JP2004501859A - Cu−In−Seの多相平衡に基づく化合物の製造 - Google Patents

Cu−In−Seの多相平衡に基づく化合物の製造 Download PDF

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Abstract

本発明は、固体組成物の製造のための、Cu−In−Seの状態図中に示されたような多相平衡の使用に関する。更に、好ましくは単一相の組成物として、液相からα CuInSeを直接得るための新規方法及び新規の単一相のα CuInSe組成物が提供される。

Description

【0001】
本発明は、定義された組成を有する固体のCu−In−Se相の製造のための、Cu−In−Seの状態図に示されたような多相平衡の使用に関する。殊に、新規方法は、単一相のα−CuInSeを液相から直接得るために提供される。更に、新規方法は、今まで得ることができなかった組成を有する単一相のα−CuInSeを製作するのを可能にする。
【0002】
Cu−In−Se−組成物、例えば化合物及び合金、殊に化学量論CuInSeを有しているα−CuInSe相は、それらの卓越した光学的及び電子工学的性質のため光起電性用途に適している半導体材料である。CuInSe−化合物は、高効率で光エネルギーを電気エネルギーに変え、かつ付加的に可視光を極めて良く吸収するので、これらの材料は、それらの動作特性及びより少ない材料消費の双方に関して通常のシリコン太陽電池よりも優れており、ひいてはより少ない費用で製造されることができる薄膜太陽電池を製造するのに適している。それらのより高い効率及び質量低下のため、存在する材料のより乏しい量のため、そのような太陽電池は殊に、宇宙船及び衛星のエネルギー供給に十分適している。理論的には、CuInSe薄膜太陽電池は、20%を上回る効率を達成すると言われる。しかしながら、実地において得られた効率は依然として、これまでのところ15%未満である。効率についての重要な1つの見方は、薄膜のミクロ構造、即ち関連した材料中の微視的欠陥の完全さである。ミクロ構造は、点欠陥(不純物)、転位、表面及び内部の境界を含む。内部境界は、粒界、即ち結晶格子及び相境界の異なる方位を有している領域の境界を含む。
【0003】
上記の欠陥の中で、拡張欠陥、例えば粒界及び相境界はおそらく、材料の光起電性への特別で不利な効果を有する:光起電性に生じた電荷キャリア、即ち電子及びホールは、これらの欠陥により捕獲され、かつ互いに再結合し、それにより光子を発生する。それゆえ、結晶欠陥で、エネルギーの光起電性変換は逆になり、かつ太陽電池の巨視的に検出可能な効率は従って減少する。それに加えて、付加的な相の存在は、光起電性に関連したα−相の体積%を低下させ、それにより効率をより一層低下させる。
【0004】
従って、特別な高効率は、粒界及び相境界を有しないα−銅−インジウム−セレン化物を製造することにより達成されることができる。粒界及び相境界を有しないそのようなモノクリスタルの材料は、単結晶と呼ばれる。
【0005】
近年、単結晶のα−銅−インジウム−セレンを製造することが集約的に試みられてきた。しかしながら、この目的に適用されるブリッジマン技術は、成功していない。最新の知識によれば、問題は、Cu−In−Se系中で複雑で多様な多相平衡が生じうることである。例えば、ブリッジマン法により組成CuInSeを有している液相を室温に冷却することは、単結晶ではなくて、異なる組成の幾つかの相及び相応する相境界を有している混合物をもたらす。単結晶の製造方法を思いつくことができるように、完全でかつ精密な3元系状態図が必要とされる。しかしながら、これまでのところ、文献は、Cu−In−Se系の不完全な及び/又は正しくない状態図を提供するに過ぎない。
【0006】
U.S. 4,652,332には、Cu、In及びSeの化学量論的量が適用される方法が記載されている。それとは逆に、本発明による方法は、化学量論的組成から取りかかっていない。付加的には、U.S. 4,652,332に含まれる状態図は、本明細書中に示された状態図とは異なる。
【0007】
L. S. Yip他, Record of the Photovoltaic Specialists Conference, U.S., New York, IEEE, vol. Conf. 21, May 21, 1990, 768−771頁は、図3中にα−CIS−モノクリスタルが得られた組成を示す。本発明の研究を実施する際に、α相の幅がずっと小さく、かつYip他により記載されたモノクリスタルが熱力学的に安定なα−CIS単結晶ではないことに気付いた。Yip他は、電子プローブ微量分析(EPMA)により得られたデータを挙げている。しかしながら、この方法の間隔分解能は、1μm(1000nm)に過ぎない。しかしながら、相応する組成物が、透過型電子顕微鏡法、つまり0.3nmの間隔分解能を得るために使用される技術で検査される場合には、多相が検出される。Yip他により記載されたモノクリスタルは従って、本明細書中に記載された単一相の結晶とは異なり、共通の結晶方位を有している多相の結晶である。更に、Yip他により記載された結晶は、単に数mmのサイズを有するのに対して、本明細書中に記載された方法は、任意のサイズの結晶の製造を可能にする。更に、Yip他のブリッジマン法は、凝固している固体粒子がメルトと同じ組成を有することを意味する調和凝固(congruent solidification)に基づいている。本発明による方法の1つの特殊性は、α−CIS単一相の結晶が得られるメルトが、α−CISとは異なる組成を示すことである。
【0008】
Z. A. Shukri他, Journal of Crystal Growth, NL, North−Holland Publishing、Amsterdam, vol.191, No.1−2, (1998), 97−107頁には、調和凝固に基づくブリッジマン法が記載されている。このことは、凝固している固体粒子が、メルトと同じ組成を有することを意味する。それとは逆に、本発明による方法においてα−CISモノクリスタルが得られるメルトは、α−CISとは異なる組成を示す。Shukri他も、電子プローブ微量分析(EPMA)により得られた測定データを示す。しかしながら、この方法の寸法分解能は、1μm(1000nm)に過ぎない。相応する組成の結晶が、透過型電子顕微鏡法、つまり0.3nmの寸法分解能を得るための技術で検査される場合には、そのような結晶の多相は検出されうる。
【0009】
Abid他, Conference Record of the 19th Photovoltaic Specialists Conference 1987, May 1987, 1305−1308頁にも、不完全であり、かつ本明細書中に示された状態図と異なるCu−In−Seの状態図が記載されている。関連した合金のモノクリスタルが製造されたというAbid他の断言は、本研究における実験データにより支持されない。
【0010】
250個を上回る異なるCu−In−Se合金に関して行われた広範囲な実験的な試験において初めて、Cu−In−Se系の3元系状態図は、示差熱分析、透過型電子顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、X線回折及び光顕微鏡法を用いて、完全にかつ高い精度で測定された。これらの状態図から、現在、α−単結晶の製造の幾つかの有望な方法及び他の興味深い組成物が誘導されうる。
【0011】
同封された図中に示されたような3元系状態図Cu−In−Seから、何故α−単結晶がブリッジマン法により製造されることができないかが明らかになる。この状態図は、α−相が、室温への冷却段階の間の温度で多様な多相平衡中に含まれることを示す。約500℃で、α−相と9個の他の相との間に、2相平衡及び3相平衡が存在する。しかしながら、このことは、我々の試験が実施される前には公知ではなかった。先行技術によれば、αCuInSeが、固相変態δ→αを経てのみ生じうるに過ぎないことが仮定された。しかしながら、我々の新規の3元系状態図によれば、α−相は、一次晶出の4個の異なる表面積を有し−その結果として、4個の型の液相が存在し、これからCuInSeが直接得られることができ、かつ次いで更なる相変態なしに室温に冷却されることができる。
【0012】
それゆえ、同封された図に記載されているような3元系の液相面(liquidus surface)を含んでいるCu−In−Seの新規の状態図は、元素Cu、In及びSeを含んでいる固体組成物の製造のための新規方法を提供する。図中の多相平衡を用いて、所望の固体組成物、即ち所望の相及び/又は化学量論を有している固体組成物の直接形成は、液相から、固体状態中で相変態なしで達成されることができる。好ましくは、固体組成物は、液体の溶融したCu−In−Se相からの晶出により製造される。
【0013】
例えば、固体組成物の製造は、液相を供給しないチョクラルスキー法による結晶成長を含んでいてよい。この方法において、種晶は、所望の組成及び温度を有しているメルト中に浸漬され、かつ回転により成長する。別の実施態様において、固体組成物の製造は、液相の供給を含むチョクラルスキー法による結晶成長を含む、即ち結晶成長の間に、同じ組成又は最初の液相とは異なる組成を有している液相が、結晶成長に使用される液相中へ連続的にか又は断続的に供給される。
【0014】
選択的に、単結晶の製造は、第二の液相と接触している第一の液相からの結晶成長を含んでいてよく、その際、第一の液相の密度及び化学量論は、第二の液相の密度及び化学量論とは異なる。結晶が第一の液相から成長するのに対して、第二の液相は、結晶成長により第一の液相から引き抜かれた材料を補充する。
【0015】
しかしながら、結晶成長、殊に単結晶の成長のための他の方法が、同封された図に示されたような状態図から当業者により得られることができるような、特別なCu−In−Se−組成物の製造に適していることに、注目すべきである。晶出方法の詳細な記載には、Elwell及びScheel, Crystal Growth from High Temperature Solutions, New York: Academic Press (1975), Holden及びMorrison, Crystals and Crystal Growing: The MIT Press (1982), Recker及びWallrafen, Synthese, Einkristallzuechtung und Untersuchung akustooptischer Materialien FbNRW, 2983 (1980), Wilke, Kristallzuechtung (Ed. J. Bohm), Berlin: VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften (1988)及びそこで再び引用された参考文献が参照される。
【0016】
系の液相面を含む新規のCu−In−Se状態図の特別な利点は、液相から組成物を製造するための新規方法を提供することであり、その際、所望の固体組成物が、液相の化学量論とは異なる化学量論を有する。系の液相面の知識なしに、そのような製造方法は、実行できないであろう。
【0017】
状態図は、単一相の組成物及び/又は単結晶の組成物である合金の製造に特に適している。固体状態の変態なしでの液相からの所望の固体の合金の好ましい直接形成は、固体状態の変態にかけられた先行技術の組成物に比較して有利な性質を有している組成物を生じる。液相からの直接形成により得られた合金は、固体状態の変態を経て得られた合金に比較して有利な物理化学的性質、例えば巨視的均一性、より少ない量の欠陥及び内部粒界を有する。殊に、液相からの直接析出により得られた合金は、任意の相間の(interphase)界面を含有せず、このことはまた、それらが、そのような界面の存在で通常増強する内部応力のないことを意味している。
【0018】
同封された図に示されたような状態図は、元素Cu、In及びSeからなっている3元系に制限されるのではなくて、少なくとも1つの別の元素、殊にGa、Na又はSでドープされたCu−In−Se合金に拡張されることができ、その際、前記の少なくとも1つの別の元素は、5原子%まで、好ましくは2原子%まで及びより好ましくは1原子%までのドーパント濃度で存在する。前記のドーパントは、α−相範囲、つまりα−相の化学量論的範囲を広げる。
【0019】
本発明の状態図は、3元系Cu、In及びSe中の単一相及び/又は単結晶の合金の製造及び少なくとも1つの別の元素を含んでいる前記合金の拡張を可能にする。より好ましくは、組成は、α−相、γ−相、δ−相及びδ−相から選択される。メルトからのγ、δ及びδの直接堆積のためのメルト組成及び温度は、図6、43(a)、50及び51に示される。最も好ましくは、組成は、図51及び52に示されたような組成範囲内の化学量論CuInSeを有しているα−相である。Ga、Na又はSでのドーピングは更に、α−相の組成範囲を拡張する。
【0020】
α−相は、状態図及び殊に第4表で定義されたような一次晶出αL1、αL2、αL3及びαL4の液相面の群から選択された条件下で、液相から直接晶出されることができる。
【0021】
それゆえ、本発明の別の主題は、一次晶出αL1、αL2、αL3及びαL4の液相面の群から選択された条件下での結晶成長により液相からα−相を直接得るための方法である。α−相は、単一相の組成物として、ひいては単結晶としても得ることができる。更に、単結晶のαを、単結晶の基板、例えば金属又はセラミック基板上にエピタキシアル成長させることが可能である。
【0022】
更になお本発明の別の主題は、殊に液相から直接得られ、かつ固相変態にかけられなかった、α−相、γ−相、δ−相及びδ−相から選択された単一相の組成物である。この種類の単結晶は、任意の他の比較できる材料のメルト−成長した単結晶中の欠陥濃度と同じくらい低い欠陥濃度を有しうる。液相L、L、L又はLからのα−相の凝固は、熱力学的平衡(小さな過冷却)に接近して行われることができるので、生じる結晶の欠陥密度は、例えば、気相から堆積された材料(物理蒸着、PVD)又は水溶液からめっきされた層に比較して、極めて低いだろう。メルトから成長したSi結晶に類似して、透過型電子顕微鏡法(TEM)により実験的に観察されうる拡張欠陥(相境界、粒界、双晶境界、積層欠陥及び転位)の濃度は、ゼロに近いか又はゼロに等しくなりうる。同じ理由のために、容量法(capacity methods)(アドミタンス分光法(admittance spectroscopy)、深準位過渡分光法(deep level transient spectroscopy))により分析できる様々な型の点欠陥の濃度は、相応する平衡濃度Exp[S/kT]・Exp[−E/kT]{式中、Sはそれぞれの型の点欠陥の形成エントロピーを表し、Eは形成エネルギーを表し、kはボルツマン定数を表し、かつTはケルビン温度を表す}と同じように低くなりうる。更に、組成物は、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも5cmのサイズを有している巨視的単結晶であってよい。
【0023】
α−CuInSe単結晶を得るための特に好ましい方法は、次のように詳細に記載されている:
新規の状態図は、特定の多様な組成を有するα−単結晶が、理想の化学量論組成CuInSeの周囲に生じうることを示す(図43a−g)。このことは、ブリッジマン技術を扱わない、それも:ブリッジマン技術は、液相の調和凝固に結びついているので、δ−相の単結晶が常に最初に得られる。新規の状態図から推論できるように、δ−相は、1002℃で融点極大を経て晶出し、その際こうして組成Cu23.5In26.0Se50.5になる。この組成は、α−相の理想組成Cu25In25Se50とは異なるので、高温相δは、更に冷却する際にα−相へ完全に変態しないが、しかし2つの相、α及びδに分解する。これは、3元系状態図の準2元系断面(quasibinary section)InSe−CuSe(図6a−d)から取り出されることができる。
【0024】
この新規の3元系状態図Cu−In−Seに基づいて、α−単結晶の製造に好ましい2つの方法が存在する:
1.チョクラルスキー法(液相の供給を含む及び液相を供給しない)
2.偏晶反応における単結晶成長
これらの方法を実施するために、αの一次晶出の4個の上記の液相面の組成範囲の場所及びそれらの温度依存性並びに偏晶反応の位置及び温度は、公知でなければならない。図43a−g中のポリサーミック(polythermic)説明図によれば、α−相の一次晶出の4個の面は、第4表に示されたパラメーターにより明記される。
【0025】
単結晶の組成を正確に調節できるように、α−相と液相L−Lとの間の共役線のコースが提供される。我々の結果は、InSe−CuSe等値線が準2元系断面を構成することを証明する。準2元系断面において、共役線は、断面で並んでいる。これは、チョクラルスキー法による単結晶成長について利点である、それというのも、等値線は直ちに、結晶培養に適している温度−濃度−範囲を開示するからである。更に、液相及び単結晶の化学組成は、共役線を経て決定されることができる及び/又は調節されることができる。
