JP2004505096A - Mycoplasmahyopneumoniaeに対する温度感受性の生ワクチン - Google Patents
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Abstract
本発明は、Mycoplasma hyopneumoniaeに対する、生きた温度感受性ワクチンを提供する。本発明はまた、Mycoplasma hyopneumoniaeのコロニー形成または感染に対してブタにワクチン接種する方法を提供する。単離および精製された温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチン。ATCC受託番号PTA−3549である、請求項1に記載の細菌ワクチン。生きた温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを、生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて含む、ワクチン調製物。
Description
【0001】
(発明の背景)
ブタ呼吸疾患複合症(porcine respiratory disease complex)(PRDC)は、遅い成長、減少した食餌効率、食欲不振、熱、咳および呼吸困難によって特徴付けられるような、ブタの生産性の低下を引き起こす、ますます増える重要な原因である。Mycoplasma hyopneumoniae(Mycoplasma suipneumoniaeとも称される)は、ブタのマイコプラスマ肺炎(地方病性肺炎、ウイルス性肺炎、感染性肺炎およびブタの前葉肺炎としても知られる)の原因因子である。M.hyopneumoniaeは、細菌よりも小さくかつ単純な構造であるが、ウイルスよりは複雑な、小さい原核生物微生物である。ウイルスと異なり、これらは、自由な生きた存在であるが、これらは、しばしば、真核生物細胞と共に見出される。なぜなら、これらは、血清含有培地での増殖に一般に必要な外因性ステロールおよび脂肪酸に対する、完全な要求性を有するからである。M.hyopneumoniaeは、細胞膜によって結合されるが、細胞壁によっては結合されない。これらは、約750,000塩基対の長さの、非常に小さいゲノムを有する。ブタは、このマイコプラズマの唯一の公知の宿主である。
【0002】
マイコプラズマ肺炎は、世界中の国々のブタに生じる、最も一般的なブタの気道疾患の1つである。PigMon(米国の北中西部中の農園における病変を評価するモニタリングプログラム)からの調査データは、サンプリングされた動物の間で>70%の罹患率で、中西部のブタの群れの97%において肺炎を同定した(Dybvig 1992)。マイコプラズマ肺炎は、低い死亡率を有するが、高い罹患率を有する(30〜80%)。この疾患は、一般に、かなりの経済的損失を生じる。なぜなら、これは、成長速度の減少、非効率および動物における病気を引き起こすからである。
【0003】
この疾患は、感染したブタから放出される風媒性の生物によって、鼻腔を介してブタからブタへ感染する。このマイコプラズマは、肺の先端葉および心臓側の葉(cardiac lobe)において、自身を深く定着させ、そこで、これらは、可視的な濃い紫色の病変または灰色の病変を引き起こし、そして呼吸困難および体重増加の減少を引き起こす。M.hyopneumoniaeによる一次感染の後に、他のマイコプラズマ種(例えば、M.hyorhinusおよびM.floculare)ならびに細菌性病原体(Pasteurella種およびBordetella種)による二次感染が続き得る。M.hyopneumoniaeによって引き起こされるこれらの気道疾患は、動物が市場に向けて供給される時点での体重増加の減少を引き起こす。従って、この生物に感染した動物は、非感染の対応物よりも屠殺の時点で価値が低い。
【0004】
多くの農場が複数の用地、高健康プログラムを採用していてさえも、肺炎の罹患率は目に見えて減少しないが、疫学的には変化し得る。ブタ肺炎の深刻な経済的結果に起因して、Mycoplasma hyopneumoniaeに対するワクチンおよび処置が、探求されてきた。ブタにおけるマイコプラズマの予防は、抗生物質処置およびワクチン接種の混合によって達成される。このアプローチは、高価かつ予測不能の両方である欠点を有し、多くの農場は、これらの手順後にほとんど改善を示さない。Mycoplasma hyopneumoniaeに対するワクチン接種は、比較的最近導入され、ワクチンは、ここ6〜7年の間のみ市販されている。
【0005】
ブタに対するマイコプラズマワクチンは、大きな商業的成功を収めたが、現場の条件下でのそれらの利点は、なお大いに検討中である。一般に、これらのワクチンは、屠殺の時点での肺炎の肺の平均病変スコアを減少させるが、罹患ブタの罹患率に影響しない。すなわち、同数のブタが罹患するが、最終的な病変は、より小さくなるようである。実績に対するマイコプラズマワクチンの影響は、さらにより疑わしいが、存在するにしても、進歩または改造のいずれかにおける明確な改善を示す論文は、ほとんどない。
【0006】
これらのワクチンの比較的不十分な実績についての理由は、ブタにおけるマイコプラズマ感染の特性と一緒に、これらが殺傷された細菌ワクチン(bacterin)であるという事実に関連し得る。M.hyopneumoniaeは、絨毛上皮細胞の、非侵襲性の侵入者(colonizer)である。この生物は、呼吸系を侵襲しないので、殺傷された細菌ワクチンによって惹起される循環抗体は、上皮障壁を突破し、そして気管支管腔中に分泌されなければならず、このプロセスは、困難かつ非効率的である。マイコプラズマ細菌ワクチンは、この粘膜分泌を達成し得るようにするために、高レベルの全身性抗体を惹起することができなくてはならない。もちろん、これは、比較的高用量の抗原および積極的アジュバントを必要とし、これらのワクチンを、高価かつ投与を困難にしている。
【0007】
別の問題が、二倍用量の注射可能な方法によって現在利用可能なワクチンを投与するための必要性を扱う。このような二倍用量の方法は、かなりのブタの取り扱いを必要とし、これは、時間集約的であり、そして動物に対するストレスを生じる。農場が大きくなるにつれ、二倍用量の注射ワクチン接種法は、ますます望まれなくなり、手順は、このような取り扱いを必要としない代替のワクチン接種法を必要とする。
【0008】
従って、M.hyopneumoniaeに対する、投与が容易な安全で効率的なワクチンについての必要性が、現在存在する。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、単離および精製された温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを提供する。この細菌ワクチンは、ATCC受託番号__であり得る。
【0010】
本発明はまた、生きた温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを、生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて含むワクチン調製物を提供する。この細菌ワクチンは、ATCC受託番号__であり得る。このワクチン調製物は、免疫学的アジュバントをさらに含み得る。また、このワクチン調製物は、少なくとも1つのさらなる感染性因子を含み得る。感染性因子は、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物であり得る。特に、この感染性因子は、Borderella bronchiseptica、Pasteurella multocida A型もしくはD型、またはHaemophilus parasuisであり得る。
【0011】
本発明はまた、免疫応答を誘導する方法および/または生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて、生きた温度感受性のMycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを含む有効量のワクチン調製物をブタに投与することによって、Mycoplasma hyopneumoniaeのコロニー形成(colonization)または感染に対して感受性のブタを保護する方法を提供する。このワクチン調製物は、免疫学的アジュバントをさらに含み得る。このワクチンは、皮下注射または筋内注射、経口摂取または鼻腔内で投与され得る。このワクチン調製物は、1以上の用量で投与され得る。
【0012】
(発明の詳細な説明)
