同定した化学物質は、消毒剤として使用し得る。
【0148】
さらに、抗病原性因子は、潜在的な病原体による定着及び全身的植種(systemic seeding)を防ぐために、静脈内、泌尿、腹腔内、脳室、脊髄、及び外科的ドレナージカテーテルを含むカテーテル(これらに限定されない)を作るために使用される物に加えてもよい。同様に、抗病原性因子は、病原体による定着を防ぐことにより、さらに深刻な侵入性感染、又は病原体による全身的植種を阻止するために、様々な外科的プロテーゼを構成する物に、及び義歯に加えてもよい。
二次代謝産物産生の増加
本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を活性化し得る化合物(ペプチド、小分子、及び模倣物(mimetics)を含む)を同定するための簡便な手段を提供する。従って、本明細書に記載された方法を用いてこのような特性を有することが発見された化学的実体は、その産生が、完全に又は部分的に、真菌の醗酵に依存する現在市場に出ている薬学的組成物の収量を増加させるための手段として有用である。このような化合物によって、その収量が醗酵中に増加し得る市場に出ている二次代謝産物の例は、シクロスポリン、ペニシリン、セファロスポリン、麦角アルカロイド、ロバスタチン、メバスタチン、及びそれらの生合成中間体が含まれるが、これらに限定されない。さらに、このような化学的実体は、このような代謝物の醗酵ブロス中の濃度(これにより、化学又はバイオアッセイによる検出の可能性)を増加させることによって、医学的又は農学的な価値を有する新規二次代謝産物を同定する可能性を増加させるために使用することもできる。何れの例でも、増加した代謝物の収量は、前記実体に真菌を接触させ、及び/又は真菌内に前記実体の産生をもたらす遺伝子発現構築物で真菌を形質転換することによって達成できる。
【0149】
本発明は、正及び負の何れにも二次代謝産物の産生を制御する候補遺伝子を同定するための簡便な手段も与える。さらに、これらの遺伝子の活性化されたバージョン又はドミナントネガティブなバージョンを同定するための方法が記載されている。従って、このような遺伝子及びそれらの誘導体は、標準的な形質転換法によって、これらの遺伝子の改変された形態を産生真菌中に導入することにより、及びノックアウトの構築による適切な遺伝子機能の除去により、二次代謝産物の産生を増加させるための真菌の遺伝子工学を可能にする可能性を有する候補である。これらのような遺伝子工学的方法によって、醗酵中にその収量が増加され得る市場に出ている二次代謝産物の例には、シクロスポリン、ペニシリン、セファロスポリン、麦角アルカロイド、ロバスタチン、メバスタチン、及びその生合成中間体が含まれるが、これらに限定されない。
真菌二次代謝産物の産生及び検出法
βラクタム抗生物質、スタチン類、麦角アルカロイド、シクロスポリン、及び他の真菌代謝物の醗酵及び産生法は、Masurekar (Biotechnology 1992, 21:241−301)及びその参考文献に記載されている。二次代謝産物の検出は、各代謝物に特異的であり、当業者に周知である。醗酵ブロス中での化合物の産生と完全性(integrity)を評価するための一般的な方法には、抗微生物活性のバイオアッセイ、高性能液体クロマトグフィー(HPLC)分析、核磁気共鳴、薄相クロマトグラフィー、及び吸光分光法が含まれるが、これらに限定されない。醗酵ブロスからの代謝物の精製には、遠心又はろ過による真菌細胞又は菌糸の除去、(溶解度及び/又はその後の抽出効率を増加させるための)醗酵後のpH及び/又は塩濃度の調整、及び適切な有機溶媒によるブロスの抽出が含まれ得る。
他の態様
一般的に、本発明には、本明細書の記載に従って単離し得る、又は相同性スクリーニングによって容易に単離される、又は本発明の核酸配列を用いたPCR増幅によって単離される任意の核酸配列が含まれる。本発明には、その病原活性(例えば、本明細書の記載に従ってアッセイされる)が失わなれないように修飾されているポリペプチドも含まれる。このような変化には、ある種の変異、欠失、挿入、又は翻訳後修飾が含まれ得、又は、さらに大きい融合タンパク質の一成分としての本発明の任意のポリペプチドの含有が含まれ得る。
【0150】
このため、他の態様では、本発明には、本発明のポリペプチドと実質的に同一である任意のタンパク質が含まれる。このような相同体には、実質的に純粋な天然に存在するポリペプチド及び対立遺伝子変種(variant);天然の変異体;誘導された変異体;高ストリンジェンシー条件下で、あるいはより好ましくないが、低ストリンジェンシー条件下で(例えば、少なくとも40ヌクレオチドの長さのプローブを用いて、2×SSC、40℃で洗浄)本発明の核酸配列の何れか一つにハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質;及び本発明の抗血清によって特異的に結合されるタンパク質が含まれる。
【0151】
本発明には、さらに、本発明の任意の天然に存在するポリペプチドの類縁体が含まれる。類縁体は、本発明の天然のポリペプチドとは、アミノ酸配列、翻訳後修飾、又はその両者が異なり得る。本発明の類縁体は、一般的には、本発明の天然に存在するアミノ酸配列の全部又は一部と、少なくとも85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、さらには99%の同一性を示すであろう。配列比較の長さは、少なくとも15アミノ酸残基、好ましくは25アミノ酸残基、より好ましくは35アミノ酸残基を超える。また、同一性の程度を決定するための模範的なアプローチでは、密接に関連した配列を示すe−3〜e−100の間の確率値で、BLASTプログラムを使用し得る。修飾には、ポリペプチドのインビボ及びインビトロ化学的誘導化、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、又はグリコシル化が含まれる:このような修飾は、ポリペプチドの合成若しくはプロセッシング中に、又は単離された修飾酵素での処理後に起こり得る。類縁体は、改変により、本発明の天然に存在するポリペプチドと一次配列が異なっていてもよい。これらには、天然と誘導の両遺伝的変種が含まれる(Sambrook, Fritsch, and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed.), CSII Press, 1989, 又はAusubelら、上記の記載に従って、例えば、放射線照射、若しくはエタンメチルサルフェートへの暴露によるランダムな変異誘発、又は部位特異的変異誘発によって生じる)。Lアミノ酸以外の残基、例えば、Dアミノ酸、又は天然に存在するアミノ酸若しくは合成アミノ酸、例えば、β又はγアミノ酸以外の残基を含有する環状ペプチド、分子、及び類縁体も含まれる。
【0152】
完全長のポリペプチドに加えて、本発明には、本発明のポリペプチドの任意の一つの断片も含まれる。本明細書で使用する「断片」という語は、少なくとも5つ、好ましくは少なくとも20の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも30の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも50の連続したアミノ酸、最も好ましくは、少なくとも60〜80以上の連続したアミノ酸を意味する。本発明の断片は、当業者に公知の方法によって作成することができ、又は正常なタンパク質のプロセッシングから生じるかもしれない(例えば、生物学的活性に必要とされない生まれたばかりのポリペプチドからのアミノ酸の除去、又は選択的mRNAスプライシング又は選択的タンパク質プロセッシング現象によるアミノ酸の除去)。
【0153】
本発明は、さらに、発症状態を診断するための組成物(例えば、ヌクレオチド配列プローブ)、及び方法を提供する。
【0154】
本明細書に挙げた全ての文献及び特許出願は、独立した各文献又は特許出願を具体的且つ個別的に参照文献として組み込むために示した場合と同様に、参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0155】
他の態様も本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
Inv8タンパク分解プロセッシングに対するINV経路及びSTE経路の変異の効果を示すウェスタンブロットを示す図。
【図2】
野生型株及びTPK遺伝子に変異を有する株の一倍体侵入表現型を示す一連の写真(2A)と、野生型株及びTPK遺伝子に変異を有する株の偽菌糸体表現型を示す一連の写真(2B)を示す図。
【図3】
Tpk2のMga1及びSfl1に対する優先的な親和性を示している酵母ツーハイブリッド分析の結果を示した写真を示す図(テストした遺伝子産物は、縦軸及び横軸に示されている。酵母の生育は、それぞれの軸上に示された遺伝子の産物間の相互作用を示している)。
【図4】
一倍体侵入生育中に、FLO11がSFL1とTPK2の下流で作用することを示すエピスタシス分析の写真(4A)と、偽菌糸体生育中に、FLO11がSFL1とTPK2の下流で作用することを示すエピスタシス分析の写真(4B)を示す図。
【図5】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図6】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図7】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図8】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図9】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図10】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図11】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図12】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図13】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図14】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図15】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図16】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図17】
カンジダRIM1によるサッカロミセスinv8表現型の相補性を記載した図。
【図18】
サッカロミセス・セレビシアエINV9のDNA配列(配列番号5)を示す図。
【図19】
サッカロミセス・セレビシアエINV9のDNA配列(配列番号5)を示す図。
【図20】
サッカロミセス・セレビシアエINV9のDNA配列(配列番号5)を示す図。
【図21】
サッカロミセス・セレビシアエInv9の予想されるアミノ酸配列(配列番号6)を示す図。
【図22】
カンジダrim1/rim1変異体の血清応答の表現型分析の一連の写真を示す図。
【図23】
Inv8の核への蓄積には、Inv8のプロセッシングが必要とされることを示した一連の写真を示す図。
【図24】
様々な侵入欠損(flo8, ste12, phd1, phd2, afl1, ras2, tpk2, tec1, flo11,及びinv6)及び高侵入変異体(ira1)中のFLO11 mRNAの定常状態レベルを示すノーザンブロットの写真を示す図(ブロットは、FLO11及びACT1に対するプローブを用いてプローブした)。
【図25】
侵入を制御する遺伝子及び経路を示す図(先の尖った矢印は、活性化を表し、末端が扁平な矢印は、抑制を示す)。
【図26】
レポーター構築物を作成するために使用されたFLO11プロモーター断片相対的な位置を示す図。
【図27】
抗真菌化合物を同定するためのシステムとして寒天侵入スクリーンを利用できることを実証したグラジエントプレートアッセイの結果を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、真菌遺伝子発現の制御に関わる遺伝子を同定し、単離する方法に関する。本発明は、真菌のビルレンスファクターを同定するのに有用な方法にも関する。本発明は、さらに、真菌の病原を制御し、又は真菌の病原に必要とされる遺伝子の発現又は活性を増加又は減少させる因子を同定する方法に関する。本発明は、殺真菌剤又は静真菌剤としてのこのような因子の使用にも関する。
【0002】
真菌は、ヒトに対して大きな重要性を有する大きく多様な生物群である。病原性の真菌は、とりわけ、その割合が急速に増加しつつある、疾病、化学療法、又は免疫抑制剤によって疾病が損なわれた集団において、ヒトの疾病の重要な原因である。様々な植物病原性真菌(例えば、焼枯れ(blights)、赤星病(rusts)、かび(mold)、黒穂病(smut)、うどん粉病)は、莫大な穀物の損失及び鑑賞用植物への損害を引き起こす。植物の疾病は、多くの属、例えば:軟腐病(例えば、クモノスカビ(Rhizopus)、縮葉病(例えば、タフリナ(Taphrina)、うどんこ病(例えば、スファエロセカ(Sphaerotheca)、オモト赤星病(例えば、ファルビア(Fulvia)、焼枯れ(例えば、アルターナリア(Alternaria))、いもち病(例えば、マグナポルス(Magnaporthe))、黒腐病(例えば、ギニャルディア(Guignardia))、赤カビ病(例えば、ベンチュリア(Venturia))、萎ちょう(例えば、フサリウム)、赤星病(例えば、プッチニア(Puccinia))、黒穂病(例えば、ウスティラゴ(Ustilago))、及び潰瘍(例えば、リゾクトニア(Rhizoctonia))に属する無数の侵襲性の真菌病原体によって引き起こされる。さらに、真菌種は、抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、及びそれらの誘導体のようなβラクタム抗生物質)、抗高コレステロール血症剤(例えば、ロバスタチン及びコンパクチン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、及び抗真菌薬剤(例えば、ニューモカンディン(pneumocandin)及びエチノカンディン(echinocandin))のような極めて多くの医学的に有用な製品の商業用製造源である。これらの薬物は、全て、真菌の二次代謝産物−真菌がそれらの微生物学的環境中の競合者に対して使用する小さな被分泌分子−である。最後に、真菌は、商業的に重要な酵素(例えば、セルラーゼ、プロテアーゼ、及びリパーゼ)並びにその他の産物(例えば、クエン酸、ジベレリン酸(gibberellic acid)、天然色素、及び薬味(flavorings))も産生する。
【0003】
真菌が、それらの生育基質に侵入する詳細は、詳しくは理解されていない。しかしながら、真菌の侵入過程に関する二つの重要なテーマが、近年判明した。第一に、カンジダ種、アスペルギルス種、ムコール種、クモノスカビ種、フサリウム種、ペニシリウム・マルネファイ(Penicillium marneffei)、ミクロスポラム種、及びトリコフィトン(Trichophyton)種のような重要なヒトの真菌性病原体は、線状菌糸として宿主の組織から侵入する。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のビルレンスは、宿主組織の侵入に依存していることが示されている。すなわち、侵入性の生育に必要とされる幾つかの遺伝子の何れかが突然変異すると、全身感染のマウスモデルでビルレンスが相当減少する。植物の真菌性病原体であるウスティラゴ・メイディス(Ustilago maydis)の病原も侵入を要する。第二に、サッカロミセス・セレビシアエにおいて寒天の侵入を制御する遺伝子と病原性の酵母において侵入を制御する遺伝子には相関がある。サッカロミセス・セレビシアエは、遺伝学的研究に好適なので、真菌の侵入の遺伝学的性質を分子的に分析するのに利用できる。
【0004】
侵入に必要とされるある種のサッカロミセス・セレビシアエの遺伝子の相同体は、他の真菌において、二次代謝産物及び分泌異化酵素の産生も調節する。例えば、サッカロミセス・セレビシアエのINV遺伝子のアスペルギルス相同体中の突然変異を活性化すると、二次代謝産物であるペニシリンと、分泌アルカリフォスファターゼ産生の増加を引き起こす(Orejas et al., Genes Dev. 1995, 9:1662)。
【0005】
【発明の実施の形態】
ある側面では、本発明は、候補化合物が、真菌のインベイシン(invasin)遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子の発現を減少するかどうかを決定するための方法に関する。該方法は、一般的には、(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;(b)前記真菌を候補化合物と接触させる工程と;(c)前記真菌を前記候補化合物に接触させた後に、前記遺伝子の発現を検出又は測定する工程とを備える。
【0006】
好ましい態様では、真菌は、野生型株(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ、カンジダ・アルビカンス、又はアスペルギルス・ニードランス);変異株;又はトレンスジェニック真菌である。他の好ましい態様では、本発明の方法に使用される遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子である。真菌のインベイシン遺伝子には、例えば、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, FLO11, IRA1, MCM1, MGA1, MUC1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, RIM1, 又はYPR1が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
他の好ましい態様では、本発明の方法に使用される遺伝子は、レポーター遺伝子である。本発明の方法に有用なレポーター遺伝子には、例えば、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ、URA3、又はHIS3が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
好ましい態様では、本発明の方法に使用される真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターに由来する。他の好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターには、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターに由来するプロモーター配列が含まれる。好ましくは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片又は欠失(例えば、FLO11遺伝子プロモーターの断片)であり;所望であれば、該断片は、基本プロモーター(basal promoter)(例えば、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子からの基本プロモーター)に融合される。
【0009】
典型的には、遺伝子(例えば、内在性FLO11、又はFLO11遺伝子プロモーターの制御下で発現される組換えリポーター遺伝子、又はその断片)の発現は、発現される遺伝子のRNA又はタンパク質レベル又は両者をアッセイすることによって測定される。例えば、真菌のインベイシン遺伝子によって、又はレポーター遺伝子によって発現されるポリペプチドは、化合物が、産生されるべき測定可能なシグナルを生ぜしめるような条件下で、検出可能なシグナルを生ぜしめる。生じたシグナルの量を量的に決定するには、テストされている化合物が全く存在しない状態で、又は本明細書に記載されている他の任意の化合物に細胞を接触させたときに検出されたシグナルの量と生じたシグナルの量とを比較することを要する。この比較によって、発現された遺伝子によって生じた検出可能なシグナルの変化(例えば、RNA又はタンパクレベルで)を引き起こすものとして化合物が同定され、これにより、真菌の侵入を阻害し得る化合物を同定することが可能となる。真菌インベイシン遺伝子の発現の減少は、一般的には、真菌の侵入の阻害によって、又は酵母型から偽菌糸体の生育への発達のスイッチの阻害、又は両者を伴う。
【0010】
関連する側面では、本発明は、候補化合物が、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子の発現を増加するかどうかを決定するための方法にも関する。該方法は、一般的には、(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;(b)前記真菌を候補化合物と接触させる工程と;(c)前記真菌を前記候補化合物に接触させた後に、前記遺伝子の発現を検出又は測定する工程とを備える。好ましい態様では、本発明は、さらに、候補化合物が、真菌の二次代謝産物の産生を増加するかどうかを決定することを備える。
【0011】
別の側面では、本発明は、候補化合物が、真菌の侵入を阻害するかどうかを決定する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)侵入に適した条件下で真菌と候補化合物を接触させる工程と、(b)候補化合物と接触させた後に、真菌による侵入を測定又は検出する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、カンジタ・アルビカンス又はサッカロミセス・セレビシアエである。
【0012】
別の側面では、本発明は、候補化合物が、真菌の侵入を促進するかどうかを決定する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)侵入に適した条件下で真菌と候補化合物を接触させる工程と、(b)候補化合物と接触させた後に、真菌による侵入を測定又は検出する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、カンジタ・アルビカンス又はサッカロミセス・セレビシアエ、又はアスペルギルス・ニードランスである。
【0013】
さらに別の側面では、本発明は、真菌の侵入促進遺伝子を同定する方法に関する。該方法は、一般的に、(a)真菌に、(1)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された第一の遺伝子、及び(2)第二の候補遺伝子又はその断片を発現させる工程と;(b)前記第一の遺伝子の発現をモニタリングする工程とを備え、前記第一の遺伝子の発現の増加により、前記第二の候補遺伝子が真菌の侵入促進遺伝子として同定される。好ましい態様では、真菌は、野生型株(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ、アスペルギルス・ニードランス、ペニシリウム・クリソジェナム(Penicillium chrysogenum)、又はアクレモニウム・クリソジェナム(Acremonium chrysogenum);変異株;又はトレンスジェニック真菌である。他の好ましい態様では、本発明の方法に使用される遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子である。
【0014】
