JP2004500456A - ポリアニリンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
アニリンの種オリゴマーをアニリンモノマーの塩及び酸化剤を酸性pHで反応させる工程を含むポリアニリンの製造方法である。さらに、酵素がその活性を維持する範囲にpHを保持するために、反応に塩基を添加しつつ、前記酵素の存在中でモノマーの塩と電子受容体と反応させる工程を含むアニリンモノマーを酸化的にカップリングする方法である。
Description
【0001】
【発明の背景】
本発明はポリアニリン(PA)を製造方法に関し、特に、制御された分子量の導電性のポリアニリンの製造方法に関するものである。
【0002】
慣例的には、導電性ポリアニリンは、強酸の存在下に過硫酸アンモニウムによりアニリンを化学的に酸化することにより製造される。この反応は高発熱性である。反応の発熱特性を制御するために、過硫酸アンモニウムは数回に分けて添加される。このプロセスの決定的な欠点は、非常に高分子量のPAを生成することである。例えば、生成物の分子量は一般的に100,000を上回る。このことは、多くの理由で処理の際に問題となる。例えば、有機溶媒への低い可溶性、高い固有粘度および溶液中での非常に短い貯蔵寿命など。加えて、所望のプラスチック、繊維および塗料に添加する前に、高分子量のPAは粉砕(例えば、空気粉砕:air−milled)して、分散させる必要がある。図1は、エメラルド色塩基形(Emeraldine Base form)の非導電性PAの典型的なUVスペクトルを示している。これは明瞭に規定される2つのピークを示している。一方は共役キノイドジイミノ基(conjugated quinoid diimono groups)に対応する約640nm付近、他方はベンゾイドジアミノ基(benzoid diamino groups)に対応する約320nm付近)である。このスペクトルは、非共役イミノ基が吸収すると予測される430nmに最低吸収を示している。
【0003】
低分子量のポリアニリンを生じさせる方法は知られている。このような方法の1つは、反応系に酸化剤を迅速に添加する工程を含む。この方法は重合反応の高発熱特性に基づき、深刻な問題をもたらす。
【0004】
ペルオキシダーゼ酵素および過酸化水素の使用を含む、ポリアニリンを製造するための酵素反応も公知であり、Pokoraに付与された米国特許5,112,752号およびAllied SignalのZemelに付与された米国特許5,420,237号に記載されている。後者はホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)を使用して、p−トルエンスルホン酸(PTSA:p−toluenselfonic acid)の存在下にアニリンを酸化することを開示している。Zemel特許に例示されているプロセスは大量の酵素を消費し、大規模生産に不適切なものとなっている。反応中のpHが3.5未満に低下するので、酵素が消費されると考えられている。酵素がその構造中に含むヘム基(heme group)を酸が溶解するという1つの理論が存在する。酢酸塩などの弱酸アニリン塩を使用してPAを製造する試みがなされている。遊離された酢酸はpHを3未満には低下させず、酵素は活性なままである。しかし残念ながら、酢酸は、全てのアニリンをプロトン化してオルト位(ortho position)を失活化する程には強くない。結果として、オルト置換(ortho−substitution)を伴う不規則な構造を有する非導電性PAが生じる。図2に、脱ドーピング(dedoped)された材料のUVスペクトルを示すが、これは350〜390nmでの吸収および490〜500nmでの小さい吸収を含み、このことは、僅かな頭尾結合(head−to−tail linkage)が達成されていることを示している。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、酸性条件下に酸化剤の存在中で低分子量のPAオリゴマー(「種オリゴマー:seed oligomer」)をアニリンモノマーと反応させることにより、制御された分子量を有するPAを製造し、さらに前記種オリゴマーの分子量を制御する新規な方法を提供する。本発明の方法は、数平均分子量が70,000未満、特に50,000未満、さらに20,000未満の導電性PAを提供するので、特に有用である。これらの低分子量のPAは、従来のプロセスにより製造された高分子量のPAよりも容易に溶解し、長い貯蔵寿命を有する。添加されるオリゴマー鎖の量を制御すると、制御された低分子量のポリマーが得られる。THF(テトラヒドロフラン:tetrahydrofuran)、DMF、DMACおよびDMSO(ジメチルスルホキシド:dimethyle sulfoxide)などの通常の有機溶媒に可溶性のあるPAを得ることができる。しかしながら、本発明の方法は、特定の条件下で、より高分子量のPA、例えば従来のプロセスで達成されるような分子量のPAを製造するために使用することもできる。加えて、反応のための誘導期(induction period)を短くすることができるので、オリゴマーの使用は有利である。強酸アニリン塩を化学的に酸化することによるPAの従来の製造では、誘導期は数時間に及ぶこともある。使用される反応物に応じて、オリゴマーの添加により誘導期を数秒までに減らすことができる。確認されていないが、オリゴマーは重合のための鋳型(template)を形成していて、それにより誘導期を短くするようである。さらに、本発明の方法は、超音波などの高周波振動の使用を用いて重合の誘導期を更に短くし、最終ポリマーの物理的特性を改善する。高周波(例えば超音波)振動は、ポリアニリンを製造する従来の重合プロセスを改善するために使用することもできる。
【0006】
本発明の方法で使用される種オリゴマーは、いずれのプロセスでも得ることができる。しかし、本発明の好ましい実施形態では、電子受容体の存在下に酸アニリン塩をペルオキシダーゼまたはオキシダーゼ酵素と反応させる酵素プロセスでオリゴマーを得る。遊離した酸が酵素を不活性化することを妨げるために、反応系を塩基および好ましくはアニリン塩基で滴定する。したがって、本発明の他の明示としては、酵素がその活性を維持するレベルにpHを保持するために好ましくはアニリンである塩基を反応経過の間に添加する、ポリアニリンを製造するための改善された酵素プロセスである。
【0007】
本発明の特別な明示の1つは2ステップの重合反応であり、ここでは第1の段階では、最も好ましくはアニリンを添加して遊離した酸と反応させて、酵素的に有効なpHを維持しつつ酵素反応によりアニリンオリゴマーを生じさせ、第2の段階では、過硫酸アンモニウムなどの酸化剤の存在下にオリゴマーをアニリンと反応させる。第1段階の反応生成物はベンゾイドジアミノに対応する約320nmに未分解のピークを有し、キノイドジイミノ基の吸収は400nmから約570nmへ非局在化(delocalized)されている。このスペクトルは、様々な分子量を有する低分子量のオリゴマーの存在を示している。第1段階で得られたオリゴマーと付加的なアニリン塩とをさらに反応させると、図4に示したスペクトルが得られ、ここでは、420nmの吸収度(absorbency)は消失し、オリゴマーが最終の導電性PAへ反応したことが示されている。
【0008】
本発明は、特に、導電性PAを製造する際に有用であるが、当業者には本発明の方法を、エメラルド色塩基形の非導電性PAの製造に関しても使用することができることは理解されるであろう。本発明の利点の1つは、これが安全かつ制御可能な(暴走しない)反応を提供することである。本記載は、主に、分子量が70,000未満であるPAの製造に焦点を置いているが、このプロセスは、より高分子量のPA、例えば所望の場合には200,000分子量のPAを製造するために使用することもできる。
【0009】
本発明では、PAを製造する際に種オリゴマーを使用する。このオリゴマーは、アニリン単位を約2から20、典型的には約2から12を含有してよい。ポリマーを製造する際に使用される種オリゴマーの量は、0.5%の少量であってもよいが、典型的には大体0.5から20%の間、さらに典型的には大体1から10%の間である。これらの百分率は重合可能な材料全体に基づく。即ち、アニリンおよびオリゴマーを合わせた量が100%である。
【0010】