【0026】
ところで、このことは、我々の結果のため、殊に等値線CuInSe−Cu50In50(図32)及び−相応して−等値線CuInSe−Cu70In30(図31)を用いて可能である。
【0027】
それゆえ、単結晶を、α−銅−インジウム−セレン化物から、等値線CuInSe−Cu50In50(図32)を用いて製造する、少なくとも3つの新規方法が存在する:
1. 液相を供給しないチョクラルスキー法は、Se 41原子パーセント(原子%)を有する組成から出発する単結晶としてのα−相を偏晶点L(673℃、Se 33.7原子%)に成長させるための手段を提供する。
【0028】
2. 液相の供給を含むチョクラルスキー法は、Se 33.7原子%からSe 41原子%までの濃度範囲内で、812℃〜660℃の間の任意の温度で、単結晶を製造するための手段を提供する、それというのも共役線は断面で並んでいるからである。
【0029】
3. 更に、等値線CuInSe−Cu50In50は、偏晶反応を示し、その際、液相Lは、600℃で、α−相及び他の液相L中へ溶解する。この液相Lは、液相Lよりも、インジウムがより豊富であり、かつそれゆえより高い密度(より高い比重)を有する。重力のために、液相L及びLは、重なり合って層で配置され、かつ単結晶は液相Lから成長するのに対して、下の液相Lは、別の材料と一緒に液相Lを供給する。
【0030】
等値線CuInSe−Cu70In30(図31)は、α−単結晶の製造の別の可能性を提供する。この等値線は、673℃でSe 33.5原子%と805℃でSe 39.6原子%との間で、上記の3つの方法によるα−相の単結晶を製造するのに使用されることができる。
【0031】
更に、等値線InSe−CuSe(図30及び51)は、双方のチョクラルスキー法による液相Lからのα−相の単結晶の成長を可能にする。次のデータは、考慮されなければならない:800℃でSe 44原子%と605℃でSe 49.5原子%との間で、共役線は、断面で並んでおり、かつα−相と液相Lとの間に境界を形成する。
【0032】
同じことは等値線Se−CuInSe(図45)に当てはまる。805℃でSe 85原子%と221℃で99.99原子%の間で、α−相は、液相Lから一次成長されることができる。これゆえ、相変態なしのα−銅−インジウム−セレン化物の単結晶成長についての前提条件は満たされる。
【0033】
本発明は更に、以下の図、表及び例により説明される:

1. 例I及びIIには準2元系断面を構成するInSe−CuSe等値線(副次系I)、及びIn−InSe−CuSe−Cu副次系(副次系II)が記載されている。例IIIは、InSe−Se−CuSe副次系(副次系III)を取り扱う。この副次系は更に、領域InSe−Se−CuInSe(IIIa)及びCuSe−Se−CuInSe(IIIb)に細分化される。
【0034】
2. Se 33〜60原子%の平衡状態図In−Se。
【0035】
3. In−Se系の準安定相(実線)及び安定相(点線)を比較する図。
【0036】
3a. Se 30〜60原子%の状態図。
【0037】
3b. 過冷却の最後の熱効果(塗りつぶした三角)の検出直後に再加熱後に得られた熱効果(白抜きの三角)の位置を示している図3aの拡大領域。
【0038】
4. InSe−CuSe準2元系断面中の臨界共役線を導く立体配座。
【0039】
4a. 共晶臨界共役線。
【0040】
4b. 包晶臨界共役線。
【0041】
5. 3元系状態図中の臨界共役線の三次元略示図。
【0042】
5a. 共晶臨界共役線。
【0043】
5b. 包晶臨界共役線。
【0044】
5c. 均一なδの領域及び低温でδに結び付いた2相平衡及び3相平衡。
【0045】
6. Cu−In−Seの等値線InSe−CuSe。我々の実験結果は、この断面が実際には準2元系断面を表すことを示している。
【0046】
7. 異なる熱処理後のCu46.5In12.2Se41.3のミクロ構造。
【0047】
7a. 935℃で3時間;水冷;SEM200×。
【0048】
7b. 500℃で12時間;水冷;400×。
【0049】
8. 異なる熱処理後のCu42.0In15.0Se43.0のミクロ構造。
【0050】
8a. 850℃で5時間;水冷;LM200×。
【0051】
8b. 850℃で5時間;水冷;1000×。
【0052】
9. 850℃で5時間後のCu60.0In4.0Se36.0のミクロ構造;水冷;SEM400×。
【0053】
10. 500℃で60時間、300℃で70時間及び100℃で140時間後のCu18.0In29.4Se52.6のミクロ構造;水冷;SEM1000×。
【0054】
11. 異なる熱処理後のCu18.5In28.9Se52.6のミクロ構造。
【0055】
11a. 500℃で60時間、300℃で70時間及び100℃で140時間;水冷;SEM1000×。
【0056】
11b. 5K/minで900℃から室温まで冷却した後;SEM1000×。
【0057】
12. 異なる熱処理後のCu21.0In27.5Se51.5のミクロ構造。
【0058】
12a. 500℃で12日間;水冷;SEM2000×。
【0059】
12b. 500℃で6日間、300℃で6日間及び100℃で6日間、水冷;SEM2000×。
【0060】
13. 異なる熱処理後のCu23.5In26.0Se50.5のミクロ構造。
【0061】
13a. 50℃で12日間、水冷;SEM2000×。
【0062】
13b. 500℃で6日間、300℃で6日間及び100℃で6日間;水冷;SEM2000×。
【0063】
14. Cu 15〜30原子%の状態図InSe−CuSe。
【0064】
14a. 平衡状態図。
【0065】
14b. 850℃から室温に水冷した固溶体の準安定状態図。
【0066】
15. 850℃で12時間後のCu26.0In24.2Se49.8のミクロ構造;水冷;TEM220 000×。明るい領域はα−CuInSeからなり、暗い領域は(CuIn)Seからなる。
【0067】
16. Cu−In−Se平衡状態図の等温断面図。
【0068】
16a. 500℃での等温断面図。
【0069】
16b. 図16aの拡大断面図。
【0070】
17. 500℃で20日後のCu10.0In44.0Se46.0のミクロ構造;水冷;SEM400×。
【0071】
18. 500℃で20日後のCu16.0In33.0Se51.0のミクロ構造;水冷;SEM400×。
【0072】
19. 500℃で13日後のCu18.0In30.0Se52.0のミクロ構造;水冷;SEM400×。
【0073】
20. 500℃で3日、300℃で4日及び180℃で13日後のCu24.4In25.2Se50.4のミクロ構造;水冷;SEM400×。
【0074】
21. 平衡状態図Cu−In。
【0075】
22. 平衡状態図Cu−Se。
【0076】
23. 平衡状態図In−Se。
【0077】
24. 3元共晶の4相の平面及び転移面(transition plane)の略示図。
【0078】
25. 臨界共役線の共晶型、例えばTk11、Tk12及びTk13を導く立体配座。
【0079】
25a. メタテクチック(metatectic)臨界共役線Tk11(δ←→α+L)を導く立体配座。
【0080】
25b. メタテクチック臨界共役線Tk11未満の温度での多相平衡。
【0081】
25c. 偏晶臨界共役線Tk12(L←→L+α)を導く立体配座。
【0082】
25d. 偏晶臨界共役線Tk12未満の温度での多相平衡。
【0083】
25e. 共晶臨界共役線Tk13(L←→α+γ)を導く立体配座。
【0084】
25f. メタテクチック臨界共役線Tk13未満の温度での多相平衡。
【0085】
26. 副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)の液相面の投影図。
【0086】
26a. 液相等温線、液相面の細分化及びU〜U16、moT1、moT2、ET1、ET2、Tk11、Tk12及びTk13での臨界液相の位置。
【0087】
26b. 850〜1050℃の温度間隔に関する準2元系断面InSe−CuSe。
【0088】
26c. 3元相HTの液相面を示す略示図。
【0089】
26d. 臨界共役線Tk11及びTk12の図式表示。
【0090】
26e. In−Se相による液相面の細分化を示す略示図。
【0091】
26f. Inに富む角での液相面の細分化。
【0092】
27. 4相の平面、臨界共役線及びIn−InSe−CuSe−Cu副次系の濃度平面上への二重飽和エッジ(double saturation edges)の投影図。
【0093】
27a. 4相の平面U〜U16、臨界共役線Tk11〜Tk13の位置及び3元偏晶点moT1、moT2の位置の投影図。
【0094】
27b. 850〜1050℃の温度間隔に関しての準2元系断面InSe−CuSe。
【0095】
27c. U及びU17での4相の平面の位置及び臨界共役線Tk1、Tk2の位置を示す略示図。
【0096】
27d. 4相の平面U、U、U、U、U及びU11の位置を示す略示図。
【0097】
27e. 4相の平面ET1(L←→α+β+CuSe)及びeTsol(β←→α+δ+αCu)の投影図。
【0098】
28. 等値線In80.0Se20.0−Cu80.0Se20.0
【0099】
29. 等値線In60.0Se40.0−Cu60.0Se40.0
【0100】
30. 等値線In50.0Se50.0−Cu50.0Se50.0
【0101】
31. 等値線CuInSe−Cu70.0In30.0
【0102】
32. 等値線Cu25.0In25.0Se50.0−Cu50.0In50.0
【0103】
33. Cu48.0In14.0Se38.0のミクロ構造を示すカラー顕微鏡写真。茶色の領域はα相に属し、白色の領域はδ相に属する;LM500×。
【0104】
34. 700℃で15時間後のCu26.0In26.0Se48.0のミクロ構造;水冷。
【0105】
34a. SEM×1000;α(灰色)+L(明るい、微粒子)。
【0106】
34b. SEM×4000;Lのミクロ構造の詳細を示す図34aの拡大図。
【0107】
35. DTAの間の5K/minでの液体状態から室温への冷却後のCu33.0In33.0Se34.0のミクロ構造。
【0108】
36. 500℃での副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)を示す等温断面図。
【0109】
37. 500℃で4日後のCu48.0In14.0Se38.0のミクロ構造;水冷。
【0110】
37a. SEM100×;CuSeH/R(暗い灰色)+α(淡い灰色)+αCu(白色)。
【0111】
37b. SEM1000×;CuSeH/R(暗い灰色)+α(淡い灰色)+αCu(黒色)。
【0112】
38. 500℃で4日後のCu28.0In33.4Se38.6のミクロ構造;水冷;SEM×200;InSe(淡い灰色)+η(白色)+α(暗い灰色)。
【0113】
39. 500℃で21日後のCu66.0In30.0Se4.0のミクロ構造;水冷;エッチングした;LM250×;δ(灰色)+α(黒色、小さなフラクション)。
【0114】
40. 500℃で21日後のCu77.0In16.0Se7.0のミクロ構造;水冷; エッチングした;LM250×;δ(灰色)+αCu(白色)+α(黒色、小さなフラクション)。
【0115】
41. DTAの間の5K/minでの液体状態から室温への冷却後のCu48.0In22.0Se30.0のミクロ構造。
【0116】
41a. SEM300×;L(明るい)+L(暗い)。
【0117】
41b. SEM1000×;Lのミクロ構造の詳細を示す図41aの拡大図。
【0118】
42. 1020℃(液体)で15min後のCu46.0In12.5Se41.5のミクロ構造;2K/minで1020℃から室温への冷却。
【0119】
42a. SEM2000×;Cuホイスカーは、凝固の間に表面で形成する。
【0120】
42b. SEM3000×;同じ試験片の異なる領域。
【0121】
43. Cu−In−Se 3元系状態図中の液相線投影図及び液相等温線(liquidus isotherm)。
【0122】
43a. 液相等温線、液相線の分配、共晶反応、偏晶反応及び包晶反応のスキーム、臨界共役線の位置及び転移平衡の液相の位置、3元偏晶点及び3元共晶点。
【0123】
43b. Seに富む角に近い液相線の分配を示す略示図。
【0124】
43c. 転移平衡U20及びU21中に含まれる液相線の相の位置及びCuSe、γ−CuSe及びCuSeの液相面の位置を示す略示図。
【0125】
43d. セレン化インジウム類の液相面を示す略示図。
【0126】
43e. 一部の臨界共役線の特有の特徴。
【0127】
43f. 高温相H(Cu13InSe11)の液相面を示す略示図。
【0128】
43g. Inに富む角に近い液相線の分配(略示図)。
【0129】
44. 3相の空間L+L+δの形成を説明する略示図。
【0130】
44a. T=835℃、つまりTk14の温度での相範囲。
【0131】
44b. Tk14の温度未満の相範囲。
【0132】
44c. 3相の空間L+L+δの拡張。
【0133】
45. 等値線Se−CuInSe
【0134】
46. 等値線In20.0Se80.0−Cu20.0Se80.0
【0135】
47. 等値線InSe−Cu40.0Se60.0
【0136】
48. 500℃で1日後のCu30.0In10.0Se60.0のミクロ構造;水冷。
【0137】
48a. SEM400×;L(灰色)+CuSe(暗い)+α(明るい)。
【0138】
48b. LM500×、明るい範囲、エッチングなし;L(灰色、きめの細かい)+CuSe(淡い茶色)+α(暗い茶色)。
【0139】
49. 320℃で2日後のCu30.0In10.0Se60.0のミクロ構造;水冷。
【0140】
49a. SEM200×;α(明るい)+CuSe(暗い灰色)。
【0141】
49b. LM500×、明るい範囲、偏光;α(灰色)+CuSe(きめの細かい)。
【0142】
50. 900℃での等温断面図。
【0143】
51. 800℃での等温断面図。符号β及びδは、β−InSe及びδ−InSeについての近道である。
【0144】
52. 500℃での等温断面図。凡例は3元相及びセレン化インジウム類について幾つかの近道を導入する。
【0145】
53. 等値線Cu10.0In90.0−Cu10.0Se90.0
【0146】

1. In−InSe−CuSe−Cu副次系のScheil反応スキーム。
【0147】
2. Se−CuInSe−CuSe副次系のScheil反応スキーム(図1中のIIIb)。
【0148】
3. InSe−Se−CuInSe副次系のScheil反応スキーム(図1中のIIIa)。符号δ、γ2/3及びα2/3は、それぞれδ−InSe、γ−InSe及びα−InSeについての近道である。
【0149】
4. α−相の一次晶出の4個の表面積についての組成の境界。
【0150】
全3元系の液相面を含んでおりかつInSe−CuSe断面を特に強調しながら全Cu−In−Se状態図の綿密な調査を実施した。これらの実験の結果を図1により示されたような3つの部分に示す。部分Iでは状態図のInSe−CuSe断面を論じる。部分II及びIIIは、それぞれCu−In−InSe−CuSe及びInSe−CuSe−Se副次系を取り扱う。それぞれの副次系について、液相面の相応する部分、反応スキーム及び状態図の様々な垂直断面図及び等温断面図を示す。部分IIは、更に、3個の2元境界系、Cu−In、Cu−Se及びIn−Seの状態図を含む。
【0151】
1. 部分I
1. 実験
1.1. 固溶体の製造
In−Se、Cu−Se及びCu−In−Se固溶体を、0.25〜1.00gの全質量を有するCu、In及びSeを高周波電磁場中で融解させることにより製造した。使用したCuは、99.999%の純度を有し、In及びSeは、99.9999%の純度を有していた。Cuを、0.1mmの厚さを有するシートに圧延し、かつスライスに切断し、Seを、顆粒(≒直径1mm)として供給し、かつInを、小さなピースに切断した。大きな生成熱及びSeの高い蒸気圧から生じる問題を回避するために、インゴットを、殊に強い壁を有する石英管中にカプセル封入した。これらの管に、820mbarで高純度Arを充てんした。我々の実験手順は、次の利点を組み合わせる:(i)使用した高周波炉は、温度の精密な制御を提供する。(ii)石英管中にインゴットをカプセル封入することは、加工の間の材料を観察するのを可能にした。殊に、Se又はInメルトから突き出したCuストライプで拡散帯域を観察することにより、温度を注意深く制御することができた。(iii)大きな生成熱及びSeの高い蒸気圧のために、Cu−In−Se合金の融解は通常、成分の過剰な撹拌を引き起こす。しかしながら、管のAr充てんは、この問題を解決する。
