JP2004509637A - 浸潤癌の発生の早期予測のための方法 - Google Patents

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Abstract

浸潤癌の起こり得る発生の早期予測のための予後推定方法であって、そのような部位を選択的に染色する色素を適用すること、引き続きそのような部位のDNAが腫瘍抑制遺伝子の変異に対して対立遺伝子欠損を呈するかどうかを決定する分子遺伝学的分析によって疑わしい癌性および前癌性組織部位を同定することを含む方法。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸潤癌(invasive cancer)の起こり得る発生の早期予測のための予後推定方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
[遺伝的分析による前癌組織の同定]
全ての新生物(neoplasms)は遺伝子変異(genetic alterations)を受けた細胞から生じ、引き続きクローン的な増大を生じると信じられている。これらの遺伝子変異には、プロトオンコジーンの活性化および腫瘍抑制遺伝子の不活性化が含まれる。病理学的な進展を伴う特定の遺伝的変化(genetic changes)の同定は、口腔癌(oral cancers)を含む多くの癌の分子進展モデルを説明し得るものである。これらの進展モデルは、ヒト腫瘍の診断および検出を援助する分子マーカーを提供する。
【0003】
分子レベルの分析は、ヒト原発新生物の特定の遺伝的変化を調べる能力に変革をもたらした。PCRに準拠した強力な技術は、DNA抽出および引き続く遺伝的分析のために、ルーチンに作製されたパラフィン包埋標本を使用することを可能にする。これらのサンプルから抽出されたDNAを増幅して、対立遺伝子欠損(allelic losses)を含む様々な遺伝子変異を明らかにすることができる。そのような対立遺伝子欠損(染色体欠失)は、欠損部位に保持される重要な腫瘍抑制遺伝子の不活性化に関するマーカーである。
【0004】
成人の腫瘍において、腫瘍抑制遺伝子は2段階の不活性化プロセスを必要とし、それによって腫瘍の進展に関する両親の対立遺伝子の双方がノックアウトされなければならない。一般的に、一方の対立遺伝子のポイントミューテーションには、二番目の対立遺伝子の欠失、および腫瘍抑制機能の完全な欠損が伴う。マイクロサテライト分析により同定されたこれら対立遺伝子的な欠損(losses)、欠失(deletions)は、腫瘍抑制遺伝子不活性化に関する共通の第二の不活性化ステップを表すものである。実際には、対立遺伝子欠損(または欠失)は、正常DNAにおける母性(maternal)および父性(paternal)の対立遺伝子を区別し得る高度の多型マーカーを使用することによって決定し得る。そして、このパターンは、組換えまたは欠失が母性または父性(LOHのヘテロ接合の欠損としても知られる)のどちらかの欠損として表される腫瘍DNAと比較される。最近、このマッピングプロセスは、高度に多型でかつヒトゲノム全体に生じるマイクロサテライトマーカー(小規模なDNA反復単位)の登場によって変革された。例えば、2つの染色体腕上に座位する重要な腫瘍抑制遺伝子座をテストすることができる。領域の1つは染色体腕9p上に座位し、そしてp16(MTS−1またはCDKN2)と呼ばれる重要な腫瘍抑制遺伝子を保持している。この重要な細胞周期インヒビターは、大抵の原発癌において、ポイントミューテーション、欠失およびメチレーションによって不活性化されている。第二の分析は、染色体領域3p21、即ち、喫煙に関連する腫瘍において最も頻繁に欠失する領域中において実施することができる。多くの遺伝子が3p領域から単離されたが、これら候補遺伝子の何れも、原発癌または細胞株において頻繁には不活性化されていない。重要なことに、9pおよび3p双方の欠損は、浸潤癌進展において同定される早期の遺伝的変化である。
【0005】
頭頸部癌(head and neck cancer)の患者は、しばしばエアロダイジェスティブトラクト(aerodigestive tract)の2次原発腫瘍(second primary tumors)を伴っている。頭頸部癌の基礎遺伝的な研究は、口腔の単一の形質転換細胞が粘膜全体に広がって、クローン的に関連する形質転換細胞の広区域を形成し得ることを示している。一人の患者に二つの病巣が生じた際には、それらは由来としては大抵クローン的なものであるとの更なる証拠がある。例えば、頭頸部癌の患者は、しばしば異常細胞の大きな斑(patch)を有し、それは単純なバイオプシーによって直接検査できる。
【0006】
