JP2004510430A - 疎水性高分子膜を使用して酵母スラリーを酸素化する方法 - Google Patents
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Abstract
気泡を形成することなく、酵母スラリーを効率的に酸素化する経済的な方法を開示する。該方法は、ガス側および液体側を有する少なくとも1つの疎水性でミクロ孔膜を備える膜酸素化器を使用する。酵母スラリーは、膜の液体側を流れ;酸素は、膜のガス側に送達され、細孔を通って酵母スラリーへと通過する。
Description
【0001】
(関連出願の相互参照)
適用なし。
【0002】
(連邦政府により援助を受けた研究または開発に関する記述)
適用なし。
【0003】
(発明の背景)
醸造酵母は、ビールおよび他の発酵飲料の製造において、炭水化物からエタノールへの発酵を促進する生体触媒として使用される。醸造において、発酵は、醸造酵母を発酵可能な炭水化物源(通常麦汁)と混合し、混合物を発酵に適した条件下でインキュベートすることにより実施される。
【0004】
一般に、麦汁は、以前の発酵から回収した酵母を接種または「投入(pitch)」される。一般に、投入酵母は、発酵中に嫌気条件を受ける。その後の発酵が起こり得る前に、嫌気投入酵母は最初に、ステロール類および不飽和脂肪酸類を含む必須脂質成分を合成しなければならない。これらの脂質の合成は、酸素および十分なグリコーゲン貯蔵を必要とする。
【0005】
酵母が脂質を合成するための十分な酸素を保証する慣用的なアプローチは、麦汁を曝気することである。しかし、この方法によれば、一貫した生成物を確実にするために、麦汁中の酸素レベルを注意深く制御しなければならない。至適下(Sub−optimal)の酸素レベルにより遅い発酵が引き起こされる。麦汁中の高い酸素レベルにより、迅速な発酵が引き起こされ得、これによりビールの風味の変化および過剰な泡立ち(overfoaming)がもたらされる。
【0006】
米国特許出願第899,756号には、酵母培養液を投入した後に麦汁を曝気または酸素化することを含む増強された発酵法が開示されている。投入後の麦汁の曝気は、発酵を促進するためにビール産業において日常的に実施されている。しかし、麦汁中の酵母の曝気は、気の抜けた前駆体の製造に寄与し得る。
【0007】
投入前に酵母スラリーを曝気または酸素化する方法を開発する試みがなされている。該方法を開発する重要な考察は、どのように、酵母による酸素取込み速度に近い速度で酸素を酵母に送達するかである。投入用の濃い最高点の酵母スラリーは、約5mg/分/リットルの酸素取込み速度(r)を有する。スラリーを空気で飽和すると、溶解酸素レベルは約10mg/リットルである。このスラリー中の酵母は、この酸素を2分間で取込むことができる。
【0008】
酵母の高い酸素要求を満たすに十分な速度で酸素を供給する、文献に記載の数個のシステムが考案された。
【0009】
英国特許出願GB2197341号には発酵前に酵母を曝気する方法が開示され、ここでは、投入酵母を最初に水で希釈し、その後、酵母が最大酸素消費速度に達するまでの期間、酸素に曝露する。その後、該酵母は酸素を含まない麦汁を投入するのに使用される。このシステムでは、溶融したガス整流板を通して酸素を供給する。このように供給した酸素は、泡形成を、特に気泡サイズを増加させるより高い供給速度で引き起こす、小さなガス気泡の形でスラリーに侵入する。泡形成を減少するために、酵母スラリーを10倍希釈し、これにより酸素必要量は10倍減少する。
【0010】
ベルギー特許Be1010885A3には、ミクロ孔セラミック膜コンタクタ(これを通って濃い酵母スラリーが循環している)により酵母を酸素化する方法が開示されている。酸化アルミニウム膜は、平均細孔サイズ0.5μmを有する。酸素が膜を通過するために、膜の液側上での圧力と比べてより高い圧力を膜のガス側上に維持しなければならない。これらの条件下で、酸素はミクロ気泡として酵母スラリーに侵入する。このシステムでは、泡の形成は減少するが消失しない。より小さな気泡のサイズおよび単位表面積あたりの多数の細孔のために、この方法は、GB2197341号に開示された方法よりも、酵母スラリーへの大量の酸素の改良された送達を与える。しかし、大量の移行は最適ではない。なぜなら、気泡の形で供給された酸素は溶解が遅いからである。なぜなら、泡は液体と共に移動し、比較的大きな液体の境界層および遅い溶解速度を引き起こすからである。この方法による十分な酸素の酵母への送達は、比較的高価なセラミック材料からなる非常に大きなコンタクタを提供することに依存する。
【0011】
米国特許第5,565,149号には、気泡を形成することなく酸素を供給する膜システムを用いて酸素を送達する方法が開示されている。膜は99.9%孔がない。酸素は拡散により膜を横切って移行される。酸素移行効率および酸素移行速度は追加の拡散段階により低下する。
【0012】
投入前に酵母を酸素化することは、一貫して良好な生成物を製造する上で、麦汁を酸素化することよりも優れていることが知られている。これにも関わらず、投入前の酵母酸素化は、酵母の非常に速い酸素取込み速度に追いつくのに十分な速度で投入酵母に酸素を供給するのに関連した困難のために、一般に醸造所では実施されていない。高い酸素供給速度を報告する文献に記載のシステムは、非経済的であるか、または過度の泡形成を引き起こす。
【0013】
泡形成を引き起こさない曝気または酸素化する経済的な方法が当分野では依然として必要である。
【0014】
(発明の要約)
