JP2004504055A - 真核生物ゲノムにおけるdnaの置換、転座およびスタッキングの方法 - Google Patents

真核生物ゲノムにおけるdnaの置換、転座およびスタッキングの方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、真核細胞における部位特異的ポリヌクレオチド置換のための組成物および方法を含む。これらの方法は、単一ポリヌクレオチド置換、ならびに遺伝子スタッキング方法を含む。本発明で使用するための好ましい真核細胞は、植物細胞および哺乳動物細胞である。

Description

【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2000年7月21日に出願した米国仮出願第60/220,062号の優先権の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、真核細胞への核酸の特異的かつ安定な組込みを得るための方法の分野に関連する。より具体的には、本発明は、標的構築物における核酸の部位特異的置換を得るための方法に関する。本発明は、φC31インテグラーゼのような真核生物リコンビナーゼポリペプチドを使用する部位特異的組換え系を利用する。
【0003】
[背景]
1980年代の初めの先駆的な形質転換の躍進以来、多くの研究への取り組みは、当然のことながら技術の横の広がりに向けられてきた。この重要視の結果、様々な植物種を形質転換することが今や可能である。しかしながら、相反して形質転換プロセス自体の効率を向上させるのに専念するような注目は少なくなった。多くの微生物系に比較して、植物の形質転換はやや時代おくれのように感じる。何百万もの独立した形質転換体が多くの微生物系を用いて日常的に得られるのに対し、植物では、その数は1〜2桁の範囲であるのが一般的である。したがって、遺伝子発見に対するショットガン形質転換アプローチは、本気では受け入れられなかったオプションである。
【0004】
高度に一貫性のある表現型により比較的数少ない代表的クローンの解析を必要とする微生物遺伝子転換と異なり、植物遺伝子転換は、非常に変わりやすいレベルとパターンの発現を示す別個の形質転換体を伴う。したがって、典型的なDNA構築物に関して、20〜30個の別個の一次形質転換体が必要である。新たな特徴を有する商業的開発のために、何百もの別個の形質転換体を、適切な導入遺伝子構造および発現を有する少数のものに関してスクリーニングする。
【0005】
植物中の導入遺伝子発現における高い可変性の根本的な理由は、完全には理解されていないが、少なくとも4つの要素がこの現象に関与している。(1)組織培養:体細胞クローンの変化が、組織培養再生植物に関連してきた。染色体構造および倍数性、DNA配列、DNA修飾、およびトランスポゾン活性の変化はすべて、体細胞クローン変異体で報告されている(Peshke and Phillips, 1992 Advances in Genetics, 30:41−75; Kaeppler et al., 2000 Plant Mol. Biol., 43:179−88)。(2)組込み部位:テロメアまたはヘテロクロマチンのような染色体構造は、隣接した遺伝子の発現に影響を及ぼすことが知られている(Stavenhagen and Zakian, 1994 Genes and Dev., 8:1411−22; Howe et al., 1995 Genetics, 140:1033−45; Wallrath and Elgin, 1995 Genes and Dev. 9:1263−77)。導入遺伝子はランダムな位置で組込まれるため、導入遺伝子発現に対する染色体の影響は、別個の形質転換体間で異なると予測することができる(Meyer, 2000 Plant Mol. Biol., 43:221−34)。(3)導入遺伝子重複性:形質転換植物は、多くの場合、可変数の導入遺伝子を含む。遺伝子発現およびコピー数との間に正の相関関係が存在するのは稀である。対照的に、多くの場合、余分の完全または部分的導入遺伝子コピーが、転写後および転写遺伝子サイレンシングに関連してきた(Muskens et al., 2000 Plant Mol. Biol., 43:243−60; Matzke et al., 2000 Plant Mol. Biol., 43:401−15)。(4)遺伝子突然変異:任意の遺伝子操作に関して予測されるように、点突然変異、欠失または再配列を獲得する可能性が常に存在する(Battacharyya et al., 1994 Plant J., 6:957−68)。
【0006】
植物遺伝子転換における現法は、多くの場合、挿入遺伝子座において複雑な組込み構造をもたらす。典型的に、導入分子の複数の完全および/または部分的コピーが、直接および/または間接反復として配列される。また、構築物を含む所望の生物または植物の挿入後には不必要な選択マーカーおよび他の調節領域が挿入される。これらの複雑なパターンは、研究に関してかならずしも妨害になるとは限らないが、商業用途には望ましくない。構造的証拠書類は、規制による許可に前もって必要なものであり、簡素な組込みパターンは容易に特徴付けられる。反復DNAもまた、構造的および機能的に不安定な傾向にある。反復配列は、染色体内および染色体間組換えに関与し得る。複雑な組込み遺伝子座が適切な表現型をもたらした場合でさえ、繁殖および播種生産プログラムに関与する数多くの交雑により、その規定発現パターンとともに、その本来の構造を維持するのは困難であり得る。複数遺伝子コピーは、特に幾つかが間接反復として配列する場合に、相同性依存的遺伝子サイレンシングに関連することが多い(Iyer et al., 2000 Plant Mol. Biol., 43:179−88; 上述のMuskens et al., 2000)。
【0007】
部位特異的組換え系に基づく方法は、ゲノムから過剰の関連コピーを除去することで、ランダムに組込まれたシングルコピー導入遺伝子を得るために(Srivastava and Ow, 1999 Proc. Natl. Acad, Sci. USA, 96:11117−11121; Srivastava and Ow, 2001 Plant Mol. Biol. 46:561−566)、またゲノム中の既知の染色体位置でDNAを挿入するために(O’Gorman et al., 1991 Science, 251:1351−55; Baubonis and Sauer, 1993 Nucl., Acids Res., 21:2025−29; Albert et al., 1995 Plant J., 7:649−59)、記載されてきた。これらの方法は、自由に可逆的である部位特異的組換え系を利用する。これらの可逆的系としては、以下の:バクテリオファージP1由来のCre−lox系(上述のBaubonis and Sauer, 1993; Albert et al., 1995 Plant J., 7:649−59)、酵母Saccharomyces cerevisiaeのFLP−FRT系(上述のO’Gorman et al., 1991)、酵母Zygosacchromyces rouxiiのR−RS系(Onouchi et al., 1995 Mol. Gen. Genet. 247: 653−660)、バクテリオファージMu由来の修飾Gin−gix系(Maeser and Kahmann, 1991 Mol. Gen. Genet., 230:170−76)、枯草菌プラスミド由来のβ−リコンビナーゼsix系(Diaz et al., 1999 J. Biol. Chem. 274: 6634−6640)、および細菌トランスポゾンTn1000由来のγδ−res系(Schwikardi and Dorge, 2000 FEBS let. 471: 147−150)が挙げられる。Cre、FLP、R、Gin、β−リコンビナーゼ、およびγδは、リコンビナーゼであり、lox、FRT、RS、gix、six、およびresは、それぞれ組換え部位である(Sadowski, 1993 FASEB J., 7:750−67; Ow and Medberry, 1995 Crit. Rev. Plant Sci. 14:239−261による書評)。
【0008】
上記組換え系は、単一ポリペプチドリコンビナーゼが同一またはほとんど同一の配列の2つの部位間の組換えを触媒するという特性の共通点がある。各組換え部位は、リコンビナーゼが結合する逆位反復が隣接した、鎖交換が起きる短い非対称のスペーサー配列から構成される。スペーサー配列の非対称性は、組換え部位に配向性を付与し、組換え反応の結果を作用する。シスの直接または間接的に配向された部位間の組換えは、それぞれ介在DNAを除去するか、または反転させる。トランスの部位間の組換えは、2つの直鎖状DNA分子の相互転座、または2つの分子の少なくとも1つが環状である場合には同時組込みを引き起こす。組換えにより生成する産物部位自体が続く組換え用基質であるため、反応は自由に可逆的である。しかしながら、実際には、2つの組換え部位が密接に関連した分子内相互作用の蓋然性が、未関連の部位間の分子間相互作用よりもかなり大きいことから、除去は本質的には不可逆的である。結論としてゲノム組換え部位に挿入されるDNA分子は容易に除去されるであろうという。
【0009】
自由に可逆的な組換え系に対して、不可逆反応を触媒することができる組換え系が存在する。バクテリオファージ λ由来のかかる系の1つでは、λインテグラーゼは、それぞれattBおよびattPとして既知の非類似性配列を、attLおよびattR由来のものに組換える。この反応には、標的部位のDNA超らせんと付帯タンパク質IHFおよびFISとが必要である。attL×attRからattBおよびattPを形成する逆反応には、XISとして知られるさらなる除去特異的タンパク質が必要である。突然変異インテグラーゼタンパク質は、これらの要件なしで分子間反応ではなく分子内反応を行うことができる。これらの突然変異λインテグラーゼを用いて、Lorbach等(2000 J. Mol. Biol., 296: 1175−81)は、ヒトゲノムに導入された組換え標的中のDNA反転を実証した。
【0010】
従来技術で記載される、より有用な不可逆的組換え系は、ストレプトミセスファージφC31組変え系である。68kDaのインテグラーゼタンパク質は、attB部位をattP部位で組換える。これらの部位は、クロスオーバー点でたった3つの塩基対の相同性を共有する。この相同性は、インテグラーゼタンパク質の結合部位と推定される逆位反復に隣接する。φC31attBおよびattPの両方に関する最小の既知機能的サイズは、およそ30〜40塩基対である。同種の結合部位を組換える際のφC31インテグラーゼ酵素の効力は、recA突然変異大腸菌において、in vitroおよびin vivoで実証された(Thorpe & Smith, 1998 Proc.Nat’l. Acad. Sci. USA, 95: 5505−10)。ファージλ系とは異なり、φC31組込み反応は、それが宿主細胞を必要としないという点で簡素である。ファージλ突然変異インテグラーゼ系とは異なり、分子間反応ならびに分子内反応が可能である。
【0011】
可逆的組換え系を使用する従来技術では、DNAがゲノムから除去または元の状態へと交換されないような複雑なストラテジーが必要である。1)DNA分子がシングルコピーとして導入され、2)挿入DNAが容易に元の状態へと除去されず、3)遺伝子組込みプロセスと関連するが、その後もはや必要とされない過剰のDNAを除去することができ、および/または4)さらなるDNAを、すでに挿入されたDNAに隣接する既存部位に追加することができるような、導入遺伝子の安定な部位特異的組込みを達成するための組成物および方法が、当該技術分野で必要とされている。
【0012】
[発明の概要]
本発明は、限定数の組込みおよび/または除去工程を伴う、導入遺伝子の安定な部位特異的組込みを得るための組成物および方法の必要性を満たす。これらの組込みおよび/または除去工程は、1)DNA分子がシングルコピーとして導入されること、2)挿入DNAが容易に元の状態へと除去されないこと、3)遺伝子組込みプロセスに関連するが、その後もはや必要とされない過剰DNAを除去することができること、および/またはさらなるDNAを、すでに挿入されたDNAに隣接する既存部位に追加することができることを導き出す。
【0013】
特に、本発明は、ファージφC31由来のもののような不可逆的組換え部位および不可逆的リコンビナーゼの使用を含む、真核細胞における遺伝子置換の方法を提供する。本発明は、導入されるDNAのシングルコピーの安定な組込みを提供するだけでなく、1または2工程でドナー構築物によりレセプター構築物を置換させる様式での不可逆的リコンビナーゼの使用について初めて記載する。したがって、本明細書中に記載する置換方法は、従来技術の組込みおよび除去方法よりも優れている。
【0014】
本発明は、具体的には、1)2つの不可逆的組換え部位(これ以降、「IRS」と称する)が隣接したレセプターポリヌクレオチドを含むレセプター構築物を含む真核細胞を準備し、2)2つの不可逆的相補組換え部位(これ以降、「CIRS」と称する)が隣接したドナーポリヌクレオチドを含むドナー構築物を、上記細胞に導入し、そして3)上記レセプター構築物および上記ドナー構築物を、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させる工程とを含む、真核細胞において部位特異的遺伝子置換を獲得する方法を提供する。好ましくは、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドは、φC31リコンビナーゼであり、リコンビナーゼは、第1(IRS)および第2(CIRS)の型の組換え部位間の組換えを触媒し、ドナーポリヌクレオチドによりレセプターポリヌクレオチドを置換させ、および置換構築物を形成させる(図1A)。φC31組変え部位の場合では、IRSがattPである場合、CIRSはattBであり、あるいはIRSがattBである場合、CIRSはattPである。
【0015】
本発明の方法は、複数の型のドナー構築物由来のポリヌクレオチドを、複数の型のレセプター構築物に移入させるのに使用することができる。例えば、本発明は、プラスミドのような環状ベクター由来のポリヌクレオチドを染色体に、あるいはある染色体由来のあるDNAセグメントを別の染色体に移入させるのに使用することができる。本発明はまた、ポリヌクレオチドが2つのCIRS間に位置する限り、どんな長さの直鎖状ポリヌクレオチドを移入するのにも使用することができる。好ましくは、移入されるべきDNAは、1000〜2000bpである。本発明のこの態様により、cDNAライブラリー由来のポリヌクレオチドを、染色体のようなレセプター構築物に直接的に移入させることが可能となり、ポリヌクレオチドをプラスミドベクターにクローニングするというさらなる介在工程が省かれる。
【0016】
また、置換構築物を可逆的リコンビナーゼと接触させることを含む、置換構築物中の望ましくないヌクレオチド配列を欠失する方法も、本発明に含まれる。これらの方法では、ドナー構築物およびレセプター構築物はそれぞれ、可逆的リコンビナーゼにより認識される2つまたはそれ以上の可逆的組換え部位(これ以降、「RRS」と称する)を含む。一実施形態では、可逆的リコンビナーゼは、Creであり、組換え部位は、lox部位である。
【0017】
置換および欠失ストラテジーの両方を組み合わせて、本発明は、真核細胞における遺伝子スタッキングの方法を提供する。本発明の方法は、抗生物質耐性マーカーのような、さらなる懸念をもたらし得る他の不要のDNAを組み込むことなく、ゲノム位置での一連の形質遺伝子の正確なスタッキングをもたらす。この方法について、以下でさらに詳述する。
【0018】
これらの上記方法および下記方法は、ポリヌクレオチドで形質転換することができる、任意の真核細胞にポリヌクレオチドを安定に組み込むのに使用することができる。好ましい実施形態では、真核細胞は、植物または動物細胞である。したがって、本発明はさらに、トランスジェニック哺乳動物および植物を生産する方法を含む。本明細書に記載するトランスジェニック植物の生産方法は、1)2つの不可逆的組換え部位(IRS)が隣接した染色体レセプターポリヌクレオチドを含むレセプター植物を準備する工程と、2)2つの不可逆的相補組換え部位(CIRS)が隣接した染色体ドナーポリヌクレオチドを含むドナー植物を準備する工程と、3)ハイブリッドトランスジェニック植物を生産するために、上記ドナー植物と上記レセプター植物とを交雑させる工程を含む。本発明によれば、この方法により生産されるトランスジェニック植物は、IRSとCIRSとの間の組換え、およびドナーポリヌクレオチドによるレセプターポリヌクレオチドの置換を触媒して、それによりトランスジェニック植物において染色体置換構築物を形成する不可逆的リコンビナーゼポリペプチドを発現する。好ましい実施形態では、レセプター植物は、シングルコピーレセプター系統である。さらなる実施形態では、置換構築物を含むが、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドを発現しないトランスジェニック植物の子孫を選択する。
【0019】
図はすべて、概略図(正確な縮尺率ではない)を表す。遺伝子転写用プロモーターは、図中で明瞭に示しているが、転写終結を促し、あらゆるコード領域の下流に存在するターミネーターは、簡素化するために、個々のエレメントとして示していない。
【0020】
[詳細な説明]
本発明は、真核細胞において安定な部位特異的ポリヌクレオチド置換または挿入を得る方法を提供する。例えば、本発明は、部位特異的様式で、遺伝子を第2の遺伝子で置換する方法を提供する。本発明の方法は、すでに利用可能な方法を超える利点を幾つか提供する。例えば、本発明の方法により、選択マーカーを必要とせずに、真核細胞のゲノムに直鎖状DNA分子を導入することが可能である。したがって、例えば、cDNAをプラスミドベクターにクローニングする中間工程を必要とせずに、cDNA分子を真核細胞に導入することができる。本発明はまた、真核細胞の染色体に所望のポリヌクレオチドを導入した後、DNAを細胞に導入するのに使用した選択マーカー等のような不必要なDNAを除去する手段を提供する。さらに、単一染色体遺伝子座で、2つまたはそれ以上の遺伝子を「スタッキング」するか、または順次導入する本発明の方法を使用することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、真核細胞の染色体においてポリヌクレオチドの安定な部位特異的置換を達成するためのリコンビナーゼ系を使用する。本明細書中で使用する場合「リコンビナーゼ系」という用語は、リコンビナーゼ(可逆的または不可逆的)および組換え反応においてその基質として作用する組換え部位を指す。それにもかかわらず、本明細書中に記載した方法は、複数型のドナー構築物から複数型のレセプター構築物へとポリヌクレオチドを移入するのに使用することができる。例えば、本発明は、プラスミドのような環状ベクターから染色体へ、ある環状ベクターから別の環状ベクターへ、またはある染色体から別の染色体へ、ポリヌクレオチドを移入するのに使用することができる。より重要なことに、本発明は、染色体または環状ベクターに直鎖状ポリヌクレオチドを移入するのに使用することができる。好ましくは、直鎖状ポリヌクレオチドは、置換されるレセプター部位のDNAとほぼ同じ長さである。環状ベクターという用語が環状染色体を含むことが理解されよう。
【0022】
本発明の一実施形態では、真核細胞において部位特異的遺伝子置換を得る方法は、不可逆的リコンビナーゼ、ならびにドナー構築物およびレセプター構築物を含む細胞を準備することを包含し、ここでドナー構築物は、2つまたはそれ以上のIRSを含み、レセプター構築物は、2つまたはそれ以上のCIRSを含む。不可逆的リコンビナーゼは、IRSとCIRSとの間の組換えを触媒し、レセプターポリヌクレオチドをドナーポリヌクレオチドで置換し、それにより置換構築物を形成する(図1参照)。好ましい実施形態では、レセプター構築物は、2つのIRSを含み、ドナー構築物は、2つのCIRSを含む。別の実施形態では、レセプター構築物は、3つのIRSを含み、ドナー構築物は、3つのCIRSを含む。
【0023】
本明細書中で使用する場合、「不可逆的リコンビナーゼ」という用語は、2つの相補不可逆的組換え部位間での組換えを触媒することができるが、さらなる因子の補助を得ずに、この組換えにより形成されるハイブリッド部位間の組換えを触媒することはできないポリペプチドを指す。不可逆的リコンビナーゼポリペプチド、および不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸は、当該技術分野で記載されており、日常的な方法を用いて得ることができる。例えば、φC31インテグラーゼをコードする核酸断片を含むベクターは、米国特許第5,190,871号に記載されており、アクセッション番号B−18477の下で、Northern Regional Research Laboratories, Peoria, Illinois 61604から利用可能である。他の不可逆的リコンビナーゼの例としては、大腸菌ファージP4リコンビナーゼ(Ow & Ausubel, 1983 J. Bacteriol. 155: 704−713)、大腸菌ファージラムダインテグラーゼ(Lorbach et al., 2000 J. Mol. Biol., 296: 1175−81)、リステリアA118ファージリコンビナーゼ(Loessner et al., 2000 Mol. Micro. 35: 324−340、およびアクチノファージR4 Sreリコンビナーゼ(Matsuura et al., 1996 J. Bacteriol. 178: 3374−3376)が挙げられる。
【0024】
