JP2004525343A - 膀胱の移行上皮癌の生物マーカー - Google Patents

膀胱の移行上皮癌の生物マーカー Download PDF

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Abstract

本発明は、膀胱の移行上皮癌(TCC)の診断のための補助として使用され得るマーカー、TCC患者およびコントロール(例えば、TCCが検出不能である被験体)のサンプルに差示的に存在するマーカーを使用する、方法およびキットを提供する。1つの局面において、本発明の方法は、このマーカーの検出を、膀胱の移行上皮癌の推定の診断と相関させる工程を包含する。1つの局面において、本発明の方法は、ガス相イオン分光法によって該マーカーを検出する工程を包含する。

Description

【0001】
(関連出願の相互参照)
適用なし
(連邦政府によって支援された研究および開発の下でなされた発明に対する権利に関する陳述)
本発明は、American Cancer Society(IRG−93−036−06)、Early Detection Research Network、American Foundation of Urologic Disease and Hoecht Marion Roussel Inc.(AV)、Virginia Prostate Centerにより支援されている。
【0002】
(発明の背景)
膀胱癌は、二番目に最も一般的な尿生殖器悪性疾患であり、米国における全ての新たに診断される癌の約5%であるとみなされている(Kleinら、Cancer、82(2):49−354(1998))。90%以上は、移行上皮癌(TCC)組織学の癌である(Steinら、J.Urol.、160:645−659(1998))。現在、TCCの最も信頼できる診断方法およびサーベイランス方法は、組織学的な確認のための膀胱鏡検査および膀胱バイオプシーによる方法である。この手順の侵襲的および労働集約的性質のために、より良い、より低コストの、そして非侵襲的な診断ツールを開発する試みがなされている。尿細胞学は、長年、非侵襲的アプローチの「ゴールドスタンダード」であった。尿細胞学は、高い特異性を有し、そして尿路上皮全体をスクリーニングするバイオプシーを凌ぐ利点を提供する(Kleinら、Cancer、82(2):49−354(1998);Steinら、J.Urol.、160:645−659(1998))。しかし、その高い偽陰性率、特に低級の腫瘍に対する高い偽陰性率は、膀胱鏡検査に対する補助としてのその使用を制限している。
【0003】
多くの非侵襲的分子診断試験が、膀胱癌病因に関連する分子変化についての今までの知識の増加に基づき、開発されている。膀胱腫瘍抗原(BTA)試験(Schamhartら、Eur.Urol.、34:99−106(1998))、BTA stat試験(Sarosdyら、Urology、50:349−53(1997))、フィブリノーゲン/フィブリン分解産物(FDP)試験(Schmetterら、J.Urol.、158:801−805(1997))、および核マトリクスタンパク質22(NMP−22)試験(Solowayら、J.Urol.、156:363−367(1996))が、FDAにより承認されており、膀胱鏡検査と合わせて使用されている。例えば、概説については、Grossmanら、Urol.Oncology、5:3−10(2000)を参照のこと。診断/予後的有用性について現在評価されている(2、3、8、9に概説される)さらなる分子アッセイは、テロメラーゼ試験(Hoshiら、Urol.Onc.、5:25−30(2000))、免疫担当細胞試験(Fradetら、Can J Urol.、1997、4:400−5(1997))、およびヒアルロン酸/ヒアルロニダーゼ試験(Phamら、Cancer Research、57:778−783(1997);Lokeshwarら、Cancer research、57:773−777(1997)、マイクロサテライト分析(Steinerら、Nat.Med.、6:621−624(1997))ならびに血液群抗原(Golijaninら、Urology、46(2):173−177(1995))、癌胎児性抗原(Liuら、J.Urol.、137:1258(1987))、p53および網膜芽腫タンパク質(Grossmanら、Urol.Oncology、5:3−10(2000))、Eカドヘリン(Banksら、J.Clin.Pathol.、48:179−180(1995);Protheroeら、British J.Cancer、80(1/2):273−8(1999)、および種々の成長因子(Halachmiら、British J.Urology、82:647−654(1998))を検出するアッセイである。
【0004】
任意の診断試験の有効性は、その特異性および選択性に依存する。すなわち、真の陽性診断、真の陰性診断、偽陽性診断、および偽陰性診断の相対比は何か。任意の状態についての真の陽性診断および真の陰性診断の割合を増加させる方法が、望ましい医学的目標である。膀胱癌の場合、本発明の診断試験は、上記の理由で完全に十分ではない。
【0005】
TCC腫瘍の異質性に起因して、膀胱鏡検査に取って代わる単一の分子アッセイが存在しないようである。癌の種々の生物学的特徴を示す、生物マーカーのパネルの同定および同時分析は、TCCの早期の検出/診断を改善するより大きな可能性を有する。さらに、費用面で効果的な医薬が優先事項である経済面を意識した環境において、癌患者を処置する医師は、膀胱癌を迅速に診断し、そして治療に対する応答を評価するための便利で効率的な方法を必要とする。本発明は、この目標および他の目標を満たすものである。
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、初めて、膀胱の移行上皮癌(TCC)の患者のサンプルおよびコントロール被験体のサンプルにおいて示差的に存在する新規のタンパク質マーカーを提供する。本発明はまた、これらの新規マーカーを検出することによるTCCの診断のための補助として使用され得る高感度で迅速な方法およびキットを提供する。患者サンプルにおける単独または組み合わせてのこれらのマーカーの測定は、診断が、TCCの診断または陰性診断(例えば、正常または疾患なし)の可能性と相関し得る情報を提供する。全てのマーカーは、分子量により特徴付けられる。このマーカーは、例えば、質量分析と結びつけたクロマトグラフィー分離により、または従来のイムノアッセイによりサンプル中で他のタンパク質から分解され得る。好ましい実施形態において、分解方法は、表面活性化レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)質量分析を含む。この方法において、質量分析プローブの表面は、マーカーに結合した吸着剤を含む。
【0007】
第1のセットのマーカーは尿サンプルから同定され、そしてカチオン性吸着剤および他の吸着剤に結合し得る。これらのマーカーとして、マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDaが挙げられる。これらのマーカーは、単一のピークとして検出される(2つまたは3つの別個のピークとして検出されるマーカーUBC−1を除く)。マーカーUBC−1はまた、膀胱バルボタージの細胞溶解物において見い出され、そして金属キレート吸着剤に結合する。さらなる分析により、マーカーUBC−1がディフェンシンペプチドのメンバーであることが明らかになった。
【0008】
第2のセットのマーカーもまた、尿サンプルから同定される。これらのマーカーはまた、カチオン性吸着剤および他の吸着剤に結合し得る。これらのマーカーとして、マーカーPC−1:約4.950〜5.150kDa;マーカーPC−2:約5.710〜6.000kDa;マーカーPC−3:約6.758〜7.750kDa;マーカーPC−4:約15.000〜16.000kDa;マーカーPC−5:約37.500〜40.000kDa;マーカーPC−6:約79.500〜82.000kDa;およびマーカーPC−7:約85.000〜92.000kDaが挙げられる。マーカーPC−6を除いて、これらのマーカーは、コントロール被験体(例えば、陰性TCC診断された患者)のサンプルよりも、TCC患者のサンプルにおいてより高頻度で検出される。マーカーPC−6は、TCCサンプルのサンプルよりも、コントロールおよび他の非TCC疾患サンプルにおいてより高頻度で検出される。
【0009】
これらのマーカーは、尿サンプルから最初に同定されたが、これらが検出され得るサンプルは、尿サンプルに限定されない。これらのマーカーは、他の型のサンプル(例えば、バルボタージ、血液血清、涙、唾液、組織など)において検出可能であり得る。例えば、マーカーUBC−1はまた、膀胱バルボタージの細胞溶解物において存在する。さらに、第1および第2のセットのマーカーは、カチオン性吸着剤(または、マーカーUBC−1に対する金属キレート吸着剤)を用いて発見されるけれども、このマーカーは、以下に記載される吸着剤の他の型に結合し得る。従って、本発明の実施形態は、カチオン性吸着剤および金属キレート吸着剤の使用に限定されない。
【0010】
これらのマーカー(マーカーUBC−1を除く)の絶対強度は未だ知られていないが、このような知識は、患者サンプルにおいてこれらを測定するのに必ずしも必要ではない。なぜならば、これらは、例えば、質量および親和性の特徴により十分特徴付けられているからである。分子量および結合特性は、これらのマーカーの特徴的な特性であり、そして検出または単離の手段に対する制限ではないことに注意のこと。さらに、本明細書中に記載される方法または当該分野で公知の方法を使用して、これらのマーカーの絶対的な同一性が決定され得る。
【0011】
従って、TCC診断を補助するための方法を提供する本発明の1つの局面において、本方法は:(a)サンプル中の少なくとも1つのタンパク質マーカーを検出する工程(ここで、このタンパク質マーカーは、マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;マーカーPC−1:約4.950〜5.150kDa;マーカーPC−2:約5.710〜6.000kDa;マーカーPC−3:約6.758〜7.750kDa;マーカーPC−4:約15.000〜16.000kDa;マーカーPC−5:約37.500〜40.000kDa;マーカーPC−6:約79.500〜82.000kDa;およびマーカーPC−7:約85.000〜92.000kDaから選択される);および(b)このマーカーの検出と、TCCの診断可能性とを相関させる工程、を包含する。
【0012】
1つの実施形態において、この相関は、サンプル中のマーカーの量および/またはコントロール中の同一マーカーの検出頻度を考慮する。
【0013】
別の実施形態において、ガス相イオン分光法が、このマーカーを検出するために使用される。例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析法が用いられ得る。
【0014】
別の実施形態において、マーカーを検出するために使用されるレーザー脱離/イオン化質量分析法は:(a)吸着剤が付着した基板を提供する工程;(b)サンプルと吸着剤を接触させる工程;ならびに(c)基板からのマーカーを脱離およびイオン化し、そして脱離/イオン化したマーカーを質量分析法で検出する工程、を包含する。任意の適切な吸着剤が、1つ以上のマーカーに結合するよう使用され得る。例えば、基板上の吸着剤は、カチオン性吸着剤、抗体吸着剤などであり得る。
【0015】
別の実施形において、イムノアッセイが、このマーカーを検出するために使用され得る。
【0016】
別の実施形態において、この方法はさらに:(a)質量/荷電比のシグナルの強度を示す、質量分析法によるサンプルに関するデータを生成する工程;(b)このデータをコンピューター読み取り可能形式に変換する工程;および(c)コンピューターを操作し、アルゴリズムを実行する工程(ここで、このアルゴリズムは、コンピューター読み取り可能データと、TCC診断または陰性診断を示すデータとの間の適合の近さ(closeness−of−fit)を決定する)を包含する。
【0017】
別の局面において、本発明は、サンプル中の少なくとも1つのタンパク質マーカーを検出する方法を提供する。この方法において、マーカーは以下から選択される:マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;マーカーPC−1:約4.950〜5.150kDa;マーカーPC−2:約5.710〜6.000kDa;マーカーPC−3:約6.758〜7.750kDa;マーカーPC−4:約15.000〜16.000kDa;マーカーPC−5:約37.500〜40.000kDa;マーカーPC−6:約79.500〜82.000kDa;およびマーカーPC−7:約85.000〜92.000kDa。この方法は、ガス相イオン分析法によりマーカーを検出する工程を包含する。
【0018】
1つの実施形態において、この方法は、レーザー脱離/イオン化質量分析法によりマーカーを検出する工程を包含する。
【0019】
別の実施形態において、この方法は、検出されたマーカーの量をコントロールと比較する工程をさらに包含する。
【0020】
別の実施形態において、この方法は、(a)質量/電荷比についてのシグナルの強度を示す質量分析法によるサンプルに関するデータを生成する工程;(b)このデータをコンピューター読み取り可能な形式に変換する工程;および(c)コンピューターを操作し、そしてマーカーを示すコンピューター読み取り可能なデータにおいてシグナルを検出するアルゴリズムを実行する工程、を包含する。
【0021】
別の実施形態において、マーカーを検出するために使用されるレーザー脱離/イオン化質量分析法は、(a)吸着剤が付着した基板を提供する工程;(b)サンプルと吸着剤を接触させる工程;ならびに(c)基板からのマーカーを脱離およびイオン化し、そして脱離/イオン化したマーカーを質量分析法で検出する工程、を包含する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、マーカーの検出分解能を改善し得るサンプル調製方法をさらに提供する。例えば、このサンプル調製は、サイズ排除クロマトグラフィーによってサンプルを分画する工程、およびマーカーを含むサンプル画分を回収する工程、およびガス相イオン化分析法を実施する工程を包含する。別の実施形態において、このサンプル調製は、ゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー(「HPLC])によりサンプル中の生体分子を分離する工程、およびマーカーを含むと疑われる画分を獲得する工程、およびガス相イオン分析法を実施する工程を包含する。
【0023】
別の局面において、本発明は、サンプル中の少なくとも1つのタンパク質マーカーを検出する方法を提供する。この方法において、マーカーは以下から選択される:マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;マーカーPC−1:約4.950〜5.150kDa;マーカーPC−2:約5.710〜6.000kDa;マーカーPC−3:約6.758〜7.750kDa;マーカーPC−4:約15.000〜16.000kDa;マーカーPC−5:約37.500〜40.000kDa;マーカーPC−6:約79.500〜82.000kDa;およびマーカーPC−7:約85.000〜92.000kDa。この方法は、イムノアッセイによりマーカーを検出する工程を包含する。
【0024】
別の局面において、本発明は、以下から選択される精製されたタンパク質を提供する:マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;マーカーPC−1:約4.950〜5.150kDa;マーカーPC−2:約5.710〜6.000kDa;マーカーPC−3:約6.758〜7.750kDa;マーカーPC−4:約15.000〜16.000kDa;マーカーPC−5:約37.500〜40.000kDa;マーカーPC−6:約79.500〜82.000kDa;およびマーカーPC−7:約85.000〜92.000kDa。
【0025】
別の局面において、本発明は以下を備えるキットを提供する:(a)吸着剤が付着された基板(ここで、この吸着剤は、以下からなる少なくとも1つのタンパク質マーカーを保持し得る:マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;マーカーPC−1:約4.950〜5.150kDa;マーカーPC−2:約5.710〜6.000kDa;マーカーPC−3:約6.758〜7.750kDa;マーカーPC−4:約15.000〜16.000kDa;マーカーPC−5:約37.500〜40.000kDa;マーカーPC−6:約79.500〜82.000kDa;およびマーカーPC−7:約85.000〜92.000kDa);および(b)サンプルと吸着剤を接触させ、そしてこの吸着剤により保持されるマーカーを検出することによりマーカーを検出するための指示書。
【0026】
(定義)
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および特定用語は、本発明の属する分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明において用いられる多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);The Glossary of Genetics、第5編.、R.Riegerら(編)、Springer Verlag(1991);およびHale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書中で使用する場合、以下の用語は、他で特定されない限るこれらに基づく意味を有する。
【0027】
「移行上皮癌」または「TCC」は、膀胱の最表面の細胞裏層において生じる癌をいう。腫瘍の等級は、その疾患の悪性の程度を反映し、そして病理学者により規定される細胞および核の特徴に基づく。第I等級は、最も攻撃的でない型とみなされ、そして第III等級は、最も攻撃的な型とみなされる。この段階は、膀胱の異なる層内での浸潤の程度および腫瘍の拡大を反映する。Ta段階において、悪性疾患は、最表面層(粘膜)に限定され、T1においては固有板(lamina propria)に侵入し、T2においては粘膜筋板に、T3においては膀胱周囲脂肪、そしてT4段階において、腫瘍は、隣接器官に拡大する。CIS(インサイチュ癌)は、粘膜に限定される平坦な病巣である。