用語「ワクチン」は、活性な免疫を生成するために使用される生物学的因子を意味するその広い意味において、本明細書中で定義される。ワクチンは、一般に、抗原の4つのカテゴリー:非天然の経路を介して投与される生きた微生物、生きた弱毒化微生物、殺傷された微生物および画分、またはさらに単一抗原もしくは微生物の生成物、のうち1つを使用する。全ての状況において、目的は、疾患を与えないで抗原を提示することである。多くの異なる侵襲性の因子および手段(ホルマリン、アジ化合物、凍結融解、超音波処理、熱処理、急な圧力低下、界面活性剤(特に非イオン性界面活性剤)、リゾチーム、フェノール、タンパク質分解酵素およびプロピオラクトンを含む)が使用されてきた。ワクチンの例としては、米国特許第4,894,332号;同第5,788,962号;同第5,338,543号;および同第5,968,525号;ならびにEP571,648号に記載されるワクチンが挙げられる。
【0013】
組成物またはワクチンに対する免疫学的応答は、宿主における、目的のポリペプチドまたはワクチンに対する細胞性免疫応答および/または抗体媒介性免疫応答の発生である。通常、このような応答は、目的の組成物またはワクチンに含まれる抗原に対して特異的に指向される、被験体産生抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞障害性T細胞からなる。本発明のワクチンはまた、免疫応答を増強することが公知の、有効量の免疫学的アジュバントを含み得る。
【0014】
さらに、ワクチンの目的は、天然の感染に対する保護を提供することである。検出可能な免疫応答(例えば、検出可能量の抗体を産生すること)は、必ずしも保護的でなくてもよい。従って、以前のワクチンは、Mycoplasma hyopneumoniaeによる感染からブタを保護するために試みられてきたが、受容可能な保護レベルは、達成されていない。
【0015】
ブタにおける使用のために現在利用可能なマイコプラズマワクチンの代替は、生ワクチンを使用することである。このような生ワクチンは、多くの利点を有する。例えば、局所免疫は、エアロゾル調製物で、粘膜部位に直接ワクチンを送達することによって達成され得、1用量のみのワクチンが必要であり、より安く製造できる。本発明者らは、正常なブタ体温では増殖できないが、インビトロまたはより低い温度では増殖できる、温度感受性の変異体を調製した。
【0016】
簡潔には、M.hyopneumoniaeを、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンに暴露させることによって、変異誘発した。変異したM.hyopneumoniaeを、Friis培地中で増殖させ、ニトロソグアニジンで処理し、次いでFriisアガロースプレートで10〜14日間増殖させた。十分に分離したコロニーを含む各プレートを、ニトロセルロースフィルター上に複写し、そして細胞質LDHの存在を検出するために、エピ蛍光(epifluorescence)のために使用した。LDHを発現しないコロニーを選択し、そして動物研究のために使用した。ニトロソグアニジンに曝露させた生物を、34℃で増殖させた。コロニーを、ニトロセルロース上にブロットし、そして寒天プレートに移し、39℃でインキュベートした。34℃で増殖するが39℃では増殖しないコロニーを選択し、ATCCに寄託した(ATCC受託番号__)。
【0017】
M.hyopneumoniaeの感染に対して保護的なワクチンの調製のために、本発明は、生きた温度感受性の細菌を使用する。多くの微生物は、何世代にもわたって培養物中で増殖した場合、その感染性を喪失し、そして抗原を変化させる。実際、ポリオに対する標準的なワクチンは、何世代にもわたって培養物中で増殖した後の、変異が起き、その結果、神経または脳の組織においてもはや増殖せず、従って、その病原性のほとんどを喪失している、実質的に生きたポリオウイルスである。このウイルスについて、重要な抗原は変化していない。
【0018】
M.hyopneumoniaeの適切な株を、種々の供給源から獲得し得る。株を、ATCCおよびNRRLのような受託機関から獲得し得る。疾患の広範な分散を考慮して、多くの株を、病気の動物由来の肺分泌物または組織からM.hyopneumoniaeを回収し、適切な培養培地に接種することによって、容易に獲得し得る。
【0019】
本発明の生きた温度感受性のM.hyopneumoniae(M.hyopneumoniae「細菌ワクチン」とも称される)を、ワクチンとして直接使用する。有効量は、種、系統、年齢、大きさ、健康状態、およびその動物が以前に同じ生物に対するワクチンを受けているか否かに依存する。ワクチン中のさらなる成分および投与経路もまた、有効投薬量に影響する。各バッチの細菌ワクチンを、個々に較正し得る。この有効投薬量は、異なる投薬量の秩序立った試験によって、当業者により容易に決定可能である。
【0020】
用語「予防する」または「予防」は、本明細書に記載されるM.hyopneumoniaeにより引き起こされるマイコプラスマ肺炎に対するワクチンに関して使用される場合、M.hyopneumoniaeにより引き起こされるマイコプラスマ肺炎の発生率を抑制するか、M.hyopneumoniaeのコロニー形成を予防するか、またはブタにおけるこの疾患の重篤度を回復もしくは軽減するワクチンを意味する。
【0021】
投与する者にとって、ワクチンの用量は、細菌ワクチンの濃度、投与経路および動物の状態に基づいて容易に決定可能である。有効量は、当業者によって、容易に決定される。重要な因子は、用量が、少なくとも部分的な保護効果を自然感染に対して提供することである。従って、ワクチンの有効量は、ブタにおいて、マイコプラスマ肺炎に対する予防効果に十分なワクチン量である。この用量は、免疫学的応答を、宿主動物において誘発する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、ワクチンの有効量は、約106〜109コロニー形成単位(CFU)/ml、そして好ましくは約106〜107CFU/mlであるよう決定される。活性成分は、典型的に組成物の約1%〜95%(w/w)の範囲であるか、必要な場合、さらに高いか低くあり得る。投与される量は、ワクチン接種を考える動物の年齢、体重および体調のような因子に依存する。この量はまた、抗体を産生する動物の免疫系の能力および所望される予防の程度に依存する。有効量は、当業者により、慣用的試験を介して、用量応答曲線を確立して容易に確立され得る。被験体は、1回以上の投与でワクチンを投与されて免疫される。この生物の免疫状態を維持するために必要であるので、複数回用量を投与し得る。
【0023】
ワクチン調製物は、免疫応答を、自然感染を実質的に予防するのに十分なように高める1つ以上のアジュバントを含み得る。アジュバントとは、注射される免疫原との混合物が応答を増加させる任意の物質をいう。適切なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N−ジオクタデシル−N’−N−ビス(2−ヒドロキシエチル−プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシル−グリセロールおよびプルロニックポリオール(pluronic polyol));ポリアニオン(polanion)(例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸、カルボポル(carbopol));ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド、MPL、ジメチルグリシン(aimethylglycine)、ツフシン、油性乳剤、ミョウバンおよびこれらの混合物)。他の可能なアジュバントとしては、E.coli熱不安定毒素またはコレラ毒素のBペプチドサブユニットが挙げられる(McGhee 1993)。
【0024】
広範に使用される手順としては、無機ゲル(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)の投与が挙げれられる。最も有効なアジュバントのいくつかは、油中水型乳剤であり、特に、これらに生ミコバクテリアまたは死ミコバクテリアが懸濁されたもの(例えば、フロイント完全アジュバント)である。しかし、ミコバクテリアを含まない乳剤(不完全なフロイントアジュバン)は、低刺激性であり、しばしば使用される。細菌ワクチンの免疫原性を増大するために、水酸化アルミニウムおよび/またはDEAEデキストラン(ジエチルアミノエチルエーテルデキストラン)を含むアジュバントが使用され得る。水酸化アルミニウムの濃度は、非常に広範であり、投与経路に依存して約1.5%までの範囲にあり得る。0.1%〜1.0%の範囲の濃度がより典型的である。同様に、DEAEデキストランの濃度は広範であり得る(例えば、約6%までが使用され得る)。水酸化アルミニウムおよびDEAEデキストランのワクチン中の濃度は、約0.24%〜約0.39%の水酸化アルミニウムおよび約1.5%のDEAEデキストランであり得る。
