JP2004500006A - 核酸が結合した比色アナライト検出器 - Google Patents

核酸が結合した比色アナライト検出器 Download PDF

Info

Publication number
JP2004500006A
JP2004500006A JP2000556063A JP2000556063A JP2004500006A JP 2004500006 A JP2004500006 A JP 2004500006A JP 2000556063 A JP2000556063 A JP 2000556063A JP 2000556063 A JP2000556063 A JP 2000556063A JP 2004500006 A JP2004500006 A JP 2004500006A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nucleic acid
biopolymer material
biopolymer
group
pda
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000556063A
Other languages
English (en)
Inventor
チャリク,デボラ,エイチ.
ヨナス,ユルリッヒ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of California
Original Assignee
University of California
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from US09/337,973 external-priority patent/US6306598B1/en
Application filed by University of California filed Critical University of California
Priority claimed from PCT/US1999/014029 external-priority patent/WO1999067423A1/en
Publication of JP2004500006A publication Critical patent/JP2004500006A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/30Against vector-borne diseases, e.g. mosquito-borne, fly-borne, tick-borne or waterborne diseases whose impact is exacerbated by climate change

Abstract

本発明は、生体高分子材料の色の変化を検出することによりアナライトおよび膜のコンホメーション変化を直接検出するための方法ならびに組成物に関する。特に、本発明は、表面またはポリジアセチレンリポソームおよび関連分子層システムでの核酸リガンドを用いたアナライトの直接比色検出を提供する。

