JP2004500553A - 前立腺ガンのマーカータンパク質 - Google Patents

前立腺ガンのマーカータンパク質 Download PDF

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Abstract

本発明は、初めて、前立腺ガンの患者および前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)のサンプル中に異なって存在するマーカーを測定することによって、前立腺ガンの診断を助けるように使用され得る、高感度かつ迅速な方法およびキットを提供する。1つ以上のこれらのマーカーの量をモニターすることによって、本発明の方法およびキットは、微量の粗サンプルを使用して、被験体の病理学的状態を決定することが可能である。詳細には、精子の塩基性タンパク質が、前立腺ガンおよびBPHを区別するポジティブなマーカーである。

Description

【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、1999年10月7日に提出された、米国特許仮出願番号第60/158,422号に対する優先権を主張する。その開示は、その全体において本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
(連邦政府によって支援された研究および開発のもとで行われた発明に対する権利の申し立て)
適用不可能。
【0003】
(発明の背景)
前立腺ガンは、男性のガンの最も一般的な形態である。これは代表的には、歳を取っている男性に罹患するが、これは、全ての年齢の男性に罹患し得る。有意な数の男性が、毎年、前立腺ガンによって死亡し、そしてこれは、男性のガンによる死亡の第2の原因である。患者の前立腺ガンの早期診断により、死亡の可能性が低下する。
【0004】
従来は、前立腺ガンは、マーカーとして前立腺特異的抗原(PSA)を使用して診断されている。PSAは、前立腺によって主に合成されそして分泌される、33kDaの糖タンパク質である。PSAはまた、セリンプロテアーゼ活性を有するプロテアーゼであり、そしてロイシン残基またはチロシン残基でタンパク質を切断する(例えば、Christenssonら、Eur.J.Biochem.194:755−763(1990)を参照のこと)。その天然の基質は、精漿中の、セメノゲリン(semenogelin)I、セメノゲリンII、およびフィブロネクチンである(例えば、Lilja、J.Clin.Invest.76:1899(1985);Liljaら、J.Clin.Invest.80:281(1987);McGeeおよびHerr、Biol.Reprod.39:499(1988)を参照のこと)。これらのタンパク質は主に、新しく射出される精液の迅速なゲルの形成に役割を果たす。これらのゲル形成タンパク質のPSAによって媒介されるタンパク質分解は、精液の液化および前進性の運動性のある精子の放出を生じる。
【0005】
PSAは、血流中に漏出し、そして血清中のPSAの濃度の測定は、現在、ヒトの前立腺ガンを検出することにおいて広範な使用が見出されている。代表的な手順においては、イムノアッセイが、患者の血清中のPSAのレベルを測定するために行われる。正常な男性のPSAの血漿レベルは、代表的には非常に低い(例えば、1ng/ml未満)。一般的には、4ng/mlを上回るPSAレベルが、前立腺ガンを示唆するが、10ng/mlを上回るレベルが、前立腺ガンを強く示唆する。
【0006】
このような手順は、いくつかの例においては有効であるが、前立腺ガンを検出するための従来の方法は、限界を有する。例えば、ガンがその初期段階にある場合には、いくらかの前立腺ガンの患者は、診断時点で正常なPSAレベルを示す。従来のPSA試験は異常なPSAのレベルを検出するので、従来のPSA試験は、それが初期段階にある場合には、前立腺ガンの存在を検出することができない場合がある。従来のPSA試験によりいくつかの症例における前立腺ガン(例えば、初期段階の疾患)の存在を診断することができないことは、患者にとって不利益であり得る。さらに、血清中のPSAレベルが上昇した多くの個体は、前立腺ガンを有さない場合があるが、その代わりに、良性の前立腺過形成(BPH)(すなわち、良性の腫瘍)を有し得る。ヒトが前立腺ガンを有するかどうかを決定するために、BPHよりもむしろ、他の抗体および/または前立腺組織の生検を使用するさらなるイムノアッセイが行われる。これらのさらなる試験は、患者およびその治療を提供する者の両方にとって時間がかかる。
【0007】
従って、ヒトが前立腺ガンを有するかどうかを決定するための、迅速かつ正確な方法およびキットを提供することが所望されている。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、初めて、前立腺ガンの患者および前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)のサンプル中に異なって存在するマーカーを測定することによって、前立腺ガンの診断を助けるように使用され得る、高感度かつ迅速な方法およびキットを提供する。1つ以上のこれらのマーカーの量をモニターすることによって、本発明の方法およびキットは、微量の粗サンプルを使用して、被験体の病理学的状態を決定することが可能である。詳細には、精子の塩基性タンパク質が、前立腺ガンおよびBPHを区別するポジティブなマーカーである。
【0009】
1つの局面においては、本発明は、前立腺ガンの診断を補助する方法を提供する。この方法は、被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定する工程、およびこの試験量が、前立腺ガンの診断と一致する診断量であるかどうかを決定する工程を包含する。単一のマーカーまたは複数のマーカーの試験量は、本発明のこの局面において決定され得る。
【0010】
これらのマーカーは、任意の適切な特徴を有し得る。これには、任意の見かけの分子量が含まれる。1つの実施形態においては、適切なマーカーは、27,000Da未満、好ましくは、約20,000Da未満、より好ましくは、約15,000Da未満、そして最も好ましくは、約10,000Da未満の見かけの分子量を有する。別の実施形態においては、この適切なマーカーは、BPHの患者のサンプルと比較して、前立腺ガンの患者のサンプル中で上昇したレベルで存在する。例えば、これらのマーカーとして、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、約8240Da、または約8714Daの見かけの分子量を有するポリペプチドが挙げられる。なお別の実施形態においては、この適切なマーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルと比較して、BPHの患者のサンプル中に上昇したレベルで存在する。例えば、これらのマーカーとして、約2276Da、約2530Da、約2095Da、約3030Da、約3038Da、約3224Da、約3600Da、約3835Da、約3915Da、約3933Da、または約4715Daの見かけの分子量を有するポリペプチドが挙げられる。1つの好ましい実施形態においては、検出されるマーカーとして、約5753Daの見かけの分子量を有する、精子の塩基性タンパク質が挙げられる。
【0011】
別の実施形態においては、このマーカーは、PSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成された切断された産物である。例えば、切断された産物は、セメノゲリンIのPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される。好ましい実施形態においては、マーカーとして検出される切断された産物は、精子の塩基性タンパク質である。
【0012】
なお別の実施形態においては、試験されるサンプルは、被験体の血液、血清、尿、精子、精液、精漿または組織抽出物から得られる。好ましくは、このサンプルは、精漿である。
【0013】
なお別の実施形態においては、診断のための方法は、イムノアッセイまたは気相イオンスペクトル分析を使用して、サンプル中のマーカーの試験量を決定する工程を包含する。好ましくは、レーザー脱離質量分析が使用される。
【0014】
別の局面においては、本発明は、マーカーを検出するための方法を提供する。この方法は、マーカーと吸着剤との間での結合を可能にする条件下で、その上に吸着剤を含有している基材と、被験体に由来するサンプルを接触させる工程(ここでは、このマーカーは、前立腺ガンのサンプル、および前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)において異なって存在するポリペプチドである)、ならびに、気相イオンスペクトル分析によってこの吸着剤に結合したマーカーを検出する工程を包含する。1つの実施形態においては、マーカーは、27,000Da未満の見かけの分子量を有する。
【0015】
別の実施形態においては、この吸着剤は、疎水性基およびアニオン性基を含む。別の実施形態においては、この基材は、吸着剤としてスルホン酸基で官能化されたポリスチレンラテックスビーズを含む。なお別の実施形態においては、この吸着剤は、疎水性基を含む。なお別の実施形態においては、この吸着剤は、金属イオンで錯化された金属キレート基を含む。なお別の実施形態においては、この吸着剤は、マーカーに対して特異的に結合する抗体を含む。なお別の実施形態においては、この吸着剤は、精子の塩基性タンパク質に特異的に結合する抗体を含む。
【0016】
なお別の実施形態においては、マーカーを検出する前に、基材上に結合していない物質が、洗浄溶液を用いて除去される。好ましくは、この洗浄溶液は、水溶液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水、または水)である。
【0017】
なお別の実施形態においては、検出されるマーカーは、セメノゲリンIのようなタンパク質基質のPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される、切断された産物である。なお別の実施形態においては、PSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成され、そしてマーカーとして検出される、切断された産物は、精子の塩基性タンパク質である。
【0018】
なお別の実施形態においては、この方法はさらに、プローブ基材上に結合したマーカーの試験量を決定する工程、およびこの試験量が、前立腺ガンの診断と一致する診断量であるかどうかを決定する工程を包含する。
【0019】
なお別の局面においては、本発明は、サンプル中のマーカーを検出するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:マーカーに対して特異的に結合する抗体を提供する工程(ここでは、このマーカーは、前立腺ガンの患者のサンプル、および前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)において異なって存在するポリペプチドである)、ならびに、このサンプルをこの抗体と接触させる工程、ならびにこのマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する工程。1つの実施形態においては、このマーカーは、27,00Da未満の見かけの分子量を有する。
【0020】
別の実施形態においては、検出されるマーカーは、セメノゲリンIのようなタンパク質基質のPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される、切断された産物である。なお別の実施形態においては、検出されるマーカーは、精子の塩基性タンパク質である。なお別の実施形態においては、この方法はさらに、プローブ基材上に結合したマーカーの試験量を決定する工程、およびこの試験量が、前立腺ガンの診断と一致する診断量であるかどうかを決定する工程を包含する。
【0021】
なお別の局面においては、本発明は、前立腺ガンの診断を補助するためのキットを提供する。ここでは、このキットは、その上に吸着剤を含有している基材(ここでは、この吸着剤はマーカーの結合に適切である)、および洗浄溶液または洗浄溶液を作製するための説明書(ここでは、この吸着剤と洗浄溶液の組み合わせによって、気相イオンスペクトル分析を使用してマーカーの検出を可能にする)を含む。このキットは、マーカーの試験量の決定を可能にし得、ここでは、このマーカーは、前立腺ガンのサンプル、および前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)において異なって存在するポリペプチドである。1つの実施形態においては、このキットは、27,000Da未満の見かけの分子量を有するマーカーを検出し得る。
【0022】
1つの実施形態においては、キット中の基材は、気相イオンスペクトル分析計に取り外し可能に挿入できるプローブの形態である。別の実施形態においては、このキットはさらに、別の基材を含み、これは、気相イオンスペクトル分析計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成するように、吸着剤を含有している基剤とともに使用され得る。
【0023】
別の実施形態においては、キットはさらに、適切な操作可能なパラメーターについての説明書を含む。
