JP2004502727A - レトロウイルス感染症を処置するための薬学的組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置する医薬品を製造するためのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用を提供する。本発明はまた、レトロウイルス感染症の治療において同時または個別または連続的に使用される混合調製物として、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬とを含有する製造物を提供する。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法およびそのような方法を行うための薬学的組成物に関する。より詳細には、本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための医薬品を製造するための、特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関する。別の実施形態において、本発明は、1つ以上の細胞タンパク質またはレトロウイルスタンパク質を標的とする1つ以上の薬物(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)と組み合わせられたこれらの誘導体の使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
1型ヒト免疫不全症ウイルス(以降、HIV−1として示される)の複製は、Vandamme他によりAntiviral Chem.Chemother.(1998)9:187〜203に概説されるように、多数のウイルス標的を標的とする強力な抗ウイルス薬を組み合わせることによって感染患者において劇的に低下させることができる。HIV感染患者の処置に対して正式に承認されている薬物は、逆転写酵素(RT)阻害剤(ヌクレオシド系および非ヌクレオシド系)またはプロテアーゼ阻害剤のクラスに属する。多剤混合療法は、ウイルス量を、最も高感度な試験の検出限界よりも低く低下させることができる。それにも関わらず、Perelson他、Nature(1997)387:123〜124によれば、低いレベルの継続した複製がおそらくは聖域部位で生じ、これにより薬物耐性株の出現をもたらすことが示されている。さらに、Schmit他、J.Infect.Dis.(1996)174:962〜968によれば、HIVは、すべてではないが、ほとんどの現在承認されている抗ウイルス薬に対する耐性を発達させることができる。
【0003】
HIV−1の組込みに必要とされる唯一の酵素は、BrownによりRetroviruses(1997)(Coffin、HughesおよびVarmus編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国)、161頁〜203頁)に概説されるように、pol遺伝子の3’末端にコードされる32kDaのタンパク質であるインテグラーゼ(以降、INとして示される)である。この酵素は、ビリオンが成熟化するときにgag−pol前駆体のプロテアーゼ媒介の切断によって産生される。インテグラーゼは、ウイルスcDNAの長末端反復(以降、LTRとして示される)エレメント内の特異的な配列を認識をする。LTRの末端の15bpが、部位特異的な切断および組込みのためには必要かつ十分である。切断部位のすぐ上流に位置する高度に保存されたジヌクレオチドCAが酵素活性には重要である。3’末端プロセシングと名付けられた組込み反応の第1段階において、2つのヌクレオチドがそれぞれの3’末端から除かれ、新しい3’−ヒドロキシル末端(CA−3’−OH)が生じる。この反応は、Miller他、J.Virol.(1997)71:5382〜5390によれば、細胞質において、前組込み複合体(以降、PICとして示される)と呼ばれる大きいウイルス核タンパク質複合体内で生じる。核に進入した後、プロセシングされたウイルス二重鎖DNAが宿主の標的DNAに結合する。この結合反応には、標的の宿主DNAの対形成する5bpの付着性切断、およびプロセシングされたCA−3’−OHのウイルスDNA末端を標的DNAの5’−Oリン酸エステル末端に連結することが含まれる。残存するギャップの修復が、これは現時点では理解されていないが、宿主細胞のDNA修復酵素によっておそらくは達成される。しかし、Chow他、Science(1992)255:723〜726によれば、レトロウイルスの酵素もまた関与することが推定されていた。
【0004】
部分的なタンパク質分解の実験に基づいて、HIV−INは3つの機能的ドメインに分割することができる。N末端のドメイン(残基1〜50を含む)は、HHCC「ジンクフィンガー」様配列を特徴とする(すなわち、Zn2+と結合する2つのヒスチジンおよび2つのシステインを含有する)が、その正確な機能は不明のままである。中央のコアドメイン(残基50〜212を含む)は、インテグラーゼスーパーファミリーおよびポリヌクレオチドトランスフェラーゼにおいて高度に保存されており、そして3’−プロセシング活性およびDNA鎖転移活性の両方に対する触媒作用ドメインを表す3つのアミノ酸残基(Asp64、Asp116およびGlu152)を特徴とする。この中央のコアドメインは単独で、DNA鎖転移反応の明かな逆(いわゆる分解反応)をインビトロで行うことができる。しかし、アミノ末端およびカルボキシ末端の両方のドメインが3’−プロセシングおよび鎖転移の触媒作用には必要である。触媒作用コアドメイン内における一アミノ酸の置換体(F185K)は、Dyda他によりScience(1994)266:1981〜1986に概説されるように、コアドメインを結晶化させることができ、そしてその三次元(以降、3Dとして示される)構造を解明することができる可溶性タンパク質をもたらす。C末端のドメイン(残基212〜288を含む)は非特異的なDNA結合に関与している。短縮化されたC末端ドメインの核磁気共鳴(以降、NMRとして示される)による構造が決定されている。INタンパク質をこれらの異なるドメインにおいて変異させた相補性研究により、正確な化学量論は不明のままであるが、INの活性形態はオリゴマーであることが示唆されている。
【0005】
高処理能のマイクロタイタープレートアッセイを確立し、そしてHIV−1INの触媒作用ドメインの3D構造を解明することによって、ケミカルライブラリーをスクリーニングするか、または構造に基づいて設計することによるIN阻害剤の開発が促進させられた。かなり面倒なPICアッセイにおけるIN阻害剤の評価が(例えば、Farnet他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:9742〜9747に)議論されているが、INの阻害は典型的には、プロセシング反応および結合反応の両方をインビトロで評価するためにLTR模倣体を使用するオリゴヌクレオチドに基づくアッセイにおいて、すなわち、Sherman他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:5119〜5123に、そしてBushman他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:1339〜1343に開示されるようなアッセイにおいて評価される。種々のクラスのHIV−1IN阻害剤が、Y.Pommier他によりAntiviral Research(2000)47:139〜148に概説されるように報告されており、これらには、(i)モノヌクレオチド、ジヌクレオチド、iso−ヌクレオチドおよびより長いオリゴヌクレオチドならびにそれらのアナログ、(ii)ヒドロキシル化芳香族化合物、(iii)DNAインターカーション剤(リガンド)、そして(iv)ポリペプチドおよび抗体が含まれる。しかし、これらの化合物はほとんどが細胞培養において抗ウイルス活性を示さなかった。細胞培養において抗ウイルス活性を示したIN阻害剤のほとんどについて、組込み段階が標的化されていることは明確には明らかにされなかった。Hazuda他、Science(2000)287:646〜650によれば、これまでに報告されている真のIN選択的阻害剤はジケト酸誘導体だけである。
【0006】
3’,5−ジアジド−2’,3’−ジデオキシウリジン5’−モノホスファート(5−N3−AZUMPとして示される)などのヌクレオチドは、おそらくはヌクレオチド結合部位との相互作用によって、より正確にはHIV−1コアドメインのα−4へリックスに結合することによってINの酵素活性を妨害する。様々なヌクレオチドアナログの構造−活性研究が報告されている。阻害のために必要とされる濃度(IC50=150μM)が高かったが、Furman他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:8333〜7によれば、1mMまでの濃度の5−N3−AZUMPが細胞内に蓄積し得るので、IN阻害がAZTの抗ウイルス効果に寄与し得ることを除外することができない。ジヌクレオチドもまた、5’−Oリン酸化がないときでさえ、HIV―1INの強力な阻害剤として報告されていたが、Mazumder他によりMol.Pharmacol.(1997)51:567〜75に報告されるように、どれも抗ウイルス活性を示さなかった。
【0007】
四鎖化グアノシン四量体構造を形成するオリゴヌクレオチドは、(Ojwang他、Antimicrob.Agents Chemother.(1995)39:2426〜2435によれば)細胞培養におけるHIV複製の強力な阻害剤である。しかし、G四量体はナノモル範囲でHIVのIN活性を阻害するが、細胞培養におけるその抗ウイルス活性は、HIVのIN活性の阻害ではなく、ウイルス進入の阻害のためであることが、薬剤耐性株の選択および配列決定によって(Cherepanov他によりMol.Pharmacol.(1997)52:771〜780に)明瞭に示されている。
【0008】
多くのポリヒドロキシル化芳香族化合物(フラボン類、チルホスチン類、リグナン類、アントラキノン類およびビスカテコール類を含む;これらはすべて、芳香族環における2つのビシナルヒドロキシル基を特徴とする)がインビトロにおけるHIV−1INの阻害剤として報告されている。3つの考えられる作用機構が提案されていた(Pommier他(前掲)を参照のこと)。カテコール類は、活性部位におけるリン酸転移反応に必要な金属イオンの配位を妨害し得る。カテコール類のインビボでの酸化は反応性のキノン化学種を生じさせることができ、またはヒドロキシル基が、酵素と相互反応するための水素結合ドナーとして機能し得る。オルト位にヒドロキシル基を含まないが、IN活性を阻害するヒドロキシル化芳香族化合物(クルクミン、クーママイシンおよびビスクマリン類など)もまた報告されている。分子モデリングを使用して、様々なファルマコホアが、Neamati他、Mol.Pharmacol.(1997)52:1041〜1055によれば、新規なリード化合物の発見をもたらし得る知られているヒドロキシル化芳香族阻害剤において同定されている。しかし、細胞培養におけるカテコールタイプの阻害剤の抗ウイルス効果は、その固有的な細胞毒性により損なわれている。
【0009】
ジカフェオイルキナ酸誘導体およびL−チコリ酸(L−CA)誘導体がインビトロにおけるHIV−1のINおよび細胞培養におけるHIV−1の複製を阻害することが、最近、Robinson他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:6326〜6331に報告された。L−チコリ酸に対して耐性のHIV−1株が選択され、変異がIN遺伝子にマッピングされた(G140S)。本発明者らは、最近、L−CAに対して耐性であり、かつIN遺伝子の代わりにgp120に変異を含む複数のHIV−1株を選択した。さらに、G140S変異を有する組換えINは、Pluymers他(2000)によれば、野生型酵素と同程度にL−CAによって阻害された。
【0010】
ジケト酸誘導体は、Hazuda他(前掲)により報告されるように、DNA鎖転移段階を特異的に阻害することによってHIV−1の複製をマイクロモル濃度で阻害する。これらの化合物の存在下で選択された耐性のウイルス株はIN遺伝子に様々な変異を有した。これらの変異は、INに導入されたときに、これらの薬剤に対して部分的な耐性をもたらした。
【0011】
多くのDNA結合剤もまた、おそらくは酵素のDNA結合ドメインとの非特異的な相互作用のためにHIV−1INを阻害することが見出されていた。DNAインターカレーターおよびDNA溝結合剤(ネトロプシンなど)はこのカテゴリーに属する。例えば、インターカーレーションするオキサゾロピリドカルバゾールに結合することによりLTRの特異的な領域において三重らせんを形成するDNAリガンドは、HIV−1INのU3特異的LTR結合阻害剤またはU5特異的LTR結合阻害剤として作用することができる。HIV−1INのアミノ酸147〜175に対応する30merのペプチドはまたミリモルの濃度でIN活性を阻害することが示されていた。INドメインに対する単鎖の可変フラグメントを細胞内で発現させることにより、ウイルス複製サイクルの初期段階が阻害される。リボソーム不活性化タンパク質(RIP)ファミリーのメンバーなどのポリペプチドがHIV−1INの強力な阻害剤として記載されていた。しかし、INとの妨害がその抗ウイルス活性に対する重要な機構であることは明らかにされていなかった。
【0012】
国際特許出願公開WO99/25718には、特に、抗菌活性、(ヘルペス単純ウイルスに対する)抗ウイルス活性、抗クラミジア活性、および(インターフェロン誘導剤のような)免疫刺激活性を有して、薬理学、獣医学および化粧品学において有用であり、そして免疫不全症患者における日和見疾患を処置するために有用であると言われるクラスのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が開示されている。
【0013】
まとめると、レトロウイルスのRTおよび/またはINを選択的に標的とし、そしてまた抗ウイルス性ある強力な阻害剤が当該分野において依然として強く求められている。従って、本発明の目的は、哺乳動物およびヒトにおけるレトロウイルス感染症(特にレンチウイルス感染症、より具体的にはHIV感染症)を処置するための効率的かつ有害でない薬学的に活性な成分および成分の組合せを明らかにすることによってこの差し迫った要求を満たすことである。
【0014】
(発明の要約)
哺乳動物およびヒトにおけるレトロウイルス感染症(特にレンチウイルス感染症、より具体的にはHIV感染症)の治療を改善し、かつウイルスの複製をさらに低下させ、かつ多数の薬剤に対して耐性であるレトロウイルス株に対処する努力において、第3のウイルス酵素であるインテグラーゼ(HIV−IN)の効果的な阻害剤に対する探索を開始することが望ましかった。この酵素は、ウイルスが複製するために不可欠な段階である、ウイルスcDNAを宿主細胞染色体に挿入することを担っている。この酵素のヒト対応体はまだ知られていないので、HIV組込みプロセスの効果的で、好ましくは選択的な阻害剤を開発することはかなり注目される。
【0015】
本発明は、特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によってレトロウイルス(特にHIV−1)のインテグラーゼが阻害されるという予想外の発見に基づいている。ここで、これらの化合物はまた、細胞培養においてHIVの複製からの保護を示し、そして1つ以上の抗レトロウイルス薬、例えば、レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物(例えば、下記に示される薬物)と組み合わせて使用されたときに哺乳動物およびヒトの細胞培養においてレトロウイルス感染(特にレンチウイルス感染)に対する相乗効果もまた示すことができる(総説については、Antivirals against AIDS(2000)、M.Dekker,Inc.を参照のこと):
・下記に詳述されるようなレトロウイルス酵素阻害剤、
・レトロウイルスの複製に関与するか、またはレトロウイルスの複製に不可欠である(グリコシル化または非グリコシル化)非酵素レトロウイルスタンパク質(例えば、HIVのgp120)に対して効果的な薬物、例えば、Nature(2001)410:966に議論されるgp120エンベロープ抗原に基づく免疫原、および
・レトロウイルスの進入に関与するか、またはレトロウイルスの進入に不可欠であるタンパク質(例えば、受容体または細胞化合物)を阻止する薬物、例えば、CCR5阻害剤(例えば、Dragic他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97:5639〜44に開示されるTAK−779分子など)。
そのような生物学的性質または性質の組合せは、すなわち、それらを、ヒトにおけるHIV感染のいわゆる混合療法において非常に注目される薬学的に活性な成分にする。
【0016】
従って、そのより広い意味で、本発明は、レトロウイルス感染患者(特にレンチウイルス感染患者、より詳細にはHIV感染患者)におけるレトロウイルス感染症を処置する医薬品を製造するためのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、レトロウイルス酵素(特にインテグラーゼまたは逆転写酵素、より詳細にはHIV−1のインテグラーゼまたはHIV−1の逆転写酵素)の阻害剤としてのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、レトロウイルス感染患者(特にレンチウイルス感染患者、より詳細にはHIV感染患者)におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法に関し、この方法は、そのような処置を必要とする患者にピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の有効量を投与する工程を含む。
【0017】
別の実施形態において、本発明はまた、逆転写酵素阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤などの1つ以上の抗レトロウイルス薬と組み合わせて使用されたときに、ヒト細胞培養におけるレトロウイルス感染に対する(下記に定義されるような)(亜)相乗効果の予想外の発見に基づいている。このような相乗的性質は、すなわち、それらを、ヒトにおけるHIV感染のいわゆる混合療法において非常に有用にする。
【0018】
上記で議論された国際特許出願公開WO99/25718は、HIVに対するこれらの化合物の活性を何ら示唆しないか、またはレトロウイルス酵素の阻害を何ら示唆しておらず、そして免疫不全症そのものを処置することを示唆せず、免疫不全患者におけるその結果のみを示唆するだけであることに注目することは非常に重要である。
【0019】
(詳細な説明)
