JP2004506202A - 細胞によって提示されるペプチド - Google Patents
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Abstract
本発明は、哺乳動物の細胞にタンパク質を加えた後にその細胞の表面に提示されるペプチドを決定する方法に関する。本発明はまた、このようなペプチドの決定、またはこのようなペプチドの決定によって生み出された薬剤実体などの修飾された分子に基づく診断のための検査に関する。このような分子は特定の生物活性を有し、修飾されていない対応する分子に比べてより低い免疫原性またはより高い免疫原性を有することが好ましい。本発明に基づく方法は、質量分光法(MS)を使用したツールを用いて確立されることが好ましい。
Description
【0001】
本発明は、哺乳動物の細胞にタンパク質を加えた後に細胞の表面に提示されるペプチドを決定する方法に関する。本発明はさらに、このようなペプチドの決定に基づく診断のための検査、またはこのようなペプチドの決定によって生み出された、例えば薬剤実体などの、好ましくは特定の生物活性を有し、修飾されていない対応する分子に比べてより低い免疫原性またはより高い免疫原性を有する、修飾された分子に関する。本発明に基づく方法は、質量分光法(MS)を使用したツールを用いて確立されることが好ましい。
【0002】
哺乳動物の細胞によるタンパク質の取込み(または細胞内での特定のタンパク質の産生)の後、これらのタンパク質は分解され、一般に、このようなタンパク質のペプチド断片が、しばしば他のタンパク質と結合して細胞の表面に現れる。具体的には、タンパク質のペプチド断片は分解され、ある種のペプチドは続いて、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と結合する。多くの場合、これはT細胞によって認識されて免疫応答が開始される。例えば、そこからペプチド断片が誘導される特定のタンパク質を産生する細胞に免疫系が対抗する場合、このような免疫応答は有益であり、例えば、特定のタンパク質に結合しその活性を制限する抗体を産生する場合、免疫系は有害である(例えば薬剤タンパク質の場合など)。
【0003】
現在までのところ所与のタンパク質について、その分解がタンパク質のどの位置で起こるかを正確に予測することは不可能であり、そのため、細胞表面に現れる正確なペプチドを確実に予測することはできない。MHC分子の場合、MHCに結合するペプチドのモチーフの予測においてはある程度成功したものもあったが、実際には、MHC分子に到達する前にこれらのペプチドの一部は分解し、どのペプチドが分解されるかの予測の信頼度は高くない。したがって、細胞表面上のペプチドを検出する標準の方法は、このようなペプチドを溶離させ、その後にその配列を決定する方法である。このような方法はルーチンの方法とは言えず、さらに、複数の細胞タイプまたは複数のMHC分子上の細胞表面ペプチドの分析が必要な場合には非実用的である。
【0004】
本発明の目的は、特に複数のMHC分子によって提示された細胞の表面のペプチドを検出する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、このような情報を、薬剤分子の設計、ワクチン分子の設計または診断のための検査に使用することにある。
【0005】
薬剤分子に関する本発明の特定の目的は、細胞によるタンパク質の取込みまたは産生の後にMHC分子によって提示されるペプチドを識別し、この情報を使用して、このようなペプチドがもはや提示されないようにタンパク質を改変することにある。
【0006】
ワクチン分子に関する本発明の特定の目的は、細胞によるタンパク質の取込みまたは産生の後にMHC分子によって提示されるペプチドを識別し、1つまたは複数のこのようなペプチドをワクチン分子中で使用して免疫系を刺激することにある。
【0007】
薬剤分子とワクチン分子の両方に関する本発明の特定の目的は、さまざまな集団全体を通じて異なるアロタイプおよび遺伝子型バリアントを包含する多くの異なるMHC分子によって提示されるペプチドを識別することにある。
【0008】
診断のための検査に関する本発明の特定の目的は、細胞によるタンパク質の取込みまたは産生の後にMHC分子によって提示されるペプチドを決定し、このような決定を、生物学的または生理学的な事象、例えば感染、を検出するための検査の基礎として使用することにある。
【0009】
診断のための検査に関する特定の目的は、検査個体の細胞によって提示されるペプチドを識別することにある。
【0010】
本発明は、細胞表面のペプチド、特に結合MHC分子中のペプチドの正確かつ包括的な分析を提供する。細胞表面のペプチドの特性または同一性の決定は特に質量分析法(MS)で行なわれた。
【0011】
かつて、特定の目的のためにMHC/ペプチド複合体が精製された。実際、MHCクラスIおよびクラスII分子に関して、これらを免疫学的に濃縮し精製する方法は、ペプチド−MHC結合相互作用の解明を可能にするのに役立ち、MHC結合モチーフの解明を可能にした。関連する例には、US5989565およびUS6077519などがある。これらには、患者の腫瘍細胞または樹状細胞集団の表面からペプチドを酸溶離させることによって、自己由来T細胞エピトープを識別する方法が提供されている。溶離されたペプチド配列は、ワクチンを産生するための合成ペプチドの設計に利用することができる。
【0012】
同様に、Salter他[US5487982]は、突然変異MHCクラスI分子に結合したペプチドを、イン・ビトロ(in vitro)で成長させた遺伝子操作した細胞から容易に除去することができる遺伝子操作した温度感受性MHCクラスI分子を提供している。
【0013】
この技術の他の例にはLanglade−Demoyen他[WO9744667]が含まれる。これは、腫瘍の免疫治療用の腫瘍特異的T細胞のin vitroおよびin vivoでの濃縮、および他の応用のために、精製されたMHC−ペプチド複合体を親和性試薬として利用する。同様にUS5763585、US5734023他は、治療用実体として例えば自己免疫性疾患の治療で使用するための特定のMHCペプチド複合体の精製方法を提供しており、Deshpande他[WO9740852]は、MHCクラスIIタンパク質への結合が強化された修飾ペプチドを開示している。全ての複合体が組換え融合タンパク質として提供される場合には、自己反応性T細胞に関連した疾患の治療に使用される。
【0014】
WO9734143およびUS5792604は、細胞の分泌経路によって内因的にプロセシングされたMHCクラスI拘束抗原を識別する方法を提供している。この生物学的アッセイは、初回刺激を受けた細胞障害性T細胞と、培地に分泌されたプロセシングされたペプチドの存在によって細胞溶解がその上に導かれる「インジケータ」標的細胞源と、を必要とする。この方式は、ドナー細胞の内因性プロセシング経路に影響を及ぼすことができる物質の識別に利用することができる。識別MHCクラスIおよびMHCクラスII拘束T細胞エピトープのための、生物学的に複合体に基づく他の方式には、WO00/67761が含まれる。これには、遺伝学的なワクチン接種ならびに樹状細胞および脾細胞の分離を利用して生物学的T細胞活性化検定をin vitroで実施する方法が提供されている。
【0015】
本発明の発明者は、MSベースの機器を完全な細胞または細胞抽出物の分析に適用し、そのデータを、治療用分子または診断のための検定の合理的な開発のための経路に組み込むことができることを認めた。
【0016】
生物起源の大きくかつ複雑な分子は質量分光法(MS)を使用した分析に適している。ただし分子はイオン化されていなければならない。MSのために生体分子をイオン化する2つの代替方法が、この技術分野では認められた技術となっている。これらは、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionisation:ESI)およびマトリックス支援レーザ脱着イオン化(matrix assisted laser de−sorption ionisation:MALDI)である。ESIでは、帯電させた細い毛細管を通して試料をポンピングし、静電的な反発によって最終的に検体イオンの脱着が生じるまで平行ガス流によって質量分析計の中へ噴霧する。ESIは連続流技法であり、そのため、液体クロマトグラフィー(LC)またはキャピラリー電気泳動法(CE)などの上流側試料分離技術に容易に接続される[Cao & Moini(1998)Am.Soc.Mass Specrom.9:1081−1088]。これらの特徴は、機器の試料プレート上に付着させた結晶性基質物質中に試料が埋め込まれるMALDI−MS技法とは対照的である。イオン化は基質のレーザ励起によって達成され、脱着した検体イオンは質量分析器に向かって加速される。したがってMALDIは非連続プロセスであり、複数のレーザパルスを使用してイオンが生み出され、データは質量分析器に累積的に集められる。
【0017】
MALDIでは質量分析は通常、イオン化レーザパルスから検出までの飛行時間を測定し質量電荷比(m/z)を計算することができる飛行時間(TOF)機器によって実施される。このような検出器は、さまざまな市販の機器で複数の技術的な改良を受けている。いくつかのモデルは、ペプチド配列の導出および他の構造決定のために源崩壊後のイオン断片の分析を可能にする。ESIベースの機器の連続流機器としての性質のため、走査分析器(例えば4倍または磁気セクタ質量分析器)が使用される。ただし、他の機器形式を利用することもできる。一般的なフォーマットは、2つの質量分析器が直列に配置され、不活性ガス分子を含む「衝突セル」を介してそれらが相互接続されるタンデムMSシステムである。後者の特徴は、衝突誘導崩壊イオンの発生および所与の入力試料からのペプチド配列の決定を可能にする。複数のハイブリッド機器フォーマットを配置し、細胞表面(MHC)と結合したペプチドの分析に利用することができる。
【0018】
Cox他[Cox,A.L.et al(1997),「MHC1:A Practical Approach」,Fernandez N., & Butcher G.編,Oxford University Press,Oxford,英の141−160ページ]によって概説されているように、MHC分子、具体的にはMHCクラスI分子から溶離されたペプチドの分析にMSが使用されている。この技術分野のより最近の概説がDe Jongによって提供されている[De Jong,A.(1998),Mass Spectrometry Reviews,17,311−335]。Ovysyannikova他[Ovysyannikova et al(2001),J.Immunol.Methods,246:1−12]は、細胞を麻疹ウイルスワクチンで処理した後にMHCクラスII対立遺伝子DRB1*0401から酸溶離した自己ペプチドの分析でMALDI−TOFを利用している。同様に、Sickman他[Sickman,A et al(2000),Analyst,125:569−573]は、LC技法とMALDI−MS技法の組合せを使用した、MHCクラスIIに結合したラットのランゲルハンス細胞由来のペプチドの識別を記載している。
【0019】
しかし本発明は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子に結合するペプチド化学種をMSベースの機器を使用して解明するための一般化された方式を初めて提供することによって、このような全ての従来技術を組み込み、拡張する。第1の実施形態において本発明は、対象、最も好ましくはヒト対象へ投与したときにMHC媒介性の免疫応答を誘起する能力が低い、またはそのような能力を欠いた治療用タンパク質を開発する目的で、ペプチド配列内のアミノ酸置換によって結合相互作用を排除する方法を提供する。本発明の目的は、対象に投与したときに免疫応答を引き起こす能力が低い治療用分子を開発する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の目的は、細胞の表面のペプチドを検出する方法、特にペプチドがMHC分子と結合している場合にペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、細胞の表面に存在するMHC分子と形式上結合したペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0022】
本発明の目的は、細胞の表面に存在する複数の異なるMHC分子と結合したペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0023】
本発明の目的は、MHC分子と結合した外因性タンパク質起源のペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0024】
本発明の目的は、MHC分子に関連した内因性タンパク質起源のペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0025】
本発明の目的は、対象とする細胞を外因性タンパク質または外因性マイクローガニズムと接触させて、対象とする細胞の表面ペプチドのレパートリーが、外因性タンパク質と接触させない同一の基準細胞に表示されるレパートリーとは異なったものになるようにするプロセスの後に、細胞の表面のペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0026】
外因性タンパク質は、ex vivoの細胞系統、組織などの、哺乳動物源から抽出した精製調製物、または前記タンパク質を発現するように操作された任意の生体源由来の精製組換え調製物とすることができる。外因性タンパク質は、天然のタンパク質、または1つまたは複数の天然タンパク質の融合を表わすことができる。外因性タンパク質はin vitroで誘導したタンパク質、天然の要素の集合または完全に合成されまたは設計されたタンパク質とすることができ、自然界に対応するものがない。
【0027】
外因性タンパク質は、抗体分子およびそれらの誘導体、サイトカイン、成長因子、ロイコトリン、止血因子などのタンパク質クラスを代表することができ、あるいは細胞毒素であることができ、あるいは酵素能力または酵素機能を有することができる。このタンパク質が治療用タンパク質であることが最も好ましい。
【0028】
いくつかの治療用タンパク質の効果は、治療用タンパク質に対する不必要な免疫反応の誘起によって制限されることが認識されている。この例には、モノクローナル抗体[Schroff,R.W.et al(1985)Cancer Res.45:879−885;Shawler,D.L.et al(1985)J.Immunol.135:1530−1535]、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子などのヒト起源のいくつかのタンパク質[Wadhwa,M.et al(1999)Clin.Cancer Res.5:1353−1361]、インターフェロンα2[Russo,D.et al(1996)Bri.J.Haem.94:300−305;Stein,R.et al(1988)New Engl.J.Med.318:1409−1413]などが含まれる。したがって、治療用タンパク質に対する免疫応答の誘起に関与する決定基を識別することができる方法が強く求められている。
【0029】
免疫応答を誘起する主たる要因は、MHCクラスII分子、いわゆるT細胞エピトープ上での提示によってT細胞の活性を刺激することができるペプチドがタンパク質中に存在することである。免疫原性を排除しまたは低減するためには、T細胞エピトープを識別しタンパク質から除去することが望ましい。本発明の目的は、T細胞エピトープの検出および識別を可能にする方法を提供することにある。
【0030】