好ましくは、第一の遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子を含む(例えば、FLO11又はMUC1)。さらに別の好ましい態様では、第一の遺伝子は、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, RIM1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3,又はYPR1に由来する真菌のインベイシン遺伝子を含む;又は前記第一の遺伝子は、レポーター遺伝子(例えば、lacZ、URA3、又はHIS3)を含む。
【0015】
好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターに由来する。他の好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、AFL1, DHH1, INV1, RIM1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターに由来し;又は上記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片若しくは欠失である。好ましくは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片は、基本プロモーター (例えば、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子の基本プロモーター)に融合される。
【0016】
好ましくは、本発明の方法に利用される遺伝子の発現は、発現された第一の遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって、又は発現された第一の遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される。
【0017】
関連した側面では、本発明は、真菌の侵入阻害遺伝子を同定する方法にも関する。該方法は、一般的に、真菌に、(1)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された第一の遺伝子、及び(2)第二の候補遺伝子又はその断片を発現させる工程と;(b)前記第一の遺伝子の発現をモニタリングする工程とを備え、前記第一の遺伝子の発現の減少により、前記第二の候補遺伝子が真菌の侵入阻害遺伝子として同定される。
【0018】
さらに別の側面では、本発明は、真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する;該方法は、一般的に、真菌細胞を真菌の侵入促進化合物と接触させる工程と;二次代謝産物の増加した合成を促進する条件下で、細胞を培養する工程とを備える。
【0019】
別の側面では、本発明は、真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する;該方法は、一般的に、真菌の侵入阻害遺伝子の発現を減少させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入阻害遺伝子(例えば、HOG1, BEM2, RIM15, SFL1, IRA1, SSDI, SRB11, SWI4,又はTPK3)の減少した発現は、真菌の侵入阻害遺伝子の不活化からもたらされる。別の好ましい態様では、二次代謝産物の増加した産生は、変異した真菌の侵入阻害遺伝子の発現からもたらされる。
【0020】
さらに別の側面では、本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的に、真菌の侵入促進遺伝子の発現を増加させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入促進遺伝子は、AFL1, DHH1, INV7, INV8, STE21, PET9, MEP2, INV1, INV5, INV6, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, CDC25, MCM1, MGA1, PHD2, PHO23, PTC1, RIM1, STP22, TPK2又はYRP1である。別の好ましい態様では、真菌の侵入促進遺伝子の増加した発現は、真菌の侵入促進遺伝子を構成的に発現させることにより、又はこのような遺伝子を過剰発現させることにより達成される。さらに別の好ましい態様では、真菌の侵入促進遺伝子は、変異している。
【0021】
別の側面では、本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、活性化された形態の侵入促進ポリペプチドをコードする遺伝子又はその断片を発現させる工程を含む。好ましい態様では、活性化された形態の侵入促進ポリペプチドは、侵入促進ポリペプチドと、侵入促進ポリペプチドの活性をさらに増大させる第二のポリペプチドとの融合を含む。別の好ましい態様では、遺伝子は、変異を有する。
【0022】
別の側面では、本発明は、真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、真菌の侵入阻害ポリペプチドの活性を減少させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入阻害ポリペプチドは、変異(例えば、優性非活性(dominant−inactive)ポリペプチド)を有する。別の好ましい態様では、真菌の侵入阻害ポリペプチドは、Hog1, Bem2, Rim15, Ira1, Sfl1, Ssd1, Srb11, Swi4,又はTpk3である。
【0023】
別の側面では、本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、真菌の侵入促進ポリペプチドの活性を増加させる工程を含む。好ましい態様では、真菌の侵入促進ポリペプチドは、変異(例えば、優性活性ポリペプチド)を有する。別の好ましい態様では、真菌の侵入促進ポリペプチドは、Afl1, Dhh1, Inv1, Inv5, Inv6, Inv9, Inv10, Inv11, Inv12, Inv13, Inv14, Rim1, Inv15, Cdc25, Inv7, Mcm1, Mga1, Phd2, Pho23, Ptc1, Inv8, Ste2, Pet9, Mep2, Stp22, Tpk2,又はYpr1である。
【0024】
別の側面では、本発明は真菌のインベイシン遺伝子を単離する方法に関する。本発明は、一般的には、(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;(b)前記真菌に変異を誘発させる工程と、(c)前記遺伝子の発現を測定し、前記遺伝子の発現の増加又は減少により、前記インベイシン遺伝子の変異を同定する工程と;(d)前記インベイシン遺伝子を単離するためのマーカーとして前記変異を使用する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、野生型株(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ)、又は変異株である。好ましい態様では、本方法に使用される遺伝子は、真菌のインベイシン遺伝子(例えば、FLO11, MUC1, AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, RIM1, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1)を含む。別の好ましい態様では、遺伝子は、レポーター遺伝子(例えば、lacZ、URA3、又はHIS3)を含む。さらに別の好ましい態様では、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターは、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターから得られる;又は、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, RIM1, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターから得られる。別の好ましい態様では、真菌のインベイシンプロモーターは、上記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片若しくは欠失である。好ましくは、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片は、基本プロモーター (例えば、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子の基本プロモーター)に融合される。
【0025】
別の側面では、本発明は、カンジダ・アルビカンスの遺伝子プロモーターからの発現を制御する遺伝子を同定するために、細胞(例えば、真菌細胞)を使用する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)カンジダ・アルビカンスの遺伝子プロモーターに作用可能に連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞を準備する工程と;(b)前記細胞中の候補遺伝子を発現させる工程と;(c)前記レポーター遺伝子の発現を検出又は測定する工程とを備える。好ましい態様では、真菌細胞は、サッカロミセス・セレビシアエである。
【0026】
別の側面では、本発明は、増加した二次代謝産物産生を有するトランスジェニック真菌細胞を調製する方法に関する。該方法は、一般的には、(a)トランス遺伝子(例えば、真菌細胞中で発現するように配置されたAFL1, DHH1, INV7, INV8, STE21, PET9, MEP2, INV1, INV5, INV6, INV9, INV10, INV11, RIM1, INV12, INV13, INV14, INV15, CDC25, MCM1, MGA1, PHD2, PHO23, PTC1, STP22, TPK2, YRP1のようなインベイシン遺伝子をコードするトランス遺伝子、又はその断片)を導入する工程と、(b)前記トランス遺伝子を発現する細胞を選択する工程とを備える。好ましい態様では、トランス遺伝子は、変異(例えば、優性活性変異又は優性非活性変異)を有する。
【0027】
別の側面では、本発明は、真菌中の二次代謝産物を増加させる方法に関する。該方法は、一般的には、(a)二次代謝産物の産生を可能とする条件で、培養物(culture)中の真菌を培養する工程と;(b)前記培養物に、真菌の侵入促進化合物を加える工程と;(c)前記培養物から代謝産物を単離する工程とを備える。好ましい態様では、真菌は、変異を有する。別の好ましい態様では、真菌は、野生型株である。
【0028】
さらに別の側面では、本発明は、インベイシン遺伝子の活性を阻害する変異をインベイシン遺伝子中に含むトランスジェニック真菌(例えば、糸状菌(filamentous fungi))に関する。好ましくは、本発明は、HOG1, SWI4, BEM2, SRB11, SSD1, TPK3, SFL1又はIRA1遺伝子、又は任意のこれらの組み合わせの中に変異を有するトランスジェニック糸状菌に関する。好ましくは、このような変異は、発現されたタンパク質(例えば、Hog1, Swi4, Bem2, Srb11, Ssd1, Tpk3, Sfl1, 又はIra1, 又は任意のそれらの組み合わせ)の活性を阻害する。別の好ましい態様では、トランスジェニック真菌は、増加した二次代謝産物の産生(例えば、増加した抗生物質の産生)を有する。
【0029】
別の側面では、本発明は、実質的に、純粋なInv9ポリペプチドに関する。好ましくは、Inv9ポリペプチドは、図6B(配列番号6)のアミノ酸配列と少なくとも55%の同一である。好ましい態様では、Inv9ポリペプチドは、真菌(例えば、サッカロミセスのような酵母)から得られる。他の好ましい態様では、Inv9は、侵入促進活性を有する。
【0030】
関連する側面では、本発明は、Inv9ポリペプチドをコードする単離された核酸(例えば、DNA)に関する。好ましくは、このような単離された核酸配列は、図6A(配列番号5)のINV9遺伝子を含み、サッカロミセス・セレビシアエのINV9変異を相補する。
【0031】
別の側面では、本発明は、実質的に純粋なRim1ポリペプチドに関する。好ましくは、Rim1ポリペプチドのジンクフィンガードメインは、図5A(配列番号4)のアミノ酸配列のジンクフィンガーと少なくとも75%同一であり、ポリペプチドのアミノ酸配列全長にわたっては、少なくとも25%同一である。好ましい態様では、Rim1ポリペプチドは、真菌(例えば、サッカロッミセスのような酵母)から得られる。別の好ましい態様では、Rim1ポリペプチドは、侵入促進活性を有する。
【0032】
関連する側面では、本発明は、Rim1ポリペプチドをコードする単離された核酸(例えば、DNA)に関する。好ましくは、このような単離された核酸は、図5A(配列番号3)のRIM1遺伝子を含み、本明細書に記載されているように、サッカロミセス・セレビシアエ中のRIM1変異を相補する。
【0033】
関連する側面では、本発明は、さらに、細胞又はベクター(例えば、真菌発現ベクター)に関し、各々は、本発明の単離された核酸分子を含む。好ましい態様では、本発明は、真菌細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ)である。さらに別の好ましい態様では、単離された本発明の核酸分子は、核酸分子によってコードされるポリペプチドの発現を媒介するプロモーターに作用可能に連結される。本発明は、さらに、本発明のベクターを含有する細胞(例えば、真菌細胞)に関する。
【0034】
さらに別の側面では、本発明は、本発明の任意の上記核酸分子を含むトランスジェニック真菌に関する。前記核酸分子は、トランスジェニック真菌中で発現される。
【0035】
関連する側面では、本発明は、Inv9又はRim1ポリペプチドを産生する方法にも関する。該方法は、(a)細胞で発現するように配置された本発明の核酸分子で形質転換された細胞を提供する工程と;(b)前記核酸分子を発現させる条件下で前記形質転換された細胞を培養する工程と;(c)Inv9又はRim1ポリペプチドを回収する工程とを備える。本発明は、さらに、本発明の単離された核酸分子のこのような発現によって産生された組換えInv9又はRim1ポリペプチド、及びこれらの各ポリペプチド又はその一部を特異的に認識し、結合する実質的に純粋な抗体に関する。
【0036】
「真菌の侵入」とは、真菌が、基質(substrate)を貫通し、掘り込む(dig)、接着(adhere)し、又は付着(attach)する過程を意味する。真菌による基質の侵入は、本明細書に記載されているような標準的方法に従って測定し得る。
【0037】
「真菌インベイシン」遺伝子は、真菌による基質への侵入を促進又は阻害することができるポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。この応答は、転写レベルで起こり得る。又は、これは、実際には、酵素又は構造的なものであり得る。真菌のインベイシン遺伝子は、本分野で公知の慣用法を組み合わせ、本明細書で開示された任意の配列を使用して任意の真菌種から同定、単離され得る。
【0038】
「ポリペプチド」は、任意のアミノ酸の鎖を意味し、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)にかかわらない。
【0039】
「レポーター遺伝子」は、その発現をアッセイし得る遺伝子を意味する。このような遺伝子には、βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ(β−glucoronidase)、β−グルコシダーゼ、及びインベルターゼをコードする遺伝子、アミノ酸生合成遺伝子、例えば酵母のLEU2, HIS3, LYS2, TRP1遺伝子、核酸生合成遺伝子、例えば酵母のURA3およびADE2遺伝子、哺乳類のクロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)遺伝子、又はそれに対する特異的な抗体を利用できる任意の表面抗原の遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク(GFP)のような発光又は蛍光によって検出し得るタンパク質をコードし得る。レポーター遺伝子は、表現型マーカー、例えば、細胞の生育又は生存に必要とされるタンパク、又は細胞死を誘導する毒性タンパクを与える任意のタンパク質もコードし得、あるいは、レポーター遺伝子は、色の存在又は不存在をもたらす、カラーアッセイによって検出できるタンパク質をコードし得る。あるいは、レポーター遺伝子は、サプレッサーtRNA(その発現は、アッセイ可能な表現型を与える)をコードし得る。本発明のレポーター遺伝子は、レポーター遺伝子機能に必要なエレメント(例えば、全てのプロモーターエレメント)を含む。
【0040】
「実質的に同一」とは、参照アミノ酸配列(例えば、図5A(配列番号4)に示されたアミノ酸配列)、又は核酸配列(図5Aに示された核酸配列;配列番号3)と少なくとも25%、好ましくは50%、より好ましくは80%、最も好ましくは90%、さらには95%の同一性を示すポリペプチド又は核酸を意味する。ポリペプチドの場合、比較配列の長さは、一般的には、少なくとも16アミノ酸、好ましくは20アミノ酸、より好ましくは少なくとも25アミノ酸、最も好ましくは35アミノ酸以上であろう。核酸の場合、一般的には、比較配列の長さは、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも75ヌクレオチド、最も好ましくは110ヌクレオチド以上である。
【0041】
配列の同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI53705, BLAST, BEAUTY, or PILEUP/PRETTYBOX programs)を用いて測定される。このようなソフトウェアは、相同性の程度を様々な置換、欠失、及び/又は他の修飾に割り当てることによって、同一又は類似の配にとマッチさせる。典型的には、保存的な置換には、以下の群(グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン)内部での置換が含まれる。
【0042】
「実質的に純粋なポリペプチド」は、自然の状態ではそれを伴う成分から分離されたポリペプチド(例えば、Inv9又はRim1ポリペプチドのようなインベイシンポリペプチド)を意味する。典型的には、少なくとも60重量%であり、自然の状態では付随するタンパク質及び天然に存在する有機分子がなければ、実質的に純粋である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%がインベイシンポリペプチドである。実質的に純粋なインベイシンポリペプチドは、例えば、天然の採取源(例えば、真菌細胞)から抽出することによって;インベイシンポリペプチドをコードする組換え核酸を発現することによって;該タンパク質を化学的に合成することによって取得し得る。純度は、任意の適切な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定できる。
【0043】
「由来する(derived from)」とは、天然に存在する配列(例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成又はそれらの組み合わせ)から単離されるか、又は天然に存在する配列を有することを意味する。
【0044】
「単離されたDNA」とは、本発明のDNAが由来する生物の天然に存在するゲノムで、遺伝子と相隣する遺伝子が除かれたDNAを意味する。それ故、この用語には、例えば、ベクター、自己複製プラスミド、又はウイルス、;又は原核細胞若しくは真核細胞のゲノムDNAに取り込まれた組換えDNA;又は他の配列から独立した別個の分子(例えば、cDNA、又はPCR若しくは制限エンドヌクレアーゼ消化によって作成されたゲノム若しくはcDNA断片)として存在する組換えDNAが含まれる。付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
【0045】
「トランスジェニック真菌細胞」とは、組換えDNA技術によって、インベイシンポリペプチドをコードする(本明細書で使用されているように)DNA分子が導入された真菌細胞(又はその先祖)を意味する。
【0046】
「発現するように配置」とは、DNA分子が、該配列の転写及び翻訳を誘導する(すなわち、例えば、インベイシンポリペプチド、組換えタンパク質、又はRNA分子の産生を促進する)DNA配列に隣接するように配置されていることを意味する。
【0047】
「プロモーター配列」とは、転写を誘導するのに十分な任意の最小配列を意味する。本発明では、プロモーター依存性遺伝子の発現を調節するのに十分な遺伝死発現用のプロモーターエレメント、又は外部シグナル若しくは因子によって誘導可能なエレメントが含まれ、このようなエレメントは、ネイティブの遺伝子の5’又は3’領域に配置され、又はトランス遺伝子構築物中に工作され得る。
【0048】
「作用可能に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク)が制御配列に結合したときに、遺伝子発現が可能となるように遺伝子及び制御配列が結合されていることを意味する。
【0049】
「候補遺伝子」とは、細工(artifice)によって、細胞中に挿入され、細胞中で発現される任意のDNAを意味する。候補遺伝子には、一部又は全体がトランススジェニック生物に異種(すなわち、外来)の遺伝子が含まれ得、生物の内在性遺伝子と相同な遺伝子を表し得る。
【0050】
「トランス遺伝子」とは、細工によって細胞中に挿入され、その細胞から発達する生物のゲノムの一部となったDNAを意味する。このようなトランス遺伝子には、一部又は全体がトランスジェニック生物に異種(すなわち、外来)の遺伝子が含まれ得、生物の内在性遺伝子と相同な遺伝子を表し得る。
【0051】
「トランスジェニック」とは、細工によって細胞中に挿入され、その細胞から発達する生物のゲノムの一部となったDNA配列を含む任意の細胞を意味する。本明細書で使用する場合、トランスジェニック生物は、一般的には、トランスジェニック真菌細胞である。本発明のトランスジェニック真菌細胞は、一以上のインベイシン遺伝子を含有し得る。
【0052】
「二次代謝産物の増加した産生」とは、対照真菌(例えば、非トランスジェニック真菌)の産生レベルより、本発明のトランスジェニック真菌中の二次代謝産物の産生レベルが多いことを意味する。好ましい態様では、本発明のトランスジェニック真菌中の二次代謝産物レベルは、対照真菌中のレベルより、少なくとも10%多い(より好ましくは、30%又は50%)。二次代謝産物の産生レベルは、慣用法を用いて測定される。
【0053】
「検出可能にラベルされた」とは、分子の存在をマークし同定するための任意の直接又は間接的な手段、例えば、オリゴヌクレオチドプローブ又はプライマー、遺伝子又はその断片、又はcDNA分子若しくはその断片を意味する。分子を検出可能にラベルする方法は、本分野において周知であり、(例えば、32P又は35Sのようなアイソトープによる)放射能ラベル、及び非放射能ラベル(例えば、化学発光ラベル、例えばフルオレセインラベル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
「精製された抗体」とは、少なくとも60重量%であり、天然の状態ではこれに随伴するタンパク質及び天然に存在する有機分子がない抗体を意味する。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が抗体、例えば、後天的耐性ポリペプチド特異的抗体(acquired resistance polypeptide specific antibody)である。精製されたインベイシン抗体(例えば、Inv9又はRim1)は、例えば、組換えで作成した後天的耐性ポリペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィー及び標準的な手法によって取得し得る。