【0024】
なお別の実施形態においては、基材は、吸着剤としての疎水性基およびアニオン性基を含む。なお別の実施形態においては、この基材は、吸着剤として疎水性基を含む。なお別の実施形態においては、この基材は、金属キレート基を含む。なお別の実施形態においては、この基材は、吸着剤として、金属イオンで錯化された金属キレート基を含む。なお別の実施形態においては、この基材は、吸着剤として、マーカー(好ましくは、精子の塩基性タンパク質)に対して特異的に結合する抗体を含む。なお別の実施形態においては、洗浄溶液は水溶液である。
【0025】
なお別の実施形態においては、キットは、マーカーに対して特異的に結合する抗体、および検出試薬を含む。必要に応じて、この抗体は、固体支持体上に固定され得る。
【0026】
なお別の実施形態においては、このキットはさらに、マーカーの診断量を示す標準を含み得る。
【0027】
多くのマーカーの絶対的な実態は未だ公知ではないが、このような知見は、患者のサンプル中のそれらを測定するためには必ずしも必要ではない。なぜなら、これらは、例えば、質量および親和性の特徴によって十分に特徴付けられるからである。分子量および結合特性は、これらのマーカーの特徴的な特性であり、そして検出または単離の手段に限定されないことが注目される。さらに、本明細書中に記載される方法または当該分野で公知の他の方法を使用して、マーカーの絶対的な実態が決定され得る。
【0028】
本発明のこれらおよび他の局面が、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して明らかとなる。
【0029】
(定義)
他に特に定義されない限りは、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);The Glossary of Genetics、第5版、R.Riegerら(編)、Springer Verlag(1991);およびHaleおよびMarham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書中で使用される場合には、以下の用語は、他に特に記載されない限りは、それらについて記載される意味を有する。
【0030】
「マーカー」は、本発明の状況においては、前立腺ガンを有さない被験体(例えば、良性の前立腺過形成の患者または健常な被験体)から採取された比較可能なサンプルを比較した場合に、前立腺ガンを有している患者から採取されたサンプル中で異なって存在するポリペプチドをいう。例えば、マーカーは、BPHの患者のサンプルと比較して、前立腺ガンの患者のサンプル中で上昇したレベルで存在するポリペプチド(特定の見かけの分子量を有する)であり得る。別の例においては、マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルと比較して、BPHの患者のサンプル中で上昇したレベルで存在するポリペプチド(特定の見かけの分子量を有する)であり得る。
【0031】
タンパク質マーカーは、気相イオンスペクトル分析によって約0.5%の偏差の確認によって分析される。従って、用語「約」は、質量分析によって測定されるようなマーカーの分子量の状況においては、マーカーの分子量の0.5%の偏差をいう。例えば、質量分析によって測定された場合に「約2776Da」の見かけの分子量を有するマーカーは、2776±14Daの範囲の見かけの分子量を有する;質量分析によって測定された場合に、「約4423Da」の見かけの分子量を有するマーカーは、4423±22Daの範囲の見かけの分子量の範囲を有するなどである。
【0032】
句「異なって存在する」は、前立腺ガンを有していない(例えば、良性の前立腺過形成を有する)患者から採取された比較可能なサンプルと比較した場合に、前立腺ガンを有している患者から採取されたサンプル中に存在するポリペプチド(または特定の見かけの分子量)の量および/または頻度における差異をいう。例えば、マーカーは、前立腺ガンを有していない被験体のサンプルと比較して、前立腺ガンの患者のサンプル中において、上昇したレベルまたは減少したレベルで存在するポリペプチドであり得る。あるいは、マーカーは、前立腺ガンを有していない被験体のサンプルと比較して、前立腺ガンの患者のサンプル中でより高い頻度またはより低い頻度で検出されるポリペプチドであり得る。マーカーは、量、頻度、または両方に関して、異なって存在し得る。
【0033】
ポリペプチドは、前立腺ガンの患者のサンプル中のポリペプチドの検出の頻度がコントロールのサンプルよりも統計学的に有意に高いかまたは低い場合には、2つのサンプルのセットの間で異なって存在する。例えば、2つのデータのセットは、スチューデントt検定を使用して比較され得、そしてP<0.05が、統計学的に有意であるとみなされ得る。別の例においては、他のサンプルのセットよりもサンプルの1つのセットにおいて観察されるポリペプチドは、それが少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%大きな頻度または少ない頻度で検出される場合には、2つのサンプルのセットの間で異なって存在する。
【0034】
あるいはまたはさらに、ポリペプチドは、一方のサンプル中のポリペプチドの量が、他方のサンプル中のポリペプチドの量とは統計学的に有意に異なる場合に、2つのサンプル間で異なって存在する。例えば、ポリペプチドは、他方のサンプル中に存在するよりも、一方のサンプル中で、それが少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%多く存在する場合、あるいは、それが一方のサンプル中で検出可能であり、かつ他方においては検出可能ではない場合に、2つのサンプル間で異なって存在する。
【0035】
「精子の塩基性タンパク質」は、精漿中の主要なタンパク質であるセメノゲリンIの前立腺特異的抗原によって媒介されるタンパク質分解によって生成されるペプチドフラグメントをいう。精子の塩基性タンパク質は、約5753Daの見かけの分子量および約52アミノ酸残基(セメノゲリンIのペプチドフラグメント85〜136)を有する。「精子の塩基性タンパク質」は、図1に示されるような配列番号1のアミノ酸配列を有し得るか、またはその短縮化バージョンを有し得、そしてまた、多型改変体、対立遺伝子、変異体、および配列番号1のアミノ酸配列を有するかもしくはその短縮化バージョンを有する精子の塩基性タンパク質の種間ホモログである、他の精子の塩基性タンパク質をも含み得る。LiljaおよびJeppsson、Febs Lett.182:181−184(1985)をもまた参照のこと。
【0036】
「切断された産物」は、本発明の状況においては、セメノゲリンIのようなタンパク質基質のPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される産物をいう。
【0037】
「前立腺特異的抗原によって媒介されるタンパク質分解」または「PSAによって媒介されるタンパク質分解」は、前立腺特異的抗原(PSA)のセリンプロテアーゼ酵素活性をいう。
【0038】
「診断」は、病理学的な状態の存在またはその性質を同定することを意味する。診断方法は、それらの感度および特異性において異なる。診断アッセイの「感度」は、試験ポジティブである罹患した個体の割合(「真のポジティブ」の割合)である。アッセイによっては検出されない罹患した個体は、「偽ネガティブ」である。疾患ではない被験体およびアッセイにおいて試験ネガティブである被験体は、「真のネガティブ」と言われる。診断アッセイの「特異性」は、1−擬ポジティブの割合である。ここでは、「偽ポジティブ」の割合は、試験ポジティブである疾患を有さないものの割合として定義される。特定の診断方法では、状態の明確な診断を提供しない場合があるが、この方法が、診断を補助するポジティブな指標を提供する場合には、これが十分である。
【0039】
マーカーの「試験量」は、試験されるサンプル中に存在するマーカーの量をいう。試験量は、絶対的な量(例えば、μg/ml)または相対的な量(例えば、シグナルの相対的な強度)のいずれかであり得る。
【0040】
マーカーの「診断量」は、本発明の状況においては、前立腺ガンの診断と一致する被験体のサンプル中のマーカーの量をいう。診断量は、絶対的な量(例えば、μg/ml)または相対的な量(例えば、シグナルの相対的な強度)のいずれかであり得る。
【0041】
マーカーの「コントロール量」は、マーカーの試験量に対して比較される任意の量または量の範囲であり得る。例えば、マーカーのコントロール量は、前立腺ガンの患者、BPHの患者、または前立腺ガンもBHPも有さないヒトの中のマーカー(例えば、精子の塩基性タンパク質)の量であり得る。コントロール量は、絶対的な量(例えば、μg/ml)または相対的な量(例えば、シグナルの相対的な強度)のいずれかであり得る。
【0042】
「プローブ」は、気相スペクトル分析計に取り外し可能に挿入することができるデバイスをいい、そして検出のためのマーカーを提示するための表面を有している基材を含む。プローブは、単一の基材または複数の基材を含み得る。ProteinChip(登録商標)、ProteinChip(登録商標)アレイ、またはチップのような用語もまた、プローブをいうために本明細書中で使用される。
【0043】
「基材」または「プローブ基材」は、その上に吸着剤が提供され得る(例えば、付着、沈着などによって)固相をいう。
【0044】
「吸着剤」は、マーカーを吸着し得る任意の材料をいう。用語「吸着剤」は、それに対してマーカーが曝される単一の材料(「モノプレックス(monoplex)吸着剤」)(例えば、化合物または官能基)、およびそれに対してマーカーが曝される複数の異なる材料(「マルチプレックス(multiplex)吸着剤」)の両方をいうために本明細書中で使用される。マルチプレックス吸着剤における吸着剤材料は、「吸着剤種」といわれる。例えば、プローブ基材上の接近可能な位置は、種々の結合特徴を有している、多くの異なる吸着剤種(例えば、陰イオン交換材料、金属キレート剤、または抗体)によって特徴付けられるマルチプレックス吸着剤を含み得る。基材の材料自体もまた、マーカーを吸着することに関与し得、そして「吸着剤」の一部と考えられ得る。
【0045】
「吸着」は、溶出剤(選択的な限界改変因子)または洗浄溶液での洗浄の前または後のいずれかでの、吸着剤とマーカーとの間での検出可能な結合をいう。
【0046】
「溶出剤」または「洗浄溶液」は、吸着剤に対するマーカーの吸着を媒介するために使用され得る試薬をいう。溶出剤および洗浄溶液はまた、「選択的な限界改変因子」とも呼ばれる。溶出剤および洗浄溶液は、プローブ基材の表面から結合していない物質を洗浄しそして除去するために使用され得る。
【0047】
「分析する」、「分析」、または「マーカーの分析」は、サンプル中の少なくとも1つのマーカーの検出をいう。分析は、分離および続く差の検出による、サンプル中の複数のマーカーの検出を含む。分析は、混合物中の全ての他のマーカーからのマーカーの完全な分離は必要とはしない。むしろ、少なくとも2つのマーカー間の区別を可能にする任意の分離が十分である。
【0048】
「気相イオンスペクトル分析計」は、サンプルが気相中にイオン化された場合に形成されるイオンの、質量−対−電荷の比に変換され得るパラメーターを測定する装置である。一般的には、目的のイオンは、単一の電荷を有し、そして質量−対−電荷の比はしばしば、単純に質量と呼ばれる。
【0049】
「質量分析計」は、入口システム、イオン化源、イオン光学アセンブリ、質量分析計、および検出装置を備える、気相イオンスペクトル分析計をいう。
【0050】
「レーザー脱離質量分析計」は、マーカーを脱離するイオン化源としてレーザを使用する、質量分析計をいう。
【0051】
「検出」は、検出される目的物の存在、非存在、または量を同定することをいう。
【0052】
「保持」は、マーカーの吸着、あるいは溶出剤または洗浄溶液での洗浄の後での、吸着剤によるマーカーの吸着をいう。
【0053】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを言うために、本明細書中で互換的に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在しているアミノ酸のアナログまたは模倣物であるアミノ酸のポリマー、ならびに天然に存在しているアミノ酸のポリマーに対して適用する。ポリペプチドは、例えば、糖タンパク質を形成するような糖質残基の付加によって、修飾され得る。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、糖タンパク質、ならびに非糖タンパク質を含む。
【0054】
用語「アミノ酸」は、天然に存在しているアミノ酸および合成のアミノ酸、ならびに天然に存在しているアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸のアナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在しているアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸、ならびに後で改変されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然に存在しているアミノ酸と同じ基本的な化学的構造(すなわち、水素に結合した炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基)を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をいう。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在しているアミノ酸と同じ基本的な化学的構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学的構造とは異なる構造を有するが、天然に存在しているアミノ酸と同様の様式で機能する化合物をいう。
