JP2004504065A - Nk細胞活性化受容体並びにその治療上および診断上の使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、活性物質を標的細胞に向けることができるターゲティング複合体に関し、前記複合体は、NKp46、NKp30、NKp44、またはこれらの機能的断片の1つを含む標的認識セグメントと、細胞傷害性部分や画像形成部分、Ig断片などの活性物質を含んだ活性セグメントを含むものである。本発明のターゲティング複合体は、ウイルス感染または癌に関連する病的な状態を治療するための、また癌を画像化し監視するための治療薬としての役割を果たす。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ウイルス感染または癌に伴う病状を治療するための、また癌を画像化し監視するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は、治療薬または造影剤に結合された、NK細胞活性化タンパク質、NKp46およびNKp44とその機能的断片を含む複合剤を使用することによって、様々なウイルス感染を治療し検出するための組成物および方法を提供する。
【0002】
(発明の背景)
ナチュラルキラー(NK)細胞、ならびに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、それによって免疫応答により異種組織または感染組織が破壊される細胞のメカニズムに主要な成分である[Trinchieri他、Adv.in Immunol.47:187〜376(1989)]。クラスI MHC分子および適切な特異的ペプチドの存在下で活性化されるCTLとは対照的に、NK細胞の1つの明確な機能は、MHCクラスIタンパク質の発現が不十分な標的細胞を溶解することである。このようにNK細胞は、異種抗原を直接検出するためではなく、「自分自身」のために免疫監視を実行する[Ljunggren他、Immunol.Today 11:7〜10(1990)]。
【0003】
このため、一般に循環しているリンパ球の約10〜15%を占めるNK細胞は、抗原に対して非特異的な手法でかつ事前の免疫感作なしで、ウイルス感染細胞および多くの悪性細胞を含む標的細胞に結合してこれを死滅させる、[Herberman他、Science 214:24〜27(1981)]。
【0004】
ヒトNK細胞抑制受容体によるHLA分子上の多形性決定基の認識は、3タイプのクラスI MHC−結合受容体によって媒介されるが、このクラスI MHC−結合受容体は、NKIRタンパク質[Colonna他、Science 268:405〜408(1995);Wagtmann他、Immunity 2:439〜449(1995);D’Andre他、J.Immunol 155:2306〜2310(1995)]とILT−2タンパク質[Colonna他、J.Exp.Med.186:1809〜1818(1997)]の両方を含み、そのリガンドが様々なHLA−A、−B、および−Cの各タンパク質であるIgスーパーファミリーの抑制受容体であり、さらにこのクラスI MHC−結合受容体は、HLA−Eタンパク質に結合すると抑制シグナルを送出するムチン様CD94/NKG2複合体である[Borrego他、J.Exp.Med.187:813〜818(1998);Brnud他、Nature、391:795〜799(1998);Lee他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:5199〜5204(1998)]。この様々なクラスI MHCタンパク質に特異的な受容体は、これらの分子が、NK機能を調節する際に重要であることを示す。
【0005】
しかし、標的細胞に対してNK細胞毒性を引き起こすのに関係する溶解受容体については、ほとんどわかっていない。最近、溶解受容体として4つの候補、すなわちNKp30、NKp44[Cantoni,C.他、J.Exp.Med.189:787〜796(1999)]、NKp46[Pessino他、J.Exp.Med.188:953〜960(1998)]、およびCD16[Mandelboim他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.96:5640〜5644(1999)]が同定された。NKp46受容体は、活性化されてもまたは活性化されていなくても全てのNK細胞上に発現するので、標的細胞の死滅に関与する主要な溶解受容体であることが認められている[Pessino他、(1998)の同書]。本発明は、NKp44およびNKp46に対する「溶解リガンド」の同定および特徴付けに一部基づいている。NKp44を除き、これら受容体の全ては活性化NK細胞および非活性化NK細胞の両方の表面に発現し、全てがCD3ζ/FcεRIγとの会合を介して活性化シグナルを伝達する[Bottino,C.他、Hum.Immunol.61:1〜6(2000)]。これとは対照的に、NKp44受容体は、活性化NK細胞の表面のみに発現し、その活性化シグナルを、DAP12との会合を介して送出する[Lanier L.L.他、Nature.391:703〜707(1998)]。これらの受容体によって認識される溶解リガンドは、知られていない。
【0006】
本発明者等の発見によって、可溶性NKp44−Ig融合タンパク質および可溶性NKp46−Ig融合タンパク質が、インフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)とパラインフルエンザウイルスの血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)に結合し、これらのウイルスタンパク質に対するNKp44およびNKp46の結合が、対応する糖タンパク質を発現する細胞の溶解に必要であることが示される。この結合は、ウイルス糖タンパク質の既知のシアル結合能力に見合ったNKp44オリゴ糖およびNKp46オリゴ糖のシアリル化を必要とする。これらの発見によって、NKp44−発現細胞およびNKp46−発現細胞が、インフルエンザウイルスおよびパラインフルエンザウイルスに感染した標的細胞を、標的細胞クラスI分子発現を大きく減少させることなくどのように認識できるかが説明される。シアル酸は、いくつかのその他のウイルスに関する受容体として利用されるので、ウイルス病原体のかなりのサブセットのNK認識に関する一般的な方策を提示することができる。
【0007】
(発明の概要)
第1の態様では、本発明は、活性物質を標的細胞に向けることが可能なターゲティング複合体に関する。この複合体は、少なくともNKp46、NKp30、NKp44、またはこれらの機能的断片を含む標的認識セグメントと、細胞傷害性部分、画像形成部分、またはIg断片でよい活性物質を含む活性セグメントを含む。
【0008】
標的認識セグメントはNKp46から得られ、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、ドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。別の特に好ましい実施形態では、このセグメントはNKp46分子のドメイン2を含む。あるいは、標的認識セグメントはNKp44から得られ、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、ドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。別の特に好ましい実施形態では、このセグメントはNKp44分子のドメイン2を含む。
【0009】
特に好ましい実施形態では、本発明の複合体は、Ig断片を活性セグメントとして含む融合タンパク質である。このIg断片は、Ig分子のFc部分であることが好ましい。
【0010】
あるいは、本発明の複合体は、細胞傷害性部分を活性セグメントとして含む結合体である。この細胞傷害性部分は、標的細胞を死滅させることができ、かつ/または標的細胞の増殖または細胞分裂を抑制することが可能な、細胞毒または抗細胞物質でよい。
【0011】
本発明の好ましい結合体は、細胞毒または抗細胞物質として、合成毒素、あるいは植物、真菌、または細菌から得られる毒素を含むことができる。この毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分のいずれか1つから選択できることがより好ましい。
【0012】
さらに別の代替の実施形態では、本発明の複合体は、活性セグメントが画像形成部分である結合体でよい。画像形成部分は、常磁性標識や放射性標識、蛍光原標識など、任意の検出可能な標識でよい。
【0013】
特定の実施形態では、本発明の複合体は、固形腫瘍ならびに非固形腫瘍から得られた細胞、特に悪性腫瘍を特異的に標的とすることができる。
【0014】
あるいは、本発明の複合体は、欠損細胞または病的な細胞を標的とする。そのような標的細胞は、病原性ウイルス感染細胞でよい。より具体的には、病原性ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バー(Epstein−Barr)ウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスを含むがこれらに限定することのない様々なウイルスのいずれかでよい。
【0015】
標的細胞がウイルス感染細胞である場合、本発明の複合体は、前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することが可能な標的認識セグメントを有することが好ましく、この結合は、シアル酸によって媒介されるものである。
【0016】
本発明の第2の態様は、NKp46−Ig融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターに関する。このDNAは、NKp46またはその機能的断片をコードするセグメントを含み、NKp46断片は、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。この発現ベクターは、Ig分子のFc部分をコードするDNA配列を含んだ第2のセグメントをさらに含む。別の好ましい実施形態では、第1のセグメントは、ドメイン2だけの核酸配列を含めばよい。
【0017】
本発明の別の実施形態では、本発明は、NKp44−Ig融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターに関する。このDNAは、NKp44またはその機能的断片をコードするセグメントを含み、NKp44断片は、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、ドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。別の好ましい実施形態では、第1のセグメントがドメイン2だけの核酸配列を含めばよい。本発明の発現ベクターに含まれるDNAの第2のセグメントは、Ig分子のFc部分をコードするDNA配列を含む。
【0018】
また本発明は、本発明のDNAまたは発現ベクターで形質転換した宿主細胞にも関する。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態は、NKp46−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号6と配列番号14のいずれか1つによって実質上示されるようなアミノ酸配列を含み、配列番号3と配列番号12のいずれか1つによって実質上示されるような核酸配列によってコードされる。
【0020】
さらに別の特に好ましい実施形態では、本発明は、NKp44−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号10よって実質上示されるようなアミノ酸配列を含み、配列番号8によって実質上示されるような核酸配列によってコードされる。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明の融合タンパク質NKp46−IgまたはNKp44−Igを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。
【0022】
さらに、本発明は、NK細胞活性化受容体NKp46またはNKp44のリガンドであるタンパク質のエピトープを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。特に好ましい抗体は、135.7と指定された抗体である。本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でよい。さらに、本発明の抗体は、検出可能な部分に結合することができる。
【0023】
他の態様では、本発明は、病的な状態を治療するための組成物に関する。本発明の組成物は、標的認識セグメントおよび活性セグメントを含む複合体を活性成分として含む。標的認識セグメントは、前記病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能である。この標的認識セグメントは、少なくともNKp46、NKp30、NKp44、またはそれらの生物学的に機能的な断片を含む。複合体の活性セグメントは、細胞傷害性物質部分とIg断片から選択することができる。
【0024】
一実施形態では、本発明の組成物は、例えばメラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの悪性疾患を治療することを目的とする。
【0025】
あるいは、本発明の組成物は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、ECMV、MVM、およびヘルペスウイルスのいずれか1つによって引き起こされたウイルス感染を治療することを目的とする。
【0026】
本発明の複合体および組成物に含まれるNKp46、NKp44、またはこれらの断片は、標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することが可能である。標的細胞がウイルス感染細胞である場合、その結合はシアル酸を介する。本発明の複合体はフリーウイルスに結合することができ、その結合もやはりシアル酸を介して行われる。
【0027】
本発明の複合体および組成物中の標的認識セグメントは、好ましくはNKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含んだNKp46断片であって、好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含んだNKp46断片を含む。別の好ましい実施形態では、断片はNKp46のドメイン2のみを含む。あるいは、本発明の複合体および組成物中の標的認識セグメントは、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含んだNKp44断片であって、好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含んだNKp44断片を含む。別の好ましい実施形態では、断片はNKp44のドメイン2のみを含む。
【0028】
本発明の複合体または組成物の活性セグメントはIg断片でよく、好ましくはIg分子のFc部分である。あるいは、活性断片は、標的細胞を死滅させかつ/または標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することが可能な細胞毒や抗細胞物質などの細胞傷害性部分でよい。
【0029】
細胞毒または抗細胞薬は、合成物質、あるいは植物由来、真菌または細菌由来の毒素でよい。
【0030】
より具体的には、毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択することができる。
【0031】
本発明の代替の態様は、サンプル中に病的な細胞または欠損細胞が存在するかどうかを検出するための診断用組成物に関する。この診断用組成物は、病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能な標的認識セグメントと、検出可能な部分を含んだ複合体を含む。認識セグメントは、NKp46、NKp44、NKp30、またはそれらの生物学的に機能的な断片を含む。検出可能な画像形成部分は、常磁性物質、放射性物質、または蛍光原物質でよい。
【0032】
本発明の別の態様は、対象の病的な状態を治療する方法に関する。この方法は、病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能な第1の標的認識セグメントと第2の治療活性セグメントを有する複合体を含んだ医薬品として有効な量の治療薬を、対象に投与するステップを含む。標的認識セグメントは、NKp46、NKp30、NKp44、またはそれらの生物学的に機能的な断片の少なくとも1つを含み、治療活性セグメントは、細胞傷害性部分またはIg断片でよい。治療される病的な状態は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染、またはメラノーマや癌腫、リンパ腫、肉腫などの悪性疾患でよい。
【0033】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、標的認識セグメントに含まれるNKp46またはNKp44が前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することができる複合体を使用する。標的細胞がウイルスに感染した細胞の場合、この結合は、シアル酸によって媒介される。より具体的には、NKp46断片は、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含み、より好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含む。別の好ましい実施形態では、この断片はNKp46分子のドメイン2のみを含む。あるいは、NKp44断片は、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含み、より好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含む。別の好ましい実施形態では、この断片はNKp44分子のドメイン2のみを含む。
【0034】
代替の一実施形態では、本発明の方法は、活性セグメントとしてIg断片を含有する複合体を使用する。このIg断片は、特に、Ig分子のFc部分である。
【0035】
別の代替の実施形態では、本発明の方法は、活性セグメントとして細胞傷害性部分を含む。この細胞傷害性部分は、標的細胞を死滅させ、かつ/または標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することができる、細胞毒または抗細胞物質から選択することができる。より具体的には、細胞毒または抗細胞物質は、合成毒、あるいは植物、真菌、または細菌由来の毒素でよい。
【0036】
この毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択することができる。
【0037】
本発明の代替の態様は、病状、特に腫瘍を診断し画像化する方法に関する。この方法は、対象の血流に造影剤を導入するステップと、悪性細胞上に発現したNKp46またはNKp44のリガンドと造影剤との結合を検出して定量するステップを含む。造影剤は、悪性細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能な第1の標的認識セグメントを有する複合体を含む。認識セグメントは、NKp46、NKp30、NKp44、またはこれらの生物学的に機能的な断片の少なくとも1つを含む。複合体は、画像形成部分である第2の活性セグメントも含み、これは常磁性物質、放射性物質、または蛍光原物質でよい。
【0038】
(発明の詳細な説明)
分子生物学の技術に関するいくつかの方法は、当業者に周知であるので本明細書では詳述していない。そのような方法には、特定部位の突然変異誘発、PCRクローニング、cDNAの発現、組換えタンパク質またはペプチドの分析、細菌細胞および酵母菌の形質転換、哺乳動物細胞のトランスフェクションなどが含まれる。そのような方法について記述している教科書は、例えば、Sambrook他のMolecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory;ISBN:0879693096、1989、F.M.AusubelによるCurrent Protocols in Molecular Biology、ISBN:047150338X、John Wiley&Sons,Inc.1988、およびF.M.Ausubel他(編)によるShort Protocols in Molecular Biology:第3版、John Wiley&Sons;ISBN:0471137812、1995である。これらの出版物の全体を参照により本明細書に組み込む。さらに、いくつかの免疫学的技法は当業者に周知であるので、どの場合にも本明細書では詳細に述べていない。例えば、Current Protocols in Immunology、Coligan他(編)、John Wiley&Sons.Inc.、New York、NYを参照されたい。
【0039】
本発明は、NK細胞活性化受容体NKp46、NKp44、およびNKp30により、腫瘍またはウイルス感染細胞上に発現した種々のリガンドの認識に基づいて腫瘍や病原性ウイルスなどの種々の疾患を治療しかつ/または診断(画像化)する新規な手法を提供する。
【0040】
診断に関しては、本発明の方法は、検出可能な画像形成部分を含む本発明の複合体を用い、例えば核磁気共鳴映像法やX線映像法、コンピュータ・エミッション断層撮影法などを介して腫瘍の画像を提供することが可能になる。
【0041】
治療に関しては、本発明の複合体は、所望の標的細胞の増殖または細胞分裂を抑制することによって、そのような細胞に細胞傷害性の作用または別のメカニズムによる抗細胞性の作用を及ぼすよう設計される。
【0042】
このため第1の態様では、本発明は、標的細胞の表面に発現するリガンド分子を特異的に認識し、活性物質を標的細胞に向けることができる、ターゲティング複合体に関する。この複合体は、
a.NKp46、NKp30、およびNKp44の各タンパク質、またはこれらの機能的断片の少なくとも1つを含む標的認識セグメントと、
b.細胞傷害性部分、画像形成部分、またはIg断片部分でよい活性物質を含む活性セグメントを含む。
【0043】
特に好ましい実施形態では、標的認識セグメントは、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むNKp46断片である。標的認識セグメントは、ドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号4により示されるアミノ酸配列またはそのアイソフォームのアミノ酸配列であって配列番号13により示されるものを有することが好ましい。別の好ましい実施形態では、標的認識セグメントは配列番号22および23で示されるように、NKp46分子のドメイン2だけを含めばよい。
【0044】
あるいは、標的認識セグメントは、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むNKp44断片である。標的認識セグメントは、ドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号9により示されるアミノ酸配列を有することが好ましい。別の好ましい実施形態では、標的認識セグメントは配列番号24で示されるようにNKp44分子のドメイン2だけを含めばよい。あるいは標的認識セグメントは、配列番号17により示されるNK活性化分子NKp30を含むことができる。
【0045】
本発明の認識セグメントは、NKp46、NKp30、およびNKp44のいずれかのドメイン1および2の複数単位を含み、あるいはドメイン2のみを含めばよいことを理解すべきである。そのような複合単位セグメントを生成することにより、標的分子に対する認識セグメントの活性を増大させることができる。
【0046】
「機能的断片」とは、分子の「断片」、「変異体」、「類似体」、または「誘導体」を意味する。本発明の核酸配列またはアミノ酸配列のいずれかのような分子の「断片」は、分子の任意のヌクレオチドまたはアミノ酸のサブセットを指すものである。このような分子の「変異体」は、その分子全体または断片に非常に類似する自然発生的な分子を指すものである。分子の「類似体」は、同じ種または異なる種から得られた同種の分子である。類似体または誘導体のアミノ酸配列は、少なくとも1つの残基が欠失し、挿入され、または置換される場合、本発明で使用される特定の分子、例えばNKp46、NKp30、またはNKp44の各分子と異なるものでよい。
【0047】
「機能的」とは、同じ生物学的機能、例えばリガンドを認識しかつ/またはそこに結合する能力と全く同じ能力を有することを意味する。
【0048】
別の特に好ましい実施形態は複合体に関し、本発明の複合体は、活性セグメントとしてIg断片を含む融合タンパク質である。このIg断片は、Ig分子のFc部分であることが好ましく、配列番号5のアミノ酸配列によってコードされる。
【0049】
補体系は、体液性免疫の主要なエフェクター・メカニズムの1つである。これは主として、第1の古典的経路成分C1が抗原複合抗体分子のFc部分に結合することによって活性化される。したがって、NKp44、NKp30、またはNKp46とIg分子のFc部分を含む融合タンパク質は、in vivoで補体系の標的として働くことができる。
【0050】
あるいは、本発明の複合体は、活性セグメントとして細胞傷害性部分を含む結合体である。この細胞傷害性部分は、細胞毒または任意の抗細胞物質であって前記標的細胞を死滅させ、かつ/または前記標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することが可能なものでよい。
【0051】
一般に治療を目的とした場合、本発明は、本発明の複合体のターゲティング・セグメントに結合することができ、かつ活性形態で標的細胞に送達させることができる任意の薬物の使用に関する。例示的な抗細胞物質には、化学療法薬、放射性同位元素、ならびに細胞毒が含まれる。化学療法薬には、ステロイドなどのホルモン、シトシンアラビノシドやフルオロウラシル、メトトレキサートまたはアミノプテリンなどの代謝拮抗物質;アントラサイクリン;マイトマイシンC;ビンカアルカロイド;デメコルチン;エトポシド;ミトラマイシン;またはクロラムブシルやマルファランなどの抗腫瘍アルキル化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
その他の実施形態は、細菌内毒素などの物質、またはそのような細菌内毒素のリピドA部分を含むことができる。どのような場合でも、このような物質は、既知の結合技法を使用して必要に応じて標的細胞に対して狙いを定め、インターナリゼーションを行い、放出し、または提示することが可能な手法で[例えば、Ghose他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、3:256〜359(1987)]、本発明の複合体のターゲティング・セグメント(好ましくはNKp46、NKp44、およびNKp30のいずれか1つのドメイン1および2、またはドメイン1とドメイン2の少なくとも1つ、好ましくはドメイン2)にうまく結合できることが示される。
【0053】
ある好ましい実施形態では、治療に利用される物質は一般に合成毒、または植物由来、真菌由来、または細菌由来の毒素を含むことになり、ほんの一例を挙げれば、そのような毒素は、例えばA毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分である。本明細書に関連して使用される最も好ましい毒素部分は、ジフテリア毒素である。
【0054】
本発明を治療に利用するそのほとんどは、毒素部分を腫瘍または病原性ウイルス感染細胞に向けようとするものである。これは、他の可能性ある物質に比べ、細胞を死滅させる作用を引き起こす毒素の能力が非常に大きいことに起因する。それにもかかわらず、ある状況下では、毒素を抗腫瘍薬やその他のサイトカイン、代謝拮抗物質、アルキル化剤、ホルモンなどの化学療法薬に代えることが可能な標的とされた毒素複合体による効率的な中毒に見合った経路を介してNKp46、NKp44、またはNKp30の標的リガンドを内在させることができない。
【0055】
本願で使用するように、本発明の複合体の活性について述べるとき(特に、活性セグメントとして細胞傷害性部分が選択されるとき)に使用される「細胞傷害性」という用語と「細胞溶解性」という用語は同義とする。一般に、細胞傷害活性は、様々な生物学的、生化学的、または生物理学的メカニズムのいずれかによって標的細胞を死滅させることに関する。細胞溶解は、より具体的にはエフェクターが標的細胞の原形質膜を溶解し、それによってその物理的な完全性が破壊される活性を指す。その結果、標的細胞が死滅する。
【0056】
さらに別の代替の実施形態では、本発明の複合体は、画像形成部分を活性セグメントとして含む結合体でよい。さらに、治療および/または診断に利用する放射性同位元素の場合、ヨウ素131、ヨウ素123、テクネシウム99m、インジウム111、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、銅67、イットリウム90、ヨウ素125、またはアスタチン211を挙げることができる。診断し監視するために腫瘍の画像を得ることが目的である場合、常磁性物質や放射性物質、蛍光原物質など、画像形成時に検出可能な物質を使用することが望ましい。多くの物質が画像形成に有用であることが、当技術分野で知られている。常磁性イオンは、例えばクロムやマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ネオジム、サマリウム、ホルミウム、エルビウムなどのイオンでよい。x線映像法などの場合に有用なイオンには、ランタン、金、鉛、およびビスマスが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の画像形成複合体は、蛍光化合物などの検出可能な部分に結合することができる。蛍光標識した複合体を適正な波長の光に曝すと、その存在を蛍光によって検出することができる。最も一般的に使用される蛍光標識化合物には、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンがある。
【0058】
複合体は、152Eやその他のランタニド系列など、蛍光発光金属を使用して検出可能に標識することもできる。これらの金属は、そのような金属キレート基をジエチレントリアミン五酢酸(ETPA)として使用して、ターゲティング・セグメントに結合することができる。
【0059】
複合体は、化学発光化合物に結合することによって、検出可能に標識することもできる。次いで化学反応の過程で生じるルミネセンスの存在を検出することによって、化学発光標識されたターゲティング・セグメントが存在するかどうかを決定する。特に有用な化学発光標識化合物は、ルミノール、イソルミノール、セロマチックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルがある。
【0060】
同様に、生物発光化合物を、本発明の複合体中の標識として使用することができる。生物発光は、生体系に見られる化学発光の1つのタイプであり、触媒タンパク質によって化学発光反応の効率が高まるものである。生物発光タンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出することによって決定される。標識を行うのに重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンである。
【0061】
本発明の複合体のターゲティング・セグメントを活性セグメント(細胞傷害性部分または画像形成部分)に結合させることができるが、これは脂質の主鎖または炭水化物の主鎖のいずれかにそれらのセグメントを直接的または間接的に結合する(conjugatingまたはcoupling)ことによってなされることを理解すべきである。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の複合体を病的な細胞に向けることができる。
【0063】
本発明を記述するのに使用されるように、「標的細胞」は、本発明の複合体(活性セグメントが治療物質、例えば細胞傷害性部分またはIgを含む)の細胞傷害活性によって死滅する細胞であり、または本発明の複合体(活性セグメントが検出可能な画像形成部分を含む)によって検出される細胞である。標的細胞は、NKp46、NKp44、およびNKp30の各分子のいずれか1つに対するリガンドを発現し、特に、悪性の細胞、または別の方法で固形腫瘍から、ならびに非固形腫瘍から得られた細胞が含まれる。
【0064】