【0152】
インゴットを融解させた後、新たに形成した固溶体を、マッフル炉中で、950℃で1時間まで焼なましした。この処理の間の温度分布の均一性を改善するために、石英管を、大きなボディーの耐熱鋼中に埋め込んだ。その後に、管を空気中で冷却し、かつインゴットを調べた。機械的撹拌により、新たに形成された材料及びインゴットの任意の残り物を管壁から引き離し、管をマッフル炉中へもとに戻し、かつそれを二回目に溶融させた。組成に応じて、融点は、950〜1020℃の間で変化した。熱力学的平衡が、一定の冷却速度(2K/min)並びに一定の温度:500℃、300℃及び100℃での期間を含む冷却手順により、より効率よく近づくことができることを見出した。以下において、この手順を‘ステップ冷却’と表す。
【0153】
1.2 示差熱分析
示差熱分析(DTA)については、薄い壁を有する石英管中に合金をカプセル封入し、かつSeの蒸発を回避するために、これらに高純度Arを800mbarの圧力で充てんした。標準物質としてCu 0.3gを使用した。我々のDTA装置は、2つの試料を同時に、(同じ)標準物質と一緒に分析するのを可能にする。分析の間に、相応する石英管は、温度安定性を改善する金属チャンバ中に駐在する。温度を厳密に調べる熱電対は、石英管と直接接触していた。加熱速度は、2〜10K/minの間で変化し、かつDTA試料の全質量は0.25〜0.5gであった。任意の温度で、我々の装置は、石英管を、それらを水中に浸漬している間に破壊することにより、試験片を急冷することを可能にする。それゆえ、金属組織学により及びTEMによりエクスシチュー(ex−situ)で相変態と一緒に生じるミクロ構造の変化を分析することができる。
【0154】
1.3 ミクロ構造及び結晶構造のキャラクタリゼーション
X線回折(XRD)分析については、ギニエ法を使用した。相応する材料を微粉砕し、石英管中にそれをカプセル封入し、かつ粉末を異なる温度で1又は2日間緩和した(relaxing)後、ギニエカメラ(Enraf−Nonius FR 552)中のCu−Kα1放射を用いてそれを研究した。相の同定のために、“指紋”としての均一相の線図を使用した。
【0155】
光学顕微鏡法(LM)及び走査型電子顕微鏡法(SEM)による金属組織学的研究については、ダイヤモンドペーストでの研磨を含む表面製造の常法を使用した。透過型電子顕微鏡法(TEM)については、Strecker他(Praktische Metallographie 30 (1993) 482)により展開された製造方法を使用した。TEM試料を、X線エネルギー分散型分析(XEDS)のための系(Tracor Northern)を備えた、JEM 2000 FX(JEOL)透過型電子顕微鏡中で調査した。
【0156】
2. In−Se成分系
In−Se成分系は、InSe−CuSe等値線の多相平衡にとって及び本明細書中に示している500℃での等温断面図にとって大部分重要である。最近の研究において、この系中の相の数、それらの組成範囲及びそれらの形成のシーケンスを、図2に図示されたようにして再決定した。従って、5個の異なるセレン化インジウムがSe 40〜59原子%の組成範囲中に生じる:InSe、InSe、InSe、InSe11及びInSe。左側にInSe−CuSe等値線の境界となるセレン化インジウムInSeは、4個の異なる変態:δ−InSe、β−InSe、γ−InSe及びα−InSe中で観察された。これらの変態の結晶構造に関する実験データは、Lutz他(J. Less Common Materials 143 (1988), 83−92)及びPfitzner及びLutz(J. Solid State Chem. 124 (1996), 305−308)に集められている。
【0157】
高温から冷却する際に、δ−InSeは、メルトから891℃で調和形成し、かつ745℃でγ−InSeに変態する。化学量論的InSeは、別の変態を受けず、かつ室温で、γ−InSeを保持する。Lutz他(上記)は、XRDにより同じ結果を得た。しかしながら、加熱する間のXRD図を記録することにより、Lutz他は、687℃での変態γ−InSe→β−InSe及び807℃でのβ−InSe→δ−InSeを観察した。更に、697℃を上回り熱処理した試料を冷却する際に、Lutz他は幾つかの準安定相:α−InSe(H)、α−InSe(R)、β′−InSe及びβ−InSe(R)を観察した。しかしながら、我々の実験データによれば、α−InSeは、201℃で包析反応においてSe及びγ−InSeから形成する安定相を構成し、かつ化学量論的InSeよりもSeがごく僅かにより豊富である。
【0158】
更に、図2は、加熱する際に、β−InSeが880℃で包晶反応においてメルトp及びδ−InSeに分解することを示している。198℃で、共析反応は、β−InSeをInSe及びγ−InSeに分解させる。α−InSeに類似して、β−InSeは、僅かに化学量論的組成InSeから、しかしながら状態図のInに富む側の方へそれる。
【0159】
図2中の相応する偏晶反応及び包晶反応の温度mo及びp〜pを決定するために、最初に出発温度で試験片を平衡化した後で、冷却せずに、加熱する間にDTAを実施した。2〜10K/minの速度で48〜54原子%のSe含量を有するメルトを冷却する場合に、過冷却が生じ、かつ準安定状態を導くので、これは必要であった。図3a及び3bは、実線により相応する準安定状態図を示しているのに対して、点線は、図2の安定状態図に相当する。黒色の中実の三角は、冷却する間のDTAによる変態に関連した効果を検出した所を示す。e及びp′での準安定平衡は、既にGoedecke他(J. Phase Equ. 19 (1998), 572−576)により、より早い研究に記載されている。
【0160】
3. 臨界共役線
一般にCu−In−Se系及び殊にInSe−CuSe等値線は、多様な不変系平衡を含む。我々の実験結果のその後の考察を準備するために、この項は、異なる型のそのような平衡を簡単に概説する。
【0161】
3元系中の不変系平衡は、2つのファミリーの1つに属する:(i)4相平衡及び(ii)不変系3相平衡。4相平衡は、更に次のものに分けられる:3元共晶点、3元包晶点及び転移平衡。不変系3相平衡は、2元境界系及び3元系の準2元系断面中に生じ、その際、2つの構成している相は、2元系の元素のように振る舞う。実際に準2元としての資格を与えることを更に以下に示すInSe−CuSe断面の例において、これらの準2元“元素”はInSe及びCuSeに相当する。準2元系断面において、それゆえ、3相平衡は、2成分についてのギブズの相律に従う−不変性を含む。この理由から、状態図中の不変系3相平衡を示す共役線を“臨界共役線”と表す。
【0162】
2つの基本型の臨界共役線(又は不変系3相平衡)が存在する:(i)共晶臨界共役線及び(ii)包晶臨界共役線、その際、液相が2つの固相(L→α+β)に分解するか、又は液相が固相と反応して他の固相(L+α→β)を生じるかに依存している。これらの基本型から、別のカテゴリーの臨界共役線、即ち偏晶臨界共役線(L→L+α)、メタテクチック臨界共役線(α→L+β)、共析臨界共役線(α→γ+β)又は包晶臨界共役線(α+β→γ)を誘導しうる。
【0163】
全てのこれらの異なる型の臨界共役線は、実際にCu−In−Se系中に生じる。更に、多様な4相平衡が見出された。ギブズの相律によれば、3元系中の4相平衡は不変性を含む。4相平衡の中で、3つの型:(i)3元共晶点、(ii)3元包晶点及び(iii)転移面、その温度で2個の3相平衡が2個の他の3相平衡により置き換えられる平面(図24参照)の間を区別する。後者の変法として、多様な3元偏晶反応及び3元共析の4相の平面が観察された。これらの4相平衡及び臨界共役線は本質的に、Cu−In−Se 3元系の多相平衡を決定する。この研究の全ての3つの部分において、それゆえ、略示的説明図を用いて及び反応スキームにより、一部の殊に重要な型の不変系平衡を説明する。
【0164】
図4は、共晶臨界共役線(図4a)及び包晶臨界共役線(図4b)の形成を説明する。共晶臨界共役線は、例えば、冷却する際に、2つの異なる2相領域の液相等温線が互いに接する場合に、常に生じる。図4a中でこれはT=Tで生じ、その際、2相領域L+δ及びL+Hの共役線が、共通の、“臨界”共役線Tを形成する。液相等温線が互いに接する臨界点で、液相は、共晶反応においてδ及びHに分解する。臨界温度T未満で、図4aは、臨界共役線のそれぞれの側で、2個の1変系3相平衡L+δ+H(暗い領域)の存在を示す。
【0165】
図4b中の等温断面図は、包晶臨界共役線を説明する。この等温断面図の平面は丁度、相範囲δの極大と交差し、かつδとメルトLとの間の共役線は、放射状配置における共通部分の点から拡張する。この等温断面図の臨界温度Tに冷却する際に、δは、包晶反応L+δ→δにおいて形成する。この温度で固相δ及びδ及びメルトLは、共通の、臨界共役線(図4b中の点線)を作る。T未満の温度で、臨界共役線は、2個の1変系の包晶の3相の空間L+δ+δ(暗い領域)中へ展開する。
【0166】
図5は、三次元略示図を用いて共晶臨界共役線及び包晶臨界共役線を導く立体配座を証明する。これらの図中で、臨界温度T未満に冷却する際に展開するそれぞれ3相の空間の進展を殊に十分に認識することができる。図5aは、共晶臨界共役線について3相の空間L+δ+Hを示すのに対して、図5bは、包晶臨界共役線の真下の3相の空間L+δ+δを示す。図5cは、包晶反応により形成する均一なδの領域並びに低温でδに結びついた2相平衡及び3相平衡を示す。
【0167】
図5の例はまた、隣接の2相平衡の全ての臨界共役線断面及び全ての共役線が、断面の平面に平行に存在する場合にのみ、等値線を“準2元”と表しうることを証明する。もしそうでないとしても−例えば、臨界共役線が等値線の平面との有限の角度を作る場合に−断面は、不変系並びに1変系の3相の空間を含み、かつ隣接の2相平衡の共役線は、傾斜対断面の平面を示す。
【0168】
図4及び5中でδ及びHと表された相は、実際にCu−In−Se系中に存在し、かつ等値線InSe−CuSe内での有限の拡張を有する。例II及びIIIには、メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線を導く立体配座が記載されている。
【0169】
4. 実験結果
この例の結果及び例II及びIIIの結果は、InSe−CuSeが実際に準2元系を構成することを証明する:Cu−In−Se系のInSe−CuSe等値線に沿って、10個の臨界共役線の全部及び全てこれらが、断面の平面にあることが見出された。更に、例II及びIIIに記載されている隣接の副次系について得られたデータは、全ての共役線が、この等値線の平面に近づくにつれて、InSe−CuSe等値線に平行になることを示す。
【0170】
4.1 InSe−CuSe副次系の安定平衡
図6は、本明細書の主要な結果、Cu−In−Se状態図のInSe−CuSe断面を示す。この状態図を得るために、73個の異なる合金の全体を1項に記載された実験方法で調査した。組成空間の稠密なサンプリングは、CuSe及びδ−InSeの一次晶出面の間及び3元相δ、δ(CuInSe)、α(CuInSe)、γ(CuInSe)及びH(Cu InSe11)の一次晶出面の間を区別するのに必要であった。文献中のこれらの相の呼称について混乱が存在したので、それらの名前が、3個の境界系Cu−Se(例II)、In−Se(2項)及びCu−In(例II)におけるそれらに従うように呼んだ。下付き文字“H”及び“R”は、それぞれ高温及び室温変態を示すのに対して、下付き文字“T”は、同じ符号を有する2元相から3元相を区別するのに役立つ。CuSeH/R又はδH/Rのような混合の下付き文字は、急冷により抑制することができなかった高温から室温変態への変態を示す。非平衡相(準安定相を含む)は、下付き文字“m”により印を付けられている。Tk1、Tk2、…Tk10は、10個の臨界共役線を表す。例II及びIIIに示された結果との比較を容易にするために、図6は、CuSeモル%よりもむしろ銅原子%の組成を示している。一部の相についての短縮された名前のような、我々の命名法の一部の別の詳細は、それぞれの 状態図又は反応スキーム中の凡例に与えられている。
【0171】
次の3つの断面において、InSe−CuSe副次系の2相平衡及び10個の臨界共役線が記載されている。4.1.1項がCuInSeとCuSeとの間の組成範囲を取り扱うのに対して、4.1.2及び4.1.3項ではInSeとCuInSeとの間の組成が記載されている。
【0172】
4.1.1 組成範囲CuInSe−CuSe
図6及び殊に図6c中の拡大断面図は、高温から冷却する際に固体の晶出が3元相δ及びHで開始することを示し、これらは、それぞれCu 23.5原子%で及び46.5原子%で、1002℃及び947℃のそれらの極大融点を有する。反応Tk1〜Tk6のそれぞれ1つは、1つの液相を含み、かつ共晶臨界共役線又は包晶臨界共役線に相当する(図4を比較)。高温相Hは24Kの狭い温度間隔に関してのみ存在する。Tk3(923℃、図6c)でHは共晶反応においてδH/R+(Cu,In)SeH/Rに分解する。Hは、おおよそ組成Cu13InSe11に相当する組成Cu46.5In12.2Se41.3を有する。しかしながら、組成Cu50In10Se40(CuInSe)を有する高温相は観察されなかった。
【0173】
高温相δはまた、共析反応において分解し;図6a及びdによれば、δはTk7(785℃)でα+(Cu,In)SeH/Rに分解する。Tk10で高温変態CuSeはCuSe+αに変態する。相δ、H及び(Cu,In)Seは、水冷により室温まで安定化されることができない。均一な(Cu,In)Seの拡張を示しているデータ点は、Cu 52.0原子%及び942℃に、Cu 58.0原子%及び785℃に、及びCu 66.4原子%及び450℃に位置している。
【0174】
CuInSeとCuSeとの間の合金組成についてのミクロ構造の進展を証明するために、図7、8及び7を含んでいた。図7aは、δH/R+(Cu,In)SeH/R(暗い)への高温相Hの共析分解から生じるミクロ構造を示す。このミクロ構造を得るために、合金Cu46.5In12.2Se41.3を935℃から急冷した。以前は均一なH粒内の相の層状の一様な分布は、共析分解を示す。同じ合金を500℃で12日間熱処理し、かつ引き続き水冷する際に、相平衡α+(Cu,In)SeH/R(図7b)を得る。SEM後方散乱顕微鏡写真は、αを明るい領域として及び(Cu,In)SeH/Rを暗い領域として示す。α+(Cu,In)SeH/Rへのδの共析分解は、図7b中のαの明るい領域内に明らかに示す。(Cu,In)SeH/Rの暗い領域内のきめの細かい明るい析出物は、α(CuInSe)からなる。
【0175】
図8及び9は、850℃に加熱しかつ水冷した後のCu42.0In15.0Se43.0(図8)及びCu60.0In4.0Se36.0(図9)のミクロ構造を示す。これらの顕微鏡写真は、急冷後の(Cu,In)Seのミクロ構造を証明するのに役立つ。図6の状態図によれば、Cu42.0In15.0Se43.0を850℃に加熱することは、相δ及び(Cu,In)Seからなるミクロ構造を導く。水冷は、これら2つの相を室温まで安定化しないので、図8は、(Cu,In)SeH/Rマトリックス中のα相(明るい)の析出物を示す。更に、図8a及び8bの顕微鏡写真は、(Cu,In)SeH/R+αへのδの共析分解が、δの以前は均一な領域(明るい)中のTk7で行われたことを示す。
【0176】
図9は、Cu60.0In4.0Se36.0のミクロ構造を示す。(Cu,In)SeH/R(暗い)の以前は均一なマトリックスは、結晶方向に沿って並ぶ析出物(明るい)を示す。図8a及びbとの比較は、これらの析出物がαからなることを示す。28〜57原子%のCu含量(図6)を有する一部の合金のDTAデータにより、600〜650℃の間で見せかけの効果が観察された。これらの効果は、所望の合金組成からの小さな偏差にそれらの起源を有するように思われる。
【0177】
4.1.2 Cu 10〜25原子%の組成範囲InSe−CuInSe 図6中のCu 10〜25原子%の組成範囲は、高温相δからδへ及びδからαへの固体状態の相変態を特徴とする。α相範囲がその極大温度、818℃を有する点は、Cu 25.0原子%を有する化学量論的組成ではなくて、Cu 24.8原子%のみに相当する。DTAにより、δがδと同時に存在する組成の範囲を十分な精度で決定することができなかった、それというのも、この変態により放出される熱が小さすぎるからである。それゆえ、範囲δ+δは、図6中に点線で現れる。これらの線をXRDにより決定し:点線を上回る温度で焼なましした10.0〜18.5原子%のCu含量を有する合金から、δ相の超格子反射が拡散して現れたXRDパターンを得た。対比して、点線未満で、常に鋭い超格子反射が観察された。しかしながら、これらの観察に基づいて、変態δ→δがより高い次数であることを無視することはできない。δ→δ変態の我々のデータの外挿は、Cu 18原子%及び520℃からCu 10原子%及び910℃を、かつ次いで図6中の範囲L+δを直接導く。