【0025】
DEAEデキストランは、種々の分子量で市販されている。本実施例は、分子量500,000ダルトンのDEAEデキストランを使用するが、異なるサイズもまた、アジュバントとして使用可能である。硫酸デキストランは、アジュバントとして使用されるが、その結果は、それほど印象的ではなかった。
【0026】
水酸化アルミニウムおよびDEAEデキストランの最適な濃度は、他方の固定された濃度で存在する各々の濃度を変えて、最も予防的であるものを決定することにより、本発明で使用するものによって容易に決定される。
【0027】
細菌ワクチン(アジュバントを伴うか、または伴わないに関わらず)は、ワクチン接種に受容可能なビヒクルと混合され得る。周知の例としては、滅菌水、生理食塩水または緩衝溶液が挙げられる。溶液中での懸濁性および分散を改善する添加剤もまた使用され得る。ワクチンを運ぶ多くの従来のビヒクルが公知であり、上記参考文献中に言及される。適切なビヒクルを選択することは、投与経路およびレシピエント動物の状態に依存して、当業者の能力の範囲内である。
【0028】
免疫は、当業者に周知の方法(例えば、経口、鼻腔内、エアロゾルおよび注射(IM、SC、IV、IDまたは他の方法のいずれか))のいずれかにより実施され得る。投与経路は、ワクチン接種される動物、ワクチンを投与されるヒトのワクチン歴および利便性に依存する。好ましい投与経路は、鼻腔内である。例えば、ワクチンは、エアロゾルワクチン接種を介して投与され得る(Murphy 1993)。この投与経路が好ましいのは、M.hyopneumoniaeに対する予防性免疫状態が、この疾患を予防する上で、循環する抗体に由来するよりむしろ局所免疫(肺)および細胞媒介性免疫であり得るからである。気道の免疫系に対する抗原(ワクチン)の提示は、局所免疫応答を刺激し得る。従って、ワクチンの局所的適用は、より効果的であり得る。さらに、ワクチンをエアロゾルとして、閉じた納屋または空間に適用することでブタにそれを吸入させることにより、多数の動物を、集中的な産生系中でワクチン接種するのに関する労働を軽減する。エアロゾルワクチン接種はまた、スプレーワクチン接種とも称されて、特定の疾患に対する家畜の効率的なワクチン接種において、商業的ベースで、最近使用されている。
【0029】
反復したワクチン接種は、周期的な時間間隔で適用されて、最初からかまたは最後の投与から長い時間の後に免疫応答を増大し得る。ワクチン接種間の時間間隔は、動物の年齢および状態に依存する。最初のワクチン接種について、この期間は一般に、1週間より長く、好ましくは約2〜3週の間である。以前にワクチン接種された動物については、ほぼ年に1回、妊娠前または妊娠中に、接種を実施し得る。
【0030】
M.hyopneumoniae細菌ワクチンは、単独で使用されるか、または他のワクチンを組み合わせて、都合のよいまたは増大された結果のために使用され得る。組み合わせワクチンは、好ましくは複数の感染に対する予防を提供する。M.hyopneumoniaeならびにBorderella bronchisepticaならびにPasteurella multocidaのA型およびD型の組み合わせが特に関心がもたれる。なぜなら3つ全ては、ブタにおける重要な疾患を引き起こすからである。さらに、このような組み合わせは、互いにこれらの能力に干渉せずに、予防的免疫応答を刺激する。これら他のワクチンは、全く異なる手段で非活性化され得る。M.hyopneumoniae細菌ワクチンと組み合わされる他のワクチンはまた、M.hyopneumoniae細菌ワクチンに対して使用されるのと同じアジュバントに適合するはずである。
【0031】
肺スコアまたは肺病変スコアは、肺組織で検出可能な病変範囲を示す。このスコア付けシステムは、GoodwinおよびWhittlestone(1973)Br.Vet.J.129:456−462に記載されるように実施される。
【0032】
鼻腔内処方物は、鼻粘膜に対する刺激性も繊毛機能を有意に妨害することも引き起こさないビヒクルを含み得る。希釈剤(例えば、水、生理食塩水または他の公知の物質)は、本発明において用いられ得る。鼻腔処方物はまた、保存剤(例えば、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムであるが、これらに限定しない)を含み得る。界面活性剤は、対象タンパク質の鼻粘膜による吸収を増大するように提供され得る。
【0033】
経口の液体調製物は、例えば、水性または油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤の形態中にあり得るか、または錠剤形態中または使用前に水もしくは適切なビヒクルで再構成される製品中に乾燥して存在し得る。このような液体調製物は、従来の添加剤(例えば、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含み得る)または保存剤)を含み得る。
【0034】
ワクチンを調製するため、生きた温度感受性M.hyopneumoniaeを単離する。次いでM.hyopneumoniaeの量を適切な濃度に合わせ、必要に応じて適切なワクチンアジュバントと合わせて、使用するために包装する。
【0035】
以下の実施例は、例示を目的としており、本発明を限定することを意図しない。
【0036】
(実施例)
(実施例1:Mycoplasma hyopneumoniaeの温度感受性変異体の調製)
M.hyopneumoniaeを以下のようにN−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンに曝すことで変異した。この方法は、いくつかのマイコプラスマにおいて首尾よく使用されてきた(Lam 1984、Lai 1990)。M.hyopneumoniaeを、Friis培地中で増殖させ、100mg/mlニトロソグアニジンで処理し、次いで、Friisアガロースプレート上で10〜14日間増殖させた。ニトロソグアニジンに曝した生物体を34℃で増殖させた。次いでコロニーをニトロセルロース上にブロットし、寒天プレートに移し、39℃でインキュベートした。34℃で増殖するが、39℃では増殖しないコロニーを、さらなる使用のために選択した。次いで、選択した変異体を3回クローン化し、さらなる使用まで−80℃で保存した。単離物はATCCに寄託した(ATCC寄託番号_____)。
【0037】
(実施例2:ワクチン調製物)
ワクチンを調製するために、1つの選択した変異体(ATCC寄託番号_____)を34℃で、Friis培地上において、混濁度および酸性色の変化が明らかになるまで増殖させた。コロニー形成単位(cfu)をFriisブロス中に10倍希釈し、希釈あたり5個の複製を用いて決定した。ワクチンを、新鮮なブロス培養物として、アジュバントを添加せずに用いた。
【0038】
(実施例3:ブタワクチン接種の予備実験)
小規模の予備実験を、ワクチンの安全性および有効性を予備的に評価するために実施した。この実施にあたって、16匹の生後5日目の子ブタを、マイコプラスマに汚染されていない農場から入手し、College of Veterinary Medicine、University of Minnesotaの隔離されたユニット中で飼育した。
【0039】
(実験プロトコル)
動物を無作為に、それぞれ8匹のブタの2つの群に割り当て、以下の処置を与えた:
群 動物 ワクチン接種 負荷 剖検
1 4 鼻腔内(2回投与) ワクチン接種後12日 7週間目
1 4 筋肉内(1回投与) 同じ 7週間目
2 4 プラセボ(2回投与) 同じ 同じ
2 4 筋肉内 なし 1、2、3、7日目
この設計は、ワクチンの粘膜提供(鼻腔内)と非経口提供(筋肉内)の両方を試験するように作製した。ワクチン接種せずに負荷したコントロール動物およびワクチン接種して負荷しなかった動物を含む群2を用いて、製品の安全性を評価した。
【0040】
(モニターされたパラメータ)
ブタを毎週、体温およびマイコプラスマ感染を示唆する呼吸器の兆候についてモニターした。これらをまた毎週、鼻腔中のM.hyopneumoniaeの存在について、PCR技術を用いて試験した(Calsamiglia 1999)。剖検にあたって、全ての動物を、肺病変について巨視的および微視的に評価した。M.hyopneumoniaeの存在を、気管気管支をかき出したものからのPCRおよび細菌培養を用いて評価した。この時点で、動物をまた、マイコプラスマ抗体の存在について、標準的ELISA技術を用いて評価した。