外因性タンパク質は取り込まれプロセシングされて、DR、DQまたはDP型のMHCクラスII分子と結合して提示される。MHCクラスII分子は、マクロファージなどの抗原提示細胞(APC)、樹状細胞によって発現される。所与のMHCクラスII分子と結合してAPCの表面に提示されるペプチドの能力はいくつかの因子、特にその一次配列によって決まる。一次配列は、そのタンパク分解による切断に対する傾向と、MHCクラスII分子のペプチド結合裂内の結合に対するその親和性の両方に影響を与える。APC表面のMHCクラスII/ペプチド複合体は、ペプチドとMHCクラスII分子の両方の露出した残基によって提供される決定基を認識することができる特定のT細胞受容体(TCR)に対して結合面を提示する。当技術分野では、MHCクラスII分子と結合することができる合成ペプチドを識別する手順が存在している。このようなペプチドは、プロセシング経路または他の現象のため、全ての状況、特にin vivoで、T細胞エピトープとして機能しない。さらに当技術分野には、潜在的なT細胞エピトープを予測し、または経験に基づいて決定されたT細胞エピトープ中の配列モチーフを認識する計算方法が存在している。方式には、計算スレッディング方法が、可能なヒトMHCクラスII DRアロタイプのサブセットとだけ結合する潜在能力を有するペプチド配列を識別する、WO98/52976に提供されているようにMHCクラスIIに結合するペプチドを予測する技法が含まれる。
【0031】
WO98/52976およびWO00/34317で認識されているとおり、T細胞エピトープ排除の最初の段階はエピトープの識別である。これらの教示では、治療用タンパク質の一次配列内のアミノ酸を慎重に置換することによって、予測したT細胞エピトープを除去する。本発明の目的は、潜在的なT細胞エピトープの数を減らすことによって免疫特性が変更された修飾タンパク質を開発する方法を提供することにある。自然の細胞内プロセシング事象の後にMHCを含む細胞の表面に存在し、またはMHC製剤に結合した識別された配列は、任意のコンピテントなAPCまたは同種の細胞の範囲内で提示する。さらに、本発明の方式の下で識別されるペプチドは、MHCクラスIIに関してはDR、DQまたはDPのアロタイプを含む、任意のMHCアロタイプまたはアロタイプの混合物から検出することができる。
【0032】
本発明は、特にMHCクラスIおよびクラスII分子と結合して細胞の表面に表示されるペプチドの検出を可能にするが、完全な細胞に限定されるものではなく、エキソソーム(exosome)の表面のペプチドの分析を含む。ペプチド−MHC複合体は、MHCクラスII分子を通常発現している細胞に由来するエキソソームベシクル(exosomal vesicle)の表面に高い濃度で存在する。ある種の状況下では、APCの表面からのエキソソームの排出量を増大させることができ、エキソソームを濃縮または分離する、認められた手順も存在する[Raposo,G.et al(1996)J.Exp.Med.183:1161−1172;Clayton,A.et al(2001)J.Immunol.Methods 247:163−174]。したがって、APC製剤およびAPCに由来するエキソソーム粒子製剤の分析は本発明の範囲に同じように含まれる。
【0033】
まとめると、本発明は以下の事項に関係する。
【0034】
・特定の生物活性を有し、かつ同じ生物活性を有する非修飾タンパク質またはポリペプチドよりも低い免疫原性または高い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチド、あるいはワクチン抗原を開発する方法であって、
(i)前記タンパク質またはポリペプチドと細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる細胞またはそのエキソソームビヒクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)前記細胞またはそのエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドに関して、前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、薬剤タンパク質またはポリペプチド、あるいはワクチン抗原の配列に標準の方法に従って割り当てることによって実行される方法。
【0035】
・(iv)前記ペプチドを修飾して、前記ペプチドのMHC分子への結合が変更されるようにする段階と、
(v)修飾した1つまたは複数のペプチド配列を、タンパク質またはポリペプチド分子配列内に標準の方法に従って組み込むことによって、最終的な薬剤タンパク質またはポリペプチドの配列変異体を構築する段階と
をさらに含む、対応する方法。
【0036】
・段階(ii)の前記細胞またはそのエキソソームビヒクルの分析が、質量分光法(MS)、好ましくはMALDI−MSおよびESI−MSを使用して実行される、対応する方法。
【0037】
・薬剤タンパク質またはポリペプチドが、前記タンパク質またはポリペプチドと細胞を接触させた後に1つまたは複数の前記ペプチドがもはや結合しないように修飾される、対応する方法。
【0038】
・段階(i)に基づいて細胞またはエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドがMHC分子と結合し、段階(ii)に基づく前記細胞またはそのエキソソームベシクルの分析がMSを使用して実行される、対応する方法。
【0039】
・段階(i)に基づいて細胞またはエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドが、細胞内ペプチダーゼおよび転送経路の生成物である、対応する方法。
【0040】
・より低い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチドを開発するための対応する方法であって、免疫原性ペプチドの修飾が、ペプチドのMHC分子への結合を排除または低減させ、任意選択で、請求項1に指示された細胞表面への結合に関して修飾したペプチドをテストすることによって実行される方法。
【0041】
・MHC分子に対するペプチドの結合の排除または低減が、薬剤タンパク質またはポリペプチド中のペプチドの配列領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換し、挿入しまたは削除することによって実行される、対応する方法。
【0042】
・より高い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチドを開発するための方法であって、ペプチドの修飾が、ペプチドのMHC分子への結合を強化し、任意選択で、請求項1に指示された細胞表面への結合に関して修飾したペプチドをテストすることによって実行される方法。
【0043】
・MHC分子へのペプチドの結合の強化が、ペプチドの配列領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換し、挿入しまたは削除し、T細胞エピトープとして機能するペプチドの活性を増大させ、および/またはT細胞エピトープが拘束されるMHCタイプの範囲を広げ、および/またはいくつかの異なるエピトープを単一の実体に結合することによって実行される、対応する方法。
【0044】
・ワクチンの開発方法であって、
(i)免疫原活性を有するタンパク質またはポリペプチドあるいは微生物と細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる前記細胞またはそのエキソソームベシクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)ペプチドが結合した表面に関して前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、タンパク質またはポリペプチドの配列に標準の方法に従って割り当て、
(iv)1つまたは複数のペプチドを、ワクチン分子配列内に標準の方法に従って組み込むことによって、最終的な薬剤ワクチンの配列変異体を構築することによって実行され、
前記細胞またはその中のエキソソームベシクルの分析がMSを使用して実行される
方法。
【0045】
・MHC分子を産生するように操作されたヒト細胞系統を使用する、対応する方法
・親(非操作)細胞系統がMHC分子を産生しない、対応する方法
・親細胞系統がMHCクラスI分子を産生しない、対応する方法
・親細胞系統がMHCクラスII分子を産生しない、対応する方法。
【0046】
・それ自体のMHC分子を産生しない非ヒト細胞がMHC分子を産生するように操作され、指示されるように使用される、対応する方法
・MHC分子がMHCクラスIIに由来する、対応する方法
・MHC分子がHLA−DR、HLA−DQおよびHLA−DPである、対応する方法。
【0047】
・MHC分子がMHCクラスIに由来する、対応する方法
・さまざまなMHCアロタイプおよび遺伝子型の包括的な混合物を提供する細胞系統または細胞試料の組合せが使用される、対応する方法
・ペプチドが外因性タンパク質または微生物を起源とする、対応する方法
・ペプチドが内因性タンパク質を起源とする、対応する方法。
【0048】
・タンパク質、ポリペプチドまたは微生物を加えた後にMHC分子上にペプチドを提示するヒト樹状細胞またはそのエキソソームベシクルが使用される、対応する方法
・タンパク質またはポリペプチドを加えた後にMHC分子上にペプチドを提示するヒト抗原提示細胞またはそのエキソソームベシクルが使用される、対応する方法。
【0049】
・ペプチド分析の前にMHC分子が濃縮される、対応する方法
・分析の前にペプチドが細胞表面から溶離される、対応する方法
・分析の前にペプチドがMHC分子から溶離される、対応する方法
・MALDI−MSが使用される、対応する方法
・ESI−MSが使用される、対応する方法。
【0050】
・診断のための検査を開発する方法であって、
(i)表面ペプチドに対して適当なヒト細胞を分析し、
(ii)(a)細胞表面に現れたあるペプチドの特性を作成し、任意選択で、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するために他の特性と比較し、または(b)細胞表面上に特異的なペプチドの配列を、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するのに使用することができる特異的なペプチドを決定する手段として決定する
ことによって実行される方法。
【0051】
・以上に記載のいずれかの方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドを薬剤治療実体として使用すること
・以上に記載のいずれかの方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドをワクチンとして使用すること
・以上に記載のいずれかの方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドを、より低い免疫原性を有する薬剤治療実体として使用すること。
【0052】
タンパク質またはポリペプチドに由来する、細胞またはそのエキソソームベシクルの表面のペプチドを検出する方法であって、
(i)前記タンパク質またはポリペプチド、あるいはこのタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子と細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる細胞またはそのエキソソームベシクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)ペプチドが結合した表面に関して前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、タンパク質またはポリペプチドの配列に標準の方法に従って割り当てることによって実行され、
細胞またはエキソソームベシクルの分析がMS、好ましくはMALDI−MSによって実行される
方法。
【0053】
したがって、本発明の第1の主要な実施形態に基づく方式によるプロセスは、本明細書に記載の方法を適用して以下のことを実行する。
【0054】
1.標的タンパク質のアミノ酸配列内のプロセシングされた1つまたは複数のT細胞エピトープを識別する
2.識別された潜在的なT細胞エピトープ内の1つまたは複数のアミノ酸が、MHC分子または完全な細胞へのペプチドの結合、あるいは他の手段によって決定されるT細胞エピトープの活性が実質的に低減され、または排除されるように修飾された、標的タンパク質の新規の配列変異体を設計する。重要なのはこのような配列変異体が、配列変異による新規の潜在的なT細胞エピトープの生成が回避されるような方法で生み出されることである。ただし、このような新規の潜在的なT細胞エピトープが、T細胞エピトープの活性を実質的に低減しまたは排除するような方法で修飾される場合にはその限りではない
3.このような配列変異体を構築し、望ましい特性を有する1つまたは複数の変異体を識別するために前記変異体をテストする。
【0055】
この方式によれば、いくつかの変異体タンパク質が、好ましくは組換えDNA技術によって産生されテストされる。ただし、化学合成を含む他の手順を企図することもできる。所与の潜在的なT細胞エピトープ内の単一のアミノ酸置換を実行してエピトープを排除することが予想される。単一のエピトープ内の置換の組合せを企図することもできる。
【0056】
本発明の主要な一態様では、哺乳動物の細胞の集団をテストタンパク質とともに培養し、またはテストタンパク質をコードする遺伝子を用いてトランスフェクションし、タンパク質の取込みまたは発現およびその分解に続いて、細胞表面のペプチドの特性または同一性を決定する。具体的にはMHC分子、特に複数のMHC分子がこのようなペプチドを提示する。この実施形態の1つの態様として、多くの異なるMHC分子上に提示されるペプチドを分析することが重要であり、したがって分析は、世界の集団で遭遇するMHCアロタイプおよび遺伝子型の非常に高い割合を包含する複数の細胞集団に関して取り組むことが好ましい。このような細胞集団は、世界の集団から複数の細胞集団をサンプリングすることによって、または複数のMHC型を産生するように操作された細胞を使用することによって得ることができる。内因性MHC分子が産生されず、細胞表面に低い背景のペプチドしか表示しない細胞系統は特に役立つ。
【0057】
ヒトMHCアロタイプおよび遺伝子型の数は多く、それぞれが所与のタンパク質の異なる特性のペプチドに結合する能力を有するため、T細胞エピトープを包括的に識別する先に説明した以前の方法は、生化学的な方法(ペプチドが多数のMHCタイプに結合するかをテストする)でも、または生物学的な方法(主としてペプチドがT細胞を活性化または刺激するかをテストする)でもなく、主に予測的な方法を含む。MHCクラスIIに結合するペプチドに対してはこのような予測的方法が、後に続く他のペプチドの予測的分析のために多数のT細胞エピトープ配列を分析してこれらのエピトープに共通するアミノ酸の特定の組合せを決定する、モチーフおよび人工ニューラルネットワーク技法を含む。しかし、MHCクラスIIに関してはこのような予測的な方法が制限され、しばしばある割合のT細胞エピトープが見落とされ(偽陰性)、または実際にはこのような活性を欠くにもかかわらずあるペプチドをT細胞エピトープと判定する(偽陽性)。予測的な方法、ならびに合成ペプチドを用いる生化学的および生物学的方法の他の主な限界は、ペプチドがMHC分子によって存在することにより影響しうる所与のタンパク質のプロセシングを考慮できないことである。したがって、偽陰性または偽陽性をそれほど生じさせずにT細胞エピトープを正確かつ包括的に識別する改良式の方法が求められており、本発明はこのような改良を提供する。
【0058】
