JP2004500092A - タンパク質の溶解性及びフォールディングを評価する相補性アッセイ - Google Patents

タンパク質の溶解性及びフォールディングを評価する相補性アッセイ Download PDF

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    • C07K1/113General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length by chemical modification of precursor peptides without change of the primary structure

Abstract

多くのタンパク質は、組換えによって生成されるとき、不適切なプロセシング、フォールディングを受け、正常な溶解性を欠く。疾患状態を示すタンパク質を含めて、改変されたタンパク質もこのような欠陥を有することがある。本発明は、適切な及び不適切なタンパク質のフォールディング、異常なプロセシング及び/または不溶性を識別する方法を対象とする。この方法は2つの成分、特殊化した融合タンパク質及び構造相補体を使用するものである。融合タンパク質は、目的のタンパク質からの配列と、それ自体は活性がないマーカー・タンパク質の一部分の配列を含む。したがって宿主細胞は、会合体が活性を取り戻し検出が可能になるように、融合したマーカー・タンパク質の機能を「補完する」働きをする、マーカー・タンパク質の残り部分を提供する。

Description

【0001】
(発明の背景)
米国政府は、National Institutes of Health(DK49835)からの財政的支援により、本出願において権利を有するものとする。
【0002】
(1.発明の分野)
本発明は、生化学、細胞生物学及び分子生物学の分野に関する。詳細には本発明は、タンパク質生化学の分野、詳細にはタンパク質のフォールディング(「折りたたみ」、folding)及び溶解性を判定するためのアッセイの使用に関する。
【0003】
(2.関連技術の説明)
タンパク質溶解特性のin vivoでの迅速かつ効率の良い評価を可能にする遺伝系に対しては広範囲の潜在的な適用例が存在する。バイオテクノロジーの土台の1つは、遺伝子工学によって処理した生物において、標的タンパク質をin vivoで機能的な形で発現する能力である。しかしながら、少なくとも部分的にはin vivoでのタンパク質フォールディングプロセスの複雑さのために(Houry他、1999)、多くの重要な標的タンパク質は、大腸菌などの細菌中において、可溶な形で効率良く発現されているわけではない。in vivoで可溶な形で発現されない標的タンパク質に出会ったとき、標的タンパク質の主要配列(Huang他、1996)、あるいは遺伝的背景または細菌の成長条件(Hung他、1998;Brown他、1997;Blackwell and Horgan、1991;Bourot他、2000;Sugihara and Baldwin、1988;Wynn他、1992)などの様々な因子を最適化することにより、可溶性タンパク質の収率がしばしば改善される可能性がある。しかしながら、可溶な形のタンパク質発現に関する既存のアッセイは退屈なものであり、通常は細胞の溶解(lysis)及び分別、その後のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるタンパク質分析を必要とする。この伝統的手法を使用して、改善された溶解性をもたらすタンパク質構築物(construct)及び/または生理学的条件をスクリーニングすることは効率が悪く、遺伝的選択は不可能である。
【0004】
タンパク質フォールディング疾患(protein folding disease)は、タンパク質溶解特性が医学的及び技術的に非常に重要である第2の領域である(Thomas他、1995;Dobson、1999)。薬剤の開発に対して非常に抵抗性があることが分かっている、これらの疾患は、何らかの突然変異体の獲得後の生合成及びタンパク質の誤ったフォールディング(Brown他、1997;Thomas他、1992;Rao他、1994)によって、あるいは凝集傾向のある生成物の形成を招く異常なタンパク質のプロセシングによって、引き起こされる。こうした生成物には、アルツハイマー病に関連するアミロイドプラークを形成するペプチド(Tan and Pepys、1994;Harper and Lansbury、1997)、筋萎縮性側策硬化症におけるSOD1(Bruijn他、1998)、パーキンソン病におけるα−シヌクレイン(Galvin他、1983)、全身性アミロイド症におけるアミロイドA及びPの沈着(Hind他、1983)、致命的家族性不眠症における胸腔原繊維(Colon and Kelly、1992)、ハンチングトン病を引き起こすポリグルタミンの増殖に関連する核内封入物(Martin and Gusella、1986;HDCRG、1993;Davies他、1997)、脊髄小脳運動失調(Wells and Warren、1998)、脊髄延髄筋萎縮症(La Spada他、1991)、及びマシャドージョゼフ病(Kawaguchi他、1994)などがある。タンパク質の溶解性についてin vivoで迅速かつ効率良くスクリーニングする能力は、タンパク質フォールディング疾患に関与するタンパク質の誤ったフォールディングまたは凝集を予防する、薬剤化合物のアッセイ(すなわち、このような凝集傾向のあるタンパク質の沈殿を防止する化合物のアッセイ)の開発にも適用することができるであろう。
【0005】
したがって当分野では、タンパク質のフォールディング及び溶解性をスクリーニングする、改善された方法が依然として必要とされている。
【0006】
(発明の概要)
本発明は、直接in vivo溶解性アッセイの基礎として使用することができる、選択可能マーカー・タンパク質の構造的な相補性(structural complementation)(Richards and Vithayati、1959;Ullmann他、1967;Taniuichi and Anfinsen、1971;Zabin and Villarejo、1975;Pecorari他、1993;Schonberger他、1996)に基づく遺伝系の使用に関する。構造的な相補性とは、タンパク質を2つの成分断片に分割することに関するもので、これらの断片を合わせると安定で充分機能的な構造を形成しなければならない。この方法の特定な実施は、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)古典的なα−相補性システムを適合させることである(Ullmann他、1967)。しかしながら同じ概念を、潜在的には、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼなどの他の選択可能な遺伝マーカー、さらには緑色蛍光性タンパク質などのスクリーニング可能なマーカーにも適用できるであろう(ただし、これらのタンパク質の適切に相補性のある断片をまず開発しなければならない)。β−galは2つの断片(α及びω)に分けることができ、これらは互いに結びついて活性酵素を形成する(Ullmann他、1967)こともできる。大腸菌細胞中で可溶性画分から不溶性画分にα−断片を再分配させると、β−gal活性レベルの低下を招き、この低下は、発色性基質X−galを使用して指標寒天プレート上での成長中に、あるいは懸濁培養中に検定することができる。α−断片を標的タンパク質C−末端に融合させると、標的タンパク質のみの溶解性と同等の溶解特性を有する、キメラ・タンパク質が形成させる。したがって、β−gal活性レベルは、標的融合体の溶解性を示す。対照的に、in vivoでの溶解性及び誤ったフォールディングを監視するための3つの現存のシステムは、完全長のマーカー・タンパク質β−gal(Lee他、1990)、GEP(Waldo他、1999)及びCAT(Maxwell他、1999)との融合体を使用するものである。MBP(Ko他、1993;Kapust他、1999)、チオレドキシン(Papouchado他、1997)、及びGST(Wang他、1999)融合体を使用すると、他の場合は不溶性であるいくつかのタンパク質構築物の溶解性が高まることによって証明されるように、無傷のマーカー酵素とタンパク質融合体の溶解特性が、マーカー酵素の溶解特性の支配を受けやすいことは充分に文書に記載されている。このような比色プレートアッセイは、効率の良い高スループット・スクリーニングに容易に適合できるはずである。
【0007】
したがって、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を評価するための方法であって、(a)(i)融合タンパク質をコードしている遺伝子であって、前記融合タンパク質がマーカー・タンパク質の第1の断片に融合している目的のタンパク質を含み、前記第1の断片は目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えない遺伝子と、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターとを含む発現構築物を提供すること、(b)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させることであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造相補的であることができること、及び(c)構造的な相補性を判定することを含み、適切なネガティブ・コントロールで観察した構造的な相補性と比べて構造的な相補性がより高いと、前記タンパク質のフォールディング及び/または溶解性が適切であることが示される方法が提供される。
【0008】
前記目的のタンパク質への融合は、NまたはC末端であってよい。マーカー・タンパク質は、標的結合タンパク質、酵素、タンパク質阻害物質、及び発色団からなる群から選択することができる。その例には、ユビキチン、緑色蛍光性タンパク質、青色蛍光性タンパク質、黄色蛍光性タンパク質、ルシフェラーゼ、アクオリン、β−ガラクトシダーゼ、チトクロームc、キモトリプシン阻害物質、RNアーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、インベルターゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、チオレドキシンC、ラクトースパーミアーゼ、アミノアシルtRNAシンターゼ、及びジヒドロ葉酸リダクターゼがある。β−ガラクトシダーゼという特定の場合は、第1の断片はβ−ガラクトシダーゼのα−ペプチドであり、前記第2の断片はβ−ガラクトシダーゼのω−ペプチドである。いくつかの実施形態ではマーカー・タンパク質は、酵素活性、発色団または蛍光団の活性を含めて、検出可能な表現型に関連している。
【0009】
目的のタンパク質は、アルツハイマーのアミロイドペプチド(Aβ)、SOD1、プレセニリン1及び2、α−シヌクレイン、アミロイドA、アミロイドP、CFTR、トランスチレチン、アミリン、リソザイム、ゲルソリン、p53、ロドプシン、インシュリン、インシュリンレセプター、フィブリリン、α−ケト酸デヒドロゲナーゼ、コラーゲン、ケラチン、PRNP、免疫グロブリン軽鎖、心房性ナトリウム利尿性ペプチド、精嚢外分泌腺タンパク質、β2−ミクログロブリン、PrP、プレカルシトニン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン6、アタキシン7、ハンチグチン、アンドロゲンレセプター、CREB結合タンパク質、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症関連タンパク質、マルトース結合タンパク質、ABCトランスポーター、グルタチオンSトランスフェラーゼ、及びチオレドキシンであってよい。
【0010】
第2の断片をコードしている遺伝子は、前記宿主細胞の染色体上に、あるいはエピソームによって保有されていてよい。宿主細胞は細菌細胞、昆虫細胞、酵母菌細胞、線虫細胞、及びホ乳動物細胞であってよい。その例には、大腸菌、C.elegans、またはS.fugeria、及び様々なホ乳動物細胞がある。好ましいプロモーターには、Taqプロモーター、T7プロモーター、またはPlacプロモーター(細菌)、CupADH、Gal(酵母菌)またはPepCkまたはtk(ホ乳動物)がある。
【0011】
特定の実施形態では、本発明の方法は、前記マーカー・タンパク質の第2の断片が欠けている宿主細胞、及び/または不適切に折りたたまれている、かつ/または不溶性である融合タンパク質である、ネガティブ・コントロールを使用する。
【0012】
他の実施形態では、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性の突然変異体をスクリーニングするための方法であって、(a)(i)目的のタンパク質と、(ii)マーカー・タンパク質の第1の断片であって、前記第1の断片は目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えず、前記融合タンパク質は、前記宿主細胞中で発現されるとき、適切に折りたたまれていず、かつ/または可溶性である第1の断片と、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターであって、前記融合タンパク質が、前記宿主細胞中で発現されるとき、適切に折りたたまれていず、かつ/または可溶性であるプロモーターとを含む融合タンパク質をコードしている遺伝子を提供すること、(b)前記目的のタンパク質をコードしている遺伝子の部分に突然変異を引き起こさせること、(c)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させることであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造相補的であることができること、及び(d)構造的な相補性を判定することを含み、突然変異していない融合タンパク質で観察した構造的な相補性に比べて構造的な相補性が相対的に増大すると、前記タンパク質の適切なフォールディング及び/または溶解性が増大することが示される方法が提供される。
【0013】
他の実施形態では、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を調節する候補となる調節物質をスクリーニングするための方法であって、(a)(i)融合タンパク質をコードしている遺伝子であって、前記融合タンパク質がマーカー・タンパク質の第1の断片に融合している目的のタンパク質を含み、前記第1の断片は目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えない遺伝子と、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターとを含む発現構築物を提供すること、(b)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させることであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造相補的であることができること、(c)宿主細胞を前記候補となる調節物質と接触させること、及び(d)構造的な相補性を判定することを含み、前記候補となる調節物質の不在下で観察した構造的な相補性と比べて構造的な相補性が相対的に増大すると、前記候補となる調節物質がタンパク質のフォールディング及び/または溶解性のモジュレーターであることが示される方法が提供される。この候補となる調節物質はタンパク質、核酸または小分子でよい。
【0014】
従来からの特許用語の慣習に従って、「a」または「an」という語は、「comprising」と共に使用するとき、本明細書及び特許請求の範囲において、1つまたは複数を意味するものとする。
【0015】
以下の図面は本明細書の一部を形成するものであり、これは本発明のいくつかの態様をさらに示すために含まれている。1つまたは複数のこれらの図面を、本明細書に示す具体的な実施形態の詳細な説明と合わせて参照することにより、本発明を一層理解することができる。
【0016】
(例示的な実施形態の説明)
タンパク質の誤ったフォールディングは、いくつかのヒトの疾患の基礎となっている。それは、機能的組換えタンパク質の生成に対するかなりの障害でもある。さらに、タンパク質のフォールディングを調節することによって、in vivoでのタンパク質の機能を調節する無限の可能性がある。今日まで、誤ったフォールディング及びその回避の研究は、個別の場合ごとの特別なアッセイの開発を必要としてきた。
【0017】
しかしながら、最大限の有用性を得るには、このような方法は容易に測定されるシグナルを提供し、広い濃度範囲にわたる標的タンパク質の溶解性のわずかな変化に敏感であり、可溶性タンパク質の表現型の選択を可能にし、標的タンパク質の溶解性に対して最小限にしか影響を与えないものでなければならない。本発明は、これらの利点のそれぞれを提供する。
【0018】
本発明では、一般化された融合構築物及び「構造的な相補性」の現象を使用して、細胞または生物ベースのスクリーニングにおいて、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を調べる。具体的実施形態では、β−ガラクトシダーゼのα及びωペプチド−ペプチドを使用し、第1のものは、相補性アッセイにおける、所与の目的のタンパク質の融合パートナーである。目的のタンパク質が適切に折りたたまれている場合は、融合体は可溶性のままであり、もう1つのβ−ガラクトシダーゼのペプチドを結合させ、酵素の活性化及び検出を可能にすることができる。様々な異なる宿主細胞、「構造的な相補性」の対(酵素、結合タンパク質、発色団)、及び標的タンパク質を使用することができる。
【0019】
本明細書に示す研究は、このシステムが、8つの融合したタンパク質:マルトース結合タンパク質及びその変異体、嚢胞性繊維症の膜透過伝導性制御因子の第1のヌクレオチド結合ドメイン、超高熱菌archeon methanococcus jannaschiiからの分枝鎖アミノ酸トランスポーター、アルツハイマーの前駆体タンパク質のAβペプチドの溶解性を確実に示すことを実証している。α断片なしで発現されるとき、融合体によって生成されるシグナルは、ヌクレオチド結合ドメインの標的体の溶解性に正比例することは、この比較的少量のポリペプチドは、大きなマーカー・タンパク質への融合体とは異なり、標的タンパク質の溶解性に著しい影響を与えることはないことを示唆している(たとえば、M13P、Harper and Lansbury、1997)。このことは、大きな可溶性タンパク質、すなわち完全長β−gal(Lee他、1990)、GFP(Waldo他、1999)及びCAT(Maxwell他、1999)との融合体を利用する、最近報告された2つの溶解性監視システムに比べて大きな利点を提供することができるであろう。融合体、及びGST(Wang他、1999)、MBP(Ko他、1993)、チオレドキシン(Papouchado他、1997)、免疫グロブリン結合ドメイン(GB1)(Huth他、1997)などの高溶解性タンパク質が、様々な発現されるタンパク質の溶解性を大幅に改善することが文書に十分に記載されている。したがって、場合によってはGFP及びCATが、標的の溶解性に重大な影響を与える可能性があると予想することが妥当である。
【0020】
前述のように、このシステムにはいくつかの潜在的な用途がある。たとえば、組換え生成物システムを試験して、生成されるポリペプチドが適切に折りたたまれているかどうか判定することができる。さらに、標的タンパク質は疾患状態の診断の特徴となる可能性がある。このシステムは、異種タンパク質の発現及びフォールディングに非常に有効な細菌株の発生及び選択において、あるいはランダムな突然変異誘発による実験中での広く様々なタンパク質の表現型の選択にも、有用である可能性がある。現在これらの強力な手法は、それ自体が測定可能な細胞機能に必要であるタンパク質に限られている。したがって、現在の溶解性検出システムは、主要配列が独特な3次元構造の形成、あるいは効率的なタンパク質成熟のために重要な細胞系の同一性及びメカニズムをどのように指示するのかなど、基本的な生物学的プロセスを理解するための重要な手段を提供する。
【0021】
本発明の一態様は、融合パートナーの目的のタンパク質に対する影響が最小限であることである。標的の溶解性に対する、「系統的な」影響(すなわち、薬剤または突然変異体のいずれかの存在下でも不在下でも同様である)だけが存在することによって、容易な比較が可能になる。実際このことは、目的の標的タンパク質に応じてアッセイの感度を調整することができるという、追加的な利点を提供する。αサブユニット中の突然変異体という最近の発見によって、α〜θ相互作用の「チューニング」が可能になり、これを利用して感度を変えることもできる。
【0022】
おそらくシステムの最も好奇心をそそる適用例は、疾患関連タンパク質のフォールディングを調節する薬剤の発見である。以前は、調合薬に関する研究は、細胞プロセスを阻害する化合物の同定に焦点が当てられていた。しかしながら、ハンチングトン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、嚢胞性繊維症、筋萎縮性側策硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、及びある形態の糖尿病及びガンなど、タンパク質の誤ったフォールディングに関連する疾患がますます広がっていることが、製薬産業にとって新しい課題となっている。誤ったフォールディングをする傾向があるタンパク質を標的とする薬剤の同定には、新規なスクリーニング及び本明細書に記載するα−相補性システムなどのアッセイ方法の開発が必要である。このような調合薬が同定できるという有望な証拠が、Rastinejad等(Foster他、1999)によって近年提供されており、彼等は可溶性かつ機能的な高次構造をもつp53の突然変異体のフォールディングを安定化させ、これによってマウスにおける腫瘍の成長を防止する能力を回復する、あるクラスの化合物の同定を報告した。
【0023】
以下のページに、本発明の様々な態様を、さらに詳細に記載する。
【0024】
A.タンパク質のフォールディング及び突然変異体タンパク質
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチングトン病、及び他の疾患などのいくつかの疾患は、in vivoでの誤ったフォールディングの結果、あるいはこれに関連するものであると考えられている。いくつかの実施形態において、本発明は、生きている細胞中での、タンパク質の誤ったフォールディングの存在についてアッセイする方法を提供する。
【0025】