【0041】
(結果)
(変異産物および選択)
34℃で増殖するが39℃で増殖しない温度感受性変異体を首尾よく産生した。2つの変異コロニーを選択して、クローン化し、そして凍結した。次いで、変異コロニーの1つ(MNtemp−1)を3回継代して、安定性について試験した。この変異株は、復帰せず、この処理の後に39℃で増殖できなかった。M.hyopneumoniaeとしての変異体の同一性をPCRによって確立した。
【0042】
(予備研究)
(ワクチン安全性)
経路に関わりなく、全てのワクチン接種されたブタは、正常の温度の38.5〜39.5℃を維持した。また、これらの動物は、観察される間、呼吸困難である臨床的証拠を示さなかった。ワクチン接種されたブタ(ただし、負荷なし)は、注射部位において、観察日(ワクチン接種後1、2、3および7日目)に、巨視的にも微視的にも、明確な病変がなかった。
【0043】
(ワクチン効力)
ワクチン用量は108cfu/mlであった。
【0044】
(ワクチン効力)
筋肉内にワクチン接種されたどの子ブタも、屠殺時に、巨視的な肺炎病変を示さなかった。これらの動物の1匹(1/4)は、気管支周囲において単核球の軽度の浸潤のある小さな微視的病変を有していた。この動物は、気管気管支洗浄液および気管気管支をかき出したものからの培養物にM.hyopneumoniaeを生じた。同様に、鼻腔内ワクチン接種したものの1匹は、小さな巨視的肺炎病変を示し(肺の3%が冒されていた)、気管支周囲における単核球の浸潤およびいくぶんの心嚢液の蓄積を示す。この動物はまた、M.hyopneumoniaeを、剖検物において培地上に生じ、蛍光抗体アッセイに対して、陽性であった。ワクチン接種され、負荷されたブタの残り(6/8)は、巨視的にも微視的にも病変を有さず、気管気管支試料から陽性のM.hyopneumoniaeを生じなかった。
【0045】
対象的に、ワクチン接種されずに負荷された3匹の動物(3/4)は、巨視的な肺炎病変を有し(肺が9%、9%および20%冒されていた)および全ての動物は、微視的な肺炎病変を有していた。全ての動物は、蛍光陽性であり、気管気管支の培養物上にM.hyopneumoniaeを生じた。これらのブタは、負荷後4日間に39.5℃を超える体温を有した。さらに、2/4の動物は、咳および呼吸困難の臨床的兆候を呈した。処置に関わりなく、どのブタでも、Tween−ELISA技術を用いることにより評価されるように、マイコプラスマに対してセロコンバージョンが起きなかった。
【0046】
(議論)
温度感受性変異体(MNtemp−1)を、ニトロソグアニジンに曝して、無作為変異を介して首尾よく産生した。クローニングの後、MNtemp−1株は、少なくとも3回の継代に対して安定であり、野生型に復帰しないことを証明した。この株の精製は、標準的PCR同定により確認した。
【0047】
この予備研究において、MNtemp−1で調製された生ワクチンは、毒性のM.hyopneumoniaeで負荷した後のブタの6/8を、完全に首尾よく予防することを証明した。各群において1匹の動物は、小さな微視的病変を有し、剖検物においてM.hyopneumoniaeの陽性培養物を生じた。これらの動物の1匹はまた、小さな(3%)巨視的病変を有した。逆にワクチン接種されなかったブタは、大きな病変スコアを有し、これらの75%は、巨視的病変を呈し、これらの100%は、微視的病変を呈し、これらは全て、蛍光抗体アッセイに陽性であった。また、これらのコントロール動物の全ては、気管気管支洗浄液から、陽性マイコプラズマ培養物を生じた。
【0048】
これらの結果は、Mycoplasma hyopneumoniaeの安定な温度感受性変異体が首尾よく産生されたことを示す。これらはまた、この変異体が、この因子により生じるブタの肺炎に対するワクチンとして首尾よく使用され得ることを示唆する。
【0049】
(実施例4:拡張されたワクチン接種研究)
拡張されたワクチン接種を実施して、予備研究で見出された結果を確認した。この実施のために、41匹の子ブタを、マイコプラズマに汚染されていない農場から入手し、隔離されたユニットで、飼育した。上記実施例3において概要を述べたプロトコルに大体従った。動物を、4つのブタ群に無作為に割り当てて、以下の処置を与えた:
(Mycoplasma hyopneumoniaeに対する、弱毒化されたワクチンの評価)
部屋A3:ワクチン接種なし、かつ負荷したもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
201 3 71 8
202 4 52 5
203 5 71 12
204 4 50 10
205 5 64 7
206 4 63 8
207 5 63 5
208 3 51 5
209 5 71 0
210 3 56 9
部屋A5:鼻腔内ワクチン接種し、かつ負荷したもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
416 4 50 4
417 6 68 9
418 5 49 7
419 5 39 0
420 6 66 0
421 5 50 0
422 6 56 8
423 7 67 0
424 5 56 0
425 5 64 0
部屋A7:鼻腔内ワクチン接種して負荷しなかったもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
401 5 70 0
402 5 65 0
403 6 70 0
404 4 69 0
405 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
406 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
407 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
408 5 66 0
部屋A9: IMワクチン接種し、かつ負荷したもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
211 4 51 0
212 4 59 0
213 4 73 8
214 5 76 0
215 3 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
216 5 83 0
217 4 鎖肛
NA
218 5 63 2
219 5 82 0
220 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
221 4 54 0
222 4 55 4
223 5 65 0
これらの結果はさらに、M.hyopneumoniaeに対する、弱毒化されたワクチンの安全性および効力を確かにした。これらはまた、この変異体が、この因子により生じるブタの肺炎に対するワクチンとして首尾よく使用され得ることを示す。
【0050】
全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが、特異的かつ個別に、参考として援用されることが意図されたのと同じ程度で、本明細書において参考文献として援用される。本発明において、添付される特許請求の範囲の範囲を逸脱せずに、多くの変更および改変がなされ得ることは、当業者に明らかである。
【0051】
(参考文献)
【0052】
【表1】
(発明の背景)
ブタ呼吸疾患複合症(porcine respiratory disease complex)(PRDC)は、遅い成長、減少した食餌効率、食欲不振、熱、咳および呼吸困難によって特徴付けられるような、ブタの生産性の低下を引き起こす、ますます増える重要な原因である。Mycoplasma hyopneumoniae(Mycoplasma suipneumoniaeとも称される)は、ブタのマイコプラスマ肺炎(地方病性肺炎、ウイルス性肺炎、感染性肺炎およびブタの前葉肺炎としても知られる)の原因因子である。M.hyopneumoniaeは、細菌よりも小さくかつ単純な構造であるが、ウイルスよりは複雑な、小さい原核生物微生物である。ウイルスと異なり、これらは、自由な生きた存在であるが、これらは、しばしば、真核生物細胞と共に見出される。なぜなら、これらは、血清含有培地での増殖に一般に必要な外因性ステロールおよび脂肪酸に対する、完全な要求性を有するからである。M.hyopneumoniaeは、細胞膜によって結合されるが、細胞壁によっては結合されない。これらは、約750,000塩基対の長さの、非常に小さいゲノムを有する。ブタは、このマイコプラズマの唯一の公知の宿主である。