例えば、Califano等、 Genetic Progression Model for Head and Neck Cancer. Cancer Research 56(11):2488−2492(1996); Sidransky、 Nucleic Acid―based Methods for Detection of Cancer. Science 278(5340):1045−058(1997); Rosin等、 Use of Allelic Loss to Predict Malignant Risk for Low―grade Oral Epithelial Dysplasia, Clinical Cancer Research 6:357362(2000)を参照されたい。
【0007】
そして、浸潤癌が将来において生じるとの早期の予後推定が、疑わしい部位の組織の遺伝的分析によって達成できることが知られている。従って、視認しえる徴候が生じるよりかなり前に、そのような疑わしい部位の局在部を同定する単純な臨床プロトコールの提供が非常に望まれている。
【0008】
[従来技術のMashbergプロトコール]
上皮組織上の疑わしい部位を同定および描写するための、イン ビボの診断スクリーニング検査が知られている。このスクリーニング検査は、癌性および前癌性の組織を選択的に染色するトルイジンブルー O(TBO)色素を用いるものであり、Mashbergの米国特許4,321,251およびTucci等の米国特許5,372,801に一般的に開示されている。さらに最近ではキットが開発されており、それは他のルーチンの歯学的または医学的な処置の一部として、医者が迅速かつ容易に検査を施することを可能にし、患者が無症状である時、または異形成病巣が通常の視覚的検診では見逃される可能性がある大変小さなものである間に、疑わしい部位をこのように同定および/または描写することを可能にするものである。疑わしい異形性病巣がMashbergプロトコールで同定されたときには、通常のバイオプシーサンプルが採取され、そして病巣が悪性か前癌性かを決定するために通常の組織学的検査に供試された。この検査を実施するキットは、適切な量および濃度のプレミックス色素および洗浄溶液を含むもので、Zila社によりライセンスされており、カナダ、オーストラリアおよびヨーロッパにおいてOraTestTMの商標で商業的に入手可能である。後に、他の陽イオン性色素が同様に有用であり(例えば、Pomerantzの米国特許5,882,672を参照)、そのような色素の選択的マーキング作用は、癌性および前癌性細胞のミトコンドリアによるそれらの摂取および保持によるものであることが決定された。
【0009】
[例1]
<臨床検査プロトコール>
この例はMashbergプロトコールの従来のプラクティスを例証するものである。
臨床検査溶液の調製
TBO(例えば、私の米国特許6,086,852の実施例1に従って調製されたもの)、キイチゴフレーバー剤(IFF Raspberry IC563457)、酢酸ナトリウム三水和物緩衝剤およびH(30% USP)防腐剤(米国特許5,372,801を参照)が、表Aに示される組成を有するTBO検査溶液を作成するために、純水(USP)、氷酢酸およびSD 18 エチルアルコール中に溶解される。
【0010】
【表A−1】
Figure 2004509637
純水中の1重量%酢酸、安息香酸ナトリウム防腐剤およびキイチゴフレーバーの前洗浄および後洗浄検査溶液が調製される。
【0011】
臨床プロトコール
患者は衣服を保護するために胸当てを着用させられる。喀出(expectoration)が予想されるため患者は10オンスのカップを与えられるが、このカップは感染性廃棄物コンテナー中に入れて廃棄でき、またはその内容物は流しが染色されるのを防ぐために流しの排水溝の中心部に直接流すことができる。周囲との接触面または染色され得る対象は、覆われるかまたは検査領域から取り除かれる。
【0012】
視覚的な口腔癌(oral cancer)検査が、軟組織(soft tissues)に刻み目または切り傷を生じ得るどのような道具も使用することなく行われる。軟組織または歯の前染色の出現が記録される。
【0013】
患者は、余分の唾液を除去して一貫性のある口腔環境を提供するために、約20秒間にわたり約15mlの前洗浄溶液で口腔を洗浄し、喀出する。次いで、追加の前洗浄溶液を用いてこのステップが繰り返される。
【0014】
次に、患者は20秒間水で洗浄およびうがいを行い、喀出する。
【0015】
次に、患者は1分間TBO検査溶液30mlで洗浄およびうがいを行い、喀出する。
【0016】
次に、患者は20秒間、後洗浄液15mlで洗浄を行い、喀出する。次いでこのステップが反復される。
【0017】
次に、患者は20秒間水で洗浄およびうがいを行い、喀出する。次いでこのステップが反復される。
【0018】