Description

【0001】
本発明は、1998年6月22日に出願した米国仮出願番号60/090,266号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明はDOE協定番号DE−AC03−76SF00098の下、米国エネルギー省に一部補助を受けて達成された。米国政府は本発明に関して一定の権利を有するものである。
【0003】
発明の分野
本発明はアナライトの選択的結合に応答して起こる生体高分子材料の色の変化を用いてアナライトを直接検出する方法と組成物に関する。
【0004】
発明の背景
自動固相法によるDNA合成は、不溶性の支持体に結合した伸長していくDNA鎖に活性化ヌクレオチドを連続的に付加することでDNA断片を作成するものであるが、1塩基あたり約10分のペースで100ヌクレオチドまでのDNA鎖合成を提供する。この配列のわかった人工的なDNA鎖である一本鎖DNAプローブは、ハイブリダイゼーションによってDNAサンプル中の相補的な相手を見いだすために用いられてきた。一定の温度(Tm)以上では、DNA二重鎖は「解けて」二つの相補的なDNA一本鎖を形成し、それらは冷却すると再結合する。もし、サンプル由来の一本鎖にプローブDNAに相補的な配列があれば、それらはハイブリダイズし二本鎖を形成する。DNAハイブリダイゼーションの過程を検出することは、DNA合成や特異的な核酸の配列(たとえば変異体、病原体、特有の対立遺伝子)の検出のための方法やその組成物の開発に重要である。DNAハイブリダイゼーションを検出する一つのアプローチは水晶微振動器(quartz crystal microbalance)を使うものであり(Okahata ら. J.Am.Chem.Soc 114:8299,1992)、これはナノグラムレベルでの質量変化を測定する非常に高感度なデバイスである。もう一つのDNAハイブリダイゼーションを表面で検出する方法は、表面に繋いだサンプル−プローブDNAのニ本鎖に電気化学的蛍光発光(ECL)のマーカーを挿入することによるECLを利用するものである(Xu ら.J.Am.Chem.Soc.117:2627(1995))。しかし、両方の方法は、化学薬品やpHや温度などの干渉にかなり敏感で、しかも精巧な装置を必要とする。
【0005】
医学的、環境的、生物学的な応用の多岐にわたる範囲におけるこのようなデバイスの影響によって、DNAセンサーの分野における関心が高まりつつある(Fodor ら、Science 251:767−773[1991]、Maeda ら、Anal. Sciences 8:83−34、[1992]、Sakurai ら、Anal. Chem. 64:1996−1997[1992]、Okahata ら、J. Am. Chem. Soc. 114:8299−8300 [1992]、 Xu ら、J. Am. Chem. Soc. 117:2627−2631 [1995]、 Wang ら、Anal. Chem. 68:2629−2634 [1996]参照)。純粋な配列解析の応用に加えて、このようなDNAセンサーは感染性又は遺伝性の疾患の検出を助け、またRNAセンサーとしては、環境汚染を測定するために特定の代謝経路の発現レベルをモニターするのに役立つ。既知配列の合成オリゴヌクレオチドと任意のサンプル中のそれに対する相補鎖とのDNAハイブリダイゼーションは、DNAとRNAの検出や配列決定に、強力なツールを提供する。ハイブリダイゼーションの現象そのものは、通常、蛍光マーカーや放射性標識を導入したり、抗体アッセイと酵素反応を特異的に改変したDNA(またはRNA)の対に応用することによって、モニターされるが、これらの方法は一般的に集中的な労力と時間がかかる多段階の工程が必要である。
【0006】
それ故、裸眼で視覚的にモニターできるDNA検出を提供するアナライト検出器の必要性があり、それがあれば、他のいかなる検出法も旧式な不必要なものとなるであろう。
【0007】
発明の概要
本発明はアナライトの選択的結合に応答して起こる生体高分子材料の変色を用いてアナライトを直接検出するための方法並びに組成物に関する。一実施形態においては、生体高分子材料が自己集合性モノマーを含む。他の一実施形態では、自己集合性モノマーは脂質である。
【0008】
本発明では、多数の重合した自己集合性モノマーと1個以上の核酸リガンドからなる生体高分子材料が考えられる。ここでは、該生体高分子材料はアナライトの存在下で色調を変化させる。いくつかの実施形態では、核酸はアナライトに親和性を持つ。他の実施形態では、一本鎖核酸配列である。さらなる他の実施形態では、核酸リガンドは1個以上の共有結合を介して該重合した自己集合性モノマーに結合している。さらに他の一実施形態では、共有結合はアミン結合、チオール結合およびアルデヒド結合からなる群から選択される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態においては、生体高分子材料はアナライトに親和性のあるリガンドとして核酸を含む。一実施形態では、その核酸リガンドは、核酸分子、酵素、病原体、薬物、受容体リガンド、抗原、イオン、タンパク質、ホルモン、血液成分、抗体、およびレクチンからなる群から選択されるアナライトに対する親和性を有する。さらなる実施形態では、アナライトはあらゆる生物(細菌類、真菌類、ウイルス類などを含むが、これらに限らない微生物を含む)、細胞、プラスミド、あるいは発現ベクターからの核酸分子である。他の一実施形態では、核酸分子であるアナライトはリボソームRNA、トランスファーRNA、メッセンジャーRNA、イントロンRNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、DNA−RNAハイブリッド分子、PNA、PNA−DNAまたはPNA−RNAハイブリッド分子、ヒト病原体に特有な核酸配列、ヒト以外の病原体に特有な核酸配列、そして遺伝的異常に特有の核酸配列(たとえば嚢胞性線維症、ティ病、クレチン病、フェニルケトン尿症(PKU)、鎌状赤血球貧血、尿崩症、網膜芽細胞腫、血友病、デュッヘン型筋ジストロフィー、クラインフェルター症候群、ターナー症候群、トリソミー21(ダウン症候群))から選択される。さらなる実施形態では、アナライトは、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、リガーゼ、テロメラーゼ、および転写因子を含むがこれらに限定しない酵素である。
【0010】
本発明では、病原体であるアナライトに親和性を持つ核酸リガンドを含む生体高分子材料も考えられる。本発明は、なんらかの特殊な病原体アナライトに限定するという意味ではなく、あらゆる病原体アナライトが考えられる。一つの実施形態では、病原体をウイルス、細菌、寄生虫、真菌から選択した。さらなる実施形態では、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ほかの肝炎ウイルス、単純ヘルペス、ポリオウイルス、天然痘ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、ワクシニアウイルス、狂犬病ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、レトロウイルス、およびリノウイルスから病原体を選択した。別の一実施形態では、病原体は、大腸菌(Escherichia coli)、結核菌(Micobacterium tuberculosis)、サルモネラ菌(Salmonella)、クラミジア菌(Chlamydia)、連鎖球菌(Streptococcus)から選択した細菌である。さらに他の実施形態は、プラスモディウム(Plasmodium)、トリパノゾーマ(Trypanasoma)、トキソプラズマ・ゴンディー(Toxoplasma gondi)、オンコセルカ(Onchocerca)から選択した寄生虫を病原体とした。しかしながら、本発明は上述した特定の属や種に限定されるものではない。
【0011】
ある実施形態では、生体高分子材料は生体高分子フィルムを含む。他の実施形態では、生体高分子材料は生体高分子リポソームを含む。さらに他の実施形態では、生体高分子材料は、細管、編組アセンブリー、層状アセンブリー、螺旋アセンブリー、繊維様アセンブリー、溶媒和ロッド、および溶媒和コイルを含む一群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明における生体高分子材料の自己集合性モノマーは、ジアセチレンモノマーを含む。ある実施形態では、ジアセチレンモノマーは、5,7−ドコサジイン酸、5,7−ペンタコサジイン酸、10,12−ペンタコサジイン酸、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるが、本発明では全てのジアセチレンモノマーが考えられる。他の実施形態では、自己集合性モノマーは、アセチレン、アルケン、チオフェン、ポリチオフェン、イミド、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル、無水リンゴ酸、ウレタン、アリルアミン、シロキサン、アニリン、ピロール、ビニルピリジニウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。ある実施形態では、自己集合性モノマーはカルボン酸、ヒドロキシル基、アミン基、アミノ酸誘導体、及び疎水基からなる群より選択されるヘッド基を含むが、本発明によって他のヘッド基も考えられる。
【0013】
本発明は、さらにドーパント物質を含む生体高分子材料についても考えられる。しかし、本発明は特定のドーパント物質に限定せず、あらゆるドーパント物質が考えられる。一実施形態では、ドーパント物質は、界面活性剤、ポリソルベート、オクトキシノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、両性イオン洗浄剤、デシルグルコシド、デオキシコール酸塩、ジアセチレン誘導体、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルメタノール、カルジオリピン、セラミド、コレステロール、ステロイド、セレブロシド、リソホスファチジルコリン、D−エリスロシンゴシン、スフィンゴミエリン、ドデシルホスフォコリン、N−ビオチニルホスファチジルエタノールアミンから成る群より選択される。他の一実施形態では、ドーパント物質はシアル酸由来のジアセチレン、ラクトース由来のジアセチレン、アミノ由来のジアセチレンからなる群から選択されるジアセチレン誘導体である。
【0014】
本発明はさらに1以上の非核酸リガンドを含む生体高分子材料も意図する。しかし、本発明は特定の非核酸リガンドに限定することを意味せず、あらゆる非核酸リガンドが考えられる。一実施形態では、非核酸リガンドは、炭水化物、タンパク質、薬剤、クロモフォア、抗原、キレート化合物、分子認識複合体、イオン基、重合性基、リンカー基、電子供与体、電子受容基、疎水基、親水基、受容体結合基、三糖類、四糖類、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGT1b、シアル酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、生体高分子材料はさらに支持体を含み、生体高分子材料は支持体に固定化されている。ある実施形態では、支持体は、ポリスチレン、ポリエチレン、テフロン、雲母、セファデックス、セファロース、ポリアクリロニトリル、フィルター、ガラス、金、シリコンチップ、及びシリカから選択される。他の実施形態では、支持体は多孔性シリカガラスからなり、多孔性シリカガラスの内部に生体高分子材料が固定化されている。しかしながら、本発明は他のあらゆる支持体も意図する。
【0016】
本発明はまた上述の一以上の生体高分子材料を含むデバイスを提供する。そこでは、生体高分子材料はデバイスに固定されている。
【0017】
本発明はさらに、アナライトの存在を検出する方法を提供する。特に好ましい実施形態では、該方法は、多数の重合した脂質モノマーおよび一以上のリガンドを含む、アナライトが存在すると色調変化をおこす生体高分子材料と、アナライトを含んでいると推測されるサンプルを提供するステップ、生体高分子材料がサンプルと接触するステップ、および生体高分子材料の変色を検出するステップで構成される。いくつかの実施形態では、リガンドは核酸リガンドである。
【0018】
さらに、本発明はDNAハイブリダイゼーションを比色検出する方法のような分析法における生体高分子材料を提供する。本発明はまた核酸ハイブリダイゼーションの存在を検出する方法を提供する。特に好ましい実施形態では、該方法は、検出されるべき一以上の核酸ハイブリッドと、多数の重合した脂質モノマーおよび検出すべき核酸に親和性を有する一以上のリガンドを含む生体高分子材料とを提供するステップ、検出されるべき核酸と生体高分子材料を接触させるステップ、および核酸の存在を検出するステップを含む。
【0019】
定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語と語句を下記に定義する。
【0020】
本明細書において、「核酸分子」は、DNAやRNAを含むが、それに限定されないあらゆる核酸を指す。この語は、既知のDNAとRNAの塩基類似体のいずれをも含む配列を意味するものである。その塩基類似体とは、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシーN6メチルアデノシン、アジリヂニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジハイドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル1,2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、2,6−ジアミノプリンを含むが、これらに限定しない。
【0021】
本明細書において、「オリゴヌクレオチド」とは長さの短い一本鎖ポリヌクレオチド鎖を意味する。オリゴヌクレオチドは典型的には100残基より短い(たとえば15〜50残基)が、しかし、本明細書において、は、もっと長いポリヌクレオチド鎖も意味する。オリゴヌクレオチドはその長さによって示されてる場合が多い。たとえば、24残基オリゴヌクレオチドは24merと記される。オリゴヌクレオチドは自己ハイブリダイズするか、あるいは他のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることにより二次構造や三次構造を形成する。そのような構造は二重らせん、ヘアピン、十字型、弓形、三重らせんも含むが、これらに限るものではない。
【0022】
本明細書において、「相補的」あるいは「相補性」という語は塩基対形成の法則によって関係づけられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して用いられる。たとえば、「A−G−T」という配列は「T−C−A」の配列に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、その場合、いくつかの核酸塩基だけが塩基対形成の法則によって対合する。もしくは、核酸間で「完全」もしくは「全体的」な相補性もあり得る。核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率や強度に有意な影響を及ぼす。これは、核酸間の結合による検出方法と同様、増幅反応においても特に重要である。
【0023】
「相同性」という語は相補性の程度を指す。部分的相同性、又は、完全な相同性(すなわち同一性)がありうる。部分的に相補的な配列とは、完全に相補的な配列が、機能的な用語「実質的に相同的」という語を使って表される標的の核酸ハイブリダイズするのを少なくとも部分的に妨げるものである。完全に相補的な配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は低いストリンジェンシー条件でのハイブリダイゼーションアッセイ(サザンブロット、ノーザンブロット、液体ハイブリダイゼーションなど)を用いて調べられる。実質的に相同的な配列またはプローブは、低ストリンジェンシー条件下で完全に相同的な配列の標的への結合(ハイブリダイゼーション)について競合してそれを阻害する。これは低ストリンジェンシー条件が非特異的な結合を許容するような条件をいうのではなく、低ストリンジェンシー条件は、2本の配列の互いへの結合が特異的(つまり選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的な結合がないことは部分的な相補性さえ欠く第2の標的(たとえば約30%以下の同一性のもの)を用いて調べることができる。すなわち、非特異的な結合がない場合、そのプローブは第2の非相補的な標的にハイブリダイズしない。
【0024】
当技術分野では低ストリンジェンシーを構成するためには多数の同等の条件がを使用できることが公知であり、すなわちプローブの長さや性質(DNA、RNA、塩基組成)、標的の性質(DNA、RNA、塩基組成、溶液中に存在するかあるいは固定されているのかなど)、塩の濃度や他の成分(たとえばホルムアミド、デキストラン硫酸塩、ポリエチレングリコールが存在するか否か)というような要因が考慮され、また、上に列挙した条件と異なっても同等である低ストリンジェンシーの条件を作るために、ハイブリダイゼーション溶液を様々に変えることもできる。さらに、当技術分野では高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイゼーションを促進する条件(例えば、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄ステップの温度を上げる、ハイブリダイゼーション溶液にホルムアミドを用いる、など)も公知である(「ストリンジェンシー」については下記の定義参照)。
【0025】
cDNAやゲノムクローンなどのニ本鎖核酸配列に関して用いられる場合、「実質的に相同的」という語は、上述の低ストリンジェンシー条件下で、ニ本鎖核酸配列どちらか一方あるいは両方の鎖に、ハイブリダイズしうるあらゆるプローブを指す。
【0026】
一本鎖核酸配列に関して用いられる場合、「実質的に相同的」という語は、上述の低ストリンジェンシー条件下で一本鎖核酸配列にハイブリダイズしうる(すなわち相補的である)あらゆるプローブを意味する。
【0027】
本明細書において、「ハイブリダイゼーション」という語は、相補的な核酸が対になることに関して用いている。ハイブリダイゼーションとハイブリダイゼーションの強度(すなわち核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関係する条件のストリンジェンシー、形成したハイブリッドのTm、核酸中のG:Cの割合などの要因により影響される。一分子の構造内で相補的な核酸が対をなしたものを含む一分子は「自己ハイブリダイズした」という。
【0028】
本明細書において、「Tm」という語は、「融解温度」に関して用いられている。融解温度は二本鎖核酸分子集団の半数が一本鎖に解離する温度である。核酸のTmを計算する式は当業者に公知である。標準的な文献に示されているように、核酸が1MのNaCl水溶液内にあるときは、Tm値の単純な推定は次の式で計算される:Tm=81.5+0.41(%G−C)(例えばAnderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization [1985]参照)。他の文献では、配列の特徴と同様に構造の特徴もTmの計算に導入したさらに高度な計算方法が含まれる。
【0029】
本明細書において、「ストリンジェンシー」という語は温度、イオン強度、有機溶媒などの他の化合物の存在、という核酸のハイブリダイゼーションを実施する条件について用いられる。「高ストリンジェンシー」条件下では、核酸塩基対の形成は、相補的塩基配列を高頻度で有している核酸断片同士だけでおこる。そして、「弱い」または「低い」ストリンジェンシーの条件は、遺伝的に多様化した生物由来の核酸は、通常相補的な配列の頻度がより低いので、そのような場合によく要求される。
【0030】
本明細書において、「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、クローニングや精製をせずにゲノムDNAの混合物中の目的配列の断片の濃度を増加させる方法を記しているK.B.Mullis の米国特許番号第4,683,195号、第4,683,202号、第4,965,188号(参照によりここに組み入れる)の方法を指す。標的配列を増幅させるこの方法は、求める標的配列を含むDNA混合物に大過剰量の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを加えて、DNAポリメラーゼ存在下で温度サイクルを正確に連続的に行うものである。その2つのプライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を行うために、混合物を変性させた後プライマーを標的分子の相補的な配列にアニールさせる。アニーリングに次いで、プライマーは相補的な鎖の新しい対を作るためにDNAポリメラーゼによって伸長する。変性、プライマーアニーリング、及びポリメラーゼによる伸長の各ステップは、標的配列の増幅断片が求める濃度になるように何度も繰り返す(つまり、変性、アニーリング、伸長を1「サイクル」として、多くの回数行う)。求める標的配列の増幅した断片の長さは、それぞれのプライマーの相対的な位置によって決まるので、長さは制御できるパラメーターである。この繰り返すという特徴から、この方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下PCR)と呼ばれている。標的配列の所望の増幅断片は混合液中で(濃度の点からみて)優勢な配列になるので、それらは「PCR増幅された」と言われる。
【0031】
PCRによって、いくつかの異なる方法論(たとえば、標識化プローブとのハイブリダイゼーション、ビオチン化プライマーの取り込みとその後のアビジン結合酵素による検出、32P−標識デオキシヌクレオチド三リン酸、(dCTPやdATPなど)の増幅断片への取り込み)によって検出できるレベルにまでゲノムDNA内の特定の標的配列を増幅できる。ゲノムDNAに加えて、あらゆるオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチド配列が、適切なプライマー分子のセットを用いて増幅しうる。特にPCRによって作られた増幅断片は、それ自体が後続のPCR増幅反応において有効な鋳型となる。
【0032】
ここで用いる、「PCR産物」、「PCR断片」、「増幅産物」の語は、変性、アニーリング、伸長、というPCRの各ステップのサイクルを2回以上行った後に、結果として得られる化合物の混合物のことをいう。これらの語は1以上の標的配列の1以上の断片を増幅させた場合にも適用する。
【0033】
本明細書において、「アンチセンス」という語は、特異的なDNAまたはRNA(たとえばmRNA)の配列に相補的なDNAまたはRNAの配列に関して用いられている。細菌の遺伝子制御に関与するアンチセンスRNA(asRNA)分子もこの定義に含まれる。アンチセンスRNAは、コード鎖の合成を可能にするウイルス性プロモーターに対して逆方向に目的の遺伝子をスプライシングすることによる合成を含む、何らかの方法により作られる。この転写された鎖が一度胚に導入されると、二本鎖を形成するように胚で作られた天然のmRNAと結合する。そして、これら二本鎖は、さらなるmRNAの転写やその翻訳を阻害する。このようにして、突然変異体の表現型が生まれうる。「アンチセンス鎖」という語は「センス」鎖に対して相補的な核酸鎖に関して用いられる。(−)(つまりマイナス)の記号は、ときにはアンチセンス鎖について用いられ、(+)の記号はときにはセンス(プラス)鎖について用いられる。
【0034】
本明細書において、「非合成的合成(non−synthetic synthesis)」という語は、そのアセンブリーの1以上の構成要素がポリマーの主鎖の一部ではない生体高分子材料の合成を指す。たとえば、本発明のいくつかの実施形態では、ガングリオシドはアナライト(たとえばコレラ毒素)の直接検出にリガンドとして用いられる。そこでは、ガングリオシドリガンドはアセンブリーに取り込まれるが、重合した網状構造の一部分ではない。
【0035】
本明細書において、「反応」という語は、ある物質(たとえば分子、膜、分子集合体)が他の物質と結合する、または、構成成分を他の物質と交換する、又は分解する、再配列する、あるいは他のやり方で化学的に改編されるなど、あらゆるの変化もしくは変換することを指す。本明細書で用いられる「反応手段」という語は、反応を開始するおよび/または触媒することのあらゆる方法を指す。そのような反応手段は酵素、温度変化、pHの変化を含むが、これらに限定しない。「該反応手段に対する親和性」という語句は、所定の反応手段に特異的に会合(例えば結合)する能力のある化合物に適用するが、それは必ずしもその反応手段の基質ではない。たとえば、PLA抗体は、PLAに対して親和性を持つが、酵素の基質ではない。
【0036】
本明細書において、「固定化」という語は、材料の移動を制限するためにもう一つの存在物(たとえば固相支持体)に物質が、化学的にあるいは他の手段で、結合すること、もしくは捕捉されることを指す。
【0037】
本明細書において、「材料」および[物質]という語は広い意味で、物質のあらゆる組成物を指す。
【0038】
本明細書において、「生体高分子材料」という語は高分子化した生物学的分子(たとえば、脂質、タンパク質、炭水化物、及びこれらの組み合わせ)からなる材料を指す。このような材料はフィルム、小胞、リポソーム、多層構造、凝集体、膜、溶媒和ポリマー(たとえば、溶媒和ロッドや溶媒和コイルのようなポリチオフェン凝集体)を含むが、これらに限定しない。いくつかの実施形態においては、生体高分子材料は重合マトリックスの一部をなしていない分子(すなわち、重合していない分子)も含む。
【0039】
本明細書において、「タンパク質」という語は2個以上のアミノ酸を含む全ての分子もしくは分子集合体について最大限広義に用いられる。このような分子はタンパク質、ペプチド、酵素、抗体、受容体、リポタンパク質、糖タンパク質を含むが、これらに限定するものではない。
【0040】
本明細書において、「抗体」という語は、動物の体内で免疫原(抗原)によって誘起される糖タンパク質をいう。1つの抗体は免疫原に対して、より具体的には、免疫原内の1以上のエピトープに対して、特異性を示す。天然の抗体は少なくとも2つの軽鎖ポリペプチドと少なくとも2つの重鎖ポリペプチドを持つ。各重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドは、抗原と相互作用する結合領域を含む可変領域(つまり、それぞれVH,VL)をポリペプチド鎖のアミノ末端の部分に有している。各重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドは、ホスト組織、又は免疫系の様々な細胞やいくつかの食細胞や古典的補体システムの第一因子(C1q)に影響する因子に免疫グロブリンが結合するのを仲介するポリペプチド鎖の定常領域(一般的にはカルボキシ末端)を含んでいる。軽鎖のその定常領域は、「DL領域」といい、重鎖の定常領域は「CH領域」という。重鎖の定常領域はCH1領域、CH2領域、CH3領域を含む。重鎖のCH1領域とCH2領域の間の部分はヒンジ領域(つまり「H領域」)という。細胞表面型の抗体の重鎖の定常領域はさらに膜カルボキシ末端にスペーサー−膜貫通領域(M1)と細胞質領域(M2)を含む。分泌型の抗体は一般的にM1とM2領域を欠損している。
【0041】
本明細書において、「生体高分子フィルム」という語は、薄片や層状構造に用いられる重合有機フィルムをいう。このフィルムは、単分子層、二分子層、多分子層を含むが、これらに限らない。生体高分子フィルムは生物学的細胞膜に(たとえば、タンパク質やアナライトのような他の分子と相互作用する能力などにおいて)似ている。
【0042】
本明細書において、「ゾル−ゲル」という語は多孔性の酸化金属ガラス構造体からなる調製物をいう。この構造体は、多孔性構造の内部に捕捉された生物的またはほかの材料を含んでいてもよい。「ゾル−ゲルマトリックス」という語句は捕捉された物質を有する、もしくは有しない、多孔性酸化金属ガラスを含む。「ゾル−ゲル物質」という語句は、ガラス材そのものを含むゾル−ゲルの加工によって調整される全ての材料と、多孔性構造のガラスに捕捉される全ての物質をいう。ここで用いるように、「ゾル−ゲル法」という語は多孔性酸化金属ガラスを作り出す全ての方法をいう。いくつかの実施形態では、「ゾル−ゲル法」は、緩和な温度条件で行われる方法をいう。「ゾル−ゲルガラス」および「酸化金属ガラス」という語は、ゾル−ゲル法によって調製されたガラス材をいい、無機材料や有機無機混合材料物質の混合物を含む。ガラスの作製に使われる材料は、アルミン酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、オルモシル(有機的に改変したシラン)、及び他の金属酸化物を含むが、これらに限定しない。
【0043】
本明細書において、「直接比色検出」という語は、介在する処理ステップ(たとえば、色の変化を解析装置によって処理された電気的シグナルに変換するなど)に頼らずに、色の変化を検出することをいう。この用語は、単純な分光分析による検出と同様、視覚的な観察(たとえば、人の目による観察)を含むものである。
【0044】
本明細書において、「アナライト」という語は、分析される全ての物質をいう。この物質には、イオン、分子、抗原、細菌、化合物、ウイルス、細胞、抗体、細胞部分が含まれるが、これらに限定しない。
【0045】
本明細書において、「選択的結合」という語は、特有の分子構造の存在に依存した方法(たとえば、特異的結合など)で、一つの物質がほかの物質に結合することを指す。たとえば、受容体は、そのリガンド結合部位に相補的な化学的構造を有するリガンドと選択的結合をする。これは相互作用が任意であって適合性に基づかない「非特異的結合」と対照的である。
【0046】
本明細書において、「バイオセンサー」という語は、部分的にあるいは全体的に生物学的分子からなるセンサーデバイスのあらゆるものを指す。伝統的な意味では、「生化学的なシグナルを定量可能な電気的シグナルに換える変換装置と緊密に接触している固定された生物学的物質(酵素、抗体、全細胞、組織、もしくはこれらの組み合わせなど)からなる分析ツールまたはシステム」(Gronow, Trends Biochem.Sci. 9:336 [1984])を指す。
【0047】
本明細書において、「変換装置」という語は、非電気的現象を電気的情報に変換して、その情報を電気的シグナルを解析する装置に伝えることのできる装置をいう。このような装置には、光度測定、蛍光測定、化学発光測定に使う装置、ファイバーオプティクスや直接的光学的検知器(たとえば、回折格子結合器)、表面プラズモン共鳴器、電位差測定や電流測定用電極、電界効果トランジスター、圧電検知器、表面音波計を含むが、これらに限定しない。
【0048】
本明細書において、「小型化」という語は、有用性(たとえば、携帯性、扱い易さ、アレイへの取り込み易さ)を高めるためにサンプルのサイズなどの、サイズを小さくすることを指す。
【0049】
本明細書において、「安定性」という語は、物質の、劣化や置換への抵抗力、および確実性や信頼性を提供する能力を指す。
【0050】
本明細書において、「コンフォメーション変化」という語は、物質の分子構造の変化を指す。単独の分子や分子集合体の構造の変化(たとえば、アナライトとの相互作用によるポリジアセチレンの構造変化)も含めた意味である。
【0051】
本明細書において、「小分子」という語は、リガンドに結合したり、リガンドと相互作用したり、コンフォメーション変化を起こす方法で生体高分子材料と相互作用する低分子量(つまり10,000原子質量単位以下で、より好ましくは、5,000原子質量単位以下)のあらゆる分子を指す。
【0052】
本明細書において、「病原体」という語は、ウイルス、細菌、寄生虫(原虫門、扇形動物門、袋形動物門、駒頭動物門、拙速動物門を含むが、これらに限定しない)、真菌類、プリオンを含むがこれらに限定しない、疾病の原因となる生物、微生物、又は媒介物に適用する。
【0053】
本明細書において、「細菌」と「細菌性」という語は、原核生物界の全ての門に属する全ての原核生物をいう。この用語は、マイコプラズマ、クラミジア、アクチノミセス、ストレプトミセス、リケッチアを含む細菌類として考え得る全ての微生物まで含むものである。球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラストなどを含む全ての細菌の型がこの定義には含まれる。「グラム陰性」及び「グラム陽性」とは、当業者に公知であるグラム染色法で得られる染色パターンを指している(Finegold and Martin. Diagnostic Microbiology, 6th Ed.(1982), CV Mosby St.Louis, pp13−15参照)。
【0054】
本明細書において、「膜」という語は、最も広義に、シート状や層状の材料を指す。全ての「生体膜」(つまり、細胞膜、核膜、細胞小器官膜、及び合成膜を含むが、これらに限らないあらゆる有機体の膜)を含むものである。典型的には、膜は、脂質、タンパク質、糖脂質、ステロイド、ステロール、及び/又は、他の成分からなる。本明細書で用いる「膜断片」という語は、膜の任意の一部分または一片を指す。「重合膜」の語は、部分的あるいは完全に重合化した膜を指す。
【0055】
本明細書において、「膜の再構築」及び「膜のコンフォメーション変化」の語句は、膜の構造におけるあらゆる変化を指す。そのような変化は、物理的な摂動、加熱、酵素的及び化学的反応、その他によって起こる。膜の再構築に至る反応とは、脂質の切断、重合、脂質のフリッピング(flipping)、膜貫通シグナリング、小胞形成、脂質化、グリコシル化、イオンチャネリング、分子再配列、リン酸化も含むが、これらに限定しない。膜の再構築に至る酵素的触媒作用は、遊離型の酵素が生体高分子材料と相互作用(たとえば、生体高分子材料中の酵素基質との反応)したり、特定のアナライト(例えば、ウイルス、細菌、毒素、その他)中に存在する酵素活性によって起こり得る。
【0056】
本明細書において、「脂質の切断」という語は、脂質や脂質を含む物質が2以上の部分に分断されるあらゆる反応を指す。「脂質の切断手法」は脂質の切断を開始する、及び/または、触媒するあらゆる手段を指す。このような脂質の切断手段は、酵素、フリーラジカル反応、温度変化を含むがこれらに限定しない。
【0057】
ここで用いられる「重合」という語は、小分子モノマーが、反復した単位からなる大分子へと変換されるあらゆる方法を含む。典型的には、重合化はモノマー同士の互いの化学的架橋を含む。
【0058】
本明細書において、「膜受容体」という語は、他の分子や物質と相互作用できる膜の構成要素を指す。このような構成要素はタンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0059】
ここで用いられている「揮発性有機化合物」または「VOC」という語は、反応性があり(つまり、揮発が速く、爆発性があり、腐食性がある、など)、概して、一定の濃度以上では人の健康又は環境に有害である有機化合物を指す。VOCの例は、アルコール、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、シクロヘキサンを含むが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書において、「酵素」という語は、化学的及び生物学的反応の触媒を担う分子又は分子群を指す。このような分子は、概して、タンパク質であるが、短いペプチド、RNA、リボザイム、抗体、又は他の分子である。
【0061】
ここで用いている、「基質」または「基体」という語は、ひとつの意味は、酵素又は他の反応手段が作用する材料もしくは物質を指す。もう一つの意味では、サンプルが伸長、もしくは接着する表面を指す。「反応基質」の語は反応手段の基質を指す(たとえば、脂質切断手段により反応する「基質脂質」)。ここに用いられる「アナライト基質」という語はアナライトが反応する材料や物質を指す。たとえとして、アナライトは酵素であり得、するとアナライト基質は酵素基質である。もうひとつの意味では、アナライトは病原体であり得るので、アナライト基質は、病原体に関連した反応手段により変化する物質やサンプルを意味する。
【0062】
本明細書において、「リパーゼ」という語は、脂質内のエステル結合に働く加水分解酵素のあらゆるグループを指す。このようなリパーゼは、トリアシルグリセロールの加水分解を触媒する膵リパーゼ、トリアシルグリセロールのグリセロールと遊離型の脂肪酸への加水分解を触媒するリポプロテインリパーゼ、ホスホリパーゼ、他を含むが、これらに限定されない。「ホスホリパーゼ」という語は、リン脂質を炭素−酸素間結合、またはリン−酸素間結合の加水分解により切断する酵素を指す。ホスホリパーゼはホスホリパーゼA、A、C、およびDを含むがこれらに限定されない。
【0063】
本明細書において、「薬物」という語は、疾病や疾病状態を診断、治療または予防するのに用いられる一物質、または複数の物質を指す。薬物は、生きている生物、組織、細胞、またはそれらが曝されるin vitro系の生理学的な変化を起こすことによって作用する。この語は、抗細菌性、抗真菌性、抗ウイルス性の化合物を含むがこれらに限定されない抗微生物薬を含むものである。また、この語は、天然或いは合成された化合物、組み換えDNA技術により産生された化合物などの抗生物質も含むものである。
【0064】
本明細書において、「ペプチド」という語は、二つ以上のアミノ酸から構成されるあらゆる物質を指す。
【0065】
本明細書において、「炭水化物」という語は、糖、でんぷん、セルロース、キチン、グリコーゲン、および同様の構造のものを含むが、これらに限定されない分子種を指す。炭水化物は糖脂質および糖タンパク質の構成成分としても存在しうる。
【0066】
本明細書において、「発色団」という語は、化合物、物質、またはサンプルの色調の原因となる分子や分子団をいう。
【0067】
本明細書において、「抗原」という語は、少なくとも一つの抗体によって認識されるあらゆる分子や分子団をいう。定義によれば、抗原は少なくとも一つのエピトープ(つまり抗体により認識されうる特定の生化学的単位)を有していなければならない。「免疫原」という語は、抗体の産生を誘導するあらゆる分子、化合物、または集合体である。定義によれば、免疫原は、少なくとも一つのエピトープ(つまり免疫応答の原因となりうる特定の生化学的単位)を有していなければならない。
【0068】
本明細書において、「キレート化合物」という語は、閉じた環状構造を完成する配位結合から構成される、またはこの配位結合を有する化合物を指す。この化合物は、少なくとも二つの非金属イオンに配位結合によって結合した形で金属イオンに結合させることができる。
【0069】
本明細書において、「分子認識複合体」という語は、分子を認識する(例えば、特異的に相互作用する)ことができる分子、分子団、分子複合体を指す。例えば、受容体のリガンド結合部位は分子認識複合体と考えられるであろう。
【0070】
本明細書において、「周囲条件」という語は、環境を取り巻く条件(例えば実験を行う室内温度や室外環境など)を指す。
【0071】
本明細書において、「室温」とは、厳密に言えば、約20〜25℃の温度を指す。しかし、一般的には、実験の行われる一般的な場所の周囲の温度を指す。
【0072】
本明細書において、「ホームテスト」や「処置位置テスト(point of care testing)」という語は、実験室環境の外で行った試験を指す。このような試験は、例えば、患者の傍などと同じく、個人住居、職場、公有もしくは私有地、車中、水の中のような室内か室外で行える。
【0073】
本明細書において、「脂質」という語は有機溶剤に可溶性の特徴を示す様々な化合物を指す。このような化合物は、脂肪、ワックス、ステロイド、ステロール、糖脂質、グリコスフィンゴ脂質(ガングリオシドを含む)、リン脂質、テルペン、脂溶性ビタミン、プロスタグランジン、カロテン、クロロフィルを含むがこれらに限定されない。本明細書において、「脂質ベース材料」とは脂質を含むあらゆる材料をいう。
【0074】
本明細書において、「ウイルス」という語は、いくつかの例外はあるが、光学顕微鏡では観察できず、独立の代謝系を欠く、生きている宿主細胞の中でのみ複製可能な微小な感染性の因子を指す。個々の粒子(ウイルス粒子)は核酸とタンパク質の殻または外膜からなり、いくつかのウイルス粒子は、膜を含む脂質も有している。「ウイルス」という語は、動物、植物、ファージ、および他のウイルスを含めて全てのタイプのウイルスを含む。
【0075】
本明細書において、「遊離型浮遊凝集体」という語句は固定化されていない凝集体を指す。
【0076】
本明細書において、「カプセル化」という語は、二種以上の物質を包み、入れ、または結合するプロセスを指し、カプセル化される材料は、カプセル化材内またはカプセル化材上に固定される。
【0077】
本明細書において、「光学的透明度」という語は、可視光検出器(例えば目や検出装置)により光が観察されるような光を透過できる物の性質を指す。
【0078】
本明細書において、「生物学的不活性」という語は、材料が生物学的な材料と化学的に反応しないような材料の性質を指す。
【0079】
本明細書において、「有機溶媒」という語は、他の物質を溶解することのできるあらゆる有機的分子を指す。例えば、クロロホルム、アルコール、フェノール、エーテル等であるがこれらに限定されない。
【0080】
本明細書において、「ナノ構造」という語は、概してナノスケールで測定される微視的な構造をいう。そのような構造はリポソーム、フィルム、多層構造、網状構造、層状構造、螺旋構造、管状構造、繊維様構造、およびこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な三次元的集合体を含む。そのような構造は、いくつかの実施形態では、ロッドやコイルのような凝集した形で溶媒和ポリマーとして存在しうる。
【0081】
本明細書において、「フィルム」という語は、薄い切片や層状形態で蒸着または用いられているあらゆる物質を指す。
【0082】
本明細書において、「小胞」という語は、小さな囲まれた構造を指す。しばしばこの構造は脂質、タンパク質、糖脂質、ステロイド、または膜に結合した他の構成成分からなる膜である。小胞は、自然界で作られ(例えば、細胞質に存在し、分子を輸送し、かつ特殊な細胞機能を区画する小胞)、また合成もされうる(例えばリポソーム)。
【0083】
本明細書において、「リポソーム」という語は、水溶性の培養液から隔離することができる人工的に作られた球状脂質複合体をいう。「リポソーム」と「小胞」という語はここでは相互に置換可能である。
【0084】
本明細書において、「生体高分子リポソーム」という語は、全部または一部が生体高分子材料で構成されるリポソームを指す。
【0085】
本明細書において、「細管」という語は小さな中空円筒型の構造をいう。
【0086】
本明細書において、「溶媒和ポリマー」、「溶媒和ロッド」および「溶媒和コイル」という語は水溶液に可溶性の重合した材料を指す。
【0087】
本明細書において、「多層」という語は、2以上の単層からなる構造を指す。個々の単層はお互いに化学的に相互作用しており(例えば、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、水素結合、疎水性または親水性集合、および立体障害による)しており、新規な性質(つまり、単層単独のものとは異なる性質)を有するフィルムを生じる。
【0088】
本明細書において、「自己集合性モノマー」と「脂質モノマー」という語は自然に会合して分子集合体を形成する分子を指す。ある意味では、これは会合して界面活性状分子集合体を形成する界面活性剤分子を示しうる。「自己集合性モノマー」という語は、単独の分子(例えば、単独の脂質分子)および小さな分子集合体(例えば重合化脂質)を含む。ここでいう小さな分子集合体はそれぞれがさらに大きな分子集合体に凝集できる。「界面活性状分子集合体」は反対の極性を持つ化学基を有し、相の界面で方向性を有する単層を形成したり、ミセル(コロイド状に凝集したコロイド粒子)を形成したり、界面活性化作用、起泡性、湿潤性、乳化性、拡散性を有する、界面活性物質の集合体をいう。
【0089】
本明細書において、「ホモポリマー」という語は、一種類の重合分子種からなる材料をいう。「混合ポリマー」という語は、2以上の種類の重合分子種からなる材料を指す。
【0090】
本明細書において、「リガンド」という語は、別の構成要素と結合してさらに大きな複合体を形成するあらゆるイオン、分子、分子団、または他の物質を指す。リガンドの例はペプチド、炭水化物、核酸(例えばDNA、RNA)、抗体、または受容体に結合するあらゆる分子を含むがこれらに限定されない。
【0091】
本明細書において、「ドーパント」という語は、材料の性質を変えるために生体高分子材料に加えられる分子を指す。このような性質は比色応答、色、感度、耐久性、強度、固定化の順応性、温度感受性、pH感受性を含むが、これに限らない。ドーパント物質は、膜(例えば、リポソーム、およびフィルム)と結合できるもので、脂質、コレステロール、ステロイド、エルゴステロール、ポリエチレングリコール、タンパク質、ペプチド、またはあらゆる他の分子(例えば、界面活性剤、ポリソルベート、オクトキシノール、ドデシル硫酸ナトリウム、両性イオン性洗浄剤、デシルグルコシド、デオキシコール酸、ジアセチレン誘導体、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルメタノール、カルジオリピン、セラミド、セレブロシド、リゾホスファチジルコリン、D−エリスロシンゴシン、スフィンゴミエリン、ドデシルホスホコリン、N−ビオチニルホスファチジルエタノールアミン、および他の合成物か細胞膜の天然成分)を含むが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書において、「有機マトリックス」と「生物学的マトリックス」という語は、より大きな多分子構造に集合する有機的分子の集まりを指す。このような構造は、フィルム、単層、二層構造を含みうるが、これらに限定されない。本明細書において、「有機的単層」は炭素を基礎にした分子の単層からなる薄いフィルムを指す。ある実施形態では、このような単層は、極性分子で構成でき、それによって、このような単層は単層の片面全てに疎水性末端が並ぶ。「単層集合体」という語は、単層からなる構造をいう。「有機高分子マトリックス」とは、マトリックスの構成分子のいくつか或いは全てが重合化した有機マトリックスを指す。
【0093】
本明細書において、「ヘッド基」と「ヘッド基官能基」という語は、分子の末端に存在する分子基(例えば、脂肪酸の末端にあるカルボン酸基)を指す。
【0094】
本明細書において、「親水性ヘッド基」という語は、水素結合、ファンデルワールス力、イオン相互作用、共有結合を含むが、これらに限定されない、化学的相互作用で実質的に水に引き寄せられる分子の末端を指す。本明細書において、「疎水性ヘッド基」という語は、他の疎水性要素と自己会合し、水から排斥される分子末端を指す。
【0095】
本明細書において、「カルボン酸ヘッド基」という語は、分子末端に、または末端近くに、1以上のカルボキシル基(−COOH)を含む有機化合物をいう。カルボン酸という語は遊離型か、塩もしくはエステルとして存在するカルボキシル基を含む。
【0096】
本明細書において、「検出ヘッド基」という語は、成分(例えば、アナライト)の検出に関与する分子の末端に含まれる分子基を指す。
【0097】
本明細書において、「リンカー」または「スペーサー分子」という語は、一つの構成要素を別の構成要素とつなぐ物質を指す。ある意味では、分子または分子基は二つ以上の分子を共有結合させるリンカーであり得る(例えば、リガンドの自己集合性モノマーへの連結)。
【0098】
本明細書において、「高分子重合表面」という語は、さらなる材料の集合のための表面をもたらす高分子材料(例えば、リガンドの結合および集合のための表面をもたらすフィルムやリポソームの生体高分子表面)を指す。
【0099】
本明細書において、「形成支持体」という語は、材料の生成用の物理的な支持体をもたらすあらゆるデバイスや構造をいう。いくつかの実施形態では、形成支持体はフィルムを層状にするおよび/または圧縮するための構造を提供する。
【0100】
本明細書において、「ジアセチレンモノマー」という語は、2つのアルキン結合(つまり炭素/炭素3重結合)を有する炭化水素の一式を指す。
【0101】
本明細書において、「標準トラフ」と「標準ラングミュア−ブロジェットトラフ」という語は、通常テフロン製のラングミュアフィルムの作成に使われる装置をいう。この装置は、水溶液を保持するリザーバーと、水溶液の上に層状になるフィルム物質を圧縮するための可動バリアをもつ(Roberts, Langmuir−Blodgett Films, Plenum, New York, [1990]など参照)。
【0102】
本明細書において、「結晶形態」という語は、結晶の型、配向性、構成(テクスチャー)、およびサイズを含みうるが、これらに限らない、結晶の構成や構造を指す。
【0103】
本明細書において、「ドメイン境界」という語は、重合化フィルム分子が均一の方向性を示す領域の境界を指す。例えば、ドメイン境界は、断続的に規則正しく配置したポリジアセチレン材料の物理的構造でありうる(例えば細溝、隆線、溝)。
【0104】
本明細書において、「ドメインサイズ」という語は、ドメイン境界の間の特有の長さを指す。
【0105】
本明細書において、「コンジュゲート主鎖」および「ポリマー主鎖」という語は、巨視的なサイズで、物理的な隆起線や細溝を示す重合化ジアセチレンフィルムのene−yneのポリマー主鎖を指す。「ポリマー主鎖軸」は、コンジュゲート主鎖と平行に走る虚軸をいう。「イントラ主鎖」および「インター主鎖」という語は、それぞれ、ある一つのポリマー主鎖内の領域、ポリマー主鎖間の領域を指す。主鎖は、鋳型表面に沿って伸びる一連の線状構造、或いは「線状の細溝」を作り出す。
【0106】
本明細書において、「結合」という語は分子の原子間、および結晶内のイオン間や分子間の連結を指す。「一重結合」という語は、結合軌道上に位置する2個の電子での結合を指す。分子記号上では原子間の一重結合は2個の原子の間の1本線で表される(例、C−C)。「二重結合」という語は2対の電子対を共有する結合を指す。二重結合は一重結合より強く、かつ反応性に富む。「三重結合」という語は、3対の電子対を共有するものを指す。本明細書において、「ene−yne」という語は、交互の二重結合と三重結合を指す。本明細書において、「アミン結合」、「チオール結合」および「アルデヒド結合」という語は、それぞれ、アミン基(つまり、アンモニアの1以上の水素原子が炭化水素基によって置換された化学基)、チオール基(つまり、アルコールの硫黄類似体)、アルデヒド基(つまり、−CHOが他の炭素原子に直接結合した化学基)とほかの原子または分子との結合を指す。
【0107】
本明細書において、「共有結合」という語は、それぞれの原子から1個ずつ提供される2個の電子を共有することによる2個の原子間の結合をいう。
【0108】
本明細書において、「吸収」という語は、ある意味では、光の吸収を指す。光は、もしサンプルに反射されたりサンプルを透過したりしなければ、吸収される。色を呈するサンプルは、それが見えている色に相当する波長以外の白色光の全波長を選択的に吸収している。
【0109】
本明細書において、「スペクトル」の語は、波長に従って配列した光エネルギーの分布を指す。
【0110】
本明細書において、「可視スペクトル」の語は、約360nmから約800nmの波長を含む光をいう。
【0111】
本明細書において、「紫外線照射」の語は、可視光より低波長で(つまり、約360nM以下)かつエックス線より高波長(つまり、約0.1nM以上)の波長の照射にさらすことを指す。紫外線照射は可視光より大きなエネルギーをもち、それによって、光化学的反応の誘起により効果的である。
【0112】
本明細書において、「色調遷移」という語は、可視光の吸収の変化を起こす分子や材料の変化をいう。いくつかの実施形態では、色調遷移は、サンプルの光吸収の変化を指し、そこでは、その遷移に伴って検出できる色長変化がある。この検出は、視覚による観察や分光光度法を含むが、これらに限定されない、様々な方法で行われうる。
【0113】
本明細書において、「サーモクロミズム遷移」という語は、温度変化によって誘起される色調遷移を指す。
【0114】
本明細書において、「固相支持体」という語は、サンプルが積層または結合する固相の物質や表面を指す。固相支持体はガラス、金属、ゲル、ろ紙、などを含むがこれらに限定されない。「疎水性固相支持体」は、疎水性構成要素を引きつけ、水をはじくように化学的な処理を受けた、またはそのように作成された固相支持体をいう。
【0115】
本明細書において、「固相支持体」という語は、サンプルが層を形成、もしくは接着する固相の物質や表面を指す。固相支持体はガラス、金属、ゲル、フィルム紙、などを含むがこれらに限定しない。「疎水性固相支持体」は、疎水性構成要素を吸着し水をはじくように化学的な処理を受けた、またはそのように作成された固相支持体をいう。
【0116】
本明細書において、「フィルム周囲境界面(film−ambient interface)」という語は、周囲の環境や外気に曝されるフィルム表面を指す(つまり固相支持体に接触している表面ではない)。
【0117】
本明細書において、「形成溶媒」という語は、材料を望む場所に、(たとえば、膜形成のための表面に、或いは、乾燥させるためにリポソーム材料を沈着させる乾燥容器に)溶かしたり分配するために用いられるあらゆる媒体を指し、典型的には、揮発性有機溶媒である。
【0118】
本明細書において、「ミセル」という語は、親水性の外側と疎水性の内側を有するコロイドサイズの粒子を指す。
【0119】
本明細書において、「トポケミカル反応」という語は、特異的な位置で起こる反応を指す(たとえば、分子の特異的な部分で起こる反応、またはある分子の立体配置が存在するときのみに起こる反応)。
【0120】
本明細書において、「成形構造体」という語は望ましい形や大きさに材料を設計する鋳型として用いる固相支持体を指す。
【0121】
本明細書において、「アレイ」および「パターン化アレイ」という語は、材料やデバイスの中に要素(つまり構成要素)を配置することを指す。たとえば、異なるアナライト認識基を有する数種の生体高分子材料を組みあわせてアナライト検出デバイスとすることは、アレイを構成させ得る。
【0122】
これらに限定しない。
【0123】
本明細書において、「干渉物」という語は、検出すべきアナライトではなく、望ましくは、検出デバイスにより認識されないか、或いは目的のアナライトと区別されうる、アナライトサンプル中に存在する構成要素を指す。
【0124】
本明細書において、「バッジ」という語は、携帯可能で、アナライト検出環境中で作業を行う各個人が携帯または着用することのできるあらゆる装置を指す。
【0125】
本明細書において、「デバイス」という語は、生体高分子材料を入れるあらゆる器具(たとえば、マルチウェルプレート、バッジ)を指す。生体高分子材料はデバイスの中に固定されても、あるいは捕捉されてもよい。1つのデバイスに複数の種の生体高分子材料を組み込むことができる。
【0126】
本明細書において、「ハロゲン化」という語は、分子中にハロゲン(すなわち、次の元素;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、およびアスタチン)を取り込む過程、またはハロゲンを取り込む程度を指す。
【0127】
本明細書において、「芳香族性」という語は、分子内に芳香族基(すなわち、6炭素環やその誘導体)を有することを指す。
【0128】
本明細書において、「水非混和性溶媒」という語句は、あらゆる比率においても水に溶けない溶媒を指す。「水混和性溶媒」という語句は、全ての比率で水に溶ける溶媒を指す。
【0129】
本明細書において、「ポジティブ」、「ネガティブ」および「両イオン性」という語は、総電荷がそれぞれ、正、負、または中性の、分子または分子団を指す。両イオン性要素は、これらの電荷がうち消される(総電荷が0になる)正電荷を持つ原子または基と負電荷を持つ原子または基の両方を有する。
【0130】
本明細書において、「生物学的有機体」という語は、炭素を基礎として含むあらゆる生命体を指す。
【0131】
本明細書において、「in situ」という語は、その天然の環境の状況下で存在する、または生じる過程、現象、物体、または情報を指す。
【0132】
本明細書において、「水性」という語は、他の構成成分の中に水を含む液体混合物を指す。
【0133】
本明細書において、「固体状態」という語は、1個以上の、固い、もしくは固相状の化合物の関与する反応を指す。
【0134】
本明細書において、「規則正しくパックされた(regularly packed)」という語は、圧縮フィルム内の分子の周期的な配置を指す。
【0135】
本明細書において、「濾過」という語は、試験サンプル中の様々な成分を他のものから分離する過程を指す。ある実施形態では、濾過は、膜または媒体を用いて固体を液体または気体から分離することを指す。他の実施形態では、この語は物質の相対的なサイズに基づいて物質を分離することも包含する。
【0136】
本明細書において、「インヒビター」という語は、化学反応を遅らせたり、または止めたりする材料、サンプル、物質を指す。「反応手段インヒビター」という語はある反応手段(たとえば、酵素)の作用または活性を遅らせたり、または止めたりしうるインヒビターを指す。
【0137】
本明細書において、「インヒビタースクリーニング」という語は、インヒビターを同定及び/又は特性づけするあらゆる方法を指す。好ましくは、インヒビタースクリーニング法は、インヒビターを含むと思われる多数のサンプルを短時間にスクリーニングする能力を有する「ハイスループットスクリーニング」を提供する。インヒビター効率の比較を提供するために、定量的な結果を提供するインヒビタースクリーニング法も所望される場合がある。
【0138】
本明細書において、「サンプル」という語は最も広義に用いられる。ある意味では、生体高分子材料を指すこともある。他の意味では、生物学的及び環境的サンプルと同様、あらゆる起源由来の試料や培養物を含む意味である。生物学的サンプルは動物(ヒトを含む)から得られる場合もあり、また、液体、固体、組織、および気体を包含する。生物学的サンプルとしては、血漿や血清などのような血液成分が挙げられる。環境的サンプルとしては、表面物質、土、水、結晶、および工業的サンプルのような環境材料が挙げられる。これらの例は、本発明に応用可能なサンプルの種類を限定するものと解釈してはならない。