本発明を記述するために本明細書で使用されるように、「癌」、「腫瘍」、および「悪性腫瘍」は全て同等に、組織または器官の過形成に関する。組織がリンパ系または免疫系の一部である場合、悪性細胞は循環細胞の非固形腫瘍を含んでよい。その他の組織または器官の悪性腫瘍は、固形腫瘍をもたらす可能性がある。一般に、本発明の複合体、ならびに本発明の組成物および方法は、非固形腫瘍および固形腫瘍の治療に使用することができ、また固形腫瘍を監視し画像化するために使用することができる(選択された活性セグメントは画像形成部分である)。
【0065】
あるいは、本発明の複合体は、HIVやEBV、CMV、ワクシニア、MVM、ECMV、ヘルペス、インフルエンザウイルスなどの病原性ウイルスに感染した細胞を対象とすることができる。
【0066】
より具体的には、病原性ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスが含まれるがこれらに限定されない様々なウイルスのいずれか1つでよい。
【0067】
本発明を記述するのに使用されるように、「病原性ウイルス」は、宿主に病気を引き起こすウイルスである。病原性ウイルスは宿主動物の細胞に感染し、そのような感染の結果、宿主の健康が衰える。本発明により考えられる病原性ウイルスには、HIV、EBV、CMV、ワクシニア、ヘルペス、MVM、ECMV、およびインフルエンザが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
前記標的細胞が病原性ウイルスに感染した細胞である特に好ましい実施形態では、本発明の複合体は、前記ウイルスに感染した標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することが可能な標的認識セグメントを有し、この結合はシアル酸によって媒介される。
【0069】
あるいは、本発明の複合体はフリーウイルスにも結合することができる。この結合もやはりシアル酸によって媒介される。
【0070】
実施例6および9に示すように、NKp46分子およびNKp44分子とそれらのリガンド(HAまたはHN)とのそれぞれの相互作用は、シアル酸によって媒介された。さらに、シアル酸は相互作用に必要であるが十分ではないことが示された。
【0071】
いくつかの哺乳動物のシアル酸受容体が明らかにされているが[Varki,A.他、FASEB J.11:248〜55(1997)]、それらがNKp46またはNKp44との結合になぜ十分ではないのかという疑問が提起されている。細胞シアル酸受容体は、利用された標的細胞上に発現することができるが、その受容体は、ふんだんに発現するウイルスのHAのように機能するほど十分な量で発現することができない。使用に適した環境になるまで細胞レクチンを隔離し、または別の方法で不活性化することをも可能である。
【0072】
実施例6および9は、NKp46およびNKp44に対するHAの結合の分析について述べている。シアル酸に対するHAの解離定数はmM範囲内にあってモノマー相互作用をもたらすには低すぎるものであり、その結果、フロー・サイトメトリーによって検出されるNKp46−Igの結合が安定になり(解離定数は0.1μM未満であることが必要である)またはNKp46−Igによってウイルス性血球凝集反応を阻止することができるようになる。これは、HAとNKp46との多量体による相互作用、またはシアル酸結合によって接触し始めた後にNKp46がHAとより緊密に相互に作用することを示している。前者の場合でさえ、末端シアル残基がN結合型オリゴ糖上に遍在するので、NKp46はこれを他の細胞糖タンパク質と区別する特殊な性質を必要とすると考えられる。1つの可能性は、シアル酸と単一のHA複合体との多価相互作用が可能になって、三量体として3つのシアル酸結合部位を持つような方法で、NKp46(単一のN結合型オリゴ糖を有すると考えられる)を多量体にすることである。組換えNKp46−IgおよびNKp44−Igは2価の分子であることが予想されるが、細胞NKp46または細胞NKp44のオリゴマー状態は知られていない。
【0073】
第2の態様では、本発明は、NKp46−Ig融合タンパク質をコードする核酸配列を含んだ発現ベクターに関する。この核酸は、
a.標的認識セグメントをコードするDNA配列であって、そのセグメントがNKp46またはその機能的断片を含むもの。このNKp46分子断片は、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましい。標的認識セグメントは、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号1により示される核酸配列によって、または配列番号11により示されるNKp46アイソフォームによってコードされることが最も好ましく、あるいは、配列番号19および配列番号20のいずれか1つによって示されるようにドメイン2だけを含み、
b.Ig分子のFc部分である活性セグメントをコードするDNA配列であって、前記DNAが配列番号2により示される核酸配列を有するもの
を含む。
【0074】
代替の実施形態では、本発明の発現ベクターはNKp44−Ig融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。この核酸配列は、
a.標的認識セグメントをコードするDNA配列であって、そのセグメントがNKp44またはその機能的断片を含むもの。このNKp44分子断片は、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましい。標的セグメントは、ドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号7により示される核酸配列によってコードされることが最も好ましく、あるいは、配列番号21によって示されるようにドメイン2だけを含み、
b.Ig分子のFc部分である活性セグメントをコードするDNA配列であって、前記DNAが配列番号2により示される核酸配列を有するもの
を含む。
【0075】
NKp30−Ig融合タンパク質をコードする発現ベクターは本発明の範囲内である。そのような発現ベクターは、NKp30のドメイン1および2の核酸配列を含み、配列番号15によって示される核酸配列を有する。
【0076】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)などのポリヌクレオチドを指し、適切な場合にはリボ核酸(RNA)を指す。これらの用語には、均等物としてヌクレオチド類似体から形成されたRNAまたはDNAの類似体と、記述された実施形態に適用可能であるように一本鎖および二本鎖のポリヌクレオチドも含まれることを理解されたい。
【0077】
本発明の発現ベクターは、動作可能に結合する調節要素をさらに含むことができる。「動作可能に結合」という文言は、本明細書において、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係を保った状態で配置されるときに第1の核酸配列が第2の核酸配列に動作可能に結合することを示すために使用される。例えばプロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に動作可能に結合している。一般に、動作可能に結合しているDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合は、同じ読み枠内にある。
【0078】
したがって、制御要素および調節要素という用語には、プロモーター、ターミネーター、およびその他の発現制御要素が含まれる。そのような調節要素はGoeddelによって記述されている[Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)]。
【0079】
本明細書で使用される「ベクター」は、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNA断片、およびその他のビークルであってDNA断片を宿主のゲノムに組み込むことが可能なものを包含する。発現ベクターは、一般に、所望の遺伝子またはその断片を含有する自己複製DNA構成または自己複製RNA構成であり、適切な宿主細胞内で認識されかつ所望の遺伝子の発現をもたらす遺伝子制御要素に動作可能に結合している。これらの制御要素は、適切な宿主内で発現をもたらすことができる。一般に遺伝子制御要素は、原核プロモーター系または真核プロモーター発現調節系を含むことができる。これは一般に、転写プロモーター、転写の開始を制御する任意選択のオペレーター、RNA発現のレベルを上昇させる転写エンハンサー、適切なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス部位、転写および翻訳を終了させる配列などを含む。発現ベクターは通常、複製の開始点、すなわちそのベクターによって宿主細胞を独立に複製することが可能な開始点を含有する。
【0080】
ベクターは追加として、適切な制限部位、抗生物質抵抗性、またはベクター含有細胞を選択するためのその他のマーカーを含むことができる。プラスミドは、最も一般的に使用される形のベクターであるが、同等の機能を果たして当技術分野で知られているかまたは知られるようになるその他の形のベクターも、本明細書で使用するのに適している。例えば、参照により本明細書に組み込むPouwels他のCloning Vectors:a Laboratory Manual(1985および補遺)、Elsevier、N.Y.;およびRodriquez他(編)のVectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth、Boston、Mass(1988)を参照されたい。
【0081】
また、本発明の特定の実施形態は、本発明の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞に関する。適切な宿主細胞には、原核生物、低級真核生物、および高級真核生物が含まれる。原核生物には、グラム陰性有機体およびグラム陽性有機体、例えばE.coliおよびB.subtilisが含まれる。低級真核生物には、酵母、S.cerevisiaeおよびピチア属と、Dictyostelium属の種が含まれる。高級真核生物には、非哺乳動物由来、例えば昆虫細胞および鳥類と、哺乳動物由来、例えばヒトやその他の霊長類の両方と、げっ歯類由来の動物細胞から確立された組織培養細胞系が含まれる。
【0082】
特に好ましい実施形態は、NKp46−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号3および配列番号12により示される核酸配列でそれぞれコードした、配列番号6により示されるアミノ酸配列または配列番号14によって示されるそのアイソフォームを有する。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、実施例11で述べるNKp46D2−Ig融合タンパク質に関する。
【0084】
別の特に好ましい実施形態は、NKp44−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号8により示される核酸配列でコードした、配列番号10により示されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、本発明はNKp44D2−Ig融合タンパク質に関する。
【0085】
あるいは、本発明の融合タンパク質は、ターゲティング・セグメントとしてNKp30分子(配列番号18により示される)を含んでよい。
【0086】
異種融合タンパク質は、同様に普通に融合したのではなくもともと融合した状態のセグメントで形成された融合タンパク質である。このため、NKp46、NKp30、またはNKp44(特にドメイン1および2、またはドメイン1とドメイン2の少なくとも1つ)分子とIg分子のFc部分との融合生成物は連続的なタンパク質分子であって、典型的なペプチド結合によって融合した配列を有し、一般に単一の翻訳生成物として形成され、かつ各原料ペプチドから得られた性質を示す分子である。
【0087】
本発明の別の態様は、本発明の融合タンパク質NKp46−Igを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。
【0088】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明は、本発明の融合タンパク質NKp44−Igを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。
【0089】
さらに本発明は、タンパク質上のエピトープを特異的に認識してそこに結合する抗体に関し、前記タンパク質は、NK細胞活性化受容体NKp46に対するリガンドである。実施例3で述べるように、NKp46推定リガンドを識別するため、SV感染細胞でマウスを免疫化し、異なる抗体について試験を行って、SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を阻止する能力について調べた。SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を効果的に阻止するそのような1つの抗体を135.7で示す。
【0090】
したがって特に好ましい実施形態では、本発明は、135.7で示される抗体に関する。この抗体は、NKp46リガンドを特異的に認識してそこに結合する。実施例3で述べるように、このリガンドは、分子量が約70Kdのタンパク質である。このタンパク質は、HN糖タンパク質であることがわかった。
【0091】
本発明の好ましい実施形態は、NKp46−Ig融合タンパク質およびNKp44−Ig融合タンパク質に対する抗体と、NKp46リガンドおよびNKp44リガンドに対する抗体に関する。これらの抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体からなる群から選択され、モノクローナル抗体が好ましい。
【0092】
タンパク質に対するポリクローナル抗体の発生については、Wiley and Sons Inc.によるCurrent Protocols in ImmunologyのChapter 2に記載されている。
【0093】
モノクローナル抗体は、雑種細胞の増殖に好都合な条件下での不死化B細胞との融合によって免疫化した動物、特にラットまたはマウスの脾臓またはリンパ節から得られたB細胞から調製することができる。ネズミB細胞の融合では、細胞系Ag−8が好ましい。
【0094】
モノクローナル抗体を発生させる技法は、上記Current Protocols in ImmunologyのChapter 2など、多くの論文および教科書に記載されている。そのChapter 2に記載されているように、モノクローナル抗体を発生させるには、これらの動物の脾臓またはリンパ節細胞を、タンパク質で免疫化された動物の脾臓またはリンパ節細胞と同じ方法で使用することができる。モノクローナル抗体を発生させる際に使用する技法は、KohlerおよびMilsteinによるNature 256:495〜497(1975)と米国特許第4,376,110号にさらに記載されている。
【0095】
「抗体」という用語は、無傷の分子、ならびにその断片の両方を含むことを意味し、例えば、抗原に結合することが可能なFabおよびF(ab’)2が含まれる。FabおよびF(ab’)2断片は、無傷の抗体のFc断片に乏しく、循環からより急速になくなり、無傷の抗体よりも非特異的組織結合が少ない可能性がある[Wahl他、J.Nucl.Med.24:316〜325、(1983)]。本発明に有用な抗体のFabおよびF(ab’)2とその他の断片は、無傷の抗体分子に関する本明細書に開示された方法に従って、本発明の複合体に対するリガンドを検出し定量するのに使用できることが理解されよう。そのような断片は、一般に、パパイン(Fab断片生成用)やペプシン(F(ab’)2断片生成用)などの酵素を使用したタンパク質分解によって生成される。
【0096】
抗体は、分子と特異的に反応してそれによって分子と抗体とを結合させることができる場合、分子に「結合することができる」と言う。「エピトープ」という用語は、抗体に結合することができる任意の分子の部分であって、その抗体が認識することのできる部分を指すものである。エピトープまたは「抗原決定基」は、通常、アミノ酸や糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面のグループからなり、特異的三次元構造特性ならびに特異的荷電特性を有する。
【0097】
「抗原」は、抗体に結合することができる分子または分子の一部であり、これはさらに、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を動物に生成させることができるものである。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。前述の特異的反応は、抗原が、高度に選択的な手法でその抗原に対応する抗体と反応し、その他の抗原によって誘発される可能性がある多数のその他の抗体とは反応しないことを示すものである。
【0098】
本発明に有用な、抗体の断片も含めた抗体は、サンプル中の本発明の複合体に対するリガンドを定量的かつ/または定性的に検出するのに使用することができる。これは、蛍光または色素で標識した抗体を、光学顕微鏡、フロー・サイトメトリー、または蛍光による検出と併せて使用する免疫蛍光法によって実現することができる。
【0099】
別の特に好ましい実施形態は、検出可能な部分に結合された本発明の抗体に関する。本発明による抗体を検出可能に標識することができる方法の1つは、その抗体を酵素に結合することによるもので、酵素免疫測定法(EIA)で使用される。この酵素は、後に適切な基質に曝されるとき、例えば分光光度法や蛍光光度法によって、または視覚的手段によって、検出可能な化学的部分が生成されるような方法で基質と反応することになる。抗体を検出可能に標識するのに使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。検出は、酵素用の色素基質を使用する比色法によって行うことができる。検出は、基質の酵素反応の程度を、同様に調製された標準と目視比較することによって行うこともできる。
【0100】
検出は、様々なその他の免疫測定法のいずれかを使用することによって行うことができる。例えば、抗体または抗体断片を放射性標識することにより、放射免疫測定法(RIA)を用いて受容体チロシンホスファターゼ(R−PTPase)を検出することが可能である。Chard,T.による「An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques」という表題の章に特に関連したWork,T.S.他によるLaboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology、North Holland Publishing Company、NY(1978)には、RIAに関する優れた記述が見られ、これを本明細書に参照による組み込む。放射性同位元素は、gカウンタまたはシンチレーション・カウンタを使用するような手段によって、またはオートラジオグラフィによって検出することができる。
【0101】
本発明による抗体を、蛍光化合物、蛍光発光金属、化学発光化合物、または生物発光化合物で標識することも可能である。
【0102】
第4の態様では、本発明は、病的な状態を治療するための組成物に関する。この組成物は、活性成分として本発明による複合体、すなわち活性セグメントが細胞傷害性部分および/またはIg断片である複合体と、医薬品として許容されるキャリアを含む。
【0103】
本明細書で使用される「医薬品として許容されるキャリア」には、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤などのいずれかまたは全てが含まれる。そのような媒質および薬剤を医薬品として活性な物質に使用することは、当技術分野では周知である。任意の従来の媒質または薬剤は、それらが活性成分に対して非相容性である場合を除いて、治療用組成物に使用することが考えられる。
【0104】
本発明の組成物は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスの治療に使用することができる。
【0105】
本発明の組成物は、メラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの癌疾患、好ましくはメラノーマの治療にも使用することができる。
【0106】
本発明の代替の態様は、サンプル中の異常細胞の存在を検出するための診断用組成物であって、活性セグメントが常磁性や放射性、または蛍光原性の物質または部分などの検出可能な画像形成部分である本発明の複合体を含む組成物に関する。
【0107】
本発明の別の態様は、対象の病的な状態を治療する方法であって、医薬品として有効な量の治療薬を対象に投与するステップを含み、前記治療薬が本発明の複合体または組成物を含むものである方法に関する。
【0108】
病的な状態は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスのいずれか1つによって引き起こされるウイルス感染でよい。
【0109】
あるいは本発明の方法は、メラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの悪性疾患、好ましくはメラノーマの治療に使用することができる。
【0110】
本発明の方法は、本発明の複合体であって、活性セグメントがIg断片を含む複合体、特に配列番号5に示されるアミノ酸配列によって示されるIg分子のFc部分を含む複合体を使用することが好ましい。あるいは本発明の方法は、活性セグメントが細胞傷害性部分を含む複合体を使用する。この細胞傷害性部分は、前記標的細胞を死滅させ、かつ/または前記標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することができる細胞毒または抗細胞物質から選択することができる。より具体的には、細胞毒または抗細胞物質は、合成毒、あるいは植物、真菌、または細菌由来の毒素でよい。例えば毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分でよい。
【0111】
上述の治療方法の他、本発明は、癌性細胞または何らかの原因で欠陥のある細胞であってその表面にNKp46、NKp44、およびNKp30のいずれか1つを発現する細胞を本発明の複合体で治療する、ex vivo治療を包含する。そのようなex vivoプロトコルでは、ヒト対象などの対象の身体から生体サンプルを得ることができる。
【0112】
このサンプルは、血液、骨髄細胞、あるいは癌になった器官からの同様の組織または細胞でよい。そのようなサンプルを得るための方法は、腫瘍学および外科の分野の当業者に周知である。そのような方法には、周知の方法で血液をサンプリングすること、あるいは骨髄またはその他の組織または器官から生検材料を得ることが含まれる。サンプルに含有される癌細胞(またはウイルス感染細胞)は、本発明の複合体の細胞傷害活性により効果的になくすことができる。次いでこのサンプルを提供した対象の身体に、このサンプルを戻すことができる。
【0113】
本明細書で使用される「有効な量」とは、選択された結果をもたらすのに必要な量を意味する。例えば、本発明の組成物の有効な量は、前記病的な状態の治療に有用である。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、哺乳動物である対象、好ましくはヒトを治療することを目的とする。したがって、「患者」または「治療を必要とする対象」とは、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、およびネコの各被験体を含めた遺伝子治療が望ましい任意の哺乳動物、好ましくはヒトの患者を意味する。
【0115】
本発明によるin vivo治療では、本発明の複合体または組成物を様々な方法で投与することができる。非限定的な例として、細胞は、静脈内を通して送り出し、または固形腫瘍の位置に隣接する腹腔内などの体腔内に送り出すことができ、あるいは固形腫瘍に直接注射しまたは固形腫瘍に隣接した部分に注射することができる。例えば静脈内投与は、白血病、リンパ腫、およびこれと同等のリンパ系悪性腫瘍の治療、ならびにウイルス感染の治療に有利である。
【0116】
注射としての使用に適する医薬品の形態には、注射可能な滅菌溶液または分散液をその場で調製するための滅菌水溶液または分散液と滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、その形態は滅菌された状態でなければならず、容易に注射できる程度まで流体でなければならない。医薬品の形態は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0117】
微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベンやクロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって妨げることができる。たいていの場合、等張剤、例えば糖や塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物は、吸収を遅らせる薬剤組成物、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを使用することにより、長時間にわたって吸収させることができる。
【0118】
滅菌溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記列挙した様々なその他の成分を含む適切な溶媒に混ぜ、その後、滅菌ろ過することによって調製する。一般に分散液は、様々な滅菌済みの活性成分を、基本的な分散媒および上記列挙したものからの必要とされるその他の成分を含有する滅菌賦形剤に混ぜることによって調製する。
【0119】
注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末であって予め滅菌ろ過されたその溶液から得られたものをもたらす真空乾燥および凍結乾燥技法である。
【0120】
本発明の複合体および組成物は、治療を受ける対象に直接投与することができ、または投与前に、化合物(細胞傷害性部分または画像形成部分)のサイズに応じてそれらをオボアルブミンや血清アルブミンなどのキャリアタンパク質に結合させることが望ましい。治療用製剤は、任意の従来の投薬処方で投与することができる。製剤は、典型的な場合、上記定義された少なくとも1種の活性成分を、1種または複数のその許容されるキャリアと共に含む。
【0121】
各キャリアは、その他の成分に対して相溶性を有しかつ患者に無害であるという意味で、医薬品としてかつ生理学的に許容されるべきである。製剤には、口、直腸、鼻、または腸管外(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)による投与に適するものが含まれる。製剤は、単位投与形態で都合よく与えることができ、医薬品の技術分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0122】
本発明の別の態様は、病的な状態、特に腫瘍を診断し画像化する方法に関する。この方法は、対象の血流に造影剤を導入するステップと、病的な標的細胞に発現したNKp46、NKp44、またはNKp30のリガンドのいずれか1つに対する造影剤の結合を検出して定量するステップを含む。造影剤は、本発明の複合体であって、その活性セグメントが、例えば常磁性物質、放射性物質、または蛍光原物質でよい画像形成部分を含む、本発明の複合体を含む。
【0123】
特に好ましい実施形態では、本発明の診断方法を、腫瘍、例えばメラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの病的な状態の診断に使用することができる。
【0124】
これまで開示し記述してきたが、本発明に開示した特定のプロセス・ステップおよび材料には若干の変更を加えることができるので、本発明は、本明細書に開示した特定の実施例、プロセス・ステップ、および材料に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は上述の特許請求の範囲とその均等物によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態のみを記述するために使用するのであってそれに限定するものではないことも理解されたい。
【0125】
他に特に明示しない限り、この明細書および上述の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」には複数形も含まれることに留意しなければならない。
【0126】
他に特に明示しない限り、この明細書および上述の特許請求の範囲の全体を通して「含む」という単語「comprise」とその変形例である「comprises」や「comprising」などは、述べられている整数またはステップあるいは述べられている整数またはステップの群を含むことを意味するものであって、任意のその他の整数またはステップあるいは整数またはステップの群を除外することを意味するものではないことを理解されたい。
【0127】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明で使用される技法の代表例である。これらの技法は、本発明を実施するための好ましい実施形態の例示であるが、本発明の開示に照らして本発明の精神および意図される範囲から逸脱することなく非常に数多くの変更を加えることが可能であることが当業者ならわかるであろう、ということを理解されたい。
【0128】
(実施例)
材料および方法
細胞およびウイルス
細胞系統:
*721.221−クラスI MHC陰性のヒトEBVで形質転換したB細胞系。
*1106mel−クラスI MHC陰性ヒトメラノーマ細胞系。
*293T−アデノウイルスで形質転換し、SV−ラージT抗原でトランスフェクトしたヒト線維芽腎臓細胞系。
*ヒトNK細胞単離キットおよび自動MACS機器(Miltenyi Biotec Inc)を使用して、NK細胞(系およびクローン)を抹消血リンパ球(PBL)から単離し、NK細胞を前述のように培養中に保持した[Mandelboim,O.他、J.Exp.Med.184:913〜922(1996)]。
【0129】
ウイルス:
センダイウイルス(SV)、マウスパラミクソウイルス、およびインフルエンザウイルス(IV) A/PR/8/34(H1N1)を、Spafas(Preston City、CT、USA)から購入した。
【0130】
モノクローナル抗体
センダイウイルスに特異的なmAbについては前に述べた[Peterhans,E.他、Virology 128:366〜376(1983);Yewdell,J.W.他、J.Immunol.128:2670〜2675(1982)]。
【0131】
インフルエンザウイルスに特異的なmAbについては前に述べた[Yewdell,J.W.、他、J.Virol.48:239〜248(1983)]。
【0132】
抗CD99mAb12E7は、A.Bernard(Hopital de L’Archet、Nice、フランス)の厚意により贈られたものである。
【0133】
抗KIR2DL1(NKAT1)mAB HP3E4は、Dr.Lopez−Botet(Hospital de la Princesa、Madrid、スペイン)の厚意により贈られたものである。ハイブリドーマを生成するmAb 3G8は、Jay Unkeless(Mt.Sinai School of Medicine、New York、USA)の厚意により与えられた。汎抗クラスI mAb 147は、ExBio(チェコ共和国)から購入した。
【0134】
ハイブリドーマを生成するmAb 3G8は、Jay Unkeless(Mt.Sinai School of Medicine、New York、USA)から寄贈された。
【0135】
分子生物学における一般的な方法:
一般に、Maniatis他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1989、1992)に記載されているような当技術分野で知られており具体的には記述されていない標準的な分子生物学的技法に従った。
【0136】
SVに感染した721.221細胞を認識するmAbの生成
SVに感染した721.221細胞(5×106)を洗浄し、BALB/cマウスに対して14日間ごとに3回、腹腔内に注射した。免疫化したマウスから血清を採取し、感染細胞に対する抗体の存在について試験を行った。そのような抗体を生成するマウスに対して再び追加免疫を行い、4日後に脾臓を採取して、脾細胞を前述のようにSP2/0細胞に融合させた[Porgador,A.他、Immunity 6:715〜726(1997)]。
【0137】