【0002】
マイコプラズマ肺炎は、世界中の国々のブタに生じる、最も一般的なブタの気道疾患の1つである。PigMon(米国の北中西部中の農園における病変を評価するモニタリングプログラム)からの調査データは、サンプリングされた動物の間で>70%の罹患率で、中西部のブタの群れの97%において肺炎を同定した(Dybvig 1992)。マイコプラズマ肺炎は、低い死亡率を有するが、高い罹患率を有する(30〜80%)。この疾患は、一般に、かなりの経済的損失を生じる。なぜなら、これは、成長速度の減少、非効率および動物における病気を引き起こすからである。
【0003】
この疾患は、感染したブタから放出される風媒性の生物によって、鼻腔を介してブタからブタへ感染する。このマイコプラズマは、肺の先端葉および心臓側の葉(cardiac lobe)において、自身を深く定着させ、そこで、これらは、可視的な濃い紫色の病変または灰色の病変を引き起こし、そして呼吸困難および体重増加の減少を引き起こす。M.hyopneumoniaeによる一次感染の後に、他のマイコプラズマ種(例えば、M.hyorhinusおよびM.floculare)ならびに細菌性病原体(Pasteurella種およびBordetella種)による二次感染が続き得る。M.hyopneumoniaeによって引き起こされるこれらの気道疾患は、動物が市場に向けて供給される時点での体重増加の減少を引き起こす。従って、この生物に感染した動物は、非感染の対応物よりも屠殺の時点で価値が低い。
【0004】
多くの農場が複数の用地、高健康プログラムを採用していてさえも、肺炎の罹患率は目に見えて減少しないが、疫学的には変化し得る。ブタ肺炎の深刻な経済的結果に起因して、Mycoplasma hyopneumoniaeに対するワクチンおよび処置が、探求されてきた。ブタにおけるマイコプラズマの予防は、抗生物質処置およびワクチン接種の混合によって達成される。このアプローチは、高価かつ予測不能の両方である欠点を有し、多くの農場は、これらの手順後にほとんど改善を示さない。Mycoplasma hyopneumoniaeに対するワクチン接種は、比較的最近導入され、ワクチンは、ここ6〜7年の間のみ市販されている。
【0005】
ブタに対するマイコプラズマワクチンは、大きな商業的成功を収めたが、現場の条件下でのそれらの利点は、なお大いに検討中である。一般に、これらのワクチンは、屠殺の時点での肺炎の肺の平均病変スコアを減少させるが、罹患ブタの罹患率に影響しない。すなわち、同数のブタが罹患するが、最終的な病変は、より小さくなるようである。実績に対するマイコプラズマワクチンの影響は、さらにより疑わしいが、存在するにしても、進歩または改造のいずれかにおける明確な改善を示す論文は、ほとんどない。
【0006】
これらのワクチンの比較的不十分な実績についての理由は、ブタにおけるマイコプラズマ感染の特性と一緒に、これらが殺傷された細菌ワクチン(bacterin)であるという事実に関連し得る。M.hyopneumoniaeは、絨毛上皮細胞の、非侵襲性の侵入者(colonizer)である。この生物は、呼吸系を侵襲しないので、殺傷された細菌ワクチンによって惹起される循環抗体は、上皮障壁を突破し、そして気管支管腔中に分泌されなければならず、このプロセスは、困難かつ非効率的である。マイコプラズマ細菌ワクチンは、この粘膜分泌を達成し得るようにするために、高レベルの全身性抗体を惹起することができなくてはならない。もちろん、これは、比較的高用量の抗原および積極的アジュバントを必要とし、これらのワクチンを、高価かつ投与を困難にしている。
【0007】
別の問題が、二倍用量の注射可能な方法によって現在利用可能なワクチンを投与するための必要性を扱う。このような二倍用量の方法は、かなりのブタの取り扱いを必要とし、これは、時間集約的であり、そして動物に対するストレスを生じる。農場が大きくなるにつれ、二倍用量の注射ワクチン接種法は、ますます望まれなくなり、手順は、このような取り扱いを必要としない代替のワクチン接種法を必要とする。
【0008】
従って、M.hyopneumoniaeに対する、投与が容易な安全で効率的なワクチンについての必要性が、現在存在する。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、単離および精製された温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを提供する。この細菌ワクチンは、ATCC受託番号__であり得る。
【0010】
本発明はまた、生きた温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを、生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて含むワクチン調製物を提供する。この細菌ワクチンは、ATCC受託番号__であり得る。このワクチン調製物は、免疫学的アジュバントをさらに含み得る。また、このワクチン調製物は、少なくとも1つのさらなる感染性因子を含み得る。感染性因子は、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物であり得る。特に、この感染性因子は、Borderella bronchiseptica、Pasteurella multocida A型もしくはD型、またはHaemophilus parasuisであり得る。
【0011】
本発明はまた、免疫応答を誘導する方法および/または生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて、生きた温度感受性のMycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを含む有効量のワクチン調製物をブタに投与することによって、Mycoplasma hyopneumoniaeのコロニー形成(colonization)または感染に対して感受性のブタを保護する方法を提供する。このワクチン調製物は、免疫学的アジュバントをさらに含み得る。このワクチンは、皮下注射または筋内注射、経口摂取または鼻腔内で投与され得る。このワクチン調製物は、1以上の用量で投与され得る。
【0012】
(発明の詳細な説明)
用語「ワクチン」は、活性な免疫を生成するために使用される生物学的因子を意味するその広い意味において、本明細書中で定義される。ワクチンは、一般に、抗原の4つのカテゴリー:非天然の経路を介して投与される生きた微生物、生きた弱毒化微生物、殺傷された微生物および画分、またはさらに単一抗原もしくは微生物の生成物、のうち1つを使用する。全ての状況において、目的は、疾患を与えないで抗原を提示することである。多くの異なる侵襲性の因子および手段(ホルマリン、アジ化合物、凍結融解、超音波処理、熱処理、急な圧力低下、界面活性剤(特に非イオン性界面活性剤)、リゾチーム、フェノール、タンパク質分解酵素およびプロピオラクトンを含む)が使用されてきた。ワクチンの例としては、米国特許第4,894,332号;同第5,788,962号;同第5,338,543号;および同第5,968,525号;ならびにEP571,648号に記載されるワクチンが挙げられる。
【0013】
組成物またはワクチンに対する免疫学的応答は、宿主における、目的のポリペプチドまたはワクチンに対する細胞性免疫応答および/または抗体媒介性免疫応答の発生である。通常、このような応答は、目的の組成物またはワクチンに含まれる抗原に対して特異的に指向される、被験体産生抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞障害性T細胞からなる。本発明のワクチンはまた、免疫応答を増強することが公知の、有効量の免疫学的アジュバントを含み得る。
【0014】
さらに、ワクチンの目的は、天然の感染に対する保護を提供することである。検出可能な免疫応答(例えば、検出可能量の抗体を産生すること)は、必ずしも保護的でなくてもよい。従って、以前のワクチンは、Mycoplasma hyopneumoniaeによる感染からブタを保護するために試みられてきたが、受容可能な保護レベルは、達成されていない。
【0015】
ブタにおける使用のために現在利用可能なマイコプラズマワクチンの代替は、生ワクチンを使用することである。このような生ワクチンは、多くの利点を有する。例えば、局所免疫は、エアロゾル調製物で、粘膜部位に直接ワクチンを送達することによって達成され得、1用量のみのワクチンが必要であり、より安く製造できる。本発明者らは、正常なブタ体温では増殖できないが、インビトロまたはより低い温度では増殖できる、温度感受性の変異体を調製した。
