JP2004359797A - 内装用水性塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)pH7以下のカチオン性水分散性樹脂液を固形分換算で100重量部、(B)耐紫外線処理された植物性粉粒体を10〜500重量部を混合する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な内装用塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木や草等を原料とする植物性粉粒体は、天然の素材であり、また、独特の触感や、優れた吸放湿性能等を有することから、内装用材料としての利用が期待されている。
植物性粉粒体を含む塗料として、例えば、特許文献1では、合成樹脂塗料70〜80%と顔料10〜20%とコルクの粉末10%とを混和した塗料が開示されている。また、特許文献2では、水溶性高分子化合物と天然素材粉砕物とを加水混合してなる塗料が開示されている。
しかしながら、これら従来技術の塗料では、
・塗料貯蔵中に植物性粉粒体からアクが発生し、貯蔵安定性が低下しやすく、また、塗料の色相に悪影響を与える
・植物性粉粒体中に樹脂が染み込んでしまい、植物性粉粒体が有する触感、芳香性、吸放湿性等の性質が阻害される
・紫外線により変色してしまい、植物性粉粒体が有する自然な色合いが損なわれる
等の問題が発生するおそれがある。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−204059号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平10−158549号公報(特許請求の範囲)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような点に鑑みされたものであり、貯蔵安定性に優れ、さらには、触感、自然な色合い、芳香性、吸放湿性等の物性に優れた塗膜が形成可能な塗料を得ることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
これらの課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行い、特定の樹脂と植物性粉粒体とを組合わせることに想到し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.(A)pH7以下のカチオン性水分散性樹脂液、及び
(B)耐紫外線処理された植物性粉粒体、
を含有し、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分を10〜500重量部含有することを特徴とする内装用水性塗料組成物。
2.水性塗料組成物中の水の含有量が20〜90重量%であることを特徴とする1.に記載の内装用水性塗料組成物。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、(A)pH7以下のカチオン性水分散性樹脂液(以下「(A)成分」という)と、(B)耐紫外線処理された植物性粉粒体(以下「(B)成分」という)を含有するものである。
【0008】
本発明の(A)成分は結合剤として用いるものである。
(A)成分のpHは7以下、好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜4である。pHがこのような値であることにより、塗料貯蔵中における(B)成分からのアク発生を防止し貯蔵安定性を高めることができる。さらに、(B)成分が有する種々の性質、例えば触感、自然な色合い、質感、吸放湿性、柔軟性、吸音性等が阻害されるのを防止することができる。
【0009】
(A)成分としては、アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のカチオン性官能基を有する水分散性樹脂を使用することができる。具体的には、例えば、
(A−1)アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のカチオン性官能基を有するカチオン性モノマーを、その他の重合性モノマーと共に、乳化重合等の方法によって水中で重合したもの;
(A−2)アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のカチオン性官能基を有するカチオン性水溶性樹脂の存在下で、重合性モノマーを乳化重合等の方法によって水中で重合したもの;
(A−3)アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のカチオン性官能基を有するカチオン性界面活性剤の存在下で、重合性モノマーを乳化重合等の方法によって水中で重合したもの;
(A−4)アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のカチオン性官能基を有するカチオン性有機溶剤系樹脂を、有機酸、無機酸等で中和し水を加えて水中に分散させたもの;
(A−5)アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のカチオン性官能基を有するカチオン性界面活性剤を用いて、有機溶剤系樹脂を水中に分散させたもの;