【0028】
「マーカー」は、本発明の文脈において、コントロール被験体(例えば、陰性診断または検出不可能な癌を有する人物、正常または健常な被験体)から採取された匹敵するサンプルと比較して、TCCを有する患者から採取されたサンプル中で示差的に存在する(特定の見かけの分子量の)ポリペプチドをいう。
【0029】
句「示差的に存在する」は、コントロール被験体と比較しての、TCCを有する患者から採取されたサンプルにおいて存在するマーカーの量および/または頻度における差異をいう。例えば、マーカーは、コントロール被験体のサンプルと比較して、TCC患者のサンプルにおいて、増加したレベルまたは減少したレベルで存在するポリペプチドであり得る。あるいは、マーカーは、コントロール被験体のサンプルと比較して、TCC患者のサンプルにおいて、より高い頻度またはより低い頻度で検出されるポリペプチドであり得る。マーカーは、量、頻度、またはその両方の観点で示差的に存在し得る。
【0030】
ポリペプチドは、TCC患者のサンプルにおいてポリペプチドを検出する頻度が、コントロールサンプルよりも統計的に有意に高いかまたは低い場合、2つのセットのサンプル間で示差的に存在する。例えば、2つのセットのデータは、スチューデントt試験を用いて比較され得、そしてP<0.05は、統計的に有意であるとみなされ得る。別の例において、ポリペプチドは、1つのセットのサンプルにおいて、他のセットのサンプルよりも少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%より高頻度または低頻度で検出される場合、2つのサンプル間で示差的に存在する。
【0031】
あるいはまたはさらに、ポリペプチドは、1つのサンプル中のポリペプチドの量が、他のサンプル中のポリペプチドの量と統計学的に有意に異なる場合、2つのサンプル間で示差的に存在する。例えば、ポリペプチドは、これが他のサンプル中に存在するよりも、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%を超えて存在する場合、またはこれが1つのサンプル中で検出可能であり、他のサンプル中で検出可能でない場合、2つのサンプル間で示差的に存在する。
【0032】
「診断」とは、病的状態の存在または性質を同定することを意味する。診断方法は、その感度および特異性において異なる。診断アッセイの「感度」は、検査で陽性と出る罹患した個体の割合(「真の陽性」の割合)である。アッセイによって検出されない罹患個体は、「偽陰性」である。罹患しておらずかつアッセイにおいて陰性と出る被験体は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1−偽陽性率であり、ここで、「偽陽性」率は、検査で陽性と出る、疾患を有さない被験体の割合として規定される。特定の診断方法は、状態の最終的な診断を提供し得ないが、この方法が診断において補助となる陽性指標を提供する場合、これは、十分である。
【0033】
マーカーの「試験量」とは、試験されるサンプル中に存在するマーカーの量をいう。試験量は、絶対量(例えば、μg/ml)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかで存在し得る。
【0034】
マーカーの「診断量」とは、TCCの診断と一致する被験体(例えば、TCCの陰性診断を有する健常個体)のサンプル中のマーカーの量をいう。診断量は、絶対量(例えば、μg/ml)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかで存在し得る。
【0035】
マーカーの「コントロール量」とは、マーカーの試験量に対して比較される任意の量または量の範囲であり得る。例えば、マーカーのコントロール量は、TCCを有さないヒトにおけるマーカーの量であり得る。コントロール量は、絶対量(例えば、μg/ml)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかで存在し得る。
【0036】
「プローブ」とは、気相イオン分光計中に取り出し可能に挿入され得るデバイスをいい、検出のためのマーカーを提示するための表面を有する基板を備える。プローブは、単一の基板または複数の基板を備え得る。ProteinChip(登録商標)、ProteinChip(登録商標)アレイのような用語、またはチップはまた、特定の種類のプローブをいうために本明細書中で使用される。
【0037】
「基板」または「プローブ基板」とは、(例えば、接着、沈着などによって)吸収剤が備えられ得る固相をいう。
【0038】
「吸収剤」とは、マーカーを吸収し得る任意の物質をいう。用語「吸収剤」は、マーカーが曝露される単一の物質(「単一(monoplex)吸収剤」)(例えば、化合物または官能基)、およびマーカーが曝露される複数の異なる物質(「多重吸収剤」)の両方をいうために本明細書中で使用される。多重吸収剤中の吸収剤物質は、「吸収剤種」といわれる。例えば、プローブ基板常のアドレス可能な位置は、異なる結合特性を有する多数の異なる吸収剤種(例えば、陰イオン交換物質、金属キレート剤、または抗体)によって特徴付けられる多重吸収剤を含み得る。基板物質自体はまた、マーカーの吸収特性に影響し得る。
【0039】
「吸収」または「保持」とは、溶出液(選択性閾値改変剤)または洗浄溶液での洗浄前または洗浄後のいずれかの、吸収剤とマーカーとの間の検出可能な結合をいう。
【0040】
「溶出液」または「洗浄溶液」とは、マーカーの吸着剤への吸着を媒介するために使用され得る因子をいう。溶出液および洗浄溶液はまた、「選択性閾値改変剤」ともいわれる。溶出液および洗浄溶液を使用して、プローブ基板表面から未結合の物質を洗浄および除去し得る。
【0041】
「分解する(resolve)」、「分解(resolution)」または「マーカーの分解」とは、サンプル中の少なくとも1つのマーカーの検出をいう。分解は、分離によるサンプル中の複数のマーカーの検出および引き続く示差的検出を包含する。分解は、混合物中の全ての他の生体分子から1つ以上のマーカーの完全な分離を必要としない。少なくとも1つのマーカーと他の生体分子との間の区別を可能にする任意の分離が十分である。
【0042】
「気相イオン分光計」とは、サンプルが揮発および電離する場合、形成されたイオンの質量対電荷比に変換され得るパラメーターを測定する装置をいう。一般的に、目的のイオンは、単一の電荷を保有し、そして質量対電荷比は、しばしば、単に質量といわれる。気相イオン分光計としては、例えば、質量分光計、イオン移動度分光計、および総イオン電流測定デバイスが挙げられる。
【0043】
「質量分析計」とは、入口システム、イオン化供給源、イオン光アセンブリ、質量分析器、および検出器を備える気総イオン分光計をいう。
【0044】
「レーザー脱離質量分光計」とは、分析物を脱着、揮発、および電離するための手段としてレーザーを使用する質量分析計をいう。
【0045】
「検出」とは、検出される対象の存在、非存在または量を同定することをいう。
【0046】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために本明細書中で交換可能に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸のアナログまたは模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用する。ポリペプチドは、糖タンパク質を形成するために、例えば、淡水化物残基の付加によって改変され得る。これらの用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、糖タンパク質ならびに非糖タンパク質を含む。
【0047】
「検出可能な部分」または「標識」とは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段によって検出可能な組成物をいう。例えば、有用な標識としては、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に使用されるような酵素)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジオキシゲニン、ハプテン、および抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能であるタンパク質、または標的と相補的な配列を有する核酸分子が挙げられる。検出可能な部分は、しばしば、サンプル中の結合された検出可能な部位の量を定量するために使用され得る、測定可能なシグナル(例えば、放射活性シグナル、色素生産性シグナル、または蛍光シグナル)を生成する。シグナルの定量は、例えば、シンチレーション計数、濃度測定、またはフローサイトメトリーによって達成される。
【0048】
「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドリガンドまたはそのフラグメントをいい、これらは、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に結合および認識する。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ軽鎖定常領域遺伝子およびλ軽鎖定常領域遺伝子、α重鎖定常領域遺伝子、γ重鎖定常領域遺伝子、δ重鎖定常領域遺伝子、ε重鎖定常領域遺伝子およびμ重鎖定常領域遺伝子、ならびに種々の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。抗体は、インタクトな免疫グロブリン、または種々のペプチダーゼを用いる消化によって生成された多数の十分に特徴付けられたフラグメントとして存在する。これらとしては、例えば、Fab’およびF(ab)’フラグメントが挙げられる。用語「抗体」とはまた、本明細書中で使用される場合、抗体全体の改変によって生成される抗体フラグメント、または組換えDNA方法論を使用してデノボで合成される抗体フラグメントのいずれかを含む。抗体はまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または単鎖抗体を含む。抗体の「Fc」部分は、1つ以上の重鎖定常領域ドメインCH、CHおよびCHを含むが、重鎖可変領域を含まない免疫グロブリン重鎖の部分をいう。
【0049】
「免疫アッセイ」は、抗原(例えば、マーカー)を特異的に結合する抗体を使用するアッセイである。免疫アッセイは、抗原を単離、標的化、および/または定量するために特定の抗体の特異的な結合特性の使用によって特徴付けられる。
【0050】
抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的(または選択的に)免疫反応する」との成句は、タンパク質またはペプチドについていう場合、異種集団のタンパク質および他の生物製剤中のそのタンパク質の存在を決定する結合反応をいう。従って、指定された免疫アッセイ条件下で、特定の抗体は、少なくともバックグラウンドの2倍で、特定のタンパク質に結合し、そしてサンプル中に存在する他のタンパク質に有意な量で実質的に結合しない。このような条件下での抗体への特定の結合は、特定のタンパク質に対するその特異性について選択される抗体を必要とし得る。例えば、特定の種(例えば、ラット、マウス、またはヒト)由来のUBC−1マーカーに対して惹起されたポリクローナル抗体は、マーカーUBC−1の多型改変体および対立遺伝子を除き、マーカーUBC−1と特異的に免疫反応性でありかつ他のタンパク質と免疫反応性でないこれらのポリクローナル抗体のみを得るように選択され得る。この選択は、他の種由来のマーカーUBC−1分子と交差反応する抗体を差し引くことによって達成され得る。種々の免疫アッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択し得る。例えば、固相ELISA免疫アッセイを慣例的に使用して、タンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択する(特定の免疫反応性を決定するために使用され得る免疫アッセイの形式および条件の説明については、例えば、Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988)を参照のこと)。代表的には、特定または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、そして代表的には、バックグラウンドの10〜100倍より大きい。
【0051】
「エネルギー吸収分子」または「EAM」は、質量分析計中のイオン化供給源からのエネルギーを吸収し、それにより、プローブ表面から分析物(例えば、マーカー)の脱離を補助する分子をいう。分析物のサイズおよび性質に依存して、エネルギー吸収物質は、必要に応じて使用され得る。MALDIにおいて使用されるエネルギー吸収分子は、頻繁に、「マトリクス」といわれる。桂皮酸誘導体、シナピン酸(sinapinic acid)(「SPA」)、シアノヒドロキシ桂皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸は、生物有機化学分子のレーザー脱離においてエネルギー吸収分子として頻繁に使用される。
【0052】
(発明の詳細な説明)
(I.導入)
長年にわたって、二次元(2D)ゲル電気泳動は、複数のタンパク質の分離および分析のための主要なツールであった(O’Farrelら、J.Biol.Chem.,250:4007(1975))。この方法論(これは、1つの実験において数千のタンパク質を分解する)は、タンパク質分離において最も高度な分解を提供する。しかし、これは、労働集約的であり、大量の出発物質を必要とし、研究室間の再現性を欠き、そして臨床適用について実用的ではない。2Dゲルタンパク質マップの比較のための画像分析ソフトウェアの開発およびタンパク質切除の自動化(Patterson,Anal.Biochem.,221:1(1994))は、分離されたタンパク質の分析を容易にしたが、2Dゲル電気泳動の主な技術的困難性が残ったままである。
【0053】
最近20年のタンパク質化学におけるかなりの技術的進歩は、タンパク質研究についての不可欠なツールとして質量分析測定を確立してきた(Carrら、Anal.Chem.,63:2802(1991);Carrら、「Overview of Peptide and Protein Analysis by Mass Spectrometry.Current Protocols in Molecular Biology」、New York,John Wiley & Sons Inc.,unit10.21,pp10.21.1−10.21.27(1998);Patterson,「Protein Identification and Characterization by Mass Spectrometry.Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons Inc.,unit 10.22,pp.10.22.1−10.22.24(1998))。2Dゲルの分析力は、障害があるが、分光測定の高い感度、速度、および再現性は、発見、同定(すなわち、ペプチドマッピング、配列決定)、および構造的な特徴付けを含む、タンパク質分析の全ての局面においてその適用を高めてきた。
【0054】
遺伝子発現プロフィールの研究を可能にするオリゴヌクレオチドマイクロアレイと類似して、Ciphergen Biosystems,Inc.は、複雑な生物学的混合物のタンパク質プロファイリングを容易にするために、SELDI−TOF−MS(表面強化レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法)と組み合わせたProteinChip(登録商標)の方法を最近開発した(Hutchensら、Rapid Comm.Mass Spectrom,7:576−580(1993);Kuwataら、Bioch.Bioph.Res.Comm.,245:764−773(1998))。この技術は、質量分析法によって引き続き分解される複雑な混合物から個々のタンパク質を捕獲するための特許になったチップアレイを利用する。この革新的な技術は、2D−PAGEを超える多数の利点を有する:これは、はるかに速く、ハイスループット能力を有し、より少ない量のタンパク質サンプルの大きさのオーダーを必要とし、ピコモル〜アットモルの範囲にタンパク質を検出する感度を有し、低い質量のタンパク質(2000〜20000Da)を効果的に分解し得、そして臨床アッセイの開発に直接適用可能である。
【0055】
血清、精漿および細胞抽出物中の前立腺癌タンパク質マーカーの発見ならびに既知の前立腺癌マーカーの検出のための免疫アッセイの開発のためのSELDI技術の効力は、発明者らの研究室によって最近実証されている(Wrightら、Prostate Cancer and Prostate Diseases,2:264−276(1999);Paweletzら、Drug Development Research,49:34−42(2000))。本発明は、尿および他の型のサンプル中で検出可能な新規なTCC生物マーカー、ならびにTCCの診断のためのこれらの生物マーカーを評価するための材料および方法を記載する。複数のタンパク質変化が、TCC患者の尿(5つの新規な尿TCC生物マーカーを含む)において再現可能に見出され、そして異なる数のタンパク質からなる7タンパク質クラスター領域が、癌群対コントロール群で観察される。これらの尿TCC関連タンパク質生物マーカーの1つが、ディフェンシンファミリーのペプチドに属することが同定された。
【0056】