次に、必要であれば退縮(retraction)、バランスのよい照明、および拡大視野を含む適切な軟組織の検診技術を使用して、口腔の観察が行われる。青色をもった疑わしい病巣の局在、サイズ、形態、色彩および表面の特徴が検査され、記録される。
【0019】
偽陽性を減らすために、患者は10−14日後に上記プロトコールの反復に戻される。この期間は、第一検診期間での何等かの潰瘍性(ulcerative)または外傷性(traumatic)病巣または刺激性病因(irritating etiology)が治癒するのための期間を与えるものである。第一検診で検出された疑わしい領域の第二検診後の陽性染色は、癌性または前癌性組織の徴候と考えられ、バイオプシーはこの結果を立証するためになされる。
【0020】
初期のエリスロプラスティック(erythroplastic)な病巣は、しばしば点状または斑状のパターンで青色に染色される。しかしながら、舌背(dorsum of the tongue)上の不規則な乳頭状間隙(papiliar crevices)により保持される染色については正常であり、それは陽性の徴候ではない。陽性とは認められないが青色染色性を保持する他の領域には、歯のプラーク、各歯の歯肉境界、軟口蓋(soft palate)の拡散性の染色が含まれる。なぜなら、舌背および潰瘍性の病巣上に保持された染色から移行した色素は容易に区別可能だからである。この検査では陽性に染色されないが、病巣の存在が非常に疑われる全ての例においては、バイオプシーが取られることがやはり不可避である。
【0021】
偽陽性
現在までに、Mashbergプロトコールは「偽陽性」の徴候、即ち、後の通常の組織学的検診で確認できない癌性または前癌性の状態の徴候を示し得ることが理解されていた。それら偽陽性の頻度を、例えば、Mashberg特許に記載の手順の反復によって、およびTucci特許に記載されている色素の特別な処方によって低減するために、少なからぬ努力が費やされた。
【0022】
【発明の概要】
しかしながら、浸潤癌の起こり得る発生を暗示するクローン的な遺伝的変化が、先に述べた染色された組織の通常の組織学的検診により該組織が癌性または前癌性であることが立証されなくとも、TBOおよび他の陽イオン性の超生体染色色素(supravital dyes)によって染色される疑わしい病巣において同定されることが決定された。従って、Mashbergプロトコールにおいて例中の高い比率で「偽陽性」と以前に考えられた徴候は、浸潤癌の発生の前兆である遺伝子変異の最も初期の徴候である。従って、Mashbergタイプの染色色素プロトコールは、どの組織を遺伝的分析に供試すべきかを決定するための、合理的で信頼できる手段である。
【0023】
従って、その最も広い側面で考慮すれば、私は、最終的な浸潤癌の発生を早期に予測するための予後推定方法を提供する。この方法は、従来技術である遺伝子分析技術と、Mashbergプロトコールで例示される従来技術の選択的染色色素技術の教示とを組合わせたものである。私の方法は、組織に対して、新生物発生前(preneoplastic)細胞のミトコンドリアにより選択的に保持される染色色素を適用することと、染色された組織部位について前記組織を視覚的に検診することによりクローン班(clonal patches)を同定することと、前記クローン班の座位において組織を切除することと、および前記切除組織から抽出したDNAが腫瘍抑制遺伝子の対立遺伝子的な欠損または変異を呈するかどうかを決定することとを含むものである。
【0024】
以下に示す実施例は当業者に対して、私の発明の実施およびその現在の好適な態様を明らかにするために提供される。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではなく、本発明は特許請求の範囲に記載した範囲においてのみ限定されるものである。
【0025】
【実施例】
[実施例1]
<Mashbergタイプ臨床プロトコール>
臨床検査溶液の調製
TBO(例えば、米国特許6,086,852の実施例1の産物)、キイチゴフレーバー剤(IFF キイチゴ IC563457)、酢酸ナトリウム三水和物緩衝剤およびH(30% USP)防腐剤(米国特許5,372,801を参照)が、表Aに示される組成を有するTBO検査溶液を作成するために、純水(USP)、氷酢酸およびSD 18 エチルアルコールに溶解される。
【0026】
【表A−2】
Figure 2004509637
純水中の1重量%酢酸、安息香酸ナトリウム防腐剤およびキイチゴフレーバーの前洗浄および後洗浄検査溶液が調製される。
【0027】
臨床プロトコール
患者は衣服を保護するために胸当てを着用させられる。喀出(expectoration)が予想されるため患者は10オンスのカップを与えられ、カップは感染性廃棄物コンテナー中に入れて廃棄でき、または、その内容物は流しが染色されるのを防ぐために流しの排水溝の中心部に直接流し得る。周囲との接触面または染色され得る対象は、覆われるかまたは検査領域から取り除かれる。