増殖細胞融合体が入っているウェルから得られた上澄みを、初めにELISAにより結合している721.221、SVに感染した721.221または1106mel細胞についてスクリーニングした。次いで感染した721.221および/または1106mel陽性の上澄みをフロー・サイトメトリーによってスクリーニングし、SVに感染した721.221細胞に対するNKp46−Ig結合の阻止について調べた。
【0138】
血球凝集阻止試験
微量滴定プレートでは、1血球凝集単位(HAU)のIVを、連続した2倍希釈のNKp46−Igと共に50μLのPBS中4℃で30分間インキュベートした。次いで1%の濃縮ヒツジRBC懸濁液50μlを添加し、血球凝集のパターンを30分後に室温でカウントした。
【0139】
細胞毒性アッセイ
様々な標的に対するNK系およびクローンの細胞傷害活性について、前述のように5時間の35S放出アッセイで評価した[Porgador,A.Proc Natl Acad Sci.USA 94:13140〜13145(1997)]。
【0140】
mAbを含む実験では、初めにNK細胞を50%のヒト血清と共にインキュベートし(ヒトNK細胞の表面に発現した様々なFc受容体に対するmAbの結合を防止するため)、洗浄した。最終のmAb濃度は20μg/mlであり、またはハイブリドーマを産出するマウスから得られた血清中にmAbが存在する場合は、1:100の希釈率であった。示される全ての実験において、自発的な放出は最大放出の25%未満であった。各ポイントは、2回行って得た値の平均を表す。2回行って得た値の範囲は常にその平均の5%以内であった。
【0141】
Ig融合タンパク質
CD16−Ig融合タンパク質の生成については前に述べた[Mandelboim,O.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5640〜5644(1999)]。
【0142】
NKp30(受託番号AJ223153)、NKp44(受託番号NM_004828)、NKp46(使用したアイソフォームの受託番号はAJ006121である)、KIR−1(受託番号L41267)、およびNKAT−8(NM_012314)の細胞外部分をコードする配列を、ヒトNKクローンから単離したcDNAからのPCRによって増幅させた。これらのPCRで生成した断片をクローニングして、ヒトIgG1のFc部分を含有する哺乳動物の発現ベクターにし、Ig融合タンパク質を既に述べたように生成した[Mandelboim,O.他、(1999)同書]。構造の配列決定により、全てのIg融合タンパク質のcDNAがヒトFcゲノムDNAと共に枠内にあり、報告された配列と同一であることを確認した。
【0143】
この操作で使用した全てのIg融合タンパク質は、標準的な非還元性のSDS−PAGEゲル上の単一のバンドとして移行し、それぞれに関し定期的にSDS−PAGEによりアッセイを行って、タンパク質が分解していないことを確認した。
【0144】
Ig融合タンパク質によるFACS染色手順については前に述べた[Mandelboim,O.他、(1999)同書]。
【0145】
抗NKp46−IgおよびNKp44−Ig血清の生成
BALB/cマウスの足蹠に、CFA中で乳化させたNKp46−Ig、NKp44−Ig、またはKIR−1−Igの融合タンパク質40μgを注射した。6週間後、マウスに追加免疫を行い、12日後に血清を採取した。
【0146】
対照血清の場合、CFA中で乳化させたPBSを用いてマウスを上述のように免疫化した。血清に関し、YTS、KIR−1でトランスフェクトしたYTS細胞、および様々なNK系およびクローンに対するNKp46およびNkp44抗原の特異性について試験した。
【0147】
抗NKp44および46血清は、1:100の希釈率、すなわちフロー・サイトメトリーで測定した結合が飽和する濃度で使用した。報告されたNKp44およびNKp46の発現パターンに合わせ[Cantoni C,C.他、J.Exp Med.189:787〜796(1999)、Pessino A,S.他、J.Exp.Med.188:953〜960(1998)]、NK細胞のみを抗NKp44血清および抗NKp46血清で陽性染色し、対照細胞721.221、RPMI 8866、Jurkatおよびその他のものは染色しないままにした。この血清を用いて、全てのNK細胞(6系統および150を超えるクローン)を様々な程度に染色した。報告されたNKp44の発現パターンに合わせ[Cantoni C,C.他の同書(1999)]、活性化NK細胞の表面のみでNKp44の発現を検出した。さらに、細胞を抗NKp44および46血清で被覆して様々なNK系およびクローンと共にインキュベートした場合、リディレクトされたP815細胞溶解を引き起こすことができた。抗NKp44および46血清は、E:T比が高い(20:1よりも高い)感染していない1106mel細胞および293T細胞の溶解も含めたいくつかの非感染標的細胞の溶解を、部分的に阻止した。他のNKトリガー受容体に対する細胞リガンドの存在は[Bottino,C.他、Hum.Immunol.61:1〜6(2000)に概説されるように]、部分的な阻止を説明していると考えられた。
【0148】
ウイルス感染細胞に対するNKp46−Ig融合タンパク質およびNKp44−Ig融合タンパク質の結合の阻止
細胞(721.221および1106mel)を、SVの上澄み100μl(721.221の場合)に、またIV 1000u/ml(1106melの場合)に感染させた。一晩インキュベートした後、感染細胞を洗浄し、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、アッセイにかけて適切なIg融合タンパク質10μgで前述のように染色を行った[Mandelboim,O.他、(1999)の同書]。
【0149】
精製済みHAを使用したNKp44−Ig結合の阻止
様々なIg融合タンパク質10マイクログラムを、最終体積100μlのPBS−BSA−Azidで精製済みのHAタンパク質[Brand,C.M.およびSkehel,J.J. Nat.New Biol.238:145〜147(1972)]40μgと共に氷上で2時間インキュベートした。次いでこれらの混合物を、細胞と共に氷上で2時間インキュベートし、前に述べたものと同じ染色手段を使用して染色し、Ig融合タンパク質の存在について調べた[Mandelboim,O.,P.他の同書(1999)]。
【0150】
一時的なトランスフェクション
Fugeneトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)を使用して、293T細胞を、対照PCDNA3プラスミドで一時的にトランスフェクトし(293T/MOCK)、またはセンダイウイルスのHNをコードするcDNAで一時的にトランスフェクトした(293T/pca−svhn)。
【0151】
実施例1
NKp30、NKp44、NKp46、およびCD16リガンドの検出。
NK認識におけるNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16の役割を、NKP30、NKp44、NKp46、およびCD16の細胞外ドメインがヒトIgG1のFc部分と融合している融合タンパク質を生成することによって、調査した。ヒトIgG1 DNAのFcに融合しているCD99の細胞外ドメインを対照として使用した。これらの構造をCOS−7細胞に一時的にトランスフェクトし、分泌された融合タンパク質をプロテインGカラムで精製した。Ig融合タンパク質を、様々な標的細胞と共にインキュベートし、前述のように間接的な免疫染色によって結合について分析した[Mandelboim,O.他の同書(1999)]。一般に、試験を行った全てのIg融合タンパク質の中で、最も効率的な結合は、NKp44−Ig融合タンパク質の場合であることが観察された(表1)。対照のCD99−Ig融合タンパク質は、試験を行った標的細胞のいずれとも結合しなかった。先の報告は、NKp46が、CD16受容体ではなくNKp44活性化受容体と共に[Mandelboim,O.他の同書(1999)]、クラスI陰性721.221細胞の分解に関与することを示していた[Cantoni C,C.他の同書(1999)、Biassoni R,A.他、Eur J Immunol.29:1014〜1020(1999)、Pessino A,S.他、J.Exp.Med.188:953〜960(1998);Sivori S,D.他、Eur J Immunol.29:1656〜66(1999)]。
【0152】
実際に、細胞をNKp30−Ig、NKp44−Ig、またはNKp46−Igの各融合タンパク質と共にインキュベートした場合、721.221細胞の染色はほんのわずかしか観察されず、721.221細胞をCD16−Ig融合タンパク質と共にインキュベートした場合には染色が全く観察されなかった(表1)。EBVで形質転換した別のB細胞系、RPMI8866の場合にも同様の結果が観察された。これらの結果によれば、NKp30−Ig、NKp44−Ig、およびNKp46−Igの結合が低いこと、すなわちこれらのタンパク質に対するリガンドの発現が低いことを示すそのような結合は、それにもかかわらずこれらの細胞の溶解を引き起こすのに十分であり、あるいは、NKp44、NKp46、またはCD16とは異なるその他の溶解受容体に対する別の溶解リガンドの存在を示している。NKp30−Ig、NKp44−Ig、NKp46−Ig、またはCD16−Igと、ラージT抗原でトランスフェクトした293T腎臓細胞系、1106mel−メラノーマ細胞系、およびサルCOS−7細胞系との結合が観察された(表1)。実際に、これらの標的細胞の全ては、NK細胞で媒介される死滅に対して様々な程度で感受性がある[Mandelboim,O.P他の同書(1999)]。COS−7細胞上のNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16に対するリガンドの存在は、これらの受容体に対するリガンドがいくつかの霊長類の中で保たれていることを示している。LB33MELA1メラノーマ細胞系に対するNKp30およびNKp44−Ig融合タンパク質の染色はほんのわずかしか観察されず(表1)、細胞系は、NK細胞により死滅させることができないものである(データは記載せず)。最後に、NKp30−、NKp44−、NKp46−、またはCD16−Ig融合タンパク質の、マウスp815細胞または健康なドナーから得たPBLに対する結合はほんのわずかしか観察されず、または全く観察されず(表1)、したがって最も重要なこととして、溶解受容体に対するリガンドはヒトとマウスでは異なることを示しており、また2番めに重要なこととして、少なくともPBLから得た「正常」細胞はNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16に対する溶解リガンドを発現しないことを示している。
【0153】
【0154】
細胞は、実験手順で述べたように様々なIg融合タンパク質と共にインキュベートし、PE結合したヤギ抗ヒトFeで染色した。MFIは中央蛍光強度を示しており、MFI数は、最も近い整数に丸めた。結果は、2つの独立した実験の代表的なものを表す。
【0155】
実施例2
ウイルス感染細胞に対するNKp46−Ig融合タンパク質の結合
以前に公表されているように[Trinchieri他、Adv.in Immunol.47:187〜376(1989)]、NK細胞はウイルス感染細胞を効果的に溶解することができ、したがって、センダイウイルス(SV)(マウスパラミクソウイルス)による感染によってNKp46−Igの結合が増加したかどうかという問題について、次に試験を行った。特に著しいのは、NKp46−Igの結合による染色が10倍になったことが観察された点である(表2)。この効果はNKp46の場合に特有のものであるが、それは、SV感染によって、試験を行った他のNK受容体Ig融合タンパク質の結合が変化しないためである(CD16−Ig、KIR−1−Ig、またはNKAT−8−Ig データは記載せず)。
【0156】
【0157】
100μl/mlのSVを含有する上澄みと共に、721.221細胞(106/ml)を一晩インキュベートした。細胞(感染したもの、または感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC標識したヤギ抗マウスIgで、またはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度(Median Fluorescence Intensity)を示しており、MFI数は、最も近い整数に丸めた。SV感染した721.221細胞、および721.221細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色は、それぞれ4および2であった。結果は、5つの独立した実験の代表例を示す。別のB細胞系、RPMI 8866でも同様の結果が得られた。
【0158】
種々のウイルスによる感染
観察されたSV感染721.221細胞に対するNKp46−Ig融合タンパク質の結合がウイルス特異か細胞特異であるかを見出すため、種々のウイルスに感染したA9線維芽細胞を使用して同様の感染実験を行った。図1に示すように、感染していないA9細胞を、EMCV、MVM、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスに感染した同様の細胞と比較した場合、NKp46−Ig結合の著しい増大が観察された。
【0159】
実施例3
SV HN糖タンパク質に対するNKp46−Igの結合
SV感染721.221細胞上の推定のNKp46−リガンドを確認するため、SV感染721.221細胞でマウスを免疫化し、脾臓から得られたB細胞ハイブリドーマの上澄みをスクリーニングして、非感染細胞に対するウイルス感染細胞の染色の増大について調べた。試験を行ったハイブリドーマクローンの1つの上澄み(135.7)は、SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を効果的に阻止した(表2)。したがってmAb135.7は、SVまたは宿主細胞でコードしたタンパク質を認識することができる。
【0160】
免疫吸着剤としてSVを使用したELISAアッセイでは、mAb135.7がウイルス遺伝子生成を認識することを示した(データは記載せず)。
【0161】
125Iで細胞表面を標識したSV感染721.221細胞の界面活性剤溶解物から回収した135.7−反応性タンパク質のSDS−PAGE分析によれば、135.7は、報告されたHN糖タンパク質の移動度と同様に、見かけの分子量が70kDaのタンパク質に結合することが明らかになった。
【0162】
したがって、十分に特徴付けされた抗SV mAbも、SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を阻止するかどうかという問題について、次に試験を行った。実際に、表2に示すように、感染細胞を最初に抗HN mAb TC−1D6またはTC−9C1と共にインキュベートした場合にNKp46−Ig結合は阻止されたが、他の主なSV糖タンパク質、融合(F)タンパク質に特異的なmAb TC−9A1の場合には阻止されなかった。
【0163】
実施例4
HNでトランスフェクトした293T細胞溶解におけるHNのNKp46認識の役割
SV感染721.221細胞に対するNKp46−IgのHN依存結合にもかかわらず、SV感染に伴うNK媒介型溶解に対するこれらの細胞の感受性の増大の検出はうまくいかなかったが(データは記載せず)、これはおそらく、これらの細胞がすでに、NK媒介型の溶解の影響を非常に受けやすいためと考えられる。このため、NK溶解におけるHNのNKp46認識の役割に関する直接的な試験ができなかった。
【0164】
しかしこれは、HNをコードするプラスミドで一時的にトランスフェクトした293T細胞を使用することにより可能であった。トランスフェクトした48時間後、TC−1D6 mAb(図2A)または135.7(図示せず)を使用することによって、細胞表面のHN発現が確認された。
【0165】
図2Aに示すように、トランスフェクションによって、NKp46−Ig以外のIg融合タンパク質、KIR−1−Ig、NKAT−8−Ig、またはCD16−Igによる染色を高めることなくNKp46−Ig染色が2倍に増大したことが重要である。さらに、NK−GAL、健康なドナーのPBLから得られたNK系は、トランスフェクトしていない細胞またはmockでトランスフェクトした細胞よりも少なくとも4倍効率的に、HNでトランスフェクトした293T細胞を溶解した(図2B、C)。
【0166】
NKp46−Igに対するマウス抗血清と共にNK GALを事前にインキュベートすると、HNでトランスフェクトした293T細胞の死滅の増大が抑制されたが、対照血清と共に行ったインキュベーションではほとんど効果がなかった(図2B)。同じ実験によれば、3種のHNに特異的なmAbのそれぞれはNKで媒介される溶解を阻止できるが、CD99に特異的な対照mAbでは著しい効果がないことが明らかになった(図2C)。
【0167】
実施例5
NKp46は、NK細胞によるHA発現細胞の認識に必要である
NK認識の顕著な特徴の1つは、その抗原特異性が不十分であることである。NKp46は、NK媒介型の溶解において物理的かつ機能的にSV HNと相互に作用することを示したが、本発明者らは次に、インフルエンザウイルス(IV)HAとも相互に作用するかどうかについて試験を行った。1106mel細胞のIV感染(クラスI欠損細胞系)により、NKp46−Ig結合が4倍増大した(表3)。上述のように、結合が高まるという特定の性質は、他のIg融合タンパク質の一定の結合によって示される(データは記載せず)。
【0168】
NKp46−Ig結合の増大は、HAに特異的なmAB H28−E23およびH17−L2によってそれぞれ完全にまたは部分的に阻止されたことが重要である(表3)。これとは対照的に、HNに特異的なmAb TC−1D6、TC−9C1、または135.7は、結合に影響を与えなかった(データは記載せず)。
【0169】
次に、1106細胞をIVに感染させた。図3Aに示すように、この感染によってNK GAL媒介型の溶解が高まり、抗NKp46血清と共に細胞を事前にインキュベートすることによって死滅の増大が阻止されるが、対照の血清、またはCD99およびCD16にそれぞれ特異的なmAb 12E7および3G8との場合は阻止されない。
【0170】
IV感染した1106mel細胞を、mAb H28−E23と共にインキュベーションすることにより、溶解の増大が完全に抑制されたが、H17−L2には部分的な抑制効果があり、阻止実験の結果を反映している(図3B、表3)。
【0171】
【0172】
1106mel細胞(106/ml)を、1000u/mlのインフルエンザウイルスと共にO.N.インキュベートした。細胞(感染したもの、または感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC結合したヤギ抗マウスIgで、またはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示し、MFI数は最も近い整数に丸めた。IV感染した1106細胞と、1106細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色はそれぞれ7および6であった。結果は、8つの独立した実験の代表例である。
【0173】
NK GALから調製したクローンによるIV感染1106mel細胞の認識について、限定希釈によって試験を行った。試験を行った28のクローン全てについて、抗NKp46血清で陽性染色した。これらのうち21のクローンは、IV感染していない細胞よりもIV感染した細胞の認識が高まることを示しており(図3C)、21のクローン全てをHAに特異的なmAb H28−E23と共に事前にインキュベートすることによって、IVにより増大した溶解が完全に抑制された(データは記載せず)。NKクローンを抗NKp46血清と共に事前にインキュベートすることにより、これらのクローンのうち13のクローンのIV強化型の溶解が完全に抑制され(例えばクローン6、図3C)、一方、6個のクローンについては部分的に抑制された(例えばクローン15、図3C)。これら2つのグループに関し、抗NKp46血清で染色した平均MFIは、それぞれ28.9および32.8であった。IV感染細胞の溶解が増大したことを示す2つのクローンは、NKp46抗血清の影響を受けなかった(例えばクローン17、図3C)。2つのクローンのこのグループに対する抗NKp46染色に関する平均MFIは、17.5であった。
【0174】
最後に、試験を行ったクローンのうち7つのクローンに関しては、IVに関連する溶解の増大は観察されず(例えばクローン5、図3C)、このグループの抗NKp46染色に関するMFIは31.3であった。HNでトランスフェクトした293T細胞を用いて同じNKクローンを試験した場合、同様の結果が得られた(データは記載せず)。
【0175】
NKクローンは、より少ない量のNKp46受容体を発現する他のNK系からも生成された(例えば、NK GALにおけるMFIが41.4であるのに比べてNKp46染色のMFIが15.5のNK系)。このNK系から生成されたクローンの約3分の1で、IV感染した1106mel溶解の増大の抑制(部分的にまたは完全に)が観察され、溶解の程度はNKp46染色と相互に関連していた(データは記載せず)。
【0176】
これらの所見は、第1に、NK細胞の実質上のサブセットによるHA−およびHN−発現細胞の認識にNKp46が必要であり、第2に、NK細胞のその他の集団は、これらの細胞をNKp46とは独立の手法により溶解できることを示している。
【0177】
実施例6
NKp46とHAおよびHNとの相互作用におけるシアル酸の関与
SV HNとIV HAは共に、Galに結合した末端Nアセチルノイラミン酸残基(シアル酸)を認識し、NKp46に結合する一般的なメカニズムを示している。NKp46とHAとの相互作用におけるシアル酸の関与は、発見の数によって示される。第1に、NKp46−Igは、タンパク質の濃度が2μMという低い濃度でヒツジ赤血球のIV媒介型凝集を完全に阻止することができる。第2に、IVノイラミニダーゼの酵素活性を阻止するmAb(NA2−1C21)と共にIV感染細胞を事前にインキュベートすることによって、IV感染細胞に対するNKp46−Ig結合が著しく増大する(表3)。最後に、そして最も直接的なことは、細菌性のノイラミニダーゼでNKp46−Igを処理することによって、IVに感染していない細胞に対する結合を減少させることなくIV感染細胞に対する結合を減少させた(図4)。
【0178】
脱シアリル化が、受容体−リガンド対の負の電荷の反発力を減少させることによって相互作用をしばしば増大させる限り[Varki,A.他、FASEB J.11:248〜55(1997)]、これは強力に、NKp46とHAのシアル結合部位との直接的な相互作用をサポートする。
【0179】
これらの発見は、2つのタイプのリガンドを介してNKp46が標的細胞に結合することを示すと解釈することができ、その第1は、NKp46に関連するシアル酸とウイルス性シアル酸受容体との相互作用に基づき、第2は、明らかにされていない細胞リガンドとの、シアル酸とは無関係な相互作用に基づく。前者は、調査を行ったNK細胞によるIV感染細胞の死滅の増大の明らかな原因である。NKの活性化に対する第2の相互作用の関与は依然として証明されていないが、おそらく、標的細胞とその他の因子によって同様に発現したリガンドの性質により様々であると考えられる。NKp46とウイルスHAとの相互作用が、その他の細胞リガンドとの相互作用を引き起こすのに十分であるかどうか、またはその他の細胞リガンドとの相互作用も必要とするかどうかは、依然として将来の研究の重要な課題である。
【0180】
NKp46とは無関係な手法でIV感染細胞を認識するNKクローン(例えばNK GALクローン17、図3C)が存在することは、ウイルス感染細胞の認識に関与するその他の溶解受容体が存在することを示す。ウイルス感染に伴う溶解の増大は抗HA mAbによって完全に阻止されるので、これらの受容体もおそらくHAを認識する。これらの受容体の誘発はやはり活性化受容体とシアル酸との相互作用に基づく可能性がある。少なくとも7つのウイルス科(family)のメンバーが、ウイルスを宿主に入れるための受容体としてシアル酸を利用するとすれば、これは、ウイルスの実質上のサブセットのNK細胞認識に関する一般的な方策を提示している。
【0181】
実施例7
SV感染721.221細胞に対するNKp44−Ig結合のアップレギュレーションは、抗HN mAbによって阻止される。
本明細書で前に述べたように、ウイルスHAは、NKp46受容体のリガンドとして識別された。NKp44受容体もウイルスHAに結合できるかどうかを試験するため、721.221細胞をSVに感染させて、NKp44−Igの結合が増大するかどうか試験を行った。NKp44−Igによる染色が10倍増加したことが観察された(表4)。この作用は、NKp44−IgおよびNKp46に特有のものであるが(表2も参照)、それはSV感染によって、試験を行ったその他のNK受容体Ig融合タンパク質の結合が変化しなかったためである(NKp30−Ig、CD16−Ig、KIR−1−Ig、またはNKAT−8−Ig(データは記載せず))。NKp44−Ig結合は、SV−HN、TC−1D6、TC−9C1[Peterhans,E.他、Virology.128:366〜376(1983)]、または135.7に対して向けられたmAbによって部分的に阻止されたが、その他の主なSV糖タンパク質、融合(F)タンパク質に特異的なmAb TC−9A1[Peterhans,E.他の同書(1983)]の場合は阻止されなかった(表4)。これは、NKp44−IgがSVからのHNと相互に作用できることを示している。
【0182】
SV−HN cDNAでトランスフェクトした293T細胞に対するNKp44−Ig結合の上昇
センダイHNに対するNKp44−Igの直接的な結合をさらに実証するため、センダイHN cDNAをコードする発現プラスミド(pca−svhn、Dr.Allen Portnerから寄贈)で一時的に293T細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトした48時間後、抗HN mAbを使用したときに効率的なHN染色が観察された(TC−1D6、図5)。同様のレベルの発現が135.7 mAbで染色した場合にも観察されたが、対照mAbの場合は観察されなかった(インフルエンザの抗HA、データは記載せず)。重要なことに、pca−svhでトランスフェクトした293T細胞のNKp44−Ig染色が2倍に増大したことも観察され(図5)、増大した特異性はNKp44に対するリガンドであることが確認された。その他のIg融合タンパク質(KIR−1−Ig、NKAT−8−Ig、またはCD16)を使用した場合は、試験を行った全ての細胞の染色に何の変化も観察されなかった。
【0183】
【0184】
721.221細胞(106/ml)を、100μl/mlのセンダイウイルスを含有する上澄みと共に一晩インキュベートした。細胞(感染したものまたは感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC標識したヤギ抗マウスIgまたはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示し、MFI数は、最も近い整数に丸めた。センダイウイルスに感染した721.221細胞と721.221細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色は、それぞれ4および3であった。結果は、4つの独立した実験の代表例である。
【0185】
実施例8
721.221/Cw6細胞のSV感染によって、高レベルのNKp44タンパク質を発現するNKクローンで媒介される抑制が停止する
次に、SVに細胞が感染することによってNK媒介型の溶解が増大する可能性について調査した。SV感染した721.221細胞と感染していない細胞との間には、NK媒介型の死滅に何の変化も観察されなかった(データは記載せず)。この現象についていくつかの説明をすることができる。その1つに、NK細胞が721.221細胞を効率的に溶解するという考えがあり、したがって別の溶解リガンド(SV血球凝集素)を添加することによって死滅を増加させないことが可能である。したがって本発明者等は、次に、クラスI MHCタンパク質を発現する721.221細胞をSVに感染させた場合にNKクローンの死滅パターンに何らかの変化が観察されるかどうかについて試験を行った。NKクローンを様々なドナーから調製し、初めにスクリーニングをして、HLA−Cw3、−Cw4、−Cw6、または−Cw7クラスI MHCタンパク質でトランスフェクトした721.221細胞により媒介される溶解の阻害について調査した。これらのトランスフェクタントの生成についてはO.Mandelboimにより記述されている[Mandelboim,O.他、J.Exp.Med.184:913〜922(1996)]。次に、クラスI MHCタンパク質を発現する721.221細胞により阻害されることがわかったNKクローンについて、SVに感染した同じ標的細胞に対し、試験を行った。721.221細胞がSVに感染すると阻害が停止し、その結果、試験を行ったNKクローンの約75%だけ溶解した。これらのクローンの全てが、NKp44タンパク質とNKp46タンパク質の両方を高レベルで発現した(データは記載せず)。1つの代表的なクローンを図6に示す。NKクローン66は、Cw6を発現する721.221細胞(721.221/Cw6)によって阻害される。NKクローン66を抗KIR2DL1 mAb HP3E4と共にインキュベートしたときには阻害の停止が観察されたが、細胞を対照mAb 12E7と共にインキュベートしたときには観察されなかった。(図6A)。721.221/Cw6細胞をSVに感染させた場合、可逆阻害も観察された。721.221/Cw6細胞を汎抗クラスI mAb147と共にインキュベートしたときに阻害の阻止が観察されるので、阻害は、KIR2DL1受容体とHLA−Cw6との相互作用によって可能になった(6B)。感染細胞を抗HA mAb135.7と共にインキュベートしたときに阻害が回復するので、可逆阻害は、感染細胞上でのHAの発現に依存するものであった(図6B)。NKクローン66を、721.221/Cw4細胞と共に、あるいは721.221/Cw3または721.221/Cw7によって阻害されるKIR2DL2を発現するその他のNKクローンと共にインキュベートしたときに、同様の結果が得られた(データは記載せず)。NKp44タンパク質を低レベルで発現する試験済みのNKクローンの約25%では、標的細胞をSVに感染させた場合、阻害パターンに何の変化も見られなかった。このためNKp44とSVのHAとの相互作用はおそらく、クラスI MHCタンパク質を発現するSV感染標的細胞によって媒介される阻害を克服することが必要と考えられる。
【0186】
実施例9
精製したHAは、ウイルス感染細胞に対する融合タンパク質NKp46−Ig結合およびNKp44−Igの結合を阻止する
感染した721.221細胞(野生型およびトランスフェクタント)の死滅に対するNKp44とNKp46の両方の関与については、721.221細胞の溶解がNKp44およびNKp46に依存するので、抗NKp44およびNKp46血清を使用するこの系では直接試験をすることができない[Cantoni C,C.他の同書(1999)、Biassoni R,A.他の同書(1999)、Pessino A,S.他の同書(1998)、Sivori S,D.他の同書(1999)]。したがって、種々の細胞型を使用してNKp44−Ig融合タンパク質がその他のウイルスの血球凝集素に結合できるかどうかについて、次に試験を行った。1106mel細胞(CD16陽性ヒトNK細胞によってほんの適量だけ溶解する細胞系[Mandelboim,O.他の同書(1999)])をIVに感染させ、染色してNKp44−Ig染色が上昇するかどうか調査した。1106mel細胞がIVに感染すると、NKp44−Ig染色が増大(約4倍)することが観察された(表5)。IV感染した1106mel細胞に対するその他のIg融合タンパク質、すなわちNKp30、CD16−Ig、KIR−1−Ig、およびNKAT−8−Igを含めたタンパク質の結合の増大が観察されなかったので、このNKp44−Ig染色は特異的なものであった(データは記載せず)。NKp44−Ig結合の増大は、H28−E23 mAbおよびH17−L2 mAbによって完全に阻止されたことが重要である(表5)。どちらのmAbも共にインフルエンザウイルスのHAに対して向けられる。SVから得られたHNに対して向けられるmAb(TC−1D6、TC−9C1、および135.7)を添加しても、何の影響もなかった(データは記載せず)。
【0187】