【0055】
アミノ酸は、それらの一般的に公知の3文字記号によって、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commisionによる1文字記号によってのいずれかによって、本明細書中で言及され得る。
【0056】
「検出可能な部分」または「標識」は、分光光度的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段によって検出可能な組成物をいう。例えば、有用な標識として、32P、35S、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に使用されるような)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン(dioxigenin)、ハプテン、および抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能であるタンパク質、あるいは、標的に対して相補的である配列を有する核酸分子が挙げられる。検出可能な部分は、しばしば、サンプル中の結合した検出可能な部分の量を定量するために使用され得る、測定可能なシグナル(例えば、放射活性シグナル、色素生成シグナル、または蛍光シグナル)を生成する。検出可能な部分は、共有結合的に、あるいはイオン結合、ファンデルワールス結合または水素結合のいずれかによって、プライマーまたはプローブに取りこまれ得るかあるいはプライマーまたはプローブに対して付着させられ得る(例えば、放射性ヌクレオチドまたはストレプトアビジンによって認識されるビオチニル化ヌクレオチドの取りこみ)。検出可能な部分は、直接的または間接的に検出可能であり得る。間接的な検出は、検出可能な部分に対する、第2の直接的または間接的に検出可能な部分の結合を含み得る。例えば、検出可能な部分は、結合パートナーのリガンド(例えば、ストレプトアビジンについての結合パートナーである、ビオチン、または相補的配列についての結合パートナーである、ヌクレオチド配列(このヌクレオチド配列は、この相補的配列に特異的にハイブリダイズする)であり得る。結合パートナーは、それ自体が直接検出可能であり得、例えば、抗体は、蛍光分子でそれ自体が標識され得る。結合パートナーはまた、間接的にも検出可能であり得、例えば、相補的なヌクレオチド配列を有する核酸は、分岐したDNA分子の一部であり得、これは、次いで、他の標識された核酸分子とのハイブリダイゼーションを介して検出可能である(例えば、P.D.FahrlanderおよびA.Klausner、Bio/Technology 6:1165(1988)を参照のこと)。シグナルの定量は、例えば、シンチレーションカウンティング、デンシトメトリー、またはフローサイトメトリーによって達成される。
【0057】
「抗体」は、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に結合しそしてそれを認識する、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドリガンドまたはそのフラグメントをいう。認識される免疫グロブリン遺伝子として、κおよびλ軽鎖定常領域遺伝子、α、γ、δ、ε、およびμ重鎖定量領域遺伝子、ならびに種々の免疫グロブリン可変領域の遺伝子が挙げられる。抗体は、例えばインタクトな免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼでの消化によって産生される多数の十分に特徴付けられたフラグメントとして、存在する。これには、例えば、Fab’フラグメントおよびF(ab)’フラグメントが挙げられる。用語「抗体」はまた、本明細書中で使用される場合には、抗体全体の改変によって産生されたか、または組換えDNA方法論を使用して新たに合成されたかのいずれかである、抗体フラグメントを含む。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または単鎖抗体もまた、含まれる。抗体の「Fc」部分は、1つ以上の重鎖定常領域ドメイン、CH、CH、およびCHを含むが、重鎖可変領域を含まない、免疫グロブリン重鎖の部分をいう。
【0058】
「イムノアッセイ」は、抗原を特異的に結合する抗体を使用するアッセイである。イムノアッセイは、抗原を単離、標的化および/または定量するための、特定の抗体の特異的結合特性の使用によって特徴付けられる。
【0059】
タンパク質またはペプチドについて言及する場合、句、抗体に対して「特異的に(または選択的に)結合する」または「〜と特異的に(または選択的に)免疫反応性である」は、タンパク質と他の生物物質(biologics)との異種集団中のタンパク質の存在を決定する、結合反応をいう。従って、設計されたイムノアッセイの条件下では、その特定化した抗体が、バックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に対して結合し、そしてそのサンプル中に存在する他のタンパク質に対しては有意な量では実質的には結合しない。このような条件下での抗体に対する特異的結合は、特定のタンパク質についてのその特異性について選択される抗体を必要とし得る。例えば、ラット、マウス、またはヒトのような特定の種に由来する精液の塩基性タンパク質に対して惹起されたポリクローナル抗体は、精液の塩基性タンパク質と特異的に免疫反応しそして他のタンパク質(精液の塩基性タンパク質の多型改変体および対立遺伝子を除く)とは反応しない、ポリクローナル抗体のみを得るように選択され得る。この選択は、他の種に由来する精液の塩基性タンパク質分子と交差反応する抗体を差し引くことよって達成され得る。種々のイムノアッセイの形式が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用され得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイが、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために慣用的に使用される(例えば、特異的な免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイの形式および条件の記載については、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988)を参照のこと)。代表的には、特異的または選択的な反応は、少なくとも2倍のバックグラウンドのシグナルまたはノイズであり、そしてより代表的には、バックグラウンドの10倍から100倍より大きい。
【0060】
(発明の詳細な説明)
本発明は、前立腺ガンの患者のサンプルおよび前立腺ガンを有さない(例えば、良性の前立腺の過形成を有する)被験体のサンプルにおいて示差的に存在するマーカーの発見、ならびに前立腺ガンの診断を補助するための方法およびキットにおけるこの発見の適用に基づく。被験体から採取されたサンプル中の1つ以上のマーカーの量をモニターすることによって、本発明の方法およびキットは、被験体の病理学的な状態を決定することが可能であり得る。例えば、1つ以上のこれらのマーカーをモニターし、高い血清レベルのPSAを有すると診断された被験体が、前立腺ガンまたはBPHを有するか否かを決定し得る。本発明の方法およびキットはまた、前立腺ガンの存在または非存在を確認するための従来の前立腺ガンの試験方法に加えて、使用され得る。本発明の方法は、血液、血清、尿、精子、精液、精漿または組織抽出物のような容易に得られる生物学的なサンプルの正確な定量を使用して、短時間で行われ得る。
【0061】
本発明のマーカーは、任意の見かけの分子量を含む、任意の適切な特徴を有し得る。例えば、適切なマーカーは、27,000Da未満、好ましくは、約20,000Da未満、より好ましくは、約15,000Da未満、なおより好ましくは、約10,000Da未満の見かけの分子量を有し得る。別の例においては、いくつかの適切なマーカーは、BPHの患者のサンプルと比較して、前立腺ガンの患者のサンプル中で上昇したレベルで存在する。これらとしては、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、約8240Da、または約8714Daの見かけの分子量を有しているマーカーが挙げられるが、これらに限定されない。なお別の例においては、いくつかの適切なマーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルと比較して、BPHの患者のサンプル中で上昇したレベルで存在する。これらとしては、約2276Da、約2530Da、約2095Da、約3030Da、約3038Da、約3224Da、約3600Da、約3835Da、約3915Da、約3933Da、または約4175Daの見かけの分子量を有するマーカーが挙げられるが、これらに限定されない。これらのマーカーは、多数の生物学的なサンプル中で見出され得、そして精漿中で見出されるマーカーは、好ましくは、本発明の方法およびキットにおいてモニターされる。
【0062】
各々のマーカーは、これらのマーカーの結合に好ましい選択的な条件下で、これらのマーカーが、被験体から採取されたサンプルにおいて富化されそして測定されるのを可能にする、特定の結合特性を有し得る。例えば、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約8030Da、および約8714Daの見かけの分子量を有しているマーカーは、金属イオン(例えば、ニッケル)を含有している吸着剤に結合し、このことは、これらのマーカーが、金属イオンに結合し得るアミノ酸残基(例えば、ヒスチジン)を有し得ることを示す。同様に、約2276Da、約2905Da、約3038Da、約3600Da、約3835Da、約3933Da、および約4175Daの見かけの分子量を有しているマーカーが、同じタイプの吸着剤に結合し得る。
【0063】
約2776Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、および約8240Daの見かけの分子量を有しているマーカーが、疎水性基(例えば、脂肪族C16炭化水素基)を含有している吸着剤に結合し、このことは、これらのマーカーが、疎水性部分を含有しているアミノ酸残基を有し得ることを示している。同様に、約2276Da、約2530Da、約2905Da、約3030Da、約3224Da、約3600Da、および約3915Daの見かけの分子量を有しているマーカーが、同じタイプの吸着剤に結合し得る。
【0064】
5753Daの分子量を有しているマーカーはさらに、疎水性基およびアニオン基を含有している吸着剤(例えば、スルホン酸基で官能化されたポリスチレンラテックスビーズ)に対してさらに結合し得、このことは、このマーカーが、塩基性のアミノ酸残基および疎水性部分を有することを示している。これらのマーカーの中でも、約5753Daの見かけの分子量を有しているマーカーが、本発明の方法およびキットを用いて好ましくモニターされる。なぜなら、これは、特定の選択的な条件下でほぼ排他的に富化され得、そして前立腺ガンの患者から採取されたサンプル中で多量に検出されるが、他の被験体(例えば、良性の前立腺の過形成を有する被験体)に由来するサンプル中では検出されないからである。
【0065】
この約5753Daの分子量を有しているマーカーは、セメノゲリンI(semenogeli I)タンパク質のPSA媒介タンパク質分解によって生成されるペプチドフラグメント(セメノゲリンIのアミノ酸部分85〜136;図1に示される配列番号1を参照のこと)である、精液の塩基性タンパク質として同定される。この精液の塩基性タンパク質は、C末端のチロシンを有し、そしてこの精液の塩基性タンパク質の直前のセメノゲリンIのペプチドフラグメント(すなわち、精液の塩基性タンパク質のN末端側のフラグメント)は、ロイシン−ロイシンのC末端の配列を有する。これらのアミノ酸の両方ともが、PSAの特異的な加水分解部位として公知であり、このことは、精液の塩基性タンパク質が、PSAのセリンプロテアーゼ酵素活性(例えば、キモトリプシン様活性)によって生成される切断された産物であることを示している。
【0066】
精液の塩基性タンパク質は、前立腺ガンの患者から採取された精漿中に豊富に存在する。しかし、その存在は、BPHの患者から採取された精漿中ではほぼ無視できる。このことは、前立腺ガン患者の精漿中のPSAが、BPHを有する患者中よりもはるかにより活性であることを示す。なぜなら、サンプル中に存在する精液の塩基性タンパク質の量は、PSAのタンパク質分解活性を反映し得るからである。この結論は、BPHの結節中のほとんどのPSAがおそらく、複数の内部切断を有し、それによってはるかに低い特異性のセリンプロテアーゼ活性を生じるという以前の知見と一致する。Chenら、J.Urol.167:2166−2170(1997)を参照のこと。
