JP2004500058A - サイトカインレセプター様ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体 - Google Patents

サイトカインレセプター様ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体 Download PDF

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Abstract

本発明は、新規なヒトCRポリペプチドおよびそのようなCRポリペプチドをコードする遺伝子のコード領域を含む、単離された核酸に関する。本発明によってまた、ヒトCRポリペプチドを産生するためのベクター、宿主細胞、抗体および、それらを産生するための組換え方法が提供される。本発明はさらに、これらの新規なヒトCRポリペプチドに関する障害を診断および処置する方法に関し、詳細には、これらの新規なヒトCRポリペプチドに関する障害を診断および処置するために有用な診断方法および治療方法に関する。

Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、新規のサイトカインレセプター様(CR)タンパク質に関する。より詳細には、新規のCRポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供される。新規のCRポリペプチドおよびこれらのポリペプチドに結合する抗体が提供される。ヒトCRのポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを産生するための、ベクター、宿主細胞、ならびに組換え法および合成法もまた提供される。本発明はさらに、これらの新規のCRポリペプチドに関連する障害を診断、処置、予防および/または予後診断をするために有用な、診断方法および治療方法に関する。本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法に関する。本発明はさらに、本発明のポリペプチドの産生および機能を阻害するための方法および/または組成物に関する。
【0002】
(発明の背景)
サイトカインは、免疫調節、免疫細胞刺激、および/または増殖、ならびにアレルギー反応の調節を含む広範な生物学的活性を惹起する、大きいグループの分泌タンパク質である。膜貫通レセプターのファミリーを通じたサイトカインシグナルはサイトカインレセプターとして公知であり、クラスIまたはクラスIIのいずれかに分類される(O’Shea,J.J.,Immunity,7:1〜11(1997))。クラスIサイトカインレセプターは、リガンド結合に関与し、JAKキナーゼアクチベータ分子に会合する、単鎖レセプターとして存在する。クラスIIサイトカインレセプターは、二本鎖からなり、この一本は、リガンド結合に関与し、そしてもう一本は、シグナル伝達のためのJAKキナーゼとの会合に必要である(O’Shea,J.J.Immunity,7:1〜11(1997))。
【0003】
サイトカインレセプターは、固有の触媒活性を欠く。代わりに、これらのレセプターは、JAKキナーゼとして公知のキナーゼの構造的に特有のクラス(ヤヌスキナーゼ)(Janus Kinase)と物理的に会合する。JAKは、ヒトサイトカインレセプターによるシグナル伝達の本質的なメディエーター(媒介物)である。サイトカインレセプターは、一般に、シグナル伝達分子上でSH2ドメインによって認識される、チロシン残基のリン酸化の手段によってシグナル伝達経路を活性化する(Ihle,J.N.Nature,377:591〜94(1995))。
【0004】
JAK活性化は、レセプター上のチロシン残基のリン酸化、およびSTATのような下流のシグナルトランスデューサの補充を生じる。STAT(シグナルトランスデューサおよび転写の活性化因子)(Signal Transducers and Activators of Transcription)は、SH2ドメインを含み、ヒトサイトカインレセプター上のリン酸化されたチロシン残基とのこれらのシグナルトランスデューサーの会合を可能にする(O’Shea,J.J.,Immunity,7:1〜11(1997))。STATリン酸化が生じ、これは、STATのホモ二量体化またはヘテロ二量体化、および核への二量体複合体の転位を生じ、これらは遺伝子転写の配列特異的アクチベーターとして機能する(Ihle,J.N.Nature,377:591〜94(1995);Karnitz,L.M.およびR.T.Abraham,Curr.Op.Immun.,7:320〜26(1995))。
【0005】
サイトカインレセプター活性は、ホスファターゼの活性化を通じて負に調節されると考えられる。例えば、造血性細胞ホスファターゼ(HCP)は、チロシン残基に特異的なカルボキシ特異的触媒性ドメイン、および2つのアミノ末端SH2ドメインを含み、ヒトサイトカイン(単数または複数)とのHCPの会合を可能にする(Ihle,J.N.,Nature,377:591〜94(1995))。HCPタンパク質の障害は、ヒトサイトカインレセプターの構成的活性化およびサイトカイン応答の過剰発現を生じ得る。ヒトサイトカインレセプターの翻訳産物に特異的な抗体は、抑制されたまたは増強されたサイトカイン応答から生じる疾患および/または障害を緩和または防止するために有用であり得る。
【0006】
このように、新規なヒトCrタンパク質を同定および開発するための明確な必要性が存在する。構造的に関連するが、このようなタンパク質は、種々の細胞および組織型において、多様かつ多面性の機能を有し得る。レセプター型の分子は、低分子および他のこのような薬理学的に有用な因子の標的ベースのスクリーニングにおいて有用性を証明するはずである。このようなレセプターに対して惹起されたモノクローナル抗体は、抗腫瘍、診断、または他の能力において治療剤として有用であることが証明され得る。本発明の精製されたヒトCRタンパク質は、標的結合分子、またはCRタンパク質と相互作用し得るシグナル伝達経路タンパク質の同定、特徴づけ、および精製に有用な検索ツールである。さらに、新しいヒトCRタンパク質の同定は、核酸およびタンパク質レベルでの誘導体、アゴニストおよびアンタゴニストの範囲の開発を可能にする。これは次に、他の状態の中でもとりわけ、癌、炎症、神経学的障害および免疫の疾患および/または障害のような状態の範囲の処置および診断における適用を有する。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、配列表に開示され、そして/または表1に記載されかつAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されたヒトcDNAプラスミドに含まれる、ポリヌクレオチド配列を含むか、または代替的には、その配列からなる単離された核酸分子を含む。これらの核酸分子のフラグメント、改変体、および誘導体もまた、本発明に含まれる。本発明はまた、CRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか、または代替的には、それらのポリヌクレオチドからなる単離された核酸分子を含む。本発明は、これらのポリヌクレオチドによってコードされるCRポリペプチドをさらに含む。配列表に開示され、そして/または表1に記載されかつATCCに寄託されたヒトcDNAプラスミドによってコードされるようなCRポリペプチドを含むか、または代替的にはそれらのポリペプチドからなるアミノ酸配列が、さらに提供される。これらのポリペプチドに結合する抗体もまた、本発明に含まれる。これらのアミノ酸配列のポリペプチドのフラグメント、改変体、および誘導体もまた、これらのポリペプチドおよびこれらのポリペプチドを結合する抗体をコードするポリヌクレオチドと同様に、本発明に包含される。
【0008】
(詳細な説明)
(表)
表1は、本願に関連してATCCで成された寄託物のATCC寄託物、寄託日、およびATCC受託番号を要約する。表1はさらに、cDNAクローンID、cDNAクローンIDに含まれるベクターの種類、ヌクレオチド配列ID番号、開示される配列に含まれるヌクレオチド、開示された配列の開始コドンの5’ヌクレオチドの位置、アミノ酸配列ID番号、および開示された配列によってコードされるORFの最後のアミノ酸を含む、以下の各「遺伝子番号」に関する情報を要約する。
【0009】
表2は、公開されたESTを示し、それらの少なくとも1、2、3、4、5、10、またはそれ以上の任意の1以上のこれらの公開されたEST配列は、必要に応じて本発明の特定の実施形態から除外される。
【0010】
表3は、表1に開示されるクローンに対応するポリヌクレオチドの発現プロフィールを要約する。第1列は、表1に開示される各コンティグ配列に関連するcDNAクローンについて、特有のクローン識別子「クローンID番号Z」を提供する。列2、「ライブラリーコード」は、本発明のポリヌクレオチドを発現する組織および/または細胞株ライブラリーの発現プロフィールを示す。列2の各ライブラリーコードは、表4において提供されるライブラリーコードおよびライブラリーの説明に対応する組織/細胞供給源の識別子を表す。これらのポリヌクレオチドの発現は、試験される他の組織および/または細胞ライブラリーにおいて観察されなかった。当業者は、本発明の対応するポリヌクレオチドの顕著な発現パターンを示す組織を同定するためか、または顕著なおよび/もしくは特異的な組織の発現を示すポリヌクレオチドを同定するためにこの情報を慣用的に使用し得る。
【0011】
表4、列1は、表3、列2に開示されるライブラリーコード(Library Code)を提供する。列2は、対応するライブラリーが由来する組織または細胞供給源の説明を提供する。疾患組織に対応するライブラリーコードは、単語「疾患」として3列目に示される。
【0012】
(定義)
以下の定義は、本明細書全体を通して使用される特定の用語の理解を容易にするために提供される。
【0013】
本発明において、「単離された(単離した)」とは、その本来の環境(例えば、それが天然に存在する場合は天然の環境)から取り出された物質をいい、したがって、その天然の状態から「人間の手によって」変更されている。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターまたは組成物の一部であり得るか、あるいは細胞中に含まれ得、そしてなお「単離されている」状態であり得る。なぜなら、そのベクター、組成物、または特定の細胞は、そのポリヌクレオチドの本来の環境ではないからである。用語「単離された」は、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー、細胞全体の総RNA調製物またはmRNA調製物、ゲノムDNA調製物(電気泳動により分離され、そしてブロットへトランスファーされたものを含む)、剪断された細胞全体のゲノムDNA調製物、あるいは本発明のポリヌクレオチド/配列の識別する特徴がないことが当該分野で示されている他の組成物をもいわない。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」とは、(表1の第5列に記載にされる)配列番号X(配列番号X)に含まれる核酸配列を有する分子、または(表1の第3列に記載され、そしてATCCに寄託されたプラスミドのプール内に含まれる)cDNAプラスミドZをいう。例えば、このポリヌクレオチドは、5’および3’非翻訳配列、天然または人工のシグナル配列を伴うかまたは伴わないコード領域、タンパク質コード領域、ならびにこの核酸配列のフラグメント、エピトープ、ドメイン、および改変体を含む、全長cDNA配列のヌクレオチド配列を含み得る。さらに、本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」とは、広く定義される本発明のポリヌクレオチド(cDNAに対応する配列のポリAテールの翻訳から生じるポリフェニルアラニンペプチド配列もポリリジンペプチド配列も明らかに除く)によってコードされるアミノ酸配列を有する分子をいう。
【0015】
本発明では、配列番号Xの配列を含む代表的プラスミドが、American Type Culture Collection(「ATCC」)に寄託され、そして/また表1に記載されている。表1に示すように、各プラスミドは、cDNAクローンID(識別番号)およびATCC受託番号(ATCC受託番号Z)によって同定される。単一の寄託物としてプールし、そして寄託したプラスミドは、同じTACC受託番号を有する。ATCCは、10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110−2209,USAに位置する。ATCC寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に拠って行われた。
【0016】
本発明の「ポリヌクレオチド」はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号Xに含まれる配列、またはその相補体(例えば、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドフラグメントのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ以上の相補体)、および/またはcDNAプラスミドZに含まれる配列(例えば、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドフラグメントのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ以上の相補体)にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含む。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での42℃での一晩のインキュベーション、続いて0.1×SSC中で約65℃にてフィルターを洗浄することをいう。
【0017】
本発明の「ポリヌクレオチド」には、より低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子もまた含まれる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよびシグナル検出の変更は、主として、ホルムアミド濃度(ホルムアミドのパーセンテージが低いほど、生じるストリンジェンシーは低くなる);塩条件、または温度の操作を通じて達成される。例えば、より低いストリンジェンシー条件は、6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl;0.2M NaHPO;0.02M EDTA、pH7.4)、0.5% SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中、37℃で一晩のインキュベーション;次いで1×SSPE、0.1% SDSを用いた50℃での洗浄を含む。さらに、なおより低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーション後に行われる洗浄は、より高い塩濃度(例えば、5×SSC)で行われ得る。
【0018】
上記の条件におけるバリエーションが、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するために使用される代替的なブロッキング試薬の含有および/または置換によって達成され得ることに留意のこと。代表的なブロッキング試薬としては、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の特許処方物が挙げられる。特異的ブロッキング試薬の含有は、適合性の問題に起因して、上記のハイブリダイゼーション条件の改変を必要とし得る。
【0019】
もちろん、ポリA+配列(例えば、配列表に示されるcDNAの任意の3’末端ポリA+領域(tract))に、またはT(もしくはU)残基の相補的ストレッチにのみハイブリダイズするポリヌクレオチドは、「ポリヌクレオチド」の定義に包含されない。なぜなら、このようなポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチまたはその相補体を含む任意の核酸分子(例えば、プライマーとしてオリゴdTを用いて生成される、事実上任意の二本鎖cDNAクローン)にハイブリダイズするからである。
【0020】
本発明のポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドから構成され得、これは、非改変RNAもしくは非改変DNAまたは改変RNAもしくは改変DNAであり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であるRNA、一本鎖、またはより代表的には二本鎖もしくは一本鎖領域と二本鎖領域との混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。さらに、このポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む、三本鎖領域から構成され得る。ポリヌクレオチドはまた、安定性のために、または他の理由のために改変された、1つ以上の改変された塩基またはDNA骨格もしくはRNA骨格を含み得る。「改変された」塩基としては、例えば、トリチル化された塩基およびイノシンのような普通でない塩基が挙げられる。種々の改変が、DNAおよびRNAに対して行われ得;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的、または代謝的に改変された形態を含む。
【0021】
特定の実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも15の、少なくとも30の、少なくとも50の、少なくとも100の、少なくとも125の、少なくとも500の、または少なくとも1000の連続するヌクレオチドであるが、300kb以下、200kb以下、100kb以下、50kb以下、15kb以下、10kb以下、7.5kb以下、5kb以下、2.5kb以下、2.0kb以下、または1kb以下の長さである。さらなる実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書中に開示されたコード配列の一部を含むが、任意のイントロンの全てまたは一部を含むわけではない。別の実施形態においては、コード配列を含むポリヌクレオチドは、ゲノムの隣接遺伝子のコード配列(すなわち、ゲノムにおける目的の遺伝子に対する5’または3’)を含まない。他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、1000、500、250、100、50、25、20、15、10、5、4、3、2または1より多いゲノム隣接遺伝子のコード配列を含まない。
【0022】
「配列番号X」とは、表1の5列目に記載されるポリヌクレオチド配列をいうが、「配列番号Y」とは、表1の10列目に記載されるポリペプチド配列をいう。配列番号Xは、表1の6列目において特定される整数によって同定される。配列番号Yのポリペプチド配列は、配列番号Xのポリヌクレオチドによってコードされる翻訳されたオープンリーディングフレーム(ORF)である。ポリヌクレオチド配列は、配列リストに示され、直ちに全てのポリペプチド配列が続く。従って、配列番号2のポリヌクレオチド配列に対応するポリペプチド配列は、配列表に示される第1のポリペプチド配列である。第2のポリペプチド配列は、配列番号3などとして示されるポリヌクレオチド配列に対応する。
【0023】
本発明のポリペプチドは、ペプチド結合または改変されたペプチド結合、すなわち、ペプチドアイソスター(isostere)によって互いに連結したアミノ酸から構成され得、そして遺伝子がコードする20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングのような天然のプロセスによって、または当該技術分野で周知の化学的改変技術のいずれかによって、改変され得る。このような改変は、基本テキスト、およびより詳細な研究論文、ならびに多くの研究文献に十分に記載される。改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシル末端、を含むポリペプチドのどこにでも生じ得る。同じ型の改変が、所定のポリペプチド中のいくつかの部位で、同じまたは種々の程度で存在し得ることが理解される。また、所定のポリペプチドは多くの型の改変を含み得る。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分枝状であり得、そしてそのポリペプチドは、分枝を含むかまたは含まない、環状であり得る。環状、分枝状および分枝した環状のポリペプチドは、天然の翻訳後プロセスから生じ得るか、または合成方法によって作製され得る。改変としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化(pegylation)、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化のようなタンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介付加、およびユビキチン化が挙げられる。(例えば、PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES、第2版、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York(1993);POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1−12頁(1983);Seifterら、Meth Enzymol.182:626−646(1990);Rattanら、Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)を参照のこと)。
【0024】
本発明のポリペプチドは、任意の適切な様式で調製され得る。そのようなポリペプチドとしては、単離された天然に存在するポリペプチド、組換え的に生成されたポリペプチド、合成的に生成されたポリペプチド、またはこれらの方法の組み合わせによって生成されたポリペプチドが挙げられる。このようなポリペプチドを調製するための手段は、当該分野において十分に理解されている。
【0025】
ポリペプチドは、分泌タンパク質の形態(成熟形態を含む)であり得るか、またはより大きなタンパク質(例えば、融合タンパク質)の一部であり得る(下記を参照のこと)。分泌配列またはリーダー配列、プロ配列、精製において補助する配列(例えば、多重のヒスチジン残基)、または組換え生成の間の安定性のためのさらなる配列を含むさらなるアミノ酸配列を含むことは、しばしば有利である。
【0026】
本発明のポリペプチドは、好ましくは単離された形態で提供され、そして好ましくは実質的に精製される。ポリペプチドの組換え的に生成されたバージョン(分泌ポリペプチドを含む)は、本明細書中で記載される技術か、または当該分野で別の公知の技術を使用して(例えば、SmithおよびJohnson(Gene 67:31−40(1988))により記載される1工程方法によって)、実質的に精製され得る。本発明のポリペプチドはまた、本明細書中で記載される技術、または当該分野における他の周知の方法を使用して(例えば、当該分野で周知の方法で本発明のポリペプチドに対して惹起された本発明の抗体を使用することによって)、天然の供給源、合成的な供給源または組換え供給源から精製され得る。
【0027】
「機能的活性」を示すポリペプチドとは、本発明の全長(完全)タンパク質と関連した1つ以上の公知の機能的活性を示し得るポリペプチドを意味する。このような機能的活性としては、生物学的活性、抗原性[抗ポリペプチド抗体に結合する(または結合することについて、ポリペプチドと競合する)能力]、免疫原性(本発明の特定のポリペプチドに結合する抗体を生成する能力)、本発明のポリペプチドと多量体を形成する能力、およびポリペプチドについてのレセプターまたはリガンドに結合する能力が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「機能的活性を有するポリペプチド」とは、特定のアッセイ(例えば、生物学的アッセイのような)で測定した場合、用量依存性を伴なっても伴なわなくても、本発明のポリペプチド(成熟形態を含む)の活性と類似であるが、必ずしも同一ではない活性を示すポリペプチドをいう。用量依存性が存在する場合、ポリペプチドの用量依存性と同一である必要はないが、むしろ本発明のポリペプチドと比較した場合に、所定の活性における用量依存性に実質的に類似する(すなわち、候補ポリペプチドは、本発明のポリペプチドと比較して、より大きな活性を示すか、または約1/25以上、そして好ましくは約1/10以上の活性、そして最も好ましくは約1/3以上の活性を示す)。
【0029】
ポリペプチド、ならびにそれらのフラグメント、改変体、誘導体、およびアナログの機能的活性は、種々の方法によってアッセイされ得る。
【0030】
例えば、全長ポリペプチドの抗体への結合について本発明の全長ポリペプチドに結合するか、またはそれと競合する能力についてアッセイする、1つの実施形態では、当該分野で公知の種々の免疫アッセイが、用いられ得る。このようなアッセイとしては、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫放射分析アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュ免疫アッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位体標識を用いる)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなどのような技術を用いる競合および非競合アッセイ系が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、抗体結合が、一次抗体上の標識を検出することによって検出される。別の実施形態では、この一次抗体は、この一次抗体に対する二次抗体または試薬の結合を検出することによって検出される。さらなる実施形態では、この二次抗体が標識される。多くの手段が、免疫アッセイにおける結合の検出について当該分野で公知であり、そして本発明の範囲内である。
【0031】
別の実施形態では、同定されたリガンド、または本発明のポリペプチドフラグメント、改変体、または誘導体が多量体化する能力が評価される場合、結合が、例えば、還元および非還元ゲルクロマトグラフィー、タンパク質アフィニティークロマトグラフィー、ならびにアフィニティーブロッティングのような当該分野で周知の手段によって、アッセイされ得る。一般には、Phizicky、E.ら、1995、Microbiol.Rev.59:94−123を参照のこと。別の実施形態では、その基質への本発明のポリペプチドの結合の生理学的相関(シグナル伝達)がアッセイされ得る。
【0032】
さらに、本明細書中に記載のアッセイ(実施例を参照のこと)および当該分野で公知の他のアッセイは、本発明のポリペプチドならびにそれらのフラグメント、改変体、誘導体、およびアナログが、ポリペプチドの関連の生物学的活性を(インビトロまたはインビボのいずれかで)惹起する能力を測定するために、慣用的に適用され得る。他の方法は、当業者に公知であり、そして本発明の範囲内である。
【0033】
(本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド)
(遺伝子番号1によってコードされるタンパク質の特徴)
この遺伝子に対応する翻訳産物は、ショウジョウバエの眼におけるパターン形成のために必要であると考えられているショウジョウバエサイドキックタンパク質(これは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである)と配列相同性を共有する(例えば、Genbank登録番号AAD09632)。
【0034】
このタンパク質の膜貫通ドメインは、以下のアミノ酸によってコードされていると考えられている:配列番号4のおよそPhe−748〜およそGly−771.本明細書中に記載されたドメインが、コンピューター分析によって推定され、そして、従って、種々の機能的なドメインを同定するために使用される分析基準に依存して、例えば、膜貫通ドメインの正確な「アドレス」は、わずかに変化し得ることがさらに理解される。例えば、膜貫通ドメインの正確な位置は、ドメインを規定するために使用される規準に基づいて、非常にわずかに変化し得る(例えば、アドレスは、およそ1〜およそ20アミノ酸残基、最も起こりそうにはおよそ1〜およそ5残基「シフト」し得る)。
【0035】
特定の好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下のアミノ酸配列によって同定される、サイトカインレセプターの細胞外部分を含むか、またはこれらからなる:ARGTEYRVQVQAFNAIGSGPWSQTVVGRTRESVPSSGPTNVSALATTSSSMLVRWSEVPEADRNGLVLGYKVMYKEKDSDTQPRFWLVEGNSSRSAQLTGLGKYVLYEVQVLAFTRIGDGSPSHPPILERTLDDVPGPPMGILFPEVRTTSVRLIWQPPAAPNGIILAYQITHRLNTTTANTATVEVLAPSARQYTATGLKPESVYLFRITAQTRKGWGEAAEALVVTTEKRDRPQPPSRPMVQQEDVRARSVLLSWEPGSDGLSPVRYYTIQTRELPSGRWALHSASVSHNASSFIVDRLKPFTSYKFRVKATNDIGDSEFSEESESLTTLQAAPDEAPTILSVTPHTTTSVLIRWQPPAEDKINGILLGFRIRYRELLYEGLRGFTLRGINNPGATWAELTYLNKHRRYEIRMSVYNAVGEGPSSPPQEVFVGEAVPTAAPRNVVVHGATATQLDVTWEPPPLDSQNGDIQGYKIYFWEAQRGNLTERVKTLFLAENSVKLKNLTGYTAYMVSVAAFNAAGDGPRSTPTQGQTQQAAPSASSSVKFSELTTTSVNVSWEAPQFPNGILEGYRLVYEPCSPVDGVSKIVTVDVKGNSPLWLKVKDLAEGVTYRFRIRAKTFTYGPEIEANVTTGPGEGAPGPPGVPIIVRYSSAIAIHWSSGDPGKGPITRYVIEARPSDEGLWDILIKDIPKEVSSYTFSMDILKPGVSYDFRVIAVNDYGFGTPSSPSQSVPAQKANPFYEEWW(配列番号6)。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、1つ以上のこれらのポリペプチドを結合する抗体のように、本発明によって包含される。さらに、これらのポリペプチドのフラグメントおよび改変体(例えば、本明細書中に記載のフラグメント、これらのポリペプチドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるポリペプチド、およびストリンジェントな条件下でこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、またはこれらの相補体)は、本発明によって包含される。本発明のこれらのフラグメントおよび改変体を結合する抗体はまた、本発明によって包含される。これらのフラグメントおよび改変体をコードするポリヌクレオチドはまた、本発明によって包含される。
【0036】
アゴニストまたはアンタゴニスト、好ましくは抗体(これは、配列番号6として同定されるサイトカインレセプターの細胞外部分に結合する)は特に好ましい。
【0037】
本発明の好ましいポリペプチドは、以下の残基のように、配列番号4に示される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える免疫原性エピトープを含むか、あるいはこれらからなる:Arg−28〜Pro−34、Glu−57〜Arg−63、Lys−75〜Pro−83、Gly−90〜Ala−96、Gly−118〜His−124、Ala−212〜Gly−217、Thr−229〜Pro−241、Val−243〜Arg−249、Glu−258〜Gly−263、Gln−273〜Arg−281、Lys−302〜Tyr−307、Glu−321〜Ser−328、Pro−359〜Ile−365、Pro−425〜Gln−430、Glu−461〜Asp−471、Ala−482〜Val−491、Gly−523〜Ala−538、Ser−661〜Ile−670、Arg−678〜Gly−683、Pro−727〜Gln−732、Gln−737〜Phe−742、Gly−771〜Lys−787、Asn−810〜Val−816、Ser−819〜Ser−838、Tyr−841〜Asp−851、Ser−859〜Lys−885、Asp−896〜Gly−909、Thr−919〜Val−931、Ser−934〜Gln−939、およびPro−945〜Ser−971。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、1つ以上のこれらのポリペプチドを結合する抗体のように、本発明によって包含される。さらに、これらのポリペプチドのフラグメントおよび改変体(例えば、本明細書中に記載のフラグメント、これらのポリペプチドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるポリペプチド、およびストリンジェントな条件下でこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、またはこれらの相補体)は、本発明によって包含される。本発明のこれらのフラグメントおよび改変体に結合する抗体はまた、本発明によって包含される。これらのフラグメントおよび改変体をコードするポリヌクレオチドはまた、本発明によって包含される。
【0038】
この遺伝子は、ヒト前立腺癌組織、好中球、および成体精巣組織において発現される。
【0039】
従って、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、生物学的サンプル中に存在する組織または細胞型の示差的同定のため、そして、以下を含むがこれらに限定されない疾患および障害のための試薬として有用である:前立腺癌、免疫系および雄性生殖系の疾患および/または障害。同様に、ポリペプチドおよびこれらのポリペプチドに対する抗体は、組織または細胞型の示差的同定のための免疫学的プローブの提供に有用である。上記組織または細胞、特に免疫系および雄性生殖系の多数の障害、および前立腺癌に関して、標準の遺伝子発現レベル(すなわち、その障害を有さない個体由来の健常組織または体液中の発現レベル)に対して有意により高いか、またはより低いレベルのこの遺伝子の発現が、このような障害を有する個体から採取された特定の組織もしくは細胞型(例えば、免疫組織、雄性生殖系組織、癌性組織および創傷組織)または体液(例えば、リンパ、血清、血漿、尿、滑液および髄液)、または別の組織もしくは細胞サンプルの中で、慣用的に検出され得る。
【0040】
前立腺癌組織、好中球、および成体精巣組織における組織分布、ならびにショウジョウバエサイドキックタンパク質に対する相同性は、この遺伝子に対応するポリヌクレオチド、翻訳産物および抗体は、免疫系および雄性生殖系の疾患および/または障害の診断、検出および/または処置、ならびに前立腺癌の診断、検出および/または処置について有用である。この遺伝子に対応する翻訳産物に指向されたアゴニストおよび/またはアンタゴニストは、サイトカイン誘導反応を増強するかまたは阻害する際に有用であり得る。
【0041】
前立腺癌組織における組織分布は、この遺伝子に対応する翻訳産物が、アンタゴニスト、特に低分子または抗体(これは、その同族のリガンドによってレセプターの結合をブロックする)の良好な標的であることを示す。従って、この遺伝子の翻訳産物の一部を特異的に結合する抗体および/または低分子は、好ましい。前立腺癌を検出するためのキットもまた提供される。1つの実施形態において、このようなキットは、固体支持体に結合したこの遺伝子の翻訳産物に特異的な抗体を含む。個体における前立腺癌を検出する方法もまた提供され、この方法は、この遺伝子の翻訳産物に特異的な抗体を個体由来の体液または生物学的サンプル(好ましくは、血清)に接触させる工程、および抗体が、体液中で見出された抗原に対して結合するか否かを確認する工程を包含する。好ましくは、抗体は固体支持体に結合され、そして体液は血清である。上記実施形態ならびに他の処置および診断試験(キットおよび方法)は、本明細書中の他でより詳細に記載される。
【0042】
好中球におけるこの遺伝子産物の発現は、潜在的にすべての造血細胞系列(血液幹細胞を含む)の増殖;生存;分化;および/または活性化を調節する際の役割を示す。サイトカイン産生、抗原提示、または他のプロセスの調節におけるこの遺伝子産物の関与は、癌の処置(例えば、免疫応答をブーストすることによる)における有用性を示す。この遺伝子は、免疫起源の細胞において発現されるので、遺伝子またはタンパク質、ならびにこのタンパク質に対する抗体は、上記列挙された組織についての腫瘍マーカーおよび/または免疫治療標的として有用性を示し得る。従って、これはまた、関節炎、喘息、免疫不全疾患(例えば、AIDS)、白血病、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、敗血症、挫瘡、および乾癬を含む免疫学的疾患についての薬剤として使用され得る。さらに、この遺伝子産物は、種々の血液系列の幹細胞および方向付けられた前駆体の拡大において、ならびに種々の細胞型の分化および/または増殖における商業的有用性を有し得る。
【0043】
成体精巣組織における組織分布は、この遺伝子に対応するポリヌクレオチド、翻訳産物および抗体が、適切な精巣機能(例えば、内分泌機能、精子成熟)に関する状態および癌の処置および/または診断に有用である。従って、この遺伝子産物は、雄性不妊症および/またはインポテンスの処置において有用である。このような因子(アンタゴニスト)は雄性避妊薬として有用であるので、この遺伝子産物はまた、結合因子を同定するように設計されたアッセイにおいて有用である。同様に、このタンパク質は、精巣癌の処置および/または診断において有用であると考えられている。精巣はまた、身体の他の組織における、特に低いレベルで、発現され得る転写物の活性な遺伝子発現の部位である。従って、この遺伝子産物は、他の特定の組織または器官において発現され得、ここで、少数の可能性のある標的指標を挙げると、造血、炎症、骨形成、および腎臓機能のような他のプロセスにおける関連した機能的な役割を果たし得る。タンパク質およびタンパク質に対する抗体は、上記列挙された組織についての腫瘍マーカーおよび/または免疫治療標的としての有用性を示し得る。
【0044】
(遺伝子番号2によってコードされるタンパク質の特徴)
本発明の好ましいポリペプチドは、以下の残基のように、配列番号5に示される1つ、2つ、3つ、または3つすべての免疫原性エピトープを含むか、あるいはこれらからなる:Glu−2〜Glu−10、Ser−22〜Gly−30、およびArg−69〜Lys−77。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、1つ以上のこれらのポリペプチドを結合する抗体のように、本発明によって包含される。さらに、これらのポリペプチドのフラグメントおよび改変体(例えば、本明細書中に記載のフラグメント、これらのポリペプチドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるポリペプチド、およびストリンジェントな条件下でこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、またはこれらの相補体)は、本発明によって包含される。本発明のこれらのフラグメントおよび改変体を結合する抗体はまた、本発明によって包含される。これらのフラグメントおよび改変体をコードするポリヌクレオチドはまた、本発明によって包含される。
【0045】
この遺伝子は、ウィルムス腫瘍組織、乳房リンパ節組織および他の生殖組織において発現される。
【0046】
従って、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド(抗体を含む)は、生物学的サンプル中に存在する腎臓組織または腎臓細胞型および生殖組織または生殖細胞型の示差的同定のため、そして以下を含むがそれらに限定されない疾患および状態の診断のための試薬として有用である:ウィルムス腫瘍および雌性生殖系疾患および/または障害。同様に、ポリペプチドおよびこれらのポリペプチドに対する抗体は、組織または細胞型の示差的同定のための免疫学的プローブの提供に有用である。上記組織または細胞、特に腎臓および雌性生殖系の多数の障害に関して、標準の遺伝子発現レベル(すなわち、その障害を有さない個体由来の健常組織または体液中の発現レベル)に対して有意により高いか、またはより低いレベルのこの遺伝子の発現が、このような障害を有する個体から採取された特定の組織もしくは細胞型(例えば、腎臓組織、生殖組織、癌性組織および創傷組織)または体液(例えば、リンパ、血清、血漿、尿、滑液および髄液)、または別の組織もしくは細胞サンプルの中で、慣用的に検出され得る。
【0047】
ウィルムス腫瘍組織および乳房リンパ節組織における組織分布は、この遺伝子に対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、雌性生殖系およびウィルムス腫瘍の疾患および/または障害の診断、検出および/または処置について有用である。
【0048】
ウィルムス腫瘍組織における組織分布は、この遺伝子が、アンタゴニスト、特に低分子または抗体(これは、その同族のリガンドによってレセプターの結合をブロックする)の良好な標的であることを示す。従って、この遺伝子の翻訳産物の一部を特異的に結合する抗体および/または低分子は、好ましい。ウィルムス腫瘍を検出するためのキットもまた提供される。1つの実施形態において、このようなキットは、固体支持体に結合したこの遺伝子の翻訳産物に特異的な抗体を含む。個体におけるウィルムス腫瘍を検出する方法もまた提供され、この方法は、この遺伝子の翻訳産物に特異的な抗体を個体由来の体液または生物学的サンプル(好ましくは、血清)に接触させる工程、および抗体が、体液中で見出された抗原に対して結合するか否かを確認する工程を包含する。好ましくは、抗体は固体支持体に結合され、そして体液は血清である。上記実施形態ならびに他の処置および診断試験(キットおよび方法)は、本明細書中の他でより詳細に記載される。
【0049】
乳房組織における組織分布は、このクローンのタンパク質産物は、乳癌の処置および診断、ならびに発現が示される場合に他の組織の癌について有用である。同様に、乳房組織における発現は、乳房新生物形成および乳癌(例えば、繊維芽腫、乳頭癌、管腺癌、パジェット病、延髄癌、粘液性癌、尿細管癌、分泌性癌およびアポクリン癌、ならびに若年性肥大および女性化乳房、乳腺炎および膿瘍、管拡張および繊維嚢胞病)におけるその使用を示し得る。タンパク質およびタンパク質に対して指向される抗体が上記列挙された組織特異的マーカーおよび/または免疫治療標的としての有用性を示し得る。
【0050】
(表1)
【0051】
【表1】
Figure 2004500058
表1は、上記の各「遺伝子番号」に対応する情報を要約する。「ヌクレオチド配列番号X」として同定されるヌクレオチド配列は、表1において同定される「cDNAクローンID」から、およびいくつかの場合において、さらなる関連のDNAクローンから得られる、部分的に相同な(「重複する」)配列から構築された。重複する配列は、高い冗長性の単一の連続した配列に構築され(通常、各ヌクレオチド位置で3〜5個の重複する配列)、配列番号Xとして同定される最終的な配列を得た。
【0052】
cDNAクローンIDは、その日付に寄託され、そして「ATCC寄託番号Zおよび日付」において列挙される対応する寄託番号が与えられた。寄託物のいくつかは、同じ遺伝子に対応する複数の異なるクローンを含む。「ベクター」は、cDNAクローンIDにおいて含まれるベクターの型をいう。
【0053】
「総ヌクレオチド配列」は、「遺伝子番号」によって同定されるコンティグにおけるヌクレオチドの総数をいう。寄託されたプラスミドは、これらの配列の全てを含み得、この配列は、配列番号Xの「クローン配列の5’ヌクレオチド」および「クローン配列の3’ヌクレオチド」として示されるヌクレオチドの位置によって反映される。推定メチオニン開始コドンの配列番号Xのヌクレオチドの位置は(存在する場合)、「開始コドンの5’ヌクレオチド」として同定される。同様に、推定シグナル配列の配列番号Xのヌクレオチドの位置は(存在する場合)、「シグナルペプチドの第一のアミノ酸の5’ヌクレオチド」として同定される。
【0054】
翻訳されたアミノ酸配列は、ポリヌクレオチド配列の第1翻訳コドンで始まり、「アミノ酸配列番号Y」として同定されるが、他のリーディングフレームもまた、公知の分子生物学技術を使用して容易に翻訳され得る。これらの代替的オープンリーディングフレームによって産生されるポリペプチドは、本発明によって具体的に意図される。
【0055】
配列番号X(ここで、Xは、配列表に開示されたポリヌクレオチド配列のいずれかであり得る)および翻訳される配列番号Y(ここで、Yは、配列表に開示されたポリペプチド配列のいずれかであり得る)は、十分に正確であり、そしてそうでなければ、当該分野において周知でありかつ以下でさらに記載される種々の使用に適切である。例えば、配列番号Xは、配列番号Xにおいて含まれる核酸配列または寄託されたプラスミドに含まれるcDNAを検出する核酸ハイブリダイゼーションプローブを設計することを含む使用を有するが、これらに限定されない。これらのプローブはまた、生物学的サンプル中の核酸分子にハイブリダイズし、それによって本発明の種々の法医学の方法、および診断の方法を可能にする。同様に、配列番号Yから同定されるポリぺプチドは、表1において同定されたcDNAクローンによりコードされる分泌タンパク質に特異的に結合する抗体を産生することを含むが、これらに限定されない使用を有する。
【0056】
それにもかかわらず、配列決定反応によって生じるDNA配列は、配列決定のエラーを含み得る。エラーは、誤って同定されたヌクレオチドとして、または生じたDNA配列におけるヌクレオチドの挿入または欠失として存在する。誤って挿入されたか、または欠失されたヌクレオチドは、推定アミノ酸配列のリーディングフレームにおいてフレームシフトを引き起こす。これらの場合において、生じたDNA配列は、実際のDNA配列と99.9%(例えば、1000塩基を超えるオープンリーディングフレームにおける1塩基の挿入または欠失)を超えて同一であり得るにもかかわらず、推定アミノ酸配列は、実際のアミノ酸配列とは異なる。
【0057】
従って、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列における正確さを必要とするこれらの適用のために、本発明は、配列番号Xとして同定された作製されたヌクレオチド配列、および配列番号Yとして同定された推定の翻訳されたアミノ酸配列のみではなく、表1において記載されるような、ATCCに寄託された本発明のヒトcDNAを含むプラスミドDNAのサンプルもまた提供する。各々の寄託されたプラスミドのヌクレオチド配列は、公知の方法に従って寄託されたプラスミドの配列決定により容易に決定され得る。
次いで、推定アミノ酸配列は、このような寄託物から証明され得る。さらに、特定のプラスミドによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列はまた、ペプチド配列決定により、または寄託されたヒトcDNAを含む適切な宿主細胞中でタンパク質を発現し、このタンパク質を収集し、そしてその配列を決定することにより、直接的に決定され得る。
【0058】
また、cDNAプラスミドを含むベクターの名前を表1に提供する。各ベクターは、当該分野において、慣用的に使用される。以下のさらなる情報は、利便性のために提供される。
【0059】
ベクターLambda Zap(米国特許第5,128,256号および同第5,286,636号)、Uni−Zap XR(米国特許第5,128,256号および同第5,286,636号)、Zap Express(米国特許第5,128,256号および同第5,286,636号)、pBluescript(pBS)(Short,J.M.ら、Nucleic Acids Res. 16:7583−7600(1988);Alting−Mees,M.A.およびShort,J.M.、Nucleic Acids Res. 17:9494(1989))ならびにpBK(Alting−Mees,M.A.ら、Strategies 5:58−61(1992))は、Stratagene Cloning Systems,Inc.、11011 N.Torrey Pines Road、La Jolla,CA,92037から市販されている。pBSは、アンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてpBKはネオマイシン耐性遺伝子を含む。ファージミドpBSは、λZapベクターおよびUni−Zap XRベクターから切り出され得、そしてファージミドpBKは、Zap発現ベクターから切り出され得る。両方のファージミドは、E.coli株XL−1 Blue(これもまた、Stratageneから入手可能である)に形質転換され得る。
【0060】
ベクターpSport1、pCMVSport 1.0、pCMVSport 2.0およびpCMVSport3.0は、Life Technologies、Inc.、P.O.Box 6009、Gaithersburg,MD 20897から得られた。全てのSportベクターはアンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてE.coli株DH10B(これもまた、Life Technologiesから入手可能である)に形質転換され得る。例えば、Gruber,C.E.ら、Focus 15:59(1993)を参照のこと。ベクターlafmid BA(Bento Soares、Columbia University、NY)は、アンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてE.coli株XL−1 Blueに形質転換され得る。ベクターpCR(登録商標)2.1(これはInvitrogen、1600 Faraday Avenue、Carlsbad、CA 92008から入手可能である)は、アンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてE.coli株DH10B(Life Technologiesから入手可能である)に形質転換され得る。例えば、Clark,J.M.、Nuc.Acids Res.16:9677−9686(1988)およびMead,D.ら、Bio/Technology 9:(1991)を参照のこと。
【0061】
本発明はまた、配列番号X、配列番号Y、および/または寄託されたプラスミド(cDNAプラスミド:Z)に対応する遺伝子に関する。対応する遺伝子は、本明細書中に開示される配列情報を使用して、公知の方法に従って単離され得る。このような方法は、開示された配列からプローブまたはプライマーを調製する工程、およびゲノム物質の適切な供給源から対応する遺伝子を同定または増幅する工程を包含するが、これらに限定されない。
【0062】
本発明においてまた提供されるものは、対立遺伝子改変体、オルトログ(ortholog)、および/または種相同体である。当該分野において公知である手順は、本明細書中で開示された配列またはATCCに寄託されたクローンからの情報を用いて、配列番号X、配列番号Y、および/またはcDNAプラスミド:Zに対応する遺伝子の全長遺伝子、対立遺伝子改変体、スプライス改変体、全長コード部分、オルトログ、および/または種相同体を得るために使用され得る。例えば、対立遺伝子改変体および/または種相同体は、本明細書中に提供される配列から適切なプローブまたはプライマーを作製し、そして対立遺伝子改変体および/または所望の相同体について適切な核酸供給源をスクリーニングすることにより単離および同定され得る。
【0063】
本発明は、配列番号Xの核酸配列および/またはcDNAプラスミド:Zを含むか、あるいはこれらからなるポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、配列番号Yのポリペプチド配列、配列番号Xによりコードされるポリペプチド、および/またはcDNAプラスミド:Z中のcDNAによりコードされるポリペプチドを含むか、あるいはこれらからなるポリペプチドを提供する。配列番号Yのポリペプチド配列、配列番号Xによりコードされるポリペプチド、および/またはcDNAプラスミド:Z中のcDNAによりコードされるポリペプチドを含むか、あるいはこれらからなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドはまた、本発明により包含される。本発明はさらに、配列番号Xの核酸配列の相補体、および/またはcDNAプラスミド:Z中のcDNAのコード鎖の相補体を含むか、あるいはこれらからなるポリヌクレオチドを包含する。
多くのポリヌクレオチド配列(例えば、EST配列)は、公に利用可能であり、そして配列データベースを通してアクセス可能であり、そして本発明の着想の前に公に利用可能であったかもしれない。好ましくは、このような関連するポリヌクレオチドは、本発明の範囲から特に除外される。全ての関連配列を列挙することは、本出願の開示では非常に煩わしい。従って、好ましくは、配列番号Xから、一般式a−bにより記載されるヌクレオチド配列(ここで、aは配列番号Xの1と配列番号Xの最終ヌクレオチド−15との間の任意の整数であり、bは15〜配列番号Xの最終ヌクレオチドの整数であり、ここでaおよびbの両方は配列番号Xに示されるヌクレオチド残基の位置に対応し、そしてここでbはa+14以上である)を含む1つ以上のポリヌクレオチドが除外される。
【0064】
(全長遺伝子の回収のためのRACEプロトコル)
部分的cDNAクローンは、Frohman,M.Aら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,85:8998−9002(1988)に記載されたcDNA末端の高速増幅(RACE)手順を利用することにより全長を作製し得る。5’末端または3’末端のいずれかが欠失しているcDNAクローンは、翻訳の開始コドンまたは終止コドンのそれぞれに伸長する欠失塩基対を含むように再構築され得る。いくつかの場合において、cDNAは、そのために翻訳の開始を欠失している。以下に、この本来の5’RACE手順の改変を簡単に記載する。ポリA+または全RNAを、Superscript II(Gibco/BRL)およびcDNA配列に特異的なアンチセンスプライマーまたは相補的プライマーを用いて逆転写する。そのプライマーを、Microcon Concentrator(Amicon)を用いて反応から除去する。次いで、第1鎖cDNAを、dATPおよび末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(Gibco/BRL)を用いて、添付する。このように、アンカー配列を産生し、これは、PCR増幅のために必要である。第2鎖をdA−テイル含有PCR緩衝液、TaqDNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer Cetus)、5’末端で3つの隣接制限部位(XhoI、SalIおよびClaI)を含むオリゴdTプライマーならびにこれらの制限部位を正しく含むプライマーから合成する。この2本鎖cDNAを同じプライマーならびにネスティッドcDNA特異的アンチセンスプライマーを用いて40サイクルでPCR増幅する。このPCR産物を、エチジウムブロマイドアガロースゲル上でサイズ分離し、そして欠失しているタンパク質コードDNAの推定サイズのcDNA産物を含むゲルの領域を取り出す。cDNAをMagic PCR Prep kit(Promega)を用いてアガロースゲルから精製し、XhoIまたはSalIを用いて制限消化し、そしてプラスミド(例えば、pBluescript SKII(Stratagene))にXhoI部位およびEcoRV部位で連結する。このDNAを細菌に形質転換し、そしてこのプラスミドクローンを配列決定して、正確なタンパク質コード挿入物を同定する。正確な5’末端を、推定的に同定された相同体を有するこの配列と部分的cDNAクローンを有する重複を比較することにより確認する。当該分野において公知の同様の方法および/または市販のキットを使用して、増幅し、そして3’末端を回収する。
【0065】
いくつかの、品質制御キットが購入のために市販されている。上記のそれらと同様の試薬および方法は、全長遺伝子を回収をするための5’ RACEおよび3’RACEの両方について、Gibco/BRLからキットの形態で供給される。第2のキットは、Clontechから入手可能である。このキットは、Dumasら、Nucleic Acids Res.,19:5227−32(1991)により開発された、関連技術の改変(SLIC(一本鎖cDNAへの、一本鎖の連結))である。手順における主な違いは、RNAを、逆転写後にアルカリ加水分解し、そしてRNAリガーゼを使用して、第1鎖cDNAに、制限部位を含むアンカープライマーを連結することである。これは、過去に配列決定をするのが困難なポリTの伸長を生じるdAテーリング反応における必要性を除去する。
【0066】
RNAからの5’cDNAまたは3’cDNAを産生する代替法は、cDNAライブラリー二本鎖DNAを使用することである。非対称性PCR増幅アンチセンスcDNA鎖を、アンチセンスcDNA特異的プライマーおよびプラスミドアンカープライマーを用いて合成する。これらのプライマーを除去し、そして対称PCR反応を、ネストしたcDNA特異的アンチセンスプライマーおよびプラスミドアンカープライマーを用いて実施する。
【0067】
(5’末端配列または3’末端配列を産生し、全長遺伝子を得るための、RNAリガーゼのプロトコル)
一旦、目的の遺伝子が同定されると、本来のcDNAプラスミド中には存在しないかもしれない遺伝子の5’部分または3’部分の同定のためのいくつかの方法が利用可能になる。これらの方法は、以下を含むがこれらに限定されない:フィルタープローブ探索、特異的プローブを使用するクローン富化、5’ RACEおよび3’RACEと類似および同一のプロトコル。全長遺伝子は、ライブラリー中に存在し得、そして探索によって同定され得るが、一方、5’末端または3’末端を生成するために有用な方法は、欠けている情報を生成するために、本来のcDNAからの既存の配列情報を、使用することである。5’RACEに類似する方法は、所望の全長遺伝子の欠けている5’末端を生成するために利用可能である(この方法は、Fromont−Racineら、Nucleic Acids Res.,21(7):1683−1684(1993)によって発表された)。簡潔には、特定のRNAオリゴヌクレオチドを、全長遺伝子RNA転写物をおそらく含むRNAの集団の5’末端に連結し、そして連結されたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーおよび目的の遺伝子の公知の配列に特異的なプライマーを含むプライマーセットを使用して、所望の全長遺伝子の5’部分をPCR増幅する。次いで、この増幅した産物を配列決定し得、そしてこれを使用して全長遺伝子を生成し得る。この方法は、所望の供給源から単離された総RNAを用いて開始し、この手順における必要条件ではないが、ポリA RNAを使用し得る。次いで、RNA調製物を、必要ならばホスファターゼで処理して、後のRNAリガーゼ工程を妨害し得る分解または損傷RNAの5’リン酸基を排除し得る。次いで、使用された場合、ホスファターゼを不活化し、そしてRNAをメッセンジャーRNAの5’末端に存在するキャップ構造を除去するために、タバコ酸性ピロホスファターゼを用いて処理する。この反応は、次いでT4 RNAリガーゼを用いてRNAオリゴヌクレオチドに連結され得る、キャップ切断RNAの5’末端に5’リン酸基を残す。次いで、この改変型RNA調製物を、遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドを用いる、第一鎖cDNA合成のためのテンプレートとして使用し得る。次いで、第一鎖合成反応物を、連結されたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーおよび目的のCR遺伝子の公知の配列に特異的なプライマーを用いる、所望の5’末端のPCR増幅のためのテンプレートとして使用し得る。次いで、得られた生成物を配列決定し、そして分析して5’末端配列が関連するCR遺伝子に属することを確認する。
【0068】
(ポリヌクレオチドフラグメントおよびポリペプチドフラグメント)
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド(核酸)の、ポリヌクレオチドフラグメントに関する。本発明において、「ポリヌクレオチドフラグメント」とは、以下である核酸配列を有するポリヌクレオチドをいう:cDNAプラスミドZに含まれるcDNAの一部か、もしくはcDNAプラスミドZに含まれるcDNAによりコードされるポリペプチドをコードするcDNAの一部;配列番号Xもしくはその相補鎖におけるポリヌクレオチド配列の一部;配列番号Yのポリペプチドの一部をコードするポリヌクレオチド配列;あるいは配列番号Xによりコードされるポリペプチドの一部をコードするポリヌクレオチド配列。本発明のヌクレオチドフラグメントは、好ましくは、少なくとも約15nt、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、そしてなおより好ましくは少なくとも約40nt、少なくとも約50nt、少なくとも約75nt、少なくとも約100nt、少なくとも約125nt、または少なくとも約150ntの長さである。例えば、「少なくとも約20ntの長さ」のフラグメントは、cDNAプラスミドZのcDNA配列に含まれる配列または配列番号Xもしくはその相補鎖に示されるヌクレオチド配列由来の20以上の連続する塩基を含むことが意図される。この文脈において「約(おおよそ)」は、特に記載された値、あるいはそれより数個(5、4、3、2、または1)のヌクレオチドだけ大きいかまたは小さな値を含む。これらのヌクレオチドフラグメントは、本明細書中で議論されるように、診断プローブおよびプライマーとしての使用を含むが、それらに限定されない使用を有する。もちろん、より大きなフラグメント(例えば、少なくとも150、175、200、250、500、600、1000または2000のヌクレオチドの長さ)もまた、本発明に含まれる。
【0069】
さらに、本発明のポリヌクレオチドフラグメントの代表例としては、例えば、配列番号X、またはその相補鎖の以下のおおよそのヌクレオチド数の配列を含むか、あるいはそれらからなるフラグメントが挙げられる:1〜50、51〜100、101〜150、151〜200、201〜250、251〜300、301〜350、351〜400、401〜450、451〜500、501〜550、551〜600、601〜650、651〜700、701〜750、751〜800、800〜850、851〜900、901〜950、951〜1000、1001〜1050、1051〜1100、1101〜1150、1151〜1200、1201〜1250、1251〜1300、1301〜1350、1351〜1400、1401〜1450、1451〜1500、1501〜1550、1551〜1600、1601〜1650、1651〜1700、1701〜1750、1751〜1800、1801〜1850、1851〜1900、1901〜1950、1951〜2000、2001〜2050、2051〜2100、2101〜2150、2151〜2200、2201〜2250、2251〜2300、2301〜2350、2351〜2400、2401〜2450、2451〜2500、2501〜2550、2551〜2600、2601〜2650、2651〜2700、2701〜2750、2751〜2800、2801〜2850、2851〜2900、2901〜2950、2951〜3000、3001〜3050、3051〜3100、3101〜3150、3151〜3200、3201〜3250、3251〜3300、3301〜3350、3351〜3400、3401〜3450、3451〜3500、3501〜3550、3551〜3600、および/または3601〜3617。この文脈において、「おおよそ(約)」は、特に記載された範囲、またはいずれかの末端もしくは両方の末端において、これより数個(5、4、3、2、または1)のヌクレオチドだけ大きいか、または小さな範囲を含む。好ましくは、これらのフラグメントは、その配列が一部であるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの、機能的活性(例えば、生物学的活性)を有するポリペプチドをコードする。より好ましくは、これらのフラグメントは、本明細書中、上記で議論されるようにプローブまたはプライマーとして使用され得る。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはより低いストリンジェンシー条件下でこれらのフラグメントの1つ以上にハイブリダイズするポリヌクレオチドもまた本発明に含まれ、これらのポリヌクレオチドまたはフラグメントによりコードされるポリペプチドも同様に含まれる。
【0070】
さらに、本発明のポリヌクレオチドフラグメントの代表例としては、例えば、cDNAプラスミドZに含まれるcDNAヌクレオチド配列、またはその相補鎖の以下のおおよそのヌクレオチド数の配列を含むか、あるいはそれらからなるフラグメントが挙げられる:1〜50、51〜100、101〜150、151〜200、201〜250、251〜300、301〜350、351〜400、401〜450、451〜500、501〜550、551〜600、601〜650、651〜700、701〜750、751〜800、800〜850、851〜900、901〜950、951〜1000、1001〜1050、1051〜1100、1101〜1150、1151〜1200、1201〜1250、1251〜1300、1301〜1350、1351〜1400、1401〜1450、1451〜1500、1501〜1550、1551〜1600、1601〜1650、1651〜1700、1701〜1750、1751〜1800、1801〜1850、1851〜1900、1901〜1950、1951〜2000、2001〜2050、2051〜2100、2101〜2150、2151〜2200、2201〜2250、2251〜2300、2301〜2350、2351〜2400、2401〜2450、2451〜2500、2501〜2550、2551〜2600、2601〜2650、2651〜2700、2701〜2750、2751〜2800、2801〜2850、2851〜2900、2901〜2950、2951〜3000、3001〜3050、3051〜3100、3101〜3150、3151〜3200、3201〜3250、3251〜3300、3301〜3350、3351〜3400、3401〜3450、3451〜3500、3501〜3550、3551〜3600、および/または3601〜3617。この文脈において、「おおよそ(約)」は、特に記載された範囲、あるいはいずれかの末端もしくは両方の末端において、これより数個(5、4、3、2、または1)のヌクレオチドだけ大きいか、または小さな範囲を含む。好ましくは、これらのフラグメントは、cDNAプラスミドZに含まれるcDNAヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの機能的活性(例えば、生物学的活性)を有するポリペプチドをコードする。より好ましくは、これらのフラグメントは、本明細書中で議論されるように、プローブまたはプライマーとして使用され得る。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはより低いストリンジェンシー条件下で1つ以上のこれらのフラグメントにハイブリダイズするポリヌクレオチドもまた本発明に含まれ、これらのポリヌクレオチドまたはフラグメントによりコードされるポリペプチドもまた、含まれる。
【0071】
本発明において、「ポリペプチドフラグメント」とは、配列番号Yに含まれるアミノ酸配列の一部、配列番号Xのポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の一部、および/またはcDNAプラスミドZ中のcDNAによってコードされるアミノ酸配列の一部であるアミノ酸配列をいう。タンパク質(ポリペプチド)フラグメントは、「自立構造(free−standing)」であり得るか、あるいはより大きなポリぺプチド(このフラグメントが、部分または領域(最も好ましくは単一の連続した領域として)を形成する)内に含まれ得る。本発明のポリペプチドフラグメントの代表例としては、例えば、配列番号Yのコード領域の、以下のおおよそのアミノ酸数のアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなるフラグメントが挙げられる:1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100、101〜120、121〜140、141〜160、161〜180、181〜200、201〜220、221〜240、241〜260、261〜280、281〜300、301〜320、321〜340、341〜360、361〜380、381〜400、401〜420、421〜440、441〜460、461〜480、481〜500、501〜520、521〜540、541〜560、561〜580、581〜600、601〜620、621〜640、641〜660、661〜680、681〜700、701〜720、721〜740、741〜760、761〜780、781〜800、801〜820、821〜840、841〜860、861〜880、881〜900、901〜920、921〜940、941〜960、961〜980、および/または981〜988。さらに、本発明のポリペプチドフラグメントは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、110、120、130、140、または150のアミノ酸の長さであり得る。この文脈において、「約(おおよそ)」とは、特に記載された範囲または値、あるいはいずれかの末端もしくは両方の末端において、これより数個(5、4、3、2、または1)のアミノ酸だけ大きいかまたは小さな、範囲または値を含む。これらのポリペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。
【0072】
タンパク質のN末端からの1つ以上のアミノ酸の欠失が、タンパク質の1つ以上の生物学的機能の損失の改変を生じるとしても、他の機能的活性(例えば、生物学的活性、多量体化する能力、リガンドに結合する能力)は、なお保持され得る。例えば、ポリペプチドの完全な形態または成熟形態を認識する抗体を誘導するおよび/または抗体に結合する、短縮型ムテインの能力は、完全なポリペプチド、または成熟ポリペプチドの大部分より少ない残基が、N末端から除去される場合には、一般的に保持される。完全なポリペプチドのN末端残基を欠く特定のポリペプチドが、このような免疫原性活性を保持するかどうかは、本明細書中に記載される慣用的な方法、およびそうでなければ当該分野において公知の別の方法によって容易に決定され得る。多数の欠失したN末端アミノ酸残基を有するムテインは、いくつかの生物学的活性または免疫原性活性を保持し得るようである。実際に、6つと同じくらい少ないアミノ酸残基からなるペプチドは、しばしば免疫応答を惹起し得る。
【0073】
従って、本発明のポリペプチドフラグメントとしては、分泌タンパク質および成熟形態が挙げられる。さらに好ましいポリペプチドフラグメントとしては、アミノ末端もしくはカルボキシ末端またはその両方から、連続した一連の欠失した残基を有する分泌タンパク質、もしくは成熟形態が挙げられる。例えば、任意の数のアミノ酸(1〜60の範囲)は、分泌ポリペプチドもしくは成熟形態のいずれかのアミノ末端から欠失され得る。同様に、任意の数のアミノ酸(1〜30の範囲)が、分泌タンパク質もしくは成熟形態のカルボキシ末端から欠失され得る。さらに、上記のアミノ末端およびカルボキシ末端の欠失の任意の組み合わせは好ましい。同様に、これらのポリペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
【0074】
本発明は、本明細書中で開示されるポリペプチド(例えば、配列番号Yのポリペプチド、配列番号Xに含まれるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド、および/またはcDNAプラスミドZに含まれるcDNAによりコードされるポリペプチド)のアミノ酸配列のアミノ末端から、1つ以上の欠失した残基を有するポリペプチドを、さらに提供する。特に、N末端の欠失は、一般式m−qによって記載され得、ここでqは、本発明のポリペプチド(例えば、配列番号Yに開示されるポリペプチド)におけるアミノ酸残基の総数を表す全整数であり、そしてmは、2〜q−6の範囲の任意の整数として定義される。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(フラグメントおよび/または改変体を含む)もまた、本発明に含まれる。
【0075】
また、上記のように、タンパク質のC末端からの1つ以上のアミノ酸の欠失が、このタンパク質の1つ以上の生物学的機能の損失の改変を生じるとしても、他の機能的活性(例えば、生物学的活性、多量体化する能力、リガンドに結合する能力)は、なお保持され得る。例えば、ポリペプチドの完全な形態または成熟形態を認識する抗体を誘導するおよび/またはこの抗体に結合する、短縮型ムテインの能力は、完全なポリペプチド、または成熟ポリペプチドの大部分より少ない残基が、C末端から除去される場合には、一般的に保持される。完全なポリペプチドのC末端残基を欠く特定のポリペプチドが、このような免疫原性活性を保持するか否かは、本明細書中に記載される慣用的な方法、およびそうでなければ当該分野において公知の他の方法によって容易に決定され得る。多数の欠失したC末端アミノ酸残基を有するムテインは、いくつかの生物学的活性または免疫原性活性を保持し得るようである。実際に、6つと同じくらい少ないアミノ酸残基からなるペプチドは、しばしば免疫応答を惹起し得る。
【0076】
従って、本発明は、本明細書中で開示されるポリペプチド(例えば、配列番号Yのポリペプチド、配列番号Xに含まれるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド、および/またはcDNAプラスミドZに含まれるcDNAによりコードされるポリペプチド)のアミノ酸配列のカルボキシ末端からの1つ以上の残基を有するポリペプチドを、さらに提供する。特に、C末端の欠失は、一般式1−nによって記載され得、ここでnは、6〜q−1の範囲の任意の全整数であり、そしてここでnは、本発明のポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置に対応する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(フラグメントおよび/または改変体を含む)もまた、本発明により含まれる。
【0077】
さらに、上記のN末端またはC末端の欠失のいずれかを組み合わせて、N末端およびC末端欠失型ポリペプチドを産生し得る。本発明はまた、アミノ末端およびカルボキシ末端の両方から1つ以上の欠失したアミノ酸を有するポリペプチドを提供する。このポリペプチドは、一般的に、配列番号X(例えば、好ましくは配列番号Yとして開示されるポリペプチドを含むが、これに限定されない)および/またはcDNAプラスミドZ中のcDNA、ならびに/あるいはそれらの相補鎖によってコードされるポリペプチドの、残基m−nを有する場合に記載され得、ここでnおよびmは、上記のような整数である。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(フラグメントおよび/または改変体を含む)もまた、本発明に含まれる。
【0078】
配列番号Yのポリペプチドに含まれる任意のポリペプチド配列、配列番号Xとして記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、任意のポリペプチド配列、またはcDNAプラスミドZ中のcDNAによってコードされる任意のポリペプチド配列は、そのポリペプチドの特定の好ましい領域を決定するために、分析され得る。例えば、配列番号XまたはcDNAプラスミドZ中のcDNAのポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、DNASTARコンピュータアルゴリズム(DNASTAR,Inc.,1228 S.Park St.,Madison,WI 53715 USA;http://www.dnastar.com/)のデフォルトパラメーターを使用して、分析され得る。
【0079】
DNASTARコンピューターアルゴリズムを使用して慣用的に得られ得るポリペプチドの領域としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:Garnier−Robsonのα−領域、β−領域、ターン領域、およびコイル領域、Chou−Fasmanのα−領域、β−領域、およびターン領域、Kyte−Doolittleの親水性領域および疎水性領域、Eisenbergのα−両親媒性領域およびβ−両親媒性領域、Karplus−Schulzの可撓性領域、Eminiの表面形成領域ならびに高い抗原性指標のJameson−Wolfの領域。この点で、本発明の非常に好ましいポリヌクレオチドの中に、いくつかの構造的特徴(例えば、上記の特徴のいくつか(例えば、1、2、3または4))と組み合わされる領域を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがある。
【0080】
さらに、Kyte−Doolittle親水性領域および疎水性領域、Emini表面形成領域、ならびに高い抗原性指標のJameson−Wolf領域(すなわち、Jameson−Wolfプログラムのデフォルトパラメターを使用して同定されるような、1.5より大きいか、または1.5に等しい抗原性指標を有する、4つ以上の連続するアミノ酸を含む)を慣用的に使用して、抗原性に対する高い程度の潜在性を表すポリペプチドの領域を決定し得る。高い抗原性の領域は、免疫応答の開始プロセスにおいて、抗原認識が生じ得る環境中のポリペプチドの表面上に曝されるようであるポリペプチドの領域を表す値を選択することによって、DNASTAR分析によるデータから決定される。
【0081】
本発明の好ましいポリペプチドフラグメントは、そのアミノ酸配列がフラグメントであるポリペプチド配列の、機能的活性(例えば、生物学的活性)を示すアミノ酸配列を含むか、またはあるいは、これらからなるフラグメントである。「機能的活性」を示すポリペプチドとは、全長タンパク質と関連した1つ以上の公知の機能的活性(例えば、前述のような、生物学的活性、抗原性、免疫原性、および/または多量体化など)を示し得るポリペプチドを意味する。
【0082】
他の好ましいポリペプチドフラグメントは、生物学的に活性なフラグメントである。生物学的に活性なフラグメントとは、本発明のポリペプチドの活性に対して、同一である必要はないが、類似する活性を示すフラグメントである。このフラグメントの生物学的活性は、改善された所望の活性、または低下した望ましくない活性を含み得る。
【0083】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号Yのポリペプチドの1、2、3、4、5以上の抗原性フラグメントか、またはその部分を含むか、またはあるいはそれらからなる。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(フラグメントおよび/または改変体を含む)もまた、本発明に含まれる。
【0084】
本発明は、以下のポリペプチドを含むか、またはあるいは以下からなるポリペプチドを含む:配列番号Yに示されるポリペプチド配列のエピトープ、またはcDNAプラスミドZ中のcDNAによりコードされるポリペプチド配列のエピトープ、あるいは前述で定義されるように、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはより低いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、配列番号Xのエピトープコード配列またはcDNAプラスミドZに含まれるエピトープコード配列の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列のエピトープ。本発明はさらに、本発明のポリペプチド配列のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号Xに開示される配列など)、本発明のエピトープをコードするポリヌクレオチド配列の相補鎖のポリヌクレオチド配列、および前記で定義されるように、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはより低いストリンジェンシー条ハイブリダイゼーション件下で、この相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。
【0085】
用語「エピトープ」とは、本明細書中で使用される場合、動物において、好ましくは哺乳動物において、そして最も好ましくはヒトにおいて抗原性活性または免疫原性活性を有するポリペプチドの部分をいう。好ましい実施形態において、本発明は、エピトープを含むポリペプチド、およびこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。「免疫原性エピトープ」とは、本明細書中で使用される場合、当該分野で公知の任意の方法によって決定されるような(例えば、下記に記載される抗体を産生するための方法による)、動物における抗体応答を誘発するタンパク質の一部として定義される(例えば、Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002(1983)を参照のこと)。用語「抗原性エピトープ」とは、本明細書中で使用される場合、当該分野で周知の任意の方法(例えば、本明細書中に記載される免疫アッセイによる)によって決定されるような、抗体がその抗原に免疫特異的に結合し得るタンパク質の一部として定義される。免疫特異的結合は、非特異的結合は除外するが、他の抗原との交差反応を除外する必要はない。抗原性エピトープは、免疫原性である必要はない。
【0086】
エピトープとして機能するフラグメントは、任意の従来の方法によって産生され得る。(例えば、Houghten,R.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131−5135(1985)を参照のこと。これはさらに、米国特許第4,631,211号に記載される)。
【0087】
本発明においては、抗原性エピトープは、好ましくは、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7アミノ酸配列を含み、より好ましくは、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50アミノ酸配列を含み、そして最も好ましくは約15アミノ酸と約30アミノ酸との間の配列を含む。免疫原性エピトープまたは抗原性エピトープを含有する好ましいポリペプチドは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100アミノ酸残基の長さである。さらなる非排他的に好ましい抗原性エピトープは、本明細書中で開示される抗原性エピトープおよびその一部を含む。抗原性エピトープは、有用である(例えば、エピトープに特異的に結合する抗体(モノクローナル抗体を含む)を惹起するため)。好ましい抗原性エピトープは、本明細書中で開示される抗原性エピトープ、および2、3、4、5以上のこれらの抗原性エピトープの任意の組合わせを含む。抗原性エピトープは、イムノアッセイにおいて、標的分子として使用され得る。(例えば、Wilsonら、Cell 37:767−778(1984);Sutcliffeら、Science 219:660−666(1983)を参照のこと)。
【0088】
同様に、免疫原性エピトープを使用して、例えば、当該分野で周知の方法に従う抗体を誘導し得る。(例えば、Sutcliffeら、前出;Wilsonら,前出;Chowら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittleら、J.Gen.Virol.66:2347−2354(1985)を参照のこと)。好ましい免疫原性エピトープは、本明細書で開示される免疫原性および2、3、4、5以上のこれらの免疫原性エピトープの任意の組合せを含む。1つ以上の免疫原性エピトープを含むポリペプチドは、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)とともに動物系(例えば、ウサギまたはマウス)に対する抗体応答を誘発するために提示され得るか、またはこのポリペプチドが十分に長い場合(少なくとも約25アミノ酸)、そのポリペプチドはキャリアなしで提示され得る。しかし、8〜10個程度の少なさのアミノ酸を含む免疫原性エピトープは、少なくとも変性ポリペプチド中の直鎖状エピトープに結合し得る抗体を惹起するには十分であることが示されている(例えば、ウェスタンブロッティングにおいて)。