したがって、「不可逆的組換え部位」および「IRS」という用語は、不可逆的リコンビナーゼ用の2つの基質の1つ目として作用することができ、その部位での組換え後にハイブリッド組換え部位へと改変される、組換え部位を指す。「相補不可逆的組換え部位」および「CIRS」という用語は、不可逆的リコンビナーゼ用の2つの基質の2つ目として作用することができ、その部位での相同組換え後にハイブリッド組換え部位へと改変される組換え部位を指す。したがって、本発明の一実施形態では、ベクタードナー構築物は、1つまたはそれ以上のCIRSを含み、染色体レセプター構築物は、1つまたはそれ以上のIRSを含む。別の実施形態では、染色体ドナー構築物の両方が2つのCIRSを含み、染色体レセプター構築物は、2つのIRSを含む。
【0025】
不可逆的リコンビナーゼおよびその対応するIRSの一例は、φC31インテグラーゼ、ならびにattBおよびattP部位である。attB部位およびattP部位は、IRSまたはCIRSのいずれかを指すことができることが理解されよう。attBがIRSである場合、attPはCIRSでなくてならない。逆に、attPがIRSである場合、attBはCIRSでなくてはならない。φC31インテグラーゼは、真核細胞では見られないさらなる因子の非存在下にて、attB×attPの反応のみを触媒する。リコンビナーゼは、attBとattPとの間の組換え時に形成されるattLとattRハイブリッド組換え部位との間の組換えを媒介することはできない。φC31インテグラーゼのようなリコンビナーゼは単独で逆反応を触媒することができないため、φC31attB×attPの組換えは安定である。したがって、これらのリコンビナーゼの使用は、ハイブリッド部位がリコンビナーゼ用の基質として作用することができ、したがって組換え反応の逆転をもたらすCre−loxまたはFLP−FRT系のような他の組換え系とは異なる。例えば、標的部位への環状分子の挿入は、同じ導入DNAのが逆の除去を導き得る。不可逆的リコンビナーゼは、逆反応を触媒することができず、したがって組込みは安定である。
【0026】
より一般的には、「組換え部位」という用語は、組換え事象用の基質として作用することができるリコンビナーゼにより認識されるヌクレオチド配列を指す。「組換え部位」という用語内には包含されないが、本発明はまた、「偽組換え部位」の使用を含む。偽組換え部位は、真核染色体において天然に存在し、かつリコンビナーゼ用の基質として作用することができるポリヌクレオチド配列である。偽組換え部位は、例えば、PCT出願第PCT/US99/18987(国際公開第00/11155号)に記載される。
【0027】
組換え部位は一般に、配向性を有しており、換言すると、それらはパリンドロームではないことを理解されたい。組換え部位は典型的に、コアまたはスペーサー領域で分離される左および右アームを含む。したがって、attB組換え部位は、BOB’から構成され、ここでBおよびB’は、それぞれ左および右アームであり、Oはスペーサー領域である。同様に、attPは、POP’であり、PおよびP’は、アームであり、Oは、同様にスペーサー領域である。attBとattP部位との間の組換え、および標的での付随する核酸の組込み時に、組込んだDNAに隣接する組込み部位を「attL」および「aatR」と称する。したがって、上述の専門用語を用いると、aatLおよびattR部位は、それぞれBOP’およびPOB’から構成される。本明細書中でのほとんどの表現では、「O」は省略され、attBおよびattPは例えば、それぞれBB’およびPP’と称される。互いに関する組換え部位の配向性は、どの組換え事象が起こるかを決定することができる。組換え部位は、2つの異なる配向性であってもよく、すなわち直接的に配向されるか(同じ方向)、または逆に配向され得る。組換え部位が、単一核酸分子状に存在し、互いに対して直接的に配向される場合、リコンビナーゼにより触媒される組換え事象は典型的に、介在核酸の除去である。組換え部位が逆に配向される場合、任意の介在配列が典型的に反転される。
【0028】
任意の適切な方法により、組換え部位を含む真核細胞に、リコンビナーゼを導入することができる。例えば、ポリペプチド形態にあるリコンビナーゼを、例えばマイクロインジェクションまたは他の方法により導入することができる。しかしながら、現在好ましい実施形態では、リコンビナーゼをコードする遺伝子を細胞に導入する。遺伝子の発現は、リコンビナーゼの生産をもたらし、次に、それが、相当する組換え部位間での組換えを触媒する。さらに、従来の形質転換方法により、レセプターおよびドナー構築物を、真核細胞に導入することができる。必要ならば、例えば米国特許第6,114,660号に記載されるように、複雑な組込みパターンの分離により、シングルコピー導入遺伝子の構築を容易にするのに、逆方向組換え部位を使用することができる。あるいは、分子スクリーニング方法から、シングルコピートランスジェニックレシピエントを得ることができる。
【0029】
本発明の方法は、宿主生物のゲノムにポリヌクレオチドを安定に組み込むために使用することができる。上述するように、本発明は、1)2つのIRSが隣接したレセプターポリヌクレオチドを含むレセプター構築物を含む真核細胞を準備し、2)2つのCIRSが隣接したドナーポリヌクレオチドを含むドナー構築物を上記細胞に導入し、そして3)上記レセプター構築物および上記ドナー構築物を、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させる工程とを含む、真核細胞において部位特異的遺伝子置換を得る方法を提供する。図1Aは、この事象体系を例示する。例えばCre−lox組換え(ここで、Creは、loxPをloxPで、lox511をlox511で組換える)を用いた可逆的リコンビナーゼ系(図1B参照)の使用もまた、DNA交換反応(lox511は、野生型loxP配列の変異体である)を引き起こすであろうことに留意されたい。しかしながら、交換反応は可逆的であり、したがって、不可逆的リコンビナーゼ系により触媒される不可逆反応よりも低効率である。好ましくは、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドは、φC31リコンビナーゼであり、リコンビナーゼは、IRSとCIRSとの間の組換えを触媒し、ドナーポリヌクレオチドによるレセプターポリヌクレオチドの置換をもたらす。
【0030】
本発明の一実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、所定の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーターを含む。「プロモーター」は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合に関与したDNA領域を指す。「誘導プロモーター」とは、例えば温度、pH、転写因子および化学物質のような環境因子または発達因子により発現レベルが変更可能である遺伝子の発現を誘導するプロモーターを指す。DNAセグメントは、別のDNAセグメントとの機能的関係に置かれる場合に、「作動可能に連結される」。例えば、シグナル配列用DNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合には、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結され、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写を刺激する場合には、コード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結されるDNA配列は近接しており、シグナル配列の場合には、近接しており、かつリーディングフレーム内にある。しかしながら、例えばエンハンサーは、それらがその転写を制御するコード配列と近接する必要はない。連結は、利便性のよい制限部位、またはその代わりに挿入されるアダプターもしくはリンカーでの連結により達成される。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「所定の遺伝子」は、宿主細胞または宿主生物に所望の形質を付与するポリペプチドをコードする。所望の形質は、例えば、油または脂肪酸産生の増加、もしくはもっと単純には、宿主細胞または宿主生物のよる所定の遺伝子でコードされるポリペプチド産生の増加であり得る。「所定の遺伝子」は、本発明により限定されず、真核細胞で発現され得る任意の遺伝子を含むことが当業者には理解されよう。
【0032】
ドナー構築物、そしてより具体的にはドナーポリペプチドにおいてプロモーターへ所定の遺伝子を作動可能に連結することに加えて、レセプター構築物において1つまたはそれ以上のプロモーターを含むこともまた望ましい。好ましい実施形態では、レセプター構築物は、2つのIRSのうちの一方に隣接する1つのプロモーターを含む。より好ましくは、プロモーターは、2つのIRSのうちの一方から5’方向に位置する。レセプター構築物におけるIRSに隣接したプロモーターの配置により、組換え事象後にドナーポリペプチドの発現が可能である。さらなる実施形態では、レセプター構築物は、選択マーカーまたはリコンビナーゼ遺伝子自体に作動可能に連結されるさらなるプロモーターを含む。
【0033】
プロモーターは、所定の遺伝子に自然に関連し得るか、あるいは異なる遺伝子または異なる種から得られる異種プロモーターであり得る。トランスジェニック植物または他の生物のすべての組織中の遺伝子の直接発現が望ましい場合、「構成的」プロモーターを使用することができ、それは一般に、ほとんどの環境条件、および発達または細胞分化の状態下において活性である。植物で使用するための適切な構成的プロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域および領域VIプロモーター、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のT−DNAに由来する1’または2’−プロモーター、および当業者に既知の植物において活性な他のプロモーターが挙げられる。他の適切なプロモーターとしては、ゴマノハグサモザイクウイルス由来の完全長転写プロモーター、アクリンプロモーター、ヒストンプロモーター、チュブリンプロモーター、マンノピンシンターゼプロモーター(MAS)、特にアラビドプシス(Sun and Callis, 1997 Plant J., 11(5):1017−1027)、mas、MacまたはダブルMacプロモーターに由来する様々なユビキチンまたはポリユビキチンプロモーター(米国特許第5,106,739号にて、およびComai et al., 1990 Plant Mol. Biol. 15:373−381で記載される)、および当業者に既知の様々な植物遺伝子由来の他の転写開始領域が挙げられる。かかる遺伝子としては、例えば、アラビドプシス由来のACT11(Huang et al., 1996 Plant Mol. Biol., 33: 125−139)、アラビドプシス由来のCat3(GenBank第U43147号、Zhong et al., 1996 Mol. Gen. Genet., 251:196−203)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)由来のステアロイルアシルキャリアタンパク質デサチュラーゼをコードする遺伝子(GenBank第X74782号、Solocombe et al., 1994 Plant Physiol., 104:1167−1176)、トウモロコシ由来のGPc1(GenBank第X15596号、Martinez et al., 1989 J. Mol. Biol., 208:551−565)、およびトウモロコシ由来のGpc2(GenBank第U45855号、Manjunath et al., 1997 Plant Mol. Biol., 33:97−112)が挙げられる。
【0034】
植物用の他の有用なプロモーターとしては、TiまたはRi−プラスミド由来、植物細胞由来、プロモーターが植物中で機能的であることがわかっている植物ウイルスまたは他の宿主由来のものも挙げられる。植物中で機能し、したがって本発明の方法で使用するのに適切な細菌プロモーターとしては、オクトピンシンテターゼプロモーターおよびノパリンシンターゼプロモーターが挙げられる。適切な内因性植物プロモーターとしては、リブロース−1,6−二リン酸(RUBP)カルボキシラーゼ小サブユニット(ssu)プロモーター、α−コングリシニンプロモーター、ファゼオリンプロモーター、ADHプロモーター、および熱ショックプロモーターが挙げられる。
【0035】
一般に、発現されるポリヌクレオチド(例えば、所定の遺伝子)は、発現カセット中に存在し、それは、ポリヌクレオチドが、所定の宿主細胞で機能的な発現制御配列(例えば、プロモーターおよびターミネーター)に作動可能に連結されていることを意味する。大腸菌で使用するための発現カセットは、T7、trp、またはラムダプロモーター、リボソーム結合部位、および好ましくは転写終結シグナルを含む。真核細胞に関しては、制御配列は典型的に、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルス等に由来するエンハンサー、およびポリアデニル化配列を任意に含むプロモータを含み、またスプライスドナーおよびアクセプター配列を含んでもよい。酵母では、利便性のよいプロモーターとしては、GAL1−10(Johnson and Davies, 1984 Mol. Cell. Biol., 4: 1440−1448)、ADH2(Russell et al., 1983 J. Biol. Chem., 258:2674−2682)、PHO5(Meyhack et al., 1982 EMBO J., 6:675−680)、およびMFα(Herskowitz and Oshima, 1982, in The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces (eds. Strathern, Jones, and Broach) Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, N.Y., pp. 181−209)が挙げられる。
【0036】
あるいは、特定組織中の所定の遺伝子発現を誘導するか、そうでなければより正確な環境または発達制御下にあるプロモーターを使用することができる。かかるプロモーターを本明細書では「誘導」または「抑制」プロモーターと称する。誘導プロモーターにより転写に影響し得る環境条件の例としては、病原体攻撃、嫌気性条件、エチレン、温度上昇、または光の存在が挙げられる。発達制御下のプロモーターとしては、葉、根、果実、または花のようなある種の組織のみで転写を開始するプロモーターが挙げられる。プロモーターの作動もまた、ゲノム中のその位置により様々であり得る。したがって、誘導プロモーターは、ある位置で完全または部分的に構成的になり得る。誘導プロモーターは多くの場合、リコンビナーゼ遺伝子の発現を制御するのに使用され、したがって、組換え反応の時期を制御することが可能となる。
【0037】
トマト由来の組織特異的E8プロモーターは、所望の遺伝子産物が果実中に存在するように遺伝子発現を誘導するのに特に有用である。例えば、Lincoln et al., 1988 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 84:2793−2797; Deikman et al., 1988 EMBO J., 7: 3315−3320; Deikman et al., 1992 Plant Physiol., 100: 2013−2017を参照されたい。他の適切なプロモーターとしては、胚貯蔵タンパク質をコードする遺伝子由来のものが挙げられる。光誘導性であり、光合成組織のみで活性なシロイヌナズナの1,5−リブロース二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(「ssu」プロモーター)、葯特異的プロモーター(欧州特許第344029号)、および例えばシロイヌナズナの種子特異的プロモーター(Krebbers et al., 1988 Plant Physiol., 87:859)を含めたさらなる器官特異的、組織特異的、および/または誘導外来プロモーターもまた既知である(例えば、Kuhlemeier et al., 1987 Ann. Rev. Plant Physiol., 38:221に引用される参照文献を参照)。例示的な緑色組織特異的プロモーターとしては、トウモロコシホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)プロモーター、小サブユニットリブロースビスカルボキシラーゼプロモーター(ssRUBISCO)、およびクロロフィルa/b結合タンパク質プロモーターが挙げられる。プロモーターはまた、国際公開第93/07278号に記載されるような植物TrpA遺伝子から単離されるプロモーターのような髄特異的プロモーターであってもよい。
【0038】
他の生物に関する誘導プロモーターとしては、例えばアラビノースプロモーター、lacZプロモーター、メタロチオネインプロモーター、および熱ショックプロモーター、ならびに当業者に既知の多くの他のプロモーターが挙げられる。S. pombeのような酵母において有用な抑制プロモーターの例は、ビタミンB1により抑制可能なPmntプロモーターである。
【0039】
本発明を用いて、上述のプロモーターの1つまたはそれ以上に作動可能に連結される所定の遺伝子をレセプター細胞に移入することができ、より具体的にはレセプター構築物に組み込むことができる。さらに、レセプター構築物に所定の遺伝子を組み込んだ際に、レセプター構築物中のプロモーターに所定の遺伝子を作動可能に連結することができる。本発明の1つの利点は、所定の遺伝子を、センスまたはアンチセンス配向でレセプター構築物に挿入し、したがってセンスまたはアンチセンスmRNAとして転写することができることである。所定の遺伝子のセンスおよびアンチセンス発現の両方は、所定の遺伝子を互いに対して逆位である2つのIRSと隣接させ、レセプターポリヌクレオチドを互いに対して逆位である2つのCIRSと隣接させることで達成することができる(例えば図5参照)。このストラテジーは、ドナー構築物がcDNAライブラリー由来のcDNAのような直鎖状DNA構築物である場合に特に有用である。したがって、本発明は、1)互いに対して逆位である2つのIRSが隣接した所定の遺伝子を含むドナー構築物、2)互いに対して逆位である2つのCIRSが隣接したレセプターポリペプチドに隣接したプロモーターを含むレセプター構築物、および3)不可逆的リコンビナーゼポリペプチド、を含む真核細胞を包含し、ここでドナー構築物とレセプター構築物を接触することにより、結果としてIRSとCIRSとの間の組換え、およびドナーポリヌクレオチドによるレセプターポリヌクレオチドの置換が生じる。本発明はさらに、1)a)互いに対して逆位である2つのIRSが隣接した所定の遺伝子を含むドナー構築物、b)互いに対して逆位である2つのCIRSが隣接したレセプターポリペプチドに隣接したプロモーターを含むレセプター構築物、およびc)不可逆的リコンビナーゼポリペプチド、を真核細胞に導入すること、および2)IRSとCIRSとの間の組換え、およびドナーポリペプチドによるレセプターポリペプチドの置換が起きるように、ドナー構築物およびレセプターを、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させることとを含む、所定の遺伝子のアンチセンス発現を達成する方法を含む。次に、アンチセンス配向で所定の遺伝子を有する置換構築物を含む真核細胞を、当業者に既知の方法で選択する。
【0040】
本発明はまた、コンカテマーDNA分子のシングルユニットコピーを組み込むのに特に有用である。遺伝子銃送達のような細胞へのDNAのある導入方法は、多くの場合、多数の連結DNA分子の挿入に関連している。このことは、導入環状プラスミドDNAの切断により生産される直鎖状DNA分子に先だつ連結により引き起こされると考えられる。本発明は、コンカテマーDNA内のシングルユニットコピーを、コンカテマーの残部を用いずに、レセプター標的部位に組み込むことができる方法を提供する。このストラテジーは、場合によっては、図3Aに例示するように、無傷の環状DNAの組込みよりも効率的である。高い効率は、基質の利用可能性に起因する。直接DNA送達方法は、高い割合の染色体外分子のコンカテマー化を生産し、それは同時組込み反応用のシングルコピー環状基質の数を減少させる。交換反応に関して、図3B、または図10および11のように、基質の唯一の要件がドナーポリヌクレオチドに隣接する2つのCIRSであるため、コンカテマーは、依然として効果的である。
【0041】
部位特異的遺伝子置換が本発明の宿主細胞で起きるためには、リコンビナーゼポリペプチドは、細胞中に存在しなくてはならない。本発明の幾つかの実施形態では、リコンビナーゼの導入は、リコンビナーゼをコードする核酸を細胞に導入することで達成される。リコンビナーゼをコードする遺伝子は、細胞において一過的または安定的に発現され得る。ドナー構築物の導入前、後またはそれと同時に、リコンビナーゼ遺伝子を細胞に導入することができる。リコンビナーゼ遺伝子は、ドナー構築物自体または別個のベクター内に存在することができる。図5A〜Bは、リコンビナーゼ遺伝子が別個のベクター上に存在する場合の本発明の一実施形態を示す。しかしながら、リコンビナーゼ遺伝子は、レセプター構築物内に、より好ましくはレセプターポリヌクレオチド内に存在することが好ましい。図6A〜Bは、リコンビナーゼ遺伝子がレセプターポリヌクレオチド内に存在する好ましい部位特異的置換ストラテジーを示す。他の実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子は、トランスジェニック真核生物、例えばトランスジェニック植物、動物、真菌類等に挿入された後、IRSおよびCIRSを含むドナーならびにレセプター構築物を含む生物と交雑される。したがって、本発明は、組換え部位を含む核酸、ならびにリコンビナーゼコードポリヌクレオチド配列が標的真核細胞で機能するプロモーターに作動可能に連結される核酸を提供する。