組換え体によって発現されたタンパク質は、特に真核細胞のプロセシング機構が欠けている原核宿主細胞では、誤ったフォールディングが多いことを意味する。タンパク質が誤って折りたたまれると、タンパク質は溶解性が低下することが多く、細胞中に封入体として沈殿する可能性がある。さらに、天然に存在するタンパク質中の突然変異体によって、宿主細胞中で内因的に発現されたとき、及び外因的に発現されたときでも、誤ったフォールディングの割合が増える。ある実施形態において本発明は、天然のものであれ人間の手によって生成されるものであれ、様々な突然変異体を可能にし、これらはin vivoでのタンパク質の誤ったフォールディングを増やす(または減らす)その能力に関してアッセイされる。
【0026】
1.融合タンパク質
本発明の一態様は、α相補性に有用なペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を合わせて、より大きな可溶性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにすることができ、フォールディング反応はその可溶性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドによって支配されているという発見である。可溶性タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドは、内因的に生成されたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと、同じ長さまたはアミノ酸配列を有していてよい。 他の実施形態では、可溶性タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドは、より大きなペプチド鎖の切断されたタンパク質、タンパク質ドメインまたはタンパク質断片であってよい。たとえば、埋め込まれている膜、そうでなければ疎水性タンパク質の可溶性断片のフォールディングを使用して、融合タンパク質を作製することができる。
【0027】
少なくとも1つのアミノ酸配列をコードしている少なくとも1つの核酸を、少なくとも第2のアミノ酸配列をコードしている少なくとも第2の核酸に動作可能に結合させ、その結果コードされている配列をin vitroまたはin vivoで隣接アミノ酸配列として翻訳することによって、融合タンパク質が生成される。融合タンパク質の設計及び発現は当分野ではよく知られており、融合タンパク質発現の方法は本明細書、参照によって本明細書に組み込まれている、たとえば米国特許第5,935,824号などの参照文献中に記載されている。
【0028】
ある実施形態では、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、可溶性タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドのN末端またはC末端の端またはその近辺で、合わせることができる。ある実施形態では、α相補的であるペプチドまたはポリペプチドを、結合部分を介して可溶性タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドに結びつけることができることが企図される。1つのこのようなリンカーは、参照によって本明細書に組み込まれている、たとえば米国特許第5,990,275号中に記載されている他のペプチドである。
【0029】
2.突然変異誘発
突然変異誘発は、これを使用する場合、さなざまな標準的な突然変異誘発手順によって行う。突然変異とは、生物の量または構造の変化が起こるプロセスである。突然変異は、1つの遺伝子、数ブロックの遺伝子または染色体全体のヌクレオチド配列の修飾を伴なう。1つの遺伝子の変化は点突然変異の結果である可能性があり、これはDNA配列中の1つのヌクレオチド塩基の除去、追加または置換を伴なうか、あるいはこれらの変化は、多数のヌクレオチドの挿入または欠失の結果である可能性がある。
【0030】
突然変異体は、DNA複製の適合度のエラーなどの事柄、あるいはゲノム中の転移性遺伝要素(トランスポゾン)の移動の結果として、自然に生じる可能性がある。突然変異体は、化学的または物理的突然変異原への暴露後にも誘導される。このような突然変異誘導剤には、電離放射線、紫外光線及びアルキル化剤及び多環式芳香族炭化水素などの多種多様な化学物質があり、これらはすべて直接的または間接的に(一般にいくつかの代謝的な生体内変化後に)核酸と相互作用することができる。このような環境的因子によって誘導されるDNAの損傷は、塩基配列の改変につながる可能性があり、このとき影響を受けたDNAが複製されるかあるいは修復され、このようにして突然変異体になる。特定の標的方法を使用することによって、突然変異を位置指定することもできる。
【0031】
a.ランダムな突然変異誘発
i)挿入突然変異誘発
挿入突然変異誘発は、知られているDNA断片の挿入を介した、遺伝子の不活性化に基づくものである。挿入突然変異誘発はあるタイプのDNA断片の挿入を含むので、生成される突然変異体は一般に、機能を得た突然変異体ではなく機能を失った突然変異体である。しかしながら、機能を得た突然変異体を生成させる挿入の例がいくつか存在する(Oppenheimer他、1991)。挿入突然変異誘発は、細菌及びDrosophilaにおいて非常に成功しており(Cooley他、1988)、トウモロコシ(Schmidt他、1987)、Arabidopsis(Marks他、1991;Koncz他、1990)、及びAntirrhinum(Sommer他、1990)において近年強力なツールとなっている。
【0032】
転移性遺伝要素は、細胞のゲノム内のある場所から他の場所へ動く(転移する)ことができるDNA配列である。認められた第1の転移因子は、Zea maysの活性/解離要素であった。このとき以来、これらは広範囲の生物、原核生物及び真核生物の両方において同定されている。
【0033】
ゲノム内の転移因子は、転移中に複製され標的部位複製物と呼ばれるDNAの短い配列の直接的な繰り返しの、側面に位置するということによって特徴付けられる。そのタイプ、及び転移のメカニズムが何であれ、ほぼすべての転移因子が、その挿入部位にこのような複製物を作成する。複製される塩基の数が一定である場合もあるが、他の場合はそれぞれの転移と共に塩基の数が変化する可能性がある。大部分の転移因子は、その末端に逆の繰り返し配列を有する。これらの末端の逆の繰り返しは、塩基数個から塩基数百個の長さの任意のものであってよく、多くの場合、これらが転移のために必要であると知られている。
【0034】
原核生物の転移因子は、大腸菌及びグラム陰性菌において最も研究されているが、グラム陽性菌中にも存在する。一般に転移因子は、それらが約2kB長未満の場合は挿入配列、あるいはそれより長い場合はトランスポゾンと呼ばれる。転移によって複製する、mu及びD108などのバクテリオファージは、転移因子の第3のタイプを構成する。それぞれのタイプの要素は、少なくとも1つのポリペプチド、それ自体の転移に必要なトランスポザーゼをコードしている。トランスポゾンは、転移に無関係な機能をコードしている遺伝子、たとえば抗生物質耐性遺伝子をさらに含むことが多い。
【0035】
トランスポゾンは、その構造に従って2つのクラスに分けることができる。第1に、化合物または複合体トランスポゾンは、それぞれの端に、通常は逆方向に、挿入配列要素のコピーを有する。これらのトランスポゾンは、その末端IS要素の1つによってコードされているトランスポザーゼを必要とする。第2のクラスのトランスポゾンは、約30の塩基対である末端の繰り返しを有し、IS要素からの配列は含まない。
【0036】
転移は通常、保存的あるいは複製的なものであるが、場合によっては両方であってもよい。複製的転移では、転移する要素の1つのコピーはドナー部位に残ったままであり、他のコピーが標的部位に挿入される。保存的転移では、転移する要素が1つの部位から切除され、他の部位に挿入される。
【0037】
真核生物の要素も、その構造及び運搬メカニズムに従って分類することができる。その主な違いは、RNA中間体を介して転移する要素と、DNAからDNAに直接転移する要素の間にある。
【0038】
RNA中間体を介して転移する要素は、しばしばレトロトランスポゾンと呼ばれ、その最も特徴的な特徴は、逆転写酵素活性を有すると考えられている、ポリペプチドをコードしていることである。2タイプのレトロトランスポゾンが存在する。いくつかのレトロトランスポゾンは、それらが長く直接的な繰り返し配列、長い末端の繰り返し(LTR)をそれぞれの端に有するという点で、レトロウイルスの組み込み型プロウイルスDNAに似ている。これらのレトロトランスポゾンとプロウイルスの間の類似性は、そのコード能力に及ぶ。これらはレトロウイルスのgag及びpol遺伝子に関係のある配列を含み、このことによって、レトロウイルスのライフ・サイクルに関係があるメカニズムにより、これらが転移することが示唆される。第2のタイプのレトロトランスポゾンには、末端の繰り返しがない。これらはgag及びpol様のポリペプチドもコードしており、RNA中間体の逆転写によって転移するが、レトロウイルス様要素のメカニズムとは異なるメカニズムによってこのことを行う。逆転写による転移は複製的なプロセスであり、ドナー部位からの要素の切除を必要としない。
【0039】
転移因子は、自発的突然変異の重要な源であり、遺伝子及びゲノムの進化の仕方に影響を与えている。転移因子は、遺伝子の中に挿入することによって遺伝子を不活性化させることができ、そのトランスポザーゼの活性によって直接的に、あるいはゲノム周辺に散在している要素のコピー間の組換えの結果として間接的に、全体的な染色体の再編成を引き起こすことができる。切除する転移因子は不正確に切除することが多く、加えられるかあるいは欠失される塩基の数が3の倍数である場合は、変化した遺伝子産物をコードする対立遺伝子を生成することができる。
【0040】
転移因子自体は、異常な形で進化する可能性がある。これらが他のDNA配列と同様に遺伝する場合は、ある種の要素のコピーは、より遠い種のコピーよりも、非常に近い種のコピーに似たものになるだろう。このことは常に当てはまるわけではないが、転移因子が1つの種から他の種に水平方向に伝えられることもあることを示唆している。
【0041】
ii)化学的突然変異誘発
化学的突然変異誘発は、表現型がある程度厳密である全範囲の突然変異体対立遺伝子を発見できることなどいくつかの利点を提供し、実施が容易、かつ安価である。大部分の化学的発ガン物質は、DNA中で突然変異体を生成する。ベンゾ[a]ピレン、N−アセトキシ−2−アセチルアミノフルオレン及びアフロトキシンB1は、細菌及びホ乳動物細胞中で、GCからTAへの転換を引き起こす。ベンゾ[a]ピレンは、ATからTAなどの塩基の置換も生み出すことができる。N−ニトロソ化合物は、GCからATへの転位を生み出す。n−ニトロソ尿素への暴露によって誘導されるチミンのO4位置のアルキル化は、TAからGCへの転位をもたらす。
【0042】
突然変異性と発ガン性の間の高い相関関係は、Ames試験(McCann他、1975)の根底にある仮定であり、この試験は細菌システム中の突然変異体、及び追加的なラット肝臓のホモジェネートについて迅速に検定するものであり、このホモジェネートは、必要な場合は突然変異原の代謝活性を提供するために、ミクロソームのシトクロムP450を含む。
【0043】
脊椎動物では、いくつかの発ガン物質が、ras原腫瘍形成遺伝子中で突然変異体を生成することが分かっている。N−ニトロソ−N−メチル尿素は、ラットにおいて乳房、前立腺及び他のガン腫を誘導し、その腫瘍の大部分はHa−rasガン遺伝子のコドン12中の第2の位置において、GからAへの転位を示す。ベンゾ[a]ピレンに誘導される皮膚の腫瘍は、Ha−ras遺伝子の第2のコドン中でAからTへの形質転換を含む。
【0044】
iii)放射線突然変異誘発
生物の分子の無欠性は、電離放射線によって劣化される。入射エネルギーを吸着すると、イオン及びフリー・ラジカルの形成され、いくつかの共有結合が破壊される。放射線ダメージの受けやすさは、分子間で、また同じ分子の異なる結晶形の間で、大きく変化するようである。それは、蓄積される全線量、及び線量率にも依存する(ひとたびフリー・ラジカルが存在すると、それらが引き起こす分子のダメージは、その本来の分散率に、したがってリアル・タイムに依存する)。サンプルを可能な限り低温にすることによって、ダメージを軽減させ、調節する。
【0045】
電離放射線はDNAのダメージ及び細胞の殺傷を引き起こし、これは一般に線量に正比例する。電離放射線は、DNAとの直接的相互作用によって多数の生物学的効果を誘導するか、あるいはフリー・ラジカル種の形成によってDNAのダメージにつながると想定されている。これらの効果には、遺伝子の突然変異、悪性の形質転換、及び細胞の殺傷がある。電離放射線が、いくつかの原核及び低級な真核細胞において、あるDNA修復遺伝子の発現を誘導することは証明されているが、電離放射線のホ乳動物の遺伝子発現の調節に対する影響についてはほとんど知られていない(Borek、1985)。いくつかの研究では、ホ乳動物細胞の、照射後に観察されるタンパク質合成のパターンの変化を記載している。たとえば、ヒト悪性黒腫細胞の電離放射線処理は、いくつかの同定されていないタンパク質の誘導と関係がある(Boothman他、1989)。サイクリン及び共に調節されるポリペプチドの合成は、ガン遺伝子が形質転換されたREF52細胞株ではなく、ラットREF52細胞中での電離放射線によって抑制される(Lambert and Borek、1988)。他の研究は、ある成長因子またはサイトカインが、x線に誘導されるDNAのダメージと関係がある可能性があることを証明している。この点において、血小板由来の成長因子は、照射後に内皮細胞から放出される(Witte他、1989)。
【0046】
本発明では、「電離放射線」という語は、充分なエネルギーを有しているか、あるいは核の相互作用を介して充分なエネルギーを生み出してイオン化を生み出す(電子を得るかあるいは失う)、粒子または光子を含む放射線を意味する。例示的でありかつ好ましい放射線の例は、x線である。所与の細胞において必要とされる電離放射線の量は、一般にその細胞の性質に依存する。典型的には、有効な発現誘導線量は、細胞のダメージまたは死を直接引き起こす電離放射線の線量未満である。放射線の有効量を決定するための手段は、当分野ではよく知られている。
【0047】
ある実施形態では、有効な発現誘導量は、約2〜約30Gray(Gy)であり、約0.5〜約2Gy/分の割合で投与する。電離放射線の有効な発現誘導量は、約5〜約15Gyであることがさらに好ましい。他の実施形態では、1回の投与で2〜9Gyの線量を使用する。電離放射線の有効線量は10〜100Gyであってよく、15〜75Gyであることが好ましく、20〜50Gyであることがさらに好ましい。
【0048】
組織に放射線を送達するための任意の適切な手段、さらに外的手段を、本発明において使用することができる。たとえば、腫瘍の抗原と免疫反応する放射標識した抗体を最初に提供し、次に放射標識した腫瘍に対する抗体を有効量送達することによって、放射線を送達することができる。さらに、ラジオアイソトープを使用して、組織または細胞に電離放射線を送達することができる。
【0049】
iv)in vitroでのスキャニング突然変異誘発
ランダムな突然変異誘発も、誤りがちのPCR(Cadwell and Joyce、1992)を使用して導入することができる。突然変異誘発の速度は、鋳型の希釈物を有する多数のチューブ中でPCRを行うことによって、増大させることができる。
【0050】
1つの非常に有用な突然変異誘発技法は、アラニン・スキャニング突然変異誘発であり、この技法では、いくつかの残基がアミノ酸アラニンで個別に置換され、したがって、タンパク質の形状の大規模な乱れというリスクを最小限にしながら、失われる側鎖の相互作用の影響を決定することができる(Cunningham他、1989)。
【0051】
近年、微量のタンパク質を使用して、リガンド結合に関する平衡定数を評価するための技法が開発されている(Blackburn他、1991;米国特許5,221,605号及び5,238,808号)。少量の物質を用いて機能的アッセイを行うための能力を利用して、非常に効率の良い、抗体の飽和突然変異誘発用のin vitroでの方法を開発することができる。本発明人は、PCR突然変異誘発を、タンパク質突然変異体の高スループット生成用にin vitroで組み合わせた転写/翻訳と組み合わせることによって、クローニング・ステップを回避した。ここで、PCR産物は、in vitroでの突然変異型短鎖抗体の転写/翻訳用に、鋳型として直接使用する。19個のアミノ酸置換体すべてをこのようにして生成させ分析することができることは非常に効率が良いために、多数の目的の残基に飽和突然変異誘発を行うことが現在可能であり、in vitroでのスキャニング突然変異誘発として1つの方法を記載することができる(Burks他、1997)。
【0052】
in vitroでのスキャニング突然変異誘発は、多量の構造−機能情報を得るための迅速な方法を提供し、この情報は(i)リガンド結合特異性を調節する残基の同定、(ii)所与の位置で活性を保持しているアミノ酸、活性を失っているアミノ酸の同定に基づくリガンド結合のより一層の理解、(iii)活性部位またはタンパク質サブドメインの全体的な弾性の評価、(iv)結果として結合を増大させるアミノ酸置換体の同定を含む。
【0053】
v)断片化及び再アセンブリによるランダムな突然変異誘発
示されるポリペプチドのライブラリーを生成するための方法は、米国特許第5,380,721号に記載されている。この方法は、ポリヌクレオチド・ライブラリーのメンバーを得ること、そのポリヌクレオチドをプールし断片化すること、その断片をリフォームすること、PCR増幅を行い、これによって断片を均質に組換えて、組換えポリヌクレオチドのシャッフルされたプールを形成することを含む。
【0054】
b.位置指定突然変異誘発
構造誘導型の位置指定突然変異誘発は、タンパク質−リガンド相互作用を精査し工学処理するための強力なツールである。この技法は、1種または複数のヌクレオチド配列変異体を選択したDNAに導入することにより、配列の変異体の調製及び試験を提供する。
【0055】
位置指定突然変異誘発は、所望の突然変異体のDNA配列をコードしている特異的なオリゴヌクレオチド配列、及び充分な数の隣接の非改変ヌクレオチドを使用する。このようにして、充分なサイズ及び複雑性のプライマー配列を提供して、横切っている欠失体接合部の両側に、安定した二重鎖(duplex)を形成する。約17〜25個のヌクレオチドの長さのプライマーが好ましく、配列の接合部の両側の約5〜10個の残基が変えられる。
【0056】
この技法は典型的には、一本鎖及び二本鎖の両方の形で存在するバクテリオファージ・ベクターを使用する。位置指定突然変異誘発に有用なベクターには、M13ファージなどのベクターがある。これらのファージ・ベクターは市販されており、一般にそれらの使用は当業者によく知られている。二本鎖プラスミドも位置指定突然変異誘発では日常的に使用され、これによって目的の遺伝子をファージからプラスミドに移すステップが除去される。
【0057】
一般に、最初は一本鎖ベクターを得るか、あるいは、その配列中に所望のタンパク質または遺伝要素をコードしているDNA配列を含む、二本鎖ベクターの2本の鎖を溶解させる。次いで、合成的に調製した、所望の突然変異配列を有するオリゴヌクレオチド・プライマーを、ハイブリダイズ条件を選択したときのミスマッチの程度を考慮して、一本鎖DNAの調製物とアニールさせる。ハイブリダイズした生成物に、大腸菌ポリメラーゼI(Klenow断片)などのDNA重合酵素を施して、突然変異体を有する鎖の合成を終了させる。このようにしてヘテロ二重鎖を形成し、1本の鎖は元の突然変異していない配列をコードしており、第2の鎖は所望の突然変異体を有する。次いでこのヘテロ二重鎖・ベクターを使用して、大腸菌細胞などの適切な宿主細胞を形質転換し、突然変異した配列配置を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0058】
タンパク質の所与の残基の機能的重要性及び情報の中身の包括的な情報は、19個のアミノ酸置換体すべてが調べられる飽和突然変異誘発によって、最もよく得ることができる。この手法の欠点は、多残基飽和突然変異誘発の実施がやっかいなことである(Warren他、1996、Zeng他、1996;Yelton他、1995;Hilton他、1996)。数百、おそらくは数千もの位置特異的突然変異が研究されているに違いない。しかしながら、改善された技法が、突然変異体の生成及び迅速なスクリーニングをより確実なものにしている。「ウォーク・スルー」突然変異誘発の記載については、米国特許第5,798,208号及び5,830,650号も参照のこと。
【0059】
位置指定突然変異誘発の他の方法は、米国特許第5,220,007号、5,284,760号、5,354,670号、5,366,878号、5,389,514号、5,635,377号、及び5,789,166号で開示されている。
【0060】
B.タンパク質の発現
1.ベクター
可溶性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている配列、及びα−相補性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている配列を選択すると、組換えベクター中でこれらを動作可能に発現させることができる。再フォールディング及び相補性プロセスをアッセイするために、発現はin vivoまたはin vitroで行ってよい。「ベクター」という語は、配列を複製することができる場所である細胞へ導入するために、核酸配列をその中に挿入することができる担体核酸分子を意味する。核酸配列は「外因性」であってよく、このことはベクターが導入される細胞に対してその核酸配列が外来的なものであるか、あるいはその配列は細胞中の配列と相同的であるが、通常では配列が見られない宿主細胞の核酸中の位置にあることを意味する。ベクターにはプラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物性ウイルス、及び植物性ウイルス)、及び人工染色体(たとえばYAC)がある。当業者は、標準的な組換え技法によって、ベクターを構築することを熟知しており、これらはSambrook他、1989及びAusubel他、1994中に記載されており、参照によって本明細書に取り込まれている。
【0061】
「発現ベクター」という語は、転写されることができる遺伝子産物の一部分をコードしている核酸配列を含む、ベクターを意味する。したがって、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される場合もある。他の場合、たとえばアンチセンス分子またはリボザイムの生成では、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは様々な「制御配列」を含むことができ、これは個々の宿主生物中で動作可能に結合しているコード配列の、転写及びおそらくは翻訳に必要とされる核酸配列のことである。転写及び翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、他の機能も果たし、かつ以下に記載する核酸配列を含むことができる。