【0139】
発明の一般的説明
本発明は、生体高分子材料の変色を検出することにより膜のコンフォメーション変化を直接検出する方法およびそのための組成物に関する。本発明の一実施形態では、脂質二重層に埋め込まれた、完全に連結したポリマー主鎖から成るポリジアセチレンセンサーは、表面に結合したリガンドと、サンプル試料中の受容体またはホスト分子との特異的な結合現象に基づく比色的遷移を起こす。発色団の検出ユニットはセンサーの中に装備され、裸眼で視覚的に観察でき、他の検出手段はなんら必要としない。本発明のある実施形態では、このようなセンサー表面に合成オリゴデオキシヌクレオチドを結合させることにより核酸ハイブリダイゼーションの現象を色調遷移によって直接検出できるデバイスが提供される。
【0140】
本発明の好ましい実施形態では、核酸のハイブリダイゼーションの直接比色検出を可能にするリガンドが、重合化されたバイオセンサーに組み込まれている。特に、本発明は、一本鎖のサンプル核酸が一本鎖のプローブ核酸に認識されることによって、核酸ハイブリダイゼーションを特異的に検出する方法、およびそのための組成物を提供する。ここで、前記プローブ核酸は、本発明の生体高分子材料の表面に共有結合している。生体高分子材料の青色から赤色への可視的な遷移は、核酸ハイブリダイゼーションの特異的な検出を可能にする。核酸ハイブリダイゼーションにおけるこの比色応答は、特異的な核酸断片(たとえばPCR産物)の迅速で簡単な検出、および医学における診断手段を提供する。さらに、核酸結合−生体高分子材料は、核酸サンプルと結合し、または核酸サンプルを変化させる酵素または他の分子の存在および活性を検出する手段を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、核酸ハイブリダイゼーションによる生体高分子における光発色性遷移に基づくパターン化した核酸センサーの構築、解析、最適化に関する組成物と方法を提供する。
【0141】
本発明のいくつかのの実施形態では、多くの異なるハイブリダイゼーション現象の検出が並列的に同時にできるように、パターン化した核酸アッセイのアレイが一つのデバイスに組み込まれている。このようなアレイは、あるアナライトが存在すると、デバイス内の既知の位置に変色が生じるように、または、アナライトに特異的な変色を起こす(たとえば、アナライト1では紫色が橙色に、アナライト2では青色が赤色にというように)ように、設計されている。特定の物質や化合物の存在を示す「+」記号のような簡単に理解されるパターンなどの、他のアレイが本発明で使われることも考えられる。これは本発明が特定のアレイの設計や構成に限られるという意味ではない。
【0142】
発明の詳細な説明
本発明は、リガンドアナライトの結合または他の再構築による膜の再構築に応答して色が変わる生体高分子材料に関する方法と組成物を含む。これらの生体高分子材料はフィルム、小胞、細管、多層構造体、ならびに溶媒和ロッドおよびコイルなどの多くの形態を含むがこれらに限定しない。これらの生体高分子材料は、重合した自己集合性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、生体高分子材料は1種類以上の自己集合性モノマーを含む。これら自己集合性モノマーには、重合基を欠いていてもよい。他の実施形態では、材料はさらにセンサーの性質を変えるドーパント物質を含む。ドーパントとしては、重合可能な自己集合性モノマー、重合不可能な自己集合性モノマー、脂質、ステロール、膜構成成分、及び生体高分子材料を最適化(たとえば、材料の安定性、耐久性、比色応答性、固定化能)する他のあらゆる分子が挙げられるが、これらに限定しない。生体高分子材料はさらにリガンド(たとえば、タンパク質、抗体、炭水化物、および核酸)を含んでもよい。該リガンドは、生体高分子表面に分子を吸着させる接着部位を提供し、またはアナライトの結合部位として利用され、それによって、該結合現象は生体高分子材料の変色を起こす。本発明の種々の実施形態は、広範囲の反応やアナライトを比色的に検出する能力を提供する。特定の生体高分子材料では、反応に応じた変色が簡単な視覚的観察、または必要ならば光を感知する装置によって見られる。本発明はさらに、安定性、耐久性、ならびに扱い易さおよび利用しやすさを提供するための、生体高分子材料を固定化するさまざまな方法を提供する。いくつかの実施形態では、さまざまな異なった高分子材料が、1つのデバイス中に組み合わせられ、1個のアレイが作製される。そのアレイは、種類または量の異なる反応またはアナライトを検出及び識別するように設計されている(すなわち、アレイが、定量的及び/又は定性的データを提供できる)。本発明の方法および組成物は、アナライト検出において幅広い用途を有し、特に、簡単、迅速、正確かつコスト効率のよい検出が求められる状況には好適である。
【0143】
発明の説明は、I.生体高分子材料の形態、II.自己集合性モノマー、III.ドーパント、IV.リガンド、V.変色、VI.膜のコンフォメーション変化の検出、VII.生体高分子材料の固定化、VIII.アレイに分けられている。アナライト(たとえば、病原体、化学物質、核酸、およびタンパク質)の存在を検出するように、また膜の再構築(たとえば脂質の切断現象や核酸の修飾)を検出するように、これらの項に述べられている生体高分子材料を設計できる。いくつかの実施形態では、これら両方の機能を果たす生体高分子材料を有することが求められる場合もある。アナライトまたは膜の再構築の検出に関する生体高分子材料の最適化(たとえば比色応答、色、及び安定性の最適化)は一般的に両方のシナリオに応用可能であることが多い。相違のある部分について記す。
【0144】
I. 生体高分子材料の形態
本発明の生体高分子材料は、編組、層状、螺旋状、細管、繊維様に加えて、リポソーム、フィルム、多層構造体などの(これらに限定されない)多くの物理的形態を取ることができる。いくつかの実施形態においては、生体高分子材料はロッドやコイルのような形に凝集した溶媒和ポリマーである。これらの分類の個々について、それらの利点と、これらの材料を開発するにあたって克服した難点を強調して以下に述べる。
【0145】
A.  フィルム
いくつかの実施形態では、本発明に用いられる生体高分子材料は、生体高分子フィルムを構成する。実施例1に述べるように、生体高分子フィルムは形成支持体上に所望のマトリックス形成材料(たとえば自己集合性有機モノマー)を重層して調製する。好ましい実施形態では、形成支持体は標準ラングミュア−ブロジェットトラフであって、マトリックス形成材料は該トラフを水性溶液で満たして作成した水性表面上に重層し、次いで、該材料を生体高分子フィルムを形成するように圧縮し、重合化した。好ましい実施形態では、圧縮は標準ラングミュア−ブロジェットトラフの中でマトリックス形成材料を圧縮するための可動バリアを用いて行った。圧縮は、マトリックス形成材料がきつく詰まった単層が形成されるまでおこなった。フィルムは、アナライトに非常に高感度な比色スクリーンを提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、実施例1に示すように、マトリックス形成材料を、形成支持体内に配置し、紫外線照射によって重合させた。しかし、重合化の全ての方法は、本発明によって熟慮され、ガンマ線照射、X線照射、化学的重合、及び電子線照射を含むが、これらに限定されない。
【0147】
いくつかの実施形態では、ジアセチレンモノマー(DA)を含む脂質を、自己集合性モノマーとして使用し、ジアセチレンモノマー(DA)は紫外線照射によってポリジアセチレン(p−PDA or PDA)へと重合化された。好ましい実施形態においては、紫外線照射源は、フィルムへの熱障害を誘引することを避けるために、フィルムから十分に距離を保つ。重合化されたフィルムの結晶形態は光学顕微鏡内の交差偏光器間で容易に観察されるが、このステップは本発明に必要というわけではない。重合化の後に生成する、交互の二重結合と三重結合によって(つまり、 ene−yne)連結した主鎖は、可視スペクトル域において強い吸収を誘起し、重合化ジアセチレンフィルムの明瞭な青/紫色の外見を生じる。
【0148】
特定の実施形態では、本発明の方法はこのステップを必要としないが、可視の青いフィルムは、さらなる解析を行うためにカルボン酸ヘッド基がフィルム周囲境界面(Charych ら、 Science 261:585 [1993])に暴露されているような、疎水性固相支持体に移される。PDAフィルムに典型的な線状の細溝が偏光光学顕微鏡で観察される。該材料は原子間力顕微鏡や他の解析手段を用いて特徴づけてもよい(実施例2参照)。
【0149】
本発明は、当業者に公知の他のいくつかの方法など、他の全てのフィルムを作製する方法を熟考した。たとえば、フィルムは溶媒ケーシング(すなわち、溶媒の遅い蒸発)によって作製することができる。また、脂質モノマーはシランまたはチオールのアンカー基を用いて作製することができ、それは固相支持体を溶液へ浸漬させて、コートされた固相支持体を形成させることができる。本発明の一実施形態では、ジアセチレンモノマーは、シランおよびチオール基により架橋され、そして重合する。この方法によれば、トラフは必要でない。
【0150】
B.  リポソーム
他の実施形態においては、本発明で使われる生体高分子材料には生体高分子リポソームが含まれる。リポソームを作製するあらゆる方法が本発明によって考えられるが、リポソームは探索子型超音波処理法で調製し(New. Liposomes: A Practical Approach.Oxford University Press. Oxford. pp33−104 [1990])。単独の、、または所望のリガンドと重合した自己集合性モノマーは、形成溶媒を除去するために乾燥され、脱イオン水に再懸濁される。その懸濁液は探索子型超音波処理を施され、重合化された。その結果生じたリポソーム溶液は生体高分子リポソームを含んでいた。
【0151】
リポソームは、単層およびフィルムとはその物理的特性や生成に必要な方法が異なる。両親媒性化合物から作られた単層物およびフィルム(或いは多層物)は、平面の膜であり、二次元的構造を形成する。単層とフィルムは、この点に関しては、図1に示されているような基礎となる固体基体によって支持される固相材料である。図1において、フィルムYは中心対称の多層フィルムであり、フィルムXとZは非中心対称の多層物である。このような材料は多数の文献に記載されており、Ulman (Ulman. An Introduction to Ultrathin Organic Films: From Langmuir−Blodgett to Self−Assembly. Academic Press, Inc., Boston, [1991])やGaines (Gaines, Insoluble Monolayers at Liquid−Gas Interfaces, Interscience Publishers, New York, [1966])などが概説している。フィルムおよび単層と対照的に、リポソームは、図2に示されるような、水性のスペースを封じ込めた三次元的な小胞である。図2はA)二次元断面図と、B)リポソームの半分の三次元図を示している。これらの材料は、多くの文献に記載されており、New(New, Liposomes: A Practical Approach, IRL Press, Oxford[1989])やRosoff (Rosoff, Vesicles, Marcel Dekker, Inc., New York, [1996])などが概説している。リポソームはその水性の区画の中に材料を捕捉するように構築することができる。フィルムや単層物は、水性のスペースを封じ込めず、1つの区画の中に材料をトラップしない。リポソームは、典型的には、同じ材料で作ったフィルムより安定かつ丈夫である。
【0152】
リポソームとフィルムとは、調製の方法を異にする。リポソームは、両親媒性分子を水性の媒体中で分散させることにより調製され、液相中に保持される。反対に、単層およびフィルムは空気−水境界面で両親媒性分子を固定化することにより調製される。ついで、固相支持体を境界面中に通過させて、フィルムを固相支持体に移す。リポソームは、均質の水性懸濁液中に存在し、球形、楕円形、正方形、長方形、細管状などの様々な形に作製することができる。従って、リポソーム表面は液体−主として水と接触している。いくつかの観点においては、リポソームは天然の細胞膜の三次元構造と似ている。リポソームが固体にまで乾燥すると、形態を失い、もはやリポソーム状態では存在しない(つまり、すでに「リポソーム」ではない)。逆に、フィルムは、平面的な不均質のコーティングとして、固相支持体に固定化された状態で存在する。単層およびフィルム表面は、空気、他の気体、または他の液体とも接触可能である。フィルムは、気中で乾燥することができ、その平面の単層または多層構造は維持され、「フィルム」のまま保たれうる。
【0153】
非常に高濃度の重合化した材料は、単層アセンブリーに比べると、リポソーム溶液の方が断面密度がより高いので、リポソーム溶液によって得られる。リポソームは一般的に、変色をより視覚的に顕著にし、比色応答を増加させるという利点を有する(例えば図3参照。図3は固定化したシアル酸含有リポソーム(1)およびフィルム(2)のインフルエンザウイルスの存在に対する比色応答を示す)。
【0154】
本発明のリポソームを生産する設計方法においては、様々な克服すべき難点があった。当初リポソームは種々のフィルムの実施形態(すなわち、上記と実施例1で述べた本発明のフィルムの実施形態)において使用される自己集合性モノマー材料(例えばジアセチレン)にて生産されうると期待されたが、これが可能かどうかは知られていなかった。その主たる原因は、リポソームとフィルムの構造には相違であった。リポソームは二次元ではなく三次元的である。それゆえ、1)ジアセチレン脂質が実際に多少なりともリポソームを形成するのか、2)ジアセチレン脂質がリポソームを形成できるなら重合化するのか、そして/あるいは3)ジアセチレン脂質はたとえ重合化したとしても比色定量的特性を発揮するのか、という点は、明らかではなかった。
【0155】
第一の点に関して、単鎖ジアセチレン脂質が現実にリポソームを形成するかが明らかではなかった。このことは、文献の大多数が、単鎖分子はミセル(すなわち、ゆるく一塊りになった単一の二重層懸濁液)を形成する傾向にあり、一方で二本鎖分子のみがリポソームを形成しうることを示しているからである。さらには、New(New.前掲)によって述べられているように、リポソーム形成に一般的に使用される二本鎖分子は天然の細胞膜に由来し、通常、ホスホジグリセリドやスフィンゴ脂質のような分子構造に組み込まれる古典的リン脂質の構造をとり、本発明のジアセチレン脂質には似ていない。
【0156】
まず、攪拌あるいは水槽超音波処理のような一般的方法(すなわち、リン脂質に通常適用されるのと同様の方法)を利用して、ジアセチレン脂質でリポソームを形成する試みが試された。これらの方法では、リポソームを形成できず、不溶性で、非分散性の非特徴的な混合物を形成する結果となった。この混合物は比色特性を示さなかった。示差走査熱量測定を利用することにより、その脂質のT(主要相転移温度)は、その天然型リン脂質相当物のものよりかなり高いことが判明した。例えば、図4はリジン由来のPDAモノマーから調製された非重合リポソームへの大きな主要相転移を表す加熱曲線を示している。このことから、探索子型超音波処理及び加熱のような高エネルギーの方法を用いて、T以上の温度に上げて脂質を分散させる必要があった。これらの条件下では(例えば実施例1に記載されているような)、光散乱透過型電子顕微鏡によって確認されるリポソームと一致するサイズ(約100nm)を有するリポソームが形成された。
【0157】
第二の点に関して、脂質が正確にお互いに関して距離と方向性をもって一塊りとなることが、重合には必要である。したがって、ポリジアセチレンの重合は、「固相状」あるいはトポケミカルな重合である。これが、分子が必ず密接にパッキングされて交差結合している理由である。圧縮されたフィルムが垂直な面に移転している図5に示されるように、フィルムを所望のパッキングに圧縮できるラングミュア装置の可動バリアを用いて、正確に該パッキングが空気―水境界面で単層およびフィルムに制御されうる。リポソーム形成の場合は、そのような外側からの圧縮は不可能である。脂質は集合して、お互いの分子について均一の距離と方向性を保つ。それ故に、本発明の開発以前は、リポソーム材料内の分子間の距離とパッキングが重合反応を許容するのに充分かどうかは不明であった。
【0158】
まず、最も困難な局面は、リポソームジアセチレン単量体脂質が交差結合して、ポリジアセチレン結合ポリマー(つまり、重合化リポソーム)を形成することであった。結合ポリマー主鎖は、望む色を呈するリポソームを提供し、アナライトとリポソームの結合によって生じる観察可能な変色を通して生物学的アナライトの検出を可能にする。しかし、リポソームは、形成して(つまり、上述の方法を用いて)室温まで冷却した後には、紫外光に暴露されても全く重合しなかった。原則としては、脂質は室温まで冷えると、結晶化し、固相様状態に戻るはずであったので(つまり、脂質がこの状態に一度戻ると、それらは上述のようなトポケミカルな重合を起こすはずであった。)、これは驚きであった。しかし、脂質はそうならず、明らかに液状のままであった。透過型電子顕微鏡(TEM)によるさらなる解析で、リポソームは結晶化しないことがわかった。これら室温下のリポソームは図6の顕微鏡写真に示すような、不安定な液相リポソームに特徴的な、かなり大きな球状に凝集した。これらの観察に基づいて、これらの材料の加熱/冷却曲線にヒステリシス効果があるという仮説がたてられた。この仮説が正しいことが証明され、「超冷却」法の開発につながった。たとえば、これらの方法において、リポソームを4℃まで冷やすことにより、脂質の結晶化に成功した。その冷却ステップを行った後は、室温に戻してもリポソームが重合しうることが判明した。重合は材料の青色と約630nmでの吸収によって証明された。超冷却を施さなかったリポソームとは対照的に、図7の顕微鏡写真に示すように、これらのリポソームは正方形、長方形、楕円形、または球形に結晶化し、その構造を永久に保持した。
【0159】
本発明の様々な実施形態に適したリポソームを形成するための上述の実験の全ては(つまり、上述の実験)、フィルムの形成に使われた方法とは正反対である。フィルムは、同じ(つまり周囲の)温度で形成および重合化が可能である。
【0160】
三番めのポイントに関しては、本発明の開発前には、重合化リポソームを用いてでさえも、生体高分子膜の破壊に応じて変色を示すかどうか不明であった。例えば、リポソームの異なる脂質のパッキング構造が、フィルムについての実施形態で観察された変色を許容するかどうか知られていなかった。アナライトの比色検出のために最適のリポソームを開発するにはさらなる実験を行うしかなかった。
【0161】
 他の形態
他の実施形態では、加熱と冷却の割合、攪拌方法、生体高分子材料の材料を変化させることが、他の超微小構造を提供するであろうことが考えられる。このような超微小構造としては、多層構造、編組構造、層状構造、螺旋構造、細管、繊維様形状、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定しない。いくつかの実施形態では、このような構造がロッドやコイルのような凝集した形態の溶媒和ポリマーでありうる。例えば、モノマーの鎖長が、溶液中に形成する凝集体の型に影響するということが示されている(Okahata and Kunitake, J. Am. Chem. Soc. 101:5231[1979])。界面活性剤を用いるこれらの他の形態を生成することは、二本鎖(Kuo ら、Macromolecule 23:3225 [1990])や層状構造(Rhodes ら., Langmuir 10:267 [1994])、中空の細管や編組構造(Frankel ら、J. Am. Chem. Soc. 116[1994])について述べられてきた。いくつかの実施形態では、比色特性のある細管が生成された。実験1に述べられているように、細管は、超音波処理の前に溶液に1−10%の有機溶媒(例えばエタノール)が加えられることを除いては、リポソームと同様に調製される。本発明は、所望の特殊な用途に適した他の形状についても考えられる。
【0162】
ポリジアセチレン脂質の他の二重層組織を、比色検出器として機能するように調製できる。このような構造としては、LB. Langmuir−Schaefer トランスファー、または回転しない単量体リポソームによって作られ、その後光重合した固相支持体上の分子二重層が挙げられる(図39[I])。関連した組織に、基体表面と二重層の間に挟まれた「クッション」層を有する拘束および保持された二重層(図39[II])がある。この「クッション」層は固定された固相支持体から柔軟性のある二重層を脱共役し、例えば膜タンパク質の取り込みなどを可能にする。3次構造のバリエーションは、高分子リポソームの自己集合性モノマーの表層平面における共有結合による固定である(図39[III])。
【0163】
他の実施形態では、ポリチオフェンの可溶性ポリマーが生成された。いくつかの実施形態では、糖分子団、ペプチド、または他のリガンドを、チオフェン誘導体として合成でき、そしてコポリマーとして重合できる。一方、チオフェンのNHS誘導体は重合可能であり、リガンド基はポリマーが形成した後に接着されうる。チオフェンポリマーは酸性基の付加により水溶性を呈する。このことより、それらは水溶液に自由に溶けるように合成され、比色的な溶液となる。
【0164】
II.  自己集合性モノマー
ある実施形態において、本発明は生体高分子材料の形成に適したさまざまな自己集合性モノマーを考えうる。このようなモノマーとしては、アセチレン、ジアセチレン(例えば、5,7−ドコサジイン酸、5,7−ペンタコサジイン酸、10,12−ペンタコサジイン酸)、アルケン、チオフェン、ポリチオフェン、イミド、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル、無水リンゴ酸、ウレタン、アリルアミン、シロキサン、ポリ−シラン、アニリン、ピロール、ポリアセチレン、ポリ(フィレンビニレン)、ポリ(パラ−フィレン)、およびビニルピリジニウムが挙げられるが、これらに限定しない。これらの群を含む脂質は均一ポリマー又は混合ポリマーであり得る。さらに、カルボン酸、ヒドロキシル基、第一級アミン基、アミノ酸誘導体、疎水基を含むがこれらに限定しない、様々なヘッド基をもつモノマーが考えられる。特定のヘッド基はアナライトに結合する認識部位として機能し、生体高分子材料をアナライトに暴露するだけで直接比色検出を可能にする。
【0165】
本発明の生体高分子材料は、一種類の自己集合性モノマーを含む場合もある(例えば、完全に5,7−ペンタコサジイン酸から成っている)が、2以上の種類を含む場合もある。生体高分子材料を複数の自己集合性モノマーで作製するためには、それぞれのモノマーを含む溶媒を最適なモル比で混合する。続いて、この混合物は上述したように調製される(例えば、フィルムの調製にはラングミュア−ブロジェット装置の水溶液表面に重層する、または、リポソームの調製には、乾燥させて水溶液中に再懸濁する)。いくつかの実施形態においては、自己集合性モノマーは他の分子(例えば、リガンド)に化学的に結合されてもよい。
【0166】
好ましい実施形態では、ジアセチレンを含む脂質モノマーが本発明の生体高分子材料の自己集合性モノマーとして使われた。本発明では、5,7−ドコサジイン酸(5,7−DCDA)、5,7−ペンタコサジイン酸(5,7−PCA)、10,12−ペンタコサジイン酸(10,12−PCA)を含むがこれらに限定しないジアセチレン−含有脂質のあらゆるものが考えられる。
【0167】
本発明ではさらに、該反応条件への応答を最大にする生体高分子材料の最適化も考慮する。本発明を利用するためには、その機序を理解することは必要ではないが、本発明はそのような限定的なものを意味するのではなく、生体高分子材料に使われた特定の脂質の化学的要素が色調遷移の感度を増減するのに重大な役割を担うと考えられる。たとえば、発色団ポリマー主鎖の位置的変化は、該アナライトへの感度を変えることができる。このことは、図8に図示しているように、ジアセチレン基を境界面領域に近づけることによって達成され、それは、(10,12−ペンタコサジイン酸とは対照的に)5,7−ペンタコサジイン酸に見られる。いくつかの実施形態では、重合可能基の位置をモノマー内の5,7位に換えると、劇的に比色感度が向上した(実施例3を参照)。さらに、PDAの鎖の長さを短く、或いは長くすると、生体高分子材料のアナライト検出感度に、おそらくはパッキングにおける変化によると思われる影響があることが示された。いくつかのアナライト検出についての実施形態では、このような感度の向上が、小さなアナライト(例えば、運動性コレラ菌由来のコレラトキシンや百日咳毒素のような細菌性毒素や抗体)の検出を可能にした。さらなる最適化が、多くの反応や再構築、およびアナライト検出に関して感度の高い材料を生み出すであろうと考えられる。
【0168】
.モノマー炭素鎖内の重合化基の位置
最終的な重合化材料中にあるポリマー主鎖から特定の距離にヘッド基を位置づける炭素鎖の長さは、集合していない状態のモノマーの重合基の位置に依存する。ジアセチレンリポソームの場合、アナライトの検出に用いると、モノマーの18−20位の間から3−5位までに位置するジアセチレン基が、進歩的に、より感度の高いリポソームを形成することが、いくつかの実施形態において示された。10−12位から4−6位にジアセチレン基をもつモノマーから生成されたリポソームは、特に効果的な感度の制御を提供した。およそ5−7位にあるジアセチレン基は、コレラトキシンの検出のような特定の実施形態では、より適していた。モノマーの生成手法が、最終的モノマーの生成物のどの位置にジアセチレン基が位置づけられるかを決定する。
【0169】
B.  総炭素鎖の長さ
本発明の開発において行われた実験は、集合していないモノマーの総炭素鎖もモノマー炭素鎖内の重合可能基の位置による影響よりは少ないながらも、リポソーム生成物の感度のレベルに影響を及ぼすことを示した。アナライト検出についての実施形態で判ったのだが、炭素鎖の長さが短いほどより高い感度を提供した。本発明においてより長い炭素鎖やより短い炭素鎖が考えられるが、発明の比色分析用リポソームの構成に理想的に有用なモノマーは、長さがC12とC25の範囲内のものである。本発明のモノマー炭素鎖の長さの適する範囲は、C20からC23である。
【0170】
モノマー鎖の長さや重合可能基の鎖内の位置による影響は、いくつかの実施形態で示された。10,12−ジアセチレン誘導体の場合、炭素鎖C23が炭素鎖C25のモノマーから成るものより低アナライトレベルで変色する比色分析用リポソームを最終産物として提供する。5,7−ジアセチレン誘導体の場合、炭素鎖C22の鎖長は炭素鎖C24の鎖長より優れた感度を提供した。それ故、生体高分子材料の他の所望の特性(例えば安定性)の観点から、目的の至適検出条件に適するように炭素鎖の長さが設計される。
【0171】
III.  ドーパント
本発明の生体高分子材料は、さらに、複数ののドーパント(微量添加物)物質を含んでもよい。ドーパントは生体高分子材料の望ましい性質を変化及び最適化するために加えられる。かかる性質とは、比色応答、色、感度、耐久性、強度、固定化され易さ、温度感受性を含むが、これらに限定しない。ドーパント材料は、膜(例えばリポソーム、フィルム)と結合する、脂質、コレステロール、ステロイド、エルゴステロール、ポリエチレングリコール、タンパク質、ペプチド、または他の任意の分子(例えば、界面活性剤、ポリソルベート、オクトキシノール、ドデシル硫酸ナトリウム、両イオン性界面活性剤、デシルグルコシド、デオキシコール酸塩、ジアセチレン誘導体、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルメタノール、カルジオリピン、セラミド、セレブロシド、リソホスファチジルコリン、D−エリスロシンゴシン、スフィンゴミエリン、ドデシルホスフォコリン、N−ビオチニルホスファチジルエタノールアミン、及び他の合成もしくは天然の細胞膜構成成分)を含むがこれらに限定しない。例えば、実施例4に示された実施形態は、ガングリオシドとPDAを含むリポソームにシアル酸由来のジアセチレンモノマーを添加することで、低レベルのアナライト検出の定量性、及び比色感度を顕著に増加させた。ドーパントを使用しない材料では弱いシグナルしか生じない場合、このようなドーパントを用いる比色応答の改良は非常に有効である。標的脂質(例えば、リガンドを含む脂質、または酵素反応の基質である脂質)がポリマー主鎖(例えばガングリオシドリガンド)に共有結合していないような場合に、このようなことが認められることが多い。
【0172】
いくつかの実施形態では、生体高分子材料を変色させるためにドーパントを加える。例えば、本発明は、青から赤に、青からだいだい色に、紫から赤に、紫から橙色に、緑から赤に、緑から橙色に、変化するリポソームを提供する。例えば、グルタミン由来のPDAはかなり暗い青色(ほぼ黒色)のリポソームを生成する。他の実施形態では、緑色のリポソームはアニーリング(つまりおよそ80℃に加熱する)と冷却(周囲温度まで)を、重合前に繰り返すことにより産生された。多色系のアプローチの利点は、特異的反応により材料を特異的な色に変えるセンサーを作製できることである。
【0173】
他の実施形態では、単一の生体高分子材料を調製する時に、異種のドーパント物質を混入する。例えば、本発明は、グルコースとシアル酸由来ポリジアセチレンを混ぜ合わせたドーパント混合液を提供する。ドーパント混合物の構成成分であるグルコースは、主に本発明のリポソームの表面への非特異的付着を防ぐために作用を示し、また感度を増幅しうる。ポリジアセチレンの結合したシアル酸成分は、機能的にはアナライト検出感度を顕著に増加させる表面を不安定化するようである。この相互のドーパントを利用するアプローチを用いることで、過度に生体高分子材料の構造整合性にとらわれずに、接着特異性、および感度の両者を最適化できる。
【0174】
本発明を利用するためにメカニズムを理解する必要はなく、本発明はこれに限定されることを意図するわけではないが、ドーパントの添加は、色彩変化の活性化の障害を減少し、および/または、リガンド(リガンドが存在する場合)と、連結した主鎖との結合を提供し、色の変化を誘起する反応を可能にする。本発明の開発中に解明された一つの見解は、大きなヘッド基(例えばシアル酸由来脂質モノマー)を持つドーパントはマトリックス表面での様々な溶媒の相互作用を起こしやすくし、青色フィルムの構造を不安定化して局所的な膜の再構築による比較的小さな変動を完全な変色にすることである。大きなヘッド基を有するドーパントを用いた場合に見られる比色応答の改良に対するもうひとつの可能な説明として、分子認識現象(すなわちアナライトまたは生体高分子材料を有する他の分子の相互作用)により誘導されるステアリック効果がドーパントのヘッド基を干渉して、アナライトに誘引される変動を増幅するのかもしれない。
【0175】
特定の実施形態では、ドーパントはジアセチレンまたはジアセチレンの修飾物(例えばシアル酸由来のジアセチレン)を含む。このような場合、誘導体化した脂質は、生体高分子材料の性質を改変するために用いられ、アナライト検出における分子認識部位として用いられるのではないということを言及しておくべきである(例えば、インフルエンザウイルスの検出に使われるシアル酸リガンドの場合のように)。たとえば、シアル酸誘導体化モノマー、またはラクトース誘導体化モノマーだけを含む、ジアセチレンを基礎とする高分子材料は神経毒(例えばボツリヌス神経毒)に反応しなかった。このことは、神経毒と誘導体化ジアセチレン脂質との間の相互作用が変色を誘導するには不十分であったことを示す。しかしながら、同じ材料が神経毒(たとえば、ガングリオシドGM1)に親和性を有するリガンドとともに提供されると、比色応答は神経毒存在下で検出された。この例では、シアル酸とラクトースに由来する脂質は、「ドーパント」であり、ガングリオシドGM1はリガンドである。
【0176】
幅広い種のドーパント材料によって、本発明の様々な実施形態に用いられる生体高分子材料の性質を最適化できる用途が見つかるであろう。天然の細胞膜構造の構成成分である材料は、一般的に本発明におけるドーパントとして有用である。たとえば、ステロイド(例えば、コレステロール)は生体高分子材料の望ましい程度の不安定性または安定性を提供することができる潜在的ドーパントに相当する。界面活性剤タイプの化合物はポリマー主鎖を形成する自己集合性モノマーへ重合されたりされなかったりするが、これらもまたドーパントとして働く。例えば界面活性剤TWEEN20は重合基を有していないが、これは本発明の特定の実施形態におけるリポソームの青色に大変顕著な強度を提供する。ドーパントとして使用されうる他の界面活性剤にペプチド性界面活性剤(つまり、膜タンパク質の膜架橋領域を模倣する疎水性領域を有する両親媒性分子)がある。これらの小さいペプチド(概してその長さは20−25アミノ酸である)は、生体高分子材料の比色応答の安定性や感度を変えるために該材料に組み込まれることが可能である。ペプチド性界面活性剤は、その物質の疎水性領域がかなり大きいため、フィルム安定性や感度に対してほかの多くの界面活性剤分子より顕著な効果を生じさせることができる。
【0177】
生体高分子材料の構造に組み込まれるもっとも適切なドーパント比率は、開発される特有のシステム、および試験状況の必要性に依存する。たとえば、感度は長期保存安全性を指向すること、または厳格なフィールド状況に順応させるために、ある程度妥協されるかもしれない。許容されうるドーパントの比率は、理論的に、必要な光学密度と変色を生み出すための指示薬ポリジアセチレン分子の十分な組み込みを除外しないであろう比率、またはポリマー構造の安定性を破壊するであろう比率のみに制限される。
【0178】
ドーパントの分子比率は低くは0.01%から高くは75%まで様々であり、0.01%でも感度の増加が特定の実施形態では認められ、75%以上になると概して生体高分子材料の構造整合性が悪化し始める。しかし、ドーパント比率が75%以上または0.01%以下である特殊な実施形態もありうる。ドーパントの好ましい範囲は、2%−10%である。本発明の特定の実施形態では、最適ドーパント比率は約5%である(実施例4、セクションII参照)。例えば、コレラ毒素の検出には、2%ラクトース誘導体化ポリジアセチレン(PDA)、5%ガングリオシド、および93%PDAを含むフィルムが、アナライトとともにインキュベートした際に強い青色から赤色への変色をもたらすことが判明した。
【0179】
ドーパントの適当な組み込み方法の選択する際には、いくつかの競合する検討材料がある。たとえば、特定の実施形態にあるリポソームを作製するための超音波処理槽を用いる方法は、その組み込みをよく制御できるが、その過程に数時間を要する。この比較的ゆっくりと穏やかに組み込む方法により比較的大きなまたは複雑なドーパント物質を組み込む。しかし、超音波処理槽を用いるアプローチは比較的低比率のドーパントを組み込もうとするときにのみ適している。ポイントプローブ法はもっと短時間に、概して1〜10分間で、ドーパント物質をかなり高比率で組み込むことを可能にする。しかし、この方法は、典型的にサイズの小さいものから中程度の大きさまでのドーパント物質の組み込みに限定される。組み込みの際に選択される温度は、特定の分析システムと望まれるリポソームのパラメーターを基に選択される。熟練者であればpH、溶媒の選択、および特定のシステムや生体高分子材料の望ましい特性に基づいて他の要因などのパラメーターを選択できる。
【0180】
広範な物理的特性を有する一連の誘導体化ポリジアセチレンドーパント分子は合成されている。これらのドーパントは、生体膜に一般的に認められる生体膜の構成分子(すなわちコレステロール、タンパク質、脂質、界面活性剤)と同じではない。それらは、特定のセンサーシステムに特徴的で特異的な機能性を提供するという点で異なる。特異的な機能性を非合成系の実施形態に提供するいくつかのドーパントの設計については下記および実施例4に示している。
【0181】
PDA分子が簡単に誘導体化されるように、単純なシステムが設計された。その合成は図9に示す。ここでは、10,12−ペンタコサジイノイック酸は遊離型アミノ基を有するいかなる分子にも結合するアミン結合に修飾される。全てのアミノ酸は遊離型アミノ基を有するので(リジンは2個の遊離型アミノ基を有する)、20個のアミノ酸はそれぞれPDA分子の頭部に位置づけられた。誘導体化PDA分子のそれぞれは、生体高分子材料に取り込まれる特殊な機能性を許容する特有の性質を有する。たとえば、グルタミン−PDAを含む材料はもっとも感度が良く、最も水溶性であり、もっとも安定した比色センサーであった。他のアミノ酸誘導体化PDA分子のいくつかの性質は実施例4に記している。代表的なアミノ酸由来ジアセチレンの、水溶性、フィルム及びリポソームの形成能、色、比色応答性は図10に示している。
【0182】
IV  リガンド
本発明の生体高分子材料はさらに1以上のリガンドを含みうる。リガンドはアナライトに対する生体高分子材料の認識部位として、あるいは、生体高分子の表面に、分子を吸着したりまたは反応を局在させるアンカーとして働く。いくつかの実施形態では、一種或いは複数種のリガンドとアナライトの相互作用に基づいて、生体高分子材料のポリマー主鎖の破壊が起こり、その結果、検出可能な色調遷移が生じる。
【0183】
いくつかの実施形態では、リガンドは、結合枝によって自己集合性モノマーに結合されるか、モノマーに直接結合するか、重合過程より先にあるいは重合過程中に生体高分子マトリックスに取り込まれるか、もしくは重合化後に該マトリックスに結合する(例えば、リガンドに結合するヘッド基を含むマトリックス成分へのリガンドの結合によって、或いは他の方法で)。例えば、図11は本発明の一実施形態の模式図を示す。化合物1はスペーサー分子の一つの末端に結合した受容体結合リガンド(つまりシアル酸)を示す。スペーサー分子の2つ目の末端は比色検出要素を形成するように重合した数個のモノマー(例えば10,12−ペンタコサジイン酸)のうちの1つに結合する。化合物2は結合したリガンドのない10,12−ペンタコサジイン酸を示している。
【0184】
本発明のリガンド基は広範な材料を含む。選択するアナライトに対してリガンドが親和性を有することが主な特徴である。適切なリガンドとは、ペプチド、炭水化物、核酸、ビオチン、薬剤、発色団、抗原、キレート化合物、短鎖ペプチド、ペプスタチン、ディールス−アルダー試薬、分子認識複合体、イオン基、重合基、ジニトロフェノール、リンカー基、電子供与体、電子受容基、疎水基、親水基、抗体、または受容体に結合するあらゆる有機分子を含むが、これらに限定しない。生体高分子材料は、所望の比色応答を最適化するために、リガンドの結合したモノマーとリガンドの結合していないモノマーの組み合わせで構成することができる(例として、リガンドの結合したジコサジノイン酸(DCDA)5%とリガンドの結合していないDCDA95%)。さらに、複数のリガンドを単一の生体高分子材料に組み込みうる。本発明に利用可能な広範なリガンドから明らかなように、きわめて広範な群のアナライトが検出されうる。
【0185】
いくつかの実施形態において、自己集合性モノマーはリガンドと結合しないが、直接集合し、重合して、比色センサーとして使われる。このような生体高分子材料は、揮発性有機化合物(VOC)を含むがこれに限らない、特定のクラスのアナライトの検出に有用であることがわかる。
【0186】
いくつかの実施形態では、リガンドはさまざまな病原性生物を検出するために組み込まれる。これは、以下のものを含むがこれらに限定するものではない:HIV(Wiesら Nature 333: 426[1988])、インフルエンザ(Whiteら Cell 56: 725[1989])、クラミジア(Infect. Imm. 57: 2378[1989])、ナイセリアメニンギチジス(Neisseria meninngitidis)、ストレプトコッカススイス(Streptcoccus   suis)、サルモネラ菌(Salmonella)、マンプスウイルス(mumps)、ニューキャッスルウイルス(newcastle)、および、レオウイルス、センダイウイルス、ミクソウイルスを含む様々なウイルスを検出するためのシアル酸; 並びにコロナウイルス、脳脊髄炎ウイルス、ロタウイルスを検出するための9−OACシアル酸; サイトメガウイルス(Virology 176 337 [1990])、麻疹ウイルス(Virology 172 386 [1989])、を検出するためのシアル酸以外の糖タンパク質;HIVを検出するためのCD4(Khatzmanら、Nature312:763[1985])、血管作動性腸管ペプチド(Sacerdoteら、J.of Neuroscience Research 18:102[1987])、ペプチドT(Ruffら、FEBS Letters 211:17[19877]);ワクシニア(Epstein ら、Nature 318:663 [1985])を検出するための上皮成長因子、狂犬病ウイルスを検出するためのアセチルコリン受容体(Lentz ら、Science 215:182[1982])、エプスタインーバールウイルスを検出するためのCd3補体受容体(Carel ら、J. Biol. Chem. 265:12293[1990])、レオウイルスを検出するためのβ−アドレナリン作動性受容体(Coら、Proc. Natl. Acad. Sci. 82:1494[1985])、ライノウイルスを検出するためのICAM−1(Marlinら、Nature 344:70[1990])、N−CAM及びミエリン結合糖タンパク質MAb(Shephey ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 85:7743 [1988]); ポリオウイルスを検出するためのポリオウイルス受容体(Mendelsohn ら、Cell 56: 855[1989]); ヘルペスウイルスを検出するための繊維芽細胞増殖因子(Kanerら、Science 248:1410 [1990]); 大腸菌を検出するためのオリゴマンノース;ナイセリアメニンギチジス(Neisseria meninngitidis)を検出するためのガングリオシドGM;並びに広範囲な病原体(例えば、ナイセリアゴロノーエ(Neisseria gonorrhoeae)、ビブリオ・バルニフィカス (V.vulnificus)、ビブリオ・パラヘモニティカス(V. parahaemolyticus)、ビブリオ・コレラ(V.cholerae)、ビブリオ・アルギノリチカス(V. aruginolyticusu)を検出するための抗体。
【0187】
当業者であれば、本発明の生体高分子材料と様々なタイプのリガンドを結合させることができるだろう。多様な化合物(例えば、炭水化物、タンパク質、核酸、他の化学基)を有する脂質を誘導体化する方法が当業者に公知である。脂質の末端にあるカルボン酸は、エステル、リン酸エステル、アミノ基、アンモニウム塩、ヒドラジン、ポリエチレンオキシド、アミド、他、多種の化合物を形成するように簡単に修飾できる。これらの化学基は、炭水化物、タンパク質、核酸、他の化学基に対する結合基を提供する(例えば、カルボン酸が、活性化エステルを生成し、タンパク質内の遊離アミノ基と反応してアミド結合を形成することによりタンパク質に直接結合する)。ラングミュアフィルムに結合した抗体の例は当技術分野に公知である(例えば、Troninら、Langmuir 11: 385[1995]およびVikholm ら、Langmuir 12: 3276[1996]を参照のこと)。膜に材料をカップリングさせる方法や、膜に材料を組み込む方法は他にも多数あり、中でも例として、タンパク質または核酸をポリマー膜にカップリングさせる方法(Bamford ら、Adv.Mat. 6: 550 [1994]など参照)、自己集合性有機単分子相にタンパク質をカップリングさせる方法(Willner ら、Adv.Mat.5:912[1993]など参照)、膜にタンパク質を組み込む方法(Downerら、Biosensor and Bioelect. 7: 429[1992]など参照)などが挙げられる。本発明の比色性材料にリガンド(タンパク質、核酸、炭水化物など)を付着させるプロトコールは実施例5に示されている。
【0188】
例えば、本発明の方法は、抗体を含むタンパク質分子をポリジアセチレン薄層フィルムやリポソームの表面に容易に付着させる系を提供しており、これによって「タンパク質」リガンドを持つ生体高分子材料が提供される。このようなリガンドは、ペプチド、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、酵素、受容体、チャネル、抗体を含むが、これらに限定されない。アナライト(例えば、酵素基質、受容体リガンド、抗原、他のタンパク質)の結合の際に、生体高分子材料のポリマー主鎖の破壊が生じて、その結果検出可能な変色が生じうる。本発明は、生体高分子材料に組み込まれるタンパク質リガンドおよび化学的に生体高分子材料の表面に結合したタンパク質リガンド(例えば、生体高分子モノマー内の表面にあるヘッド基に化学的に結合する)も意図している。
【0189】
A.核酸リガンド
(■)核酸リガンドの選択
核酸の一つの特徴的な性質は、核酸が相補的なヌクレオチド配列を持つ核酸と配列特異的に水素結合を形成する能力である。この核酸が相補的な核酸鎖と特異的水素結合を形成する(つまりハイブリダイズする)という能力は、本発明の方法に活用される。既知の配列をもつ核酸(核酸リガンド)又は所望のハイブリダイゼーション特性は「標的」相補的配列についてサンプルを調べるための「プローブ」として使われる。標的配列は、本発明の様々な核酸リガンドおよび組成物ならびに方法を用いて同定される。
【0190】
プローブ領域が相補的である標的配列は、あらゆる生物(例として、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌を含むがこれに限定しない)または細胞(例として、培養細胞を含むがこれに限定しない真核細胞もしくは原核細胞のあらゆるもの)から由来する、遺伝子物質の全体もしくは一部分、または、リボソームRNA、トランスファーRNA、メッセンジャーRNA、もしくはイントロンRNAのような核酸遺伝子産物でありうる。標的配列は一般的に約数百ヌクレオチドであるが、本発明においては、これより短い配列や長い配列も意図している。ヒトもしくはヒト以外の病原体(感染性の微生物のあらゆるものを含む)や、ヒトもしくはヒト以外(例えば、動物)のDNAまたはRNA配列(たとえば遺伝的異常やその他の状態)、ならびに遺伝子工学実験によってもたらされた配列、たとえば総mRNAもしくは完全な細胞のDNAのランダムな断片など、に特有の配列がこれらの例としてあげられるが、これらに限定しない。標的配列を同定する方法やプローブ領域を調製する方法は、当業者に公知である。標的配列は、例えば、ヒトまたはヒト以外の病原体、例えば、全ての腸内桿菌もしくは全てのクラミジア菌、のあるクラスに特有の核酸配列に相補的なものでも可能である。標的配列が、例えば組み換えDNA産物の製造に用いられる宿主細胞またはベクターに特有の核酸配列に相補的な配列ということもあり得る(例えば、生産物中のそのようなDNAまたはRNAの混入物の存在を検出するため)。この点で、上記で同定された様々な標的配列に相補的な(つまり、親和性を有している)核酸は本発明の核酸リガンドとして認められる。
【0191】
本発明によって考慮される核酸リガンドのもう一つのタイプは、他の生物学的分子(例えば、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、リガーゼ、テロメラーゼ、転写因子などの酵素)に結合する、またはこれらと相互作用する、核酸分子を含む。この結合のタイプは、含まれるDNAもしくはRNAを構成するヌクレオチド配列に依存する。例えば短いDNA配列は原核生物および真核生物の両者において転写を抑制または活性化する標的タンパク質に結合することが知られている。ほかの短いDNA配列は、おそらくクロモソームのメカニズムに関与する特異的なタンパク質の結合に関するリガンドを作成することによって、クロモソームのセントロメアやテロメアとして機能することが知られている。この点で生物学的分子の天然の標的である配列を持つ核酸分子は、本発明における核酸リガンドとして意図される。
【0192】
本発明は、生物学的分子の天然のリガンドではないが、その代わりに本発明を利用する者に選択されるあらゆる望ましいアナライトに結合できる核酸リガンドも意図する。このような核酸を同定するのに用いられる一つの技術はSELEX法と呼ばれている。基本的なSELEX法は、米国特許第5,475,096号、第5,270,163号、第5,475,096号、およびPCT出願公開WO97/38134、WO98/33941、およびWO99/07724、に述べられており、これら全ては本明細書に引用文献として組み入れる。SELEX法は特有の配列を持つ核酸分子であって、望ましい標的アナライトもしくは標的分子に特異的に結合する性質を有するものの同定を可能にする。
【0193】
簡潔に説明すると、ステップごとに反復をおこなって、目的の候補となるものの混合物から選択することを含んでいる。SELEX法は核酸混合物、好ましくは無作為な配列の断片を含む混合物を用いて開始される。この混合物は標的物(例えばアナライト)と結合に好ましい条件下で接触させる。次に、結合していない核酸を標的分子に結合した核酸から分離する。その後、対となった核酸と標的物とを解離させて、その核酸は増幅させるか又は単離して標的に結合する濃縮された調製物を得る。結合、分離、解離、および増幅というステップを望ましい回数で反復する。
【0194】
標的に対して最も高い親和定数をもつ核酸が最も結合しやすい。分離、解離、および増幅の後、結合親和性のより高い候補が濃縮されている2つめの核酸混合物が生成される。結果として得られる核酸混合物が、単一もしくは少数の配列が優勢になるまでさらに選択を繰り返すことで、次第に最良のリガンドを得る。これらは、そののちにクローニングされて配列決定され、個々の純粋なリガンドとして結合親和性について試験することができる。
【0195】
選択と増幅のサイクルは、望む結果が得られるまで繰り返される。最も一般的な場合では、サイクルを繰り返しても明らかな結合強度が改善されなくなるまで選択/増幅が続けられる。この方法は、試験混合物中の約1018個もの異種の核酸を含むサンプルに利用されうる。試験混合物の核酸は無作為な配列部分を含むことが好ましい、というのは、この部分が、特定の標的物に対する幅広い結合親和性を有する可能性のある多くの配列や構造を提供するためである。例えば20ヌクレオチドを無作為に並べたセグメントを含む核酸混合物がには、420種の可能性のある候補があり得る。しかし、本発明はある特定の長さをもつ無作為なセグメントに限定しない。いくつかの実施形態では、無作為化された部分は長さが約40〜120塩基対である場合もあり、他の実施形態では無作為化された部分は長さが50〜100塩基対である。好ましいいくつかの実施形態では、無作為化された部分は長さが約70〜90塩基対である。
【0196】
無作為化された部分は、5’と3’が決まった配列の領域で挟まれている。この決まった配列領域は、効果的な増幅(例えばPCRによる増幅)に有用な保存された配列である。従って、手順に従って選択された無作為化領域を増幅するには、同じ一対のPCRプライマーを使うことができる。好ましいいくつかの実施形態では、決まった配列領域をプライマー間でニ量化形成およびアニーリングが最小化されるように設計する。他の好ましい実施形態では、決まった配列領域はプロモーター領域(例えば、T3,T7,SP6プロモーターなど)を含む。さらに他の実施形態では、決まった配列領域を含む核酸全体を容易にクローニングできるか、または無作為化された領域がサブクローニングできるように、5’の決まった配列領域と3’の決まった配列領域は制限酵素部位によって挟まれている。有用な制限部位はEcoRI、HindIII、PstIのような当業者に公知な部位を含むがこれらに限定しない。
【0197】
無作為化された核酸配列の合成や、無作為に細胞性核酸を切断したものからのサイズによる選択を含む多くの方法で、核酸配列変異体を作成することができる。変化する配列部位は、全く、もしくは部分的に、ランダム配列を含んでおり、またランダム配列とともに組み込まれた保存されている配列の一部分も含んでいる場合がある。選択/増幅の反復を行う前、もしくはその反復の間に、突然変異誘発によって、試験する核酸の配列の変化を導入または増加できる。SELEX法で用いる分離法は分離用マトリックスに頼る。高親和性オリゴヌクレオチドは、クロマトグラフィーの手法、ニトロセルロースフィルターに結合させる方法、液相−液相分離、ゲル濾過法、密度勾配遠心法を含む様々な方法を用いて分離される。
【0198】
従って、本発明は、これら核酸分子を本発明の核酸リガンドとして利用するために、この無作為化された核酸分子の一群から様々なアナライトへの結合能に関するスクリーニングを考慮する。いくつかの実施形態では、核酸を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、該混合物は約1012個以上の異なる核酸配列からなり、特に好ましい実施形態においては、その混合物は約1018個以上の異なる核酸配列を含む。本発明の好ましい実施形態では、核酸は無作為化部分を含んでいる。他の実施形態では、無作為化部分は、およそ30〜150ヌクレオチドの長さである。さらに別の実施形態では、無作為な部分がおよそ40〜120ヌクレオチドの長さである。別の好ましい実施形態では無作為化部分は、およそ50〜100ヌクレオチドの長さである。いくつかの特に好ましい実施形態では、無作為化部分は、およそ70〜95ヌクレオチドの長さである。一方で、別の特に好ましい実施形態では、無作為化部分はおよそ50〜60ヌクレオチドの長さである。
【0199】
それゆえ、本発明は多種類のアナライトへ結合しうる核酸リガンドを意図している。さらにこれらのアナライトの例としては、病原体、薬物、受容体リガンド、抗原、イオン、タンパク質、ホルモン、血液成分、抗体、およびレクチンを含むが、それらに限定されない。
【0200】
上記に特定された多様な核酸リガンドの全ては、より大きい核酸分子のドメインもしくは部分としても含まれるかもしれない。また、上記で特定された全ての核酸リガンドが後述するモノマーに結合できる。
【0201】
(ii)DNA のモノマーへの結合
本発明のひとつの実施形態においては、自己集合性モノマーを、一本鎖DNA断片(オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とも称する)の5’末端に共有結合させた。ODN−脂質コンジュゲートを、ジアセチレンリポソームアセンブリー中に取り込んだ。合成DNAとのコンジュゲート反応のための一般的な手順は、DNA合成機中で、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の5’末端をアミノ官能基により修飾し、さらにODNの切断および脱保護により、さらに反応し得る反応性アミン官能基性を得るものである(例えばChatterjeeら、J. Am. Chem. Soc. 112:6397−6399[1990];Gryaznovら、Nucleic Acids Res. 21[1993]:Reedら、Bioconjugate Chem. 6:101−108[1995];Soukupら、Bioconjugate Chem.6:135−138[1995];Herrleinら、J. Am. Chem. Soc. 117:10151−10152[1995];Timofeevら、Nucleic Acid Res. 24:3142−3148[1996];Kangら、Nucleic Acid Res. 24;3896−3902[1996];およびGanachaudら、Langmuir 13:701−707[1997]を参照されたい)。活性化カルボキシラート(すなわちN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を用いたアミド化が通常は用いられる。ひとつの実施形態においては、5’−アミノ官能基化された27merである、HN−CH−CH(CHOH)−OPOH−O− GAATGTATTAGAATGTAATGAACTTTA (配列番号1)(以降、「オリゴ1」とする)を、10,12−ペンタコサジイン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS−PDA)とコンジュゲートさせた。
【0202】
コンジュゲーションのための別の手順は、ジアセチレン脂質一リン酸の、NN’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)媒介性のエステル化である。ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下でのリン酸モノエステルとアルコールとの反応による、リン酸ジエステルの生成法はKhoranaらに記載されているが、それによると副産物としてピロリン酸塩が生成される(例えばKhoranaら、J. Chem. Soc. [1953]:Smithら、J. Am. Chem. Soc. 80:6204−6212[1958];Gilhamら、J. Am. Chem. Soc. 80:6212−6222[1958];およびTenerら、J. Am. Chem. Soc. 80[1958]を参照されたい)。ジシクロヘキシルカルボジイミドを縮合試薬として用いる糖リン酸と脂質アルコールとの反応が報告されている(例えば、Warrenら、Biochemistry 11;2565−2572[1972]; Warrenら、Biochemistry 12:5031−5037[1973];およびWarrenら、Biochemistry 12:5038−5045[1973]を参照されたい)。得られたコンジュゲーション産物を、一本鎖として、およびそれらの非修飾相補体とのハイブリダイゼーション産物として、ゲル電気泳動で特性決定した。赤痢菌(Shigella)受容体を担持するリポソームへDNAを注入するための、バクテリオファージλを用いたDNAのリポソームへの取り込みもまた報告されている(Newら、Liposomes:A Practical Approach, 第1版、Oxford University Press:New York[1990])。本発明の1つの実施形態においては、固体支持体に結合した10merの5’−OH末端を、DCCを用いてジアセチレン一リン酸とコンジュゲートさせた。
【0203】