【0067】
従って、いくつかの実施形態においては、被験体に由来するサンプル中のPSA媒介タンパク質分解によって生成された切断された産物を、例えば、精液の塩基性タンパク質の量を測定することによって、前立腺ガンの診断を補助するためにモニターし得る。サンプル中のPSAの量を測定する代わりに、サンプル中のPSAの生物学的な活性をモニターすることが、いくつかの利点を有する。第1に、検出されるシグナルは、PSAの活性を測定する場合に、増幅される。例えば、酵素の代謝回転速度に依存して、1つのPSA分子は、そのタンパク質基質(例えば、セメノゲリンIまたはセメノゲリンII)が十分な量で存在する場合には、多くの検出可能な切断された産物を産生し得る。従って、2つのサンプル中のPSA活性において差異が存在する場合には、この差異は、切断された産物の量を使用して測定され得る。増幅効果は、例えば、サンプル間のPSAの量の差異が非常に小さく、そして従来の方法を使用して決定することが困難である場合に(例えば、前立腺ガンの初期段階)、有用であり得る。第2に、BPH患者中のPSAは、前立腺ガンの患者中のPSAよりもはるかに低いセリンプロテアーゼ活性を有する。減少したセリンプロテアーゼ活性は、より少ない量の、PSAの切断産物(例えば、精液の塩基性タンパク質)である、マーカーを生じ得る。従って、前立腺ガンの患者中の検出可能な切断産物は、おそらく、BPHの患者中よりも多い。PSAの量をモニターするよりもむしろ、PSA媒介タンパク質分解によって生成される切断産物であるマーカーをモニターすることによって、本発明の方法およびキットは、患者がBPHまたは前立腺ガンを有するか否かを決定するための、より高感度の方法を提供し得る。
【0068】
(I.気相イオンスペクトル分析を使用してマーカーを検出するための方法) 1つの局面においては、本発明は、前立腺ガンの患者のサンプルおよび前立腺ガンを有さないヒト(例えば、BPHの患者)のサンプルにおいて示差的に存在するマーカーを検出するための方法を提供する。記載されるマーカーの任意の1つまたは組み合わせが、本発明のこの局面の範囲内であり、そして検出され得る。これらのマーカーを検出するための方法は、多くの適用を有する。例えば、1つのマーカーまたはマーカーの組み合わせを測定して、前立腺ガンとBPHとの間を区別し得、そして従って、患者の前立腺ガンの診断を補助するとして有用である。別の例においては、これらのマーカーを検出するための本発明の方法は、これらのマーカーの発現を調節する化合物についてアッセイしそしてそれを同定するために、インビトロでの前立腺ガン細胞または前立腺ガンについてのインビボ動物モデルに適用され得る。
【0069】
(A.気相イオンスペクトル分析による検出)
検出方法の1つの実施形態においては、気相イオンスペクトル分析計が使用され得る。この方法は、以下の工程を包含する:(a)サンプルを、その上に吸着剤を含有している基材と、マーカーと吸着剤との間での結合を可能にする条件下で接触させる工程;および(b)気相イオンスペクトル分析計によって吸着剤に結合したマーカーを検出する工程。
【0070】
これらのマーカーの検出は、特定の選択性条件(例えば、使用される吸着剤または洗浄溶液のタイプ)を使用して増強され得る。好ましい実施形態においては、マーカーを発見するために使用されたものと同じまたは実質的に同じ選択性条件が、サンプル中のマーカーを検出するための方法において使用され得る。例えば、疎水性基および陰イオンの基を有している吸着剤(例えば、スルホン酸基で官能化されたポリスチレンラテックスビーズ)を含有している基材が、使用され得る。別の例においては、疎水性基(例えば、両親媒性のC16炭化水素基)を有している吸着剤を含有している基材が、使用され得る。なお別の例においては、吸着剤として金属キレート基に結合した金属イオン(例えば、ニトロ三酢酸基によってキレート化されたニッケル金属イオン)を有している吸着剤を含有している基材が、使用され得る。いくつかの実施形態においては、吸着剤は、マーカー(例えば、精子の塩基性タンパク質)に特異的に結合する抗体であり得る。好ましくは、サンプルは、被験体から採取された精漿である。
【0071】
1つの実施形態においては、吸着剤を含有している基材は、プローブの形態であり得る。これは、気相イオンスペクトル分析計に除去可能に挿入することができる。例えば、基材は、その表面上に吸着剤を有しているストリップの形態であり得る。別の実施形態においては、吸着剤を含有している基材が、気相イオンスペクトル分析計中に除去可能に挿入され得るプローブを形成するように、別の基材上に配置され得る。例えば、吸着剤を含有している基材は、固相(例えば、マーカーを結合するための官能基を有するポリマーまたはガラスビーズ)であり得る。これは続いて、プローブを形成するように第2の基材上に配置される。例えば、第2の基材は、ストリップの形態であり得るか、または予め決定された接近可能な位置でウェルの並びを有しているプレートであり得る。この実施形態の1つの利点は、マーカーが、1つの物理的な状況において第1の基材に対して吸着され得、そして第2の基材に移動させられることであり、これは次いで、気相イオンスペクトル分析計による分析に供され得る。プローブは、それが気相イオンスペクトル分析計に除去可能に挿入され得る限りは、任意の形状であり得る。
【0072】
プローブはまた、気相イオンスペクトル分析計の入口システムおよび検出装置での使用のために適合させられ得る。例えば、プローブは、垂直方向および/または水平方向に移動可能な台車中でのマウントのために適合させられ得、台車は、手によるプローブの再配置を必要とすることなく良好な位置になるようにプローブを水平方向および/または垂直方向に移動する。
【0073】
プローブ基材は好ましくは、吸着剤を支持することが可能な材料から作成される。例えば、プローブ基材材料として、断熱性の材料(例えば、ガラス、セラミック)、半断熱性の材料(例えば、シリコンウェハー)、または伝導性の材料(例えば、金属(例えば、ニッケル、真鍮、鉄、アルミニウム、金)もしくは伝導性のポリマー)、有機ポリマー、生体ポリマー、またはそれらの任意の組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0074】
プローブ基材の表面は、マーカーの結合のために調整され得る。例えば、1つの実施形態においては、プローブ基材の表面は、表面上に吸着剤を配置するために調整され得る(例えば、化学的または機械的に(例えば、ざらざらにする))。吸着剤は、マーカーとの結合のための官能基を含む。いくつかの実施形態においては、基材の材料自体もまた、吸着特性に関係し得、そして「吸着剤」の一部であると考えられえる。
【0075】
任意の数の種々の吸着剤が、それらが本発明のマーカーの結合に適切な結合特性を有する限り、使用され得る。吸着剤は、疎水性基、親水性基、陽イオン基、陰イオン基、金属イオンキレート基、または抗原に対して特異的に結合する抗体、あるいはそれらの組合せ(しばしば、「混合された態様」の吸着剤と呼ばれる)を含み得る。疎水性基を含有している例示的な吸着剤として、両親媒性の炭化水素を有しているマトリックス(例えば、C〜C18両親媒性炭化水素)およびフェニル基のような芳香族炭化水素官能基を有しているマトリックスが挙げられる。親水性基を含有している例示的な吸着剤として、酸化ケイ素(すなわち、ガラス)、または親水性のポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、またはセルロース)が挙げられ得る。陽イオン基を含有している例示的な吸着剤として、第2級、第3級、または第4級アミンのマトリックスが挙げられる。陰イオン基を含有している例示的な吸着剤として、硫酸塩陰イオン(SO )のマトリックスおよびカルボン酸塩陰イオン(すなわち、COO)、またはリン酸塩陰イオン(OPO )のマトリックスが挙げられる。金属キレート剤を含有している例示的な吸着剤として、金属イオン(例えば、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、ならびにアルミニウムおよびカルシウムのような他の金属イオン)とともに配位共有結合を形成する、1つ以上の電子ドナー基を有する有機分子が挙げられる。抗体を含有している例示的な吸着剤として、本明細書中で提供される任意の1つのマーカーについて特異的な抗体が挙げられる。好ましい実施形態においては、吸着剤は、マーカーを富化しそして同定するために使用された吸着剤と実質的に類似しているかまたは同一である。
【0076】
吸着剤は、連続的なパターンでまたは不連続のパターンで、プローブ基材上に配置され得る。連続的である場合には、1つ以上の吸着剤が、基材の表面上に配置され得る。複数のタイプの吸着剤が使用される場合には、基材の表面は、1つ以上の結合特性が1次元または2次元の勾配で変化するようにコーティングされ得る。不連続である場合には、多数の吸着剤が、基材の表面上の予め決定された接近可能な位置に配置され得る。接近可能な位置は、任意のパターンで配置され得るが、好ましくは、規則的なパターン(例えば、直線、直交の並び、または規則的な曲線(例えば、円))である。それぞれの接近可能な位置は、同じまたは異なる吸着剤を含有し得る。図2においては、吸着剤の不連続なスポットを含有しているプローブが示される。
【0077】
プローブは、基材材料および/または吸着剤の選択に依存して、任意の適切な方法を使用して産生され得る。例えば、金属の基材の表面は、金属の表面の誘導(derivitization)が可能な金属でコーティングされ得る。より詳細には、金属の表面は、酸化ケイ素、酸化チタン、または金でコーティングされ得る。次いで、表面は、二官能性のリンカーを用いて誘導され得、その一方の末端が、表面上で官能基と共有結合し得、そしてその他方の末端がさらに、吸着剤として機能する基でさらに誘導され得る。別の例においては、結晶のシリコンから作成された有孔性のシリコンの表面が、マーカーの結合のための吸着剤を含有するように化学的に改変され得る。なお別の例においては、ヒドロゲル骨格を有する吸着剤が、例えば、置換されたアクリルアミドモノマー、置換されたアクリレートモノマー、または吸着剤として選択された官能基を含有しているその誘導体を含むモノマーの溶液をインサイチュで重合することによって、基材の表面上に直接形成され得る。
【0078】
本発明での使用に適切なプローブはまた、例えば、第WO98/59361号、1999年4月29日に提出された第U.S.S.N.60/131,652号、およびWeiら、Nature 399:243−246(1999)に記載されている。
【0079】
吸着剤を含有しているプローブ基材は、サンプルと接触する。サンプルは、好ましくは、生物学的な流体サンプルである。生物学的な流体サンプルの例として、血液、血清、尿、精子、精液、精漿、または組織抽出物が挙げられる。好ましい実施形態においては、生物学的な流体は、精漿を含む。
【0080】
サンプルは、溶出液で可溶化し得るか、または溶出液と混合し得る。次いで、吸着剤を含有しているプローブ基材が、濡らすこと、浸すこと、漬けること、噴霧すること、洗浄すること、またはピペッティングすることなどを含む任意の技術を使用して、溶液と接触させる。一般的には、数アトモルから100ピコモルのマーカーを、約1μlから500μl中に含有しているサンプルの容量が、吸着剤への結合のためには十分である。
【0081】
サンプルは、吸着剤を含有しているプローブ基材と、マーカーが吸着剤に結合することを可能にするための十分な期間の間、接触させられ得る。代表的には、サンプルと吸着剤を含有している基材とが、約30秒間から約12時間、そして好ましくは、約30秒間から約15分間の間の期間、接触させられる。
【0082】
サンプルが吸着剤を含有しているプローブ基材と接触させられる温度は、特定のサンプルおよび選択されるプローブの関数であり得る。代表的には、サンプルは、室温および大気圧条件下で、プローブ基材と接触させられる。しかし、いくつかのサンプルについては、改変された温度(代表的には、4℃から37℃)および圧力条件が所望され得る。この条件は、当業者によって決定することが可能である。
【0083】
吸着剤を含有しているプローブ基材とサンプルまたはサンプル溶液との接触の後、プローブ基材の表面上の結合していない材料が、結合した材料のみが基材の表面上に保持されるように、洗い流されることが好ましい。プローブ基材の表面の洗浄は、例えば、溶出液または洗浄溶液で基材の表面を濡らすこと、浸すこと、漬けること、リンスすること、噴霧すること、または洗浄することによって達成され得る。微小流体光学のプロセスが、溶出剤のような洗浄溶液がプローブ上の吸着剤の小さなスポットに対して導入される場合に、好ましく使用される。代表的には、洗浄溶液は、0℃から100℃の間、好ましくは、4℃から37℃の間の温度であり得る。
【0084】