本発明の第1の実施形態に基づくヒト薬剤タンパク質の開発に関する特定の応用は、それによってヘルパーT細胞を活性化させおよび/または刺激するエピトープが除去されるタンパク質を生成することである。この場合、第一の関心事は、MHCクラスIIによって提示されるペプチドである。高い割合のヒトに対して有効な薬剤タンパク質を開発するためには、多数のMHCアロタイプのうちの1つまたは複数のアロタイプによって提示されるタンパク質内のペプチドを識別し、次いでこれらのペプチドを改変してMHC結合に対する能力を除去することが必要である。以前には、MHCクラスIIによって提示されるペプチドの包括的な識別は、このようなペプチドを正確に予測することが難しく、多数の異なるアロタイプおよび遺伝子型のヒトMHCクラスII分子のうちの1つまたは複数の分子に結合するペプチドを予測することが難しいために制限された。予測の信頼度がより高いMHCクラスIに結合するペプチドに比べて、MHCクラスIIに結合するペプチドは長さが多様であり、ペプチド結合に対してより大きな影響を有する主要な結合ポケットの外側にアミノ酸を有する。したがって、MHCクラスIIに対しては、潜在的なT細胞エピトープを包括的に識別するために、多数のMHCクラスIIアロタイプおよび遺伝子型のうちの1つまたは複数に結合するペプチドを予測しまたは検出するのに現在使用可能な方法よりも正確かつ包括的な方法が求められている。このような方法を使用できる主な利益は、全ての主要なT細胞エピトープ(または全てのT細胞エピトープ)が識別され除去された薬剤が生成されることにある。
【0059】
本発明を使用して薬剤を開発する好ましい1つの方法は以下の段階を含む:
1.薬剤として潜在的に使用するためのテストタンパク質に関し、選択したヒト細胞系統またはヒト細胞試料にこのタンパク質を加える段階
2.適当な期間の後、表面ペプチドについて細胞を分析する段階。具体的には、細胞に直接にMALDI−MSを使用し、または細胞画分、特にMHC画分にMALDI−MSを使用し、あるいは特にMALDI−MSまたはESI−MSによる分析の前に細胞表面からペプチドを溶離して分析する
3.所与のタンパク質から、細胞表面に現れたペプチドをテストタンパク質に割り当てる段階
4.(2)で細胞表面に現れたペプチドを修飾してMHC分子への結合を排除する段階。いくつかのケースでは、修飾されたペプチドを細胞表面への結合に関してテストする(上記)
5.タンパク質配列中の1つまたは複数のペプチドに適当な修飾を組み込んでMHC分子への結合を排除することによって、最終的な薬剤タンパク質分子を生成する段階。
【0060】
本発明の第2の主要な実施形態によれば、ワクチン分子またはワクチンとして機能することができる分子を開発することができる方式が提供される。ヒトに使用されるワクチンが最も好ましいが、この方式は、ヒト以外の種の病気の治療または予防のためのワクチン分子の開発にも同じように適用することができる。本発明を使用したワクチンの開発に関する特定の応用は、それによってT細胞を活性化させ、および/または刺激する主要なエピトープ、主にヘルパーT細胞に対するエピトープが存在し、さらに細胞殺滅を必要とする応用に対しては細胞障害性T細胞に対するエピトープ(主にMHCクラスI拘束)が存在するペプチドまたはタンパク質を生成することである。高い割合のヒトに対して有効なワクチンを開発するためには、多数のMHCアロタイプおよび遺伝子型のうちの1つまたは複数によって提示されるタンパク質内のペプチドを識別し、次いでこれらのペプチドの中から、最終的なワクチン分子に含める1つまたは複数のエピトープを選択することが必要である。このようなエピトープは、MHCクラスIまたはMHCクラスII、あるいはその両方によって拘束されたペプチドを含むことができる。本発明は、MHCクラスIおよびクラスIIによって提示されるペプチドのこのような識別を提供し、したがって本発明は、より有効なワクチンを開発する基礎となる。
【0061】
MHCクラスIエピトープとMHCクラスIIエピトープの主な違いは、MHC−ペプチド複合体中のペプチドが通常それから誘導されるタンパク質の主な起源にある。外因性タンパク質は主に、MHCクラスIIと結合したペプチドを生じ、細胞内から発現される内因性タンパク質は、異なるペプチダーゼおよび細胞内転送経路に従ってプロセシングされて、細胞表面のMHCクラスI分子と主に結合する。外因性タンパク質でも、または内因性タンパク質でも、一連のプロセシング段階の間に、通常ならMHCに結合するタンパク質由来のあるペプチド配列が破壊される可能性があり、そのため、あるT細胞エピトープはイン・ビボ(in vivo)で産生されない。このようなペプチドに関して予測的(または生化学的/生物学的)方法は、T細胞エピトープの識別におけるプロセシングを考慮することができない。本発明の特徴は、細胞表面から識別されるペプチドが、細胞内処理および転送経路を介して通過することができるとしてAPC(または他の細胞)によって選択されたペプチドであることである。本発明はプロセシング事象の真の産物の識別に集中するので、本発明では、エピトープ識別の予測的またはイン・ビトロ(in vitro)方法を使用して識別される偽陽性および偽陰性エピトープの割合が低減する。
【0062】
したがって、本発明の第2の主要な実施形態に基づく方式によるプロセスは、本明細書に記載の方法を適用して以下のことを実行する。
【0063】
1.標的タンパク質のアミノ酸配列内の1つまたは複数のT細胞エピトープを識別する
2.1つまたは複数のアミノ酸が修飾された標的タンパク質の新規の配列変異体を、以下のいずれかの方法で設計する
i)T細胞エピトープの活性を増大させ、および/または
ii)MHC分子または完全な細胞へのペプチドの結合あるいは他の手段によって決定されるようにT細胞エピトープが拘束されるMHCタイプの範囲を広げ、および/または
iii)いくつかの異なるエピトープを単一の(より小さな)実体に結合する
3.このような配列変異体を構築し、望ましい特性を有する1つまたは複数の変異体を識別するために前記変異体をテストする。
【0064】
この方式によれば、いくつかの変異体タンパク質が、好ましく組換えDNA技術によって産生されテストされる。ただし、化学合成を含む他の手順を企図することもできる。
【0065】
したがって、本発明を使用してワクチンを開発する好ましい1つの方法は以下の段階を含む
1.ワクチンとして潜在的に使用するためのタンパク質に関し、選択したヒト細胞系統またはヒト細胞試料にこのタンパク質を加える段階
2.適当な期間の後、表面ペプチドに関して細胞を分析する段階。具体的には、細胞に直接にMALDI−MSを使用し、または細胞画分、特にMHC画分にMALDI−MSを使用し、あるいは特にMALDI−MSまたはESI−MSによる分析の前に細胞表面からペプチドを溶離して分析する
3.所与のタンパク質から、細胞表面に現れるペプチドをテストタンパク質に割り当てる段階
4.(2)で細胞表面に現れた1つまたは複数のペプチドを、最終的なワクチン分子で使用するために選択する段階。
【0066】
薬剤またはワクチンとして使用する細胞表面ペプチドの分析に関しては、異なるMHCアロタイプおよび遺伝子型の包括的な混合物を提供する細胞系統またはヒト細胞試料の組合せを使用することができること、およびこのような天然の細胞試料が、MHCクラスIおよび/またはクラスII拘束エピトープの包括的な混合物を提供することを理解されたい。テストタンパク質の添加後に活性化してMHC分子上に効率的にペプチドを提示することができるヒト樹状細胞(またはエキソソーム)は特に役立つ。あるいは、主にもう1つのMHCタイプをこれらの細胞にコードする遺伝子のトランスフェクションによって、それらのMHCレパートリーを拡張するようにヒト細胞系統を操作することができ、したがって細胞表面ペプチドの分析に関して複数のMHCタイプを有する細胞が産生される。マウスMHC遺伝子が削除されまたはその他の方法で無能にされたマウス細胞など、それ自体のMHC分子を産生しない非ヒト細胞が特に役立つ。細胞表面ペプチドの分析はさらに、ペプチド分析の前にMHC分子を例えば免疫アフィニティカラムを使用して濃縮する任意選択の段階を含む。MHCクラスIIに関しては、細胞表面ペプチドの分析のための本発明の方法は、DR以外のアロタイプへの結合の分析を提供するという特定の利点を有する。(DRのβ鎖とは対照的に)MHC分子の両方の鎖が結合に寄与すると考えられるDQに対して使用可能な予測的な方法がないため、DQ、DPなどのアロタイプによるペプチド提示の分析は非常に困難であった。
【0067】
本発明の主要な第3の態様によれば、診断のための検査の開発に本発明を適用する方式が提供される。この実施形態の特定の応用は、特定の病気または細胞の傷害を指示するペプチドの異常な存在、不在またはパターンを識別するために、細胞表面に提示されたペプチドの特性を生成することである。
【0068】
したがって本発明の目的は、対象とする細胞を外因性タンパク質または生物、あるいは他の作用因子と接触させて、対象とする細胞の表面ペプチドのレパートリーが、外因性タンパク質または生物と接触させない同一の細胞に表示されるレパートリーとは異なったものになるようにするプロセスの後に、細胞の表面のペプチドを検出する方法を提供することにある。本発明の実施では、「診断ペプチド」または「インジケータペプチド」の存在を、MS機器の質量スペクトル中のインジケータペプチド質量のレジストレーションによって、またはCID(または同種の)スペクトル中のインジケータペプチド配列の記録によって分離することができる。同様に、インジケータペプチドの存在を、外因性タンパク質または作用因子と接触させない基準試料に由来する質量スペクトルに関して指示することができる。このような比較分析は、インジケータペプチドの質量が知られておらず、またはどのようにしても予測できない場合に特に価値がある。比較分析は、同一の質量ピークの減算によってin silicoで実施することができ、特定の質量ピークの損失が診断インジケータである場合に特定の価値がある。生体試料の比較分析でMS技法が利用されている。しかし、Liotta他[WO0049410]の場合には、このような比較分析を、レーザ捕獲マイクロ切開によって得られた個々の細胞のタンパク含量に焦点を置く。これは、診断(比較、減法など)が、表面から検出されたペプチド、特に細胞表面のMHC分子と結合したペプチドに基づく本発明とは異なる。
【0069】
MS技術を使用する他の診断技法には、Little他[US6207370]の技法が含まれる。Little他は、獲得した状態ではない個体の体質的特徴である遺伝子病の識別を対象とするMSベースの診断手順を開示している。この手順では、個体の遺伝的素質に依存する集団内で可変である標的タンパク質の質量を識別することができる。他の診断方式が、Geng他によって開示されている[Geng,M.(2000)J.Chromatography A.870:295−313]。Geng他は、血清タンパク試料のトリプシン分解物から得られたMALDI−TOFスペクトルを分析した。そのプロセスは、複雑な混合物中に存在する検体タンパク質の存在の徴候を示す「シグネチャペプチド(signature peptide)」を検出する。これも、診断(比較、減法など)が、表面から検出されたペプチド、特に細胞表面のMHC分子と結合したペプチドに基づく本発明とは異なる。
【0070】
したがって、本発明の方式によれば、診断のための検査を開発する好ましい1つの方法は以下の段階を含む
1.表面ペプチドに関して適当なヒト細胞を分析する段階。具体的には、細胞に直接にMALDI−MSを使用し、または細胞画分、特にMHC画分にMALDI−MSを使用し、あるいは特にMALDI−MSまたはESI−MSによる分析の前に細胞表面からペプチドを溶離して分析する
2.細胞表面に現れたあるペプチドの特性を産生し、必要ならば、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するために他の特性と比較し、または細胞表面上に特異的なペプチドの配列を、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するのに使用することができる特異的なペプチドを決定する手段として決定する段階。
【0071】
本発明の全ての実施形態に関して、さまざまなタンパク質配列データベースへの容易なアクセスおよび増大するその内容のため、ペプチドの同一性を決定するために完全な配列を得ることはそれほど重要ではない。親イオンの既知の質量に対して少量の内部配列情報(2〜3残基とすることができる)だけで、ペプチド化学種を特徴づけるのに十分であることもある。連続するフラグメントのイオンデータセットのデータベースを検索するアルゴリズムが使用可能であることを認識されたい。これらの例には、ProteinLynx Global Serverサーチアルゴリズム(Micromass社,Wythenshawe,英)、Matrix Science社のMascot[www.matrix.com]、Protein Prospectorのプログラムセット[http://prospector.ucsf.edu]などが含まれる。このようなプログラムは、対象とするペプチドの質量を有するデータベースの配列エントリの断片化をシミュレートする。
【0072】
以下の非限定的な例によって本発明をさらに説明する。
【0073】
実施例1
細胞表面HLA DRに結合したペプチドをMALDI−tofを使用して検出する方法
EBVで形質転換したヒトB細胞系統JESTHOMおよびBSMを、ECACC社(Porton Down,英)から入手した。B細胞系統JESTHOMはHLA−DR1*0101に対して同型接合性、系統BSMはDRB1*0401に対して同型接合性である。細胞系統は、供給業者が推奨する条件を使用してin vitroで培養した。供給業者が推奨する条件を使用して培養したマウスNSO細胞(ECACC#85110503)を陰性の対照細胞系統として使用した。
【0074】
合成ペプチドは、Zeneca社から入手した(Zeneca LSM,Northwich,英)。ペプチドHA1は、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパクの残基307〜319に対応する13量体である(Rothbard,J.B.et al(1988)Cell 52:515)。ペプチドMP1は、インフルエンザウイルス基質タンパク質の残基17〜29に対応する13量体である[Rothbard,J.B.et al(1988)ibid]。これらのペプチドはともに、特異的にいくつかの異なるHLA−DRと結合することが知られているが、DR4アロタイプとの差動結合が見られる。MP1はDR4に結合するが、MP1は、DR4にあまり結合しない[Busch R.et al(1990)Int.Immunol.2:443]。
【0075】
いくつかの実験に関しては、不安定なビオチンリンカー部分を含む類似体ペプチドを使用した。これらに関しては、リンカービオチン−HPDP(Pierce社,Chester,英)をN末端システイン残基に結合させて、ペプチドHA1BおよびMP1Bを得た。追加のシステイン残基を除いてこの配列はHA1およびMP1と同一である。結合は、ビオチン−HPDP(Pierce社,Chester,英)とともに提供されたプロトコルを使用して行なった。ただし、結合させたペプチドの精製は、HPLCおよび標準溶離プロフィールを使用して実施した。精製されたモノクローナル抗体LB3.1[ATCCナンバーHB−298]を使用して阻害実験を実施した。抗体は、プロテインAセファロース(Millipore社,Conset,英)アフィニティークロマトグラフィーおよび供給業者が推奨する手順を使用してハイブリドーマLB3.1調整培地から精製した。ハイブリドーマは標準条件を使用して維持した。LB3.1は、ペプチドおよび細胞とともに最高濃度10μg/mlで培養した。
【0076】