等が挙げられる。このうち、(A−1)、(A−2)、(A−3)は、有機溶剤含有量の少ない水分散性樹脂を容易に製造することができる点で好適である。
【0010】
(A)成分を構成する重合性モノマーとしては、紫外線吸収性モノマーを使用することも可能である。このようなモノマーを使用することにより、(B)成分自体や、(B)成分に含まれるアク成分等に起因する変退色を効果的に抑制することができる。紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、シアノアクリレート系紫外線吸収性モノマーや、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマー等を挙げることができる。この他、ピペリジル基含有モノマー等のラジカル捕捉能を有するモノマー等を使用することもできる。
【0011】
(A)成分の最低造膜温度は5℃以下、さらには0℃以下であることが望ましい。このような最低造膜温度を有する(A)成分を採用することにより、造膜助剤の使用量を削減することが可能となる。
(A)成分の平均粒子径は特に限定されないが、通常10〜500nm、好ましくは20〜300nmである。
【0012】
本発明の(B)成分は、木や草等を粉砕して得られた植物性粉粒体に耐紫外線処理を施したものである。さらに、(B)成分は天然の素材であることから、環境適応形の素材として好ましいものである。
(B)成分の原料となる植物としては、例えば、マツ、スギ、ヒノキ、モミ、ケヤキ、ナラ、ラワン、ヒバ、キリ、ブナ、カシ、コルクガシ等の木本類、アシ、ラン、イグサ、イネ、ムギ、ケナフ、フキ、コウゾ等の草本類等が挙げられ、これらの樹皮、幹、枝、葉、根等が利用でき、この他、果物の皮や種子、海草、鋸屑、籾殻等を使用することもできる。
このような植物性粉粒体に耐紫外線処理を施す方法としては、公知の方法で行えばよいが、例えば、リン酸処理、または、紫外線吸収能を有する金属化合物で植物性粉粒体を処理する方法等が好ましい。耐紫外線処理を施すことにより、紫外線による変色を抑制することができ、植物性粉粒体の触感、自然な色合い、質感等を長期間維持することができる。
【0013】
リン酸処理としては、特に限定されないが、本発明では、リン酸カルシウム組成物を用いて処理することが好ましい。リン酸カルシウム組成物で植物性粉粒体内外表面に保護層を形成することにより、効果的に紫外線を遮蔽し変色を抑制することができる。また、リン酸カルシウム組成物は、着色力が小さく、植物性粉粒体に保護層を形成したとしても植物性粉粒体本来の自然な色合い、質感等を保つことができる。さらに、塩素やNOx等の有害物質の侵入を防ぐことができ、植物性粉粒体の耐黄変性を高めることもできる。
【0014】
リン酸カルシウム組成物は、組成式1で表される組成物であり、熱的・化学的に安定な組成物である。
(組成式1)
CaaXb(PO4)cYd・eH2O
(Xはp価の金属イオン(pは2または3)、Yはq価の陰イオン(qは1、2または3)、a、b、c、dは2a+p×b−3c−q×d=0を満足する実数(但しa、cは正の実数、b、dは0又は正の実数)、eは0以上の実数)
【0015】
Xは、2価または3価の金属イオンであり、例えば、Mg2+、Sr2+、Ba2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+等の2価の金属イオン、Al3+、Bi3+、Co3+、Mn3+、Fe3+等の3価の金属イオン等が挙げられる。
特に、XがAl3+、Bi3+、Co3+、Mn3+、Fe3+等の3価の金属イオンである場合、吸放湿性、耐黄変性により優れた効果を発揮するため望ましい。さらに、Al3+、Fe3+である場合、安価であり環境負荷が低いために特に望ましい。
Yは、1価、2価または3価の陰イオンであり、例えば、OH−、Cl−、NO3 −、CH3COOH−、SO4 2−、CO3 2−、PO4 3−等が挙げられる。
本発明では特に、XとしてAl3+、Fe3+等の3価の金属イオンを、YとしてOH−等の親水基を有するリン酸カルシウム組成物を使用することが好ましい。
a、b、c、dは、2a+p×b−3c−q×d=0を満足する実数(但しa、cは正の実数、b、dは0又は正の実数)であれば特に限定されないが、通常、a:b=10:0〜7:3、a:c=8:2〜5:5、c:d=10:0〜4:6であることが好ましい。
なお、a、b、c、dは、元素分析(EDS)等により求めることができる。
【0016】
また、リン酸カルシウム組成物は、単一のリン酸カルシウム組成物を使用することもできるし、2種以上のリン酸カルシウム組成物の混合物を適宜選択して使用することもできる。
リン酸カルシウム組成物の使用量は、植物性粉粒体の種類により適宜調整すればよいが、通常植物性粉粒体100重量部に対して、好ましくは0.1〜150.0重量部、さらに好ましくは1.0〜100.0重量部である。リン酸カルシウム組成物の使用量が0.1重量部未満の場合には、植物性粉粒体の太陽光による変色や耐黄変性を改善することが困難である。150.0重量部を超える場合は、コストに見合うだけの性能が得られない。
【0017】
紫外線吸収能を有する金属化合物で植物性粉粒体を処理する方法では、植物性粉粒体内外表面に紫外線吸収能を有する金属化合物の保護層を形成することにより、耐紫外線性に優れた植物性粉粒体を得ることができる。