本発明は最初に、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症(特にレンチウイルス感染症、より詳細にはHIV感染症)を処置する医薬品を製造するためのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関し、そしてそのような感染症にかかりやすい哺乳動物の対応する処置方法に関する。
【0020】
第2の局面において、本発明は、好ましくは哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する(またはその処置のための)医薬品として(または医薬品を製造するために)、そしてより好ましくは哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対して(またはその処置において)相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、(a)ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの1つ以上の誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)とを含む組成物の使用を提供する。第3の局面において、本発明は、レトロウイルス感染症の治療において同時または個別または連続的に使用される混合調製物として、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する相乗効果をもたらすようにそれぞれの割合で、(a)ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの1つ以上の誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)とを含有する製造物を提供する。第4の局面において、本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法を提供する。この方法は、レトロウイルス感染に対して相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)とを含む混合治療用調製物の有効量を、そのような処置を必要とする哺乳動物に同時または別個または連続的に投与する工程を含む。
【0021】
本発明の様々な局面において、処置されるレトロウイルス感染症は、好ましくはレンチウイルス感染症であり、より好ましくはHIV感染症である。
【0022】
本発明の様々な局面において、ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、好ましくは、下記の式を有する化合物、その薬学的に受容可能な付加塩または立体化学的異性体であって:
【0023】
【化6】
【0024】
式中、
・Xは、ヒドロキシ、ハロおよびチオールから選択され、
・Yは、ヒドロキシ、メトキシおよびハロから選択され、そして
・Zは、水素、ハロおよびニトロから選択される。
このようなピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、例えば、5,5’−アリーリデンビスバルビツル酸(例えば、XおよびYの両方がヒドロキシであるとき)または5,5’−アリーリデンビス(2−チオ)バルビツル酸(例えば、Xがチオールで、Yがヒドロキシであるとき)のピリジン塩をオキシ塩化リンPOCl3と反応し、その後、酸化リンP2O5と反応することによって、あるいは(例えば、Xがヒドロキシで、Yがメトキシで、Zがp−ニトロであるときには)6−メトキシウラシル、p−ニトロベンズアルデヒド、酢酸および無水酢酸を酢酸の沸騰温度に近い温度で反応することによって得ることができる。これらの方法の様々な変形がWO99/25718に開示されている。この誘導体ファミリーの代表的なものとして、5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンが挙げられる。興味深いことに、この誘導体ファミリーにおいて、スルフヒドリル基を2位および8位に有する分子は、ヒドロキシル置換基を同じ位置に有する対応する化合物よりも顕著な抗ウイルス活性を示す傾向を有することが認められた。
【0025】
上記で言及された薬学的に受容可能な付加塩は、上記の式を有する化合物が形成することができ、かつそのような化合物の塩基形態を適切な酸で処理することによって都合よく得ることができる治療的に活性な非毒性の酸付加塩形態を包含することが意味される。そのような適切な酸の例には、例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素酸または臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;または有機酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわち、エタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわち、ブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸(すなわち、2−ヒドロキシ安息香酸)、p−アミノサリチル酸、パモ酸などが含まれる。逆に、塩形態は、適切なアルカリで処理することによって遊離塩基形態に変換することができる。本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能な付加塩」には、上記の式を有する化合物ならびに上記に定義されるようなそれらの塩が形成することができる溶媒和物が含まれ、例えば、水和物、アルコラートなどが含まれる。
【0026】
本発明において治療活性成分として使用されるピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は好ましくは、それらが意図される治療プログラムを安全に制御するために、実質的に純粋な形態で、すなわち、その製造過程および/または取扱い過程に由来する化学的不純物(副生成物または残留溶媒など)を含まない形態で存在しなければならない。ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、それらが不斉炭素原子を少なくとも有するとき、ラセミ混合物として存在し得るか、または模擬移動床技術を含む標準的な分画方法によってラセミ混合物から得られる前記化合物の実質的に純粋な立体異性体もしくはエナンチオマーの形態で存在し得る。
【0027】
本明細書中前記で使用される用語「立体化学的異性体」により、式(I)の化合物が有し得る可能な異性体のすべてが定義される。別途示されない限り、化合物の化学的名称は、基本分子構造のすべてのジアステレオマーおよびエナンチオマーを含む、すべての可能な立体化学的異性体の混合物を意味する。より詳細には、立体中心はR配置またはS配置のいずれかを有し得る。前記化合物の純粋な立体異性体は、同じ基本分子構造の他のエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に、用語「立体異性体的に純粋」または用語「キラル純粋」は、立体異性体過剰率が少なくとも80%であり(すなわち、少なくとも90%が一方の異性体であり、多くても10%がそれ以外の可能な異性体であり)、好ましくは少なくと90%であり、より好ましくは少なくとも94%であり、最も好ましくは少なくとも97%である化合物に関する。用語「エナンチオマー的に純粋」および用語「ジアステレオマー的に純粋」は、それぞれ、問題とする混合物のエナンチオマー過剰率、ジアステレオマー過剰率に注目して、同じように理解しなければならない。
【0028】
従って、エナンチオマーの混合物が調製方法のときに得られる場合には、混合物は、好適なキラル定常相を使用する液体クロマトグラフィーによって分離することができる。好適なキラル定常相には、例えば、多糖が挙げられ、具体的にはセルロース誘導体またはアミロース誘導体がある。市販されている多糖ベースのキラル定常相には、ChiralCelTMCA、OA、OB、OC、OD、OF、OG、OJおよびOK、ならびにChiralpakTMAD、AS、OP(+)およびOT(+)がある。前記の多糖キラル定常相との組合せで使用される適切な溶出液または移動相には、ヘキサンなどがあり、これらは、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールで調節される。
【0029】
本明細書中前記で使用される用語「実質的に純粋」は、高速液体クロマトグラフィーなどのこの分野で通常的な方法によって測定されたときに、少なくとも約96%(好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%)の化学的純度を意味する。
【0030】
本発明の様々な局面において、薬物(b)として使用されるレトロウイルス酵素阻害剤は、この分野で既に知られているカテゴリーに属し得るが、特に下記の阻害剤を含むことができる:
・HIV−1のIN阻害剤、例えば、本明細書中上記に概説されるようなHIV−1IN阻害剤;
・ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、ジドブジン、ラミブジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビンなど;
・非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、ネビラピン、デラビルジンなど;
・他の逆転写酵素阻害剤、例えば、フォスカルネットナトリウムなど;
・HIV−1プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビルなど。
【0031】
本発明の第3の局面で提供される製造物は、(a)および(b)の少なくとも1つが少なくとも薬学的に受容可能なキャリアと混合されている薬学的調製物または薬学的組成物の形態であり得る。本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、例えば、前記組成物の溶解、分散もしくは拡散によって、処置される位置への適用もしくは散布を容易にするために、かつ/またはその有効性を損なうことなくその貯蔵、輸送もしくは取扱いを容易にするために、有効成分(a)および有効成分(b)からなる組成物が配合される任意の材料または物質を意味する。薬学的に受容可能なキャリアは固体であってもよく、または液体であってもよく、または液体を形成させるために圧縮されている気体であってもよい。すなわち、本発明の組成物は、高濃度物、エマルション剤、溶液剤、顆粒、粉剤、スプレー剤、エアロゾル剤、ペレットまたは粉末剤として好適に使用することができる。
【0032】
前記薬学的組成物およびその配合物において使用される好適な薬学的キャリアは当業者には十分に知られており、その選択は本発明では特に制限されない。薬学的キャリアはまた、湿潤化剤、分散剤、増粘剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖または塩化ナトリウムなど)などの添加剤を、それらが製薬実施と矛盾しないならば含むことができる。すなわち、哺乳動物に対して永続的な損傷を生じさせないキャリアおよび添加剤を含むことができる。本発明の薬学的組成物は、任意の知られている様式で、例えば、一段階または多段階の方法で、有効成分を、選択されたキャリア物質と、そしてまた、適する場合には、界面活性剤などのそれ以外の添加剤と均質に混合、コーティングおよび/または粉砕することによって調製することができ、そして例えば、約1μm〜10μmの直径を通常的には有するマイクロスフェアの形態で得るために、すなわち、有効成分を制御放出または持続放出させるためのマイクロカプセルを製造するために、微細化によって調製することができる。
【0033】
本発明の薬学的組成物において使用される好適な界面活性剤は、良好な乳化性、分散性および/または湿潤化性を有する非イオン性物質、カチオン性物質および/またはアニオン性物質である。好適なアニオン性界面活性剤には、水溶性の石けんおよび水溶性の合成界面活性剤の両方が含まれる。好適な石けんには、高級脂肪酸(C10〜C22)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、非置換アンモニウム塩または置換アンモニウム塩、例えば、オレイン酸またはステアリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、あるいはココナッツオイルまたはタローオイルから得られる天然脂肪酸混合物のそのような塩が挙げられる。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム塩またはカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩および脂肪硫酸塩;スルホン酸化ベンゾイミダゾール誘導体およびアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪スルホン酸塩または脂肪硫酸塩は通常、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、非置換アンモニウム塩、または8個〜22個の炭素原子を有するアルキル基もしくはアシル基で置換された置換アンモニウム塩の形態であり、例えば、リグノスルホン酸またはドデシルスルホン酸のナトリウム塩またはカルシウム塩、あるいは天然脂肪酸から得られる脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸エステルまたはスルホン酸エステルのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、および脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。好適なスルホン酸化ベンゾイミダゾール誘導体は、好ましくは、8個〜22個の炭素原子を含有する。アルキルアリールスルホン酸塩の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸またはジブチルナフタレンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム塩、カルシウム塩またはアルカノールアミン塩がある。また、対応するリン酸塩(例えば、リン酸エステルの塩)、ならびにp−ノニルフェノールとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの付加物、またはリン脂質も好適である。この目的のために好適なリン脂質には、セファリンタイプまたはレシチンタイプの天然リン脂質(動物細胞または植物細胞に由来)または合成リン脂質が挙げられ、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リソレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびそれらの混合物がある。
【0034】
好適な非イオン性界面活性剤には、少なくとも12個の炭素原子を分子内に含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミンまたは脂肪族アミドのポリエトキシル化誘導体およびポリプロポキシル化誘導体、そしてアルキルアレーンスルホン酸塩およびジアルキルスルホコハク酸塩が含まれ、例えば、脂肪族アルコールおよび脂環式アルコール、飽和および不飽和の脂肪酸およびアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体などがある。前記誘導体は、好ましくは、3個〜10個のグリコールエーテル基および8個〜20個の炭素原子を(脂肪族)炭化水素部分に含有し、そして6個〜18個の炭素原子をアルキルフェノールのアルキル成分に含有する。さらなる好適な非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンオキシドのポリプロピレングリコールとの水溶性付加物、1個〜10個の炭素原子をアルキル鎖に含有するエチレンジアミノポリプロピレングリコールである。そのような付加物は、20個〜250個のエチレングリコールエーテル基および/または10個〜100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、通常、プロピレングリコールユニットあたり1個〜5個のエチレングリコールユニットを含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例には、ノニルフェノール−ポリエトキシエタノール、ひまし油ポリグリコール酸エーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールおよびオクチルフェノキシポリエトキシエタノールがある。ポリエチレンソルビタンの脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタントリオレアートなど)、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステルおよびペンタエリトリトールの脂肪酸エステルもまた好適な非イオン性界面活性剤である。
【0035】
好適なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換フェニルまたはヒドロキシで必要に応じて置換される4個の炭化水素基を有する四級アンモニウム塩(好ましくはハロゲン化物)が含まれ、例えば、少なくとも1つのC8〜C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイルなど)をN置換基として含有し、そしてさらなる置換基として、非置換またはハロゲン化された低級アルキル基、ベンジル基および/またはヒドロキシ低級アルキル基を含有する四級アンモニウム塩が含まれる。
【0036】
この目的のために好適な界面活性剤のより詳細な記載を、例えば、「McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.、Ridgewood、New Jersey、1981)、「Tensid−Taschenbuch」第2版(Hanser Verlag、Vienna、1981)、および「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.、New York、1981)に見出すことができる。
【0037】