【0089】
本発明のエピトープ保有ポリペプチドは、当該分野で周知の方法に従って抗体を誘導するために使用され得る。これらの周知の方法としては、インビボ免疫、インビトロ免疫、およびファージディスプレイ法が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、Sutcliffeら、前出;Wilsonら、前出、およびBittleら、J.Gen.Virol.、66:2347−2354(1985)を参照のこと。インビボ免疫を使用する場合、動物を遊離ペプチドを用いて免疫し得る;しかし、抗ペプチド抗体力価は、高分子キャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイド)にペプチドを結合させることによりブーストされ得る。例えば、システイン残基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを用いてキャリアに結合され得る。その一方、他のペプチドは、より一般的な結合剤(例えば、グルタルアルデヒド)を用いてキャリアに結合され得る。ウサギ、ラット、およびマウスのような動物は、遊離のペプチドまたはキャリア結合ペプチドのいずれかを用いて、例えば、約100μgのペプチドまたはキャリアタンパク質およびフロイントアジュバントまたは免疫応答を刺激することが公知である他のアジュバントを含むエマルジョンを腹腔内注射および/または皮内注射することにより免疫される。いくつかのブースター注射が、抗ペプチド抗体の有用な力価を提供するために、例えば、約2週間の間隔で、必要とされ得る。この力価は、例えば、固体表面に吸着した遊離のペプチドを用いるELISAアッセイにより検出され得る。免疫した動物由来の血清中の抗ペプチド抗体の力価は、抗ペプチド抗体の選択(例えば、当該分野で周知の方法に従う固体支持体上のペプチドへの吸着および選択された抗体の溶出による)により上昇し得る。
【0090】
当業者に理解されるように、そして上記で考察されるように、本発明のポリペプチドおよびその免疫原性エピトープフラグメントおよび/または抗原性エピトープフラグメントは、他のポリペプチド配列に融合され得る。例えば、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメインまたはそれらの部分(CH1、CH2、CH3、またはそれらの任意の組み合わせ、およびこれらの部分)と融合し得、これがキメラポリペプチドを生じる。このような融合タンパク質は、精製を容易にし得、そしてインビボにおける半減期を増加し得る。このことは、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインおよび哺乳動物の免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の種々のドメインからなるキメラタンパク質について示された。例えば、EP 394,827;Trauneckerら、Nature,331:84−86(1988)を参照のこと。上皮の関門を横切っての免疫系への抗原の増強された送達は、FcRn結合パートナー(例えば、IgGフラグメントまたはFcフラグメント(例えば、PCT公開 WO96/22024およびWO 99/04813を参照のこと)に結合体化した抗原(例えば、インスリン)について実証されている。ジスルフィド架橋二量体構造を有するIgG融合タンパク質はまた、そのIgG部分ジスルフィド結合に起因して、単量体ポリペプチドまたはそれらのフラグメント単独よりも、他の分子の結合および中和において効果的であることが見出された。例えば、Fountoulakisら、J.Biochem.、270:3958−3964(1995)を参照のこと。
【0091】
同様に、EP−A−O 464 533(カナダ国対応出願2045869)は、別のヒトタンパク質またはその一部とともに免疫グロブリン分子の定常領域の種々の部分を含む、融合タンパク質を開示する。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は、治療および診断において有利であり、従って、例えば改善された薬物動態学的特性を生じ得る(EP−A 0232 262)。あるいは、融合タンパク質が発現、検出、および精製された後に、Fc部分が欠失され得ることが望ましい。例えば、融合タンパク質が、免疫の抗原として使用される場合、そのFc部分は、治療および診断を妨げ得る。薬物探索において、例えばhIL−5のようなヒトタンパク質が、hIL−5のアンタゴニストを同定するための高処理能力スクリーニングアッセイの目的のためにFc部分と融合されている。(D.Bennettら、J.Molecular Recognition 8:52−58(1995);K.Johansonら、J.Biol.Chem.270:9459−9471(1995)を参照のこと。)
さらに、本発明のポリペプチドは、融合されたポリペプチドの精製を容易にするペプチドのような、マーカー配列と融合され得る。好ましい実施形態において、このマーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)において提供されるタグのようなヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、それらの多くは市販されている。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグである「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する(Wilsonら、Cell 37:767(1984))。
【0092】
従って、これら上記の任意の融合物は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを用いて操作され得る。
【0093】
上記のエピトープをコードする核酸はまた、エピトープタグ(例えば、血球凝集素(「HA」)タグまたはフラッグタグ(flag tag))として目的の遺伝子と組換えられ、発現されたポリペプチドの検出および精製を補助し得る。例えば、Janknechtらによって記載された系は、ヒト細胞株において発現される非変性融合タンパク質の迅速な精製を可能にする(Janknechtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972−897(1991))。この系において、目的の遺伝子は、遺伝子の読み取り枠が、6つのヒスチジン残基からなるアミノ末端タグと翻訳で融合されるように、ワクシニア組換えプラスミド中にサブクローンされる。このタグは、融合タンパク質についての基質結合ドメインとしてはたらく。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞由来の抽出物は、Ni2+ニトリロ三酢酸アガロースカラムに充填され、そしてヒスチジンタグ化したタンパク質が、イミダゾール含有緩衝液を用いて選択的に溶出され得る。
【0094】
本発明のさらなる融合タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(総称して「DNAシャッフリング」といわれる)の技術を通じて生成され得る。DNAシャッフリングを使用して、本発明のポリペプチドの活性を調節し得、このような方法を用いて、変化した活性を有するポリペプチド、ならびにそのポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを生成し得る。一般には、米国特許第5,605,793号;同第5,811,238号;同第5,830,721号;同第5,834,252号;および同第5,837,458号、ならびにPattenら、Curr.Opinion Biotechnol.8:724−33(1997);Harayama、Trends Biotechnol.16(2):76−82(1998);Hanssonら、J.Mol.Biol.287:265−76(1999);ならびにLorenzoおよびBlasco,Biotechniques 24(2):308−13(1998)(これらの特許および刊行物の各々は、本明細書によってその全体が参考として援用される)を参照のこと。1つの実施形態において、配列番号Xに対応するポリヌクレオチドおよびこれらのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの改変は、DNAシャッフリングにより達成され得る。DNAシャッフリングは、相同組換えまたは部位特異的組換えにより、2つ以上のDNAセグメントをアセンブリして、ポリヌクレオチド配列における変化を産生することを含む。別の実施形態において、本発明のポリヌクオチドまたはコードされるポリペプチドは、組換え前に、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入または他の方法による、ランダムな変異誘発に供されることによって改変され得る。別の実施形態において、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの1つ以上の成分、モチーフ、セクション(section)、部分、ドメイン、フラグメントなどは、1つ以上の異種分子の1つ以上の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、フラグメントなどと組み換えられ得る。
【0095】
(ポリヌクレオチド改変体およびポリペプチド改変体)
本発明はまた、CR改変体を含む。本発明は、配列番号Xに開示されるポリヌクレオチド配列の改変体またはそれらに対する相補鎖の改変体、および/またはcDNAプラスミドZ中に含まれるcDNA配列の改変体に関する。
【0096】
本発明はまた、配列番号Yに開示されるポリペプチド配列の改変体、配列番号Xのポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド配列の改変体および/またはcDNAプラスミドZ中のcDNAによってコードされるポリペプチド配列の改変体を含む。
【0097】
「改変体」とは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるがそれらの特性は保持している、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドをいう。一般的に、改変体は全体的に非常に類似しており、そして、多くの領域において、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと同一である。
【0098】
従って、本発明の1つの局面は、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むか、あるいはこれらのポリヌクレオチドからなる単離された核酸分子を提供する:(a)配列番号Xに記載されるか、またはクローン番号ZのcDNA配列に含まれるヌクレオチド配列;(b)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号Z中のcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列をコードする、配列番号Xまたはクローン番号Z中のcDNAのヌクレオチド配列;(c)成熟CRポリペプチドをコードする、配列番号X中またはクローン番号ZのcDNA中のヌクレオチド配列;(d)CR関連ポリペプチドの生物学的活性フラグメントをコードする、配列番号X中またはクローン番号ZのcDNAのヌクレオチド配列;(e)CRポリペプチドの抗原性フラグメントをコードする、配列番号X中またはクローン番号Z中のcDNA配列のヌクレオチド配列;(f)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号Z中のcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列を含むCRポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;(g)配列番号Yのアミノ酸配列またはクローン番号Z中のcDNAによりコードされるアミノ酸配列の成熟CRポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;(h)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号Z中のcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列を有するCRポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントをコードするヌクレオチド配列;(i)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号Z中のcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列を有するCRポリペプチドの抗原性フラグメントをコードするヌクレオチド配列;および(j)上記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)または(i)における任意のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列。
【0099】
本発明はまた、以下を含むか、あるいはこれらからなる、核酸分子に関する:例えば上記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)または(j)中の任意のヌクレオチド配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるヌクレオチド配列;配列番号Xまたはその相補鎖中のヌクレオチドコード配列;クローン番号Zに含まれるcDNAまたはその相補鎖のヌクレオチドコード配列;配列番号Yのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;配列番号Xのヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列;配列番号Xのポリヌクレオチド配列の相補体によりコードされるポリペプチド配列;クローン番号Zに含まれるcDNAによりコードされるポリペプチドをコードされるヌクレオチド配列;表1の10欄で規定されるポリペプチド配列をコードする、配列番号Xのヌクレオチド配列またはその相補鎖;表1の10欄で規定されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその相補鎖;ならびに/またはこれらの核酸分子のいずれかのポリヌクレオチドフラグメント(例えば、本明細書中に記載されるフラグメント)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下あるいは低いストリンジェンシー条件下でこれらの核酸分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドもまた、本発明によって含まれ、これらのポリヌクレオチドおよび核酸によってコードされるポリペプチドも同様である。
【0100】
好ましい実施形態において、本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またあるいは低いストリンジェンシー条件下で、上記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)または(i)のポリヌクレオチドに、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むか、またあるいはこれらのポリヌクレオチドからなる核酸分子を包含し、これらのポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドも同様に包含する。別の好ましい実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またあるいは低いストリンジェンシー条件下で、これらの核酸分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドもまた本発明に包含され、これらのポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドも同様に包含される。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、またあるいはこれらのポリペプチドからなる精製されたタンパク質を提供する:(a)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号ZのcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列;(b)配列番号Yのアミノ酸配列またはクローン番号ZのcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するCRポリペプチドの成熟形態のアミノ酸配列;(c)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号ZのcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列を有するCRポリペプチドの生物学的活性フラグメントのアミノ酸配列;および(d)配列番号Yの完全アミノ酸配列またはクローン番号ZのcDNAによりコードされる完全アミノ酸配列を有するCRポリペプチドの抗原性フラグメントのアミノ酸配列。
【0102】
本発明はまた、例えば、以下のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、またあるいはこれらのアミノ酸配列からなるタンパク質に関する:上記の(a)、(b)、(c)、または(d)のアミノ酸配列のいずれか;配列番号Yで示されるアミノ酸配列;クローン番号Zに含まれるcDNAによりコードされるアミノ酸配列;表1の10欄に規定されるアミノ酸配列;配列番号Xのヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列;および配列番号Xのポリヌクレオチド配列の相補体によりコードされるアミノ酸配列。これらのポリペプチドのフラグメントもまた提供される(例えば、本明細書中に記載されるフラグメント)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またあるいは低いストリンジェンシー条件下で、これらのアミノ酸配列をコードする核酸分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるさらなるタンパク質もまた本発明に包含され、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチドも同様である。
【0103】
本発明の参照ヌクレオチド配列に、例えば、少なくとも95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸によって、その核酸のヌクレオチド配列が、そのヌクレオチド配列がポリぺプチドをコードする参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5つまでの点変異を含み得ることを除いて、参照配列に対して同一であることを意図する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有する核酸を得るために、参照配列のヌクレオチドの5%までが、欠失され得るか、または別のヌクレオチドで置換され得るか、あるいは参照配列中の総ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが参照配列中に挿入され得る。問い合わせ(query)配列は、表1に示される配列全体、ORF(オープンリーディングフレーム)、または本明細書中で記載されるように特定される任意のフラグメントであり得る。
【0104】
実際問題として、任意の特定の核酸分子またはポリぺプチドが、本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータープログラムを使用して従来的に決定され得る。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最も良好な全体的な適合性(全体的な配列整列とも呼ばれる)を決定するための好ましい方法は、Brutlagら(Comp.App. Biosci.6:237−245(1990))のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムを使用して決定され得る。配列整列において、問い合わせ配列および対象配列は、両方ともにDNA配列である。RNA配列は、UからTに変換することによって比較され得る。この全体的な配列整列の結果は、同一性パーセント(%)で示される。同一性パーセントを算定するためにDNA配列のFASTDB整列において使用される好ましいパラメーターは:Matrix=Unitary、k−tuple=4、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=30、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty 0.05、Window Size=500または対象ヌクレオチド配列の長さ(どちらかより短い方)である。
【0105】
対象配列が、5’または3’欠失のために(内部欠失のためではなく)問い合わせ配列より短い場合、手動の補正が結果に対してなされなけらばならない。これは、同一性パーセントを計算する場合に、FASTDBプログラムが対象配列の5’および3’の短縮を考慮しないからである。5’末端または3’末端で短縮されている対象配列について、問い合わせ配列に対して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の総塩基のパーセントとして一致/整列されない対象配列の5’および3’である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。ヌクレオチドが一致/整列されるか否かは、FASTDB配列整列の結果によって決定される。次いで、このパーセントは、特定のパラメーターを用いて上記のFASTDBプログラムによって算定された同一性パーセントから差し引かれ、最終的な同一性パーセントのスコアに到達する。この補正されたスコアが、本発明の目的に使用されるものである。FASTDB整列によって示されるように、問い合わせ配列と一致/整列されない、対象配列の5’および3’の塩基の外側の塩基のみが、同一性パーセントのスコアを手動で調整する目的で算定される。
【0106】
例えば、90塩基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100塩基の問い合わせ配列に整列される。欠失が、対象配列の5’末端で生じ、従って、FASTDB整列は、5’末端の最初の10塩基で一致/整列を示さない。10個の不対合塩基は、配列の10%(一致していない5’および3’の末端の塩基の数/問い合わせ配列の塩基の総数)を表し、そのため10%が、FASTDBプログラムによって算定される同一性パーセントのスコアから差し引かれる。残りの90塩基が完全に一致する場合は、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例では、90塩基の対象配列が、100塩基の問い合わせ配列と比較される。この場合、欠失は、内部欠失であり、その結果、対象配列の5’または3’に問い合わせと一致/整列しない塩基が存在しない。この場合、FASTDBによって算定される同一性パーセントは手動で補正されない。再び、問い合わせ配列と一致/整列しない対象配列の5’または3’の塩基のみが手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためにはなされない。
【0107】
本発明の問い合わせアミノ酸配列に、例えば、少なくとも95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリぺプチドにより、対象ポリペプチドのアミノ酸配列は、その対象ポリぺプチド配列が問い合わせアミノ酸配列の各100個のアミノ酸あたり5つまでのアミノ酸の変更を含み得ることを除いて、問い合わせ配列に同一であることが意図される。換言すれば、問い合わせアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリぺプチドを得るために、対象配列におけるアミノ酸残基の5%までが、挿入、欠失、(インデル(indels))または別のアミノ酸で置換され得る。参照配列のこれらの改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端位置で生じ得るか、またはそれらの末端位置の間のどこにでも生じ得、参照配列中の残基間で個々にかまたは参照配列内の1個以上連続する群の状態かのいずれかで、散在する。
【0108】
実際問題として、任意の特定のポリぺプチドが、例えば、表1に示されるアミノ酸配列またはそのフラグメント、SEQ ID NO:Xにおけるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列またはそのフラグメント、あるいはcDNAプラスミドZにおけるcDNAによりコードされるアミノ酸配列またはそのフラグメントに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータープログラムを使用して従来のように決定され得る。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間での最良の全体的な一致(全体的配列整列とも呼ばれる)を決定するための好ましい方法は、Brutlagら(Comp.App.Biosci.6:237−245(1990))のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムを使用して決定され得る。配列整列において、問い合わせ配列および対象配列は、両方ともヌクレオチド配列であるかまたは両方ともアミノ酸配列であるかのいずれかである。上記の全体的配列整列の結果は、同一性パーセントで示される。FASTDBアミノ酸整列に用いられる好ましいパラメーターは:Matrix=PAM 0、k−tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Window Size=配列の長さ、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05、Window Size=500または対象アミノ酸配列の長さ(どちらかより短い方)である。
【0109】
対象配列が、N末端またはC末端欠失により(内部の欠失のためではなく)問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対してなされなけらばならない。これは、FASTDBプログラムが、全体的な同一性パーセントを算定する場合に、対象配列のN末端短縮およびC末端短縮を考慮しないからである。N末端およびC末端で短縮されている対象配列について、問い合わせ配列に対して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の総塩基のパーセントとして、対応する対象残基と一致/整列しない、対象配列のN末端およびC末端である問い合わせ配列の残基の数を計算することによって補正される。残基が一致/整列されているか否かは、FASTDB配列整列の結果によって決定される。次いで、このパーセントは、上記のFASTDBプログラムによって特定のパラメーターを使用して計算された同一性パーセントから差し引かれ、最終的な同一性パーセントのスコアに到達する。この最終的な同一性パーセントのスコアが、本発明の目的で使用されるものである。問い合わせ配列と一致/整列していない対象配列のN末端側およびC末端側の残基のみが、同一性パーセントのスコアを手動で調整する目的のために考慮される。すなわち、対象配列の最も遠いN末端およびC末端残基の外側の問い合わせ残基位置のみである。
【0110】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100残基の問い合わせ配列と整列される。欠失が対象配列のN末端で生じ、そしてそれゆえFASTDB整列は、N末端での最初の10残基の一致/整列を示さない。この10個の不対合残基は、配列の10%(一致していないN末端およびC末端の残基の数/問い合わせ配列中の残基の総数)を表し、その結果FASTDBプログラムによって計算される同一性パーセントのスコアから10%が差し引かれる。残りの90残基が完全に一致した場合、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90残基の対象配列が、100残基の問い合わせ配列と比較される。この場合、欠失は、内部欠失であり、そのため問い合わせ配列と一致/整列しない対象配列のN末端またはC末端の残基は存在しない。この場合、FASTDBによって算定される同一性パーセントは、手動で補正されない。再び、FASTDB整列において示される、問い合わせ配列と一致/整列しない対象配列のN末端およびC末端の外側の残基位置のみが手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためにはなされない。
【0111】
改変体は、コード領域、非コード領域、またはその両方における変化を含み得る。特に好ましいものは、サイレントな置換、付加、または欠失を生成するがコードされるポリぺプチドの特性または活性を変化させない変化を含む、ポリヌクレオチド改変体である。遺伝コードの縮重に起因するサイレントな置換によって生成されるヌクレオチド改変体が、好ましい。さらに、50アミノ酸未満、40アミノ酸未満、30アミノ酸未満、20アミノ酸未満、10アミノ酸未満、あるいは5〜50アミノ酸、5〜25アミノ酸、5〜10アミノ酸、1〜5アミノ酸、または1〜2アミノ酸が、任意の組合せで置換、欠失、または付加されている改変体もまた、好ましい。ポリヌクレオチド改変体は、種々の理由(例えば、特定の宿主についてのコドン発現を至適化する(ヒトmRNAにおけるコドンを、E.coliのような細菌宿主によって好ましいコドンに変化させる))のために、生成され得る。
【0112】
天然に存在する改変体は、「対立遺伝子改変体」と呼ばれ、そして生物の染色体上の所定の遺伝子座を占有する遺伝子のいくつかの代替の形態のうちの1つをいう。(Genes II、Lewin,B.,編 John Wiley & Sons,New York(1985))。これらの対立遺伝子改変体は、ポリヌクレオチドレベルおよび/またはポリぺプチドレベルのいずれかで変化し得、そして本発明に含まれる。あるいは、天然に存在しない改変体は、変異誘発技術によってまたは直接的な合成によって生成され得る。
【0113】
タンパク質工学および組換えDNA技術の公知の方法を使用して、改変体は、本発明のポリぺプチドの特性を改善または変化させるために作製され得る。例えば、本明細書中に考察されるように、1つ以上のアミノ酸が、生物学的機能の実質的な欠損を伴わずに、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端から欠失され得る。Ronら、J.Biol.Chem.268:2984−2988(1993)の著者らは、3個、8個、または27個のアミノ末端アミノ酸残基を欠失させた後でさえもヘパリン結合活性を有する改変体KGFタンパク質を報告した。同様に、インターフェロンγは、このタンパク質のカルボキシ末端から8〜10個のアミノ酸残基を欠失させた後、10倍までのより高い活性を示した(Dobeliら、J.Biotechnology 7:199−216(1988))。
【0114】
さらに、豊富な証拠は、改変体が、天然に存在するタンパク質の生物学的活性に類似する活性をしばしば保持することを実証する。例えば、Gayleおよび共同研究者ら(J.Biol.Chem 268:22105−22111(1993))は、ヒトサイトカインIL−1aの広範囲にわたる変異分析を行った。彼らは、ランダムな変異誘発を使用して、分子の全長にわたって改変体当たり平均2.5アミノ酸の変化になる、3,500個を超える個々のIL−1a改変体を作製した。複数の変異が、全ての可能なアミノ酸位置で試験された。この研究者らは、「分子の大部分は、[結合活性または生物学的活性]のいずれに対してもほとんど影響を伴わないで変化され得る」ことを見出した。(要約を参照のこと)。実際、試験された3,500個を超えるヌクレオチド配列のうち、わずか23個の独特なアミノ酸配列が、野生型と活性が有意に異なるタンパク質を生成した。
【0115】
さらに、本明細書中に議論されるように、ポリぺプチドのN末端またはC末端からの1つ以上のアミノ酸の欠失が、1つ以上の生物学的機能の改変または欠失を生じたとしても、他の生物学的活性はなお保持され得る。例えば、分泌形態を認識する抗体を誘導および/または結合する、欠失改変体の能力は、分泌形態の大多数より少ない残基が、N末端またはC末端から除去される場合に保持されるようである。タンパク質のN末端残基またはC末端残基を欠損する特定のポリぺプチドが、このような免疫原性活性を保持するか否かは、本明細書中に記載される慣用的な方法、およびそうでなければ当該分野において公知の慣用的な方法によって容易に決定され得る。
【0116】
従って、本発明はさらに、本発明のポリペプチドの機能的活性(例えば、生物学的活性)を示すポリペプチド改変体を含み、このポリペプチド改変体は、本発明のポリペプチドの改変体である。このような改変体としては、活性に対する影響をほとんど有さないように、当該分野において公知の一般的な法則に従って選択される、欠失、挿入、逆位、反復、および置換が挙げられる。
【0117】
本願は、本明細書中に開示される核酸配列(例えば、N末端欠失および/またはC末端欠失のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、核酸分子に関し、これは、その核酸が機能的活性を有するポリペプチドをコードするか否かに関わらない。これは、特定の核酸分子が機能的活性を有するポリペプチドをコードしない場合でさえ、例えば、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとしてその核酸分子を使用する方法を、当業者はなお知っているからである。機能的活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用としては、とりわけ、(1)cDNAライブラリーにおいて遺伝子改変体またはその対立遺伝子改変体もしくはスプライス改変体を単離すること;(2)Vermaら、Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques、Pergamon Press,New York(1988)に記載されるような、遺伝子の正確な染色体位置を提供するための、中期染色体スプレッドに対するインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISH);ならびに(3)特定の組織におけるmRNA発現を検出するためのノーザンブロット分析が、挙げられる。
【0118】
しかし、好ましいのは、本発明のポリペプチドの機能的活性を有するポリペプチドを実際にコードする、本明細書中に開示される核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である配列を有する、核酸分子である。
【0119】
当然、遺伝子コードの縮重が原因で、例えば、cDNAプラスミドZ中のcDNAの核酸配列、表1に示される核酸配列(SEQ ID NO:X)またはそれらのフラグメントと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一な配列を有する核酸分子の大多数が、「機能的活性を有する」ポリペプチドをコードすることを、当業者はただちに認識する。実際、これらのヌクレオチド配列のいずれかの縮重改変体はすべて同じポリペプチドをコードするので、多くの場合において、上記の比較アッセイを実施することなしでさえ、これは当業者には明らかである。縮重改変体でない核酸分子について、妥当な数がまた、機能的活性を有するポリペプチドをコードすることが、当該分野でさらに認識される。これは、下記にさらに議論されるように、タンパク質の機能にあまり影響しそうにないかまたは有意には影響しそうにないかのいずれかであるアミノ酸置換(例えば、1つの脂肪族アミノ酸を第2の脂肪族アミノ酸で置換すること)を当業者が完全に承知しているからである。
【0120】
例えば、表現型的にサイレントなアミノ酸置換を作製する方法に関する指針が、Bowieら「Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions」Science 247:1306〜1310(1990)に提供され、この著者は、変化に対するアミノ酸配列の許容性を研究する2つの主なストラテジーが存在することを示している。
【0121】
第1のストラテジーは、進化の過程の間の自然の選択によるアミノ酸置換の許容性を利用する。異なる種におけるアミノ酸配列を比較して、保存的アミノ酸が同定され得る。これらの保存的アミノ酸は、タンパク質の機能について重要であるようである。対照的に、置換が自然の選択によって許容されたアミノ酸の位置は、これらの位置がタンパク質の機能に重要ではないことを示す。従って、アミノ酸置換を許容する位置は、タンパク質の生物学的活性をなおも維持しつつ改変され得る。
【0122】
第2のストラテジーは、タンパク質機能に重要な領域を同定するために、クローン化された遺伝子の特定の位置でアミノ酸変化を導入するための遺伝子工学を使用する。例えば、部位特異的変異誘発またはアラニンスキャニング変異誘発(分子中のどの残基にも1つのアラニン変異の導入)が、使用され得る。(CunninghamおよびWells,Science 244:1081−1085(1989))。次いで、得られた変異分子は生物学的活性について試験され得る。
【0123】
著者らが述べるように、これらの2つのストラテジーは、タンパク質がアミノ酸置換に驚くほど寛容であることを明らかにした。著者らはさらに、どのアミノ酸変化が、タンパク質中の特定のアミノ酸位置で許容されるようであるかを示す。例えば、最も埋もれている(タンパク質の三次構造内の)アミノ酸残基は、非極性側鎖を必要とするが、表面側鎖の特徴は、一般にほとんど保存されない。さらに、寛容される保存的なアミノ酸置換は、脂肪族または疎水性アミノ酸のAla、Val、Leu、およびIleの置換;ヒドロキシル残基のSerおよびThrの置換;酸性残基のAspおよびGluの置換;アミド残基のAsnおよびGlnの置換、塩基性残基のLys、Arg、およびHisの置換;芳香族残基のPhe、Tyr、およびTrpの置換、ならびに小さなサイズのアミノ酸のAla、Ser、Thr、Met、およびGlyの置換を含む。保存的なアミノ酸置換以外に、本発明の改変体は、(i)1つ以上の非保存的なアミノ酸残基での置換、ここでは置換されるアミノ酸残基は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸残基であってもよく、もしくはそうでなくてもよい、または(ii)置換基を有する1つ以上のアミノ酸残基での置換、または(iii)別の化合物(例えば、ポリぺプチドの安定性および/もしくは可溶性を増加するための化合物(例えば、ポリエチレングリコール))との成熟ポリぺプチドの融合、または(iv)さらなるアミノ酸(例えば、IgG Fc融合領域ペプチド、またはリーダーもしくは分泌配列、または精製を容易にする配列)とのポリぺプチドの融合または(v)別の化合物(例えば、アルブミン(これは、組換えアルブミン(例えば、1999年3月2日に公布された米国特許第5,876,969号、EP特許0413 622、および1999年6月16日に公布された米国特許第5,766,883号(これらは、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)を含むが、これに限定されない)とのポリペプチド離ぺの融合を含む。このような改変体ポリぺプチドは、本明細書中の教示から、当業者の範囲内であることが考えられる。
【0124】
例えば、他の荷電されたアミノ酸または中性のアミノ酸での、荷電されたアミノ酸のアミノ酸置換を含むポリぺプチド改変体は、改善された特徴(例えば、より少ない凝集性)を有するタンパク質を生成し得る。薬学的処方物の凝集は、凝集体の免疫原活性に起因して、活性を減少し、かつクリアランスを増加する。(Pinckardら、Clin.Exp.Immunol.2:331−340(1967);Robbinsら、Diabetes 36:838−845(1987);Clelandら、Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307−377(1993))。
【0125】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むが、50アミノ酸置換を超えず、さらにより好ましくは、40アミノ酸置換を超えず、なおより好ましくは、30アミノ酸置換を超えず、そしてなおさらにより好ましくは、20アミノ酸置換を超えないアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。もちろん、ポリペプチドは、配列番号Yのポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、配列番号Xによりコードされるアミノ酸配列、および/または少なくとも1つのアミノ酸置換を含むが、好ましさの増大する順番に、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1アミノ酸置換を超えないアミノ酸置換を含むcDNAプラスミドZ中のcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有することが非常に好ましい。特定の実施形態において、配列番号Yのアミノ酸配列またはそのフラグメント(例えば、本明細書に記載の成熟形態および/または他のフラグメント)、配列番号Xによりコードされるアミノ酸配列またはそのフラグメント、ならびに/あるいはcDNAプラスミドXZによりコードされるアミノ酸配列またはそのフラグメントにおける付加、置換、および/または欠失の数は、1〜5、5〜10、5〜25、5〜50、10〜50、または50〜150であり、保存的アミノ酸置換が好ましい。本明細書中で議論されるように、本発明の任意のポリペプチドは、融合タンパク質を生成するために使用され得る。例えば、本発明のポリペプチドは、第2のタンパク質と融合される場合、抗原性タグとして使用され得る。本発明のポリペプチドに対して惹起される抗体は、ポリペプチドに結合することによって、第2のタンパク質を間接的に検出するために使用され得る。さらに、分泌されるタンパク質は、細胞位置を輸送シグナルに基づいて標的化するので、分泌されることが示されている本発明のポリペプチドは、他のタンパク質に一旦融合されると標的化分子として使用され得る。
【0126】
本発明のポリペプチドと融合され得るドメインの例は、異種シグナル配列のみならず、また他の異種機能性領域をも含む。融合は、必ずしも直接的である必要はないが、リンカー配列を介して起こり得る。
【0127】
特定の好ましい実施形態において、本発明のタンパク質は、ポリペプチドがN末端欠失変異体および/またはC末端欠失変異体である融合タンパク質を含む。好ましい実施形態において、本出願は、特定のN末端欠失変異体およびC末端欠失変異体のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一の核酸分子に関する。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(フラグメントおよび/または改変体を含む)はまた、本発明に含まれる。
【0128】
さらに、融合タンパク質はまた、本発明のポリペプチドの特徴を改良するために操作され得る。例えば、さらなるアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域が、宿主細胞からの精製または続く取り扱いおよび貯蔵の間の安定性ならびに持続性を改良するためにポリペプチドのN末端に付加され得る。また、ペプチド部分は、精製を容易にするためにポリペプチドに付加され得る。このような領域は、ポリペプチドの最終調製の前に除去され得る。ポリペプチドの取り扱いを容易にするためのペプチド部分の付加は、当該分野でよく知られ、そして慣用技術である。
【0129】
当業者に理解されるように、本発明のポリペプチドおよび上記のそれらのエピトープ保有フラグメントは、異種ポリペプチド配列と組合わされ得る。例えば、本発明のポリペプチドは、異種ポリペプチド配列に融合され得る。例えば、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメインまたはそれらの部分(ドメイン全体もしくはその部分の両方を含む、CH1、CH2、CH3、およびそれらの任意の組み合わせ)と融合され得、キメラポリペプチドを生じる。これらの融合タンパク質は、精製を容易にし、そしてインビボでの半減期の増大を示す。1つの報告された例は、ヒトCD4−ポリペプチドの最初の2つのドメインおよび哺乳動物の免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の種々のドメインからなるキメラタンパク質を記載する(EP 394,827;Trauneckerら、Nature,331:84〜86(1988))。(IgGに起因する)ジスルフィド結合二量体構造を有する融合タンパク質はまた、単量体タンパク質またはそれらのタンパク質フラグメント単独よりも、他の分子の結合および中和においてより効果的であり得る(Fountoulakisら,J.Biochem.,270:3958−3964(1995))。
【0130】
(ベクター、宿主細胞、およびタンパク質産生)
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、宿主細胞、および組換え技術によるポリペプチドの産生に関する。例えば、ベクターは、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターであり得る。レトロウイルスベクターは、複製コンピテント、または複製欠損であり得る。後者の場合、一般にウイルス増殖は、宿主細胞を補完する(complementing)際にのみ生じる。
【0131】
本発明のポリヌクレオチドは、宿主における増殖のために選択マーカーを含むベクターに連結され得る。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈澱物のような沈澱物、または荷電脂質との複合体において導入される。ベクターがウイルスである場合、ウイルスベクターは、適切なパッケージング細胞株を使用してインビトロでパッケージングされ得、次いで宿主細胞に形質導入され得る。
【0132】
ポリヌクレオチド挿入物は、適切なプロモーター(いくつか挙げれば、例えば、ファージλPLプロモーター、E.coli lacプロモーター、trpプロモーター、phoAプロモーターおよびtacプロモーター、SV40初期プロモーターおよびSV40後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーター)に作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターは当業者に公知である。発現構築物はさらに、転写開始、転写終結のための部位、および転写領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位を含む。構築物によって発現される転写物のコード部分は、好ましくは、始めに翻訳開始コドン、および翻訳されるポリペプチドの末端に適切に位置される終結コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含む。
【0133】
示されるように、発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。このようなマーカーは、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418、またはネオマイシン耐性、ならびにE.coliおよび他の細菌において培養するためのテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子を含む。適切な宿主の代表的な例は、細菌細胞(例えば、E.coli、StreptomycesおよびSalmonella typhimurium細胞);酵母細胞のような真菌細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastoris(ATCC登録番号201178));Drosophila S2およびSpodoptera Sf9細胞のような昆虫細胞;CHO細胞、COS細胞、293細胞、およびBowesメラノーマ細胞のような動物細胞;ならびに植物細胞を含むが、これらに限定されない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は、当該分野で公知である。
【0134】
細菌における使用のために好ましいベクターの中には、pQE70、pQE60およびpQE−9(QIAGEN,Inc.から入手可能);pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene Cloning Systems,Inc.から入手可能);ならびにptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia Biotech,Inc.から入手可能)を含む。好ましい真核生物ベクターの中には、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG(Stratageneから入手可能);ならびにpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Pharmaciaから入手可能)がある。酵母系における使用のために好ましいベクターは、pYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalph、pPIC9、pPIC3.5、pHIL−D2、pHIL−S1、pPIC3.5K、pPIC9K、およびPAO815(全てInvitrogen,Carlbad,CAから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なベクターは当業者に容易に明らかである。
【0135】
宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、または他の方法によってもたらされ得る。このような方法は、Davisら、Basic Methods In Molecular Biology (1986)のような多くの標準的な研究室マニュアルに記載される。本発明のポリペプチドは、実際、組換えベクターを欠損する宿主細胞によって発現され得ることが特に意図される。
【0136】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウム沈澱またはエタノール沈澱、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって組換え細胞培養物から回収され得、そして精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために使用される。
【0137】
本発明のポリペプチドはまた、以下から回収され得る:直接単離されるかまたは培養されるかにかかわらず、体液、組織および細胞を含む天然の供給源から精製される産物;化学的合成手順の産物;ならびに、例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む、原核生物宿主または真核生物宿主から組換え技術によって産生された産物。組換え産生手順において使用される宿主に依存して、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されてもよく、またはグリコシル化されていなくてもよい。さらに、本発明のポリペプチドはまた、宿主媒介プロセスの結果として、いくつかの場合において、最初の改変されたメチオニン残基を含み得る。従って、一般に、翻訳開始コドンによってコードされるN末端メチオニンが、すべての真核生物細胞における翻訳後の任意のタンパク質から高い効率で除去されることが、当該分野において周知である。ほとんどのタンパク質においてN末端メチオニンはまた、ほとんどの原核生物において効率的に除去されるが、いくつかのタンパク質について、この原核生物除去プロセスは、N末端メチオニンが共有結合するアミノ酸の性質に依存して、非効率的である。
【0138】
1つの実施形態において、酵母Pichia pastorisは、真核細胞系において、本発明のポリペプチドを発現させるために使用される。Pichia pastorisは、メタノールをその唯一の炭素供給源として代謝し得るメチル栄養性(methylotrophic)酵母である。メタノール代謝経路における主要な工程は、Oを使用してのホルムアルデヒドへのメタノールの酸化である。この反応は、酵素アルコールオキシダーゼによって触媒される。その唯一の炭素供給源としてメタノールを代謝するために、Pichia pastorisは、Oに対するアルコールオキシダーゼの比較的低い親和性に部分的に起因して、高レベルのアルコールオキシダーゼを生成する。結果的に、主要な炭素供給源としてメタノールに依存する増殖培地において、2つのアルコールオキシダーゼ遺伝子(AOX1)のうちの1つのプロモーター領域は、非常に活性である。メタノールの存在下で、AOX1遺伝子から産生されるアルコールオキシダーゼは、Pichia pastorisにおける総可溶性タンパク質のうちのおよそ30%までを含む。Ellis,S.B.ら、Mol.Cell.Biol.5:1111〜21(1985);Koutz,P.J.ら、Yeast 5:167〜77(1989);Tschopp,J.F.ら、Nucl.Acids Res.15:3859〜76(1987)。従って、AOX1調節配列の全てまたは一部の転写調節下の異種コード配列(例えば、本発明のポリヌクレオチドなど)は、メタノールの存在下で増殖したPichia酵母において、指数関数的に高レベルで発現される。
【0139】
1つの例において、プラスミドベクターpPIC9Kは、「Pichia Protocols:Methods in Molecular Biology」,D.R.HigginsおよびJ.Cregg編(The Humana Press,Totowa,NJ,1998)において本質的に記載されるように、Pichea酵母系において、本明細書中に示されるように本発明のポリペプチドをコードするDNAを発現させるために使用される。この発現ベクターは、マルチクローニング部位の上流に位置するPichia pastorisアルカリホスファターゼ(PHO)分泌シグナルペプチド(すなわち、リーダー)に連結された強力なAOX1プロモーターによって、本発明のタンパク質の発現および分泌を可能にする。
【0140】
多くの他の酵母ベクター(例えば、pYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalpha、pPIC9、pPIC3.5、pHIL−D2、pHIL−S1、pPIC3.5K、およびPAO815)は、当業者が容易に理解するように、提案された発現構築物が必要とされる場合インフレームのAUGを含む転写、翻訳、分泌(所望される場合)などの適切に配置されたシグナルを提供する限り、pPIC9Kの代わりに使用され得る。
【0141】
別の実施形態において、異種コード配列(例えば、本発明のポリヌクレオチドなど)の高レベルの発現は、本発明の異種ポリヌクレオチドを発現ベクター(例えば、pGAPZまたはpGAPZalphaなど)中にクローニングし、そしてメタノールの非存在下で酵母培養物を増殖させることによって達成され得る。
【0142】
本明細書において議論されるベクター構築物を含む宿主細胞を含むことに加えて、本発明はまた、脊椎動物起源(特に、哺乳動物起源)の一次(primary)宿主細胞、二次(secondary)宿主細胞、および不死化宿主細胞を含む。これらの宿主細胞は、内因性の遺伝物質(例えば、コード配列)を欠失または置換するように操作されており、そして/あるいは本発明のポリヌクレオチドと作動可能に連結された遺伝物質(例えば、異種ポリヌクレオチド配列)を含むように操作され、そして内因性のポリヌクレオチドを活性化、変更、および/または増幅する。例えば、当該分野で公知の技術は、相同組換えを介して、異種制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)ならびに内因性ポリヌクレオチド配列を作動可能に連結するために使用され得る(例えば、1997年6月24日に発行された米国特許第5,641,670号;1996年9月26日に公開された国際公開第WO 96/29411号;1994年8月4日に公開された国際公開第WO 94/12650号;Kollerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);およびZijlstraら,Nature 342:435−438(1989)を参照のこと。これらの開示の各々は、それら全体において参考として援用される)。
【0143】
さらに、本発明のポリペプチドは、当該分野で公知の技術を用いて化学合成され得る(例えば、Creighton,1983,Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,N.Y.およびHunkapillerら,Nature,310:105−111(1984)を参照のこと)。例えば、このポリペプチド配列のフラグメントに対応するポリペプチドは、ペプチド合成機の使用により合成され得る。さらに、所望の場合、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸アナログが、置換または付加としてこのポリペプチド配列に導入され得る。非古典的アミノ酸としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:通常のアミノ酸のD異性体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸(例えば、b−メチルアミノ酸)、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸、および一般のアミノ酸アナログ。さらに、アミノ酸はD(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。
【0144】
本発明は、翻訳の間または翻訳後に、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、抗体分子または他の細胞性リガンドへの結合などによって示差的に改変される本発明のポリペプチドを含む。任意の多数の化学的改変は、以下を含むがこれらに限定されない公知の技術によって実施され得る:臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBHによる特異的化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成;など。
【0145】
本発明によって含まれるさらなる翻訳後修飾としては、例えば、以下などが挙げられる:N結合型もしくはO結合型の炭水化物鎖(N末端またはC末端のプロセシング)、アミノ酸バックボーンへの化学部分の結合、N結合型もしくはO結合型の炭水化物鎖の化学修飾、および原核生物宿主細胞発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加もしくは欠失。このポリペプチドはまた、検出可能な標識(例えば、酵素標識、蛍光標識、同位体標識または親和性標識)を用いて改変して、このタンパク質の検出および単離が可能にされ得る。
【0146】
本発明によってまた、さらなる利点(例えば、このポリペプチドの溶解度、安定性および循環時間の増加、または免疫原性の減少)を提供し得る、本発明のポリペプチドの化学修飾誘導体が提供される(米国特許第4,179,337号を参照のこと)。誘導体化のための化学部分は、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなど)から選択され得る。このポリペプチドは、この分子内のランダムな位置で、またはこの分子内の所定の位置で改変され得、そして1、2、3以上の結合した化学部分を含み得る。
【0147】
このポリマーは、任意の分子量のポリマーであり得、そして分枝状であっても非分枝状であってもよい。ポリエチレングリコールに関しては、好ましい分子量は、取り扱いおよび製造の容易さのために、約1kDaと約100kDaとの間(用語「約」は、ポリエチレングリコールの調製において、いくつかの分子は示した分子量よりも重く、いくつかは示した分子量よりも軽いことを示す)である。所望の治療的プロフィール(例えば、所望される持続放出の持続時間、ある場合には生物学的活性に対する効果、取り扱いの容易さ、抗原性の程度または抗原性がないこと、および治療タンパク質またはアナログに対するポリエチレングリコールの他の公知の効果)に依存して、他のサイズが用いられ得る。
【0148】
ポリエチレングリコール分子(または他の化学的部分)は、このタンパク質の機能的ドメインまたは抗原性ドメインに対する効果を考慮してタンパク質に結合されるべきである。当業者に利用可能な多数の結合方法が存在する(例えば、本明細書中に参考として援用される、EP 0 401 384(G−CSFにPEGを結合する)、Malikら,Exp.Hematol.20:1028−1035(1992)(塩化トレシルを用いたGM−CSFのペグ化(pegylation)を報告する)もまた参照のこと)。例えば、ポリエチレングリコールは、反応性基(例えば、遊離のアミノ基またはカルボキシル基)によってアミノ酸残基を介して共有結合され得る。反応性基は、活性化ポリエチレングリコール分子が結合し得る基である。遊離のアミノ基を有するアミノ酸残基としては、リジン残基およびN末端アミノ酸残基が挙げられ得る;遊離のカルボキシル基を有するアミノ酸残基としては、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびC末端アミノ酸残基が挙げられ得る。スルフヒドリル残基もまた、ポリエチレングリコール分子を結合するための反応性基として用いられ得る。治療目的のために好ましいのは、アミノ基での結合、例えば、N末端またはリジン基での結合である。
【0149】
N末端で化学修飾されたタンパク質を具体的に所望し得る。ポリエチレングリコールを本発明の組成の例示として用いて、種々のポリエチレングリコール分子から(分子量、分枝などによって)、反応混合物中でのポリエチレングリコール分子のタンパク質(ポリペプチド)分子に対する比、行われるべきペグ化反応の型、および選択されたN末端ペグ化タンパク質の獲得方法を選択し得る。N末端ペグ化調製物の獲得方法(すなわち、必要な場合、この部分を他のモノペグ化部分から分離すること)は、ペグ化タンパク質分子の集団からの、N末端ペグ化物質の精製により行われ得る。N末端修飾で化学修飾された選択的タンパク質は、特定のタンパク質における誘導体化に利用可能な異なる型の第1級アミノ基(リジン対N末端)の示差的反応性を利用する還元的アルキル化によって達成され得る。適切な反応条件下では、カルボニル基含有ポリマーを用いた、N末端でのタンパク質の実質的に選択的な誘導体化が達成される。
【0150】
本発明のポリペプチドは、モノマーまたはマルチマー(すなわち、ダイマー、トリマー、テトラマーおよびより高度のマルチマー)であり得る。従って、本発明は、モノマーおよびマルチマーの本発明のポリペプチド、それらの調製ならびにそれらを含む組成物(好ましくは薬学的組成物)に関する。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、モノマー、ダイマー、トリマーまたはテトラマーである。さらなる実施形態では、本発明のマルチマーは、少なくともダイマー、少なくともトリマー、または少なくともテトラマーである。
【0151】
本発明によって含まれる多量体は、ホモマーまたはヘテロマーであり得る。本明細書中で用いられる場合、用語ホモマーは、配列番号Yのアミノ酸配列に対応するかまたは配列番号Xによってコードされるアミノ酸配列または配列番号Xの相補体、および/またはcDNAプラスミドZによってコードされるアミノ酸配列(本明細書中に記載されるこれらに対応する、フラグメント、改変体、スプライス改変体および融合タンパク質を含む)のみを含む多量体をいう。これらのホモマーは、同一または異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み得る。特定の実施形態では、本発明のホモマーは、同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドのみを含む多量体である。別の特定の実施形態では、本発明のホモマーは、異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む多量体である。特定の実施形態では、本発明の多量体は、ホモ二量体(例えば、同一または異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む)あるいはホモ三量体(例えば、同一および/または異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む)である。さらなる実施形態では、本発明のホモマー性多量体は、少なくともホモ二量体、少なくともホモ三量体または少なくともホモ四量体である。
【0152】
本明細書中で用いられる場合、用語ヘテロマーとは、本発明のポリペプチドに加えて、1つ以上の異種ポリペプチド(すなわち、異なるタンパク質のポリペプチド)を含む多量体をいう。特定の実施形態では、本発明の多量体は、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体である。さらなる実施形態では、本発明のヘテロマー性多量体は、少なくともヘテロ二量体、少なくともヘテロ三量体または少なくともヘテロ四量体である。
【0153】
本発明の多量体は、疎水性、親水性、イオン性および/もしくは共有結合性の結合の結果であり得、ならびに/または例えば、リポソーム形成によって間接的に連結され得る。従って、1つの実施形態では、本発明の多量体(例えば、ホモ二量体またはホモ三量体など)は、本発明のポリペプチドが溶液中で互いに接触する場合に形成される。別の実施形態では、本発明のへテロ多量体(例えば、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体など)は、本発明のポリペプチドが、溶液中で本発明のポリペプチドに対する抗体(本発明の融合タンパク質中の異種ポリペプチド配列に対する抗体を含む)と接触する場合に、形成される。他の実施形態では、本発明の多量体は、本発明のポリペプチドとの、および/または本発明のポリペプチド間での共有結合によって形成される。このような共有結合は、ポリペプチド配列(例えば、配列番号Yに列挙されるか、または配列番号Xおよび/もしくはcDNAプラスミド:Zによってコードされるポリペプチド中に含まれる、ポリペプチド配列)中に含まれる1以上のアミノ酸残基を含み得る。1例では、この共有結合は、ネイティブ(すなわち、天然に存在する)ポリペプチドにおいて相互作用するポリペプチド配列間に存在するシステイン残基間での架橋である。別の例では、この共有結合は、化学的操作または組換え操作の結果である。あるいは、このような共有結合は、融合タンパク質中の異種ポリペプチド配列において含まれる、1以上のアミノ酸残基を含み得る。1例では、共有結合は、本発明の融合タンパク質に含まれる異種配列間にある(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと)。特定の例では、この共有結合は、(本明細書中に記載されるような)本発明のFc融合タンパク質に含まれる異種配列間にある。別の特定の例では、本発明の融合タンパク質の共有結合は、共有結合した多量体を形成し得る別のタンパク質(例えば、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin)(例えば、国際公開第WO 98/49305号(この内容はその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)など)由来の異種ポリペプチド配列間にある。別の実施形態では、2以上の本発明のポリペプチドは、ペプチドリンカーを介して連結される。例としては、米国特許第5,073,627号(本明細書中に参考として援用される)に記載されるペプチドリンカーが挙げられる。ペプチドリンカーによって隔てられた本発明の複数のポリペプチドを含むタンパク質は、従来の組換えDNA技術を用いて生成され得る。
【0154】
本発明の多量体ポリペプチドを調製する別の方法は、ロイシンジッパーまたはイソロイシンジッパーのポリペプチド配列に融合した本発明のポリペプチドの使用を含む。ロイシンジッパードメインおよびイソロイシンジッパードメインは、それらが発見されたタンパク質の多量体化を促進するポリペプチドである。ロイシンジッパーは、本来、いくつかのDNA結合タンパク質(Landschulzら、Science 240:1759(1988))において同定され、そしてそれ以来、種々の異なるタンパク質から見出されている。公知のロイシンジッパーは、二量体化または三量体化する天然に存在するペプチド、およびそれらの誘導体である。本発明の可溶性多量体タンパク質を産生するために適切なロイシンジッパードメインの例は、PCT出願WO94/10308(本明細書中で参考として援用される)に記載されるロイシンジッパードメインである。溶液中で二量体化または三量体化するポリペプチド配列と融合した、本発明のポリペプチドを含む組換え融合タンパク質は、適切な宿主細胞において発現され、そして得られる可溶性多量体融合タンパク質は、当該分野で公知の技術を使用して、培養上清から回収される。
【0155】
本発明の三量体ポリペプチドは、増大した生物学的活性の利点を提供し得る。好ましいロイシンジッパー部分およびイソロイシン部分は、優先的に三量体を形成するものである。1つの例は、Hoppeら(FEBS Letters 344:191,(1994))および米国特許出願第08/446,922号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるような、肺サーファクタントタンパク質D(SPD)から誘導されるロイシンジッパーである。天然に存在する三量体タンパク質から誘導される他のペプチドは、本発明の三量体ポリペプチドの調製において使用され得る。
【0156】
別の例において、本発明のタンパク質は、Flag(登録商標)ポリペプチド配列を含む本発明の融合タンパク質に含まれるFlag(登録商標)ポリペプチド配列間の相互作用によって結合される。さらなる実施形態において、本発明の結合タンパク質は、本発明のFlag(登録商標)融合タンパク質に含まれる異種ポリペプチド配列と抗Flag(登録商標)抗体との間の相互作用によって結合される。
【0157】
本発明の多量体は、当該分野で公知の化学技術を用いて生成され得る。例えば、本発明の多量体中に含まれることが所望されるポリペプチドは、当該分野で公知のリンカー分子およびリンカー分子長最適化技術を用いて化学的に架橋され得る(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。さらに、本発明の多量体は、多量体中に含まれることが所望されるポリペプチドの配列中に位置するシステイン残基間に1つ以上の分子間架橋を形成するために、当該分野で公知の技術を用いて生成され得る(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。さらに、本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドのC末端またはN末端へのシステインまたはビオチンの付加によって慣用的に改変され得、そして当該分野で公知の技術が、1つ以上のこれらの改変したポリペプチドを含む多量体を生成するために適用され得る(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。さらに、当該分野で公知の技術は、本発明の多量体に含まれることが所望されるポリペプチド成分を含むリポソームを生成するために適用され得る(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0158】
あるいは、本発明の多量体は、当該分野で公知の遺伝子工学技術を用いて生成され得る。1つの実施形態において、本発明の多量体中に含まれるポリペプチドは、本明細書中に記載されるかまたはさもなくば当該分野で公知の融合タンパク質技術を用いて組換え産生される(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。特定の実施形態において、本発明のホモ二量体をコードするポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、リンカーポリペプチドをコードする配列に連結し、次いで、もともとのC末端からN末端へ逆方向にポリペプチドの翻訳産物をコードする合成ポリヌクレオチド(リーダー配列を欠く)に、さらに連結することによって生成される(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。別の実施形態において、本明細書中に記載されるかまたはさもなくば当該分野で公知の組換え技術が適用されて、膜貫通ドメイン(あるいは疎水性ペプチドまたはシグナルペプチド)を含む本発明の組換えポリペプチドを生成し、そしてこれは、膜再構成技術によってリポソームに取り込まれ得る(例えば、米国特許第5,478,925号を参照のこと、これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0159】
(抗体)
本発明のさらなるポリペプチドは、本発明の配列番号Yのポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、もしくは改変体、および/または本発明のエピトープに免疫特異的に結合する(特異的抗体−抗原結合をアッセイするための当該分野で周知のイムノアッセイにより決定されるような)抗体およびT−細胞抗原レセプター(TCR)に関する。本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されたフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体が挙げられる)、および任意の上記抗体のエピトープ結合フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)をいう。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの分子であり得る。
【0160】
最も好ましくは、抗体は、本発明のヒト抗原結合抗体フラグメントであり、そしてFab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)およびVLドメインまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。単鎖抗体を含む抗原結合抗体フラグメントは、可変領域を、単独であるいは以下:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインの全体または部分との組み合わせで含み得る。ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインと可変領域の任意の組み合わせをもまた含む抗原結合フラグメントもまた、本発明に含まれる。本発明の抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源由来であり得る。好ましくは、この抗体は、ヒト、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ウサギ(ship rabbit)、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。本明細書中で使用される場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、そしてヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つ以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックでかつ内因性免疫グロブリンを発現しない動物(以下および、例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載されるような)から単離された抗体を含む。
【0161】
本発明の抗体は、一重特異的、二重特異的、三重特異的またはより多価の多重特異的であり得る。多重特異的な抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり得るか、または本発明のポリペプチドおよび異種エピトープ(例えば、異種ポリペプチドまたは固体支持体物質)の両方に特異的であり得る。例えば、PCT公開WO 93/17715;WO92/08802;WO 91/00360;WO 92/05793;Tuttら、J.Immunol.147:60−69(1991);米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;同第5,601,819号;Kostelnyら、J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照のこと。
【0162】
本発明の抗体は、これらが認識または特異的に結合する、本発明のポリペプチドのエピトープまたは部分に関して記載または特定化され得る。このエピトープまたはポリペプチドの部分は、例えば、N末端およびC末端位置によって、連続するアミノ酸残基におけるサイズによって本明細書中に記載されるように特定され得る。本発明の任意のエピトープまたはポリペプチドに特異的に結合する抗体はまた、排除され得る。従って、本発明は、本発明のポリペプチドを特異的に結合し、そして本発明のポリペプチドの排除を可能にする抗体を含む。
【0163】
本発明の抗体はまた、その交差反応性について記載または特定化され得る。本発明のポリペプチドの任意の他のアナログ、オルソログまたはホモログを結合しない抗体が、含まれる。本発明のポリペプチドに対して少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%および少なくとも50%の同一性(当該分野で公知の方法および本明細書中に記載される方法を用いて計算されるように)を有するポリペプチドを結合する抗体もまた、本発明に含まれる。特定の実施形態において、本発明の抗体は、ヒトタンパク質の、マウスホモログ、ラットホモログおよび/またはウサギホモログならびに対応するそれらのエピトープと交差反応する。本発明のポリペプチドに対して95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満および50%未満の同一性(当該分野で公知の方法および本明細書中に記載される方法を用いて計算されるように)を有するポリペプチドを結合しない抗体もまた、本発明に含まれる。特定の実施形態において、上記の交差反応性は、本明細書中に開示された、任意の単一特異的な抗原性または免疫原性ポリペプチド、あるいは2、3、4、5以上の特異的抗原性および/または免疫原生ポリペプチドの組み合わせに関する。さらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(本明細書中で記載されるような)で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを結合する抗体が、本発明に含まれる。本発明の抗体はまた、本発明のポリペプチドに対するそれらの結合親和性について記載または特定化され得る。好ましい結合親和性としては、5×10−2M未満、10−2M未満、5×10−3M未満、10−3M未満、5×10−4M未満、10−4M未満、5×10−5M未満、10−5M未満、5×10−6M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満、10−11M未満、5×10−12M未満、10−12M未満、5×10−13M未満、10−13M未満、5×10−14M未満、10−14M未満、5×10−15M未満または10−15M未満の解離定数すなわちKdを有する親和性が挙げられる。
【0164】
本発明はまた、競合性結合を決定するための当該分野で公知の任意の方法(例えば、本明細書中で記載されるイムノアッセイ)によって決定されるような、本発明のエピトープに対する抗体の結合を競合的に阻害する抗体を提供する。好ましい実施形態において、この抗体は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、エピトープへの結合を競合的に阻害する。
【0165】
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。例えば、本発明は、本発明のポリペプチドとのレセプター/リガンド相互作用を部分的または完全にのいずれかで破壊する抗体を含む。好ましくは、本発明の抗体は、本明細書中で開示された抗原性エピトープ、またはその部分を結合する。本発明は、レセプター特異的抗体およびリガンド特異的抗体の両方の特徴を有する。本発明はまた、リガンド結合を妨害しないがレセプター活性化を妨害するレセプター特異的抗体の特徴を有する。レセプター活性化(すなわち、シグナル伝達)は、本明細書中に記載の技術、そうでなければ、当該分野で公知の技術により決定され得る。例えば、レセプター活性化は、レセプターのリン酸化(例えば、チロシンまたはセリン/トレオニン)、または免疫沈降それに続いてウェスタンブロット分析(例えば、上記のような)によってその基質を検出することにより、決定され得る。特定の実施形態において、この抗体の非存在下で、リガンド活性またはレセプター活性を、その活性の少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%阻害する抗体が提供される。
【0166】
本発明はまた、リガンド結合およびレセプター活性化の両方を妨げるレセプター特異的抗体、ならびにレセプターリガンド複合体を認識し、そして好ましくは、結合していないレセプターまたは結合していないリガンドを特異的に認識しないレセプター特異的抗体の特徴を有する。同様に、本発明は、リガンドと結合し、そしてレセプターへのリガンドの結合を妨げる中和抗体、およびリガントと結合し、それによりレセプター活性化を妨げるが、リガンドがレセプターを結合することを妨げない抗体を含む。さらに、本発明は、レセプターを活性化する抗体を含む。これらの抗体は、レセプターアゴニストとして作用し得、すなわち、例えば、レセプターの二量化を誘発することによってリガンド媒介レセプター活性化の生物学的活性化の全てまたはサブセットのいずれかを増強するかまたは活性化し得る。この抗体は、本明細書中に開示される本発明のペプチドの特異的生物学的活性を含む生物学的活性についてのアゴニスト、アンタゴニストまたは逆アゴニストとして特定化され得る。上記抗体アゴニストは、当該分野で公知の方法を用いて作製され得る。例えば、PCT公開WO96/40281;米国特許第5,811,097号;Dengら、Blood 92(6):1981−1988(1998);Chenら、Cancer Res.58(16):3668−3678(1998);Harropら、J.Immunol.161(4):1786−1794(1998);Zhuら、Cancer Res:58(15):3209−3214(1998);Yoonら、J.Immunol.160(7):3170−3179(1998);Pratら、J.Cell.Sci.111(Pt2):237−247(1998);Pitardら、J.Immunol.Methods 205(2):177−190(1997);Liautardら、Cytokine 9(4):233−241(1997);Carlsonら、J.Biol.Chem.272(17):11295−11301(1997);Tarymanら、Neuron 14(4):755−762(1995);Mullerら、Structure 6(9):1153−1167(1998);Bartunekら、Cytokine 8(1):14−20(1996)(上記の文献は、全て、その全体が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0167】