本発明の最も広い明示では、種オリゴマーは、Zemelに付与された米国特許5,420,237号、Pokoraに付与された米国特許5,112,752号、米国特許3,963,498号および同4,025,463号に記載されているプロセスを含む利用可能なプロセスのいずれによっても得ることができる。しかし、好ましい実施形態では、Zemel特許に記載されているプロセスの変法を使用してオリゴマーを得る。その際、反応混合物に塩基および好ましくはアニリンを添加することにより、反応系のpHを3.5より高く、好ましくは大体4.0から5.0の間に維持する。Zemelプロセスでは、アニリンのpKa未満のpKaを有する酸性化剤を使用する。典型的には、酸性化剤はHClなどの強酸である。これらの条件下でのアニリンの反応は、強酸の放出をもたらす。Zemel反応では、アニリンの2モルが反応してポリマーを形成するごとに、1モルの酸が放出される。したがって、重合が進行するにつれて、反応混合物のpHは急速に低下する。Zemelの反応混合物のpHは1.0〜2.5の低さとなる。このpHはアニリンモノマーの頭尾結合を保証するが、酵素を不活性化させる。
【0011】
本発明では、塩酸塩などの強酸アニリン塩を使用し、放出された酸を塩基と反応させて、pHを3.5から4.5の範囲内に維持するようにpHを制御する。当業者には、酵素の反応効率は劣るが、この範囲からの多少の逸脱は許容されることは理解されるであろう。水酸化カルシウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムなどの塩基をこの目的のために使用することができるが、これらは、通常は除去すべき不純物または汚染物を反応生成物に導入することになる。したがって、好ましい塩基は、反応してPAとなる同じアニリンである。アニリンは溶液またはニート(neat)で反応に添加することができる。アニリンは、電子供与体の添加に合わせた反応間隔で添加されるか、pHをモニタリングしつつ系に滴定される。
【0012】
大抵の場合は、水中で重合反応を行うことができる。しかし、Zemelに付与された米国特許5,420,237号およびPokoraに付与された米国特許5,112,752に記載されているように、混合反応系もプレポリマーを製造する際には有用である。モノマーが十分には水中で可溶性でない場合、混合された溶媒も有効である。例えば、エタノール/水を使用することができる。溶媒/水の混合物中で使用するために適切な有機溶媒には、アセトンと、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールなどのアルコールと、ピロリジノン、例えばN−メチル−2−ピロリジノンと、アセトニトリルと、テトラヒドロフランとが含まれる。有機溶媒/水の混合物は、少なくとも約0.5%から約50%の水を含む。最も好ましい実施形態では、溶媒媒体は水100%である。
【0013】
アニリンは、置換されていても非置換であってもよい。有用なアニリンは当業者には公知である。例えばZemel特許参照されたい。望ましい場合には、コポリマーを製造するために、様々に置換されたアニリンの組み合わせを使用することができる。本発明のポリマーで有用な置換されたアニリンの例には、導電性ポリマーを生じさせる際に有用であると以前から推薦されているアニリンが含まれる。これらのアニリンの例は、米国特許5,378,403号、同5,422,423号および同5,420,237号に記載されている。米国特許5,420,237号に記載されているように、アニリン成分は、式I(Formula I)の、1つまたは複数の、置換されたまたは非置換のアニリンモノマーから選択する。
【0014】
【化1】
【0015】
式中、nは0から4の整数であり、mは1から5の整数であるが、ただしnおよびmの合計は5に等しい。アニリン環の少なくとも1つの位置はその位置で酸化的なカップリングを可能にする基である。R1は、水素または1つのR2置換基である。R2は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、メルカプト、スルホニル酸、カルボキシル、ならびに炭化水素含有置換基から選択される。炭化水素含有置換基は、アルキル、アルカノイル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリーロイル、アルキルアリールから選択されるか、又は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、メルカプト、スルホン酸およびカルボン酸の1個または複数でアルキル置換(alkylsubstituted)された炭化水素含有置換基から選択される。前記炭化水素置換基は炭素原子を1から20個を含有する。特に好ましい実施形態では、式中のR1が水素または炭素を1から4個を有する1つのアルキルであり、R2が1つの水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、メルカプト、カルボン酸、スルホン酸、および1つのアルキル、アルコキシ、アルカノイルから選択され、前記アルキルは炭素を1から6個を有する、式Iのアニリンモノマーが意図されている。最も好ましい実施形態では、アニリンモノマーは非置換のアニリンである。置換および非置換のアニリンの次のリストは、ポリマーおよびコポリマーを製造するために本発明の実施で使用することができる前記特許中に記載されたものの実例である。アニリン(aniline)、2−アセチルアニリン(2−acetylaniline)、2−シクロヘキシルアニリン(2−cyclohexylaniline)、2,5−ジメチルアニリン(2,5−dimethylaniline)、トルイジン(toluidine)、2,3−ジメチルアニリン(2,3−dimethylaniline)、m−トルイジン(m−toluidine)、2,5−ジブチルアニリン(2,5−dibutylaniline)、o−エトキシアニリン(o−ethoxyaniline)、o−シアノアニリン(o−cyanoaniline)、m−ブチルアニリン(m−butylaniline)、2−チオメチルアニリン(2−thiomethylaniline)、m−ヘキシルアニリン(m−hexylaniline)、2,5−ジクロロアニリン(2,5−dichloroaniline)、m−オクチルアニリン(m−octylaniline)、3−(n−ブタンスルホン酸)アニリン(3−(n−butanesulfonic acid)aniline)、2−ブロモアニリン(2−bromoaniline)、3−プロポキシメチルアニリン(3−propoxymethylaniline)、3−ブロモアニリン(3−bromoaniline)、3−アセトアミドアニリン(3−acetamidoaniline)、5−クロロ−2−メトキシアニリン(5−chroro−2−methoxyaniline)、3−フェノキシアニリン(3−phenoxyaniline)、N−メチルアニリン(N−methylaniline)、2−(ジメチルアミノ)アニリン(2−(dimethylamido)aniline)、2−エチルチオアニリン(2−ethylthioaniline)、N−カルボニルアニリン(N−carbonylaniline)、2−メチルチオメチルアニリン(2−methylthiomethylaniline)。
【0016】
酵素は、アニリンの酸塩を直ちに重合する形へと酸化する能力に基づき選択する。通常、酵素は、モノマーを酸化するために十分な時間、酸性環境中でその活性を保持すべきである。いくつかの酵素は、ヘム基の存在によって特徴付けられる。酵素は、好ましくはペルオキシダーゼ、さらに好ましくは大豆ペルオキシダーゼ(soybeam peroxidase)であるが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、タバコペルオキシダーゼ(tabacco peroxidase)、トマトペルオキシダーゼ(tomato peroxidase)、豆果ベルオキシダーゼ(legume peroxdase)、細菌ペルオキシダーゼ(bacterial peroxidase)およびクロロペルオキシダーゼ(chloroperoxidase)などの他のペルオキシダーゼも使用することができる。加えて、オキシダーゼ酵素もモノマーを重合する際に有用であると考えられる。
【0017】
使用される酵素の量はその反応性に依存している。実施例は大豆ペルオキシダーゼの適切な量を示している。反応中の酵素の量は、十分なアニリンモノマーをカップリングして、所望の鎖長のオリゴマーを生じさせるに十分でなければならない。反応器中での酵素の濃度は、少なくとも約0.1単位/mlである。酵素の濃度は、反応媒体の1ミリリットル当たりの活性単位で測定する。ペルオキシダーゼでは、活性の1単位(ppu)は、pH=6.0、20℃での20秒で、ピロガロールから1.0ミリグラムのプルプロガリンを生成する。反応媒体の1ミリリットル当たりの酵素の濃度は、典型的には、約0.1単位/mlから約10,000単位/mlの範囲である。