本発明は、酵母スラリーを、少なくとも1つのミクロ孔疎水性高分子膜を有する膜コンタクタを通して通過させること(該膜はガス側および液体側を有し、該コンタクタは酸素源に接続されており、酵母スラリーの少なくとも一部は液体側上の膜の近くにある)、そして、膜を通して酸素源からの酸素を酵母スラリーに送達することを含む、投入前に酵母スラリーを効率的に酸素化する経済的な方法を含む。
【0015】
本発明の目的は、酵母スラリーを酸素化するコスト効率的な方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、酸素の非希釈酵母スラリーへの効率的な移行を可能とする方法を提供することである。
【0017】
本発明の利点は、酵母スラリーを、実質的にスラリーを泡立てることなく酸素化し得ることである。
【0018】
本発明の他の目的、特徴および利点は、明細書の検討から明らかとなろう。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、泡形成を引き起こさない、投入前に酵母スラリーを酸素化または曝気する経済的な方法を提供する。(「酸素化」または「曝気」なる語は本明細書で同義語として使用し;読み易くするために、酸素化なる語を、明細書の残り全体に使用する)。投入前の酵母の酸素化により、酵母細胞は十分な酸素を得、発酵過程中の細胞増殖に必要なステロール類および脂肪酸類を合成しうる。麦汁よりも酵母スラリーを酸素化することにより、より一貫した最終生成物を、気の抜けた前駆体のレベルを減少しつつ得ることができる。
【0020】
本発明の方法では、非希釈酵母は、ミクロ孔疎水性高分子膜(これを通ってガスを交換し得る)により酸素化される。膜は、直接混合することなく、液体酵母スラリー間の高い表面積接触を提供する。高い表面積対容量の比は、大量の移動のための高い比表面積を提供する。酸素をスラリーに送達する方法は、泡(foam)を生成する気泡(bubble)の形成を引き起こさない。泡を最小限にすることに加えて、本発明により、より高いKL値での操作が可能となる。
【0021】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施態様においては、酵母スラリーがタンク10に収容される。酵母の一部を、タンク10から、液体側40およびガス側50を有する少なくとも1つのミクロ孔疎水性膜30を装備した膜酸素化器20に移す。スラリーを膜の液体側40に通過させる。酸素タンク60からの酸素ガスを膜のガス側50に送達し、膜を通ってスラリーへと通過させる。酸素化酵母スラリーをタンク10に戻す。所望により、システムはスラリー中の溶解酸素を測定する手段70を備え得る。
【0022】
酵母懸濁液中の酸素取込み速度は、以下の式を使用して、酸素化中の任意の時間に、測定した溶解酸素発生プロファイルから計算できる:
【0023】
酸素質量平衡は以下のように記載できる:
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、CおよびCdはそれぞれ、酵母スラリーおよび酸素化器放出における溶解酸素濃度(mg/L)であり、Vは、スラリー容量(L)であり、Fは酸素化器を通るスラリー流速(再循環速度、L/分)であり、rは、分で測定した酸素化器における時間(t)後の酵母の即時酸素取込み速度(mg/分・L)である。
【0026】
式(1)を再編成して、測定した溶解酸素濃度および酵母タンク中の溶解酸素の変化速度から酸素取込み速度を計算し得る:
【0027】
【数2】
【0028】
酸素取込み速度rは、通常、mg O2/分/109細胞で表現される。質量移行効率は通常、因子kLaにより表現され、ここでのkLは質量移行係数(cm/分)であり、aは、cm−1の液体容量で割ったガスと液体の間の界面面積である。以下の式から分かるように、高いr値に追いつくのに十分な速度で酸素を供給するために変化させ得る4つのパラメータが存在する:
【0029】
【数3】
【0030】
ここでのC*は、ガス中の酸素の分圧と平衡である液体中の酸素濃度である。
【0031】
本発明の方法の設計において、酸素取込み速度に影響を及ぼす変数に対する以下の変化を考慮した:
【0032】
(1)kLaの増加。実施例に示したように、本発明の方法は、以前に報告された最大のkLa値よりも少なくとも1次元大きいkLa値を与える(マッシェレーン(Masschelein,C.A.)ら、国会議事録(Congress Proceedings)、ヨーロッパ醸造会議(European Brewing Conference)、1995年、377〜386頁)。
【0033】
(2)酸素化システムの容量と酵母スラリーの容量との比の増加。比較的低いkLa値でさえ、Be1010885A3号に開示されたシステムのように、酵母スラリーの容量と比較して酸素化システムの容量を増加させることにより、十分な酸素を供給できる。しかし、この選択肢は、特にセラミックなどの高価な膜材料を使用する場合、非経済的である。
【0034】
(3)酸素供給要求は、GB2197341号に開示されたように、酵母スラリーを希釈することにより減少させ得る。この選択肢はより大きな装置を必要とし、また非経済的でもある。
【0035】
(4)ガス相と液相との間の酸素濃度の差異(C*−C)の増加。この差異は、ガス移行の駆動力であるが、このパラメータは全システムにおいて限られている。気泡移行システムにおいて、ガス送達圧または流速の増加は、より大きな泡形成およびより低いkLa値を引き起こすより大きな気泡を生じる。気泡を含まない本発明の移行システムでは、ガス圧の増加は、液体側上での圧力の増加を必要とする。なぜなら、液体圧力は、気泡形成を防ぐために、ガス圧力よりも高くなければならないからである。
【0036】
