JP2004359721A - 合成樹脂粉末および水硬性物質用混和材または打継ぎ材 - Google Patents
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Abstract
【課題】後添加するポリビニルアルコール量が少ない場合でも再分散性に優れ、さらに再分散した場合の造膜性にも優れた合成樹脂粉末を得ること、またこの合成樹脂粉末を使用することにより、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質への分散性に優れ、さらに得られる水硬性物質に優れた強度および耐水性を付与することができる水硬性物質用混和材を得ること、またこの合成樹脂粉末を使用することにより、接着性および耐久性に優れ、さらに機械的強度にも優れる水硬性物質用打継ぎ材を得ること。
【解決手段】ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末。
【選択図】 なし
【解決手段】ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂粉末に関し、さらに詳しくは、ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂粉末は、合成樹脂エマルジョンを噴霧乾燥することにより製造され、合成樹脂エマルジョンに比べて粉末であることにより、取り扱いおよび輸送の点で優れている。また、使用に際しては、水を添加し、攪拌することにより容易に水中に再分散するため、セメントまたはセメントモルタルへの混和材、接着剤、塗料用バインダーなどの広範な用途に使用されている。なかでもモルタルへの混和材に関しては、粉末であることから、プレミックスが可能であり、多様な商品形態を可能にすることから、広く用いられている。しかしながら、従来の合成樹脂エマルジョンでは、それをそのまま噴霧乾燥した場合には、分散質が容易に融着し、水に再分散しないため、多量のポリビニルアルコールを後添加し、さらにはブロッキング防止剤として無水珪酸等の無機粉末を多量に併用する必要があるのが現状である。後添加するポリビニルアルコール(PVA)としては、粉末化後、使用時に再乳化しうることが必要であることから、従来部分けん化PVAが広く用いられてきた(特許文献1)。しかしながら、得られた粉末の再分散性は、必ずしも充分優れているとは言えず、また部分けん化PVAを大量に配合して粉末化することから、得られた粉末を再分散させたエマルジョンの耐水性は粉末化前に比べ劣るという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−263849号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述の問題点を解決し、さらに後添加するポリビニルアルコール量が少ない場合でも再分散性に優れ、さらに再分散した場合の造膜性にも優れた合成樹脂粉末を得ること、またこの合成樹脂粉末を使用することにより、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質への分散性に優れ、さらに得られる水硬性物質に優れた強度および耐水性を付与することができる水硬性物質用混和材を得ること、またこの合成樹脂粉末を使用することにより、接着性および耐久性に優れ、さらに機械的強度にも優れる水硬性物質用打継ぎ材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者の上記目的は、ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末を提供することによって達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合成樹脂粉末について詳細に説明する。
本発明において、エマルジョン(A)の分散質は、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体を(共)重合したものである。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩またはカリウム塩等のスチレン系単量体類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロライド、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンの4級アンモニウム塩、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンの4級アンモニウム塩、さらにはアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の4級アンモニウム塩、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、またジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。これらの単量体は単独で、または二種以上を組み合わせて使用される。
上記の単量体単位からなる重合体のうち、酢酸ビニル系重合体で代表されるビニルエステル系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体で代表されるオレフィン−ビニルエステル共重合体などは、本発明におけるエマルジョン(A)の分散質の好ましい態様の一つである。
【0007】
本発明において、エマルジョン(A)の分散剤にはビニルアルコール系重合体が用いられる。ビニルアルコール系重合体は、例えば、ビニルエステルを重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造される。該ビニルアルコール系重合体のけん化度は、特に制限されないが、60〜99.9モル%が好適であり、より好ましくは、70〜99.5モル%、さらに好ましくは75〜99モル%である。けん化度が60モル%未満の場合には、ビニルアルコール系重合体本来の性質である水溶性が低下する懸念が生じる。またけん化度が99.9モル%を越える場合、乳化重合が不安定になる懸念がある。該ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度(以下重合度と略す)も特に制限されないが、100〜8000の範囲が好適であり、300〜3000がより好ましい。
【0008】
該ビニルアルコール系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルピロリドン、 N−ビニルホルムアミド、 N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合するか、またはビニルエステルと上記エチレン性不飽和単量体とを共重合し、得られた(共)重合体をけん化することによって得られる末端変性物を用いることもできる。
【0009】
本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)は、上記のビニルアルコール系重合体の存在下で、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体を乳化重合することによって得られる。該合成樹脂エマルジョンの製造において、乳化重合の開始剤としては、通常乳化重合に用いられる重合開始剤が用いられる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド等の油溶性過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。また、前記過酸化物と酒石酸等の還元剤とからなるレドックス系開始剤も用いられる。これらの使用方法は特に制限はないが、重合の初期に一括して添加する方法や、連続的に重合系に添加する方法等が採用できる。
【0010】