【0178】
818℃での臨界点から、2つの領域δ+αは、より低い温度の方へ拡張する。これら2相の領域の1つは、臨界共役線Tk7(785℃)で終わるのに対して、他方は最初に、臨界共役線Tk8(520℃)に寄与し、かつ次いで、相変態δ→δのために、室温までδ+αとして持続する。
【0179】
500〜550℃で、α相範囲の組成の拡張は、Cu 3.5原子%のその極大に達する。温度の更なる減少は、この範囲を100℃で≒Cu 1原子%に狭くする。図6中の2相領域δH/R+αの横方向の拡張は、2K/minで、500℃(60h)、300℃(70h)及び100℃(140h)での拡張焼なましにより進行した標準の冷却過程を中断する場合に−ステップ冷却後にのみ観察された。図6中のα相範囲の境界を、SEM、TEM、DTA及びXRDにより得られたデータを組み合わせることにより決定した。
【0180】
ステップ冷却の我々の特別な手順を受けたδ+α領域の合金中で、幾つかの異なる分散を有する同じ析出物が観察された。異なる長さスケール上の析出物を有するそのようなミクロ構造は展開する、それというのも、α及びβの相範囲は、温度が減少するに伴い両側でより狭くなるからである。図10及び11aの顕微鏡写真は、更なる分解が、我々のステップ冷却手順の等温焼なましの間に生じた大きな析出物を示す。500、300及び100℃での等温焼なましのそれぞれ1つの間に、個々の相のフラクションは、それぞれの共役線断面の逆の長さに従って−それゆえ天秤の法則に従って調節する。
【0181】
しかしながら、5K/minの一定速度で900℃から室温に冷却する場合に、完全に異なる体積分率のα及びδH/Rが得られる。これは、図11aのCu18.5In28.9Se52.6の顕微鏡写真を図11bの顕微鏡写真と比較する場合に明らかになる。図11a中でα及びδH/Rの体積分率は、天秤の法則に従うのに対して、図11bは、α(暗い)の増大した体積分率を示す。更に、2つの顕微鏡写真は、2つの異なる冷却手順後の析出物の形態学の点で著しい差異を示す。
【0182】
図12及び13の顕微鏡写真は、500℃で12日間焼なまししかつ水冷した合金のミクロ構造(図12a及び13a)を、我々のステップ冷却手順を受けた合金のミクロ構造(図12b及び13b)と比較するのに役立つ。500℃で焼なまししかつ水冷した、Cu 21.0原子%を有する合金(Cu21.0In27.5Se51.5)及びCu 23.5原子%を有する合金(Cu23.5In26.0Se50.5)は、それぞれδ+α(図12a)及び純粋なα(図13a)からなる。図12aは、明るいストライプとしてのδ相を特徴とする。対比して、これらの合金のステップ冷却は、異なる体積分率のα及びδを導く(図12b)。
【0183】
Cu 23.5原子%を有する合金を500℃でのその均一な状態から冷却することは、δ析出物の微細な分散を導く(図13b)。ここ及びそこでも、この合金中で明るいSEM後方散乱コントラストを有する丸い析出物が観察された。これらの析出物は、InSeであることが判明した。これは、α相の均一性範囲が、温度約100℃でむしろ狭くなることを示し;低温で既に、化学量論的組成CuInSeからの小さな偏差は、様々な異なる相の析出を導く(2項)。
【0184】
これまで記載された顕微鏡写真は、与えられた温度での焼なまし処理の期間だけではなくて熱履歴にもこの特別な温度で、殊に低温で生じるミクロ構造に強く影響を及ぼすことを示す。原則として、冷却手順とミクロ構造との間の相関を量的に確立することができたが、しかしこれは、手に余る数の過冷却図を必要とするだろう。
【0185】
4.1.3 Cu 0〜12原子%の組成範囲InSe−CuInSe
Cu 0〜12原子%の組成範囲は、臨界共役線Tk4、Tk5、Tk6及びTk8及び図6中でγと表された3元相CuInSeを特徴とする。Tk4(910℃)で室温変態δは、包晶反応L+δ→γにより形成する。Tk4(910℃)とTk5=900℃との間で、それゆえ、δは、メルトから直接析出する。臨界共役線Tk5は、包晶反応L+δ←→γによるγ(CuInSe)の形成を表す。同じ組成の3元相は、Manolikas他(Physica Status Solidi A55 (1979), 709−722)及びBoehnke及びKuehn(J. Mater. Sci. 22 (1987), 1635−1641)にも記載されている。880℃に近いDTAにより観察された一部の熱効果は、γが実際には、880℃未満及び880℃を上回る温度で異なる変態を有し(略示図6b)、それゆえ高温変態(γHT)から室温変態(γRT)に変態するというを仮説を支持する。
【0186】
液相、Tk4を含む最後の臨界共役線は、870℃で生じる。Tk4でメルトLは、共晶反応L→δ−InSe+γにより分解する。図6中で相δ−InSeはδと表されている。δ−InSeからγ−InSeへの多形変態は、臨界共役線Tk8(742℃)、InSe−CuSe断面のInに富む側で最後の臨界共役線を導く。Tk8未満で相γ−InSe及びγは、室温まで同時に存在する。
【0187】
副次系In−InSe−CuSe−Cu(図1)が記載されている例IIにおいて、InSe−CuSe断面の10個の臨界共役線及び反応スキーム中のその4相の反応を要約する。
【0188】
4.2 過冷却した合金の状態図
15〜28原子%のCu含量を有する合金の850〜900℃での焼なまし及びその後の急冷は、δH/Rからのαの析出及び818℃でのα範囲の極大に近い変態δ→αへの過冷却の効果を示した。図6a、6b、14a及び14bは、これらの実験の結果を図示している。それぞれの合金の微粉砕した試料に関するXRD研究は、水冷が、20.0〜26.0原子%のCu含量を有する合金について反応δ→αを抑制できないことを示し;これらの合金について、XRDパターンは、α相のくっきりした線を示した。TEMは、相変態を確認し、かつ20.0〜25.5原子%のCu含量についてはδはαに完全に変態することを示した。対比して、Cu 26.0原子%を有する合金は、既に、αマトリックス中の(Cu,In)SeH/Rの小さな析出物を特徴とする(図15)。
【0189】
図14a及びbは、過冷却の存在での相変態δ→αを、15.0〜30.0原子%のCu含量についての平衡状態図と比較して示す。凡例は、XRDにより得られたデータ点及びDTAによるものを示すのに使用される符号を示す。
【0190】
15.0〜18.5原子%のCu含量を有する合金のXRD図は専ら、δの反射を示した。20.0〜26.0原子%のCu含量を有する合金中で、加熱及び冷却する間のDTAにより観察された熱効果の温度は、互いに極めてよく合致し、かつ図14a中のδ+α相範囲の上部境界を確認する。Cu 20.0〜26.0原子%の相応する組成範囲は、850℃での焼なまし及び急冷が均一なα(中実の円)を生じさせる組成範囲とほぼ一致する。Cu 18.5〜20.0原子%の間でのみ、過冷却は、5K/minの冷却速度で実施したDTA分析により観察されたように、変態δH/R→αを抑える。
【0191】
図14b中の状態図は実際には、“実現図(realization diagram)”を構成し−点線で描かれた状態図は上記の特別な熱処理及び急冷手順に言及する。比較のために、実線は平衡状態図を示す。点線は、α相範囲の極大で始まり、かつこの図中に示された状態図の全断面に亘り拡張する。Cu 24.8原子%を上回り、過冷却は、相範囲の境界線をより高いCu含量の方へ移動させ;臨界共役線Tk7は、より低い温度、(Tk7′)に移動し、かつ共析点は、α極大の右側でδ相範囲のより低い境界を外挿する線に続く。Cu 18.0〜19.0原子%の間で、臨界共役線Tk9は、より低い温度(Tk9′)に移動する。図14b中の点線と実線との間の比較は、過冷却が、2相範囲δ+αの幅を0.6原子%に低下させることができることを示す(範囲δRm+α;5.1項に導入された変換に従って、非平衡相は、下付き文字“m”により表される)。範囲δ+αはより狭くなる、それというのも過冷却は、300℃で均一なα及び均一なδの双方の領域を拡張するからである(図14b中の範囲δRm及び)。
【0192】
適用にとって最も重要なのは、我々の実験により、急速冷却が実質的に均一なα(CuInSe)の組成範囲を拡張することができる−300℃で、Cu 18.5〜25.5原子%の均一なαを得ることができることが示された。
【0193】
図14bに示された結果は、相範囲δH/R+αの幅が、熱履歴と共に強く変化することを示す。連続冷却の場合に、冷却速度はミクロ構造に強い影響を及ぼす。これは、δH/R+α相範囲における最適な平衡を得るのを目指す場合に、2項に記載された特別なステップ冷却手順が適用された理由である。
【0194】
5. 500℃での等温断面図
3元系状態図の正規の等値線と対照的に、準2元系断面は、2元系相平衡の全ての臨界共役線及び全ての共役線が、断面の平面にあることを必要とする。InSe−CuSe断面がこの基準を満たすかどうかをチェックするために、500℃でのCu−In−Se状態図の等温断面図の一部が理解された。この部分は、InSe−CuSe断面の付近にも、3相平衡の共役線を見ることを可能にし、かつこれらの共役線が、それらがそれに近づくにつれて、InSe−CuSe断面の平面に平行になるかどうかを検査することを可能にする。更に、500℃での等温断面図は主に技術的に重要である、それというのも、光起電性用途のためのCu−In−Se薄膜は、しばしば、この温度でか又はこれに極めて近い温度で製作されるからである。最終的には、文献中に与えられたInSe−CuSe断面の状態図は、もちろん、InSe−CuSe断面の平面でも、3元系状態図でも、α相(CuInSe)の拡張を完全に記載していない。後者は、異なる温度での多様な等温断面図から評価されることができる。
【0195】
図16a及びbは、500℃での等温断面図の部分を示す。この図は、In−Se成分系の再調査により決定された多相平衡を正しく含む。斜線領域は、単一相の領域を示す。図16b、図16aの拡大断面図は、点線として等値線InSe−CuSeの位置を示す。点線の共通部分は、α相(CuInSe)の化学量論的組成に印を付ける。図16bによれば、α相は、9個の2相範囲及び9個の3相平衡の境界となる! InSe−CuSe断面のSeに富む側で、αは、Cuに富む側よりも幾らかより大きな組成範囲を示す。図16a中の符号Lは、Seに富む液相を示す。
【0196】
高温相δは、これはInSe−CuSe断面中で、しかし等温断面図のInに富む側で水冷により室温まで安定化されることができない。500℃でこの相は、図16中でδにより標識付けした小さな領域の存在を有する。我々の実験観察は、δが閃亜鉛鉱構造を有し、かつ11.0〜15.5原子%のCu濃度を有する共役線CuInSe−In42.0Se58.0に沿って、室温まで安定化されることができることによるデータとよく合致する。
【0197】
高温変態δ並びに低温変態δは、αとの2相平衡をそれぞれ確立する。図16bの拡大図は、狭い3相の空間δ+δ+αが2相領域δ+α及びδ+αを分離することを示す。更に、α相は、InSe及びInSeとの2相平衡及び3相平衡を確立する。3相平衡InSe+α+η、α+η+δ及びα+Cu+δは、この研究の部分IIで論じられる。2元系セレン化インジウムInSe、InSe、InSe、InSe11及びInSeは、Cuについての実質的な溶解度を提供しない。
【0198】
InSe−CuSe等値線に結びついた3相平衡の共役線を断面の平面の方へ外挿することは、断面の平面に並んだ共役線が見出された。これは、InSe−CuSe断面が準2元系断面を構成することを確認する。
【0199】
6. 500℃でのミクロ構造
図17、18、19及び20の顕微鏡写真は、前の項で論じられた500℃での等温断面図の幾つかの多相平衡を証明する。殊に、これらの顕微鏡写真は、α相を含む2相平衡及び3相平衡を示す。
【0200】
図17は、InSe及びα(暗い)からなるCu11.0In44.0Se46.0のミクロ構造を示す。対比して、図18は、3相平衡を示す。このミクロ構造は、500℃で焼なまししたCu16In33Se51に属しており、かつInSe(明るい)、δ(灰色)及びα(暗い)を含む。図19は最終的には、δ(灰色)とα(暗い)との間の2相平衡からなるCu18.0In30.0Se52.0のミクロ構造を図示する。
【0201】
CuInSeの組成に近い合金はしばしば、加工の間のSeの損失のためにInSeの小さな析出物を示す。SEM後方散乱像中で、これらの析出物は、αマトリックス(暗い)内に埋め込まれた明るい丸い粒子として現れる。図20は、そのようなミクロ構造の一例を示す。合金は、Cu24.4In25.2Se50.4の公称組成を有しており、かつ500℃から、2つの等温焼なまし工程において、300℃で100時間及び180℃で13日間冷却した。図20中に現れるミクロ構造は、低温でαからのInSeの析出を表す表面がα、CuInSeの理想組成に密接に近づくことを確認する。
【0202】
7. 結論
Cu−In−Se合金の多相平衡に関する基本研究は、Cu−In−Se合金の有効な技術的用途のための重要な必要条件を構成する。Cu−In−Se合金の制御された製造及び系統的な最適化の双方は、液相面を含んでいる全Cu−In−Se状態図の練達した知識、及び潜在性の非平衡状態のより深い理解を必要とする。70個を上回る異なる合金にDTA、XRD、LM、SEM及びTEMを適用することにより、Cu−In−Se 3元系状態図のInSe−CuSe断面に関して矛盾のないデータが得られた。我々の研究から得られたデータ及び殊に500℃での等温断面図は、InSe−CuSe断面が実際に準2元系断面を構成するという仮説を強力に支持する。
【0203】
更に、我々の実験から、非平衡状態が、Cu−In−Se合金の加工において重要な役割を果たしうると結論を下す。これは殊に、α相(CuInSe)を含む平衡に当てはまる。熱力学的平衡において、α相の存在範囲は、室温で極めて狭い(約1原子%)が、しかし非平衡状態中で、7原子%ほどに達しうる。この結果は、CuInSeの性質を活用している薄膜光起電性デバイスの製作への重要な影響力を有しうる。
【0204】
部分II
1. 一般
この部分は、副次系In−InSe−CuSe−Cuを取り扱う。この副次系の合金は、部分Iに詳述されたように、石英管中にインゴットをカプセル封入し、かつそれを高周波炉中で融解させることにより製作した。液相等温線並びに4相の反応の温度及び臨界共役線を決定するために、殊に薄い壁を有する石英管中に試験片をカプセル封入した後に、示差熱分析(DTA)を使用した。合金のミクロ構造を分析するために、X線回折(XRD)、光−光学顕微鏡法(LM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)及び透過型電子顕微鏡法(TEM)を使用した。SEM及びTEMに加えて、X線エネルギー分散型分光法(XEDS)を元素分析に使用した。実験手順の更なる詳細には部分Iが参照される。
【0205】
得られた結果から、この部分は、液相線、5個の等値線、相応するScheil反応スキーム及び500℃での全副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)の等温断面図を示す。3元系の多相平衡は、2元成分系の多相平衡に依存する。3元の副次系IIを取り扱う前に、それゆえ、Cu−In、Cu−Se及びIn−Seに関する最新のデータを要約する。
【0206】
2. 2元成分系
2.1 Cu−In
図21は、Cu−Inの状態図を示す。符号p及びeは、それぞれ包晶反応及び共晶反応を表す。β(CuIn)及びγ(CuIn)は、それぞれesol3及びesol1で共析反応により分解する高温相を構成する。Jain, Ellner及びSchubert(Z. Metallk. 63 (1972), 456−461)は、組成Cu64.0In36.0に近い相ηを、5個の異なる変態:A、A′、B、C及びηに細分化している。この命名法に従って、図2中のそれぞれの相をη、ηA′、η、C及びηと表した。高温相β、γ及びηは、極端な急速冷却(スプラット(splat)冷却、例えば)により室温まで安定化されることができるに過ぎない。
【0207】
2.2 Cu−Se
一部の領域中で、Charkrabarti及びLaughlin(”Binary Alloy Phase Diagrams, in:T. B. Massalski他 (eds.) Binary Alloy Phase Diagrams, ASM International、Materials Park (1990), 1475−1476)により2元の多相平衡に関するハンドブック中に刊行されたCu−Seの状態図を補正した。図22は、補正版を示す。50〜95原子%のSeフラクションを有する4個の異なる合金をDTAに適用することにより、ミシビリティギャップL+L、mo(Se 51.2原子%)での偏晶点、及びp10(377℃)及びp11(342℃)での包晶点の温度を再決定した。高温相CuSeから室温変態CuSeへの変態は、134℃で及び化学量論的組成で観察されるに過ぎなかった。符号mo及びmoは、それぞれ1100℃及び523℃での偏晶反応L→CuSe+L及びL→CuSe+Lを表す。
