JP2004504585A - 化合物の組織バリア輸送を最適にするためのシステムおよび方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明の分野は、処方物および化学的組成物をスクリーニングするための組織バリア・アッセイに関する。
【0002】
【従来の技術】
腸管上皮または気道上皮などの上皮バリアを横切る化合物(例えば薬物)の輸送のイン・ビトロ分析は、一般的にUssing型チャンバを使用して行う。Ussing型チャンバを使用して組織バリア・アッセイを行うためには、生体から無傷のシートとして一片の組織を取りだし、内部チャンバが2房チャンバになっているような密閉式内部中空チャンバを備えるデバイス中に固定する。その後生体に適合する溶液を両チャンバに充填し、目的の薬物を一方のチャンバ溶液に加える。次に薬物が組織バリアを横切る輸送率を決定するために、各時刻で反対側のチャンバ溶液からサンプルを採取する。この種の組織バリア・アッセイは手間がかかるだけでなく非効率的で、かつ組織シートの単位面積に由来する非常に限られた数の独立サンプルだけに限られる。
【0003】
経皮薬物送達とは、薬物が経皮薬物送達デバイスから皮膚を通過して患者の血流へ輸送することを含む組織送達の型である。経皮薬物送達には、他の薬物送達の方法と比べて多くの利点がある。一つの明らかな利点は、(注射)針と針がもたらす痛みを回避することができる。これは、反復投与される薬物には特に望ましい。注射針の不快が回避できれば、薬物療法への患者のコンプライアンスの向上につながる。
【0004】
経皮薬物送達の別の利点は、数日から数週間に及ぶかもしれない長期のまたは持続的送達が提供できる可能性である。経口または肺送達など他の送達方法は、一般的に体内で好適な薬物濃度を持続するため薬物を反復投与する必要がある。持続的な経皮送達を行えば、投与量の維持は長期に渡り自動的に行われる。これは体内で(血中濃度)半減期が短い薬物、例えばペプチドまたはタンパク質などに特に有益である。
【0005】
最後の利点は、経皮投与されたとき薬物分子は皮膚を通過して血流に至るだけでよい。経皮投与された薬物は肝臓内での初回通過代謝を回避し、また消化管内での低いpHや酵素など他の分解経路をも回避する。
皮膚は生体の一番大きな臓器である。皮膚は不透過性が高く水分および電解質の損失を妨げる。皮膚は主として2層、外側の表皮と内側の真皮に区分される。表皮は皮膚の外層で厚さ50〜100ミクロンである(Monteiro−Riviere,1991;Champion他,1992)。真皮は皮膚の内層で厚さは1〜3mmと様々である。経皮薬物送達の目標は、薬物をこの皮膚の層へ到達させることで、その層には毛細血管が存在し薬物が全身に送達されることを可能にする。表皮には神経終末または血管は存在しない。表皮の主たる目的は皮膚表面上に死細胞の丈夫な層を作り、それによって環境から生体を保護することである。この表皮の最外層は角質層と呼ばれ、角質層を含む死細胞は角層細胞またはケラチノサイトと呼ばれる。
【0006】
角質層は通常れんが壁として模型化または記述される(Elias,1983;Elite,1988)。この「れんが(bricks)」は死んで平らになった角層細胞である。一般的に角質層全体に約10〜15の角層細胞が垂直に積み重ねられている(Monteiro−Riviere,1991;Champion他,1992)。角層細胞は、脂質二重層(「モルタル」)のシートに包まれている。脂質二重層のシートの間隔は50nm以下である。一般的には角層細胞の各対の間には約4個から8個の脂質二重層がある。この脂質マトリックスは、主としてセラミド類、スフィンゴ脂質類、コレステロール、脂肪酸類、およびステロール類から構成され水分は殆ど存在しない(Lampe他,1983「a」;Lampe他,1983「b」;Elias,1988)。
【0007】
角質層は皮膚の最も薄い層であるが、この角質層は皮膚を横切って侵入する分子または微生物に対する第一バリアである。多くの分子にとって、この角質層を横切ることは大変困難であり、それが経皮薬物送達手段が今日まで広く使用されなかった原因となっている。一度分子が角質層を通過すれば、拡散は表皮、真皮から血管にまで急速に行われる。従って、経皮薬物送達研究の関心の多くは、分子や薬物を角質層を超えて輸送することに集中していた。
【0008】
経皮薬物送達デバイスの最も一般的な様式は経皮薬物「パッチ(patch)」で、薬物または医薬品は皮膚に隣接して配された貯蔵部に含まれる(SchaeferおよびRedelmeier,1996)。この薬物分子は一般的に単純な拡散によって皮膚を通過する。輸送は、皮膚内と皮膚外への分子拡散の割合、そして皮膚内への薬物の区分けによって支配される。一般に、経皮薬物送達は小さな親油分子、例えばスコポラミン、ニトログリセリン、およびニコチンなど容易に皮膚を透過するものに限られる。送達は遅く通常薬物が皮膚を通過するのに時間がかかり、そして、この治療生物学的影響を及ぼすために極めて少量の薬物を必要とするときにのみ効果的である。(GuyおよびHadgraft,1989)。
【0009】
経皮送達は時間がかかるので、分子輸送率を促進するために多くの物質が使用されている。これらの物質は、化学的促進剤または透過促進剤として公知である。化学的促進剤は、角質層中の薬物の溶解度を増加、または角質層中の薬物の透過性を増加させることより、皮膚を通過する薬物のフラックスを増加させる。可能な促進剤の数は多く、かつ促進剤の組合せは独立する各構成物質の存在によって予想を超えて薬物のフラックスを向上させることが公知であるために、その選択はさらに複雑なものになっている。
【0010】
経皮パッチなどの経皮薬物送達デバイスは一般に接着剤を含み、この接着剤はデバイスを皮膚と密接させておく役目を持つが、さらに、この接着剤は薬物が溶解または分散しているマトリックスを形成してもよい。使用可能な接着剤には多くの異なる形態があり、薬物または薬物と促進剤とを共に使用するために、どの接着剤を使用するかを選択することは、しばしば非常に難しい問題である。
【0011】
現在、適切な接着剤と促進剤の選択、さらに薬物に関するそれらの相対的比率は、安全とみなされている物、他の薬物で有効であったものからの一般的なガイドラインによってのみ決定されている。創薬の殆どが試行錯誤的実験を通して行われている。
現在まで多くの経皮輸送実験は、比較的に大きなヒト皮膚拡散セルを使用し、その場合ソース側に添加剤を含む薬物溶液を入れ、シンク側に一般的に生理食塩水または真皮のモデルと考えられる他の溶液を入れる。皮膚膜がこのセルを2つの側に分け隔てるが、それは多くの場合組織バンクから供給された全皮膚サンプルから注意深く剥離された角質層の死皮膚である。デバイスの容量は一般的に5ccまたはそれ以上である。角質層のフィルムを通り抜ける薬物のフラックスを測定するために、定期的に細胞のシンク側からサンプルを採取する。全工程は大変手間のかかる作業であり、かつ大量の皮膚の使用が必要となるが、それを得ることは極めて難しい。したがって、多くの可能な化学的物質の組合せのうち、比較的少数のものしか分析できない。
【0012】
したがって、経皮輸送を含む、化合物や医薬品さらに他の成分の組織バリア輸送に最適な組成物または処方物を同定するため、多数のサンプルをスクリーニングする方法について当該分野には相変わらず需要がある。
【0013】
【発明の概要】
本発明はハイ・スループットシステムおよび多数の成分の組み合わせを様々な濃度および正体で同時に調製するための方法、ならびに経皮送達のような各組み合わせ中の成分の組織バリア伝達を試験するハイ・スループット法に関する。
本発明の方法によって、医薬品などの活性成分が、例えば皮膚、肺組織、気管組織、鼻組織、膀胱組織、胎盤、膣組織、直腸組織、胃組織、消化管組織、および眼または角膜組織などの組織を通過して輸送される時、付加的なまたは不活性な成分、例えば賦形剤、キャリア、賦形剤、接着剤、および添加剤などの影響の測定が可能となる。本発明はこのようにして経皮輸送などの組織輸送を向上するために総合的に最適な組成物または処方物を決定する目的で医薬組成物または処方物をハイ・スループット試験することを包含する。本発明の特定の実施形態を以下に詳述する。
【0014】
1つの実施形態において、本発明は組織を通過する成分の輸送を測定するための装置に関し、この装置は支持プレート、支持プレートによって支持されるサンプル・アレイ、サンプル・アレイを覆う膜または組織標本、およびサンプル・アレイとは反対側の膜または組織標本に固定された貯蔵プレートを備える。本発明の1つの態様において、アレイ中の各サンプルは、異なる活性成分、または活性成分の異なる物理的状態が、サンプル・アレイ中の1つ以上のサンプルに存在するような、成分から成る特有な組成物または処方物を含む。
【0015】
本発明の別の態様において、アレイの各サンプルは共通成分と、少なくとも1つの付加成分とを含み、各サンプルは、
(i)付加成分の正体
(ii)付加成分に対する共通成分の割合、または
(iii)共通成分の物理的状態
の少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なる。
【0016】
「共通成分」とは、サンプル・アレイ中の全てのサンプル中に含まれる成分である。1つの実施形態において、この共通成分は活性成分であり、この活性成分は医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品または栄養補助食品であることが好ましい。このサンプルは液体、溶液、懸濁液、乳濁液、固体、半固体、ゲル、フォーム、ペースト、軟膏、または粉体の形を有していてよい。
【0017】
別の実施形態において、本発明はサンプルの組織バリア輸送を測定する方法に関し、前記方法は、
(a)各サンプルが活性成分と少なくとも一つの付加成分を有し、各サンプルが
(i)前記活性成分の正体
(ii)前記付加成分の正体
(iii)前記付加成分に対する活性成分の割合、または
(iv)活性成分の物理的状態
のうち少なくとも1つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なる、サンプル・アレイを調製すること、
(b)前記サンプル・アレイを組織標本で覆うこと、
(c)前記サンプル・アレイに対応する貯蔵部アレイを備える貯蔵プレートを前記サンプル・アレイとは反対側の組織標本側に固定すること、
(d)前記貯蔵部のアレイに貯蔵媒体を充填すること、ならびに
(e)各サンプルから組織標本を通過する前記活性成分の輸送を測定するため、1つ以上の時点で各貯蔵部の活性成分の濃度を測定すること、
を含む。
【0018】
好ましい実施形態において、この活性成分は医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品、または栄養補助食品である。別の実施形態においてこの組織標本は皮膚である。
別の実施形態において、本発明は組織を通過するサンプルのフラックスを分析または測定する方法に関し、前記方法は
(a)各サンプルが共通成分と少なくとも一つの付加成分を有し、各サンプルが
(i)前記活性成分の正体、
(ii)前記付加成分の正体
(iii)前記共通成分の前記付加成分に対する割合、または
(iv)前記共通成分の物理状態、
のうち少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なるサンプル・アレイを調製すること、
(b)前記サンプル・アレイを組織標本で覆うこと、
(c)前記サンプル・アレイに対応する貯蔵アレイを有する貯蔵プレートを前記サンプル・アレイとは反対側の前記組織標本側に固定すること、
(d)前記貯蔵アレイを貯蔵媒体で充填すること、ならびに
(e)各サンプルから前記組織標本を通過する前記共通成分のフラックスを測定するため、時間の関数として各貯蔵部内の前記共通成分の濃度を測定すること、を含む。
【0019】
代替の実施形態において、前記方法はウェル間の側方拡散を回避するために前記組織標本を切断する付加的な工程を含む。この方法は組織標本の欠陥または不均質性を分析し、その欠陥を修正または修復する工程を含むのが好ましい。
別の実施形態において、本発明は角質層を通る活性成分または薬物のフラックスをハイ・スループット・スクリーニング(high−throughput screening)する装置および方法に関し、そのようなフラックスは、少なくとも部分的に、促進剤の存在下において組織内の薬物透過性によって測定されることを認める。この透過性は一般に少なくとも2つの要因、即ち、角質層内での活性成分または薬物の溶解性と、角質層内での活性成分または薬物の拡散性、によって支配される。これらの2つ要因、溶解性と拡散性は、角質層を通るフラックスを間接的に評価する方法によって個別に測定できる。このように、活性成分と不活性化合物から成る異なる組成物のサンプルを含むウェルのアレイを構築し、限定しないが、その組成物には、活性成分/キャリアまたは賦形剤、/活性成分/キャリアまたは賦形剤/促進剤/、活性成分/接着剤/促進剤/添加剤、が含まれる。所定の量の角質層を各ウェルに加え、活性成分または薬物が組織サンプルへ取りこまれる割合を、同様に調製したウェルから異なる時点で組織を抽出して測定する。溶解量が経時変化しなくなるまで十分時間を置いた後濃度を測定すれば、活性成分または薬物の組織内での平衡濃度を評価できる。この割合と溶解度の積は活性成分または薬物の透過性に比例する。
【0020】
本発明のハイ・スループット組合せスクリーニング・システムおよび方法は、限定しないが、経皮送達デバイスの構築を含む、組成物または処方物が望ましい結果を達成するために、最適な組成物または処方物を同定する。特に、本発明のシステムおよび方法は、1)組成物または処方物が望ましい特性を達成するための、1つ以上の活性成分および1つ以上の不活性成分を含む最適な組成物または処方物、2)薬物との適合性が最適の接着剤/促進剤/添加剤の組成物、3)角質層を通る薬物のフラックスが最大となるために最適な薬物/接着剤/促進剤/添加剤の組成物、および4)細胞毒性が最小となるために最適な薬物/接着剤/促進剤/添加剤の組成物、を同定するために使用してもよい。
【0021】
本発明の特徴および利点は、添付の図面と合わせ以下の詳細な説明によってより理解される。
【0022】
[発明の詳細な説明]