本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)において、ビニルアルコール系重合体の使用量は特に制限されないが、通常単量体100重量部に対して2〜30重量部、好ましくは3〜15重量部、さらに好ましくは4〜10重量部である。ビニルアルコール系重合体が2重量部未満の場合、合成樹脂エマルジョンの重合安定性が低下すると共にビニルアルコール系重合体を分散剤とする合成樹脂エマルジョンの特徴である機械的安定性や化学的安定性の低下、皮膜強度の低下等が起こる懸念がある。また、ビニルアルコール系重合体が30重量部を越える場合、重合系の粘度上昇による反応熱除去の問題や皮膜耐水性の低下等の懸念がある。
ビニルアルコール系重合体の添加方法には特に制限はなく、重合の初期に一括して添加する方法、初期にビニルアルコール系重合体の一部を添加し、重合中に連続的に重合系へ添加する方法等がある。
また、従来公知のノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性の界面活性剤やヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子をビニルアルコール系重合体と併用してもかまわない。
【0011】
本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)を製造する際の単量体の添加方法として、初期に一括して重合系に添加する方法、初期に単量体の一部を添加し、残りを重合中に連続的に添加する方法、単量体と水と分散剤を予め乳化したものを重合系に連続的に添加する方法等、各種の方法が可能である。
【0012】
また、本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)を製造する際に、連鎖移動剤を添加することもできる。連鎖移動剤としては、連鎖移動が起こるものであれば特に制限はないが、連鎖移動の効率の点でメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、単量体100重量部に対して5重量部以下が好ましい。連鎖移動剤の添加量が5重量部を越える場合には、合成樹脂エマルジョンの重合安定性が低下する上、分散質を形成する重合体の分子量が著しく低下し、エマルジョン物性の低下が起こる懸念がある。
【0013】
上記エマルジョン(A)に後添加されるビニルアルコール系重合体(B)の重合度は、200〜2000であることが重要であり、好ましくは1500以下、さらに好ましくは1000以下、最適には700以下である。ビニルアルコール系重合体(B)の重合度が2000を越える場合、ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下する恐れが生じ、また、得られる合成樹脂粉末の再分散性が低下する懸念が生じる。重合度の下限値は好ましくは300以上である。重合度が200を下回る場合は、再分散した場合の造膜性が低下する恐れがある。
また該ビニルアルコール系重合体(B)のけん化度は70〜85モル%であることが重要であり、好ましくは72〜84モル%、さらに好ましくは75〜83モル%、最適には78〜82モル%である。けん化度が70モル%未満の場合、該ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下する恐れがある。またけん化度が85モル%を越える場合、ビニルアルコール系重合体(B)の合成樹脂エマルジョン(A)への物理的吸着が少なくなるため、ビニルアルコール系重合体(B)の添加量を多くしないと得られる合成樹脂粉末の再分散性が低下する懸念があり、また、ビニルアルコール系重合体(B)の添加量を多くした場合、得られる合成樹脂粉末からなる水硬性物質用混和材または打ち継ぎ材を用いて、水硬性物質に優れた強度を付与することが難しくなる。
【0014】
また、ビニルアルコール系重合体(B)として、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体を用いることは本発明の好ましい態様のひとつである。該ビニルアルコール系重合体を用いることにより得られる合成樹脂粉末の再分散性が向上し、また該合成樹脂粉末をセメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質用混和材または打ち継ぎ材として使用する場合に、曲げ強度などの性能が向上する。1,2−グリコール結合の含有量は、1.9モル%以上であることが好ましく、より好ましくは1.95モル%以上、さらに好ましくは2.0モル%以上、最適には2.1モル%以上である。また、1,2−グリコール結合の含有量は4モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.5モル%以下、最適には3.2モル%以下である。ここで、1,2−グリコール結合の含有量はNMRスペクトルの解析から求められる。
1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の製造方法には、特に制限はなく、公知の方法が使用可能である。一例として、上記の1,2−グリコール結合量になるようにビニルエステルとビニレンカーボネートを共重合し、得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法、ビニルエステルの重合温度を通常の条件より高い温度、例えば75〜200℃として加圧下に重合し、得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法などが挙げられる。後者の方法においては、重合温度は95〜190℃であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。また加圧条件としては、重合系が沸点以下になるように選択することが重要であり、好適には0.2MPa以上、さらに好適には0.3MPa以上である。また上限は5MPa以下が好適であり、さらに3MPa以下がより好適である。重合はラジカル重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などいずれの方法でも行うことができるが、溶液重合、特にメタノールを溶媒とする溶液重合法が好適である。このようにして得られたビニルエステル系重合体を通常の方法によりけん化することによりビニルアルコール系重合体が得られる。
【0015】
該ビニルアルコール系重合体(B)は本発明の効果を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。これらの共重合可能なエチレン性不飽和単量体の使用量は特に制限されないが、全単量体に対して通常5モル%以下である。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合するか、またはビニルエステルと上記エチレン性不飽和単量体とを共重合し、得られる(共)重合体をけん化することによって得られる末端変性物を用いることもできる。
【0016】
合成樹脂エマルジョン(A)とそれに後添加されるビニルアルコール系重合体(B)との配合比は、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分100重量部に対してビニルアルコール系重合体(B)が3〜10重量部であることが好適であり、より好ましくは4〜9重量部、さらに好ましくは5〜8重量部である。ビニルアルコール系重合体(B)が3重量部未満の場合、粉末化後の再分散性が低下する懸念があり、また合成樹脂粉末を水硬性物質に混和した際の機械的安定性が不足し、合成樹脂粉末の水硬性物質への分散性が低下する懸念がある。また、10重量部を越える場合、得られる粉末の耐水性などの物性が低下し、またこの合成樹脂粉末を使用した水硬性物質の強度が低下する懸念がある。
【0017】