【0018】
ペルオキシダーゼでの電子供与体として有用であると知られているいずれのペルオキシドも、本発明の実施で使用することができる。このようなペルオキシドの例は、過酸化水素、メチルヒドロペルオキシドおよびエチルヒドロペルオキシドなどのアルキルヒドロペルオキシド、芳香族ペルオキシド、例えばクメニルヒドロペルオキシド、ならびにペルオキシ酸である。電子供与体が酵素を酸化する時に、電子受容体の還元形が溶媒の1成分であると、製造が簡単になる。例えば、過酸化水素は酵素を酸化して水に変換される。オキシダーゼ酵素は、ペルオキシドの代わりに酸素または酸素含有ガスと共に使用する。好ましくは、電子受容体とモノマーとのモル比は少なくとも約1:1から約1.5:1である。
【0019】
モノマーと反応する電子受容体の量を制限することにより、種オリゴマーの分子量を制御することができる。例えば、8単位以下を有するオリゴマーが望ましい場合には、供給される電子受容体とモノマーとのモル比は約0.1:1から約0.15:1であるべきである(図5および6参照)。大体8から15間の単位を有するオリゴマーが望ましい場合には、供給される電子受容体とモノマーとのモル比は約0.15から約0.225:1であるべきである(図7参照)。25単位までを有するオリゴマーが望ましい場合には、供給される電子受容体とモノマーとのモル比は約0.2:1から約0.3:1であるべきである(図8参照)。同様に、より多い量の電子受容体を使用すると、より高分子量のオリゴマーを生成させることができる。
【0020】
オリゴマーおよびアニリンモノマーを反応させて、オリゴマーをより高分子量のポリマーに変えることは、アニリンモノマーを反応させることによるPAの製造で使用される方法で行うことができる。最も広く使用される酸化剤は過硫酸アンモニウムであるが、当業者に知られていて、アニリンを重合しうる過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム、塩化鉄などの他の酸化剤も使用することができる。酸化剤が穏やかなほど、収率は低い。
【0021】
通常、第2反応での反応混合物のpHは、アニリンモノマーのプロトン化を引き起こすに十分な程度に酸性である。通常、反応混合物のpHは反応混合物中のアニリンモノマーのpKa未満であるが、酵素を不活性化するほどには低くない。好ましくは、有効なpHは、アニリンモノマーが反応混合物中に分散されたモノマーである場合に、アニリンモノマーの少なくとも70%がそのプロトン化された形で存在するような環境をもたらす。特に好ましい実施形態では、アニリンの少なくとも約95%がプロトン化されるようなpHを選択する。好ましくは、pHは約1より高く、約4.5よりも低い。反応温度は大体−5℃から100℃の範囲であってよいが、典型的には0から30℃の範囲である。温度は、通常、従来のプロセスのように低く(例えば−5℃で)なくてもよい。それというのも、暴走する発熱反応を防ぐ必要がないためである。化学的酸化剤を用いる第2段階の反応は、オリゴマーを回収することなく第1段階と同じ反応容器で実施することができる。
【0022】
実施例中に記載の反応条件および反応物濃度は、本発明で使用されるものの例である。アニリンを、典型的には、酸を含有する水溶液に添加する。酸の例は、HCl、CH3COOH、HNO3、H2SO4、HBF4、C12H25C6H4SO3H、CH3C6H5SO3H、C6H5SO3H、CH3SO3H、CF3SO3H、CF3COOHおよびCCl3COOHである。無機および有機リン酸、リン酸、スルフィン酸なども使用することができる。勢いのある攪拌が必要である。大体0.1から5モルのアニリンを水1000mlに添加することができる。アニリンの添加により、塩が生成し、酵素に許容可能なレベルまでpHが上昇する。アニリン添加が終了したら、酵素溶液を添加することができる。酵素の活性に応じて、添加量を変動させる。大豆ペルオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼでは、酵素を、反応させるアニリン1グラム当たり大体50から3000ppuの量で使用する。好ましくは、電子受容体の溶液を、酸化剤が酵素を阻害するのを防ぐため反応に徐々に添加する。Pokoraに付与された米国特許5,278,055は、ペルオキシドの添加速度を徐々に遅くする傾斜した(ramped)添加を開示している。本発明の好ましい実施形態では、反応が進行して酸が放出されるに伴い、アニリンまたは他の塩基を酵素反応中に添加して、pHを3.0より高く、好ましくは4.0から5.0の範囲に維持する。
【0023】
低分子量のポリマーを生じさせるためのオリゴマーおよびモノマーの反応は、典型的には、オリゴマーを生じさせるために酵素プロセスを使用するオリゴマーの製造で使用されたと同じ反応容器中で行う。前記で説明したように、酵素反応を、大体0.5から60%のオリゴマーが生じ、残りが未反応のアニリン塩であるように調節することができる。所望のオリゴマー濃度が達成されたら、過硫酸塩または他の強力な酸化剤を添加して、重合反応を完了させることができる。反応は発熱性であるので、好ましくは反応を冷却して、30℃未満の温度を維持する。過硫酸塩を増しながら添加することができ、添加を増していく間は反応容器を冷却して30℃未満の温度を維持する。第2段階の反応は、通常、0から45℃で行う。第2段階の反応で、ポリマーをより高分子量に成長させる。
【0024】
第1段階の反応生成物の分子量(質量スペクトルに基づく)は、通常、300から3,000の範囲であり、典型的には大体500から1,500である。第2段階のポリマー生成物の分子量は、通常、大体3,000から70,000であり、典型的には大体15,000から25,000である。このポリマー生成物は、高い導電性を示すだけでなく、溶媒への良好な可溶性を示し、他のポリアニリンに比べてかなり長い溶液中の貯蔵寿命を有するので、有利である。これにより、ポリマーの溶液を製造し、様々なポリマー系に添加することが可能である。
【0025】
ポリマーを従来の方法でドーピングして、導電性にする。好ましいドーパントは、p−トルエンスルホン酸(PTSA:p−toluenesulfonic acid)などの有機プロトン酸であるが、ポリアニリン中で使用するために文献中に記載されている他のドーパントも使用することができる。アニリン重合のための酸としてPTSAを使用すると、これはドーパントとしても機能し得る。他のドーパントの例は米国特許5,378,403号に提示されている。ドーパントの量は変動させることができ、前記で検討されている導電性限界が達成される限り、厳密ではない。ドーパントは、ポリマー生成物に導電性をもたらす種のいずれでもよい。ドーパントとして、酸性化剤は、通常、共役ポリマーのバックボーンをプロトン化し、ポリマーのバックボーンに沿って電荷担体を生じさせ、その結果として導電性材料をもたらす。ポリマーは、10−4S/cmより高い、好ましくは10−3S/cmより高い導電性を有し、10−1S/cm以上の導電性が達成されている。塩酸などの酸も使用することができ、これは、未ドーピング形のポリマーが望ましい場合には、経済的により有利である。エメラルド色塩基型が望ましい場合には、塩を水酸化アンモニウムと反応させることができる。
【0026】
本発明のポリマーを熱可塑性または熱硬化性ポリマーとブレンドして、そのブレンドに帯電防止特性を付与することができる。ブレンドで使用されるポリマーの量は、望ましい最終特性に応じて変動させる。本発明のポリマーは、導電性ポリマーが有用であるいずれの目的においても、非常に有用である。いくつかの適用が、それぞれ既にここで参照している特許中に挙げられている。
【0027】
ポリマーを製造する際に、プレポリマーを単離する必要がないことを明記したい。アニリン、酸化剤および酸を、直接、プレポリマー反応系に添加して、ポリマー生成物を生成させることができる。第2段階の反応は、強力な酸化剤および酸を必要とする。幅広く変動させることができて、最終生成物を望ましい特性に合わせることができる量のアニリンを、第2段階で反応させる。典型的には、第1段階で使用されたアニリンの大体25%から100%に等しい量を、第2段階で添加する。この量は、第1段階の後にどれくらいの量の未反応のアニリンが存在しているかに応じて、変動させることができる。第1段階の生成物が大量の未反応のアニリンを含む場合には、第2段階でアニリンを添加しなくてもよい。