任意の適切な洗浄溶液または溶出液が、プローブ基材の表面を洗浄するために使用され得る。例えば、有機の溶液または水性の溶液が使用され得る。好ましくは、水性の溶液が使用され得る。例示的な水性の溶液として、HEPES緩衝液、Tris緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水などが挙げられる。特定の洗浄溶液または溶出剤の選択は、他の実験条件(例えば、使用される吸着剤または検出されるマーカーのタイプ)に依存し、そして当業者によって決定され得る。例えば、疎水性基およびスルホン酸基を吸着剤として含有しているプローブ(例えば、SCX1 ProteinChip(登録商標)アレイ)が使用される場合には、水性の溶液(例えば、HEPES緩衝液)が好ましくあり得る。別の例においては、金属結合基を含有しているプローブ(例えば、Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイ)が使用される場合には、水性の溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)が好ましくあり得る。なお別の例においては、疎水性基を含有しているプローブ(例えば、H4 ProteinChip(登録商標)が使用される場合には、水が洗浄溶液として好ましくあり得る。
【0085】
必要に応じて、エネルギー吸収分子(例えば、溶液中)が、プローブ基材の表面上に結合したマーカーまたは他の物質に対して適用され得る。噴霧すること、ピペッティング、または漬けることが、使用され得る。これは、結合していない材料がプローブ基材の表面から洗い流された後に行われ得る。エネルギー吸収分子は、気相イオンスペクトル計中のエネルギー源からのエネルギーを吸収し、それによってプローブの表面からのマーカーまたは他の物質の脱着を補助する分子をいう。例示的なエネルギー吸収分子として、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸、およびジヒドロ安息香酸が挙げられる。
【0086】
マーカーがプローブに結合させられた後、これは、気相イオンスペクトル分析計を使用して検出される。プローブ上の吸着剤に結合したマーカーまたは他の物質は、気相イオンスペクトル分析計を使用して分析され得る。これは、例えば、質量スペクトル分析計、イオン移動度スペクトル分析計、または全イオン電流測定デバイスを含む。マーカーの量および特徴は、気相イオンスペクトル分析計を使用して決定され得る。目的のマーカーに加えて他の物質もまた、気相イオンスペクトル分析計によって検出され得る。
【0087】
1つの実施形態においては、質量スペクトル分析計は、プローブ上のマーカーを検出するために使用され得る。代表的な質量スペクトル分析計においては、マーカーとともにプローブが、質量スペクトル分析計の入口システム中に導入される。次いで、マーカーは、レーザー、加速原子ボンバードメント、またはプラズマのようなイオン化源によってイオン化される。生成されたイオンが、イオン光学アセンブリによって回収され、そして、次いで通過するイオンを質量分析装置が散乱させ、そして分析する。質量分析計を通過するイオンが、検出装置によって検出される。次いで、検出装置は、検出されたイオンの情報を、質量−対−電荷の比に変換する。マーカーまたは他の物質の存在の検出は、代表的には、シグナルの強度の検出を含む。次いで、これは、プローブに結合したマーカーの量および特性を反映し得る。
【0088】
好ましい実施形態においては、レーザー脱離飛行時間質量スペクトル分析計が、本発明のプローブとともに使用される。レーザー脱離質量スペクトル分析計においては、結合したマーカーを有するプローブが、入口システム中に導入される。マーカーは、脱着され、そしてイオン化供給源からのレーザーによって気相中にイオン化される。生成されたイオンがイオン光学アセンブリによって回収され、次いで、飛行時間質量分析計中で、イオンが、短い高電圧の場を通じて加速され、そして高減圧のチャンバー中に浮遊させられる。高減圧のチャンバーの遠い末端では、加速されたイオンは、種々の時間に敏感な検出装置の表面にぶつかる。飛行時間は、イオンの質量の関数であるので、イオン化と衝突との間で経過した時間が、特異的な質量の分子の存在または非存在を同定するために使用され得る。当業者が理解するように、レーザー脱離飛行時間質量スペクトル分析計のこれらの任意の成分は、脱着、加速、検出、時間の測定などの種々の手段を使用する質量スペクトル分析計のアセンブリにおいて、本明細書中に記載される他の化合物と組合せられ得る。
【0089】
別の実施形態においては、イオン移動度スペクトル分析計が、マーカーを検出しそして特徴付けるために使用され得る。イオン移動度スペクトル分析の原理は、イオンの種々の移動度に基づく。詳細には、イオン化によって産生されるサンプルのイオンは、例えば、質量、電荷、または形状におけるそれらの差異に起因して、電場の影響下にあるチューブ中を種々の速度で移動する。イオン(代表的には、電流の形態で)は、次いでサンプル中のマーカーまたは他の物質を同定するために使用され得る、検出装置で計算される。イオン移動度スペクトル分析の1つの利点は、大気圧で操作することができることである。
【0090】
なお別の実施形態においては、全イオン電流測定デバイスが、マーカーを検出しそして特徴付けるために使用され得る。このデバイスは、単一のタイプのマーカーのみが結合することを可能にする表面化学をプローブが有する場合に、使用され得る。単一のタイプのマーカーがプローブ上に結合させられる場合は、イオン化マーカーから生成された全電流が、マーカーの性質を反映する。マーカーによって産生された全イオン電流が、次いで、既知の化合物の保存された全イオン電流と比較され得る。次いで、マーカーの特徴が決定され得る。
【0091】
マーカーの脱着および検出によって生成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピューターの使用によって分析され得る。コンピュータープログラムは、一般的には、コードを保存する読み取り可能な媒体を含む。特定のコードが、プローブ上のそれぞれの性質の位置、その性質での吸着剤の実態、および吸着剤を洗浄するために使用される溶出条件を含むメモリーにつぎ込まれ得る。この情報を使用して、プログラムは、次いで、特定の選択性特徴(例えば、使用される吸着剤および溶出剤のタイプ)を定義する、プローブ上の一連の性質を同定し得る。コンピューターはまた、プローブ上の特定の接近可能な位置から受容された種々の分子量でのシグナルの強度についてのデータを入力として受容する、コードを含む。このデータは、検出されるマーカーの数を示し得、必要に応じて、これは、シグナルの強度、および検出されるそれぞれのマーカーの決定された分子量を含む。
【0092】
データの分析は、検出されるマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ)を決定する工程、および「アウターライアー(outerliers)」(予め決定された統計学的な分布から偏差するデータ)を除去する工程を包含する。例えば、観察されたピークは、較正され得る。較正は、何らかの参照と比較してそれぞれのピークの高さが計算されるプロセスである。例えば、参照は、機器および化学薬品(例えば、エネルギー吸収分子)によって生成されるバックグラウンドのノイズであり得る。これは、目盛のゼロに設定される。次いで、それぞれのマーカーまたは他の物質について検出されたシグナルの強度が、所望される目盛(例えば、100)の中の相対的な強度の形態で表示され得る。あるいは、標準が、サンプルとともに受け容れられ得、その結果、標準によるピークが、それぞれのマーカーまたは検出される他のマーカーについて観察されるシグナルの相対的な強度を計算するための参照として使用され得る。
【0093】
コンピューターは、得られるデータを表示のための種々の形式に変換し得る。「スペクトル図または保持(retentate)マップ」と呼ばれる1つの形式においては、標準的なスペクトル図が表示され得る。ここでは、図は、それぞれの特定の分子量で検出装置に到達するマーカーの量を示す。「ピークマップ」と呼ばれる別の形式においては、ピークの高さおよび質量の情報のみが、スペクトル図から保持され、それによってより明確な画像を生じ、そしてほぼ同一の分子量を有するマーカーをより容易に見ることを可能にする。「ゲル図」と呼ばれるなお別の形式においては、ピーク図によるそれぞれの質量が、それぞれのピークの高さに基づくグレイスケールの画像に変換され得、それによって電気泳動ゲル上のバンドと同様の見かけを生じる。「3−Dオーバーレイ」と呼ばれるなお別の形式においては、いくつかのスペクトルが、相対的なピークの高さにおける微妙な変化を研究するために重ねられ得る。「差異マップ図」と呼ばれるなお別の形式においては、2つ以上のスペクトルが比較され得、サンプル間でアップレギュレートされるかまたはダウンレギュレートされる特有のマーカー(単数または複数)が、便利に強調される。任意の2つのサンプルに由来するマーカーのプロフィール(スペクトル)が、視覚的に比較され得る。
【0094】
上記の表示形式の任意のものを使用して、特定の分子量(例えば、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、約8240Da、または約8714Da)を有しているマーカーがサンプルから検出されるかどうかが、シグナルの表示によって容易に決定され得る。さらに、シグナルの強度から、プローブの表面上に結合したマーカーの量が決定され得る。
【0095】
(B.イムノアッセイによる検出) 検出方法の別の実施形態においては、イムノアッセイが、サンプル中のマーカーを定量的または定性的に検出しそして分析するために使用され得る。この方法は、以下の工程を包含する:(a)マーカーに特異的に結合する抗体を提供する工程であって、ここで、マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプル、および前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)のサンプル中に異なって存在するポリペプチドである;(b)サンプルを抗体と接触させる工程;ならびに(c)サンプル中のマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する工程。
【0096】
マーカーに対して特異的に結合する抗体を調製するために、精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列が使用され得る。約5753Daの分子量を有するマーカーについては、精子の塩基性タンパク質、核酸、およびアミノ酸配列が利用可能である。例えば、図1ならびにLiljaおよびJeppson、Febs.Lett.182:181−184(1985)を参照のこと。他のマーカーについての核酸およびアミノ酸配列は、これらのマーカーのさらなる特徴付けによって得ることができる。例えば、それぞれのマーカーは、多数の酵素(例えば、トリプシン、V8プロテアーゼ)を用いてマップされるペプチドであり得る。それぞれのマーカーによる消化フラグメントの分子量は、種々の酵素によって生成される消化フラグメントの分子量と適合する配列についての、データベース(例えば、SwissProtデータベース)を検索するために使用され得る。この方法を使用して、他のマーカーの核酸およびアミノ酸配列が、これらのマーカーがデータベース中の公知のタンパク質であるかどうかが、同定され得る。
【0097】
あるいは、タンパク質は、タンパク質ラダー配列決定を使用して配列決定され得る。タンパク質のラダーは、例えば、分子を断片化すること、およびフラグメントを酵素消化に供すること、またはフラグメントの末端から単一のアミノ酸を順番に除去する他の方法によって、生成され得る。タンパク質のラダーを調製する方法は、例えば、国際公開番号第WO93/24834号(Chaitら)および米国特許第5,792,664号(Chaitら)に記載されている。次いで、ラダーは、質量分析によって分析される。ラダーのフラグメントの質量の差異によって、分子の末端から除去されたアミノ酸を同定する。
【0098】
マーカーがデータベース中で公知のタンパク質ではない場合には、核酸およびアミノ酸配列が、マーカーのアミノ酸配列の一部でさえの知見を用いて、決定され得る。例えば、縮重プローブが、マーカーのN末端のアミノ酸配列に基づいて作製され得る。次いで、これらのプローブは、マーカーが最初に検出されたサンプルから作製されたゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用され得る。ポジティブなクローンが同定され得、増幅され得、そしてそれらの組換えDNA配列が、周知の技術を使用してサブクローン化され得る。例えば、Current Protocols for Molecular Biology(Ausbelら、Green Publishing Assoc.and Wiley−Interscience 1989)、およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、1989)を参照のこと。
【0099】
精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列を使用して、マーカーに対して特異的に結合する抗体が、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して調製され得る。例えば、Coligan、Current Protocols in Immunology(1991);HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(1988);Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、1986);ならびにKohlerおよびMilstein、Nature 256:495−497(1975)を参照のこと。このような技術として、ファージまたは同様のベクター中の組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製、ならびにウサギまたはマウスを免疫化することによるポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Huseら、Science 246:1275−1281(1989);Wardら、Nature 341:544−546(1989)を参照のこと)。
