JP2004504073A - 交流を用いて薬剤を送達する方法 - Google Patents
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Abstract
製薬化学的薬剤、栄養素、および遺伝物質等の異なった薬剤を組織にわたって輸送する種々の方法が提供される。方法は、AC信号を利用し、輸送が行なわれる組織の領域において実質的に一定の電気的状態を維持し、これによって、制御され、かつ予測可能な方法で薬剤が組織にわたって輸送されることを可能にする。特定の方法は、任意のACまたはDC前パルス信号を含み、最初に目的の電気的状態を獲得する。任意のDCオフセット信号は、薬剤の輸送を促進することを支援するためにさらに含まれ得る。方法は、種々の異なった臨床背景および用途において利用され得る。
【選択図】図2
【選択図】図2
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は概して、薬物送達の分野に関し、具体的には、イオン導入法による輸送を含む、組織にわたる製薬活性剤などの薬剤の輸送の方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
代謝産物、薬物および栄養物等の種々の薬剤を組織にわたって輸送することは、主に3つのファクタの機能である。すなわち、組織の透過性、駆動力の有無、および輸送が行なわれる領域の大きさである。多くの組織に対する固有の浸透性が無いため、体表面にわたって薬剤を移動させることが難しい。細胞膜が通常、イオン化された極性種および無電荷の極性種に比較的浸透しない脂質の二分子層から構成されているため、多くの組織内の浸透性は低い。例えば、皮膚にわたって薬剤を輸送することは、一部には、角質層と呼ばれる皮膚の外層が、細胞間の脂質(これにより、物質がこのバリアを通過することが激しく妨害される)がぎっしりと充填された細胞からなるため、困難であることが分かっている。
【0003】
腸に沿って並んでいる細胞がかなり浸透性が高く、そして経口摂取が通常患者によって受け入れられているため、薬物の経口投与は、薬物送達の最も通常の方法を保持する。しかし、このアプローチは、腸内での薬剤の分解、駆動力を付与する能力の無さ、そして局所的な胃腸過敏を含む種々の欠点を有する。
【0004】
イオン導入法は、電流を付与することによって、組織にわたって薬剤を送達するために用いられ得る別のアプローチである。実際、イオン導入法の方法は通常、所定の種類のリザーバまたは吸収パッドを含む電極を位置決めすることを含む。この吸収パッドは、組織上で輸送される薬剤を含み、この組織を介して送達が行われる。通常薬剤を含まないが、導電性ゲルを含むかまたはこれでコーティングされた別の電極をさらに、組織と接触して配置して、電気回路を完成させる。
【0005】
2つの電極間および組織にわたって電圧を印加すると、電流が生成され、これにより、イオン化された薬剤が反対の電荷の電極に向かって移動し、これにより、薬剤が組織中を動く。イオン化された薬剤より効果が低いにもかかわらず、中性薬剤を電気浸透を介してさらに輸送し得る。イオン導入法は、組織内の孔の形成および/または拡大を誘発し、これは次いで、イオン薬剤および極性薬剤への組織の浸透性を増加させて、これらの薬剤をこのような孔を通過させる。組織が皮膚である場合、薬剤は角質層に浸透し、そして表皮層に伝わる。真皮の最内部分は通常、乳頭層と呼ばれ、そして脈管系から毛細管網を含む。この網は、薬剤を吸収し、そして続いて、薬剤を循環系の主な部分に移動させる。
【0006】
イオン導入法の大部分は、定電流のDC信号を用いて輸送を達成する。このような方法に関連付けられたいくつかの問題があり、この結果、臨床家、患者および政府の調節機関がこれを受け入れる際の制限となっている。定電流のDCの一つの欠点は、定電流が付与されている場合でさえも、薬物送達の速度が時間の経過と共に変化することである。定電流で一定した流れを提供することが不可能であることは、恐らく、組織の有孔性における時間に依存した変化、ならびにこれに付随する孔表面の電荷密度、および治療途中での有効な孔サイズの変化に起因する。このような変化は、イオン導入法による経皮の薬物送達を効果的に制御する際に著しい問題を呈する。定電流のDC方法を用いると、生物活性薬剤の移転数(特定の電荷種によって運搬される全電流の数分の1)が、通常のイオン導入法手順の過程で時間が経つにつれ増加することが通常見受けられる。転移数のこの変化は、組織にわたって輸送される薬剤の量が、時間と共に変化し、そして制御も予測も効果的にされ得ないことを意味する。
【0007】
定電流のDCの方法で電気穿孔法の程度を制御する際の問題によりさらに、患者間患者内で大きな変化が生じる。したがって、輸送される薬剤の量が時間関数として変化するだけでなく、同じ人間の日ごとの変化、および人ごとの変化がさらにある。
【0008】
さらに別の問題は、イオン導入法の間に形成される副産物の関数である。多くのシステムを用いると、輸送は水による加水分解を伴い、これにより、バルク溶液内で著しいpH変化が生じ、電極表面においてガスが形成される。特に、陽子がアノードで形成し、水酸化物イオンがカソードで形成する。このようなpH変化の結果、電気化学処理による焼灼が生じ、これにより組織が損傷され得る。さらに、ガス形成は接触を妨害し、これにより、電極と組織表面との間の導電性が妨害される。
【0009】
これらの問題に対処するために、定電流信号ではなく、異なった波形の信号およびパスルDC信号を使用することを含む種々の方法が試された。パルスDC信号の使用は、理論的に、皮膚キャパシタンスが放電することを可能にし、これによってより制御された電流の流れおよび薬物の送達を可能にすることによって、改善された性能を提供することが提示された。しかしながら、複数のDCパルス法は、定電流DC法と同じ一般的問題の少なくともいくつかを抱えている。
【0010】
一般的なパスルDC法の例示は、Weaverらによる米国特許第5,019,034号が、一連の短DCパルスを利用して電気穿孔を特に、可逆電気的破壊と呼ばれる状態誘導する方法について議論する。さらに、組織にわたる薬剤の輸送を達成するために種々の力が利用され得る。電気穿孔が一度確立されると(例えば、パルス持続時間、形状および周波数等の)DCパルスの性質は、輸送が完了するまで維持される。Van Groningenによる米国特許第5,391,195号は、少なくとも1kHzの周波数を含み、かつ少なくとも80%の衝撃係数を有するパルス直流を用いる方法について議論する。このような信号は、輸送効率を高めるためにアサートされる。DC信号を用いる方法、および比較的安定した電流が付与されるように電流レベルをモニタリングする計画がなされた方法は、Newmanによる米国特許第4,931,046号、およびChienらによる米国特許第5,042,975号において議論される。特定のDC法は、パルス電界と連続電界との組合せを用いる。例えば、Hofmannによる米国特許第5,968,006号は、パルスDC信号を生成して患者の皮膚に孔を誘導するために用いられる1つの電極アセンブリについて議論される。第2の電極アセンブリは、電気穿孔された領域を通る分子の輸送に影響を及ぼすために十分な大きさの低圧連続電界を生成する。上述の特許の各々は、直流を使用してイオン導入法を実行することについて議論するにとどまっている。これらの特許は、さらに輸送される薬剤(単数または複数)についての一定の輸率、従って一定の磁束を維持するために、電気穿孔された組織の領域において実質的に一定の電気的状態をどのように維持するかについて議論していない。
【0011】
上記のイオン導入に関する文献は、電導性イオン導入においてAC信号を利用することについて教示されていない。AC信号は、イオン導入による効果的な輸送を達成するための必要な駆動力を欠くと複数の当業者に信じられてきた。その代わりに、荷電粒子を輸送するために付与されたDC信号の駆動力が必要とされるという見解がある。AC信号が双方向性の性質を有しているために、AC信号の使用は、よくても非能率的な輸送をもたらし、回路網輸送はおそらく全く行なわれないという結論に多くの人を導いた。例えば、米国特許第5,391,195号において、「(交流の逆転パルス)負のパルスは、正のパルスに逆効果をもたらし、それによって治療の有効性を低減する」ことが記載される。
【0012】
それにもかかわらず、特定の研究者は、導電性イオン導入法における特定の目標のためにAC信号を用いることを述べている。例えば、Sabalisによるいくつかの特許(例えば、米国特許第5,312,325号;第5,328,454号;5,336,168号および第5,372,579号を参照)は、患者の皮膚に周期的な電気的変化を付与するために電流発振器に利用されるシステムについて述べる。皮膚の電位および抵抗の周期的な変化をトリガーする目的は、治療中の個人の自然な送達リズムを補強することである。従って、このような変形は、治療用化合物を含む液体の電気浸透が患者の循環系に流れ込むようにすると言われている。このタイプの送達は、患者の生まれながらの生物学的リズムと一致し、これを補強すると言われている。米国特許第5,328,453号は、電流の方向が周期的に指定され得、血餅を防止し、循環の流れを強化する1次薬物およびカウンタアクタの輸送を利用するシステムについて述べる。極性の逆転は、1次薬物およびカウンタアクタの電荷が逆であるとき効果的であるように要求される。
【0013】
いくつかの方法は、AC成分を含み得る一連の波形の適用を含む。Sabalisによる米国特許第5,135,478号および第5,328,452号は、例えば、分離するか、または重なり得、AC信号を含み得る複数の波形を生成することを含むイオン導入法について述べる。各信号の持続時間、反復率、形状および高調波成分は、血液循環を強化し、血液凝固のプロセスを妨害するように選択される。Lissらによる米国特許第5,421,817号は、集合的に送達を強化すると言われる搬送周波数および種々の変調周波数を含む、重なる波形の複合セットの使用について述べる。波形のセットにおけるAC信号の包含を可能にする一方で、Lissらは、AC信号の使用は好適でなく、極性の逆転は「薬物の経皮性送達を逆にする傾向がある」とは言えないという見解を補強する。
【0014】
さらに、DC法(Howardらによる「Arch Phys.Med.Rehabil.76」1995年、463〜466ページ、およびTapperらによる米国特許第5,224,927号を参照)を用いて生じ得る電気化学処理により焼灼を最小限にするための、イオン導入法におけるAC信号の使用に関する文献においていくらか述べられている。発汗過多の治療等の関連する方法においてAC信号を用いるように(例えば、ReinauerらによるBr.J.Derm.129、1993年、166〜169ページを参照)、受動的またはイオン導入法による薬物の輸送の後、皮膚の刺激を制御および低減するためにAC信号を用いることも述べられている(例えば、Dinhによる米国特許第6,018,679号)。
【0015】
しかしながら、AC信号の使用について述べるこれらの特許または論文のいずれも、実質的に一定の電気的状態および実質的に一定の電気穿孔状態を維持し、送達の期間中、組織にわたる薬剤の輸送が予測可能かつ制御される方法で行なわれるという試みを完全には扱っていない。さらに、複数のイオン導入法の障害となる被験者の内部および被験者間の可変性を低減する方法についても述べていない。
【0016】
(発明の要旨)
AC信号を利用して組織にわたって異なった薬剤を送達する方法が提供される。この方法は、製薬化学的薬剤、金属イオンおよび栄養分等の複数の異なった薬剤を送達するために利用され得る。送達プロセス中、AC信号が用いられ、抽出が行なわれる組織の領域において実質的に一定の電気的状態を維持し、これによって、薬剤が、制御され、かつ予測される方法で組織にわたって輸送されることを可能にする。この方法は、幅広い用途において利用される。例えば、特定の方法が、種々の治療的処置、解毒法、痛みの処理および皮膚治療において利用され得る。
【0017】
従って、特定の方法は、より具体的には、それらのうちの1つは組織に付与されるAC信号である1つ以上の電気信号を供給することによる組織にわたる薬剤の送達を含む。AC信号は、その後、組織の領域内の実質的に一定の電気的状態を維持するように調節され、実質的に一定の電気的状態の維持は、薬剤の送達を用意にする。いくつかの方法に関して、AC信号によって維持される電気的状態は電気的コンダクタンスまたは電気抵抗である。組織に付与されるAC信号は、基本的に、任意の波形を有し得る。波形は、例えば、対称または非対称であり得、従って、四角、正弦、鋸歯、三角および台形の形状を含む。AC信号の周波数は、少なくとも1Hzである傾向があるが、他の例においては、周波数は約1Hz〜約1kHz、約1kHz〜約10kHz、または約10kHz〜約30kHzの範囲内にある。
【0018】
他の送達方法は、AC信号より前に組織に付与される任意の電気的前パルスを含み、送達が行なわれるべき組織の領域内で電気穿孔を誘導する。前パルスは、AC信号またはDC信号のどちらかであり得る。前パルスの電圧は、通常、約1〜約90Vの範囲にあり、他の例においては約9〜約30V、さらに別の例においては約30〜約40V、さらに別の例においては約40〜約90Vの範囲にある。実際の電圧は、任意の特定の電圧か、またはこれらの範囲内の電圧の範囲であり得る。
【0019】
組織にわたる薬剤の送達は、AC信号により誘導された電気穿孔された領域にわたって受動拡散を介し得る。しかしながら、特定の方法は、AC信号と組合されて付与される任意のDCオフセット信号を利用する。DCオフセット信号は、実質的に一定の電気的状態で維持される領域にわたる薬剤の送達を促進するために有効である。DCオフセット信号は、典型的には、薬剤の送達中、実質的に連続的に付与され、送達レートを制御するために有効な電圧または電流である。DCオフセット信号は、通常、約0.1〜5Vおよび約0.01〜0.5mA/cm2の範囲にあるが、この範囲内の任意の特定の電圧、電流あるいは電圧の範囲(複数)または電流の範囲(複数)を含み得る。特定の方法において、DCオフセット信号は、組織と接触する2つの電極を利用して付与され、DCオフセット信号の電流の流れの方向は、周期的に2つの電極間に反転される。
【0020】
さらに別の方法は、前パルスおよびDCオフセットをAC信号と組合せて、組織にわたって薬剤を送達する。このような方法は、通常、AC信号の前に、電気的前パルスを組織に付与し、領域内で電線項を誘導することを含む。DCオフセット尊号は、さらに、組織に付与され、AC信号により実質的に一定の電気的状態に保たれる領域にわたって薬剤の送達を促進するために有効である。
【0021】
方法は、動物および植物の組織を含む種々の異なったタイプの組織を用いて利用され得る。組織は、体表面または人工物の部分であり得る。通常、組織は、皮膚または粘膜組織、特に人の皮膚または粘膜組織である。荷電および非感電薬剤を含む、種々の薬剤も送達され得る。
【0022】
(詳細な説明)
(I.定義)
本発明を説明する前に、他に明記なき限り、本発明は特定のイオン導入送達デバイス、治療用薬剤等に限定されないことが理解される必要がある。なぜならこれらには様々な種類があり得るからである。本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態だけを説明する目的で用いられ、限定することを意図しないことも理解される必要がある。
【0023】
本明細書および添付の請求項において用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に示さない限り、複数の対象物を含む。従って、例えば、「薬理学的活性薬剤」に関しては、2つ以上の活性薬剤を含み、「ビヒクル」に関しては、2つ以上のビヒクルを含む等である。
【0024】
本発明の説明および請求項において、以下の用語は以下に挙げられた定義で用いられる。
【0025】
用語「体表面」は、皮膚または粘膜組織と関係付けて用いられ、粘膜の内層を有する体腔の内面を含む。用語「皮膚」は「粘膜組織」を含むと解され、逆に「粘膜組織」は「皮膚」を含むと解される。
【0026】
組織の「領域」は、1つ以上の信号を付与することによって電気穿孔される組織の領域のことであり、この領域にわたって薬剤が輸送される。従って、体表面の領域は、皮膚の領域または粘膜組織のことであり、これらにわたって活性薬剤が送達される。
【0027】
用語「電気穿孔」は、概して、孔の誘導が原因であると信じられている組織の浸透性の増大および/またはイオン導入プロセス中に物質が抽出され得る、誘導された孔か、または既存の孔の大きさの増加のことである。従って、用語「電気穿孔状態」は、電気穿孔された組織の浸透性のことである。
【0028】
本明細書中で用いられるように、用語「治療すること」および「治療」は、症状の重症度および/または頻度の低減、症状および/または内在する原因の除去、症状および/または内在する原因の出現の予防、および損傷の改善または治療のことである。