【0062】
a.プロモーター及びエンハンサー
「プロモーター」とは、核酸配列の一領域である制御配列であり、そこで転写の開始及び速度が制御される。プロモーターは、制御タンパク質及び分子がそれに結合することができるRNAポリメラーゼなどの遺伝要素、及び他の転写因子を含んでよい。「動作可能に位置している」、「動作可能に結合している」、「制御下にある」、及び「転写制御下にある」というフレーズは、その配列の転写の開始及び/または発現を制御するための核酸配列に関して、プロモーターが的確で機能的な位置及び/または方向にあることを意味する。プロモーターは「エンハンサー」と共に使用することができ(あるいはできない)、エンハンサーとは、核酸配列の転写の活性化に関係があるシス活性調節配列のことである。
【0063】
プロモーターは、コード断片及び/またはエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得られるような、本来は遺伝子または配列と結びついているプロモーターであってよい。このようなプロモーターは、「内因性」と呼ぶことができる。同様にエンハンサーは、その配列の下流または上流のいずれかに位置する核酸配列と、本来は結びついているエンハンサーであってよい。あるいは、コード核酸断片を組換えまたは異種プロモーターの制御下に位置させることによって、いくつかの利点を得ることができるであろう。このプロモーターとは、正常ではその本来の環境において、核酸配列と結びついていないプロモーターのことである。組換えまたは異種エンハンサーとは、正常ではその本来の環境において、核酸配列と結びついていないエンハンサーのことである。このようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、及び他の原核生物、ウイルス、または真核生物細胞から単離したプロモーターまたはエンハンサー、「天然に存在しない」、すなわち異なる転写調節領域、及び/または発現を変える突然変異体の異なる要素を含むプロモーターまたはエンハンサーを含んでよい。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に生成することに加えて、組換えクローニング及び/またはPCR(登録商標)を含めた核酸増幅技術を、本明細書に開示する組成物と共に使用して、配列を生成することができる(いずれも参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照のこと)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核オルガネラ中の配列の転写及び/または発現を指示する制御配列も、使用することができると企図される。
【0064】
当然ながら、発現用に選択した細胞タイプ、オルガネラ、及び生物においてDNA断片の発現を効果的に指示する、プロモーター及び/またはエンハンサーを使用することが重要であろう。分子生物学の当業者は一般に、タンパク質の発現用に、プロモーター、エンハンサー、及び細胞タイプの組み合わせを使用することを知っている。たとえば、参照によって本明細書に組み込まれているSambrook他(1989)を参照のこと。使用するプロモーターは、組換えタンパク質及び/またはペプチドの大規模な生成において有利であるように、導入されるDNA断片の高レベルの発現を指示するための適切な条件下で、構造的、組織特異的、誘導的、及び/または有用なものであってよい。プロモーターは、異種または内因性のものであってよい。
【0065】
表1に、遺伝子の発現を調節するために、本発明のコンテキストにおいて使用することができるいくつかの要素/プロモーターを列挙する。このリストは、発現の促進に関係がある、考えられるすべての要素を網羅することを意図するものではなく、単にその例示的なものである。表2では、誘導因子の例を提供し、これらは特異的刺激に応じて活性化される可能性がある、核酸配列の領域である。
Figure 2004500092
Figure 2004500092
Figure 2004500092
【0066】
組織特異的プロモーターまたは要素の同一性、及びその活性を特徴付けるためのアッセイは、当業者によく知られている。このような領域の例には、ヒトLIMK2遺伝子(Nomoto他、1999)、ソマトスタチンレセプター2遺伝子(Kraus他、1998)、ネズミ副睾丸のレチノイン酸結合遺伝子(Lareyre他、1999)、ヒトCD4(Zhao−Emonet他、1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumaki他、1998)、D1Aドーパミンレセプター遺伝子(Lee他、1997)、インシュリン様成長因子II(Wu他、1997)、ヒト血小板内皮細胞接着分子−1(Almendro他、1996)がある。
【0067】
b.開始シグナル及び内部リボソーム結合部位
特異的な開始シグナルが、コード配列の効率の良い翻訳のために必要となることもある。これらのシグナルは、ATG開始コドンまたは隣接の配列を含む。ATG開始コドンを含めた、外因性の翻訳制御シグナルが提供されることが必要となることがある。当業者はこれを容易に決定し、必要なシグナルを提供することができるであろう。開始コドンは、所望のコード配列のリーディング・フレームと「インフレーム」であり、挿入体全体の翻訳を確実にしなければならないことがよく知られている。外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然のものまたは合成されたものであってよい。適切な転写エンハンサー要素を封入することによって、発現の効率を高めることができる。
【0068】
本発明のある実施形態では、内部リボソーム・エントリー部位(IRES)要素を使用して、マルチ遺伝子、またはポリシストロン性のメッセージを作製する。IRES要素は、5’メチル化Cap依存性翻訳のリボソーム・スキャニング・モデルを回避することができ、内部部位で翻訳を始める(Pelletier及びSonenberg、1988)。ピコルナウイルス・ファミリーの2つのメンバー(灰白脳炎及び脳心筋炎)からのIRES要素(Pelletier及びSonenberg、1988)、及びホ乳動物のメッセージからのIRES(Macejak及びSarnow、1991)が記載されている。IRES要素を、異種のオープン・リーディング・フレームに結合させることができる。IRESによってそれぞれ分離されている、多数のオープン・リーディング・フレームを一緒に転写することができ、ポリシストロン性のメッセージを作製する。IRES要素によって、それぞれのオープン・リーディング・フレームが、効率の良い翻訳のためにリボソームにアクセスできる。1つのプロモーター/エンハンサーを使用して多数の遺伝子を効率よく発現させて、1つのメッセージを転写することができる(参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,925,565号及び5,935,819号を参照のこと)。
【0069】
c.マルチ・クローニング・サイト
ベクターはマルチ・クローニング・サイト(MCS)を含むことができ、これは多数の制限酵素部位を含む核酸領域であり、これらはいずれも標準的な組換え技術と共に使用して、ベクターを消化することができる(参照によって本明細書に組み込まれている、Carbonelli他、1999、Levenson他、1998、及びCocea、1997を参照のこと)。「制限酵素による消化」とは、核酸分子中の特定の位置のみで働く酵素によって、核酸分子を触媒的に切断することである。これらの制限酵素の多くは市販されている。このような酵素の使用は、当業者によって広く理解されている。しばしばベクターは、MCS内を切断して外因性の配列をベクターに連結させる制限酵素を使用して、線状化あるいは断片化される。「連結(ligation)」とは、2つの核酸断片間にリン酸ジエステル結合を形成するプロセスのことであり、これらは互いに隣り合っている(あるいはそうではない)可能性がある。制限酵素及び連結反応に関する技法は、組換え技術の当業者によく知られている。
【0070】
d.スプライシング部位
転写された真核生物のRNA分子の大部分は、RNAスプライシングされて、主要な転写物からイントロンが除去される。ゲノム真核配列を含むベクターは、タンパク質発現用の転写物の適切なプロセシングを確実にするために、ドナー及び/または受容スプライシング部位を必要とする可能性がある(参照によって本明細書に組み込まれている、Chandler他、1997を参照のこと)。
【0071】
e.ポリアデニル化シグナル
発現においては、一般に転写物の適切なポリアデニル化を行うための、ポリアデニル化シグナルが含まれる。ポリアデニル化シグナルの性質が、本発明を首尾良く実施するために重要であるとは考えられておらず、かつ/または、任意のこのような配列を使用することができる。好ましい実施形態にはSV40ポリアデニル化シグナル、及び/またはウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルがあり、これらは好都合であり、かつ/または、様々な標的細胞中でよく機能することが知られている。発現カセットの要素として、転写終結部位も企図される。これらの要素は、メッセージのレベルを高め、かつ/または、カセットから他の配列への読みとばしを最小限にする、働きをすることができる。
【0072】
f.複製の起点
宿主細胞中でベクターを増殖させるために、それは1つまたは複数の複製部位の起点(「ori」と呼ばれることが多い)を含んでよく、その起点は特異的な核酸配列であり、そこで複製が開始される。代替的には、宿主細胞が酵母菌である場合は、自発的に複製する配列(ARS)を使用することができる。
【0073】
g.選択可能でありスクリーニング可能であるマーカー
本発明のある実施形態では、細胞が本発明の核酸構築物を含み、発現ベクター中にマーカーを封入することによって、in vitroまたはin vivoで細胞を識別することができる。このようなマーカーは、細胞に識別可能な変化を与え、発現ベクターを含む細胞の容易な識別を可能にするであろう。一般に、選択可能マーカーとは、選択を可能にする性質を与えるマーカーのことである。ポジティブな選択可能マーカーとは、マーカーの存在によってその選択が可能になるマーカーのことであるが、一方ネガティブな選択可能マーカーとは、その存在が選択を妨げるマーカーのことである。ポジティブな選択可能マーカーの一例は、薬剤耐性マーカーである。
【0074】
通常、薬剤選択マーカーの封入は、形質転換体のクローニング及び識別に役立つ。たとえば、ネオマイシン、プロマイシン、ヒグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン及びヒスチジノールに対する耐性を与える遺伝子は、有用な選択可能マーカーである。実行条件に基づいて形質転換体の区別を可能にする表現型を与えるマーカーに加えて、そのベースが比色定量分析である、GFPなどのスクリーニング可能マーカーなどの他のタイプのマーカーも企図される。代替的に、帯状疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの、スクリーニング可能酵素を使用することができる。当業者は、免疫マーカーの使用の仕方(おそらくFACS分析と併用する)も知っているであろう。マーカーが遺伝子産物をコードしている核酸と同時に発現することができる限り、使用するマーカーは重要であるとは考えられない。選択可能でありスクリーニング可能であるマーカーの他の例は、当業者によく知られている。
【0075】
2.宿主細胞
本明細書で使用するように、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」という語は、互換的に使用することができる。これらの語はすべて、任意のすべての次世代の子孫を含む。ゆっくりとした偶然の突残変異のために、すべての子孫が同一である可能性はないことが理解される。異種の核酸配列の発現というコンテクストでは、「宿主細胞」とは原核生物または真核生物のことであり、宿主細胞は、ベクターを複製させることができるか、かつ/またはベクターによってコードされている異種の遺伝子を発現することができる、任意の形質転換可能な生物を含む。ベクターのレセプターとして、宿主細胞を使用することができ、かつ使用されてきた。宿主細胞は「トランスフェクト」されているか、あるいは「形質転換」されていてよく、これは外因性の核酸が宿主細胞に移され、または導入されるプロセスを意味する。形質転換された細胞は主要な対象細胞、及びその子孫を含む。
【0076】
所望の結果がベクターの複製であるか、あるいはベクターにコードされている核酸配列の一部またはすべての発現であるかどうかに応じて、宿主細胞は原核生物または真核生物に由来してよい。原核生物は、グラム陰性または陽性細胞を含む。宿主細胞として使用するために、多数の細胞株及び培養物が入手可能であり、生きている培養物及び遺伝物質の保管所として機能する組織である(www.atcc.org)、American Type Culture Collection(ATCC)によって、これらを得ることができる。ベクターのバックボーン及び所望の結果に基づいて、当業者によって適切な宿主を決定することができる。たとえば、プラスミドまたはコスミドを、多くのベクターを複製させるために、原核宿主細胞に導入することができる。ベクターの複製及び/または発現用に、宿主細胞として使用する細菌細胞には、DH5α、JM109、及びKC8、及びSURE(登録商標)Competent Cells及びSOLPACK(登録商標)Gold Cells(STRATAGENE(登録商標)、La Jolla)などの、いくつかの市販の細菌宿主がある。代替的に、大腸菌LE392などの細菌細胞を、ファージ・ウイルス用の宿主細胞として使用することができる。
【0077】
ベクターの複製及び/または発現用の真核宿主細胞の例には、C.elegans、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、Cos、CHO、Saos、酵母菌、線虫、昆虫細胞、及びPC12がある。様々な細胞タイプ及び生物からの多くの宿主細胞が入手可能であり、当業者に知られているであろう。同様に、真核または原核宿主細胞、特にベクターの複製または発現に許容的であるものと共に、ウイルス・ベクターを使用することができる。
【0078】
いくつかのベクターは、原核細胞または真核細胞の両方でベクターを複製させるか、かつ/または発現させる、制御配列を使用することができる。当業者は、前に記載したすべての宿主細胞をインキュベートしてそれらを保ち、ベクターの複製を可能にする条件を、さらに理解しているであろう。さらに理解され知られているのは、ベクターの大規模な生成、及びベクター、及び同族のポリペプチド、タンパク質またはペプチドによってコードされる核酸の生成を可能にする、技法及び条件である。
【0079】
3.発現系
本発明のタンパク質の発現に戻ると、配列をコードしている適切な核酸がひとたび得られると、発現系の調製に進むことができる。原核または真核システムでの発現用のDNA断片の工学処理は、組換え発現の当業者に一般に知られている技法によって行うことができる。
【0080】
本発明のタンパク質の発現において、ほぼあらゆる発現系を使用することができることが考えられる。本発明と共に使用するために、原核細胞及び/または真核細胞ベースのシステムを使用して、核酸配列、またはその同族のポリペプチド、タンパク質またはペプチドを生成することができる。多くのこのようなシステムは、市販されており広く入手可能である。
【0081】
cDNA及びゲノム配列の両方が、真核生物の発現に適している。なぜなら一般に宿主細胞は、ゲノムの転写物を加工して、タンパク質への翻訳用の機能的mRNAを生み出すからである。一般的に、組換え遺伝子として、cDNAバージョンの遺伝子を使用することがより好都合であろう。cDNAバージョンを使用することによって、典型的にはcDNA遺伝子と同程度かそれより大きいゲノム遺伝子よりも、この遺伝子のサイズが一般的により小さく、標的細胞をトランスフェクトするためにより容易に使用されるという利点が提供されると考えられている。しかしながら、望むならば、ゲノムバージョンの特定の遺伝子を使用することができると企図される。
【0082】
タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、他の選択されたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと同時に発現することができ、タンパク質は同じ細胞中で同時発現する可能性があり、既に他の選択されたタンパク質を有している細胞に遺伝子が提供される可能性があることが企図される。2つの異なる組換えベクター(それぞれがそれぞれのDNAのいずれかのコピーを有する)で細胞を同時にトランスフェクトすることによって、同時発現を達成することができる。代替的に、1つの組換えベクターを構築して、両方のタンパク質用のコード領域を封入することができ、次いで1つのベクターでトランスフェクトした細胞中で、これを発現させることができるであろう。いずれの場合も、本明細書では「同時発現」という語は、同じ組換え細胞中での、1つまたは複数のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている少なくとも1つの選択された核酸または遺伝子、及び1つまたは複数のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている少なくとも第2の二次的な選択された核酸または遺伝子の両方の発現のことである。
【0083】
タンパク質は細胞系中で発現させることができるか、あるいはタンパク質生成を増大させる培地で増大させることができることが企図される。1つのこのようなシステムが、参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,834,249号に記載されている。ある実施形態では、再フォールディングを増大させる1つまたは複数のタンパク質と、融合タンパク質を同時発現させることができる。再フォールディングを増大させるこのようなタンパク質には、たとえばDsbAまたはDsbCタンパク質がある。DsbAまたはDsbCタンパク質を同時発現させる細胞系は、参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,639,635号に記載されている。ある実施形態では、温度感受性発現ベクターを使用して、多くの大腸菌細胞の菌株の最適成長温度である37℃より低い(または高い)温度で、タンパク質のフォールディングをアッセイするのに助力することが企図される。たとえば、温度感受性発現ベクター及び約20℃以下でタンパク質を発現する宿主細胞は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,654,169号及び5,726,039号に記載されている。
【0084】
本明細書で使用するように、「工学処理した」及び「組換え」細胞または宿主細胞という語は、少なくとも1つのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしているcDNAまたは遺伝子などの、外因性DNA断片または遺伝子が、その中に導入されている細胞を言及することを意図するものである。したがって工学処理した細胞は、組換えによって導入された外因性DNA断片または遺伝子を含まない天然の細胞と区別可能である。したがって工学処理した細胞とは、人間の手によって導入された、1つまたは複数の遺伝子を有する細胞である。組換え細胞は、導入されたcDNAまたはゲノム遺伝子を有する細胞を含み、特定の導入遺伝子とは本来関係ないプロモーターの隣に位置する遺伝子も含む。
【0085】
原核生物の宿主のいくつかの例は、大腸菌菌株RR1、大腸菌LE392、大腸菌B、大腸菌X1776(ACCT No.31537)及び大腸菌W3110(F−、λ−、原栄養性、ACCT No.273325)、Bacillus subtilisなどのバチルス、及びSalmonella typhimurium、Serratia marcescensなどの他の腸内細菌、様々なPseudomonas種である。
【0086】
一般に、宿主細胞と適合性がある種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミド・ベクターが、これらの宿主と共に使用される。ベクターは通常、複製部位、及び形質転換される細胞中の表現型の選択肢を提供することができる、マーキング部位を保有している。たとえば大腸菌は、pBR322の誘導体、大腸菌種に由来するプラスミドを使用して形質転換されることが多い。pBR322はアンピシリン及びテトラサイクリン耐性の遺伝子を含み、したがって形質転換された細胞を識別するための容易な手段を提供する。pBRプラスミド、または他の細菌プラスミドまたはファージは、それ自体のタンパク質の発現用に、微生物によって使用される可能性があるプロモーターも含まなければならない(あるいは含むように改変しなければならない)。
【0087】
さらに、宿主微生物と適合性があるレプリコン及び制御配列を含むファージ・ベクターを、形質転換ベクターとしてこれらの宿主と共に使用することができる。たとえば、ファージ・ラムダGEM(商標)−11を、組換えファージ・ベクターの作製において使用することができ、このベクターを使用して、大腸菌LE392などの宿主細胞を形質転換させることができる。
【0088】
他の有用なベクターには、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質の生成において使用するため、その後の精製及び分離あるいは切断用の、pINベクター(Inouye他、1985)、及びpGEXベクターがある。他の適切な融合タンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどである。
【0089】
組換えDNA構築において最も一般的に使用されるプロモーターには、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース及びトリプトファン(trp)プロモーター・システムがある。これらが最も一般的に使用されているが、他の細菌プロモーターも発見され使用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が発表されており、当業者にそれらをプラスミド・ベクターと機能的に連結させることを可能にする。
【0090】
a.原核生物の発現
大腸菌などの細菌細胞中での、組換えタンパク質生成に関する以下の詳細は、一般的な組換えタンパク質生成に関する例示的な情報によって提供され、それを特定の組換え発現系に適合させることは、当業者に知られているはずである。
【0091】