本発明は、例えば、医薬品もしくは薬物、他の化合物、または化合物の組合せなどの活性化合物の組織バリア輸送を向上させるハイ・スループット組合せシステムおよび方法に関する。1つの実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、組織輸送を介して患者へ送達される医薬組成物または処方物のための、最適な成分(例えば溶剤、キャリア、輸送促進剤、接着剤、添加剤、他の賦形剤)を同定するために使用してもよい。前記医薬組成物もしくは処方物は、限定しないが局所的に(例えば軟膏、ローション、ゲル、および溶液の形で)および眼用に(例えば溶液の形で)経皮的に投与または送達される医薬組成物または処方物(例えば経皮送達デバイスの形で)を含む。本願で使用される「ハイ・スループット」とは、本願に記載されるように生成またはスクリーンされるサンプル数を意味し、一般的には少なくとも10個、より一般的には少なくとも50〜100個、好ましくは1000個以上のサンプルを言及する。
【0023】
本発明のハイ・スループット法は、各種形態のサンプルを使用して実行することができる。一般的に、この方法は液体サンプルまたは固体もしくは半固体サンプルのいずれかを用いて行う。
本願で使用される「液体源」とは、測定または分析される成分(複数でもよい)を含むサンプルが液状であることを意味し、限定しないが液体、溶液、乳濁液、懸濁液、およびその中に分散された固体微粒子を含む前記のもの全てを含む。
【0024】
本願で使用される「固体源」とは、測定または分析される成分(複数でもよい)を含むサンプルが固状または半固状であることを意味し、限定しないが、粉体、ゲル、フィルム、フォーム、ペースト、軟膏、接着剤、高粘弾性液体、固状または半固状中に分散された固体微粒子を含む高粘弾性液体、および経皮パッチを含む。
【0025】
本願で使用される「貯蔵媒体」とは、本発明の装置または方法に使用されるサンプルおよび組織の成分に化学的に適合性のある液体、溶液、ゲル、またはスポンジを言及する。本発明の1つの実施形態において、この貯蔵媒体は組織バリアを通過する成分の輸送、フラックスまたは拡散を、測定または分析するために取り出した標本の一部を含む。貯蔵媒体は液体または溶液が好ましい。
【0026】
〔5.1組織バリア輸送測定装置の概要〕
第1図は本発明による、サンプル・アレイ112の組織バリア輸送測定用ハイ・スループット装置100の好ましい実施形態の概略図である。装置100は、サンプル・アレイ112、組織標本120および貯蔵プレート130を支持する基質プレート114を備える。この実施形態において、サンプル・アレイ112中の各サンプルはサンプル・ウェル116内に置かれる。基質プレート114の底部には、各サンプル・ウェル116の底部を形成するベース118を取付ける。ベース118はサンプル充填時、空気がサンプル・ウェル116から排出される物ならどんな様式でもよく、適当な材料から製造された膜(例えばゴム膜)であればよい。他方、ベース118は、硬質で取外し可能な基質プレート、例えば固体源サンプルのアレイを支持できるプレート214(第2A図〜第2D図に関して後述する)である。
【0027】
基質プレート114は、幾つかのサンプルを支持することが可能な硬質の格子またはプレートでもよい。例えば基質プレート114は、24、36、48、72、96または384のウェル・プレートでよい。装置100は1つ以上のサンプル・アレイ112を備えるのが好ましく、装置100中のサンプル・ウェル116の数は、少なくとも100、好ましくは少なくとも1000、さらに好ましくは少なくとも10,000である。サンプル・ウェル116の大きさは約1mm〜約50mmが好ましく、さらに好ましくは約2mm〜約10mm、最も好ましくは約3mm〜約7mmである。例えば、3mmウェル型であればおよそ30,000の0.25m2の皮膚サンプルのアレイが得られる。
【0028】
本願で使用される用語「アレイ」または「サンプル・アレイ」(例えばアレイ112)とは、通常の実験下で使用される複数のサンプルを意味し、各サンプルは少なくとも2つの成分を含有し、かつ成分の少なくとも1つは活性成分である。本発明の1つの実施形態において、サンプルの成分の1つは「共通成分」であり、本願で使用されるとおりこの共通成分は、ネガティブコントロールを除くアレイの全サンプルに存在する成分を意味する。
【0029】
サンプル・アレイ112は、複数の異なる組成物のサンプルが得られるように設計され、そのサンプル・アレイを分析することによって、組織120を通過する成分の輸送を向上させるための、最適な組成物または処方物の測定が可能となる。サンプル・アレイ112中の各サンプルは、必ずしもというわけではないが以下の少なくとも1つの点に関して、アレイ中の他のサンプルの全てと異なることが好ましい。
(i)活性成分の正体
(ii)付加成分の正体
(iii)活性成分または共通成分の付加成分に対する割合、、または
(iv)活性成分または共通成分の物理的状態
【0030】
アレイは24、36、48、96、またはそれ以上の数のサンプルを備えることが可能で、サンプル数は好ましくは1000、さらに好ましくは少なくとも10、000である。アレイは、一般的に1つ以上のサブ・アレイを備える。例えばサブ・アレイは、96個のサンプル・ウェルを備えるプレートであってよい。
【0031】
基質プレート114とサンプル・アレイ112を覆うものは組織標本120である。組織120は組織のシートであることが好ましく、例えば皮膚、肺、気管、鼻、胎盤、膣、直腸、大腸、消化管、胃、膀胱、または角膜の組織である。組織120は皮膚組織または角質層であればさらに好ましい。ヒトの死皮膚を組織120として使用する場合、組織標本を調製するための1つの公知の方法は、60℃の湯に2分間漬けた後、表皮を除去し4℃の加湿チャンバ内で保存する、ヒート・ストリッピングを伴う。実験に先立って表皮の一片を加湿チャンバから取り出し基質プレート114の上に載置する。組織がいかなる損傷も受けないようするため、およびインビボで皮膚は力学的に丈夫な真皮によって支持されているという事実を模倣するため、組織120をナイロン・メッシュ(Terko社)で支持してもよい。他方、生組織外植片、動物組織(齧歯類、ウシまたはブタなど)または培養組織同等物を含む他の種類の組織を使用してもよい。適当な培養組織の例としては、DERMAGRAFT(Advanced Tissue Sciences社)および米国特許第5,266,480号に教示されるものが含まれ、これを本願に引用して援用する。
【0032】
本発明の代替の実施形態として、隣接するサンプル間に位置する組織標本120を通過する側方拡散を防止するため、組織標本120をサンプル・ウェル116間の溝122によって幾つかのセグメントに分割する。溝122を作成する方法は幾つかあり、機械的刻み付け又は切削、レーザー切削、若しくは圧着(例えばプレート114と130間、または「ワッフル焼き器」型エンボス加工用ツールを使用して)などの方法がある。機械的圧力によって組織標本120に歪みや損傷を与え得る切削ツールの使用を避け、レーザー刻み付けを使用するのが好ましい。レーザーによる溝122は非常に小さな切り溝に行われ、それによって比較的高密度のサンプルやより効率的な組織標本が使用できるようになる。レーザー・ツールによって生成される熱影響部を最小とすることができ、それによって組織標本120への損傷を減らすことができる。
【0033】
貯蔵プレート130(例えば底無型タイター・プレート)を組織120の上面、基質プレート114と反対側の組織の上に置く。貯蔵プレートは、複数の中空貯蔵部132を備える。プレート130を固定する場合、組織が各ウェル116と貯蔵部132を分離するように、各貯蔵部132をサンプル・ウェル116上に整合させて、適所に固定する。貯蔵プレート130を、クランプ、ねじ、ファスナ、または他の適当な取付け手段を使用して基質プレート114に固定する。プレート130および114は、貯蔵部132の周囲に液体密封が形成されるような十分な圧力で圧着するのが好ましい。各貯蔵部には、組織120を通過して貯蔵部132に拡散してくるサンプル成分または化合物を受容するための生理食塩水などの貯蔵物を充填する。1つの実施形態において、貯蔵媒体は約2%BSA含有PBS溶液である。
【0034】
サンプル・ウェル116から組織120を通過してくる成分の輸送またはフラックス(すなわち組織バリア輸送または拡散)は、貯蔵部132から取り出したサンプルの成分濃度を測定して分析してもよい。異なるサンプル/貯蔵部の測定を比較することは、組織輸送の向上または望ましい成分(例えば医薬品)の拡散ための、最適なサンプル組成物の決定に役立つ。
【0035】
サンプルは自動的に調製され、サンプル・ウェルへ加えられ、混合されることが好ましい。同様に輸送または拡散された成分を含有する貯蔵部132からの標本およびそれらの濃度を、自動的に測定し処理することができる。「自動」または「自動的に」とはサンプル、成分および標本または拡散生成物を添加、混合、解析するためにコンピュータ・ソフトウエアおよびロボット工学を使用することを意味する。
【0036】
サンプルは、当業者に公知の各種の投入または材料移動の手法を使用して、例えば第1図のサンプル・アレイ112など本発明のサンプル・アレイのサンプル・ウェルへ加える。それらの手法は限定しないが、手作業による投入、ピペッティング、および他の手動または自動による固体または液体分配システムを含む。
成分をサンプル・ウェルへ加え混合した後、このサンプルを加熱、ろ過、および凍結乾燥など公知の手法によって処理してもよい。テストする特性に従うサンプルの処理方法は、当業者であれば承知しているであろう。サンプルは個別あるいはグループで処理できるがグループで行うことが好ましい。処方する溶液または組成物の適当な自動分配サンプリング装置および方法に関する詳細はさらに、同時係属の米国特許出願番号09/540,462号に開示され、その全内容を本願に引用して援用する。
【0037】
手短に言えば、複数の企業によって本願に記載するシステムでの使用に適合可能なマイクロアレイ・システムは既に開発されているが、現在それらは全て特定の所定の活性を有する化合物を同定するために、スクリーニングすることを唯一の目的として使用されており、既知の正体を有する成分または化合物をスクリーニングして、最適の成分の組合せを同定し望ましい結果を達成することとは対照的である。このようなシステムは変更を要することもあるが、十分当業者の通常の技術の範囲内での変更である。マイクロアレイ・システムを保持する企業の例としては、メリーランド州のGene Logic of Gaithersburg社(Beattieへ賦与された米国特許第5,843,767号参照)、テキサス州オースチンのLuminex社、カリフォルニア州フラートンのBeckman Instruments社、テキサス州プラノのMicroFab Technologies社、カリフォルニア州サンディエゴのNanogen社、カリフォルニア州サニーベールのHyseq社がある。これらのデバイスは様々な異なるシステムに基づいてサンプルを試験する。全てのデバイスは成分をテスト・ウェルへ導く数千の微視的経路を備え、反応はテスト・ウェルで行われる。これらのシステムはコンピュータに接続され、適切なソフトウエアとデータのセットを使用してデータ分析が行われる。Beckman Instruments社のシステムは96または384アレイにナノリットルのサンプルを供給でき、ヌクレオチド分子配列のハイブリダイゼーション分析に大変適している。MicroFab Technologies社のシステムによるサンプルの供給は、インクジェット・プリンタを使用し別々のサンプルをウェルへ等配分する。
【0038】
これらおよびその他のシステムを本願の使用に必要とされるように適合させることができる。例えば、様々な濃度および組合せでの、活性成分と各種付加的なまたは不活性な成分との組合せの作製は、標準公式化(formulating)ソフトウエア(例えばマサチューセッツ州NatickのMathworks社から市販されているソフトウエアMatlab)を使用して行うことができる。従って作製した組合せをマイクロソフト・エクセルなどのスプレッド・シートにダウンロードできる。このスプレッド・シートから、公式化ソフトウエアによって得られた各種組合せに従ってサンプル・アレイを調製するため、ワーク・リストを作成して自動分配機構に指令を出すことができる。このワーク・リストの作成は、使用する自動分配機構に準じて標準的プログラミング法を使用して行うことができる。いわゆるワーク・リストを使用すればファイルを、個別にプログラムされた工程ではなく、単に処理コマンドとして使用することが可能となる。このワーク・リストは、公式化プログラムによる公式化アウトプットと、自動分配機構によって直接読み取り可能なファイル・フォーマットの中の適切なコマンドとを結びつける。
【0039】
自動分配機構は、少なくとも1つの医薬品などの活性成分と、例えば溶剤、キャリア、賦形剤、および添加剤などの各種不活性または付加的な成分とを、各サンプル・ウェルへ供給する。各成分を多様な量で供給できる自動分配機構が好ましい。1つの実施形態において、この自動分配機構は1つ以上のマイクロ・ソレノイド・バルブを使用する。
【0040】
自動液体および固体分配システムは広く知られており、ノースカロライナ州RTP(Research Triangle Park)、Tecan−US社のTecan Genesisなどが市販されている。ストック・プレートからサンプル・ウェルまたはサイトへの、活性成分や例えば溶液、溶剤、キャリア、賦形剤、添加剤等の不活性成分の回収分配は、ロボット・アームが行うことができる。このプロセスはアレイが完了するまで繰り返される。次にサンプルを混合する。例えば、ロボット・アームは好適な混合を確保するため、設定された回数各ウェル・プレートで上下動する。
【0041】
第1図の装置100の使用においてこの装置は、組織120の上、貯蔵部132の中に貯蔵媒体、および組織120の下、アレイ112のサンプル・ウェル116の中にサンプル、を含むとして先に記載されている。代替の実施形態においてはこの位置が逆になり、サンプル・アレイ112の貯蔵部132は組織標本120の下にあり、サンプル・ウェル116は組織標本120の上、上部プレートまたは上部膜は貯蔵部132と貯蔵プレート130の上になる。
本発明のシステムおよび方法の別の実施形態を特に第2図〜第8図について後述する。
【0042】
〔5.2 サンプルの組成物〕
