JP2004500388A - エポチロン、その中間体およびその類似体の合成 - Google Patents
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Abstract
本発明は、エポチロン、デオキシエポチロン、およびその類似体を調製するための集中的な方法を提供する。さらに本発明は、ガンを治療するための新規な組成物および方法を提供し、多剤の表現型を進展させたガンを治療するための方法をさらに提供する。
Description
【0001】
(優先権の情報)
【発明の属する技術分野】
本発明は、35 U.S.C.§119(e)の下で、参照によってその全容がここに組み込まれている「Synthesis of Epothilones,Intermediates Thereto and Analogues Thereof」という表題で2000年3月1日に出願された同時係属仮出願60/185,968号、および「Synthesis of Epothilones,Intermediates Thereto and Analogues Thereof」という表題で2000年11月30日に出願された60/250,447号に対する優先権を主張するものであり、参照によってその全容がここに組み込まれている、それぞれ1998年2月25日、1998年7月9日、および1998年8月24日に出願された米国仮特許出願第60/075,947号、60/092,319号、および60/097,733号に基づき、1999年2月24日に出願された米国特許第09/257,072号の一部継続出願であり、参照によってその全容がここに組み込まれている、それぞれ1996年12月3日、1997年1月14日、1997年5月22日、1997年5月29日および1997年8月13日に出願された米国仮特許出願第60/032,282号、60/033,767号、60/047,566号、60/047,941号および60/0,55,533号に基づき、1997年12月3日に出願された米国特許第08/986,025号の一部継続出願である。さらに本出願は、参照によってその全容がここに組み込まれている「Synthesis of Epothilones,Intermediates Thereto and Analogues Thereof」という表題で2000年3月1日に共に出願された米国特許出願に対する優先権を主張するものである。
【0002】
(政府の支援)
本研究は、National Institute of Healthからの補助金CA−28824,25848,CA−08748,CA−39821,CA−GM−72231,GM−18248,CA−62948,F32CA81704、及びAIO−9355、並びにNational Science Foundationからの補助金CHE−9504805によって支援された。さらに本研究は、Chul Bom Lee(U.S.Army,Grant DAMD 17−98−1−8155)、Shawn J.Stachel(NIH,Grant F32CA81704);およびMark D Chappell.(NIH,Grant,F32GM199721)に対する博士号取得後補助金によって支援された。したがって米国政府は、本発明において確かな権利を有するものとする。
【0003】
【従来の技術】
(発明の背景)
エポチロンは、マイコバクテリウム属Sorangium cellulosumから単離した、天然に存在する細胞毒性マクロライドの1ファミリーである。タクソイドの構造とは大きく異なる構造を有するにもかかわらず、パクリタクセル(Taxol(登録商標))と類似なエポチロンは、微小管アセンブリを安定化させることにより細胞分裂を阻害することを含み、ひいては細胞死をもたらす、類似のメカニズムによって機能するようである(Bollag他Cancer Res.1995,55,2325)。現在パクリタクセルは、第一線の化学療法剤として使用されている。しかしながら、その治療指数、および水に不溶であるために製剤が困難であるこという懸念は障害である。
比較すると、エポチロンは、より高い治療プロフィールおよび増大した水溶性を享受しており、このため魅力的な治療剤である。具体的には、エポチロンには、多剤耐性腫瘍細胞に対して著しい効能があることが証明されている。さらに、パクリタクセルと比べて増大した水溶性は、エポチロンの製剤化能力にとって有用である。天然に存在する化合物、エポチロンB(以下のスキーム1中の1b,EpoB)は、このファミリーの最も効力のあるメンバーであることが分かっているが、これは少なくとも異種移植マウスでは、厄介なほど限られた治療指数を残念ながら有する(Su他Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36,1093;Harris他J.Org.Chem.1999,64,8434)。
【0004】
【化50】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
エポチロンBの治療指数が限られているにもかかわらず、エポチロンの著しい臨床潜在力は、本発明者等による、エポチロンの細胞毒性および生体内での抗腫瘍効力を調べるためのいくつかの合成および治療研究の誘因となっている(Balog他;Angew.Chem.Int.Ed.1996,35,2801;Su他Angew.Chem.Int.Ed.1997,36,757;Meng他J.Am.Chem.Soc.1997,119,10073を参照のこと)。これらおよび他の研究の行程中において、12,13−デオキシエポチロンB(2b,dEpoB)は、エポチロンB(1b,EpoB)よりも有望な治療プロフィールを示すことが近年判明している。具体的にはdEpoBが、毒性用量レベルの低下のために、エポチロンBと比べてより広い治療範囲を示すことが分かっている(Danishefsky他Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1998,95,9642)。さまざまなマウス・モデルに基づく生体内での実験は、dEpoBが著しい治療効力を有し、異種移植片中のさまざまな感受性および耐性腫瘍に対して本質的に治癒力があることを一貫して証明している。その印象的な生体内でのプロフィールのために、dEpoBには、イヌにおける毒性評価を経て、抗ガン剤としてのその利用を想定した、ヒトでの試用の期待が高まっている。
【0006】
エポチロンの治療効力に基づき、エポチロンの他の構造変異体の発見および単離に関する関心が依然として存在している。近年、エポチロンEおよびFが発酵から単離されており、これらは21−ヒドロキシル基を有する(Nicolaou.他Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1998,37,84;Hofle In GBF Annual Report;Walsdorff,J.−H,Ed.;GBF:Braunschweig,1997,p. 91)。これらの化合物のSAR研究によって、C21にヒドロキシル官能が存在することにより、生物学的活性が大幅に低下することはないことが示唆される(Hofle他Angew.Chem.Int.Ed.1999,38,1971)。製剤に由来するパクリタクセル化学療法の相当なリスクを考慮すると、追加のヒドロキシによって水溶性が増大した化学療法剤が提供され、結果として製剤性能を大幅に改善しうる点で、この特徴は非常に有用である。さらに、21−ヒドロキシル基は容易に入手できる第1アルコールを表すので、さらなる合成用の分子ハンドル(handle)としてそれを使用することも可能であろう。
【0007】
明らかに、C21に官能性ハンドルを有するという潜在的な利点の点で、本発明人による12,13−デオキシエポチロンの優れた治療プロフィールの認識に基づいて、新規な合成法を開発してエポチロンの12,13デオキシ、21−ヒドロキシル類似体への容易なアクセスを可能にすることが望ましいであろう。望ましい21−ヒドロキシル類似体へのアクセスを可能にするだけでなく、他の有用な類似体、好ましくは20−または21−位において官能化された類似体を含めたデオキシエポチロンの類似体、またはアザ類似体、およびこれらの誘導体へのアクセスも可能にする、効率の良い方法を開発することも望ましいであろう。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(発明の概要)
重要なことに、本発明は新規なエポチロンの類似体、およびそれを合成するための方法を提供する。一態様において本発明は、以下の構造を有する化合物を提供する。
【化51】
上式でMはNHまたはOであり、
CYはアリールまたはヘテロアリール部分であり、
qは1〜5であり、
Wは出現するごとに独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、
Vは出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH、−SH、アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
mは出現するごとに独立に、1〜5であり、
結合W−−−R1は単結合または二重結合を表し、
R1は出現するごとに独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2、N2RA、ハロゲン、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、
R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、1つまたは複数のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノによって任意に置換されており、RCおよびRDはそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
ZはO、N(ORE)またはN−NRFRGであり、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立に置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式部分であり、
nは0、1、2または3である。
【0009】
いくつかの実施形態では、これまで及びここに記載されるそれぞれの化合物について、CYがフェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。他の実施形態では、CYは、1つまたは2つのメチル基で置換された、4−チアゾリルまたは4−オキサゾリル部分であり、いくつかの実施形態では、メチル基が2−または5−位で置換されている。他の実施形態では、CYが4−チアゾリルであり、mが1であり、nが3である。本発明の他の実施形態では、R2およびR3がそれぞれ水素であり、R4がメチルであり、R5が水素であり、ZがOである。
【0010】
上記および本明細書に記載するいくつかの化合物についてはMがOであり、他の実施形態では、MがNHであることことも理解されるであろう。本発明の他の実施形態では、R6が、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化52】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である。
本発明の化合物のあるサブセットでは、R6がメチルまたはエチルである。本発明の化合物の他のサブセットでは、CYが4−チアゾリルまたは4−オキサゾリルであり、R6がメチルまたはエチルである。他の実施形態では、R6がエチルである。
本発明の他の実施形態では、12−位に置換基を有し、2つ以上の炭素原子を有する化合物が企図され、したがって、R6は2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。さらに、他のサブセットは、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化53】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である化合物を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、前に記載したように、チアゾニリルおよびオキサゾリニル化合物が当該のものである。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、以下の一般式を有する化合物が提供される。
【化54】
【0012】
さらに本発明は、考えられるすべての立体異性体および二重結合異性体を含む。たとえば、当該のいくつかの異性体は、これまで及びここに記載するように、以下の構造を有する化合物を含む。
【化55】
【化56】
【化57】
【0013】
他の実施形態では、これまで及びここに記載する化合物のそれぞれについて、R1がORAであり、RAが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールであり、Wが−CH2−であり、mが1である。他の実施形態では、これまで及びここに記載する化合物のそれぞれについて、R1がNRARAであり、RAが水素、窒素保護基、または低級アルキルであり、mが1であり、Wが−CH2−である。他の実施形態では、Wが(C=O)であり、mが1であり、R1が水素である。
【0014】
他の実施形態では、R1が光アフィニティー標識である。いくつかの実施形態では、光アフィニティー標識は光活性化可能基であり、1つまたは複数のハロゲン部分によって置換されたo−、m−またはp−アジドベンゾイルである。いくつかの実施形態では、光活性化可能基は4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルアシルである。
【0015】
本発明に懸かる化合物のサブセットは、以下の構造を有する化合物を含む。
【化58】
上式でR6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。このサブセットのいくつかの実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。このサブセットの他の実施形態では、R6が、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化59】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である。このサブセットの他の実施形態では、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化60】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である。
【0016】
他の実施形態では、R6がメチルであり、化合物は以下の構造を有する。
【化61】
【0017】
本発明の他の実施形態では、いくつかの化合物が提供され、本発明の化合物は、ここに記載するように、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識に結合している。いくつかの実施形態では、これらの本発明の化合物は、以下の一般構造を有する。
【化62】
上式でR6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
WおよびUはそれぞれ独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、
Vは出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH,−SH,アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、Bはペプチドまたは炭水化物である。いくつかの実施形態では、ペプチドが5〜約25個のアミノ酸から成る。他の実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
【0018】
本発明の他の態様では、いくつかの構成体が提供されるが、エポチロン化合物は、本明細書に詳細に記載するように、多数現れる。たとえば、本発明の構成体はポリマー主鎖を含むが、前記ポリマー主鎖は生体高分子または合成ポリマーであり、およびこれまで及びここに記載する2つ以上の化合物であり、この2つ以上の化合物は同じであるか異なっており、前記2つ以上の化合物はポリマー主鎖に、直接的あるいはリンカーを介して結合しており、ここで前記2つ以上の化合物は、その化合物の12−位、20−位または21−位を介して結合している。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖はデンドリマー、ペプチド、または生分解性ポリマーである。
【0019】
いくつかの実施形態では、以下の構造を有する二量体デオキシエポチロンが提供される。
【化63】
上式でEPOは、12−、20−または21−位に存在する官能基を介して結合している、これまで及びここに記載する本発明の化合物を含むが、ここではXがメチレン、(C=O)であるか、あるいは存在せず、Yが(C=O)、O、NHであるか、あるいは存在せず、Zが(C=O)、NH、Oであるか、あるいは存在せず、nが0〜5である。いくつかの実施形態では、EPOが以下の構造式を有する。
【化64】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。他の実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがOであり、Zが(C=O)である。他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがNHであり、Zが不在である。他の実施形態では、Xが(C=O)であり、YがOまたはNHであり、Zが不在である。
【0020】
本発明の他の態様では、これまで及びここに記載する本発明の化合物の任意の1つ、および製薬品として許容される担体を含む、製薬組成物を提供する。
【0021】
さらに本発明は、ガンに罹患した患者においてガンを治療するための方法であって、治療的に有効量のこれまで及びここに記載する化合物の任意の1つを患者に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、ガンが固形腫瘍である場合にガンの治療に使用される。他の実施形態では、この方法は、ガンが乳ガンである場合にガンの治療に使用される。
【0022】
さらに本発明は、多剤耐性細胞の成長を阻害するのに有効な、これまで及びここに記載する化合物の任意の1つを一定量含む、組成物を提供する。さらに本発明は、多剤耐性細胞の成長を阻害する方法を提供するが、この方法は多剤耐性細胞と、多剤耐性細胞の成長を阻害するのに有効な、これまで及びここに記載する化合物の任意の1つの一定量を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物が、製薬品として許容される担体または希釈剤をさらに含むことが理解されるであろう。他の実施形態では、本発明の組成物は、一定量の細胞毒性剤(抗ガン剤を含むがこれだけには限らない)をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗ガン剤はアドリアマイシン、ビンブラスチンまたはパクリタクセル、またはこれらの任意の組み合わせである。他の実施形態では、化合物の有効量は体重1kgあたり約0.01mg/〜約50mgである。他の実施形態では、化合物の有効量が約0.01mg/体重1kg〜約25mg/体重1kgである。
【0023】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化65】
または
【化66】
上式でPが酸素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、窒素保護基、炭素保護基、イオウ保護基、または酸素保護基である。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するハロケトンを提供する工程、
【化67】
b)前記ハロケトンにエノールエーテルを生成させるための条件を施し、その後以下の構造を有するヒドロキシケトンを調製するのに適した条件下でヒドロキシル化する工程、
【化68】
または
【化69】
および、c)以下の化合物を形成するのに適した条件下でヒドロキシケトンを保護する工程。
【化70】
または
【化71】
【0024】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含む。
【化72】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程をOsO4およびAD−mix−αの存在下で行う。
【0025】
他の実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含み、
【化73】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程をOsO4およびAD−mix−βの存在下で行う。
【0026】
前に記載した方法について、いくつかの実施形態では、Pが−SiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。
【0027】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化74】
上式でPが酸素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するグリコールイミドを調製する工程、
【化75】
b)前記グリコールイミドを、N,O−(直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキル、アリール)ヒドロキシルアミン、N,O−ジ−(直鎖状または分枝鎖状C1−8)アルキルヒドロキシルアミンおよびN,O−アリール,アリールヒドロキシルアミンからなる群から選択される置換ヒドロキシルアミンを用いて、以下の構造を有するアミドを形成するのに適切な条件下で処理する工程、
【化76】
[上式でR’およびR”がそれぞれ独立に直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキルまたはアリールである]
c)前記アミドと置換有機金属試薬を、当該化合物を形成するのに適切な条件下で反応させる工程を含む。いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。他の実施形態では、置換有機金属試薬が、MeMgBrまたはMeMgClを含めた(これらだけには限られないが)グリニャール試薬である。
【0028】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化77】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、ZAがOPであり、Pが酸素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、または炭素保護基である。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化78】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化79】
を有するケトンと前記ホスフィンオキシドを縮合させる工程、および
c)任意に、当該化合物を形成するのに適切な条件下で工程b)で形成されたエステルを還元する工程。
いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。他の実施形態では、R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルであることが理解されるであろう。他の実施形態では、R1が置換または無置換4−チアゾリルである。他の実施形態では4−チアゾリルが、−2または−5位において1つまたは2つのメチル基で置換されている。
【0029】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化80】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、ZAがN3またはNHPであり、Pが窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化81】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化82】
を有するケトンと前記ホスフィンオキシドを縮合させる工程、
c)工程b)で形成された化合物を適切な条件下で転化させてアジドを生成させ、任意に、さらに前記アジドを処理して保護型アミンを生成させる工程。
いくつかの実施形態では、トンプソンの方法を使用して、本発明を実施する。他の実施形態では、シュタウディンガー還元によりアジドを還元して、保護型アミンを生成させる。他の実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。本発明の他の実施形態では、R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。本発明の他のサブセットでは、R1が置換または無置換4−チアゾリルである。
【0030】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化83】
上式でPが窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化84】
上式でR0,R’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化85】
を有するケトンと前記ホスフィンオキシドを縮合させる工程、および
c)当該化合物を形成するのに適切な条件下で、工程b)で形成されたエステルを還元する工程。
【0031】
前に記載した方法についてのいくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。いくつかの実施形態では、Halがヨードである。
【0032】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化86】
上式でZBがCO2R9またはCOSR9であり、R9が水素または酸素またはイオウ保護基であり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素であるか、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルである。この方法は以下の工程を含む。
以下の構造:
【化87】
を有するケトアルデヒドを保護して保護型アルデヒドを生成させ、その後前記保護型アルデヒドを以下の構造:
【化88】
を有する化合物と縮合を行うために適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化89】
を有するアルドールを生成させ、前記保護されたアセタール基を加水分解して、以下の構造:
【化90】
を有するケトアルデヒドを生成させ、前記ケトアルデヒドを第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で反応させ、任意にC3アルコールを保護して、以下の構造:
【化91】
[式中、ZBおよびR2〜R5は上述の定義を有する]
を有する化合物を生成させる工程。
【0033】
いくつかの実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、化学量論的条件下で前記ケトアルデヒドをキラルエノラートチタンと反応させることを含む。他の実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、前記ケトアルデヒドを触媒試薬と反応させることを含む。いくつかの実施形態では、使用する触媒試薬がCarreira触媒である。他の実施形態では、使用する触媒試薬がMikamiのキラル・アルドール触媒である。
【0034】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化92】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素であるか、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、MがNHまたはOであり、nが0、1、2または3である。
この方法は以下の工程を含む。
以下の構造を有する前駆体であって、
【化93】
上式でR1〜R6が前で定義するものであり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である前駆体を提供する工程。前記前駆体を提供する工程は、更に以下の構造:
【化94】
を有する第1の化合物を、適切な条件下で以下の構造:
【化95】
を有する第2の化合物と反応させて、カップリングを行って前記前駆体を生成させ、
前記前駆体に適切な条件を施して大環化を行い、任意に脱保護して所望の化合物を生成させる工程をさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、該方法は、脱保護してR2およびR3が水素である化合物を生成させる工程を方法が含む。他の実施形態では、R1が−CY=CHXまたは水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルであり、Xが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。他の実施形態では、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール基が光活性化可能基で、または1つまたは複数のヒドロキシ、チオ、アミノ、置換アミノ、アルデヒド、カルボン酸、アルケニル、イミノ、またはジアゾでさらに置換されている。他の実施形態では、MがOであり、R1が−CY=CHXであり、Yがメチルであり、Xが−(C=O)H、メチル、または−(CH2)nOH(式中、nが0〜5である)によって2位において置換されている4−チアゾリルである。他の実施形態では、Xが2−および5−位においてメチルによって置換されている、4−チアゾリルである。他の実施形態では、R7〜R11がそれぞれ独立に水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、またはSi(RA)3からなる群から選択され、RAは出現するごとに独立に、分枝または非分枝、置換または無置換、脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールである。他の実施形態では、前記第1および第2のセクターに適切な条件を施す工程が、前記セクターにスズキカップリングを行うための条件を施すことを含む。他の実施形態では、MがNHまたはOであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
【0036】
上述の方法についてのいくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有する前駆体化合物の合成を提供する。
【化96】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素であるか、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、または炭素保護基であり、nが0、1、2または3であり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である。前記方法は、以下のことを含む。
以下の構造:
【化97】
[式中、R1、R6およびZAが上述の定義を有する]
を有する第1の化合物を提供する工程、以下の構造:
【化98】
[式中、R2、R3、R4およびR5が上述の定義を有し、ZBがCO2R9またはCOSR9である]
を有する第2の化合物を提供する工程。
ここで、第2の化合物を提供する工程は、以下の構造:
【化99】
を有するケトアルデヒドを保護して保護型アルデヒドを生成させ、その後前記保護型アルデヒドを以下の構造:
【化100】
を有する化合物と縮合を行うために適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化101】
を有するアルドールを生成させ、保護されたアセタール基を加水分解して、以下の構造:
【化102】
を有するケトアルデヒドを生成させ、前記ケトアルデヒドを第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で反応させ、任意にC3アルコールを保護して、以下の構造:
【化103】
[式中、ZBおよびR2〜R5が上記の定義を有する]
を有する第2のセクターを生成させ、前記第1および第2のセクターをカップリングを行うために適切な条件下で反応させて、当該前駆体を生成させることをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態では、R1が−CY=CHXであり、Yが水素またはアルキルであり、Xが直鎖状または分枝状アルキルによって2位において置換されているか、あるいは−(CH2)nOH(式中、nが0〜5である)によって置換されている4−チアゾリルであり、R6が独立に水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。本発明の他の実施形態では、MがNHまたはOであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。いくつかの実施形態では、ZAがN3であり、本発明の方法は、適切な条件下でアジドを反応させて保護型アミンを生成させる工程を任意にさらに含む。他の実施形態では、本発明の方法は、前駆体化合物を脱保護して、遊離ヒドロキシ酸前駆体、またはアミノ酸前駆体を生成させる工程をさらに含む。
【0037】
【発明の実施の形態】
(定義)
上述したように、本発明が癌およびそれに関連する他の増殖性疾病の治療に有用な化合物の新規な種類を供給する。本発明の化合物は上述したものおよびここに述べられるものを含み、ここのどこかで開示する様々な綱、亜属および種によって部分的に例示される。
【0038】
本発明の化合物に多くの不斉中心があることは当業者であれば理解するであろう。したがって、本発明の化合物およびその製薬組成物は鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体の形をとることが可能であり、あるいは立体異性体の混合体の形をとることも可能である。付け加えると、ここに述べたようなある好ましい実施形態で、本発明の方法はエポチロンおよびその類似体の効率的な合成のための改良された方法を提供する。
【0039】
加えて、本発明は前述の化合物の製薬品として許容される誘導体およびこれらの化合物を使用する患者の治療方法、それらの製薬組成物、あるいはこれらいずれかを1つまたは複数の別の治療薬剤との組み合わせとして供給する。ここで使用する「製薬品として許容される誘導体」という語句は製薬品として許容される、そのような化合物のあらゆる塩、エステル、またはそのような化合物のエステルの塩、あるいは患者に投与する上でここに述べたのとは違う方法で(直接的ないし間接的に)化合物を供給できる何らかの付加化合物または誘導体、またはその代謝産物または残渣を意味する。したがって製薬品として許容される誘導体はとりわけプロドラッグを含む。プロドラッグは化合物の誘導体であって普通は非常に低い薬理活性をもち、生体内で除去され易く、その結果親分子を薬理活性種として生じる付加部分を含む。プロドラッグの範例は生体内で切断されて目的の化合物を生じるエステルである。様々な化合物のプロドラッグ、プロドラッグを作製するために親分子を誘導化する材料と方法が知られており、本発明に適合化することができる。ある範例的な医薬組成および製薬品として許容される誘導体をここで以下にさらに詳しく検討する。
【0040】
本発明の所定の化合物および特定の官能基の定義もまた以下にさらに詳細に説明する。本発明の目的のために、化学元素はCASバージョンの、Handbook of Chemistry and Physics,75thEd.の表紙裏にある元素の周期律表に従って識別し、特定の官能基はそこに述べてあるように定義する。加えて、有機化学の一般的な原理、ならびに特定の官能部分と反応性は、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999の「Organic Chemistry」に述べられており、その全内容はここで参考のために取り入れられている。さらに、ここで述べるような合成方法が様々な保護基を利用することは当業者であれば分かるであろう。ここで使用した「保護基」という用語で、特定の官能部分、例えばO、SまたはNは一時的にブロックされ、多官能化合物中において、反応が別の反応部位で選択的に生じることができるようにることを意味する。好ましい実施形態では、指向する反応に対して安定な保護基質を与えるために保護基は優れた収率で選択的に反応する。この保護基は容易に入手可能で好ましくは他の官能基を侵さない無害な試薬によって優れた収率で選択的に除去されねばならない。この保護基は容易に分離可能な誘導体を形成する(さらに好ましくは新たな立体中心を生じない)。この保護基はさらなる反応部位を回避するために最少限の付加的官能性を有する。ここで列挙すると、酸素、イオウ、窒素および炭素の保護基を利用することができる。範例となる保護基をここで列挙するが、しかしながら、本発明がこれらの保護基に限定されることは意図されず、様々な同等の付加的保護基が上記の標準を使用して容易に識別可能であり、本発明の方法において利用可能であることは理解されるであろう。付け加えると、様々な保護基は「Protective Groups in Organic Synthesis」,Third Ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley & Sons,New York:1999に述べられており、その全内容は参考のためにここに取り入れている。
【0041】
ここで述べたような化合物が何らかの数の置換部分または官能部分で置換され得ることは理解されるであろう。概して、「任意に」という用語が前にあろうとなかろうと、「置換された」という用語および本発明の式に含まれる置換基は、所定の構造中の水素基の特定の置換基による置き換えを称する。何らかの所定の構造内で複数の位置が特定のグループから選択される複数の置換基で置換されるとき、その置換基はすべての位置で同じであっても異なっていてもよい。ここで使用する「置換された」という用語は有機化合物のすべての許容できる置換基を含むことを意図している。広い態様では、許容できる置換基には有機化合物の非環状型および環状型、分枝型および非分枝型、炭素環型および複素環型、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子が水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たすここに述べた有機化合物のいずれかの許容できる置換基を有することがある。その上さらに、本発明は有機化合物の許容可能な置換基によって何らかの方式で制限されることを意図するものではない。本発明により想定される置換基および変形の組み合わせは癌の治療および/または癌細胞の増殖の阻害または死滅に有用な安定な化合物の生成という結果につながるものであることが好ましい。ここに使用する「安定」という用語は製造を許容するのに充分な安定性を有し、充分な期間にわたってここで詳細に述べる目的に有用な化合物の保全性を維持する化合物を称することが好ましい。
【0042】
ここに使用する「脂肪族」という用語は飽和および不飽和の両方、直鎖状(すなわち非分枝型)、分枝型、環状、または多環式脂肪族炭化水素のいずれでも、場合によっては1つまたは複数の官能基で置換されたものを含む。当業者は理解するであろうが、「脂肪族」は、限定されるものではないが、ここではアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことを意図されている。こうして、ここで使用する「アルキル」という用語は直鎖状、分枝型および環状のいずれのアルキル基をも含む。同様の慣行を、「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般的な用語にも適用する。その上さらに、ここで使用する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は置換および無置換の基の両方を包含する。
【0043】
特定しない限り、アルキルおよび他の脂肪族基は1〜6または1〜3の隣接する脂肪族炭素原子を含むことが好ましい。したがって例証となる脂肪族は、限定はされないが、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、−CH2−シクロプロピル、アリール、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、−CH2−シクロブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、−CH2−シクロペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、−CH2−シクロヘキシル部分などを含み、やはり1つまたは複数の置換基をもってもよい。アルケニル基は、限定はされないが、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどを含む。代表的なアルキニル基は、限定はされないが、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどを含む。
【0044】
ここに使用する「アルコキシ」または「チオアルキル」という用語は前に規定したように、酸素原子またはイオウ原子を介して親分子部分に結合したアルキル基を称する。アルコキシの範例は、限定はされないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシを含む。チオアルキルの範例は、限定はされないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオなどを含む。
【0045】
「アルキルアミノ」という用語は−NHR’の構造を有する基を称し、その中でR’はここでアルキルと規定する。アルキルアミノの範例は、限定はされないが、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノなどを含む。ある実施形態ではC1−C3のアルキルアミノ基が本発明で使用される。
【0046】
本発明の化合物の上述の脂肪族(および他の)部分の置換基のいくつかの例は、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ;メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルを含む。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0047】
概して、ここに使用する「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、安定で好ましくは3から14個の炭素原子を有する単環または多環式、複素環式、多環式、および複素多環式の不飽和の部分を称し、各々は置換されてもされなくてもよい。置換基は、限定はされないが、前述の置換基すなわちここに開示した脂肪族部分またはその他の部分で引用した置換基を含み、安定な化合物を形成する結果につながる。本発明のある実施形態では、「アリール」という用語は1つまたは2つの芳香環を有する単環または二環の炭素環系であって、限定はされないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含む。本発明のある実施形態では、ここに使用する「ヘテロアリール」という用語は5個から10個の環状の原子群を有する環式芳香族基を称し、その環状原子の1つはS、OおよびNから選択され、環状原子のゼロ個、1個または2個は付加的なヘテロ原子であって独立してS、OおよびNから選択され、環状原子の残りは炭素であり、この基は、例えばピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどのような環状原子のいずれかを介して分子の残りに連結されている。
アリールまたはヘテロアリール基(二環式アリール基を含む)が置換されてもされなくてもよいことは理解されるであろうし、ここで置換は、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルを含む何らかの1つまたは複数の部分による1つ、2つまたは3つの水素原子の独立した置き換えを含む。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0048】
ここに使用する「シクロアルキル」という用語は特に、3個から7個、好ましくは3個から10個の炭素原子を有する基を称する。適切なシクロアルキルは、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含み、他の脂肪族、ヘテロ脂肪族または複素環式部分の場合には任意に、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルで置換されることもある。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0049】
ここに使用する「ヘテロ脂肪族」という用語は、例えば炭素原子に代わって1つまたは複数の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素原子を含む脂肪族部分を称する。ヘテロ脂肪族部分は分枝、非分枝または環状であってもよく、モルホリノ、ピロリジニルなどのような飽和および不飽和の複素環を含む。ある実施形態では、ヘテロ脂肪族部分は、以下に限定されないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルを含む1つまたは複数の部分による1つまたは複数の水素原子の独立した置き換えによって置換される。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0050】
ここに使用する「ハロ」および「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を称する。
「ハロアルキル」という用語は1つ、2つ、または3つのハロゲン原子を結合して有する上記に規定したアルキル基を意味し、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロメチルなどのような基によって例示される。
【0051】
ここに使用する「ヘテロシクロアルキル」または「複素環」という用語は非芳香族の5、6または7員環、または酸素、イオウおよび窒素から独立的に選択される1から3個のヘテロ原子を有する縮合6員環を含む二または三環性基を称し、そこでは(i)各々の5員環が0から1個の二重結合を有し、各々の6員環が0から2個の二重結合を有し、(ii)ヘテロ原子の窒素およびイオウが場合によっては酸化され、(iii)ヘテロ原子の窒素が場合によっては第4級化され、(iv)上記の複素環のいずれかがベンゼン環に縮合されることがある。代表的な複素環は、限定はされないが、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、およびテトラヒドロフリルを含む。ある実施形態では、「置換型ヘテロシクロアルキルまたは複素環」基が使用され、ここでは1つ、2つまたは3つの水素原子を独立的に、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルで置き換えることにより置換された上記に規定したヘテロシクロアルキルまたは複素環基を称する。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0052】
「標識化」:ここに使用する「標識化」という用語は、化合物に、その化合物の検出を可能にする、少なくとも1つの元素、同位元素または化合物が結合していることを意味するように意図される。概して、標識は3つの種類に分かれ、すなわちa)限定はされないが67Ga、99mTc(Tc−99m)、111In、123I、125I、169Ybおよび186Reを含む放射活性同位元素ないし重同位元素であってもよい同位元素標識、b)抗体ないし抗原であってもよい免疫標識、c)着色または蛍光染料である。生物学的活性または検出する化合物の特性を阻害しないあらゆる位置で標識が化合物に組み込まれてもよいことは理解されるであろう。本発明のある実施形態では、生物学的系の分子間の相互作用の直接的な解明のために(例えばチューブリン二量体のエポチロン結合部位を探査するために)光アフィニティー標識が利用される。ジアゾ化合物、アジド、またはジアジリンのニトレンないしカルベンへの光変換に最も依存して多様な既知の発光団が使用可能であり(Barley,H.,Photogenerated Reagents in Biochemistry and Molecular Biology(1983),Elsevier,Amsterdam.を参照)、その全内容をここでは参考のために取り入れている。本発明のある実施形態では、使用する光アフィニティー標識は1つまたは複数のハロゲン部分で置換されたo−、m−およびp−アジドベンゾイルであり、限定はされないが4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸を含む。
【0053】
「ポリマー」:ここに使用する「ポリマー」という用語は、開いた状態、閉じた状態、直鎖状、分枝状または同じまたは異なる繰り返しユニット(モノマー)の架橋状であってもよい鎖を有する組成を称する。ある実施形態ではポリマーという用語が生体高分子を称し、ここで使用するそれは自然界で見出される物質かまたは自然界で見出されるそれらの物質を基本としたポリマー状の物質を称するように意図され、限定はされないが核酸、ペプチド、およびその擬似物質を含むことは理解されるであろう。ある他の実施形態では、ポリマーという用語は生分解ポリマーあるいはその他のポリマー状材料のような合成ポリマーを称する。ポリマー状の固体支持体もまた本発明のポリマーに包含されることは理解されるであろう。本発明の化合物はポリマー状の支持体に結合させることが可能であり、したがってある合成的な修飾を固相で行うことができる。ここで使用する「固体支持体」という用語は、限定はされないが、ペレット、ディスク、キャピラリー、中空ファイバ、ニードル、ピン、固体繊維、セルロース・ビーズ、ポアガラス・ビーズ、シリカゲル、場合によってはジビニルベンゼンと架橋したポリスチレン・ビーズ、グラフト共重合ビーズ、ポリアクリルアミド・ビーズ、ラテックス・ビーズ、場合によってはN−N’−bis−アクリロイルエチレンジアミンと架橋したジメチルアクリルアミド・ビーズ、および疎水性ポリマーでコーティングされたガラス粒子を含むよう意味される。当業者は特定の固体支持体の選択が使用する反応化学との支持体の適合性によって制限されることを実感するであろう。範例となる固体支持体は、1)ジビニルベンゼンと架橋したポリスチレン・ビーズ、2)PEG(ポリエチレングリコール)の複合物であるTentagelアミノ樹脂である。Tentagelは、オン・ビーズまたはオフ・ビーズ分析に使用する万能支持体を提供し、かつトルエンから水まで広がる溶媒中で優れた膨潤をもするので、特に有用な固体支持体である。
【0054】
(発明の詳細な説明)
上述したように、本発明は新規なエポチロン類似体、およびその合成の方法を供給する。ある実施形態では、本発明は20−ないし21−および12−置換型のエポチロンおよびアザ類似体、医薬的組成、および癌の治療におけるエポチロン類似体の使用方法を供給する。予想外にも、あるエポチロンは生体外と生体内の両方で癌細胞の多剤耐性を逆行させるのに効果的であることが見出されたばかりでなく、正常細胞よりもMDR細胞に対して細胞毒性のある傍系の感受性薬剤として、ビンブラスチンのような他の細胞毒性薬剤との組み合わせで個別薬剤が単独に同じ濃度であるときよりも活性となる協力薬剤として活性を示すと判定された。注目すべきことに、本発明のデオキシエポチロンは生体内での腫瘍細胞毒性薬剤としての例外的な高い特異性を有し、タキソール(Taxol、登録商標)ビンブラスチン、アドリアマイシンおよびカンプトテシンを含む最新の主だった化学療法薬剤よりもさらに効果的で正常細胞に対する毒性が少ない。
【0055】
前に開示したように、全体的に合成により導き出された薬剤を使用して、本発明者らは初めてエポチロンBの生体内での作製を行った。EpoBそれ自体がやっかいな毒性プロファイルを示すと判明したとき、12,13−デオキシ化合物が調べられた。予想外なことに、MDR活性化に関して高度に細胞毒性で健全である一方で、dEpoBはさらに望ましい毒性プロファイルを示した。dEpoBが注目すべき治療能力を有し、異種移植片による様々な感受性および抵抗性の腫瘍に対して本質的に治療効果のあることを様々なマウスのモデルに基づく実験が矛盾無く有意に示した。その生体内での印象的なプロファイルのせいで、dEpoBは抗癌剤としての進展を予想するヒトでの試験を期待して、イヌで毒物学的評価を進められてきた。明らかに、12,13−デオキシ化合物の優れた治療プロファイルの本発明者らの独自の先駆的認識に期待すると、エポチロンの他の類似体の生体内での効力を評価することは興味深かった。しかしながら、生物学的評価のためにこれらの物質の有意の量を利用する能力は改善された合成の方法論を必要とした。ここに開示したように、様々なエポチロン・マクロライド、特に12,13−デオキシエポチロンの合成のための改善された合成方法が提供され、それがエポチロンの様々な合成類似体の利用を可能にする。
【0056】
本発明のエポチロンおよびその類似体
重要なことに、前で論じたように、本発明は新規な化合物、およびエポチロンおよびその類似体の効率の良い合成を可能にするための方法を提供する。一態様において本発明は、以下の構造を有する新規な化合物であって、
【化104】
上式でMはNHまたはOであり、
CYはアリールまたはヘテロアリール部分であり、
qは1〜5であり、
Wは出現するごとに独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、
Vは出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH、−SH、アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
mは出現するごとに独立に、1〜5であり、
結合W−−−R1は単結合または二重結合を表し、
R1は出現するごとに独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2、N2RA、ハロゲン、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、
R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、1つまたは複数のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノによって任意に置換されており、RCおよびRDはそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
ZはO、N(ORE)またはN−NRFRGであり、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立に置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式部分であり、
nは0、1、2または3である化合物を提供する。
【0057】
本発明が、前に記載した化合物のあらゆる立体異性体および二重結合異性体を、含むことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、以下の構造を有する化合物を提供する。
【化105】
いくつかの実施形態では、XがSであり、YがNであり、mが1であり、nが3である。他の実施形態では、R6がメチルまたはエチルである。他の実施形態では、MがOである。他の実施形態では本発明は、R6がH、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化106】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである化合物を含む。
R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である化合物を、本発明が含むことも理解されるであろう。他の実施形態では、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化107】
【0058】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである。これまで及びここに記載の化合物も本明細書において提供され、R1がORAであり、RAが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールであり、Wが−CH2−であり、mが1である。他の実施形態では、Wが(C=O)であり、mが1であり、R1が水素である。他の実施形態では、WがCH2−であり、R1がNRARAであり、RAは出現するごとに独立に、窒素保護基、水素または低級アルキルである。他の実施形態では、Wが−CH2−であり、R1が1つまたは複数のヒドロキシル部分によって置換されているアルキルまたはアルキレン部分である。他の実施形態では、これまで及びここに記載する化合物のそれぞれについて、R2およびR3がそれぞれ水素であり、R4がメチルであり、R5が水素であり、ZがOである。他の実施形態では、R1が光アフィニティー標識であり、いくつかの実施形態では、光アフィニティー標識は光活性化可能基であり、1つまたは複数のハロゲン部分によって置換されたo−、m−またはp−アジドベンゾイルである。いくつかの実施形態では、光活性化可能基は4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルアシルである。
【0059】
本発明が、以下の構造を有する化合物を含めた、エポチロンのいくつかの異性体を提供することが理解されるであろう。
【化108】
【0060】
他の実施形態では、以下の構造を有する異性体を提供する。
【化109】
【0061】
他の実施形態では、以下の構造を有する異性体を提供する。
【化110】
【0062】
本発明の他の実施形態では、21−ヒドロキシル化化合物が提供され、この化合物は以下の構造を有する。
【化111】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。本発明のいくつかの実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である、化合物を提供する。他の実施形態では、R6がH、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化112】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである、化合物を提供する。他の実施形態では、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化113】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである、化合物を提供する。
【0063】
本発明の他の実施形態では、R6がメチルであり、化合物は以下の構造を有する。
【化114】
【0064】
他の実施形態では、R6がエチルであり、本発明の化合物は以下の構造を有する。
【化115】
【0065】
他の実施形態では、本発明の化合物は以下の構造を有する。
【化116】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0066】
他の実施形態では本発明は、以下の一般構造を有する化合物を提供する。
【化117】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0067】
多量の官能化化合物にアクセスする能力により、ポリマーおよび/または治療部分へのさらなる結合が可能になることが理解されるであろう。したがって他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の化合物の、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識への結合を企図する。一実施形態では、以下の式を有する化合物を提供する。
【化118】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、WまたはUは出現するごとに独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、Vが出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH、−SH、アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、Bがポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0068】
他の態様では本発明は、多様に表される化合物を提供し、一実施形態では本発明は、ポリマー主鎖、および
2つまたは本発明の化合物であって、2つまたは本発明の化合物が同じであるかあるいは異なっていてもよく、前記2つ以上の化合物がポリマー主鎖に直接的に、あるいはリンカーを介して結合しており、2つ以上の化合物が化合物の12−位、20−位または21−位を介して結合している化合物を含む組成物を提供する。
いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖がデンドリマー、ペプチド、または生分解性ポリマーである。
【0069】
他の実施形態では、以下の構造を有する二量体デオキシエポチロンを提供する。
【化119】
上式でEPOが、12−、20−または21−位に存在する官能基を介して結合している、請求項1に記載の化合物を含み、Xがメチレン、(C=O)であるか、あるいは存在せず、Yが(C=O)、O、NHであるか、あるいは存在せず、Zが(C=O)、NH、Oであるか、あるいは存在せず、nが0〜5である。
【0070】
他の実施形態では、EPOが以下の構造式を有する。
【化120】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0071】
他の実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがOであり、Zが(C=O)である。
他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがNHであり、Zは存在である。
他の実施形態では、Xが(C=O)であり、YがOまたはNHであり、Zは存在である。
【0072】
新規な合成法
前に記載したように本発明により、エポチロンおよび関連化合物の効率の良い合成を可能にし、さまざまな類似体へのアクセスを可能にする新規な方法も提供される。一般に本発明は、新規な方法を提供し、この方法によって大環化に必要なアシルおよびアルキル・セクター(sector)を多量に提供することができ、この方法が、参照によってその全容がここに組み込まれている、08/986,025および09/257,072中で開示される、以前に報告された合成法から改良された方法であることが示される。
【0073】
図1に示すように(さらにdEpoFおよびdEpoBの代替合成に関する実施例2中に記載するように)、本発明は一態様において、エポチロンおよびその類似体に関する新規な合成を提供する。本明細書に記載するように、この手法はアルキル・セクターの使用を含み、アルキル・セクター中のC3は既に還元されており、アルキル・セクターとのカップリング用に態勢が整っている。さらに、アルキル・セクターに対する、より好都合で調整的な手法を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、B−アルキルスズキカップリング反応によって、2つの断片を結合させ、次いで大環化反応によってマクロラクトンまたはマクロラクトムに進展させることができる。いくつかの実施形態では、dEpoBの以前の合成用に使用した反応(係属中の特許出願08/986,025および09/257,072に記載される)およびdEpoF(実施例1に記載し、図2に示す)と同様に、Yamaguchiの大環化を使用する。
【0074】
したがって、本発明の一態様では、O−アルキル断片の中間体を調製するための効率の良い方法を提供し、その中間体化合物は以下の構造を有する。
【化121】
または
【化122】
上式でPが酸素保護基であり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、ポリマー、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、または炭素保護基、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。
【0075】
一実施形態では、非対称触媒酸素化によって、これらの構造の合成を達成することができることが理解されるであろう(1つの異性体の合成に関する図3を参照のこと)。この方法では、非対称触媒酸素化法を使用して、C15中心を取り付け、アルキンのヨード化を行って、(Z)−アルケンの形状を与える。一般に本発明のこの方法は、以下のことを含む。
a)以下の構造を有するハロケトンを提供すること、
【化123】
b)前記ハロケトンにエノールエーテルを生成させるための条件を施し、その後以下の構造を有するヒドロキシケトンを調製するのに適した条件下でヒドロキシル化すること、
【化124】
または
【化125】
および、c)以下の化合物を形成するのに適した条件下でヒドロキシケトンを保護すること。
【化126】
または
【化127】
【0076】
非対称ヒドロキシル化反応において使用する試薬に応じて、前述のように、本発明のエポチロンおよびその類似体の調製において使用するための、いずれかの立体異性体を提供することができることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、好ましくはOsO4およびAD−mix−αの存在下で、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含む。
【化128】
【0077】
他の実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、好ましくはOsO4およびAD−mix−βの存在下で、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含む。
【化129】
【0078】
この化合物は、本明細書に詳細に記載するように、ラクタム誘導体を合成するのに非常に有用である。本発明はさらに、シリルエノールエーテルを最初に提供する方法を企図することも理解されるであろう。
【0079】
これまで及びここに記載した方法中で使用する化合物についての、いくつかの実施形態では、Pが−SiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。前に記載した方法中で使用する化合物についての他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。
【0080】
本明細書の実施例中に記載するように、図3中に示すように、一実施形態ではこの手法は、プロピレン(17)とB−ヨード−9−BBNを反応させ、結果として生じたビニルボラントをメチルビニルケトンに加えて、ケトン(18)を供給することを含む。TMSI/HMDSなどの試薬を用いて、この化合物を後に処理することにより、2つのシリルエーテルレジル異性体19と20が88:12である混合物が与えられた。AD−mix−α、生成したヒドロキシケトン21を使用して、この混合物の非対称なジヒドロキシル化を行う。重要なことに、この手順を使用して、オスミウム仲介ジヒドロキシル化中に、潜在的に影響を受けやすいヨードアルケン官能基を維持することができる。最後に、25を生成した18のトリエチルシリル化を行い、わずか4工程のシークエンスを終了させる。
【0081】
本発明の他の実施形態では、図4中の一実施形態において示すような、C15の形状を確立させるための非対称アルキル化反応を使用して、ケトンを生成させることができることも理解されるであろう。
【0082】
一般に、本発明の方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するグリコールイミドを調製する工程、
【化130】
b)N,O−(直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキル、アリール)ヒドロキシルアミン、N,O−ジ−(直鎖状または分枝鎖状C1−8)ヒドロキシルアミンおよびN,O−アリール,ヒドロキシルアミンからなる群から選択される置換ヒドロキシルアミンを用いて、以下の構造を有するアミドであって、
【化131】
上式でR’およびR”がそれぞれ独立に直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキルまたはアリールであるアミドを形成するのに適切な条件下で、グリコールイミドを処理する工程、