発現ベクターを含む細菌細胞、たとえば大腸菌は、任意のいくつかの適切な培地、たとえばLB培地中で生育される。たとえばIPTGを培地に加えることによって、あるいはインキュベーションをより高温に切り替えることによって、組換えタンパク質の発現を誘導することができる。さらなる時間、一般に2〜24時間細菌を培養した後、遠心分離によって細胞を回収し、洗浄して残留培地を取り除く。
【0092】
次いで細菌細胞を、たとえば細胞ホモジェナイザー中での破壊によって溶解させ、遠心分離して密集した封入体及び細胞膜を可溶性細胞成分から分離する。スクロースなどの糖類の緩衝液中への取り込み、及び選択的スピードでの遠心分離によって、密集した封入体が選択的に濃縮される条件下で、この遠心分離を行うことができる。
【0093】
組換えタンパク質が封入体中で発現される場合、多くの例においてよくあることであるが、封入体を任意のいくつかの溶液中で洗浄して、いくらかの汚染宿主タンパク質を取り除き、次いでβ−メルカプトエタノールまたはDTT(ジチオスレイトール)などの還元剤の存在下で、高濃度の尿素(たとえば8M)または塩化グアニジンなどのカオトロピック剤を含む溶液中で溶解させることができる。
【0094】
ある状況下では、元のタンパク質の形状に非常に似た形状への再フォールディングプロセスを、タンパク質に施すのに適した条件下で、タンパク質を数時間インキュベートすることが有利である可能性がある。一般にこのような条件には、500mg/ml未満の低いタンパク質濃度、低レベルの還元剤、2M未満の尿素の濃度、及びしばしば、タンパク質分子中のジスルフィド結合の交換を容易にする、還元及び酸化グルタチオンの混合物などの試薬の存在がある。
【0095】
たとえばSDS−PAGEによって、あるいは元の分子に特異的な抗体(元の分子または少量の組換えタンパク質を接種させた動物から、これを得ることができる)を用いて、再フォールディングプロセスを観察することができる。再フォールディングの次に、次いでタンパク質をさらに精製して、イオン交換樹脂、ゲル透過樹脂などの任意のいくつかの支持体上、あるいは様々なアフィニティ・カラム上でのクロマトグラフィによって、再フォールディング混合物から分離することができる。
【0096】
b.真核生物の発現
微生物に加えて、多細胞生物に由来する細胞の培養物も、宿主として使用することができる。原則として、脊椎動物培養物または無脊椎動物の培養物からのものであれ、任意のこのような培養物が働くことができる。ホ乳動物細胞に加えて、これらは組換えウイルス発現ベクター(たとえばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;及び組換えウイルス発現ベクター(たとえばカリフラワー・モザイク・ウイルス、CaMV;タバコ・モザイク・ウイルス、TMV)を感染させたか、あるいは1つまたは複数のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている配列を含む、組換えプラスミド発現ベクター(たとえばTiプラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系を含む。
【0097】
Saccharomyces中での発現用に、たとえばプラスミドYRp7が一般的に使用される。このプラスミドはtrpl遺伝子を既に含んでおり、これが、トリプトファン中で生育する能力が欠けている酵母菌の突然変異菌株、たとえばATCC No.44076またはPEP4−1用の選択マーカーとなる。したがって、酵母菌宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl障害の存在は、トリプトファンの不在下での成長による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。
【0098】
酵母菌のベクター中の適切なプロモーター配列には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼなどの、他の糖分解酵素用のプロモーターがある。適切な発現プラスミドを構築する際には、これらの遺伝子と関係がある末端配列も発現ベクター、発現が望まれる配列の3’に連結させて、mRNAのポリアデニル化及び末端を提供する。
【0099】
成長条件によって転写が制御されるという追加的な他の利点を有する、他の適切なプロモーターには、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関係がある分解酵素、及び前述のグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの使用を担う酵素用のプロモーター領域がある。
【0100】
いずれも参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,871,986号及び4,879,236号に記載されるように、昆虫細胞/バキュロウイルス・システムは、異種の核酸断片の高レベルのタンパク質発現を生み出すことができ、これはたとえば、INVITROGEN(登録商標)からMAXBAC(登録商標)2.0、及びCLONTECH(登録商標)からBACPACK(登録商標)BACULOVIRUS EXPRESSION SYSTEMの名称で購入することができる。
【0101】
ある有用な昆虫システムでは、外来性遺伝子を発現させるために、Autograph californica核ポリヘドロシス・ウイルス(AcNPV)がベクターとして使用される。このウイルスは、Spodoptera frugiperdaの細胞中で成長する。1つまたは複数のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている配列は、ウイルスの不要領域(たとえばポリヘドリン遺伝子)にクローン化され、AcNPVプロモーター(たとえばポリヘドリン・プロモーター)の制御下に置かれる。コード配列の首尾良い挿入によって、ポリヘドリン遺伝子が不活性化し、非閉塞型組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされているタンパク質性コートが欠けているウイルス)が生成される結果となる。したがって、これらの組換えウイルスを使用して、Spodoptera frugiperdaの細胞を感染させ、その中で挿入された遺伝子が発現させられる(たとえば、参照によって本明細書に組み込まれている、Smithの米国特許第4,215,051号)。
【0102】
発現系の他の例には、合成エクジソン誘導性レセプターを含む、STRATAGENE(登録商標)のCOMPLETE CONTROL(商標)Inducible Mammalian Expression System、または大腸菌発現系である、そのpET Expression Systemがある。誘導性発現系の他の例には、INVITROGEN(登録商標)から入手可能であり、これは完全長CMVプロモーターを使用する誘導性ホ乳動物発現系である、T−REX(登録商標)(テトラサイクリン制御型発現)Systemを保有している。INVITROGEN(登録商標)は、化合物栄養要求性酵母菌Pichia methanolica中での組換えタンパク質の高レベルの生成用に設計されている、Pichia methanolica Expression Systemと呼ばれる酵母菌発現系も提供している。当業者は、核酸配列またはその同族のポリペプチド、タンパク質、またはペプチドを生成させるための、発現構築物などのベクターの発現のさせ方を知っているであろう。
【0103】
有用なホ乳動物宿主細胞株の例は、VERO及びHeLa細胞、チャイニーズ・ハムスターの卵巣(CHO)細胞株、W138、BHK、COS−7、293、HepG2、3T3、RIN及びMDCK細胞株である。さらに、挿入された遺伝子の発現を調節するか、あるいは所望の特異的な方法で遺伝子産物を改変及び加工する、宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこのような改変(たとえばグリシジル化)及びプロセシング(たとえば切断)は、タンパク質の機能にとって重要であろう。
【0104】
異なる宿主細胞は、タンパク質の転写後のプロセシング及び改変用の、特徴的で特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株または宿主システムを選択して、発現される外来性タンパク質の適切な改変及びプロセシングを確実にすることができる。
【0105】
ホ乳動物細胞中で使用するための発現ベクターは、通常は複製の起点(必要に応じて)、発現される遺伝子の前に位置するプロモーター、及び任意の必要なリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写停止配列を含む。複製の起点は、SV40または他のウイルス(たとえば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源に由来するような外因性の源を含ませるための、ベクターの構築によって提供されるか、あるいは宿主細胞の染色体の複製メカニズムによって提供される。ベクターが宿主細胞の染色体に組み込まれる場合、後者が充分であることが多い。
【0106】
プロモーターは、ホ乳動物細胞のゲノム(メタロチオネイン・プロモーター)、またはホ乳動物ウイルス(たとえばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニア・ウイルス7.5Kプロモーター)に由来してよい。さらに、正常では遺伝子配列と関係があるプロモーターまたは制御配列を使用することも考えられ、そうであることが望ましいであろう。ただし、このような制御配列は宿主細胞系と適合性があるものとする。
【0107】
いくつかのウイルス・ベースの発現系を使用することができ、たとえば一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、及び最高頻度でサル・ウイルス40(SV40)に由来する。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、非常に有用である。なぜならこの両者は、SV40ウイルスの複製の起点も含む断片として、ウイルスから容易に得られるからである。小さな(または大きな)SV40断片を使用することもできる。ただし、HindIII部位からウイルスの複製の起点中に位置するBglI部位に向かって延びている、約250bpの配列が含まれているものとする。
【0108】
アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、たとえば後期プロモーター及び3つに分かれたリーダー配列に連結させることができる。次いでこのキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivoでの組換えによって、アデノウイルスのゲノム中に挿入することができる。ウイルスのゲノムの不要領域(たとえば、領域E1、E3またはE4)への挿入によって、生命力があり、感染した宿主中でタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現することができる組換えウイルスが、結果として生じるであろう。
【0109】
特異的な開始シグナルが、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている配列の効率の良い翻訳に必要なこともある。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接する配列を含む。ATG開始コドンを含めた、外因性の翻訳制御シグナルが、さらに提供されることが必要なことがある。当業者は、これを容易に決定し、必要なシグナルを提供することができるであろう。挿入体全体の翻訳を確実にするために、開始コドンは、所望のコード配列のリーディング・フレームと、イン・フレーム(またはイン・フェーズ)でなければならないことはよく知られている。これらの外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の、様々な源であってよい。適切な転写エンハンサー要素及び転写終結物を封入することによって、発現の効率を高めることができる。
【0110】
真核生物の発現では、転写単位に適切なポリアデニル化部位(たとえば5’−AATAAA−3’)を取り込ませることも、それが元のクローン化断片中に含まれていない場合は、典型的には望まれるであろう。典型的には、ポリA付加部位は、転写終結前の位置のタンパク質の、終結部位のヌクレオチド約30〜2000個「下流」に位置する。
【0111】
C.遺伝子の送達
本発明の態様の一般的な手法は、融合タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている核酸、及び/または、融合タンパク質との相補性によってその活性が変化する可能性がある、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている核酸を有する細胞を提供することであり、これによってタンパク質の活性の検出可能な変化が引き起こされる。タンパク質を直接送達することができると考えられるが、好ましい実施形態は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている核酸を細胞に提供することを含む。この提供の次に、細胞の転写及び翻訳機構、及び発現構築物が提供することができる任意の機構によって、ポリペプチドを合成する。
【0112】
本発明のある実施形態では、遺伝子をコードしている核酸を、細胞のゲノム中にしっかりと組み込むことができる。他の実施形態では、DNAの別個のエピソーム断片として、核酸を細胞中にしっかりと保つことができる。このような核酸断片、すなわち「エピソーム」は、宿主細胞の周期に関係なく、あるいはアド主細胞の周期と同調して、保存及び複製を可能にするのに充分な配列をコードしている。発現構築物がどのようにして細胞に送達されるか、細胞中のどこに核酸が留まるかは、使用する発現構築物のタイプに依存する。
【0113】
1.ウイルス・ベクターを使用するDNAの送達
あるウイルスの、レセプター仲介型エンドサイトーシスによって細胞を感染させるか、あるいは細胞に入る能力、及び宿主細胞のゲノムに組み込み、ウイルスのゲノムを安定的かつ効率的に発現する能力によってそれらは、ホ乳動物細胞へ外来性遺伝子を運ぶための魅力的な候補となっている。本発明の好ましいベクターは、一般にウイルス・ベクターである。
【0114】
外来性遺伝物質を受容することができるいくつかのウイルスは、それらが収容できるヌクレオチドの数、及びそれらが感染する細胞の範囲は限られているが、これらのウイルスが首尾良く遺伝子の発現を行うことが証明されている。しかしながらアデノウイルスは、その遺伝物質を宿主のゲノムに組み込ませることはなく、したがって遺伝子発現のために宿主の複製を必要とせず、それらを迅速で、効率の良い、異質の遺伝子発現に理想的に適合するものにしている。複製体欠損感染性ウイルスを作製するための技法は、当分野でよく知られている。
【0115】
当然ながら、ウイルス送達系を使用する際には、ビリオンを充分に精製して、それを望ましくない汚染物質、欠損干渉性ウイルス粒子またはエンドトキシン及び他の発熱原などをほとんど含まないものにして、その結果ビリオンが、ベクター構築物を受け取る細胞、動物または個体において、いかなる厄介な反応も引き起こさないようにすることが望ましいであろう。ベクターを精製する好ましい手段には、塩化セシウム勾配遠心法などの浮遊密度勾配の使用がある。
【0116】
a.アデノウイルス・ベクター
発現構築物を送達するための個々の方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルス・ベクターはゲノムDNAに組み込まれる能力が低いことが知られているが、これらのベクターによって与えられる遺伝子運搬の効率の良さによって、この特徴は相殺される。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを支持し、(b)その中でクローン化されている組織または細胞特異的な構築物を最終的に発現するのに充分な、アデノウイルス配列を含む構築物を含むことを意味する。
【0117】
発現ベクターは、遺伝子工学的に処理した形のアデノウイルスを含む。この遺伝学的生物体、すなわち36kbで線状であり二本鎖DNAウイルスである、アデノウイルスの知識によって、大きな粒子のアデノウイルスDNAを7kbまでの外来性配列で置換することができる(Grunhaus及びHorwitz、1992)。レトロウイルスとは対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染が結果として染色体の組み込みにつながることはない。なぜならアデノウイルスDNAは、潜在的な毒性なしでエピソーム式に複製することができるからである。アデノウイルスは構造的にも安定しており、広範囲の増幅の後にゲノムの再編成が検出されることはない。
【0118】
アデノウイルスは、中程度の大きさのゲノム、操作のしやすさ、高いタイター、標的細胞の範囲が広いこと、及び高い感染性のために、遺伝子運搬ベクターとして使用するのに非常に適している。ウイルスのゲノムの両端は100〜200塩基対の逆反復体(ITR)を含み、これはウイルスDNAの複製及びパッケージングに必要なシス要素である。ゲノムの初期(E)及び後期(L)領域は、ウイルスDNAの複製の開始によって分かれる異なる転写単位を含む。E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスのゲノムの転写の調節を担うタンパク質、及び数個の細胞の遺伝子をコードしている。E2領域(E2A及びE2B)の発現によって、ウイルスDNAの複製用のタンパク質が合成される結果となる。これらのタンパク質はDNAの複製、後期の遺伝子発現及び宿主細胞のシャット・オフに関係がある(Renan、1990)。大部分のウイルスのキャップシッド・タンパク質を含めた、後期遺伝子の産物は、主要な後期プロモーター(MLP)によって生み出される、1つの一次転写物の重要なプロセシングの後でのみ発現される。MLP(16.8m.u.に位置する)は、感染の後期中、非常に効率的であり、このプロモーターから生み出されたmRNAはすべて、5’で3つに分かれたリーダー配列(TPL)を有しており、この配列がそれらを転写に好ましいmRNAにする。
【0119】
現在のシステムでは、組換えアデノウイルスは、シャトル・ベクターとプロウイルス・ベクターの間の相同的組換えから生成されている。2つのプロウイルス・ベクターの間で起こりうる組換えのために、野生型アデノウイルスをこのプロセスから生成させることができる。したがって、個々のプラークからウイルスの1つのクローンを単離すること、及びそのゲノム構造を調べることが重要である。
【0120】
複製体が欠損している現在のアデノウイルス・ベクターの生成及び増殖は、293と指定される特有のヘルパー細胞株に依存し、この細胞株は、Ad5DNA断片によってヒトの初期腎臓細胞から形質転換され、E1タンパク質を構造的に発現する(E1A及びE1B;Graham他、1977)。E3領域はアデノウイルスのゲノムから分配可能であるので(Jones及びShenk、1978)、現在のアデノウイルス・ベクターは、293細胞の助けによって、E1、D3領域のいずれか、あるいはこの両方の領域に外来性DNAを保有する(Graham及びPrevec、1991)。近年、E4領域に欠失体を含むアデノウイルス・ベクターが記載されている(米国特許第5,670,488号、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0121】
本来アデノウイルスは、約105%の野生型ゲノムをパッケージすることができ(Ghosh−Choudhury他、1987)、約2kb余分なDNA用の容量を提供する。E1及びE3領域において交換可能な約5.5kbのDNAと組み合わせて、現在のアデノウイルス・ベクターの最大容量は7.5kb未満であり、あるいはベクターの全長の約15%である。80%を超えるアデノウイルスのウイルス・ゲノムは、ベクターのバックボーン中に留まっている。
【0122】
ヘルパー細胞株は、ヒトの初期腎臓細胞、筋肉細胞、血液形成細胞、または他のヒトの初期間葉性または上皮細胞などの、ヒトの細胞に由来してよい。あるいはヘルパー細胞は、ヒト・アデノウイルスに許容的な、他のホ乳動物種からの細胞に由来してよい。このような細胞には、たとえばベロ細胞または他のサル初期間葉性または上皮細胞などがある。前述のように、好ましいヘルパー細胞は293である。
【0123】
Racher他(1995)は、293細胞を培養し、アデノウイルスを増殖させるための改善された方法を開示した。あるフォーマットでは、個々の細胞を100〜200mlの培地を含む、1リットルのシリコーン処理した回転フラスコ(Techne、Cambridge、UK)中に接種することによって、天然の細胞凝集体を成長させる。40rpmで撹拌した後、トリパンブルーを用いて細胞の生命力を評価する。他のフォーマットでは、Fibra−Celミクロ担体(Bibby Sterlin、Stone、UK)(5g/l)を、以下のように使用する。5mlの培地に再懸濁させた細胞接種物を、250mlのErlenmeyerフラスコ中の担体(50ml)に加え、1〜4時間、時々撹拌しながら放置する。次いでこの培地を50mlの新鮮な培地に交換し、振とうを開始する。ウイルスを生成させるために、細胞を約80%の合流状態まで成長させて、その後培地を交換し(最終体積の25%まで)、0.05というMOIでアデノウイルスを加える。培養物を一晩放置し、その後体積を100%まで増大させ、さらに72時間の振とうを開始する。
【0124】
アデノウイルス・ベクターは複製体が欠損しているか、あるいは少なくとも条件的に欠損していなければならないという必要性以外に、アデノウイルス・ベクターの性質が、本発明を首尾良く行うために重要であるとは考えられていない。アデノウイルスは、異なる42の知られている血清型またはサブグループA〜Fの任意のものであってよい。アデノウイルスのタイプ5のサブグループCは、本発明中で使用するための、条件付き複製体欠損アデノウイルス・ベクターを得るための、好ましい出発物質である。これは、アデノウイルスのタイプ5が、その多量の生化学的及び遺伝学的情報が知られているヒト・アデノウイルスであるからであり、それは歴史的に、ベクターとしてアデノウイルスを使用する大部分の構築のために使用されている。
【0125】
前述のように、本発明の典型的なベクターは複製体が欠損しており、アデノウイルスのE1領域は有していないはずである。したがって、形質転換された構築物を、E1のコード配列がそこから取り除かれている位置に導入することが最も好都合であろう。しかしながら、アデノウイルスの配列中の、構築物を挿入する位置は本発明には重要ではない。目的の遺伝子をコードしているポリヌクレオチドも、Karlsson他(1986)によって記載されるようにE3交換ベクター中の欠失E3領域の代わりに、あるいはヘルパー細胞株またはヘルパー・ウイルスがE4の欠陥を補うE4領域の代わりに、挿入することができる。