ビニルアルコール系重合体(B)の添加方法としては、ビニルアルコール系重合体(B)の水溶液を、エマルジョン(A)に添加する方法が好適な方法であるが、ビニルアルコール系重合体(B)の粉末、フレークまたはペレットをエマルジョン(A)に添加する方法も挙げられる。また、乳化重合によりエマルジョン(A)を製造する際、乳化重合の後半にビニルアルコール系重合体(B)を添加(一括または連続添加)する方法も挙げられる。
本発明の合成樹脂粉末は、上記の合成樹脂エマルジョン(A)にビニルアルコール系重合体(B)を配合した後、噴霧乾燥して得られる。噴霧乾燥には、流体を噴霧して乾燥する通常の噴霧乾燥が使用できる。噴霧の形式により、ディスク式、ノズル式、衝撃波式などがあるが、いずれの方法でも良い。また、熱源として、熱風や加熱水蒸気等が用いられる。乾燥条件は、噴霧乾燥機の大きさや種類、合成樹脂エマルジョンの濃度、粘度、流量等によって適宜選択すればよい。乾燥温度は、100℃〜150℃が適当であり、この乾燥温度の範囲内で、十分に乾燥した粉末が得られるように、他の乾燥条件を設定することが望ましい。
【0018】
また、本発明の合成樹脂粉末の貯蔵安定性、水への再分散性を向上させる目的で、無機粉末(ブロッキング防止剤)を使用することが望ましい。無機粉末は、噴霧乾燥後の粉末に添加して均一に混合しても良いが、噴霧乾燥する際に合成樹脂エマルジョンを無機粉末の存在下に噴霧すると(同時噴霧)、均一な混合を行うことができ好適である。無機粉末は平均粒径0.1〜100μmの微粒子であることが好適である。無機粉末としては、微粒子の無機粉末が好ましく、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が使用される。これらの無機粉末のうち、無水珪酸が好適である。無機粉末の使用量は、性能上、合成樹脂粉末に対して20重量%以下が好ましく、さらには10重量%以下が好ましい。下限値については0.1重量%以上が好ましく、さらには0.2重量%以上が好ましい。また、有機系のフィラーも使用できる。
【0019】
本発明の合成樹脂粉末は、水中に再分散させた後、200メッシュの金網でろ過した際の残渣の固形分が、合成樹脂粉末の全重量に対し0.5重量%以下であるものが、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質に混和した際、得られる水硬性物質の強度をより向上させることができることから好ましい。より好ましい残渣量は0.3重量%以下である。
【0020】
合成樹脂粉末の水への再分散性をより向上させるために、各種の水溶性添加剤を加えることもできる。噴霧乾燥前に合成樹脂エマルジョン(A)ないしビニルアルコール系重合体(B)に添加剤を配合して噴霧乾燥を行うと、均一に混合された合成樹脂粉末が得られるため好ましい。水溶性添加剤の使用量は特に制限はなく、エマルジョンの耐水性等の物性に悪影響を与えない程度に適宜コントロールされる。このような添加剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、でんぷん誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等の他、水溶性アルキッド樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ナフタレンスルホン酸樹脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリカルボン酸樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリオール樹脂、水溶性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明の合成樹脂粉末(平均粒径1〜1000μm、好適には2〜500μm)は、そのまま各種用途に用いることができるが、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョン、合成樹脂粉末を添加して用いることもできる。
本発明の合成樹脂粉末は、特にセメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質用混和材または水硬性物質用打継ぎ材として有用である。このことは後述する実施例からも明らかである。ここで、水硬性物質としては、例えばポルトランドセメント、アルミナセメント、スラグセメント、フライアッシュセメントなどの水硬セメント、あるいは石膏、プラスターなどのセメント以外の水硬性材料が挙げられる。
上記の水硬性物質用混和材を、例えば、セメント、骨材および水からなるセメントモルタルに配合して使用する場合、水硬性物質用混和材の配合量は、セメントに対し5〜20重量%が好適である。ここで、骨材としては、川砂、砕砂、色砂、けい砂などの細骨材、川砂利、砕石などの粗骨材が挙げられる。
また、本発明の合成樹脂粉末を、水硬性物質用打継ぎ材として使用する場合は、上記合成樹脂粉末を水で適宜再乳化し、打継ぎ材(プライマー処理材)としてコンクリートなどの水硬性物質基板に塗り付け、その後で、セメントモルタルなどの水硬性物質を塗り付けることにより施工が行われる。上記打継ぎ材は優れた接着性を示し、水硬性物質に優れた耐久性や機械的強度などを付与することができる。
【0022】
水硬性物質用混和材および打継ぎ材の分散性をより向上させるために、上記した水溶性添加剤などの各種の添加剤を加えることもできる。噴霧乾燥前に合成樹脂エマルジョン(A)ないしビニルアルコール系重合体(B)に添加剤を配合して噴霧乾燥を行うと、均一に混合された水硬性物質用混和材ないし打継ぎ材が得られるため好ましい。本発明の水硬性物質用混和材および打継ぎ材には、AE剤、減水剤、流動化剤、保水剤、増粘剤、防水剤、消泡剤等が適宜使用される。
本発明の合成樹脂粉末は、接着剤、塗料、紙加工剤などの用途にも使用できる。これらの用途には、粘性改良剤、保水剤、粘着付与剤、増粘剤、顔料分散剤、安定剤等が適宜使用される。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」はいずれも重量基準を意味する。
PVA(B)の製造例1
攪拌機、窒素導入口、開始剤導入口を備えた5L加圧反応槽に酢酸ビニル2400g、メタノール600gおよび酒石酸0.088gを仕込み、室温下に窒素ガスによるバブリングをしながら反応槽圧力を2.0MPaまで昇圧して10分間放置した後、放圧するという操作を3回繰り返して系中を窒素置換した。開始剤溶液として2,2’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40)をメタノールに溶解した濃度0.2g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。次いで上記の反応槽内温を120℃に昇温した。このときの反応槽圧力は0.5MPaであった。次いで、上記の開始剤溶液2.5mlを注入し重合を開始した。重合中は重合温度を120℃に維持し、上記の開始剤溶液を10.0ml/hrの割合で連続添加して重合を実施した。重合中の反応槽圧力は0.5MPaであった。3時間後に反応槽を冷却して重合を停止した。このときの反応系の固形分濃度は24%であった。次いで、30℃減圧下にメタノールを時々添加しながら未反応酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(濃度33%)を得た。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が25%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液400g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、アルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)2.3g{ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル単位に対するアルカリのモル比(MR)0.005}を添加して、40℃でけん化を行った。アルカリ添加後約2分でゲル化した反応物を粉砕器にて粉砕し、1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを70℃乾燥機中に2日間放置して乾燥PVA(PVA−6)を得た。得られたPVA−6のけん化度は80モル%であった。また、重合後に未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5でけん化し、ゲル化した反応物を粉砕したものを60℃で5時間放置してけん化を進行させた。得られたPVAに対してメタノールによるソックスレー洗浄を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ500であった。該精製PVAの1,2−グリコール結合量を500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から求めたところ、2.2モル%であった。