本発明の特定の実施形態においては、ODN−脂質コンジュゲートをリポソームと混合し、次いで光重合させ(photopolymerized)、非結合ODNを除くために濾過した。リポソームとともに保持されたODNの量を、260nmでのUV吸光度測定により定量した。リポソーム中のDNAの相互作用および含有を、特に遺伝子治療におけるDNA送達系として調べた(例えばNewら、前掲を参照)。カチオン性リポソームは、脂質二重層で挟み込んだDNAらせんが平行に並んだ層状複合体を形成し、それは液晶性の性質を示す(例えば、Radlerら、J. Am. Chem. Soc. 275:810−814[1997];およびLasicら、J. Am. Chem. Soc.119:832−833[1997]を参照されたい)。しかしながら、本発明とは異なり、これらのリポソームで、DNA結合の際に、目に見える比色変化を示すものはない。
【0204】
特定の実施形態においては、カチオン性荷電ラテックス粒子上へのODNの吸着特性を、pH依存的に調べた。正に荷電した表面と負に荷電したODNとの間のクーロン相互作用および疎水性相互作用または水素結合が、重要な役割を果たす(例えば、Ganachaudら、Langmuir 13:701−707[1997]:およびElaissariら、Langmuir 11:1261−1267[1995]を参照されたい)。この疎水性相互作用/水素結合は、リポソーム表面上に露出されたカルボン酸ヘッド基を有するPDAリポソームにおいて見られたように、負に荷電した表面にさえODNを吸着させる。
【0205】
本発明は、特定のDNA−脂質取り込み法のいずれにも限定されるものではない。ひとつの実施例においては、予め調製された生体高分子材料に、続く光重合によって一本鎖プローブDNA(ss−p−DNA)脂質を取り込ませる。この方法には、ss−p−DNA脂質の合成、プローブDNAのジアセチレン脂質とのコンジュゲーション、および続いての層への挿入、続いてのジアセチレンの重合が必要である。ジアセチレン脂質の、プローブDNAの5’末端への直接的コンジュゲーションは、例えば、5’−OH−末端化されたオリゴヌクレオチドをPOCl/PO(OCHおよび脂質アルコールで処理することによって、あるいは5’−OH−末端をリン酸シアノエチル/トリクロロアセトニトリルでリン酸化し続いて脂質アルコール/トリクロロアセトニトリルと反応させることによって、実現できる。しかしながら、この方法はかなり収率が低い(例えば、Ringsdorfら、Angew. Chem. 100:117[1988];およびChenら、J. Colloid Interface Sci. 153:244[1992]を参照されたい)。より高い収率が得られる別の合成手順は、自動化オリゴヌクレオチド合成の最後の結合ステップとしてホスホロアミダイトまたは脂質のH−ホスホネートの結合を含むものである(例えば、Kunitake Angew. Chem. 104:692[1992];Roberts, Langmuir−Blodgett Films. Plenum Press, New York[1990];およびUlman, Ultrathin Organic Films,第1版、Academic Press, Inc., San Diego[1991]を参照のこと)。この方法は脂質がDNA合成機中の反応条件に対して安定であることを必要とする。中間体の亜リン酸トリエステルのリン酸エステルへの酸化がI処理によってなされるため、ジアセチレンユニットは、これらの条件下では不安定である恐れがあり、三重結合へのヨウ素の付加も生じ得る。また、アミノ部分またはチオール部分のような官能基を5’−末端に導入し、続いて脂質を結合させてもよい。このような官能基を有する多様なホスホロアミダイトが、DNA合成機での使用のために市販されている。
【0206】
あるいは、ss−p−DNAは、DNAの光分解を回避するために、脂質の光重合の後に特定のアンカー脂質と連結させ得た。さらにリポソームは、比色検出装置に組み込むために、基板表面に共有結合で固定化されている。この結合は、基板表面上に露出している官能基と特異的に反応するアンカー脂質を取り込むことにより実現できる。ポリジアセチレン表面でのDNAの固定化は、アミノ官能基化またはAl(III)ホスホネート官能基化された表面への非特異的固定化によって、またはDNAのシリカゲル結合ソラーレンへの光結合によって実現できる。アミノ−およびAl(III)ホスホネートの場合には、相補的DNAの表面結合DNAへの表面特異的なハイブリダイゼーションが報告されている(例えば、Zasadzinskiら、Science 263:1726[1994];Whitesidesら、Science 254:1312[1991];およびDamerら、Liposome Preparation: Methods and Mechanisms, 第1版、Marcel Dekker, Inc., New York and Basel[1983]を参照のこと)。
【0207】
本発明のひとつの実施形態においては、DNAリガンドは、相補的核酸によるハイブリダイゼーション事象に対して30%の比色応答をもたらした。応答は配列特異的であった。なぜなら、相補的ではない対照オリゴヌクレオチドでは僅か15%の応答のみがもたらされるからである。
【0208】
V. 比色変化の検出
生体高分子材料の分解の結果生じる比色変化は、数多くの方法で検出できる。本発明の好ましい実施形態においては、色の変化が、単に視覚的観察によって観察された。このように、本発明は、家庭でのユーザーなど訓練されていない観察者であっても容易に使用できる。
【0209】
別の実施態様においては、当技術分野で周知のスペクトル試験装置を用いて、単なる目視による観察の範囲を超えて、スペクトル的な質(特定の照射光波長に対する光学密度を含む)の変化を検出する。例えば、分光計を用いて、アナライトの導入前と導入後に前記材料のスペクトルを測定し、比色応答(CR%)を測定した。アナライトにさらす前の前記材料の可視光吸収スペクトルを、B=I/(I+I)として測定した。式中「B」は、基準波長Iと比較した場合の、波長Iでの所定の色相の比率を表している。次いでアナライトにさらした後スペクトルを取得し、同じ計算を行ってBfinalを決定した。%CR=[(B−Bfinal)/B]×100%として比色応答を計算した。
【0210】
さらに、本発明は、所望の場合には、変換デバイスに結合することもできる。自己集合したモノマー材料と変換デバイスとの結合は、光ファイバー(例えばBeswickおよびPitt、J. Colloid Interface Sci. 124:146[1988];ならびにZhaoおよびReichert、Langmuir 8:2785[1992]を参照されたい)、水晶発振器(例えばFurukiおよびPu、Thin Solid Films 210:471[1992];およびKepleyら、Anal. Chem. 64:3191[1992]を参照されたい)、および電極表面(例えばMiyasakaら、Chem. Lett., p.627[1990];ならびにBilewiczおよびMajda、Langmuir 7:2794[1991]を参照されたい)を用いて説明されている。しかしながら、これらの例とは異なり、本発明は、前記材料における色変化の観察による二重チェック(すなわち確認法)を提供する。
【0211】
いくつかの実施例においては、本発明の生体高分子材料を、共振周波数で振動する薄いPzT材料上にコーティングして、マイクロ電気機械系(MEMS system)を作製してもよい。このようにして、生体高分子材料における変化は、現象を確認することが可能な比色変化と共に、共振周波数の変化として検出できる。
【0212】
また、脂質ポリマーを光電デバイス、比色計、または2以上の特定の波長で読み取りができる光ファイバーチップと結合することにより、感度を高められる。また、該デバイスは別のシグナル伝達デバイス(音声アラームや振動等)に連結し、シグナルの簡単な翻訳をもたらすこともできる。
【0213】
上記のように、アナライトの活性(例えばリパーゼの脂質分解活性およびトランスフェラーゼの膜修飾活性)の検出に加えて、アナライトの存在を検出することが望ましいであろう。本発明の生体高分子材料を用いて、多種多様なアナライト(小分子、微生物、膜受容体、膜断片、揮発性有機化合物(VOC)、酵素、薬剤、抗体および他の関連物質を含むがこれに限定されない)を、アナライトの結合の際に生じる色変化の観察によって検出できる。本発明は非常に穏やかな試験条件下で機能して、生体小分子をほぼ天然の状態で検出する能力を提供し、アナライトの修飾または分解に伴うリスクを回避している。
【0214】
VI. 膜のコンホメーション変化の検出
上記の通り、本発明は、生体高分子材料におけるコンホメーション変化を、比色変化の観察によって検出するための方法を提供する。このようなコンホメーション変化は、アナライトのリガンドへの結合(上記)により、また化学反応(酵素触媒作用など)による生体高分子材料の化学修飾のために、引き起こされ得る。
【0215】
いくつかの実施形態においては、本発明は、生体高分子材料を用いた簡便なプロトコールを提供し、界面触媒作用の検出、インヒビターの同定、および、触媒能の特性決定のための酵素や他の触媒体(触媒性抗体等)のスクリーニングの、実用的な方法を提供するものである。これらの方法は、天然の、標識されていない基質を使用する。そして触媒作用または阻害は、周辺の脂質−高分子アセンブリーの色変化の存在または不在によってシグナル化される。この技術の一段階(one−step)という性質により、ハイスループットな化合物スクリーニングへ好都合に応用できる。本発明の方法は一般に、酵素の認識および活性に影響し、また膜の再構成に影響する因子に適用できる。
【0216】
重合し混合した小胞は、化学的および物理的分解に対して高度に安定性であり、放射標識基質を用いる酵素アッセイに代わる、好都合で経済的な方法を提供する。本発明で記述された小胞ストック溶液は、アッセイの結果に影響を与えることなく6ヶ月以上保存できた。
【0217】
本発明の特定の用途を以下に記述して、一連のコンホメーション変化への本発明の幅広い適用性を説明し、またその特異性と使用の容易さを示す。ホスホリパーゼA、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD、ブンガロトキシン(アマガサヘビ毒素)、および他の酵素活性を例示する。これらの実施例は本発明の幅広い適用性を単に示すものである。これらの特定の実施形態に本発明が制限されるものではない。
【0218】
A. ホスホリパーゼ 活性
PLA活性は以前から、多様なモデル膜系、例えば重合化小胞(Duaら、J. Biol. Chem. 270, 263[1995])、ミセル(Reynoldら、前出)、単層(Graingerら、前出、およびMirskyら、Thin Solid Films 284, 939[1996])において標識技術(放射能および蛍光等)を使用して研究されてきた。本発明は、PLA酵素活性を比色検出するためのPLAの基質脂質を取り込んだ生体高分子材料を提供する。
【0219】
生体高分子材料を、重合し得るマトリックス脂質(10,12−トリコサジイン酸等)と、PLAの基質脂質(ジミリストイルホスファチジルコリン[DMPC]等)の様々なモル画分(0〜40%)との組合せを用いて、実施例1および10に記載の通りに調製した。いくつかの実施形態においては、PLAの基質脂質を含む生体高分子材料は、図12に示されるようにリポソームであった。この図は、重合の前(上)および後(下)の、ジアセチレン脂質マトリックス中のDMPC基質を示す。それらの初期状態においては、小胞は、肉眼には深い青色と見え、図13に示されている通り、約620nmのあたりに吸収極大を有する(実線)。PLAのDMPC/PDA小胞への添加の際に、懸濁液は急激に(すなわち数分以内に)赤色に変化し、図13に示されているように約540nmに吸収極大を示した(破線)。
【0220】
色の変化は、図14に示されている通り、PDA小胞中の天然脂質DMPCのモルパーセンテージを変化させることにより調節された。10%以上の相対的色変化が、明瞭に肉眼で観察された。数分以内に20%を超えるDMPCを含むリポソームは強い比色応答を示した。DMPCを低いモル比率(例えば5%)で有するリポソームもまた、より長時間のインキュベーションの後で、視覚的に検出可能な比色応答を示した。DMPCを含まない小胞は、対照サンプルにおいて示されている通り、PLAの添加の際に、大部分は青色相のままであった。
【0221】
PDA小胞およびフィルムの生体色素変化は、コンジュゲートした高分子主鎖の拡張されたπオーバーラップの摂動から生じると提唱されている。この構造的再配置は、以前の研究においては、多価受容体結合またはPDAマトリックスへのペプチドドメインの貫通によって誘導されており、より短い波長(すなわち490−540nm)での吸収をもたらす(Charychら、Chemistry and Biology, 前出:PanおよびCharych, 前出:ならびにChengおよびStevens、Advance Materials, 前出)。酵素PLAと混合DMPC/PDA小胞との相互作用の際に観察される強烈な色変化は、この場合には、界面触媒作用による小胞の化学修飾が、生体色素変化を誘導するための別の経路を提供することを示している。このように、本発明は、生体高分子材料における比色変化を誘導するための新規手段を示すものである。
【0222】
生体触媒作用がDMPC/PDA小胞にて生じることを確認するために、PDAマトリックス中へ取り込まれた標識脂質類似体を用いてPLA活性を独立して測定し、小胞の比色応答と生成物の生成を同時に測定できるようにした。使用した類似体はチオエステルである1,2−ビス−(S−デカノイル)−1,2−ジチオ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DTPC)であった。DTPCのPLAによる切断によって、5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)と容易に反応して412nmで典型的に吸収する着色生成物を生成する可溶性チオール修飾脂質が産生される(Reynoldsら、前出)。事実、混合した40% DTPC/PDA小胞にPLAを添加した場合には、DNTBと反応する加水分解産物により、図15に示す通りに412nmでかなりの吸収が起こった。同時に、PDA小胞もまた色を変化させ、懸濁液は、図13に示されたDMPC含有小胞の比色応答と同程度の比色応答を示した。これらの結果は、PLAによる界面触媒作用が、重合化混合小胞において生じることを確認するものである。
【0223】
さらにNMR実験により、PLAによる界面触媒作用が生じていることが確認され、かつ酵素反応の最終産物の情報がもたらされた。図16は、PLAを添加する前のDMPC/PDA小胞の32P NMRスペクトル(図16A)と、酵素反応後の同スペクトル(図16B)の特徴を述べるものである。図16Aの、インタクトな小胞に由来する比較的幅の広い異方性の31P共鳴は、PDA小胞中に埋め込まれたDMPCのコリンヘッド基に対応する。図16Aにおいて31Pの異方性が観察されたことは、DMPC分子が小胞マトリックス内部に固定化されていることを示している。PLAを添加した後、31Pシグナルは、図16Bに示される通り、ダウンフィールドへ移行した。図16B中の31P共鳴の位置は、DMPCの加水分解産物である水可溶化されたリゾミリストイルホスファチジルコリンについて観察された変化と一致していた。さらに、図16Bは、酵素処理された小胞の懸濁液において見られた31P共鳴が、図16A、最初のDMPC/PDA小胞に由来する31Pシグナルよりも有意に狭くなっていることを示しており、このことはPLA触媒作用に続いてリン酸基の移動性が高くなったことを示している(SmithおよびEkiel、Phosphorous−31 NMR, Principles and Applications, Academic Press, Orlando, pp 447[1984])。この結果は、酵素反応に続くリゾ脂質反応産物の分解を示唆している。PLAとの反応後の区別し得るリゾ脂質相の出現を示すH NMRデータは、この記述をさらに支持するものである。
【0224】
B. 他のホスホリパーゼ
ホスホリパーゼC(PLC)およびホスホリパーゼD(PLD)等の、他の酵素による界面触媒作用の比色検出もまた、基質修飾PDA小胞を用いて行った。それにより本発明によって記述される方法論を一般的に適用できることを示した。これらのホスホリパーゼは、グリセロリン脂質の極性ヘッド基領域を切断し、一方でホスホリパーゼAは専ら2アシル位置でアシルエステル結合を切断する。
【0225】
ホスホリパーゼDおよびCのアッセイ試験を、PLAアッセイと同様の条件下で行った。PLDおよびPLC活性の両方をリポソームアッセイによって検出することに成功した。PLDアッセイにより、約55%の最終比色応答を得た。しかしながら、応答曲線の形状はPLAのものよりも緩やかであった。本発明を用いるために、機構を理解することは必要ではなく、本発明が次のように限定されることを意図するものでもないが、PLDに触媒される反応の動力学が異なるか、または触媒事象と色の変化との間の応答時間がより長くかかることが考えられる。PLCアッセイでは、60%の最終比色応答が得られ、応答曲線はPLAのものと類似していた。NMR実験により、PLCおよびPLDによる界面触媒作用が生じていることをさらに確認した。
【0226】
C. ブンガロトキシン アマガサヘビ毒素 (BUTX))
アマガサヘビ(Bungarus multicinctus)由来のヘビ毒素であるβ−ブンガロトキシンは、シナプス小胞を破壊し、アセチルコリン放出を阻害することが知られている。これはPLA毒素に分類され、以下の2つのサブユニットから構成される。それはPLA活性を示す12kDaのサブユニットと、プロテアーゼインヒビターと配列の相同性を有する7.5kDaのサブユニットである。
【0227】
ブンガロトキシンと40% DMPC/60% 10,12−トリコサジイン酸(TRCDA)リポソームを用いた実験は、1時間のインキュベーション時間の後で、約50%の最大比色応答を示した。応答曲線は、PLAアッセイのものと類似していた。さらに、BUTXとのインキュベーションの後に、このアッセイ溶液中のリポソームは、色が変化しただけでなく、沈殿もした。以前の研究においては、BUTXは、小さな一枚膜リポソームの融合を誘導することが示されていた(Rufiniら、Biochemistry 29, 9644[1990])。この融合の機構は不明のままであるが、BUTX、Ca2+、およびリゾリン脂質との間の相互作用に依存するものと考えられる。
【0228】
このブンガロトキシンアッセイは、生体高分子材料中における比色変化を生成できる酵素的特性を有する巨大分子アセンブリーの一例を提供する。いくつかの実施形態においては、更なるブンガロトキシン検出特性を生体高分子材料に付加し、比色検出を増強することが望ましいであろう。例えば、ブンガロトキシン(すなわちリガンド)に対して生成された抗体を、DMPCに加えて生体高分子材料上に取り込んでもよい。そうすれば、ブンガロトキシンがサンプル中に存在する場合には、リガンド/アナライトの相互作用および酵素/基質反応が組み合わされ、比色応答が増強されるであろう。
【0229】
D. 他の酵素系
本発明は、数多くの他の系の酵素活性(特に脂肪分解酵素、アシル基転移酵素、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼ、異性化酵素、リガーゼ、ポリメラーゼおよびプロテイナーゼを含むがこれらに限定されない)を検出し、測定し、特徴付ける際に使用できるであろう。このような酵素は、溶液中で遊離していてもよく、またはより大きな分子凝集物、細胞、および病原体の一部であってもよい。生体触媒性事象の一般的な記述については、Dordick(Dordick, Biocatalysts for Industry, Plenum Press[1991])を参照されたい。
【0230】
例えば、グリコシダーゼは、それらの活性を測定するために、または病原体の存在の指標として検出され得る。ノイラミニダーゼ等のシアリダーゼはインフルエンザウイルスにおいて見出され、他のシアリダーゼはサルモネラ菌(Salmonella)に伴うものである。生体高分子材料をグリコシダーゼに対する基質とともに提供することにより、病原体の存在を検出できる。他の検出要素(インフルエンザウイルス検出のためのシアル酸リガンドなど)と組み合わせることにより、非常に高感度の比色センサーを作製し得る。
【0231】
また、プロテイナーゼの検出系を作製するためにも基質を提供できる。例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、ペプスタチン基質に対するそのプロテアーゼ活性を介して検出し得る。また、炭疽菌(Bacillus anthracis)に由来する炭疽菌胞子は、基質との反応を介してラッカーゼ活性を同定することにより検出し得る。ラッカーゼは、多様な基質(フェノール、ポリフェノール、および芳香族アミンを含む)の酸化的変換を触媒する複数銅含有(multi−copper−containing)酵素である。特異的基質にはバニリン酸、シリンガ酸、および2−2’−アジノ−ビス(3−エチル−ベンズチオアゾリン−6−スルホン酸)が含まれる。これらの公知のラッカーゼ基質を1種以上、本発明の生体高分子材料に導入することにより、炭疽菌胞子に対する検出アッセイを作製し得る。
【0232】
他の用途には、生体高分子材料へ核酸を取り込み、ヌクレオチドポリメラーゼ(DNAポリメラーゼなど)の活性を試験することが含まれる。これらのアッセイ系は、ポリメラーゼインヒビターの同定および特性決定のための技術において使用されるであろう。これらの例から、本発明の生体高分子材料は、多種多様な膜のコンホメーション変化および応答を比色検出する上で使用できることは明らかである。
【0233】
E. インヒビターのスクリーニング
上記の通り、本発明は、生体高分子材料のコンホメーションを変化させる酵素および他の分子の活性を検出するための方法を提供するものである。これらの方法は、比色変化の原因となる活性のインヒビターを同定し特性決定するための、正確かつ迅速なスクリーニング技術(例えば、候補インヒビターを酵素のタンパク質基質を含む生体高分子材料にさらすことによって、プロテアーゼインヒビターを同定し特性決定する)を提供するために拡張され得る。
【0234】
例えば、上述のPLA酵素活性の検出に関しては、DMPC/PDA小胞の色の変化は、PLAのインヒビターを用いることによって抑制できる。インヒビターである1−ヘキサデシル−3−トリフルオロエチルグリセロ−2−ホスホメタノール(MJ33)(Gelbら、前掲、およびJainら、Biochemistry 30, 10256[1991])の存在下において、前記小胞はPLAを添加しても青色相のままであった。PLA/小胞懸濁液については、96ウェルマイクロタイタープレート中、MJ33の存在下(青色)および不在下(赤色)において、これらの色の差異が明瞭に視覚化された。該ウェルの吸光度を標準的なマイクロプレートリーダーを用いて測定し、図17に示されるように比色応答の抑制を定量的に確認した。この図は、インヒビターの不在下(実線、最大誤差1.9%)、およびMJ33の存在下(破線、正方形、最大誤差6.9%)の、DMPC/PCA小胞についての比色応答曲線を示す。また、Ca2+をZn2+に置き換えることによるPLAの阻害を示す(破線、ひし形、最大誤差6.5%)。
【0235】
MJ33による青色から赤色への色変化の阻害は、非特異的付着が生体色素応答における役割を担っておらず、PLA活性が直接色変化の原因となっていることを示している。PLAの不活性化はまた、PLAの触媒補因子であるCa2+(Gelbら、前掲)をバッファー溶液から除去する際にも見られた。同様に、Ca2+イオンの代わりにZn2+イオンを含むバッファー中に調製されたPLAは、図17に示されるように、小胞の青色から赤色への色変化を誘導しない(破線、ひし形)。リゾチームやグルコースオキシダーゼなどの他の酵素の存在下でも、小胞は変色しない。これら2つの酵素は、40% DMPC/PDA小胞との1時間以上にもわたるインキュベーションの後でも、5%以下の比色応答を示すのみである。これらの比色応答の特異性は、酵素インヒビターのハイスループットスクリーニングのために必要とされる選択性を提供する。
【0236】
インヒビターのスクリーニングのために、試験される酵素に対する基質を含む生体高分子材料を、マルチチャンバーデバイス(96ウェルプレートなど)中に配置する。ウェルの各々を、酵素インヒビターを含む疑いが持たれるサンプルと共にインキュベートする。次いで酵素を添加し、色変化を検出する。阻害に成功したインヒビターは、部分的にまたは完全に、酵素が生体高分子材料にて色変化を起こすことを防ぐであろう。結果に信頼性を与えるために、適切な対照サンプル(インヒビターを含まないサンプルおよび公知のインヒビターを含むサンプル)のアッセイも行う。
【0237】
F. 設計された触媒
本発明の生体高分子材料はさらに、「設計された」タンパク質、ペプチドおよび触媒性抗体の活性および有効性をスクリーニングするための方法を提供する。特定の条件(特に溶媒および熱条件)の下で安定であるように酵素を遺伝子工学的に操作することが、現在非常に盛んである。そのような酵素に対する基質を本発明の生体高分子材料中に供給することにより、これらの遺伝子操作されたタンパク質についての簡便かつ精度の高いスクリーニングを、多様な試験条件の下で行うことができる。同様に、本発明の方法は、触媒性抗体の反応をスクリーニングし、特性決定するために使用することができる。
【0238】
VII. 生体高分子材料の固定化
本発明の生体高分子材料は多様な固体支持体上に固定化できる。固体支持体には、ポリスチレン、ポリエチレン、テフロン、シリカゲルビーズ、疎水化シリカ、雲母、濾紙(ナイロン、セルロースおよびニトロセルロースなど)、ガラスビーズおよびスライド、金および全ての分離媒体(シリカゲル、セファデックスおよび他のクロマトグラフィー媒体など)が含まれるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態においては、生体高分子材料をゾル−ゲル工程によりシリカガラス中に固定化した。
【0239】
本発明の比色用生体高分子材料の安定性、強度、貯蔵寿命、比色応答、色、使用の容易さ、デバイス(アレイなど)への集積、その他望ましい特性を改善するためには、その固定化が望ましい。いくつかの実施態様においては、多様な基板表面上に比色材料を配置して、公知で容易に使用できる、リトマス紙試験に類似した試験方法を作製することができる。例えば、ナイロン濾紙の反射特性は、固定化したポリジアセチレンリポソームの比色特性を著しく促進させる。濾紙はまた、メッシュのサイズによりリポソームの安定性を増加させる。
【0240】
別の実施例においては、本発明のリポソームを、インクジェットプリンターのインクカートリッジ中に充填し、これを使用して生体高分子リポソーム材料を紙の上にあたかもインクであるかのように印刷して使用した。この紙の上にあるリポソーム材料は、その比色特性を維持していた。この実施形態により、パターン化されたアレイを、任意の形状およびサイズで容易に作製できることが示された。複数のカートリッジ(カラープリンターなど)を使用することにより、パターン化されたアレイは異なる生体高分子材料を用いて作製できる。
【0241】
本発明のいくつかの実施形態においては、リポソーム層を薄い支持体(プリント用紙、プラスチックシート、オーバーヘッド透明シート(transparency)など)上に、通常のインクジェットプリンターを使用してパターン化した。プリンターは、プリント用カートリッジにリポソーム溶液を充填して使用した。これにより、数十cmから下はmm以下の領域(プリンターの解像度の限界)までの範囲でのパターン化が可能となった。そしてパーソナルコンピューターのソフト(作図プログラム、ワードプロセッサーなど)により、パターンを容易に設計でき、印刷できた。印刷したリポソームを、乾燥後光重合させた。その結果得られる高分子は強力に吸収されており、アセトンやCHClなどの有機溶媒ですら、作製されたパターンを溶解しなかった。この方法は、試験スティックタイプの方法やアレイタイプのアッセイを作り出すための理想的な手法を提示する。別の利点は、薄いフイルムに塗布され、アッセイにおいて完全に使用されるリポソーム材料の効果的な使用である(すなわち、洗浄または官能化ステップによる損失がない)。
【0242】
一般的な作業手順は、以下の工程:i)リポソーム溶液(5ml以上、2〜10mM)を調製し、その溶液をカートリッジに充填すること、ii)カートリッジを、インクの強力なプリントパターンでプライミング(priming)およびフラッシングして、その直後に所望のリポソームパターンを印刷すること、および、iii)リポソームのプリントアウトを光重合すること、からなる。
【0243】
実験のコースにおいて、いくつかの問題点が見られた。重合の収量は紙のタイプによって変化したが、通常の白色コピー用紙では一般に良好な結果が得られた。高品質の紙(すなわちレーザープリンター用紙、カラープリンター用紙)においては、印刷されたリポソームは重合しなかったが、このことも同様にリポソームのタイプによっていた。純粋なTRCDA(10mM)またはPDA(2mM)リポソームは、通常の紙に比べると僅かに少ない収量で重合したが、20%シアル酸脂質(SA−PDA)を含むTRCDAリポソームはこのような高品質の紙の上では全く重合しなかった。他方、SA−PDA含有リポソームは、標準紙またはオーバーヘッド透明シート上では良好に重合した。別の実験においては、プリントノズルが短時間経過した後に詰まった。このことは、水の蒸発とノズル内でのリポソームの凝集による可能性が最も高い。詰まりを防ぐため、5〜30%のエタノールをリポソーム溶液中に添加した。この添加はノズルを詰まらないようにするために非常に効果的であったが、重合の収量は低下した。ノズルは、エタノールで洗浄し、Nまたは空気でカートリッジを加圧して液体をプリントノズルを通してカートリッジ内部に向かわせることによりリポソーム溶液でフラッシングして清浄にすることができる。グリセロールおよびポリエチレングリコールなどの添加物を、水の蒸発を防ぐために添加し、その結果重合の収量に影響を与えることなくリポソームの凝集を防ぐこともまた考慮されている。別の実施形態においては、ノズルは詰まりを防ぐために設計し直されている(形状の再設計、または異なる材料の使用など)。
【0244】
A. ゾル ゲル法による生体高分子材料の捕捉
本発明の開発以前は、ゾル−ゲル工程が、染料や生物分子などの有機分子をシリカゲル中に捕捉するために使用されてきたが(Avnir, Accounts Chem. Res. 28:328[1995]:Yamanakaら、Am. Chem. Soc. 117:9095[1995]:Millerら、Non−Cryst. Solids 202:279[1996]:およびDaveら、Anal. Chem. 66:1120A[1994]を参照)、自己組織(self−organized)分子凝集物の固定化(生体高分子材料、自己集合性モノマー凝集体およびリポソームなど)はゾル−ゲル材料では実現されていなかった。
【0245】
本発明の実施形態により、水性ゾル−ゲル法を使用して、球体二層脂質凝集体およびリポソームの固定化に成功し得る。これらの分子構造体、および、特に生物学的または生物模倣(すなわち天然の模倣)脂質からなるリポソームは、水性条件下および室温ではかなり強固であるが、有機溶媒の存在下および高温では容易に分解する。ゾル−ゲル工程は、検出可能な構造変更を伴うことなく分子凝集体を固定化するための容易な方法を提供し、それにより任意のサイズおよび形状へと容易に加工し得る強固な構造体を作製するものである。
【0246】
シリカのゾル−ゲル材料は、テトラメチルオルトケイ酸塩、水、および塩酸を、冷凍条件下で単相溶液が得られるまで超音波破砕することにより調製した。テトラメチルオルトケイ酸塩以外の金属酸化物の使用も、金属酸化物が捕捉を容易にし、実質的に透明なガラス材料を形成する限り、本発明によって考慮されている。そのような金属酸化物には、ケイ酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、オルモシル(ormosil)などが含まれるが、これらに限定されない。続いてバッファーを酸性溶液に冷却条件下で添加する。上記のように生成した生体高分子材料を、緩衝ゾル溶液中に混合する。この混合物を所望の成型用構造体に注ぎ、室温でゲル化させる。本発明が使用される成型用構造体のタイプによって制限されることは意図されていない。なぜなら、多様な構造体を適用して、任意のサイズおよび形状(キュベット、薄いフイルム、プラスチック、セラミックを作製するための平滑表面、またはバッジを作製するための金型を含むがこれに限定されない)のゲルを作製できることが考慮されているからである。本発明は室温でゲル化させることに限定されるものではない。なぜなら、機能的なアナライト検出ゲルの作製を容易にするいずれの温度範囲も考慮されているからである。
【0247】
実施形態の1つにおいては、DCDAリポソームをゾル−ゲルガラス中に取り込むが、本発明では、あらゆる生体高分子構造体の取込みを考慮している。上記のゾル−ゲル法によると、数分以内にゲル化が起こり、紫色のゲルが生成する。図18に示す通り、ポリジアセチレンリポソームの可視光吸収スペクトルは、ゾル−ゲルマトリックス中においても、溶液中のリポソームと比較して変更されていなかった。リポソームを55℃まで加熱すると、ポリジアセチレン材料に特徴的である青色から赤色への熱比色遷移が起こる。青色相から赤色相となった材料は、図19に示す通り、同じように、ゾル−ゲル状態となっても溶液と比較して変化しなかった。このように、本発明は、壊れやすい生体高分子構造体(すなわちリポソーム)と共存可能であり、かつバルク溶液において観察されるこれらの構造体の物理的性質を維持するゾル−ゲルマトリックスを提供する。
【0248】
さらに、様々な厚さのゾルゲル調製された材料が、アナライトに対して固有の感度を有するであろうことが考えられる。より厚いフイルムは、より高い表面対体積比を有し、それ故に、比色遷移を引き起こすためにはより高いアナライトの濃度が必要となるであろう。
【0249】
さらに、ゾル−ゲル調製のゲル化条件を、所望の孔径を有する物質を作製するために、ゲル化温度、ゲル材料、および乾燥条件を変えることによって最適化できる。材料の架橋密度を変化させることによってもまた、孔径を制御することができる。孔径は、本発明では、数nm〜数百nm以上を想定している。いくつかのゲルでは、アナライトがリガンドに接近する状態を維持しながら、所望でない物質をサイズで選択するスクリーニングを行うことができる。また、ゾル−ゲル技術により、形成される構造体を、所望のいずれの形状(カートリッジ、コーティング、モノリス、粉末および繊維を含むがこれらに限定されない)にも成型し得る。
【0250】
B. 化学結合による固定化
本発明の実施形態のいくつかにおいては、生体高分子材料をポリ(エーテル
ウレタン)またはポリアクリロニトリルの膜に結合させることができる。これらの膜は、有孔性かつ親水性であり、アフィニティー分離または免疫診断のために使用できる。本発明のリポソームを、最初に、イミジゾリル−カルボニル(imidizolyl−carbonyl)、スクシンイミド、FMPまたはイソシアネートなどの活性化基を、リポソーム中に存在する求核基(−NH、−SH、または−OH基など)に急速に結合する膜に結合させることにより、これらの膜と結合させることができる。このように、これらの官能基を含む任意のリポソーム調製物を膜に直接結合させることができる。この方法は、タンパク質の膜への結合と類似しており、後者は当技術分野でよく知られている(Bamfordら、Chromatography 606:19[1992])。
【0251】
多様な他の固定化技術が当技術分野で知られており、本発明の生体高分子材料に適用できる。例えば、−SH官能基を有する材料は、金表面、粒子、または電極へ、チオール−金結合を介して直接固定化することもできる。この場合には、SH基を含むリポソームの溶液を、清浄にした金表面とともに、水中で攪拌しながら室温で12〜24時間にわたりインキュベートする。また、材料をシリコンチップやシリカゲル(二酸化ケイ素など)に、実施例8に記載した方法を用いて固定化できる。さらにまた、NH官能基を含む材料を、タンパク質の固定化に関して頻繁に使用される、標準的なグルタルアルデヒド結合反応により、表面上に固定化できる。さらにリポソームを、それらのカルボキシ基を介して、未結合のアミン基を有する分枝高分子であるポリエチレンイミンを含む表面へ結合できる。
【0252】
VIII. アレイ
本発明の特定の実施形態では、単一の装置内に、異なるヘッド基化学物質、リガンド、ドーパント、モノマーまたは他の特性を有する重合可能な脂質の大きなパレットを作製し、所望の特性および品質、特に選択性、感度、定量性、使用の容易さ、および運搬性を増加させることを想定している。このアレイフォーマットを用いることにより、単一センサー手法の欠点を克服するいくつかの利点を実現できる。これらには、部分的に選択性であるセンサーの使用能力、および複数成分のサンプルの測定能力が含まれる。このことにより、干渉バックグラウンドの存在下で特定のサンプルを感知すること、または2以上の目的のサンプルを同時にモニターすることの可能性が供される。所与のサンプルに対する所与の脂質の感度を、各々のサンプルを同定するフィンガープリントの特徴をもたらすために測定できる。例えば、PDA誘導体Aの脂質−高分子フイルムは、サンプルXの存在下では完全にオレンジ色相に変換するが(%CR=100)、一方でPDA誘導体Bは、ピンク色を増加する70の%CRを有し、PDA誘導体Cは紫色を発生させる40の%CRを有し、そしてPDA誘導体Dは全く変化しない(故に青色/紫色のままである)ことがあり得る。この応答のフィンガープリントである、オレンジ色/ピンク色/紫色/青色−紫色は、サンプルXの存在を示す。明らかに、アレイ中のエレメントの数が多くなるほど、所与のアナライトに関して完全に同定する機会が増加する。生体高分子材料を固定化することにより、任意の所望のサイズと形状を有する物質を作製し、小型で、容易に読み取りと解釈ができる装置の中に取り込むことができる。
【0253】
サンプルの存在と活性の双方を測定するアレイを作製できる。例えば、特定の酵素の特性決定をする場合には、アレイの一部分が酵素に関するアナライト検出能力を提供(酵素と相互作用するリガンドを取り込むことにより、など)するものとし、他の部分が酵素活性アッセイを提供(生体高分子材料内に酵素基質を含めることにより、など)するものとできる。このようなアレイを、アレイの各部分が定量的または定性的なデータを提供するか、または対照実験を提供するものとして、インヒビタースクリーニング技術での使用のために拡張できる。
【0254】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態と態様を実証し、さらに説明するために提供されており、その範囲を制限するとは解釈されない。
【0255】
以下の実験の開示においては、以下の略語が適用される。N(正常)、M(モル濃度)、mM(ミリモル濃度)、μM(マイクロモル濃度)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、μmol(マイクロモル)、nmol(ナノモル)、pmol(ピコモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、ng(ナノグラム)、lまたはL(リットル)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル)、nm(ナノメートル)、μCi(マイクロキュリー)、mN(ミリニュートン)、Å(オングストローム)、kDa(キロダルトン)、ppm(パート パー ミリオン)、N(ニュートン)、℃(度、摂氏)、RT(室温)、h(時間)、wt%(重量パーセント)、aq(水性)、J(ジュール)、UV(紫外線)、XPS(X線光電子分光法)、PDA(ジアセチレンモノマー)、PCA(ペンタコサジイン酸モノマー)、DCDA(ドコサジン酸;docosadynoic acid)、TRCDA(トリコサジイン酸)、SA−PDA(シアル酸誘導PDA)、BUTX(ブンガロトキシン)、OTS(オクタデシルトリクロロシラン)、VOC(揮発性有機化合物)、CR(比色応答)、pH(水素イオン濃度)、EDC(エチルカルボジイミド塩酸塩)、AFM(原子力顕微鏡)、Hz(ヘルツ)、LB(ラングミュア−ブロジェット)、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)、CO(二酸化炭素)、MgSO(硫酸マグネシウム)、CdCl(塩化カドミウム)、MeOH(メタノール)、Be(ベリリウムイオン)、Mg(マグネシウムイオン)、Ca(カルシウムイオン)、Ba(バリウムイオン)、N(窒素ガス)、Sigma(Sigma Chemical Co. St. Louis,MO)、Perkin−Elmer(Perkin−Elmer Co., Norwalk, CT)、Fisher(Fisher Scientific. Pittsburgh, PA)、およびFarchan Laboratories(Farchan Laboratories. Inc., Gainesville. FL)、Park Scientific Instrument(Park Scientific Instruments. Sunnyvale, CA)、Biorad(Bio−Rad Laboratories. Hercules, CA)、Gelman(Gelman Sciences, Ann Arbor. MI)、Pierce(Pierce. Rockford, Ill)、およびBellco Glass(Bellco Glass Inc. Vineland. NJ)。
【0256】
全ての化合物は試薬等級の純度を有しており、特に言及がない場合には供給されたままの状態で使用した。有機溶媒は、Fisher Scientific由来でスペクトル(spectral)等級のものであった。全ての水性溶液は、18.0 M−オーム−cm抵抗と記載されたORGANICfree cartridgeを備えたBarnstead Type D4700 NANOpure Analytical Deionization Systemを通して精製された水で調製した。
【0257】
実施例
生体高分子材料の調製
I. リポソームの作成
リポソーム中に取り込まれる自己集合性モノマーを溶媒(ジアセチレンにはクロロホルム、ガングリオシドGM1にはメタノール、など)に溶解させた。多くの他の揮発性溶媒(ベンゼン、ヘキサンおよび酢酸エチルが含まれるがこれらに限定されない)が本発明において有用である。溶媒溶液を、褐色のバイアル中で(すなわち、後で行う乾燥ステップの間の光干渉を防ぐために)適当な容積で混合させて、所望の脂質混合物(5モル%のGM1、および95%ジアセチレンなど)を得た。約2μmolの総脂質含有量であった。続いて溶媒を、ロータリーエバポレーターまたは窒素ガス流で蒸発させた。続いて乾燥脂質を十分量の脱イオン水中に再度懸濁し、脂質の1〜15mM溶液を作製した。続いてこの溶液を15〜60分間プローブ超音波破砕器(Fisher sonic dismembrator model 300、出力50%、マイクロチップ)により、New(Newら、前掲)の記載に従って超音波破砕した。溶液を超音波破砕の間に加熱し(ほとんどの場合、超音波破砕工程自体が十分な熱を提供した)、使用された脂質の相転移温度を超える温度とした(典型的には30〜90℃)。その結果得られた混合物を、0.8マイクロモルナイロンフィルター(Gelman)を通して、または5mm Millipore Millex−SVフィルターを通して濾過し、4℃まで冷却し保存するか、または重合した。1つの実施形態においては、重合の前に、サンプルに5〜10分間窒素を通し曝気して、溶液中の酸素を除いた。
【0258】
攪拌したリポソーム溶液の重合を、3cmの距離で小型254nm UVランプ(pen−ray、エネルギー1600マイクロワット/cm)を用いて1cmの水晶キュベット中で行った。重合の間、チャンバーを窒素ガスで浄化し、全ての酸素を置換しサンプルを冷却した。重合時間は、5〜30分間の範囲で、リポソームの所望の特性(例えば、色、重合度)に応じて変化した。別の実施形態においては、浄化することなく溶液をUVチャンバー中に置き、0.3〜20J/cm、好ましくは1.6J/cmの紫外線照射に、5〜30分間曝露した。
【0259】
いくつかの実施形態においては、重合は、マルチチャンバープレート(ELISAプレートなど)中で行った。約200μlの超音波破砕したリポソーム溶液を、プレートの各ウェル中に配置した。プレートをUVランプの下に、ランプとプレートとの距離を3cmに保って配置した。照射時間は、典型的には1分間継続した。照射時間を長くすると、ピンク色/紫色のリポソームが形成された。このことは、色変化はUV光により開始されることを示していた。このようなリポソームは一致しない結果をもたらしたので、避けるべきである。
【0260】
II. フィルムの作成
ポリジアセチレンフイルムを、標準的なラングミュア−ブロジェット溝において形成した(例えばRoberts. Langmuir Blodgett Films, Plenum. New York[1990]を参照されたい)。溝に水を満たし、フイルムのための表面を作製した。蒸留水を、18.2 M−オームの抵抗を有するミリポア純粋生成装置を用いて精製した。ジアセチレンモノマー(5,7−ドコサジイン酸 10,12−ペンタコサジイン酸[Farchan Laboratories], 5,7−ペンタコサジイン酸、それらの組合せ、または他の自己集合性モノマー)を、溶媒拡散剤(スペクトル等級のクロロホルム[Fisher])中に溶解させ、シリンジを使って水性表面上に層を重ねて連続フイルムを形成した。1.0〜2.5mMの濃度範囲で調製したモノマーを、暗所で4℃で保存し、実験において使用する前には室温まで平衡化させた。
【0261】
水表面上に層を重ねた後、フイルムを移動可能バリアを用いて物理的に圧縮し、自己集合性モノマーの高密度で(tightly)パックされた単層を形成した。単層はその最も高密度のパック形状まで(すなわち、20〜40mN/mのフイルム表面圧力が達成されるまで)圧縮した。圧縮に続いて、フイルムを重合した。本発明の特定の実施形態(ドーパントを用いる実施形態など)においては、20〜40mN/mを上回るかまたは下回る表面圧力の圧縮が必要となるであろう。
【0262】
紫外線照射を、モノマーの重合のために使用したが、他の重合のための手段もまた使用し得る(ガンマ線照射、X線照射、および電子ビーム曝露など)。照射工程の間は常に、フイルム上の圧力を、移動可能バリアを用いて20〜40mN/mの表面圧力に維持した。紫外線ランプは、フイルムおよび溝から20cm以上離して配置した。ランプをフイルムにより近づけて配置すると、フイルムの加熱効果によるジアセチレンフイルムの損傷が起こることが判明した。フイルムは、約254nmの波長を有する紫外線に約1分間曝露した。重合化を、重合したジアセチレン形成により獲得される青色を観察すること、および重合したジアセチレンフィルムに典型的である直線状の溝を偏光光学顕微鏡で検出することにより確認した。
【0263】
III. 細管の作成
細管中へ取り込む自己集合性モノマーを、リポソームについて上記したように、溶媒中へ溶解させ、混合し、蒸発させ、水中に再懸濁した。1〜10体積%のエタノールを溶液に添加したが、他の有機溶媒もまた本発明において考慮されている。続いて溶液を超音波破砕し(必要に応じて加熱し)、濾過し、冷却し、リポソームに関して上記したように重合した。
【0264】
実施例
生体高分子材料の試験
I. 光学顕微鏡と 線分析器
PDAモノマーとシアル酸誘導PDAモノマーとの組合せを用いて、ジアセチルフイルムをラングミュアブロジェット溝に上記の通りに調製した。重合した浮遊アセンブリーを水平タッチ法(horizontal touch method)によって、予めオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の自己集合した単層で記載通りに(MaozおよびSagiv、J. Colloid Interface Sci. 100: 465[1984])コーティングしたガラススライド上に、持ち上げた。
【0265】
次にスライドを、交差した(crossed)偏光子を使用して光学顕微鏡で記載通りに(Day およびLango, Macromolecules 13: 1478[1980])観察した。フイルムは、図20の光学顕微鏡写真に示された通り、顕微鏡の範囲(すなわち50〜150μM)にわたって高度の秩序(order)を示した。150μMまでの大きなドメインが視認された(1cm=10μM)。
【0266】
フイルムをさらに、角度分解X線光電子分光法(XPS)およびエリプソメーターにより特性決定した。XPSの結果により、ヘッド基のアミド窒素原子およびカルボニル炭素原子が、脂質鎖のメチレン炭素と比較して表面に局在化していることが示された。このことはシアロシド(sialoside)ヘッド基が、フイルムの表面に提示されることを示している。HF処理されたシリコン上にコートされたポリジアセチレン単層の、エリプソメーター分析では、フィルムが厚さ約40Åであることを示していたが、これは分子モデリングに基づいて期待される値と一致している。
【0267】
II. 原子力顕微鏡
in situ原子力顕微鏡を使用して、顕微鏡での生体高分子結晶の、形態、表面トポロジー、ならびに、成長および分解特性を解明し、核形成(nucleation)現象の動的観察およびその測定が可能となった。研究は、Binnigらによって記述された(Binnigら、Phys. Rev. Lett. 12: 930[1986];およびBinnigら、Europhys. Lett. 3:1281[1987])、in situ研究の標準的な技術により行った。
【0268】
2つの異なる原子力顕微鏡をこの研究に使用した。1μmより大きな画像を、市販の装置(Park Scientific Instrument)を用いて得た。この場合には、Si ultralevers(Park Scientific Instrument)を用いた。市販のフォトリソグラフ的にパターン化されたガラススライド (Bellco Glass)を使用して、各温度ステップの後に、フイルムの正確に同じ領域の画像化を行った。1μmよりも小さい画像は、自家製AFM(Kolbeら、Ultramicroscopy 42−44:1113[1992])を用いて得た。許容範囲内の0.1N/mの力定数を有するSiカンチレバーを用いた(Park Scientific Instruments)。両方の顕微鏡を、コンタクトモード(contact mode)で操作し、後者の場合には、4−カドラント位置(quadrant position)感受性フォトダイオードにより、カンチレバーの曲がりとねじれを同時に測定することができた。全ての画像を、周囲の条件の下でコンタクトモードで得た。
【0269】
実施例3
生体高分子材料の最適化
本発明は、多様な生体高分子材料の形態(例えば、リポソーム、フィルム、微小管、など)を、ドーパント材料を伴ってまたは伴わずに、様々なリガンドとともに、かつ様々な形態で固定化して提供する。これらの実施形態のそれぞれについて、感受性、頑健性、比色応答、およびその他所望の要素を最大化するように、生体高分子材料を最適化することができる。以下に記載するのは、このような最適化に関するいくつかの例示的な実施例である。これらの実施例は本発明の適応性を単に例示することを意図するにすぎない。本発明をこれらの特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0270】
I. 混合モノマー
本発明の生体高分子材料は、純粋なモノマー(例えば、純粋なジアセチレン)のサンプルを含んでもよいし、または混合モノマー(例えば、ガングリオシドGM1またはドーパントを伴うPDA)を含んでもよい。混合モノマーの組成比率(%)の最適化を行って、所望の特性を有する生体高分子材料を提供することができる。このような最適化の実施例を、ガングリオシドリガンドによるアナライト(すなわち、コレラ毒素)の検出のために以下に記載する。
【0271】
M1/PDAフィルムの比色応答を評価するために、リガンド(すなわちGM1)とPDAを種々の濃度で組合わせて試験した。過剰のリガンド分子を添加した場合(すなわち、重合脂質の濃度が低い場合)、フィルムは不安定であり、高バックグラウンドを有した。フィルムが過剰の重合脂質分子を有した場合には、該フィルムは安定しすぎて、変色がうまく起こらないことになる。最大応答を示すことができるGM1/PDAバイオセンサー組成の探索において、一連のPDA単分子膜フィルムをOTSでコートしたスライドガラスにトランスファーした。該フィルムをコレラ毒素に暴露して評価し、その比色応答をUV−Vis分光法を用いて測定した。図21は、本実施例で研究したGM1バイオセンサーとして機能する単分子膜フィルムの比色特性および比色応答をまとめたものであり、初期吸光度、トランスファー率、ならびにバッファー中およびアナライトに反応した際の比色応答を示している。該フィルムの640 nmにおける最大ピーク値をもたらす初期吸光度(Ainit)は、該フィルムのトランスファー率および組成の関数である。混合した分子集合体に染色機能性を与えないGM1は、通常、初期の青色強度を弱める。硬い表面上で減少した面積と下相に現れた基体の面積との比であるトランスファー率は、該PDAフィルムがシアル酸−PDA(SA−PDA)およびGM1分子のフィルムと比較して非常にトランスファーされやすいこと示している。青色から赤色への比色応答(CR)は、単分子膜フィルムが、GM1またはSA−PDAを高含有量で用いた場合を除いて、バッファー溶液中で低度のCRを示すことを表す。
【0272】
II イオン下相の最適化
水性下相のイオン含有量は、ラングミュア(Langmuir)単分子膜の特性に有意な影響を与える。カチオン種の存在は、単分子膜とアニオン性ヘッド基との静電相互作用を強化し、その結果該フィルムを安定化する(Gaines, Insoluble Monolayers at Liquid−Gas Interface, Interscience Publishers, New York, pp 291−299 [1966])。 図22は、下相中のCdCl濃度の関数として、5% GM1/5% SA−PDA/90%PDAの等温曲線を示す。Cd2+の濃度が増加すると、膨張した相が、分子占有面積が小さい方に全体的にシフトし、これは、単分子膜が高いCd2+濃度において安定化されることを示している。このふるまいは、Cd2+と、PDAの部分的に溶解したアニオン性カルボキシレートヘッド基(pKa=約5)との間のイオン性相互作用に大きく起因するものであり、一方、酸性SA−PDAおよびGM1(これらの分子上のシアル酸のpKaは約2.6である)もまた、おそらくその作用の増強に寄与する。この単分子膜を安定化する機構のさらなる証拠は、より高いイオン濃度の機能として、表面圧力が増加することに見られる。多くの二価イオン(Be、Mg、Ca、BaおよびCd)は、イオンのサイズおよび電荷に基づいて分子のパッキングに影響を与える塩の形成によって、PDAモノマーの等温曲線に影響を与えることが示された。5% GM1/5% SA−PDA/90% PDAの3成分系については、最大0.01MのCd2+を含有する水性下相に対して非混和性の動向が全く観察されず、これはこの混合単分子膜がイオン含有量に関して比較的安定であることを示している。しかしCd2+が0.1Mまで増加すると、5% GM1/5% SA−PDA/90% PDA単分子膜の不安定なふるまいが観察された。これはおそらく、SA−PDA中およびGM1中のシアル酸とPDA中のカルボン酸とでは、Cd2+と相互作用する能力が異なる結果としての凝集ドメインの形成、または高塩濃度における沈殿に起因するものであろう。
【0273】
Cd2+が低濃度(すなわち、約10−4M)である場合、等温曲線は凝縮相領域においてほんのわずかしか変化しないが、これは、下相中の低含有量のイオンが緻密なフィルムの構造に有意な影響を与えないことを示す。Cd2+の濃度が10−3M以上に上昇すると、図22に示すように凝縮相領域における分子占有面積のシフトが生じ、これはこの緻密な単分子膜の何らかの構造変化を示している。このような構造変化の誘導に関する前記混合物中の添加物の役割を探索するために、純粋なPDAの、Cd2+濃度が10−2Mでの等温曲線を測定した。 10−2M Cd2+の下相で、PDA等温曲線の低分子占有面積での急激な上昇がみられる。しかし、緻密な領域および分子占有面積内のこの等温曲線の勾配は、水における場合と実質的に同一であった。この結果は、フィルムの特性が該分子の長い疎水性セグメントによって主に支配されるような高塩濃度での秩序あるフィルムと一致する。同様の結果がアミンベースのジアセチレンについても得られた(WalshおよびLando. Langmuir. 10: 252 [1994])。従って、図22におけるシフトは、該フィルム内において異なった形態で解離した個々の成分によって誘導された混合静電効果を反映しており、3成分からなるフィルムが純粋なPDAフィルムに比べて安定性が低いことを示唆している。
【0274】
III. 下相 pH の最適化
PDAは酸性分子であるため、pHの上昇によってPDA分子のイオン化がもたらされ、最終的に単分子膜の境界面に沿って相当な電荷が導入された。図23はpH 4.5、5.8および9.2における5% GM1/5% SA−PDA/90% PDAの等温曲線を示す。 高pH(pH 9.2)では、該フィルムは近接するPDA分子間の静電反発作用の結果として、非常に膨張した。このようなフィルムを圧縮して単分子膜を形成するのは困難であった。さらに、個々の分子の区別可能なセグメントが観察され、これは分離したドメインを形成しやすい混合単分子膜における非混和性の動向を示した。明らかに、単分子膜の境界面における高電荷密度は水界面上に好ましくない相互作用を引き起こした。このようなpHでは、PDA混合物中への GM1 などの化合物(すなわち酸性のもの)の添加は好ましくないであろうことが予想できる。低いpHにおける3成分系の等温曲線は標準的なピークのふるまいを示す。崩壊圧は中性pHにおける場合よりも有意に大きく、これは低pHにおける場合よりは安定なフィルムが形成されることを示している。このようなpHにおけるPDA分子のイオン化の抑制は、フィルムの安定性の増強に寄与し、その結果GM1分子のPDAフィルム中への組込みを安定化させることができる。
【0275】
IV. 下相温度の最適化