【0029】
用語「薬理学的活性薬剤」、「製薬化学的薬剤」、「薬物」および「治療的薬剤」は、本明細書中で交換可能に用いられ、組織にわたって送達(例えば、経皮性または経粘膜性投与)するために適切な化学物質または化合物、および所望の効果を誘導する化学物質または化合物のことである。この用語は、治療的に有効な薬剤、および予防的に有効な薬剤を含む。さらに含まれるのは、具体的に述べられた、これらの化合物または化合物のクラスの誘導体および類似物であり、さらに、治療的薬剤の活性代謝物を含む所望の効果を誘導する。
【0030】
本明細書中で用いられるように、「ビヒクル」は体表面にわたる薬剤の投与に適切な搬送材料のことである。本明細書中で有用なビヒクルは、非中毒性であり、製薬化学的調合物の他の化合物または薬物送達システムと有害な方法で相互作用しないような、当該分野で公知である任意の材料を含む。
【0031】
薬理学的活性薬剤の「効果的な」量(または「治療に効果的な」量)は、所望の効果を提供するために十分であるが、非中毒性である薬物の量を意味する。
【0032】
(II.概要)
制御され、かつ予測可能な組織にわたる薬剤の輸送の種々の方法が本明細書中に開示される。これらの方法は、部分的に、AC信号のみか、または1つ以上のACまたはDC信号との組合せが、輸送が行なわれる組織の領域において、実質的に一定の電気的状態を誘導および維持するために利用され得る。このような電気的状態を維持することによって、領域内の組織の浸透性を維持し得、領域内の孔の大きさ、孔密度および孔の表面電荷密度は一定に保持される。組織内に新しい孔を生成または既存の孔を拡大する電気信号を付与して組織の浸透性を高めるプロセス(例えば、組織内に孔を生成または拡大すること)は、電気穿孔法と呼ばれ、このように取得される浸透度は、電気穿孔の状態と呼ばれる。
【0033】
この方法で組織の浸透性または電気穿孔状態を制御することは、フラックスにおける薬剤の可変性が組織にわたって低減されることを可能にして、輸送される物質の一定の輸率が達成される。フラックスの可変性を順次低減するということは、医薬品等の薬剤を制御され、かつ予測可能な方法で送達し得ることを意味し、効果のある治療範囲が狭い(narrow therapeutic window)医薬品にとって特に重要な局面である。患者内患者間の薬物送達レートの可変性も、本明細書中で開示される特定の方法を用いて最小化され得る。
【0034】
電気的状態、従って組織の電気穿孔度は、組織の導電性または抵抗をモニタリングすることによって、または組織の浸透度と相関する、類似の電気的パラメータによって確認され得る。
【0035】
AC信号は、実質的に一定の電気的状態を維持するように調節されるが、組織にわたる物質の輸送は種々の方法で達成され得る。組織の一方の側の物質の濃度が、組織のもう一方の側よりも著しく高い場合(例えば、皮膚の外側に対して内側)、電気穿孔領域を通る薬剤の輸送は、受動的拡散、フィック駆動の拡散により達成され得る。他の方法は、AC信号のDCオフセットを電気穿孔領域に付与することによって輸送のレートを高め、領域にわたって薬剤を駆動する。
【0036】
特定の方法は、所望の電気的状態を迅速に獲得するための任意の前パルスを含み、所望の電気的状態は、その後、AC信号によって維持される。前パルスは、AC信号またはDC信号のどちらかであり得る。従って、本明細書中に提供される方法は、単に、AC信号(「ACプロトコル」または「ACオンリープロトコル」)、AC信号とDCオフセット信号の組み合わせ(「AC+DCオフセットプロトコル」)、を含み得、これらのうちのいずれも、ACまたはDC前パルスとさらに組合され得る。
【0037】
本明細書中で提供される方法は、従来のDC導入法またはパルスDCイオン導入法による送達方法と著しく異なる。発明の背景の節において説明されたように、一定の電流DC法およびパルスDC法の著しい欠点は、これらが組織浸透性または電気穿孔の、実質的に一定の状態を維持できないことである。電気穿孔された組織の領域内の孔は、イオン導入法の間に時間とともに変化することがよくある。実質的に一定の電気穿孔された状態を維持できないことは、制御可能および予測可能に薬剤を組織にわたって送達する定電流DC法の能力を著しく制限する。本発明の方法は、輸送が行なわれる期間中、実質的に一定の電気的状態を維持することによって、この問題を改善し得る。
【0038】
(III.種々の方法の説明)
(A.概要)
本明細書中に記載される種々の方法の一般的な特徴は、AC信号を用いて実質的に一定の電気的状態を維持して、体表面等の組織にわたって薬剤を輸送する際の磁束の可変性を制限することである。電気的状態は、典型的には、抽出が行なわれる間の時間にわたって維持される。実質的に一定の電気的状態、および電気穿孔の状態を維持することによって、有効孔密度および孔の大きさは、基本的に、治療手順中は一定である。これは、同様に、送達される薬剤が、実質的に一定で制御および決定できる輸送レートを可能にする。
【0039】
本明細書中で用いられるように、用語「AC信号」は、概して、周期的に方向を逆転させる電気信号(例えば、電流または電圧)のことである。さらに後述されるように、典型的には、AC信号は、少なくとも約1Hzの周波数を有する。AC信号は、ゼロ基準点に対して方向を逆転する信号のみでなく、ゼロ基準点に対してバイアスされる信号のことでもあることが理解されるべきである。「電気的状態」という用語は、電気穿孔される組織の浸透性の測定値と相関する状態、またはこの測定値のことであり、これは電気値として測定され得る。実質的に一定の電気的状態は、実質的に一定の電気穿孔状態と相関する。実質的に一定の電気的状態は、例えば電気穿孔される領域内の実質的に一定の抵抗またはコンダクタンスによって、および/または輸送される物質の実質的に一定の輸率(特定の物質によって運ばれる全電流に対する比)によって証明される。
【0040】
この方法は、荷電化学種および非荷電化学種の両方を含む種々の薬剤の制御され、かつ予測可能な送達のために用いられ得る。イオン導入法において典型的であるように、浸透体は、主に、荷電実態である傾向がある。しかしながら、本明細書中に記載された方法は、荷電分子の送達のみに限定されない。本明細書中で述べられる方法は、非荷電物質を送達する場合に利用され得る。
【0041】
これらの方法は、組織にわたって、より具体的には組織の領域にわたって薬剤の送達を達成する方法が立案される。本明細書中で用いられるように、「組織」は、特定の機能の実行において統一的である類似の細胞および/または細胞成分の集合体を意味するように定義される。細胞は、特定の機能の実行において統一的である。組織は、生体の部分、生体から摘出された部分、または人工物であり得る。人工組織は、人工組織中で細胞の集合体が培養され、生体内の組織と同様の機能をするものである。しかしながら、集合化された組織は、宿主(すなわち、生体)から取得されない。人工組織は、インビボまたはインビトロで培養され得る。人の皮膚は、例えば、インビトロで培養され得、細胞の集合体を取得し、単層の厚さまたはそれよりも大きい。これは、培養液中の皮膚組織か、または生きた宿主に一旦移植された皮膚組織として機能し得る。本発明の特定の方法を用いて利用され得る特定のタイプの人工組織は、例えば、米国特許第4,458,678号、第4,485,096号および第4,304,866号において述べられる。
【0042】
特定の方法は、人または動物の組織を用いて実施される。従って、これらの方法は、人の患者に対する種々の臨床的用途および獣医学的用途において利用され得る。動物に対して実施される場合、動物は基本的に、提供される任意の種類の動物であり得、動物は、電気信号が付与されることによって中に孔が生成され得る組織層を有する。従って、特定の方法は、例えば、犬および猫等の家内動物、馬、牛、羊および豚等の家畜、外来動物、爬虫類、鳥および両生類を用いて実行され得る。さらに、他の方法は、植物または植物細胞培養物を用いて実行される。
【0043】
(B.AC信号)
(1.概要)
付与されるAC信号の特定の機能は、実質的に一定の電気的状態を維持する目標を達成することを支援し、一方で、DCベースの方法と関連付けられたいくつかの問題を回避する。例えば、既存のDC経皮性イオン導入技術の問題は、このような方法が、皮膚抵抗が経時的に変化することを許すことである。これは、次に、薬剤が組織にわたって送達または輸送されるレートを変化させる。しかしながら、AC信号の使用は、この問題を低減し得る。AC成分は、極性を連続的に逆転させるので、組織は、実質的に輸送手順にわたって減極された状態で保たれ、従って、皮膚構造を連続的に変化させ得、イオン導入法による輸送を妨害し得る電荷の蓄積に対してあまり敏感でない。
【0044】
AC信号も、新しい孔の形成を誘導することによって、および/または既存の孔を拡大することによって、輸送を促進するように働く。AC信号の適用は、電気浸透を介して、同時に輸送が強化されることなく新しい孔を生成し得ることが現在の発明者によって見出されている。従って、AC信号の適用によって強化された輸送は、少なくとも部分的に新しい孔が生成された結果である。(例えば、Liらによる「J.Pharmaceutical Sciences 88」1999年、419〜427ページを参照。この発明は、参考のため本明細書中で援用する)。新しい孔を生成することによって、AC信号の適用は、受動拡散のみと比較して、抽出レートを著しく増大し得る。
【0045】
さらに、複数の当業者は、荷電化合物を輸送するためにDC電界が必要とされ、AC信号はイオン導入による輸送のために必要な駆動力を欠くと考えたが、本発明者は、ACイオン導入法は、直接電界効果(すなわち、電気泳動)を取除かず、この効果の約10%が、比較的低い周波数AC(例えば、10Hz〜1kHz)の状態で保たれることを発見した。任意の特定の理論に縛られることを意図しないが、このACフラックス強化現象は、皮膚にわたる目標物質の非対称的境界条件の結果であると考えられる。従って、AC信号は、低減された直接電界効果および電気穿孔を介して、電極の電気化学反応による複雑さがなく、輸送を強化する手段も提供する(例えば、水による加水分解)。
【0046】
制御される送達のレベルの増大のほかに、AC信号の利用によって取得され得る他の利益が存在する。例えば、輸送中のAC信号の適用は、従来のDCイオン導入法と比較して、皮膚への刺激を少なくし、感覚のより高い閾値を有する。すなわち、高周波数ACを用いることは、所与の電流で、DCよりも、あまり不都合でない感覚/痛みをもたらす。従って、イオン導入法のためにAC電界を使用することは、イオン導入のためにDCを用いるよりも良好である(例えば、Dalziel&Mansfield、AIEE Trans、1950年、Volume69、1162〜1168ページ、およびDalziel&Massoglia、AIEE Trans、1956年、Volume75、49〜56ページを参照)。
【0047】
これらの周波数関係は、別の理由で重要である。皮膚における孔の誘導の広がりに対する周波数効果に関する結果は、(例えば、10〜250Hzの)低AC周波数領域における孔の形成の広がりへの周波数の非常に小さい依存度を示す。従って、最適なAC周波数領域は、AC法において利用され得、この方法で、高いAC電圧が用いられ、孔の誘導の広がりを増大し、最低の感覚および刺激を伴う輸送を強化する。
【0048】
(2.組織へのAC信号の付与)
極めて詳細に後述されるように、AC信号(および任意の前パルスおよびDCオフセット信号)は、通常、治療される組織と接触して配置される、少なくとも1対の電極を用いる組織に付与される。少なくとも1つの電極は、送達されるべき薬剤(例えば、製薬化学的薬剤)を含むリザーバを含む。この電極は、輸送が行なわれるべき組織の領域上に配置される。第2の電極も、組織と接触して配置され、電源を有する電気回路を形成するように配置される。AC信号は、組織にわたる薬剤(単数または複数)の輸送の条件を最適化する賦形剤を用いて、または用いずに付与され得る。
【0049】
人に対して実施される方法については、電極は、しばしば、最も外側の皮膚層、すなわち角質層と接触して配置される。AC信号の適用は、任意の前パルス信号と組合せて、皮膚内に孔を生成および維持し、これによって、薬剤(単数または複数)が角質層にわたって輸送され、それを真皮表皮層へ輸送されることを可能にする。
【0050】
付与されたAC信号は、所望の電気的状態を効果的に導入および/または維持するために適切な電圧および波形であり、その状態は、孔のない組織と比較して、薬剤の強化された輸送を可能にする電気穿孔された状態である。通常、目標の電気的状態は、選択された電気抵抗または電気コンダクタンスである。あるいは、さらに、電気抵抗またはコンダクタンス値が決定され得る他の電気的パラメータ、および組織の浸透度に対応する任意の他のパラメータがモニタリングされ得る。
通常、AC信号は、薬剤の輸送が行なわれている間の時間にわたって、実質的に一定の電気的状態を維持するように付与される。送達に要する実際の期間は、用途の性質に著しく依存して変化する。いくつかの用途は、約10分未満で実行され得、他の用途は12〜24時間またはそれ以上続き得る。
【0051】
治療中、AC信号は、選択された目標値で電気的状態を維持するか、またはより典型的には、目標の範囲内に維持するように、必要に応じて変更される。最も典型的には、これは、印加される電圧の振幅および/または周波数を変更することによって達成される。患者の皮膚の電気抵抗がモニタリングされる方法に関して、目標抵抗は、人によっていくらか異なり得る。しかしながら、目標抵抗は、一般的に、約1〜30kΩ・cm2、より典型的には5〜15kΩ・cm2内の値である傾向がある。目標抵抗は、さらに、患者の初期抵抗の固定有理数であり得る。概して、目標抵抗は、初期抵抗の約0.1〜10%であり、より典型的な値は0.1〜1%の範囲内である。
【0052】
AC信号は、通常、選択される目標値を維持し、測定された値が目標値の約20%よりも増減しないように、必要に応じて付与される。従って、目標が5kΩ・cm2の場合、AC信号は、測定された抵抗を約4〜6kΩ・cm2の範囲内に保持するために必要に応じて変更される。特定の他の方法において、揺らぎは目標値の10%未満に制限され、さらに他の方法において、約1%未満に制限される。
【0053】
AC信号の周波数、波形および持続時間は、選択された電気的状態を所望の範囲内に維持するために効果的な間、変動し得る。しかしながら、AC信号の周波数は、一般的に、少なくとも約1Hzである傾向がある。特定の方法において、付与された周波数は、通常、約1Hz〜約1kHzの範囲内に含まれ、他の方法においては、周波数は、通常、約1kHz〜約10kHzの範囲にある。さらに別の方法において、周波数は、通常、10kHz〜30kHz、または30kHz〜200kHzの範囲内にある。実際の周波数は、これらの範囲内の任意の特定の値か、またはこれらの範囲内の値の範囲であり得る。インビボ人体実験中の典型的な電圧は、約0〜40Vであるが、より実用的な範囲は0〜20Vである。多様な波形が利用され得る。適切な波形は、対称および非対称の両方の波形を含み、四角、三角、正弦、鋸歯および台形の形状等を含む。
【0054】
信号が付与される組織の領域の大きさは、用途の性質に著しく依存して異なり得る。通常、領域は1cm2未満である。通常、電気穿孔された領域および物質が抽出される領域は、約1cm2未満〜約200cm2より大きい傾向がある。領域の大きさは、他の用途においてより小さい傾向であり、約5cm2〜約100cm2に及ぶ。さらに他の方法において、領域は、約5cm2〜約30cm2である傾向がある。領域の大きさは、さらに、これらの範囲内の任意の特定の値であり得る。領域の形状は、任意の幾何学的形状であり得、任意の1つの特定の形状または形状のタイプに限定されない。
【0055】
(3.中性化学種の輸送)
DC成分なしで輸送を実行する、AC信号を利用するいくつかの方法は、組織にわたる中性薬剤(例えば、グルコースまたはエタノール)を抽出するために有用であり得る。本発明の発明者は、さらに、DCを付与せず、約1Hzより上の周波数でAC信号が用いられて行なわれる方法は、電気穿孔をほとんど含まないか、全く含まないことを見出した。従って、AC信号のみを利用して送達を実行するとき、とるに足りない電気穿孔が存在する。さらに、中性薬剤を輸送すると、電気穿孔は存在しない。この状態での輸送は、受動拡散と類似であるが、新しい孔の誘導(すなわち、より高い皮膚の孔隙率)が原因で強化されおよび/または電気穿孔のために孔隙率が増大または増加される。ACのもとでの中性薬剤の輸送は、従来の定電流DCシステムを用いるよりも結果として(主に電気穿孔が不在のため)磁束が少なくなり得るが、主にAC信号を用いる方法は、それにもかかわらず有用である。なぜなら、可変の孔表面と関連付けられた患者内患者間の可変性が最小化されるからである。さらに、中性浸透体については、静電薬剤が皮膚へ分配されない。
【0056】