【0042】
所望の遺伝子置換が起きた細胞の選択を容易にするために、標的構築物は、(好ましくは組換え部位間に)ネガティブ選択マーカーを含むことができる。組込み用構築物の導入およびリコンビナーゼとの接触後、続いて細胞に対してネガティブ選択を行い、ネガティブ選択マーカーを保持する細胞を排除する。ネガティブ選択マーカーの適切な例は、当業者には既知であり、例えば、ガンシクロビルと接触すると哺乳動物細胞を死滅させる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。この方法により、抗生物質耐性遺伝子または他の選択マーカーのような外来性DNAを有する生じた形質転換細胞を用いずに、所望の遺伝子置換に関して選択することができる。図4は、その様なネガティブ選択マーカーを利用した好ましい部位特異的置換ストラテジーを示す。
【0043】
また本発明には、置換構築物を第2のリコンビナーゼと接触させることを含む、置換構築物中の望ましくないヌクレオチド配列を欠失する方法が含まれる。これらの方法では、ドナー構築物およびレセプター構築物はそれぞれ、可逆的リコンビナーゼにより認識される(またはそれと適合している)2つまたはそれ以上の可逆的組換え部位(これ以降、「RRS」と称する)を含む。しかしながら、第2のリコンビナーゼが不可逆的リコンビナーゼである場合も、本方法は作動し得る。図7は、可逆型(図7A)または不可逆型(図7B)のいずれかの第2のリコンビナーゼ系を用いた、もはや必要のないDNAの欠失を表し、ここで対応するIRSおよびCIRSをattP−2およびattB−2として示す。
【0044】
不可逆的リコンビナーゼと同様に、可逆的リコンビナーゼは、2つの相補的RRS間の組換えを触媒する。組換えにより生成される産物部位はそれ自体続く組換え用の基質であるため、リコンビナーゼおよび組換え部位を「可逆的」と称する。適切な可逆的リコンビナーゼ系は、当業者に既知であり、例えばCre−lox系が挙げられる。Cre−lox系では、組換え部位を「lox部位」と称し、リコンビナーゼを「Cre」と称する。lox部位が平行配向にある(すなわち、同一方向である)場合、Creは、介在ポリヌクレオチド配列の欠失を触媒する。lox部位が逆位にある場合、Creリコンビナーゼは、介在ポリペプチド配列の反転を触媒する。この系は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Sauer, B., 1987 Mol Cell Biol., 7:2087−2096)、哺乳動物細胞(Sauer et al., 1988 Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 85:5166−5170; Sauer et al., 1989 Nucleic Acids Res., 17:147−161)、ならびにタバコ(Dale, et al., 1990 Gene, 91: 79−85)およびアラビドプシス(Osborne et al., 1995 Plant J., 7(4):687−701)のような植物を含む様々な宿主細胞で機能する。植物でのCre−loxリコンビナーゼ系の使用はまた、米国特許第5,527,695号およびPCT出願国際公開第93/01283号に記載されている。lox511(Hoess R. et al., 1986 Nucleic Acids Res., 14:2287−2300)、lox66、lox71、lox76、lox75、lox43、lox44(Albert H. et al., 1995 Plant J., 7(4):649−659)を含む幾つかの種々のlox部位が知られている。
【0045】
幾つかの他の組換え系もまた、これら用途で使用するのに適している。これらとしては、例えば酵母のFLP/FRT系(Lyznik, L.A. et al., 1996 Nucleic Acids Res., 24(19):3784−9)、ファージMuのGinリコンビナーゼ(Crisona, N.J. et al., 1994 J. Mol. Biol., 243(3):437−57)、大腸菌のPinリコンビナーゼ(例えば、Kutsukake et al., 1985 Gene, 34(2−3):343−50)、赤痢菌属由来のPinB、PinDおよびPinF(Tominaga A et al., 1991 J. Bacteriol., 173(13):4079−87)、ならびにpSR1プラスミドのR/RS系(Araki, H. et al., 1992 J. Mol. Biol., 225(1):25−37)が挙げられる。したがって、リコンビナーゼ系は、大量で数が増加しつつある供給源から利用可能である。本発明の一実施形態では、可逆的リコンビナーゼは、Creであり、RRSはlox部位である。
【0046】
可逆的組換え部位を用いる場合、ドナー構築物およびレセプター構築物中の両方のRRSは同一であるか、またはほぼ同一である。ドナー構築物中のRRSは、逆に配向しており、レセプター構築物中のRRSは、逆に配向しているのがまた好ましい。これらの実施形態では、ドナー構築物によるレセプター構築物の部位特異的置換は、直接的に配向されたRRS対を含む置換構築物を生じる。したがって、置換構築物中の直接的に配向された可逆的組換え部位の1つまたはそれ以上の対のある1つの成員は、レセプター構築物に由来し、1つまたはそれ以上の対の他の成員は、ドナーポリヌクレオチドに由来する。置換構築物を可逆的リコンビナーゼと接触させることにより、直接的に配向されたRRS間のポリヌクレオチド配列が除去される。RRSを含む例示的構築物を図7〜13に示す。
【0047】
本発明の一実施形態では、所望の最終構築物中で不必要な置換構築物中のポリヌクレオチド配列を上述の方法を用いて欠失させる(各種例に関して図7〜13を参照)。より具体的には、図10のように、ドナー構築物は、選択マーカー、2つのRRSが隣接する所定の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーターを含み、このセグメント全体が、2つのIRSに隣接している。ドナー構築物中の2つのRRSは、逆に配向している。レセプター構築物は、インテグラーゼコード領域を含むレセプターポリヌクレオチド、プロモーターおよび選択マーカーを含み、ここでレセプターポリヌクレオチドは、2つのCIRSおよびプロモーターに隣接しており、レセプターポリヌクレオチドおよびプロモーターは、2つのRRSに隣接している。レセプター構築物中の2つのRRSは、逆に配向しており、レセプター構築物中の各RRSは、ドナー構築物中のRRSにとって組換え性である(例えば、図9参照)。別の実施形態では、IRSは、互いに対して逆位であり、CIRSは、たがいに対して逆位である(図11を参照)。
【0048】
上述の方法のほかに、本発明は、特定染色体遺伝子座で所定の複数のポリヌクレオチドを順次「スタッキング」する方法も提供する。スタッキングは、最終産物中において不必要なDNAを組み込む必要なく達成される。この方法の2つの実施形態の概略図を図8および9に示す。本発明のスタッキング方法では、レセプター構築物は、先述のものと同一である(図7Aに示した)。これらの方法で使用するドナー構築物(図8A)は、所定遺伝子、および単一のCIRS(例えば、φC31系のattB)を含み、これらの成分は、逆位RRS(例えばlox部位)対に隣接している。また、選択マーカーコード領域がドナー構築物中に存在するが、選択マーカー用のプロモーターは存在しない。好ましくは、このマーカーは、レセプター構築物で使用したものと異なる。第2のCIRS(例えば、φC31系のattB)は、選択マーカーコード領域の上流にある。
【0049】
上述するような従来型の方法を用いて、レセプター構築物を宿主細胞の染色体に組み込む。同様に、望ましい場合は、例えば米国特許第6,114,600号に記載されるような複雑な組換えパターンの分離により、シングルコピー導入遺伝子の構築を容易にするために、隣接逆位組換え部位を使用することができる。あるいは、分子スクリーニング方法から、シングルコピートランスジェニックレシピエントを得ることができる。
【0050】
次に、ドナー構築物を、その染色体にレセプター構築物が組み込まれた細胞に導入する。不可逆的リコンビナーゼ(例えば、φC31)と接触すると、ドナー構築物のattB部位とレセプター構築物上のattP部位との間で組換えが起こる(図8A〜B)。ドナー構築物中には2つのattB部位が存在するため、いずれか部位がゲノムattP部位と組換えすることができる。所定のヌクレオチオドの下流にあるattB部位がattPと組換えする場合、生じる組換え事象は、選択マーカーsel2(図示していない)の発現を活性化しないであろう。他方で、選択マーカーコード領域の上流にあるattB部位がattPと組換えする場合、レセプター構築物中のattPに隣接して存在するプロモーターは、選択マーカーコード領域に作動可能に連結されるようになるであろう(図8B)。これにより、後者の類の組込み事象に関して選択することが可能となる。生じた構造は、形質遺伝子の機能に必要のない2つのDNA断片間に所定のポリヌクレオチドおよび関連attB部位を有する。したがって、これらの外来性断片は、直接的に配向されたRRS(例えば、lox)部位ではさまれたDNAのリコンビナーゼ媒介性欠失により除去することができる(図8B〜C)。
【0051】
外来性断片の除去後に、宿主細胞は、逆に配向されたRRS(例えばlox)対が隣接した所望のポリヌクレオチドおよびCIRS(例えば、attB)のみを保持する。したがって、attB部位は、第2の所定の遺伝子を含む第2のドナー構築物による2回目の組換え用の標的として使用することができる(図8C〜図8E)。両方の選択マーカーが染色体から除去されたため、同じ2つのマーカーの一方をこの第2の組換えに使用することができる。組換えおよび除去反応は、第2、第3、および続く組込み用構築物を用いて望ましいように繰り返される(図8D〜J)。これにより、互いに隣接した一連のポリヌクレオチドが生じる。遺伝子スタッキングはまた、逆位配向性にある不可逆的組換え部位を用いて達成することができる。このストラテジーの例を図9A〜Jに図示する。
【0052】
典型的に、真核細胞に導入されるレセプターおよびドナー構築物、ならびに他の構築物は、組換え発現技法を用いて調製される。組換え発現技法には、組換え核酸の構築およびトランスフェクトした細胞中での遺伝子の発現が含まれる。これらの目的を達成するための分子クローニング技法は、当該技術分野で既知である。組換え核酸の構築に適切な様々なクローニングおよびin vitro増幅方法は、当業者に既知である。多くのクローニングの実施により、当業者に指示するのに十分なこれらの教示および説明の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Volume 152, Academic Press, Inc., San Diegom CA (Berger)、およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1998 Supplement) (Ausubel)に見られる。
【0053】
ポリヌクレオチド構築物の構築は一般に、細菌において複製することが可能なベクターの使用を必要とする。細菌からプラスミドを精製するための大量のキットが市販されている。その適切な使用に関しては、製造業者の説明書に従うべきである(例えば、EasyPrepJ、FlexiPrepJ(ともに、Pharmacia Biotech)、StrataCleanJ(Startagene)、およびQIAexpressExpressionSystem(Qiadgen)を参照)。次に、さらに単離して精製したプラスミドを、他のプラスミドを生産するように操作し、細胞をトランスフェクトするのに使用し、あるいは植物を感染および形質転換するためにアグロバクテリウム・チュメファシエンスに組み込むことができる。アグロバクテリウム属が形質転換の手段である場合、シャトルベクターが構築される。ストレプトミセス属またはバシラス属でのクローニングも可能である。
【0054】
上述のように、選択マーカーは、多くの場合、ポリヌクレオチド構築物に、および/または真核細胞に構築物を導入するのに使用されるベクターに組み込まれる。これらのマーカーにより、所定のポリヌクレオチドを含む細胞のコロニーの選択が可能である。多くの場合、ベクタードナー構築物は、例えば大腸菌、または標的細胞に導入される前にベクターが複製される他の細胞で機能的な1つの選択マーカーを有するであろう。第2の選択マーカーも、組込み用構築物に含まれ得るが、その選択マーカーの除去が望ましい場合、マーカーは、所定のポリヌクレオチドに隣接する組換え部位の対の外側に置かれる。
【0055】
大腸菌用の選択マーカーの例としては、抗生物質(すなわち、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、エリスロマイシン)に対する耐性を特徴付ける遺伝子、またはβ−ガラクトシダーゼのような他の型の選択可能な酵素活性を付与する遺伝子、あるいはラクトースオペロンが挙げられる。哺乳動物細胞で使用するのに適切な選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)、または薬剤耐性を付与する原核細胞遺伝子であるgpt(キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、これはミコフェノール酸で選択することができる)、neo(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、これはG418、ハイグロマイシンもしくはピューロマイシンで選択することができる)、およびDHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ、これはメトトレキセートで選択することができる)が挙げられる(Mulligan & Berg, 1981 Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 78:2072; Southern & Berg, 1982 J. Mol. Appl. Genet., 1:327)。
【0056】
植物細胞用の選択マーカーは、多くの場合、例えばカナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、またはクロラムフェニコールのような殺生剤または抗生物質に対する耐性、あるいはクロルスルフロンまたはBastaのような除草剤耐性を付与する。選択マーカーに適したコード配列の例は、抗生物質カナマイシンに対する耐性を付与する酵素ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするneo遺伝子(Beck et al., 1982 Gene, 19:327)、酵素ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードし、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を付与するhpt遺伝子(Gritz and Davies, 1983 Gene, 25:179)、および除草剤化合物ホスフィノスリシンおよびビアラホスに対する耐性を付与するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼをコードするbar遺伝子(欧州特許第242236号)である。
【0057】
1つよりも多い所定の遺伝子が真核細胞に導入される場合、各外因性核酸に異なる選択マーカーを使用することが一般的に望ましい。このことにより、所望の外因性核酸の両方を含む細胞に関して同時に選択することが可能となる。
【0058】
上述の組成物および方法は、ポリヌクレオチドを任意の真核細胞に安定に組み込むのに使用することができる。本発明の真核細胞の非限定的な例としては、動物、植物、真菌、細菌および他の微生物由来の細胞が挙げられる。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞で使用することができる部位特異的置換方法の例は、図4および5に見られる。別の実施形態では、真核細胞は、植物細胞である。植物細胞で使用することができる部位特異的置換方法の例は、図6に見られる。幾つかの実施形態では、細胞は、多細胞生物、例えばトランスジェニック植物または動物の一部である。本発明の方法は、トランスジェニックコムギ、トウモロコシおよび動物を用いた場合のような、トランスジェニック物質を得るのが困難な状況で特に有用である。これらの状況では、まれに起こるシングルコピー挿入を発見することは、多数の別個に得られるトランスジェニッククローンをあらかじめ獲得することを必要とし、それ自体多大な努力を要する。特に所定の植物標的としては、例えばコメ、トウモロコシ、コムギ、ライムギ、オオムギ、バナナ、ヤシ、ユリ、ラン、およびスゲを含む単子葉植物である。例えば、タバコ、リンゴ、ジャガイモ、ビート、ニンジン、ヤナギ、ニレ、カエデ、バラ、キンポウゲ、ペチュニア、フロックス、スミレ、およびヒマワリを含む双子葉植物もまた適切な標的である。
【0059】
したがって、本発明はさらに、1)2つのIRSが隣接した染色体レセプターポリヌクレオチドを含むレセプター植物をし、2)2つのCIRSが隣接した染色体ドナーポリペプチドを含むドナー植物を準備し、そして3)トランスジェニック植物を生産するように、上記ドナー植物と上記レセプター植物を交雑させる工程とを含む、トランスジェニック植物の生産方法を包含し、ここで上記ドナー植物または上記レセプター植物のいずれかは、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドを含む。ドナーおよびレセプター植物は、同一もしくは異なる属または種であり得る。本発明のこの態様の一実施形態を図12に示す。
【0060】
この方法で生産されるトランスジェニック植物は、IRSとCIRSとの間の組換え、およびドナーポリヌクレオチドによるレセプターポリヌクレオチドの置換を触媒し、それによりトランスジェニック植物中に染色体置換構築物を形成する不可逆的リコンビナーゼポリペプチドを発現する。好ましい実施形態では、レセプター植物は、シングルコピーレセプター系統である。さらなる実施形態では、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドを発現しないトランスジェニック植物の子孫を選択する。他の好ましい実施形態では、染色体置換構築物は、ドナーポリヌクレオチドに作動可能に連結されるプロモーターを含み、より好ましくは、該プロモーターは、レセプター構築物に由来する。本発明はまた、上述のトランスジェニック植物を、可逆的リコンビナーゼをコードする核酸を含む植物と交雑させることを包含し、ここで染色体置換構築物は、可逆的リコンビナーゼに適合する直接的に配向された可逆的組換え部位(RRS)の1つまたはそれ以上の対をさらに含む(図12BおよびC参照)。
【0061】
当業者に既知の幾つかの手段のいずれかにより、組換え部位および/またはリコンビナーゼコード遺伝子を含むポリヌクレオチド構築物を、標的細胞および/または生物に導入することができる。例えば、様々な従来の技法により、DNA構築物を、植物の培養または器官のいずれかで植物細胞へ導入することができる。例えば、DNA構築物は、DNA粒子照射のような遺伝子銃方法を用いて植物細胞に直接導入することができ、あるいはDNA構築物は、植物細胞プロトプラストのエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションのような技法を用いて導入することができる。粒子媒介性形質転換技法(「遺伝子銃」としても既知である)は、Klein et al., 1987 Nature, 327:70−73; Vasil, V. et al., 1993 Bio/Technol., 11:1553−1558、およびBecker, D. et al., 1994 Plant J., 5:299−307に記載されている。これらの方法は、小ビーズまたは粒子のマトリクス内に、または表面上に核酸を有する小粒子による細胞浸透を含む。遺伝子銃PDS−1000Gene Gun(Biorad, Hercules, CA)は、ヘリウム圧を使用して、DNA被覆金またはタングステンミクロキャリアを標的細胞に向けて加速する。このプロセスは、植物、細菌、真菌、藻類、無傷動物細胞、組織培養細胞、および動物胚を含む生物由来の広範な組織および細胞に適用可能である。動物および患者の生組織用の本質的に穏やかなエレクトロポレーション方式であれる電子パルス送達を使用することが可能である(Zhao, 1995 Advanced Drug Delivery Reviews, 17:257−262)。
【0062】
他の形質転換方法も、当業者には既知である。マイクロインジェクション技法が当該技術分野で既知であり、科学および特許文献に十分に記載されている。ポリエチレングリコール(PEG)沈殿を用いたDNA構築物の導入は、Paszkowski et al., EMBO J. 3:2717 (1984)に記載されている。エレクトロポレーション技法は、Fromm et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:5824 (1985)に記載されている。植物プロトプラストのPEG媒介性形質転換およびエレクトロポレーションはまた、Lazzeri, P., Methods Mol., Biol. 49:95−106 (1995)でも議論さされている。単子葉植物および双子葉植物の両方で異種遺伝子を導入および発現するための方法が既知である。例えば、米国特許第5,633,446号、第5,317,096号、第5,689,052号、第5,159,135号、および第5,679,558号、Weising et al., 1988 Ann. Rev. Genet., 22:421−477を参照されたい。単子葉植物の形質転換は特に、エレクトロポレーション(例えば、Shimamoto et al., Nature (1992), 338:274−276)、遺伝子銃(例えば、欧州特許出願第270,356号)、およびアグロバクテリウム(例えば、Bytebier et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA (1987) 84:5345−5349)を含む様々な技法を用いて達成することができる。