フィルムを作製する間、温度上昇により、通常、表面圧の上昇、膨張領域の増大、およびπ/A等温曲線における相転換点の低分子占有面積方向へのシフトがもたらされる(Birdi, Lipid and Biopolymer Monolayers at Liquid Interfaces, Plenum Press. New York [1989])。この影響は、熱振動によってもたらされる高温での脂質の炭化水素テイルの高度な柔軟性に起因し、2次元クラウジウス−クラペイロンの式で解析することができる(Birdi.前掲)。しかし、PDAを含む単分子膜フィルムは通常、圧縮の間に崩壊してしまう。従って、下相温度の影響を評価するには、この現象を考慮しなければならない。図24は、100% PDA、5% SA−PDA/95% PDAおよび5% GM1/5% SA−PDA/90% PDAの等温曲線に対する温度の影響を表す。下相温度の低下に伴い、表面圧が上昇し、等温曲線の形が変化した。低温での等温曲線は、転換領域におけるピークの消失およびなめらかな曲線の出現によって示されるように、液相−固相転換特性をよりいっそう示した。3つの単分子膜について得られたすべてのπ−A等温曲線は類似の特徴を示す。これらの図の間の主な差異は、フィルム組成の関数である崩壊点の位置にある。
【0276】
V. モノマー重合性基の位置
10,12−ペンタコサジイン酸リポソームと5,7−ドコサジイン酸(Holy Cross CollegeのAlice Deckertから提供を受けた)リポソームのアナライトに対する比色応答の比較を行い、自己集合性モノマー内の重合性基の位置の影響を判定した。GM1リガンドを各タイプのリポソームに組込ませ、コレラ毒素の検出を分析した。ガングリオシドGM1を5 mol %で、ジアセチレン「マトリックス脂質(matrix lipid)」モノマーと混合した。リポソームをプローブ超音波処理法を用いて調製し、UV照射(254 nm)によって重合した。
【0277】
ポリジアセチレンリポソームの結合したene−yne主鎖は、深い青色/紫色溶液となって現われた。新たに調製した紫色のリポソームの可視吸収スペクトルを図25に示す。コレラ毒素を、5% GM1および95% 5,7−ドコサジイン酸からなるリポソームに添加すると、該溶液はすぐに橙色に変化し、図26に示すようにポリジアセチレンの「赤相」吸収が優位になる。ガングリオシドGM1を5,7−ドコサジイン酸のかわりに10,12−ペンタコサジイン酸からなるマトリックス脂質と混合すると、比色応答は有意に低減した。本発明を使用するためにこの機構を理解する必要はなく、そのために本発明が制限されることを意図しないが、5,7−ドコサジイン酸リポソームで観察された感受性の増大は、境界面の近傍に光学的レポーター基が配置されたことから生じるものと予想される(すなわち、8個のメチレンユニットと比較した3個のメチレンユニット)。フーリエ変換IR分光分析により、C−C結合βに関するポリマー主鎖へのわずかな回転は、有効な結合長を変化させるのに十分であることを示した(Bermanら、Science 259: 515 [1995])。これらのコンホメーション変化は、より短いアルキル鎖長によって、より容易に変換される。
【0278】
実施例4
ドーパントの組込み、最適化および特性
新規なセンサー系を設計するたびごとに、PDA、ドーパントおよびリガンド(例えば、ガングリオシド)の量を変化させて、最適なセンサーを作成する。 試験のために典型的には0〜100%量を使用するが、最適な系は5〜15%のリガンド、0〜95% のPDAおよび0〜95%のドーパントを使用するものであると思われる。各成分の比率(%)は、その系、必要とされる安定性、および必要とされる感受性に依存する。本発明の特定の実施形態は、生体高分子材料に一種以上のドーパントを組込ませうる。
【0279】
I. 生体高分子材料へのドーパントの組込み
アミノ酸誘導体化ジアセチレンドーパントを比色性リポソーム中に組込ませた。 まず始めに、該脂質(すなわち、ドーパントおよびジアセチレンモノマー)をクロロホルムに溶解し、1アリコートを反応バイアルに移した。有機溶媒をNガスを使用して吹き飛ばし、適量の水を添加して脂質濃度を約1 mMとした。超音波処理槽を使用して白色沈殿を分解してリポソームを生成させた。通常の超音波処理時間は、使用したドーパントの種類に依存して、1時間〜5時間の間で変化させた。超音波処理の間に、温度を約80℃まで注意深く上昇させ、リポソームの生成を促した。超音波処理を溶液が透明になるまで続けた。この暖かい溶液をすぐに5 μM Millipore Millex−SVフィルターを通して濾過し、該溶液中に存在しうるいかなる不純物も除去した。得られた溶液を、使用前に4℃で一晩保存した。
【0280】
重合後、深青色のリポソームが得られた。最終的なリポソームは、アミノ酸誘導体化ジアセチレンドーパントを含有していた。
【0281】
II. ドーパント濃度の最適化
PDA、GM1(すなわちリガンド)およびシアル酸由来PDA(すなわち、ドーパント)を含むフィルムを、コレラ毒素を検出するために実施例3の第1節に記載したように製造した。比色アッセイは、3つの成分のすべてが最適な比色応答に必要であることを示した。コレラ毒素の最適な検出のためには、SA−PDAおよびGM1の双方が該フィルム内に存在する必要があり、そうでなければ、該フィルムはあまりに不安定であるかまたは十分に変色しない。これは、3つの成分すべての濃度に依存する。本発明を使用するためにこの機構を理解する必要はなく、そのために本発明が制限されることを意図するものではないが、SA−PDAの機能は、ストレスに誘導される機構による、生体分子認識のための該フィルムの準安定状態を提供することであると予想される(Charychら、Chem. and Biol. 3: 113 [1996])。また、1% GM1/1% SA−PDA/98% PDAからなるフィルムも調査した。そのCRは低いことがわかり、有用な比色バイオセンサーとはならなかった。図21に示すように、最適な比色センサーは、5% GM1/5% SA−PDA/90% PDAであることが判明した。従って、 ドーパント5%モル含量のSA−PDAが、コレラ毒素検出のための最良のセンサーを提供する。
【0282】
III. 誘導体化ジアセチレンドーパントの特性
ジアセチレンに結合した疎水性アミノ酸を使用して、該フィルムまたはリポソームの安定性ならびに生体高分子材料の溶解性を低減することができる。これらの誘導体化PDAは、互いに直接的に関連している2つの要素、すなわち安定性および感受性を微調整するために、複雑な系のアセンブリーにおいて有用でありうる。疎水性PDAを親水性PDAとともに使用することにより、多様な周囲条件においてフィルムおよびリポソームの安定性を大いに増大させることができる。安定性の大きな増加は見られるが、感受性に変化はない。感受性と安定性のバランスを最適化しなければならない。
【0283】
ジアセチレンに結合した酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸を用いて、前記物質の溶解性を増大させることができる。具体的には、この変化によりポリジアセチレン脂質を水溶性生体分子と混合することが可能となった。通常は、PDAは水に不溶であり、有機溶媒が必要である(すなわち、生体分子に有害となりうる)。酸性または塩基性ヘッド基をPDA分子上に配置することにより、誘導体化PDAの溶解性は非常に増大した。また、より鮮明な色を生じ、センサーのアセンブリーにより合致していた。これらの結果はおそらく、すべての成分における水溶解性および混合均一性の増大によるものである。酸性/塩基性PDAは、アミノ酸由来ジアセチレンの中で明らかに、最も感受性があった。
【0284】
ヒスチジンをアミン結合PDAに結合させることにより、容易に変色しうるが再生も可能でありうる物質を作製した。この方法の特に有利な点は、普通に重合化しているPDAは、変色はしても再度使用できない点にある。該ヒスチジン物質のヘッド基が中性に近いpKaを有することから、この利点がもたらされる。
【0285】
蛍光性PDAヘッド基をPDAアミン結合系上に配置することにより、比色性バイオセンサーに蛍光特性を付加して製造することができる。この特性により、多目的かつより感度の高いセンサーが提供される。
【0286】
実施例5
リガンドの付加
リガンドは自己集合性モノマーのヘッド基に共有結合することができ(例えば、ジアセチレンモノマーに結合したシアル酸)、重合物質の表面に共有結合することができ(例えば、物質表面に対して、多数のアミン結合およびチオール結合を有するタンパク質および抗体)、または生体高分子材料に非共有結合で組込まれうる(例えば、フィルムおよびリポソームの膜中に組込まれたガングリオシド)。
【0287】
自己集合性モノマーは、当技術分野で一般的な合成技術を用いて、非常に多様な化学的ヘッド基の官能性を有するように合成することができる。いくつかの実施形態においては、続いて該リガンドを、当技術分野で公知の合成法を用いて、これらの官能基との化学反応によって自己集合性モノマーに結合させる。該官能基には、これらに限定するものではないが、エステル、エーテル、アミノ、アミド、チオール、またはこれらの組み合わせが含まれる。あるいは、多くのリガンドは、界面活性剤に対して共有結合することなく、自己集合性マトリックス(例えば、ガングリオシドおよびリポタンパク質などの疎水性領域を有する膜タンパク質および膜分子)中に組込ませることができる。
【0288】
本発明の具体的な適用法を以下に記載し、本発明の生体高分子材料に結合可能な広範なリガンドを例示する。これらの実施例は本発明の広範な適用性の単なる例示にすぎず、本発明をこれら特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0289】
I. シアル酸
シアル酸をリガンドとしてジアセチレンモノマーに結合させた。当技術分野で公知のいくつかの合成法を使用することができ、それらの方法の多くは、炭水化物を本発明の生体高分子材料に結合させるために一般的に適用できる。一実施形態においては、PDA(クロロホルム中1.0 g、2.7 mmol)を、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(0.345g、3.0mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(0.596 g、3.1 mmol)と反応させた。該溶液を2時間攪拌し、続いてクロロホルムを蒸発させた。残留物をジエチルエーテルおよび水で抽出した。有機相を硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥し、濾過した。続いて該溶媒をロータリーエバポレーターで濃縮すると1.21gのN−スクシンイミジル−PDA(NHS−PDA)が得られた。エタノールアミン(0.200 ml、2.9 mmol)をNHS−PDAの溶液(50 mlのクロロホルム中に1.21g)に添加し、続いてトリエチルアミン(0.350 ml、2.5 mmol)を添加し、室温で2時間にわたって攪拌した。該溶媒を蒸発させ残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(2:1 EtOAc:ヘキサン、R=0.15)で精製すると、 0.99 gのN−(2−ヒドロキシエチル)−PDAが得られた。
クロロホルム25ml中のテトラエチレングリコールジアミン(1.26 g、6.60 mmol)を、クロロホルム20ml中のN−スクシンイミジル−PDA溶液(0.603 g, 1.28 mmol)に攪拌しながら30分間にわたって滴下した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去する前に、反応液をさらに30分間攪拌した。残留物をEtoAcに溶解し、水で2回抽出した。有機相をMgSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。抽出物をシリカゲルクロマトグラフィー (20:1 CHCl : MeOH, R=0.20)で精製すると、3.72gのN−(11−アミノ−3,6,9−トリオキシウンデカニル)−PDAが得られた。
【0290】
無水酢酸2 mlを、ピリジン1.7ml中のエチル−5−N−アセチル−2,6−アンヒドロ−3,5−ジデオキシ−2−C−(2−プロペニル)−D−エリスロ−L−マンノノノネート(0.47g、1.30 mmol)の冷却溶液に、窒素雰囲気下で攪拌しながら添加した。反応液を一晩かけて室温まで温めた。18時間後、溶媒を減圧下で周囲温度にて除去すると、粗粘着性オイルが生成した。該オイルをトルエンから繰り返し濃縮して凝固させた。粗固形物を、溶離液として酢酸エチルを用いてシリカ上のフラッシュクロマトグラフィーにかけ、0.58 gのエチル−5−N−アセチル−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−(2−プロペニル)−D−エリスロ−L−マンノ−ノノネートを得た。
【0291】
アセトン10 ml中のエチル−5−N−アセチル−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−(2−プロペニル)−D−エリスロ−L−マンノ−ノノネートの溶液(0.38 g, 0.72 mmol)を−78℃まで冷却し、その間CaCl乾燥チューブで水分から保護した。オゾンを、特徴的な青色が5分間持続するまで該溶液中に吸引した。反応物をOでパージして過剰なOを追い出し、続いて5℃まで温めた。過剰のJones試薬(7滴)を橙褐色が存続するまで添加し、続いて該反応物を周囲温度まで温めた。数分後エタノールを滴下して過剰の酸化剤を消滅させた。緑色沈殿を濾過し、アセトンで数回洗浄した。合わせた濾液を減圧濃縮し、酢酸エチルに溶解した。該溶液を飽和NaHCO水溶液で3回抽出した。合わせた水相を濃塩酸(HCl)で酸性にし、塩化メチレンで5回抽出した。合わせた塩化メチレン抽出物をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮するとエチル−5−N−アセチル−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−(酢酸)−D−エリスロ−L−マンノ−ノネートが得られた。
【0292】
エチル−5−N−アセチル−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−(酢酸)−D−エリスロ−L−マンノ−ノネート(0.194 g、0.35 mmol)を、冷却した(5℃)クロロホルム2ml中のNHS(0.058 g、0.50 mmol)およびEDC(0.096 g, 0.50 mmol)の溶液に窒素雰囲気化で添加した。この反応物を5時間にわたって攪拌しながら周囲温度まで温めた。該反応物を15mlのクロロホルムで希釈し、1N HCl水溶液で2回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回、および飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。有機相をMgS0で乾燥させ、濾過して濃縮すると、エチル−5−N−アセチル−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−(N−スクシンイミジルアセテート)−D−エリスロ−L−マンノ−ノノネートが生成した。
【0293】
エチル−5−N−アセチル−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−(N−スクシンイミジルアセテート)−D−エリスロ−L−マンノ−ノノネート(0.143 g, 0.22 mmol)およびN−(11−アミノ−3,6,9−トリオキシウンデカニル)−PDA(0.133 g、0.24 mmol)を2mlのクロロホルムに溶解し、反応物を密封し56時間にわたり攪拌した。該溶液を15mlのクロロホルムで希釈し、飽和1N HCI水溶液で2回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。有機相をMgSOで乾燥して濾過し、粗製の半固形状になるまで濃縮した。該物質をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(20:1 CHCl : MeOH)にかけ、エチル−5−N−アセチル−4,5,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−[(N−11’−(PDA)−3’,6’,9’−トリオキシウンデカニル)アセドアミド]−D−エリスロ−L−マンノ−ノノネートを製造した。
【0294】
エチル−5−N−アセチル−4,5,8,9− テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−2−C−[(N−11’−(PDA)−3’,6’,9’−トリオキシウンデカニル)アセドアミド]−D−エリスロ−L−マンノ−ノノネート (0.20 g, 0.19 mmol)を4mlの水および0.5mlのメタノール(0.1gの水酸化ナトリウムが溶解している)に溶解することによって、シアル酸誘導型PDAを生成した。該溶液を3時間にわたって攪拌し、イオン交換樹脂 (Biorad AG 50W−X4 H+形態)を、溶液がpH試験紙で酸性を示すまで添加した。該溶液を濾過し、濾液を真空下で濃縮し、シアル酸誘導型PDAを製造した。
【0295】
II. 炭水化物
本発明の別の実施形態においては、炭水化物(すなわちシアル酸を含む)を3ステップの方法によって修飾し、N−アリルグリコシドを製造することができる。例えば、N−アリルグリコシドは続いて、当技術分野で公知の単純な化学合成法を用いて、他の分子(例えばPDA)に容易に結合させることができる。この方法は、広範な炭水化物を生体高分子材料に組込む方法を提供する(そして、その結果として広範なアナライトを検出する方法を提供する)。第1にオリゴ糖を水を加えないアリルアミンに溶解し(必要に応じて水を加えてもよく、これは収率に不利な影響を与えない)、0.5〜0.1 Mの溶液を作製する。反応を停止し、少なくとも48時間攪拌する。出発物質をアミノグリコシド生成物に完全に変換する際に、溶媒を蒸発させて除去し、粗固形物をトルエンで処理して数回蒸発乾固させる。続いて該固形物を氷浴中で冷やし60%のピリジン、40%の無水酢酸の溶液を添加すると、500モル%過剰の無水酢酸を含有する溶液が得られる。該反応物を水分から保護し、攪拌しながら一晩かけて周囲温度に温める。溶媒を蒸発により除去し、残留物をトルエンに溶解し、数回蒸発乾固させる。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、遊離糖のペルアセチル化NAc−アリルグリコシド形態を製造する。
【0296】
次にペルアセチル化NAc−アリルグリコシドを無水メタノール中に溶解して0.1〜0.01Mの溶液を調製した。MeOH中の1N NaOMeを数滴添加し、反応物を周囲温度で3時間攪拌した。十分なDowex 50樹脂(H+ 形態)を添加して該塩基を中和し、続いて該溶液を濾過し、蒸発乾固した(所望により再結晶による精製を実施できる)。この生成物はN−アリルグリコシルアミド(N−allylglycoslamide)形態の炭水化物である。この合成反応により、N−アリル−グリコシルアミド形態の多様な炭水化物が生成された。該炭水化物には、限定するものではないが、グルコース、NAc−グルコサミン、フコース、ラクトース、トリ−NAc−チトトリオース、Sulfo Lewis類似体およびSialyl Lewis類似体が含まれる。当業者であれば、この方法を広範な炭水化物のジアセチレン脂質への結合に一般的に適用可能であることが明白であろう。
【0297】
III. ガングリオシド M1
ガングリオシド GM1により、自己集合性モノマーに共有結合することなしに、リガンドを組込む例が提供される。ガングリオシドGM1を、メタノールに溶解したガングリオシドGM1溶液(Sigma)とクロロホルムに溶解したPDAとを合わせることにより生体高分子材料に導入し、乾燥させた。該ガングリオシドは、自己集合性界面活性剤構造中への自身の組込みを促進するような疎水性領域を含有している。従って、乾燥させた溶液を脱イオンした水に再懸濁した場合、得られた構築物は、ガングリオシドとPDAの混合物を含んでいた。リポソームおよびその他の形態を、この再懸濁混合物から実施例1に記載のように製造した。該ガングリオシドは重合性基を含まないが、ガングリオシドはジアセチレンの架橋によって生成した重合マトリックス中に埋め込まれた。同様の方法を、疎水性領域を含むその他のリガンド(例えば、膜貫通タンパク質およびリポタンパク質)の組込みのために使用することができる。
【0298】
IV. タンパク質
上述のように作製したNHS−PDA、チオール結合PDAおよび当技術分野で公知のその他の方法により、タンパク質と抗体の結合のための官能基が提供される。NHSまたはチオール結合モノマーを所望の凝集体に組込み、そして重合する。そして、NHSまたはチオール官能基が、当技術分野で標準的な化学合成反応を用いて、タンパク質および抗体に共有結合させるための、表面反応部位を提供する。別の実施形態においては、ヒドラジド官能基をPDA上に配置して、タンパク質および抗体のアルデヒド基およびケトン基に結合させることができる。これらの実施形態は、タンパク質および抗体の非常に幅広いアレイを生体高分子材料に組込む方法を提供する。具体的な実施例を以下に記載する。これらの実施例は本発明の広範な適用性の単なる例示にすぎず、本発明をこれらの特定の実施形態に制限することを意図するものではない。
【0299】
A. へキソキナーゼ
NHS−PDA脂質を上述のように合成した。簡単に述べると、1.00gの10,12−ペンタコサジイン酸(Farchan, Gainesville, FL)をCHClに溶解し、これに0.345 gのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および0.596 gの1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を添加した。該溶液を室温で2時間にわたって攪拌し、続いてロータリーエバポレーター(rotavap)を用いてCHClを除去した。残留物をEtOACおよび水で抽出した。分離後、有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、続いて溶媒を除去した。次に未精製の生成物をCHC1で2回再結晶し、FT−IRによって確認した。
【0300】
1:1(モル比)のPDA/NHS−PDAクロロホルム溶液をマイクロシリンジを用いてラングミュア・ブロジェット(Langmuir−Blodgett)トラフ(KSV ミニ−トラフ、KSV Instruments.Inc., Finland)上の水性下相上に拡散させた(下相の温度は5℃に維持した)。有機溶媒を、該溶液を20分間放置することにより蒸発させた。該フィルムを緻密な単分子膜レベルにまで圧縮し、その後オクタデシルトリクロロシラン(OTS)でコートしたガラススライドに垂直累積させることによってトランスファーした。圧縮速度および浸漬速度は5 mm/分に維持した。重合後の検出のための十分な比色シグナルがもたらされるように、かつ親水性表面が確実に溶液にさらされるように、ガラススライド上に3相を累積させた。
【0301】
酵素固定前に安定なPDA単分子膜フィルムを調製することは、センサーのバックグラウンドを低くするため、およびその再生可能性を増大させるために重要である。ラングミュア単分子膜トラフにより、該単分子膜の表面崩壊圧を評価することにより、フィルムの安定性を測定する方法が提供される。混合フィルム(すなわちPDAおよびNHS−PDAを有するフィルム)が1種の成分からなる単分子膜よりもよりいっそう安定であり、従って酵素固定に対してより安定であるらしいことが見出された。例えば、1:1のNHS−PDA/PDA単分子膜の5℃での崩壊圧が57 mN/mであるのに対し、NHS−PDAおよびPDA単分子膜はそれぞれ34および28 mN/mで崩壊した。本発明を使用するためにこの機構を理解する必要はなく、本発明が制限されることを意図するものではないが、該相互作用がこれらの混合単分子膜においてより好ましいと予想される。これはおそらく、大きさの異なるヘッド基を近接してパッキングできるような最適な空間配置によるものである。
【0302】
力学的な安定性に加えて、該単分子膜は、好適なセンサーたるために所望の光学的特性(すなわち、高度の色彩強度)を備えていなければならない。フィルムの品質を(この特定の場合では、すなわち色彩強度)、異なる累積圧において調査した。40 mN/mで作成されたフィルムが最良のトランスファー速度および色彩強度をもたらすことが見出された。従って、このトランスファー圧で得られた1:1のNHS−PDA/PDAフィルムをヘキソキナーゼによる修飾のために選択した。
【0303】
酵母ヘキソキナーゼ懸濁液(E.C.2.7.1.1, Boehringer Mannheim GmbH. Germanyから取得)をマイクロ遠心分離機にかけ、飽和硫酸アンモニウムを除去した。該タンパク質を0.1 Mのリン酸バッファー(pH 8.0)に再度溶解して濃度を約1 mg/mlとし、同一のバッファーに対してSlide−A−Lyzer透析カセット(Pierce)を用いて3時間透析した。PDA単分子膜スライドを0.7 cm x 2.5 cm の長方形片に裁断し、ヘキソキナーゼ溶液中で4℃にて1時間インキュベートした。インキュベーション時間を延長すると色彩強度の低減が生じることが見出された。これはおそらく、化学的架橋反応中にLB単分子膜がはがれたことによるものであろう。次に該単分子膜チップを脱イオンした水ですすぎ、0.1 Mのエタノールアミンに10分間浸して反応を停止させた。該チップを脱イオンした水で再度すすぎ、空気乾燥した。該フィルムにハンドヘルドUVランプを照射することにより重合を行った。照射時間は各面につき6分とした。照射時間を延長すると赤色への不可逆的な変色が生じた。
【0304】
B. 抗体
市販のジアセチレンをまず濾過して、不溶性の不純物(例えば重合形態のもの)を除去し、上述のように化学的にNHS−PDAに変換した。適量のNHS−PDAおよびその他の形態のPDA誘導体(例えば、ドーパントまたはリガンド)を混合して所望のモル比にした。該溶液はNガスを用いて乾燥すると、バイアルの底に白色物質の薄い層が析出した。脱イオンした水を添加し、脂質の総濃度が約1 mMとなるようにした。該溶液を、約20分間のプローブ超音波処理機または2時間以上のバス超音波処理機を採用して、透明な溶液が得られるまで超音波処理した。該溶液を5μmフィルターを通じて加熱濾過して、その後4℃で一晩保存した。
【0305】
架橋を行う前に、0.1 Mのリン酸バッファー(pH 8.5)をリポソーム溶液に添加した。次に、同種のバッファーに溶解した抗体を添加し、該溶液を4℃にて一晩保存した。過剰の抗体を遠心または透析のいずれかによって除去した。遠心を使用する場合は、氷浴を用いてペレットを穏やかに再び超音波処理した。該抗体と超音波処理した物質を合わせた後、実施例1においてリポソームについて記載したように重合を実施した。
【0306】
また、抗体をヒドラジドによって生体高分子材料に結合させることもできる。いくつかの実施形態においては、NHS−カップリングにはこの方法が好ましい。なぜなら、NHSは抗体のFab’領域で反応し、アナライトへの結合をブロックしうるからである。このヒドラジド法は、抗体のFc領域を生体高分子材料へ結合させ、結合領域を利用可能なまま残す。ヒドラジド法において、ヒドラジド−PDA脂質を製造し、未重合リポソームを作製する(例えば、20% ヒドラジド PDA/80% TRCDA)。Centricon 50フィルターを使用して、 500μlの抗体保存溶液を等量の123mMクエン酸ナトリウム(pH 5.5)を添加して洗浄し、4000 rpmで9分間にわたってスピンダウンした。濾過工程をさらに2回繰り返した。次に、クエン酸バッファー中の抗体400μlを、25 μlの過ヨウ素酸ナトリウムとともに22℃にて2時間インキュベートすることによって酸化した。2時間後、50μlのN−アセチルメチオニンを添加することによって反応を停止させた。次に300μlのリポソーム、150μlのクエン酸バッファー、400 μlの水および200μlの酸化抗体を22℃にて一晩インキュベートした。結合していない抗体を、リポソームからCentricon 500フィルターを用いて除去し、900μ1のTrisバッファー(pH 9.0)で洗浄し、4000 rpmで2分間の遠心にかけた。何回か洗浄した後、該サンプルを(必要に応じて)Trisバッファーで希釈して0.2 mM (またはそれ未満)のリポソーム溶液を作製した。
【0307】
V. その他(アミノ酸、ヌクレオチドなど)
上記および図9に示すように、アミノ酸のアミン結合を介したジアセチレンへの結合が達成された。アミノ酸を脂質に結合させる多様な他の手段が当技術分野で公知である。
【0308】
VOC検出のために、多様な種の化学ヘッド基を含むPDA結合リガンドの作製について実施例7に記載する。これらの実施例は、広範な化学ヘッド基を有するPDAの誘導を示す。該化学ヘッド基には例えば、親水性非電荷ヒドロキシル基、第1級アミン官能基、アミノ酸誘導体および疎水基がある。これらおよびその他の修飾を、当技術分野で公知の合成法によって生じさせる。
【0309】
別の実施形態において、多様なその他の界面活性剤結合リガンドを、活性化カルボン酸基および求核性のアミノまたはヒドロキシの関与する縮合反応を利用して調製することができる。PDAは無水条件下、トリメチルアセチルクロライドで活性化して、活性な不斉無水物を生成することができる。該無水物を過剰のエチレンジアミンまたはエタノールアミンで処理することにより、それぞれエチレンジアミノ−PDA (EDA−PDA)またはエタノールアミン−PDA(EA−PDA)を生成することができる。 1.5モル当量のトリエチルアミンを触媒塩基として添加し、反応を室温にて3時間にわたって進行させる。EDA−PDAおよびEA−PDAをシリカゲルカラムおよびクロロホルム/メタノール勾配を使用して、クロマトグラフィーで精製する。続いて、EDA−PDAまたはEA−PDAを遊離カルボン酸を含有するリガンド(上述のように化学的に活性化したもの)とともに凝縮させ、リガンドが結合した重合性界面活性剤を生成する。この方法で調製することができるリガンドの典型的な例として、限定するもではないが、炭水化物、ヌクレオチドおよびビオチンが挙げられる。
【0310】
本技術は、分子の脂質および膜への結合または会合が成功した実施例を他に多数含む。リガンドと結合した自己集合性モノマーは、鎖長が改変されていてもよく、または2重鎖もしくは多重鎖からなるものでもよい。リガンドとモノマーのこれらの様々な組合わせにより、広範なアナライトとの相互作用に適した、所望の比色応答、選択性および感受性を有する生体高分子材料の非常に広範なアレイが提供される。
【0311】
本発明の一実施形態において、NHS−PDAをヒドラジン水和物で処理することによって、PDAのヒドラジドを合成した。ヒドラジン水和物(500 μl、約80%)をNHS−PDA溶液(1 mL、CHCl中40 mg ml−1)と混同し、室温で12時間反応させた。続いて有機相を水で完全に抽出し、ロータリーエバポレーターにかけて乾燥させると、TLC上で1スポットとして、量で見積もると純粋なPDA−NH−NHが得られた(CHCl/MeOH/NH水溶液 13:6:1、R=0.94)。特性評価: 白色固体、
Figure 2004500006
PDA−NH−NH(KBr)のIR分光分析は、3310cm−1に強いピークを示した。このピークはアミノ基に特有のものである。1600cm−1におけるPDAのカルボニル直線振動は3つのアミドバンド(1645,1606,1534cm−1)に代わっていた。これらのバンドはPDA−NH−NH相系における水素結合のIR研究において非常に有用である。
【0312】
本発明の一実施形態においては、95% PDAおよび5% PDA−NH−NHからなる混合リポソーム(0.1mM)を0.3 Jcm−2で重合した。これらのリポソームは、純粋なPDAリポソームと同じ重合反応を有し、ケト修飾セル、アルデヒド、ケトンまたはNHSエステルとの結合研究のために容易に使用することができた。本発明を実施するためにこの機構を理解する必要はなく、本発明を特定の機構に限定するものでもないが、純粋なPDA−NH−NHから作成されたリポソームは意外にも純水中では重合しなかった。0.1mMのリポソーム水溶液を0.9J cm−2で照射した後、非常に弱い赤吸収のみが観察された。塩基性の媒質(すなわち、90mM NH:PHY02または炭酸バッファー pH9:PHY03)中のリポソームに照射すると、重合における同様の欠陥が見られた。対照的に、90 mM HC1溶液中ではリポソーム(0.1 mM)は高収率で重合し、確実に赤色形態となった。HC1濃度を0.9Mまで上昇させるとリポソームは優れた収率で重合し、青色形態となった。この溶液は長時間たつと安定ではなく、リポソームが沈殿した。この青色のリポソームを若干過剰の塩基(すなわち、NH)で処理したところ、その色が赤色に変化した。HClを添加すると、その色が青色に戻った。特有な色相の形成に与えるpHの類似の影響が、NH−処理PDAサンプルにも観察された。
【0313】
この可逆的比色変化はヘッド基領域における水素結合の変化によるものと考えられた。しかし、本発明の実施のためにこの機構を理解する必要はなく、本発明が特定の機構に制限されることを意図するものではない。水素結合が脂質鎖の分子パッキングを強力に支配しており、結合したポリマー主鎖のコンホメーション変化を強いる可能性が高い。
【0314】
実施例6 比色分析
I. 視覚的検出
好ましい実施形態においては、本発明の生体高分子材料の比色変化を、ヒトの眼による簡単な観察によって検出する。この観察はその簡易性ゆえ、家庭のユーザーなどのように訓練されていない観察者によってもその機能を達成できる。本実施例においては、本発明の比色分析の開発において使用された方法を説明する。
【0315】
II. 可視吸収分光分析
いくつかの実施形態においては、比色応答の正確な定量的データを得ること、またはヒトの眼よっては検出できない微妙な変化もしくはかすかなシグナルを記録することが好ましいかもしれない。そのようなデータを得るために、分光分析法を適用しうる。
【0316】
可視吸収研究を、Hewlett Packard 8452A ダイオードアレイ分光光度計を使用して実施した。PDA物質(すなわち、フィルムおよびリポソーム)については、626 nm(すなわち、該物質に青色を与える波長 )における吸収を、総吸収最大値と比較した場合の変化率(%)を測定することによって、比色応答(CR)を定量した。
【0317】
生体高分子材料の、特定の量のアナライトに対する応答を定量するために、アナライトなしでの該生体高分子材料の可視吸収スペクトルを以下の式によって分析した。
【0318】
= I626/(I536 + I626
式中Bは、626 nmでの吸収強度を、536および626 nmでの吸収強度の和で除したものとして定義する。アナライトに暴露した生体高分子材料を同様に下式で分析した。
【0319】
= I626/(I536 + I626
式中Bはアナライトとともにインキュベートした後の吸収強度の新たな比を表す。リポソーム溶液の比色応答(CR)を、アナライトに暴露した際のBの変化率(%)として定義する。
【0320】
CR = [(B−B)/B] X 100%
実施例7
アナライトの検出
本発明が教示する広範な生体高分子材料は、多数のアナライトの検出を可能にする。このようなアナライトは、複雑な生物体(例えば、ウイルス、細菌および寄生生物)から単純な有機小分子(例えば、アルコールおよび糖)の範囲にまでおよぶ。本発明の具体的な適用法を以下に記載することにより、一連のアナライト検出系に対する本発明の広範な適用性を例示し、その特性および使用の容易性を示す。これらの実施例は、本発明の広範な適用性を単に例示することを意図するにすぎない。本発明がこれら特定の実施形態により制限されることを意図するものではない。
【0321】
I. インフルエンザウイルスの検出
本発明は、現在利用可能な技術と比較して優れたインフルエンザの検出方法を提供する。免疫学的アッセイは、該ウイルスが示す抗原性のシフトおよびドリフトのために制限される。本発明はすべての種のインフルエンザを検出するため、患者がインフルエンザに罹患しているか否かの決定は信頼できるものとなり、かつ特定の株に限定されない。実際に、新規に進化した未同定のインフルエンザ株でさえ検出することができる。
【0322】
シアル酸結合生体高分子材料を実施例1および5に記載したように作製した。該材料をインフルエンザウイルスに暴露し、比色情報を視覚的にまたは実施例6に記載した分光分析法で観察し、それぞれ青相(実線)および赤相(点線)の材料について図27に示した。リポソームについては、これまでの研究において最適ウイルス結合は、リポソーム中に1〜10%の混合物が存在するときに生じることが示されていたので、シアル酸結合PCAの1〜10%の混合物を含ませた(Spevakら、J. Am. Chem. Soc. 161: 1146 [1993])。
【0323】
ケイ酸塩ガラスに捕獲したリポソーム(すなわち、ゾル−ゲル法によって調製したリポソーム)については、5,7−DCDAが10,12−PCAに比べてより鮮明な比色応答をもたらすことが見出された。5,7−DCDAによる改善された応答は、ゾル−ゲル物質のサイズ限定性および色彩変化の原因となるコンホメーション変化のトポケミカルな性質に関係すると考えられている。しかし、本発明の実施のためにこの機構を理解する必要はない。
【0324】
一実験において、リポソーム溶液を含有するシアル酸−結合PDAに5〜10分間照射すると、深青色のリポソームが生成した。一方、10〜30分間で重合させると紫色になった。インフルエンザウイルスを該リポソームに添加すると、該材料は桃色または橙色に変化した。この変化は、初期の調製物が青色であったか紫色であったかにそれぞれ依存する。この色の変化は裸眼で容易に観察できた。
【0325】
競合阻害実験を実施して、リガンド−アナライト相互作用の特異性を示した。実験は上述のように実施したが、インフルエンザウイルス赤血球凝集反応の公知のインヒビターであるa−O−メチル−ノイラミン酸をわずかに過剰にした。インヒビターの存在により、該生体高分子材料の検出可能の色の変化は全く見られなくなった。
インフルエンザウイルス検出系に、インフルエンザの株またセロタイプを互いにおよび他の病原体から、認識および識別するさらなるリガンドを含ませることが考えられる。
【0326】
本発明のシアル酸含有生体高分子材料は、その他多くの病原体を検出する方法を提供する。インフルエンザウイルスに加えて、シアル酸は、その他のアナライトを検出することができる。該アナライトとしては、これらに限定するものではないが、HIV、クラミジア、レオウイルス、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、サルモネラ(Salmonella)、センダイウイルス(Sendai virus)、マンプス(mumps)、 ニューカッスル(newcastle)、ミクソウイルス(myxovirus)およびナイセリア・メニンギチジス(髄膜炎菌)(Neisseria meningitidis)が含まれる。
【0327】
II. コレラ毒素の検出
コレラ毒素は、グラム陰性菌であるビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)の内毒素である。ビブリオ・コレラはヒトにおいて死に至る可能性がある下痢疾患を引き起こす。コレラ毒素は、二つのサブユニットA (27 kDa)およびB (11.6 kDa)から構成される。その化学量はABである。B成分は細胞表面上のGM1ガングリオシドに特異的に結合し、最終的にAフラグメントを膜を通して転位させる。コレラ毒素は、GM1含有支持脂質膜、GM1および炭水化物「プロモーター」脂質(すなわち、シアル酸誘導ジアセチレン)を含有する重合したラングミュア・ブロジェットフィルムによって認識されうる。これはPanおよびCharych (Langmuir 13: 1365 [1997])によって示されている。
【0328】
ガングリオシドGM1、ビブリオ・コレラ由来のコレラ毒素、ヒト血清アルブミン、および小麦胚芽凝集素はSigmaから購入した。5,7−ドコサジイン酸は合成した。脱イオン水は、蒸留水をMillipore μF超精製トレイン(ultrapurification train)に通すことによって得た。溶媒は試薬グレードのものを使用した。ガングリオシドGM1を5モル%でジアセチレン「マトリックス脂質」モノマーと混合した。リポソームをプローブ超音波処理法を用いて調製し、UV照射(254 nm)によって重合させた。ポリジアセチレンリポソームの結合したene−yne主鎖は、深青/紫色の溶液を出現させる。新たに調製した紫色のリポソームの可視吸収スペクトルを図25に示す。
【0329】
比色アッセイのために、コレラ毒素をpH 7.0の50 mM Trisバッファーで1 mg/mlに希釈した。500 μlガラスキュベット中で、上述のように作製した青相のリポソームをpH 7.0の50 mM Trisバッファーで1:5に希釈した。該リポソームを該バッファー中で15〜30分間予めインキュベートし、コレラ毒素添加前の青相の安定性を確認した。この期間、色の変化は全く見られなかった。
【0330】
コレラ毒素を、連続添加法によって該キュベットに添加した。添加するたびに内容物を混合し、可視吸収スペクトルを時間の関数として記録した。典型的には、図26に示すように、95%の吸収変化が毒素添加後の初めの2分以内に生じたことが観察された。実験のたびに、キュベットの内容物を白色マイクロタイタープレートの1個のウェルに移した。桃色−橙色のコレラ処理リポソームを青色の陰性対照と視覚的に照合した。
【0331】
ガングリオシドGM1リガンドをリポソームから除去すると、陰性応答が観察された。同様に、コレラ毒素に加えて、匹敵する量のその他のタンパク質をGM1含有リポソームに添加すると、陰性応答が得られた。これらのタンパク質には、ヒト血清アルブミン、アビジンおよび小麦胚芽凝集素が含まれる。
【0332】
速度論的実験により、95%以上の色の変化が、該毒素添加後の初めの2分以内に生じたことが示される。図28に示すように、絶対的な影響ではないが、変色は該溶液に滴下した毒素の量に依存する。S字状の挙動は比色変化の協同性を示唆する。本発明を使用するためにこの機構を理解する必要はなく、そのために本発明が制限されることを意図しないが、この機構は、GM1リガンドへの毒素の結合がそれに続いて起こる毒素の結合をより有利にするという意味において、結合自体が協同的であることを示しうるものであると考えられる。あるいはこの結果は、脂質ポリマー側鎖コンホメーションおよびそのポリジアセチレン主鎖の有効な結合長に関する結果からみることにより、より適切な理解が可能かもしれない。毒素が結合した結果、有効な結合長が縮小されると、続いて起こる残余の脂質−ポリマー主鎖の摂動がより有利に生じる。
【0333】
III. 大腸菌毒素の検出
リポソームをモル5% GM1および95% 5,7−DCDAで調製した。比色アッセイのために、大腸菌毒素(Sigma)を分子量30K用のカットオフフィルターを通して15℃にて2000 x gでスピンし、塩を除去した。該タンパク質を50 mM Trisバッファー (pH 7.0)で再希釈し、最終濃度を1 mg/mlにした。
【0334】
図29は、5%のGM1リガンドおよび95%の5,7−DCDAを含有する重合リポソームの、大腸菌毒素に暴露する前の可視吸収スペクトルを示す。該リポソームを、プラスチック製使い捨てキュベット中で、50 mM Trisバッファー(pH 8.0)で希釈し、最終濃度を0.2 mMにした。該キュベット中の溶液は裸眼で紫色に見えた。
【0335】
このキュベット中のリポソーム溶液に上記の大腸菌毒素を40μl添加し、該サンプルを10分間インキュベートした。可視吸収スペクトルを図30に示すように、再度記録した。このキュベット中の溶液は、該毒素を添加すると、裸眼で、添加前の紫色と比べて桃色に見えた。図29および30の吸収スペクトルは観察された色の変化を確証するものである。
【0336】
IV. その他の病原体の検出
本発明を利用して、その他種々の病原体をも検出しうる。多数の病原体に特異的なリガンド(例えば、炭水化物、タンパク質および抗体)は、上述および当技術分野で公知の慣例の化学的合成法を用いて、上記生体高分子材料に組込ませることができる。いくつかの病原体検出系の実施例を以下に記載することにより、本発明を使用して適用できる多様な方法を示し、かつ単一種のリガンド (例えば, シアル酸)の広範な検出能を示す。
【0337】
本発明のシアル酸から誘導された材料を使用して、プラスモディウム属(Plasmodium;すなわち、マラリアを引き起こす病因となる病原因子)などの寄生生物の存在が検出された。これらの実施形態においては、遺伝的に保存された宿主結合部位を使用した。上述のシアル酸を含有するPDAフィルムを、マラリア寄生虫(malaria parasite)および赤血球を含有する溶液に暴露した。該寄生虫に一晩暴露した後、該フィルムは桃色になった。各場合において、この色彩応答(CR)はほぼ100%起こった。該システムをその他の試験物質(例えば、多様なリガンドを有する生体高分子材料のアレイ)と組合せて使用し、プラスモディウム属(例えば熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum))または他の病原体のうち特に有毒な種または株の存在を同定および識別する。
【0338】
また別の実施形態においては、抗体をリガンドとして使用し、ナイセリア・ゴノローエ(Neisseria gonorrhoeae)およびビブリオ・ブルニフィカス(Vibrio vulnificus)の存在を検出することに成功した。該抗体の生体高分子材料 への組込みについて実施例5に記載する。
【0339】
これらの実施例から明らかなように、本発明は、細菌、ウイルスおよび寄生虫を含む広範な病原体を検出する多様な手段を提供する。
【0340】
V.揮発性有機化学物質( VOC )の検出
本発明の特定の実施形態は、揮発性有機化合物(VOC)を比色定量的に検出する手段を提供する。VOC検出の最近の方法の多くは、サンプルをガスクロマトグラフィー/質量分光法で分析する研究室の設備に入れる必要がある。現場での方法論には、分光分析で使用されるような大きくかさばった部品の装置を必要とするものもある。これらの方法は不純物の定量および同定を行うのに優れているが、個々の作業者の安全性を保証するものではない。一実施形態では、本発明は有害なVOCの存在を知らせる固定化生体高分子材料を含むバッジ(badge)を提供し、そしてVOCを含む領域内の作業場の最大安全性を提供する。該バッジは、分析が容易かつ簡便であり、使用者の側には分析するための専門的知識が全く必要ない。バッジの変色は、人に適切な処置をとるよう知らせる。バッジによってコストが削減され、そして環境管理および復旧処置の効率が改善され、潜在的に有害な物質への過剰暴露を防ぐことによって、従業員の疾病による中断時間が有意に減少される。
【0341】
VOC検出についての2つの主なアプローチは種々のグループで採用されてきた。ひとつめのものには、VOC検出について改変が加えられたGC/MSなどの伝統的な解析手法(すなわち、機器に基づくアプローチ)(Karpeら, J. Chromatography A 708: 105 [1995])が含まれる。しかしながらこれらの方法は高価かつ複雑であり、そしてそれ自体を現場または家庭用に使うことはできない。第2には、脂質膜を検出器表面へ結合すること(すなわち、有機デバイスアプローチ)が含まれる。この10年の間には、圧電性マスバランスの有機フィルムによる被覆を含むいくつかのセンサーデバイスが研究された。その被覆の非選択的特性のために、これらはアレイ中で研究された。水晶結晶板微量天秤(QCM)および表面音波(SAW)デバイス(例えばRose−Pehrsson ら、Anal. Chem.60: 2801 [1988]を参照)などのセンサーは、適用される量に従って直線的振動数変化(linear frequency changes)を有する。結晶へのポリマーまたはその他の被覆を適用することによって、QCMまたはSAWに基づくセンサーを構築する。SAW、QCM、および電極に基づくシステムの使用に含まれる複雑な電子装置によって、これらのアプローチが安全な個人用デバイスとしての使用されるにはより受け入れられにくくなる。
【0342】
本発明は、電子的デバイスへのシグナル伝達ではなく、むしろシグナル伝達が有機層構造の必要不可欠な部分であるという点でこれらの方法とは異なる。さらに本発明の実施形態により、電子的検出よりもむしろシグナルの光学検出が容易になる。さらに本発明は、材料設計における柔軟性を提供し、電子的装置の必要性を担うよりむしろ小さなカートリッジ(例えばバッジ)中への容易な固定を可能にする。
【0343】
本発明の開発の際に、揮発性有機溶媒と特定の脂質−ポリマー膜との相互作用によって強い青から赤への色調遷移を生じることが観察された。図31の曲線aは、青相におけるPCAフィルムの吸光スペクトルを示す。該フィルムは水中へ溶解した約500ppmの1−オクタノールへの暴露の際に赤相PCA(曲線b)へと変化する。各種の溶媒について分析し、変色は一般に溶媒の濃度に依存し、そしてまたハロゲン化および芳香族性の程度により増大する。この研究では、単一成分の薄いPCA膜フィルムを調製し、UVへの暴露(254nm)によって青相に重合した。これらの材料は、水と混合性のある溶媒よりも水と非混合性である溶媒に感度が高かった。混合性のあるアルコールについては、エタノールと比較すると、応答がイソプロパノールに対して劇的に上昇することが分かった。それはおそらく溶媒の膜へのインターカレーションの程度がより大きいためだろう。水と非混合性の溶媒については、0.05wt%(500ppm)で測定可能な変色が得られた。この群では、アルコール鎖長の増加ならびに塩素化度の増加により類似の傾向が観察された。図32AおよびBで示すように、多種多様な水と非混合性の溶媒を、それらの水飽和濃度で試験した。項目Bで示すように、それぞれの濃度は異なる。図32Aでは、y軸は比色応答または青から赤への転換の度合を示す。棒グラフの上に示す数字は、ppmでの検出の上限を示す。これらの溶媒の多くについて、500ppmより十分に低い溶媒濃度を検出しうることが明らかである。
【0344】
水中で比較的高い溶解性を有する非混合性の溶媒について、比色応答に対する溶媒濃度の影響を調べることができた。図33に1−ブタノールについて示すように、0.05〜8wt%の範囲で水中で比色応答と溶媒濃度との間に直線的相関があることが分かった。
【0345】
医薬品産業は、医薬化合物が典型的に溶媒の存在下で起こる有機化学反応により製造されるので、目下溶媒センサーの必要性がある。ヒトまたは他の動物において使用する薬物のパッケージングの前に、溶媒を完全に除去しなければならない(CareyおよびKowalski, Anal. Chem. 60: 541 [1988])。これらのVOCを検出するために最近用いられている方法は、薬物を横切って熱風を送るエネルギー集約的ドライヤーと、種々の溶媒の蒸発量を分析する圧電性結晶アレイを利用するものである(Carey, Trends in Anal. Chem. 13: 210 [1993])。本発明は、これらの測定を非常に簡易化する比色法に基づくアプローチを提供する。
【0346】
さらに、非産業的な屋内空気環境下におけるVOCの定量に関する分析法の重要性は、ここ数年の間に劇的に上昇している。このことは、主に一般の家庭用機器または事務機械からの排気に対する認識、ならびに建築物の通気制御の傾向が高まったことによる。消費者向け製品を製造する企業は、空気サンプリングおよびその後の研究室での分析を必要としない、in−situにおいて有害なVOCの存在を減少させうる屋内空気モニターを提供することにより、この高まった必要性に応えることに関心がある。本発明は、そのような手段を達成するための実施形態を提供する。実際、本発明の実施形態は、拡充された空気サンプリングのための提供でき、そしてそのカートリッジは個人的または一般的な空気サンプリングとして小さな携帯用の電池式ポンプに連結することができる。
【0347】
VI.他の有機小分子の検出
図34の化合物1および2などの特定の包含化合物またはクラスレートは、有機溶媒蒸気に対し非常に選択的な吸着剤であることが示されている(Ehlenら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. Vol.32, p.110 [1993])。例えば、化合物1はジオキサンに対する顕著な親和性を有し、そしてブタノール、アセトン、メタノール、2−プロパノール、シクロヘキサン、トルエンおよび水に対してほとんど親和性がない。その一方化合物2は同じグループの溶媒の中では1−ブタノールに対し顕著な親和性を示す。
【0348】
本実施例の目的は、小さな有機化合物を特異的に捕捉し、視覚的に検出することのできる比色的変化によって捕捉したことを伝えるという機能性材料の新規な種類を示すことである。これらの材料は、空気中または水流中の溶媒または他の毒性汚染物質などの化合物の存在を検出する、単純に色に基づくセンサーデバイスとして働く。
【0349】
第1ステップには、図34示すように化合物1および2の脂質ジアセチレン類似体の合成が含まれる。該図において、PDA(ペンタコサジイン酸)3の鏡像学的に純粋なエステルは、過酸化モリブデンの酸化により水酸化されてアルコール4となる。ジアステレオマーを分離し、そのエステルを加水分解してキラル体乳酸塩類似体5および6とする。エチルエステルが形成され、それをグリニャール試薬で処理して所望のキラル体脂質類似体7および8を得る。R基の変更により、特異的な捕捉能力が検討される多種多様な新規材料が生じる。
【0350】
モノマー−脂質クラスレートを、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)フィルム装置を使用して水表面上に並べ、そして圧縮する。上述のようにUV照射による単層の重合によって青色に着色した材料が得られる。該フィルムを疎水化顕微鏡スライド上にのせる。これらの材料のアナライト(例えば1−ブタノールまたはジオキサン)への暴露により比色応答が生じる。
【0351】
VII.ヘキソキナーゼリガンドを用いたグルコースの検出
比色測定のために、上述のようなヘキソキナーゼ改変フィルムを、光学特性を測定する目的でシラン化ガラス製カバーガラス上にのせた。バイオセンサーで被覆したガラス製カバーガラスをガラスキュベット中に入れ、そしてヘキソキナーゼ改変フィルムのUV−Visスペクトルを0.1Mリン酸バッファー(pH6.5)中で記録した。このバッファー条件で得られた測定値をバックグラウンドとみなした。グルコースまたは他の糖置換体の添加はキュベット中で直接行った。図35は、インキュベーション時間の関数として、グルコースを添加した際のヘキソキナーゼ改変PDA単層のUR−Visスペクトルを示し、(A)バックグラウンド(0.1Mリン酸バッファー、pH6.5);(B)10.0mMグルコース添加後t=0.02分にて;(C)10.0mMグルコース添加後t=30分にて;および(D)10.0mMグルコース添加後t=60分にて、を示す。
【0352】
550nmにおける吸光度の増加に反映されているように、グルコースの添加が即時応答を引き起こすことは明らかである。該応答は時間と共に増大し、60分でピークに達する。上述に定義した比色応答(CR)は、t=0.02分、30分および60分に対してそれぞれ5.2%、13.7%および17.1%であった。色の変化はこれらの条件下で不可逆的であった。
【0353】
グルコースセンサーの選択性を、図36で示すようにグルコースに構造的に類似した糖化合物を用いて試験した。全ての試験を0.1Mリン酸バッファー(pH6.5)中で行った。右から2つ目のカラムは、固定化ヘキソキナーゼを用いないPDA単層におけるグルコースによる変動を示す。サンプリング数(n)は、グルコースについてn=6であるが、他のものはn=3である。10.0mMのソルビトール、ガラクトースおよびスクロースの添加によって該センサーは誘発されなかった。このことは、該センサーがグルコースという糖に対し非常に特異的であることを示唆している。該センサーの活性化機構を更に研究するために、固定化ヘキソキナーゼのないPDA単層を試験した。t=60分におけるCRはヘキソキナーゼ結合PDA単層のバックグラウンドに匹敵し、有意な応答は観察されなかった。この結果は、グルコースはそれ自体がPDAフィルムにおける色の変化を誘導できないことを示した。該センサーがグルコースに対し応答するためには、固定化ヘキソキナーゼの存在が必要である。
【0354】
VIII.核酸ハイブリダイゼーション現象の検出
他の実施形態では、本発明の材料には、一本鎖サンプルDNA(ss−s−DNA)の核酸分子認識による一本鎖プローブDNA(ss−p−DNA)とのDNAハイブリダイゼーションまたは他の核酸相互作用の特異的な検出が可能な核酸リガンドが含まれ、それは本発明の生体高分子材料の表面に共有結合で結合している。特定の生体高分子材料を用いると、色の移り変わりがアナライト結合の際に起こり、それは簡単な視覚観察により、または所望であれば色感知機器により見ることができる。DNAハイブリダイゼーションの比色検出を図40に大まかに説明する。
【0355】
IX.他の実施例
上述の実施例は、本発明により検出可能な、複雑な生物学的有機体(例えば、ウイルス、細菌および寄生生物)から簡単で小さな有機分子(例えばアルコール)までの幅広い範囲のアナライトを示す。他の多くのアナライトは、限定されるものではないがガングリオシドを組み込んだPDAを用いて検出されるボツリヌス神経毒など(PanおよびCharych, Langmuir 13: 1367 [1997])を含む生体高分子材料に連結したリガンドを用いて効果的に検出されてきた。当業者に公知の標準的な化学合成技術を用いて多数のリガンド型を自己集合性モノマーに連結し、種々のアナライトを検出しうることを意図する。それに加え、他の多数のリガンドの型を自己集合性モノマーへの共有結合なしに生体高分子マトリクス中に組み入れることができる。これらの材料により、小分子、病原体、細菌、膜受容体、膜断片、揮発性有機化合物、酵素、薬物、およびその他多くの関連材料の検出が可能になる。
【0356】
本発明はまた、他の種々の用途におけるセンサーとしての使用を提供する。PDA材料の色の移り変わりは、温度およびpHの変化により影響を受ける。したがって、本発明の方法および組成物は、温度およびpH検出器としての使用を提供する。
【0357】