c)化合物を形成するのに適切な条件下で、アミドと置換有機金属試薬を反応させる工程。
【0083】
いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。これまで及びここに記載した方法中で使用する化合物についての、他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。本発明の他の実施形態では、置換有機金属試薬が、MeMgBrまたはMeMgClを含めた(これらだけには限られないが)グリニャール試薬である。
【0084】
図4中に示すように、本発明の一実施形態では、非対称アルキル化を使用して18ケトンを提供した。このアルキル化は、3工程で23から得た知られているPMB誘導体24bからの、シリル化グリコレートの合成で始まる。いくつかの実施形態では、混合型無水物のin situでの形成を含む1つのフラスコ手順によって、23をマルチグラム・スケールの24aに転換することができる。二ヨウ化物を用いて−78℃で、リチオ24aを後で処理することによって、1つの異性体として所望の25aを得る。TES基を除去した後、Weinrebアミド26aの形成を、キラル補助体の同時脱離、およびその後の保護によって行い、グリニャールを加えて11を得る。
【0085】
上記のケトンのいずれかの立体異性体に多量にアクセスする能力によって、以下に示すハロゲン化ビニルを多量に合成することも可能である。
【化132】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、ZAがOP,SP,N3またはNHPであり、Pが酸素、イオウまたは窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、またはポリマーである。
【0086】
いくつかの実施形態では、ZAがOPであり、本発明の方法は以下のことを含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化133】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製すること、
b)以下の構造:
【化134】
を有するケトンとホスフィンオキシドを縮合させること、および
c)任意に、化合物を形成するのに適切な条件下において工程b)で形成されたエステルを還元すること。
【0087】
本発明の他の実施形態では、ZAがN3またはNHPであり、本発明の方法は以下のことを含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化135】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製すること、
b)以下の構造:
【化136】
を有するケトンとホスフィンオキシドを縮合させること、
c)工程b)で形成された化合物を適切な条件下で転化させてアジドを生成させるか、あるいは任意に、さらにアジドを処理して保護型アミンを生成させること。
いくつかの実施形態では、トンプソンの方法を使用して、本発明を実施する。他の実施形態では、シュタウディンガー還元によりアジドを還元して、保護型アミンを生成させる。
これまで及びここに記載するように、前に記載した方法をさまざまなエポチロンの類似体に適用することができることも理解されるであろう。たとえば、いくつかの実施形態では、R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。本明細書に記載するように、それぞれのこれらの置換基は1つまたは複数の部分で置換することができ、本明細書の実施例中に詳細に記載するように、R1が置換または無置換4−チアゾリルであり、いくつかの実施形態ではR1が、2−または5−位の1つまたは両方において1つまたは2つのメチル官能基で置換されている、チアゾリル部分を含むことも理解されるであろう。
【0088】
本発明の一実施形態では、実施例1および2に詳細に記載するように、前に記載した方法を使用して、以下の構造を有する21−ヒドロキシ類似体を合成する。
【化137】
上式でPが窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、またはポリマーである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化138】
上式でR0,R’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化139】
を有するケトンとホスフィンオキシドを縮合させる工程、および
c)化合物を形成するのに適切な条件下で、工程b)で形成されたエステルを還元する工程。
【0089】
前に記載したハロゲン化ビニルおよび中間体のそれぞれについて、いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルであることが理解されるであろう。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。
【0090】
前に論じたように、本発明の他の態様では、O−アシル断片への新規な経路を提供し、その断片は以下の構造を含む。
【化140】
上式でZBがCO2R9またはCOSR9であり、R9が水素または酸素またはイオウ保護基であり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルである。前記方法は以下のことを含む。
以下の構造:
【化141】
を有するケトアルデヒドを保護して保護型アルデヒドを生成させ、その後前記保護型アルデヒドを以下の構造:
【化142】
を有する化合物と縮合を行うために適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化143】
を有するアルドールを生成させ、保護されたアセタール基を加水分解して、以下の構造:
【化144】
を有するケトアルデヒドを生成させ、前記ケトアルデヒドを第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で反応させ、任意にC3アルコールを保護して、ZBおよびR2〜R5が前で定義するものであり、以下の構造:
【化145】
を有する化合物を生成させること。
【0091】
いくつかの実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、化学量論的条件下で前記ケトアルデヒドをキラルエノラートチタンと反応させること含む。他の実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、前記ケトアルデヒドを触媒試薬と反応させること含む。Carreira触媒およびMikamiのキラル・アルドール触媒だけには限られないが、これらを含めたさまざまな触媒試薬を使用することができることが理解されるであろう。たとえば、右翼セクターを構築するために、非対称アルドール反応(Duthaler,R.O.;Herold,P.;Lottenbach,W.;Oretle,K.;Reidiker,M.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1989,28,495)を使用することができる。この方法では、以下のアルドール反応のために化学量論的キラル添加剤を使用した。
【化146】
【0092】
しかしながら一例では、以下の第1のスキームは、Carreira触媒(Carreira,E.M.;Singer,R.A.;Lee,W.J.Am.Chem.Soc.1994,116,8837)を使用する、触媒的なMukaiyamaタイプのアルドール反応を表す。シリルケトンアセタールおよびわずかな触媒装入(2〜5mol%)を使用するこの方法に関しては、EEが一般的に高い。この場合、メチルエステルが生成され、水性塩基を用いる後のスズキカップリング後に、これを加水分解することができる。
【化147】
【0093】
使用することができる他の方法は、Mikamiのキラル・アルドール触媒(Mikami,K.;Matsukawa,S.J.Am.Chem.Soc.1994,116,4077)に基づく。このシリーズの触媒は容易に調製され、反応は一般に0℃で行われ、高いエナンチオ選択性が提供される。この方法によってチオエステルが生成され、後のスズキカップリング後に、これを容易に加水分解することができる。
【化148】
【0094】
dEpoBおよびdEpoF、およびそれらのいくつかの類似体に関する新規な方法を本明細書に記載しているが、この新規な方法を、オキサゾリニル、ピリジル、およびフェニル類似体および置換されたこれらの誘導体を含めた(これらだけに限られないが)広範囲の他の類似体を合成するために、使用することもできることが理解されるであろう。ホスフィンオキシドも、dEpoBおよびdEpoF前駆体化合物について本明細書に記載するように、本明細書に記載の適切なオキサゾリニル、ピリジル、およびフェニル出発原料、または他の類似体用の物質を使用して、調製することができることが理解されるであろう。本明細書に記載するように、これらのホスフィンオキシドをケトンと反応させ、そのケトンを多様化させて12個の改変型類似体を生成させることもできる。本明細書に記載するように、本発明は、ケトン部分およびアシル・セクターの効率の良い調整的な合成を提供し、したがって、大環化前駆体を合成するために(スズキカップリングを介する)、適切なホスフィンオキシドを使用して、これらを使用することができる。さらに、調整ケトンを容易に生成する能力によりさまざまなC12類似体の合成が可能であり、したがってこの方法により、合成の工程中に、12−位およびアリールまたはヘテロアリール・セクターを同時に改変することが可能である。
【0095】
したがって他の態様では、本明細書に記載の新規な方法を使用して、以下の一般構造を有する化合物を合成することができる。
【化149】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、炭素保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、MがNHまたはOであり、nが0、1、2または3である。
【0096】
一般に本発明の化合物は、以下のことによって調製される。
以下の構造を有する前駆体であって
【化150】
上式でR1〜R6が前で定義するものであり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である前駆体を提供することであって、前駆体を提供する工程は以下の構造
【化151】
を有する第1の化合物を適切な条件下で以下の構造
【化152】
を有する第2の化合物と反応させて、カップリングを行って前駆体を生成させ、
前記前駆体に適切な条件を施して大環化を行い、任意に脱保護して所望の化合物を生成させることをさらに含む。
【0097】
以下に示す構造を有する本発明の前駆体が、本発明の方法に従い、本明細書に記載の新規なアシルおよびアルキル・セクターを使用して、一般的に調製されることが理解されるであろう。たとえば、前駆体:
【化153】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、炭素保護基、またはポリマーであり、nが0、1、2または3であり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である前駆体を、一般に以下のことによって調製する。
【0098】
R1、R6およびZAが前で定義するものであり、以下の構造
【化154】
を有する第1のセクターを提供すること、R2、R3、R4およびR5が前で定義するものであり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、以下の構造
【化155】
を有する第2のセクターを提供すること、
前記第1および第2のセクターをカップリングを行うために適切な条件下で反応させて、前駆体を生成させること。
【0099】
いくつかの実施形態では、これまで及びここに記載するように、R1がCY=CHXであり、Xが2−位、5−位あるいは2−および5−位の両方において、直鎖状または分枝状アルキルによって置換されているか、あるいはnが0〜5である−(CH2)nOHよって置換されている4−チアゾリルであり、R6が独立に水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、またはポリマーである。
【0100】
他の実施形態では、MがNHであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。他の実施形態では、MがOであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
【0101】
前に記載したように、いくつかの実施形態では、新規な方法を使用してマクロラクタム誘導体を調製し、したがって本発明の方法は、ZAがN3であるとき、適切な条件下でアジドを反応させて保護型アミンを生成させる工程を任意に含む。さらに本発明の方法は、前駆体化合物を脱保護して、遊離ヒドロキシ酸前駆体、またはアミノ酸前駆体を生成させる工程を任意に含み、したがってこれらの前駆体は、本明細書に詳細に記載するように、マクロラクタム化またはマクロラクタン化反応用の態勢ができている。さらに本発明は、環化化合物に脱保護の工程を施すことを企図し、適切な条件下で環化化合物を反応させて、本明細書に詳細に記載する光アフィニティー標識、放射性標識、炭水化物結合またはポリマー結合化合物を生成させることをさらに任意に企図する。
【0102】
機能性エポチロン類似体の合成
ここに示したように、21−ヒドロキシの機能性化合物(または他の反応性類似体)の大量利用能力は、概してここに述べて権利主張した各々の類似体のさらなる機能化と合成のための足場を提供する。ここにある実施形態であるヒドロキシ置換型チアゾリニル誘導体(dEpoBに基づく)が提示されるけれども、以下に示したおよび本書に述べた各々の方法論は他の新規な類似体(例えばヒドロキシル置換型オキザゾリニル、ピリジルなど)に適用することも可能であり、それらの合成は総じて上記および本書で説明される。
【0103】
本発明のある実施形態では、標識化化合物が供給され、ある実施形態では光アフィニティー標識または放射性標識された化合物が供給される。様々な光親和性放射活性試薬が利用可能であることは理解されるであろう。例えば、本発明の一実施形態では、チューブリン二量体の中のエポチロン結合部位を探査するのに使用可能な(図5に示したような)光アフィニティー標識されたdEpoF3を生じるために、DCCの作用下で保護されていないdEpoFと4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸との縮合が実施される。アジド酸に代わって蛍光芳香族酸(例えばローダミン)が使用されると、結合反応はフルオロフォアを含んだ新規なエポチロン4を供給する。エポチロンの細胞内分布のモニタおよび結合の調査にとって蛍光エポチロンは特に有用である。
【0104】
ある実施形態では放射活性標識が利用される。sec−ヒドロキシル基の保護を使用しないで21−ヒドロキシル基を機能化する能力は有意にC21で効率的な置換を供給する。p−トルエンベンゼンスルホニルクロリド(p−TsCl)によるdEpoFの処理はC−21トシラート5の生成に利用することができる。それに続いてヨウ素で置換すると21−ヨード−dEpoB6が生じ、それをシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化トリブチルスズで還元してdEpoB(2b)にすることができる。したがって、この順序はdEpoFの選択的脱酸素化を介したdEpoBの調製を構成する。付け加えると、水素化源としてトリチウム還元剤(例えばNaBT3CNまたはn−Bu3SnT)を使用するならば、放射性標識エポチロン(7,T−dEpoB)を容易に生じることができる。もっと重要なことには、トシラート5またはヨウ化物6を使用する単純な置換反応によって様々な求核剤をC21の位置に導入することができる。特に、上述したケトン合成にもやはり使用されてきた21−アジド−エポチロン(6でR=N3)のシュタウディンガー還元は21−アミノ−エポチロン(R=NH2)の新しい種類の利用を可能にする。
【0105】
C21での選択的機能化がアシル化またはスルホニル化に限定されないことは理解されるであろう。例えば、保護されていないdEpoF(2d)をMnO2の介在する酸化条件に直接晒すと図6に示したような21−オキソ−エポチロンB(8)の高収率の形成という結果につながり、これは図7に示したようなさらなる機能化にとって有用な類似体である。
こうして、別の実施形態で、図7に示すように21−オキソ系からエポチロン誘導体を利用することができる。NaBT4(またはNaBCNT3、NaB(OAc)3T)によるアルデヒド8の単純な還元は放射性同位元素を9のようにdEpoF内に配置する。ウィーティッヒ型のオレフィン化反応が21−アルキリデン−エポチロン10を生じ、その後、それが化学選択的に水素化またはジヒドロキシル化されてそれぞれ11および12を生じることができる。場合によっては、アリールインジウム試薬の作用によって12bを供給するために、水溶性溶媒中で保護されていないアルデヒド8にアリールのユニットを加えることは容易に可能である。10および12bのようにいったんアルケン機能が装備されると、引き続く添加反応に関与するその能力はさらに精巧なエポチロン誘導体を作製するのに利用することができる。例えば、選択的な水素化は11を供給し、それは自然に生じるエポチロンB10の「デオキシ」類似体を構成する。水素ガスを使用する代わりにT2を使用することによってトリチウムで放射性標識することもやはり可能である。一方、12a(またはジヒドロキシル化された12b)は調剤化に利点をもたらす水溶性の類似体である。カルボン酸部分を備えた新規なエポチロン13は亜塩素酸ナトリウムによるアルデヒド8の酸化を介して生じる。
【0106】
さらに別の実施形態では、アルデヒド8はアミンと反応させられ、脱水を介して対応するシッフ塩基14が容易に生成される。シッフ塩基14は21−イミノ−エポチロン類似体を表わし、その生物学的活性は報告されないままである。特に、オキシム誘導体(14でRがヒドロキシまたはアルコキシ)は容易に端衛さえて簡単に取り扱いされる。ヒドラジンとの反応から誘導されるヒドラゾン(14でR=NR2)は21−イミノ−エポチロンの別の安定な形である。引き続いてNaBH3CNで還元するとイミン14が21−アミノ−エポチロン15へと容易に変換される。この工程でアミノ酢酸メチルがアミンとして使用されると、優れた収率でN−dEpoB−Glyメチルエステルが産物として形成される。同じプロトコルを辿って、還元性アミン化にαアミノ酸またはオリゴペプチドを使用すると多くの潜在性の利点を有する新規なエポチロン−ペプチド共役体が供給される。
【0107】
最後に、アルデヒドにヒドラジンを加え、得られるヒドラゾンを引き続いて酸化すると21−ジアゾ−エポチロン16が生じる。チューブリンへのエポチロンの結合に関する詳細な情報が欠けていることを考慮すると、21−ジアゾ系は適切な生物学的研究にとって光親和性プローブとして有用となるかもしれない。
【0108】
水溶性で多様に存在するエポチニン類似体の合成
本発明は付加的に治療薬剤のさらに効果的な供給を可能にするために本発明の化合物の調剤化および/または機能化を意図する。タキソールによる化学療法の1つの大きな問題は疎水性から生じる。その限界水溶性は発色団(cremophore)のようなそれら自体の危険性と管理点を有する調剤媒体に頼ることを必要とする。C21でヒドロキシ置換することによりエポチロンに付与される比較的高い水溶性および付加的な増加はある程度の期待を示した。しかしながら、水溶性の溶媒中でエポチロンの調剤化を可能にする程度までエポチロンの水溶性がさらに増進されるならばそれはもっと望ましいことであろう。C21機能化系による生物学的活性の維持は溶解度促進剤の結合の可能性を招く。この補助の促進剤は細胞の酵素によって切断および代謝され、それに付随してエポチロンが放出されることが予測される。
【0109】
ある実施形態では、本発明は図8に示すようにdEpoFをN,N−ジメチルグリシンと反応させ、続いて塩化水素塩形成させることによって調製される新規な化合物を供給する。別の手法には、やはり図8に示したように無水アスパラギン酸の使用、21−アミノ基による開環および穏やかな脱保護(R1=Troc、Zn/AcOH)によるαアミノ基の遊離が含まれ、水溶性の増進を供給する両性イオンが生じる。
【0110】
別の実施形態では、C21の官能基は水溶性を高めるための親水性の側鎖を有する様々なαアミノ酸またはペプチドの導入にとってそれら自体を足場として提供する。図9を参照すると、21−ヒドロキシ−(2b)または21−アミノ化合物(15)を使用して、N保護されたオリゴペプチドをC末端結合を介してエポチロン・セクターに結合させることができる。場合によっては、還元性のアミノ化およびペプチド結合はカルボキシ保護されたペプチドのアルデヒド8および酸13それぞれへのN末端結合を可能にする。水溶性の増進に加えて、ペプチド−エポチロン共役体は腫瘍細胞を目標化する付加的な利点を供給する可能性がある。腫瘍細胞はしばしばペプチド・リガンドに対するある受容体を過剰発現するので、エポチロンに結合したペプチドを認識素子として利用することができる。こうして、リガンド−受容体の相互作用はペプチド−エポチロンを腫瘍細胞に案内し、細胞内取り込みを容易にすることができる。例えば、ソマトスタチンの断片はエポチロンをいくつかの腫瘍のタイプで頻繁に見受けられるソマトスタチン受容体過剰発現細胞へと供給するのに使用することができる。
【0111】
ペプチドとの共役に加えて、新規なグリコシル化によって水溶性エポチロン類似体の別の興味深い種類が生じる。グルカルエポキシドを使用するグリコシル化法の利点を活用すると、ある実施形態で、図10に示すようにグルコースまたはラクトースをもつ21−機能化エポチロンを容易に共役させることができる。この共役手法が還元端部にグリコシル供与体ユニットを呈示する様々なオリゴ糖に適用可能であることに留意すべきである。さらに別の実施形態では、図11に示したように、直接の炭素−炭素結合を有するエポチロン炭水化物共役体を図示したようにして調製することができる。一実施形態では、Danishefskyジエンが使用され、ヘテロ−ディールス−アルダー反応が有効化される。
【0112】
別のある実施形態では、本発明は多価アレーの形成を意図する。細胞外リガンドの低親和性結合は多くのリガンドを一緒に共有結合でつないで多価アレーを形成することによって有意に向上させることができる。エポチロンの抗癌活性作用の開始は微小管への非共有結合を含むので、二量体の形成はリガンド(エポチロン)のバイオポリマー(微小管)への結合を促進する可能性がある。細胞内背景での多価の有効性は疑問ではあるが、微小管によって呈示される多数の結合部位はそのような利点の可能性を提供する。
【0113】
図12に示したように、エポチロン二量体の調製はエポチロンの2つの半片を共有結合で連結することによって容易に実施することができる。機能性ハンドルとしてのC21官能基の利点を活用すると、変化した長さ(n=0、1、2、3など)をもつα,ω二酸、ジアミン、およびジオールのようなつながりは単純な結合反応を介してエポチロンを結合することができる。細胞毒性の能力増進に加えて、エポチロン二量体を使用するチューブリン結合分析はチューブリン二量体または微小管のタキソール(エポチロン)結合部位に関する価値ある情報を供給するかもしれない。
【0114】
本発明の別の実施形態では、低分子のリガンド(エポチロン)と細胞内受容体(微小管)という背景での多価の概念はデンドリマーないしポリマー骨格上のエポチロンの多数存在によってより良く試験することができる。微小管に位置する多数結合部位と多数存在エポチロンとの間の相互作用は好都合な多価の状況を発生し、それによって抗癌活性の完璧な促進につながることがあり得る。上述したのと同じ共役プロトコルを辿ると、多数存在エポチロンはデンドリマーないしポリマーの骨格上で利用可能な官能基を使用して容易に合成することができる。図12の例証は市販入手可能なPAMAM(Starburst(登録商標))デンドリマー(X=CO2またはNH)およびオクタペプチド(例えばグルタミン酸、リシン)上にある8つのエポチロンの存在である。
【0115】
本発明が付加的にバイオポリマーや生体適合性の(合成または自然に生じる)ポリマーのようなポリマーを介したエポチロンの投薬を意図していることは理解されるであろう。生体適合性ポリマーは生分解性と非生分解性に分類することができる。生分解ポリマーは化学組成、製造方法、および移植構造の関数として生体内で分解する。合成および自然ポリマーが使用可能であるが、より均一で再現性のある分解およびその他の物理的性質のせいで合成ポリマーが好ましい。合成ポリマーの範例には無水物重合体、乳酸重合体やグリコール酸重合体およびその共重合体のようなヒドロキシ酸重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルトエステル、およびいくつかのポリホスファゼンが含まれる。自然に生じるポリマーにはコラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミンおよびゼラチンのようなタンパク質および多糖類が含まれる。エポチロンがバイオポリマーあるいは人工的な機能性ポリマーを介して投薬されると、巨大分子治療の生物学的利点を活用することが可能である。理想的なポリマー・マトリックスは疎水性、安定性、有機的可溶性、低融点、および適切な分解プロファイルの組み合わせであろう。付け加えるとこのポリマーは、身体のような水成環境に置かれたときに適切な期間にわたってその保全性を維持し、かつ使用前に長期間にわたって貯蔵されるのに充分に安定であるように疎水性であることもやはり好ましい。理想的なポリマーはまた、使用の間で崩壊したりまたは砕けたりしないように強固でなおかつ柔軟性があるべきである。
【0116】
様々な生分解ポリマーが本発明に使用可能であり、中でも、N−(ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド(HPMA)、グルタミン酸、およびラクチド−リシン共重合体のような流行の官能基を含むもの(図14に示す)は効率的な媒介物として役立つことができる。荷電した側鎖をもつポリペプチドは本来水溶性であるが、非極性ポリマーのケースではポリマー骨格とエポチロン類似体との間に共有結合で、溶解度促進剤として設計されたペプチド・リンカーを組み入れてもよい。ある実施形態では、ここに述べた化合物は、参考資料としてここでその全内容を取り入れた米国特許第5,977,163号に述べられているように、水溶性のキレート剤、あるいはポリエチレングリコール、ポリ(l−グルタミン酸)ないしポリ(l−アスパラギン酸)のような水溶性ポリマーに適切な機能を介して共役されてもよい。
【0117】
別のある実施形態で、樹状の中心の球上に多数のエポチロンを存在させる手法が図15に例示されている。PAMAM(Starburst(登録商標))上で半分を形成することから開始し、3,4−2カ所保護したグルカルが末端カルボキシル基に結合される。デンドリマーの生成に応じて、末端基の数(4、8、16、32など)および性質(CO2Na、NH2)は変えることができる。グルカルエポキシドをグリコシル化するプロトコルを使用して、エポチロンの21−官能基(X=O、S、NHなど)と末端グルコースとの間のグリコシド結合が確立される。最終的なC3’およびC4’の保護基の脱保護は水溶性、デンドリマー上のエポチロンの多数存在を提供する。追加的な親水性が必要であるときは、単糖ではなくてオリゴ糖のユニットをグリコシル供与体としてデンドリマーの末端に結合させてもよい。
【0118】
医薬組成
上述したように、本発明は抗癌および抗増殖活性を有する新規な化合物を供給し、したがって本発明の化合物は癌の治療にとって有用である。したがって、本発明の別の態様では医薬組成が供給され、そこではこれらの組成は本書で述べたような化合物のいずれか1つを含み、場合によっては製薬品として許容される基剤を含む。ある好ましい実施形態では、場合によってはこれらの組成は1種または複数種の追加の治療薬剤をさらに含む。別のある実施形態では、追加の治療薬剤はここでさらに詳細に述べるような抗癌剤である。
【0119】
本発明のある化合物が治療のための遊離の形、あるいは製薬品として許容されるその誘導体として適切に存在することが可能であることもやはり理解されるであろう。本発明によると、限定はされないが製薬品として許容される誘導体には、製薬品として許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、または必要としている患者への投薬でここに述べた以外またはその代謝産物ないし残渣、例えばプロドラッグとしての化合物を直接的ないし間接的に供給できる何らかの別の付加化合物ないし誘導体が含まれる。
【0120】
ここで使用する「製薬品として許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などをなくしてヒトおよび下等動物の組織に接触させて使用するのに適し、かつ適度な利点/危険度比率に見合った塩を称する。製薬品として許容される塩は当該技術ではよく知られている。例えば、S.M.Berge他が、ここで参考のために取り入れたJ.Pharmaceutical Sciences,66:1−19(1977)に製薬品として許容される塩を述べている。これらの塩は本発明の化合物の最終的な単離および精製の間でイン・サイチューで調製されるか、または遊離塩基機能を適切な有機酸と反応させることによって別に調製されてもよい。医薬的に受容可能であって無毒の酸添加塩の範例は塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸のような有機酸とアミノ基との塩、またはイオン交換のような当該技術で使用される別の方法を使用することによる塩である。その他の製薬品として許容される塩にはアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンホル酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオネート、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、バレリアン酸塩などが含まれる。代表的なアルカリないしアルカリ土類金属塩にはナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる製薬品として許容される塩には、適切なら、非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、およびハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩といった対イオンを使用して形成されるアミンのカチオンが含まれる。
【0121】
付け加えると、ここで使用する「製薬品として許容されるエステル」という用語は生体内で加水分解するエステルを称し、ヒトの体内で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものを含む。適切なエステルのグループには、例えば、製薬品として許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸から誘導されたものを含み、各々のアルキルまたはアルケニル部分は6個を超えない炭素原子を有すると有利である。特定のエステルの範例にはギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルが含まれる。
【0122】
さらに、ここで使用する「製薬品として許容されるプロドラッグ」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などをなくしてヒトおよび下等動物の組織に接触させて使用するのに適し、かつ適度な利点/危険度比率に見合っており、できれば本発明の化合物の両性イオン型と同様に、意図されたそれらの用途に効果的な本発明の化合物のプロドラッグを称する。「プロドラッグ」という用語は生体内で、例えば血液中の加水分解によって迅速に変換されて上記の式の親化合物生じる化合物を称する。綿密な考察はT.HiguchiとV.StellaによるPro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、およびEdward B.Roche編のBioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に供給されており、それらの両方をここで参考資料として取り入れている。
【0123】
上述したように、本発明の医薬的組成は製薬品として許容される基剤を付加的に含み、ここで使用するそれは、所望の特定の投薬に合わせて溶剤、希釈剤、またはその他の液体媒体、分散ないし懸濁補助、表面活性剤、等張剤、濃化剤ないし乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤などのいずれかあるいはすべてを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1975)には医薬組成の調剤に使用する様々な基剤およびその調製のために知られている技術が開示されている。何らかの従来の基剤媒体が、何らかの不本意な生物学的効果ないしさもなければ医薬組成の他の何らかの成分と有害な方式で相互作用することなどで本発明の抗癌性化合物と相容れない場合を例外として、その使用は本発明の範囲内にあると意図される。製薬品として許容される基剤として役立つことのできる材料のいくつかの範例には、限定はされないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖、コーンスターチおよびポテトスターチのようなデンプン、セルロースおよびその誘導体のカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなど、粉末トラガカントゴム、モルト、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび坐薬ワックスのような賦形剤、ピーナッツオイルおよび綿実油のようなオイル、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油、グリコール、プロピレングリコール類、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのようなバッファ剤、アルギン酸、脱ピロゲン水、等張塩、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸バッファ溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのようなその他の非毒性の適合潤滑剤が含まれ、同様に着色剤、解離剤、コーティング剤、甘味料、調味料および芳香剤、保存料および抗酸化剤もまた調剤者の判断に従って組成の中にあってもよい。
【0124】
化合物および製薬組成物の用途
さらに別の態様では、本発明の治療方法によると、腫瘍細胞はここに述べたような本発明の化合物ないし組成と前記腫瘍細胞を接触させることによって殺されるかまたは増殖を阻害される。したがって、本発明のさらに別の態様では、治療に有効な量で本発明の化合物または本発明の化合物を含む医薬組成を、それを必要とする被験体に投薬する工程を含む癌の治療方法が供給され、所望の結果を達成するのに必要な量と時間で為される。本発明のある実施形態では、本発明の化合物または医薬組成の「治療に有効な量」は腫瘍細胞の殺害または増殖阻害に有効な量である。本発明の方法によると、この化合物および組成は腫瘍細胞の殺害ないし増殖阻害に効果的ないかなる量および径路を使用して投薬されてもよい。したがって、ここで使用する「腫瘍細胞の殺害ないし増殖阻害に効果的な量」という表現は腫瘍細胞を殺すかまたは増殖を阻害するのに充分な薬剤量を称する。正確な必要量は被験体によって変わるもので被験体の種、年齢、および総合的な状態、感染のひどさ、特定の抗癌剤、その投薬モードなどによって決まる。本発明の抗癌性化合物は投薬の簡易性および投与の均一性のために投与ユニットの形で調剤されることが好ましい。ここで使用する「投与ユニット形」という表現は治療を受ける患者にとって適切な物理的に別々のユニットの抗癌剤を称する。しかしながら、本発明の化合物および組成の毎日の合計使用量が正常な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることは理解されるであろう。いかなる特定の患者ないし有機体のためのいかなる特異的な治療有効化投与レベルも治療する疾病および疾病の重篤度、使用される特異的化合物の活性、使用される特異的組成、患者の年齢、体重、総合健康状態、性別および食事、投薬時間、投薬径路、使用する特異的化合物の排出速度、治療期間、使用する特異的化合物と組み合わせるか同時に使用する薬剤、および医学技術でよく知られている類似因子を含めた様々な因子によって決まるであろう。
【0125】
さらに、所望の投与量で適切な製薬品として許容される基剤で調剤した後、本発明の医薬組成は経口、直腸経由、非経口、槽内経由、膣内経由、腹膜内経由、局所適用(粉末、軟膏、または滴下剤として)、頬内、口腔ないし鼻腔スプレーなど、治療する病気の重篤度に応じてヒトおよび他の動物に投薬されてもよい。本発明のある実施形態では、ここに述べた化合物は、参考資料としてここでその全内容を取り入れた米国特許第5,977,163号に述べられているように、水溶性のキレート剤、あるいはポリエチレングリコール、ポリ(l−グルタミン酸)ないしポリ(l−アスパラギン酸)のような水溶性ポリマーに適切な機能を介して共役されて調剤される。ある実施形態では、本発明の化合物は所望の治療効果を得るために約0.01mg/kgから約50mg/kg、好ましくは約1mg/kgから約25mg/kgの患者の体重当たりの1日当たりの投与レベルを、1日に1回ないし複数回で経口ないし非経口で投薬されてもよい。
【0126】
経口投薬のための液体の投与形には、限定はされないが、製薬品として許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、この液体投与形は、例えば水ないし他の溶剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、カストール油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物といった可溶化剤および乳化剤のような当該技術で一般的に使用される不活性な希釈剤が含まれてもよい。不活性希釈剤の上にさらに、経口用の組成はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、調味料、および芳香剤をも含むことがある。
【0127】
注射可能な調製物、例えば、殺菌済みで注射可能な水性ないし油性の懸濁液は適切な分散ないし湿潤剤および懸濁化剤を使用して知られている技術に従って調剤することが可能である。殺菌済みで注射可能な調製物はまた、非毒性で非経口で受容可能な希釈剤または溶剤中の殺菌済みの注射可能溶液、懸濁液または乳濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としてあってもよい。受容可能な媒体および溶剤のうちで使用できるものは水、リンゲル溶液、U.S.Pおよび等張塩化ナトリウム溶液である。付け加えると、殺菌済みの固定油が溶剤あるいは懸濁化媒体として広く使用される。この目的で、合成のモノまたはジグリセリドを含めたいかなるブランドの固定油も使用することができる。付け加えると、オレイン酸のような脂肪酸が注射可能な調製物で使用される。
【0128】
注射可能な調剤は、例えば、バクテリア保留フィルタを通す濾過によるか、または滅菌水ないし他の殺菌済み媒体に溶解ないし分散可能な殺菌固体組成の形で殺菌剤を使用前に取り込むことによって殺菌することができる。
【0129】
薬剤の効果を引き延ばすために、皮下注射または筋肉注射から薬剤の吸収を遅くすることがときには望ましい。これは水溶性の低い結晶質または非晶質物質の懸濁液体を使用することによって達成される可能性がある。そのとき、薬剤の吸収速度はその溶解速度によって決まり、それは今度は逆に、結晶のサイズおよび結晶形状によって決まる可能性がある。場合によっては、非経口注射薬剤形の遅い吸収は薬剤を油性の媒体に溶解または懸濁することによって達成される。注射可能なデポー製剤形はポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解ポリマー中に薬剤のマイクロカプセルのマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬剤の比率および使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬剤の放出速度を制御することができる。他の生分解ポリマーの範例にはポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー剤の注射可能調剤はまた、薬剤を身体組織と適合するリポソームあるいはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製される。
【0130】
直腸ないし膣投薬のための組成は、本発明の化合物をココアバター、ポリエチレングリコールないし常温では固体であるが体温で液体となってそれにより直腸や膣腔内で溶けて活性化合物を放出する座剤ワックスのような適切な非刺激性の賦形剤ないし基剤と混合することによって調製可能な座剤であることが好ましい。
【0131】
経口投薬のための固体投与形にはカプセル、タブレット、丸薬、粉末、および顆粒が含まれる。そのような固体投与形では、活性化合物はクエン酸ナトリウムないしリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの不活性で製薬品として許容される賦形剤ないし基剤、および/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マニトール、および珪酸のようなフィラーないし増量剤、b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアのような結合剤、c)グリセロールのような希釈剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ポテトないしタピオカスターチ、アルギン酸、ある種の珪酸塩、および炭酸ナトリウムのような分解剤、e)パラフィンのような溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物のような吸収加速剤、g)例えばセチルアルコールおよびグリセリンモノステアラートのような湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤と混合される。カプセル、タブレットおよび丸薬のケースでは、投与形はまたバッファ剤を含むことがある。
【0132】
類似したタイプの固体組成はまた、ラクトースないし乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用してソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内でフィラーとして使用されることもある。タブレット、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒の固体投与形は腸溶コーティングおよび薬剤調剤技術でよく知られている他のコーティングのようなコーティングおよび外殻で調製されることがある。場合によってはそれらは乳白化剤を含むことがあり、また、腸管の一定の部分でだけかまたはそこを優先して、場合によっては遅延方式で活性成分を放出する組成であってもよい。組成を埋め込む使用可能な範例にはポリマー物質およびワックスが含まれる。類似したタイプの固体組成はまた、ラクトースないし乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用してソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内でフィラーとして使用されることもある。
【0133】
この活性化合物はまた、上述の1つまたは複数の賦形剤でマイクロカプセル形状にされることもある。タブレット、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒の固体投与形は腸溶コーティングおよび薬剤調剤技術でよく知られている他のコーティングのようなコーティングおよび外殻で調製されることがある。そのような固体投与形では活性化合物はスクロース、ラクトースまたはデンプンのような少なくとも1つの希釈剤を添加されることもある。そのような投与形はまた、普通の慣例として、不活性希釈剤以外の添加物質、例えばタブレット形成用の潤滑剤およびステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースのような他のタブレット形成補助剤を含むこともある。カプセル、タブレットおよび丸薬のケースでは、投与形はまたバッファ剤をも含むことがある。場合によってはそれらは乳白化剤を含むことがあり、また、腸管の一定の部分でだけかまたはそこを優先して、場合によっては遅延方式で活性成分を放出する組成であってもよい。組成を埋め込む使用可能な範例にはポリマー物質およびワックスが含まれる。
【0134】
本発明の化合物の局所適用または経皮投薬のための投与形には軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬または貼付剤が含まれる。この活性化合物は殺菌条件下で製薬品として許容される基剤および何らかの必要な保存料ないしバッファを必要かもしれなければ添加される。眼用調剤、耳用滴下剤、眼用滴下剤もまた本発明の範囲内にあることが意図される。付け加えると、本発明は身体に化合物を制御しながら供給する追加的な利点を有する経皮貼付剤の用途を意図するものである。そのような投与形は適当な媒体中に本化合物を溶解または調剤することによって為され得る。皮膚を通過する化合物の流れを増大させるためにやはり吸収促進剤を使用することもある。この速度は速度制御用の膜を供給することによってもまたは化合物をポリマー・マトリックスないしジェルに分散することによっても制御することができる。
【0135】
上述したように、本発明の化合物は抗癌剤として有用であり、したがって腫瘍細胞の細胞死を有効化するかまたは腫瘍細胞の増殖を阻害することによって癌の治療に有用となり得る。概して、本発明の抗癌剤は癌および他の、限定はされないが、一例を挙げれば乳癌、子宮頚部癌、結腸および直腸癌、白血病、肺癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、および胃癌を含めた他の増殖性障害の治療に有用である。ある実施形態では、本発明の抗癌剤は白血病細胞およびメラノーマ細胞に対して活性であり、したがって白血病(例えば脊髄性、リンパ球、骨髄球およびリンパ芽球性白血病)および悪性メラノーマの治療に有用である。さらに別の実施形態では、本発明の抗癌剤は充実性腫瘍に対して活性であり、やはり多剤耐性細胞(MDR細胞)を殺し、かつ/または増殖を阻害する。
【0136】
本発明の化合物および組成が複合治療で使用され得ること、すなわち本化合物および医薬組成が1つまたは複数の他の望ましい治療薬ないし医療処置と同時、またはそれに先行して、あるいはそれに引き続いて投薬され得ることもやはり理解されるであろう。複合療法で使用される特定の治療組み合わせ(治療薬と処置)は望ましい治療薬および/または処置と、達成されるべき望ましい治療効果を考慮するものであろう。使用される治療が同じ疾病に所望の効果を達成すること(例えば本発明の化合物は別の抗癌剤と同時に投薬されてもよい)、または異なる効果を達成する(例えば何らかの副作用の制御)ことがあり得ることもまた理解されるであろう。
【0137】
例えば、本発明の本発明の抗癌剤と組み合わせて使用されるかもしれない他の治療ないし抗癌剤には外科手術、放射線治療(少しだが例を挙げると、γ放射線、中性子ビーム放射線治療、電子ビーム放射線治療、プロトン治療、短距離放射線療法、系統的放射活性同位元素)、内分泌治療、生物学的応答緩和剤(ほんの一部であるが挙げるとインターフェロン、インターロイキン、および腫瘍致死因子(TNF))、高体温および寒冷療法、何らかの副作用緩和剤(例えば制吐作用)、および限定はされないがアルキル化薬剤(メクロレタミン、クロラムブチル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキセート)、プリン・アンタゴニストおよびピリミジン・アンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ジェムシタビン)、スピンドル毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンオレルビン、パクリタクセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)を含めた他の認可化学療法薬剤が含まれる。最新の癌治療のさらに包括的な考察については、(http://www.nci.nih.gov/)を参照し、FDA認可腫瘍薬剤のリストは(http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm)、およびここで参考のために全内容を取り入れたThe Merck Manual,Seventeenth Ed.1999を参照されたい。
【0138】
さらに別の態様では、本発明はまた、本発明の医薬的組成の成分のうちの1つまたは複数で満たした1つまたは複数の容器を有する医薬パックないしキットをも供給し、ある実施形態では複合療法として使用するために追加の認可治療薬剤を含む。場合によっては、そのような容器に付随するものは医薬製品の製造、使用ないし販売を統括する政府機関によって通達される通告である可能性があり、その通告はヒトに投与するための製造、使用ないし販売の機関による認可を反映する。
【0139】
同等物
引き続く代表的な実施例は本発明を例証する手助けとなることを意図するものであり、それらが本発明の範囲を限定することを意図していなければまたそう解釈されるべきでもない。全くのところ、本発明の様々な変形、およびここに示して説明したものに加わるそのさらなる実施形態は、ここに引用した科学的および特許の文献に追従して参照する判例を含めて、本文書の全内容から当業者にとって明らかになるであろう。さらに、それら引用文献の内容が当該技術の状態を具体的に説明する補助としてここに取り入れられていることも理解されるはずである。以下の実施例は重要な付加的情報、例証および手引きを含んでおり、それらは様々な実施形態およびその同等例で本発明の実施に適合することが可能である。
【0140】
【実施例】
実施例1:スズキカップリング、ノヨリ還元およびマクロラクトン化による21−OH dEpoB(dEpoF)の合成(図2、および図16〜18を参照)
1つの典型的な実施形態において、新規なエポチロン類似体である12,13−デスオキシエポチロンF(dEpoF、21−ヒドロキシ−12,13−デスオキシエポチロンB;図2)を、12,13−デスオキシエポチロンB(dEpoB)の実用的合成、この合成は図16〜18に記載したが、この合成にて以前に使用した集中的戦略を用いて合成した。本明細書に更に詳細に記述したように、水への溶解性がより高くなるため、および適切な生物学的研究のための官能基化が容易になるため、付加的なヒドロキシル基を含む新規な類似体が他のエポチロン類に対して優位性があると評価されるであろう。
【0141】
1つの実施例において、本明細書で示したようにdEpoBを調製するために使用した方法と同様の方法を用いてdEpoFを合成した。ここで、2種のほぼ同等に複雑なフラグメントを重要な構成要素としていた(図2)。本明細書に記載したように、チアゾール成分の新規な合成のための手法を開発し、dEpoBのこれまでの合成に用いた右翼を、dEpoF合成用のポリプロピオン酸ドメインのために使用した。
【0142】
本明細書に例示したように、知られている2−置換チアゾール(Ciufolini,M.A.;Shen,Y.C.,J.Org.Chem.,1997,62,3804)をTroc基で保護し、これを後段の合成でC7ヒドロキシ保護で同時に除去することから左翼の合成を開始した(図16)。エチルエステルをDibal−Hでアルデヒドに還元し、そしてこれをアルデヒドにホモロゲートした。ブラウンプロトコル(Racherla,U.S.;Brown,H.C.,J.Org.Chem.,1991,56,401)によりアリール単位の不斉付加を行い、高い鏡像体過剰率(>95%)でC15に(S)−立体配置を導入した。末端オレフィンを選択的にジヒドロキシル化した後、得られたジオールを開裂させ、アルデヒドを生成した。続いてヨードエチレニル化し、所望のヨウ化ビニルを単一の幾何異性体として得た(Stork,G.;Zhao,K.,Tetrahedron Lett.,1989,30,2173;Chen,J.他Tetrahedron Lett.,1994,35,2827)。そして粗生成物を水酸化リチウムで直接処理し、実用的な収率でアルコールを得た。
【0143】
2種の重要なフラグメントをPd触媒スズキカップリング反応により結合し、ジケトンを得た(図17)(Miyaura,N.;Suzuki,A.,Chem.Rev.,1995,95,2457;Miyaura,N.他J.Am.Chem.Soc.,1989,111,314;Johnson,C.R.;Braun,M.P.,J.Am.Chem.Soc.,1993,115,11014)。その代りに、遊離のアルコールをカップリングに用いてアルコールを得、そしてこれをジケトンに再度変換することができた。TBS基を除去した後、ジケトンを修飾したノヨリ触媒を用いてルテニウム触媒不斉水素化条件下に置いた(Ikariya,T.他J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1985,922;Taber,D.F.;Silverberg,L.J.,Tetrahedron Lett.,1991,32,4227)。驚くべきことに、所望のジオールが単一のジアステレオマーとして生成したけれども、C15メチルエーテルがほぼ1:1の比で生成した。市販されているノヨリ触媒であるRuCl2(BINAP)(Noyori,R.,Tetrahedron,1994,50,4259)を用いると、主成分がC16−C17還元生成物である複雑な混合物が形成されることとなった。多くの異なる条件下でも、メチルエーテルの形成は回避できなかった。メタノール性HClがC15ヒドロキシ基の加溶媒分解を引き起こすことが考えられるので、溶媒としてエタノールを使用すると加溶媒分解プロセスが最小化されると期待された。ジオールの収率がいくらか高められるように、充分に長い反応時間および低い転化率で反応を行った。基質をジケトンからC15 TBSエーテルに変更すると、限界まで向上した。これらの結果は、加溶媒分解によるこの種の生成物が観察されないdEpoBの合成と極めて対照的である。
【0144】
触媒としてEt2NH2[{(BINAP)RuCl2}2Cl3](Ohta,T.他Orgnometal,1996,19,1521;Noyori,R.他J.Am.Chem.Soc.,1987,109,5856)を用いる不斉ノヨリ還元は、反応に存在する酸の量に依存することが知られている(King他J.Org.Chem.,1992,57,6689)。dEpoB合成の場合、C3での還元および良好なジアステレオ選択性の両方のため、化学量論量のHClの存在が必要であった(Harris,C.R.他J.Amer.Chem.Soc.,1999,121,7050)。化学量論量の酸を添加すると、チアゾール成分が明らかにプロトン化され、これによってルテニウム触媒の不活性化が阻害される。その代りに、このチアゾールのプロトン化は、加溶媒分解に潜在的に弱いC15アリルアルコールを効果的に保護することができた。化学量論量のHClを用いてC21置換誘導体の還元を行うことができた。しかしながら、加溶媒分解は20モル%のHClでさえも進行し、このことは2−ヒドロキシメチル置換チアゾールはHClを除去するのに効果的な塩基ではないことを示している。この大きな反応性の差異は大部分が立体配置的な原因であるけれども、チアゾールへの置換は、遠隔アルコールの反応性に大きく影響する。
【0145】
全ての必要な立体中心を確立するために、TESOTfによってC3およびC15アルコールを同時に保護することにより、t−ブチルエステルを外した(図18)。メタノール性HClを用いてC15 TES基を選択的に脱シリル化すると、ヒドロキシ酸が得られ、これは容易にマクロラクトン化される。山口のプロトコルによるマクロラクトン化では、完全に保護されたマクロラクトンが60〜70%の収率で得られた(Inanaga,J.他Bull.Chem.Soc.Jpn.,1979,52,1989;Mulzer,J.他Synthesis,1992,215)。2つのTroc保護基の除去は、ヨウ化サマリウム(II)(Evans,D.A.他J.Am.Chem.Soc.,1990,112,7001)または亜鉛の作用により良好な収率で行われた。最後に、C3 TES基を標準のHF−ピリジン脱保護化して、12,13−デスオキシエポチロンFを得た。
【0146】
実施例1のための実験:(図16〜18参照)
エステル(3G)。知られている2−(ヒドロキシメチル)チアゾール−4−カルボン酸エチル(38.4g、0.205mol)およびピリジン(41mL、0.053mol)のCH2Cl2(100mL)溶液に、0℃でクロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル(32mL、0.23mol)をゆっくり添加した。0℃で30分間攪拌した後、NaHCO3水溶液(100mL)をゆっくり添加して反応物をクエンチした。有機層を分離し、そして水層をCH2Cl2(100mL×2)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を2NのHCl(100mL)、NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水で洗浄した。Na2SO4で乾燥した後、減圧下に溶媒を除去した。残留物をエタノール(50mL)で処理して、淡黄色固体(35g)を得た。母液を濃縮し、クロマトグラフして、更なる量(35g)の生成物を得た(95%)。
【NMR1】
【0147】
アルデヒド(4G)。エステル(23g、0.063mol)のCH2Cl2(200mL)溶液に、−78℃で0.5時間かけてDibal−H溶液(CH2Cl2中1.0M、120mL)を添加した。添加後、得られた混合物を冷凍庫(−78℃)に置いた。10時間後、過剰のDibal−Hを酢酸(5mL)でクエンチし、懸濁が消えて透明な2相溶液になるまで、飽和酒石酸カリウムおよびナトリウム水溶液(150mL)とともに混合物を攪拌した。有機層をNaHCO3、食塩水で洗浄し、そしてNa2SO4で乾燥した。真空下に溶媒を除去し、そして残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフして、所望のアルデヒドを淡黄色で粘着性のあるオイルとして得た(16g、80%)。
【NMR2】
【0148】
アルデヒド(5G)。アルデヒド(21g、0.066mol)のベンゼン(300mL)溶液に、2−(トリフェニルホスホラアニリデニル)プロピオンアルデヒド(20.6g、0.066mol)を添加した。得られた混合物を加熱還流した。3時間後、混合物を室温に冷却し、減圧下に濃縮した。SiO2によるフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=4:1)により精製し、透明オイルとして所望のアルデヒドを得た(21g、89%)。
【NMR3】
【0149】
アルコール:不斉アリール化(6G)。アルデヒド(9.20g、25.7mmol)溶液を無水エーテル(50mL)に溶解し、エーテル−液体窒素浴により−100℃に冷却した。知られている方法により調製した(+)−ジイソピノカンフェイルアリールボランのペンタン溶液(1.5当量、150mL)を、激しく攪拌したアルデヒド溶液に滴下添加した。添加を終えた後、反応混合物を1.5時間攪拌し、そして−50℃に加温した。そして、30%のH2O2(20mL)および飽和NaHCO3水溶液(50mL)を添加し、得られた濁りのある混合物を8時間攪拌した。有機層を分離し、水層をエーテル(100mL×2)で抽出した。合わせた有機層をNa2S2O3水溶液(100mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=10:1)により精製し、透明オイルとしてアルコールを得た(7.65g、74%)。アルコールの鏡像体過剰率は、対応するMosherのエステルに誘導体化することにより95%と決定した。
【NMR4】
【0150】
シリルエーテル(7G)。方法A:アルコール7(7.65g、19.1mmol)および2,6−ルチジン(10mL、85.9mmol)のCH2Cl2(50mL)混合物に、−78℃でTBSOTf(15mL、0.066mol)を滴下添加した。添加後、反応混合物を室温に加温し、5時間攪拌した。反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(50mL)に注ぎ入れ、エーテル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を2NのHCl(50mL)、NaHCO3水溶液(50mL)、食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。SiO2でのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサンそしてヘキサン/酢酸エチル=95:5)により、無色オイルとしてTBSエーテル9.39gを得た(95%)。
方法B:アルコール(8.50g、25.0mmol)およびイミダゾール(3.40g、50.0mmol)のDMF(50mL)混合物に、TBSCl(4.72g、31.3mmol)および4−DMAP(30mg、0.25mmol)を添加した。室温で8時間攪拌した後、混合物をエーテル(250mL)で希釈し、2NのHCl(50mL)、NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水(50mL)で順次洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥し、濃縮した。SiO2でのフラッシュクロマトグラフィにより、TBSエーテル11.0gを得た(97%)。
【NMR5】
【0151】
アルデヒド(8G)。ジヒドロキシル化。オレフィン(20.6g、0.040mol)、N−メチルモルホリン−N−オキシド(THF中50%、10mL、0.048mol)およびH2O(21mL)のt−BuOH(155mL)溶液に、0℃でOsO4溶液(THF中1重量%、20.3mL、0.78mmol)を添加した。12時間攪拌した後、Na2SO3(〜10g)および水(5mL)を添加し、得られた溶液を30分間攪拌した。そして、混合物をエーテル(100mL×3)で抽出し、そして食塩水で洗浄した。合わせた有機抽出物を無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を除去し、そしてシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、無色粘稠性オイルとして1:1ジアステレオマーのジオール混合物18.8gを得た(85%)。
【NMR6】
【0152】
アルデヒド形成。方法A:ジオール(18g、0.032mol)および炭酸ナトリウム(8.67g、0.081mol)のベンゼン(500mL)懸濁液に、0℃で5分間かけて四酢酸鉛(19.1g、0.043mol)を数度に分けて添加した。15分間攪拌後、混合物を4:1ヘキサン−酢酸エチル混合物を用いてシリカゲルのショートパッドにより濾過した。減圧下に溶媒を除去して、所望のアルデヒド14gを得た(82%)。
【0153】
方法B:ジオール(11.8g、24.2mmol)の酢酸エチル(100mL)溶液に、0℃で四酢酸鉛(95%、12.5g、26.8mmol)を数度に分けて添加した。得られた黄色懸濁液を1時間激しく攪拌し、その時点でのTLC分析は出発物質が完全に消費されたことを示していた。そして反応混合物を1:1エーテル/ヘキサン混合物を用いてシリカゲルのショートパッドにより濾過した。濾液を濃縮し、そしてフラッシュクロマトグラフィにより精製して、淡黄色オイルとしてアルデヒド7.95gを得た(72%)。
【NMR7】
【0154】
ヨウ化ビニル(9G)。ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム(7.90g、17.9mmol)のTHF(150mL)懸濁液に、周囲温度でn−ブチルリチウム(7.17mL、ヘキサン中2.5M、17.94mmol)を添加した。固体成分がなくなった後、この赤色溶液を−78℃で激しく攪拌しながらヨウ素(4.54g、17.94mmol)のTHF(150mL)溶液に添加した。得られた暗褐色懸濁液を5分間攪拌し、ゆっくり−30℃に加温した。ヘキサメチルジシラジドナトリウム溶液(17.34mL、THF中1.0M、17.34mmol)を懸濁液に滴下添加し、暗赤色溶液を得た。そして、アルデヒド8G(3.10g、5.98mmol)のTHF(10mL)溶液をゆっくり添加し、−30℃で30分間攪拌し続けた。反応混合物をペンタン(1000mL)で希釈し、セライトパッドにより濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=6:1)により精製し、シロップとしてヨウ化ビニル1.50gを得た(38%)。
【NMR8】
【0155】
ヨウ化ビニル(9Gb)。ヨウ化(エチル)トリフェニルホスホニウム(5.05g、12.1mmol)のTHF(30mL)懸濁液に、周囲温度でヘキサメチルジシラジドナトリウム溶液(12mL、THF中1.0M)を添加した。5分間攪拌後、暗赤色溶液を−78℃に冷却し、−78℃でヨウ素(3.02g、11.9mmol)のTHF(50mL)溶液に激しく攪拌しながらカニューレし、暗褐色懸濁液を得た。5分後、ヘキサメチルジシラジドナトリウム溶液(11mL、THF中1.0M)を添加し、得られた赤色溶液を0.5時間攪拌した。アルデヒド(3.12g、6.04mmol)のTHF(30mL)溶液をカニューレにより添加し、混合物を1時間かけて−20℃に加温し、その時点でのTLC分析は出発アルデヒドが完全に消費されたことを示していた。飽和NH4Cl水溶液(0.5mL)およびヘキサン(50mL)を添加して反応物をクエンチし、得られた沈殿物をシリカゲルのショートパッドで濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、淡黄色オイル4.05gを得た。
【0156】
上記のように得た粗製の混合物をTHF水溶液(1:1、10mL)に溶解した。そして、水酸化リチウム1水和物(0.510g、12.2mmol)を室温で添加し、そして得られた混合物を攪拌した。4時間後、2相溶液を飽和NH4Cl水溶液(15mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(25mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNaHCO3水溶液および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3:1)で精製し、淡黄色オイルとしてアルコール1.78gを得た(61%)。
【NMR9】
【0157】
15−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−ケトン(微量の互変異性体*)(11G)。9−BBNダイマー(0.774g、6.34mmol)のTHF(5mL)溶液に、トリカルボニル(2.80g、5.43mmol)のTHF(5mL)溶液を添加した。25℃で1時間攪拌した後、TLC分析は出発オレフィンが完全に消費されたことを示していた。
【0158】
ヨウ化ビニル(3.25g、4.53mmol)、(dppf)PdCl2・CH2Cl2(0.370g、0.453mmol)、AsPh3(0.139g、0.454mmol)およびCs2CO3(2.21g、6.78mmol)を含む分離フラスコに、脱ガスしたDMF(5mL)を添加した。得られた赤色懸濁液を20分間アルゴンガス気流でパージした。水(2mL)を上記調製したボラン溶液に添加し、10分間攪拌をし続けて過剰の9−BBNをクエンチした。そして、アルキルボラン溶液を、臭化ビニルを含む溶液に激しく攪拌しながら素早く添加した。2時間後、反応混合物をエーテル(50mL)で希釈し、水(10mL×2)および食塩水で洗浄し、そして無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、粗生成物をヘキサン/酢酸エチル(10:1)で溶出させるシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製し、淡黄色で粘り気があるオイルとして生成物3.26gを得た(65%)。
【NMR10】
【0159】
15−ヒドロキシ−3−ケトン(鈴木生成物、微量の互変異性体*)(12G)。TBSエーテル(0.265g、0.254mmol)を、25℃でMeOH中0.5NのHCl(25mL)に溶解した。反応物をTLCによりモニターして反応の完結を見た。2時間後、反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(25mL)に注ぎ入れ、CH2Cl2(40mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、そして無水MgSO4で乾燥した。アルコールをヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶出させるシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製し、無色粘稠性オイルとして純粋なアルコール(0.198g、84%)を得た。