本発明では、特に、減圧注入法により、紫外線吸収能を有する金属化合物を植物性粉粒体内外に保護層として形成することが好ましい。具体的には、減圧注入法により、紫外線吸収能を有する金属化合物の前駆体である金属イオン水溶液を植物性粉粒体に注入し、次いで、アルカリ処理及び/または酸化・還元処理等を施すことによって、紫外線吸収能を有する金属化合物を植物性粉粒体内外に保護層として形成するものである。このような方法では、耐紫外線性に優れるとともに、植物性粉粒体本来の自然な色合い、質感等を十分に保つことができる。
【0018】
紫外線吸収能を有する金属化合物としては、特に限定されず、銅、亜鉛、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト及びニッケル等から選ばれる1種又は2種以上の金属の無機塩、有機塩又は酸化物を適宜選択して使用することができる。
特に、環境負荷が小さく、安価であり、光安定性が高く、かつ太陽光の遮蔽能が高い、亜鉛、チタン、鉄等の化合物を用いることが望ましい。
亜鉛、チタン、鉄等の化合物としては、化学的に安定な酸化物の他、酸化物の酸素イオンを、OH−、CH3COO−、SO4 2−、Cl−、NO3 −、CO3 2−、PO4 3−等で、部分的に置換した化合物を用いることが望ましい。
紫外線吸収能を有する金属化合物の使用量としては、植物性粉粒体100重量部に対して0.1〜120重量部、好ましくは0.5〜100重量部である。0.1重量部より小さい場合は、紫外線吸収能が不十分となり、植物性粉粒体の光安定性が向上されない。また、120重量部より多い場合は、紫外線吸収能を有する金属化合物により植物性粉粒体が着色されて、植物性粉粒体本来の自然な色合い、質感等を保つことが困難となる。
【0019】
(B)成分の形状としては、例えば、球状、繊維状、板状、棒状、リン片状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(B)成分の大きさも特に限定されないが、球状粉粒体の場合は概ね0.01〜10mm(好ましくは0.01〜5mm)の粒径のものを使用することができる。このような(B)成分は、1種または2種以上で使用することができる。なお、本発明における(B)成分としては通常、無着色品を用いればよい。
【0020】
(B)成分には通常、多種多様な成分、例えば、各種糖類の他、タンニン、セサミン、パウロニン、ピノレジノール、ロイコアントシアニン、アクテオシド等の成分が含まれている。このような成分は塗料貯蔵中にアクとして溶出し、塗料の色相に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本発明では、上述の(A)成分を使用することにより、これら成分の溶出を防止することができる。従って、(B)成分が有する種々の性質をそのまま生かすことが可能となる。
【0021】
本発明では、(B)成分が有する触感、自然な色合い、質感、芳香性、吸放湿性、柔軟性、吸音性等の性質を損わない限り、(B)成分に前処理(漂白処理、難燃化処理、防虫処理、防腐処理、着色処理等)を施すことも可能である。ここで使用可能な処理剤としては、例えば、アルコキシシラン類、珪酸塩類、有機樹脂類、あるいはこれらの混合物等を含有するものが挙げられる。
【0022】
本発明組成物では、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分を10〜500重量部含有する。(B)成分が10重量部より少ない場合は、(B)成分による触感、自然な色合い、質感、吸放湿性等の効果が得られない。500重量部より多い場合は、形成塗膜の付着性が低下するおそれがある。
【0023】
本発明組成物においては、上述の成分に加えて、(C)着色材料(以下「(C)成分」という)を混合することにより、任意の色相に着色することが可能となる。(C)成分としては、例えば、(C−1)着色粉粒体、(C−2)無機顔料、(C−3)有機顔料等が使用可能である。
(C−1)着色粉粒体としては、例えば、着色合成樹脂粉粒体、着色木粉等が挙げられる。このうち、着色合成樹脂粉粒体としては、例えば、合成樹脂粒子中に顔料が均一に分散したもの、合成樹脂粒子の表面近傍に顔料が局在化したもの、合成樹脂粒子に染料を化学的に結合させたもの等が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、尿素−ホルムアルデヒド樹脂ビーズ、シリコーン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズ、フェノール樹脂ビーズ、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂ビーズ、ポリアクリロニトリルビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ナイロンビーズ等の着色物が使用可能である。着色木粉としては、顔料で木粉をコーティングしたもの等が挙げられる。
(C−2)無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、珪藻土、タルク、クレー、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、黄色酸化鉄等が挙げられる。