さらなる成分を、組成物中の有効成分の作用継続時間を制御するために含めることができる。例えば、制御放出組成物を、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンなどの適切なポリマーキャリアを選択することによって達成することができる。薬物放出速度および作用継続時間はまた、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸メチルおよびその他の上記に記載されたポリマーなどのポリマー物質の粒子(例えば、マイクロカプセル)に有効成分を取り込むことによって制御することができる。そのような方法は、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、ナノカプセルなどのようなコロイド薬物送達系を含む。投与経路に依存して、薬学的組成物は、保護コーティングが必要になる場合がある。
【0038】
注射使用に好適な薬学的形態物は、必要に応じてその場でそれらを調製するための無菌の水溶性の溶液または懸濁物および無菌の粉末を含む。従って、この目的のための典型的なキャリアには、生体適合性の水性緩衝剤、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど、およびそれらの混合物が含まれる。
【0039】
成分(a)および成分(b)は、処置される哺乳動物において同時に直接、それらの共同的な治療効果を必ずしも発揮しないということを考慮すると、本発明の第3の局面で提供される製造物はまた、別個ではあるが、隣接した形態で2つの成分を含有する医学的なキットまたはパッケージの形態にすることができる。従って、後者に関連して、成分(a)および成分(b)のそれぞれを、他方の成分の投与経路とは異なる投与経路に好適な方法で配合することができる。例えば、それらの一方を経口用配合物または非経口用配合物の形態にすることができ、これに対して、もう一方を静脈内注射用のアンプル剤またはエアロゾル剤の形態にすることができる。
【0040】
本発明の第3の局面である処置方法に従って、
・有効成分(a)および有効成分(b)は、処置される哺乳動物(ヒトを含む)に、この分野で十分に知られている任意の手段によって、すなわち、経口的、鼻腔内、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、関節内、非経口的に、またはカテーテル投与によって投与することができる。
・(a)および(b)の混合調製物の有効量は、好ましくは抗レトロウイルス量であり、例えば、レトロウイルス酵素の阻害量である。より好ましくは、効果的な量は誘導体(a)のインテグラーゼ阻害量および薬物(b)のレトロウイルス酵素阻害量である。さらにより好ましくは、前記のレトロウイルス酵素阻害剤薬物(b)がプロテアーゼ阻害剤であるとき、その効果的な量はプロテアーゼ阻害量である。前記のレトロウイルス酵素阻害剤薬物(b)が逆転写酵素阻害剤であるとき、その有効量は逆転写酵素阻害量である。前記のレトロウイルス酵素阻害剤薬物(b)がピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの誘導体とは異なるインテグラーゼ阻害剤であるとき、その有効量はインテグラーゼ阻害量である。(b)が、レトロウイルスの複製に関与する(グリコシル化または非グリコシル化)非酵素レトロウイルスタンパク質に対して効果的な薬物(例えば、HIVgp120エンベロープ抗原に基づく免疫原)であるとき、(b)はその通常の有効量で使用されるはずである。(b)がCCR5阻害剤であるとき、(b)はCCR5阻害量で使用されるはずである。
・成分(a)および成分(b)を同時に投与することができるが、処置される身体においてそれらの機能的融合を達成するために、それらを、例えば、比較的短い期間内で(例えば、約24時間以内に)別個または連続的に投与することもまた有益であり得る。
【0041】
下記の実施例は、例示目的のためにだけ示され、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈してはならない。
【0042】
(実施例)
本発明の実施例を行うために、下記の化合物および実験手順を使用した。
【0043】
ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、WO99/25718に開示される方法に従って得た。AZTは、Horwitz他によりJ.Org.Chem.(1964)29:2076〜8に以前に記載されるように合成された。チビラピンおよびロビリドはJanssen Research Foundation(Beerse、ベルギー)から得た。ネビラピンはBoehringer Ingelheim(Ridgefield、CN)から得た。リトナビルはAbbott laboratories(Abbott Park、Illinois)により提供された。分子量が5,000のデキストラン硫酸をSigmaから購入した。ネルフィナビルはAgouron Pharmaceuticals(La Jolla、California)から得た。ビシクラムAMD3100はAmormedから得た。
【0044】
MT−4細胞(Miyochi他によりGann.Monogram.(1982)28:219〜228に開示される)およびC8166細胞(Salahuddin他によりVirology(1983)129:51〜64に開示される)を、5%CO2を有する加湿雰囲気中で増殖させ、そして10%熱不活化ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、0.1%重炭酸ナトリウムおよび20μg/mlのゲンタマイシンが補充されたRPMI1640培地で維持した。
【0045】
HIV−1(IIIB)ウイルスは、Popovic他によりScience(1984)224:497〜500に記載された。HIV−1(NDK)もまた、Spire他によりGene(1989)81:275〜284に記載された。HIV−1(以降、NL4.3として示され、Adachi他によりJ.Virol.(1986)59:284〜291に開示される)は、国立衛生研究所(Bethesda、Maryland)から得られる分子クローンである。13MB1(L100I)株および39NM1(Y181C)株は、本発明者らの研究室において、それぞれ、チビラピンまたはロビリドの存在下でMT−4細胞においてHIV−1(IIIB)およびHIV−1(NDK)を連続的に継代した後に単離された。L1、L2、L4およびL6は、ジデオキシヌクレオシド(ddN)アナログのジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジンおよびラミブジン、ならびに非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のロビリドを用いた連続処置の前およびその後の一人の血清陽性患者に由来する臨床単離体である。Schmidt他(前掲)によれば、L6株は下記の変異を逆転写酵素に含有する:V75I、F77L、K103N、F116Y、Q151MおよびM184V。HIV−1またはHIV−2(ROD)(Barre−Sinoussi他によりScience(1983)220:868〜871に開示される)およびHIV−2(EHO)(Rey他によりVirology(1989)173:258〜267に開示される)の保存株を、Pauwels他(J.Virol.Methods(1987)16:171〜185)およびSchols他(J.AIDS(1989)2:10〜15)に従って、HIV−1感染細胞株またはHIV−2感染細胞株の培養上清から得た。サル免疫不全症ウイルス[SIV(MAC251)]をSmith Kline(Rixensart、ベルギー)から得て、保存株をSIV感染MT−4細胞の上清から調製した。
【0046】
実施例1 急性感染の細胞培養モデルにおけるHIVまたはSIVの複製に対するピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害活性。
【0047】
下記の式を有する一連の5−(4−置換フェニル)−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンにおける8個の異なる化合物(以降、A〜Hとして示される)の阻害活性を、急性感染の細胞培養モデルにおけるHIVまたはSIVの複製を阻害するその能力について試験した:
【0048】
【化7】
【0049】
(式中、X、YおよびZは下記の表1に定義される通りである)
【0050】
【表1】
【0051】
選択された化合物を、Pauwels他によりJ.Virol.Methods(1988)20:309〜321に記載される比色測定試験を使用して、HIV−1(IIIB)株、2つのHIV−2株(RODおよびEHO)、およびSIV(MAC251)に対して、MT−4細胞におけるウイルス誘導による細胞変性の阻害について試験した。評価を感染後5日目に行った。
【0052】
これらの化合物の細胞傷害性を、モック感染のMT−4細胞またはC8166細胞の生存性を感染後5日目に測定することによって同時に決定した。少なくとも2つの別個の実験に対する平均値および標準偏差を含む抗ウイルス活性および細胞傷害性のデータを表2に示す。表において、
・EC50は50%有効濃度(すなわち、細胞培養においてウイルスの細胞変性効果を50%阻害するために必要な濃度)を表す。
・CC50は50%細胞傷害濃度(すなわち、MT−4細胞の生存性を50%低下させる濃度)を表す。
【0053】
【表2】
【0054】
誘導体C、E、GおよびHは、HIV−1(IIIB)の複製に対して活性であった。このシリーズの最も活性な化合物H、すなわち、5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン(すべての添付された図ではV−165として示される)は、50%有効濃度(EC50)が11.4μMと活性であった。Hはまた、5.5μM〜30μMの範囲のEC50値で、HIV−1(NDK、NL4.3およびL1)、HIV−2(RODおよびEHO)およびSIV(MAC251)に対して活性であった。対照的に、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のネビラピンは、比較として試験されたが、MT−4細胞において98μMで、HIV−2(RODおよびEHO)およびSIV(MAC251)の複製に対して不活性であった。
【0055】
実施例2 薬剤耐性HIV−1株に対する特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害活性。
【0056】
化合物Gおよび化合物Hの抗ウイルス活性を、実施例1と同じ方法を使用して、様々な薬剤耐性HIV−1株に対して試験した。結果を下記の表3に示す。表において、EC50は実施例1と同じ意味を有し、EC50の増大倍率は、野生型(WT)株に対する抗ウイルス活性との比較による。化合物Hは、ウイルス進入アンタゴニストのデキストラン硫酸またはビシクラムに対して耐性であるHIV−1株に対して活性であった。非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)のチビラピンまたはロビリドに対する耐性のための選択されたHIV−1株は両方の化合物によって阻害された。
【0057】
【表3】
【0058】
さらに、本発明者らは、親株L1が、IIIBよりも、化合物Hに対して大きい感受性(EC50:3.7±1.8μM)を有したことを考慮して、3つの多剤耐性(MddNR)HIV−1株(L2、L4およびL6)に対する化合物Hの阻害能が最大で1/3に低下していることを認めた。
【0059】
実施例3 様々なHIV−1阻害剤と5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンとの混合阻害効果。
【0060】
化合物Hの抗ウイルス効果を、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のジドブジン、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のネビラピン、およびプロテアーゼ阻害剤のネルフィナビルと組み合わせて試験した。
【0061】
HIV−1により誘導される細胞変性効果に対する混合阻害効果を、Elion他によりJ.Biol.Chem.(1954)208:477〜488に、そしてBaba他によりAntimicrob.Agents Chemother.(1984)25:515〜517に以前に記載されるように、アイソボログラム法によって評価した。
【0062】
前記に定義されるようなEC50を、阻害濃度分率(以降、FICとして示される)を計算するために使用した。組み合わせられた化合物のFICに対応する最小FIC指数(例えば、FICx+FICy)が1.0に等しいとき、その組合せは付加的であると言われる;1.0〜0.5の間であるとき、その組合せは定義により亜相乗的であると言われる;0.5よりも小さいとき、その組合せは、定義により、相乗的であると言われる。最小FIC指数が1.0〜2.0の間であるとき、その組合せは、亜アンタゴニスト的であると言われ、2.0を越えるときには、その組合せはアンタゴニスト的であると定義される。
【0063】
これらの試験の結果は、直線がそれぞれ1.0および0.5に等しいFICを表す図2〜図4に示されるアイソボログラムで報告される。これらの図は、
【0064】
【数1】
【0065】
の合算値が0.5〜1の間に含まれ、そして
【0066】
【数2】
【0067】
の合算値が0.5未満であったことを示している。
実施例4 複製サイクルにおける5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの介入時期。
【0068】
添加時期実験を、複製サイクルのどの段階が化合物Hによって阻害されるかを調べるために行った。簡単に記載すると、この実験により、抗HIV化合物の添加が、ウイルス複製サイクルにおいて、その抗ウイルス活性を失う前に、どのくらい長く延ばされ得るかが決定される。MT−4細胞に、ウイルス複製のすべての段階を同調させるために0.5の感染多重度(m.o.i.)でHIV−1(IIIB)を感染させ、そして様々な抗ウイルス試験化合物を、感染後の(0時間から26時間までに及ぶ)種々の時間で添加した。ウイルスのp24抗原の産生を(HIV−1p24コアプロフィルELISA(DuPont、Dreieich、ドイツ)を使用して)感染後31時間で測定した。これは、pg/mlでp24Ag含有量のlog10として表される。作用モードが知られている参照化合物がこの実験には含められた。デキストラン硫酸(ポリアニオン)は、ウイルスが細胞に結合することを妨害する。ヌクレオシドアナログのAZTは逆転写プロセスを阻害する。リトナビルはタンパク質分解的切断阻害剤である。これらの参照化合物(デキストラン硫酸、AZTおよびリトナビル)は、0.01のm.o.i.で測定されたEC50値の100倍に対応する正規化された濃度で添加された。化合物Hは250μMで添加された。この実験の結果を示す図1には、下記の記号が使用された:
【0069】
【数3】
【0070】
図1により、化合物Hの添加は、ウイルス感染後6時間延ばすことができる。このことは、組込み(DNA鎖転移)のときにおける相互作用を示唆している。なぜなら、類似する添加時期実験で試験された知られているジケト酸のインテグラーゼ阻害剤は、感染後6時間以上経って添加されたときにその活性を失ったからである。しかし、実験は、ウイルス複製時に標的化される最後の段階を明らかにするだけであるので、この実験からは、化合物Hが逆転写酵素とも相互作用することを除外することができない。
【0071】
実施例5 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンによるレンチウイルスベクター媒介形質導入の阻害。
【0072】
阻害剤がHIVの逆転写段階および/または組込み段階を妨害することを確認するために、293T細胞の1回の感染を、VSV−Gエンベロープで偽タイプ化され、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを有するHIV−1由来のベクターを使用して、Naldini他によりScience(1996)272:263〜7に記載される方法に従って行った。具体的には、水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープで偽タイプ化されたHIV−1由来のベクター粒子を、パッケージングプラスミドのpCMVΔR8.2またはpCMVΔR8.91、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープをコードするプラスミド(pMDG)、および2つの長末端反復(LTR)が隣接するレポーター遺伝子をコードするプラスミド(pHR’−CMVルシフェラーゼ)の3つのプラスミドで293T細胞をトランスフェクションすることによって作製した。すべてのプラスミドはEuropean Gene Vector Database and Repositoryから得ることができ、そしてGenethon III、CNRS URA、1923、Evry(フランス)によって、ジュネーブ大学(遺伝学および微生物学学部)(スイス)によって提供された。10cmディッシュの293T細胞をトランスフェクションするために、3つのプラスミドの700μl混合物を150mMのNaClにおいて作製した(20μgのベクタープラスミド、10μgのパッケージング構築物および5μgのエンベローププラスミド)。700μlのこのDNA溶液に、ポリエチレンイミン(PEI)(Aldrichから入手可能)(150mMのNaClにおける10mM保存溶液の110μl)をゆっくり添加した。室温で15分後、DNA−PEI複合体を、1%ウシ胎児血清(FCS)が補充されたDMEM培地中の293T細胞に滴下して加えた。一晩インキュベーションした後、培地を、10%FCSを含有する培地と交換した。上清をトランスフェクション後の2日目〜5日目に集めた。ベクター粒子を、スイング式バケットローター(SW27、Beckman、Palo Alto、California)で25,000rpmにおいて4℃で2時間の超遠心分離によって沈降させた。ペレットをPBSに再溶解して、100倍濃度液を作製した。種々のウイルス保存株をp24抗原含有量に基づいて正規化した(HIV−1p24コアプロフィルELISA、これはDuPont(Dreieich、ドイツ)から得られる)。阻害剤を96ウエルプレートにおいて評価した。各ウエルについて、2,000pgのベクターおよび2μg/mlのポリブレンを、100μlのDMEM/1%FCSで増殖させた293T細胞のコンフルエントな単層に加えた。阻害剤を種々の濃度でインキュベーションした。トランスフェクションした48時間後に細胞を溶解して、ルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼアッセイシステムTM(Promega Benelux、Leiden、オランダ)を使用してLumicountTM(Packard、Meriden、Connecticut)で測定した。細胞数に対する正規化を、BCATMタンパク質アッセイ試薬(Pierce、Illinois)を使用してタンパク質濃度を測定することによって行った。