【NMR11】
【0160】
3,15−ジオール(ノヨリ生成物)(13G)。ジケトン(0.302g、0.325mmol)を25℃でMeOH中0.12NのHCl(3.5mL、0.42mmol)に溶解した。そして、Et2NH2[{(R)−(BINAP)RuCl}2Cl3]触媒(THF中0.048M、0.034mmol)を添加し、混合物をParr装置に移した。容器を10分間H2でパージし、そして1,200psi(約8.3MPa)に加圧した。25℃で8時間後、反応物を大気圧に戻し、飽和NaHCO3水溶液(15mL)に注ぎ入れた。この混合物をCH2Cl2(15mL×3)で抽出し、合わせた有機層を無水Na2SO4で乾燥した。生成物混合物をヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶出させるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィにより分離し、透明なオイルとしてより極性の低いメチルエーテル0.152g(49%)および緑色で粘り気があるオイルとしてより極性の高いヒドロキシエステル0.126g(42%)を得た。
【NMR12】
【0161】
15−ヒドロキシ酸(14G)。ジオール(0.495g、0.531mmol)のCH2Cl2(5mL)溶液に、−78℃で2,6−ルチジン(0.870mL、7.47mmol)およびTESOTf(0.840mL、3.72mmol)を順次添加した。反応混合物を−78℃で0.5時間攪拌し、そして3時間かけて室温に加温した。室温で8時間攪拌した後、反応混合物をCH2Cl2(40mL)で希釈し、1NのHCl(20mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、緩衝剤溶液(20mL、pH=7)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した後、粗生成物を次の反応条件に適用した。
【0162】
粗製のビス(トリエチルシリル)エーテルをTHF(5mL)に溶解し、そして0℃に冷却した。反応をTLCによりしっかりモニターしながら、MeOH中0.1NのHCl溶液(2.2mL)を添加した。メタノール性HClは少しずつであり、完結するためにおよそ5mLの0.1NのHClが必要であった。反応混合物をCH2Cl2(30mL)で希釈し、緩衝剤(10mL、pH=7)で洗浄し、そして無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を除去した後、粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製し、無色の粘り気があるオイルとして酸0.370gを得た(70%)。
【NMR13】
【0163】
7,21−ビス(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル)−3−トリエチルシリルオキシ−12,13−デスオキシエポチロンF(15G)。トリエチルアミン(0.360mL、2.60mmol)および2,4,6−トリクロロ安息香酸(0.528g、2.15mmol)を、ヒドロキシ酸(0.426g、0.430mmol)のTHF(9.0mL)溶液に添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、そしてトルエン(40mL)で希釈した。得られた溶液を注射器に取り出し、あらかじめ調製しておいたDMAP(0.525g、4.30mmol)のトルエン(400mL)溶液に3時間かけてシリンジポンプにより添加した。添加を終えた後、反応物を1時間攪拌し、そしてセライトのショートパッドで濾過した。濾液を真空下に濃縮し、そしてSiO2でのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=21:1)により、白色発泡体として所望のマクロラクトン0.196gを得た(64%)。Mp71.7〜72.9℃。
【NMR14】
【0164】
3−トリエチルシリルオキシ−12,13−デスオキシエポチロンF(16G)。方法A:サマリウム金属(126mg、0.838mmol)およびヨウ素(170mg、0.838mmol)のTHF(8mL)混合物を、2時間還流下激しく攪拌した。この間、反応混合物は暗オレンジ色からオリーブグリーン色、そして深青色になった。深青色溶液を室温に冷却し、そして触媒量のヨウ化ニッケル(2.6mg、0.0083mmol)を添加した。室温で5分間攪拌した後、混合物を−78℃に冷却した。マクロラクトン(81.5mg、0.0838mmol)のTHF(2mL)溶液をSmI2/NiI2溶液にカニューレし、そして1時間攪拌し続けた。−40℃で2時間攪拌した後、反応混合物を1NのHCl(10mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3(10mL)水溶液および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を真空下に留去した後、シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィし(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)により、無色のオイルとしてジオール45.3mgを得た(87%)。
【0165】
方法B:活性化亜鉛粉末(0.261g、3.84mmol)の酢酸(2mL)懸濁液に、室温でマクロラクトン(0.196g、0.201mmol)のTHF(1.0mL)溶液を添加した。1.5時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、コットンプラグで濾過して、過剰の亜鉛を除去した。そして濾液を飽和NaHCO3水溶液(15mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィにより粗生成物を精製し、無色の粘り気があるオイルとしてジオール0.108gを得た(86%)。
【NMR15】
【0166】
12,13−デスオキシエポチロンF(dEpoF)(2Gd)。トリエチルシリルエーテル(82mg、0.132mmol)をポリエチレン容器中THF(2mL)に溶解し、氷浴中0℃に冷却した。得られた溶液を、TLCによりしっかりモニターしながらHF−ピリジン(1.5mL)で処理した。0℃で1時間そして室温で0.5時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(20mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、飽和NaHCO3(20mL)と1NのHCl(20mL)との水溶液および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(1:2)混合物を用いるシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィにより、白色発泡体としてデスオキシエポチロンF61mgを得た(91%)。
【NMR16】
【0167】
2−エトキシカルボニル−4−クロロメチル(チアゾール)(3H)。アミノチオキソ酢酸エチル(0.145g、1.09mmol)および1,3−ジクロロアセトン(0.138g、1.09mmol)のアセトン(2mL)中1:1混合物を24時間加熱還流した。暗褐色溶液を室温に冷却し、酢酸エチル(10mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(3mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をヘキサン−酢酸エチル(3:1)で溶出させるシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィにより精製し、淡黄色で粘り気があるオイルとしてチアゾール3H0.187gを得た(83%)。
【NMR17】
【0168】
2−エトキシカルボニル(チアゾール)−4−メチルジフェニルホスフィンオキシド(4H)。塩化物(2.65g、12.9mmol)の塩化メチレン(13mL)溶液に、ジフェニルホスフィンオキシド(3.13g、15.5mmol)、炭酸セシウム(5.88g、18.0mmol)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウム(95mg、0.26mmol)を添加した。得られた懸濁液を室温で48時間攪拌した。TLC分析により出発クロリドが完全に消費されたことが示された後、反応混合物を飽和NaHSO4水溶液(50mL)を含む分液漏斗に注ぎ入れ、塩化メチレン(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル−塩化メチレン=1:1)により精製し、僅かに粘稠性のオイルとしてウィッティッヒ試薬3.28gを得た(68%)。
【NMR18】
【0169】
ヨウ化ビニル6H。ウィッティッヒ試薬(70mg、0.19mmol)のTHF(2mL)溶液に、−78℃でヘキサメチルジシラジドリチウム(THF中1.0M、0.15mL)を滴下添加した。初期の淡黄色溶液が直ちに深赤色溶液に変色した。10分後、ケトンのTHF溶液をカニューレにより赤色溶液にゆっくり添加した。添加を終えた後、反応混合物を0.5時間かけて0℃に加温し、その時点でのTLC分析は反応が完結していることを示していた。混合物を飽和NaHSO4水溶液(5mL)に注ぎ入れ、エーテル(5mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=20:1)により精製し、無色オイルとしてエチルエステル52mgを得た(80%)。
【NMR19】
【0170】
アルコール7H。水素化リチウムアルミニウム(4.0mg、0.10mmol)のエーテル(0.5mL)スラリーに、0℃でエチルエステル(52mg、0.10mmol)溶液を滴下添加した。添加後、反応混合物を室温に加温し、2時間攪拌した。そして混合物を飽和NaHSO4水溶液(5mL)に注ぎ入れ、エーテル(5mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=5:1)により精製し、透明オイルとしてアルコール24mgを得た(50%)。
【NMR20】
【0171】
グリコールイミド10Ha。0℃に冷却したPMB−保護化イミド(9.23g、26.0mmol)のジクロロメタン(90mL)溶液に、TiCl4(5.05g、27.3mmol)を添加した。溶液を0℃で5分間攪拌し、その後ジイソプロピルエチルアミン(3.53g、27.3mmol)を滴下添加し、1時間攪拌し続けた。反応物を飽和NaHCO3溶液でクエンチし、ジクロロメタン(3×60mL)を用いて抽出した。合わせた有機層を食塩水(1×50mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(70%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとしてグリコールイミド10Ha(5.5g、87%)を得た。
【0172】
グリコールイミド11H。グリコールイミドX(4.75g、20.2mmol)のDMF(20mL)溶液に、イミダゾール(1.65g、24.3mmol)続いてTESCl(3.35g、22.2mmol)を添加した。混合物を室温で12時間攪拌した。そして溶液をH2O(200mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(25%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとしてTES−保護化グリコールイミド11H(5.93g、84%)を得た。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.33。
【NMR21】
【0173】
アルキル化グリコールイミド(12H)。TES−保護化グリコールイミド11H(1.11g、3.18mmol)をTHF(20mL)に溶解し、−78℃に冷却した。LHMDS(1.0MのTHF溶液、3.50mmol)を滴下添加し、−78℃で30分間攪拌した。1,3−ジヨード−3−ブテン(1.08g、3.5mmol)のTHF(5mL)溶液を、冷却したエノレートにカニューレにより添加し、その後溶液を12時間かけて室温にゆっくり加温した。溶液を飽和NaCO3溶液でクエンチし、EtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)により、淡黄色オイルとしてアルキル化グリコールイミド12H(1.27g、81%)を得た。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.47。
【NMR22】
【0174】
アルキル化TES−保護化N,O−ジメタミド(12Ha)。アルキル化TES−保護化グリコールイミド12H(5.29g、10.0mmol)を、HOAc:THF:H2O(3:1:1、150mL)に溶解し、室温で4時間攪拌した。そして溶媒を真空下に除去した。オイル状残留物をEtOAc(100mL)に溶解し、飽和NaCO3(2×50mL)および食塩水(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。この物質を更には精製せずに引き続く反応に用いた。N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.87g、50.0mmol)をTHF(60mL)に懸濁させ、0℃に冷却した。AlMe3のトルエン1.0M溶液(25mL、50mmol)を滴下添加した。添加を終えた後、氷浴を除去し、溶液を室温で2時間攪拌した。そしてこの溶液を0℃で粗製のアルキル化グリコールイミド(上記調製したもの)のTHF(100mL)溶液にカニューレした。添加を完結した後、氷浴を除去し、混合物を室温で6時間攪拌した。反応物を1Nの酒石酸溶液(100mL)を添加してクエンチし、1時間攪拌した。有機層を除去し、水層をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(20%アセトン/ヘキサン)により、透明オイルとしてN,O−ジメチルアミド12Ha(2.67g、2工程で91%)を得た。40%アセトン/ヘキサン中Rf=0.42。
【NMR23】
【0175】
TES−保護化N,O−ジメチルアミド(13H)。N,O−ジメチルアミド12Ha(2.53g、8.47mmol)のDMF(15mL)溶液に、イミダゾール(0.69g、10.2mmol)続いてTESCl(1.40g、9.32mmol)を添加した。溶液を室温で5時間攪拌した。そして溶液をH2O(150mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化N,O−ジメチルアミド13H(3.39g、97%)を得た。40%アセトン/ヘキサン中Rf=0.66。
【NMR24】
【0176】
TES−保護化メチルケトン(14H)。0℃に冷却したTES−保護化N,O−ジメチルアミド13H(3.27g、7.91mmol)のTHF(80mL)溶液に、メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中3.0M、23.7mmol)を添加した。溶液を0℃で15分間攪拌し、そして飽和NH4Cl溶液(50mL)でクエンチした。有機層を除去し、水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化メチルケトン14H(2.72g、93%)を得た。20%アセトン/ヘキサン中Rf=0.35。
【NMR25】
【0177】
ヒドロキシケトン(17H)。ケトン16H(3.10g、13.0mmol)のCH2Cl2(70mL)溶液を−17℃に冷却し、HMDS(10.0mL、47.4mmol)そしてTMSI(5.5mL、38.6mmol)で順次処理した。得られた黄色懸濁液を5分後室温に加温し、3時間磁気攪拌し、その後反応混合物をEt2O(100mL)で希釈し、そして冷却した飽和NaHCO3(2×50mL)で洗浄した。水層をEt2O(2×50mL)で逆抽出した。合わせたEt2O抽出物をNa2SO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。得られた黄色オイルを更には精製せずに次の工程に使用した。
【0178】
AD−混合−α(16.49g)およびOsO4(1.55mL、0.152mmol)の1:1t−BuOH:H2O(124mL)溶液を0℃に冷却し、粗製のシリルエノールエーテルで処理した。2時間後、反応物を飽和Na2SO3(100mL)でクエンチし、室温に加温し、そして1時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(5:1ヘキサン:EtOAc)により、透明オイルとして17H(1.60g、全48%)を得た。
【NMR26】
【0179】
TES−保護化ヒドロキシケトン(14H)。ヒドロキシケトン17H(1.383g、5.44mmol)のDMF(10mL)溶液を、イミダゾール(0.822g、12.1mmol)およびTESCl(1.00mL、5.95mmol)で処理した。3時間後、反応物をH2O(20mL)で希釈し、EtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をH2O(1×20mL)および食塩水(1×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(20:1(R)5:1ヘキサン:EtOAc)により、透明オイルとして14H(1.72g、86%)を得た。
【0180】
実施例2:還元型にカップリングするためのアシル部位の導入および右翼および左翼を合成するための新規な方法によるデスオキシエポチロンFの合成
他の実施形態において、図1に示すようにおよび本明細書に詳述したように、dEpoFの全合成を行った。特に、使用した合成技術の効果を改良する試みにおいて、有望な抗ガン剤であるdEpoFの新規でかつ改良された全合成を、(スズキカップリングの後にノヨリ還元を行うよりは)既に還元されたC3とスズキカップリングさせるためのアシル部位を用いて開発した。この試みとの関連において、アシルおよびアルキル部位の両方に対する、より収束したおよびモジュラー経路を開発した。新規な合成は、それぞれの工程で強い立体選択性を持って収束したおよびモジュラー性質戦略を特徴としている。主要な中間体を合成することが簡便であるため、大量調製が容易であり、それぞれの合成セグメントにおいて構造上の変更が簡単である。
【0181】
より特異的には、dEpoFのO−アルキル翼の合成のために、ホーナー様縮合により、チアゾール成分と臨界のC15立体化学および(Z)−12,13−アルケン官能基を有するセグメントとを好都合に結合した。O−アシル翼への途中である立体選択的アルドール反応を詳細に調べた。図19に描写するように、遷移状態に影響する要因を微妙に変化させると、立体化学情報を長期に伝達することに顕著な影響があることが示された。これらの研究において(Wu他Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,4505〜4508も参照のこと)、この全ての内容は参照により本明細書に取り込まれるが、アルドール縮合における成分の立体化学的整合性の関わり合いを動力学的レベルで調査した。共有結合形成における分子認識が重要性であるという顕著な例は、反応速度分割により示されてきた。図19に描写するように、O−アシル翼16の合成において、適切な順序でケトアルデヒド19とアセテート20およびアルデヒド11とを立体選択的アルドール反応させると、関連するキラル中心での立体配置を制御しながら必要な炭素単位を組み立てることができると考えられた(図18参照)。初期のアルドール生成物(AまたはB)の立体中心は、このシナリオにおいて、後期のアルドールプロセスによりC−C結合を形成する際のジアステレオ選択性に強く影響すると信じられていた。遷移状態に影響する要因を微妙に変化させると、立体化学情報を長期に伝達することに顕著な影響があることも示した。
【0182】
ポリプロピオン酸領域のSARマップにおいて高い程度の不耐性が見られ、多くの類似体が入手できるために広範な適応可能中間体として、新規なO−アシル翼フラグメントを用いることが出来る。より詳細に記載したように、dEpoFを生体外および生体内での両方で評価すると、本化合物は極めて有望な抗ガン剤活性を示した。
【0183】
上述のような一般的合成法に加えて、本発明は更に、2種の独立した方法によりメチルケトン11を調製する新規な方法を提供する。最初の方法は、C15中心を導入する触媒的不斉酸化方法、および(Z)−アルケン幾何を導入するためのアルキンのヨードホウ素化を含む(図3)。図3に示したように、本発明の1つの実施形態において、プロピン(17)をβ−ヨード−9−BBNと反応させ、得られたビニルボランをメチルビニルケトンに添加し、ケトン18を得た。続いて本化合物をTMSI/HMDSと処理して、2種のシリルエーテルのレジオ異性体19および20の88:12混合物を得た。AD−混合−αを用いて混合物を不斉ジヒドロキシル化を行い、55%収率および87%鏡像体過剰率でヒドロキシケトン21を得た。オスミウムで媒介されるジヒドロキシル化の間、潜在的に弱いヨウ化アルケン官能基が耐えうることができることは注目すべきである。最後に、25のトリエチルシリル化により18が得られ、たった4工程で手順が完結した。
【0184】
本発明の更に他の実施形態において、C15立体配置を確立する不斉アルキル化反応を含む経路(図4)を検討した。炭素−炭素結合形成は、求核剤としてキラルなグリコレートエノレートを用いると効果的であり、必要であった(Z)−2,4−ジヨード−2−ブテン(22)は2−ブチン−4−オールから容易に調製できた。あらかじめ、アルキル化によるよりは「キラルなエノレート」(すなわち、補助のアシル基を有するもの)の酸化により、グリコレートの不斉合成を行った。一般的なタイプ24のグリコレートのアルキル化を含む実施例は、強固なO−保護基を必要とする傾向にあった。よって、これらのアルキル化にシリル保護した24を用いる可能性を調べた。シリル化されたグリコレートの合成は、3工程で23から得られる、公知のPMB誘導体24bを出発物として行った。他の実施形態において、系内での混合無水物の形成を含む1フラスコ方法により、23を数グラムスケールで24aに変換できた。続いて、−78℃でリチオ24aをジヨード22で処理して、所望の25aを単一の異性体(98%以上のジアステレオ選択性)として良好な収率で得た。ある実施形態において、TES官能基を保護化剤として優先的に使用し、24aの不斉アルキル化を数グラムスケールでごく普通に行い、光学的に純粋な25aを得ることができた。TES基を除去した後、ワインレブアミド26aの形成は、キラルな補助基が同時に解離し、続いて保護化およびグリニャール付加により影響を受け、11が得られた。
【0185】
上記模範的な実施形態に記載したように、必要なケトン11を調製した後、完全な左翼成分の調製を行った。特に、図20に示すように、チオオキサミド酸エチル(31)を1,3−ジクロロアセトン(32)と縮合させて、優れた収率で2,4−二置換チアゾール33を得た。そして、Ph2POEtを用いるアルブゾフ反応またはHOPPh3を用いる直接P−アルキル化によるある実施形態において、35は効果がある。LHMDSで処理すると、チアゾール34およびケトン11は円滑に縮合し、単一の幾何異性体として35が得られた。最後に、エステル35をDibal−Hで還元して、アルコール36が得られ、これをTroc基で保護して、所望のO−アルキル部分8を得た。この新規な経路は、10の一次変換を含む従来の手法より極めて短くかつより収束的である。
【0186】
O−アシルフラグメントへの新規な合成経路
定量的にO−アルキル構成要素8をうまく調製したので、O−アシルフラグメント9への経路の開発に興味を移した。前述のように、我々が以前の合成に使用したセグメントを用いると(実施例1参照)、ノヨリ還元の間C15で加溶媒分解の問題が発生する。よって、スズキカップリングの前にC3カルビノール中心を確立することに、多くの改良点が集中した。1つの実施形態において、不斉レフォルマトスキー反応(式1、表1)を実現するという試みを検討した。キラルなアミノアルコール39の存在下、臭化酢酸t−ブチルの「亜鉛酸塩」をケトアルデヒド13に付加反応させた(Soal他J.Chem.Soc.PerkinTrans.,1994,1257、Soal他Chem.Rev.,1992,92,833)。本反応により優れた収率で期待するアルドール付加物が生成し、それゆえ、エナンチオ選択性は合成的に価値があるレベルに達していなかったが(エントリー1および2)、本反応は多くの他の2つの炭素求核剤に適応できると評価される。反応温度を下げるにつれ、エナンチオ選択性は大きく向上するので、反応は効果的ではない転化率に問題ある方法であった(エントリー3)。
【0187】
更に他の実施形態において、酢酸t−ブチルから誘導したキラルなチタンエノレートの反応により、立体制御を行った。文献のプロトコル(Dunthaler他Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1989,28,495)に従い、β−ヒドロキシt−ブチルエステル37の両方のエナンチオマーを高いエナンチオ選択性で良好な収率で調製した(エントリー4および5)。鏡像体過剰率および絶対立体選択性の感覚を、37を対応するMosherエステルに誘導体化することにより決定し、我々のプログラムでの現象により実証した(Dale他J.Am.Chem.Soc.,1973,95,512参照)。
【化156】
【0188】
【表1】
【0189】
高いエナンチオ過剰率で37を得る方法を見出したので、2重の立体区別アルドール反応を検討した(β−ヒドロキシケトン類のアルドール反応の例として、Luke他J.Org.Chem.,1995,60,3013;Evans他Tetrahedron Lett.1993,34,6871、McCarthy他J.Org.Chem.,1987,52,4681)。求核剤として保護化された37を用いるために、両方のエナンチオマーのアルドール付加物を、対応するTESエーテル鏡像異性体38に変換した。反応に関し、同じアルドール反応に38のチタンエノラートを用いた(Evans他J.Am.Chem.Soc.,1990,112,8215)。実際、(S)−38および(R)−38の両方がアルドール縮合し、ジアステレオマー混合物が適切な収率で得られた(図22)。それぞれの反応で得られる主要なジアステレオマーの立体化学は、C8よりもC3の立体配置が、新たに形成されたC6およびC7中心の立体配置に大きな効果を有することを示していた。
【0190】
本明細書に記載した研究の過程において、立体化学情報を長期に伝達するための微妙な変化を検討するために、本明細書に記載したアルドール反応の過程において他の研究を行った。リチオアルコキシエノレートの場合、適合したシリーズを支持する大きな動力学的有利性が示されてきたことを確定した。これらの発見は、立体化学バイアスの長期間転移の他の例に適用できると認められるであろう。これらの結果を議論するために、Wu他Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,4505〜4508を参照のこと。この全体の内容は参照により本明細書に取り込まれる。
【0191】
それゆえ、ある他の実施形態において、引き続く「基質−方向性」および「試薬−制御性」アルドール反応により、C6、C7およびC3での必要な立体配置が得られるという、9への代りの方法を探索した(図22)。
【0192】
この目標に向かって、ケトアルデヒド13をジイソプロピルアセタールとして保護し、得られたケトン49を14とアルドール反応させた。49をLDAで脱プロトン化し、そして14と反応させると、縮合が円滑に進行し、アルドール付加物50と51との4:1混合物が得られた。主要なジアステレオマー50を、フラッシュクロマトグラフィにより極めて容易に分離し、Troc基として保護した。実際、C3がエノールエーテルに相当した初期の場合と異なり、アルドール縮合が完結するという、本ルートに重要な効果があった。さらに、これまでの合成では−120℃よりも−78℃でカップリングが行われているので、反応条件は科学技術的により要求が少ない。
【0193】
図22を参照するように、酸触媒下50bのジイソプロピルアセタール基を加水分解すると、ケトアルデヒド52が得られ、これは第2のアルドール反応のためになる。式1に示すようにグルコースより誘導された補助を用いる同じ「チタノ」t−ブチルエステル法に従い、所望したC3(S)53を高いジアステレオ選択性(dr>20:1)で得た。C3アルコールをシリル基で保護して、O−アシル翼9およびTBS誘導体54が得られ、このスペクトルおよびクロマトグラフ性質は、これらの実験室での他のプログラムから以前に得られた物質と同一であった。
【0194】
そして、図23に示したように、dEpoBの形式的な全合成に、新たに調製した9を利用した。EpoBシリーズ58においてO−アルキルセグメントとβ−アルキルスズキカップリングさせ、59を得た。続いて、59をTESOTfで処理した後、選択的に脱シリル化し、ヒドロキシ酸60を得た。これは我々の以前の合成にてdEpoB(2b)およびEpoB(1b)に誘導した。したがって、これらの研究により明らかに、多くのアルドール反応の立体化学成果およびdEpoBに代わりうる全合成の構成を確立した。アシル部位における「酢酸チタン」を基礎とするC3Sへの経路または以前に行った次期鈴木経路(C3ケト→C3Sヒドロキシ)は、経済性の問題およびスケールアップし易さに依存して利用できる。
【0195】
最終的に、これらの研究結果をdEpoFの全合成に適用した。上記説明したように、本化合物の全合成をより改良することは、臨床評価を前進させるために重要である。
【0196】
図24に示したように、フラグメント8および9をβ−アルキル鈴木プロトコルにより結合し、secoエステル62を得た。t−ブチルエステル62をTESエステルに変換した後、酸触媒による選択的脱シリル化を行い、63が得られ、これをマクロラクトン化した。この点において、スペクトルの相関を詳細に取ると63は以前に合成した中間体と一致することを確認した。我々の以前の合成で使用したのと同様の手順に従い、ヒドロキシ酸63を環化して、全体が保護されたマクロラクトン64を得た。最終的に、TrocおよびTES基を連続的に除去して、12,13−デスオキシエポチロン(2d、dEpoF)を得、これは以前に合成したdEpoFと全ての面で再び一致していることが分かった。
【0197】
dEpoFの合成を完結するとともに、12,13−アルケンでエポキシ化することによりエポチロンF自身(1d、EpoF)の合成も確立した(図25)。合成dEpoFを2,2−ジメチルジオキシラン(DMDO)で処理して、天然の立体化学を有する12,13−エポキシドが形成し、EpoFを得た。分光学的データおよび観察された[α]D(c、MeOH)は、天然のEpoFによく一致していた(Hofle他Angew.Chem.Int.Ed.,1999,38,1971)、[α]D(c、EtOH)。21−ヒドロキシル基はdEpoBの水溶性を2.5倍向上させることも分かった(Swindell他J.Med.Chem.,1992,34,1176)。加えて、更なる官能基化のための中間点として有用であることが分かった。DCCの作用のもと、非保護化dEpoFをアジド酸65と縮合させて、光親和性で標識したdEpoF66を得た。チューブリン−結合アッセイでは、dEpoFはdEpoBの活性を90%維持していることを示しているので、アロイル化誘導体66はチューブリン重合を引き起こさず、それゆえ、チューブリン−結合に効果的なチアゾール領域の微妙な性質が強調された。
【0198】
その抗ガン能を評価するために、全合成dEpoFについてまずは多くの細胞タイプを試験した。表2に示すように、dEpoFは、広範囲の高感度および耐性ガン細胞株に対して高い細胞毒性活性を示した。特に、dEpoFは、MDR細胞株に対して高い有効性と低い交差耐性を維持しており、パクリタキセル、ビンブラスチン、エトポシド、アクチノマイシン、およびアドリアマイシンなどの他の非エポチロン抗ガン剤より確実に優れていた。dEpoFのこれらの特性は、極めて有望な抗ガン剤であるdEpoBの特性に非常に匹敵している。
【0199】
【表2】
【0200】
実施例2のための実験
概要。全ての市販されている物質は、他に断らない限り、更には精製せずに使用した。以下の溶媒を乾燥溶媒システムから得、更には乾燥せずに使用した:THF、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエンおよびベンゼン。事前に精製した乾燥アルゴンガスの陽圧下に全ての反応を行った。1Hおよび13C NMRスペクトルを、それぞれ300または400、および75または100MHzでCDCl3溶液中記録した。E.Merckシリカゲル60 F254プレートで分析的薄層クロマトグラフィを行い、E.Merckシリカゲル60(40〜63μm)またはシグマH−型シリカゲル(10〜40μm)上で、示した溶媒を用いてフラッシュクロマトグラフィを行った。
【0201】
【化157】
化合物25。ケトン22(3.10g、13.0mmol)のCH2Cl2(70mL)溶液を−17℃に冷却し、HMDS(10.0mL、47.4mmol)そしてTMSI(5.5mL、38.6mmol)で順次処理した。得られた黄色懸濁液を5分間かけて室温に加温し、3時間磁気攪拌し、その後反応混合物をエーテル(100mL)で希釈し、そして冷飽和10%NaHCO3(2×50mL)で洗浄した。水層をエーテル(2×50mL)で逆抽出した。合わせたエーテル性抽出物をNa2SO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。得られた黄色オイルを更には精製せずに次の工程に用いた。
【0202】
AD−混合−α(16.49g)およびOsO4(1.55mL、0.152mmol)の1:1 t−BuOH:H2O(124mL)溶液を0℃に冷却し、粗製のシリルエノールエーテル23で処理した。2時間後、反応物を飽和Na2SO3(100mL)でクエンチし、室温に加温し、そして1時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(5:1ヘキサン/酢酸エチル)により、透明オイルとして25を得た(1.60g、全48%)。
【NMR27】
【0203】
【化158】
化合物18。ヒドロキシケトン25(1.38g、5.44mmol)のDMF(10mL)溶液を、イミダゾール(0.822g、12.1mmol)およびTESCl(1.00mL、5.95mmol)で処理した。3時間後、反応物をH2O(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をH2O(1×20mL)および食塩水(1×20mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(20:1から5:1=ヘキサン/酢酸エチル)により、透明オイルとして18を得た(1.72g、86%)。
TES保護化N,O−ジメチルアミド30b(3.27g、7.91mmol)の0℃に冷却したTHF(80mL)溶液に、メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中3.0M、23.7mmol)を添加した。溶液を0℃で15分間攪拌し、そして飽和NH4Cl溶液(50mL)でクエンチした。有機層を除去し、そして水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化メチルケトン18を得た(2.72g、93%)。20%アセトン/ヘキサン中Rf=0.35。;
【NMR28】
【0204】
【化159】
化合物28a。方法A。PMB−保護化イミド28b(9.23g、26.0mmol)の0℃に冷却したジクロロメタン(90mL)溶液に、TiCl4(5.05g、27.3mmol)を添加した。溶液を0℃で5分間攪拌し、その後ジイソプロピルエチルアミン(3.53g、27.3mmol)を滴下添加し、そして1時間攪拌し続けた。反応物を飽和NaHCO3溶液でクエンチし、ジクロロメタン(3×60mL)を用いて抽出した。合わせた有機層を食塩水(1×50mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(70%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとして非保護化グリコールイミドを得た(5.50g、87%)。得られた化合物(4.75g、20.2mmol)のDMF(20mL)溶液に、イミダゾール(1.65g、24.3mmol)続いてTESCl(3.35g、22.2mmol)を添加した。混合物を室温で12時間攪拌した。そして溶液をH2O(200mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(25%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとしてTES−保護化グリコールイミド28aを得た(5.93g、84%)。
【0205】
方法B。機械攪拌機および窒素注入口を装備した2Lの三つ口フラスコに、水素化ナトリウム(60%分散液、8.0g、0.200mol)およびエーテル(400mL)を添加した。この懸濁液に、0℃でグリコール酸(15.21g、0.200mol)を数回に分けて添加した。20分後、トリエチルアミン(30mL、0.215mol)およびTESCl(30.15g、0.200mol)を添加し、混合物を室温で2時間攪拌した。反応混合物を−78℃に冷却した後、ピバロイルクロリド(24.6mL、0.200mol)を注射器によりゆっくり添加し、1時間攪拌し続けた。THF(400mL)中27(17.7g、0.100mol)を含む分離フラスコに、−78℃でn−BuLi(ヘキサン中2.5M、40mL、0.100mol)をゆっくり添加した。0.5時間攪拌した後、混合物を上記調製した懸濁液に激しく攪拌しながらカニューレした。混合物を2時間かけて室温に加温し、10%NaHSO4(500mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、水層をエーテル(200mL×3)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHCO3および食塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮し、そして濾過した。シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/EtOAc=15:1)により精製し、透明オイルとして28aを得た(12.85g、38%)。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.33。
【NMR29】
【0206】
【化160】
化合物29a。TES−保護化グリコールイミド28a(1.11g、3.18mmol)をTHF(20mL)に溶解し、−78℃に冷却した。LHMDS(1.0MのTHF溶液、3.50mmol)を滴下添加し、−78℃で30分間攪拌した。1,3−ジヨード−3−ブテン(26、1.08g、3.5mmol)のTHF(5mL)溶液を、カニューレにより冷却したエノレートに添加し、その後溶液を12時間かけて室温にゆっくり加温した。溶液を飽和NaCO3溶液でクエンチし、EtOAc(3×30mL)を用いて抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)により、淡黄色オイルとしてアルキル化グリコールイミド29aを得た(1.27g、81%)。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.47。
【NMR30】
【0207】
【化161】
化合物30a。アルキル化TES−保護化グリコールイミド29a(5.29g、10.0mmol)をHOAc:THF:H2O(3:1:1、150mL)に溶解し、室温で4時間攪拌した。そして溶媒を真空下に除去した。オイル状の残留物をEtOAc(100mL)に溶解し、飽和NaCO3(2×50mL)および食塩水(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮して、29bを得た。この物質は更には精製をせずに続く反応に使用した。
【0208】
N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.87g、50.0mmol)をTHF(60mL)に懸濁し、0℃に冷却した。AlMe3のトルエン(25mL、50mmol)1.0M溶液を滴下添加した。添加を終えた後、氷浴を除去し、溶液を室温で2時間攪拌した。そしてこの溶液を、0℃で粗製のアルキル化グリコールイミド29b(上記調製した)のTHF(100mL)溶液にカニューレした。添加を終えた後、氷浴を除去し、混合物を室温で6時間攪拌した。1Nの酒石酸溶液(100mL)を添加することにより反応物をクエンチし、1時間攪拌した。有機層を除去し、水層をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(20%アセトン/ヘキサン)により、透明オイルとしてN,O−ジメチルアミド30aを得た(2.67g、2工程で91%)。
【NMR31】
【0209】
【化162】
化合物30b。N,O−ジメチルアミド30a(2.53g、8.47mmol)のDMF(15mL)溶液に、イミダゾール(0.69g、10.2mmol)続いてTESCl(1.40g、9.32mmol)を添加した。溶液を室温で5時間攪拌した。そして溶液をH2O(150mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化N,O−ジメチルアミド30b(3.39g、97%)を得た。
【NMR32】
【0210】
【化163】
2−エトキシカルボニル−4−クロロメチル(チアゾール)、(34)。アミノチオキソ酢酸エチル(12.2g、91.6mmol)および1,3−ジクロロアセトン(13.4g、105mmol)のトルエン(100mL)混合物を2時間加熱還流した。褐色溶液を室温に冷却し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(トルエン−酢酸エチル=9:1)により精製し、淡黄色で粘り気があるオイルとしてチアゾール34を得た(18.1g、96%)。
【NMR33】
【0211】
【化164】
2−エトキシカルボニル(チアゾール)−4−メチルジフェニルホスフィンオキシド、(35)。塩化物34(8.40g、40.8mmol)の塩化メチレン(60mL)溶液に、ジフェニルホスフィンオキシド(9.10g、45.0mmol)、炭酸セシウム(16.3g、50.0mmol)、モレキュラーシーブ(4オングストローム、約0.5g)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウム(150mg、0.40mmol)を添加した。得られた懸濁液を室温で48時間攪拌した。そして反応混合物を飽和NaHSO4水溶液(50mL)を含む分液漏斗に注ぎ入れ、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル−塩化メチレン=1:1)により精製し、僅かに粘稠性のシロップとしてホーナー試薬35を得た(12.48g、82%)。
【NMR34】
【0212】
【化165】
化合物36。ケトン18(5.45g、14.8mmol)およびホスフィンオキシド35(8.20g、22.1mmol)のTHF(15mL)混合物に、−78℃でヘキサメチルジシラジドリチウム溶液(THF中1.0M、18mL)を滴下添加した。初期の淡黄色溶液が徐々に深赤色に変色した。室温で10時間攪拌した後、反応混合物を飽和NH4Cl水溶液(100mL)に注ぎ入れ、エーテル(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHCO3(50mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=40:1から10:1)により精製し、無色オイルとしてエチルエステル36を得た(4.01g、52%)。
【NMR35】
【0213】
【化166】
化合物37。エチルエステル36(4.01g、7.69mmol)のTHF(20mL)溶液に、0℃でDibal−H溶液(CH2Cl2中1.0M、19mL)を添加した。添加後、反応混合物を室温に加温した。2時間攪拌した後、1.0Mロシェル溶液(100mL)およびエーテル(50mL)を反応混合物に添加し、得られた懸濁液を室温で2時間攪拌し、この時点で透明な相が分離してきた。有機相を分離し、水相を更なるエーテル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=5:1)により精製し、透明オイルとしてアルコール37を得た(3.60g、98%)。
【NMR36】
【0214】
【化167】
化合物15。アルコール37(3.40g、7.09mmol)およびピリジン(1.2mL、14.9mmol)のCH2Cl2(20mL)溶液に、0℃でクロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル(1.80g、8.50mol)をゆっくり添加した。30分間攪拌した後、10%NaHCO3(30mL)を添加して反応物をクエンチし、エーテル(30mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を2NのHCl(20mL)、10%NaHCO3水溶液(20mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして濃縮した。シリカゲルカラム(ヘキサン−酢酸エチル=20:1)により精製して、淡黄色オイルとしてTtocエーテル15を得た(3.93g、85%)。
【NMR37】
【0215】
【化168】
1,1−ジイソプロピルオキシ−2,2−ジメチル−3−ペンタノン(50)。ケトアルデヒド19(6.40g、50mmol)のイソプロパノール(100mL)溶液に、オルトギ酸トリイソプロピル(16.7mL、75mmol)およびp−TsOH(951mg、5.0mmol)を添加した。混合物を3時間攪拌した後、食塩水(100mL)に注ぎ入れ、エーテル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、そして真空下に濃縮して、淡黄色液体として50を得た(10.12g、88%)。:
【NMR38】
【0216】
【化169】
(4R,5S,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−5−ヒドロキシ−2,2,4,6−テトラメチル−8−ノン−3−オン(51a)。LDA(15.70mmol)のTHF(20mL)溶液に、−78℃でケトン50(3.29g、14.27mmol)のTHF(15mL)溶液を添加した。混合物を−78℃で0.5時間攪拌し、そして−40℃に加温した。−40℃で0.5時間攪拌した後、−78℃に再び冷却した。そして、アルデヒド11の塩化メチレン溶液(2.2mL、73%、16.36mmol)を添加した。−78℃で1時間攪拌した後、反応物を飽和NH4Cl水溶液(12mL)でクエンチし、室温に加温した。水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(2%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、51a(3.06g、65%)および52a(0.74g、16%)を共に無色オイルとして得た。
【NMR39】
【0217】
【化170】
(4S,5R,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−5−ヒドロキシ−2,2,4,6−テトラメチル−8−ノン−3−オン(52a)。分析値:
【NMR40】
【0218】
【化171】
(4R,5S,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−5−ヒドロキシ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノン−3−オン(51b)。51a(3.00g、9.13mmol)のCH2Cl2(40mL)溶液に、0℃でTrocCl(2.50mL、18.26mmol、2.0当量)およびピリジン(2.95mL、26.5mmol、4.0当量)を添加した。混合物を5時間攪拌した。そして、食塩水(20mL)に注ぎ入れ、CH2Cl2(3×40mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(2%EtOAcのヘキサン溶液)により精製して、51b(4.58g、99%)を得た。:
【NMR41】
【0219】
【化172】
(4S,5R,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノン−3−オン(52b)。51bのための方法に従って、Trocエーテル52b(0.192g、90%)を、52a(0.140g、0.426mmol)、ピリジン(138μL、1.70mmol、4.0当量)およびTrocCl(117μL、0.85mmol、2.0当量)から調製した。:
【NMR42】
【0220】
【化173】
(4R,5S,6S)−3−オキソ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノネナール(53)。51b(4.58g、9.08mmol)のTHF(75mL)および水(23mL)溶液に、p−TsOH(450mg、2.36mmol)を添加した。反応混合物を7時間加熱還流し、そして飽和NaHCO3水溶液(50mL)に注ぎ入れた。水層をEtOAc(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(3%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、53(3.22g、88%)を得た。:
【NMR43】
【0221】
【化174】
(3S,6R,7S,8S)−3−ヒドロキシ−5−オキソ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル,(54)。LDA(7.52mmol)のエーテル(30mL)溶液に、−78℃で酢酸tert−ブチル(0.865ml、6.41mmol)を添加し、−78℃で1時間攪拌した。チタン錯体L−41(8.34mol)のエーテル(90ml)溶液を40分間かけて滴下添加した。−78℃で0.5時間攪拌した後、反応混合物を−30℃に加温し、45分間攪拌し、そして−78℃に再び冷却した。53(2.57g、6.41mmol)のエーテル(15mL)溶液を10分間かけて添加し、混合物を−78℃で2時間攪拌した。5MのTHF水溶液(14mL)でクエンチした後、室温で1時間攪拌し、混合物をセライトプラグにより濾過した。濾液を食塩水(40mL)で洗浄し、水層をエーテル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(7%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、透明オイルとして54(2.95g、89%)を得た。:
【NMR44】
【0222】
【化175】
(3S,6R,7S,8S)−5−オキソ−3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル,(54b)。54a(126mg、0.243mmol)のCH2Cl2(3mL)溶液に、−20℃で2,6−ルチジン(85μL、0.729mmol、3.0当量)およびTBSOTf(62μL、0.269mmol)を添加した。混合物を攪拌し、終夜で室温に加温した。食塩水(5mL)で洗浄し、そして水層をCH2Cl2(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(2%EtOAcのヘキサン溶液)を用いて精製し、54b(110mg、72%)を得た。:
【NMR45】
【0223】
【化176】
化合物16。アルコール54(1.80g、3.48mmol)およびイミダゾール(0.48g、7.05mmol)のDMF(5mL)混合物に、TESC1(0.68g、4.51mmol)を添加した。混合物を室温で2時間攪拌し、水(50mL)に注ぎ入れた。エーテル(30mL×3)で抽出し、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(トルエン−酢酸エチル=20:1)により精製して、無色オイルとしてTESエーテル16を得た(2.12g、96%)。:[α]D−61.7(c1.05,CHCl3)
【NMR46】
【0224】
【化177】
(3R,6R,7S,8S)−3−ヒドロキシ−5−オキソ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル(56a)。54aのための方法に従って、56a(20.8mg、74%)をLDA(0.064mmol)、酢酸tert−ブチル(7.4μL、0.055mmol)、チタン錯体D−41(0.0715mmol)およびアルデヒド55(22mg、0.055mmol)から調製した。:
【NMR47】
【0225】
【化178】
(3R,6R,7S,8S)−5−オキソ−3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル(56b)。54bの方法に従って、TBSエーテル56b(13mg、65%)をアルコール56a(17mg、0.033mmol)、2,6−ルチジン(μL、0.103mmol)、およびTBSOTf(8.5μL、0.037mmol)から調製した。1H NMRおよびTLCの両方とも、他の経路で得られたサンプルと一致していた。
【0226】
【化179】
(4S,5R,6S)−3−オキソ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノネナール(57)。55の方法に従って、アルデヒド57(0.103mg、81%)を52b(0.16g、0.317mmol)、THF(3mL)、水(1mL)、p−TsOH(20mg)から調製した。:
【NMR48】
【0227】
【化180】
(3S,6S,7R,8S)−3−ヒドロキシ−5−オキソ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル、(58a)。54のための方法に従い、アルコール58a(24mg、82%)をLDA(0.064mmol)、酢酸tert−ブチル(7.4μL、0.055mmol)、チタン錯体D−41(0.0715mmol)およびアルデヒド57(22mg、0.055mmol)から調製した。
【NMR49】
【0228】
【化181】
(3S,6S,7R,8S)−5−オキソ−3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル(58b)。54bのための方法に従って、TBSエーテル58b(17mg、65%)を58a(21mg、0.041mmol)、2,6−ルチジン(14μL)、およびTBSOTf(10.5μL)から調製した。1H NMRおよびTLCの両方とも、他の経路から得られたサンプルと一致していた。
【0229】
【化182】
(3S,6R,7S,8S,12Z,15S,16E)−5−オキソ−3,15−ビス(トリエチルシリルオキシ)−17−(2−メチルチアゾル−4−イル)−4,4,6,8,12,16−ヘキサメチル−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)ペンタデカ−12,16−ジエン酸tert−ブチル、(60)。9−BBNダイマー(40mg、0.163mmol)のTHF(1.0mL)溶液に、オレフィン16(100mg、0.158mmol)のTHF(1.0mL)溶液を添加した。室温で2時間攪拌した後、TLC分析は16が完全に消費されたことを示しており、この時点でH2O(30mL)を添加し、残留している9−BBNをクエンチした。ヨウ化ビニル59(73mg、0.158mmol)のDMF(1.5mL)溶液を含む分離フラスコに、Cs2CO3(102mg、0.316mmol)、AsPh3(10mg、0.326mmol)、PdCl2(dppf)(26mg、0.0318mmol)、およびH2O(0.13mL)を順次激しく攪拌しながら添加した。そして、上記調製したアルキルボラン溶液を注射器により素早く添加した。4時間後、反応混合物をエーテル(20mL)に注ぎ入れ、水(2×10mL)および食塩水(8mL)で洗浄した。有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(5%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、淡黄色オイルとして60(110.5mg、72%)を得た。:
【NMR50】
【0230】
【化183】
(3S,6R,7S,8S,12Z,15S,16E)−5−オキソ−15−ヒドロキシ−3−トリエチルシリルオキシ−17−(2−メチルチアゾル−4−イル)−4,4,6,8,12,16−ヘキサメチル−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)ペンタデカ−12,16−ジエン酸tert−ブチル、(61)。エステル60(50mg、0.0517mmol)のCH2Cl2(1.0mL)溶液に、−78℃で2,6−ルチジン(72mL、0.517mmol)およびTESOTf(71mL、0.31mmol)を添加した。混合物を終夜攪拌し、そして室温に加温した。反応物を飽和NH4Cl水溶液(2mL)でクエンチし、CH2Cl2(10mL)に注ぎ入れた。有機層を緩衝剤溶液(pH7.0)で洗浄し、濃縮した。残留物をTHF(0.5mL)に溶解し、そして0℃に冷却した。メタノール性HCl(0.12M、0.5mL)を少しずつ添加し、反応をTLCによりしっかりモニターした。20分後、反応物を飽和NaHCO3溶液(5mL)でクエンチし、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(30%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、淡黄色で粘り気のあるオイルとして61(28.2mg、68%)を得た。
【0231】
【化184】
化合物63。9−BBN−Hダイマー(0.490g、4.02mmol)のTHF(2mL)溶液に、オレフィン16(2.12g、3.35mmol)のTHF(4mL)溶液を添加した。室温で1時間攪拌した後、TLC分析は出発オレフィン16が完全に消費されたことを示していた。水(0.25mL)を上記調製したボラン溶液に添加し、10分間攪拌をし続け、過剰の9−BBN−Hをクエンチした。ヨウ化ビニル15(2.00g、3.05mmol)、(dppf)PdCl2・CH2Cl2(0.250g、0.306mmol)、AsPh3(0.188g、0.614mmol)およびCs2CO3(1.49g、4.57mmol)を含む分離フラスコに、脱ガスしたDMF(2mL)を添加した。そしてアルキルボラン溶液を、0℃でヨウ化ビニル15を含む溶液に激しく攪拌しながら素早く添加した。室温で15時間攪拌した後、反応混合物を10%NaHSO4(30mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHSO4(30mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして濃縮した。SiO2でのフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=10:1)により精製し、淡黄色粘稠性オイルとして63を得た(2.97g、84%)。[α]D−35.6(c.2.10、CHCl3);
【NMR51】
【0232】
【化185】
化合物64。tert−ブチルエステル63(2.86g、2.46mmol)のCH2Cl2(12mL)溶液に、0℃で2,6−ルチジン(0.86mL、7.37mmol)およびTESOTf(0.98g、3.71mmol)を添加した。反応混合物を0℃で0.5時間攪拌し、そして室温に加温した。室温で10時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、1NのHCl(20mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、リン酸緩衝剤溶液(20mL、pH=7)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮した。そして、粗製のTES誘導体をTHF(5mL)に溶解し、0℃で0.1NHClのMeOH溶液(0.5mL)を用いて処理した。さらにメタノール性HClを少しずつ添加し、完結させるためにおよそ1.5mLの0.1NHClを必要とした。反応混合物をリン酸緩衝剤(15mL、pH=7)に注ぎ入れ、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮した。SiO2カラム(ヘキサン−酢酸エチル=1:1)により精製し、無色で粘着性のあるオイルとして酸64を得た(1.78g、73%)。クロマトグラフィのデータと分光学的データとを、あらかじめ合成した化合物でのデータと比較して、64であることを確認した。
【0233】
【化186】
エポチロンF(1d、EpoF)。dEpoF(2d、7.1mg、0.014mmol)のCH2Cl2(1mL)溶液に、−78℃で2,2−ジメチルジオキシラン溶液(CH2Cl2中約0.04M)を添加した。反応混合物を−40℃に加温し、1時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、そして10%Na2S2O3(2mL)および食塩水で洗浄した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1:1)により精製して、薄膜としてEpoF(1d)を得た(4.4mg、60%)。
【NMR52】
【0234】
【化187】
化合物67。アジド酸66(3.8mg、0.016mmol)のCH2Cl2(0.5mL)溶液に、0℃でDCC(3.3mg、0.016mmol)およびdEpoF(7.5mg、0.015mmol)のCH2Cl2(0.5mL)溶液を添加した。2時間攪拌した後、混合物をシリカゲルのショードパッドで濾過し、そして濃縮した。シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)により精製して、透明な粘り気のあるオイルとして67を得た(6.8mg、63%)。:
【NMR53】
【0235】
実施例3:アザ−エポチロン類の合成
本発明のある種の実施形態はマクロラクタム類似体を目的としており(例えば図26参照)、以下の実施例はある種の発明であるアザ−類似体を記述していることが理解されるであろう。
C15−Epi−アザ−dEpoB(1F)。デスオキシエポチロンB(dEpoB)の生体安定性を改良するために、対応するラクタム類似体を合成した。図27。生体内でのエステラーゼ開裂に影響を受けないので、ラクタムの生体安定性が向上した。この合成は、C15−Epi−アザ−dEpoBを全合成した初めての例である。本明細書に記載した方法は、必要なC15−(R)−アザ−異性体の合成にも適応できる。
【0236】
図27に参照するように、1Fの合成は、既に報告されている(R)−ヒドロキシヨウ化ビニル2Fを出発物としている。アジ化水素酸を用いるC15(エポチロン付番方式)アルコールにおけるミツノブの発明により、アジド3Fが得られた。7Eから誘導したエノールエーテルとアジド2とのパラジウム−触媒スズキカップリングにより、アジドエステル4Fが得られた。アジドをトリフェニルホスフィンを用いてシュタウディンガー還元を行い、そして発生したアミンをt−ブトキシカルボニル誘導体として保護化すると、アジド4Fからの全収率52%でエノールエーテル5Fが得られた。続いて、アセトン中化学量論量のp−トルエンスルホン酸を用いてメチルエノールエーテルを加水分解し、82%という満足すべき収率でb−ケトエステル6Fを得た。C−3ケトンの立体選択的還元をノヨリ水素化条件下に行い、56%の収率でβ−ヒドロキシエステル7Fを得た。酸性の水素化条件でも、アミノ−t−ブトキシカルボニル基の早い脱保護(約20%)が起こった。次に、ジクロロメタン中トリフルオロ酢酸を用いてt−Boc−アミンとt−ブチルエステルとを同時に脱保護し、アミノ酸8Fを得た。ジクロロメタン中HATUおよびコリジンを用いてseco−アミノ酸を処理することにより、大環状閉環による環状ラクタムが50%収率で得られた。最後に、亜鉛で媒介されたC7−Troc基の脱保護により、C15−epi−アザ−デスエポキシエポチロンB(1F)が得られた。
【0237】
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載し、そして以下により詳細に記載した方法を用いて、アザ−エポチロン類を調製した。アザ−dEpoB(4a)の全合成に関する結果が最近報告された。本明細書には、アザ−EpoB(2)の全合成を報告し、そして我々自身の生体内比較を基本とする抗ガン剤として価値ある効能を提供する。
【0238】
アザ−EpoB(4a)の全合成が最近達成され、これは12,13−デスオキシエポチロンB(3、dEpoB)の合成で我々が使用した戦略と同様の収束した戦略を基本としていた。これらに沿って、ほぼ同様に複雑なフラグメントを主要な構成要素として使用した(図28)。新しい目標に対応するために、アルキル部位5の調製は新規な構成を必要としたが、dEpoBを我々が以前に合成した際に入手できたアシル部位6は、ポリプロピオン酸ドメインに使用できた。パラジウム触媒βアルキルスズキカップリングにより、2つの主要なフラグメント5および6を結合させた。ルテニウムにより媒介される不斉水素化により、C−3での所望する立体化学が高い選択性で得られた。そして脱保護した後マクロラクタム化して、アザ−dEpoBに直ぐに誘導された。考えられるように、これらのアイディアを実行することはラクタムシリーズについて簡単ではなかった。
【0239】
アルキルフラグメント5を含む必要なアミンは、ホーナー様オレフィン化により生産できたけれども、反応は非能率的であった。オレフィン化反応を回避するために、dEpoB(3、図29)の合成のために使用したアルキルフラグメントを基盤として、C−15アミン(エポチロン付番方式)を導入するためのミツノブ基準方策を開発した。dEpoBの合成に使用したTES−保護化ヨウ化ビニルアルキルフラグメント(15)の反対のエナンチオマー(Sヒドロキシル立体配置の代わりにR)は、最近開発された方法により容易に入手できる。酢酸:THF:水を用いて、シリルエーテル(15)の脱保護が簡便に達成できた。対応するC−15 tert−ブチルジメチルシリルエーテルは、より強い条件下でも脱保護および分解に極めて抵抗性があることは注目すべきである。この研究成果は、より丈夫なtert−ブチルジメチルシリルエーテルを頼りとする代わりに、ヒドロキシル基に対してトリエチルシリル保護を用いると更に有利であることを示した。トンプソンの方法を用いて、遊離のアルコール(16)を対応するアジド(17)に変換した。このプロトコルにより、完全な転化率および最小の脱離生成物でアジドを85%収率で得た。対照的に、標準のミツノブ条件を用いて転移させ、アジドを66%の収率で得た。この反応では、多量の脱離生成物が副生した。次に、トリフェニルホスフィンを媒介としてアジドをシュタウディンガー還元した後、発生したアミンをt−ブチルカーバメートとして保護し、引き続くβ−アルキルスズキカップリングに必要なパートナー(5)を得た。不幸にも、パラジウム触媒β−アルキル鈴木反応は10%の収率であった。本反応が低い収率であったのは、パラジウムにカーバメートが酸化的に挿入した後に分子内でキレート化することにより誘導された安定な中間体が生成するためと考えられる。
【0240】
β−アルキル鈴木反応を円滑にするために、対応するアジド−アルキルフラグメント17を用いてクロスカップリングを行った。満足すべきことに、パラジウム触媒クロスカップリングが円滑に進行し、アジド−エステル19が63%の収率で生成した(図30)。しかしながら、続いてアジド19をシュタウディンガー還元すると、失望することにアミノエステル20が18%の収率で得られ、これは、発生したアミンとβ−ケトエステルとで、分子間的にまたは分子内的にの何れかで、シッフ塩基が生成するためと考えられる。
【0241】
効率を上げるために、β−ケトエステルを一次的に対応するエノールエーテルとしてマスクできることが分かった(図31)。アシルフラグメント6を合成するための最後から2番目の工程は、C2−C3メチルエノールエーテルの加水分解を含んでいるので、この回避策は現実に合成を短くした。意味深いことに、パラジウム触媒β−アルキル鈴木クロスカップリング反応は円滑に進行し、dEpoBの合成を更に改良するために引き続いて導入した結果である、対応するβ−ケトエステルとよりも高収率であった。期待されたように、β−ケトエステルを対応するエノールエーテルとしてマスクすることにより、続くトリフェニルホスフィンにより媒介されるアジド22のシュタウディンガー還元において、98%の収率が得られた。発生したアミンをそのt−ブチルカーバメート(23)として保護した後、β−ケトエステル18を転移加水分解により遊離することができた。