【0208】
2.3 In−Se
成分系In−Seは、例Iに既に記載されている。しかしながら、この系はCu−In−Seの多相平衡にとって殊に重要であるので、その最も重要な性質をここで短く繰り返す。図23は、Goedecke他(J. Phase Equ. 19 (1998), 572−576)により刊行された新しいIn−Se状態図In−Seを示す。ミシビリティギャップL+L及びL+Lは再決定され、かつこうしてmo(520℃)及びmo(750℃)での偏晶点の位置であった。図23によれば、室温まで安定のままである7個の異なるセレン化インジウムが存在する:InSe、InSe、InSe、InSe11、InSe、γ−InSe及びα−InSe。InSeについては4個の異なる変態:δ、β、γ及びα−InSeが観察された。p〜pでの包晶変態は、次の相:β−InSe(p)、InSe(p)、InSe11(p)、InSe(p)及びInSe(p)を導く。図23中の包晶点pとpとの間の合金のメルトは、過冷却される傾向にあり、その場合に、晶出は安定状態よりもむしろ準安定状態を導く。2〜10K/minの冷却速度の準安定平衡の図は、Goedeke他(上記)により刊行されている。
【0209】
3. 不変系平衡の型
3.1 4相の平面
例Iにおいて、Cu−In−Se系が多様な異なる4相の反応及び臨界共役線を特徴とすることを既に指摘した。副次系の多相平衡にとって最も重要なのは、InSe−CuSe断面の平面にあり、かつSeに富む及びCuに富む領域の方へ拡張する10個の臨界共役線である。In−InSe−CuSe−Cu副次系の4相の平面及び臨界共役線を論じる前に、略示図を用いてこれらの3元の不変系平衡の異なるカテゴリーを導入する。例Iには、共晶臨界共役線及び包晶臨界共役線を導く立体配座が記載されている。本明細書中で、3元共晶の4相の平面、転移面、メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線を導入する。
【0210】
3元系は、3個の異なる型の不変系平衡を示しうる:(i)4相平衡、(ii)臨界共役線として表される不変系3相平衡及び(iii)例えば、融点極大又は融点極小に相当する不変系2相平衡。4相平衡は更に、3元共晶点、3元包晶点及び転移平衡に細分化される。図24の左側は、反応L←→α+β+γに相当する3元共晶の4相の平面の例を示す。4相の平面未満で、相応するScheil反応スキームを示した。そのような反応スキームは、より高い温度からの4相の平面中へ合流する3相平衡及びこの平面からより低い温度の方へ現れる3相平衡を示す。更に、反応スキームは、それぞれの4相の平面の反応式及び温度を言及する。4相の平面を上回る温度で、例えば、図24は、3個の3相平衡:L+α+β、L+α+γ及びL+β+γを図示している。反応式、L←→α+β+γによれば、メルトLは3個の固相、α+β+γに分解する。反応生成物、α+β+γは、反応式未満でもう一度示される。
【0211】
図26の液相線投影図及び第1表の反応スキーム中で、ET1のような符号により3元共晶点を示した。2元共晶点及び包晶点は、それぞれe及びpのような符号により表される。図24の右側は、転移面Uを図示している。4相の平面を下回る及び上回る3相平衡は、相応する反応式:L+α←→β+γと一緒に、反応スキームに示されている。この例において、2個の3相平衡は、4相の平面:L+α+γ及びL+α+βを上回る温度で存在する。4相の平面を下回る温度で系は、より低い温度で生じる別の反応に貢献することができる2個の新しい3相平衡:α+β+γ及びL+β+γを確立する。
【0212】
転移面は、我々の状態図中でUのような符号を有する。液相を含まない4相の平面は、それぞれeTsol1又はusol1のような符号により表される。前者は、3元共晶点を表すのに対して、後者は転移面を表す。2つの液相(L←→L+α+β)を含む共晶の4相の反応は、通例、3元偏晶点として公知である。我々の命名法において、moT1のような符号をこの型の反応が生じる温度に割り当てた。1つ又は2つの液相を含む4相の反応の場合に、鋳造物のミクロキャラクタリゼーションによるか又はDTAの冷却条件下にメルトから冷却した試験片のミクロキャラクタリゼーションにより、反応の型を同定することができる。
【0213】
3.2 メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線
部分Iにおいて、共晶臨界共役線及び包晶臨界共役線を導入し、かつそれらが2つの1変系3相平衡の存在を、それぞれの臨界共役線の温度未満、又はそれ以上で、又は未満及びそれ以上で(比較Tk9)含むことを示した。
【0214】
この断面には、2つの別の型の臨界共役線:メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線が記載されている。図25は、メタテクチック臨界共役線の略示図を示す。これらの臨界共役線並びに相L、L、δ(CuInSe)、α(CuInSe)及びγ(Cu−In 2元系のγ相)は実際には、In−InSe−CuSe−Cu副次系中に現れる。図25a中に示されたように、平衡α+δ及びL+δにおいて析出するδ相の等温線が、互いに接する臨界温度Tc11が存在する。これは、平衡δ←→L+αを表している共通の(“臨界”)共役線Tk11を導く。それゆえ、臨界温度Tc11は、δがα+Lに分解する温度を表す。一般に、他の固相(α)及び液相(L)への固相(δ)のそのような分解を“メタテクチック(metatectic)”と表す。共晶臨界共役線及び包晶臨界共役線に類似して、3相の空間L+δ+α(図25b中の黒色)は、臨界共役線Tk11の臨界温度Tc11未満で存在する。これらの3相の空間は1変系であり、かつそれらの間で液相Lはαの一次晶出表面中へ展開する。
【0215】
T=Tc12で、2相の表面L+L及びL+αの液相線は互いに接する。これは、平衡L←→L+α(図25c)を表している共通の(“臨界”)共役線Tk12を導く−液相線の交点で液相LはL+αに分解する。液相(L)が固相(α)及び他の液相(L)に分解する場合のこの例は、“偏晶の”分解の場合を構成する。図25dによれば、2つの偏晶の3相の空間(L+L+α、黒色で示されている)は、臨界共役線未満で存在する。今回、液相Lは、αの一次晶出表面中へ展開する。
【0216】
T=Tc13で、L+αの液相等温線は、L+γの液相等温線に接する。図25eによれば、これは、平衡L←→α+γを表す共晶臨界共役線Tk13を導く:その際、液相線は互いに接し、液相Lは共晶反応においてα+γに分解する。2相の空間L+γは、Cu−In境界系から生じる(図21)。図25fは、臨界共役線Tk13未満で存在する多相平衡L←→α+γを図示している。
【0217】
以下において、幾つかの等値線(図28、29、30、31、32)及び図26及び27中の液相線投影図を用いて、臨界共役線Tk1〜Tk13から生じる3相の空間が、全In−InSe−CuSe−Cu副次系の多相平衡を大部分は決定することを示す。
【0218】
4. 液相線及び4相の平面の投影図
4.1 液相線投影図
図26は、鋳造合金並びにDTAの条件下に冷却した合金上のDTA及び金属組織学により得られたIn−InSe−CuSe−Cu副次系の液相線を示す。図26b中で、準2元系断面InSe−CuSeには、850〜1050℃でのみ液相線投影図についての関連した温度間隔が示されている。この温度間隔は、Tk1〜Tk6と表された臨界共役線を含む。高温相H(Cu13InSe11)は947℃で形成する。923℃でH及びは(Cu,In)Se及びδ、CuInSeの高温変態に分解する。δは、1002℃で、23.5原子%のCu濃度で晶出する。断面のInに富む側は、Tk4での包晶反応による相応する低温相、δの形成、及びTk5での相γの形成を特徴とする。
【0219】
図26a中で、細線は、液相等温線を示すのに対して、太線は、1変系のそれぞれ共晶及び包晶の平衡を表し;これらの線での矢印の頭は、減少する温度の方向を示す。符号U、E及びmoは、−3.1項中に導入されているような、転移面、3元共晶点及び3元偏晶点を示す。
【0220】
合計で、In−InSe−CuSe−Cu副次系は、28個の4相平衡を含む。これらの20個は、液相(16個の転移面、2個の3元共晶点、2個の3元偏晶点)を含む。更に、13個の臨界共役線及び21個の一次晶出の異なる表面を決定した。図26aは、δ、αL1、(Cu,In)Se、η及びγの晶出表面が、ミシビリティギャップL+Lの領域を支配することを示す。
【0221】
図27dは、これらの4相の平面の相応する面を示す−但しUでの転移面の面を除く。3元系において、InSe、InSe、InSe11、InSe、β−InSe及びδ−InSeの液相線面は、大きな拡張を有しない。この点で、セレン化インジウムを含んでいる4相の平面の温度が、加熱する間に決定されることができるに過ぎないことを強調する必要があり;Se 48〜54原子%のIn濃度を有するIn−Seメルトを冷却する際に、過冷却は3元系へ拡張する準安定平衡を導入する(図30)。
【0222】
図26b中の符号αL1及びαL2は、α相の2つの異なる一次晶出表面の間を識別するのに役立ち;これらの表面は、それぞれ臨界共役線Tk11及びTk12から現れる。図26a中で、αL1の晶出表面は、それぞれ不変系平衡moT2、U14、U13、Tk11、U、moT1及びTk12により境界を設けられている。晶出表面αL2はむしろ狭い。それは、Cu−In境界系に平行して、Inに富む側でLと標識付けした点からCuに富む側でLと標識付けした点へ拡張する。これらの双方の点は、それぞれmoT1及びmoT2で2つの3元偏晶点中に含まれる液相Lに属している。2つの偏晶の4相の平面及び液相Lの位置は、図27a中に示されている。図26a及び27aは更に、InSe及び(Cu,In)Seの一次晶出表面の存在を示す:液相線投影図のInに富む角中で、moT2での偏晶の4相の平面未満で、液相LはInSeを析出させ、かつCuに富む側で、moT1での偏晶の4相の平面未満で、Lは(Cu,In)Seを析出させる。2元及び3元偏晶点のために、液相Lは、InSe及び(Cu,In)Se、また:mo、p、U14及びmoT2で定義された範囲中のInSe、及びmo、moT1及びUで定義された範囲中の(Cu,In)Seも析出させる。
【0223】
図26c及び27cによれば、共晶臨界共役線Tk1及びTk2未満で存在する1変系3相平衡L+δ+H及びL+H+(Cu,In)Seは、それぞれU及びU17での転移面上で終わる。U17での4相の平面は、部分IIIで更に論じられる。部分Iにおいて既に言及したように、水冷は、高温相Hを室温まで安定化しない。
【0224】
4.2 4相の平面の投影図
図27a及びeは、U、U、U、U10、U15、U16、U14、U13、moT1及びmoT2での4相の平面の位置を図示し、かつ図27eは、ET1での4相の平面及び3元共晶の4相の平面eTsol2の部分を示す。
【0225】
第1表中の反応スキームは、臨界共役線Tk1〜Tk13を含んでいる20個の2元の及び28個の3元の不変系平衡を要約する。臨界共役線Tk1〜Tk8は、InSe−CuSeの欄に、及び臨界共役線Tk9及びTk10は欄In−InSe−CuSe−Cuの底部に記載されている。矢印により印を付けられた反応は、Cu−In−Seの他の副次系を含み;これらの副次系は、例IIIの主題であろう。反応スキームをコンパイルする際に、その温度による不変系平衡を整理することを試みた。最も温度を有する転移面、Uは、925℃で生じ、かつ臨界共役線Tk1(942℃)及びTk2(935℃)から現れる3相平衡を含む。転移面U未満で、反応スキームは、3相平衡L+δ+CuSe及びH+δ+(Cu,In)Seを特徴とする。3相の空間H+δ+(Cu,In)Seは、InSe−CuSe準2元系断面中の臨界共役線Tk3(923℃)で終わる。相応する3相の空間は、Cu−InSe−Se副次系中のU17での転移面から現れる。この3相の空間もまた臨界共役線Tk3(923℃)で終わる。臨界共役線Tk3は、正確にInSe−CuSe断面の平面にある。Tk3の温度は、相応する4相の平面の温度U=925℃及びU=925℃に関してInSe−CuSe断面の平面のそばで極小を構成する。類似の立体配座は、臨界共役線Tk7(785℃)で存在し、その際、相δが共析反応においてα及び(Cu,In)Seに分解し;その臨界共役線の温度もまた、隣接した反応の温度に関して局所極小を構成する(図29)。
【0226】
4.3 3元偏晶点
図26及び27によれば、2つの3元偏晶点がIn−InSe−CuSe−Cu副次系中に存在する。moT1=635℃での4相の平面は、次の3相の空間:L+α+(Cu,In)Se、L+L+α及びL+L+CuSeを終わらせる。第1表によれば、3相の空間L+L+CuSeは、Cu−Se境界系(mo)から生じるのに対して、2つの他の3相平衡は、それぞれU及びTk12で現れる。moT1で液相Lは、L→L+α+(Cu,In)Seに従って分解する。
【0227】
4相の平面moT2(512℃)は、次の3相平衡:L+L+InSe(moから)、L+InSe+α(U14から)及びL+L+α(Tk12から)をつなぐ。moT2で液相Lは、L→L+α+InSeに従って分解する。図27によれば、液相Lの組成は、3相の空間L+α+InSeについてInに富む側に及び3相の空間L+α+(Cu,In)SeについてCuに富む側にある。温度が減少するに伴い、Cuに富む液相Lは、ET1=620℃で3元共晶反応においてα+β+(Cu,In)Seに分解する(第1表及び図27e)。
【0228】
4.4 ミシビリティギャップL+L
図23によればIn−Se境界系は、液相LとLとの間にミシビリティギャップを有する。520℃でLは、L+InSeに分解する。図23中のIn−Se境界系の状態図から明らかなように、InSeの一次晶出は、L(p〜mo)及びL(520℃〜e)の双方から生じうる。ミシビリティギャップL+Lは、Se 20原子%及び637℃で閉じる。どのようにミシビリティギャップがCu濃度で変化するかを調査するために、20原子%の一定のSe濃度についての等値線を作り上げた(図28)。
【0229】
図28の等値線のInに富む側で、Cu濃度を増大させることが、より高い温度の方へミシビリティギャップの極大を移行させることが認識される。Seの高い蒸気圧のために、ミシビリティギャップのDTA分析は、950℃を上回る温度で不可能であった。図28中で、それゆえ、950℃を上回るデータは、低温のデータから外挿した。Cu−Se境界系の方へミシビリティギャップの外挿した等温線は、図26a中に図示されている。
【0230】
5. 等値線
5.1 Se 20原子%を有する多相平衡
図28中のSe 20原子%での等値線は、4相の平面及び臨界共役線との多数の共通部分を示す。これらの部分は、既に、第1表及び図25、26及び27:偏晶臨界共役線及び共晶臨界共役線Tk12及びTk13及びmoT1及びmoT2での3元偏晶点を論じた際に記載されている。ここでは、臨界共役線未満で形成する3相の空間L+L+α及びL+α+γが明らかに認識されることができる。図28によれば、臨界共役線Tk12及びTk13及びmoT1及びmoT2での3元偏晶点は実質的に、In−InSe−CuSe−Cu副次系の多相平衡に影響を及ぼす。
【0231】
図28中のSe 20原子%での等値線は更に、α相(CuInSe)、光起電性用途に特に重要である相が、Cu−In相η、δ、及びβと、及び固溶体αCuとさえも平衡を確立することを示す。第1表によれば、eTsol3=572℃で交差した4相の平面は、α+δ+αCuへのβ相の3元共析分解に印をつける。Cu−In境界系(図21)中で、βは、p=710℃での包晶反応により形成し、かつesol3=574℃で共析反応において分解する。U10、U及びUsol2での4相の平面の間で、図28は、2相の空間α+γ及びα+δを示す。
【0232】
当該の研究において、組成Cu36In64に近いCu−In境界系中に単一相として現れる相セット{η、ηA′、η、C、η}を処理し、かつそれをηと表す。U15=506℃、U16=308℃及びET2=153℃での4相の平面は、3相平衡InSe+α+η、InSe+Cu11In+η及びIn+Cu11In+InSeの形成を導く。後者は、室温まで安定なままである。図27a中で、U15及びU16での4相の平面は、むしろ大きな領域をカバーする。In角で始まって、これらの領域は、Se 50原子%及びCu 64原子%まで拡張する。
【0233】