【0024】
エマルジョン製造例1
窒素吹き込み口、温度計、撹拌機を備えた耐圧オートクレーブにPVA−217{(株)クラレ製、重合度1700、けん化度88モル%}の9.5%水溶液80部を仕込み、60℃に昇温してから、窒素置換を行った。酢酸ビニル80部を仕込んだ後、エチレンを導入して4.9MPaまで加圧し、0.5%過酸化水素水溶液2gおよび2%ロンガリット水溶液0.3gを圧入し、重合を開始した。残存酢酸ビニル濃度が10%となったところで、エチレンを放出してエチレン圧力2.0MPaとし、3%過酸化水素水溶液0.3gを圧入し、重合開始から3時間後に重合を完結させた。重合中に凝集などがなく、重合安定性に優れており、固形分濃度55%、エチレン含量18重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−1)が得られた。
【0025】
エマルジョン製造例2
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製容器に、末端にメルカプト基を有するPVA(重合度550、けん化度88.3モル%、メルカプト基含量3.3×10−5当量/g)5部とイオン交換水90部を仕込み、95℃で完全溶解させた。次いで、希硫酸によりpH=4とした後、150rpmで撹拌しながらメチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート10部、n−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、窒素置換後70℃まで昇温した。1%過硫酸カリウム水溶液5部を添加して重合を開始し、さらにメチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート40部、n−ドデシルメルカプタン0.4部を混合したものを2時間かけて連続的に添加した。重合開始3時間後、転化率99.5%となり重合を終了した。固形分濃度52%の安定なメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(Em−2)を得た。
【0026】
実施例1
エマルジョン製造例1で得たエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−1)182部(固形分100部)とPVA−1(重合度500、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)の5%水溶液100部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。
【0027】
(合成樹脂粉末の性能評価)
合成樹脂粉末100部にイオン交換水100部を添加して、攪拌機により十分攪拌し、以下の物性を評価した。結果を表1に示す。
・再分散性(ろ過残渣);再分散したエマルジョンを200メッシュのステンレス製金網でろ過し、ろ過残渣を105℃の乾燥機で24時間乾燥した。得られた乾燥物の重量を測定し、元の合成樹脂粉末に対するろ過残渣の固形分の割合を求めた。
・再分散性(状態);再分散したエマルジョンの状態を目視及び光学顕微鏡で観察し、以下の基準により判断した。
◎ 再分散液が均一で分散剤の平均粒子径50μm以下
○ 再分散液が均一で未分散物がない。
△ 再分散はしているが、未分散物が認められる。
× 再分散しない
・造膜性:再分散したエマルジョンを50℃でガラス板上に流延、乾燥させ、造膜性を以下の基準により判断した。
○ 均一で強靱な皮膜が得られる。
△ 皮膜にはなるがもろい。
× 均一な皮膜が得られない。
【0028】
(水硬性物質用混和材の性能評価)
セメントモルタル用混和材としての性能
セメントモルタルの物性試験
1)モルタル組成:
合成樹脂粉末/セメント重量比=0.10
砂/セメント重量比=3.0、水/セメント重量比=0.6
2)スランプ値 :JIS A−1173に準じて測定
(セメントモルタルへの分散性を示す指標)
3)曲げ強度 :JIS A−6203に準じて測定
4)圧縮強度 :JIS A−6203に準じて測定
結果を表1に示す。
【0029】
(水硬性物質用打継ぎ材の性能評価)
セメントモルタル用打継ぎ材としての性能
接着強度試験
1)試験用基板
試験に用いるコンクリート基板としては、建築における標準的な調合である、ポルトランドセメント300部、けい砂800部、粗骨材(バラス)1000部、水180部を練り混ぜた後、合板型枠で300mm×300mm×厚さ50mmの大きさに打設して、試験室{温度20℃、相対湿度(RH)65%}中で28日間養生したものを用いた。
【0030】
2)塗り付けモルタル
試験に用いる塗り付けモルタルの調合は、重量比でセメント1、骨材(標準砂)2とし、フロー値が170±5となるように水−セメント比を調整して、JIS R5201の9.4の規定に準拠して練り混ぜた。
なお、セメントとしては、JIS R5210(ポルトランドセメント)に規定される普通ポルトランドセメントを、骨材としては、JIS R5210の9.2に規定される豊浦標準砂を用いた。
【0031】
3)試験体の作製方法
合成樹脂粉末を水に再分散し、上記1)の試験用基板の表面に刷毛で均一に塗り付け、温度20℃、65%RHの雰囲気下に24時間放置した。なお、打継ぎ材の塗布量は、固形分で50g/m2とした。次に、上記2)のモルタルを厚さ6mmになるように金ゴテで塗り付けて、20℃、80%RH以上の雰囲気下で48時間養生した後、さらに試験室中で26日間養生して試験体とした。
【0032】
4)標準状態の接着強度試験
上記3)で作成した試験体のモルタル面を、寸法40mm×90mmに基板に達するまで切り込んだ後、JIS A6916の5.6に規定する試験方法に準じて接着強度試験を行い、5箇所の測定値の平均値を求めた。結果を、打ち継ぎ物性として表1に示す。
【0033】
比較例1
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−2(重合度500、けん化度95モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0034】
比較例2
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−3(重合度500、けん化度88モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0035】
比較例3
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−4(重合度2400、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−5(重合度1000、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0037】
実施例3