【0063】
植物の形質転換のために、DNA構築物は、適切なT−DNAフランキング領域と組み合わせて、従来型アグロバクテリウム・チュメファシエンス宿主ベクターに導入してもよい。A.チュメファシエンス宿主の病原性機能は、その細菌により細胞を感染する場合、導入遺伝子および(存在する場合)隣接マーカー遺伝子(複数可)の、植物細胞DNAへの導入を誘導するであろう。アグロバクテリウム・チュメファシエンス媒介性形質転換技法は、科学文献に十分に記載されている。例えば、Hrosch et al., Science, 233:496−498 (1984), Fraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:4803 (1983)、およびHooykaas, Plant Mol. Biol., 13:327−336 (1989), Bechtold et al., Comptes Rendus De L Acadmie Des Sciences Serie Iii−Sciences De La Viwe−Life Sciences, 316:1194−1199 (1993), Valvekens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5536−5540 (1988)を参照されたい。植物および細胞培養物に関する遺伝子移入方法の説明に関しては、例えば、Fisk et al., Scientia Horticulturae 55:5−36 (1993)、およびPotrykus, CIBA Found. Symp. 154:198 (1990)を参照されたい。
【0064】
ポリヌクレオチド配列を細胞へ送達するための他の方法としては、例えば、リポソームベースの遺伝子送達(Debs and Zhu (1993) 国際公開第93/24640号; Mannino and Gould−Fogerite (1988) BioTechniques 6 (7): 682−691; Rose 米国特許第5,279,833号; Brigham (1991) 国際公開第91/06309号; およびFelgner et al., (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413−7414)、ならびにパピローマウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクターの使用(例えば、Berns et al., (1995) Ann. NY Acad. Sci. 772:95−104; Ali et al., (1994) Gene Ther. 1: 367−384; および総説に関してHaddada et al., (1995) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 199 (Pt 3):297−306; Buchscher et al., (1992) J. Virol. 66(5) 2731−2739; Johann et al., (1992) J. Virol. 66(5):1635−1640 (1992); Sommerfelt et al., (1990) Virol. 176:58−59; Wilson et al., (1989) J. Virol. 63:2374−2378; Miller et al., J. Virol. 65:2220−2224 (1991); Wong−Staal et al., PCT/US94/05700、およびRosenburg and Fauci (1993) in Fundamental Immunology, Third Edition Paul (ed) Raven Press, Ltd., New Yorkおよびその中の参照文献; 上述のYu et al., Gene Therapy (1994); West et al., (1987) Virology 160:38−47; Carter et al., (1989) 米国特許第4,797,368号; Carter et al., 国際公開第93/24641号(1993); Kotin (1994) Human Gene Therapy 5:793−801; AAVベクターの総説に関してMuzyczka (1994) J. Clin. Invst. 94:1351およびSamulski(上述); Lebkowski, 米国特許第5,173,414号; Tratschin et al., (1985) Mol. Cell. Biol. 5(11):3251−3260; Tratschin et al., (1984) Mol. Cell. Biol., 4:2072−2081; Hermonat and Muzyczka (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6466−6470; McLaughlin et al., (1988) amd Samulski et al., (1989) J. Virol., 63:03822−3828)が挙げられる。
【0065】
導入ドナーポリヌクレオチドの組込みパターンを解析することができる方法は、当業者に既知である。例えば、形質転換細胞からDNAを抽出し、1つまたはそれ以上の制限酵素でそのDNAを消化して、ポリヌクレオチド構築物の標識断片にハイブリダイズさせることができる。挿入配列はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて同定することができる(例えば、これらおよび他の適切な方法に関してSambrook et al., Molecular Cloning−A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照)。
【0066】
上記形質転換技法のいずれかにより得られる形質転換植物細胞を培養して、形質転換された遺伝子型、したがって所望の表現型を保有する植物全体を再生させることができる。かかる再生技法は、組織培養生長培地中のある植物ホルモンの操作に依存し、典型的に所望のヌクレオチド配列と一緒に導入された殺生剤および/または除草剤マーカーに依存する。培養プロトプラストからの植物再生は、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Cuture, PP. 124−176, Macmillian Publishing Company, New York (1983)、およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21−73, CRC Press, Boca Raton, (1985)に記載されている。再生はまた、植物カルス、外植体、体細胞胚(Dandekar et al., J. Tissue Cult. Meth., 12:145 (1989); McGranahan et al., Plant Cell Rep., 8:512 (1990))、器官、またはそれらの一部から得ることもできる。かかる再生技法は、一般に、Klee et al., Ann. Rev. of Plant Phys., 38:467−486(1987)に記載されている。
【0067】
ほとんどの脊椎動物種のトランスジェニックおよびキメラ動物を生産する方法も有用である。かかる種としては、マウスおよびラットのようなげっ歯類、ウサギ、ヒツジおよびヤギ(ovines)、ブタ(porcines)、ウシおよびバッファローのようなウシ亜科(bovines)を含む非ヒト動物が挙げられるが、これらに限定されない。トランスジェニック動物を得る方法は、例えばPuhler, A., Ed., Genetic Engineering of Animals, VCH Publ., 1993、Murphy and Carter, Eds., Transgenesis Techniques: Principles and Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 18), 1993、およびPinkert, CA, Ed., Transgenic Animal Technology: A Laboratory Handbook, Academic Press, 1994に記載されている。特定遺伝子改変を有するトランスジェニック魚類もまた、特許請求した方法を用いて作製することができる。トランジェニック魚類の作製の一般法に関して、例えば、Iyengar et al., (1996) Transgenic Res. 5:147−166を参照されたい。
【0068】
ゲノムに特定の改変を有するトランスジェニックまたはキメラ動物を得る一方法は、受精卵母細胞を組換え部位が隣接する所定のポリヌクレオチドを含むベクターと接触させることである。マウスのような幾つかの動物に関して、受精をin vivoで実施し、卵を手術で取り出す。他の動物、特にウシでは、生きている動物または食肉処理場の動物から卵を取り出し、in vitroで卵を受精させるのが好ましい。DeBoer et al., 国際公開第91/08216号を参照されたい。in vitroでの受精により、実質的に同調細胞に改変を導入することが可能となる。次に、約16〜150個の細胞を含む着床前胚が得られるまで、受精卵母細胞をin vitroで培養する。16〜32細胞期の胚を桑実胚と記載する。32個以上の細胞を含む着床前胚を胎盤胞と称する。これらの胚は、典型的に64個の細胞段階にある胞胚腔の発達を示す。望ましい場合、胚細胞中の所望の外因性ポリヌクレオチドの存在は、当業者に既知の方法により検出することができる。着床前段階にまで受精卵母細胞を培養する方法は、Gordon et al., (1984) Methods Enzymol. 101: 414; Hogan et al., Manipulation of the Mouse Embryo: A Laboratory Manual C.S.H.L. N.Y. (1986)(マウス胚)、Hammer et al., (1985) Nature 315: 680(ウサギおよびブタ胚)、Gandolfi et al., (1987) J. Reprod. Fert. 81:23−28; Rexroad et al., (1988) J. Anim. Sci. 66: 947−953(ヒツジ胚)、およびEyestone et al., (1989) J. Reprod. Fert. 85: 715−720; Camous et al., (1984) J. Reprod. Fert. 72: 779−785、およびHeyman et al., (1987) Theriogenology 27: 5968(ウシ胚)に記載されている。時には、着床前胚は、着床までの間凍結保存される。着床前胚を適切な雌に移入して、導入遺伝子が組込まれると、発達段階に応じて、トランスジェニックまたはキメラ動物を誕生させる。キメラ動物は、真の生殖系列トランスジェニック動物を形成するのに繁殖させることができる。
【0069】
あるいは、上記方法は、所望のドナーポリヌクレオチドのシングルコピーを有する胚幹細胞(ES)得るために使用することができる。これらの細胞は、in vitroで着床前胚から得られる。例えばHooper, ML. Embryonal Stem Cells: Introducing Planned Changes into the Animal Germline (Mordern Genetics, v.1), Int’l. Pub. Distrib., Inc., 1993; Bradley et al., (1984) Nature 309, 255−258を参照されたい。形質転換ES細胞を、非ヒト動物由来の杯盤胞と組み合わせる。ES細胞は、胚のコロニーを形成させ、胚によっては生じたキメラ動物の生殖系列を形成する。Jaenisch, Science, 240: 1468−1474 (1988)を参照されたい。あるい生物を再構成することができるES細胞または体細胞(「体細胞再増殖細胞」)は、除核受精卵母細胞への移植のための核源として使用し、トランスジェニック動物を生み出すことができる。例えば、Wilmut et al., (1997) Nature 385: 810−813を参照されたい。
【0070】
上述に一般的に記載するように、本発明は、所望の部位特異的組換えを達成する幾つかのストラテジーを提供する。これらのストラテジーには、たとえば第2のポリヌクレオチドによる染色体ポリヌクレオチドの置換を得る方法が含まれる。幾つかの実施形態では、選択マーカーのような望ましくないDNAの非存在下で、所定のポリヌクレオチドを細胞ゲノムに導入する。他の実施形態は、選択マーカーのような望ましくないDNAが、所望の所定のポリヌクレオチドを含む細胞の選択を容易にするためにそれらが使用された後、細胞ゲノムから欠失される方法を提供する。これらの特定のストラテジーについて、以下の実施例でさらに記載している。
【0071】
本出願全体にわたって、様々な刊行物を参照している。これらの刊行物、およびそれら刊行物全体内に引用した参照文献すべての開示は、本明細書が関連する技術の状況をより完全に記載するために、参照により本出願に援用される。先述の事項は、本発明の好ましい実施形態に関するものであり、本発明の範囲を逸脱することなく多数の変化が本明細書中でなされてもよいこともまた理解されるべきである。本発明は、以下の実施例によりさらに説明するが、それは、いかなる場合においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。それどころか、様々な他の実施形態、修飾およびそれらの均等物に対する方策がなされてもよく、本明細書中の詳細な説明に目を通した後に、本発明の精神および/または併記の特許請求の範囲から逸脱することなく、それが当業者の心に自然に浮かび得ることが明らかに理解されよう。
【0072】
[実施例]
実施例1
直鎖状または環状標的構築物を用いた遺伝子置換
本実施例は、ストレプトミセス属のバクテリオファージφC31の部位特異的組換え系が、真核細胞中の遺伝子置換ストラテジーにおいて機能することを示す。このストラテジーは、バクテリオファージφC31由来の系のような部位特異的組込み系を利用する。環状ファージDNA染色体の細菌ゲノム中への挿入は、intによりコードされるインテグラーゼであり、細菌の結合部位attBとファージの結合部位attPとをそれぞれ組換え、attLおよびattRとして知られる新たなハイブリッド配列を形成する、単一のポリペプチドφC31タンパク質を必要とする。attB部位およびattP部位は、交差地点を中心とする53bpの広がり内に、たった16個の塩基対マッチを共有する。なお、以下では、記号BB’、PP’、BP’およびPB’を、それぞれattB、attP、attLおよびattRと互換的に用いる。attB、attP、attLおよびattRの逆配向は、それぞれB’B、P’P、P’BおよびB’Pとして表わす。
【0073】
物質および方法
組換えDNA
全体を通して、標準的な方法を用いた。大腸菌株XL2−Blue(recA1 endA1 gyrA96 thi−1 hsdR17 supE44 relA1 lac[F’proAB lac1q ZΔM15Tn10(Tet)Amy Cam、Strategene)をDNA構築物の宿主として機能した。
【0074】
培地
分裂酵母株を、必要に応じてアデニン、ヒスチジン、ロイシンまたはウラシルを225mg/lで補充した最少培地(EMM−低グルコース、Bio101)で成長させた。5−FOA(5−フルオロオロチン酸、Zymo Research, Inc.製)を加えた最少プレートをGrimm等((1988) Mol. Gen. Genet. 215: 81−86)にしたがって調製し、アデニン、ヒスチジンおよびロイシンを補充した。使用の際には、チアミンを5μg/mlで加えた。
【0075】
2つのφC31 attP標的を有するS. pombe
ApaI−SacI断片としてpHS282(ThorpeおよびSmith (1998) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 95 : 5505−5510)から単離した、84bpのφC31 attP部位(PP’と略す)を、S. pombeの組込みベクターpJK148(KeeneyおよびBoeke (1994) Genetics 136: 849−856)の同一部位にクローニングし、pLT44を作製した。このプラスミドを、酢酸リチウムによるNdeIで切断したDNAでの形質転換によりS. pombe leu1−32対立遺伝子へターゲティングした。pLT44との相同組換えによりLeu+に変換されたレシピエント宿主FY527(h−ade6−M216 his3−D1 leu1−32 ura4−D18)を、サザン解析により調べた。FY527attP(図3A)と示すLeu+の形質転換体の1つは、pLT44のシングルコピーを保持していることがわかった。FY527attPx2(図3B)と示す他の形質転換体は、タンデムに挿入されたpLT44を保有し、したがって2つのattP部位を含有している。
【0076】
2つのφC31 attB部位を含む組込みura4+ベクター
1.8kbのEcoRI−BamHI断片上のpTZura4(S. Forsburg)から除去したS. pombeのura4遺伝子を、同じ酵素で切断したpJK148に挿入し、pLT40を作製した。500bpのBamHI−XbaI断片としてpHS21から単離したφC31 attB部位(BB’と略す)を、これらの酵素で切断したpLT40内に連結し、pLT42を作製した。ほとんどのleu1遺伝子をXhoI断片を欠失させることによりpLT42から除去し、pLT45を作製した。これにより、pLT45には229bpのleu1が残り、その形質転換効率はleu1相同性をまったく有さないプラスミドの形質転換効率と同程度まで低下した。ura4の他方直近に、同一配向で第2のattB部位を有するpLT50を、まず、attB BamHI−SacI断片をpLT42からpUC19にサブクローニングし、これをEcoRIおよびSalIIを用いて除去し、次に、これをEcoRIおよびXhoIで切断したpLT45に挿入することより構築した。最終構築物中の第2のattB部位は、各鎖について一度配列が決定され、第1のattB部位と同一であることがわかった。
【0077】
直鎖状DNAの形質転換
attB−ura4−attBの直鎖状DNAを、pLT50から精製したAttII−AlwNI断片として、または、鋳型としてpLT50を用いたPCR生成物として調製した。PCRは、pJK148のプラスミド骨格に対応するT3プライマーおよび第2のプライマー(5’ ggc cct gaa att gtt gct tct gcc 3’;配列番号:1)を用い、標準条件を用いて行った。
【0078】
φC31インテグラーゼの抑制合成
ビタミンB1により抑制されるS. pombeのPmntプロモーターを、pMO147から1.2kbのPstI−SacI断片として除去し、同一の酵素で切断したhis3+、ars1ベクターpBG2(Ohi等、(1996) Gene 174: 315−318)に挿入し、pLT41を作製した。φC31のintコード領域を含む2.0kbのSacI断片を、pHS33(ThorpeおよびSmith (1998)、上記)からpLT41のSacI部位に移入した。発現がPmntの制御下にあるようにintコード領域が配向しているクローンを、pLT43と表わした。
【0079】
分子解析
Boehringer Mannheim製のGenius系を用いてサザン解析を行った。998bpのleu1の内部EcoRV断片、1.8kbのura4断片、および2.0kbのφC31 int遺伝子をランダムプライマー法によってジゴキシゲンで標識し、プローブとして用いた。StratageneのTurbo PFU酵素またはVENTポリメラーゼを用い、Perkin ElmerのCetus Gene Amp PCR 9600上で、ポリメラーゼ連鎖反応を行った。標準T3およびT7プライマーを可能な限り用いた。ura4プライマー(5’ gtc aaa aag ttt cgt caa tat cac 3’(配列番号:2))およびpJK148プライマーは、Operon Technologiesから購入した。すべてのPCR反応には、アニーリング温度51℃および伸長時間30秒を用いた。
【0080】
結果および考察
直鎖状DNAを介した遺伝子置換
本実験は、φC31の部位特異的組換え系は、直鎖状cDNAを標的細胞中に送達するための有効な手段であることを示している。cDNA基質を調製するため、直鎖状分子を、その両端の連結反応またはPCR合成の結合部位により連結し、その後、染色体上に位置する標的部位のタンデム対と組換え、挿入用cDNAと標的DNAを置換することとなる。このような遺伝子置換反応が有効かどうかを試験するため、タンデムに挿入されたpLT44を有するFY527誘導体を単離した。FY527attPx2と示されるこの株は、leu1遺伝子およびベクター配列によって分離される、leu1遺伝子座にある2つの直接配向のattP部位を有する(図2B)。FY527attPx2をattB部位に隣接したura4を含む直鎖状DNAで形質転換した。直鎖状基質は、pLT50(図2A)からゲル精製断片として、または、このプラスミドの増幅物からPCR生成物として得られた。pLT45由来のプラスミドpLT50は、ura4遺伝子の他方側に、第2の直接的に配向されたattB部位を有する。両方の直鎖状基質とも、pLT43で同時形質転換した場合、ほぼ同一の形質転換効率を与え、Ura+形質転換体の数を刺激した(表1)。いくつかの実験では、その頻度は、複製プラスミドの対照の頻度と同程度に高かった。