本発明のTCC関連タンパク質生物マーカーは、種々の適用において使用され得る。例えば、1つまたは任意の組み合わせのマーカーを使用して、TCC診断を補助し得る。別の例において、これらのマーカーを使用して、インビトロまたはインビボでマーカーの発面を調節する化合物をスクリーニングし得、この化合物は、次いで、患者におけるTCCを処置または予防するために有用であり得る。別の例において、これらのマーカーを使用して、TCCの特定の処置に対する応答をモニターし得る。なお別の例において、これらのマーカーは、遺伝研究において使用され得る。例えば、特定のマーカーは、遺伝的に連鎖し得る。このことは、例えば、家族がTCCの履歴を有するTCC患者の集団由来のサンプルを分析することによって、決定され得る。次いで、結果は、例えば、家族がTCCの履歴を有さないTCC患者から得られたデータと比較され得る。遺伝的に連鎖したマーカーをツールとして使用して、家族がTCCの履歴を有する被験体が、TCCを有するように予め決められているか否かを決定し得る。
【0057】
(II.マーカーの特徴付け)
2つのセットのマーカーを、気相イオン分光法を使用して、TCC患者の尿サンプルから同定した。マーカーセット1は、気相イオン分光法によって単一または規定の質量値を有するように検出されたマーカーを示す。マーカーセット2は、気相イオン分光法によって、ある範囲の質量値を有するタンパク質クラスターとして検出されたマーカーを表す。マーカーセット2の各タンパク質クラスターマーカーは、異なるタンパク質のクラスターおよび/または同じタンパク質の異なる状態のクラスターを示し得る。
【0058】
(A.マーカーセット1)
第1のセットのマーカーは、TCC患者の尿サンプルにおいて見出された。必要に応じて、尿サンプルを、サイズ排除クロマトグラフィーによって最初に分画し、続いてアニオン交換クロマトグラフィーでSELDI分析した。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーからのサンプルまたは溶出した画分を、カチオン吸収剤を含む基板(すなわち、SAX2 ProteinChip(登録商標)、Ciphergen Biosystems,Inc.,Fremont,CA)に適用し、そして吸収剤上に保持したマーカーの見かけの分子量を測定するために気相イオン分光法によって試験した。これらのマーカーは、コントロールサンプルと比較して、TCC患者の尿サンプル中により頻繁に存在する。以下の表Aは、質量分光法によって測定される各マーカーの見かけの分子量を示す。
【0059】
(表A)
【0060】
【化1】
Figure 2004525343
表Aに示されるように、各マーカーの見かけの分子量は、一定の範囲として示される。各マーカーについての質量の変動範囲(例えば、UBC−2について233Da)は、複数のサンプル由来の質量分析法によって測定される質量の標準偏差の5倍を示す(実施例の節を参照のこと)。これらのマーカーの全てが、カチオン吸収剤に結合するので、これらのマーカーは、正味の負電荷を有するようである。マーカーUBC−1はまた、尿バルボタージから調製された細胞溶解物から検出された。これらのマーカーのうちで、マーカーUBC−1は、ヒトディフェンシンα2および1として同定された。他のマーカーの同一性は、知られていない。これらのマーカーの他の特徴は、以下の実施例の節でさらに記載される。
【0061】
(B.マーカーセット2)
第2のセットのマーカーはまた、マーカーUBC−1〜UBC−5に関するサンプル手順を使用して、TCC患者の尿サンプルにおいて見出された。尿サンプルを、サイズ排除クロマトグラフィーによって最初に分画し、続いて陰イオン交換チップでSELDI分析した。次いで各画分を、カチオン基を有する吸収剤を含む基板(すなわち、SAX2 ProteinChip(登録商標)、Ciphergen Biosystems,Inc.,Fremont,CA)に適用し、そして吸収剤上に保持したマーカーの見かけの分子量を測定するために気相イオン分光法によって試験した。PC−6を除き、これらのマーカーは、コントロールサンプルと比較して、TCC患者の尿サンプル中により頻繁に存在する。対照的に、マーカーPC−6は、TCC患者群由来の尿サンプルと比較して、健常なコントロール群および非TCC疾患群の尿サンプル中でより頻繁に存在した。以下の表Bは、各マーカーの見かけの分子量を示す。
【0062】
(表B)
【0063】
【化2】
Figure 2004525343
表Bに示されるように、各マーカーの見かけの分子量(質量分光法によって測定されるような)は、「約(およそ)」といわれる。なぜなら、タンパク質の分子量は、代表的に、質量分光法によって約0.5%の変動の信頼度で分解されるからである。従って、マーカーPC−1〜PC−7の質量範囲の文脈中において「約」とは、示される値の0.5%の変動をいう。例えば、マーカーPC−1の見かけの分子量範囲は、4.950kDa±25Da〜5.150kDa±26Daである。マーカーPC−2〜PC−7について、マーカーの見かけの分子範囲は、以下の通りである:マーカーPC−2:5.710kDa±29Da〜6.000kDa±30Da;マーカーPC−3:6.758kDa±34Da〜7.750kDa±39Da;マーカーPC−4:15.000kDa±75Da〜16.000kDa±80Da;マーカーPC−5:37.500kDa±186Da〜40.000kDa±200Da;マーカーPC−6:79.500kDa±398Da〜82.000kDa±410Da;およびマーカーPC−7:85.000±425Da kDa〜9.2000kDa±460Da。
【0064】
これらのマーカーの全ては、カチオン吸収剤に結合するので、これらのマーカーは、正味の負電荷を有するようである。これらのマーカーの同一性は、知られていない。これらのマーカーの他の特徴は、以下の実施例の節でさらに記載される。
【0065】
これらのマーカーは、最初、尿サンプルから同定されたが、このマーカーは他の型のサンプル(例えば、バルボタージ、血液、血清、唾液,組織など)の中に存在し得る。従って、このマーカーが検出され得るサンプルは、尿サンプルに限定されない。さらに、これらのマーカーは、最初、上記の技術を使用して同定されたが、これらのマーカーの検出は、これらの技術に限定されず、かつ他の技術(例えば、ELISA免疫アッセイ)が使用され得る。
【0066】
(III.マーカーの検出)
別の局面において、本発明は、マーカーを検出するための方法を提供し、このマーカーはTCC患者およびコントロール(例えば、TCCが検出不能な被験体)のサンプルにおいて、示差的に存在する。これらのマーカーは、おおくの生物学的サンプル中で検出され得る。このサンプルは、好ましくは、生物学的な流体サンプルである。本発明において有用な生物学的流体サンプルの例としては、尿、膀胱バルボタージ、血液、血漿、涙、唾液,組織などが挙げられる。これらのマーカーの全ては尿において見出されるので、尿は、本発明の実施形態のための好ましいサンプル源である。
【0067】
任意の適切な方法を使用して本明細書中に記載の1以上のマーカーを検出し得る。例えば、気相イオン分光分析を使用し得る。この技術としては、例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析が挙げられる。いくつかの実施形態において、このサンプルは、気相イオン分光分析、例えば、プレ分画化、2次元ゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどに先だって調製され得、マーカーの検出を補助する。マーカーの検出は、気相イオン分光分析以外の方法を使用して達成され得る。例えば、従来の免疫アッセイ(例えば、ELISA)を使用してサンプル中のマーカーを検出し得る。これらの検出方法は以下において詳細に記述され得る。
【0068】
(A.気相イオン分光分析による検出)
好ましい実施形態において、サンプル中に存在するマーカーは気相イオン分光分析を使用して、そしてより好ましくは質量分析を使用して検出される。1実施形態において、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化(「MALDI」)質量分析において、このサンプルは、代表的には、半精製されてタンパク質分離方法(例えば、2次元ゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー(HPLC))を使用して、マーカーから本質的になる画分を得る。
【0069】
別の実施形態において、表面改良型分析計(surface−enhanced laser desorption/ionization mass spectrometry(「SELDI」))が使用され得る。SELDIは吸着剤を含む基材を使用してマーカーを捕捉し、次いで,このマーカーは、質量分析の間に、直接的に脱離され、そして基材表面からイオン化される。SELDIにおけるこの基材表面はマーカーを捕捉するので、サンプルはMALDIにおけるような半精製がなされる必要はない。しかし、サンプルの複雑性および使用される吸着剤の型に依存して、SELDI分析前にこの複雑性を低減するためにサンプルを調製することが所望され得る。
【0070】
サンプル中のマーカーの検出を補助する種々のサンプル調製方法および気相イオン分光分析分析法が以下で詳細に記載される。
【0071】
(1.気相イオン分光分析前のサンプル調製)
必要に応じて、以下に記載されるかまたは当該分野で公知の他の方法のうちの1つまたはそれらの組み合わせを使用してサンプルを調製し、サンプル中のマーカーの検出および特徴づけをさらに補助し得る。いくつかの実施形態において、サンプルを前画分化(pre−fractionate)して、より複雑性の少ないサンプルを気相イオン分光分析の前に提供し得る。例えば、尿サンプルをタンパク質のサイズに従って前画分化して、このサンプル中のタンパク質の複雑性を低減し得る。さらに、前画分化プロトコルは、マーカーについての物理学的特性および化学的特性に関するさらなる情報を提供し得る。例えば、サンプルが陰イオン交換スピンカラムを使用して前画分化される場合、およびマーカーが特定のpHで溶出された場合、この溶出の特徴付けはこのマーカーの結合特性に関する情報を提供する。別の実施例において、サンプルは、大量に存在するかまたはサンプル中のマーカーの検出を干渉し得るこのサンプル中のタンパク質または他の分子を除去することによって前画分化され得る。他の適切なサンプル調製プロトコルは、当業者にとって明らかであり、そしてこれらはまた本発明の実施形態においても適用され得る。
【0072】
(a)サイズ排除クロマトグラフィー)
1実施形態において、サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用してサンプル中のタンパク質のサイズに従って前画分化され得る。利用可能なサンプルが少量である生物学的サンプルについて、好ましくは、サイズ選択スピンカラムが使用される。例えば、K−30スピンカラム(Ciphergen Biosystems,Inc.)が使用され得る。一般に、このカラムから溶出される第1の画分(「画分1」)は、最も高いパーセンテージの高分子量タンパク質を有しており;画分2は低いパーセンテージの高分子量タンパク質を有しており;画分3は、さらに低いパーセンテージの高分子量タンパク質を有しており;画分4は、最も低い量の巨大タンパク質を有しており、以下同様ある。次いで、画分の各々は、マーカーの検出のために気相イオン分光分析によって分析され得る。
【0073】
(b)ゲル電気泳動による生体分子の分離)
別の実施形態において、サンプル中の生体分子は高分解能電気泳動(例えば、1次元ゲル電気泳動または2次元ゲル電気泳動)によって分離され得る。マーカーを含有する画分は、単離され得、そして気相イオン分光分析によってさらに分析され得る。好ましくは、2次元ゲル電気泳動を使用して、生体分子のスポットの2次元の配列を得、このスポットは1以上のマーカーを含む。例えば、JungblutおよびThiede、Mass Spectr.Rev.16:145〜162(1997)を参照のこと。
【0074】
2次元ゲル電気泳動は、当該分野で公知の方法を使用して実施され得る。例えば、Deutscher編、Methods In Enzymology 182巻を参照のこと。代表的には、サンプル中の生体分子は、例えば、等電点によって分離され、この間に、サンプル中の生体分子は、これらの生体分子がこれらの正味の電荷がゼロとなるスポット(すなわち、等電点)に達するまでpH勾配において分離される。この第1の分離工程によって、生体分子の1次元の配列が生じる。一次元配列にある生体分子はさらに第1の工程で使用された技術とは一般的に異なる技術を使用してさらに分離される。例えば、第2次元において、等電点によって分離された生体分子は、ポリアクリルアミドゲルを使用してさらに分離される(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE))。SDS−PAGEゲルは生体分子の分子量の基づいてさらなる分離を可能にする。代表的には、2次元ゲル電気泳動は、複雑な混合物中の1000〜200,000Daの分子量範囲にある化学的に異なる生体分子を分離し得る。
【0075】
2次元配列内の生体分子は当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して検出され得る。例えば、ゲルにおける生体分子は標識されるかまたは染色される(例えば、クマシーブルーまたは銀染色)。ゲル電気泳動が、本発明の1以上のマーカーの分子量に対応するスポットを生成する場合、このスポットは気相イオン分光分析によってさらに分析され得る。例えば、スポットはゲルから切り出され得、そして気相イオン分光分析によって分析され得る。あるいは、生体分子を含むゲルは電場を印加することによって不活性メンブレンに移され得る。従って、おおよそマーカーの分子量に対応するメンブレン上のスポットは気相イオン分光分析によって分析され得る。気相イオン分光分析において、これらのスポットは、以下に記載されるような任意の適切な技術(例えば、MALDIまたは(例えば、ProteinChip(登録商標)arrayを使用する)SELDI)を使用して分析され得る。
【0076】
気相イオン分光分析の前に、スポット中の生体分子を、切断試薬(例えば、プロテアーゼ(例えば、トリプシン))を使用してより小さいフラグメントに切断することが所望され得る。小フラグメントへの生体分子の消化によって、このスポットにおける質量のフィンガープリントが提供され、このフィンガープリントを使用して、所望の場合、このマーカーの同一性を決定するために使用され得る。
【0077】
(c)高速液体クロマトグラフィー)
さらに別の実施形態において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、それらの異なる物理特性(例えば、極性、電荷、およびサイズ)に基づいて、サンプル中の生体分子の混合物を分離し得る。HPLC機器は代表的に、移動相のレザバ、ポンプ、注入器、分離カラム、および検出器からなる。サンプル中の生体分子は、サンプルのアリコートをこのカラムに注射することによって、分離される。この混合物中の異なる生体分子は、それらがこの移動液相と固定相との間の振る舞いを区画化するときの差異に起因して異なる速度でこのカラム中を通過する。1以上のマーカーの分子量および/または物理学的特性に対応する画分が収集され得る。次いで、この画分は、気相イオン分光分析によって分析され、マーカーを検出し得る。例えば、これらのスポットは、以下の詳細な記述のように、MALDIまたは(例えば、ProteinChip(登録商標)arrayを使用する)SELDIのいずれかを使用して分析され得る。
【0078】
(d)分析前のマーカーの修飾)
必要に応じて、マーカーは分析前に修飾され得、マーカーの分解能を改善するか、またはマーカーの同一性を決定する。任意のプロテアーゼが使用され得る。例えば、これらのマーカーは、分析前のタンパク質分解に供され得る。これらのマーカーを別個の数のフラグメントに切断する可能性のなるプロテアーゼ(例えば、トリプシン)が特に有用である。消化によって生じたフラグメントは、これらのマーカーのフィンガープリントとして機能し、これによって、これらのマーカーの間接的な検出を可能にする。これは、特に、問題とするマーカーについて混同され得る類似の分子量を有するマーカーが存在する場合に特に有用である。また、タンパク質分解性フラグメント化は、高分子量マーカーにとって有用であり、これは、より小さいマーカーは質量分析によって容易に解明され得るからである。別の実施例において、生体分子は修飾され得、検出分解能を改善し得る。例えば、ノイラミニダーゼを使用して、末端のシアル酸残基を糖タンパク質から除去し、陰イオン性吸着剤(例えば、陽イオン性交換ProteinChip(登録商標)アレイへの結合を改善し得、そして、検出分解能を改善し得る。別の実施形態において、これらのマーカーは、分子マーカーに特異的に結合する特定の分子量のタグの結合によって、修飾され得、そしてさらにこれらを識別する。必要に応じて、このような修飾されたマーカーを検出した後に、これらのマーカーの同一性は、タンパク質データベース(例えば、SWISS−PRO)の修飾マーカーの物理学的特徴および化学的特徴と一致させることによってさらに決定され得る。
【0079】
(2.気相イオン分光分析のための基材とサンプルとの接触)
上に記載されるように調製されるサンプルは、基材と接触され得る。基材は、気相イオン分光分析を用いる用途に適応するようなプローブであり得る。あるいは、基材は、気相イオン分光分析を用いる用途に適応されたプローブ上に配置され得る基材材料であり得る。例えば、基材は、結合マーカーに対する官能基を含む、固相(例えば、ポリマー性、常磁性のラテックスまたはガラスビーズ)であり得る。この基材は、次いで、プローブ上に配置される。
【0080】
プローブは、気相イオン分光分析を用いる用途に適応される(例えば、着脱可能で、気相イオン分光分析機器に挿入可能である)限り任意の形状であり得る。例えば、このプローブは、予め決定された予測可能な配置で一連のウェルを伴った、細片(ストリップ)、プレート、またはディッシュの形態であり得る。このプローブはまた、気相イオン分光分析機器のインレット(入口)システムおよび検出器を用いる用途のために形状形成され得る。例えば、このプローブは水平方向および/または垂直方向に並進可能なカートリッジ(これは、水平方向および/または水平方向にこのプローブを、プローブを手動による再配置を必要とすることなしに、連続的な位置に移動する)での装備について適応され得る。