更に、図28は、In濃度が増大することは、mo=1000℃でのCu−Se境界系中に生じる偏晶反応L→L+(Cu,In)Seの温度を、温度moT1=653℃に低下させることを証明する。類似して、In濃度が増大することは、e=1063℃で生じる共晶反応L→(Cu,In)Se+αCuの温度を、U=708℃に低下させる。Usol11=618℃で、ET1での4相の平面を単に2K下回って、液相を含まない転移面が観察される。この4相の反応は、3相の空間α+αCu+(Cu,In)Seを導く。134℃での熱効果は、(Cu,In)Seから(Cu,In)Seへの変態を示す。
【0234】
5.2 Se 40原子%を有する多相平衡
図29の等値線In60Se40−Cu60Se40は、Cu 50〜60原子%を、よりSeに富む副次系に拡張する。Cu 50原子%での多相平衡の共役線は、正確にInSe−CuSe断面の平面にある。従って、図29の等値線の平面は、臨界共役線Tk1(L←→H+CuSe)、Tk3(H←→δ+CuSe)及びTk7(δ←→α+CuSe)と交差する。4.3項において前記のように、相δ及びhは、共晶反応によりそれぞれ785℃及び923℃で分解する。より低い温度の方へTk7(785℃、U及びU19未満)の2つの3相平衡δ+α+(Cu,In)Se並びに3相の空間H+δ+(Cu,In)Se(U及びU17未満)がそれぞれ、923℃で臨界共役線Tk3中で終わることを実現する。図29中で相応する3相の空間が標識付けされなかったことに注意、それというのも、それらは極めて小さいからである。
【0235】
合計で、図29中のIn60Se40−Cu60Se40等値線の平面は、U、U17、U19、U、U10、U、U14、U15、U16及びU20での4個の液相面及び10個の転移面と交差する。表面がIn60Se40−Cu60Se40等値線の平面のCuに富む側と交差する、moT3、U19及びU20での4相の平面は、例IIIに更に論じられる。図29bの拡大図は、Cu 30〜40原子%の組成範囲内のTk12及びTk13未満の多相平衡を再現する。この図の平面と交差する4相の平面は、図28を用いて既に論じたものと同じである。
【0236】
5.3 In50Se50−Cu50Se50等値線
図30中に示されたIn50Se50−Cu50Se50等値線は、副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)及び副次系III(InSe−Se−CuSe)の多相平衡を結合する。この等値線は、Cu濃度の関数としての均一なδ及びαの拡張を示す。等値線の平面は、U13(597℃、L+δ←→InSe+α)での転移面の内部共役線(InSe+α)に沿って正確に拡張する。2相領域InSe+αは、均一なαの領域に直接境界となり、かつ温度への弱い依存を示すに過ぎない。例Iにおいて、α中のInSe析出物の顕微鏡写真を示した(図13及び20)。Cuに富む側に、α相(Cu,In)Seは析出しうるが、しかしながら組成の狭い間隔内に過ぎない。In50Se50−Cu50Se50等値線は、極大を示す相δの液相面、及びδが818℃でαに変態する点を視覚化する。等値線のInSe側で、図30に証明されたDTA効果は、加熱する間にか又は冷却する間に記録したかどうかに依存する顕著な差異を示す。500℃近くで示した効果は、液相から冷却する間に、平衡状態ではなくて、準安定状態を反映する。609℃、607℃及び597℃でのDTA効果は、低温でそれらを平衡化した後に、それぞれの合金を加熱した際に観察されるに過ぎない。後者の目的には、DTA分析のための試験片を、500℃で14日間焼なましした。加熱する間に観察されたDTA効果の上記の3つの温度は、転移面の次の温度に相当する:U11(L+InSe←→InSe+δ)、U12(L+δ←→InSe+δ)及びU13(L+δ←→InSe+α)。
【0237】
5.4 等値線CuInSe−Cu50In50及びCuInSe−Cu70In30
図31及び32中の2つの等値線は、δ及びIn濃度の関数としてのα液相面の拡張を示す。図31及び図32の双方の平面が一部の臨界共役線を含んだとしても、2つの等値線は、準2元系断面を構成しない:図31中でのみ、臨界共役線Tk12(673℃)及びTk13(663℃)が断面の平面にある。3相平衡L+α+δ及びγ+δ+αとのこの平面の共通部分は、しかしながら、1変系平衡を生じる。それゆえ、2相平衡L+δ及びL+αの共役線は、等値線の平面との角度を作る。Tk12(673℃)で、液相Lは、偏晶反応によりα+Lに分解する。更なる冷却の際に、Seの不足した液相Lは、共晶反応によりα+γに分解する。DTA効果は、600℃を上回りCu−In境界系におけるγからδへの多形変態に戻す(図21)。
【0238】
図33は、上記反応の実験証拠を示す。5K/minでのメルトからの冷却後に、Cu48.0In14.0Se38.0は、大きなフラクションの一次α(灰色)及び、粒界に沿って、α+γ/δに属する共晶のミクロ構造を特徴とする。偏晶反応L←→α+L、共晶反応L←→α+γ及び変態γ→δのために、DTAデータに関連してこの顕微鏡写真を説明されうるに過ぎない。
【0239】
Cu48.0In14.0Se39.0のDTAは、冷却する際に5個の効果及び加熱する際に4個の効果を示した。図32中で、メタテクチック臨界共役線Tk11(812℃)のみが、等値線の平面に分類される。この臨界共役線を導く立体配座は、図25a及び25b中に概略されており、かつ3.2項中で説明される。812℃未満で、図32は、図26a中のαL1に相当するαの液相面を示す。図34の顕微鏡写真は、700℃でのCu26.0In26.0Se48.0のミクロ構造を示し、かつ2相領域L+αの存在を証明する。図34a中できめの細かい粒状領域は液相Lに相当する。クラックを含有するマトリックスはαからなる。急冷する際に、液相Lは最初に、偏晶反応によりα+Lに分解する。更なる冷却の際に、Inに富むLは、δ相(図34b中の明るい領域)を析出する。
【0240】
図35は、液相Lの偏晶分解により形成されたミクロ構造の他の例を示す。この合金の組成、Cu33.0In33.0Se34.0は、偏晶反応の組成に正確に相応し;これは、図32及び状態図により予言されたそれぞれの相のフラクションから明らかになる。冷却の際に、液相Lは、α及びLにほぼ完全に分解する。更なる冷却の際に、Inに富む液相Lは、相ηを析出する。後者は、明るい、球状成分として図35のミクロ構造中に現れる。図35b中で粒界を装飾する暗い相、InSeは、少量の液相が晶出の間に残留し、かつU15(506℃)での転移面を経てInSeに凝固することを示す。それぞれ図34及び35中に明るく現れる相δとηとの間を区別するために、XEDS及びXRDを実施した。
【0241】
6. 500℃での等温断面図
図36は、500℃での状態図の等温断面図を示す。斜線領域は、単一相の領域を示す。500℃で全ての相は、Inに富む角中の液相Lを除いて、固体である。3相平衡L+InSe+η及びInSe+α+ηは、U15での転移面未満で、In−InSe−CuSe−Cu副次系の最も大きな転移面を確立された。図36中の2相平衡α+δは、CuInSe−Cu70In30等値線の平面を示す(図31)。
【0242】
α相、CuInSeは、In−InSe−CuSe−Cu副次系の8個の2相平衡及び3相平衡中で析出する。明確には、αは、InSe、η、CuSe、δ、αCu、InSe、δ及びδとの平衡を確立する。3相平衡α+αCu+CuSe、α+η+δ及びα+δ+αCuは、Usol1(618℃)、Usol2(612℃)及びETsol3(572℃)での4相の反応から従う。InSe−α(CuInSe)−InSeの間の領域は、例Iに記載されている(図16)。高温相δが、準2元系断面CuSe−InSeの平面内の組成で急冷されることができないのに対して、それは断面の平面のそばで多少よりInに富む組成で急冷されることができる。
【0243】
7. 500℃でのミクロ構造
図37、38、39及び40は、500℃で4〜5日間焼なまし及び引き続く水冷後の幾つかの異なる合金の顕微鏡写真を示す。研磨した表面の金属組織学的エッチングについては、10%硝酸第二鉄(ferri−nitrate)の溶液を使用した。殊にCuに富む合金についてはこの溶液が、良好なコントラストを有する異なる相を示すことを証明した。全ての他の金属組織学的調査について、ウェットケミカルエッチングなしで十分なSEMコントラストが得られた。一部の場合に、更に、偏光を使用することによりLMコントラストを改善することができた。
【0244】
図37aは、Cu48.0In14.0Se38.0のミクロ構造を再現する。ウェットエッチングなしで得られたこの顕微鏡写真は、個々の相が凝固の間に形成したシーケンスを示す。粗い共晶のミクロ構造は、液相の最初の部分で、相α/δ(灰色)及び(Cu,In)Se(暗い)を析出したことを示す。次いで、凝固が進行するので、液相の組成は、残りの液相Lが最終的にはL+α+CuSeに分解するように変化する。図37aの試験片は、500℃で焼なまししたので、3元共晶反応により形成したミクロ構造は、顕微鏡写真を支配し、かつ相平衡αCu+α+CuSeを証明する。図37中の拡大された断面は、αCu(暗い)、CuSe(暗い灰色)及びα(淡い灰色)の間をより明らかに区別するのを可能にする。
【0245】
図38は、Cu28.0In33.4Se38.6のミクロ構造を示し、かつU15(506℃)での転移面未満で3相平衡InSe+η+αの存在を確認する。この顕微鏡写真中で、αは暗く現れ、ηは明るく現れ、かつInSeは、灰色レベルの中間的なものを示す。
【0246】
図39は、αとδとの間の2相平衡を証明する。この顕微鏡写真を記録する際に使用した偏光において、δ相は、淡い−灰色から暗い−灰色への弱い転移を特徴とする。暗く現れるα相は、小さな体積分率を有するに過ぎず、かつ球状粒子からなる。図39の顕微鏡写真を説明するために、それは図31のCuInSe−Cu70In30等値線を調べるのに助けとなる。後者は、αが液相Lから臨界共役線Tk13(663℃)を経て形成するのに対して、δが、605℃での変態γ→δに戻ることを示す。
【0247】
図40は、eTsol3(572℃)での共析の4相の平面未満での3相の空間αCu+α+δの存在についての証拠を示す。ここで適用されたエッチング後に、αCuは明るく、δは淡い灰色に、及びαは黒色に現れる。
【0248】
Cu 50原子%及びSe 20〜30原子%の合金組成で、メルトからの冷却は、液相L及び液相L中への液相の分離を導く。LはSeに富み、かつLはCuに富むので、Lは、主としてmoT1での3元偏晶反応におけるα+L+CuSeH/Rに凝固するのに対して、Lは、主としてET1で3元共晶の4相の平面を経て凝固する。関連した範囲内の組成を有する試験片を無視する場合には、既に劈開表面の外観検査は、2つの異なる液相の凝固から生じる粒子を示す。そのような合金の金属組織学的エッチングは、Lの分解について示している粒状領域を示す。
【0249】
図41は、そのようなミクロ構造の一例を示す。図41aは、5K/minで1000℃から室温に冷却した後のCu48.0In22.0Se30.0のミクロ構造を示す。明るい領域は、L、Seに富む液相が凝固するのに対して、暗い、粒状領域はL、Cuに富む液相の凝固から生じる場合を示す。粒状領域は、液相Lからの一次析出により形成したαCu固溶体を含んでいる幾つかの相からなる(図41b)。
【0250】
2K/minでの1020℃〜600℃での液体状態からmoT1での偏晶点近くの組成を有する合金を冷却する場合に、微細なCuホイスカーは、試験片の表面で形成する(図42a及びb)。これらのCuホイスカーは、図23bのバックグラウンドにおいて認識される黒色ホールから成長したものであり、かつおそらく、Cuに富む残りの液相Lをゆっくりと冷却する際に行われる収縮のために形成する。
【0251】
8. 結論
この部分には、3元系状態図の液相線投影図、等値線及び等温断面図による、In−InSe−CuSe−Cuの多相平衡、Cu−In−Se系の副次系IIが記載されている。それぞれ境界系In−Se及びCu−SeのInに富む領域中のミシビリティギャップが連続的に合流することが見出された。共晶臨界共役線、メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線は、In−InSe−CuSe−Cu副次系の多相平衡にとって重要な役割を演じる。殊に、メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線は、光起電性用途のための最も重要な相を構成するα相(CuInSe)について2つの一次晶出表面の存在を導く。
【0252】
部分III
1. 一般
部分IIIは、残っている副次系III、InSe−Se−CuSeを取り扱い、かつ考察を全組成三角形に拡張する。この副次系を、液相線投影図、幾つかの等温断面図及び幾つかの等値線を用いて論じる。更に、部分IIの反応スキームは、領域InSe−Se−CuInSe及びCuSe−Se−CuInSe(図1中のIIIa及びIIIb)についての2つの別の反応スキームにより補足される。
【0253】
その後に、Cu−In−Se系の多相平衡を全体として論じる。この目的には、全組成三角形をカバーしている、その液相線投影図、3つの等温断面図及び2つの等値線を示す。
【0254】
キャラクタリゼーションに使用される合金の製作及び実験方法は、部分Iに記載されている。
【0255】
2. InSe−Se−CuSe副次系の多相平衡
2.1 液相線投影図
図43は、鋳造合金及びメルトから冷却したDTA試験片のDTA(示差熱分析)及び金属組織学により決定されたような、Cu−In−Se系の液相線を示す。図43a中の符号p、e及びmoは、それぞれ2元包晶点、共晶点及び偏晶点を表す。細線は、液相等温線を表す。矢印を有する太線は、対比して、共晶反応、包晶反応又は偏晶反応を表す。矢印は常に、減少する温度の方向を示す。符号U、E及びmoは、それぞれ転移面、3元共晶点及び3元偏晶点を示す。それゆえ、これらの符号は、液相を含む4相の反応を示す。図43a、43e及び43f中の符号Tで印を付けられた点線は、臨界共役線を示す。部分I及びIIにおいて、略示図を用いて、共晶臨界共役線、包晶臨界共役線、メタテクチック臨界共役線及び偏晶臨界共役線並びに2つの型の4相の平面(転移面及び3元共晶点)を説明している。
【0256】
図43の液相線投影図中の支配的な特徴は、液相L+Lのミシビリティギャップ及び相δの一次晶出表面である。δの融点極大は、1002℃であり、かつ図43a中で点により印を付けられている。極大がInSe−CuSe等値線の平面内に属するのに対して、それは23.5原子%のCu含量に相当し、ひいては、α相の化学量論CuInSeと正確に一致しない。
【0257】
またInSe−CuSe等値線の平面内で融点極大を経て晶出する相H(Cu13InSe11)は、最も小さい液相面を有する。2元偏晶点mo、mo及びmo並びに3元偏晶点moT1、moT2及びmoT3のために、相CuSe及びInSeは、図43a及び43c中で、それぞれ境界系Cu−Se及びIn−Seに平行している一次晶出の2つの表面を有する。
【0258】
α相(CuInSe)は、InSe−Se−CuSe副次系中で液相からの一次析出の2つの表面を有する。図43aは、これらの表面をαL1及びαL2として示す。部分II中に説明されているように、これらの液相面は、メタテクチック臨界共役線Tk11及び偏晶臨界共役線T12を経て形成する。図43a、43b及び43c中の液相線投影図のSeに富む側は、観察されたαの2つの別の液相面:αL3及びαL4を示す。液相面αL4は、メタテクチック臨界共役線Tk15から生じ、かつSe角に拡張する。液相面αL3は、対比して、Se約50原子%でCu−Se境界系に平行して存在し、4相の反応U18(第2表及び2.3項)から生じる。
【0259】
図43a中でCu−Se境界系から生じるミシビリティギャップL+Lは、Tk14での臨界点で終わる。この臨界点で、2相領域L+δの液相等温線は、ミシビリティギャップL+Lの臨界点と接する。この点が、液相線の鞍点に相当することに注目する。図44a及び44bは、更に以下において説明されるこの状況の略示図を示す。
【0260】
図44a中でミシビリティギャップL+Lの臨界点は、Tk14でそれぞれ2相の空間L+δ又はL+δの液相等温線と接し;Tk14で液相L及びLは同じ組成を有する。この点から現れる点線は、‘特別な’臨界共役線に印を付け、それに沿って相L=Lがδとの平衡を確立する。Tk14の臨界温度未満で、系は、図44b中で黒色に示される単一の3相の空間、L+L+δを展開する。温度が低下する際に、この3相の空間は広がるのに対して、液相LはSeがより豊富になり、かつ液相Lは、Seがますます不足するようになる。図44cは、三次元略示図において温度の減少に伴う3相の空間の拡張を証明する。臨界共役線Tk14、Tk15及びTk16は、むしろInSe−Se−CuSe副次系内の複雑な反応スキームを始める。臨界共役線Tk16は、Tk14と同じ型のものである。
【0261】