精製したHAが、感染細胞に対するNKp44またはNKp46の結合を阻止できるかどうかを見極めるため、他の部分で述べたように、PBS−BSA−Azid中の最終体積100μlで、様々なIg融合タンパク質10マイクログラムを精製済みのHAタンパク質40μgと共に氷上で2時間インキュベートした[Brand,C.M他、Nat.New Biol.238:145〜147(1972)]。図7は、精製したHAタンパク質40μgと共に、またはそのタンパク質なしで、NKp44−Ig(A)またはNKp46−Ig(B)をインキュベートした状態を示す(精製したHAタンパク質40μg未満を使用した場合、NKp46−IgまたはNKp44−Igの結合は阻止されないことが明らかであった)。次に混合物を、IVに感染しまたは感染していない1106mel細胞と共に氷上で2時間インキュベートし、前述と同じ染色手順を使用して[Mandelboim,O.他の同書(1999)]、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色し、Ig融合タンパク質の存在について調査した。図7は、2回実施した実験のうち1つの代表例を示す。SV感染721.221細胞を使用した場合に同様の結果が得られた。これらの結果は、ウイルスタンパク質HAとナチュラルキラー細胞活性化受容体NKp44およびNKp46との直接的な相互作用を示す。
【0188】
さらに、ELISAアッセイにおけるNKp46−IgおよびNKp44−Igと血球凝集素タンパク質との直接的な相互作用(図示せず)。
【0189】
インフルエンザウイルスに感染した細胞に対するNKp44−Igの結合は、 NKp44のシアリル化に依存する
SV HNとIV HAの両方は、Galに結合した末端Nアセチルノイラミン酸残基(シアル酸)を認識し、NKp44に対する結合が、NKp46に対するHAの結合(実施例6で述べた)と同様にNKp44上に発現したシアル酸残基を介して生じる可能性があることを示している。実際にIV感染細胞を、IVノイラミニダーゼ(感染細胞の表面に発現したその他の主なIV糖タンパク質)の酵素活性を阻止するmAb(NA2−1C21)と共に事前にインキュベートすることにより、IV感染細胞に対するNKp44−Igの結合が著しく高まる(表5)。さらにNKp44−Igは、HAがシアル酸に結合しないはしか(measles)[Maisner,A.およびHerrler,G. Virology 210:479〜481(1995)]に感染した標的細胞を、染色しなかった(データは記載せず)。最後に、かつ最も直接的なことには、NKp44−Igを細菌性ノイラミニダーゼで処理すると、IV感染していない細胞に対する結合が減少することなくIV感染した細胞に対する結合が減少する(図8)。NKp44−Igの処理は、フロー・サイトメトリーで測定した場合、感染していない1106mel細胞の染色に影響を与えず(図8)、SDS/PAGE分析によって試験を行ったタンパク質の完全性にも変化を与えなかった(データは記載せず)。脱シアリル化では、受容体−リガンド対の負の電荷の反発力を減ずることによってしばしば相互作用が増大するので[Varki,A.、FASEB J.11:248〜55(1997)]、これはNKp44とHAのシアル結合部位との直接的な相互作用を強力にサポートする。
【0190】
【0191】
1106mel細胞(106/ml)を、1000u/mlのA/PR/8/34インフルエンザウイルスと共にO.N.インキュベートした。細胞(感染したもの、または感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC結合したヤギ抗マウスIgで、またはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示し、MFI数は最も近い整数に丸めた。インフルエンザに感染した1106mel細胞と、1106mel細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色はそれぞれ8および6であった。結果は、3つの独立した実験の代表例である。
【0192】
実施例10
IV感染した1106mel細胞の溶解の増大は、NKp44に対するポリクローナルmAbによって阻止される
上述の結果は、NKp44がIVとSVの両方の血球凝集素と結合できることを示していた。実施例5で実証されたように、1106mel細胞がIVに感染することによって、HAに対するmAbによって完全に阻止された1106mel細胞の溶解が増大した。しかし、抗NKp46血清がアッセイに含まれる場合、試験を行ったNKクローンの中で、いくつかの死滅表現型(完全阻害、部分阻害、または阻害なし)を観察することができた。1つの可能な説明とは、HAに結合することができる別の受容体が存在することである。したがってIVに感染した1106melの溶解について調べるため、NKクローンと、抗NKp44血清および抗NKp46血清の組合せを使用するアッセイにかけた。NKクローンは、限定希釈によってドナーMBから得られたPBLから調製した。試験を行った全てのクローン(合計で64)を、抗NKp44血清と抗NKp46血清の両方で陽性染色した。IVに感染した1106mel細胞(1106mel/Flu)の死滅の増大が、試験を行ったNKクローンの57%で観察された(図9)。1106mel/Flu溶解の増大の完全な阻害は、試験を行ったNKクローン、すなわち抗NKp46血清と共に、または抗NKp44およびNKp46血清の組合せと共に、事前にインキュベートしたNKクローンの26%で観察された(例えばクローン1、図9)。試験を行ったクローンの14%は、抗NKp44血清と抗NKp46血清の両方を独立に使用したときに部分阻害を示し、抗NKp44血清と抗NKp46血清の両方を組み合せたときに完全な阻害を示した(例えばクローン46、図9)。1106mel/Flu溶解の増大は、試験を行ったクローンの17%で阻止できなかった(例えばクローン8、図9)。最後に、このドナーから得られた試験を行ったクローンの43%で溶解の増大が観察されなかった(例えばクローン4、図9)。このような細胞のパーセンテージは、本明細書で前に示したように、それぞれのドナーによってかなり変わる可能性がある。1106mel/Flu細胞の増大の完全阻害は、抗NKp44血清のみがアッセイに含まれる場合、決して実現されなかった(データは記載せず)。1106melの効率的な溶解がより高いE:T比で観察された場合、抗CD16mAbと共に、または抗NKp44血清および抗NKp46血清と共に細胞をインキュベートすることによって、溶解の部分阻害が生じた(データは記載せず)。全ての抗体を組み合せた場合、1106mel溶解の効率的な阻害が観察された(データは記載せず)。
【0193】
このため、NKp46受容体と同様に、NKp44は、センダイウイルスとインフルエンザウイルスの両方の血球凝集素に結合することができ、この結合によって、感染細胞のNK細胞溶解が引き起こされる。ここで試験を行ったクローンの43%が、1106mel/Flu細胞の死滅の増大を示さない理由は、完全に理解されていない。1つの可能な説明は、感染が原因でアップレギュレートされまたはダウンレギュレートされ、またNKの死滅を調節するのに重要なその他のタンパク質に対する受容体を、これらのクローンが発現する可能性があることである。
【0194】
実施例11
ウイルスHAとの相互作用の原因としてのNKp46のドメイン2の識別
ウイルスHAとの相互作用におけるNKp46分子の種々のドメインの役割について、種々の欠失融合タンパク質を生成することによって調査をした。
【0195】
第1のNKp46細胞外ドメイン(a.a.#1〜120から−配列番号26により示される)ならびに第2の細胞外ドメイン(a.a.#121〜234−配列番号22により示される)をヒトIgG1のFc部分に融合させ、NKp46D1−IgおよびNKp46D2−Igをそれぞれ生成した。これらの構成をCOS−7細胞に一時的にトランスフェクトし、分泌した融合タンパク質をプロテインGカラムで精製した。ウイルスHAに対する結合がこれら2つのドメインの一方によって特に媒介されるかどうかを試験するため、両方の欠失融合タンパク質ならびに対照の完全融合タンパク質NKp46−IgおよびNKp44−Igに関し、ウイルス感染細胞に対する結合について試験を行った。したがって、721.221細胞をSVに感染させ、NKp46D1−IgまたはNKp46D2−Igの結合の増大について試験を行った。NKp46D2−Ig融合タンパク質による染色は約10倍増大したことが観察され(図10)、一方、721.221細胞のSV感染は、NKp46D1−Ig融合タンパク質のいかなる著しい結合も増大させなかった。この観察されたNKp46D2−Ig結合は、SV−HNに対して向けられた135.7mAbによってかなり阻止されたが、その他の主なSV糖タンパク質、融合(F)タンパク質に特異的なmAb TC−9A1[Peterhans,E.他の同書(1983)]の場合、または対照の12E7抗体によっては阻止されなかった(図10D)。これらの結果は、NKp46中のHA相互作用部分がドメイン2であることを示している。インフルエンザウイルスに感染した1106melで同様の実験を行ったが、NKp46のドメイン2は、観察されたウイルスHAとの相互作用を担うドメインであることが示された(図11)。このため、NKp46D1ではなくNKp46D2がウイルス感染細胞に結合することができ、さらに、この結合は抗HNmAbで阻止することができる。
【0196】
本明細書の実施例6および9で述べたように、NKp46およびNKp44のそれぞれに対するSV HNおよびIV HAの結合は、両方の受容体に発現するシアル酸残基を介して生じる。観察されたウイルスタンパク質に対するNKp46D2の結合もシアル残基によって媒介されるかどうかを見出すため、融合タンパク質を細菌のノイラミニダーゼで処理し、その後、感染細胞(SVに感染した721.221細胞およびIVに感染した1106細胞)と共にインキュベートした。図12に示すように、ノイラミニダーゼ(NA)を使用してシアル酸残基を除去すると、融合タンパク質の結合能力が著しく低下した。これらの結果は、IV感染した1106mel細胞またはSV感染した721.221細胞に対するNKp46D2−Igの結合がシアル酸に依存することを示している。
【0197】
実施例12
ヒトメラノーマ細胞での様々な溶解リガンド、特にNKp30の発現
メラノーマの患者を腫瘍浸潤リンパ球(TIL)で治療することによって、メラノーマの患者の40%にクラスI MHC消失変異体が生じることが、前に報告されている[Restifo,N.P.他、J.Natl.Cancer Inst.88:100〜108(1996)]。これは、腫瘍細胞中のβ2−ミクログロブリン発現のダウンレギュレーションに起因する。同じ腫瘍系は、NK細胞で媒介される死滅に対して様々な程度で影響を受けやすいことが、後に示された[Porgador,A.他、Proc Natl Acad Sci.94:13140〜13145(1997)]。さらに、これらのメラノーマ系の1つ、1106melは、試験を行ったCD16陰性NKクローンの多くによって非効率的に死滅することが示された[Mandelboim,O.他、Proc.Natl.Acad.Sci.96:5640〜5644(1999)]。
【0198】
クラスI MHC発現が不十分な様々なメラノーマ細胞(対照として使用するLB33melA1を除く)のNK認識におけるNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16の各受容体の役割を、本発明のNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16 Ig融合タンパク質を使用した実験を行うことによって、調査した。ヒトIgG1 DNAに融合したCD99の細胞外ドメインをコードするcDNAを、対照として使用した。Ig融合タンパク質を、様々なメラノーマ細胞と共にインキュベートし、前述のように[Mandelboim,O.の同書(1999)]間接的な免疫染色により結合について分析した。一般に、NKp30−IgおよびNKp44−Ig融合タンパク質の場合に最高のメラノーマ細胞の染色が観察された(表6)。LB33melA1細胞では全てのIg融合タンパク質の染色はほとんど観察されず、細胞系はNK細胞によって死滅させることが困難なものであった(データは記載せず)。NK細胞によって死滅させることができる全てのその他の細胞系を、Ig融合タンパク質で様々な程度に染色した(表6)。
【0199】
【0200】
【図面の簡単な説明】
【図1】
様々なウイルスに感染した後の、NKp46リガンド発現のアップレギュレーション
721.221細胞(106/ml)を、センダイウイルスを含有する上澄み100μl/mlと共に一晩インキュベートした。A9細胞(24時間前に継代した半集密的な培養びん)を、MVM(1.5×107単位/ml)、EMCV(EMCVを含有する上澄み250μl/ml)、アデノウイルス(5×106単位/ml)、またはワクシニア(ワクシニアを含有する上澄み4ml)のいずれかと共に3時間インキュベートした。A9細胞を異なるウイルスと共にインキュベートした後、ウイルスを含有する媒質を除去して、培地を添加した。感染から18〜24時間後、細胞(感染しまたは感染していないもの)を採取し、洗浄し、NKp46−Ig融合タンパク質(太線)または対照のCD99−Ig(普通線)で染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。パネル内の数はNKp46−Ig染色のMFIを表す。結果は、2回実施した実験の代表的なものを示す。略語:Couはカウントの略である。
【図2】
NKp46Igによって促進される、センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞の溶解
A:センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞に対するNKp46−Igの結合。293T細胞を一時的に、対照(cont)PCDNA3プラスミドでトランスフェクトし(293T/MOCK)、またはセンダイウイルスのHNをコードするcDNAでトランスフェクトした(293T/pca−svhn)。48時間後、細胞を、TC−1D6 mAbで、またはKIR−1、NKAT−8、CD16、およびNKp46 Ig融合タンパク質で染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。対照は、FITC結合抗マウス(抗=α)抗体(mAbなし)で、またはPE結合抗ヒトFc抗体(Ig融合タンパク質なし)で染色した同じ細胞であった。結果は、3回実施した実験の代表的なものを示す。
BおよびC:センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞の溶解促進は、抗NKp46および抗HNmAbによって阻止される。トランスフェクションの48時間後、293T細胞、293T/MOCK細胞、および293T/pca−svhn細胞を35S−Metで標識し、洗浄した。次いで標識した細胞を、示したエフェクターと標的の比(E:T)で、対照血清(cont ser)または抗NKp46血清(ser)と共に事前にインキュベートしたNK GALと共にインキュベートした(B)。あるいは、標識細胞を、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートし、洗浄し、次いでNK GALと共にインキュベートした(C)。全ての実験で、NK細胞を50%のヒト血清(ser)と共に氷上で1時間、事前にインキュベートし、次いで洗浄してFc受容体をブロックした。結果は、3回実施した実験の代表的なものを示す。略語:Prot(タンパク質)、特異的溶解(sp ly)、比(ra)、MO(mock)。
【図3】
NK GALおよび誘導されたクローンによる、IVに感染した1106mel細胞の溶解
A:NK細胞を、抗体なしで、または対照(cont)抗CD99mAbと共に(12E7)、抗CD16mAb(抗=α)と共に(3G8)、対照血清(cont ser)と共に、抗NKp46血清と共に、氷上で1時間インキュベートした。次いでNK細胞を洗浄し、次いで1106mel細胞と共に、またはIVに感染した1106mel細胞と共に、示したE:Tの比(=ra)でインキュベートした。
B:IVに感染した1106mel細胞を、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートし、次いでNK GALと共に、示したE:Tの比でインキュベートした。結果は、3回実施した実験の代表的なものである。
C:限定希釈によって、NK GALから28のNKクローンを誘導した。ポリクローナル抗体を含有する血清を用いたブロッキング実験を、図1に関する説明文で述べたように実施した。E:Tの比は5:1であった。図に示すパーセンテージは、現れる1つのNKクローンと同様に振る舞ったクローンの%である。結果は、2回実施した実験の代表的なものである。全ての実験で、NK細胞を、50%のヒト血清と共に氷上で1時間、事前にインキュベートし、次いで洗浄して、Fc受容体をブロックした。略語:sp lyは特異的溶解の略であり、cont(対照)、ser(血清)であり、clはクローンの略である。
【図4】
IVに感染し、また感染していない1106細胞に対するNKp46−Igの結合に、NA処理が及ぼす影響
NKp46−Igを、ビーズ状アガロース(N―5254、SIGMA、St.Louis、Missouri)に結合した0.01Uの不溶性ノイラミニダーゼと共に、またはPBS(mock処理したもの、MO−trea)と共に、ローラ上で1時間、17℃でインキュベートした。IVに感染し、または感染していない1106細胞(Ce)を洗浄し、NA処理し(trea)またはmock処理したNKp46−Igで染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。AおよびBのパネルは、8回実施した実験のうち代表的な2つを示す。NAの活性は、NA処理したフェツイン、高度にシアリル化したタンパク質のSDS−PAGE分析により確認した。
【図5】
センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞に対するNKp44−Igの結合
Fugeneトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)を使用して、293T細胞を一時的に対照PCDNA3プラスミドでトランスフェクトし(293T/MOCK)、またはSVのHNをコードするcDNAでトランスフェクトした(293T/pca−svh)。48時間後、細胞を、TC−1D6 mAbで、またはKIR−1、NKAT−8、CD16、およびNKp46 Ig融合タンパク質で染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。対照は、FITC結合抗マウス抗体(mAbなし)で、またはPE結合抗ヒトFc抗体(Ig融合タンパク質なし)で染色した同じ細胞であった。結果は、2回実施した実験の代表的なものを示す。略語:sp lyは特異的溶解の略であり、MO(MOCK)、prot(タンパク質)である。
【図6】
抑制が妨げられるクラス1 MHCタンパク質を発現する721.221のSV感染
自動MACS機器(Miltenyi Biotec Inc.)を使用して、様々なドナーからNKクローンを誘導した。NKp44タンパク質およびNKp46タンパク質の存在に関しては抗NKp44およびNKp46血清を使用してクローンを染色し、NK抑制受容体の存在に関してはHP3E4 mAbを使用してクローンを染色した。現れるNKクローンのE:Tの比は約3:1であった。結果は、2回実施した実験の代表的なものを示す。
A:初めにNKクローンを、指示されるmAbと共に1時間インキュベートし、次いで標識した標的細胞と共にインキュベートしたことを示す。
B:初めに、指示されるmAbと共に氷上で1時間インキュベートし、次いでNK細胞と共にインキュベートした、標識された標的細胞を示す。
略語:sp lyは特異的溶解の略である。
【図7】
IVに感染し、また感染していない1106mel細胞に対するNKp46−IgおよびNKp44−Igの結合に、HAブロッキングが及ぼす影響
NKp44−Ig(上部パネル)またはNKp46−Ig(下部パネル)を、40μgの精製されたHAタンパク質なしで、またはそのような40μgの精製されたHAタンパク質と共に、インキュベートした。次に混合物を、IVに感染しまたは感染していない1106mel細胞と共にインキュベートし、PE結合ヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。
【図8】
IVに感染し、また感染していない1106mel細胞に対するNKp44−Igの結合に、NA処理が及ぼす影響
MFIは中央蛍光強度を示す。NKp44−Igを、ビーズ状アガロース(N―5254、SIGMA、St.Louis、Missouri)に結合した0.01Uの不溶性ノイラミニダーゼと共に、またはPBS(対照として)と共に、ローラ上で1時間、17℃でインキュベートした。IVに感染し、または感染していない1106mel細胞を洗浄し、NA処理しまたはmock処理したNKp44−Igで染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。図は、2回実施した実験のうち代表的な1つを示す。NAの活性は、NA処理したフェツイン、高度にシアリル化したタンパク質のSDS−PAGE分析により確認した。略語:No pr(タンパク質なし)、NA trea(NA処理)
【図9】
NKクローンによるIV感染1106mel細胞の溶解
限定希釈によって、NK系統のMBから64のNKクローンを誘導した。ポリクローナル抗体を含有する血清を用いたブロッキング実験を、実験手順で述べたように実施した。E:Tの比は2:1であった。図に示すパーセンテージは、現れる1つのNKクローンと同様に振る舞ったクローンの%である。1106mel/Flu+Cは、対照血清とのインキュベーションを示す。結果は、2回実施した実験の代表的なものである。全ての実験で、NK細胞を、50%のヒト血清と共に氷上で1時間、事前にインキュベートし、次いで洗浄して、Fc受容体をブロックした。略語:sp ly(特異的溶解)、cl(クローン)、α(抗)。
【図10】
ドメイン2は、SVのHVウイルスタンパクとの相互作用を引き起こす
721.221細胞を、SV上澄み100μlに感染させた。一晩インキュベートした後、感染した細胞を洗浄し、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、アッセイにかけて前述のように適切なIg融合タンパク質10μgで染色し[Mandelboim,O.他、(1999)の同書]、MFIは中央蛍光強度を示す。
【図11】
ドメイン2は、IVのHAウイルスタンパクとの相互作用を引き起こす
1106mel細胞を、IV 1000u/mlに感染させた。一晩インキュベートした後、感染細胞を洗浄し、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、アッセイにかけて前述のように適切なIg融合タンパク質10μgで染色した[Mandelboim,O.他、(1999)の同書]。MFIは中央蛍光強度を示す。
【図12】
感染細胞および感染していない細胞に対するNKp46d2−Igの結合に、NA処理が及ぼす影響
指示される様々な融合タンパク質を、ビーズ状アガロース(N―5254、SIGMA、St.Louis、Missouri)に結合した0.01Uの不溶性ノイラミニダーゼと共に、またはPBS(mock処理したもの)と共に、ローラ上で1時間、17℃でインキュベートした。IVに感染し、または感染していない1106細胞、ならびにSVに感染し、または感染していない721.221細胞を洗浄し、NA処理し(trea)またはPBS処理した融合タンパク質で染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。NAの活性は、NA処理したフェツイン、高度にシアリル化したタンパク質のSDS−PAGE分析により確認した。
A:NKp30−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
B:NKp44−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
C:NKp46−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
D:NKp46D1−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
E:NKp46D2−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
(発明の分野)
本発明は、ウイルス感染または癌に伴う病状を治療するための、また癌を画像化し監視するための治療薬に関する。より詳細には、本発明は、治療薬または造影剤に結合された、NK細胞活性化タンパク質、NKp46およびNKp44とその機能的断片を含む複合剤を使用することによって、様々なウイルス感染を治療し検出するための組成物および方法を提供する。
【0002】
(発明の背景)
ナチュラルキラー(NK)細胞、ならびに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、それによって免疫応答により異種組織または感染組織が破壊される細胞のメカニズムに主要な成分である[Trinchieri他、Adv.in Immunol.47:187〜376(1989)]。クラスI MHC分子および適切な特異的ペプチドの存在下で活性化されるCTLとは対照的に、NK細胞の1つの明確な機能は、MHCクラスIタンパク質の発現が不十分な標的細胞を溶解することである。このようにNK細胞は、異種抗原を直接検出するためではなく、「自分自身」のために免疫監視を実行する[Ljunggren他、Immunol.Today 11:7〜10(1990)]。
【0003】
このため、一般に循環しているリンパ球の約10〜15%を占めるNK細胞は、抗原に対して非特異的な手法でかつ事前の免疫感作なしで、ウイルス感染細胞および多くの悪性細胞を含む標的細胞に結合してこれを死滅させる、[Herberman他、Science 214:24〜27(1981)]。
【0004】
ヒトNK細胞抑制受容体によるHLA分子上の多形性決定基の認識は、3タイプのクラスI MHC−結合受容体によって媒介されるが、このクラスI MHC−結合受容体は、NKIRタンパク質[Colonna他、Science 268:405〜408(1995);Wagtmann他、Immunity 2:439〜449(1995);D’Andre他、J.Immunol 155:2306〜2310(1995)]とILT−2タンパク質[Colonna他、J.Exp.Med.186:1809〜1818(1997)]の両方を含み、そのリガンドが様々なHLA−A、−B、および−Cの各タンパク質であるIgスーパーファミリーの抑制受容体であり、さらにこのクラスI MHC−結合受容体は、HLA−Eタンパク質に結合すると抑制シグナルを送出するムチン様CD94/NKG2複合体である[Borrego他、J.Exp.Med.187:813〜818(1998);Brnud他、Nature、391:795〜799(1998);Lee他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:5199〜5204(1998)]。この様々なクラスI MHCタンパク質に特異的な受容体は、これらの分子が、NK機能を調節する際に重要であることを示す。
【0005】
しかし、標的細胞に対してNK細胞毒性を引き起こすのに関係する溶解受容体については、ほとんどわかっていない。最近、溶解受容体として4つの候補、すなわちNKp30、NKp44[Cantoni,C.他、J.Exp.Med.189:787〜796(1999)]、NKp46[Pessino他、J.Exp.Med.188:953〜960(1998)]、およびCD16[Mandelboim他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.96:5640〜5644(1999)]が同定された。NKp46受容体は、活性化されてもまたは活性化されていなくても全てのNK細胞上に発現するので、標的細胞の死滅に関与する主要な溶解受容体であることが認められている[Pessino他、(1998)の同書]。本発明は、NKp44およびNKp46に対する「溶解リガンド」の同定および特徴付けに一部基づいている。NKp44を除き、これら受容体の全ては活性化NK細胞および非活性化NK細胞の両方の表面に発現し、全てがCD3ζ/FcεRIγとの会合を介して活性化シグナルを伝達する[Bottino,C.他、Hum.Immunol.61:1〜6(2000)]。これとは対照的に、NKp44受容体は、活性化NK細胞の表面のみに発現し、その活性化シグナルを、DAP12との会合を介して送出する[Lanier L.L.他、Nature.391:703〜707(1998)]。これらの受容体によって認識される溶解リガンドは、知られていない。
【0006】
本発明者等の発見によって、可溶性NKp44−Ig融合タンパク質および可溶性NKp46−Ig融合タンパク質が、インフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)とパラインフルエンザウイルスの血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)に結合し、これらのウイルスタンパク質に対するNKp44およびNKp46の結合が、対応する糖タンパク質を発現する細胞の溶解に必要であることが示される。この結合は、ウイルス糖タンパク質の既知のシアル結合能力に見合ったNKp44オリゴ糖およびNKp46オリゴ糖のシアリル化を必要とする。これらの発見によって、NKp44−発現細胞およびNKp46−発現細胞が、インフルエンザウイルスおよびパラインフルエンザウイルスに感染した標的細胞を、標的細胞クラスI分子発現を大きく減少させることなくどのように認識できるかが説明される。シアル酸は、いくつかのその他のウイルスに関する受容体として利用されるので、ウイルス病原体のかなりのサブセットのNK認識に関する一般的な方策を提示することができる。
【0007】
(発明の概要)
第1の態様では、本発明は、活性物質を標的細胞に向けることが可能なターゲティング複合体に関する。この複合体は、少なくともNKp46、NKp30、NKp44、またはこれらの機能的断片を含む標的認識セグメントと、細胞傷害性部分、画像形成部分、またはIg断片でよい活性物質を含む活性セグメントを含む。
【0008】
標的認識セグメントはNKp46から得られ、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、ドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。別の特に好ましい実施形態では、このセグメントはNKp46分子のドメイン2を含む。あるいは、標的認識セグメントはNKp44から得られ、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、ドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。別の特に好ましい実施形態では、このセグメントはNKp44分子のドメイン2を含む。
【0009】
特に好ましい実施形態では、本発明の複合体は、Ig断片を活性セグメントとして含む融合タンパク質である。このIg断片は、Ig分子のFc部分であることが好ましい。
【0010】
あるいは、本発明の複合体は、細胞傷害性部分を活性セグメントとして含む結合体である。この細胞傷害性部分は、標的細胞を死滅させることができ、かつ/または標的細胞の増殖または細胞分裂を抑制することが可能な、細胞毒または抗細胞物質でよい。
【0011】
本発明の好ましい結合体は、細胞毒または抗細胞物質として、合成毒素、あるいは植物、真菌、または細菌から得られる毒素を含むことができる。この毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分のいずれか1つから選択できることがより好ましい。
【0012】
さらに別の代替の実施形態では、本発明の複合体は、活性セグメントが画像形成部分である結合体でよい。画像形成部分は、常磁性標識や放射性標識、蛍光原標識など、任意の検出可能な標識でよい。
【0013】
特定の実施形態では、本発明の複合体は、固形腫瘍ならびに非固形腫瘍から得られた細胞、特に悪性腫瘍を特異的に標的とすることができる。
【0014】
あるいは、本発明の複合体は、欠損細胞または病的な細胞を標的とする。そのような標的細胞は、病原性ウイルス感染細胞でよい。より具体的には、病原性ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バー(Epstein−Barr)ウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスを含むがこれらに限定することのない様々なウイルスのいずれかでよい。
【0015】