【0028】
本発明を次のこれには限定されない実施例でさらに詳述する。
【0029】
<参考実施例1:化学的酸化>
反応器中で、H2SO4の55gm(0.56モル)を10℃で水800mlに溶かした。反応混合物の凝固を避けるため激しく攪拌しながら、アニリン94gm(1.0モル)をゆっくりと添加した。(NH4)2S2O8の285gm(1.25モル)を水300ml中に溶かし、4つの部分に分けて反応混合物に添加した。第1部分12.5%の過硫酸アンモニアの溶液を12.5℃で添加した。誘導期は3分であった。発熱プロセスにより温度が25℃に上昇した。反応を17℃に冷却し、次いで残りの過硫酸アンモニウム溶液を3つの部分に分けて添加した。各部分が反応したら、反応を20℃に冷却し、その後、次の部分を添加した。過硫酸アンモニウム添加の全時間は約40分であった。ろ過し、水で洗浄し、乾燥させた。ポリアニリン115.5gmが集まった。脱ドーピングされたポリマーのUVスペクトルを図1に示す。
【0030】
<参考実施例2:Allied Signal処理>
水45ml中のアニリン0.95gmをパラ−トルエンスルホン酸(para−toluenesulfonic acid)でpH3に滴定した。反応混合物を0℃に冷却し、14,000ppuのHRPを含有する溶液5mlおよび過酸化水素の30%溶液1.53mlを添加した。反応を0℃で60時間攪拌した。生成物をろ過し、真空中で12時間乾燥させた。エメラルド色塩0.8gmが集まった。UVスペクトルは本質的に、図1に示したものと同様である。
【0031】
<参考実施例3:酢酸中のアニリンの酵素的カップリング>
反応器中で、酢酸70gm(1.15モル)を水200mlに10℃で溶かした。アニリン94.0gm(1.0モル)を、激しく攪拌しながらゆっくりと添加した。300ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ550mlを添加した。H2O2の溶液(17.5%)を2時間かけて、0.2ml/分の速度で供給した。反応混合物をNH4OHで中和し、遠心分離機により生成物を単離し、水で洗浄し、乾燥させた。生成物20gが集まった。脱ドーピングされたポリマーのUVスペクトルを図2に示す。
【0032】
<実施例1:オリゴマーの酵素的製造>
反応器中で、PTSAの114gm(0.6モル)を水800mlに10℃で溶かした。反応混合物の凝固を回避するために激しく添加しながら、アニリン55.8gm(0.6モル)をゆっくりと添加した。475ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ溶液250mlを添加した。H2O2の溶液(17.5%)を0.4ml/分の速度で供給して、H2O22mlを供給した後に、供給を1分間休止し、新たにアニリン0.5gmを添加した。H2O280ml(0.41モル)を添加し、アニリン20g(0.21モル)を4時間かけて添加した。生成物をろ過し、乾燥させた。ポリアニリン55.4gが集まった。脱ドーピングされたポリマーでのUVスペクトルを図3に示す。
【0033】
<実施例2:酵素的および化学的酸化を組み合わせることによるポリアニリンの製造>
反応器中で、HClの37%溶液460ml(5.37モル)を水1300mlと10℃で混合した。アニリン500gm(5.37モル)を添加した。3000ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ666mlを添加した。H2O2の溶液(17.5%)を0.5ml/分の速度で供給し、H2O22.0mlを供給した後に、供給を1分間休止し、新たにアニリン0.5gmを添加した。2時間後、H2O262ml(0.32モル)およびアニリン13.0gmを添加した。アニリン全量=513.0gm(5.51モル)。初期および添加アニリンの変換率は5.8%であった。
【0034】
(NH4)2S2O81436gm(5.38モル)を反応混合物に、それぞれ179.5gmの8つの部分に分けて、最初に10℃で添加した。誘導期はなかった。このプロセスは発熱性で、1部分当たり約8〜10℃の温度上昇をもたらした。反応を30℃まで達するのを放置し、次いで各部分が反応し後は20℃に冷却し、その後、次の部分を添加した。過硫酸アンモニウム添加の総時間は約40分であった。反応混合物NH4OHで中和し、ろ過し、水で洗浄し、乾燥させた。エメラルド色塩基508gm(99.0%)が集まった。
【0035】
<実施例3:制御された分子量を有するオリゴマーの酵素的製造>
反応器中で、HClの37%溶液520ml(5.48モル)を水500mlと10℃で混合した。アニリン510gm(5.48モル)を添加した。300ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ2500mlを添加した。H2O2(17.5%)の溶液を1.2ml/分の速度で供給し、H2O24.0mlを供給したら、供給を1分間休止し、新たなアニリン1.0gmを添加した。過酸化水素の17.5%溶液54mlを供給した後に、初期モノマー(initial monomer)の変換率5%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図5参照)、ろ液を反応器に戻した。過酸化水素の17.5%溶液108mlを加えた後に、初期モノマーの変換率10%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図6参照)、ろ液を反応器に戻した。過酸化水素の17.5%溶液162mlを供給した後に、初期モノマーの変換率15%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図7参照)、ろ液を反応器に戻した。17.5%過酸化水素216mlを供給した後に、初期モノマーの変換率20%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図8参照)、ろ液を反応器に戻した。
【0036】
本発明の詳細な説明、その好ましい実施形態を参照すると、請求項により定義される本発明の意図および範囲から逸脱することなく、数多くの変法および変更が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図2】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図3】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図4】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図5】
本発明により製造された、アニリンモノマーの5%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【図6】
本発明により製造された、アニリンモノマーの10%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【図7】
本発明により製造された、アニリンモノマーの15%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【図8】
本発明により製造された、アニリンモノマーの20%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【発明の背景】
本発明はポリアニリン(PA)を製造方法に関し、特に、制御された分子量の導電性のポリアニリンの製造方法に関するものである。
【0002】
慣例的には、導電性ポリアニリンは、強酸の存在下に過硫酸アンモニウムによりアニリンを化学的に酸化することにより製造される。この反応は高発熱性である。反応の発熱特性を制御するために、過硫酸アンモニウムは数回に分けて添加される。このプロセスの決定的な欠点は、非常に高分子量のPAを生成することである。例えば、生成物の分子量は一般的に100,000を上回る。このことは、多くの理由で処理の際に問題となる。例えば、有機溶媒への低い可溶性、高い固有粘度および溶液中での非常に短い貯蔵寿命など。加えて、所望のプラスチック、繊維および塗料に添加する前に、高分子量のPAは粉砕(例えば、空気粉砕:air−milled)して、分散させる必要がある。図1は、エメラルド色塩基形(Emeraldine Base form)の非導電性PAの典型的なUVスペクトルを示している。これは明瞭に規定される2つのピークを示している。一方は共役キノイドジイミノ基(conjugated quinoid diimono groups)に対応する約640nm付近、他方はベンゾイドジアミノ基(benzoid diamino groups)に対応する約320nm付近)である。このスペクトルは、非共役イミノ基が吸収すると予測される430nmに最低吸収を示している。