(C.任意の前パルス)
比較的高電圧DCまたはACの前パルスは、選択的に組織に付与され得、目標の電気的状態、またはAC信号を調節することによって、実質的に維持される電気穿孔の状態を迅速に達成する。前パルスが所望の電気的状態を一度導き出すと、送達される薬剤のフラックスは、実質的に一定の電気的状態(例えば、実質的に一定の抵抗またはコンダクタンス)を電気穿孔された領域内で維持することによって制御され得る。AC信号は前パルスとして利用されると、この信号は、実質的に目標の電気的状態を維持するために利用され得る。AC前パルスには、さらに、分離AC信号が続き、目標の電気的状態を維持し、これは通常、前パルスの終了の直後に付与される。
【0057】
目標の電気的状態を獲得するためにAC信号のみが用いられ得る場合、前パルスを用いる利点は、これが所望の電気的状態を確立するプロセスを加速し得ることである。しかしながら、前パルスなしで、主にAC信号だけを用いることに付随するより長い期間は、DCオンリープロトコルと比較して依然として好適である。なぜなら、ACオンリープロトコルは、依然として予測可能かつ安定した電気的状態をもたらし、これは組織の一定の輸送特性を高める。このことは、DC信号だけを適用するときには起こらない。
【0058】
通常、AC前パルスまたはDC前パルスの特性は、所望の電気的状態を取得するために効果的であるように選択される。典型的には、これは、前パルス信号が目標の電気抵抗またはコンダクタンスを獲得するために付与されることを意味する。前パルスの電圧は、しばしば、約1〜約90Vの範囲にある。他の方法において、電圧は約9〜約30Vの範囲にある。さらに他の方法において、電圧は、約30から約40Vであり、他の方法においては約40〜約90Vである。
【0059】
AC前パルスが利用される場合、AC前パルスは対称または非対称であり得る。種々の適切なAC前パルス波形が用いられ得、方形波形、正弦波形、鋸歯波形、台形波形を含むが、これらに限定されない。前パルスの持続時間は目標の電気的状態を達成するために十分に長い。前パルスの持続時間は、部分的に、前パルスの電圧に依存する。しかしながら、前パルスは、通常、1分未満〜20分である。DCが利用される場合、これも種々の波形で供給され、形状は、例えば、四角、三角、台形または鋸歯である。前パルスは、目標の電気的状態を確立するために十分な持続時間を有する。
【0060】
(D.任意のDCオフセット信号)
組織にわたる輸送を行なうためにAC信号のみを用いる方法は、主に受動拡散を含み、輸送を達成する。しかしながら、上述のように、輸送は純粋に受動的な輸送を介して向上される。なぜなら、AC信号は電気穿孔を誘導し、これを通って薬剤が受動的に拡散し得るからである。さらに、ACプロトコルと関連付けられた小さい直接電界効果が存在し、イオン化合物の輸送を強化する。送達を促進し、送達プロセスを加速するために、この穿孔を通って物質、具体的には、イオン化合物が拡散し得る。抽出を促進し、抽出プロセスを加速するために、AC信号は、選択的に、DCオフセット信号と組合され得る。この組合せを利用する方法は、時には、「AC+DCプロトコル」と呼ばれる。この信号の特定の組合せを用いて、AC信号は、主に、組織の領域を実質的に一定の電気的状態で維持するために利用され、輸送を増大する浸透性のレベルを維持する。DCオフセット信号は、薬剤の輸送を駆動することを支援するために付与される。信号のこのような組合せを用いて、組織にわたる薬剤の安定した磁束が獲得され得る。これは、DC信号のみを用いて輸送を達成し、薬剤のフラックスがしばしば予測不可能であり、治療の経過とともに変化する従来の方法と対照的である。
【0061】
一般的事項として、組織に付与されるDCオフセット信号は、通常、組織にわたって輸送される薬剤の送達の実質的に一定のレートを維持するために効果的である。従って、DCオフセット信号のタイミングおよび持続時間は、この目標によって決定される。薬剤が送達されるレートは、組織の電気抵抗またはコンダクタンス、およびDCオフセット電圧または電流によって制御され得る。
【0062】
DCオフセット信号は、しばしば、AC信号の付与と基本的に同時に付与される。このタイミングは、例えば、前パルスが所望の電気的状態をすでに確立したときに適切である。しかしながら、他の方法において、DCオフセット信号は、AC信号が開始された後まで遅延される。遅延は、例えば、前パルスはAC信号が目標の電気的状態を確立することを可能にすることなく行なわれる方法の場合に適切であり得る。通常、DCオフセット信号の電圧は、約0.1V〜約5Vの範囲にあり、他の方法において、電圧は約0.1V〜約5Vの範囲にある。電流の範囲は、通常、約0.01〜0.5mA/cm2である。
【0063】
(E.例示的方法)
上述の電気信号は、種々の組合せで結合され得、組織にわたって薬剤を投与するための種々の異なったプロトコルをもたらす。例示的方法が続く。方法が、多数の異なった組織タイプを用いて実施され、組織の電気的状態を評価するために異なったパラメータがモニタリングされ得る一方で、このような方法は、しばしば、人の組織を用いて実行され、皮膚の電気抵抗またはコンダクタンスをモニタリングすることを含む。
【0064】
(1.ACオンリープロトコル)
図1は、方法50を図示し、これは、(例えば、目標の皮膚抵抗またはコンダクタンス等の)目標の電気的値または範囲の選択52で始まる。上述のように、選択された特定の目標は、処置される個人、および送達される薬剤の性質にいくらか依存して変動し得る。次にAC信号が付与され(54)、所望の目標の電気的状態を獲得し、組織にわたる物質の抽出を容易にする。上述のように、前パルスを用いず、AC信号のみの付与は、所望の目標を達成するために長期間を必要とし得る。それでもなお、AC信号の付与は、上述の理由で、単純な受動拡散を介して輸送を著しく向上する。さらに、極性を逆転することによるAC信号は、組織が脱分極され、組織の表面における荷電化学種の増大に対してあまり敏感でない状態に組織を保つ。AC信号は、さらに、皮膚浸透性の比較的一定のレベルを維持し、これは、比較的一定の、制御され、かつ予測可能な組織にわたる薬剤の送達を可能にする。
【0065】
AC信号が付与される時間において、連続的または周期的に組織の電気的状態が測定され(58)、組織の電気的状態が目標の範囲内にあるかどうかを決定する。電気的状態は、目標の範囲内にある場合、AC信号は改変せずに付与される。しかしながら、測定された電気的状態が目標の範囲の外側にずれる場合、AC信号は調節され(60)、電気的状態を目標の範囲内に戻す。AC信号は、組織にわたる所望の量の薬剤を実質的に一定のレートで送達するために十分な期間の間付与される。送達期間が一度完了すると(56)、治療は終了する(62)。
【0066】
(2.AC+前パルスプロトコル)
1つのAC+前パルス法70の模式図が図2に示される。この特定のアプローチを用いて、目標の電気的状態の選択72はACオンリープロトコルに関して説明されたとおりであり、図1に示される。しかしながら、AC信号の付与78の前に、ACまたはDC前パルスが組織に付与され(74)、選択された電気的状態を比較的早く獲得する。目標の状態が達成された(76)と一度判定されると、AC信号が組織に付与される(78)。電気的状態は、前の節で説明されたように、連続的または定期的にモニタリングされ(82)、送達が行われる期間にわたって目標の電気的状態を維持する。AC信号は、必要に応じて調節され、目標の状態を維持する。送達期間が一度完了される(80)と、手順は終了する(86)。
【0067】
(3.AC+DCオフセット)
図3は、AC+DCオフセットプロトコルを利用する方法90の主な局面を図示する。方法の初期のステージは、通常、目標の電気的状態の選択92を含むACオンリープロトコルに関して説明されたステージをたどる。しかしながら、この特定の方法は、AC信号およびDCオフセット信号が組織に付与される(94)。DCオフセット信号は、AC信号の付与と同時にまたは治療中の任意の時間に付与され得る。電気的状態がもはや目標とされる値にないと判定される場合、AC信号は調節され(100)、電気的状態を目標の値または範囲に戻す。このような調節は、通常、DC信号に依存せず、通常、DCにより駆動される輸送に影響を及ぼさない。DC信号は、典型的には一定に保たれるが、付与周期94の間に任意に調節され得、輸送される薬剤の送達レートを変更する。所望の量の薬剤が一度送達される(96)、または治療の期間が終了すると、ACおよびDC信号の付与は終了される(102)。
【0068】
(4.AC+前パルス+DCオフセット)
特定の方法110は、前パルスおよびDCオフセット信号をAC信号と組み合わせる(図4を参照)。このような方法は、各タイプの信号の独特な機能を利用し、薬剤の送達を最適化する。上述のように、目標の電気的状態が選択され(112)、次に、ACまたはDC前パルスを付与し、組織の浸透性が向上されたレベルと相関する選択された電気的状態を迅速に確立し、薬剤の送達を促進する。目標の状態が達成されたと一度判定されると(116)、AC信号およびDCオフセット信号が付与され(118)、AC信号が主に機能して、電気穿孔された組織にわたる薬剤の輸送を促進するように作用する目標の電気的状態およびDCオフセット信号を維持する。電気的状態はモニタリングされる(122)。電気的状態が目標の状態と異なることが見出される場合、AC信号は、必要に応じて調節され(124)、電気的状態を目標の状態に戻す。治療時間が一度経過するとプロセスは完了する(126)。
【0069】
(F.薬剤)
本明細書中で開示される方法は、幅広い薬剤の送達において用いられ得る。方法は、通常、イオン導入法によって組織にわたって輸送され得る任意の薬剤を送達するために利用され得る。組織が人の皮膚であるとき、薬剤は電気穿孔された皮膚を通って移動し得るものである。
【0070】
輸送される薬剤は、薬理学的に活性の薬剤であり、治療目的または予防目的で投与される。このような薬剤の例は、興奮薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗喘息薬、抗間接炎薬、抗癌薬、コリン抑制薬、鎮痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め薬、制吐薬、駆虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血薬、抗高血圧薬、抗感染薬、抗炎症薬、抗片頭痛、抗腫瘍薬、抗パーキンソン症薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗結節薬、抗潰瘍薬、抗ウィルス薬、抗不安薬、食欲抑制剤、注意血管障害および注意血管過活動薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗狭心症薬、中枢神経系(「CNS])薬、ベータ遮断薬および抗不整脈薬を含む心臓血管薬、中枢神経系興奮薬、利尿薬、遺伝物質、ホルモン剤(hormonolytics)、睡眠薬、低血糖薬、免疫抑制剤、筋弛緩剤、麻酔拮抗薬、ニコチン、栄養剤、副交感神経遮断薬、ペプチド薬、精神刺激薬、鎮静薬、ステロイド、禁煙薬、交感神経興奮薬、トランキライザ、血管拡張薬、ベータアゴニスト、ならびに早産防止薬を含むが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの方法において、2つ以上の薬理学的な活性薬剤は、組合されて投与される。さらに、薬理学的な活性薬剤は、種々の薬剤と組合され得、輸送の特定の局面を教科する。例えば、治療的薬剤は、血液の循環を改善し、患者の体にわたって治療的薬剤の送達レートを強化する薬剤と組合され得る。他の方法は、1つ以上の賦形剤を利用し、手順の間行なわれる位相のレベルを制御する。
【0072】
薬剤は、さらに、調合物の部分であり得、例えば、組織にわたる送達のために適切なビヒクルと組合され得る。例えば、投与される薬剤は、所望の調合物に依存して、動物または人に投与するための製薬化学組成を調合するために一般的に用いられる製薬化学的に容認できる、毒性のないキャリアまたは希釈剤を含む組成の部分であり得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性度に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理的塩類溶液、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、組成または調合物は、他のキャリア、補助薬、または毒性のない、非治療用、非免疫源安定薬、賦形剤等も含み得る。組成は、pH調節および緩衝薬剤、緊張調節薬剤、湿潤剤、洗剤等、生理的状態に近づける追加的物質も含み得る。種々のタイプの投与に適切な調合物に関するさらなるガイダンスは、「Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、PA、17th ed、1985年に見出され得る。
【0073】
送達される薬剤(単数または複数)が製薬化学的薬剤である場合、送達される治療薬剤は、予防および/または治療的処置のために投与され得る。治療薬剤の量は、疾病の状態または症状を治療、あるいはそうでなければ疾病または任意の他の所望でない症状の進行を回避、防止、抑制、または逆進させるために十分な量のことである。予防的量は、疾病または任意の所望でない症状を回避、防止、または抑制するために十分な量のことである。必要とされる薬剤の現実量は、例えば、薬剤の抗力および潜在的毒性、体内の薬剤の安定性、および薬剤を受取る個人の大きさおよび年齢を含む、当業者に公知のファクタの数に依存する。
【0074】
薬剤は、例えば、栄養素、代謝物および染料等、それらの治療的または予防的価値のために送達されない分子を含み得る。
【0075】
(IV.送達システム)
本明細書中に開示される方法を実行するための装置の1実施形態は、図5に模式的に示される。組織または体表面218にわたる薬剤を送達するシステム202、204は、通常、電源206に電気接続された2つの電極202の第1のセットを含む。電源206は、AC信号およびDC信号の両方を送達することができる単一の電源であり得るか、または2つの別々の電源、すなわち、AC信号を送達する一方の電源およびDC信号を送達する他方の電源を含み得る。2つの電極202、204および電源206を含む回路は、さらに、制御器208に接続され、この制御器は電極202、204に送達される電気信号をモニタリングし、信号を電源206に送信し得、そこから伝送された信号を変更する。
【0076】
電極202のうちの少なくとも1つは、少なくとも、1つのリザーバ(例えば、210)を含み、リザーバ表面212に電気接続される。リザーバ210の別の表面214は、組織218(例えば、患者の皮膚)の表面126に接触して配置され、例えば、接着剤またはゲル(図示せず)によって位置が保持される。リザーバ210は、組織218にわたって送達されるべき1つ以上の薬剤(例えば、製薬化学的薬剤)を含む。リザーバ210は、薬剤(単数または複数)220が溶解される溶液を収容する室であり得る。あるいは、リザーバ210は、送達されるべき薬剤(単数または複数)220を含む溶液、ペーストまたはゲルを保持する多孔性材料を含み得る。当業者に公知の種々の他のリザーバも利用され得る。対のもう一方の電極204も、組織218の表面216と接触して配置され、接着剤またはゲル(図示せず)によって位置が保持される。この電極204が配置され、2つの電極202と204との間を流れる電流の形成を可能にする。DCオフセット電流は、組織218にわたるリザーバ210内の荷電薬剤の、逆の電荷の電極の方向に駆動するために付与され得る。非荷電薬剤は、電気浸透によって生理学的pHで、アノード(正電極)から組織218にわたって駆動される。
【0077】
装置200は、電極222、224の第2のセットか、またはモニタリングセットを含み、これらのセットは、電気穿孔される組織の領域内に配置され、組織にわたる薬剤の輸送中、組織218の電気的状態をモニタリングする。上に示されるように、モニタリングされる電気的状態は、(例えば、電気抵抗またはコンダクタンス等の)組織の浸透性の程度か、または電気穿孔の状態を反映する状態である。モニタリング電極222、224は、電極の第1のセットから分離され得るが、これは必要ではない。なぜなら、電極の第1のセット202、204は、組織218の電気的状態をモニタリングするために用いられ得るからである。モニタリング電極222、224は、図5に示されるように分離モニタ226に接続され得るか、または電極202、204の第1のセットと同じ制御器208に接続され得る。分離モニタ226に接続された場合、モニタ226は、電極222、224の第2のセットによって測定されたような組織218の電気的状態に関する信号を制御器208に送信し得る。
【0078】