標的細胞がウイルス感染細胞である場合、本発明の複合体は、前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することが可能な標的認識セグメントを有することが好ましく、この結合は、シアル酸によって媒介されるものである。
【0016】
本発明の第2の態様は、NKp46−Ig融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターに関する。このDNAは、NKp46またはその機能的断片をコードするセグメントを含み、NKp46断片は、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。この発現ベクターは、Ig分子のFc部分をコードするDNA配列を含んだ第2のセグメントをさらに含む。別の好ましい実施形態では、第1のセグメントは、ドメイン2だけの核酸配列を含めばよい。
【0017】
本発明の別の実施形態では、本発明は、NKp44−Ig融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターに関する。このDNAは、NKp44またはその機能的断片をコードするセグメントを含み、NKp44断片は、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましく、ドメイン1とドメイン2の両方を含むことがより好ましい。別の好ましい実施形態では、第1のセグメントがドメイン2だけの核酸配列を含めばよい。本発明の発現ベクターに含まれるDNAの第2のセグメントは、Ig分子のFc部分をコードするDNA配列を含む。
【0018】
また本発明は、本発明のDNAまたは発現ベクターで形質転換した宿主細胞にも関する。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態は、NKp46−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号6と配列番号14のいずれか1つによって実質上示されるようなアミノ酸配列を含み、配列番号3と配列番号12のいずれか1つによって実質上示されるような核酸配列によってコードされる。
【0020】
さらに別の特に好ましい実施形態では、本発明は、NKp44−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号10よって実質上示されるようなアミノ酸配列を含み、配列番号8によって実質上示されるような核酸配列によってコードされる。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明の融合タンパク質NKp46−IgまたはNKp44−Igを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。
【0022】
さらに、本発明は、NK細胞活性化受容体NKp46またはNKp44のリガンドであるタンパク質のエピトープを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。特に好ましい抗体は、135.7と指定された抗体である。本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でよい。さらに、本発明の抗体は、検出可能な部分に結合することができる。
【0023】
他の態様では、本発明は、病的な状態を治療するための組成物に関する。本発明の組成物は、標的認識セグメントおよび活性セグメントを含む複合体を活性成分として含む。標的認識セグメントは、前記病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能である。この標的認識セグメントは、少なくともNKp46、NKp30、NKp44、またはそれらの生物学的に機能的な断片を含む。複合体の活性セグメントは、細胞傷害性物質部分とIg断片から選択することができる。
【0024】
一実施形態では、本発明の組成物は、例えばメラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの悪性疾患を治療することを目的とする。
【0025】
あるいは、本発明の組成物は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、ECMV、MVM、およびヘルペスウイルスのいずれか1つによって引き起こされたウイルス感染を治療することを目的とする。
【0026】
本発明の複合体および組成物に含まれるNKp46、NKp44、またはこれらの断片は、標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することが可能である。標的細胞がウイルス感染細胞である場合、その結合はシアル酸を介する。本発明の複合体はフリーウイルスに結合することができ、その結合もやはりシアル酸を介して行われる。
【0027】
本発明の複合体および組成物中の標的認識セグメントは、好ましくはNKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含んだNKp46断片であって、好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含んだNKp46断片を含む。別の好ましい実施形態では、断片はNKp46のドメイン2のみを含む。あるいは、本発明の複合体および組成物中の標的認識セグメントは、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含んだNKp44断片であって、好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含んだNKp44断片を含む。別の好ましい実施形態では、断片はNKp44のドメイン2のみを含む。
【0028】
本発明の複合体または組成物の活性セグメントはIg断片でよく、好ましくはIg分子のFc部分である。あるいは、活性断片は、標的細胞を死滅させかつ/または標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することが可能な細胞毒や抗細胞物質などの細胞傷害性部分でよい。
【0029】
細胞毒または抗細胞薬は、合成物質、あるいは植物由来、真菌または細菌由来の毒素でよい。
【0030】
より具体的には、毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択することができる。
【0031】
本発明の代替の態様は、サンプル中に病的な細胞または欠損細胞が存在するかどうかを検出するための診断用組成物に関する。この診断用組成物は、病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能な標的認識セグメントと、検出可能な部分を含んだ複合体を含む。認識セグメントは、NKp46、NKp44、NKp30、またはそれらの生物学的に機能的な断片を含む。検出可能な画像形成部分は、常磁性物質、放射性物質、または蛍光原物質でよい。
【0032】
本発明の別の態様は、対象の病的な状態を治療する方法に関する。この方法は、病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能な第1の標的認識セグメントと第2の治療活性セグメントを有する複合体を含んだ医薬品として有効な量の治療薬を、対象に投与するステップを含む。標的認識セグメントは、NKp46、NKp30、NKp44、またはそれらの生物学的に機能的な断片の少なくとも1つを含み、治療活性セグメントは、細胞傷害性部分またはIg断片でよい。治療される病的な状態は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、およびヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス感染、またはメラノーマや癌腫、リンパ腫、肉腫などの悪性疾患でよい。
【0033】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、標的認識セグメントに含まれるNKp46またはNKp44が前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することができる複合体を使用する。標的細胞がウイルスに感染した細胞の場合、この結合は、シアル酸によって媒介される。より具体的には、NKp46断片は、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含み、より好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含む。別の好ましい実施形態では、この断片はNKp46分子のドメイン2のみを含む。あるいは、NKp44断片は、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含み、より好ましくはドメイン1とドメイン2の両方を含む。別の好ましい実施形態では、この断片はNKp44分子のドメイン2のみを含む。
【0034】
代替の一実施形態では、本発明の方法は、活性セグメントとしてIg断片を含有する複合体を使用する。このIg断片は、特に、Ig分子のFc部分である。
【0035】
別の代替の実施形態では、本発明の方法は、活性セグメントとして細胞傷害性部分を含む。この細胞傷害性部分は、標的細胞を死滅させ、かつ/または標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することができる、細胞毒または抗細胞物質から選択することができる。より具体的には、細胞毒または抗細胞物質は、合成毒、あるいは植物、真菌、または細菌由来の毒素でよい。
【0036】
この毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択することができる。
【0037】
本発明の代替の態様は、病状、特に腫瘍を診断し画像化する方法に関する。この方法は、対象の血流に造影剤を導入するステップと、悪性細胞上に発現したNKp46またはNKp44のリガンドと造影剤との結合を検出して定量するステップを含む。造影剤は、悪性細胞を特異的に認識してそこに結合することが可能な第1の標的認識セグメントを有する複合体を含む。認識セグメントは、NKp46、NKp30、NKp44、またはこれらの生物学的に機能的な断片の少なくとも1つを含む。複合体は、画像形成部分である第2の活性セグメントも含み、これは常磁性物質、放射性物質、または蛍光原物質でよい。
【0038】
(発明の詳細な説明)
分子生物学の技術に関するいくつかの方法は、当業者に周知であるので本明細書では詳述していない。そのような方法には、特定部位の突然変異誘発、PCRクローニング、cDNAの発現、組換えタンパク質またはペプチドの分析、細菌細胞および酵母菌の形質転換、哺乳動物細胞のトランスフェクションなどが含まれる。そのような方法について記述している教科書は、例えば、Sambrook他のMolecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory;ISBN:0879693096、1989、F.M.AusubelによるCurrent Protocols in Molecular Biology、ISBN:047150338X、John Wiley&Sons,Inc.1988、およびF.M.Ausubel他(編)によるShort Protocols in Molecular Biology:第3版、John Wiley&Sons;ISBN:0471137812、1995である。これらの出版物の全体を参照により本明細書に組み込む。さらに、いくつかの免疫学的技法は当業者に周知であるので、どの場合にも本明細書では詳細に述べていない。例えば、Current Protocols in Immunology、Coligan他(編)、John Wiley&Sons.Inc.、New York、NYを参照されたい。
【0039】
本発明は、NK細胞活性化受容体NKp46、NKp44、およびNKp30により、腫瘍またはウイルス感染細胞上に発現した種々のリガンドの認識に基づいて腫瘍や病原性ウイルスなどの種々の疾患を治療しかつ/または診断(画像化)する新規な手法を提供する。
【0040】
診断に関しては、本発明の方法は、検出可能な画像形成部分を含む本発明の複合体を用い、例えば核磁気共鳴映像法やX線映像法、コンピュータ・エミッション断層撮影法などを介して腫瘍の画像を提供することが可能になる。
【0041】
治療に関しては、本発明の複合体は、所望の標的細胞の増殖または細胞分裂を抑制することによって、そのような細胞に細胞傷害性の作用または別のメカニズムによる抗細胞性の作用を及ぼすよう設計される。
【0042】
このため第1の態様では、本発明は、標的細胞の表面に発現するリガンド分子を特異的に認識し、活性物質を標的細胞に向けることができる、ターゲティング複合体に関する。この複合体は、
a.NKp46、NKp30、およびNKp44の各タンパク質、またはこれらの機能的断片の少なくとも1つを含む標的認識セグメントと、
b.細胞傷害性部分、画像形成部分、またはIg断片部分でよい活性物質を含む活性セグメントを含む。
【0043】
特に好ましい実施形態では、標的認識セグメントは、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むNKp46断片である。標的認識セグメントは、ドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号4により示されるアミノ酸配列またはそのアイソフォームのアミノ酸配列であって配列番号13により示されるものを有することが好ましい。別の好ましい実施形態では、標的認識セグメントは配列番号22および23で示されるように、NKp46分子のドメイン2だけを含めばよい。
【0044】
あるいは、標的認識セグメントは、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むNKp44断片である。標的認識セグメントは、ドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号9により示されるアミノ酸配列を有することが好ましい。別の好ましい実施形態では、標的認識セグメントは配列番号24で示されるようにNKp44分子のドメイン2だけを含めばよい。あるいは標的認識セグメントは、配列番号17により示されるNK活性化分子NKp30を含むことができる。
【0045】
本発明の認識セグメントは、NKp46、NKp30、およびNKp44のいずれかのドメイン1および2の複数単位を含み、あるいはドメイン2のみを含めばよいことを理解すべきである。そのような複合単位セグメントを生成することにより、標的分子に対する認識セグメントの活性を増大させることができる。
【0046】
「機能的断片」とは、分子の「断片」、「変異体」、「類似体」、または「誘導体」を意味する。本発明の核酸配列またはアミノ酸配列のいずれかのような分子の「断片」は、分子の任意のヌクレオチドまたはアミノ酸のサブセットを指すものである。このような分子の「変異体」は、その分子全体または断片に非常に類似する自然発生的な分子を指すものである。分子の「類似体」は、同じ種または異なる種から得られた同種の分子である。類似体または誘導体のアミノ酸配列は、少なくとも1つの残基が欠失し、挿入され、または置換される場合、本発明で使用される特定の分子、例えばNKp46、NKp30、またはNKp44の各分子と異なるものでよい。
【0047】
「機能的」とは、同じ生物学的機能、例えばリガンドを認識しかつ/またはそこに結合する能力と全く同じ能力を有することを意味する。
【0048】
別の特に好ましい実施形態は複合体に関し、本発明の複合体は、活性セグメントとしてIg断片を含む融合タンパク質である。このIg断片は、Ig分子のFc部分であることが好ましく、配列番号5のアミノ酸配列によってコードされる。
【0049】
補体系は、体液性免疫の主要なエフェクター・メカニズムの1つである。これは主として、第1の古典的経路成分C1が抗原複合抗体分子のFc部分に結合することによって活性化される。したがって、NKp44、NKp30、またはNKp46とIg分子のFc部分を含む融合タンパク質は、in vivoで補体系の標的として働くことができる。
【0050】
あるいは、本発明の複合体は、活性セグメントとして細胞傷害性部分を含む結合体である。この細胞傷害性部分は、細胞毒または任意の抗細胞物質であって前記標的細胞を死滅させ、かつ/または前記標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することが可能なものでよい。
【0051】
一般に治療を目的とした場合、本発明は、本発明の複合体のターゲティング・セグメントに結合することができ、かつ活性形態で標的細胞に送達させることができる任意の薬物の使用に関する。例示的な抗細胞物質には、化学療法薬、放射性同位元素、ならびに細胞毒が含まれる。化学療法薬には、ステロイドなどのホルモン、シトシンアラビノシドやフルオロウラシル、メトトレキサートまたはアミノプテリンなどの代謝拮抗物質;アントラサイクリン;マイトマイシンC;ビンカアルカロイド;デメコルチン;エトポシド;ミトラマイシン;またはクロラムブシルやマルファランなどの抗腫瘍アルキル化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
その他の実施形態は、細菌内毒素などの物質、またはそのような細菌内毒素のリピドA部分を含むことができる。どのような場合でも、このような物質は、既知の結合技法を使用して必要に応じて標的細胞に対して狙いを定め、インターナリゼーションを行い、放出し、または提示することが可能な手法で[例えば、Ghose他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、3:256〜359(1987)]、本発明の複合体のターゲティング・セグメント(好ましくはNKp46、NKp44、およびNKp30のいずれか1つのドメイン1および2、またはドメイン1とドメイン2の少なくとも1つ、好ましくはドメイン2)にうまく結合できることが示される。
【0053】
ある好ましい実施形態では、治療に利用される物質は一般に合成毒、または植物由来、真菌由来、または細菌由来の毒素を含むことになり、ほんの一例を挙げれば、そのような毒素は、例えばA毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分である。本明細書に関連して使用される最も好ましい毒素部分は、ジフテリア毒素である。
【0054】
本発明を治療に利用するそのほとんどは、毒素部分を腫瘍または病原性ウイルス感染細胞に向けようとするものである。これは、他の可能性ある物質に比べ、細胞を死滅させる作用を引き起こす毒素の能力が非常に大きいことに起因する。それにもかかわらず、ある状況下では、毒素を抗腫瘍薬やその他のサイトカイン、代謝拮抗物質、アルキル化剤、ホルモンなどの化学療法薬に代えることが可能な標的とされた毒素複合体による効率的な中毒に見合った経路を介してNKp46、NKp44、またはNKp30の標的リガンドを内在させることができない。
【0055】
本願で使用するように、本発明の複合体の活性について述べるとき(特に、活性セグメントとして細胞傷害性部分が選択されるとき)に使用される「細胞傷害性」という用語と「細胞溶解性」という用語は同義とする。一般に、細胞傷害活性は、様々な生物学的、生化学的、または生物理学的メカニズムのいずれかによって標的細胞を死滅させることに関する。細胞溶解は、より具体的にはエフェクターが標的細胞の原形質膜を溶解し、それによってその物理的な完全性が破壊される活性を指す。その結果、標的細胞が死滅する。
【0056】
さらに別の代替の実施形態では、本発明の複合体は、画像形成部分を活性セグメントとして含む結合体でよい。さらに、治療および/または診断に利用する放射性同位元素の場合、ヨウ素131、ヨウ素123、テクネシウム99m、インジウム111、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、銅67、イットリウム90、ヨウ素125、またはアスタチン211を挙げることができる。診断し監視するために腫瘍の画像を得ることが目的である場合、常磁性物質や放射性物質、蛍光原物質など、画像形成時に検出可能な物質を使用することが望ましい。多くの物質が画像形成に有用であることが、当技術分野で知られている。常磁性イオンは、例えばクロムやマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ネオジム、サマリウム、ホルミウム、エルビウムなどのイオンでよい。x線映像法などの場合に有用なイオンには、ランタン、金、鉛、およびビスマスが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の画像形成複合体は、蛍光化合物などの検出可能な部分に結合することができる。蛍光標識した複合体を適正な波長の光に曝すと、その存在を蛍光によって検出することができる。最も一般的に使用される蛍光標識化合物には、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンがある。
【0058】
複合体は、152Eやその他のランタニド系列など、蛍光発光金属を使用して検出可能に標識することもできる。これらの金属は、そのような金属キレート基をジエチレントリアミン五酢酸(ETPA)として使用して、ターゲティング・セグメントに結合することができる。
【0059】
複合体は、化学発光化合物に結合することによって、検出可能に標識することもできる。次いで化学反応の過程で生じるルミネセンスの存在を検出することによって、化学発光標識されたターゲティング・セグメントが存在するかどうかを決定する。特に有用な化学発光標識化合物は、ルミノール、イソルミノール、セロマチックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルがある。
【0060】
同様に、生物発光化合物を、本発明の複合体中の標識として使用することができる。生物発光は、生体系に見られる化学発光の1つのタイプであり、触媒タンパク質によって化学発光反応の効率が高まるものである。生物発光タンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出することによって決定される。標識を行うのに重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンである。
【0061】
本発明の複合体のターゲティング・セグメントを活性セグメント(細胞傷害性部分または画像形成部分)に結合させることができるが、これは脂質の主鎖または炭水化物の主鎖のいずれかにそれらのセグメントを直接的または間接的に結合する(conjugatingまたはcoupling)ことによってなされることを理解すべきである。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の複合体を病的な細胞に向けることができる。
【0063】
本発明を記述するのに使用されるように、「標的細胞」は、本発明の複合体(活性セグメントが治療物質、例えば細胞傷害性部分またはIgを含む)の細胞傷害活性によって死滅する細胞であり、または本発明の複合体(活性セグメントが検出可能な画像形成部分を含む)によって検出される細胞である。標的細胞は、NKp46、NKp44、およびNKp30の各分子のいずれか1つに対するリガンドを発現し、特に、悪性の細胞、または別の方法で固形腫瘍から、ならびに非固形腫瘍から得られた細胞が含まれる。
【0064】
本発明を記述するために本明細書で使用されるように、「癌」、「腫瘍」、および「悪性腫瘍」は全て同等に、組織または器官の過形成に関する。組織がリンパ系または免疫系の一部である場合、悪性細胞は循環細胞の非固形腫瘍を含んでよい。その他の組織または器官の悪性腫瘍は、固形腫瘍をもたらす可能性がある。一般に、本発明の複合体、ならびに本発明の組成物および方法は、非固形腫瘍および固形腫瘍の治療に使用することができ、また固形腫瘍を監視し画像化するために使用することができる(選択された活性セグメントは画像形成部分である)。
【0065】
あるいは、本発明の複合体は、HIVやEBV、CMV、ワクシニア、MVM、ECMV、ヘルペス、インフルエンザウイルスなどの病原性ウイルスに感染した細胞を対象とすることができる。
【0066】
より具体的には、病原性ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスが含まれるがこれらに限定されない様々なウイルスのいずれか1つでよい。
【0067】
本発明を記述するのに使用されるように、「病原性ウイルス」は、宿主に病気を引き起こすウイルスである。病原性ウイルスは宿主動物の細胞に感染し、そのような感染の結果、宿主の健康が衰える。本発明により考えられる病原性ウイルスには、HIV、EBV、CMV、ワクシニア、ヘルペス、MVM、ECMV、およびインフルエンザが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
前記標的細胞が病原性ウイルスに感染した細胞である特に好ましい実施形態では、本発明の複合体は、前記ウイルスに感染した標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することが可能な標的認識セグメントを有し、この結合はシアル酸によって媒介される。
【0069】
あるいは、本発明の複合体はフリーウイルスにも結合することができる。この結合もやはりシアル酸によって媒介される。
【0070】
実施例6および9に示すように、NKp46分子およびNKp44分子とそれらのリガンド(HAまたはHN)とのそれぞれの相互作用は、シアル酸によって媒介された。さらに、シアル酸は相互作用に必要であるが十分ではないことが示された。
【0071】
いくつかの哺乳動物のシアル酸受容体が明らかにされているが[Varki,A.他、FASEB J.11:248〜55(1997)]、それらがNKp46またはNKp44との結合になぜ十分ではないのかという疑問が提起されている。細胞シアル酸受容体は、利用された標的細胞上に発現することができるが、その受容体は、ふんだんに発現するウイルスのHAのように機能するほど十分な量で発現することができない。使用に適した環境になるまで細胞レクチンを隔離し、または別の方法で不活性化することをも可能である。
【0072】
実施例6および9は、NKp46およびNKp44に対するHAの結合の分析について述べている。シアル酸に対するHAの解離定数はmM範囲内にあってモノマー相互作用をもたらすには低すぎるものであり、その結果、フロー・サイトメトリーによって検出されるNKp46−Igの結合が安定になり(解離定数は0.1μM未満であることが必要である)またはNKp46−Igによってウイルス性血球凝集反応を阻止することができるようになる。これは、HAとNKp46との多量体による相互作用、またはシアル酸結合によって接触し始めた後にNKp46がHAとより緊密に相互に作用することを示している。前者の場合でさえ、末端シアル残基がN結合型オリゴ糖上に遍在するので、NKp46はこれを他の細胞糖タンパク質と区別する特殊な性質を必要とすると考えられる。1つの可能性は、シアル酸と単一のHA複合体との多価相互作用が可能になって、三量体として3つのシアル酸結合部位を持つような方法で、NKp46(単一のN結合型オリゴ糖を有すると考えられる)を多量体にすることである。組換えNKp46−IgおよびNKp44−Igは2価の分子であることが予想されるが、細胞NKp46または細胞NKp44のオリゴマー状態は知られていない。
【0073】
第2の態様では、本発明は、NKp46−Ig融合タンパク質をコードする核酸配列を含んだ発現ベクターに関する。この核酸は、
a.標的認識セグメントをコードするDNA配列であって、そのセグメントがNKp46またはその機能的断片を含むもの。このNKp46分子断片は、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましい。標的認識セグメントは、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号1により示される核酸配列によって、または配列番号11により示されるNKp46アイソフォームによってコードされることが最も好ましく、あるいは、配列番号19および配列番号20のいずれか1つによって示されるようにドメイン2だけを含み、
b.Ig分子のFc部分である活性セグメントをコードするDNA配列であって、前記DNAが配列番号2により示される核酸配列を有するもの
を含む。
【0074】
代替の実施形態では、本発明の発現ベクターはNKp44−Ig融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。この核酸配列は、
a.標的認識セグメントをコードするDNA配列であって、そのセグメントがNKp44またはその機能的断片を含むもの。このNKp44分子断片は、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも1つを含むことが好ましい。標的セグメントは、ドメイン1とドメイン2の両方を含み、配列番号7により示される核酸配列によってコードされることが最も好ましく、あるいは、配列番号21によって示されるようにドメイン2だけを含み、
b.Ig分子のFc部分である活性セグメントをコードするDNA配列であって、前記DNAが配列番号2により示される核酸配列を有するもの
を含む。
【0075】
NKp30−Ig融合タンパク質をコードする発現ベクターは本発明の範囲内である。そのような発現ベクターは、NKp30のドメイン1および2の核酸配列を含み、配列番号15によって示される核酸配列を有する。
【0076】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)などのポリヌクレオチドを指し、適切な場合にはリボ核酸(RNA)を指す。これらの用語には、均等物としてヌクレオチド類似体から形成されたRNAまたはDNAの類似体と、記述された実施形態に適用可能であるように一本鎖および二本鎖のポリヌクレオチドも含まれることを理解されたい。
【0077】
本発明の発現ベクターは、動作可能に結合する調節要素をさらに含むことができる。「動作可能に結合」という文言は、本明細書において、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係を保った状態で配置されるときに第1の核酸配列が第2の核酸配列に動作可能に結合することを示すために使用される。例えばプロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に動作可能に結合している。一般に、動作可能に結合しているDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合は、同じ読み枠内にある。
【0078】
したがって、制御要素および調節要素という用語には、プロモーター、ターミネーター、およびその他の発現制御要素が含まれる。そのような調節要素はGoeddelによって記述されている[Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)]。
【0079】
本明細書で使用される「ベクター」は、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNA断片、およびその他のビークルであってDNA断片を宿主のゲノムに組み込むことが可能なものを包含する。発現ベクターは、一般に、所望の遺伝子またはその断片を含有する自己複製DNA構成または自己複製RNA構成であり、適切な宿主細胞内で認識されかつ所望の遺伝子の発現をもたらす遺伝子制御要素に動作可能に結合している。これらの制御要素は、適切な宿主内で発現をもたらすことができる。一般に遺伝子制御要素は、原核プロモーター系または真核プロモーター発現調節系を含むことができる。これは一般に、転写プロモーター、転写の開始を制御する任意選択のオペレーター、RNA発現のレベルを上昇させる転写エンハンサー、適切なリボソーム結合部位をコードする配列、RNAスプライス部位、転写および翻訳を終了させる配列などを含む。発現ベクターは通常、複製の開始点、すなわちそのベクターによって宿主細胞を独立に複製することが可能な開始点を含有する。
【0080】
ベクターは追加として、適切な制限部位、抗生物質抵抗性、またはベクター含有細胞を選択するためのその他のマーカーを含むことができる。プラスミドは、最も一般的に使用される形のベクターであるが、同等の機能を果たして当技術分野で知られているかまたは知られるようになるその他の形のベクターも、本明細書で使用するのに適している。例えば、参照により本明細書に組み込むPouwels他のCloning Vectors:a Laboratory Manual(1985および補遺)、Elsevier、N.Y.;およびRodriquez他(編)のVectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses、Buttersworth、Boston、Mass(1988)を参照されたい。