【0003】
低分子量のポリアニリンを生じさせる方法は知られている。このような方法の1つは、反応系に酸化剤を迅速に添加する工程を含む。この方法は重合反応の高発熱特性に基づき、深刻な問題をもたらす。
【0004】
ペルオキシダーゼ酵素および過酸化水素の使用を含む、ポリアニリンを製造するための酵素反応も公知であり、Pokoraに付与された米国特許5,112,752号およびAllied SignalのZemelに付与された米国特許5,420,237号に記載されている。後者はホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)を使用して、p−トルエンスルホン酸(PTSA:p−toluenselfonic acid)の存在下にアニリンを酸化することを開示している。Zemel特許に例示されているプロセスは大量の酵素を消費し、大規模生産に不適切なものとなっている。反応中のpHが3.5未満に低下するので、酵素が消費されると考えられている。酵素がその構造中に含むヘム基(heme group)を酸が溶解するという1つの理論が存在する。酢酸塩などの弱酸アニリン塩を使用してPAを製造する試みがなされている。遊離された酢酸はpHを3未満には低下させず、酵素は活性なままである。しかし残念ながら、酢酸は、全てのアニリンをプロトン化してオルト位(ortho position)を失活化する程には強くない。結果として、オルト置換(ortho−substitution)を伴う不規則な構造を有する非導電性PAが生じる。図2に、脱ドーピング(dedoped)された材料のUVスペクトルを示すが、これは350〜390nmでの吸収および490〜500nmでの小さい吸収を含み、このことは、僅かな頭尾結合(head−to−tail linkage)が達成されていることを示している。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、酸性条件下に酸化剤の存在中で低分子量のPAオリゴマー(「種オリゴマー:seed oligomer」)をアニリンモノマーと反応させることにより、制御された分子量を有するPAを製造し、さらに前記種オリゴマーの分子量を制御する新規な方法を提供する。本発明の方法は、数平均分子量が70,000未満、特に50,000未満、さらに20,000未満の導電性PAを提供するので、特に有用である。これらの低分子量のPAは、従来のプロセスにより製造された高分子量のPAよりも容易に溶解し、長い貯蔵寿命を有する。添加されるオリゴマー鎖の量を制御すると、制御された低分子量のポリマーが得られる。THF(テトラヒドロフラン:tetrahydrofuran)、DMF、DMACおよびDMSO(ジメチルスルホキシド:dimethyle sulfoxide)などの通常の有機溶媒に可溶性のあるPAを得ることができる。しかしながら、本発明の方法は、特定の条件下で、より高分子量のPA、例えば従来のプロセスで達成されるような分子量のPAを製造するために使用することもできる。加えて、反応のための誘導期(induction period)を短くすることができるので、オリゴマーの使用は有利である。強酸アニリン塩を化学的に酸化することによるPAの従来の製造では、誘導期は数時間に及ぶこともある。使用される反応物に応じて、オリゴマーの添加により誘導期を数秒までに減らすことができる。確認されていないが、オリゴマーは重合のための鋳型(template)を形成していて、それにより誘導期を短くするようである。さらに、本発明の方法は、超音波などの高周波振動の使用を用いて重合の誘導期を更に短くし、最終ポリマーの物理的特性を改善する。高周波(例えば超音波)振動は、ポリアニリンを製造する従来の重合プロセスを改善するために使用することもできる。
【0006】
本発明の方法で使用される種オリゴマーは、いずれのプロセスでも得ることができる。しかし、本発明の好ましい実施形態では、電子受容体の存在下に酸アニリン塩をペルオキシダーゼまたはオキシダーゼ酵素と反応させる酵素プロセスでオリゴマーを得る。遊離した酸が酵素を不活性化することを妨げるために、反応系を塩基および好ましくはアニリン塩基で滴定する。したがって、本発明の他の明示としては、酵素がその活性を維持するレベルにpHを保持するために好ましくはアニリンである塩基を反応経過の間に添加する、ポリアニリンを製造するための改善された酵素プロセスである。
【0007】
本発明の特別な明示の1つは2ステップの重合反応であり、ここでは第1の段階では、最も好ましくはアニリンを添加して遊離した酸と反応させて、酵素的に有効なpHを維持しつつ酵素反応によりアニリンオリゴマーを生じさせ、第2の段階では、過硫酸アンモニウムなどの酸化剤の存在下にオリゴマーをアニリンと反応させる。第1段階の反応生成物はベンゾイドジアミノに対応する約320nmに未分解のピークを有し、キノイドジイミノ基の吸収は400nmから約570nmへ非局在化(delocalized)されている。このスペクトルは、様々な分子量を有する低分子量のオリゴマーの存在を示している。第1段階で得られたオリゴマーと付加的なアニリン塩とをさらに反応させると、図4に示したスペクトルが得られ、ここでは、420nmの吸収度(absorbency)は消失し、オリゴマーが最終の導電性PAへ反応したことが示されている。
【0008】
本発明は、特に、導電性PAを製造する際に有用であるが、当業者には本発明の方法を、エメラルド色塩基形の非導電性PAの製造に関しても使用することができることは理解されるであろう。本発明の利点の1つは、これが安全かつ制御可能な(暴走しない)反応を提供することである。本記載は、主に、分子量が70,000未満であるPAの製造に焦点を置いているが、このプロセスは、より高分子量のPA、例えば所望の場合には200,000分子量のPAを製造するために使用することもできる。
【0009】
本発明では、PAを製造する際に種オリゴマーを使用する。このオリゴマーは、アニリン単位を約2から20、典型的には約2から12を含有してよい。ポリマーを製造する際に使用される種オリゴマーの量は、0.5%の少量であってもよいが、典型的には大体0.5から20%の間、さらに典型的には大体1から10%の間である。これらの百分率は重合可能な材料全体に基づく。即ち、アニリンおよびオリゴマーを合わせた量が100%である。
【0010】
本発明の最も広い明示では、種オリゴマーは、Zemelに付与された米国特許5,420,237号、Pokoraに付与された米国特許5,112,752号、米国特許3,963,498号および同4,025,463号に記載されているプロセスを含む利用可能なプロセスのいずれによっても得ることができる。しかし、好ましい実施形態では、Zemel特許に記載されているプロセスの変法を使用してオリゴマーを得る。その際、反応混合物に塩基および好ましくはアニリンを添加することにより、反応系のpHを3.5より高く、好ましくは大体4.0から5.0の間に維持する。Zemelプロセスでは、アニリンのpKa未満のpKaを有する酸性化剤を使用する。典型的には、酸性化剤はHClなどの強酸である。これらの条件下でのアニリンの反応は、強酸の放出をもたらす。Zemel反応では、アニリンの2モルが反応してポリマーを形成するごとに、1モルの酸が放出される。したがって、重合が進行するにつれて、反応混合物のpHは急速に低下する。Zemelの反応混合物のpHは1.0〜2.5の低さとなる。このpHはアニリンモノマーの頭尾結合を保証するが、酵素を不活性化させる。
【0011】
本発明では、塩酸塩などの強酸アニリン塩を使用し、放出された酸を塩基と反応させて、pHを3.5から4.5の範囲内に維持するようにpHを制御する。当業者には、酵素の反応効率は劣るが、この範囲からの多少の逸脱は許容されることは理解されるであろう。水酸化カルシウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムなどの塩基をこの目的のために使用することができるが、これらは、通常は除去すべき不純物または汚染物を反応生成物に導入することになる。したがって、好ましい塩基は、反応してPAとなる同じアニリンである。アニリンは溶液またはニート(neat)で反応に添加することができる。アニリンは、電子供与体の添加に合わせた反応間隔で添加されるか、pHをモニタリングしつつ系に滴定される。