電気信号を付与する際に利用される電極202、204の第1のセットは、イオン導入法において用いられる任意の標準タイプの電極であり得る。いくつかのシステムは、銀/塩化銀から製作された標準心電計電極等の非分極電極を用いる。他の適切な材料は、金、ステンレス鋼およびプラチナを含む。多重チャンネル分散性電極も、特定の方法で利用され得る(米国特許第5,415,629号を参照)。
【0079】
DCオフセット信号が利用されると、電極はリザーバ機能を含む。なぜなら、カソードまたはアノードのどちらかは送達される薬剤の電荷に依存するからである。通常、アノードはDCオフセット信号の正の寄与を受取り、カソードはDCオフセット信号の負の寄与を受取る。結果として、DCオフセット信号が付与される場合、正に帯電しているイオンは組織を通じて抽出され、アノードの部分であるリザーバにおいて受取られる。正に帯電しているイオンは、アノードで組織内に駆動され、負に帯電しているイオンは、カソードで組織にわたって駆動される。生理的pHで、中性薬剤は電気浸透によってアノードから組織内に駆動される。DCオフセットが利用されず、AC信号のみが送達される場合、形式アノードまたはカソードは存在しない。
【0080】
いくつかのシステムにおいて、電極202、204の両方においてリザーバを含むことは有益であり得る。例えば、AC信号のみが付与される場合、薬剤はいずれかのリザーバから拡散を介して輸送され得る。さらに後述されるように、DCオフセットを用いる方法は、異なった時点で電流の流れの方向を逆転することを含む。電極202、204の両方において配置されるリザーバは、そのような方法において有益であり得る。なぜなら、送達は両方のリザーバから生じ得るからである。2つのリザーバは、さらに、逆の電荷の異なった薬剤が送達されるべき場合、よい影響が及ぼされるように利用され得る。このような例において、異なった帯電薬剤は別々のリザーバに配置され、用法のリザーバから送達が同時に進行し得るようにされる。
【0081】
動作中、リザーバ210は、輸送されるべき薬剤220を含む溶液または基質で満たされる。リザーバ210が吸収性材料を含む場合、これは薬剤を含む溶液で浸漬されるか、または薬剤を含むペーストまたはゲルで被覆される。電極202、204の第1のセットが一度完全に配置されると、電源206を介して電極202、204の第1のセットに電気信号が送達される。送達される特定の信号は、上で開示されたプロトコルのどれが利用されるかに依存する。しかしながら、種々の方法は、通常、電源206を利用することを含み、適切な形状、持続時間、周波数および電圧のAC信号を生成し、選択された電気的状態を維持する。輸送プロセス中に電気的状態が、モニタリング電極222、224によって検出された目標の電気的状態からずれた場合、適切な調節は、電源206を用いて行なわれ、AC信号を変更し、電気的状態が目標の値か、または目標の範囲内に戻されるようにする。
【0082】
制御器208は、マイクロプロセッサにより制御され得る。マイクロプロセッサベースの制御器が、モニタリング電極222、224からの信号に基づいて、電気的状態が目標の状態からずれていると判定した場合、制御器は、電源206に信号を送り、AC信号を変更し、電気的状態が所望の目標に戻るようにする。患者の皮膚の電気的状態が、例えば、潜在的に危険なレベルに達したことが判定される場合、このような制御器は、さらに、安全遮断を含み得る。
【0083】
ACまたはDC前パルスのどちらかを利用する方法については、目標の電気的状態に到達するために効果的な電源206によって適切な周波数の前パルス、電圧および持続時間が生成される。モニタリング電極222、224は、このプロセスの間に利用され得、所望の電気的状態の方向に進む。この状態が一度獲得されると、信号は制御器208に送信され、前パルスの生成を終了し、その後、組織に付与するためのAC信号および/またはDCオフセットを生成する。
【0084】
上述のように、いくつかの方法において、リザーバ210内の薬剤220の濃度は、組織のもう一方の側よりも十分に高く、受動拡散を介して電気穿孔領域を通って薬剤が輸送されるようにする。しかしながら、より典型的には、電源206は、さらに、DCオフセット信号を生成するために利用される。この電流は、帯電物質の輸送を、逆の電荷を有する電極の方向、または中性薬剤をアノードからカソードへ電気浸透を介して駆動する。
【0085】
半導体回路の使用によって、電極、電源およびリザーバ等の種々の前述の素子は、個人の日常の活動を妨害することなく、個人によって快適に着用され得る小型の集積デバイスに含まれ得る。
【0086】
(V.例示的用途)
本明細書中で提供される輸送法は、種々の障害および疾病の治療を含む種々の用途において用いられ得る。特定の方法は例えば、糖尿病の治療および肥満のような種々の体重障害の治療に用いられる。糖尿病の場合、個人のグルコースレベルが上昇したときに、インシュリンまたは他の低血糖薬剤の制御された送達のために、およびグルカゴンまたは(例えば、グルコースなどの)炭水化物代謝を低血糖の個人に輸送する場合に、この方法が用いられ得る。体重減少治療は、例えば、コレシストキニン等の食欲抑制剤の送達を含み得る。
【0087】
関連する方法は、麻酔薬または他のタイプの物質の乱用から回復しようと努める個人を治療する場合に支援するために実行される。これらの方法は、例えば、解毒プロセスにおいて支援する薬剤の投与を含み得る。送達法は、さらに、ニコチン嗜癖の治療において価値を見出す。ニコチン嗜癖の治療は、しばしば、治療期間にわたって、レベルを減少させながらニコチンが送達されるプログラムを含む。
【0088】
特定の方法は、種々の血液循環および血圧障害の治療に非常に向いている。例えば、この方法は、種々の抗凝固薬(例えば、ヘパリン、低分子量ヘパリン類似物およびワルファリンナトリウム等の)種々の抗凝固薬の輸送において用いられ得る。このような方法は、発作の予防および/または特定の外科的手順が後に続く凝固の危険を低減する場合に有用であり得る。血圧障害の治療は、(例えば、α遮断薬およびβ遮断薬等の)適切なレベルの血圧薬の送達によって影響が与えられる。いくつかの方法は、痛みの処理において価値を見出す。このような方法は、種々の麻酔の輸送を含み、手術中、または種々の消耗性の疾病に苦しむ特定の個人によって経験される極度の痛みを処理する場合に痛みを制御する。さらに別の方法は、精神医学的障害、睡眠障害、(例えば、パーコンソン病等の)運動障害、感染、ならびに局所的および散在的炎症性障害に対して薬物を送達することに価値を見出す。
【0089】
さらに別の方法は、種々の皮膚治療に対して方向付けられる。従って、特定の方法は、挫瘡、湿疹および乾癬等の皮膚の状態を治療するために適切な薬剤の送達を含む。いくつかの方法は、化粧品の使用において等、皮膚を水和させる薬剤の送達を含む。逆に、皮膚に炎症を起こす薬剤は、皮膚の外部層を剥がすために送達され得、これによって種々のコラーゲンをグロースファクタおよび新しい皮膚層の成長の活性化を促す。
【0090】
以下の実施例は、本明細書中で開示される方法の特定の局面を例示するために提供され、方法の範囲を限定するようには解釈されるべきでない。
【0091】
(実施例)
(I.実験)
(A.材料)
放射性同位元素で標識された[3H]マンニトールおよび[14C]臭化テトラエチルアンモニウム(TEA+)は、New England Nuclear(Boston、MA)およびAmerican Radiolabeled Chemicals(St.Louis、MO)から購買された。人の表皮膜(HEM)は、分層皮を切除された人の皮膚を熱分離することによって調整した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)を、試薬用化学薬品および脱イオン水を用いて、0.1Mのイオン強度で調整した。
【0092】
(B.実験方法)
(1.概要)
イオン導入法の研究は、並んだ2チャンバ拡散セル(約0.8cm2の拡散表面積および2mLの室容積)内で37℃で、HEMを用いて行われた。各実験における見かけ浸透係数(P)を、
【0093】
【数1】
(1)
によって計算した。
【0094】
ここで、Aは膜表面積、tは治療の時間、Qは受取チャンバ(receiver chamber)に輸送された浸透体の量、およびCDは供与チャンバ(donor chamber)における浸透体の濃度である。供与チャンバおよび受取チャンバにおける溶液のpHを、各イオン導入法を作動させた後に点検した。
【0095】
(2.定電流法)
実験を、Ag−AgCl電極を有する定電流イオン導入デバイス(phoresor II Auto、Model No.PM850、Iomed、Inc.,Salt Lake City、UT)を用いて、0.13mA/cm2で実行した。Srinivasanらによる「Journal of Controlled Release;10、1989年、157〜165ページに記載されるように、HEMの初期の抵抗を、4電極電位システム(JAS Instrumental Systems、Inc.、Salt Lake City、UT)100mVの電位を膜にわたって付与することによって測定し。イオン導入中のHEM抵抗は、拡散セルの供与チャンバおよび受取チャンバに挿入された2つの可撓性ルギン毛管を用いて、膜にわたる電位降下をモニタリングすることによって測定された。ルギン毛管の各々は、電圧計および/またはオシロスコープ(2211型、Tektronix Inc.、Beaverton、OR)に接続されたカロメル電極を含んだ。HEM抵抗は、イオン導入中に出力電流レベルおよび電圧計が読み取られることによって決定され得る。
【0096】
[14C]TEA+(トリエチルアンモニウム)および[3H]マンニトールの追跡量は、実験の開始時に供与チャンバに付加された。1mlの試料を約30分ごとに受取チャンバから取得し、新鮮なPBSと取り換えた。10μlの試料を1時間ごとに供与側室から取得した。試料は、10mlのシンチレーションカクテル(Ultima GoldTM、Packard Instrument Co.、Meriden、CT)と混合され、デュアルラベル(dual−labeled)の液体シンチレーション検出器(Parkard TriCarbTM、Model 1900 TR Liquid Scintillation Analyzer)によって分析試験される。
【0097】
(3.AC+DC オフセット法)
5ボルトのDCは、4電極電位システムを用いて、皮膚電気抵抗を2kΩに低減し、次に、250mVDCオフセットを有する50Hzの方形波ACが関数発生器(45011型、BK Precision、Placentia、CA)によって生成される。出力AC電圧は、皮膚抵抗を実験の全期間の間、2kΩ(±10%)に保つため、手動で3〜8ボルトに調節された。低電流セッションに記載されるのと同じ浸透体およびサンプリングプロトコルが用いられた。
【0098】
(4.AC+受動輸送法(DCオフセットなしのAC)
皮膚の電気抵抗を2kΩに低減するために、AC+DCオフセット法プロトコルにおいて記載されたのと同じプロトコルが用いられた。DCパルスの次に、DCオフセットを有しない50Hzの方形波ACが、AC+DCオフセット実験セッションで記載されたように、手動で出力AC電圧を調節することによって、皮膚抵抗を2kΩ(±10%)で保つ。浸透体およびサンプリングプロトコルは、上述のように、定電流およびAC+DCオフセットセッションの場合と同じである。
【0099】
(II.結果)
(A.従来の定電流DC法と、AC+DCオフセットとDCオフセットプロトコルを有しないACとの比較。)
人の表皮膜を通るマンニトールおよびTEA+の浸透係数(ドナー濃度により正規化されたフラックス)は、本実施例の第1部において示される定電流DC法、DCオフセットプロトコルを有しないACおよびAC+DCオフセットプロトコルにより、複数の異なった試料に関して決定された。平均値および標準偏差値は、この結果から計算され、下記の表1および表2において要約される。
【0100】
平均値の標準誤差(SEM)は、各アプローチに関する測定された浸透値における可変量を示し、より具体的には、標準偏差を表す平均値の比率である。従って、SEMが小さくなるほど、平均に正規化された試料可変性(標準偏差)は小さくなり、測定された値の可変性は少なくなる。
【0101】
表1に示されるように、従来の定電流DCプロトコルは、DCオフセット法およびAC+DCオフセット法を有用いない新しいACのSEM値と比較して、マンニトール輸送に関して比較的大きいSEM値を生成した。さらに、表2は、TEA+を示す。マンニトール輸送と同様、表2は、DCオフセット法を用いないACまたはAC+DCオフセット法と比較して、従来の定電流DC法に関して比較的高いSEM値を示す。
【0102】
これらの結果は、浸透値により測定された組織の電気的状態の可変性の著しい低減は、マンニトール等の非荷電浸透体およびTEA+等の荷電浸透体の両方に対して、DCオフセット法を用いないACまたはAC+DCオフセット法のどちらかを利用して達成されたことを示す。さらに、これらのデータは異なった人のドナーからの皮膚の試料間の可変性を表すので、患者間の可変性を制御するためのDCオフセットを用いないACまたはAC+DCイオン導入法の優位性を示した。
【0103】
下記の表3は、マンニトールおよびTEA+の種々の電流プロファイルの効果を示す。表3の最後の欄は、100〜330分のすべての輸送データポイントに関する最適ラインの線形回帰線の傾斜を示す。線の傾斜は、2つの変数、この場合、浸透体フラックスと時間との間の関係の変化率として定義される。従って、ゼロの傾斜は、浸透体フラックスが時間に関して変化せず、傾斜が正(または負)であるほど傾斜し、磁束は時間とともにより変化する。
【0104】
表3は、非荷電マンニトールとカチオンTEA+の両方に関して、目標の皮膚抵抗が2kΩか4kΩかによって、ACを有する磁束の変化が同じであることを示す。マンニトール磁束の変化率が、AC+DCオフセットプロトコルを用いる場合、DCオフセット法を用いないACよりも57%低いことも明らかである。従来の定電流DCを用いるマンニトール磁束の変化率は、DCオフセット法を用いないACおよびAC+DCオフセット法よりも5.7倍〜10倍高い。最後に、正規化されたTEA+磁束の変化率は、従来の定電流DCを用いる場合、AC+DCオフセット法およびDCオフセット法を用いないACよりもそれぞれ3倍〜20倍高い。
【0105】
これらのすべてのデータは、ACおよびAC+DCイオン導入法は、従来の定電流DCのみのイオン導入法よりも、被験者間の可変性(表1および表2)が少なくおよび1被験者内部の可変性(表3)が少ないことを示す。
【0106】
本明細書中に記載された例および実施形態は例示的目標にすぎず、これに照らして種々の改変または変更が当業者に提示され、本出願の意図および範囲、および特許請求の範囲に含まれるべきであることが理解される。本明細書中に引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、各個人の刊行物、特許または特許請求が、参考のため、援用されるべく具体的かつ個別に示されるのと同様に、すべての目標のために、参考のため、その全体を本明細書中に援用される。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本明細書中で提供されたように、AC信号のみを利用して、組織にわたって薬剤を輸送する方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図2】
図2は、本明細書中で提供されたように、AC信号および前パルスを利用して、組織にわたって薬剤を送達する方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図3】
図3は、本明細書中で提供されたように、AC信号およびDCオフセット信号を用いて、組織にわたって薬剤を輸送する方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図4】
図4は、本明細書中で提供されたように、前パルス、AC信号およびDCオフセット信号を利用する1つの方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図5】
図5は、患者の皮膚にわたる薬理学的活性薬剤の輸送など、組織にわたって薬剤を輸送する例示的装置の模式図である。
(発明の分野)
本発明は概して、薬物送達の分野に関し、具体的には、イオン導入法による輸送を含む、組織にわたる製薬活性剤などの薬剤の輸送の方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
代謝産物、薬物および栄養物等の種々の薬剤を組織にわたって輸送することは、主に3つのファクタの機能である。すなわち、組織の透過性、駆動力の有無、および輸送が行なわれる領域の大きさである。多くの組織に対する固有の浸透性が無いため、体表面にわたって薬剤を移動させることが難しい。細胞膜が通常、イオン化された極性種および無電荷の極性種に比較的浸透しない脂質の二分子層から構成されているため、多くの組織内の浸透性は低い。例えば、皮膚にわたって薬剤を輸送することは、一部には、角質層と呼ばれる皮膚の外層が、細胞間の脂質(これにより、物質がこのバリアを通過することが激しく妨害される)がぎっしりと充填された細胞からなるため、困難であることが分かっている。