【0073】
このアッセイにおいて、ルシフェラーゼ活性の低下は、初期のHIV複製段階の阻害に対する尺度である。形質導入の阻害が、17μMの平均EC50値で、化合物Hで得られた。コントロールの逆転写酵素阻害剤であるAZTは、レンチウイルスの形質導入を49nMのEC50値で阻害した。gp120がウイルス粒子に存在しないことにより、HIVタイプのウイルス進入は標的として除外される。化合物Hはまた、(Zufferey他によりNature Biotechnol.(1997)15:871〜5に記載されるなどの)副因子のnef、vif、vprおよびvpuを欠いている次世代ベクターによる形質導入を同じ程度に阻害した。従って、これにより、抗ウイルス機構におけるこれらのHIVタンパク質に対する主要な役割が除外される。これらのアッセイにより、HIV−1の逆転写および/または組込みが、細胞培養における本発明の化合物の抗ウイルス効果に対する標的として確認される。
【0074】
実施例6 特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によるHIV逆転写酵素活性の阻害。
【0075】
HIV−1逆転写酵素の酵素活性の阻害を、Debyser他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:1451〜5に記載されるように、ビリオンに由来する酵素を得て、逆転写酵素活性についてアッセイするための手順を使用しながら、本発明のいくつかの化合物および参照化合物について評価した。ポリ(rC).オリゴ(dG)およびポリ(rA).オリゴ(dT)をテンプレートプライマーとして使用し、そして8−[3H]−dGTPおよび[3H]−dTTPを放射能標識された基質として使用した。反応混合物における8−[3H]−dGTPおよび[3H]−dTTPの最終濃度は2.5μMであった。組換えHIV−1RT(HXB2)を、Jonckheere他によりJ.Virol.Methods(1996)61:113〜125に記載されるようにして得た。これらの実験の結果を下記の表4に示す。表において、IC50は50%阻害濃度(すなわち、テンプレートプライマーとしてポリ(C).オリゴ(dG)またはポリ(A).オリゴ(dT)を使用したときに組換えHIV−1RTの活性を50%阻害するために必要な濃度)である。
【0076】
【表4】
【0077】
実施例7 特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によるHIVインテグラーゼ活性の阻害。
【0078】
3’−プロセシング反応、DNA鎖転移反応および全体的な組込み反応の阻害を、下記の方法論を使用して、Cherepanov他によりMol.Pharmacol.(1997)52:771〜780に記載されるように、オリゴヌクレオチドに基づくアッセイにおいて測定した。
【0079】
最初に、組換えHis標識HIV−1インテグラーゼを、Cherepanov他(前掲)により記載されるように、HIV−1IN(HTLV III株)をコードするプラスミドpRP1012(Netherlands Cancer Institute(Amsterdam)から入手可能)からE.coli PC1(BL21(DE3)(pLysS)ΔendA::TcR)で産生させ、そしてNi−ニトリロ三酢酸カラム(Qiagen、Hilden、ドイツ)、次いでHighTrap−ヘパリンカラム(Pharmacia)で精製した。
【0080】
下記の高速液体クロマトグラフィー精製されたデオキシオリゴヌクレオチドをAmersham−Pharmacia Biotechから購入した:
INT1、5’−TGTGGAAAATCTCTAGCAGT;
INT2、5’−ACTGCTAGAGATTTTCCACA;
T35、5’−ACTATACCAGACAATAATTGTCTGGCCTGTACCGT;
SK70、5’−ACGGTACAGGCCAGACAATTATTGTCTGGTATAGT。
【0081】
オリゴヌクレオチドのINT1およびINT2はHIV−1LTRのU5末端に対応する。オリゴヌクレオチドINT1を20%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲルで精製し、そしてポリヌクレオチドT4キナーゼおよび
【0082】
【数4】
【0083】
を使用して5’末端を標識した。インテグラーゼ反応に対するDNA基質を、INT1およびINT2をアニーリングすることによって作製した。100mMのNaClが存在する2つのオリゴヌクレオチドの等モル混合物を95℃で短時間加熱し、そして室温にゆっくり冷却した。同様に、SK70およびT35をアニーリングすることにより、標的DNA分子として使用される35bpのdsDNA分子を得た(T35/SK70)。
【0084】
3’−プロセシングアッセイ用の最終的な反応混合物は、20mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(以降、HEPESとして示される)(pH7.5)、5mMのジチオスレイトール、10mMのMgCl2、75mMのNaCl、15%(容量/容量)のポリエチレングリコール(分子量8,000)、30nMのオリゴヌクレオチド基質、および230nMのHis標識インテグラーゼを10μlの容量に含有した。反応を酵素の添加によって開始させた。阻害剤を反応成分と短時間インキュベーションし、その後、インテグラーゼを添加した。反応を37℃で7分間進行させ、そしてホルムアミド負荷緩衝液(95%ホルムアミド、30mMエチレンジアミン四酢酸、0.1%キシレンシアノール、0.1%ブロモフェノールブルー、0.1%ジラウリル硫酸ナトリウムSDS)の添加によって停止させた。全体的な組込みアッセイでは、この反応を60分間進行させ、その後、ホルムアミド色素を添加した。図5は、化合物Hの非存在下(レーン1)または減少量の化合物Hの存在下(レーン2〜7)で行われた3’−プロセシング反応の結果を表す。阻害剤の濃度は、25μM(レーン2)、5μM(レーン3)、1μM(レーン4)、0.2μM(レーン5)、0.04μM(レーン6)および0.008μM(レーン7)であった。
【0085】
鎖の転移は下記の方法でアッセイされた:30nMのDNA基質を、切断反応を行わせるために、230nMのインテグラーゼと37℃で5分間プレインキュベーションした。反応混合物の組成は3’−プロセシングアッセイにおける組成と同一であった。5分後に、阻害剤とともに、または阻害剤を伴うことなく、1μlの過剰な標的DNA(250nMの最終濃度)を添加して、サンプルを37℃で1時間インキュベーションした。この過剰な標的DNAにより、ウイルス基質に対するインテグラーゼのさらなる結合が競合的に阻止される。
【0086】
反応をホルムアミド色素の添加によって停止させ、生成物を15%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲルで分離した。オートラジオグラフィーを、湿ったゲルをX線フィルム(CURIX RP1、Agfa−Gevaert(ベルギー)から入手可能)に感光させることによって行った。結果の定量を、Phosphorlmager装置(Molecular Dynamics、Sunnyvale、California)を使用して行った。
【0087】
これらの実験の結果を下記に表5に示す。上記で定義されるようなIC50(μM)値が得られる。
【0088】
【表5】
【0089】
化合物C、E、GおよびHが3−プロセシング反応および全体的な組込み反応を阻害した。化合物Hはまた、DNA鎖転移反応に対する強い阻害効果を有している。細胞培養において認められた抗レトロウイルス活性と、インテグラーゼアッセイにおける阻害活性との強い相関が認められた。最も良い相関が、細胞培養における阻害能と、鎖転移アッセイにおける阻害能との間で得られた(r2=0.998)。
【0090】
実施例8 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの速度論的切断アッセイ。
【0091】
20bpのオリゴヌクレオチド(30nM)を230nMのインテグラーゼと3分間プレインキュベーションすることにより、初期の安定な複合体(ISC)が形成された。反応混合物の組成は実施例7の3’−プロセシング反応の組成と同一であった。5,000の分子量を有するデキストラン硫酸が0.3μMの最終濃度で添加されたとき、オリゴヌクレオチドに対するインテグラーゼのさらなる結合が阻止された。しばらくして、5μlアリコートを採取し、そして5μlのホルムアミド負荷緩衝液(上記と同じ組成を有する)を使用して、反応を停止させた。切断産物へのISCの変換に対する速度定数を、式A・Be−ktを使用して計算することができる。3’−プロセシングに対する化合物Hの阻害効果を調べるために、本発明者らは、(プレインキュベーション後にデキストラン硫酸と一緒に添加された)50μMの化合物の存在下で同じ実験を繰り返して、速度定数を比較した。化合物Hの非存在下では、速度定数は0.152±0.038min−1と計算されたが、その存在下では0.147±0.025min−1と計算された。この極めて類似する値により、化合物Hが3’−プロセシングの触媒作用に直接影響を及ぼしていることが除かれる。
【0092】
この実験のさらなる結果が、以下を示す図6に示される。
【0093】
【数5】
【0094】
実施例9 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンのHIV−1インテグラーゼ結合アッセイ。
【0095】
結合実験を、BIAcore2000(Biacore)およびストレプトアビジンが予め固定化されているセンサーチップSATMに基づくバイオセンサー技術を使用して行った。結合実験を製造者の手順に従って37℃で行った。結合緩衝液B(20mMのHEPES、pH7.5)は、50mMのNaCl、10mMのMgCl2および5mMのDTTを含有した。最初に、3’−ビオチン化オリゴヌクレオチドの5’−ACTGCTAGAGATTTTCCACACTGACTAAAAGGGTCAAAA−3’をセンサーチップに結合させた。続いて、相補的な35merの5’−GACCCTTTTAGTCAGTGTGGAAAATCTCTAGCAGT−3’を捕捉されたオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションさせて、インテグラーゼの認識配列を自由端で生じさせた。HIV−1インテグラーゼ(33μM溶液の100μl)を希釈緩衝液(10mMのTris.HCl(pH7.5)/750mMのNaCl/10%グリセロール/1mMのβ−メルカプトエタノール)で10倍希釈し、そして緩衝液Bでさらに10倍希釈して、10μl/分の流速で、330nMの最終濃度で注入し、最初にブランク流路に通し、次いで特異的なオリゴヌクレオチドを有する流路に通した。ブランク流路における特異的な吸収を差し引いた。インテグラーゼを93μMの化合物Hとプレインキュベーションした後では、DNAに対するインテグラーゼの結合は完全に破壊されていた。
【0096】
実施例10 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンは二本鎖DNA内にインターカレーションしない。
【0097】
インターカレーターは、2つの連続した塩基対の間に進入することによって二重らせんを安定化させることが知られているので、本発明者らは、化合物Hが二本鎖DNAにインターカレーションし得るかどうかを確認した。この安定化は、(二本鎖の50%が2つの一本鎖に解離する温度として定義される)二本鎖の融解温度の上昇によって反映される。本発明者らは、それぞれのオリゴデオキシヌクレオチドについて1μMの固定された濃度でのインビトロ組込みアッセイから得られる二本鎖DNA(INT1−INT2)を使用した。連続希釈した化合物H(25μM、5μM、1μM、0.2μM、0.04μMおよび0μM)を、INT1−INT2を含有する種々のキュベットに加え、そして吸光度を260nmでモニターしながら、その温度を最初に15℃から80℃まで徐々に上昇させ(0.2℃/分)、その後、同じ速度で15℃に低下させた。融解曲線は、Varian CARY300バイオ分光光度計を用いて決定された。キュベットは、キュベットホルダーを通って循環する水によって温度調節され、そして溶液の温度が、キュベット内に直接浸けられたサーミスターを用いて測定された。温度制御およびデータ取得はCompaqデスクトップコンピューターを用いて自動的に行われた。サンプルは、0.2℃/分の速度で、最初に加熱され、次いで冷却された。融解曲線は、Tmを示す変曲点を有する一次導関数を採用して評価された。変動性は0.5℃未満であった。
【0098】
このようにして測定された融点は、様々な濃度の化合物Hの存在下で影響を受けず(59℃で)一定であった。このことは、化合物Hがインターカレーションにより二本鎖DNAを安定化させないことを明瞭に示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体に対する添加時間実験におけるウイルス産生の結果を、他のレトロウイルス剤と比較して表す。
【図2】図2は、ジドブジンおよび本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害濃度分率が、MT−4細胞において誘導されるHIV−1の細胞変性効果に対するこれらの化合物の混合阻害作用においてプロットされるアイソボログラムを表す。
【図3】図3は、ネルフィナビルおよび本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害濃度分率が、MT−4細胞において誘導されるHIV−1の細胞変性効果に対するこれらの化合物の混合阻害作用においてプロットされるアイソボログラムを表す。
【図4】図4は、ネビラピンおよび本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害濃度分率が、MT−4細胞において誘導されるHIV−1の細胞変性効果に対するこれらの化合物の混合阻害作用においてプロットされるアイソボログラムを表す。
【図5】図5は、本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によるHIV−1インテグラーゼ活性の阻害を示す。
【図6】図6は、本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の非存在下または存在下における速度論的切断反応の結果を示す。
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法およびそのような方法を行うための薬学的組成物に関する。より詳細には、本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための医薬品を製造するための、特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関する。別の実施形態において、本発明は、1つ以上の細胞タンパク質またはレトロウイルスタンパク質を標的とする1つ以上の薬物(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)と組み合わせられたこれらの誘導体の使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
1型ヒト免疫不全症ウイルス(以降、HIV−1として示される)の複製は、Vandamme他によりAntiviral Chem.Chemother.(1998)9:187〜203に概説されるように、多数のウイルス標的を標的とする強力な抗ウイルス薬を組み合わせることによって感染患者において劇的に低下させることができる。HIV感染患者の処置に対して正式に承認されている薬物は、逆転写酵素(RT)阻害剤(ヌクレオシド系および非ヌクレオシド系)またはプロテアーゼ阻害剤のクラスに属する。多剤混合療法は、ウイルス量を、最も高感度な試験の検出限界よりも低く低下させることができる。それにも関わらず、Perelson他、Nature(1997)387:123〜124によれば、低いレベルの継続した複製がおそらくは聖域部位で生じ、これにより薬物耐性株の出現をもたらすことが示されている。さらに、Schmit他、J.Infect.Dis.(1996)174:962〜968によれば、HIVは、すべてではないが、ほとんどの現在承認されている抗ウイルス薬に対する耐性を発達させることができる。
【0003】
HIV−1の組込みに必要とされる唯一の酵素は、BrownによりRetroviruses(1997)(Coffin、HughesおよびVarmus編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国)、161頁〜203頁)に概説されるように、pol遺伝子の3’末端にコードされる32kDaのタンパク質であるインテグラーゼ(以降、INとして示される)である。この酵素は、ビリオンが成熟化するときにgag−pol前駆体のプロテアーゼ媒介の切断によって産生される。インテグラーゼは、ウイルスcDNAの長末端反復(以降、LTRとして示される)エレメント内の特異的な配列を認識をする。LTRの末端の15bpが、部位特異的な切断および組込みのためには必要かつ十分である。切断部位のすぐ上流に位置する高度に保存されたジヌクレオチドCAが酵素活性には重要である。3’末端プロセシングと名付けられた組込み反応の第1段階において、2つのヌクレオチドがそれぞれの3’末端から除かれ、新しい3’−ヒドロキシル末端(CA−3’−OH)が生じる。この反応は、Miller他、J.Virol.(1997)71:5382〜5390によれば、細胞質において、前組込み複合体(以降、PICとして示される)と呼ばれる大きいウイルス核タンパク質複合体内で生じる。核に進入した後、プロセシングされたウイルス二重鎖DNAが宿主の標的DNAに結合する。この結合反応には、標的の宿主DNAの対形成する5bpの付着性切断、およびプロセシングされたCA−3’−OHのウイルスDNA末端を標的DNAの5’−Oリン酸エステル末端に連結することが含まれる。残存するギャップの修復が、これは現時点では理解されていないが、宿主細胞のDNA修復酵素によっておそらくは達成される。しかし、Chow他、Science(1992)255:723〜726によれば、レトロウイルスの酵素もまた関与することが推定されていた。
【0004】