(C−3)有機顔料としては、例えば、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0024】
本発明では、(C)成分として、特に(C−1)着色粉粒体が好適である。このような(C−1)成分は、分散剤を使用しなくても塗料中に容易に分散することができるものである。そのため、分散剤による貯蔵安定性低下や各種塗膜物性の低下を防ぐことが可能となる。
【0025】
(C)成分の混合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し1〜500重量部、好ましくは2〜200重量部である。(C)成分が1重量部より少ない場合は、十分な着色効果を得ることができない。500重量部より多い場合は、(B)成分による触感、自然な色合い、質感等が損なわれるおそれがある。
【0026】
上述の成分の他、本発明組成物においては、多価金属の塩(例えば、多価金属の硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、珪酸塩等)や多価金属の酸化物を混合することもできる。このような成分を混合すれば、塗料貯蔵中における(B)成分からのアク発生をより確実に抑制することができる。多価金属の塩としては、例えば硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム等が挙げられる。多価金属の酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化チタン等が挙げられる。このうち、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム等のアルミニウム化合物が好ましく用いられる。この中でも、特に縮合リン酸アルミニウムが好適である。
【0027】
本発明組成物においては、上述の成分に加えて、繊維長0.01〜10mmの繊維を混合することもできる。このような成分を混合することにより、特に鏝塗りを行った際の作業性及び仕上り性を向上させることができる。
【0028】
本発明組成物においては、紫外線吸収剤を混合することもできる。このような紫外線吸収剤を混合することにより、変退色をより効果的に抑制することができる。紫外線吸収剤としては、実質的にバインダーの透明性を阻害しない範囲内で、その種類、混合量、混合方法等を設定することが望ましい。バインダーの透明性を阻害しない範囲内であれば、植物粉粒体特有の意匠性が十分に表出可能となる。
具体的に、紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2,2−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコ−ルとの反応生成物等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;
フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;
その他、トリアジン系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、アミノ安息香酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、微粒酸化チタン、微粒酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。このうち、常温で液状の紫外線吸収剤については、樹脂との相溶性が良好なものが好適である。
紫外線吸収剤を本発明組成物に混合する方法としては、直接混合する方法、造膜助剤等の溶剤に溶解させた後に混合する方法、界面活性剤によって乳化した後に混合する方法等が挙げられる。このうち、界面活性剤で乳化する場合には、その乳化物の粒子径を3μm以下(好ましくは2μm)以下とすることが望ましい。
紫外線吸収剤の混合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し通常1〜20重量部程度である。
【0029】
本発明組成物にはアルデヒド吸着剤を混合することもできる。アルデヒド吸着剤としては、例えば、アミン化合物、アミド化合物、イミド化合物、尿素化合物、ヒドラジド化合物、アゾール化合物、アジン化合物、層状リン酸化合物等が挙げられる。このような成分を混合することにより、ホルムアルデヒド等に起因する室内環境汚染を抑制することができる。また、使用する(B)成分の種類や、その処理履歴等によっては、(B)成分の構成成分であるリグニン、多糖類等からホルムアルデヒドが生成する場合があるが、アルデヒド吸着剤を混合すれば、このようなホルムアルデヒドの室内への放散を防止することも可能となる。
【0030】
上述の成分の他、本発明組成物においては、通常塗料に使用可能な添加剤、例えば、顔料、骨材、染料、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、界面活性剤、消泡剤、光安定剤、光触媒、架橋剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で混合することもできる。形成塗膜の防火性を高めるために、例えば、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、その他水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛等を混合することもできる。