また、リガンドがアナライトへの競合的結合剤として機能する場合に、それらを本発明で使用することもできる。例えば、アナライトの天然受容体の存在下でアナライトへの比色応答を測定することによって、天然受容体の量および/または結合親和性を決定することができる。競合法または阻害法の適用により、非常に小さく、大部分が不活性の化合物、ならびに非常に低濃度で存在する物質または少数もしくは単一のバリアンシー(valiancy)を有する物質の試験が可能になる。この方法の一つの適用により、天然の結合現象の競合的阻害を観察するためのスクリーニングアッセイを提供することにより、薬物の開発および改良のための手段としての使用が提供される。本発明の組成物はさらに、所望の材料の結合を比色定量的に観察することができ、その関連するリガンドを有する関連生体高分子材料を、特定のポリマー構造を区別することにより他から分離させることができるので、材料のライブラリーを試験する手段を提供する。
【0358】
実施例8
生体高分子材料の固定
I.シリコンチップおよびゲルへの固定
シリコンゲルまたは薄片を1:1のHCl/メタノール中で酸洗浄し、水中ですすぎ、そして濃硫酸中に入れる。完全に水ですすいだあと、該薄片チップまたはゲルを2回蒸留した脱イオン水中で煮沸し、そして冷却および乾燥し、続いて乾燥トルエン中に調製した3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの2%溶液中不活性環境下でシラン化する。次に該チップまたはゲルを、0.1Mリン酸バッファー中で調製したGMBS(N−スクシンイミジル4−マレイミドブチラート)またはEMCS(N−スクシンイミジル6−マレイミドカプロアート)のいずれかの2mM溶液中に入れる(最初に架橋剤を最小量のジメチルホルムアミド中に溶解する)。リン酸バッファーですすいだ後、該チップをpH 8.0リン酸バッファー中に調製したリポソームの0.05mg/ml溶液中に入れる。最後に、該チップまたはゲルを該バッファー溶液で完全にすすぎ、続いて使用するまで該バッファー溶液中に保存する。該リポソームは、機能するためのGMBSまたはEMCSとの架橋のためにNH官能基を有するほうがよい。
【0359】
II.生体高分子材料のゾル ゲルエントラップメント
シリカゾルは、15.25gのテトラメチルオルトシリケート(TMOS)、3.35gの水、および0.22mlの0.04N塩酸水溶液を、溶液が単一の相になるまで冷浴槽中で超音波処理して調製した(約20分)。続いて冷却MOPSバッファー溶液(50% v v)を酸性ゾルに添加し、ゲル化を遅らせるために氷浴中で溶液が十分に冷却されたことを確認した。シリカゾルを生成するのに適切な種々の材料には、限定するものではないが、あらゆるテトラアルコキシシランまたは有機的に修飾されたシラン(例えばオルモシル(ormosil))が含まれる。それに加えて、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MeTEOS)、アリールシルセスキオキサン、および他の金属酸化物が、ゾル−ゲルガラスの生成における使用を提供する。
【0360】
リポソームをカプセル化するために、次に重合したリポソーム溶液(2.5ml)(実施例1で生成したもの)を緩衝化ゾル(10ml)中に混合し、そしてその混合物をプラスチックキュベット中に注いで、平らな表面上にフィルムとして適用するか、または他の所望の任意の形成鋳型中に注いで、パラフィルムで密封し、そして周囲の温度でゲルにさせる。サンプルのゲル化は数分で起こり、キュベット形成ゲルの場合は、透明でモノリス様の固体(18mm×10mm×5mm)が紫色に着色したp−PDAリポソームを有するモノリスとして得られた。シネレシスによる古くなったモノリスのわずかな収縮が観察された。
【0361】
他の生体高分子材料の形状(すなわち、フィルムおよび他の超微小構造)のカプセル化を上述のように実施することができる。材料は小さな(すなわちナノ単位の範囲内の)部分に生成されるか、またはそうではない場合には断片化されなくてはならず、そして溶液中に組み込んで緩衝化ゾルと混合させなければならない。
【0362】
実施例9
アレイの作製
いくつかの実施形態において、本発明は、種々のヘッド基の化学的性質を有する多様な重合した脂質を生成し、アレイを作製することを包含する。カルボン酸官能基(式量陰性電荷を与える)、親水性非荷電ヒドロキシ基、第一級アミン官能基(式量陽性電荷を獲得しうる)、アミノ誘導体(陽性、陰性または両性イオン性電荷を有する)、ならびに疎水性基などを有するヘッド基を含有する脂質を生成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、単一デバイスへのこれらの材料の組み合わせによって、種々のアナライトの同時検出、またはバックグラウンド干渉物(interferant)からの所望のアナライトの識別が容易になる。いくつかの実施形態において、種々のドーパント材料を含有する生体高分子材料を使用して、アレイの各部分について異なる色パターンを提供する。
【0363】
例えば、種々のヘッド基の化学的性質を有する多様な重合脂質を生成させて、アレイを作製することができる。例えば、図37は種々のヘッド基の化学的性質を有する脂質を記述する。これらは、それらのヘッド基官能性に基づいて5つのグループに分類しうる。化合物2.4および2.5は、式量陰性電荷を与えるカルボン酸官能基を含む。化合物2.6および2.7は、親水性非荷電ヒドロキシ基を含む。化合物2.8および2.9は、式量陽性電荷を獲得しうる第一級アミン官能基を含む。アミノ酸誘導体2.10は、陽性、陰性または両性イオン性電荷を有して存在しうる。化合物2.11〜2.13は疎水性ヘッド基を有する。
【0364】
これらの脂質の合成は、市販のPDA(2.4)で開始する。2.10、2.12および2.13を除く全ての合成は、上述のようなPDAの活性化N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS−PDA)を使用して、それぞれのヘッド基とPDAとのカップリングにより行うことができる。アミノ酸脂質2.10は、図38で示すように、水素化アルミニウムリチウムおよび対応する臭化物誘導体へのアルコールの転換を利用して、PDAから4つのステップで調製しうる。該臭化物を、水素化ナトリウムを含むアセトニトリル中のジエチルN−アセチミドマロン酸塩との反応により保護アミノ酸に変換し、続いて脱保護を行う。フッ化脂質2.12および2.13は、ペンタフルオロベンゾイルクロリドと、アミノ脂質2.8および2.9との反応により調製しうる。
【0365】
上述のように調製された材料は、デバイスのチャンバー内に沈積させるか、またはデバイスの特定の部分に固定化しうる。一つの装置(例えばバッジ)中で種々の性質(例えば、アナライトもしくは反応の検出能、色、アナライト親和性)を有する生体高分子材料を生成することによって、多様な反応およびアナライトを同定、識別および定量する能力のあるアレイを作製する。
【0366】
他の実施形態では、図46に示すように、固体基体上のポリジアセチレン二重層系に結合させた伸長する鎖を用いて、パターン化DNAアッセイ自動DNA合成の構築を行う。各サイクルで添加する活性化ヌクレオチドモノマーは、5’末端に光感受性保護基を担持する。カップリング反応後に、鎖の末端(5’)を光感受性保護基でキャッピングする。マスクを介した基体への照射によって、照射された基体の一部分のみが脱保護される。したがって、単一基体(検出器)表面上で、いくつかの独立したss−p−DNA配列をマスクの適切な選択によって平行して合成することができる。このアプローチによって、一つのステップで多くの異なるss−s−DNA 断片の検出のための強力な多価センサーが得られるだろう。該方法には、DNA自体(λabs=約260nm)に影響を与えない波長、またはポリジアセチレン主鎖を干渉しない波長で切断される光感受性保護基が必要である。そのような光感受性保護基は、リン酸のo−ニトロベンジルオキシエステル(λabs=約340nm)および関連化合物(Greene ら、Protective Groups in Organic Synthesis,第2版 John Wiley & Sons. Inc., New York [1991];Pillai, Synthesis, p. 1 [1980];ならびにZehavi, Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 46: 179 [1988]を参照のこと)である。
【0367】
実施例10
膜再構築の検出
1. ホスホリパーゼ
生体高分子リポソームを、水中で重合したマトリクス脂質10,12−トリコサジイン酸(tricosadiynoic acid)とPLA基質脂質(例えばDMPC)の種々のモル画分(0%−40%)との混合物を探索子超音波処理し、続いて1.6μJ/cmの紫外線254nm照射による重合により調製した。透過型電子顕微鏡による分析は、平均約100nmの大きさの小胞を示した。
【0368】
最初の段階では、小胞は裸眼で深青色に見え、620nm付近で最大吸収を有した。重合した小胞は40% DMPC/60% PDAで構成された。1mMの総脂質を、標準的キュベット中で最終容量0.5mlになるまで50mM TrisバッファーpH7.0中に1:10で希釈し、Hewlett Packard分光光度計9153Cモデルを使用してスペクトルを記録した。ハチ毒ホスホリパーゼA(Sigma)を10mM Tris、150mM NaCl、5mM CaClバッファーpH8.9中に溶解し、最終濃度1.4mg/ml PLAを得た。この溶液の50μlを該キュベットに添加し、60分後にそのスペクトルを記録した。DMPC/PDA小胞へPLAを添加したら、懸濁液は迅速に(すなわち数分のうちに)赤に変わり、上述の図13で示すように約540nmで最大吸光度を示した。
【0369】
ある範囲のモル%でDMPCを含むリポソームを、それらの比色応答を生じる能力について試験した。5μlの1.4mg/ml PLAを50μlのDMPC/PDA小胞に添加した(0.1mM 最終総脂質濃度)。この実験は分子デバイスUVマックスキネティックマイクロプレートリーダーを用いて標準的96ウエルプレート中で行った。小胞溶液の吸光度を620nmおよび490nmの波長で時間の関数としてモニターした。データを、上述の図17で示すように時間に対する比色応答(CR)としてプロットし、色応答曲線を得た。
【0370】
生体触媒作用がDMPC/PDA小胞で起こることを確認するために、PLA活性を、PDAマトリクス中に組み込まれた標識化脂質類似体を用いて別に測定した。それにより産物形成および小胞の比色応答の同時測定が可能となる。使用した類似体は、チオエステル1,2−ビス−(S−デカノイル)−1,2−ジチオ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DTPC)であった。45μlの40mM Tris pH7.0および5μlの6mM DTNBで希釈した5μlの40% DTPC/PDA小胞を10μlの1.4mg/ml PLAと共にインキュベートした。412nmにおける吸光度を経時的にモニターした。
【0371】
PLAによる界面触媒作用の発生を更に実証し、酵素反応産物の最終結果の情報を示すためにNMR実験を実施した。スペクトルをBruker DMX500 NMR分光計上で11.7テスラの磁場でとった。ブロック壊変(block−decay)パルス配列を2048獲得データポイントと共に使用した。2秒の再生遅延で、40 000の誘発されない壊変が各実験で蓄積された。0.1M リン酸を外部参照として使用した。図16は、A)混合DMPC/PDA小胞、0.1mM 総脂質;B)PLA添加(200ng)後の同じ小胞懸濁液、の31P NMR スペクトルを示す。
【0372】
II.ホスホリパーゼ および
ホスホリパーゼDおよびCについてのアッセイを、ホスホリパーゼPLAアッセイと類似した条件下で行った。全てのアッセイにおいて、1mMの40% DMPC/60% 10,12−トリコサジイン酸(TRCDA)リポソームを使用した。ホスホリパーゼDおよびCの貯蔵水溶液を、それぞれ50mM Tris、150mM NaCl、5mM CaCl、pH8.9 バッファーおよび20mMホウ酸ナトリウム、150mM NaCl、5mM CaCl、pH8.9 バッファー中に酵素を濃度1mg/mlで溶解することにより調製した。続いて該アッセイを、5μlのリポソーム、45μlの50mM Tris pH7.0(またはPLCを試験する場合には20mMホウ酸ナトリウム pH 7.0)、および5μlの酵素を添加することにより実施した。該アッセイの対照は、酵素を含まない5μlのバッファーから構成された。該アッセイを最初の10分間は2分毎に、続いて残りの50分間は10分毎に620nmおよび490nmでモニターした。
【0373】
III.アマガサヘビ毒素
アッセイを上述の実験と類似した条件下で実施した。10μlの1mM 40% DMPC/60% TRCDAリポソーム、35μlの50mM Tris pH7.4、15μlのBUTX(分子プローブ B−3459)を50mM Tris、150mM NaCl、5mM CaCl pH7.4中に溶解し、2mg/mlの溶液を作製した。スペクトルを最初の10分間のインキュベーションでは2分毎に、そして残りの50分間は10分毎にモニターした。490nmおよび620nmにおける吸光度を、UVマックスマイクロプレートリーダーを用いてモニターした。
【0374】
IV.阻害剤スクリーニング
阻害剤を使用して、PLAにより開始される比色現象をブロックした。0.6% MJ33を含むDMPC/PDA小胞を重合し、そして5μlの1.4mg/ml PLAと共にインキュベートした。5μlの重合していないリポソームを40μlの50mM Tris pH7.0、5μl MJ33(0.006 Mで水中に溶解)、5μlの50mM Tris、150mM NaCl、5mM CaCl pH8.9と合わせ、15分間インキュベートした。続いて該リポソームを96ウエルプレート中で重合し、吸光スペクトルを490nmおよび620nmで記録した。5μlのPLAを添加し、特定の時間間隔でスペクトルを1時間モニターした。Zn2−阻害については、該酵素を10mM Tris、150mM NaCl、0.1mM ZnCl pH8.9中に溶解した。
【0375】
実施例11
核酸に結合した生体高分子材料
これらの実験では、オリゴヌクレオチドを誘導体化して、生体高分子リポソーム中に組み込むための一本鎖プローブDNA(ss−p−DNA)を形成させた。リポソームを、化合物1(図41)95%と化合物3(図41)5%の脂質混合物から、上述のように水性溶媒中の脂質混合物の乾燥フィルムを超音波処理することによって調製した。このリポソーム溶液をUV光(254nm)を照射することにより光重合し、続いて化合物4(図41[配列番号2])または化合物5(図41)のいずれかを添加し、化合物3の活性エステル脂質部位で共有結合を形成させた。この過程を図42に示す。
【0376】
α,ω−ビスアミノss−p−DNA(すなわち化合物5)をポリマーリポソームの表面にカップリングすることにより、化合物4で生成されたものより感度の高いプローブを潜在的に作製する。本発明を実施するためにこの機構を理解する必要はないし、本発明は特定の解釈のいずれにも限定されるわけではないが、この増大した感度に対する可能な理由は以下のようなものである。一本鎖DNAは、溶解したポリマーから知られるように、溶液中でコイル構造を形成する。コイル化ss−p−DNA(化合物5)とリポソーム表面との結合により、比較的近接した2つの結合がもたらされる。ハイブリダイゼーションの際に、二重鎖DNAが伸長し、そして両方の結合で同時に、ポリアセチレン主鎖のコンホメーションの変化が生じる。この協力作用により比色検出の感度が高まる。
【0377】
これらのリポソームの大きさおよび形状などの特徴は、TEM (例えば、フリーズフラクチャー法)および光散乱を含む種々の測定から決定することができる。ラマン分光法およびUV/Vis分光法により、ポリマー主鎖についての情報が示されるが、FTIR分光法はアルキル鎖に対し感受性を有する。表面トポロジーはAFM下で明らかになり、そして表面の化学組成はXPSによって判明されうる。しかし本発明にはそのような特性決定実験は必要ではない。
【0378】
図41の化合物1および類似体2および3を使用し、誘導体化して、膜表面に所望の機能化を生じさせた。図41は、脂質1の光重合する前および後の、結合したポリマー主鎖を有するフィルム構造を示す。M13ファージDNAの配列と相補的なオリゴヌクレオチドdGGGAATTCGT(配列番号4)を誘導体化して、鎖の末端にアミノ基を担持するss−p−DNA化合物4および5を形成しうる。これらのアミノ基は、ポリジアセチレンフィルム中の活性エステル脂質である化合物3と反応することができ、光重合後のリポソームまたは二重層へのss−p−DNAの結合が可能になる。しかしながら、本発明は特定のss−p−DNA配列のいずれかに限定されることを意図しているわけではない。
【0379】
いくつかの実験では、ODN−脂質結合オリゴ1(以後「W001」)を、図45で示すように、DMSO/水性バッファー溶媒(pH9、NaCO/NaHCOバッファー、0.1M)中のNHS−PDAとアミノ官能基を有する27マーオリゴ1との反応より得る。DMSO中に溶解したNHS−PDAは、水性ODNバッファー溶液に添加する際に部分的に溶液の外へ出るが、それにもかかわらず該反応は冷中(約4℃)で2週間にわたって進行した。CHCl中に溶解した水性ODNバッファー溶液およびNHS−PDAを用いる二相系(すなわち、水中のアミンおよび有機溶媒中の酸塩化物)においてアミドを形成させるための第2の試みは失敗した。本発明を実施するためにこの機構の理解は必要ではないし、本発明は特定の機構に限定されるものではないが、この失敗はおそらく、両方の反応物の非常に強力な極性の違いによるものだろう。それによってそれらのどちらも相の境界面を横切ることができず、反応するのに十分な距離まで近づくことがなかった。
【0380】
更に図43で示すように、5’末端の第1のOH基を、DCCを凝縮剤として、およびピリジンを塩基として使用して、リン酸ヘッド基を有するジアセチレン脂質に結合した。該脂質を、核酸塩基保護基を担持する脱トリチル化オリゴ2(すなわち、図43でseq.1−DA13//90P03H2と示す脂質結合オリゴヌクレオチド)に結合させ、それを固体支持体に結合させた。ODN−脂質コンジュゲートを、固体支持体から切断し、そして標準的NH処理で脱保護し、オリゴ2コンジュゲートを得た。
【0381】
リポソームの大きなバッジをこれらの実験中に調製した。脂質は最初に濾過し、そして濾過した脂質溶液を有機溶媒中に入れた。本発明の好ましい実施形態では、30〜80mlの容量であるリポソーム溶液中の有機溶媒の総容量は5mlよりも少なく、高濃度の脂質が得られた。そのビーカーをハンドウオーム熱プレート上に置き、穏やかにNを液体の表面上に流した。完全に蒸発させた後、磁性攪拌子および適切な量のHOを加えた。続いてそのビーカーを、攪拌子の1〜2mm上に超音波処理器チップを保つようにした磁性攪拌器上の超音波処理器チャンバー中に設置した。好ましい実施形態では、該液体を60%の出力で、穏やかに攪拌および加熱しながら(すなわちヒートガンを用いる)、固体がすべて分散するまで超音波処理した。適切な超音波処理時間(5〜30分)後、温かい溶液を0.8μmのメトリセルフィルター(Metricel filter)を通して濾過し、冷却した。
【0382】
リポソーム重合に対するODNの影響を、15分間室温でインキュベートし、光重合(1.6J cm )し、そして次に0.1mM脂質濃度に希釈した、モノマーPDAリポソームの1mM溶液に添加した5%「オリゴ2」(すなわち、図43でseq.1−DA13//90P03H2と示される脂質結合オリゴヌクレオチド)を用いて決定した。純粋なPDAリポソーム(Abs.639nm=0.68 O.D.、エネルギー量=0.8J cm−2)のポリマー吸光度に対する、使用したエネルギー量および642nmにおける吸光度(Abs.642nm=0.5 O.D.、エネルギー量=1.6J cm−2)の比較に基づいて、本発明を実施するためにこの機構を理解する必要はないし、本発明は特定の機構に限定されるものではないが、254nm(すなわち、重合に使用される波長)でのODNの強力な吸光度が原因で、ODNの存在により重合の効率が減少することが示唆された。他の影響はリポソーム二重層とのODNの相互作用かもしれなく、歪められ、それゆえより効率の悪い重合となる。この相互作用は、ポリマー最大吸光度の、639nmから642nmへのシフトに対する最も主となる原因であると思われる。濾過(すなわちcc30濾過:使用したフィルターは、約30000gmol−1で分子カットオフするセントリコン(centricon )30フィルターおよび濾過であり遠心分離で達成した)後、リポソーム相と結合したODNの量は劇的に減少し、そして濾液はほとんどのODNを含有していた。第2濾過ステップ後、大半のODNをリポソーム相から除去した。濾過手法によるリポソームの10〜15%の損失は、純粋なリポソームを使用して観察されるものに匹敵した。
【0383】
cc30濾過によるODNの損失を、UV−Visスペクトルからリポソームバックグラウンドを差し引くことにより定量し、リポソーム相のODN濃度の直接的な量を反映する純粋なODN吸光度を得た。最初のリポソーム‐ODNスペクトルから濾液(すなわち、純粋なオリゴ2)の容量補正スペクトルを差し引くことにより、純粋なリポソーム「ブランク」が導き出される。それを今度は保持物のスペクトルから不純物を含まないODNスペクトルを導き出すのに使うことができた。この方法によりリポソーム相中のODN濃度に対する定量値が得られることとなり、この値は、希釈系列に合致するように、指数的な「崩壊」法則に従って減少した。2回のcc30濾過の後、総計75%のリポソームおよび14%のODNが保持された。保持されたリポソーム相中の厳密なODN濃度は、3つの主要な因子に依存した。すなわち、i)指数的減衰関数に従って希釈された保持物中に残存するODNの希釈度、ii) 周囲の培地中のODN濃度と平衡にある結合も含めた、リポソームに非特異的に結合したODNの画分、およびiii)ODNがフィルターに捕捉され、ポリマーの損失に相関するフィルター表面でのリポソームの吸着によるODNの損失、である。ODNがリポソーム表面に特異的に結合するときには、ODN−脂質コンジュゲートの場合と同様、最後の因子が特に重要になる。
【0384】
いくつかの実験において、PDAリポソーム(1 mM濃度)を5%の「オリゴ3」(配列番号3)(オリゴ2の相補体)と混合した。リポソームは照射の際に沈降したが、これはこのODNサンプル中の高い塩含量によるものであった。重合の収率を改善するために、PDAリポソームを、重合の前に0.1 mMの濃度に希釈した。希釈したリポソームを、5%のオリゴ2と共に室温にて14時間および4℃にて6時間インキュベートしたところ、純粋なPDAリポソームに匹敵する収率の0.3 J cm−2(254 nm)の低いエネルギー用量で、光重合化が達成された。ODN−リポソーム混合物を10倍希釈することで、相対塩濃度を減少させ、純粋なPDAリポソームおよびオリゴ2サンプルに匹敵する重合収率が得られた。この結果は、5%のオリゴ3と混合した1 mMリポソーム溶液とは対照的であり、リポソームは、高い塩濃度に起因して照射の際に溶液から析出した。オリゴ2とオリゴ3との間の主な差異は、より長い鎖の長さ(27マー対10マー)および末端の第一アミノ基である。このアミノ官能基にPDA酸ヘッド基によりプロトンを付加し、塩の対を形成することができ、より長い鎖の長さは、リポソーム表面での非特異的な吸着を増強する。両方の効果は、リポソーム相中のより高いODN保持量をもたらした。第1および第2の濾過の間のポリマーの損失は9%であった。
【0385】
別の実験では、1−(3−ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸(EDC)およびNHSを、ODN/リポソーム混合物(すなわち、1 mMのPDAおよび5%のODN)に加え、オリゴ1のリポソーム表面への共有結合を作成した。この混合物に、50μlのEDC保存液(HO中に0.6 mg ml−1のEDC HCl)および1μlのNHS保存液(HO中に0.6 mg ml−1)を加えて室温にて11時間インキュベートした。モノマーリポソーム混合物をcc30濾過し、再希釈(ν=1)し、重合化(0.3 J cm−2)し、再び濾過/希釈(ν=1)した。
【0386】
さらに別の実験では、予め重合化したPDAリポソーム(0.1 mM)/オリゴ1(5%)を用いた。重合化されていないPDAリポソーム(0.1 mM)を一度cc30濾過し、再希釈して重合化(0.3 J cm−2)し、その後5%のオリゴ1と共に室温にて11時間インキュベートした。ODNインキュベーション後、リポソームをさらに2回濾過したところ、濾過工程あたりのポリマーの損失は17%であった。さらに別の実験では、予め重合化したPDAリポソーム(0.1 mM)/オリゴ1(5%)をEDCおよびNHS処理して用いた。EDCおよびNHSをリポソーム表面に加え、ODNと共にインキュベートする前にリポソームを重合化した。PDAリポソームを一度モノマー形態で濾過し、0.1 mMに再希釈し、重合化(0.3 J cm−2)し、5%のオリゴ1、EDC(0.6 mg ml−1のHO中のEDC HClを50μl)およびNHS(0.6 mg ml−1のHO中のNHSを1μl)と共に、室温にて11時間インキュベートした。インキュベーション後、ODN‐リポソーム混合物を濾過したところ、2回目および3回目の線状ポリマーの損失は、それぞれ15%および23%であった。本発明を作り、使用するためにこの機構を解明する必要はないが、EDC/NHS処理も重合化条件(重合化の前後)も、ODNの保持特性を有意に変化させないことが示唆される。
【0387】
さらに、リポソームの表面上でアミノ官能化オリゴ1にリポソームが共有結合する能力について調べた。この目的のために、重合化したリポソーム(0.3 J cm−2、0.1 mM)を、5%のオリゴ1と共に室温にて11時間インキュベートし、cc30濾過し、元の容量まで再希釈した。cc30濾過をさらに2回繰り返し、ポリマーの損失を640 nmで測定したところ、わずかに指数的な「横ばい」(flattening out)を示した。本発明を実施するにはこの機構の解明は必要ではなく、また本発明は特定の機構的な説明に限定されないが、ポリマー損失のこの横ばいは、各濾過工程後に吸着されたリポソームでフィルター表面をより完全に被覆することに大部分起因するものであり、さらなるリポソーム吸着のために空いているフィルター表面は少なくなる。リポソームのバックグラウンドを差し引くと純粋なODNスペクトルが得られ、濾過の際のODNの損失の計算が可能になった。このODN損失は、本質的に同じ直線的関数に従ったが、これは、リポソーム中の10%のNHS−PDAの使用がODN保持を改善しないことを示唆している。
【0388】
未修飾の10マーについて3回のcc30濾過後の結果は、約70%のポリマー(高い塩濃度では約40%に減少する)および6%のODNが保持されたことを示した。純粋なPDAリポソームを有するアミノ官能化した27マーを、2回だけcc30濾過した。ポリマー‐/ODN−損失および濾過回数の間の直線的関係から、3回のcc30濾過後に50〜60%のポリマーが保持され、16〜32%のODNが保持されることが推定される。NHS−PDA/PDA(10:90)リポソームについては、ポリマーは24%のみであったが、ODNは37%保持された。ODNがリポソーム表面に結合された場合、ODNの保持はポリマー損失の関数でもあった。これはODNがフィルターに吸着したリポソームと共に溶液から抽出されるからである。この事実は、リポソーム濃度に関係する実際のODN濃度の測定を複雑にした。何故なら、ODN−リポソーム相互作用の明確な性質および程度は知られていないからである。一般的には、リポソーム濃度に関する相対的なODNの保持は、絶対的なODNの保持よりも(すなわち、リポソーム相の総量と比較して)高かった。
【0389】
ODNとリポソームとのより特異的な(すなわち、共有的な)相互作用を得るために、2つの異なるODN−脂質コンジュゲートを合成した。モノマーリポソーム(0.1 mM、500 μl)を、ODN‐脂質コンジュゲートと共にインキュベートし(5%、室温にて8.5時間および4℃にて15時間)、重合化(0.3 J cm−2)し、その後3回cc30濾過/洗浄(それぞれ300μlのHO)した。この処理の前後に、UV−Visスペクトルを取り、ポリマー‐およびODN損失を定量した。100μlの濾過していないODN−リポソーム混合物に、当量の未修飾相補的ODNを加え、ハイブリダイゼーションの際の比色応答を試験した。オリゴ2(5%)と混合したPDAリポソームの3回のcc30濾過の前後のUV−Visスペクトルは、濾液がODNのみを含有することを示した。室温での相補的オリゴ3の添加は、ポリマー吸収スペクトルに影響しなかった。
【0390】
さらなる実験において、5%のオリゴ1コンジュゲートをPDAリポソームと混合したところ、重合化の収率が激減することが示された。本発明を実施するのにこの機構の解明は必要ではなく、また本発明は特定の機構に限定されないが、この収率の減少はおそらく、ODN‐脂質尾部のリポソーム二重層への挿入に起因するものであり、PDAパッケージングが幾分か乱される。オリゴヌクレオチド相補的オリゴ1(すなわち、オリゴ4)の添加により、赤色のポリマー吸収がわずかに増加した。約79%のポリマーが、3回の濾過後に保持されていた。本発明の1実施形態において、PDAリポソーム(0.1 mM)を5%のオリゴ4と共にインキュベートし、その後重合化(0.3 J cm−2)し、濾過したところ、39%のポリマーの保持および31%のODNの保持を得た(図27)。
【0391】
他の実験において、10,12‐ヘキサコサジイン‐1‐オールリン酸一リン酸から作製したPOSリポソーム(以後、「DA13リポソーム」と呼ぶ)を、5%のオリゴ2脂質と共にインキュベートし、その後重合化(0.3 J cm−2)し、3回cc30濾過したところ、51%のポリマーの保持を得た。当量の相補的オリゴ3の添加により、赤色の吸収のわずかな増加と、続いて青色の吸収の減少が誘導された。図44に示した算出されたODNスペクトルから、28%の高いODNの保持が推定された。本発明を実施するのにこの機構の解明は必要ではなく、また本発明は特定の機構に限定されないが、5%のオリゴ1とPOSリポソーム(0.1 mM)とを混合すると、重合化の収率(0.3 J cm−2)が減少した。これは、おそらくODN−脂質のPOSリポソームへの挿入に起因するものであろう。この場合、吸収の最大値はより長波長側にシフトし、リポソームに緑色を帯びた色を与えた。相補的オリゴ4の添加は、ポリマー吸収に影響しなかった。3回のcc30濾過後、76%のポリマーおよび56%のODNが保持された。
【0392】
ODN相補体と混合した全サンプルを、40℃にて約30分間インキュベートし、特異的ハイブリダイゼーションおよび色調遷移を誘導したが、オリゴ2/オリゴ3を有するPOSリポソームのみが、赤色への可視的な色の変化を呈した。
【0393】
DNA−PDA コンジュゲートの合成およびハイブリダイゼーション
2つの相補配列、すなわち配列番号1(オリゴ2:配列1)(5’GGG AAT TCG T3’)および配列番号2(オリゴ3:配列2)(5’ACG AAT TCC C3’)を、Experdite 8909核酸合成システム(PerSeptive Biosystems)を用いて、標準的なホスホルアミダイト経路を用いて合成した。
【0394】
一般的なホスホルアミダイト法を図46に図式的に示す。第1の工程A)において、ジメトキシトリチル(DMT)基を、ヌクレオチドに結合した固相支持体の5’末端で切断した。この固相支持体は、通常制御された細孔ガラス(CPG)であるが、このCPGは、ヌクレオチドがスクシニルスペーサーを介してデオキシリボースの3’末端に結合した長鎖アルキルアミノ基で修飾されたものである。次いで、遊離の5’‐OH基を、工程B)においてテトラゾールにより活性化し、ホスホルアミダイトに結合させて鎖を伸長させた1個のヌクレオチドを形成させた。工程C)において、未反応の5’‐OH末端を無水酢酸でエステル化し、失敗の配列の発生を減少させた。次の工程D)において、亜リン酸トリエステル結合を、ピリジン/HO中のヨウ素により、対応するリン酸トリエステルに酸化した。その後、このサイクルを必要なホスホルアミダイトを用いて、最終的な配列が確立されるまで随意繰り返した。材料を水性NH(30%)で処理し、固相支持体から切断し、およびヌクレオチドの脱保護を行うことによって、遊離の生物活性を有するDNAを得た。保護基、塩および小さい副生成物の除去は、通常、Sephadex G−25またはG−50カラムを用いたスピンカラムクロマトグラフィーによって達成することができる。
【0395】
CPGからの切断およびDNAの脱保護は、様々な方法により達成することができる。ある方法では、カラムを切り開いてCPGビーズを回収し、小さいスクリューキャップのテフロン製容器中に移す。このCPGビーズを1 mlの濃NHOH(30%)で55℃にて6〜8時間処理し、次いで、アンモニアをデカンテーションしてビーズから除去する。あるいは、1 mlの濃NHOH(30%)を入れた2つの注射筒をカラムの末端に接続し、水酸化アンモニウム溶液を1.5時間出し入れし、ガラスバイアルに移して55℃にて6時間加熱する。水酸化アンモニウム溶液を含有するDNAを、遠心(すなわち、「speed vac」)することにより乾燥するまで蒸発させ、得られた固体を200μlのHOに再溶解する。
【0396】
完全に保護され、ポリマー支持体に結合した配列1の遊離の5’末端を、CHCl中で室温にてPDAおよびDCCで処理して、DNA−PDAコンジュゲートを得た。この方法に従うと、副生成物(すなわち、ジシクロヘキシル尿素)および過剰の試薬を、DNA切断の前にカラムから洗浄して不要な精製工程を回避することができる。配列1とPDAとのコンジュゲーションの反応スキームを図47に示す。ポリマー支持体からのDNA切断および保護基(ベンゾイル基およびイソ‐ブチロイル基)の除去は、濃アンモニア溶液(30%)で55℃にて6〜8時間処理することにより達成されたので、DNA−PDAエステル結合の切断する危険性を考慮しなければならなかった。
【0397】
2つの基本的な精製法、すなわち、エタノール沈降法およびSephadex G−25スピンカラムクロマトグラフィーを行って、10マーから切断された保護基および塩を全て除去した。配列2については、エタノール沈降法は機能しなかったが、これはおそらくエタノール(70%)/NHAcO中では可溶性となる10マーという短い長さによるものであろう。Sephadex G−25クロマトグラフィーでの成功については、直接調べることができなかったが、DNAがカラムを通過したことをUV−Vis分光計測により示すことはできた。20%アクリルアミドゲル上でゲル電気泳動を行い、配列1とPDAとの間のカップリング反応が成功していることを明らかにした。ゲルを臭化エチジウムまたは硝酸銀で染色したところ、該10マーは臭化エチジウムに対して極めて非感受性であることが示された。電気泳動は、配列1のサンプルが配列2よりわずかに速く移動し、配列1‐PDAおよび配列2が、臭化エチジウムによく染まるハイブリッドを形成したことを示した。
【0398】
遊離のPDAが配列1‐PDAサンプル中に存在するか否かを調べるため、当業界で公知のようにTLCを行い、硝酸銀で染色した。この方法の結果、加熱するとシリカゲル上でPDAが強く染色された。この実験は、DNAをシリカゲル上で移動させても、配列1‐PDAと配列2との間に極性の差異はなかったが、配列1‐PDAサンプルにおいて遊離のPDAは検出されなかったということを示している。DNAサンプルから得たUV−Visスペクトルは、約260 nmでの典型的なヌクレオ塩基のピークおよび種々のサンプルによって強度の異なる(ほとんど塩濃度の変化によるものであろう)、約200 nmでの強い吸収を示した。
【0399】
ジアセチレン脂質(すなわち、ホスホルアミダイト)を自動DNA合成に使用できるか否かを調べるため、室温にてPDAおよびIをアセトニトリル中に溶解し、5分後にTLCを行うことにより、アセトニトリル中のヨウ素に対するPDAの安定性について試験した。Iを自動DNA合成において酸化剤として用いて、三価のホスホニウムエステルをヌクレオ塩基カップリング工程後に五価のリン酸エステルに酸化した(図33)。TLCは、PDAが容易にIと反応して(付加)、UV照射の際に重合しない、より極性の強い生成物を形成したことを示した。このことは、ジアセチレンをDNA合成装置に直接用いることはできないことを示唆している。
【0400】
1実施形態において、オリゴ2をDA13脂質とコンジュゲートさせた。CHCl/EtOH(95:5)中の2 mM DA13溶液(2.5 mL, 5 μmol)を、蒸発して乾燥させ、1 mlのCHClおよび1μlのピリジン中に再溶解した。この溶液に、5.2 mg(25μmol)のDCCを加え、混合液を、脱トリチル化され、完全に保護されたオリゴ2を担持するメンブランフィルター(MemSyn Nucleic Acid Synthesis Device, PerSeptive Biosystems)中に注入した。不溶性の白色沈殿物(おそらくほとんどはピロリン酸)が形成されるまで、反応物を一晩放置した。液体を除去し、メンブランをCHCl、MeOHおよびHOで数回洗浄した。ODNを、標準的な処理(30%の水性NH、55℃、6時間)により固相支持体から切断/脱保護を行い、最終的に200μlのHOに再懸濁して203.1 pmol μl (642.6μg ml−1)の濃度の未精製オリゴ2コンジュゲートを得た。
【0401】
本発明の別の実施形態において、オリゴ1をNHS−PDAとコンジュゲートさせた。CHCl(40 mg ml−1)中のNHS−PDA(6μl、0.24 mg、508 nmol)溶液を、乾燥して90μlのDMSOに再溶解した。次いで、70μlのオリゴ1(0.26μmol ml−1)および10μlのNaCO/NaHCOバッファーpH 9(1 M)を該溶液に加え、NHS−PDAを沈殿させた。反応混合物を室温にて一晩保持し、次いで約4℃にて2週間保存した。この期間の後、混合物を1000μlのHOで希釈し、500μlのCHCl(各回)で5回抽出した。水相を急速減圧乾燥し、100μlのHOに再溶解して、未精製W001(オリゴ1コンジュゲート)画分(150.5 pmol μl−1、1304μg ml−1 ODN + NHS)を得た。バッファー溶液は、NaCO(1 M)とNaHCO(1 M)の水性溶液を1:8の比で混合することにより調製したものである。
【0402】
別の実験で、バチルス・グロビジイ(Bacillus globigii)のゲノムUCotD5’由来の27マーおよびその相補配列UCotD3’(アミノリンカーを介してPDA−脂質コンジュゲートで示されている)を、図34に示したように用いた。DNA合成装置でのアミノ修飾および次の脂質コンジュゲーションを図49に示した。反応パラメータ(すなわち、ODNの予備水和、NHS−PDAの溶媒としてDMSO/アセトン)の改変により、ODN−脂質の収率が増加した。
【0403】
各配列から、未修飾バッチ(UNahHsn)、5’アミノ修飾バッチ(図49の5’アミノ修飾用C6−TFAを用いる、UNahHsnam)、およびビス−アミノ修飾バッチ(両方の末端の1次アミノ基、UNahHsnam2x)を合成した。ビス−アミノ修飾ODNについては、アミノ官能化固相支持体を合成に用いて、図50に示した二官能基性ODNを得た。
【0404】
別の実験で、NHS−PDAをアミノ修飾ODNとコンジュゲートさせた。200μlのHO中のアミノ修飾ODN(40〜50 nmol)を、完全に乾燥するまで急速減圧乾燥し、次いで、5μlのHOで約30分間、再水和し、200μlのDMSOに溶解した(混合時間約10分間)。この溶液に、20μlの1 M Na/NaHCOバッファー、pH 9および40 ml DMSO/アセトン(1:1 v/v)中に溶解した0.7 mg NHS−PDAを40μl加えた。約24時間後、400μlのHOを加え、それぞれ400μlのCHClで5回抽出した。水相を急速減圧乾燥し、固体を200μlのHOに再溶解した。n−ブタノール(300μl)を約30μlのODN溶液に加えることにより、n−ブタノール沈降を行った。溶液をよく振盪し、14000 rpmで10分間遠心分離した。有機相をペレットから注意深くデカンテーションして除き、300μlのエタノール(100%)を加え、14000 rpmで5分間遠心分離した。エタノールをデカンテーションして除いた後、ペレットを約1分間急速減圧乾燥した。
【0405】
さらに、[N−(6−アミノヘキシル)−p−アジド安息香酸アミド]を合成した。N−スクシンイミジル−4−アジド安息香酸(250 mg、0.95 mmol、ABA−NHS)を2 mlのCHClに懸濁し(水浴冷却)、2 mlのCHCl中に溶解した550 mg(4.8 mmol)のヘキサメチレンジアミンの溶液を加えたところ、ただちに白色の沈殿を形成した。これに4 mlのCHClを加え、30分間攪拌した。次いで、約5 mlのHOを加えたところ、その上面に安定な乳濁液を形成した。有機相を水で数回抽出し、境界面の白色固体から分離し、乾燥した。この化合物は、−18℃で数週間後には固体形態に分解するが、エタノール性溶液(1 mM)中では安定である。
【0406】
保護基および反応副生成物からのDNAを精製するため、エタノール沈降を行った。配列2を400μlのHOに再溶解し、その後140μlの水性NHAcO(7.5 M, pH 5.2)および1080μlのEtOHを加えた。該溶液を−20℃にて一晩保存し、次の日に、5℃にて30分間、14000 r min−1で遠心分離した。しかし、沈殿物は得られなかった。さらに140μlのNHAcOを加えても、沈殿物は得られなかった。
【0407】
該溶液を再び(急速減圧乾燥により)濃縮して400μlとしたところ、DNA濃度は430 pmolμl−1/1314μg ml−1であることが判明した。塩および他の副生成物(例えば、過剰のPDA)を除去するため、配列2溶液を1000 r min−1で1分間遠心することにより1 mlのSephadex G−25を通して濾過し、221 pmolμl−1/673μg ml−1の濃度の配列2スピンc.s.p.B画分を得た。別の200μlのTEを該カラムに通したところ、72 pmolμl−1/219μg ml−1の濃度の配列2スピンc.s.p.B(TE)第2画分を得た。Sephadex G−25カラム自身は、1 mlの注射筒の小さい開口部を疎水化ガラスウールで塞ぎ、Sephadex G−25のTE懸濁液(1 gのG−25あたり5 ml、TE:10 mM Tris/HCl + 1 mM EDTA pH8)をカラムに充填することにより、使用の直前に調製したものである。注射筒に充填と、30秒間、1000 r min−1の遠心を繰り返して、合計1 mlのG−25を注射筒に詰めた。次いで、カラムを2分間、1000 r min−1で遠心して乾燥した。
【0408】
本発明の1実施形態において、PDA(7.4 mg、20μmol)を1 mlのCHClに溶解し、0.22μmのテフロンメンブランで濾過し、重合した材料を除去した。濾過したPDAに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、4.1 mg、20μmol)を加えた。脱トリチル化された配列1を有する0.2μmのカラムを2 mlのCHClで洗浄した後、PDA反応混合物を、カラムの両端に2つの注射筒を接続し、混合物を数回、前後に押すことにより、配列1を含有するカラム中に注入した。室温にて一晩、反応を進行させた。次の日、反応混合物を除去し、カラムを2 mL分のCHClで2回洗浄した後、2 mL分のEtOHで洗浄した。カラムからDNAを切断するため、1 mlの濃NH溶液(30%)を注入し、1.5時間かけて数回前後に押した。漏れにより、15分の反応時間の後に0.5 mlのNH溶液が失われた。1.5時間後、残った溶液をテフロンコートスクリューキャップ付きのバイアルに移し、密封して55℃にて6時間加熱した。次いで、該溶液をエッペンドルフチューブに移し、急速減圧乾燥遠心により濃縮して乾燥した。得られた固体を200μlのHOに溶解し、以下の容量に分割した。すなわち、i)50μlの配列1−PDA未精製物(433 pmolμl−1/1368μg ml−1)、およびii)150μlの配列1−PDA未精製物に50μlのTEをさらに加え、Sephadex G−25スピンカラムにより脱塩したもの(配列1−PDA s.c.、213 pmolμl−1/672μg ml−1)、である。別の200μlのTEをスピンカラムに通して流し、残りのDNAを洗い出した(配列1−PDA s.c(TE)、52 pmolμl−1/163μg ml−1)。
【0409】
ハイブリダイゼーションの一般的な方法としては、2つの相補的なDNA鎖(すなわち、配列−PDAおよび配列2)を100μlのHO中で各々1μgずつ混合し、沸騰した水中で約3分間加熱し、ゆっくりと冷却する。例えば、ある実験では、1μlの配列1−PDA未精製物(1368μg ml−1)と2μlの配列2スピンc.s.p.B(673μg ml−1)とを134μlのHO中で混合し、最終濃度を10 ngμl−1とした(HybA)。別の実験では、1.5μlの配列1−PDA s.c.(672μg ml−1)と1.5μlの配列2スピンc.s.p.B(673μg ml−1)とを97μlのHO中で混合し、最終濃度を10 ngμl−1とした(HybB)。水浴槽を電子レンジ中で加熱して沸騰させた。次いで、サンプルを3分間浸してから取り出し、室温にて20分間、作業台上で冷却させた後、−30℃にて冷凍庫に保存した。DNAハイブリダイゼーションの後、PDA−DNAコンジュゲートをさらなる特徴付けのためにゲル上で泳動した。
【0410】
実施例 12
核酸リガンドハイブリダイゼーションを用いる HIV−1 の比色検出
以下の実施例は、HIV−1に関連する核酸を含有することが疑われるサンプル中の標的核酸分子を検出するための、本発明の材料および方法の使用を例示するものである。具体的には、本実施例は、本発明の方法を用いて臨床サンプル中のHIV−1の存在を検出するための、本発明の核酸に結合した生体高分子材料の使用を例示するものである。以下に説明する方法は、Respessの米国特許第5,599,662号(参照により本明細書に組み込むものとする)に記載された逆ドットブロット法の改変型であり、HIV−1を検出するのに用いられる。
【0411】
本実施例の核酸に結合した生体高分子材料を、実施例11に従って調製する(ただし、異なる核酸リガンド配列(プローブ)を用いる)。Respessが記載したように、2つの異なる35マーのプローブを構築する(RespessはRAR 1034およびRAR 1037と称している)。これらの配列は、実施例11に記載された標準的なホスホルアミダイト経路により合成する。これらの配列を本発明の生体高分子材料に共有結合させるために(すなわち、これらの配列は本発明の核酸リガンドとして機能する)、これらの35マーをアミノ官能化し、実施例11に記載されたようにNHS−PDAと反応させる。この生体高分子材料を以下に記載のようにHIV−1の検出に用いる。
【0412】
血液サンプルを採取し、Boyum(Boyum, Scan. J. Clin. Lab. Invest., 21 (Suppl. 97):77[1968]、参照により本明細書に組み込むものとする)が記載した標準的なFicoll−Hypaque密度勾配法により末梢血の単球を単離することによって、HIV−1に感染していることが疑われる被験体から臨床サンプルを取得する。別の方法としては、Casarealeら(Casarealeら、PCR Meth. Appln., 2:149−153[1992]、参照により本明細書に組み込むものとする)により記載されたように、直接的に赤血球を溶解することによる血液サンプルからの白血球の単離と、DNA抽出が含まれる。
【0413】
次の工程には、該臨床サンプル中に存在するかもしれない標的HIV−1 DNAの増幅が含まれる。これは、標準的なPCR法により2つの33マーのプライマー(RespessはRAR 1032およびRAR 1033と称している)を用いて行う。しかし、Respessのものとは異なり、本実施例では、増幅したDNAを検出するためにプライマーをビオチン化する必要はない。
【0414】
次いで、増幅された標的DNAの検出を、上記の核酸の結合した生体高分子材料を用いて行う。臨床サンプルを、約30分間、40℃にて各ウェルの表面に固定した生体高分子材料を含有する8−マイクロウェルプレートに加える(ハイブリダイゼーションを起こさせる)。HIV−1 DNAの存在は、生体高分子材料の視覚的な色調変化により示される。本発明の生体高分子材料における検出可能な色調変化を引き起こすには、HIV−1 DNAの存在のみで十分であるので、洗浄工程は必要ない。これは、アビジン−HRPコンジュゲートを添加してマイクロウェルを展開する前に洗浄工程を必要とするRespessのものとは対照的である(本発明では別のステップは必要ではない)。
【0415】
上記実施例から明らかであるとおり、本発明の比色材料および方法は、サンプル中のDNAの存在を検出するための多くの利点を有する。特に、本方法により、標的DNAを標識する必要なくして増幅された標的DNAを検出することが可能となる。本方法には、標的DNAの存在を検出するための洗浄工程も、展開溶液(例えば、アビジン−HRP)の添加も必要でない。
【0416】
実施例 13
絨毛ゴナドトロピンホルモンの検出
本実施例は、家庭用妊娠試験に適用されるような本発明の方法および材料の有用性を例示するものである。特に、本実施例は、妊娠初期の診断のための尿におけるヒト絨毛ゴナドトロピンの検出のための、本発明の核酸に結合した生体高分子材料の使用を例示するものである。
【0417】
ヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)は、胎盤で合成され、受精卵の絨毛組織への着床後速やかに血液および尿中に放出される糖タンパク質ホルモンである。hCGの検出は、家庭用妊娠試験において妊娠指示薬として広く用いられている(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,145,789号を参照されたい)。
【0418】
本実施例の核酸の結合した生体高分子材料を、実施例11に従って調製する(ただし、異なる核酸リガンドを用いる)。本実施例の核酸リガンドは、家庭用妊娠試験において有用であるためには、hCGに対する親和性を有する必要がある。かかる核酸リガンドを同定するための1つの方法は、上記のSELEX法である。基本的SELEX法は、米国特許第5,475,096号、5,270,163号、および5,475,096号、ならびにPCT公開WO 97/38134号、WO 98/33941号およびWO 99/07724号に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み入れられるものとする。SELEX法により、所望の標的となるアナライトまたは分子に対して特異的に結合する特性を有する特有の配列を用いた核酸分子の同定が可能になる。hCGに特異的に結合する核酸リガンドを見出すために、Droletら(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,874,218号)はこの方法を用いた。DroletらがH−42 RNAと呼ぶこの核酸配列は、実施例11に記載された標準的なホスホルアミダイト経路により合成するか、またはSELEX法を用いて単離することができる。このhCG特異的な核酸リガンドを、アミノ官能化し、実施例11に記載されたNHS−PDAと反応させ、これらの配列を本発明の生体高分子材料に共有結合させる(すなわち、これらの配列は本発明の核酸リガンドとして機能する)。この生体高分子材料を用いて、下記のような家庭用妊娠試験のためにhCGを検出する。
【0419】
次いで、該生体高分子材料を、ナイロン濾紙などの固相支持体に固定し、家庭用妊娠試験デバイスを構築する。かかるデバイスの例は、Cortiらの米国特許第5,145,789号に記載されている(ただし、上記のようにナイロン濾紙を作製する)。本発明のデバイスは、基本的にはCortiらと同じ方法で使用されるが、本発明の生体高分子材料は、hCGを含有する尿または血液の存在下で、ある明確な色を別の色に変化させる。種々の利点(例えば、読み取りの容易さ)を提供する本発明の特徴は、Cortiらのデバイスには欠けている。hCGの存在は、本発明の生体高分子材料に結合した核酸リガンドへのhCGの結合により検出される。この結合は、生体高分子材料における色の変化を引き起こす。従って、本発明は、医療の場および/または家庭用試験にとって好適な、容易に読み取ったり分析したりできる使い易いデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
生体高分子フィルムの略図を示す。Yは中心対称の多層フィルムであり、一方、フィルムXとZは非中心対称多層である。
【図2】
生体高分子リポソームの略図を示す。パートAは切断面2次元図であり、パートBはリポソームの半分の3次元図である。
【図3】
同じアナライトに暴露された同じ生体高分子材料から構成されている生体高分子1)リポソームと2)フィルムを示す。
【図4】
PDAモノマーから調製された未重合リポソームの大きな主要相遷移を描写している加熱曲線を示す。
【図5】
圧縮されたフィルムが垂直の板に移されつつある場合のラングミュア−ブロジェット装置の略図を示す。
【図6】
室温にのみ冷却されたリポソームの顕微鏡写真を示す。
【図7】
4℃に冷却しながら調製されたリポソームの顕微鏡写真を示す。
【図8】
5, 7−ペンタコサジイン 酸の化学構造を示す。
【図9】
脂質モノマーにカップリングする分子の遊離アミノ基を修飾するための合成反応を示す。
【図10】
アミノ酸から誘導したジアセチレンモノマーから成る生体高分子材料の性質を示す。
【図11】
シアル酸から誘導した10, 12−ペンタコサジイン 酸(化合物1)と10, 12−ペンタコサジイン 酸(化合物2)の化学構造を示す。
【図12】
重合前(上)と重合後(下)のジアセチレン脂質マトリックス中の基質となる脂質(すなわち、DMPC)を示す。
【図13】
図12のリポソームのホスホリパーゼAへの暴露前(実線)と暴露後(破線)の可視吸収スペクトルを示す。
【図14】
様々な濃度のDMPCを含む図12のリポソームのホスホリパーゼAに応答した比色応答変化を示す。
【図15】
1, 2−ビス−(S−デカノイル)−1,2−ジチオ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DTPC)を含むリポソームの、PLAと様々な長さの時間にわたり暴露した後の412nmでの吸光度を示す。
【図16】
PL A添加前 (A) と酵素反応後 (B) のDMPC/PCA小胞の31P NMR スペクトルを示す。
【図17】
PL A存在下(●)と阻害剤とPL A存在下(■と◆)でのDMPC含有リポソームの比色応答を示す。
【図18】
ゾル−ゲルマトリックス中でのポリジアセチレンリポソームの可視吸収スペクトルを示す。
【図19】
リポソームを55℃で加熱した後の図18における材料の可視吸収スペクトルを示す。
【図20】
ジアセチレンフィルムの光学的顕微鏡写真を示す。
【図21】
シアル酸から誘導したPDAとガングリオシドGMを有するまたは有しないポリジアセチレン単分子層の性質を示す。
【図22】
CdClのサブフェーズ(subphase)濃度の関数としての5% GM/5%SA−PDA/90% PDAの等温線を示す。
【図23】
pH 4.5、5.8および9.2での5% GM/5%SA−PDA/90% PDAの等温線を示す。
【図24】
100% PDA、5%SA−PDA/95% PDAおよび5% GM/5%SA−PDA/90% PDAの等温線への温度効果を示す。
【図25】
「青色相」5% GMおよび95% 5, 7−ドコサジイン酸リポソームの可視吸収スペクトルを示す。
【図26】
コレラ毒素暴露後の図25のリポソームの可視吸収スペクトルを示す。
【図27】
インフルエンザウイルスへの暴露前(実線)と暴露後(破線)のシアル酸含有フィルムの可視吸収スペクトルを示す。
【図28】
様々な濃度のコレラ毒素に反応したガングリオシドGM1含有リポソームの色度遷移を示す。
【図29】
5% GMリガンドと95% 5,7−DCDAを含有する重合体リポソームの可視吸収スペクトルを示す。
【図30】
大腸菌毒素への暴露後の図29の材料の可視吸収スペクトルを示す。
【図31】
1−オクタノール水溶液への暴露前(線 a)と暴露後(線b)のPCAフィルムの吸収スペクトルを示す。
【図32】
PDA材料の様々なVOCsに対する比色応答を指す棒グラフ(A)およびVOCsの濃度を示す表(B)である。
【図33】
1−ブタノールへの生体高分子材料の比色応答を1−ブタノールの濃度に対して反応とを比較したグラフを示す。
【図34】
低分子有機化合物の検出のためのPDA誘導体を製造するための化合物群と合成概略を示す。
【図35】
グルコース添加後のインキュベーション時間の関数として(A)バックグラウンド、(B)t=0.02分、(C)t=30分および(D)t=60分でのヘキソキナーゼ改変PDA単分子層のUV−Visスペクトルを示す。
【図36】
生体高分子材料を含有するヘキソキナーゼの多種類の糖類に対する比色応答を示す。
【図37】
検出アレイにおいて使用するためのPDA誘導体を示す。
【図38】
図37の化合物2.10の有機合成を示す。
【図39】
生体高分子アセンブリーのいくつかの具体例を示す。
【図40】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図41】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図42】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図43】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図44】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図45】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図46】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図47】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図48】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図49】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。
【図50】
核酸結合生体高分子材料の生成と使用の種々の実施形態を示す。それぞれは下記により詳細に記述される。