本発明の方法では、システムガスは、分子状酸素(O2)の形で供給される。酸素は、疎水性膜システムを使用して供給する。この方法により、液体側上の圧力は、ガス側上での圧力よりも高く維持され、ガスが気泡として膜を通過するのを防ぐ。気泡形成の減少は、泡形成を大きく減少または消失する利点を有する。
【0037】
膜は疎水性であるので、液体は孔を貫通せず、ガス−液体界面は、膜の液体側上で維持される。高いkLa値は、高いクロスフロー速度の適用を通じて液体表面を連続的に新しくすることにより達成できる。
【0038】
本発明の初期の評価において、血液酸素化器として使用した型の疎水性膜酸素化器(モデルMax−FTE、メドトロニック社(Medtronic)、ミネソタ州ミネアポリス所在)を、クロスフローで膜に酵母スラリーを流しながら使用した。米国特許第4,975,247号(参照して本明細書の記載の一部とする)に開示されたように、この型の大量移行装置は中空糸膜を備える。酵母スラリーは繊維の外(液体側)付近を流れ、酸素は繊維の内(ガス側)に送達された。
【0039】
実施例では、酵母スラリーの一部を、約800ml/分の流速で膜コンタクタにポンプで送出した。コンタクタ中でのスラリーの滞留時間は約9秒であった。平均速度は、繊維層で約41cm/分であり、表面速度(繊維層の流速/横断面積)は約13.7cm/分であった。
【0040】
当業者は、kLa値が高いならば、これらのパラメータを変化させ得、依然として許容可能な酸素化が得られることを認識しているだろう。実施例に使用したkLa値は、約0.1秒−1〜約0.4秒−1の範囲であった。kLaが少なくとも約0.005秒−1であるならば、他のkLa値は、本発明の方法を使用して許容可能な結果を与えることが期待される。より好ましくは、kLa値は少なくとも約0.1秒−1である。より好ましくはさらに、kLaは0.4秒−1またはそれ以上である。
【0041】
当業者は、実施例に開示した膜コンタクタに加えて、本発明にも使用するに適した他の膜構成が存在することを理解しているだろう。スパイラル巻、振動、回転および管状の中空糸膜も本発明の実施に使用し得ることが期待される。
【0042】
実施例に使用する膜コンタクタは、比較的小さい発酵容量に適している。当業者は、比較的大量の発酵では、より大きなコンタクタを使用することを望むことを理解するだろう。
【0043】
本発明の方法では、酵母スラリーは膜の液側上を流れ、酸素はガス側に送達される。以下の実施例では、繊維内の酵母スラリーの流動経路は、繊維軸に実質的に垂直な方向にあった(クロスフロー)。平行流および反対流も、成功裡に利用し得ることが期待される。
【0044】
以下の実施例に使用した疎水性膜コンタクタは、約200μmの内径および約300μmの外径を有する複数の中空糸膜を備える。約10μm〜約3mmの範囲の外径および約5μm〜約2.9mmの範囲の内径を有する中空糸膜は、本発明の実施に適していると期待される。
【0045】
膜は、酸素が移行し得る複数の細孔を有する。実施例に使用した膜は、約0.03μmの孔サイズを有した。しかし、孔サイズが、酸素が膜を通って移行するに十分なほど大きいが、液体が操作膜貫通圧力差で膜を通って破壊するほど大きくはないならば、より大きなまたはより小さな孔サイズを有する膜も使用し得る。適切なミクロ孔膜は、約0.1nm〜約2μmの範囲の細孔を有するべきである。
【0046】
実施例に使用した膜は、膜接触面積の約40%の多孔率を有する。多孔率は、開いている膜面積の比率である。約2%〜約95%の範囲の多孔率を有する膜が本発明の実施に適切であると期待される。
【0047】
実施例に使用した膜は、ミクロ孔ポリプロピレン製であった。膜は、任意の適切な非反応性で疎水性のポリマー材料から製造し得る。該材料は、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはテフロン)、ポリビニリデンジフルオライド、ポリビニリデンジクロリド、およびポリエチレンを含むがこれに限定されない。
【0048】
分子状酸素は、酸素含有ガスで送達される。好ましくは、分子状酸素は、10%より多くの酸素を含む酸素ガスとして送達される。所望により、酸素は、空気、酸素富化空気、または酸素を含む任意の適切なガスとして送達し得る。
【0049】
実施例では、酸素を0.25L/分の流速で送達した。酸素が、期待される酸素取り込み速度よりも少なくとも2倍高い速度で供給される限り、より低いまたはより高い速度を使用し得る。さらにより好ましくは、酸素送達速度は、酸素取込み速度よりも少なくとも5倍高い。
【0050】
以下の実施例で使用した酵母は、ミラーブルーイングカンパニー社におけるより大量のビール発酵に使用した非希釈最高点(brink)酵母であった。当業者は、本発明の実施は、本発明を使用して、発酵に使用した任意の種類の酵母を酸素化し得ることを理解しているだろう。
【0051】
好ましくは、本発明の酵母スラリーは、約40g/Lの酵母(乾燥重量)〜約80g/Lの酵母(乾燥重量)を含む。しかし、酸素化前に酵母を40g/L未満に希釈することを望む者はそうし得る。
【0052】
以下の実施例では、酸素化中、酵母スラリーの温度を60°Fで維持した。この温度は、実施例に使用した特定の酵母の典型的な発酵温度であるために選択した。しかし、酸素化中の温度は本発明の実施に重要ではないことを理解すべきである。酵母スラリーが周囲温度で酸素化され得るか、または、酵母が温度制御システムを使用して酸素化中に所望の温度または温度範囲で維持され得る。酵母スラリーの温度は、プログラム可能な温度制御システムを使用することにより、酸素化の経過中に制御可能に変化させ得る。簡便には、酸素化は、その後の発酵を実施する温度に近い温度で実施し得る。