【0055】
「特異的に結合する」とは、インベイシンポリペプチドを認識し、結合するが、天然にInv9又はRim1のようなインベイシンポリペプチドを含んだサンプル、例えば生物学的サンプル中に存在する他の分子を実質的に認識及び結合しない抗体を意味する。
【0056】
「変異」とは、位置指定又はランダム変異誘発の何れかによる配列中の変化を意味する。変異した形態のタンパク質には、点変異及び挿入、欠失、又は転位(rearrangement)が包含される。変異体とは、変異を含有する生物である。
【0057】
本発明は、真菌病原体中の遺伝子発現の制御における化合物の効力を区別し、評価するために使用される様々な標準的スクリーニング法に比べて、長く待ち望まれた利点を有する。例えば、該方法は、高情報量フォーマットでの遺伝的選別によって、真菌の侵入を特異的に活性化又は阻害するペプチド及び化合物を同定することが可能となる。これらの方法によれば、このような因子の作用様式を迅速に描出することも可能となる。さらに、これらの方法は、最初の当たり(hits and leads)から、より効率的な化合物の発展を可能とする反復的な化合物の修飾及び再テストプロセスに向いている。
【0058】
真菌の侵入を阻害する化合物は、真菌のビルレンスも阻止することが多いであろう。これらの化合物は、植物又は動物の真菌性疾病を治療するのに治療的価値を有し得る。真菌の侵入を促進する化合物は、商業的に重要な真菌の二次代謝産物の収率を増加させるのに有用であり得る。
【0059】
本発明は、病原に重要な新規真菌遺伝子を単離するアプローチも提供する。これらの新規遺伝子及びそれらがコードするタンパク質は、さらなる化合物の標的を含む。
【0060】
さらに、本発明は、真菌生物自体の遺伝的操作によって、商業的に重要な二次代謝産物の収率を増加させる手段を与える。これにより、これまでは不可能であった真菌産物の大規模生産が容易になる。さらに、それにより、真菌に接触させ、又は真菌中で発現されたときに、二次代謝産物の産生を活性化することができる「増強物質(potentiators)」(すなわち、化合物及びペプチド)の容易な同定が可能となる。真菌の二次代謝産物の生産を増加し得ることには、少なくとも二つの重要な応用がある。第一に、二次代謝産物の生産の増加により、増加がなければ、実験室で検出できないレベルのこれらの化合物を作り出す真菌から、新規な抗微生物化合物を同定することが容易になるであろう。第二に、臨床的に、又は研究に有用である既存の二次代謝産物の産生を増加させることができるであろう。
【0061】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の好適な態様の記載、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0062】
我々は、真菌の侵入及び偽菌糸体の生育を制御する相互に接続された一連のシグナル伝達カスケードを発見した。我々は、サッカロミセス・セレビシアエから、以前に特徴づけられた遺伝子の新しい役割、侵入及び偽菌糸体の生育を同定した(AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, YPR1)。遺伝学的及び生化学的分析によって、我々は、これらの遺伝子、及び侵入を制御することが知られた他の遺伝子を一連の並列的シグナル伝達カスケードに位置付けることができた。下表1は、サッカロミセス・セレビシアエの侵入及び/又は偽菌糸体の生育を制御する、我々が同定した遺伝子のリストである。これらの遺伝子は、サッカロミセスゲノムデータベースによって表記される対応する配列名で相互参照される。これらの遺伝子の配列及びそれらの転写制御エレメント候補もサッカロミセスゲノムデータベースでみることができる(http://genome−www.stanford.edu/ Saccharomyses/)。
【表1】
【0063】
我々は、これらのシグナル伝達カスケードの「樹形図(wiring diagram)」を構築し、これらの遺伝子の多くが、少なくとも、一部は、単一の遺伝子FLO11の制御を介して、真菌の侵入を直接制御することを示した。単一の標的に収束するシグナルの同定により、動物又は植物宿主の何れかで真菌の病原を阻害するのに有用な治療因子を評価し、同定するようにデザインされた改良スクリーニング法が容易となった。さらに、我々の発見は、様々な新規真菌ビルレンス因子を同定するのに有用なスクリーニング法の基礎を与える。さらに、このようなビルレンス因子の同定は、抗病原体として使用するための標的化された試薬の開発を促進する。さらに、改良されたスクリーニング法は、重要な真菌の二次代謝産物の産生を増加させる因子を同定するための基礎を与える。
【0064】
以下の実験例は、説明を意図したものであり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することを意図したものではない。
偽菌糸体の生育及び侵入に関与する遺伝子を単離するためのスクリーニング
以下、我々は、一連のシグナル伝達カスケードが、協働して作動し、偽菌糸体の生育、及び固体培地、サッカロミセス・セレビシアエ中への一倍体の掘り込みを制御するという実験的な証拠を記載する。
【0065】
高グルコースと低窒素を含有する固体培地上で、サッカロミセス・セレビシアエの二倍体細胞は、侵入糸(invasive filament)を形成する伸長した細胞の鎖からなる偽菌糸体を形成する(Gimeno et al., Cell 1992, 68:1077−1090)。リッチな培地上では、一倍体細胞は、「掘り込み(digging)」と称されている侵入性の生育を示すが、二倍体細胞は示さない(Roberts and Fink, Genes Dev. 1994, 8:2974−85)。偽菌糸体の生育と一倍体の侵入性生育(invasive growth)の両者に行き着く栄養的なシグナルは、幾つかの経路を含んでいる。これらの動態に関与するサッカロミセス・セレビシアエの遺伝子を単離するために、我々は、偽菌糸体生育又は一倍体の侵入の何れかが欠損した変異体を求めて一連のスクリーニングを行った。これらのスクリーニングを以下に記載する。
スクリーニング1.偽菌糸体生育中の侵入を喪失した変異体の同定
酵母の突然変異導入とスクリーニングは、MoschとFinkに記載されているように実施した(Genetics 1997, 145:671−684)。簡潔に述べれば、低窒素SLAD寒天上で生育させたときに寒天に侵入できないトランスポゾンで誘導した変異体を探すための直接的な視覚的スクリーニングは、偽菌糸体生育が可能なMATa/α一倍体株で行った。二次スクリーニングによって、長い細胞を作り、侵入以外の偽菌糸体生育の全側面が可能である変異体のサブセットを同定した。
スクリーニング2.掘り込み欠損変異体の同定
(Roberts and Fink、上記)に記載されたプレート洗浄アッセイを用いて、一倍体の侵入性生育が欠損したサッカロミセス・セレビシアエの変異体を同定した。MoschとFink(Genetics 1997, 145:671−84, and Burns et al., Genes Dev. 1994 8:1087−105)の記載に従って構築した、トランスポゾンで変異誘発した一倍体をYPD上に播種し、よく分離した単一コロニーを形成せしめた。3〜5日、30℃で生育させた後、プレートをレプリカプレーティングして、マスタープレートの表面を水流で洗浄した。侵入欠損変異体のコロニーは、完全に(又はほとんど完全に)寒天から洗浄されたのに対して、野生型株の多くの細胞は、洗浄後も寒天中に残存していた。続いて、侵入欠損表現型を示すコロニーのレプリカから変異株を摘み取った。
スクリーニング3.高侵入性変異体の同定
トランスポゾンで変異誘発した一倍体をYPDに播種し、上記スクリーニング2に記載したように生育させた。野生型コロニーよりも「粗く」見える表面形態を有するコロニーを選び出した−粗いコロニー表面は、高侵入性の指標である。続いて、二次試験により、野生型対照に比べて、洗浄後に、より多くの細胞が寒天中に残存している変異体を同定した。このような変異体は、高侵入性変異体として保有された。
スクリーニング4.INV経路に特異的に影響を与える変異の同定
該スクリーニングは、偽菌糸体の生育に必要とされる他の特徴付けられた遺伝子に影響を与える変異とは異なり、inv変異体は、野生型変異体に比べて、漂白剤カルコフラワー(calcoflour)に対してより耐性があるという我々の観察に基づいていた。さらに、全ての侵入欠損変異体に当てはまることであるが、inv一倍体は、YPD寒天上で生育させたときに、野生型コロニーに比べて、より滑らかに見えるコロニー表面形態を示した。YPD寒天上で生育させたときに、滑らかなコロニー形態を示すトランスポゾンで誘導したカルコフラワー耐性変異体の集合体も同定された。
【0066】
トランスポゾン挿入によって誘導された全ての変異について、慣用法により、トランスポゾン挿入部位に隣接するゲノムcDNAを単離し、配列決定された。続いて、影響を受けた遺伝子を同定するために、隣接DNAのヌクレオチド配列をサッカロミセス・セレビシアエのゲノム配列と比較した。
スクリーニング5.侵入欠損変異体の高コピー抑制因子の同定
酵母ゲノムDNAを含有するプラスミドのライブラリーを侵入欠損(Inv−)二倍体whi3株に形質転換した。これらのライブラリープラスミドは、
高コピー数で維持を促進する複製起点を含有していた(2μ起点)。選択培地(SC−URA)上に形質転換体を播種し、1〜2日間プレートをインキュベートした後、プレート洗浄アッセイを行った。Inv表現型を抑圧した高コピープラスミドは、合成培地中への一過性の侵入性生育を促進した。この生育は、プレート洗浄アッセイ後に、寒天中に残存した小さな窪みのコロニーとして同定された。MCM1とPHD2を含む、幾つかの遺伝子が、whi3変異体のInv−表現型の高コピー抑制因子として同定された。続いて、Phd2が欠失した、mcm1部分的機能喪失変異体の分析によって、これらの遺伝子は、侵入とFLO11発現を制御することが実証された。
【0067】
上記スクリーニングから、我々は、偽菌糸体生育又はサッカロミセス・セレビシアエの一倍体の侵入を制御する60の遺伝子を同定した。インベイシンと呼ばれる、これらの遺伝子は、さらに、少なくとも6つのシグナル伝達カスケードに分類されてきた。変異又は過剰発現後に生じた表現型に基づいて、これらの遺伝子は、さらに、「真菌侵入促進」又は「真菌侵入阻害」として分類することができる。例えば、AFL1の完全な欠失を含有するサッカロミセス・セレビシアエ株は、野生型株が糸を形成し、又は侵入する条件下で、糸の形成、又は侵入がなく、通常は、偽菌糸体生育又は一倍体の掘り込み中に侵入を誘導する条件下で、侵入が観察されない。シグナル伝達カスケードの例は、以下に記載されている。
【0068】
寒天の侵入に必要とされるこのシグナル伝達経路を含む12のサッカロミセス・セレビシアエ遺伝子が、同定、クローニング、特性決定された。その活性が、タンパク分解によって制御される転写因子をコードするJNV8は、該経路の最も下流に位置するメンバーである。他の12のメンバー(INV1, INV3, INV5, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, INV16, 及びSTP22)は、全て、Inv8のタンパク分解制御に必要とされる。図1に示されているように、これまでに調べられた他の全てのインベイシン遺伝子の変異と異なり、これらの遺伝子の変異は、Inv8のプロセッシングをブロックする。INVメンバーの一つ、Inv14は、カルパインファミリーの細胞質システインプロテアーゼである。このシグナル伝達経路が、真菌で保存されており、他の真菌で、二次代謝産物及び細胞外基質を分解し得る分泌酵素の産生を制御できることは驚くべきことであった。サッカロミセス・セレビシアエ遺伝子の相同体は、例えば、アスペルギルス・ニードランス(ここでは、一群の類似した遺伝子が、細胞外pHに応答して多数の分泌異化酵素の転写を制御する);ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(多数の分泌アルカリプロテアーゼの転写制御因子として);ペニシリウム・クリソジェナムとアスペルギルス・ニガー(アスペルギルス・ニードランスに見出されたのと類似の役割を有する)に見出されている。アスペルギルス・ニードランスとペニシリウム・クリソジェナムでは、該経路は、直接ペニシリンの産生を制御する(ペニシリンの産生は、活性化された形態の転写因子によって制御される)。
【0069】
これらのシグナル伝達カスケード他の更なるメンバーは、様々な標準的手法を通じて同定される。第一に、変異株の表現型のエンハンサーとサプレッサーは、当業者に公知の標準的な手法を用いて単離される(Ausubel、上記)。第二に、経路のメンバーと相互作用するタンパク質は、酵母ツーハイブリッド法を用いて単離される(Fields and Song, Nature 1989, 240:245−246; Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991, 88:9578−9582; Brent and Finley, Annu. Rev. Genet. 1997, 31:663−704)。一つの例では、Aキナーゼの触媒サブユニットTpk2と特異的に相互作用し、関連タンパク質Tpk1及びTpk3とは相互作用しないタンパク質が同定され、偽菌糸体の発育に重要であることが示された。SLAD(低窒素培地)上で生育された二倍体tpk2株は、偽菌糸体の発育が完全に欠損しているのに対して、tpk3二倍体株は、線状化が非常に増大していた(図2B)。同様に、一倍体tpk2変異体は、侵入性生育が欠損しており、tpk3変異体は、高侵入性であった(図2A)。tpk1変異体は、一倍体と二倍体の何れとしても、野生型株から区別できなかった。tpk2 tpk3変異体は、tpk2一重変異体と同じ表現型を有していたので、tpk3変異体の強調された線状化と侵入表現型には、機能的なTpk2が必要であった。Tpk2は、偽菌糸体の生育のみに必要とされるようなので、我々は、Tpk2と特異的に相互作用するタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドスクリーニングを使用した。そのままの状態のTPK2のオープンリーディングフレームをGal4 DNA結合のコーディング配列に融合し、Gal4転写活性ドメインのコーディング配列に融合した酵母ゲノム断片のライブラリーをスクリーニングするのに使用した。ade−株のアデニン非依存性生育をもたらすGAL4−ADE2レポーターの活性化を、Gal4 DNA結合ドメイン:Tpk2融合体とGal4活性化ドメインに融合されたTpk2相互作用タンパク質との相互作用に対する予備的な証拠とした。次に、Gal4 DNA結合ドメインに融合されたTpk1、Tpk2、Tpk3、又はDph1を用いて、陽性クローンに対してツーハイブリッドアッセイを再びテストした。ジフタミド(diphthamide)の生合成に必要とされる遺伝子、DPH1、PKAイソフォームに特異的ではない相互作用を制御するために使用した。
【0070】
二つのクラスのタンパク質が、ツーハイブリッドアッセイでTpk2と相互作用した:第一のクラスは、無差別であり、Tpk1、Tpk2、及びTpk3と相互作用した:第二のクラスは、選択的であり、Tpk2と優先的に相互作用した(図3)。三つの全ての触媒サブユニットと相互作用したタンパク質の一つは、以前Tpk1、Tpk2、及びTpk3に結合することが示された、PKAの負の制御サブユニットBcy1である。第二のクラスは、ヘリックス−ターン−ヘリックスDNA結合モチーフを含有する一群の5つの酵母タンパク質(Mga1、SflI、Hsf1、Skn7、及びHms2)に属する転写因子候補であるSfl1とMga1からなる。Skn7以外は全て、少なくとも一つのコンセンサスPKAリン酸化部位([R/K][R/K]X[S/T])を含有する:Sfl1は五つ、Mga1は二つ、Hsf1は四つ、及びHms2は一つ有する。
【0071】
我々は、MGA1とSFL1のオープンリーディングフレームを共に欠失させた。sfl1変異体は、劇的な表現型を有していた:sfl1の一倍体株は、非常に房状(flocculent)であり、高侵入性であったのに対して、sfl1の欠失がホモ接合である二倍体は、非常に線状化が増強されていた(図4A−4B)。我々は、tpk2の偽菌糸体欠損が、Sfl1機能の喪失によってブロックされるかどうかを見るために、sfl1 tpk2二重変異体を構築した。sfl1 tpk2二重変異体は、sfl1一重変異体と同一の表現型を有しており、Sfl1が、Tpk2の下流で作用することが示唆された(図4A−B)。我々は、mga1ヌル変異変異体では、偽菌糸体欠損形成に劇的な欠損を検出することができなかった。
【0072】
同様のツーハイブリッドスクリーニングは、本明細書に記載された任意のシグナル伝達カスケードのさらなるメンバーを同定するためにも使用することができる。次に、変異株又は過剰発現の構築のような当業者に公知の様々な手法を用いて、候補遺伝子を分析する。Inv8又はSfl1のような菌体シグナル伝達経路中の遺伝子の転写標的の同定は、細胞外基質の分解又は侵入に直接必要とされる遺伝子産物を同定するために使用される。例えば、Inv8転写標的の同定は、寒天への侵入に直接必要とされる遺伝子産物を同定するのに有用である。このような標的遺伝子の同定は、INV経路の優れたレポーターとなり、非プロセッシングvsタンパク分解されたInv8タンパク質の相対活性を明らかにし、Inv8が、標的遺伝子を活性化し、抑制する機序を決定することを可能にする。あるいは、例えば、サッカロミセス・セレビシアエの表現型の相補性をスクリーニングすることによる、他の真菌中の相同体の同定は、抗生物質、抗高コレステロール血症剤、免疫抑制剤、又は抗真菌剤のような二次代謝産物の産生を調節する真菌の遺伝子産物を同定するために実施することができる。
【0073】
本明細書に記載した研究に基づけば、新規抗真菌治療薬を発見し、開発すること;新規真菌二次代謝産物を同定し、商業化すること;現在入手できる真菌産物の収量を改善すること;および未知の真菌に挑戦するための手法と産物を開発することが可能となる。シグナル伝達機構は、真菌間で保存されているものと思われる。従って、本明細書に記載した発見に基づけば、これらの各シグナル伝達カスケードは、抗真菌薬及び/又は二次代謝産物の制御の標的となる。これらの中の何れかの遺伝子の変異した対立遺伝子を担持するサッカロミセス・セレビシアエ株は、アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマ(Phaffia rhodozyma)のような重要な病原性真菌及び商業的に重要な真菌からの相同体を含む、真菌の相同体であって、変異した表現型を相補し、又は救出し得る相同体をスクリーニングするために使用できる。これらの株は、救出された生物が、増加した生育又は生存をし得るように、これらの生物は、本明細書に記載したセレクションをベースとするスクリーニングを用いて単離するように、遺伝的に修飾することができる。セレクションをベースとするスクリーニングは、高情報量を可能にし、このため、現在使用されているアプローチよりもさらに迅速に遺伝子を単離するアプローチを与える。さらに、変異した表現型を相補する遺伝子のスクリーニングは、機能的な特性を共有するが、ヌクレオチド又はアミノ酸レベルで高度の類似性を含有しない遺伝子の単離を可能とする。
インベイシン相同体の単離
任意の真菌細胞は、インベイシン相同体の分子クローニングの核酸源として用いることができる。インベイシン相同体(例えば、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1)の単離には、真菌の侵入の促進又は阻害を伴う特性又は活性を示すポリペプチドをコードするDNA配列の単離が含まれる。本明細書に記載されているインベイシン遺伝子及びポリペプチドの配列に基づき、当業者に周知の標準的な戦略と手法を用いて、様々な真菌(例えば、カンジダ、アスペルギルス、ペニシリウム、ムコール、モナスカス、トリコデルマ、フサリウム、トリポクラダム、アクレモニウム、クリプトコッカス、ウスティラゴ、マグネポルス(Magneporthe)、アクレモニウム、ヤロウィア、及びファフィア)から、さらなるインベイシン相同体の制御及びコーディング配列を単離することが可能となる。
【0074】
ある例では、核酸ハイブリダイゼーションスクリーニングの慣用的スクリーニング法とともに、本明細書に記載された任意のインベイシン配列を使用してもよい。このようなハイブリダイゼーション手法とスクリーニング操作は、当業者に周知であり、例えば、「Benton and Davis, Science 1977, 196:180; Grunstein and Hogness, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 1975, 72:3961; Ausubel et al., 1997, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York; Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York;及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York」に記載されている。ある例では、カンジダ・アルビカンスのRIM1 cDNA(本明細書に記載されている)の全部又は一部は、カンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子と配列同一性を有する相同体を見出すために、組換え真菌DNAライブラリー(例えば、アスペルギルス・ニードランスから調製された組換え発現ライブラリー)をスクリーニングするためのプローブとして使用され得る。ハイブリダイジングしている配列は、以下に記載されている方法に従って、プラーク又はコロニーハイブリダイゼーションによって検出される。
【0075】
あるいは、Rim1ポリペプチドのアミノ酸配列の全部又は一部を用いて、
Rim1 “degenerate”オリゴヌクレオチドプローブ(すなわち、あるアミノ酸配列のための全ての可能なコーディング配列の混合物)を含むRim1特異的オリゴヌクレオチドプローブを容易にデザインし得る。これらのオリゴヌクレオチドは、Rim1配列のDNAストランド及び任意の適切な一部の配列に基づき得る。このようなプローブをデザインし、調製するための一般的な方法は、例えば、Ausubelら(上記)とBerger及びKimmel(上記)に記載されている。これらのオリゴヌクレオチドは、RIM1相補配列にハイブリダイズし得るプローブとして、又は様々な増幅技術、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング戦略用のプライマーとしてのそれらの使用の何れかを通じて、RIM1相同体の単離に有用である。所望であれば、様々なオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせを組換えDNAライブラリーのスクリーニング用に使用し得る。オリゴヌクレオチドは、本分野で公知の方法を用いて検出可能にラベルされ得、組換えDNAライブラリーからのフィルターレプリカをプローブするために使用し得る。組換えDNAライブラリーは、本分野で周知の方法、例えば、Ausubelら(上記)に記載されているような方法に従って調製される。又は、それらは、市販の採取源から得られ得る。
【0076】