Claims (48)

  1. 多数の重合した自己集合性モノマーおよび1以上の核酸リガンドを含む生体高分子材料からなる組成物であって、該生体高分子材料がアナライトの存在下で変色することを特徴とする上記組成物。
  2. 1以上の核酸リガンドがアナライトに対する親和性を有する、請求項1記載の生体高分子材料。
  3. 1以上の核酸リガンドが一本鎖核酸配列である、請求項1記載の生体高分子材料。
  4. 1以上の核酸リガンドが重合した自己集合性モノマーに1以上の共有結合を介して結合している、請求項1記載の生体高分子材料。
  5. 1以上の共有結合がアミン結合、チオール結合、およびアルデヒド結合からなる群より選択される、請求項4記載の生体高分子材料。
  6. 核酸リガンドが核酸分子、酵素、病原体、薬物、受容体リガンド、抗原、イオン、タンパク質、ホルモン、血液成分、抗体、およびレクチンからなる群より選択されるアナライトに対して親和性を有する、請求項2記載の生体高分子材料。
  7. 核酸分子がリボソームRNA、トランスファーRNA、メッセンジャーRNA、イントロンRNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、ヒト病原体に特徴的な核酸配列、非ヒト病原体に特徴的な核酸配列、および遺伝的異常に特徴的な核酸配列より選択される、請求項6記載の生体高分子材料。
  8. 酵素がポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、リガーゼ、テロメラーゼ、および転写因子より選択される、請求項6記載の生体高分子材料。
  9. 病原体がウイルス、細菌、寄生体、および真菌より選択される、請求項6記載の生体高分子材料。
  10. 1以上のドーパント物質をさらに含む、請求項1記載の生体高分子材料。
  11. ドーパント物質が界面活性剤、ポリソルベート、オクトキシノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、両性イオン洗浄剤、デシルグルコシド、デオキシコール酸塩、ジアセチレン誘導体、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルメタノール、カルジオリピン、セラミド、コレステロール、ステロイド、セレブロシド、リゾホスファチジルコリン、D−エリスロシンゴシン、スフィンゴミエリン、ドデシルホスホコリン、およびN−ビオチニルホスファチジルエタノールアミンからなる群より選択される、請求項10記載の生体高分子材料。
  12. ジアセチレン誘導体がシアル酸由来のジアセチレン、ラクトース由来のジアセチレン、およびアミノ酸由来のジアセチレンからなる群より選択される、請求項11記載の生体高分子材料。
  13. 1以上の非核酸リガンドをさらに含む、請求項1記載の生体高分子材料。
  14. 1以上の非核酸リガンドが炭水化物、タンパク質、薬物、発色団、抗原、キレート化化合物、分子認識複合体、イオン基、重合性基、リンカー基、電子供与体、電子受容基、疎水基、親水基、受容体結合基、三糖類、四糖類、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGT1b、シアル酸、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項13記載の生体高分子材料。
  15. 生体高分子材料が生体高分子フィルムを構成している、請求項1記載の生体高分子材料。
  16. 生体高分子材料が生体高分子リポソームを構成している、請求項1記載の生体高分子材料。
  17. 生体高分子材料が細管、編組アセンブリー、層状アセンブリー、螺旋アセンブリー、繊維様アセンブリー、溶媒和ロッド、および溶媒和コイルからなる群より選択される、請求項1記載の生体高分子材料。
  18. 自己集合性モノマーがジアセチレンモノマーからなる、請求項1記載の生体高分子材料。
  19. ジアセチレンモノマーが5,7−ドコサジイン酸、5,7−ペンタコサジイン酸、10,12−ペンタコサジイン酸、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項18記載の生体高分子材料。
  20. 自己集合性モノマーがアセチレン、アルケン、チオフェン、ポリチオフェン、イミド、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル、無水リンゴ酸、ウレタン、アリルアミン、シロキサン、アニリン、ピロール、ビニルピリジニウム、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の生体高分子材料。
  21. 自己集合性モノマーがカルボン酸、ヒドロキシル基、アミン基、アミノ酸誘導体、および疎水基からなる群より選択されるヘッド基を含む、請求項1記載の生体高分子材料。
  22. 支持体をさらに含み、生体高分子材料が支持体に固定されている、請求項1記載の生体高分子材料。
  23. 支持体がポリスチレン、ポリエチレン、テフロン、雲母、セファデックス、セファロース、ポリアクリロニトリル、フィルター、ガラス、金、シリコンチップ、およびシリカからなる群より選択される、請求項22記載の生体高分子材料。
  24. 請求項1記載の生体高分子材料がデバイスに固定されていることを特徴とする、該生体高分子材料を1以上含んでなるデバイス。
  25. アナライトの存在を検出する方法であって、
    a) i) 多数の重合した脂質モノマーおよび1以上の核酸リガンドを含む生体
    高分子材料であって、アナライトの存在下で変色する該生体高分子材料、および
    ii) アナライトを含むと予想されるサンプル、
    を用意し、
    b) 該生体高分子材料に該サンプルを接触させ、
    c) 該生体高分子材料の色の変化を検出する、
    ことを含む上記方法。
  26. 1以上の核酸リガンドがアナライトに対する親和性を有する、請求項25記載の方法。
  27. 1以上の核酸リガンドが一本鎖核酸配列であり、アナライトも一本鎖核酸配列であって、該核酸リガンドとハイブリダイズする、請求項25記載の方法。
  28. 1以上の核酸リガンドが重合した脂質モノマーに1以上の共有結合を介して結合している、請求項25記載の方法。
  29. 1以上の共有結合がアミン結合、チオール結合、およびアルデヒド結合からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
  30. 核酸リガンドが核酸分子、酵素、病原体、薬物、受容体リガンド、抗原、イオン、タンパク質、ホルモン、血液成分、抗体、およびレクチンからなる群より選択されるアナライトに対して親和性を有する、請求項26記載の方法。
  31. 核酸分子がリボソームRNA、トランスファーRNA、メッセンジャーRNA、イントロンRNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、ヒト病原体に特徴的な核酸配列、非ヒト病原体に特徴的な核酸配列、および遺伝的異常に特徴的な核酸配列より選択される、請求項30記載の方法。
  32. 酵素がポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、リガーゼ、テロメラーゼ、および転写因子より選択される、請求項30記載の方法。
  33. 病原体がウイルス、細菌、寄生体、および真菌より選択される、請求項30記載の方法。
  34. ウイルスがインフルエンザ、風疹、水痘−帯状疱疹、A型肝炎、B型肝炎、単純ヘルペス、ポリオ、天然痘、ヒト免疫不全ウイルス、ワクシニア、狂犬病、エプスタイン−バー、レトロウイルス、およびリノウイルスより選択される、請求項33記載の方法。
  35. 生体高分子材料が1以上のドーパント物質をさらに含む、請求項25記載の方法。
  36. ドーパント物質が界面活性剤、ポリソルベート、オクトキシノール、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、両性イオン洗浄剤、デシルグルコシド、デオキシコール酸塩、ジアセチレン誘導体、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルメタノール、カルジオリピン、セラミド、コレステロール、ステロイド、セレブロシド、リゾホスファチジルコリン、D−エリスロシンゴシン、スフィンゴミエリン、ドデシルホスホコリン、およびN−ビオチニルホスファチジルエタノールアミンからなる群より選択される、請求項35記載の方法。
  37. ドーパント物質がシアル酸由来のジアセチレン、ラクトース由来のジアセチレン、およびアミノ酸由来のジアセチレンからなる群より選択されるジアセチレン誘導体である、請求項36記載の方法。
  38. 生体高分子材料が1以上の非核酸リガンドをさらに含む、請求項25記載の方法。
  39. 1以上の非核酸リガンドが炭水化物、タンパク質、薬物、発色団、抗原、キレート化化合物、分子認識複合体、イオン基、重合性基、リンカー基、電子供与体、電子受容基、疎水基、親水基、受容体結合基、三糖類、四糖類、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGT1b、シアル酸、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項38記載の方法。
  40. 生体高分子材料が生体高分子フィルムを構成している、請求項25記載の方法。
  41. 生体高分子材料が生体高分子リポソームを構成している、請求項25記載の方法。
  42. 生体高分子材料が細管、編組アセンブリー、層状アセンブリー、螺旋アセンブリー、繊維様アセンブリー、溶媒和ロッド、および溶媒和コイルからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
  43. 脂質モノマーがジアセチレンモノマーからなる、請求項25記載の方法。
  44. ジアセチレンモノマーが5,7−ドコサジイン酸、5,7−ペンタコサジイン酸、10,12−ペンタコサジイン酸、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
  45. 脂質モノマーがアセチレン、アルケン、チオフェン、ポリチオフェン、イミド、アクリルアミド、メタクリレート、ビニルエーテル、無水リンゴ酸、ウレタン、アリルアミン、シロキサン、アニリン、ピロール、ビニルピリジニウム、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
  46. 脂質モノマーがカルボン酸、ヒドロキシル基、アミン基、アミノ酸誘導体、および疎水基からなる群より選択されるヘッド基を含む、請求項25記載の方法。
  47. 支持体をさらに含み、生体高分子材料が支持体に固定されている、請求項25記載の方法。
  48. 支持体がポリスチレン、ポリエチレン、テフロン、雲母、セファデックス、セファロース、ポリアクリロニトリル、フィルター、ガラス、金、シリコンチップ、およびシリカからなる群より選択される、請求項47記載の方法。
JP2000556063A 1998-06-22 1999-06-22 核酸が結合した比色アナライト検出器 Withdrawn JP2004500006A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US9026698P 1998-06-22 1998-06-22
US09/337,973 US6306598B1 (en) 1992-11-13 1999-06-21 Nucleic acid-coupled colorimetric analyte detectors
PCT/US1999/014029 WO1999067423A1 (en) 1998-06-22 1999-06-22 Nucleic acid-coupled colorimetric analyte detectors