【0012】
大抵の場合は、水中で重合反応を行うことができる。しかし、Zemelに付与された米国特許5,420,237号およびPokoraに付与された米国特許5,112,752に記載されているように、混合反応系もプレポリマーを製造する際には有用である。モノマーが十分には水中で可溶性でない場合、混合された溶媒も有効である。例えば、エタノール/水を使用することができる。溶媒/水の混合物中で使用するために適切な有機溶媒には、アセトンと、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールなどのアルコールと、ピロリジノン、例えばN−メチル−2−ピロリジノンと、アセトニトリルと、テトラヒドロフランとが含まれる。有機溶媒/水の混合物は、少なくとも約0.5%から約50%の水を含む。最も好ましい実施形態では、溶媒媒体は水100%である。
【0013】
アニリンは、置換されていても非置換であってもよい。有用なアニリンは当業者には公知である。例えばZemel特許参照されたい。望ましい場合には、コポリマーを製造するために、様々に置換されたアニリンの組み合わせを使用することができる。本発明のポリマーで有用な置換されたアニリンの例には、導電性ポリマーを生じさせる際に有用であると以前から推薦されているアニリンが含まれる。これらのアニリンの例は、米国特許5,378,403号、同5,422,423号および同5,420,237号に記載されている。米国特許5,420,237号に記載されているように、アニリン成分は、式I(Formula I)の、1つまたは複数の、置換されたまたは非置換のアニリンモノマーから選択する。
【0014】
【化1】
【0015】
式中、nは0から4の整数であり、mは1から5の整数であるが、ただしnおよびmの合計は5に等しい。アニリン環の少なくとも1つの位置はその位置で酸化的なカップリングを可能にする基である。R1は、水素または1つのR2置換基である。R2は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、メルカプト、スルホニル酸、カルボキシル、ならびに炭化水素含有置換基から選択される。炭化水素含有置換基は、アルキル、アルカノイル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリーロイル、アルキルアリールから選択されるか、又は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、メルカプト、スルホン酸およびカルボン酸の1個または複数でアルキル置換(alkylsubstituted)された炭化水素含有置換基から選択される。前記炭化水素置換基は炭素原子を1から20個を含有する。特に好ましい実施形態では、式中のR1が水素または炭素を1から4個を有する1つのアルキルであり、R2が1つの水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、メルカプト、カルボン酸、スルホン酸、および1つのアルキル、アルコキシ、アルカノイルから選択され、前記アルキルは炭素を1から6個を有する、式Iのアニリンモノマーが意図されている。最も好ましい実施形態では、アニリンモノマーは非置換のアニリンである。置換および非置換のアニリンの次のリストは、ポリマーおよびコポリマーを製造するために本発明の実施で使用することができる前記特許中に記載されたものの実例である。アニリン(aniline)、2−アセチルアニリン(2−acetylaniline)、2−シクロヘキシルアニリン(2−cyclohexylaniline)、2,5−ジメチルアニリン(2,5−dimethylaniline)、トルイジン(toluidine)、2,3−ジメチルアニリン(2,3−dimethylaniline)、m−トルイジン(m−toluidine)、2,5−ジブチルアニリン(2,5−dibutylaniline)、o−エトキシアニリン(o−ethoxyaniline)、o−シアノアニリン(o−cyanoaniline)、m−ブチルアニリン(m−butylaniline)、2−チオメチルアニリン(2−thiomethylaniline)、m−ヘキシルアニリン(m−hexylaniline)、2,5−ジクロロアニリン(2,5−dichloroaniline)、m−オクチルアニリン(m−octylaniline)、3−(n−ブタンスルホン酸)アニリン(3−(n−butanesulfonic acid)aniline)、2−ブロモアニリン(2−bromoaniline)、3−プロポキシメチルアニリン(3−propoxymethylaniline)、3−ブロモアニリン(3−bromoaniline)、3−アセトアミドアニリン(3−acetamidoaniline)、5−クロロ−2−メトキシアニリン(5−chroro−2−methoxyaniline)、3−フェノキシアニリン(3−phenoxyaniline)、N−メチルアニリン(N−methylaniline)、2−(ジメチルアミノ)アニリン(2−(dimethylamido)aniline)、2−エチルチオアニリン(2−ethylthioaniline)、N−カルボニルアニリン(N−carbonylaniline)、2−メチルチオメチルアニリン(2−methylthiomethylaniline)。
【0016】
酵素は、アニリンの酸塩を直ちに重合する形へと酸化する能力に基づき選択する。通常、酵素は、モノマーを酸化するために十分な時間、酸性環境中でその活性を保持すべきである。いくつかの酵素は、ヘム基の存在によって特徴付けられる。酵素は、好ましくはペルオキシダーゼ、さらに好ましくは大豆ペルオキシダーゼ(soybeam peroxidase)であるが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、タバコペルオキシダーゼ(tabacco peroxidase)、トマトペルオキシダーゼ(tomato peroxidase)、豆果ベルオキシダーゼ(legume peroxdase)、細菌ペルオキシダーゼ(bacterial peroxidase)およびクロロペルオキシダーゼ(chloroperoxidase)などの他のペルオキシダーゼも使用することができる。加えて、オキシダーゼ酵素もモノマーを重合する際に有用であると考えられる。
【0017】
使用される酵素の量はその反応性に依存している。実施例は大豆ペルオキシダーゼの適切な量を示している。反応中の酵素の量は、十分なアニリンモノマーをカップリングして、所望の鎖長のオリゴマーを生じさせるに十分でなければならない。反応器中での酵素の濃度は、少なくとも約0.1単位/mlである。酵素の濃度は、反応媒体の1ミリリットル当たりの活性単位で測定する。ペルオキシダーゼでは、活性の1単位(ppu)は、pH=6.0、20℃での20秒で、ピロガロールから1.0ミリグラムのプルプロガリンを生成する。反応媒体の1ミリリットル当たりの酵素の濃度は、典型的には、約0.1単位/mlから約10,000単位/mlの範囲である。
【0018】
ペルオキシダーゼでの電子供与体として有用であると知られているいずれのペルオキシドも、本発明の実施で使用することができる。このようなペルオキシドの例は、過酸化水素、メチルヒドロペルオキシドおよびエチルヒドロペルオキシドなどのアルキルヒドロペルオキシド、芳香族ペルオキシド、例えばクメニルヒドロペルオキシド、ならびにペルオキシ酸である。電子供与体が酵素を酸化する時に、電子受容体の還元形が溶媒の1成分であると、製造が簡単になる。例えば、過酸化水素は酵素を酸化して水に変換される。オキシダーゼ酵素は、ペルオキシドの代わりに酸素または酸素含有ガスと共に使用する。好ましくは、電子受容体とモノマーとのモル比は少なくとも約1:1から約1.5:1である。
【0019】
モノマーと反応する電子受容体の量を制限することにより、種オリゴマーの分子量を制御することができる。例えば、8単位以下を有するオリゴマーが望ましい場合には、供給される電子受容体とモノマーとのモル比は約0.1:1から約0.15:1であるべきである(図5および6参照)。大体8から15間の単位を有するオリゴマーが望ましい場合には、供給される電子受容体とモノマーとのモル比は約0.15から約0.225:1であるべきである(図7参照)。25単位までを有するオリゴマーが望ましい場合には、供給される電子受容体とモノマーとのモル比は約0.2:1から約0.3:1であるべきである(図8参照)。同様に、より多い量の電子受容体を使用すると、より高分子量のオリゴマーを生成させることができる。