本発明の抗体は、例えば、これらに限定されないが、本発明のポリペプチドを精製し、検出し、そして標的化するために使用され得る。これらは、インビトロおよびインビボの両方での診断方法および治療方法を含む。例えば、この抗体は、生物学的サンプルにおける本発明のポリペプチドのレベルを定性的におよび定量的に測定するためのイムノアッセイにおける使用を有す。例えば、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988)(本明細書中でその全体が参照として援用される)を参照のこと。
【0168】
以下にさらに詳細に議論されるように、本発明の抗体は、単独または他の化合物との組み合わせのいずれかで使用され得る。この抗体はさらに、ポリペプチドまたは他の化合物へN末端でもしくはC末端で異種ポリペプチドに組換え的に融合され得るか、または化学的に結合(共有結合および非共有結合を含む)され得る。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおける標識として有用な分子および異種ポリペプチド、薬剤、放射性核種、または毒素のようなエフェクター分子へ組換え的に融合または結合され得る。例えば、PCT公開WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;および欧州特許第396,387号を参照のこと。
【0169】
本発明の抗体は、改変された(すなわち、共有結合性付着(covalent attachment)が、抗体が抗イディオタイプ応答を産生するのを妨げないような、抗体に対する任意の型の分子の共有結合性付着による)誘導体を含む。例えば、制限されないが、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ぺグ化(pegylation)、リン酸化(phosphylation)、アミド化、既知の保護基/ブロック基(blocking group)による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変された抗体が挙げられる。多数の任意の化学的改変が、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含むが、これらに制限されない公知の技術によって実行され得る。さらに、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0170】
本発明の抗体は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって産生され得る。目的の抗原に対するポリクローナル抗体は、当該分野で周知の種々の手順によって産生され得る。例えば、本発明のポリペプチドが種々の宿主動物(ウサギ、マウス、ラットなどを含むがこれらに限定されない)に投与されて、抗原に対して特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導し得る。種々のアジュバントが、宿主種に依存して、免疫学的応答を増加させるために使用され得、そしてフロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル(mineral gel)、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット−ゲラン杆菌)およびcorynebacterium parvumのような潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されない。このようなアジュバントはまた、当該分野で周知である。
【0171】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む、当該分野で公知の広範な種々の技術を用いて調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当該分野で公知の以下に挙げられるハイブリドーマ技術を使用して産生され得、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版、1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.1981)(上記の参考文献は、その全体が参考として援用される)に教示される。本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ技術を通して生成された抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」とは、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体をいい、そしてその生成される方法に由来する抗体ではない。
【0172】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を産生およびスクリーニングする方法は、当該分野で慣用的かつ周知であり、そして実施例に詳細に議論される。非限定的な実施例において、マウスは、本発明のポリペプチドまたはそのようなペプチドを発現する細胞を用いて免疫され得る。一旦免疫応用が検出される(例えば、抗原に特異的な抗体がマウスの血清中に検出される)と、マウスの脾臓を収集しそして脾細胞を単離する。次に、その脾細胞を周知の技術によって任意の適切な骨髄腫細胞(例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞)に融合させる。ハイブリドーマを限界希釈によって選択およびクローン化する。次に、ハイブリドーマクローンを、本発明のポリペプチドに結合し得る抗体を分泌する細胞について、当該分野で公知の方法によってアッセイする。一般的に高いレベルの抗体を含む腹水(ascites fluid)が、陽性ハイブリドーマクローンを用いてマウスを免疫させることによって、産生され得る。
【0173】
従って、本発明は、モノクローナル抗体および本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養する工程を包含する方法によって産生される抗体を、生成する方法を提供し、ここで、好ましくは、このハイブリドーマは、骨髄腫細胞と本発明の抗原で免疫したマウスから単離された脾細胞とを融合させ、次いで本発明のポリペプチドと結合し得る抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、融合物から生じるハイブリドーマをスクリーニングすることによって生成される。
【0174】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により産生し得る。例えば、本発明のFabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを産生するため)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを産生するため)のような酵素を使用して、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断によって産生され得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
【0175】
例えば、本発明の抗体はまた、当該分野に公知の種々のファージディスプレイ方法を用いて産生され得る。ファージディスプレイ方法において、機能的な抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面上に提示される。特定の実施形態において、このようなファージを、レパートリー抗体ライブラリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために利用し得る。目的の抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージを、抗原を用いて、(例えば、標識化抗原、あるいは固体表面または固体ビーズへ結合または捕捉された抗原を使用して)選択または同定し得る。これらの方法において使用されるファージは、代表的に、ファージ遺伝子IIIタンパク質またはファージ遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換え的に融合されたFab、Fvまたはジスルフィド安定化されたFvの抗体ドメインを有するファージから発現されたfdおよびM13結合ドメインを含む糸状(filamentous)ファージである。本発明の抗体を作製するために用いられ得るファージディスプレイ方法の例としては、以下に開示される方法が挙げられる:Brinkmanら、J.Immunol.Methods 182:41〜50(1995);Amesら、J.Immunol.Methods 184:177〜186(1995);Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.24:952〜958(1994);Persicら、Gene 187 9〜18(1997);Burtonら、Advances in Immunology 57:191〜280(1994);PCT公開 PCT/GB91/01134;PCT公開 WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;ならびに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号および同第5,969,108号(これらのそれぞれは、その全体が参考として援用される)。
【0176】
上記参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ファージ由来の抗体をコードする領域は、ヒト抗体を含む抗体の全体、または任意の他の所望の抗原結合フラグメントを作製するために単離および使用され得、そして例えば、以下に詳細に記載されるように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む任意の所望の宿主において発現され得る。例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメントを組換え的に産生するための技術はまた、当該分野で公知の方法を用いて使用され得る。この方法は、例えば、以下に開示される方法である:PCT公開WO92/22324;Mullinaxら、BioTechniques 12(6):864−869(1992);およびSawaiら、AJRI 34:26−34(1995);およびBetterら、Science 240:1041−1043(1998)(上記の参考文献は、その全体が参考として援用される)。
【0177】
単鎖のFvsおよび抗体を産生するために用いられ得る技術の例としては、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology 203:46−88(1991);Shuら、PNAS 90:7995−7999(1993);およびSkerraら、Science 240:1038−1040(1988)に記載される技術が挙げられる。ヒトにおける抗体のインビボにおける使用およびインビトロ検出アッセイを含むいくつかの用途のために、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の使用が好ましくあり得る。キメラ抗体とは、抗体の異なる部分が、異なる動物種に由来する分子(例えば、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体)である。キメラ抗体を産生するための方法は、当該分野において公知である。例えば、Morrison,Science 229:1202(1985);Oiら、BioTechniques 4:214(1986);Gilliesら、(1989)J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号を参照のこと(これらはそれらの全体が、参考として本明細書中に援用される)。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する所望された抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域内のフレームワーク残基(framework residue)は、抗原結合を変化させるため(好ましくは改善させるために)CDRドナー抗体由来の対応残基と置換される。これらフレームワークの置換は、当該分野で周知の方法によって同定され、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリング、ならびに特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較による。(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332:323(1988)を参照のこと(これらはそれらの全体が参考として本明細書中に援用される)。)抗体は、以下を含む当該分野で公知の種々の技術を用いてヒト化され得る:例えば、CDR−移植(欧州特許第239,400号;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号および同第5,585,089号)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号;同第519,596号;Padlan、Molecular Immunology 28(4/5):489−498(1991); Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguskaら、PNAS 91:969−973(1994))、およびチェーンシャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)。
【0178】
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置に対して特に所望される。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いた上記のファージディスプレイ法を含む当該分野で公知の種々の方法により作製され得る。米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号;およびPCT公開WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741;(これらの各々はその全体が参考として本明細書中に援用される)もまた参照のこと。
【0179】
ヒト抗体はまた、機能的内因性免疫グロブリンの発現は出来ないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現し得るトランスジェニックマウスを用いて産生され得る。例えば、ヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子およびヒト軽鎖免疫グロブリン遺伝子の複合体は、無作為にまたは相同組換えによってマウス胚性幹細胞に導入され得る。あるいは、ヒト可変領域、定常領域および多様性領域(diversity region)は、ヒト重鎖遺伝子およびヒト軽鎖遺伝子に加えて、マウスの胚性幹細胞に導入され得る。マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子およびマウス軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座の導入と別々にまたは同時に非機能的にされ得る。特に、JH領域のホモ接合性の欠失は、内因性抗体の産生を妨げる。改変された胚性幹細胞を発展させ、そしてキメラマウスを産生するために胚盤胞中に微量注入する。次に、キメラマウスを、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を産生するために繁殖させる。トランスジェニックマウスを、選択された抗原(例えば、本発明のポリペプチドの全体または部分)を用いて通常の様式で免疫する。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いた免疫したトランスジェニックマウスから得られ得る。トランスジェニックマウスに保持されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、そしてその後、クラススイッチングおよび体細胞変異を受ける。従って、そのような技術の使用によって、治療的に有用なIgG抗体、IgA抗体、IgM抗体およびIgE抗体の産生が可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概要については、LonbergおよびHuszar、Int.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術のならびにそのような抗体を産生するためのプロトコールの詳細な議論については、例えば、PCT公開WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;欧州特許第0 598 877;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;同第5,885,793号;同第5,916,771号;および同第5,939,598号を参照のこと(これらはその全体が本明細書中に参考として援用される)。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)およびGenpharm(San Jose,CA)のような企業は、上記の技術に類似した技術を用いて選択された抗原に対するヒト抗体を提供することに従事し得る。
【0180】
選択されたエピトープを完全に認識するヒト抗体を、「ガイドされた(guided)選択」といわれる技術を用いて産生し得る。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)は、同じエピトープを完全に認識するヒト抗体の選択を導くために使用される。(Jespersら、Bio/technology 12:899−903(1988))。
【0181】
さらに、本発明のポリペプチドに対する抗体は、当業者に周知の技術を用いて本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を産生するために順々に利用され得る。(例えば、GreenspanおよびBona、FASEB J.7(5):437−444;(1989)およびNissinoff,J.Immunol.147(8):2429−2438(1991)を参照のこと。)例えば、結合し、そしてポリペプチドの多量体化(multimerization)および/またはリガンドに対する本発明のポリペプチドの結合を競合的に阻害する抗体が、ポリペプチドの多量体化ドメインおよび/または結合ドメインを「模倣する」抗イディオタイプを産生するために使用され得、そして結果としてポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合し、そして中和する。このような抗イディオタイプまたはそのような抗イディオタイプのFabフラグメントの中和は、ポリペプチドリガンドを中和するための治療的レジメンに使用され得る。例えば、そのような抗イディオタイプ抗体は、本発明のポリペプチドに結合するためおよび/またはそのリガンド/レセプターに結合するために使用され得、そしてそれによってその生物学的活性がブロックされる。
【0182】
(抗体をコードするポリヌクレオチド)
本発明はさらに、本発明の抗体およびそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、ストリンジェントな、またはより低いストリジェンシーなハイブリダイゼーション条件下で(例えば、上記に定義されるような)抗体(好ましくは、本発明のポリペプチドと特異的に結合する、好ましくは、配列番号Yのアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体)をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
【0183】
ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の方法によって得られ得、そしてそのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は決定される。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られている場合、この抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから構築され得(例えば、Kutmeierら、BioTechniques 17:242(1994)に記載されるような)、これは、簡単にいうと、以下の工程を包含する:この抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップするオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、次いでPCRによる連結されたオリゴヌクレオチドの増幅。
【0184】
あるいは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から生成され得る。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能だが、その抗体分子の配列が既知である場合、その免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成され得るか、あるいは適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、または抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、本発明の抗体の発現のために選択されたハイブリドーマ細胞)から生成されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸(好ましくはポリA+RNA))から、例えば、その抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために、配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、または特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得られ得る。PCRによって生成された増幅された核酸は、次いで、当該分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
【0185】
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作について当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位指向性変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYおよびAusubelら編、1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NYに記載の技術を参照のこと。これらは両方がその全体において本明細書に参考として援用される。))を用いて操作され、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を作製するように異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成し得る。
【0186】
特定の実施形態において、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列は、相補性決定領域(CDR)の配列の同定のために、当該分野において周知の方法によって(例えば、配列超可変性の領域を決定するために、他の重鎖、および軽鎖の可変領域を既知のアミノ酸配列と比較することによって)調べられ得る。慣用的な組換えDNA技術を用いて、1つ以上のCDRが、前述のようにフレームワーク領域内に(例えば、非ヒト抗体をヒト化するために、ヒトフレームワーク領域中に)挿入され得る。このフレームワーク領域は天然に存在し得るか、またはコンセンサスフレームワーク領域であり得、そして好ましくはヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、列挙したヒトフレームワーク領域については、Chothiaら、J.Mol.Biol.278:457−479(1998)を参照のこと)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせによって生成されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上記に議論されるように、1つ以上のアミノ酸置換は、フレームワーク領域内で作製され得、そして好ましくは、そのアミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、このような方法は、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠如した抗体分子を生成するために、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域のシステイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製するために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変更は、本発明によって、および当該分野の技術内に包含される。
【0187】
さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングさせることによって、「キメラ抗体」を産生するために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851−855(1984);Neubergerら、Nature 312:604−608(1984);Takedaら、Nature 314:452−454(1985))が使用され得る。上記のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、このような分子は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を有する(例えば、ヒト化抗体)。
【0188】
あるいは、単鎖抗体の産生に関して記載された技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423−42(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988);およびWardら、Nature 334:544−54(1989))が、単鎖抗体の産生に適応され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coliにおける機能性Fvフラグメントのアセンブリのための技術もまた、使用され得る(Skerraら、Science 242:1038−1041(1988))。
【0189】
(抗体を産生する方法)
本発明の抗体は、抗体を合成するための当該分野で公知の任意の方法によって、特に、化学合成によって、または、好ましくは、組換え発現技術によって産生され得る。
【0190】
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクターは、当該分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成され得る。従って、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの発現によってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載される。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含む発現ベクターの構築のために使用され得る。これらの方法には、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域(例えば、PCT公開 WO86/05807;PCT公開 WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)をコードするヌクレオチド配列を含み得、そしてこの抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖の全体の発現のためにこのようなベクターにクローニングされ得る。
【0191】
この発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと移入され、そしてこのトランスフェクトされた細胞は、次いで、本発明の抗体を産生するために、従来技術によって培養される。従って、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体の発現についての好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述されるように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中に同時発現され得る。
【0192】
種々の宿主発現ベクター系は、本発明の抗体分子を発現させるために利用され得る。このような宿主発現系は、目的のコード配列が産生され、かつ続いて精製され得るビヒクルを表わすが、また、適切なヌクレオチドをコードする配列で形質転換またはトランスフェクトされる場合に、インサイチュで本発明の抗体分子を発現し得る細胞を表わす。これらには、以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗体をコードする配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌(例えば、E.coli、B.subtilis)のような微生物;抗体をコードする配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体をコードする配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した植物細胞系または抗体をコードする配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物のウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)。好ましくは、Escherichia coliのような細菌細胞、そしてより好ましくは、特に、組換え抗体分子全体の発現のために真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントのようなベクターと組み合わされた、チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)のような哺乳動物細胞が、抗体のための効果的な発現系である(Foeckingら、Gene 45:101(1986);Cockettら、Bio/Technology 8:2(1990))。
【0193】
細菌系において、多くの発現ベクターが、抗体分子の発現を意図する使用に依存して有利に選択され得る。例えば、多量のこのようなタンパク質が産生されるべき場合、抗体分子の薬学的組成物の生成のために、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指向するベクターが所望され得る。このようなベクターには、以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗体をコードする配列がlacZをコードする領域と共にベクターにインフレーム(in frame)で個別に連結され得、その結果、融合タンパク質が産生されるE.coli発現ベクターpUR278(Rutherら、EMBO J.2:1791(1983));pINベクター(Inouye&Inouye、Nucleic Acids Res.13:3101−3109(1985);Van Heeke&Schuster、J.Biol.Chem.24:5503−5509(1989))など。pGEXベクターもまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、外来性ポリペプチドを発現させるために使用され得る。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、そして溶解した細胞から、マトリックスグルタチオン−アガロースビーズへの吸着および結合、それに続く遊離グルタチオン存在化での溶出によって容易に精製され得る。このpGEXベクターは、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され、その結果、このクローニングされた標的遺伝子産物は、GST部分から放出され得る。
【0194】
昆虫系においては、Autographa californica核多角体病ウィルス(AcNPV)は、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。このウィルスは、Spodoptera frugiperda細胞において増殖する。抗体をコードする配列は、このウィルスの非必須の領域(例えばポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングされ得、そしてAcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置され得る。
【0195】
哺乳動物宿主細胞においては、多数のウィルスに基づく発現系が利用され得る。アデノウィルスが発現ベクターとして使用される場合においては、目的の抗体をコードする配列は、アデノウィルスの転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび3つの部分に分かれるリーダー配列、に連結され得る。次いで、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボでの組換えによって、アデノウィルスゲノムに挿入され得る。ウィルスゲノムの非必須領域(例えば、E1またはE3領域)における挿入は、生存可能で、感染した宿主において抗体分子を発現する能力のある組換えウィルスを生じる(例えば、Logan&Shenk、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355−359(1984)を参照のこと)。特異的開始シグナルはまた、挿入された抗体をコードする配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。さらに、この開始コドンは、挿入部分全体の翻訳を確実にするために、所望されるコード配列のリーディングフレームと相が同じでなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、種々の起源(天然および合成の両方)であり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター、などの含有によって高められ得る(Bittnerら、Methods in Enzymol.153:51−544(1987)を参照のこと)。
【0196】
さらに、宿主細胞系統は、選択され得、これは挿入配列の発現を調節するか、または所望される特異的な様式で遺伝子産物を改変し、そしてプロセシングする。タンパク質産物のこのような改変(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能のために重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の、翻訳後プロセシングおよび改変のための、特徴的で特異的な機構を有する。適切な細胞株または宿主系は、発現された外来タンパク質の正確な改変およびプロセシングを確実にするように選択され得る。この目的のために、遺伝子産物の、第一の転写、グリコシル化、およびリン酸化の正確なプロセシングのための細胞機構を有する、真核生物宿主細胞が、使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞は、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、そして特に、例えば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47Dのような乳癌細胞株、ならびに、例えば、CRL7030およびHs578Bstのような正常な乳腺細胞株、を含むがこれらに限定されない。
【0197】
組換えタンパク質の長期間の高収率産生、安定発現が好ましい。例えば、安定に抗体分子を発現する細胞株が操作され得る。ウィルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するよりも、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、など)、および選択可能なマーカーによって制御されるDNAで形質転換され得る。外来DNAの導入に続いて、操作された細胞は、1〜2日間富化培地で増殖させられ得、次いで、選択培地に切り替えられる。組換えプラスミドにおける選択可能マーカーは、選択したものに耐性を与え、そして細胞が、プラスミドをその染色体内に安定に組み込み、そして増殖して、細胞増殖巣を形成し、これを今度はクローニングし得、細胞株に拡張され得ることを可能にする。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を操作するために、有利に使用され得る。このような操作された細胞株は、直接的または間接的に抗体分子と相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価において、特に有用であり得る。
【0198】
多数の選択系が使用され得、この選択系は、単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska&Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817(1980))を含むがこれらに限定されず、これらの遺伝子は、tk−、hgprt−またはaprt−細胞においてそれぞれ使用され得る。また、代謝拮抗物質耐性は、以下の遺伝子の選択の根拠として使用され得る:dhfr、これはメトトレキサートに対する耐性を与える(Wiglerら、Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));gpt、これはミコフェノール酸にに対する耐性を与える(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));neo、これはアミノグリコシドG−418に対する耐性を与える(Clinical Pharmacy 12:488−505;WuおよびWu、Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan、Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson、Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);1993年5月、TIB TECH 11(5):155−215);ならびにhygro、これはハイグロマイシンにに対する耐性を与える(Santerreら、Gene 30:147(1984))。組換えDNA技術の分野で通常知られている方法は、所望の組換えクローンを選択するために、慣用的に適用され得、そしてこのような方法は、以下に記載されている:例えば、Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990);ならびに12章および13章、Dracopoliら(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley&Sons、NY(1994);Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981)(これらはその全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0199】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増大され得る(総説として、BebbingtonおよびHentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、Vol.3(Academic Press、New York、1987)を参照のこと)。抗体を発現するベクター系におけるマーカーが、増幅可能であると、宿主細胞の培養物に存在するインヒビターのレベルにおける増加は、マーカー遺伝子のコピーの数を増加する。増副領域は抗体遺伝子と結合しているので、抗体の産生もまた増加する(Crouseら、Mol.Cell.Biol.3:257(1983))。
【0200】
宿主細胞は、本発明の二つの発現ベクター(重鎖由来のポリペプチドをコードする第一のベクターおよび軽鎖由来のポリペプチドをコードする第二のベクター)で、同時トランスフェクトされ得る。この二つのベクターは、重鎖および軽鎖のポリペプチドの等しい発現を可能にする、同一の選択可能なマーカーを含み得る。あるいは、単一のベクターが使用され得、これは重鎖および軽鎖両方のポリペプチドをコードし、そして発現することができる。このような状況において、過剰の毒性の遊離重鎖を避けるために、重鎖の前に軽鎖が配置されるべきである(Proudfoot、Nature 322:52(1986);Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197(1980))。重鎖および軽鎖のためのコード配列はcDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
【0201】
一旦本発明の抗体分子が、動物によって産生されるか、化学的に合成されるか、または組換えにより発現されると、当該分野で公知の、免疫グロブリン分子の精製のための任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー(特に、プロテインAの後に特異的抗原に対する親和性(アフィニティー)による)、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質精製のための任意の他の標準的な技術によって、精製され得る。さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、本明細書中に記載されるかまたはそうでなければ当該分野において公知の、異種ポリペプチド配列に融合され得、精製を容易にする。
【0202】
本発明は、組換えにより融合されるかまたは化学的に、本発明のポリペプチド(もしくはその部分、好ましくはこのポリペプチドの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100個のアミノ酸)に結合されて(共有結合および非共有結合の両方を含む)、融合タンパク質を生成する抗体を含む。この融合は、直接的である必要はないが、リンカー配列を介して起こり得る。この抗体は、本発明のポリペプチド(またはその部分、好ましくはこのポリペプチドの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100個のアミノ酸)以外の抗原に特異的であり得る。例えば、インビトロまたはインビボのいずれにおいても、本発明のポリペプチドを特定の細胞表面のレセプターに特異的な抗体に融合または結合させることによって、特定の細胞のタイプに対して、本発明のポリペプチドを標的にするために、抗体が使用され得る。本発明のポリぺプチドに融合または結合される抗体はまた、インビトロ免疫アッセイおよび当該分野で公知の方法を使用する精製方法において使用され得る。例えば、Harborら、上記、およびPCT公開第WO93/21232号;EP439,095;Naramuraら、Immunol.Lett.39:91−99(1994);米国特許第5,474,981号;Gilliesら、PNAS89:1428−1432(1992);Fellら、J.Immunol.146:2446−2452(1991)を参照のこと。これらは、その全体が参考として援用される。
【0203】
本発明はさらに、抗体の可変領域以外のドメインに融合または結合された、本発明のポリぺプチドを含む組成物を含む。例えば、本発明のポリぺプチドは、抗体のFc領域、またはその部分に融合または結合され得る。この抗体の本発明のポリぺプチドに融合された部分は、定常領域、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、またはそのドメイン全体もしくは部分任意の組合せを含み得る。これらのポリぺプチドはまた、上記の抗体の部分に融合または結合され得、多重体を形成する。例えば、本発明のポリぺプチドに融合されたFc部分は、このFc部分の間のジスルフィド結合を通して二量体を形成し得る。より高度の多重体形態は、ポリぺプチドをIgAおよびIgMの部分に融合させることによって作製され得る。本発明のポリぺプチドを抗体部分に融合または結合させるための方法は、当該分野において公知である。米国特許第5,336,603号;同第5,622,929号;同第5,359,046号;同第5,349,053号;同第5,447,851号;同第5,112,946号;EP 307,434;EP 367,166;PCT国際公開第WO96/04388号;第WO91/06570号;Ashkenaziら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:10535−10539(1991);Zhengら、J.Immunol.154:5590−5600(1995);およびVilら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337−11341(1992)(前記の参考文献はその全体が参考として援用される)を参照のこと。
【0204】
上で考察されたように、ポリぺプチド、ポリぺプチドフラグメント、または配列番号Yの変異体、に対応するポリぺプチドは、このポリぺプチドのインビボ半減期を増大させるため、または当該分野で公知の方法を使用する免疫学的アッセイにおいて使用するために、上記の抗体部分に融合または結合され得る。さらに、配列番号Yに対応するポリぺプチドを、上記の抗体部分に融合または結合して、精製を容易にし得る。1つの報告された例は、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメイン、および哺乳動物の免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の種々のドメインからなるキメラタンパク質を記載している(EP 394,827;Trauneckerら、Nature 331:84−86(1988))。ジスルフィド連結二量体構造(IgGに起因する)を有する抗体に融合または結合される、本発明のポリぺプチドもまた、単量体分泌タンパク質またはタンパク質フラグメント単独よりも、他の分子に結合しそして中和するのにさらに効率的であり得る(Fountoulakisら、J.Biochem.270:3958−3964(1995))。多くの場合、融合タンパク質のFc部分は、治療および診断において有益であり、従って、例えば、改良された薬物動態学的な特性を生じ得る(EP A 232,262)。あるいは、融合タンパク質が発現され、検出され、そして精製された後に、Fc部分を欠失させることが望ましい。例えば、融合タンパク質が免疫化のための抗原として使用される場合、Fc部分は、治療および診断を妨害し得る。例えば、薬物の発見において、hIL−5のようなヒトタンパク質は、hIL−5のアンタゴニストを同定するための高スループットスクリーニングアッセイの目的のためにFc部分と融合されてきた(Bennettら、J.Molecular Recognition 8:52−58(1995);Johansonら、J.Biol.Chem.270:9459−9471(1995)を参照のこと)。
【0205】
さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、精製を容易にするペプチドのような、マーカー配列に融合され得る。好ましい実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、とりわけヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)において提供されるタグ)であり、これらの多くのマーカーアミノ酸配列が市販されている。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:821−824(1989)に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の都合の良い精製を提供する。精製のために有用な別のペプチドタグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する「HA」タグ(Wilsonら、Cell37:767(1984))、および「flag」タグを含むが、これに限定されない。
【0206】
本発明は、診断剤または治療剤に結合される、抗体またはそのフラグメントをさらに含む。抗体は、例えば、臨床上の試験手順(例えば、所与の処置レジメン(regimen)の効力を決定するため)の一部として、腫瘍の発生または進行をモニターするために、診断的に使用され得る。検出は、抗体を検出可能な物質と連結させることによって容易にされ得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子放射断層撮影を使用する陽電子放射金属、および非放射性常磁性金属イオン、が挙げられる。この検出可能な物質は、抗体(またはそのフラグメント)に対して、直接的または間接的のいずれかで、当該分野で公知の技術を使用する媒介物(例えば、当該分野で公知のリンカー)を介して、連結または結合され得る。例えば、本発明に従う診断薬としての使用のための抗体に結合され得る金属イオンに関しては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子団複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;ならびに、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。
【0207】
さらに、抗体またはそのフラグメントは、治療用部分(例えば細胞毒(例えば細胞増殖抑制性もしくは細胞殺傷性の薬剤))、治療剤または放射性金属イオン(例えば、α−エミッタ−(例えば213Bi))に結合され得る。細胞毒または細胞毒性薬剤は、細胞に対して有害な任意の薬剤を含む。例としては、パクリタキセル(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD,1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそのアナログまたはホモログ、が挙げられる。治療剤は、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、クロルメチン(mechlorethamine)、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(anthramycin)(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)、を含むが、それらに限定されない。
【0208】
本発明の結合体は、所与の生物学的応答を改変するために使用され得、治療剤または薬物部分は、古典的な化学的治療剤に限定されると解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリぺプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、毒素(例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、a−インターフェロン、β−インターフェロン、神経発育因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノゲン賦活剤、アポトーシス薬(例えば、TNF−α、TNF−β、AIM I(国際公開第WO97/33899号を参照のこと)、AIM II(国際公開第WO97/34911号を参照のこと)、Fasリガンド(Takahashiら、Int.Immunol.6:1567−1574(1994))、VEGI(国際公開第WO99/23105号))、血栓症薬もしくは抗脈管形成薬(例えば、アンジオスタチンもしくはエンドスタチン);または生物学的応答改変剤(例えばリンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の増殖因子)、が挙げられ得る。
【0209】
抗体はまた、固体支持体に付着させられ得、この固体支持体は、標的抗原の免疫アッセイまたは精製に特に有用である。このような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレン、が挙げられるがそれらに限定されない。
【0210】
このような治療部分を抗体に結合する技術は周知であり、例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243−56頁(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623−53頁(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475−506頁(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編)、303−16頁(Academic Press 1985)、およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.62:119−58(1982)を参照のこと。
【0211】
あるいは、抗体は2次抗体に結合され、米国特許第4,676,980号(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)におけるSegalによる記載のような抗体異種結合体(heteroconjugate)を形成し得る。
【0212】
単独、あるいは細胞毒性因子および/またはサイトカインと組み合わせて投与される、抗体に結合する治療部分を有するかまたは有さない抗体が、治療薬として使用され得る。
【0213】
(免疫表現型分類(immunophenotyping))
本発明の抗体は、細胞株および生物学的サンプルの免疫表現型分類のために利用され得る。本発明の遺伝子の翻訳生成物は、細胞特異的マーカーとして、あるいはより詳細には、特定の細胞型の分化および/または成熟の種々の段階で差示的に発現される細胞マーカーとして有用であり得る。特異的エピトープ、またはエピトープの組み合わせに対して指向されるモノクロナール抗体は、マーカーを発現する細胞集団のスクリーニングを可能とする。種々の技術が、マーカーを発現する細胞集団をスクリーニングするために、モノクロナール抗体を用いて利用され得、そしてその技術には、抗体でコーティングされた磁気ビーズを用いる磁気分離、固体マトリクス(すなわち、プレート)に付着した抗体を用いる「パンニング」、ならびにフローサイトメトリー(例えば、米国特許第5,985,660号;およびMorrisonら、Cell,96:737−49(1999)を参照のこと)が挙げられる。
【0214】
これらの技術は、血液学的悪性腫瘍(すなわち、急性白血病患者における最少残留疾患(minimal residual disease)(MRD))および対宿主性移植片病(GVHD)を予防するための移植術における「非自己」細胞と共に見出され得るような、細胞の特定集団のスクリーニングを可能にする。あるいは、これらの技術は、ヒト臍帯血において見出され得るような増殖および/または分化を受け得る、造血幹細胞および先祖細胞のスクリーニングを可能にする。
【0215】
(抗体結合についてのアッセイ)
本発明の抗体は、当該分野において公知の任意の方法により、免疫特異的結合についてアッセイされ得る。用いられ得る免疫アッセイとしては、いくつかのものについてだけ名称を挙げると、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイのような技術を用いる競合アッセイ系および非競合アッセイ系が挙げられるが、これらに限定されない。このようなアッセイは慣用的であり、そして当該分野において周知である(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、Ausubelら編,1994,Current Protocols in Molecular Biology,第1巻、John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkを参照のこと)。例示的な免疫アッセイが、以下に簡潔に記載される(が、これらは限定を目的とすることが意図されない)。
【0216】
免疫沈降プロトコルは、一般に、タンパク質ホスファターゼインヒビターおよび/またはプロテアーゼインヒビター(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウム)を補充したRIPA緩衝液(1% NP−40またはTriton X−100、1% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、0.01M リン酸ナトリウム(pH7.2)、1% Trasylol)のような溶解緩衝液中で、細胞の集団を溶解する工程、目的の抗体を細胞溶解物に添加する工程、一定時間(例えば、1〜4時間)4℃でインキュベートする工程、プロテインAセファロースビーズおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解物に添加する工程、約1時間以上4℃でインキュベートする工程、溶解緩衝液中でビーズを洗浄する工程、およびSDS/サンプル緩衝液中でビーズを再懸濁する工程を包含する。目的の抗体の、特定の抗原を免疫沈降する能力は、例えば、ウエスタンブロット分析により、アッセイされ得る。当業者は、抗体の抗原への結合を増加するように、そしてバックグラウンドを減少させるように改変され得るパラメータ(例えば、セファロースビーズを用いて細胞溶解物を事前にきれいにする工程)に関して、認め得る。免疫沈降プロトコルに関するさらなる考察については、例えば、Ausubelら編,1994、Current Protocols in Molecular Biology,第1巻、John Wiley&Sons、Inc.,New York,10.16.1を参照のこと。
【0217】
ウエスタンブロット分析は、一般に、タンパク質サンプルを調製する工程、ポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じた8%〜20% SDS−PAGE)中でのそのタンパク質サンプルの電気泳動、そのタンパク質サンプルをそのポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDFまたはナイロンのような膜に移す工程、ブロッキング溶液(例えば、3% BSAまたは脱脂粉乳を有するPBS)中でその膜をブロックする工程、洗浄緩衝液(例えば、PBS−Tween 20)中でその膜を洗浄する工程、ブロッキング緩衝液中で希釈された一次抗体(目的の抗体)を用いてその膜をブロックする工程、洗浄緩衝液中でその膜を洗浄する工程、ブロッキング緩衝液中で希釈された酵素基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)あるいは放射性分子(例えば、32Pまたは125I)に結合した二次抗体(一次抗体を認識する、例えば、抗ヒト抗体)を用いて、その膜をブロックする工程、洗浄緩衝液中でその膜を洗浄する工程、ならびにその抗原の存在を検出する工程を包含する。当業者は、検出されるシグナルを増加させるように、そしてバックグラウンドノイズを減少させるように改変され得るパラメータに関して、認め得る。ウエスタンブロットプロトコルに関するさらなる考察については、例えば、Ausubelら編,1994,Current Protocols in Molecular Biology,第1巻、John Wiley&Sons,Inc.,New York,10.8.1を参照のこと。
【0218】
ELISAは、抗原を調製する工程、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルをその抗原でコーティングする工程、酵素基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)のような検出可能な化合物に結合した目的の抗体をそのウェルに添加し、そして一定時間インキュベートする工程、およびその抗原の存在を検出する工程を包含する。ELISAにおいて、目的の抗体は、検出可能な化合物に結合している必要はない;その代わり、検出可能な化合物に結合した第二の抗体(目的の抗体を認識する)が、ウェルに添加され得る。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体がウェルにコーティングされ得る。この場合、検出可能な化合物に結合した第二の抗体が、コーティングされたウェルへの目的の抗原の添加に続いて、添加され得る。当業者は、検出されるシグナルを増加させるように改変され得るパラメータ、および当該分野において公知のELISAの他のバリエーションに関して、認め得る。ELISAに関するさらなる考察については、例えば、Ausubelら編,1994,Current Protocols in Molecular Biology,第1巻、John Wiley&Sons,Inc.,New York,11.2.1を参照のこと。
【0219】
抗原に対する抗体の結合親和性および抗体−抗原相互作用のオフレート(off−rate)が、競合結合アッセイにより決定され得る。競合結合アッセイの一つの例は、ラジオイムノアッセイであり、ラジオイムノアッセイは、標識抗原(例えば、3Hまたは125I)と、漸増量の非標識抗原の存在下での、目的の抗体を用いるインキュベーション、および標識抗原に結合した抗体の検出を含む。特定の抗原に対する目的の抗体の親和性、および結合オフレートは、スキャッチャードプロット分析によるデータから決定され得る。第二の抗体との競合はまた、ラジオイムノアッセイを用いて決定され得る。この場合、抗原は、漸増量の非標識の第二の抗体の存在下で、標識化合物(例えば、3Hまたは125I)に結合した目的の抗体とともにインキュベートされる。
【0220】
(治療用途)
本発明はさらに、抗体ベースの治療に関し、この治療は、1つ以上の開示された疾患、障害、または状態を処置するために、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトの患者に、本発明の抗体を投与する工程を包含する。本発明の治療化合物としては、本発明の抗体(本明細書中に記載されるような、それらのフラグメント、アナログおよび誘導体を含む)ならびに本発明の抗体をコードする核酸(本明細書中に記載されるような、それらのフラグメント、アナログおよび誘導体ならびに抗イディオタイプ抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患、障害または状態(本明細書中に記載される任意の1つ以上の疾患、障害、または状態を含むがこれらに限定されない)を処置、阻害または予防するために使用され得る。本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患、障害または状態の処置および/または予防は、それらの疾患、障害または状態に関連した症状を緩和する工程を含むが、これに限定されない。本発明の抗体は、当該分野で公知であるか、または本明細書中に記載されるように、薬学的に受容可能な組成物中に提供され得る。
【0221】
本発明の抗体が治療的に使用され得る方法の要約は、身体内で局所的にまたは全身的に、あるいは(例えば、補体(CDC)により、またはエフェクター細胞(ADCC)により媒介されるような)抗体の直接的細胞傷害性により、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを結合させることを含む。これらのアプローチのいくつかは、より詳細に以下に記載される。本明細書中で提供される教示を与えられれば、当業者は、過度の実験なしに、診断上の目的、モニタリングの目的あるいは治療上の目的のために、本発明の抗体を使用する方法がわかる。
【0222】
本発明の抗体は、例えば、抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増加させるために役立つ、他のモノクローナル抗体またはキメラ抗体、あるいはリンホカインまたは造血増殖因子(例えば、IL−2、IL−3およびIL−7のような)と組み合わせて有利に利用され得る。
【0223】
本発明の抗体は、単独で、または他の型の処置(例えば、放射線療法、化学療法、ホルモン治療、免疫治療および抗腫瘍剤)との組み合わせで投与され得る。一般的に、(抗体の場合には)患者の種と同じ種である種起源または種反応性の生成物の投与が好ましい。従って、好ましい実施形態においては、ヒトの抗体、フラグメント誘導体、アナログ、または核酸が、治療または予防のために、ヒトの患者に投与される。
【0224】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(そのフラグメントを含む)に関する免疫アッセイ、およびそれらに関連した障害の治療の両方のために、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する、高親和性および/または強力な、インビボでの阻害抗体および/または中和抗体、それらのフラグメント、またはそれらの領域を使用することが好ましい。このような抗体、フラグメント、または領域は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(そのフラグメントを含む)に対して親和性を有する。好ましい結合親和性としては、5×10−2M、10−2M、5×10−3M、10−3M、5×10−4M、10−4M、5×10−5M、10−5M、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、および10−15Mより小さい解離定数すなわちKdを有する結合親和性が挙げられる。
【0225】
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現したか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
【0226】
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法は、本発明に従って使用され得る。例示的な方法が以下に記載される。
【0227】
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。使用され得る、組換えDNA技術分野において一般的に公知である方法は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
【0228】
好ましい局面において、化合物は抗体をコードする核酸配列を含有し、上記核酸配列は、適切な宿主において、抗体、またはそのフラグメントもしくはキメラタンパク質、あるいはその重鎖もしくは軽鎖を発現する発現ベクターの一部である。特に、このような核酸配列は、抗体コード領域に作動可能に連結したプロモーターを有し、上記プロモーターは誘導性であるかまたは構成性であり、そして必要に応じて組織特異的である。別の特定の実施形態においては、抗体をコードする配列および任意の他の所望の配列がゲノム中の所望の部位での相同組換えを促進する領域に隣接した核酸分子が使用され、従って抗体をコードする核酸の染色体内の発現を提供する(KollerおよびSmithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);Zijlstraら,Nature 342:435−438(1989))。特定の実施形態において、発現した抗体分子は単鎖抗体であるか;あるいはこの核酸配列は、この抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードする配列またはそのフラグメントを含む。
【0229】
核酸の患者への送達は、直接的(この場合、患者は核酸または核酸保有ベクターに直接的に曝される)か、または間接的(この場合、細胞は最初にインビトロで核酸で形質転換され、次いで患者に移植される)のいずれかであり得る。これらの2つのアプローチは、インビボ遺伝子治療として、またはエキソビボ遺伝子治療としてそれぞれ公知である。
【0230】
特定の実施形態において、核酸配列はインビボで直接的に投与され、そこで核酸配列は発現されて、コードされた生成物を産生する。これは、当該分野で公知の多数の方法(例えば、それらを適切な核酸発現ベクターの一部分として構築し、そしてそれを(例えば、欠損性または弱毒化したレトロウイルスまたは他のウイルスベクター(米国特許第4,980,286号を参照のこと)を用いる感染により)細胞内になるように投与することにより、あるいは、裸のDNAの直接注射により、あるいは、微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)の使用により、あるいは脂質または細胞表面のレセプターでコーティングするか、もしくは薬剤をトランスフェクトすることにより、あるいは、リポソーム、微粒子、またはマイクロカプセル中へのカプセル化により、あるいは、それらを核に入ることが公知であるペプチドと結合させて投与することにより、レセプター媒介のエンドサイトーシスを受けるリガンドと結合させて投与することにより(例えば、WuおよびWu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)を参照のこと)(レセプターを特異的に発現する細胞の型を標的にするために用いられ得る)などのいずれかにより達成され得る。別の実施形態において、核酸−リガンド複合体が形成され得、ここで、このリガンドはエンドソームを破壊するフソジェニック(fusogenic)ウイルス性ペプチドを含み、この核酸がリソゾーム分解を回避することを可能にする。さらに別の実施形態において、核酸は、特定のレセプターを標的化することにより、細胞特異的な取り込みおよび発現についてインビボで標的化され得る(例えば、PCT公開第WO92/06180号;同第WO92/22635号;同第WO92/20316号;同第WO93/14188号、同第WO93/20221号を参照のこと)。あるいは、核酸は、細胞内部に導入され得、そして相同組換えにより、発現のために宿主細胞DNA中に組み込まれ得る(KollerおよびSmithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);Zijlstraら,Nature 342:435−438(1989))。
【0231】
特定の実施形態において、本発明の抗体をコードする核酸配列を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターが用いられ得る(Millerら,Meth.Enzymol.217:581−599(1993)を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルス性ゲノムの正確なパッケージングおよび宿主細胞DNAへの正確な組込みのために必要な構成要素を含む。遺伝子治療において使用される抗体をコードする核酸配列は、一つ以上のベクター中にクローニングされ、これは、患者内への遺伝子の送達を容易にする。レトロウイルスベクターに関するさらなる詳細は、Boesenら,Biotherapy 6:291−302(1994)(これは、幹細胞を化学療法に対してより耐性にするために、mdr1遺伝子を造血性幹細胞に送達するための、レトロウイルスベクターの使用を記載する)に見出され得る。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参考文献は、以下である:Clowesら,J.Clin.Invest.93:644−651(1994);Kiemら,Blood 83:1467−1473(1994);SalmonsおよびGunzberg,Human Gene Therapy 4:129−141(1993);ならびにGrossmanおよびWilson,Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110−114(1993)。
【0232】
アデノウイルスは、遺伝子治療において使用され得る他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、特に、気道上皮へ遺伝子を送達するための魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは、自然に気道上皮に感染し、そこで軽い疾患を起こす。アデノウイルスベースの送達システムの他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞を感染することができるという利点を有する。KozarskyおよびWilson,Current Opinion in Genetics and Development 3:499−503(1993)は、アデノウイルスベースの遺伝子治療の概説を示す。Boutら,Human Gene Therapy 5:3−10(1994)は、アカゲザルの気道上皮に遺伝子を移すためのアデノウイルスベクターの使用を示した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの使用の他の例は、Rosenfeldら,Science 252:431−434(1991);Rosenfeldら,Cell 68:143−155(1992);Mastrangeliら,J.Clin.Invest.91:225−234(1993);PCT公開第WO94/12649号;およびWangら,Gene Therapy 2:775−783(1995)に見出され得る。好ましい実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。
【0233】
アデノ随伴ウイルス(AAV)はまた、遺伝子治療における使用が提案されてきた(Walshら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289−300(1993);米国特許第5,436,146号)。
【0234】
遺伝子治療への別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法により、組織培養中の細胞へ遺伝子を移入する工程を包含する。通常、移入の方法は、選択可能なマーカーの細胞への移入を含む。次いで、細胞は、移入された遺伝子を取り込みそして発現する細胞を単離するために選沢下に置かれる。次いで、それらの細胞は患者に送達される。
【0235】
この実施形態においては、得られた組換え細胞のインビボ投与の前に、核酸が細胞に導入される。このような導入は、当該分野において公知の任意の方法により実施され得、それらの方法としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターでの感染、細胞融合、染色体媒介の遺伝子移入、マイクロセル媒介の遺伝子移入、スフェロプラスト融合など。外来遺伝子の細胞への導入については、当該分野において多数の技術が公知であり(例えば、LoefflerおよびBehr,Meth.Enzymol.217:599−618(1993);Cohenら,Meth.Enzymol.217:618−644(1993);Cline,Pharmac.Ther.29:69−92m(1985)を参照のこと)、そしてレシピエント細胞の必要な発生的および生理学的機能が破壊されないならば、本発明に従って使用され得る。この技術は、細胞への核酸の安定した移入を提供するべきであり、その結果、この核酸は、細胞により発現可能であり、好ましくは、その細胞の子孫により遺伝性でかつ発現可能である。
【0236】
得られた組換え細胞は、当該分野において公知の様々な方法により、患者へ送達され得る。組換え血球(例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞)は、好ましくは、静脈内に投与される。使用が考えられる細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、そして当業者により決定され得る。
【0237】
遺伝子治療の目的のために核酸が導入され得る細胞は、任意の所望の入手可能な細胞型を包含し、そして以下を含むがそれらに限定されない:上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球のような血球;種々の幹細胞または前駆細胞、特に、造血幹細胞または造血前駆細胞(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児の肝臓などから得られるような細胞)。
【0238】
好ましい実施形態において、遺伝子治療に使用される細胞は、患者に対して自己である。
【0239】
遺伝子治療において組換え細胞が使用される実施形態において、抗体をコードする核酸配列は、細胞またはそれらの子孫により核酸配列が発現可能であるように細胞に導入され、次いで組換え細胞は、治療的効果のためにインビボで投与される。特定の実施形態において、幹細胞または前駆細胞が用いられる。インビトロで単離され、かつインビトロで維持され得る任意の幹細胞および/または前駆細胞は、本発明のこの実施形態に従って潜在的に使用され得る(例えば、PCT公開WO94/08598:StempleおよびAnderson,Cell 71:973−985(1992);Rheinwald,Meth.Cell Bio.21A:229(1980);ならびにPittelkowおよびScott,Mayo Clinic Proc.61:771(1986)を参照のこと)。
【0240】
特定の実施形態において、遺伝子治療の目的で導入されるべき核酸は、コード領域に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含有し、その結果、核酸の発現は、適切な転写誘導因子の存在または非存在を制御することにより制御可能である。
【0241】
(治療活性または予防活性の実証)
本発明の化合物または薬学的組成物は、好ましくは、ヒトでの使用の前にインビトロで、次いでインビボで、所望の治療活性または予防活性について試験される。例えば、化合物または薬学的組成物の、治療有用性または予防有用性を証明するためのインビトロアッセイとしては、細胞株または患者組織サンプルに対する化合物の効果が挙げられる。細胞株および/または組織サンプルに対する化合物または組成物の効果は、当業者に公知である技術(ロゼット形成アッセイおよび細胞溶解アッセイが挙げられるがこれらに限定されない)を利用して決定され得る。本発明に従って、特定の化合物の投与が示されるかどうかを決定するために用いられ得るインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられ、このアッセイでは、患者組織サンプルが培養において増殖され、そして化合物に曝露されるか、そうでなければ化合物が投与され、そして、組織サンプルに対するそのような化合物の効果が観察される。
【0242】
(治療的/予防的な投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物、好ましくは本発明のポリペプチドまたは抗体の投与による処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製される(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。被験体は好ましくは、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどのような動物が挙げられるがそれらに限定されない動物であり、そして好ましくは哺乳動物であり、そして最も好ましくはヒトである。
【0243】
化合物が核酸または免疫グロブリンを含む場合に使用され得る処方および投与方法は、上記に記載され;さらなる適切な処方および投与経路は、本明細書中で以下に記載されたものの中から選択され得る。
【0244】
種々の送達システムが公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム中でのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、この化合物の発現が可能な組換え細胞、レセプター媒介エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)を参照のこと)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築など)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアゾール化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
【0245】
特定の実施形態において、本発明の薬学的化合物または組成物を、処置の必要な領域に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
【0246】
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中へ送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
【0247】
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は制御された放出システム中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。さらに別の実施形態において、制御された放出システムは、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
【0248】
他の制御された放出システムは、Langerにより総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
【0249】
本発明の化合物がタンパク質をコードする核酸である、具体的な実施形態において、その核酸は、それを適切な核酸発現ベクターの一部として構成し、そしてそれが細胞内になるように投与することにより(例えば、レトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286号を参照のこと)、または直接注射により、または微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)の使用により、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクト剤でコーティングすることにより、または核に入ることが公知であるホメオボックス様ペプチドと結合させて投与すること(例えば、Joliotら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868(1991)を参照のこと)などにより、そのコードされたタンパク質の発現を促進するようにインビボで投与され得る。あるいは、核酸は、細胞内に導入され得、そして、発現のために相同組換えにより宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【0250】