【0003】
腸に沿って並んでいる細胞がかなり浸透性が高く、そして経口摂取が通常患者によって受け入れられているため、薬物の経口投与は、薬物送達の最も通常の方法を保持する。しかし、このアプローチは、腸内での薬剤の分解、駆動力を付与する能力の無さ、そして局所的な胃腸過敏を含む種々の欠点を有する。
【0004】
イオン導入法は、電流を付与することによって、組織にわたって薬剤を送達するために用いられ得る別のアプローチである。実際、イオン導入法の方法は通常、所定の種類のリザーバまたは吸収パッドを含む電極を位置決めすることを含む。この吸収パッドは、組織上で輸送される薬剤を含み、この組織を介して送達が行われる。通常薬剤を含まないが、導電性ゲルを含むかまたはこれでコーティングされた別の電極をさらに、組織と接触して配置して、電気回路を完成させる。
【0005】
2つの電極間および組織にわたって電圧を印加すると、電流が生成され、これにより、イオン化された薬剤が反対の電荷の電極に向かって移動し、これにより、薬剤が組織中を動く。イオン化された薬剤より効果が低いにもかかわらず、中性薬剤を電気浸透を介してさらに輸送し得る。イオン導入法は、組織内の孔の形成および/または拡大を誘発し、これは次いで、イオン薬剤および極性薬剤への組織の浸透性を増加させて、これらの薬剤をこのような孔を通過させる。組織が皮膚である場合、薬剤は角質層に浸透し、そして表皮層に伝わる。真皮の最内部分は通常、乳頭層と呼ばれ、そして脈管系から毛細管網を含む。この網は、薬剤を吸収し、そして続いて、薬剤を循環系の主な部分に移動させる。
【0006】
イオン導入法の大部分は、定電流のDC信号を用いて輸送を達成する。このような方法に関連付けられたいくつかの問題があり、この結果、臨床家、患者および政府の調節機関がこれを受け入れる際の制限となっている。定電流のDCの一つの欠点は、定電流が付与されている場合でさえも、薬物送達の速度が時間の経過と共に変化することである。定電流で一定した流れを提供することが不可能であることは、恐らく、組織の有孔性における時間に依存した変化、ならびにこれに付随する孔表面の電荷密度、および治療途中での有効な孔サイズの変化に起因する。このような変化は、イオン導入法による経皮の薬物送達を効果的に制御する際に著しい問題を呈する。定電流のDC方法を用いると、生物活性薬剤の移転数(特定の電荷種によって運搬される全電流の数分の1)が、通常のイオン導入法手順の過程で時間が経つにつれ増加することが通常見受けられる。転移数のこの変化は、組織にわたって輸送される薬剤の量が、時間と共に変化し、そして制御も予測も効果的にされ得ないことを意味する。
【0007】
定電流のDCの方法で電気穿孔法の程度を制御する際の問題によりさらに、患者間患者内で大きな変化が生じる。したがって、輸送される薬剤の量が時間関数として変化するだけでなく、同じ人間の日ごとの変化、および人ごとの変化がさらにある。
【0008】
さらに別の問題は、イオン導入法の間に形成される副産物の関数である。多くのシステムを用いると、輸送は水による加水分解を伴い、これにより、バルク溶液内で著しいpH変化が生じ、電極表面においてガスが形成される。特に、陽子がアノードで形成し、水酸化物イオンがカソードで形成する。このようなpH変化の結果、電気化学処理による焼灼が生じ、これにより組織が損傷され得る。さらに、ガス形成は接触を妨害し、これにより、電極と組織表面との間の導電性が妨害される。
【0009】
これらの問題に対処するために、定電流信号ではなく、異なった波形の信号およびパスルDC信号を使用することを含む種々の方法が試された。パルスDC信号の使用は、理論的に、皮膚キャパシタンスが放電することを可能にし、これによってより制御された電流の流れおよび薬物の送達を可能にすることによって、改善された性能を提供することが提示された。しかしながら、複数のDCパルス法は、定電流DC法と同じ一般的問題の少なくともいくつかを抱えている。
【0010】
一般的なパスルDC法の例示は、Weaverらによる米国特許第5,019,034号が、一連の短DCパルスを利用して電気穿孔を特に、可逆電気的破壊と呼ばれる状態誘導する方法について議論する。さらに、組織にわたる薬剤の輸送を達成するために種々の力が利用され得る。電気穿孔が一度確立されると(例えば、パルス持続時間、形状および周波数等の)DCパルスの性質は、輸送が完了するまで維持される。Van Groningenによる米国特許第5,391,195号は、少なくとも1kHzの周波数を含み、かつ少なくとも80%の衝撃係数を有するパルス直流を用いる方法について議論する。このような信号は、輸送効率を高めるためにアサートされる。DC信号を用いる方法、および比較的安定した電流が付与されるように電流レベルをモニタリングする計画がなされた方法は、Newmanによる米国特許第4,931,046号、およびChienらによる米国特許第5,042,975号において議論される。特定のDC法は、パルス電界と連続電界との組合せを用いる。例えば、Hofmannによる米国特許第5,968,006号は、パルスDC信号を生成して患者の皮膚に孔を誘導するために用いられる1つの電極アセンブリについて議論される。第2の電極アセンブリは、電気穿孔された領域を通る分子の輸送に影響を及ぼすために十分な大きさの低圧連続電界を生成する。上述の特許の各々は、直流を使用してイオン導入法を実行することについて議論するにとどまっている。これらの特許は、さらに輸送される薬剤(単数または複数)についての一定の輸率、従って一定の磁束を維持するために、電気穿孔された組織の領域において実質的に一定の電気的状態をどのように維持するかについて議論していない。
【0011】
上記のイオン導入に関する文献は、電導性イオン導入においてAC信号を利用することについて教示されていない。AC信号は、イオン導入による効果的な輸送を達成するための必要な駆動力を欠くと複数の当業者に信じられてきた。その代わりに、荷電粒子を輸送するために付与されたDC信号の駆動力が必要とされるという見解がある。AC信号が双方向性の性質を有しているために、AC信号の使用は、よくても非能率的な輸送をもたらし、回路網輸送はおそらく全く行なわれないという結論に多くの人を導いた。例えば、米国特許第5,391,195号において、「(交流の逆転パルス)負のパルスは、正のパルスに逆効果をもたらし、それによって治療の有効性を低減する」ことが記載される。
【0012】
それにもかかわらず、特定の研究者は、導電性イオン導入法における特定の目標のためにAC信号を用いることを述べている。例えば、Sabalisによるいくつかの特許(例えば、米国特許第5,312,325号;第5,328,454号;5,336,168号および第5,372,579号を参照)は、患者の皮膚に周期的な電気的変化を付与するために電流発振器に利用されるシステムについて述べる。皮膚の電位および抵抗の周期的な変化をトリガーする目的は、治療中の個人の自然な送達リズムを補強することである。従って、このような変形は、治療用化合物を含む液体の電気浸透が患者の循環系に流れ込むようにすると言われている。このタイプの送達は、患者の生まれながらの生物学的リズムと一致し、これを補強すると言われている。米国特許第5,328,453号は、電流の方向が周期的に指定され得、血餅を防止し、循環の流れを強化する1次薬物およびカウンタアクタの輸送を利用するシステムについて述べる。極性の逆転は、1次薬物およびカウンタアクタの電荷が逆であるとき効果的であるように要求される。
【0013】
いくつかの方法は、AC成分を含み得る一連の波形の適用を含む。Sabalisによる米国特許第5,135,478号および第5,328,452号は、例えば、分離するか、または重なり得、AC信号を含み得る複数の波形を生成することを含むイオン導入法について述べる。各信号の持続時間、反復率、形状および高調波成分は、血液循環を強化し、血液凝固のプロセスを妨害するように選択される。Lissらによる米国特許第5,421,817号は、集合的に送達を強化すると言われる搬送周波数および種々の変調周波数を含む、重なる波形の複合セットの使用について述べる。波形のセットにおけるAC信号の包含を可能にする一方で、Lissらは、AC信号の使用は好適でなく、極性の逆転は「薬物の経皮性送達を逆にする傾向がある」とは言えないという見解を補強する。
【0014】
さらに、DC法(Howardらによる「Arch Phys.Med.Rehabil.76」1995年、463〜466ページ、およびTapperらによる米国特許第5,224,927号を参照)を用いて生じ得る電気化学処理により焼灼を最小限にするための、イオン導入法におけるAC信号の使用に関する文献においていくらか述べられている。発汗過多の治療等の関連する方法においてAC信号を用いるように(例えば、ReinauerらによるBr.J.Derm.129、1993年、166〜169ページを参照)、受動的またはイオン導入法による薬物の輸送の後、皮膚の刺激を制御および低減するためにAC信号を用いることも述べられている(例えば、Dinhによる米国特許第6,018,679号)。
【0015】
しかしながら、AC信号の使用について述べるこれらの特許または論文のいずれも、実質的に一定の電気的状態および実質的に一定の電気穿孔状態を維持し、送達の期間中、組織にわたる薬剤の輸送が予測可能かつ制御される方法で行なわれるという試みを完全には扱っていない。さらに、複数のイオン導入法の障害となる被験者の内部および被験者間の可変性を低減する方法についても述べていない。
【0016】
(発明の要旨)
AC信号を利用して組織にわたって異なった薬剤を送達する方法が提供される。この方法は、製薬化学的薬剤、金属イオンおよび栄養分等の複数の異なった薬剤を送達するために利用され得る。送達プロセス中、AC信号が用いられ、抽出が行なわれる組織の領域において実質的に一定の電気的状態を維持し、これによって、薬剤が、制御され、かつ予測される方法で組織にわたって輸送されることを可能にする。この方法は、幅広い用途において利用される。例えば、特定の方法が、種々の治療的処置、解毒法、痛みの処理および皮膚治療において利用され得る。
【0017】
従って、特定の方法は、より具体的には、それらのうちの1つは組織に付与されるAC信号である1つ以上の電気信号を供給することによる組織にわたる薬剤の送達を含む。AC信号は、その後、組織の領域内の実質的に一定の電気的状態を維持するように調節され、実質的に一定の電気的状態の維持は、薬剤の送達を用意にする。いくつかの方法に関して、AC信号によって維持される電気的状態は電気的コンダクタンスまたは電気抵抗である。組織に付与されるAC信号は、基本的に、任意の波形を有し得る。波形は、例えば、対称または非対称であり得、従って、四角、正弦、鋸歯、三角および台形の形状を含む。AC信号の周波数は、少なくとも1Hzである傾向があるが、他の例においては、周波数は約1Hz〜約1kHz、約1kHz〜約10kHz、または約10kHz〜約30kHzの範囲内にある。
【0018】
他の送達方法は、AC信号より前に組織に付与される任意の電気的前パルスを含み、送達が行なわれるべき組織の領域内で電気穿孔を誘導する。前パルスは、AC信号またはDC信号のどちらかであり得る。前パルスの電圧は、通常、約1〜約90Vの範囲にあり、他の例においては約9〜約30V、さらに別の例においては約30〜約40V、さらに別の例においては約40〜約90Vの範囲にある。実際の電圧は、任意の特定の電圧か、またはこれらの範囲内の電圧の範囲であり得る。
【0019】
組織にわたる薬剤の送達は、AC信号により誘導された電気穿孔された領域にわたって受動拡散を介し得る。しかしながら、特定の方法は、AC信号と組合されて付与される任意のDCオフセット信号を利用する。DCオフセット信号は、実質的に一定の電気的状態で維持される領域にわたる薬剤の送達を促進するために有効である。DCオフセット信号は、典型的には、薬剤の送達中、実質的に連続的に付与され、送達レートを制御するために有効な電圧または電流である。DCオフセット信号は、通常、約0.1〜5Vおよび約0.01〜0.5mA/cm2の範囲にあるが、この範囲内の任意の特定の電圧、電流あるいは電圧の範囲(複数)または電流の範囲(複数)を含み得る。特定の方法において、DCオフセット信号は、組織と接触する2つの電極を利用して付与され、DCオフセット信号の電流の流れの方向は、周期的に2つの電極間に反転される。
【0020】
さらに別の方法は、前パルスおよびDCオフセットをAC信号と組合せて、組織にわたって薬剤を送達する。このような方法は、通常、AC信号の前に、電気的前パルスを組織に付与し、領域内で電線項を誘導することを含む。DCオフセット尊号は、さらに、組織に付与され、AC信号により実質的に一定の電気的状態に保たれる領域にわたって薬剤の送達を促進するために有効である。
【0021】
方法は、動物および植物の組織を含む種々の異なったタイプの組織を用いて利用され得る。組織は、体表面または人工物の部分であり得る。通常、組織は、皮膚または粘膜組織、特に人の皮膚または粘膜組織である。荷電および非感電薬剤を含む、種々の薬剤も送達され得る。
【0022】
(詳細な説明)
(I.定義)
本発明を説明する前に、他に明記なき限り、本発明は特定のイオン導入送達デバイス、治療用薬剤等に限定されないことが理解される必要がある。なぜならこれらには様々な種類があり得るからである。本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態だけを説明する目的で用いられ、限定することを意図しないことも理解される必要がある。
【0023】
本明細書および添付の請求項において用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に示さない限り、複数の対象物を含む。従って、例えば、「薬理学的活性薬剤」に関しては、2つ以上の活性薬剤を含み、「ビヒクル」に関しては、2つ以上のビヒクルを含む等である。
【0024】
本発明の説明および請求項において、以下の用語は以下に挙げられた定義で用いられる。
【0025】
用語「体表面」は、皮膚または粘膜組織と関係付けて用いられ、粘膜の内層を有する体腔の内面を含む。用語「皮膚」は「粘膜組織」を含むと解され、逆に「粘膜組織」は「皮膚」を含むと解される。
【0026】
組織の「領域」は、1つ以上の信号を付与することによって電気穿孔される組織の領域のことであり、この領域にわたって薬剤が輸送される。従って、体表面の領域は、皮膚の領域または粘膜組織のことであり、これらにわたって活性薬剤が送達される。
【0027】
用語「電気穿孔」は、概して、孔の誘導が原因であると信じられている組織の浸透性の増大および/またはイオン導入プロセス中に物質が抽出され得る、誘導された孔か、または既存の孔の大きさの増加のことである。従って、用語「電気穿孔状態」は、電気穿孔された組織の浸透性のことである。
【0028】
本明細書中で用いられるように、用語「治療すること」および「治療」は、症状の重症度および/または頻度の低減、症状および/または内在する原因の除去、症状および/または内在する原因の出現の予防、および損傷の改善または治療のことである。
【0029】
用語「薬理学的活性薬剤」、「製薬化学的薬剤」、「薬物」および「治療的薬剤」は、本明細書中で交換可能に用いられ、組織にわたって送達(例えば、経皮性または経粘膜性投与)するために適切な化学物質または化合物、および所望の効果を誘導する化学物質または化合物のことである。この用語は、治療的に有効な薬剤、および予防的に有効な薬剤を含む。さらに含まれるのは、具体的に述べられた、これらの化合物または化合物のクラスの誘導体および類似物であり、さらに、治療的薬剤の活性代謝物を含む所望の効果を誘導する。
【0030】
本明細書中で用いられるように、「ビヒクル」は体表面にわたる薬剤の投与に適切な搬送材料のことである。本明細書中で有用なビヒクルは、非中毒性であり、製薬化学的調合物の他の化合物または薬物送達システムと有害な方法で相互作用しないような、当該分野で公知である任意の材料を含む。
【0031】
薬理学的活性薬剤の「効果的な」量(または「治療に効果的な」量)は、所望の効果を提供するために十分であるが、非中毒性である薬物の量を意味する。
【0032】
(II.概要)
制御され、かつ予測可能な組織にわたる薬剤の輸送の種々の方法が本明細書中に開示される。これらの方法は、部分的に、AC信号のみか、または1つ以上のACまたはDC信号との組合せが、輸送が行なわれる組織の領域において、実質的に一定の電気的状態を誘導および維持するために利用され得る。このような電気的状態を維持することによって、領域内の組織の浸透性を維持し得、領域内の孔の大きさ、孔密度および孔の表面電荷密度は一定に保持される。組織内に新しい孔を生成または既存の孔を拡大する電気信号を付与して組織の浸透性を高めるプロセス(例えば、組織内に孔を生成または拡大すること)は、電気穿孔法と呼ばれ、このように取得される浸透度は、電気穿孔の状態と呼ばれる。