【0053】
酸素化後、酵母を投入に使用し得る。発酵は、標準的な発酵条件を使用して進行させる。醸造業者の目的に応じて、酵母を使用して、曝気または非曝気麦汁を投入し得る。
【0054】
主な目的が、風味プロファイルに影響を及ぼすか若しくは制御するか、または、気の抜けた前駆体の形成を防ぐことである場合、非曝気麦汁を発酵に使用すべきである。実施例に示したように、本発明の方法により酸素化した酵母と共に非曝気麦汁を投入する発酵は、高級アルコール類の生成の実質的な減少およびエステル類生成の増加により特徴づけられた。エステル類は、一般に、所望の風味をビールに付与すると考えられる。
【0055】
本発明の方法を使用して、酸素化酵母を使用して曝気麦汁を投入することにより、高い発酵速度が得られ得ると想定される。好ましくは、発酵は、本発明の方法により曝気した酵母を使用して曝気麦汁を非曝気酵母スラリーと共に投入し、慣用的な発酵法よりも短い時間で完了し得る。
【0056】
投入および発酵に加えて、本発明の方法により酸素化した酵母を、清澄化、貯蔵、または酵母を一般に使用する任意の他の適用を含む醸造過程の他の態様に使用し得る。酸素化酵母はまた、ワイン産業で、風味を操作するために使用し得ると想定される。
【0057】
以下の実施例では、酵母スラリーを脱炭酸し、酵母を酸素化する前に含有された酸素を剥離した。この段階を含めて、酸素化の経過中の酸素濃度の正確な測定を確実にした。この段階は、特に酵母酸素化の主な目的が、その後の発酵の発酵速度を高めることである場合には省略し得る。
【0058】
以下の非限定的な実施例は、単に説明的なものである。
【0059】
材料
全酵母懸濁液(40〜80gの乾燥重量/L、約10〜12L)を、酸素化試験で酵母スラリーとして使用した。
【0060】
試験に使用した膜酸素化器は、メドトロニック社(ミネソタ州ミネアポリス)による血液酸素化器として販売されている。膜は、約2.4m2の表面積および約120mlの液体保持容量を有する。
【0061】
酵母スラリーの酸素化
酵母は、図1に図解したような過程により酸素化した。酵母懸濁液は、連続的に撹拌するためのオーバーヘッド撹拌器を装備した12リットルのステンレス鋼タンク(「酵母タンク」)に入れた。酵母スラリーの温度は、予め決定した一定温度(60°F)に、温度制御システムにより維持した。タンクに、酵母をタンクから膜酸素化器に移行し、酸素化酵母を酸素化器からタンクに戻すポートを装備した。タンクは、溶解酸素を測定するためのセンサーに接続した追加のポートを備えた。システムは、酵母として測定すべき酵母スラリー中の溶解酸素を酸素化器から放出することを可能とする追加の酸素センサーを装備した。
【0062】
正確な測定を確実にするために、酵母スラリーを脱炭酸し、酸素化実験の開始前に満たした容器中に包含された全ての酸素を剥離した。脱炭酸および脱酸素化は、酵母が循環している間に窒素ガスを膜酸素化器にパージすることにより行なった。酵母懸濁液を脱炭酸し、脱酸素化し、所望の温度(例えば60°F)(10〜30分)に到達させた後、窒素パージを停止し、酸素供給を周囲圧力で開始した。
【0063】
酵母スラリーを、タンクから膜酸素化器に、0.8L/分の速度で移行した。酸素は、約0.25L/分の速度で酸素供給シリンダーから酸素化器に送達した。酵母スラリーの酸素化器での滞留時間は約9秒であった。
【0064】
タンク中の酵母懸濁液並びに酸素化器放出中の溶解酸素レベルを連続的に記録した。酵母試料を、数時間毎に集め、別々のビール発酵を接種するのに使用した。集めた各酵母試料のアリコートをステロール類含量について解析した。
【0065】
ビール発酵中の酸素化酵母の性能
上記のように酸素化した酵母を、2Lの容量の無菌麦汁を含む発酵器に投入し、12×106細胞mL−1を目標とした。発酵器は、熱質量フローメーターを通して排出し、オンラインで発酵速度を測定した。毎日の試料を容器から採取し、pHおよび正確な含量を測定した。全細胞増殖および細胞生存度を、血球計測計により発酵の終了時に測定した。
【0066】
本発明の方法により酸素化した酵母を、酸素化および非酸素化麦汁の両方に投入した。酵母酸素化の時間の関数としての、発酵の終了に達するに必要な時間(二酸化炭素発生速度が0.4ml/分・Lに到達する時間)を、曝気および非曝気麦汁の両方について図2に示す。
【0067】
図2から分かるように、曝気(黒丸)または非曝気(白丸)麦汁の発酵速度は、酸素化酵母を投入することにより増加した。非酸素化麦汁を使用し、約8〜10時間曝気した酵母を投入した発酵は、非酸素化酵母(黒丸時間0)を投入した曝気麦汁で得られたものとほぼ同じ発酵時間を有した。酵母生存度は酸素化により影響を受けなかった。酵母増殖は減少し、これにより、フーゼル油は減少し、エステル類は増加した。
【0068】
非曝気麦汁に、本発明の方法により酸素化した酵母を投入した発酵は、高級アルコール類製造の10%減少およびエステル類製造の5%増加を示した。
【0069】
本発明は、例示した実施態様に限定されないが、以下の特許請求の範囲内に該当する全てのかかる修飾および変更を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、タンクからの酸素化膜への酵母スラリーの流れおよび酸素化スラリーのタンクへの戻りを示す。
【図2】
図2は、酵母酸素化時間の関数としての曝気および非曝気麦汁の発酵時間を示す。
(関連出願の相互参照)
適用なし。
【0002】
(連邦政府により援助を受けた研究または開発に関する記述)
適用なし。
【0003】
(発明の背景)