【0016】
簡潔には、M.hyopneumoniaeを、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンに暴露させることによって、変異誘発した。変異したM.hyopneumoniaeを、Friis培地中で増殖させ、ニトロソグアニジンで処理し、次いでFriisアガロースプレートで10〜14日間増殖させた。十分に分離したコロニーを含む各プレートを、ニトロセルロースフィルター上に複写し、そして細胞質LDHの存在を検出するために、エピ蛍光(epifluorescence)のために使用した。LDHを発現しないコロニーを選択し、そして動物研究のために使用した。ニトロソグアニジンに曝露させた生物を、34℃で増殖させた。コロニーを、ニトロセルロース上にブロットし、そして寒天プレートに移し、39℃でインキュベートした。34℃で増殖するが39℃では増殖しないコロニーを選択し、ATCCに寄託した(ATCC受託番号__)。
【0017】
M.hyopneumoniaeの感染に対して保護的なワクチンの調製のために、本発明は、生きた温度感受性の細菌を使用する。多くの微生物は、何世代にもわたって培養物中で増殖した場合、その感染性を喪失し、そして抗原を変化させる。実際、ポリオに対する標準的なワクチンは、何世代にもわたって培養物中で増殖した後の、変異が起き、その結果、神経または脳の組織においてもはや増殖せず、従って、その病原性のほとんどを喪失している、実質的に生きたポリオウイルスである。このウイルスについて、重要な抗原は変化していない。
【0018】
M.hyopneumoniaeの適切な株を、種々の供給源から獲得し得る。株を、ATCCおよびNRRLのような受託機関から獲得し得る。疾患の広範な分散を考慮して、多くの株を、病気の動物由来の肺分泌物または組織からM.hyopneumoniaeを回収し、適切な培養培地に接種することによって、容易に獲得し得る。
【0019】
本発明の生きた温度感受性のM.hyopneumoniae(M.hyopneumoniae「細菌ワクチン」とも称される)を、ワクチンとして直接使用する。有効量は、種、系統、年齢、大きさ、健康状態、およびその動物が以前に同じ生物に対するワクチンを受けているか否かに依存する。ワクチン中のさらなる成分および投与経路もまた、有効投薬量に影響する。各バッチの細菌ワクチンを、個々に較正し得る。この有効投薬量は、異なる投薬量の秩序立った試験によって、当業者により容易に決定可能である。
【0020】
用語「予防する」または「予防」は、本明細書に記載されるM.hyopneumoniaeにより引き起こされるマイコプラスマ肺炎に対するワクチンに関して使用される場合、M.hyopneumoniaeにより引き起こされるマイコプラスマ肺炎の発生率を抑制するか、M.hyopneumoniaeのコロニー形成を予防するか、またはブタにおけるこの疾患の重篤度を回復もしくは軽減するワクチンを意味する。
【0021】
投与する者にとって、ワクチンの用量は、細菌ワクチンの濃度、投与経路および動物の状態に基づいて容易に決定可能である。有効量は、当業者によって、容易に決定される。重要な因子は、用量が、少なくとも部分的な保護効果を自然感染に対して提供することである。従って、ワクチンの有効量は、ブタにおいて、マイコプラスマ肺炎に対する予防効果に十分なワクチン量である。この用量は、免疫学的応答を、宿主動物において誘発する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、ワクチンの有効量は、約106〜109コロニー形成単位(CFU)/ml、そして好ましくは約106〜107CFU/mlであるよう決定される。活性成分は、典型的に組成物の約1%〜95%(w/w)の範囲であるか、必要な場合、さらに高いか低くあり得る。投与される量は、ワクチン接種を考える動物の年齢、体重および体調のような因子に依存する。この量はまた、抗体を産生する動物の免疫系の能力および所望される予防の程度に依存する。有効量は、当業者により、慣用的試験を介して、用量応答曲線を確立して容易に確立され得る。被験体は、1回以上の投与でワクチンを投与されて免疫される。この生物の免疫状態を維持するために必要であるので、複数回用量を投与し得る。
【0023】
ワクチン調製物は、免疫応答を、自然感染を実質的に予防するのに十分なように高める1つ以上のアジュバントを含み得る。アジュバントとは、注射される免疫原との混合物が応答を増加させる任意の物質をいう。適切なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N−ジオクタデシル−N’−N−ビス(2−ヒドロキシエチル−プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシル−グリセロールおよびプルロニックポリオール(pluronic polyol));ポリアニオン(polanion)(例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸、カルボポル(carbopol));ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド、MPL、ジメチルグリシン(aimethylglycine)、ツフシン、油性乳剤、ミョウバンおよびこれらの混合物)。他の可能なアジュバントとしては、E.coli熱不安定毒素またはコレラ毒素のBペプチドサブユニットが挙げられる(McGhee 1993)。
【0024】
広範に使用される手順としては、無機ゲル(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)の投与が挙げれられる。最も有効なアジュバントのいくつかは、油中水型乳剤であり、特に、これらに生ミコバクテリアまたは死ミコバクテリアが懸濁されたもの(例えば、フロイント完全アジュバント)である。しかし、ミコバクテリアを含まない乳剤(不完全なフロイントアジュバン)は、低刺激性であり、しばしば使用される。細菌ワクチンの免疫原性を増大するために、水酸化アルミニウムおよび/またはDEAEデキストラン(ジエチルアミノエチルエーテルデキストラン)を含むアジュバントが使用され得る。水酸化アルミニウムの濃度は、非常に広範であり、投与経路に依存して約1.5%までの範囲にあり得る。0.1%〜1.0%の範囲の濃度がより典型的である。同様に、DEAEデキストランの濃度は広範であり得る(例えば、約6%までが使用され得る)。水酸化アルミニウムおよびDEAEデキストランのワクチン中の濃度は、約0.24%〜約0.39%の水酸化アルミニウムおよび約1.5%のDEAEデキストランであり得る。
【0025】
DEAEデキストランは、種々の分子量で市販されている。本実施例は、分子量500,000ダルトンのDEAEデキストランを使用するが、異なるサイズもまた、アジュバントとして使用可能である。硫酸デキストランは、アジュバントとして使用されるが、その結果は、それほど印象的ではなかった。
【0026】
水酸化アルミニウムおよびDEAEデキストランの最適な濃度は、他方の固定された濃度で存在する各々の濃度を変えて、最も予防的であるものを決定することにより、本発明で使用するものによって容易に決定される。
【0027】
細菌ワクチン(アジュバントを伴うか、または伴わないに関わらず)は、ワクチン接種に受容可能なビヒクルと混合され得る。周知の例としては、滅菌水、生理食塩水または緩衝溶液が挙げられる。溶液中での懸濁性および分散を改善する添加剤もまた使用され得る。ワクチンを運ぶ多くの従来のビヒクルが公知であり、上記参考文献中に言及される。適切なビヒクルを選択することは、投与経路およびレシピエント動物の状態に依存して、当業者の能力の範囲内である。
【0028】
免疫は、当業者に周知の方法(例えば、経口、鼻腔内、エアロゾルおよび注射(IM、SC、IV、IDまたは他の方法のいずれか))のいずれかにより実施され得る。投与経路は、ワクチン接種される動物、ワクチンを投与されるヒトのワクチン歴および利便性に依存する。好ましい投与経路は、鼻腔内である。例えば、ワクチンは、エアロゾルワクチン接種を介して投与され得る(Murphy 1993)。この投与経路が好ましいのは、M.hyopneumoniaeに対する予防性免疫状態が、この疾患を予防する上で、循環する抗体に由来するよりむしろ局所免疫(肺)および細胞媒介性免疫であり得るからである。気道の免疫系に対する抗原(ワクチン)の提示は、局所免疫応答を刺激し得る。従って、ワクチンの局所的適用は、より効果的であり得る。さらに、ワクチンをエアロゾルとして、閉じた納屋または空間に適用することでブタにそれを吸入させることにより、多数の動物を、集中的な産生系中でワクチン接種するのに関する労働を軽減する。エアロゾルワクチン接種はまた、スプレーワクチン接種とも称されて、特定の疾患に対する家畜の効率的なワクチン接種において、商業的ベースで、最近使用されている。