そして、β−ケトエステル18を、修飾ノヨリ触媒を用いたメタノール中でのルテニウム媒介不斉水素化反応に供した(図32)。実際、所望のジオール24が78%の収率で単一のジアステレオマーとして生成した。しかしながら、(チアゾール成分のプロトン化のために)水素化媒体中に酸が必要なため、少量の脱保護化したアミン生成物が得られた。この望ましくない加水分解は、再結晶した触媒を用いることにより、反応速度を向上させ、それゆえに酸性溶液への暴露時間が最小化し、回避した。ジクロロメタン中トリフルオロ酢酸の作用により、t−ブチルカーバメートとt−ブチルエステルとを同時に脱保護して、アミノ酸25を得、これを精製せずに次の環化反応に用いた。ジクロロメタン中HATUを媒介としてマクロラクタン化を行い、90%の収率でTroc−保護化ラクタムを得た。マクロラクタン化に他の溶剤(すなわち、DMF、THF)を用いると、マクロ環化も起こったことは注目すべきである。しかしながら、HATUのテトラメチルウロニウムフラグメントが環状付加物のC3ヒドロキシルに転移することが原因であった副生成物の程度が変わるので、所望の物質となることが制限された。HATUのテトラメチルウロニウムフラグメントが環状付加物のC3ヒドロキシルに転移することが副生成物の原因であることは、後に明白となった。尿素付加物を酸水溶液(酢酸:THF:水)で処理すると、環化生成物が遊離した。超音波の影響下に亜鉛粉末で脱保護を行うと、完全に脱保護された12,13,15−デスオキシ−15(S)−アザ−エポチロンB(4a)が88%の収率で得られた。最後に、−50℃で2,2−ジメチルジオキシランを用いて12,13−オレフィン性結合をエポキシ化すると、単一のジアステレオマーとして全合成したアザ−エポチロンB(2)が得られた。
【0242】
ラクタムシリーズの生物活性を更に深く調べるために、本明細書に記載したように、エピマー化したヨウ化ビニルフラグメントを生成するために、アルキル化用のエナンチオマーのキラル補助を用いることによりC15−(R)鏡像異性体を合成した。そして、対応するラクトンシステムにおいて見られたように、C15で反転する影響に関して、このジアステレオマーを評価した(Harris他J.Org.Chem.,1999,64,8434)。
【0243】
アザ−エポチロン類の生物学的評価
全合成したアザ−エポチロンB(2、アザ−EpoB)、12,13,15−デスオキシ−15(S)−アザ−エポチロンB(4a、アザ−dEpoB)、およびエピマー化12,13,15−デスオキシ−15(R)−アザ−エポチロンB(4b、15−エピ−アザ−dEpoB)を、これらの抗ガン能を評価するために、多くの細胞タイプについて評価してきた。表3に示すように、アザ−EpoBをdEpoBと直接比較すると、我々の基礎である白血病細胞株(CCRF−CEM)において、それぞれ0.0021および0.0095μMと、生体外で僅かに高い能力があることを示していた。しかしながら、アザ−EpoBは、dEpoBと比較して、我々の多種薬剤耐性細胞株(CCRF−CEM/VBL100、CCRM−CEM/VMI、およびCCRF−CEM/タキソール)において、活性が大きく低下していた。加えて、エポチロンB(C12,C13エポキシドを含む)とdEpoB(エポキシドを含まない)とを比較して注目されるように、アザ−dEpoBは、アザ−EpoBを含むエポキシドよりも約10倍能力が低かった。また、15−エピ−アザ−dEpoBは、試験した全ての細胞株において更に低い活性を示した。
【0244】
【表3】
【0245】
そして、アザ−EpoB(2)の生体内評価に興味を移した。最初に、アザ−EpoBの治療学的有効性を、ヒト乳房MX−1異種移植を有するヌードマウスについて調べた(図33)。我々の以前の研究において開発したゆっくりしたIV注入プロトコルに従い、動物実験を行った。6mg/kgの用量により、ガン成長をいくらか阻害することが示されたが、ガンの塊の減少は見られず、処置を中止するとガンの成長能が回復した。高い用量レベル(9mg/kg)では、最大許容用量レベルに近づくにつれ、ガンの大きさが退化せずに、同様の妨害作用が見られた。
【0246】
次に、アザ−EpoBの治療学を、ヒト白血病K562異種移植を有する胸腺欠損マウスについて評価した。
図34に示したように、マウスをアザ−EpoB(6mg/kg)で処置すると、ガン成長が阻害されたが、ガンの大きさは減少しなかった。対照的に、同じマウスをdEpoFより(30mg/kg)で更に処置すると、免除の点でガンの大きさが容易に減少した。
そして、HPLCを基本とする方法を用いてアザ−EpoBの水溶性を試験した。驚くべきことに、ラクタムシリーズはdEpoBよりもおよそ25倍水溶性があると考えられた。この観察および我々のMDR細胞株に対する活性の明らかな欠乏を考慮して、いくつかの我々が事前に調製した類似体の活性を再調査した。類似体の極性およびその性能の間に、明らかな相関が見られ、P糖タンパク質(P−gp)基質として使用した。したがって、ラクトンと比べてラクタムシステムの極性が高いので、アザ−dEpoBは、P−gp受容体によりMDR細胞からより効率的に除去される。
【0247】
要約すれば、アザ−dEpoBを、β−アルキルスズキカップリングおよび続くマクロラクタム化による2つの主要なフラグメントを結合させることを基本とする戦略を用いて、全化学合成により生産した。生体外活性を検討するために、アザ−dEpoBもアザ−EpoBにうまく酸化した。動物試験を容易にするために大量スケール生産に効率的でありおよび受け入れられやすい合成を検証した。従って、アザ−dEpoBはdEpoBと同様の活性を示すことが示されたが、耐性細胞株に対しては効果がなかった。アザ−EpoBは非耐性細胞株においてはdEpoBよりも活性があったが、生体内モデルに拡張すると効果がなかった。
【0248】
実施例3 実験の部
一般手順。特記していない場合は、市販の材料は全て精製せずに使用した。以下の溶媒は乾燥溶媒系から得られ、更なる乾燥をせずに使用した。THF、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエンおよびベンゼン。全ての反応は事前に精製した乾燥アルゴンガスによる陽圧下で行った。1Hおよび13CのNMRスペクトルは、それぞれ400および100MHzでCDC13溶液中で記録した。分析用薄層クロマトグラフィはE.メルクシリカゲル60F254プレートで行い、フラッシュクロマトグラフィは表示した溶媒を使用して、E.メルクシリカゲル60(40〜63μm)またはシグマHタイプシリカゲル(10〜40μm)で行った。
【0249】
【化188】
16の作製。TESで保護されたアルコール15(2.28g、4.92mmol)をHOAc:THF:H2O(3:1:1、50ml)に溶解し、室温で8時間攪拌した。その後、溶媒を真空で除去した。油状残留物をEtOAc(100ml)に溶解し、余分な酸は飽和NaHCO3溶液(50ml)を添加して中和した。有機層を除去し、水層をEtOAc(50ml×3)で抽出した。混合した有機層を飽和NaHCO3溶液(50ml×1)、食塩水(50ml×1)で洗い、(MgSO4)上で乾燥した。溶液をろ過して真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(30%EtOAc/ヘキサン)で、黄色油状のアルコール16(1.71g、99%)が得られた。[α]D+4.9(c 1.0,CHCl3);Rf=0.19,40% EtOAc/ヘキサン。
【NMR54】
【0250】
【化189】
17の作製。アリルアルコール16(1.74g、4.99mmol)をトルエン(30ml)に溶解して0℃に冷却した。ジフェニルホスホリルアジド(1.65g、5.98mmol)を添加し、その後DBU(0.91g、5.98mmol)を添加した。反応混合液を0℃で2時間攪拌した。次に、溶液を25℃に加温してエチルアセテート(100ml)を添加した。有機層を、H2O(30ml×1)、飽和NaHCO3(50ml×1)、食塩水(50ml×1)で洗った。次に、有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。
シリカゲルによるクロマトグラフィ(7.5%EtOAc/ヘキサン)では、淡黄色油状のアジ化物17(1.58g、85%)が得られた。
【NMR55】
【0251】
【化190】
5の作製。THF(3ml)に溶解したアジ化物17(0.074g、0.198mmol)溶液に、トリフェニルホスフィン(0.062g、0.237mmol)を添加した。反応混合物を25℃で24時間攪拌した。次に水(0.014g、0.792mmol)を添加して65℃で4時間反応させた。溶液を冷却し、1NHClで酸性化し、酢酸エチル(30ml×3)で抽出した。次に、水溶液層を1NNaOHで塩基性化して酢酸エチル(30ml×3)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後、真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(5%メタノール/クロロホルム)では、遊離アミン(0.069g、100%)が得られた。
アミンの性状;
【NMR56】
【0252】
上記方法で作製した遊離アミン(0.069g、0.198mmol)をアセトニトリル(2ml)に溶解した溶液に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.065g、0.297mmol)を添加し、次にトリエチルアミン(0.024g、0.238mmol)を添加した。反応物を25℃で1.5時間攪拌した。溶媒を真空で除去した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(15%EtOAc/ヘキサン)では、黄色油状の保護されたアミン5(0.065g、73%)が得られた。
【NMR57】
【0253】
【化191】
22の作製。THF(25ml)に溶解したエノールエーテル21(5.80g、11.22mmol)溶液に、9−BBNニ量体(2.10g、8.63mmol)を添加した。混合液を25℃で1時間攪拌した後のTLC分析では、出発物のオレフィン21が完全に消費されていた。ヨウ化ビニル17(3.22g、8.63mmol)、(dppf)PdCl2CH2Cl2(0.705g、0.862mmol)、AsPh3(0.264g、0.862mmol)、Cs2CO3(4.21g、12.94mmol)の入った別のフラスコに、脱気したDMF(30ml)を添加した。水(5ml)をボラン溶液に加えて攪拌を10分間連続し、余剰の9−BBN−Hを失活させた。次に、激しく攪拌したヨウ化ビニルを含む溶液に、アルキルボラン溶液を速やかに添加した。2時間後、反応混合液を酢酸エチル(300ml)で希釈し、水(250ml×1)、次いで食塩水(100ml×1)で洗い、MgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)では、黄色油状の22(4.56g、70%)が得られた。
【NMR58】
【0254】
【化192】
18の作製。THF(100ml)に溶解した鈴木産物22(4.10g、5.36mmol)溶液に、トリフェニルホスフィン(2.81g、10.71mmol)を添加した。溶液を40℃に19時間加温した。水(2ml)を添加して65℃に4時間加温した。シリカゲル(70g)を添加して溶媒を真空で除去した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(1.5%MeOH/0.5%トリエチルアミンを含有するクロロホルム)では、還元アミン(3.9g、98%)が得られた。[α]D−4.4(c 1.0,CHCl3);Rf=0.30,10%メタノール/クロロホルム(1%トリエチルアミンを含む)。
【NMR59】
【0255】
上記方法で作製したアミン(3.30g、4.48mmol)をアセトニトリル(100ml)に溶解した溶液に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(1.37g、6.27mmol)を添加し、次にトリエチルアミン(0.91g、8.57mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。次に、溶液をEtOAc(100ml)で希釈し、1NHCl(100ml×1)、飽和Na2CO3(100ml)次いで食塩水(100ml×1)で洗い、MgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。
シリカゲルによるクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状の22(2.66g、70%)が得られた。
【NMR60】
【0256】
【化193】
アセトン(9ml)に溶解したエノールエーテル23(0.309g、0.363mmol)溶液に、ρ−トルエンスルホン酸(0.083g、0.436mmol)を添加した。溶液を室温で22時間攪拌した。反応物に飽和NaHCO3を加えて中和し、EtOAc(30ml×3)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後、真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(15%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状のβ−ケト−エステル18(0.250g、82%)が得られた。[α]D−36.8(c 1.0,CHCl3);Rf=0.28,10% EtOAc/トルエン。
【NMR61】
【0257】
【化194】
23の作製。ジケトン18(1.234g、1.48mmol)を、25℃の0.12NHClのMeOH(24.6ml、2.95mmol)溶液に溶解した。次に、溶液をアルゴンガスで30分間スパージした。次に、ルテニウム触媒(0.150g、0.089mmol)を添加して混合液をParr器具に移した。容器をH2で10分間パージし、その後圧力を1200psiに高めた。25℃で18時間経過後、反応物を大気圧に戻し、飽和NaHCO3水溶液(60ml)に注いだ。EtOAc(100ml×3)で抽出後、混和した有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(20%EtOAc/ヘキサン)では白色泡状のヒドロキシエステル24(0.955g、78%)が得られた。
【NMR62】
【0258】
【化195】
24の作製。CH2Cl2(20ml)に溶解したビス−Bocで保護されたアミノ酸(0.738g、0.880mmol)溶液に、トリフルオロ酢酸(10ml)を添加した。溶液を室温で2時間攪拌した後真空で濃縮した。粗物質は精製せずに使用した。
【NMR63】
【0259】
【化196】
Trocにより保護された4aの作製。上で得られた粗混合物をDMF(10ml)に溶解し、CH2Cl2(500ml)で希釈した。次に、HOAt(0.359g、2.64mmol)を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(1.02g、7.92mmol)、最後にHATU(0.359g、2.64mmol)を添加した。この混合液を25℃で16時間攪拌した。次に、反応混合物を水(100ml×1)で洗った。有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。次に粗混合物をHOAc、THFおよび水の混合溶液(3:1:1、30ml)に30分間で溶解した。反応混合液を真空で濃縮し、飽和NaHCO3水溶液で中和し、EtOAc(100ml×3)で抽出した。混和した有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(45%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状のTrocで保護されたアザ−dEpoB(0.479g、79%)、および88%非対称ジヒドロキシル化から、Trocで保護されたC−15−エピ−アザ−dEpoB(0.065g、11%)が得られた。
【0260】
Trocで保護されたアザ−dEpoBの性状。
【NMR64】
【0261】
Trocで保護されたC−15−エピ−アザ−dEpoBの性状。
【NMR65】
【0262】
【化197】
4aの作製。THFとHOAcの混合溶液(1:3、6ml)に溶解したTrocで保護されたアザ−dEpoB(0.038g、0.057mmol)の溶液に、ナノサイズの活性亜鉛をスパチュラの先一杯分添加した。次に、反応混合液を25℃で2時間音波処理した。溶液をろ過して金属亜鉛を除去後真空で濃縮した。次に、残留物をEtOAc(20ml)に溶解して飽和NaHCO3水溶液(10ml)で中和した。水層をEtOAc(20ml×3)で抽出し多。混和した有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(60%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状のアザ−dEpoB(0.025g、88%)が得られた。
【0263】
アザ−dEpoB(4a)の性状。
【NMR66】
【0264】
15(R)−アザ−dEpoB(4b)の性状。
【NMR67】
【0265】
【化198】
2の作製。アザ−dEpoB(0.025g、0.051mmol)をCH2Cl2(2ml)に溶解し、−78℃に冷却した。2,2−ジメチルジオキシラン(0.6M、0.11mmol)を徐々に添加した。反応混合物を−50℃になるまで放置し、1時間攪拌した。ジメチルスルフィド(0.1ml)を−50℃で添加して余剰のDMDOを失活させ、室温まで加温した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(80%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状の完全合成アザ−EpoB(0.018g、69%)が得られた。
【NMR68】
【0266】
実施例4。生物学的研究。
微小管アセンブリーを安定させる天然の分子の中では、パクリタキセル(タキソール(登録商標))が断然最もよく知られ、広く研究され、また最先端で広く使われる癌の化学療法剤で、特に固形癌の治療のために使用される(Landino,L.M.& MacDonald,T.L.(1995)The Chemistry and Pharmacology of Taxol and Its Derivatives,ed.Favin,V.(Elsevier,New York)Chap.7.;Rose,W.C.(1992)Anti.Cancer Drugs 3,311−321;Rowinsky,E.K.,Eisenhauser,E.A.,Chaudhry,V.,Arbuck,S.G.& Donehower,R.C.(1993)Semin,Oncol,20,1−15)。類似の作用機構を有しより近年になって発見された化合物としては、discordermolids(4、5)、eleutherobins(6)、laulimalides(7)およびエポチロン(8〜14)がある。推測されるチューブリンアセンブリーとの結合部位が共通している(15〜18)にもかかわらず、これらの化学構造および/または薬理学上の特性は大きく異なる。
【0267】
関連する他のマイナーな構成要素と並んで、エポチロンAおよびBは粘液菌Sorangium cellulosumから単離されたマクロライドで、南アフリカ共和国のザンビア川沖から採取された(8)。チューブリンからの微小管の形成に対するエポチロン誘導体の影響に関する最近の研究では、16個のエポチロン(10μM)の内13個がEpoBと比較して83〜99%の微小管安定化効果を示した(16)。細胞毒性と観察された微小管安定化効果は相関性があった(10)。
【0268】
薬理学的評価では、一連のエポチロンの中では最も効力が高いEpoBが、高毒性または致死的な用量においても治療効果は低いことが指摘された(19)。試験管内細胞毒性検定ではEpoBより低い評価のdEpoB(Z−12,13−デスオキシエポチロンB)が、EpoBより格段に高い治療効果を示した(19、20)。構造活性相関(SAR)を調べた結果、EpoBの12,13−エポキシ部は宿主に対する毒性と関連するが、抗腫瘍性治療効果にはほとんど貢献しないことが示唆された。
【0269】
本明細書では、先導化合物dEpoB(14)および21−ヒドロキシ−dEpoB(dEpoF)(21)と共に、現在臨床試験中の15−アザ−EpoB(BMS247550)(22)の試験管内および生体内における薬理学的性質を提示する。dEpoBおよびdEpoFは広い抗腫瘍性スペクトルを有し、ヒト白血病または乳腫瘍の異種移植片を移植されたヌードマウスにおいて治癒効果のあることが示されている。dEpoBの予備的毒性試験では、治療用量においては有害作用がほとんどなく、主に胃腸管において限定的な毒性が認められた。
【0270】
結果
ヒト結腸癌HCT−116異種移植片に対する治療効果。
癌化学療法剤の治療効果は、用いた腫瘍モデル、用量および投与方法などの各種要素によって異なる。ヌードマウスにおけるヒト結腸癌HCT−116異種移植片に対しては、dEpoB、dEpoF、パクリタキセルおよびCPT−11は実質的に類似した治療効果を示した(図35)。こうした結果は、本研究で使用される各薬剤の用量および投与経路が適切であることを示唆している。本研究では、体重減および/または死亡率の測定により最大耐用量近くでの治療効果の比較を意図した。
【0271】
ヒト白血病K562異種移植片に対する治療効果。
a.dEpoB、パクリタキセル、アドリアマイシンおよびビンブラスチン間の比較。
図36に示したように、dEpoBは特に、ヌードマウスに移植した、投薬経験のない非MDR慢性ヒト骨髄性白血病のK562異種移植片に対して有効であった。dEpoBでは完全寛解が認められたが、アドリアマイシン、パクリタキセルおよびビンブラスチンは部分的治療効果または寛解効果を認めただけであった。これは、dEpoBが広い範囲の薬剤耐性腫瘍(例えば、VBL、Adrまたはパクリタキセルに耐性の腫瘍)に対してパクリタキセルより優れた治療効果を示したが、非薬剤耐性腫瘍においてはパクリタキセルと同等の効果を示した初期の試験(19、27、28)と対照的である。
【0272】
b.パクリタキセルとdEpoBによる逐次的治療。
dEpoB(30mg/kg、Q2D×3)による単剤投与治療では4週間のK562の消失が認められた。しかし、パクリタキセルによる同様の方法での投与では、部分的治療効果が認められたにすぎない(図37)。後者の群のヌードマウスはその後dEpoBを3サイクル(30mg/kg、(Q2D×3)×3)投与され、その結果880mm3の大きさのK562腫瘍が20mm3未満に縮小した。反復注射の結果尾静脈が傷害を受けたので、それ以後dEpoBによる治療は中止された。
【0273】
c.アザEpoBとdEpoFによる逐次的治療。
アザEpoBの最大耐用量(6mg/kg、Q2D×6)によるK562異種移植片の治療では、腫瘍増殖が顕著に抑制されたが腫瘍の縮小は認められなかった。500mm3近くの大きさの腫瘍を有する同群のヌードマウスは、その後dEpoF(30mg/kg、Q2D×6)による治療を受けた。腫瘍は治療期間中に縮小し、治療の終了後も縮小しつづけた。3週後には遂に腫瘍塊は消失した。
【0274】
ヒト乳腺癌のM−1異種移植片に対するdEpoFの治療効果。
初期の試験で、dEpoBおよびパクリタキセルはM−1異種移植片に対して治療効果があることが示された(19、27および28)。同様の試験をdEpoFで行った。MX−1腫瘍を移植されたヌードマウスを、dEpoFの2種類の用量で治療した(図39)。15mg/kg、Q2D×5、6時間静脈内点滴の用法では、腫瘍増殖は部分的に抑制された。dEpoFのより高い用量(30mg/kg、Q2D×5、6時間静脈内点滴)では、MX−1腫瘍は徐々に縮小し、マウス5体中3体で消失した。
【0275】
CCRF−CEM異種移植片に対するdEpoFおよび15−アザEpoBの治療効果の比較。
図37に示したように、定着状態の良好なCCRF−CEM腫瘍異種移植片(平均腫瘍サイズは約400mm3)を有するヌードマウスを、dEpoB30mg/kgまたは15−アザEpoB6mg/kgにより6時間静脈内点滴、Q2D×6の用法で治療した。15−アザEpoBによる中等度の腫瘍抑制が認められた。しかし、dEpoFは腫瘍を徐々に縮小し、28日目(6回目の投与)にはマウス3体の内1体で腫瘍が消失し、2体では腫瘍残留物が認められるだけであった(図38)。この実験で、対照マウスは体重が増加し続けたが、dEpoFまたは15−アザEpoBで治療されたマウスは、28日目には体重が約10%減少した(図39)。
【0276】
MX−1異種移植片に対するdEpoBおよび15アザEpoBの治療効果の比較。
MX−1腫瘍の大きさが約100mm3の時、アザEpoB4mg/kgまたは6mg/kgのQ2D×6(10〜20日目)投与により腫瘍増殖が低下したが、縮小は認められなかった。更に、Q2D×3(26〜30日目)による投与では、腫瘍の進行が継続してその負荷が大きくなったため、実験動物は屠殺された(図41)。アザEpoB4mg/kgの用量では体重変化はほとんど認められなかったが、6mg/kgの用量では18日目に約3gの体重減がみられ、22日目にはマウス5体中1体が毒性のため死亡した(図42)。MX−1腫瘍の大きさが約120mm3の時、dEpoB30mg/kgのQ2D×6(10〜20日目)投与により当初腫瘍増殖が低下し、後に腫瘍は縮小した(図41)。dEpoBのQ2D×5(26〜34日目)による継続投与では、22日目に腫瘍の5分の1が、38日目に5分の2が、40日目に5分の3が消失した。dEpoBの最終投与から6日目においても、腫瘍の縮小が継続していたことを認めた(図41)。
【0277】
dEpoB30mg/kgのQ2D(10〜20日目)による投与から22日目に体重は約3.5g減少したが、26日目には対照の体重近くまで回復した。Q2D×5(26〜34日目)による第2サイクルの治療が開始したとき、体重は36日目に約4.1g減少し、その後腫瘍の消失がみられた36〜40日目には約2gの体重増が認められた(図41および図42)。
【0278】
各種ヒト腫瘍の異種移植片に対するdEpoBおよびパクリタキセルの治療効果の比較。
ヒト腫瘍の異種移植片を移植されたヌードマウスにおいて、dEpoBおよびパクリタキセルの治療効果が比較された。合計すると、8個の固形癌(肺癌(A549)、乳癌(MX−1)、結腸腺癌(HT−29)、結腸癌(HCT−116)、前立腺癌(PC−3)、卵巣腺癌(SK−OV−3)およびUL3−C)および5個の白血病(T細胞急性リンパ芽球白血病(CCRF−CEM)とそのパクリタキセル耐性亜系統(CCRF−CEM/タキソール、57倍の耐性)およびビンブラスチン耐性亜系統(CCRF−CEM/VBL100、761倍の耐性)、慢性骨髄芽球白血病(K562)ならびに前骨髄球白血病(HL−60))を皮下移植のために使用した(表5)。dEpoB30〜40mg/kgおよびパクリタキセル(タキソール(登録商標))15〜24mg/kgをCremophorとEtOHの混合溶液(1:1)に溶解して、表5に示した投薬スケジュールに従って6時間静脈内点滴として使用した。これらの投与により10〜20%の体重減が認められたが死には至らなかった。特記されていなければ、腫瘍の種類により、治療は10日目から皮下腫瘍が35〜200mm3に達した21日目の間に開始された。腫瘍の大きさと体重は1日おき(Q2D)に記録し、また人道的理由から腫瘍が体重の10%以上に達した時に実験動物は屠殺された。特記無き場合は、対照群を含め各群は3〜5匹の実験動物で構成された。治療期間中における投与群と対照群との比で最小の平均腫瘍サイズを表5に示した。投与群における腫瘍が消失したマウスの比率も表5に示した。試験した3種の薬剤耐性腫瘍(MCF−7/Adr、CCRF−CEM/タキソールおよびCCRF−CEM/VBL100)および白血病K562に対して、dEpoBはタキソールよりもかなり高い(>>)または格段に高い(>>>)治療効果を示した。前立腺癌PC−3および卵巣癌SK−OV−3に対しては、タキソールはdEpoBよりもかなり高い(>>)効果を示した。興味深いことに、他の卵巣腫瘍UL3−Cに対しては、dEpoBはタキソールと同等またはやや高い(≧)効果を示した。dEpoBがタキソールと同等またはやや高い(≧)効果を示した腫瘍は、肺癌A549、乳癌MX−1、CCRF−CEMであり、タキソールがdEpoBと同等またはやや高い効果を示した腫瘍は、結腸腺癌HT−29、結腸癌HCT−116、および白血病HL−60であった。乳癌MX−1と白血病CCRF−CEM腫瘍に対しては、dEpoBおよびタキソールはともに全てまたはほとんどの試験動物において腫瘍を完全に消失させた。白血病CCRF−CEM/タキソール、CCRF−CEM/VBL100およびK562に対しては、タキソールは腫瘍増殖を遅らせたが腫瘍の縮小および消失効果は認められなかったが、dEpoBの場合は全ての試験動物において完全な腫瘍の消失が認められた。
【0279】
動物モデルを使用したdEpoB、dEpoF、EpoB、アザEpoB間または数種常用抗癌剤との治療効果の比較。
dEpoBの治療効果の相対効力をパクリタキセル(タキソール(登録商標))、アドリアマイシン(ADR)、ビンブラスチン(VBL)、カンプトテシン、カンプトサー(CPT−11)、エトポシド(VP−16)、dEpoF、EpoBまたは15アザ−EpoBと比較し、マウス腫瘍1個、ヒト固形癌8個およびヒト白血病5個を使い異なった投与経路(腹腔内、静脈内および静脈内点滴)、および異なった投与スケジュールで実施した21試験の結果をまとめた(表6)。
【0280】
比較は最大耐用量近くの用量で行い、体重減は10〜20%であったが致死例はなかった。全般的に、治療効果の幅と効力はdEpoBが最も優れ、次にタキソール、次に他の癌化学療法剤と続いた。dEpoFはdEpoBと類似の治療効果を示すが、他の常用癌化学療法剤との直接比較はまだ行われていない。EpoBおよびアザEpoBの抗腫瘍効果は中等度であったが、中等度の体重減で死亡例が見られたことから治療閾値幅は狭いようである(参考文献19、表3および4、ならびに本明細書図38および39)。
【0281】
dEpoBとタキソールとの比較をより詳細に表5および図37に示し、HCT−116腫瘍に対するdEpoB、dEpoF、タキソール、CPT−11間の比較を図35に、K562白血病に対するdEpoB、タキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン間の比較を図36に、K562白血病に対する15−アザEpoBとdEpoFとの比較を図38および39に、またMX−1腫瘍に対する15−アザEpoBとdEpoBとの比較を図41および42に示した。
【0282】
薬剤耐性発達の経過。
致死下の濃度の抗腫瘍剤に対してヒト肺癌A549細胞が繰り返し曝露すると、薬剤耐性が発達することがある。本研究では、VBLに対する14.3カ月間の曝露で4848倍の同剤耐性が、パクリタキセルに対する21.3カ月間の曝露で2858倍の同剤耐性が、アドリアマイシンに対する21.3カ月間の曝露で16.3倍のパクリタキセル耐性が、またdEpoBに対する21.4カ月間の曝露で21倍のdEpoB耐性が発達した(図8)。従って、他の抗腫瘍剤と比較すると、dEpoBは薬剤耐性腫瘍細胞に対してより有効である(表4)だけでなく、同剤に対する長期曝露による耐性の発達がより起こりにくい。
【0283】
血漿中のdEpoBの安定性。
ヌードマウスに移植された各種ヒト腫瘍の異種移植片に対してdEpoBが著しい治療効果を示したにもかかわらず、試験管内におけるヌードマウス血漿中の半減期(t1/2)は比較的短く、約20分であった(図44)。予想外にも、HPLCの結果では、dEpoBは試験管内におけるヒト血漿中で3時間以上安定であった(図44)。
【0284】
ビーグル犬におけるdEpoBの毒性および薬理学。
dEpoBの2、6、12および20mg/kgを、静脈内点滴で雄ビーグル犬(11.2〜14kg)に投与した。点滴の量は10分間で1ml/kgで、ハーバードPHD2000ポンプ(ハーバード・アパレータス社)を使用した。dEpoBは、Cremophor3%、エタノール3%、プロピレングリコール40%、および5%グルコース54%で調製した。実験動物は、すなわちCremophorによるアレルギー反応を最小限にするために、30分前にBenadryl5mg/kg、静注、シメチジン5mg/kg、筋注、およびデキサメタゾン1mg/kgで前処理された。
【0285】
dEpoBの2および6mg/kg(40および120mg/m2)では有意な毒性を認めなかった。12mg/kg(240/m2)では、3日目に中等度の下痢(無出血)と体重減(1.3kg)を認めた。体重は2〜3週間で徐々に回復した。白血球(WBC)数はやや減少した(13%)が9日間で回復した。血小板数およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)においては、有意な変化を認めなかった。心臓、肺、腎臓、脾臓、大小腸、肝臓、筋肉、骨髄、リンパ節など28の臓器および組織においては、有意な病理組織上の病変を発見できなかった。dEpoBの用量を更に20mg/kg(400/m2)の静脈内投与に高くした場合、2日目に重度の出血性下痢および脱水症を認め、体重減は2日目には0.9kg、3日目には3.6kgであった。WBCは3日目に0.6k/μlに低下し、4日目にはALTおよびASTが3〜6倍に上昇した。実験動物は全身虚弱、食欲低下、活力低下が認められ、4日後には死亡した。十二指腸から回腸までの腸粘膜には、目視で異常(赤変化)が認められた。小腸には血液の滲んだムチン様粘性物が含まれていた。骨髄の病理組織学的検査では、細胞性の低下を認めた。この致死用量では、陰窩細胞を有する腸粘膜上皮の壊死が最も激しく影響した。
【0286】
ビーグル犬を使用した薬物動態学研究では、dEpoBの6mg/kg(120mg/m2体表面)を10分間の静脈点滴で投与した。5mlのヘパリンを添加した試験管に、15分前から24時間後にかけて間欠的に血液標本を連続して採取した。方法の項で説明したように、dEpoBの血漿中濃度はHPLCで測定した。半減期(t1/2)のα相は1.9時間で、β相は21時間であった(図45)。24時間後の標本採取の終了時点で、dEpoBの血漿中濃度は0.045μg/mlつまり0.092μMであり、組織培養におけるCCRF−CEM細胞の増殖を阻止するdEpoBのIC50値0.0095μMよりもかなり高かった。
【0287】
総括すると、微小管安定化作用が類似しているにもかかわらず、エポチロン類(例えば、EpoA、EpoBおよびdEpoB)はタキサン類(例えば、パクリタキセル)とは自然界の供給源、化学構造、水溶性、Pgp−MDR特性、構造変化に対する耐性、全合成の難易度および抗癌スペクトルの点で異なる。これまで蓄積された結果によると、dEpoBは、試験管内および生体内において特に薬剤耐性細胞または腫瘍に対する効果の点でパクリタキセルよりも優れた薬理学上の特徴を有する(19、29、表4)。
【0288】
EpoBはEpoA、パクリタキセル、dEpoBよりも効果が高いが、ヌードマウスに対する毒性が高く、高毒性の用量においてすらヒト腫瘍の異種移植片を移植されたマウスにおける治療効果は、dEpoBまたはパクリタキセルに比べて低かった(19)。しかし、パクリタキセルはPgp−MDRの格好の基質であり、dEpoBの治療効果が高い多剤耐性腫瘍に対しては効果がない(19、20、28および図35および36)。
【0289】
ヌードマウスにおけるヒト腫瘍異種移植片に対するdEpoB(NSC−703147)の治療効果に関する報告に加え、EpoB(30、31)および15−アザ−EpoB(BMS−247550)(32)の生体内における効果が明らかとなった。従って、同じ設定で試験された、dEpoBと別の化合物(dEpoF)ならびに15−アザ−EpoB、およびタキソール(登録商標)とを比較する。この結果は、dEpoFとdEpoBの治療効果は類似しており、ヌードマウスにおけるヒトK562腫瘍の異種移植片に対して治療効果があることを示している(図36〜39)。dEpoBとdEpoFの治療効果はタキソール(登録商標)(図36および37)または15−アザ−EpoB(図38および39と図41および42)、およびデキソンビジン、ビンブラスチンまたはCPT−11などの現在広く使用されている癌治療剤の一部よりも優れていた(図35)。広い範囲のヒト腫瘍異種移植片に対するdEpoBの高い効果は、試験管内のヌードマウス血漿中におけるdEpoBの半減期が短い(t1/2=15〜20分)事実にかかわらず明らかである(図44)。ヌードマウスに対するdEpoBの静脈内6時間点滴が短い半減期を補った可能性がある。ヒト血漿(図44)およびビーグル犬(図45)におけるdEpoBの長い半減期は、ヒトおよび犬における静脈点滴の必要性を低くする可能性がある。
有用な癌治療剤に必須の特徴としては、癌に対する高い効果だけでなく、宿主特に重要な器官または機能に対して毒性が低いことが必要である(つまり、広い治療閾値または高い治療指数(LD50/ED50))。毒性学的研究から、dEpoFとdEpoBは治療期間中に致死的ではないが23〜29%の体重減を引き起こすが、EpoBまたはアザEpoBによる14〜20%の体重減は致命的になるという1つの重要な知見がもたらされた。更に、dEpoBとdEpoFは死亡をもたらさずに腫瘍を完全に消失させた(図36〜42)が、EpoB(19)またはアザEpoB(図41〜42)は最低限の治療効果が得られた時でも死亡例があった。
【0290】
材料および方法
化学物質。本試験で使用したdEpoB(NSC−703147)(10、14)、dEpoF(21)およびアザEpoB(BMS 247550)(22)は、前述したようにBio−Organic Chemistry Laboratoryで全合成により得た。試験管内試験用には、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、エトポシド(VP−16)、テニポシド(VM−26)、カンプトテシン(CPT)、アクチノマイシンD(AD)、および硫酸ビンブラスチン(VBL)はシグマ社から購入した。上記物質(VBLは生理食塩水)の原液は全て、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒を使用して調製し、実験時に望みの濃度に希釈して使用した。組織培養におけるDMSOの最終濃度は、溶媒による細胞毒性を避けるために0.25%(vol/vol)以下であった。生体内試験用には、dEpoB、dEpoFおよび15−アザ−EpoBをCremophorとEtOHを混合(1:1)した賦形剤に溶解し、その後生理食塩水で希釈して6時間静脈点滴に使用した。Cremophor ELはシグマ社から購入した。パクリタキセルのCremophor/EtOH製剤は臨床用の市販品(ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社)を使用した。パクリタキセル、dEpoBおよびdEpoFの水溶性は、それぞれ約0.6mg/ml、10mg/ml、25mg/mlであった。硫酸ビンブラスチン(VBL、ベルバン、イーライ・リリー社)、エトポシド(VP−16、ベプシド、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社)、カンプトサー(イリノテカンまたはCPT−11、ファルマシア&アップジョン)、およびアドリアマイシン(DXまたはAdr、ドキソルビシン−HCl、アストラ・ファーマスーティカル社)は製造業社による製剤を使用し、生理食塩水で希釈した。
【0291】
腫瘍および細胞系統。
CCRF−CEMヒトT細胞急性リンパ芽球白血病細胞、そのテニポシド耐性亜系統(CCRF−CEM/VM1)、およびビンブラスチン耐性亜系統(CCRF−CEM/VBL100)は、W.T.ベック(イリノイ大学、シカゴ、IL)から入手した。これらの亜系統を、次第に高くなる致死下の濃度(IC50−IC90)にビンブラスチンでは16カ月間、パクリタキセルでは12カ月間、テニポシドでは12カ月間曝露させた(それぞれ、CCRF−CEM/VBL1000、CCRF−CEM/タキソール、CCRF−CEM/VM2と命名された)。各薬剤を含有する新鮮培地を7〜14日毎に補充した。耐性細胞系統は、試験開始時のCCRF−CEM細胞と比較して、ビンブラスチンに対して4308倍の耐性(IC50:0.9743μM)、パクリタキセルに対しては282倍の耐性(IC50:0.339μM)、VP−16に対しては69倍の耐性(IC50:19.8μM)を示した(表1を参照)。A549ヒト肺癌細胞におけるVBL、タキソール、AdrおよびdEpoB耐性の発達の過程でも、同様の手順を用いた(図43を参照)。各ケースで、細胞増殖阻止試験を行う前に、薬剤に曝露させた細胞は新鮮培地に最低4日間再び懸濁させた。卵巣腺癌UL3−C、UL3−B/タキソール、ハムスター肺繊維芽細胞とその亜系統DC−3F、DC−3F/ADIIおよびDC−3F/ADXは、本研究所の細胞銀行から入手した。
【0292】
以下のヒト癌細胞は、アメリカ基準菌株保存機構(ATCC、ロックビル、MD)から入手した。乳癌(MX−1)、乳腺癌(MCF−7)、卵巣腺癌(SK−OV−3)、肺癌(A549)、結腸腺癌(HT−29)、結腸癌(HCT−116)、前立腺癌(PC−3)、慢性骨髄芽球白血病(K562)および前骨髄細胞白血病(HL−60)。
【0293】
実験動物
nu/nu遺伝子をもつ無胸腺ヌードマウスを全てのヒト腫瘍異種移植に使用した。異系交配させたSwiss家系のマウスを、Charles River Laboratoriesから入手した。体重22g以上、8週齢以上の雄マウスをほとんどの試験で使用した。薬剤は尾静脈から6時間の点滴により投与した。各マウス個体は、薬剤投与のためにファルコンの有孔ポリプロピレンチューブ拘束器に閉じ込めた。腫瘍容積は、長さ、幅、高さ(または幅)をカリパスで測定して評価した。マルチトラック付きプログラム式ハーバードPHD2000注射ポンプ(ハーバード・アパレータス)を静脈点滴に使用した。一般的には、Cremophor/EtOH(1:1)に溶解した各薬剤の点滴量は、6時間点滴の場合100μl+生理食塩水2.0mlであった。動物実験は全て、国立衛生研究所の「実験動物の飼育および利用ガイド」の指針、およびメモリアル・スローン−ケタリング癌センター施設動物飼育および利用委員会の認定したプロトコールに従って行った。腫瘍移植動物の人道的扱いに関するこの委員会の方針通り、マウスは腫瘍が全体重の10%以上になった時点で安楽死させられた。
【0294】
細胞毒性検定。
細胞は初期密度2〜5×104細胞/mlで培養した。これらは、37℃の5%CO2、加湿空気中で、ペニシリン(100ユニット/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)(GIBCO/BRL)、および5%熱不活化ウシ胎仔血清が含まれたRPMI培地1640(GIBCO/BRL)で維持された。単層で増殖している固形腫瘍細胞(例えば、MCF−7/Adr)に関しては、薬剤の細胞毒性は、Skehan他(23)が記載した細胞蛋白含量測定用のスルホローダミンB法により96ウェル微量定量プレートを使用して測定した。懸濁液中で培養された細胞(例えば、CCRF−CEMおよびその亜系統)に関しては、細胞毒性の測定は96ウェル微量定量プレートを使用して、2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−5−カルボキサニリド−2Hテラゾジウム水酸化物(XTT)−ミクロ培養テトラゾニウム法(24)を2回繰り返して行った。この両者の方法では、各ウェルの吸光をミクロ平板リーダー(EL−340、バイオテック社、バーリントン、VT)で測定した。1回の試験で、試験薬剤を6または7種の濃度で試験した。用量−効果関係データは、既に記載したコンピュータ・プログラムを使用して、50%効果量プロット(25)により解析した。
【0295】
HPLC分析
dEpoB(0.05〜20μg/ml)を含むヒト血漿またはヌードマウス血漿(300μl)に30μlのメタノールを加えて2分間混合し、その後300μlのメタノールを加えた。遠心分離による上清を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で使用した。ノバパックC18カラム(15cm)を使用し、0.8%トリエチルアミンおよび0.2%リン酸の入った50%アセトニトリル/水を移動相とした。250nmにおけるUV吸光度を測定した。
【0296】
試験管内における薬剤耐性の発達。
ヒト肺癌A549細胞を、14.3〜21.4カ月間、繰り返しIC50〜IC90の濃度の抗癌剤(dEpoB、パクリタキセル、ビンブラスチンまたはアドリアマイシン)に曝露させた。数週毎に細胞を採取して用量−効果関係を解析し、IC50値を無処理の親細胞のIC50値と比較して耐性程度を測定(SRB蛋白質染色検定を使用)した。細胞系譜の増殖には、トリプシン処理/洗浄細胞を使用した。薬剤含有新鮮培地に加える薬剤濃度(新規IC50濃度の1〜2倍)は、細胞の曝露を継続するため毎週高くしていった。
【0297】
異種移植片試験。
ヒト腫瘍細胞(5×106)または腫瘍組織(30〜50mg)をnu/nuマウス(Charles River Laboratories、ウィルミントン、MA)皮下に移植した。特に断らない限り、腫瘍が特定の大きさに成長した時点で、6時間静脈点滴を1日置きに5回の投与を開始した。腫瘍容積は、カリパスで寸法を3カ所(長さ、幅および高さまたは幅)測定して求めた。体重変化および致死性は1日置きに調査した。
【0298】
以下の参考文献が、実施例4において引用されている。
【参考文献】
【0299】
【表4】
【0300】
【表5】
【0301】
【表6】
【0302】
実施例5。追加の生物学的データおよび類似体の合成
動物血漿中のdEpoFの安定性。ノバパックC18、3.9×300mmカラムを使用し、移動相として0.01%のトリエチルアミンを含む50mMリン酸ニ水素カリウムと混合した50%アセトニトリルを使用し、流速0.8ml/分で行うHPLC法が樹立されている。dEpoFは波長260nmで測定され、約10分間の保持時間を有する。血漿安定性試験はPel−Freeze社から購入したマウス血漿およびイヌ血漿、およびMSKCCの血液センターから購入したヒト血漿で行う。少量のdEpoFを50%メタノール/水に溶解して500μg/mlとする。20μl分を2mlの血漿に加えて最終血漿濃度を5μg/mlとする。血漿標本を37℃に保った。その時点で200μlの血漿を取り出し、400μlのメタノールに添加して血漿蛋白質を沈殿させる。20μlの上清をそのままHPLCで分析した。市販の凍結マウス血漿単独ではdEpoFの半減期は約1時間で急速に消失するが、イヌおよびヒト血漿中では安定である。
【0303】
以下の実験は図7に示した化合物に関する。
トシラート(5)。CH2Cl2(0.2ml)に溶解したdEpoF(4.2mg、0.0083mmol)およびピリジン(0.1ml)溶液に、ρ−トルエンスルホニルクロリド(2.4mg、0.013mmol)を0℃で添加した。この溶液を1時間攪拌したときのTLC分析では、反応は少々進行していた。更に、ρ−トルエンスルホニルクロリド(1.0mg)と4−ジメチルアミノピリジン(0.1mg)を添加し、攪拌を0.5時間継続した。次に、反応混合物をEtOAc(5ml)で希釈し、1NHCl水溶液(2ml×2)、NaHCO3(2ml)、NaCl(2ml)溶液の順で洗い、MgSO4上で乾燥後濃縮した。シリカゲルカラム(40%EtOAc−ヘキサン)による精製で、粘着性油状の純粋トシラート5(4.1mg、75%)が得られた。
【NMR69】
【0304】
ヨウ化物(6)。21−トシラート−dEpoB(5、2.0mg)のアセトン(HPLC級試薬、0.45g)溶液にNaI(5mg)を添加した。15分間の攪拌後、飽和Na2S2O3水溶液2滴を添加して微量のI2を不活化し、攪拌を3分間継続した。トルエン(0.5ml)を添加した後窒素ガスでアセトンを蒸発させた後、残留物を直接シリカゲルカラム上に載せた。ヘキサン−EtOAc(4:1)による溶出の結果、淡黄色油状の21−ヨード−dEpoB(6、1.5mg)が得られた。
【NMR70】
【0305】
dEpoB(2または7)。21−ヨード−dEpoB(6、約0.15mg)のHMPA(0.15ml)溶液に、NaBH3CN(5mg)を添加した。反応の進行を追跡するために、少量の反応混合液を水とエーテルに分画し、エーテル層をTLCに使用した。TLC分析によると、反応は3.5時間で終了した。水(3ml)で不活化した後、反応混合液をヘキサン−CH2Cl2(2:1、2ml)で3回、ヘキサン−トルエン(2:1、2ml)で1回抽出した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(50%エーテルのヘキサン溶液から純粋なエーテル)精製の結果、望みのdEpoB(2b、約0.05mg)が得られた。dEpoBの同定は、標本のクロマトグラフィおよび分光分析結果を既存のデータと比較して行った。
アルデヒド(8)。dEpoF(10.0mg、0.0197mmol)のCH2Cl2(0.5ml)溶液に、二酸化マンガン(活性化済み、14mg、0.16mmol)を添加した。室温で2時間攪拌後、混合液を小さいシリカゲルカラムパッドでろ過した。ろ液を濃縮して、粘凋、無色油状のアルデヒド8(8.9mg、89%)を得た。
【NMR71】
【0306】
21−オキソ−dEpoBの生物学的データ。
表4に示したように、21−オキソ−dEpoBの相対効力を試験した。高度耐性(ビンブラスチンに2766倍耐性)のMDS細胞を使用した。表に示したように、dEpoFはdEpoBよりわずかに効力が低く、21−オキソ−dEpoBはdEpoBよりも3.7倍効力が低くdEpoBと同様の弱い薬剤耐性を示した。具体的には、MDR CCRF−CEM/VBL細胞において、dEpoFの効力はdEpoBよりも4.5倍低く、21−オキソ−dEpoBの効力はdEpoBよりも5.1倍低い。(IC50 CCRF−CEM/VBL)/(IC50 CCRF−CEM)比を使用すると、dEpoBは8.6倍、21−オキソ−dEpoBは11.9倍、dEpoFは33.6倍の耐性であった。
【0307】
【表7】
【0308】
実施例6。新規合成法によるジオキサランの合成(図46および47)
C12エチルジオキサランdEpoB(C12−Diox−dEpoB)の合成は、既知のTBDPSで保護されたアルキン1から始まる。化合物1はB−ヨード−9−BBNによるヨード−ホウ酸処理を受ける。生じるビニルボランは、1位と4位にメチルビニルケトンを付加して78%の収率でケトン2を産生する。シリル基はHF−ピリジン処理で取り除かれ第1アルコール3を産生する。TBDPSエーテルは後者の段階の合成と適合性がないので、この過程が必要であることがわかった。この時点では、熱力学的エノールエーテルはTMSIおよびHMDSにより95%の収率で約9:1の比率(熱:力学)で産生される。第1アルコールは反応の間TMSエーテルとして同時に保護される。水酸基の不斉導入は、第1シリル基の加水分解および生じるジオールのビスTES誘導体としての保護の後、Sharplessジヒドロキシル化法で化合物4を全収率56%で産生することにより達成される。ホスフィン酸化物5およびケトン4による効率的なホルナーオレフィン化(86%)により、ヨウ化ビニルセグメントに最終的な炭素−炭素結合が形成される。最後に、慎重に管理された条件下で、2%酢酸のメタノール溶液を使用して0℃で最初のTESが取り除かれ、生じるアルコールはTrocカーボネートとして再び保護され化合物8を産生する。
【0309】
合成の重要な工程には、ヨウ化ビニル8とポリプロピオネート9の結合と完全に合成された炭素骨格の形成が含まれる。この過程は、鈴木交差共役を使用して化合物10を77%の収率で産生することで達成される。その後、tert−ブチルエステルはTESOTf処理により脱保護され、生じるシリルエステルとC15シリルエーテルは希塩酸のメタノール溶液処理により同時に加水分解される。その結果生じるseco−酸は、Yamaguchi環化を受け、71%の収率でマクロラクトン12を産生する。Trocカーボネートは両者とも金属亜鉛の酢酸溶液で取り除かれ、68%の収率でジオール13を産生する。第1アルコールの選択的酸化はTEMPO/ヨードベンゼンジアセテートで達成され、C7酸化の徴候は認めない。エチレングリコールアセタールは、ビス(トリメチルシリル)エチレングリコールと触媒性TMSOTfを使用してノヨリの方法で合成した。最後に、粗産物はHF−ピリジンで脱シリル化され最終産物15を産生する。この方法でこれまでに50mgの最終産物が生産されて、高度な生体内生物学的試験を支えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、アシル・セクターの合成にアルドールカップリング反応を使用してエポチロンおよびその類似体を合成するためのモジュラープランを示す図である。
【図2】図2は、スズキカップリング、ノヨリ還元およびマクロラクトン化を経由したデオキシエポチロンFの合成を示す図である。
【図3】図3は、試薬および条件が(a)i)9−BBN−I、ヘキサン、ii)メチルビニルケトン、iii)3N NaOH、トルエン、100℃、65%、(b)TMSI−HMDS、CH2Cl2、−20℃から室温、(c)1モル%OsO4、AD−mix−α、MeSO2NH2、t−BuOH−H2O(1:1)、2段階について55%、(d)TESCl、イミダゾール、DMF、85%である、ケトン11への触媒による非対称径路を示す図である。
【図4】図4は、試薬および条件が(a)i)TiCl4、CH2Cl2、DIPEA、87%、ii)TESCl、イミダゾール、DMF、84%、(b)i)グリコール酸、TESCl、NaH−TEA、エーテル、0℃、その後、t−BuCOCl、−78℃、ii)n−BuLi、−78℃から室温、38〜41%、(c)LHMDS、−78℃、THF、81%、(d)AcOH:H2O:THF(3:1:1)、86%、(e)i)CH3ONHCH3、AlMe3、CH2Cl2、ii)TESCl、イミダゾール、DMF、88%、(g)MeMgBr、0℃、93%でケトン11への立体選択性のアルキル化径路を示す図である。
【図5】図5は、ある官能化エポチロン類似体の合成と利用を示す図である。
【図6】図6は、21−ヒドロキシ−デオキシエポチロンBから21−オキソ−デオキシエポチロンBへの変換を示す図である。
【図7】図7は、ある21−官能化12,13−デオキシエポチロンB類似体の合成を示す図である。
【図8】図8は、増進した水溶性を提供するある両性イオンの合成を示す図である。
【図9】図9は、ある本発明の化合物のペプチドへの共役を示す図である。
【図10】図10は、ある炭水化物−エポチロン共役体の合成を示す図である。
【図11】図11は、直接C−C結合で接合したある炭水化物−エポチロン共役体の合成、およびその他のエポチロン類似体を示す図である。
【図12】図12は、あるエポチロン二量体の合成を示す図である。
【図13】図13は、デンドリマーおよびポリマー上に多数存在する本発明のエポチロンを示す図である。
【図14】図14は、生分解可能なポリマーに結合した本発明のあるエポチロンの合成を示す図である。
【図15】図15は、ある本発明の水溶性エポチロン誘導体の合成を示す図である。
【図16】図16は、チアゾリル部分7Gの合成を示す図である。
【図17】図17は、保護された環化前駆体13Gcの合成を示す図である。
【図18】図18は、dEpoF(2Gd)の合成を示す図である。
【図19】図19は、連続的なアルドール反応によるO−Acyl Wingの合成設計を示す図である。
【図20】図20は、試薬および条件が(a)トルエン、110℃、2時間、96%、(b)HOPPh2、Cs2CO3、cat.TBAI、CH2Cl2、室温、48時間、82%、(c)LHMDS、THF、−78℃、52%、(d)2.5 eq Dibal−H、CH2Cl2、0℃、98%、(e)Cl3CCH2OCOCl、ピリジン、CH2Cl2、86%で、ホーナー縮合を経るO−Alkyl wingの合成を示す図である。
【図21】図21は、TESエーテル対掌体38のアルドール縮合を示す図である。
【図22】図22は、試薬および条件が(a)CH(Oi−Pr)3、iPrOH、cat.TsOH、88%、(b)LDA、−78℃、85%、46:47=4:1、(c)TrocCl、ピリジン、CH2Cl2、0℃、99%、(d)H2O/THF、cat.TsOH、88%、(e)THF、89%、dr>20:1、(f)TBSOTf、2,6−ルチジン、CH2Cl2、−78℃、81%、(g)TESCl、イミダゾール、DMF、96%で、O−Acyl Wingへの新規な合成径路を示す図である。
【図23】図23は、試薬および条件が(a)i)9−BBN−H、THF(ii)PdCl2(dppf)、AsPh3、DMF−THF−H2O、室温、2時間、72%、(b)TESOTf、2,6−ルチジン、CH2Cl2、−78℃から室温、8時間、(ii)HCl−CH3OH、THF、0℃、69%で、dEpoBの全合成を示す図である。
【図24】図24は、試薬および条件が(a)i)9−BBN−H、THF(ii)PdCl2(dppf)、AsPh3、DMF−THF−H2O、室温、8時間、89%、(b)TESOTf、2,6−ルチジン、CH2Cl2、−78℃から室温、8時間、(ii)HCl−CH3OH、0℃、78%、(c)2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド、(C2H5)3Nその後4−DMAP、トルエン、低速添加3時間、60〜70%、(d)Zn、AcOH−THF、室温、1時間、90%、(e)HF−ピリジン、THF0℃から室温、91%で、dEpoFの全合成の完結を示す図である。
【図25】図25は、EpoFおよび光アフィニティー標識したdEpoFの合成を示す図である。
【図26】図26は、あるアザ類似体を示す図である。
【図27】図27は、C15−エピ−アザ−デオキシエポチロンBを調製するための合成径路を示す図である。
【図28】図28は、スズキカップリング、ノヨリ水素化およびマクロラクトン化を介したアザ−dEpoBの合成を示す図である。
【図29】図29は、ヨウ化ビニル5とアシル・セクター6のスズキカップリングを示す図である。
【図30】図30は、アジド断片とのスズキカップリングを示す図である。
【図31】図31は、ヨウ化ビニルアジド17とメチルエノールエーテル21とのスズキカップリングを示す図である。
【図32】図32は、アザd−EpoBの合成を示す図である。
【図33】図33は、C15−アザ−EpoBによる処理の後の、MX−1腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図34】図34は、6mg/kgのC−15−アザ−EpoB、Q2D×6および30mg/kgのdEpoF、Q2D×6(静脈注射6時間)の後の、ヒト白血病K526腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図35】図35は、ヒト結腸癌をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図36】図36は、ヒト白血病K562の異種移植片をもつヌードマウスのdEpoB、タキソール、アドリアマイシン、およびビンブラスチンによる治療効果を示す図である。
【図37】図37は、 ヒト白血病K562の異種移植片をもつヌードマウスのdEpoBとタキソールによる治療効果を示す図である。
【図38】図38は、15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理(静脈注射6時間)の後の、CCRF−CEM腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図39】図39は、15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理(静脈注射6時間)の後の、CCRF−CEM腫瘍をもつヌードマウスの体重を示す図である。
【図40】図40は、dEpoF(静脈注射6時間(Q2D×5))の後の、MX−1をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図41】図41は、C−15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理の後の、MX−1腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図42】図42は、C−15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理の後の、MX−1腫瘍をもつヌードマウスの体重を示す図である。
【図43】図43は、ヒト肺癌A549に対する抵抗性を示す図である。
【図44】図44は、血漿内での安定性(マウスvsヒト)を示す図である。
【図45】図45は、6mg/kgの静脈注射(10分間)の後の、イヌでのdEpoBの薬物動態を示す図である。
【図46】図46は、C12エチルジオキサレンヨウ化ビニルの合成を示す図である。
【図47】図47は、ここに述べた新規な方法論を使用するC12環状アセタールの合成を示す図である。
(優先権の情報)
【発明の属する技術分野】
本発明は、35 U.S.C.§119(e)の下で、参照によってその全容がここに組み込まれている「Synthesis of Epothilones,Intermediates Thereto and Analogues Thereof」という表題で2000年3月1日に出願された同時係属仮出願60/185,968号、および「Synthesis of Epothilones,Intermediates Thereto and Analogues Thereof」という表題で2000年11月30日に出願された60/250,447号に対する優先権を主張するものであり、参照によってその全容がここに組み込まれている、それぞれ1998年2月25日、1998年7月9日、および1998年8月24日に出願された米国仮特許出願第60/075,947号、60/092,319号、および60/097,733号に基づき、1999年2月24日に出願された米国特許第09/257,072号の一部継続出願であり、参照によってその全容がここに組み込まれている、それぞれ1996年12月3日、1997年1月14日、1997年5月22日、1997年5月29日および1997年8月13日に出願された米国仮特許出願第60/032,282号、60/033,767号、60/047,566号、60/047,941号および60/0,55,533号に基づき、1997年12月3日に出願された米国特許第08/986,025号の一部継続出願である。さらに本出願は、参照によってその全容がここに組み込まれている「Synthesis of Epothilones,Intermediates Thereto and Analogues Thereof」という表題で2000年3月1日に共に出願された米国特許出願に対する優先権を主張するものである。
【0002】
(政府の支援)
本研究は、National Institute of Healthからの補助金CA−28824,25848,CA−08748,CA−39821,CA−GM−72231,GM−18248,CA−62948,F32CA81704、及びAIO−9355、並びにNational Science Foundationからの補助金CHE−9504805によって支援された。さらに本研究は、Chul Bom Lee(U.S.Army,Grant DAMD 17−98−1−8155)、Shawn J.Stachel(NIH,Grant F32CA81704);およびMark D Chappell.(NIH,Grant,F32GM199721)に対する博士号取得後補助金によって支援された。したがって米国政府は、本発明において確かな権利を有するものとする。
【0003】
【従来の技術】
(発明の背景)
エポチロンは、マイコバクテリウム属Sorangium cellulosumから単離した、天然に存在する細胞毒性マクロライドの1ファミリーである。タクソイドの構造とは大きく異なる構造を有するにもかかわらず、パクリタクセル(Taxol(登録商標))と類似なエポチロンは、微小管アセンブリを安定化させることにより細胞分裂を阻害することを含み、ひいては細胞死をもたらす、類似のメカニズムによって機能するようである(Bollag他Cancer Res.1995,55,2325)。現在パクリタクセルは、第一線の化学療法剤として使用されている。しかしながら、その治療指数、および水に不溶であるために製剤が困難であるこという懸念は障害である。
比較すると、エポチロンは、より高い治療プロフィールおよび増大した水溶性を享受しており、このため魅力的な治療剤である。具体的には、エポチロンには、多剤耐性腫瘍細胞に対して著しい効能があることが証明されている。さらに、パクリタクセルと比べて増大した水溶性は、エポチロンの製剤化能力にとって有用である。天然に存在する化合物、エポチロンB(以下のスキーム1中の1b,EpoB)は、このファミリーの最も効力のあるメンバーであることが分かっているが、これは少なくとも異種移植マウスでは、厄介なほど限られた治療指数を残念ながら有する(Su他Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36,1093;Harris他J.Org.Chem.1999,64,8434)。
【0004】
【化50】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
エポチロンBの治療指数が限られているにもかかわらず、エポチロンの著しい臨床潜在力は、本発明者等による、エポチロンの細胞毒性および生体内での抗腫瘍効力を調べるためのいくつかの合成および治療研究の誘因となっている(Balog他;Angew.Chem.Int.Ed.1996,35,2801;Su他Angew.Chem.Int.Ed.1997,36,757;Meng他J.Am.Chem.Soc.1997,119,10073を参照のこと)。これらおよび他の研究の行程中において、12,13−デオキシエポチロンB(2b,dEpoB)は、エポチロンB(1b,EpoB)よりも有望な治療プロフィールを示すことが近年判明している。具体的にはdEpoBが、毒性用量レベルの低下のために、エポチロンBと比べてより広い治療範囲を示すことが分かっている(Danishefsky他Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1998,95,9642)。さまざまなマウス・モデルに基づく生体内での実験は、dEpoBが著しい治療効力を有し、異種移植片中のさまざまな感受性および耐性腫瘍に対して本質的に治癒力があることを一貫して証明している。その印象的な生体内でのプロフィールのために、dEpoBには、イヌにおける毒性評価を経て、抗ガン剤としてのその利用を想定した、ヒトでの試用の期待が高まっている。
【0006】
エポチロンの治療効力に基づき、エポチロンの他の構造変異体の発見および単離に関する関心が依然として存在している。近年、エポチロンEおよびFが発酵から単離されており、これらは21−ヒドロキシル基を有する(Nicolaou.他Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1998,37,84;Hofle In GBF Annual Report;Walsdorff,J.−H,Ed.;GBF:Braunschweig,1997,p. 91)。これらの化合物のSAR研究によって、C21にヒドロキシル官能が存在することにより、生物学的活性が大幅に低下することはないことが示唆される(Hofle他Angew.Chem.Int.Ed.1999,38,1971)。製剤に由来するパクリタクセル化学療法の相当なリスクを考慮すると、追加のヒドロキシによって水溶性が増大した化学療法剤が提供され、結果として製剤性能を大幅に改善しうる点で、この特徴は非常に有用である。さらに、21−ヒドロキシル基は容易に入手できる第1アルコールを表すので、さらなる合成用の分子ハンドル(handle)としてそれを使用することも可能であろう。
【0007】
明らかに、C21に官能性ハンドルを有するという潜在的な利点の点で、本発明人による12,13−デオキシエポチロンの優れた治療プロフィールの認識に基づいて、新規な合成法を開発してエポチロンの12,13デオキシ、21−ヒドロキシル類似体への容易なアクセスを可能にすることが望ましいであろう。望ましい21−ヒドロキシル類似体へのアクセスを可能にするだけでなく、他の有用な類似体、好ましくは20−または21−位において官能化された類似体を含めたデオキシエポチロンの類似体、またはアザ類似体、およびこれらの誘導体へのアクセスも可能にする、効率の良い方法を開発することも望ましいであろう。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(発明の概要)
重要なことに、本発明は新規なエポチロンの類似体、およびそれを合成するための方法を提供する。一態様において本発明は、以下の構造を有する化合物を提供する。
【化51】
上式でMはNHまたはOであり、
CYはアリールまたはヘテロアリール部分であり、
qは1〜5であり、
Wは出現するごとに独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、
Vは出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH、−SH、アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
mは出現するごとに独立に、1〜5であり、
結合W−−−R1は単結合または二重結合を表し、
R1は出現するごとに独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2、N2RA、ハロゲン、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、