【0081】
2つの5’部位と2つの3’部位との間で起きる組換えを伴う、意図する遺伝子置換の事象を、図2Bに示す。2つの交差は同時にではなく順次に起こり得るが、最終生成物は同一である(図2C、クラス1)。8つの代表的なUra HisのクローンのXbaI制限パターンを調べると、7つが3つのクラスに分けられるパターンを示した。これらのうちの3つはクラス1のパターンを有し、この場合、leu1プローブは3kbおよび20kbのバンドにハイブリダイズし、ura4プローブは20kbのバンドにハイブリダイズした(図2C)。第2および第3のクラスは、attP標的への部位特異的挿入の前の、直鎖状断片の以前の環化に起因すると思われる事象を示す。図2Dは、複製されたattB部位間の組換えに起因するであろう環化反応を示す。環状体の5’attP部位への組込みは、プラスミドのバンドサイズを5.5kbから7.4kbまで増大させる。このバンドは、ura4およびleu1の双方のプローブにハイブリダイズすることになる(図2E、クラス2)。このパターンは、1つの形質転換体に見出された。3’attP部位への組込みは、18kbのバンドを20kbまで増大させ、これにより両方のプローブでの検出が可能となる(図2F、クラス3)。このパターンは、3つの形質転換体に見出された。残りのクローンは、2つのura4のコピーと、他のleu1のコピーとを有し、これは、leu1遺伝子座での遺伝子増幅を示唆している。これについては、これ以上解析しなかった。
【0082】
【表1】
Figure 2004504055
【0083】
環状DNAを介した遺伝子置換
直鎖状DNAの形質転換から回収したクラス2および3の構造は、環状中間体を示唆する。しかし、直鎖状断片は、容易にアニーリングし得る相補性の一本鎖の末端を有していない。この分子構造は、attB部位間の分子内再結合、または、2つの末端間のある種の連結反応のいずれかに合致している。おそらく、高い環化率は、直鎖状のDNA末端によって促進されたものである。二本鎖の分解は酵母における遺伝子組換えを刺激することから(Szostakら、(1983) Cell 33: 25−35)、直鎖状末端は、より容易にストランドに入り込むか、または、末端と連結し得る。これが真実である場合、クラス2および3の組込み体(integrants)は、環状DNAの使用により最小化されることとなる。
【0084】
FY527attPx2の形質転換について、pLT50プラスミドDNAを用いて調べた(表1参照)。この形質転換由来の8つの代表的なUra Hisクローンの組込み構造について解析した。8つのクローンのうちの6つは、同じ3つのクラスに、すなわち3つはクラス1に、1つはクラス2に、2つはクラス3に分けられた。クラス2および3の組込み体が優勢であることは、複製されたattB部位間の組換えが直鎖状基質を必要としないことを示している。この事象がS. pombeまたはφC31インテグラーゼのいずれによって促進されるかは、いまだ決定していない。1つの可能性としては、インテグラーゼがattPが存在しなくてもattBと相互作用することが考えられる。φC31インテグラーゼは、各DNA基質の二本鎖を分解させることにより組換えを触媒する、インベルターゼ−レゾルバーゼクラスの酵素の一員である。これがattB部位で発生するのであれば、二本鎖の分解は、一般化された相同組換え系を補充するものとなり得る。しかし、このような組換えは精製成分を用いたin vitroの研究では検出されていない(Thorpe, H. M.およびSmith, M. C. M. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 5505−5510)。あるいは、内因性S. pombeの組換え遺伝子はこのプラスミドの再構成を促進し得る。プラスミド上の直接反復の間の相同性を最少まで、すなわち、attBでは34bp、そしてattPでは39bp(Grothら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 5995−6000)まで減らすことにより、この望まない副反応の頻度を低下させ得る。
【0085】
組込み構造のこれら3つのクラスの他に、attBxattP部位の不完全な組換えに起因する組込みパターンの可能性が存在する。これは、pLT43が細胞から失われた場合と同様に、インテグラーゼタンパク質の量が制限される場合に起こりうる。His表現型が選択されなかった場合には、Hisのコロニーを容易に発見することができる。4つの部位間における単一の組換え事象から4つの可能な構造が発生し得る;5’attB×5’attP、3’attB×3’attB、3’attB×5’attPおよび5’attB×3’attP。引き続いて第2のattB×attP反応が発生する場合には、5’attB×5’attPおよび3’attB×3’attBの組込み体はクラス1構造に変換され、ura4マーカーは消失するので、3’attB×5’attPおよび5’attB×3’attPの組込み体は見出されない。8つの単離物のうちの1つは、5’attB×5’attP反応を通した無傷のpLT50の取り込みに一致するパターンを示す。このクラス4構造を図1Gに示す。ura4プローブは2.3kbの単一バンドを検出し、leu1プローブは3kb、5.6kbおよび18kbのバンドを検出した。NdeIを用いた切断により、leu1およびura4プローブの両方にハイブリダイズする12kbのバンドが得られ、これは2つのマーカーの物理的結合に一致する。残りの単離物は完全なプラスミドを取り込むだけでなく、leu1およびura4の両方にハイブリダイズする他のバンドも有していた。これは、より複合的な事象を示し、おそらく、遺伝子座における遺伝子増幅を示す。
【0086】
FY527attPx2株への組込みについても、5’attPまたは3’attPのいずれかの部位で染色体中に挿入することができるインタクトのpLT45(図3A)を用いて調べた。染色体中のさらなるattP標的は、形質転換効率を有意に変化させなかった。pLT43を用いて得られたHisの形質転換体の数だけ正規化すると、φC31インテグラーゼが媒介するFY527attPx2の形質転換の効率は、pLT45を用いたFY527attPの形質転換に匹敵するものであった。標的およびドナー分子の両方の、このように複製された部位は、遺伝子置換ストラテジーで観察される増大した形質転換頻度に必要と思われる。
【0087】
インテグラーゼDNAの最適濃度の決定
pLT50(図3B)を用いたFY527attPx2およびpLT45(図3A)を用いたFY527attPの形質転換を、ある範囲のpLT43のDNA濃度(0、0.1、1、5、10mg)を用いて行った。図3は、両方の組の形質転換が、pLT43DNA5mgを用いた場合にUraのコロニーのピーク数をもたらすことを示す。pLT50/FY527attPx2の形質転換では、pLT45/FY527attPの形質転換と比較して4〜14倍多い数の形質転換体が産生された。この観察は、上記で考察した結果と一致する。しかし、正確な事象の頻度がより低く、pLT45については88%であるのに対してpLT50については38%であることにより、より高い形質転換頻度は相殺される。
【0088】
要約
本実施例は、2重部位での組換え反応が非常に効率的であることを示す。正確な遺伝子置換事象頻度は、複製プラスミドベクターの形質転換効率の約14%〜24%である(表1)。図3Cは、最適なインテグラーゼ遺伝子濃度において、転換効率が複製プラスミドが達するレベルまでさらに上昇することを示す。複製プラスミドの高い形質転換効率は、細菌および酵母の機能選択によるクローニングを可能とする。これらの結果は、直接選択によるクローニングもまた、2つの部位でのφC31の組換え系で実現され得ることを示す。直鎖状cDNA分子のライブラリは、クローニングベクター系を経る必要はない。代わりに、隣接att部位により連結し、動物または植物細胞のゲノムatt−att標的に直接導入することができる。
【0089】
直鎖状DNAに由来する環状分子の組込みから構成される競争的な副反応が観察されるものの、これらの望まれない事象は、最小の機能結合部位を用いることにより最小に抑えることができる。加えて、2つのattP部位間の、標的部位のDNAがネガティブ選択マーカーをコードしていた場合には、マーカーの全体が置換された場合のみが検出されることになる。
【0090】
実施例2
ゲノムプロモーターの背後への発現コード領域の挿入
本実施例は、選択マーカーの同時導入を必要としない遺伝子置換ストラテジーによる、所定の動物染色体標的へのDNA断片の送達のための一般的なストラテジーを例示する。置換ストラテジでは宿主DNAの対応する断片が損失することになるので、対抗選択マーカーの損失が遺伝子置換の選択基準となりうる。このアプローチでは、さらなる不要なDNAを取り込むことなく、形質遺伝子が正確に組込まれることとなる。
【0091】
本実施例は、本方法が、宿主細胞に存するゲノムプロモーターの背後への直接的な配置を介する、cDNA分子の機能的発現を試験するのに有用であることも例示する。これにより、大腸菌の増殖用ベクター中、例えば、プラスミドまたはファージベクター中にcDNAを先にクローニングする必要は回避される。研究者はデータベースから遺伝子配列を選択し、その遺伝子配列に対応する適当なプライマーを作製し、選択したmRNA配列を選択的に逆転写させ、そのcDNAを形質転換に十分な量まで増幅させることができる。mRNAから産生されたcDNAは合成attPまたはattB部位に連結し、遺伝子置換ストラテジーに直接使用することができる。本例では、attBの合成オリゴマーはcDNAを同一配向で隣接するように設計されている。
【0092】
方法
標的構築物は、Pc−attP−tk−Ps−zeo−attP断片から構成されている(図4)。用いられている略号:Pcはヒトサイトメガロウイルスプロモーター、tkはチミジンキナーゼコード領域、PsはSV40初期プロモーター、zeoはゼオマイシン耐性コード領域。本例のattP部位は、上記φC31系のような不可逆的組換え系のクラスに属する組換え部位である。Ps−zeo断片により、宿主ゲノム中の標的構築物の選択が可能となる。tk遺伝子は、対抗選択マーカーである。適当な培養条件下で、機能性のtk遺伝子が欠失した細胞が生存する一方、機能性のtk遺伝子を保持するものは生じない。他の選択マーカー、対抗選択マーカーおよびプロモーターの使用も可能である。
【0093】
組込み構築物は、同一配向のattB部位の組に隣接した遺伝子断片から、本例では、cDNAから構成される(図4)。もしtkの上流のattPがcDNAの5’末端の上流にあるattBと組換わり、zeoの下流のattBがcDNAの3’末端の下流のattBと組換わると、次にこの二重の組換えの事象、ゲノムからtk遺伝子を除去することになる。この遺伝子置換はPc−attR−cDNA連結を選択し、cDNAの発現をもたらす。組換えの他の可能な組合せは、染色体を分解することとなる。
【0094】
実施例3
ヒトゲノムにおける遺伝子置換
本実施例は、所定の哺乳動物の染色体標的にDNA断片を送達するための、実施例2におけるよりもより詳細なストラテジーを例示する。好ましくは、哺乳動物の染色体標的は、ヒト染色体標的である。本実施例は、cDNA分子が、ゲノム標的発現プロモーターの背後、センスまたはアンチセンス配向に、部位特異的に挿入可能であることを示す。cDNAの発現が表わす表現型は、遺伝子機能の手がかりを解明し得るものであるから、このcDNAの組込みストラテジーは機能性ゲノムの解析のためのツールとなりうる。
【0095】
方法
組換えDNA
全体にわたって、標準的なクローニング方法を使用した。DNAクローニングに用いた大腸菌株JM109[F’traD36 lacIq D(lacZ)M15 proA+B/e14−(McrA) D(lac−proAB) thi gyrA96(Nalr) endA1 hsdR17(rk−mk) relA1 supE44]は、Luria Broth中で成長させた。
【0096】
対照hpt発現構築物
ハイグロマイシン耐性遺伝子のコード領域であるhpt断片を、p35S−hpt(Albertら、1995 Plant J.: 649−59)をSalIで切断したものから回収し、pBluescriptII KS(+/−)のSalI部位にサブクローニングした。次に、hpt遺伝子を含む、このプラスミドからのNotI−KpnI断片を、cDNA発現ベクターpcDNA3.1/zeo(Invitrogen製、カールズバッド、カリフォルニア州)のNotI−KpnI部位にサブクローニングした。得られたプラスミドpcDNA3.1−hptは、ヒト部位メガロウイルスプロモーターであるPc由来のhptを発現する。
【0097】
φC31インテグラーゼ発現ベクター
pJHK1(図5A)はPc−int断片を有し、ここで、intはφC31インテグラーゼコード領域である。ベクターpcDNA3.1/zeoをNsiIおよびBsmIで切断し、ゼオシン耐性コード領域(1,800bp〜2,767bp)から構成される断片をほとんど除去した。残ったベクターは平滑末端連結反応によって再環化した。φC31インテグラーゼ遺伝子を含む1.9kbのNheI−BamHI断片を、ゼオシン感受性のpcDNA3.1誘導体のNheI−BamHI部位に挿入し、pJHK1を生成した。φC31インテグラーゼ断片のNheIに近い末端は、合成コザック(Kozak)配列(5’−GGGCCCGCCACGATGACACAAGGGGTTGTGACCGGGGTGGACACGTACGCGGGTGCTTACGACCGTCAGTCGCGCGAGCGCGAGAATTC−3’;配列番号:3)を有する。
【0098】
逆に配向されたφC31attB部位に隣接したhptベクターの組込み
pJHK2(図5C)は、pBluescriptII KS(+/−)(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)骨格中にBB’−hpt−B’B断片を含有し、ここで、BB’およびB’Bはそれぞれ直接配向および間接配向のφC31attB部位である。hpt断片はp35S−hpt(Albertら、1995、前出)のSalIによる切断から得られ、これをpBluescriptII KS(+/)のSalI部位にサブクローニングすることにより、pBluescript−hptを作製した。53bpのKpnI−BB’−KhoIオリゴ(5’−GCGGTGCGGGTGCCAGGGCGTGCCCTTGGGCTCCCCGGGCGCGTACTCCACCT−3’;配列番号:4)を、pBluescript−hptの対応する部位に挿入し、pBluescript−BB’−hptを生成した。pBluescript−BB’−hptの対応部位への挿入のためにSpeI−HindIII断片として回収する前に、KpnI−BB’−XhoIリンカーをpMECA(Biotechniques, Vol. 24: 6, 922−925, 1998)にさらにサブクローニングして、pJHK2を生成した。
【0099】
逆位attp部位により隣接したtkを有するゲノム標的
pJHK3(図5A)は、pcDNA3.1/zeo骨格中にPc−PP’−tk−P’P断片を含有し、ここで、tkはヒト単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼコード領域であり、PP’およびP’Pは、それぞれ、直接配向および間接配向のφC31attP部位である。2つの53bpのφC31attP部位(5’−AGTAGTGCCCCAACTGGGGTAACCTTTGAGTTCTCTCAGTTGGGGGCGTAGGG−3’;配列番号:5)を、適当な隣接制限酵素部位を用いて合成した。EcoRI−HindIII−P’P−AfIIIのオリゴを、pcDNA3.1/zeoの対応する部位に挿入し、pcDNA3.1−P’Pを生成した。pIC19R/MC1−TK由来の1.85kbのKhoI−HindIII tk断片(Kirk Thomas博士、ユタ大学)を対応部位に結合させ、pcDNA3.1−tk−P’Pを生成した。tk遺伝子は、147bpのエンハンサーをその5’末端に含む。NheI−PP’−XhoIオリゴをpcDNA3.1−tk−P’Pの対応部位に挿入し、pJHK3を作製した。
【0100】
標的細胞系
pJHK3構築物を、製造業者の指示に従ってlipofectamine(商標)(Life Technologies、ガイザースバーグ、メリーランド州)を使用して、ヒト細胞系293T(American Type Culture Collection、ロックビル、メリーランド州)にトランスフェクトした。細胞は、10%のウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。pJHK3構築物は、tk遺伝子の上流に単一のXhoI部位を有し、下流に単一のHindIII部位を有する。32個の安定してトランスフェクトされた細胞系由来のDNAを、tkプローブを用いるサザンハイブリダイゼーションのために、XhoIまたはHindIIIで切断した。2つの細胞系は、XhoIまたはHindIIIのいずれかで切断したDNAにおいて単一のハイブリダイゼーションバンドを示し、これは、組込み分子のシングルコピーの存在を示唆する。attP部位を切断するBstEIIで切断したDNAにハイブリダイズすることにより、予想される2kbの内部tk断片が明らかとなった。
【0101】
ガンシクロビル耐性解析
tk遺伝子の機能発現をガンシクロビル(Sigma Co.)処理によって試験した。細胞は24ウェルの組織培養プレート(1×10細胞/ウェル)中に接種し、一晩成長させた。ガンシクロビル(0〜50mMの範囲)を各ウェルに添加し、細胞成長を数日間観察した。野生型の293T細胞はガンシクロビルに対して試験した最高濃度(50mM)まで非感受性であったのに対し、単一のPc−PP’−tk−P’P断片を備えた2つの細胞系はガンシクロビルに感受性であった。
【0102】
φC31インテグラーゼを介した組換え
pJHK1およびpJHK2の双方を4μgずつ、pJHK3のシングルコピーを保有する1×10個の293T細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクションから3日後、細胞を順に希釈して、50mMのハイグロマイシン(Boehringer Mannheim)またはガンシクロビルを含む新鮮なDMEMに移した。耐性のある細胞をトランスフェクションから約14日後に単離し、さらに解析した。直鎖状DNAのトランスフェクションのため、BB’−hpt−B’Bの直鎖状断片を、pJHK2から精製したKpnI断片として調製した。
【0103】
分子解析
製造業者のマニュアルに従ってQIAampR DNA Blood Mini Kit(Qiagen、バレンシア、カリフォルニア州)を使用して293T細胞からゲノムDNAを単離した。ゲノムのサザンハイブリダイゼーションを標準プロトコルで行い、ここで、DNAプローブは、Boehringer Mannheim製のrandom primed DNA labeling kit(カタログ番号1004760)を使用して作製した。
【0104】
結果および考察
比較ゲノム解析や転写プロファイリング解析に関係するようなmRNAは、attP末端を備えたプライマーを用いるPCRによって選択的に増幅させることができる。図5Aに示すように、attP末端は逆配向を向き、これにより、cDNAは標的中いずれの配向でも挿入可能である。二重の組換え反応は、センス発現(図5A)またはアンチセンス発現(図5B)のために標的プロモーターの背後でcDNAを融合させ、これにより、遺伝子産物の過剰または過少産生がもたらされ得ることが予想される。付随的に、対抗選択性遺伝子の損失は、部位特異的遺伝子置換の検出を提供することとなる。以下の図面では、プロモーターを明示しているが、単純化のため、転写の終結を促進し各コード領域の下流に位置する配列であるターミネーターは、別個のエレメントとして示していない。
【0105】
シングルコピー標的細胞系
直鎖状DNA断片の選択的挿入のためにヒトゲノム中の標的部位を作製するため、pcDNA3.1/zeoベクター骨格中にPc−PP’−tk−P’P断片を有するpJHK3構築物を、ヒト細胞系293Tにトランスフェクトした。tk遺伝子の発現は、ヌクレオシドのアナローグであるガンシクロビルに対する感受性を付与する。ベクター骨格はゼオシン耐性遺伝子を含むので、pJHK3のランダム組込みから得られたゼオシン耐性のコロニーを精製し、サザンハイブリダイゼーションによって解析した。
【0106】
標的細胞系の分子解析
32個の細胞系由来のゲノムDNAをXhoIまたはHindIIIで処理し、tkDNAをプローブとした。XhoIまたはHindIIIは、tkの上流または下流をそれぞれ一度切断する。tkプローブにハイブリダイズすることにより、挿入されたpJHK3の両側に導入遺伝子の宿主DNAの境界の断片が明らかとなる。XhoIおよびHindIIIで処理したDNA中に検出された単一のハイブリダイゼーションバンドにより、pJHK3の挿入されたシングルコピーの存在が示されることになる。2つの細胞系、JHK3aおよびJHK3bは、この予想を満たした。XhoIまたはHindIIIの断片サイズは予想されなかったが、これは、この断片がXhoIまたはHindIIIの宿主切断部位の最も近い位置に依存することによる。細胞系JHK3aについては、XhoIで切断したDNA中におよそ7kbの単一バンドが、また、HindIIIで切断したDNA中におよそ7kbの単一バンドが明らかとなった。細胞系JHK3bは、XhoIおよびHindIIIで処理したDNA中に、それぞれおよそ13kbの単一バンドおよびおよそ10kbの単一バンドを示した。