該アプローチの一例では、75%を超える同一性を有する相同なRIM1配列は、高ストリンジェンシー条件を用いて検出又は単離される。高ストリンジェンシー条件には、約42℃、及び約50%のホルムアミド、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、1% SDS、2×SSC、10%デキストランサルフェートでのハイブリダイゼーション、約65℃、約2×SSC、及び1% SDSでの第一の洗浄後の約65℃、及び約0.1×SSCでの第二の洗浄が含まれ得る。あるいは、高ストリンジェンシー条件には、約42℃、及び約50%のホルムアミド、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、0.5% SDS、5×SSPE、1×デンハルト(Denhardt’s)でのハイブリダイゼーション後の、室温、2×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄、及び55〜60℃、0.2×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄が含まれ得る。
【0077】
別のアプローチでは、本明細書に記載されているカンジダ・アルビカンスのRIM1遺伝子と約25%以上の配列同一性を有するRIM1相同体を検出するための低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件には、例えば、約42℃、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、1% SDS、2×SSC、及び10%デキストランサルフェート(ホルムアミドなし)でのハイブリダイゼーション、及び約37℃、6×SSC、約1% SDSでの洗浄が含まれる。あるいは、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、約42℃、及び約40%のホルムアミド、0.1mg/mLの絞り取ったサケの精子DNA、0.5% SDS、5×SSPE、1×デンハルトで、その後室温、2×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄、及び室温、0.5×SSC、0.1% SDSでの二度の洗浄で実施し得る。これらのストリンジェンシーの条件は、例示である;他の適切な条件は、当業者によって決定し得る。
【0078】
所望であれば、慣用法を用いて、RIM1転写物の存在又は不存在を決定するために、任意の真菌(例えば、本明細書に記載されている真菌)から単離した全RNA又はポリ(A+)RNAのRNAゲルブロット分析を使用し得る。一例として、アスペルギルス・ニードランスRNAのノーザンブロットは、標準的な方法に従って調製され、50%のホルムアミド、5×SSC、2.5×デンハルトの溶液、及び300μg/mLのサケ精子DNAを含有するハイブリダイゼーション溶液中にて、37℃で、RIM1遺伝子断片を用いてプローブされる。一晩ハイブリダイゼーションを行った後、該ブロットを10分間、各回1×SSC、0.2% SDSを含有する溶液中において、37℃で二度洗浄する。ブロットのオートラジオグラムは、真菌RNAサンプルにRIM1ハイブリダイジングRNAが存在することを実証するために使用される。ハイブリダイズしているバンドは、この真菌が、C.アルビカンスRIM1相同体を発現していることの指標とされる。このハイブリダイズしている転写物の単離は、標準的なcDNAクローニング手法を用いて行われる。他の真菌の侵入は、類似の様式で評価され、クローニングし得る。
【0079】
上述のように、インベイシンオリゴヌクレオチド(例えば、カンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子から調製したオリゴヌクレオチド)は、例えば、PCRを用いた増幅クローニング戦略でのプライマーとしても使用し得る。PCR法は、本分野において周知であり、例えば、「PCR technology, Erlich, ed., Stockton Press, London, 1989; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds., Academic Press, Inc., New York, 1990; 及びAusubel et al.(上記)」に記載されている。プライマーは、必要に応じて、例えば、(本明細書に記載されているような)増幅された断片の5’及び3’末端の適切な制限部位を含有せしめることによって、適切なベクターに増幅された産物がクローニングされるようにデザインされる。所望であれば、RIM1配列は、PCR「RACE」手法、すなわち「Rapid Amplification of cDNA Ends(例えば、Innis et al.(上記)参照)」を用いて、単離し得る。この方法により、カンジダ・アルビカンスのRIM1配列に基づくオリゴヌクレオチドプライマーは、3’及び5’方向に向けられ、重複するPCR断片を作成するために使用される。これらの重複する3’と5’末端RACEの産物は、元の完全長cDNAを産生するために結合される。該方法は、Innisら(上記);及びFrohmanら, Proc. Natl. Acad. Sci, USA 85:8998, 1988に記載されている。RIM1相同配列を増幅するのに有用なオリゴヌクレオチドプライマーの例には、
が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
上記各配列において、Nは、A、T、G、又はCである。
【0081】
あるいは、任意の真菌cDNA又はcDNA発現ライブラリーは、本明細書に記載された標準的方法に従って、インベイシン変異体(例えば、本明細書に記載されているRIM1及びAFL1変異体)の機能的な相補によってスクリーニングされ得る。
【0082】
配列のインベイシンポリペプチドとの関連性の確認は、機能的相補性アッセイ、及び相同体及び発現された産物の配列比較を含む様々な慣用法によってなし得るが、これらに限定されない。さらに、遺伝子産物の活性は、本明細書に記載された手法の何れか、、例えば、そのコードされた産物の機能的又は免疫学的特性に従って、評価し得る。
【0083】
一度インベイシン相同体が同定されれば、それは、標準的な方法にしたがってクローニングされ、標準的な方法に従って、真菌発現ベクターの構築に使用される。
相互作用するポリペプチド
インベイシンタンパク質配列の単離は、インベイシンタンパク質と作用するポリペプチドの同定も促進する。このようなポリペプチドをコードする配列は、任意の標準的なツーハイブリッドシステムによって単離される(例えば、Fields et al., Nature 1989, 240:245−246; Yang et al., Science 1992, 257:680−682; Zervos et al., Cell 1993, 72:223−232)。例えば、Tpk2配列の全部又は一部は、(GAL4又はLexA DNA結合ドメインのような)DNA結合ドメインに融合され得る。この誘導タンパク質が、それ自身、適切なDNA結合部位を有するレポーター遺伝子(例えば、lacZ又はLEU2レポーター遺伝子)の発現を活性化しないことを確定した後に、該融合タンパク質を相互作用の標的として使用する。続いて、活性化ドメイン(例えば、酸性活性化ドメイン)に融合されたタンパク質と相互作用する候補を宿主細胞中でTpk2融合体と同時発現させ、それらがTpk2配列と接触し、レポーター遺伝子の発現を刺激する能力によって、相互作用するタンパク質を同定する。このスクリーニング法を用いて同定されたTpk2と相互作用するタンパク質は、後天的な耐性シグナル伝達経路に含まれるタンパク質のよい候補となる。該方法の例は、本明細書に記載されている(下記)。
サッカロミセス・セレビシアエの変異を相補する真菌の相同体の単離
サッカロミセス・セレビシアエ変異株の使用の一つは、サッカロミセスセレビシアエの変異を相補できる他の真菌の相同体をスクリーニングすることである。ここで、我々は、このようなアプローチの効果に対する証拠を与える。我々は、INV8のC.アルビカンスの相同体(RIM1(図5A;配列番号3)と表記される)を同定した。完全長のRIM1が、サッカロミセス・セレビシアエinv8株中のプラスミドから発現されると、細胞は、まだinv8表現型を示していた。しかしながら、RIM1の相同体(サッカロミセス・セレビシアエのINV8、ヤロウィワ・リポリティカのRIM101、及びアスペルギルス・ニードランスのpacC)は、活性化のためにタンパク分解によるプロセッシングを必要とする。サッカロミセス・セレビシアエのプロテアーゼは、カンジダ・アルビカンスのRim1(図5A;配列番号4)を切除することができないようである。これを支持するように、プロテアーゼ切断部位の直前で末端切断されたRIM1遺伝子は、サッカロミセス・セレビシアエのinv8表現型を相補することが見出された(図5B)。これによれば、Rim1プロテアーゼは、カンジダ・アルビカンス中に存在するようであり、該プロテアーゼは、INV14の相同体と考えられるであろう。サッカロミセス・セレビシアエの侵入と他の真菌による二次代謝産物の産生との相関という我々の発見に基づけば、全てではないにしても、多くのサッカロミセス・セレビシアエINV遺伝子が、様々な真菌に相同体を有するものと思われる。実際、INV5、INV9及びINV4は、それぞれ、アスペルギスル・ニードランス遺伝子のpalA、palF、及びpalBの産物と高いアミノ酸類似性を有するタンパク質をコードすると予想される。我々は、INV9近傍のゲノム領域の公開された配列が、幾つかの誤りを含有していることを見出した。INV9の正しいDNA配列(配列番号5)と予想されるポリヌクレオチドの配列(配列番号6)は、図6A−Bに示されている。INV5/palA、INV9/palF、及びINV14/palBは、それぞれの生物中でInv8/PacCを活性化させるのに必要とされる。このようにこれらの遺伝子は、構造的及び機能的に保存された遺伝子である。さらに、INV9の相同体、INV11及びINV13は、部分的に配列決定されたカンジダ・アルビカンスの遺伝子のリストに見出される(http://alces.med.umn.edu.)。真菌スキゾサッカロミセス・ポンベのINV1の相同体(GENBANK locus:SPBC3B9)、INV13の相同体(GENBANK locus: SPBC4B4)、及びINV15の相同体(GENBANK locus: SPACC1B3)と同様に、真菌クルベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)のINV11の相同体(GENBANK locus: KLAJ9848)も部分的に配列決定されている。STP22の相同体(GENBANK locus; SCZ86109)は、真菌サッカロミセス・カールスベルジェンエシス(Saccharomyces carlsbergenesis)において同定されている。INV経路の12のクローニングされた遺伝子のうち、六つ(INV5、INV8、及びINV12−15)は、真菌界の外に、明白な構造的相同性を有している。病原性の真菌、カンジダ・アルビカンス、及び重要な二次代謝産物であるペニシリンを産生する真菌、アスペルギルス・ニードランスを含む様々な真菌にINV相同体が存在することは、様々な真菌の病原および二次代謝産物の産生に影響を与えるために、これらの遺伝子及び/又はそれらの活性を操作することの潜在的な有用性を強調するものである。さらなる相同体は、サッカロミセス・セレビシアエの変異株中で真菌のcDNA又はゲノムライブラリーから遺伝子を発現させ、変異表現型が相補又は増強されている形質転換体を選択することによって単離することができる。
侵入におけるそれらの役割を決定するための他の真菌遺伝子の変異生成
任意の真菌種から、侵入に関与するサッカロミセス・セレビシアエ・遺伝子の任意の特異的な相同体を単離した後、我々は、病原又はその真菌による侵入における遺伝子の役割を決定することができる。侵入を活性化又は増加させる任意のこのような遺伝子は、ビルレンスも活性化又は増加させるであろう。これらの遺伝子の機能の欠失又は不活化は、その真菌株のビルレンスを減少させるであろう。以下の遺伝子欠失の例は、前節からのカンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子を利用する。
【0084】
我々は、カンジダ・アルビカンスRIM1遺伝子が、カンジダ・アルビカンス中での侵入性の菌糸の成長に必要であるかどうかをテストした。ホモ接合のrim1/rim1欠失を作った。カンジダ・アルビカンスのrim1/rim1変異体は、寒天上、37℃、血清の存在下で侵入性の菌糸を形成しないのに対して、非変異カンジダアルビカンスは侵入性の菌糸を形成する(図7)。変異した株のビルレンスは、様々な動物モデルを用いて決定することができる。全身感染のモデルの一つを一例として記載する。正常な「野生型」株と比較したカンジダの変異株の相対的なビルレンス(感染性)をテストするために、変異及び正常カンジダ細胞を別々の健康なマウスの尾静脈の中に注射する。次に、2週間から1月の間、マウスを観察する。変異したカンジダによって死んだマウスと正常なカンジダによって死んだマウスとの相対数が、ビルレンス指標を与える(Lo et al., Cell 1997, 90: 939−949参照)。さらに、侵入を阻害し、又は減少する任意の真菌遺伝子も二次代謝産物の産生を阻害又は減少させる可能性がある。このような遺伝子のうちの何れかの機能を欠失又は崩壊すれば、二次代謝産物の産生が増大するであろう。形質転換及び相同的組換え手法を含む遺伝子工学的な方法が、多くの真菌で実施されている(Punt and vqn den Hondel, Methods Enzymol. 1992, 216:447−457; Timberlake and Marshall, Science, 1989, 244: 1313−1317; Fincham, Microbiol Rev. 1989, 53: 148−170)。現在、遺伝子欠失手法は、カンジダ・アルビカンス(Fonzi and Irwin, Genetics 1993, 134:717−728)、ウスティラゴ・メイディス(Fotheringham and Hollman, Mol. Cell Biol. 1989, 9:4052−4055; Bolker et al., Mol. Gen. Genet. 1995, 248:547−552)、ヤロウィア・リポリティカ(Neuveglise et al., Gene 1998, 213: 37−46; Chen et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 1997, 48:232−235; Cordero et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 1996, 46:143−148)、アクレモニウム・クリソジェナム(Skatrud et al., Curr. Genet. 1987, 12:337−348; Walz and Kuck, Curr. Genet. 1993, 24; 421−427)、マグナポルセ・グリージー(Magnaporthe grisea)(Sweigard et al., Mol. Gen. Genet. 1992, 232: 183−190);Kershaw et al., EMBO J. 1998, 17: 3838−3849)、ヒストプラズマ・カプシュレイタム(Histoplsma capsulatum)(Woods et al., J. Bacteriol. 1998, 180:5135−5143)、及びアスペルギルス種(Miller et al., Mol. Cell Biol. 1985, 5: 1714−1721; de Ruiter−Jacobs et al., Curr. Genet. 1989, 16: 159−163; Gouka et al., Curr. Genet. 1995, 27: 536−540; van den Hombergh et al., Mol. Gen. Genet. 1996, 251: 542−550; D’Enfert, Curr. Genet. 1996, 30:76−82; Weidner et al., Curr. Genet. 1998, 33:378−385)を含む多くの真菌で実施されているが、これらに限定されない。
【0085】
この遺伝子欠失手法は、最強の表現型を与える真菌の相同体及び侵入特異的な相同体の選別を可能とする。遺伝子破壊の幾つかは、非病原性真菌をもたらすであろう。これらの遺伝子及びコードされるタンパク質は、化合物で標的とするための優れた候補である。他の破壊は、高侵入性真菌をもたらすであろう。アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマのような真菌中に存在するこれらの遺伝子の変異は、βラクタム抗生物質及びそれらの誘導体又はスタチンのような抗高コレステロール血症剤等の商業的価値のある二次代謝産物の産生を増加せしめるはずである。
二次代謝産物の産生を増加するための系
真菌は、彼らの生存に好ましい環境を作り出すために二次代謝産物を分泌する。これらの代謝産物は、極めて多くの商業的用途を有することも示されている。我々は、二次代謝産物の産生と侵入の制御との間に相関を発見した。ペニシリン産生の制御に関与するアスペルギルス・ニードランスのpacC遺伝子は、侵入に役割を有する相同体がサッカロミセス・セレビシアエとカンジダ・アルビカンスの両者に存在する。ペニシリン産生の制御に関与するアスペルギルス・ニードランスの遺伝子palA、palD、及びpalFも、侵入に必要とされる相同体がサッカロミセス・セレビシアエに存在する。さらに、上述のように、我々は、カンジダ・アルビカンスにpacCの相同体を同定し(RIM1)、これも侵入に必要であることを示した。同様に、サッカロミセス・セレビシアエによる基質への侵入を誘導する栄養状態の多くも、アスペルギルス・ニードランスに増加したペニシリンの産生をもたらす。例えば、限られた量のアンモニアの存在下における生育は、サッカロミセス・セレビシアエにおける偽菌糸体の生育とアスペルギルス・ニードランスにおけるペニシリンの産生の両者に重要である(Gimeno et al, 上記、及び、Brakhage. A. A., Micro. Mol. Biol. Rev. 1998, 62:547−585参照)。我々が、侵入及びFLO11プロモーターからの発現(下記)を制御することを示した遺伝子の多くは、アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマのような真菌中で二次代謝産物の産生も制御するであろう。この知見は、その多くが、商業的に価値が高い、より多量のこれらの二次代謝産物を産生する真菌株を作り出すために使用することができる。
【0086】
遺伝学的な操作で二次代謝産物の産生を増加させる方法の一例は、真菌の侵入阻害遺伝子HOG1を利用することである。我々は、HOG1が、サッカロミセス・セレビシアエにおける一倍体の侵入と偽菌糸体の生育の負の制御因子であることを示した。サッカロミセス・セレビシアエのHOG1を変異又は欠失させると、野生型株が侵入し得ない条件で、基質に侵入するトランスジェニック株が得られる。アスペルギルス種、ペニシリウム種、アクレモニウム・クリソジェナム、ヤロウィア・リポリティカ、及びファフィア・ロドツィーマのような真菌中のHog1タンパク質の活性を減少させると、シグナル伝達経路の脱抑制を介して、二次代謝産物の産生の増加をもたらす。タンパク質活性を減少させるための様々な方法が存在する。一つの方法は、本明細書に記載したように、真菌に適用し得ることが知られている相同的組換え手法を用いて、HOG1遺伝子全体又はその一部を欠失させることである。どうように、遺伝子の変異誘発は、減少したタンパク質活性ももたらし得る。別の方法は、直接又は間接に、HOG1の発現又はHog1の活性を阻害する遺伝子又は化合物を適用することであろう。これらの遺伝子及び化合物は、本明細書に記載されたスクリーニング手法を用いて単離することができる。HOG1に関して記載した方法は、同様に、GRR1, IRA1, BEM2, TPK3, SFL1, SSD1, RIM15, CDC55, SWI4及びELM1を含む任意の真菌の抗侵入遺伝子に適用できるが、これらに限定されない。
【0087】
産生を増加させるための第二の機構は、INV8の相同体又は他の任意の真菌侵入促進遺伝子のような真菌侵入促進遺伝子の活性を増加させることである。一つの方法は、構成的に活性なプロモーターからこのような遺伝子を発現させることである。アスペルギルス・ニードランスのgpdA遺伝子、アクレモニウム・クリソジェナムのipnS遺伝子、又はペニシリウム・クリソジェナムphoA遺伝子の何れかから得たプロモーター配列からの遺伝子の発現を誘導する発現システムのような発現システムは、当業者に周知である(Skatrud et al., Curr. Genet. 1987, 12:337−348; Kolar et al, Gene 1988, 62:127−134; de Ruiter−Jacobs et al., Curr. Genet. 1989, 16: 159−163: Smith et al., Gene 1988, 114:211−216; Graessle et al., Appl. Environ. Microbiol. 1997, 63:753−756)。
【0088】
真菌の侵入促進遺伝子の活性を増加させるための別の方法は、活性化変異の導入を介して、又は活性の増加をもたらす他の遺伝子への融合を作出することにより、遺伝的に真菌侵入遺伝子を変化させることである。融合タンパク質は、好ましくは、構成的に活性である。第三の方法は、コードされたタンパク質の活性が増加するように真菌の侵入遺伝子を変異させることである。例えば、サッカロミセス・セレビシアエのInv8とその相同体PacCは、転写活性特性にタンパク分解による切断を必要とする。我々は、この切断には、Inv8の核への局在化が必要なことを示した。Inv8を末端切断することができないと、Inv8の細胞質への蓄積をもたらす。これらのデータは、Inv8とその相同体の活性化が、タンパク質が核内に存在するその標的遺伝子に接近できるようになった結果であろうと示唆している。このように、プロテアーゼ切断部位のコーディング配列の上流へのストップコドンの導入によって引き起こされるInv8又はPacCの末端切断は、構成的に活性な転写因子を作り出すであろう。別の方法は、直接又は間接に、INV8の発現又はInv8の活性を増加させる化合物を適用することである。これらの化合物は、本明細書に記載したスクリーニング手法を用いて単離し得る。サッカロミセス・セレビシアエのINV8は、ヤロウィア・リポリティカのRIM101、並びにアスペルギルス・ニードランス、アスペルギルス・ニガー及びペニシリウム・クリソジェナムのpacCと相同である。pacCは、直接ペニシリンの産生を制御することが知られている。ペニシリンの産生は、活性化された形態の転写因子によって制御される。このように、記載した何れかの方法を用いてPacC活性を増加させれば、ペニシリン産生の増加がもたらされるであろう。
FLO11 プロモーターは、真菌侵入のレポーターである
細胞表面タンパク質Flo11は、侵入性生育と線状生育(filamentous growth)に必要であることが報告されている(Lambrechts et al., 1996; Liu et al., 1996; Lo and Dranganis, 1996; Lo and Dranganis, 1998; S. cerevisiae var. diataticusでは、Flo11は、Muc1と呼ばれている)。FLO遺伝子は、細胞−細胞接着に必要とされるタンパク質をコードする(Teunissen and Steensma, 1995)。四つのプロテインキナーゼ(Ste20, Ste11, Ste7及びKss1)が関与するMAPキナーゼ経路は、転写因子Ste12/Tec1の活性を制御する。このシグナル伝達カスケードによって制御される遺伝子の一つがFLO11である。
【0089】