【0081】
プローブ基材は、任意の物質からなり得る。例えば、このプローブ基材材料としては、絶縁物質(例えば、酸化ケイ素のようなガラス、プラスチック、セラミック)、半導体物質(例えば、シリコンウエハ)、または導電性物質(例えば、ニッケル、黄銅、鉄、アルミニウム、金のような金属または導電性ポリマー)、有機ポリマー、生体ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。このプローブ基材材料はまた、固体または多孔性であり得る。本発明の実施形態における用途について適切なプローブは、米国特許第5,617,060号(HutchensおよびYip)およびWO 98/59360(HutchenおよびYip)に記載されている。
【0082】
(a)不活性基材上のサンプルの分析)
サンプルの複雑性が上記のような調製方法を使用して実質的に低減された場合、このサンプルは気相イオン分光分析のための任意の適切な基材と接触され得る。例えば、基材表面は不活性であり得、そして結合マーカーに対する吸着剤を含む必要ない。なぜなら、マーカーからの他の生体分子のさらなる分離が必要ないためである。いくつかの実施形態において、好ましくは、サンプルは2次元ゲル電気泳動またはHPLCによって調製され、基材とこの画分とを接触させる前にマーカーを含む画分を得る。次いで、スポットまたは画分中のこれらのマーカーは、さらなる画分化を伴わずに気相イオン分光分析(例えば、従来のMALDI)を使用するか、または当該分野で公知の他の方法を使用するかして解明され得る。
【0083】
気相イオン分光分析前に、エネルギー吸収分子(「EAM」)またはマトリックス基材は、代表的には基材表面上のマーカーに適用される。このエネルギー吸収分子は、気相イオン分析分光機器由来のエネルギー源からのエネルギー吸収を補助し得、そしてこれらの分子はプローブ表面からのマーカーの脱着を補助し得る。例示的なエネルギー吸収分子としては、桂皮酸誘導体、シオピン酸(sinapinic acid)(「SPA」)、シアノヒドロキシ桂皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。他の適切なエネルギー吸収分子は、当業者にとって公知である。例えば、エネルギー吸収分子についてのさらなる記載について、米国特許第5,719,060号(HutchensおよびYip)を参照のこと。
【0084】
エネルギー吸収分子およびマーカーを含むサンプルは任意の適切な方法で接触され得る。例えば、エネルギー吸収分子は、マーカーを含むサンプルと混合され、そして、この混合物は、従来のMALDIプロセスのように基材表面に配置される。別の実施形態において、エネルギー吸収分子はこの基材表面とサンプルとを接触させる前に、基材表面上に配置され得る。別の例において、サンプルは、この基材表面とエネルギー吸収分子との接触の前に基材表面上に配置される。次いで、これらのマーカーは、以下に詳説するように脱離され、イオン化され、そして検出され得る。
【0085】
((b)吸着剤を含む基材表面上のサンプルの分析)
いくつかの実施形態において、サンプルの複雑性は基材を使用してさらに低減され得、この基材は1以上のマーカーを結合し得る吸着剤を含有する。吸着剤は、吸着剤がマーカーを結合するのに適切な結合の特徴を有している限り、マーカーについて生物的な特異性(例えば、マーカーに特異的に結合する抗体)である必要はない。例えば、吸着剤は、疎水性基、親水性基、カチオン性基、アニオン性基、金属イオンキレート化基、レクチン、へパリンまたは抗体あるいはそれらの組み合わせをあり得る。好ましくは、この吸着剤はカチオン性であるか、またはマーカー特異的な抗体を含み得る。
【0086】
種々の型の吸着剤の例が、当該分野で周知である。例えば、疎水性基を含む吸着剤としては、脂肪族炭化水素(例えば、C〜C18脂肪族炭化水素)を有する材料、および芳香族炭化水素官能基(例えば、フェニル基)を有するマトリクスが挙げられる。親水性基を含む吸着剤としては、例えば、ガラス(例えば、シリコンオキシド)、または親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロースまたはセルロース)が挙げられる。カチオン基を含む吸着剤としては、例えば、第二級アミン、第三級アミンまたは第四級アミンのマトリクスが挙げられる。アニオン基を含む吸着剤としては、硫酸アニオン(SO )のマトリクスおよびカルボキシレートアニオン(COO)またはリン酸アニオン(OPO )のマトリクスが挙げられる。金属キレート基を含む吸着剤としては、例えば、金属イオン(例えば、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄および他の金属イオン(例えば、アルミニウムおよびカルシウム))と配位結合を形成する1個以上の電子供与基を有する有機分子が挙げられる。抗体を含む吸着剤としては、例えば、本明細書中で提供されるマーカーのいずれか1つに特異的に結合する抗体が挙げられる。これらの吸着剤の数種を有するプローブもまた、市販されている(例えば、Normal Phase ProteinChip(登録商標)、SAX2 ProteinChip(登録商標)、IMAC3 ProteinChip(登録商標)など(全ては、Cihphergen Biosystems,Inc.(Fremout,CA)より入手可能))。好ましい実施形態において、吸着剤は、尿サンプルからマーカーを濃縮し同定するために初めに使用される吸着剤(例えば、SAX2 ProteinChip(登録商標))と実質的に類似しているか、または同じである。
【0087】
プローブは、基材材料および/または吸着剤の選択に依存する任意の適切な方法を使用して産生され得る。例えば、金属表面は、シリコンオキシド、酸化チタンまたは金でコーティングされ得、このコーティングされた表面は、例えば、二官能性リンカーで誘導体化されて吸着剤に結合および付着し得る。例えば、二官能性リンカーの一方の末端は、表面上で官能基と共有結合し得、他方の末端は、吸着剤として機能する基でさらに誘導体化され得る。別の例において、結晶化シリコンから作製される多孔性シリコン表面は、結合マーカーに対する吸着剤を含むように化学修飾され得る。別の例において、吸着剤は、例えば、置換アクリルアミドモノマー、置換アクリレートモノマー、またはそれらの誘導体(吸着剤として選択される官能基を含む)を含むモノマー溶液のインサイチュでの重合によって、基材表面上に直接的に形成され得る。このモノマー溶液の重合によって、二分子を結合するためのより高い能力を有するヒドロゲル吸着剤が提供され得る。
【0088】
マーカーに結合する吸着剤は、任意の適切なパターン(例えば、連続的または不連続的)で基材に適用され得る。例えば、1種以上の吸着剤が、基材表面上に存在し得る。複数の型の吸着剤が使用される場合、この基材表面は、1つ以上の結合特性が一次元勾配または二次元勾配で変更されるようにコーティングされ得る。不連続である場合複数の吸着剤が、所定のアドレス可能な位置において基材表面上に存在し得る。このアドレス可能な位置は、任意のパターンで整列され得るが、好ましくは、規則的なパターン(例えば、線、直交アレイ、または規則的な曲線(例えば、円))で整列され得る。例えば、プローブは、吸着剤の不連続スポットを含み得る。各アドレス可能な位置は、同じかまたは異なる吸着剤を含み得る。このスポットは、質量分析の間に、エネルギー源(例えば、レーザ)がマーカーを脱離およびイオン化するために各スポットに指向されるか、または各スポットに「整列される(address)」という点で、「アドレス可能」である。
【0089】
サンプルは、任意の適切な様式(例えば、水浴、浸漬、液浸、噴霧、洗浄、またはピペッティングなど)で吸着剤を含む基材と接触される。一般的には、約1μl〜500μl中で数アトモル〜100ピコモルのマーカーを含むサンプル容量が、吸着剤に結合するのに十分である。このサンプルは、マーカーが吸着剤に結合するのを可能にするのに十分な期間、吸着剤を含むプローブ基材と接触され得る。代表的には、このサンプルおよび吸着剤を含む基材は、約30秒〜約12時間、好ましくは約30秒〜約15分間、接触される。代表的には、このサンプルは、周囲温度および圧力条件下にて、プローブ基材と接触される。しかしながら、いくつかのサンプルについて、変更温度(代表的には、4℃〜37℃)および圧力条件が所望され得、この条件は、当業者によって決定可能である。
【0090】
基材がサンプルまたはサンプル溶液と接触された後、基材表面上の未結合の材料は、結合材料だけが基材表面上に維持されるように、洗浄される。基材表面の洗浄は、例えば、基材表面を溶離剤で水浴、浸漬、液浸、リンス、噴霧または洗浄することによって達成され得る。ミクロ流体プロセスは、好ましくは、溶離剤がプローブ上の吸着剤の小スポットに導入される場合に、使用される。代表的には、溶離剤は、0℃と100℃との間、好ましくは4℃と37℃との間の温度であり得る。いくつかの実施形態において、プローブ表面上に結合したマーカーが、洗浄なしに気相イオン分光光度法によって分解され得る場合、未結合の材料をプローブ表面から洗浄することは、必要ではないかもしれない。
【0091】
任意の適切な溶離剤(例えば、有機または水性)が、基材表面を洗浄するために使用され得る。好ましくは、水溶液が使用される。例示的な水溶液としては、HEPES緩衝液、Tris緩衝液またはリン酸緩衝化生理食塩水などが挙げられる。緩衝液の洗浄ストリンジェンシーを増加させるために、添加剤が緩衝液に導入され得る。これらとしては、イオン性相互作用改変剤(イオン強度およびpHの両方)、水構造改変剤、疎水性相互作用改変剤、カオトロピズム試薬、親和性相互作用ディスプレーサが挙げられるがこれらに限定されない。これらの添加剤の特定の例は、例えば、PCT公開WO98/59360(HutchensおよびYip)に見出され得る。特定の溶離剤または溶離添加剤の選択は、他の実験条件(例えば、使用される吸着剤の型、または検出されるべきマーカーの型)に依存しており、当業者によって決定され得る。
【0092】
プローブ表面からマーカーを含む生分子を脱離およびイオン化する前に、エネルギー吸収分子(「EAM」)またはマトリクス材料が、代表的に、基材表面上のマーカーに適用される。EAMの型およびEAMを適用するための方法は、上記で議論されており、この節では報告しない。
【0093】
(3.脱離/イオン化および検出)
基材表面上のマーカーは、気相イオン分析計を使用して、脱離およびイオン化され得る。任意の適切な気相イオン分析計は、基材上のマーカーが分解されるのが可能な限り使用され得る。好ましくは、気相イオン分析計は、マーカーの定量化を可能にする。
【0094】
1つの実施形態において、気相イオン分析計は、質量分析計である。代表的な質量分析計において、基材またはその表面上にマーカーを含むプローブは、質量分析計の入口システムに導入される。次いで、このマーカーは、脱離源(例えば、レーザ、高速原子衝撃、高エネルギープラズマ、エレクトロスプレーイオン化法、熱スプレーイオン化法、液体二次イオンMS、電場脱離など)によって脱離される。生成された、脱離した揮発性種は、前形成したイオンまたは脱離事象の直接的な結果としてイオン化された中性種からなる。生成されたイオンは、イオン光学アセンブリによって収集され、次いで質量分析器によって分散され、通過イオンを分析する。質量分析器から出てくるイオンは、検出器によって検出される。次いで、この検出器は、検出されたイオンの情報を質量−電荷比に翻訳する。マーカーまたは他の物質の存在を検出することは、代表的に、シグナル強度の検出を含む。次いで、これは、基材に結合したマーカーの量および特性を示し得る。質量分析計の任意の成分(例えば、脱離源、質量分析器、検出器など)が、本明細書中に記載される他の適切な成分、または本発明の実施形態において当該分野で公知の他のものと組み合わせられ得る。
【0095】
好ましくは、レーザ脱離飛行時間型質量分析計が、本発明の実施形態において使用され得る。レーザ脱離質量分析計において、基材またはマーカーを含むプローブが、入口システムに導入される。このマーカーは、イオン源からのレーザによって気相で脱離およびイオン化される。生成されたイオンは、イオン光学アセンブリによって収集され、次いで飛行時間型質量分析器において、イオンが短い高圧場を通って加速され、高減圧チャンバに押し流される。この高減圧チャンバから遠方の末端において、加速されたイオンは、異なる時間で感受性検出器表面に衝突する。飛行時間法は、イオンの質量の関数であるので、イオン形成とイオン検出器衝突との間の経過時間は、特定の質量 対 電荷比のマーカーの存在または非存在を同定するために使用され得る。
【0096】
別の実施形態において、イオン移動度分析計が、マーカーを検出するために使用され得る。イオン移動度分析計の原理は、イオンの異なる移動度に基づく。特に、イオン化によって生成されたサンプルのイオンは、異なる速度で移動し、それは、電場の影響下で、チューブを通るそれらの差(例えば、質量、電荷、または形状)に起因する。イオン(代表的には、電流の形態)は、検出器で記録され、この検出器は、次いで、サンプル中のマーカーまたは他の物質を同定するために使用される。イオン移動度分析計の1つの利点は、大気圧で操作できることである。
【0097】
なお別の実施形態において、全イオン電流測定デバイスが、マーカーを検出および特徴付けるために使用され得る。このデバイスは、基材が単一型のマーカーのみを有する場合に使用され得る。単一型のマーカーが基材上にある場合、イオン化したマーカーから生じる全電流は、マーカーの量および他の特徴を示す。次いで、マーカーによって生じる全イオン電流は、コントロール(例えば、既知の化合物の全イオン電流)と比較され得る。次いで、マーカーの量または他の特徴が決定され得る。
【0098】
(4.データの解析)
マーカーの脱離および検出によって作成されるデータは、任意の適切な手段を使用して解析される。1つの実施形態において、データは、プログラム可能なデジタルコンピューターを使用して解析される。このコンピュータープログラムは、一般に、コードを記憶する読み出し可能な媒体を含む。プローブ上の各特徴の位置、その特徴における吸着剤の同一性、およびこの吸着剤を洗浄するために使用される溶出条件を含む特定のコードが、記憶装置(メモリ)に割り当てられる。このコンピューターはまた、プローブ上の特定のアドレス可能な位置から受容された種々の分子質量でのシグナル強度についてのデータを、入力として受容するコードを含む。このデータは、検出されるマーカーの数(各マーカーによって生じるシグナルの強度を含む)を示し得る。
【0099】
データ解析は、検出されるマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ)を決定する工程、および「アウトライアー(outerlier)」(所定の統計学的分布から外れたデータ)を除く工程を包含し得る。観察されたピークが規格化され得、それによって、いくつかの参照に対する各ピークの高さが算出される。例えば、参照は、器具および化学製品(例えば、エネルギー吸収分子)によって生じるバックグラウンドノイズであり得、そしてこれは、尺度においてゼロとして設定される。次いで、各マーカーまたは他の生分子について検出されるシグナル強度は、所望の尺度(例えば、100)における相対的な強度の形態で表示され得る。あるいは、基準(例えば、ウシ血清アルブミン)がサンプルを用いて許容され、その結果、この基準からのピークを参照として使用して、各マーカーまたは検出された他のマーカーについて観察されたシグナルの相対的な強度を算出し得る。
【0100】
コンピューターは、得られたデータを、画像化するために種々のフォーマットに変換し得る。「スペクトル表示(spectrum view)またはレテンテートマップ(retentate map)」として参照される1つのフォーマットにおいて、標準スペクトル表示が画像化され得、ここで、この表示は、各特定の分子量において検出器に到達するマーカーの量を示す。「ピークマップ(peak map)」として参照される別のフォーマットにおいて、ピークの高さおよび質量情報のみが、スペクトル表示から保持され、より明瞭な画像が作製され、ほぼ同一の分子量を有するマーカーをより簡単に見ることを可能にする。「ゲル表示(gel view)」として参照されるなお別のフォーマットにおいて、ピーク表示からの各質量は、各ピークの高さに基づくグレースケール画像に変換され得、電気泳動ゲルによるバンドと類似の外観を生じる。「3−Dオーバーレイ(3−D overlay)」として参照されるなお別の実施形態において、いくつかのスペクトルが、相対的なピークの高さの細かい変化を研究するためにオーバーレイされ得る。「差マップ表示(difference map view)」として参照されるなお別のフォーマットにおいて、2つ以上のスペクトルが比較され得、特有のマーカーおよびサンプル間でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるマーカーを都合よく強調表示する。任意の2つのサンプルからのマーカープロフィール(スペクトル)が、視覚的に比較される。なお別のフォーマットにおいて、Spotfire Scatter Plotが使用され得、ここで、検出されるマーカーは、点としてプロットされ、ここで、このプロットの一方の軸は、検出されるマーカーの見かけの分子を表わし、他方の軸は、検出されるマーカーのシグナル強度を表わす。各サンプルについて、検出されるマーカーおよびサンプル中に存在するマーカーの量は、コンピューター読み出し可能な媒体に記憶され得る。次いで、このデータは、コントロール(例えば、プロフィールまたはコントロールにおいて検出されるマーカーの量(例えば、TCCが検出できない被験体))と比較され得る。
【0101】
(B.免疫アッセイによる検出)
別の実施形態において、免疫アッセイが、サンプル中のマーカーを検出および分析するために使用され得る。この方法は、以下を包含する:(a)マーカーに特異的に結合する抗体を提供する工程;(b)サンプルを抗体と接触させる工程;および(c)サンプル中のマーカーに結合する抗体の複合体の存在を検出する工程。
【0102】