本発明の組織バリア輸送を評価するシステムおよび方法の補足的な詳細を述べる前に、出願人は本発明での使用に適当なサンプルの組成物について述べる。
【0043】
〔5.2.1 一般的な組成物用語〕
本願で使用される「成分」とは、あらゆる物質または化合物を意味する。成分は活性または不活性であってよい。本願で使用される「活性成分」とは、組成物または処方物をその意図する目的のために使用するとき、組成物または処方物に主たる有用性を与える物質または化合物を意味する。活性成分には医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品、および栄養補助食品などの例がある。活性成分は、感覚性化合物(sensory compounds)、農薬、消費者製品処方薬の活性成分、または工業製品処方薬の活性成分であってよい。本願で使用される「不活性成分」とは、活性成分投与のための組成物または処方物への使用に有用または潜在的に有用であるが、活性成分の活性特性に有意な影響を与えず、さらに組成物または処方物に主たる有用性を生じさせない成分を意味する。適当な不活性成分の例には、限定しないが、促進剤、賦形剤、キャリア、溶剤、希釈液、安定剤、添加剤、接着剤、およびそれらの組み合わせがある。
【0044】
アレイのサンプルは活性成分および不活性成分を含むことが好ましい。1つの実施形態において、アレイのサンプル中の活性成分は同一または異なっていてもよく、一方別の実施形態において、アレイ中のサンプルは共通成分としての活性成分と不活性成分を含む。当業者であれば複数の並べ換えが可能で、例えば活性成分が医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品、または栄養補助食品の場合、好ましい不活性成分は賦形剤、キャリア、溶剤、希釈液、安定剤、促進剤、添加剤、接着剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
本願で使用される「サンプル」とは、活性成分と、1つ以上の付加成分または不活性成分の混合物を意味する。好ましくは、サンプルは2つ以上の付加成分を含み、より好ましくは3つ以上の付加成分を含む。一般にサンプルは1つの活性成分を含むが、多種の活性成分を含むこともできる。さらに、サンプル・アレイ中のサンプルは1以上の共通成分を含んでもよい。サンプルはどのような容器もしくはホルダの中にも、または任意の材料もしくは表面の内部もしくは上部にも存在させることができ、唯一の要件はサンプルを分離された場所に位置しなければならないことである。サンプルは、例えばマサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore社から市販されている容量250μlの24、36、48、または96のウェル・プレート(またはフィルタ・プレート)などサンプル・ウェル内に包含されることが好ましい。サンプルは約100ミリグラム未満の活性成分を含むことができ、好ましくは約1ミリグラム未満、より好ましくは約100マイクログラム未満、さらに好ましくは100ナノグラム未満の活性成分を含む。サンプルの総容量は好ましくは約1〜200μl、より好ましくは約5〜150μl、最も好ましくは約10〜100μlである。サンプルは液体源または固体源サンプルでよく、例えば固体、半固体、フィルム、液体、溶液、ゲル、フォーム、ペースト、軟膏、粉体、懸濁液、または乳濁液の形のサンプルを含む。
【0046】
本願に記載される本発明に従って、成分の「物理的状態」とは、まず成分が液体であるかまたは固体であるかによって定義される。成分が固体の場合、その物理的状態はさらに粒子の大きさおよび成分が結晶質または非晶質であるかによって定義される。成分が結晶性の場合、物理的状態はさらに(1)その結晶性マトリックスが共付加物(co−adduct)を含むかどうか、またはその結晶性マトリックスが本来は共付加物を含んでいたが、その共付加物が除去されて空隙が残っているのかどうか、(2)晶癖(3)形態学すなわち晶癖および粒度分布、(4)内部構造(多形性)に分けられる。共付加物においては、結晶性マトリックスは化学量論的または非化学量論的のいずれか量の付加物を含むことができ、例えば溶媒和物または水和物など結晶溶媒(crystallization solvent)または結晶水を含むことができる。非化学量論的溶媒和物および水和物は、溶媒または水が任意の間隔で例えばチャネルなどの結晶性マトリックス内にトラップされている包接体(inclusionsまたはclathrates)を含む。化学量論的溶媒和物または水和物とは、結晶性マトリックスが特定の部位に特定の割合で溶媒または水を含む場合である。すなわち溶媒または水分子は、所定の位置に配された結晶性マトリックスの部分である。加えて、結晶性マトリックスの物理的状態は、本来結晶性マトリックス中に存在する共付加物を除去することによって変化し得る。例えば、溶媒和物または水和物から溶媒または水が除去されると、結晶性マトリックス内に孔が形成され、それによって新たな物理的状態が形成される。晶癖とは個々の結晶の外観のことで、例えば結晶には立方、正方、斜方、単斜、三斜、菱面、または六方の結晶形がある。加工特性は晶癖に影響される。結晶の内部構造とは結晶形または多形性のことをいう。所定の化合物は異なる多形体すなわち別個の結晶の種類として存在してもよい。一般に所定の化合物の異なる多形体は、2つの異なる化合物の結晶として構造も特性も異なる。溶解度、融点、密度、硬度、結晶形、光学的および電気的特性、蒸気圧、および安定性など全てが多形体の形によって異なる。
【0047】
〔5.2.2.活性成分および共通成分〕
先に記載した通り、共通成分は、例えば医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品もしくは栄養補助食品などの活性成分か、または不活性成分のいずれでもよい。本発明の好ましい実施形態において、共通成分は活性成分であり、より好ましくは医薬品である。本願で使用されるとおり「医薬品」とは、動物またはヒトに投与された時、治療、疾病予防、診断、または予防の効果を有する物質または化合物の全てを意味する。「医薬品」とは処方薬および大衆薬を含む。本発明の使用に適当な医薬品とは既知のものまたは開発されるものの全てを含む。
【0048】
適当な医薬品の例には、限定しないが、例えば、ベシル酸アムロジピン,ロサルタンカリウム,イルベサルタン,塩酸ジルチアゼム,重硫酸クロピドグレル,ジゴキシン,アブシキマブ,フロセミド,塩酸アミオダロン,ベラプロスト,ニコチン酸トコフェロールなどの循環器用医薬品、例えばアモキシシリン,クラブラン酸カリウム,アジスロマイシン,イトラコナゾール,アシクロビル,フルコナゾール,塩酸テルビナフィン,エチルコハク酸エリスロマイシン,およびアセチルスルフィキサゾールなどの抗感染成分、例えば塩酸セルトラリン,ベンラファキシン,塩酸ビュープロピオン,オランザピン,塩酸ブスピロン,アルプラゾラム,塩酸メチルフェニデート,マレイン酸フルボキサミン,およびメシル酸エルゴロイドなどの精神治療成分、例えばランソプラゾール,塩酸ラニチジン,ファモチジン,塩酸オンダンセトロン,塩酸グラニセトロン,スルファサラジン,およびインフリキシマブなどの胃腸製品、例えばロラタジン,塩酸フェキソフェナジン,塩酸セチリジン,プロピオン酸フルチカゾン,キシナホ酸サルメテロール,およびブデソニドなどの呼吸器治療薬、例えばアトルバスタチンカルシウム,ロバスタチン,ベザフィブラート,シプロフィブラート,およびゲムフィブロジルなどのコレステロール低下剤、例えばパクリタキセル,カルボプラチン,クエン酸タモキシフェン,ドセタキセル,塩酸エピルビシン,酢酸ロイプロリド,ビカルタミド,酢酸ゴセレリン・インプラント,塩酸イリノテカン,塩酸ゲムシタビン,およびサルグラモスチム(sargramostim)などの癌および癌関連治療薬、例えばエポエチンアルファ,エノキサパリンナトリウム,および抗血友病因子などの血液調製剤、例えばセレコキシブ,ナブメトン,ミソプロストール,およびロフェコキシブなどの抗関節炎成分、例えばラミブジン,硫酸インジナビル,スタブジン,およびラミブジンなどのエイズおよびエイズ関連医薬品、例えば塩酸メトホルミン,トログリタゾン,およびアカルボースなどの糖尿病および糖尿病関連治療薬、例えばB型肝炎ワクチン,およびA型肝炎ワクチンなどの生物薬,例えばエストラジオール,ミコフェノール酸モフェチル,およびメチルプレドニゾロンなどのホルモン類、例えば塩酸トラマドール,フェンタニル,メタミゾール,ケトプロフェン,硫酸モルヒネ,アセチルサリチル酸リジン,ケトロラックトロメタミン,モルヒネ,ロキソプロフェンナトリウム,およびイブプロフェンなどの鎮痛薬、例えばイソトレチノインおよびリン酸クリンダマイシンなどの外用製品、例えばプロポフォール,塩酸ミダゾラム,および塩酸リドカインなどの麻酔薬、例えばコハク酸スマトリプタン,ゾルミトリプタン,および安息香酸リザトリプタンなどの片頭痛治療薬、例えばゾルピデム,酒石酸ゾルピデム,トリアゾラム,および臭化ブチルヒコシン(hycosine)などの鎮静薬および催眠薬、例えばイオヘキソール,テクネチウム,TC99M,セスタミビ,イオメプロール,ガドジアミド,イオベルソール,およびイオプロミドなどの画像化成分、および例えばアルサクタイド(alsactide),アメリシウム,ベタゾール,ヒスタミン,マンニトール,メチラポン,ペタガストリン(petagastrin),フェントラミン,放射性B12,ガドジアミド,ガドペンテト酸,ガドテリドール,およびパーフルブロンなどの診断および造影剤成分が含まれる。本発明に使用するための医薬品は他に下表1に掲げるものを含み、それらの医薬品は本発明のシステム、アレイおよび方法を使用して、新規な組成物または処方物を開発すれば緩和できる諸問題を有する。
【0049】
【表1】
さらに適当な医薬品の例は他に『2000 Med Ad News』の第19号56〜60頁、および『The Physicians Desk Reference』(医師用卓上参考書)第53版792〜796頁、Medical Economics社(1999)に掲げられており双方を本願に引用して援用する。
【0050】
適当な獣医学用医薬品の例には限定しないが、ワクチン、抗生物質、成長促進成分、および駆虫薬が含まれる。適当な獣医学用医薬品の例は他に『The Merck Veterinary Manual』(メルク獣医マニュアル)第8版、Merck社、ニュージャージー州Rahway、1998頁(1997)、『The Encyclopedia of Chemical Technology』(工業化学百科事典)第24巻、Kirk−Othomer(第4版826頁)、およびECT(工業化学百科事典)、第2版第21巻の『Veterinary Drugs』(獣医学用薬剤)、A.L.ShoreおよびR.J.Magee著、American Cyanamid社に掲載されている。本発明のシステムおよび方法を使用する組織(または膜貫通)輸送分析に適当な活性成分は他に、栄養サプリメント、代替医薬品、または補助栄養食品が含まれる。
【0051】
本願で使用される「栄養サプリメント」とは、栄養学的効果を与えるために動物またはヒトへ投与されるノンカロリーのもしくは低カロリーの物質、または食物に耽美で舌触りのよい安定した効果もしくは栄養学的効果を与えるために、食物中に投与されるノンカロリーのもしくは低カロリーの物質を意味する。栄養サプリメントには限定しないが、例えばカズシーン(caducean)などの脂肪結合剤、魚油、例えばニンニクおよびコショウ抽出物などの植物抽出物、ビタミンおよびミネラル類、例えば防腐剤、酸味料、固化防止成分、消泡剤、抗酸化剤、増量剤、着色剤、硬化剤、食物繊維、乳化剤、酵素、固化剤、湿潤剤、膨脹剤、潤滑剤、非栄養甘味料、食品等級溶媒、増粘剤、代替脂肪、および風味増強料などの食物添加物、および例えば食欲抑制剤などの補助食品が含まれる。適当な栄養サプリメントの例は『The Encyclopedia of Chemical Technology』(化学大辞典)第11巻、Kirk−Othomer(第4版805―833頁)(1994)に掲載されている。適当なビタミンの例は(1998)『The Encyclopedia of Chemical Technology』(化学大辞典)第25巻、Kirk−Othomer(第4版1頁)、『Goodman & Gilman’s:The Pharmacological Basis of Therapeutics』(グッドマン・ギルマン薬理療法)第9版、Joel G.Harman、Lee E.Limbird編、McGrawHill社、1547頁(1996)に掲載され、双方を本願に引用して援用する。適当なミネラル類の例は『The Encyclopedia of Chemical Technology』(工業化学百科事典)第16巻、Kirk−Othomer(第4版746頁)、およびECT工業化学百科事典)第3版第15巻の『Mineral Nutrients』(ミネラル栄養)、570〜603頁、C.L.RollinsonおよびM.G.Enig著、メリーランド大学に掲載され双方を本願に引用して援用する。
【0052】
本願に使用される「代替医薬品」とは、疾病の治療ためまたは身体の健康もしくは厚生のために、被験者もしくは患者へ投与される物質、好ましくは例えば薬草または薬草抽出物もしくは濃縮物などの天然物質を意味し、その場合その物質はFDAの承認を必要としない。適当な代替医薬品の例には、限定しないが、イチョウ、朝鮮ニンジン、カノコソウ、オーク樹皮、カバカバ、エキナシア、デビルズ・クロー(harpagophyti radix)が含まれ、他には『The Complete German Commission E Monographs:Therapeutic Guide to Herbal Medicine』(ドイツE委員会の全研究論文:薬草剤の治療案内書)Mark Blumenthal他編、Integrative Medicine Communications社(1998)に掲載され本願に引用して援用する。
【0053】