我々は、FLO11が、二倍体の線状生育及び一倍体の侵入を制御する他のシグナル伝達経路に対する下流の標的であることを発見した。これらの表現型を制御する一つの経路が、FLO11の発現も制御することは知られていたが、FLO11が、数個のシグナル伝達経路によるこのような複雑な制御の下にあると思われるのは驚くべきことであった。これらの発見を以下に概説する。
【0090】
FLO11発現を制御する別のシグナル伝達カスケードの例は、cAMP/PKA経路である。FLO11がcAMP経路の標的であることを示唆する証拠は、以下のとおりである。MAPK経路とcAMP/PKA経路は共に、同一の活性化因子Ras2により、線状化のために活性化されるので、線状生育に対するcAMPの別個の役割の分析には、Rasとは独立して、PKAの分岐を活性化する能力が必要とされる。この最終目標を達成するために、我々は、RAS遺伝子(RAS1とRAS2)と高親和性cAMPホスホジエステラーゼPDE2を共に欠損する株(ras1 ras2 pde2)を構築した。Ras1とRas2は、アデニレート・シクラーゼCyr1の活性化に必要とされ、PDE2は、cAMPの加水分解に必要とされるホスホジエステラーゼをコードしているので、ras1 ras2 pde2株は、cAMPの合成と分解が損なわれている。Rasに誘導されたシグナルが、MAPKカスケードに伝達できないので、このような株は、Aキナーゼを誘導するための外来cAMPに依存するはずであり、線状化に対するcAMPの効果は、Ras/MAPKシグナルに依存しないはずである。
【0091】
ras1 ras2 pde2株(SR957)は、YPD(酵母抽出物、ペプトン、デキストロース)上での生育にcAMPを必要とするが、SC(synthetic complete)、SLAD(synthetic low ammonia dertrose)、及びYNB(yeast nitrogen base)培地上では、cAMPがなくても生育し、低cAMPレベルの指標であるグリコーゲンの高蓄積を示す。我々は、他者によって観察されているように(Nikawa et al., 1987)、cAMPを添加しなくても、この三重変異体が生育できるのは、内部cAMPを与えるのに十分な基礎シクラーゼ活性があるからと推測する。この見解を支持するように、我々は、我々のras1 ras2 pde2株の生育が、機能的シクラーゼ(CYR1)遺伝子に依存することを観察した。
【0092】
二倍体ras1 ras2 pde2株(SR959)は、cAMPがなくてもSLAD培地上で生育するが、偽菌糸体を形成しない。しかしながら、cAMPを含有するSLAD培地上では、該株は、非常に線状性である。さらに、cAMPの添加は、線状化の誘導のみならず、基質の侵入をもたらす。CAMPの存在下では、ras1 ras2 pde2株(SRS59)は、テストした全ての培地(YPD, SC, SLAD)上で侵入性である。侵入性の生育は、YPD上で一倍体株を用いると通常観察されるので、細胞の種類のシグナルと栄養学的なシグナルの両者が、細胞内の高いcAMPレベルによって回避され得る。
【0093】
MAPK経路を活性化することによってcAMPが、線状化を誘導するかどうかを決定するために、我々は、線状化を誘導する濃度のcAMPを含有するSLADプレート上で培養されたras1 ras2 pde2株におけるKss1 MAPK経路特異的なレポーターFG::Ty1−lacZ(Mosch et al.,上記)の発現を測定した。ras1 ras2 pde2株(SR959)中のFG::Ty1−lacZレポーターの発現レベルは、これらのcAMPレベルによって変化しなかった。さらに、cAMPは、ste12 ras1 ras2 pde2欠失株(SR1088)に線状化を誘導したので、cAMP/PKA経路は、MAPK経路と並列的に作用していることを示している。
【0094】
我々は、cAMPによって、ras1 ras2 pde2株でFLO11 mRNAが誘導されるが、野生型バックグラウンドでは誘導されないことを実証した。cAMPなしで三重変異株が生育するときには、FLO11転写物が検出できず、2mM cAMPの存在下では強く誘導された。房状化(flocculation)に必要とされ、Flo11と26%同一である別の細胞表面タンパク質Flo1をコードするFLO1の発現は、同一の条件下で1.4倍しか誘導されない。この結果は、FLO11の強力な誘導は、全ての房状化遺伝子の一般的な特徴ではないことを示している。FLO11のcAMP誘導とcAMPの存在下で細胞が培養されるときに観察される形態的な変化との対応は、さらに、FLO11欠失の表現型によって支持される;flo11 ras1 ras2 pde2株(SR1121)では、cAMPは、侵入も線状化も誘導できない。これらのデータは、FLO11が、侵入性及び線状生育の誘導に必要とされるcAMP依存性シグナル経路の中心的な標的であることを示唆している。
【0095】
CAMPの存在下での増強されたFLO11転写は、細胞の形態的変化と相関する。2mMのcAMPが存在する液体SCで培養された細胞は、偽菌糸体様の細胞の鎖を示すのに対して、cAMPが存在しない液体SCで培養された細胞の多くは、単一の細胞であるか、又は単一の芽(bud)を有する細胞の何れかである。細胞−細胞接着に対するcAMPの効果は、細胞の伸長に対する環状ヌクレオチドの影響よりもずっと顕著である。
【0096】
侵入性及び線状生育のレポーターとしてのFLO11プロモーターの使用は、普遍的なようである。図9に示されているように、FLO11プロモーターは、侵入性及び偽菌糸体生育の良好なレポーターである。侵入又は偽菌糸体生育を減少させる変異体の場合、afl1, ste12, tec1, flo8, inv8, ras2, tpk2, phd1, phd2, inv6, inv7, whi3, dhh1, mep2, ptc1, mcm1, inv1, inv13及びinv14に対して、FLO11の発現と侵入/偽菌糸体生育には直接的な相関が存在した。さらに、侵入/偽菌糸体の生育の増加を示したhog1、grr1、ira1、tpk3、及びsfl1変異体も、増加したFLO11発現を示した。例えば、FLO11は、Tpk2とSfl1の両者によって転写的に制御されている。tpk2変異体のFLO11発現は、1/10に減少を示したのに対して、tpk3変異体は、
3倍の上昇を有していた。FLO11 mRNAのレベルは、tpk2 tpk3二重変異体でも10倍減少していた。FLO11 mRNAのレベルは、sfl1変異体でも3倍増加し、sfl1 tpk2変異体で同じように増加した。sfl1 tpk3二重変異体のFLO11 mRNAレベルは、何れの一重変異体のレベルをも超えていた。
【0097】
FLO11は、偽菌糸体生育と侵入の優れたレポーターであるのみならず、侵入及び偽菌糸体生育にも重要である。sfl1 flo11一倍体変異株は、リッチ培地上での侵入性生育ができず、sfl1 flo11ホモ接合二倍体変異体は、偽菌糸体の発育ができなかった。このように、flo11機能喪失は、sfl1機能喪失の高侵入性及び高線状表現型をブロックした。しかしながら、sfl1 flo11二重変異体の喪失は、flo11一重変異体のそれに比べて顕著ではなく、FLO11が、偽菌糸体の発育と一倍体の侵入に関与する、唯一のSfl1の下流標的でないことを示唆している。
【0098】
図10に示された遺伝子を含む、シグナル伝達経路に位置する他の多くの遺伝子も、FLO11発現に必要とされるであろうと仮定するのが合理的である。これらの結果と侵入(そして、おそらくは、FLO11の発現)を制御する多数の更なる遺伝子の我々の近年の同定に基づいて、我々は、FLO11を制御する遺伝的な回路の樹形図を構築した(図10)。表1に掲載されたこれらの遺伝子は全て、侵入及び/又は二形性の生育をブロックすることによって作用する新規抗真菌剤の候補標的である。
【0099】
FLO11の制御された発現に、FLO11の該5’領域がどの程度必要であるかを決定するために、我々は、この非コーディング領域中に欠失を含有するプラスミドベースのFLO11::lacZレポーター構築物の発現を調べた。FLO11の開始コドンから2800塩基(bp−2800)上流の領域に及ぶ14の連続する200bpの欠失を構築した。BglII部位を末端に含有するプライマーを使用し、YEp355中にクローニングするPCRにより、ATGの5’の3kb領域を増幅することによって、FLO11−lacZレポータープラスミドを構築した(用いたプライマーの配列は、5’−CGCACACTATGCAAAGACCGAGATCTTCC−3’)(配列番号7)と5’−GAAGATCTTCTC CACATACCAATCACTCG−3’)(配列番号8)。該レポーター中の各14の欠失は、3kbのFLO11−プロモーター領域(EcoRI/HindIII断片としてYEp355−FLO11::lacZからサブクローニングされた)を含有するKS+ブルースクリプトプラスミドを使用して、プライマー重複法によって構築された。変異誘発後、部分的に欠失されたflo11−nnプロモーター配列をYEp355に再クローニングした。この目的で使用したプライマーは、
得られた欠失シリーズのための14のプラスミドを株10560−2Bに形質転換した。βガラクトシダーゼの等価発現について、フィルターアッセイを用いて、少なくとも3つの独立したクローンをテストした。二倍体株は、10560−2B flo11−nn形質転換体と株10560−5Bをそれぞれ交配することにより、添加成分としてロイシンのみを含有するYNB上で選択することによって作出した。
【0100】
400bpの配列エレメントを含有する14のプラスミドを10560−2B、L5795、L5816、L6149、L6150、及びSR957に形質転換した。βガラクトシダーゼの等価発現について、フィルターアッセイを使用して、少なくとも三つの独立したクローンをテストした。フィルターアッセイは、α−因子(5μM)の効果をテストするために使用した。
【0101】
FLO11プロモーターエレメントが多数存在し、これらのエレメントに影響を与える複数の条件があるために、実験のデザインには、いくつかの節約が必要であった。これらの各エレメントを含有する我々のプラスミドベースのレポーターからβガラクトシダーゼを測定することにより、迅速な株の構築とレポーター活性の再現性ある測定が可能となった。我々は、株がプラスミドを保持するように、分析を選択培地に限定した。我々のβガラクトシダーゼアッセイは、一般的に、二倍体株に対するより一倍体株に対してより高い活性を示す。リッチ培地の場合、この結果は、定常状態のmRNAレベルを測定することにより、FLO11の発現をモニターしたときに以前観察された結果と一致している。我々が、24−26時間後(ディオキシ生育後)に、又はSLAD培地上で、FLO11::lacZを測定すると、一倍体細胞は10倍、二倍体細胞は、5倍を超える誘導を示す。SLAD上での一倍体細胞に対するFLO11::lacZのこの大きな誘導は、FLO11のmRNAを測定した実験では観察されなかった。この差は、mRNAとタンパク質の安定性の差、又は培養をサンプリングした時間の差の何れかによるものであり得る。何れかの方法で測定したFLO11の発現は、生育条件と生育期に極めて敏感である。
【0102】
総RNAは、熱い酸フェノールを用いて調製し、ノーザンブロットは、Ausubelら(上記)に記載されているように実施した。OD600=1.0になるまで、ras1 ras2 pde2を欠失した株をSC+1mM cAMPの中でプレ培養した。SCを用いて2度細胞を洗浄し、新鮮なSC培地又はSC培地+2mM cAMP中に、OD600=0.3になるように希釈した。該細胞をOD600=1.0になるまで、培養し、採集した。ホルムアルデヒドを含有するアガロースゲル上で、10〜15μgのRNAを分離した。FLO11 mRNAへのハイブリダイゼーションについては、FLO11 ORFのbp 3502−4093に対応するプローブを使用した。
【0103】
FG::TyA−lacZのβガラクトシダーゼアッセイのための細胞を三日間SLAD−プレート上でインキュベートした;FLO11::lacZ発現研究のための細胞を、それぞれの液体培地中で培養し、Moschら(上記)に従って定量した。
【0104】
20時間生育した集密培養から、指数生育相にあるFLO11::lacZ発現を定量するための細胞を新鮮な培地にI:20で播種し、4〜6時間培養した。ディオキシシフト後に、FLO11::lacZ発現を定量するための細胞を24〜26時間生育させた。指数生育する培養に播種するために、同じ培養を使用した。SLAD培地でFLO11::lacZ発現を定量するための細胞をSC培地中で20時間プレ生育させ、2%のグルコースで二度洗浄し、SLAD培地中に1;5で希釈し、4〜6時間生育させた。cAMPにより誘導されたFLO11プロモーターセグメントを検出するために、各プラスミドを保有する株SR957を、1mM cAMPを含有する選択培地で一晩生育させ、cAMPを全く含有しない培地に10時間移して2mMのcAMPを含有するか、又は全くcAMPを含有する二つの培養に分割し、採集前に四時間生育させた。
【0105】
一倍体と二倍体の株で、欠失の発現をアッセイした。FLO11の発現は、細胞の生育相とともに変動するので、我々は、SC上で指数生育している細胞、グルコースが枯渇するまでSC上で生育された細胞(ポスト−ディオキシ)、及びSLAD(グルコースが多く、窒素が少ない培地)上の細胞を調べた。
【0106】
各FLO11::lacZプロモーター欠失に対する酵素アッセイにより、多くの部位を有する異常に長いプロモーターが明らかとなる。もし、その欠失が、少なくとも三倍lacZの発現を増加せしめれば、次のセクションでは、暫定的に、この部位を上流抑制部位(URS)と呼び、もし、その欠失が少なくとも30%の発現減少をもたらせば、上流活性化部位(UAS)と呼ぶ。
【0107】
各flo11−lacZプロモーター欠失の酵素アッセイによるシス−エレメントの分析によって、本来のFLO11プロモーターが、非常に抑制されていることが明らかになる。該欠失には、その活性が生育状態、栄養条件、及び細胞の種類に依存する少なくとも九個のURSエレメントが明らかとなる。URSエレメントの一つは、flo11−14(bp −2600−2800)によって規定され、シス−エレメントが、FLO11のコーディング領域の候補から少なくとも2800塩基対離れたところに存在していることを示している。一般的に、一倍体株は、二倍体株より強い抑制を示す。
【0108】
抑制部位の活性を可視化するための明瞭な方法は、各々の条件に対するlacZ活性とSLAD上で生育された一倍体のlacZ活性を比較することである。この比較により、flo11−4,−5, −7, −8, −12, −13及びflo11−14内のURSエレメントが明らかになる。これらサブセットのエレメントは、全ての培地上での抑制に対する鍵であるが、SLAD上で生育された一倍体における効果が最強である。一倍体特異的な効果は、欠失flo11−4,−10, −11, −12及びflo11−13に対して見出される。明らかに、flo11−4, −11, −12及びflo11−13には、一倍体特異的なFLO11の窒素抑制で機能する部位が存在する。
【0109】
一倍体と二倍体株には、その他の差異が存在し、最も顕著なのが、:1)SC上での二倍体で(指数生育)、flo11−4は、2倍減少した発現レベルを有するのに対して、一倍体では、33倍上昇した発現を有すること;2)ディオキシシフト後の二倍体では、flo11−11は、3倍減少したレベルを有しているのに対して、一倍体では、12倍上昇した発現を有している。二倍体細胞では、flo11−4、flo11−10、及びflo11−11は、UASエレメントとして作用する。flo11−5は、一倍体と二倍体の両者において、強力に窒素制御された部位である。
【0110】
欠失分析は、FLO11の発現に必要とされる配列エレメントも明らかにした。テストした全ての条件下で、flo11−6は、発現が劇的に減少し、flo11−6(−1200〜−1000)中の欠失した配列は、強いUASを含有することを示唆している。さらに、flo11−1、flo11−2、及びflo11−3は、一貫して、野生型のFLO11−lacZレポーター構築物に比べて、より低い活性を示し、これらは、FLO11プロモーター中のUASエレメントとして同定されている。flo11−1の発現が減少しているのは、この構築物からTATAA領域が欠失している結果であろう。
【0111】
我々は、染色体のFLO11遺伝子座に二つのflo11プロモーター変異を作成した。そのうちの一つflo11−16では、我々は、実質的にプロモーター領域全体(−150〜−2947)を欠失させた。残りの一つでは、我々は、野生型プロモーター全体をflo11−6と置き換えた。FLO11プロモーターの染色体欠失は、塩基対−2947〜−150をURA3と置きかえることによって行い(使用したプライマーの配列は:
【0112】
染色体FLO11プロモーター領域にflo11−6を作成するために、形質転換により、URA3遺伝子をEcoRI/HindIIIで消化したKS+flo11−D6と置き換えて、5−FOA上での選別により、塩基対−1000〜−1200(SR1174)の欠失を得た。
【0113】
flo11−16又はflo11−6の何れかを担持する株は、完全に一倍体侵入性生育を欠損しており、二倍体(例えば、flo11−6/flo11−6)のように、非常に減少した線状化を示す。一倍体の侵入欠損は、FLO11コーディング領域の欠失のそれと同程度に著しいものである。flo11−6構築物が欠失したセグメントをFLO11発現用の必須UASとして同定したflo11−6を用いた結果は、lacZプラスミド構築物からのデータに基づく我々の結論を支持している。
【0114】
FLO11プロモーターのUASエレメントを同定するための第二のアプローチでは、我々は、基礎転写ユニットに融合されたlacZレポーターの活性化をテストするために、約400塩基対の14個の各配列エレメントをデザインした(図11)。UAS配列エレメントを決定するために、200bp重複する14の各400bpエレメントをPCRによって増幅し、pLG669Zの中にクローニングした。このベクターは、lacZ遺伝子に融合されたCYC1遺伝子のコドンを一つ含有し、この融合された遺伝子の前には、CYC1の上流に横たわる1100のヌクレオチドがある。プロモーター断片は、−683〜−249位にXhoI制限部位を有する。XhoI断片を切り出し、FLO11プロモーターからの断片と置き換えた。該断片は、FLO11の開始コドンに対して、以下の位置に対応する:FLO11:−1〜−421(FLO11−2/1),−181〜−618(FLO11−3/2),−380〜−819(FLO11−4/3),−580〜−10l7(FLO11−5/4),−778〜−1219(FLO11−6/5),−980〜−1420(FLO11−7/6),−1181〜−1619(FLO11−8/7),−1380〜−1819(FLO11−9/8),−1572〜−2019(FLO11−10/9),−1780〜−2219(FLO11−11/10),−1980〜−2419(FLO11−12/11),−2180〜−2619(FLO11−13/12),−2380〜−2819(FLO11−14/13),−2580〜−2983(FLO11−15/14)。クローニングの目的で、PCRプライマーの5’末端に制限部位(XhoI)を導入した。この目的で使用したプライマーは:
であった。
【0115】
このレポーター構築物シリーズは、bp−200〜−400の間で重複するセグメントFLO11−2/1とFLO11−3/2、bp−1200〜−1000の間で重複するFLO11−6/5とFLO11−7/6、及びbp−2000〜−1800の間で重複するFLO11−10/9とFLO11−11/10にUASエレメント同定された。これらの配列エレメントは、基礎転写ユニットを含有するが、挿入をもたないレポータープラスミドと比較して、βガラクトシダーゼ活性に2倍を超える増加を示している。FLO11−2/1、FLO11−3/2、及びFLO11−11/10の活性は、ポスト−ディオキシの細胞中で誘導される。200倍にも及ぶ誘導をもたらす。これらの結果は、エレメントFLO11−2、FLO11−3、及びFLO11−11が、生育の後期段階におけるFLO11の発現に必要とされることを示唆した。欠失分析と合わせれば、これらのデータは、FLO11プロモーターには、少なくとも四つのUASエレメントが存在することを示唆していた。FLO11プロモーターは、サッカロミセス・セレビシアエ・バール・ディアスタティカスのMUC1, STA1, STA2及びSTA3遺伝子のプロモーター領域と非常に相同性を有している。
【0116】
上記のプロモーター分析のタイプは、二倍体の線状生育又は一倍体の侵入に欠損を有する同定された一連の変異株と組み合わせると、トランス−エレメント(tans−acting element)及びそれらによって標的とされるFLO11プロモーターの領域の同定が可能となる。ある例では、我々は、FLO8、STE12、TEC1が欠失した株、又はSTE12とTEC1の両者を欠失した株に、14個の各400bp配列エレメントを形質転換した。
【0117】
FLO8の欠失は、指数(それぞれ、8倍と4倍の減少)、及びポスト−ディオキシ生育(両エレメントともに5倍の減少)の両者で、FLO11−6/5とFLO11−7/6の発現を著しく減少せしめる。これらのエレメントは、高cAPMレベルによっても誘導される。FLO8機能は、ポスト−ディオキシ生育相におけるFLO11−3/2とFLO11−8/7の最大発現にも必要とされるが、指数生育においては必要とされず、この結果は、Flo8が、栄養条件に応じて異なって機能し得ることを示唆している。
【0118】
STE12の欠失は、ポスト−ディオキシ細胞よりも、指数生育細胞で、より強い効果を有していた。Ste12を欠く指数生育細胞では、FLO11−6/5、FLO11/10/9、及びFLO11−11/10セグメントは、少なくとも発現が3倍の減少を示した。ポスト−ディオキシ細胞では、FLO11−10/9のみが、STE12欠失株減少した発現を示した。
【0119】
TEC1の欠失は、FLO11挿入レポーターシリーズの発現に対して顕著な影響を与えたが、この減少は、指数生育細胞のみで観察することができ、STE12又はFLO8が欠失された株で観察されたものに比べて、顕著でなかった。この観察は、本来のFLO11プロモーターのノーザン分析と一致しており、FLO11 mRNAレベルは、STE12(L5795)又はFLO8(L5816)が欠失した株での減少に比べて、TEC1(L6149)が欠失した株ではより低い減少を示した。FLO11−6/5、FLO11−10/9、及びFLO11−11/12は、指数生育細胞では、TEC1に依存していた。ste12株中のTEC1の欠失は、一重変異株に比べて、FLO11−10/9の発現に中程度の減少を示した。しかしながら、STE12の欠失は、TEC1の欠失に比べて、10倍を超える強い効果をもたらしたので、この結果は、この部位におけるSte12のTec1非依存性の役割を示唆し得る。
【0120】
我々の結果は、Flo8とSte12/Tec1が、大部分が重複していないFLO11プロモーター中の複数の部位を介して作用することを示唆している。Flo8とSte12の最強の効果は、指数及びポストディオキシ細胞の何れにおいても、FLO11プロモーターの二つの異なる配列エレメントで観察された。Flo8は、flo11−6(bp−1200〜−1000)で規定された配列エレメントに作用したのい対して、Ste12は、FLO11−10/9に対して作用した(bp−1800〜1600)。FLO11−12/11とFLO11−10/9は、Tec1とSte12の両者により標的とされた。異なる転写因子に対して空間的に離れた部位が存在することは、FLO11の転写に対して、複合的なコントロール(combinatorial control)が行われていることを支持する強力な証左である。
【0121】