【0081】
また、本発明の特定の実施形態は、本発明の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞に関する。適切な宿主細胞には、原核生物、低級真核生物、および高級真核生物が含まれる。原核生物には、グラム陰性有機体およびグラム陽性有機体、例えばE.coliおよびB.subtilisが含まれる。低級真核生物には、酵母、S.cerevisiaeおよびピチア属と、Dictyostelium属の種が含まれる。高級真核生物には、非哺乳動物由来、例えば昆虫細胞および鳥類と、哺乳動物由来、例えばヒトやその他の霊長類の両方と、げっ歯類由来の動物細胞から確立された組織培養細胞系が含まれる。
【0082】
特に好ましい実施形態は、NKp46−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号3および配列番号12により示される核酸配列でそれぞれコードした、配列番号6により示されるアミノ酸配列または配列番号14によって示されるそのアイソフォームを有する。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、実施例11で述べるNKp46D2−Ig融合タンパク質に関する。
【0084】
別の特に好ましい実施形態は、NKp44−Ig融合タンパク質に関する。この融合タンパク質は、配列番号8により示される核酸配列でコードした、配列番号10により示されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、本発明はNKp44D2−Ig融合タンパク質に関する。
【0085】
あるいは、本発明の融合タンパク質は、ターゲティング・セグメントとしてNKp30分子(配列番号18により示される)を含んでよい。
【0086】
異種融合タンパク質は、同様に普通に融合したのではなくもともと融合した状態のセグメントで形成された融合タンパク質である。このため、NKp46、NKp30、またはNKp44(特にドメイン1および2、またはドメイン1とドメイン2の少なくとも1つ)分子とIg分子のFc部分との融合生成物は連続的なタンパク質分子であって、典型的なペプチド結合によって融合した配列を有し、一般に単一の翻訳生成物として形成され、かつ各原料ペプチドから得られた性質を示す分子である。
【0087】
本発明の別の態様は、本発明の融合タンパク質NKp46−Igを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。
【0088】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明は、本発明の融合タンパク質NKp44−Igを特異的に認識してそこに結合する抗体に関する。
【0089】
さらに本発明は、タンパク質上のエピトープを特異的に認識してそこに結合する抗体に関し、前記タンパク質は、NK細胞活性化受容体NKp46に対するリガンドである。実施例3で述べるように、NKp46推定リガンドを識別するため、SV感染細胞でマウスを免疫化し、異なる抗体について試験を行って、SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を阻止する能力について調べた。SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を効果的に阻止するそのような1つの抗体を135.7で示す。
【0090】
したがって特に好ましい実施形態では、本発明は、135.7で示される抗体に関する。この抗体は、NKp46リガンドを特異的に認識してそこに結合する。実施例3で述べるように、このリガンドは、分子量が約70Kdのタンパク質である。このタンパク質は、HN糖タンパク質であることがわかった。
【0091】
本発明の好ましい実施形態は、NKp46−Ig融合タンパク質およびNKp44−Ig融合タンパク質に対する抗体と、NKp46リガンドおよびNKp44リガンドに対する抗体に関する。これらの抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体からなる群から選択され、モノクローナル抗体が好ましい。
【0092】
タンパク質に対するポリクローナル抗体の発生については、Wiley and Sons Inc.によるCurrent Protocols in ImmunologyのChapter 2に記載されている。
【0093】
モノクローナル抗体は、雑種細胞の増殖に好都合な条件下での不死化B細胞との融合によって免疫化した動物、特にラットまたはマウスの脾臓またはリンパ節から得られたB細胞から調製することができる。ネズミB細胞の融合では、細胞系Ag−8が好ましい。
【0094】
モノクローナル抗体を発生させる技法は、上記Current Protocols in ImmunologyのChapter 2など、多くの論文および教科書に記載されている。そのChapter 2に記載されているように、モノクローナル抗体を発生させるには、これらの動物の脾臓またはリンパ節細胞を、タンパク質で免疫化された動物の脾臓またはリンパ節細胞と同じ方法で使用することができる。モノクローナル抗体を発生させる際に使用する技法は、KohlerおよびMilsteinによるNature 256:495〜497(1975)と米国特許第4,376,110号にさらに記載されている。
【0095】
「抗体」という用語は、無傷の分子、ならびにその断片の両方を含むことを意味し、例えば、抗原に結合することが可能なFabおよびF(ab’)2が含まれる。FabおよびF(ab’)2断片は、無傷の抗体のFc断片に乏しく、循環からより急速になくなり、無傷の抗体よりも非特異的組織結合が少ない可能性がある[Wahl他、J.Nucl.Med.24:316〜325、(1983)]。本発明に有用な抗体のFabおよびF(ab’)2とその他の断片は、無傷の抗体分子に関する本明細書に開示された方法に従って、本発明の複合体に対するリガンドを検出し定量するのに使用できることが理解されよう。そのような断片は、一般に、パパイン(Fab断片生成用)やペプシン(F(ab’)2断片生成用)などの酵素を使用したタンパク質分解によって生成される。
【0096】
抗体は、分子と特異的に反応してそれによって分子と抗体とを結合させることができる場合、分子に「結合することができる」と言う。「エピトープ」という用語は、抗体に結合することができる任意の分子の部分であって、その抗体が認識することのできる部分を指すものである。エピトープまたは「抗原決定基」は、通常、アミノ酸や糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面のグループからなり、特異的三次元構造特性ならびに特異的荷電特性を有する。
【0097】
「抗原」は、抗体に結合することができる分子または分子の一部であり、これはさらに、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を動物に生成させることができるものである。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。前述の特異的反応は、抗原が、高度に選択的な手法でその抗原に対応する抗体と反応し、その他の抗原によって誘発される可能性がある多数のその他の抗体とは反応しないことを示すものである。
【0098】
本発明に有用な、抗体の断片も含めた抗体は、サンプル中の本発明の複合体に対するリガンドを定量的かつ/または定性的に検出するのに使用することができる。これは、蛍光または色素で標識した抗体を、光学顕微鏡、フロー・サイトメトリー、または蛍光による検出と併せて使用する免疫蛍光法によって実現することができる。
【0099】
別の特に好ましい実施形態は、検出可能な部分に結合された本発明の抗体に関する。本発明による抗体を検出可能に標識することができる方法の1つは、その抗体を酵素に結合することによるもので、酵素免疫測定法(EIA)で使用される。この酵素は、後に適切な基質に曝されるとき、例えば分光光度法や蛍光光度法によって、または視覚的手段によって、検出可能な化学的部分が生成されるような方法で基質と反応することになる。抗体を検出可能に標識するのに使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。検出は、酵素用の色素基質を使用する比色法によって行うことができる。検出は、基質の酵素反応の程度を、同様に調製された標準と目視比較することによって行うこともできる。
【0100】
検出は、様々なその他の免疫測定法のいずれかを使用することによって行うことができる。例えば、抗体または抗体断片を放射性標識することにより、放射免疫測定法(RIA)を用いて受容体チロシンホスファターゼ(R−PTPase)を検出することが可能である。Chard,T.による「An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques」という表題の章に特に関連したWork,T.S.他によるLaboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology、North Holland Publishing Company、NY(1978)には、RIAに関する優れた記述が見られ、これを本明細書に参照による組み込む。放射性同位元素は、gカウンタまたはシンチレーション・カウンタを使用するような手段によって、またはオートラジオグラフィによって検出することができる。
【0101】
本発明による抗体を、蛍光化合物、蛍光発光金属、化学発光化合物、または生物発光化合物で標識することも可能である。
【0102】
第4の態様では、本発明は、病的な状態を治療するための組成物に関する。この組成物は、活性成分として本発明による複合体、すなわち活性セグメントが細胞傷害性部分および/またはIg断片である複合体と、医薬品として許容されるキャリアを含む。
【0103】
本明細書で使用される「医薬品として許容されるキャリア」には、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤などのいずれかまたは全てが含まれる。そのような媒質および薬剤を医薬品として活性な物質に使用することは、当技術分野では周知である。任意の従来の媒質または薬剤は、それらが活性成分に対して非相容性である場合を除いて、治療用組成物に使用することが考えられる。
【0104】
本発明の組成物は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスの治療に使用することができる。
【0105】
本発明の組成物は、メラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの癌疾患、好ましくはメラノーマの治療にも使用することができる。
【0106】
本発明の代替の態様は、サンプル中の異常細胞の存在を検出するための診断用組成物であって、活性セグメントが常磁性や放射性、または蛍光原性の物質または部分などの検出可能な画像形成部分である本発明の複合体を含む組成物に関する。
【0107】
本発明の別の態様は、対象の病的な状態を治療する方法であって、医薬品として有効な量の治療薬を対象に投与するステップを含み、前記治療薬が本発明の複合体または組成物を含むものである方法に関する。
【0108】
病的な状態は、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスのいずれか1つによって引き起こされるウイルス感染でよい。
【0109】
あるいは本発明の方法は、メラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの悪性疾患、好ましくはメラノーマの治療に使用することができる。
【0110】
本発明の方法は、本発明の複合体であって、活性セグメントがIg断片を含む複合体、特に配列番号5に示されるアミノ酸配列によって示されるIg分子のFc部分を含む複合体を使用することが好ましい。あるいは本発明の方法は、活性セグメントが細胞傷害性部分を含む複合体を使用する。この細胞傷害性部分は、前記標的細胞を死滅させ、かつ/または前記標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することができる細胞毒または抗細胞物質から選択することができる。より具体的には、細胞毒または抗細胞物質は、合成毒、あるいは植物、真菌、または細菌由来の毒素でよい。例えば毒素は、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分でよい。
【0111】
上述の治療方法の他、本発明は、癌性細胞または何らかの原因で欠陥のある細胞であってその表面にNKp46、NKp44、およびNKp30のいずれか1つを発現する細胞を本発明の複合体で治療する、ex vivo治療を包含する。そのようなex vivoプロトコルでは、ヒト対象などの対象の身体から生体サンプルを得ることができる。
【0112】
このサンプルは、血液、骨髄細胞、あるいは癌になった器官からの同様の組織または細胞でよい。そのようなサンプルを得るための方法は、腫瘍学および外科の分野の当業者に周知である。そのような方法には、周知の方法で血液をサンプリングすること、あるいは骨髄またはその他の組織または器官から生検材料を得ることが含まれる。サンプルに含有される癌細胞(またはウイルス感染細胞)は、本発明の複合体の細胞傷害活性により効果的になくすことができる。次いでこのサンプルを提供した対象の身体に、このサンプルを戻すことができる。
【0113】
本明細書で使用される「有効な量」とは、選択された結果をもたらすのに必要な量を意味する。例えば、本発明の組成物の有効な量は、前記病的な状態の治療に有用である。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、哺乳動物である対象、好ましくはヒトを治療することを目的とする。したがって、「患者」または「治療を必要とする対象」とは、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、およびネコの各被験体を含めた遺伝子治療が望ましい任意の哺乳動物、好ましくはヒトの患者を意味する。
【0115】
本発明によるin vivo治療では、本発明の複合体または組成物を様々な方法で投与することができる。非限定的な例として、細胞は、静脈内を通して送り出し、または固形腫瘍の位置に隣接する腹腔内などの体腔内に送り出すことができ、あるいは固形腫瘍に直接注射しまたは固形腫瘍に隣接した部分に注射することができる。例えば静脈内投与は、白血病、リンパ腫、およびこれと同等のリンパ系悪性腫瘍の治療、ならびにウイルス感染の治療に有利である。
【0116】
注射としての使用に適する医薬品の形態には、注射可能な滅菌溶液または分散液をその場で調製するための滅菌水溶液または分散液と滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、その形態は滅菌された状態でなければならず、容易に注射できる程度まで流体でなければならない。医薬品の形態は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0117】
微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベンやクロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって妨げることができる。たいていの場合、等張剤、例えば糖や塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物は、吸収を遅らせる薬剤組成物、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを使用することにより、長時間にわたって吸収させることができる。
【0118】
滅菌溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記列挙した様々なその他の成分を含む適切な溶媒に混ぜ、その後、滅菌ろ過することによって調製する。一般に分散液は、様々な滅菌済みの活性成分を、基本的な分散媒および上記列挙したものからの必要とされるその他の成分を含有する滅菌賦形剤に混ぜることによって調製する。
【0119】
注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末であって予め滅菌ろ過されたその溶液から得られたものをもたらす真空乾燥および凍結乾燥技法である。
【0120】
本発明の複合体および組成物は、治療を受ける対象に直接投与することができ、または投与前に、化合物(細胞傷害性部分または画像形成部分)のサイズに応じてそれらをオボアルブミンや血清アルブミンなどのキャリアタンパク質に結合させることが望ましい。治療用製剤は、任意の従来の投薬処方で投与することができる。製剤は、典型的な場合、上記定義された少なくとも1種の活性成分を、1種または複数のその許容されるキャリアと共に含む。
【0121】
各キャリアは、その他の成分に対して相溶性を有しかつ患者に無害であるという意味で、医薬品としてかつ生理学的に許容されるべきである。製剤には、口、直腸、鼻、または腸管外(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)による投与に適するものが含まれる。製剤は、単位投与形態で都合よく与えることができ、医薬品の技術分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0122】
本発明の別の態様は、病的な状態、特に腫瘍を診断し画像化する方法に関する。この方法は、対象の血流に造影剤を導入するステップと、病的な標的細胞に発現したNKp46、NKp44、またはNKp30のリガンドのいずれか1つに対する造影剤の結合を検出して定量するステップを含む。造影剤は、本発明の複合体であって、その活性セグメントが、例えば常磁性物質、放射性物質、または蛍光原物質でよい画像形成部分を含む、本発明の複合体を含む。
【0123】
特に好ましい実施形態では、本発明の診断方法を、腫瘍、例えばメラノーマや癌腫、肉腫、リンパ腫などの病的な状態の診断に使用することができる。
【0124】
これまで開示し記述してきたが、本発明に開示した特定のプロセス・ステップおよび材料には若干の変更を加えることができるので、本発明は、本明細書に開示した特定の実施例、プロセス・ステップ、および材料に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は上述の特許請求の範囲とその均等物によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態のみを記述するために使用するのであってそれに限定するものではないことも理解されたい。
【0125】
他に特に明示しない限り、この明細書および上述の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」には複数形も含まれることに留意しなければならない。
【0126】
他に特に明示しない限り、この明細書および上述の特許請求の範囲の全体を通して「含む」という単語「comprise」とその変形例である「comprises」や「comprising」などは、述べられている整数またはステップあるいは述べられている整数またはステップの群を含むことを意味するものであって、任意のその他の整数またはステップあるいは整数またはステップの群を除外することを意味するものではないことを理解されたい。
【0127】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明で使用される技法の代表例である。これらの技法は、本発明を実施するための好ましい実施形態の例示であるが、本発明の開示に照らして本発明の精神および意図される範囲から逸脱することなく非常に数多くの変更を加えることが可能であることが当業者ならわかるであろう、ということを理解されたい。
【0128】
(実施例)
材料および方法
細胞およびウイルス
細胞系統:
*721.221−クラスI MHC陰性のヒトEBVで形質転換したB細胞系。
*1106mel−クラスI MHC陰性ヒトメラノーマ細胞系。
*293T−アデノウイルスで形質転換し、SV−ラージT抗原でトランスフェクトしたヒト線維芽腎臓細胞系。
*ヒトNK細胞単離キットおよび自動MACS機器(Miltenyi Biotec Inc)を使用して、NK細胞(系およびクローン)を抹消血リンパ球(PBL)から単離し、NK細胞を前述のように培養中に保持した[Mandelboim,O.他、J.Exp.Med.184:913〜922(1996)]。
【0129】
ウイルス:
センダイウイルス(SV)、マウスパラミクソウイルス、およびインフルエンザウイルス(IV) A/PR/8/34(H1N1)を、Spafas(Preston City、CT、USA)から購入した。
【0130】
モノクローナル抗体
センダイウイルスに特異的なmAbについては前に述べた[Peterhans,E.他、Virology 128:366〜376(1983);Yewdell,J.W.他、J.Immunol.128:2670〜2675(1982)]。
【0131】
インフルエンザウイルスに特異的なmAbについては前に述べた[Yewdell,J.W.、他、J.Virol.48:239〜248(1983)]。
【0132】
抗CD99mAb12E7は、A.Bernard(Hopital de L’Archet、Nice、フランス)の厚意により贈られたものである。
【0133】
抗KIR2DL1(NKAT1)mAB HP3E4は、Dr.Lopez−Botet(Hospital de la Princesa、Madrid、スペイン)の厚意により贈られたものである。ハイブリドーマを生成するmAb 3G8は、Jay Unkeless(Mt.Sinai School of Medicine、New York、USA)の厚意により与えられた。汎抗クラスI mAb 147は、ExBio(チェコ共和国)から購入した。
【0134】
ハイブリドーマを生成するmAb 3G8は、Jay Unkeless(Mt.Sinai School of Medicine、New York、USA)から寄贈された。
【0135】
分子生物学における一般的な方法:
一般に、Maniatis他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1989、1992)に記載されているような当技術分野で知られており具体的には記述されていない標準的な分子生物学的技法に従った。
【0136】
SVに感染した721.221細胞を認識するmAbの生成
SVに感染した721.221細胞(5×106)を洗浄し、BALB/cマウスに対して14日間ごとに3回、腹腔内に注射した。免疫化したマウスから血清を採取し、感染細胞に対する抗体の存在について試験を行った。そのような抗体を生成するマウスに対して再び追加免疫を行い、4日後に脾臓を採取して、脾細胞を前述のようにSP2/0細胞に融合させた[Porgador,A.他、Immunity 6:715〜726(1997)]。
【0137】
増殖細胞融合体が入っているウェルから得られた上澄みを、初めにELISAにより結合している721.221、SVに感染した721.221または1106mel細胞についてスクリーニングした。次いで感染した721.221および/または1106mel陽性の上澄みをフロー・サイトメトリーによってスクリーニングし、SVに感染した721.221細胞に対するNKp46−Ig結合の阻止について調べた。
【0138】
血球凝集阻止試験
微量滴定プレートでは、1血球凝集単位(HAU)のIVを、連続した2倍希釈のNKp46−Igと共に50μLのPBS中4℃で30分間インキュベートした。次いで1%の濃縮ヒツジRBC懸濁液50μlを添加し、血球凝集のパターンを30分後に室温でカウントした。
【0139】
細胞毒性アッセイ
様々な標的に対するNK系およびクローンの細胞傷害活性について、前述のように5時間の35S放出アッセイで評価した[Porgador,A.Proc Natl Acad Sci.USA 94:13140〜13145(1997)]。
【0140】
mAbを含む実験では、初めにNK細胞を50%のヒト血清と共にインキュベートし(ヒトNK細胞の表面に発現した様々なFc受容体に対するmAbの結合を防止するため)、洗浄した。最終のmAb濃度は20μg/mlであり、またはハイブリドーマを産出するマウスから得られた血清中にmAbが存在する場合は、1:100の希釈率であった。示される全ての実験において、自発的な放出は最大放出の25%未満であった。各ポイントは、2回行って得た値の平均を表す。2回行って得た値の範囲は常にその平均の5%以内であった。
【0141】
Ig融合タンパク質
CD16−Ig融合タンパク質の生成については前に述べた[Mandelboim,O.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5640〜5644(1999)]。
【0142】
NKp30(受託番号AJ223153)、NKp44(受託番号NM_004828)、NKp46(使用したアイソフォームの受託番号はAJ006121である)、KIR−1(受託番号L41267)、およびNKAT−8(NM_012314)の細胞外部分をコードする配列を、ヒトNKクローンから単離したcDNAからのPCRによって増幅させた。これらのPCRで生成した断片をクローニングして、ヒトIgG1のFc部分を含有する哺乳動物の発現ベクターにし、Ig融合タンパク質を既に述べたように生成した[Mandelboim,O.他、(1999)同書]。構造の配列決定により、全てのIg融合タンパク質のcDNAがヒトFcゲノムDNAと共に枠内にあり、報告された配列と同一であることを確認した。
【0143】
この操作で使用した全てのIg融合タンパク質は、標準的な非還元性のSDS−PAGEゲル上の単一のバンドとして移行し、それぞれに関し定期的にSDS−PAGEによりアッセイを行って、タンパク質が分解していないことを確認した。
【0144】
Ig融合タンパク質によるFACS染色手順については前に述べた[Mandelboim,O.他、(1999)同書]。
【0145】
抗NKp46−IgおよびNKp44−Ig血清の生成
BALB/cマウスの足蹠に、CFA中で乳化させたNKp46−Ig、NKp44−Ig、またはKIR−1−Igの融合タンパク質40μgを注射した。6週間後、マウスに追加免疫を行い、12日後に血清を採取した。
【0146】
対照血清の場合、CFA中で乳化させたPBSを用いてマウスを上述のように免疫化した。血清に関し、YTS、KIR−1でトランスフェクトしたYTS細胞、および様々なNK系およびクローンに対するNKp46およびNkp44抗原の特異性について試験した。
【0147】
抗NKp44および46血清は、1:100の希釈率、すなわちフロー・サイトメトリーで測定した結合が飽和する濃度で使用した。報告されたNKp44およびNKp46の発現パターンに合わせ[Cantoni C,C.他、J.Exp Med.189:787〜796(1999)、Pessino A,S.他、J.Exp.Med.188:953〜960(1998)]、NK細胞のみを抗NKp44血清および抗NKp46血清で陽性染色し、対照細胞721.221、RPMI 8866、Jurkatおよびその他のものは染色しないままにした。この血清を用いて、全てのNK細胞(6系統および150を超えるクローン)を様々な程度に染色した。報告されたNKp44の発現パターンに合わせ[Cantoni C,C.他の同書(1999)]、活性化NK細胞の表面のみでNKp44の発現を検出した。さらに、細胞を抗NKp44および46血清で被覆して様々なNK系およびクローンと共にインキュベートした場合、リディレクトされたP815細胞溶解を引き起こすことができた。抗NKp44および46血清は、E:T比が高い(20:1よりも高い)感染していない1106mel細胞および293T細胞の溶解も含めたいくつかの非感染標的細胞の溶解を、部分的に阻止した。他のNKトリガー受容体に対する細胞リガンドの存在は[Bottino,C.他、Hum.Immunol.61:1〜6(2000)に概説されるように]、部分的な阻止を説明していると考えられた。
【0148】
ウイルス感染細胞に対するNKp46−Ig融合タンパク質およびNKp44−Ig融合タンパク質の結合の阻止
細胞(721.221および1106mel)を、SVの上澄み100μl(721.221の場合)に、またIV 1000u/ml(1106melの場合)に感染させた。一晩インキュベートした後、感染細胞を洗浄し、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、アッセイにかけて適切なIg融合タンパク質10μgで前述のように染色を行った[Mandelboim,O.他、(1999)の同書]。
【0149】
精製済みHAを使用したNKp44−Ig結合の阻止
様々なIg融合タンパク質10マイクログラムを、最終体積100μlのPBS−BSA−Azidで精製済みのHAタンパク質[Brand,C.M.およびSkehel,J.J. Nat.New Biol.238:145〜147(1972)]40μgと共に氷上で2時間インキュベートした。次いでこれらの混合物を、細胞と共に氷上で2時間インキュベートし、前に述べたものと同じ染色手段を使用して染色し、Ig融合タンパク質の存在について調べた[Mandelboim,O.,P.他の同書(1999)]。
【0150】
一時的なトランスフェクション
Fugeneトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)を使用して、293T細胞を、対照PCDNA3プラスミドで一時的にトランスフェクトし(293T/MOCK)、またはセンダイウイルスのHNをコードするcDNAで一時的にトランスフェクトした(293T/pca−svhn)。
【0151】
実施例1
NKp30、NKp44、NKp46、およびCD16リガンドの検出。
NK認識におけるNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16の役割を、NKP30、NKp44、NKp46、およびCD16の細胞外ドメインがヒトIgG1のFc部分と融合している融合タンパク質を生成することによって、調査した。ヒトIgG1 DNAのFcに融合しているCD99の細胞外ドメインを対照として使用した。これらの構造をCOS−7細胞に一時的にトランスフェクトし、分泌された融合タンパク質をプロテインGカラムで精製した。Ig融合タンパク質を、様々な標的細胞と共にインキュベートし、前述のように間接的な免疫染色によって結合について分析した[Mandelboim,O.他の同書(1999)]。一般に、試験を行った全てのIg融合タンパク質の中で、最も効率的な結合は、NKp44−Ig融合タンパク質の場合であることが観察された(表1)。対照のCD99−Ig融合タンパク質は、試験を行った標的細胞のいずれとも結合しなかった。先の報告は、NKp46が、CD16受容体ではなくNKp44活性化受容体と共に[Mandelboim,O.他の同書(1999)]、クラスI陰性721.221細胞の分解に関与することを示していた[Cantoni C,C.他の同書(1999)、Biassoni R,A.他、Eur J Immunol.29:1014〜1020(1999)、Pessino A,S.他、J.Exp.Med.188:953〜960(1998);Sivori S,D.他、Eur J Immunol.29:1656〜66(1999)]。
【0152】
実際に、細胞をNKp30−Ig、NKp44−Ig、またはNKp46−Igの各融合タンパク質と共にインキュベートした場合、721.221細胞の染色はほんのわずかしか観察されず、721.221細胞をCD16−Ig融合タンパク質と共にインキュベートした場合には染色が全く観察されなかった(表1)。EBVで形質転換した別のB細胞系、RPMI8866の場合にも同様の結果が観察された。これらの結果によれば、NKp30−Ig、NKp44−Ig、およびNKp46−Igの結合が低いこと、すなわちこれらのタンパク質に対するリガンドの発現が低いことを示すそのような結合は、それにもかかわらずこれらの細胞の溶解を引き起こすのに十分であり、あるいは、NKp44、NKp46、またはCD16とは異なるその他の溶解受容体に対する別の溶解リガンドの存在を示している。NKp30−Ig、NKp44−Ig、NKp46−Ig、またはCD16−Igと、ラージT抗原でトランスフェクトした293T腎臓細胞系、1106mel−メラノーマ細胞系、およびサルCOS−7細胞系との結合が観察された(表1)。実際に、これらの標的細胞の全ては、NK細胞で媒介される死滅に対して様々な程度で感受性がある[Mandelboim,O.P他の同書(1999)]。COS−7細胞上のNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16に対するリガンドの存在は、これらの受容体に対するリガンドがいくつかの霊長類の中で保たれていることを示している。LB33MELA1メラノーマ細胞系に対するNKp30およびNKp44−Ig融合タンパク質の染色はほんのわずかしか観察されず(表1)、細胞系は、NK細胞により死滅させることができないものである(データは記載せず)。最後に、NKp30−、NKp44−、NKp46−、またはCD16−Ig融合タンパク質の、マウスp815細胞または健康なドナーから得たPBLに対する結合はほんのわずかしか観察されず、または全く観察されず(表1)、したがって最も重要なこととして、溶解受容体に対するリガンドはヒトとマウスでは異なることを示しており、また2番めに重要なこととして、少なくともPBLから得た「正常」細胞はNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16に対する溶解リガンドを発現しないことを示している。