マーカーに特異的に結合する抗体を調製するために、精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列が使用され得る。マーカーについての核酸およびアミノ酸配列は、これらのマーカーのさらなる特徴付けによって得られ得る。例えば、各マーカーは、多数の酵素(例えば、トリプシン、V8プロテアーゼなど)を用いてマッピングされるペプチドであり得る。各マーカーからの消化フラグメントの分子量は、種々の酵素によって産生された消化フラグメントの分子量と整合する配列についてのデータベース(例えば、SWISS−PROデータベース)を検索するために使用され得る。この方法を使用して、これらのマーカーがデータベースにおいて既知のタンパク質である場合、他のマーカーの核酸およびアミノ酸配列が同定され得る。
【0103】
あるいは、タンパク質は、タンパク質ラダー配列決定(protein ladder sequencing)を使用して、配列決定され得る。タンパク質ラダーは、例えば、分子を切断し、そしてフラグメントを酵素消化または他の方法(例えば、フラグメントの末端から単一アミノ酸を連続的に除去する方法)に供することによって生成され得る。タンパク質ラダーを調製する方法は、例えば、国際公開WO93/24834(Chaitら)および米国特許第5,792,664号(Chaitら)に記載されている。次いで、ラダーは、質量分光計によって分析される。ラダーフラグメントの質量差は、分子の末端から除去されたアミノ酸を同定する。
【0104】
マーカーがデータベースにおいて既知でない場合、核酸およびアミノ酸配列は、マーカーのアミノ酸配列の一部の知識でさえも用いて決定され得る。例えば、変性したプローブは、マーカーのN末端アミノ酸配列に基づいて作製され得る。次いで、これらのプローブは、マーカーが初期に検出されたサンプルから作製されたゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用され得る。ポジティブクローンが同定され、増幅され、そしてそれらの組換えDNA配列が周知の技術を使用してサブクローン化され得る。例えば、Current Protocols for Molecular Biology(Ausubelら、Green Publishing Assoc.and Wiley−Interscience 1989)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory,NY 1989)を参照のこと。
【0105】
精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列を使用して、マーカーに特異的に結合する抗体が、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して調製される。例えば、Coligan,Current Protocols in Immunology(1991);Harlow & Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1988);Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、1986);およびKohler & Milstein,Nature 256:495〜497(1975)を参照のこと。このような技術としては、ファージまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体調製、ならびにウサギまたはマウスの免疫による、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製が挙げられるがこれらに限定されない(例えば、Huseら、Science 246:1275〜1281(1989);Wardら、Nature 341:544〜546(1989)を参照のこと)。
【0106】
抗体が提供された後、マーカーが検出され得、そして/または当該分野で公知の、任意の適切な免疫学的結合アッセイを使用して定量化され得る(例えば、米国特許第4,366,241号;同第4,376,110号;同第4,517,288号;および同第4,837,168号を参照のこと)。有用なアッセイとしては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)(例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA))、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイが挙げられる。これらの方法はまた、例えば、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology,第37巻(Asai編、1993);Basic and Clinical Immunology(Stites & Terr編、第7版、1991);およびHarlow & Lane、前出に記載されている。
【0107】
一般的に、被験体から得られたサンプルは、マーカーに特異的に結合する抗体と接触され得る。必要に応じて、抗体をサンプルと接触させる前に、抗体は、固形支持体に固定されて、洗浄およびそれに続く複合体の単離を容易にし得る。固体支持体の例としては、例えば、マイクロタイタープレート、スティック、ビーズまたはミクロビーズの形態の、ガラスまたはプラスチックが挙げられる。抗体はまた、プローブ基材またはProteinChip(登録商標)アレイに結合され得、そして上記のような気相イオン分析計によって分析され得る。このサンプルは、好ましくは、被験体から採取された生物学的流体サンプルである。生物学的サンプルの例としては、尿、バルボタージ、血液、血清、血漿、涙、唾液、組織などが挙げられる。好ましい実施形態において、生物学的流体は、尿を含む。サンプルは、このサンプルを抗体で接触させる前に、適切な溶離液で希釈され得る。
【0108】
サンプルを抗体と共にインキュベートした後、この混合物を洗浄し、形成された抗体−マーカー複合体が検出され得る。これは、洗浄した混合物を検出試薬と共にインキュベートすることによって達成され得る。この検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識化される二次抗体であり得る。例示的な検出可能な標識としては、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADSTM)、蛍光染料、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシターゼ(horse radish peroxide)、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般に使用される他のもの)、および比色定量標識(例えば、金コロイドまたは着色ガラスまたはプラスチックビーズ)が挙げられる。あるいは、サンプル中のマーカーは、間接的なアッセイを使用して検出され得、ここで例えば、二次標識抗体が、結合したマーカー特異的抗体を検出するために使用され、そして/または、競合アッセイもしくは阻害アッセイにおいては、例えば、マーカーの別のエピトープに結合するモノクローナル抗体が混合物と共に同時にインキュベートされる。
【0109】
アッセイ全体を通して、インキュベーション工程および/または洗浄工程が、試薬の各組み合わせの後に必要とされ得る。インキュベーション工程は、約5秒〜数時間、好ましくは約5分〜約24時間、変更され得る。しかしながら、インキュベーション時間は、アッセイのフォーマット、マーカー、溶液の容量、濃度などに依存する。通常、これらのアッセイは、周囲温度で行われるが、これらは10℃〜40℃のような温度範囲にわたって行われ得る。
【0110】
免疫アッセイは、サンプル中のマーカーの存在または非存在、ならびにサンプル中のマーカーの量を決定するために使用され得る。第一に、サンプル中のマーカーの試験量は、上記の免疫アッセイ法を使用して検出され得る。マーカーがサンプル中に存在する場合、これは、上記の適切なインキュベーション条件下でマーカーに特異的に結合する抗体との抗体−マーカー複合体を形成し得る。抗体−マーカー複合体の量は、標準と比較することによって決定され得る。標準は、例えば、既知の化合物またはサンプル中に存在することが公知の別のタンパク質であり得る。上記のように、マーカーの試験量は、測定の単位がコントロールと比較できるのならば、絶対単位で測定する必要はない。
【0111】
サンプル中のこれらのマーカーを検出するための方法は、多くの適用を有する。例えば、1つ以上のマーカーが、TCC診断または予後診断を補助するために測定され得る。別の例において、マーカーを検出するための方法を使用して、癌処置に対する被験体の応答をモニタリングするために使用され得る。別の例において、マーカーを検出するための方法を使用して、インビボまたはインビトロにおけるこれらのマーカーの発現を調節する化合物をアッセイし、そしてそれらを同定し得る。
【0112】
(IV.TCCの診断)
別の局面において、本発明は、Merker Set 1またはMerker Set 2における1つ以上のマーカーを使用して、TCC診断を補助するための方法を提供する。これらのマーカーは、TCC診断を補助する際に、単独で、いずれかのセットの他のマーカーと組み合わせて、または全く異なるマーカー(例えば、膀胱腫瘍抗原またはNMP−22)と組み合わせて使用され得る。Marker Set 1およびMarker Set 2におけるマーカーは、TCC患者およびTCCが検出できない正常な被験体のサンプル中に差次的に存在する。例えば、全てのマーカー(マーカーPC−6を除く)は、正常な被験体においてよりもTCC患者において、より高い頻度で存在する。従って、人におけるこれらのマーカーの1つ以上を検出することによって、この人がTCCを有する可能性に関する有用な情報が提供される。
【0113】
従って、本発明の実施形態は、TCC診断を補助するための方法を包含する。ここでこの方法は、以下を包含する:(a)サンプル中の少なくとも1つのマーカーを検出する工程であって、ここでこのマーカーは、Marker UBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;Marker UBC−2:9.495kDa±233Da;Marker UBC−3:44.6kDa±1.9kDa;Marker UBC−4:100.120kDa±4.3kDa;Marker UBC−5:133.190kDa±3.9kDa;Marker PC−1:約4.950−5.150kDa;Marker PC−2:約5.710−6.000kDa;Marker PC−3:約6.758−7.750kDa;Marker PC−4:約15.000−16.000kDa;Marker PC−5:約37.500−40.000kDa;Marker PC−6:約79.500−82.000kDa;およびMarker PC−7:約85.000−92.000kDaから選択される工程、ならびに(b)このマーカー(単数または複数)の検出がTCCの推定診断と関連付ける工程。この相関関係は、(例えば、TCCが検出不能である正常な被験体における)マーカー(単数または複数)のコントロールの量と比べた、サンプル中のマーカー(単数または複数)の量を考慮し得る。この相関関係は、試験サンプル中のマーカーの存在または欠如、ならびにコントロール中の同じマーカーの検出の頻度を考慮し得る。この相関関係は、被験体がTCCを有するか否かの決定を容易にするためのこのような因子の両方を考慮し得る。
【0114】
マーカーを検出するために、任意の適切なサンプルを被験体から獲得し得る。好ましくは、サンプルは、この被験体由来の尿サンプルである。所望の場合、このサンプルは、このマーカーの検出能を強化するために上記のように調製され得る。例えば、マーカーUBC−1〜UBC−5の検出能を増大するため、この被験体由来の尿サンプルは必要に応じて、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって、分画され得る。サンプル調製(例えば、プレ分画プロトコール)は、随意であり、そして用いられる検出方法によって、マーカーの検出能を強化する必要はないかもしれない。例えば、サンプル調製は、マーカーに特異的に結合する抗体を用いて、サンプル中のマーカーの存在を検出する場合、不必要であり得る。
【0115】
任意の適切な方法を用いて、サンプル中のマーカー(単数または複数)を検出し得る。例えば、気相イオン分光分析または伝統的なイムノアッセイ(例えば、ELISA)が、上記のように用いられ得る。これらの方法を用いて、1つ以上のマーカーが検出され得る。好ましくは、複数のマーカーの存在について、サンプルを試験する。単一のマーカーのみではなく、複数のマーカーの存在を検出することによって、診断のためのさらなる情報が提供される。詳細には、サンプル中の複数のマーカーの検出によって真陽性診断および真陰性診断の割合が増加し、そして偽陽性診断または偽陰性診断の割合が減少する。
【0116】
次いで、マーカー(単数または複数)の検出は、TCCの推定診断に相関する。いくつかの実施形態において、マーカーの量の定量を伴わない、単なるマーカーの存在または欠如の検出が、有用であり、そしてTCCの推定診断と相関し得る。例えば、全てのマーカー(マーカーUBC−6は除く)は、正常な被験体よりもTCC患者においてより頻繁に検出される。従って、試験されている被験体におけるこれらのマーカーの1つ以上の単なる検出は、この被験体がTCCを有する可能性がより高いことを示す。
【0117】
他の実施形態において、マーカーの検出は、マーカーを定量して、マーカーの検出とTCCの推定診断とを関連付ける工程を包含し得る。例えば、このマーカーのいくつかおよび全てが、正常な被験体の尿サンプルにおいてよりも、TCC患者の尿サンプルにおいてより高い量で存在し得る。従って、試験されている被験体において検出されたマーカーの量が、コントロール量と比べてより高いならば、この試験されている被験体は、TCCを有する可能性がより高い。
【0118】
このデータの分析は、マーカーUBC−1〜UBC−5、およびPC−1〜PC−5およびPC−7のうちいずれか1つの検出(またはマーカーPC−6の欠如)は、TCCの陽性診断と高度な相関関係はないことを示す。しかし、陽性診断の機会は、マーカーUBC−1〜UBC−5、およびPC−1〜PC−5、およびPC−7のさらに多く(例えば、2、3、4、など)の検出に伴って有意に増大する。さらに、これらのマーカーUBC−1〜UBC−5、およびPC−1〜PC−5、およびPC−7のいずれか1つ(またはマーカーUBC−6の検出)が検出不能であることはまた、TCCの陰性診断と高度な相関関係はない。しかし、これらのマーカーの多くを検出することが不可能であることは、TCCの陰性診断に高度に相関する。
【0119】
マーカーが定量されるとき、このマーカーはコントロールに対して比較され得る。コントロールは、例えば、TCCが検出不能である正常な被験体の匹敵するサンプルに存在するマーカーの平均量または中央値量であり得る。コントロール量は、試験量を測定するのと、同じかまたは実質的に類似の実験条件下で測定される。例えば、試験サンプルが被験体の尿サンプルから得られ、そしてマーカーが特定のプローブを用いて検出されるならば、このマーカーのコントロール量は好ましくは、同じプローブを用いて患者の尿サンプルから決定される。マーカーのコントロール量は、TCCを有さない正常な被験体由来の非常に多数のサンプルに基づいて決定され、結果としてその集団中の種々のマーカーの量を反映することが好ましい。
【0120】
次いで、質量分析法によって生成されたデータは、コンピューターソフトウェアによって分析され得る。ソフトウェアは、シグナルを質量分析計からコンピューター読み取り形態に変換するコードを含み得る。このソフトウェアはまた、アルゴリズムをシグナルの分析に適用し、このシグナルが、本発明のマーカーまたは他の有用なマーカーに相当するシグナルにおける「ピーク」を示すか否かを決定するためのコードを含み得る。このソフトウェアはまた、試験サンプル由来のシグナルを代表的な「正常」のおよびTCCのシグナル特性と比較し、そして2つのシグナルの間の適合の密接度を決定するアルゴリズムを実行するコードを含み得る。任意の適切なアルゴリズムが用いられ得る。例えば、人工知能プログラム、例えば、ファジー理論、ニューロンネットワークのクラスター分析(ANN)が用いられ得る。例えば、Qureshiら、J.Urol.,163:630〜633(2000);Snowら、J.Urol.,152:1923(1994)を参照のこと。このソフトウェアはまた、どの試験サンプルが最も近接しているかを示し、それによって推定診断を提供するコードを含み得る。
【0121】
(V.キット)
なお別の局面において、本発明は、TCCの診断を補助するキットを提供する。ここで、このキットは、本発明のマーカーを検出するために用いられ得る。例えば、このキットは、本明細書に記載のマーカー(このマーカーは、TCC患者および正常被験体のサンプル中に示差的に存在する)のいずれか1つ以上を検出するために用いられ得る。本発明のキットは、多くの適用を有し得る。例えば、このキットは、被験体がTCCを有するか否か、または陰性診断を有するか否かを決定するために用いられ得、これによってTCC診断を補助する。別の例において、このキットは、TCCに関するインビトロまたはインビボの動物モデルにおいて、1つ以上のマーカーの発現を調節する化合物を同定するために用いられ得る。
【0122】
1実施形態において、キットは、以下:(a)その上に吸収剤を含む基質であって、この吸収剤がマーカー結合に適切である、基質、および(b)この吸収剤とサンプルとを接触させること、およびこの吸収剤によって保持されるマーカー(単数または複数)を検出することによって、マーカー(単数または複数)を検出するための指示書を備える。いくつかの実施形態において、このキットは、溶離剤(溶出剤)(指示書と別に、または指示書と組み合わせて)、または溶離剤を作成するための指示書を含み得る。ここでこの吸収剤および溶離剤の組み合わせによって、気相イオン分光分析を用いるマーカーの検出が可能になる。このようなキットは、上記の材料から調製され得る。そしてこれらの材料(例えば、プローブ基質、吸収剤、洗浄溶液、など)の以前の考察は、この節に完全に適合性であり、そして繰り返すことはない。
【0123】