本発明はまた、薬学的組成物を提供する。このような組成物は、治療有効量の化合物、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。具体的な実施形態において、用語「薬学的に受容可能な」とは、動物における、そしてさらに特にヒトにおける使用のために、連邦規制当局もしくは米国政府により認められたか、または米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に列挙されたことを意味する。用語「キャリア」とは、治療剤とともに投与される、希釈剤、アジュバンド、賦形剤、またはビヒクルをいう。このような薬学的なキャリアは、水および油(石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源の油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)を含む)のような滅菌した液体であり得る。水は、薬学的組成物が静脈内に投与される場合に、好ましいキャリアである。生理食塩水溶液、ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液はまた、特に注射可能な溶液のために、液体キャリアとして使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、フラワー、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物はまた、所望される場合、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出処方物などの形態を取り得る。この組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドのようなキャリアとともに、坐剤として処方され得る。経口処方物は、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準キャリアを含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。このような組成物は、治療有効量の化合物を、好ましくは精製された形態で、適切な量のキャリアとともに含んで、患者への適切な投与のための形態を提供する。処方物は、投与形態に適するべきである。
【0251】
好ましい実施形態において、組成物は、慣用手順に従って、ヒトへの静脈内投与のために採用された薬学的組成物として、処方される。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射の部位での痛みを緩和するリグノカインのような局部麻酔を含み得る。一般的には、成分は、別々にかまたは単一投薬形態で一緒に混合してのどちらかで、例えば、一定量の活性薬剤を示すアンプルまたは小袋(sachette)のような密封された容器中の凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として供給される。組成物が注入により投与されるべき場合には、組成物は、滅菌した薬学的等級の水または生理食塩水を含む注入ボトルに分配され得る。組成物が注入により投与される場合、成分が投与の前に混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0252】
本発明の化合物は、中性のまたは塩の形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するもののようなアニオンとともに形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するもののようなカチオンとともに形成される塩が挙げられる。
【0253】
この処置(本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性と関連する疾患または障害の抑制および予防)において効果的である本発明の化合物の量は、標準的な臨床技術により決定され得る。さらに、インビトロアッセイは、必要に応じて、使用して最適な投薬量の範囲を同定するのを助け得る。処方において使用されるべき正確な用量はまた、投与の経路、および疾患または障害の重篤さに依存し、そして開業医の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から外挿され得る。
【0254】
抗体に関して、患者に投与される投薬量は、代表的に、患者の体重1kgあたり0.1mg〜100mgである。好ましくは、患者に投与される投薬量は、患者の体重1kgあたり0.1mgと20mgとの間であり、より好ましくは、患者の体重1kgあたり1mg〜10mgである。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドへの免疫応答に起因して、他種由来の抗体よりもヒト体内で長い半減期を有する。従って、ヒト抗体の低い投薬量および頻度の低い投与が、しばしば可能である。さらに、本発明の抗体の投与の投薬量および頻度は、改変(例えば、脂溶化(lipidation)のような)による抗体の取り込みおよび組織浸透(例えば、脳への)を増強することにより減少され得る。
【0255】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の一つ以上の成分で満たされている一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。薬学的製品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制している政府機関により規定される形式における通告は、このような容器に、必要に応じて伴ない得る。この通告は、ヒトの投与のための製造、使用または販売のこの機関による認可を反映する。
【0256】
(診断および画像化)
目的のポリペプチドに特異的に結合する標識化抗体、ならびにその誘導体およびそのアナログは、診断目的のために使用されて、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連する疾患、障害および/または状態を検出、診断またはモニターし得る。本発明は、目的のポリペプチドの異常な発現の検出について提供し、これは、(a)目的のポリペプチドに特異的な1つ以上の抗体を使用して、個体の細胞または体液中の目的のポリペプチドの発現をアッセイする工程、および(b)この遺伝子発現レベルと標準的な遺伝子発現のレベルを比較する工程、を包含し、これによって、その標準的な発現レベルと比較されるアッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少が、異常な発現を示す。
【0257】
本発明は、障害を診断するための診断アッセイを提供し、このアッセイは、(a)目的のポリペプチドに特異的な1つ以上の抗体を使用して、個体の細胞または体液中の目的のポリペプチドの発現をアッセイする工程、および(b)この遺伝子発現レベルと標準的な遺伝子発現のレベルを比較する工程、を包含し、これによって、その標準的な発現レベルと比較されるアッセイされたポリペプチド遺伝子発現レベルの増加または減少が、特定の障害を示す。癌に関して、個体由来の生検組織における比較的高い量の転写物の存在は、疾患の発生のための素因を示し得るか、または実際の臨床症状の出現前に疾患を検出するための手段を提供し得る。この型のより決定的な診断は、保健専門家に予防手段を使用させること、または早期の積極的な処置を可能にし得、これにより、癌の発生またはさらなる進行を予防する。
【0258】
本発明の抗体を使用して、当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を使用して生物学的サンプル中のタンパク質レベルをアッセイし得る(例えば、Jalkanenら、J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanenら、J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987)を参照のこと)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な、抗体に基づく他の方法としては、イムノアッセイ(例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)および放射免疫測定法(RIA))が挙げられる。適切な抗体アッセイ標識は、当該分野において公知であり、そして酵素標識(例えば、グルコースオキシダーゼ);放射性同位体(例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99Tc));発光標識(例えば、ルミノール);ならびに蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、ならびにビオチンが挙げられる。
【0259】
本発明の1つの局面は、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトにおける、目的のポリペプチドの異常な発現と関連する疾患または障害の検出および診断である。1つの実施形態において、診断は、a)目的のポリペプチドに特異的に結合する有効量の標識化分子を被験体に(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に)投与する工程;b)このポリペプチドが発現する被験体内の部位でこの標識化分子が優先的に濃縮することを可能にするために(および結合していない標識化分子がバックグラウンドレベルまで除去されるために)投与後、時間間隔を待つ工程;c)バックグラウンドレベルを決定する工程;およびd)この被験体中の標識化分子を検出する工程、を包含し、その結果、このバックグラウンドレベルを越える標識化分子の検出は、この被験体が目的のポリペプチドの異常な発現と関連する特定の疾患または障害を有することを示す。バックグラウンドレベルは、特定の系について以前に決定された標準的な値と、検出された標識化分子の量を比較する工程を包含する種々の方法により決定され得る。
【0260】
被験体の大きさおよび使用される画像化システムが、診断の画像を産生するために必要である画像化部分の量を決定するということは、当該分野において理解される。放射性同位体部分の場合、ヒト被験体について、注射される放射能の量は、通常、約5〜20ミリキュリーの範囲の99mTcである。次いで、標識化抗体または標識化抗体フラグメントは、特定のタンパク質を含む細胞の位置で優先的に蓄積する。インビボでの腫瘍の画像化は、S.W.Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments」(Tumor Imaging、第13章:The Radiochemical Detection of Cancer,S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982)において、記載される。
【0261】
使用する標識の型および投与の様式を含む、いくつかの変動に依存して、標識化分子が被験体中の部位に優先的に濃縮することを可能にするため、および結合していない標識化分子がバックグラウンドレベルまで除去されるための投与後の時間間隔は、6〜48時間もしくは6〜24時間または6〜12時間である。別の実施形態において、投与後の時間間隔は、5〜20日間または5〜10日間である。
【0262】
1つの実施形態において、疾患および障害をモニターすることは、疾患または障害(disease)を診断するための方法を繰り返すことによって実施される(例えば、最初の診断から1ヶ月後、最初の診断から6ヶ月後、最初の診断から1年後、など)。
【0263】
標識化分子の存在は、インビボスキャニングについての当該分野で公知の方法を使用して患者中で検出され得る。これらの方法は、使用される標識の型に依存する。当業者は、特定の標識を決定するための適切な方法を決定することができる。本発明の診断方法において使用され得る方法およびデバイスは、コンピュータ連動断層撮影法(CT)、体全体のスキャン(例えば、陽子(position)放射断層撮影法(PET))、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波診断法を含むが、これらに限定されない。
【0264】
特定の実施形態において、分子を放射性同位体で標識し、そして放射応答外科的機器(radiation responsive surgical instrument)(Thurstonら、米国特許第5,441,050号)を使用して患者中で検出する。別の実施形態において、分子を蛍光化合物で標識し、そして蛍光応答スキャニング機器を使用して患者中で検出する。別の実施形態において、分子を陽電子射出金属で標識し、そして陽電子射出断層撮影法を使用して患者中で検出する。さらに別の実施形態において、分子を常磁性標識で標識し、そして磁気共鳴画像法(MRI)を使用して患者中で検出する。
(キット)
本発明は、上記の方法において使用され得るキットを提供する。1つの実施形態において、キットは、1つ以上の容器において、本発明の抗体、好ましくは精製した抗体を備える。特定の実施形態において、本発明のキットは、エピトープを含む実質的に単離されたポリペプチドを備える。このエピトープは、キット中に含まれる抗体と特異的に免疫反応する。好ましくは、本発明のキットは、目的のポリペプチドと反応しないコントロール抗体をさらに備える。別の特定の実施形態において、本発明のキットは、目的のポリペプチドへの抗体の結合を検出するための手段を備える(例えば、この抗体は、検出可能な基質(例えば、蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物もしくは発光化合物)に結合体化され得るか、または一次抗体を認識する二次抗体が、検出可能な基質と結合体化され得る)。
【0265】
本発明の別の特定の実施形態において、キットは、増殖性および/または癌性のポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対して特異的な抗体を含む血清のスクリーニングに使用するための診断キットである。このようなキットは、目的のポリペプチドと反応しないコントロール抗体を備え得る。このようなキットは、エピトープを含む実質的に単離されたポリペプチド抗原を備え得る。このエピトープは、少なくとも1つの抗ポリペプチド抗原抗体と特異的に免疫反応する。さらに、このようなキットは、抗原に対する上記の抗体の結合を検出するための手段を備える(例えば、抗体は、蛍光化合物(例えば、フローサイトメトリーにより検出され得るフルオレセインまはたローダミン)と結合体化され得る)。特定の実施形態において、キットは、組換え的に産生されたポリペプチド抗原または化学的に合成されたポリペプチド抗原を備え得る。キットのポリペプチド抗原はまた、固体支持体に付着され得る。
【0266】
より特定の実施形態において、上記のキットの検出手段は、上記のポリペプチド抗原が付着する固体支持体を備える。このようなキットはまた、非付着レポーター標識化抗ヒト抗体を備え得る。この実施形態において、ポリペプチド抗原への抗体の結合は、上記のレポーター標識化抗体の結合によって検出され得る。
【0267】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドの抗原を含む血清のスクリーニングにおいて使用するための、診断キットを含む。この診断キットは、ポリペプチド抗原またはポリヌクレオチド抗原と特異的に免疫反応する実質的に単離された抗体、およびこの抗体へのこのポリヌクレオチド抗原またはポリペプチド抗原の結合を検出するための手段を備える。1つの実施形態において、抗体は、固体支持体に付着される。特定の実施形態において、抗体は、モノクロナール抗体であり得る。キットのこの検出手段は、二次標識化モノクロナール抗体を含み得る。あるいは、またはさらに、この検出手段は、標識化競合抗原を含み得る。
【0268】
1つの診断構成において、試験血清を、本発明の方法により得られる表面結合抗原を有する固相試薬と反応させる。特定の抗原抗体とこの試薬との結合、および洗浄することによる結合していない血清成分の除去の後、この試薬をレポーター標識化抗ヒト抗体と反応させて、固体支持体上に、結合した抗抗原抗体の量に比例して、この試薬にレポーターを結合させる。この試薬を再び洗浄して、結合していない標識化抗体を除去し、そしてこの試薬と会合するレポーターの量を決定する。代表的に、レポーターは、酵素であり、この酵素は、適切な蛍光性基質、発光性基質または比色用基質(Sigma,St.Louis,MO)の存在下で固相をインキュベートすることにより検出される。
【0269】
上記のアッセイにおける固体表面試薬は、タンパク質材料を固体支持体材料(例えば、高分子ビーズ、計深棒、96ウェルプレートまたは濾過材料)に付着させるための公知の技術により調製される。これらの付着方法としては、一般的に、支持体へのタンパク質の非特異的な吸着または固体支持体上の化学的に活性な基(例えば、活性化カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはアルデヒド基)とのタンパク質の共有結合(covalent attachment)(代表的には、遊離アミン基を介する)が挙げられる。あるいは、ストレプトアビジンでコートされたプレートが、ビオチン化された抗原と共に使用され得る。
【0270】
従って、本発明は、この診断方法を行うためのアッセイ系またはキットを提供する。このキットは、一般的に、表面結合された組換え抗原を有する支持体、および表面結合された抗抗原抗体を検出するための、レポーター標識された抗ヒト抗体を備える。
【0271】
(ポリヌクレオチドの使用)
本明細書中で同定された各々のポリヌクレオチドは、試薬として多数の方法において使用され得る。以下の説明は例示的であるとみなされるべきであり、そして公知の技術を利用する。
【0272】
本発明のポリヌクレオチドは、染色体同定のために有用である。実際の配列データ(反復多型性)に基づく染色体マーキング試薬は現在ほとんど利用可能ではないため、新しい染色体マーカーを同定する必要性が存在するままである。各々の配列は、個々のヒト染色体上の特定の位置に特に標的化され、そしてこの位置にハイブリダイズされ得る。従って、本発明の各々のポリヌクレオチドは、当該分野で公知の技術を用いて染色体マーカーとして慣用的に使用され得る。
【0273】
簡単に言うと、配列は、配列番号Xで示される配列からPCRプライマー(好ましくは、少なくとも15bp(例えば、15〜25bp))を調製することによって染色体にマッピングされ得る。プライマーが、ゲノムDNA中の1つより多くの予測されたエキソンにまたがらないように、プライマーは、コンピューター分析を使用して必要に応じて選択され得る。次いで、これらのプライマーは、個々のヒト染色体を含む体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングのために使用される。配列番号Xに対応するヒト遺伝子を含むハイブリッドのみが、増幅されたフラグメントを産生する
同様に、体細胞ハイブリッドは、特定の染色体に対してポリヌクレオチドをPCRマッピングする迅速な方法を提供する。単一のサーマルサイクラーを使用して1日あたり3つ以上のクローンが割り当てられ得る。さらに、ポリヌクレオチドの下位位置決定(sublocalization)は、特定の染色体フラグメントのパネルを用いて達成され得る。使用され得る他の遺伝子マッピング戦略は、インサイチュハイブリダイゼーション、標識フローソート(labeled flow sorted)染色体でのプレスクリーニング、染色体特異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリダイゼーションによる前選択、およびコンピューターマッピング技術(例えば、その全体が本明細書中に参考として援用される、Shuler,Trends Biotechnol 16:456−459(1998)など)を含む。
【0274】
ポリヌクレオチドの正確な染色体位置はまた、中期染色体スプレッド(spread)の蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を使用して獲得され得る。この技術は500または600塩基ほどの短さのポリヌクレオチドを使用する;しかし2,000〜4,000bpのポリヌクレオチドが好ましい。この技術の総説に関しては、Vermaら、「Human Chromosomes:a Manual of Basic Techniques」,Pergamon Press,New York (1988)を参照のこと。
【0275】
染色体マッピングについては、ポリヌクレオチドは、個々に(単一染色体またはその染色体上の単一部位をマークするために)またはパネルで(複数部位および/または複数染色体をマークするために)使用され得る。
【0276】
従って、本発明はまた、染色体の位置決定のための方法も提供し、この方法は、(a)表1におけるポリヌクレオチド配列および配列番号XからPCRプライマーを調製する工程、ならびに(b)個々の染色体を含む体細胞ハイブリッドをスクリーニングする工程を包含する。
【0277】
本発明のポリヌクレオチドは、同様に、放射線ハイブリッドマッピング、HAPPYマッピング、および長範囲制限マッピングに有用である。これらの技術および当該分野で公知の他の技術の概説について、例えば、Dear「Genome Mapping:A Practical Approach」IRL Press at Oxford University Press、London(1997);Aydin、J.Mol.Med.77:691〜694(1999);Haciaら、Mol.Psychiatry 3:483〜492(1998);Herrickら、Chromosome Res.7:409〜423(1999);Hamiltonら、Methods Cell Biol.62:265〜280(2000);および/またはOtt、J.Hered.90:68〜70(1999)(これらの各々は、その全体が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0278】
一旦、ポリヌクレオチドが正確な染色体位置にマップされると、ポリヌクレオチドの物理的位置は、連鎖分析において使用され得る。連鎖分析は、染色体位置と特定の疾患の提示との間の同時遺伝(coinheritance)を確立する。(疾患マッピングデータは、例えば、V.McKusick,Mendelian Inheritance in Man(Johns Hopkins University Welch Medical Libraryを通してオンラインで利用可能である)において見い出される)。1メガベースマッピング解像度および20kbあたり1遺伝子と仮定すると、疾患と関連する染色体領域に正確に位置決定されるcDNAは、50〜500の潜在的な原因遺伝子のうちの1つであり得る。
【0279】
従って、一旦、同時遺伝が確立されると、罹患個体と非罹患個体との間での本発明のポリヌクレオチドおよび対応する遺伝子における差異が試験され得る。まず、染色体中の可視的構造変化(例えば、欠失または転座)は染色体スプレッドにおいて、またはPCRによって試験される。構造的変化が存在しない場合、点変異の存在が確認される。何人かのまたは全ての罹患個体で観察されたが、正常な個体では観察されなかった変異は、この変異がこの疾患を引き起こし得ることを示す。しかし、いくつかの正常な個体由来のポリペプチドおよび対応する遺伝子の完全な配列決定は、変異を多型性と区別するために要求される。新しい多型性が同定される場合、この多型ポリペプチドはさらなる連鎖分析のために使用され得る。
【0280】
さらに、非罹患個体と比較した、罹患個体の遺伝子の増加または減少した発現が、本発明のポリヌクレオチドを使用して評価され得る。任意のこれらの変化(変化した発現、染色体再配置、または変異)は、診断マーカーまたは予後マーカーとして使用され得る。
【0281】
従って、本発明はまた、障害の診断の間に有用な診断方法を提供し、この方法は、個体由来の細胞または体液中の本発明のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する工程、および測定された遺伝子発現レベルを標準のポリヌクレオチド発現レベルと比較する工程を包含し、これによって、標準と比較して、遺伝子発現レベルの増加または減少が、障害の指標になる。
【0282】
なお別の実施形態では、本発明は、サンプルを、試験被験体に由来する増殖性および/または癌性のポリヌクレオチドの存在について分析するためのキットを含む。一般的実施形態において、このキットは、本発明のポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドプローブ、および適切な容器を備える。この特定の実施形態では、このキットは、本発明のポリヌクレオチドの内部領域を規定する2つのポリヌクレオチドプローブを含み、ここで各プローブは、この領域に対して内部に31’マー末端を含む1つの鎖を有する。さらなる実施形態では、このプローブは、ポリメラーゼ連鎖反応増幅のためのプライマーとして有用であり得る。
【0283】
例えば、腫瘍の診断を含む、関連障害の診断が既に従来方法によって行われている場合、本発明は、予後インジケーターとして有用であり、それによって増強または抑制された本発明のポリヌクレオチドの発現を示す患者が、標準レベルにより近いレベルでこの遺伝子を発現する患者と比較して悪い臨床結果を経験する。
【0284】
「本発明のポリヌクレオチドの発現レベルを測定する(こと)」によって、本発明のポリペプチドのレベルまたは本発明のポリペプチドをコードするmRNAのレベルを、第1の生物学的サンプルにおいて直接的(例えば、絶対のタンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定または評価することによって)または相対的(例えば、第2の生物学的サンプル中のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルに対して比較することによって)のいずれかで定性的または定量的に測定または評価することが意図される。好ましくは、第1の生物学的サンプル中のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルが測定または評価され、そして標準のポリペプチドレベルまたはmRNAレベルに対して比較され、この標準は、関連障害を有さない個体から得られる第2の生物学的サンプルから得られるかまたは関連障害を有さない個体の集団由来のレベルを平均することによって決定される。当該分野で認識されるように、一旦標準的なポリペプチドレベルまたはmRNAレベルが公知になれば、これを、比較のための標準として反復して用い得る。
【0285】
「生物学的サンプル」によって、本発明のポリペプチドまたは対応するmRNAを含む、個体、体液、細胞株、組織培養物または他の供給源から得られる任意の生物学的サンプルが意図される。示されるように、生物学的サンプルは、本発明のポリペプチドを含む体液(例えば、精液、リンパ、血清、血漿、尿、滑液および髄液)、本発明のポリペプチドを発現することが見出された組織供給源を含む。哺乳動物から組織生検および体液を得るための方法は、当該分野で周知である。生物学的サンプルがmRNAを含む場合、組織生検が好ましい供給源である。
【0286】
上記で提供された方法は好ましくは、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドが固体支持体に結合される、診断方法および/またはキットに適用され得る。1つの例示的な方法では、この支持体は、米国特許第5,837,832号、同第5,874,219号および同第5,856,174号に記載される、「遺伝子チップ」または「生物学的チップ」であり得る。さらに、本発明のポリヌクレオチドが結合されたこのような遺伝子チップを用いて、本発明の単離された本発明のポリヌクレオチド配列と、試験被験体から単離されたポリヌクレオチドとの間の多型性を同定し得る。このような多型の知識(すなわち、その多型の位置、およびその多型の存在)は、多くの障害(例えば、神経障害、免疫系障害、筋肉障害、生殖障害、胃腸障害、肺障害、心血管障害、腎障害、増殖性障害、ならびに/または癌性疾患および癌性状態)について、疾患遺伝子座を同定する際に有益である。このような方法は、米国特許第5,858,659号および同第5,856,104号に記載される。上記に参照した米国特許は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0287】
本発明は、化学的に合成された、または、ペプチド核酸(PNA)として再現された)または当該分野で公知の他の方法に従って、本発明のポリヌクレオチドを包含する。PNAの使用は、本発明のポリヌクレオチドが固体支持体、または、遺伝子チップに取り込まれる場合、好ましい形態として役立つ。本発明の目的のために、ペプチド核酸(PNA)は、ポリアミド型のDNAアナログであり、そしてアデニン、グアニン、チミンおよびシトシンについてのモノマー単位が市販されている(Perceptive Biosystems)。DNAの特定の成分(例えば、リン、酸化リンまたはデオキシリボース誘導体)は、PNA中に存在しない。P.E.Nielsen,M.Egholm,R.H.BergおよびO.Buchardt,Science 254,1497(1991);ならびにM.Egholm,O.Buchardt,L.Christensen,C.Behrens,S.M.Freier,D.A.Driver,R.H.Berg、S.K.Kim,B.NordenおよびP.E.Nielsen,Nature 365,666(1993)によって開示されるように、PNAは、相補的なDNA鎖に対して特異的かつ緊密に結合し、そしてヌクレアーゼによって分解されない。実際、PNAは、DNA自体が結合するよりも強力にDNAに結合する。これはおそらく、2つの鎖の間に静電斥力が存在せず、そしてまたポリアミド骨格がより可撓性が高いことによる。これによって、PNA/DNA二重鎖は、DNA/DNA二重鎖よりも広範囲のストリンジェンシー条件下で結合し、多重鎖ハイブリダイゼーションを行うのをより容易にする。強力な結合に起因して、DNAを用いてよりも小さいプローブが用いられ得る。さらに、おそらく、単一の塩基ミスマッチが、PNA/DNAハイブリダイゼーションを用いて決定され得る。なぜなら、PNA/DNAの15マーにおける単一のミスマッチは、DNA/DNAの15マー二重鎖については4℃〜16℃であるのに対して、融点(T.sub.m)を8〜20℃低下させるからである。また、PNA中に電荷基が存在しないことは、ハイブリダイゼーションが、低いイオン強度で行われ得、そして分析の間の塩によって可能な妨害を減少させることを意味する。
【0288】
本発明は、哺乳動物におけるガンの検出を含むがこれらに限定されない用途を有する。特に、本発明は、以下を含むがこれらに限定されない、病理学的細胞増殖新形成の診断の間に有用である:急性骨髄性白血病(急性単球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性赤白血病、急性巨核球性白血病、および急性未分化白血病などを含む);および慢性骨髄性白血病(慢性骨髄単球性白血病、慢性顆粒球性白血病などを含む)。好ましい哺乳動物としては、有尾猿(monkey)、無尾猿(ape)、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギおよびヒトが挙げられる。特に好ましいのは、ヒトである。
【0289】
病理学的細胞増殖障害はしばしば、原癌遺伝子の不適切な活性化に関連する(Gelmann,E.P.ら,「The Etiology of Acute Leukemia:Molecular Genetics and Viral Oncology」,Neoplastic Diseases of the Blood,第1巻,Wiernik、P.H.ら編,161−182(1985))。新形成は現在、ウイルス配列の染色体への挿入、より活性に転写される領域への遺伝子の染色体転座、または何らかの他の機構による、正常な細胞遺伝子産物の定性的変化から、または遺伝子発現の定量的改変から生じると考えられている(Gelmannら、前出)。特定の遺伝子の変異または変更された発現が、他の組織および他の細胞型の中でも、いくつかの白血病の病因と関与するようである(Gelmannら、前出)。実際、いくつかの動物新形成に関与する癌遺伝子のヒト対応物は、ヒトの白血病および癌のいくつかの症例において増幅または転座されている(Gelmannら、前出)。
【0290】
例えば、c−myc発現は、非リンパ球性白血病細胞株HL−60において高度に増幅される。HL−60細胞が増幅を止めるように化学的に誘導される場合、c−mycのレベルは、ダウンレギュレートされることが見出される(国際公開番号WO91/15580)。しかし、c−mycまたはc−mybの5’末端に相補的であるDNA構築物へのHL−60細胞の暴露が、c−mycタンパク質またはc−mybタンパク質の発現をダウンレギュレートする対応するmRNAの翻訳をブロックし、処理した細胞の細胞増殖および分化の停止を引き起こすことが示されている(国際公開番号WO91/15580;Wickstromら、Proc.Natl.Acad.Sci.85:1028(1988);Anfossiら、Proc.Natl.Acad.Sci.86:3379(1989))。しかし、当業者は、増殖表現型を示すことが公知である種々の起源の多数の細胞および細胞型を考慮すれば、本発明の有用性が造血性の細胞および組織の増殖性障害の処置に限定されないことを認識する。
【0291】
前記に加えて、本発明のポリヌクレオチドは、三重らせん形成を通して、またはアンチセンスDNAもしくはRNAを通して遺伝子発現を制御するために使用され得る。アンチセンス技術は、例えば、Okano,J.Neurochem.56:560(1991),「Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression」,CRC Press,Boca Raton,FL(1988)において考察される。三重らせん形成は例えば、Leeら、Nucleic Acids Research 6:3073(1979);Cooneyら、Science 241:456(1988);およびDervanら、Science 251:1360(1991)において考察される。両方の方法は、相補的DNAまたは相補的RNAへのポリヌクレオチドの結合に依存する。これらの技術に関して、好ましいポリヌクレオチドは通常、20〜40塩基長のオリゴヌクレオチドであり、そして転写に関与する遺伝子領域(三重らせん−Leeら,Nucl.Acids Res.6:3073(1979);Cooneyら、Science 241:456(1988);およびDervanら、Science 251:1360(1991)を参照のこと)またはmRNA自体(アンチセンス−Okano,J.Neurochem.56:560(1991);Oligodeoxy−nucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,Boca Raton,FL(1988))のいずれかに相補的である。三重らせん形成は、最適にはDNAからのRNA転写の遮断を生じるが、アンチセンスRNAハイブリダイゼーションは、ポリペプチドへのmRNA分子の翻訳を阻止する。上記に記載のオリゴヌクレオチドはまた、アンチセンスRNAまたはDNAが、インビボで発現されて本発明の抗原のポリペプチド産生を阻害し得るように細胞に送達され得る。両方の技術は、モデル系において効果的であり、そして本明細書に開示される情報は、疾患を処置するための試みにおいて、特に、増殖性疾患および/または状態の処置のために、アンチセンスまたは三重らせんポリヌクレオチドを設計するために使用され得る。
【0292】
本発明のポリヌクレオチドはまた、遺伝子治療において有用である。遺伝子治療の1つの目標は、遺伝欠損を修正する試みにおいて、欠損遺伝子を有する生物へ正常遺伝子を挿入することである。本発明に開示されるポリヌクレオチドは、高度に正確な様式でこのような遺伝欠損を標的とする手段を提供する。別の目標は、宿主ゲノム中には存在しなかった新しい遺伝子を挿入し、それによって宿主細胞中に新しい形質を生成することである。
【0293】
ポリヌクレオチドはまた、微小な生物学的サンプルから個体を同定するために有用である。例えば、米国軍は、その職員を同定するために制限フラグメント長の多型性(RFLP)の使用を考慮している。この技術において、個体のゲノムDNAは1つ以上の制限酵素で消化され、そして職員を同定するため固有なバンドを生じるためのサザンブロットについてプローブされる。この方法は、「認識票(Dog tag)」(これは、失われたり、交換されたり、または盗まれたりすることにより、ポジティブな同定を困難にし得る)の現在の限界を受けない。本発明のポリヌクレオチドは、RFLPのためのさらなるDNAマーカーとして使用され得る。
【0294】
本発明のポリヌクレオチドはまた、個体のゲノムの選択された部分の実際の塩基ごとのDNA配列を決定することによって、RFLPに対する代替物として使用され得る。これらの配列は、このような選択されたDNAを増幅しそして単離するためにPCRプライマーを調製するために使用され得、次いで、この選択されたDNAは、配列決定され得る。各個体が固有のセットのDNA配列を有するので、この技術を使用して、個体が同定され得る。一旦、固有のIDデータベースが個体について確立されると、その個体が生存していようとまたは死亡していようと、その個体のポジティブ同定が、極めて小さな組織サンプルからなされ得る。
【0295】
法医学生物学もまた、本明細書に開示されるようなDNAに基づく同定技術を使用して利益を得る。組織(例えば、髪または皮膚)、または体液(例えば、血液、唾液、精液、滑液、羊水、乳汁、リンパ、肺痰(pulmonary sputum)またはサーファクタント、尿、糞便物質など)のような非常に小さな生物学的サンプルから得られたDNA配列は、PCRを使用して増幅され得る。ある先行技術において、DQaクラスII HLA遺伝子のような多型性遺伝子座から増幅された遺伝子配列は、個体を同定するための法医学生物学において使用される。(Erlich,H.,PCR Technology,Freeman and Co.(1992))。一旦、これらの特異的多型性遺伝子座が増幅されると、これらは1つ以上の制限酵素で消化される。これは、DQaクラスII HLA遺伝子に対応するDNAでプローブされたサザンブロットについてのバンドの同定セットを生じる。同様に、本発明のポリヌクレオチドは、法医学的目的のための多型性マーカーとして使用され得る。
【0296】
また、特定の組織の供給源を同定し得る試薬についての必要性が存在する。例えば、未知の起源の組織が提供される場合、法医学においてこのような必要性が生じる。適切な試薬は、例えば、本発明の配列から調製される、DNAプローブまたはプライマーを含み得る。このような試薬のパネルは、種および/または器官型によって組織を同定し得る。同様の様式で、これらの試薬は、夾雑物について組織培養物をスクリーニングするために使用され得る。
【0297】
本発明のポリヌクレオチドはまた、生物学的サンプル中に存在する組織または細胞型の示差的同定のためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。同様に、本発明のポリペプチドに関するポリペプチドおよび抗体は、組織(例えば、免疫組織化学アッセイ)または細胞型(例えば、免疫細胞学アッセイ)の示差的同定のための免疫学的プローブを提供するのに有用である。さらに、「標準」遺伝子発現レベル(すなわち、障害を有しない個体由来の健康組織の発現レベル)と比較して、上記の組織または細胞の多くの障害に対して、本発明のポリヌクレオチド/ポリペプチドの有意に高いかまたは低いレベルの遺伝子発現が、このような障害を有する個体から採取された特定の組織(例えば、本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを発現する組織、および/または癌性組織および/または創傷組織)または体液(例えば、血清、血漿、尿、滑液または髄液)において検出され得る。
【0298】
従って、本発明は、以下の工程を含む障害の診断方法を提供する:(a)個体の細胞または体液中の遺伝子発現レベルをアッセイする工程;(b)標準的な遺伝子発現レベルと、この遺伝子発現レベルを比較し、それにより、標準の発現レベルと比較して、アッセイされた遺伝子発現レベルの増加または減少が障害を示す、工程。
【0299】
少なくとも、本発明のポリヌクレオドは、サザンブロットのゲル上の分子量マーカーとして、特定の細胞型における特異的mRNAの存在についての診断プローブとして、新規のポリヌクレオドを発見するプロセスにおける「減算した(subtract−out)」公知の配列に対するプローブとして、「遺伝子チップ」または他の支持体に付着するためのオリゴマーを選択および作製するために、DNA免疫技術を用いて抗DNA抗体を惹起するために、および免疫応答を惹起する抗原として使用され得る。
【0300】
(ポリペプチドの使用)
本明細書中で同定される各々のポリペプチドは、多くの方法において使用され得る。以下の記述は、例示として考慮されるべきであり、そして公知の技術を利用する。
【0301】
本発明のポリペプチドに対して指向されるポリペプチドおよび抗体は、組織(例えば、ABC免疫ペルオキシダーゼのような免疫組織化学アッセイ(Hsuら、J.Histochem.cytochem.29:577−580(1981))または細胞型(例えば、免疫細胞化学アッセイ)の示差的同定のための免疫学的プローブを提供するために有用である。
【0302】
抗体を使用して、当業者に公知の古典的な免疫組織学的な方法を用いて、生物学的サンプル中の本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのレベルをアッセイし得る。(例えば、Jalkanenら、J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanenら、J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987)を参照のこと)。タンパク質の遺伝子発現を検出するのに有用な、他の抗体に基づく方法には、免疫学的検定(例えば、酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA))が含まれる。適切な抗体アッセイの標識は、当該分野で公知であり、そして酵素標識(例えば、グルコースオキシダーゼ);放射性同位体(例えば、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru;発光標識(例えば、ルミノール);ならびに蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)ならびにビオチンが挙げられる。
【0303】
生物学的サンプル中の本発明のポリペプチドのレベルをアッセイすることに加えて、タンパク質はまた、画像化によりインビボで検出され得る。タンパク質のインビボ画像化のための抗体の標識またはマーカーは、X線撮影法、NMR、またはESRにより検出可能なものを含む。X線撮影法のために適切な標識は、放射性同位体(例えば、バリウムまたはセシウム)を含み、これは検出可能な放射線を放射するが、被験体に対して明らかに有害ではない。NMRおよびESRのための適切なマーカーは、検出可能な特徴的なスピンを有するマーカー(例えば、重水素)を含み、これは、関連するハイブリドーマのための栄養分を標識することにより抗体中に取り込まれ得る。
【0304】
放射性同位体(例えば、131I、112In、99mTc、(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru)、放射線不透過性物質、または核磁気共鳴により検出可能な材料のような適切な検出可能な画像化部分で標識された、タンパク質特異的抗体または抗体フラグメントは、免疫系の障害について検査されるべき哺乳動物に(例えば、非経口的、皮下、または腹腔内に)導入される。被験体のサイズおよび用いられる画像化システムは、診断画像を生成するために必要な画像化部分の量を決定することが当該分野で理解される。放射性同位体部分の場合には、ヒト被験体について、注射される放射能の量は、通常、99mTcの約5〜20ミリキュリーの範囲である。次いで、標識された抗体または抗体フラグメントは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを発現する細胞の位置に優先的に蓄積される。インビボ腫瘍画像化は、S.W.Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments」(Tumor Imagingの第13章:The Radiochemical Detection of Cancer、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982))に記載される。
【0305】
1つの実施形態において、本発明は、異種ポリペプチドまたは核酸と会合する本発明のポリペプチド(例えば、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドおよび/または抗体)を投与することによる、本発明の組成物の細胞への特異的な送達のための方法を提供する。1つの例において、本発明は、治療タンパク質を標的化細胞中へ送達するための方法を提供する。別の例において、本発明は、一本鎖核酸(例えば、アンチセンスまたはリボザイム)または二本鎖核酸(例えば、細胞のゲノムに組み込み得るか、またはエピソームにて複製し得、そして転写され得るDNA)を、標的化細胞に送達するための方法を提供する。
【0306】
別の実施形態において、本発明は、毒素または細胞傷害性プロドラッグに関連する本発明のポリペプチドを投与することによる細胞の特異的な破壊(例えば、腫瘍細胞の破壊)のための方法を提供する。
【0307】
「毒素」とは、内因性の細胞傷害性エフェクタ系、放射性同位体、ホロ毒素(holotoxin)、改変型毒素、毒素の触媒サブユニット、または規定の条件下で細胞死を引き起こす細胞中もしくは細胞表面には通常存在しない任意の分子もしくは酵素を結合および活性化する1つ以上の化合物を意味する。本発明の方法に従って使用され得る毒素としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:当該分野で公知の放射性同位体、固有のまたは誘導された内因性の細胞傷害性エフェクタ系に結合する化合物(例えば、抗体(またはその補体固定含有部分))、チミジンキナーゼ、エンドヌクレアーゼ、RNAse、α毒素、リシン、アブリン、Pseudomonas外毒素A、ジフテリア毒素、サポリン、モモルジン(momordin)、ゲロニン(gelonin)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、αサルシン(sarcin)およびコレラ毒素。「毒素」はまた、細胞分裂停止剤もしくは細胞破壊剤、治療薬または放射活性金属イオン(例えば、α−放射体(例えば、213Bi))もしくは他の放射性同位体(例えば、103Pd、133Xe、131I、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、35S、90Y、153Sm、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、90イットリウム、117スズ、186レニウム、166ホルミウム、および188レニウム);発光標識(例えば、ルミノール);および蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、ならびにビオチンを含む。
【0308】
当該分野において公知の技術は、本発明のポリペプチド(抗体を含む)を標識化するために適用され得る。このような技術としては、二官能性結合剤の使用(例えば、米国特許第5,756,065号;同第5,714,631号;同第5,696,239号;同第5,652,361号;同第5,505,931号;同第5,489,425号;同第5,435,990号;同第5,428,139号;同第5,342,604号;同第5,274,119号;同第4,994,560号;および同第5,808,003号を参照のこと;これら各々の内容は、本明細書中に参考としてその全体を援用する)が挙げられるが、これに限定されない。
【0309】
従って、本発明は、障害の診断方法を提供し、これは以下を含む:(a)個体の細胞または体液における本発明のポリペプチドの発現レベルをアッセイする工程;および(b)アッセイされたポリペプチドの発現レベルを標準のポリペプチドの発現レベルと比較し、それによって標準の発現レベルと比較してアッセイされたポリペプチドの発現レベルにおける増加または減少が障害を示す工程。癌に関しては、個体由来の生検された組織中の相対的に高い量の転写物の存在は、疾患の発症の素因を示し得るか、または実際の臨床的な症状が明らかとなる前に疾患を検出するための手段を提供し得る。より決定的なこのタイプの診断は、保健専門家がより早く予防策または積極的な処置を使用し、それによって癌の発症またはさらなる進行を防ぐことを可能にし得る。
【0310】
さらに、本発明のポリペプチドを用いて疾患または状態(例えば、神経障害、免疫系障害、筋肉障害、生殖障害、胃腸障害、肺障害、心血管障害、腎臓障害、増殖障害ならびに/または癌性疾患および状態)を処置または予防し得る。例えば、患者は、ポリペプチドの非存在またはレベルの減少を元に戻すこと(例えば、インスリン)、異なるポリペプチドの非存在またはレベルの減少を補充すること(例えば、ヘモグロビンBに対するヘモグロビンS、SOD、カタラーゼ、DNA修復タンパク質)、ポリペプチドの活性を阻害すること(例えば、癌遺伝子または腫瘍抑制因子)、ポリペプチドの活性を活性化すること(例えば、レセプターに結合することによって)、遊離リガンドについて膜結合レセプターと競合させることによって膜結合レセプターの活性を減少させること(例えば、炎症を低減させる際に用いられる可溶性TNFレセプター)、または所望の応答をもたらすこと(例えば、血管の成長の阻害、増殖細胞または組織に対する免疫応答の増強)の試みにおいて、本発明のポリペプチドが投与され得る。
【0311】
同様に、本発明のポリペプチドに対して指向される抗体もまた用いられ、疾患(上記、および本明細書中のどこかに記載されるような)を処置し得る。例えば、本発明のポリペプチドに対して指向される抗体の投与には、ポリペプチドを結合して、そして/またはポリペプチドを中和し、そして/またはポリペプチドの過剰産生を低減し得る。同様に、抗体の投与は、例えば、膜に結合したポリペプチド(レセプター)へ結合することにより、ポリペプチドを活性化し得る。
【0312】
少なくとも、本発明のポリペプチドは、当業者に周知の方法を用いるSDS−PAGEゲルまたは分子ふるいゲル濾過カラムの分子量マーカーとして使用され得る。宿主細胞の形質転換を評価する方法として、ポリペプチドがまた用いられ、抗体を惹起し得、次いで、この抗体が使用され、組換え細胞からのタンパク質発現を測定する。さらに、本発明のポリペプチドが使用され、以下の生物学的活性を試験し得る。
【0313】
(診断アッセイ)
本発明の化合物は、哺乳動物(好ましくはヒト)における種々の障害の診断、処置、予防および/または予測のために有用である。このような障害としては、免疫系の障害(例えば、以下の「免疫活性」に記載される)、筋肉障害(例えば、以下の「神経活性および神経学的疾患」に記載される)、生殖障害(例えば、以下の「抗新脈管形成活性」に記載される)、神経障害(例えば、以下の「神経活性および神経学的疾患」に記載される)、肺障害(例えば、以下の「免疫活性」に記載される)、心血管障害(例えば、以下の「心臓血管障害」に記載される)、腎臓障害(例えば、以下の「免疫活性」に記載される)、増殖性障害(例えば、以下の「過剰増殖性障害」、「抗新脈管形成活性」および「細胞レベルでの疾患」に記載される)、ならびに/または、癌性の疾患および障害(例えば、以下の「過剰増殖性障害」、「抗新脈管形成活性」および「細胞レベルでの疾患」に記載される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0314】
CRファミリーのタンパク質のメンバーは、上皮および頭髪の維持および成長、ならびにプロテアーゼ阻害に関連する生物学的活性に関与すると考えられる。従って、本発明の組成物(本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体、ならびにそのフラグメントおよび改変体を含む)は、異常なCR活性に関連する疾患および/または障害の診断、検出、および/または処置において用いられ得る。好ましい実施形態において、本発明の組成物(本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体、ならびにそのフラグメントおよび改変体を含む)は、癌(例えば、上皮癌、および/または以下の「過剰増殖性障害」および「細胞レベルでの疾患」で記載される癌)、上皮細胞維持および増殖、免疫系障害(例えば、炎症性障害、および/または、以下の「免疫活性」に記載される障害)、ならびに創傷治癒中の障害(例えば、以下の「創傷治癒および上皮細胞増殖」に記載の障害)に関連する疾患および/または障害の診断、検出、および/または処置において用いられ得る。従って、本発明のポリヌクレオチド、翻訳産物および抗体は、上皮癌、創傷治癒中の障害、上皮の維持および増殖、ならびに炎症性障害を含むがこれに限定されない活性に関連する疾患および/または障害の診断、検出、および/または処置に有用である。
【0315】
より一般的には、この遺伝子に対応するポリヌクレオチド、翻訳産物および抗体は、以下の系に関連する疾患および/または障害の診断、検出および/または処置に有用であり得る。
【0316】
別の実施形態において、本発明のポリペプチド、またはそのポリペプチドに対応するポリヌクレオチド、抗体、アゴニストもしくはアンタゴニストは、本発明のポリペプチドが発現される組織(「本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド」に記載の組織を含む)に関連する障害を診断、予測、予防および/または処置するために用いられ得る。
【0317】
多数の障害について、CR遺伝子発現の実質的に変更した(増大または減少した)レベルが、このような障害を有する個体から得た細胞または体液(例えば、血清、血漿、尿、滑液または髄液)で、「標準」のCR遺伝子発現レベル、すなわち、障害を有さない個体由来の組織または体液中のCR発現レベルに比較して、検出され得る。従って、本発明は、障害の診断中に有用な診断方法を提供し、この方法は、個体由来の組織、細胞または体液でのCRポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルを測定する工程、および測定した遺伝子発現レベルを標準CR遺伝子発現レベルと比較する工程を包含し、そのことにより、標準と比較される遺伝子発現レベルの増加または減少が、CR関連障害の指標となる。これらの診断アッセイは、例えば、血液サンプル、生検組織、または剖検組織などにおいて、インビボまたはインビトロで実施され得る。
【0318】
本発明はまた、予想指標として有用であり、これによりCR遺伝子発現の上昇または低下を示す患者は、標準レベルに近いレベルで遺伝子を発現する患者に対して悪い臨床結果を被る。
【0319】
「CRポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルをアッセイする」とは、CRポリペプチドのレベル、またはCRポリペプチドをコードするmRNAレベルを、第一の生物学的サンプルで、直接的(例えば、絶対タンパク質レベルまたはmRNAレベルの決定または評価によって)または相対的(例えば、第二の生物学的サンプルのCRポリペプチドレベルまたはmRNAレベルに対する比較によって)に、定性または定量的に測定または評価することを意図する。好ましくは、第一の生物学的サンプル中のCRポリペプチドレベルまたはmRNAレベルは、測定または評価され、そして標準CRポリペプチドレベルまたはmRNAレベルと比較され、この標準は、障害を有さない個体から得た第二の生物学的サンプルから得られるか、または免疫系の障害を有さない個体集団からのレベルを平均して決定される。当該分野で理解されるように、一旦、標準CRポリペプチドレベルまたはmRNAレベルが判明すると、比較のための標準として繰り返し使用され得る。
【0320】
「生物学的サンプル」とは、CRポリペプチド(その一部を含む)またはmRNAを含有する、個体、細胞株、組織培養物、またはその他の供給源から得られた、任意の生物学的サンプルを意図する。示されるように、生物学的サンプルとしては、CRポリペプチドの全長またはそのフラグメントを発現することが見出された体液(例えば、血清、血漿、尿、滑液、および髄液)および組織供給源が挙げられる。哺乳動物から組織生検および体液を得る方法は、当該分野で周知である。生物学的サンプルが、mRNAを含む場合、組織生検が好ましい供給源である。
【0321】
全細胞RNAは、ChomczynskiおよびSacchi(Anal.Biochem.162:156−159(1987))により記載される一段階グアニジウム−チオシアネート−フェノール−クロロホルム方法のような任意の適切な技術を用いて生物学的サンプルから単離され得る。次いで、CRポリペプチドをコードするmRNAのレベルが、任意の適切な方法を用いてアッセイされる。これらは、ノーザンブロット分析、S1ヌクレアーゼマッピング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT−RCR)、およびリガーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT−LCR)を包含する。
【0322】
本発明はまた、ポリペプチドの正常なレベルおよび異常なレベルの決定を含む、生物学的サンプル(例えば、細胞および組織)中のCRポリペプチドのレベルを検出する定量アッセイおよび診断アッセイのような診断アッセイに関する。従って、例えば、正常なコントロール組織サンプルと比較した、CRポリペプチドの過剰発現を検出するための本発明に従う診断アッセイは、腫瘍の存在を検出するために使用され得る。宿主由来のサンプルにおいて、本発明のCRポリペプチドのようなポリペプチドのレベルを決定するために使用され得るアッセイ技術は、当業者に周知である。このようなアッセイ方法としては、放射性免疫アッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、およびELISAアッセイが挙げられる。生物学的サンプルにおけるCRポリペプチドレベルのアッセイは、任意の当該分野に公知の方法を用いて可能である。
【0323】
生物学的サンプル中のCRポリペプチドレベルをアッセイすることは、抗体に基づく技術を用いて可能である。例えば、組織におけるCRポリペプチド発現は、古典的な免疫組織学的方法(Jalkanenら、J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanen、M.ら、J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987))を用いて研究され得る。CRポリペプチド遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体に基づく方法は、免疫アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着法(ELISA)および放射性免疫アッセイ(RIA))を包含する。適切な抗体アッセイ標識は、当該分野で公知であり、そして酵素標識(例えば、グルコースオキシダーゼ)および放射性同位元素(例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)および蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、ならびにビオチンを包含する。
【0324】
分析されるべき組織または細胞型としては、一般的には、CR遺伝子を発現することが公知であるか、またはそのことが予測される組織または細胞型(例えば、癌など)が挙げられる。本明細書中で使用されるタンパク質単離方法は、例えば、HarlowおよびLane(Harlow,E.およびLane,D.,1988「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(これは、その全体が本明細書中で参考として援用される))に記載される方法であり得る。単離された細胞は、細胞培養物または患者由来であり得る。培養物から採取された細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子治療技術の一部として、あるいはCR遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験するために使用され得る細胞の評価において必須の工程であり得る。
【0325】
例えば、抗体または抗体のフラグメント(例えば、本明細書中に記載される)を使用して、CR遺伝子産物あるいは保存された改変体もしくはそのペプチドフラグメントの存在を定量的にまたは定性的に検出し得る。これは、例えば、光学顕微鏡検出、フローサイトメトリー検出、または蛍光比色検出と一緒に蛍光的に標識された抗体を使用する免疫蛍光技術によって達成され得る。
【0326】
好ましい実施形態において、CRポリペプチドの推定エピトープドメインの全てまたはいずれか1つに対する抗体、または抗体のフラグメントは、CR遺伝子産物、またはその保存された改変体もしくはペプチドフラグメントの存在を定量的にまたは定性的に検出するために用いられ得る。これは、例えば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光定量検出と組み合わせた、蛍光標識した抗体を使用する免疫蛍光技術によって達成され得る。
【0327】
さらに好ましい実施形態において、CRポリペプチドの立体配置エピトープに対する抗体、または抗体のフラグメントは、CR遺伝子産物、またはその保存された改変体もしくはペプチドフラグメントの存在を定量的にまたは定性的に検出するために用いられ得る。これは、例えば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光定量検出と組み合わせた、蛍光標識した抗体を使用する免疫蛍光技術によって達成され得る。
【0328】
本発明の抗体(またはそのフラグメント)、および/または本発明のCRポリペプチドは、CR遺伝子産物またはその保存された改変体もしくはそのペプチドフラグメントのインサイチュ検出のために、免疫蛍光、免疫電子顕微鏡または非免疫学的アッセイとしてさらに組織学的に使用され得る。インサイチュ検出は、患者由来の組織学的標本を除去すること、およびそれに本発明の標識した抗体またはCRポリペプチドを適用することによって達成され得る。抗体(またはフラグメント)またはCRポリペプチドは、好ましくは、生物学的サンプル上に標識した抗体(またはフラグメント)を覆うことによって適用される。このような手順の使用を通して、CR遺伝子産物、または保存された改変体もしくはペプチドフラグメント、あるいはCRポリペプチド結合の存在だけでなく、試験した組織におけるその分布も決定することが可能である。本発明を使用して、当業者は、広範種々の組織学的方法のいずれか(例えば、染色手順)が、例えば、インサイチュ検出を達成するために変更され得ることを容易に理解する。
【0329】
CR遺伝子産物または保存された改変体もしくはそのペプチドフラグメントについての免疫アッセイおよび非免疫アッセイは、代表的に、CR遺伝子産物または保存された改変体もしくはそのペプチドフラグメントを結合し得る検出可能に標識された抗体の存在下で、サンプル(例えば、生物学的液体、組織抽出物、新鮮な収集された細胞、または細胞培養においてインキュベートされた細胞の溶解物)をインキュベートする工程、ならびに当該分野で周知の多数の技術のいずれかによって結合した抗体を検出する工程を包含する。
【0330】
生物学的サンプルは、固相支持体またはキャリア(例えば、ニトロセルロース)あるいは細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定し得る他の固体支持体と接触させられ得る。次いで、この支持体を、適切な緩衝液で洗浄し、続いて、検出可能に標識された抗CRポリペプチド抗体または検出可能なCRポリペプチドで処理し得る。この固相支持体を、次いで、緩衝液で2回洗浄し、非結合の抗体またはポリペプチドを除去し得る。必要に応じて、この抗体は、その後標識される。次いで、固体支持体上の固定された標識の量は、従来の方法によって検出され得る。
【0331】
「固相支持体またはキャリア」とは、抗原または抗体を結合し得る任意の支持体を意図する。周知の支持体またはキャリアとしては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のおよび改変したセルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、および磁鉄鉱が挙げられる。キャリアの性質は、本発明の目的のためにある程度可溶性であるかまたは不溶性のいずれかであり得る。支持体材料は、結合した分子が、抗原または抗体に結合し得る限り、実質的に任意の可能な構造配置を有し得る。従って、支持体の構造は、ビーズの場合は球状、あるいは試験管の内表面またはロッドの外表面の場合は円筒形であり得る。あるいは、表面は、平面(例えば、シート、試験ストリップなど)であり得る。好ましい支持体は、ポリスチレンビーズを含む。当業者には、抗体または抗原を結合し得る多くの他の適切なキャリアが公知であるか、または慣用的な実験の使用によって同一か確認することができる。
【0332】
抗CRポリペプチド抗体またはCR抗原ポリペプチドの所定のロットの結合活性は、周知の方法に従って決定され得る。当業者は、慣用的な実験を使用することによって各々の決定のための有効でかつ最適のアッセイ条件を決定し得る。
【0333】
個体から得られた生物学的サンプルにおいてCRのポリペプチドレベルまたはポリヌクレオチドレベルをアッセイすることに加えて、CRのポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、画像化によってインビボでも検出され得る。例えば、本発明の1つの実施形態において、CRのポリペプチドおよび/または抗CR抗原抗体は、疾患の細胞(例えば、新生物)を画像化するために使用される。別の実施形態において、本発明のCRのポリヌクレオチド(例えば、特定のCR mRNA転写物の、全体または部分に相補的なポリヌクレオチド)ならびに/あるいは抗CR抗体(例えば、本発明のCRポリペプチドのエピトープのいずれか1つまたは組み合わせに対する抗体、本発明のCRポリペプチドの構成的エピトープに対する抗体、または哺乳動物細胞の細胞表面上で発現された全長ポリペプチドに対する抗体)は、疾患細胞または新生物細胞を画像化するために使用される。
【0334】
CRポリペプチドをインビボで画像化するための抗体標識またはマーカーは、X線撮影、NMR、MRI、CATスキャンもしくはESRにより検出可能なものが挙げられる。X線撮影のために、適切な標識としては、検出可能な放射線を放射するが被験体に対して明らかに有害でない、放射線同位元素(例えば、バリウムまたはセシウム)が挙げられる。NMRおよびESRのための適切なマーカーとしては、検出可能な特徴的なスピンを有するマーカー(例えば、重水素)が挙げられ、これらは、関連のハイブリドーマのための栄養素の標識化により抗体に取り込まれ得る。インビボ画像化がヒトにおける診断のためにCRのポリペプチドの増強されたレベルを検出するために使用される場合、ヒト抗体または「ヒト化」キメラモノクローナル抗体を使用することが好ましくあり得る。そのような抗体は、本明細書中に記載されるかさもなくば当該分野で公知の技術を用いて産生され得る。例えば、キメラ抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。総説については、Morrison,Science 229:1202(1985);Oiら、BioTechniques 4:214(1986);Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Taniguchiら、EP 171496;Morrisonら、EP 173494;Neubergerら、WO 8601533;Robinsonら、WO 8702671;Boulianneら、Nature 312:643(1984);Neubergerら、Nature 314:268(1985)を参照のこと。
【0335】
さらに、存在が検出され得る任意のCRのポリペプチドが、投与され得る。例えば、放射性不透過性(radio−opaque)化合物または他の適切な化合物で標識されたCRポリペプチドは、投与され、標識抗体に関して上記に記載されるようにインビボで画像化され得る。さらにこのようなCRポリペプチドは、インビトロ診断手順のために使用され得る。
【0336】
適切な検出可能な画像化部分(例えば、放射性同位元素(例えば、131I、112In、99mTc)、放射線不透過性物質、または核磁気共鳴により検出可能な材料)で標識されたCRの、ポリペプチド特異的抗体または抗体フラグメントが、免疫系障害について試験される哺乳動物に(例えば、非経口で、皮下で、もしくは腹腔内で)導入される。被験体および使用される画像化システムの大きさが、診断画像を生じるのに必要とされる画像化部分の量を決定することは、当該分野で理解される。放射線同位元素部分の場合、ヒト被験体については、注入される放射能の量は、通常、約5〜20ミリキュリーの99mTcの範囲である。標識された抗体または抗体フラグメントは、次いで、CRタンパク質を含む細胞の位置に優先的に蓄積する。インビボ腫瘍イメージングは、S.W.Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragment」により記載される(Tumor Imaging:The Radiochemical Detection of Cancer、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982)の13章)。
【0337】
抗体に関して、抗CRポリペプチド抗体が検出可能に標識され得る1つの方法は、これらを酵素へ連結し、そしてこの連結された産物を酵素免疫アッセイ(EIA)に用いることによる(Voller,A.「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」1978、Diagnostic Horizons 2:1−7、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、MD);Vollerら、J.Clin.Pathol.31:507−520(1978);Butler,J.E.、Meth.Enzymol.73:482−523(1981);Maggio,E.(編)1980、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、FL;Ishikawa,E.ら(編)1981、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo)。抗体に結合する酵素は、適切な基質(好ましくは色素基質)と、例えば、分光光度法、蛍光法または可視手段によって検出され得る化学部分を生成するような様式で反応する。抗体を検出可能に標識するために使用される酵素としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロホスフェート、デヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、この検出は、この酵素に対する色素基質を用いる比色方法によって達成され得る。検出はまた、同様に調製された標準物質と比較して、基質の酵素反応の程度を視覚的に比較することによって達成され得る。
【0338】
検出はまた、種々の他の免疫アッセイのいずれかを用いて達成され得る。例えば、抗体または抗体フラグメントを放射性標識することによって、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用を介してCRポリペプチドを検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,March,1986を参照のこと(これは、本明細書中に参考として援用される))。放射性同位元素は、γカウンター、シンチレーションカウンター、またはオードラジオグラフィーを含む手段によって検出され得るが、これらに限定されない。
【0339】
抗体を蛍光化合物で標識することもまた可能である。蛍光標識された抗体が適切な波長の光に曝露される場合、次いでその存在は、蛍光に起因して検出され得る。最も一般的に使用される蛍光標識化合物の間では、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド(ophthaldehyde)およびフルオレサミンがある。
【0340】
抗体はまた、152Euまたは他のランタニド系列のような蛍光発光金属を用いて検出可能に標識され得る。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(ETDA)のような金属キレート群を用いて抗体に結合され得る。
【0341】
抗体はまた、化学発光化合物に結合することによって検出可能に標識され得る。次いで、化学発光タグ化抗体の存在は、化学反応の経過の間に生じる発光の存在を検出することによって決定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびオキサレートエステルである。
【0342】
同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗体を標識し得る。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加する生物系において見出される化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識目的のための重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0343】
(疾患を検出するための方法)
概して、疾患は、患者から得られた生物学的サンプル(例えば、血液、血清、尿、および/または腫瘍生検)中の本発明のCRタンパク質および/またはこのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの1つ以上の存在に基づき患者において検出され得る。言い換えれば、このようなタンパク質は、疾患または障害(癌および/または本明細書のいずれかに記載のものを含む)の存在または非存在を示すマーカーとして用いられ得る。さらに、このようなタンパク質は、他の疾患および癌の検出に有用であり得る。本明細書に提供される結合剤は、概して生物学的サンプル中でこの薬剤に結合する抗原のレベルの検出を可能にする。ポリヌクレオチドプライマーおよびプローブは、CRポリペプチドをコードするmRNA(これは、また癌を含む疾患または障害の存在または非存在の指標である)のレベルを検出するために用いられ得る。一般に、CRポリペプチドは、正常組織よりも疾患組織で少なくとも3倍高いレベルで存在するはずである。
【0344】
サンプル中でポリペプチドマーカーを検出するための結合剤を用いるための当業者に公知の種々のアッセイ形式が存在する。例えば、HarlowおよびLane(前出)を参照のこと。概して、患者における疾患の存在または非存在は、以下(a)患者から得た生物学的サンプルを結合剤と接触させる工程;(b)この結合剤に結合するポリペプチドのレベルをサンプル中で検出する工程;および(c)ポリペプチドのレベルを事前に決定したカットオフ値と比較する工程、により検出され得る。
【0345】
好ましい実施形態において、このアッセイは、サンプルの残りの部分から、本発明のCRポリペプチドに結合し、そしてそれを取り除くために、固体支持体上に固定された結合剤の使用を含む。次いでこの結合されたポリペプチドは、レポーター基を含み、そして結合剤/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を用いて検出され得る。このような検出試薬は、例えば、このポリペプチドに特異的に結合する結合剤、またはこの結合剤に特異的に結合する抗体もしくは他の薬剤(例えば、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインAまたはレクチン)を含み得る。あるいは、競合アッセイが利用され得(ここでは、ポリペプチドがレポーター基で標識される)、そして結合剤とサンプルとのインキュベーションの後に、固定された結合剤への結合を可能にし得る。サンプルの成分が結合剤に対する標識ポリペプチドの結合を阻害する程度は、サンプルと固定された結合剤との反応性の指標である。このようなアッセイでの使用に適切なポリペプチドとしては、上記のように、CRポリペプチドおよびその部分、または抗体(ここに結合剤が結合する)が挙げられる。
【0346】
固体支持体は、本発明のCRポリペプチドが結合し得る、当業者に公知の物質であり得る。例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレートにおける試験ウェル、またはニトロセルロースフィルターまたは他の適切なメンブレンであり得る。あるいは、この支持体は、ビースまたはディスク(例えば、ガラスファイバーガラス)、ラテックスまたはプラスチック材料(例えばポリスチレンまたはポリビニルクロリドン)であり得る。この支持体はまた、例えば、米国特許第5,359,681号に記載のような、磁気粒子または光ファイバーセンサーであり得る。結合剤は、当業者に公知の種々の技術を用いて、固体支持体に結合され得る。これは、特許および科学文献に十分に記載されている。本発明の文脈では、用語「固定(immobilization)」とは、非共有結合(例えば、吸着)および共有結合(支持体上の薬剤と官能基との間の直接連結であり得るか、または架橋剤による連結であり得る)の両方をいう。マイクロタイタープレート中のウェルへの、またはメンブレンへの吸着による固定が好ましい。このような場合、吸着は、適切な緩衝液中での、結合剤と固体支持体との、適切な時間の接触によって達成され得る。接触時間は温度で変化するが、代表的には、約1時間と約1日との間である。一般に、プラスチックのマイクロタイタープレート(例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニル)のウェルと十分な量(これは、約10ng〜約10μg、そして好ましくは約100ng〜約1μgにわたる)の結合剤との接触は、十分な量の結合剤を固定するのに十分である。
【0347】
固体支持体に対する結合剤の共有結合は、一般にこの支持体と二機能性試薬(結合剤上で、支持体および官能基(例えば、水酸基またはアミノ基)の両方と反応する)との最初の反応によって達成され得る。例えば、この結合剤は、ベンゾキノンを用いて、または結合パートナー上のアミンおよび活性水素と、支持体上のアルデヒド基の縮合により、適切なポリマーコーティングを有する支持体に共有結合され得る(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook、1991 A12〜A13を参照のこと)。
【0348】
(遺伝子治療方法)
本発明の別の局面は、障害、疾患および状態を処置または予防するための遺伝子治療方法である。この遺伝子治療方法は、本発明のポリペプチドの発現を達成するための、核酸(DNA、RNAおよびアンチセンスDNAまたはRNA)配列の動物への導入に関する。この方法は、標的組織によるこのポリペプチドの発現のために必要なプロモータおよび他の任意の遺伝因子と、作動可能に連結した本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを必要とする。このような遺伝子治療および送達技術は当該分野において公知である(例えば、本明細書中に参考として援用される、WO90/11092を参照のこと)。
【0349】
従って、例えば、患者由来の細胞は、エキソビボで本発明のポリヌクレオチドと作動可能に連結したプロモーターを含むポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を用いて操作され得、次いで、操作された細胞は、本発明のポリペプチドを用いて処置される患者に提供される。このような方法は、当該分野において周知である。例えば、Belldegrun,A.ら、J.Natl.Cancer Inst.85:207−216(1993);Ferrantini,M.ら、Cancer Research 53:1107−1112(1993);Ferrantini,M.ら、J.Immunology 153:4604−4615(1994);Kaido,T.ら、Int.J.Cancer 60:221−229(1995);Ogura,H.ら、Cancer Research 50:5102−5106(1990);Santodonato,L.ら、Human Gene Therapy 7:1−10(1996);Santodonato,L.ら、Gene Therapy 4:1246−1255(1997);およびZhang,J.−F.ら、Cancer Gene Therapy 3:31−38(1996)を参照のこと。これらは、本明細書中に参考として援用される。1つの実施形態においては、操作される細胞は、動脈細胞である。この動脈細胞は、動脈、動脈の周囲の組織への直接的な注射を介して、またはカテーテル注入を介して患者に再導入され得る。
【0350】
以下により詳細に考察されるように、このポリヌクレオチド構築物は、注射可能な物質を動物の細胞に送達する任意の方法(例えば、組織(心臓、筋肉、皮膚、肺、肝臓など)の間質空間への注射)により送達され得る。このポリヌクレオチド構築物は、薬学的に受容可能な液体または水性のキャリア中で送達され得る。
【0351】
1つの実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドは、裸のポリヌクレオチドとして送達される。用語「裸の」ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAとは、細胞への侵入を補助し、促進し、または容易にするために作用するいかなる送達ビヒクル(ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム処方物、リポフェクチンまたは沈殿剤などを含む)も含まない配列をいう。しかし、本発明のポリヌクレオチドはまた、当業者に周知の方法により調製され得るリポソーム処方物中およびリポフェクチン処方物中などで送達され得る。このような方法は、例えば、米国特許第5,593,972号、同第5,589,466号および同第5,580,859号(これらは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0352】
遺伝子治療方法において使用されるポリヌクレオチドベクター構築物は、好ましくは、宿主ゲノム中に組み込まれないかまたは複製を可能にする配列を含まない構築物である。適切なベクターとしては、Stratageneから入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG;Pharmaciaから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL;ならびにInvitrogenから入手可能なpEF1/V5、pcDNA3.1、およびpRc/CMV2が挙げられる。他の適切なベクターは、当業者に容易に明らかである。
【0353】
当業者に公知の任意の強力なプロモーターは、ポリヌクレオチド配列の発現を駆動するために用いられ得る。適切なプロモーターとしては、アデノウイルスプロモーター(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター);または異種プロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター);RSウイルス(RSV)プロモーター;誘導性プロモーター(例えば、MMTプロモーター、メタロチオネインプロモーター);熱ショックプロモーター;アルブミンプロモーター;ApoAIプロモーター;ヒトグロビンプロモーター;ウイルスチミジンキナーゼプロモーター(例えば、単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター);レトロウイルスLTR;b−アクチンプロモーター;およびヒト成長ホルモンプロモーターが挙げられる。このプロモーターはまた、本発明のポリヌクレオチドについてネイティブなプロモーターであり得る。
【0354】
他の遺伝子治療技術とは異なり、裸の核酸配列を標的細胞に導入する1つの主要な利点は、その細胞におけるポリヌクレオチド合成の一過性の性質である。研究によって、非複製DNA配列が細胞に導入されて、6ヶ月までの期間の間、所望のポリペプチドの産生を提供し得ることが示された。
【0355】