【0031】
本発明の水性塗料組成物中における水の含有量は通常20〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。これにより、使用時に大量の水を加えなくても塗装することが可能となる。また、本発明ではこのような量の水を含んでいても良好な貯蔵安定性を確保することができる。
【0032】
本発明組成物全体のpHは通常7以下、好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜4である。本発明組成物のpHがこのような値であることにより、塗料の貯蔵安定性や、触感、自然な色合い、質感、芳香性、吸放湿性等の塗膜物性をより高めることが可能となる。
【0033】
本発明組成物は、主に建築物の内装用塗料として有用であり、内壁、天井等を構成する各種基材表面に対して適用することができる。具体的にその基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、石綿セメント板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや壁紙が貼り付けられたものでもよい。
本発明組成物の塗付方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、鏝等の塗装器具を用いて塗付することができる。
塗付時には、本発明組成物を水で希釈することもできる。希釈割合は、通常0〜100重量%、好ましくは0〜50重量%である。
塗付量は、特に限定されないが、通常0.3〜5kg/m2、好ましくは0.5〜4kg/m2である。
また、本発明塗料組成物は、シート状に成形することもできる。この場合、上述のような各種基材表面に積層することができる。得られたシートは、接着剤・接着シート等を用いて、公知の方法で内壁、天井等に貼りつければよい。
【0034】
本発明組成物を塗装した後、透明性を有する上塗塗料を塗付することもできる。上塗塗料としては、(P)シリコーンエマルション、及び(Q)前記(P)以外の合成樹脂エマルションを含有し、(P)成分と(Q)成分の固形分比率が95:5〜5:95である上塗塗料が好適である。このような上塗塗料を使用することにより、本発明組成物による塗膜の吸放湿性等の効果を阻害せずに、汚れ防止性を付与することができる。
上塗塗料の塗装においては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を用いることができる。上塗層の塗付量は、特に限定されないが、通常0.01〜0.5kg/m2、好ましくは0.05〜0.3kg/m2である。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0036】
(実施例1)
水性樹脂A200重量部に対し、耐紫外線処理したケナフ粉A200重量部と、ヒドロキシエチルセルロース3重量%水溶液500重量部と、水430重量部と、シリコーン系消泡剤5重量部とを混合・攪拌することにより塗料を製造した。この塗料における水の含有量は76重量%となった。なお、水性樹脂Aとしては、カチオン性アクリル樹脂エマルション(スチレン−メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体、pH3.0、最低造膜温度2℃、固形分50重量%)を使用した。
耐紫外線処理したケナフ粉A:ケナフ粉(京都繊維資材製、大きさ:10〜1000μm)100.0gを、リン酸水素2ナトリウム40.0gをイオン交換水1.0kgに溶かした溶液に懸濁し、よく攪拌した。次に、硝酸カルシウム4水和物60.0gと硝酸鉄9水和物8.0gをイオン交換水1.0kgに溶かした溶液を混合し、さらに攪拌を続け、濾過、洗浄した後、110℃で1時間乾燥し、耐紫外線処理したケナフ粉A(リン酸カルシウム組成物の組成式:Ca0.9Fe0.1(PO4)0.6(OH)0.3・eH2O(e≧0))を得た。
得られた塗料について以下の試験を行った。
【0037】
(貯蔵安定性試験)
製造した塗料を容器内に密閉し、20℃下にて168時間放置したときの外観変化を目視にて確認した。また、放置前及び放置後の粘度を回転粘度計で測定し、その粘度変化を確認した。
【0038】
(吸放湿性試験)
予めシーラーが塗装された150mm×70mmのアルミニウム板表面に、塗料を塗付量2kg/m2で鏝塗りし、温度20℃・湿度65%下で14日間乾燥させたものを試験体とした。なお、塗料としては、製造直後の塗料と、20℃下にて168時間放置した後の塗料を用いて、それぞれ試験体を作製した。
作製した試験体の重量WD0を測定した後、これを温度20℃・湿度90%下で24時間放置後、重量WW1を測定し、続いて、温度20℃・湿度45%下で24時間放置し、重量WD1を測定した。同様の操作をもう1回繰り返し、湿潤状態での重量WW2と乾燥状態での重量WD2とを測定した。
次に、図1に示すように横軸に時間、縦軸に重量をとり、吸放湿曲線を作成し、下式により吸放湿特性値を算出して、その平均値を求めた。
吸湿量W1(g)=WW1−WD0
放湿量W2(g)=WW1−WD1
吸湿量W3(g)=WW2−WD1
放湿量W4(g)=WW2−WD2