【0126】
アデノウイルスの成長及び操作は当業者に知られており、in vitro及びin vivoにおいて広範囲を示す。このグループのウイルスは高いタイター、たとえば1ml当たり10〜1011個のプラーク形成単位で得ることができ、これらは感染性が高い。アデノウイルスのライフ・サイクルでは、宿主細胞のゲノムへの組み込みは必要とされない。アデノウイルス・ベクターによって送達される外来性遺伝子はエピソーム性のものであり、したがって宿主細胞に対する遺伝的毒性は低い。
【0127】
アデノウイルス・ベクターは、真核生物の遺伝子発現において使用されており(Levreo他、1991;Gomez−Foix他、1992)、及びワクチン開発(Grunhaus及びHorwitz、1992;Graham及びPrevec、1992)において使用されている。組換えアデノウイルス及びアデノ関連ウイルス(以下参照)は両方共に、分裂していないヒト初代細胞を感染させ、かつ形質導入することができる。
【0128】
b.AAVベクター
アデノ関連ウイルス(AAV)は、本発明の細胞形質導入において使用するために、魅力的なベクター系である。なぜならそれは組換えの頻度が高く、分裂していない細胞を感染させることができ、したがって、たとえば組織培養物(Muzyczka、1992)またはin vivoにホ乳動物細胞に遺伝子を送達するために有用となるからである。AAVは広範囲の感染性を有する(Tratschin他、1984;Laughlin他、1986;Lebkowski他、1988;McLaughlin他、1988)。rAAVベクターの生成及び使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号及び米国特許第4,797,368号に記載されており、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている。
【0129】
遺伝子の送達におけるAAVの使用を示す研究には、LaFace他、(1988);Zhou他、(1993);Flotte他、(1993);及びWalsh他、(1994)がある。組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子(Kaplitt他、1994;Lebkowski他、1988;Samulski他、1989;Yoder他、1994;Zhou他、1994;Hermonat及びMuzyczka、1984;Tratschin他、1985;McLaughlin他、1988)、及びヒト疾患に関する遺伝子(Flotte他、1992;Luo他、1994;Ohi他、1990;Walsh他、1994;Wei他、1994)の、in vitro及びin vivoでの形質導入用に首尾良く使用されている。近年、嚢胞性繊維症の治療に関する相Iヒト臨床試験用に、AAVベクターが承認されている。
【0130】
AAVは、培養されている細胞中で生産的な感染を受けるために、他のウイルス(アデノウイルスまたはヘルペス・ウイルスのファミリーのメンバー)との同時感染を必要とする点で、依存性パルボウイルスである(Muzyczka、1992)。ヘルパー・ウイルスとの同時感染がないと、野生型AAVゲノムがその端からヒト染色体19に組み込み、そこにパルボウイルスとして潜伏状態で留まる(Kotin他、1990;Samulski他、1991)。しかしながらrAAVは、AAV Repタンパク質も発現されない限り、組み込み用の染色体19に限られない(Shelling及びSmith、1994)。AAVプロウイルスを保有している細胞が、ヘルパー・ウイルスによって過度に感染されているとき、AAVゲノムは染色体から、あるいは組換えプラスミドから「救出」され、正常な生産的感染が確立される(Samulski他、1989;McLaughlin他、1988;Kotin他、1990;Muzyczka、1992)。
【0131】
典型的には、組換えAAV(rAAV)ウイルスは、2つのAAV末端の繰り返し体の側面に位置する目的の遺伝子を含むプラスミド(McLaughlin他、1988;Samulski他、1989;それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている)、及び末端の繰り返し体がない野生型AAVコード配列を含む発現プラスミド、たとえばpIM45(McCarty他、1991;参照によって本明細書に組み込まれている)を同時にトランスフェクトすることによって作成される。アデノウイルス、またはAAVヘルパー機能に必要とされるアデノウイルス遺伝子を保有するプラスミドによって、細胞は感染あるいはトランスフェクトもされる。このようにしてされるrAAVウイルスのストックは、rAAV粒子から物理的に隔てなければならない(たとえば塩化セシウム密度遠心法によって)アデノウイルスによって汚染される。代替的に、AAVコード領域を含むアデノウイルス・ベクター、またはAAVコード領域を含む細胞株、及び、いくつかあるいはすべてのアデノウイルス・ヘルパー遺伝子を使用することができる(Yang他、1994;Clark他、1995)。組み込まれたプロウイルスとして、rAAVのDNAを保有する細胞株も使用することができる(Flotte他、1995)。
【0132】
c.レトロウイルス・ベクター
その遺伝子を宿主のゲノムに組み込み、多量の外来性遺伝物質を運搬し、広範囲の種及び細胞型を感染させ、特別な細胞株中にパッケージされるその能力のため、レトロウイルスには遺伝子送達ベクターとしての見込みがある(Miller、1992)。
【0133】
レトロウイルスは、逆転写のプロセスによって感染した細胞中で、そのRNAを二本鎖DNAに転換させる能力によって特徴付けられる、一本鎖RNAウイルスのグループである(Coffin、1990)。したがって、その結果生じるDNAは、プロウイルスとして細胞染色体にしっかりと組み込まれ、ウイルス・タンパク質の合成を指示する。この組み込みによってウイルスの遺伝子配列が、受容細胞及びその子孫中に保有される結果となる。レトロウイルスのゲノムは、それぞれキャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、及び外被タンパク質成分をコードしている、3つの遺伝子、gag、pol、envを含む。gag遺伝子からの上流で見られる配列は、ゲノムをビリオンにパッケージするためのシグナルを含む。2つの長い末端の繰り返し体(LTR)配列は、ウイルスのゲノムの5’及び3’端に存在する。これらは強力なプロモーター及びエンハンサー配列を含み、宿主細胞のゲノム中での組み込み用にも必要とされる(Coffin、1990)。
【0134】
レトロウイルス・ベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードしている核酸を、あるウイルス配列の位置にあるウイルスのゲノムに挿入して、複製体が欠損しているウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gag、pol、env遺伝子を含むがLTRは含まないパッケージ型細胞株、及びパッケージ成分を構築する(Mann他、1983)。cDNAを含む組換えプラスミド、及びレトロウイルスのLTRとパッケージ配列がこの細胞株中に導入されると(たとえばリン酸カルシウム沈殿によって)、そのパッケージ配列によって、組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子中にパッケージされ、次いでこれが培養培地に分泌される(Nicolas及びRubenstein、1988;Temin、1986;Mann他、1983)。次いで組換えレトロウイルスを含む培地を回収し、任意選択で濃縮し、遺伝子の運搬用に使用する。レトロウイルス・ベクターは、広く様々な細胞型を感染させることができる。しかしながら、組み込み及び安定した発現には、宿主細胞の分裂が必要である(Paskind他、1975)。
【0135】
欠損レトロウイルス・ベクターの使用に関する関心事は、野生型で複製能力のあるウイルスの、パッケージされた細胞中での考えられる外観である。これは組換え事象から生じる可能性があり、この組換え中に、組換えウイルスからの無欠な配列が、宿主細胞のゲノム中に組み込まれたgag、pol、env配列からの上流に挿入する。しかしながら、新たなパッケージ細胞株が現在利用可能であり、これは組換えの可能性を大幅に低下させるはずである(Markowitz他、1988;Hersdorffer他、1990)。
【0136】
第2の世代のレトロウイルス・ベクターを使用する、遺伝子の送達が報告されている。Kasahara他(1994)は、正常ではマウス細胞のみに感染する、Moloneyネズミ白血病ウイルスの工学処理した変異体を作製し、ウイルスが特異的に結合し、赤血球タンパク質(EPO)レセプターを有するヒト細胞に感染するように外被タンパク質を改変した。EPO配列の一部分を外被タンパク質に挿入して、新たな結合特異性を有するキメラ・タンパク質を作製することによって、このことが達成された。
【0137】
d.他のウイルス・ベクター
他のウイルス・ベクターを、本発明において発現構築物として使用することができる。ワクシニア・ウイルス(Ridgeway、1988;Baichwal及びSugden、1986;Coupar他、1988)、シンドビス(sindbis)ウイルス、サイトメガロウイルス及び単疱疹ウイルスなどのウイルスに由来するベクターを使用することができる。これらは、様々なホ乳動物細胞に、いくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann、1989;Ridgeway、1988;Baichwal及びSugden、1986;Coupar他、1988;Horwich他、1990)。
【0138】
欠損B型肝炎ウイルスの最近の認識と共に、異なるウイルスの配列の構造と機能の関係への新たな見解が得られた。in vitroでの研究によって、このウイルスは、そのゲノムの80%が欠失しているにもかかわらず、ヘルパー依存性のパッケージング及び逆転写に関する能力を有することが示された(Horwich他、1990)。このことによって、大部分のゲノムは外来性遺伝物質で置き換えることができることが示唆された。Chang他は最近、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を、ポリメラーゼ、表面、及びプレ表面コード配列の代わりに、アヒルB型肝炎ウイルスのゲノムに導入した。これを、野生型ウイルスと同時に鳥類の肝腫瘍の細胞株にトランスフェクトした。高タイターの組換えウイルスを含む培養培地を使用して、主要な雛アヒルの肝細胞を感染させた。安定したCAT遺伝子の発現を、トランスフェクション後、少なくとも24日間検出した(Chang他、1991)。
【0139】
ある他の実施形態では、ベクターはHSVである。HSVを魅力的なベクターにする1つの要因は、ゲノムのサイズ及び組織である。HSVは大きいので、多数の遺伝子または発現カセットの取り込みは、他の小さなウイルス系よりも問題がない。さらに、パフォーマンス(たとえば一時的な強さ)を変えながら、異なるウイルスの制御配列が利用可能であることによって、他の系よりも高い程度で発現を制御することができる。ウイルスが比較的少ない断片的メッセージを有し、さらに遺伝的操作を容易にしていることも1つの利点である。HSVも比較的操作が容易であり、高タイターに成長させることができる。したがって、充分なMOIを得るのに必要とされる体積、繰り返しの投与の必要性が低いという点で、送達には問題点が少ない。
【0140】
e.改変されたウイルス
本発明の他の実施形態では、送達される核酸が、工学処理されて特異的な結合リガンドを発現している、感染性ウイルス内に収容されている。したがってこのウイルス粒子は、標的細胞の同族のレセプターに特異的に結合し、その中身を細胞に送達するはずである。レトロウイルス・ベクターを特異的に標的にするために設計された新規な手法が、ウイルスの外被タンパク質へのラクトース残基の化学的な添加による、レトロウイルスの化学的改変に基づいて、近年開発された。この改変によって、シアログリコタンパク質レセプターを介した肝細胞の特異的な感染を可能にすることができる。
【0141】
組換えレトロウイルスを標的にするための他の手法が設計され、この手法では、レトロウイルスの外被タンパク質、及び特異的な細胞レセプターに対する、ビオチニル化抗体が使用された。ストレプタビジンを使用することによりビオチン成分によって、これらの抗体を結合させた(Roux他、1989)。主要な組織適合性複合体のクラスI及びクラスIIの抗原に対する抗体を使用して、これらの表面抗原を有する様々なヒト細胞と、エコトロピック(ecotropic)ウイルスのin vitroでの感染を彼らは証明した(Roux他、1989)。
【0142】
2.DNA送達の他の方法
本発明の様々な実施形態において、DNAは発現構築物として細胞に送達される。遺伝子構築物の発現を行うために、発現構築物が細胞に送達されなければならない。本明細書に記載するように、送達用の好ましいメカニズムはウイルス感染を介するものであり、この場合、発現構築物が、感染性ウイルス粒子中でキャプシドに包まれている。しかしながら、発現構築物を細胞中に運ぶための、いくつかの非ウイルス的な方法も本発明によって企図される。本発明の一実施形態では、発現構築物は裸の組換えDNAまたはプラスミドのみからなっていてよい。構築物の運搬は、物理的あるいは化学的に細胞膜を透過させることができる、任意の述べられている方法によって行うことができる。以下で論じるように、いくつかのこれらの技法を、in vivoまたはex vivoでの使用に首尾良く適合させることができる。
【0143】
a.リポソーム仲介トランスフェクション
本発明の他の実施形態では、発現構築物はリポソーム中で捉えられてよい。リポソームは、リン酸脂質二重層の膜と内部の水性培地によって特徴付けられる小胞構造体である。多細胞生物のリポソームは、水性培地によって隔てられている多数の脂質層を有する。これらは、リン酸脂質が過剰な水溶液中に懸濁されるときに、自然に形成する。脂質成分は、密閉構造が形成される前に自己再編成され、水を捉え、脂質二重層間の溶質を溶かす(Ghosh及びBachhawat、1991)。Lipofectamine(Gibco BRL)と合成した、発現構築物も企図される。
【0144】
リポソーム仲介の核酸の送達、及びin vitroでの外来性DNAの発現は、非常に成功している(Nicolau及びSene、1982;Fraley他、1979;Nicolau他、1987)。Wong他(1980)は、リポソーム仲介の送達、及び培養したヒヨコ胚、HeLa及び肝腫瘍細胞中での外来性DNAの発現実現可能性を証明した。
【0145】
本発明のある実施形態では、リポソームを赤血球凝集ウイルス(HVJ)と合成させることができる。これによって、細胞膜との融合が容易になり、リポソームに包まれたDNAの細胞への侵入が促進されることが示されている(Kaneda他、1989)。他の実施形態では、リポソームは合成されているか、あるいは核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)と共に使用することができる(Kato他、1991)。他の実施形態では、リポソームは、HVJ及びHMG−1と複合体を形成しまたはそれらと共に使用することができる。他の実施形態では、送達媒体はリガンド及びリポソームを含んでよい。細菌プロモーターがDNA構築物中で使用される場合、リポソーム内に適切な細菌ポリメラーゼを含むことも望ましいであろう。
【0146】
b.エレクトロポレーション
本発明のある実施形態では、エレクトロポレーションによって発現構築物を細胞中に導入する。エレクトロポレーションは、細胞及びDNAの懸濁液を高圧電荷にさらすことを含む。
【0147】
エレクトロポレーションを使用する真核細胞のトランスフェクションは、非常に成功している。この方法で、マウスpre−Bリンパ球を、ヒトのkappa免疫グロブリン遺伝子でトランスフェクトし(Potter他、1984)、ラットの肝細胞を、クロラモフェニコールアセチルトランスファーゼの遺伝子でトランスフェクトした(Tur−Kaspa他、1986)。
【0148】
c.リン酸カルシウムまたはDEAE−デキストラン
本発明の他の実施形態では、リン酸カルシウム沈殿を使用して、発現構築物を細胞に導入する。この技法を使用して、ヒトKB細胞が、アデノウイルス5DNAでトランスフェクトされている(Graham及びVan Der Eb、1973)。さらにこの方法で、マウスL(A9)、マウスC127、CHO、CV−1、BHK、NIH3T3及びHeLa細胞を、ネオマイシン・マーカー遺伝子でトランスフェクトし(Chen及びOkayama、1987)、ラット肝細胞を、様々なマーカー遺伝子でトランスフェクトした(Rippe他、1990)。
【0149】
他の実施形態では、DEAE−デキストラン、次にポリエチレングリコールを使用して、発現構築物を細胞に送達する。この方法では、レポーター・プラスミドをマウスのミエローマ及び赤白血病細胞に導入した(Gopal、1985)。
【0150】
d.パーティクル・ボンバードメント
(「粒子の衝撃」、particle bombardment)
裸のDNA発現構築物を細胞に運搬するための本発明の他の実施形態は、粒子の衝撃を含んでよい。この方法は、DNAをコートしたミクロ発射体(「マイクロプロジェクタイル」、microprojectile)を高速に加速させ、それを細胞膜に貫通させ、細胞を殺さずに細胞に侵入する能力に依存する(Klein他、1987)。小粒子を加速させるための、いくつかの装置が開発されている。あるこのような装置は、高圧電荷を利用して電流を生じさせ、その結果原動力を提供する(Yang他、1990)。使用するミクロ発射体は、タングステンまたは金のビーズなどの、生物学的に不活性な物質からなる。
【0151】
e.直接的マイクロインジェクションまたは超音波ローディング
本発明の他の実施形態は、直接的マイクロインジェクションまたは超音波ローディングによる、発現構築物の導入を含む。直接的マイクロインジェクションを使用して、核酸構築物がアフリカツメガエルの卵母細胞に導入されており(Harland及びWeintraub、1985)、LTK繊維芽細胞は超音波ローディングにより、チミジンキナーゼの遺伝子でトランスフェクトされている(Fechheimer他、1987)。
【0152】
f.アデノウイルス介助型トランスフェクション
本発明のある実施形態では、アデノウイルス介助型トランスフェクションを使用して、発現構築物を細胞に導入する。アデノウイルス結合系を使用して、細胞系において、トランスフェクション効率が増大したことが報告されている(Kelleher及びVos、1994;Cotten他、1992;Curiel、1994)。
【0153】
g.レセプター仲介型トランスフェクション
核酸構築物を標的細胞に送達するために使用することができる他の発現構築物は、レセプター仲介型の送達媒体である。これらは、標的細胞中で起こるであろうレセプター仲介型のエンドサイトーシスによる、マクロ分子の選択的な取り込みを利用する。様々なレセプターの細胞のタイプ特異的分布の点で、この送達方法は、本発明にさらなる程度の特異性を加える。他のホ乳動物の細胞タイプのコンテキストにおける特異的送達は、Wu及びWuによって記載されている(1993;参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0154】
いくつかのレセプター仲介型遺伝子標的媒体は、細胞レセプター特異的リガンド及びDNA結合因子を含む。他のものは、送達されるDNA構築物がそこに動作可能に結びつく、細胞レセプター特異的リガンドを含む。いくつかのリガンドが、レセプター仲介型遺伝子の運搬用に使用されており(Wu及びWu、1987;Wagner他、1990;Perales他、1994;Myers、EPO 0273085)、これが技法の操作性を確かなものにする。本発明のある態様では、リガンドを選択して、EOE標的細胞群上で特異的に発現されるレセプターに対応させる。
【0155】
他の実施形態では、細胞特異的な遺伝子標的媒体のDNA送達媒体成分は、リポソームと組み合わせて、特異的結合リガンドを含んでよい。送達される核酸はリポソーム内に収容され、特異的結合リガンドはリポソーム膜中に機能的に取り込まれる。したがってリポソームは、標的細胞のレセプターに特異的に結合し、その中身を細胞に送達するはずである。このような系が機能的な使用系であることが示されており、たとえば表皮の成長因子(EGF)は、核酸からEGFレセプターのアップレギュレーションを示す細胞への、レセプター仲介型の送達において使用される。
【0156】
他の実施形態では、標的送達媒体のDNA送達媒体成分は、リポソームそのものであってよく、細胞特異的な結合を指示する1つまたは複数の脂質または糖タンパク質を、それが含むことが好ましいであろう。たとえばNicolau他(1987)は、ラクトシルセラミド、ガラクトース末端アシアルガングリオシドを使用し、これらはリポソームに取り込まれ、肝細胞ではインシュリン遺伝子の取り込みの増大が観察された。本発明の組織特異的形質転換構築物が、同様の方法で標的細胞に特異的に送達されることが企図される。
【0157】
h.相同的組換え
相同的組換え(Koller及びSmithies、1992)によって、既存の遺伝子の正確な改変が可能であり、位置的な影響及び挿入失活という問題点を克服し、特定の遺伝子を不活性化させ、かつ1つの遺伝子を他の遺伝子で置換することができる。相同的組換えのための方法は、参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,614,396号に記載されている。
【0158】
したがって、トランスジェニック構築物を送達するための好ましい方法は、相同的組換えの使用を含む。相同的組換えは、アンチセンスと同様に、核酸が相補的な配列と塩基対を形成する傾向を利用するものである。この場合、塩基対が働いて、2つの別個の核酸分子の相互作用を容易にし、その結果鎖の破壊及び修復が起こる可能性がある。言い換えれば、この方法の「相同的な」態様は、配列相同性を利用して2つの相補的な配列を非常に似たものにするが、「組換え」態様は、1つの相補的な配列を提供して、いくつかの結合の破壊及び他のものの形成によって一方を置換する。
【0159】
実際には、相同的組換えは以下のように使用する。最初に、宿主細胞内の組み込み用の部位を選択する。次いで、組み込み部位に相補的な配列を遺伝的構築物中に封入し、ゲノムに組み込ませるために選択した遺伝子を側面に置く。このコンテクストにおいて、側面に置くとは、標的の相同的な配列が選択した遺伝子の上流(5’)及び下流(3’)に位置することを単に意味する。これらの配列は、標的遺伝子の上流及び下流のいくつかの配列に対応するはずである。したがって、構築物を細胞に導入し、これによって細胞の配列と構築物の間の組換えが可能となる。