ポリヌクレオチド構築物は、動物内の組織(筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺、および結合組織を包含する)の間隙空間に送達され得る。この組織の間隙空間は、器官組織の細網線維間の、細胞間の液体ムコ多糖類基質、血管または室の壁における弾性線維、線維性組織のコラーゲン線維、あるいは結合組織鞘性筋肉細胞(connective tissue ensheathing muscle cell)内または骨の裂孔中の同じ基質を包含する。これは、同様に、循環の血漿およびリンパチャンネルのリンパ液により占められた空間である。筋肉組織の間隙空間への送達は、以下で議論される理由のために好ましい。本発明のポリヌクレオチド構築物は、これらの細胞を含む組織への注射によって、好都合に送達され得る。本発明のポリヌクレオチド構築物は、好ましくは、分化した持続性の非分裂細胞に送達され、そしてその細胞において発現されるが、送達および発現は、非分化細胞または完全には分化していない細胞(例えば、血液の幹細胞または皮膚線維芽細胞)において達成され得る。インビボでの筋肉細胞は、ポリヌクレオチドを取り込み、そして発現する能力において、特に適格である。
【0356】
裸の核酸配列注射のために、DNAまたはRNAの有効投薬量は、約0.05mg/kg体重から約50mg/kg体重の範囲にある。好ましくは、この投薬量は、約0.005mg/kgから約20mg/kgであり、そしてより好ましくは約0.05mg/kgから約5mg/kgである。もちろん、当業者が認識するように、この投薬量は、注射の組織部位に応じて変化する。核酸配列の適切かつ有効な投薬量は、当業者によって容易に決定され得、そして処置される状態および投与経路に依存し得る。
【0357】
好ましい投与経路は、組織の間隙空間への非経口注射経路による。しかし、他の非経口経路もまた用いられ得、これには、例えば、特に、肺または気管支の組織、咽喉または鼻の粘膜への送達のためのエアロゾル処方物の吸入が挙げられる。さらに、裸のDNA構築物が、血管形成術の間にこの手順において用いられるカテーテルによって動脈に送達され得る。
【0358】
裸のポリヌクレオチドは、送達部位での直接の針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、およびいわゆる「遺伝子銃」を含むがこれらに限定されない、当該分野で公知の任意の方法によって送達される。これらの送達方法は、当該分野で公知である。
【0359】
この構築物はまた、ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム処方物、リポフェクチン、沈殿剤などのような送達ビヒクルを用いて送達され得る。このような送達方法は、当該分野で公知である。
【0360】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド構築物は、リポソーム調製物中で複合体化している。本発明にて使用するためのリポソーム調製物は、カチオン性(正に荷電した)、アニオン性(負に荷電した)および中性の調製物を包含する。しかしながら、カチオン性リポソームとポリアニオン性核酸との間で強固な荷電複合体を形成し得るので、カチオン性リポソームが特に好ましい。カチオン性リポソームは、機能的形態において、プラスミドDNA(本明細書中で参考として援用される、Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:7413〜7416);mRNA(本明細書中で参考として援用される、Maloneら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86:6077〜6081);および精製された転写因子(本明細書中で参考として援用される、Debsら、J.Biol.Chem.(1990)265:10189〜10192)の細胞内送達を媒介することが示されている。
【0361】
カチオン性リポソームは容易に入手可能である。例えば、N[1−2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリエチルアンモニウム(DOTMA)リポソームは特に有用であり、そして商標LipofectinのもとにGIBCO BRL,Grand Island,N.Y.(本明細書中で参考として援用される、Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:7413〜7416をもまた参照のこと、)より入手可能である。他の市販のリポソームとしては、トランスフェクテース(transfectace)(DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE(Boehringer)が挙げられる。
【0362】
当該分野で周知の技術を使用して、他のカチオン性リポソームを、容易に入手可能な物質より調製し得る。DOTAP(1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン)リポソームの合成の記述に関して、例えばPCT公開番号WO90/11092(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。DOTMAリポソームの調製は文献にて説明されており、例えば、本明細書中で参考として援用される、P.Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413〜7417を参照のこと。類似した方法を使用して、他のカチオン性脂質物質よりリポソームを調製し得る。
【0363】
同様に、アニオン性リポソームおよび中性リポソームは、例えば、Avanti Polar Lipids(Birmingham,Ala.)から容易に入手可能であり、または容易に入手可能な物質を使用して簡単に調製され得る。そのような物質としてはとりわけ、ホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。これらの物質はまた、DOTMA出発物資およびDOTAP出発物質と適切な割合において混合され得る。これらの物質を使用してリポソームを生成する方法は、当該分野で周知である。
【0364】
例えば、商業的に、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を種々の組み合わせにおいて使用し、コレステロールを添加してもしなくても、従来のリポソームを生成し得る。従って、例えば、超音波処理バイアル中への窒素ガス流下で、各50mgのDOPGおよびDOPCを乾燥することにより、DOPG/DOPC小胞を調製し得る。このサンプルを一晩真空ポンプ下に置き、そして次の日、脱イオン水で水和する。次いで、浴を、15ECで循環させながら、最大設定にて、逆位カップ(浴タイプ)プローブを装備したHeat Systems モデル350超音波処理器を使用して、このサンプルを栓をしたバイアル中にて2時間超音波処理する。あるいは、負に荷電した小胞を、超音波処理なしで調製して多重膜小胞を生成し得るか、または核孔膜(nucleopore membrane)を通して押し出すことにより別々の大きさの単膜小胞を生成し得る。他の方法は、当業者に公知でありそして利用可能である。
【0365】
このリポソームとしては、多重膜小胞(MLV)、小さな単膜小胞(SUV)または大きな単膜小胞(LUV)が挙げられ得、SUVが好ましい。当該分野で周知の方法を使用して、種々のリポソーム−核酸複合体が調製される。例えば、本明細書中で参考として援用される、Straubingerら、Methods of Immunology(1983)、101:512〜527を参照のこと。例えば、核酸を含有するMLVは、ガラスチューブの壁面にリン脂質の薄膜を堆積させ、そしてその後、カプセル化されるべき物質の溶液で水和することによって調製され得る。SUVはMLVの長期超音波処理により調製され、単膜リポソームの均質集団を生成する。封入されるべき物質を、予め形成されたMLVの懸濁液に添加し、次いで、超音波処理する。カチオン性脂質を含むリポソームを使用する場合、乾燥した脂質膜を、滅菌水または10mM Tris/NaClのような等張性緩衝溶液のような適切な溶液中に再懸濁し、超音波処理し、次いで、予め形成されたリポソームをDNAと直接混合する。正に荷電したリポソームのカチオン性DNAへの結合に起因して、リポソームおよびDNAは非常に安定な複合体を形成する。SUVは、小核酸フラグメントを用いての用途を見出す。LUVは、当該分野で周知の多くの方法により調製される。一般に使用される方法としては、Ca2+−EDTAキレート化(Papahadjopoulosら、Biochim.Biophys.Acta(1975)394:483;Wilsonら、Cell(1979))17:77);エーテル注入(Deamer,D.およびBangham,A.、Biochim.Biophys.Acta(1976)443:629;Ostroら、Biochem.Biophys.Res.Commum.(1977)76:836;Fraleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979)76:3348);界面活性剤透析(Enoch,H.およびStrittmatter,P.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979)76:145);および逆相エバポレーション(REV)(Fraleyら、J.Biol.Chem.(1980)255:10431;Szoka、F.およびPapahadjopuolos,D.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1978)75:145;Schaefer−Ridderら、Science(1982)215:166)が挙げられ、これらの文献は本明細書中で参考として援用される。
【0366】
一般に、DNAのリポソームに対する割合は約10:1から約1:10までである。好ましくは、その割合(ration)は約5:1から約1:5までである。より好ましくは、その割合は約3:1から約1:3までである。さらにより好ましくは、その割合は約1:1である。
【0367】
米国特許第5,676,954号(本明細書中で参考として援用される)はカチオン性リポソームキャリアと複合体化された遺伝物質のマウスへの注入について報告する。米国特許第4,897,355号、同第4,946,787号、同第5,049,386号、同第5,459,127号、同第5,589,466号、同第5,693,622号、同第5,580,859号、同第5,703,055号および国際公開第WO94/9469号(これらは本明細書中で参考として援用される)は、DNAを細胞および哺乳動物にトランスフェクトする際に使用するためのカチオン性脂質を提供する。米国特許第5,589,466号、同第5,693,622号、同第5,580,859号、同第5,703,055号および国際公開第WO94/9469号(これらは本明細書中で参考として援用される)は、DNA−カチオン性脂質複合体を哺乳動物に送達する方法を提供する。
【0368】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチドをコードする配列を含むRNAを含むレトロウイルス粒子を使用して、エキソビボまたはインビボで細胞を操作する。レトロウイルスプラスミドベクターが由来し得るレトロウイルスとしては、モロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、ニワトリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳癌ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0369】
このレトロウイルスプラスミドベクターを使用して、パッケージング細胞株を形質導入し、プロデューサー細胞株を形成する。トランスフェクトされ得るパッケージング細胞株の例としては、その全体が本明細書中で参考として援用される、Miller、Human Gene Theapy、1:5〜14(1990)にて記載されるようなPE501、PA317、R−2、R−AM、PA12、T19−14X、VT−19−17−H2、RCRE、RCRIP、GP+E−86、GP+envAm12およびDAN細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。このベクターは、当該分野で公知の任意の手段により、パッケージング細胞を形質導入し得る。そのような手段としては、エレクトロポレーション、リポソームの使用、およびCaPO沈殿が挙げられるが、それらに限定されない。1つの代替法において、このレトロウイルスプラスミドベクターをリポソームにカプセル化し得るか、または脂質に結合し得て、次いで宿主に投与し得る。
【0370】
このプロデューサー細胞株は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む感染性レトロウイルスベクター粒子を産生する。次いで、そのようなレトロウイルスベクター粒子を使用して、インビトロまたはインビボのどちらかで、真核生物細胞を形質導入し得る。この形質導入された真核生物細胞は、本発明のポリペプチドを発現する。
【0371】
特定の他の実施形態において、アデノウイルスベクター中に含まれるポリヌクレオチドを用いて、エキソビボまたはインビボで細胞を操作する。アデノウイルスは、それが本発明のポリペプチドをコードし、そして発現し、それと同時に通常の溶菌性ウイルス生活環にて複製するその能力に関して不活性化されるように操作され得る。アデノウイルス発現は、そのウイルスDNAの宿主細胞染色体への組み込み無しに達成され、その結果、挿入性変異誘発についての心配が軽減される。さらに、アデノウイルスは、何年もの間、腸の生ワクチンとして優れた安全側面を伴って使用されている(Schwartz,A.R.ら(1974)、Am.Rev.Respir.Dis.、109:233−238)。最終的に、アデノウイルス媒介性遺伝子移入が、コトンラットの肺へのα−1−アンチトリプシンおよびCFTRの移入を含む多くの例において実証されている(Rosenfeld,M.A.ら(1991)、Science、252:431〜434;Rosenfeldら(1992)、Cell、68:143〜155)。さらに、ヒト癌における原因物質としてアデノウイルスを確立しようとする広範な研究は、一様に否定的であった(Green,M.ら(1979) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:6606)。
【0372】
本発明において有用である適切なアデノウイルスベクターが、例えば、KozarskyおよびWilson,Curr.Opin.Genet.Devel. 3:499〜503(1993);Rosenfeldら、Cell 68:143〜155(1992);Engelhardtら、Human Genet.Ther. 4:759〜769(1993);Yangら、Nature Genet. 7:362〜369(1994);Wilsonら、Nature 365:691〜692(1993);および米国特許第5,652,224号に記載されており、これらの文献および特許は本明細書中で参考として援用される。例えば、アデノウイルスベクターAd2が有用であり、そしてヒト293細胞にて増殖され得る。これらの細胞は、アデノウイルスのE1領域を含み、そして構成的にElaおよびElbを発現し、このことは、このベクターから欠失している遺伝子の産物を提供することによって欠損アデノウイルスを補完する。Ad2に加えて、他の多様なアデノウイルス(例えば、Ad3、Ad5、およびAd7)もまた、本発明において有用である。
【0373】
好ましくは、本発明において使用されるアデノウイルスは、複製欠損性である。複製欠損アデノウイルスは、感染性粒子を形成するために、ヘルパーウイルスおよび/またはパッケージング細胞株の助けを必要とする。得られたウイルスは、細胞に感染する能力があり、そしてプロモーターに作動可能に連結された目的のポリヌクレオチドを発現し得るが、ほとんどの細胞にて複製し得ない。複製欠損アデノウイルスは、次の遺伝子のすべてまたは一部のうちの1つ以上にて欠失され得る:E1a、E1b、E3、E4、E2aまたはL1〜L5。
【0374】
特定の他の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して、エキソビボまたはインビボでこの細胞を操作する。AAVは、感染性粒子を生成するためにヘルパーウイルスを必要とする、天然に存在する欠損ウイルスである(Muzyczka,N.,Curr.Topics in Microbiol.Immunol.158:97(1992))。AAVはまた、非分裂細胞の中にそのDNAを組み込み得る数少ないウイルスの中の1つである。300塩基対程度の小さいAAVを含むベクターがパッケージされ得、そして組み込み得るが、外来性DNAのためのスペースは約4.5kbに限られる。そのようなAAVの生成および使用の方法は当該分野で公知である。例えば、米国特許第5,139,941号、同第5,173,414号、同第5,354,678号、同第5,436,146号、同第5,474,935号、同第5,478,745号および同第5,589,377号を参照のこと。
【0375】
例えば、本発明において使用するために適切なAAVベクターは、DNA複製、キャプシド形成、および宿主細胞組み込みに必要な配列すべてを含む。Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1989)において見い出される方法のような、標準的クローニング方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物を、このAAVベクターに挿入する。次いで、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿などを含む、任意の標準的技術を使用して、この組換えAAVベクターを、ヘルパーウイルスに感染しているパッケージング細胞にトランスフェクトする。適切なヘルパーウイルスとしては、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ワクシニアウイルス、またはヘルペスウイルスが挙げられる。一旦パッケージング細胞がトランスフェクトおよび感染されると、それらはそのポリヌクレオチド構築物を含む感染性AAVウイルス粒子を生成する。次いで、エキソビボまたはインビボのいずれかで、これらのウイルス粒子を使用して真核生物細胞を形質導入する。この形質導入細胞は、そのゲノムに組み込まれたポリヌクレオチド構築物を含み、そして本発明のポリペプチドを発現する。
【0376】
遺伝子治療の別の方法は、相同組換え(例えば、米国特許第5,641,670号、1997年6月24日発行;国際公開第WO96/29411号、1996年9月26日公開;国際公開第WO94/12650号、1994年8月4日公開;Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932〜8935(1989);およびZijlstraら、Nature 342:435〜438(1989)を参照のこと)を介して、異種制御領域および内在性ポリヌクレオチド配列(例えば、本発明のポリペプチドをコードしている配列)を作動可能に連結する工程を含む。この方法は、標的細胞中に存在しているが、通常はその細胞中で発現しないかまたは所望するよりも低いレベルで発現する、遺伝子の活性化を含む。
【0377】
当該分野で既知の標準的技術を使用して、ポリヌクレオチド構築物を作製する。この構築物は、プロモーターを、そのプロモーターに隣接した標的化配列とともに含む。適切なプロモーターが、本明細書中に記載されている。標的化配列は、プロモーター−標的化配列と内在性配列との相同組換えを可能にするに十分にその内在性配列に対して相補的である。標的化配列は、所望される内在性ポリヌクレオチド配列の5’末端の十分近くに存在し、それゆえ、相同組換えに際して、そのプロモーターは、その内在性配列に作動可能に連結される。
【0378】
このプロモーターおよび標的化配列は、PCRを使用して増幅され得る。好ましくは、この増幅されたプロモーターは、5’末端および3’末端に別の制限酵素部位を含む。好ましくは、第1の標的化配列の3’末端は、増幅されたプロモーターの5’末端と同じ制限酵素部位を含み、そして第2の標的化配列の5’末端は、増幅されたプロモーターの3’末端と同じ制限部位を含む。増幅されたプロモーターおよび標的化配列を消化し、そしてともに連結する。
【0379】
裸のポリヌクレオチドとしてか、もしくは上記により詳細に記載されるようなリポソーム、ウイルス配列、ウイルス粒子、ウイルス全体、リポフェクション、沈殿剤などのようなトランスフェクション促進剤と一緒にかのいずれかで、このプロモーター−標的化配列構築物を細胞に送達する。直接針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、粒子加速器などを含む任意の方法により、Pプロモーター−標的化配列を送達し得る。この方法を、下記により詳細に記載する。
【0380】
プロモーター−標的化配列構築物は、細胞により取り込まれる。この構築物と内在性配列との間に相同組換えが起こり、その結果、内在性配列は、このプロモーターの制御下に配置される。次いで、このプロモーターは、内在性配列の発現を駆動する。
【0381】
好ましくは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、そのタンパク質の分泌を促進する分泌シグナル配列を含む。代表的に、このシグナル配列は、コード領域の5’末端に向かってかまたは5’末端で発現される、そのポリヌクレオチドのコード領域に位置する。このシグナル配列は、目的のポリヌクレオチドに対して同種であってもよいしまたは異種であってもよく、そしてトランスフェクトされる細胞に対して同種であってもよいしまたは異種であってもよい。さらに、当該分野で公知の方法を使用して、このシグナル配列は化学合成され得る。
【0382】
その投与形態によって、治療効果を提供するのに十分な量にて1つ以上の分子が発現される限り、上記のポリヌクレオチド構築物のうちのいずれかの任意の投与形態が使用され得る。これは、直接針注射、全身性注射、カテーテル注入、バイオリスティック(biolistic)注射器、粒子加速器(すなわち、「遺伝子銃」)、ゲルフォームスポンジデポー(depot)、他の市販デポー(depot)物質、浸透圧ポンプ(例えば、Alzaミニポンプ)、経口用または坐剤用の固形(錠剤または丸剤)薬学的処方物、および手術中のデカンティング(decanting)または局所適用を含む。例えば、ラット肝臓およびラット脾臓へのリン酸カルシウム沈澱した裸のプラスミドの直接注射、または門脈へのタンパク質被覆プラスミドの直接注射は、ラット肝臓における外来遺伝子の遺伝子発現をもたらした(Kanedaら、Science、243:375(1989))。
【0383】
局所投与の好ましい方法は、直接注射によるものである。好ましくは、送達ビヒクルと複合体を形成した本発明の組換え分子は、動脈領域内部に直接注射により投与されるか、または動脈領域内部に局所投与される。動脈領域内部での組成物の局所投与とは、その組成物を動脈内に数センチメートル、好ましくは数ミリメートルで注射することを言う。
【0384】
局所投与の別の方法は、本発明のポリヌクレオチド構築物を外科的創傷中または外科的創傷の周囲に接触させることである。例えば、患者は手術を経験し得、そしてこのポリヌクレオチド構築物がその創傷の内側の組織の表面上にコーティングされ得るか、またはこの構築物が、その創傷の内側の組織の領域に注入され得る。
【0385】
全身投与に有用な治療組成物は、本発明の標的化された送達ビヒクルと複合体を形成した本発明の組換え分子を含む。全身投与で使用するために適切な送達ビヒクルは、特定部位に対してそのビヒクルを標的化するリガンドを含むリポソームを含む。
【0386】
全身投与の好ましい方法としては、静脈内注射、エアロゾル、経口および経皮(局所的)送達が挙げられる。当該分野で標準的な方法を使用して、静脈内注射が実行され得る。当該分野で標準的な方法を使用して、エアロゾル送達もまた実行され得る(例えば、本明細書中で参考として援用される、Striblingら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 189:11277〜11281(1992)を参照のこと)。動物の腸内の消化酵素による分解に耐える能力をもつキャリアに対して本発明のポリヌクレオチド構築物を複合体形成することにより、経口送達は実行され得る。そのようなキャリアの例としては、当該分野で公知であるもののような、プラスチックカプセルまたは錠剤が挙げられる。皮膚内へ通過可能な親油性試薬(例えば、DMSO)と本発明のポリヌクレオチド構築物を混合することによって、局所的送達は実行され得る。
【0387】
送達される物質の有効量を決定することは、例えば、その物質の化学構造および生物学的活性、動物の年齢および体重、処置を必要とする正確な状態およびその重症度、ならびに投与経路を含む、多数の因子に依存し得る。処置の頻度は、1用量あたりの投与されるポリヌクレオチド構築物の量ならびに被験体の健康および病歴のような、多くの因子に依存する。正確な量、投薬回数および投薬のタイミングは、主治医または主治獣医により決定される。
【0388】
本発明の治療的組成物は、任意の動物に、好ましくは哺乳動物および鳥類に投与され得る。好ましい哺乳動物としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ウマおよびブタが挙げられ、特にヒトが好ましい。
【0389】
(生物学的活性)
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストをアッセイに使用し、1つ以上の生物学的活性について試験し得る。本発明のこれらのポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストが特定のアッセイにおいて活性を示す場合、これらの分子はその生物学的活性に関連した疾患に関与し得るようである。従って、このポリヌクレオチドおよびポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストを使用し、関連した疾患を処置し得る。
【0390】
タンパク質のCRファミリーのメンバーは、サイトカイン結合、サイトカイン応答およびシグナル伝達に関連する生物学的活性に関与すると考えられる。従って、本発明の組成物(本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体、ならびにそのフラグメントおよび改変体を含む)は、異常なCR活性に関連する疾患および/または障害の診断、検出および/または処置において使用され得る。好ましい実施形態において、本発明の組成物(本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体、ならびにそのフラグメントおよび改変体を含む)は、免疫系活性(例えば、炎症障害、免疫欠損、免疫調節、免疫細胞刺激、免疫細胞増殖、アレルギー反応、および/または以下の「免疫活性」に記載のもの)、異常なサイトカインレセプターシグナル伝達、癌(例えば、以下の「細胞レベルの疾患」に記載のもの)、ならびに神経学的障害(例えば、以下の「神経活性および神経学的疾患」に記載の障害)に関連する疾患および/または障害の診断、検出および/または処置において使用され得る。従って、本発明のポリヌクレオチド、翻訳産物および抗体は、免疫系障害、炎症障害、免疫調節、免疫細胞刺激、免疫細胞増殖、アレルギー反応、異常なサイトカインレセプターシグナル伝達および/またはサイトカイン応答の過剰発現、癌ならびに神経障害を含むがこれらに限定されない、活性に関連する疾患および/または障害の、診断、検出および/または処置において有用である。
【0391】
より一般的には、この遺伝子に対応するポリヌクレオチド、翻訳産物、および抗体は、以下の系と関連する疾患および/または障害の診断、検出および/または処置のために有用であり得る。
【0392】
(免疫活性)
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、例えば、免疫細胞の増殖、分化、もしくは動員(走化性)を活性化または阻害することにより、免疫系の疾患、障害および/または状態を、処置、予防、および/または診断するのに有用であり得る。免疫細胞は、造血と呼ばれるプロセスを介して発達し、多能性幹細胞から骨髄性細胞(血小板、赤血球、好中球およびマクロファージ)およびリンパ系細胞(Bリンパ球およびTリンパ球)を生成する。これら免疫疾患、障害および/または状態の病因は、遺伝的、身体的(somatic)(例えば、癌およびいくつかの自己免疫性障害)、後天的(例えば、化学療法もしくは毒素による)または感染的であり得る。さらに、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、特定の免疫系の疾患または障害のマーカーまたは検出物質(detector)として使用され得る。
【0393】
別の実施形態において、本発明のポリペプチド、あるいはこのポリペプチドに対応するポリヌクレオチド、抗体、アゴニストまたはアンタゴニストが、免疫系の疾患および障害を処置するために、そして/あるいは本発明のポリペプチドが発現される組織に関連する細胞によって生じる免疫応答を阻害もしくは増強するために、使用され得、そのような組織としては、「本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド」と題する節において開示される組織が挙げられる。
【0394】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、免疫不全(先天性免疫不全および後天性免疫不全の両方を含む)の処置、予防および/または診断において有用であり得る。免疫グロブリンレベル、B細胞機能および/またはB細胞メンバーが減少する、B細胞免疫不全の例としては、以下が挙げられる:X連鎖無ガンマグロブリン血症(ブルトン病)、X連鎖小児性無ガンマグロブリン血症、過剰なIgMを伴うX連鎖免疫欠損、過剰な非IgMを伴うX連鎖免疫欠損、X連鎖リンパ球増殖症候群(XLP)、無ガンマグロブリン血症(先天性無ガンマグロブリン血症および後天性無ガンマグロブリン血症、成人発症無ガンマグロブリン血症、後期発症無ガンマグロブリン血症、異常ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、非特異的低ガンマグロブリン血症、劣性無ガンマグロブリン血症(スイス型)を含む)、選択的IgM欠損、選択的IgA欠損、選択的IgGサブクラス欠損、選択的IgGサブクラス欠損(IgA欠損を伴うかまたは伴わない)、上昇したIgMを伴うIg欠損、上昇したIgMを伴うIgGおよびIgA欠損、正常なIgもしくは上昇したIgを伴う抗体欠損、Ig重鎖欠失、κ鎖欠失、B細胞リンパ球増殖性障害(BLPD)、分類不能型免疫不全(CVID)、分類不能型免疫不全(CVI)(後天性)、および一過性乳児低ガンマグロブリン血症。
【0395】
特定の実施形態において、毛細血管拡張性運動失調または毛細血管拡張性運動失調に関係する状態が、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、および/またはそのアゴニストを投与することにより軽減または処置される。
【0396】
T細胞および/もしくはB細胞の機能および/または数が減少する先天性免疫不全の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ディ・ジョージ奇形、重症複合型免疫不全(SCID)(X連鎖SCID、常染色体劣性SCID、アデノシンデアミナーゼ欠損、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)欠損、MHCクラスII欠損(不全リンパ球症候群)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群および毛細血管拡張性運動失調が挙げられるが、これらに限定されない)、胸腺発育不全、第3および第4咽頭嚢症候群、22q11.2欠損、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ナチュラルキラー細胞欠損(NK)、特発性CD4+ Tリンパ球減少、顕著なT細胞欠損を伴う免疫欠損(不特定)、および細胞媒介免疫の不特定の免疫欠損。
【0397】
特定の実施形態において、ディジョージ奇形またはディジョージ奇形に関連する状態は、例えば、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、またはそのアンタゴニストもしくはアゴニストを投与することによって、緩和されるかまたは処置される。
【0398】
本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、および/またはそのアゴニストを投与することにより緩和または処置され得る他の免疫不全としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:慢性肉芽腫症、チェディアック−東病、ミエロペルオキシダーゼ欠損、白血球グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠損、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、白血球接着不全、補体成分欠損(C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8および/またはC9の欠損を含む)、細網細胞(reticular)発育不全、胸腺リンパ形成不全症−発育不全、胸腺腫を伴う免疫不全、重篤先天性白血球減少症、免疫不全を伴う形成異常症、新生児好中球減少症、短肢(short limbed)小人症、およびIgを伴うネゼロフ症候群複合型免疫欠損。
【0399】
好ましい実施形態において、上記の免疫欠損およびこの免疫欠損に関係する状態が、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストを使用して、処置、予防、および/または診断される。
【0400】
好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、免疫欠損の個体の間で免疫応答をブーストするための薬剤として使用され得る。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、B細胞および/またはT細胞免疫欠損の個体の間で免疫応答をブーストするための薬剤として使用され得る。
【0401】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、自己免疫障害を処置、予防、および/または診断する際に有用であり得る。多くの自己免疫障害は、免疫細胞によって外来物質として自己を不適切に認識することから生じる。この不適切な認識が、宿主組織の破壊をもたらす免疫応答を生じる。従って、免疫応答(特に、T細胞の増殖、分化、または走化性)を阻害し得る本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの投与は、自己免疫障害の予防における有効な治療であり得る。
【0402】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストにより処置、予防、および/または診断され得る自己免疫疾患または自己免疫障害としては、以下のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない:全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、溶血性貧血、血小板減少症、自己免疫血小板減少性紫斑病、自己免疫新生児血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、紫斑病(例えば、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病)、自己免疫性血球減少症、グッドパスチャー症候群、尋常性天疱瘡、重症筋無力症、グレーヴズ病(甲状腺機能亢進症)、およびインスリン抵抗性糖尿病。
【0403】
本発明の組成物を用いて処置、予防、および/または診断され得る自己免疫成分を有する可能性があるさらなる障害としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:II型コラーゲン誘導性関節炎、抗リン脂質症候群、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発性軟骨炎、リウマチ性心疾患、神経炎、ブドウ膜炎眼炎、多発性内分泌腺症、ライター病、スティッフマン症候群、自己免疫肺炎症、自閉、ギヤン−バレー症候群、インシュリン依存性真性糖尿病、および自己免疫炎症性眼。
【0404】
本発明の組成物によって処置、予防および/または診断され得る自己免疫成分を有する可能性があるさらなる障害としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗コラーゲン抗体を伴う強皮症(schleroderma)(例えば、核小体抗体および他の核抗体によってしばしば特徴付けられる)、混合結合組織病(例えば、可溶性核抗原(例えば、リボ核タンパク質)に対する抗体によってしばしば特徴付けられる)、多発性筋炎(例えば、非ヒストンANAによってしばしば特徴付けられる)、悪性貧血(例えば、抗壁細胞、ミクロソーム、および内因子抗体によってしばしば特徴付けられる)、特発性アジソン病(例えば、体液および細胞媒介性副腎細胞傷害性によってしばしば特徴付けられる)、不妊症(例えば、抗精子抗体によってしばしば特徴付けられる)、糸球体腎炎(例えば、糸球体基底膜抗体または免疫複合体によってしばしば特徴付けられる)、水疱性類天疱瘡(例えば、基底膜中のIgGおよび補体によってしばしば特徴付けられる)、シェーグレン症候群(例えば、多重組織抗体、および/または特定の非ヒストンANA(SS−B)によってしばしば特徴付けられる)、真性糖尿病(例えば、細胞媒介性および体液性島細胞抗体によってしばしば特徴付けられる)、ならびにアドレナリン作動性薬剤抵抗性(喘息または嚢胞性線維症を伴うアドレナリン作動性薬剤抵抗性を含む)(例えば、βアドレナリンレセプター抗体によってしばしば特徴付けられる)。
【0405】
本発明の組成物により処置、予防および/または診断され得る自己免疫成分を有し得るさらなる障害としては、活動性慢性肝炎(例えば、平滑筋抗体により、しばしば特徴付けられる)、原発性胆汁性肝硬変(例えば、ミトコンドリア抗体により、しばしば特徴付けられる)、他の内分泌線不全(例えば、いくつかの場合において特定の組織抗体によって、しばしば特徴付けられる)、白斑(例えば、メラノサイト抗体により、しばしば特徴付けられる)、脈管炎(例えば、血管壁におけるIgおよび補体、ならびに/または低血清補体により、しばしば特徴付けられる)、心筋梗塞後症候群(post−MI)(例えば、心筋抗体により、しばしば特徴付けられる)、心臓切開症候群(例えば、心筋抗体により、しばしば特徴付けられる)、じんま疹(例えば、IgEに対するIgG抗体およびIgM抗体により、しばしば特徴付けられる)、アトピー性皮膚炎(IgEに対するIgG抗体およびIgM抗体により、しばしば特徴付けられる)、喘息(例えば、IgEに対するIgG抗体およびIgM抗体により、しばしば特徴付けられる)、ならびに他の多くの炎症障害、肉芽腫性障害、変性障害および萎縮性障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0406】
好ましい実施形態において、上記の疾患および障害に関連する、自己免疫疾患および自己免疫障害および/または自己免疫状態は、例えば、本発明のアンタゴニストもしくはアゴニスト、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、または抗体を使用して、処置、予防および/または診断される。特定の好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストを使用して、慢性関節リウマチが処置、予防および/または診断される。別の特定の好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストを使用して、全身性エリテマトーデスが処置、予防および/または診断される。別の特定の好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストを使用して、特発性血小板減少性紫斑病が処置、予防および/または診断される。別の特定の好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストを使用して、IgAネフロパシーが処置、予防および/または診断される。
【0407】
好ましい実施形態において、自己免疫疾患および障害、ならびに/または上記に列挙される疾患および障害に関連する状態は、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストを使用して処置、予防および/または診断される。
【0408】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストを免疫抑制剤として用いる。
【0409】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、造血細胞の疾患、障害および/または状態の処置、予防、および/または診断に有用であり得る。本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、特定の(または多くの)型の造血細胞の減少に関連した疾患、障害、および/または状態(白血球減少症、好中球減少症、貧血、血小板減少症を含むが、これらに限定されない)を処置または予防する試みにおいて、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化および増殖を増加させるために用いられ得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、特定の(または多くの)型の造血細胞の減少に関連した疾患、障害、および/または状態(組織球増殖症を含むが、これらに限定されない)を処置または予防する試みにおいて、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化および増殖を増加させるために用いられ得る。
【0410】
アレルギー性の反応および状態(例えば、喘息(特に、アレルギー性喘息))または他の呼吸性の問題はまた、本発明のポリペプチド、抗体、またはポリヌクレオチド、および/あるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストを使用して処置、予防および/または診断され得る。さらに、これらの分子は、アナフィラキシー、抗原性分子に対する過敏症、または血液型不適合を処置、予防および/または診断するために使用され得る。
【0411】
さらに、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドおよび/またはこれらのアゴニストを用いて、IgE媒介性アレルギー反応を処置または予防し得る。このようなアレルギー反応としては、喘息、鼻炎および湿疹が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストを用いて、インビトロまたはインビボでのIgEの濃度を調整し得る。
【0412】
さらに、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストは、炎症性状態の診断、予後判断、予防および/または処置における用途を有する。例えば、本発明のポリペプチド、抗体もしくはポリヌクレオチドおよび/または本発明のアゴニストもしくはアンタゴニストは、炎症反応に関与する細胞の活性化、増殖および/または分化を阻害し得るので、これらの分子は、慢性および急性炎症状態の診断、予後判断、予防および/または処置に用いられ得る。このような炎症性状態としては、例えば以下が挙げられるがこれらに限定されない:感染に関連する炎症(例えば、敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症応答症候群)、虚血性再灌流障害、エンドトキシン死亡率、補体媒介超急性拒絶、腎炎、サイトカインまたはケモカイン誘導性肺障害、炎症性腸疾患、クローン病、サイトカイン(例えば、TNFまたはIL−1)の過剰発現、呼吸障害(例えば、喘息およびアレルギー);胃腸の障害(例えば、炎症性腸疾患);癌(例えば、胃癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、肝臓癌および乳癌);CNS障害(例えば、多発性硬化症、虚血性脳傷害および/または発作、外傷性脳傷害、神経変性傷害(例えば、パーキンソン病およびアルツハイマー病)、AIDS関連痴呆、およびプリオン疾患);心臓血管障害(例えば、アテローム硬化症、心筋炎、心臓血管疾患、および心肺バイパス合併症);ならびに、炎症(例えば、肝炎、慢性関節リウマチ、痛風、外傷、膵炎、サルコイドーシス、皮膚炎、腎臓虚血再灌流障害、グレーヴス病、全身性エリテマトーデス、糖尿病および同種異系の移植拒絶)によって特徴付けられる多くのさらなる疾患、状態、および障害。
【0413】
炎症は、基礎的な防御メカニズムであるので、炎症性疾患は、実質的に身体の任意の組織に影響し得る。したがって、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体ならびにそれらのアゴニストまたはアンタゴニストを以下を含むが、これらに限定されない組織特異的炎症性疾患の処置における用途を有する:副腎炎、肺胞炎、胆管胆嚢炎、虫垂炎、亀頭炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液胞炎、心嚢炎、蜂巣炎、子宮頚炎、胆嚢炎、声帯炎、コクリティス(cochlitis)、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、皮膚炎、憩室炎、脳炎、心内膜炎、食道炎、耳管炎、結合組織炎、毛胞炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、舌炎、肝脾炎、角膜炎、迷路炎、咽頭炎、リンパ管炎、乳房炎、中耳炎、髄膜炎、子宮炎、粘膜炎、心筋炎、筋炎、腎炎、神経炎、精巣炎、骨軟膜炎、耳炎、心膜炎、腱周囲炎(peritendonitis)、腹膜炎、咽頭炎、静脈炎、ポリオ、前立腺炎、歯髄炎、網膜炎、鼻炎、卵管炎、強膜炎、強膜脈絡膜炎、陰嚢炎、副鼻腔炎、脊髄炎(sponylitis)、脂肪組織炎、口内炎、滑膜炎、耳管炎、腱炎、扁桃炎、尿道炎および膣炎。
【0414】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体またはポリヌクレオチド、および/あるいはそれらのアゴニストまたはアンタゴニストは、器官の移植拒絶、対宿主性移植片病を、処置、診断、および/または予防するのに有用である。器官の拒絶は、免疫応答を介して移植組織の宿主免疫細胞の破壊によって生じる。同様に、免疫応答はまた、GVHDに関与するが、しかしこの場合は、外来移植された免疫細胞は、宿主組織を破壊する。免疫応答(特に、T細胞の活性化、増殖、分化、または走化性)を阻害する本発明のポリペプチド、抗体、またはポリヌクレオチド、および/あるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストは、器官拒絶またはGVHDの予防における有効な治療であり得る。特定の実施形態において、免疫応答(特に、T細胞の活性化、増殖、分化、または走化性)を阻害する本発明のポリペプチド、抗体、またはポリヌクレオチド、および/あるいはそのアゴニストまたはアンタゴニストは、実験的アレルギー性拒絶および超急性異種移植拒絶の予防における有効な治療であり得る。
【0415】
他の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体もしくはポリヌクレオチドおよび/またはこれらのアゴニストまたはアンタゴニストは、血清病、ポストステプトコッカル(post steptococcal)糸球体腎炎および結節性多発動脈炎、免疫複合体誘導脈管炎を含むが、これらに限定されない免疫複合疾患を処置、診断および/または予防するのに有用である。
【0416】
本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストは、感染因子を処置、検出、および/または予防するために使用され得る。例えば、免疫応答を増加すること(特に、B細胞および/またはT細胞の増殖、活性化および/または分化を増加すること)によって、感染性疾患は、処置、検出、および/または予防され得る。免疫応答は、既存の免疫応答の増大によってか、または新しい免疫応答の開始によってかのいずれかで増加され得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストはまた、必ずしも免疫応答を誘発することなく、感染因子(感染因子を列挙する適用の節などを参照のこと)を直接阻害し得る。
【0417】
別の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/または本発明のアゴニストもしくはアンタゴニストは、特定の抗原に対する免疫応答性を増大するワクチンアジュバンドとして用いられる。特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/または本発明のアゴニストもしくはアンタゴニストは、腫瘍特異的免疫応答性を増大するアジュバンドとして用いられる。
【0418】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/または本発明のアゴニストまたはアンタゴニストは、抗ウィルス免疫応答性を増大するワクチンアジュバンドとして用いられる。アジュバントとして本発明の組成物を使用して増大され得る抗ウイルス免疫応答は、ウイルスおよび本明細書中に記載されるかまたはさもなくば当該分野で公知の疾患または症状に関連するウイルスを含む。特定の実施形態において、本発明の組成物は、ウイルス、疾患、または症状(これは、AIDS、髄膜炎、デング熱、EBV、および肝炎(例えば、B型肝炎)からなる群から選択される)に対する免疫応答を増大するためのアジュバントとして使用される。別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、ウイルス、疾患、または症状(これは、HIV/AIDS、RSウイルス、デング熱、ロタウイルス、日本脳炎、インフルエンザAおよびB、パラインフルエンザ、麻疹、サイトメガロウイルス、狂犬病、ジュニン(Junin)、チクングニヤ、リフトバレー熱、単純疱疹、および黄熱病からなる群から選択される)に対する免疫応答を増大するためのアジュバントとして使用される。
【0419】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/または本発明のアゴニストまたはアンタゴニストは、抗細菌免疫応答性または抗真菌免疫応答性を増大するワクチンアジュバンドとして用いられる。アジュバントとして本発明の組成物を使用して増大され得る抗細菌免疫応答または抗真菌免疫応答としては、細菌または真菌、および本明細書中に記載されるか、またはさもなくば当該分野で公知の疾患または症状に関連する細菌または真菌が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の組成物は、細菌または真菌、疾患、または症状(これは、破傷風、ジフテリア、ボツリスム、およびB型髄膜炎からなる群から選択される)に対する免疫応答を増大するためのアジュバントとして使用される。
【0420】
別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、細菌または真菌、疾患、または症状(これは、Vibrio cholerae、Mycobacterium leprae、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Meisseria meningitidis、Streptococcus pneumoniae、Group B streptococcus、Shigella spp.、Enterotoxigenic Escherichia coli、Enterohemorrhagic E.coli、Borrelia burgdorferi、およびPlasmodium(マラリア)からなる群から選択される)に対する免疫応答を増大するためのアジュバントとして使用される。
【0421】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、抗寄生虫性の免疫応答を増強するためのアジュバントとして使用される。アジュバントとして本発明の組成物を使用する、増強され得る抗寄生虫性の免疫応答としては、本明細書中に記載される寄生虫、および寄生虫関連疾患もしくは症状、または当該分野において公知である他のものが挙げられる。特定の実施形態において、本発明の組成物は、寄生虫に対する免疫応答を増強するためのアジュバントとして使用される。別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、Plasmodium(マラリア)またはLeishmaniaに対する免疫応答を増強するためのアジュバントとして使用される。
【0422】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストはまた、例えば、単核食細胞の漸増および活性化を阻止することによって、珪肺症、サルコイドーシス、特発性肺線維症を含む感染症を処置するために使用され得る。
【0423】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、本発明のポリペプチドに対する免疫媒介性応答を阻害または増強する抗体の生成についての抗原として使用される。
【0424】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、免疫系をブーストするために動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ブタ、ミニブタ、トリ、ラクダ、ヤギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、およびヒト:もっとも好ましくは、ヒト)に投与されて、1以上の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、およびIgE)の増加した量を産生し、より高い親和性抗体産生および免疫グロブリンクラススイッチング(例えば、IgG、IgA、IgM、およびIgE)を誘導し、ならびに/または、免疫応答を増加する。
【0425】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、病原体に対するB細胞応答性の刺激因子として使用される。
【0426】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、T細胞の活性化因子として使用される。
【0427】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、免疫治療を受ける前に個体の免疫状態を高める因子として使用される。
【0428】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、より高い親和性抗体を誘導するための因子として使用される。
【0429】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、血清免疫グロブリン濃度を増加するための因子として使用される。
【0430】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、免疫無防備な個体の回復を加速するための因子として使用される。
【0431】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、高齢集団の免疫応答性をブーストするための因子として使用される。
【0432】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、骨髄移植および/または他の移植(例えば、同種異系または外因性の組織の移植)の前にか、その間にか、または後に免疫系増強因子として使用される。移植に関して、本発明の組成物は、移植の前にか、同時にか、および/または後に投与され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物は、移植の後でT細胞集団の回復の開始の前に投与される。別の特定の実施形態において、本発明の組成物は、移植の後でT細胞集団の回復の開始の後だがB細胞集団の完全な回復の前にまず投与される。
【0433】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、B細胞機能の後天的喪失を有する個体の免疫応答性をブーストするための因子として使用される。ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストを投与することによって改善または処置され得る、B細胞機能の後天的喪失を生じる状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:HIV感染、AIDS、骨髄移植、およびB細胞慢性リンパ性白血病(CLL)。
【0434】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、一時的な免疫欠損を有する個体の免疫応答性をブーストするための因子として使用される。ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストを投与することによって改善または処置され得る一時的な免疫欠損を生じる状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ウイルス感染(例えば、インフルエンザ)からの回復、感染性栄養失調関連状態、単核細胞症からの回復、またはストレス関連状態、麻疹からの回復、輸血からの回復、および手術からの回復。
【0435】
別の特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、単球、樹状細胞、および/またはB細胞による抗原提示の調節因子として使用される。1つの実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、インビトロまたはインビボにおいて抗原提示を増強するかまたは抗原提示を拮抗する。さらに、関連する実施形態において、この抗原提示の増強または拮抗は、抗腫瘍処置としてか、または免疫系を調節するために有用である。
【0436】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、TH1細胞性応答と対照的に体液性応答(すなわち、TH2)の発達に対して個体の免疫系を指向するための因子として使用される。
【0437】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、腫瘍増殖を誘導し、従って抗腫瘍性因子に対してより感受性にするための手段として使用される。例えば、多発性骨髄腫は、徐々に分割する疾患であり、従って実質的に全ての抗腫瘍性レジメンに対して治療抵抗性である。これらの細胞がより迅速に増殖することを強いられる場合、これらの感受性プロファイルは、おそらく変化する。
【0438】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、病理学(例えば、AIDS、慢性リンパ球性障害、および/または分類不能型免疫不全)におけるB細胞集団の刺激因子として使用される。
【0439】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、手術、外傷(trauma)もしくは遺伝的欠損に続くリンパ組織の発生(generation)および/または再発生についての治療法として使用される。別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、移植前の骨髄サンプルの前処置として使用される。
【0440】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、SCID患者に観察されるような免疫不全症/免疫欠損を生じる、発生学的に遺伝した障害についての遺伝子ベースの治療法として使用される。
【0441】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、Leshmaniaのような、単球に影響する寄生虫性疾患に対して防御する、単球/マクロファージを活性化する手段として使用される。
【0442】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、本発明のポリペプチドによって誘発される、分泌されたサイトカインを調節する手段として使用される。
【0443】
上記の適用の全ては、獣医用医薬に適用し得る。
【0444】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、外因性因子または自身に対する免疫応答の種々の局面をブロックする手段として使用される。免疫応答の特定の局面をブロックすることが所望され得る疾患または状態の例としては、狼瘡のような自己免疫疾患、および関節炎、ならびに皮膚アレルギー、炎症、腸疾患、傷害、および病原体に関する疾患/傷害に対する免疫応答性が挙げられる。
【0445】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症のような自己免疫疾患に関連するB細胞増殖およびIg分泌を予防するための治療法として使用される。
【0446】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、内皮細胞におけるB細胞および/またはT細胞の移動のインヒビターとして使用される。この活性は、組織構造または同族応答を破壊し、そして例えば、免疫応答を破壊する際、および敗血症をブロックする際に有用である。
【0447】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、非定量優位性(undetermined significance)の単一クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、Waldenstrom’s疾患、関連特発性単一クローン性高ガンマグロブリン血症、およびプラスマ細胞腫のような疾患において明らかな慢性高ガンマグロブリン血症についての治療法として使用される。
【0448】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、例えば、特定の自己免疫疾患、慢性炎症疾患、および感染性疾患において、ペプチド走化性、そしてマクロファージおよびこれらの前駆物質、ならびに好中球、好塩基球、Bリンパ球、およびいくつかのT細胞サブセット(例えば、活性化された、およびCD8細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞)の活性化を阻害するために使用され得る。自己免疫疾患の例は、本明細書中に記載され、そして多発性硬化症、およびインシュリン依存性糖尿病を含む。
【0449】
本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストはまた、例えば、好酸球の産生および移動を阻止することによって、特発性高好酸球症候群を処置するために使用され得る。
【0450】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、補体媒介細胞溶解を増強または阻害するために使用される。
【0451】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、抗体依存性細胞性細胞傷害(cytoxicity)を増強または阻害するために使用される。
【0452】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストはまた、例えば、動脈壁における単球浸潤を阻止することによって粥状硬化症を処置するために使用され得る。
【0453】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を処置するために使用され得る。
【0454】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、創傷および組織の修復の刺激、新脈管形成の刺激、脈管またはリンパの疾患または障害の修復の刺激について有用であり得る。さらに、本発明のアゴニストおよびアンタゴニストは、粘膜表面の再発生を刺激するために使用され得る。
【0455】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、および/またはそれらのアゴニストは、原発性まもしくは後天性の免疫欠損、欠乏性(deficient)血清免疫グロブリン産生、反回性感染、および/または免疫系機能不全によって特徴付けられる障害を処置または予防するために使用される。さらに、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、および/またはそれらのアゴニストは、関節、骨、皮膚、および/または耳下腺の感染、血液媒介(borne)感染(例えば、敗血症、髄膜炎、敗血症関節炎、および/または骨髄炎)、自己免疫疾患(例えば、本明細書中に記載されるもの)、炎症性障害、ならびに悪性疾患、そして/あるいはこれらの感染、疾患、障害および/または悪性疾患に関連する疾患、障害または状態(CVID、他の原発性免疫欠損症、HIV疾患、CLL、反回性気管支炎、中耳炎、結膜炎、肺炎、肝炎、髄膜炎、帯状ヘルペス(例えば、重篤帯状ヘルペス)、および/またはニューモシスティスが挙げられるが、これらに限定されない)を処置または予防するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、および/またはそれらのアゴニストで予防、診断または処置され得る他の疾患および障害としては、HIV感染、HTLV−BLV感染、リンパ球減少症、食細胞殺菌性機能不全症(dysfunctionanemia)、血小板減少症、およびヘモグロビン尿症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0456】
別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、分類不能型免疫不全疾患(「CMIV」;「後天性無ガンマグロブリン血症」としても公知)またはこの疾患のサブセットを有する個体を処置、および/または診断するために使用され得る。
【0457】
特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、自己免疫細胞または組織に関連する癌または新生物を含む、癌または新生物を、処置、診断、および/または予防するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストによって予防、診断、および/または処置され得る、癌または新生物の例は、本明細書中に記載され、そして急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、Hodgkins疾患、非Hodgkinsリンパ腫、急性リンパ球性貧血(ALL)、慢性リンパ球白血病、プラスマ細胞増加症、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、およびEBV形質転換疾患が挙げられる。好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるような、毒素または放射性同位元素に結合された、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、癌および新生物を処置、診断、および/または予防するために使用され得る。さらに好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるような、毒素または放射性同位元素に結合された、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、急性骨髄性白血病を処置、診断、および/または予防するために使用され得る。
【0458】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、ラージB細胞リンパ腫の細胞増殖を減少するための治療剤として使用される。
【0459】
別の特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、慢性骨髄性白血病に関連するB細胞およびIgの関与を減少する手段として使用される。
【0460】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、B細胞免疫欠損の個体(例えば、部分的または完全な脾摘出を受けた個体)間の免疫応答性をブーストするための薬剤として用いられる。
【0461】
本発明のアンタゴニストは、例えば、結合抗体および/または阻害性の抗体、アンチセンス核酸、リボザイムまたは本発明のポリペプチドの可溶性形態(例えば、Fc融合タンパク質)(例えば、実施例9を参照のこと)を含む。本発明のアゴニストは、例えば、結合抗体または阻害性抗体、およびポリペプチドの可溶性形態(例えば、Fc融合タンパク質)(例えば、実施例9を参照のこと)を含む。本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、本明細書中に記載のような)と共に、組成物で使用される。
【0462】
別の実施形態において、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、機能的な内因性抗体分子を産生することが不可能であるか、またはさもなければ損われた内因性免疫系を有するが、別の動物からの再構築または部分的に再構築された免疫系によって、ヒト免疫グロブリン分子を産生することが可能である動物(上に列挙される動物を含むが、これらに限定されず、トランスジェニック動物もまた含む)に投与される。(例えば、公開されたPCT出願WO 98/24893、WO/9634096、WO/9633735、およびWO/9110741を参照のこと)。このような動物への本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストの投与は、本発明のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニストに対するモノクローナル抗体を作製するために有用である。
【0463】
さらに、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはアンタゴニストは、アポトーシスに影響し得、従って、細胞生存の増大あるいはアポトーシスの阻害に関連する多くの疾患の処置において有用である。例えば、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはアンタゴニストによって処置または検出され得る、細胞生存の増大あるいはアポトーシスの阻害に関連する疾患としては、癌(例えば、濾胞性リンパ腫、p53変異を有する癌腫、およびホルモン依存性腫瘍、これらは以下:結腸癌、心臓腫瘍、膵臓癌、黒色腫、網膜芽細胞腫、神経膠芽細胞腫、肺癌、腸の癌、精巣癌、胃癌、神経芽細胞腫、粘液腫、筋腫、リンパ腫、内皮腫、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、腺腫、乳癌、前立腺癌、カポージ肉腫および卵巣癌を含むが、これらに限定されない);自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、胆汁性肝硬変、ベーチェット病(Behcet’s disease)、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎ならびに慢性関節リウマチ)およびウイルス感染(例えば、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノウイルス)、炎症、対宿主性移植片病、急性移植片拒絶、ならびに慢性移植片拒絶、が挙げられる。
【0464】
好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはアンタゴニストは、特に上記に列挙される癌の増殖、進行、および/または転移を阻害するために使用される。
【0465】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはアンタゴニストによって処置または検出され得る、細胞生存の増大に関連するさらなる疾患または状態としては、悪性疾患ならびに以下のような関連する障害の進行および/または転移が挙げられるが、これらに限定されない:白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病を含む)を含む)ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病))、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、ならびに固形腫瘍(肉腫および癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、骨膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頸部癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)を含むが、これらに限定されない)。
【0466】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはアンタゴニストによって処置または検出され得る、アポトーシスの増大に関連するさらなる疾患としては、以下が挙げられる:AIDS;神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、小脳変性および脳腫瘍または以前に関連した疾患);自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、胆汁性肝硬変、ベーチェット病(Behcet’s disease)、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎ならびに慢性関節リウマチ)、脊髄形成異常症候群(例えば、再生不良性貧血)、対宿主性移植片病、虚血性傷害(心筋梗塞、発作および再灌流傷害によって生じるようなもの)、肝臓傷害(例えば、肝炎関連肝臓傷害、虚血/再灌流傷害、胆汁うっ滞(cholestosis)(胆管傷害)および肝臓癌);毒物誘導性肝臓疾患(アルコールによって引き起こされるようなもの)、敗血症性ショック、悪液質ならびに食欲不振。
【0467】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、ならびに/あるいはアンタゴニストによって検出および/または処置され得る過剰増殖の疾患および/または障害の例としては、肝臓、腹部、骨、乳房、消化器系、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、上皮小体、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部および頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、ならびに泌尿生殖器に位置する新生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0468】
同様に、他の過剰増殖障害もまた、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、ならびに/あるいはアンタゴニストにより処置または検出され得る。このような過剰増殖性障害の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:高ガンマグロブリン血症、リンパ球増殖性障害、パラプロテイン血症、紫斑、サルコイドーシス、セザリー症候群、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ゴシェ病、組織球増殖症、および任意の他の過剰増殖性疾患、加えて上記に列挙した器官系に見出される新生物。
【0469】
(過剰増殖障害)
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストを使用し、新生物を含む過剰増殖障害を処置または検出し得る。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、直接的または間接的な相互作用を介してこの障害の増殖を阻害し得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、過剰増殖障害を阻害し得る他の細胞を増殖し得る。
【0470】
例えば、免疫応答を増大させること、特に過剰増殖障害の抗原性の質を増大させることによって、またはT細胞を増殖、分化、もしくは動員することによって、過剰増殖障害を処置し得る。既存の免疫応答を増強するか、または新たな免疫応答を開始するかのいずれかによって、この免疫応答を増大させ得る。あるいは、免疫応答を減少させることもまた、化学療法剤のような、過剰増殖障害を処置する方法であり得る。
【0471】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストによって処置または検出され得る過剰増殖障害の例としては、結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、上皮小体、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部および頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、ならびに泌尿生殖器に位置する新生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0472】
同様に、他の過剰増殖障害もまた、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストにより処置または検出され得る。このような過剰増殖性障害の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:高ガンマグロブリン血症、リンパ球増殖性障害、パラプロテイン血症、紫斑、サルコイドーシス、セザリー症候群、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ゴシェ病、組織球増殖症、および任意の他の過剰増殖性疾患、加えて上記に列挙した器官系に見出される新生物。
【0473】
本発明のポリヌクレオチドを利用する1つの好ましい実施形態は、本発明および/または融合タンパク質もしくはそのフラグメントを用いる遺伝子治療によって、異常な細胞分裂を阻害することである。
【0474】
従って、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを異常に増殖している細胞に挿入することによって、細胞増殖性障害を処置するための方法を提供し、ここでこのポリヌクレオチドはこの発現を示す。
【0475】
本発明の別の実施形態は、個体における細胞増殖性障害を処置する方法を提供し、この方法は、本発明の1以上の活性遺伝子コピーを異常に増殖している1つの細胞または複数の細胞に投与することを包含する。好ましい実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドをコードするDNA配列の発現において有効な組換え発現ベクターを含むDNA構築物である。本発明の別の好ましい実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドをコードするDNA構築物は、レトロウイルスベクター、またはより好ましくは、アデノウイルスベクターを用いて、処理されるべき細胞に挿入される(G J.Nabelら、PNAS 1999 96:324−326(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。最も好ましい実施形態においては、ウイルスベクターは不完全であり、非増殖性細胞ではなく増殖性細胞のみを形質転換する。さらに、好ましい実施形態においては、単独、または他のポリヌクレオチドと組み合わされたかもしくは融合されたかのいずれかで増殖性細胞に挿入される本発明のポリヌクレオチドは、次いで外部刺激(すなわち、磁気、特異的小分子、化学的、または薬物投与など)を介して調節され得、これはこのポリヌクレオチドの上流のプロモーターに作用し、コードされたタンパク質産物の発現を誘導する。このように、本発明の有益な治療効果は、この外部刺激に基づいて明確に調節され得る(すなわち、本発明の発現を増加、減少、または阻害する)。
【0476】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、脈管形成タンパク質をコードする他のポリヌクレオチドと一緒に投与され得る。脈管形成タンパク質の例としては、酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子、VEGF−1、VEGF−2、VEGF−3、上皮増殖因子αおよびβ、血小板由来の内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子、および一酸化窒素シンターゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0477】
本発明のポリヌクレオチドは、発癌遺伝子または抗原の発現の抑制において有用であり得る。「発癌遺伝子の発現の抑制」によって、遺伝子の転写の抑制、遺伝子転写物の分解(プレメッセージ(pre−message)RNA)、スプライシングの阻害、メッセンジャーRNAの破壊、タンパク質の翻訳後修飾の予防、タンパク質の破壊、またはタンパク質の正常な機能の阻害が意図される。
【0478】
異常に増殖している細胞への局所的投与のために、本発明のポリヌクレオチドは当業者に公知の任意の方法によって投与され得、この方法としては、トランスフェクション、エレクトロポレーション、細胞の微量注入、またはビヒクル(例えば、リポソーム、リポフェクチン)中で、または裸のポリヌクレオチドとして、または本明細書を通して記載される任意の他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子送達系(例えば、レトロウイルスベクター(Gilboa,J.Virology 44:845(1982);Hocke,Nature 320:275(1986);Wilsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:3014)、ワクシニアウイルス系(Chakrabartyら、Mol.Cell Biol.5:3403(1985))または当業者に公知の他の有効なDNA送達系(Yatesら、Nature 313:812(1985))があるが、これらに限定されない)によって送達され得る。これらの参考文献は、例示のみであり、本明細書中に参考として援用される。異常に増殖している細胞を特異的に送達またはトランスフェクトし、そして非分裂細胞を使わないために、当業者に公知のレトロウイルス、またはアデノウイルス(当該分野および本明細書中の他のいずれかに記載のような)送達系を使用することが好ましい。宿主DNA複製は、組み込みのためにレトロウイルスDNAを必要とし、レトロウイルスはそのライフサイクルに必要なレトロウイルス遺伝子を欠くために自己複製できないからである。このようなレトロウイルス送達系を本発明のポリヌクレオチドのために用いることによって、この遺伝子および構築物は異常に増殖している細胞を標的とし、そして非分裂正常細胞を使用しない。
【0479】
本発明のポリヌクレオチドは、注射針を疾患部位に直接導くために使用される画像化デバイスの使用によって、内部器管、体腔などにおける細胞増殖性障害/疾患部位へ直接送達され得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、外科的処置のときに疾患部位へ投与され得る。
【0480】
「細胞増殖性疾患」によって、器管、腔、または身体の部分の任意の1つまたは任意の組み合わせに影響を与える、任意のヒトまたは動物の疾患もしくは障害が意味され、これは良性であるか悪性であるかに関わらず、細胞、細胞の群、または組織の単一または複数の局所的異常増殖によって特徴付けられる。