部分的なタンパク質分解の実験に基づいて、HIV−INは3つの機能的ドメインに分割することができる。N末端のドメイン(残基1〜50を含む)は、HHCC「ジンクフィンガー」様配列を特徴とする(すなわち、Zn2+と結合する2つのヒスチジンおよび2つのシステインを含有する)が、その正確な機能は不明のままである。中央のコアドメイン(残基50〜212を含む)は、インテグラーゼスーパーファミリーおよびポリヌクレオチドトランスフェラーゼにおいて高度に保存されており、そして3’−プロセシング活性およびDNA鎖転移活性の両方に対する触媒作用ドメインを表す3つのアミノ酸残基(Asp64、Asp116およびGlu152)を特徴とする。この中央のコアドメインは単独で、DNA鎖転移反応の明かな逆(いわゆる分解反応)をインビトロで行うことができる。しかし、アミノ末端およびカルボキシ末端の両方のドメインが3’−プロセシングおよび鎖転移の触媒作用には必要である。触媒作用コアドメイン内における一アミノ酸の置換体(F185K)は、Dyda他によりScience(1994)266:1981〜1986に概説されるように、コアドメインを結晶化させることができ、そしてその三次元(以降、3Dとして示される)構造を解明することができる可溶性タンパク質をもたらす。C末端のドメイン(残基212〜288を含む)は非特異的なDNA結合に関与している。短縮化されたC末端ドメインの核磁気共鳴(以降、NMRとして示される)による構造が決定されている。INタンパク質をこれらの異なるドメインにおいて変異させた相補性研究により、正確な化学量論は不明のままであるが、INの活性形態はオリゴマーであることが示唆されている。
【0005】
高処理能のマイクロタイタープレートアッセイを確立し、そしてHIV−1INの触媒作用ドメインの3D構造を解明することによって、ケミカルライブラリーをスクリーニングするか、または構造に基づいて設計することによるIN阻害剤の開発が促進させられた。かなり面倒なPICアッセイにおけるIN阻害剤の評価が(例えば、Farnet他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:9742〜9747に)議論されているが、INの阻害は典型的には、プロセシング反応および結合反応の両方をインビトロで評価するためにLTR模倣体を使用するオリゴヌクレオチドに基づくアッセイにおいて、すなわち、Sherman他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:5119〜5123に、そしてBushman他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:1339〜1343に開示されるようなアッセイにおいて評価される。種々のクラスのHIV−1IN阻害剤が、Y.Pommier他によりAntiviral Research(2000)47:139〜148に概説されるように報告されており、これらには、(i)モノヌクレオチド、ジヌクレオチド、iso−ヌクレオチドおよびより長いオリゴヌクレオチドならびにそれらのアナログ、(ii)ヒドロキシル化芳香族化合物、(iii)DNAインターカーション剤(リガンド)、そして(iv)ポリペプチドおよび抗体が含まれる。しかし、これらの化合物はほとんどが細胞培養において抗ウイルス活性を示さなかった。細胞培養において抗ウイルス活性を示したIN阻害剤のほとんどについて、組込み段階が標的化されていることは明確には明らかにされなかった。Hazuda他、Science(2000)287:646〜650によれば、これまでに報告されている真のIN選択的阻害剤はジケト酸誘導体だけである。
【0006】
3’,5−ジアジド−2’,3’−ジデオキシウリジン5’−モノホスファート(5−N3−AZUMPとして示される)などのヌクレオチドは、おそらくはヌクレオチド結合部位との相互作用によって、より正確にはHIV−1コアドメインのα−4へリックスに結合することによってINの酵素活性を妨害する。様々なヌクレオチドアナログの構造−活性研究が報告されている。阻害のために必要とされる濃度(IC50=150μM)が高かったが、Furman他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:8333〜7によれば、1mMまでの濃度の5−N3−AZUMPが細胞内に蓄積し得るので、IN阻害がAZTの抗ウイルス効果に寄与し得ることを除外することができない。ジヌクレオチドもまた、5’−Oリン酸化がないときでさえ、HIV―1INの強力な阻害剤として報告されていたが、Mazumder他によりMol.Pharmacol.(1997)51:567〜75に報告されるように、どれも抗ウイルス活性を示さなかった。
【0007】
四鎖化グアノシン四量体構造を形成するオリゴヌクレオチドは、(Ojwang他、Antimicrob.Agents Chemother.(1995)39:2426〜2435によれば)細胞培養におけるHIV複製の強力な阻害剤である。しかし、G四量体はナノモル範囲でHIVのIN活性を阻害するが、細胞培養におけるその抗ウイルス活性は、HIVのIN活性の阻害ではなく、ウイルス進入の阻害のためであることが、薬剤耐性株の選択および配列決定によって(Cherepanov他によりMol.Pharmacol.(1997)52:771〜780に)明瞭に示されている。
【0008】
多くのポリヒドロキシル化芳香族化合物(フラボン類、チルホスチン類、リグナン類、アントラキノン類およびビスカテコール類を含む;これらはすべて、芳香族環における2つのビシナルヒドロキシル基を特徴とする)がインビトロにおけるHIV−1INの阻害剤として報告されている。3つの考えられる作用機構が提案されていた(Pommier他(前掲)を参照のこと)。カテコール類は、活性部位におけるリン酸転移反応に必要な金属イオンの配位を妨害し得る。カテコール類のインビボでの酸化は反応性のキノン化学種を生じさせることができ、またはヒドロキシル基が、酵素と相互反応するための水素結合ドナーとして機能し得る。オルト位にヒドロキシル基を含まないが、IN活性を阻害するヒドロキシル化芳香族化合物(クルクミン、クーママイシンおよびビスクマリン類など)もまた報告されている。分子モデリングを使用して、様々なファルマコホアが、Neamati他、Mol.Pharmacol.(1997)52:1041〜1055によれば、新規なリード化合物の発見をもたらし得る知られているヒドロキシル化芳香族阻害剤において同定されている。しかし、細胞培養におけるカテコールタイプの阻害剤の抗ウイルス効果は、その固有的な細胞毒性により損なわれている。
【0009】
ジカフェオイルキナ酸誘導体およびL−チコリ酸(L−CA)誘導体がインビトロにおけるHIV−1のINおよび細胞培養におけるHIV−1の複製を阻害することが、最近、Robinson他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:6326〜6331に報告された。L−チコリ酸に対して耐性のHIV−1株が選択され、変異がIN遺伝子にマッピングされた(G140S)。本発明者らは、最近、L−CAに対して耐性であり、かつIN遺伝子の代わりにgp120に変異を含む複数のHIV−1株を選択した。さらに、G140S変異を有する組換えINは、Pluymers他(2000)によれば、野生型酵素と同程度にL−CAによって阻害された。
【0010】
ジケト酸誘導体は、Hazuda他(前掲)により報告されるように、DNA鎖転移段階を特異的に阻害することによってHIV−1の複製をマイクロモル濃度で阻害する。これらの化合物の存在下で選択された耐性のウイルス株はIN遺伝子に様々な変異を有した。これらの変異は、INに導入されたときに、これらの薬剤に対して部分的な耐性をもたらした。
【0011】
多くのDNA結合剤もまた、おそらくは酵素のDNA結合ドメインとの非特異的な相互作用のためにHIV−1INを阻害することが見出されていた。DNAインターカレーターおよびDNA溝結合剤(ネトロプシンなど)はこのカテゴリーに属する。例えば、インターカーレーションするオキサゾロピリドカルバゾールに結合することによりLTRの特異的な領域において三重らせんを形成するDNAリガンドは、HIV−1INのU3特異的LTR結合阻害剤またはU5特異的LTR結合阻害剤として作用することができる。HIV−1INのアミノ酸147〜175に対応する30merのペプチドはまたミリモルの濃度でIN活性を阻害することが示されていた。INドメインに対する単鎖の可変フラグメントを細胞内で発現させることにより、ウイルス複製サイクルの初期段階が阻害される。リボソーム不活性化タンパク質(RIP)ファミリーのメンバーなどのポリペプチドがHIV−1INの強力な阻害剤として記載されていた。しかし、INとの妨害がその抗ウイルス活性に対する重要な機構であることは明らかにされていなかった。
【0012】
国際特許出願公開WO99/25718には、特に、抗菌活性、(ヘルペス単純ウイルスに対する)抗ウイルス活性、抗クラミジア活性、および(インターフェロン誘導剤のような)免疫刺激活性を有して、薬理学、獣医学および化粧品学において有用であり、そして免疫不全症患者における日和見疾患を処置するために有用であると言われるクラスのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が開示されている。
【0013】
まとめると、レトロウイルスのRTおよび/またはINを選択的に標的とし、そしてまた抗ウイルス性ある強力な阻害剤が当該分野において依然として強く求められている。従って、本発明の目的は、哺乳動物およびヒトにおけるレトロウイルス感染症(特にレンチウイルス感染症、より具体的にはHIV感染症)を処置するための効率的かつ有害でない薬学的に活性な成分および成分の組合せを明らかにすることによってこの差し迫った要求を満たすことである。
【0014】
(発明の要約)
哺乳動物およびヒトにおけるレトロウイルス感染症(特にレンチウイルス感染症、より具体的にはHIV感染症)の治療を改善し、かつウイルスの複製をさらに低下させ、かつ多数の薬剤に対して耐性であるレトロウイルス株に対処する努力において、第3のウイルス酵素であるインテグラーゼ(HIV−IN)の効果的な阻害剤に対する探索を開始することが望ましかった。この酵素は、ウイルスが複製するために不可欠な段階である、ウイルスcDNAを宿主細胞染色体に挿入することを担っている。この酵素のヒト対応体はまだ知られていないので、HIV組込みプロセスの効果的で、好ましくは選択的な阻害剤を開発することはかなり注目される。
【0015】
本発明は、特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によってレトロウイルス(特にHIV−1)のインテグラーゼが阻害されるという予想外の発見に基づいている。ここで、これらの化合物はまた、細胞培養においてHIVの複製からの保護を示し、そして1つ以上の抗レトロウイルス薬、例えば、レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物(例えば、下記に示される薬物)と組み合わせて使用されたときに哺乳動物およびヒトの細胞培養においてレトロウイルス感染(特にレンチウイルス感染)に対する相乗効果もまた示すことができる(総説については、Antivirals against AIDS(2000)、M.Dekker,Inc.を参照のこと):
・下記に詳述されるようなレトロウイルス酵素阻害剤、
・レトロウイルスの複製に関与するか、またはレトロウイルスの複製に不可欠である(グリコシル化または非グリコシル化)非酵素レトロウイルスタンパク質(例えば、HIVのgp120)に対して効果的な薬物、例えば、Nature(2001)410:966に議論されるgp120エンベロープ抗原に基づく免疫原、および
・レトロウイルスの進入に関与するか、またはレトロウイルスの進入に不可欠であるタンパク質(例えば、受容体または細胞化合物)を阻止する薬物、例えば、CCR5阻害剤(例えば、Dragic他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97:5639〜44に開示されるTAK−779分子など)。
そのような生物学的性質または性質の組合せは、すなわち、それらを、ヒトにおけるHIV感染のいわゆる混合療法において非常に注目される薬学的に活性な成分にする。
【0016】
従って、そのより広い意味で、本発明は、レトロウイルス感染患者(特にレンチウイルス感染患者、より詳細にはHIV感染患者)におけるレトロウイルス感染症を処置する医薬品を製造するためのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、レトロウイルス酵素(特にインテグラーゼまたは逆転写酵素、より詳細にはHIV−1のインテグラーゼまたはHIV−1の逆転写酵素)の阻害剤としてのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、レトロウイルス感染患者(特にレンチウイルス感染患者、より詳細にはHIV感染患者)におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法に関し、この方法は、そのような処置を必要とする患者にピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の有効量を投与する工程を含む。
【0017】
別の実施形態において、本発明はまた、逆転写酵素阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤などの1つ以上の抗レトロウイルス薬と組み合わせて使用されたときに、ヒト細胞培養におけるレトロウイルス感染に対する(下記に定義されるような)(亜)相乗効果の予想外の発見に基づいている。このような相乗的性質は、すなわち、それらを、ヒトにおけるHIV感染のいわゆる混合療法において非常に有用にする。
【0018】
上記で議論された国際特許出願公開WO99/25718は、HIVに対するこれらの化合物の活性を何ら示唆しないか、またはレトロウイルス酵素の阻害を何ら示唆しておらず、そして免疫不全症そのものを処置することを示唆せず、免疫不全患者におけるその結果のみを示唆するだけであることに注目することは非常に重要である。
【0019】
(詳細な説明)
本発明は最初に、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症(特にレンチウイルス感染症、より詳細にはHIV感染症)を処置する医薬品を製造するためのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用に関し、そしてそのような感染症にかかりやすい哺乳動物の対応する処置方法に関する。
【0020】
第2の局面において、本発明は、好ましくは哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する(またはその処置のための)医薬品として(または医薬品を製造するために)、そしてより好ましくは哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対して(またはその処置において)相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、(a)ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの1つ以上の誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)とを含む組成物の使用を提供する。第3の局面において、本発明は、レトロウイルス感染症の治療において同時または個別または連続的に使用される混合調製物として、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する相乗効果をもたらすようにそれぞれの割合で、(a)ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの1つ以上の誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)とを含有する製造物を提供する。第4の局面において、本発明は、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法を提供する。この方法は、レトロウイルス感染に対して相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体と、(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬(例えば、レトロウイルス酵素阻害剤)とを含む混合治療用調製物の有効量を、そのような処置を必要とする哺乳動物に同時または別個または連続的に投与する工程を含む。
【0021】
本発明の様々な局面において、処置されるレトロウイルス感染症は、好ましくはレンチウイルス感染症であり、より好ましくはHIV感染症である。
【0022】
本発明の様々な局面において、ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、好ましくは、下記の式を有する化合物、その薬学的に受容可能な付加塩または立体化学的異性体であって:
【0023】
【化6】
【0024】
式中、
・Xは、ヒドロキシ、ハロおよびチオールから選択され、
・Yは、ヒドロキシ、メトキシおよびハロから選択され、そして
・Zは、水素、ハロおよびニトロから選択される。
このようなピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、例えば、5,5’−アリーリデンビスバルビツル酸(例えば、XおよびYの両方がヒドロキシであるとき)または5,5’−アリーリデンビス(2−チオ)バルビツル酸(例えば、Xがチオールで、Yがヒドロキシであるとき)のピリジン塩をオキシ塩化リンPOCl3と反応し、その後、酸化リンP2O5と反応することによって、あるいは(例えば、Xがヒドロキシで、Yがメトキシで、Zがp−ニトロであるときには)6−メトキシウラシル、p−ニトロベンズアルデヒド、酢酸および無水酢酸を酢酸の沸騰温度に近い温度で反応することによって得ることができる。これらの方法の様々な変形がWO99/25718に開示されている。この誘導体ファミリーの代表的なものとして、5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンが挙げられる。興味深いことに、この誘導体ファミリーにおいて、スルフヒドリル基を2位および8位に有する分子は、ヒドロキシル置換基を同じ位置に有する対応する化合物よりも顕著な抗ウイルス活性を示す傾向を有することが認められた。
【0025】