別の実施形態において、このキットは、その上に吸収剤を含む第一の基質(例えば、吸収剤で機能化された粒子)と、第二の基質であって、この上に第一の基質が配置され得、気相イオン分光分析計に取り外し可能に挿入可能であるプローブを形成する第二の基質とを、備え得る。他の実施形態において、キットは、取り外し可能に挿入可能であるプローブの形態である、単一の基質を、この基質上の吸収剤とともに、備え得る。なお別の実施形態において、このキットはさらに、プレ分画スピンカラム(例えば、K−30サイズ排除カラム)を備え得る。
【0124】
必要に応じて、このキットはさらに、標識または別の挿入物の形態で、適切な操作パラメーターについての指示書を備え得る。例えば、このキットは、尿サンプルをプローブ上に接触させた後、このプローブを洗浄する方法について消費者に情報提供する、標準的な指示書を備え得る。別の例では、このキットは、サンプル中のタンパク質の複雑性を減じるようにサンプルをプレ分画するための指示書を有し得る。
【0125】
別の実施形態において、このキットは、以下:(a)マーカーに特異的に結合する抗体、および(b)検出試薬を備える。このようなキットは、上記の材料から調製され得、そしてこの材料(例えば、抗体、検出試薬、固定支持体、など)に関する前の考察は、完全にこの節に適用可能であり、そして繰り返すことはしない。必要に応じて、このキットはさらに、プレ分画スピンカラムを備え得る。いくつかの実施形態において、このキットはさらに、標識または別の挿入物の形態で、適切な操作パラメーターについての指示書を備え得る。
【0126】
必要に応じて、このキットはさらに、標準情報またはコントロール情報を含み得る。その結果、この試験サンプルを、コントロール情報標準と比較して、サンプル中で検出されたマーカーの試験量が、TCCの診断と一致する診断量であるか否かを決定することができる。例えば、標準は、ウシインスリン、ウシ血清アルブミンなどであり得る。
【0127】
(実施例)
以下の実施例は、例示の目的で提供されるものであり、限定の目的ではない。
【0128】
(I.対象物)
Eastern Virginia Medical School(EVMS)の泌尿器科(department of Urology)でみられた患者から数ヶ月間にわたって尿サンプルを収集した。この尿サンプルを直ちにアリコートにし、そしてアッセイするまで、Virginia Prostate CenterのTissue and Body Fluid Bankにおいて−80℃で保存した。全部で94の尿試料を収集した。TCC患者およびコントロール群の人口統計学を、以下に示す表1に提供する。
【0129】
【表1】
Figure 2004525343
健常コントロール(n=34)は、EVMSで前立腺癌スクリーニングプログラムに参加した、疾患の証拠のないボランティア、および健常個体(すなわち、泌尿器癌の病歴または証拠のない)を含んだ。TCC(n=30 患者)を、試料収集の時点で組織学的にまたは細胞学的に確認した。再発の場合、試料収集の前3ヶ月以内に化学療法または免疫療法を受けた患者はいなかった。
【0130】
World Health Organization(WHO)(世界保健機構)のシステムを用いて分類(類別)を評価した。腫瘍の病期(段階)およびTCCを有する患者の分類(類別)を、以下の表2に示す。
【0131】
【表2】
Figure 2004525343
Ta腫瘍の4患者、T1腫瘍の1患者およびT2腫瘍の1患者は、併発性の上皮内癌(CIS)を有した。他の尿生殖系の疾患(n=30 患者)は、以下を含んだ:臨床的または病理学的に確認された前立腺炎(n=6)、前立腺症(n=9)、尿路感染(n=1)、良性前立腺肥大(BPH)(n=12)、アミロイドーシス(n=1)、前立腺および膀胱の炎症(n=1)、膀胱排尿開口部閉塞(n=1)、ならびに前立腺癌(n=1)。良性前立腺肥大(BPH)を有する1患者および前立腺症を有する1患者は、併発性の前立腺炎を有した。
【0132】
(II.統計分析)
試験に含まれたTCC患者の総数に対する、バイオマーカーを含んだTCC患者の比として、感度を規定する。TCCを有さない個体の総数に対する、タンパク質ピークを有さない、そしてTCCを有さない個体の比として特異性を規定する。バイオマーカーを有する個体がTCCを有する確率として、正の推定値を規定する。バイオマーカーを有さない個体がTCCを有さない確率として、負の推定値を規定する。二次元分割表中のデータを組織化し、そして変数の独立性について試験した後、カイ二乗検定を用いて統計を実施した。スチューデントのt検定を利用して、種々の群の間のピーク数の比較を実施した。全ての場合、P<0.05を統計学的に有意であるとみなした。
【0133】
(III.タンパク質バイオチップの生成)
A.SAX−2 ProteinChip(登録商標)(Strong anionic exchanger,cationic surface(強力陰イオン交換体、陽イオン表面))
SAX−2 ProteinChip(登録商標)は、強力な陰イオン交換体アレイであり、陽イオン性タンパク質に結合する能力が高い第4級アンモニウム表面を有する。陰イオン性のアレイは、陰性に荷電したアミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)の静電的相互作用を介してタンパク質に結合する。結合は代表的に、低塩の高いpHで生じ、そしてpHが低下し塩濃度が上昇するにつれて、結合は低下する。
【0134】
SAX−2 ProteinChip(登録商標)は、以下のとおり生成され得る。金属基質の表面は、上記のようなガラスコーティングで条件付けされコーティングされる。3−(Methacryloylamino(メタクリロイルアミノ))プロピルトリメチルアンモニウムクロライド(15.0重量%)、およびN,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.4重量%)を、光重合化開始剤として(−)−リボフラビン(0.01重量%)を用い、そして反応促進剤として過硫酸アンモニウム(0.2重量%)を用いて、光重合する。モノマー(単量体)溶液を、粗くエッチングしたガラスコーティングした基質上に蒸着し(0.4μL、2回)、そして近UV曝露システム(Hg短アークランプ、20mW/cm(365nm))を用いて5分間照射する。この表面を、塩化ナトリウム(1M)の溶液で洗浄し、次いでこの表面を、脱イオン水で2回洗浄する。
【0135】
B.IMAC3 ProteinChip(登録商標)(Immobilized Metal Affinity Capture,nitrilotriacetic acid on surface(固定された金属親和性捕獲、表面上のニトリロ三酢酸))
IMAC3 ProteinChip(登録商標)は、高性能金属結合のための表面、および金属結合残基を用いたタンパク質の引き続く親和性捕獲を備える。固定された金属親和性捕獲アレイは、金属に親和性を有するタンパク質およびペプチドに結合する;露出したヒスチジン、トリプトファンおよび/またはシステインを有するタンパク質は代表的に、これらのチップ表面に固定された金属に結合する。結合は代表的に、pH6〜8より下、および高い塩濃度で生じ、そしてイミダゾールおよびグリシンの濃度が上昇するにつれて結合は低下する。
【0136】
IMAC3 ProteinChip(登録商標)は、以下のとおり生成され得る。金属基質の表面は、上記のようにガラスコーティングで条件付けられてコーティングされる。5−メタシルアミド−2−(N,N−ビカルボキシメタイルアミノペンタン酸)(5−Methacylamido−2−(N,N−biscarboxymethaylamino)pentanoic acid
)(7.5重量%)、アクリルオイルトリ−(ヒドロキシメチル)メチルアミン(7.5重量%)、およびN,N’−メチレンビスアクリルアミド(0.4重量%)を、光重合開始剤として−(−)リボフラビン(0.02重量%)を用いて光重合する。このモノマー溶液を、粗くエッチングしたガラスコーティングした基質上に蒸着し(0.4mL、2回)、そして近UV曝露システム(Hg短アークランプ、20mW/cm(365nm))を用いて5分間照射する。この表面を、塩化ナトリウム(1M)の溶液で洗浄し、次いでこの表面を、脱イオン水で2回洗浄する。
【0137】
ニッケルを有するIMAC3 ProteinChip(登録商標)を、以下のとおり、ニッケル金属イオンを用いて活性化し得る。この表面を、各スポットに対して100mMの硫酸ニッケルの溶液で処理し、室温で15分間、高振動数の振盪器上でインキュベートする。溶液を取り出した後、この表面を水でリンスした。0.5M NaCl含有PBS(または少なくとも0.5M NaClを含有する他の結合緩衝液)を5μL、各スポットに添加し、そして振盪器上で5分間インキュベートし得る。このスポットを拭き取って乾燥させる。
【0138】
(IV.尿のタンパク質バイオチップSELDI分析)
(A.尿サンプル調製およびSELDI分析)
尿サンプルを解凍して、細胞材料の除去のために短時間遠心分離した。上清のタンパク質濃度をBCAキット(Pierce)を用いて評価した。結合緩衝液(20mM Tris pH9、0.4M NaCl,0.1% Triton X 100)を用いて、最終タンパク質濃度2mg/mlまでサンプルを希釈し、そしてK30マイクロ−スピンカラム(Ciphergen Biosystems,Inc)を用いてタンパク質サイズ分画に供した。氷中での30分のインキュベーション後、希釈した尿をスピンカラムに供して、720gで3分間遠心分離した。初期の報告(Wrightら、Prostate Cancer and Prostate Diseases,2:264〜276(1999))に記載された分析と同様に、ProteinChip(登録商標)SELDI分析を実施した。要するに、フロースルー(通過)(画分)、および未分画サンプル(20mM Tris pH 9.0,0.1% Triton−X 100中に希釈した)の5μlのアリコートを、SAX2チップ(強力な陰イオン交換体化学からなる)の異なるアレイに直接付与した。HOでの短時間の洗浄後、0.5μlの飽和マトリックス溶液(α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含有する50%アセトニトリル−0.5%トリフルオロ酢酸)を、アレイに付与し、そして風乾させた。次いで、ナノ秒のレーザーパルスが窒素レーザー(337nm)から生じる、PBS−Iマスリーダーにこのチップを配置した。以下のレーザー強度(L)の各々で60のレーザーショットの平均を用いてスペクトルを生成した:15(フィルターイン)、30(フィルターイン)、および55(フィルターアウト)。低レーザー強度で分離したタンパク質ピーク数の算出のために、L15およびL30で収集したスペクトルを、SELDIソフトウェアを利用して合わせた(0.5%変異)。ウシインスリン(Bovine Insulin)(5733.6Da)、ウシチトクロムC(Bovine Cytochrome C)(12230.9Da)、およびウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)(66410Da)(Ciphergen Biosystems)を、標準として利用して、外部較正を、実施した。
【0139】
94の尿サンプルを、SELDI質量分析によってアッセイした。強力な陰イオン交換体チップ表面上の処理によって、70までのタンパク質ピークを分離した。図1aは、単一の尿試料の2,000〜150,000Daの間のタンパク質質量を示す、代表的なタンパク質のスペクトルである。スペクトルの生成をレーザー強度15〜30、および55で実施し、それぞれ低分子量タンパク質および高分子量タンパク質をさらに良好に分離した。示されるように、SELDI技術は、低分子量タンパク質(<10kDa)およびポリペプチドを分離するのに特に有効であった。興味深いことに、TCC患者由来の尿は、さらに多くの数のタンパク質ピークを含むようであった。レーザー強度15および30でのデータの収集によって、それぞれ正常および他の尿生殖器疾患についての21および22のタンパク質ピークの平均に対して、TCCの尿から平均33のタンパク質ピークが、得られた(P<0.001)。同様に、さらに高いレーザー強度(すなわち、55−フィルターアウト)では、TCCサンプルは、正常および他の泌尿生殖器疾患群における27および20のタンパク質ピークに対して、平均34のタンパク質ピークを有した(正常群についてはP<0.001、そして他の疾患群についてはP=0.008)。
【0140】
全てのサンプルを二連または三連のいずれかで処理し、尿タンパク質の分離における再現性を確認した。図1b−cは、再現性が完全に受け入れられ得ることを示す。タンパク質1〜4と命名された4つの顕著なピークについて、平均、標準偏差(SD)および変動係数(CV)を決定した。アッセイ内での再現性(すなわち、平均質量±SD(CV%))は、タンパク質1については、6440.6±0.92Da(0.014%)であり、タンパク質2については、7914±3.32Da(0.042%)であり、タンパク質3については、13262±0.78Da(0.006%)であり、そしてタンパク質4については、66288±69.3Da(0.1%)であった(図1b−c、スペクトル1および2)。アッセイ間の再現性は、タンパク質1については、6443.3±3.85Da(0.06%)であり、タンパク質2については、7918.3±6.12Da(0.08%)であり、タンパク質3については、13267±8.42Da(0.06%)であり、そしてタンパク質4については、66277±15.56Da(0.023%)であることが決定された(図1b−c、スペクトル1および2対3)。
【0141】
(B.マーカーセット1:UBC−1〜UBC−5)
TCCを有する患者、尿路の他の疾患を有する患者、および正常個体由来の尿試料の分析によって、5つの顕著なタンパク質ピークがTCCにおいて優先的に発現されることが明らかになった。これらのタンパク質の代表的な質量分析およびゲル図を図2に示す。タンパク質の1つは、二重のタンパク質ピークとしてか、または時には三重のタンパク質ピークとして観察された(図2a)。これはそれぞれ、3.353(SD:21Da)、3.432(SD:24.4Da)、および3.470kDa(SD:6.32Da)の平均質量を有する。このタンパク質は、マーカーUBC−1と称される。他の4つのTCC関連タンパク質と関連する平均SELDI質量は、以下である:UBC−2:9.495kDa(SD:46.5Da);UBC−3:44.6kDa(SD:372.8Da);UBC−4:100.120kDa(SD:866.8);そしてUBC−5:133.190kDa(SD:772.9Da)(図2b−d)。
【0142】
以下に示される表3は、研究群およびコントロール群における5つのTCC関連UCBマーカーの検出の統計的分析を図示している。
【0143】
【表3】
Figure 2004525343
評価されたTCC患者の尿のうち、46.7%(14/30)がUBC−1について陽性;53.3%(16/30)がUBC−2について陽性;70%(21/30)がUBC−3について陽性;43.3%(13/30)がUBC−4について陽性;および63.3%(19/30)がUBC−5について陽性であった(表3)。
【0144】
TCCの病期および段階に関するマーカーの発現を、以下の表4に示す。
【0145】
【表4】
Figure 2004525343
TCC患者の集団は、病期および段階に関して選択しなかったが、悪性疾患の大部分は、表在性の癌であったことに注意のこと(病期Ta/T1;段階III)(表2)。ほとんど全てのマーカーの頻度は、軽い段階(I〜II)から重い段階(III)へ、および軽い病期(Ta)から重い病期(T1〜3)へ癌腫が進行するにつれて増加することが認められた。
【0146】
正常な集団における5つの生体マーカーに対する陽性サンプル%は、UBC−1について14.7(5/34);UBC−2について8.9(3/34);UBC−3について11.8(4/34);UBC−4について14.7(5/34);およびUBC−5について20.6(7/34)であった。これは、それぞれ、85.3%、91.1%、88.2%、85.3%および79.4%という特異性に対応している(表3)。このコントロール群におけるマーカーの頻度は、TCC尿におけるそれらの頻度とは有意に異なる(表3)。
【0147】
生体マーカーUBC−1およびUBC−4は、正常集団にほぼ等しい頻度(4/30、すなわち13.3%)で他の尿生殖器疾患を有する患者由来の尿標本中に存在することが分かった。しかし、マーカーUBC−2、UBC−4およびUBC−5は、比較的高い頻度で見出された:UBC−2およびUBC−4については30%(9/30)、ならびにUBC−5については40%(12/30)。このコントロール群(すなわち、他の疾患)とTCC癌群との間のマーカーの頻度の差異は、マーカーUBC−1、UBC−3およびUBC−4について依然として統計学的に有意であるが、マーカーUBC−2およびUBC−5については有意でなかった(表3)。
【0148】
これらの結果に基づくと、TCC検出のための個々のマーカーの特異性全体は、70.3〜85.9%の範囲である(表3)。同様に、陰性推定値(NPV)は、76.4〜85%まで変化し、陽性推定値(PPV)は、50〜61.8%まで変化した(表3)。
【0149】
(C.マーカーセット2:PC−1〜PC−7)
TCC群とコントロール群との間の個々のタンパク質ピークの頻度における差異の検出に加えて、質量スペクトルにおける局所的差異もまた観察した。この研究群およびコントロール群において差示的発現を有するタンパク質クラスターの検出の統計学的分析を以下の表5に示す。
【0150】
【表5】
Figure 2004525343
表5は、陽性の数および%、ならびにTCC群とコントロール群との間の差異を示した7つのタンパク質クラスター領域についてのp値を示す。これらのクラスターのうちの5つにより示されたタンパク質パターン(4,950〜5,150Da、5,710〜6,000Da、6,758〜7,750Da、15,000〜16,000Da、および85,000〜92,000Daを含む)は、TCC患者由来の尿において、健常コントロールおよび他の疾患コントロールで見出されたパターンとは有意に異なることが分かった。唯一の例外は、37,500〜40,000領域がTCC群と他の疾患群との間で統計的に異ならない(0.75<p<0.9)と分かったことであった。興味深いことに、79.5〜82.0kDaの範囲の質量を有するタンパク質クラスターは、健常コントロール群の64.7%、および非TCC疾患群由来の尿の80%において見出されたが、TCC群ではわずか33%でしか見出されなかった。コントロール群とTCC群との間のこのクラスターの頻度における差異は、統計学的に有意であった。