【0100】
抗体が提供された後、マーカーは、多数の十分に認識されている免疫学的な結合アッセイの任意のものを使用して検出され得、そして/または定量され得る(例えば、米国特許第4,366,241号;同第4,376,110号;同第4,517,288号;および同第4,837,168号を参照のこと)。有用なアッセイとして、例えば、酵素イムノアッセイ(EIA)(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイが挙げられる。一般的なイムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology、第37巻(Asai編、1993);Basic and Clinical Immunology(StitesおよびTerr編、第7版、1991);HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988)をもまた参照のこと。
【0101】
一般的には、被験体から得られたサンプルは、マーカーに対して特異的に結合する抗体と接触させられ得る。必要に応じて、抗体は、抗体をサンプルと接触させる前に、複合体の洗浄および続く単離を容易にするために、固体支持体に対して固定され得る。固体支持体の例として、例えば、マイクロタイタープレート、スティック、ビーズ、またはマイクロビーズの形態での、ガラスまたはプラスチックが挙げられる。抗体はまた、上記に記載されているプローブ基材またはProteinChip(登録商標)アレイに対して付着させられ得る。サンプルは、好ましくは、被験体から採取された生物学的な液体のサンプルである。生物学的な液体のサンプルの例として、血液、血清、尿、精子、精液、精漿、または組織抽出物が挙げられる。好ましい実施形態においては、生物学的な液体は、精漿を含む。サンプルは、サンプルを抗体に対して接触させる前に、適切な溶出剤で稀釈され得る。
【0102】
抗体とのサンプルのインキュベーション後、混合物が洗浄され、そして形成された抗体−マーカー複合体が検出され得る。これは、洗浄された混合物と検出試薬とのインキュベーションによって達成され得る。この検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識される二次抗体であり得る。例示的な検出可能な標識として、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標))、蛍光色素、放射性標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて一般的に使用される他のもの)、ならびに比色標識(例えば、コロイド状の金、または着色したガラスもしくはプラスチックビーズ)が挙げられる。あるいは、サンプル中のマーカーは、間接的なアッセイを使用して検出され得る。ここでは、例えば、第2の標識された抗体が、結合したマーカー特異的抗体を検出するために、そして/または競合もしくは阻害アッセイにおいて使用される。ここでは、例えば、マーカーの異なるエピトープに対して結合するモノクローナル抗体が、混合物と同時にインキュベートされる。
【0103】
アッセイを通じて、インキュベーションおよび/または洗浄工程が、それぞれの試薬の混合の後に必要とされ得る。インキュベーション工程は、約5秒から数時間まで、好ましくは、約5分から約24時間までで変化し得る。しかし、インキュベーション時間は、アッセイ形式、マーカー、溶液の容量、濃度などに依存する。通常は、アッセイは、室温で行われ得るが、これらは、例えば、10℃から40℃までの温度の範囲の間で行われ得る。
【0104】
イムノアッセイは、サンプル中のマーカーの存在または非存在、およびサンプル中のマーカーの量を決定するために、使用され得る。第1に、サンプル中のマーカーの試験量が、上記のイムノアッセイ方法を使用して検出され得る。マーカーがサンプル中に存在する場合には、これは、上記に記載される適切なインキュベーション条件下で、マーカーに対して特異的に結合する抗体とともに、抗体−マーカー複合体を形成する。抗体−マーカー複合体の量は、標準に対して比較することによって決定され得る。標準は、例えば、サンプル中に存在することが既知の化合物または別のタンパク質であり得る。上記に記載されるように、マーカーの試験量は、測定値の単位がコントロールに対して比較され得る限りは、必ずしも絶対的な単位で測定される必要はない。
【0105】
サンプル中のこれらのマーカーを検出するための方法は、多くの適用を有する。例えば、1つ以上のマーカーが、前立腺ガンの診断または予想を補助するために測定され得る。別の例においては、マーカーの検出のための方法は、ガンの処置のために被験体の応答をモニターするために使用され得る。別の例においては、マーカーを検出するための方法は、インビボまたはインビトロでこれらのマーカーの発現を調節する化合物についてアッセイするため、およびそのような化合物を同定するために、使用され得る。
【0106】
(II.マーカーの試験量を使用して前立腺ガンを診断するための方法)
別の局面においては、本発明は、前立腺ガンの患者のサンプルおよび前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)のサンプル中で異なって存在するマーカーを使用する、前立腺ガンの診断を補助するための方法を提供する。上記に記載されるマーカーの任意の1つまたは組合せが、前立腺ガンの診断を補助するために使用され得る。利用可能である現在の前立腺ガンの試験と比較して、本発明の方法は、被験体が前立腺ガンまたはBPHを有するかどうかを区別するための、迅速でありそして簡単な方法を提供し、従って、前立腺ガンの診断を補助する。この方法は、以下の工程を包含する:(a)被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定する工程;および(b)試験量が、前立腺ガンの診断と一致する診断量であるかどうかを決定する工程。
【0107】
工程(a)においては、被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量が決定される。任意の適切なサンプルが、被験体から得られ得る。好ましくは、サンプルは、試験される被験体から採取された生物学的な液体のサンプルである。生物学的な液体のサンプルの例として、血液、血清、尿、精子、精液、精漿、または組織抽出物が挙げられる。好ましい実施形態においては、生物学的な液体は、精漿を含む。なぜなら、精漿は、前立腺に対して物理的に近位である体液であり、そしてガン性の細胞によって最初に罹患される他の組織であるからである。従って、精漿は、おそらく、前立腺ガンとは異なるタンパク質、またはアップレギュレートされるかもしくはダウンレギュレートされるタンパク質を含む。さらに、精漿サンプルを試験することは、患者に針を挿入することのような、侵襲性である手順を必要とはしない。
【0108】
サンプルが得られた後、任意の適切な方法が、試験される被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定するために使用され得る。例えば、気相イオンスペクトル分析計またはイムノアッセイが使用され得る。
【0109】
1つの実施形態においては、気相イオンスペクトル分析が、被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定するために使用され得る。最初に、1つ以上のマーカーが、上記の方法を使用して気相イオンスペクトル分析で検出され得る。マーカーが気相イオンスペクトル分析器によって検出された後、マーカーの試験量が決定され得る。例えば、シグナルは、目的のマーカーの分子量で表示される。表示されるシグナルの強度または大きさに基づいて、試験されるサンプル中のマーカーの量が決定され得る。サンプル中のマーカーの試験量は、それがマーカーのコントロール量に対して定量的または定性的に比較され得る限りは、必ずしも絶対的な単位である必要はなく、相対的な単位であり得ることが注意される。例えば、上記に記載するように、検出されるマーカーの量は、バックグラウンドのノイズに基づいて相対的な強度に関して表示され得る。好ましくは、マーカーの試験量およびコントロール量は、同じ条件下で測定される。
【0110】
所望される場合には、マーカーの絶対的な量は、較正によって決定され得る。例えば、精子の塩基性タンパク質のような精製されたマーカーが、プローブの表面上の吸着剤の種々のスポットに対して漸増量で添加され得る。次いで、それぞれのスポットからピークが得られ得、そしてそれぞれのスポットでの精子の塩基性タンパク質の濃度に対してグラフにプロットされ得る。ピーク強度対濃度のプロットから、試験される任意のサンプル中のマーカーの絶対的な量が決定され得る。
【0111】
別の実施形態においては、イムノアッセイは、被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定するために使用され得る。最初に、サンプル中のマーカーの試験量が、上記に記載されるイムノアッセイ方法を使用して検出され得る。マーカーがサンプル中に存在する場合には、これは、上記に記載される適切なインキュベーション条件下で、マーカーに対して特異的に結合する抗体とともに、抗体−マーカー複合体を形成する。抗体−マーカー複合体の量は、標準に対して比較することによって決定され得る。上記に記載されるように、マーカーの試験量は、測定値の単位がコントロールに対して比較され得る限りは、必ずしも絶対的な単位である必要はない。
【0112】
マーカーの試験量がいずれかの方法を使用して決定された後、試験量に基づいて、被験体が前立腺ガンを有するかどうかが決定され得る。この決定は、任意の適切な方法によって行われ得る。例えば、試験量は、以下のように決定された値または値の範囲であり得るコントロール量に対して比較され得る。
【0113】
1つの実施形態においては、コントロール量は、BPHの患者に由来する比較可能なサンプル中に存在するマーカーの量であり得る。コントロール量は、試験量を測定する条件と同じであるかまたは実質的に同様の実験条件下で測定される。例えば、試験サンプルが、被験体の精漿から得られ、そしてマーカーが特定のプローブを使用して検出される場合には、マーカーのコントロール量は、好ましくは、同じプローブを使用してBPHの患者の精漿サンプルから決定される。マーカーのコントロール量が、前立腺ガンを有さない被験体(例えば、BPHの患者)に由来する有意な数のサンプルに基づいて決定され、その結果、これが、その集団中のマーカーの量のバリエーションを反映することが、好ましい。マーカーの試験量がマーカー(これは、前立腺ガンの患者のサンプル中で上昇させられることが公知である)(例えば、5753Da)のコントロール量と比較して有意に増大している場合には、これは、試験される被験体が前立腺ガンを有するというポジティブな指標であり得る。例えば、試験量が、コントロール量と比較して、1.5倍、好ましくは2倍、より好ましくは5倍、または最も好ましくは10倍に増大させられる場合には、試験量は、前立腺ガンの診断と一致する診断量である。逆は、前立腺ガンの患者よりもBPHの患者のサンプルにおいて上昇させられることが公知のマーカーについて適用される(例えば、3600Da)。
【0114】
別の実施形態においては、コントロール量は、前立腺ガンの患者に由来する比較可能なサンプル中に存在するマーカーの量であり得る。再び、マーカーのコントロール量が、前立腺ガンの患者から採取された有意な数のサンプルに基づいて決定され、その結果、これが、その集団中のマーカーの量のバリエーションを反映することが、好ましい。マーカーの試験量がマーカーのコントロール量とほぼ同じである場合には、これは、試験される被験体が前立腺ガンを有するというポジティブな指標であり得る。
【0115】
なお別の実施形態においては、コントロール量は、正常なヒト(すなわち、前立腺ガンおよびBPHを有さないことが既知のヒト)に由来する比較可能なサンプル中に存在するマーカーの量であり得る。マーカーのコントロール量が、正常なヒトから採取された有意な数のサンプルに基づいて決定され、その結果、これは、その集団中のマーカーの量のバリエーションを反映することが、好ましい。特定のマーカー(例えば、5753Da)のコントロール量が、前立腺ガンの患者の比較可能なサンプル中に存在する同じマーカーの量よりも有意に少ない場合には、このマーカーは、前立腺ガンを診断するために使用され得、そして単回の試験でBPHを除外する。このような場合においては、マーカーの試験量が、マーカーのコントロール量と比較して有意に増大している場合には、これは、試験される被験体が前立腺ガンを有するというポジティブな指標であり得る。例えば、試験量が、コントロール量と比較して、1.5倍、好ましくは2倍、より好ましくは5倍、または最も好ましくは10倍に増大させられる場合には、試験量は、前立腺ガンの診断と一致する診断量である。逆は、前立腺ガンの患者よりもBPHの患者のサンプルにおいて上昇させられることが既知のマーカーについて適用される(例えば、3600Da)。