醸造酵母は、ビールおよび他の発酵飲料の製造において、炭水化物からエタノールへの発酵を促進する生体触媒として使用される。醸造において、発酵は、醸造酵母を発酵可能な炭水化物源(通常麦汁)と混合し、混合物を発酵に適した条件下でインキュベートすることにより実施される。
【0004】
一般に、麦汁は、以前の発酵から回収した酵母を接種または「投入(pitch)」される。一般に、投入酵母は、発酵中に嫌気条件を受ける。その後の発酵が起こり得る前に、嫌気投入酵母は最初に、ステロール類および不飽和脂肪酸類を含む必須脂質成分を合成しなければならない。これらの脂質の合成は、酸素および十分なグリコーゲン貯蔵を必要とする。
【0005】
酵母が脂質を合成するための十分な酸素を保証する慣用的なアプローチは、麦汁を曝気することである。しかし、この方法によれば、一貫した生成物を確実にするために、麦汁中の酸素レベルを注意深く制御しなければならない。至適下(Sub−optimal)の酸素レベルにより遅い発酵が引き起こされる。麦汁中の高い酸素レベルにより、迅速な発酵が引き起こされ得、これによりビールの風味の変化および過剰な泡立ち(overfoaming)がもたらされる。
【0006】
米国特許出願第899,756号には、酵母培養液を投入した後に麦汁を曝気または酸素化することを含む増強された発酵法が開示されている。投入後の麦汁の曝気は、発酵を促進するためにビール産業において日常的に実施されている。しかし、麦汁中の酵母の曝気は、気の抜けた前駆体の製造に寄与し得る。
【0007】
投入前に酵母スラリーを曝気または酸素化する方法を開発する試みがなされている。該方法を開発する重要な考察は、どのように、酵母による酸素取込み速度に近い速度で酸素を酵母に送達するかである。投入用の濃い最高点の酵母スラリーは、約5mg/分/リットルの酸素取込み速度(r)を有する。スラリーを空気で飽和すると、溶解酸素レベルは約10mg/リットルである。このスラリー中の酵母は、この酸素を2分間で取込むことができる。
【0008】
酵母の高い酸素要求を満たすに十分な速度で酸素を供給する、文献に記載の数個のシステムが考案された。
【0009】
英国特許出願GB2197341号には発酵前に酵母を曝気する方法が開示され、ここでは、投入酵母を最初に水で希釈し、その後、酵母が最大酸素消費速度に達するまでの期間、酸素に曝露する。その後、該酵母は酸素を含まない麦汁を投入するのに使用される。このシステムでは、溶融したガス整流板を通して酸素を供給する。このように供給した酸素は、泡形成を、特に気泡サイズを増加させるより高い供給速度で引き起こす、小さなガス気泡の形でスラリーに侵入する。泡形成を減少するために、酵母スラリーを10倍希釈し、これにより酸素必要量は10倍減少する。
【0010】
ベルギー特許Be1010885A3には、ミクロ孔セラミック膜コンタクタ(これを通って濃い酵母スラリーが循環している)により酵母を酸素化する方法が開示されている。酸化アルミニウム膜は、平均細孔サイズ0.5μmを有する。酸素が膜を通過するために、膜の液側上での圧力と比べてより高い圧力を膜のガス側上に維持しなければならない。これらの条件下で、酸素はミクロ気泡として酵母スラリーに侵入する。このシステムでは、泡の形成は減少するが消失しない。より小さな気泡のサイズおよび単位表面積あたりの多数の細孔のために、この方法は、GB2197341号に開示された方法よりも、酵母スラリーへの大量の酸素の改良された送達を与える。しかし、大量の移行は最適ではない。なぜなら、気泡の形で供給された酸素は溶解が遅いからである。なぜなら、泡は液体と共に移動し、比較的大きな液体の境界層および遅い溶解速度を引き起こすからである。この方法による十分な酸素の酵母への送達は、比較的高価なセラミック材料からなる非常に大きなコンタクタを提供することに依存する。
【0011】
米国特許第5,565,149号には、気泡を形成することなく酸素を供給する膜システムを用いて酸素を送達する方法が開示されている。膜は99.9%孔がない。酸素は拡散により膜を横切って移行される。酸素移行効率および酸素移行速度は追加の拡散段階により低下する。
【0012】
投入前に酵母を酸素化することは、一貫して良好な生成物を製造する上で、麦汁を酸素化することよりも優れていることが知られている。これにも関わらず、投入前の酵母酸素化は、酵母の非常に速い酸素取込み速度に追いつくのに十分な速度で投入酵母に酸素を供給するのに関連した困難のために、一般に醸造所では実施されていない。高い酸素供給速度を報告する文献に記載のシステムは、非経済的であるか、または過度の泡形成を引き起こす。
【0013】
泡形成を引き起こさない曝気または酸素化する経済的な方法が当分野では依然として必要である。
【0014】
(発明の要約)
本発明は、酵母スラリーを、少なくとも1つのミクロ孔疎水性高分子膜を有する膜コンタクタを通して通過させること(該膜はガス側および液体側を有し、該コンタクタは酸素源に接続されており、酵母スラリーの少なくとも一部は液体側上の膜の近くにある)、そして、膜を通して酸素源からの酸素を酵母スラリーに送達することを含む、投入前に酵母スラリーを効率的に酸素化する経済的な方法を含む。
【0015】
本発明の目的は、酵母スラリーを酸素化するコスト効率的な方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、酸素の非希釈酵母スラリーへの効率的な移行を可能とする方法を提供することである。
【0017】
本発明の利点は、酵母スラリーを、実質的にスラリーを泡立てることなく酸素化し得ることである。
【0018】