本願で使用される「栄養補助食品」とは、カロリー値および医薬的もしくは治療的特性の双方を有する食物もしくは食物製品を意味する。栄養補助食品の例にはニンニク、コショウ、フスマ繊維および健康飲料が含まれる。適当な栄養補助食品の例は、M.C.Linder編『Nutritional Biochemistry and Metabolism with Clinical Applications』(臨床応用での栄養生化学と代謝)、Elsevier社、ニューヨーク(1985)、Pszczola他著(1998)『Food technology』(食物技術)第52巻30〜37ページ、およびShukla他著(1992)『Cereal Foods World』(シリアル食品世界)第37巻665〜666頁に掲載されている。
【0054】
活性成分が医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品、または栄養補助食品の場合、付加成分の少なくとも1つは賦形剤であることが好ましい。本願で使用される「賦形剤」とは、加工または製造の結果として医薬品の調剤に使用される不活性物質、または動物もしくはヒトへ投与するための医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品、および栄養補助食品を調剤するため当業者によって使用される不活性物質を意味する。ヒトおよび動物への投与に安全であると承認または考えられている賦形剤が好ましい。適当な添加剤の例には限定しないが、例えば乳酸、塩酸、および酒石酸などの酸味料、例えば非イオン系カチオンおよびアニオン界面活性剤などの可溶化剤、例えばベントナイト,セルロース,およびカオリンなどの吸収剤、例えばジエタノールアミン,クエン酸カリウム,および炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ化成分、例えばリン酸三カルシウム,三ケイ酸マグネシウム,および滑石などの固化防止成分、例えば安息香酸,ソルビン酸,ベンジルアルコール,ベンゼトニウム,塩化物,ブロノポール,アルキルパラベン類,セトリミド,フェノール,酢酸フェニル水銀,チメロサール,およびフェノキシエタノールなどの抗菌成分、例えばアスコルビン酸,αトコフェロール,没食子酸プロピル,およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、例えばアカシア,アルギン酸,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,デキストリン,ゼラチン,グアールガム,ケイ酸マグネシウムアルミニウム,マルトデキストリン,ポビドン,デンプン,植物油,およびゼインなどの結合剤、例えばリン酸ナトリウム,リンゴ酸,およびクエン酸カリウムなどの緩衝化成分、例えばEDTA,リンゴ酸,およびマルトールなどのキレート化成分、例えば付加糖,セチルアルコール,ポリビニルアルコール,カルナバワックス,ラクトースマルチトール,二酸化チタンなどのコーティング成分、例えば微結晶性ワックス,白色ワックス,および黄色ワックスなどの徐放性賦形薬、例えば硫酸カルシウムなどの乾燥剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムなどの洗浄剤、例えばリン酸カルシウム,ソルビトール,デンプン,滑石,ラクチトール,ポリメタクリレート類,塩化ナトリウム,およびパルミトステアリン酸グリセリルなどの希釈剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素,クロスカルメロースナトリウム,ケイ酸マグネシウムアルミニウム,ポラクリリンカリウム,およびグリコールデンプンナトリウム;分散成分、例えばポロクサマー386,およびポリオキシエチレン脂肪エステル類(ポリソルベート類)、例えばセテアリルアルコール,ラノリン,鉱物油,ペトロラタム,コレステロール,ミリスチン酸イソプロピル,およびレシチンなどの軟化薬、例えば陰イオン性乳化ワックス,モノエタノールアミン,および中鎖トリグリセリド類などの乳化成分、例えばエチルマルトール,エチルバニリン,フマル酸,リンゴ酸,マルトール,およびメントールなどの風味成分、例えばグリセリン,プロピレングリコール,ソルビトール,およびトリアセチンなどの湿潤剤、例えばステアリン酸カルシウム,キャノーラ油,パルミトステアリン酸グリセリル,酸化マグネシウム,ポロクサマー,安息香酸ナトリウム,ステアリン酸,およびステアリン酸亜鉛などの潤滑剤、例えばアルコール類,フェニル蟻酸ベンジル,植物油,フタル酸ジエチル,オレイン酸エチル,グリセロール,グリコフロール,インジゴカルミン用,ポリエチレングリコール,サンセット・イエロー用,タルタジン用,トリアセチンなどの溶剤、例えばシクロデキストリン,アルブミン,キサンタンガムなどの安定化成分、例えばグリセロール,デキストロース,塩化カリウム,および塩化ナトリウムなどの緊張化成分、およびそれらの混合物が含まれる。賦形剤には医薬品、栄養サプリメント、代替医薬品、または栄養補助食品の吸収率、生物学的利用能、または他の薬物動態学的特性を変化させるものが含まれる。例えば結合剤および充填剤など適当な賦形剤の例は他に、『Remington’s Pharmaceutical Sciences』(レミントンの薬学)第18版、Alfonso Gennaro編、MackPublishing社、ペンシルバニア州Easton(1995)、および『Handbook of Pharmaceutical excipients』(医薬賦形剤のハンドブック)第3版、Arthur H.Kibbe編、米国薬剤師会、ワシントンD.C.(2000)に掲載され、双方を本願に引用して援用する。
一般的に経皮送達デバイスの形成に使用され、従って特に本発明のサンプルの処方に有用性がある賦形剤は透過促進剤、接着剤および溶剤である。これらの各々を以下にさらに詳しく詳述する。
【0055】
〔5.2.3.透過促進剤〕
様々な種類の透過促進剤を薬物の経皮輸送の促進に使用してもよい。透過促進剤は化学的促進剤および機械的促進剤に分けることができ、その各々について以下に詳述する。
【0056】
〔5.2.3.1 化学的促進剤〕
化学的促進剤は様々な機構によって組織または膜を通過する分子の輸送率を促進する。本発明において、化学的促進剤は角質層のバリア特性を減少させるために使用されるのが好ましい。薬物相互作用は、薬物をより透過しやすい状態(プロドラッグ)に変化し、次にプロドラッグが体内で代謝されて本来の形態(6−フルオロウラシル、ヒドロコルチゾン)に戻ること(Hadgraft、1985)または、薬物溶解度(エタノール、プロピレングリコール)を増加させることを含む。多数の研究(200を超える化合物が研究された)(ChattarajおよびWalker、1995)にもかかわらず、依然として分子輸送の化学的促進についての普遍的に応用可能な力学的理論は存在しない。化学的促進剤について公にされた業績の多くは、ほとんど経験と試行錯誤(Johnson、1996)に基づいている。
【0057】
多くの異なるクラスの化学的促進剤が同定されており例えば、カチオン系、アニオン系、および非イオン系の界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオクサマー類)、脂肪酸類およびアルコール類(エタノール、オレイン酸、ラウリン酸、リポソーム)、抗コリン作用剤(臭化ベンジロニウム、臭化オキシフェノニウム)、アルカノン類(n−ヘプタン)、アミド類(尿素、NN−ジエチル−m−トルアミド)、脂肪酸エステル類(n−酪酸塩)、有機酸類(クエン酸)、ポリオール類(エチレングリコール、グリセロール)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド)およびテルペン類(シクロヘキセン)がある(HadgraftおよびGuy 1989、Walters 1989、WilliamsおよびBarry 1992、ChattarajおよびWalker1995)。これらの促進剤の多くは皮膚または薬物のいずれかと相互に作用し合う。皮膚と相互に作用し合うこれら促進剤を本願では「脂質透過促進剤」と呼び、皮膚との相互作用を有し、皮膚との相互作用には促進剤によって角質層の分配すること、脂質二重層を分裂すること(アゾン、エタノール、ラウリン酸)、角質層内タンパク質を結合および分裂すること(ドデシル硫酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド)、または脂質二重層の水和(尿素、臭化ベンジロニウム)が含まれる。他の化学的促進剤は、媒体中で薬物溶解度(以後「溶解促進剤」と呼ぶ)を増加させて、薬物の経皮送達の増加を促進する。脂質透過促進剤、溶解促進剤、および促進剤の組合せ(同じく「バイナリー・システム」と呼ぶ)について以下にさらに詳述する。
【0058】
〔5.2.3.1.1.脂質透過促進剤〕
脂質類への透過性を促進する化学物質は公知であり市販されている。例えばエタノールは薬物の溶解性を10,000倍まで増加させ、かつエストラジオールのフラックスを140倍増加させ、他方不飽和脂肪酸類は、脂質二重層の流動性を増加させる(BronaughおよびMaibach編『Marcel Dekker 1989』1〜12頁)。脂質二重層を分裂する脂肪酸類の例には、リノール酸、カプリル酸、ラウリン酸、およびネオデカン酸が含まれ、それらをエタノールまたはプロピレングリコールなどの溶剤に混ぜてもよい。脂質二重層分裂剤を使用する公の透過データの評価は、脂肪親和性化合物の透過促進の粒径依存の観察と大変良く一致する。プロピレングリコール中の3つの二重層分裂化合物、カプリル酸、ラウリン酸、およびネオデカン酸の透過促進がAungst他著『Pharm.Res.』第7巻712〜718頁(1990)に報告されている。彼らはヒト皮膚を通過する安息香酸(122Da)、テストステロン(288Da)、ナロキソン(328Da)、およびインドメタシン(359Da)の4つの親油性化合物の透過性を検証した。各薬物についての各促進剤の透過促進性を、Ec/pg=Pe/pg/Ppgに従って計算し、その場合Pe/pgは促進剤/プロピレングリコール処方による薬物透過性、Ppgはプロピレングリコール単独による透過性である。
【0059】
リノール酸など不飽和脂肪酸類が皮膚透過性を促進すると考えられる、その主たる機構は、細胞間脂質領域の秩序を乱すことによる。例えばオレイン酸などの不飽和脂肪酸類の詳細な構造の研究が、示差走査分析を使用して(Barry J.著『Controlled Release』(徐放)第6巻85〜97頁(1987))および赤外線分光分析を使用して(Ongpipattanankul他著『Pharm.Res.』第8巻350〜354頁(1991)、Mark他著『J.Control.Rd.』第12巻67〜75頁(1990)行われている。オレイン酸は、高度に秩序が維持されたSC脂質二重層の秩序を乱し、かつ細胞間領域内に分離した油様相を形成する可能性があることが発見された。不飽和脂肪酸類または他の二重層を混乱物質によって秩序を乱されたSC脂質二重層は、液相脂質二重層と本質的に類似しているかもしれない。
【0060】
分離した油相はバルク油相に似た特性を有するはずである。流体二重層およびバルク油相の輸送については多くのことが公知である。具体的な液相の拡散係数、例えばジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)二重層についてCleggおよびVaz著『Progress in Protein−Lipid Interactions』(タンパク質−脂質相互反応の進歩)Watts編(Elsevier社ニューヨーク1985)173〜229頁、Tocanne他著、『FEB』第257巻10〜16頁(1989)、およびバルク油相についてPerry他著『Perry’s Chemical Engineering Handbook』(ペリーの化学工学ハンドブック)(McGraw−Hill社、NY(1984))、これらの拡散係数はSCの拡散係数を超え、かつさらに重要なことに、SC輸送の粒径依存性よりもかなり低い粒径依存性を示す。Kasting他著『Prodrugs:Topical and Ocular Delivery』(プロドラッグ:局所および眼送達)Sloan編(Marcel Dekker社、ニューヨーク州、1992)117〜161頁、PortsおよびGuy著『Pharm.Res.』9、663−339(1992)、Willschut他著『Chemosphere』第30巻1275〜1296頁(1995)。その結果所定の溶質の拡散係数は、SC中よりも、DMPCなどの流体二重層またはバルク油相中の方が大きくなる。SC輸送の強力な粒径依存のために、SC脂質中での拡散は化合物が大きくなるほど非常に遅くなるが、他方流体DMPC二重層およびバルク油相中での輸送は、化合物が大きい場合でも適度に遅いのみである。SC中での拡散係数と流体DMPC二重層またはバルク油相中での拡散係数の差異は、溶質が大きい場合ほど大きく、かつ化合物が小さいほど差異も小さい。したがって、SC脂質二重層を流体二重層相へ変換できる化合物、または分離バルク油相を添加することができる化合物の秩序を乱す二重層の促進能は、小さな化合物には低い透過性促進、大きな化合物には高い透過性促進を有する粒径依存を示す。
【0061】
脂質二重層分裂剤の包括的一覧は欧州特許出願第43,738号(1982)に記載され、これを本願に引用して援用する。模範となる化合物を下式によって示す。
R−X、〔ここで、Rは約7〜16の炭素原子から成る直鎖アルキル、約7〜22の炭素原子から成る非末端アルケニル、または/および約13〜22の炭素原子から成る分岐鎖アルキルであり、かつXは−OH、−COOCH3、−COOC2H5、−OCOCH3、−SOCH3、−P(CH3)20、COOC2H4OC4H4OH、−COOCH(CHOH)4CH3OH、−COOCH2CHOHCH3、COOCH2CH(OR’’)CH2OR’’、−(OCH2CH2)mOH、−COOR’、または−CONR’2(なお、R’はH、−CR3、−C2H5、−C2H7または−C2H4OHであり、R’’は、−H、または約7〜22の炭素原子から成る非末端アルケニルであり、mは2〜6であり、もしR’’がアルケニルでありかつXが−OHまたはCOOHであれば、少なくとも1つの二重結合はcis形である。)〕
【0062】
〔5.2.3.1.2 溶解促進剤〕
薬物の経皮送達を増加させるための別の方法は、媒体中での薬物溶解度を増加させる化学的溶解促進剤を使用することである。これは異なる賦形剤を導入することによって薬物−媒体相互作用を変化させるか、または薬物結晶性を変化させることのいずれかによって達成することができる(FlynnおよびWeiner、1993)。