R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、1つまたは複数のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノによって任意に置換されており、RCおよびRDはそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
ZはO、N(ORE)またはN−NRFRGであり、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立に置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式部分であり、
nは0、1、2または3である。
【0009】
いくつかの実施形態では、これまで及びここに記載されるそれぞれの化合物について、CYがフェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。他の実施形態では、CYは、1つまたは2つのメチル基で置換された、4−チアゾリルまたは4−オキサゾリル部分であり、いくつかの実施形態では、メチル基が2−または5−位で置換されている。他の実施形態では、CYが4−チアゾリルであり、mが1であり、nが3である。本発明の他の実施形態では、R2およびR3がそれぞれ水素であり、R4がメチルであり、R5が水素であり、ZがOである。
【0010】
上記および本明細書に記載するいくつかの化合物についてはMがOであり、他の実施形態では、MがNHであることことも理解されるであろう。本発明の他の実施形態では、R6が、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化52】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である。
本発明の化合物のあるサブセットでは、R6がメチルまたはエチルである。本発明の化合物の他のサブセットでは、CYが4−チアゾリルまたは4−オキサゾリルであり、R6がメチルまたはエチルである。他の実施形態では、R6がエチルである。
本発明の他の実施形態では、12−位に置換基を有し、2つ以上の炭素原子を有する化合物が企図され、したがって、R6は2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。さらに、他のサブセットは、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化53】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である化合物を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、前に記載したように、チアゾニリルおよびオキサゾリニル化合物が当該のものである。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、以下の一般式を有する化合物が提供される。
【化54】
【0012】
さらに本発明は、考えられるすべての立体異性体および二重結合異性体を含む。たとえば、当該のいくつかの異性体は、これまで及びここに記載するように、以下の構造を有する化合物を含む。
【化55】
【化56】
【化57】
【0013】
他の実施形態では、これまで及びここに記載する化合物のそれぞれについて、R1がORAであり、RAが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールであり、Wが−CH2−であり、mが1である。他の実施形態では、これまで及びここに記載する化合物のそれぞれについて、R1がNRARAであり、RAが水素、窒素保護基、または低級アルキルであり、mが1であり、Wが−CH2−である。他の実施形態では、Wが(C=O)であり、mが1であり、R1が水素である。
【0014】
他の実施形態では、R1が光アフィニティー標識である。いくつかの実施形態では、光アフィニティー標識は光活性化可能基であり、1つまたは複数のハロゲン部分によって置換されたo−、m−またはp−アジドベンゾイルである。いくつかの実施形態では、光活性化可能基は4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルアシルである。
【0015】
本発明に懸かる化合物のサブセットは、以下の構造を有する化合物を含む。
【化58】
上式でR6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。このサブセットのいくつかの実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。このサブセットの他の実施形態では、R6が、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化59】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である。このサブセットの他の実施形態では、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化60】
または(CH2)p−OH(式中、pが1〜6である)である。
【0016】
他の実施形態では、R6がメチルであり、化合物は以下の構造を有する。
【化61】
【0017】
本発明の他の実施形態では、いくつかの化合物が提供され、本発明の化合物は、ここに記載するように、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識に結合している。いくつかの実施形態では、これらの本発明の化合物は、以下の一般構造を有する。
【化62】
上式でR6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
WおよびUはそれぞれ独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、
Vは出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH,−SH,アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、Bはペプチドまたは炭水化物である。いくつかの実施形態では、ペプチドが5〜約25個のアミノ酸から成る。他の実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
【0018】
本発明の他の態様では、いくつかの構成体が提供されるが、エポチロン化合物は、本明細書に詳細に記載するように、多数現れる。たとえば、本発明の構成体はポリマー主鎖を含むが、前記ポリマー主鎖は生体高分子または合成ポリマーであり、およびこれまで及びここに記載する2つ以上の化合物であり、この2つ以上の化合物は同じであるか異なっており、前記2つ以上の化合物はポリマー主鎖に、直接的あるいはリンカーを介して結合しており、ここで前記2つ以上の化合物は、その化合物の12−位、20−位または21−位を介して結合している。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖はデンドリマー、ペプチド、または生分解性ポリマーである。
【0019】
いくつかの実施形態では、以下の構造を有する二量体デオキシエポチロンが提供される。
【化63】
上式でEPOは、12−、20−または21−位に存在する官能基を介して結合している、これまで及びここに記載する本発明の化合物を含むが、ここではXがメチレン、(C=O)であるか、あるいは存在せず、Yが(C=O)、O、NHであるか、あるいは存在せず、Zが(C=O)、NH、Oであるか、あるいは存在せず、nが0〜5である。いくつかの実施形態では、EPOが以下の構造式を有する。
【化64】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。他の実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがOであり、Zが(C=O)である。他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがNHであり、Zが不在である。他の実施形態では、Xが(C=O)であり、YがOまたはNHであり、Zが不在である。
【0020】
本発明の他の態様では、これまで及びここに記載する本発明の化合物の任意の1つ、および製薬品として許容される担体を含む、製薬組成物を提供する。
【0021】
さらに本発明は、ガンに罹患した患者においてガンを治療するための方法であって、治療的に有効量のこれまで及びここに記載する化合物の任意の1つを患者に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、ガンが固形腫瘍である場合にガンの治療に使用される。他の実施形態では、この方法は、ガンが乳ガンである場合にガンの治療に使用される。
【0022】
さらに本発明は、多剤耐性細胞の成長を阻害するのに有効な、これまで及びここに記載する化合物の任意の1つを一定量含む、組成物を提供する。さらに本発明は、多剤耐性細胞の成長を阻害する方法を提供するが、この方法は多剤耐性細胞と、多剤耐性細胞の成長を阻害するのに有効な、これまで及びここに記載する化合物の任意の1つの一定量を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物が、製薬品として許容される担体または希釈剤をさらに含むことが理解されるであろう。他の実施形態では、本発明の組成物は、一定量の細胞毒性剤(抗ガン剤を含むがこれだけには限らない)をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗ガン剤はアドリアマイシン、ビンブラスチンまたはパクリタクセル、またはこれらの任意の組み合わせである。他の実施形態では、化合物の有効量は体重1kgあたり約0.01mg/〜約50mgである。他の実施形態では、化合物の有効量が約0.01mg/体重1kg〜約25mg/体重1kgである。
【0023】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化65】
または
【化66】
上式でPが酸素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、窒素保護基、炭素保護基、イオウ保護基、または酸素保護基である。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するハロケトンを提供する工程、
【化67】
b)前記ハロケトンにエノールエーテルを生成させるための条件を施し、その後以下の構造を有するヒドロキシケトンを調製するのに適した条件下でヒドロキシル化する工程、
【化68】
または
【化69】
および、c)以下の化合物を形成するのに適した条件下でヒドロキシケトンを保護する工程。
【化70】
または
【化71】
【0024】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含む。
【化72】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程をOsO4およびAD−mix−αの存在下で行う。
【0025】
他の実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含み、
【化73】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程をOsO4およびAD−mix−βの存在下で行う。
【0026】
前に記載した方法について、いくつかの実施形態では、Pが−SiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。
【0027】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化74】
上式でPが酸素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するグリコールイミドを調製する工程、
【化75】
b)前記グリコールイミドを、N,O−(直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキル、アリール)ヒドロキシルアミン、N,O−ジ−(直鎖状または分枝鎖状C1−8)アルキルヒドロキシルアミンおよびN,O−アリール,アリールヒドロキシルアミンからなる群から選択される置換ヒドロキシルアミンを用いて、以下の構造を有するアミドを形成するのに適切な条件下で処理する工程、
【化76】
[上式でR’およびR”がそれぞれ独立に直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキルまたはアリールである]
c)前記アミドと置換有機金属試薬を、当該化合物を形成するのに適切な条件下で反応させる工程を含む。いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。他の実施形態では、置換有機金属試薬が、MeMgBrまたはMeMgClを含めた(これらだけには限られないが)グリニャール試薬である。
【0028】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化77】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、ZAがOPであり、Pが酸素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、または炭素保護基である。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化78】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化79】
を有するケトンと前記ホスフィンオキシドを縮合させる工程、および
c)任意に、当該化合物を形成するのに適切な条件下で工程b)で形成されたエステルを還元する工程。
いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。他の実施形態では、R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルであることが理解されるであろう。他の実施形態では、R1が置換または無置換4−チアゾリルである。他の実施形態では4−チアゾリルが、−2または−5位において1つまたは2つのメチル基で置換されている。
【0029】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化80】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、ZAがN3またはNHPであり、Pが窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化81】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化82】
を有するケトンと前記ホスフィンオキシドを縮合させる工程、
c)工程b)で形成された化合物を適切な条件下で転化させてアジドを生成させ、任意に、さらに前記アジドを処理して保護型アミンを生成させる工程。
いくつかの実施形態では、トンプソンの方法を使用して、本発明を実施する。他の実施形態では、シュタウディンガー還元によりアジドを還元して、保護型アミンを生成させる。他の実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。本発明の他の実施形態では、R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。本発明の他のサブセットでは、R1が置換または無置換4−チアゾリルである。
【0030】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化83】
上式でPが窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化84】
上式でR0,R’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化85】
を有するケトンと前記ホスフィンオキシドを縮合させる工程、および
c)当該化合物を形成するのに適切な条件下で、工程b)で形成されたエステルを還元する工程。
【0031】
前に記載した方法についてのいくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。いくつかの実施形態では、Halがヨードである。
【0032】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化86】
上式でZBがCO2R9またはCOSR9であり、R9が水素または酸素またはイオウ保護基であり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素であるか、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルである。この方法は以下の工程を含む。
以下の構造:
【化87】
を有するケトアルデヒドを保護して保護型アルデヒドを生成させ、その後前記保護型アルデヒドを以下の構造:
【化88】
を有する化合物と縮合を行うために適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化89】
を有するアルドールを生成させ、前記保護されたアセタール基を加水分解して、以下の構造:
【化90】
を有するケトアルデヒドを生成させ、前記ケトアルデヒドを第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で反応させ、任意にC3アルコールを保護して、以下の構造:
【化91】
[式中、ZBおよびR2〜R5は上述の定義を有する]
を有する化合物を生成させる工程。
【0033】
いくつかの実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、化学量論的条件下で前記ケトアルデヒドをキラルエノラートチタンと反応させることを含む。他の実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、前記ケトアルデヒドを触媒試薬と反応させることを含む。いくつかの実施形態では、使用する触媒試薬がCarreira触媒である。他の実施形態では、使用する触媒試薬がMikamiのキラル・アルドール触媒である。
【0034】
他の態様では本発明は、以下の構造を有する化合物を調製する方法を提供する。
【化92】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素であるか、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、MがNHまたはOであり、nが0、1、2または3である。
この方法は以下の工程を含む。
以下の構造を有する前駆体であって、
【化93】
上式でR1〜R6が前で定義するものであり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である前駆体を提供する工程。前記前駆体を提供する工程は、更に以下の構造:
【化94】
を有する第1の化合物を、適切な条件下で以下の構造:
【化95】
を有する第2の化合物と反応させて、カップリングを行って前記前駆体を生成させ、
前記前駆体に適切な条件を施して大環化を行い、任意に脱保護して所望の化合物を生成させる工程をさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、該方法は、脱保護してR2およびR3が水素である化合物を生成させる工程を方法が含む。他の実施形態では、R1が−CY=CHXまたは水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルであり、Xが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。他の実施形態では、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール基が光活性化可能基で、または1つまたは複数のヒドロキシ、チオ、アミノ、置換アミノ、アルデヒド、カルボン酸、アルケニル、イミノ、またはジアゾでさらに置換されている。他の実施形態では、MがOであり、R1が−CY=CHXであり、Yがメチルであり、Xが−(C=O)H、メチル、または−(CH2)nOH(式中、nが0〜5である)によって2位において置換されている4−チアゾリルである。他の実施形態では、Xが2−および5−位においてメチルによって置換されている、4−チアゾリルである。他の実施形態では、R7〜R11がそれぞれ独立に水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、またはSi(RA)3からなる群から選択され、RAは出現するごとに独立に、分枝または非分枝、置換または無置換、脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールである。他の実施形態では、前記第1および第2のセクターに適切な条件を施す工程が、前記セクターにスズキカップリングを行うための条件を施すことを含む。他の実施形態では、MがNHまたはOであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
【0036】
上述の方法についてのいくつかの実施形態では、本発明は、以下の構造を有する前駆体化合物の合成を提供する。
【化96】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素であるか、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、NRA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、または炭素保護基であり、nが0、1、2または3であり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である。前記方法は、以下のことを含む。
以下の構造:
【化97】
[式中、R1、R6およびZAが上述の定義を有する]
を有する第1の化合物を提供する工程、以下の構造:
【化98】
[式中、R2、R3、R4およびR5が上述の定義を有し、ZBがCO2R9またはCOSR9である]
を有する第2の化合物を提供する工程。
ここで、第2の化合物を提供する工程は、以下の構造:
【化99】
を有するケトアルデヒドを保護して保護型アルデヒドを生成させ、その後前記保護型アルデヒドを以下の構造:
【化100】
を有する化合物と縮合を行うために適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化101】
を有するアルドールを生成させ、保護されたアセタール基を加水分解して、以下の構造:
【化102】
を有するケトアルデヒドを生成させ、前記ケトアルデヒドを第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で反応させ、任意にC3アルコールを保護して、以下の構造:
【化103】
[式中、ZBおよびR2〜R5が上記の定義を有する]
を有する第2のセクターを生成させ、前記第1および第2のセクターをカップリングを行うために適切な条件下で反応させて、当該前駆体を生成させることをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態では、R1が−CY=CHXであり、Yが水素またはアルキルであり、Xが直鎖状または分枝状アルキルによって2位において置換されているか、あるいは−(CH2)nOH(式中、nが0〜5である)によって置換されている4−チアゾリルであり、R6が独立に水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。本発明の他の実施形態では、MがNHまたはOであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。いくつかの実施形態では、ZAがN3であり、本発明の方法は、適切な条件下でアジドを反応させて保護型アミンを生成させる工程を任意にさらに含む。他の実施形態では、本発明の方法は、前駆体化合物を脱保護して、遊離ヒドロキシ酸前駆体、またはアミノ酸前駆体を生成させる工程をさらに含む。
【0037】
【発明の実施の形態】
(定義)
上述したように、本発明が癌およびそれに関連する他の増殖性疾病の治療に有用な化合物の新規な種類を供給する。本発明の化合物は上述したものおよびここに述べられるものを含み、ここのどこかで開示する様々な綱、亜属および種によって部分的に例示される。
【0038】
本発明の化合物に多くの不斉中心があることは当業者であれば理解するであろう。したがって、本発明の化合物およびその製薬組成物は鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体の形をとることが可能であり、あるいは立体異性体の混合体の形をとることも可能である。付け加えると、ここに述べたようなある好ましい実施形態で、本発明の方法はエポチロンおよびその類似体の効率的な合成のための改良された方法を提供する。
【0039】
加えて、本発明は前述の化合物の製薬品として許容される誘導体およびこれらの化合物を使用する患者の治療方法、それらの製薬組成物、あるいはこれらいずれかを1つまたは複数の別の治療薬剤との組み合わせとして供給する。ここで使用する「製薬品として許容される誘導体」という語句は製薬品として許容される、そのような化合物のあらゆる塩、エステル、またはそのような化合物のエステルの塩、あるいは患者に投与する上でここに述べたのとは違う方法で(直接的ないし間接的に)化合物を供給できる何らかの付加化合物または誘導体、またはその代謝産物または残渣を意味する。したがって製薬品として許容される誘導体はとりわけプロドラッグを含む。プロドラッグは化合物の誘導体であって普通は非常に低い薬理活性をもち、生体内で除去され易く、その結果親分子を薬理活性種として生じる付加部分を含む。プロドラッグの範例は生体内で切断されて目的の化合物を生じるエステルである。様々な化合物のプロドラッグ、プロドラッグを作製するために親分子を誘導化する材料と方法が知られており、本発明に適合化することができる。ある範例的な医薬組成および製薬品として許容される誘導体をここで以下にさらに詳しく検討する。
【0040】
本発明の所定の化合物および特定の官能基の定義もまた以下にさらに詳細に説明する。本発明の目的のために、化学元素はCASバージョンの、Handbook of Chemistry and Physics,75thEd.の表紙裏にある元素の周期律表に従って識別し、特定の官能基はそこに述べてあるように定義する。加えて、有機化学の一般的な原理、ならびに特定の官能部分と反応性は、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999の「Organic Chemistry」に述べられており、その全内容はここで参考のために取り入れられている。さらに、ここで述べるような合成方法が様々な保護基を利用することは当業者であれば分かるであろう。ここで使用した「保護基」という用語で、特定の官能部分、例えばO、SまたはNは一時的にブロックされ、多官能化合物中において、反応が別の反応部位で選択的に生じることができるようにることを意味する。好ましい実施形態では、指向する反応に対して安定な保護基質を与えるために保護基は優れた収率で選択的に反応する。この保護基は容易に入手可能で好ましくは他の官能基を侵さない無害な試薬によって優れた収率で選択的に除去されねばならない。この保護基は容易に分離可能な誘導体を形成する(さらに好ましくは新たな立体中心を生じない)。この保護基はさらなる反応部位を回避するために最少限の付加的官能性を有する。ここで列挙すると、酸素、イオウ、窒素および炭素の保護基を利用することができる。範例となる保護基をここで列挙するが、しかしながら、本発明がこれらの保護基に限定されることは意図されず、様々な同等の付加的保護基が上記の標準を使用して容易に識別可能であり、本発明の方法において利用可能であることは理解されるであろう。付け加えると、様々な保護基は「Protective Groups in Organic Synthesis」,Third Ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley & Sons,New York:1999に述べられており、その全内容は参考のためにここに取り入れている。
【0041】
ここで述べたような化合物が何らかの数の置換部分または官能部分で置換され得ることは理解されるであろう。概して、「任意に」という用語が前にあろうとなかろうと、「置換された」という用語および本発明の式に含まれる置換基は、所定の構造中の水素基の特定の置換基による置き換えを称する。何らかの所定の構造内で複数の位置が特定のグループから選択される複数の置換基で置換されるとき、その置換基はすべての位置で同じであっても異なっていてもよい。ここで使用する「置換された」という用語は有機化合物のすべての許容できる置換基を含むことを意図している。広い態様では、許容できる置換基には有機化合物の非環状型および環状型、分枝型および非分枝型、炭素環型および複素環型、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子が水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たすここに述べた有機化合物のいずれかの許容できる置換基を有することがある。その上さらに、本発明は有機化合物の許容可能な置換基によって何らかの方式で制限されることを意図するものではない。本発明により想定される置換基および変形の組み合わせは癌の治療および/または癌細胞の増殖の阻害または死滅に有用な安定な化合物の生成という結果につながるものであることが好ましい。ここに使用する「安定」という用語は製造を許容するのに充分な安定性を有し、充分な期間にわたってここで詳細に述べる目的に有用な化合物の保全性を維持する化合物を称することが好ましい。
【0042】
ここに使用する「脂肪族」という用語は飽和および不飽和の両方、直鎖状(すなわち非分枝型)、分枝型、環状、または多環式脂肪族炭化水素のいずれでも、場合によっては1つまたは複数の官能基で置換されたものを含む。当業者は理解するであろうが、「脂肪族」は、限定されるものではないが、ここではアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことを意図されている。こうして、ここで使用する「アルキル」という用語は直鎖状、分枝型および環状のいずれのアルキル基をも含む。同様の慣行を、「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般的な用語にも適用する。その上さらに、ここで使用する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は置換および無置換の基の両方を包含する。
【0043】
特定しない限り、アルキルおよび他の脂肪族基は1〜6または1〜3の隣接する脂肪族炭素原子を含むことが好ましい。したがって例証となる脂肪族は、限定はされないが、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、−CH2−シクロプロピル、アリール、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、−CH2−シクロブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、−CH2−シクロペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、−CH2−シクロヘキシル部分などを含み、やはり1つまたは複数の置換基をもってもよい。アルケニル基は、限定はされないが、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどを含む。代表的なアルキニル基は、限定はされないが、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどを含む。
【0044】
ここに使用する「アルコキシ」または「チオアルキル」という用語は前に規定したように、酸素原子またはイオウ原子を介して親分子部分に結合したアルキル基を称する。アルコキシの範例は、限定はされないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシを含む。チオアルキルの範例は、限定はされないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオなどを含む。
【0045】
「アルキルアミノ」という用語は−NHR’の構造を有する基を称し、その中でR’はここでアルキルと規定する。アルキルアミノの範例は、限定はされないが、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノなどを含む。ある実施形態ではC1−C3のアルキルアミノ基が本発明で使用される。
【0046】
本発明の化合物の上述の脂肪族(および他の)部分の置換基のいくつかの例は、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ;メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルを含む。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0047】
概して、ここに使用する「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、安定で好ましくは3から14個の炭素原子を有する単環または多環式、複素環式、多環式、および複素多環式の不飽和の部分を称し、各々は置換されてもされなくてもよい。置換基は、限定はされないが、前述の置換基すなわちここに開示した脂肪族部分またはその他の部分で引用した置換基を含み、安定な化合物を形成する結果につながる。本発明のある実施形態では、「アリール」という用語は1つまたは2つの芳香環を有する単環または二環の炭素環系であって、限定はされないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含む。本発明のある実施形態では、ここに使用する「ヘテロアリール」という用語は5個から10個の環状の原子群を有する環式芳香族基を称し、その環状原子の1つはS、OおよびNから選択され、環状原子のゼロ個、1個または2個は付加的なヘテロ原子であって独立してS、OおよびNから選択され、環状原子の残りは炭素であり、この基は、例えばピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどのような環状原子のいずれかを介して分子の残りに連結されている。
アリールまたはヘテロアリール基(二環式アリール基を含む)が置換されてもされなくてもよいことは理解されるであろうし、ここで置換は、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルを含む何らかの1つまたは複数の部分による1つ、2つまたは3つの水素原子の独立した置き換えを含む。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0048】
ここに使用する「シクロアルキル」という用語は特に、3個から7個、好ましくは3個から10個の炭素原子を有する基を称する。適切なシクロアルキルは、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含み、他の脂肪族、ヘテロ脂肪族または複素環式部分の場合には任意に、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルで置換されることもある。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0049】
ここに使用する「ヘテロ脂肪族」という用語は、例えば炭素原子に代わって1つまたは複数の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素原子を含む脂肪族部分を称する。ヘテロ脂肪族部分は分枝、非分枝または環状であってもよく、モルホリノ、ピロリジニルなどのような飽和および不飽和の複素環を含む。ある実施形態では、ヘテロ脂肪族部分は、以下に限定されないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルを含む1つまたは複数の部分による1つまたは複数の水素原子の独立した置き換えによって置換される。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0050】
ここに使用する「ハロ」および「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を称する。
「ハロアルキル」という用語は1つ、2つ、または3つのハロゲン原子を結合して有する上記に規定したアルキル基を意味し、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロメチルなどのような基によって例示される。
【0051】
ここに使用する「ヘテロシクロアルキル」または「複素環」という用語は非芳香族の5、6または7員環、または酸素、イオウおよび窒素から独立的に選択される1から3個のヘテロ原子を有する縮合6員環を含む二または三環性基を称し、そこでは(i)各々の5員環が0から1個の二重結合を有し、各々の6員環が0から2個の二重結合を有し、(ii)ヘテロ原子の窒素およびイオウが場合によっては酸化され、(iii)ヘテロ原子の窒素が場合によっては第4級化され、(iv)上記の複素環のいずれかがベンゼン環に縮合されることがある。代表的な複素環は、限定はされないが、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、およびテトラヒドロフリルを含む。ある実施形態では、「置換型ヘテロシクロアルキルまたは複素環」基が使用され、ここでは1つ、2つまたは3つの水素原子を独立的に、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、NO2、CN、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−ヘテロアリール、CO2−アルキル、CO2−アリール、CO2−ヘテロアリール、CONH2、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−ヘテロアリール、OC(O)−アルキル、OC(O)−アリール、OC(O)−ヘテロアリール、OCO2−アルキル、OCO2−アリール、OCO2−ヘテロアリール、OCONH2、OCONH−アルキル、OCONH−アリール、OCONH−ヘテロアリール、NHC(O)−アルキル、NHC(O)−アリール、NHC(O)−ヘテロアリール、NHCO2−アルキル、NHCO2−アリール、NHCONH−ヘテロアリール、SO2−アルキル、SO2−アリール、C3−C6−シクロアルキル、CF3、CH2CF3、CHCl2、CH2OH、CH2CH2OH、CH2NH2、CH2SO2CH3、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ベンジルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、アミノ、ベンジルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアミノ、チオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ベンジルチオ、アルキルチオ、またはメチルチオメチルで置き換えることにより置換された上記に規定したヘテロシクロアルキルまたは複素環基を称する。概して適用可能な置換基の付加的な例はここに説明する実施例に示された特定の実施形態によって例示される。
【0052】
「標識化」:ここに使用する「標識化」という用語は、化合物に、その化合物の検出を可能にする、少なくとも1つの元素、同位元素または化合物が結合していることを意味するように意図される。概して、標識は3つの種類に分かれ、すなわちa)限定はされないが67Ga、99mTc(Tc−99m)、111In、123I、125I、169Ybおよび186Reを含む放射活性同位元素ないし重同位元素であってもよい同位元素標識、b)抗体ないし抗原であってもよい免疫標識、c)着色または蛍光染料である。生物学的活性または検出する化合物の特性を阻害しないあらゆる位置で標識が化合物に組み込まれてもよいことは理解されるであろう。本発明のある実施形態では、生物学的系の分子間の相互作用の直接的な解明のために(例えばチューブリン二量体のエポチロン結合部位を探査するために)光アフィニティー標識が利用される。ジアゾ化合物、アジド、またはジアジリンのニトレンないしカルベンへの光変換に最も依存して多様な既知の発光団が使用可能であり(Barley,H.,Photogenerated Reagents in Biochemistry and Molecular Biology(1983),Elsevier,Amsterdam.を参照)、その全内容をここでは参考のために取り入れている。本発明のある実施形態では、使用する光アフィニティー標識は1つまたは複数のハロゲン部分で置換されたo−、m−およびp−アジドベンゾイルであり、限定はされないが4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸を含む。
【0053】
「ポリマー」:ここに使用する「ポリマー」という用語は、開いた状態、閉じた状態、直鎖状、分枝状または同じまたは異なる繰り返しユニット(モノマー)の架橋状であってもよい鎖を有する組成を称する。ある実施形態ではポリマーという用語が生体高分子を称し、ここで使用するそれは自然界で見出される物質かまたは自然界で見出されるそれらの物質を基本としたポリマー状の物質を称するように意図され、限定はされないが核酸、ペプチド、およびその擬似物質を含むことは理解されるであろう。ある他の実施形態では、ポリマーという用語は生分解ポリマーあるいはその他のポリマー状材料のような合成ポリマーを称する。ポリマー状の固体支持体もまた本発明のポリマーに包含されることは理解されるであろう。本発明の化合物はポリマー状の支持体に結合させることが可能であり、したがってある合成的な修飾を固相で行うことができる。ここで使用する「固体支持体」という用語は、限定はされないが、ペレット、ディスク、キャピラリー、中空ファイバ、ニードル、ピン、固体繊維、セルロース・ビーズ、ポアガラス・ビーズ、シリカゲル、場合によってはジビニルベンゼンと架橋したポリスチレン・ビーズ、グラフト共重合ビーズ、ポリアクリルアミド・ビーズ、ラテックス・ビーズ、場合によってはN−N’−bis−アクリロイルエチレンジアミンと架橋したジメチルアクリルアミド・ビーズ、および疎水性ポリマーでコーティングされたガラス粒子を含むよう意味される。当業者は特定の固体支持体の選択が使用する反応化学との支持体の適合性によって制限されることを実感するであろう。範例となる固体支持体は、1)ジビニルベンゼンと架橋したポリスチレン・ビーズ、2)PEG(ポリエチレングリコール)の複合物であるTentagelアミノ樹脂である。Tentagelは、オン・ビーズまたはオフ・ビーズ分析に使用する万能支持体を提供し、かつトルエンから水まで広がる溶媒中で優れた膨潤をもするので、特に有用な固体支持体である。
【0054】
(発明の詳細な説明)
上述したように、本発明は新規なエポチロン類似体、およびその合成の方法を供給する。ある実施形態では、本発明は20−ないし21−および12−置換型のエポチロンおよびアザ類似体、医薬的組成、および癌の治療におけるエポチロン類似体の使用方法を供給する。予想外にも、あるエポチロンは生体外と生体内の両方で癌細胞の多剤耐性を逆行させるのに効果的であることが見出されたばかりでなく、正常細胞よりもMDR細胞に対して細胞毒性のある傍系の感受性薬剤として、ビンブラスチンのような他の細胞毒性薬剤との組み合わせで個別薬剤が単独に同じ濃度であるときよりも活性となる協力薬剤として活性を示すと判定された。注目すべきことに、本発明のデオキシエポチロンは生体内での腫瘍細胞毒性薬剤としての例外的な高い特異性を有し、タキソール(Taxol、登録商標)ビンブラスチン、アドリアマイシンおよびカンプトテシンを含む最新の主だった化学療法薬剤よりもさらに効果的で正常細胞に対する毒性が少ない。
【0055】
前に開示したように、全体的に合成により導き出された薬剤を使用して、本発明者らは初めてエポチロンBの生体内での作製を行った。EpoBそれ自体がやっかいな毒性プロファイルを示すと判明したとき、12,13−デオキシ化合物が調べられた。予想外なことに、MDR活性化に関して高度に細胞毒性で健全である一方で、dEpoBはさらに望ましい毒性プロファイルを示した。dEpoBが注目すべき治療能力を有し、異種移植片による様々な感受性および抵抗性の腫瘍に対して本質的に治療効果のあることを様々なマウスのモデルに基づく実験が矛盾無く有意に示した。その生体内での印象的なプロファイルのせいで、dEpoBは抗癌剤としての進展を予想するヒトでの試験を期待して、イヌで毒物学的評価を進められてきた。明らかに、12,13−デオキシ化合物の優れた治療プロファイルの本発明者らの独自の先駆的認識に期待すると、エポチロンの他の類似体の生体内での効力を評価することは興味深かった。しかしながら、生物学的評価のためにこれらの物質の有意の量を利用する能力は改善された合成の方法論を必要とした。ここに開示したように、様々なエポチロン・マクロライド、特に12,13−デオキシエポチロンの合成のための改善された合成方法が提供され、それがエポチロンの様々な合成類似体の利用を可能にする。
【0056】
本発明のエポチロンおよびその類似体
重要なことに、前で論じたように、本発明は新規な化合物、およびエポチロンおよびその類似体の効率の良い合成を可能にするための方法を提供する。一態様において本発明は、以下の構造を有する新規な化合物であって、
【化104】
上式でMはNHまたはOであり、
CYはアリールまたはヘテロアリール部分であり、
qは1〜5であり、
Wは出現するごとに独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、
Vは出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH、−SH、アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
mは出現するごとに独立に、1〜5であり、
結合W−−−R1は単結合または二重結合を表し、
R1は出現するごとに独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2、N2RA、ハロゲン、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
R2およびR3はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、
R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、1つまたは複数のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノによって任意に置換されており、RCおよびRDはそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R6は独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N2、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、窒素保護基、炭素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、
ZはO、N(ORE)またはN−NRFRGであり、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立に置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式部分であり、
nは0、1、2または3である化合物を提供する。
【0057】
本発明が、前に記載した化合物のあらゆる立体異性体および二重結合異性体を、含むことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、以下の構造を有する化合物を提供する。
【化105】
いくつかの実施形態では、XがSであり、YがNであり、mが1であり、nが3である。他の実施形態では、R6がメチルまたはエチルである。他の実施形態では、MがOである。他の実施形態では本発明は、R6がH、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化106】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである化合物を含む。
R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である化合物を、本発明が含むことも理解されるであろう。他の実施形態では、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化107】
【0058】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである。これまで及びここに記載の化合物も本明細書において提供され、R1がORAであり、RAが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールであり、Wが−CH2−であり、mが1である。他の実施形態では、Wが(C=O)であり、mが1であり、R1が水素である。他の実施形態では、WがCH2−であり、R1がNRARAであり、RAは出現するごとに独立に、窒素保護基、水素または低級アルキルである。他の実施形態では、Wが−CH2−であり、R1が1つまたは複数のヒドロキシル部分によって置換されているアルキルまたはアルキレン部分である。他の実施形態では、これまで及びここに記載する化合物のそれぞれについて、R2およびR3がそれぞれ水素であり、R4がメチルであり、R5が水素であり、ZがOである。他の実施形態では、R1が光アフィニティー標識であり、いくつかの実施形態では、光アフィニティー標識は光活性化可能基であり、1つまたは複数のハロゲン部分によって置換されたo−、m−またはp−アジドベンゾイルである。いくつかの実施形態では、光活性化可能基は4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルアシルである。
【0059】
本発明が、以下の構造を有する化合物を含めた、エポチロンのいくつかの異性体を提供することが理解されるであろう。
【化108】
【0060】
他の実施形態では、以下の構造を有する異性体を提供する。
【化109】
【0061】
他の実施形態では、以下の構造を有する異性体を提供する。
【化110】
【0062】
本発明の他の実施形態では、21−ヒドロキシル化化合物が提供され、この化合物は以下の構造を有する。
【化111】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。本発明のいくつかの実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である、化合物を提供する。他の実施形態では、R6がH、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化112】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである、化合物を提供する。他の実施形態では、R6がエチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、
【化113】
またはpが1〜6である(CH2)p−OHである、化合物を提供する。
【0063】
本発明の他の実施形態では、R6がメチルであり、化合物は以下の構造を有する。
【化114】
【0064】
他の実施形態では、R6がエチルであり、本発明の化合物は以下の構造を有する。
【化115】
【0065】
他の実施形態では、本発明の化合物は以下の構造を有する。
【化116】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0066】
他の実施形態では本発明は、以下の一般構造を有する化合物を提供する。
【化117】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0067】
多量の官能化化合物にアクセスする能力により、ポリマーおよび/または治療部分へのさらなる結合が可能になることが理解されるであろう。したがって他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の化合物の、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識への結合を企図する。一実施形態では、以下の式を有する化合物を提供する。
【化118】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、WまたはUは出現するごとに独立に、不在であるか、−NH−、C=O、C=S、−O−、−S−またはC(V)2であり、Vが出現するごとに独立に、水素、ハロゲン、−OH、−SH、アミノ、または置換または無置換アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、Bがポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0068】
他の態様では本発明は、多様に表される化合物を提供し、一実施形態では本発明は、ポリマー主鎖、および
2つまたは本発明の化合物であって、2つまたは本発明の化合物が同じであるかあるいは異なっていてもよく、前記2つ以上の化合物がポリマー主鎖に直接的に、あるいはリンカーを介して結合しており、2つ以上の化合物が化合物の12−位、20−位または21−位を介して結合している化合物を含む組成物を提供する。
いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖がデンドリマー、ペプチド、または生分解性ポリマーである。
【0069】
他の実施形態では、以下の構造を有する二量体デオキシエポチロンを提供する。
【化119】
上式でEPOが、12−、20−または21−位に存在する官能基を介して結合している、請求項1に記載の化合物を含み、Xがメチレン、(C=O)であるか、あるいは存在せず、Yが(C=O)、O、NHであるか、あるいは存在せず、Zが(C=O)、NH、Oであるか、あるいは存在せず、nが0〜5である。
【0070】
他の実施形態では、EPOが以下の構造式を有する。
【化120】
上式でR6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識である。
【0071】
他の実施形態では、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがOであり、Zが(C=O)である。
他の実施形態では、Xがメチレンであり、YがNHであり、Zは存在である。
他の実施形態では、Xが(C=O)であり、YがOまたはNHであり、Zは存在である。
【0072】
新規な合成法
前に記載したように本発明により、エポチロンおよび関連化合物の効率の良い合成を可能にし、さまざまな類似体へのアクセスを可能にする新規な方法も提供される。一般に本発明は、新規な方法を提供し、この方法によって大環化に必要なアシルおよびアルキル・セクター(sector)を多量に提供することができ、この方法が、参照によってその全容がここに組み込まれている、08/986,025および09/257,072中で開示される、以前に報告された合成法から改良された方法であることが示される。
【0073】
図1に示すように(さらにdEpoFおよびdEpoBの代替合成に関する実施例2中に記載するように)、本発明は一態様において、エポチロンおよびその類似体に関する新規な合成を提供する。本明細書に記載するように、この手法はアルキル・セクターの使用を含み、アルキル・セクター中のC3は既に還元されており、アルキル・セクターとのカップリング用に態勢が整っている。さらに、アルキル・セクターに対する、より好都合で調整的な手法を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、B−アルキルスズキカップリング反応によって、2つの断片を結合させ、次いで大環化反応によってマクロラクトンまたはマクロラクトムに進展させることができる。いくつかの実施形態では、dEpoBの以前の合成用に使用した反応(係属中の特許出願08/986,025および09/257,072に記載される)およびdEpoF(実施例1に記載し、図2に示す)と同様に、Yamaguchiの大環化を使用する。
【0074】
したがって、本発明の一態様では、O−アルキル断片の中間体を調製するための効率の良い方法を提供し、その中間体化合物は以下の構造を有する。
【化121】
または
【化122】
上式でPが酸素保護基であり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、ポリマー、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、または炭素保護基、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールである。
【0075】
一実施形態では、非対称触媒酸素化によって、これらの構造の合成を達成することができることが理解されるであろう(1つの異性体の合成に関する図3を参照のこと)。この方法では、非対称触媒酸素化法を使用して、C15中心を取り付け、アルキンのヨード化を行って、(Z)−アルケンの形状を与える。一般に本発明のこの方法は、以下のことを含む。
a)以下の構造を有するハロケトンを提供すること、
【化123】
b)前記ハロケトンにエノールエーテルを生成させるための条件を施し、その後以下の構造を有するヒドロキシケトンを調製するのに適した条件下でヒドロキシル化すること、
【化124】
または
【化125】
および、c)以下の化合物を形成するのに適した条件下でヒドロキシケトンを保護すること。
【化126】
または
【化127】
【0076】
非対称ヒドロキシル化反応において使用する試薬に応じて、前述のように、本発明のエポチロンおよびその類似体の調製において使用するための、いずれかの立体異性体を提供することができることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、好ましくはOsO4およびAD−mix−αの存在下で、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含む。
【化128】
【0077】
他の実施形態では、ヒドロキシル化の工程が、非対称触媒を使用してハロケトンを反応させて、好ましくはOsO4およびAD−mix−βの存在下で、非対称なジヒドロキシル化を行い、以下の構造を有する化合物を生成させることを含む。
【化129】
【0078】
この化合物は、本明細書に詳細に記載するように、ラクタム誘導体を合成するのに非常に有用である。本発明はさらに、シリルエノールエーテルを最初に提供する方法を企図することも理解されるであろう。
【0079】
これまで及びここに記載した方法中で使用する化合物についての、いくつかの実施形態では、Pが−SiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。前に記載した方法中で使用する化合物についての他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。
【0080】
本明細書の実施例中に記載するように、図3中に示すように、一実施形態ではこの手法は、プロピレン(17)とB−ヨード−9−BBNを反応させ、結果として生じたビニルボラントをメチルビニルケトンに加えて、ケトン(18)を供給することを含む。TMSI/HMDSなどの試薬を用いて、この化合物を後に処理することにより、2つのシリルエーテルレジル異性体19と20が88:12である混合物が与えられた。AD−mix−α、生成したヒドロキシケトン21を使用して、この混合物の非対称なジヒドロキシル化を行う。重要なことに、この手順を使用して、オスミウム仲介ジヒドロキシル化中に、潜在的に影響を受けやすいヨードアルケン官能基を維持することができる。最後に、25を生成した18のトリエチルシリル化を行い、わずか4工程のシークエンスを終了させる。
【0081】
本発明の他の実施形態では、図4中の一実施形態において示すような、C15の形状を確立させるための非対称アルキル化反応を使用して、ケトンを生成させることができることも理解されるであろう。
【0082】
一般に、本発明の方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するグリコールイミドを調製する工程、
【化130】
b)N,O−(直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキル、アリール)ヒドロキシルアミン、N,O−ジ−(直鎖状または分枝鎖状C1−8)ヒドロキシルアミンおよびN,O−アリール,ヒドロキシルアミンからなる群から選択される置換ヒドロキシルアミンを用いて、以下の構造を有するアミドであって、
【化131】
上式でR’およびR”がそれぞれ独立に直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキルまたはアリールであるアミドを形成するのに適切な条件下で、グリコールイミドを処理する工程、
c)化合物を形成するのに適切な条件下で、アミドと置換有機金属試薬を反応させる工程。
【0083】
いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルである。これまで及びここに記載した方法中で使用する化合物についての、他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。本発明の他の実施形態では、置換有機金属試薬が、MeMgBrまたはMeMgClを含めた(これらだけには限られないが)グリニャール試薬である。
【0084】
図4中に示すように、本発明の一実施形態では、非対称アルキル化を使用して18ケトンを提供した。このアルキル化は、3工程で23から得た知られているPMB誘導体24bからの、シリル化グリコレートの合成で始まる。いくつかの実施形態では、混合型無水物のin situでの形成を含む1つのフラスコ手順によって、23をマルチグラム・スケールの24aに転換することができる。二ヨウ化物を用いて−78℃で、リチオ24aを後で処理することによって、1つの異性体として所望の25aを得る。TES基を除去した後、Weinrebアミド26aの形成を、キラル補助体の同時脱離、およびその後の保護によって行い、グリニャールを加えて11を得る。
【0085】
上記のケトンのいずれかの立体異性体に多量にアクセスする能力によって、以下に示すハロゲン化ビニルを多量に合成することも可能である。
【化132】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、ZAがOP,SP,N3またはNHPであり、Pが酸素、イオウまたは窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、またはポリマーである。
【0086】
いくつかの実施形態では、ZAがOPであり、本発明の方法は以下のことを含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化133】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製すること、
b)以下の構造:
【化134】
を有するケトンとホスフィンオキシドを縮合させること、および
c)任意に、化合物を形成するのに適切な条件下において工程b)で形成されたエステルを還元すること。
【0087】
本発明の他の実施形態では、ZAがN3またはNHPであり、本発明の方法は以下のことを含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化135】
上式でR’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製すること、
b)以下の構造:
【化136】
を有するケトンとホスフィンオキシドを縮合させること、
c)工程b)で形成された化合物を適切な条件下で転化させてアジドを生成させるか、あるいは任意に、さらにアジドを処理して保護型アミンを生成させること。
いくつかの実施形態では、トンプソンの方法を使用して、本発明を実施する。他の実施形態では、シュタウディンガー還元によりアジドを還元して、保護型アミンを生成させる。
これまで及びここに記載するように、前に記載した方法をさまざまなエポチロンの類似体に適用することができることも理解されるであろう。たとえば、いくつかの実施形態では、R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである。本明細書に記載するように、それぞれのこれらの置換基は1つまたは複数の部分で置換することができ、本明細書の実施例中に詳細に記載するように、R1が置換または無置換4−チアゾリルであり、いくつかの実施形態ではR1が、2−または5−位の1つまたは両方において1つまたは2つのメチル官能基で置換されている、チアゾリル部分を含むことも理解されるであろう。
【0088】
本発明の一実施形態では、実施例1および2に詳細に記載するように、前に記載した方法を使用して、以下の構造を有する21−ヒドロキシ類似体を合成する。
【化137】
上式でPが窒素保護基であり、Halがハロゲンであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、RAは出現するごとに独立に、水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、またはポリマーである。この方法は以下の工程を含む。
a)以下の構造を有するホスフィンオキシドであって、
【化138】
上式でR0,R’およびR”が独立にC1−8直鎖状または分枝鎖状アルキル、または置換または無置換フェニル、アルコキシまたはアリールオキシであるホスフィンオキシドを調製する工程、
b)以下の構造:
【化139】
を有するケトンとホスフィンオキシドを縮合させる工程、および
c)化合物を形成するのに適切な条件下で、工程b)で形成されたエステルを還元する工程。
【0089】
前に記載したハロゲン化ビニルおよび中間体のそれぞれについて、いくつかの実施形態では、PがSiRHRJRKであり、RH、RJ、およびRKはそれぞれエチルであることが理解されるであろう。他の実施形態では、R6が直鎖状または分枝状、環式または非環式、置換または無置換脂肪族またはヘテロ脂肪族である。他の実施形態では、R6がメチル、エチル、n−またはイソプロピル、フェニルまたはベンジルである。他の実施形態では、Halがヨードである。
【0090】
前に論じたように、本発明の他の態様では、O−アシル断片への新規な経路を提供し、その断片は以下の構造を含む。
【化140】
上式でZBがCO2R9またはCOSR9であり、R9が水素または酸素またはイオウ保護基であり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルである。前記方法は以下のことを含む。
以下の構造:
【化141】
を有するケトアルデヒドを保護して保護型アルデヒドを生成させ、その後前記保護型アルデヒドを以下の構造:
【化142】
を有する化合物と縮合を行うために適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化143】
を有するアルドールを生成させ、保護されたアセタール基を加水分解して、以下の構造:
【化144】
を有するケトアルデヒドを生成させ、前記ケトアルデヒドを第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で反応させ、任意にC3アルコールを保護して、ZBおよびR2〜R5が前で定義するものであり、以下の構造:
【化145】
を有する化合物を生成させること。
【0091】
いくつかの実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、化学量論的条件下で前記ケトアルデヒドをキラルエノラートチタンと反応させること含む。他の実施形態では、第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、前記ケトアルデヒドを触媒試薬と反応させること含む。Carreira触媒およびMikamiのキラル・アルドール触媒だけには限られないが、これらを含めたさまざまな触媒試薬を使用することができることが理解されるであろう。たとえば、右翼セクターを構築するために、非対称アルドール反応(Duthaler,R.O.;Herold,P.;Lottenbach,W.;Oretle,K.;Reidiker,M.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1989,28,495)を使用することができる。この方法では、以下のアルドール反応のために化学量論的キラル添加剤を使用した。