上記で言及された薬学的に受容可能な付加塩は、上記の式を有する化合物が形成することができ、かつそのような化合物の塩基形態を適切な酸で処理することによって都合よく得ることができる治療的に活性な非毒性の酸付加塩形態を包含することが意味される。そのような適切な酸の例には、例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素酸または臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;または有機酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわち、エタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわち、ブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸(すなわち、2−ヒドロキシ安息香酸)、p−アミノサリチル酸、パモ酸などが含まれる。逆に、塩形態は、適切なアルカリで処理することによって遊離塩基形態に変換することができる。本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能な付加塩」には、上記の式を有する化合物ならびに上記に定義されるようなそれらの塩が形成することができる溶媒和物が含まれ、例えば、水和物、アルコラートなどが含まれる。
【0026】
本発明において治療活性成分として使用されるピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は好ましくは、それらが意図される治療プログラムを安全に制御するために、実質的に純粋な形態で、すなわち、その製造過程および/または取扱い過程に由来する化学的不純物(副生成物または残留溶媒など)を含まない形態で存在しなければならない。ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、それらが不斉炭素原子を少なくとも有するとき、ラセミ混合物として存在し得るか、または模擬移動床技術を含む標準的な分画方法によってラセミ混合物から得られる前記化合物の実質的に純粋な立体異性体もしくはエナンチオマーの形態で存在し得る。
【0027】
本明細書中前記で使用される用語「立体化学的異性体」により、式(I)の化合物が有し得る可能な異性体のすべてが定義される。別途示されない限り、化合物の化学的名称は、基本分子構造のすべてのジアステレオマーおよびエナンチオマーを含む、すべての可能な立体化学的異性体の混合物を意味する。より詳細には、立体中心はR配置またはS配置のいずれかを有し得る。前記化合物の純粋な立体異性体は、同じ基本分子構造の他のエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に、用語「立体異性体的に純粋」または用語「キラル純粋」は、立体異性体過剰率が少なくとも80%であり(すなわち、少なくとも90%が一方の異性体であり、多くても10%がそれ以外の可能な異性体であり)、好ましくは少なくと90%であり、より好ましくは少なくとも94%であり、最も好ましくは少なくとも97%である化合物に関する。用語「エナンチオマー的に純粋」および用語「ジアステレオマー的に純粋」は、それぞれ、問題とする混合物のエナンチオマー過剰率、ジアステレオマー過剰率に注目して、同じように理解しなければならない。
【0028】
従って、エナンチオマーの混合物が調製方法のときに得られる場合には、混合物は、好適なキラル定常相を使用する液体クロマトグラフィーによって分離することができる。好適なキラル定常相には、例えば、多糖が挙げられ、具体的にはセルロース誘導体またはアミロース誘導体がある。市販されている多糖ベースのキラル定常相には、ChiralCelTMCA、OA、OB、OC、OD、OF、OG、OJおよびOK、ならびにChiralpakTMAD、AS、OP(+)およびOT(+)がある。前記の多糖キラル定常相との組合せで使用される適切な溶出液または移動相には、ヘキサンなどがあり、これらは、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールで調節される。
【0029】
本明細書中前記で使用される用語「実質的に純粋」は、高速液体クロマトグラフィーなどのこの分野で通常的な方法によって測定されたときに、少なくとも約96%(好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%)の化学的純度を意味する。
【0030】
本発明の様々な局面において、薬物(b)として使用されるレトロウイルス酵素阻害剤は、この分野で既に知られているカテゴリーに属し得るが、特に下記の阻害剤を含むことができる:
・HIV−1のIN阻害剤、例えば、本明細書中上記に概説されるようなHIV−1IN阻害剤;
・ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、ジドブジン、ラミブジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビンなど;
・非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、ネビラピン、デラビルジンなど;
・他の逆転写酵素阻害剤、例えば、フォスカルネットナトリウムなど;
・HIV−1プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビルなど。
【0031】
本発明の第3の局面で提供される製造物は、(a)および(b)の少なくとも1つが少なくとも薬学的に受容可能なキャリアと混合されている薬学的調製物または薬学的組成物の形態であり得る。本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、例えば、前記組成物の溶解、分散もしくは拡散によって、処置される位置への適用もしくは散布を容易にするために、かつ/またはその有効性を損なうことなくその貯蔵、輸送もしくは取扱いを容易にするために、有効成分(a)および有効成分(b)からなる組成物が配合される任意の材料または物質を意味する。薬学的に受容可能なキャリアは固体であってもよく、または液体であってもよく、または液体を形成させるために圧縮されている気体であってもよい。すなわち、本発明の組成物は、高濃度物、エマルション剤、溶液剤、顆粒、粉剤、スプレー剤、エアロゾル剤、ペレットまたは粉末剤として好適に使用することができる。
【0032】
前記薬学的組成物およびその配合物において使用される好適な薬学的キャリアは当業者には十分に知られており、その選択は本発明では特に制限されない。薬学的キャリアはまた、湿潤化剤、分散剤、増粘剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖または塩化ナトリウムなど)などの添加剤を、それらが製薬実施と矛盾しないならば含むことができる。すなわち、哺乳動物に対して永続的な損傷を生じさせないキャリアおよび添加剤を含むことができる。本発明の薬学的組成物は、任意の知られている様式で、例えば、一段階または多段階の方法で、有効成分を、選択されたキャリア物質と、そしてまた、適する場合には、界面活性剤などのそれ以外の添加剤と均質に混合、コーティングおよび/または粉砕することによって調製することができ、そして例えば、約1μm〜10μmの直径を通常的には有するマイクロスフェアの形態で得るために、すなわち、有効成分を制御放出または持続放出させるためのマイクロカプセルを製造するために、微細化によって調製することができる。
【0033】
本発明の薬学的組成物において使用される好適な界面活性剤は、良好な乳化性、分散性および/または湿潤化性を有する非イオン性物質、カチオン性物質および/またはアニオン性物質である。好適なアニオン性界面活性剤には、水溶性の石けんおよび水溶性の合成界面活性剤の両方が含まれる。好適な石けんには、高級脂肪酸(C10〜C22)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、非置換アンモニウム塩または置換アンモニウム塩、例えば、オレイン酸またはステアリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、あるいはココナッツオイルまたはタローオイルから得られる天然脂肪酸混合物のそのような塩が挙げられる。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム塩またはカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩および脂肪硫酸塩;スルホン酸化ベンゾイミダゾール誘導体およびアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪スルホン酸塩または脂肪硫酸塩は通常、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、非置換アンモニウム塩、または8個〜22個の炭素原子を有するアルキル基もしくはアシル基で置換された置換アンモニウム塩の形態であり、例えば、リグノスルホン酸またはドデシルスルホン酸のナトリウム塩またはカルシウム塩、あるいは天然脂肪酸から得られる脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸エステルまたはスルホン酸エステルのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、および脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。好適なスルホン酸化ベンゾイミダゾール誘導体は、好ましくは、8個〜22個の炭素原子を含有する。アルキルアリールスルホン酸塩の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸またはジブチルナフタレンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム塩、カルシウム塩またはアルカノールアミン塩がある。また、対応するリン酸塩(例えば、リン酸エステルの塩)、ならびにp−ノニルフェノールとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの付加物、またはリン脂質も好適である。この目的のために好適なリン脂質には、セファリンタイプまたはレシチンタイプの天然リン脂質(動物細胞または植物細胞に由来)または合成リン脂質が挙げられ、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リソレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびそれらの混合物がある。
【0034】
好適な非イオン性界面活性剤には、少なくとも12個の炭素原子を分子内に含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミンまたは脂肪族アミドのポリエトキシル化誘導体およびポリプロポキシル化誘導体、そしてアルキルアレーンスルホン酸塩およびジアルキルスルホコハク酸塩が含まれ、例えば、脂肪族アルコールおよび脂環式アルコール、飽和および不飽和の脂肪酸およびアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体などがある。前記誘導体は、好ましくは、3個〜10個のグリコールエーテル基および8個〜20個の炭素原子を(脂肪族)炭化水素部分に含有し、そして6個〜18個の炭素原子をアルキルフェノールのアルキル成分に含有する。さらなる好適な非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンオキシドのポリプロピレングリコールとの水溶性付加物、1個〜10個の炭素原子をアルキル鎖に含有するエチレンジアミノポリプロピレングリコールである。そのような付加物は、20個〜250個のエチレングリコールエーテル基および/または10個〜100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、通常、プロピレングリコールユニットあたり1個〜5個のエチレングリコールユニットを含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例には、ノニルフェノール−ポリエトキシエタノール、ひまし油ポリグリコール酸エーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールおよびオクチルフェノキシポリエトキシエタノールがある。ポリエチレンソルビタンの脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタントリオレアートなど)、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステルおよびペンタエリトリトールの脂肪酸エステルもまた好適な非イオン性界面活性剤である。
【0035】
好適なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換フェニルまたはヒドロキシで必要に応じて置換される4個の炭化水素基を有する四級アンモニウム塩(好ましくはハロゲン化物)が含まれ、例えば、少なくとも1つのC8〜C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイルなど)をN置換基として含有し、そしてさらなる置換基として、非置換またはハロゲン化された低級アルキル基、ベンジル基および/またはヒドロキシ低級アルキル基を含有する四級アンモニウム塩が含まれる。
【0036】
この目的のために好適な界面活性剤のより詳細な記載を、例えば、「McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.、Ridgewood、New Jersey、1981)、「Tensid−Taschenbuch」第2版(Hanser Verlag、Vienna、1981)、および「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.、New York、1981)に見出すことができる。
【0037】
さらなる成分を、組成物中の有効成分の作用継続時間を制御するために含めることができる。例えば、制御放出組成物を、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンなどの適切なポリマーキャリアを選択することによって達成することができる。薬物放出速度および作用継続時間はまた、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸メチルおよびその他の上記に記載されたポリマーなどのポリマー物質の粒子(例えば、マイクロカプセル)に有効成分を取り込むことによって制御することができる。そのような方法は、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、ナノカプセルなどのようなコロイド薬物送達系を含む。投与経路に依存して、薬学的組成物は、保護コーティングが必要になる場合がある。
【0038】
注射使用に好適な薬学的形態物は、必要に応じてその場でそれらを調製するための無菌の水溶性の溶液または懸濁物および無菌の粉末を含む。従って、この目的のための典型的なキャリアには、生体適合性の水性緩衝剤、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど、およびそれらの混合物が含まれる。
【0039】
成分(a)および成分(b)は、処置される哺乳動物において同時に直接、それらの共同的な治療効果を必ずしも発揮しないということを考慮すると、本発明の第3の局面で提供される製造物はまた、別個ではあるが、隣接した形態で2つの成分を含有する医学的なキットまたはパッケージの形態にすることができる。従って、後者に関連して、成分(a)および成分(b)のそれぞれを、他方の成分の投与経路とは異なる投与経路に好適な方法で配合することができる。例えば、それらの一方を経口用配合物または非経口用配合物の形態にすることができ、これに対して、もう一方を静脈内注射用のアンプル剤またはエアロゾル剤の形態にすることができる。
【0040】
本発明の第3の局面である処置方法に従って、
・有効成分(a)および有効成分(b)は、処置される哺乳動物(ヒトを含む)に、この分野で十分に知られている任意の手段によって、すなわち、経口的、鼻腔内、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、関節内、非経口的に、またはカテーテル投与によって投与することができる。
・(a)および(b)の混合調製物の有効量は、好ましくは抗レトロウイルス量であり、例えば、レトロウイルス酵素の阻害量である。より好ましくは、効果的な量は誘導体(a)のインテグラーゼ阻害量および薬物(b)のレトロウイルス酵素阻害量である。さらにより好ましくは、前記のレトロウイルス酵素阻害剤薬物(b)がプロテアーゼ阻害剤であるとき、その効果的な量はプロテアーゼ阻害量である。前記のレトロウイルス酵素阻害剤薬物(b)が逆転写酵素阻害剤であるとき、その有効量は逆転写酵素阻害量である。前記のレトロウイルス酵素阻害剤薬物(b)がピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの誘導体とは異なるインテグラーゼ阻害剤であるとき、その有効量はインテグラーゼ阻害量である。(b)が、レトロウイルスの複製に関与する(グリコシル化または非グリコシル化)非酵素レトロウイルスタンパク質に対して効果的な薬物(例えば、HIVgp120エンベロープ抗原に基づく免疫原)であるとき、(b)はその通常の有効量で使用されるはずである。(b)がCCR5阻害剤であるとき、(b)はCCR5阻害量で使用されるはずである。
・成分(a)および成分(b)を同時に投与することができるが、処置される身体においてそれらの機能的融合を達成するために、それらを、例えば、比較的短い期間内で(例えば、約24時間以内に)別個または連続的に投与することもまた有益であり得る。
【0041】
下記の実施例は、例示目的のためにだけ示され、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈してはならない。
【0042】
(実施例)
本発明の実施例を行うために、下記の化合物および実験手順を使用した。
【0043】
ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体は、WO99/25718に開示される方法に従って得た。AZTは、Horwitz他によりJ.Org.Chem.(1964)29:2076〜8に以前に記載されるように合成された。チビラピンおよびロビリドはJanssen Research Foundation(Beerse、ベルギー)から得た。ネビラピンはBoehringer Ingelheim(Ridgefield、CN)から得た。リトナビルはAbbott laboratories(Abbott Park、Illinois)により提供された。分子量が5,000のデキストラン硫酸をSigmaから購入した。ネルフィナビルはAgouron Pharmaceuticals(La Jolla、California)から得た。ビシクラムAMD3100はAmormedから得た。