【0153】
【0154】
細胞は、実験手順で述べたように様々なIg融合タンパク質と共にインキュベートし、PE結合したヤギ抗ヒトFeで染色した。MFIは中央蛍光強度を示しており、MFI数は、最も近い整数に丸めた。結果は、2つの独立した実験の代表的なものを表す。
【0155】
実施例2
ウイルス感染細胞に対するNKp46−Ig融合タンパク質の結合
以前に公表されているように[Trinchieri他、Adv.in Immunol.47:187〜376(1989)]、NK細胞はウイルス感染細胞を効果的に溶解することができ、したがって、センダイウイルス(SV)(マウスパラミクソウイルス)による感染によってNKp46−Igの結合が増加したかどうかという問題について、次に試験を行った。特に著しいのは、NKp46−Igの結合による染色が10倍になったことが観察された点である(表2)。この効果はNKp46の場合に特有のものであるが、それは、SV感染によって、試験を行った他のNK受容体Ig融合タンパク質の結合が変化しないためである(CD16−Ig、KIR−1−Ig、またはNKAT−8−Ig データは記載せず)。
【0156】
【0157】
100μl/mlのSVを含有する上澄みと共に、721.221細胞(106/ml)を一晩インキュベートした。細胞(感染したもの、または感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC標識したヤギ抗マウスIgで、またはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度(Median Fluorescence Intensity)を示しており、MFI数は、最も近い整数に丸めた。SV感染した721.221細胞、および721.221細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色は、それぞれ4および2であった。結果は、5つの独立した実験の代表例を示す。別のB細胞系、RPMI 8866でも同様の結果が得られた。
【0158】
種々のウイルスによる感染
観察されたSV感染721.221細胞に対するNKp46−Ig融合タンパク質の結合がウイルス特異か細胞特異であるかを見出すため、種々のウイルスに感染したA9線維芽細胞を使用して同様の感染実験を行った。図1に示すように、感染していないA9細胞を、EMCV、MVM、アデノウイルス、またはワクシニアウイルスに感染した同様の細胞と比較した場合、NKp46−Ig結合の著しい増大が観察された。
【0159】
実施例3
SV HN糖タンパク質に対するNKp46−Igの結合
SV感染721.221細胞上の推定のNKp46−リガンドを確認するため、SV感染721.221細胞でマウスを免疫化し、脾臓から得られたB細胞ハイブリドーマの上澄みをスクリーニングして、非感染細胞に対するウイルス感染細胞の染色の増大について調べた。試験を行ったハイブリドーマクローンの1つの上澄み(135.7)は、SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を効果的に阻止した(表2)。したがってmAb135.7は、SVまたは宿主細胞でコードしたタンパク質を認識することができる。
【0160】
免疫吸着剤としてSVを使用したELISAアッセイでは、mAb135.7がウイルス遺伝子生成を認識することを示した(データは記載せず)。
【0161】
125Iで細胞表面を標識したSV感染721.221細胞の界面活性剤溶解物から回収した135.7−反応性タンパク質のSDS−PAGE分析によれば、135.7は、報告されたHN糖タンパク質の移動度と同様に、見かけの分子量が70kDaのタンパク質に結合することが明らかになった。
【0162】
したがって、十分に特徴付けされた抗SV mAbも、SV感染細胞に対するNKp46−Igの結合を阻止するかどうかという問題について、次に試験を行った。実際に、表2に示すように、感染細胞を最初に抗HN mAb TC−1D6またはTC−9C1と共にインキュベートした場合にNKp46−Ig結合は阻止されたが、他の主なSV糖タンパク質、融合(F)タンパク質に特異的なmAb TC−9A1の場合には阻止されなかった。
【0163】
実施例4
HNでトランスフェクトした293T細胞溶解におけるHNのNKp46認識の役割
SV感染721.221細胞に対するNKp46−IgのHN依存結合にもかかわらず、SV感染に伴うNK媒介型溶解に対するこれらの細胞の感受性の増大の検出はうまくいかなかったが(データは記載せず)、これはおそらく、これらの細胞がすでに、NK媒介型の溶解の影響を非常に受けやすいためと考えられる。このため、NK溶解におけるHNのNKp46認識の役割に関する直接的な試験ができなかった。
【0164】
しかしこれは、HNをコードするプラスミドで一時的にトランスフェクトした293T細胞を使用することにより可能であった。トランスフェクトした48時間後、TC−1D6 mAb(図2A)または135.7(図示せず)を使用することによって、細胞表面のHN発現が確認された。
【0165】
図2Aに示すように、トランスフェクションによって、NKp46−Ig以外のIg融合タンパク質、KIR−1−Ig、NKAT−8−Ig、またはCD16−Igによる染色を高めることなくNKp46−Ig染色が2倍に増大したことが重要である。さらに、NK−GAL、健康なドナーのPBLから得られたNK系は、トランスフェクトしていない細胞またはmockでトランスフェクトした細胞よりも少なくとも4倍効率的に、HNでトランスフェクトした293T細胞を溶解した(図2B、C)。
【0166】
NKp46−Igに対するマウス抗血清と共にNK GALを事前にインキュベートすると、HNでトランスフェクトした293T細胞の死滅の増大が抑制されたが、対照血清と共に行ったインキュベーションではほとんど効果がなかった(図2B)。同じ実験によれば、3種のHNに特異的なmAbのそれぞれはNKで媒介される溶解を阻止できるが、CD99に特異的な対照mAbでは著しい効果がないことが明らかになった(図2C)。
【0167】
実施例5
NKp46は、NK細胞によるHA発現細胞の認識に必要である
NK認識の顕著な特徴の1つは、その抗原特異性が不十分であることである。NKp46は、NK媒介型の溶解において物理的かつ機能的にSV HNと相互に作用することを示したが、本発明者らは次に、インフルエンザウイルス(IV)HAとも相互に作用するかどうかについて試験を行った。1106mel細胞のIV感染(クラスI欠損細胞系)により、NKp46−Ig結合が4倍増大した(表3)。上述のように、結合が高まるという特定の性質は、他のIg融合タンパク質の一定の結合によって示される(データは記載せず)。
【0168】
NKp46−Ig結合の増大は、HAに特異的なmAB H28−E23およびH17−L2によってそれぞれ完全にまたは部分的に阻止されたことが重要である(表3)。これとは対照的に、HNに特異的なmAb TC−1D6、TC−9C1、または135.7は、結合に影響を与えなかった(データは記載せず)。
【0169】
次に、1106細胞をIVに感染させた。図3Aに示すように、この感染によってNK GAL媒介型の溶解が高まり、抗NKp46血清と共に細胞を事前にインキュベートすることによって死滅の増大が阻止されるが、対照の血清、またはCD99およびCD16にそれぞれ特異的なmAb 12E7および3G8との場合は阻止されない。
【0170】
IV感染した1106mel細胞を、mAb H28−E23と共にインキュベーションすることにより、溶解の増大が完全に抑制されたが、H17−L2には部分的な抑制効果があり、阻止実験の結果を反映している(図3B、表3)。
【0171】
【0172】
1106mel細胞(106/ml)を、1000u/mlのインフルエンザウイルスと共にO.N.インキュベートした。細胞(感染したもの、または感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC結合したヤギ抗マウスIgで、またはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示し、MFI数は最も近い整数に丸めた。IV感染した1106細胞と、1106細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色はそれぞれ7および6であった。結果は、8つの独立した実験の代表例である。
【0173】
NK GALから調製したクローンによるIV感染1106mel細胞の認識について、限定希釈によって試験を行った。試験を行った28のクローン全てについて、抗NKp46血清で陽性染色した。これらのうち21のクローンは、IV感染していない細胞よりもIV感染した細胞の認識が高まることを示しており(図3C)、21のクローン全てをHAに特異的なmAb H28−E23と共に事前にインキュベートすることによって、IVにより増大した溶解が完全に抑制された(データは記載せず)。NKクローンを抗NKp46血清と共に事前にインキュベートすることにより、これらのクローンのうち13のクローンのIV強化型の溶解が完全に抑制され(例えばクローン6、図3C)、一方、6個のクローンについては部分的に抑制された(例えばクローン15、図3C)。これら2つのグループに関し、抗NKp46血清で染色した平均MFIは、それぞれ28.9および32.8であった。IV感染細胞の溶解が増大したことを示す2つのクローンは、NKp46抗血清の影響を受けなかった(例えばクローン17、図3C)。2つのクローンのこのグループに対する抗NKp46染色に関する平均MFIは、17.5であった。
【0174】
最後に、試験を行ったクローンのうち7つのクローンに関しては、IVに関連する溶解の増大は観察されず(例えばクローン5、図3C)、このグループの抗NKp46染色に関するMFIは31.3であった。HNでトランスフェクトした293T細胞を用いて同じNKクローンを試験した場合、同様の結果が得られた(データは記載せず)。
【0175】
NKクローンは、より少ない量のNKp46受容体を発現する他のNK系からも生成された(例えば、NK GALにおけるMFIが41.4であるのに比べてNKp46染色のMFIが15.5のNK系)。このNK系から生成されたクローンの約3分の1で、IV感染した1106mel溶解の増大の抑制(部分的にまたは完全に)が観察され、溶解の程度はNKp46染色と相互に関連していた(データは記載せず)。
【0176】
これらの所見は、第1に、NK細胞の実質上のサブセットによるHA−およびHN−発現細胞の認識にNKp46が必要であり、第2に、NK細胞のその他の集団は、これらの細胞をNKp46とは独立の手法により溶解できることを示している。
【0177】
実施例6
NKp46とHAおよびHNとの相互作用におけるシアル酸の関与
SV HNとIV HAは共に、Galに結合した末端Nアセチルノイラミン酸残基(シアル酸)を認識し、NKp46に結合する一般的なメカニズムを示している。NKp46とHAとの相互作用におけるシアル酸の関与は、発見の数によって示される。第1に、NKp46−Igは、タンパク質の濃度が2μMという低い濃度でヒツジ赤血球のIV媒介型凝集を完全に阻止することができる。第2に、IVノイラミニダーゼの酵素活性を阻止するmAb(NA2−1C21)と共にIV感染細胞を事前にインキュベートすることによって、IV感染細胞に対するNKp46−Ig結合が著しく増大する(表3)。最後に、そして最も直接的なことは、細菌性のノイラミニダーゼでNKp46−Igを処理することによって、IVに感染していない細胞に対する結合を減少させることなくIV感染細胞に対する結合を減少させた(図4)。
【0178】
脱シアリル化が、受容体−リガンド対の負の電荷の反発力を減少させることによって相互作用をしばしば増大させる限り[Varki,A.他、FASEB J.11:248〜55(1997)]、これは強力に、NKp46とHAのシアル結合部位との直接的な相互作用をサポートする。
【0179】
これらの発見は、2つのタイプのリガンドを介してNKp46が標的細胞に結合することを示すと解釈することができ、その第1は、NKp46に関連するシアル酸とウイルス性シアル酸受容体との相互作用に基づき、第2は、明らかにされていない細胞リガンドとの、シアル酸とは無関係な相互作用に基づく。前者は、調査を行ったNK細胞によるIV感染細胞の死滅の増大の明らかな原因である。NKの活性化に対する第2の相互作用の関与は依然として証明されていないが、おそらく、標的細胞とその他の因子によって同様に発現したリガンドの性質により様々であると考えられる。NKp46とウイルスHAとの相互作用が、その他の細胞リガンドとの相互作用を引き起こすのに十分であるかどうか、またはその他の細胞リガンドとの相互作用も必要とするかどうかは、依然として将来の研究の重要な課題である。
【0180】
NKp46とは無関係な手法でIV感染細胞を認識するNKクローン(例えばNK GALクローン17、図3C)が存在することは、ウイルス感染細胞の認識に関与するその他の溶解受容体が存在することを示す。ウイルス感染に伴う溶解の増大は抗HA mAbによって完全に阻止されるので、これらの受容体もおそらくHAを認識する。これらの受容体の誘発はやはり活性化受容体とシアル酸との相互作用に基づく可能性がある。少なくとも7つのウイルス科(family)のメンバーが、ウイルスを宿主に入れるための受容体としてシアル酸を利用するとすれば、これは、ウイルスの実質上のサブセットのNK細胞認識に関する一般的な方策を提示している。
【0181】
実施例7
SV感染721.221細胞に対するNKp44−Ig結合のアップレギュレーションは、抗HN mAbによって阻止される。
本明細書で前に述べたように、ウイルスHAは、NKp46受容体のリガンドとして識別された。NKp44受容体もウイルスHAに結合できるかどうかを試験するため、721.221細胞をSVに感染させて、NKp44−Igの結合が増大するかどうか試験を行った。NKp44−Igによる染色が10倍増加したことが観察された(表4)。この作用は、NKp44−IgおよびNKp46に特有のものであるが(表2も参照)、それはSV感染によって、試験を行ったその他のNK受容体Ig融合タンパク質の結合が変化しなかったためである(NKp30−Ig、CD16−Ig、KIR−1−Ig、またはNKAT−8−Ig(データは記載せず))。NKp44−Ig結合は、SV−HN、TC−1D6、TC−9C1[Peterhans,E.他、Virology.128:366〜376(1983)]、または135.7に対して向けられたmAbによって部分的に阻止されたが、その他の主なSV糖タンパク質、融合(F)タンパク質に特異的なmAb TC−9A1[Peterhans,E.他の同書(1983)]の場合は阻止されなかった(表4)。これは、NKp44−IgがSVからのHNと相互に作用できることを示している。
【0182】
SV−HN cDNAでトランスフェクトした293T細胞に対するNKp44−Ig結合の上昇
センダイHNに対するNKp44−Igの直接的な結合をさらに実証するため、センダイHN cDNAをコードする発現プラスミド(pca−svhn、Dr.Allen Portnerから寄贈)で一時的に293T細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトした48時間後、抗HN mAbを使用したときに効率的なHN染色が観察された(TC−1D6、図5)。同様のレベルの発現が135.7 mAbで染色した場合にも観察されたが、対照mAbの場合は観察されなかった(インフルエンザの抗HA、データは記載せず)。重要なことに、pca−svhでトランスフェクトした293T細胞のNKp44−Ig染色が2倍に増大したことも観察され(図5)、増大した特異性はNKp44に対するリガンドであることが確認された。その他のIg融合タンパク質(KIR−1−Ig、NKAT−8−Ig、またはCD16)を使用した場合は、試験を行った全ての細胞の染色に何の変化も観察されなかった。
【0183】
【0184】
721.221細胞(106/ml)を、100μl/mlのセンダイウイルスを含有する上澄みと共に一晩インキュベートした。細胞(感染したものまたは感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC標識したヤギ抗マウスIgまたはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示し、MFI数は、最も近い整数に丸めた。センダイウイルスに感染した721.221細胞と721.221細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色は、それぞれ4および3であった。結果は、4つの独立した実験の代表例である。
【0185】
実施例8
721.221/Cw6細胞のSV感染によって、高レベルのNKp44タンパク質を発現するNKクローンで媒介される抑制が停止する
次に、SVに細胞が感染することによってNK媒介型の溶解が増大する可能性について調査した。SV感染した721.221細胞と感染していない細胞との間には、NK媒介型の死滅に何の変化も観察されなかった(データは記載せず)。この現象についていくつかの説明をすることができる。その1つに、NK細胞が721.221細胞を効率的に溶解するという考えがあり、したがって別の溶解リガンド(SV血球凝集素)を添加することによって死滅を増加させないことが可能である。したがって本発明者等は、次に、クラスI MHCタンパク質を発現する721.221細胞をSVに感染させた場合にNKクローンの死滅パターンに何らかの変化が観察されるかどうかについて試験を行った。NKクローンを様々なドナーから調製し、初めにスクリーニングをして、HLA−Cw3、−Cw4、−Cw6、または−Cw7クラスI MHCタンパク質でトランスフェクトした721.221細胞により媒介される溶解の阻害について調査した。これらのトランスフェクタントの生成についてはO.Mandelboimにより記述されている[Mandelboim,O.他、J.Exp.Med.184:913〜922(1996)]。次に、クラスI MHCタンパク質を発現する721.221細胞により阻害されることがわかったNKクローンについて、SVに感染した同じ標的細胞に対し、試験を行った。721.221細胞がSVに感染すると阻害が停止し、その結果、試験を行ったNKクローンの約75%だけ溶解した。これらのクローンの全てが、NKp44タンパク質とNKp46タンパク質の両方を高レベルで発現した(データは記載せず)。1つの代表的なクローンを図6に示す。NKクローン66は、Cw6を発現する721.221細胞(721.221/Cw6)によって阻害される。NKクローン66を抗KIR2DL1 mAb HP3E4と共にインキュベートしたときには阻害の停止が観察されたが、細胞を対照mAb 12E7と共にインキュベートしたときには観察されなかった。(図6A)。721.221/Cw6細胞をSVに感染させた場合、可逆阻害も観察された。721.221/Cw6細胞を汎抗クラスI mAb147と共にインキュベートしたときに阻害の阻止が観察されるので、阻害は、KIR2DL1受容体とHLA−Cw6との相互作用によって可能になった(6B)。感染細胞を抗HA mAb135.7と共にインキュベートしたときに阻害が回復するので、可逆阻害は、感染細胞上でのHAの発現に依存するものであった(図6B)。NKクローン66を、721.221/Cw4細胞と共に、あるいは721.221/Cw3または721.221/Cw7によって阻害されるKIR2DL2を発現するその他のNKクローンと共にインキュベートしたときに、同様の結果が得られた(データは記載せず)。NKp44タンパク質を低レベルで発現する試験済みのNKクローンの約25%では、標的細胞をSVに感染させた場合、阻害パターンに何の変化も見られなかった。このためNKp44とSVのHAとの相互作用はおそらく、クラスI MHCタンパク質を発現するSV感染標的細胞によって媒介される阻害を克服することが必要と考えられる。
【0186】
実施例9
精製したHAは、ウイルス感染細胞に対する融合タンパク質NKp46−Ig結合およびNKp44−Igの結合を阻止する
感染した721.221細胞(野生型およびトランスフェクタント)の死滅に対するNKp44とNKp46の両方の関与については、721.221細胞の溶解がNKp44およびNKp46に依存するので、抗NKp44およびNKp46血清を使用するこの系では直接試験をすることができない[Cantoni C,C.他の同書(1999)、Biassoni R,A.他の同書(1999)、Pessino A,S.他の同書(1998)、Sivori S,D.他の同書(1999)]。したがって、種々の細胞型を使用してNKp44−Ig融合タンパク質がその他のウイルスの血球凝集素に結合できるかどうかについて、次に試験を行った。1106mel細胞(CD16陽性ヒトNK細胞によってほんの適量だけ溶解する細胞系[Mandelboim,O.他の同書(1999)])をIVに感染させ、染色してNKp44−Ig染色が上昇するかどうか調査した。1106mel細胞がIVに感染すると、NKp44−Ig染色が増大(約4倍)することが観察された(表5)。IV感染した1106mel細胞に対するその他のIg融合タンパク質、すなわちNKp30、CD16−Ig、KIR−1−Ig、およびNKAT−8−Igを含めたタンパク質の結合の増大が観察されなかったので、このNKp44−Ig染色は特異的なものであった(データは記載せず)。NKp44−Ig結合の増大は、H28−E23 mAbおよびH17−L2 mAbによって完全に阻止されたことが重要である(表5)。どちらのmAbも共にインフルエンザウイルスのHAに対して向けられる。SVから得られたHNに対して向けられるmAb(TC−1D6、TC−9C1、および135.7)を添加しても、何の影響もなかった(データは記載せず)。
【0187】
精製したHAが、感染細胞に対するNKp44またはNKp46の結合を阻止できるかどうかを見極めるため、他の部分で述べたように、PBS−BSA−Azid中の最終体積100μlで、様々なIg融合タンパク質10マイクログラムを精製済みのHAタンパク質40μgと共に氷上で2時間インキュベートした[Brand,C.M他、Nat.New Biol.238:145〜147(1972)]。図7は、精製したHAタンパク質40μgと共に、またはそのタンパク質なしで、NKp44−Ig(A)またはNKp46−Ig(B)をインキュベートした状態を示す(精製したHAタンパク質40μg未満を使用した場合、NKp46−IgまたはNKp44−Igの結合は阻止されないことが明らかであった)。次に混合物を、IVに感染しまたは感染していない1106mel細胞と共に氷上で2時間インキュベートし、前述と同じ染色手順を使用して[Mandelboim,O.他の同書(1999)]、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色し、Ig融合タンパク質の存在について調査した。図7は、2回実施した実験のうち1つの代表例を示す。SV感染721.221細胞を使用した場合に同様の結果が得られた。これらの結果は、ウイルスタンパク質HAとナチュラルキラー細胞活性化受容体NKp44およびNKp46との直接的な相互作用を示す。
【0188】
さらに、ELISAアッセイにおけるNKp46−IgおよびNKp44−Igと血球凝集素タンパク質との直接的な相互作用(図示せず)。
【0189】
インフルエンザウイルスに感染した細胞に対するNKp44−Igの結合は、 NKp44のシアリル化に依存する
SV HNとIV HAの両方は、Galに結合した末端Nアセチルノイラミン酸残基(シアル酸)を認識し、NKp44に対する結合が、NKp46に対するHAの結合(実施例6で述べた)と同様にNKp44上に発現したシアル酸残基を介して生じる可能性があることを示している。実際にIV感染細胞を、IVノイラミニダーゼ(感染細胞の表面に発現したその他の主なIV糖タンパク質)の酵素活性を阻止するmAb(NA2−1C21)と共に事前にインキュベートすることにより、IV感染細胞に対するNKp44−Igの結合が著しく高まる(表5)。さらにNKp44−Igは、HAがシアル酸に結合しないはしか(measles)[Maisner,A.およびHerrler,G. Virology 210:479〜481(1995)]に感染した標的細胞を、染色しなかった(データは記載せず)。最後に、かつ最も直接的なことには、NKp44−Igを細菌性ノイラミニダーゼで処理すると、IV感染していない細胞に対する結合が減少することなくIV感染した細胞に対する結合が減少する(図8)。NKp44−Igの処理は、フロー・サイトメトリーで測定した場合、感染していない1106mel細胞の染色に影響を与えず(図8)、SDS/PAGE分析によって試験を行ったタンパク質の完全性にも変化を与えなかった(データは記載せず)。脱シアリル化では、受容体−リガンド対の負の電荷の反発力を減ずることによってしばしば相互作用が増大するので[Varki,A.、FASEB J.11:248〜55(1997)]、これはNKp44とHAのシアル結合部位との直接的な相互作用を強力にサポートする。
【0190】
【0191】
1106mel細胞(106/ml)を、1000u/mlのA/PR/8/34インフルエンザウイルスと共にO.N.インキュベートした。細胞(感染したもの、または感染していないもの)を洗浄し、様々なmAbと共にインキュベートし、FITC結合したヤギ抗マウスIgで、またはNKp46−Ig融合タンパク質で染色し、その後、PE結合したヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示し、MFI数は最も近い整数に丸めた。インフルエンザに感染した1106mel細胞と、1106mel細胞の、PE結合した抗ヒトFcによるバックグラウンド染色はそれぞれ8および6であった。結果は、3つの独立した実験の代表例である。
【0192】
実施例10
IV感染した1106mel細胞の溶解の増大は、NKp44に対するポリクローナルmAbによって阻止される
上述の結果は、NKp44がIVとSVの両方の血球凝集素と結合できることを示していた。実施例5で実証されたように、1106mel細胞がIVに感染することによって、HAに対するmAbによって完全に阻止された1106mel細胞の溶解が増大した。しかし、抗NKp46血清がアッセイに含まれる場合、試験を行ったNKクローンの中で、いくつかの死滅表現型(完全阻害、部分阻害、または阻害なし)を観察することができた。1つの可能な説明とは、HAに結合することができる別の受容体が存在することである。したがってIVに感染した1106melの溶解について調べるため、NKクローンと、抗NKp44血清および抗NKp46血清の組合せを使用するアッセイにかけた。NKクローンは、限定希釈によってドナーMBから得られたPBLから調製した。試験を行った全てのクローン(合計で64)を、抗NKp44血清と抗NKp46血清の両方で陽性染色した。IVに感染した1106mel細胞(1106mel/Flu)の死滅の増大が、試験を行ったNKクローンの57%で観察された(図9)。1106mel/Flu溶解の増大の完全な阻害は、試験を行ったNKクローン、すなわち抗NKp46血清と共に、または抗NKp44およびNKp46血清の組合せと共に、事前にインキュベートしたNKクローンの26%で観察された(例えばクローン1、図9)。試験を行ったクローンの14%は、抗NKp44血清と抗NKp46血清の両方を独立に使用したときに部分阻害を示し、抗NKp44血清と抗NKp46血清の両方を組み合せたときに完全な阻害を示した(例えばクローン46、図9)。1106mel/Flu溶解の増大は、試験を行ったクローンの17%で阻止できなかった(例えばクローン8、図9)。最後に、このドナーから得られた試験を行ったクローンの43%で溶解の増大が観察されなかった(例えばクローン4、図9)。このような細胞のパーセンテージは、本明細書で前に示したように、それぞれのドナーによってかなり変わる可能性がある。1106mel/Flu細胞の増大の完全阻害は、抗NKp44血清のみがアッセイに含まれる場合、決して実現されなかった(データは記載せず)。1106melの効率的な溶解がより高いE:T比で観察された場合、抗CD16mAbと共に、または抗NKp44血清および抗NKp46血清と共に細胞をインキュベートすることによって、溶解の部分阻害が生じた(データは記載せず)。全ての抗体を組み合せた場合、1106mel溶解の効率的な阻害が観察された(データは記載せず)。
【0193】
このため、NKp46受容体と同様に、NKp44は、センダイウイルスとインフルエンザウイルスの両方の血球凝集素に結合することができ、この結合によって、感染細胞のNK細胞溶解が引き起こされる。ここで試験を行ったクローンの43%が、1106mel/Flu細胞の死滅の増大を示さない理由は、完全に理解されていない。1つの可能な説明は、感染が原因でアップレギュレートされまたはダウンレギュレートされ、またNKの死滅を調節するのに重要なその他のタンパク質に対する受容体を、これらのクローンが発現する可能性があることである。
【0194】
実施例11
ウイルスHAとの相互作用の原因としてのNKp46のドメイン2の識別
ウイルスHAとの相互作用におけるNKp46分子の種々のドメインの役割について、種々の欠失融合タンパク質を生成することによって調査をした。
【0195】
第1のNKp46細胞外ドメイン(a.a.#1〜120から−配列番号26により示される)ならびに第2の細胞外ドメイン(a.a.#121〜234−配列番号22により示される)をヒトIgG1のFc部分に融合させ、NKp46D1−IgおよびNKp46D2−Igをそれぞれ生成した。これらの構成をCOS−7細胞に一時的にトランスフェクトし、分泌した融合タンパク質をプロテインGカラムで精製した。ウイルスHAに対する結合がこれら2つのドメインの一方によって特に媒介されるかどうかを試験するため、両方の欠失融合タンパク質ならびに対照の完全融合タンパク質NKp46−IgおよびNKp44−Igに関し、ウイルス感染細胞に対する結合について試験を行った。したがって、721.221細胞をSVに感染させ、NKp46D1−IgまたはNKp46D2−Igの結合の増大について試験を行った。NKp46D2−Ig融合タンパク質による染色は約10倍増大したことが観察され(図10)、一方、721.221細胞のSV感染は、NKp46D1−Ig融合タンパク質のいかなる著しい結合も増大させなかった。この観察されたNKp46D2−Ig結合は、SV−HNに対して向けられた135.7mAbによってかなり阻止されたが、その他の主なSV糖タンパク質、融合(F)タンパク質に特異的なmAb TC−9A1[Peterhans,E.他の同書(1983)]の場合、または対照の12E7抗体によっては阻止されなかった(図10D)。これらの結果は、NKp46中のHA相互作用部分がドメイン2であることを示している。インフルエンザウイルスに感染した1106melで同様の実験を行ったが、NKp46のドメイン2は、観察されたウイルスHAとの相互作用を担うドメインであることが示された(図11)。このため、NKp46D1ではなくNKp46D2がウイルス感染細胞に結合することができ、さらに、この結合は抗HNmAbで阻止することができる。
【0196】
本明細書の実施例6および9で述べたように、NKp46およびNKp44のそれぞれに対するSV HNおよびIV HAの結合は、両方の受容体に発現するシアル酸残基を介して生じる。観察されたウイルスタンパク質に対するNKp46D2の結合もシアル残基によって媒介されるかどうかを見出すため、融合タンパク質を細菌のノイラミニダーゼで処理し、その後、感染細胞(SVに感染した721.221細胞およびIVに感染した1106細胞)と共にインキュベートした。図12に示すように、ノイラミニダーゼ(NA)を使用してシアル酸残基を除去すると、融合タンパク質の結合能力が著しく低下した。これらの結果は、IV感染した1106mel細胞またはSV感染した721.221細胞に対するNKp46D2−Igの結合がシアル酸に依存することを示している。