溶解促進剤には例えばプロピレングリコールおよびグリセロールなどの水−ジオール類、例えばエタノール、プロパノール、および高級アルコール類などのモノ−アルコール類、DMSO、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン、N−メチルピロリドン、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オンおよび他のn−置換−アルキル−アザシクロアルキル−2−オンが含まれる。
【0063】
〔5.2.3.1.3.促進剤の組合せ(バイナリー・システム)〕
Cooperへ賦与された米国特許第4,537,776号には、透過促進に関する特定のバイナリー・システムの使用についての概略がある。同様に欧州特許出願第43,738号にも、親油性を有する薬理学的に活性な化合物送達に関して、細胞外膜(cell−envelope)の秩序を乱す化合物の広範なカテゴリーと共に、溶剤として選択したジオールの使用が記載されている。メタクロプラミド透過を高めるためのバイナリー・システムについては英国特許出願GB2,153,223Aに開示され、C8〜32の脂肪族モノカルボン酸(Cが18〜32の場合は不飽和および/または分枝)の一価のアルコールエステル、またはC6〜24の脂肪族モノアルコール(Cが14〜24の場合は不飽和および/または分枝)および、例えば2−ピロリドンまたはN−メチルピロリドンなどのN−環式化合物からなる。
【0064】
例えば、プロゲストゲン類およびエストロゲン類などステロイド類の経皮送達を促進するため、ジエチレングリコールモノエチルもしくはモノメチルエーテルと、モノラウリン酸プロピレングリコールおよびラウリン酸メチルからなる促進剤の組合せが米国特許第4,973,468号に開示されている。経皮薬物送達のための、グリセロールモノラウリン酸およびエタノールからなる二重促進剤が、米国特許第4,820,720号に記載されている。米国特許第5,006,342号には経皮薬物投与のための多くの促進剤が列挙され、それらの促進剤は脂肪酸エステル類、またはC2〜C4のアルカンジオール類の脂肪族アルコールエーテル類からなり、その場合エステル/エーテルの各脂肪酸/アルコール分の炭素原子数は約8〜22である。米国特許第4,863,970号には局所使用のための透過促進組成物が開示され、この組成物は、特定の量の1つ以上の細胞外膜の秩序を乱す化合物(例えばオレイン酸、オレイルアルコール、およびオレイン酸のグリセロールエステルなど)を含む透過促進賦形剤に含まれる活性促進剤、C2もしくはC3のアルカノール、および水などの不活性希釈剤、を含有する。
【0065】
必ずしもバイナリー・システムに関与しないが、他の化学的促進剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、もしくはDMSOの水溶液(例えばHerschlerへ賦与された米国特許第3,551,554号、Herschlerへ賦与された米国特許番号3,711,602号、およびHerschlerへ賦与された米国特許第3,711,606号に記載)、およびアゾン類(n置換アルキルアザシクロアルキル−2−オン)(例えばCooperへ賦与された米国特許番号4,557,943号に記載)を含む。マサチューセッツ工科大学によるPCT/US96/12244号には、ジラウリン酸ポリエチレングリコール200(PEG)、ミリスチン酸イソプロピル(IM)、およびトリオレイン酸グリセロール(GT)を使用しての受動的実験の結果では、PBS単独による受動的フラックスに関してコルチコステロン・フラックス促進値は2,5,および0.8である。しかし、50%エタノールおよびLA/エタノールは、46および900の係数で有意にコルチコステロンの受動的フラックスを増加する。
【0066】
幾つかの化学的促進剤は毒性および皮膚炎などの副作用を有することがある。米国特許番号4,855,298号には、皮膚炎特性を有する化学的促進剤含有組成物によって生じた皮膚炎を、抗炎症効果をもたらすのに十分な量のグリセリンで軽減させるための組成物が開示されている。本発明によって、経皮輸送など化合物、医薬品、または他の成分の組織バリア輸送における多数の促進剤の効果の試験が可能となる。
【0067】
〔5.2.3.2.経皮送達のための機械的促進剤〕
便宜上機械的促進剤は、外来の促進剤の全て含むと定義し、例えば超音波、機械的もしくは浸透圧、電場(電気穿孔法またはイオントフォレシス)または磁場などを含む。
経皮送達を促進するため超音波の使用(概して20kHz〜10MHzの範囲の周波数)について多くの報告がなされている。超音波は単独でおよび他の化学的および/または機械的促進剤と組み合わせて使用されている。例えば、マサチューセッツ工科大学によるPCT/US96/12244号に報告のある通り、治療的超音波(1MHz、1.4W/cm2)と化学的促進剤を共に使用することによって、PBS、PEG、IM、およびGTによるコルチコステロン・フラックスは、同一促進剤による受動的フラックスより、1.3〜5.0倍ほど大きいフラックスを生成する。超音波と50%エタノールを組み合わせることにより、コルチコステロン輸送は受動的ケースの2倍増加するが、LA/エタノールによる輸送では14倍増加し、0.16mg/cm2/時間のフラックス、PBS単独よりも13,000倍大きいフラックスが生み出される。
【0068】
また圧力勾配も皮膚を通過する流動体の輸送を促進するために使用できる。圧力は真空または陽圧デバイスによって加えることができる。他方、浸透圧を経皮輸送を生ぜしめるために使用してもよい。
同様に電流も経皮薬物輸送および血液分析物の抽出を促進するため応用されている。このような電流は異なる機構によって輸送を促進する。例えば、電場を使用することで、皮膚を通過する電荷を帯びた分子の輸送の原動力が得られ、かつ第2に電場の使用によって、イオンの動きが皮膚を横切っての対流、それは電気浸透と称されるが、を誘発し得る。この機構はイオントフォレシス中に、中性分子の経皮輸送に主要な役割を果たすと考えられている。イオントフォレシスには電流の使用が必要で、好ましくはDC、またはAC、かつゼロより大きく約1mA/cm2までの電流密度が必要である。グルコースの経皮抽出を達成するため、電流を使用する皮膚透過性の促進が、Tamada他著『Proceed Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.』第22巻129〜130頁(1995)に報告されている。磁力活性種を皮膚を通過させて輸送するために、皮膚を前処理するかまたは他の透過促進剤と組み合わせて、磁場を皮膚へ使用することができる。例えば、磁気粒子を負荷したポリマー微粒子を皮膚を通過させて輸送させることができる。
【0069】
〔5.2.4. 接着剤〕
組織バリアを通過する活性成分または薬物送達のためのデバイス、特に経皮パッチなどの経皮送達デバイスには、一般的に接着剤が含まれる。接着剤は、しばしば活性成分もしくは薬物が溶解もしくは分散するマトリックスを形成し、勿論デバイスは皮膚などの組織と密接させたままにしておく。活性成分もしくは薬物と接着剤の適合性は、それらの接着剤中での溶解度に影響される。保存または使用中に生じる過飽和条件は、接着剤マトリックス内での活性成分もしくは薬物の沈殿に対して全て通常に非常に安定している。組織を透過するための原動力を増加させ、かつデバイスの安定性を向上させるため、接着剤は高溶解性を有していることが望ましい。
【0070】
数種のクラスの接着剤が使用され、それらの各々が多くの可能な接着剤の形態を有している。これらのクラスには、ポリイソブチレン、シリコン、およびアクリル系接着剤が含まれる。アクリル系接着剤は誘導体の形で使用されているものが多い。このように、特定の薬物および促進剤と使用するのに、最適と思われる接着剤を選択することは多くの場合難題である。一般に、デバイス中に存在させる全ての成分は溶剤中に溶解し、プラスチック性基材上に鋳込または被膜する。溶剤が気化すれば薬物含有接着フィルムが生成される。本発明によりサンプル組成物または処方物中の、様々な種類と量の接着剤の効果を迅速かつ効率的に試験することができる。
【0071】
〔5.2.5 溶剤〕
活性成分、キャリアまたは接着剤のための溶剤は、生体適合性さらには溶解される材料の溶解度、および活性成分もしくは薬物と適切な相互作用が輸送される場所に基づいて選択される。例えば、溶剤中に溶解している活性成分または薬物による緩和と、輸送される活性成分または薬物への溶剤の悪影響は、溶剤を選択する上で考慮する要因である。水溶性ポリマーから形成されたマトリックスを製造するために水溶性溶剤が使用できる。有機溶剤は通常疎水性および数種の親水性ポリマーを溶解するために使用される。好ましい有機溶剤は揮発性か、もしくは比較的沸点の低いもの、または真空下で除去できるもの、そして塩化メチレンなどヒトへの微量投与が許容されているものである。溶剤は他にも、例えば酢酸エチル、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、およびそれらの組み合わせもまた使用してもよい。好ましい溶剤は『Federal Register』(連邦官報)第62巻第85号24301〜24309頁(1997年5月)に公表にされ、食品医薬品局にクラス3の残留溶剤として格付けされているものである。薬物のための溶剤は通常蒸留水、緩衝生理食塩水、乳酸リンゲル液または他の薬学的に許容可能なキャリアである。
【0072】
〔5.3 サンプルの調製およびスクリーニング方法〕
本発明のハイ・スループット・スクリーニング法は、例えば1)このような組成物もしくは処方物として望ましい特徴の達成にとって、1つ以上の活性成分と、1つ以上の不活性成分を含む最適な組成物もしくは処方物、2)活性成分または薬物との適合性にとって、最適の接着剤/促進剤/賦形剤組成物、2)角質層を通過する最大薬物フラックスにとって、最適の活性成分もしくは薬物/接着剤/促進剤/添加剤組成物、および3)細胞毒性を最小限に抑えるために、最適の活性成分もしくは薬物/接着剤/促進剤/添加剤組成物、などを同定する。
【0073】
サンプルの調製、加工、およびスクリーニングの基本的要件は、分配機構と試験すなわちスクリーニング機構である。分配機構は、アレイ・プレート上に分別されている、例えばサンプル・ウェルなどのサイトへ成分を加える。好ましくはこの分配機構は自動化されており、コンピュータ・ソフトウエアによって制御され、かつ例えば成分(複数でもよい)の正体および/または成分濃度などの付加可変条件を少なくとも1つ変更することができ、さらに好ましくは2以上の可変条件を変更することができる。例えば医薬品成分および賦形剤(促進剤や接着剤など)のサンプルを、サンプル・ウェルに充填または付加することは、医薬品プロセス製造の当業者に周知の材料操作技術およびロボット工学を含む。もちろん必要に応じて個々の成分を手動でアレイの適切なウェルへ置くことも可能である。このピック・アンド・プレイス技術も当業者には周知である。試験機構は各サンプルの1つ以上の特性、例えば経時薬物濃度などを試験するために使用することが好ましい。試験機構は自動化され、かつコンピュータによって駆動されていることが好ましい。
【0074】
1つの実施形態において、このシステムはさらに成分後のサンプルを加工するための加工機構を含む。例えば、成分のサンプル・ウェルへの添加後に装置を組立てて、組織標本をサンプル・ウェル上の特定の位置へ置く前に、当業者には周知の方法および装置を使用してサンプルを攪拌、ミリング、ろ過、遠心分離、乳化、または溶剤除去(凍結乾燥など)および再構築などによって加工することができる。サンプルは自動的におよび同時に加工することが好ましい。
【0075】
上述のように、第1図の組織バリア輸送デバイスの好ましい使用法は、直接または間接的に、組織120を通過してアレイの貯蔵部132へ拡散する成分(例えば医薬品)の存在、不在または濃度の決定を伴う。このような測定は当業者に周知の様々な手段によって行ってもよい。例えば共通成分の存在、不在または濃度を決定するために、分光学的手法が使用できることは公知である。適当な測定法には、限定しないが、分光法、赤外線分光分析法、近赤外線分光分析、ラマン分光法、NMR、X線回析、中性子回折、粉末X線回析、放射性標識、および放射能が含まれる。
【0076】
1つの模範的実施形態において、限定しないが、ヒト皮膚を通過する活性成分(例えば薬物)の受動透過性は放射性標識した活性成分または薬物を微量使用して測定することができる。公知の方法に従って、化合物または薬物を輸送する溶剤の全てと、逆にその中へ移ったトリチウムの全てを除去するために、放射性標識した化合物または薬物をロータリー・エバポレータにかける。次に放射性標識した化合物または薬物を、後述する促進剤、キャリア、添加剤、接着剤、および/または他の添加剤を含む各種組成処方物中に再溶解して一般的な濃度の1μChi/mlにし、例えば第1図のアレイ112のサンプル・ウェル116などのサンプル・ウェルへ加える。そして受動透過実験を行う。例えば第1図の貯蔵部132など貯蔵部区画には、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS、リン酸濃度=0.01M、NaCl濃度=0.137M)(Sigma Chemical社)などを入れるのが好ましい。受入れ溶液は他のものを使用してもよく、それは当業者であれば周知であろう。サンプルおよび貯蔵部区画中の放射性標識した成分もしくは薬物の濃度は、シンチレーション・カウンタを使用して測定する(例えばmodel 2000 CA、Packaxd Instruments社)。二重処方物を幾つかのサンプルに使用してもよく、および/または測定の信頼性を最適なものにするため反復実験を行ってもよい。
【0077】
透過値は定常条件下、関係式P=(dNr/dt)/(ACd)から計算できる。式中、Aはサンプルへアクセス可能な組織の比表面積、Cdはサンプル中の成分または薬物の濃度、Nrはレセプター貯蔵部へ透過した成分または薬物の蓄積量である。Williams他著『Int.J.Pharm.』第86巻69〜77頁(1992)にヒト皮膚透過性の被験者間変異は40%と報告されている。受動透過性促進、Epは下記の式1に従ってPBSの受動透過性との関係から計算する。