全Cu−In−Se系中で、29個の異なる液相面、18個の臨界共役線及び40個の4相平衡を決定した。考察を単純化するために、InSe−Se−CuSe副次系を、領域CuInSe−Se−CuSe及びInSe−Se−CuInSe(IIIa及びIIIb、図1を比較)に細分化した。これら2つ領域の間の境界は、メタテクチック臨界共役線Tk15と一致する。以下において、最初にこの分離線に沿って等値線を論じ、かつ次いで領域IIIa及びIIIbを考える。
【0262】
2.2 Se−CuInSe等値線
図45は、等値線Se−CuInSe、換言すればメタテクチック臨界共役線Tk15に沿った垂直断面図を示す。この表示において、相δの融点極大及びδからα(CuInSe)への反応の温度極大が明らかに認識される。805℃でかつ臨界共役線Tk15に沿って高温相δは、Seに富む液相L及びαに分解する。この反応は、一種の共晶晶出を表し、かつ“メタテクチック”と表される。部分IIにおいて、臨界共役線Tk11の例を有するメタテクチック臨界共役線を導入した。Tk15未満で及び220.5℃を上回って、図45は、液相Lとαとの間の2相平衡を示す。805℃を上回って、Se−CuInSe等値線は、もはや準2元のものではない、それというのも、極大と等値線の平面との間の共通部分は、組成Cu25.0In25.0Se50.0で正確に生じないからである。前記のように、双方の極大がInSe−CuSe等値線の平面に分類され、かつそれぞれCu 23.5原子%及びCu 24.8原子%で生じる。それゆえ、2相領域L+δの共役線は、Se−CuInSe等値線の平面内で正確に存在しない。
【0263】
2.3 CuInSe−Se−CuSe
第2表には、CuInSe−Se−CuSe領域(図1中のIIIb)の全反応スキームが記載されている。InSe−CuSeと題する欄には、この領域の関連した臨界共役線:Tk1、Tk2、Tk3及びTk7が記載されている。矢印又は“I”により印を付けた線は、副次系In−InSe−CuSe−Cu(臨界共役線Tk1、Tk2、Tk3及びTk7)及びInSe−Se−CuSe(臨界共役線Tk15、Tk17)から生じるか又はそれらを導く。CuInSe−Se−CuSeの領域中で、第2表には、5個の転移平衡(U17、U18、U19、U20、U21)、1つの3元偏晶点(moT3)及び1つの3元共晶点(ET3)が記載されている。
【0264】
InSe−CuSe等値線のCuに富む側は、947℃での融点極大を経ての相H(Cu13InSe11)の晶出を特徴とする(図43a及び43f)。Hは、室温で安定化されることができなかった高温相である。923℃でHは、共析反応によりα+(Cu,In)Seに分解する。図43fによれば、Hの液相面は、Tk2及びTk1での臨界共役線により及び点U及びU17により境界を設けられる。
【0265】
転移面Uは、In−InSe−CuSe−Cu副次系に属し、かつ部分IIにおいて論じた。転移面U17未満で、2つの3相平衡:L+δ+(Cu,In)Se及びδ+H+(Cu,In)Seが観察される。後者の平衡もまた、925℃で転移面U未満で、In−InSe−CuSe−Cu副次系中に存在する。第2表は更に、これらの3相平衡の双方が、臨界共役線Tk3(923℃)で極小で終わることを示す。
【0266】
CuInSe−Se−CuSe領域の多相平衡については、臨界共役線Tk14(835℃)が重要な役割を果たす。これは、Cu−Se境界系のミシビリティギャップL+Lの臨界点が、この臨界共役線に向くためである。図44bによれば、Tk14での臨界共役線は、3相の空間L+L+δをもたらす。温度が減少するに伴い、この空間は拡張し、かつついで3相の空間δ+L+αと一緒に、803℃で、4相の平面U18(L+δ←→α+L)上で終わる。図43a、43b及び43cによれば、4相の平面U18未満の液相LがますますSeに富むようになり、転移面U20(376℃)及びU21(338℃)中で析出し、かつET3(220℃)で終わる。
【0267】
803℃での液相Lは、温度が減少する場合に、Cuがより豊富になり、800℃で4相の反応U19に加わり、かつ3元偏晶点mo(522℃)で終わる。図43aの液相線投影図は、4相の反応U19未満でα相(CuInSe)の小さい液相面を示す。図43a中で、この表面はαL3と呼ばれ、かつそれはL(U18)、U19及びmoT3により境界を設けられる。
【0268】
CuInSe−Se−CuSe領域内の等値線の位置に応じて、これらの垂直断面図は、第2表中に記載された4相の平面と交差しうる。図46、47及び48中に示された等値線を用いて、領域CuInSe−Se−CuSeの不変系平衡を今論じる。
【0269】
図46中の等値線In20.0Se80.0−Cu20.0Se80.0は、左半分(Cu 0〜10原子%)と右半分(Cu 10〜20原子%)との間の多相平衡の間の実質的な差異を示す。Cu 10〜20原子%の領域中で、等値線は、第2表中に与えられたような4相の平面U18、moT3、U20、U21及びEt3と交差する。前に言及したように、CuInSe−Se等値線は、領域CuInSe−Se−CuSeとInSe−Se−CuInSeとの間の境界と一致する。
【0270】
図47中の等値線InSe−Cu40.0Se60.0は、Cu 20〜40原子%の領域中で図46中と同じ4相の平面を有する共通部分を特徴とする。再び、この等値線は、左半分(Cu 0〜20原子%)及び右半分(Cu 20〜40原子%)における多相平衡の間の実質的な差異を示す。等値線の平面は、2相平衡α+CuIn並びに338℃未満で確立される3相平衡L+α+CuSe及びα+CuSe+γ−CuSeを含むように、4相の平面U21と交差する。相γ−CuSe及びCuSeは、それぞれ377℃及び342℃で、包晶反応p10及びp11を経てCu−Se境界系中に形成する。図48a〜48b中のCu30.0In10.0Se60.0のミクロ構造は、4相の反応U20及びU21の存在を確認する。図48aのSEM像は、moT3(522℃)とU20(376℃)との間の3相の空間L(灰色)+α(明るい)+CuSe(暗い)のミクロ構造を示す。Seに富む液相L(灰色)は、水冷の間に微粒子サイズで凝固する。図48bのLMカラー顕微鏡写真中で、Lのきめの細かい領域は灰色に現れるのに対して、α及びCuSeは、それぞれ暗い茶色及び淡い茶色の色相を示す。320℃で2日間の同じ合金の熱処理は、図49のミクロ構造を生じる。図49aのSEM像は、2相平衡α(明るい)+CuSe(暗い)を示す。偏光のもとで記録された図49bのLM明るい−範囲の顕微鏡写真は、付加的にCuSe相の微粒子を示す。組成Cu30In10Se60は、αをCuSeと結びつけ、かつ転移面U21(L+γ−CuSe←→α+CuSe)の内部共役線と一致する線に向く。
【0271】
図30中の等値線In50.0Se50.0−Cu50.0Se50.0は、副次系II(In−InSe−CuSe)の多相平衡及び副次系IIIの領域IIIb(CuInSe−Se−CuSe)を特徴とする。Cu 0〜25原子%の平衡は、既に例IIにおいて記載されている。図30は、相δの液相面及びδからαへの固体状態の反応の温度極大との等値線の共通部分を視覚化する。Cu 25〜50原子%の間で、4相の平面U19、moT3及びU20との共通部分が認識され、かつ800℃〜522℃の間で、図は、2相の空間L+αの一部を示す。Cu 45〜49原子%の液相線は、液相面 L(α)に属する。
【0272】
2.4 InSe−Se−CuInSe
この項には、液相線投影図(図43a、43b及び43e)を用いて副次系IIIの領域InSe−Se−CuInSe(図1中の領域IIIb)、Se 80及び60原子%を有する等値線(図47及び48)及び第3表の反応スキームが記載されている。
【0273】
図43a中で臨界共役線Tk16の一端は、点により印をつけられている。相応する点は、液相L及びLのミシビリティギャップを終わらせ、かつこの点で液相L及びLの臨界点は、液相等温線L+γと接する。このようにして形成された臨界共役線に沿って、相L=Lは、γとの平衡を確立する(図43e)。Tk16未満で、この平衡は、3相の空間L+L+γ中へ展開する(第3表)。
【0274】
冷却の際に、3相の空間L+L+γの液相Lは、Seがより豊富になり、4相の反応U22、U23及びU24に加わり、かつET4(219℃)で消える。この挙動と対照的に、液相Lは、温度が減少するに伴いInがより豊富になり、かつ最終的には、偏晶反応moT4(745℃)によりL+δ+γに分解する。第3表中に導入された符号δは、高温相δ−InSeを表す。第3表のInSe−CuInSeと題する欄は、InSe−CuSe等値線(副次系I)のInに富む側で、臨界共役線Tk4、Tk5、Tk6、Tk8及びTk9を含む。符号γは、900℃でこの準2元系断面内で形成する3元相(CuInSe)を表す。
【0275】
第3表のInSe−Seと題する欄には、In−Se境界系の不変系平衡 mo(750℃)、esol7(745℃)、e(221℃)及びpsol1(201℃)が記載されている。
【0276】
転移面U22(L+δ←→α+δ)は、臨界共役線Tk4(L+δ+δ)及びTk15(δ+α+L)から現れる3相平衡を終わらせ、かつ2つの新しい3相平衡は、この平面:δ+α+L及びδ+α+δ(δは化学量論CuInSeを有する相の、高温変態及びδは室温変態を表す)未満で確立される。3相の空間及びδ+α+δは、InSe−CuSe準2元系断面の方へ移行し、かつ次いで臨界共役線Tk9(520℃)中へ合流している場合に、不変系になる。温度が更に減少する際に、平衡は、副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)中へ移行し、かつ次いで4相の平面eTsol4で終わる。
【0277】
この副次系中でのみ、水冷により室温でδを安定化することが可能である(3項、等温断面図)。平面moT4は、3元偏晶の4相の平面を構成するのに対して、U23は転移面である。図46及び47中の等値線は、4相の平面U22、moT4及びU23との共通部分を示す。743℃及びET5(220℃)、ET4(219℃)及びU24(220℃)の温度の間で、等値線は、3相の空間L+γ+γ−InSe、L+γ+δ及びL+α+δを示すに過ぎない。第3表は、これらの3相の空間(γ−InSeがγ2/3により省略されることに注意)を生じる4相の反応を示し、かつ図43bの略示図は、不変系平衡ET5、ET4及びU24の位置を示す。しかしながら、Tk18及びTk17での臨界共役線及び反応psol1の過程を実験的に決定しなかった。境界系のInに富む側で、γ−InSeは、2元偏晶点mo及び3元偏晶点moT4のために、液相Lから直接析出しうる(図43a及び43b)。
【0278】
3. 全Cu−In−Se系の考察
3.1 900℃での等温断面図
図50は、900℃での全濃度角度の等温断面図を示す。この温度で、幅広い範囲の組成は液相として存在する。InSeをCuSeと接続する線に沿って、斜線範囲として示された均一なδ及び均一な(Cu,In)Seの領域が認識される。2つの3相平衡L+δ+(Cu,In)Seは、転移面U(925℃)及びU17(925℃)から生じる。前記の3相平衡の間の小さなリボンは、Tk3=923℃でのδ+(Cu,In)Seへの高温相Hの共析分解から生じる。
【0279】
等温断面図のInに富む及びSeに富む領域中で、Tk5=900℃(L+δ←→γ)での、InSe−CuSe垂直断面図の平面と一致する臨界共役線を見ることができる。2相領域L+δは、均一なδの範囲の周りの放射状共役線を特徴とする。これらの共役線は、3相平衡L+δ+CuSe及びL+δ+δで終わる。2相領域δ+CuSeの中間的なものは、極めて小さく、かつInSe−CuSe準2元系断面の平面に平行して正確に拡張する。
【0280】
Inを添加することは、Cu−Se境界の1100℃での2元反応mo(L←→L+CuSe)及び1065℃でのe(L←→αCu+CuSe)を、Inを添加する際に1変系にし、かつそれらをより低い温度に移行させる。これらの平衡は、653℃で、それぞれmoT1(L←→L+α+(Cu,In)Se)で及びU(L+αCu←→(Cu,In)Se+β)で終わる。Cuに富む角中で、等温断面図の平面は、2つの3相の空間L+L+CuSe及びL+αCu+CuSeと交差する。液相ミシビリティギャップL+Lの共役線は、3相の空間L+L+(Cu,In)Seから拡張し、かつミシビリティギャップの臨界点中でCu約25原子%及びSe 20原子%で終わる。高温の方へのL+Lミシビリティギャップの経過は、低温のデータ(例II)を外挿することにより得られた。ミシビリティギャップL+Lと対照的に、Cu−Se境界系のSeに富む側でミシビリティギャップL+Lは、900℃で小さな拡張(In 5原子%)を有するに過ぎない。
【0281】
3.2 800℃での等温断面図
図51は、800℃での等温断面図を示す。図50中のように、斜線範囲は、均一な3元相(γ、δ、δ及びα)の領域を示す。800℃断面は、多くの臨界共役線及び転移面の下に存在する。それゆえ、図51は、多数の3相平衡を特徴とする。
【0282】
800℃で系は、3元のα相(CuInSe):L+α、L+α及びL+αを含む3つの2相平衡を特徴とする。図51はまた、800℃でも生じる転移面U19の位置を示す。この転移面は、副次系IIIの領域IIIb(CuInSe−Se−CuSe)に属しており、かつ2相の空間α+(Cu,In)Seに直ちに境界をなす。3相の空間L+L+α及びL+δ+αは、転移面U18(L+δ←→α+L)を経て及びメタテクチック臨界共役線Tk15(δ←→α+L)を経て存在するようになる。部分IIに記載されているように、2相の空間L+αは、812℃でのメタテクチック臨界共役線Tk11により生じる。812℃未満で存在し始める2つの3相の空間L+δ+α及び2相の空間L+αとの共通部分は、副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)に属する。
【0283】
臨界共役線Tk4(910℃)及びTk5(900℃)を経て形成し、かつ双方ともそれぞれ2回生じる3相平衡L+δ+δ及びL+γ+δは、組成三角形のSeに富む及びInに富む側の方へ、副次系IIIの領域IIIa(InSe−Se−CuInSe)中へ及び副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)中へ拡張する。
【0284】
InSeの領域中で、2つの3相の空間:β−InSe+δ−InSe+γ及びL+δ+γが観察された(図51中で、符号β及びδは、β−InSe及びδ−InSeについての近道であることに注意)。これらの3相の空間は、Tk6(部分I、部分II)での臨界共役線から生じる。図51のSeに富む側は更に、In−Se境界系に平行したそれぞれ液相L又はLの狭い領域を示す。小さな移行とは別に、副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)内の多相平衡は、図50中と同じである。
【0285】
3.3 500℃での等温断面図
500℃での等温断面図は、光起電性デバイス用の薄膜の製作にとって主に技術的に重要である、それというのも、これらの膜は、しばしば、温度約500℃で堆積されるからである。この例は、500℃での等温断面図の我々の考察をCuに富む及びInに富む合金(部分I及びII)からSeに富む合金に拡張する:図52は、全組成三角形に亘る500℃での等温断面図を示す。図52bは、部分Iにおいて示された領域に相当し、その際、Cu 15〜38原子%及びSe 44〜60原子%の組成をカバーする。この図中の点線は、組成Cu25In25Se50に印をつけ、かつけばをつけた線は、InSe−CuSe準2元系断面の位置に印をつける。図52の凡例は3元相及びセレン化インジウム類についての幾つかの近道を導入することに注意。
【0286】
Seに富む角及びInに富む角中で、500℃での等温断面図はなお、液相(それぞれL及びL)の小さな領域を特徴とする。Seに富む側の、4個の3相平衡L+γ−InSe+γ、L+δ+γ、L+δ+α及びL+α+CuSeは、U23、Tk5、U22から、及び反応moT3から生じる。より低い温度の方へのこれらの3相の空間の展開は、図46及び47の等値線から明らかになる。
【0287】
α相(CuInSe)は、8個の固相及び1個の液相(L)との平衡を確立する。固相の中で、η、δ及びαCuはIn−Cu境界系から、CuSeはCu−Se境界系から、かつInSe及びInSeはIn−Se境界系から生じる。αとの平衡で残っている2つの相は、δ及びδである。より高い温度及びより低い温度でのα相範囲の形態学は、部分I中のInSe−CuSe等値線から、及び部分II及びIII、本明細書中に示された多数の他の等値線から、評価されることができる。
【0288】
4. In 10原子%を有する多相平衡