【0028】
視覚的な口腔癌(oral cancer)検査が、軟組織(soft tissues)に刻み目または切り傷を生じ得るどのような道具も使用することなしに行われる。軟組織または歯の前染色の出現が記録される。
【0029】
患者は、余分の唾液を除去して一貫性のある口腔環境を提供するために、約20秒間にわたり約15mlの前洗浄溶液で口腔を洗浄し、喀出する。次いで、追加の前洗浄溶液を用いてこのステップが繰り返される。
【0030】
次に、患者は20秒間水で洗浄およびうがいを行い、喀出する。
【0031】
次に、患者は1分間TBO検査溶液30mlで洗浄およびうがいを行い、喀出する。
【0032】
次に、患者は20秒間、後洗浄液15mlで洗浄を行い、喀出する。次いでこのステップが反復される。
【0033】
次に、患者は20秒間水で洗浄およびうがいを行い、喀出する。次いでこのステップが反復される。
【0034】
次に、必要であれば退縮(retraction)、バランスのよい照明、および拡大視野を含む適切な軟組織の検診技術を使用して、口腔の観察が行われる。青色をもった疑わしい病巣の局在、サイズ、形態、色彩および表面の特徴が検査され、記録される。
【0035】
患者は10−14日後に上記プロトコールの反復に戻された。この期間は、第一検診期間に存在した何等かの潰瘍性(ulcerative)または外傷性(traumatic)病巣または刺激性病因(irritating etiology)が治癒するための期間を与えるものである。第一検診で検出された疑わしい領域の第二検診後の陽性染色は、癌性または前癌性組織の徴候と考えられる。
【0036】
初期のエリスロプラスティック(erythroplastic)な病巣は、しばしば点状または斑状のパターンで青色に染色される。しかしながら、舌背(dorsum of the tongue)上の不規則な乳頭状間隙(papiliar crevices)により保持される染色については正常であり、それは陽性の徴候ではない。陽性とは認められないが青色染色性を保持する他の領域には、歯のプラーク、各歯の歯肉の境界、軟口蓋(soft palate)の拡散性の染色が含まれる。なぜなら、舌背および潰瘍性の病巣上に保持された染色から移行した色素は容易に区別可能だからである。しかしながら、この検査において陽性に染色されないものの、病巣の存在が非常に疑われる全ての例においては、バイオプシーが取られ、そして分子レベルの分析に供試されることが不可避なことである。
【0037】
[実施例2]
<遺伝子変異の分析>
様々な臨床上の部位から58サンプルが得られた。これらサンプル中の2サンプルについては、更なる分子レベルの分析には不十分な試料しかスライド上に存在しないので、分析は不可能であることが決定された。残りの56例において、新生物性細胞(neoplastic cells)が、レーザー捕捉顕微解剖鏡(laser capture microdissection scope)を使用して、(癌の事例)正常組織または上皮から、(他の全ての事例)正常組織から慎重に摘出された。これは3つのクリティカルな座位での引き続くマイクロサテライト分析のために、細胞分離およびDNA抽出を可能にする。15例においては、DNAが不十分で更なる分析は不可能である。検査のために選択された2つの座位(D9S171およびD9S736)は、p16遺伝子を保持する染色体領域9p21上にある。第三のマーカー(D3S1067)は、染色体3p21上に位置する。残りの41例において、全ての分子レベルの研究は、病理学的診断の知見を考慮しない盲検で行なわれた。
【0038】
本研究においては、青色染色された病巣と、青色染色領域内ではないがそれに近接するバイオプシーを行った病巣とが別々に同定される。従って、多くの事例において、染色領域ならびに近接する非染色領域の双方を直接検査することができる。これら41例の全てにおいて、これらのクリティカルなマーカーのマイクロサテライト分析は、イン サイチュー(in situ)で、癌および癌種(carcinoma)を有する実際上全ての事例においてLOH(染色体欠失)の存在を示す。加えて、異形成および非異形成病巣の多く、ならびに未知(病理学的診断なし)のカテゴリーにおける病巣もまた、クローン的な遺伝的変化を保持する。
【0039】
12例の癌の症例中の12例において、予測されたようにクローン的な遺伝的変化が同定された。イン サイチューでの癌種または重篤な異形成の4つ全ての事例においても、クローン的な変化が同定された。異形成の事例中の57%(7例中の4例)および異形成を呈さない事例中の85%(14例中の12例)において、クローン的な遺伝的変化がそれらのマーカー中の1以上に認められた。未知の組織学的特徴を有する事例において、クローン的な遺伝的変化が、前記事例中の25%(4例中の1例)において同定された。全体的には、クローン的な変化は、マイクロサテライト分析により病巣の80%(41例中の33例)において同定された。この分子レベルの分析は、Mashbergタイプのプロトコールにより同定された病巣の約80%がクローン的であることを示すものである。