【0033】
この方法で組織の浸透性または電気穿孔状態を制御することは、フラックスにおける薬剤の可変性が組織にわたって低減されることを可能にして、輸送される物質の一定の輸率が達成される。フラックスの可変性を順次低減するということは、医薬品等の薬剤を制御され、かつ予測可能な方法で送達し得ることを意味し、効果のある治療範囲が狭い(narrow therapeutic window)医薬品にとって特に重要な局面である。患者内患者間の薬物送達レートの可変性も、本明細書中で開示される特定の方法を用いて最小化され得る。
【0034】
電気的状態、従って組織の電気穿孔度は、組織の導電性または抵抗をモニタリングすることによって、または組織の浸透度と相関する、類似の電気的パラメータによって確認され得る。
【0035】
AC信号は、実質的に一定の電気的状態を維持するように調節されるが、組織にわたる物質の輸送は種々の方法で達成され得る。組織の一方の側の物質の濃度が、組織のもう一方の側よりも著しく高い場合(例えば、皮膚の外側に対して内側)、電気穿孔領域を通る薬剤の輸送は、受動的拡散、フィック駆動の拡散により達成され得る。他の方法は、AC信号のDCオフセットを電気穿孔領域に付与することによって輸送のレートを高め、領域にわたって薬剤を駆動する。
【0036】
特定の方法は、所望の電気的状態を迅速に獲得するための任意の前パルスを含み、所望の電気的状態は、その後、AC信号によって維持される。前パルスは、AC信号またはDC信号のどちらかであり得る。従って、本明細書中に提供される方法は、単に、AC信号(「ACプロトコル」または「ACオンリープロトコル」)、AC信号とDCオフセット信号の組み合わせ(「AC+DCオフセットプロトコル」)、を含み得、これらのうちのいずれも、ACまたはDC前パルスとさらに組合され得る。
【0037】
本明細書中で提供される方法は、従来のDC導入法またはパルスDCイオン導入法による送達方法と著しく異なる。発明の背景の節において説明されたように、一定の電流DC法およびパルスDC法の著しい欠点は、これらが組織浸透性または電気穿孔の、実質的に一定の状態を維持できないことである。電気穿孔された組織の領域内の孔は、イオン導入法の間に時間とともに変化することがよくある。実質的に一定の電気穿孔された状態を維持できないことは、制御可能および予測可能に薬剤を組織にわたって送達する定電流DC法の能力を著しく制限する。本発明の方法は、輸送が行なわれる期間中、実質的に一定の電気的状態を維持することによって、この問題を改善し得る。
【0038】
(III.種々の方法の説明)
(A.概要)
本明細書中に記載される種々の方法の一般的な特徴は、AC信号を用いて実質的に一定の電気的状態を維持して、体表面等の組織にわたって薬剤を輸送する際の磁束の可変性を制限することである。電気的状態は、典型的には、抽出が行なわれる間の時間にわたって維持される。実質的に一定の電気的状態、および電気穿孔の状態を維持することによって、有効孔密度および孔の大きさは、基本的に、治療手順中は一定である。これは、同様に、送達される薬剤が、実質的に一定で制御および決定できる輸送レートを可能にする。
【0039】
本明細書中で用いられるように、用語「AC信号」は、概して、周期的に方向を逆転させる電気信号(例えば、電流または電圧)のことである。さらに後述されるように、典型的には、AC信号は、少なくとも約1Hzの周波数を有する。AC信号は、ゼロ基準点に対して方向を逆転する信号のみでなく、ゼロ基準点に対してバイアスされる信号のことでもあることが理解されるべきである。「電気的状態」という用語は、電気穿孔される組織の浸透性の測定値と相関する状態、またはこの測定値のことであり、これは電気値として測定され得る。実質的に一定の電気的状態は、実質的に一定の電気穿孔状態と相関する。実質的に一定の電気的状態は、例えば電気穿孔される領域内の実質的に一定の抵抗またはコンダクタンスによって、および/または輸送される物質の実質的に一定の輸率(特定の物質によって運ばれる全電流に対する比)によって証明される。
【0040】
この方法は、荷電化学種および非荷電化学種の両方を含む種々の薬剤の制御され、かつ予測可能な送達のために用いられ得る。イオン導入法において典型的であるように、浸透体は、主に、荷電実態である傾向がある。しかしながら、本明細書中に記載された方法は、荷電分子の送達のみに限定されない。本明細書中で述べられる方法は、非荷電物質を送達する場合に利用され得る。
【0041】
これらの方法は、組織にわたって、より具体的には組織の領域にわたって薬剤の送達を達成する方法が立案される。本明細書中で用いられるように、「組織」は、特定の機能の実行において統一的である類似の細胞および/または細胞成分の集合体を意味するように定義される。細胞は、特定の機能の実行において統一的である。組織は、生体の部分、生体から摘出された部分、または人工物であり得る。人工組織は、人工組織中で細胞の集合体が培養され、生体内の組織と同様の機能をするものである。しかしながら、集合化された組織は、宿主(すなわち、生体)から取得されない。人工組織は、インビボまたはインビトロで培養され得る。人の皮膚は、例えば、インビトロで培養され得、細胞の集合体を取得し、単層の厚さまたはそれよりも大きい。これは、培養液中の皮膚組織か、または生きた宿主に一旦移植された皮膚組織として機能し得る。本発明の特定の方法を用いて利用され得る特定のタイプの人工組織は、例えば、米国特許第4,458,678号、第4,485,096号および第4,304,866号において述べられる。
【0042】
特定の方法は、人または動物の組織を用いて実施される。従って、これらの方法は、人の患者に対する種々の臨床的用途および獣医学的用途において利用され得る。動物に対して実施される場合、動物は基本的に、提供される任意の種類の動物であり得、動物は、電気信号が付与されることによって中に孔が生成され得る組織層を有する。従って、特定の方法は、例えば、犬および猫等の家内動物、馬、牛、羊および豚等の家畜、外来動物、爬虫類、鳥および両生類を用いて実行され得る。さらに、他の方法は、植物または植物細胞培養物を用いて実行される。
【0043】
(B.AC信号)
(1.概要)
付与されるAC信号の特定の機能は、実質的に一定の電気的状態を維持する目標を達成することを支援し、一方で、DCベースの方法と関連付けられたいくつかの問題を回避する。例えば、既存のDC経皮性イオン導入技術の問題は、このような方法が、皮膚抵抗が経時的に変化することを許すことである。これは、次に、薬剤が組織にわたって送達または輸送されるレートを変化させる。しかしながら、AC信号の使用は、この問題を低減し得る。AC成分は、極性を連続的に逆転させるので、組織は、実質的に輸送手順にわたって減極された状態で保たれ、従って、皮膚構造を連続的に変化させ得、イオン導入法による輸送を妨害し得る電荷の蓄積に対してあまり敏感でない。
【0044】
AC信号も、新しい孔の形成を誘導することによって、および/または既存の孔を拡大することによって、輸送を促進するように働く。AC信号の適用は、電気浸透を介して、同時に輸送が強化されることなく新しい孔を生成し得ることが現在の発明者によって見出されている。従って、AC信号の適用によって強化された輸送は、少なくとも部分的に新しい孔が生成された結果である。(例えば、Liらによる「J.Pharmaceutical Sciences 88」1999年、419〜427ページを参照。この発明は、参考のため本明細書中で援用する)。新しい孔を生成することによって、AC信号の適用は、受動拡散のみと比較して、抽出レートを著しく増大し得る。
【0045】
さらに、複数の当業者は、荷電化合物を輸送するためにDC電界が必要とされ、AC信号はイオン導入による輸送のために必要な駆動力を欠くと考えたが、本発明者は、ACイオン導入法は、直接電界効果(すなわち、電気泳動)を取除かず、この効果の約10%が、比較的低い周波数AC(例えば、10Hz〜1kHz)の状態で保たれることを発見した。任意の特定の理論に縛られることを意図しないが、このACフラックス強化現象は、皮膚にわたる目標物質の非対称的境界条件の結果であると考えられる。従って、AC信号は、低減された直接電界効果および電気穿孔を介して、電極の電気化学反応による複雑さがなく、輸送を強化する手段も提供する(例えば、水による加水分解)。
【0046】
制御される送達のレベルの増大のほかに、AC信号の利用によって取得され得る他の利益が存在する。例えば、輸送中のAC信号の適用は、従来のDCイオン導入法と比較して、皮膚への刺激を少なくし、感覚のより高い閾値を有する。すなわち、高周波数ACを用いることは、所与の電流で、DCよりも、あまり不都合でない感覚/痛みをもたらす。従って、イオン導入法のためにAC電界を使用することは、イオン導入のためにDCを用いるよりも良好である(例えば、Dalziel&Mansfield、AIEE Trans、1950年、Volume69、1162〜1168ページ、およびDalziel&Massoglia、AIEE Trans、1956年、Volume75、49〜56ページを参照)。
【0047】
これらの周波数関係は、別の理由で重要である。皮膚における孔の誘導の広がりに対する周波数効果に関する結果は、(例えば、10〜250Hzの)低AC周波数領域における孔の形成の広がりへの周波数の非常に小さい依存度を示す。従って、最適なAC周波数領域は、AC法において利用され得、この方法で、高いAC電圧が用いられ、孔の誘導の広がりを増大し、最低の感覚および刺激を伴う輸送を強化する。
【0048】
(2.組織へのAC信号の付与)
極めて詳細に後述されるように、AC信号(および任意の前パルスおよびDCオフセット信号)は、通常、治療される組織と接触して配置される、少なくとも1対の電極を用いる組織に付与される。少なくとも1つの電極は、送達されるべき薬剤(例えば、製薬化学的薬剤)を含むリザーバを含む。この電極は、輸送が行なわれるべき組織の領域上に配置される。第2の電極も、組織と接触して配置され、電源を有する電気回路を形成するように配置される。AC信号は、組織にわたる薬剤(単数または複数)の輸送の条件を最適化する賦形剤を用いて、または用いずに付与され得る。
【0049】
人に対して実施される方法については、電極は、しばしば、最も外側の皮膚層、すなわち角質層と接触して配置される。AC信号の適用は、任意の前パルス信号と組合せて、皮膚内に孔を生成および維持し、これによって、薬剤(単数または複数)が角質層にわたって輸送され、それを真皮表皮層へ輸送されることを可能にする。
【0050】
付与されたAC信号は、所望の電気的状態を効果的に導入および/または維持するために適切な電圧および波形であり、その状態は、孔のない組織と比較して、薬剤の強化された輸送を可能にする電気穿孔された状態である。通常、目標の電気的状態は、選択された電気抵抗または電気コンダクタンスである。あるいは、さらに、電気抵抗またはコンダクタンス値が決定され得る他の電気的パラメータ、および組織の浸透度に対応する任意の他のパラメータがモニタリングされ得る。
通常、AC信号は、薬剤の輸送が行なわれている間の時間にわたって、実質的に一定の電気的状態を維持するように付与される。送達に要する実際の期間は、用途の性質に著しく依存して変化する。いくつかの用途は、約10分未満で実行され得、他の用途は12〜24時間またはそれ以上続き得る。
【0051】
治療中、AC信号は、選択された目標値で電気的状態を維持するか、またはより典型的には、目標の範囲内に維持するように、必要に応じて変更される。最も典型的には、これは、印加される電圧の振幅および/または周波数を変更することによって達成される。患者の皮膚の電気抵抗がモニタリングされる方法に関して、目標抵抗は、人によっていくらか異なり得る。しかしながら、目標抵抗は、一般的に、約1〜30kΩ・cm2、より典型的には5〜15kΩ・cm2内の値である傾向がある。目標抵抗は、さらに、患者の初期抵抗の固定有理数であり得る。概して、目標抵抗は、初期抵抗の約0.1〜10%であり、より典型的な値は0.1〜1%の範囲内である。
【0052】
AC信号は、通常、選択される目標値を維持し、測定された値が目標値の約20%よりも増減しないように、必要に応じて付与される。従って、目標が5kΩ・cm2の場合、AC信号は、測定された抵抗を約4〜6kΩ・cm2の範囲内に保持するために必要に応じて変更される。特定の他の方法において、揺らぎは目標値の10%未満に制限され、さらに他の方法において、約1%未満に制限される。
【0053】
AC信号の周波数、波形および持続時間は、選択された電気的状態を所望の範囲内に維持するために効果的な間、変動し得る。しかしながら、AC信号の周波数は、一般的に、少なくとも約1Hzである傾向がある。特定の方法において、付与された周波数は、通常、約1Hz〜約1kHzの範囲内に含まれ、他の方法においては、周波数は、通常、約1kHz〜約10kHzの範囲にある。さらに別の方法において、周波数は、通常、10kHz〜30kHz、または30kHz〜200kHzの範囲内にある。実際の周波数は、これらの範囲内の任意の特定の値か、またはこれらの範囲内の値の範囲であり得る。インビボ人体実験中の典型的な電圧は、約0〜40Vであるが、より実用的な範囲は0〜20Vである。多様な波形が利用され得る。適切な波形は、対称および非対称の両方の波形を含み、四角、三角、正弦、鋸歯および台形の形状等を含む。
【0054】
信号が付与される組織の領域の大きさは、用途の性質に著しく依存して異なり得る。通常、領域は1cm2未満である。通常、電気穿孔された領域および物質が抽出される領域は、約1cm2未満〜約200cm2より大きい傾向がある。領域の大きさは、他の用途においてより小さい傾向であり、約5cm2〜約100cm2に及ぶ。さらに他の方法において、領域は、約5cm2〜約30cm2である傾向がある。領域の大きさは、さらに、これらの範囲内の任意の特定の値であり得る。領域の形状は、任意の幾何学的形状であり得、任意の1つの特定の形状または形状のタイプに限定されない。
【0055】
(3.中性化学種の輸送)
DC成分なしで輸送を実行する、AC信号を利用するいくつかの方法は、組織にわたる中性薬剤(例えば、グルコースまたはエタノール)を抽出するために有用であり得る。本発明の発明者は、さらに、DCを付与せず、約1Hzより上の周波数でAC信号が用いられて行なわれる方法は、電気穿孔をほとんど含まないか、全く含まないことを見出した。従って、AC信号のみを利用して送達を実行するとき、とるに足りない電気穿孔が存在する。さらに、中性薬剤を輸送すると、電気穿孔は存在しない。この状態での輸送は、受動拡散と類似であるが、新しい孔の誘導(すなわち、より高い皮膚の孔隙率)が原因で強化されおよび/または電気穿孔のために孔隙率が増大または増加される。ACのもとでの中性薬剤の輸送は、従来の定電流DCシステムを用いるよりも結果として(主に電気穿孔が不在のため)磁束が少なくなり得るが、主にAC信号を用いる方法は、それにもかかわらず有用である。なぜなら、可変の孔表面と関連付けられた患者内患者間の可変性が最小化されるからである。さらに、中性浸透体については、静電薬剤が皮膚へ分配されない。
【0056】
(C.任意の前パルス)
比較的高電圧DCまたはACの前パルスは、選択的に組織に付与され得、目標の電気的状態、またはAC信号を調節することによって、実質的に維持される電気穿孔の状態を迅速に達成する。前パルスが所望の電気的状態を一度導き出すと、送達される薬剤のフラックスは、実質的に一定の電気的状態(例えば、実質的に一定の抵抗またはコンダクタンス)を電気穿孔された領域内で維持することによって制御され得る。AC信号は前パルスとして利用されると、この信号は、実質的に目標の電気的状態を維持するために利用され得る。AC前パルスには、さらに、分離AC信号が続き、目標の電気的状態を維持し、これは通常、前パルスの終了の直後に付与される。
【0057】
目標の電気的状態を獲得するためにAC信号のみが用いられ得る場合、前パルスを用いる利点は、これが所望の電気的状態を確立するプロセスを加速し得ることである。しかしながら、前パルスなしで、主にAC信号だけを用いることに付随するより長い期間は、DCオンリープロトコルと比較して依然として好適である。なぜなら、ACオンリープロトコルは、依然として予測可能かつ安定した電気的状態をもたらし、これは組織の一定の輸送特性を高める。このことは、DC信号だけを適用するときには起こらない。
【0058】
通常、AC前パルスまたはDC前パルスの特性は、所望の電気的状態を取得するために効果的であるように選択される。典型的には、これは、前パルス信号が目標の電気抵抗またはコンダクタンスを獲得するために付与されることを意味する。前パルスの電圧は、しばしば、約1〜約90Vの範囲にある。他の方法において、電圧は約9〜約30Vの範囲にある。さらに他の方法において、電圧は、約30から約40Vであり、他の方法においては約40〜約90Vである。