【0481】
本発明のポリヌクレオチドが処置される細胞の増殖に対して生物学的に阻害する効果を有する限り、本発明のポリヌクレオチドの任意の量が投与され得る。さらに、本発明のポリヌクレオチドの1つより多くを、同じ部位へ同時に投与することが可能である。「生物学的に阻害する」によって、細胞の部分的または全体的な増殖阻害および細胞の増殖(proliferation)または成長(growth)の速度における減少が意味される。生物学的阻害用量は、組織培養物における標的悪性細胞増殖もしくは異常増殖細胞増殖、動物および細胞培養物における腫瘍増殖に対する本発明のポリヌクレオチドの効果を評価することによって、または当業者に公知の任意の他の方法によって決定され得る。
【0482】
本発明はさらに、抗体に基づく治療に関し、この治療は、1以上の記載された障害を処置するために、抗ポリペプチド抗体および抗ポリヌクレオチド抗体を哺乳動物(好ましくは、ヒト)患者に投与する工程を包含する。抗ポリペプチド抗体および抗ポリヌクレオチド抗体のポリクロナール抗体およびモノクロナール抗体を生成するための方法は、本明細書中のいずれかに詳細に記載される。このような抗体は、当該分野において公知であるかまたは本明細書中に記載されるような薬学的に受容可能な組成物中に提供され得る。
【0483】
本発明の抗体が治療的に使用され得る方法の要旨は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを、身体中で局所的もしくは全体的に、または抗体の直接的な細胞傷害性によって(例えば、相補細胞(CDC)またはエフェクター細胞(ADCC)によって媒介されるように)結合させる工程を包含する。これらのアプローチのいくつかは、以下により詳細に記載される。本明細書中に提供される教示によって、当業者は過度の実験なしで、本発明の抗体を診断目的、モニタリング目的または治療目的のために使用する方法を理解する。
【0484】
特に、本発明の抗体、フラグメントおよび誘導体は、本明細書中に記載されるような細胞増殖性障害および/または細胞分化障害を有しているかまたは発症している被験体を処置するために有用である。このような処置は、抗体もしくはフラグメント、誘導体またはそれらの結合体の単一または複数の用量を投与する工程を包含する。
【0485】
本発明の抗体は、例えば、他のモノクロナール抗体もしくはキメラ抗体と組み合わせて、またはリンホカインもしくは造血成長因子と組み合わせて有利に使用され得、これは抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増加させるために役立つ。
【0486】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して高親和性および/または強力なインビボ阻害および/または中和抗体、それらのフラグメントもしくは領域を、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(それらのフラグメントを含む)に関するイムノアッセイおよびそれらに関連する障害の治療の両方のために使用することが好ましい。このような抗体、フラグメントまたは領域は、好ましくは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド(それらのフラグメントを含む)に対する親和性を有する。好ましい結合親和性としては、5×10−6M、10−6M、5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15Mおよび10−15M未満の解離定数すなわちKdを伴う結合親和性が挙げられる。
【0487】
さらに、本明細書中のいずれかに記載されるように、本発明のポリペプチドは、単独で、融合タンパク質として、または他のポリペプチドと組み合わせて、直接的または間接的のいずれかで、増殖性細胞または組織の新脈管形成の阻害において有用である。最も好ましい実施形態においては、この抗新脈管形成効果は、例えば造血性細胞、腫瘍特異的細胞(例えば、腫瘍関連マクロファージ)の阻害を通して、間接的に達成され得る(Joseph IBら、J Natl Cancer Inst,90(21):1648−53(1998)(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指向する抗体はまた、直接的または間接的に新脈管形成の阻害を生じ得る(Witte Lら、Cancer Metastasis Rev.17(2):155−61(1998)(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0488】
本発明のポリペプチド(融合タンパク質を含む)またはそのフラグメントは、アポトーシスの誘導を通した増殖性細胞または組織の阻害において有用であり得る。このポリペプチドは、デスドメインレセプター(例えば、腫瘍壊死因子(TNF)レセプター1、CD95(Fas/APO−1)、TNFレセプター関連アポトーシス媒介タンパク質(TRAMP)およびTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)レセプター1およびレセプター2)の活性化において、直接的または間接的のいずれかで、増殖性細胞および組織のアポトーシスを誘導するために作用し得る(Schulze−Osthoff Kら、Eur J Biochem 254(3):439−59(1998)(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。さらに、本発明の別の好ましい実施形態においては、このポリペプチドは、他の機構を通して(例えば、アポトーシスを活性化する他のタンパク質の活性化において)、あるいは単独または小分子薬物もしくはアジュバント(例えば、アポプトニン(apoptonin)、ガレクチン、チオレドキシン、抗炎症タンパク質)との組み合わせのいずれかで、このタンパク質の発現の刺激を通して、アポトーシスを誘導し得る(例えば、Mutat Res 400(1−2):447−55(1998)、Med Hypotheses.50(5):423−33(1998)、Chem Biol Interact.Apr 24;111−112:23−34(1998)、J Mol Med.76(6):402−12(1998)、Int J Tissue React;20(1):3−15(1998)(これらはすべて本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0489】
本発明のポリペプチド(それとの融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含む)は、増殖性細胞または組織の転移の阻害において有用である。阻害は、ポリペプチド、または本明細書中のいずれかに記載されるようなこのポリペプチドを指向する抗体の投与の直接的な結果として、あるいは間接的に(例えば、転移を阻害することが知られているタンパク質(例えば、α4インテグリン)の発現の活性化)生じ得る(例えば、Curr Top Microbiol Immunol 1998;231:125−41(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。本発明のこのような治療的効果は、単独、または小分子薬物もしくはアジュバントとの組み合わせのいずれかで達成され得る。
【0490】
別の実施形態においては、本発明は、本発明のポリペプチドを含有する組成物(例えば、異種ポリペプチド、異種核酸、毒素、またはプロドラッグに会合するポリペプチドまたはポリペプチド抗体を含有する組成物)を、本発明のポリペプチドを発現する標的細胞に送達する方法を提供する。本発明のポリペプチドまたはポリペプチド抗体は、疎水性、親水性、イオン性および/または共有結合性相互作用を介して、異種ポリペプチド、異種核酸、毒素、またはプロドラッグに会合し得る。
【0491】
本発明のポリペプチド、それらとの融合タンパク質またはそれらのフラグメントは、直接的(例えば、本発明のポリペプチドが増殖性抗原および免疫原に応答するために、免疫応答を「ワクチン接種した」場合に起こるように)、または間接的(例えば、この抗原および免疫原に対する免疫応答を増強することが知られているタンパク質(例えば、ケモカイン)の発現の活性化におけるように)のいずれかで、増殖細胞または組織の免疫原性および/または抗原性の増強において有用である。
【0492】
(心臓血管障害)
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストを使用して、四肢虚血のような末梢動脈疾患を含む、心臓血管障害を処置し得る。
【0493】
心臓血管障害としては、動動脈瘻(arterio−arterial fistula)、動静脈瘻、大脳動静脈先天異常、先天性心欠陥(congenital heart defects)、肺動脈弁閉鎖症、およびシミター症候群のような心臓血管異常が挙げられる。先天性心欠陥としては、大動脈縮窄、三房心、冠状脈管奇形(coronary vessel anomalies)、交差心、右胸心、開存性動脈管(patent ductus arteriosus)、エブスタイン奇形、アイゼンメンガー複合体、左心室発育不全症候群、左胸心、ファロー四徴症、大血管転位症、両大血管右室起始症、三尖弁閉鎖症、動脈管遺残、および心中隔欠損症(heart septal defects)(例えば、大動脈肺動脈中隔欠損症(aortopulmonary septal defect)、心内膜床欠損症、リュタンバッシェ症候群、ファロー三徴症、心室心中隔欠損症(ventricular heart septal defects))が挙げられる。
【0494】
心臓血管障害としてはまた、不整脈、カルチノイド心臓病、高心拍出量(high cardiac output)、低心拍出量(low cardiac output)、心タンポナーデ、心内膜炎(細菌性を含む)、心臓動脈瘤、心停止、うっ血性心不全、うっ血性心筋症、発作性呼吸困難、心臓水腫、心肥大、うっ血性心筋症、左心室肥大、右心室肥大、梗塞後心破裂(post−infarction heart rupture)、心室中隔破裂、心臓弁疾患、心筋疾患、心筋虚血、心内膜液浸出、心外膜炎(梗塞性および結核性を含む)、気心膜症、心膜切開後症候群、右心疾患、リウマチ性心疾患、心室機能不全、充血、心臓血管妊娠合併症(cardiovascular pregnancy complications)、シミター症候群、心血管梅毒、および心血管結核(cardiovascular tuberculosis)のような心臓病が挙げられる。
【0495】
不整脈としては、洞性不整脈、心房性細動、心房粗動、徐脈、期外収縮、アダムズ−ストークス症候群、脚ブロック、洞房ブロック、長QT症候群(long QT syndrome)、副収縮、ローン−ギャノング−レヴァイン症候群、マヘーム型早期興奮症候群(Mahaim−type pre−excitation syndrome)、ウルフ−パーキンソン−ホワイト症候群、洞不全症候群、頻拍、および心室性細動が挙げられる。頻拍としては、発作性頻拍、上室性頻拍、心室固有調律促進、房室結節性再入頻拍(atrioventricular nodal reentry tachycardia)、異所心房性頻拍、異所接合部頻拍、洞房結節性再入頻拍(sinoatrial nodal reentry tachycardia)、洞性頻拍、トルサード・ド・ポワント、および心室性頻拍が挙げられる。
【0496】
心臓弁疾患としては、大動脈弁機能不全症、大動脈弁狭窄症、心雑音(hear murmurs)、大動脈弁逸脱症、僧帽弁逸脱症、三尖弁逸脱症、僧帽弁機能不全、僧帽弁狭窄症、肺動脈弁閉鎖症、肺動脈弁機能不全、肺動脈弁狭窄症、三尖閉鎖症、三尖弁機能不全、および三尖弁狭窄症が挙げられる。
【0497】
心筋疾患としては、アルコール性心筋症、うっ血性心筋症、肥大型心筋症、弁下部性大動脈狭搾症、弁下部性肺動脈狭搾症、拘束型心筋症、シャーガス心筋症、心内膜線維弾性症、心内膜心筋線維症、キーンズ症候群、心筋再灌流障害、および心筋炎が挙げられる。
【0498】
心筋性虚血としては、狭心症、冠動脈瘤、冠動脈硬化、冠動脈血栓症、冠動脈血管痙攣、心筋梗塞、および心筋気絶(myocardial stunning)のような冠動脈疾患が挙げられる。
【0499】
心臓血管疾患としてはまた、動脈瘤、血管形成異常、血管腫症、細菌性血管腫症状、ヒッペル−リンダラ疾患(Hippel−Lindau Disease)、クリペル−トルノネー−ウェーバー症候群、スタージ−ウェーバー症候群、血管運動神経性水腫、大動脈疾患、高安動脈炎、大動脈炎、ルリーシュ症候群、動脈閉塞疾患、動脈炎、動脈内膜炎(enarteritis)、結節性多発性動脈炎、脳血管障害、糖尿病性血管障害、糖尿病性網膜症、塞栓症、血栓症、先端紅痛症、痔、肝静脈閉塞障害、高血圧、低血圧、虚血、末梢血管障害、静脈炎、肺静脈閉塞疾患、高血圧、低血圧、虚血、末梢血管疾患、静脈炎、肺静脈閉塞疾患、レーノー病、CREST症候群、網膜静脈閉塞、シミター症候群、上大静脈症候群、毛細血管拡張症、毛細血管拡張性運動失調(atacia telangiectasia)、遺伝性出血性毛細管拡張症、精索静脈瘤、拡張蛇行静脈、静脈瘤性潰瘍、脈管炎、および静脈機能不全のような血管疾患が挙げられる。
【0500】
動脈瘤としては、解離性動脈瘤、偽動脈瘤、感染した動脈瘤、破裂した動脈瘤、大動脈性動脈瘤、大脳性動脈瘤、冠動脈瘤、心動脈瘤、および腸骨性動脈瘤が挙げられる。
【0501】
動脈閉塞疾患としては、動脈硬化症、間欠性跛行、頸動脈狭窄症、線維筋性形成異常、腸間膜性血管閉塞、モヤモヤ病、腎動脈閉塞、網膜動脈閉塞、および閉塞性血栓性血管炎が挙げられる。
【0502】
脳血管障害としては、頸動脈疾患、脳のアミロイドアンギオパチー、大脳動脈瘤、大脳無酸素症、大脳動脈硬化、大脳動静脈先天異常、大脳動脈疾患、大脳の塞栓症および血栓症、頸動脈血栓症、洞血栓症、ヴァレンベルク症候群、大脳出血、硬膜上血腫、硬膜下血腫、クモ膜下出血(subaraxhnoid hemorrhage)、大脳梗塞、大脳虚血(一過性を含む)、鎖骨下動脈盗血症候群、室周白軟化症(periventricular leukomalacia)、血管性頭痛、群発性頭痛、片頭痛、および椎骨基部(vertebrobasilar)機能不全が挙げられる。
【0503】
塞栓症としては、空気塞栓症、羊水塞栓症、コレステロール塞栓症、爪先チアノーゼ症候群、脂肪塞栓症、肺動脈塞栓症、および血栓塞栓症が挙げられる。血栓症としては、冠状動脈血栓症、肝静脈血栓症、網膜静脈閉塞、頸動脈血栓症、洞血栓症、ヴァレンベルク症候群、および血栓性静脈炎が挙げられる。
【0504】
虚血としては、大脳虚血、虚血性大腸炎、仕切り症候群(compartment syndrome)、前仕切り症候群(anterior compartment syndrome)、心筋虚血、再灌流傷害、および末梢四肢虚血が挙げられる。脈管炎としては、大動脈炎、動脈炎、ベーチェット(Behcet)症候群、チャーグ−ストラウス症候群、粘膜皮膚リンパ節症候群、閉塞性血栓性血管炎、過敏性血管炎、シェーンライン−ヘーノホ紫斑病(Schoenlein−Henoch purpura)、アレルギー性皮膚血管炎およびヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0505】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、危険な四肢虚血および冠状動脈疾患の処置に対して特に有効である。
【0506】
ポリペプチドは、当該分野で公知である任意の方法を使用して投与され得、これらの方法としては、送達部位における直接的針注射、静脈内注射、局所投与、カテーテル注入、微粒子銃(biolistic)注射、粒子加速器、ゲルフォームスポンジデポー、他の市販デポー物質、浸透圧ポンプ、経口または坐剤の固形薬学的処方物、手術中のデカンティングまたは局所適用、エアロゾル送達が挙げられるが、これらに限定されない。そのような方法は当該分野で公知である。ポリペプチドは、下記でより詳細に記載される、治療剤(Therapeutic)の一部として投与され得る。ポリヌクレオチドを送達する方法は本明細書中でより詳細に記載される。
【0507】
(抗新脈管形成活性)
新脈管形成の内因性の、刺激因子とインヒビターとの間の天然に存在する平衡は、阻害影響が優勢である平衡である。Rastinejadら、Cell 56:345〜355(1989)。新生血管形成が正常な生理学的条件下において生じるまれな場合(例えば、創傷治癒、器官再生、胚発生、および雌性生殖プロセス)において、新脈管形成は、厳密に調節され、そして空間的および時間的に定められる。病的な新脈管形成の条件(例えば、固形腫瘍増殖を特徴付ける)の下において、これらの調節の制御はできない。調節されていない新脈管形成は病的になり、そして多くの新生物性疾患および非新生物性疾患の進行を維持する。多くの重篤な疾患は、固形腫瘍の増殖および転移、関節炎、いくつかの型の眼の障害および乾癬を含む、異常な新生血管形成により支配される。例えば、Mosesら、Biotech.9:630〜634(1991);Folkmanら、N.Engl.J.Med.、333:1757〜1763(1995);Auerbachら、J.Microvasc.Res.29:401〜411(1985);Folkman、Advances in Cancer Research、KleinおよびWeinhouse編、Academic Press、New York、175〜203頁(1985);Patz、Am.J.Opthalmol.94:715〜743(1982);およびFolkmanら、Science 221:719〜725(1983)による概説を参照のこと。多くの病的状態において、新脈管形成のプロセスは、その疾患状態に寄与する。例えば、固形腫瘍の増殖が新脈管形成に依存することを示唆する有意なデータが蓄積されている。FolkmanおよびKlagsbrun、Science 235:442〜447(1987)。
【0508】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド、ならびに本発明のアゴニストまたはアンタゴニストの投与による新生血管形成に関連する疾患または障害の処置を提供する。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストを用いて処置し得る悪性状態および転移性状態には、本明細書に記載の悪性疾患、固形腫瘍、および癌、ならびに当該分野で公知の他のもの(このような障害の総説については、Fishmanら、Medicine、第2版、J.B.Lippincott Co.,Philadelphia(1985)を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明は、新脈管形成関連疾患および/または障害の処置の方法を提供し、この方法は、治療有効量の、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストを、その処置の必要な個体に投与する工程を包含する。例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストは、癌または腫瘍を治療的に処置するために、種々のさらなる方法で利用され得る。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストで処置され得る癌としては、前立腺癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、膵臓癌、喉頭癌、食道癌、精巣癌、肝臓癌、耳下腺癌、胆管癌、結腸癌、直腸癌、頸部癌、子宮癌、子宮内膜癌、腎臓癌、膀胱癌、甲状腺癌を含む固形腫瘍;原発性腫瘍および転移;黒色腫;膠芽腫;カポージ肉腫;平滑筋肉腫;非小細胞肺癌;結腸直腸癌;進行性(advanced)悪性疾患;および血液から生じる腫瘍(例えば、白血病)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストは、皮膚癌、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍およびカポージ肉腫のような癌を処置するために、局所送達され得る。
【0509】
なお他の局面において、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストは、例えば膀胱内投与によって膀胱癌の表面形態を処置するために利用され得る。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストは、腫瘍に直接的に、または注射もしくはカテーテルを介して腫瘍部位付近に送達され得る。当然のことながら、当業者が理解するように、適切な投与様式は、処置されるべき癌によって変化する。他の送達様式は本明細書中において議論される。
【0510】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストは、癌に加えて、他の障害(新脈管形成を含む)を処置する際に有用であり得る。これらの障害としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:良性腫瘍(例えば、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫);動脈硬化プラーク;眼の脈管形成疾患(例えば、糖尿病性網膜症、未熟網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖、ルベオーシス、網膜芽細胞腫、ブドウ膜炎(uvietis)および眼の翼状片(Pterygia)(異常な血管増殖));慢性関節リウマチ;乾癬;遅延型創傷治癒;子宮内膜症;脈管形成;顆粒化;過形成性瘢痕(ケロイド);偽関節骨折;強皮症;トラコーマ;血管接着;心筋の新脈管形成;冠状側副枝(coronary collaterals);大脳側副枝;動静脈奇形;虚血性四肢新脈管形成;オースラー−ウェーバー(Osler−Webber)症候群;プラーク新生血管形成;毛細血管拡張症;血友病性関節;血管線維腫;線維筋性形成異常;創傷顆粒化;クローン病;およびアテローム性動脈硬化症。
【0511】
例えば、本発明の1つの局面において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストを過形成性瘢痕またはケロイドに投与する工程を包含する、過形成性瘢痕およびケロイドを処置するための方法が提供される。
【0512】
本発明の1つの実施形態において、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストは、過形成性瘢痕またはケロイドに、これらの病変の進行を妨げるために直接注射される。この治療は、過形成性瘢痕およびケロイド(例えば、やけど)の発生を生じることが知られている状態の予防処置において特に価値があり、そして好ましくは、増殖期が進行する時間(最初の傷害の約14日後)を有した後であるが、過形成性瘢痕またはケロイドの発生の前に開始される。上述のように、本発明はまた、眼の新生血管形成疾患(例えば、角膜新生血管形成、血管新生緑内障、増殖性糖尿病網膜症、水晶体後線維増殖および黄斑変性を含む)を処置するための方法を提供する。
【0513】
さらに、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド(アゴニストおよび/またはアンタゴニストを含む)を用いて処置され得る新生血管形成に関連する眼の障害としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:血管新生緑内障、糖尿病網膜症、網膜障害、網膜芽細胞腫、水晶体後線維増殖症、ブドウ膜炎、未熟網膜症、黄斑変性、角膜移植新生血管形成、ならびに他の眼の炎症性疾患、眼の腫瘍、および脈絡膜または虹彩の新生血管形成に関連する疾患。例えば、Waltmanら、Am.J.Ophthal.85:704〜710(1978)およびGartnerら、Surv.Ophthal.22:291〜312(1978)による総説を参照のこと。
【0514】
従って、本発明の1つの局面において、治療有効量の化合物(上記)を患者に対して、血管の形成が阻害されるように角膜に投与する工程を包含する、角膜新生血管形成(角膜移植新生血管形成を含む)のような眼の新生血管形成疾患を処置するための方法が、提供される。簡潔には、角膜は、通常には血管を欠く組織である。しかし、特定の病的状態において、毛細血管は、縁の角膜周囲脈管叢から角膜に伸長し得る。角膜が血管化されるようになる場合、角膜はまた混濁されるようになり、患者の視力の衰えを生じる。角膜が完全に不透明になる(opacitate)場合に、視力喪失が完全になり得る。広範な種々の障害は、例えば、以下を含む角膜新生血管形成を生じ得る:角膜感染(例えば、トラコーマ、単純ヘルペス角膜炎、リーシュマニア症およびオンコセルカ症)、免疫学的プロセス(例えば、移植片拒絶およびスティーヴンズ−ジョンソン症候群)、アルカリやけど、外傷、炎症(任意の原因による)、毒性および栄養欠乏状態、ならびにコンタクトレンズを装着することの合併症として。
【0515】
特に好ましい実施形態において、本発明は、生理食塩水(眼に用いる調製物において一般に使用される任意の保存剤および抗菌剤と組合せて)中で局所投与のために調製され得、そして点眼剤形態で投与され得る。溶液または懸濁液は、その純粋な形態で調製され得、そして1日に数回投与され得る。あるいは、上記のように調製される抗脈管形成組成物はまた、角膜に直接投与され得る。好ましい実施形態において、抗脈管形成組成物は、角膜に結合する粘膜接着性ポリマーとともに調製される。さらなる実施形態において、抗脈管形成因子または抗脈管形成組成物は、従来のステロイド治療に対する補助剤として利用され得る。局所治療はまた、脈管形成応答(例えば、化学的やけど)を誘導する高い可能性を有することが公知である角膜病変において予防的に有用であり得る。これらの場合において、処置(おそらくステロイドと組み合わせられる)は、その後の合併症を予防するのを補助するために直ちに開始され得る。
【0516】
他の実施形態において、上記の化合物は、角膜支質に直接、顕微鏡の案内の下で眼科医によって注入され得る。好ましい注射部位は、個々の病巣の形態で変化し得るが、投与の目標は、脈管構造の前進している面に組成物を置くこと(すなわち、血管と正常な角膜との間に分散される)である。ほとんどの場合において、これは、前進している血管から角膜を「防御」するための縁周囲(perilimbic)角膜注射を含む。この方法はまた、角膜新生血管形成を予防的に防ぐために、角膜傷害の直後に利用され得る。この状況において、この物質は、角膜病巣とその所望されない潜在的な血液供給の縁との間に分散して縁周囲角膜に注射され得る。このような方法はまた、類似の様式で、移植された角膜の毛細血管浸潤を予防するために利用され得る。徐放形態において、注入は、1年に2〜3回のみ必要とされ得る。ステロイドもまた、注入溶液に添加され、その注射自体から生じる炎症を低減し得る。
【0517】
本発明の別の局面において、患者に、血管の形成を阻害するように、治療有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストを眼に投与する工程を包含する、血管新生緑内障を処置するための方法が提供される。1つの実施形態において、化合物は、血管新生緑内障の早期形態を処置するために、眼に局所投与され得る。他の実施形態において、化合物は、前方角(anterior chamber angle)の領域に注入によって移植され得る。他の実施形態において、化合物はまた、化合物が眼房水に連続的に放出されるように、任意の位置に置かれ得る。本発明の別の局面において、患者に、血管の形成が阻害されるように、治療有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストを眼に投与する工程を包含する、増殖性糖尿病性網膜症を処置するための方法が提供される。
【0518】
本発明の特に好ましい実施形態において、増殖性糖尿病性網膜症は、網膜におけるポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストの局所濃度を増加させるために、眼房水または硝子体への注入によって処置され得る。好ましくは、この処置は、光凝固を必要とする重篤な疾患の獲得の前に開始されるべきである。
【0519】
本発明の別の局面において、血管の形成が阻害されるように、患者に、治療有効量のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アンタゴニストおよび/またはアゴニストを眼に投与する工程を包含する、水晶体後線維増殖症を処置するための方法が、提供される。化合物は、硝子体内注射を介して、および/または眼内移植を介して局所投与され得る。
【0520】
さらに、このポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストで処置され得る障害としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:血管腫、関節炎、乾癬、血管線維腫、アテローム性プラーク、遅延型創傷治癒、顆粒化、血友病性関節、過形成性瘢痕、偽関節骨折、オースラー−ウェーバー(Osler−Weber)症候群、化膿性肉芽腫、強皮症、トラコーマ、および血管接着。
【0521】
さらに、このポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストで処置され得る障害および/または状態としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:固形腫瘍、血液由来の(blood born)腫瘍(例えば、白血病)、腫瘍転移、カポージ肉腫、良性腫瘍(例えば、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫)、慢性関節リウマチ、乾癬、眼の脈管形成疾患(例えば、糖尿病性網膜症、未熟網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス、網膜芽細胞腫、およびブドウ膜炎)、遅延型創傷治癒、子宮内膜症、脈管形成、顆粒化、過形成性瘢痕(ケロイド)、偽関節骨折、強皮症、トラコーマ、血管接着、心筋の新脈管形成、冠状側副枝(coronary collaterals)、大脳側副枝、動静脈奇形、虚血性四肢新脈管形成、オースラー−ウェーバー症候群、プラーク新生血管形成、毛細血管拡張症、血友病性関節、血管線維腫線維筋性形成異常、創傷顆粒化、クローン病、アテローム性動脈硬化症、産児制限薬剤(月経を制御する、胎芽着床のために必要な血管新生を予防することによる)、病原性の結果(例えば、ネコ引っかき病(Rochele minalia quintosa)、潰瘍(Helicobacter pylori)、バルトネラ症および細菌性血管腫症状)のような新脈管形成を有する疾患。
【0522】
出産制限方法の1つの局面において、胎芽着床をブロックするに十分な化合物の量は、性交および受精が起こる前またはその後に投与され、従って産児制限の有効な方法、おそらく「事後用(morning after)」方法を提供する。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストはまた、月経を制御することにおいて使用され得るか、または子宮内膜症の処置における腹膜洗浄液として、もしくは腹膜移植のためのいずれかで投与され得る。
【0523】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストは、縫合(stitch)肉芽腫を予防するために、外科縫合に組み込まれ得る。
【0524】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストは、広範な種々の外科手順において利用され得る。例えば、本発明の1つの局面において、組成物(例えば、スプレーまたはフィルムの形態において)は、悪性組織から正常な周囲の組織を分離するため、そして/または周囲の組織への疾患の広がりを予防するために、腫瘍の除去の前に、領域をコートまたはスプレーするために利用され得る。本発明の他の局面において、組成物(例えば、スプレーの形態において)は、腫瘍をコートするため、または所望の場所において新脈管形成を阻害するために、内視鏡手順を介して送達され得る。本発明のなお他の局面において、本発明の抗脈管形成組成物でコートされている外科メッシュが、外科メッシュが利用され得る任意の手順において利用され得る。例えば、本発明の1つの実施形態において、抗脈管形成組成物を有した外科メッシュレーデン(laden)は、構造に対する支持を提供するため、そして一定の量の抗脈管形成因子を放出するために、腹部癌切除手術の間(例えば、結腸切除の後)に利用され得る。
【0525】
本発明のさらなる局面において、癌の局所的再発およびその部位での新しい血管の形成が阻害されるように、切除後にポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストを腫瘍の切除縁に投与する工程を包含する、腫瘍切除部位を処置するための方法が提供される。本発明の1つの実施形態において、抗脈管形成化合物は、腫瘍切除部位に直接投与される(例えば、塗布、ブラッシング(brushing)、または他の方法で抗脈管形成化合物で腫瘍の切除縁をコートすることによって適用される)。あるいは、抗脈管形成化合物は、投与前に公知の外科ペーストに組み込まれ得る。本発明の特に好ましい実施形態において、抗脈管形成化合物は、悪性疾患についての肝切除後および神経外科手術後に適用される。
【0526】
本発明の1つの局面において、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストは、広範な種々の腫瘍(例えば、乳房腫瘍、結腸腫瘍、脳腫瘍および肝腫瘍を含む)の切除縁に投与され得る。例えば、本発明の1つの実施形態において、抗脈管形成化合物は、切除後に、神経学的腫瘍の部位に、その部位での新しい血管の形成が阻害されるように投与され得る。
【0527】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアゴニストはまた、他の抗脈管形成因子とともに投与され得る。他の抗脈管形成因子の代表的な例としては以下が挙げられる:抗侵襲性因子、レチノイン酸およびその誘導体、パクリタキセル、スラミン、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase)−1、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター−2、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−2および種々の形態のより軽い「d群」遷移金属。
【0528】
より軽い「d群」遷移金属には、例えばバナジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブおよびタンタル種が挙げられる。そのような遷移金属種は、遷移金属錯体を形成し得る。上記の遷移金属種の適切な錯体としては、オキソ遷移金属錯体が挙げられる。
【0529】
バナジウム錯体の代表的な例としては、バナデート錯体およびバナジル錯体のようなオキソバナジウム錯体が挙げられる。適切なバナデート錯体としては、例えばメタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウムおよびオルトバナジン酸ナトリウムのようなメタバナデート錯体およびオルトバナデート錯体が挙げられる。適切なバナジル錯体としては、例えばバナジルアセチルアセトネートおよび硫酸バナジル(硫酸バナジル一水和物および硫酸バナジル三水和物のような硫酸バナジル水和物を含む)が挙げられる。
【0530】
タングステン錯体およびモリブデン錯体の代表的な例としてはまた、オキソ錯体が挙げられる。適切なオキソタングステン錯体としては、タングステート錯体およびタングステンオキシド錯体が挙げられる。適切なタングステート錯体としては、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸ナトリウム二水和物およびタングステン酸が挙げられる。適切なタングステンオキシドとしては、タングステン(IV)オキシドおよびタングステン(VI)オキシドが挙げられる。適切なオキソモリブデン錯体としては、モリブデート、モリブデンオキシドおよびモリブデニル錯体が挙げられる。適切なモリブデート錯体としては、モリブデン酸アンモニウムおよびその水和物、モリブデン酸ナトリウムおよびその水和物、ならびにモリブデン酸カリウムおよびその水和物が挙げられる。適切なモリブデンオキシドとしては、モリブデン(VI)オキシド、モリブデン(VI)オキシドおよびモリブデン酸が挙げられる。適切なモリブデニル錯体としては、例えばモリブデニルアセチルアセトネートが挙げられる。他の適切なタングステン錯体およびモリブデン錯体としては、例えばグリセロール、酒石酸および糖由来のヒドロキソ誘導体が挙げられる。
【0531】
広範な種々の他の抗脈管形成因子もまた、本発明の状況において利用され得る。代表的な例としては、以下が挙げられる:血小板因子4;硫酸プロタミン;硫酸化キチン誘導体(クイーンクラブ(queen crab)の殻から調製される)(Murataら、Cancer Res.51:22〜26、1991);硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(SP−PG)(この化合物の機能は、ステロイド(例えば、エストロゲン)およびクエン酸タモキシフェンの存在によって、増強され得る);スタウロスポリン;基質代謝の調節因子(例えば、プロリンアナログ、シスヒドロキシプロリン、d,L−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α−ジピリジル,アミノプロピオニトリルフマレートを含む);4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン;メトトレキサート;ミトザントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン−血清;ChIMP−3(Pavloffら、J.Bio.Chem.267:17321〜17326、1992);キモスタチン(Tomkinsonら、Biochem J.286:475〜480、1992);シクロデキストリンテトラデカサルフェート;エポネマイシン;カンプトテシン;フマギリン(Ingberら、Nature 348:555〜557、1990);チオリンゴ酸金ナトリウム(「GST」;MatsubaraおよびZiff、J.Clin.Invest.79:1440〜1446、1987);アンチコラゲナーゼ−血清;α2−抗プラスミン(Holmesら、J.Biol.Chem.262(4):1659〜1664、1987);ビサントレン(National Cancer Institute);ロベンザリット二ナトリウム(N−(2)−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸(chloroanthronilic acid)二ナトリウム、すなわち「CCA」;Takeuchiら、Agents Actions 36:312〜316、1992);サリドマイド;Angostaticステロイド;AGM−1470;カルボキシアミノイミダゾール(carboxynaminolmidazole);およびメタロプロテイナーゼインヒビター(例えば、BB94)。
【0532】
(細胞レベルでの疾患)
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアンタゴニストもしくはアゴニストによって処置または検出され得る細胞生存の増大あるいはアポトーシスの阻害に関連する疾患には、癌(例えば、濾胞性リンパ腫、p53変異を有する癌腫、およびホルモン依存性腫瘍、これらは以下:結腸癌、心臓腫瘍、膵臓癌、黒色腫、網膜芽細胞腫、神経膠芽細胞腫、肺癌、腸癌、精巣癌、胃癌、神経芽細胞腫、粘液腫、筋腫、リンパ腫、内皮腫、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、骨肉腫、軟骨肉腫、腺腫、乳癌、前立腺癌、カポージ肉腫および卵巣癌を含むが、これらに限定されない);自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、胆汁性肝硬変、ベーチェット病(Behcet’s disease)、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎ならびに慢性関節リウマチ)およびウイルス感染(例えば、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノウイルス)、炎症、対宿主性移植片病、急性移植片拒絶、ならびに慢性移植片拒絶、が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、および/またはアンタゴニストは、特に上記に列挙される、癌の増殖、進行、および/または転移(metasis)を阻害するために使用される。
【0533】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストによって処置あるいは検出され得る細胞生存の増大に関連するさらなる疾患または状態には、悪性疾患の進行および/または転移ならびに以下のような関連する障害が挙げられるが、これらに限定されない:白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病を含む)を含む)ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病))、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、ならびに固形腫瘍(肉腫および癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、骨膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌腫、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頸部癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)を含むが、これらに限定されない)。
【0534】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストによって処置あるいは検出され得るアポトーシスの増大に関連する疾患には、以下が挙げられる:AIDS;神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、小脳変性および脳腫瘍または以前に関連した疾患);自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、胆汁性肝硬変、ベーチェット病(Behcet’s disease)、クローン病、多発性筋炎、全身性エリテマトーデスおよび免疫関連糸球体腎炎ならびに慢性関節リウマチ)、脊髄形成異常症候群(例えば、再生不良性貧血)、対宿主性移植片病、虚血性傷害(心筋梗塞、発作および再灌流傷害によって生じるようなもの)、肝臓傷害(例えば、肝炎関連肝臓傷害、虚血/再灌流傷害、胆汁うっ滞(cholestosis)(胆管傷害)および肝臓癌);毒物誘導性肝臓疾患(アルコールによって引き起こされるようなもの)、敗血症性ショック、悪液質ならびに食欲不振。
【0535】
(創傷治癒および上皮細胞増殖)
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストを、治療目的のため、例えば、創傷治癒の目的のために上皮細胞増殖および基底ケラチノサイトを刺激するため、ならびに毛包生成および皮膚創傷の治癒を刺激するために、利用するプロセスが提供される。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、以下を含む創傷治癒を刺激する際に臨床的に有用であり得る:外科的創傷、切除の創傷、深い創傷(真皮および表皮の損傷を含む)、眼組織の創傷、歯組織の創傷、口腔創傷、糖尿病性潰瘍、皮膚の潰瘍、肘の潰瘍、動脈の潰瘍、静脈うっ滞潰瘍、熱への曝露または化学物質から生ずる熱傷、および他の異常な創傷治癒状態(例えば、尿毒症、栄養失調、ビタミン欠乏、ならびにステロイド、放射線療法および抗腫瘍性薬物および代謝拮抗物質を用いる全身性処置に関連する合併症。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、皮膚損失後の皮膚の回復を促進するために使用され得る。
【0536】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、創傷床(wound bed)への皮膚移植片の接着を増大するため、および創傷床からの再上皮形成を刺激するために使用され得る。以下は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストが創傷床への接着を増大するために使用され得る、移植片の型である:自家移植片、人工皮膚、同種移植片(allograft)、自己植皮片、自己表皮移植片(autoepdermic graft)、無血管性(avacular)移植片、ブレア−ブラウン移植片、骨移植片、胚胎組織移植片、真皮移植片、遅延移植片、皮膚移植片、表皮移植片、筋膜移植片、全層皮膚移植片、異種移植片(heterologous graft)、異種移植片(xenograft)、同種移植片(homologous graft)、増殖性移植片、層板状移植片、網状移植片、粘膜移植片、オリエ−ティールシュ移植片、大網移植片、パッチの移植片(patch graft)、茎状移植片、全層移植片(penetrating graft)、分層植皮片(split skin graft)、分層植皮片(thick split graft)。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、皮膚の強度を助長するため、および加齢した皮膚の外見を改善するために使用され得る。
【0537】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストはまた、肝細胞増殖、および肺、乳房、膵臓、胃、小腸(small intesting)、および大腸における上皮細胞増殖における変化を生じると考えられる。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストは、上皮細胞(例えば、皮脂細胞(sebocyte)、毛包、肝細胞、II型肺胞上皮細胞(type II pneumocyte)、ムチン産生杯細胞、および他の上皮細胞、ならびに皮膚、肺、肝臓、および胃腸管内に含まれるそれらの前駆体)の増殖を促進し得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、内皮細胞、ケラチノサイト、および基底ケラチノサイトの増殖を促進し得る。
【0538】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストはまた、照射、化学療法処置またはウイルス感染から生じる腸の毒性の副作用を低減するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、小腸粘膜に対して細胞保護的な(cytoprotective)効果を有し得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストはまた、化学療法およびウイルス感染から生じる粘膜炎(mucositis)(口潰瘍)の治癒を刺激し得る。
【0539】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、熱傷を含む、完全な厚さおよび部分的な厚さの皮膚欠損における皮膚の完全な再生(すなわち、毛包、汗腺、および皮脂腺の再増殖)、乾癬のような他の皮膚欠損の処置においてさらに使用され得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、表皮水疱症(これらの損傷の再上皮形成を促進することによる頻繁な開放性かつ疼痛性の水疱を生じる、下層の真皮への表皮の接着の欠損)を処置するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストはまた、胃潰瘍および十二指腸(doudenal)潰瘍を処置し、そして粘膜の内層の瘢痕形成ならびに腺の粘膜および十二指腸の粘膜の内層の再生による治癒を、より迅速に補助するために使用され得る。炎症性腸疾患、例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎は、それぞれ、小腸または大腸の粘膜表面の破壊を生じる疾患である。従って、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、粘膜表面の再表面形成(resurfacing)を促進して、より迅速な炎症性腸疾患の治癒を補助し、そして炎症性腸疾患の進行を予防するために、使用され得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストを用いる処置は、胃腸管全体の粘液の産生に対して有意な効果を有すると予期され、そして摂取された有害な物質からかまたは外科手術後に、腸粘膜を有害な物質から保護するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたアンタゴニストは、その発現不足に関連する疾患を処置するために使用され得る。
【0540】
さらに、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、種々の病的状態に起因する肺への損傷を予防および治癒するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、急性または慢性の肺損傷を予防または処置するために、肺胞および細気管支(brochiolar)上皮の増殖および分化を刺激し得、そしてその修復を促進し得る。例えば、肺胞(aveoli)の進行性の損失を生じる気腫、および細気管支上皮および肺胞の壊死を生じる吸入傷害(inhalation injury)(すなわち、煙の吸入および熱傷から生じる)は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストを使用して、効果的に処置され得る。また、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、II型肺胞上皮細胞の増殖および分化を刺激するために使用され得、これは、未熟な乳児における肺硝子膜症(例えば、乳児呼吸窮迫症候群および気管支肺異形成症)のような疾患を処置または予防するのを助け得る。
【0541】
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、肝細胞の増殖および分化を刺激し得、従って、肝臓の疾患および病状(例えば、肝硬変により生じる劇症肝不全、ウイルス性肝炎および毒性物質(すなわち、アセトアミノフェン、四塩化炭素(carbon tetraholoride)、および当該分野で公知の他の肝臓毒素)により生じる肝臓損傷)を緩和または処置するために用いられ得る。
【0542】
さらに、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、真性糖尿病の発症を処置または予防するために使用され得る。新たにI型糖尿病およびII型糖尿病と診断された患者において、いくらかの島細胞機能が残っている場合、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、その疾患の永続的な発現を、緩和、遅延または予防するように、その島機能を維持するために使用され得る。また、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、島細胞機能を改善または促進するための島細胞移植における補助として使用され得る。
【0543】
(神経活性および神経学的疾患)
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびアゴニストもしくはアンタゴニストは、脳および/または神経系の疾患、障害、損傷、または傷害の診断および/または処置に用いられ得る。本発明の組成物(例えば、CRポリペプチド、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニスト)を用いて処置され得る神経系の障害としては、軸索の切断、ニューロンの減少もしくは変性、または脱髄のいずれかを引き起こす、神経系損傷および疾患または障害が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法に従って、患者(ヒト患者および非ヒト哺乳動物患者を含む)において処置され得る神経系病変には、以下の中枢神経系(脊髄、脳を含む)または末梢神経系のいずれかの病変が挙げられるが、これらに限定されない:(1)虚血病変(ここで、神経系の一部における酸素不足により、ニューロンの損傷または死が生じ、これには大脳梗塞もしくは虚血、または脊髄梗塞もしくは虚血が挙げられる);(2)外傷病変(身体的損傷により生じるかまたは手術に関連する病変、例えば、神経系の一部分を切断する病変、または圧縮損傷を含む);(3)悪性病変(ここで、神経系の一部分は、神経系関連悪性疾患もしくは非神経系組織由来の悪性疾患のいずれかである悪性組織により破壊または損傷される);(4)感染性病変(ここで、神経系の一部分は、例えば、膿瘍による感染の結果として、破壊または損傷されるか、あるいはヒト免疫不全ウイルス、帯状ヘルペスもしくは単純ヘルペスウイルスによる感染と関連するか、ライム病、結核、梅毒に関連する);(5)変性病変(ここで、神経系の一部分は、変性プロセスの結果として破壊または損傷され、これには、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティングトン病または筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連する変性が挙げられるが、これらに限定されない);(6)栄養性の疾患または障害に関連する病変(ここで、神経系の一部分は、栄養障害または代謝障害によって破壊または損傷され、これには、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ヴェルニッケ病、タバコ−アルコール弱視、マルキアファーヴァ−ビニャーミ病(脳梁の一次変性)およびアルコール小脳変性が挙げられるが、これらに限定されない);(7)全身性疾患に関連する神経性病変(糖尿病(糖尿病性ニューロパシー、ベル麻痺)、全身性エリテマトーデス、癌または類肉腫症が挙げられるが、これらに限定されない);(8)毒性物質(アルコール、鉛または特定の神経毒を含む)により生じる病変;ならびに(9)脱髄性病変(ここで、神経系の一部分は、脱髄性執権によって破壊または損傷され、これには、多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルス関連脊髄障害、横断脊髄障害または種々の病因、進行性多病巣性白質脳障害、および橋中央ミエリン溶解が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0544】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、大脳低酸素症の損傷効果から神経細胞を保護するために用いられる。さらに好ましい実施形態では、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、大脳低酸素症の損傷効果から神経細胞を防御するために用いられる。この実施形態によると、本発明の組成物は、大脳低酸素症に関連する神経細胞損傷を処置または予防するために用いられる。この実施形態の1つの非排他的局面において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、大脳虚血と関連する神経細胞損傷を処置、または予防するために用いられる。この実施形態の非限定的な別の局面において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、大脳梗塞に関連する神経細胞損傷を処置または予防するために用いられる。
【0545】
この実施形態の別の局面において本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、発作に関連する神経細胞損傷を処置または予防するために用いられる。特定の局面において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、発作(stroke)に関連する神経細胞損傷を処置または予防するために用いられる。
【0546】
別の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、心臓発作に関連する神経細胞損傷を処置または予防するために用いられる。特定の局面において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、心臓発作に関連する大脳神経細胞損傷を処置または予防するために用いられる。
【0547】
神経系障害を処置または予防するのに有用な本発明の組成物は、ニューロンの生存または分化の促進における生物学的活性について試験することによって、選択され得る。例えば、制限する目的ではないが、以下の効果のいずれかを誘発する本発明の組成物は、本発明によると有用であり得る:(1)低酸素症または低酸素状態の存在または非存在のいずれかにおいて、培地におけるニューロンの生存時間の増加;(2)培地またはインビボにおけるニューロンの出芽の増大;(3)培地またはインビボにおけるニューロン関連分子(例えば、運動ニューロンに関して、コリンアセチルトランスフェラーゼまたはアセチルコリンステラーゼ)の産生の増大;あるいは(4)インビボにおけるニューロン機能障害の軽減した症状。このような効果は、当該分野で公知の任意の方法によって測定され得る。好ましくは、非制限的な実施形態において、ニューロンの生存の増大は、本明細書中に記載される方法、またはそうでなければ当該分野で公知の方法(例えば、Zhangら、Proc Natl Acad Sci USA 97:3637〜42(2000)、またはArakawaら(J.Neurosci.10:3507〜3515(1990))に記載される方法)を使用して慣用的に測定され得;ニューロンの増加した出芽は、当該分野で公知の方法(例えば、Pestronkら(Exp.Neurol.70:65〜82(1980))またはBrownら(Ann.Rev.Neurosci.4:17〜42(1981))に記載される方法)によって検出され得;ニューロン関連分子の増加した産生は、当該分野で公知の技術を使用し、測定されるべき分子に基づいて、バイオアッセイ、酵素アッセイ、抗体結合、ノザンブロットアッセイなどによって、測定され得;そして運動ニューロンの機能障害は、運動ニューロン障害の物理的発現(例えば、弱さ、運動ニューロンの伝導速度、または機能障害)を評価することによって、測定され得る。
【0548】
特定の実施形態において、本発明に従って処置され得る運動ニューロンの障害には、運動ニューロンおよび神経系の他の成分に影響を与え得る障害(例えば、梗塞、感染、毒素への暴露、外傷、外科的損傷、変性疾患、または悪性疾患)、ならびにニューロンに選択的に影響する障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症)が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこれには、進行性脊髄性筋萎縮症、進行性球延髄麻痺、原発性側索硬化症、小児筋萎縮および若年性筋萎縮、小児期の進行性球麻痺(ファチオ−ロンデ病)、ポリオおよびポリオ後症状、ならびに遺伝性運動感覚性神経障害(シャルコー−マリー−トゥース病)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0549】
さらに、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、ニューロン生存、シナプス形成;伝達;神経分化などにおいて役割を果たし得る。従って、本発明の組成物(FDCDポリヌクレオチド、ポリペプチド、およびアゴニストまたはアンタゴニストを含む)は、学習および/または認識の障害を含むがこれに限定されない、これらの役割に関連する疾患または障害を、診断、および/または処置または予防するのに用いられ得る。本発明の組成物は、神経変性性疾患状態および/または行動障害の処置または予防において有用であり得る。このような神経変性性疾患状態および/または行動障害としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ツレット症候群、精神分裂病、躁病、痴呆、偏執症、強迫性障害、恐慌性障害、学習障害、ALS、精神病、自閉、および行動変化(栄養補給、睡眠パターン、平衡、および知覚の障害を含む)。さらに、本発明の組成物は、また発生中の胚、または伴性障害に関連する発生の障害の処置、予防および/または検出において役割を果たし得る。
【0550】
さらに、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および/またはアゴニストまたはアンタゴニストは、以下を含むが挙げられるがこれらに限定されない脳血管障害に関連する、疾患、傷害、障害または、損傷から、神経細胞を防御するのに有用であり得る:頚動脈疾患(例えば、頸動脈血栓症、頸動脈狭窄またはモヤモヤ病)、脳のアミロイドアンギオパチー、大脳動脈瘤、脳無酸素症、大脳動脈硬化症、大脳動静脈奇形、大脳動脈疾患、脳塞栓症および血栓(例えば、頸動脈血栓症、洞血栓症およびヴァレンベルク症候群)、脳内出血(例えば、硬膜外血腫もしくは硬膜下血腫、またはクモ膜下血腫)、脳虚血(例えば、一過性脳虚血、鎖骨下動脈盗血症候群、または椎骨脳底不全(vertebrobasilar insufficiency))、血管性痴呆(例えば、多発脳梗塞性痴呆)、脳室周囲白質軟化症、ならびに血管性頭痛(例えば、群発性頭痛および片頭痛)。
【0551】
本発明のなおさらなる局面によれば、治療目的で、例えば神経学的細胞増殖および/または分化を刺激するために、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストを利用するためのプロセスが提供される。従って、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストは、神経学的疾患を処置、および/または検出するために用いられ得る。さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、特定の神経系疾患または傷害のマーカーまたは検出因子として用いられ得る。
【0552】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得る神経学的疾患の例としては、以下が挙げられる:脳疾患(例えば、母系フェニルケトン尿症のようなフェニルケトン尿症を含む代謝性脳疾患)、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏症、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体欠乏症、ヴェルニッケ脳障害、脳水腫、テント下(infratentorial)新生物を含む小脳性新生物のような脳新生物、脈絡叢新生物のような脳室新生物、視床下部性新生物、テント上新生物、キャナヴァン病、毛細血管拡張性運動失調のような脊髄小脳性退化を含む小脳性運動失調のような小脳疾患、小脳性共同運動障害、フリードライヒ失調症、マチャド−ジョセフ病、オリーブ橋小脳萎縮、テント下新生物のような小脳性新生物、びまん性軸周囲性脳炎、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症および亜急性硬化性汎脳炎のようなびまん性脳硬化。
【0553】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては、以下が挙げられる:脳血管障害(例えば、頸動脈血栓症、頸動脈狭窄およびモヤモヤ病を含む頸動脈疾患)、脳のアミロイドアンギオパチー、大脳動脈瘤、脳無酸素症、大脳動脈硬化症、大脳動静脈奇形、大脳動脈疾患、脳塞栓症、ならびに頸動脈血栓症、洞血栓症およびヴァレンベルク症候群のような脳塞栓症および血栓症、硬膜上血腫、硬膜下血腫およびクモ膜下出血のような脳出血、脳亀裂骨折、一過性脳虚血のような脳虚血、鎖骨下動脈盗血症候群および椎骨脳底不全(vertebrobasilar insufficiency)、多発脳梗塞性痴呆のような血管性痴呆、脳室周囲白質軟化症、群発性頭痛および片頭痛のような血管性頭痛。
【0554】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては以下が挙げられる:エイズ痴呆複合症のような痴呆症、アルツハイマー病およびクロイツフェルト−ヤーコプ病のような初老期痴呆、アルツハイマー病および進行性核上性麻痺のような老年痴呆、多発脳梗塞性痴呆のような血管性痴呆、びまん性軸周囲性脳炎のような脳炎、流行性脳炎、日本脳炎、セントルイス脳炎、マダニ媒介性脳炎および西ナイル熱のようなウイルス性脳炎、急性播種性脳脊髄炎、ブドウ膜髄膜炎症候群、脳炎後パーキンソン病および亜球性硬化性汎脳炎のような髄膜脳脊髄炎、室周白斑症のような脳軟化症、点頭痙攣を含む全身てんかんのようなてんかん、アプサンスてんかん(absence epilepsy)、MERRF症候群を含むミオクローヌスてんかん、強直・間代てんかん、複雑部分てんかん、前頭葉てんかんおよび側頭葉てんかんのような部分てんかん、外傷後てんかん、持続性部分てんかんのようなてんかん重積持続状態、ハレルフォルデン−シュパッツ症候群。
【0555】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては、以下が挙げられる:ダンディ−ウォーカー症候群および正常圧水頭症のような水頭症、視床下部性新生物のような視床下部性疾患、大脳マラリア、脱力発作を含むナルコレプシー、延髄ポリオ(bulbar poiomyelitis)、大脳偽腫瘍、レット症候群、ライ症候群、視床疾患、大脳トキソプラスマ症、頭蓋内結核腫およびツェルヴェーガー症候群、エイズ痴呆複合症のような中枢神経系感染、脳膿瘍、硬膜下蓄膿症、ウマの脳脊髄炎のような脳脊髄炎、ベネズエラウマ脳脊髄炎、壊死性出血性脳脊髄炎、ビスナ、ならびに大脳マラリア。
【0556】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては、以下が挙げられる:クモ膜炎のような髄膜炎、リンパ球性脈絡髄膜炎を含むウイルス性髄膜炎のような無菌性髄膜炎、ヘモフィルス髄膜炎を含む細菌性髄膜炎、リステリア髄膜炎、ウォーターハウス−フリーデリックセン症候群のような髄膜炎菌性脳脊髄膜炎、肺炎球菌髄膜炎および髄膜結核症、クリプトコックス髄膜炎のような真菌性髄膜炎、硬膜下滲出、ブドウ膜髄膜脳炎症候群のような髄膜脳炎、横行脊髄炎(transverse myelitis)のような脊髄炎、脊髄ろうのような神経梅毒、延髄ポリオおよびポリオ後症候群を含むポリオ、プリオン病(例えば、クロイツフェルト−ヤーコプ病、ウシの海綿状脳症、ゲルストコン−シュトロイスラー症候群、クールー、スクラピー)、ならびに大脳トキソプラスマ症。
【0557】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては、以下が挙げられる:テント下新生物のような小脳性新生物を含む脳新生物のような中枢神経系新生物、脈絡叢新生物、視床下部性新生物およびテント上新生物のような脳室新生物、髄膜新生物、硬膜外新生物を含む脊髄新生物、キャナヴァン病のような脱髄疾患、副腎脳白質ジストロフィーを含むびまん性大脳硬化症(diffuse cerebral sceloris)、びまん性軸周囲性脳炎、球様細胞白質萎縮症、異染性白質萎縮症のようびまん性大脳硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、壊死性出血性脳脊髄炎、進行性多病巣性白質脳障害、多発性硬化症、橋中央ミエリン溶解、横行脊髄炎、視神経脊髄炎、スクラピー、脊柱前弯症、慢性疲労症候群、ビスナ、高圧神経質症候群(High Pressure Nervous Syndrome)、髄膜症、先天性筋無緊張症のような脊髄疾患、筋萎縮性側索硬化症、ヴェルドニッヒ−ホフマン病のような棘筋萎縮、脊髄圧搾、硬膜外新生物のような脊髄新生物、脊髄空洞症、脊髄ろう、スティッフマン症候群、母親由来15 q‐13微少欠損のような精神遅滞、ネコ鳴き症候群、ド・ランゲ症候群、ダウン症候群、ガングリオシドーシスG(M1)のようなガングリオシドーシス、ザントホフ病、テイ−サックス病、ハートナップ病、ホモシスチン尿症、ローレンス−ムーン−ビードル症候群、レッシュ−ナイハン症候群、カエデシロップ病、フコース蓄積症のようなムコリピドーシス、ニューロンセロイド脂褐素沈着症、眼脳腎症候群、母系フェニルケトン尿のようなフェニルケトン尿症、プラーダー−ヴィリ症候群、レット症候群、ルービンスタイン−テービ症候群、結節硬化症、WAGR症候群、全前脳症のような神経系異常、水無能症(hydrangencephaly)を含む無能症のような神経管不全、アルノルト−キアーリ奇形、脳ヘルニア、髄膜瘤、髄膜脊髄瘤、嚢胞性二分脊椎および潜在性二分脊椎のような脊髄癒合不全。
【0558】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては、以下が挙げられる:シャルコー−マリー疾患を含む遺伝性の運動および感覚ニューロン障害、遺伝性視覚萎縮症、レフスム病、遺伝性痙性対麻痺、ヴェルドニッヒ−ホフマン病、先天性痛覚脱失症および家族性自律神経障害のような遺伝性感覚および自律性ニューロパシー、神経学的症状発現(例えば、ゲルストマン症候群を含む失認)、逆向性健忘症のような健忘症、失行症、神経因性膀胱、脱力発作、難聴、部分聴覚欠失、大声(ludness)レクルートメントおよび耳鳴を含む聴覚障害のような情報伝達障害、失書症、名称失語症、ブロカ失語症およびヴェルニッケ失語症を含む失語症のような言語障害、急性失読症のような失読症、言語発達障害、名称失語症、ブロカ失語症およびヴェルニッケ失語症を含む失語症のような発語障害、蓄積障害、構語障害、反響言語、無言症およびどもりを含む発語障害のような情報伝達障害、失声症および嗄声のような発声障害、除脳硬直状態、せん妄、線維束性攣縮、幻覚、髄膜症、母親由来15 q‐13微少欠損、運動失調、アテトーシス、舞踏病、失調症、運動低下症、筋肉緊張低下、ミオクローヌス、チック、斜頸および振せんのような運動障害、スティッフマン症候群のような筋肉硬直のような筋肉緊張亢進、筋肉痙性、耳帯状疱疹を含む顔面神経麻痺のような神経麻痺、胃不全麻痺、片麻痺、複視のような眼筋麻痺、デュエーン症候群、ホルナー症候群、キーンズ症候群のような慢性進行性外眼筋麻痺症、球麻痺、熱帯性痙攣不全対麻痺、ブラウン−セカール症候群、四肢麻痺、呼吸麻痺および声帯麻痺のような対麻痺、不全麻痺、幻肢、無味覚症および味覚不全のような味覚障害、弱視、失明、色覚異常、複視、半盲、視野暗点および準正常視覚(subnormal vision)のような視覚障害、クライネ−レヴィン症候群、不眠症および夢遊症を含む過眠症のような睡眠障害、開口障害のような痙縮、昏睡、持続性植物状態および失神およびめまいのような意識消失、先天性筋無緊張症のような神経筋疾患、筋萎縮性側索硬化症、ランバート−イートン筋無力症症候群、運動神経疾患、棘筋萎縮、シャルコー−マリー疾患およびヴェルドニッヒ−ホフマン病のような筋萎縮、後ポリオ症候群、筋ジストロフィー、重症筋無力症、萎縮性筋緊張症、先天性筋緊張症、ネマリンミオパシー、家族性期性四肢麻痺、多発性パラミロクローヌス(Multiplex Paramyloclonus)、熱帯性痙攣不全対麻痺およびスティッフマン症候群、先端肢端疼痛症のような末梢神経系疾患、腎アミロイドーシス、アーディー症候群、Barre−Lieou症候群、家族性自律神経障害、ホルナー症候群、反射性交感神経性ジストロフィーおよびシャイ−ドレーガー症候群のような自律神経系疾患、神経線維腫症2を含む聴神経腫のような内耳神経疾患のような脳神経疾患、顔面神経痛のような顔面神経疾患、メルカーソン−ローゼンタール症候群、弱視を含む眼球運動性障害、眼振、眼球運動麻痺、デュエーン症候群のような眼筋麻痺、ホルナー症候群、キーンズ症候群を含む慢性進行性外眼筋麻痺症、内斜視および外斜視のような斜視、動眼神経麻痺、遺伝性眼萎縮症を含む眼萎縮症のような眼神経疾患、視神経円板結晶腔、視神経脊髄炎のような視神経炎、乳頭水腫、三叉神経痛、声帯麻痺、視神経脊髄炎および脊柱前弯症のような脱髄疾患、糖尿病性足のような糖尿病性ニューロパシー。
【0559】
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストおよび/またはアンタゴニストを用いて処置または検出され得るさらなる神経学的疾患としては、以下が挙げられる:手根管症候群のような神経圧搾症候群、足根管症候群、頸肋症候群のような胸郭出口症候群、尺骨神経圧搾症候群、カウザルギー、頸腕神経痛、顔面神経痛および三叉神経痛のような神経痛、実験的アレルギー性神経炎、眼神経炎、多発性神経炎、多発性神経根神経炎および神経根炎(例えば、多発性神経根炎、遺伝性運動および感覚ニューロパシー(例えば、シャルコー−マリエ疾患、遺伝性眼萎縮症、レフサム病、遺伝性痙性対麻痺およびヴェルドニッヒ‐ホフマン病、遺伝性感覚および自律神経ニューロパシー(先天性痛覚脱失および.家族性自律神経障害を含む)、POEMS症候群、坐骨神経痛、味覚性発汗症候群およびテタニー))のような神経炎。
【0560】
(感染性疾患)
本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストは、感染因子を処置または検出するために用いられ得る。例えば、免疫応答を増加させることによって、特にB細胞および/またはT細胞の増殖および分化を増加させることによって、感染性疾患が処置され得る。免疫応答は、既存の免疫応答を増加させるか、または新たな免疫応答を開始させるかのいずれかにより上昇され得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびにアゴニストまたはアンタゴニストはまた、必ずしも免疫応答を誘発することなく、感染因子を直接阻害し得る。
【0561】
ウイルスは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびに/あるいはアゴニストまたはアンタゴニストにより処置または検出され得る疾患または症状を引き起こし得る感染因子の一例である。ウイルスの例としては、以下のDNAおよびRNAのウイルスおよびウイルス科が挙げられるがこれらに限定されない:アルボウイルス、アデノウイルス科、アレナウイルス科、アルテリウイルス、ビルナウイルス科、ブンヤウイルス科、カルシウイルス科、サルコウイルス科(Circoviridae)、コロナウイルス科、デング熱、EBV、HIV、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科(肝炎)、ヘルペスウイルス科(例えば、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、帯状疱疹)、モノネガウイルス(Monon例えば、avirus)(例えば、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス、ラブドウイルス科)、オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザA、インフルエンザB、およびパラインフルエンザ)、パピローマウイルス、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科(例えば、痘瘡またはワクシニア)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV−I、HTLV−II、レンチウイルス)、およびトガウイルス科(例えば、ルビウイルス属)。これらの科内に入るウイルスは、以下を含むがこれらに限定されない種々の疾患または症状を引き起こし得る:関節炎、細気管支炎(bronchiollitis)、RSウイルス、脳炎、眼感染症(例えば、結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、肝炎(A型、B型、C型、E型、慢性活動性、デルタ)、日本脳炎、フニン、チングニア、リフトバレー熱、黄熱病、髄膜炎、日和見感染症(例えば、AIDS)、肺炎、バーキットリンパ腫、水痘、出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ、狂犬病、感冒、ポリオ、白血病、風疹、性感染症、皮膚病(例えば、カポージ、いぼ)、およびウイルス血症。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストを用いて、任意のこれらの症状または疾患が処置または検出され得る。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、以下の処置に使用される:髄膜炎、デング熱、EBV、および/または肝炎(例えば、B型肝炎)。さらなる特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、1以上の他の市販の肝炎ワクチンに非応答性の患者を処置するために使用される。さらに特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストは、AIDSを処置するために使用される。
【0562】
同様に、疾患または症状を引き起こし得、かつ本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド、ならびに/またはアゴニストまたはアンタゴニストによって処置または検出され得る細菌性因子および真菌性因子は、以下のグラム陰性およびグラム陽性の細菌、細菌科ならびに真菌を含むがこれらに限定されない:Actinomyces(例えば、Norcardia)、Acinetobacter、Cryptococcus neoformans、Aspergillus、Bacillaceae(例えば、Bacillus anthrasis)、Bacteroides(例えば、Bacteroides fragilis)、Blastomycosis、Bordetella、Borrelia(例えば、Borrelia burgdorferi)、Brucella、Candidia、Campylobacter、Chlamydia、Clostridium(例えば、Clostridium botulinum、Clostridium dificile、Clostridium perfringens、Clostridium tetani)、Coccidioides、Corynebacterium(例えば、Corynebacterium diptheriae)、Cryptococcus、Dermatocycoses、E.coli(例えば、Enterotoxigenic E.coliおよびEnterohemorrhagic E.coli)、Enterobacter(例えば、Enterobacter aerogenes)、Enterobacteriaceae(Klebsiella、Salmonella(例えば、Salmonella typhi、Salmonella enteritidis、Salmonella typhi)、Serratia、Yersinia、Shigella)、Erysipelothrix、Haemophilus(例えば、Haemophilus influenza B型)、Helicobacter、Legionella(例えば、Lepionella pneumophila)、Leptospira、Listeria(例えば、Listeria monocytogenes)、Mycoplasma、Mycobacterium(例えば、Mycobacterium lepraeおよびMycobacterium tuberculosis)Vibrio(例えば、Vibrio cholerae)、Neisseriaceae(例えば、Neisseria gonorrhea、Neisseria meningitidis)、Pasteurellacea、Proteus、Pseudomonas(例えば、Pseudomonas aeruginosa)、Rickettsiaceae、Spirochetes(例えば、Treponema spp.、Leptospira spp.、Borrelia spp.)、Shigella spp.、Staphylococcus(例えば、Staphylococcus aureus)、Meningiococcus、PneumococcusおよびStreptococcus(例えば、Streptococcus pneumoniaeおよびグループA、BおよびC Streptococci)、およびUreaplasmas。これらの細菌および真菌の科は、以下を含むがこれらに限定されない疾患または症状を引き起こし得る:菌血症、心内膜炎、眼感染症(例えば、結膜炎)、結核、ブドウ膜炎、歯肉炎、日和見感染症(例えば、AIDSに関連した感染症)、爪周囲炎、プロテーゼ関連感染症(prosthesis−related infection)、ライター病、気道感染症(例えば、百日咳または蓄膿症)、敗血症、ライム病、ネコ引っ掻き病、赤痢、パラチフス熱、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、髄膜炎(例えば、髄膜炎A型およびB型)、クラミジア、梅毒、ジフテリア、らい病、パラ結核、結核、狼瘡、ボツリヌス中毒、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染病、皮膚病(例えば、蜂巣炎、皮膚真菌症(dermatocycoses))、毒血症、尿路感染症、創傷感染症。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、アゴニストもしくはアンタゴニストを用いて、任意のこれらの症状もしくは疾患を処置または検出し得る。特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストは、以下を処置するために使用される:破傷風、ジフテリア、ボツリスム、および/またはB型髄膜炎。
【0563】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、および/またはアゴニストもしくはアンタゴニストにより処置され得る、寄生生物性因子が引き起こす疾患または症状としては以下の科またはクラスが挙げられるがこれらに限定されない:アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症(Dientamoebiasis)、交疫、外部寄生生物性(Ectoparasitic)、ジアルジア鞭毛虫症、蠕虫症、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラスマ症、トリパノソーマ症、およびトリコモナス(Trichomonas)症、ならびに胞子虫症(Sporozoan)(例えば、Plasmodium virax、Plasmodium falciparium、Plasmodium malariaeおよびPlasmodium ovale)。これらの寄生生物は、以下を含むがこれらに限定されない種々の疾患または症状を引き起こし得る:疥癬、ツツガムシ病、眼感染症、腸疾患(例えば、赤痢、ジアルジア鞭毛虫症)、肝臓疾患、肺疾患、日和見感染症(例えば、AIDS関連)、マラリア、妊娠合併症、およびトキソプラスマ症。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストを用いて、任意のこれらの症状または疾患を処置し得る。
【0564】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストは、患者に有効量のポリペプチドを投与するか、または患者から細胞を取り出して、本発明のポリヌクレオチドをこの細胞に供給し、そして操作した細胞を患者に戻す(エキソビボ治療)かのいずれかによるものであり得る。さらに、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドはワクチン中の抗原として用いられて、感染性疾患に対する免疫応答を惹起し得る。
【0565】
(再生)
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストを用いて、細胞を分化させ、増殖させ、そして誘引して、組織の再生を導き得る(Science 276:59−87(1997)を参照のこと)。組織の再生を用いて、先天性欠損、外傷(創傷、熱傷、切開、または潰瘍)、加齢、疾患(例えば、骨粗鬆症、変形性関節症(osteocarthritis)、歯周病、肝不全)、美容形成手術を含む手術、線維症、再灌流傷害、もしくは全身性サイトカイン損傷により損傷を受けた組織を修復、置換、または保護し得る。