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA(B)製造例1で得られたPVA−6(重合度500、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量2.2モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0038】
実施例4
Em−1の182部(固形分100部)とPVA−1の5%水溶液160部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0039】
実施例5
Em−1の182部(固形分100部)とPVA−1の5%水溶液200部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0040】
実施例6
Em−1の182部(固形分100部)とPVA−1の5%水溶液240部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0041】
実施例7
実施例1において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりに、エマルジョン製造例2で調製したメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(Em−2)の192部(固形分100部)を用いた以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0042】
比較例4
実施例4において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりにEm−2の192部(固形分100部)を用い、PVA−1の代わりにPVA−2を用いた以外は、実施例4と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0043】
比較例5
実施例4において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりにEm−2の192部(固形分100部)を使用し、PVA−1の5%水溶液160部の代わりにPVA−3の5%水溶液240部を使用した以外は、実施例4と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0044】
実施例8
実施例4において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりにEm−2の192部(固形分100部)を使用し、PVA−1の代わりにPVA−6を使用した以外は、実施例4と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明により、後添加するポリビニルアルコール量が少ない場合でも再分散性に優れ、さらに再分散した場合の造膜性にも優れた合成樹脂粉末が得られる。また、この合成樹脂粉末を使用することにより、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質への分散性に優れ、さらに得られる水硬性物質に優れた強度および耐水性を付与することができる水硬性物質用混和材が得られる。また、本発明の合成樹脂粉末を使用することにより、接着性および耐久性に優れ、さらに機械的強度にも優れる水硬性物質用打継ぎ材が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂粉末に関し、さらに詳しくは、ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂粉末は、合成樹脂エマルジョンを噴霧乾燥することにより製造され、合成樹脂エマルジョンに比べて粉末であることにより、取り扱いおよび輸送の点で優れている。また、使用に際しては、水を添加し、攪拌することにより容易に水中に再分散するため、セメントまたはセメントモルタルへの混和材、接着剤、塗料用バインダーなどの広範な用途に使用されている。なかでもモルタルへの混和材に関しては、粉末であることから、プレミックスが可能であり、多様な商品形態を可能にすることから、広く用いられている。しかしながら、従来の合成樹脂エマルジョンでは、それをそのまま噴霧乾燥した場合には、分散質が容易に融着し、水に再分散しないため、多量のポリビニルアルコールを後添加し、さらにはブロッキング防止剤として無水珪酸等の無機粉末を多量に併用する必要があるのが現状である。後添加するポリビニルアルコール(PVA)としては、粉末化後、使用時に再乳化しうることが必要であることから、従来部分けん化PVAが広く用いられてきた(特許文献1)。しかしながら、得られた粉末の再分散性は、必ずしも充分優れているとは言えず、また部分けん化PVAを大量に配合して粉末化することから、得られた粉末を再分散させたエマルジョンの耐水性は粉末化前に比べ劣るという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−263849号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述の問題点を解決し、さらに後添加するポリビニルアルコール量が少ない場合でも再分散性に優れ、さらに再分散した場合の造膜性にも優れた合成樹脂粉末を得ること、またこの合成樹脂粉末を使用することにより、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質への分散性に優れ、さらに得られる水硬性物質に優れた強度および耐水性を付与することができる水硬性物質用混和材を得ること、またこの合成樹脂粉末を使用することにより、接着性および耐久性に優れ、さらに機械的強度にも優れる水硬性物質用打継ぎ材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者の上記目的は、ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末を提供することによって達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合成樹脂粉末について詳細に説明する。
本発明において、エマルジョン(A)の分散質は、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体を(共)重合したものである。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩またはカリウム塩等のスチレン系単量体類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロライド、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンの4級アンモニウム塩、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンの4級アンモニウム塩、さらにはアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の4級アンモニウム塩、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、またジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。これらの単量体は単独で、または二種以上を組み合わせて使用される。
上記の単量体単位からなる重合体のうち、酢酸ビニル系重合体で代表されるビニルエステル系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体で代表されるオレフィン−ビニルエステル共重合体などは、本発明におけるエマルジョン(A)の分散質の好ましい態様の一つである。
【0007】