【0151】
表6は、TCC病期と段階に関するタンパク質クラスターの分布を示す。
【0152】
【表6】
Figure 2004525343
UBC1−5マーカーと同様に、ほとんどのクラスターの頻度は、I〜II等級からIII等級までおよびTa段階からT1−3段階までの癌腫の進行とともに増加することを観察した。
【0153】
理論に束縛されることを望まないが、これらのクラスターは、79.5〜82.0kDa間のクラスターを除いて、優先的にTCC群内で観察されるので、それらは本明細書中で検出されそして以前に報告された(Protheroeら、British J.Cancer,80(1/2):273−8(1999);Hemmingsenら、J.Urol.,152:1923(1994))膀胱癌患者の尿中の増加したタンパク質排泄を反映するものと考えられ得、腫瘍新血管系からの血清タンパク質の漏れ、または膀胱癌細胞の増加した代謝回転のいずれかに起因し得る(Protheroeら、British J.Cancer,80(1/2):273−8(1999))。
【0154】
(V.膀胱バルボタージのタンパク質バイオチップSELDI分析)
(A.膀胱バルボタージサンプル調製およびSELDI分析)
膀胱洗浄液を、細胞性物質の回収のために、1,500rpmで5分間遠心分離した。上清を、細胞ペレットを再懸濁するために使用した1〜2mlを除いて、廃棄した。次いで、再懸濁した細胞ペレットの50〜100μlのサイトスピン調製物を作製し、このスライドをすぐに100%EtOH中に配置し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。癌細胞を同定するために、この染色したスライドは病理学者(S.N.)によって試験され、この個々の癌細胞またはクラスターを、前に記載したように(Wrightら(1999)、前出;Emmert−Buckら、J.Immun.Meth.,141:149〜155(1991))、Pixcell 100 Laser Capture Microdissection Microscope(Arcturus Engineering,Mountain View,CA)を使用して、得た。
【0155】
タンパク質抽出物を、0.1%NP−40を含む3〜5μlの20mM HEPES中に細胞を再懸濁し、5分間ボルテックスし、次いで、14,000rpmで1分間遠心分離することによって、500〜1000の顕微解剖した細胞から調製した。全溶解物を、ニッケルIMAC3(Immobilized Metal Affinity)ProteinChip(登録商標)アレイ上に適用し、1時間インキュベートした。このチップを、20mM Tris pH7.5、0.1% TritonX−100、0.5M NaCl(5回)、およびHPLC−H2O(5回)で洗浄した。質量分析は、尿について記載したように、エネルギー吸収分子としてCHCAまたはシナピン酸(sinapinic acid)(SPA)のいずれかを使用して行った。
【0156】
(B.マーカーUBC−1の検出)
6個の一致した(すなわち同じTCC患者由来の)膀胱洗浄液および尿標本セットの全てを分析した。全ての6患者由来の膀胱癌細胞は3.3/3.4kDaタンパク質(UBC−1マーカー)を発現し、これはまた4/6の一致した尿中に存在した。図4は、細胞溶解物および尿の両方においてマーカーに対して陽性であった一致したセットの3つを示す。尿中に見出されたこのタンパク質についての二重ピークパターンが細胞溶解物のスペクトル中に維持されることは、注目に値する。病理学者によって良性と特徴づけされた、2個の異なる膀胱バルボタージ標本由来の膀胱上皮細胞はまた、3.3/3.4kDaタンパク質を含むことが見出された(データは示していない)。
【0157】
UBC−1タンパク質マーカーとは対照的に、9.5(UBC−2)、44(UBC−3)、100(UBC−4)および133(UBC−5)kDaの尿タンパク質は、膀胱細胞溶解物中に検出されなかった。理論に束縛されることを望まないが、マーカーUBC−2〜UBC−5は、細胞外タンパク質であり得るか、あるいは細胞内タンパク質のタンパク質溶解フラグメントであり得る。なぜなら、それらは、細胞学的標本から得た癌細胞中において検出されなかったからである。所望される場合、これらのタンパク質の同定は、例えば、トリプシンペプチドマッピング(Patterson,Anal.Biochem.,221:1(1994))およびアミノ酸配列決定(Patterson,SD,「Protein Identification and Characterization by Mass Spectrometry.Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley&Sons Inc.,ユニット10.22、10.22.1〜10.22.24頁(1998))によって達成され得る。
【0158】
(C.デフェンシン(defesin)ファミリーとしてのマーカーUBC−1の同定)
5つのTCC−関連マーカーと同様の分子量を有するタンパク質についてのタンパク質データベースによる検索(SWISS−PRO;www.expasy.ch/tools/tagident.html)は、二重の3.3/3.4kDaマーカーが、それぞれ3.38kDaおよび3.45kDaの報告された分子量を有するヒトデフェンシンα2および1(Celisら、Electrophoresis,20(2):300−9(1999))に対応することを示唆した。この仮説を試験するために、SELDIベースのイムノアッセイを、ヒトデフェンシン1,2および3に対する市販の抗体を利用して行った。
【0159】
SELDIイムノアッセイを、以前の報告(Wrightら(1999)、前出)に記載されるものと同様に行った。簡単に述べると、予め活性化したチップ(PS1 ProteinChip(登録商標)、Ciphergen Biosystems,Inc.、Fremont,CA)のアレイを、2〜4時間、室温で攪拌しながら、4μlProtein G(0.5mg/ml、50mM炭酸水素ナトリウム、pH.8,Sigma)でコートした。次いで、残りの活性部位を1M エタノールアミンでブロックし(30分、室温)、PBS−0.5%Triton X(x3)およびPBS(x4)を用いて15mlコニカルチューブ中で連続的に洗浄した。2μlのデフェンシン1〜3(HNP1、2および3)モノクローナル抗体(Ab)(IgG1、0.2mg/ml、Serotec)、PSMA 7E11C5.3Ab(IgG1、0.2mg/ml、Cytogen Corporation、Princeton、NJの厚意によって提供された)またはマウスIgG1(30μg/ml)を、チップ上に適用し、4℃で結合させ、一晩(o/n)振とうした。未結合のAbをPBS−0.5%TritonX(x1)、PBS−0.1%TritonX(x3)、およびPBS(x4)を用いて15mLコニカルチューブ中で連続的に洗浄することによって除去した。尿サンプルを、0.055mg/mlの総タンパク質濃度で100μPBS−0.1%CETAB(Sigma、29)中で希釈し、その後氷中で20分間インキュベーションし、バイオプロセッサ(Ciphergen Biosystems.,Inc.,Fremont,CA)を使用してアレイ上に適用した。4℃で3時間インキュベーション後、未結合の尿タンパク質を、PBS−0.1%CETAB(各々5分、室温)で5回洗浄し、次いでHPLC−HOで5回洗浄し、CHCAを加え、このチップを質量分析に供した。このスペクトルを90回のレーザーショットのシグナル平均化を使用して発生させた。
【0160】
このマーカーについての3つの陽性尿標本および3つの陰性尿標本の全てを分析した。図5Aに示されるように、デフェンシン−αAbがチップ上に予め結合されるとき、マーカーUBC−1は容易に捕捉された。対照的に、デフェンシンAbの非存在下において(図5B)または非関連のAbの存在下において、バックグラウンドレベルを上まわる非特異的結合は検出されなかった(図5C、5D)。SELDI直接結合によってUBC−1ネガティブであった尿標本は、SELDIイムノアッセイによりUBC−1ネガティブのままであった(図5E)。
【0161】
デフェンシンは、抗菌活性、細胞傷害活性および抗腫瘍活性を有する小ペプチドのファミリーを形成する(Zhaoら、FEBS Lett.,396:319−22(1996))。それらの一次構造に基づいて、2つのファミリー、αおよびβデフェンシンは、ヒトにおいて特徴付けられてきた(Celisら、Electrophoresis,20(2):300−9(1999))。β−デフェンシンは、腎臓、皮膚、および呼吸器系の上皮細胞中において主に発現され(Yangら、Science,286:525−528(1999);Selstedら、J Cell Biol.,118:929−936(1992))、一方で、α−デフェンシンは、好中球細胞および腸パーネト細胞(Mizukawaら、Anticancer Res.,19:2969−72(1999))中で主に発現することが見出されてきた。最近のデータは、口腔癌腫患者の顎下腺のランゲルハンス細胞およびじん埃細胞(Mizukawaら、Anticancer Res.,20(2B):1125−7(2000);Barnathanら、Amer.J.Pathol.,150(3)1009−1019(1997))ならびに冠状血管の上皮細胞および平滑筋細胞(Porterら、FEBS Lett.,434:272−276(1998))におけるαデフェンシンの免疫学的局在決定をさらに証明する。膀胱癌細胞におけるデフェンシンペプチドの存在は、以前に報告されていない。理論に束縛されることを望まないが、この発見は、腫瘍活性化した好中球からのこれらのペプチドの放出に対して二次的であり得るか、あるいは、これらのペプチドは、膀胱細胞によって発現され得、これは膀胱細胞におけるmRNAレベルを試験することによって確証され得る。
【0162】
回腸の新膀胱(ileal neobladder)由来の尿中の、Paneth細胞特異的ディフェンシンの存在が実証されている(Hemmingsenら,J.Urol.,152:1923(1994))が、それにもかかわらず、膀胱切開前の同じ患者由来の尿におけるこの型のディフェンシンの存在は、示され得なかった。この実施例において用いられる抗体は、好中球特異的ディフェンシンであるHNP1、2、および3を認識し、この2つの研究において得られる異なる結果についての説明を提供する。
【0163】
良性の膀胱細胞におけるディフェンシンポリペプチドの存在は、尿とは対照的に、このマーカーの存在が細胞レベルで腫瘍特異的ではないことを示唆する。しかし、理論に束縛されることは望まないが、腫瘍形成の間にその量の変化が起こることが予想され、TCC患者由来の尿におけるより高いレベルの検出を生じる。あるいは、これらのポリペプチドの存在はまた、病理学者によってはまだ検出されない腫瘍形成の初期段階を示し得る。1人の患者が、膀胱バルボタージの収集の3ヶ月後に、TCCのT1段階、グレードIIを有すると見出されたという事実が、この仮説を支持する。いずれにせよ、このペプチドの量的変化をモニターするためのイムノアッセイは、腫瘍の発達および進行に関するさらなる有用な情報を提供し得る。
【0164】
(VI.マーカーの組み合せの分析)
SELDI技術は、複数のマーカーを同時に分析する利点を提供する。従って、TCC関連生体マーカーの診断有用性を最大にするために、個々のタンパク質UBC1〜UBC5および7つのタンパク質クラスターを、種々の組み合わせで配置して生体マーカーパネルを形成し、そして全てのグループについての尿のスペクトルを再分析した。生体マーカーの組み合わせを、この組み合わせセットの任意のマーカーがサンプル中に存在する場合に陽性であるとして分類し、そしてこの試料中にいずれのマーカーも検出されなかった場合に、陰性であると分類した。複数の生体マーカーパネルの感度および特異性を、以下の表7に示す。
【0165】
【表7】
Figure 2004525343
これらの生体マーカーパネルを使用すると、TCCの検出についての感度は、個々の生体マーカーを使用したときの43.3%〜63.3%(表3)から、83.3%〜86.7%へと増加した(表7)。しかし、予想されるように、このアッセイの全体の特異性における低下が存在する(単一マーカーについての平均81%から、生体マーカーの組み合わせを使用する67.2%へ)(表7)。単一マーカーをについての平均79%に対して、このアッセイのNPVにおける89.6%への顕著な増加が存在し、そして54.3%のPPV(表7)は、単一アッセイについての58%の平均PPVと同様であった(表3)。
【0166】
3.3/3.4kDa(UBC−1)、9.5kDa(UBC−2)マーカーと85−92kDaクラスター(PC−7)との組み合わせは、アッセイの感度に関して最良の生体マーカーの組み合わせであると同定された。このセットを使用すると、91.3%のPPVで86.7%の感度が得られ、そしてそれぞれ65.6%および54.2%の特異性およびNPVであった(表7)。
【0167】
表7に示される組み合わせセットの3つ全ては、比較的高い感度で、低いグレードおよび低い段階の癌を検出し得た。腫瘍の段階およびグレードに対するこの生体マーカーパネルの感度を、以下の表8に示す。
【0168】
【表8】
Figure 2004525343
表8に示されるように、3.3/3.4、44および85〜92kDaの組み合わせセットは、グレードIおよびIIの癌の66.7%、ならびにTa段階の癌の71.4%を検出する。3.3/3.4、9.5、100kDa、ならびに3.3/3.4、9.5および85〜92kDaの組み合わせセットは、グレードIおよびIIの癌について77.7%、ならびにTaの癌について78.6%という、わずかに優れた感度を提供した。SELDI尿アッセイの検出率が、これらの同じ患者の排泄された尿または膀胱洗浄細胞学のいずれかによって得られた33.3%という割合よりも著しく優れているということが、最も注目される。3.3/3.4、9.5および100kDaのセットの、段階T1−T3の腫瘍(92.8%)を除いて、全ての組み合わせ生体マーカーパネルは、グレードIIIの癌の検出においてより高い感度(85.7%〜90.5%)を提供した。
【0169】
上記のように、各個々のマーカー(UBC1〜UBC5)または7つのタンパク質クラスターマーカーPC−1〜PC−7の各々のTCC検出についての感度は、比較的低いことが見出された。しかし、個々のマーカーおよびタンパク質クラスターの組み合わせは、全体のTCC検出率、ならびに低いグレードの癌および低い段階の癌についての検出率を増加した。この実施例の節に記載される結果に基づいて、このSELDIの組み合わせアプローチは、排出された尿の細胞学による20〜30%の検出率と比較して、グレードIおよびIIの癌について77.7%の検出率、ならびに段階Taの癌について78.6%の検出率を提供した(GrossmanおよびDinney,Urol.Oncology 5:3−10(1999)を参照のこと)。これらの結果は、本発明のマーカーが、早期のTCCを検出するために使用され得ることを示唆する(例えば、SELDIプロテオミック(proteomic)アプローチを使用して)。
【0170】
このコンビナトリアル生体マーカー分析アプローチは、感度を増大したが、このアッセイの特異性を低下した。このアプローチは、従来の単純な統計学的方法に依存する。サンプルおよびSELDIデータのより大きなプールの処理のために、人工的な情報プログラム(例えば、データを分析するための、ファジィ論理学、クラスター分析または神経回路網(ANN))を使用することが望ましくあり得る。臨床病理学的マーカーおよび分子マーカーに基づいて、前立腺癌(Qureshiら,J.Urol.,163:630−633(2000))または膀胱癌(Snowら、J.Urol,152:1923(1994))における結果を予測するために以前に開発されたANNは、本発明の実施形態において適用され得る。
【0171】
本発明は、膀胱癌患者および膀胱癌を有さない正常な被験体のサンプルにおいて差示的に存在するマーカーを使用して、膀胱癌の診断を援助するための新規な材料および方法を提供する。特定の実施例が提供されるが、上記の記載は例示であり、そして限定的ではない。以前に記載された実施形態のうち任意の1つ以上の特徴が、任意の様式で本発明の任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わされ得る。さらに、本明細書を鑑みると、本発明の多くのバリエーションが当業者に明らかである。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決定されるべきではなく、代わりに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
【0172】
本明細書中に列挙される全ての刊行物および特許文献は、各個々の刊行物または特許文献が別個に示されるのと同じ程度まで、全ての目的のために、その全体において参考として援用される。この文書における種々の参考文献の引用によって、本出願人は、任意の特定の参考文献が本発明に対する「先行技術」であると承認しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1(a〜c)は、尿サンプルのタンパク質質量スペクトルを示す。図1aは、強アニオン交換(SAX II)チップ表面上で処理された1つの尿サンプルの代表的なタンパク質質量スペクトルを示す。図1bおよび図1cは、SELDI−TOF−MS技術を用いたタンパク質検出の再現性を示す。1〜3:処理された尿サンプル(三連)の質量スペクトル(上)および個々のゲルの外観(下)。1および2を、同日に処理し、3を別の日に処理した。数は、個々のタンパク質ピークの質量に対応する。m/z:質量/電荷(ダルトン)。
【図2】