本発明の他の目的、特徴および利点は、明細書の検討から明らかとなろう。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、泡形成を引き起こさない、投入前に酵母スラリーを酸素化または曝気する経済的な方法を提供する。(「酸素化」または「曝気」なる語は本明細書で同義語として使用し;読み易くするために、酸素化なる語を、明細書の残り全体に使用する)。投入前の酵母の酸素化により、酵母細胞は十分な酸素を得、発酵過程中の細胞増殖に必要なステロール類および脂肪酸類を合成しうる。麦汁よりも酵母スラリーを酸素化することにより、より一貫した最終生成物を、気の抜けた前駆体のレベルを減少しつつ得ることができる。
【0020】
本発明の方法では、非希釈酵母は、ミクロ孔疎水性高分子膜(これを通ってガスを交換し得る)により酸素化される。膜は、直接混合することなく、液体酵母スラリー間の高い表面積接触を提供する。高い表面積対容量の比は、大量の移動のための高い比表面積を提供する。酸素をスラリーに送達する方法は、泡(foam)を生成する気泡(bubble)の形成を引き起こさない。泡を最小限にすることに加えて、本発明により、より高いKL値での操作が可能となる。
【0021】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施態様においては、酵母スラリーがタンク10に収容される。酵母の一部を、タンク10から、液体側40およびガス側50を有する少なくとも1つのミクロ孔疎水性膜30を装備した膜酸素化器20に移す。スラリーを膜の液体側40に通過させる。酸素タンク60からの酸素ガスを膜のガス側50に送達し、膜を通ってスラリーへと通過させる。酸素化酵母スラリーをタンク10に戻す。所望により、システムはスラリー中の溶解酸素を測定する手段70を備え得る。
【0022】
酵母懸濁液中の酸素取込み速度は、以下の式を使用して、酸素化中の任意の時間に、測定した溶解酸素発生プロファイルから計算できる:
【0023】
酸素質量平衡は以下のように記載できる:
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、CおよびCdはそれぞれ、酵母スラリーおよび酸素化器放出における溶解酸素濃度(mg/L)であり、Vは、スラリー容量(L)であり、Fは酸素化器を通るスラリー流速(再循環速度、L/分)であり、rは、分で測定した酸素化器における時間(t)後の酵母の即時酸素取込み速度(mg/分・L)である。
【0026】
式(1)を再編成して、測定した溶解酸素濃度および酵母タンク中の溶解酸素の変化速度から酸素取込み速度を計算し得る:
【0027】
【数2】
【0028】
酸素取込み速度rは、通常、mg O2/分/109細胞で表現される。質量移行効率は通常、因子kLaにより表現され、ここでのkLは質量移行係数(cm/分)であり、aは、cm−1の液体容量で割ったガスと液体の間の界面面積である。以下の式から分かるように、高いr値に追いつくのに十分な速度で酸素を供給するために変化させ得る4つのパラメータが存在する:
【0029】
【数3】
【0030】
ここでのC*は、ガス中の酸素の分圧と平衡である液体中の酸素濃度である。
【0031】
本発明の方法の設計において、酸素取込み速度に影響を及ぼす変数に対する以下の変化を考慮した:
【0032】
(1)kLaの増加。実施例に示したように、本発明の方法は、以前に報告された最大のkLa値よりも少なくとも1次元大きいkLa値を与える(マッシェレーン(Masschelein,C.A.)ら、国会議事録(Congress Proceedings)、ヨーロッパ醸造会議(European Brewing Conference)、1995年、377〜386頁)。
【0033】
(2)酸素化システムの容量と酵母スラリーの容量との比の増加。比較的低いkLa値でさえ、Be1010885A3号に開示されたシステムのように、酵母スラリーの容量と比較して酸素化システムの容量を増加させることにより、十分な酸素を供給できる。しかし、この選択肢は、特にセラミックなどの高価な膜材料を使用する場合、非経済的である。
【0034】
(3)酸素供給要求は、GB2197341号に開示されたように、酵母スラリーを希釈することにより減少させ得る。この選択肢はより大きな装置を必要とし、また非経済的でもある。
【0035】
(4)ガス相と液相との間の酸素濃度の差異(C*−C)の増加。この差異は、ガス移行の駆動力であるが、このパラメータは全システムにおいて限られている。気泡移行システムにおいて、ガス送達圧または流速の増加は、より大きな泡形成およびより低いkLa値を引き起こすより大きな気泡を生じる。気泡を含まない本発明の移行システムでは、ガス圧の増加は、液体側上での圧力の増加を必要とする。なぜなら、液体圧力は、気泡形成を防ぐために、ガス圧力よりも高くなければならないからである。
【0036】
本発明の方法では、システムガスは、分子状酸素(O2)の形で供給される。酸素は、疎水性膜システムを使用して供給する。この方法により、液体側上の圧力は、ガス側上での圧力よりも高く維持され、ガスが気泡として膜を通過するのを防ぐ。気泡形成の減少は、泡形成を大きく減少または消失する利点を有する。
【0037】
膜は疎水性であるので、液体は孔を貫通せず、ガス−液体界面は、膜の液体側上で維持される。高いkLa値は、高いクロスフロー速度の適用を通じて液体表面を連続的に新しくすることにより達成できる。
【0038】
本発明の初期の評価において、血液酸素化器として使用した型の疎水性膜酸素化器(モデルMax−FTE、メドトロニック社(Medtronic)、ミネソタ州ミネアポリス所在)を、クロスフローで膜に酵母スラリーを流しながら使用した。米国特許第4,975,247号(参照して本明細書の記載の一部とする)に開示されたように、この型の大量移行装置は中空糸膜を備える。酵母スラリーは繊維の外(液体側)付近を流れ、酸素は繊維の内(ガス側)に送達された。