【0160】
実際問題として、正常では遺伝的構築物は、遺伝子をゲノムに挿入するための媒体をはるかに超えるものとして働くであろう。たとえば、組換え体を選択できることが重要であり、したがって、構築物中に選択可能マーカーを封入することが一般的である。この遺伝子によって、様々な静菌性及び殺菌性薬剤に対する耐性を与えることにより、そのゲノムDNAに構築物が組み込まれた細胞を選択することが可能である。さらにこの技法は、「ノックアウト」(欠失)あるいは遺伝子を妨害するために使用することができる。したがって、遺伝子を改変するかあるいは突然変異させるための他の手法は、相同的組換え、または「ノックアウト技術」の使用を含む。突然変異しているかあるいは広く欠失した形の異種遺伝子を、構築物中の側面領域の間に封入することによって、このことが行われる。相同的組換えを行うための構築物の配置は、以下のようなものであろう。
ベクター・5’側面配列・選択した遺伝子・選択可能マーカー遺伝子・側面配列3’・ベクター
【0161】
したがって、この種の構築物を使用して、1回の組換え事象において、(i)内因性遺伝子を「ノックアウト」すること、(ii)このような事象を識別するための選択可能マーカーを提供すること、(iii)発現用のトランス遺伝子を導入することが可能である。
【0162】
相同的組換え手法の他の精巧な点は、「ネガティブな」選択可能マーカーを使用することを含む。この一例は、米国特許第5,624,830号に記載される、ネガティブな選択方法におけるシトシンデアミナーゼ遺伝子の使用である。ネガティブな選択可能マーカーは、選択可能マーカーと異なり、マーカーを発現する細胞の死を引き起こす。したがってそれは、望ましくない組換え事象を識別するために使用される。選択可能マーカーを使用して、相同的組換え体を選択しようとするとき、最初のスクリーニング・ステップにおいて、ランダムで非配列特異的な事象から生成した相同的組換え体から、適切な相同的組換え体を識別することは困難である。これらの組換え体は選択可能マーカーの遺伝子も含むことができ、目的の異種タンパク質を発現することができるが、いかなる場合も所望の表現型は有していないはずである。ネガティブな選択可能マーカーを、側面配列の外側ではなく構築物に結合させることによって、ネガティブな選択可能マーカーを取り込む、ランダムな組換え事象に対して選択することができる。相同的組換え体が、ネガティブな選択可能マーカーを導入することはないはずである。なぜならそれは、側面配列の外側にあるからである。
【0163】
3.マーカー遺伝子
本発明のある態様では、特異的な細胞を特異的な遺伝マーカーで標識して、標識した細胞の運命についての情報を提供する。したがって本発明は、全細胞のアッセイに基づく、組換え体の候補のスクリーニング及び選択方法も提供し、この方法は、レポーター遺伝子の上流に位置する一般的なDNAプロモーターが機能的である条件下でのみ生じる、容易に検出可能な表現型を、組換え宿主に与えるレポーター遺伝子を使用することが好ましい。一般にレポーター遺伝子は、ポリペプチド(マーカー・タンパク質)をコードしており、細胞培養物の分析、たとえば細胞培養物の蛍光測定、放射性同位体または分光測定分析によって検出可能な宿主細胞により、これがこれが生成されることは正常ではない。
【0164】
本発明の他の態様では、PCR(登録商標)によるDNA増幅、または蛍光測定、放射性同位体または分光測定分析プローブを使用するハイブリダイズなどの、標準的な遺伝的分析技法によって検出可能な、遺伝マーカーを提供する。
【0165】
a.スクリーニング
当業者に知られているように、代表的な酵素には、エステラーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ(組織のプラスミノゲン活性体またはウロキナーゼ)及びその活性によって検出することができる他の酵素がある。本発明中で使用するために企図されるのは、トランス遺伝子の発現用のマーカーとしての、緑色蛍光性タンパク質(GEP)である(Chalfie他、1994)。GEPの使用では外因的な追加基質は必要ではなく、近紫外線または青い光の照射のみが必要であり、したがって、生きている細胞中の遺伝子発現を観察するための非常な潜在性を有する。
【0166】
他の特定の例は、酵素クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であり、放射標識した基質、ホタル及び細菌のルシフェラーゼ、細菌酵素β−ガラクトシダーゼ及びβ−グロクルニダーゼと共にこれを使用することができる。このクラスの他のマーカー遺伝子は当業者によく知られており、本発明において使用するのに適している。
【0167】
b.選択
宿主細胞に検出可能な特性を与える他のクラスのレポーター遺伝子は、ポリペプチド、一般には酵素をコードするレポーター遺伝子であり、これらはその形質転換体を毒性に対して耐性があるものにする。このクラスのレポーター遺伝子の例は、毒性レベルの抗生物質G418に対して宿主細胞を保護する、neo遺伝子(Colberre−Garapin他、1981)ストレプトマイシン耐性を与える遺伝子(米国特許第4,430,434号)、ヒグロミシンB耐性を与える遺伝子(Santerre他、1984;米国特許第4,727,028号、4,960,704号及び4,559,302号)、メトトレキサートへの耐性を与える、ジヒドロ葉酸リダクターゼをコードする遺伝子(Alt他、1978)、酵素HPRT、及び当分野でよく知られている多くの他の遺伝子がある(Kaufman、1990)。
【0168】
D.培養系
組換えタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを長期にわたり高収率で生成させるためには、安定した発現が好ましい。たとえば、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする構築物を安定して発現する細胞株を、工学処理することができる。ウイルス性の複製源を含む発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現制御要素(たとえば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写終結体、ポリアデニル化部位など)によって制御されるベクター、及び選択可能マーカーを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。外来性DNAの導入に続き、工学処理した細胞を濃縮培地中で1〜2日間成長させて、次いで選択培地に移すことができる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を与え、細胞のその染色体中にプラスミドをしっかりと組み込ませ、順にクローン化して細胞株に拡げることができる焦点を形成する。
【0169】
それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞中の、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(tk)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hgprt)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(aprt)遺伝子を含めた、いくつかの選択系を使用することができるが、これらだけには限られない。さらに、メトトレキサートへの耐性を与える、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(dhfr);ミコフェノール酸への耐性を与える、gpt;アミノグリコシドG−418への耐性を与える、ネオマイシン(neo);及びヒグロマイシンへの耐性を与える、ヒグロマイシン(hygro)に関する選択のベースとして、代謝拮抗物質耐性を使用することができる。
【0170】
動物細胞は、in vitroにおいて2つのモードで増殖させることができる。細胞の塊が全体に懸濁している懸濁液中で増殖する、非アンカー依存性の細胞として、あるいはその増殖のために固形支持体への接着を必要とする、アンカー依存性の細胞(すなわち、単層タイプの細胞増殖)としてである。
【0171】
連続的な確立した細胞株からの非アンカー依存性すなわち懸濁培養は、最も広く使用される、細胞及び細胞生成物の大規模な生成の手段である。しかしながら、懸濁液で培養した細胞には、発ガン性の可能性があること、あるいは接着性の細胞よりもタンパク質生成が少ないことなどの制約がある。
【0172】
撹拌型タンク中でのホ乳動物細胞の大規模な懸濁培養は、組換えタンパク質を生成させるための一般的な方法である。2つの懸濁培養用の反応器設計、撹拌型反応器とエアリフト反応器が広く使用されている。撹拌型の設計は、インターフェロンの生成用に、8000リットル容量で首尾良く使用されている。細胞は、高さと直径の比が1:1〜3:1である、ステンレス鋼性タンク中で増殖させる。通常この培養物は、ブレード・ディスクまたは船舶のプロペラ型をベースとする、1つまたは複数の撹拌器で混合する。撹拌器システムが、ブレードよりも小さなせん断力を提供することは記載されている。撹拌は、磁石によって結合した駆動装置によって、直接的あるいは間接的に行うことができる。間接的な駆動により、撹拌シャフト上でのシールによって微生物が汚染されるリスクが軽減される。
【0173】
最初は微生物発酵用にも記載され、その後はホ乳動物の培養に適合させられたエアリフト反応器は、培養物を混合し酸素を与えるためのガス流を利用するものである。ガス流は反応器の上部セクションに入り、循環を駆り立てる。ガスは培養物の表面から離脱し、ガス気泡の無い濃い液体は反応器の下部セクションにおいて下方に移動させられる。この設計の主な利点は、簡潔さ、及び機械的混合の必要がないことである。典型的には、この高さと直径の比は10:1である。エアリフト反応器はスケール・アップが比較的容易であり、ガスの質量体移動に優れており、比較的小さなせん断力を生み出す。
【0174】
本発明のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが「過剰発現される」、すなわち、細胞中でのその本来の発現と比べて高いレベルで発現される可能性があることが企図される。このような過剰発現は、放射標識及び/またはタンパク質精製を含めた、様々な方法によって評価することができる。しかしながら、たとえば簡単かつ直接的な方法、たとえばSDS/PAGE及びタンパク質染色またはウエスタン・ブロッティング、次に結果として生じたゲルまたはブロットの濃度計によるスキャニングなどの、定量分析を含む方法が好ましい。本来の細胞中でのレベルと比較した、組換えタンパク質またはペプチドのレベルの特異的な上昇は、宿主細胞によって生成される他のタンパク質と比べて特異的タンパク質が比較的豊富であるように、過剰発現の指標であり、たとえばゲル上で見ることができる。
【0175】
E.相補性
本明細書のいくつかの実施形態において使用する、「構造的な相補性」、「相補性」または「α相補性」という語は、タンパク質断片またはドメインを含む少なくとも1つのポリペプチドが、タンパク質断片またはドメインを含む少なくとも第2のポリペプチドの活性を変える能力のことである。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つのポリペプチド及び少なくとも第2のポリペプチドが、同じ前駆体タンパク質の配列に由来する。この非制限的な例は、β−ガラクトシラーゼのα断片及びω断片が相互作用して、活性β−ガラクトシラーゼ酵素複合体を生成するときに生じる、β−ガラクトシラーゼの活性の相補性である。
【0176】
他の相補的なタンパク質断片が、当分野で知られている。非制限的な例には、P.falciparumのチミジレートシンターゼ及びジヒドロ葉酸リダクターゼ・ドメイン(Shallom他、1999)、及び異なる種のミトコンドリアのプロセシングペプチダーゼ(Adamec他、1999)α及びβサブユニットがあり、温度感受性突然変異体である酵母菌菌株を使用することによって、これらの活性が検出された。
【0177】
したがって、様々なペプチドまたはポリペプチド配列を使用して、標的タンパク質を有する融合タンパク質を生成させることができ、その結果、相補化したペプチドまたはポリペプチドの活性の変化によって、標的タンパク質の可溶形へのフォールディングを検出することができると企図される。本発明中で使用するための、一般に使用されているか、あるいはよく知られている選択可能またはスクリーニング可能なマーカーの、追加の相補的断片を作成することができることも企図される。このようなマーカーの非制限的な例には、ユビキチンなどの標的結合タンパク質;β−ガラクトシダーゼ、チトクロームc、キモトリプシン阻害物質、RNアーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、インベルターゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、チオレドキシンC、ラクトースパーミアーゼ、アミノアシルtRNAシンターゼ、またはジヒドロ葉酸リダクターゼなどの酵素;タンパク質阻害物質、緑色蛍光性タンパク質、青色蛍光性タンパク質、黄色蛍光性タンパク質、ルシフェラーゼ、アクオリンなどの、蛍光団または発色団がある。
【0178】
このようなマーカーの1つまたは複数の断片を、当業者によく知られる組換え技術によって生成させて、本明細書に記載するタンパク質のフォールディングをアッセイするための、相補的な系を生成することができると企図される。非制限的な例では、マーカー・タンパク質の約250個以下のアミノ酸のN末端配列をコードしている核酸を、可溶形に折りたたまれる目的のタンパク質の核酸と、動作可能に結び付けることができる。このような核酸を使用して、本明細書に記載する発現ベクターを構築することができ、このような核酸を使用して、マーカー・タンパク質のC末端の末端配列を発現する細胞を補うことができる。代替的な非制限的な例では、マーカー・タンパク質の約250個以下のアミノ酸のC末端配列をコードしている核酸を、可溶形に折りたたまれる目的のタンパク質の核酸と、動作可能に結び付けることができる。このような核酸を使用して、本明細書に記載する発現ベクターを構築することができ、このような核酸を使用して、マーカー・タンパク質のN末端の末端配列を発現する細胞を補うことができる。当然ながら当業者は、様々な長さのマーカー遺伝子断片をコードしている核酸を設計することができる。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子断片は、アミノ酸が約200個、約150個、約100個、約99個、約98個、約97個、約96個、約95個、約94個、約93個、約92個、約91個、約90個、約89個、約88個、約87個、約86個、約85個、約84個、約83個、約82個、約81個、約80個、約79個、約78個、約77個、約76個、約75個、約74個、約73個、約72個、約71個、約70個、約69個、約68個、約67個、約66個、約65個、約64個、約63個、約62個、約61個、約60個、約59個、約58個、約57個、約56個、約55個、約54個、約53個、約52個、約51個、約50個、約49個、約48個、約47個、約46個、約45個、約44個、約43個、約42個、約41個、約40個、約39個、約38個、約37個、約36個、約35個、約34個、約33個、約32個、約31個、約30個、約29個、約28個、約27個、約26個、約25個、約24個、約23個、約22個、約21個、約20個、約19個、約18個、約17個、約16個、約15個、約14個、約13個、約12個、約11個、約10個、約9個、約8個、約7個、約6個、約5個、約4個未満の、ポリペプチドまたはペプチドをコードすることができ、これらは正しく折りたたまれたときには可溶性であるタンパク質をコードしている核酸と、動作可能に結び付いている。
【0179】
F.スクリーニング・アッセイ
本発明は、様々な態様のタンパク質のフォールド及び/または溶解性をスクリーニングするための、α−相補性の系の使用を対象とするものである。前に論じたように、本発明の重要な態様は、目的のタンパク質からの配列及びマーカー・タンパク質の一部分を含む、融合タンパク質の使用である。マーカー・タンパク質は、融合のコンテクストでは、その検出可能な表現型を示すことはできない。しかしながら、マーカー・タンパク質の相補的部分も含む環境で発現されるときは、「相補性」が発生し、検出可能な事象が起こり、このタンパク質が適切に折りたたまれ、可溶性のままであると考えられる。このアッセイによって、迫真性、感受性、取り扱いやすさ、及び容易な適合性を含めた多くの利点が提供される。
【0180】
1.方法
本発明に関する、3つの主な適用分野が存在する。組換えポリペプチド生成における適合性に関するタンパク質のスクリーニング、変化したフォールディング及び/または溶解性プロファイルを有する突然変異体またはドメイン境界に関するスクリーニング(たとえば疾患の診断)、及びタンパク質のフォールディング及び/または溶解性を調節する薬剤に関するスクリーニングである。第1の実施形態では、本発明の方法は以下のステップを含む。
a)(i)融合タンパク質をコードしている遺伝子であって、前記融合タンパク質がマーカー・タンパク質の第1の断片に融合している目的のタンパク質を含み、前記第1の断片は目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えないか、あるいは系統的(すなわち、予測可能かつ繰り返し可能)な方法でのみ影響を与える遺伝子、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターを含む発現構築物を提供するステップ、
b)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させるステップであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造的に相補性であることができるステップ、及び
c)構造的な相補性を判定するステップ。
【0181】
この方法における構造的な相補性の程度を、適切なネガティブ・コントロールに関して分かった構造的な相補性の程度と比較することによって、前記タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を判定することができる。特定の疾患状態を有する疑いのある患者からの、特定の細胞タイプを見ることによって、この一般的なスクリーニングの方法を、特異的な診断方法に変えることができる。
【0182】
他の実施形態では、突然変異体のフォールディング及び/または溶解性に関するスクリーニングの方法を提供し、この方法は以下のステップを含む。
a)(i)目的のタンパク質、及び(ii)マーカー・タンパク質の第1の断片であって、前記第1の断片は目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えないか、あるいは系統的(すなわち、予測可能かつ繰り返し可能)な方法でのみ影響を与え、前記融合タンパク質は、前記宿主細胞中で発現されるとき、適切に折りたたまれていないか、かつ/または可溶性である第1の断片を含む融合タンパク質をコードしている遺伝子を提供するステップ、
b)前記目的のタンパク質をコードしている遺伝子のその部分に突然変異を引き起こさせるステップ、
c)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させるステップであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造的に相補性であることができるステップ、及び
d)構造的な相補性を判定するステップ。
【0183】
ここでも、突然変異していない融合タンパク質について観察した構造的な相補性と比較した、構造的な相補性の相対的な変化によって、前記タンパク質の適切なフォールディング及び/または溶解性の変化が示される。代替的な実施形態は、マーカー・タンパク質の断片とのその融合前に、目的の遺伝子の突然変異を含む。
【0184】
最後に、第3のアッセイは、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を調節する候補となる調節物質についてのスクリーニングに関するものであり、以下のステップを含む。
a)(i)融合タンパク質をコードしている遺伝子であって、前記融合タンパク質がマーカー・タンパク質の第1の断片に融合している目的のタンパク質を含み、前記第1の断片は目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えないか、あるいは系統的(すなわち、予測可能かつ繰り返し可能)な方法でのみ影響を与える遺伝子、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターを含む発現構築物を提供するステップ、
b)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させるステップであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造的に相補性であることができるステップ、
c)宿主細胞と前記候補となる調節物質を接触させるステップ、及び
d)構造的な相補性を判定するステップ。
【0185】
ここでも、前記候補となる調節物質の不在下で観察した構造的な相補性と比較した、構造的な相補性の相対的な変化によって、前記候補となる調節物質がタンパク質のフォールディング及び/または溶解性のモジュレーターであることが示される。
【0186】
2.モジュレーター(「修飾因子」、modulator)
本明細書で使用するように、「候補となる物質」とは、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を阻害するか、あるいは高める可能性が潜在的にある任意の分子のことである。候補となる物質は、タンパク質またはその断片、小分子、または核酸分子であってもよい。鉛の化合物を使用して改良型化合物の開発を助けることは、「合理的な薬剤設計」として知られており、知られている阻害物質と活性物質を比較することだけでなく、標的分子の構造に関して予想することも含む。
【0187】
合理的な薬剤設計の目的は、生物学的に活性のあるポリペプチドまたは標的化合物の、構造類似体を生成させることである。このような類似体を作製することによって、天然の分子よりもより活性があるかあるいは安定性があり、変化の受けやすさが異なり、様々な他の分子の機能に影響を与えることができる、薬剤を形成することが可能である。ある手法では、標的分子またはその断片用の、3次元構造体を生成することができる。x線結晶学、コンピュータ・モデリング、または両方の手法の組み合わせによって、これを行うことができるであろう。
【0188】