第二の例では、我々は、AFL1の変異株におけるFLO11プロモーターの断片からのlacZの発現を測定した。この変異株の二倍体は、野生型酵母が糸を形成する条件下で、糸を形成せず、あるいは侵入しない。我々は、あるエレメントFLO11−11/10が、発現に関して、完全にAFL1に依存することを発見した。我々は、酵母細胞が、対数期生育から定常期生育に変化するにつれて、FLO11プロモーター断片11/10からの発現は、15倍以上誘導されることも見出した。さらに、この定常期のFLO11−11/10からの転写の誘導は、完全にAFL1に依存していた。
【0122】
上述のように、FLO11の発現は、偽菌糸体生育と一倍体の侵入に関与する多くの遺伝子に依存している。このため、FLO11プロモーターの分析を様々な変異株と組み合わせることにより、我々は、FLO11を制御するトランス−エレメント及び標的として機能する重要なプロモーターエレメントをマップすることができるだろう。サッカロミセス・セレビシアエ遺伝子の多くは、他の真菌に相同体を有しているので、この分析により、真菌の侵入を阻害し、又は二次代謝産物の産生を促進する化合物に対する標的の候補を同定することが可能となろう。
【0123】
変異株と組み合わせて、FLO11プロモーター断片及び欠失を用いる別の例では、cAMPシグナルが、FLO11転写を活性化するプロモーター中の部位
を決定した。我々は、培地にcAMPを添加することによって内部cAMPレベルを操作し得る株であるras1 ras2 pde2変異株(SR957)の中に400bpのレポーターシリーズを形質転換した。SR957に2mM cAMPを添加すれば、cAMPなしで生育したSR957に比べて、FLO11−6/5が3倍誘導され、FLO11−7/6、FLO11−8/7、及びFLO11−10/9が2倍誘導された。これらの結果は、トランス−エレメントが、一より多いシス−エレメントを介して、cAMPを介するシグナルを通じて、FLO11の発現をアップレギュレートされることを示唆している。cAMPによって最も強く誘導されたセグメントは、重複するエレメントFLO11−6/5とFLO11−7/6(bp −1200〜−1000)によって規定され、同エレメントは、Flo8の標的となる。先に示したように、このエレメントは、侵入及び線状生育の誘導にも必要とされる。
【0124】
上述のように、FLO11転写物は、FLO8遺伝子の欠失を含有する株(L5816、flo8−2)では検出されなかった。さらに、cAMPによるFLO11の誘導は、FLO8の欠失を担持するras1 ras2 pde2変異株(SR1081)ではブロックされる。ste12 ras1 ras2 pde2変異株(SR1088)は、flo8 ras1 ras2 pde2変異株(SR1081)のように、劇的に減少したFLO11発現を有する。しかしながら、FLO11の転写は、ste12 ras1 ras2 pde2株では、cAMPによって誘導され得る。ste12変異体では、cAMPによってFLO11が誘導されるが、flo8変異体では誘導されないことは、対応するこれらの株の表現型と整合する。すなわち、flo8 ras1 ras2 pde2株は、cAMPの存在下において、SLADプレート上で糸を形成できないか、又はYPDプレート上で寒天に侵入するのに対して、ste12 ras1 ras2 pde2は、侵入性であり、且つ2mM cAMPを含有するYPD又はSLADプレート上で糸を形成することができる。このため、高cAMPレベルは、FLO11の転写の活性化において、MAPKカスケードの転写因子Ste12要求性を回避できるが、Flo8要求性は回避できない。これらの実験は、幾つかのシグナル伝達カスケードが、FLO11のプロモーターに収束するモデルを支持する。
【0125】
それぞれ、FLO8とSTE12の過剰発現によるste12とflo8変異体の抑制パターンは、FLO11に対するそれらの共同コントロールのモデルを支持する。ste12株(SR1021)におけるFLO8の過剰発現とflo8株(SR1134)におけるSTE12の過剰発現は、該変異体の偽菌糸体と侵入欠損を抑圧した。「抑圧された」株の偽菌糸体の形態は、野生型のそれとは同一でなかった。STE12を過剰発現するflo8株では、各偽菌糸体鎖の細胞は、野生型偽菌糸体の細胞に比べて、より伸長しているようにみえる。FLO8を過剰発現するste12株では、細胞が、野生型よりも長くない。しかしながら、それらは、より高密度の線状ネットワークを有している。このコロニーの形状は、cAMPによって糸を形成するように誘導された株(SR959)と同様の形状である。
【0126】
過剰発現による抑圧のパターンは、FLO11の発現パターンに反映されていた。FLO8の過剰発現は、ste12変異体(SR1021)において、FLO11の発現を10倍増加した。高レベルのSte12は、有毒なので、STE12を過剰発現した逆の実験はより困難である。STE12のレベルを制御するために、我々は、ガラクトースによって制御され得るGAL::STE12構築物を使用した。プラスミド上にGAL::STE12構築物を含有するflo8株(SR1134)では、FLO11転写物のレベルは、対照プラスミド(SR1097)を形質転換した株と比較して、SCグルコース培地上で3倍増加した。この増加は、おそらく、GALプロモーターの不完全な抑制を表していた。SCガラクトース培地中で四時間インキュベートすることによって、STE12が誘導されれば、FLO11の発現は、10倍増加した。
【0127】
高レベルの内部cAMPが、FLO11の転写を刺激するかどうかを決定するために、我々は、それ以外は野生型である株のIRA1を欠失させた。Ira1は、RsS−GTPをRas−GDPに転換することによって、RasGTPを非活性化させるRas−GAPである。Ira1の機能が失われると、活性化されたRasの割合が高くなり、このため、細胞内のcAMPレベルの上昇がもたらされる(Tanaka et al, 1989)。ira1変異株(SR599)では、FLO11転写物は、強く誘導された。このFLO11の誘導は、IRA1機能を欠如した株の高侵入性表現型に反映されれいた。ste12 ira1変異体(SR1133)は、まだ高侵入性であり、少なくとも幾つかのcAMPシグナルが、MAPK経路とは独立していることを示している。しかしながら、flo11 ira1(SR1079)又はflo8 ira1(SR1132)株は、侵入できなかった。これらの結果は、高い内部及び外部cAMPレベルによるFLO11の誘導に、Flo8が必要とされるという解釈と合致する。FLO8とIRA1を共に欠如する株(SR1132)は、FLO11転写物のレベルを劇的に減少していたのに対して、ira1バックグラウンド(SR1133)中のSTE12の欠失は、まだ野生型と同等のFLO11転写物レベルを示していた。これらの結果は、ira1 ste12株の高侵入性表現型及びira1 flo8株の非侵入性表現型と合致している。
【0128】
サッカロミセス・セレビシアエのFLO11プロモーターの制御の分析によって、様々な真菌種における侵入の制御及び二次代謝産物の産生に関する価値ある情報が与えられ、そして与えられ続けるであろう。サッカロミセス・セレビシアエ又は他の真菌種の侵入又は二次代謝産物の産生に関わる他の遺伝子のプロモーターは、同様に、侵入と二次代謝産物の制御に関するさらに価値ある情報を与えるであろう。このようなプロモーターの例は、カンジダ・アルビカンスからのECE1遺伝子プロモーターである。カンジダ・アルビカンスのECE1遺伝子の発現は、非侵入性の酵母の生育から侵入性の菌糸の生育への転換中に、高度に誘導される。カンジダの侵入性生育の制御因子をクローニングするために、ECE1プロモーターと大腸菌のlacZ遺伝子の融合体を構築した。具体的には、ECE1の開始コドンの上流の706塩基とECE1遺伝子の最初の10コドンからなるDNA断片を作成するために、PCRプライマーをデザインした。酵母2μ/LEU2シャトルベクター上に担持されたlacZとのインフレームな翻訳融合体を作り出すために、その断片をクローニングした。融合プラスミドは、ホモ接合のleu2/leu2とura3/ura3であった二倍体サッカロミセス・セレビシアエ株を形質転換するために使用した。続いて、酵母2μ/URA3ベクター中にクローニングされたカンジダ・アルビカンスのゲノムDNA断片のライブラリーを用いて該株を形質転換した。得られた二重形質転換体は、補充アミノ酸を欠く選択培地上で回収され、プールされた後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)と.003% w/vXGALを含有した最小培地上に、低密度で再プレーティングされた(200−300コロニー/プレート)。該プレートを一週間インキュベートし、クローニングされたカンジダの侵入制御因子は、ECE1プロモーターを介したlacZの転写を活性化すると考えて、濃青色のコロニーを取り出した。2μ/URA3プラスミドは、青い形質転換体から単離し、再テストした後、クローニングしたDNAの配列を決定した。同定された遺伝子の一つが、かんじだAFL1であった。サッカロミセス・セレビシアエ中でのカンジダAFL1遺伝子の発現は、通常であれば、基質に侵入しないリッチ培地条件下で、二倍体に対して、増大した侵入性の行動を付与した。カンジタAFL1遺伝子の相同体を標準的にデータベースで検索することにより、サッカロミセス・セレビシアエ相同体が明らかになった。AFL1の完全な欠失を含有するサッカロミセス・セレビシアエ株は、野生型酵母が糸を形成し、又は侵入する条件下で、糸を形成せず、又は侵入しなかった。
【0129】
AFL1は、サッカロミセス・セレビシアエFLO11(上記)とカンジダECE1の両者の発現を制御する。FLO11を制御する他のサッカロミセス・セレビシアエ遺伝子の相同体は、他の真菌においてそれ自体菌糸の生育又は侵入を制御する遺伝子プロモーターを制御するようである。下流の遺伝子は、当業者に公知の多くの手法によって決定できる。一つの例は、「DeRisi et al. Science 1997, 278:680」に記載されているようなマイクロアレー分析を使用することである。
【0130】
その機能をスクリーニングすることによって、カンジダの遺伝子をクローニングするために、カンジダECE1遺伝子転写の誘導因子としてサッカロミセスを使用することは、侵入又は二次代謝産物の産生に関与する重要な真菌遺伝子を単離するための別のアプローチの例である。この実験で重要なカンジダの侵入制御因子をクローニングすることに成功すれば、その中でスクリーニングするための異種宿主としてサッカロミセスを使用することによって、潜在的に多様な種から転写の制御因子をクローニングできるという概念が証明される。この手法は、他の生物には利用できないが、サッカロミセスには利用できる洗練された分子遺伝学的なツールという利点を与える。これは、カンジダのような真菌に対してのみならず、潜在的には、哺乳動物種のような極めてかけ離れた種に対する示唆も有する。この方法は、非サッカロミセス種からの転写の制御因子の機能をより詳細に分析する上でも有用であり得る。異種宿主としてのサッカロミセスの使用は、カンジタ又は他の任意の生物の転写制御因子を単離するために、cDNA又はゲノムライブラリーを迅速にスクリーニングするための選択をベースとするスクリーニングと組み合わせることができる。
遺伝子と化合物用のスクリーニングアッセイ
上述のように、我々は、病原性に関与し、それ故、病原性真菌及び他の微生物病原体のビルレンスを減少させる化合物をスクリーニングするために、又は、あるいは、二次代謝産物の産生を増加させるために使用し得る多数の真菌の侵入促進及び侵入抑制因子を同定した。このようなスクリーニングアッセイを実施するためには、任意の数の方法を利用し得る。一つのアプローチによれば、候補化合物は、本明細書に記載された核酸配列の一つを発現する病原性真菌細胞の培地に様々な濃度で添加される。次に、例えば、核酸分子から調製された任意の適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いて、標準的なノーザンブロット分析(Ausubelら、上記)により、遺伝子発現を測定する。候補化合物の存在下での遺伝子発現のレベルは、候補分子を欠いた対照培地中で測定されたレベルと比較される。侵入促進因子の発現の減少を促進する化合物は、本発明において有用であると考えられる;このような分子は、例えば、感染性生物の病原性と闘うための治療剤として使用し得る。侵入促進因子の発現の増加を促進する化合物は、本発明において有用であると考えられる;このような分子は、例えば、商業的に重要な二次代謝産物の産生を増加させる増強物質として使用し得る。
【0131】
所望であれば、候補化合物又は遺伝子の影響は、代わりに、タンパク質ポリペプチドレベルをアッセイすることによって測定し得る。インベイシンポリペプチドに特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティング又は免疫沈降のような標準的な免疫学的手法を含む、好ましいタンパク質アッセイが多数存在する。例えば、免疫アッセイは、病原性生物中に存在する本発明のポリペプチドの少なくとも一つの発現を検出又はモニターするために使用し得る。このようなポリペプチドに結合し得るポリクローナル又はモノクローナル抗体(Harlow and Lane, Antibodies, a laboratory manual 1988m Cold Spring Harbor Pressの記載に従って製造される)は、病原性ポリペプチドのレベルを測定するために、任意の標準的な免疫アッセイフォーマット(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、又はRIAアッセイ)に使用し得る。別の例では、ポリペプチドレベルは、標準的なアッセイで、酵素活性を使用して決定し得る。例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)及びβガラクトシダーゼ(lacZ遺伝子によってコードされる)の酵素活性の測定を可能とする標準的なキットを利用できる(例えば、Tropix, Inc., Bedford Mass.から入手できる、Galacto−Plus and Gus light systems)。タンパク質レベルは、蛍光活性化セルソーター(FACS)、分光光度計、又は発光のような手法を用いても決定できる。インベイシン促進ポリペプチドの発現の減少を促進する化合物は、有用であると考えられる。このような分子も、例えば、感染性生物の病原性と闘うための治療剤として使用し得る。インベイシン促進ポリペプチドの活性の増加を促進する化合物も有用であると考えられる。このような分子は、例えば、商業的に重要な二次代謝産物の産生を増加させる増強物質としても使用し得る。
【0132】
これに代えて、又はこれに加えて、本発明のインベイシンポリペプチドに特異的に結合し、阻害する化合物を探索するために、候補化合物をスクリーニングしてもよい。このような化合物の効力は、インベイシンポリペプチドと相互作用する能力に依存する。このような相互作用は、任意の数の標準的な結合手法及び機能的なアッセイを用いて、容易にアッセイし得る(例えば、Ausubelらに記載されたもの、上記)。例えば、候補化合物は、本発明のポリペプチドとの相互作用及び結合についてインビトロでテストし得、病原性をモジュレートする能力は、任意の標準的なアッセイ(例えば、本明細書に記載されたもの)によってアッセイし得る。
【0133】
ある例では、インベイシンポリペプチドに結合する候補化合物は、クロマトグラフィーをベースとする手法を用いて同定し得る。例えば、本発明の組換えポリペプチドは、該ポリペプチドを発現するように改変された細胞から標準的な手法(例えば、上記のもの)によって精製し得、カラム上に固相し得る。次に、候補化合物の溶液をカラムに通して、インベイシンポリペプチドに結合する能力に基づいて、インベイシンポリペプチドに特異的な化合物が同定され、カラムに固定化される。化合物を単離するためには、非特異的に結合した分子を除去するためにカラムを洗浄し、続いて、目的とする化合物をカラムから放出し、採取する。この方法(又は、他の任意の適切な方法)によって単離された化合物は、所望であれば、(例えば、高性能液体クロマトグラフィーにより)さらに精製してもよい。さらに、これらの候補化合物は、病原体のビルレンスを低下させる能力についてテストし得る(例えば、本明細書に記載したように)。このアプローチによって単離された化合物は、例えば、病原性の感染、疾病、又は双方の開始を治療し、または阻止するための治療剤としても使用し得る。10mM以下の親和定数で病原性ポリペプチドに結合するものとして同定された化合物は、本発明において特に有用と考えられる。
【0134】
さらに別のアプローチでは、候補遺伝子及び化合物は、線状の侵入、菌糸体の生育、偽菌糸体の生育、又は一倍体の掘り込み中に、正又は負に制御されることが知られているプロモーターエレメントからの発現をモニターすることにより、真菌細胞のビルレンスを阻害する能力についてスクリーニングされる。これらの同じく選別をベースとするシステムは、FLO11プロモーター(PFLO11)からの発現の増加をもたらす遺伝子又は化合物をスクリーニングするために、設計し得る。ある例では、PFLO11は、発現が増加したときに、優れた生育を与える遺伝子に融合される。例えば、his3変異体中に存在するときに、SC−HIS上での生育を可能とするPFLO11−HIS3融合体が作成された。該融合体は、化合物3−アミノトリアゾール(3−AT)によって、発現レベルを滴定できるというさらなる利点を有する。3−ATは、十分な量で存在すれば、PFLO11から発現されたHis3を阻害し、この株をSC−HIS上で生育できなくするHis3の拮抗阻害剤である。それ故、PFLO11−HIS3を含有する株の生育は、PFLO11−HIS3の発現が増加して3−ATによるHis3の拮抗阻害が克服されたときに播種されたSC−HIS+3−AT上だけで起こる。転写因子Tec1の発現の増加は、このような株に3−ATに対する耐性の増加を与える。異なる量の3−ATを使用することによって、生育に必要なPFLO11−HIS3の増加の程度をモジュレートすることができる。このような正の選別システムには、URA3, TRP1, ADE2, LEU2を含む多くのマーカーを使用することができるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の正の選別システムも該システムで機能することが理解できるであろう。
【0135】
別の例では、FLO11の発現をダウンレギュレートする遺伝子及び化合物を選別するために、劣った生育(その最極端な場合は−死滅)を与える遺伝子産物にPFLO11をリンクした遺伝子融合体を用いることができる。この場合、FLO11発現を減少及び/又は喪失させる任意の条件が、劣った生育を改善し、株を生育せしめるであろう。例えば、PFLO11依存的にSC−URA上での生育を可能とするURA3オ−プンリーディングフレームへのPFLO11の融合体が作成された。URA3の発現は、5−フルオロオロチン酸(5−FOA;5−fluoro−orotic acid)の存在下において、有毒なので、FLO11が発現していないことの選別は、PFLO11 URA3融合体を担持する株のSC+5−FOA上での生育をスクリーニングすることによって達成し得る。当業者であれば、、他の負の選別システムも該システムで機能することが理解できるであろう。
【0136】
上記システムは、FLO11の発現の有無の選別を可能にするが、同様の手法は、FLO11の発現の変化をスクリーニングするために使用し得る。定量できる有用なPFLO11のレポーター遺伝子融合体の他の例には、lacZ及び緑色蛍光タンパク(GFP)のような酵素又は蛍光レポーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
ここに記載した選別及びスクリーニングシステムは、上述したもの以外に多くの潜在的な応用を有する。例えば、それらは、選別方法によって、FLO11を制御する多くの遺伝子の機能的相同体を同定するために使用できる。例えば、his3が欠失され、且つPFLO11HIS3融合体を担持する株でFLO11の発現を喪失させる遺伝子の変異は、この株をヒスジチジン栄養要求体にする(ヒスチジンが欠損した培地中では生育できない)。しかしながら、このような株に(相補又は変異対立遺伝子の抑圧による)FLO11の発現を復活させる他の生物からのcDNA又はゲノムDNAクローンは、ヒスチジン欠損培地上での生育を選別することによって、直接選別することができる。同様に、サッカロミセス・セレビシアエ及び異種の生物からのFLO11発現の新規制御因子は、同じ選別スキームを用いて同定し得る。
【0138】
菌糸体又は偽菌糸体の生育中に制御されることが知られているプロモーターを使用することの他の応用では、各シグナル伝達経路に必要とされるシス−エレメントをマッピングするために、欠失構築物を作成することができる。一例として、FLO11 ORFの上流の3kb領域から200bpずつのnested欠失が作成される、FLO11プロモーターのスクリーニングと選別アッセイが、様々な野生型および変異バックグラウンド株におけるlacZ発現に対する影響について分析されている。別の例では、FLO11プロモーターの重複する400bpの断片が、CYC1転写ユニットにクローニングされる(図11)。共に、これらの例は、どのDNA領域が発現に必要とされるか(及びこれらの各領域がどの程度必要とされるか)を実証するであろう。さらに、FLO11プロモーターのような菌糸体生育又は偽菌糸体生育中に制御されるサブクローニングされたプロモーター片とのレポーター遺伝子融合体は、別個の経路をブロックする(又は活性化する)様々な変異体での発現について評価され得る。当業者であれば、本明細書に記載したものを含む、他のインベイシンからの制御エレメントは、Ausubelら(上記)に記載された標準的な手法と共に、本明細書に記載した方法を用いて、記載に従って単離し得ることが理解できるであろう。これらの方法には、制御又はプロモーター領域候補からのDNAセグメントのレポーター遺伝子への融合、及び欠失分析が含まれる。さらに、任意のインベイシンプロモーターの経路特異性は、野生型及び変異宿主株の使用によって決定し得る。あるDNAセグメントが、野生型株でレポーター発現を与えるが、特定の変異体で全く発現しないか、又は増加した発現を示せば、この配列は、変異体が規定する経路によるインベイシンの発現を媒介すると推測される。このアプローチを用いて、FLO11を制御する別個の経路をレポートする一群の遺伝子融合体を作成することができる。CYC1, PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25及びCUP1を含む様々な基本又は誘導性プロモーターエレメントをこの手法に適用することができるが、これらに限定されない。上記システムを用いて、任意の処置について、FLO11の発現に対する作用様式を割り付けることができる。経路特異的なレポーターに対する化学的又は遺伝学的処置の影響を評価すれば、どの経路が、この処置によって変化したかを決定することが可能となろう。例えば、一つは、STE経路を介したFLO11の発現をレポートするレポーター(レポーター1)、もう一つは、FLO11のINV経路を介した発現をレポートするレポーター(レポーター2)という二つの異なるレポーター融合体を考える。もし、完全長のPFLO11の発現を消失させる能力によって同定された化合物Xが、レポーター1に影響を与えるが、レポーター2には影響を与えないことが示されれば、化合物Xは、STE経路の活性に影響を与えることによって、FLO11発現をブロックすると推定される。同様に、経路特異的なPFLO11レポーター構築物及びあるシグナル成分の活性化された対立遺伝子を用いれば、ある経路のどこで、化合物が影響を与えているかについても詳細が明らかとなるであろう。例えば、変異体STE11−4及びSTE12の過剰発現は、共にFLO11の発現を増加すると予測される。もし化合物Xが、STE11−4によって媒介されるFLO11の増加した発現をブロックするが、STE12の過剰発現をブロックしなければ、化合物Xは、STE12の前だが、STE11において又はSTE11以降でSTE経路を拮抗すると推定し得る。様々な欠失変異体でのレポーターの発現を評価すれば、FLO11の発現を活性化する化合物の効果を評価するための同様のアプローチが可能となろう。