本発明において、エマルジョン(A)の分散剤にはビニルアルコール系重合体が用いられる。ビニルアルコール系重合体は、例えば、ビニルエステルを重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造される。該ビニルアルコール系重合体のけん化度は、特に制限されないが、60〜99.9モル%が好適であり、より好ましくは、70〜99.5モル%、さらに好ましくは75〜99モル%である。けん化度が60モル%未満の場合には、ビニルアルコール系重合体本来の性質である水溶性が低下する懸念が生じる。またけん化度が99.9モル%を越える場合、乳化重合が不安定になる懸念がある。該ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度(以下重合度と略す)も特に制限されないが、100〜8000の範囲が好適であり、300〜3000がより好ましい。
【0008】
該ビニルアルコール系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルピロリドン、 N−ビニルホルムアミド、 N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合するか、またはビニルエステルと上記エチレン性不飽和単量体とを共重合し、得られた(共)重合体をけん化することによって得られる末端変性物を用いることもできる。
【0009】
本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)は、上記のビニルアルコール系重合体の存在下で、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体を乳化重合することによって得られる。該合成樹脂エマルジョンの製造において、乳化重合の開始剤としては、通常乳化重合に用いられる重合開始剤が用いられる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の水溶性過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド等の油溶性過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。また、前記過酸化物と酒石酸等の還元剤とからなるレドックス系開始剤も用いられる。これらの使用方法は特に制限はないが、重合の初期に一括して添加する方法や、連続的に重合系に添加する方法等が採用できる。
【0010】
本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)において、ビニルアルコール系重合体の使用量は特に制限されないが、通常単量体100重量部に対して2〜30重量部、好ましくは3〜15重量部、さらに好ましくは4〜10重量部である。ビニルアルコール系重合体が2重量部未満の場合、合成樹脂エマルジョンの重合安定性が低下すると共にビニルアルコール系重合体を分散剤とする合成樹脂エマルジョンの特徴である機械的安定性や化学的安定性の低下、皮膜強度の低下等が起こる懸念がある。また、ビニルアルコール系重合体が30重量部を越える場合、重合系の粘度上昇による反応熱除去の問題や皮膜耐水性の低下等の懸念がある。
ビニルアルコール系重合体の添加方法には特に制限はなく、重合の初期に一括して添加する方法、初期にビニルアルコール系重合体の一部を添加し、重合中に連続的に重合系へ添加する方法等がある。
また、従来公知のノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性の界面活性剤やヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子をビニルアルコール系重合体と併用してもかまわない。
【0011】
本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)を製造する際の単量体の添加方法として、初期に一括して重合系に添加する方法、初期に単量体の一部を添加し、残りを重合中に連続的に添加する方法、単量体と水と分散剤を予め乳化したものを重合系に連続的に添加する方法等、各種の方法が可能である。
【0012】
また、本発明に用いる合成樹脂エマルジョン(A)を製造する際に、連鎖移動剤を添加することもできる。連鎖移動剤としては、連鎖移動が起こるものであれば特に制限はないが、連鎖移動の効率の点でメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、単量体100重量部に対して5重量部以下が好ましい。連鎖移動剤の添加量が5重量部を越える場合には、合成樹脂エマルジョンの重合安定性が低下する上、分散質を形成する重合体の分子量が著しく低下し、エマルジョン物性の低下が起こる懸念がある。
【0013】
上記エマルジョン(A)に後添加されるビニルアルコール系重合体(B)の重合度は、200〜2000であることが重要であり、好ましくは1500以下、さらに好ましくは1000以下、最適には700以下である。ビニルアルコール系重合体(B)の重合度が2000を越える場合、ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下する恐れが生じ、また、得られる合成樹脂粉末の再分散性が低下する懸念が生じる。重合度の下限値は好ましくは300以上である。重合度が200を下回る場合は、再分散した場合の造膜性が低下する恐れがある。
また該ビニルアルコール系重合体(B)のけん化度は70〜85モル%であることが重要であり、好ましくは72〜84モル%、さらに好ましくは75〜83モル%、最適には78〜82モル%である。けん化度が70モル%未満の場合、該ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下する恐れがある。またけん化度が85モル%を越える場合、ビニルアルコール系重合体(B)の合成樹脂エマルジョン(A)への物理的吸着が少なくなるため、ビニルアルコール系重合体(B)の添加量を多くしないと得られる合成樹脂粉末の再分散性が低下する懸念があり、また、ビニルアルコール系重合体(B)の添加量を多くした場合、得られる合成樹脂粉末からなる水硬性物質用混和材または打ち継ぎ材を用いて、水硬性物質に優れた強度を付与することが難しくなる。
【0014】
また、ビニルアルコール系重合体(B)として、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体を用いることは本発明の好ましい態様のひとつである。該ビニルアルコール系重合体を用いることにより得られる合成樹脂粉末の再分散性が向上し、また該合成樹脂粉末をセメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質用混和材または打ち継ぎ材として使用する場合に、曲げ強度などの性能が向上する。1,2−グリコール結合の含有量は、1.9モル%以上であることが好ましく、より好ましくは1.95モル%以上、さらに好ましくは2.0モル%以上、最適には2.1モル%以上である。また、1,2−グリコール結合の含有量は4モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.5モル%以下、最適には3.2モル%以下である。ここで、1,2−グリコール結合の含有量はNMRスペクトルの解析から求められる。