【0059】
AC前パルスが利用される場合、AC前パルスは対称または非対称であり得る。種々の適切なAC前パルス波形が用いられ得、方形波形、正弦波形、鋸歯波形、台形波形を含むが、これらに限定されない。前パルスの持続時間は目標の電気的状態を達成するために十分に長い。前パルスの持続時間は、部分的に、前パルスの電圧に依存する。しかしながら、前パルスは、通常、1分未満〜20分である。DCが利用される場合、これも種々の波形で供給され、形状は、例えば、四角、三角、台形または鋸歯である。前パルスは、目標の電気的状態を確立するために十分な持続時間を有する。
【0060】
(D.任意のDCオフセット信号)
組織にわたる輸送を行なうためにAC信号のみを用いる方法は、主に受動拡散を含み、輸送を達成する。しかしながら、上述のように、輸送は純粋に受動的な輸送を介して向上される。なぜなら、AC信号は電気穿孔を誘導し、これを通って薬剤が受動的に拡散し得るからである。さらに、ACプロトコルと関連付けられた小さい直接電界効果が存在し、イオン化合物の輸送を強化する。送達を促進し、送達プロセスを加速するために、この穿孔を通って物質、具体的には、イオン化合物が拡散し得る。抽出を促進し、抽出プロセスを加速するために、AC信号は、選択的に、DCオフセット信号と組合され得る。この組合せを利用する方法は、時には、「AC+DCプロトコル」と呼ばれる。この信号の特定の組合せを用いて、AC信号は、主に、組織の領域を実質的に一定の電気的状態で維持するために利用され、輸送を増大する浸透性のレベルを維持する。DCオフセット信号は、薬剤の輸送を駆動することを支援するために付与される。信号のこのような組合せを用いて、組織にわたる薬剤の安定した磁束が獲得され得る。これは、DC信号のみを用いて輸送を達成し、薬剤のフラックスがしばしば予測不可能であり、治療の経過とともに変化する従来の方法と対照的である。
【0061】
一般的事項として、組織に付与されるDCオフセット信号は、通常、組織にわたって輸送される薬剤の送達の実質的に一定のレートを維持するために効果的である。従って、DCオフセット信号のタイミングおよび持続時間は、この目標によって決定される。薬剤が送達されるレートは、組織の電気抵抗またはコンダクタンス、およびDCオフセット電圧または電流によって制御され得る。
【0062】
DCオフセット信号は、しばしば、AC信号の付与と基本的に同時に付与される。このタイミングは、例えば、前パルスが所望の電気的状態をすでに確立したときに適切である。しかしながら、他の方法において、DCオフセット信号は、AC信号が開始された後まで遅延される。遅延は、例えば、前パルスはAC信号が目標の電気的状態を確立することを可能にすることなく行なわれる方法の場合に適切であり得る。通常、DCオフセット信号の電圧は、約0.1V〜約5Vの範囲にあり、他の方法において、電圧は約0.1V〜約5Vの範囲にある。電流の範囲は、通常、約0.01〜0.5mA/cm2である。
【0063】
(E.例示的方法)
上述の電気信号は、種々の組合せで結合され得、組織にわたって薬剤を投与するための種々の異なったプロトコルをもたらす。例示的方法が続く。方法が、多数の異なった組織タイプを用いて実施され、組織の電気的状態を評価するために異なったパラメータがモニタリングされ得る一方で、このような方法は、しばしば、人の組織を用いて実行され、皮膚の電気抵抗またはコンダクタンスをモニタリングすることを含む。
【0064】
(1.ACオンリープロトコル)
図1は、方法50を図示し、これは、(例えば、目標の皮膚抵抗またはコンダクタンス等の)目標の電気的値または範囲の選択52で始まる。上述のように、選択された特定の目標は、処置される個人、および送達される薬剤の性質にいくらか依存して変動し得る。次にAC信号が付与され(54)、所望の目標の電気的状態を獲得し、組織にわたる物質の抽出を容易にする。上述のように、前パルスを用いず、AC信号のみの付与は、所望の目標を達成するために長期間を必要とし得る。それでもなお、AC信号の付与は、上述の理由で、単純な受動拡散を介して輸送を著しく向上する。さらに、極性を逆転することによるAC信号は、組織が脱分極され、組織の表面における荷電化学種の増大に対してあまり敏感でない状態に組織を保つ。AC信号は、さらに、皮膚浸透性の比較的一定のレベルを維持し、これは、比較的一定の、制御され、かつ予測可能な組織にわたる薬剤の送達を可能にする。
【0065】
AC信号が付与される時間において、連続的または周期的に組織の電気的状態が測定され(58)、組織の電気的状態が目標の範囲内にあるかどうかを決定する。電気的状態は、目標の範囲内にある場合、AC信号は改変せずに付与される。しかしながら、測定された電気的状態が目標の範囲の外側にずれる場合、AC信号は調節され(60)、電気的状態を目標の範囲内に戻す。AC信号は、組織にわたる所望の量の薬剤を実質的に一定のレートで送達するために十分な期間の間付与される。送達期間が一度完了すると(56)、治療は終了する(62)。
【0066】
(2.AC+前パルスプロトコル)
1つのAC+前パルス法70の模式図が図2に示される。この特定のアプローチを用いて、目標の電気的状態の選択72はACオンリープロトコルに関して説明されたとおりであり、図1に示される。しかしながら、AC信号の付与78の前に、ACまたはDC前パルスが組織に付与され(74)、選択された電気的状態を比較的早く獲得する。目標の状態が達成された(76)と一度判定されると、AC信号が組織に付与される(78)。電気的状態は、前の節で説明されたように、連続的または定期的にモニタリングされ(82)、送達が行われる期間にわたって目標の電気的状態を維持する。AC信号は、必要に応じて調節され、目標の状態を維持する。送達期間が一度完了される(80)と、手順は終了する(86)。
【0067】
(3.AC+DCオフセット)
図3は、AC+DCオフセットプロトコルを利用する方法90の主な局面を図示する。方法の初期のステージは、通常、目標の電気的状態の選択92を含むACオンリープロトコルに関して説明されたステージをたどる。しかしながら、この特定の方法は、AC信号およびDCオフセット信号が組織に付与される(94)。DCオフセット信号は、AC信号の付与と同時にまたは治療中の任意の時間に付与され得る。電気的状態がもはや目標とされる値にないと判定される場合、AC信号は調節され(100)、電気的状態を目標の値または範囲に戻す。このような調節は、通常、DC信号に依存せず、通常、DCにより駆動される輸送に影響を及ぼさない。DC信号は、典型的には一定に保たれるが、付与周期94の間に任意に調節され得、輸送される薬剤の送達レートを変更する。所望の量の薬剤が一度送達される(96)、または治療の期間が終了すると、ACおよびDC信号の付与は終了される(102)。
【0068】
(4.AC+前パルス+DCオフセット)
特定の方法110は、前パルスおよびDCオフセット信号をAC信号と組み合わせる(図4を参照)。このような方法は、各タイプの信号の独特な機能を利用し、薬剤の送達を最適化する。上述のように、目標の電気的状態が選択され(112)、次に、ACまたはDC前パルスを付与し、組織の浸透性が向上されたレベルと相関する選択された電気的状態を迅速に確立し、薬剤の送達を促進する。目標の状態が達成されたと一度判定されると(116)、AC信号およびDCオフセット信号が付与され(118)、AC信号が主に機能して、電気穿孔された組織にわたる薬剤の輸送を促進するように作用する目標の電気的状態およびDCオフセット信号を維持する。電気的状態はモニタリングされる(122)。電気的状態が目標の状態と異なることが見出される場合、AC信号は、必要に応じて調節され(124)、電気的状態を目標の状態に戻す。治療時間が一度経過するとプロセスは完了する(126)。
【0069】
(F.薬剤)
本明細書中で開示される方法は、幅広い薬剤の送達において用いられ得る。方法は、通常、イオン導入法によって組織にわたって輸送され得る任意の薬剤を送達するために利用され得る。組織が人の皮膚であるとき、薬剤は電気穿孔された皮膚を通って移動し得るものである。
【0070】
輸送される薬剤は、薬理学的に活性の薬剤であり、治療目的または予防目的で投与される。このような薬剤の例は、興奮薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗喘息薬、抗間接炎薬、抗癌薬、コリン抑制薬、鎮痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め薬、制吐薬、駆虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血薬、抗高血圧薬、抗感染薬、抗炎症薬、抗片頭痛、抗腫瘍薬、抗パーキンソン症薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗結節薬、抗潰瘍薬、抗ウィルス薬、抗不安薬、食欲抑制剤、注意血管障害および注意血管過活動薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗狭心症薬、中枢神経系(「CNS])薬、ベータ遮断薬および抗不整脈薬を含む心臓血管薬、中枢神経系興奮薬、利尿薬、遺伝物質、ホルモン剤(hormonolytics)、睡眠薬、低血糖薬、免疫抑制剤、筋弛緩剤、麻酔拮抗薬、ニコチン、栄養剤、副交感神経遮断薬、ペプチド薬、精神刺激薬、鎮静薬、ステロイド、禁煙薬、交感神経興奮薬、トランキライザ、血管拡張薬、ベータアゴニスト、ならびに早産防止薬を含むが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの方法において、2つ以上の薬理学的な活性薬剤は、組合されて投与される。さらに、薬理学的な活性薬剤は、種々の薬剤と組合され得、輸送の特定の局面を教科する。例えば、治療的薬剤は、血液の循環を改善し、患者の体にわたって治療的薬剤の送達レートを強化する薬剤と組合され得る。他の方法は、1つ以上の賦形剤を利用し、手順の間行なわれる位相のレベルを制御する。
【0072】
薬剤は、さらに、調合物の部分であり得、例えば、組織にわたる送達のために適切なビヒクルと組合され得る。例えば、投与される薬剤は、所望の調合物に依存して、動物または人に投与するための製薬化学組成を調合するために一般的に用いられる製薬化学的に容認できる、毒性のないキャリアまたは希釈剤を含む組成の部分であり得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性度に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理的塩類溶液、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、組成または調合物は、他のキャリア、補助薬、または毒性のない、非治療用、非免疫源安定薬、賦形剤等も含み得る。組成は、pH調節および緩衝薬剤、緊張調節薬剤、湿潤剤、洗剤等、生理的状態に近づける追加的物質も含み得る。種々のタイプの投与に適切な調合物に関するさらなるガイダンスは、「Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、PA、17th ed、1985年に見出され得る。
【0073】
送達される薬剤(単数または複数)が製薬化学的薬剤である場合、送達される治療薬剤は、予防および/または治療的処置のために投与され得る。治療薬剤の量は、疾病の状態または症状を治療、あるいはそうでなければ疾病または任意の他の所望でない症状の進行を回避、防止、抑制、または逆進させるために十分な量のことである。予防的量は、疾病または任意の所望でない症状を回避、防止、または抑制するために十分な量のことである。必要とされる薬剤の現実量は、例えば、薬剤の抗力および潜在的毒性、体内の薬剤の安定性、および薬剤を受取る個人の大きさおよび年齢を含む、当業者に公知のファクタの数に依存する。
【0074】
薬剤は、例えば、栄養素、代謝物および染料等、それらの治療的または予防的価値のために送達されない分子を含み得る。
【0075】
(IV.送達システム)
本明細書中に開示される方法を実行するための装置の1実施形態は、図5に模式的に示される。組織または体表面218にわたる薬剤を送達するシステム202、204は、通常、電源206に電気接続された2つの電極202の第1のセットを含む。電源206は、AC信号およびDC信号の両方を送達することができる単一の電源であり得るか、または2つの別々の電源、すなわち、AC信号を送達する一方の電源およびDC信号を送達する他方の電源を含み得る。2つの電極202、204および電源206を含む回路は、さらに、制御器208に接続され、この制御器は電極202、204に送達される電気信号をモニタリングし、信号を電源206に送信し得、そこから伝送された信号を変更する。
【0076】
電極202のうちの少なくとも1つは、少なくとも、1つのリザーバ(例えば、210)を含み、リザーバ表面212に電気接続される。リザーバ210の別の表面214は、組織218(例えば、患者の皮膚)の表面126に接触して配置され、例えば、接着剤またはゲル(図示せず)によって位置が保持される。リザーバ210は、組織218にわたって送達されるべき1つ以上の薬剤(例えば、製薬化学的薬剤)を含む。リザーバ210は、薬剤(単数または複数)220が溶解される溶液を収容する室であり得る。あるいは、リザーバ210は、送達されるべき薬剤(単数または複数)220を含む溶液、ペーストまたはゲルを保持する多孔性材料を含み得る。当業者に公知の種々の他のリザーバも利用され得る。対のもう一方の電極204も、組織218の表面216と接触して配置され、接着剤またはゲル(図示せず)によって位置が保持される。この電極204が配置され、2つの電極202と204との間を流れる電流の形成を可能にする。DCオフセット電流は、組織218にわたるリザーバ210内の荷電薬剤の、逆の電荷の電極の方向に駆動するために付与され得る。非荷電薬剤は、電気浸透によって生理学的pHで、アノード(正電極)から組織218にわたって駆動される。
【0077】
装置200は、電極222、224の第2のセットか、またはモニタリングセットを含み、これらのセットは、電気穿孔される組織の領域内に配置され、組織にわたる薬剤の輸送中、組織218の電気的状態をモニタリングする。上に示されるように、モニタリングされる電気的状態は、(例えば、電気抵抗またはコンダクタンス等の)組織の浸透性の程度か、または電気穿孔の状態を反映する状態である。モニタリング電極222、224は、電極の第1のセットから分離され得るが、これは必要ではない。なぜなら、電極の第1のセット202、204は、組織218の電気的状態をモニタリングするために用いられ得るからである。モニタリング電極222、224は、図5に示されるように分離モニタ226に接続され得るか、または電極202、204の第1のセットと同じ制御器208に接続され得る。分離モニタ226に接続された場合、モニタ226は、電極222、224の第2のセットによって測定されたような組織218の電気的状態に関する信号を制御器208に送信し得る。
【0078】
電気信号を付与する際に利用される電極202、204の第1のセットは、イオン導入法において用いられる任意の標準タイプの電極であり得る。いくつかのシステムは、銀/塩化銀から製作された標準心電計電極等の非分極電極を用いる。他の適切な材料は、金、ステンレス鋼およびプラチナを含む。多重チャンネル分散性電極も、特定の方法で利用され得る(米国特許第5,415,629号を参照)。
【0079】
DCオフセット信号が利用されると、電極はリザーバ機能を含む。なぜなら、カソードまたはアノードのどちらかは送達される薬剤の電荷に依存するからである。通常、アノードはDCオフセット信号の正の寄与を受取り、カソードはDCオフセット信号の負の寄与を受取る。結果として、DCオフセット信号が付与される場合、正に帯電しているイオンは組織を通じて抽出され、アノードの部分であるリザーバにおいて受取られる。正に帯電しているイオンは、アノードで組織内に駆動され、負に帯電しているイオンは、カソードで組織にわたって駆動される。生理的pHで、中性薬剤は電気浸透によってアノードから組織内に駆動される。DCオフセットが利用されず、AC信号のみが送達される場合、形式アノードまたはカソードは存在しない。
【0080】
いくつかのシステムにおいて、電極202、204の両方においてリザーバを含むことは有益であり得る。例えば、AC信号のみが付与される場合、薬剤はいずれかのリザーバから拡散を介して輸送され得る。さらに後述されるように、DCオフセットを用いる方法は、異なった時点で電流の流れの方向を逆転することを含む。電極202、204の両方において配置されるリザーバは、そのような方法において有益であり得る。なぜなら、送達は両方のリザーバから生じ得るからである。2つのリザーバは、さらに、逆の電荷の異なった薬剤が送達されるべき場合、よい影響が及ぼされるように利用され得る。このような例において、異なった帯電薬剤は別々のリザーバに配置され、用法のリザーバから送達が同時に進行し得るようにされる。