【0139】
これらの実験で用いたレポーターは、正と負の選別及び様々なスクリーニング法を可能とするために、完全長のFLO11プロモーターについて記載したのと同様の方法で、利用することができる。これは、FLO11の発現の経路特異的モジュレーター(異種の遺伝子、化合物、ペプチド等)の同定を可能とするであろう。このようなシステムは、他の生物からこれらの制御遺伝子の重要な相同体のモジュレーターを同定する上でも有用である。例えば、小さなGタンパク質Rasは、多種類のヒト腫瘍で活性化され、抗腫瘍因子の候補としてRASの阻害剤を同定するのは興味深い。酵母(例えば、二つの酵母RAS遺伝子が欠失され、ヒトRASを発現する酵母株)中のヒトRASの活性をレポートするFLO11プロモーター断片融合体を入手すれば、酵母で、ヒトRasのモジュレーターを選別し、及び/又はスクリーニングすることが可能となろう。
【0140】
スクリーニングの別の例は、リッチ(YPD)培地上で生育させると、一倍体のサッカロミセス・セレビシアエ由来の酵母が、偽菌糸体を形成せずに、寒天に侵入するという観察に基づいている。この非線状の侵入行動は、「掘り込み」と名付けられ、この行動を検出するために使用されるアッセイは、「掘り込みアッセイ(dig assay)」と名付けられている(RobertsとFink(上記))。リッチ培地上での一倍体のサッカロミセス・セレビシアエの掘り込みをブロックする変異は、低窒素条件下で、二倍体サッカロミセス・セレビシアエの偽菌糸体の成長及びに寒天への侵入も阻害する。掘り込みを欠失した変異株は、「掘り込みマイナス」、又は「掘り込み−」と称される。偽菌糸体の侵入と掘り込みアッセイでの行動との相関は、このスクリーニングの不可欠な側面である。掘り込みアッセイは、偽菌糸体侵入アッセイに比べて、比較的実施が容易であり、一倍体細胞で起こるので、劣性変異に依存する遺伝的アプローチにより向いている。
【0141】
我々は、病原性真菌が、所定の基質中への増加した侵入又は接着を特徴とする類似の掘り込み行動を示し得ることを発見した。例えば、カンジダ・アルビカンスは、種々の適切な条件(例えば、YPD、及びSPIDER)で、基質の非線状侵入を示す。この行動は、報告されたサッカロミセス・セレビシアエの掘り込み行動と似ている。サッカロミセス・セレビシアエと同じく、任意のカンジダ・アルビカンス変異株による非菌糸性の寒天への侵入は、線状誘導条件下(例えば、寒天+血清)で、その株が糸を形成能力と相関する。このため、真菌の掘り込み表現型をブロックする化合物をスクリーニングすれば、糸の形成をブロックし、その結果、発症をブロックする化合物の同定が可能となろう。これらの化合物は、抗真菌剤又は静真菌剤として有用と考えられる。同様に、基質への侵入を増加させる化合物のスクリーニングは、二次代謝産物の産生又は収量も増加させ得る化合物の同定を可能とするであろう。
【0142】
掘り込みアッセイの例を以下に示す。ある化合物が、最低生育阻害濃度よりずっと低い濃度で、非変異サッカロミセス・セレビシアエ又はカンジダ・アルビカンスの非線状の寒天への侵入に影響を与えるかどうかを調べるために、リッチ培地(YPD)及び抗真菌剤フルコナゾールの勾配を含有する寒天プレート上に、これらの真菌をスポッティングした。次に、至適生育温度で二日間、該プレートをインキュベートし、水で洗浄した。両真菌ともに、生育を阻害するのに必要とされる濃度より有意に低いフルコナゾール濃度で、寒天の侵入の阻害を示した(図12)。このアッセイは、U.maydisのような他の二形性真菌及びその他の真菌に対して行い得る。全てのケースで、侵入アッセイは、侵入を阻害する化合物、又は侵入を促進する化合物を単離するために使用し得る。各種の化合物は、本明細書に記載した価値ある用途を有するであろう。
【0143】
必要に応じて、上記アッセイの何れかで同定された侵入阻害化合物は、任意の標準的な動物モデルに、病原性感染の進行に対する保護を与えるのに有用であると確認され得る。ここに、一例を記載する。もし成功すれば、候補化合物は、抗病原体治療剤として使用し得る。侵入促進化合物は、二次代謝産物の産生を評価することによって確認し得る。もし成功すれば、候補化合物は、これらの又は他の二次代謝産物の産生又は収量を増加させるための増強物質として使用し得る。
テスト化合物と抽出物
一般的に、本分野で公知の方法に従って、天然の産物と合成(又は半合成)抽出物の両者の大規模なライブラリから、又は化学ライブラリーから化合物が同定される。薬物の発見と開発の分野の当業者であれば、テスト抽出物又は化合物の正確な採取源は、本発明のスクリーニング操作にとって決定的なものではないことが理解できよう。従って、本明細書に記載した方法を用いて、実質的に任意の数の化学的抽出物又は化合物をスクリーニングすることができる。このような抽出物又は化合物の例には、植物、真菌、原核細胞、又は動物をベースとする抽出物、醗酵ブロス、及び合成化合物、並びに既存の化合物の修飾物が含まれるが、これらに限定されない。糖質、脂質、ペプチド、及び核酸をベースとする化合物を含む任意の数(これらに限定されない)の化学物質のランダムな、又は指向的な合成(例えば、半合成又は全合成)をもたらすためにも、多くの方法を利用し得る。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates (Merrimack, NH)、及びAldrich Chemical(Milwaukee, WI)から商業的に購入し得る。あるいは、細菌、真菌、植物、及び動物の抽出物の形態である天然の化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institue(Ft. Pierce, FL)、及びPharmaMar, U.S.A. (Cambridge, MA)を含む多くの供給元から商業的に購入し得る。さらに、所望であれば、本分野で公知の方法に従って、例えば、標準的な抽出と分画法によって、天然の及び合成的に製造したライブラリーが作成される。さらに、所望であれば、任意のライブラリー又は化合物は、標準的な化学的、物理的、又は生化学的方法を用いて容易に修飾され得る。
【0144】
さらに、薬物の発見と開発の分野の当業者であれば、可能であればいつでも、脱複製(dereplication)(例えば、分類学的な脱複製、生物学的な脱複製、及び化学的な脱複製、または任意のそれらの組み合わせ)(すなわちレプリケートすなわち抗病原活性が既に知られた物質のリピートを除去すること)する方法を利用し得ることを容易に理解できるであろう。
【0145】
ある粗抽出物が、侵入促進、又は侵入抑制活性、又は結合活性を有することが見出されたら、観察された効果に必要とされる化学的成分を単離するために、ポジティブリード抽出物のさらなる分画が必要である。このように、抽出、分画、及び精製工程のゴールは、所望の活性を有する粗抽出物中の化学的な実体(entity)を慎重に特性決定し、同定することである。このような異種抽出物の分画及び精製法は、本分野において公知である。所望であれば、疾病の発症の治療、又は二次代謝産物の増加した産生に有用な因子であることが示された化合物は、本分野で公知の方法に従って、化学的に修飾される。
薬学的治療剤と植物保護剤
本発明は、病原体の病原性又はビルレンスを阻害し得る化合物(ペプチド、小分子阻害剤、及び模倣物(mimetics)を含む)を同定するための簡便な手段を提供する。従って、本明細書に記載された方法を用いて、医学的又は農学的に価値を有することが発見された化学的実体は、薬物、植物保護剤の何れかとして、又は、例えば、論理的ドラッグデザインにより、既存の抗病原体化合物の構造的修飾に関する情報として有用である。このような方法は、細菌、ウイルス、真菌、アネライド、線虫、プラチヘルミンセス(Platyhelminthes)、及び原生動物を含む(これらに限定されない)様々な病原体に対して影響を有する化合物をスクリーニングするのに有用である。病原性真菌の例には、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス種、ムコール種、クモノスカビ種、フサリウム種、ペニシリウム・マルネファイ、ミクロスポラム種、クリプトコッカス・ネオファルマンス・ニューモシスチス・カリニ、及びトリコフィトン種が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
治療的に使用する場合、本明細書に開示した方法を用いて同定された組成物又は因子(agent)は、例えば、生理的食塩水のような薬学的に許容される緩衝液中に調合して、全身投与し得る。処置は、例えば、病原性ポリペプチドに伴う生物学的現象を崩壊、抑圧、減弱、又は中和するアンタゴニストで動物を処置することによって、直接達成され得る。好ましい投与ルートには、例えば、患者に継続的、持続的な薬物レベルを与える吸入、又は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、、又は皮内注射が含まれる。ヒト患者又は他の動物の治療は、生理的に許容される担体中の治療的有効量の抗病原因子を用いて実施されるであろう。適切な担体及びそれらの調合は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences by E.W. Martin」に記載されている。投与すべき抗病原因子の量は、投与様式、年齢、及び患者の体重、疾病の種類、及び疾病の範囲に応じて変わる。一般的に、量は、他の微生物疾病の治療に使用される他の因子に使用される量の範囲内であろうが、ある場合には、化合物の特異性の増加故に、より少ない量が必要とされる。化合物は、微生物の生育を阻害する用量で投与される。例えば、全身投与の場合、化合物は、典型的には、0.1ng〜10g/kg体重の範囲で投与される。
【0147】
農業に使用する場合には、本明細書に開示した方法を用いて同定された組成物又は因子は、植物の葉にスプレー又は粉末として、又は灌漑システムに化学物質として適用される。典型的には、このような因子は、感染を防ぐために、病原体に先立って、植物の表面に投与されるべきである。それらの上に担持された、又は植栽部位の土壌中に存在する病原体を抑制することによって、植栽後に病原体に襲われるのを防ぐために、種、球根、根、塊茎、及び球茎も処理される。様々な微生物病原体を抑制するために、野菜、観葉植物、かん木、又は木を植える土壌を化学的消毒薬で処理してもよい。処理は、好ましくは、植栽の数日又は数週間前に行われる。化学物質は、例えば、トラクターのような機械ルート、又は手で蒔くかの何れかによって適用し得る。さらに、前記アッセイ方法を用いて同定した化学物質は、消毒剤として使用し得る。
【0148】
さらに、抗病原性因子は、潜在的な病原体による定着及び全身的植種(systemic seeding)を防ぐために、静脈内、泌尿、腹腔内、脳室、脊髄、及び外科的ドレナージカテーテルを含むカテーテル(これらに限定されない)を作るために使用される物に加えてもよい。同様に、抗病原性因子は、病原体による定着を防ぐことにより、さらに深刻な侵入性感染、又は病原体による全身的植種を阻止するために、様々な外科的プロテーゼを構成する物に、及び義歯に加えてもよい。
二次代謝産物産生の増加
本発明は、真菌の二次代謝産物の産生を活性化し得る化合物(ペプチド、小分子、及び模倣物(mimetics)を含む)を同定するための簡便な手段を提供する。従って、本明細書に記載された方法を用いてこのような特性を有することが発見された化学的実体は、その産生が、完全に又は部分的に、真菌の醗酵に依存する現在市場に出ている薬学的組成物の収量を増加させるための手段として有用である。このような化合物によって、その収量が醗酵中に増加し得る市場に出ている二次代謝産物の例は、シクロスポリン、ペニシリン、セファロスポリン、麦角アルカロイド、ロバスタチン、メバスタチン、及びそれらの生合成中間体が含まれるが、これらに限定されない。さらに、このような化学的実体は、このような代謝物の醗酵ブロス中の濃度(これにより、化学又はバイオアッセイによる検出の可能性)を増加させることによって、医学的又は農学的な価値を有する新規二次代謝産物を同定する可能性を増加させるために使用することもできる。何れの例でも、増加した代謝物の収量は、前記実体に真菌を接触させ、及び/又は真菌内に前記実体の産生をもたらす遺伝子発現構築物で真菌を形質転換することによって達成できる。
【0149】
本発明は、正及び負の何れにも二次代謝産物の産生を制御する候補遺伝子を同定するための簡便な手段も与える。さらに、これらの遺伝子の活性化されたバージョン又はドミナントネガティブなバージョンを同定するための方法が記載されている。従って、このような遺伝子及びそれらの誘導体は、標準的な形質転換法によって、これらの遺伝子の改変された形態を産生真菌中に導入することにより、及びノックアウトの構築による適切な遺伝子機能の除去により、二次代謝産物の産生を増加させるための真菌の遺伝子工学を可能にする可能性を有する候補である。これらのような遺伝子工学的方法によって、醗酵中にその収量が増加され得る市場に出ている二次代謝産物の例には、シクロスポリン、ペニシリン、セファロスポリン、麦角アルカロイド、ロバスタチン、メバスタチン、及びその生合成中間体が含まれるが、これらに限定されない。
真菌二次代謝産物の産生及び検出法
βラクタム抗生物質、スタチン類、麦角アルカロイド、シクロスポリン、及び他の真菌代謝物の醗酵及び産生法は、Masurekar (Biotechnology 1992, 21:241−301)及びその参考文献に記載されている。二次代謝産物の検出は、各代謝物に特異的であり、当業者に周知である。醗酵ブロス中での化合物の産生と完全性(integrity)を評価するための一般的な方法には、抗微生物活性のバイオアッセイ、高性能液体クロマトグフィー(HPLC)分析、核磁気共鳴、薄相クロマトグラフィー、及び吸光分光法が含まれるが、これらに限定されない。醗酵ブロスからの代謝物の精製には、遠心又はろ過による真菌細胞又は菌糸の除去、(溶解度及び/又はその後の抽出効率を増加させるための)醗酵後のpH及び/又は塩濃度の調整、及び適切な有機溶媒によるブロスの抽出が含まれ得る。
他の態様
一般的に、本発明には、本明細書の記載に従って単離し得る、又は相同性スクリーニングによって容易に単離される、又は本発明の核酸配列を用いたPCR増幅によって単離される任意の核酸配列が含まれる。本発明には、その病原活性(例えば、本明細書の記載に従ってアッセイされる)が失わなれないように修飾されているポリペプチドも含まれる。このような変化には、ある種の変異、欠失、挿入、又は翻訳後修飾が含まれ得、又は、さらに大きい融合タンパク質の一成分としての本発明の任意のポリペプチドの含有が含まれ得る。
【0150】
このため、他の態様では、本発明には、本発明のポリペプチドと実質的に同一である任意のタンパク質が含まれる。このような相同体には、実質的に純粋な天然に存在するポリペプチド及び対立遺伝子変種(variant);天然の変異体;誘導された変異体;高ストリンジェンシー条件下で、あるいはより好ましくないが、低ストリンジェンシー条件下で(例えば、少なくとも40ヌクレオチドの長さのプローブを用いて、2×SSC、40℃で洗浄)本発明の核酸配列の何れか一つにハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質;及び本発明の抗血清によって特異的に結合されるタンパク質が含まれる。
【0151】
本発明には、さらに、本発明の任意の天然に存在するポリペプチドの類縁体が含まれる。類縁体は、本発明の天然のポリペプチドとは、アミノ酸配列、翻訳後修飾、又はその両者が異なり得る。本発明の類縁体は、一般的には、本発明の天然に存在するアミノ酸配列の全部又は一部と、少なくとも85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、さらには99%の同一性を示すであろう。配列比較の長さは、少なくとも15アミノ酸残基、好ましくは25アミノ酸残基、より好ましくは35アミノ酸残基を超える。また、同一性の程度を決定するための模範的なアプローチでは、密接に関連した配列を示すe−3〜e−100の間の確率値で、BLASTプログラムを使用し得る。修飾には、ポリペプチドのインビボ及びインビトロ化学的誘導化、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、又はグリコシル化が含まれる:このような修飾は、ポリペプチドの合成若しくはプロセッシング中に、又は単離された修飾酵素での処理後に起こり得る。類縁体は、改変により、本発明の天然に存在するポリペプチドと一次配列が異なっていてもよい。これらには、天然と誘導の両遺伝的変種が含まれる(Sambrook, Fritsch, and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed.), CSII Press, 1989, 又はAusubelら、上記の記載に従って、例えば、放射線照射、若しくはエタンメチルサルフェートへの暴露によるランダムな変異誘発、又は部位特異的変異誘発によって生じる)。Lアミノ酸以外の残基、例えば、Dアミノ酸、又は天然に存在するアミノ酸若しくは合成アミノ酸、例えば、β又はγアミノ酸以外の残基を含有する環状ペプチド、分子、及び類縁体も含まれる。
【0152】
完全長のポリペプチドに加えて、本発明には、本発明のポリペプチドの任意の一つの断片も含まれる。本明細書で使用する「断片」という語は、少なくとも5つ、好ましくは少なくとも20の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも30の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも50の連続したアミノ酸、最も好ましくは、少なくとも60〜80以上の連続したアミノ酸を意味する。本発明の断片は、当業者に公知の方法によって作成することができ、又は正常なタンパク質のプロセッシングから生じるかもしれない(例えば、生物学的活性に必要とされない生まれたばかりのポリペプチドからのアミノ酸の除去、又は選択的mRNAスプライシング又は選択的タンパク質プロセッシング現象によるアミノ酸の除去)。
【0153】
本発明は、さらに、発症状態を診断するための組成物(例えば、ヌクレオチド配列プローブ)、及び方法を提供する。
【0154】
本明細書に挙げた全ての文献及び特許出願は、独立した各文献又は特許出願を具体的且つ個別的に参照文献として組み込むために示した場合と同様に、参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0155】
他の態様も本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
Inv8タンパク分解プロセッシングに対するINV経路及びSTE経路の変異の効果を示すウェスタンブロットを示す図。
【図2】
野生型株及びTPK遺伝子に変異を有する株の一倍体侵入表現型を示す一連の写真(2A)と、野生型株及びTPK遺伝子に変異を有する株の偽菌糸体表現型を示す一連の写真(2B)を示す図。
【図3】
Tpk2のMga1及びSfl1に対する優先的な親和性を示している酵母ツーハイブリッド分析の結果を示した写真を示す図(テストした遺伝子産物は、縦軸及び横軸に示されている。酵母の生育は、それぞれの軸上に示された遺伝子の産物間の相互作用を示している)。
【図4】
一倍体侵入生育中に、FLO11がSFL1とTPK2の下流で作用することを示すエピスタシス分析の写真(4A)と、偽菌糸体生育中に、FLO11がSFL1とTPK2の下流で作用することを示すエピスタシス分析の写真(4B)を示す図。
【図5】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図6】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図7】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図8】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図9】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図10】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図11】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図12】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図13】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図14】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図15】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図16】
カンジダRIM1遺伝子(配列番号3)のDNA配列と予想されるコードされたタンパク質(配列番号4)を示す図。
【図17】
カンジダRIM1によるサッカロミセスinv8表現型の相補性を記載した図。
【図18】
サッカロミセス・セレビシアエINV9のDNA配列(配列番号5)を示す図。
【図19】
サッカロミセス・セレビシアエINV9のDNA配列(配列番号5)を示す図。
【図20】
サッカロミセス・セレビシアエINV9のDNA配列(配列番号5)を示す図。
【図21】
サッカロミセス・セレビシアエInv9の予想されるアミノ酸配列(配列番号6)を示す図。
【図22】
カンジダrim1/rim1変異体の血清応答の表現型分析の一連の写真を示す図。
【図23】
Inv8の核への蓄積には、Inv8のプロセッシングが必要とされることを示した一連の写真を示す図。
【図24】
様々な侵入欠損(flo8, ste12, phd1, phd2, afl1, ras2, tpk2, tec1, flo11,及びinv6)及び高侵入変異体(ira1)中のFLO11 mRNAの定常状態レベルを示すノーザンブロットの写真を示す図(ブロットは、FLO11及びACT1に対するプローブを用いてプローブした)。
【図25】
侵入を制御する遺伝子及び経路を示す図(先の尖った矢印は、活性化を表し、末端が扁平な矢印は、抑制を示す)。
【図26】
レポーター構築物を作成するために使用されたFLO11プロモーター断片相対的な位置を示す図。
【図27】
抗真菌化合物を同定するためのシステムとして寒天侵入スクリーンを利用できることを実証したグラジエントプレートアッセイの結果を示す図。
Claims (142)
- 候補化合物が、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子の発現を減少するかどうかを決定するための方法であって、
(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された前記遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;
(b)前記真菌を候補化合物と接触させる工程と;
(c)前記真菌を前記候補化合物と接触させた後に、前記遺伝子の発現を検出又は測定する工程と;
を備えた方法。 - 前記真菌が、野生型株である請求項1の方法。
- 前記野生型株が、サッカロミセス・セレビシアエ、カンジダ・アルビカンス、又はアスペルギルス・ニードランスである請求項2の方法。
- 前記真菌が、変異株である請求項1の方法。
- 前記真菌が、トランスジェニック真菌である請求項1の方法。