【0039】
実施例では、酵母スラリーの一部を、約800ml/分の流速で膜コンタクタにポンプで送出した。コンタクタ中でのスラリーの滞留時間は約9秒であった。平均速度は、繊維層で約41cm/分であり、表面速度(繊維層の流速/横断面積)は約13.7cm/分であった。
【0040】
当業者は、kLa値が高いならば、これらのパラメータを変化させ得、依然として許容可能な酸素化が得られることを認識しているだろう。実施例に使用したkLa値は、約0.1秒−1〜約0.4秒−1の範囲であった。kLaが少なくとも約0.005秒−1であるならば、他のkLa値は、本発明の方法を使用して許容可能な結果を与えることが期待される。より好ましくは、kLa値は少なくとも約0.1秒−1である。より好ましくはさらに、kLaは0.4秒−1またはそれ以上である。
【0041】
当業者は、実施例に開示した膜コンタクタに加えて、本発明にも使用するに適した他の膜構成が存在することを理解しているだろう。スパイラル巻、振動、回転および管状の中空糸膜も本発明の実施に使用し得ることが期待される。
【0042】
実施例に使用する膜コンタクタは、比較的小さい発酵容量に適している。当業者は、比較的大量の発酵では、より大きなコンタクタを使用することを望むことを理解するだろう。
【0043】
本発明の方法では、酵母スラリーは膜の液側上を流れ、酸素はガス側に送達される。以下の実施例では、繊維内の酵母スラリーの流動経路は、繊維軸に実質的に垂直な方向にあった(クロスフロー)。平行流および反対流も、成功裡に利用し得ることが期待される。
【0044】
以下の実施例に使用した疎水性膜コンタクタは、約200μmの内径および約300μmの外径を有する複数の中空糸膜を備える。約10μm〜約3mmの範囲の外径および約5μm〜約2.9mmの範囲の内径を有する中空糸膜は、本発明の実施に適していると期待される。
【0045】
膜は、酸素が移行し得る複数の細孔を有する。実施例に使用した膜は、約0.03μmの孔サイズを有した。しかし、孔サイズが、酸素が膜を通って移行するに十分なほど大きいが、液体が操作膜貫通圧力差で膜を通って破壊するほど大きくはないならば、より大きなまたはより小さな孔サイズを有する膜も使用し得る。適切なミクロ孔膜は、約0.1nm〜約2μmの範囲の細孔を有するべきである。
【0046】
実施例に使用した膜は、膜接触面積の約40%の多孔率を有する。多孔率は、開いている膜面積の比率である。約2%〜約95%の範囲の多孔率を有する膜が本発明の実施に適切であると期待される。
【0047】
実施例に使用した膜は、ミクロ孔ポリプロピレン製であった。膜は、任意の適切な非反応性で疎水性のポリマー材料から製造し得る。該材料は、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはテフロン)、ポリビニリデンジフルオライド、ポリビニリデンジクロリド、およびポリエチレンを含むがこれに限定されない。
【0048】
分子状酸素は、酸素含有ガスで送達される。好ましくは、分子状酸素は、10%より多くの酸素を含む酸素ガスとして送達される。所望により、酸素は、空気、酸素富化空気、または酸素を含む任意の適切なガスとして送達し得る。
【0049】
実施例では、酸素を0.25L/分の流速で送達した。酸素が、期待される酸素取り込み速度よりも少なくとも2倍高い速度で供給される限り、より低いまたはより高い速度を使用し得る。さらにより好ましくは、酸素送達速度は、酸素取込み速度よりも少なくとも5倍高い。
【0050】
以下の実施例で使用した酵母は、ミラーブルーイングカンパニー社におけるより大量のビール発酵に使用した非希釈最高点(brink)酵母であった。当業者は、本発明の実施は、本発明を使用して、発酵に使用した任意の種類の酵母を酸素化し得ることを理解しているだろう。
【0051】
好ましくは、本発明の酵母スラリーは、約40g/Lの酵母(乾燥重量)〜約80g/Lの酵母(乾燥重量)を含む。しかし、酸素化前に酵母を40g/L未満に希釈することを望む者はそうし得る。
【0052】
以下の実施例では、酸素化中、酵母スラリーの温度を60°Fで維持した。この温度は、実施例に使用した特定の酵母の典型的な発酵温度であるために選択した。しかし、酸素化中の温度は本発明の実施に重要ではないことを理解すべきである。酵母スラリーが周囲温度で酸素化され得るか、または、酵母が温度制御システムを使用して酸素化中に所望の温度または温度範囲で維持され得る。酵母スラリーの温度は、プログラム可能な温度制御システムを使用することにより、酸素化の経過中に制御可能に変化させ得る。簡便には、酸素化は、その後の発酵を実施する温度に近い温度で実施し得る。
【0053】
酸素化後、酵母を投入に使用し得る。発酵は、標準的な発酵条件を使用して進行させる。醸造業者の目的に応じて、酵母を使用して、曝気または非曝気麦汁を投入し得る。
【0054】
主な目的が、風味プロファイルに影響を及ぼすか若しくは制御するか、または、気の抜けた前駆体の形成を防ぐことである場合、非曝気麦汁を発酵に使用すべきである。実施例に示したように、本発明の方法により酸素化した酵母と共に非曝気麦汁を投入する発酵は、高級アルコール類の生成の実質的な減少およびエステル類生成の増加により特徴づけられた。エステル類は、一般に、所望の風味をビールに付与すると考えられる。
【0055】
本発明の方法を使用して、酸素化酵母を使用して曝気麦汁を投入することにより、高い発酵速度が得られ得ると想定される。好ましくは、発酵は、本発明の方法により曝気した酵母を使用して曝気麦汁を非曝気酵母スラリーと共に投入し、慣用的な発酵法よりも短い時間で完了し得る。