【化146】
【0092】
しかしながら一例では、以下の第1のスキームは、Carreira触媒(Carreira,E.M.;Singer,R.A.;Lee,W.J.Am.Chem.Soc.1994,116,8837)を使用する、触媒的なMukaiyamaタイプのアルドール反応を表す。シリルケトンアセタールおよびわずかな触媒装入(2〜5mol%)を使用するこの方法に関しては、EEが一般的に高い。この場合、メチルエステルが生成され、水性塩基を用いる後のスズキカップリング後に、これを加水分解することができる。
【化147】
【0093】
使用することができる他の方法は、Mikamiのキラル・アルドール触媒(Mikami,K.;Matsukawa,S.J.Am.Chem.Soc.1994,116,4077)に基づく。このシリーズの触媒は容易に調製され、反応は一般に0℃で行われ、高いエナンチオ選択性が提供される。この方法によってチオエステルが生成され、後のスズキカップリング後に、これを容易に加水分解することができる。
【化148】
【0094】
dEpoBおよびdEpoF、およびそれらのいくつかの類似体に関する新規な方法を本明細書に記載しているが、この新規な方法を、オキサゾリニル、ピリジル、およびフェニル類似体および置換されたこれらの誘導体を含めた(これらだけに限られないが)広範囲の他の類似体を合成するために、使用することもできることが理解されるであろう。ホスフィンオキシドも、dEpoBおよびdEpoF前駆体化合物について本明細書に記載するように、本明細書に記載の適切なオキサゾリニル、ピリジル、およびフェニル出発原料、または他の類似体用の物質を使用して、調製することができることが理解されるであろう。本明細書に記載するように、これらのホスフィンオキシドをケトンと反応させ、そのケトンを多様化させて12個の改変型類似体を生成させることもできる。本明細書に記載するように、本発明は、ケトン部分およびアシル・セクターの効率の良い調整的な合成を提供し、したがって、大環化前駆体を合成するために(スズキカップリングを介する)、適切なホスフィンオキシドを使用して、これらを使用することができる。さらに、調整ケトンを容易に生成する能力によりさまざまなC12類似体の合成が可能であり、したがってこの方法により、合成の工程中に、12−位およびアリールまたはヘテロアリール・セクターを同時に改変することが可能である。
【0095】
したがって他の態様では、本明細書に記載の新規な方法を使用して、以下の一般構造を有する化合物を合成することができる。
【化149】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、炭素保護基、ポリマー、炭水化物、光アフィニティー標識、または放射性標識であり、MがNHまたはOであり、nが0、1、2または3である。
【0096】
一般に本発明の化合物は、以下のことによって調製される。
以下の構造を有する前駆体であって
【化150】
上式でR1〜R6が前で定義するものであり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である前駆体を提供することであって、前駆体を提供する工程は以下の構造
【化151】
を有する第1の化合物を適切な条件下で以下の構造
【化152】
を有する第2の化合物と反応させて、カップリングを行って前駆体を生成させ、
前記前駆体に適切な条件を施して大環化を行い、任意に脱保護して所望の化合物を生成させることをさらに含む。
【0097】
以下に示す構造を有する本発明の前駆体が、本発明の方法に従い、本明細書に記載の新規なアシルおよびアルキル・セクターを使用して、一般的に調製されることが理解されるであろう。たとえば、前駆体:
【化153】
上式でR1が水素であるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であるか、あるいはXが水素である−CY=CHXであるか、あるいは置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリール置換脂肪族、またはアリール置換ヘテロ脂肪族であり、Yが水素、または直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R2およびR3がそれぞれ独立に、水素、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、直鎖状または分枝状、置換または無置換アシル、アロイル、ベンゾイル、またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、R4およびR5がそれぞれ独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒドによって任意に置換されている直鎖状または分枝鎖状アルキル、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノであり、RCおよびRDがそれぞれ独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、R6が独立に、水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、窒素保護基、酸素保護基、イオウ保護基、炭素保護基、またはポリマーであり、nが0、1、2または3であり、ZAがOR7、NHR8またはN3であり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、R7、R8、R9、R10、またはR11が出現するごとに独立に水素、酸素保護基または窒素保護基である前駆体を、一般に以下のことによって調製する。
【0098】
R1、R6およびZAが前で定義するものであり、以下の構造
【化154】
を有する第1のセクターを提供すること、R2、R3、R4およびR5が前で定義するものであり、ZBがCO2R9またはCOSR9であり、以下の構造
【化155】
を有する第2のセクターを提供すること、
前記第1および第2のセクターをカップリングを行うために適切な条件下で反応させて、前駆体を生成させること。
【0099】
いくつかの実施形態では、これまで及びここに記載するように、R1がCY=CHXであり、Xが2−位、5−位あるいは2−および5−位の両方において、直鎖状または分枝状アルキルによって置換されているか、あるいはnが0〜5である−(CH2)nOHよって置換されている4−チアゾリルであり、R6が独立に水素、ORA、SRA、NRARA、C(O)ORA、C(O)RA、CONHRA、N3、N2RA、ハロゲン、環式アセタール、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、RAが出現するごとに独立に水素、または直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール、またはポリマーである。
【0100】
他の実施形態では、MがNHであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。他の実施形態では、MがOであり、R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝または非分枝脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である。
【0101】
前に記載したように、いくつかの実施形態では、新規な方法を使用してマクロラクタム誘導体を調製し、したがって本発明の方法は、ZAがN3であるとき、適切な条件下でアジドを反応させて保護型アミンを生成させる工程を任意に含む。さらに本発明の方法は、前駆体化合物を脱保護して、遊離ヒドロキシ酸前駆体、またはアミノ酸前駆体を生成させる工程を任意に含み、したがってこれらの前駆体は、本明細書に詳細に記載するように、マクロラクタム化またはマクロラクタン化反応用の態勢ができている。さらに本発明は、環化化合物に脱保護の工程を施すことを企図し、適切な条件下で環化化合物を反応させて、本明細書に詳細に記載する光アフィニティー標識、放射性標識、炭水化物結合またはポリマー結合化合物を生成させることをさらに任意に企図する。
【0102】
機能性エポチロン類似体の合成
ここに示したように、21−ヒドロキシの機能性化合物(または他の反応性類似体)の大量利用能力は、概してここに述べて権利主張した各々の類似体のさらなる機能化と合成のための足場を提供する。ここにある実施形態であるヒドロキシ置換型チアゾリニル誘導体(dEpoBに基づく)が提示されるけれども、以下に示したおよび本書に述べた各々の方法論は他の新規な類似体(例えばヒドロキシル置換型オキザゾリニル、ピリジルなど)に適用することも可能であり、それらの合成は総じて上記および本書で説明される。
【0103】
本発明のある実施形態では、標識化化合物が供給され、ある実施形態では光アフィニティー標識または放射性標識された化合物が供給される。様々な光親和性放射活性試薬が利用可能であることは理解されるであろう。例えば、本発明の一実施形態では、チューブリン二量体の中のエポチロン結合部位を探査するのに使用可能な(図5に示したような)光アフィニティー標識されたdEpoF3を生じるために、DCCの作用下で保護されていないdEpoFと4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸との縮合が実施される。アジド酸に代わって蛍光芳香族酸(例えばローダミン)が使用されると、結合反応はフルオロフォアを含んだ新規なエポチロン4を供給する。エポチロンの細胞内分布のモニタおよび結合の調査にとって蛍光エポチロンは特に有用である。
【0104】
ある実施形態では放射活性標識が利用される。sec−ヒドロキシル基の保護を使用しないで21−ヒドロキシル基を機能化する能力は有意にC21で効率的な置換を供給する。p−トルエンベンゼンスルホニルクロリド(p−TsCl)によるdEpoFの処理はC−21トシラート5の生成に利用することができる。それに続いてヨウ素で置換すると21−ヨード−dEpoB6が生じ、それをシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化トリブチルスズで還元してdEpoB(2b)にすることができる。したがって、この順序はdEpoFの選択的脱酸素化を介したdEpoBの調製を構成する。付け加えると、水素化源としてトリチウム還元剤(例えばNaBT3CNまたはn−Bu3SnT)を使用するならば、放射性標識エポチロン(7,T−dEpoB)を容易に生じることができる。もっと重要なことには、トシラート5またはヨウ化物6を使用する単純な置換反応によって様々な求核剤をC21の位置に導入することができる。特に、上述したケトン合成にもやはり使用されてきた21−アジド−エポチロン(6でR=N3)のシュタウディンガー還元は21−アミノ−エポチロン(R=NH2)の新しい種類の利用を可能にする。
【0105】
C21での選択的機能化がアシル化またはスルホニル化に限定されないことは理解されるであろう。例えば、保護されていないdEpoF(2d)をMnO2の介在する酸化条件に直接晒すと図6に示したような21−オキソ−エポチロンB(8)の高収率の形成という結果につながり、これは図7に示したようなさらなる機能化にとって有用な類似体である。
こうして、別の実施形態で、図7に示すように21−オキソ系からエポチロン誘導体を利用することができる。NaBT4(またはNaBCNT3、NaB(OAc)3T)によるアルデヒド8の単純な還元は放射性同位元素を9のようにdEpoF内に配置する。ウィーティッヒ型のオレフィン化反応が21−アルキリデン−エポチロン10を生じ、その後、それが化学選択的に水素化またはジヒドロキシル化されてそれぞれ11および12を生じることができる。場合によっては、アリールインジウム試薬の作用によって12bを供給するために、水溶性溶媒中で保護されていないアルデヒド8にアリールのユニットを加えることは容易に可能である。10および12bのようにいったんアルケン機能が装備されると、引き続く添加反応に関与するその能力はさらに精巧なエポチロン誘導体を作製するのに利用することができる。例えば、選択的な水素化は11を供給し、それは自然に生じるエポチロンB10の「デオキシ」類似体を構成する。水素ガスを使用する代わりにT2を使用することによってトリチウムで放射性標識することもやはり可能である。一方、12a(またはジヒドロキシル化された12b)は調剤化に利点をもたらす水溶性の類似体である。カルボン酸部分を備えた新規なエポチロン13は亜塩素酸ナトリウムによるアルデヒド8の酸化を介して生じる。
【0106】
さらに別の実施形態では、アルデヒド8はアミンと反応させられ、脱水を介して対応するシッフ塩基14が容易に生成される。シッフ塩基14は21−イミノ−エポチロン類似体を表わし、その生物学的活性は報告されないままである。特に、オキシム誘導体(14でRがヒドロキシまたはアルコキシ)は容易に端衛さえて簡単に取り扱いされる。ヒドラジンとの反応から誘導されるヒドラゾン(14でR=NR2)は21−イミノ−エポチロンの別の安定な形である。引き続いてNaBH3CNで還元するとイミン14が21−アミノ−エポチロン15へと容易に変換される。この工程でアミノ酢酸メチルがアミンとして使用されると、優れた収率でN−dEpoB−Glyメチルエステルが産物として形成される。同じプロトコルを辿って、還元性アミン化にαアミノ酸またはオリゴペプチドを使用すると多くの潜在性の利点を有する新規なエポチロン−ペプチド共役体が供給される。
【0107】
最後に、アルデヒドにヒドラジンを加え、得られるヒドラゾンを引き続いて酸化すると21−ジアゾ−エポチロン16が生じる。チューブリンへのエポチロンの結合に関する詳細な情報が欠けていることを考慮すると、21−ジアゾ系は適切な生物学的研究にとって光親和性プローブとして有用となるかもしれない。
【0108】
水溶性で多様に存在するエポチニン類似体の合成
本発明は付加的に治療薬剤のさらに効果的な供給を可能にするために本発明の化合物の調剤化および/または機能化を意図する。タキソールによる化学療法の1つの大きな問題は疎水性から生じる。その限界水溶性は発色団(cremophore)のようなそれら自体の危険性と管理点を有する調剤媒体に頼ることを必要とする。C21でヒドロキシ置換することによりエポチロンに付与される比較的高い水溶性および付加的な増加はある程度の期待を示した。しかしながら、水溶性の溶媒中でエポチロンの調剤化を可能にする程度までエポチロンの水溶性がさらに増進されるならばそれはもっと望ましいことであろう。C21機能化系による生物学的活性の維持は溶解度促進剤の結合の可能性を招く。この補助の促進剤は細胞の酵素によって切断および代謝され、それに付随してエポチロンが放出されることが予測される。
【0109】
ある実施形態では、本発明は図8に示すようにdEpoFをN,N−ジメチルグリシンと反応させ、続いて塩化水素塩形成させることによって調製される新規な化合物を供給する。別の手法には、やはり図8に示したように無水アスパラギン酸の使用、21−アミノ基による開環および穏やかな脱保護(R1=Troc、Zn/AcOH)によるαアミノ基の遊離が含まれ、水溶性の増進を供給する両性イオンが生じる。
【0110】
別の実施形態では、C21の官能基は水溶性を高めるための親水性の側鎖を有する様々なαアミノ酸またはペプチドの導入にとってそれら自体を足場として提供する。図9を参照すると、21−ヒドロキシ−(2b)または21−アミノ化合物(15)を使用して、N保護されたオリゴペプチドをC末端結合を介してエポチロン・セクターに結合させることができる。場合によっては、還元性のアミノ化およびペプチド結合はカルボキシ保護されたペプチドのアルデヒド8および酸13それぞれへのN末端結合を可能にする。水溶性の増進に加えて、ペプチド−エポチロン共役体は腫瘍細胞を目標化する付加的な利点を供給する可能性がある。腫瘍細胞はしばしばペプチド・リガンドに対するある受容体を過剰発現するので、エポチロンに結合したペプチドを認識素子として利用することができる。こうして、リガンド−受容体の相互作用はペプチド−エポチロンを腫瘍細胞に案内し、細胞内取り込みを容易にすることができる。例えば、ソマトスタチンの断片はエポチロンをいくつかの腫瘍のタイプで頻繁に見受けられるソマトスタチン受容体過剰発現細胞へと供給するのに使用することができる。
【0111】
ペプチドとの共役に加えて、新規なグリコシル化によって水溶性エポチロン類似体の別の興味深い種類が生じる。グルカルエポキシドを使用するグリコシル化法の利点を活用すると、ある実施形態で、図10に示すようにグルコースまたはラクトースをもつ21−機能化エポチロンを容易に共役させることができる。この共役手法が還元端部にグリコシル供与体ユニットを呈示する様々なオリゴ糖に適用可能であることに留意すべきである。さらに別の実施形態では、図11に示したように、直接の炭素−炭素結合を有するエポチロン炭水化物共役体を図示したようにして調製することができる。一実施形態では、Danishefskyジエンが使用され、ヘテロ−ディールス−アルダー反応が有効化される。
【0112】
別のある実施形態では、本発明は多価アレーの形成を意図する。細胞外リガンドの低親和性結合は多くのリガンドを一緒に共有結合でつないで多価アレーを形成することによって有意に向上させることができる。エポチロンの抗癌活性作用の開始は微小管への非共有結合を含むので、二量体の形成はリガンド(エポチロン)のバイオポリマー(微小管)への結合を促進する可能性がある。細胞内背景での多価の有効性は疑問ではあるが、微小管によって呈示される多数の結合部位はそのような利点の可能性を提供する。
【0113】
図12に示したように、エポチロン二量体の調製はエポチロンの2つの半片を共有結合で連結することによって容易に実施することができる。機能性ハンドルとしてのC21官能基の利点を活用すると、変化した長さ(n=0、1、2、3など)をもつα,ω二酸、ジアミン、およびジオールのようなつながりは単純な結合反応を介してエポチロンを結合することができる。細胞毒性の能力増進に加えて、エポチロン二量体を使用するチューブリン結合分析はチューブリン二量体または微小管のタキソール(エポチロン)結合部位に関する価値ある情報を供給するかもしれない。
【0114】
本発明の別の実施形態では、低分子のリガンド(エポチロン)と細胞内受容体(微小管)という背景での多価の概念はデンドリマーないしポリマー骨格上のエポチロンの多数存在によってより良く試験することができる。微小管に位置する多数結合部位と多数存在エポチロンとの間の相互作用は好都合な多価の状況を発生し、それによって抗癌活性の完璧な促進につながることがあり得る。上述したのと同じ共役プロトコルを辿ると、多数存在エポチロンはデンドリマーないしポリマーの骨格上で利用可能な官能基を使用して容易に合成することができる。図12の例証は市販入手可能なPAMAM(Starburst(登録商標))デンドリマー(X=CO2またはNH)およびオクタペプチド(例えばグルタミン酸、リシン)上にある8つのエポチロンの存在である。
【0115】
本発明が付加的にバイオポリマーや生体適合性の(合成または自然に生じる)ポリマーのようなポリマーを介したエポチロンの投薬を意図していることは理解されるであろう。生体適合性ポリマーは生分解性と非生分解性に分類することができる。生分解ポリマーは化学組成、製造方法、および移植構造の関数として生体内で分解する。合成および自然ポリマーが使用可能であるが、より均一で再現性のある分解およびその他の物理的性質のせいで合成ポリマーが好ましい。合成ポリマーの範例には無水物重合体、乳酸重合体やグリコール酸重合体およびその共重合体のようなヒドロキシ酸重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルトエステル、およびいくつかのポリホスファゼンが含まれる。自然に生じるポリマーにはコラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミンおよびゼラチンのようなタンパク質および多糖類が含まれる。エポチロンがバイオポリマーあるいは人工的な機能性ポリマーを介して投薬されると、巨大分子治療の生物学的利点を活用することが可能である。理想的なポリマー・マトリックスは疎水性、安定性、有機的可溶性、低融点、および適切な分解プロファイルの組み合わせであろう。付け加えるとこのポリマーは、身体のような水成環境に置かれたときに適切な期間にわたってその保全性を維持し、かつ使用前に長期間にわたって貯蔵されるのに充分に安定であるように疎水性であることもやはり好ましい。理想的なポリマーはまた、使用の間で崩壊したりまたは砕けたりしないように強固でなおかつ柔軟性があるべきである。
【0116】
様々な生分解ポリマーが本発明に使用可能であり、中でも、N−(ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド(HPMA)、グルタミン酸、およびラクチド−リシン共重合体のような流行の官能基を含むもの(図14に示す)は効率的な媒介物として役立つことができる。荷電した側鎖をもつポリペプチドは本来水溶性であるが、非極性ポリマーのケースではポリマー骨格とエポチロン類似体との間に共有結合で、溶解度促進剤として設計されたペプチド・リンカーを組み入れてもよい。ある実施形態では、ここに述べた化合物は、参考資料としてここでその全内容を取り入れた米国特許第5,977,163号に述べられているように、水溶性のキレート剤、あるいはポリエチレングリコール、ポリ(l−グルタミン酸)ないしポリ(l−アスパラギン酸)のような水溶性ポリマーに適切な機能を介して共役されてもよい。
【0117】
別のある実施形態で、樹状の中心の球上に多数のエポチロンを存在させる手法が図15に例示されている。PAMAM(Starburst(登録商標))上で半分を形成することから開始し、3,4−2カ所保護したグルカルが末端カルボキシル基に結合される。デンドリマーの生成に応じて、末端基の数(4、8、16、32など)および性質(CO2Na、NH2)は変えることができる。グルカルエポキシドをグリコシル化するプロトコルを使用して、エポチロンの21−官能基(X=O、S、NHなど)と末端グルコースとの間のグリコシド結合が確立される。最終的なC3’およびC4’の保護基の脱保護は水溶性、デンドリマー上のエポチロンの多数存在を提供する。追加的な親水性が必要であるときは、単糖ではなくてオリゴ糖のユニットをグリコシル供与体としてデンドリマーの末端に結合させてもよい。
【0118】
医薬組成
上述したように、本発明は抗癌および抗増殖活性を有する新規な化合物を供給し、したがって本発明の化合物は癌の治療にとって有用である。したがって、本発明の別の態様では医薬組成が供給され、そこではこれらの組成は本書で述べたような化合物のいずれか1つを含み、場合によっては製薬品として許容される基剤を含む。ある好ましい実施形態では、場合によってはこれらの組成は1種または複数種の追加の治療薬剤をさらに含む。別のある実施形態では、追加の治療薬剤はここでさらに詳細に述べるような抗癌剤である。
【0119】
本発明のある化合物が治療のための遊離の形、あるいは製薬品として許容されるその誘導体として適切に存在することが可能であることもやはり理解されるであろう。本発明によると、限定はされないが製薬品として許容される誘導体には、製薬品として許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、または必要としている患者への投薬でここに述べた以外またはその代謝産物ないし残渣、例えばプロドラッグとしての化合物を直接的ないし間接的に供給できる何らかの別の付加化合物ないし誘導体が含まれる。
【0120】
ここで使用する「製薬品として許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などをなくしてヒトおよび下等動物の組織に接触させて使用するのに適し、かつ適度な利点/危険度比率に見合った塩を称する。製薬品として許容される塩は当該技術ではよく知られている。例えば、S.M.Berge他が、ここで参考のために取り入れたJ.Pharmaceutical Sciences,66:1−19(1977)に製薬品として許容される塩を述べている。これらの塩は本発明の化合物の最終的な単離および精製の間でイン・サイチューで調製されるか、または遊離塩基機能を適切な有機酸と反応させることによって別に調製されてもよい。医薬的に受容可能であって無毒の酸添加塩の範例は塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸のような有機酸とアミノ基との塩、またはイオン交換のような当該技術で使用される別の方法を使用することによる塩である。その他の製薬品として許容される塩にはアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンホル酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオネート、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、バレリアン酸塩などが含まれる。代表的なアルカリないしアルカリ土類金属塩にはナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる製薬品として許容される塩には、適切なら、非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、およびハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩といった対イオンを使用して形成されるアミンのカチオンが含まれる。
【0121】
付け加えると、ここで使用する「製薬品として許容されるエステル」という用語は生体内で加水分解するエステルを称し、ヒトの体内で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものを含む。適切なエステルのグループには、例えば、製薬品として許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸から誘導されたものを含み、各々のアルキルまたはアルケニル部分は6個を超えない炭素原子を有すると有利である。特定のエステルの範例にはギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルが含まれる。
【0122】
さらに、ここで使用する「製薬品として許容されるプロドラッグ」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などをなくしてヒトおよび下等動物の組織に接触させて使用するのに適し、かつ適度な利点/危険度比率に見合っており、できれば本発明の化合物の両性イオン型と同様に、意図されたそれらの用途に効果的な本発明の化合物のプロドラッグを称する。「プロドラッグ」という用語は生体内で、例えば血液中の加水分解によって迅速に変換されて上記の式の親化合物生じる化合物を称する。綿密な考察はT.HiguchiとV.StellaによるPro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、およびEdward B.Roche編のBioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に供給されており、それらの両方をここで参考資料として取り入れている。
【0123】
上述したように、本発明の医薬的組成は製薬品として許容される基剤を付加的に含み、ここで使用するそれは、所望の特定の投薬に合わせて溶剤、希釈剤、またはその他の液体媒体、分散ないし懸濁補助、表面活性剤、等張剤、濃化剤ないし乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤などのいずれかあるいはすべてを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1975)には医薬組成の調剤に使用する様々な基剤およびその調製のために知られている技術が開示されている。何らかの従来の基剤媒体が、何らかの不本意な生物学的効果ないしさもなければ医薬組成の他の何らかの成分と有害な方式で相互作用することなどで本発明の抗癌性化合物と相容れない場合を例外として、その使用は本発明の範囲内にあると意図される。製薬品として許容される基剤として役立つことのできる材料のいくつかの範例には、限定はされないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖、コーンスターチおよびポテトスターチのようなデンプン、セルロースおよびその誘導体のカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなど、粉末トラガカントゴム、モルト、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび坐薬ワックスのような賦形剤、ピーナッツオイルおよび綿実油のようなオイル、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油、グリコール、プロピレングリコール類、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのようなバッファ剤、アルギン酸、脱ピロゲン水、等張塩、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸バッファ溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのようなその他の非毒性の適合潤滑剤が含まれ、同様に着色剤、解離剤、コーティング剤、甘味料、調味料および芳香剤、保存料および抗酸化剤もまた調剤者の判断に従って組成の中にあってもよい。
【0124】
化合物および製薬組成物の用途
さらに別の態様では、本発明の治療方法によると、腫瘍細胞はここに述べたような本発明の化合物ないし組成と前記腫瘍細胞を接触させることによって殺されるかまたは増殖を阻害される。したがって、本発明のさらに別の態様では、治療に有効な量で本発明の化合物または本発明の化合物を含む医薬組成を、それを必要とする被験体に投薬する工程を含む癌の治療方法が供給され、所望の結果を達成するのに必要な量と時間で為される。本発明のある実施形態では、本発明の化合物または医薬組成の「治療に有効な量」は腫瘍細胞の殺害または増殖阻害に有効な量である。本発明の方法によると、この化合物および組成は腫瘍細胞の殺害ないし増殖阻害に効果的ないかなる量および径路を使用して投薬されてもよい。したがって、ここで使用する「腫瘍細胞の殺害ないし増殖阻害に効果的な量」という表現は腫瘍細胞を殺すかまたは増殖を阻害するのに充分な薬剤量を称する。正確な必要量は被験体によって変わるもので被験体の種、年齢、および総合的な状態、感染のひどさ、特定の抗癌剤、その投薬モードなどによって決まる。本発明の抗癌性化合物は投薬の簡易性および投与の均一性のために投与ユニットの形で調剤されることが好ましい。ここで使用する「投与ユニット形」という表現は治療を受ける患者にとって適切な物理的に別々のユニットの抗癌剤を称する。しかしながら、本発明の化合物および組成の毎日の合計使用量が正常な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることは理解されるであろう。いかなる特定の患者ないし有機体のためのいかなる特異的な治療有効化投与レベルも治療する疾病および疾病の重篤度、使用される特異的化合物の活性、使用される特異的組成、患者の年齢、体重、総合健康状態、性別および食事、投薬時間、投薬径路、使用する特異的化合物の排出速度、治療期間、使用する特異的化合物と組み合わせるか同時に使用する薬剤、および医学技術でよく知られている類似因子を含めた様々な因子によって決まるであろう。
【0125】
さらに、所望の投与量で適切な製薬品として許容される基剤で調剤した後、本発明の医薬組成は経口、直腸経由、非経口、槽内経由、膣内経由、腹膜内経由、局所適用(粉末、軟膏、または滴下剤として)、頬内、口腔ないし鼻腔スプレーなど、治療する病気の重篤度に応じてヒトおよび他の動物に投薬されてもよい。本発明のある実施形態では、ここに述べた化合物は、参考資料としてここでその全内容を取り入れた米国特許第5,977,163号に述べられているように、水溶性のキレート剤、あるいはポリエチレングリコール、ポリ(l−グルタミン酸)ないしポリ(l−アスパラギン酸)のような水溶性ポリマーに適切な機能を介して共役されて調剤される。ある実施形態では、本発明の化合物は所望の治療効果を得るために約0.01mg/kgから約50mg/kg、好ましくは約1mg/kgから約25mg/kgの患者の体重当たりの1日当たりの投与レベルを、1日に1回ないし複数回で経口ないし非経口で投薬されてもよい。
【0126】
経口投薬のための液体の投与形には、限定はされないが、製薬品として許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、この液体投与形は、例えば水ないし他の溶剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、カストール油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物といった可溶化剤および乳化剤のような当該技術で一般的に使用される不活性な希釈剤が含まれてもよい。不活性希釈剤の上にさらに、経口用の組成はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、調味料、および芳香剤をも含むことがある。
【0127】
注射可能な調製物、例えば、殺菌済みで注射可能な水性ないし油性の懸濁液は適切な分散ないし湿潤剤および懸濁化剤を使用して知られている技術に従って調剤することが可能である。殺菌済みで注射可能な調製物はまた、非毒性で非経口で受容可能な希釈剤または溶剤中の殺菌済みの注射可能溶液、懸濁液または乳濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としてあってもよい。受容可能な媒体および溶剤のうちで使用できるものは水、リンゲル溶液、U.S.Pおよび等張塩化ナトリウム溶液である。付け加えると、殺菌済みの固定油が溶剤あるいは懸濁化媒体として広く使用される。この目的で、合成のモノまたはジグリセリドを含めたいかなるブランドの固定油も使用することができる。付け加えると、オレイン酸のような脂肪酸が注射可能な調製物で使用される。
【0128】
注射可能な調剤は、例えば、バクテリア保留フィルタを通す濾過によるか、または滅菌水ないし他の殺菌済み媒体に溶解ないし分散可能な殺菌固体組成の形で殺菌剤を使用前に取り込むことによって殺菌することができる。
【0129】
薬剤の効果を引き延ばすために、皮下注射または筋肉注射から薬剤の吸収を遅くすることがときには望ましい。これは水溶性の低い結晶質または非晶質物質の懸濁液体を使用することによって達成される可能性がある。そのとき、薬剤の吸収速度はその溶解速度によって決まり、それは今度は逆に、結晶のサイズおよび結晶形状によって決まる可能性がある。場合によっては、非経口注射薬剤形の遅い吸収は薬剤を油性の媒体に溶解または懸濁することによって達成される。注射可能なデポー製剤形はポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解ポリマー中に薬剤のマイクロカプセルのマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬剤の比率および使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬剤の放出速度を制御することができる。他の生分解ポリマーの範例にはポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー剤の注射可能調剤はまた、薬剤を身体組織と適合するリポソームあるいはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製される。
【0130】
直腸ないし膣投薬のための組成は、本発明の化合物をココアバター、ポリエチレングリコールないし常温では固体であるが体温で液体となってそれにより直腸や膣腔内で溶けて活性化合物を放出する座剤ワックスのような適切な非刺激性の賦形剤ないし基剤と混合することによって調製可能な座剤であることが好ましい。
【0131】
経口投薬のための固体投与形にはカプセル、タブレット、丸薬、粉末、および顆粒が含まれる。そのような固体投与形では、活性化合物はクエン酸ナトリウムないしリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの不活性で製薬品として許容される賦形剤ないし基剤、および/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マニトール、および珪酸のようなフィラーないし増量剤、b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアのような結合剤、c)グリセロールのような希釈剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ポテトないしタピオカスターチ、アルギン酸、ある種の珪酸塩、および炭酸ナトリウムのような分解剤、e)パラフィンのような溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物のような吸収加速剤、g)例えばセチルアルコールおよびグリセリンモノステアラートのような湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤と混合される。カプセル、タブレットおよび丸薬のケースでは、投与形はまたバッファ剤を含むことがある。
【0132】
類似したタイプの固体組成はまた、ラクトースないし乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用してソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内でフィラーとして使用されることもある。タブレット、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒の固体投与形は腸溶コーティングおよび薬剤調剤技術でよく知られている他のコーティングのようなコーティングおよび外殻で調製されることがある。場合によってはそれらは乳白化剤を含むことがあり、また、腸管の一定の部分でだけかまたはそこを優先して、場合によっては遅延方式で活性成分を放出する組成であってもよい。組成を埋め込む使用可能な範例にはポリマー物質およびワックスが含まれる。類似したタイプの固体組成はまた、ラクトースないし乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用してソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内でフィラーとして使用されることもある。
【0133】
この活性化合物はまた、上述の1つまたは複数の賦形剤でマイクロカプセル形状にされることもある。タブレット、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒の固体投与形は腸溶コーティングおよび薬剤調剤技術でよく知られている他のコーティングのようなコーティングおよび外殻で調製されることがある。そのような固体投与形では活性化合物はスクロース、ラクトースまたはデンプンのような少なくとも1つの希釈剤を添加されることもある。そのような投与形はまた、普通の慣例として、不活性希釈剤以外の添加物質、例えばタブレット形成用の潤滑剤およびステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースのような他のタブレット形成補助剤を含むこともある。カプセル、タブレットおよび丸薬のケースでは、投与形はまたバッファ剤をも含むことがある。場合によってはそれらは乳白化剤を含むことがあり、また、腸管の一定の部分でだけかまたはそこを優先して、場合によっては遅延方式で活性成分を放出する組成であってもよい。組成を埋め込む使用可能な範例にはポリマー物質およびワックスが含まれる。
【0134】
本発明の化合物の局所適用または経皮投薬のための投与形には軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬または貼付剤が含まれる。この活性化合物は殺菌条件下で製薬品として許容される基剤および何らかの必要な保存料ないしバッファを必要かもしれなければ添加される。眼用調剤、耳用滴下剤、眼用滴下剤もまた本発明の範囲内にあることが意図される。付け加えると、本発明は身体に化合物を制御しながら供給する追加的な利点を有する経皮貼付剤の用途を意図するものである。そのような投与形は適当な媒体中に本化合物を溶解または調剤することによって為され得る。皮膚を通過する化合物の流れを増大させるためにやはり吸収促進剤を使用することもある。この速度は速度制御用の膜を供給することによってもまたは化合物をポリマー・マトリックスないしジェルに分散することによっても制御することができる。
【0135】
上述したように、本発明の化合物は抗癌剤として有用であり、したがって腫瘍細胞の細胞死を有効化するかまたは腫瘍細胞の増殖を阻害することによって癌の治療に有用となり得る。概して、本発明の抗癌剤は癌および他の、限定はされないが、一例を挙げれば乳癌、子宮頚部癌、結腸および直腸癌、白血病、肺癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、および胃癌を含めた他の増殖性障害の治療に有用である。ある実施形態では、本発明の抗癌剤は白血病細胞およびメラノーマ細胞に対して活性であり、したがって白血病(例えば脊髄性、リンパ球、骨髄球およびリンパ芽球性白血病)および悪性メラノーマの治療に有用である。さらに別の実施形態では、本発明の抗癌剤は充実性腫瘍に対して活性であり、やはり多剤耐性細胞(MDR細胞)を殺し、かつ/または増殖を阻害する。
【0136】
本発明の化合物および組成が複合治療で使用され得ること、すなわち本化合物および医薬組成が1つまたは複数の他の望ましい治療薬ないし医療処置と同時、またはそれに先行して、あるいはそれに引き続いて投薬され得ることもやはり理解されるであろう。複合療法で使用される特定の治療組み合わせ(治療薬と処置)は望ましい治療薬および/または処置と、達成されるべき望ましい治療効果を考慮するものであろう。使用される治療が同じ疾病に所望の効果を達成すること(例えば本発明の化合物は別の抗癌剤と同時に投薬されてもよい)、または異なる効果を達成する(例えば何らかの副作用の制御)ことがあり得ることもまた理解されるであろう。
【0137】
例えば、本発明の本発明の抗癌剤と組み合わせて使用されるかもしれない他の治療ないし抗癌剤には外科手術、放射線治療(少しだが例を挙げると、γ放射線、中性子ビーム放射線治療、電子ビーム放射線治療、プロトン治療、短距離放射線療法、系統的放射活性同位元素)、内分泌治療、生物学的応答緩和剤(ほんの一部であるが挙げるとインターフェロン、インターロイキン、および腫瘍致死因子(TNF))、高体温および寒冷療法、何らかの副作用緩和剤(例えば制吐作用)、および限定はされないがアルキル化薬剤(メクロレタミン、クロラムブチル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキセート)、プリン・アンタゴニストおよびピリミジン・アンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ジェムシタビン)、スピンドル毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンオレルビン、パクリタクセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)を含めた他の認可化学療法薬剤が含まれる。最新の癌治療のさらに包括的な考察については、(http://www.nci.nih.gov/)を参照し、FDA認可腫瘍薬剤のリストは(http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm)、およびここで参考のために全内容を取り入れたThe Merck Manual,Seventeenth Ed.1999を参照されたい。
【0138】
さらに別の態様では、本発明はまた、本発明の医薬的組成の成分のうちの1つまたは複数で満たした1つまたは複数の容器を有する医薬パックないしキットをも供給し、ある実施形態では複合療法として使用するために追加の認可治療薬剤を含む。場合によっては、そのような容器に付随するものは医薬製品の製造、使用ないし販売を統括する政府機関によって通達される通告である可能性があり、その通告はヒトに投与するための製造、使用ないし販売の機関による認可を反映する。
【0139】
同等物
引き続く代表的な実施例は本発明を例証する手助けとなることを意図するものであり、それらが本発明の範囲を限定することを意図していなければまたそう解釈されるべきでもない。全くのところ、本発明の様々な変形、およびここに示して説明したものに加わるそのさらなる実施形態は、ここに引用した科学的および特許の文献に追従して参照する判例を含めて、本文書の全内容から当業者にとって明らかになるであろう。さらに、それら引用文献の内容が当該技術の状態を具体的に説明する補助としてここに取り入れられていることも理解されるはずである。以下の実施例は重要な付加的情報、例証および手引きを含んでおり、それらは様々な実施形態およびその同等例で本発明の実施に適合することが可能である。
【0140】
【実施例】
実施例1:スズキカップリング、ノヨリ還元およびマクロラクトン化による21−OH dEpoB(dEpoF)の合成(図2、および図16〜18を参照)
1つの典型的な実施形態において、新規なエポチロン類似体である12,13−デスオキシエポチロンF(dEpoF、21−ヒドロキシ−12,13−デスオキシエポチロンB;図2)を、12,13−デスオキシエポチロンB(dEpoB)の実用的合成、この合成は図16〜18に記載したが、この合成にて以前に使用した集中的戦略を用いて合成した。本明細書に更に詳細に記述したように、水への溶解性がより高くなるため、および適切な生物学的研究のための官能基化が容易になるため、付加的なヒドロキシル基を含む新規な類似体が他のエポチロン類に対して優位性があると評価されるであろう。
【0141】
1つの実施例において、本明細書で示したようにdEpoBを調製するために使用した方法と同様の方法を用いてdEpoFを合成した。ここで、2種のほぼ同等に複雑なフラグメントを重要な構成要素としていた(図2)。本明細書に記載したように、チアゾール成分の新規な合成のための手法を開発し、dEpoBのこれまでの合成に用いた右翼を、dEpoF合成用のポリプロピオン酸ドメインのために使用した。
【0142】
本明細書に例示したように、知られている2−置換チアゾール(Ciufolini,M.A.;Shen,Y.C.,J.Org.Chem.,1997,62,3804)をTroc基で保護し、これを後段の合成でC7ヒドロキシ保護で同時に除去することから左翼の合成を開始した(図16)。エチルエステルをDibal−Hでアルデヒドに還元し、そしてこれをアルデヒドにホモロゲートした。ブラウンプロトコル(Racherla,U.S.;Brown,H.C.,J.Org.Chem.,1991,56,401)によりアリール単位の不斉付加を行い、高い鏡像体過剰率(>95%)でC15に(S)−立体配置を導入した。末端オレフィンを選択的にジヒドロキシル化した後、得られたジオールを開裂させ、アルデヒドを生成した。続いてヨードエチレニル化し、所望のヨウ化ビニルを単一の幾何異性体として得た(Stork,G.;Zhao,K.,Tetrahedron Lett.,1989,30,2173;Chen,J.他Tetrahedron Lett.,1994,35,2827)。そして粗生成物を水酸化リチウムで直接処理し、実用的な収率でアルコールを得た。
【0143】
2種の重要なフラグメントをPd触媒スズキカップリング反応により結合し、ジケトンを得た(図17)(Miyaura,N.;Suzuki,A.,Chem.Rev.,1995,95,2457;Miyaura,N.他J.Am.Chem.Soc.,1989,111,314;Johnson,C.R.;Braun,M.P.,J.Am.Chem.Soc.,1993,115,11014)。その代りに、遊離のアルコールをカップリングに用いてアルコールを得、そしてこれをジケトンに再度変換することができた。TBS基を除去した後、ジケトンを修飾したノヨリ触媒を用いてルテニウム触媒不斉水素化条件下に置いた(Ikariya,T.他J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1985,922;Taber,D.F.;Silverberg,L.J.,Tetrahedron Lett.,1991,32,4227)。驚くべきことに、所望のジオールが単一のジアステレオマーとして生成したけれども、C15メチルエーテルがほぼ1:1の比で生成した。市販されているノヨリ触媒であるRuCl2(BINAP)(Noyori,R.,Tetrahedron,1994,50,4259)を用いると、主成分がC16−C17還元生成物である複雑な混合物が形成されることとなった。多くの異なる条件下でも、メチルエーテルの形成は回避できなかった。メタノール性HClがC15ヒドロキシ基の加溶媒分解を引き起こすことが考えられるので、溶媒としてエタノールを使用すると加溶媒分解プロセスが最小化されると期待された。ジオールの収率がいくらか高められるように、充分に長い反応時間および低い転化率で反応を行った。基質をジケトンからC15 TBSエーテルに変更すると、限界まで向上した。これらの結果は、加溶媒分解によるこの種の生成物が観察されないdEpoBの合成と極めて対照的である。
【0144】
触媒としてEt2NH2[{(BINAP)RuCl2}2Cl3](Ohta,T.他Orgnometal,1996,19,1521;Noyori,R.他J.Am.Chem.Soc.,1987,109,5856)を用いる不斉ノヨリ還元は、反応に存在する酸の量に依存することが知られている(King他J.Org.Chem.,1992,57,6689)。dEpoB合成の場合、C3での還元および良好なジアステレオ選択性の両方のため、化学量論量のHClの存在が必要であった(Harris,C.R.他J.Amer.Chem.Soc.,1999,121,7050)。化学量論量の酸を添加すると、チアゾール成分が明らかにプロトン化され、これによってルテニウム触媒の不活性化が阻害される。その代りに、このチアゾールのプロトン化は、加溶媒分解に潜在的に弱いC15アリルアルコールを効果的に保護することができた。化学量論量のHClを用いてC21置換誘導体の還元を行うことができた。しかしながら、加溶媒分解は20モル%のHClでさえも進行し、このことは2−ヒドロキシメチル置換チアゾールはHClを除去するのに効果的な塩基ではないことを示している。この大きな反応性の差異は大部分が立体配置的な原因であるけれども、チアゾールへの置換は、遠隔アルコールの反応性に大きく影響する。
【0145】
全ての必要な立体中心を確立するために、TESOTfによってC3およびC15アルコールを同時に保護することにより、t−ブチルエステルを外した(図18)。メタノール性HClを用いてC15 TES基を選択的に脱シリル化すると、ヒドロキシ酸が得られ、これは容易にマクロラクトン化される。山口のプロトコルによるマクロラクトン化では、完全に保護されたマクロラクトンが60〜70%の収率で得られた(Inanaga,J.他Bull.Chem.Soc.Jpn.,1979,52,1989;Mulzer,J.他Synthesis,1992,215)。2つのTroc保護基の除去は、ヨウ化サマリウム(II)(Evans,D.A.他J.Am.Chem.Soc.,1990,112,7001)または亜鉛の作用により良好な収率で行われた。最後に、C3 TES基を標準のHF−ピリジン脱保護化して、12,13−デスオキシエポチロンFを得た。
【0146】
実施例1のための実験:(図16〜18参照)
エステル(3G)。知られている2−(ヒドロキシメチル)チアゾール−4−カルボン酸エチル(38.4g、0.205mol)およびピリジン(41mL、0.053mol)のCH2Cl2(100mL)溶液に、0℃でクロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル(32mL、0.23mol)をゆっくり添加した。0℃で30分間攪拌した後、NaHCO3水溶液(100mL)をゆっくり添加して反応物をクエンチした。有機層を分離し、そして水層をCH2Cl2(100mL×2)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を2NのHCl(100mL)、NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水で洗浄した。Na2SO4で乾燥した後、減圧下に溶媒を除去した。残留物をエタノール(50mL)で処理して、淡黄色固体(35g)を得た。母液を濃縮し、クロマトグラフして、更なる量(35g)の生成物を得た(95%)。
【NMR1】
【0147】
アルデヒド(4G)。エステル(23g、0.063mol)のCH2Cl2(200mL)溶液に、−78℃で0.5時間かけてDibal−H溶液(CH2Cl2中1.0M、120mL)を添加した。添加後、得られた混合物を冷凍庫(−78℃)に置いた。10時間後、過剰のDibal−Hを酢酸(5mL)でクエンチし、懸濁が消えて透明な2相溶液になるまで、飽和酒石酸カリウムおよびナトリウム水溶液(150mL)とともに混合物を攪拌した。有機層をNaHCO3、食塩水で洗浄し、そしてNa2SO4で乾燥した。真空下に溶媒を除去し、そして残留物をシリカゲルカラムでクロマトグラフして、所望のアルデヒドを淡黄色で粘着性のあるオイルとして得た(16g、80%)。
【NMR2】
【0148】
アルデヒド(5G)。アルデヒド(21g、0.066mol)のベンゼン(300mL)溶液に、2−(トリフェニルホスホラアニリデニル)プロピオンアルデヒド(20.6g、0.066mol)を添加した。得られた混合物を加熱還流した。3時間後、混合物を室温に冷却し、減圧下に濃縮した。SiO2によるフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=4:1)により精製し、透明オイルとして所望のアルデヒドを得た(21g、89%)。
【NMR3】
【0149】
アルコール:不斉アリール化(6G)。アルデヒド(9.20g、25.7mmol)溶液を無水エーテル(50mL)に溶解し、エーテル−液体窒素浴により−100℃に冷却した。知られている方法により調製した(+)−ジイソピノカンフェイルアリールボランのペンタン溶液(1.5当量、150mL)を、激しく攪拌したアルデヒド溶液に滴下添加した。添加を終えた後、反応混合物を1.5時間攪拌し、そして−50℃に加温した。そして、30%のH2O2(20mL)および飽和NaHCO3水溶液(50mL)を添加し、得られた濁りのある混合物を8時間攪拌した。有機層を分離し、水層をエーテル(100mL×2)で抽出した。合わせた有機層をNa2S2O3水溶液(100mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=10:1)により精製し、透明オイルとしてアルコールを得た(7.65g、74%)。アルコールの鏡像体過剰率は、対応するMosherのエステルに誘導体化することにより95%と決定した。
【NMR4】
【0150】
シリルエーテル(7G)。方法A:アルコール7(7.65g、19.1mmol)および2,6−ルチジン(10mL、85.9mmol)のCH2Cl2(50mL)混合物に、−78℃でTBSOTf(15mL、0.066mol)を滴下添加した。添加後、反応混合物を室温に加温し、5時間攪拌した。反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(50mL)に注ぎ入れ、エーテル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を2NのHCl(50mL)、NaHCO3水溶液(50mL)、食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。SiO2でのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサンそしてヘキサン/酢酸エチル=95:5)により、無色オイルとしてTBSエーテル9.39gを得た(95%)。
方法B:アルコール(8.50g、25.0mmol)およびイミダゾール(3.40g、50.0mmol)のDMF(50mL)混合物に、TBSCl(4.72g、31.3mmol)および4−DMAP(30mg、0.25mmol)を添加した。室温で8時間攪拌した後、混合物をエーテル(250mL)で希釈し、2NのHCl(50mL)、NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水(50mL)で順次洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥し、濃縮した。SiO2でのフラッシュクロマトグラフィにより、TBSエーテル11.0gを得た(97%)。
【NMR5】
【0151】
アルデヒド(8G)。ジヒドロキシル化。オレフィン(20.6g、0.040mol)、N−メチルモルホリン−N−オキシド(THF中50%、10mL、0.048mol)およびH2O(21mL)のt−BuOH(155mL)溶液に、0℃でOsO4溶液(THF中1重量%、20.3mL、0.78mmol)を添加した。12時間攪拌した後、Na2SO3(〜10g)および水(5mL)を添加し、得られた溶液を30分間攪拌した。そして、混合物をエーテル(100mL×3)で抽出し、そして食塩水で洗浄した。合わせた有機抽出物を無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を除去し、そしてシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、無色粘稠性オイルとして1:1ジアステレオマーのジオール混合物18.8gを得た(85%)。
【NMR6】
【0152】
アルデヒド形成。方法A:ジオール(18g、0.032mol)および炭酸ナトリウム(8.67g、0.081mol)のベンゼン(500mL)懸濁液に、0℃で5分間かけて四酢酸鉛(19.1g、0.043mol)を数度に分けて添加した。15分間攪拌後、混合物を4:1ヘキサン−酢酸エチル混合物を用いてシリカゲルのショートパッドにより濾過した。減圧下に溶媒を除去して、所望のアルデヒド14gを得た(82%)。
【0153】
方法B:ジオール(11.8g、24.2mmol)の酢酸エチル(100mL)溶液に、0℃で四酢酸鉛(95%、12.5g、26.8mmol)を数度に分けて添加した。得られた黄色懸濁液を1時間激しく攪拌し、その時点でのTLC分析は出発物質が完全に消費されたことを示していた。そして反応混合物を1:1エーテル/ヘキサン混合物を用いてシリカゲルのショートパッドにより濾過した。濾液を濃縮し、そしてフラッシュクロマトグラフィにより精製して、淡黄色オイルとしてアルデヒド7.95gを得た(72%)。
【NMR7】
【0154】
ヨウ化ビニル(9G)。ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム(7.90g、17.9mmol)のTHF(150mL)懸濁液に、周囲温度でn−ブチルリチウム(7.17mL、ヘキサン中2.5M、17.94mmol)を添加した。固体成分がなくなった後、この赤色溶液を−78℃で激しく攪拌しながらヨウ素(4.54g、17.94mmol)のTHF(150mL)溶液に添加した。得られた暗褐色懸濁液を5分間攪拌し、ゆっくり−30℃に加温した。ヘキサメチルジシラジドナトリウム溶液(17.34mL、THF中1.0M、17.34mmol)を懸濁液に滴下添加し、暗赤色溶液を得た。そして、アルデヒド8G(3.10g、5.98mmol)のTHF(10mL)溶液をゆっくり添加し、−30℃で30分間攪拌し続けた。反応混合物をペンタン(1000mL)で希釈し、セライトパッドにより濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=6:1)により精製し、シロップとしてヨウ化ビニル1.50gを得た(38%)。
【NMR8】
【0155】
ヨウ化ビニル(9Gb)。ヨウ化(エチル)トリフェニルホスホニウム(5.05g、12.1mmol)のTHF(30mL)懸濁液に、周囲温度でヘキサメチルジシラジドナトリウム溶液(12mL、THF中1.0M)を添加した。5分間攪拌後、暗赤色溶液を−78℃に冷却し、−78℃でヨウ素(3.02g、11.9mmol)のTHF(50mL)溶液に激しく攪拌しながらカニューレし、暗褐色懸濁液を得た。5分後、ヘキサメチルジシラジドナトリウム溶液(11mL、THF中1.0M)を添加し、得られた赤色溶液を0.5時間攪拌した。アルデヒド(3.12g、6.04mmol)のTHF(30mL)溶液をカニューレにより添加し、混合物を1時間かけて−20℃に加温し、その時点でのTLC分析は出発アルデヒドが完全に消費されたことを示していた。飽和NH4Cl水溶液(0.5mL)およびヘキサン(50mL)を添加して反応物をクエンチし、得られた沈殿物をシリカゲルのショートパッドで濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、淡黄色オイル4.05gを得た。
【0156】
上記のように得た粗製の混合物をTHF水溶液(1:1、10mL)に溶解した。そして、水酸化リチウム1水和物(0.510g、12.2mmol)を室温で添加し、そして得られた混合物を攪拌した。4時間後、2相溶液を飽和NH4Cl水溶液(15mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(25mL×3)で抽出した。合わせた有機層をNaHCO3水溶液および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=3:1)で精製し、淡黄色オイルとしてアルコール1.78gを得た(61%)。
【NMR9】
【0157】
15−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−ケトン(微量の互変異性体*)(11G)。9−BBNダイマー(0.774g、6.34mmol)のTHF(5mL)溶液に、トリカルボニル(2.80g、5.43mmol)のTHF(5mL)溶液を添加した。25℃で1時間攪拌した後、TLC分析は出発オレフィンが完全に消費されたことを示していた。
【0158】
ヨウ化ビニル(3.25g、4.53mmol)、(dppf)PdCl2・CH2Cl2(0.370g、0.453mmol)、AsPh3(0.139g、0.454mmol)およびCs2CO3(2.21g、6.78mmol)を含む分離フラスコに、脱ガスしたDMF(5mL)を添加した。得られた赤色懸濁液を20分間アルゴンガス気流でパージした。水(2mL)を上記調製したボラン溶液に添加し、10分間攪拌をし続けて過剰の9−BBNをクエンチした。そして、アルキルボラン溶液を、臭化ビニルを含む溶液に激しく攪拌しながら素早く添加した。2時間後、反応混合物をエーテル(50mL)で希釈し、水(10mL×2)および食塩水で洗浄し、そして無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、粗生成物をヘキサン/酢酸エチル(10:1)で溶出させるシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製し、淡黄色で粘り気があるオイルとして生成物3.26gを得た(65%)。
【NMR10】
【0159】
15−ヒドロキシ−3−ケトン(鈴木生成物、微量の互変異性体*)(12G)。TBSエーテル(0.265g、0.254mmol)を、25℃でMeOH中0.5NのHCl(25mL)に溶解した。反応物をTLCによりモニターして反応の完結を見た。2時間後、反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(25mL)に注ぎ入れ、CH2Cl2(40mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、そして無水MgSO4で乾燥した。アルコールをヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶出させるシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製し、無色粘稠性オイルとして純粋なアルコール(0.198g、84%)を得た。
【NMR11】
【0160】
3,15−ジオール(ノヨリ生成物)(13G)。ジケトン(0.302g、0.325mmol)を25℃でMeOH中0.12NのHCl(3.5mL、0.42mmol)に溶解した。そして、Et2NH2[{(R)−(BINAP)RuCl}2Cl3]触媒(THF中0.048M、0.034mmol)を添加し、混合物をParr装置に移した。容器を10分間H2でパージし、そして1,200psi(約8.3MPa)に加圧した。25℃で8時間後、反応物を大気圧に戻し、飽和NaHCO3水溶液(15mL)に注ぎ入れた。この混合物をCH2Cl2(15mL×3)で抽出し、合わせた有機層を無水Na2SO4で乾燥した。生成物混合物をヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶出させるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィにより分離し、透明なオイルとしてより極性の低いメチルエーテル0.152g(49%)および緑色で粘り気があるオイルとしてより極性の高いヒドロキシエステル0.126g(42%)を得た。
【NMR12】
【0161】
15−ヒドロキシ酸(14G)。ジオール(0.495g、0.531mmol)のCH2Cl2(5mL)溶液に、−78℃で2,6−ルチジン(0.870mL、7.47mmol)およびTESOTf(0.840mL、3.72mmol)を順次添加した。反応混合物を−78℃で0.5時間攪拌し、そして3時間かけて室温に加温した。室温で8時間攪拌した後、反応混合物をCH2Cl2(40mL)で希釈し、1NのHCl(20mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、緩衝剤溶液(20mL、pH=7)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥し、真空下に濃縮した後、粗生成物を次の反応条件に適用した。
【0162】
粗製のビス(トリエチルシリル)エーテルをTHF(5mL)に溶解し、そして0℃に冷却した。反応をTLCによりしっかりモニターしながら、MeOH中0.1NのHCl溶液(2.2mL)を添加した。メタノール性HClは少しずつであり、完結するためにおよそ5mLの0.1NのHClが必要であった。反応混合物をCH2Cl2(30mL)で希釈し、緩衝剤(10mL、pH=7)で洗浄し、そして無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を除去した後、粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製し、無色の粘り気があるオイルとして酸0.370gを得た(70%)。
【NMR13】
【0163】
7,21−ビス(2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル)−3−トリエチルシリルオキシ−12,13−デスオキシエポチロンF(15G)。トリエチルアミン(0.360mL、2.60mmol)および2,4,6−トリクロロ安息香酸(0.528g、2.15mmol)を、ヒドロキシ酸(0.426g、0.430mmol)のTHF(9.0mL)溶液に添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、そしてトルエン(40mL)で希釈した。得られた溶液を注射器に取り出し、あらかじめ調製しておいたDMAP(0.525g、4.30mmol)のトルエン(400mL)溶液に3時間かけてシリンジポンプにより添加した。添加を終えた後、反応物を1時間攪拌し、そしてセライトのショートパッドで濾過した。濾液を真空下に濃縮し、そしてSiO2でのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=21:1)により、白色発泡体として所望のマクロラクトン0.196gを得た(64%)。Mp71.7〜72.9℃。
【NMR14】
【0164】
3−トリエチルシリルオキシ−12,13−デスオキシエポチロンF(16G)。方法A:サマリウム金属(126mg、0.838mmol)およびヨウ素(170mg、0.838mmol)のTHF(8mL)混合物を、2時間還流下激しく攪拌した。この間、反応混合物は暗オレンジ色からオリーブグリーン色、そして深青色になった。深青色溶液を室温に冷却し、そして触媒量のヨウ化ニッケル(2.6mg、0.0083mmol)を添加した。室温で5分間攪拌した後、混合物を−78℃に冷却した。マクロラクトン(81.5mg、0.0838mmol)のTHF(2mL)溶液をSmI2/NiI2溶液にカニューレし、そして1時間攪拌し続けた。−40℃で2時間攪拌した後、反応混合物を1NのHCl(10mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3(10mL)水溶液および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を真空下に留去した後、シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィし(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)により、無色のオイルとしてジオール45.3mgを得た(87%)。