【0029】
反復したワクチン接種は、周期的な時間間隔で適用されて、最初からかまたは最後の投与から長い時間の後に免疫応答を増大し得る。ワクチン接種間の時間間隔は、動物の年齢および状態に依存する。最初のワクチン接種について、この期間は一般に、1週間より長く、好ましくは約2〜3週の間である。以前にワクチン接種された動物については、ほぼ年に1回、妊娠前または妊娠中に、接種を実施し得る。
【0030】
M.hyopneumoniae細菌ワクチンは、単独で使用されるか、または他のワクチンを組み合わせて、都合のよいまたは増大された結果のために使用され得る。組み合わせワクチンは、好ましくは複数の感染に対する予防を提供する。M.hyopneumoniaeならびにBorderella bronchisepticaならびにPasteurella multocidaのA型およびD型の組み合わせが特に関心がもたれる。なぜなら3つ全ては、ブタにおける重要な疾患を引き起こすからである。さらに、このような組み合わせは、互いにこれらの能力に干渉せずに、予防的免疫応答を刺激する。これら他のワクチンは、全く異なる手段で非活性化され得る。M.hyopneumoniae細菌ワクチンと組み合わされる他のワクチンはまた、M.hyopneumoniae細菌ワクチンに対して使用されるのと同じアジュバントに適合するはずである。
【0031】
肺スコアまたは肺病変スコアは、肺組織で検出可能な病変範囲を示す。このスコア付けシステムは、GoodwinおよびWhittlestone(1973)Br.Vet.J.129:456−462に記載されるように実施される。
【0032】
鼻腔内処方物は、鼻粘膜に対する刺激性も繊毛機能を有意に妨害することも引き起こさないビヒクルを含み得る。希釈剤(例えば、水、生理食塩水または他の公知の物質)は、本発明において用いられ得る。鼻腔処方物はまた、保存剤(例えば、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムであるが、これらに限定しない)を含み得る。界面活性剤は、対象タンパク質の鼻粘膜による吸収を増大するように提供され得る。
【0033】
経口の液体調製物は、例えば、水性または油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤の形態中にあり得るか、または錠剤形態中または使用前に水もしくは適切なビヒクルで再構成される製品中に乾燥して存在し得る。このような液体調製物は、従来の添加剤(例えば、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含み得る)または保存剤)を含み得る。
【0034】
ワクチンを調製するため、生きた温度感受性M.hyopneumoniaeを単離する。次いでM.hyopneumoniaeの量を適切な濃度に合わせ、必要に応じて適切なワクチンアジュバントと合わせて、使用するために包装する。
【0035】
以下の実施例は、例示を目的としており、本発明を限定することを意図しない。
【0036】
(実施例)
(実施例1:Mycoplasma hyopneumoniaeの温度感受性変異体の調製)
M.hyopneumoniaeを以下のようにN−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジンに曝すことで変異した。この方法は、いくつかのマイコプラスマにおいて首尾よく使用されてきた(Lam 1984、Lai 1990)。M.hyopneumoniaeを、Friis培地中で増殖させ、100mg/mlニトロソグアニジンで処理し、次いで、Friisアガロースプレート上で10〜14日間増殖させた。ニトロソグアニジンに曝した生物体を34℃で増殖させた。次いでコロニーをニトロセルロース上にブロットし、寒天プレートに移し、39℃でインキュベートした。34℃で増殖するが、39℃では増殖しないコロニーを、さらなる使用のために選択した。次いで、選択した変異体を3回クローン化し、さらなる使用まで−80℃で保存した。単離物はATCCに寄託した(ATCC寄託番号_____)。
【0037】
(実施例2:ワクチン調製物)
ワクチンを調製するために、1つの選択した変異体(ATCC寄託番号_____)を34℃で、Friis培地上において、混濁度および酸性色の変化が明らかになるまで増殖させた。コロニー形成単位(cfu)をFriisブロス中に10倍希釈し、希釈あたり5個の複製を用いて決定した。ワクチンを、新鮮なブロス培養物として、アジュバントを添加せずに用いた。
【0038】
(実施例3:ブタワクチン接種の予備実験)
小規模の予備実験を、ワクチンの安全性および有効性を予備的に評価するために実施した。この実施にあたって、16匹の生後5日目の子ブタを、マイコプラスマに汚染されていない農場から入手し、College of Veterinary Medicine、University of Minnesotaの隔離されたユニット中で飼育した。
【0039】
(実験プロトコル)
動物を無作為に、それぞれ8匹のブタの2つの群に割り当て、以下の処置を与えた:
群 動物 ワクチン接種 負荷 剖検
1 4 鼻腔内(2回投与) ワクチン接種後12日 7週間目
1 4 筋肉内(1回投与) 同じ 7週間目
2 4 プラセボ(2回投与) 同じ 同じ
2 4 筋肉内 なし 1、2、3、7日目
この設計は、ワクチンの粘膜提供(鼻腔内)と非経口提供(筋肉内)の両方を試験するように作製した。ワクチン接種せずに負荷したコントロール動物およびワクチン接種して負荷しなかった動物を含む群2を用いて、製品の安全性を評価した。
【0040】
(モニターされたパラメータ)
ブタを毎週、体温およびマイコプラスマ感染を示唆する呼吸器の兆候についてモニターした。これらをまた毎週、鼻腔中のM.hyopneumoniaeの存在について、PCR技術を用いて試験した(Calsamiglia 1999)。剖検にあたって、全ての動物を、肺病変について巨視的および微視的に評価した。M.hyopneumoniaeの存在を、気管気管支をかき出したものからのPCRおよび細菌培養を用いて評価した。この時点で、動物をまた、マイコプラスマ抗体の存在について、標準的ELISA技術を用いて評価した。
【0041】
(結果)
(変異産物および選択)
34℃で増殖するが39℃で増殖しない温度感受性変異体を首尾よく産生した。2つの変異コロニーを選択して、クローン化し、そして凍結した。次いで、変異コロニーの1つ(MNtemp−1)を3回継代して、安定性について試験した。この変異株は、復帰せず、この処理の後に39℃で増殖できなかった。M.hyopneumoniaeとしての変異体の同一性をPCRによって確立した。
【0042】
(予備研究)
(ワクチン安全性)
経路に関わりなく、全てのワクチン接種されたブタは、正常の温度の38.5〜39.5℃を維持した。また、これらの動物は、観察される間、呼吸困難である臨床的証拠を示さなかった。ワクチン接種されたブタ(ただし、負荷なし)は、注射部位において、観察日(ワクチン接種後1、2、3および7日目)に、巨視的にも微視的にも、明確な病変がなかった。
【0043】
(ワクチン効力)
ワクチン用量は108cfu/mlであった。
【0044】
(ワクチン効力)
筋肉内にワクチン接種されたどの子ブタも、屠殺時に、巨視的な肺炎病変を示さなかった。これらの動物の1匹(1/4)は、気管支周囲において単核球の軽度の浸潤のある小さな微視的病変を有していた。この動物は、気管気管支洗浄液および気管気管支をかき出したものからの培養物にM.hyopneumoniaeを生じた。同様に、鼻腔内ワクチン接種したものの1匹は、小さな巨視的肺炎病変を示し(肺の3%が冒されていた)、気管支周囲における単核球の浸潤およびいくぶんの心嚢液の蓄積を示す。この動物はまた、M.hyopneumoniaeを、剖検物において培地上に生じ、蛍光抗体アッセイに対して、陽性であった。ワクチン接種され、負荷されたブタの残り(6/8)は、巨視的にも微視的にも病変を有さず、気管気管支試料から陽性のM.hyopneumoniaeを生じなかった。
【0045】