【0044】
MT−4細胞(Miyochi他によりGann.Monogram.(1982)28:219〜228に開示される)およびC8166細胞(Salahuddin他によりVirology(1983)129:51〜64に開示される)を、5%CO2を有する加湿雰囲気中で増殖させ、そして10%熱不活化ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、0.1%重炭酸ナトリウムおよび20μg/mlのゲンタマイシンが補充されたRPMI1640培地で維持した。
【0045】
HIV−1(IIIB)ウイルスは、Popovic他によりScience(1984)224:497〜500に記載された。HIV−1(NDK)もまた、Spire他によりGene(1989)81:275〜284に記載された。HIV−1(以降、NL4.3として示され、Adachi他によりJ.Virol.(1986)59:284〜291に開示される)は、国立衛生研究所(Bethesda、Maryland)から得られる分子クローンである。13MB1(L100I)株および39NM1(Y181C)株は、本発明者らの研究室において、それぞれ、チビラピンまたはロビリドの存在下でMT−4細胞においてHIV−1(IIIB)およびHIV−1(NDK)を連続的に継代した後に単離された。L1、L2、L4およびL6は、ジデオキシヌクレオシド(ddN)アナログのジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジンおよびラミブジン、ならびに非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のロビリドを用いた連続処置の前およびその後の一人の血清陽性患者に由来する臨床単離体である。Schmidt他(前掲)によれば、L6株は下記の変異を逆転写酵素に含有する:V75I、F77L、K103N、F116Y、Q151MおよびM184V。HIV−1またはHIV−2(ROD)(Barre−Sinoussi他によりScience(1983)220:868〜871に開示される)およびHIV−2(EHO)(Rey他によりVirology(1989)173:258〜267に開示される)の保存株を、Pauwels他(J.Virol.Methods(1987)16:171〜185)およびSchols他(J.AIDS(1989)2:10〜15)に従って、HIV−1感染細胞株またはHIV−2感染細胞株の培養上清から得た。サル免疫不全症ウイルス[SIV(MAC251)]をSmith Kline(Rixensart、ベルギー)から得て、保存株をSIV感染MT−4細胞の上清から調製した。
【0046】
実施例1 急性感染の細胞培養モデルにおけるHIVまたはSIVの複製に対するピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害活性。
【0047】
下記の式を有する一連の5−(4−置換フェニル)−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンにおける8個の異なる化合物(以降、A〜Hとして示される)の阻害活性を、急性感染の細胞培養モデルにおけるHIVまたはSIVの複製を阻害するその能力について試験した:
【0048】
【化7】
【0049】
(式中、X、YおよびZは下記の表1に定義される通りである)
【0050】
【表1】
【0051】
選択された化合物を、Pauwels他によりJ.Virol.Methods(1988)20:309〜321に記載される比色測定試験を使用して、HIV−1(IIIB)株、2つのHIV−2株(RODおよびEHO)、およびSIV(MAC251)に対して、MT−4細胞におけるウイルス誘導による細胞変性の阻害について試験した。評価を感染後5日目に行った。
【0052】
これらの化合物の細胞傷害性を、モック感染のMT−4細胞またはC8166細胞の生存性を感染後5日目に測定することによって同時に決定した。少なくとも2つの別個の実験に対する平均値および標準偏差を含む抗ウイルス活性および細胞傷害性のデータを表2に示す。表において、
・EC50は50%有効濃度(すなわち、細胞培養においてウイルスの細胞変性効果を50%阻害するために必要な濃度)を表す。
・CC50は50%細胞傷害濃度(すなわち、MT−4細胞の生存性を50%低下させる濃度)を表す。
【0053】
【表2】
【0054】
誘導体C、E、GおよびHは、HIV−1(IIIB)の複製に対して活性であった。このシリーズの最も活性な化合物H、すなわち、5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン(すべての添付された図ではV−165として示される)は、50%有効濃度(EC50)が11.4μMと活性であった。Hはまた、5.5μM〜30μMの範囲のEC50値で、HIV−1(NDK、NL4.3およびL1)、HIV−2(RODおよびEHO)およびSIV(MAC251)に対して活性であった。対照的に、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のネビラピンは、比較として試験されたが、MT−4細胞において98μMで、HIV−2(RODおよびEHO)およびSIV(MAC251)の複製に対して不活性であった。
【0055】
実施例2 薬剤耐性HIV−1株に対する特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害活性。
【0056】
化合物Gおよび化合物Hの抗ウイルス活性を、実施例1と同じ方法を使用して、様々な薬剤耐性HIV−1株に対して試験した。結果を下記の表3に示す。表において、EC50は実施例1と同じ意味を有し、EC50の増大倍率は、野生型(WT)株に対する抗ウイルス活性との比較による。化合物Hは、ウイルス進入アンタゴニストのデキストラン硫酸またはビシクラムに対して耐性であるHIV−1株に対して活性であった。非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)のチビラピンまたはロビリドに対する耐性のための選択されたHIV−1株は両方の化合物によって阻害された。
【0057】
【表3】
【0058】
さらに、本発明者らは、親株L1が、IIIBよりも、化合物Hに対して大きい感受性(EC50:3.7±1.8μM)を有したことを考慮して、3つの多剤耐性(MddNR)HIV−1株(L2、L4およびL6)に対する化合物Hの阻害能が最大で1/3に低下していることを認めた。
【0059】
実施例3 様々なHIV−1阻害剤と5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンとの混合阻害効果。
【0060】
化合物Hの抗ウイルス効果を、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のジドブジン、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のネビラピン、およびプロテアーゼ阻害剤のネルフィナビルと組み合わせて試験した。
【0061】
HIV−1により誘導される細胞変性効果に対する混合阻害効果を、Elion他によりJ.Biol.Chem.(1954)208:477〜488に、そしてBaba他によりAntimicrob.Agents Chemother.(1984)25:515〜517に以前に記載されるように、アイソボログラム法によって評価した。
【0062】
前記に定義されるようなEC50を、阻害濃度分率(以降、FICとして示される)を計算するために使用した。組み合わせられた化合物のFICに対応する最小FIC指数(例えば、FICx+FICy)が1.0に等しいとき、その組合せは付加的であると言われる;1.0〜0.5の間であるとき、その組合せは定義により亜相乗的であると言われる;0.5よりも小さいとき、その組合せは、定義により、相乗的であると言われる。最小FIC指数が1.0〜2.0の間であるとき、その組合せは、亜アンタゴニスト的であると言われ、2.0を越えるときには、その組合せはアンタゴニスト的であると定義される。
【0063】
これらの試験の結果は、直線がそれぞれ1.0および0.5に等しいFICを表す図2〜図4に示されるアイソボログラムで報告される。これらの図は、
【0064】
【数1】
【0065】
の合算値が0.5〜1の間に含まれ、そして
【0066】
【数2】
【0067】
の合算値が0.5未満であったことを示している。
実施例4 複製サイクルにおける5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの介入時期。
【0068】
添加時期実験を、複製サイクルのどの段階が化合物Hによって阻害されるかを調べるために行った。簡単に記載すると、この実験により、抗HIV化合物の添加が、ウイルス複製サイクルにおいて、その抗ウイルス活性を失う前に、どのくらい長く延ばされ得るかが決定される。MT−4細胞に、ウイルス複製のすべての段階を同調させるために0.5の感染多重度(m.o.i.)でHIV−1(IIIB)を感染させ、そして様々な抗ウイルス試験化合物を、感染後の(0時間から26時間までに及ぶ)種々の時間で添加した。ウイルスのp24抗原の産生を(HIV−1p24コアプロフィルELISA(DuPont、Dreieich、ドイツ)を使用して)感染後31時間で測定した。これは、pg/mlでp24Ag含有量のlog10として表される。作用モードが知られている参照化合物がこの実験には含められた。デキストラン硫酸(ポリアニオン)は、ウイルスが細胞に結合することを妨害する。ヌクレオシドアナログのAZTは逆転写プロセスを阻害する。リトナビルはタンパク質分解的切断阻害剤である。これらの参照化合物(デキストラン硫酸、AZTおよびリトナビル)は、0.01のm.o.i.で測定されたEC50値の100倍に対応する正規化された濃度で添加された。化合物Hは250μMで添加された。この実験の結果を示す図1には、下記の記号が使用された:
【0069】
【数3】
【0070】
図1により、化合物Hの添加は、ウイルス感染後6時間延ばすことができる。このことは、組込み(DNA鎖転移)のときにおける相互作用を示唆している。なぜなら、類似する添加時期実験で試験された知られているジケト酸のインテグラーゼ阻害剤は、感染後6時間以上経って添加されたときにその活性を失ったからである。しかし、実験は、ウイルス複製時に標的化される最後の段階を明らかにするだけであるので、この実験からは、化合物Hが逆転写酵素とも相互作用することを除外することができない。
【0071】
実施例5 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンによるレンチウイルスベクター媒介形質導入の阻害。
【0072】
阻害剤がHIVの逆転写段階および/または組込み段階を妨害することを確認するために、293T細胞の1回の感染を、VSV−Gエンベロープで偽タイプ化され、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを有するHIV−1由来のベクターを使用して、Naldini他によりScience(1996)272:263〜7に記載される方法に従って行った。具体的には、水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープで偽タイプ化されたHIV−1由来のベクター粒子を、パッケージングプラスミドのpCMVΔR8.2またはpCMVΔR8.91、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープをコードするプラスミド(pMDG)、および2つの長末端反復(LTR)が隣接するレポーター遺伝子をコードするプラスミド(pHR’−CMVルシフェラーゼ)の3つのプラスミドで293T細胞をトランスフェクションすることによって作製した。すべてのプラスミドはEuropean Gene Vector Database and Repositoryから得ることができ、そしてGenethon III、CNRS URA、1923、Evry(フランス)によって、ジュネーブ大学(遺伝学および微生物学学部)(スイス)によって提供された。10cmディッシュの293T細胞をトランスフェクションするために、3つのプラスミドの700μl混合物を150mMのNaClにおいて作製した(20μgのベクタープラスミド、10μgのパッケージング構築物および5μgのエンベローププラスミド)。700μlのこのDNA溶液に、ポリエチレンイミン(PEI)(Aldrichから入手可能)(150mMのNaClにおける10mM保存溶液の110μl)をゆっくり添加した。室温で15分後、DNA−PEI複合体を、1%ウシ胎児血清(FCS)が補充されたDMEM培地中の293T細胞に滴下して加えた。一晩インキュベーションした後、培地を、10%FCSを含有する培地と交換した。上清をトランスフェクション後の2日目〜5日目に集めた。ベクター粒子を、スイング式バケットローター(SW27、Beckman、Palo Alto、California)で25,000rpmにおいて4℃で2時間の超遠心分離によって沈降させた。ペレットをPBSに再溶解して、100倍濃度液を作製した。種々のウイルス保存株をp24抗原含有量に基づいて正規化した(HIV−1p24コアプロフィルELISA、これはDuPont(Dreieich、ドイツ)から得られる)。阻害剤を96ウエルプレートにおいて評価した。各ウエルについて、2,000pgのベクターおよび2μg/mlのポリブレンを、100μlのDMEM/1%FCSで増殖させた293T細胞のコンフルエントな単層に加えた。阻害剤を種々の濃度でインキュベーションした。トランスフェクションした48時間後に細胞を溶解して、ルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼアッセイシステムTM(Promega Benelux、Leiden、オランダ)を使用してLumicountTM(Packard、Meriden、Connecticut)で測定した。細胞数に対する正規化を、BCATMタンパク質アッセイ試薬(Pierce、Illinois)を使用してタンパク質濃度を測定することによって行った。
【0073】
このアッセイにおいて、ルシフェラーゼ活性の低下は、初期のHIV複製段階の阻害に対する尺度である。形質導入の阻害が、17μMの平均EC50値で、化合物Hで得られた。コントロールの逆転写酵素阻害剤であるAZTは、レンチウイルスの形質導入を49nMのEC50値で阻害した。gp120がウイルス粒子に存在しないことにより、HIVタイプのウイルス進入は標的として除外される。化合物Hはまた、(Zufferey他によりNature Biotechnol.(1997)15:871〜5に記載されるなどの)副因子のnef、vif、vprおよびvpuを欠いている次世代ベクターによる形質導入を同じ程度に阻害した。従って、これにより、抗ウイルス機構におけるこれらのHIVタンパク質に対する主要な役割が除外される。これらのアッセイにより、HIV−1の逆転写および/または組込みが、細胞培養における本発明の化合物の抗ウイルス効果に対する標的として確認される。
【0074】
実施例6 特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によるHIV逆転写酵素活性の阻害。
【0075】
HIV−1逆転写酵素の酵素活性の阻害を、Debyser他によりProc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:1451〜5に記載されるように、ビリオンに由来する酵素を得て、逆転写酵素活性についてアッセイするための手順を使用しながら、本発明のいくつかの化合物および参照化合物について評価した。ポリ(rC).オリゴ(dG)およびポリ(rA).オリゴ(dT)をテンプレートプライマーとして使用し、そして8−[3H]−dGTPおよび[3H]−dTTPを放射能標識された基質として使用した。反応混合物における8−[3H]−dGTPおよび[3H]−dTTPの最終濃度は2.5μMであった。組換えHIV−1RT(HXB2)を、Jonckheere他によりJ.Virol.Methods(1996)61:113〜125に記載されるようにして得た。これらの実験の結果を下記の表4に示す。表において、IC50は50%阻害濃度(すなわち、テンプレートプライマーとしてポリ(C).オリゴ(dG)またはポリ(A).オリゴ(dT)を使用したときに組換えHIV−1RTの活性を50%阻害するために必要な濃度)である。
【0076】
【表4】
【0077】
実施例7 特定のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によるHIVインテグラーゼ活性の阻害。
【0078】
3’−プロセシング反応、DNA鎖転移反応および全体的な組込み反応の阻害を、下記の方法論を使用して、Cherepanov他によりMol.Pharmacol.(1997)52:771〜780に記載されるように、オリゴヌクレオチドに基づくアッセイにおいて測定した。
【0079】
最初に、組換えHis標識HIV−1インテグラーゼを、Cherepanov他(前掲)により記載されるように、HIV−1IN(HTLV III株)をコードするプラスミドpRP1012(Netherlands Cancer Institute(Amsterdam)から入手可能)からE.coli PC1(BL21(DE3)(pLysS)ΔendA::TcR)で産生させ、そしてNi−ニトリロ三酢酸カラム(Qiagen、Hilden、ドイツ)、次いでHighTrap−ヘパリンカラム(Pharmacia)で精製した。
【0080】
下記の高速液体クロマトグラフィー精製されたデオキシオリゴヌクレオチドをAmersham−Pharmacia Biotechから購入した:
INT1、5’−TGTGGAAAATCTCTAGCAGT;
INT2、5’−ACTGCTAGAGATTTTCCACA;
T35、5’−ACTATACCAGACAATAATTGTCTGGCCTGTACCGT;
SK70、5’−ACGGTACAGGCCAGACAATTATTGTCTGGTATAGT。
【0081】
オリゴヌクレオチドのINT1およびINT2はHIV−1LTRのU5末端に対応する。オリゴヌクレオチドINT1を20%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲルで精製し、そしてポリヌクレオチドT4キナーゼおよび
【0082】
【数4】
【0083】
を使用して5’末端を標識した。インテグラーゼ反応に対するDNA基質を、INT1およびINT2をアニーリングすることによって作製した。100mMのNaClが存在する2つのオリゴヌクレオチドの等モル混合物を95℃で短時間加熱し、そして室温にゆっくり冷却した。同様に、SK70およびT35をアニーリングすることにより、標的DNA分子として使用される35bpのdsDNA分子を得た(T35/SK70)。