【0116】
試験量が前立腺ガンの診断量であるかどうかを決定するための工程の説明は、図3(a)および図3(b)を参照して記載され得る。図3(a)は、約5753Da(精子の塩基性タンパク質)の見かけの分子量を有しているマーカーを検出することが可能である、SCX1 ProteinChip(登録商標)を使用して測定した、BPHの患者のサンプル中のマーカーの量を示すコントロールの例示的な質量スペクトルである。図3(a)に示すように、ピークA’は、5753Daの分子量で約0.1未満の値を有し、そしてBPHを有している患者中の精子の塩基性タンパク質の量に対応する。図3(b)は、被験体から採取した試験サンプルの質量スペクトルである。図3(b)に示されるように、ピークA’’は、図3(a)のピークA’と同じ分子量であり、そして試験サンプル中の精子の塩基性タンパク質の試験量に対応する。BPHの患者中のマーカーのコントロール量を示す図3(a)に示されるピークA’と比較して、図3(b)中に示されるピークA’’は有意に高く、そして約52の値を有する。被験体のサンプル中のマーカーの試験量を示すピークA’’は、BPHの患者のサンプルから得られたコントロールの値を示すピークA’よりも有意に大きいので、図3(b)の質量スペクトルを産生するために使用されたサンプルが前立腺ガンを有している被験体から採取されたと決定され得る。
【0117】
質量スペクトル分析によって生成されたデータは,次いで、コンピューターソフトウェアによって分析され得る。ソフトウェアは、質量スペクトル分析計からのシグナルをコンピューターで読み取りが可能な形態に変換するコードを含有し得る。このソフトウェアはまた、シグナルが本発明のマーカーまたは他の有用なマーカーに対応するシグナル中に「ピーク」を示すかどうかを決定するために、シグナルの分析のためのアルゴリズムを提供するコードをも含み得る。このソフトウェアまたは、「正常」および前立腺ガンに特徴的な代表的なシグナルと、試験サンプルに由来するシグナルとを比較し、そして2つのシグナル間での適合の近さを決定するアルゴリズムを実行するコードをも含み得る。このソフトウェアはまた、どの試験サンプルが最も近いかを示し、それによってあり得る診断を提供するコードをも含み得る。
【0118】
(III.キット)
なお別の局面においては、本発明は、本発明のマーカーを検出するために使用され得る、前立腺ガンの診断を補助するためのキットを提供する。例えば、キットは、上記のマーカーの任意の1つまたはそれらの組合せを検出するために使用され得る。マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルおよびBPHの患者のサンプル中で異なって存在する。本発明のキットは、多くの適用を有する。例えば、キットは、被験体が前立腺ガンまたはBPHを有するかどうかを区別するために、従って、前立腺ガンの診断を補助するために使用され得る。別の例においては、キットは、インビトロで前立腺細胞中のマーカーの発現を調節する化合物、または前立腺ガンについてのインビボの動物モデルにおいてマーカーの発現を調節する化合物を同定するために、使用され得る。
【0119】
1つの実施形態においては、キットは以下を含有し得る:(a)その上に吸着剤を含有している基材(ここでは、吸着剤は、マーカーの結合に適切である)、および(b)洗浄溶液または洗浄溶液を作製するための説明書(ここでは、吸着剤と洗浄溶液の組合せによって、気相イオンスペクトル分析を使用してマーカーの検出が可能となる)。このようなキットは、上記の材料から調製され得、そしてこれらの材料の先の議論(例えば、プローブ基材、吸着剤、洗浄溶液など)がこのセクションに完全に適用可能であり得、必ずしも繰り返す必要はない。
【0120】
いくつかの実施形態においては、キットは、その上に吸着剤を含有している第1の基材(例えば、吸着剤で官能化された粒子)、および気相イオンスペクトル分析計に除去可能に挿入され得るプローブを形成するように第1の基材の下に配置され得る第2の基材を含み得る。他の実施形態においては、キットは、基材の上に吸着剤とともに除去可能に挿入され得るプローブの形態である、単一の基材を含有し得る。
【0121】
必要に応じて、キットはさらに、標識または別の挿入物の形態で適切な操作パラメーターについての説明書を含み得る。例えば、キットは、精漿のサンプルがプローブ上に接触させられた後にプローブを洗浄するための方法を消費者に説明する標準的な説明書を有し得る。
【0122】
別の実施形態においては、キットは、(a)マーカーに対して特異的に結合する抗体;および(b)検出試薬を含有する。このようなキットは、上記の材料から調製され得、そしてこれらの材料に関する先の議論(例えば、抗体、検出試薬、固定化支持体など)がこのセクションに完全に適用可能であり得、必ずしも繰り返す必要はない。
【0123】
いずれの実施形態においても、キットはさらに、必要に応じて、標準的な情報またはコントロールの情報を含み得、その結果、試験サンプルは、サンプル中の検出されるマーカーの試験量が前立腺ガンの診断と一致する診断量であるかどうかを決定するために、コントロールの標準的な情報と比較され得る。
【0124】
(実施例)
以下の実施例は、説明のために提供され、限定のためではない。
【0125】
(A.Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイを使用するマーカーの同定)
Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイを、以下のように組み立てた。金属の基材の表面を、レーザーによってエッチングすることにより条件付けた(例えば、Quantred Company、Galaxyモデル、ND−YAG Laser(1.064nmの放射線、0.005インチのレーザースポットの大きさを有する30〜35ワットの電力、12〜14インチの表面距離のレーザ光源;1秒あたり1mmあたり約25回のスキャン速度を使用する))。次いで、金属基材のエッチングした表面を、ガラスコーティングでコーティングした。5−メタクリルアミド−2−(N,N−ビスカルボキシメチルアミノ)ペンタン酸(7.5wt%)、アクリロイトリ(ヒドロキシメチル)メチルアミン(7.5wt%)およびN,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.4wt%)を、光重合開始剤として(−)−リボフラビン(0.02wt%)を使用して光重合した。モノマーの溶液を、粗くエッチングしたガラスでコーティングした基材上に沈着させ(0.4μL、2回)、そして近紫外光への暴露システム(Hgショートアークランプ、20mW/cm、365nm)を用いて5分間照射した。表面を、塩化ナトリウム溶液(1M)で洗浄し、次いで表面を、脱イオン水で2回洗浄した。表面を、NiSO溶液(50mM、10mL/スポット)で処理し、そして高周波混合装置上で10分間混合した。NiSO溶液を除去した後、この処理プロセスを繰り返した。最後に、表面を、脱イオン水の流れで洗浄(15秒/チップ)し、それによってNi(II)ProteinChip(登録商標)アレイを提供する。
【0126】
精漿サンプルを、前立腺ガンを有する患者およびBPHを有する患者から得た。それぞれのサンプルから、2μlの精漿を、3μlの9.5Mの尿素、2%のCHAPS、100mMのTrisHCl(pH9.0)に添加する。混合物を、冷却しながら5分間ボルテックスした。この混合物をさらに、50mMのHEPES(pH7.4)で1/10に稀釈した。稀釈したサンプル溶液を、Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイ(Ciphergen Biosystems、Inc.,Fremont,CA)上の吸着剤のスポットに添加した。Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイは、吸着剤として、ヒドロゲル骨格に共有結合したニトロロ三酢酸基によってキレート化されたニッケル金属イオンを含有する。サンプル溶液を、加湿チャンバー中で振盪させながら15分間インキュベートした。ProteinChip(登録商標)アレイを、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.2)で洗浄した。0.3μlのCHCA(アセトニトリル中に飽和させたトリフルオロ酢酸溶液)を、サンプルを含むスポットに添加し、そしてProteinChip(登録商標)アレイを、Protein Biology System II質量分析計(Ciphergen Biosystems,Inc.)中で読んだ。
【0127】
結果を図4に示す。パネルの上段は、Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイより分析したBPHの患者のサンプルに由来するタンパク質をゲル表示形式で示す。ここでは、検出されるそれぞれのタンパク質は、特定の分子量一致するバンドとして表される。パネルの中段は、Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイから分析される、前立腺ガンの患者のサンプルによるタンパク質をゲル表示形式で示す。パネルの下段は、2つのサンプル間の差異のマップを示す。0より上の垂直方向の線は、BPHの患者由来のサンプルと比較して、前立腺ガンの患者由来のサンプル中で上昇したレベルで存在するタンパク質を示す。逆に、0より下の垂直方向の線は、前立腺ガンの患者由来のサンプルと比較して、BPHの患者由来のサンプル中で上昇したレベルで存在するタンパク質を示す。垂直方向の腺が高いほど、2つのサンプル間で見出されるタンパク質の量の差異が大きい。
【0128】
図4に示すように、多数のタンパク質がBPHの患者由来のサンプル中よりも前立腺ガンの患者由来のサンプル中で非常に豊富であることを見出した。例えば、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約8030Da、および約8714Daの見かけの分子量のタンパク質が、BPHの患者由来のサンプルよりも前立腺ガンの患者由来のサンプル中で非常に豊富であることを見出した。さらに、多数のタンパク質が、前立腺ガン患者由来のサンプル中よりもBPHの患者由来のサンプル中で非常に豊富であることを見出した。例えば、約2276Da、約2905Da、約3038Da、約3600Da、約3835Da、約3933Da、および約4175Daの見かけの分子量を有するタンパク質が、前立腺ガンの患者由来のサンプルよりもBPHの患者由来のサンプル中で非常に豊富に存在することを見出した。
【0129】
(B.H4 ProteinChip(登録商標)アレイを使用するマーカーの同定)
H4 ProteinChip(登録商標)アレイを、SiOでコーティングしたアルミニウム基材から組み立てた。このプロセスにおいては、アルミニウム基材を、エチルアルコール中の2%(v/v)の3−アミノプロピルトリエトキシキシランの溶液に1時間暴露させた。エタノールでの基材の表面のリンスの後、基材を乾燥させた(120℃、20分)。次いで、アミノシラン化アルミニウム基材を、エチレングリコールジメチルエーテルおよびトリエチルアミン中のポリ(オクタデセン−アルト−無水マレイン酸)の溶液と4時間反応させた。次いで、活性化させたアルミニウム基材を、エチレングリコールジメチルエーテルでリンスし、そして風乾させ、それによってH4 ProteinChip(登録商標)アレイを提供する。
【0130】
実質的に上記と同じ溶液および手順を使用して精漿サンプルを調製した。稀釈したサンプル溶液を、H4 ProteinChip(登録商標)アレイ(Ciphergen Biosystems、Inc.,Fremont,CA)上の吸着剤のスポットに添加した。H4 ProteinChip(登録商標)アレイは、吸着剤として、脂肪族の(C16)炭化水素疎水性表面を含有する。混合物を加湿チャンバーサンプル溶液をスポット上で風乾した。ProteinChip(登録商標)アレイを、水で洗浄した。0.3μlのCHCA(アセトニトリル中で飽和させたトリフルオロ酢酸溶液)を、サンプルを含有しているスポットに添加し、そしてProteinChip(登録商標)アレイを、Protein Biology System II(登録商標)質量分析計(Ciphergen Biosystems,Inc.Fremont,CA)中で読み取った。
【0131】
結果を図5に示す。パネル上段は、H4 ProteinChip(登録商標)アレイから分析したBPHの患者のサンプルに由来するタンパク質をゲル表示形式で示す。ここでは、検出されるそれぞれのタンパク質を、特定の分子量と一致するバンドとして表した。パネル中段は、H4 ProteinChip(登録商標)アレイから分析される、前立腺ガンの患者のサンプルに由来するタンパク質をゲル表示形式で示す。パネル下段は、2つのサンプル間の差異のマップを示す。0より上の垂直方向の線は、BPHの患者に由来するサンプルと比較して、前立腺ガンの患者に由来するサンプル中で上昇したレベルで存在するタンパク質を示す。
【0132】