【0078】
【式1】
式中、P(促進剤)は所定の促進剤による薬物透過性、P(PBS)はPBSによる薬物透過性である。飽和溶液からのフラックスJsatは、Jsat=PCsatから計算され、その場合Csatは処方薬の薬物溶解度である。フラックス促進、Ejは下記の式2を使用して計算する。
【0079】
【式2】
式中、Jsat(促進剤)およびJsat(PBS)は、それぞれ促進剤およびPBSの飽和溶液からの薬物のフラックスである。
〔5.4 皮膚組織サンプルの微視的欠陥の修正または修復〕
本発明は、皮膚などの組織標本の微視的欠陥を修復および/または修正する方法を含む。例えば、活性成分(例えば医薬品または薬物)の経皮送達の研究に使用する装置または拡散セルには、拡散高速輸送経路として働くことのできる欠陥が皆無の皮膚サンプルが必要である。このような欠陥には数ミリメートルから数十ミクロンの大きさの数種のタイプがある。物理的裂け目と毛嚢は、輸送もしくは拡散データの解釈で妥協が許される、2つのタイプの欠陥にすぎない。不均質組織セグメント、すなわち異常な量の欠陥を含むセグメントは、特に本発明において比較的に小さな組織サンプルを使用する場合、不正確で間違った拡散測定を導く。所定の組織サンプル表面上の欠陥の位置の迅速な同定は、画像解析によって達成することができ、ビデオ顕微鏡法または顕微鏡写真法を使用して、各組織セグメントを高速マイクロ・インスペクションすることが好ましい。
【0080】
本発明の好ましい実施形態に従って、不均質組織セグメントに関する拡散データは不正確な測定を避けるため廃棄してもよい。他方、組織セグメントの欠陥の影響の特徴づけができ、および/または定量することができる場合、関連する拡散測定はその欠陥の分を数学的に調整できる。
本発明の別の実施形態において組織標本中の欠陥は、欠陥場所をカバーするために、ワックスをプリントするように指令されているインクジェット・プリンタに、この欠陥場所を供給することによって修復される。プリントするパターンは欠陥の無い領域の上へも多少重ね、欠陥全体をカバーするように工夫する。ワックス・プリント・ヘッドは組織と衝突した瞬間、固化する溶融ワックスをプリントする。この固形ワックスは耐水性で、かつその後の試験期間中、修復された領域が拡散フラックスに影響を与えないことを確実にするためシールのような役目を果たす。ドロップレット配置は、重なりが十分にシールを形成するのが好ましい。
【0081】
〔5.5 固体源サンプルのための代替の実施形態(第2図A〜D)〕
第2図A〜Dは、固体源サンプルを使用し、組織バリア輸送を測定する代替のハイ・スループット装置200および方法の概略図である。装置200は、第1図の装置100に類似するが、例えば接着剤、比較的平らな経皮パッチ、またはフィルム様サンプルなどの半固形物を含有する組成物など、固体源サンプルを試験するために設計されている点で異なる。基質プレート214はプラスチックまたはガラス製プレートなど稠密なプレートで、このプレートはサンプル216のアレイ212を支持する。各サンプルは1つの活性成分(例えば医薬品)と、少なくとも1つの不活性成分を含む成分の組み合わせを含有する。適当な成分の例は第1図に関して先に記載してある。
【0082】
本方法の第1工程は、異なる組成物の領域(すなわち、サンプル216)のアレイ212を、稠密な基質214上に作製することを含む。このアレイを製造する方法は様々あるが、1つの簡単な方法は、簡便な溶剤中に全ての構成要素含む溶液を作成するため、コンビナトリアル分配装置を使用することである。溶液または組成物を処方する適当な分配装置および方法は先に記載され、および米国特許出願番号09/540,462号にも開示され、その全内容を本願に引用して援用する。
【0083】
好ましい実施形態において、処方された溶液は、サンプル・ウェル116から成るサンプル・アレイ112を備える(第1図の)基質プレート114に類似するマイクロタイター・プレートのウェルと、ベース118ではなく分離可能で稠密な底部プレート214の中に含まれる。次に、この溶剤を気化させ、ウェル内の各サンプルを乾燥させると底部にフィルムが得られる。この気化方法は、経皮パッチなどの各種組織輸送デバイスの製造に使用される製造方法を模倣している。次に第2図Aに示されるアレイを得るため、上部プレートを除去してもよい。サンプル216はどのような形態をしていてもよいが、第2図Aに示すように一般には円形が好ましい。
【0084】
医薬品または薬物などの活性成分の析出を目的として、例えば薬物/接着剤/促進剤溶液の組成物もしくは処方物の安定性を評価するために、この型のプレートが使用できることは注目すべきである。析出が生じているかどうかは、各フィルムの光学的検査をすれば分かる。それはサンプルに光が当った場合、析出物が光散乱の増加の原因となるからである。この散乱方法を予め排除すべき程度にフィルムが既に十分不透明な場合、代替の手段を使用してもよい。1つのこのような方法はフィルム中の結晶の存在を容易に検出する第二高調波発生法(SHG)である。また結晶の存在を検出するため微焦点X線回析を使用することも可能である。
【0085】
第2図Bにおいて示すように、本発明の方法の次の工程は、研究に使用する組織標本220を調製することである。角質層の標本などの標本220は、先に述べたように一般の方法によって調製しても、または取得してもよい。ただし、どのようなプレート型を研究に使用しようとも、これをカバーするほど十分にサンプル標本220が大きければ、それが最も好都合である。例えば、96ウェルのマイクロタイター・プレートをカバーするほど十分に大きくする。従って各々の研究のプレート214のために、分離された組織サンプルを調製する。次に第2図Bに示すように、サンプル領域の各々をカバーするように、この組織をプレート214の上に置く。組織220の下にエア・ポケットが決して生じないように注意する。1つの方法は、組織220をプレート214の1つの端から初めて徐々にプレートの表面を横切って進みながら置いていく。エアは組織/プレートの接触線の先で押出される。
【0086】
第2図Cに示すように、本発明の1つの実施形態において、側方拡散が隣接するサンプル間に発生しないことを確実なものにするために、今度は各サンプル領域上の組織220の領域を、近隣の領域から物理的に切断または分離してセグメント224を作成する。先に述べたようにこれは例えば機械的な刻み付けもしくは切削、レーザー切削または、カット222に沿っての圧着など、どのような方法によっても行うことができる。
【0087】
さて各プレート214上の組織セグメント224の各々を、ビデオ顕微鏡法によって結像し特徴づけしてもよい。自動画像認識は、損傷を受けたあるいは不均質なこれらの組織セグメントを、同定し記録するために使用することができる。先に述べたように、損傷を受けた、または不均質な組織セグメント224は置換、修復または無視してもよい。他方、損傷を受けた、または不均質なセグメント224に関与するデータは欠陥分について調整してもよい。任意選択で、組織220は区分けに先んじて画像化、置換、または修復してもよい。さらに他の代替の方法では、この組織220を切断および/または画像化した後、サンプル216上に組織セグメント224を置く。
【0088】
第2図Dにおいて、本発明の方法の次の工程は、第1図の貯蔵プレート130に類似する貯蔵プレート230、または底開き型(open−bottomed)タイター・プレートを、図示するように、組織セグメント224の上に置くことである。貯蔵プレート230は、複数の中空貯蔵部232を含む。プレート230が適所に固定されるとき、組織セグメント224が各サンプルを貯蔵部232からを分離するように、各貯蔵部232はサンプルおよび組織上に並ぶ。貯蔵プレート230はクランプ、ねじ、ファスナ、または他の適当な取付け手段を使用して基質プレート214に固定される。プレート230および214は、貯蔵部232の周囲に液体密封が作り出されるように十分な圧力で圧着することが好ましい。組織セグメント224を横切って貯蔵部232へ拡散するサンプル化合物を受け入れるため、各貯蔵部を貯蔵媒体、好ましくは生理食塩水などの液体または溶液で満たす。1つの実施形態において、この貯蔵媒体は約2%BSA含有PBS溶液である。
【0089】
自動定期サンプリングを備える装置200のインキュベーション、および貯蔵部232の溶液の調製は、コンビナトリアル研究の全サンプル用の活性成分の透過性評価を行うために使用される。
本願に記載される本発明の実施形態は、組織を通過する化合物の輸送に焦点を当てているが、本発明のシステムおよび方法は、膜または他の全てのバリアを通過する化合物の輸送の研究にも適当である。
【0090】
〔5.6 間接測定を使用する代替の実施形態(第3図)〕
第3図では、本発明の代替の実施形態において、装置300は、角質層など組織標本を通る活性成分フラックスをハイ・スループット・スクリーニングする装置および方法に関し、そのようなフラックスは、少なくとも部分的に、促進剤の存在下において組織内の活性成分(医薬品または薬物)の透過性によって測定されることを認める。この透過性は一般に少なくとも2つの要因、組織内での(例えば角質層)活性成分の溶解度、および組織標本内での活性成分の拡散性によって支配される。これらの2つの要因、溶解度と拡散性は、組織標本を通過するフラックスを間接的に評価する方法で個別に測定する。
【0091】
第3図において、活性成分および不活性成分(例えば医薬品/接着剤/促進剤/添加剤)から成る異なる組成物のサンプル(例えば溶液338)を含有するウェル316から成るアレイ312を構築する。所定の量の角質層などの組織セグメント340を各ウェルへ加える。他方、各セグメントがサンプル溶液338と接触するように組織セグメントを各ウェル316の上に(第1図、第2C図および第2D図に示す配置に似せて)置く。成分(例えば薬物または医薬品)が組織サンプルの中へ採取される率を、同様に調製されたウェル316から異なる時間に組織340を抽出し、その成分の存在、不在、または濃度を計測することによって測定してもよい。溶解量が経時変化しないように十分に長い時間をかけた後、濃度を測定することで溶解度、すなわち組織内340での成分平衡濃度を評価できる。比率および溶解度の積は成分の透過性に比例する。
【0092】
〔5.7 組織バリア輸送の代替装置(第4図A〜C)〕
第4図Aにおいて示すように、第1図の装置の代替の実施形態は拡散セル400である。拡散セル400はシンク・プレート410と、ソース・プレート430と、シンク・プレート410およびソース・プレート430の間に配された組織標本420と、を備える。シンク・プレート410は第1図に関して先に述べたように、貯蔵媒体を保持するためのシンク・ウェル412を備える。シンク・ウェル410は開放端を有する円筒形として図示されるが、シンク・ウェルは長方形、六方晶、球形、楕円形、または他のどのような形状を有していてもよい。シンク・プレート410は、シンク・ウェル412の端に沿って、シンク・ウェル412と流動的に連通する少なくとも1つのアクセス・ポート416を備える。またシンク・プレート410はソース・プレート430と咬合するために構成された表面形態414を備えるのが好ましく、かつ組織標本420で密封を形成する。
【0093】
1つの好ましい実施形態において、組織標本420は皮膚組織であるが、第1図の組織標本120に関して先に述べたように、いかなる組織または膜であってよい。組織標本420はシンク・ウェル412と表面形態414をカバーするように切断され、形成されまたは特定の寸法に切られる。組織標本420は好ましくはアクセス・ポート416を完全にはカバーしないように置く。
【0094】
第4図Cにおいて示すように、ソース・プレート430は、ソース貯蔵部またはウェル432を備え、これは開放端を含み、かつソース・プレート430を組織標本420上に置いたときシンク・ウェル412と整合する。また経路436はソース・プレート430を通過し、ソース・ウェル432と連通しないがほぼ隣接する。経路436はアクセス・ポート416に整合するように構成され、ソース・プレート430を除去することなしに、シンク・ウェル412中の貯蔵媒体とアクセスする。
【0095】
第4図Aにおいて再度示すように、またソース・プレート430は、シンク・プレート410の表面形態414と咬合するために構成され特定の寸法に切られ表面形態434を備えるのが好ましく、かつシンク・ウェル412およびソース・ウェル432の周囲を組織標本420と共に密封を形成する。例えば1つの実施形態において表面形態414は、シンク・ウェル412の開放型境界の周囲で表面シンク・プレート420から延びる凸環で、かつ表面形態434は表面形態414と咬合するために構成されソース・プレート430中に形成された凹環である。
【0096】
本発明の別の実施形態において、幾つかの拡散セル400は第1図のアレイ112に類似する拡散セルのアレイを作製するため、集合して取り付けられるかまたは形成される。
第4図A〜Cの装置の模範的な使用は、第1図に関する上記の模範的な使用と同一であるが、ソース・プレート430または組織420を除去することなしに、アクセス・ポート416および経路436によって、シンク・ウェル412から貯蔵媒体を付加または除去することが可能となる。拡散セル400に使用される貯蔵媒体は液体または溶液であることが好ましい。拡散セル400の代替の使用法において、貯蔵媒体およびサンプルの配置は第1図と逆でもよい。例えば、貯蔵媒体をソース・ウェル432中の組織標本420の上に置いて、かつサンプルをシンク・ウェル412中に保持してもよい。そのような実施形態において、経路436およびアクセス・ポート416を通してサンプルを加えてもまたは除去することができる。
【0097】
〔5.8サンプルの充填または添加の方法(第5図AおよびB)〕
第5図A及びBは、サンプル530を、例えば第1図に示すサンプル・アレイ112などのサンプル・アレイ中のサンプル・ウェル522に添加または充填するときに使用するための装置500の概略図である。その場合サンプル530および組織524の間のエア・ポケットまたは気泡の発生は避ける。サンプル・アレイ中、組織524はサンプル・ウェル522と貯蔵部526との間に位置するが、サンプル・ウェル522は、例えば第1図に示す基質プレート114などの基質プレート中に位置し、貯蔵部526は例えば第1図に示す貯蔵プレート130などの貯蔵プレート中に位置する。本発明の充填方法において、サンプル供給源514と排気スペース512とを備える供給カニューレ510は、サンプル530で充填するためのサンプル・ウェル522の片側をカバーする基底膜520を穿刺する。