対象的に、ワクチン接種されずに負荷された3匹の動物(3/4)は、巨視的な肺炎病変を有し(肺が9%、9%および20%冒されていた)および全ての動物は、微視的な肺炎病変を有していた。全ての動物は、蛍光陽性であり、気管気管支の培養物上にM.hyopneumoniaeを生じた。これらのブタは、負荷後4日間に39.5℃を超える体温を有した。さらに、2/4の動物は、咳および呼吸困難の臨床的兆候を呈した。処置に関わりなく、どのブタでも、Tween−ELISA技術を用いることにより評価されるように、マイコプラスマに対してセロコンバージョンが起きなかった。
【0046】
(議論)
温度感受性変異体(MNtemp−1)を、ニトロソグアニジンに曝して、無作為変異を介して首尾よく産生した。クローニングの後、MNtemp−1株は、少なくとも3回の継代に対して安定であり、野生型に復帰しないことを証明した。この株の精製は、標準的PCR同定により確認した。
【0047】
この予備研究において、MNtemp−1で調製された生ワクチンは、毒性のM.hyopneumoniaeで負荷した後のブタの6/8を、完全に首尾よく予防することを証明した。各群において1匹の動物は、小さな微視的病変を有し、剖検物においてM.hyopneumoniaeの陽性培養物を生じた。これらの動物の1匹はまた、小さな(3%)巨視的病変を有した。逆にワクチン接種されなかったブタは、大きな病変スコアを有し、これらの75%は、巨視的病変を呈し、これらの100%は、微視的病変を呈し、これらは全て、蛍光抗体アッセイに陽性であった。また、これらのコントロール動物の全ては、気管気管支洗浄液から、陽性マイコプラズマ培養物を生じた。
【0048】
これらの結果は、Mycoplasma hyopneumoniaeの安定な温度感受性変異体が首尾よく産生されたことを示す。これらはまた、この変異体が、この因子により生じるブタの肺炎に対するワクチンとして首尾よく使用され得ることを示唆する。
【0049】
(実施例4:拡張されたワクチン接種研究)
拡張されたワクチン接種を実施して、予備研究で見出された結果を確認した。この実施のために、41匹の子ブタを、マイコプラズマに汚染されていない農場から入手し、隔離されたユニットで、飼育した。上記実施例3において概要を述べたプロトコルに大体従った。動物を、4つのブタ群に無作為に割り当てて、以下の処置を与えた:
(Mycoplasma hyopneumoniaeに対する、弱毒化されたワクチンの評価)
部屋A3:ワクチン接種なし、かつ負荷したもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
201 3 71 8
202 4 52 5
203 5 71 12
204 4 50 10
205 5 64 7
206 4 63 8
207 5 63 5
208 3 51 5
209 5 71 0
210 3 56 9
部屋A5:鼻腔内ワクチン接種し、かつ負荷したもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
416 4 50 4
417 6 68 9
418 5 49 7
419 5 39 0
420 6 66 0
421 5 50 0
422 6 56 8
423 7 67 0
424 5 56 0
425 5 64 0
部屋A7:鼻腔内ワクチン接種して負荷しなかったもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
401 5 70 0
402 5 65 0
403 6 70 0
404 4 69 0
405 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
406 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
407 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
408 5 66 0
部屋A9: IMワクチン接種し、かつ負荷したもの
ブタID 最初の体重 最終体重 肺スコア
211 4 51 0
212 4 59 0
213 4 73 8
214 5 76 0
215 3 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
216 5 83 0
217 4 鎖肛
NA
218 5 63 2
219 5 82 0
220 4 ワクチン接種2週間後に安楽死(6/4) 0
221 4 54 0
222 4 55 4
223 5 65 0
これらの結果はさらに、M.hyopneumoniaeに対する、弱毒化されたワクチンの安全性および効力を確かにした。これらはまた、この変異体が、この因子により生じるブタの肺炎に対するワクチンとして首尾よく使用され得ることを示す。
【0050】
全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが、特異的かつ個別に、参考として援用されることが意図されたのと同じ程度で、本明細書において参考文献として援用される。本発明において、添付される特許請求の範囲の範囲を逸脱せずに、多くの変更および改変がなされ得ることは、当業者に明らかである。
【0051】
(参考文献)
【0052】
【表1】
Claims (17)
- 単離および精製された温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチン。
- ATCC受託番号PTA−3549である、請求項1に記載の細菌ワクチン。
- 生きた温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを、生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて含む、ワクチン調製物。
- 前記細菌ワクチンが、ATCC受託番号PTA−3549である、請求項3に記載のワクチン調製物。
- 前記ワクチンが、免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項3に記載のワクチン調製物。
- 少なくとも1つのさらなる感染性因子をさらに含み、該感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物である、請求項5に記載のワクチン調製物。
- 前記感染性因子が、Borderella bronchiseptica、Pasteurella multocida A型もしくはD型、またはHaemophilus parasuisである、請求項6に記載のワクチン調製物。
- Mycoplasma hyopneumoniaeのコロニー形成または感染に対して感受性であるブタを保護する方法であって、該方法は、生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて、生きた温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを含むワクチン調製物の有効量を該ブタに投与する工程を包含する、方法。
- 前記ワクチン調製物が、免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項8に記載の方法。
- 前記ワクチン調製物が、皮下注射もしくは筋内注射、経口摂取または鼻腔内によって投与される、請求項8に記載の方法。
- 前記ワクチン調製物が、鼻腔内に投与される、請求項8に記載の方法。
- 前記ワクチン調製物が、1以上の用量で投与される、請求項8に記載の方法。
- Mycoplasma hyopneumoniaeによって引き起こされるマイコプラズマ肺炎に対して感受性のブタにおいて免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、生理学的に受容可能な非毒性ビヒクルと組み合わせて、生きた温度感受性Mycoplasma hyopneumoniae細菌ワクチンを含むワクチン調製物の有効量を該ブタに投与する工程を包含する、方法。
- 前記ワクチン調製物が、免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項13に記載の方法。
- 前記ワクチン調製物が、皮下注射もしくは筋内注射、経口摂取または鼻腔内によって投与される、請求項13に記載の方法。
- 前記ワクチン調製物が、鼻腔内に投与される、請求項13に記載の方法。
- 前記ワクチン調製物が、1以上の用量で投与される、請求項13に記載の方法。
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