【0020】
オリゴマーおよびアニリンモノマーを反応させて、オリゴマーをより高分子量のポリマーに変えることは、アニリンモノマーを反応させることによるPAの製造で使用される方法で行うことができる。最も広く使用される酸化剤は過硫酸アンモニウムであるが、当業者に知られていて、アニリンを重合しうる過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム、塩化鉄などの他の酸化剤も使用することができる。酸化剤が穏やかなほど、収率は低い。
【0021】
通常、第2反応での反応混合物のpHは、アニリンモノマーのプロトン化を引き起こすに十分な程度に酸性である。通常、反応混合物のpHは反応混合物中のアニリンモノマーのpKa未満であるが、酵素を不活性化するほどには低くない。好ましくは、有効なpHは、アニリンモノマーが反応混合物中に分散されたモノマーである場合に、アニリンモノマーの少なくとも70%がそのプロトン化された形で存在するような環境をもたらす。特に好ましい実施形態では、アニリンの少なくとも約95%がプロトン化されるようなpHを選択する。好ましくは、pHは約1より高く、約4.5よりも低い。反応温度は大体−5℃から100℃の範囲であってよいが、典型的には0から30℃の範囲である。温度は、通常、従来のプロセスのように低く(例えば−5℃で)なくてもよい。それというのも、暴走する発熱反応を防ぐ必要がないためである。化学的酸化剤を用いる第2段階の反応は、オリゴマーを回収することなく第1段階と同じ反応容器で実施することができる。
【0022】
実施例中に記載の反応条件および反応物濃度は、本発明で使用されるものの例である。アニリンを、典型的には、酸を含有する水溶液に添加する。酸の例は、HCl、CH3COOH、HNO3、H2SO4、HBF4、C12H25C6H4SO3H、CH3C6H5SO3H、C6H5SO3H、CH3SO3H、CF3SO3H、CF3COOHおよびCCl3COOHである。無機および有機リン酸、リン酸、スルフィン酸なども使用することができる。勢いのある攪拌が必要である。大体0.1から5モルのアニリンを水1000mlに添加することができる。アニリンの添加により、塩が生成し、酵素に許容可能なレベルまでpHが上昇する。アニリン添加が終了したら、酵素溶液を添加することができる。酵素の活性に応じて、添加量を変動させる。大豆ペルオキシダーゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼでは、酵素を、反応させるアニリン1グラム当たり大体50から3000ppuの量で使用する。好ましくは、電子受容体の溶液を、酸化剤が酵素を阻害するのを防ぐため反応に徐々に添加する。Pokoraに付与された米国特許5,278,055は、ペルオキシドの添加速度を徐々に遅くする傾斜した(ramped)添加を開示している。本発明の好ましい実施形態では、反応が進行して酸が放出されるに伴い、アニリンまたは他の塩基を酵素反応中に添加して、pHを3.0より高く、好ましくは4.0から5.0の範囲に維持する。
【0023】
低分子量のポリマーを生じさせるためのオリゴマーおよびモノマーの反応は、典型的には、オリゴマーを生じさせるために酵素プロセスを使用するオリゴマーの製造で使用されたと同じ反応容器中で行う。前記で説明したように、酵素反応を、大体0.5から60%のオリゴマーが生じ、残りが未反応のアニリン塩であるように調節することができる。所望のオリゴマー濃度が達成されたら、過硫酸塩または他の強力な酸化剤を添加して、重合反応を完了させることができる。反応は発熱性であるので、好ましくは反応を冷却して、30℃未満の温度を維持する。過硫酸塩を増しながら添加することができ、添加を増していく間は反応容器を冷却して30℃未満の温度を維持する。第2段階の反応は、通常、0から45℃で行う。第2段階の反応で、ポリマーをより高分子量に成長させる。
【0024】
第1段階の反応生成物の分子量(質量スペクトルに基づく)は、通常、300から3,000の範囲であり、典型的には大体500から1,500である。第2段階のポリマー生成物の分子量は、通常、大体3,000から70,000であり、典型的には大体15,000から25,000である。このポリマー生成物は、高い導電性を示すだけでなく、溶媒への良好な可溶性を示し、他のポリアニリンに比べてかなり長い溶液中の貯蔵寿命を有するので、有利である。これにより、ポリマーの溶液を製造し、様々なポリマー系に添加することが可能である。
【0025】
ポリマーを従来の方法でドーピングして、導電性にする。好ましいドーパントは、p−トルエンスルホン酸(PTSA:p−toluenesulfonic acid)などの有機プロトン酸であるが、ポリアニリン中で使用するために文献中に記載されている他のドーパントも使用することができる。アニリン重合のための酸としてPTSAを使用すると、これはドーパントとしても機能し得る。他のドーパントの例は米国特許5,378,403号に提示されている。ドーパントの量は変動させることができ、前記で検討されている導電性限界が達成される限り、厳密ではない。ドーパントは、ポリマー生成物に導電性をもたらす種のいずれでもよい。ドーパントとして、酸性化剤は、通常、共役ポリマーのバックボーンをプロトン化し、ポリマーのバックボーンに沿って電荷担体を生じさせ、その結果として導電性材料をもたらす。ポリマーは、10−4S/cmより高い、好ましくは10−3S/cmより高い導電性を有し、10−1S/cm以上の導電性が達成されている。塩酸などの酸も使用することができ、これは、未ドーピング形のポリマーが望ましい場合には、経済的により有利である。エメラルド色塩基型が望ましい場合には、塩を水酸化アンモニウムと反応させることができる。
【0026】
本発明のポリマーを熱可塑性または熱硬化性ポリマーとブレンドして、そのブレンドに帯電防止特性を付与することができる。ブレンドで使用されるポリマーの量は、望ましい最終特性に応じて変動させる。本発明のポリマーは、導電性ポリマーが有用であるいずれの目的においても、非常に有用である。いくつかの適用が、それぞれ既にここで参照している特許中に挙げられている。
【0027】
ポリマーを製造する際に、プレポリマーを単離する必要がないことを明記したい。アニリン、酸化剤および酸を、直接、プレポリマー反応系に添加して、ポリマー生成物を生成させることができる。第2段階の反応は、強力な酸化剤および酸を必要とする。幅広く変動させることができて、最終生成物を望ましい特性に合わせることができる量のアニリンを、第2段階で反応させる。典型的には、第1段階で使用されたアニリンの大体25%から100%に等しい量を、第2段階で添加する。この量は、第1段階の後にどれくらいの量の未反応のアニリンが存在しているかに応じて、変動させることができる。第1段階の生成物が大量の未反応のアニリンを含む場合には、第2段階でアニリンを添加しなくてもよい。
【0028】
本発明を次のこれには限定されない実施例でさらに詳述する。
【0029】
<参考実施例1:化学的酸化>
反応器中で、H2SO4の55gm(0.56モル)を10℃で水800mlに溶かした。反応混合物の凝固を避けるため激しく攪拌しながら、アニリン94gm(1.0モル)をゆっくりと添加した。(NH4)2S2O8の285gm(1.25モル)を水300ml中に溶かし、4つの部分に分けて反応混合物に添加した。第1部分12.5%の過硫酸アンモニアの溶液を12.5℃で添加した。誘導期は3分であった。発熱プロセスにより温度が25℃に上昇した。反応を17℃に冷却し、次いで残りの過硫酸アンモニウム溶液を3つの部分に分けて添加した。各部分が反応したら、反応を20℃に冷却し、その後、次の部分を添加した。過硫酸アンモニウム添加の全時間は約40分であった。ろ過し、水で洗浄し、乾燥させた。ポリアニリン115.5gmが集まった。脱ドーピングされたポリマーのUVスペクトルを図1に示す。
【0030】
<参考実施例2:Allied Signal処理>
水45ml中のアニリン0.95gmをパラ−トルエンスルホン酸(para−toluenesulfonic acid)でpH3に滴定した。反応混合物を0℃に冷却し、14,000ppuのHRPを含有する溶液5mlおよび過酸化水素の30%溶液1.53mlを添加した。反応を0℃で60時間攪拌した。生成物をろ過し、真空中で12時間乾燥させた。エメラルド色塩0.8gmが集まった。UVスペクトルは本質的に、図1に示したものと同様である。