【0098】
次に、サンプル供給源514を、組織524と接触するまでサンプル・ウェル522の中へ伸張する。次にサンプル530がサンプル供給源512に供給され、そしてサンプル530がサンプル・ウェル522へ充填され始めると、空気が供給カニューレ510中の排気スペース512を通って、サンプル・ウェル522から強制的に排出される。望ましい量のサンプル530がサンプル・ウェル522に充填された時、サンプル供給源512と供給カニューレ510を、基底膜520およびサンプル・ウェル522から完全に引き抜く。
【0099】
本発明の充填方法の好ましい実施形態において、サンプル530をサンプル・ウェル522へ送る間、充填過程中は常にサンプル供給源514がサンプル530がサンプル・ウェル522に入る充填率と同期する率でサンプル・ウェル522内に引き戻されて、サンプル供給源514の排出口はサンプル・ウェル522内に突出するサンプル530内部にある。望ましい量のサンプル530がサンプル・ウェル522へ充填されたとき、サンプル供給源512および供給カニューレ510の両方を完全に基底膜520およびサンプル・ウェル522から引き抜く。
【0100】
好ましい実施形態において、基底膜520はゴム膜である。
本発明の充填方法は手動で、または自動分配手段を使用して行うことができる。その場合サンプル・アレイ中のサンプル・ウェルは自動分配装置を使用して充填される。この装置は高速で、正確、かつ制御された方法で、同一または異なるサンプルを、1つ以上のサンプル・アレイ中の複数のサンプル・ウェルへ分配することが可能である。
本発明の充填方法に従って分配されたサンプル530は液体源サンプルであることが好ましい。
【0101】
〔5.9 固体源サンプルの代替の実施形態(第6図〜第8図)〕
第6図は、本発明に従って固体源サンプルのアレイ630中の組織バリア輸送を測定するための、ハイ・スループット装置600の好ましい実施形態の分解概略図である。装置600はスペーサ・プレート620を支持する基底プレート610、固体源サンプルのアレイ630、組織標本640、ドナー貯蔵部654のアレイを備える貯蔵プレート650、および例えば条662を有する段付きねじ660などの締付け手段を備える。
【0102】
基底プレート610はアルミニウム製で、かつスペーサ・プレート620および貯蔵プレート650は、透明プラスチックまたはポリカーボネート製であることが好ましい。
基底プレート610は段付きねじ660の条662と咬合するためドリルで穴を開けられたねじ穴612を有し、よってねじ660が装置を通り抜けてねじ穴612送られ締付けられた時、この装置が締め合わせられる。この装置が締め合わせられる時、貯蔵プレート650および組織標本640の間は密閉される。基底プレート610の端の周辺に位置するねじ穴612の数は幾つでもよいが、ねじ穴612の数は好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは4から8の間である。好ましい実施形態において、基底プレート610はさらにガイド印614のアレイを含み、このガイド印は例えば2x2,4×4,6x6,および8xl2など、どのようなアレイを形成してもよく、また組立て中、装置600の各種構成部品を並べるのを補助するために使用される。
【0103】
スペーサ・プレート620および貯蔵プレート650中の、ねじ穴622およびねじ穴652は各々、ドリルで穴を開けられ、段付きねじ660の段と条622はスムースに通過できるが、(各々第7図および第8図の段付きねじ760および860に図示されるように)段付きねじ660の頭は通過できない。スペーサ・プレート620および貯蔵プレート650の端の周辺に位置する、各々のねじ穴622およびねじ穴652の数は、幾つでもよいが、ねじ穴622およびねじ穴652の数は、好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは4個から8個である。好ましい実施形態において、スペーサ・プレート620および貯蔵プレート650の双方の各角に少なくとも1個のねじ穴がある。
【0104】
代替の実施形態において、装置600はさらに貯蔵プレート650の上に位置する上部プレートを備え、この上部プレートは基底プレート610(例えばアルミニウム)と同一材料から製造され、かつ貯蔵プレート650中のねじ穴652と適合するねじ穴を含むオープン・フレームか、またはねじ穴652と貯蔵プレート650上のドナー貯蔵部654と同一のねじ穴と貯蔵部のアレイを含む固体のプレート、のいずれかである。
【0105】
装置600は、まず基底プレート610の上面にスペーサ・プレート620を置き、スペーサ・プレート620中のねじ穴622と、基底プレート610中のねじ穴612を整合させることにより組立てる。貯蔵プレート650中のドナー貯蔵部654のパターンに対応するパターンで、固体源サンプルのアレイ630をスペーサ・プレート620上に作製し、かつ基底プレート610上のガイド印614は、各サンプル630が上部プレート650中のドナー貯蔵部654と整合するように配置されるのを確実にするために使用される。サンプル630のサイズはドナー貯蔵部654のサイズと相応する。
【0106】
各サンプル630は、1つの活性成分(例えば医薬品)と、少なくとも1つの不活性成分を含む成分の組み合わせを含む。適当な成分の例は第1図に関して先に記述がある。
組織標本640とサンプル630間にエア・ポケットが形成されるのを避ける態様で、組織標本のシート640をサンプル・アレイ630上に配置する。次にドナー貯蔵部654のアレイを備える貯蔵プレート650を、上部プレート650上のねじ穴652が、対応するスペーサ・プレート620のねじ穴622に整合するように皮膚上に配置する。
【0107】
次に、得られた組立て装置600を締め合わせるが、これは条622を有する段付きねじ660を、組立てられた装置600の並んだねじ穴652にスライドさせて通し、かつ貯蔵プレート650と組織標本640の間が密着するように各段付きねじ660を締めて行う。段付きねじ660は、少なくとも組立てられた装置600の四隅の各々に使用することが好ましい。
【0108】
貯蔵媒体を組立てられた装置600のドナー貯蔵部654へ加え、適時にまたは様々な時間間隔で、サンプルをドナー貯蔵部654から採取し、かつ組織標本640を通過するサンプル630中の、例えば活性成分および共通成分などの成分の、輸送またはフラックスの測定に使用する。複数のサンプルが採取された場合、ドナー貯蔵部654から標本の内容を除去した後、等量の貯蔵媒体を同一のドナー貯蔵部654へ加える。
【0109】
ドナー貯蔵部654のサイズは約1mm〜約50mm、より好ましくは約2mm〜約10mm、最も好ましくは約3mm〜約7mmである。
第7図は、本発明に従って固体源サンプルのアレイの組織バリア輸送を測定するための、ハイ・スループット装置700の圧縮概略図である。装置700は装置600と類似するが、ドナー貯蔵部754のアレイが8×l2の合計96のアレイである点で異なる。その場合各々の貯蔵部は直径6mmを超えない。装置700は、スペーサ・プレート720を支持する基底プレート710、固体源サンプルのアレイ(例えば第6図に示すサンプル630)と、組織標本(例えば第6図に示す組織標本640)、ドナー貯蔵部754のアレイを備える貯蔵プレート750、および例えば段付きねじ760などの締付け手段を備える。
【0110】
第8図は、本発明に従って、固体源サンプルのアレイ中の組織バリア輸送を測定するためのハイ・スループット装置800の圧縮概略図である。装置800は装置600および装置700に類似するが、ドナー貯蔵部854のアレイが、16×24の合計384のドナー貯蔵部854のアレイである点で異なる。その場合各々の貯蔵部は直径3mmを超えない。装置800は、スペーサ・プレート820を支持する基底プレート810と、固体源サンプルのアレイ(例えば第6図に示すサンプル630)、組織標本(例えば第6図に示す組織標本640)、ドナー貯蔵部854のアレイを備える貯蔵プレート850、例えば段付きねじ860などの締付け手段を備える。第7図と第8図の装置の変形形態は、第6図に記載される変形形態と同一であり、かつ第6図〜第8図の装置の他の変形形態および模範的な使用は、適用可能であれば第1図に関して先に記載されたものと同一である。
【0111】
【実施例】
以下の実施例によってさらに本発明の方法およびアレイを説明する。本発明が以下の実施例の特定の詳述によって限定されない。
〔実施例1:ヒトの死皮膚を通過するニコチン透過〕
ヒトの死皮膚表皮を分離するが、これはまず皮膚をその下層にある脂肪から分離し、次に標準的手法を使用し60℃で90秒間熱処理を行い表皮を分離することによる。
【0112】
NICODERMCQ(登録商標)のニコチン・ステップ1(21mg/24時間)経皮パッチ(GlaxoSmithKline社製、米国ノース・カロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)に直径5/16インチの円の孔を開けるが、得られた穿孔サンプルの上に支持体および剥離ライナーを、穿孔サンプルが試験装置中に配置されるまで保持する。
【0113】
第6図に記載さるように装置を組立てた。その場合装置中の各プレートは長方形で大きさ5.030インチ(127.76mm)×3.365インチ(85.48mm)である。第1にアルミニウム製基底プレート610の上面に、厚さ1/8インチ(3.175mm)の透明ポリカーボネート・スペーサ・プレート620を置き、次にスペーサ・プレート中のねじ穴622を、基底プレート中のねじ穴612と整合させることによって装置を組立てた。その後、4×4サンプル・アレイを下表2に記載する通りにスペーサ・プレート620上に作製した。
【0114】
【表2】
穿孔サンプルを、表2の4×4アレイのスペーサ・プレート620上に一個ずつ置き、かつ各アレイ・サンプルが貯蔵プレート650中のドナー貯蔵部654と整合するように、配置されるのを確実にするため、基底プレート610上のガイド印614を使用して、各アレイ・サンプルの位置を選択した。基底プレート610上の、深さ0.020インチ(0.508mm)を有する96個のガイド印614を、基底プレート610の長辺の端から11.24mm内側に、短辺の端から14.38mm内側に位置する12×8アレイの中に配置した。配置の時、各サンプル上の剥離ライナーを除去して、サンプルの薬物貯蔵部/接着剤を暴露させた。
【0115】
アレイ・サンプルA4およびD1中、サンプル・パッチの薬物貯蔵部は、剥離ライナーと共に支持体から剥がれた。アレイの位置B3,C1,およびD3は、この装置を使っての経皮輸送測定時の、側方拡散の潜在的影響力を測定をするために、全くサンプルを含まない対照である。
全てのサンプルをアレイ中に置いた後、このサンプル・アレイより大きなのサイズの熱剥離したヒト死皮膚片を、皮膚とサンプル間にエア・ポケットが全く入らないように丁寧に静かにサンプル上に置いた。この皮膚の角質層をサンプルへ向けて隣接させた。次に直径1/4インチ(6.35mm)のドナー貯蔵部654の4×4アレイを備える、1/4インチ(6.35mm)厚の透明ポリカーボネート貯蔵プレート650を、貯蔵プレート650上の全てのねじ穴652が、対応するスペーサ・プレート620のねじ穴622と整合するように、皮膚の上に置いた。
【0116】
得られた組立装置600を締め合わせたが、これは条622を有する段付きねじ660を、組立てられた装置の四隅の各々で整合されたねじ穴652にスライドさせて通し、貯蔵プレート650と皮膚の間が密着するように、各段付きねじ660を締め付けることによって行った。基底プレート610上のねじ穴612は、0.250インチ(6.35mm)〜0.188(4.775mm)の範囲の10−24タップを有し、このタップがねじが締められる時、ねじ660の条662を捕らえて装置を締め合わせる。
【0117】
75μlのダルベッコ(Dulbecco’s)リン酸緩衛生理食塩水(PBS)を、貯蔵媒体としてアレイ中の各ドナー貯蔵部へ加えた。
2時間後、各ドナー貯蔵部654から貯蔵媒体の検査標本50μlを採取しその折、さらに50μlのPBSを各ドナー貯蔵部654へ加えた。2時間検査標本の各々をHPLCのバイアル中に置き、さらに450μlの50mM(リン酸でpH3.0に調整した)リン酸カリウム/アセトニトリル=50/50(v/v)を加えて500μlになるように希釈した。
【0118】
上述の方法を3時間後、4時間後、および5時間後に繰返した。実験のサンプリング段階の最後に、アレイ中の各ドナー貯蔵部654には、先に示されたように希釈された4つの(4)50μl検査標本が得られたが、ただB3ドナー貯蔵部用に3時間後に採取された検査標本は、500μlではなく950μlに希釈された。
【0119】
各検査標本中のニコチン含有量を、次にHPLC分析によって決定した。
検査標本を解析するために使用したHPLCシステムの構成要素は、Waters 2790 Separations Module(登録商標)、Waters Photodiode Array Detector Model 996(登録商標)、およびWaters Millennium 32v3.2 Chromatography Software(登録商標)(Waters社、マサチューセッツ州ミルフォード)であった。
【0120】
HPLC分析は大きさ250mm×4.6mm、粒子径5μmのプラチナEPSC18カラム(登録商標:Alltech Associates社、ミシガン州、Muskegan)を使用して行った。移動相は50mMリン酸カリウム(リン酸でpH3.0に調整した)/アセトニトリル=50/50(v/v)で、流量は1.0ml/分であった。検出は波長260nmで紫外線吸光度を測定して行った。実行時間は4分であった。注入量は10μlであった。カラム温度は周囲温度であった。
【0121】
各検査標本中のニコチン含有量数量化は、1セットのニコチン・スタンダード(Sigma社)を使用して得られた較正曲線に比較することによって行った。ニコチン量は、1〜100μg/mlの範囲では線形であるということが分かった。本方法を使用して皮膚中の他の成分(例えば脂肪、タンパク質)による潜在的なクロマトグラフィの干渉は、直接分析によって無視した。