【0165】
方法B:活性化亜鉛粉末(0.261g、3.84mmol)の酢酸(2mL)懸濁液に、室温でマクロラクトン(0.196g、0.201mmol)のTHF(1.0mL)溶液を添加した。1.5時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、コットンプラグで濾過して、過剰の亜鉛を除去した。そして濾液を飽和NaHCO3水溶液(15mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィにより粗生成物を精製し、無色の粘り気があるオイルとしてジオール0.108gを得た(86%)。
【NMR15】
【0166】
12,13−デスオキシエポチロンF(dEpoF)(2Gd)。トリエチルシリルエーテル(82mg、0.132mmol)をポリエチレン容器中THF(2mL)に溶解し、氷浴中0℃に冷却した。得られた溶液を、TLCによりしっかりモニターしながらHF−ピリジン(1.5mL)で処理した。0℃で1時間そして室温で0.5時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(20mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、飽和NaHCO3(20mL)と1NのHCl(20mL)との水溶液および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(1:2)混合物を用いるシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィにより、白色発泡体としてデスオキシエポチロンF61mgを得た(91%)。
【NMR16】
【0167】
2−エトキシカルボニル−4−クロロメチル(チアゾール)(3H)。アミノチオキソ酢酸エチル(0.145g、1.09mmol)および1,3−ジクロロアセトン(0.138g、1.09mmol)のアセトン(2mL)中1:1混合物を24時間加熱還流した。暗褐色溶液を室温に冷却し、酢酸エチル(10mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(3mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をヘキサン−酢酸エチル(3:1)で溶出させるシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィにより精製し、淡黄色で粘り気があるオイルとしてチアゾール3H0.187gを得た(83%)。
【NMR17】
【0168】
2−エトキシカルボニル(チアゾール)−4−メチルジフェニルホスフィンオキシド(4H)。塩化物(2.65g、12.9mmol)の塩化メチレン(13mL)溶液に、ジフェニルホスフィンオキシド(3.13g、15.5mmol)、炭酸セシウム(5.88g、18.0mmol)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウム(95mg、0.26mmol)を添加した。得られた懸濁液を室温で48時間攪拌した。TLC分析により出発クロリドが完全に消費されたことが示された後、反応混合物を飽和NaHSO4水溶液(50mL)を含む分液漏斗に注ぎ入れ、塩化メチレン(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル−塩化メチレン=1:1)により精製し、僅かに粘稠性のオイルとしてウィッティッヒ試薬3.28gを得た(68%)。
【NMR18】
【0169】
ヨウ化ビニル6H。ウィッティッヒ試薬(70mg、0.19mmol)のTHF(2mL)溶液に、−78℃でヘキサメチルジシラジドリチウム(THF中1.0M、0.15mL)を滴下添加した。初期の淡黄色溶液が直ちに深赤色溶液に変色した。10分後、ケトンのTHF溶液をカニューレにより赤色溶液にゆっくり添加した。添加を終えた後、反応混合物を0.5時間かけて0℃に加温し、その時点でのTLC分析は反応が完結していることを示していた。混合物を飽和NaHSO4水溶液(5mL)に注ぎ入れ、エーテル(5mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=20:1)により精製し、無色オイルとしてエチルエステル52mgを得た(80%)。
【NMR19】
【0170】
アルコール7H。水素化リチウムアルミニウム(4.0mg、0.10mmol)のエーテル(0.5mL)スラリーに、0℃でエチルエステル(52mg、0.10mmol)溶液を滴下添加した。添加後、反応混合物を室温に加温し、2時間攪拌した。そして混合物を飽和NaHSO4水溶液(5mL)に注ぎ入れ、エーテル(5mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)および食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=5:1)により精製し、透明オイルとしてアルコール24mgを得た(50%)。
【NMR20】
【0171】
グリコールイミド10Ha。0℃に冷却したPMB−保護化イミド(9.23g、26.0mmol)のジクロロメタン(90mL)溶液に、TiCl4(5.05g、27.3mmol)を添加した。溶液を0℃で5分間攪拌し、その後ジイソプロピルエチルアミン(3.53g、27.3mmol)を滴下添加し、1時間攪拌し続けた。反応物を飽和NaHCO3溶液でクエンチし、ジクロロメタン(3×60mL)を用いて抽出した。合わせた有機層を食塩水(1×50mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(70%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとしてグリコールイミド10Ha(5.5g、87%)を得た。
【0172】
グリコールイミド11H。グリコールイミドX(4.75g、20.2mmol)のDMF(20mL)溶液に、イミダゾール(1.65g、24.3mmol)続いてTESCl(3.35g、22.2mmol)を添加した。混合物を室温で12時間攪拌した。そして溶液をH2O(200mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(25%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとしてTES−保護化グリコールイミド11H(5.93g、84%)を得た。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.33。
【NMR21】
【0173】
アルキル化グリコールイミド(12H)。TES−保護化グリコールイミド11H(1.11g、3.18mmol)をTHF(20mL)に溶解し、−78℃に冷却した。LHMDS(1.0MのTHF溶液、3.50mmol)を滴下添加し、−78℃で30分間攪拌した。1,3−ジヨード−3−ブテン(1.08g、3.5mmol)のTHF(5mL)溶液を、冷却したエノレートにカニューレにより添加し、その後溶液を12時間かけて室温にゆっくり加温した。溶液を飽和NaCO3溶液でクエンチし、EtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)により、淡黄色オイルとしてアルキル化グリコールイミド12H(1.27g、81%)を得た。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.47。
【NMR22】
【0174】
アルキル化TES−保護化N,O−ジメタミド(12Ha)。アルキル化TES−保護化グリコールイミド12H(5.29g、10.0mmol)を、HOAc:THF:H2O(3:1:1、150mL)に溶解し、室温で4時間攪拌した。そして溶媒を真空下に除去した。オイル状残留物をEtOAc(100mL)に溶解し、飽和NaCO3(2×50mL)および食塩水(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。この物質を更には精製せずに引き続く反応に用いた。N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.87g、50.0mmol)をTHF(60mL)に懸濁させ、0℃に冷却した。AlMe3のトルエン1.0M溶液(25mL、50mmol)を滴下添加した。添加を終えた後、氷浴を除去し、溶液を室温で2時間攪拌した。そしてこの溶液を0℃で粗製のアルキル化グリコールイミド(上記調製したもの)のTHF(100mL)溶液にカニューレした。添加を完結した後、氷浴を除去し、混合物を室温で6時間攪拌した。反応物を1Nの酒石酸溶液(100mL)を添加してクエンチし、1時間攪拌した。有機層を除去し、水層をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(20%アセトン/ヘキサン)により、透明オイルとしてN,O−ジメチルアミド12Ha(2.67g、2工程で91%)を得た。40%アセトン/ヘキサン中Rf=0.42。
【NMR23】
【0175】
TES−保護化N,O−ジメチルアミド(13H)。N,O−ジメチルアミド12Ha(2.53g、8.47mmol)のDMF(15mL)溶液に、イミダゾール(0.69g、10.2mmol)続いてTESCl(1.40g、9.32mmol)を添加した。溶液を室温で5時間攪拌した。そして溶液をH2O(150mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化N,O−ジメチルアミド13H(3.39g、97%)を得た。40%アセトン/ヘキサン中Rf=0.66。
【NMR24】
【0176】
TES−保護化メチルケトン(14H)。0℃に冷却したTES−保護化N,O−ジメチルアミド13H(3.27g、7.91mmol)のTHF(80mL)溶液に、メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中3.0M、23.7mmol)を添加した。溶液を0℃で15分間攪拌し、そして飽和NH4Cl溶液(50mL)でクエンチした。有機層を除去し、水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化メチルケトン14H(2.72g、93%)を得た。20%アセトン/ヘキサン中Rf=0.35。
【NMR25】
【0177】
ヒドロキシケトン(17H)。ケトン16H(3.10g、13.0mmol)のCH2Cl2(70mL)溶液を−17℃に冷却し、HMDS(10.0mL、47.4mmol)そしてTMSI(5.5mL、38.6mmol)で順次処理した。得られた黄色懸濁液を5分後室温に加温し、3時間磁気攪拌し、その後反応混合物をEt2O(100mL)で希釈し、そして冷却した飽和NaHCO3(2×50mL)で洗浄した。水層をEt2O(2×50mL)で逆抽出した。合わせたEt2O抽出物をNa2SO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。得られた黄色オイルを更には精製せずに次の工程に使用した。
【0178】
AD−混合−α(16.49g)およびOsO4(1.55mL、0.152mmol)の1:1t−BuOH:H2O(124mL)溶液を0℃に冷却し、粗製のシリルエノールエーテルで処理した。2時間後、反応物を飽和Na2SO3(100mL)でクエンチし、室温に加温し、そして1時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(5:1ヘキサン:EtOAc)により、透明オイルとして17H(1.60g、全48%)を得た。
【NMR26】
【0179】
TES−保護化ヒドロキシケトン(14H)。ヒドロキシケトン17H(1.383g、5.44mmol)のDMF(10mL)溶液を、イミダゾール(0.822g、12.1mmol)およびTESCl(1.00mL、5.95mmol)で処理した。3時間後、反応物をH2O(20mL)で希釈し、EtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をH2O(1×20mL)および食塩水(1×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(20:1(R)5:1ヘキサン:EtOAc)により、透明オイルとして14H(1.72g、86%)を得た。
【0180】
実施例2:還元型にカップリングするためのアシル部位の導入および右翼および左翼を合成するための新規な方法によるデスオキシエポチロンFの合成
他の実施形態において、図1に示すようにおよび本明細書に詳述したように、dEpoFの全合成を行った。特に、使用した合成技術の効果を改良する試みにおいて、有望な抗ガン剤であるdEpoFの新規でかつ改良された全合成を、(スズキカップリングの後にノヨリ還元を行うよりは)既に還元されたC3とスズキカップリングさせるためのアシル部位を用いて開発した。この試みとの関連において、アシルおよびアルキル部位の両方に対する、より収束したおよびモジュラー経路を開発した。新規な合成は、それぞれの工程で強い立体選択性を持って収束したおよびモジュラー性質戦略を特徴としている。主要な中間体を合成することが簡便であるため、大量調製が容易であり、それぞれの合成セグメントにおいて構造上の変更が簡単である。
【0181】
より特異的には、dEpoFのO−アルキル翼の合成のために、ホーナー様縮合により、チアゾール成分と臨界のC15立体化学および(Z)−12,13−アルケン官能基を有するセグメントとを好都合に結合した。O−アシル翼への途中である立体選択的アルドール反応を詳細に調べた。図19に描写するように、遷移状態に影響する要因を微妙に変化させると、立体化学情報を長期に伝達することに顕著な影響があることが示された。これらの研究において(Wu他Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,4505〜4508も参照のこと)、この全ての内容は参照により本明細書に取り込まれるが、アルドール縮合における成分の立体化学的整合性の関わり合いを動力学的レベルで調査した。共有結合形成における分子認識が重要性であるという顕著な例は、反応速度分割により示されてきた。図19に描写するように、O−アシル翼16の合成において、適切な順序でケトアルデヒド19とアセテート20およびアルデヒド11とを立体選択的アルドール反応させると、関連するキラル中心での立体配置を制御しながら必要な炭素単位を組み立てることができると考えられた(図18参照)。初期のアルドール生成物(AまたはB)の立体中心は、このシナリオにおいて、後期のアルドールプロセスによりC−C結合を形成する際のジアステレオ選択性に強く影響すると信じられていた。遷移状態に影響する要因を微妙に変化させると、立体化学情報を長期に伝達することに顕著な影響があることも示した。
【0182】
ポリプロピオン酸領域のSARマップにおいて高い程度の不耐性が見られ、多くの類似体が入手できるために広範な適応可能中間体として、新規なO−アシル翼フラグメントを用いることが出来る。より詳細に記載したように、dEpoFを生体外および生体内での両方で評価すると、本化合物は極めて有望な抗ガン剤活性を示した。
【0183】
上述のような一般的合成法に加えて、本発明は更に、2種の独立した方法によりメチルケトン11を調製する新規な方法を提供する。最初の方法は、C15中心を導入する触媒的不斉酸化方法、および(Z)−アルケン幾何を導入するためのアルキンのヨードホウ素化を含む(図3)。図3に示したように、本発明の1つの実施形態において、プロピン(17)をβ−ヨード−9−BBNと反応させ、得られたビニルボランをメチルビニルケトンに添加し、ケトン18を得た。続いて本化合物をTMSI/HMDSと処理して、2種のシリルエーテルのレジオ異性体19および20の88:12混合物を得た。AD−混合−αを用いて混合物を不斉ジヒドロキシル化を行い、55%収率および87%鏡像体過剰率でヒドロキシケトン21を得た。オスミウムで媒介されるジヒドロキシル化の間、潜在的に弱いヨウ化アルケン官能基が耐えうることができることは注目すべきである。最後に、25のトリエチルシリル化により18が得られ、たった4工程で手順が完結した。
【0184】
本発明の更に他の実施形態において、C15立体配置を確立する不斉アルキル化反応を含む経路(図4)を検討した。炭素−炭素結合形成は、求核剤としてキラルなグリコレートエノレートを用いると効果的であり、必要であった(Z)−2,4−ジヨード−2−ブテン(22)は2−ブチン−4−オールから容易に調製できた。あらかじめ、アルキル化によるよりは「キラルなエノレート」(すなわち、補助のアシル基を有するもの)の酸化により、グリコレートの不斉合成を行った。一般的なタイプ24のグリコレートのアルキル化を含む実施例は、強固なO−保護基を必要とする傾向にあった。よって、これらのアルキル化にシリル保護した24を用いる可能性を調べた。シリル化されたグリコレートの合成は、3工程で23から得られる、公知のPMB誘導体24bを出発物として行った。他の実施形態において、系内での混合無水物の形成を含む1フラスコ方法により、23を数グラムスケールで24aに変換できた。続いて、−78℃でリチオ24aをジヨード22で処理して、所望の25aを単一の異性体(98%以上のジアステレオ選択性)として良好な収率で得た。ある実施形態において、TES官能基を保護化剤として優先的に使用し、24aの不斉アルキル化を数グラムスケールでごく普通に行い、光学的に純粋な25aを得ることができた。TES基を除去した後、ワインレブアミド26aの形成は、キラルな補助基が同時に解離し、続いて保護化およびグリニャール付加により影響を受け、11が得られた。
【0185】
上記模範的な実施形態に記載したように、必要なケトン11を調製した後、完全な左翼成分の調製を行った。特に、図20に示すように、チオオキサミド酸エチル(31)を1,3−ジクロロアセトン(32)と縮合させて、優れた収率で2,4−二置換チアゾール33を得た。そして、Ph2POEtを用いるアルブゾフ反応またはHOPPh3を用いる直接P−アルキル化によるある実施形態において、35は効果がある。LHMDSで処理すると、チアゾール34およびケトン11は円滑に縮合し、単一の幾何異性体として35が得られた。最後に、エステル35をDibal−Hで還元して、アルコール36が得られ、これをTroc基で保護して、所望のO−アルキル部分8を得た。この新規な経路は、10の一次変換を含む従来の手法より極めて短くかつより収束的である。
【0186】
O−アシルフラグメントへの新規な合成経路
定量的にO−アルキル構成要素8をうまく調製したので、O−アシルフラグメント9への経路の開発に興味を移した。前述のように、我々が以前の合成に使用したセグメントを用いると(実施例1参照)、ノヨリ還元の間C15で加溶媒分解の問題が発生する。よって、スズキカップリングの前にC3カルビノール中心を確立することに、多くの改良点が集中した。1つの実施形態において、不斉レフォルマトスキー反応(式1、表1)を実現するという試みを検討した。キラルなアミノアルコール39の存在下、臭化酢酸t−ブチルの「亜鉛酸塩」をケトアルデヒド13に付加反応させた(Soal他J.Chem.Soc.PerkinTrans.,1994,1257、Soal他Chem.Rev.,1992,92,833)。本反応により優れた収率で期待するアルドール付加物が生成し、それゆえ、エナンチオ選択性は合成的に価値があるレベルに達していなかったが(エントリー1および2)、本反応は多くの他の2つの炭素求核剤に適応できると評価される。反応温度を下げるにつれ、エナンチオ選択性は大きく向上するので、反応は効果的ではない転化率に問題ある方法であった(エントリー3)。
【0187】
更に他の実施形態において、酢酸t−ブチルから誘導したキラルなチタンエノレートの反応により、立体制御を行った。文献のプロトコル(Dunthaler他Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1989,28,495)に従い、β−ヒドロキシt−ブチルエステル37の両方のエナンチオマーを高いエナンチオ選択性で良好な収率で調製した(エントリー4および5)。鏡像体過剰率および絶対立体選択性の感覚を、37を対応するMosherエステルに誘導体化することにより決定し、我々のプログラムでの現象により実証した(Dale他J.Am.Chem.Soc.,1973,95,512参照)。
【化156】
【0188】
【表1】
【0189】
高いエナンチオ過剰率で37を得る方法を見出したので、2重の立体区別アルドール反応を検討した(β−ヒドロキシケトン類のアルドール反応の例として、Luke他J.Org.Chem.,1995,60,3013;Evans他Tetrahedron Lett.1993,34,6871、McCarthy他J.Org.Chem.,1987,52,4681)。求核剤として保護化された37を用いるために、両方のエナンチオマーのアルドール付加物を、対応するTESエーテル鏡像異性体38に変換した。反応に関し、同じアルドール反応に38のチタンエノラートを用いた(Evans他J.Am.Chem.Soc.,1990,112,8215)。実際、(S)−38および(R)−38の両方がアルドール縮合し、ジアステレオマー混合物が適切な収率で得られた(図22)。それぞれの反応で得られる主要なジアステレオマーの立体化学は、C8よりもC3の立体配置が、新たに形成されたC6およびC7中心の立体配置に大きな効果を有することを示していた。
【0190】
本明細書に記載した研究の過程において、立体化学情報を長期に伝達するための微妙な変化を検討するために、本明細書に記載したアルドール反応の過程において他の研究を行った。リチオアルコキシエノレートの場合、適合したシリーズを支持する大きな動力学的有利性が示されてきたことを確定した。これらの発見は、立体化学バイアスの長期間転移の他の例に適用できると認められるであろう。これらの結果を議論するために、Wu他Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,4505〜4508を参照のこと。この全体の内容は参照により本明細書に取り込まれる。
【0191】
それゆえ、ある他の実施形態において、引き続く「基質−方向性」および「試薬−制御性」アルドール反応により、C6、C7およびC3での必要な立体配置が得られるという、9への代りの方法を探索した(図22)。
【0192】
この目標に向かって、ケトアルデヒド13をジイソプロピルアセタールとして保護し、得られたケトン49を14とアルドール反応させた。49をLDAで脱プロトン化し、そして14と反応させると、縮合が円滑に進行し、アルドール付加物50と51との4:1混合物が得られた。主要なジアステレオマー50を、フラッシュクロマトグラフィにより極めて容易に分離し、Troc基として保護した。実際、C3がエノールエーテルに相当した初期の場合と異なり、アルドール縮合が完結するという、本ルートに重要な効果があった。さらに、これまでの合成では−120℃よりも−78℃でカップリングが行われているので、反応条件は科学技術的により要求が少ない。
【0193】
図22を参照するように、酸触媒下50bのジイソプロピルアセタール基を加水分解すると、ケトアルデヒド52が得られ、これは第2のアルドール反応のためになる。式1に示すようにグルコースより誘導された補助を用いる同じ「チタノ」t−ブチルエステル法に従い、所望したC3(S)53を高いジアステレオ選択性(dr>20:1)で得た。C3アルコールをシリル基で保護して、O−アシル翼9およびTBS誘導体54が得られ、このスペクトルおよびクロマトグラフ性質は、これらの実験室での他のプログラムから以前に得られた物質と同一であった。
【0194】
そして、図23に示したように、dEpoBの形式的な全合成に、新たに調製した9を利用した。EpoBシリーズ58においてO−アルキルセグメントとβ−アルキルスズキカップリングさせ、59を得た。続いて、59をTESOTfで処理した後、選択的に脱シリル化し、ヒドロキシ酸60を得た。これは我々の以前の合成にてdEpoB(2b)およびEpoB(1b)に誘導した。したがって、これらの研究により明らかに、多くのアルドール反応の立体化学成果およびdEpoBに代わりうる全合成の構成を確立した。アシル部位における「酢酸チタン」を基礎とするC3Sへの経路または以前に行った次期鈴木経路(C3ケト→C3Sヒドロキシ)は、経済性の問題およびスケールアップし易さに依存して利用できる。
【0195】
最終的に、これらの研究結果をdEpoFの全合成に適用した。上記説明したように、本化合物の全合成をより改良することは、臨床評価を前進させるために重要である。
【0196】
図24に示したように、フラグメント8および9をβ−アルキル鈴木プロトコルにより結合し、secoエステル62を得た。t−ブチルエステル62をTESエステルに変換した後、酸触媒による選択的脱シリル化を行い、63が得られ、これをマクロラクトン化した。この点において、スペクトルの相関を詳細に取ると63は以前に合成した中間体と一致することを確認した。我々の以前の合成で使用したのと同様の手順に従い、ヒドロキシ酸63を環化して、全体が保護されたマクロラクトン64を得た。最終的に、TrocおよびTES基を連続的に除去して、12,13−デスオキシエポチロン(2d、dEpoF)を得、これは以前に合成したdEpoFと全ての面で再び一致していることが分かった。
【0197】
dEpoFの合成を完結するとともに、12,13−アルケンでエポキシ化することによりエポチロンF自身(1d、EpoF)の合成も確立した(図25)。合成dEpoFを2,2−ジメチルジオキシラン(DMDO)で処理して、天然の立体化学を有する12,13−エポキシドが形成し、EpoFを得た。分光学的データおよび観察された[α]D(c、MeOH)は、天然のEpoFによく一致していた(Hofle他Angew.Chem.Int.Ed.,1999,38,1971)、[α]D(c、EtOH)。21−ヒドロキシル基はdEpoBの水溶性を2.5倍向上させることも分かった(Swindell他J.Med.Chem.,1992,34,1176)。加えて、更なる官能基化のための中間点として有用であることが分かった。DCCの作用のもと、非保護化dEpoFをアジド酸65と縮合させて、光親和性で標識したdEpoF66を得た。チューブリン−結合アッセイでは、dEpoFはdEpoBの活性を90%維持していることを示しているので、アロイル化誘導体66はチューブリン重合を引き起こさず、それゆえ、チューブリン−結合に効果的なチアゾール領域の微妙な性質が強調された。
【0198】
その抗ガン能を評価するために、全合成dEpoFについてまずは多くの細胞タイプを試験した。表2に示すように、dEpoFは、広範囲の高感度および耐性ガン細胞株に対して高い細胞毒性活性を示した。特に、dEpoFは、MDR細胞株に対して高い有効性と低い交差耐性を維持しており、パクリタキセル、ビンブラスチン、エトポシド、アクチノマイシン、およびアドリアマイシンなどの他の非エポチロン抗ガン剤より確実に優れていた。dEpoFのこれらの特性は、極めて有望な抗ガン剤であるdEpoBの特性に非常に匹敵している。
【0199】
【表2】
【0200】
実施例2のための実験
概要。全ての市販されている物質は、他に断らない限り、更には精製せずに使用した。以下の溶媒を乾燥溶媒システムから得、更には乾燥せずに使用した:THF、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエンおよびベンゼン。事前に精製した乾燥アルゴンガスの陽圧下に全ての反応を行った。1Hおよび13C NMRスペクトルを、それぞれ300または400、および75または100MHzでCDCl3溶液中記録した。E.Merckシリカゲル60 F254プレートで分析的薄層クロマトグラフィを行い、E.Merckシリカゲル60(40〜63μm)またはシグマH−型シリカゲル(10〜40μm)上で、示した溶媒を用いてフラッシュクロマトグラフィを行った。
【0201】
【化157】
化合物25。ケトン22(3.10g、13.0mmol)のCH2Cl2(70mL)溶液を−17℃に冷却し、HMDS(10.0mL、47.4mmol)そしてTMSI(5.5mL、38.6mmol)で順次処理した。得られた黄色懸濁液を5分間かけて室温に加温し、3時間磁気攪拌し、その後反応混合物をエーテル(100mL)で希釈し、そして冷飽和10%NaHCO3(2×50mL)で洗浄した。水層をエーテル(2×50mL)で逆抽出した。合わせたエーテル性抽出物をNa2SO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。得られた黄色オイルを更には精製せずに次の工程に用いた。
【0202】
AD−混合−α(16.49g)およびOsO4(1.55mL、0.152mmol)の1:1 t−BuOH:H2O(124mL)溶液を0℃に冷却し、粗製のシリルエノールエーテル23で処理した。2時間後、反応物を飽和Na2SO3(100mL)でクエンチし、室温に加温し、そして1時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(5:1ヘキサン/酢酸エチル)により、透明オイルとして25を得た(1.60g、全48%)。
【NMR27】
【0203】
【化158】
化合物18。ヒドロキシケトン25(1.38g、5.44mmol)のDMF(10mL)溶液を、イミダゾール(0.822g、12.1mmol)およびTESCl(1.00mL、5.95mmol)で処理した。3時間後、反応物をH2O(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をH2O(1×20mL)および食塩水(1×20mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィ(20:1から5:1=ヘキサン/酢酸エチル)により、透明オイルとして18を得た(1.72g、86%)。
TES保護化N,O−ジメチルアミド30b(3.27g、7.91mmol)の0℃に冷却したTHF(80mL)溶液に、メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中3.0M、23.7mmol)を添加した。溶液を0℃で15分間攪拌し、そして飽和NH4Cl溶液(50mL)でクエンチした。有機層を除去し、そして水層をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化メチルケトン18を得た(2.72g、93%)。20%アセトン/ヘキサン中Rf=0.35。;
【NMR28】
【0204】
【化159】
化合物28a。方法A。PMB−保護化イミド28b(9.23g、26.0mmol)の0℃に冷却したジクロロメタン(90mL)溶液に、TiCl4(5.05g、27.3mmol)を添加した。溶液を0℃で5分間攪拌し、その後ジイソプロピルエチルアミン(3.53g、27.3mmol)を滴下添加し、そして1時間攪拌し続けた。反応物を飽和NaHCO3溶液でクエンチし、ジクロロメタン(3×60mL)を用いて抽出した。合わせた有機層を食塩水(1×50mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(70%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとして非保護化グリコールイミドを得た(5.50g、87%)。得られた化合物(4.75g、20.2mmol)のDMF(20mL)溶液に、イミダゾール(1.65g、24.3mmol)続いてTESCl(3.35g、22.2mmol)を添加した。混合物を室温で12時間攪拌した。そして溶液をH2O(200mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(25%EtOAc/ヘキサン)により、透明オイルとしてTES−保護化グリコールイミド28aを得た(5.93g、84%)。
【0205】
方法B。機械攪拌機および窒素注入口を装備した2Lの三つ口フラスコに、水素化ナトリウム(60%分散液、8.0g、0.200mol)およびエーテル(400mL)を添加した。この懸濁液に、0℃でグリコール酸(15.21g、0.200mol)を数回に分けて添加した。20分後、トリエチルアミン(30mL、0.215mol)およびTESCl(30.15g、0.200mol)を添加し、混合物を室温で2時間攪拌した。反応混合物を−78℃に冷却した後、ピバロイルクロリド(24.6mL、0.200mol)を注射器によりゆっくり添加し、1時間攪拌し続けた。THF(400mL)中27(17.7g、0.100mol)を含む分離フラスコに、−78℃でn−BuLi(ヘキサン中2.5M、40mL、0.100mol)をゆっくり添加した。0.5時間攪拌した後、混合物を上記調製した懸濁液に激しく攪拌しながらカニューレした。混合物を2時間かけて室温に加温し、10%NaHSO4(500mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、水層をエーテル(200mL×3)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHCO3および食塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮し、そして濾過した。シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/EtOAc=15:1)により精製し、透明オイルとして28aを得た(12.85g、38%)。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.33。
【NMR29】
【0206】
【化160】
化合物29a。TES−保護化グリコールイミド28a(1.11g、3.18mmol)をTHF(20mL)に溶解し、−78℃に冷却した。LHMDS(1.0MのTHF溶液、3.50mmol)を滴下添加し、−78℃で30分間攪拌した。1,3−ジヨード−3−ブテン(26、1.08g、3.5mmol)のTHF(5mL)溶液を、カニューレにより冷却したエノレートに添加し、その後溶液を12時間かけて室温にゆっくり加温した。溶液を飽和NaCO3溶液でクエンチし、EtOAc(3×30mL)を用いて抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)により、淡黄色オイルとしてアルキル化グリコールイミド29aを得た(1.27g、81%)。20%EtOAc/ヘキサン中Rf=0.47。
【NMR30】
【0207】
【化161】
化合物30a。アルキル化TES−保護化グリコールイミド29a(5.29g、10.0mmol)をHOAc:THF:H2O(3:1:1、150mL)に溶解し、室温で4時間攪拌した。そして溶媒を真空下に除去した。オイル状の残留物をEtOAc(100mL)に溶解し、飽和NaCO3(2×50mL)および食塩水(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮して、29bを得た。この物質は更には精製をせずに続く反応に使用した。
【0208】
N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.87g、50.0mmol)をTHF(60mL)に懸濁し、0℃に冷却した。AlMe3のトルエン(25mL、50mmol)1.0M溶液を滴下添加した。添加を終えた後、氷浴を除去し、溶液を室温で2時間攪拌した。そしてこの溶液を、0℃で粗製のアルキル化グリコールイミド29b(上記調製した)のTHF(100mL)溶液にカニューレした。添加を終えた後、氷浴を除去し、混合物を室温で6時間攪拌した。1Nの酒石酸溶液(100mL)を添加することにより反応物をクエンチし、1時間攪拌した。有機層を除去し、水層をEtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(20%アセトン/ヘキサン)により、透明オイルとしてN,O−ジメチルアミド30aを得た(2.67g、2工程で91%)。
【NMR31】
【0209】
【化162】
化合物30b。N,O−ジメチルアミド30a(2.53g、8.47mmol)のDMF(15mL)溶液に、イミダゾール(0.69g、10.2mmol)続いてTESCl(1.40g、9.32mmol)を添加した。溶液を室温で5時間攪拌した。そして溶液をH2O(150mL)に注ぎ入れ、EtOAc(4×100mL)で抽出した。合わせた有機層をH2O(2×100mL)で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。そして溶液を濾過し、真空下に濃縮した。シリカゲルでのクロマトグラフィ(15%アセトン/ヘキサン)により、黄色オイルとしてTES−保護化N,O−ジメチルアミド30b(3.39g、97%)を得た。
【NMR32】
【0210】
【化163】
2−エトキシカルボニル−4−クロロメチル(チアゾール)、(34)。アミノチオキソ酢酸エチル(12.2g、91.6mmol)および1,3−ジクロロアセトン(13.4g、105mmol)のトルエン(100mL)混合物を2時間加熱還流した。褐色溶液を室温に冷却し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(トルエン−酢酸エチル=9:1)により精製し、淡黄色で粘り気があるオイルとしてチアゾール34を得た(18.1g、96%)。
【NMR33】
【0211】
【化164】
2−エトキシカルボニル(チアゾール)−4−メチルジフェニルホスフィンオキシド、(35)。塩化物34(8.40g、40.8mmol)の塩化メチレン(60mL)溶液に、ジフェニルホスフィンオキシド(9.10g、45.0mmol)、炭酸セシウム(16.3g、50.0mmol)、モレキュラーシーブ(4オングストローム、約0.5g)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウム(150mg、0.40mmol)を添加した。得られた懸濁液を室温で48時間攪拌した。そして反応混合物を飽和NaHSO4水溶液(50mL)を含む分液漏斗に注ぎ入れ、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(50mL)および食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル−塩化メチレン=1:1)により精製し、僅かに粘稠性のシロップとしてホーナー試薬35を得た(12.48g、82%)。
【NMR34】
【0212】
【化165】
化合物36。ケトン18(5.45g、14.8mmol)およびホスフィンオキシド35(8.20g、22.1mmol)のTHF(15mL)混合物に、−78℃でヘキサメチルジシラジドリチウム溶液(THF中1.0M、18mL)を滴下添加した。初期の淡黄色溶液が徐々に深赤色に変色した。室温で10時間攪拌した後、反応混合物を飽和NH4Cl水溶液(100mL)に注ぎ入れ、エーテル(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHCO3(50mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=40:1から10:1)により精製し、無色オイルとしてエチルエステル36を得た(4.01g、52%)。
【NMR35】
【0213】
【化166】
化合物37。エチルエステル36(4.01g、7.69mmol)のTHF(20mL)溶液に、0℃でDibal−H溶液(CH2Cl2中1.0M、19mL)を添加した。添加後、反応混合物を室温に加温した。2時間攪拌した後、1.0Mロシェル溶液(100mL)およびエーテル(50mL)を反応混合物に添加し、得られた懸濁液を室温で2時間攪拌し、この時点で透明な相が分離してきた。有機相を分離し、水相を更なるエーテル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして真空下に濃縮した。シリカゲルカラムでのカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=5:1)により精製し、透明オイルとしてアルコール37を得た(3.60g、98%)。
【NMR36】
【0214】
【化167】
化合物15。アルコール37(3.40g、7.09mmol)およびピリジン(1.2mL、14.9mmol)のCH2Cl2(20mL)溶液に、0℃でクロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル(1.80g、8.50mol)をゆっくり添加した。30分間攪拌した後、10%NaHCO3(30mL)を添加して反応物をクエンチし、エーテル(30mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を2NのHCl(20mL)、10%NaHCO3水溶液(20mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして濃縮した。シリカゲルカラム(ヘキサン−酢酸エチル=20:1)により精製して、淡黄色オイルとしてTtocエーテル15を得た(3.93g、85%)。
【NMR37】
【0215】
【化168】
1,1−ジイソプロピルオキシ−2,2−ジメチル−3−ペンタノン(50)。ケトアルデヒド19(6.40g、50mmol)のイソプロパノール(100mL)溶液に、オルトギ酸トリイソプロピル(16.7mL、75mmol)およびp−TsOH(951mg、5.0mmol)を添加した。混合物を3時間攪拌した後、食塩水(100mL)に注ぎ入れ、エーテル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、そして真空下に濃縮して、淡黄色液体として50を得た(10.12g、88%)。:
【NMR38】
【0216】
【化169】
(4R,5S,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−5−ヒドロキシ−2,2,4,6−テトラメチル−8−ノン−3−オン(51a)。LDA(15.70mmol)のTHF(20mL)溶液に、−78℃でケトン50(3.29g、14.27mmol)のTHF(15mL)溶液を添加した。混合物を−78℃で0.5時間攪拌し、そして−40℃に加温した。−40℃で0.5時間攪拌した後、−78℃に再び冷却した。そして、アルデヒド11の塩化メチレン溶液(2.2mL、73%、16.36mmol)を添加した。−78℃で1時間攪拌した後、反応物を飽和NH4Cl水溶液(12mL)でクエンチし、室温に加温した。水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(2%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、51a(3.06g、65%)および52a(0.74g、16%)を共に無色オイルとして得た。
【NMR39】
【0217】
【化170】
(4S,5R,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−5−ヒドロキシ−2,2,4,6−テトラメチル−8−ノン−3−オン(52a)。分析値:
【NMR40】
【0218】
【化171】
(4R,5S,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−5−ヒドロキシ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノン−3−オン(51b)。51a(3.00g、9.13mmol)のCH2Cl2(40mL)溶液に、0℃でTrocCl(2.50mL、18.26mmol、2.0当量)およびピリジン(2.95mL、26.5mmol、4.0当量)を添加した。混合物を5時間攪拌した。そして、食塩水(20mL)に注ぎ入れ、CH2Cl2(3×40mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(2%EtOAcのヘキサン溶液)により精製して、51b(4.58g、99%)を得た。:
【NMR41】
【0219】
【化172】
(4S,5R,6S)−1,1−ジイソプロピルオキシ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノン−3−オン(52b)。51bのための方法に従って、Trocエーテル52b(0.192g、90%)を、52a(0.140g、0.426mmol)、ピリジン(138μL、1.70mmol、4.0当量)およびTrocCl(117μL、0.85mmol、2.0当量)から調製した。:
【NMR42】
【0220】
【化173】
(4R,5S,6S)−3−オキソ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノネナール(53)。51b(4.58g、9.08mmol)のTHF(75mL)および水(23mL)溶液に、p−TsOH(450mg、2.36mmol)を添加した。反応混合物を7時間加熱還流し、そして飽和NaHCO3水溶液(50mL)に注ぎ入れた。水層をEtOAc(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(3%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、53(3.22g、88%)を得た。:
【NMR43】
【0221】
【化174】
(3S,6R,7S,8S)−3−ヒドロキシ−5−オキソ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル,(54)。LDA(7.52mmol)のエーテル(30mL)溶液に、−78℃で酢酸tert−ブチル(0.865ml、6.41mmol)を添加し、−78℃で1時間攪拌した。チタン錯体L−41(8.34mol)のエーテル(90ml)溶液を40分間かけて滴下添加した。−78℃で0.5時間攪拌した後、反応混合物を−30℃に加温し、45分間攪拌し、そして−78℃に再び冷却した。53(2.57g、6.41mmol)のエーテル(15mL)溶液を10分間かけて添加し、混合物を−78℃で2時間攪拌した。5MのTHF水溶液(14mL)でクエンチした後、室温で1時間攪拌し、混合物をセライトプラグにより濾過した。濾液を食塩水(40mL)で洗浄し、水層をエーテル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(7%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、透明オイルとして54(2.95g、89%)を得た。:
【NMR44】
【0222】
【化175】
(3S,6R,7S,8S)−5−オキソ−3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル,(54b)。54a(126mg、0.243mmol)のCH2Cl2(3mL)溶液に、−20℃で2,6−ルチジン(85μL、0.729mmol、3.0当量)およびTBSOTf(62μL、0.269mmol)を添加した。混合物を攪拌し、終夜で室温に加温した。食塩水(5mL)で洗浄し、そして水層をCH2Cl2(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(2%EtOAcのヘキサン溶液)を用いて精製し、54b(110mg、72%)を得た。:
【NMR45】
【0223】
【化176】
化合物16。アルコール54(1.80g、3.48mmol)およびイミダゾール(0.48g、7.05mmol)のDMF(5mL)混合物に、TESC1(0.68g、4.51mmol)を添加した。混合物を室温で2時間攪拌し、水(50mL)に注ぎ入れた。エーテル(30mL×3)で抽出し、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(トルエン−酢酸エチル=20:1)により精製して、無色オイルとしてTESエーテル16を得た(2.12g、96%)。:[α]D−61.7(c1.05,CHCl3)
【NMR46】
【0224】
【化177】
(3R,6R,7S,8S)−3−ヒドロキシ−5−オキソ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル(56a)。54aのための方法に従って、56a(20.8mg、74%)をLDA(0.064mmol)、酢酸tert−ブチル(7.4μL、0.055mmol)、チタン錯体D−41(0.0715mmol)およびアルデヒド55(22mg、0.055mmol)から調製した。:
【NMR47】
【0225】
【化178】
(3R,6R,7S,8S)−5−オキソ−3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル(56b)。54bの方法に従って、TBSエーテル56b(13mg、65%)をアルコール56a(17mg、0.033mmol)、2,6−ルチジン(μL、0.103mmol)、およびTBSOTf(8.5μL、0.037mmol)から調製した。1H NMRおよびTLCの両方とも、他の経路で得られたサンプルと一致していた。
【0226】
【化179】
(4S,5R,6S)−3−オキソ−2,2,4,6−テトラメチル−5−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−8−ノネナール(57)。55の方法に従って、アルデヒド57(0.103mg、81%)を52b(0.16g、0.317mmol)、THF(3mL)、水(1mL)、p−TsOH(20mg)から調製した。:
【NMR48】
【0227】
【化180】
(3S,6S,7R,8S)−3−ヒドロキシ−5−オキソ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル、(58a)。54のための方法に従い、アルコール58a(24mg、82%)をLDA(0.064mmol)、酢酸tert−ブチル(7.4μL、0.055mmol)、チタン錯体D−41(0.0715mmol)およびアルデヒド57(22mg、0.055mmol)から調製した。
【NMR49】
【0228】
【化181】
(3S,6S,7R,8S)−5−オキソ−3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−4,4,6,8−テトラメチル−7−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)−10−ウンデセン酸tert−ブチル(58b)。54bのための方法に従って、TBSエーテル58b(17mg、65%)を58a(21mg、0.041mmol)、2,6−ルチジン(14μL)、およびTBSOTf(10.5μL)から調製した。1H NMRおよびTLCの両方とも、他の経路から得られたサンプルと一致していた。
【0229】
【化182】
(3S,6R,7S,8S,12Z,15S,16E)−5−オキソ−3,15−ビス(トリエチルシリルオキシ)−17−(2−メチルチアゾル−4−イル)−4,4,6,8,12,16−ヘキサメチル−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)ペンタデカ−12,16−ジエン酸tert−ブチル、(60)。9−BBNダイマー(40mg、0.163mmol)のTHF(1.0mL)溶液に、オレフィン16(100mg、0.158mmol)のTHF(1.0mL)溶液を添加した。室温で2時間攪拌した後、TLC分析は16が完全に消費されたことを示しており、この時点でH2O(30mL)を添加し、残留している9−BBNをクエンチした。ヨウ化ビニル59(73mg、0.158mmol)のDMF(1.5mL)溶液を含む分離フラスコに、Cs2CO3(102mg、0.316mmol)、AsPh3(10mg、0.326mmol)、PdCl2(dppf)(26mg、0.0318mmol)、およびH2O(0.13mL)を順次激しく攪拌しながら添加した。そして、上記調製したアルキルボラン溶液を注射器により素早く添加した。4時間後、反応混合物をエーテル(20mL)に注ぎ入れ、水(2×10mL)および食塩水(8mL)で洗浄した。有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(5%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、淡黄色オイルとして60(110.5mg、72%)を得た。:
【NMR50】
【0230】
【化183】
(3S,6R,7S,8S,12Z,15S,16E)−5−オキソ−15−ヒドロキシ−3−トリエチルシリルオキシ−17−(2−メチルチアゾル−4−イル)−4,4,6,8,12,16−ヘキサメチル−(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)ペンタデカ−12,16−ジエン酸tert−ブチル、(61)。エステル60(50mg、0.0517mmol)のCH2Cl2(1.0mL)溶液に、−78℃で2,6−ルチジン(72mL、0.517mmol)およびTESOTf(71mL、0.31mmol)を添加した。混合物を終夜攪拌し、そして室温に加温した。反応物を飽和NH4Cl水溶液(2mL)でクエンチし、CH2Cl2(10mL)に注ぎ入れた。有機層を緩衝剤溶液(pH7.0)で洗浄し、濃縮した。残留物をTHF(0.5mL)に溶解し、そして0℃に冷却した。メタノール性HCl(0.12M、0.5mL)を少しずつ添加し、反応をTLCによりしっかりモニターした。20分後、反応物を飽和NaHCO3溶液(5mL)でクエンチし、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し、濾過し、そして真空下に濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ(30%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、淡黄色で粘り気のあるオイルとして61(28.2mg、68%)を得た。
【0231】
【化184】
化合物63。9−BBN−Hダイマー(0.490g、4.02mmol)のTHF(2mL)溶液に、オレフィン16(2.12g、3.35mmol)のTHF(4mL)溶液を添加した。室温で1時間攪拌した後、TLC分析は出発オレフィン16が完全に消費されたことを示していた。水(0.25mL)を上記調製したボラン溶液に添加し、10分間攪拌をし続け、過剰の9−BBN−Hをクエンチした。ヨウ化ビニル15(2.00g、3.05mmol)、(dppf)PdCl2・CH2Cl2(0.250g、0.306mmol)、AsPh3(0.188g、0.614mmol)およびCs2CO3(1.49g、4.57mmol)を含む分離フラスコに、脱ガスしたDMF(2mL)を添加した。そしてアルキルボラン溶液を、0℃でヨウ化ビニル15を含む溶液に激しく攪拌しながら素早く添加した。室温で15時間攪拌した後、反応混合物を10%NaHSO4(30mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHSO4(30mL)および食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして濃縮した。SiO2でのフラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル=10:1)により精製し、淡黄色粘稠性オイルとして63を得た(2.97g、84%)。[α]D−35.6(c.2.10、CHCl3);
【NMR51】
【0232】
【化185】
化合物64。tert−ブチルエステル63(2.86g、2.46mmol)のCH2Cl2(12mL)溶液に、0℃で2,6−ルチジン(0.86mL、7.37mmol)およびTESOTf(0.98g、3.71mmol)を添加した。反応混合物を0℃で0.5時間攪拌し、そして室温に加温した。室温で10時間攪拌した後、反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、1NのHCl(20mL)に注ぎ入れた。有機層を分離し、リン酸緩衝剤溶液(20mL、pH=7)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮した。そして、粗製のTES誘導体をTHF(5mL)に溶解し、0℃で0.1NHClのMeOH溶液(0.5mL)を用いて処理した。さらにメタノール性HClを少しずつ添加し、完結させるためにおよそ1.5mLの0.1NHClを必要とした。反応混合物をリン酸緩衝剤(15mL、pH=7)に注ぎ入れ、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして濃縮した。SiO2カラム(ヘキサン−酢酸エチル=1:1)により精製し、無色で粘着性のあるオイルとして酸64を得た(1.78g、73%)。クロマトグラフィのデータと分光学的データとを、あらかじめ合成した化合物でのデータと比較して、64であることを確認した。
【0233】
【化186】
エポチロンF(1d、EpoF)。dEpoF(2d、7.1mg、0.014mmol)のCH2Cl2(1mL)溶液に、−78℃で2,2−ジメチルジオキシラン溶液(CH2Cl2中約0.04M)を添加した。反応混合物を−40℃に加温し、1時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、そして10%Na2S2O3(2mL)および食塩水で洗浄した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、そして濃縮した。シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1:1)により精製して、薄膜としてEpoF(1d)を得た(4.4mg、60%)。
【NMR52】
【0234】
【化187】
化合物67。アジド酸66(3.8mg、0.016mmol)のCH2Cl2(0.5mL)溶液に、0℃でDCC(3.3mg、0.016mmol)およびdEpoF(7.5mg、0.015mmol)のCH2Cl2(0.5mL)溶液を添加した。2時間攪拌した後、混合物をシリカゲルのショードパッドで濾過し、そして濃縮した。シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)により精製して、透明な粘り気のあるオイルとして67を得た(6.8mg、63%)。:
【NMR53】
【0235】
実施例3:アザ−エポチロン類の合成
本発明のある種の実施形態はマクロラクタム類似体を目的としており(例えば図26参照)、以下の実施例はある種の発明であるアザ−類似体を記述していることが理解されるであろう。
C15−Epi−アザ−dEpoB(1F)。デスオキシエポチロンB(dEpoB)の生体安定性を改良するために、対応するラクタム類似体を合成した。図27。生体内でのエステラーゼ開裂に影響を受けないので、ラクタムの生体安定性が向上した。この合成は、C15−Epi−アザ−dEpoBを全合成した初めての例である。本明細書に記載した方法は、必要なC15−(R)−アザ−異性体の合成にも適応できる。
【0236】
図27に参照するように、1Fの合成は、既に報告されている(R)−ヒドロキシヨウ化ビニル2Fを出発物としている。アジ化水素酸を用いるC15(エポチロン付番方式)アルコールにおけるミツノブの発明により、アジド3Fが得られた。7Eから誘導したエノールエーテルとアジド2とのパラジウム−触媒スズキカップリングにより、アジドエステル4Fが得られた。アジドをトリフェニルホスフィンを用いてシュタウディンガー還元を行い、そして発生したアミンをt−ブトキシカルボニル誘導体として保護化すると、アジド4Fからの全収率52%でエノールエーテル5Fが得られた。続いて、アセトン中化学量論量のp−トルエンスルホン酸を用いてメチルエノールエーテルを加水分解し、82%という満足すべき収率でb−ケトエステル6Fを得た。C−3ケトンの立体選択的還元をノヨリ水素化条件下に行い、56%の収率でβ−ヒドロキシエステル7Fを得た。酸性の水素化条件でも、アミノ−t−ブトキシカルボニル基の早い脱保護(約20%)が起こった。次に、ジクロロメタン中トリフルオロ酢酸を用いてt−Boc−アミンとt−ブチルエステルとを同時に脱保護し、アミノ酸8Fを得た。ジクロロメタン中HATUおよびコリジンを用いてseco−アミノ酸を処理することにより、大環状閉環による環状ラクタムが50%収率で得られた。最後に、亜鉛で媒介されたC7−Troc基の脱保護により、C15−epi−アザ−デスエポキシエポチロンB(1F)が得られた。
【0237】
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載し、そして以下により詳細に記載した方法を用いて、アザ−エポチロン類を調製した。アザ−dEpoB(4a)の全合成に関する結果が最近報告された。本明細書には、アザ−EpoB(2)の全合成を報告し、そして我々自身の生体内比較を基本とする抗ガン剤として価値ある効能を提供する。
【0238】
アザ−EpoB(4a)の全合成が最近達成され、これは12,13−デスオキシエポチロンB(3、dEpoB)の合成で我々が使用した戦略と同様の収束した戦略を基本としていた。これらに沿って、ほぼ同様に複雑なフラグメントを主要な構成要素として使用した(図28)。新しい目標に対応するために、アルキル部位5の調製は新規な構成を必要としたが、dEpoBを我々が以前に合成した際に入手できたアシル部位6は、ポリプロピオン酸ドメインに使用できた。パラジウム触媒βアルキルスズキカップリングにより、2つの主要なフラグメント5および6を結合させた。ルテニウムにより媒介される不斉水素化により、C−3での所望する立体化学が高い選択性で得られた。そして脱保護した後マクロラクタム化して、アザ−dEpoBに直ぐに誘導された。考えられるように、これらのアイディアを実行することはラクタムシリーズについて簡単ではなかった。
【0239】
アルキルフラグメント5を含む必要なアミンは、ホーナー様オレフィン化により生産できたけれども、反応は非能率的であった。オレフィン化反応を回避するために、dEpoB(3、図29)の合成のために使用したアルキルフラグメントを基盤として、C−15アミン(エポチロン付番方式)を導入するためのミツノブ基準方策を開発した。dEpoBの合成に使用したTES−保護化ヨウ化ビニルアルキルフラグメント(15)の反対のエナンチオマー(Sヒドロキシル立体配置の代わりにR)は、最近開発された方法により容易に入手できる。酢酸:THF:水を用いて、シリルエーテル(15)の脱保護が簡便に達成できた。対応するC−15 tert−ブチルジメチルシリルエーテルは、より強い条件下でも脱保護および分解に極めて抵抗性があることは注目すべきである。この研究成果は、より丈夫なtert−ブチルジメチルシリルエーテルを頼りとする代わりに、ヒドロキシル基に対してトリエチルシリル保護を用いると更に有利であることを示した。トンプソンの方法を用いて、遊離のアルコール(16)を対応するアジド(17)に変換した。このプロトコルにより、完全な転化率および最小の脱離生成物でアジドを85%収率で得た。対照的に、標準のミツノブ条件を用いて転移させ、アジドを66%の収率で得た。この反応では、多量の脱離生成物が副生した。次に、トリフェニルホスフィンを媒介としてアジドをシュタウディンガー還元した後、発生したアミンをt−ブチルカーバメートとして保護し、引き続くβ−アルキルスズキカップリングに必要なパートナー(5)を得た。不幸にも、パラジウム触媒β−アルキル鈴木反応は10%の収率であった。本反応が低い収率であったのは、パラジウムにカーバメートが酸化的に挿入した後に分子内でキレート化することにより誘導された安定な中間体が生成するためと考えられる。
【0240】
β−アルキル鈴木反応を円滑にするために、対応するアジド−アルキルフラグメント17を用いてクロスカップリングを行った。満足すべきことに、パラジウム触媒クロスカップリングが円滑に進行し、アジド−エステル19が63%の収率で生成した(図30)。しかしながら、続いてアジド19をシュタウディンガー還元すると、失望することにアミノエステル20が18%の収率で得られ、これは、発生したアミンとβ−ケトエステルとで、分子間的にまたは分子内的にの何れかで、シッフ塩基が生成するためと考えられる。
【0241】
効率を上げるために、β−ケトエステルを一次的に対応するエノールエーテルとしてマスクできることが分かった(図31)。アシルフラグメント6を合成するための最後から2番目の工程は、C2−C3メチルエノールエーテルの加水分解を含んでいるので、この回避策は現実に合成を短くした。意味深いことに、パラジウム触媒β−アルキル鈴木クロスカップリング反応は円滑に進行し、dEpoBの合成を更に改良するために引き続いて導入した結果である、対応するβ−ケトエステルとよりも高収率であった。期待されたように、β−ケトエステルを対応するエノールエーテルとしてマスクすることにより、続くトリフェニルホスフィンにより媒介されるアジド22のシュタウディンガー還元において、98%の収率が得られた。発生したアミンをそのt−ブチルカーバメート(23)として保護した後、β−ケトエステル18を転移加水分解により遊離することができた。
そして、β−ケトエステル18を、修飾ノヨリ触媒を用いたメタノール中でのルテニウム媒介不斉水素化反応に供した(図32)。実際、所望のジオール24が78%の収率で単一のジアステレオマーとして生成した。しかしながら、(チアゾール成分のプロトン化のために)水素化媒体中に酸が必要なため、少量の脱保護化したアミン生成物が得られた。この望ましくない加水分解は、再結晶した触媒を用いることにより、反応速度を向上させ、それゆえに酸性溶液への暴露時間が最小化し、回避した。ジクロロメタン中トリフルオロ酢酸の作用により、t−ブチルカーバメートとt−ブチルエステルとを同時に脱保護して、アミノ酸25を得、これを精製せずに次の環化反応に用いた。ジクロロメタン中HATUを媒介としてマクロラクタン化を行い、90%の収率でTroc−保護化ラクタムを得た。マクロラクタン化に他の溶剤(すなわち、DMF、THF)を用いると、マクロ環化も起こったことは注目すべきである。しかしながら、HATUのテトラメチルウロニウムフラグメントが環状付加物のC3ヒドロキシルに転移することが原因であった副生成物の程度が変わるので、所望の物質となることが制限された。HATUのテトラメチルウロニウムフラグメントが環状付加物のC3ヒドロキシルに転移することが副生成物の原因であることは、後に明白となった。尿素付加物を酸水溶液(酢酸:THF:水)で処理すると、環化生成物が遊離した。超音波の影響下に亜鉛粉末で脱保護を行うと、完全に脱保護された12,13,15−デスオキシ−15(S)−アザ−エポチロンB(4a)が88%の収率で得られた。最後に、−50℃で2,2−ジメチルジオキシランを用いて12,13−オレフィン性結合をエポキシ化すると、単一のジアステレオマーとして全合成したアザ−エポチロンB(2)が得られた。
【0242】
ラクタムシリーズの生物活性を更に深く調べるために、本明細書に記載したように、エピマー化したヨウ化ビニルフラグメントを生成するために、アルキル化用のエナンチオマーのキラル補助を用いることによりC15−(R)鏡像異性体を合成した。そして、対応するラクトンシステムにおいて見られたように、C15で反転する影響に関して、このジアステレオマーを評価した(Harris他J.Org.Chem.,1999,64,8434)。
【0243】
アザ−エポチロン類の生物学的評価
全合成したアザ−エポチロンB(2、アザ−EpoB)、12,13,15−デスオキシ−15(S)−アザ−エポチロンB(4a、アザ−dEpoB)、およびエピマー化12,13,15−デスオキシ−15(R)−アザ−エポチロンB(4b、15−エピ−アザ−dEpoB)を、これらの抗ガン能を評価するために、多くの細胞タイプについて評価してきた。表3に示すように、アザ−EpoBをdEpoBと直接比較すると、我々の基礎である白血病細胞株(CCRF−CEM)において、それぞれ0.0021および0.0095μMと、生体外で僅かに高い能力があることを示していた。しかしながら、アザ−EpoBは、dEpoBと比較して、我々の多種薬剤耐性細胞株(CCRF−CEM/VBL100、CCRM−CEM/VMI、およびCCRF−CEM/タキソール)において、活性が大きく低下していた。加えて、エポチロンB(C12,C13エポキシドを含む)とdEpoB(エポキシドを含まない)とを比較して注目されるように、アザ−dEpoBは、アザ−EpoBを含むエポキシドよりも約10倍能力が低かった。また、15−エピ−アザ−dEpoBは、試験した全ての細胞株において更に低い活性を示した。
【0244】
【表3】
【0245】
そして、アザ−EpoB(2)の生体内評価に興味を移した。最初に、アザ−EpoBの治療学的有効性を、ヒト乳房MX−1異種移植を有するヌードマウスについて調べた(図33)。我々の以前の研究において開発したゆっくりしたIV注入プロトコルに従い、動物実験を行った。6mg/kgの用量により、ガン成長をいくらか阻害することが示されたが、ガンの塊の減少は見られず、処置を中止するとガンの成長能が回復した。高い用量レベル(9mg/kg)では、最大許容用量レベルに近づくにつれ、ガンの大きさが退化せずに、同様の妨害作用が見られた。
【0246】