図30及び図31を用いて、3つの異なる副次系の多相平衡を接続する2つの等値線は既に示されている。図53は、副次系III(InSe−Se−CuSe)の領域IIIa(InSe−Se−CuInSe)及び領域IIIb(CuSe−Se−CuInSe)の平衡と副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)の平衡を結びつけているこの種類の他の等値線を示す。副次系Iの平衡、InSe−CuSe準2元系断面は、図53中で、極大L+δとの共通部分未満及びTk4(910℃)での臨界共役線との共通部分未満で現れる。Cu10In90でのCu−In境界系から出発して、かつSe 0〜55原子%のSe含量を増大させて、等値線は最初に、ミシビリティギャップL+Lと、次いで3元偏晶の4相の平面moT2と、及び最終的には4相の平面U、U11、U12、U13、U14、U15、U16及びET2と交差する。更に、図53は、等値線のSeに富む側で臨界共役線Tk15(805℃)から現れる2つの3相の空間L+δ+αが、転移面U22(770℃)及びU18(803℃)で終わることを示す。Se 80原子%から殆どCu−Se境界系に達する不変系平衡は、522℃で3元偏晶の4相の平面moT3に及び376℃で転移面U20に及び338℃でU21に属する。3元共晶点ET4及びET3と及び転移面U24との共通部分の温度は、互いに極めて接近している−第3表によれば、それらは、1Kだけ異なる。
【0289】
符号eTsol4は、400℃でSe 50.0〜52.5原子%の4相の平面を表す。この4相の平面は、相δがδ+InSe+αに分解する3元共晶反応に相当する(第1表)。この結果は、直ちに400℃未満で30日間熱処理した試験片を分析することにより得られた。これらの試験片中で、相δはもはや観察されなかった。
【0290】
5. 結論
合金の多相平衡に関する実験研究は更に、新技術の展開に鍵となる役割を果たす、それというのも、この種類の研究は、多相平衡、ミクロ構造の進展及び材料の巨視的性質の間の因果相関関係において物理的洞察を提供するからである。3つのその後の例に記載されているCu−In−Seの状態図は、多種多様な4相の反応及び臨界共役線を示す。このむしろ込み入った系は、液相等温線、共役線及び液相線の分配を導き出すために、多くの異なる合金の綿密な調査を必要とした。我々の結果は、示差熱分析、光−光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、透過型電子顕微鏡法及びX線回折による実験研究に基づいている。合計で、4つの異なる3元相:α(CuInSe)、γ(CuInSe)、H(Cu13InSe11)及びδH/R(CuInSe)が同定された。これらの中で、H及びδは、水冷することにより室温で安定化されることができない高温相である。
【0291】
我々の研究の枠組みにおいて、Cu−In−Seの全ての3つの2元の境界系の多相平衡を、殊にIn−Se境界系について再調査する必要があった。これらの研究は、In−Se境界系のInに富む液相とSeに富む液相との間のミシビリティギャップ及びCu−Se境界系のSeに富む側でのミシビリティギャップの再決定をもたらした。更に、それらの初期の研究が、In−Se境界系における2つの新しい相の発見を導き、かつ準安定状態図を生じさせた。セレン化インジウム類の中で、InSe及びInSeは、α相(CuInSe)との2相及び3相平衡を確立する。相InSeの組成範囲中及び3元合金中で、液体状態から冷却する間に準安定平衡の形成も観察された。
【0292】
α相の組成範囲中で及びInSe−CuSe準2元系断面に沿って、過冷却した平衡の状態図を設定した。この状態図が、薄膜太陽電池のミクロ構造に関するTEMの結果研究を解釈する助けとなることを証明した。薄膜と平衡化された多結晶のバルク材料との間の比較は、薄膜の室温状態が、高められた温度でのバルク材料の平衡状態に相当することを示した。α相(CuInSe)が、より高い温度で示す大きな組成範囲は、室温まで急冷されることができる。組成範囲の極大拡張は、δ→α相変態を上回り焼なまししかつ水冷することによりInSe−CuSe準2元系断面内の合金で達成されることができる。Beilharz他の実験結果によれば(“Bulk crystals in the system Cu−In−Ga−Se with initial Ga/Ga+In=0.1 to 0.3:growth from the melt and characterization”, in Ternary and Multinary Components, Institute of Physics Publishing, Bristol UK (1998, 19−22)、Gaと合金にすることによりα相の組成範囲を拡張することもできる。類似の効果は、Na添加についても観察された。それゆえ、Cu−In−Seの多相平衡に関する我々の研究を4元系Cu−In−Se−Ga及びCu−In−Se−Naに拡張することは道理にかなっているように思われる。α相の多結晶の試験片での予備実験は、Na 0.1〜0.2原子%と合金にすることが、均一なαの範囲をInSe−CuSe準2元系断面のInSe側の方へCu約2原子%だけ拡張することを示した。
【0293】
部分II及びIII中に示した等温断面図から、500℃でα相が9つの異なる相との2相及び3相平衡を確立することが明らかになる。この多様な平衡は、他の研究員が、CuInSe単結晶を成長させるのを試みる場合に、偶然遭遇した困難を説明する。InSe−CuSe準2元系断面内で、α相(CuInSe)は、δ→α変態を経てのみ形成しうる。それゆえ、α相が一次晶出(αL1〜αL4)の4個の異なる表面を有するという我々の所見は、CuInSe単結晶を成長させるという新しい計略の展開にとって主に重要である。Cu−In−Se状態図によれば、化学量論的組成CuInSeの周囲の特定の範囲の異なる組成内のα相の単結晶を成長させるのを可能にする。この目的には、最初に、所望の組成を有するδの単結晶を成長させ、かつついでこれらをαに変態させる必要がある。しかしながら、これは、ブリッジマン技術を用いては不可能である:この技術は調和凝固を必要とするので、組成Cu23.5In26.0Se50.5を有するδ単結晶を得ることができるに過ぎず、かつαに変態する際及び室温へ冷却する際に、そのような単結晶は2つの相に分解する(部分I)。α単結晶を成長させるため、及びそれらの組成を制御できるように、それゆえ、ブリッジマン技術ではなくて液相の大きな溜めで作業するチョクラルスキー法を使用すべきである。
【0294】
【表1】
Figure 2004501859
【0295】
【表2】
Figure 2004501859
【0296】
【表3】
Figure 2004501859
【0297】
【表4】
Figure 2004501859

【図面の簡単な説明】
【図1】
InSe−CuSe等値線(副次系I)、In−InSe−CuSe−Cu副次系(副次系II)、及びInSe−Se−CuSe副次系(副次系III)を示す略示図。
【図2】
Se 33〜60原子%のIn−Se平衡状態図。
【図3】
In−Se系の準安定相(実線)及び安定相(点線)を比較する状態図。
【図4】
InSe−CuSe準2元系断面中の臨界共役線を導く立体配座を示す略示図。
【図5】
3元系状態図中の臨界共役線を示す三次元略示図。
【図6】
Cu−In−Seの等値線InSe−CuSeを示す略示図。
【図7】
異なる熱処理後のCu46.5In12.2Se41.3のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図8】
異なる熱処理後のCu42.0In15.0Se43.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図9】
850℃で5時間後のCu60.0In4.0Se36.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図10】
500℃で60時間、300℃で70時間及び100℃で140時間後のCu18.0In29.4Se52.6のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図11】
異なる熱処理後のCu18.5In28.9Se52.6のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図12】
異なる熱処理後のCu21.0In27.5Se51.5のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図13】
異なる熱処理後のCu23.5In26.0Se50.5のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図14】
Cu 15〜30原子%のInSe−CuSe状態図。
【図15】
850℃で12時間後のCu26.0In24.2Se49.8のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図16】
Cu−In−Se平衡状態図の等温断面図。
【図17】
500℃で20日後のCu10.0In44.0Se46.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図18】
500℃で20日後のCu16.0In33.0Se51.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図19】
500℃で13日後のCu18.0In30.0Se52.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図20】
500℃で3日、300℃で4日及び180℃で13日後のCu24.4In25.2Se50.4のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図21】
Cu−In平衡状態図。
【図22】
Cu−Se平衡状態図。
【図23】
In−Se平衡状態図。
【図24】
3元共晶の4相の平面及び転移面を示す略示図。
【図25】
臨界共役線の共晶型、例えばTk11、Tk12及びTk13を導く立体配座を示す略示図。
【図26】
副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)の液相面の投影図。
【図27】
4相の平面、臨界共役線及びIn−InSe−CuSe−Cu副次系の濃度平面上への二重飽和エッジの投影図。
【図28】
In80.0Se20.0−Cu80.0Se20.0等値線を示す略示図。
【図29】
In60.0Se40.0−Cu60.0Se40.0等値線を示す略示図。
【図30】
In50.0Se50.0−Cu50.0Se50.0等値線を示す略示図。
【図31】
CuInSe−Cu70.0In30.0等値線を示す略示図。
【図32】
Cu25.0In25.0Se50.0−Cu50.0In50.0等値線を示す略示図。
【図33】
Cu48.0In14.0Se38.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図34】
700℃で15時間後のCu26.0In26.0Se48.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図35】
DTAの間の5K/minでの液体状態から室温への冷却後のCu33.0In33.0Se34.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図36】
500℃での副次系II(In−InSe−CuSe−Cu)を示す等温断面図。
【図37】
500℃で4日後のCu48.0In14.0Se38.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図38】
500℃で4日後のCu28.0In33.4Se38.6のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図39】
500℃で21日後のCu66.0In30.0Se4.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図40】
500℃で21日後のCu77.0In16.0Se7.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図41】
DTAの間の5K/minでの液体状態から室温への冷却後のCu48.0In22.0Se30.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図42】
1020℃(液体)で15min後のCu46.0In12.5Se41.5のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図43】
Cu−In−Se 3元系状態図中の液相線投影図及び液相等温線を示す図。
【図44】
3相の空間L+L+δの形成を説明する略示図。
【図45】
Se−CuInSe等値線を示す略示図。
【図46】
In20.0Se80.0−Cu20.0Se80.0等値線を示す略示図。
【図47】
InSe−Cu40.0Se60.0等値線を示す略示図。
【図48】
500℃で1日後のCu30.0In10.0Se60.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図49】
320℃で2日後のCu30.0In10.0Se60.0のミクロ構造を示す顕微鏡写真。
【図50】
900℃での等温断面図。
【図51】
800℃での等温断面図。
【図52】
500℃での等温断面図。
【図53】
Cu10.0In90.0−Cu10.0Se90.0等値線を示す略示図。

Claims (23)

  1. 元素Cu、In及びSeを含んでいる固体組成物の製造のための系の液相面を含む、状態図Cu−In−Seの使用。
  2. 製造が、液相からの所望の固体組成物の直接形成を含んでいる、請求項1記載の使用。
  3. 前記の製造が液相からの晶出を含む、請求項1又は2記載の使用。
  4. 前記の製造が、液相を供給しないチョクラルスキー法による結晶成長を含む、請求項3記載の使用。
  5. 前記の製造が、液相の供給を含むチョクラルスキー法による結晶成長を含む、請求項3記載の使用。
  6. 前記の製造が、第二の液相と接触している第一の液相からの結晶成長を含み、その際、第一の液相の密度及び化学量論が、第二の液相とは異なる、請求項3記載の使用。
  7. 所望の固体組成物は、固体組成物が形成される液相の化学量論とは異なる化学量論を有する、請求項2から6までのいずれか1項記載の使用。
  8. 前記組成物が単一相の組成物である、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
  9. 前記組成物が単結晶の組成物である、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
  10. 前記組成物が、Cu、In、Se及び少なくとも1つの別の元素を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
  11. 前記の少なくとも1つの別の元素が、全組成物に対して5原子%までの量で存在する、請求項10記載の使用。
  12. 前記の少なくとも1つの別の元素を、Ga、Na、Sの群から選択する、請求項10又は11記載の使用。
  13. 前記組成物を、α−相、γ−相、δ−相及びδ相から選択する、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
  14. 前記組成物が、図51及び52に示されたような組成範囲内の化学量論CuInSeを有しているα−相であり、かつ場合により別の元素の存在により拡張される、請求項13記載の使用。
  15. α−相を、状態図及び第4表に定義されたような一次晶出αL1、αL2、αL3及びαL4の液相面の群から選択される液相から直接晶出させる、請求項14記載の使用。
  16. 状態図及び第4表に定義されたような一次晶出αL1、αL2、αL3及びαL4の液相面の群からの結晶成長により、液相からCu−In−Se α−相を直接得る方法。
  17. α−相を単一相の組成物として得る、請求項16記載の方法。
  18. α−相を単結晶として得る、請求項16又は17記載の方法。
  19. α−相を基板上に成長させる、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
  20. α−相、γ−相、δ−相及びδ−相から選択された単一相のCu−In−Se組成物。
  21. 図51及び52に示されたような組成範囲内の化学量論CuInSeを有しているα−相であり、かつ場合により別の元素の存在により拡張されている、請求項20記載の組成物。
  22. ほぼ相応する平衡濃度である欠陥濃度を有している、請求項20又は21記載の組成物。
  23. 単結晶である、請求項20から22までのいずれか1項記載の組成物。
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