【0566】
本発明を用いて再生し得る組織としては、以下が挙げられる:器官(例えば、膵臓、肝臓、腸、腎臓、皮膚、内皮)、筋肉(平滑筋、骨格筋、または心筋)、血管系(血管およびリンパ管を含む)、神経、造血、および骨格(骨、軟骨、腱、および靭帯)の組織。好ましくは、再生は、瘢痕なく、または瘢痕が低減されて生じる。再生はまた、新脈管形成を含み得る。
【0567】
さらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストは、治癒するのが困難な組織の再生を増加させ得る。例えば、腱/靭帯の再生を増大させることによって、損傷後の回復時間が早まる。本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストはまた、損傷を回避する試みにおいて予防的に使用され得る。処置され得る特定の疾患は、腱炎、手根管症候群、および他の腱欠損または靭帯欠損を含む。非治癒創傷の組織再生のさらなる例としては、褥瘡性潰瘍(pressure ulcer)、脈管不全、外科的創傷、および外傷性創傷に関連する潰瘍が挙げられる。
【0568】
同様に、神経および脳組織はまた、神経細胞を増殖および分化させるために本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストを使用することによって再生され得る。本方法を用いて処置され得る疾患としては、中枢神経系疾患および末梢神経系疾患、神経障害、または機械的および外傷性障害(例えば、脊髄障害、頭部外傷、脳血管疾患、および発作(stoke))が挙げられる。詳細には、末梢神経傷害と関連する疾患、末梢神経障害(例えば、化学療法または他の医学的療法から生じる)、局在神経障害、および中枢神経系疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、およびシャイ−ドレーガー症候群)はすべて、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストを用いて処置され得る。
【0569】
(走化性)
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストは、走化性活性を有し得る。走化性分子は、細胞(例えば、単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、肥満細胞、好酸球、上皮細胞および/または内皮細胞)を、身体内の特定の部位(例えば、炎症、感染、または過剰増殖の部位)に誘引または動員する。次いで、動員された細胞は、特定の外傷または異常性を撃退および/または治癒し得る。
【0570】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストは、特定の細胞の走化性活性を増大し得る。次いで、これらの走化性分子を使用して、身体内の特定の位置に標的化した細胞の数を増加させることによって、炎症、感染、過増殖障害、または任意の免疫系障害を処置し得る。例えば、走化性分子を使用して、傷害を受けた位置に免疫細胞を誘引することによって、組織に対する創傷および他の外傷を処置し得る。本発明の走化性分子はまた、線維芽細胞を誘引し得、これは創傷を処置するために使用され得る。
【0571】
本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストが走化性活性を阻害し得ることもまた意図される。これらの分子はまた、障害を処置するために使用され得る。従って、本発明のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストは、走化性のインヒビターとして使用され得る。
【0572】
(結合活性)
本発明のポリペプチドは、このポリペプチドに結合する分子、またはこのポリペプチドが結合する分子についてスクリーニングするために使用され得る。このポリペプチドとこの分子との結合は、結合したポリペプチドまたは分子の活性を活性化(アゴニスト)、増大、阻害(アンタゴニスト)、または減少させ得る。そのような分子の例としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば、レセプター)、または低分子が挙げられる。
【0573】
好ましくは、この分子は、このポリペプチドの天然のリガンド(例えば、リガンドのフラグメント)、または天然の基質、リガンド、構造的模倣物、もしくは機能的模倣物に密接に関連する(Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):第5章(1991)を参照のこと)。同様に、この分子は、このポリペプチドが結合する天然のレセプター、または少なくとも、このポリペプチドによって結合され得るレセプターのフラグメント(例えば、活性部位)に密接に関連し得る。いずれの場合においても、この分子は、公知の技術を用いて合理的に設計され得る。
【0574】
好ましくは、これらの分子についてのスクリーニングは、このポリペプチドを発現する適切な細胞を産生する工程を包含する。好ましい細胞としては、哺乳動物、酵母、Drosophila、またはE.coli由来の細胞が挙げられる。次いで、このポリペプチドを発現する細胞(または、発現されたポリペプチドを含む細胞膜)を、好ましくは、このポリペプチドまたはこの分子のいずれかの結合、活性の刺激、または活性の阻害を観察するための分子を潜在的に含む試験化合物と接触させる。
【0575】
このアッセイは、このポリペプチドへの候補化合物の結合を単純に試験し得、ここで結合は、標識によって、または標識された競合物との競合に関するアッセイにおいて検出される。さらに、アッセイは、候補化合物がこのポリペプチドへの結合によって生成されるシグナルを生じるか否かを試験し得る。
【0576】
あるいは、このアッセイは、無細胞調製物、固体支持体に接着されたポリペプチド/分子、化学ライブラリー、または天然産物の混合物を用いて実施され得る。アッセイはまた、候補化合物を、ポリペプチドを含む溶液と混合する工程、ポリペプチド/分子の活性または結合を測定する工程、およびポリペプチド/分子の活性または結合を、標準と比較する工程を単純に包含し得る。
【0577】
好ましくは、ELISAアッセイは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、サンプル(例えば、生物学的サンプル)におけるポリペプチドのレベルまたは活性を測定し得る。抗体は、ポリペプチドへの直接的もしくは間接的のいずれかの結合、または基質についてのポリペプチドとの競合によって、ポリペプチドのレベルまたは活性を測定し得る。
【0578】
さらに、本発明のポリペプチドが結合するレセプターは、当業者に公知の多くの方法(例えば、リガンドパニングおよびFACSソーティング(Coliganら、Current Protocols in Immun.,1(2)、第5章(1991)))によって同定され得る。例えば、ポリアデニル化RNAがこのポリペプチドに応答する細胞から調製される発現クローニングが用いられ、例えば、NIH3T3細胞(これは、FGFファミリータンパク質に対する複数のレセプターを含むことが公知である)、およびSC−3細胞、およびこのRNAから作製されたcDNAライブラリーは、プールに分けられ、そしてこのポリペプチドに応答性でないCOS細胞または他の細胞をトランスフェクトするために使用される。ガラススライド上で増殖しているトランスフェクトされた細胞は、それらを標識化した後に、本発明のポリペプチドに曝露される。このポリペプチドは、種々の手段(部位特異的プロテインキナーゼに対する認識部位のヨウ素化または封入を含む)によって標識化され得る。
【0579】
固定化およびインキュベーション後、スライドは、オートラジオグラフィー分析に供される。陽性プールを同定し、そしてサブプールを、反復性のサププール化および再スクリーニングプロセスを使用して調製および再びトランスフェクトして、最終的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生じる。
【0580】
レセプター同定のための代替のアプローチとして、標識ポリペプチドは、細胞膜と光親和性に連結し得るか、またはレセプター分子を発現する調製物を抽出し得る。架橋された材料は、PAGE分析によって分離され、そしてX線フィルムに曝露される。ポリペプチドのレセプターを含む標識複合体が切り出され得、ペプチドフラグメントへと分離され得、そしてタンパク質微量配列決定に供され得る。微量配列決定から得られるアミノ酸配列を使用して、1組の縮重オリゴヌクレオチドプローブを設計してcDNAライブラリーをスクリーニングし、推定レセプターをコードする遺伝子を同定する。
【0581】
さらに、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリングの技術(集合的に「DNAシャッフリング」という)を利用して、本発明のポリペプチドの活性を調節し得、それによって本発明のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを効果的に生成する。一般に、米国特許第5,605,793号、同第5,811,238号、同第5,830,721号、同第5,834,252号、および同第5,837,458号、ならびにPatten,P.A.ら、Curr.Opinion Biotechnol.8:724〜33(1997);Harayama,S.Trends Biotechnol.16(2):76〜82(1998);Hansson,L.O.ら、J.Mol.Biol.287:265〜76(1999);ならびにLorenzo,M.M.およびBlasco,R.Biotechniques 24(2):308〜13(1998)(これらの特許および刊行物の各々は、本明細書において参考として援用される)を参照のこと。1つの実施形態において、ポリヌクレオチドおよび対応するポリペプチドの変更は、DNAシャッフリングによって達成され得る。DNAシャッフリングは、相同組換えまたは部位特異的な組換えによる、2つ以上のDNAセグメントの、本発明の分子の所望の分子への構築を含む。別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドおよび対応するポリペプチドは、組換えの前に、誤りがちな(error−prone)PCR、ランダムヌクレオチド挿入または他の方法によるランダム変異誘発に供することによって、変更され得る。別の実施形態において、本発明のポリペプチドの1つ以上の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、フラグメントなどは、1つ以上の異種分子の1つ以上の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、フラグメントなどと組換えられ得る。好ましい実施形態において、この異種分子は、ファミリーのメンバーである。さらに好ましい実施形態において、この異種分子は、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF−I)、トランスホーミング増殖因子(TGF)−α、表皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、TGF−β、骨形成タンパク質(BMP)−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、アクチビンAおよびアクチビンB、デカペンタプレジック(decapentapl例えば、ic)(dpp)、60A、OP−2、ドーサリン(dorsalin)、増殖分化因子(GDF)、結節(nodal)、MIS、インヒビン−α、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β5、および神経膠由来神経栄養因子(GDNF)のような増殖因子である。
【0582】
他の好ましいフラグメントは、本発明のポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントである。生物学的に活性なフラグメントは、本発明のポリぺプチドの活性に類似の活性を示すが、必ずしも同一ではないフラグメントである。このフラグメントの生物学的活性は、改善された所望の活性、または減少した所望されない活性を含み得る。
【0583】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドの作用を調節する化合物を同定するために化合物をスクリーニングする方法を提供する。このようなアッセイの例は、哺乳動物線維芽細胞、本発明のポリペプチド、スクリーニングされるべき化合物および[H]チミジンを、線維芽細胞が通常増殖する細胞培養条件下で合わせる工程を包含する。コントロールアッセイは、スクリーニングされるべき化合物の非存在下で実施され得、そしてこの化合物の存在下での線維芽細胞の増殖の量と比較して、各々の場合における[H]チミジンの取り込みの決定によって、この化合物が増殖を刺激するか否かを決定し得る。線維芽細胞の増殖の量は、[H]チミジンの取り込みを測定する液体シンチレーションクロマトグラフィーによって測定される。アゴニスト化合物およびアンタゴニスト化合物の両方が、この手順により同定され得る。
【0584】
別の方法において、本発明のポリペプチドに対するレセプターを発現する哺乳動物細胞または膜調製物は、この化合物の存在下において標識化した本発明のポリペプチドとともにインキュベートされる。次いで、この化合物がこの相互作用を増強またはブロックする能力が、測定され得る。あるいは、スクリーニングされるべき化合物とレセプターとの相互作用に続く既知のセカンドメッセンジャー系の応答が測定され、そしてこの化合物がこのレセプターに結合し、そしてセカンドメッセンジャー応答を誘発する能力を測定して、この化合物が潜在的なアゴニストまたはアンタゴニストであるか否かを決定する。このようなセカンドメッセンジャー系には、cAMPグアニル酸シクラーゼ、イオンチャネルまたはホスホイノシチド加水分解が挙げられるが、これらに限定されない。
【0585】
これらの上記のアッセイの全ては、診断マーカーまたは予後マーカーとして使用され得る。これらのアッセイを用いて発見される分子は、ポリペプチド/分子を活性化または阻害することによって、疾患を処置するか、あるいは患者に特定の結果(例えば、血管増殖)をもたらすために使用され得る。さらに、アッセイは、適切に操作された細胞または組織からの本発明のポリペプチドの産生を阻害または増強し得る因子を発見し得る。
【0586】
従って、本発明は、以下の工程を含む本発明のポリペプチドに結合する化合物を同定する方法を包含する:(a)候補結合化合物を本発明のポリペプチドとともにインキュベートする工程;および(b)結合が生じたか否かを決定する工程。さらに、本発明は、以下の工程を含むアゴニスト/アンタゴニストを同定する方法を包含する:(a)候補化合物を本発明のポリペプチドとともにインキュベートする工程、(b)生物学的活性をアッセイする工程、および(b)ポリペプチドの生物学的活性が改変されているか否かを決定する工程。
【0587】
(標的化された送達)
別の実施形態において、本発明は、組成物を、本発明のポリペプチドについてのレセプターを発現する標的化細胞、または本発明のポリペプチドの細胞結合形態を発現する細胞に送達する方法を提供する。
【0588】
本明細書中で議論される場合、本発明のポリペプチドまたは抗体は、異種ポリペプチド、異種核酸、毒素またはプロドラッグと、疎水性、親水性、イオン性および/または共有結合性の相互作用を介して会合し得る。1つの実施形態において、本発明は、異種ポリペプチドまたは核酸と会合した本発明のポリペプチド(抗体を含む)を投与することによる、本発明の組成物の細胞への特異的な送達のための方法を提供する。1つの例において、本発明は、治療タンパク質を標的化細胞中へ送達するための方法を提供する。別の例において、本発明は、一本鎖核酸(例えば、アンチセンスまたはリボザイム)あるいは二本鎖核酸(例えば、細胞のゲノムに組み込まれ得るか、またはエピソームにて複製し得、そして転写され得る、DNA)を、標的化細胞に送達するための方法を提供する。
【0589】
別の実施形態において、本発明は、毒素または細胞傷害性プロドラッグと会合した本発明のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチドまたは本発明の抗体)を投与することによる細胞の特異的破壊(例えば、腫瘍細胞の破壊)のための方法を提供する。
【0590】
「毒素」とは、内因性の細胞傷害性エフェクター系、放射性同位体、ホロ毒素(holotoxin)、改変型毒素、毒素の触媒サブユニット、または規定の条件下で細胞死を引き起こす細胞中もしくは細胞表面には通常存在しない任意の分子もしくは酵素を、結合および活性化する化合物を意味する。本発明の方法に従って使用され得る毒素としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:当該分野で公知の放射性同位体、固有のまたは誘導された内因性の細胞傷害性エフェクター系を結合する化合物(例えば、抗体(またはその一部を含む補体固定)、チミジンキナーゼ、エンドヌクレアーゼ、RNAse、α毒素、リシン、アブリン、Pseudomonas内毒素A、ジフテリア毒素、サポリン、モモルジン(momordin)、ゲロニン(gelonin)、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、α−サルシン(sarcin)およびコレラ毒素。「細胞傷害性プロドラッグ」とは、通常細胞内に存在する酵素によって、細胞傷害性化合物へと変換される非毒性の化合物を意味する。本発明の方法に従って使用され得る細胞傷害性プロドラッグとしては、安息香酸マスタードアルキル化剤のグルタミル誘導体、エトポシドまたはマイトマイシンCのリン酸誘導体、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、およびドキソルビシンのフェノキシアセトアミド誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0591】
(薬物スクリーニング)
本発明のポリペプチドの活性を改変する分子についてスクリーニングするための、本発明のポリペプチド、またはこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用が、さらに意図される。このような方法は、本発明のポリペプチドを、アンタゴニスト活性またはアゴニスト活性を有することが疑われる選択された化合物と接触させる工程、および結合に続いてこれらのポリペプチドの活性をアッセイする工程を包含する。
【0592】
本発明は、種々の薬物スクリーニング技術のいずれかにおいて、本発明のポリペプチド、またはそれらの結合フラグメントを使用することによって治療用化合物をスクリーニングするために特に有用である。このような試験に用いられるポリペプチドまたはフラグメントは、固体支持体に固定化され得、細胞表面上に発現され得、溶液中で遊離であり得、または細胞内に局在化され得る。薬物スクリーニングの1つの方法は、ポリペプチドまたはフラグメントを発現する組換え核酸を用いて安定に形質転換される真核生物宿主細胞または原核生物宿主細胞を利用する。薬物は、競合結合アッセイにおいて、このような形質転換細胞に対してスクリーニングされる。例えば、試験されている薬剤と本発明のポリペプチドとの間の複合体の形成(formulaton)を測定し得る。
【0593】
従って、本発明は、本発明のポリペプチドによって媒介される活性に影響を及ぼす薬物または任意の他の薬剤についてのスクリーニング方法を提供する。これらの方法は、当該分野で周知の方法によって、このような薬剤を本発明のポリペプチドもしくはそのフラグメントと接触させる工程、およびこの薬剤とこのポリペプチドもしくはそのフラグメントとの間の複合体の存在についてアッセイする工程を包含する。このような競合結合アッセイにおいて、スクリーニングされる薬剤は、代表的に、標識化される。インキュベーション後に、遊離の薬剤は、結合形態中に存在する薬剤から分離され、そして遊離または複合体化されていない標識の量は、特定の薬剤が本発明のポリペプチドに結合する能力の尺度である。
【0594】
薬物スクリーニングについての別の技術は、本発明のポリペプチドに対する適切な結合親和性を有する化合物に対するハイスループットスクリーニングを提供し、そして欧州特許出願84/03564(1984年9月13日公開)(これは、本明細書中で参考として援用される)に非常に詳細に記載される。簡潔にいうと、大量の異なる小さなペプチド試験化合物は、固体基材(例えば、プラスチックピンまたはいくつかの他の表面)上で合成される。ペプチド試験化合物を、本発明のポリペプチドと反応させ、そして洗浄する。次いで、結合したポリペプチドは、当該分野で周知の方法によって検出される。精製されたポリペプチドは、前述の薬物スクリーニング技術での使用のためにプレート上に直接コーディングされる。さらに、非中和抗体を使用して、このペプチドを捕捉し得、そして固体支持体上にそれを固定し得る。
【0595】
本発明はまた、競合薬物スクリーニングアッセイの使用を意図し、ここで、本発明のポリペプチドを結合し得る中和抗体は、ポリペプチドまたはそのフラグメントに対する結合について試験化合物と特異的に競合する。この様式において、抗体を使用して、本発明のポリペプチドと1つ以上の抗原性エピトープを共有する任意のペプチドの存在を検出する。
【0596】
(アンチセンスおよびリボザイム(アンタゴニスト))
特定の実施形態において、本発明に従うアンタゴニストは、配列番号Xに含まれる配列またはその相補鎖に対応する核酸および/または表1において同定されるcDNAプラスミドZに含まれるヌクレオチド配列である。1つの実施形態において、アンチセンス配列は、生物体により内部で生成され、別の実施形態において、アンチセンス配列は別々に投与される(例えば、O’Connor,J.,Neurochem.56:560(1991)を参照のこと)。Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,Boca Raton,FL(1988)。アンチセンス技術を使用して、アンチセンスDNAもしくはRNAを通してか、または3重らせんの形成を通して遺伝子発現を制御し得る。アンチセンス技術は、例えば、Okano,J.,Neurochem.56:560(1991);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,Boca Raton,FL(1988)に考察される。3重らせん形成は、例えば、Leeら、Nucleic Acids Research 6:3073(1979);Cooneyら、Science、241:456(1988);およびDervanら、Science、251:1300(1991)において考察される。これらの方法は、相補的なDNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結合に基づく。
【0597】
例えば、非リンパ性白血病細胞株HL−60および他の細胞株の増殖を阻害するためのc−mycおよびc−mybアンチセンスRNA構築物の使用は、以前に記載された(Wickstromら(1988);Anfossiら(1989))。これらの実験は、細胞をオリゴリボヌクレオチドとインキュベーションすることによってインビトロで行われた。インビボ用途のための類似の手順は、WO91/15580に記載される。簡単には、所定のアンチセンスRNAについてのオリゴヌクレオチドの対は、以下のように生成される:オープンリーディングフレームの最初の15塩基に相補的な配列を、5末端のEcoRI部位および3末端のHindIII部位に隣接させる。次に、オリゴヌクレオチドの対は、90℃で1分間加熱され、次いで2×連結緩衝液(20mM TRIS HCl pH7.5、10mM MgCl、10mM ジチオスレイトール(DTT)および0.2mM ATP)中でアニーリングされ、次いで、レトロウイルスベクターPMV7のEcoR1/HindIII部位に連結される(WO91/15580)。
【0598】
例えば、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’コード部分を使用して、約10〜40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計し得る。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に関与する遺伝子の領域に相補的であるように設計され、それにより転写およびレセプターの産生を阻害する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、インビボでmRNAにハイブリダイズし、そしてmRNA分子のレセプターポリペプチドへの翻訳をブロックする。
【0599】
1つの実施形態において、本発明のアンチセンス核酸は、外来の配列からの転写により細胞内で産生される。例えば、ベクターまたはその一部が転写され、本発明のアンチセンス核酸(RNA)を産生する。このようなベクターは、アンチセンス核酸をコードする配列を含む。このようなベクターは、それが転写されて所望のアンチセンスRNAを産生し得る限り、エピソームを保持し得るか、または染色体に組込まれ得る。このようなベクターは、当該分野において標準的な組換えDNA技術方法により構築され得る。ベクターは、脊椎動物細胞において複製および発現のために使用される、当該分野で公知のプラスミド、ウイルスなどであり得る。本発明のポリペプチドをコードする配列またはそのフラグメントの発現は、脊椎動物、好ましくはヒト細胞において作用する、当該分野で公知の任意のプロモーターにより得る。そのようなプロモーターは、誘導性または構成性であり得る。このようなプロモーターは、SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、Nature、29:304−310(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら、Cell、22:787−797(1980))、ヘルペスチミジンプロモーター(Wagnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441−1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、Nature、296:39−42(1982))などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0600】
本発明のアンチセンス核酸は、少なくとも本発明の遺伝子のRNA転写物の一部に相補的な配列を含む。しかし、完全に相補的であることは好ましいが、必要ではない。本明細書中で言及される「少なくともRNAの一部に相補的な」配列は、RNAとハイブリダイズし得るに十分な相補性を有し、安定な二重鎖を形成する配列を意味し;従って、二本鎖アンチセンス核酸の場合において、二重鎖DNAの一本鎖が試験され得るか、または三重鎖形成がアッセイされ得る。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度およびアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、RNAとのより多くの塩基ミスマッチを含み得、これは、安定な二重鎖(または三重鎖の場合もあり得る)を含み得、そしてなお形成し得る。当業者は、ハイブリダイズ複合体の融点を決定するために標準的な手順を使用することによりミスマッチの許容の程度を確認し得る。
【0601】
メッセージの5’末端に相補的であるオリゴヌクレオチド(例えば、AUG開始コドンまででかつAUG開始コドンを含む5’非翻訳配列)は、翻訳の阻害の際に最も効率的に働くべきである。しかし、mRNAの3’非翻訳配列に相補的な配列は、同様にmRNAの翻訳を阻害する際に有効であることが示された。一般的に、Wagner,R.、Nature 372:333−335(1994)を参照のこと。従って、本発明に記載されるポリヌクレオチド配列の5’−または3’−の非翻訳非コード領域のいずれかに相補的なオリゴヌクレオチドは、内因性mRNAの翻訳を阻害するアンチセンスアプローチに使用され得る。mRNAの5’非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補物を含むべきである。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、翻訳のあまり効率的でないインヒビターであるが、本発明に従って使用され得る。本発明のmRNAの5’領域、3’領域またはコード領域にハイブリダイズするように設計されるか否かにかかわらず、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチド長であるべきであり、そして好ましくは6〜約50ヌクレオチド長にわたるオリゴヌクレオチドである。特定の局面において、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチドまたは少なくとも50ヌクレオチドである。
【0602】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、もしくはRNA、またはキメラ混合物、あるいはそれらの誘導体もしくは改変バージョン、一本鎖、または二本鎖であり得る。このオリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で改変されて、例えば、分子の安定性、ハイブリダーゼーションなどを改善し得る。このオリゴヌクレオチドは、ペプチドのような他の付加基(例えば、インビボにおいて宿主細胞レセプターを標的化するために)、または細胞膜を通した輸送を促進する因子(例えば、Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553−6556(1989);Lemaitreら、Proc.Natl.Acad.Sci.84:648−652(1987);PCT公開番号WO88/09810(1988年12月15日公開)を参照のこと)、または血液脳関門(例えば、PCT公開番号WO89/10134(1988年4月25日公開)を参照のこと)、ハイブリダイゼーション誘引切断剤(hybridization−triggered cleavage agent)(例えば、Krolら、BioTechniques、6:958−976(1988)を参照のこと)、またはインターカレート剤(例えば、Zon,Pharm.Res.5:539−549(1988)を参照のこと)を含み得る。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダーゼーション誘引架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘引切断剤など)に結合体化され得る。
【0603】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの改変された塩基部分を含み得、この塩基部分は、以下を含むがそれらに限定されない群から選択される:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン。
【0604】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、以下を含むがそれらに限定されない群から選択される少なくとも1つの改変された糖部分を含み得る:アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソース。
【0605】
さらなる別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下を含むがそれらに限定されない群から選択される少なくとも1つの改変されたリン酸骨格を含む:ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート(phosphoramidate)、ホスホロジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタール(formacetal)またはそれらのアナログ。
【0606】
さらに別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、a−アノマーオリゴヌクレオチドである。a−アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的なRNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、通常のb−ユニットとは反対に、その鎖は互いに平行にする(Gautierら、Nucl.Acids Res.、15:6625−6641(1987))。このオリゴヌクレオチドは、2−0−メチルリボヌクレオチドであるか(Inoueら、Nucl.Acids Res.、15:6131−6148(1987))、またはキメラRNA−DNAアナログである(Inoueら、FEBS Lett.215:327−330(1987))。
【0607】
本発明のポリヌクレオチドは当該分野で公知の標準的な方法(例えば、自動DNA合成機により(このような装置はBiosearch,Applied Biosystemsなどから市販されている)の使用により)合成され得る。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinらの方法(Nucl.Acids Res.、16:3209(1988))により合成され得、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、コントロールドポアガラス(controlled pore glass)ポリマー支持体(Sarinら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:7448−7451(1988))などの使用により調製され得る。
【0608】
一方、コード領域配列に相補的なアンチセンスヌクレオチドが、使用され得、転写された非翻訳領域に相補的なアンチセンスヌクレオチドが最も好ましい。
【0609】
本発明による潜在的なアンタゴニストはまた、触媒RNA、すなわちリボザイムを含む(例えば、PCT国際公開WO90/11364、1990年10月4日公開;Sarverら、Science、247:1222−1225(1990)を参照のこと)。一方、部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムを使用して、mRNAを破壊し得るが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的な塩基対を形成する隣接領域により決定される位置で、mRNAを切断する。たった1つの必要条件は、標的mRNAが以下の2つの塩基配列を有することである:5’−UG−3’。ハンマーヘッド型リボザイムの構築および生成は当該分野で周知であり、そしてHaseloffおよびGerlach、Nature、334:585−591(1988)により十分に記載される。配列番号Xのヌクレオチド配列内に多くの潜在的なハンマーヘッド型リボザイム切断部位が存在する。好ましくは、このリボザイムは、切断認識部位がmRNAの5’末端付近に位置するように;すなわち、効率を増大し、そして非機能的mRNA転写物の細胞内蓄積を最小化するように、操作される。
【0610】
アンチセンスアプローチの場合、本発明のリボザイムは、改変されたオリゴヌクレオチド(例えば、安定性、標的化などについて改良された)から構成され得、そしてインビボにおいて本発明のポリヌクレオチドを発現する細胞に送達されるべきである。リボザイムをコードするDNA構築物は、DNAをコードするアンチセンスの導入のための上記と同じ様式において細胞中に導入され得る。送達の好ましい方法は、強力な構成性プロモーター(例えば、pol IIIまたはpol IIプロモーターのような)の制御下で、リボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することを含み、その結果トランスフェクトした細胞が内因性メッセージを破壊し、そして翻訳を阻害するに十分な量のリボザイムを生成する。リボザイムはアンチセンス分子と異なり触媒性であるので、より低い細胞内濃度が効率のために必要とされる。
【0611】
アンタゴニスト/アゴニスト化合物を利用して、腫瘍性の細胞および組織に対する本発明のポリペプチドの細胞増殖(growth)および増殖(proliferation)効果を阻害し得る。すなわち、腫瘍の新脈管形成を刺激し、それにより異常な細胞成長および増殖を(例えば、腫瘍形成または増殖において)遅延または防止する。
【0612】
アンタゴニスト/アゴニストをまた利用して、血管過多の疾患を阻害し得、そして水晶体嚢外白内障(extracapsular cataract)手術後の上皮レンズ細胞の増殖を防止する。本発明のポリペプチドのマイトジェン活性の防止はまた、例えば、バルーン血管形成術後の再狭窄のような場合に要求され得る。
【0613】
アンタゴニスト/アゴニストをまた利用して、創傷治癒の間の瘢痕組織の増殖防止し得る。
【0614】
アンタゴニスト/アゴニストをまた利用して、本明細書中に記載される疾患を処置し得る。
【0615】
従って、本発明は、疾患または障害(本発明のポリヌクレオチドの過剰発現に関連する、本願の全体に渡って列挙される疾患または障害が含まれるが、これらに限定されない)を処置する方法であって、(a)本発明のポリヌクレオチドに関するアンチセンス分子、および/または(b)本発明のポリヌクレオチドに関するリボザイムを、患者に投与することによって処置する方法を提供する。
【0616】
(結合ペプチドおよび他の分子)
本発明はまた、CRポリペプチドに結合するポリペプチドおよび非ポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法、ならびにそれによって同定されたCR結合分子を含む。これらの結合分子は、例えば、CRポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストとして有用である。そのようなアゴニストおよびアンタゴニストは、本発明に従って、以下に詳細に記載される治療実施形態において使用され得る。
【0617】
この方法は、以下の工程を包含する:
a.CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドを多数の分子と接触させる工程;および
b.CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドに結合する分子を同定する工程。
【0618】
CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドを多数の分子と接触させる工程は、多数の方法によってもたらされ得る。例えば、当業者は、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドを固体支持体上に固定化させ、そして多数の分子の溶液を固定したCRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドと接触させることを考え得る。このような手順は、固定したCRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドから構成される親和性マトリックスを用いるアフィニティークロマトグラフィープロセスに類似している。次いで、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドに対して選択的な親和性を有する分子が、親和性選択によって精製され得る。固体支持体の性質、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドのこの固体支持体への付着に関するプロセス、溶媒、および親和性単離または親和性選択の条件は、大部分が慣用的であり、そして当業者に周知である。
【0619】
あるいは、多数のポリペプチドはまた、ポリペプチドのサブセットまたは個々のポリペプチドを含む実質的に別々の分画へ分離され得る。例えば、多数のポリペプチドは、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィーなどポリペプチドの分離に関して当業者に公知の方法によって、分離され得る。個々のポリペプチドはまた、宿主細胞の外部表面上またはほぼ外部表面に発現されるような様式で、形質転換された宿主細胞(例えば、組換えファージ)によって産生され得る。次いで、個々の単離物は、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドによって「プローブ化」され得、必要に応じて発現に必要とされるであろうインデューサーの存在下で、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドと個々のクローンとの間で任意の選択的親和性相互作用が起こったか否かが決定される。CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドを個々のポリペプチドを含む各分画と接触させる前に、これらのポリペプチドはまず、さらなる簡便性のために固体支持体に移され得る。そのような固体支持体は、単に、例えばニトロセルロースまたはナイロンでできたフィルター膜の断片であり得る。この様式において、陽性クローンは、発現ライブラリーの形質転換宿主細胞の集団(これらは、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドに対して選択的親和性を有するポリペプチドをコードするDNA構築物を持つ)から同定され得る。さらに、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドに対して選択的親和性を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、従来の手段によって直接決定され得るか、またはこのポリペプチドをコードするDNAのコード配列が、頻繁により簡便に決定され得る。次いで、一次配列が、対応するDNA配列から推定され得る。アミノ酸配列がポリペプチド自身から決定されるものである場合、微小配列決定技術を使用し得る。この配列決定技術は、質量分析法を含み得る。
【0620】
特定の状況において、選択的親和性相互作用の存在を決定または検出しようと試みる前に、未結合のCRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドあるいは未結合ポリペプチドのいずれかを、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドおよび多数のポリペプチドの混合物から洗浄除去することが望ましくあり得る。このような洗浄工程は、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドまたは多数のポリペプチドが固体支持体に結合している場合に、特に望ましくあり得る。
【0621】
本方法に従って提供される多数の分子は、多様性ライブラリー(例えば、CRポリペプチドへ特異的に結合する分子をスクリーニングし得る無作為またはコンビナトリアルの、ペプチドライブラリーまたは非ペプチドライブラリー)として提供され得る。使用され得る多くのライブラリー(例えば、化学合成ライブラリー、組換えライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)、およびインビトロ翻訳ベースのライブラリーが、当該分野で公知である。化学合成ライブラリーの例は、以下に記載される:Fodorら、1991、Science 251:767−773;Houghtenら、1991、Nature 354:84−86;Lamら、1991、Nature 354:82−84;Medynski、1994、Bio/Technology 12:709−710;Gallopら、1994、J.Medicinal Chemistry 37(9):1233−1251;Ohlmeyerら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922−10926;Erbら、1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422−11426;Houghtenら、1992,Biotechniques 13:412;Jayawickremeら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1614−1618;Salmonら、1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11708−11712;PCT公開番号WO93/20242;ならびにBrennerおよびLerner、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381−5383。
【0622】
ファージディスプレイライブラリーの例は、以下に記載される:ScottおよびSmith、1990、Science 249:386−390;Devlinら、1990、Science、249:404−406;Christian,R.B.ら、1992、J.Mol.Biol.227:711−718);Lenstra、1992、J.Immunol.Meth.152:149−157;Kayら、1993、Gene 128:59−65;ならびにPCT公開番号WO94/18318(1994年8月18日)。
【0623】
インビトロ翻訳ベースのライブラリーとしては、以下:PCT公開番号WO91/05058(1991年4月18日);およびMattheakisら、1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9022−9026に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0624】
非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Buninら、1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4708−4712を参照のこと)が、使用のために適応され得る。ペプトイドライブラリー(Simonら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367−9371)がまた使用され得る。使用され得るライブラリーの別の例は、Ostreshら(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11138−11142)によって記載され、ここでは、ペプチド中のアミド官能基が、過剰にメチル化(permethylate)されて、化学的に形質転換されたコンビナトリアルライブラリーを生成する。
【0625】
本発明において有用である種々の非ペプチドライブラリーは、大きい。例えば、EckerおよびCrooke(1995,Bio/Technology 13:351−360)は、種々のライブラリーの基礎を形成する化学種の間として、ベンゾジアゼピン、ヒダントイン、ピペラジンジオン、ビフェニル、糖アナログ、β−メルカプトケトン、アリール酢酸、アシルピペラジン、ベンゾピラン、キューバン(cubane)、キサンチン、アミンイミドおよびオキサゾロンを列挙している。
【0626】
非ペプチドライブラリーは、2つの型に大きく分類され得る:修飾されたモノマーおよびオリゴマー。修飾モノマーライブラリーは、比較的単純な骨格構造を使用し、この上に種々の官能基が付加される。しばしば、骨格は、既知の有用な薬理学的活性を有する分子である。例えば、骨格は、ベンゾジアゼピン構造であり得る。
【0627】
非ペプチドオリゴマーライブラリーは、単量体の順序に依存して新規な形状を作製する様式で共にアセンブルされる、多数の単量体を使用する。使用される単量体単位の間には、カルバメート、ピロリノン(pyrrolinone)およびモルホリノがある。ペプトイド(側鎖がα炭素よりもαアミノ基に結合するペプチド様オリゴマー)は、非ペプチドオリゴマーライブラリーの別のバージョンの基礎を形成する。最初の非ペプチドオリゴマーライブラリーは、単一型の単量体を使用し、従って、反復骨格を含んだ。近年のライブラリーは、1つより多くの単量体を使用し、自由度が添加されたライブラリーを与える。
【0628】
ライブラリーをスクリーニングすることは、多様な一般的に公知の方法のいずれかによって達成され得る。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する以下の参考文献:ParmleyおよびSmith、1989、Adv.Exp.Med.Biol.251:215−218;ScottおよびSmith、1990、Science 249:386−390;Fowlkesら、1992;BioTechniques 13:422−427;Oldenburgら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5393−5397;Yuら、1994、Cell 76:933−945;Staudtら、1988、Science 241:577−580;Bockら、1992、Nature 355:564−566;Tuerkら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6988−6992;Ellingtonら、1992、Nature 355:850−852;米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号、および米国特許第5,198,346号(全てLadnerらに対して);RebarおよびPabo、1993、Science 263:671−673;ならびにPCT公開番号WO94/18318を参照のこと。
【0629】
特定の実施形態において、CRポリペプチドを結合する分子を同定するためのスクリーニングは、ライブラリーのメンバーを固相に固定化されたCRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドと接触させ、そしてCRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドに結合するライブラリーメンバーを収集することによって実行され得る。そのようなスクリーニング方法の例の、「パニング」と呼ばれる技術は、例として、ParmleyおよびSmith,1988,Gene 73:305−318;Fowlkesら、1992,BioTechniques 13:422−427;PCT公開番号WO94/18318;ならびにその中に引用される参考文献に記載される。
【0630】
別の実施形態において、酵母中の相互作用タンパク質を選択するためのツーハイブリッドシステム(FieldsおよびSong,1989,Nature 340:245−246;Chienら、1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578−9582)が、CRポリペプチドまたはCR様ポリペプチドに特異的に結合する分子を同定するために使用され得る。
【0631】
CR結合分子がポリペプチドである場合、このポリペプチドは、任意のペプチドライブラリー(ランダムペプチドライブラリー、コンビナトリアルペプチドライブラリー、またはバイアスペプチドライブラリーを含む)から簡便に選択され得る。用語「バイアス(biased)」は、ライブラリーを作製する方法が、生じる分子(この場合にはペプチド)の収集の多様性を支配する1つ以上のパラメーターを制限するように操作されることを意味するために本明細書中に使用される。
【0632】
従って、本当にランダムなペプチドライブラリーは、ペプチドの所定の位置に特定のアミノ酸を見出す可能性が20全てのアミノ酸に関して同じである、ペプチドの収集物を作製する。しかし、例えば、リジンが5番目のアミノ酸毎に生じることを特定するかまたはデカペプチドライブラリーの4位、8位および9位がアルギニンのみを含むように固定して特定することによって、バイアスがライブラリーに導入され得る。ライブラリー中へ導入され得る。明らかに、バイアスの多くの型は、意図され得、そして本発明は、いかなる特定のバイアスにも制限されない。さらに、本発明は、特定の型のペプチドライブラリー(例えば、ファージディスプレイペプチドライブラリーおよびDNA挿入物と共にλファージベクターを含むDNA構築物を使用するライブラリー)を意図する。
【0633】
上記のように、CRに結合する分子(ポリペプチドである)の場合、このポリペプチドは、約6から約60より少ないアミノ酸残基を有し、好ましくは約6〜約10アミノ酸残基、そして最も好ましくは約6〜約22アミノ酸であり得る。別の実施形態において、CRに結合するポリペプチドは、15〜100の範囲のアミノ酸、または20〜50の範囲のアミノ酸を有する。
【0634】
選択されたCR結合ポリペプチドは、化学合成または組換え発現によって得られ得る。
【0635】
(他の活性)
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストは、血管内皮細胞増殖を刺激する能力の結果として、種々の疾患状態(例えば、血栓症、動脈硬化、および他の心臓血管の状態)に起因する虚血組織の血管再生を刺激するための処置において利用され得る。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストをまた利用して、上記で議論されるように新脈管形成および肢の再形成を刺激し得る。
【0636】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストをまた、傷害、熱傷、手術後組織修復、および瘢痕に起因する創傷の処置にも利用し得る。なぜなら、それらは異なる起源の種々の細胞(例えば、線維芽細胞および骨格筋細胞)に対してマイトジェン性であり、それゆえダメージを受けた組織または疾患組織の修復または置換を促進するからである。
【0637】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストをまた使用して、ニューロンの成長を刺激し、そして特定のニューロンの障害または神経変性状態(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびAIDS関連複合体)において生じるニューロンのダメージを処置および予防し得る。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストは、軟骨細胞増殖を刺激する能力を有し得、それゆえ、骨および歯周の再形成を増強し、そして組織移植片または骨の移植片における補助のために利用され得る。
【0638】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストをまた利用して、ケラチノサイト増殖を刺激することにより、日焼けに起因する皮膚の老化を予防し得る。
【0639】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストをまた、抜け毛を予防するためにも利用し得る。なぜなら、FGFファミリーのメンバーは、髪形成細胞を活性化し、そしてメラノサイト増殖を促進するからである。同じ系列にそって、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストを利用して、他のサイトカインと組み合わせて使用した場合、造血細胞および骨髄細胞の増殖および分化を刺激し得る。
【0640】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストをまた利用して、移植前の器官を維持し得るか、または始原組織の細胞培養を支持するために使用し得る。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストはまた、初期胚における分化のための中胚葉起源の組織を誘導するために利用され得る。
【0641】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストはまた、先に議論されるように、造血系統に加えて胚性幹細胞の分化または増殖を増加または減少し得る。
【0642】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストはまた、哺乳動物の特徴(例えば、身長、体重、毛の色、眼の色、皮膚、脂肪組織の割合、色素沈着、大きさ、および形(例えば、美容外科))を調節するために使用され得る。同様に、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストは、異化作用、同化作用、プロセシング、利用、およびエネルギーの貯蔵に影響を及ぼす哺乳動物の代謝を調節するために使用され得る。
【0643】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストは、バイオリズム、カリカディック(caricadic)リズム、うつ病(抑うつ性障害を含む)、暴力の傾向、痛みへの耐性、生殖能力(好ましくは、アクチビンまたはインヒビン様活性によって)、ホルモンレベルもしくは内分泌レベル、食欲、性欲、記憶、ストレス、または他の認知の質に影響を及ぼすことによって、哺乳動物の精神状態または身体状態を変更するために使用され得る。
【0644】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストはまた、例えば、貯蔵能力、脂肪含有量、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、補因子、または他の栄養成分を増加または減少させるような食品添加物または保存剤として使用され得る。
【0645】
上記に列挙される用途は、広範な種々の宿主において用途を有する。このような宿主としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヒト、ネズミ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、ミニブタ(micro−pig)、ニワトリ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、およびヒト。特定の実施形態において、宿主は、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ニワトリ、ラット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、イヌまたはネコである。好ましい実施形態において、宿主は哺乳動物である。最も好ましい実施形態において、宿主は、ヒトである。
【0646】
(他の好ましい実施形態)
本願発明の他の好ましい実施形態は、配列番号Xもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZのヌクレオチド配列中の少なくとも約50個連続したヌクレオチドの配列に、少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を含む。
【0647】
上記連続したヌクレオチドの配列が、表1中で配列番号Xについて規定されるような位置の範囲で、配列番号Xのヌクレオチド配列に含まれる、核酸分子もまた好ましい。
【0648】
配列番号Xもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZのヌクレオチド配列中の少なくとも約150個連続したヌクレオチドの配列に、少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子もまた好ましい。
【0649】
配列番号Xもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZのヌクレオチド配列中の少なくとも約500個連続したヌクレオチドの配列に、少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子はさらに好ましい。
【0650】
さらに好ましい実施形態は、表1中で配列番号Xについて規定されるような位置の範囲で配列番号Xのヌクレオチド配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、核酸分子である。
【0651】
さらに好ましい実施形態は、配列番号Xもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZの完全なヌクレオチド配列に、少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子である。
【0652】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号Xもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZのポリヌクレオチド配列を含む核酸分子にハイブリダイズする単離された核酸分子もまた好ましく、ここで上記のハイブリダイズする核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、A残基のみまたはT残基のみからなるヌクレオチド配列を有する核酸分子には、ハイブリダイズしない。
【0653】
cDNAプラスミドZを含むDNA分子を含む組成物もまた好ましい。
【0654】
cDNAプラスミドZのヌクレオチド配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子もまた好ましい。
【0655】
上記の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列が、cDNAプラスミドZによってコードされる完全なオープンリーディングフレーム配列のヌクレオチド配列中に含まれる、単離された核酸分子もまた好ましい。
【0656】
cDNAプラスミドZによってコードされるヌクレオチド配列中の少なくとも150個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子もまた好ましい。
【0657】
さらに好ましい実施形態は、cDNAプラスミドZによってコードされるヌクレオチド配列中の少なくとも500個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子である。
【0658】
さらに好ましい実施形態は、cDNAプラスミドZによってコードされる完全なヌクレオチド配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子である。
【0659】
さらに好ましい実施形態は、以下からなる群から選択される配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を、生物学的サンプルにおいて検出するための方法である:配列番号Xのヌクレオチド配列もしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるヌクレオチド配列。上記の方法は、上記の群から選択される配列と、上記のサンプル中の少なくとも1つの核酸分子のヌクレオチド配列とを比較する工程、および上記サンプル中の上記核酸分子の配列が、上記の選択された配列に対して少なくとも95%同一であるか否かを決定する工程を包含する。
【0660】
上記の配列を比較する工程が、上記サンプル中の核酸分子と、上記の群から選択される上記の配列を含む核酸分子との間の核酸ハイブリダイゼーションの程度を決定する工程を包含する、上記方法もまた好ましい。同様に、上記の配列を比較する工程が、上記サンプル中の核酸分子から決定されるヌクレオチド配列と、上記の群から選択される配列とを比較する工程によって実施される、上記方法もまた好ましい。この核酸分子は、DNA分子もまたはRNA分子も含み得る。
【0661】
さらに好ましい実施形態は、生物学的サンプルの種、組織、または細胞型を同定するための方法であって、この方法は、以下からなる群から選択される配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む上記サンプル中の核酸分子を(もしあれば)検出する工程を包含する:配列番号Xのヌクレオチド配列もしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるヌクレオチド配列。
【0662】
生物学的サンプルの種、組織、または細胞型を同定するための方法は、少なくとも2つのヌクレオチド配列のパネル中のヌクレオチド配列を含む核酸分子を検出する工程を包含し得、ここで上記パネル中の少なくとも1つの配列は、上記の群から選択される配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一である。
【0663】
配列番号Xもしくはそれに対する相補鎖またはタンパク質をコードするcDNAプラスミドZのヌクレオチド配列の異常な構造または発現と関連する病理学的状態を、被験体において診断するための方法もまた好ましく、この方法は、以下からなる群から選択される配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、核酸分子を、(もしあれば)上記被験体から得られた生物学的サンプルにおいて検出する工程を包含する:配列番号Xのヌクレオチド配列もしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるヌクレオチド配列。
【0664】
病理学的状態を診断するための方法は、少なくとも2つのヌクレオチド配列のパネル中のヌクレオチド配列を含む核酸分子を検出する工程を包含し得、ここで、上記パネル中の少なくとも1つの配列は、上記の群から選択される配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一である。
【0665】
上記の核酸分子のヌクレオチド配列が、少なくとも2つのヌクレオチド配列のパネルを含む、単離された核酸分子を含む組成物もまた好ましく、ここで上記のパネル中の少なくとも1つの配列は、以下からなる群から選択される配列中の少なくとも50個連続したヌクレオチドの配列に少なくとも95%同一である:配列番号Xのヌクレオチド配列もしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるヌクレオチド配列。この核酸分子は、DNA分子もまたはRNA分子も含み得る。
【0666】
配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド中の少なくとも約10個連続したアミノ酸の配列に、少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドもまた好ましい。
【0667】
配列番号Yのアミノ酸配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド中の少なくとも約30個連続したアミノ酸の配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドもまた好ましい。
【0668】
配列番号Yのアミノ酸配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド中の少なくとも約100個連続したアミノ酸の配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドはさらに好ましい。
【0669】
配列番号Yの完全なアミノ酸配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、および/またはcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチドに少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドはさらに好ましい。
【0670】
cDNAプラスミドZによってコードされるタンパク質の完全なアミノ酸配列中の少なくとも約10個連続したアミノ酸の配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドはさらに好ましい。
【0671】
上記の連続したアミノ酸の配列が、cDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、および/または配列番号Yのポリペプチド配列の部分のアミノ酸配列に含まれる、ポリペプチドもまた好ましい。
【0672】
cDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列中の少なくとも約30個連続的なアミノ酸の配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドもまた、好ましい。
【0673】
cDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列中の少なくとも約100の連続的なアミノ酸の配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドもまた、好ましい。
【0674】
cDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドもまた、好ましい。
【0675】
以下からなる群から選択される配列中の、少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドに対して特異的に結合する単離された抗体は、さらに好ましい:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。
【0676】
以下からなる群から選択された配列中の、少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを、生物学的サンプルにおいて検出する方法は、さらに好ましい:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド;この方法は、このサンプル中における少なくとも1つのポリペプチド分子のアミノ酸配列をこの群から選択された配列と比較する工程およびこのサンプル中におけるこのポリペプチド分子の配列が、少なくとも10の連続的なアミノ酸のこの配列と少なくとも90%同一であるかどうかを決定する工程を包含する。
【0677】
このサンプル中における少なくとも1つのポリペプチド分子のアミノ酸配列を、この群から選択された配列と比較するこの工程が、このサンプル中のポリペプチドの、以下からなる群から選択された配列中の少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列に対して、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドと特異的に結合する抗体に対する特異的な結合の程度を決定する工程を包含する、上記の方法もまた、好ましい:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。
【0678】
この配列を比較する工程が、このサンプル中のポリペプチド分子から決定されたアミノ酸配列を、この群から選択された配列と比較することによって行われる、上記の方法もまた好ましい。
【0679】
生物学的サンプルの種、組織または細胞型を同定する方法もまた好ましく、ここでこの方法は、このサンプル中のポリペプチド分子(このポリペプチドは、もし存在するならば、以下からなる群から選択される配列における少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む)を検出する工程を包含する:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。
【0680】
生物学的サンプルの種、組織または細胞型を同定する上記の方法もまた好ましく、ここでこの方法は、少なくとも2つのアミノ酸配列のパネルにおけるアミノ酸配列を含むポリペプチド分子を検出する工程を包含し、ここでこのパネル中の少なくとも1つの配列は、上記の群から選択された配列における少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列と少なくとも90%同一である。
【0681】
被験体において、表1において同定された、ポリペプチドをコードする核酸配列の異常な構造または発現に関連する病的状態を診断する方法もまた、好ましい。ここで、この方法は、この被験体から得られた生物学的サンプルにおいて、少なくとも2つのアミノ酸配列のパネルにおけるアミノ酸配列を含むポリペプチド分子を検出する工程を包含し、ここでこのパネル中の少なくとも1つの配列は、以下からなる群から選択される配列における少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列と少なくとも90%同一である:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。
【0682】
これらの方法のいずれかにおいて、このポリペプチド分子を検出する工程は、抗体を使用することを包含する。
【0683】
以下からなる群から選択された配列中の、少なくとも10の連続的なアミノ酸の配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子もまた、好ましい:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。
【0684】
ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、原核生物宿主でのこのポリペプチドの発現について最適化されている、単離された核酸分子もまた、好ましい。
【0685】
ポリペプチドが以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された核酸分子もまた、好ましい:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。
【0686】
上記の単離された核酸分子のいずれかをベクター中に挿入する工程を含む、組換えベクターの作製方法はさらに好ましい。この方法によって生成された組換えベクターも、好ましい。宿主細胞中にベクターを導入する工程を含む、組換え宿主細胞を作製する方法、ならびにこの方法によって生成された組換え宿主細胞もまた、好ましい。
【0687】
単離されたポリペプチドを作製する方法であって、このポリペプチドが発現されるような条件下でこの組換え宿主細胞を培養する工程、およびこのポリペプチドを回収する工程を包含する、方法もまた、好ましい。単離されたポリペプチドを作製するこの方法もまた好ましく、ここでこの組換え宿主細胞は真核生物細胞であり、そしてこのポリペプチドは、以下からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む、ヒトタンパク質である:配列番号Yのポリペプチド配列;配列番号Xによってコードされるポリペプチドもしくはそれに対する相補鎖、およびcDNAプラスミドZによってコードされるポリペプチド。この方法によって生成された単離されたポリペプチドもまた、好ましい。
【0688】
増加したレベルのタンパク質活性を必要とする個体を処置する方法もまた、好ましい。ここで、この方法は、このような個体に、この個体においてこのタンパク質の活性のレベルを増加させるのに有効な本願発明の単離されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、その免疫原性フラグメントまたはアナログ、結合剤、抗体、または抗体結合フラグメントの一定量を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0689】
減少したレベルのタンパク質活性を必要とする個体を処置する方法もまた、好ましい。ここで、この方法は、このような個体に、この個体においてこのタンパク質の活性のレベルを減少させるのに有効な本願発明の単離されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、その免疫原性フラグメントまたはアナログ、結合剤、抗体、または抗体結合フラグメントの一定量を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0690】
本発明の特定の実施形態において、表2の4番目の列に列挙される各「コンティグID」について、好ましくは、表2の5番目の列において言及され、そして一般式a−bによって記載されるヌクレオチド配列を含むか、あるいはこれらからなる、1つ以上のポリヌクレオチドが、除外される。ここで、aおよびbは、表2の列3において言及される対応する配列番号Xについて独特に決定される。さらに特定の実施形態は、表2の5番目の列において言及される特定のポリヌクレオチド配列の1、2、3、4またはそれより多くを除外するポリヌクレオチド配列に関する。
【0691】
好ましくは、一般式c−dによって記載されるヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドが、本発明から除外され、ここで、cとdとの両方が、配列番号Xに示されるヌクレオチド残基の位置に対応し、そしてここで、dは、c+14以上である。
【0692】
この列挙は、この一般式によって除外され得る配列の全てを包含することを決して意味せず、これは単に代表的な例である。これらの登録を通して利用可能な全ての参考文献は、本明細書によって、それらの全体において参考として援用される。
【0693】
【表2】
Figure 2004500058
【0694】
【表3】
Figure 2004500058
【0695】
【表4】
Figure 2004500058
Figure 2004500058
概して、本発明を記載してきたが、例示の目的のために提供されかつ限定することを意図しない、以下の実施例を参照することによって、本発明はより容易に理解される。
【0696】
(実施例)
(実施例1:選択されたcDNAクローンの寄託されたサンプルからの単離) 引用されるATCC寄託物中の各cDNAクローンは、プラスミドベクター中に含まれる。表1は、各クローンが単離されたcDNAライブラリーを構築するために用いられたベクターを示す。多くの場合において、ライブラリーを構築するために使用されたベクターは、プラスミドが切り出されたファージベクターである。直下の表は、cDNAライブラリーを構築する際に使用される各ファージベクターについて関連するプラスミドを相関づける。例えば、特定のクローンがベクター「Lambda Zap」中に単離されていると表1に示される場合、対応する寄託クローンは、「pBluescript」である。
【0697】
【表5】
Figure 2004500058
ベクターLambda Zap(米国特許第5,128,256号および同第5,286,636号)、Uni−Zap XR(米国特許第5,128,256号および同第5,286,636号)、Zap Express(米国特許第5,128,256号および同第5,286,636号)、pBluescript(pBS)(Shortら、Nucleic Acids Res. 16:7583−7600(1988);Alting−Meesら、Nucleic Acids Res. 17:9494(1989))ならびにpBK(Alting−Meesら、Strategies 5:58−61(1992))は、Stratagene Cloning Systems,Inc.、11011 N.Torrey Pines Road、La Jolla,CA,92037から市販されている。pBSは、アンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてpBKはネオマイシン耐性遺伝子を含む。両方とも、E.coli株XL−1 Blue(これもまた、Stratageneから入手可能である)に形質転換され得る。pBSは、SK+、SK−、KS+およびKSの4形態で入荷する。SおよびKとは、ポリリンカー領域(「S」とはSacIであり、そして「K」とは、KpnIのことであり、これらは、それぞれのリンカーの各末端での最初の部位である)に隣接するT7およびT3プライマー配列に対するポリリンカーの配向をいう。「+」または「−」とは 、ある方向においてf1 oriから開始される一本鎖レスキューがセンス鎖DNAを生成し、そして他方においてアンチセンスであるようなf1複製起点(「ori」)の配向をいう。
【0698】
ベクターpSport1、pCMVSport 2.0およびpCMVSport3.0をLife Technologies、Inc.、P.O.Box6009、Gaithersburg,MD 20897から入手した。全てのSportベクターはアンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてE.coli株DH10B(これもまた、Life Technologiesから入手可能である)に形質転換され得る。(例えば、Gruber,C.E.ら、Focus 15:59(1993)を参照のこと)。ベクターlafmid BA(Bento Soares、Columbia University、NY)は、アンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてE.coli株XL−1 Blueに形質転換され得る。ベクターpCR(登録商標)2.1(これはInvitrogen、1600 Faraday Avenue、Carlsbad、CA 92008から入手可能である)は、アンピシリン耐性遺伝子を含み、そしてE.coli株DH10B(Life Technologiesから入手可能である)に形質転換され得る(例えば、Clark、Nuc.Acids Res.16:9677−9686(1988)およびMeadら、Bio/Technology 9:(1991)を参照のこと)。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、表1における特定のクローンについて同定されたファージベクター配列、ならびに上記に示された対応するプラスミドベクター配列を含まない。
【0699】
表1に引用される、任意の所定のcDNAクローンについてATCC受託番号を与えられたサンプルにおける寄託された物質はまた、1つ以上のさらなるプラスミド(これは各々、その所定のクローンとは異なるcDNAクローンを含む)を含み得る。従って、同じATCC受託番号を共有する寄託物は、表1に示される各cDNAクローンのためのプラスミドを少なくとも含む。代表的には、表1に引用される各ATCC寄託物のサンプルは、ほぼ等量(重量で)の約50個のプラスミドDNA(これは各々、異なるcDNAクローンを含む)の混合物を含む;しかし、このような寄託サンプルは、50個よりも多いかまたは少ないcDNAクローン(約500個までのcDNAクローン)のためのプラスミドを含み得る。
【0700】
表1における特定のクローンについて引用されるプラスミドDNAの寄託サンプルからそのクローンを単離するために2つのアプローチが使用され得る。第一に、プラスミドを、配列番号Xに対応するポリヌクレオチドプローブを使用して、クローンをスクリーニングすることによって直接単離する。
【0701】
特に、30〜40ヌクレオチドを有する特定のポリヌクレオチドを、報告されている配列に従って、Applied BiosystemsのDNA合成装置を使用して合成する。オリゴヌクレオチドを、例えば、32P−γ−ATPで、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて標識し、そして慣用の方法に従って精製する。(例えば、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring、NY(1982))。プラスミド混合物を、当業者に公知の技術(例えば、ベクター供給者によって提供される技術または上記で引用された関連の刊行物もしくは特許において提供される技術)を用いて、上記のような適切な宿主(例えば、XL−1 Blue(Stratagene))に形質転換する。形質転換体を1.5%寒天プレート(適切な選択薬剤、例えば、アンピシリンを含む)に、1プレートあたり約150の形質転換体(コロニー)の密度でプレーティングする。これらのプレートを、細菌コロニースクリーニングについての慣用の方法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1.93〜1.104頁)または当業者に公知の他の技術に従って、ナイロンメンブレンを使用してスクリーニングする。
【0702】