図5に示すように、多数のタンパク質が、BPHの患者に由来するサンプルよりも前立腺ガンの患者に由来するサンプル中で非常に豊富であることを見出した。例えば、約2776Da、5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、および約8240Daの見かけの分子量を有するタンパク質が、BPHの患者に由来するサンプルよりも前立腺ガンの患者に由来するサンプル中で非常に豊富であることを見出した。約2776Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、および約8030Daの見かけの分子量を有しているタンパク質もまた、豊富であり、そしてNi(II)ProteinChip(登録商標)アレイを使用して検出されたことを記述する。
【0133】
さらに、多数のタンパク質が、前立腺ガンの患者に由来するサンプル中よりもBPHの患者に由来するサンプルで非常に豊富であることを見出した。例えば、約2276Da、約2530Da、約2905Da、約3030Da、約3224Da、約3600Da、および約3915Daの見かけの分子量を有するタンパク質が、BPHの患者に由来するサンプルよりも前立腺ガンの患者に由来するサンプル中で非常に豊富であった。約2776Da、約2095Da、および約3600Daの見かけの分子量を有するタンパク質もまた、豊富であり、そしてNi(II)ProteinChip(登録商標)アレイを使用して検出されたことを記述する。
【0134】
(C.SCX1 ProteinChip(登録商標)アレイを使用して同定したマーカー)
SCX1 ProteinChip(登録商標)アレイを、SiOでコーティングしたアルミニウム基材から組み立てた。このプロセスにおいて、蒸留水中のスルホン化ポリスチレンマイクロスフェアの懸濁液を、チップの表面上に沈着させた(2mL/スポット、2回)。風乾(室温、5分)後、表面を、100mMのクエン酸アンモニウム(pH4.5)で1回、100mMの重炭酸アンモニウム(pH8.0)で1回、そして脱イオン水で1回洗浄する。チップを風乾した。
【0135】
精漿サンプルを、前立腺ガンを有する患者およびBPHを有する患者から得た。それぞれのサンプルから、2μlの精漿を、3μlの9.5Mの尿素、2%のCHAPS、100mMのTrisHCl(pH9.0)に添加する。混合物を、5分間冷却しながらボルテックスした。この混合物をさらに、50mMのHEPES(pH7.4)で1/10に稀釈した。この稀釈した溶液の4μlのアリコートを、SCX1 ProteinChip(登録商標)アレイ(Ciphergen Biosystems、Inc.)上のスポットに添加し、そして加湿チャンバー中で振盪させながら15分間インキュベートした。サンプルを取り出し、そしてProteinChip(登録商標)アレイを、4μlの50mMのHEPESで2回洗浄した。0.3μlのCHCA(アセトニトリル中で飽和させたトリフルオロ酢酸溶液)を添加し、そしてProteinChip(登録商標)アレイを、Protein Biology System IITM質量分析計(Ciphergen Biosystems,Inc.)中で読んだ。
【0136】
結果を図6に示す。パネル上段は、SCX1 ProteinChip(登録商標)から分析したBPHの患者のサンプルに由来するタンパク質をスペクトル表示形式で示す。図6に示すように、分析したタンパク質の無視できる量(0.1未満の相対的な強度)のみを、約5753Daの見かけの分子量で観察した。パネル下段は、SCX1 ProteinChip(登録商標)から分析した前立腺ガンの患者のサンプルに由来するタンパク質をスペクトル表示形式で示す。図6に示すように、約5753Daの見かけの分子量のタンパク質が、前立腺ガンの患者のサンプル中に高いレベル(約52の相対的強度)で存在した。
【0137】
続いて、約5753Daの見かけの分子量を有するこのタンパク質を、2つのタンパク質分解酵素であるトリプシンおよびV8プロテアーゼを用いてペプチドマップした。Swiss Prot Database中のタンパク質と適合させることによって、マーカーが、セメノゲリンIのPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成されるタンパク質分解フラグメントである、精子の塩基性タンパク質であることを同定した。精子の塩基性タンパク質のアミノ酸配列については、図1を参照のこと。
【0138】
本発明は、前立腺ガンの患者のサンプルおよび前立腺ガンを有さない被験体(例えば、良性の前立腺の過形成の患者)のサンプル中で異なって存在するマーカーを使用する、前立腺ガンの診断を補助する新規の材料および方法を提供する。特定の例が提供されてきたが、上記の記載は説明であって、限定ではない。上記の実施形態の1つ以上の任意の特徴が、本発明の任意の他の実施形態の1つ以上の特徴とともに任意の様式で組合せられ得る。さらに、本発明の多くのバリエーションが、明細書を参照して当業者に明らかとなる。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照しては決定されないが、その代わりに、それらと完全に同等な範囲とともに、添付される特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0139】
本願中で引用される全ての刊行物および特許文献が、個々の刊行物または特許文献が個々に記載されているのと同程度の全ての目的のためにそれら全体が参考として援用される。この文献中の種々の参考文献のそれらの記載によって、出願人らは、任意の特定の参考文献をこれらの発明の「先行技術」とは認めない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、精子の塩基性タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図2】
図2は、プローブの表面上に吸着剤のスポットを含有しているプローブを示す。
【図3】
図3は、前立腺ガンの診断の一部として、試験サンプルがコントロールに対して比較される方法の例を説明する。
【図4】
図4は、Ni(II)ProteinChip(登録商標)アレイ上に結合された、前立腺ガンの患者のサンプル、および良性の前立腺過形成の患者のサンプル中のタンパク質を示す。図4はまた、前立腺ガンの患者のサンプルから得られたデータから、良性の前立腺過形成の患者のサンプルから得られたデータを引き算することによって得られる、差異のマップを示す。
【図5】
図5は、H4 ProteinChip(登録商標)アレイ上に結合された、前立腺ガンの患者のサンプル、および良性の前立腺過形成の患者のサンプル中のタンパク質を示す。図5はまた、前立腺ガンの患者のサンプルから得られたデータから、良性の前立腺過形成の患者のサンプルから得られたデータを引き算することによって得られる、差異のマップを示す。
【図6】
図6は、SCX1 ProteinChip(登録商標)アレイ上に結合された、前立腺ガンの患者のサンプル、および良性の前立腺過形成の患者のサンプル中のタンパク質を示す。

Claims (18)

  1. 前立腺ガンの診断を補助するための方法であって、該方法が以下:
    被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定する工程であって、ここで、該マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルおよび良性の前立腺の過形成の患者のサンプル中に異なって存在するポリペプチドであり、そしてここで、該マーカーが27,000Da未満の見かけの分子量を有する工程;および
    該試験量が、前立腺ガンの診断と一致する診断量であるか否かを決定する工程を包含する、方法。
  2. 前記マーカーが、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、約8240Da、または約8714Daの見かけの分子量を有するポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記マーカーが精子の塩基性タンパク質である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記マーカーが、セメノゲリンIのPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記マーカーが、約2276Da、約2530Da、約2095Da、約3030Da、約3038Da、約3224Da、約3600Da、約3835Da、約3915Da、約3933Da、または約4175Daの見かけの分子量を有するポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
  6. 前立腺ガンの診断を補助するための方法であって、該方法が以下:
    被験体に由来するサンプル中のマーカーの試験量を決定する工程であって、ここで、該マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルおよび良性の前立腺の過形成の患者のサンプル中で異なって存在するポリペプチドであり、そしてここで、該マーカーは、PSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成された切断された産物である、工程;および
    試験量が前立腺ガンの診断と一致する診断量であるか否かを決定する工程を包含する、方法。
  7. 前記マーカーが、27,000Da未満の見かけの分子量を有する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記プロテアーゼがPSAであり、そして切断された産物が、セメノゲリンIのPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記マーカーが、精子の塩基性タンパク質である、請求項6に記載の方法。
  10. マーカーを検出するための方法であって、該方法が以下:
    該マーカーと吸着剤との間の結合を可能にする条件下で、サンプルとその上に該吸着剤を含有している基材とを接触させる工程であって、ここで、該マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルおよび良性の前立腺の過形成の患者のサンプル中で異なって存在するポリペプチドであり、そしてここで、該マーカーは27,000Da未満の見かけの分子量を有する、工程;および
    気相イオンスペクトル分析によって、該吸着剤に結合したマーカーを検出する工程;
    を包含する、方法。
  11. サンプル中のマーカーを検出するための方法であって、該方法が以下:
    該マーカーに特異的に結合する抗体を提供する工程であって、ここで、該マーカーは、前立腺ガンの患者のサンプルおよび良性の過形成の患者のサンプル中に異なって存在するポリペプチドであり、そしてここで該マーカーが27,000Da未満の見かけの分子量を有する、工程;
    該サンプルと抗体とを接触させる工程;および
    該マーカーに結合した該抗体の複合体の存在を検出する工程、
    を包含する、方法。
  12. 前記マーカーが、約2776Da、約4423Da、約4480Da、約5753Da、約6098Da、約6270Da、約6998Da、約7843Da、約8030Da、約8240Da、または約8714Daの見かけの分子量を有するポリペプチドである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記マーカーが精子の塩基性タンパク質である、請求項11に記載の方法。
  14. 前記マーカーが、PSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される切断された産物である、請求項11に記載の方法。
  15. 前記マーカーが、セメノゲリンIのPSAによって媒介されるタンパク質分解によって生成される、請求項11に記載の方法。
  16. 前記マーカーが、約2276Da、約2530Da、約2095Da、約3030Da、約3038Da、約3224Da、約3600Da、約3835Da、約3915Da、約3933Da、または約4715Daの見かけの分子量を有するポリペプチドである、請求項11に記載の方法。
  17. マーカーの試験量の決定を可能にし得る、前立腺ガンの診断を補助するためのキットであって、該キットが以下:
    その上に吸着剤を含有している基材であって、ここで、該吸着剤は、該マーカーの結合に適切であり、ここで該マーカーが、前立腺ガンの患者のサンプルおよび良性の前立腺の過形成の患者のサンプル中で異なって存在するポリペプチドであり、そしてここで、該マーカーが27,000Da未満の見かけの分子量を有する基材;および
    洗浄溶液または洗浄溶液を作製するための説明書であって、ここで、該吸着剤と該洗浄溶液の組合せが、気相イオンスペクトル分析を使用してマーカーの検出を可能とする、説明書、
    を含む、キット。
  18. 前立腺ガンの診断を補助するためのキットであって、該キットがマーカーの試験量の決定を可能にし得、ここで、該マーカーが、前立腺ガンの患者のサンプルおよび良性の前立腺の過形成の患者のサンプル中で異なって存在するポリペプチドであり、そして、27,000Da未満の見かけの分子量を有する、キットであって、以下:
    前記マーカーに特異的に結合する抗体;および
    検出試薬
    を含有する、キット。
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