1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の製造方法には、特に制限はなく、公知の方法が使用可能である。一例として、上記の1,2−グリコール結合量になるようにビニルエステルとビニレンカーボネートを共重合し、得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法、ビニルエステルの重合温度を通常の条件より高い温度、例えば75〜200℃として加圧下に重合し、得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法などが挙げられる。後者の方法においては、重合温度は95〜190℃であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。また加圧条件としては、重合系が沸点以下になるように選択することが重要であり、好適には0.2MPa以上、さらに好適には0.3MPa以上である。また上限は5MPa以下が好適であり、さらに3MPa以下がより好適である。重合はラジカル重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などいずれの方法でも行うことができるが、溶液重合、特にメタノールを溶媒とする溶液重合法が好適である。このようにして得られたビニルエステル系重合体を通常の方法によりけん化することによりビニルアルコール系重合体が得られる。
【0015】
該ビニルアルコール系重合体(B)は本発明の効果を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。これらの共重合可能なエチレン性不飽和単量体の使用量は特に制限されないが、全単量体に対して通常5モル%以下である。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合するか、またはビニルエステルと上記エチレン性不飽和単量体とを共重合し、得られる(共)重合体をけん化することによって得られる末端変性物を用いることもできる。
【0016】
合成樹脂エマルジョン(A)とそれに後添加されるビニルアルコール系重合体(B)との配合比は、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分100重量部に対してビニルアルコール系重合体(B)が3〜10重量部であることが好適であり、より好ましくは4〜9重量部、さらに好ましくは5〜8重量部である。ビニルアルコール系重合体(B)が3重量部未満の場合、粉末化後の再分散性が低下する懸念があり、また合成樹脂粉末を水硬性物質に混和した際の機械的安定性が不足し、合成樹脂粉末の水硬性物質への分散性が低下する懸念がある。また、10重量部を越える場合、得られる粉末の耐水性などの物性が低下し、またこの合成樹脂粉末を使用した水硬性物質の強度が低下する懸念がある。
【0017】
ビニルアルコール系重合体(B)の添加方法としては、ビニルアルコール系重合体(B)の水溶液を、エマルジョン(A)に添加する方法が好適な方法であるが、ビニルアルコール系重合体(B)の粉末、フレークまたはペレットをエマルジョン(A)に添加する方法も挙げられる。また、乳化重合によりエマルジョン(A)を製造する際、乳化重合の後半にビニルアルコール系重合体(B)を添加(一括または連続添加)する方法も挙げられる。
本発明の合成樹脂粉末は、上記の合成樹脂エマルジョン(A)にビニルアルコール系重合体(B)を配合した後、噴霧乾燥して得られる。噴霧乾燥には、流体を噴霧して乾燥する通常の噴霧乾燥が使用できる。噴霧の形式により、ディスク式、ノズル式、衝撃波式などがあるが、いずれの方法でも良い。また、熱源として、熱風や加熱水蒸気等が用いられる。乾燥条件は、噴霧乾燥機の大きさや種類、合成樹脂エマルジョンの濃度、粘度、流量等によって適宜選択すればよい。乾燥温度は、100℃〜150℃が適当であり、この乾燥温度の範囲内で、十分に乾燥した粉末が得られるように、他の乾燥条件を設定することが望ましい。
【0018】
また、本発明の合成樹脂粉末の貯蔵安定性、水への再分散性を向上させる目的で、無機粉末(ブロッキング防止剤)を使用することが望ましい。無機粉末は、噴霧乾燥後の粉末に添加して均一に混合しても良いが、噴霧乾燥する際に合成樹脂エマルジョンを無機粉末の存在下に噴霧すると(同時噴霧)、均一な混合を行うことができ好適である。無機粉末は平均粒径0.1〜100μmの微粒子であることが好適である。無機粉末としては、微粒子の無機粉末が好ましく、炭酸カルシウム、クレー、無水珪酸、珪酸アルミニウム、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が使用される。これらの無機粉末のうち、無水珪酸が好適である。無機粉末の使用量は、性能上、合成樹脂粉末に対して20重量%以下が好ましく、さらには10重量%以下が好ましい。下限値については0.1重量%以上が好ましく、さらには0.2重量%以上が好ましい。また、有機系のフィラーも使用できる。
【0019】
本発明の合成樹脂粉末は、水中に再分散させた後、200メッシュの金網でろ過した際の残渣の固形分が、合成樹脂粉末の全重量に対し0.5重量%以下であるものが、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質に混和した際、得られる水硬性物質の強度をより向上させることができることから好ましい。より好ましい残渣量は0.3重量%以下である。
【0020】
合成樹脂粉末の水への再分散性をより向上させるために、各種の水溶性添加剤を加えることもできる。噴霧乾燥前に合成樹脂エマルジョン(A)ないしビニルアルコール系重合体(B)に添加剤を配合して噴霧乾燥を行うと、均一に混合された合成樹脂粉末が得られるため好ましい。水溶性添加剤の使用量は特に制限はなく、エマルジョンの耐水性等の物性に悪影響を与えない程度に適宜コントロールされる。このような添加剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、でんぷん誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等の他、水溶性アルキッド樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ナフタレンスルホン酸樹脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリカルボン酸樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリオール樹脂、水溶性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明の合成樹脂粉末(平均粒径1〜1000μm、好適には2〜500μm)は、そのまま各種用途に用いることができるが、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョン、合成樹脂粉末を添加して用いることもできる。
本発明の合成樹脂粉末は、特にセメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質用混和材または水硬性物質用打継ぎ材として有用である。このことは後述する実施例からも明らかである。ここで、水硬性物質としては、例えばポルトランドセメント、アルミナセメント、スラグセメント、フライアッシュセメントなどの水硬セメント、あるいは石膏、プラスターなどのセメント以外の水硬性材料が挙げられる。
上記の水硬性物質用混和材を、例えば、セメント、骨材および水からなるセメントモルタルに配合して使用する場合、水硬性物質用混和材の配合量は、セメントに対し5〜20重量%が好適である。ここで、骨材としては、川砂、砕砂、色砂、けい砂などの細骨材、川砂利、砕石などの粗骨材が挙げられる。
また、本発明の合成樹脂粉末を、水硬性物質用打継ぎ材として使用する場合は、上記合成樹脂粉末を水で適宜再乳化し、打継ぎ材(プライマー処理材)としてコンクリートなどの水硬性物質基板に塗り付け、その後で、セメントモルタルなどの水硬性物質を塗り付けることにより施工が行われる。上記打継ぎ材は優れた接着性を示し、水硬性物質に優れた耐久性や機械的強度などを付与することができる。
【0022】
水硬性物質用混和材および打継ぎ材の分散性をより向上させるために、上記した水溶性添加剤などの各種の添加剤を加えることもできる。噴霧乾燥前に合成樹脂エマルジョン(A)ないしビニルアルコール系重合体(B)に添加剤を配合して噴霧乾燥を行うと、均一に混合された水硬性物質用混和材ないし打継ぎ材が得られるため好ましい。本発明の水硬性物質用混和材および打継ぎ材には、AE剤、減水剤、流動化剤、保水剤、増粘剤、防水剤、消泡剤等が適宜使用される。