抗体を使用して、標的化合物である活性物質または阻害物質の構造を確認することも可能である。原則としてこの手法は、後の薬剤設計がそれに基づく可能性がある薬を生成する。機能的、薬理学的に活性のある抗体に対する、抗イディオタイプ抗体を生成することによって、タンパク質結晶学を完全に回避することができる。鏡像の鏡像と同様に、抗イディオタイプの結合部位は、元の抗原の類似体であることが予想されるであろう。したがって、この抗イディオタイプを使用して、化学的あるいは生物学的に生成されたペプチドのバンクから、ペプチドを識別し単離することができるであろう。したがって、選択したペプチドは、薬として働くであろう。抗体を抗原として使用する、抗体を生成するための本明細書に記載する方法を使用して、抗イディオタイプを生成することができる。
【0189】
一方、有用な化合物の識別を「brute force」使用とする試みにおいて、様々な市販の源から、有用な薬剤に関する基本的な評価基準を満たすと考えられる、小分子のライブラリーを簡単に得ることができる。組み合わせ的に生成したライブラリー(たとえばペプチド・ライブラリー)を含めた、このようなライブラリーのスクリーニングは、多数の関連(または無関係)化合物を活性について調べるための、迅速で効率の良い方法である。組み合わせの手法は、活性があるが、そうでなければ望ましくない化合物である、第2、第3及び第4世代の化合物モデルを作製することによって、潜在的な薬剤を迅速に進化させるために役立つ。
【0190】
候補となる化合物は、天然に存在する化合物の断片または一部分を含んでよいか、あるいは(他の場合は不活性である)知られている化合物の活性のある組み合わせとして発見される可能性がある。動物、細菌、真菌、葉及び樹皮を含めた植物源、及び海洋性サンプルなどの天然源から単離した化合物を、潜在的に有用な薬剤の存在の存在に関する候補として、アッセイすることができることが提案される。スクリーニングされる薬剤は化学的組成物または人造化合物に由来するか、あるいはこれらから合成することもできることが理解されよう。したがって、本発明によって同定される候補となる物質は、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子の阻害物質、または知られている阻害物質または刺激物質から合理的な薬剤設計によって設計することができる、任意の他の化合物であってよいことが理解される。
【0191】
他の適切なモジュレーターには、アンチセンス分子、リボザイム、及び抗体(単鎖抗体を含む)があり、これらはいずれも標的分子に特異的であろう。このような化合物は、本文献中の他の箇所にさらに詳細に記載されている。たとえば、翻訳または転写開始部位、またはスプライシング接合部に結合するアンチセンス分子は、理想的な候補となる阻害物質であろう。
【0192】
最初に同定された調節化合物に加えて、他の立体的に同等な化合物を調合して、モジュレーターの構造の重要な部分を模倣することができるとも、本発明人は企図している。ペプチドモジュレーターのペプチド模倣物を含む可能性がある、このような化合物を、最初のモジュレーターと同様の方法で使用することができる。
【0193】
3.アッセイ・フォーマット
迅速で、安価で、さらに行うのが容易なアッセイは、in vitroでのアッセイである。前で詳細に論じたように、この目的用に特異的に工学処理した細胞を含めた様々な細胞株を、このようなスクリーニング・アッセイ用に使用することができる。アッセイに応じて、培養が必要とされる可能性がある。読み出しとしてα−相補体を使用し、細胞を調べる。代替的には、たとえばタンパク質の発現、mRNAの発現(全細胞またはポリA RNAのディファレンシャル・ディスプレイを含めて)などを見ることによって、分子の分析を行うことができる。
【0194】
in vivoでのアッセイは、工学処理して融合タンパク質(標的タンパク質及び第1のマーカー断片)と相補的分子(第2のマーカー断片)の両方を発現させた、トランスジェニック動物を含めた、様々な動物モデルの使用を含む。そのサイズ、取り扱いやすさ、その生理機能に関する情報、及び遺伝的構成のために、特にトランスジェニック動物用には、マウスが好ましい実施形態である。しかしながら、昆虫、線虫、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、アレチネズミ、ウッドチャック、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ及びサル(チンパンジー、ギボン及びヒヒを含む)を含めた、他の動物も適切である。任意のこれらの種に由来する動物モデルを使用して、モジュレーターに関するアッセイを行うことができる。
【0195】
このようなアッセイでは、1種または複数の候補となる物質が動物に投与され、候補となる物質で治療していない同等な動物と比較した、タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を変える候補となる物質の能力が、モジュレーターを同定する。
【0196】
候補となる物質によるこれらの動物の治療は、適切な形の化合物を動物に投与することを含む。投与は、口、鼻、頬、または局所を含めた(これらだけには限られないが)、臨床または非臨床目的の任意の経路であってよい。あるいは投与は、動脈内滴下、気管支中滴下、皮内、皮下、筋肉内、膜内または静脈内注射によるものであってよい。特異的に企図される経路は、全身性静脈内注射、血液またはリンパ供給による局所的な投与であるか、あるいは感染部位に直接投与する。
【0197】
in vivoでの化合物の有効性の判定は、様々な異なる評価基準を含む可能性がある。さらに、in vitroまたはin cytoでのアッセイよりも意味のある方法で、毒性及び用量応答性の測定を動物中で行うことができる。
【0198】
4.高スループット及びフロー・サイトメトリー
高スループット・フォーマットは、薬剤のスクリーニングにおいて非常に有用である。フロー・サイトメトリーは、宿主細胞中で生成されるシグナルに基づいて、液体サンプル中で細胞または他の粒子を分離することを含む。一般に、フロー・サイトメトリーの目的は、分離した粒子を、その1つまたは複数の特徴に関して分析することである。フロー・サイトメトリーの基本ステップは、液体流が感知領域を通過するように、液体サンプルを装置に向けることを含む。粒子は1度にセンサを通過し、サイズ、屈射、光の散乱性、透明度、粗さ、形状、蛍光性などに基づいて分類されるはずである。
【0199】
細胞の迅速な定量分析が、生物医学的研究及び医学において有用であることが分かっている。Apparatiは、1秒当たり数千個の細胞の割合で、細胞の性質の定量的な多数のパラメータの分析を可能にしている。これらの装置は、細胞のタイプを区別する能力を提供する。測定した変数の1次元(ヒストグラム)または2次元(等高プロット、分散プロット)の度数分布で、データが表示されることが多い。多数のパラメータのデータ・ファイルの分割は、相互作用する1次元または2次元のグラフィック・プログラムを連続的に使用することを含む。
【0200】
迅速に細胞を検出するための、多パラメータのフロー・サイトメトリーのデータの定量分析は、2段階:細胞クラスの特徴付け及びサンプル・プロセシングからなる。一般に、細胞クラスの特徴付けのプロセスでは、細胞の特徴を目的の細胞と目的ではない細胞に分割する。次いで、サンプル・プロセシングでは、細胞が属する領域に従って、それぞれの細胞をその2つのカテゴリーの1つに分類する。細胞のクラスの分析は非常に重要である。なぜなら、適切な特徴の細胞が得られる場合のみ、高い検出パフォーマンスを予想することができるからである。
【0201】
フロー・サイトメトリーによって行われるのは細胞の分析だけではなく、細胞の選別も行われる。米国特許第3,826,364号(参照によって組み込まれている)では、機能的に異なる細胞タイプなどに、粒子を物理的に分離する、装置が開示されている。この機械中では、レーザーがイルミネーションを提供し、これが粒子の流れ上で適切なレンズまたはレンズ・システムによって焦点が当てられ、その結果、その中の粒子からの非常に局所的な散乱が存在する。さらに、非常に強力な源であるイルミネーションが、流れ中の蛍光性粒子を励起させるために、粒子の流れに向けられる。流れ中のいくつかの粒子に選択的に電荷を与え、次いでそれらを指定のレセプタクル(「入れ物」、receptacle)に偏向させることによって分離することができる。この分離の古典的な形は、蛍光標識した抗体によるものであり、これらを使用して1つまたは複数の細胞タイプに、分離用に印を付ける。
【0202】
フロー・サイトメトリーについての他の方法は、米国特許第4,284,412号、第4,989,977号、第4,498,766号、第5,478,722号、第4,857,451号、第4,774,189号、第4,767,206号、第4,714,682号、第5,160,974号、及び第4,661,913号中で見ることができ、これらはすべて参照によって組み込まれている。
【0203】
G.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例中に開示した技法は、本発明人によって発見された技法であり、本発明の実施において充分に機能し、したがって本発明を実施するための好ましい形態を構成すると考えることができることが、当業者によって理解されるはずである。しかしながら当業者は、本開示の観点から、開示される本明細書中の実施形態に多くの変更を行うことができ、さらに本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、同様の結果を得ることができることを理解しているはずである。
【0204】
実施例1:材料及び方法
抗体、化学物質及び発現ベクター
モノクローナル・マウス抗HA及びポリクローナル・ヒツジ抗MBP抗体を、BabCO(Richmond、CA)から購入した。西洋わさびペルオキシダーゼ結合(HRP)二次抗体は、Jackson ImmunoResearch Laboratories(West Grove、PA)から得た。イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)を、Boehringer Mannheim(Indianapolis、IN)から得た。O−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。MBP−α融合体をコードしている発現ベクターpMAL−c2xは、New England Biolabs(Beverly、MA)から得た。M.jannaschii(MJ1267)LivFタンパク質のcDNAを含むプラスミドを、American Type Culture Collectionから得た。アルツハイマーの前駆体タンパク質(APP)のcDNAを含むプラスミドpAPP770は、Dr.J.Herz、Dept.Molecular Genetics、UT Southwestern、Dallas、TXから贈呈された。チオレドキシンのcDNAを含むプラスミドpTRx.parallel1は、Dr.K.Gardner、Dept.Biochemistry、UT Southwestern、Dallas、TXから贈呈された。グルタチオンS−トランスフェラーゼのcDNAを含むプラスミドpGex−2tは、Amersham/Pharmanica(Piscataway、NJ)から得た。
【0205】
α−融合発現ベクターの構築
CFTRの残基404〜644(NBD1−B)及び419〜655(NBD1−D)をコードしている相補的DNA断片を、前述のように生成したpET28a発現プラスミドからのNdel及びXholを使用して切除した。(Qu及びThomas、1996)。近年発表されたHisP NBD結晶構造相同性に基づいて(Hung他、1998)、これらの構築物はCFTRの第1のNBD全体を含むと予想される。結果として生じた断片を、マルトース結合タンパク質(MBP)の代わりにNdel/Sallで消化したpMal−c2×に連結させ、α断片(完全長β−ガラクトシダーゼからの残基7〜58)を有するイン・フレームの融合体を形成した。発現カセットPCRを使用して、観察する他のα融合構築物を組み立てた。MJ1267のcDNAも、pMal−c2×のNdel及びSall部位にサブクローン化した。結果として生じたベクターは、MJ1267の間にイン・フレームの停止コドン、及びα融合構築物を完成させる位置指定突然変異誘発によって除去されたpMAL−c2×のポリリンカーを含んでいた。TRx、GST及びAβ(APP残基1〜42)をNdel/Sac1で消化したpMal−c2xにそれぞれ連結させた。タンデムAβ/α融合構築物、Aβ−rptを組み立てるために使用したクローニング戦略は、他で記載された戦略(Culvenor他、1998)と同様のものであり、内部EcoRI部位を使用して、介在配列の無い正確なAβ(1〜42)繰り返し体を生成させた。すべての標的をpMal−c2×ベクター中でサブクローン化し、したがって、同じプロモーターを使用した。さらに、評価したABCトランスポーターNBDも、pET28aのT7プロモーターの制御下で、BL21細胞中において発現させた。それぞれの場合において、PCR(登録商標)産物及び構築物の迫真性を、制限地図及びDNAのシークエンシングによって確認した。
【0206】
いくつかの発現したタンパク質(MJ1267、CFTR−NBD1、TRx、GST及びAβ)用のマーカーとして機能させるために、HA標識した配列を、標識配列をコードする2つのアニール化した相補的なオリゴヌクレオチドを使用して、pMal−c2×発現ベクターのSall部位中に導入し、Sallリンカー配列の側面に置いた。結果として生じた連結生成物の正しい位置を、DNAのシークエンシングによって確認した。
【0207】
位置指定突然変異誘発
QuickChange突然変異誘発キット(Stratagene、La、Jolla、CA)を使用して、オリゴヌクレオチドを対象とする突然変異誘発を行い、発現ベクターpMal−c2×中で、突然変異体MBPタンパク質を生成させた。使用したアンチセンス突然変異プライマーの配列は、以下のものであった。
G32D/I33P −
5’−GATGCTCAACGGTGACTTTAGGATCGGTATCTTCTCGAATTTC−3’
G32D −
5’−CAACGGTGACTTTAATATCGGTATCTTTCTCG−3’
133P −
5’−GGTGACTTTAGGTCCGGTATCTTTCTCG−3’
【0208】
DNAのシークエンシングによって、突然変異体の取り込みを観察した。Qiagen Inc.によって供給される試薬を使用して、プラスミドDNAを精製した。
【0209】
融合タンパク質の発現
標準的な方法によって、発現構築物をDH5α大腸菌に形質転換し、100μg/mLのアンピシリン(amp)を補ったLB寒天プレート上でコロニーを選択した。1つのコロニー、10mLのLB+amp培養物を接種し、37℃で一晩成長させた。翌日、一晩培養したものを1000倍に希釈し、10mLのLB+amp培養物にして、中間対数期(OD600〜0.5)に成長させた。IPTGを0.3mMまで添加することによって、タンパク質生成を誘導し、さらに細胞を指定時間インキュベートした。
【0210】
β−galの相補性のin vitroでのアッセイ
融合タンパク質の発現が終了した後、10,000×gでの2分間の遠心分離によって、細胞(1.5mL)を採取した。上澄みを取り除いた後、細胞のペレットを、1mLの緩衝液Z(10mM KCl、2.0mM MgSO、100mM NaHPO、pH7.0)中に再懸濁させた。細胞を再びペレット状にし、0.3mLの緩衝液Z中に再懸濁させ、液体窒素及び37℃の水浴間での3回の凍結/解凍サイクルによって溶かした。次に、結果として生じた細胞の溶解物0.1mLを、清潔なミクロフュージ・チューブに移し、そこに0.27%のβ−メルカプトエタノールを補った緩衝液Z(0.7mL)を加えた。160μLのONPG溶液(緩衝液Z中に4.0mg/mL)を加えることによって反応を開始させ、37℃で10分間インキュベートした。1M NaCOを0.4mL加えることによって、反応を停止させた。次いで、チューブを10,000×gで10分間遠心分離して残骸を除去し、420nmでの上澄みの吸収を測定した。
【0211】
可溶性及び不溶性分画の分析
発現した融合タンパク質の溶解性特性を生化学的に分析するために、指定時間かけて誘導した細胞からの3mLの培養物を、遠心分離によって採取し、1度洗浄し、600μLの溶解溶液(100mM NaCl、1mM EDTA、50mM Tris Cl、pH7.6)中に再懸濁させた。超音波処理(50℃で30秒3回の一定サイクル)、及びマイクロチップ・プローブを備えるBransonモデル450sonifierを使用した4というパワー出力によって、細胞懸濁物を溶解させた。すべての操作は氷上で行った。超音波処理の後、ミクロフュージ中において4℃で10分間、溶液を10,000×gで遠心分離して、可溶性と不溶性分画を分離した。適切な場合は、上澄み及びペレット分画を、SDS PAGE及びウエスタン・ブロッティングによって分析した。
【0212】
SDS PAGE及びウエスタン・ブロッティング
Schagger及びvon Jagow(1987)の緩衝液システムを使用して、10%Tricine−SDSポリアクリルアミド・ゲルによる電気泳動によって、発現したタンパク質を分析した。コーマーシ・ブルーを用いた染色によって、タンパク質のバンドを視覚化した。ウエスタン・イムノブロッティングについては、タンパク質をゲルからニトロセルロースに移すための、標準的な方法を使用した。結果として生じた膜を、Tween−20及び10%脱水ミルクを含むTBS中で、少なくとも1時間ブロックし、指定の一次抗体と室温でインキュベートした。適切なHRP結合型二次抗体及びX線フィルムを使用して、ECL(Amersham、Piscataway、NJ)により、免疫反応性のバンドを視覚化した。コーマーシ染色したゲル及び露光されたX線フィルム上でのバンドの密度をAgfa Arcusスキャナで測定し、Molecular Analystソフトウェア(BioRad、Hercules、CA)を使用して定量化した。
【0213】
β−galの相補性に関する青色/白色スクリーニング
個別の発現構築物を含むDH5αのシングル・コロニーを、α−融合タンパク質がin vivoでβ−gal活性を補う能力について分析した。それぞれの構築物に寄生する細菌を、100μg/mLのアンピシリン、80μg/mLのXgal、及び0.1mMのIPTGを補ったLB寒天プレート上で、シングル・コロニーに画線培養した。このプレートを37℃で18〜48時間インキュベートし、α相補的なコロニー中で青色に視覚化することによって、β−galの活性を評価した。
【0214】
96ウエルのプレート中でのβ−galの相補性に関する比色定量スクリーニング
指定の発現構築物それぞれに寄生する、前述のような一晩培養物からの細胞を、中間対数期(OD600≒0.5)に成長させた。125μlのそれぞれの培養物を、100μg/mLのアンピシリン及び0.6mMのIPTGを補った125μlのLB培地を含む、底が平らな96ウエルのプレートの個々のウエルに移した(結果として最終[IPTG]は0.3mMになった)。次いで、このプレートを37℃でオービット・シェーカー上に置き、迅速にシェーキングした。1時間のインキュベーションの後、X−galを80μg/mLの最終濃度まで加え、プレートを一晩、37℃のシェーカーに戻した。
【0215】
実施例2:結果
α−断片キメラ体がβ−galのω−断片を補う能力を試験するため、また活性β−galを生成することによって標的タンパク質の溶解性を報告するために、誘導性細菌発現プラスミド中において、モデルのポリペプチドをα−断片のN末端に融合させた(図1B)。最初の実験では、大腸菌のマルトース結合タンパク質(MBP)に焦点を当てた。MBPは、正常では大腸菌のペリプラスム中に分泌されるが、しかしながら、本実験で使用する構築物はリーダー配列が欠けており、したがって、ω−断片が位置する細胞質中に折りたたまれている。
【0216】
発現されるα−融合タンパク質がin vivoでβ−gal活性を補う相対的能力を評価するために、融合発現構築物に寄生する大腸菌を、IPTG/X−gal指標プレート上に平板培養し、結果として生じるコロニー中で青色が発展するのを観察した。54残基α−断片(β−galの残基6〜59)を発現する、pUC19−形質転換型DH5α大腸菌が、最も強烈に青い。これは、α−断片のみに起因するβ−galの相補性のレベルを表す。MBP−α融合タンパク質(MBP残基1〜366、α:β−galの残基7〜58)は、非常なα−相補性を生み出すが、pUC19について観察されるもの未満である。Yanisch−Perron他(1985)。
【0217】
以前に、溶解性の低下及びMBPのペリプラスム収率の低下につながる、いくつかの突然変異体を同定した(Betton Hofnung、1986)。たとえば、2つの残基、133P及びG32Dの突然変異体は、可溶性ペリプラスムMBPを100倍を超えて減少させた。この二重突然変異体をMBP/α融合構築物中に導入し、指標プレート上でα−相補性について観察した。野生型MBPと二重突然変異体は、等レベルで発現した。以前に報告された、これらの突然変異体のin vivoでのMBPの溶解性に対する影響と一致して、G32D/I33P二重突然変異体は、溶解性、したがって指標プレート上で融合タンパク質がβ−gal活性を補う能力を大幅に低下させた。
【0218】
アッセイ・システムの一般性を試験するために、一続きのα−融合構築物を生成させた。TRxまたはGST(悪質なパターンの溶解性を促進させるために融合体として通常使用される、溶解性が高い2つのタンパク質)のいずれかのαと、指標プレート上のDH5α中の発現体の融合によって、青色が発展する結果となり、これはMBP/α融合構築物について観察されるものと同じくらい強烈である。次に、2つのATP結合カセット(ABC)トランスポーターからの、一続きのヌクレオチド結合ドメイン(NBD)を生成させ、調べた。2つは、嚢胞性繊維症の膜内外伝導性制御因子(CFTR)の第1のNBD:NBD1−B(CFTR残基404〜644)、及びNBD1−D(CFTR残基419〜655)を含むと予想されるポリペプチドである。正常では相互作用するタンパク質の他のドメインの不在下での本来の限られた溶解性、または安定性/誤ったフォールディングが非常に低いこと、またはこの両方のために、このドメインは溶解性が低い。このドメイン中のいくつかの突然変異によって、in vivoでの完全長のCFTRの適切なフォールディング妨げられ、したがって嚢胞性繊維症につながる。第3のNBD、LivF(MJ1267)は、高温菌archaeon M.jannaschiからの、分枝鎖アミノ酸トランスポーターのサブユニットである。CFTR NBD1は不溶性であり、野生型MBP(Ko他、1993)またはGST(King及びSorscher、1998)などの可溶性タンパク質に融合しない限り、大腸菌中で発現されるとき封入体を形成することが示されている(Qu及びThomas、1996)。しかしながらMJ1267は、より可溶性であることが分かっており、BL21大腸菌中のT7発現系から10%可溶性タンパク質を生成する。