【0107】
構造的には、Pc−PP’−tk−P’P断片は、両方の細胞系において完全であった。attP配列は、BstEII部位を含んでいた。BstEIIによる切断により、tkプローブにより検出されるおよそ2kbの単一のtk断片が放出され、両方の系がこのパターンを示した。Pc−PP’−tk−PP’断片は、tkの発現に対しても機能性であった。これらの2つの細胞系において、成長培地へのガンシクロビルの添加は、成長培地の色変化がないことおよび顕微鏡試験によって確認されたように、試験した最低濃度(1mM)においても、代謝活性の停止をもたらした。これに比して、非トランスジェニック親系は、試験した最高濃度(50mM)までガンシクロビルへの耐性があり、成長培地は赤みがかった色から黄色みがかった色へと変色し、細胞は増殖した。
【0108】
簡単のため、図5ではPc−PP’−tk−P’P断片の下流にゼオシン耐性マーカーを示すが、分子データは、これが上流にあっても適合し得ることを示した。選択マーカー遺伝子の相対配置は重要ではないので、その正確な位置は決定しなかった。
【0109】
標的遺伝子座へのhptの交換
ゲノム標的でDNA交換反応を行う概念を試験するため、細胞系JHK3aおよびJHK3bにpJHK2を、φC31インテグラーゼを発現する構築物であるpJHK1とともにまたは、それだけでトランスフェクトした。構築物pJHK2はBB’−hpt−B’B断片を含み、ここで、BB’およびB’Bはそれぞれ53bpのattB配列の順配向または逆位を示す(図5C)。hpt 5’−attBおよびtk 5’−attPの間の組換えにより、Pcはhptと連結し、これにより、hptの発現とハイグロマイシン耐性の付与とが可能となる。しかし、hpt 5’−attBおよびtk 3’−attPの間の組換えにより、Pcはhptのアンチセンス配向と連結し、細胞はハイグロマイシン感受性を維持することとなる。したがって、回収されたハイグロマイシン耐性コロニーの数は、全DNA標的事象の半分のみを示す。
【0110】
表2は、2つの細胞系を用いたトランスフェクションの結果を列挙する。hpt遺伝子を発現するPc−hpt断片を保有する対照プラスミドpcDNA3.1−hpt(図5D)は、細胞100万個当たりおよそ3,200個のハイグロマイシン耐性コロニーが得られる。これは、ランダム組込み頻度が約0.3%であることを示す。pJHK1およびpJHK2の両方をトランスフェクトした場合には、およそ88〜550のハイグロマイシン耐性コロニーが回収された。標的事象の半分のみがハイグロマイシン耐性として計測されたと仮定すると、これはおよそ180〜1,100の標的事象、または、およそ2.8%〜17%の間のランダム形質転換頻度となる。対して、ハイグロマイシン耐性コロニーは、pJHK1またはpJHK2のいずれか一方がトランスフェクション基質としたときには見出されなかった。
【0111】
ハイグロマイシン耐性の表現型は、hptがゲノムプロモーターの背後に組込まれたことを示す。ハイグロマイシン耐性コロニーは対照、すなわち、pJHK1を伴わずにpJHK2でトランスフェクトしたものからは回収されず、したがって、耐性表現型はhpt5’−attB部位とtk 5’attP部位との間の組換えにより、Pc−hpt接合が形成されることによるものであるはずである。hpt 3’−attB部位とtk 3’−attP部位との間でも組換えが生じたかどうかを試験するため、代表的なクローンをPCRで解析した。hptと、tk 3’attP配列に隣接するDNAとに対応するプライマーを、代表的なハイグロマイシン耐性クローンについてPCR反応に用いた(図5F)。予想される1.2kbのPCR産物が8つの代表的なクローンのすべてにおいて検出されたが、先祖であるJHK3aまたは293Tからは検出されなかった。これは、hpt 5’−attBとtk 5’−attPの配列との間(センス配向)の組換えが、hpt 3’−attBとtk 3’−attPとの間の組換えによって達成され得ることを示す。同様に、hpt 5’−attBとtk 3’−attPの配列との間(アンチセンス配向)の組換えがhpt 3’−attBおよびtk−5’−attPの間の組換えによって達成され得ることが予想される。これらの二重の組換え反応により、tkDNAを除外して交換される。
【0112】
DNA標的由来のガンシクロビル耐性
hpt 5’−attBとtk 5’−attPとの間の組換えにより、Pcはhptに連結するだけでなく、tkをPcから除く。それゆえ、標的の事象は、ガンシクロビル耐性の表現型を産生すると予想される。ハイグロマイシンのクローンを50μMのガンシクロビルを含む培地上に移すと、その1週間後、12個のクローンのうち9個がこのヌクレオシドアナローグに対してはっきりとした耐性を示した。他のクローンはガンシクロビルに対して感受性、または低レベルの耐性を示した。感受性または低い耐性の表現型には、様々な理由が考えられる。例えば、細胞の代謝状態に応じて、先に合成されたtkタンパク質が細胞からなくなるのにより時間を要することがある。また、標的遺伝子座から外部に交換されたtk遺伝子が他のゲノムのどこかに組込まれていることもある。
【0113】
まとめとして、ハイグロマイシンに対する耐性と、ガンシクロビルに対する感受性と、正しい分子結合とを示すクローンの回収は、図5Aに示すようなDNA交換の事象と一致する。
【0114】
【表2】
Figure 2004504055
【0115】
実施例4
直鎖状DNA分子を用いた植物細胞における遺伝子置換
本実施例は、植物細胞の直鎖状DNA分子を用いた遺伝子置換のためのストラテジーを示す。実施例2と比較して、本実施例は2つのさらなる特長を含む。第1に、宿主細胞はインテグラーゼまたはリコンビナーゼタンパク質を産生し、それゆえ、同時形質転換用インテグラーゼまたはリコンビナーゼ発現構築物は必要とされず、第2に、形質遺伝子は逆位attB部位に隣接している。これにより、遺伝子断片をゲノムプロモーターの背後にいずれかの配向で配置することが可能となる。一方の配向ではセンス転写が起こり、他方の配向ではアンチセンス転写が起こることとなる。センス発現は遺伝子の過剰発現を導く可能性があり、一方で、アンチセンス発現は対応する宿主遺伝子または遺伝子ファミリーの抑制を導く可能性がある。
【0116】
図6は、2つの特異的な構築物を用いた一般的なストラテジーを示す。標的構築物はRB−p−attP−int−35S−codA−35S−npt(逆位attP)−LB断片から構成される。以下のような略称が用いられる:Pはプロモーター、35SはCaMV35Sプロモーター、codAはシトシンデアミナーゼ遺伝子コード領域、nptはカナマイシン耐性遺伝子コード領域。attP部位および対応するint遺伝子は、φC31系のような不可逆的組換え系のクラスに属する。RBおよびLBは、アグロバクテリウム属媒介性遺伝子移入に由来する、左右のT−DNAの境界の配列を示す。35S−npt断片により、宿主ゲノム中の標的構築物の選択が可能となる。codA遺伝子は、シトシンデアミナーゼをコードする対抗選択マーカーであり、補充性の5−フルオロシトシンを毒性の5−フルオロウラシル(5−flurouracil)に変換することができる酵素であるシトシンデアミナーゼをコードする。5−フルオロシトシンを培養培地に添加した場合には、機能性のcodA遺伝子を失った細胞のみが生き残ることになる。他の選択マーカー、対抗選択マーカーおよびプロモーターを使用することができる。
【0117】
組込み構築物は遺伝子断片、本例では、逆位attB部位の組に隣接したcDNAから構成される。codAの対抗選択マーカーが失われることとなる2つの可能な配置が実現され得る。一方の配置では、cDNAはセンス配向に転写される(図6A)。他方の配置では、cDNAはアンチセンス配向に転写される(図6B)。
【0118】
実施例5
遺伝子を染色体および除去した外来性DNAに導入するための2つのリコンビナーゼ系の使用
本実施例は、遺伝子を所定の染色体標的に送達した後、不要なDNAの除去を行うための2つの異なる組換え系を組み合わせるための一般的なストラテジーを例示する。このストラテジを図7に図示する。
【0119】
方法
図7に、2つの特定構築物を用いた一般的なストラテジーを示す。レセプター構築物は、組換え部位が配列において同一またはほぼ同一である組換え系のクラスに属する1組の逆位組換え部位に隣接した、P−attP−int−P−sel1断片から構成される。これらの組換え系は、例えば、Cre−lox系、FLP−FRT系、R−Rs系およびβリコンビナーゼ−six系を含む。Pはプロモーターを、sel1は選択マーカーを、intは各attP部位に対応するインテグラーゼまたはリコンビナーゼコード領域を示す。本例におけるattP部位は、図7Aに示されるφC31系のような不可逆的組換え系のクラスか、または、Cre−lox系、FLP−FRT系、R−Rs系、もしくはβリコンビナーゼ−six系のような、図7Bに示すような可逆的組換え系のクラスのいずれかに属する組換え部位であってもよい。
【0120】
ドナー組込み構築物は、attB−sel2−P−traitから構成され、ここで、P−traitは、組換え部位が配列において同一またはほぼ同一である組換え系のクラスに属する逆位組換え部位の組に隣接している。「Trait」は、ゲノムへと操作される形質を与える遺伝子である。本例のattB部位は、φC31系のような不可逆的組換え系のクラスか、または、Cre−lox系、FLP−FRT系、R−Rs系やβリコンビナーゼ−six系のような、可逆的組換え系のクラスのいずれかに属する組換え部位であってもよい。
【0121】
工程1:逆位組換え部位に隣接したP−attP−int−P−sel1標的構築物を、従来の形質転換法により宿主ゲノムに挿入する。所望の場合には、逆位組込み部位を用い、例えば、米国特許第6,114,600号に記載されているような複雑な組込みパターンの分解(resolution)により、シングルコピーの導入遺伝子の構築を容易にすることも可能である。あるいは、シングルコピートランスジェニックレシピエントは、分子スクリーニング法によって得ることができる。
【0122】
工程2:組込み構築物を、標的構築物を含む遺伝子導入細胞系である標的系に形質転換する。本例では、標的系はインテグラーゼまたはリコンビナーゼを産生する。標的系がインテグラーゼまたはリコンビナーゼを発現しない場合、インテグラーゼまたはリコンビナーゼに対応する遺伝子、mRNAまたはタンパク質を組込み構築物とともに同時導入してもよい。組込み構築物は、attPxattBの組換えによってゲノム標的に組込まれる。これにより、形質遺伝子が、形質遺伝子の機能に必要とされず組換え部位により挟まれたDNAの部位特異的欠失によって除去され得る2組の断片の間に配置される。
【0123】
工程3:次に、2組の不要なDNAを挟む組換え部位に対応するリコンビナーゼ、またはリコンビナーゼ遺伝子、mRNAまたはタンパク質を、安定なあるいは一過性のいずれかの方法により宿主細胞に導入する。例えば、リコンビナーゼ遺伝子の安定な導入は、遺伝子交差、または、安定な形質転換の別の過程を通すことができる。リコンビナーゼの一過性の導入は、タンパク質またはmRNA分子を送達する形質転換方法、または、DNA分子の安定な組込みにならないリコンビナーゼ遺伝子の送達によって行うことができる。
【0124】
工程4:導入したリコンビナーゼによる不要なDNAの部位特異的組換えが有効なとき、宿主細胞は、逆位組換え部位の組に隣接した所望の形質遺伝子のみを含むこととなる。
【0125】
第1の不可逆的組換え系の不可逆的組換え部位を認識しない、第2の不可逆的組換え系を用いる不要なDNAの除去を行うストラテジーの変形例を図7Bに示す。レセプター標的構築物は、第2の不可逆的組換え系に由来する1組の不可逆的組換え部位attP−2(PP’−2)に隣接した、P−attP−int−P−sel1断片から構成される。ドナー組込み構築物は、attB−sel2−P−traitから構成され、ここで、P−traitは、第2の不可逆的組換え系に由来する1組の不可逆的組換え部位attB−2(BB’−2)に隣接している。
【0126】
工程1:attP−2部位に隣接したP−attP−int−P−sel1標的構築物を、従来の形質転換によって宿主ゲノムに挿入する。
【0127】
工程2:ゲノム標的へのattP×attBの組換えによって組込むことにより、組込み構築物を標的系に形質転換する。これにより、形質遺伝子は、形質遺伝子の機能に不要であり、attP−2×attB−2の部位特異的組換えにより除去され得る2組の断片の間に配置されることとなる。
【0128】
工程3:次に、attP−2およびattB−2部位に対応するリコンビナーゼを、安定なあるいは一過性の方法によって宿主細胞中に導入する。
【0129】
工程4:導入したリコンビナーゼによる不要なDNAの部位特異的な組換えが有効なとき、宿主細胞は1組のハイブリッドの組換え部位PB’−2およびBP’−2に隣接し、所望の形質遺伝子のみを含むこととなる。
【0130】
実施例6
遺伝子スタッキング
本実施例は、所定の染色体標的に一連の遺伝子を送達し、その後不要なDNAを除去するための2つの異なる組換え系の使用を組み合わせるための一般的なストラテジーを例示する。同一のゲノム部位への形質遺伝子の連続的な付加は「遺伝子スタッキング」と呼ばれる。この方法によれば、抗生物質耐性マーカーのような、付加的な問題を引き起こし得る他の不要なDNAを組込むことなく、ゲノム配置に一連の形質遺伝子が正確にスタッキングされる。この方法は、動物および植物細胞を含む、DNAによって形質転換され得るすべての細胞に適用可能である。
【0131】
方法
一連の特定構築物を用いる本ストラテジの実施例を図8に示す。レセプターまたは標的構築物は、図7Aに示すものと同一であるが、本例のattP部位はφC31系のような不可逆的組換え系のクラスに由来する必要がある。
【0132】
第1のドナーまたは組込み構築物はattB−sel2−P−trait1−attBを保持し、ここで、P−trait1−attBは、配列において組換え部位が同一またはほぼ同一である、可逆的組換え系のクラスに属する1組の逆位組換え部位に隣接している。例示を目的として、ここで、Cre−lox系は、組換え系の上記クラスの例として用いられる。しかし、他の可逆的リコンビナーゼもまた適している。遺伝子trait1はゲノムへと操作されるべき形質遺伝子であり、Pはプロモーターを示し、sel2は選択マーカーコード領域である。本例のattB部位は、φC31系のような不可逆的組換え系のクラスに属する組換え部位に由来するものである必要がある。
【0133】
工程1:逆位lox部位に隣接したP−attP−int−P−sel1標的構築物を、従来の形質転換により宿主ゲノムに導入する(図8A)。
【0134】
工程2:この組込み構築物を標的系、すなわち、標的構築物を含むトランスジェニック系に形質転換する(図8A)。本実施例では、標的系はインテグラーゼまたはリコンビナーゼを産生する。標的系がインテグラーゼまたはリコンビナーゼを発現しない場合には、インテグラーゼまたはリコンビナーゼに対応する遺伝子、mRNAまたはタンパク質を組込み構築物とともに同時導入してもよい。組込み構築物は、ゲノム標的へのattP×attB組換えにより組み込まれることとなる。組込み構築物中には2つのattB部位が存在していることから、いずれの部位もゲノムattP部位と組換わり得る。trait1の下流のattB部位がattP部位と組換わる場合には、得られる組込み体は選択マーカーsel2の発現を活性化しないこととなる。一方で、sel2の上流のattB部位がattPと組換わる場合には、P−attR−sel2連結が形成されることとなる。上流のプロモーターによるsel2の転写により、選択表現型が表わされることとなる。このクラスの組込み事象が選択され得る。得られる構造では、形質遺伝子の機能に必要でなく、かつ直接的に配向されたlox部位により挟まれたDNAの部位特異的欠失により除去され得る、2組の断片の間にP−trait1−attB断片が配置される(図8B)。
【0135】
工程3:次に、2組の不要なDNAを挟む組換え部位に対応する組換え遺伝子、mRNA、またはタンパク質を、安定なまたは一過性の方法のいずれかによって宿主細胞中に導入する。例えば、組換え遺伝子の安定な導入は、遺伝子交差を介して、または安定な形質転換の別の過程を介することができる。リコンビナーゼの一過性の導入は、タンパク質またはmRNA分子を送達する形質転換方法、または、DNA分子の安定な組込みとならない組換え遺伝子の送達によって導入することができる。
【0136】
工程4:不要なDNAの部位特異的組換えが成功した場合には、宿主細胞は所望のtrait遺伝子、および、1組の逆位lox部位に隣接したattB部位のみを保持することとなる(図8C)。染色体の標的遺伝子座における単一のattB部位は、このとき、部位特異的組換えの別の過程のための標的として機能することができる。さらに、宿主ゲノム中の選択マーカー遺伝子の欠如は、先に使用したマーカーsel1およびsel2がその後の形質転換のために再度使用可能であることを意味することとなる。
【0137】
工程5:trait2の導入(図8C)。第2の形質遺伝子trait2は、以下の断片attP−P−trait2−attP−lox−P−sel2を含む構築物の組込みによって導入することができる。なお、sel1またはsel2マーカーが再度、選択マーカーとして機能することができる。いずれのattP部位も、ゲノムattB部位と組換わって標的部位にDNAを組込み、sel2によってコードされる選択可能な表現型を与えることができる。trait2の下流のattP部位がattBと組換わると、組込み構造は、図8Eに示すようなものとなる。P−trait2の上流のattP部位がattBと組換わると、組込み構造は図8Dに示すようなものとなる。2つのクラスの組込み構造は、分子解析により決定することができる。図8Dに示すクラスのみが、さらなる遺伝子スタッキングに有用なものとなる。図8Dに示すクラスは取っておき、一方、図8Eに示すクラスは廃棄する。
【0138】
工程6:工程3および4を繰り返し、図8Dに示す構造から不要なDNAを除去する。これにより、図8Fに示す組込み構造が得られる。
【0139】
工程7:trait3の導入(図8F)。第3の形質遺伝子trait3は、断片attB−P−trait3−attB−lox−P−sel2を含む構築物を組込むことにより導入することができる。なお、sel1またはsel2マーカーが再度、選択マーカーとして機能することができる。いずれのattB部位もゲノムattP部位と組換わってDNAが標的部位を組込む可能性があり、sel2によりコードされる選択可能な表現型を与えることができる。いずれのattBがattPと組換わるかにより、組込み構造が異なることとなる。2つの組込み構造は分子解析によって決定することができる。さらなる遺伝子スタッキングを行うことができる構造を図8Gに示すが、これは、P−trait3の上流のattB部位の間での組換えに由来するものである。
【0140】
工程8:工程3および4を繰り返して図8Gに示す構造から不要なDNAを除去する。これにより、図8Hに示す組込み構造が得られる。
【0141】
工程9:trait4の導入(図8H)。第4の形質遺伝子trait4は、断片attP−P−trait4−attP−lox−P−sel2を含む構造を組込むことにより導入することができる。なお、sel1およびsel2マーカーが再度、選択マーカーとして機能することができる。いずれのattP部位もゲノムattB部位と組換わって標的部位にDNAを組込む可能性があり、sel2によりコードされる選択可能な表現型を与えることができる。いずれのattPがattBと組変わるかに応じて、組込み構造は異なることとなる。2つの組込み構造は分子解析によって決定することができる。さらなる遺伝子スタッキングを行うことができる構造を図8Iに示すが、これは、P−trait4の上流のattP部位の組換えに由来するものである。
【0142】
工程10:工程3および4を繰り返して、図8Iに示す構造から不要なDNAを除去する。これにより、図8Jに示す組込み構造が得られる。
【0143】
工程11:trait5の導入(図8J)。第5の形質遺伝子trait5のスタッキングを、図8Jに示す。原則として、これは第3の形質遺伝子trait3のスタッキングのストラテジーによって示されるのと基本的に同一である。同様に、第6の形質遺伝子のスタッキングは、第2および第4の形質遺伝子のスタッキングと同一である。この繰り返しパターンは何度も繰り返すことができ、同一のマーカー遺伝子を各形質転換事象における使用のために「リサイクル」することができる。
【0144】
変形例
直接的に配向された部位の組の代わりに、逆位attBおよびattP部位の組もまた用いることができる。図9に、この可能性を示す。事象の組は、逆位attBおよびattP部位の組を除いて、図8に示すものと基本的に同じである。
【0145】
実施例7
コンカテマーDNA由来の遺伝子置換
本実施例は、遺伝子置換ストラテジーによりDNA断片を所定の染色体標的に送達するための一般的なストラテジーを、第2の組換え系とともに例示し、不要なDNAは、その後ゲノムから除去することができる。組込み用DNAは、コンカテマー型であり、遺伝子銃のような所定の遺伝子移入方法によって得ることができる。
【0146】
結果
図10に、2つの特異的な構築物を用いる、本方法のための一般的なストラテジーを示す。標的構築物は、配列において組換え部位が同一またはほぼ同一である可逆的組換え系のクラスに属する1組の逆位組換え部位に隣接している、P−attP−int−P−sel1−attP断片から構成される。これらの組換え系は、例えば、Cre−lox系、FLP−FRT系、R−Rs系、およびβリコンビナーゼ−6系を含む。図10において、Pはプロモーターを示し、sel1は選択マーカーコード領域を示し、intは各attP部位に対応するインテグラーゼまたはリコンビナーゼコード領域を示す。本例のattP部位は、φC31系のような不可逆的組換え系のクラスに属する組換え部位である。