【0040】
[結論]
以前の研究は、クローン的な遺伝的変化を有する病巣のみが、癌に進行するらしいと示唆している。これらの研究の全てが、9pおよび/または3p欠損を有する病巣のみが癌に進行し、これらの変化を有さない病巣は決して進行しないことを示唆している。もし他のより進展的な遺伝的変化(例えば、17p欠損またはp53の変異)が存在するならば、新生物発生前の病巣における進行のリスクは明らかに実際上100%に上昇する。
【0041】
3pおよび/または9p欠損の場合の癌に進行するリスクは、28−75%にわたっている。しかしながら、進行の最低の頻度(28%)の事例での研究において、予見的に検査された116例の患者は研究の開始の前に癌はなかった。他の2つの研究は、以前切除した原発腫瘍などを有する123患者を含むものであり、高率または進行(45−78%)を反映するものであった。もっとも最近の研究において、その著者は、2以上の対立遺伝子欠損をもった全ての疑わしい領域の切除を明確に推奨していた。
【0042】
従って、この実施例は、この患者集団中のトルイジンブルー色素により同定された新生物発生前の変化はクローン的なものであり、それゆえに癌への進行途上のものであるとの事実を確立するものである。同定された病巣の全てが浸潤癌に進行するかは確かではないが、初期のクローン的な増幅がこれらの患者で開始していることは明らかである。上記の研究に基づいて、保護評価(conservation estimate)は、これらの病巣の50−75%が浸潤癌に進行するらしいことを示唆する。それゆえ、これらのクローン班の存在により、これらの患者は非常に高リスクなカテゴリーに分類され、したがって疾患領域の完全な摘出が許可される。
【0043】
この実施例から導かれるもう1つの重要なポイントは、染色領域および非染色領域の議論に関連するものである。ほとんど全ての事例において、染色領域および非染色領域の双方が同一のクローン的な遺伝的変化を共有している。頭頸部癌のクローン的な進行モデルの説明に基づけば、再発(recur)する頭頸部癌を有する大抵の患者が、異常上皮の大班を有することは明らかである。染色領域から離れた部位のバイオプシーもまた、同一のクローン的な遺伝的変化を示すであろうことは驚くべきことではない。重要なことは、染色領域のバイオプシーのみがクローン的な遺伝的変化を示す一方、非染色領域はこれらの変化を示さない事例が少なくとも3例存在することである。これはおそらく、これらの患者にはより小さいクローン班が存在することによるものであり、異常病巣の同定における色素染色の使用を更に支持するものである。
【0044】
明らかに、Mashbergタイプのプロトコールは、イン サイチューにおいて、癌種および通常の形態学的分析によって確証された癌を有する患者を同定した。注目すべきことに、他の除去された病巣の大多数は、顕微鏡観察下で正常もしくは異形成であると思われたが(さもなければそれらはMashbergプロトコールより「偽陽性」として分類されたであろう)、それでも、これらの病巣は癌への進行に必然的で重要なクローン的な遺伝的変化を保持している。
【0045】
従って、Mashbergタイププロトコールは、癌に加えて、癌に進行するであろう病巣を検出するための強力な方法を提示するものである。この点において、染色によって同定される病巣をバイオプシーすることは適切であり、それは(A)前記病巣が更なる切除によりその全体を除去できるので治癒に至り、または(B)クローン的な遺伝的進行の証拠立てによって適切に患者を高リスクカテゴリーに分類する。
【0046】
当業者が本発明を理解および実施するための事項に関する本発明の内容を開示し、また本発明の現在の好適な態様を特定したので、特許請求の範囲に記載のとおり、本発明についての権利を請求する。

Claims (1)

  1. 浸潤癌の起こり得る発生の早期予測のための予後推定方法であって、前記方法が、
    (a)組織に対して、新生物的および前新生物的な細胞のミトコンドリアにより選択的に保持される染色色素を適用することと、
    (b)染色された組織部位について、前記組織を視覚的に検診することにより前記組織のクローン班を同定することと、
    (c)前記クローン班の座位において組織を切除することと、
    (d)前記切除組織から抽出されたDNAが対立遺伝子欠損または腫瘍抑制遺伝子の変異を呈するかどうかを決定することと、
    を含む方法。
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