図2(a〜d)は、尿における5つのTCC関連タンパク質ピークの検出を示す。4人の異なるTCC患者(C1〜C4)、2人の健常体(N1〜N2)、および他の尿生殖疾患を有する2人の患者(B1〜B2)由来の尿の質量スペクトル(上パネル)および個々のゲルの外観(下パネル)。TCC試料に固有であるかまたは過剰発現されていることが同定された5つのタンパク質の平均分子量は:UBC−1:3.352/3.432kDa(a:矢印)、および時々3.47kDa(a:矢じり);UBC−2.9.495kDa(b:矢印);UBC−3:44.647kDa(c:矢印);UBC−4:100.120kDa、およびUBC−5:133.190kDa(d:矢印)、である。質量スペクトルにおける数は、特定のサンプルにおいて観察されたマーカーの質量を示す。M/z:質量/電荷。
【図3】
図3(a〜c)は、膀胱洗浄物由来の癌細胞の純粋な集団の顕微解剖を示す。A:膀胱洗浄サイトスピン。矢印は、癌細胞のクラスターを指す;B:癌細胞の顕微解剖後の同一のサイトスピン;C:単離された細胞。H.& E.により40×で染色した。
【図4】
図4は、3セットの一致した尿(U1〜3)および膀胱洗浄物由来の顕微解剖された癌細胞(BW1〜BW3)のタンパク質質量スペクトルおよびゲルの外観を示す。図4は、腫瘍細胞および尿における3.35/3.43kDaタンパク質(矢印)の存在を示す。M/z:質量/電荷。
【図5】
図5(A〜F)は、SELDIイムノアッセイによりデフェンシンとしての3.3/3.4kDa(UBC−1)タンパク質マーカーの同定を示す。A〜D:3.3/3.4kDaマーカーを含むSELDIアッセイに直接結合するまで、以下のいずれかと共にインキュベートしたTCC尿:A:デフェンシン−a Ab;B:Abなし;C:前立腺特異的膜抗原(PSMA)と反応性のAb;D:コントロール免疫グロブリンと適合する無関係のアイソタイプ;E:デフェンシンAbと共に3.3/3.4kDaタンパク質を含まない正常な尿。3.3/3.4kDaタンパク質を、この質量のタンパク質を含むサンプルにおいてのみ捕捉したことに注意のこと(パネルA);F:α−デフェンシンAbと共に純粋なαデフェンシンペプチド。M/z:質量/電荷。

Claims (54)

  1. 膀胱の移行上皮癌の診断を補助するための方法であって、該方法は、以下:
    (a)サンプル中の少なくとも1つのタンパク質マーカーを検出する工程であって、該タンパク質マーカーは以下:
    マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;
    マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;
    マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;
    マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;
    マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;
    マーカーPC−1:約4.950〜約5.150kDa;
    マーカーPC−2:約5.710〜約6.000kDa;
    マーカーPC−3:約6.758〜約7.750kDa;
    マーカーPC−4:約15.000〜約16.000kDa;
    マーカーPC−5:約37.500〜約40.000kDa;
    マーカーPC−6:約79.500〜約82.000kDa;および
    マーカーPC−7:約85.000〜約92.000kDa、
    から選択される、工程;ならびに
    (b)該マーカーの検出を、膀胱の移行上皮癌の推定の診断と相関させる工程、
    を包含する、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記相関は、前記サンプル中の前記マーカーの存在または非存在、ならびにコントロールにおける該マーカーの検出の頻度に関する、方法。
  3. 前記相関が、前記マーカーのコントロール量と比較した、前記サンプルにおける該マーカーの量にさらに関する、請求項2に記載の方法。
  4. 複数の前記マーカーを検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  5. 少なくとも3つの前記マーカーを検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  6. 少なくとも4つの前記マーカーを検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  7. 少なくとも5つの前記マーカーを検出する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  8. マーカーUBC−1、UBC−2およびPC−7の存在の検出が、膀胱の移行上皮癌の陽性診断と高度に相関する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記サンプルが尿である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記サンプルが、膀胱バルボタージ由来の細胞溶解物である、請求項1に記載の方法。
  11. ガス相イオン分光法が、前記マーカーの検出のために使用される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記ガス相イオン分光法が、レーザー脱離/イオン化質量分析法である、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項12に記載の方法であって、レーザー脱離/イオン化質量分析法が、以下:
    (a)吸着剤が付着した基板を提供する工程;
    (b)前記サンプルを該吸着剤と接触させる工程;ならびに
    (c)該基板から前記マーカーを脱離およびイオン化して、質量分析器を用いて、脱離/イオン化した該マーカーを検出する工程、
    を包含する、方法。
  14. 前記基板が、前記質量分析器を用いた使用のために適合されるプローブである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記基板が、前記質量分析器を用いた使用のために適合されるプローブ上に配置するために適切である、請求項13に記載の方法。
  16. 前記吸着剤が、前記マーカーに特異的に結合する抗体である、請求項13に記載の方法。
  17. 前記吸着剤が、カチオン性吸着剤である、請求項13に記載の方法。
  18. 前記吸着剤が、金属キレート吸着剤である、請求項13に記載の方法。
  19. マーカーUBC−1を検出する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記マーカーの検出のためにイムノアッセイが使用される、請求項1に記載の方法。
  21. 請求項12に記載の方法であって、該方法は、以下:
    (a)質量/電荷比についてのシグナルの強度を示す、前記質量分析器による前記サンプルに関するデータを生成する工程;
    (b)該データを、コンピューター読み取り可能な形態に変換する工程;および
    (c)コンピューターにアルゴリズムを実行させる工程であって、該アルゴリズムは、コンピューター読み取り可能なデータと、膀胱の移行上皮癌の診断または陰性診断を示すデータとの間の適合の近さを決定する、工程、
    を包含する、方法。
  22. 前記アルゴリズムが、人工知能プログラムを含む、請求項21に記載の方法。
  23. 前記人工知能プログラムが、ファジィ論理学、クラスター分析またはニューラルネットワークである、請求項22に記載の方法。
  24. サンプル中の少なくとも1つのタンパク質マーカーを検出するための方法であって、該マーカーが、以下:
    マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;
    マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;
    マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;
    マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;
    マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;
    マーカーPC−1:約4.950〜約5.150kDa;
    マーカーPC−2:約5.710〜約6.000kDa;
    マーカーPC−3:約6.758〜約7.750kDa;
    マーカーPC−4:約15.000〜約16.000kDa;
    マーカーPC−5:約37.500〜約40.000kDa;
    マーカーPC−6:約79.500〜約82.000kDa;および
    マーカーPC−7:約85.000〜約92.000kDa、
    から選択され、ここで、該方法は、ガス相イオン分光法によって該マーカーを検出する工程を包含する、方法。
  25. 前記サンプルが、尿サンプルである、請求項24に記載の方法。
  26. 前記検出方法が、レーザー脱離/イオン化質量分析法によって前記マーカーを検出する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
  27. コントロールに対して、前記検出されたマーカーの量を比較する工程をさらに包含する、請求項24に記載の方法。
  28. 請求項26に記載の方法であって、該方法は、以下:
    (a)質量/電荷比についてのシグナルの強度を示す、前記質量分析器による前記サンプルに関するデータを生成する工程;
    (b)該データを、コンピューター読み取り可能な形態に変換する工程;および
    (c)コンピューターを操作しかつアルゴリズムを実行する工程であって、該アルゴリズムは、前記マーカーを示すコンピューター読み取り可能なデータ中のシグナルを検出する、工程、
    を包含する、方法。
  29. 請求項26に記載の方法であって、レーザー脱離/イオン化質量分析法が、以下:
    (a)吸着剤が付着した基板を提供する工程;
    (b)前記サンプルを該吸着剤と接触させる工程;ならびに
    (c)該基板から前記マーカーを脱離およびイオン化して、質量分析器を用いて、脱離/イオン化したマーカーを検出する工程、
    を包含する、方法。
  30. 前記基板が、前記質量分析器を用いた使用のために適合されるプローブである、請求項29に記載の方法。
  31. 前記基板が、前記質量分析器を用いた使用のために適合されるプローブ上に配置するために適切である、請求項29に記載の方法。
  32. 請求項26に記載の方法であって、該方法は、以下:
    (a)サイズ除外クロマトグラフィーによって前記サンプルを画分し、そして前記マーカーを含むサンプル画分を回収する工程;
    (b)該サンプル画分を、基板上の吸着剤と接触させる工程;および
    (c)該吸着剤上に維持される該マーカーを、脱離およびイオン化し、そして質量分析器を用いて該脱離/イオン化されたマーカーを検出する工程、
    を包含する、方法。
  33. 前記サンプルが、尿サンプルである、請求項32に記載の方法。
  34. 前記吸着剤が、カチオン性吸着剤である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記吸着剤が、金属キレート吸着剤である、請求項33に記載の方法。
  36. マーカーUBC−1を検出する工程を包含する、請求項35に記載の方法。
  37. 前記吸着剤が、1以上の前記マーカーに特異的に結合する抗体である、請求項33に記載の方法。
  38. 請求項24に記載の方法であって、該方法は、検出前に、以下:
    (a)前記サンプル中の生体分子を、1以上の生体分子を含むスポットの、一次元または二次元のアレイに分離する工程;
    (b)該マーカーを含むことが疑われる該アレイから、スポットを選択および取り出す工程;および
    (c)該選択されたスポットを、ガス相イオン分光法によって分析して、該選択されたスポットが該マーカーを含むか否かを決定する工程、
    をさらに包含する、方法。
  39. 検出されたマーカーの量をコントロールと比較する工程をさらに包含する、請求項38に記載の方法。
  40. ガス相イオン分光法によって前記選択されたスポットを分析する前に、該選択されたスポット中の前記生体分子を、酵素によって消化する工程をさらに包含する、請求項38に記載の方法。
  41. 請求項24に記載の方法であって、該方法は、検出前に、以下:
    (a)前記サンプル中の生体分子を、高速液体ガスクロマトグラフィーによって分離する工程;
    (b)前記マーカーを含むことが疑われる画分を回収する工程;および
    (c)該画分をガス相イオン分光法によって分析して、該画分が該マーカーを含むか否かを決定する工程、
    をさらに包含する、方法。
  42. 前記検出されたマーカーの量を、コントロールと比較する工程をさらに包含する、請求項41に記載の方法。
  43. サンプル中の少なくとも1つのタンパク質マーカーを検出するための方法であって、該マーカーは、以下:
    マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;
    マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;
    マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9Da;
    マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;
    マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;
    マーカーPC−1:約4.950〜約5.150kDa;
    マーカーPC−2:約5.710〜約6.000kDa;
    マーカーPC−3:約6.758〜約7.750kDa;
    マーカーPC−4:約15.000〜約16.000kDa;
    マーカーPC−5:約37.500〜約40.000kDa;
    マーカーPC−6:約79.500〜約82.000kDa;および
    マーカーPC−7:約85.000〜約92.000kDa、
    から選択され、ここで、該方法は、イムノアッセイによって該マーカーを検出する工程を包含する、方法。
  44. 以下:
    マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;
    マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;
    マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;
    マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;
    マーカーPC−1:約4.950〜約5.150kDa;
    マーカーPC−2:約5.710〜約6.000kDa;
    マーカーPC−3:約6.758〜約7.750kDa;
    マーカーPC−4:約15.000〜約16.000kDa;
    マーカーPC−5:約37.500〜約40.000kDa;
    マーカーPC−6:約79.500〜約82.000kDa;および
    マーカーPC−7:約85.000〜約92.000kDa、
    から選択される、精製されたタンパク質。
  45. キットであって、該キットは、以下:
    (a)吸着剤が付着した基板であって、該吸着剤は、以下:
    マーカーUBC−1:3.353kDa±105Da、3.432kDa±122Da、3.470kDa±32Da;
    マーカーUBC−2:9.495kDa±233Da;
    マーカーUBC−3:44.6kDa±1.9kDa;
    マーカーUBC−4:100.120kDa±4.3kDa;
    マーカーUBC−5:133.190kDa±3.9kDa;
    マーカーPC−1:約4.950〜約5.150kDa;
    マーカーPC−2:約5.710〜約6.000kDa;
    マーカーPC−3:約6.758〜約7.750kDa;
    マーカーPC−4:約15.000〜約16.000kDa;
    マーカーPC−5:約37.500〜約40.000kDa;
    マーカーPC−6:約79.500〜約82.000kDa;および
    マーカーPC−7:約85.000〜約92.000kDa、
    から選択される、少なくとも1つのタンパク質マーカーを保持し得る、基板;ならびに
    (b)サンプルを該吸着剤と接触させて、該吸着剤によって保持される該マーカーを検出することによって、該マーカーを検出するための指示書、
    を備える、キット。
  46. 前記基板が、ガス相イオン分光法を用いる使用のために適合されたプローブであり、該プローブが、前記吸着剤が結合する表面を有する、請求項45に記載のキット。
  47. 前記基板が、質量分析器を用いた使用のために適合されるプローブ上に配置するために適切である、請求項45に記載のキット。
  48. ガス相イオン分光法を用いた使用のために適合されるプローブをさらに備える、請求項47に記載のキット。
  49. 前記吸着剤が、金属キレート吸着剤である、請求項45に記載のキット。
  50. 前記吸着剤が、カチオン性の基を含む、請求項45に記載のキット。
  51. 前記吸着剤が、前記マーカーに特異的に結合する抗体である、請求項45に記載のキット。
  52. 参照をさらに備える、請求項45に記載のキット。
  53. 前記基板が、複数の異なる型の吸着剤を含む、請求項45に記載のキット。
  54. (1)溶出剤をさらに含み、ここで、前記マーカーは、洗浄される場合に前記吸着剤上に維持される、請求項45に記載のキット。
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