細胞は、テストおよび対照実験で異なる合成ペプチドで処理する前にパラホルムアルデヒドで固定した。実験は、最終濃度50μMのペプチドを含むペプチド結合緩衝液(pH4.0のリン酸クエン酸塩緩衝液50mM;0.1%NP4O)150μlに加えた完全培地50μl中の3×106個の細胞を使用して実施した。培養は37℃で24時間実施した。検定に関しては、ペプチド処理した細胞を遠心分離によって回収し、それらをPBSで3回洗浄した。細胞は、50%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸10μlの入った0.5ml微量遠心管に入れた。続いてそれぞれの試料を5秒間激しく混合し、その後、MALDI機器の試料プレートに試料をスポッティングした。2層試料スポッティング法を使用した。この方法では、酸基質溶液[アセトニトリル、メタノールおよび水の1:1:1混合物に溶解した0.1Mシナピン酸]1μlをMS試料プレート上で乾燥させる。続いて細胞1μlおよびシナピン酸基質溶液1μlをスポットした。
【0077】
不安定なリンカー質量−タグを含む合成ペプチドを使用する実験では、100mM β−メルカプトエタノール(BME)を含むPBS中での細胞の培養によってリンカーの除去を達成した。BMEを用いた培養は37℃で30分間実施し、細胞はPBSを使用して3回洗浄してから、先と同じようにMALDI試料プレートへ適用した。
【0078】
Voyager DE質量分析計(Perseptive Biosystems社,Foster City,米カリフォルニア州)は陽イオンモードで使用した。この機器は、ウマ心臓アポミグロビンとウシ血清アルブミンの混合物(Sigma社,Poole,英)で較正し、それぞれの分析前30分以内に、質量の正確さがそれぞれの標準に対して0.1%以内であることをチェックした。試料スポットは空気乾燥し、陽イオンモードで分析した。遅延抽出は25kV、150ナノ秒にセットした。低質量ゲートは600Daにセットした。それぞれの試料から合計125レーザショット分を累積した。
【0079】
JESTHOM細胞から生み出されたスペクトル中に、ペプチドHA1およびMP1の予測された質量ピークが識別された。対照的に、HLA DR4を発現するBSM細胞からはペプチドHA1だけしか識別できなかった。標識化したペプチドを使用した実験では、BME処理した細胞のスペクトル中にペプチドピークの質量シフトが識別された。LB1.1培養細胞(阻害実験)からのスペクトルは、抗体処理によってペプチド結合をなくすことがことができなかったことを示した。ただし、ペプチド、標識化したペプチドおよびLB1.1抗体を使用した三者間の競合検定では、低減された相対的なイオン存在度のいくつかの証拠を見つけることができた。ペプチドまたはペプチドの組合せで処理したマウスNSO細胞からのスペクトルは、標的イオンピークの非常に低い存在度を示し、細胞処理中の非特異的相互作用および/または不十分な洗浄を示唆している。
【0080】
実施例2
MHC DRに結合したペプチドをMALDI−tofを使用して分析する方法
免疫アフィニティークロマトグラフィーによって、JESTHOM細胞膜からHLA−DR1*0101を精製した。BSM細胞からHLA DRB1*0401を精製した。可溶化された細胞膜は先に記載したとおりに準備し処理した[Gorga et al(1987)J.Biol.Chem.262:16087−16094、Sette et al(1989)J.Immunol.42:35−40]。抗DRモノクローナル抗体LB3.1[ATCCナンバーHB−298]を免疫アフィニティ試薬として使用した。抗体は、プロテインAセファロース(Millipore社,Conset,英)アフィニティークロマトグラフィーおよび供給業者が推奨する手順を使用してハイブリドーマLB3.1調整培地から精製した。ハイブリドーマは標準条件を使用して維持した。LB3.1抗体は、InVitrogen社(InVitrogen,Groningen,オランダ)によって提供されたLinxシステムおよび供給業者が推奨する条件を使用して、セファロース4B(Pharmacia Biotech社,St.Albans,英)に結合させた。
【0081】
実施例1で説明した合成ペプチドHA1およびMP1を、HLA−DR1*0101製剤50μlとともに培養した。ペプチドは、最終濃度50μMのペプチド結合緩衝液(pH4.0のリン酸クエン酸塩緩衝液50mM;0.1%NP4O)中で37℃で26時間培養した。結合していないペプチドは、microcon遠心ろ過セル(Millipore,米)を使用した限外ろ過およびPBSを用いた複数回の洗浄サイクル(最低4回)によって除去した。最終的な体積は20μ1まで低減した。いくつかの実験では、MALDI−tof分析の前にペプチドをMHCから溶離させた。この場合、溶離は、0.1%TFA水溶液を用いた抽出によって実施した。溶離液は蒸発乾固させ、実施例1で示したMALDI基質溶液を使用して直接に再懸濁させた。他の実験では、基質溶液に再懸濁させたMHC−ペプチド複合体を機器試料プレートに適用した。
【0082】
HLA−DR1*0101製剤から生み出されたスペクトル中に、ペプチドHA1およびMP1の予測された質量ピークが識別された。対照的に、DRB1*0401製剤のスペクトルではHA1の質量ピークだけが識別できた。
【0083】
実施例3
完全タンパク質を用いて細胞を処理した後に細胞表面ペプチドを分析するための方法
健康な供血者から得た末梢血試料40mlからヒト樹状細胞を濃縮した。血液は、ヘパリン、histopaque1077(Sigma社,Poole,英)密度勾配培地を使用して調製した単核細胞画分および供給業者が推奨する条件を使用して凝固しないようにした。樹状細胞は、イムノマグネティック分離手順を使用したネガティブセレクションによって得た。試薬および条件は全てMitenyi Biotec社(Bisely,英)によって提供されたものを使用した。樹状細胞は、タンパク質抗原で処理するため多穴式組織培養皿中に溶離させた。細胞は実験の進行中、10%(v/v)ウシ胎児血清および標準抗生物質を補ったRPMI培地中に維持した。全ての試薬は全てLife Technologies社(Paisley,英)のものを使用した。
【0084】
これらの研究では組換えスタフィロキナーゼ製剤を使用した。Genosys Biotechnologies社(Cambridge,英)による契約の下で野生型スタフィロキナーゼ遺伝子を合成した。この遺伝子は、オーバーラップ合成プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応、およびCollen他によって与えられた配列[Collen D.(1996)Circulation 94:197−206]によって構築した。合成遺伝子は、453bp EcoRI−HinDIII制限断片として、細菌性発現ベクターpMEX(MoBiTec社,Gottingen,独)にクローン化した。pMEX/スタフィロキナーゼ遺伝子は、標準技法によって適当な大腸菌株TG1を形質転換させ、活性スタフィロキナーゼを分泌している単一の形質転換クローンを、フィブリンプレート検定を使用して選択した[Astrup,T.et al(1952)Arch.Biochem.Biophys.40:346−351、Collen,D.et al(1992)Fibrinolysis 6:203−213]。最もよく発現したクローンを成長させ、シーケンシャルカラムクロマトグラフィーおよび先に記載した方法[Collen,D.et al(1992)ibid、Schlott,B.et al(1994)Biotechnology 12:185−189]を使用して培養液上清から組換えタンパク質を精製した。
【0085】
樹状細胞は、濃度100μg/mlの精製スタフィロキナーゼとともに一晩培養した。いくつかの実験では、培地に添加された阻害剤混液を使用して抗原プロセシングをブロックした。阻害剤は、テストタンパク質を加える1時間前に以下の濃度で加えた:塩化アンモニウム50mM;アジ化ナトリウム1mg/ml;クロロキンおよびコルヒチン500μM。化合物は全てSigma社(Sigma,Poole,英)のものを使用した。
【0086】
タンパク質処理の後、培養皿から細胞を取り出し、3サイクルの遠心分離/PBS処理を使用して洗浄して、全ての培地および外来性のタンパク質を除去した。細胞は、MALDI−tof分析のために実施例1に示したように処理した。スペクトルを集め、テストタンパク質に由来する存在ペプチドに関して分析した。これらは、スタフィロキナーゼで処理していない対照細胞から得られたスペクトルと比較することによって識別した。
【0087】
スタフィロキナーゼによるものと考えられるイオンピークは、スタフィロキナーゼで処理した細胞から得られたスペクトル中で識別されたが、代謝阻害剤で処理した細胞のスペクトルおよびまたはスタフィロキナーゼで処理しなかった対照細胞では見られなかった。
【0088】
実施例4
完全タンパク質を用いた細胞処理から得られたペプチド配列を決定する方法
対象とするタンパク質を用いて実施例3の方法に従って細胞を処理した。ペプチドは、5%アセトニトリル、0.1%蟻酸溶液を用いた多回抽出サイクル(4〜6回)によって細胞から溶離させた。テストタンパク質に由来する配列の存在はESI−MS/MSを使用して決定した。
【0089】
溶離させた試料は乾燥し、0.1%蟻酸溶液中に再懸濁させた。未処理の溶離液全体を、質量分析計のZスプレー源に直接に接続されたモジュラーCapLCシステム(Micromass社,Wythenshawe,英)によって分離した。試料は、流量30μL/分でC18プレカラムにロードし、0.1%蟻酸溶液を使用して3分間脱塩した。流量を1μL/分まで低減させ、C18 180mm pepmapカラム上にリダイレクトした。カラムは、95%H2O、5%アセトニトリル、0.1%蟻酸の溶媒溶液から5%H2O、95%アセトニトリル、0.1%蟻酸の溶媒溶液までの標準溶離勾配を使用して溶離させた。
【0090】
Zスプレーナノフローエレクトロスプレーイオン源が取り付けられたMicromass Q−Tof2機器(Micromass社,Wythenshawe,英)上でエレクトロスプレーMSおよびMS/MSデータを得た。装置は陽イオンモードで動作させ、源温度は80℃、カウンターガス流量は40L/時間とし、ナノスプレー連続LCプローブには2800Vの電位を印加した。データは全て、機器を自動データ依存スイッチングモードで動作させて得た。
【0091】
機器は、グルフィブリノペプチドb(glufibrinopeptide b)の衝突誘導分解に起因する2点較正被選択断片イオンを用いて較正した。データは全てProteinLynxソフトウェアによって自動的に処理し、タンパク質識別は、ProteinLynx Global Serverサーチアルゴリズム(Micromass社,Wythenshawe,英)を用いた分析によって行なった。
【0092】
ホウケイ酸塩針を通して生の試料を機器に注入することによって手動データ収集を実行した。試料を濃度約1μMに調整した。試料は注入前に、使い捨てC18 ZipTipミニカラム(Millipore社,米)を使用して脱塩した。
【0093】
スペクトルを収集し、テストタンパク質に由来する存在ペプチド質量に関して分析した。これらは、抗原処理がブロックされた細胞を含む対照細胞から得られたスペクトルと比較することによって識別した。スタフィロキナーゼを用いた処理後に、スタフィロキナーゼによるものと考えられるペプチド質量が識別された。スタフィロキナーゼで処理しなかった細胞でも、または代謝阻害剤で処理した細胞でも等しいイオンピークは明らかでなかった。
本発明は、哺乳動物の細胞にタンパク質を加えた後に細胞の表面に提示されるペプチドを決定する方法に関する。本発明はさらに、このようなペプチドの決定に基づく診断のための検査、またはこのようなペプチドの決定によって生み出された、例えば薬剤実体などの、好ましくは特定の生物活性を有し、修飾されていない対応する分子に比べてより低い免疫原性またはより高い免疫原性を有する、修飾された分子に関する。本発明に基づく方法は、質量分光法(MS)を使用したツールを用いて確立されることが好ましい。
【0002】
哺乳動物の細胞によるタンパク質の取込み(または細胞内での特定のタンパク質の産生)の後、これらのタンパク質は分解され、一般に、このようなタンパク質のペプチド断片が、しばしば他のタンパク質と結合して細胞の表面に現れる。具体的には、タンパク質のペプチド断片は分解され、ある種のペプチドは続いて、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と結合する。多くの場合、これはT細胞によって認識されて免疫応答が開始される。例えば、そこからペプチド断片が誘導される特定のタンパク質を産生する細胞に免疫系が対抗する場合、このような免疫応答は有益であり、例えば、特定のタンパク質に結合しその活性を制限する抗体を産生する場合、免疫系は有害である(例えば薬剤タンパク質の場合など)。
【0003】
現在までのところ所与のタンパク質について、その分解がタンパク質のどの位置で起こるかを正確に予測することは不可能であり、そのため、細胞表面に現れる正確なペプチドを確実に予測することはできない。MHC分子の場合、MHCに結合するペプチドのモチーフの予測においてはある程度成功したものもあったが、実際には、MHC分子に到達する前にこれらのペプチドの一部は分解し、どのペプチドが分解されるかの予測の信頼度は高くない。したがって、細胞表面上のペプチドを検出する標準の方法は、このようなペプチドを溶離させ、その後にその配列を決定する方法である。このような方法はルーチンの方法とは言えず、さらに、複数の細胞タイプまたは複数のMHC分子上の細胞表面ペプチドの分析が必要な場合には非実用的である。
【0004】
本発明の目的は、特に複数のMHC分子によって提示された細胞の表面のペプチドを検出する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、このような情報を、薬剤分子の設計、ワクチン分子の設計または診断のための検査に使用することにある。
【0005】
薬剤分子に関する本発明の特定の目的は、細胞によるタンパク質の取込みまたは産生の後にMHC分子によって提示されるペプチドを識別し、この情報を使用して、このようなペプチドがもはや提示されないようにタンパク質を改変することにある。
【0006】
ワクチン分子に関する本発明の特定の目的は、細胞によるタンパク質の取込みまたは産生の後にMHC分子によって提示されるペプチドを識別し、1つまたは複数のこのようなペプチドをワクチン分子中で使用して免疫系を刺激することにある。
【0007】
薬剤分子とワクチン分子の両方に関する本発明の特定の目的は、さまざまな集団全体を通じて異なるアロタイプおよび遺伝子型バリアントを包含する多くの異なるMHC分子によって提示されるペプチドを識別することにある。
【0008】
診断のための検査に関する本発明の特定の目的は、細胞によるタンパク質の取込みまたは産生の後にMHC分子によって提示されるペプチドを決定し、このような決定を、生物学的または生理学的な事象、例えば感染、を検出するための検査の基礎として使用することにある。
【0009】
診断のための検査に関する特定の目的は、検査個体の細胞によって提示されるペプチドを識別することにある。
【0010】
本発明は、細胞表面のペプチド、特に結合MHC分子中のペプチドの正確かつ包括的な分析を提供する。細胞表面のペプチドの特性または同一性の決定は特に質量分析法(MS)で行なわれた。
【0011】
かつて、特定の目的のためにMHC/ペプチド複合体が精製された。実際、MHCクラスIおよびクラスII分子に関して、これらを免疫学的に濃縮し精製する方法は、ペプチド−MHC結合相互作用の解明を可能にするのに役立ち、MHC結合モチーフの解明を可能にした。関連する例には、US5989565およびUS6077519などがある。これらには、患者の腫瘍細胞または樹状細胞集団の表面からペプチドを酸溶離させることによって、自己由来T細胞エピトープを識別する方法が提供されている。溶離されたペプチド配列は、ワクチンを産生するための合成ペプチドの設計に利用することができる。