【0147】
組込み構築物は、attB−sel2−p−trait1−attBを含み、ここで、P−traitセグメントは、組換え部位が同一またはほぼ同一の配列である不可逆的組換え系のクラスに属する、1組の逆位組換え部位に隣接している。例示を目的として、Cre−lox系をこの組換え系のクラスの実施例として用いるが、他の可逆的組換え系もまた適している。遺伝子trait1はゲノムへと操作される形質遺伝子であり、Pはプロモーターを示し、sel2は選択可能マーカーコード領域である。本例のattB部位はφC31系のような不可逆的組換え系のクラスに属する組換え部位に由来する。
【0148】
工程1:逆位lox部位に隣接したP−attP−int−P−sel1−attP標的構築物を、従来の形質転換によって宿主ゲノム中に導入する(図10A)。所望の場合には、逆位lox部位を用いて、例えば、米国特許第6,114,600号に記載されているような複雑な組込みパターンの分割により、トランスジェニック系のシングルコピーの構築を容易とすることができる。また、シングルコピーのトランスジェニックレシピエントは、分子スクリーニング法によって得ることができる。
【0149】
工程2:組込み構築物を標的系、すなわち、標的構築物を含むトランスジェニック系に形質転換する(図10A)。本実施例では、標的系は、インテグラーゼまたはリコンビナーゼを産生する。標的系がインテグラーゼまたはリコンビナーゼを発現しない場合には、インテグラーゼまたはリコンビナーゼに対応する遺伝子、mRNAまたはタンパク質を組み込み導入物とともに同時導入するようにしてもよい。組込み構築物は、ゲノム標的中にattPxattBの組換えによって組み込まれることとなる。組込み構築物中には2つのattB部位が存在しており、2つのattP部位はゲノム標的に存在することから、いずれかのattB部位もいずれかのゲノムattP部位と組換わり得る。この場合、sel2の上流のattB部位がintの上流のattPと組換わる場合にのみ、P−attR−sel2連結が形成されることとなる。上流のプロモーターによるsel2の転写が、選択可能な表現型を表わすこととなる。この組込み事象が選択される可能性があり、下流における第2のattP×attB組換えがその後に続く必要がある。図10Aに示すように、trait1のすぐ下流のゲノムattPおよびattB部位の間の組換えにより、図10A、Bに示す配置をもたらすこととなる。しかし、trait1のさらに下流の他のattB部位がゲノムattP部位と組換わるとしても、最終結果は同じであることとなる。すなわち、得られる構造では、形質遺伝子の機能に必要でなく、かつ直接的に配向されたlox部位に挟まれたDNAの部位特異的欠失によって除去され得る2組の断片の間に、P−trait1断片が配置される(図10B)。
【0150】
工程3:次に、2組の不要なDNAを挟む組換え部位に対応するリコンビナーゼ遺伝子、mRNAまたはタンパク質を、安定なまたは一過性の方法のいずれかによって宿主細胞中に導入する。例えば、リコンビナーゼ遺伝子の安定な導入は、遺伝子交差を介して、または安定な形質転換の別の過程を介することができる。一過性のリコンビナーゼの導入は、タンパク質またはmRNA分子を送達する形質転換方法により、または、DNA分子の安定な導入とならない組換え遺伝子の送達により導入することができる。
【0151】
工程4:不要なDNAの部位特異的組換えが成功した場合には、宿主細胞は、逆位lox部位の組に隣接した所望の形質遺伝子のみを含むこととなる(図10C)。
【0152】
変形例
直接的に配向された部位の組ではなく、逆位attBおよびattP部位の組を用いてもよい。図11に、この場合のあり得る構造を示す。事象の組は、逆位attBおよびattP部位の対を除いて、図10として示されたものと類似している。
【0153】
実施例8
染色体組換えを介したアラビドプシス(Arabidopsis)における導入遺伝子転座 本実施例は、バクテリオファージφC31の部位特異的組換え系を用いて、ある植物系から別の植物系へ導入遺伝子を転座させるストラテジーを示す。このストラテジーでは、また、第2の部位特異的組換えを用いて不要なDNAを除去し、これにより、宿主ゲノム中に形質遺伝子のみを残すようにする考えも組み込む。
【0154】
研究室系(laboratory line)(ドナー系)を、特異的な組換え部位の組に隣接した導入遺伝子で形質転換する。対応する部位の組を、エリート系、所望のフィールド変種(field variety)(レセプタ系)に導入する。研究室系をエリート系と交雑させると、研究室系染色体とエリート系染色体との間で部位特異的組換えが発生する。リコンビナーゼの存在下では、導入遺伝子は研究室系染色体からエリート系染色体へ、隣接するDNAの転座を伴うことなく転座する。基本的に、転座事象は、非相同または相同染色体の間で起こり得る。相同染色体の間での場合、転座事象は、相同染色体中の異なる位置間で、または、同一の位置で起こり得る。
【0155】
図12Aに、本例で用いる2つの植物系を示す。標的植物系を、pCD426で形質転換した。この「レセプター」構築物は、アグロバクテリウム属遺伝子移入ベクターpPZP211に由来するものであった。RBとLBとの間、すなわち、Agrobacterium転移DNAの左右の境界の配列の間は、以下のDNAセグメントloxP−35S−PP’−npt−35S−int−PP’−(逆位loxP)である。ここで、35Sはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターであり、loxPはCre−lox組換え系の野生型組換え部位であり、PP’はφC31リコンビナーゼ系のattP部位であり、nptはネオマイシントランスフェラーゼのコード領域であり、intはφC31組換え系のインテグラーゼをコードする。図中プロモーターを明確に示すが、簡単にするため、転写の停止を促進しかつ各コード領域の下流に位置するターミネータは別のエレメントとしては図示しない。
【0156】
第2の植物系を、pPZP211に由来する「ドナー」構築物であるpCD414で形質転換した。RBとLBとの間に、BB’−bar−loxP−P3−gus−(逆位loxP)−35S−BB’−dhlA−35S−aacC1から構成されるDNAセグメントを挿入した。ここで、barは除草剤バスタに対する耐性をコードし、P3はサトウキビ杆状バドナウイルス(sugarcane bacilliform badnavirus)プロモーターであり、gusはβ−グルクロニダーゼのコード領域であり、dhlAはハロアルカンデハロゲナーゼのコード領域(Naestedら、1999, Plant J. 18: 571−76)であり、aaaC1はゲンタマイシン耐性をコードする。P3−gus断片は、レセプターエリート系へ遺伝子移入することになる(destinied)、代表的な形質遺伝子を表わす。
【0157】
ドナー系をレセプター系と交雑させた場合には、インテグラーゼが促進する部位特異的組換えが、2つの染色体の間で予想された。nptに近いPP’がbarに近いBB’と組換わった場合には、35Sはnptから切り離され、barに融合する。この事象は、バスタに対する耐性を与える。他のいずれのPP’xBB’組換えも、bar選択可能な表現型を生むことはない。下流でのPP’xBB’事象が同様に生じた場合には、35S−dhlA連結が開裂する。dhlAの発現はDCE(1,2−ジクロロエタン)に対する感受性を与える。すなわち、バスタとDCEとに耐性を有する植物は、ドナー染色体からレセプター染色体に転座したDNAの、bar−loxP−P3−gus−(逆位loxP)−35Sセグメントを有するはずである。
【0158】
この詳細なシナリオにおいて、ドナーおよびレセプター系はT−DNAのランダム送達によってそれぞれ形質転換したものであり、ドナーおよびレセプター部位は異なる遺伝子座にあることとなる。それにもかかわらず、ドナーおよびレセプター部位が同じ遺伝子座(相同染色体の同一の位置)にあっても、同じ原則が当てはまる。すべての場合に、導入遺伝子の両側での部位特異的組込みにより、ドナーの導入遺伝子に隣接するドナーDNAの連結障害物(linkage drag)が排除される。
【0159】
結果および考察
ドナーおよびレセプター系
野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis ecotype Columbia)を、pCD426を用いてアグロバクテリウム媒介性形質転換により形質転換した。同様に、野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis ecotype Landsberg)をpCD414を用いて形質転換した。この2種の生態型(ecotype)は十分な多型マーカーを有し、必要であれば、ドナーDNAの量をレセプター系のバックグランドにおいて概算することができる。これは、Lansberg生態型およびColumbia生態型としてそれぞれ表わされる、ドナー研究室系とエリートフィールド変種との間の代表的な遺伝子移入プログラムを促進する。
【0160】
35s−PP’−npt断片によって付与されるカナマイシン耐性を有するColumbia系を、サザンハイブリダイゼーションによって解析した。カナマイシン耐性植物の約10%が、図12Aに示すような、pCD426がコードするT−DNAの無傷のシングルコピーを有していることがわかった。ゲンタマイシン耐性を有するLansberg系についても、35s−aaaC1 DNAによって付与されるシングルコピーの挿入に関して、スクリーニングを行った。原則的には、ドナーまたはレセプター系が複数の導入遺伝子のコピーを含んでいるかどうかにかかわらず、35s−BB’−dhlA連結の全てのコピーが壊れない限り、dhlAマーカーでの対抗選択は有効ではないであろう。
【0161】
F1植物
表3は、pCD426の3つのシングルコピーと、pCD414系の7つのシングルまたは低コピーとの間で、対で交雑させた表を示す。可能な21対の組合せのうち18を交雑させ、F1子孫を得た。F1子孫はゲンタマイシン耐性に関して選択した。PCRアッセイを用いて、レセプター遺伝子座も有する植物を同定した。これらの基準を満たすものをF2種子の産生に関して選択した。さらに、これらのF1植物について、部位特異的組換えに関する1組の試験を行った。
【0162】
第1の試験では、バスタを塗った葉のそれぞれにおける、バスタ耐性に関して調べた。交雑のいくつかの組合せでは、数枚の葉が除草剤に対する耐性の微候を示して緑色のままであったのに対し、親の葉は黄変した。用いた第2の試験は、35S−PB’−bar結合の存在に関する、葉のDNAについてのPCR解析であった。barおよびnptの両方の3’末端に存在する、35Sおよびnos3’ターミネーターに対応するプライマーは、1.1kbの35S−PP’−nptの非組換え結合、および/または、0.8kbの組換え35S−PB’−bar結合を増幅させる(図12A、図12B)。2つの結合バンドの相対的な存在度は組換えの量を示すはずである。いくつかのF1植物では、0.8kbの35S−PB’−bar結合が見出された。しかし、この0.8kbの生成物の存在量が、1.1kbの生成物に比して比較的少ないことは、わずかの細胞しか組換わっていないことを示唆する。
【0163】
第3の試験は、F1の花および葉の組織に関するサザン解析であった。DNAは、EcoRI、HindIIIおよびSacIの組み合わせで切断し(図12A、図12Bにおいて、それぞれE、H、Sで表わす)、35Sプローブにハイブリダイズさせた。図12Aおよび12Bに、親および組換え染色体から予想される切断パターンを示す。CD426では、ハイブリダイゼーションプローブは3.1kbの単一バンドとして検出されると予想される。CD414では、プローブは2つのバンドにハイブリダイズするはずであり、その一方の予想サイズは2.5kbであり、他方は宿主の最も近い切断部位の位置に応じたサイズを有する、導入遺伝子の宿主の境界のバンドである。所定のDNA断片が転座される二重の組換えの事象において、レセプター染色体は2.2kbおよび1.1kbの2つの新たなバンドを示し、一方、ドナー染色体は1.9kbの新たな単一バンドおよび同じサイズの導入遺伝子の宿主の境界断片を示すはずである。
【0164】
組換えが検出された場合には、F1植物は組換え事象に関してキメラであった。ハイブリダイゼーションシグナルの大部分は、3.1kbおよび2.5kbの親断片へのものであった。しかし、ブロットをより長い露出時間にかけたところ、組換えバンドが検出された。強いハイブリダイゼーションがおよそ2kb〜3.1kbの領域に見られたことから、予想された2.2kbおよび1.9kbの組換えバンドはバックグランドから観察することができなかった。しかし、1.1kbのバンドがいくつかの植物の、花と葉の両方の組織において明確に検出された。このハイブリダイゼーションパターンは、いくつかの他の交雑に由来するF1子孫に関しても同様であった。サザン解析およびPCRのデータは両方とも、組換えが細胞の少ない部分だけで起きていることを示した。
【0165】
この組換え率の低さは、35S−int導入遺伝子の乏しい発現、組換えに関する2つの関与部位の位置的効果、および/または、相同染色体の同じ位置に位置しない部位に関して予想される組換え率の一般的な低さによる可能性がある。同様の、そしてさらに低い頻度の、「異所性の(ectopic)」染色体組換えが、タバコ(Qin他、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91: 1706−10)、Arabidopsis(本研究室にて、未公開)およびタバコとアラビドプシスとのハイブリッド細胞(Koshinskyら、2000, Plant J. 23: 715−22)におけるCre−loxを媒介とした染色体転座に関して以前に観察されている。それにもかかわらず、バスタ耐性の表現型、35S−PB’−bar結合のPCRでの検出、および1.1kbの35S−BP’−(逆位loxP)結合のサザンデータは、すべてドナーからレセプター染色体への導入遺伝子の転座と一致するものである。
【0166】
F2子孫
組換えが検出されなかった交雑を含む、各交雑からの2つの代表的なF1植物を、F2種子のために自己受精させた。F2の苗木にバスタを噴霧した。表3から、18個の交雑のうちの5個が、バスタ耐性(Bar)のF2子孫を産出する少なくとも1つのF1系を有し、3つの他の交雑がバスタに部分的な耐性を示すF2植物を産出し、一方で、残りの10個の交雑がBar子孫を産出しなかったことが示される。これは、葉に塗布するアッセイを用いたF1植物において見られたのと同一の耐性パターンである。
【0167】
3つのレセプター系のすべてがBar子孫を産出したことが特に重要である。このことは、成功した導入遺伝子の転座がゲノムのほんのわずかな位置に限定されていないことを示す。7つのドナー系のうちの4つのみがBar子孫をもたらし、これらの交雑のうちのいくつかは部分的なBar植物を産出した。部分的な耐性は、遺伝子サイレンシングによって引き起こされるようなbar遺伝子の乏しい発現による可能性がある。しかし、より可能性の高い説明によれば、部分的なバスタ耐性は、35S−PB’−bar結合の胚伝達(germinal transmission)ではなく後期の体細胞性組換え(somatic recombination)によるものである。発育上の後期の組換え事象により、35S−PB’−bar結合を有する細胞がより少なくなることが予想される。
【0168】
興味深いことに、Bar子孫を産生できなかった10個の交雑のうち8個が、ドナー系CD414−10、CD414−61、およびCD414−82に由来していた。3つの系すべては、ドナーDNAのシングルコピーを保有していると予測された。しかし、これらの系はpCD414のT−DNAのインタクトのコピーを有していない可能性がある。barやBB’配列のような、このDNAセグメントの重要エレメント内の検出されないDNA再配列または点突然変異が、組換えが観察されなかったことを説明し得る。
【0169】
耐性植物を生む交雑のいずれの組合せにおいても、すべての同胞種の植物が同様ということではなかった。この植物のうちのいくつかは、同胞種よりも大きく成長するにつれ、他のものよりもバスタに対して高い耐性を示すように思われた。高いレベルのBarは、転座事象の胚伝達により、または、親ドナーおよびレセプターの両方の染色体の同時分離の場合には、発達上の早期の組換え事象による可能性がある。
【0170】
F2の苗木をサザンブロットにより解析した。DNAは、EcoRI、HindIIIおよびSacIの組合せで切断し、barのDNAをプローブとした。バンドのクラスターとハイブリダイズする35Sプローブと異なり、barプローブはドナー構築物のSacI−HindIII断片を表わす1.1kbのシングルバンドを検出することが予想される(図12A)。組換え量に応じて、2.2kbの35S−PB’−barバンドを見て取ることができる。このバンドが、1.1kbの親バンドと比較してより低い強度でハイブリダイズする場合には、これは体細胞中の組換えを示す。雄性および雌性の両方の配偶子が組換え事象を伝達するならば、2.2kbのバンドだけが、1.1kbのバンドなしに、存在するはずである。2.2kbのバンドは、強度の差はあるものの、調べたF2の苗木の8つすべてに見ることができた。調べた1つの苗木では、2.2kbのバンドは、1.1kbのバンドと同様の強度でハイブリダイズした。このバンドパターンは、雄性または雌性の生殖系列のいずれか(両方ではない)による胚伝達に一致し、これにより、導入遺伝子の転座事象に関してヘテロの接合体が導かれる。そうであれば、導入遺伝子の転座事象(親配置)を欠く相同染色体は、遺伝子を導入しないColumbia生態型植物への戻し交雑で分離することができる。かかる戻し交雑由来のBar子孫は、導入遺伝子の転座レセプター染色体に関してヘミ接合体であり、これらの中では、その半分までは、相互転座遺伝子座を有するドナー染色体から分離された。
【0171】
【表3】
Figure 2004504055
【0172】
不要なDNAの除去
転座後のもはや必要ではないDNAは宿主ゲノムからその後除去され得るという条件の下で、導入遺伝子の転座技術が設計されている。ドナーおよびレセプター遺伝子座は、第2の組換え系由来の、本例では、Cre−lox系由来の、逆位組換え部位の組を含む(図12A)。導入遺伝子の転座の後、レセプター染色体上の新たな配置は、P3−gus断片によって例示される、形質遺伝子以外のDNAの直接的に反復されるloxP部位隣接セグメントの組を有する(図12B)。図12Cは、cre遺伝子を発現する植物に交雑させると、Creリコンビナーゼを媒介としたloxPに特異的な組換えにより、不要なDNAが欠失され、逆位loxP部位の組に隣接した形質遺伝子のみが残ることを示す。逆位loxP部位は互いに組換わって介在したDNAを反転させることができるので、形質遺伝子は植物のセントロメアに対してそのいずれの配向でも存在することとなる。これにより、所与の標的部位からの2つの明確な発現パターンが生じる。
【0173】
可能な変形例
上記実験に示した特定の設計は、φC31と異なる、自由に可逆的反応を与える他の組換え系での使用のために、変更することができる。図13に一例を示し、ここで、Cre−loxは形質遺伝子(P2−gus)をドナーからレセプター染色体へ転座させるために用いられる。FLP−FRTのような第2の組換え系を用いて、その後不要なDNAを除去する。
【0174】
ドナー構築物pVS78は、ランダムな位置でゲノムに形質転換される。P1−bar選択マーカーは直接的に配向されたloxP部位に隣接し、ドナー構築物断片は逆位lox511部位の組に隣接している。lox511対立遺伝子は、loxPと組換わらない。このため、cre遺伝子がゲノムに導入された場合には、loxP×loxPおよびlox511×lox511の組換えの事象、複雑な遺伝子座をシングルコピーに分割するだけでなく、P1−barマーカーが除かれることとなる。この分割工程は、ドナー系をレセプター系中に交雑させるよりも前またはそれと同時に行うことができる。このようなレセプター系の例として、VS11がある。図13に示すように、ドナーおよびレセプター染色体の間、loxP×loxPの間、およびlox511とlox511の間における、二重の部位特異的組換えにより、P1−aha結合が形成されることとなり、ここで、P1はイネアクチンプロモーターであり、ahaはアセトヒドロキシ酸シンターゼコード領域である。ahaの発現はイマゼタピル耐性を与える。上記のように、P1−loxP−ahaセグメントは直接的に配向されたFRT部位に隣接しているため、その後、FLPリコンビナーゼの導入により除去することができる(図13に図示せず)。
【0175】
要約
現在の形質転換方法によれば、導入したDNAの、予測できない組込み位置、パターンおよびコピーがもたらされる。標的レセプター系の生成により、ゲノム中に標的部位をランダムに配置させる現在の形質転換方法を使用することからなることが予見されている。シングルコピー標的系は、複雑な複数コピーを伴う上記方法に好適であろう。導入遺伝子の転座ストラテジーは、隣接逆位組換え部位を組み込むものであり、そのため、シングルコピーの形質転換体を得るための、分割に基づくストラテジー(Srivastavaら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci USA, 96: 11117−11121;SrivastavaおよびOw、2001 Plant Mol. Biol. 46: 561−566;米国特許第6,114,600号)に適したものである。
【0176】
一旦標的系を得れば、これらについて部位の完全性(site integrity)および発現パターンに関して特定することができる。望ましいと思われるものについては、その後のDNA挿入のための標的部位として用いることができる。次に、標的部位はエリート系から出して繁殖させることができる。その後、形質遺伝子(またはDNAセグメント内の複合的な形質遺伝子)を、研究室系の標的部位への部位特異的組込みにより、または、研究室系ゲノムへのDNAのランダム組込みにより、導入してもよい。形質遺伝子のセグメントは、次いで、本実施例に示したように、ドナー系染色体からエリート系レセプター染色体へと転座させることができる。