吸放湿特性値(g/m2)=(W1+W2+W3+W4)/{4×(試験体面積)}
【0039】
(耐紫外線性試験)
予めシーラーが塗装された150mm×70mmのアルミニウム板表面に対し、塗料を塗付量2kg/m2で鏝塗りし、温度20℃・湿度65%下で14日間乾燥させたものを試験体とした。なお、塗料としては製造直後の塗料を使用した。
試験体の初期色相(L* 1、a* 1、b* 1)を色彩色差計「CR−300」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定した後、紫外線ランプGL−15(紫外線出力15W)を30cmの距離から168時間照射した。次いで、紫外線照射後の試験体の色相(L* 2、a* 2、b* 2)を測定し、照射前後の色差(△E)を下記式に従って算出することにより耐紫外線性を評価した。なお、評価は、○:色差1未満、△:色差1以上2未満、×:色差2以上、とした。
【0040】
<式>△E={(L* 2−L* 1)2+(a* 2−a* 1)2+(b* 2−b* 1)2}0.5
【0041】
実施例1では、貯蔵安定性試験において外観や粘度の異常は認められなかった。粘度変化は10%未満であった。また、実施例1では、柔らかな触感を有する淡黄色の塗膜が形成された。
吸放湿性試験において、製造直後の塗料の吸放湿特性値は111g/m2、20℃で168時間放置した塗料の吸放湿特性値は114g/m2であり、いずれも優れた吸放湿性能を示した。
耐紫外線性試験においては、「○」となり、優れた耐紫外線性を示した。
【0042】
(実施例2)
耐紫外線処理したケナフ粉Aの代わりに耐紫外線処理したケナフ粉Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で塗料を作製し、貯蔵安定性試験、吸放湿性試験、耐紫外線性試験を行った。
耐紫外線処理したケナフ粉B:硫酸鉄(II)7水和物50.0gをイオン交換水500.0mlに混合し、よく攪拌した。次に、ケナフ粉(京都繊維資材製、大きさ:10〜1000μm)200.0gを浸漬してスラリーとした。
このスラリーを入れた耐圧容器を減圧容器の中に静置し、アスピレ―ターを用いて5分間減圧(真空度:2.3kPa)した後、常圧に戻した。
次に、攪拌しながら25%アンモニア水を滴下してpHを12とし、水酸化鉄が析出してスラリーが青緑色に濁ることを確認した。
さらに、10%過酸化水素水を50ml添加し、水酸化鉄が酸化水酸化鉄となって、スラリーが褐色となることを確認した。
このスラリーを、室温で1時間攪拌した。濾過、洗浄した後、110℃で1時間乾燥し、耐紫外線処理したケナフ粉Bを得た。
【0043】
実施例2では、貯蔵安定性試験において外観や粘度の異常は認められなかった。粘度変化は10%未満であった。また、実施例1では、柔らかな触感を有する淡黄色の塗膜が形成された。
吸放湿性試験において、製造直後の塗料の吸放湿特性値は110g/m2、20℃で168時間放置した塗料の吸放湿特性値は113g/m2であり、いずれも優れた吸放湿性能を示した。
耐紫外線性試験においては、「○」となり、優れた耐紫外線性を示した。
【0044】
(比較例1)
水性樹脂B200重量部に対し、植物性粉粒体としてケナフ粉(京都繊維資材製、大きさ:10〜1000μm)200重量部と、ヒドロキシエチルセルロース3重量%水溶液500重量部と、水430重量部と、シリコーン系消泡剤5重量部とを混合・攪拌することにより塗料を製造した。この塗料における水の含有量は76重量%となった。なお、水性樹脂Bとしては、アニオン性アクリル樹脂エマルション(スチレン−メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体、pH8.0、最低造膜温度4℃、固形分50重量%)を使用した。
得られた塗料について実施例1と同様の試験を行った。
比較例1では、当初淡黄色であった塗料が、貯蔵後、黒く変色してしまった。また、貯蔵後の粘度は、貯蔵前に比べ50%以上上昇してしまった。
吸放湿性試験において、製造直後の塗料の吸放湿特性値は114g/m2であったが、20℃で168時間放置した塗料の吸放湿特性値は88g/m2と大きく低下してしまった。
耐紫外線性試験においては、「×」となり、耐紫外線性に劣る結果が得られた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、さらに、触感、質感、自然な色合い、芳香性、吸放湿性等の物性に優れた塗膜が形成可能な塗料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】吸放湿特性値の測定方法を示すグラフ
【符号の説明】
1:吸放湿曲線
2:WD0
3:WW1
4:WD1
5:WW2
6:WD2
Claims (2)
- (A)pH7以下のカチオン性水分散性樹脂液、及び
(B)耐紫外線処理された植物性粉粒体、
を含有し、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分を10〜500重量部含有することを特徴とする内装用水性塗料組成物。 - 水性塗料組成物中の水の含有量が20〜90重量%であることを特徴とする請求項1に記載の内装用水性塗料組成物。
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