【0012】
同様に、Salter他[US5487982]は、突然変異MHCクラスI分子に結合したペプチドを、イン・ビトロ(in vitro)で成長させた遺伝子操作した細胞から容易に除去することができる遺伝子操作した温度感受性MHCクラスI分子を提供している。
【0013】
この技術の他の例にはLanglade−Demoyen他[WO9744667]が含まれる。これは、腫瘍の免疫治療用の腫瘍特異的T細胞のin vitroおよびin vivoでの濃縮、および他の応用のために、精製されたMHC−ペプチド複合体を親和性試薬として利用する。同様にUS5763585、US5734023他は、治療用実体として例えば自己免疫性疾患の治療で使用するための特定のMHCペプチド複合体の精製方法を提供しており、Deshpande他[WO9740852]は、MHCクラスIIタンパク質への結合が強化された修飾ペプチドを開示している。全ての複合体が組換え融合タンパク質として提供される場合には、自己反応性T細胞に関連した疾患の治療に使用される。
【0014】
WO9734143およびUS5792604は、細胞の分泌経路によって内因的にプロセシングされたMHCクラスI拘束抗原を識別する方法を提供している。この生物学的アッセイは、初回刺激を受けた細胞障害性T細胞と、培地に分泌されたプロセシングされたペプチドの存在によって細胞溶解がその上に導かれる「インジケータ」標的細胞源と、を必要とする。この方式は、ドナー細胞の内因性プロセシング経路に影響を及ぼすことができる物質の識別に利用することができる。識別MHCクラスIおよびMHCクラスII拘束T細胞エピトープのための、生物学的に複合体に基づく他の方式には、WO00/67761が含まれる。これには、遺伝学的なワクチン接種ならびに樹状細胞および脾細胞の分離を利用して生物学的T細胞活性化検定をin vitroで実施する方法が提供されている。
【0015】
本発明の発明者は、MSベースの機器を完全な細胞または細胞抽出物の分析に適用し、そのデータを、治療用分子または診断のための検定の合理的な開発のための経路に組み込むことができることを認めた。
【0016】
生物起源の大きくかつ複雑な分子は質量分光法(MS)を使用した分析に適している。ただし分子はイオン化されていなければならない。MSのために生体分子をイオン化する2つの代替方法が、この技術分野では認められた技術となっている。これらは、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionisation:ESI)およびマトリックス支援レーザ脱着イオン化(matrix assisted laser de−sorption ionisation:MALDI)である。ESIでは、帯電させた細い毛細管を通して試料をポンピングし、静電的な反発によって最終的に検体イオンの脱着が生じるまで平行ガス流によって質量分析計の中へ噴霧する。ESIは連続流技法であり、そのため、液体クロマトグラフィー(LC)またはキャピラリー電気泳動法(CE)などの上流側試料分離技術に容易に接続される[Cao & Moini(1998)Am.Soc.Mass Specrom.9:1081−1088]。これらの特徴は、機器の試料プレート上に付着させた結晶性基質物質中に試料が埋め込まれるMALDI−MS技法とは対照的である。イオン化は基質のレーザ励起によって達成され、脱着した検体イオンは質量分析器に向かって加速される。したがってMALDIは非連続プロセスであり、複数のレーザパルスを使用してイオンが生み出され、データは質量分析器に累積的に集められる。
【0017】
MALDIでは質量分析は通常、イオン化レーザパルスから検出までの飛行時間を測定し質量電荷比(m/z)を計算することができる飛行時間(TOF)機器によって実施される。このような検出器は、さまざまな市販の機器で複数の技術的な改良を受けている。いくつかのモデルは、ペプチド配列の導出および他の構造決定のために源崩壊後のイオン断片の分析を可能にする。ESIベースの機器の連続流機器としての性質のため、走査分析器(例えば4倍または磁気セクタ質量分析器)が使用される。ただし、他の機器形式を利用することもできる。一般的なフォーマットは、2つの質量分析器が直列に配置され、不活性ガス分子を含む「衝突セル」を介してそれらが相互接続されるタンデムMSシステムである。後者の特徴は、衝突誘導崩壊イオンの発生および所与の入力試料からのペプチド配列の決定を可能にする。複数のハイブリッド機器フォーマットを配置し、細胞表面(MHC)と結合したペプチドの分析に利用することができる。
【0018】
Cox他[Cox,A.L.et al(1997),「MHC1:A Practical Approach」,Fernandez N., & Butcher G.編,Oxford University Press,Oxford,英の141−160ページ]によって概説されているように、MHC分子、具体的にはMHCクラスI分子から溶離されたペプチドの分析にMSが使用されている。この技術分野のより最近の概説がDe Jongによって提供されている[De Jong,A.(1998),Mass Spectrometry Reviews,17,311−335]。Ovysyannikova他[Ovysyannikova et al(2001),J.Immunol.Methods,246:1−12]は、細胞を麻疹ウイルスワクチンで処理した後にMHCクラスII対立遺伝子DRB1*0401から酸溶離した自己ペプチドの分析でMALDI−TOFを利用している。同様に、Sickman他[Sickman,A et al(2000),Analyst,125:569−573]は、LC技法とMALDI−MS技法の組合せを使用した、MHCクラスIIに結合したラットのランゲルハンス細胞由来のペプチドの識別を記載している。
【0019】
しかし本発明は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子に結合するペプチド化学種をMSベースの機器を使用して解明するための一般化された方式を初めて提供することによって、このような全ての従来技術を組み込み、拡張する。第1の実施形態において本発明は、対象、最も好ましくはヒト対象へ投与したときにMHC媒介性の免疫応答を誘起する能力が低い、またはそのような能力を欠いた治療用タンパク質を開発する目的で、ペプチド配列内のアミノ酸置換によって結合相互作用を排除する方法を提供する。本発明の目的は、対象に投与したときに免疫応答を引き起こす能力が低い治療用分子を開発する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の目的は、細胞の表面のペプチドを検出する方法、特にペプチドがMHC分子と結合している場合にペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、細胞の表面に存在するMHC分子と形式上結合したペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0022】
本発明の目的は、細胞の表面に存在する複数の異なるMHC分子と結合したペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0023】
本発明の目的は、MHC分子と結合した外因性タンパク質起源のペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0024】
本発明の目的は、MHC分子に関連した内因性タンパク質起源のペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0025】
本発明の目的は、対象とする細胞を外因性タンパク質または外因性マイクローガニズムと接触させて、対象とする細胞の表面ペプチドのレパートリーが、外因性タンパク質と接触させない同一の基準細胞に表示されるレパートリーとは異なったものになるようにするプロセスの後に、細胞の表面のペプチドを検出する方法を提供することにある。
【0026】
外因性タンパク質は、ex vivoの細胞系統、組織などの、哺乳動物源から抽出した精製調製物、または前記タンパク質を発現するように操作された任意の生体源由来の精製組換え調製物とすることができる。外因性タンパク質は、天然のタンパク質、または1つまたは複数の天然タンパク質の融合を表わすことができる。外因性タンパク質はin vitroで誘導したタンパク質、天然の要素の集合または完全に合成されまたは設計されたタンパク質とすることができ、自然界に対応するものがない。
【0027】
外因性タンパク質は、抗体分子およびそれらの誘導体、サイトカイン、成長因子、ロイコトリン、止血因子などのタンパク質クラスを代表することができ、あるいは細胞毒素であることができ、あるいは酵素能力または酵素機能を有することができる。このタンパク質が治療用タンパク質であることが最も好ましい。
【0028】
いくつかの治療用タンパク質の効果は、治療用タンパク質に対する不必要な免疫反応の誘起によって制限されることが認識されている。この例には、モノクローナル抗体[Schroff,R.W.et al(1985)Cancer Res.45:879−885;Shawler,D.L.et al(1985)J.Immunol.135:1530−1535]、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子などのヒト起源のいくつかのタンパク質[Wadhwa,M.et al(1999)Clin.Cancer Res.5:1353−1361]、インターフェロンα2[Russo,D.et al(1996)Bri.J.Haem.94:300−305;Stein,R.et al(1988)New Engl.J.Med.318:1409−1413]などが含まれる。したがって、治療用タンパク質に対する免疫応答の誘起に関与する決定基を識別することができる方法が強く求められている。
【0029】
免疫応答を誘起する主たる要因は、MHCクラスII分子、いわゆるT細胞エピトープ上での提示によってT細胞の活性を刺激することができるペプチドがタンパク質中に存在することである。免疫原性を排除しまたは低減するためには、T細胞エピトープを識別しタンパク質から除去することが望ましい。本発明の目的は、T細胞エピトープの検出および識別を可能にする方法を提供することにある。
【0030】
外因性タンパク質は取り込まれプロセシングされて、DR、DQまたはDP型のMHCクラスII分子と結合して提示される。MHCクラスII分子は、マクロファージなどの抗原提示細胞(APC)、樹状細胞によって発現される。所与のMHCクラスII分子と結合してAPCの表面に提示されるペプチドの能力はいくつかの因子、特にその一次配列によって決まる。一次配列は、そのタンパク分解による切断に対する傾向と、MHCクラスII分子のペプチド結合裂内の結合に対するその親和性の両方に影響を与える。APC表面のMHCクラスII/ペプチド複合体は、ペプチドとMHCクラスII分子の両方の露出した残基によって提供される決定基を認識することができる特定のT細胞受容体(TCR)に対して結合面を提示する。当技術分野では、MHCクラスII分子と結合することができる合成ペプチドを識別する手順が存在している。このようなペプチドは、プロセシング経路または他の現象のため、全ての状況、特にin vivoで、T細胞エピトープとして機能しない。さらに当技術分野には、潜在的なT細胞エピトープを予測し、または経験に基づいて決定されたT細胞エピトープ中の配列モチーフを認識する計算方法が存在している。方式には、計算スレッディング方法が、可能なヒトMHCクラスII DRアロタイプのサブセットとだけ結合する潜在能力を有するペプチド配列を識別する、WO98/52976に提供されているようにMHCクラスIIに結合するペプチドを予測する技法が含まれる。
【0031】
WO98/52976およびWO00/34317で認識されているとおり、T細胞エピトープ排除の最初の段階はエピトープの識別である。これらの教示では、治療用タンパク質の一次配列内のアミノ酸を慎重に置換することによって、予測したT細胞エピトープを除去する。本発明の目的は、潜在的なT細胞エピトープの数を減らすことによって免疫特性が変更された修飾タンパク質を開発する方法を提供することにある。自然の細胞内プロセシング事象の後にMHCを含む細胞の表面に存在し、またはMHC製剤に結合した識別された配列は、任意のコンピテントなAPCまたは同種の細胞の範囲内で提示する。さらに、本発明の方式の下で識別されるペプチドは、MHCクラスIIに関してはDR、DQまたはDPのアロタイプを含む、任意のMHCアロタイプまたはアロタイプの混合物から検出することができる。
【0032】
本発明は、特にMHCクラスIおよびクラスII分子と結合して細胞の表面に表示されるペプチドの検出を可能にするが、完全な細胞に限定されるものではなく、エキソソーム(exosome)の表面のペプチドの分析を含む。ペプチド−MHC複合体は、MHCクラスII分子を通常発現している細胞に由来するエキソソームベシクル(exosomal vesicle)の表面に高い濃度で存在する。ある種の状況下では、APCの表面からのエキソソームの排出量を増大させることができ、エキソソームを濃縮または分離する、認められた手順も存在する[Raposo,G.et al(1996)J.Exp.Med.183:1161−1172;Clayton,A.et al(2001)J.Immunol.Methods 247:163−174]。したがって、APC製剤およびAPCに由来するエキソソーム粒子製剤の分析は本発明の範囲に同じように含まれる。
【0033】
まとめると、本発明は以下の事項に関係する。
【0034】
・特定の生物活性を有し、かつ同じ生物活性を有する非修飾タンパク質またはポリペプチドよりも低い免疫原性または高い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチド、あるいはワクチン抗原を開発する方法であって、
(i)前記タンパク質またはポリペプチドと細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる細胞またはそのエキソソームビヒクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)前記細胞またはそのエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドに関して、前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、薬剤タンパク質またはポリペプチド、あるいはワクチン抗原の配列に標準の方法に従って割り当てることによって実行される方法。
【0035】
・(iv)前記ペプチドを修飾して、前記ペプチドのMHC分子への結合が変更されるようにする段階と、
(v)修飾した1つまたは複数のペプチド配列を、タンパク質またはポリペプチド分子配列内に標準の方法に従って組み込むことによって、最終的な薬剤タンパク質またはポリペプチドの配列変異体を構築する段階と
をさらに含む、対応する方法。
【0036】
・段階(ii)の前記細胞またはそのエキソソームビヒクルの分析が、質量分光法(MS)、好ましくはMALDI−MSおよびESI−MSを使用して実行される、対応する方法。
【0037】
・薬剤タンパク質またはポリペプチドが、前記タンパク質またはポリペプチドと細胞を接触させた後に1つまたは複数の前記ペプチドがもはや結合しないように修飾される、対応する方法。
【0038】
・段階(i)に基づいて細胞またはエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドがMHC分子と結合し、段階(ii)に基づく前記細胞またはそのエキソソームベシクルの分析がMSを使用して実行される、対応する方法。
【0039】