【0084】
3’−プロセシングアッセイ用の最終的な反応混合物は、20mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(以降、HEPESとして示される)(pH7.5)、5mMのジチオスレイトール、10mMのMgCl2、75mMのNaCl、15%(容量/容量)のポリエチレングリコール(分子量8,000)、30nMのオリゴヌクレオチド基質、および230nMのHis標識インテグラーゼを10μlの容量に含有した。反応を酵素の添加によって開始させた。阻害剤を反応成分と短時間インキュベーションし、その後、インテグラーゼを添加した。反応を37℃で7分間進行させ、そしてホルムアミド負荷緩衝液(95%ホルムアミド、30mMエチレンジアミン四酢酸、0.1%キシレンシアノール、0.1%ブロモフェノールブルー、0.1%ジラウリル硫酸ナトリウムSDS)の添加によって停止させた。全体的な組込みアッセイでは、この反応を60分間進行させ、その後、ホルムアミド色素を添加した。図5は、化合物Hの非存在下(レーン1)または減少量の化合物Hの存在下(レーン2〜7)で行われた3’−プロセシング反応の結果を表す。阻害剤の濃度は、25μM(レーン2)、5μM(レーン3)、1μM(レーン4)、0.2μM(レーン5)、0.04μM(レーン6)および0.008μM(レーン7)であった。
【0085】
鎖の転移は下記の方法でアッセイされた:30nMのDNA基質を、切断反応を行わせるために、230nMのインテグラーゼと37℃で5分間プレインキュベーションした。反応混合物の組成は3’−プロセシングアッセイにおける組成と同一であった。5分後に、阻害剤とともに、または阻害剤を伴うことなく、1μlの過剰な標的DNA(250nMの最終濃度)を添加して、サンプルを37℃で1時間インキュベーションした。この過剰な標的DNAにより、ウイルス基質に対するインテグラーゼのさらなる結合が競合的に阻止される。
【0086】
反応をホルムアミド色素の添加によって停止させ、生成物を15%変性ポリアクリルアミド/尿素ゲルで分離した。オートラジオグラフィーを、湿ったゲルをX線フィルム(CURIX RP1、Agfa−Gevaert(ベルギー)から入手可能)に感光させることによって行った。結果の定量を、Phosphorlmager装置(Molecular Dynamics、Sunnyvale、California)を使用して行った。
【0087】
これらの実験の結果を下記に表5に示す。上記で定義されるようなIC50(μM)値が得られる。
【0088】
【表5】
【0089】
化合物C、E、GおよびHが3−プロセシング反応および全体的な組込み反応を阻害した。化合物Hはまた、DNA鎖転移反応に対する強い阻害効果を有している。細胞培養において認められた抗レトロウイルス活性と、インテグラーゼアッセイにおける阻害活性との強い相関が認められた。最も良い相関が、細胞培養における阻害能と、鎖転移アッセイにおける阻害能との間で得られた(r2=0.998)。
【0090】
実施例8 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンの速度論的切断アッセイ。
【0091】
20bpのオリゴヌクレオチド(30nM)を230nMのインテグラーゼと3分間プレインキュベーションすることにより、初期の安定な複合体(ISC)が形成された。反応混合物の組成は実施例7の3’−プロセシング反応の組成と同一であった。5,000の分子量を有するデキストラン硫酸が0.3μMの最終濃度で添加されたとき、オリゴヌクレオチドに対するインテグラーゼのさらなる結合が阻止された。しばらくして、5μlアリコートを採取し、そして5μlのホルムアミド負荷緩衝液(上記と同じ組成を有する)を使用して、反応を停止させた。切断産物へのISCの変換に対する速度定数を、式A・Be−ktを使用して計算することができる。3’−プロセシングに対する化合物Hの阻害効果を調べるために、本発明者らは、(プレインキュベーション後にデキストラン硫酸と一緒に添加された)50μMの化合物の存在下で同じ実験を繰り返して、速度定数を比較した。化合物Hの非存在下では、速度定数は0.152±0.038min−1と計算されたが、その存在下では0.147±0.025min−1と計算された。この極めて類似する値により、化合物Hが3’−プロセシングの触媒作用に直接影響を及ぼしていることが除かれる。
【0092】
この実験のさらなる結果が、以下を示す図6に示される。
【0093】
【数5】
【0094】
実施例9 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンのHIV−1インテグラーゼ結合アッセイ。
【0095】
結合実験を、BIAcore2000(Biacore)およびストレプトアビジンが予め固定化されているセンサーチップSATMに基づくバイオセンサー技術を使用して行った。結合実験を製造者の手順に従って37℃で行った。結合緩衝液B(20mMのHEPES、pH7.5)は、50mMのNaCl、10mMのMgCl2および5mMのDTTを含有した。最初に、3’−ビオチン化オリゴヌクレオチドの5’−ACTGCTAGAGATTTTCCACACTGACTAAAAGGGTCAAAA−3’をセンサーチップに結合させた。続いて、相補的な35merの5’−GACCCTTTTAGTCAGTGTGGAAAATCTCTAGCAGT−3’を捕捉されたオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションさせて、インテグラーゼの認識配列を自由端で生じさせた。HIV−1インテグラーゼ(33μM溶液の100μl)を希釈緩衝液(10mMのTris.HCl(pH7.5)/750mMのNaCl/10%グリセロール/1mMのβ−メルカプトエタノール)で10倍希釈し、そして緩衝液Bでさらに10倍希釈して、10μl/分の流速で、330nMの最終濃度で注入し、最初にブランク流路に通し、次いで特異的なオリゴヌクレオチドを有する流路に通した。ブランク流路における特異的な吸収を差し引いた。インテグラーゼを93μMの化合物Hとプレインキュベーションした後では、DNAに対するインテグラーゼの結合は完全に破壊されていた。
【0096】
実施例10 5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンは二本鎖DNA内にインターカレーションしない。
【0097】
インターカレーターは、2つの連続した塩基対の間に進入することによって二重らせんを安定化させることが知られているので、本発明者らは、化合物Hが二本鎖DNAにインターカレーションし得るかどうかを確認した。この安定化は、(二本鎖の50%が2つの一本鎖に解離する温度として定義される)二本鎖の融解温度の上昇によって反映される。本発明者らは、それぞれのオリゴデオキシヌクレオチドについて1μMの固定された濃度でのインビトロ組込みアッセイから得られる二本鎖DNA(INT1−INT2)を使用した。連続希釈した化合物H(25μM、5μM、1μM、0.2μM、0.04μMおよび0μM)を、INT1−INT2を含有する種々のキュベットに加え、そして吸光度を260nmでモニターしながら、その温度を最初に15℃から80℃まで徐々に上昇させ(0.2℃/分)、その後、同じ速度で15℃に低下させた。融解曲線は、Varian CARY300バイオ分光光度計を用いて決定された。キュベットは、キュベットホルダーを通って循環する水によって温度調節され、そして溶液の温度が、キュベット内に直接浸けられたサーミスターを用いて測定された。温度制御およびデータ取得はCompaqデスクトップコンピューターを用いて自動的に行われた。サンプルは、0.2℃/分の速度で、最初に加熱され、次いで冷却された。融解曲線は、Tmを示す変曲点を有する一次導関数を採用して評価された。変動性は0.5℃未満であった。
【0098】
このようにして測定された融点は、様々な濃度の化合物Hの存在下で影響を受けず(59℃で)一定であった。このことは、化合物Hがインターカレーションにより二本鎖DNAを安定化させないことを明瞭に示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体に対する添加時間実験におけるウイルス産生の結果を、他のレトロウイルス剤と比較して表す。
【図2】図2は、ジドブジンおよび本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害濃度分率が、MT−4細胞において誘導されるHIV−1の細胞変性効果に対するこれらの化合物の混合阻害作用においてプロットされるアイソボログラムを表す。
【図3】図3は、ネルフィナビルおよび本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害濃度分率が、MT−4細胞において誘導されるHIV−1の細胞変性効果に対するこれらの化合物の混合阻害作用においてプロットされるアイソボログラムを表す。
【図4】図4は、ネビラピンおよび本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の阻害濃度分率が、MT−4細胞において誘導されるHIV−1の細胞変性効果に対するこれらの化合物の混合阻害作用においてプロットされるアイソボログラムを表す。
【図5】図5は、本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体によるHIV−1インテグラーゼ活性の阻害を示す。
【図6】図6は、本発明で使用されたピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の非存在下または存在下における速度論的切断反応の結果を示す。
Claims (46)
- 哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、
(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体、および
(b)1つ以上の抗レトロウイルス薬
を含む組成物の使用。 - 哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための医薬品を製造するために、前記処置における相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、
(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体、および
(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な1つ以上の薬物
を含む組成物の使用。 - レトロウイルス感染症がレンチウイルス感染症である、請求項1または請求項2に記載の方法。
- レトロウイルス感染症がHIV感染症である、請求項1または請求項2に記載の方法。
- 前記ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンである、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
- 前記薬物(b)の1つが逆転写酵素阻害剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
- 前記薬物(b)の1つがプロテアーゼ阻害剤である、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
- 前記薬物(b)の1つがピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体とは異なるインテグラーゼ阻害剤である、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
- 医薬品としての、
(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体、および
(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬
を含む組成物の使用。 - レトロウイルス感染症の治療において同時または個別または連続的に使用される混合調製物として、哺乳動物におけるレトロウイルス感染症に対する相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、
(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体、および
(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬
を含有する製造物。 - 前記薬物(b)の1つがプロテアーゼ阻害剤である、請求項11に記載の製造物。
- 前記薬物(b)の1つが逆転写酵素阻害剤である、請求項11または請求項12に記載の製造物。
- 前記薬物(b)の1つがピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体とは異なるインテグラーゼ阻害剤である、請求項11〜13のいずれかに記載の製造物。
- レトロウイルス感染症がレンチウイルス感染症である、請求項11〜14のいずれかに記載の製造物。
- レトロウイルス感染症がHIV感染症である、請求項11〜14のいずれかに記載の製造物。
- 前記ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンである、請求項11〜17のいずれかに記載の製造物。
- (a)および(b)の少なくとも1つが少なくとも薬学的に受容可能なキャリアと混合されている薬学的調製物の形態である、請求項11〜18のいずれかに記載の製造物。
- 哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法であって、レトロウイルス感染症に対する相乗効果をもたらすためなどにそれぞれの割合で、
(a)1つ以上のピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体、および
(b)レトロウイルスの進入および/または複製に関与する1つ以上のレトロウイルスタンパク質または細胞タンパク質に対して効果的な薬物を含む1つ以上の抗レトロウイルス薬
を含む混合された治療調製物の効果的な量を、そのような処置を必要とする哺乳動物に同時または別個または連続的に投与することを含む方法。 - レンチウイルス感染症を処置するための請求項20に記載の方法。
- HIV感染症を処置するための請求項20または請求項21に記載の方法。
- 治療調製物の効果的な量がレトロウイルス酵素阻害量である、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 治療調製物の効果的な量が誘導体(a)のインテグラーゼ阻害量および薬物(b)のレトロウイルス酵素阻害量である、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 記薬物(b)の1つがプロテアーゼ阻害剤であり、治療調製物の効果的な量が誘導体(a)のインテグラーゼ阻害量および薬物(b)のプロテアーゼ阻害量である、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 前記薬物(b)の1つが逆転写酵素阻害剤であり、治療調製物の効果的な量が誘導体(a)のインテグラーゼ阻害量および薬物(b)の逆転写酵素阻害量である、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 前記薬物(b)の1つがピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体とは異なるインテグラーゼ阻害剤であり、治療調製物の効果的な量が誘導体(a)のインテグラーゼ阻害量および薬物(b)のインテグラーゼ阻害量である、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
- 前記ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンである、請求項20〜28のいずれかに記載の方法。
- 哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための医薬品を製造するための、ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用。
- 医薬品が、レンチウイルス感染症を処置するためのものである、請求項30に記載の使用。
- 医薬品が、HIV感染症を処置するためのものである、請求項30または請求項31に記載の使用。
- レトロウイルス酵素の阻害剤としてのピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の使用。
- 前記レトロウイルス酵素がインテグラーゼである、請求項33に記載の使用。
- 前記レトロウイルス酵素がHIV−1のインテグラーゼである、請求項33または請求項34に記載の使用。
- 前記レトロウイルス酵素が逆転写酵素である、請求項33に記載の使用。
- 前記レトロウイルス酵素がHIV−1の逆転写酵素である、請求項33または請求項34に記載の使用。
- 前記ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンである、請求項30〜38のいずれかに記載の方法。
- 哺乳動物におけるレトロウイルス感染症を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする哺乳動物にピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体の効果的な量を投与することを含む方法。
- レンチウイルス感染症を処置するための請求項40に記載の方法。
- HIV感染症を処置するための請求項40または請求項41に記載の方法。
- 効果的な量がレトロウイルス酵素阻害量である、請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
- 効果的な量がインテグラーゼ阻害量である、請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
- 前記ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジン誘導体が5−(4−ニトロフェニル)−2,8−ジチオール−4,6−ジヒドロキシ−5H−ピラノ[2,3−d:6,5−d’]ジピリミジンである、請求項40〜45のいずれかに記載の方法。
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