【0031】
<参考実施例3:酢酸中のアニリンの酵素的カップリング>
反応器中で、酢酸70gm(1.15モル)を水200mlに10℃で溶かした。アニリン94.0gm(1.0モル)を、激しく攪拌しながらゆっくりと添加した。300ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ550mlを添加した。H2O2の溶液(17.5%)を2時間かけて、0.2ml/分の速度で供給した。反応混合物をNH4OHで中和し、遠心分離機により生成物を単離し、水で洗浄し、乾燥させた。生成物20gが集まった。脱ドーピングされたポリマーのUVスペクトルを図2に示す。
【0032】
<実施例1:オリゴマーの酵素的製造>
反応器中で、PTSAの114gm(0.6モル)を水800mlに10℃で溶かした。反応混合物の凝固を回避するために激しく添加しながら、アニリン55.8gm(0.6モル)をゆっくりと添加した。475ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ溶液250mlを添加した。H2O2の溶液(17.5%)を0.4ml/分の速度で供給して、H2O22mlを供給した後に、供給を1分間休止し、新たにアニリン0.5gmを添加した。H2O280ml(0.41モル)を添加し、アニリン20g(0.21モル)を4時間かけて添加した。生成物をろ過し、乾燥させた。ポリアニリン55.4gが集まった。脱ドーピングされたポリマーでのUVスペクトルを図3に示す。
【0033】
<実施例2:酵素的および化学的酸化を組み合わせることによるポリアニリンの製造>
反応器中で、HClの37%溶液460ml(5.37モル)を水1300mlと10℃で混合した。アニリン500gm(5.37モル)を添加した。3000ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ666mlを添加した。H2O2の溶液(17.5%)を0.5ml/分の速度で供給し、H2O22.0mlを供給した後に、供給を1分間休止し、新たにアニリン0.5gmを添加した。2時間後、H2O262ml(0.32モル)およびアニリン13.0gmを添加した。アニリン全量=513.0gm(5.51モル)。初期および添加アニリンの変換率は5.8%であった。
【0034】
(NH4)2S2O81436gm(5.38モル)を反応混合物に、それぞれ179.5gmの8つの部分に分けて、最初に10℃で添加した。誘導期はなかった。このプロセスは発熱性で、1部分当たり約8〜10℃の温度上昇をもたらした。反応を30℃まで達するのを放置し、次いで各部分が反応し後は20℃に冷却し、その後、次の部分を添加した。過硫酸アンモニウム添加の総時間は約40分であった。反応混合物NH4OHで中和し、ろ過し、水で洗浄し、乾燥させた。エメラルド色塩基508gm(99.0%)が集まった。
【0035】
<実施例3:制御された分子量を有するオリゴマーの酵素的製造>
反応器中で、HClの37%溶液520ml(5.48モル)を水500mlと10℃で混合した。アニリン510gm(5.48モル)を添加した。300ppu/mlの大豆ペルオキシダーゼ2500mlを添加した。H2O2(17.5%)の溶液を1.2ml/分の速度で供給し、H2O24.0mlを供給したら、供給を1分間休止し、新たなアニリン1.0gmを添加した。過酸化水素の17.5%溶液54mlを供給した後に、初期モノマー(initial monomer)の変換率5%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図5参照)、ろ液を反応器に戻した。過酸化水素の17.5%溶液108mlを加えた後に、初期モノマーの変換率10%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図6参照)、ろ液を反応器に戻した。過酸化水素の17.5%溶液162mlを供給した後に、初期モノマーの変換率15%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図7参照)、ろ液を反応器に戻した。17.5%過酸化水素216mlを供給した後に、初期モノマーの変換率20%が達成された。反応混合物400mlをろ過し、オリゴマーを単離し(図8参照)、ろ液を反応器に戻した。
【0036】
本発明の詳細な説明、その好ましい実施形態を参照すると、請求項により定義される本発明の意図および範囲から逸脱することなく、数多くの変法および変更が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図2】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図3】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図4】
脱ドーピングされた形の生成物に関するUV吸収スペクトルを示す図である。
【図5】
本発明により製造された、アニリンモノマーの5%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【図6】
本発明により製造された、アニリンモノマーの10%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【図7】
本発明により製造された、アニリンモノマーの15%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
【図8】
本発明により製造された、アニリンモノマーの20%を重合した後のオリゴマーの質量スペクトルを示す図である。
Claims (13)
- アニリンの種オリゴマーをアニリンモノマーの塩および酸化剤と酸性pHで反応させる工程を含むことを特徴とするポリアニリンの製造方法。
- 前記種オリゴマーがアニリン単位で約2から約20個を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記酸性pHがアニリンモノマーのpKa未満であることを特徴とする請求項2に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記種オリゴマーがアニリン単位で2から12個を含有することを特徴とする請求項3に記載のポリアニリンの製造方法。
- 酸素またはペルオキシドの存在中でアニリンモノマーの塩をオキシダーゼ酵素またはペルオキシダーゼ酵素と反応させて、前記種オリゴマーを生じさせる工程を更に含むことを特徴とする請求項4に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記酵素の存在中での反応の間に、酸が放出され、放出された酸を中和するために塩基を反応に添加することを特徴とする請求項5に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記塩基がアニリンであることを特徴とする請求項6に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記オリゴマーが、オリゴマーとモノマーとの全体に対して約0.5から約20%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記pHが約1.0から約4.5であることを特徴とする請求項1に記載のポリアニリンの製造方法。
- 前記酵素が大豆ペルオキシダーゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼであり、前記電子受容体が過酸化水素であることを特徴とする請求項5に記載のポリアニリンの製造方法。
- 塩基を反応に添加して酵素が活性を維持する範囲のpHを保持しつつ、前記酵素の存在中でモノマーの塩を電子受容体と反応させる工程を含むことを特徴とするアニリンモノマーを酸化的にカップリングする方法。
- 前記酵素がペルオキシダーゼであり、前記電子受容体がペルオキシドであり、前記pHが約3.5から約4.5であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 重合及び処理の間に、高周波振動を適用することを特徴とする請求項1に記載のポリアニリンの製造方法。
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