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004500006A true JP2004500006A (ja) 2004-01-08

Family

ID=26782087

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000556063A Withdrawn JP2004500006A (ja) 1998-06-22 1999-06-22 核酸が結合した比色アナライト検出器

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2004500006A (ja)
CA (1) CA2330937A1 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005525554A (ja) * 2002-05-13 2005-08-25 オレ インガナス、 バイオセンサ用途のための受容体(例えば、ポリヌクレオチド、抗体など)を有する高分子電解質複合体(例えば、両性イオンポリチオフェン)
JP2007155459A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 標的検出ナノセンサ
JP2007161717A (ja) * 2005-12-16 2007-06-28 Sungkyunkwan Univ Foundation For Corporate Collaboration ポリジアセチレン超分子体とリガンド検出方法。
JP2009532167A (ja) * 2006-04-03 2009-09-10 ギブン イメージング リミテッド 生体内分析のための装置、システムおよび方法
JP2010528311A (ja) * 2007-05-29 2010-08-19 ファーマ・ダイアグノスティックス・ナムローゼ・フェンノートシャップ 新規化学物質および薬物候補のpk/adme−tox特性決定のための試薬および方法
US8663093B2 (en) 2006-04-03 2014-03-04 Given Imaging Ltd. Device, system and method for in-vivo analysis
JP2018531245A (ja) * 2015-10-02 2018-10-25 ロシュ イノベーション センター コペンハーゲン エーエス オリゴヌクレオチドコンジュゲーション方法

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005525554A (ja) * 2002-05-13 2005-08-25 オレ インガナス、 バイオセンサ用途のための受容体(例えば、ポリヌクレオチド、抗体など)を有する高分子電解質複合体(例えば、両性イオンポリチオフェン)
JP2007155459A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 標的検出ナノセンサ
JP2007161717A (ja) * 2005-12-16 2007-06-28 Sungkyunkwan Univ Foundation For Corporate Collaboration ポリジアセチレン超分子体とリガンド検出方法。
JP2009532167A (ja) * 2006-04-03 2009-09-10 ギブン イメージング リミテッド 生体内分析のための装置、システムおよび方法
US8663093B2 (en) 2006-04-03 2014-03-04 Given Imaging Ltd. Device, system and method for in-vivo analysis
JP2010528311A (ja) * 2007-05-29 2010-08-19 ファーマ・ダイアグノスティックス・ナムローゼ・フェンノートシャップ 新規化学物質および薬物候補のpk/adme−tox特性決定のための試薬および方法
JP2018531245A (ja) * 2015-10-02 2018-10-25 ロシュ イノベーション センター コペンハーゲン エーエス オリゴヌクレオチドコンジュゲーション方法
US11555050B2 (en) 2015-10-02 2023-01-17 Roche Innovation Center Copenhagen A/S Oligonucleotide conjugation process

Also Published As

Publication number Publication date
CA2330937A1 (en) 1999-12-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6306598B1 (en) Nucleic acid-coupled colorimetric analyte detectors
AU742885B2 (en) Direct colorimetric detection of biocatalysts
US6022748A (en) Sol-gel matrices for direct colorimetric detection of analytes
Reppy et al. Biosensing with polydiacetylene materials: structures, optical properties and applications
Watterson et al. Effects of oligonucleotide immobilization density on selectivity of quantitative transduction of hybridization of immobilized DNA
Tinland et al. Persistence length of single-stranded DNA
US20030129618A1 (en) Sensitive and rapid detection of pathogenic organisms and toxins using fluorescent polymeric lipids
Reviakine et al. Streptavidin 2D crystals on supported phospholipid bilayers: toward constructing anchored phospholipid bilayers
JPH11500223A (ja) 三次元比色分析集成体
JP2004500006A (ja) 核酸が結合した比色アナライト検出器
US8741577B2 (en) Surface immobilised multilayer structure of vesicles
EP1112377A1 (en) Nucleic acid-coupled colorimetric analyte detectors
Pfeiffer et al. Influence of nanotopography on phospholipid bilayer formation on silicon dioxide
WO1998036263A1 (en) Protein-coupled colorimetric analyte detectors
AU748644B2 (en) Nucleic acid-coupled colorimetric analyte detectors
AU2004227314B2 (en) Surface immobilised multilayer structure of vesicles
JP4925820B2 (ja) 表面に固定された小胞の多層構造
Mazur Bio-inspired Liposome-based Platforms for Biomedical Applications
Seo Strategies toward Highly Sensitive Polydiacetylene Supramolecules based Biosensors.
Matthews Single-Nanoparticle Microscopy of DNA-Incorporated Hydrogel Nanoparticles
Nicola et al. Tampering with microglia-mediated neuroinflammation by means of DNA nanostructures
JP2009244101A (ja) 被検物質の検出方法
Van Lengerich DNA-mediated fusion of lipid vesicles
Yeri Rapid DNA-based point-of-care diagnostics
Chung Developing novel lipid architectures as a platform for membrane biophysics

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060622

A072 Dismissal of procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073

Effective date: 20061024

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20061107