あるいは、配列番号Xの両端(すなわち、表1に規定されるクローンの5’NTおよび3’NTによって囲まれる配列番号Xの領域内)に由来する、17〜20ヌクレオチドの2つのプライマーを合成し、そしてこれらを使用して、寄託されたcDNAプラスミドをテンプレートとして使用して、所望のcDNAを増幅する。ポリメラーゼ連鎖反応を、慣用の条件下で、例えば、0.5μgの上記cDNAテンプレートとの反応混合物の25μl中で実施する。便利な反応混合物は、1.5〜5mM MgCl、0.01%(w/v)ゼラチン、それぞれ20μMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP、25pmolの各プライマーおよび0.25ユニットのTaqポリメラーゼである。35サイクルのPCR(94℃での変性を1分間;55℃でのアニールを1分間;72℃での伸長を1分間)を、Perkin−Elmer Cetus自動化サーマルサイクラーを用いて実施する。増幅産物をアガロースゲル電気泳動により分析し、そして予想される分子量のDNAバンドを切り出し、そして精製する。PCR産物を、DNA産物をサブクローニングおよび配列決定することによって選択された配列であることを確認する。
【0703】
寄託されたクローンに存在しないかもしれない遺伝子の5’非コード部分または3’非コード部分の同定のために、いくつかの方法が利用可能である。これらの方法は、以下を含むがこれらに限定されない:フィルタープローブ探索、特異的プローブを使用するクローン富化、および当該分野で周知である5’および3’「RACE」プロトコルと類似するかまたは同一のプロトコル。例えば、5’RACEに類似する方法は、所望の全長転写物の失われた5’末端を生成するために利用可能である(Fromont−Racineら、Nucleic Acids Res.21(7):1683−1684(1993))。
【0704】
簡潔には、特定のRNAオリゴヌクレオチドを、全長遺伝子RNA転写物をおそらく含むRNAの集団の5’末端に連結する。連結されたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーおよび目的の遺伝子の公知の配列に特異的なプライマーを含むプライマーセットを使用して、所望の全長遺伝子の5’部分をPCR増幅する。次いで、この増幅した産物を配列決定し得、そしてこれを使用して全長遺伝子を生成し得る。
【0705】
この上記の方法は、所望の供給源から単離された総RNAを用いて開始するが、ポリA+RNAをも使用し得る。次いで、RNA調製物を、必要ならばホスファターゼで処理して、後のRNAリガーゼ工程を妨害し得る分解または損傷RNAの5’リン酸基を排除し得る。次いで、ホスファターゼを不活化するべきであり、そしてRNAをメッセンジャーRNAの5’末端に存在するキャップ構造を除去するために、タバコ酸性ピロホスファターゼを用いて処理するべきである。この反応は、次いでT4 RNAリガーゼを用いてRNAオリゴヌクレオチドに連結され得る、キャップ切断RNAの5’末端に5’リン酸基を残す。
【0706】
この改変型RNA調製物を、遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドを用いる、第一鎖cDNA合成のためのテンプレートとして使用する。第一鎖合成反応物を連結されたRNAオリゴヌクレオチドに特異的なプライマーおよび目的の遺伝子の公知の配列に特異的なプライマーを用いる、所望の5’末端のPCR増幅のためのテンプレートとして使用する。次いで、得られた生成物を配列決定し、そして分析して5’末端配列が所望の遺伝子に属することを確認する。
【0707】
(実施例2:ポリヌクレオチドに対応するゲノムクローンの単離)
ヒトゲノムP1ライブラリー(Genomic Systems、Inc.)を、実施例1に記載される方法に従って、配列番号Xに対応するcDNA配列について選択されたプライマーを用いるPCRによってスクリーニングする(Sambrookもまた参照のこと)。
【0708】
(実施例3:ポリペプチドの組織分布)
本発明のポリヌクレオチドのmRNA発現の組織分布を、とりわけ、Sambrookらによって記載されるノーザンブロット分析についてのプロトコルを用いて決定する。例えば、実施例1に記載される方法によって生成されるcDNAプローブを、rediprimeTM DNA labeling system(Amersham Life Science)を用いて、製造者の指示に従って、P32で標識する。標識後、プローブを、CHROMA SPIN−100TMカラム(Clontech Laboratories、Inc.)を使用して、製造者のプロトコル番号PT1200−1に従って精製する。次いで、精製した標識プローブを使用して、種々のヒト組織をmRNA発現について試験する。
【0709】
種々のヒト組織(H)またはヒト免疫系組織(IM)を含む多重組織ノーザン(MTN)ブロット(Clontech)を、ExpressHybTMハイブリダイゼーション溶液(Clontech)を用いて、製造者のプロトコル番号PT1190−1に従って、標識プローブで試験する。ハイブリダイゼーションおよび洗浄後、ブロットをマウントして、そして−70℃で一晩フィルムに露出し、そしてフィルムを標準的な手順に従って現像する。
【0710】
(実施例4:ポリヌクレオチドの染色体マッピング)
オリゴヌクレオチドプライマーのセットを、配列番号Xの5’末端の配列に従って設計する。このプライマーは、好ましくは約100ヌクレオチドにわたる。次いで、このプライマーセットを、以下のセットの条件下でポリメラーゼ連鎖反応に使用する:95℃で30秒;56℃で1分;70℃で1分。このサイクルを32回反復し、次いで1回、70℃で5分間のサイクルを行う。個々の染色体または染色体フラグメントを含む体細胞ハイブリッドパネル(Bios,Inc)に加えて、ヒト、マウス、およびハムスターのDNAを鋳型として使用する。反応物を、8%ポリアクリルアミドゲルまたは3.5%アガロースゲルのいずれかで分析する。染色体マッピングを、特定の体細胞ハイブリッドにおける約100bpのPCRフラグメントの存在によって決定する。
【0711】
(実施例5:ポリペプチドの細菌性発現)
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、実施例1に概説するように、DNA配列の5’および3’末端に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅して挿入フラグメントを合成する。cDNA挿入物を増幅するために使用されるプライマーは、発現ベクターに増幅産物をクローニングするために、必要な場合は、制限部位(例えば、BamHIおよびXbaI)および開始コドン/終止コドンを好ましくは含むべきである。例えば、BamHIおよびXbaIは、細菌性発現ベクターpQE−9(Qiagen,Inc.,Chatsworth,CA)の制限酵素部位に対応する。このプラスミドベクターは、抗生物質耐性(Amp)、細菌の複製起点(ori)、IPTGで調節可能なプロモーター/オペレーター(P/O)、リボソーム結合部位(RBS)、6−ヒスチジンタグ(6−His)、および制限酵素クローニング部位をコードする。
【0712】
pQE−9ベクターをBamHIおよびXbaIで消化し、そして、増幅されたフラグメントを細菌性RBSにおいて開始されるリーディングフレームを維持しながらpQE−9ベクターに連結する。次いで連結混合物を、lacIリプレッサーを発現し、そしてまたカナマイシン耐性(Kan)を与えるプラスミドpREP4の多重コピーを含む、E.coli株M15/rep4(Qiagen,Inc.)を形質転換するために使用する。形質転換体を、それらのLBプレート上で生育する能力によって同定し、そしてアンピシリン/カナマイシン耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを単離し、そして制限分析によって確認する。
【0713】
所望の構築物を含むクローンを、Amp(100μg/ml)およびKan(25μg/ml)の両方を補充したLB培地における液体培養で一晩(O/N)増殖させる。O/N培養物を、1:100〜1:250の比で大量培養物に接種するために使用する。細胞を、0.4と0.6との間の光学密度600(O.D.600)まで増殖させる。次いで、IPTG(イソプロピル−B−D−チオガラクトピラノシド)を最終濃度1mMになるように加える。IPTGは、lacIリプレッサーの不活化により誘導し、P/Oの障害物を除去し、遺伝子発現の増加を導く。
【0714】
細胞を、さらに3〜4時間増殖させる。次いで、細胞を遠心分離(6000×gで20分間)によって収集する。細胞ペレットを、カオトロピック剤である6MグアニジンHCl中に、4℃で3〜4時間攪拌することによって可溶化させる。細胞細片を遠心分離によって取り除き、そしてポリペプチドを含む上清を、ニッケル−ニトリロ三酢酸(「Ni−NTA」)アフィニティー樹脂カラム(QIAGEN,Inc.前出より入手可能)にロードする。6×Hisタグを有するタンパク質は、Ni−NTA樹脂に高い親和性で結合し、そして単純な1工程手順で精製され得る(詳細には、The QIAexpressionist(1995)QIAGEN,Inc.,前出を参照のこと)。
【0715】
手短に言えば、上清を、6Mグアニジン−HCl、pH8のカラムにロードし、カラムを、最初に10容量の6Mグアニジン−HCl、pH8で洗浄し、次いで10容量の6Mグアニジン−HCl、pH6で洗浄し、最後にポリペプチドを、6Mグアニジン−HCl、pH5で溶出する。
【0716】
次いで、精製したタンパク質を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)または50mM 酢酸ナトリウム、pH6の緩衝液および200mM NaClに対して透析することにより再生させる。あるいは、タンパク質はNi−NTAカラムに固定化している間に、首尾よく再折畳みされ得る。推奨条件は以下の通りである:プロテアーゼインヒビターを含む、500mM NaCl、20%グリセロール、20mM Tris/HCl pH7.4中の6M〜1M尿素の直線勾配を使用する再生。再生は1.5時間以上の時間をかけて行うべきである。再生後、タンパク質を250mMイミダゾールの添加によって溶出させる。イミダゾールを、PBSまたは50mM酢酸ナトリウム pH6の緩衝液および200mM NaClに対する最終の透析工程によって除去する。精製したタンパク質を、4℃で保存するか、または−80℃で冷凍する。
【0717】
上記の発現ベクターに加えて、本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたファージオペレーターおよびプロモーターエレメントを含み、pHE4aと呼ばれる発現ベクターを含む(ATCC受託番号209645、1998年2月25日に寄託)。このベクターは以下を含む:1)選択マーカーとしてのネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、2)E.coli複製起点、3)T5ファージプロモーター配列、4)2つのlacオペレーター配列、5)シャイン−ダルガーノ配列、および6)ラクトースオペロンリプレッサー遺伝子(laqIq)。複製起点(oriC)は、pUC19(LTI,Gaithersburg,MD)に由来する。プロモーター配列およびオペレーター配列を合成的に作製する。
【0718】
NdeIおよびXbaI、BamHI、XhoI、またはAsp718によってベクターを制限処理し、制限生成物をゲルで泳動し、そしてより大きな方のフラグメント(スタッファー(stuffer)フラグメントは約310塩基対であるべきである)を単離することによって、DNAをpHEaに挿入し得る。DNA挿入物を、NdeI(5’プライマー)およびXbaI、BamHI、XhoI、またはAsp718(3’プライマー)に対する制限部位を有するPCRプライマーを使用して、実施例1に記載のPCRプロトコルに従って生成する。PCR挿入物を、ゲル精製し、そして適合する酵素で制限処理する。挿入物およびベクターを標準的なプロトコルに従って連結する。
【0719】
操作されたベクターは、上記のプロトコルにおいて、細菌系でタンパク質を発現させるために容易に置換され得る。
【0720】
(実施例6:封入体からのポリペプチドの精製)
以下の別の方法は、ポリペプチドが封入体の形態で存在する場合に、E.coli中で発現されたポリペプチドを精製するために使用され得る。他に指定されない場合には、以下のすべての工程は4〜10℃で行われる。
【0721】
E.coli発酵の生産期の完了後、細胞培養物を4〜10℃に冷却し、そして15,000rpmの連続遠心分離(Heraeus Sepatech)によって細胞を採集する。細胞ペーストの単位重量あたりのタンパク質の予想される収量および必要とされる精製タンパク質の量に基づいて、細胞ペーストの適切な量(重量による)を、100mM Tris、50mM EDTA、pH7.4を含む緩衝溶液に懸濁させる。細胞を、高剪断ミキサーを使用して均質な懸濁液に分散させる。
【0722】
次いで、細胞をマイクロフルイダイザー(microfluidizer)(Microfluidics,Corp.またはAPV Gaulin,Inc.)に2回、4000〜6000psiで溶液を通すことによって溶解させる。次いでホモジネートを、最終濃度0.5M NaClになるようにNaCl溶液と混合し、続いて7000×gで15分間遠心分離を行う。得られたペレットを、0.5M NaCl、100mM Tris、50mM EDTA、pH7.4を使用して再度洗浄する。
【0723】
得られた洗浄した封入体を、1.5M 塩酸グアニジン(GuHCl)で2〜4時間可溶化する。7000×gで15分間の遠心分離の後、ペレットを廃棄し、そしてポリペプチドを含む上清を4℃で一晩インキュベートしてさらなるGuHCl抽出を可能にする。
【0724】
不溶性粒子を除去するための高速遠心分離(30,000×g)に続き、GuHCl可溶化タンパク質を、GuHCl抽出物と、50mM ナトリウム、pH4.5、150mM NaCl、2mM EDTAを含む20容量の緩衝液とを、激しい攪拌で迅速に混合することによって、再折畳みさせる。再折畳みした希釈タンパク質溶液を、さらなる精製工程の前の12時間、混合しないで4℃で保つ。
【0725】
再折畳みされたポリペプチド溶液を清澄にするために、40mM酢酸ナトリウム、pH6.0で平衡化した、適切な表面積を有する0.16μmメンブレンフィルターを備えるあらかじめ準備した接線濾過ユニット(例えば、Filtron)を使用する。濾過したサンプルを、カチオン交換樹脂(例えば、Poros HS−50,Perseptive Biosystems)上にロードする。カラムを40mM 酢酸ナトリウム、pH6.0で洗浄し、そして同じ緩衝液中の250mM、500mM、1000mM、および1500mM NaClで、段階的な様式で溶出する。溶出液の280nmにおける吸光度を連続的にモニターする。画分を収集し、そしてSDS−PAGEによってさらに分析する。
【0726】
次いでポリペプチドを含む画分をプールし、そして4容量の水と混合する。次いで希釈されたサンプルを、あらかじめ準備した強アニオン(Poros HQ−50,Perseptive Biosystems)交換樹脂および弱アニオン(Poros CM−20,Perseptive Biosystems)交換樹脂の直列カラムのセットにロードする。カラムを40mM 酢酸ナトリウム、pH6.0で平衡化する。両方のカラムを、40mM 酢酸ナトリウム、pH6.0、200mM NaClで洗浄する。次いでCM−20カラムを10カラム容量の直線勾配(0.2M NaCl、50mM 酢酸ナトリウム、pH6.0から1.0M NaCl、50mM 酢酸ナトリウム、pH6.5の範囲)を用いて溶出させる。画分を、溶出液の定常A280モニタリング下で収集する。次いで、(例えば、16% SDS−PAGEによって判明した)ポリペプチドを含む画分をプールする。
【0727】
得られたポリペプチドは、上記の再折畳みおよび精製工程の後で95%より高い純度を示すはずである。5μgの精製タンパク質がロードされる場合、いかなる主たる混在バンドも、クマシーブルー染色した16% SDS−PAGEゲルから観察されないはずである。精製タンパク質はまた、エンドトキシン/LPS混在について試験され得、そして代表的には、LPS含量はLALアッセイに従って、0.1ng/ml未満である。
【0728】
(実施例7:バキュロウイルス発現系におけるポリペプチドのクローニングおよび発現)
この実施例では、ポリペプチドを発現するために、プラスミドシャトルベクターpA2を使用してポリヌクレオチドをバキュロウイルスに挿入する。この発現ベクターは、Autographa californica核多核体ウイルス(AcMNPV)の強力なポリヘドリンプロモーター、続いてBamHI、Xba I、およびAsp718のような便利な制限部位を含む。シミアンウイルス40(「SV40」)のポリアデニル化部位を、効率的なポリアデニル化のために使用する。組換えウイルスの容易な選択のために、プラスミドは、同方向にある弱いDrosophilaプロモーターの制御下でE.coli由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子、続いてポリヘドリン遺伝子のポリアデニル化シグナルを含む。挿入された遺伝子は両方の側で、クローン化したポリヌクレオチドを発現する生存可能なウイルスを生成する、野生型ウイルスDNAとの細胞媒介性の相同組換えのためのウイルス配列と隣接する。
【0729】
他の多くのバキュロウイルスベクター(例えば、pAc373、pVL941、およびpAcIM1)は、当業者が容易に理解するように、必要とされる場合、構築物が転写、翻訳、分泌などのために適切に配置されたシグナル(シグナルペプチドおよびインフレームなAUGを含む)を提供する限りにおいて、上記のベクターの代わりに使用され得る。このようなベクターは、例えば、Luckowら、Virology 170:31−39(1989)に記載される。
【0730】
具体的には、適切な制限部位および開始コドン/終止コドンを有するプライマーを用い、実施例1に記載されるPCRプロトコルを使用して、寄託されたクローンに含まれるcDNA配列を、増幅させる。天然に存在するシグナル配列を使用して分泌タンパク質を産生する場合、pA2ベクターは第2のシグナルペプチドを必要としない。あるいは、ベクターは、Summersら(「A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture Procedures」、Texas Agricultural Experimental Station Bulletin No.1555(1987))に記載される標準的な方法を用いて改変して、バキュロウイルスリーダー配列を含ませ得る(pA2 GP)。
【0731】
増幅されたフラグメントを、市販のキット(「Geneclean」,BIO 101 Inc.,La Jolla,Ca)を使用して、1%アガロースゲルから単離する。次いでフラグメントを適切な制限酵素で消化し、そして再び1%アガロースゲルで精製する。
【0732】
プラスミドを対応する制限酵素で消化し、そして必要に応じて、当該分野で公知の慣用の手順を用いて、仔ウシ腸ホスファターゼを用いて脱リン酸化し得る。次いでDNAを、市販のキット(「Geneclean」BIO 101 Inc.,La Jolla,Ca)を使用して、1%アガロースゲルから単離する。
【0733】
フラグメントおよび脱リン酸化したプラスミドを、T4 DNAリガーゼを用いて互いに連結する。E.coli HB101またはXL−1 Blue(Stratagene Cloning Systems,La Jolla,Ca)細胞のような他の適切なE.coli宿主を、連結混合液で形質転換し、そして培養プレート上に拡げる。プラスミドを含む細菌を、個々のコロニー由来のDNAを消化し、そして消化産物をゲル電気泳動によって分析することにより同定する。クローニングしたフラグメントの配列をDNA配列決定によって確認する。
【0734】
このポリヌクレオチドを含む5μgのプラスミドを、Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417(1987)によって記載されたリポフェクション法を使用して、1.0μgの市販の線状化バキュロウイルスDNA(「BaculoGoldTM baculovirus DNA」,Pharmingen,San Diego,CA)とともに同時トランスフェクトする。1μgのBaculoGoldTMウイルスDNAおよび5μgのプラスミドを、50μlの無血清グレース培地(Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD)を含む、マイクロタイタープレートの滅菌したウェル中で混合する。その後、10μlのリポフェクチンおよび90μlグレース培地を加え、混合し、そして室温で15分間インキュベートする。次いで、トランスフェクション混合液を、無血清グレース培地1mlを加えた35mm組織培養プレートに播種したSf9昆虫細胞(ATCC CRL 1711)に滴下して加える。次いでプレートを27℃で5時間インキュベートする。次いで、トランスフェクション溶液をプレートから除去し、そして10%ウシ胎仔血清を補充した1mlのグレース昆虫培地を添加する。次いで培養を27℃で4日間継続する。
【0735】
4日後上清を収集し、SummersおよびSmith、前出によって記載されたようにプラークアッセイを行う。「Blue Gal」(Life Technologies Inc.,Gaithersburg)を含むアガロースゲルを、galが発現しているクローン(青色に着色したプラークを生ずる)の容易な同定および単離を可能にするために使用する。(この型の「プラークアッセイ」の詳細な説明はまた、Life Technologies Inc., Gaithersburgによって配布される、昆虫細胞培養およびバキュロウイルス学のための使用者ガイドの中の9−10頁に見出され得る)。適切なインキュベーションの後、青色に着色したプラークをマイクロピペッター(例えば、Eppendorf)のチップで拾う。次いで、組換えウイルスを含む寒天を、200μlのグレース培地を含む微小遠心分離チューブ中で再懸濁させ、そして組換えバキュロウイルスを含む懸濁液を、35mmディッシュに播種したSf9細胞に感染させるために使用する。4日後、これらの培養ディッシュの上清を採集し、次いで4℃に貯蔵する。
【0736】
ポリペプチドの発現を確認するために、10%熱非働化FBSを補充したグレース培地中でSf9細胞を増殖させる。細胞を、約2の感染多重度(「MOI」)でポリヌクレオチドを含む組換えバキュロウイルスで感染させる。放射性標識したタンパク質を所望する場合には、6時間後に培地を除去し、そしてメチオニンおよびシステインを含まないSF900 II培地(Life Technologies Inc.,Rockville,MDから入手可能)に置き換える。42時間後、5μCiの35S−メチオニンおよび5μCiの35S−システイン(Amershamから入手可能)を添加する。細胞をさらに16時間インキュベートし、次いで遠心分離によって採集する。上清中のタンパク質および細胞内タンパク質を、SDS−PAGE、次いで(放射性標識した場合)オートラジオグラフィーによって分析する。
【0737】
精製タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列の微量配列決定法を使用して、産生されたタンパク質のアミノ末端配列を決定し得る。
【0738】
(実施例8:哺乳動物細胞におけるポリペプチドの発現)
本発明のポリペプチドを、哺乳動物細胞中で発現させ得る。代表的な哺乳動物発現ベクターは、mRNAの転写の開始を媒介するプロモーターエレメント、タンパク質コード配列、ならびに転写の終結および転写物のポリアデニル化に必要なシグナルを含む。さらなるエレメントは、エンハンサー、コザック配列、および、RNAスプライシングのドナー部位およびアクセプター部位に隣接する介在配列を含む。非常に効率的な転写は、SV40由来の初期および後期プロモーター、レトロウイルス(例えばRSV、HTLVI、HIVI)由来の長末端反復(LTR)、およびサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターを用いて達成される。しかし、細胞エレメント(例えば、ヒトアクチンプロモーター)もまた、使用され得る。
【0739】
本発明を実施する際の使用に適切な発現ベクターは、例えば、pSVLおよびpMSG(Pharmacia,Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)、pBC12MI(ATCC 67109)、pCMVSport2.0、ならびにpCMVSport3.0のようなベクターを含む。使用され得る哺乳動物宿主細胞は、ヒトHela細胞、293細胞、H9細胞およびJurkat細胞、マウスNIH3T3細胞およびC127細胞、Cos 1細胞、Cos 7細胞およびCV1細胞、ウズラQC1−3細胞、マウスL細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む。
【0740】
あるいは、ポリペプチドは、染色体に組み込まれたポリヌクレオチドを含む、安定な細胞株中で発現され得る。dhfr、gpt、ネオマイシン、ハイグロマイシンのような選択可能なマーカーを用いる同時トランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞の同定および単離を可能にする。
【0741】
トランスフェクトされた遺伝子はまた、大量のコードされたタンパク質を発現するために増幅され得る。DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)マーカーは、目的の遺伝子の数百または数千さえものコピーを有する細胞株の開発に有用である。(例えば、Altら、J.Biol.Chem.253:1357−1370(1978);Hamlinら、Biochem.et Biophys.Acta、1097:107−143(1990):Pageら、Biotechnology 9:64−68(1991)を参照のこと)。別の有用な選択マーカーは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphyら、Biochem J.227:277−279(1991);Bebbingtonら、Bio/Technology 10:169−175(1992))。これらのマーカーを使用して、哺乳動物細胞を選択培地中で増殖させ、そしてもっとも高い耐性を有する細胞を選択する。これらの細胞株は、染色体に組み込まれた、増幅された遺伝子を含む。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびNSO細胞は、タンパク質の産生のためにしばしば使用される。
【0742】
プラスミドpSV2−dhfr(ATCC受託番号37146)の誘導体である、発現ベクターpC4(ATCC受託番号209646)およびpC6(ATCC受託番号209647)は、ラウス肉腫ウイルス(Cullenら、Molecular and Cellular Biology,438−447(1985年3月))の強力なプロモーター(LTR)、およびCMVエンハンサー(Boshartら、Cell 41:521−530(1985))のフラグメントを含む。例えば、BamHI、XbaI、およびAsp718の制限酵素切断部位を有するマルチプルクローニングサイトは、目的の遺伝子のクローニングを容易にする。ベクターはまた、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン、ポリアデニル化および終結シグナル、ならびに、SV40初期プロモーターの制御下にあるマウスDHFR遺伝子を含む。
【0743】
具体的には、例えば、プラスミドpC6を、適切な制限酵素によって消化し、次いで当該分野で公知の手順によって、仔ウシ腸ホスファターゼ(phosphate)を使用して脱リン酸化する。次いで、このベクターを1%アガロースゲルから単離する。
【0744】
本発明のポリヌクレオチドは、必要な場合、適切な制限部位および開始/停止コドンを有するプライマーを用いて実施例1に概説するプロトコルに従って増幅される。このベクターは分泌のために必要な場合、異種シグナル配列を含むように改変され得る(例えば、WO96/34891を参照のこと)。
【0745】
増幅フラグメントを、市販のキット(「Geneclean」、BIO 101 Inc.、La Jolla,Ca.)を使用して、1%アガロースゲルから単離する。次いで、このフラグメントを、適切な制限酵素で消化し、そして再び1%アガロースゲルで精製する。
【0746】
次いで、増幅フラグメントを同じ制限酵素で消化し、そして1%アガロースゲルで精製する。次いで、単離されたフラグメントおよび脱リン酸したベクターを、T4 DNAリガーゼで連結する。次いで、E.coli HB101細胞またはXL−1 Blue細胞を形質転換し、そしてプラスミドpC6に挿入されたフラグメントを含む細菌を、例えば、制限酵素分析を用いて同定する。
【0747】
活性なDHFR遺伝子を欠損するチャイニーズハムスター卵巣細胞を、トランスフェクションに使用する。5μgの発現プラスミドpC6を、リポフェクチン(Felgnerら、前出)を用いて、0.5μgのプラスミドpSVneoと同時トランスフェクトする。プラスミドpSV2−neoは、優性で選択可能なマーカーであるところの、G418を含む抗生物質の群に対する耐性を付与する酵素をコードするTn5由来のneo遺伝子を含む。この細胞を、1mg/mlのG418を補充したαマイナスMEMに播種する。2日後、この細胞をトリプシン処理し、そして10、25、または50ng/mlのメトトレキサートおよび1mg/mlのG418を補充したαマイナスMEM中のハイブリドーマクローニングプレート(Greiner,Germany)中に播種する。約10〜14日後、単一のクローンをトリプシン処理し、次いで異なる濃度のメトトレキサート(50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)を使用して、6ウェルのペトリ皿または10mlのフラスコに播種する。次いで、最高濃度のメトトレキサートで増殖するクローンを、さらに高い濃度のメトトレキサート(1μM、2μM、5μM、10mM、20mM)を含む新たな6ウェルプレートに移す。同じ手順を、100〜200μMの濃度で増殖するクローンが得られるまで繰り返す。所望の遺伝子産物の発現を、例えば、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットによって、または逆相HPLC分析によって分析する。
【0748】
(実施例9:タンパク質融合物)
本発明のポリぺプチドは、好ましくは、他のタンパク質に融合される。これらの融合タンパク質は、種々の適用のために使用され得る。例えば、本発明のポリぺプチドの、Hisタグ、HAタグ、プロテインA、IgGドメイン、およびマルトース結合タンパク質への融合は、精製を容易にする(実施例5を参照のこと;EP A 394,827もまた参照のこと;Trauneckerら、Nature、331:84−86(1988))。このポリペプチドはまた、異種ポリペプチド配列(例えば、KDEL)に融合して分泌および細胞内輸送を促進し得る。さらに、IgG−1、IgG−3、およびアルブミンへの融合は、インビボでの半減期を増大させる。本発明のポリぺプチドに融合した核局在化シグナルは、タンパク質を特定の細胞内局在に標的化し得る。一方、共有結合ヘテロ二量体またはホモ二量体は、融合タンパク質の活性を増大または減少させ得る。融合タンパク質はまた、1つより多い機能を有するキメラ分子を作製し得る。最後に、融合タンパク質は、非融合タンパク質と比較して、融合タンパク質の可溶性および/または安定性を増大させ得る。上記の融合タンパク質の全ての型は、IgG分子へのポリぺプチドの融合を概説する以下のプロトコル、または実施例5に記載されるプロトコルを改変することによって作製され得る。
【0749】
簡単には、IgG分子のヒトFc部分は、以下に記載の配列の5’末端および3’末端にわたるプライマーを使用してPCR増幅され得る。これらのプライマーはまた、発現ベクター(好ましくは、哺乳動物発現ベクター)へのクローニングを容易にする都合の良い制限酵素部位、および必要な場合、開始/停止コドンを有するべきである。
【0750】
例えば、pC4(受託番号209646)が使用される場合、ヒトFc部分は、BamHIクローニング部位に連結され得る。3’BamHI部位が破壊されるべきであることに注意のこと。次に、ヒトFc部分を含有するベクターが、BamHIを用いて再び制限され、ベクターを線状化し、そして実施例1に記載されるPCRプロトコルによって単離された本発明のポリヌクレオチドが、このBamHI部位に連結される。ポリヌクレオチドは、終止コドンなしにクローニングされ、そうでなければ、融合タンパク質は産生されないことに注意すること。
【0751】
天然に存在するシグナル配列が分泌タンパク質を産生するために使用される場合、pC4は、第2のシグナルペプチドを必要としない。あるいは、天然に存在するシグナル配列が使用されない場合、ベクターは、異種シグナル配列を含むように改変され得る(例えば、WO 96/34891を参照のこと)。
(ヒトIgG Fc領域)
GGGATCCGGAGCCCAAATCTTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAATTCGAGGGTGCACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACTCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTAAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAACCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCAAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGAGTGCGACGGCCGCGACTCTAGAGGAT(配列番号1)。
【0752】
(実施例10:ポリペプチドの処方)
ポリペプチド組成物は、個々の患者の臨床状態(特に、分泌ポリペプチド単独を用いた処置の副作用)、送達部位、投与の方法、投与の計画、ならびに開業医に公知の他の因子を考慮に入れて、良好な医療行為と一致した様式において、処方および投薬される。従って、本明細書中での目的のための「有効量」は、このような考慮によって、決定される。
【0753】
一般的な提案として、一用量あたりに非経口的に投与されるポリペプチドの薬学的に有効な総量は、患者の体重の約1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲であるが、上記で注意したように、これは治療上の裁量を受ける。より好ましくは、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日であり、そしてヒトに関して最も好ましくは、ホルモンについて、約0.01mg/kg/日と1mg/kg/日との間である。連続して投与される場合、ポリペプチドは、代表的に、1日あたり1〜4回の注射によるか、または、例えば、ミニポンプを使用する連続皮下注入のいずれかにより、約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投薬速度で投与される。静脈内バッグ溶液もまた、使用され得る。変化を観察するために必要である処置の長さ、および応答が生じるための処置後の間隔は、所望の効果に依存して変動するようである。
【0754】
本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物は、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に(intracistemally)、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏、ゲル、ドロップまたは経皮性パッチによるように)、頬側に(bucally)、または経口スプレーもしくは鼻内スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液状充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意の型の処方補助物を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「非経口的(な)」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0755】
ポリペプチドはまた、持続放出系によって適切に投与される。持続放出性の組成物の適切な例としては、成形品の形態(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)の半透性のポリマーマトリクスが挙げられる。持続放出マトリクスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとの共重合体(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981)およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(R.Langerら)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられる。持続放出性組成物はまた、リポソームに封入された(liposomally entrapped)ポリペプチドが挙げられる。分泌ポリペプチドを含むリポソームは、それ自体、公知の方法により調製される:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030−4034(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願83−118008;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;およびEP 102,324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30molパーセントコレステロールより多い小さな(約200〜800Å)単層型であり、選択された割合は、最適な分泌ポリペプチド療法について調整される。
【0756】
非経口的な投与に関して、1つの実施形態において、ポリペプチドは、一般に、薬学的に受容可能なキャリア(すなわち、使用される投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、そしてこの処方の他の成分と適合性であるもの)と共に単位投薬量注入可能形態(溶液、懸濁液または乳濁液)において、所望の程度の純度でそれを混合することによって処方される。例えば、処方物は、好ましくは、酸化剤およびポリペプチドに対して有害であることが公知である他の化合物を含まない。
【0757】
一般に、処方物は、ポリペプチドを、液体キャリアもしくは細かく粉砕した固体キャリアまたは両方と、均一およびじかに接触させることにより調製される。次いで、必要である場合、産物は、所望の処方物へと成形される。好ましくは、このキャリアは、非経口的なキャリアであり、より好ましくは、レシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液が挙げられる。非水溶性ビヒクル(例えば、不揮発性油およびオレイン酸エチル)はまた、リポソームと同様に、本明細書中で有用である。
【0758】
キャリアは、微量の添加物(例えば、等張性および化学的安定性を増強する物質)を適宜含む。このような物質は、使用される投薬量および濃度において、レシピエントに非毒性であり、そして緩衝液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩類);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量(約10残基よりも小さい)のポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖、二糖、および他の糖質(セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポロキサマー(poloxamer)、またはPEG)を含む。
【0759】
ポリペプチドは、このようなビヒクル中で、代表的に、約3〜8のpHで、約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度、好ましくは1〜10mg/mlの濃度で処方される。上記の賦形剤、キャリア、または安定化剤の特定のものの使用は、ポリペプチド塩の形成をもたらすことが理解される。
【0760】
治療的な投与のために使用される任意のポリペプチドは、無菌であり得る。無菌性は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)による濾過により容易に達成される。治療ポリペプチド組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器(例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する点滴溶液バッグまたはバイアル)に配置される。
【0761】
ポリペプチドは、通常、単位用量容器または多用量容器(例えば、密封アンプルまたは密封バイアル)中に水溶液としてか、または再構成のための凍結乾燥した処方物として保存される。凍結乾燥した処方物の例として、10mlバイアルを、5mlの滅菌濾過した1%(w/v)水性ポリペプチド溶液で満たし、そして得られる混合物を凍結乾燥する。その注入溶液は、静菌注射用水を使用して、凍結乾燥したポリペプチドを再構成することにより調製される。
【0762】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で満たされた1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制している政府機関により規定される形式における通告は、このような容器に伴い得る。この通告は、ヒトの投与のための製造、使用または販売の、この機関による認可を反映する。さらに、本発明のポリペプチドは、他の治療的化合物とともに使用され得る。
【0763】
(実施例11:ポリペプチドのレベル低下を処置する方法)
個体におけるポリペプチドの標準の発現レベルまたは正常発現レベルの低下により引き起こされる状態は、本発明のポリペプチドを好ましくは分泌形態および/または可溶性形態で投与することにより処置し得ることが理解される。従って、本発明はまた、このポリペプチドのレベルの増加が必要な個体の処置方法を提供する。この方法は、このような個体に、このような個体でこのポリペプチドの活性レベルを増加させる量のポリペプチドを含む治療的組成物を投与する工程を包含する。
【0764】
例えば、ポリペプチドのレベルが低下した患者は、そのポリペプチドを、1日用量0.1〜100μg/kgで6日間続けて服用する。好ましくは、ポリペプチドは分泌形態である。投与および処方物に基づく投薬計画の正確な詳細は、実施例10に提供されている。
【0765】
(実施例12:ポリペプチドのレベル上昇を処置する方法)
アンチセンス技術を使用して本発明のポリペプチドの産生を阻害する。この技術は、ガンのような様々な病因に起因する、好ましくは分泌形態のポリペプチドのレベルを低下させる方法の1つの例である。
【0766】
例えば、ポリペプチドのレベルが異常に上昇したと診断された患者に、アンチセンスポリヌクレオチドを、0.5、1.0、1.5、2.0および3.0mg/kg/日で21日間、静脈内投与する。この処置が十分に耐えられた場合は、7日間の休薬期間後に、この処置を繰り返す。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、本明細書に記載されている技術および処方物(例えば、実施例10を参照のこと)を用いて、さもなければ当該分野で公知の技術および処方物を用いて処方され得る。
【0767】
(実施例13:遺伝子治療を使用する処置方法−エキソビボ)
遺伝子治療の1つの方法は、ポリペプチドを発現し得る線維芽細胞を患者に移植する。一般に、線維芽細胞は、皮膚生検により被験者から得られる。得られた組織を組織培養培地中に配置し、小片に分割する。組織の小塊を組織培養フラスコの湿潤表面に置き、約10片を各フラスコに置く。このフラスコを倒置し、しっかりと閉め、そして、室温で一晩放置する。室温で24時間後、フラスコを反転させ、そして組織塊をフラスコの底に固定させたままにし、そして新鮮な培地(例えば、10%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有するHamのF12培地)を添加する。次いで、フラスコを37℃で約1週間インキュベートする。
【0768】
この時点で、新鮮な培地を添加し、次いで数日ごとに取り換える。さらに二週間培養した後に、単層の線維芽細胞が出現する。この単層をトリプシン処理し、さらに大きなフラスコにスケールアップする。
【0769】
モロニーマウス肉腫ウイルスの長末端反復が隣接するpMV−7(Kirschmeier,P.T.ら、DNA,7:219−25(1988))をEcoRIおよびHindIIIで消化した後、仔ウシ腸ホスファターゼで処理する。線状ベクターをアガロースゲル上で分画し、そしてガラスビーズを使用して精製する。
【0770】
本発明のポリペプチドをコードするcDNAを、プライマーを用い、そして必要な場合、適切な制限部位および開始/終止コドンを有する、実施例1に記載のそれぞれ5’末端配列および3’末端配列に対応するPCRプライマーを使用して増幅し得る。好ましくは、この5’プライマーはEcoRI部位を含み、そしてこの3’プライマーはHindIII部位を含む。等量の、モロニーマウス肉腫ウイルスの線状骨格および増幅したEcoRIおよびHindIIIフラグメントを、T4 DNAリガーゼの存在下で一緒に加える。得られた混合物を、この2つのフラグメントを連結するのに適した条件下で維持する。次いで、連結混合物を使用し、細菌HB101を形質転換する。次いで、それを、カナマイシンを含む寒天上にプレーティングし、ベクターが正確に挿入された目的の遺伝子を有することを確認する。
【0771】
両種指向性pA317またはGP+am12パッケージング細胞を、10%仔ウシ血清(CS)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、組織培養でコンフルエントな密度まで増殖させる。次いで、その遺伝子を含むMSVベクターを培地に加え、そしてパッケージング細胞をこのベクターで形質導入する。このとき、このパッケージング細胞は、その遺伝子を含む感染性ウイルス粒子を産生する(ここで、このパッケージング細胞をプロデューサー細胞という)。
【0772】
形質導入されたプロデューサー細胞に新鮮な培地を添加し、次いでこの培地を10cmプレートのコンフルエントなプロデューサー細胞から採取する。感染性ウイルス粒子を含む使用済み培地を、ミリポアフィルターを通して濾過し、はがれたプロデューサー細胞を除去し、次いでこの培地を使用して、線維芽細胞を感染させる。線維芽細胞のサブコンフルエントなプレートから培地を除去し、そしてプロデューサー細胞からの培地で速やかに置き換える。この培地を除去し、そして新鮮な培地と置き換える。ウイルスの力価が高ければ、実質的にすべての線維芽細胞が感染され、選択は必要ではない。力価が非常に低ければ、neoまたはhisのような選択マーカーを有するレトロウイルスベクターを使用することが必要である。一旦、線維芽細胞が効率的に感染したなら、その線維芽細胞を分析し、タンパク質が産生されているか否かを決定する。
【0773】
次いで、操作された線維芽細胞を、単独で、またはサイトデックス3マイクロキャリアビーズ上でコンフルエントに増殖させた後のいずれかで、宿主に移植する。
【0774】
(実施例14:内因性CR遺伝子を使用する遺伝子治療)
本発明に従う遺伝子治療の別の方法は、内因性CR遺伝子配列を、例えば、米国特許番号5,641,670(1997年6月24日発行);国際公開番号WO 96/29411(1996年9月26日公開);国際公開番号WO 94/12650(1994年8月4日公開);Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:8932〜8935(1989);およびZijlstraら、Nature,342:435〜438(1989)に記載されるように、相同組換えを介してプロモーターに作動可能に結合する工程を包含する。この方法は、その標的細胞中に存在するが、その細胞中では発現されないかまたは所望されるよりも低いレベルで発現される、遺伝子の活性化を包含する。
【0775】
プロモーターおよび標的化配列を含むポリヌクレオチド構築物を作製する。この標的化配列は、プロモーターに隣接する、内因性CR遺伝子の5’非コード配列に相同である。この標的化配列は、このCR遺伝子の5’末端に十分に近く、その結果、このプロモーターは、相同組換えの際にこの内因性配列に作動可能に連結される。このプロモーターおよび標的化配列を、PCRを使用して増幅し得る。好ましくは、この増幅したプロモーターは、5’末端および3’末端上に異なる制限酵素部位を含む。好ましくは、第1の標的化配列の3’末端は、増幅したプロモーターの5’末端と同じ制限酵素部位を含み、そして第2の標的化配列の5’末端は、増幅したプロモーターの3’末端と同じ制限部位を含む。
【0776】
この増幅したプロモーターおよび増幅した標的化配列を、適切な制限酵素で消化し、続いて仔ウシ腸ホスファターゼで処理する。消化したプロモーターおよび消化した標的化配列を、T4 DNAリガーゼの存在下でともに加える。生じた混合物を、これら2つのフラグメントの連結に適切な条件下で維持する。この構築物をアガロースゲルでサイズ分画し、次いでフェノール抽出およびエタノール沈殿により精製する。
【0777】
この実施例において、このポリヌクレオチド構築物を、エレクトロポレーションを介して裸のポリヌクレオチドとして投与する。しかし、このポリヌクレオチド構築物はまた、トランスフェクション促進剤(例えば、リポソーム、ウイルス配列、ウイルス粒子、沈殿剤など)とともに投与され得る。送達のこのような方法は、当該分野で公知である。
【0778】
一旦、細胞をトランスフェクトすると、相同組換えが生じて、このプロモーターがこの内因性CR遺伝子配列に作動可能に連結される。これは、この細胞中におけるこのCRの発現を生じる。発現は、免疫学的染色または当該分野で公知の他の任意の方法により、検出され得る。
【0779】
線維芽細胞を、皮膚生検により被験者から得る。得られた組織を、DMEM+10%ウシ胎仔血清中に配置する。対数増殖期または定常期初期の線維芽細胞を、トリプシン処理し、そしてプラスチックの表面から栄養培地でリンスする。細胞懸濁液のアリコートを、計数のために取り出し、そして残りの細胞を遠心分離に供する。上清を吸引し、そしてペレットを5mlのエレクトロポレーション緩衝液(20mM HEPES pH7.3、137mM NaCl、5mM KCl、0.7mM NaHPO、6mMデキストロース)に再懸濁する。この細胞を再遠心分離し、上清を吸引し、そして細胞をアセチル化ウシ血清アルブミン1mg/mlを含むエレクトロポレーション緩衝液に再懸濁する。この最終細胞懸濁物は、約3×10細胞/mlを含む。エレクトロポレーションを、再懸濁直後に実施すべきである。
【0780】
プラスミドDNAを、標準的技術に従って調製する。例えば、CR遺伝子座に標的化するためのプラスミドを構築するために、プラスミドpUC18(MBI Fermentas、Amherst、NY)をHindIIIで消化する。CMVプロモーターを、5’末端にXbaI部位および3’末端にBamHI部位を備えてPCRにより増幅する。2つのCR非コード遺伝子配列をPCRを介して増幅する:一方のCR非コード配列(CRフラグメント1)を、5’末端にHindIII部位および3’末端にXba部位を備えて増幅する;他方のCR非コード配列(CRフラグメント2)を、5’末端にBamHI部位および3’末端にHindIII部位を備えて増幅する。このCMVプロモーターおよびCRフラグメントを、適切な酵素(CMVプロモーター−XbaIおよびBamHI;CRフラグメント1−XbaI;CRフラグメント2−BamHI)で消化し、そしてともに連結する。生じた連結生成物をHindIIIで消化し、そしてHindIIIで消化したpUC18プラスミドと連結する。
【0781】
プラスミドDNAを、0.4cmの電極ギャップを備える滅菌キュベット(Bio−Rad)に添加する。最終DNA濃度は、一般的に、少なくとも120μg/mlである。次いで、この細胞懸濁液の0.5ml(約1.5×10細胞を含む)をこのキュベットに添加し、そしてこの細胞懸濁液およびDNA溶液を、穏やかに混合する。エレクトロポレーションを、Gene−Pulser装置(Bio−Rad)を用いて実施する。キャパシタンスおよび電圧を、それぞれ、960μFおよび250〜300Vに設定する。電圧が増加すると、細胞の生存が減少するが、導入されたDNAをそれらのゲノム中に安定に組込む生存細胞の割合が劇的に増加する。これらのパラメーターを考慮すると、パルス時間約14〜20mSecが観察されるはずである。
【0782】
エレクトロポレーションした細胞を、室温で約5分間維持し、次いで、このキュベットの中身を、滅菌した移動ピペットを用いて穏やかに取り出す。この細胞を、10cmのディッシュ中の、予め温めた栄養培地(15%仔ウシ血清を含むDMEM)10mlに直接加え、そして37℃でインキュベートする。翌日、この培地を吸引し、そして10mlの新鮮な培地で置換し、そしてさらに16〜24時間インキュベートする。
【0783】
次いで、操作された線維芽細胞を、宿主中に、単独か、またはサイトデックス(cytodex)3マイクロキャリア(microcarrier)ビーズ上でコンフルエントになるまで増殖させた後かのいずれかで、注入する。ここで、この線維芽細胞は、タンパク質産物を生成する。次いで、この線維芽細胞を、上記のような患者に導入し得る。
【0784】
(実施例15:遺伝子治療を使用する処置方法−インビボ)
本発明の別の局面は、障害、疾患、および状態を処置するためにインビボ遺伝子治療方法を使用することである。この遺伝子治療法は、CRポリペプチドの発現を増大または減少させるための、動物への裸の核酸(DNA、RNA、およびアンチセンスDNAまたはRNA)CR配列の導入に関する。CRポリヌクレオチドは、プロモーター、または標的組織によるCRポリペプチドの発現に必要な任意の他の遺伝子エレメントに、作動可能に連結され得る。このような遺伝子治療および送達の技術および方法は、当該分野で公知であり、例えば、WO90/11092、WO98/11779;米国特許第5693622号、同第5705151号、同第5580859号;Tabataら、Cardiovasc.Res.35(3):470−479(1997);Chao Jら、Pharmacol.Res.35(6):517−522(1997);Wolff、Neuromuscul.Disord.7(5):314−318(1997)、Schwartzら、Gene Ther.,3(5):405−411(1996);Tsurumi Y.ら、Circulation 94(12):3281−3290(1996)(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0785】
CRポリヌクレオチド構築物は、注入可能な物質を動物の細胞に送達する任意の方法(例えば、組織(心臓、筋肉、皮膚、肺、肝臓、腸など)の間隙空間への注入)によって送達され得る。CRポリヌクレオチド構築物は、薬学的に受容可能な液体または水性キャリア中で送達され得る。
【0786】
用語「裸の」ポリヌクレオチド、DNAまたはRNAは、細胞への侵入を補助、促進、または容易にするように作用するいかなる送達ビヒクル(ウイルス配列、ウイルス粒子、リポソーム処方物、リポフェクチン、または沈澱剤などを含む)も含まない配列をいう。しかし、CRポリヌクレオチドはまた、当業者に周知の方法によって調製され得るリポソーム処方物(例えば、Felgnerら Ann.NY Acad.Sci.,772:126−139(1995)およびAbdallahら Biol.Cell 85(1):1−7(1995)で教示されたもの)中で送達され得る。
【0787】
この遺伝子治療方法において使用されるCRポリヌクレオチドベクター構築物は、好ましくは、宿主ゲノムに組み込まれず、複製を可能にする配列も含まない構築物である。当業者に公知の任意の強力なプロモーターが、DNAの発現を駆動するために用いられ得る。他の遺伝子治療技術とは異なり、裸の核酸配列を標的細胞に導入する1つの主要な利点は、その細胞におけるポリヌクレオチド合成の一過性の性質である。研究によって、非複製DNA配列が細胞に導入されて、6ヶ月までの間の期間、所望のポリペプチドの産生を提供し得ることが示された。
【0788】
ポリヌクレオチド構築物を、動物内の組織(筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺、および結合組織を含む)の間隙空間に送達され得る。組織の間隙空間は、細胞間液、器官組織の細網線維間のムコ多糖マトリクス、血管または室の壁における弾性線維、線維性組織のコラーゲン線維、あるいは筋肉細胞を囲む結合組織内の同じマトリクス(that same matrix)または骨の裂孔中の結合組織内の同じマトリクス(that same matrix)を含む。これは、同様に、循環の血漿およびリンパチャンネルのリンパ液により占められた空間である。筋肉組織の間隙空間への送達は、以下に記載の理由のために好ましい。このポリヌクレオチド構築物を、これらの細胞を含む組織への注射によって、好都合に送達し得る。このポリヌクレオチド構築物は、好ましくは、持続性の分化した非分裂細胞に送達され、その細胞において発現されるが、送達および発現は、非分化細胞または完全には分化していない細胞(例えば、血液の幹細胞または皮膚線維芽細胞)において達成され得る。インビボ筋肉細胞は、ポリヌクレオチドを取り込み、そしてこのポリヌクレオチドを発現する能力において、特に適格である。
【0789】
裸のCRポリヌクレオチド注射のために、DNAまたはRNAの有効投薬量は、約0.05g/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲にある。好ましくは、投薬量は、約0.005mg/kg〜約20mg/kgであり、そしてより好ましくは、約0.05mg/kg〜約5mg/kgである。もちろん、当業者が認識するように、この投薬量は、注射の組織部位に従って変動する。核酸配列の適切かつ有効な投薬量は、当業者によって容易に決定され得、そして処置される状態および投与経路に依存し得る。好ましい投与経路は、組織の間隙空間への非経口注射経路によってである。しかし、他の非経口経路もまた用いられ得、これには、例えば、特に肺または気管支組織、咽喉または鼻の粘膜への送達のためのエアロゾル処方物の吸入が挙げられる。さらに、裸のCRポリヌクレオチド構築物を、血管形成術の間にこの手順において用いられるカテーテルによって動脈に送達し得る。
【0790】
インビボでの筋肉における注射されたCRポリヌクレオチドの用量応答効果を、以下のようにして決定する。CRポリペプチドをコードするmRNAの生成のために適切なCR鋳型DNAを、標準的な組換えDNA方法論に従って調製する。鋳型DNA(これは環状または直鎖状のいずれかであり得る)を裸のDNAとして使用するか、またはリポソームと複合体化するかのいずれかを行う。次いで、マウスの四頭筋に、多様な量のこの鋳型DNAを注射する。
【0791】
5〜6週齢の雌性および雄性のBalb/Cマウスに、0.3mlの2.5%Avertinを腹腔内注射することにより麻酔する。1.5cmの切開を大腿前部で行い、そして四頭筋を直接可視化する。CR鋳型DNAを、0.1mlのキャリアに入れて、1cc注射器で27ゲージ針を通して1分間にわたって、この筋肉の遠位挿入部位から約0.5cmの位置で膝に、約0.2cmの深さで注射する。縫合を、将来の位置確認のために注射部位の上で行い、そして皮膚をステンレス鋼クリップで閉じる。
【0792】
適切なインキュベーション時間(例えば、7日)後、筋肉抽出物を、四頭全体を切り出すことによって調製する。個々の四頭筋の5枚目毎の15μm切片を、CRタンパク質発現について組織化学的に染色する。CRタンパク質発現についての時間経過は、異なるマウスから四頭筋を異なる時間に採取すること以外は、同様な様式で行い得る。注射後の筋肉中のCRのDNAの持続性を、注射したマウスおよびコントロールマウスから総細胞性DNAおよびHIRT上清を調製した後、サザンブロット分析によって決定し得る。マウスにおける上記実験の結果は、CRの裸のDNAを用いて、ヒトおよび他の動物において適切な投薬量および他の処置パラメーターを推定するために使用し得る。
【0793】
(実施例16:抗体の産生)
a)ハイブリドーマ技術
本発明の抗体を、種々の方法によって調製し得る。(Current Protocols、第2章を参照のこと)。このような方法の1つの例として、CRポリペプチドを発現する細胞を、ポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、動物に投与する。好ましい方法において、CRポリペプチドの調製物を調製し、そしてその調製物が、天然の夾雑物を実質的に含まないようにするために精製する。ついで、このような調製物を、より大きな比活性のポリクローナル抗体を産生するために、動物に導入する。
【0794】
CRポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術を使用して調製する(Kohlerら、Nature 256:495(1975);Kohlerら、Eur.J.Immunol.6:511(1976);Kohlerら、Eur.J.Immunol.6:292(1976);Hammerlingら:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、Elsevier、N.Y.、563〜681頁(1981))。一般的に、動物(好ましくは、マウス)を、CRポリペプチドまたはより好ましくは分泌CRポリペプチド発現細胞で、免疫する。このようなポリペプチド発現細胞を、適切な任意の組織培養培地(好ましくは、10%ウシ胎仔血清(約56℃にて不活化)を補充し、そして約10g/lの非必須アミノ酸、約1,000U/mlのペニシリン、および約100μg/mlのストレプトマイシンを補充した、Earle’s改変Eagle’s培地)にて培養する。
【0795】
このようなマウスの脾細胞を抽出し、そして適切な骨髄腫細胞株と融合させる。適切な任意の骨髄腫細胞株を、本発明に従って使用し得るが、しかし、親骨髄腫細胞株(SP2O)(ATCCから入手可能)を使用することが好ましい。融合後、生じたハイブリドーマ細胞を、HAT培地にて選択的に維持し、ついで、Wandsら(Gastroenterology 80:225〜232(1981))により記載されるように、限界希釈によってクローン化する。ついで、このような選択を介して得たハイブリドーマ細胞をアッセイして、CRポリペプチドを結合し得る抗体を分泌するクローンを同定する。
【0796】
あるいは、CRポリペプチドに結合し得るさらなる抗体を、抗イディオタイプ抗体を使用して2段階工程の手順において生成し得る。このような方法は、抗体それ自体が抗原であり、それゆえ二次抗体に結合する抗体を得ることが可能であるという事実を利用する。この方法に従って、タンパク質特異的抗体を使用して、動物(好ましくは、マウス)を免疫する。次いで、このような動物の脾細胞を使用して、ハイブリドーマ細胞を産生する。そして、このハイブリドーマ細胞は、CRタンパク質特異的抗体に結合する能力がCRポリペプチドによってブロックされ得る抗体を産生するクローンを同定するためにスクリーニングされる。このような抗体は、CRタンパク質特異的抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、そして動物を免疫してさらなるCRタンパク質特異的抗体の形成を誘導するために使用される。
【0797】
ヒトにおける抗体のインビボ使用のために、抗体は、「ヒト化」される。このような抗体は、上記のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に由来する遺伝的構築物を使用することによって産生され得る。キメラ抗体およびヒト化抗体を産生するための方法は当該分野で公知であり、そして本明細書に議論される(総説については、Morrison,Science 229:1202(1985);Oiら、BioTechniques 4:214(1986);Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Taniguchiら、EP 171496;Morrisonら、EP 173494;Neubergerら、WO 8601533;Robinsonら、WO 8702671;Boulianneら、Nature 312:643(1984);Neubergerら、Nature 314:268(1985)を参照のこと)。
【0798】
b)scFvのライブラリーからのCRポリペプチドに対して指向される抗体フラグメントの単離
ヒトPBLから単離した天然に存在するV遺伝子を、CRポリペプチド(ドナーは、これらに対して曝露されていても曝露されていなくともよい)に対する反応性を含む抗体フラグメントのライブラリーに構築する(例えば、米国特許第5,885,793号(その全体が参考として本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0799】
(ライブラリーのレスキュー(rescue))
PCT公開WO 92/01047に記載のように、ヒトPBLのRNAからscFvのライブラリーを構築する。抗体フラグメントを提示するファージをレスキューするため、ファージミドを保有する約10個のE.coliを用いて、50mlの2×TY(1%グルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含有する)(2×TY−AMP−GLU)を接種し、そして振盪しながら0.8のO.D.まで増殖させる。この培養物の5mlを用いて50mlの2×TY−AMP−GLUに接種し、2×10TUのΔ遺伝子3ヘルパー(M13Δ遺伝子III、PCT公開WO92/01047を参照のこと)を添加し、そして培養物を振盪なしで37℃で45分間インキュベートし、次いで振盪しながら37℃で45分間インキュベートする。この培養物を10分間4000r.p.m.で遠心分離し、そしてペレットを2リットルの2×TY(100μg/mlアンピシリンおよび50μg/mlカナマイシンを含有する)中に再懸濁し、そして一晩増殖させる。ファージをPCT公開WO92/01047に記載のように調製する。
【0800】
M13Δ遺伝子IIIを以下のように調製する:M13Δ遺伝子IIIヘルパーファージは、遺伝子IIIタンパク質をコードしない。それゆえ、抗体フラグメントを提示するファージ(ファージミド)は、抗原に対するより大きい結合アビディティーを有する。ファージ形態形成の間、野生型遺伝子IIIタンパク質を供給するpUC19誘導体を保有する細胞においてヘルパーファージを増殖させることにより、感染性M13Δ遺伝子III粒子を作製する。培養物を振盪なしで37℃で1時間インキュベートし、次いで振盪しながら37℃でさらに1時間インキュベートする。細胞を遠心沈殿(IEC−Centra 8,400r.p.m.で10分間)し、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含有する2×TYブロス(2×TY−AMP−KAN)300ml中で再懸濁し、そして37℃で振盪しながら一晩増殖させた。ファージ粒子を、2回のPEG沈殿(Sambrookら、1990)により培養培地から精製および濃縮し、2ml PBSに再懸濁し、そして0.45μmのフィルター(Minisart NML;Sartorius)を通過させ、約1013形質導入単位/ml(アンピシリン耐性クローン)の最終濃度を得る。
【0801】
(ライブラリーのパニング)
Immunotubes(Nunc)を、本発明のポリペプチドの100μg/mlまたは10μg/mlのいずれかの4mlを用いてPBS中で一晩コーティングする。チューブを2%Marvel−PBSを用いて37℃で2時間ブロックし、次いでPBS中で3回洗浄する。約1013TUのファージをチューブに適用し、そして、回転盤上で上下にタンブリングしながら室温で30分間インキュベートし、次いでさらに1.5時間静置しておく。チューブをPBS 0.1%Tween−20で10回、そしてPBSで10回洗浄する。1mlの100mMトリエチルアミンを添加し、そして回転盤上で15分間上下に回転させることによりファージを溶出し、その後この溶液を0.5mlの1.0M Tris−HCl,pH7.4で直ちに中和する。次いで、溶出したファージを細菌とともに37℃で30分間インキュベートすることにより、ファージを用いて、10mlの対数増殖中期のE.coli TG1に感染させる。次いで、E.coliを1%グルコースおよび100μg/mlアンピシリンを含有するTYEプレート上にプレーティングする。次いで、得られる細菌ライブラリーを、上記のようにΔ遺伝子3ヘルパーファージでレスキューし、次の回の選択のためのファージを調製する。次いで、このプロセスを、アフィニティー精製の全4回について反復し、3回目および4回目にはチューブ洗浄をPBS、0.1%Tween−20で20回、そしてPBSで20回に増加する。
【0802】
(バインダーの特徴付け)
第3回目および4回目の選択から溶出したファージを用いて、E.coli HB 2151を感染させ、そして可溶性scFvをアッセイのために単一コロニーから生成する(Marksら、1991)。50mM炭酸水素塩、pH9.6中の本発明のポリペプチドの10pg/mlのいずれかでコーティングしたマイクロタイタープレートを用いてELISAを実施する。ELISAにおける陽性クローンをPCRフィンガープリンティング(例えば、PCT公開WO92/01047を参照のこと)、次に配列決定することによりさらに特徴付ける。これらのELISA陽性クローンはまた、当業者に公知の技術によってさらに特徴付けされ得る(例えば、エピトープマッピング、結合アフィニティー、レセプターシグナル変換、抗体/抗原結合をブロックするか、または競合的に阻害する能力、および競合的なアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性)。
【0803】
(実施例17:CRタンパク質−相互作用するタンパク質の同定)
本発明の精製されたヒトCRポリペプチドは、相互作用するシグナル伝達タンパク質(例えば、JAKs(Janus Kinases)またはSTATs(Signal Transducers and Activators of Transcription)あるいは他のシグナル伝達経路タンパク質の同定、特徴付けおよび精製のための研究ツールとして有用である。間単に述べると、標識されたヒトCRポリペプチドは、そのヒトCRポリペプチドが相互作用する分子の精製のための試薬として有用である。アフィニティー精製の1つの実施形態において、膜結合ヒトCRポリペプチドは、クロマトグラフィーカラムに共有結合する。推定標的細胞(例えば、前立腺癌細胞)由来の無細胞抽出物を、カラムに通過させ、適切な親和性を有する分子が、ヒトCRポリペプチドに結合する。ヒトCRポリペプチド複合体は、カラムから回収され、分離され、そして回収された分子を、N末端タンパク質配列決定に供する。次いで、このアミノ酸配列を使用して捕捉された分子を同定するか、または適切なDNAライブラリーから関連する遺伝子をクローニングするために変性したオリゴヌクレオチドプローブを設計する。
【0804】
(実施例18−結合研究)
サイトカインが本発明のヒトCRポリペプチドに対する特異性を有し得るか否かを決定するために、Whitty et alによって記載される結合アッセイが利用される(Whitty,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,95:13165−170(1998))。間単に述べると、Cos−7細胞に、本発明のヒトCRに対するcDNA配列を含む適切な発現ベクターをトランスフェクトする。さらなる細胞をコントロールとして使用されるベクターのみを用いて偽(mock)トランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞を、2日間37℃で、5%CO2、10%ウシ胎仔血清(FBS)および2mM L−グルタミンを補充したDMEM中で培養する。細胞を、1%FBSおよび0〜1nM放射標識サイトカイン(例えば、125I標識IL−4)を含む200μl PBS中で室温でインキュベートする。多くの放射標識サイトカインをこの系を使用する結合について試験し得る。一時間後、細胞を、1%FBSを含む2mlのPBSで2回洗浄し、そしてこの細胞に結合した放射能を、適切なシンチレーションカウンターを使用することによって定量する。データを非特異的な結合について集め、そしてコントロールのカウントと比較する。コントロールと比較して増加した試験細胞の放射能のカウントは、本発明のヒトCRポリペプチドに対するサイトカインサンプルの特異的結合を示す。
【0805】
本発明を、前述の説明および実施例に詳細に記載された以外の方法で実施し得ることは、明らかである。本発明の多数の改変およびバリエーションが、上記の教示を考慮して可能であり、従って、それは、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0806】
発明の背景、詳細な説明および実施例において引用された各文書の全開示(特許、特許出願、学術文献、要約、実験マニュアル、書籍または他の開示を含む)は、本明細書中に参考として援用される。さらに、本明細書にとともに提出された配列表のハードコピーおよび対応するコンピュ−ター読み出し形態は、両方とも本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0807】
本発明の特定のCRポリヌクレオチドおよびポリペプチド(抗体を含む)は、米国仮出願シリアル番号第60/168,621号に開示され、これは、その全体において参考として本明細書中で援用される。さらに、米国仮出願シリアル番号第60/168,621号の配列表のハードコピーおよびコンピューター読み取り可能な形態はまた、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0808】
【表6】
Figure 2004500058
ATCC寄託番号PTA−1008
2頁
(カナダ)
出願人は、出願に基づきカナダ国特許が発行されるか、あるいは同出願が拒絶または放棄されて回復され得なくなるかもしくは取り下げられるまでは、特許庁長官(Commissioner of Patents)が、長官により指名された独立の専門家に対してのみ出願中で言及された寄託済みの生物学的材料のサンプルの供与を許可する旨を請求し、出願人は、国際出願の公表のための規則上の準備が完了する前に、書面によりその旨を国際事務局に告知しなければならない。
【0809】
(ノルウェー)
出願人はここにおいて、出願が(ノルウェー特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにノルウェー特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、ノルウェー特許法第22条および第33条(3)に基づき出願が公に利用可能にされる時点以前に、出願人によりノルウェー特許庁に対してなされるものとする。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、ノルウェー特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0810】
(オーストラリア)
出願人はここにおいて、微生物のサンプルの供与は、特許の付与前において、あるいは出願の放棄(lapsing)、拒絶あるいは取り下げ前において、発明に対し利害関係を有さない当業者である対象者(skilled addressee)に対してのみ行われる旨を、告知するものである(オーストラリア国特許法第3.25(3)号規定)。
【0811】
(フィンランド)
出願人はここにおいて、出願が(特許および統制委員会(National Board of Patents and Regulations)により)公開に付されるかあるいは公開を経ずに国立特許および法規委員会による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。
【0812】
ATCC寄託番号PTA−1008
3頁
(英国)
出願人はここにおいて、微生物のサンプルの供与は専門家に対してのみ利用可能にされる旨を、請求する。この旨の請求は、出願の国際公表のための規則上の準備が完了する前に、出願人により国際事務局に対してなされなければならない。
【0813】
(デンマーク)
出願人はここにおいて、出願が(デンマーク特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにデンマーク特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、デンマーク特許法第22条および第33条(3)に基づき出願が公に利用可能にされる時点以前に、出願人によりデンマーク特許庁に対してなされるものとする。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、デンマーク特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0814】
(スウェーデン)
出願人はここにおいて、出願が(スウェーデン特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにスウェーデン特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、優先日から16ヶ月が経過するよりも前に、出願人により国際事務局に対してなされるものとする(好ましくはPCT Applicant’s GuideのVolume Iのannex Zに記載された書式PCT/RO/134による)。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、スウェーデン特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0815】
(オランダ)
出願人はここにおいて、オランダ特許の発行日まで、あるいは出願が拒絶、取り下げあるいは放棄(lapsed)される日までは、特許法31F(1)の規定に基づき、微生物は専門家へのサンプル供与の形でのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、オランダ王国特許法の第22C条または第25条に基づき出願が公に利用可能にされる日のうちいずれか早い方の日付よりも前に、出願人によりオランダ工業所有権局に対して提出されるものとする。

Claims (22)

  1. 単離された核酸分子であって、以下:
    (a)配列番号Xに示されるポリヌクレオチド、またはATCC受託番号Zに含まれるcDNAによってコードされるポリヌクレオチド;
    (b)配列番号Yの生物学的に活性なポリペプチドフラグメント、またはATCC受託番号Zに含まれるcDNA配列によってコードされる生物学的に活性なポリペプチドフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
    (c)配列番号Yのポリペプチドエピトープ、またはATCC受託番号Zに含まれるcDNA配列によってコードされるポリペプチドエピトープをコードする、ポリヌクレオチド;
    (d)(a)〜(c)において特定されるポリヌクレオチドのいずれか1つにストリンジェント条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであって、ここで、該ポリヌクレオチドは、A残基のみまたはT残基のみのヌクレオチド配列を有する核酸分子に、ストリンジェント条件下でハイブリダイズしない、ポリヌクレオチド、
    からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
  2. 前記ポリヌクレオチドが、可溶性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  3. 前記ポリヌクレオチドが、配列番号Yとして同定される配列をコードするヌクレオチド配列、またはATCC受託番号Zに含まれるcDNA配列によってコードされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  4. 前記ポリヌクレオチドが、配列番号Xの全体のヌクレオチド配列、またはATCC受託番号Zに含まれるcDNAを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
  5. 前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項2に記載の単離された核酸分子。
  6. 前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
  7. 請求項1に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターを含む、宿主細胞。
  9. 遺伝子発現を制御する異種調節エレメントに作動可能に連結されている請求項1に記載の核酸分子を含む、組換え宿主細胞。
  10. 請求項9に記載の宿主細胞からコードされたポリペプチドを発現する工程、および該ポリペプチドを回収する工程を包含する、ポリペプチドの産生方法。
  11. 単離されたポリペプチドであって、以下:
    (a)配列番号Yに示されるポリペプチド、またはcDNAによってコードされるポリペプチド;
    (b)配列番号Yのポリペプチドフラグメント、またはcDNAによってコードされるポリペプチド;
    (c)配列番号Yのポリペプチドエピトープ、またはcDNAによってコードされるポリペプチド;および
    (d)配列番号Yの改変体、
    からなる群より選択される配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  12. 配列番号Yを有するポリペプチドを含む、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
  13. 請求項11に記載の単離されたポリペプチドに特異的に結合する、単離された抗体。
  14. 請求項11に記載の単離されたポリペプチドを発現する、組換え宿主細胞。
  15. 単離されたポリペプチドを作製する方法であって、以下: (a)該ポリペプチドが発現されるような条件下で、請求項14に記載の組換え宿主細胞を培養する工程;および
    (b)該ポリペプチドを回収する工程、
    を包含する、方法。
  16. 請求項15に記載の方法によって産生される、ポリペプチド。
  17. 医学的状態を予防、処置、または緩和する方法であって、請求項1に記載のポリヌクレオチドの治療有効量を、哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、方法。
  18. 被験体における病理学的状態、または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、以下:
    (a)請求項1に記載のポリヌクレオチドにおける変異の存在または非存在を決定する工程;および
    (b)該変異の存在または非存在に基づいて病理学的状態、または病理学的状態に対する感受性を診断する工程、
    を包含する、方法。
  19. 被験体において病理学的状態、または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、以下:
    (a)生物学的サンプルにおける請求項11に記載のポリペプチドの発現の存在または量を決定する工程;および
    (b)該ポリペプチドの発現の存在または量に基づいて病理学的状態、または病理学的状態に対する感受性を診断する工程、
    を包含する、方法。
  20. 請求項11に記載のポリペプチドに対する結合パートナーを同定する方法であって、以下:
    (a)請求項11に記載のポリペプチドを結合パートナーと接触させる工程;および
    (b)該結合パートナーが該ポリペプチドの活性をもたらすか否かを決定する工程、
    を包含する、方法。
  21. 請求項11に記載のポリペプチドの活性を改変する分子をスクリーニングする方法であって、以下:
    (a)該ポリペプチドを、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を有すると疑われる化合物と接触させる工程;および
    (a)該ポリペプチドの活性をアッセイする工程;
    を包含する、方法。
  22. 医学的状態を予防、処置、または緩和する方法であって、請求項11に記載のポリペプチドの治療有効量を、哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、方法。
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