【0177】
エリートのバックグランドへの標的部位の導入の際、エリートの変種が一定して進化していることが認められる。例えば、標的部位はランダムに配置される可能性があり、遺伝子Xの隣に位置する(land)。次に、X標的は、例えばテキサスのエリート系A、ネブラスカのエリート系B、そしてアルゼンチンのエリート系Cというように、広い範囲で戻し交雑する。時間が経過するにつれ、エリート系A、B、Cは、新たなエリート系A2、B2、そしてC2へと進化し得る。しかし、これらの新たなエリート系は新規に現れることはなく、原種A、B、そしてCからそれぞれ進化するものであるので、X標的遺伝子座を保持している可能性が高い。このため、おそらく前の導入遺伝子の改善版である新たな導入遺伝子、または複数の導入遺伝子から構成されるDNA断片を、この遺伝子座への部位特異的組換えにより、研究室系からエリート系A2、B2、C2へと、再び転座させることが可能である。エリートのバックグランドで標的系が確立されれば、導入遺伝子転座技術は、研究室系からエリート系への導入遺伝子のシャトリング(shuttling)を容易なものとし、これは遺伝子導入形質の商業化において、大変な労力と時間の節約となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1Aおよび図1Bは、可逆的または不可逆的組換え系を用いたDNA交換反応を示す。不可逆的組換え系(図1A)では、IRSとCIRS間の組換えにより、不可逆的リコンビナーゼにはもはや認識されることのないハイブリッド部位が形成される。可逆的組換え系(図1B)では、RRSとRRS間の組換えにより、互いに組換え続けることができる2つの産物であるRRS部位が生産される。したがって、その部位と交換するDNAはまた、元の状態へと交換することができる。この例は、RRS−1およびRRS−2と称した2つの異なるRRS部位を示す。
【図2】
図2A〜Gは、酵母(S. prombe)のleu1遺伝子座での二重部位組換えストラテジーを示す。pLT50に由来する直鎖状attB−ura4−attB DNA(図2A〜B)は、分子の両端で組み換わり、正確な遺伝子置換をもたらす(図2C、クラス1)。さらに、副反応が幾つか観察され、標的遺伝子座の5’attP(図2E、クラス2)または3’attP部位(図2F、クラス3)に挿入される前に、相同組換えにより直鎖状分子が再環化して、環状中間体を形成した(図2D)。環状pLT50を形質転換基質として使用する場合、pLT50の5’attB部位とleu1遺伝子座の5’attP部位の単一組換えが図示した構造(図2G、クラス4)を生産する1つのクローンを回収した。エンドヌクレアーゼXbaI(X)またはNdeI(N)切断産物の予測サイズを示す。
【図3】
図3は、インテグラーゼ−DNA濃度の関数として形質転換効率を示す(パネルC)。FY529attP(パネルA)またはFY529attPx2(パネルB)を、様々な量のpLT43DNAとともに、それぞれpLT45またはpLT50 DNA1μgで形質転換した。
【図4】
図4は、直鎖状cDNA分子を、哺乳動物細胞の染色体に組み込むためのストラテジーを示す図である。この場合では、IRSまたはCIRSの各対を、直接反復配列として配列させる。
【図5】
図5Aおよび図5Bは、哺乳動物細胞への組込み時の直鎖状cDNAのセンスおよびアンチセンス発現に関するストラテジーを示す。この場合では、IRSまたはCIRSの各対を、間接反復配列として配列させる。図5C〜Dは、導入レポーター遺伝子hptのセンス発現を実証するためのDNA基質を示す。図5Eは、ヒトゲノム中のシングルコピーレセプター構築を示す。図5Fは、DNA交換のPCR検出に関するストラテジーを示す。
【図6】
図6Aおよび図6Bは、植物細胞への組み込み時のcDNAのセンスおよびアンチセンス発現に関するストラテジーを示す。これらの方法を実施する際、選択マーカーをcDNAに結合させない。
【図7】
図7は、所望のポリヌクレオチドのみを組み込むための一般的ストラテジーを示す。選択マーカーのような外来性DNAを除去する。白矢頭は、可逆的リコンビナーゼ用の組換え部位を表し、「int」は、リコンビナーゼをコードする遺伝子であり、「sel1」および「sel2」は、選択マーカーである。「P」は、プロモーターであり、「trait」は、発現すると、細胞に所望の形質を付与する所定のポリヌクレオチドである。
【図8】
図8A〜Jは、遺伝子を「スタッキング」するための一般的ストラテジーを示す。「trait1」、「trait2」等は、発現すると、細胞に所望の形質を付与する所定の個々の遺伝子である。
【図9】
図9A〜Jは、遺伝子を「スタッキング」するための第2のストラテジーを示す。この場合、逆位組換え部位を使用する。
【図10】
図10A〜Cは、DNAコンカテマーの単一ユニットが、遺伝子置換によりゲノムに挿入することができるストラテジーを示す。この例では、直接的に配向された二重組換え部位を使用する。
【図11】
図11A〜Cは、DNAコンカテマーの単一ユニットが、遺伝子置換によりゲノムに挿入することができるストラテジーを示す。この例では、間接的に配向された二重組換え部位を使用する。
【図12】
図12A〜Cは、植物染色体間のポリヌクレオチドの部位特異的置換(あるいは「DNA断片転座」事象とも呼ばれる)、続く形質遺伝子(P3−gusが例示される)の発現にもはや必要とされないDNAの除去に関するストラテジーを示す。
【図13】
図13は、可逆的リコンビナーゼを用いた、植物染色体間のポリヌクレオチドの部位特異的置換に関するストラテジーを示す。ここでは、Cre−loxを、ドナー染色体からレセプター染色体へ形質遺伝子(P2−gus)を転座するのに使用し、次にFLP−FRTのような第2の可逆的組換え系を、不必要なDNAを除去するのに使用する。

Claims (66)

  1. 真核細胞において部位特異的遺伝子置換を得る方法であって、:
    a)2つまたはそれ以上の不可逆的組換え部位(IRS)が隣接したレセプターポリヌクレオチドを含むレセプター構築物を含む真核細胞を準備し、
    b)2つまたはそれ以上の不可逆的相補組換え部位(CIRS)が隣接したドナーポリヌクレオチドを含むドナー構築物を、該細胞に導入し、そして
    c)該レセプター構築物および該ドナー構築物を、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させ、
    d)ここで該不可逆的リコンビナーゼが、第1および第2の型の組換え部位との間の組換え、ならびに該ドナーポリヌクレオチドによる該受容体ポリヌクレオチドの置換を触媒し、それにより置換構築物を形成すること
    を含む方法。
  2. 前記ドナー構築物が、直鎖状である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ドナー構築物が、環状ベクターである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ドナー構築物が、染色体である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記レセプター構築物が、染色体である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記レセプター構築物が、2つのIRSを含み、前記ドナー構築物が、2つのCIRSを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記IRSが、互いに対して逆位であり、CIRSが、互いに対して逆位である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記ドナーポリヌクレオチドが、所定の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーターをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  9. 前記レセプター構築物が、前記IRSの一方に隣接しているプロモーターをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  10. 前記プロモーターが、前記IRSから5’末端方向に位置する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記レセプター構築物が、選択マーカーに作動可能に連結される第2のプロモーターをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  12. 前記レセプターポリヌクレオチドまたは前記ドナーポリヌクレオチドが、ネガティブ選択マーカーをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  13. 前記レセプターポリヌクレオチドまたは前記ドナーポリヌクレオチドが、前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、請求項9に記載の方法。
  14. 前記レセプターポリヌクレオチドが、前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸を含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドが、φC31インテグラーゼ、大腸菌ファージP4リコンビナーゼ、大腸菌ファージラムダリコンビナーゼ、リステリアU153もしくはA118ファージリコンビナーゼ、またはアクチノファージR4 Sreリコンビナーゼである、請求項14に記載の方法。
  16. 前記不可逆的リコンビナーゼが、バクテリオファージφC31インテグラーゼである、請求項15に記載の方法。
  17. 前記置換構築物を可逆的リコンビナーゼと接触させることにより、前記置換構築物中の望ましくないヌクレオチド配列を欠失させることをさらに含む方法であって、前記置換構築物が、該可逆的リコンビナーゼと適合する1つまたはそれ以上の対の直接的に配向された可逆的組換え部位(RRS)を含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記可逆的リコンビナーゼが、ファージP1由来のCre、酵母のFLP、ファージMuのGinリコンビナーゼ、pSR1プラスミドのRリコンビナーゼ、およびバシラスファージ由来のβリコンビナーゼからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記レセプター構築物が、2つのIRSを含み、前記ドナー構築物が、2つのCIRSを含む、請求項17に記載の方法。
  20. 前記ドナーポリヌクレオチドが、2つの前記RRSを含み、その2つが、互いに対して逆に配向している、請求項19に記載の方法。
  21. 前記RRSが、プロモーターおよび所定の遺伝子に隣接している、請求項20に記載に方法。
  22. 前記レセプター構築物が、2つの前記RRSをさらに含み、その2つが、互いに対して逆に配向している、請求項21に記載の方法。
  23. 前記RRSが、前記2つのIRSが隣接する様にプロモーターおよび前記レセプターポリヌクレオチドと隣接する、請求項22に記載の方法。
  24. 前記レセプター構築物が、3つのIRSを含み、前記ドナー構築物が、3つのCIRSを含む、請求項17に記載の方法。
  25. 前記3つのIRSが、同一である2つのIRSおよび同一でない1つのIRSで構成され、前記3つのCIRSが、同一である2つのCIRSおよび同一でない1つのCIRSで構成される、請求項24に記載の方法。
  26. 前記ドナーポリヌクレオチドが、所定の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーターをさらに含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記レセプター構築物が、前記IRSの1つに隣接しているプロモーターをさらに含む、請求項25に記載の方法。
  28. 前記プロモーターが、前記IRSから5’方向に位置する、請求項27に記載の方法。
  29. 前記レセプター構築物が、選択マーカーに作動可能に連結される第2のプロモーターをさらに含む、請求項27に記載の方法。
  30. 前記レセプターポリヌクレオチドまたは前記ドナーポリヌクレオチドが、ネガティブ選択マーカーをさらに含む、請求項27に記載の方法。
  31. 前記レセプターポリヌクレオチドまたは前記ドナーポリヌクレオチドが、前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、請求項27に記載の方法。
  32. 前記レセプターポリヌクレオチドが、前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸を含む、請求項31に記載の方法。
  33. 前記不可逆的リコンビナーゼポリヌクレオチドが、φC31インテグラーゼ、大腸菌ファージP4リコンビナーゼ、大腸菌ファージラムダリコンビナーゼ、リステリアU153もしくはA118ファージリコンビナーゼ、またはアクチノファージR4 Sreリコンビナーゼである、請求項32に記載の方法。
  34. 前記不可逆的リコンビナーゼが、バクテリオファージφC31インテグラーゼである、請求項33に記載の方法。
  35. 前記真核細胞が、哺乳動物細胞または植物細胞から選択される、請求項1または17に記載の方法。
  36. 前記真核細胞が、植物細胞である、請求項35に記載の方法。
  37. 請求項36に記載の方法により生産される植物細胞。
  38. 請求項37に記載の植物細胞を含む植物。
  39. 前記真核細胞が、ヒト細胞である、請求項35に記載の方法。
  40. トランスジェニック植物を生産する方法であって、:
    a)2つの不可逆的組換え部位(IRS)が隣接した染色体レセプターポリヌクレオチドを含むレセプター植物を準備し、
    b)2つの相補不可逆的組換え部位(CIRS)が隣接した染色体ドナーポリヌクレオチドを含むドナー植物を準備し、
    c)該IRSと該CIRS間の組換え、および該ドナーポリヌクレオチドによる該レセプターポリヌクレオチドの置換を触媒し、それにより該トランスジェニック植物において染色体置換構築物を形成する不可逆的リコンビナーゼポリペプチドを発現するトランスジェニック植物を生産するために、該ドナー植物を該レセプター植物と交雑させる工程
    を含む方法。
  41. 前記レセプター植物が、シングルコピーレセプター系統である、請求項40に記載の方法。
  42. 前記レセプター植物および前記ドナー植物が、同一種である、請求項40に記載の方法。
  43. 前記レセプターポリヌクレオチドが、前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、請求項40に記載の方法。
  44. 前記不可逆的リコンビナーゼポリヌクレオチドを発現しない前記トランスジェニック植物の子孫を選択することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
  45. 前記染色体置換構築物が、前記ドナーポリヌクレオチドに作動可能に連結されるプロモーターを含む、請求項40に記載の方法。
  46. 前記プロモーターが、前記レセプター植物に由来するものである、請求項45に記載の方法。
  47. 前記レセプターポリヌクレオチドまたは前記ドナーポリヌクレオチドが、ネガティブ選択マーカーをさらに含む、請求項40に記載の方法。
  48. 前記IRSが、互いに対して逆位であり、前記CIRSが、互いに対して逆位である、請求項40に記載の方法。
  49. 前記不可逆的リコンビナーゼポリヌクレオチドが、φC31インテグラーゼ、大腸菌ファージP4リコンビナーゼ、大腸菌ファージラムダリコンビナーゼ、リステリアU153もしくはA118ファージリコンビナーゼ、またはアクチノファージR4 Sreリコンビナーゼである、請求項40に記載の方法。
  50. 前記不可逆的リコンビナーゼが、バクテリオファージφC31インテグラーゼである、請求項49に記載の方法。
  51. 前記トランスジェニック植物を、可逆的リコンビナーゼをコードする核酸を含む植物と交雑させることをさらに含む方法であって、前記染色体置換構築物が、該可逆的リコンビナーゼと適合する1つまたはそれ以上の対の直接的に配向された可逆的組換え部位(RRS)をさらに含む、請求項40に記載の方法。
  52. 請求項40ないし51のいずれか1項に記載の方法により生産されるトランスジェニック植物。
  53. 細胞における遺伝子スタッキングの方法であって、:
    a)少なくとも1つの不可逆的組換え部位(IRS)を含む標的ポリヌクレオチド、互いに対して逆に配向している2つの可逆的組換え部位(RRS)を含む標的構築物を染色体中に含む細胞を準備し、
    b)第1のドナーポリヌクレオチド、2つの相補不可逆的組換え部位(CIRS)、および互いに対して逆に配向している2つのRRSを含む第1のドナー構築物を該細胞に導入し、
    c)該標的構築物および該第1のドナー構築物を、該IRSおよび該CIRSのそれぞれと適合し、ここで該不可逆的組換え部位が該第1のドナーポリヌクレオチドを該標的構築物へ組み込み、それにより第1の染色体組込み構築物を形成する、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させ、
    d)遺伝子座を、該RRSのそれぞれと適合する可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させて、それにより第1の染色体形質構築物を形成することにより、該第1の染色体組込み構築物中の望ましくないヌクレオチド配列を欠失させ、
    e)2つのIRS、第2のドナーポリヌクレオチドおよび1つのRRSを含む第2のドナー構築物を、該細胞に導入し、
    f)該第1の染色体形質構築物および該第2のドナー構築物を、該第2のドナーポリヌクレオチドを該第1の染色体形質構築物に組み込み、それにより第2の染色体組込み構築物を形成する該不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させ、
    g)第2の染色体組込み構築物を含む細胞(ここで、該第1のドナーポリヌクレオチドが、該第2のドナーポリヌクレオチドに隣接している)に関して選択し、
    h)選択した該第2の染色体組込み構築物を、該RRSのそれぞれと適合している可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させて、それにより第2の染色体形質構築物を形成することにより、選択した該第2の染色体組込み構築物中の望ましくないヌクレオチド配列を欠失させ、
    i)2つのCIRS、第3のドナーポリヌクレオチドおよび1つのRRSを含む第3のドナー構築物を、該細胞に導入し、
    j)該第2の染色体形質構築物および該第3のドナー構築物を、該第3のドナーポリヌクレオチドを該第2の染色体形質構築物を組み込み、それにより第3の染色体組込み構築物を形成する該不可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させ、
    k)該第3の染色体組込み構築物を含む細胞(ここで、該第2のドナーポリヌクレオチドが、該第3のドナーポリヌクレオチドに隣接している)に関して選択し、
    l)選択した該第3の染色体組込み構築物を、該RRSのそれぞれと適合する可逆的リコンビナーゼポリペプチドと接触させて、それにより第3の染色体形質構築物を形成することにより、選択した該第3の染色体組込み構築物中の望ましくないヌクレオチド配列を欠失させること
    を含む、請求項40に記載の方法。
  54. 前記ドナー構築物のいずれか1つが、環状ベクターである、請求項53に記載の方法。
  55. 前記レセプター構築物が、染色体である、請求項53に記載の方法。
  56. 前記ドナーポリヌクレオチドのいずれか1つが、プロモーターに作動可能に連結される所定の遺伝子を含む、請求項53に記載の方法。
  57. 前記ドナーポリヌクレオチドが、選択マーカーをさらに含む、請求項56に記載の方法。
  58. 前記レセプター構築物が、不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項57に記載の方法。
  59. 前記レセプターポリヌクレオチドが、前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドをコードする前記核酸を含む、請求項58に記載の方法。
  60. 前記不可逆的リコンビナーゼポリペプチドが、φC31インテグラーゼ、大腸菌ファージP4リコンビナーゼ、大腸菌ファージラムダリコンビナーゼ、リステリアU153もしくはA118ファージリコンビナーゼ、またはアクリノファージR4Sreリコンビナーゼである、請求項59に記載の方法。
  61. 前記不可逆的リコンビナーゼが、バクテリオファージφC31インテグラーゼである、請求項60に記載の方法。
  62. 前記レセプター構築物が、選択マーカーに作動可能に連結されるプロモーターをさらに含む、請求項56に記載の方法。
  63. 前記選択マーカーが、ネガティブ選択マーカーである、請求項62に記載の方法。
  64. 前記真核細胞が、植物細胞または哺乳動物細胞である、請求項53に記載の方法。
  65. 前記真核細胞が、植物細胞である、請求項64に記載の方法。
  66. 前記真核細胞が、ヒト細胞である、請求項64に記載の方法。
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