【0197】
実施例12
ヒトメラノーマ細胞での様々な溶解リガンド、特にNKp30の発現
メラノーマの患者を腫瘍浸潤リンパ球(TIL)で治療することによって、メラノーマの患者の40%にクラスI MHC消失変異体が生じることが、前に報告されている[Restifo,N.P.他、J.Natl.Cancer Inst.88:100〜108(1996)]。これは、腫瘍細胞中のβ2−ミクログロブリン発現のダウンレギュレーションに起因する。同じ腫瘍系は、NK細胞で媒介される死滅に対して様々な程度で影響を受けやすいことが、後に示された[Porgador,A.他、Proc Natl Acad Sci.94:13140〜13145(1997)]。さらに、これらのメラノーマ系の1つ、1106melは、試験を行ったCD16陰性NKクローンの多くによって非効率的に死滅することが示された[Mandelboim,O.他、Proc.Natl.Acad.Sci.96:5640〜5644(1999)]。
【0198】
クラスI MHC発現が不十分な様々なメラノーマ細胞(対照として使用するLB33melA1を除く)のNK認識におけるNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16の各受容体の役割を、本発明のNKp30、NKp44、NKp46、およびCD16 Ig融合タンパク質を使用した実験を行うことによって、調査した。ヒトIgG1 DNAに融合したCD99の細胞外ドメインをコードするcDNAを、対照として使用した。Ig融合タンパク質を、様々なメラノーマ細胞と共にインキュベートし、前述のように[Mandelboim,O.の同書(1999)]間接的な免疫染色により結合について分析した。一般に、NKp30−IgおよびNKp44−Ig融合タンパク質の場合に最高のメラノーマ細胞の染色が観察された(表6)。LB33melA1細胞では全てのIg融合タンパク質の染色はほとんど観察されず、細胞系はNK細胞によって死滅させることが困難なものであった(データは記載せず)。NK細胞によって死滅させることができる全てのその他の細胞系を、Ig融合タンパク質で様々な程度に染色した(表6)。
【0199】
【0200】
【図面の簡単な説明】
【図1】
様々なウイルスに感染した後の、NKp46リガンド発現のアップレギュレーション
721.221細胞(106/ml)を、センダイウイルスを含有する上澄み100μl/mlと共に一晩インキュベートした。A9細胞(24時間前に継代した半集密的な培養びん)を、MVM(1.5×107単位/ml)、EMCV(EMCVを含有する上澄み250μl/ml)、アデノウイルス(5×106単位/ml)、またはワクシニア(ワクシニアを含有する上澄み4ml)のいずれかと共に3時間インキュベートした。A9細胞を異なるウイルスと共にインキュベートした後、ウイルスを含有する媒質を除去して、培地を添加した。感染から18〜24時間後、細胞(感染しまたは感染していないもの)を採取し、洗浄し、NKp46−Ig融合タンパク質(太線)または対照のCD99−Ig(普通線)で染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。パネル内の数はNKp46−Ig染色のMFIを表す。結果は、2回実施した実験の代表的なものを示す。略語:Couはカウントの略である。
【図2】
NKp46Igによって促進される、センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞の溶解
A:センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞に対するNKp46−Igの結合。293T細胞を一時的に、対照(cont)PCDNA3プラスミドでトランスフェクトし(293T/MOCK)、またはセンダイウイルスのHNをコードするcDNAでトランスフェクトした(293T/pca−svhn)。48時間後、細胞を、TC−1D6 mAbで、またはKIR−1、NKAT−8、CD16、およびNKp46 Ig融合タンパク質で染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。対照は、FITC結合抗マウス(抗=α)抗体(mAbなし)で、またはPE結合抗ヒトFc抗体(Ig融合タンパク質なし)で染色した同じ細胞であった。結果は、3回実施した実験の代表的なものを示す。
BおよびC:センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞の溶解促進は、抗NKp46および抗HNmAbによって阻止される。トランスフェクションの48時間後、293T細胞、293T/MOCK細胞、および293T/pca−svhn細胞を35S−Metで標識し、洗浄した。次いで標識した細胞を、示したエフェクターと標的の比(E:T)で、対照血清(cont ser)または抗NKp46血清(ser)と共に事前にインキュベートしたNK GALと共にインキュベートした(B)。あるいは、標識細胞を、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートし、洗浄し、次いでNK GALと共にインキュベートした(C)。全ての実験で、NK細胞を50%のヒト血清(ser)と共に氷上で1時間、事前にインキュベートし、次いで洗浄してFc受容体をブロックした。結果は、3回実施した実験の代表的なものを示す。略語:Prot(タンパク質)、特異的溶解(sp ly)、比(ra)、MO(mock)。
【図3】
NK GALおよび誘導されたクローンによる、IVに感染した1106mel細胞の溶解
A:NK細胞を、抗体なしで、または対照(cont)抗CD99mAbと共に(12E7)、抗CD16mAb(抗=α)と共に(3G8)、対照血清(cont ser)と共に、抗NKp46血清と共に、氷上で1時間インキュベートした。次いでNK細胞を洗浄し、次いで1106mel細胞と共に、またはIVに感染した1106mel細胞と共に、示したE:Tの比(=ra)でインキュベートした。
B:IVに感染した1106mel細胞を、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートし、次いでNK GALと共に、示したE:Tの比でインキュベートした。結果は、3回実施した実験の代表的なものである。
C:限定希釈によって、NK GALから28のNKクローンを誘導した。ポリクローナル抗体を含有する血清を用いたブロッキング実験を、図1に関する説明文で述べたように実施した。E:Tの比は5:1であった。図に示すパーセンテージは、現れる1つのNKクローンと同様に振る舞ったクローンの%である。結果は、2回実施した実験の代表的なものである。全ての実験で、NK細胞を、50%のヒト血清と共に氷上で1時間、事前にインキュベートし、次いで洗浄して、Fc受容体をブロックした。略語:sp lyは特異的溶解の略であり、cont(対照)、ser(血清)であり、clはクローンの略である。
【図4】
IVに感染し、また感染していない1106細胞に対するNKp46−Igの結合に、NA処理が及ぼす影響
NKp46−Igを、ビーズ状アガロース(N―5254、SIGMA、St.Louis、Missouri)に結合した0.01Uの不溶性ノイラミニダーゼと共に、またはPBS(mock処理したもの、MO−trea)と共に、ローラ上で1時間、17℃でインキュベートした。IVに感染し、または感染していない1106細胞(Ce)を洗浄し、NA処理し(trea)またはmock処理したNKp46−Igで染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。AおよびBのパネルは、8回実施した実験のうち代表的な2つを示す。NAの活性は、NA処理したフェツイン、高度にシアリル化したタンパク質のSDS−PAGE分析により確認した。
【図5】
センダイHNcDNAでトランスフェクトした293T細胞に対するNKp44−Igの結合
Fugeneトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)を使用して、293T細胞を一時的に対照PCDNA3プラスミドでトランスフェクトし(293T/MOCK)、またはSVのHNをコードするcDNAでトランスフェクトした(293T/pca−svh)。48時間後、細胞を、TC−1D6 mAbで、またはKIR−1、NKAT−8、CD16、およびNKp46 Ig融合タンパク質で染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。対照は、FITC結合抗マウス抗体(mAbなし)で、またはPE結合抗ヒトFc抗体(Ig融合タンパク質なし)で染色した同じ細胞であった。結果は、2回実施した実験の代表的なものを示す。略語:sp lyは特異的溶解の略であり、MO(MOCK)、prot(タンパク質)である。
【図6】
抑制が妨げられるクラス1 MHCタンパク質を発現する721.221のSV感染
自動MACS機器(Miltenyi Biotec Inc.)を使用して、様々なドナーからNKクローンを誘導した。NKp44タンパク質およびNKp46タンパク質の存在に関しては抗NKp44およびNKp46血清を使用してクローンを染色し、NK抑制受容体の存在に関してはHP3E4 mAbを使用してクローンを染色した。現れるNKクローンのE:Tの比は約3:1であった。結果は、2回実施した実験の代表的なものを示す。
A:初めにNKクローンを、指示されるmAbと共に1時間インキュベートし、次いで標識した標的細胞と共にインキュベートしたことを示す。
B:初めに、指示されるmAbと共に氷上で1時間インキュベートし、次いでNK細胞と共にインキュベートした、標識された標的細胞を示す。
略語:sp lyは特異的溶解の略である。
【図7】
IVに感染し、また感染していない1106mel細胞に対するNKp46−IgおよびNKp44−Igの結合に、HAブロッキングが及ぼす影響
NKp44−Ig(上部パネル)またはNKp46−Ig(下部パネル)を、40μgの精製されたHAタンパク質なしで、またはそのような40μgの精製されたHAタンパク質と共に、インキュベートした。次に混合物を、IVに感染しまたは感染していない1106mel細胞と共にインキュベートし、PE結合ヤギ抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。
【図8】
IVに感染し、また感染していない1106mel細胞に対するNKp44−Igの結合に、NA処理が及ぼす影響
MFIは中央蛍光強度を示す。NKp44−Igを、ビーズ状アガロース(N―5254、SIGMA、St.Louis、Missouri)に結合した0.01Uの不溶性ノイラミニダーゼと共に、またはPBS(対照として)と共に、ローラ上で1時間、17℃でインキュベートした。IVに感染し、または感染していない1106mel細胞を洗浄し、NA処理しまたはmock処理したNKp44−Igで染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。図は、2回実施した実験のうち代表的な1つを示す。NAの活性は、NA処理したフェツイン、高度にシアリル化したタンパク質のSDS−PAGE分析により確認した。略語:No pr(タンパク質なし)、NA trea(NA処理)
【図9】
NKクローンによるIV感染1106mel細胞の溶解
限定希釈によって、NK系統のMBから64のNKクローンを誘導した。ポリクローナル抗体を含有する血清を用いたブロッキング実験を、実験手順で述べたように実施した。E:Tの比は2:1であった。図に示すパーセンテージは、現れる1つのNKクローンと同様に振る舞ったクローンの%である。1106mel/Flu+Cは、対照血清とのインキュベーションを示す。結果は、2回実施した実験の代表的なものである。全ての実験で、NK細胞を、50%のヒト血清と共に氷上で1時間、事前にインキュベートし、次いで洗浄して、Fc受容体をブロックした。略語:sp ly(特異的溶解)、cl(クローン)、α(抗)。
【図10】
ドメイン2は、SVのHVウイルスタンパクとの相互作用を引き起こす
721.221細胞を、SV上澄み100μlに感染させた。一晩インキュベートした後、感染した細胞を洗浄し、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、アッセイにかけて前述のように適切なIg融合タンパク質10μgで染色し[Mandelboim,O.他、(1999)の同書]、MFIは中央蛍光強度を示す。
【図11】
ドメイン2は、IVのHAウイルスタンパクとの相互作用を引き起こす
1106mel細胞を、IV 1000u/mlに感染させた。一晩インキュベートした後、感染細胞を洗浄し、様々なmAbと共に氷上で1時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、アッセイにかけて前述のように適切なIg融合タンパク質10μgで染色した[Mandelboim,O.他、(1999)の同書]。MFIは中央蛍光強度を示す。
【図12】
感染細胞および感染していない細胞に対するNKp46d2−Igの結合に、NA処理が及ぼす影響
指示される様々な融合タンパク質を、ビーズ状アガロース(N―5254、SIGMA、St.Louis、Missouri)に結合した0.01Uの不溶性ノイラミニダーゼと共に、またはPBS(mock処理したもの)と共に、ローラ上で1時間、17℃でインキュベートした。IVに感染し、または感染していない1106細胞、ならびにSVに感染し、または感染していない721.221細胞を洗浄し、NA処理し(trea)またはPBS処理した融合タンパク質で染色し、その後、PE結合抗ヒトFcで染色した。MFIは中央蛍光強度を示す。NAの活性は、NA処理したフェツイン、高度にシアリル化したタンパク質のSDS−PAGE分析により確認した。
A:NKp30−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
B:NKp44−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
C:NKp46−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
D:NKp46D1−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
E:NKp46D2−Ig融合タンパク質とのインキュベーションを示す。
Claims (82)
- 活性物質を標的細胞に向けることができるターゲティング複合体であって、
a.NKp46、NKp30、NKp44、またはこれらの機能的断片の1つ
を含む標的認識セグメント、および
b.細胞傷害性部分、
画像形成部分、および
Ig断片、からなる群から選択される前記活性物質を含む活性セグメント、
を含む前記複合体。 - 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項1記載の複合体。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2を含み、実質的に配列番号4および配列番号13のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する請求項2記載の複合体。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号22および配列番号23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する請求項2記載の複合体。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項1記載の複合体。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2を含み、実質的に配列番号9によって示されるアミノ酸配列を有する請求項5記載の複合体。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号24によって示されるアミノ酸配列を有する請求項5記載の複合体。
- 前記複合体が前記活性セグメントとしてIg断片を含む融合タンパク質であり、前記Ig断片がIg分子のFc部分であり、実質的に配列番号5により示されるアミノ酸配列によってコードされるものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
- 前記複合体が、前記標的細胞を死滅させかつ/前記標的細胞の増殖または細胞分裂を抑制することができる細胞毒または抗細胞物質から選択される細胞傷害性部分を前記活性セグメントとして含む結合体である請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
- 前記細胞毒または抗細胞物質が、合成毒、および植物、真菌、または細菌由来の毒素のいずれか1つである請求項9記載の結合体。
- 前記毒素が、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択される請求項10記載の結合体。
- 前記複合体が、常磁性物質、放射性物質、および蛍光原物質からなる群から選択される画像形成部分を前記活性セグメントとして含む結合体である請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
- 前記標的細胞が病的な細胞である請求項1記載の複合体。
- 前記病的な細胞が癌細胞である請求項13記載の複合体。
- 前記癌細胞が、癌腫、メラノーマ、リンパ腫、および肉腫からなる群から選択される請求項14記載の複合体。
- 前記標的細胞が病原性ウイルス感染細胞である請求項1記載の複合体。
- 前記病原性ウイルスが、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスのいずれか1つである請求項16記載の複合体。
- 前記標的認識セグメントが、前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することができ、前記結合がシアル酸を媒介している請求項17記載の複合体。
- NKp46−Ig融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターであって、前記タンパク質が、
a.NKp46またはその機能的断片を含む標的認識セグメント、および
b.Ig分子のFc部分である活性セグメント、
を含む前記発現ベクター。 - 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項19記載の発現ベクター。
- 前記NKp46断片が、実質的に配列番号1および配列番号11のいずれか1つにより示される核酸配列でコードされたNKp46分子のドメイン1および2を含み、Ig分子のFc部分が実質的に配列番号2により示される核酸配列でコードされる請求項20記載の発現ベクター。
- 前記NKp46断片が、実質的に配列番号19および配列番号20のいずれか1つにより示される核酸配列でコードされたNKp46分子のドメイン2を含み、Ig分子のFc部分が実質的に配列番号2により示される核酸配列でコードされる請求項20記載の発現ベクター。
- NKp44−Ig融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターであって、前記タンパク質が、
a.NKp44またはその機能的断片を含む標的認識セグメント、および
b.Ig分子のFc部分である活性セグメント、
を含む前記発現ベクター。 - 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項23記載の発現ベクター。
- 前記NKp44断片が、実質的に配列番号7により示される核酸配列でコードされたNKp44分子のドメイン1および2を含み、Ig分子のFc部分が実質的に配列番号2により示される核酸配列でコードされる請求項24記載の発現ベクター。
- 前記NKp44断片が、実質的に配列番号21により示される核酸配列でコードされたNKp44分子のドメイン2を含み、Ig分子のFc部分が実質的に配列番号2により示される核酸配列でコードされる請求項24記載の発現ベクター。
- 請求項21および22のいずれか一項に記載の発現ベクターにより形質転換した宿主細胞。
- 請求項25および26のいずれか一項に記載の発現ベクターにより形質転換した宿主細胞。
- 実質的に配列番号3および配列番号12により示される核酸配列によってそれぞれコードされた、実質的に配列番号6、配列番号14のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を含むNKp46−Ig融合タンパク質。
- 実質的に配列番号8により示される核酸配列によってコードされた、実質的に配列番号10により示されるアミノ酸配列を含むNKp44−Ig融合タンパク質。
- 請求項29記載の融合タンパク質を特異的に認識しかつその融合タンパク質に結合する抗体。
- 請求項30記載の融合タンパク質を特異的に認識しかつその融合タンパク質に結合する抗体。
- タンパク質上のエピトープを特異的に認識しかつそのエピトープに結合する抗体であって、前記タンパク質が、NK細胞活性化受容体NKp46およびNKp44のいずれか1つに対するリガンドである抗体。
- 前記リガンドが約70Kdの分子量を有するタンパク質である、135.7で示される請求項33記載の抗体。
- モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体からなる群から選択される、請求項31〜34のいずれか一項に記載の抗体。
- 検出可能な部分に結合した請求項35記載の抗体。
- 病的な状態を治療するための組成物であって、
a.前記病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識しその標的細胞
に結合することができる標的認識セグメントであって、NKp46、NK
p44、NKp30、またはこれらの生物学的に機能的な断片の1つを含
む前記認識セグメント、および
b.細胞傷害性部分およびIg断片からなる群から選択される活性セグメント、
を含む複合体を活性成分として含む前記組成物。 - 前記病的な状態が、癌腫、メラノーマ、リンパ腫、および肉腫からなる群から選択された癌疾患である請求項37記載の組成物。
- 前記病的な状態が、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスのいずれか1つによって引き起こされたウイルス感染である請求項37記載の組成物。
- NKp46、NKp44、またはこれらの機能的断片を含む標的認識セグメントが、前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することができ、前記結合がシアル酸を媒介している請求項39記載の組成物。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項37〜40のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号4および配列番号13のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項41記載の組成物。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号22および配列番号23のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項41記載の組成物。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項37〜40のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号9により示されるアミノ酸配列を有する請求項44記載の組成物。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号24により示されるアミノ酸配列を有する請求項44記載の組成物。
- 前記活性セグメントが、実質的に配列番号5により示されるアミノ酸配列でコードされたIg分子のFc部分であるIg断片である請求項42、43、45、および46のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記活性セグメントが、前記標的細胞を死滅させかつ/または前記標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することができる細胞毒または抗細胞物質から選択された細胞傷害性部分である請求項42、43、45、および46のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記細胞毒または抗細胞物質が、合成毒、および植物、真菌、または細菌由来の毒素のいずれか1つである請求項48記載の組成物。
- 前記毒素が、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択される請求項49記載の組成物。
- サンプル中の病的な細胞の存在を検出するための診断用組成物であって、
a.前記病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識しその標的細胞
に結合することができる標的認識セグメントであって、NKp46、NK
p44、NKp30、またはこれらの生物学的に機能的な断片の1つを含
む前記認識セグメント、および
b.常磁性物質、放射性物質、および蛍光原物質からなる群から選択される画
像形成部分である検出可能な画像形成セグメント、
を含む前記組成物。 - 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項51記載の診断用組成物。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号4および配列番号13のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項52記載の診断用組成物。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号22および配列番号23のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項52記載の診断用組成物。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項51記載の診断用組成物。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号9により示されるアミノ酸配列を有する請求項55記載の診断用組成物。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号24により示されるアミノ酸配列を有する請求項55記載の診断用組成物。
- 標的認識セグメントが、前記標的細胞の表面に発現したリガンドに結合することができる請求項51〜57のいずれか一項に記載の診断用組成物。
- 前記標的細胞が癌細胞である請求項58記載の診断用組成物。
- 前記癌が、癌腫、メラノーマ、リンパ腫、および肉腫からなる群から選択された癌疾患である請求項59記載の診断用組成物。
- 治療上有効な量の複合体またはそれを含む医薬品を対象に投与することを含む、対象の病的な状態を治療するための方法であって、前記複合体が、
a.前記病的な状態に関与する病的な標的細胞を特異的に認識しその標的細胞
に結合することができる第1の標的認識セグメントであって、NKp46
、NKp44、NKp30、またはこれらの生物学的に機能的な断片の1
つを含む前記認識セグメント、および
b.細胞傷害性部分およびIg断片からなる群から選択される活性セグメント、
を含む前記方法。 - 前記病的な状態が、癌腫、メラノーマ、リンパ腫、および肉腫からなる群から選択される癌疾患である請求項61記載の方法。
- 前記病的な状態が、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、MVM、ECMV、およびヘルペスウイルスのいずれか1つによって引き起こされるウイルス感染である請求項61記載の方法。
- 標的認識セグメントNKp46、NKp44、またはこれらの機能的断片が、前記標的細胞の表面に発現するリガンドに結合することができ、前記結合がシアル酸で媒介される請求項63記載の方法。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項61〜64のいずれか一項に記載の方法。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号4および配列番号13のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項65記載の方法。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号22および配列番号23のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項65記載の方法。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項61〜64のいずれか一項に記載の方法。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号9により示されるアミノ酸配列を有する請求項68記載の方法。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号24により示されるアミノ酸配列を有する請求項68記載の方法。
- 前記活性セグメントが、実質的に配列番号5により示されるアミノ酸配列でコードされたIg分子のFc部分であるIg断片である請求項66、67、69、および70のいずれか一項に記載の方法。
- 前記活性セグメントが、前記標的細胞を死滅させかつ/または前記標的細胞の増殖および/または細胞分裂を抑制することができる細胞毒または抗細胞物質から選択された細胞傷害性部分である請求項66、67、69、および70のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細胞毒または抗細胞物質が、合成毒、および植物、真菌、または細菌由来の毒素のいずれか1つである請求項72記載の方法。
- 前記毒素が、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、α−サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、エンドトキシン、またはエンドトキシンのリピドA部分からなる群から選択される請求項73記載の方法。
- 対象の悪性細胞を診断し画像化するための方法であって、造影剤を前記対象の血流に導入するステップと、標的悪性細胞に発現したNKp46リガンド、NKp30リガンド、およびNKp44リガンドのいずれか1つに対する前記造影剤の結合を検出し定量するステップとを含み、前記造影剤が、
a.前記悪性細胞を特異的に認識しその悪性細胞に結合することができる第1
の標的認識セグメントであって、NKp46、NKp30、NKp44、
またはこれらの生物学的に機能的な断片の1つを含む前記認識セグメント
、および
b.常磁性物質、放射性物質、および蛍光原性物質からなる群から選択される
画像形成部分である活性セグメント、
を有する複合体を含む前記方法。 - 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項75記載の方法。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号4および配列番号13のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項76記載の方法。
- 前記NKp46断片が、NKp46分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号22および配列番号23のいずれか1つにより示されるアミノ酸配列を有する請求項76記載の方法。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1とドメイン2の少なくとも一方を含む請求項75記載の方法。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン1および2を含み、実質的に配列番号9により示されるアミノ酸配列を有する請求項79記載の方法。
- 前記NKp44断片が、NKp44分子のドメイン2を含み、実質的に配列番号24により示されるアミノ酸配列を有する請求項79記載の方法。
- 前記悪性細胞が、癌腫、メラノーマ、リンパ腫、および肉腫からなる群から選択される請求項75〜81のいずれか一項に記載の方法。
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