【0081】
動作中、リザーバ210は、輸送されるべき薬剤220を含む溶液または基質で満たされる。リザーバ210が吸収性材料を含む場合、これは薬剤を含む溶液で浸漬されるか、または薬剤を含むペーストまたはゲルで被覆される。電極202、204の第1のセットが一度完全に配置されると、電源206を介して電極202、204の第1のセットに電気信号が送達される。送達される特定の信号は、上で開示されたプロトコルのどれが利用されるかに依存する。しかしながら、種々の方法は、通常、電源206を利用することを含み、適切な形状、持続時間、周波数および電圧のAC信号を生成し、選択された電気的状態を維持する。輸送プロセス中に電気的状態が、モニタリング電極222、224によって検出された目標の電気的状態からずれた場合、適切な調節は、電源206を用いて行なわれ、AC信号を変更し、電気的状態が目標の値か、または目標の範囲内に戻されるようにする。
【0082】
制御器208は、マイクロプロセッサにより制御され得る。マイクロプロセッサベースの制御器が、モニタリング電極222、224からの信号に基づいて、電気的状態が目標の状態からずれていると判定した場合、制御器は、電源206に信号を送り、AC信号を変更し、電気的状態が所望の目標に戻るようにする。患者の皮膚の電気的状態が、例えば、潜在的に危険なレベルに達したことが判定される場合、このような制御器は、さらに、安全遮断を含み得る。
【0083】
ACまたはDC前パルスのどちらかを利用する方法については、目標の電気的状態に到達するために効果的な電源206によって適切な周波数の前パルス、電圧および持続時間が生成される。モニタリング電極222、224は、このプロセスの間に利用され得、所望の電気的状態の方向に進む。この状態が一度獲得されると、信号は制御器208に送信され、前パルスの生成を終了し、その後、組織に付与するためのAC信号および/またはDCオフセットを生成する。
【0084】
上述のように、いくつかの方法において、リザーバ210内の薬剤220の濃度は、組織のもう一方の側よりも十分に高く、受動拡散を介して電気穿孔領域を通って薬剤が輸送されるようにする。しかしながら、より典型的には、電源206は、さらに、DCオフセット信号を生成するために利用される。この電流は、帯電物質の輸送を、逆の電荷を有する電極の方向、または中性薬剤をアノードからカソードへ電気浸透を介して駆動する。
【0085】
半導体回路の使用によって、電極、電源およびリザーバ等の種々の前述の素子は、個人の日常の活動を妨害することなく、個人によって快適に着用され得る小型の集積デバイスに含まれ得る。
【0086】
(V.例示的用途)
本明細書中で提供される輸送法は、種々の障害および疾病の治療を含む種々の用途において用いられ得る。特定の方法は例えば、糖尿病の治療および肥満のような種々の体重障害の治療に用いられる。糖尿病の場合、個人のグルコースレベルが上昇したときに、インシュリンまたは他の低血糖薬剤の制御された送達のために、およびグルカゴンまたは(例えば、グルコースなどの)炭水化物代謝を低血糖の個人に輸送する場合に、この方法が用いられ得る。体重減少治療は、例えば、コレシストキニン等の食欲抑制剤の送達を含み得る。
【0087】
関連する方法は、麻酔薬または他のタイプの物質の乱用から回復しようと努める個人を治療する場合に支援するために実行される。これらの方法は、例えば、解毒プロセスにおいて支援する薬剤の投与を含み得る。送達法は、さらに、ニコチン嗜癖の治療において価値を見出す。ニコチン嗜癖の治療は、しばしば、治療期間にわたって、レベルを減少させながらニコチンが送達されるプログラムを含む。
【0088】
特定の方法は、種々の血液循環および血圧障害の治療に非常に向いている。例えば、この方法は、種々の抗凝固薬(例えば、ヘパリン、低分子量ヘパリン類似物およびワルファリンナトリウム等の)種々の抗凝固薬の輸送において用いられ得る。このような方法は、発作の予防および/または特定の外科的手順が後に続く凝固の危険を低減する場合に有用であり得る。血圧障害の治療は、(例えば、α遮断薬およびβ遮断薬等の)適切なレベルの血圧薬の送達によって影響が与えられる。いくつかの方法は、痛みの処理において価値を見出す。このような方法は、種々の麻酔の輸送を含み、手術中、または種々の消耗性の疾病に苦しむ特定の個人によって経験される極度の痛みを処理する場合に痛みを制御する。さらに別の方法は、精神医学的障害、睡眠障害、(例えば、パーコンソン病等の)運動障害、感染、ならびに局所的および散在的炎症性障害に対して薬物を送達することに価値を見出す。
【0089】
さらに別の方法は、種々の皮膚治療に対して方向付けられる。従って、特定の方法は、挫瘡、湿疹および乾癬等の皮膚の状態を治療するために適切な薬剤の送達を含む。いくつかの方法は、化粧品の使用において等、皮膚を水和させる薬剤の送達を含む。逆に、皮膚に炎症を起こす薬剤は、皮膚の外部層を剥がすために送達され得、これによって種々のコラーゲンをグロースファクタおよび新しい皮膚層の成長の活性化を促す。
【0090】
以下の実施例は、本明細書中で開示される方法の特定の局面を例示するために提供され、方法の範囲を限定するようには解釈されるべきでない。
【0091】
(実施例)
(I.実験)
(A.材料)
放射性同位元素で標識された[3H]マンニトールおよび[14C]臭化テトラエチルアンモニウム(TEA+)は、New England Nuclear(Boston、MA)およびAmerican Radiolabeled Chemicals(St.Louis、MO)から購買された。人の表皮膜(HEM)は、分層皮を切除された人の皮膚を熱分離することによって調整した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)を、試薬用化学薬品および脱イオン水を用いて、0.1Mのイオン強度で調整した。
【0092】
(B.実験方法)
(1.概要)
イオン導入法の研究は、並んだ2チャンバ拡散セル(約0.8cm2の拡散表面積および2mLの室容積)内で37℃で、HEMを用いて行われた。各実験における見かけ浸透係数(P)を、
【0093】
【数1】
(1)
によって計算した。
【0094】
ここで、Aは膜表面積、tは治療の時間、Qは受取チャンバ(receiver chamber)に輸送された浸透体の量、およびCDは供与チャンバ(donor chamber)における浸透体の濃度である。供与チャンバおよび受取チャンバにおける溶液のpHを、各イオン導入法を作動させた後に点検した。
【0095】
(2.定電流法)
実験を、Ag−AgCl電極を有する定電流イオン導入デバイス(phoresor II Auto、Model No.PM850、Iomed、Inc.,Salt Lake City、UT)を用いて、0.13mA/cm2で実行した。Srinivasanらによる「Journal of Controlled Release;10、1989年、157〜165ページに記載されるように、HEMの初期の抵抗を、4電極電位システム(JAS Instrumental Systems、Inc.、Salt Lake City、UT)100mVの電位を膜にわたって付与することによって測定し。イオン導入中のHEM抵抗は、拡散セルの供与チャンバおよび受取チャンバに挿入された2つの可撓性ルギン毛管を用いて、膜にわたる電位降下をモニタリングすることによって測定された。ルギン毛管の各々は、電圧計および/またはオシロスコープ(2211型、Tektronix Inc.、Beaverton、OR)に接続されたカロメル電極を含んだ。HEM抵抗は、イオン導入中に出力電流レベルおよび電圧計が読み取られることによって決定され得る。
【0096】
[14C]TEA+(トリエチルアンモニウム)および[3H]マンニトールの追跡量は、実験の開始時に供与チャンバに付加された。1mlの試料を約30分ごとに受取チャンバから取得し、新鮮なPBSと取り換えた。10μlの試料を1時間ごとに供与側室から取得した。試料は、10mlのシンチレーションカクテル(Ultima GoldTM、Packard Instrument Co.、Meriden、CT)と混合され、デュアルラベル(dual−labeled)の液体シンチレーション検出器(Parkard TriCarbTM、Model 1900 TR Liquid Scintillation Analyzer)によって分析試験される。
【0097】
(3.AC+DC オフセット法)
5ボルトのDCは、4電極電位システムを用いて、皮膚電気抵抗を2kΩに低減し、次に、250mVDCオフセットを有する50Hzの方形波ACが関数発生器(45011型、BK Precision、Placentia、CA)によって生成される。出力AC電圧は、皮膚抵抗を実験の全期間の間、2kΩ(±10%)に保つため、手動で3〜8ボルトに調節された。低電流セッションに記載されるのと同じ浸透体およびサンプリングプロトコルが用いられた。
【0098】
(4.AC+受動輸送法(DCオフセットなしのAC)
皮膚の電気抵抗を2kΩに低減するために、AC+DCオフセット法プロトコルにおいて記載されたのと同じプロトコルが用いられた。DCパルスの次に、DCオフセットを有しない50Hzの方形波ACが、AC+DCオフセット実験セッションで記載されたように、手動で出力AC電圧を調節することによって、皮膚抵抗を2kΩ(±10%)で保つ。浸透体およびサンプリングプロトコルは、上述のように、定電流およびAC+DCオフセットセッションの場合と同じである。
【0099】
(II.結果)
(A.従来の定電流DC法と、AC+DCオフセットとDCオフセットプロトコルを有しないACとの比較。)
人の表皮膜を通るマンニトールおよびTEA+の浸透係数(ドナー濃度により正規化されたフラックス)は、本実施例の第1部において示される定電流DC法、DCオフセットプロトコルを有しないACおよびAC+DCオフセットプロトコルにより、複数の異なった試料に関して決定された。平均値および標準偏差値は、この結果から計算され、下記の表1および表2において要約される。
【0100】
平均値の標準誤差(SEM)は、各アプローチに関する測定された浸透値における可変量を示し、より具体的には、標準偏差を表す平均値の比率である。従って、SEMが小さくなるほど、平均に正規化された試料可変性(標準偏差)は小さくなり、測定された値の可変性は少なくなる。
【0101】
表1に示されるように、従来の定電流DCプロトコルは、DCオフセット法およびAC+DCオフセット法を有用いない新しいACのSEM値と比較して、マンニトール輸送に関して比較的大きいSEM値を生成した。さらに、表2は、TEA+を示す。マンニトール輸送と同様、表2は、DCオフセット法を用いないACまたはAC+DCオフセット法と比較して、従来の定電流DC法に関して比較的高いSEM値を示す。
【0102】
これらの結果は、浸透値により測定された組織の電気的状態の可変性の著しい低減は、マンニトール等の非荷電浸透体およびTEA+等の荷電浸透体の両方に対して、DCオフセット法を用いないACまたはAC+DCオフセット法のどちらかを利用して達成されたことを示す。さらに、これらのデータは異なった人のドナーからの皮膚の試料間の可変性を表すので、患者間の可変性を制御するためのDCオフセットを用いないACまたはAC+DCイオン導入法の優位性を示した。
【0103】
下記の表3は、マンニトールおよびTEA+の種々の電流プロファイルの効果を示す。表3の最後の欄は、100〜330分のすべての輸送データポイントに関する最適ラインの線形回帰線の傾斜を示す。線の傾斜は、2つの変数、この場合、浸透体フラックスと時間との間の関係の変化率として定義される。従って、ゼロの傾斜は、浸透体フラックスが時間に関して変化せず、傾斜が正(または負)であるほど傾斜し、磁束は時間とともにより変化する。
【0104】
表3は、非荷電マンニトールとカチオンTEA+の両方に関して、目標の皮膚抵抗が2kΩか4kΩかによって、ACを有する磁束の変化が同じであることを示す。マンニトール磁束の変化率が、AC+DCオフセットプロトコルを用いる場合、DCオフセット法を用いないACよりも57%低いことも明らかである。従来の定電流DCを用いるマンニトール磁束の変化率は、DCオフセット法を用いないACおよびAC+DCオフセット法よりも5.7倍〜10倍高い。最後に、正規化されたTEA+磁束の変化率は、従来の定電流DCを用いる場合、AC+DCオフセット法およびDCオフセット法を用いないACよりもそれぞれ3倍〜20倍高い。
【0105】
これらのすべてのデータは、ACおよびAC+DCイオン導入法は、従来の定電流DCのみのイオン導入法よりも、被験者間の可変性(表1および表2)が少なくおよび1被験者内部の可変性(表3)が少ないことを示す。
【0106】
本明細書中に記載された例および実施形態は例示的目標にすぎず、これに照らして種々の改変または変更が当業者に提示され、本出願の意図および範囲、および特許請求の範囲に含まれるべきであることが理解される。本明細書中に引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、各個人の刊行物、特許または特許請求が、参考のため、援用されるべく具体的かつ個別に示されるのと同様に、すべての目標のために、参考のため、その全体を本明細書中に援用される。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本明細書中で提供されたように、AC信号のみを利用して、組織にわたって薬剤を輸送する方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図2】
図2は、本明細書中で提供されたように、AC信号および前パルスを利用して、組織にわたって薬剤を送達する方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図3】
図3は、本明細書中で提供されたように、AC信号およびDCオフセット信号を用いて、組織にわたって薬剤を輸送する方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図4】
図4は、本明細書中で提供されたように、前パルス、AC信号およびDCオフセット信号を利用する1つの方法のステップを図示する模式的ブロック図である。
【図5】
図5は、患者の皮膚にわたる薬理学的活性薬剤の輸送など、組織にわたって薬剤を輸送する例示的装置の模式図である。
Claims (10)
- 組織にわたって薬剤を送達する装置であって、該装置は、
(a)1つ以上の電気信号を供給する電源であって、該1つ以上の電気信号はAC信号を含む、電源と、
(b)該組織と電気接触して配置され、該AC信号を該組織に付与するように適合された1対の電極を備える電気回路を形成し、該電極のうちの少なくとも1つは該薬剤を保持するためのリザーバを備え、該回路は該電源を備える、システムと、
(c)該AC信号を調整して、該組織の領域内の実質的に一定の電気的状態を維持するように作用する該回路に電気接続された制御器であって、該実質的に一定の電気的状態の維持は該薬剤の送達を促進する、制御器と
を含む、装置。 - 前記制御器は、前記AC信号を調整して、前記組織の領域内で、前記薬剤が送達される期間にわたって、電気穿孔の実質的に一定の状態を維持する、請求項1に記載の装置。
- 前記電気的状態はコンダクタンスまたは電気抵抗であり、前記制御器は、前記薬剤が送達される期間にわたって、前記組織の領域内で実質的に一定のコンダクタンスまたは電気抵抗を維持する、請求項1に記載の装置。
- 前記電源によって供給される前記AC信号の周波数は、少なくとも約1Hzである、請求項1に記載の装置。
- 前記装置は、前記電極を介して前記組織に付与するための電気的前パルスを生成するために作用し、該電気的前パルスは、前記AC信号を付与する前に、前記領域内で電気穿孔を誘導するために作用する、請求項1に記載の装置。
- 前記装置は、前記電極を介して前記組織に付与するためのDCオフセット信号を生成するために作用し、該DCオフセット信号は、前記領域に渡って前記薬剤の送達を促進するために作用する、請求項1に記載の装置。
- 前記装置は、(i)前記領域内の電気穿孔を誘導する電気的前パルスおよび(ii)該領域にわたって前記薬剤の送達を促進させるDCオフセット信号を生成し、前記電極を介して前記組織に供給するように作用し、該DCオフセット信号の前に該電気的前パルスを付与するために作用する、請求項1に記載の装置。
- 人の皮膚は該人の組織である、請求項1に記載の装置。
- 前記組織は粘膜であり、前記装置は粘膜を用いて使用するために構成される、請求項1に記載の装置。
- 前記物質は、前記薬剤を送達するように構成され、該薬剤は、製薬的活性剤を含む、請求項1に記載の装置。
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