- 前記遺伝子が、真菌のインベイシン遺伝子を含む請求項1の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、FLO11又はMUC1である請求項6の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, RIM1, 又はYPR1である請求項1の方法。
- 前記遺伝子が、レポーター遺伝子を含む請求項1の方法。
- 前記レポーター遺伝子が、lacZ、URA3、又はHIS3である請求項9の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、
FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターである請求項1の方法。 - 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, RIM1, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターである請求項1の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片又は欠失である請求項1の方法。
- 前記断片が、基本プロモーターに融合されている請求項13の方法。
- 前記基本プロモーターが、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子である請求項1の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって測定される方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子の発現の減少が、真菌の侵入を阻害する請求項6の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子の発現の減少が、酵母型から偽菌糸生育へのスイッチを阻害する方法。
- 前記候補化合物が、真菌の病原性を阻害又は減少させる請求項1の方法。
- 候補化合物が、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された遺伝子の発現を増加するかどうかを決定するための方法であって、
(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された前記遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;
(b)前記真菌を候補化合物と接触させる工程と;
(c)前記真菌を前記候補化合物と接触させた後に、前記遺伝子の発現を検出又は測定する工程と;
を備えた方法。 - 前記真菌が、野生型株である請求項21の方法。
- 前記野生型株が、サッカロミセス・セレビシアエ、アスペルギルス・ニードランス、ペニシリウム・クリソジェナム、又はアクレモニウム・クリソジェナムである請求項22の方法。
- 前記真菌が、変異株である請求項21の方法。
- 前記真菌が、トランスジェニック真菌である請求項21の方法。
- 前記遺伝子が、真菌のインベイシン遺伝子を含む請求項21の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、FLO11又はMUC1である請求項26の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, RIM1, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3,又はYPR1である請求項26の方法。
- 前記遺伝子が、レポーター遺伝子を含む請求項21の方法。
- 前記レポーター遺伝子が、lacZ、URA3、又はHIS3である請求項29の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、
FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターである請求項21の方法。 - 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13,, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, RIM1, TPK3又はYPR1遺伝子プロモーターである請求項21の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、真菌のインベイシン遺伝子プロモーターの断片又は欠失である請求項21の方法。
- 前記断片が、基本プロモーターに融合されている請求項33の方法。
- 前記基本プロモーターが、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子である請求項34の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって測定される請求項21の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される請求項21の方法。
- 前記候補化合物が、真菌の二次代謝産物の産生を増加させるかどうかを決定することをさらに備えた請求項21の方法。
- 候補化合物が、真菌の侵入を阻害するかどうかを決定する方法であって、
(a)侵入に適した条件下で真菌と候補化合物を接触させる工程と;
(b)前記候補化合物と接触させた後に、前記真菌による侵入を測定又は検出する工程と;
を備えた方法。 - 前記真菌が、カンジタ・アルビカンスである請求項39の方法。
- 前記真菌が、サッカロミセス・セレビシアエである請求項39の方法。
- 候補化合物が、真菌の侵入を促進するかどうかを決定する方法であって、
(a)侵入に適した条件下で真菌と候補化合物を接触させる工程と;
(b)前記候補化合物と接触させた後に、前記真菌による侵入を測定又は検出する工程と;
を備えた方法。 - 前記真菌が、カンジタ・アルビカンスである請求項42の方法。
- 前記真菌が、サッカロミセス・セレビシアエである請求項42の方法。
- 前記真菌が、アスペルギルス・ニードランスである請求項42の方法。
- 真菌の侵入促進遺伝子を同定する方法であって、
(a)真菌に、(1)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された第一の遺伝子、及び(2)第二の候補遺伝子又はその断片を発現させる工程と;
(b)前記第一の遺伝子の発現をモニタリングする工程とを備え、前記発現の増加により、前記候補遺伝子を真菌の侵入促進遺伝子として同定する方法。 - 前記真菌が、野生型株である請求項46の方法。
- 前記野生型株が、サッカロミセス・セレビシアエである請求項47の方法。
- 前記真菌が、変異株である請求項46の方法。
- 前記真菌が、トランスジェニック真菌である請求項46の方法。
- 前記第一の遺伝子が、真菌のインベイシン遺伝子を含む請求項46の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、FLO11又はMUC1である請求項51の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, RIM1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3,又はYPR1である請求項51の方法。
- 前記第一の遺伝子が、レポーター遺伝子を含む請求項46の方法。
- 前記レポーター遺伝子が、lacZ、URA3、又はHIS3である請求項54の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターである請求項46の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、AFL1, DHH1, INV1, RIM1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターである請求項46の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターの断片又は欠失である請求項46の方法。
- 前記断片が、基本プロモーターに融合されている請求項58の方法。
- 前記基本プロモーターが、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子である請求項59の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された第一の遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって測定される請求項46の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された第一の遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される請求項46の方法。
- 前記真菌の侵入促進遺伝子が、インベイシン経路のメンバーを含む請求項46の方法。
- 真菌の侵入阻害遺伝子を同定する方法であって、
(a)真菌に、(1)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターに作用可能に連結された第一の遺伝子、及び(2)第二の候補遺伝子又はその断片を発現させる工程と;
(b)前記第一の遺伝子の発現をモニタリングする工程とを備え、
前記発現の減少により、前記候補遺伝子を真菌の侵入阻害遺伝子として同定する方法。 - 前記真菌が、野生型株である請求項64の方法。
- 前記野生型株が、サッカロミセス・セレビシアエである請求項65の方法。
- 前記真菌が、変異株である請求項64の方法。
- 前記真菌が、トランスジェニック真菌である請求項64の方法。
- 前記第一の遺伝子が、真菌のインベイシン遺伝子を含む請求項64の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、FLO11又はMUC1である請求項69の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, RIM1, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3,又はYPR1である請求項69の方法。
- 前記第一の遺伝子が、レポーター遺伝子を含む請求項64の方法。
- 前記レポーター遺伝子が、lacZ、URA3、又はHIS3である請求項72の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターである請求項64の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、AFL1, DHH1, INV1, RIM1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターである請求項64の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、FLO11, MUC1, STA1, STA2又はSTA3遺伝子プロモーターの断片又は欠失である請求項64の方法。
- 前記断片が、基本プロモーターに融合されている請求項76の方法。
- 前記基本プロモーターが、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1又はCUP1遺伝子である請求項77の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された第一の遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって測定される請求項64の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された第一の遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される請求項64の方法。
- 前記真菌の侵入阻害遺伝子が、インベイシン経路のメンバーを含む請求項64の方法。
- 真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法であって、前記真菌細胞を真菌の侵入促進化合物と接触させる工程を備えた方法。
- 真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法であって、真菌の侵入阻害遺伝子の発現を減少させる工程を備えた方法。
- 前記真菌の侵入阻害遺伝子の前記減少した発現が、前記真菌の侵入阻害遺伝子の非活性化から生じる請求項83の方法。
- 前記真菌の侵入阻害遺伝子が変異している請求項83の方法。
- 前記真菌の侵入阻害遺伝子が、HOG1, BEM2, RIM15, SFL1, IRA1, SSDI, SRB11, SWI4,又はTPK3を含む請求項83の方法。
- 真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法であって、真菌の侵入促進遺伝子の発現を増加させる工程を含む方法。
- 前記真菌の侵入促進遺伝子が、AFL1, DHH1, INV7, INV8, STE21, PET9, MEP2, INV1, INV5, INV6, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, CDC25, MCM1, MGA1, PHD2, PHO23, PTC1, RIM1, STP22, TPK2又はYRP1である請求項87の方法。
- 前記真菌の侵入促進遺伝子の増加した発現が、構成的に発現され、又は過剰発現されている請求項87の方法。
- 前記真菌の侵入促進遺伝子が変異している請求項87の方法。
- 真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法であって、活性化された形態の侵入促進ポリペプチドをコードする遺伝子又はその断片を発現させる工程を備えた方法。
- 前記活性化された形態の前記侵入促進ポリペプチドが、侵入促進ポリペプチドと、前記侵入促進ポリペプチドの活性をさらに増大させる第二のポリペプチドとの融合を含む請求項91の方法。
- 前記遺伝子が、変異を有する請求項91の方法。
- 真菌細胞中での二次代謝産物の産生を増加させる方法であって、真菌の侵入阻害ポリペプチドの活性を減少させる工程を含む方法。
- 前記真菌の侵入阻害ポリペプチドが、変異を有する請求項94の方法。
- 前記変異が、優性非活性ポリペプチドをコードする請求項95の方法。
- 前記真菌の侵入阻害ポリペプチドが、Hog1, Bem2, Rim15, Ira1, Sfl1, Ssd1, Srb11, Swi4,又はTpk3である請求項94の方法。
- 真菌の二次代謝産物の産生を増加させる方法であって、真菌の侵入促進ポリペプチドの活性を増加させる工程を備えた方法。
- 前記真菌の侵入促進ポリペプチドが、変異を有する請求項98の方法。
- 前記変異が、優性活性ポリペプチドをコードする請求項99の方法。
- 前記真菌の侵入促進ポリペプチドが、Afl1, Dhh1, Inv1, Inv5, Inv6, Inv9, Inv10, Inv11, Inv12, Inv13, Inv14, Rim1, Inv15, Cdc25, Inv7, Mcm1, Mga1, Phd2, Pho23, Ptc1, Inv8, Ste2, Pet9, Mep2, Stp22, Tpk2,又はYpr1である請求項98の方法。
- 真菌のインベイシン遺伝子を単離する方法であって、
(a)真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが作用可能に連結された遺伝子を発現している真菌を準備する工程と;
(b)前記真菌に変異を誘発させる工程と;
(c)前記遺伝子の発現を測定し、前記遺伝子の発現の増加又は減少により、前記インベイシン遺伝子の変異を同定する工程と;
(d)前記インベイシン遺伝子を単離するためのマーカーとして前記変異を使用する工程と;
を備えた方法。 - 前記真菌が、野生型株である請求項102の方法。
- 前記野生型株が、サッカロミセス・セレビシアエである請求項103の方法。
- 前記真菌が、変異株である請求項102の方法。
- 前記遺伝子が、真菌のインベイシン遺伝子を含む請求項102の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、FLO11又はMUC1である請求項106の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子が、 AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, RIM1, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3又はYPR1である請求項106の方法。
- 前記遺伝子が、レポーター遺伝子を含む請求項102の方法。
- 前記レポーター遺伝子が、lacZ、URA3、又はHIS3である請求項109の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターである請求項102の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、、AFL1, DHH1, INV1, INV5, INV6, INV7, INV8, INV9, INV10, INV11, INV12, INV13, INV14, INV15, BEM2, CDC25, RIM1, HOG1, IRA1, MCM1, MGA1, PET9, PHD2, PHO23, PTC1, RIM15, SFL1, SRB11, SSD1, STE21, STP22, SWI4, TPK2, TPK3, 又はYPR1遺伝子プロモーターである請求項102の方法。
- 前記真菌のインベイシン遺伝子プロモーターが、、FLO11, MUC1, STA1, STA2, 又はSTA3遺伝子プロモーターの断片又は欠失である請求項102の方法。
- 前記断片が、基本プロモーターに融合されている請求項113の方法。
- 前記基本プロモーターが、PGK1, ADH1, GAL1−10, tet−R, MET25, CYC1, 又はCUP1遺伝子である請求項114の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された遺伝子のタンパク質レベルをアッセイすることによって測定される請求項102の方法。
- 前記遺伝子発現が、発現された遺伝子のRNAレベルをアッセイすることによって測定される請求項102の方法。
- 異種細胞を用いて、カンジダ・アルビカンスの遺伝子プロモーターからの発現を制御する遺伝子を同定する方法であって、
(a)カンジダ・アルビカンスの遺伝子プロモーターに作用可能に連結されたレポーター遺伝子を発現する異種細胞を準備する工程と;
(b)前記異種細胞中の候補遺伝子を発現させる工程と;
(c)前記レポーター遺伝子の前記発現を検出又は測定する工程と;
を備えた方法。 - 前記異種細胞が、サッカロミセス・セレビシアエである請求項118の方法。
- 増加した二次代謝産物産生を有するトランスジェニック真菌細胞を調製する方法であって、
(a)真菌細胞中にトランス遺伝子を導入する工程と;
(b)タンパク質を産生するための前記トランス遺伝子を発現している細胞を選択する工程と;
を備え、前期トランス遺伝子が、AFL1, DHH1, INV7, INV8, STE21, PET9, MEP2, INV1, INV5, INV6, INV9, INV10, INV11, RIM1, INV12, INV13, INV14, INV15, CDC25, MCM1, MGA1, PHD2, PHO23, PTC1, STP22, TPK2, YPR1, IIOG1, BEM2, RIM15, SFL1, IRA1, SSD1, SRB11, SWI4, TPK3又はそれらの断片である方法。 - 前記トランス遺伝子が、変異を有する請求項120の方法。
- 前記変異が、優性活性変異である請求項121の方法。
- 前記変異が、優性非活性変異である請求項121の方法。
- 真菌中の二次代謝産物を増加させる方法であって、
(a)二次代謝産物の産生を可能とする条件で、培養物中の前記真菌を培養する工程と;
(b)前記培養物に、真菌の侵入促進化合物を加える工程と;
(c)前記培養物から前記代謝産物を単離する工程と;
を備えた方法。 - 前記真菌が、変異を有する請求項124の方法。
- 前記真菌が、野生型株である請求項124の方法。
- HOG1遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Hog1タンパク質の活性を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項127のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- SWI4遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Swi4タンパク質の活性を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項129のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- BEM2遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Bem2タンパク質の活性を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項131のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- SRB11遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Srb11タンパク質の発現を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項133のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- SSD1遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Ssd1タンパク質の発現を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項135のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- TPK3遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Tpk3タンパク質の発現を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項137のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- SFL1遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Sfl1タンパク質の発現を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項139のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
- IRA1遺伝子中に変異を有するトランスジェニック糸状菌であって、前記変異が、機能的Ira1タンパク質の発現を阻害するトランスジェニック糸状菌。
- 請求項141のトランスジェニック糸状菌であって、前記真菌が、増加した二次代謝産物の産生を有するトランスジェニック糸状菌。
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