【0056】
投入および発酵に加えて、本発明の方法により酸素化した酵母を、清澄化、貯蔵、または酵母を一般に使用する任意の他の適用を含む醸造過程の他の態様に使用し得る。酸素化酵母はまた、ワイン産業で、風味を操作するために使用し得ると想定される。
【0057】
以下の実施例では、酵母スラリーを脱炭酸し、酵母を酸素化する前に含有された酸素を剥離した。この段階を含めて、酸素化の経過中の酸素濃度の正確な測定を確実にした。この段階は、特に酵母酸素化の主な目的が、その後の発酵の発酵速度を高めることである場合には省略し得る。
【0058】
以下の非限定的な実施例は、単に説明的なものである。
【0059】
材料
全酵母懸濁液(40〜80gの乾燥重量/L、約10〜12L)を、酸素化試験で酵母スラリーとして使用した。
【0060】
試験に使用した膜酸素化器は、メドトロニック社(ミネソタ州ミネアポリス)による血液酸素化器として販売されている。膜は、約2.4m2の表面積および約120mlの液体保持容量を有する。
【0061】
酵母スラリーの酸素化
酵母は、図1に図解したような過程により酸素化した。酵母懸濁液は、連続的に撹拌するためのオーバーヘッド撹拌器を装備した12リットルのステンレス鋼タンク(「酵母タンク」)に入れた。酵母スラリーの温度は、予め決定した一定温度(60°F)に、温度制御システムにより維持した。タンクに、酵母をタンクから膜酸素化器に移行し、酸素化酵母を酸素化器からタンクに戻すポートを装備した。タンクは、溶解酸素を測定するためのセンサーに接続した追加のポートを備えた。システムは、酵母として測定すべき酵母スラリー中の溶解酸素を酸素化器から放出することを可能とする追加の酸素センサーを装備した。
【0062】
正確な測定を確実にするために、酵母スラリーを脱炭酸し、酸素化実験の開始前に満たした容器中に包含された全ての酸素を剥離した。脱炭酸および脱酸素化は、酵母が循環している間に窒素ガスを膜酸素化器にパージすることにより行なった。酵母懸濁液を脱炭酸し、脱酸素化し、所望の温度(例えば60°F)(10〜30分)に到達させた後、窒素パージを停止し、酸素供給を周囲圧力で開始した。
【0063】
酵母スラリーを、タンクから膜酸素化器に、0.8L/分の速度で移行した。酸素は、約0.25L/分の速度で酸素供給シリンダーから酸素化器に送達した。酵母スラリーの酸素化器での滞留時間は約9秒であった。
【0064】
タンク中の酵母懸濁液並びに酸素化器放出中の溶解酸素レベルを連続的に記録した。酵母試料を、数時間毎に集め、別々のビール発酵を接種するのに使用した。集めた各酵母試料のアリコートをステロール類含量について解析した。
【0065】
ビール発酵中の酸素化酵母の性能
上記のように酸素化した酵母を、2Lの容量の無菌麦汁を含む発酵器に投入し、12×106細胞mL−1を目標とした。発酵器は、熱質量フローメーターを通して排出し、オンラインで発酵速度を測定した。毎日の試料を容器から採取し、pHおよび正確な含量を測定した。全細胞増殖および細胞生存度を、血球計測計により発酵の終了時に測定した。
【0066】
本発明の方法により酸素化した酵母を、酸素化および非酸素化麦汁の両方に投入した。酵母酸素化の時間の関数としての、発酵の終了に達するに必要な時間(二酸化炭素発生速度が0.4ml/分・Lに到達する時間)を、曝気および非曝気麦汁の両方について図2に示す。
【0067】
図2から分かるように、曝気(黒丸)または非曝気(白丸)麦汁の発酵速度は、酸素化酵母を投入することにより増加した。非酸素化麦汁を使用し、約8〜10時間曝気した酵母を投入した発酵は、非酸素化酵母(黒丸時間0)を投入した曝気麦汁で得られたものとほぼ同じ発酵時間を有した。酵母生存度は酸素化により影響を受けなかった。酵母増殖は減少し、これにより、フーゼル油は減少し、エステル類は増加した。
【0068】
非曝気麦汁に、本発明の方法により酸素化した酵母を投入した発酵は、高級アルコール類製造の10%減少およびエステル類製造の5%増加を示した。
【0069】
本発明は、例示した実施態様に限定されないが、以下の特許請求の範囲内に該当する全てのかかる修飾および変更を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、タンクからの酸素化膜への酵母スラリーの流れおよび酸素化スラリーのタンクへの戻りを示す。
【図2】
図2は、酵母酸素化時間の関数としての曝気および非曝気麦汁の発酵時間を示す。
Claims (8)
- (a)酵母スラリーの少なくとも一部を、膜コンタクタを通して通過させる段階であって、該コンタクタは少なくとも1つの、疎水性のミクロ孔膜を備え、該膜は液側およびガス側を有し、該コンタクタは酸素源に接続しており、酵母スラリーの少なくとも一部は液側上の膜の近くにあり、
(b)酸素源からの酸素を、酸素の少なくとも一部が膜のガス側から酵母スラリーへの移行を引き起こす条件下で、膜のガス側へと送達する段階
を含む、酵母スラリーを酸素化する方法。 - 該酵母スラリーが、酵母タンクと膜コンタクタの間の閉じた系中を循環していることを特徴とする請求項1の方法。
- 培地に酸素化酵母を投入する段階を含み、該酵母は請求項1の方法により酸素化されていることを特徴とする液体培地を発酵する方法。
- 該培地が麦汁であることを特徴とする請求項3の方法。
- 該麦汁が投入前に曝気されることを特徴とする請求項4の方法。
- 該麦汁が投入前に曝気されないことを特徴とする請求項4の方法。
- 請求項3の方法により製造した発酵飲料。
- 該飲料がビールであることを特徴とする請求項7の飲料。
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