【0122】
HPLC分析の結果を以下の表3及び表4に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
各ドナー貯蔵部のニコチンの蓄積は、以下の式(3)〜(6)に従って計算した。
【0125】
【式3】
【0126】
【式4】
【0127】
【式5】
【0128】
【式6】
アレイ中の各ドナー貯蔵部のニコチン蓄積計算の結果を、以下の表6Aおよび表6Bに示す。
【0129】
【表6A】
【0130】
【表6B】
先の結果から分かるように、活性成分、ニコチンはドナー貯蔵部中に検出され、したがってニコチンは皮膚バリアを通過した。またこれらの結果より、使用した検出または測定方法は、輸送されたニコチンを検出するのに十分感度が高かったことを示している。活性成分ニコチンや多くのサンプルの経皮輸送は明らかに類似の輸送率を示した。
【0131】
さらに、隣接する「ウェル」へのニコチンの側方拡散は、直接の経皮輸送に比べ十分に遅いことを示していたが、非常に低量のニコチンがサンプル上に位置しないドナー貯蔵部に検出された。このように、この実験は明らかに組織バリアを通過する成分の輸送を測定するこの装置の可能性を示している。
本発明はある特定の好ましい実施形態に関して非常に詳細に記述しているが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の請求項の精神と範囲は本願に含まれる「発明の実施の形態」の記述によって如何なる制限も受けない。実際、図示され記載される実施形態に加えて、本発明の各種変更形態は当業者には明らかとなり、添付の請求項の範囲に含まれるであろう。
【0132】
なお、参照文献が幾つか述べられたが、それらの全ての内容を本願に引用して援用する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
第1図は、本発明による経皮輸送など組織バリア輸送を測定するためのハイ・スループット装置の概略図である。
【図2】
本発明による固体源サンプルを用いて組織バリア輸送を測定するためのハイ・スループット装置の代替の実施形態の概略図である(A〜D)。
【図3】
第3図は、本発明による組織バリア輸送を測定するためのハイ・スループット装置の代替の実施形態の概略図である。
【図4】
本発明による単独で、またはハイ・スループット装置の一部として、組織バリア輸送を測定するために使用される拡散セルの代替の実施形態の概略図である(A〜C)。
【図5】
例えば第1図に示すハイ・スループット装置中のサンプル・アレイなど、サンプル・アレイ中のサンプル・ウェルを充填するための装置の概略図である(A〜B)。
【図6】
第6図は、本発明による、固体源サンプルを使用して組織バリア輸送を測定または分析するためのハイ・スループット装置の代替の実施形態の概略図である。
【図7】
第7図は、本発明による、固体源サンプルを使用して組織バリア輸送を測定または分析するためのハイ・スループット装置の代替の実施形態の概略図である。
【図8】
第8図は、本発明による、固体源サンプルを使用して組織バリア輸送を測定または分析するためのハイ・スループット装置の代替の実施形態の概略図である。
Claims (49)
- 組織を通過する成分の輸送を測定する装置であって、
支持プレートと、
前記支持プレートによって支持されるサンプル・アレイと、
前記サンプル・アレイの上にかぶせた組織標本と、
前記サンプル・アレイとは反対の前記組織標本の側へ固定され、かつ貯蔵アレイを有する貯蔵プレートと、
を備えた測定装置。 - 前記サンプル・アレイの各サンプルは、共通成分及び少なくとも1つの付加成分を含み、
各サンプルが、
(i)前記付加成分の正体、
(ii)前記共通成分の前記付加成分に対する割合、
(iii)前記共通成分の物理的状態、
の少なくとも1つの点に関して他のサンプルの少なくとも一つとは異なるものである、請求項1に記載の装置。 - 前記共通成分が医薬品、栄養サプリメント、栄養補助食品、または代替医薬品である、請求項2に記載の装置。
- 前記付加成分が接着剤、促進剤、添加剤、溶剤、賦形剤、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の装置。
- 前記促進剤が化学的促進剤、脂質透過促進剤、溶解促進剤、または促進剤の組み合わせである、請求項4に記載の装置。
- 前記接着剤がポリイソブチレン、シリコン、またはアクリル系接着剤である、請求項4に記載の装置。
- 前記サンプル・アレイ中の各サンプルが、固体源サンプルまたは液体源サンプルである、請求項1に記載の装置。
- 前記組織標本が皮膚組織を含む、請求項1に記載の装置。
- 前記皮膚組織が表皮または角質層を含む、請求項8に記載の装置。
- 前記皮膚組織が、ヒト皮膚組織、動物皮膚組織または培養皮膚組織である、請求項8または9に記載の装置。
- 前記組織標本は、複数のセグメントに分けられており、その各セグメントが一つのサンプルを覆っており、且つ、前記支持プレートと各サンプルの貯蔵部を限定する貯蔵プレートの環状部分との間に密閉されている、請求項1に記載の装置。
- 前記組織標本が、機械的切削、刻み付け、レーザー切削、切削または圧着によって複数のセグメントに分けられた、請求項11に記載の装置。
- 各貯蔵部が、前記貯蔵プレートを通って延び、かつサンプルの上に整列する経路を含む、請求項1に記載の装置。
- 前記装置がさらに前記貯蔵部の少なくとも1つの中に貯蔵媒体を含む、請求項13に記載の装置。
- 前記貯蔵媒体が液体または溶液である、請求項14に記載の装置。
- サンプルの組織バリア輸送を測定する方法であって、
各サンプルが活性成分と少なくとも一つの付加成分を有し、前記各サンプルが、前記活性成分の正体,前記付加成分の正体,前記活性成分の前記付加成分に対する割合,または前記活性成分の物理状態,のうち少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なるサンプル・アレイを調製すること;
サンプル・アレイを組織標本で覆うこと;
前記サンプル・アレイに対応する貯蔵アレイを有する貯蔵プレートを前記サンプル・アレイとは反対側の前記組織標本側に固定すること;
前記貯蔵アレイを貯蔵媒体で充填すること;
各サンプルから前記組織標本を通過する前記サンプル成分の輸送を測定するため、各貯蔵部中で一つ以上のサンプル成分の濃度を測定すること;
を含む測定方法。 - サンプルの組織バリアフラックスを分析する方法であって、
各サンプルが共通成分と少なくとも一つの付加成分を有し、前記各サンプルが、前記付加成分の正体,前記共通成分の前記付加成分に対する割合,前記共通成分の物理状態,のうち少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なるサンプル・アレイを調製すること;
サンプル・アレイを組織標本で覆うこと;
前記サンプル・アレイに対応する貯蔵アレイを有する貯蔵プレートを前記サンプル・アレイとは反対側の前記組織標本側に固定すること;
前記貯蔵アレイを貯蔵媒体で充填すること;
各サンプルから前記組織標本を通過する前記共通成分のフラックスを測定するため、時間の関数として各貯蔵部内の前記共通成分の濃度を測定すること;
を含む分析方法。 - サンプル・アレイ中の各サンプルが固体源サンプルまたは液体源サンプルである、請求項16または17に記載の方法。
- 前記活性成分が医薬品、栄養サプリメント、栄養補助食品または代替医薬品である、請求項16に記載の方法。
- 前記共通成分が医薬品、栄養サプリメント、栄養補助食品または代替医薬品である請求項17に記載の方法。
- 前記付加成分が、賦形剤、溶剤、接着剤、促進剤、添加剤、またはそれらの組み合わせである、請求項17に記載の方法。
- 前記促進剤が化学的促進剤、脂質透過促進剤、溶解促進剤、または促進剤の組み合わせである、請求項21に記載の方法。
- 前記接着剤が、ポリイソブチレン、シリコン、またはアクリル系接着剤である、請求項21に記載の方法。
- 前記方法はさらに、前記組織標本を複数のセグメントに分ける工程を含み、その場合各セグメントはサンプルを覆う、請求項16または17に記載の方法。
- 前記分ける工程が機械的切削、レーザー切削、刻み付け、切削または圧着を含む、請求項24に記載の方法。
- 前記方法はさらに、不均質なセグメントを検出するために各セグメントをイメージングし、かつ不均質なセグメントを修正する工程を含む、請求項24に記載の方法。
- 前記の修正する工程が、
前記不均質なセグメントを除去すること;
前記不均質なセグメントに関与する濃度測定を無視すること;
前記不均質なセグメントを修正するために濃度測定を調節すること;
前記不均質なセグメントを修復すること;
のいずれかを含む、請求項26に記載の方法。 - 成分の組織バリアフラックスを決定する方法であって、
各サンプルが共通成分と少なくとも一つの付加成分を有し、前記各サンプルが、前記付加成分の正体,前記共通成分の前記付加成分に対する割合,前記共通成分の物理状態,のうち少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なるサンプル・アレイを調製すること;
サンプル・アレイを組織標本で覆うこと;
前記サンプル・アレイの第1のサンプルから組織標本を通過する前記共通成分のフラックスを決定すること;
を含む決定方法。 - 前記決定する工程がさらに、前記組織標本を通過する前記共通成分のフラックスを決定するために、前記組織標本の反対側の上に位置する貯蔵部中の、前記第1のサンプルからの前記共通成分の濃度を測定することを含む、請求項28に記載の方法。
- 前記方法がさらに、
前記サンプル・アレイに対応する貯蔵アレイを有する貯蔵プレートを前記サンプル・アレイとは反対側の前記組織標本側に固定すること;
前記貯蔵アレイを貯蔵媒体で充填すること;
前記組織標本を通過する各サンプルから前記共通成分のフラックスを測定するため、時間の関数として各貯蔵部内の前記共通成分の濃度を測定すること;
を含む、請求項28に記載の方法。 - 前記方法がさらに、前記組織標本を複数のセグメントに分けることを含み、各セグメントはサンプルを覆う、請求項28に記載の方法。
- 前記分ける工程が、機械的切削、レーザー切削、刻み付け、切削または圧着を含む、請求項31に記載の方法。
- さらに、不均質なセグメントを検出するために、各セグメントをイメージングする工程を含む、請求項31の方法。
- 前記方法がさらに不均質なセグメントを修正する工程を含み、
前記修正する工程が、
不均質なセグメントを除去すること;
前記不均質なセグメントに関連する濃度測定を無視すること;
前記不均質なセグメントを修復すること;
のいずれかを含む、請求項33に記載の方法。 - 前記覆う工程が、さらに、
組織標本を複数のセグメントに分けること;
望ましい特性のために前記セグメントをイメージングすること;
前記望ましい特性を有する第1のセグメントを選択すること;
前記第1のサンプルの上に前記第1のセグメントをかぶせること;
を含む、請求項28に記載の方法。 - サンプル・アレイ中の各サンプルが、液体源サンプルまたは固体源サンプルである、請求項28に記載の方法。
- 前記組織標本が皮膚組織である、請求項28に記載の方法。
- 最適の経皮組成物または処方物を決定する方法であって、
各サンプルが活性成分と少なくとも一つの付加成分を有し、前記各サンプルが、前記活性成分の正体,前記付加成分の正体,前記活性成分の前記付加成分に対する割合,前記活性成分の物理状態,のうち少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なるサンプル・アレイを調製すること;
前記サンプル・アレイを皮膚標本で覆うこと;
最適の経皮処方薬を決定するために、前記サンプル・アレイ中の各サンプルから皮膚組織を通過する前記活性成分のフラックスを決定すること;
を含む決定方法。 - 最適の経皮組成物または処方物を決定する方法であって、
各サンプルが共通成分と少なくとも一つの付加成分を有し、前記各サンプルが、前記付加成分の正体,前記共通成分の前記付加成分に対する割合,前記共通成分の物理状態,のうち少なくとも一つに関して他のサンプルの少なくとも一つと異なるサンプル・アレイを調製すること;
前記サンプル・アレイを皮膚標本で覆うこと;
最適の経皮処方薬を決定するために、前記サンプル・アレイ中の各サンプルから皮膚組織を通過する前記共通成分のフラックスを判断すること;
を含む決定方法。 - 前記方法がさらに、前記組織標本を複数のセグメントに分ける工程で、その場合各セグメントはサンプルを覆う、請求項38または39に記載の方法。
- 前記の分ける工程が機械的切削、レーザー切削、刻み付け、切削または圧着を含む、請求項40に記載の方法。
- 前記方法がさらに、前記不均質なセグメントを検出するために、各セグメントをイメージングする工程を含む、請求項40に記載の方法。
- 前記方法がさらに、前記不均質なセグメントを修正する工程を含み、
前記修正する工程が、
前記不均質なセグメントを除去すること;
前記不均質なセグメントに関連する濃度測定を無視すること;
前記不均質なセグメントを修復すること;
のいずれかを含む、請求項41の方法。 - 組織を通過する成分の輸送を測定する装置であって、
基底プレート;
スペーサ・プレート;
前記スペーサ・プレートによって支持される固体源サンプルのアレイ;
サンプル・アレイの上にかぶせた組織標本;
前記サンプル・アレイとは反対の前記組織標本側に固定され、かつ貯蔵アレイを備える貯蔵プレート;
前記貯蔵プレートと前記組織標本の間に密閉を形成するための締付け手段;
を備える輸送測定装置。 - 前記装置はさらに、上部プレートを備える、請求項44に記載の装置。
- 前記スペーサ・プレートおよび前記貯蔵プレートの片方または両方が透明または透けている、請求項44に記載の装置。
- 前記基底プレートがアルミニウムである、請求項44または46に記載の装置。
- 前記締付け手段が前記装置を通り抜けて前記基底プレートに固定されるねじを含む、請求項44,45,または46の何れかに記載の装置。
- 前記締付け手段が前記装置を通り抜けて前記基底プレートに固定されるねじを含む、請求項47に記載の装置。
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