・段階(i)に基づいて細胞またはエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドが、細胞内ペプチダーゼおよび転送経路の生成物である、対応する方法。
【0040】
・より低い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチドを開発するための対応する方法であって、免疫原性ペプチドの修飾が、ペプチドのMHC分子への結合を排除または低減させ、任意選択で、請求項1に指示された細胞表面への結合に関して修飾したペプチドをテストすることによって実行される方法。
【0041】
・MHC分子に対するペプチドの結合の排除または低減が、薬剤タンパク質またはポリペプチド中のペプチドの配列領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換し、挿入しまたは削除することによって実行される、対応する方法。
【0042】
・より高い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチドを開発するための方法であって、ペプチドの修飾が、ペプチドのMHC分子への結合を強化し、任意選択で、請求項1に指示された細胞表面への結合に関して修飾したペプチドをテストすることによって実行される方法。
【0043】
・MHC分子へのペプチドの結合の強化が、ペプチドの配列領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換し、挿入しまたは削除し、T細胞エピトープとして機能するペプチドの活性を増大させ、および/またはT細胞エピトープが拘束されるMHCタイプの範囲を広げ、および/またはいくつかの異なるエピトープを単一の実体に結合することによって実行される、対応する方法。
【0044】
・ワクチンの開発方法であって、
(i)免疫原活性を有するタンパク質またはポリペプチドあるいは微生物と細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる前記細胞またはそのエキソソームベシクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)ペプチドが結合した表面に関して前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、タンパク質またはポリペプチドの配列に標準の方法に従って割り当て、
(iv)1つまたは複数のペプチドを、ワクチン分子配列内に標準の方法に従って組み込むことによって、最終的な薬剤ワクチンの配列変異体を構築することによって実行され、
前記細胞またはその中のエキソソームベシクルの分析がMSを使用して実行される
方法。
【0045】
・MHC分子を産生するように操作されたヒト細胞系統を使用する、対応する方法
・親(非操作)細胞系統がMHC分子を産生しない、対応する方法
・親細胞系統がMHCクラスI分子を産生しない、対応する方法
・親細胞系統がMHCクラスII分子を産生しない、対応する方法。
【0046】
・それ自体のMHC分子を産生しない非ヒト細胞がMHC分子を産生するように操作され、指示されるように使用される、対応する方法
・MHC分子がMHCクラスIIに由来する、対応する方法
・MHC分子がHLA−DR、HLA−DQおよびHLA−DPである、対応する方法。
【0047】
・MHC分子がMHCクラスIに由来する、対応する方法
・さまざまなMHCアロタイプおよび遺伝子型の包括的な混合物を提供する細胞系統または細胞試料の組合せが使用される、対応する方法
・ペプチドが外因性タンパク質または微生物を起源とする、対応する方法
・ペプチドが内因性タンパク質を起源とする、対応する方法。
【0048】
・タンパク質、ポリペプチドまたは微生物を加えた後にMHC分子上にペプチドを提示するヒト樹状細胞またはそのエキソソームベシクルが使用される、対応する方法
・タンパク質またはポリペプチドを加えた後にMHC分子上にペプチドを提示するヒト抗原提示細胞またはそのエキソソームベシクルが使用される、対応する方法。
【0049】
・ペプチド分析の前にMHC分子が濃縮される、対応する方法
・分析の前にペプチドが細胞表面から溶離される、対応する方法
・分析の前にペプチドがMHC分子から溶離される、対応する方法
・MALDI−MSが使用される、対応する方法
・ESI−MSが使用される、対応する方法。
【0050】
・診断のための検査を開発する方法であって、
(i)表面ペプチドに対して適当なヒト細胞を分析し、
(ii)(a)細胞表面に現れたあるペプチドの特性を作成し、任意選択で、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するために他の特性と比較し、または(b)細胞表面上に特異的なペプチドの配列を、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するのに使用することができる特異的なペプチドを決定する手段として決定する
ことによって実行される方法。
【0051】
・以上に記載のいずれかの方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドを薬剤治療実体として使用すること
・以上に記載のいずれかの方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドをワクチンとして使用すること
・以上に記載のいずれかの方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドを、より低い免疫原性を有する薬剤治療実体として使用すること。
【0052】
タンパク質またはポリペプチドに由来する、細胞またはそのエキソソームベシクルの表面のペプチドを検出する方法であって、
(i)前記タンパク質またはポリペプチド、あるいはこのタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子と細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる細胞またはそのエキソソームベシクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)ペプチドが結合した表面に関して前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、タンパク質またはポリペプチドの配列に標準の方法に従って割り当てることによって実行され、
細胞またはエキソソームベシクルの分析がMS、好ましくはMALDI−MSによって実行される
方法。
【0053】
したがって、本発明の第1の主要な実施形態に基づく方式によるプロセスは、本明細書に記載の方法を適用して以下のことを実行する。
【0054】
1.標的タンパク質のアミノ酸配列内のプロセシングされた1つまたは複数のT細胞エピトープを識別する
2.識別された潜在的なT細胞エピトープ内の1つまたは複数のアミノ酸が、MHC分子または完全な細胞へのペプチドの結合、あるいは他の手段によって決定されるT細胞エピトープの活性が実質的に低減され、または排除されるように修飾された、標的タンパク質の新規の配列変異体を設計する。重要なのはこのような配列変異体が、配列変異による新規の潜在的なT細胞エピトープの生成が回避されるような方法で生み出されることである。ただし、このような新規の潜在的なT細胞エピトープが、T細胞エピトープの活性を実質的に低減しまたは排除するような方法で修飾される場合にはその限りではない
3.このような配列変異体を構築し、望ましい特性を有する1つまたは複数の変異体を識別するために前記変異体をテストする。
【0055】
この方式によれば、いくつかの変異体タンパク質が、好ましくは組換えDNA技術によって産生されテストされる。ただし、化学合成を含む他の手順を企図することもできる。所与の潜在的なT細胞エピトープ内の単一のアミノ酸置換を実行してエピトープを排除することが予想される。単一のエピトープ内の置換の組合せを企図することもできる。
【0056】
本発明の主要な一態様では、哺乳動物の細胞の集団をテストタンパク質とともに培養し、またはテストタンパク質をコードする遺伝子を用いてトランスフェクションし、タンパク質の取込みまたは発現およびその分解に続いて、細胞表面のペプチドの特性または同一性を決定する。具体的にはMHC分子、特に複数のMHC分子がこのようなペプチドを提示する。この実施形態の1つの態様として、多くの異なるMHC分子上に提示されるペプチドを分析することが重要であり、したがって分析は、世界の集団で遭遇するMHCアロタイプおよび遺伝子型の非常に高い割合を包含する複数の細胞集団に関して取り組むことが好ましい。このような細胞集団は、世界の集団から複数の細胞集団をサンプリングすることによって、または複数のMHC型を産生するように操作された細胞を使用することによって得ることができる。内因性MHC分子が産生されず、細胞表面に低い背景のペプチドしか表示しない細胞系統は特に役立つ。
【0057】
ヒトMHCアロタイプおよび遺伝子型の数は多く、それぞれが所与のタンパク質の異なる特性のペプチドに結合する能力を有するため、T細胞エピトープを包括的に識別する先に説明した以前の方法は、生化学的な方法(ペプチドが多数のMHCタイプに結合するかをテストする)でも、または生物学的な方法(主としてペプチドがT細胞を活性化または刺激するかをテストする)でもなく、主に予測的な方法を含む。MHCクラスIIに結合するペプチドに対してはこのような予測的方法が、後に続く他のペプチドの予測的分析のために多数のT細胞エピトープ配列を分析してこれらのエピトープに共通するアミノ酸の特定の組合せを決定する、モチーフおよび人工ニューラルネットワーク技法を含む。しかし、MHCクラスIIに関してはこのような予測的な方法が制限され、しばしばある割合のT細胞エピトープが見落とされ(偽陰性)、または実際にはこのような活性を欠くにもかかわらずあるペプチドをT細胞エピトープと判定する(偽陽性)。予測的な方法、ならびに合成ペプチドを用いる生化学的および生物学的方法の他の主な限界は、ペプチドがMHC分子によって存在することにより影響しうる所与のタンパク質のプロセシングを考慮できないことである。したがって、偽陰性または偽陽性をそれほど生じさせずにT細胞エピトープを正確かつ包括的に識別する改良式の方法が求められており、本発明はこのような改良を提供する。
【0058】
本発明の第1の実施形態に基づくヒト薬剤タンパク質の開発に関する特定の応用は、それによってヘルパーT細胞を活性化させおよび/または刺激するエピトープが除去されるタンパク質を生成することである。この場合、第一の関心事は、MHCクラスIIによって提示されるペプチドである。高い割合のヒトに対して有効な薬剤タンパク質を開発するためには、多数のMHCアロタイプのうちの1つまたは複数のアロタイプによって提示されるタンパク質内のペプチドを識別し、次いでこれらのペプチドを改変してMHC結合に対する能力を除去することが必要である。以前には、MHCクラスIIによって提示されるペプチドの包括的な識別は、このようなペプチドを正確に予測することが難しく、多数の異なるアロタイプおよび遺伝子型のヒトMHCクラスII分子のうちの1つまたは複数の分子に結合するペプチドを予測することが難しいために制限された。予測の信頼度がより高いMHCクラスIに結合するペプチドに比べて、MHCクラスIIに結合するペプチドは長さが多様であり、ペプチド結合に対してより大きな影響を有する主要な結合ポケットの外側にアミノ酸を有する。したがって、MHCクラスIIに対しては、潜在的なT細胞エピトープを包括的に識別するために、多数のMHCクラスIIアロタイプおよび遺伝子型のうちの1つまたは複数に結合するペプチドを予測しまたは検出するのに現在使用可能な方法よりも正確かつ包括的な方法が求められている。このような方法を使用できる主な利益は、全ての主要なT細胞エピトープ(または全てのT細胞エピトープ)が識別され除去された薬剤が生成されることにある。
【0059】
本発明を使用して薬剤を開発する好ましい1つの方法は以下の段階を含む:
1.薬剤として潜在的に使用するためのテストタンパク質に関し、選択したヒト細胞系統またはヒト細胞試料にこのタンパク質を加える段階
2.適当な期間の後、表面ペプチドについて細胞を分析する段階。具体的には、細胞に直接にMALDI−MSを使用し、または細胞画分、特にMHC画分にMALDI−MSを使用し、あるいは特にMALDI−MSまたはESI−MSによる分析の前に細胞表面からペプチドを溶離して分析する
3.所与のタンパク質から、細胞表面に現れたペプチドをテストタンパク質に割り当てる段階
4.(2)で細胞表面に現れたペプチドを修飾してMHC分子への結合を排除する段階。いくつかのケースでは、修飾されたペプチドを細胞表面への結合に関してテストする(上記)
5.タンパク質配列中の1つまたは複数のペプチドに適当な修飾を組み込んでMHC分子への結合を排除することによって、最終的な薬剤タンパク質分子を生成する段階。
【0060】
本発明の第2の主要な実施形態によれば、ワクチン分子またはワクチンとして機能することができる分子を開発することができる方式が提供される。ヒトに使用されるワクチンが最も好ましいが、この方式は、ヒト以外の種の病気の治療または予防のためのワクチン分子の開発にも同じように適用することができる。本発明を使用したワクチンの開発に関する特定の応用は、それによってT細胞を活性化させ、および/または刺激する主要なエピトープ、主にヘルパーT細胞に対するエピトープが存在し、さらに細胞殺滅を必要とする応用に対しては細胞障害性T細胞に対するエピトープ(主にMHCクラスI拘束)が存在するペプチドまたはタンパク質を生成することである。高い割合のヒトに対して有効なワクチンを開発するためには、多数のMHCアロタイプおよび遺伝子型のうちの1つまたは複数によって提示されるタンパク質内のペプチドを識別し、次いでこれらのペプチドの中から、最終的なワクチン分子に含める1つまたは複数のエピトープを選択することが必要である。このようなエピトープは、MHCクラスIまたはMHCクラスII、あるいはその両方によって拘束されたペプチドを含むことができる。本発明は、MHCクラスIおよびクラスIIによって提示されるペプチドのこのような識別を提供し、したがって本発明は、より有効なワクチンを開発する基礎となる。
【0061】
MHCクラスIエピトープとMHCクラスIIエピトープの主な違いは、MHC−ペプチド複合体中のペプチドが通常それから誘導されるタンパク質の主な起源にある。外因性タンパク質は主に、MHCクラスIIと結合したペプチドを生じ、細胞内から発現される内因性タンパク質は、異なるペプチダーゼおよび細胞内転送経路に従ってプロセシングされて、細胞表面のMHCクラスI分子と主に結合する。外因性タンパク質でも、または内因性タンパク質でも、一連のプロセシング段階の間に、通常ならMHCに結合するタンパク質由来のあるペプチド配列が破壊される可能性があり、そのため、あるT細胞エピトープはイン・ビボ(in vivo)で産生されない。このようなペプチドに関して予測的(または生化学的/生物学的)方法は、T細胞エピトープの識別におけるプロセシングを考慮することができない。本発明の特徴は、細胞表面から識別されるペプチドが、細胞内処理および転送経路を介して通過することができるとしてAPC(または他の細胞)によって選択されたペプチドであることである。本発明はプロセシング事象の真の産物の識別に集中するので、本発明では、エピトープ識別の予測的またはイン・ビトロ(in vitro)方法を使用して識別される偽陽性および偽陰性エピトープの割合が低減する。
【0062】
したがって、本発明の第2の主要な実施形態に基づく方式によるプロセスは、本明細書に記載の方法を適用して以下のことを実行する。
【0063】
1.標的タンパク質のアミノ酸配列内の1つまたは複数のT細胞エピトープを識別する
2.1つまたは複数のアミノ酸が修飾された標的タンパク質の新規の配列変異体を、以下のいずれかの方法で設計する
i)T細胞エピトープの活性を増大させ、および/または