次に、アザ−EpoBの治療学を、ヒト白血病K562異種移植を有する胸腺欠損マウスについて評価した。
図34に示したように、マウスをアザ−EpoB(6mg/kg)で処置すると、ガン成長が阻害されたが、ガンの大きさは減少しなかった。対照的に、同じマウスをdEpoFより(30mg/kg)で更に処置すると、免除の点でガンの大きさが容易に減少した。
そして、HPLCを基本とする方法を用いてアザ−EpoBの水溶性を試験した。驚くべきことに、ラクタムシリーズはdEpoBよりもおよそ25倍水溶性があると考えられた。この観察および我々のMDR細胞株に対する活性の明らかな欠乏を考慮して、いくつかの我々が事前に調製した類似体の活性を再調査した。類似体の極性およびその性能の間に、明らかな相関が見られ、P糖タンパク質(P−gp)基質として使用した。したがって、ラクトンと比べてラクタムシステムの極性が高いので、アザ−dEpoBは、P−gp受容体によりMDR細胞からより効率的に除去される。
【0247】
要約すれば、アザ−dEpoBを、β−アルキルスズキカップリングおよび続くマクロラクタム化による2つの主要なフラグメントを結合させることを基本とする戦略を用いて、全化学合成により生産した。生体外活性を検討するために、アザ−dEpoBもアザ−EpoBにうまく酸化した。動物試験を容易にするために大量スケール生産に効率的でありおよび受け入れられやすい合成を検証した。従って、アザ−dEpoBはdEpoBと同様の活性を示すことが示されたが、耐性細胞株に対しては効果がなかった。アザ−EpoBは非耐性細胞株においてはdEpoBよりも活性があったが、生体内モデルに拡張すると効果がなかった。
【0248】
実施例3 実験の部
一般手順。特記していない場合は、市販の材料は全て精製せずに使用した。以下の溶媒は乾燥溶媒系から得られ、更なる乾燥をせずに使用した。THF、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエンおよびベンゼン。全ての反応は事前に精製した乾燥アルゴンガスによる陽圧下で行った。1Hおよび13CのNMRスペクトルは、それぞれ400および100MHzでCDC13溶液中で記録した。分析用薄層クロマトグラフィはE.メルクシリカゲル60F254プレートで行い、フラッシュクロマトグラフィは表示した溶媒を使用して、E.メルクシリカゲル60(40〜63μm)またはシグマHタイプシリカゲル(10〜40μm)で行った。
【0249】
【化188】
16の作製。TESで保護されたアルコール15(2.28g、4.92mmol)をHOAc:THF:H2O(3:1:1、50ml)に溶解し、室温で8時間攪拌した。その後、溶媒を真空で除去した。油状残留物をEtOAc(100ml)に溶解し、余分な酸は飽和NaHCO3溶液(50ml)を添加して中和した。有機層を除去し、水層をEtOAc(50ml×3)で抽出した。混合した有機層を飽和NaHCO3溶液(50ml×1)、食塩水(50ml×1)で洗い、(MgSO4)上で乾燥した。溶液をろ過して真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(30%EtOAc/ヘキサン)で、黄色油状のアルコール16(1.71g、99%)が得られた。[α]D+4.9(c 1.0,CHCl3);Rf=0.19,40% EtOAc/ヘキサン。
【NMR54】
【0250】
【化189】
17の作製。アリルアルコール16(1.74g、4.99mmol)をトルエン(30ml)に溶解して0℃に冷却した。ジフェニルホスホリルアジド(1.65g、5.98mmol)を添加し、その後DBU(0.91g、5.98mmol)を添加した。反応混合液を0℃で2時間攪拌した。次に、溶液を25℃に加温してエチルアセテート(100ml)を添加した。有機層を、H2O(30ml×1)、飽和NaHCO3(50ml×1)、食塩水(50ml×1)で洗った。次に、有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。
シリカゲルによるクロマトグラフィ(7.5%EtOAc/ヘキサン)では、淡黄色油状のアジ化物17(1.58g、85%)が得られた。
【NMR55】
【0251】
【化190】
5の作製。THF(3ml)に溶解したアジ化物17(0.074g、0.198mmol)溶液に、トリフェニルホスフィン(0.062g、0.237mmol)を添加した。反応混合物を25℃で24時間攪拌した。次に水(0.014g、0.792mmol)を添加して65℃で4時間反応させた。溶液を冷却し、1NHClで酸性化し、酢酸エチル(30ml×3)で抽出した。次に、水溶液層を1NNaOHで塩基性化して酢酸エチル(30ml×3)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後、真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(5%メタノール/クロロホルム)では、遊離アミン(0.069g、100%)が得られた。
アミンの性状;
【NMR56】
【0252】
上記方法で作製した遊離アミン(0.069g、0.198mmol)をアセトニトリル(2ml)に溶解した溶液に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.065g、0.297mmol)を添加し、次にトリエチルアミン(0.024g、0.238mmol)を添加した。反応物を25℃で1.5時間攪拌した。溶媒を真空で除去した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(15%EtOAc/ヘキサン)では、黄色油状の保護されたアミン5(0.065g、73%)が得られた。
【NMR57】
【0253】
【化191】
22の作製。THF(25ml)に溶解したエノールエーテル21(5.80g、11.22mmol)溶液に、9−BBNニ量体(2.10g、8.63mmol)を添加した。混合液を25℃で1時間攪拌した後のTLC分析では、出発物のオレフィン21が完全に消費されていた。ヨウ化ビニル17(3.22g、8.63mmol)、(dppf)PdCl2CH2Cl2(0.705g、0.862mmol)、AsPh3(0.264g、0.862mmol)、Cs2CO3(4.21g、12.94mmol)の入った別のフラスコに、脱気したDMF(30ml)を添加した。水(5ml)をボラン溶液に加えて攪拌を10分間連続し、余剰の9−BBN−Hを失活させた。次に、激しく攪拌したヨウ化ビニルを含む溶液に、アルキルボラン溶液を速やかに添加した。2時間後、反応混合液を酢酸エチル(300ml)で希釈し、水(250ml×1)、次いで食塩水(100ml×1)で洗い、MgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)では、黄色油状の22(4.56g、70%)が得られた。
【NMR58】
【0254】
【化192】
18の作製。THF(100ml)に溶解した鈴木産物22(4.10g、5.36mmol)溶液に、トリフェニルホスフィン(2.81g、10.71mmol)を添加した。溶液を40℃に19時間加温した。水(2ml)を添加して65℃に4時間加温した。シリカゲル(70g)を添加して溶媒を真空で除去した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(1.5%MeOH/0.5%トリエチルアミンを含有するクロロホルム)では、還元アミン(3.9g、98%)が得られた。[α]D−4.4(c 1.0,CHCl3);Rf=0.30,10%メタノール/クロロホルム(1%トリエチルアミンを含む)。
【NMR59】
【0255】
上記方法で作製したアミン(3.30g、4.48mmol)をアセトニトリル(100ml)に溶解した溶液に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(1.37g、6.27mmol)を添加し、次にトリエチルアミン(0.91g、8.57mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間攪拌した。次に、溶液をEtOAc(100ml)で希釈し、1NHCl(100ml×1)、飽和Na2CO3(100ml)次いで食塩水(100ml×1)で洗い、MgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。
シリカゲルによるクロマトグラフィ(10%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状の22(2.66g、70%)が得られた。
【NMR60】
【0256】
【化193】
アセトン(9ml)に溶解したエノールエーテル23(0.309g、0.363mmol)溶液に、ρ−トルエンスルホン酸(0.083g、0.436mmol)を添加した。溶液を室温で22時間攪拌した。反応物に飽和NaHCO3を加えて中和し、EtOAc(30ml×3)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後、真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(15%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状のβ−ケト−エステル18(0.250g、82%)が得られた。[α]D−36.8(c 1.0,CHCl3);Rf=0.28,10% EtOAc/トルエン。
【NMR61】
【0257】
【化194】
23の作製。ジケトン18(1.234g、1.48mmol)を、25℃の0.12NHClのMeOH(24.6ml、2.95mmol)溶液に溶解した。次に、溶液をアルゴンガスで30分間スパージした。次に、ルテニウム触媒(0.150g、0.089mmol)を添加して混合液をParr器具に移した。容器をH2で10分間パージし、その後圧力を1200psiに高めた。25℃で18時間経過後、反応物を大気圧に戻し、飽和NaHCO3水溶液(60ml)に注いだ。EtOAc(100ml×3)で抽出後、混和した有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(20%EtOAc/ヘキサン)では白色泡状のヒドロキシエステル24(0.955g、78%)が得られた。
【NMR62】
【0258】
【化195】
24の作製。CH2Cl2(20ml)に溶解したビス−Bocで保護されたアミノ酸(0.738g、0.880mmol)溶液に、トリフルオロ酢酸(10ml)を添加した。溶液を室温で2時間攪拌した後真空で濃縮した。粗物質は精製せずに使用した。
【NMR63】
【0259】
【化196】
Trocにより保護された4aの作製。上で得られた粗混合物をDMF(10ml)に溶解し、CH2Cl2(500ml)で希釈した。次に、HOAt(0.359g、2.64mmol)を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(1.02g、7.92mmol)、最後にHATU(0.359g、2.64mmol)を添加した。この混合液を25℃で16時間攪拌した。次に、反応混合物を水(100ml×1)で洗った。有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。次に粗混合物をHOAc、THFおよび水の混合溶液(3:1:1、30ml)に30分間で溶解した。反応混合液を真空で濃縮し、飽和NaHCO3水溶液で中和し、EtOAc(100ml×3)で抽出した。混和した有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(45%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状のTrocで保護されたアザ−dEpoB(0.479g、79%)、および88%非対称ジヒドロキシル化から、Trocで保護されたC−15−エピ−アザ−dEpoB(0.065g、11%)が得られた。
【0260】
Trocで保護されたアザ−dEpoBの性状。
【NMR64】
【0261】
Trocで保護されたC−15−エピ−アザ−dEpoBの性状。
【NMR65】
【0262】
【化197】
4aの作製。THFとHOAcの混合溶液(1:3、6ml)に溶解したTrocで保護されたアザ−dEpoB(0.038g、0.057mmol)の溶液に、ナノサイズの活性亜鉛をスパチュラの先一杯分添加した。次に、反応混合液を25℃で2時間音波処理した。溶液をろ過して金属亜鉛を除去後真空で濃縮した。次に、残留物をEtOAc(20ml)に溶解して飽和NaHCO3水溶液(10ml)で中和した。水層をEtOAc(20ml×3)で抽出し多。混和した有機層をMgSO4上で乾燥し、ろ過後真空で濃縮した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(60%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状のアザ−dEpoB(0.025g、88%)が得られた。
【0263】
アザ−dEpoB(4a)の性状。
【NMR66】
【0264】
15(R)−アザ−dEpoB(4b)の性状。
【NMR67】
【0265】
【化198】
2の作製。アザ−dEpoB(0.025g、0.051mmol)をCH2Cl2(2ml)に溶解し、−78℃に冷却した。2,2−ジメチルジオキシラン(0.6M、0.11mmol)を徐々に添加した。反応混合物を−50℃になるまで放置し、1時間攪拌した。ジメチルスルフィド(0.1ml)を−50℃で添加して余剰のDMDOを失活させ、室温まで加温した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(80%EtOAc/ヘキサン)では、白色泡状の完全合成アザ−EpoB(0.018g、69%)が得られた。
【NMR68】
【0266】
実施例4。生物学的研究。
微小管アセンブリーを安定させる天然の分子の中では、パクリタキセル(タキソール(登録商標))が断然最もよく知られ、広く研究され、また最先端で広く使われる癌の化学療法剤で、特に固形癌の治療のために使用される(Landino,L.M.& MacDonald,T.L.(1995)The Chemistry and Pharmacology of Taxol and Its Derivatives,ed.Favin,V.(Elsevier,New York)Chap.7.;Rose,W.C.(1992)Anti.Cancer Drugs 3,311−321;Rowinsky,E.K.,Eisenhauser,E.A.,Chaudhry,V.,Arbuck,S.G.& Donehower,R.C.(1993)Semin,Oncol,20,1−15)。類似の作用機構を有しより近年になって発見された化合物としては、discordermolids(4、5)、eleutherobins(6)、laulimalides(7)およびエポチロン(8〜14)がある。推測されるチューブリンアセンブリーとの結合部位が共通している(15〜18)にもかかわらず、これらの化学構造および/または薬理学上の特性は大きく異なる。
【0267】
関連する他のマイナーな構成要素と並んで、エポチロンAおよびBは粘液菌Sorangium cellulosumから単離されたマクロライドで、南アフリカ共和国のザンビア川沖から採取された(8)。チューブリンからの微小管の形成に対するエポチロン誘導体の影響に関する最近の研究では、16個のエポチロン(10μM)の内13個がEpoBと比較して83〜99%の微小管安定化効果を示した(16)。細胞毒性と観察された微小管安定化効果は相関性があった(10)。
【0268】
薬理学的評価では、一連のエポチロンの中では最も効力が高いEpoBが、高毒性または致死的な用量においても治療効果は低いことが指摘された(19)。試験管内細胞毒性検定ではEpoBより低い評価のdEpoB(Z−12,13−デスオキシエポチロンB)が、EpoBより格段に高い治療効果を示した(19、20)。構造活性相関(SAR)を調べた結果、EpoBの12,13−エポキシ部は宿主に対する毒性と関連するが、抗腫瘍性治療効果にはほとんど貢献しないことが示唆された。
【0269】
本明細書では、先導化合物dEpoB(14)および21−ヒドロキシ−dEpoB(dEpoF)(21)と共に、現在臨床試験中の15−アザ−EpoB(BMS247550)(22)の試験管内および生体内における薬理学的性質を提示する。dEpoBおよびdEpoFは広い抗腫瘍性スペクトルを有し、ヒト白血病または乳腫瘍の異種移植片を移植されたヌードマウスにおいて治癒効果のあることが示されている。dEpoBの予備的毒性試験では、治療用量においては有害作用がほとんどなく、主に胃腸管において限定的な毒性が認められた。
【0270】
結果
ヒト結腸癌HCT−116異種移植片に対する治療効果。
癌化学療法剤の治療効果は、用いた腫瘍モデル、用量および投与方法などの各種要素によって異なる。ヌードマウスにおけるヒト結腸癌HCT−116異種移植片に対しては、dEpoB、dEpoF、パクリタキセルおよびCPT−11は実質的に類似した治療効果を示した(図35)。こうした結果は、本研究で使用される各薬剤の用量および投与経路が適切であることを示唆している。本研究では、体重減および/または死亡率の測定により最大耐用量近くでの治療効果の比較を意図した。
【0271】
ヒト白血病K562異種移植片に対する治療効果。
a.dEpoB、パクリタキセル、アドリアマイシンおよびビンブラスチン間の比較。
図36に示したように、dEpoBは特に、ヌードマウスに移植した、投薬経験のない非MDR慢性ヒト骨髄性白血病のK562異種移植片に対して有効であった。dEpoBでは完全寛解が認められたが、アドリアマイシン、パクリタキセルおよびビンブラスチンは部分的治療効果または寛解効果を認めただけであった。これは、dEpoBが広い範囲の薬剤耐性腫瘍(例えば、VBL、Adrまたはパクリタキセルに耐性の腫瘍)に対してパクリタキセルより優れた治療効果を示したが、非薬剤耐性腫瘍においてはパクリタキセルと同等の効果を示した初期の試験(19、27、28)と対照的である。
【0272】
b.パクリタキセルとdEpoBによる逐次的治療。
dEpoB(30mg/kg、Q2D×3)による単剤投与治療では4週間のK562の消失が認められた。しかし、パクリタキセルによる同様の方法での投与では、部分的治療効果が認められたにすぎない(図37)。後者の群のヌードマウスはその後dEpoBを3サイクル(30mg/kg、(Q2D×3)×3)投与され、その結果880mm3の大きさのK562腫瘍が20mm3未満に縮小した。反復注射の結果尾静脈が傷害を受けたので、それ以後dEpoBによる治療は中止された。
【0273】
c.アザEpoBとdEpoFによる逐次的治療。
アザEpoBの最大耐用量(6mg/kg、Q2D×6)によるK562異種移植片の治療では、腫瘍増殖が顕著に抑制されたが腫瘍の縮小は認められなかった。500mm3近くの大きさの腫瘍を有する同群のヌードマウスは、その後dEpoF(30mg/kg、Q2D×6)による治療を受けた。腫瘍は治療期間中に縮小し、治療の終了後も縮小しつづけた。3週後には遂に腫瘍塊は消失した。
【0274】
ヒト乳腺癌のM−1異種移植片に対するdEpoFの治療効果。
初期の試験で、dEpoBおよびパクリタキセルはM−1異種移植片に対して治療効果があることが示された(19、27および28)。同様の試験をdEpoFで行った。MX−1腫瘍を移植されたヌードマウスを、dEpoFの2種類の用量で治療した(図39)。15mg/kg、Q2D×5、6時間静脈内点滴の用法では、腫瘍増殖は部分的に抑制された。dEpoFのより高い用量(30mg/kg、Q2D×5、6時間静脈内点滴)では、MX−1腫瘍は徐々に縮小し、マウス5体中3体で消失した。
【0275】
CCRF−CEM異種移植片に対するdEpoFおよび15−アザEpoBの治療効果の比較。
図37に示したように、定着状態の良好なCCRF−CEM腫瘍異種移植片(平均腫瘍サイズは約400mm3)を有するヌードマウスを、dEpoB30mg/kgまたは15−アザEpoB6mg/kgにより6時間静脈内点滴、Q2D×6の用法で治療した。15−アザEpoBによる中等度の腫瘍抑制が認められた。しかし、dEpoFは腫瘍を徐々に縮小し、28日目(6回目の投与)にはマウス3体の内1体で腫瘍が消失し、2体では腫瘍残留物が認められるだけであった(図38)。この実験で、対照マウスは体重が増加し続けたが、dEpoFまたは15−アザEpoBで治療されたマウスは、28日目には体重が約10%減少した(図39)。
【0276】
MX−1異種移植片に対するdEpoBおよび15アザEpoBの治療効果の比較。
MX−1腫瘍の大きさが約100mm3の時、アザEpoB4mg/kgまたは6mg/kgのQ2D×6(10〜20日目)投与により腫瘍増殖が低下したが、縮小は認められなかった。更に、Q2D×3(26〜30日目)による投与では、腫瘍の進行が継続してその負荷が大きくなったため、実験動物は屠殺された(図41)。アザEpoB4mg/kgの用量では体重変化はほとんど認められなかったが、6mg/kgの用量では18日目に約3gの体重減がみられ、22日目にはマウス5体中1体が毒性のため死亡した(図42)。MX−1腫瘍の大きさが約120mm3の時、dEpoB30mg/kgのQ2D×6(10〜20日目)投与により当初腫瘍増殖が低下し、後に腫瘍は縮小した(図41)。dEpoBのQ2D×5(26〜34日目)による継続投与では、22日目に腫瘍の5分の1が、38日目に5分の2が、40日目に5分の3が消失した。dEpoBの最終投与から6日目においても、腫瘍の縮小が継続していたことを認めた(図41)。
【0277】
dEpoB30mg/kgのQ2D(10〜20日目)による投与から22日目に体重は約3.5g減少したが、26日目には対照の体重近くまで回復した。Q2D×5(26〜34日目)による第2サイクルの治療が開始したとき、体重は36日目に約4.1g減少し、その後腫瘍の消失がみられた36〜40日目には約2gの体重増が認められた(図41および図42)。
【0278】
各種ヒト腫瘍の異種移植片に対するdEpoBおよびパクリタキセルの治療効果の比較。
ヒト腫瘍の異種移植片を移植されたヌードマウスにおいて、dEpoBおよびパクリタキセルの治療効果が比較された。合計すると、8個の固形癌(肺癌(A549)、乳癌(MX−1)、結腸腺癌(HT−29)、結腸癌(HCT−116)、前立腺癌(PC−3)、卵巣腺癌(SK−OV−3)およびUL3−C)および5個の白血病(T細胞急性リンパ芽球白血病(CCRF−CEM)とそのパクリタキセル耐性亜系統(CCRF−CEM/タキソール、57倍の耐性)およびビンブラスチン耐性亜系統(CCRF−CEM/VBL100、761倍の耐性)、慢性骨髄芽球白血病(K562)ならびに前骨髄球白血病(HL−60))を皮下移植のために使用した(表5)。dEpoB30〜40mg/kgおよびパクリタキセル(タキソール(登録商標))15〜24mg/kgをCremophorとEtOHの混合溶液(1:1)に溶解して、表5に示した投薬スケジュールに従って6時間静脈内点滴として使用した。これらの投与により10〜20%の体重減が認められたが死には至らなかった。特記されていなければ、腫瘍の種類により、治療は10日目から皮下腫瘍が35〜200mm3に達した21日目の間に開始された。腫瘍の大きさと体重は1日おき(Q2D)に記録し、また人道的理由から腫瘍が体重の10%以上に達した時に実験動物は屠殺された。特記無き場合は、対照群を含め各群は3〜5匹の実験動物で構成された。治療期間中における投与群と対照群との比で最小の平均腫瘍サイズを表5に示した。投与群における腫瘍が消失したマウスの比率も表5に示した。試験した3種の薬剤耐性腫瘍(MCF−7/Adr、CCRF−CEM/タキソールおよびCCRF−CEM/VBL100)および白血病K562に対して、dEpoBはタキソールよりもかなり高い(>>)または格段に高い(>>>)治療効果を示した。前立腺癌PC−3および卵巣癌SK−OV−3に対しては、タキソールはdEpoBよりもかなり高い(>>)効果を示した。興味深いことに、他の卵巣腫瘍UL3−Cに対しては、dEpoBはタキソールと同等またはやや高い(≧)効果を示した。dEpoBがタキソールと同等またはやや高い(≧)効果を示した腫瘍は、肺癌A549、乳癌MX−1、CCRF−CEMであり、タキソールがdEpoBと同等またはやや高い効果を示した腫瘍は、結腸腺癌HT−29、結腸癌HCT−116、および白血病HL−60であった。乳癌MX−1と白血病CCRF−CEM腫瘍に対しては、dEpoBおよびタキソールはともに全てまたはほとんどの試験動物において腫瘍を完全に消失させた。白血病CCRF−CEM/タキソール、CCRF−CEM/VBL100およびK562に対しては、タキソールは腫瘍増殖を遅らせたが腫瘍の縮小および消失効果は認められなかったが、dEpoBの場合は全ての試験動物において完全な腫瘍の消失が認められた。
【0279】
動物モデルを使用したdEpoB、dEpoF、EpoB、アザEpoB間または数種常用抗癌剤との治療効果の比較。
dEpoBの治療効果の相対効力をパクリタキセル(タキソール(登録商標))、アドリアマイシン(ADR)、ビンブラスチン(VBL)、カンプトテシン、カンプトサー(CPT−11)、エトポシド(VP−16)、dEpoF、EpoBまたは15アザ−EpoBと比較し、マウス腫瘍1個、ヒト固形癌8個およびヒト白血病5個を使い異なった投与経路(腹腔内、静脈内および静脈内点滴)、および異なった投与スケジュールで実施した21試験の結果をまとめた(表6)。
【0280】
比較は最大耐用量近くの用量で行い、体重減は10〜20%であったが致死例はなかった。全般的に、治療効果の幅と効力はdEpoBが最も優れ、次にタキソール、次に他の癌化学療法剤と続いた。dEpoFはdEpoBと類似の治療効果を示すが、他の常用癌化学療法剤との直接比較はまだ行われていない。EpoBおよびアザEpoBの抗腫瘍効果は中等度であったが、中等度の体重減で死亡例が見られたことから治療閾値幅は狭いようである(参考文献19、表3および4、ならびに本明細書図38および39)。
【0281】
dEpoBとタキソールとの比較をより詳細に表5および図37に示し、HCT−116腫瘍に対するdEpoB、dEpoF、タキソール、CPT−11間の比較を図35に、K562白血病に対するdEpoB、タキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン間の比較を図36に、K562白血病に対する15−アザEpoBとdEpoFとの比較を図38および39に、またMX−1腫瘍に対する15−アザEpoBとdEpoBとの比較を図41および42に示した。
【0282】
薬剤耐性発達の経過。
致死下の濃度の抗腫瘍剤に対してヒト肺癌A549細胞が繰り返し曝露すると、薬剤耐性が発達することがある。本研究では、VBLに対する14.3カ月間の曝露で4848倍の同剤耐性が、パクリタキセルに対する21.3カ月間の曝露で2858倍の同剤耐性が、アドリアマイシンに対する21.3カ月間の曝露で16.3倍のパクリタキセル耐性が、またdEpoBに対する21.4カ月間の曝露で21倍のdEpoB耐性が発達した(図8)。従って、他の抗腫瘍剤と比較すると、dEpoBは薬剤耐性腫瘍細胞に対してより有効である(表4)だけでなく、同剤に対する長期曝露による耐性の発達がより起こりにくい。
【0283】
血漿中のdEpoBの安定性。
ヌードマウスに移植された各種ヒト腫瘍の異種移植片に対してdEpoBが著しい治療効果を示したにもかかわらず、試験管内におけるヌードマウス血漿中の半減期(t1/2)は比較的短く、約20分であった(図44)。予想外にも、HPLCの結果では、dEpoBは試験管内におけるヒト血漿中で3時間以上安定であった(図44)。
【0284】
ビーグル犬におけるdEpoBの毒性および薬理学。
dEpoBの2、6、12および20mg/kgを、静脈内点滴で雄ビーグル犬(11.2〜14kg)に投与した。点滴の量は10分間で1ml/kgで、ハーバードPHD2000ポンプ(ハーバード・アパレータス社)を使用した。dEpoBは、Cremophor3%、エタノール3%、プロピレングリコール40%、および5%グルコース54%で調製した。実験動物は、すなわちCremophorによるアレルギー反応を最小限にするために、30分前にBenadryl5mg/kg、静注、シメチジン5mg/kg、筋注、およびデキサメタゾン1mg/kgで前処理された。
【0285】
dEpoBの2および6mg/kg(40および120mg/m2)では有意な毒性を認めなかった。12mg/kg(240/m2)では、3日目に中等度の下痢(無出血)と体重減(1.3kg)を認めた。体重は2〜3週間で徐々に回復した。白血球(WBC)数はやや減少した(13%)が9日間で回復した。血小板数およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)においては、有意な変化を認めなかった。心臓、肺、腎臓、脾臓、大小腸、肝臓、筋肉、骨髄、リンパ節など28の臓器および組織においては、有意な病理組織上の病変を発見できなかった。dEpoBの用量を更に20mg/kg(400/m2)の静脈内投与に高くした場合、2日目に重度の出血性下痢および脱水症を認め、体重減は2日目には0.9kg、3日目には3.6kgであった。WBCは3日目に0.6k/μlに低下し、4日目にはALTおよびASTが3〜6倍に上昇した。実験動物は全身虚弱、食欲低下、活力低下が認められ、4日後には死亡した。十二指腸から回腸までの腸粘膜には、目視で異常(赤変化)が認められた。小腸には血液の滲んだムチン様粘性物が含まれていた。骨髄の病理組織学的検査では、細胞性の低下を認めた。この致死用量では、陰窩細胞を有する腸粘膜上皮の壊死が最も激しく影響した。
【0286】
ビーグル犬を使用した薬物動態学研究では、dEpoBの6mg/kg(120mg/m2体表面)を10分間の静脈点滴で投与した。5mlのヘパリンを添加した試験管に、15分前から24時間後にかけて間欠的に血液標本を連続して採取した。方法の項で説明したように、dEpoBの血漿中濃度はHPLCで測定した。半減期(t1/2)のα相は1.9時間で、β相は21時間であった(図45)。24時間後の標本採取の終了時点で、dEpoBの血漿中濃度は0.045μg/mlつまり0.092μMであり、組織培養におけるCCRF−CEM細胞の増殖を阻止するdEpoBのIC50値0.0095μMよりもかなり高かった。
【0287】
総括すると、微小管安定化作用が類似しているにもかかわらず、エポチロン類(例えば、EpoA、EpoBおよびdEpoB)はタキサン類(例えば、パクリタキセル)とは自然界の供給源、化学構造、水溶性、Pgp−MDR特性、構造変化に対する耐性、全合成の難易度および抗癌スペクトルの点で異なる。これまで蓄積された結果によると、dEpoBは、試験管内および生体内において特に薬剤耐性細胞または腫瘍に対する効果の点でパクリタキセルよりも優れた薬理学上の特徴を有する(19、29、表4)。
【0288】
EpoBはEpoA、パクリタキセル、dEpoBよりも効果が高いが、ヌードマウスに対する毒性が高く、高毒性の用量においてすらヒト腫瘍の異種移植片を移植されたマウスにおける治療効果は、dEpoBまたはパクリタキセルに比べて低かった(19)。しかし、パクリタキセルはPgp−MDRの格好の基質であり、dEpoBの治療効果が高い多剤耐性腫瘍に対しては効果がない(19、20、28および図35および36)。
【0289】
ヌードマウスにおけるヒト腫瘍異種移植片に対するdEpoB(NSC−703147)の治療効果に関する報告に加え、EpoB(30、31)および15−アザ−EpoB(BMS−247550)(32)の生体内における効果が明らかとなった。従って、同じ設定で試験された、dEpoBと別の化合物(dEpoF)ならびに15−アザ−EpoB、およびタキソール(登録商標)とを比較する。この結果は、dEpoFとdEpoBの治療効果は類似しており、ヌードマウスにおけるヒトK562腫瘍の異種移植片に対して治療効果があることを示している(図36〜39)。dEpoBとdEpoFの治療効果はタキソール(登録商標)(図36および37)または15−アザ−EpoB(図38および39と図41および42)、およびデキソンビジン、ビンブラスチンまたはCPT−11などの現在広く使用されている癌治療剤の一部よりも優れていた(図35)。広い範囲のヒト腫瘍異種移植片に対するdEpoBの高い効果は、試験管内のヌードマウス血漿中におけるdEpoBの半減期が短い(t1/2=15〜20分)事実にかかわらず明らかである(図44)。ヌードマウスに対するdEpoBの静脈内6時間点滴が短い半減期を補った可能性がある。ヒト血漿(図44)およびビーグル犬(図45)におけるdEpoBの長い半減期は、ヒトおよび犬における静脈点滴の必要性を低くする可能性がある。
有用な癌治療剤に必須の特徴としては、癌に対する高い効果だけでなく、宿主特に重要な器官または機能に対して毒性が低いことが必要である(つまり、広い治療閾値または高い治療指数(LD50/ED50))。毒性学的研究から、dEpoFとdEpoBは治療期間中に致死的ではないが23〜29%の体重減を引き起こすが、EpoBまたはアザEpoBによる14〜20%の体重減は致命的になるという1つの重要な知見がもたらされた。更に、dEpoBとdEpoFは死亡をもたらさずに腫瘍を完全に消失させた(図36〜42)が、EpoB(19)またはアザEpoB(図41〜42)は最低限の治療効果が得られた時でも死亡例があった。
【0290】
材料および方法
化学物質。本試験で使用したdEpoB(NSC−703147)(10、14)、dEpoF(21)およびアザEpoB(BMS 247550)(22)は、前述したようにBio−Organic Chemistry Laboratoryで全合成により得た。試験管内試験用には、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、エトポシド(VP−16)、テニポシド(VM−26)、カンプトテシン(CPT)、アクチノマイシンD(AD)、および硫酸ビンブラスチン(VBL)はシグマ社から購入した。上記物質(VBLは生理食塩水)の原液は全て、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒を使用して調製し、実験時に望みの濃度に希釈して使用した。組織培養におけるDMSOの最終濃度は、溶媒による細胞毒性を避けるために0.25%(vol/vol)以下であった。生体内試験用には、dEpoB、dEpoFおよび15−アザ−EpoBをCremophorとEtOHを混合(1:1)した賦形剤に溶解し、その後生理食塩水で希釈して6時間静脈点滴に使用した。Cremophor ELはシグマ社から購入した。パクリタキセルのCremophor/EtOH製剤は臨床用の市販品(ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社)を使用した。パクリタキセル、dEpoBおよびdEpoFの水溶性は、それぞれ約0.6mg/ml、10mg/ml、25mg/mlであった。硫酸ビンブラスチン(VBL、ベルバン、イーライ・リリー社)、エトポシド(VP−16、ベプシド、ブリストル−マイヤーズ・スクイブ社)、カンプトサー(イリノテカンまたはCPT−11、ファルマシア&アップジョン)、およびアドリアマイシン(DXまたはAdr、ドキソルビシン−HCl、アストラ・ファーマスーティカル社)は製造業社による製剤を使用し、生理食塩水で希釈した。
【0291】
腫瘍および細胞系統。
CCRF−CEMヒトT細胞急性リンパ芽球白血病細胞、そのテニポシド耐性亜系統(CCRF−CEM/VM1)、およびビンブラスチン耐性亜系統(CCRF−CEM/VBL100)は、W.T.ベック(イリノイ大学、シカゴ、IL)から入手した。これらの亜系統を、次第に高くなる致死下の濃度(IC50−IC90)にビンブラスチンでは16カ月間、パクリタキセルでは12カ月間、テニポシドでは12カ月間曝露させた(それぞれ、CCRF−CEM/VBL1000、CCRF−CEM/タキソール、CCRF−CEM/VM2と命名された)。各薬剤を含有する新鮮培地を7〜14日毎に補充した。耐性細胞系統は、試験開始時のCCRF−CEM細胞と比較して、ビンブラスチンに対して4308倍の耐性(IC50:0.9743μM)、パクリタキセルに対しては282倍の耐性(IC50:0.339μM)、VP−16に対しては69倍の耐性(IC50:19.8μM)を示した(表1を参照)。A549ヒト肺癌細胞におけるVBL、タキソール、AdrおよびdEpoB耐性の発達の過程でも、同様の手順を用いた(図43を参照)。各ケースで、細胞増殖阻止試験を行う前に、薬剤に曝露させた細胞は新鮮培地に最低4日間再び懸濁させた。卵巣腺癌UL3−C、UL3−B/タキソール、ハムスター肺繊維芽細胞とその亜系統DC−3F、DC−3F/ADIIおよびDC−3F/ADXは、本研究所の細胞銀行から入手した。
【0292】
以下のヒト癌細胞は、アメリカ基準菌株保存機構(ATCC、ロックビル、MD)から入手した。乳癌(MX−1)、乳腺癌(MCF−7)、卵巣腺癌(SK−OV−3)、肺癌(A549)、結腸腺癌(HT−29)、結腸癌(HCT−116)、前立腺癌(PC−3)、慢性骨髄芽球白血病(K562)および前骨髄細胞白血病(HL−60)。
【0293】
実験動物
nu/nu遺伝子をもつ無胸腺ヌードマウスを全てのヒト腫瘍異種移植に使用した。異系交配させたSwiss家系のマウスを、Charles River Laboratoriesから入手した。体重22g以上、8週齢以上の雄マウスをほとんどの試験で使用した。薬剤は尾静脈から6時間の点滴により投与した。各マウス個体は、薬剤投与のためにファルコンの有孔ポリプロピレンチューブ拘束器に閉じ込めた。腫瘍容積は、長さ、幅、高さ(または幅)をカリパスで測定して評価した。マルチトラック付きプログラム式ハーバードPHD2000注射ポンプ(ハーバード・アパレータス)を静脈点滴に使用した。一般的には、Cremophor/EtOH(1:1)に溶解した各薬剤の点滴量は、6時間点滴の場合100μl+生理食塩水2.0mlであった。動物実験は全て、国立衛生研究所の「実験動物の飼育および利用ガイド」の指針、およびメモリアル・スローン−ケタリング癌センター施設動物飼育および利用委員会の認定したプロトコールに従って行った。腫瘍移植動物の人道的扱いに関するこの委員会の方針通り、マウスは腫瘍が全体重の10%以上になった時点で安楽死させられた。
【0294】
細胞毒性検定。
細胞は初期密度2〜5×104細胞/mlで培養した。これらは、37℃の5%CO2、加湿空気中で、ペニシリン(100ユニット/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)(GIBCO/BRL)、および5%熱不活化ウシ胎仔血清が含まれたRPMI培地1640(GIBCO/BRL)で維持された。単層で増殖している固形腫瘍細胞(例えば、MCF−7/Adr)に関しては、薬剤の細胞毒性は、Skehan他(23)が記載した細胞蛋白含量測定用のスルホローダミンB法により96ウェル微量定量プレートを使用して測定した。懸濁液中で培養された細胞(例えば、CCRF−CEMおよびその亜系統)に関しては、細胞毒性の測定は96ウェル微量定量プレートを使用して、2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−5−カルボキサニリド−2Hテラゾジウム水酸化物(XTT)−ミクロ培養テトラゾニウム法(24)を2回繰り返して行った。この両者の方法では、各ウェルの吸光をミクロ平板リーダー(EL−340、バイオテック社、バーリントン、VT)で測定した。1回の試験で、試験薬剤を6または7種の濃度で試験した。用量−効果関係データは、既に記載したコンピュータ・プログラムを使用して、50%効果量プロット(25)により解析した。
【0295】
HPLC分析
dEpoB(0.05〜20μg/ml)を含むヒト血漿またはヌードマウス血漿(300μl)に30μlのメタノールを加えて2分間混合し、その後300μlのメタノールを加えた。遠心分離による上清を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で使用した。ノバパックC18カラム(15cm)を使用し、0.8%トリエチルアミンおよび0.2%リン酸の入った50%アセトニトリル/水を移動相とした。250nmにおけるUV吸光度を測定した。
【0296】
試験管内における薬剤耐性の発達。
ヒト肺癌A549細胞を、14.3〜21.4カ月間、繰り返しIC50〜IC90の濃度の抗癌剤(dEpoB、パクリタキセル、ビンブラスチンまたはアドリアマイシン)に曝露させた。数週毎に細胞を採取して用量−効果関係を解析し、IC50値を無処理の親細胞のIC50値と比較して耐性程度を測定(SRB蛋白質染色検定を使用)した。細胞系譜の増殖には、トリプシン処理/洗浄細胞を使用した。薬剤含有新鮮培地に加える薬剤濃度(新規IC50濃度の1〜2倍)は、細胞の曝露を継続するため毎週高くしていった。
【0297】
異種移植片試験。
ヒト腫瘍細胞(5×106)または腫瘍組織(30〜50mg)をnu/nuマウス(Charles River Laboratories、ウィルミントン、MA)皮下に移植した。特に断らない限り、腫瘍が特定の大きさに成長した時点で、6時間静脈点滴を1日置きに5回の投与を開始した。腫瘍容積は、カリパスで寸法を3カ所(長さ、幅および高さまたは幅)測定して求めた。体重変化および致死性は1日置きに調査した。
【0298】
以下の参考文献が、実施例4において引用されている。
【参考文献】
【0299】
【表4】
【0300】
【表5】
【0301】
【表6】
【0302】
実施例5。追加の生物学的データおよび類似体の合成
動物血漿中のdEpoFの安定性。ノバパックC18、3.9×300mmカラムを使用し、移動相として0.01%のトリエチルアミンを含む50mMリン酸ニ水素カリウムと混合した50%アセトニトリルを使用し、流速0.8ml/分で行うHPLC法が樹立されている。dEpoFは波長260nmで測定され、約10分間の保持時間を有する。血漿安定性試験はPel−Freeze社から購入したマウス血漿およびイヌ血漿、およびMSKCCの血液センターから購入したヒト血漿で行う。少量のdEpoFを50%メタノール/水に溶解して500μg/mlとする。20μl分を2mlの血漿に加えて最終血漿濃度を5μg/mlとする。血漿標本を37℃に保った。その時点で200μlの血漿を取り出し、400μlのメタノールに添加して血漿蛋白質を沈殿させる。20μlの上清をそのままHPLCで分析した。市販の凍結マウス血漿単独ではdEpoFの半減期は約1時間で急速に消失するが、イヌおよびヒト血漿中では安定である。
【0303】
以下の実験は図7に示した化合物に関する。
トシラート(5)。CH2Cl2(0.2ml)に溶解したdEpoF(4.2mg、0.0083mmol)およびピリジン(0.1ml)溶液に、ρ−トルエンスルホニルクロリド(2.4mg、0.013mmol)を0℃で添加した。この溶液を1時間攪拌したときのTLC分析では、反応は少々進行していた。更に、ρ−トルエンスルホニルクロリド(1.0mg)と4−ジメチルアミノピリジン(0.1mg)を添加し、攪拌を0.5時間継続した。次に、反応混合物をEtOAc(5ml)で希釈し、1NHCl水溶液(2ml×2)、NaHCO3(2ml)、NaCl(2ml)溶液の順で洗い、MgSO4上で乾燥後濃縮した。シリカゲルカラム(40%EtOAc−ヘキサン)による精製で、粘着性油状の純粋トシラート5(4.1mg、75%)が得られた。
【NMR69】
【0304】
ヨウ化物(6)。21−トシラート−dEpoB(5、2.0mg)のアセトン(HPLC級試薬、0.45g)溶液にNaI(5mg)を添加した。15分間の攪拌後、飽和Na2S2O3水溶液2滴を添加して微量のI2を不活化し、攪拌を3分間継続した。トルエン(0.5ml)を添加した後窒素ガスでアセトンを蒸発させた後、残留物を直接シリカゲルカラム上に載せた。ヘキサン−EtOAc(4:1)による溶出の結果、淡黄色油状の21−ヨード−dEpoB(6、1.5mg)が得られた。
【NMR70】
【0305】
dEpoB(2または7)。21−ヨード−dEpoB(6、約0.15mg)のHMPA(0.15ml)溶液に、NaBH3CN(5mg)を添加した。反応の進行を追跡するために、少量の反応混合液を水とエーテルに分画し、エーテル層をTLCに使用した。TLC分析によると、反応は3.5時間で終了した。水(3ml)で不活化した後、反応混合液をヘキサン−CH2Cl2(2:1、2ml)で3回、ヘキサン−トルエン(2:1、2ml)で1回抽出した。シリカゲルによるクロマトグラフィ(50%エーテルのヘキサン溶液から純粋なエーテル)精製の結果、望みのdEpoB(2b、約0.05mg)が得られた。dEpoBの同定は、標本のクロマトグラフィおよび分光分析結果を既存のデータと比較して行った。
アルデヒド(8)。dEpoF(10.0mg、0.0197mmol)のCH2Cl2(0.5ml)溶液に、二酸化マンガン(活性化済み、14mg、0.16mmol)を添加した。室温で2時間攪拌後、混合液を小さいシリカゲルカラムパッドでろ過した。ろ液を濃縮して、粘凋、無色油状のアルデヒド8(8.9mg、89%)を得た。
【NMR71】
【0306】
21−オキソ−dEpoBの生物学的データ。
表4に示したように、21−オキソ−dEpoBの相対効力を試験した。高度耐性(ビンブラスチンに2766倍耐性)のMDS細胞を使用した。表に示したように、dEpoFはdEpoBよりわずかに効力が低く、21−オキソ−dEpoBはdEpoBよりも3.7倍効力が低くdEpoBと同様の弱い薬剤耐性を示した。具体的には、MDR CCRF−CEM/VBL細胞において、dEpoFの効力はdEpoBよりも4.5倍低く、21−オキソ−dEpoBの効力はdEpoBよりも5.1倍低い。(IC50 CCRF−CEM/VBL)/(IC50 CCRF−CEM)比を使用すると、dEpoBは8.6倍、21−オキソ−dEpoBは11.9倍、dEpoFは33.6倍の耐性であった。
【0307】
【表7】
【0308】
実施例6。新規合成法によるジオキサランの合成(図46および47)
C12エチルジオキサランdEpoB(C12−Diox−dEpoB)の合成は、既知のTBDPSで保護されたアルキン1から始まる。化合物1はB−ヨード−9−BBNによるヨード−ホウ酸処理を受ける。生じるビニルボランは、1位と4位にメチルビニルケトンを付加して78%の収率でケトン2を産生する。シリル基はHF−ピリジン処理で取り除かれ第1アルコール3を産生する。TBDPSエーテルは後者の段階の合成と適合性がないので、この過程が必要であることがわかった。この時点では、熱力学的エノールエーテルはTMSIおよびHMDSにより95%の収率で約9:1の比率(熱:力学)で産生される。第1アルコールは反応の間TMSエーテルとして同時に保護される。水酸基の不斉導入は、第1シリル基の加水分解および生じるジオールのビスTES誘導体としての保護の後、Sharplessジヒドロキシル化法で化合物4を全収率56%で産生することにより達成される。ホスフィン酸化物5およびケトン4による効率的なホルナーオレフィン化(86%)により、ヨウ化ビニルセグメントに最終的な炭素−炭素結合が形成される。最後に、慎重に管理された条件下で、2%酢酸のメタノール溶液を使用して0℃で最初のTESが取り除かれ、生じるアルコールはTrocカーボネートとして再び保護され化合物8を産生する。
【0309】
合成の重要な工程には、ヨウ化ビニル8とポリプロピオネート9の結合と完全に合成された炭素骨格の形成が含まれる。この過程は、鈴木交差共役を使用して化合物10を77%の収率で産生することで達成される。その後、tert−ブチルエステルはTESOTf処理により脱保護され、生じるシリルエステルとC15シリルエーテルは希塩酸のメタノール溶液処理により同時に加水分解される。その結果生じるseco−酸は、Yamaguchi環化を受け、71%の収率でマクロラクトン12を産生する。Trocカーボネートは両者とも金属亜鉛の酢酸溶液で取り除かれ、68%の収率でジオール13を産生する。第1アルコールの選択的酸化はTEMPO/ヨードベンゼンジアセテートで達成され、C7酸化の徴候は認めない。エチレングリコールアセタールは、ビス(トリメチルシリル)エチレングリコールと触媒性TMSOTfを使用してノヨリの方法で合成した。最後に、粗産物はHF−ピリジンで脱シリル化され最終産物15を産生する。この方法でこれまでに50mgの最終産物が生産されて、高度な生体内生物学的試験を支えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、アシル・セクターの合成にアルドールカップリング反応を使用してエポチロンおよびその類似体を合成するためのモジュラープランを示す図である。
【図2】図2は、スズキカップリング、ノヨリ還元およびマクロラクトン化を経由したデオキシエポチロンFの合成を示す図である。
【図3】図3は、試薬および条件が(a)i)9−BBN−I、ヘキサン、ii)メチルビニルケトン、iii)3N NaOH、トルエン、100℃、65%、(b)TMSI−HMDS、CH2Cl2、−20℃から室温、(c)1モル%OsO4、AD−mix−α、MeSO2NH2、t−BuOH−H2O(1:1)、2段階について55%、(d)TESCl、イミダゾール、DMF、85%である、ケトン11への触媒による非対称径路を示す図である。
【図4】図4は、試薬および条件が(a)i)TiCl4、CH2Cl2、DIPEA、87%、ii)TESCl、イミダゾール、DMF、84%、(b)i)グリコール酸、TESCl、NaH−TEA、エーテル、0℃、その後、t−BuCOCl、−78℃、ii)n−BuLi、−78℃から室温、38〜41%、(c)LHMDS、−78℃、THF、81%、(d)AcOH:H2O:THF(3:1:1)、86%、(e)i)CH3ONHCH3、AlMe3、CH2Cl2、ii)TESCl、イミダゾール、DMF、88%、(g)MeMgBr、0℃、93%でケトン11への立体選択性のアルキル化径路を示す図である。
【図5】図5は、ある官能化エポチロン類似体の合成と利用を示す図である。
【図6】図6は、21−ヒドロキシ−デオキシエポチロンBから21−オキソ−デオキシエポチロンBへの変換を示す図である。
【図7】図7は、ある21−官能化12,13−デオキシエポチロンB類似体の合成を示す図である。
【図8】図8は、増進した水溶性を提供するある両性イオンの合成を示す図である。
【図9】図9は、ある本発明の化合物のペプチドへの共役を示す図である。
【図10】図10は、ある炭水化物−エポチロン共役体の合成を示す図である。
【図11】図11は、直接C−C結合で接合したある炭水化物−エポチロン共役体の合成、およびその他のエポチロン類似体を示す図である。
【図12】図12は、あるエポチロン二量体の合成を示す図である。
【図13】図13は、デンドリマーおよびポリマー上に多数存在する本発明のエポチロンを示す図である。
【図14】図14は、生分解可能なポリマーに結合した本発明のあるエポチロンの合成を示す図である。
【図15】図15は、ある本発明の水溶性エポチロン誘導体の合成を示す図である。
【図16】図16は、チアゾリル部分7Gの合成を示す図である。
【図17】図17は、保護された環化前駆体13Gcの合成を示す図である。
【図18】図18は、dEpoF(2Gd)の合成を示す図である。
【図19】図19は、連続的なアルドール反応によるO−Acyl Wingの合成設計を示す図である。
【図20】図20は、試薬および条件が(a)トルエン、110℃、2時間、96%、(b)HOPPh2、Cs2CO3、cat.TBAI、CH2Cl2、室温、48時間、82%、(c)LHMDS、THF、−78℃、52%、(d)2.5 eq Dibal−H、CH2Cl2、0℃、98%、(e)Cl3CCH2OCOCl、ピリジン、CH2Cl2、86%で、ホーナー縮合を経るO−Alkyl wingの合成を示す図である。
【図21】図21は、TESエーテル対掌体38のアルドール縮合を示す図である。
【図22】図22は、試薬および条件が(a)CH(Oi−Pr)3、iPrOH、cat.TsOH、88%、(b)LDA、−78℃、85%、46:47=4:1、(c)TrocCl、ピリジン、CH2Cl2、0℃、99%、(d)H2O/THF、cat.TsOH、88%、(e)THF、89%、dr>20:1、(f)TBSOTf、2,6−ルチジン、CH2Cl2、−78℃、81%、(g)TESCl、イミダゾール、DMF、96%で、O−Acyl Wingへの新規な合成径路を示す図である。
【図23】図23は、試薬および条件が(a)i)9−BBN−H、THF(ii)PdCl2(dppf)、AsPh3、DMF−THF−H2O、室温、2時間、72%、(b)TESOTf、2,6−ルチジン、CH2Cl2、−78℃から室温、8時間、(ii)HCl−CH3OH、THF、0℃、69%で、dEpoBの全合成を示す図である。
【図24】図24は、試薬および条件が(a)i)9−BBN−H、THF(ii)PdCl2(dppf)、AsPh3、DMF−THF−H2O、室温、8時間、89%、(b)TESOTf、2,6−ルチジン、CH2Cl2、−78℃から室温、8時間、(ii)HCl−CH3OH、0℃、78%、(c)2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド、(C2H5)3Nその後4−DMAP、トルエン、低速添加3時間、60〜70%、(d)Zn、AcOH−THF、室温、1時間、90%、(e)HF−ピリジン、THF0℃から室温、91%で、dEpoFの全合成の完結を示す図である。
【図25】図25は、EpoFおよび光アフィニティー標識したdEpoFの合成を示す図である。
【図26】図26は、あるアザ類似体を示す図である。
【図27】図27は、C15−エピ−アザ−デオキシエポチロンBを調製するための合成径路を示す図である。
【図28】図28は、スズキカップリング、ノヨリ水素化およびマクロラクトン化を介したアザ−dEpoBの合成を示す図である。
【図29】図29は、ヨウ化ビニル5とアシル・セクター6のスズキカップリングを示す図である。
【図30】図30は、アジド断片とのスズキカップリングを示す図である。
【図31】図31は、ヨウ化ビニルアジド17とメチルエノールエーテル21とのスズキカップリングを示す図である。
【図32】図32は、アザd−EpoBの合成を示す図である。
【図33】図33は、C15−アザ−EpoBによる処理の後の、MX−1腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図34】図34は、6mg/kgのC−15−アザ−EpoB、Q2D×6および30mg/kgのdEpoF、Q2D×6(静脈注射6時間)の後の、ヒト白血病K526腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図35】図35は、ヒト結腸癌をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図36】図36は、ヒト白血病K562の異種移植片をもつヌードマウスのdEpoB、タキソール、アドリアマイシン、およびビンブラスチンによる治療効果を示す図である。
【図37】図37は、 ヒト白血病K562の異種移植片をもつヌードマウスのdEpoBとタキソールによる治療効果を示す図である。
【図38】図38は、15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理(静脈注射6時間)の後の、CCRF−CEM腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図39】図39は、15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理(静脈注射6時間)の後の、CCRF−CEM腫瘍をもつヌードマウスの体重を示す図である。
【図40】図40は、dEpoF(静脈注射6時間(Q2D×5))の後の、MX−1をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図41】図41は、C−15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理の後の、MX−1腫瘍をもつヌードマウスの腫瘍サイズを示す図である。
【図42】図42は、C−15−アザ−EpoBまたはdEpoF処理の後の、MX−1腫瘍をもつヌードマウスの体重を示す図である。
【図43】図43は、ヒト肺癌A549に対する抵抗性を示す図である。
【図44】図44は、血漿内での安定性(マウスvsヒト)を示す図である。
【図45】図45は、6mg/kgの静脈注射(10分間)の後の、イヌでのdEpoBの薬物動態を示す図である。
【図46】図46は、C12エチルジオキサレンヨウ化ビニルの合成を示す図である。
【図47】図47は、ここに述べた新規な方法論を使用するC12環状アセタールの合成を示す図である。
Claims (61)
- 以下の構造:
CYはアリールまたはヘテロアリール部分であり;
qは1〜5であり;
Wは出現するごとに独立に、不在であるか;−NH−;C=O;C=S;−O−;−S−またはC(V)2であり;
Vは出現するごとに独立に、水素;ハロゲン;−OH;−SH;アミノ;または置換または無置換のアルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;
mは出現するごとに独立に、1〜5であり;
結合W−−−R1は単結合または二重結合を表し;
R1は出現するごとに独立に、水素;ORA;SRA;NRARA;C(O)ORA;C(O)RA;CONHRA;N3;N2;N2RA;ハロゲン;置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリール;ポリマー;炭水化物;光アフィニティー標識;または放射性標識であり;RAは出現するごとに独立に、水素;直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;窒素保護基;炭素保護基;酸素保護基;イオウ保護基;ポリマー;炭水化物;光アフィニティー標識;または放射性標識であり;
R2およびR3はそれぞれ独立に、水素;置換または無置換、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;アシル;アロイル;ベンゾイル;またはSi(RB)3であり、RBは出現するごとに独立に、置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり;
R4およびR5はそれぞれ独立に、水素;置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり、1つまたは複数のヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環式アセタール、フッ素、NRCRD、N−ヒドロキシイミノ、またはN−アルコキシイミノによって任意に置換されており、RCおよびRDはそれぞれ独立に、水素、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;
R6は独立に、水素;ORA;SRA;NRARA;C(O)ORA;C(O)RA;CONHRA;N2;N2RA;ハロゲン;環式アセタール;置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリールであり;RAは出現するごとに独立に、水素;窒素保護基;炭素保護基;酸素保護基;イオウ保護基;直鎖状または分枝鎖状、置換または無置換、環式または非環式、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール;ポリマー;炭水化物;光アフィニティー標識;または放射性標識であり;
ZはO、N(ORE)またはN−NRFRGであり;RE、RF、およびRGはそれぞれ独立に置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式脂肪族部分であり; nは0、1、2または3である]
を有する化合物。 - MがOである、請求項1に記載の化合物。
- R6が2個以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝状または非分枝状の脂肪族またはヘテロ脂肪族部分である、請求項1に記載の化合物。
- CYが4−チアゾリルまたは4−オキサゾリルであり、R1がORAであり、RAが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式の脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換のアリールまたはヘテロアリールであり;Wが−CH2−であり、mが1である、請求項1に記載の化合物。
- CYが4−チアゾリルまたは4−オキサゾリルであり、Wが(C=O)であり、mが1であり、R1が水素である、請求項1に記載の化合物。
- R2およびR3がそれぞれ水素であり、R4がメチルであり、R5が水素であり、ZがOである、請求項1に記載の化合物。
- 以下の構造:
を有する、請求項1に記載の化合物。 - ポリマー主鎖、および
2つ以上の請求項1に記載の化合物を含む構成物であって、2つ以上の請求項1に記載の化合物が同じであるかあるいは異なっており、前記2つ以上の化合物がポリマー主鎖に直接的に、あるいはリンカーを介して結合しており、2つ以上の化合物が該化合物の12−位、20−位または21−位で結合している構成物。 - ポリマー主鎖がデンドリマー、ペプチド、または生分解性ポリマーである、請求項20に記載の組成物。
- R6が、2つ以上の炭素原子を有する、置換または無置換、環式または非環式、分枝状または非分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族部分である、請求項23に記載の化合物。
- Xがメチレンであり、YがOであり、Zが(C=O)である、請求項23に記載の化合物。
- Xがメチレンであり、YがNHであり、Zが不在である、請求項23に記載の化合物。
- Xが(C=O)であり、YがOまたはNHであり、Zが不在である、請求項23に記載の化合物。
- 請求項1に記載の化合物、および
製薬品として適切な担体または希釈剤を含む、ガンを治療するための製薬組成物。 - ガンに罹患した患者においてガンを治療する方法であって、治療的に有効量の請求項1に記載の化合物を患者に投与する工程を含む方法。
- 前記ガンが固形腫瘍である、請求項29に記載の方法。
- 前記ガンが乳ガンである、請求項29に記載の方法。
- 所定量の細胞毒性剤をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
- 前記細胞毒性剤が抗ガン剤である、請求項28に記載の組成物。
- 前記抗ガン剤がアドリアマイシン、ビンブラスチンまたはパクリタクセルである、請求項33に記載の組成物。
- 前記化合物の有効量が、体重1kgあたり約0.01mg〜約50mgである、請求項28に記載の組成物。
- 以下の構造:
を有する化合物を調製する方法であって、
a)以下の構造:
b)前記ハロケトンにエノールエーテルを生成させるための条件を施し、その後以下の構造:
c)以下の化合物:
- 以下の構造:
を有する化合物を調製する方法であって、
a)以下の構造:
b)前記グリコールイミドを、N,O−(直鎖状または分枝鎖状C1−8アルキル、アリール)ヒドロキシルアミン、N,O−ジ−(直鎖状または分枝鎖状C1−8)アルキルヒドロキシルアミンおよびN,O−アリール,アリールヒドロキシルアミンからなる群から選択される置換ヒドロキシルアミンを用い、以下の構造:
を有するアミドを形成するのに適切な条件下で処理する工程、
c)前記アミドを、当該化合物を形成するのに適切な条件下で、置換有機金属試薬と反応させる工程を含む方法。 - 置換有機金属試薬がグリニャール試薬である、請求項39に記載の方法。
- 以下の構造:
を有する化合物を調製する方法であって、
a)以下の構造:
を有するホスフィンオキシドを調製する工程、
b)前記ホスフィンオキシドを、以下の構造:
c)前記化合物を任意に転化させるか、あるいは、生成したエステルを任意に当該化合物を形成するのに適切な条件下で還元する工程を含む方法。 - R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである、請求項41に記載の方法。
- R1が置換または無置換4−チアゾリルである、請求項41に記載の方法。
- 以下の構造:
を有する化合物を調製する方法であって、
a)以下の構造:
を有するホスフィンオキシドを調製する工程、
b)前記ホスフィンオキシドを、以下の構造:
c)工程b)で形成された化合物を適切な条件下で転化させてアジドを生成させるか、あるいは任意に、さらにアジドを処理して保護型アミンを生成させる工程を含む方法。 - R1が水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである、請求項44に記載の方法。
- R1が置換または無置換4−チアゾリルである、請求項44に記載の方法。
- 以下の構造:
を有する化合物を調製する方法であって、
a)以下の構造:
を有するホスフィンオキシドを調製する工程、
b)前記ホスフィンオキシドを、以下の構造:
c)工程b)で形成されたエステルを、当該化合物を形成するのに適切な条件下で還元する工程を含む方法。 - 以下の構造:
を有する化合物を調製する方法であって、
以下の構造:
を有する化合物を生成させることを含む方法。 - 第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、前記ケトアルデヒドを化学量論的条件下でキラルエノラートチタンと反応させることを含む、請求項48に記載の方法。
- 第2のアルドール反応を行うために適切な条件下で前記ケトアルデヒドを反応させる工程が、前記ケトアルデヒドを触媒試薬と反応させることを含む、請求項48に記載の方法。
- 使用する触媒試薬がCarreira触媒である、請求項50に記載の方法。
- 使用する触媒試薬がMikamiのキラル・アルドール触媒である、請求項50に記載の方法。
- 以下の構造:
を有する化合物を調製するための方法であって、
以下の構造:
を有する前駆体を提供する工程を含み、前記前駆体を提供する工程が、
以下の構造:
前記前駆体に適切な条件を施して大環化を行い、任意に脱保護して所望の化合物を生成させることをさらに含む方法。 - 脱保護してR2およびR3が水素である化合物を生成させる工程を含む、請求項53に記載の方法。
- R1が−CY=CHXまたは水素、置換または無置換、直鎖状または分枝状、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルであり、Xが水素、直鎖状または分枝状、置換または無置換、環式または非環式、アルキル、ヘテロアルキル、フェニル、4−チアゾリル、2−フラニル、3−フラニル、4−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、イミダゾリル、4−オキサゾリル、3−インドリルまたは6−インドリルである、請求項53に記載の方法。
- 脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール基が、光活性化可能基で、または1つまたは複数のヒドロキシ、チオ、アミノ、置換アミノ、アルデヒド、カルボン酸、アルケニル、イミノ、またはジアゾでさらに置換されている、請求項53に記載の方法。
- MがOであり、R1が−CY=CHXであり、Yがメチルであり、Xが−(C=O)H、−(CH2)nOH、または−(CH2)NRARAによって2−位において置換されている4−チアゾリルであり、nが0〜5である、請求項53に記載の方法。
- R7〜R11がそれぞれ独立に水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル、またはSi(RB)3からなる群から選択され、RBは出現するごとに独立に、分枝または非分枝、置換または無置換、脂肪族またはヘテロ脂肪族、または置換または無置換アリールまたはヘテロアリールである、請求項53に記載の方法。
- 前記第1および第2のセクターに適切な条件を施す工程が、前記セクターにスズキカップリングを行うための条件を施すことを含む、請求項53に記載の方法。
- 前駆体を提供する前記工程が、以下の構造:
を有する第1のセクターを提供すること、以下の構造:
を有する第2のセクターを提供することを含み、
第2のセクターを提供する工程が、以下の構造:
を有する第2のセクターを生成させ、
前記第1および第2のセクターをカップリングを行うために適切な条件下で反応させて、当該前駆体を生成させることをさらに含む、請求項53に記載の方法。 - R1がCY=CHXであり、Yが水素またはアルキルであり、Xが直鎖状または分枝状アルキルによって2位において置換されているか、あるいは−(CH2)nOHによって置換されている4−チアゾリルであり、nが0〜5であり、
R6が水素、ヒドロキシ、チオ、アミノまたはハロゲンであるか、あるいは置換または無置換、環式または非環式、直鎖状または分枝状の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、またはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、チオアルキル、アリールチオ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、環式アセタール、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシイミノ、またはアルコキシアミノである、請求項60に記載の方法。 - ZAがN3であり、適切な条件下でアジドを反応させて保護型アミンを生成させる工程を任意にさらに含む、請求項60に記載の方法。
- 前駆体化合物を脱保護して、遊離ヒドロキシ酸前駆体、またはアミノ酸前駆体を生成させる工程を任意にさらに含む、請求項60に記載の方法。
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