【0219】
指標プレート上のDH5α中で発現されるとき、CFTR NBD/α融合体は、成長の48時間後でも、非常に青色が少ない結果となるが、NBD1−D/α融合体は、NBD1−Bよりも測定的に相補性であるようである。対照的に、MJ1267/α融合体の発現は、CFTR NBD/α融合タンパク質のいずれかと比較すると、結果として非常に高レベルの青色につながる。MBP/α融合タンパク質は、グループとしてのNBD/α融合体よりも高レベルで発現し、したがって、より活性がある。指標プレート上の青色によって証明されるα−相補性の相対レベルは、試験するそれぞれの構築物について、シングル・コロニーのレベルで観察することができ、平板培養する細胞の密度に依存しない指標を提供することに留意すべきである。
【0220】
α−相補性アッセイが、迅速なスループット・スクリーニングに従うフォーマットに適合性があるかどうかを試験するために、前に記載した構築物を、96ウエルプレートでのβ−galアッセイにおける青色の発生について分析した。それぞれの構築物についての、ミクロタイター・プレートでのアッセイにおいて得られる青色のレベルは、寒天プレートでのアッセイにおいて得られるレベルとよく合致する。実際、2つのCFTR−NBD/α融合体の比較によって得られる色のレベルの違いは、96ウエルプレートでのβ−galアッセイにおいてより明らかである。
【0221】
指標プレート上の青色の強度が、標的タンパク質の溶解性を報告しているという仮説を立証するために、生化学的分画実験において、可溶性タンパク質と不溶性タンパク質の量を測定した。G32D、133P、及びG32D/I33P−MBP/α融合体を発現する大腸菌に、遠心分離によって細胞破壊及び分画を施した。それぞれの融合タンパク質についての、可溶性及び不溶性分画のSDS PAGEによる分析によって、溶解性とXgalプレート上での青色のレベルの間の相関関係が明らかになった。agaプレートでのβ−gallアッセイは、長いインキュベーション時間の後でも、不溶性から高レベルの溶解性への変化に対して最も敏感であり、その範囲は最も実用的であることに留意することが重要である。野生型MBP/α融合体は主に上澄みに分かれるが、二重突然変異体(G32D/I33P)は主にペレットに分かれる。分画の結果を、抗−MBP抗体とプローブさせる、ウエスタン・ブロットによってさらに確認した。可溶性であるMBP/α融合体の分画は、以前に発表されたα−断片マーカーの無いこれらの突然変異体(Betton及びHofnung、1996)の、安定性及びフォールディング収率と一致する。このことは、α−断片はMBP融合タンパク質の全体的な溶解性特性に大きな影響を与えず、したがってα−断片は、標的タンパク質の溶解性の良いレポーターであることを示唆する。同様に、GST/α及びTRx/α融合体について観察される高レベルの青色は、生化学的分画実験と非常に相関関係があり、大部分のこれらの両方のタンパク質分画が可溶性分画になることを示す。
【0222】
生化学的溶解性とα−相補性の間の相関関係(プレート・アッセイにおけるコロニーの青色によって示されるような)が、NBD/α融合構築物についても証明された。両方のCFTR−NBD/α融合タンパク質ともに、青色をほとんど示さず、ほぼすべての融合タンパク質分画は、α−断片と共に発現されるとき(DH5α発現)であれ、α−断片無しで発現されるとき(BL21発現)であれ、不溶性分画になる。対照的にMJ1267は、α−断片融合体として発現されるとき、CFTR NBD/α融合体のいずれかと比べて、非常に高レベルの青色を生み出す。このことは、あるいはα−断片を有するか(DH5α発現)、あるいはα−断片が無い(BL21発現)MJ1267の部分的溶解性と相関関係がある。これらの結果を一緒にして、これらの場合、比較的小さなα−断片は、標的ポリペプチドに融合するとき、標的の溶解性に大きな影響は与えず、他の場合は不溶性である標的(CFTR−NBD)の溶解性は上昇させず、部分的に可溶性である標的(MJ1267)の溶解性を低下させることもないことが示唆される。
【0223】
それぞれの融合標的によるβ−galのα−相補性の定量的測定値を、細胞溶解物中の活性の直接的な測定によって得た。合計4つのMBPフォールディング変異体を使用して、β−gal活性と生化学的溶解性の間の、標的系内での定量関係を確立した。表3は、これらのin vitroでの酵素アッセイの結果を要約するものである。
Figure 2004500092
【0224】
β−gal活性の1単位は、1分間当り、1μモルのONPGをo−ニトロフェノール及びD−ガラクトースに水解するのに必要な酵素量として定義される。MBP(及びその変異体)とα−フラグメントとの間のポリリンカーは、36残基の長さであることに留意する。このリンカーは、CFTR−、LivF−、GST−、及びTRx−α融合構築体の構築において、9残基に減少した。
【0225】
活性は、これらの構築物について観察される、青色の相対的レベルと非常に相関関係がある。プレート・アッセイは、中程度の溶解性の標的(MBP一重突然変異体)から溶解性の高い標的を区別することがあまりできず、これはおそらくコロニーの成長中のシグナルの組み込みによるものである。図2は、コーマーシ染色したゲルの濃度測定による、それぞれのMBP/α融合体についての、酵素活性(表3)と生化学的可溶分画の直線関係を示す。ここでも活性は、Betton及びHofnung(1996)によって報告された非融合型MBPについて、ペリプラズムのフォールディング収量(yield)と直線的な相関関係を示し、さらにこれらのタンパク質の固有なフォールディング/溶解性の特性を報告するアッセイの能力をサポートしている。以前にBetton及びHofnung(1996)によって報告された影響と比較したときの、ここで報告する異なる程度の影響は、フォールディングが起こる細胞環境を映し出している可能性がある。なぜなら本発明の構築物は、細胞質中でフォールドするはずであるからである。
【0226】
嚢胞性繊維症に加えて、多くの他のヒト疾患は、不適切なフォールディング及び/またはタンパク質の凝集と関係がある(Thomas他、1995;Tan及びPepys、1994;Wells及びWarren、1998)。構造的な相補性アッセイがこのようなタンパク質に適用性があるかどうかを試験するために、羅患した個体の脳内で筋原繊維を形成する、アルツハイマーのAβ(1〜42)ペプチドを追加の試験例として選択した。α−断片に融合し指標プレート上の大腸菌中で発現されるとき、融合タンパク質はβ−gal活性を効率良く補うことができず、青色がほとんど発生しない結果となる。対照的に、in vitroでの筋原繊維形成を遅らせることが知られている(Wood他、1995)、Aβ(F19P)の位置19でのフェニルアラニンからプロリンへの突然変異によって、等しい発現レベルでの、指標プレート上での明白で測定可能な青色の増加、β−gal活性の約3倍の増大、及び可溶性分画中の融合タンパク質の増加という結果になる。近年、Culvenor等は、酵母菌中のタンデム・ヘッドツーテイル(head−to−tail)二重鎖としてのAβ(1〜42)の発現によって、Aβ−免疫反応性材料「大きな細胞内堆積物」の生成を報告した(Culvenor他、1998)。このアッセイがこのような構築物の溶解状態を報告する能力を評価するために、本発明人は、α−断片との融合体としてAβのタンデム・リピート(Aβ−rpt)を組み立て発現させた。Aβ−rpt/α融合タンパク質を発現するコロニーは、指標プレート上では検出可能な青色を示さず、in vitroでのβ−gal活性が野生型Aβ/α融合体について観察されるものよりも低く、可溶性分画中に検出可能なタンパク質は存在しない。興味深いことに、Aβ−rptタンパク質は凝集して、非常に分子量が大きい不溶性の種であるラダーを形成し、これは単独のAβ/α融合体には存在しない性質であり、おそらく病状をより反映するものである。
【0227】
本明細書で開示し特許請求するすべての組成物及び/または方法は、本開示に照らして、余分な実験をすることなく作製実施することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態に則して説明してきたが、本明細書に記載する組成物及び/または方法に、方法のステップあるいは一連のステップに、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、変形形態を適用できることは当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的に関係があるいくつかの作用物質を、本明細書に記載する作用物質で置き換えても、同じまたは同等の結果が得られることは明らかであろう。当業者に明らかなこのような同等な置き換え及び変形形態はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の精神、範囲及び概念の範囲に含まれるものとみなされる。
【0228】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書に記載されたものを補充するものとして、代表的な方法等の詳細が提供される範囲で、参照することによって本明細書に具体的に組み入れられるものである。
【0229】
Figure 2004500092
【0230】
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【0231】
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【0232】
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【0233】
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【0234】
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【0236】
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【0240】
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【0241】
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【0246】
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【0247】
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【0248】
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【0249】
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【0250】
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【0251】
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【図面の簡単な説明】
【図1】
構造的な相補性に基づくin vivo溶解性アッセイを示す図である。(図1A)相補性溶解性アッセイを示す概略図である。P(四角形)は標的タンパク質を表し、α(三角形)及びω(台形)は四量体β−ガラクトシダーゼのそれぞれの相補的断片を表す。角括弧は、可溶性の(折りたたまれた)標的/α融合体の利用性に関するアッセイの、濃度依存性を示す。Kは、濃度依存性平衡会合/解離反応を単に強調するために示す。(図1B)標的タンパク質/α断片C末端融合発現構築物(α断片、完全長β−ガラクトシダーゼからの7〜58個の残基)を示す概略図である。「HA」は、調べたいくつかの構築物中に存在する、挿入したインフルエンザ赤血球凝集素(HA)免疫タグ(残基配列YPYDVPDYA)の位置を示す。
【図2】
β−ガラクトシダーゼ活性と融合タンパク質の溶解性及びフォールディングの相関関係を示す図である。分散プロットは、調べたそれぞれのMBP/α断片融合タンパク質についての、細胞溶解液中で測定したin vitroβ−ガラクトシダーゼ活性(表1を参照のこと)と、分画可溶(fraction soluble)(円)及び報告された原形質膜の収量(yield)(四角)の相関関係を示す。

Claims (40)

  1. タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を評価するための方法であって、
    a)(i)融合タンパク質をコードしている遺伝子であって、前記融合タンパク質がマーカー・タンパク質の第1の断片に融合している目的のタンパク質を含み、前記第1の断片が目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えない遺伝子と、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターとを含む発現構築物を提供すること、
    b)前記マーカー・タンパク質の第2の断片も発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させることであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造的に相補性であることができること、及び
    c)構造的な相補性を判定することを含み、
    適切なネガティブ・コントロールで観察した構造的な相補性と比べて構造的な相補性がより高いと、前記タンパク質のフォールディング及び/または溶解性が適切であることが示される方法。
  2. 前記目的のタンパク質への前記融合がC末端である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記目的のタンパク質への前記融合がN末端である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記マーカー・タンパク質が標的結合タンパク質、酵素、タンパク質阻害物質、蛍光団及び発色団からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記マーカー・タンパク質が標的結合タンパク質である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記標的結合タンパク質がユビキチンである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記マーカー・タンパク質が発色団である、請求項4に記載の方法。
  8. 前記発色団が緑色蛍光性タンパク質、青色蛍光性タンパク質、黄色蛍光性タンパク質、ルシフェラーゼまたはアクオリンである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記マーカー・タンパク質が酵素である、請求項4に記載の方法。
  10. 前記酵素がβ−ガラクトシダーゼ、チトクロームc、キモトリプシン阻害物質、RNアーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、インベルターゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、チオレドキシンC、ラクトースパーミアーゼ、アミノアシルtRNAシンターゼ、及びジヒドロ葉酸リダクターゼである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記酵素がβ−ガラクトシダーゼである、請求項10に記載の方法。
  12. 第1の断片がβ−ガラクトシダーゼのα−ペプチドであり、前記第2の断片がβ−ガラクトシダーゼのω−ペプチドである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記目的のタンパク質がアルツハイマーのアミロイドペプチド(Aβ)、SOD1、プレセニリン1及び2、α−シヌクレイン、アミロイドA、アミロイドP、CFTR、トランスチレチン、アミリン、リソザイム、ゲルソリン、p53、ロドプシン、インシュリン、インシュリンレセプター、フィブリリン、α−ケト酸デヒドロゲナーゼ、コラーゲン、ケラチン、PRNP、免疫グロブリン軽鎖、心房性ナトリウム利尿性ペプチド、精嚢外分泌タンパク質、β2−ミクログロブリン、PrP、プレカルシトニン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン6、アタキシン7、ハンチグチン、アンドロゲンレセプター、CREB結合タンパク質、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症関連のタンパク質、マルトース結合タンパク質、ABCトランスポーター、グルタチオンSトランスフェラーゼ、及びチオレドキシンである、請求項1に記載の方法。
  14. 前記第2の断片をコードしている遺伝子が前記宿主細胞の染色体上に保有されている、請求項1に記載の方法。
  15. 前記第2の断片をコードしている遺伝子が前記宿主細胞中でエピソームによって保有されている、請求項1に記載の方法。
  16. 前記宿主細胞が細菌細胞、昆虫細胞、酵母菌細胞、線虫細胞、及びホ乳動物細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記宿主細胞が細菌細胞である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記細菌細胞が大腸菌である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記プロモーターがTaqプロモーター、T7プロモーター、またはPlacプロモーターである、請求項18に記載の方法。
  20. 前記宿主細胞が線虫細胞である、請求項16に記載の方法。
  21. 前記線虫細胞がC.elegans細胞である、請求項20に記載の方法。
  22. 前記宿主細胞が昆虫細胞である、請求項16に記載の方法。
  23. 前記宿主細胞がS.fugeria細胞である、請求項22に記載の方法。
  24. 前記宿主細胞が酵母菌細胞である、請求項16に記載の方法。
  25. 前記プロモーターがCupADHまたはGalである、請求項14に記載の方法。
  26. 前記宿主細胞がホ乳動物細胞である、請求項16に記載の方法。
  27. 前記プロモーターがPepCkまたはtkである、請求項26に記載の方法。
  28. 前記ネガティブ・コントロールが前記マーカー・タンパク質の第2の断片が欠けている宿主細胞を使用する、請求項1に記載の方法。
  29. 前記ネガティブ・コントロールが不適切に折りたたまれており、かつ/または不溶性である融合タンパク質を使用する、請求項1に記載の方法。
  30. タンパク質のフォールディング及び/または溶解性の突然変異体をスクリーニングするための方法であって、
    a)(i)目的のタンパク質と、(ii)マーカー・タンパク質の第1の断片であって、前記第1の断片が目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えず、前記融合タンパク質が、前記宿主細胞中で発現されるとき、適切に折りたたまれていず、かつ/または可溶性である第1の断片とを含む融合タンパク質をコードしている遺伝子を提供すること、
    b)前記目的のタンパク質をコードしている遺伝子の部分に突然変異を引き起こさせること、
    c)前記マーカー・タンパク質の第2の断片を発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させることであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造的に相補性であることができること、及び
    d)構造的な相補性を判定することを含み、
    突然変異していない融合タンパク質で観察した構造的な相補性と比べて構造的な相補性が相対的に増大していると、前記タンパク質の適切なフォールディング及び/または溶解性が増大していることが示される方法。
  31. 前記目的のタンパク質への前記融合がC末端である、請求項30に記載の方法。
  32. 前記目的のタンパク質への前記融合がN末端である、請求項30に記載の方法。
  33. 前記マーカー・タンパク質が標的結合タンパク質、酵素、タンパク質阻害物質、発色団からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
  34. 前記宿主細胞が細菌細胞、昆虫細胞、酵母菌細胞、線虫細胞、ホ乳動物細胞からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
  35. タンパク質のフォールディング及び/または溶解性を調節する候補となる調節物質をスクリーニングするための方法であって、
    a)(i)融合タンパク質をコードしている遺伝子であって、前記融合タンパク質がマーカー・タンパク質の第1の断片に融合している目的のタンパク質を含み、前記第1の断片が目的のタンパク質のフォールディングまたは溶解性に影響を与えない遺伝子と、(ii)前記宿主細胞中で活性があり、前記遺伝子に動作可能に結合しているプロモーターとを含む発現構築物を提供すること、
    b)前記マーカー・タンパク質の第2の断片を発現する宿主細胞中で前記融合タンパク質を発現させることであって、前記第2の断片が前記第1の断片と構造的に相補性であることができること、
    c)宿主細胞を前記候補となる調節物質と接触させること、及び
    d)構造的な相補性を判定することを含み、
    前記候補となる調節物質の不在下で観察した構造的な相補性と比べて構造的な相補性が相対的に変化していると、前記候補となる調節物質がタンパク質のフォールディング及び/または溶解性のモジュレーターであることが示される方法。
  36. 前記目的のタンパク質への前記融合がC末端である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記目的のタンパク質への前記融合がN末端である、請求項35に記載の方法。
  38. 前記マーカー・タンパク質が標的結合タンパク質、酵素、タンパク質阻害物質、発色団からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
  39. 前記宿主細胞が細菌細胞、昆虫細胞、酵母菌細胞、線虫細胞、ホ乳動物細胞からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
  40. 前記候補となる調節物質がタンパク質、核酸または小分子からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
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