ii)MHC分子または完全な細胞へのペプチドの結合あるいは他の手段によって決定されるようにT細胞エピトープが拘束されるMHCタイプの範囲を広げ、および/または
iii)いくつかの異なるエピトープを単一の(より小さな)実体に結合する
3.このような配列変異体を構築し、望ましい特性を有する1つまたは複数の変異体を識別するために前記変異体をテストする。
【0064】
この方式によれば、いくつかの変異体タンパク質が、好ましく組換えDNA技術によって産生されテストされる。ただし、化学合成を含む他の手順を企図することもできる。
【0065】
したがって、本発明を使用してワクチンを開発する好ましい1つの方法は以下の段階を含む
1.ワクチンとして潜在的に使用するためのタンパク質に関し、選択したヒト細胞系統またはヒト細胞試料にこのタンパク質を加える段階
2.適当な期間の後、表面ペプチドに関して細胞を分析する段階。具体的には、細胞に直接にMALDI−MSを使用し、または細胞画分、特にMHC画分にMALDI−MSを使用し、あるいは特にMALDI−MSまたはESI−MSによる分析の前に細胞表面からペプチドを溶離して分析する
3.所与のタンパク質から、細胞表面に現れるペプチドをテストタンパク質に割り当てる段階
4.(2)で細胞表面に現れた1つまたは複数のペプチドを、最終的なワクチン分子で使用するために選択する段階。
【0066】
薬剤またはワクチンとして使用する細胞表面ペプチドの分析に関しては、異なるMHCアロタイプおよび遺伝子型の包括的な混合物を提供する細胞系統またはヒト細胞試料の組合せを使用することができること、およびこのような天然の細胞試料が、MHCクラスIおよび/またはクラスII拘束エピトープの包括的な混合物を提供することを理解されたい。テストタンパク質の添加後に活性化してMHC分子上に効率的にペプチドを提示することができるヒト樹状細胞(またはエキソソーム)は特に役立つ。あるいは、主にもう1つのMHCタイプをこれらの細胞にコードする遺伝子のトランスフェクションによって、それらのMHCレパートリーを拡張するようにヒト細胞系統を操作することができ、したがって細胞表面ペプチドの分析に関して複数のMHCタイプを有する細胞が産生される。マウスMHC遺伝子が削除されまたはその他の方法で無能にされたマウス細胞など、それ自体のMHC分子を産生しない非ヒト細胞が特に役立つ。細胞表面ペプチドの分析はさらに、ペプチド分析の前にMHC分子を例えば免疫アフィニティカラムを使用して濃縮する任意選択の段階を含む。MHCクラスIIに関しては、細胞表面ペプチドの分析のための本発明の方法は、DR以外のアロタイプへの結合の分析を提供するという特定の利点を有する。(DRのβ鎖とは対照的に)MHC分子の両方の鎖が結合に寄与すると考えられるDQに対して使用可能な予測的な方法がないため、DQ、DPなどのアロタイプによるペプチド提示の分析は非常に困難であった。
【0067】
本発明の主要な第3の態様によれば、診断のための検査の開発に本発明を適用する方式が提供される。この実施形態の特定の応用は、特定の病気または細胞の傷害を指示するペプチドの異常な存在、不在またはパターンを識別するために、細胞表面に提示されたペプチドの特性を生成することである。
【0068】
したがって本発明の目的は、対象とする細胞を外因性タンパク質または生物、あるいは他の作用因子と接触させて、対象とする細胞の表面ペプチドのレパートリーが、外因性タンパク質または生物と接触させない同一の細胞に表示されるレパートリーとは異なったものになるようにするプロセスの後に、細胞の表面のペプチドを検出する方法を提供することにある。本発明の実施では、「診断ペプチド」または「インジケータペプチド」の存在を、MS機器の質量スペクトル中のインジケータペプチド質量のレジストレーションによって、またはCID(または同種の)スペクトル中のインジケータペプチド配列の記録によって分離することができる。同様に、インジケータペプチドの存在を、外因性タンパク質または作用因子と接触させない基準試料に由来する質量スペクトルに関して指示することができる。このような比較分析は、インジケータペプチドの質量が知られておらず、またはどのようにしても予測できない場合に特に価値がある。比較分析は、同一の質量ピークの減算によってin silicoで実施することができ、特定の質量ピークの損失が診断インジケータである場合に特定の価値がある。生体試料の比較分析でMS技法が利用されている。しかし、Liotta他[WO0049410]の場合には、このような比較分析を、レーザ捕獲マイクロ切開によって得られた個々の細胞のタンパク含量に焦点を置く。これは、診断(比較、減法など)が、表面から検出されたペプチド、特に細胞表面のMHC分子と結合したペプチドに基づく本発明とは異なる。
【0069】
MS技術を使用する他の診断技法には、Little他[US6207370]の技法が含まれる。Little他は、獲得した状態ではない個体の体質的特徴である遺伝子病の識別を対象とするMSベースの診断手順を開示している。この手順では、個体の遺伝的素質に依存する集団内で可変である標的タンパク質の質量を識別することができる。他の診断方式が、Geng他によって開示されている[Geng,M.(2000)J.Chromatography A.870:295−313]。Geng他は、血清タンパク試料のトリプシン分解物から得られたMALDI−TOFスペクトルを分析した。そのプロセスは、複雑な混合物中に存在する検体タンパク質の存在の徴候を示す「シグネチャペプチド(signature peptide)」を検出する。これも、診断(比較、減法など)が、表面から検出されたペプチド、特に細胞表面のMHC分子と結合したペプチドに基づく本発明とは異なる。
【0070】
したがって、本発明の方式によれば、診断のための検査を開発する好ましい1つの方法は以下の段階を含む
1.表面ペプチドに関して適当なヒト細胞を分析する段階。具体的には、細胞に直接にMALDI−MSを使用し、または細胞画分、特にMHC画分にMALDI−MSを使用し、あるいは特にMALDI−MSまたはESI−MSによる分析の前に細胞表面からペプチドを溶離して分析する
2.細胞表面に現れたあるペプチドの特性を産生し、必要ならば、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するために他の特性と比較し、または細胞表面上に特異的なペプチドの配列を、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するのに使用することができる特異的なペプチドを決定する手段として決定する段階。
【0071】
本発明の全ての実施形態に関して、さまざまなタンパク質配列データベースへの容易なアクセスおよび増大するその内容のため、ペプチドの同一性を決定するために完全な配列を得ることはそれほど重要ではない。親イオンの既知の質量に対して少量の内部配列情報(2〜3残基とすることができる)だけで、ペプチド化学種を特徴づけるのに十分であることもある。連続するフラグメントのイオンデータセットのデータベースを検索するアルゴリズムが使用可能であることを認識されたい。これらの例には、ProteinLynx Global Serverサーチアルゴリズム(Micromass社,Wythenshawe,英)、Matrix Science社のMascot[www.matrix.com]、Protein Prospectorのプログラムセット[http://prospector.ucsf.edu]などが含まれる。このようなプログラムは、対象とするペプチドの質量を有するデータベースの配列エントリの断片化をシミュレートする。
【0072】
以下の非限定的な例によって本発明をさらに説明する。
【0073】
実施例1
細胞表面HLA DRに結合したペプチドをMALDI−tofを使用して検出する方法
EBVで形質転換したヒトB細胞系統JESTHOMおよびBSMを、ECACC社(Porton Down,英)から入手した。B細胞系統JESTHOMはHLA−DR1*0101に対して同型接合性、系統BSMはDRB1*0401に対して同型接合性である。細胞系統は、供給業者が推奨する条件を使用してin vitroで培養した。供給業者が推奨する条件を使用して培養したマウスNSO細胞(ECACC#85110503)を陰性の対照細胞系統として使用した。
【0074】
合成ペプチドは、Zeneca社から入手した(Zeneca LSM,Northwich,英)。ペプチドHA1は、インフルエンザウイルス血球凝集素タンパクの残基307〜319に対応する13量体である(Rothbard,J.B.et al(1988)Cell 52:515)。ペプチドMP1は、インフルエンザウイルス基質タンパク質の残基17〜29に対応する13量体である[Rothbard,J.B.et al(1988)ibid]。これらのペプチドはともに、特異的にいくつかの異なるHLA−DRと結合することが知られているが、DR4アロタイプとの差動結合が見られる。MP1はDR4に結合するが、MP1は、DR4にあまり結合しない[Busch R.et al(1990)Int.Immunol.2:443]。
【0075】
いくつかの実験に関しては、不安定なビオチンリンカー部分を含む類似体ペプチドを使用した。これらに関しては、リンカービオチン−HPDP(Pierce社,Chester,英)をN末端システイン残基に結合させて、ペプチドHA1BおよびMP1Bを得た。追加のシステイン残基を除いてこの配列はHA1およびMP1と同一である。結合は、ビオチン−HPDP(Pierce社,Chester,英)とともに提供されたプロトコルを使用して行なった。ただし、結合させたペプチドの精製は、HPLCおよび標準溶離プロフィールを使用して実施した。精製されたモノクローナル抗体LB3.1[ATCCナンバーHB−298]を使用して阻害実験を実施した。抗体は、プロテインAセファロース(Millipore社,Conset,英)アフィニティークロマトグラフィーおよび供給業者が推奨する手順を使用してハイブリドーマLB3.1調整培地から精製した。ハイブリドーマは標準条件を使用して維持した。LB3.1は、ペプチドおよび細胞とともに最高濃度10μg/mlで培養した。
【0076】
細胞は、テストおよび対照実験で異なる合成ペプチドで処理する前にパラホルムアルデヒドで固定した。実験は、最終濃度50μMのペプチドを含むペプチド結合緩衝液(pH4.0のリン酸クエン酸塩緩衝液50mM;0.1%NP4O)150μlに加えた完全培地50μl中の3×106個の細胞を使用して実施した。培養は37℃で24時間実施した。検定に関しては、ペプチド処理した細胞を遠心分離によって回収し、それらをPBSで3回洗浄した。細胞は、50%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸10μlの入った0.5ml微量遠心管に入れた。続いてそれぞれの試料を5秒間激しく混合し、その後、MALDI機器の試料プレートに試料をスポッティングした。2層試料スポッティング法を使用した。この方法では、酸基質溶液[アセトニトリル、メタノールおよび水の1:1:1混合物に溶解した0.1Mシナピン酸]1μlをMS試料プレート上で乾燥させる。続いて細胞1μlおよびシナピン酸基質溶液1μlをスポットした。
【0077】
不安定なリンカー質量−タグを含む合成ペプチドを使用する実験では、100mM β−メルカプトエタノール(BME)を含むPBS中での細胞の培養によってリンカーの除去を達成した。BMEを用いた培養は37℃で30分間実施し、細胞はPBSを使用して3回洗浄してから、先と同じようにMALDI試料プレートへ適用した。
【0078】
Voyager DE質量分析計(Perseptive Biosystems社,Foster City,米カリフォルニア州)は陽イオンモードで使用した。この機器は、ウマ心臓アポミグロビンとウシ血清アルブミンの混合物(Sigma社,Poole,英)で較正し、それぞれの分析前30分以内に、質量の正確さがそれぞれの標準に対して0.1%以内であることをチェックした。試料スポットは空気乾燥し、陽イオンモードで分析した。遅延抽出は25kV、150ナノ秒にセットした。低質量ゲートは600Daにセットした。それぞれの試料から合計125レーザショット分を累積した。
【0079】
JESTHOM細胞から生み出されたスペクトル中に、ペプチドHA1およびMP1の予測された質量ピークが識別された。対照的に、HLA DR4を発現するBSM細胞からはペプチドHA1だけしか識別できなかった。標識化したペプチドを使用した実験では、BME処理した細胞のスペクトル中にペプチドピークの質量シフトが識別された。LB1.1培養細胞(阻害実験)からのスペクトルは、抗体処理によってペプチド結合をなくすことがことができなかったことを示した。ただし、ペプチド、標識化したペプチドおよびLB1.1抗体を使用した三者間の競合検定では、低減された相対的なイオン存在度のいくつかの証拠を見つけることができた。ペプチドまたはペプチドの組合せで処理したマウスNSO細胞からのスペクトルは、標的イオンピークの非常に低い存在度を示し、細胞処理中の非特異的相互作用および/または不十分な洗浄を示唆している。
【0080】
実施例2
MHC DRに結合したペプチドをMALDI−tofを使用して分析する方法
免疫アフィニティークロマトグラフィーによって、JESTHOM細胞膜からHLA−DR1*0101を精製した。BSM細胞からHLA DRB1*0401を精製した。可溶化された細胞膜は先に記載したとおりに準備し処理した[Gorga et al(1987)J.Biol.Chem.262:16087−16094、Sette et al(1989)J.Immunol.42:35−40]。抗DRモノクローナル抗体LB3.1[ATCCナンバーHB−298]を免疫アフィニティ試薬として使用した。抗体は、プロテインAセファロース(Millipore社,Conset,英)アフィニティークロマトグラフィーおよび供給業者が推奨する手順を使用してハイブリドーマLB3.1調整培地から精製した。ハイブリドーマは標準条件を使用して維持した。LB3.1抗体は、InVitrogen社(InVitrogen,Groningen,オランダ)によって提供されたLinxシステムおよび供給業者が推奨する条件を使用して、セファロース4B(Pharmacia Biotech社,St.Albans,英)に結合させた。
【0081】
実施例1で説明した合成ペプチドHA1およびMP1を、HLA−DR1*0101製剤50μlとともに培養した。ペプチドは、最終濃度50μMのペプチド結合緩衝液(pH4.0のリン酸クエン酸塩緩衝液50mM;0.1%NP4O)中で37℃で26時間培養した。結合していないペプチドは、microcon遠心ろ過セル(Millipore,米)を使用した限外ろ過およびPBSを用いた複数回の洗浄サイクル(最低4回)によって除去した。最終的な体積は20μ1まで低減した。いくつかの実験では、MALDI−tof分析の前にペプチドをMHCから溶離させた。この場合、溶離は、0.1%TFA水溶液を用いた抽出によって実施した。溶離液は蒸発乾固させ、実施例1で示したMALDI基質溶液を使用して直接に再懸濁させた。他の実験では、基質溶液に再懸濁させたMHC−ペプチド複合体を機器試料プレートに適用した。
【0082】
HLA−DR1*0101製剤から生み出されたスペクトル中に、ペプチドHA1およびMP1の予測された質量ピークが識別された。対照的に、DRB1*0401製剤のスペクトルではHA1の質量ピークだけが識別できた。
【0083】
実施例3
完全タンパク質を用いて細胞を処理した後に細胞表面ペプチドを分析するための方法
健康な供血者から得た末梢血試料40mlからヒト樹状細胞を濃縮した。血液は、ヘパリン、histopaque1077(Sigma社,Poole,英)密度勾配培地を使用して調製した単核細胞画分および供給業者が推奨する条件を使用して凝固しないようにした。樹状細胞は、イムノマグネティック分離手順を使用したネガティブセレクションによって得た。試薬および条件は全てMitenyi Biotec社(Bisely,英)によって提供されたものを使用した。樹状細胞は、タンパク質抗原で処理するため多穴式組織培養皿中に溶離させた。細胞は実験の進行中、10%(v/v)ウシ胎児血清および標準抗生物質を補ったRPMI培地中に維持した。全ての試薬は全てLife Technologies社(Paisley,英)のものを使用した。
【0084】
これらの研究では組換えスタフィロキナーゼ製剤を使用した。Genosys Biotechnologies社(Cambridge,英)による契約の下で野生型スタフィロキナーゼ遺伝子を合成した。この遺伝子は、オーバーラップ合成プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応、およびCollen他によって与えられた配列[Collen D.(1996)Circulation 94:197−206]によって構築した。合成遺伝子は、453bp EcoRI−HinDIII制限断片として、細菌性発現ベクターpMEX(MoBiTec社,Gottingen,独)にクローン化した。pMEX/スタフィロキナーゼ遺伝子は、標準技法によって適当な大腸菌株TG1を形質転換させ、活性スタフィロキナーゼを分泌している単一の形質転換クローンを、フィブリンプレート検定を使用して選択した[Astrup,T.et al(1952)Arch.Biochem.Biophys.40:346−351、Collen,D.et al(1992)Fibrinolysis 6:203−213]。最もよく発現したクローンを成長させ、シーケンシャルカラムクロマトグラフィーおよび先に記載した方法[Collen,D.et al(1992)ibid、Schlott,B.et al(1994)Biotechnology 12:185−189]を使用して培養液上清から組換えタンパク質を精製した。
【0085】
樹状細胞は、濃度100μg/mlの精製スタフィロキナーゼとともに一晩培養した。いくつかの実験では、培地に添加された阻害剤混液を使用して抗原プロセシングをブロックした。阻害剤は、テストタンパク質を加える1時間前に以下の濃度で加えた:塩化アンモニウム50mM;アジ化ナトリウム1mg/ml;クロロキンおよびコルヒチン500μM。化合物は全てSigma社(Sigma,Poole,英)のものを使用した。
【0086】
タンパク質処理の後、培養皿から細胞を取り出し、3サイクルの遠心分離/PBS処理を使用して洗浄して、全ての培地および外来性のタンパク質を除去した。細胞は、MALDI−tof分析のために実施例1に示したように処理した。スペクトルを集め、テストタンパク質に由来する存在ペプチドに関して分析した。これらは、スタフィロキナーゼで処理していない対照細胞から得られたスペクトルと比較することによって識別した。
【0087】
スタフィロキナーゼによるものと考えられるイオンピークは、スタフィロキナーゼで処理した細胞から得られたスペクトル中で識別されたが、代謝阻害剤で処理した細胞のスペクトルおよびまたはスタフィロキナーゼで処理しなかった対照細胞では見られなかった。
【0088】
実施例4
完全タンパク質を用いた細胞処理から得られたペプチド配列を決定する方法
対象とするタンパク質を用いて実施例3の方法に従って細胞を処理した。ペプチドは、5%アセトニトリル、0.1%蟻酸溶液を用いた多回抽出サイクル(4〜6回)によって細胞から溶離させた。テストタンパク質に由来する配列の存在はESI−MS/MSを使用して決定した。
【0089】
溶離させた試料は乾燥し、0.1%蟻酸溶液中に再懸濁させた。未処理の溶離液全体を、質量分析計のZスプレー源に直接に接続されたモジュラーCapLCシステム(Micromass社,Wythenshawe,英)によって分離した。試料は、流量30μL/分でC18プレカラムにロードし、0.1%蟻酸溶液を使用して3分間脱塩した。流量を1μL/分まで低減させ、C18 180mm pepmapカラム上にリダイレクトした。カラムは、95%H2O、5%アセトニトリル、0.1%蟻酸の溶媒溶液から5%H2O、95%アセトニトリル、0.1%蟻酸の溶媒溶液までの標準溶離勾配を使用して溶離させた。
【0090】
Zスプレーナノフローエレクトロスプレーイオン源が取り付けられたMicromass Q−Tof2機器(Micromass社,Wythenshawe,英)上でエレクトロスプレーMSおよびMS/MSデータを得た。装置は陽イオンモードで動作させ、源温度は80℃、カウンターガス流量は40L/時間とし、ナノスプレー連続LCプローブには2800Vの電位を印加した。データは全て、機器を自動データ依存スイッチングモードで動作させて得た。
【0091】
機器は、グルフィブリノペプチドb(glufibrinopeptide b)の衝突誘導分解に起因する2点較正被選択断片イオンを用いて較正した。データは全てProteinLynxソフトウェアによって自動的に処理し、タンパク質識別は、ProteinLynx Global Serverサーチアルゴリズム(Micromass社,Wythenshawe,英)を用いた分析によって行なった。
【0092】
ホウケイ酸塩針を通して生の試料を機器に注入することによって手動データ収集を実行した。試料を濃度約1μMに調整した。試料は注入前に、使い捨てC18 ZipTipミニカラム(Millipore社,米)を使用して脱塩した。
【0093】
スペクトルを収集し、テストタンパク質に由来する存在ペプチド質量に関して分析した。これらは、抗原処理がブロックされた細胞を含む対照細胞から得られたスペクトルと比較することによって識別した。スタフィロキナーゼを用いた処理後に、スタフィロキナーゼによるものと考えられるペプチド質量が識別された。スタフィロキナーゼで処理しなかった細胞でも、または代謝阻害剤で処理した細胞でも等しいイオンピークは明らかでなかった。
Claims (34)
- 特定の生物活性を有し、かつ同じ生物活性を有する非修飾タンパク質またはポリペプチドよりも低い免疫原性または高い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチド、あるいはワクチン抗原を開発する方法であって、
(i)前記タンパク質またはポリペプチドと細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる細胞またはそのエキソソームビヒクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)前記細胞またはそのエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドに関して、前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、薬剤タンパク質またはポリペプチド、あるいはワクチン抗原の配列に標準の方法に従って割り当てる
ことによって実行される方法。 - (iv)前記ペプチドを修飾して、前記ペプチドのMHC分子への結合が変更されるようにする段階と、
(v)修飾した1つまたは複数のペプチド配列を、タンパク質またはポリペプチド分子配列内に標準の方法に従って組み込むことによって、最終的な薬剤タンパク質またはポリペプチドの配列変異体を構築する段階と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。 - 段階(ii)の前記細胞またはそのエキソソームビヒクルの分析が、質量分光法(MS)を使用して実行される、請求項1または2に記載の方法。
- MALDI−MSが使用される、請求項3に記載の方法。
- ESI−MSが使用される、請求項3に記載の方法。
- 薬剤タンパク質またはポリペプチドが、前記タンパク質またはポリペプチドと細胞を接触させた後に1つまたは複数の前記ペプチドがもはや結合しないように修飾される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
- 段階(i)に基づいて細胞またはエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドがMHC分子と結合し、段階(ii)に基づく前記細胞またはそのエキソソームベシクルの分析がMSを使用して実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- 段階(i)に基づいて細胞またはエキソソームベシクルの表面に結合されたペプチドが、細胞内ペプチダーゼおよび転送経路の生成物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- より低い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチドを開発するための請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、免疫原性ペプチドの修飾が、ペプチドのMHC分子への結合を排除または低減させ、任意選択で、請求項1に指示された細胞表面への結合に関して修飾したペプチドをテストすることによって実行される方法。
- MHC分子に対するペプチドの結合の排除または低減が、薬剤タンパク質またはポリペプチド中のペプチドの配列領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換し、挿入しまたは削除することによって実行される、請求項9に記載の方法。
- より高い免疫原性を有する薬剤タンパク質またはポリペプチドを開発するための請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、ペプチドの修飾が、ペプチドのMHC分子への結合を強化し、任意選択で、請求項1に指示された細胞表面への結合に関して修飾したペプチドをテストすることによって実行される方法。
- MHC分子へのペプチドの結合の強化が、ペプチドの配列領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を置換し、挿入しまたは削除し、T細胞エピトープとして機能するペプチドの活性を増大させ、および/またはT細胞エピトープが拘束されるMHCタイプの範囲を広げ、および/またはいくつかの異なるエピトープを単一の実体に結合することによって実行される、請求項11に記載の方法。
- ワクチンの開発方法であって、
(i)免疫原活性を有するタンパク質またはポリペプチドあるいは微生物と細胞とを接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる前記細胞またはそのエキソソームベシクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)ペプチドが結合した表面に関して前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、タンパク質またはポリペプチドの配列に標準の方法に従って割り当て、
(iv)1つまたは複数のペプチドを、ワクチン分子配列内に標準の方法に従って組み込むことによって、最終的な薬剤ワクチンの配列変異体を構築し、
前記細胞またはその中のエキソソームベシクルの分析がMSを使用して実行される
方法。 - MHC分子を産生するように操作されたヒト細胞系統を使用する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
- 親(非操作)細胞系統がMHC分子を産生しない、請求項14に記載の方法。
- 親細胞系統がMHCクラスI分子を産生しない、請求項14に記載の方法。
- 親細胞系統がMHCクラスII分子を産生しない、請求項14に記載の方法。
- それ自体のMHC分子を産生しない非ヒト細胞がMHC分子を産生するように操作され、指示されるように使用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
- MHC分子がMHCクラスIIに由来する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
- MHC分子がHLA−DR、HLA−DQおよびHLA−DPである、請求項19に記載の方法。
- MHC分子がMHCクラスIに由来する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
- さまざまなMHCアロタイプおよび遺伝子型の包括的な混合物を提供する細胞系統または細胞試料の組合せが使用される、請求項19に記載の方法。
- ペプチドが外因性タンパク質または微生物を起源とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
- ペプチドが内因性タンパク質を起源とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
- タンパク質、ポリペプチドまたは微生物を加えた後にMHC分子上にペプチドを提示するヒト樹状細胞またはそのエキソソームベシクルが使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
- タンパク質またはポリペプチドを加えた後にMHC分子上にペプチドを提示するヒト抗原提示細胞またはそのエキソソームベシクルが使用される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
- ペプチド分析の前にMHC分子が濃縮される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
- 分析の前にペプチドが細胞表面から溶離される、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
- 分析の前にペプチドがMHC分子から溶離される、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
- 診断のための検査を開発する方法であって、
(i)表面ペプチドに対して適当なヒト細胞を分析し、
(ii)(a)細胞表面に現れたペプチドのプロファイルを作成し、任意選択で、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するために他のプロファイルと比較し、または(b)細胞表面上に特異的なペプチドの配列を、ヒト細胞に関連した異常または病気を識別するのに使用することができる特異的なペプチドを決定する手段として決定する
ことによって実行される方法。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドを薬剤治療実体として使用すること。
- 請求項11から13のいずれか一項に記載の方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドをワクチンとして使用すること。
- 請求項9または10に記載の方法によって得られたタンパク質またはポリペプチドを、より低いイモノゲニシティを有する薬剤治療実体として使用すること。
- タンパク質またはポリペプチドに由来する、細胞またはそのエキソソームベシクルの表面のペプチドを検出する方法であって、
(i)前記タンパク質またはポリペプチド、あるいはこのタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子と細胞を接触させ、接触させなかった基準細胞上に表示される表面ペプチドのレパートリーとは異なる細胞またはそのエキソソームベシクル上の表面ペプチドのレパートリーを生成させ、
(ii)ペプチドが結合した表面に関して前記細胞またはそのエキソソームベシクルを分析し、
(iii)前記ペプチドを、タンパク質またはポリペプチドの配列に標準の方法に従って割り当て、
細胞またはエキソソームベシクルの分析がMS、好ましくはMALDI−MSによって実行される
方法。
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