本発明の合成樹脂粉末は、接着剤、塗料、紙加工剤などの用途にも使用できる。これらの用途には、粘性改良剤、保水剤、粘着付与剤、増粘剤、顔料分散剤、安定剤等が適宜使用される。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」はいずれも重量基準を意味する。
PVA(B)の製造例1
攪拌機、窒素導入口、開始剤導入口を備えた5L加圧反応槽に酢酸ビニル2400g、メタノール600gおよび酒石酸0.088gを仕込み、室温下に窒素ガスによるバブリングをしながら反応槽圧力を2.0MPaまで昇圧して10分間放置した後、放圧するという操作を3回繰り返して系中を窒素置換した。開始剤溶液として2,2’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40)をメタノールに溶解した濃度0.2g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。次いで上記の反応槽内温を120℃に昇温した。このときの反応槽圧力は0.5MPaであった。次いで、上記の開始剤溶液2.5mlを注入し重合を開始した。重合中は重合温度を120℃に維持し、上記の開始剤溶液を10.0ml/hrの割合で連続添加して重合を実施した。重合中の反応槽圧力は0.5MPaであった。3時間後に反応槽を冷却して重合を停止した。このときの反応系の固形分濃度は24%であった。次いで、30℃減圧下にメタノールを時々添加しながら未反応酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(濃度33%)を得た。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が25%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液400g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、アルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)2.3g{ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル単位に対するアルカリのモル比(MR)0.005}を添加して、40℃でけん化を行った。アルカリ添加後約2分でゲル化した反応物を粉砕器にて粉砕し、1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを70℃乾燥機中に2日間放置して乾燥PVA(PVA−6)を得た。得られたPVA−6のけん化度は80モル%であった。また、重合後に未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5でけん化し、ゲル化した反応物を粉砕したものを60℃で5時間放置してけん化を進行させた。得られたPVAに対してメタノールによるソックスレー洗浄を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ500であった。該精製PVAの1,2−グリコール結合量を500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から求めたところ、2.2モル%であった。
【0024】
エマルジョン製造例1
窒素吹き込み口、温度計、撹拌機を備えた耐圧オートクレーブにPVA−217{(株)クラレ製、重合度1700、けん化度88モル%}の9.5%水溶液80部を仕込み、60℃に昇温してから、窒素置換を行った。酢酸ビニル80部を仕込んだ後、エチレンを導入して4.9MPaまで加圧し、0.5%過酸化水素水溶液2gおよび2%ロンガリット水溶液0.3gを圧入し、重合を開始した。残存酢酸ビニル濃度が10%となったところで、エチレンを放出してエチレン圧力2.0MPaとし、3%過酸化水素水溶液0.3gを圧入し、重合開始から3時間後に重合を完結させた。重合中に凝集などがなく、重合安定性に優れており、固形分濃度55%、エチレン含量18重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−1)が得られた。
【0025】
エマルジョン製造例2
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製容器に、末端にメルカプト基を有するPVA(重合度550、けん化度88.3モル%、メルカプト基含量3.3×10−5当量/g)5部とイオン交換水90部を仕込み、95℃で完全溶解させた。次いで、希硫酸によりpH=4とした後、150rpmで撹拌しながらメチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート10部、n−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、窒素置換後70℃まで昇温した。1%過硫酸カリウム水溶液5部を添加して重合を開始し、さらにメチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート40部、n−ドデシルメルカプタン0.4部を混合したものを2時間かけて連続的に添加した。重合開始3時間後、転化率99.5%となり重合を終了した。固形分濃度52%の安定なメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(Em−2)を得た。
【0026】
実施例1
エマルジョン製造例1で得たエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(Em−1)182部(固形分100部)とPVA−1(重合度500、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)の5%水溶液100部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。
【0027】
(合成樹脂粉末の性能評価)
合成樹脂粉末100部にイオン交換水100部を添加して、攪拌機により十分攪拌し、以下の物性を評価した。結果を表1に示す。
・再分散性(ろ過残渣);再分散したエマルジョンを200メッシュのステンレス製金網でろ過し、ろ過残渣を105℃の乾燥機で24時間乾燥した。得られた乾燥物の重量を測定し、元の合成樹脂粉末に対するろ過残渣の固形分の割合を求めた。
・再分散性(状態);再分散したエマルジョンの状態を目視及び光学顕微鏡で観察し、以下の基準により判断した。
◎ 再分散液が均一で分散剤の平均粒子径50μm以下
○ 再分散液が均一で未分散物がない。
△ 再分散はしているが、未分散物が認められる。
× 再分散しない
・造膜性:再分散したエマルジョンを50℃でガラス板上に流延、乾燥させ、造膜性を以下の基準により判断した。
○ 均一で強靱な皮膜が得られる。
△ 皮膜にはなるがもろい。
× 均一な皮膜が得られない。
【0028】
(水硬性物質用混和材の性能評価)
セメントモルタル用混和材としての性能
セメントモルタルの物性試験
1)モルタル組成:
合成樹脂粉末/セメント重量比=0.10
砂/セメント重量比=3.0、水/セメント重量比=0.6
2)スランプ値 :JIS A−1173に準じて測定
(セメントモルタルへの分散性を示す指標)
3)曲げ強度 :JIS A−6203に準じて測定
4)圧縮強度 :JIS A−6203に準じて測定
結果を表1に示す。
【0029】
(水硬性物質用打継ぎ材の性能評価)
セメントモルタル用打継ぎ材としての性能
接着強度試験
1)試験用基板
試験に用いるコンクリート基板としては、建築における標準的な調合である、ポルトランドセメント300部、けい砂800部、粗骨材(バラス)1000部、水180部を練り混ぜた後、合板型枠で300mm×300mm×厚さ50mmの大きさに打設して、試験室{温度20℃、相対湿度(RH)65%}中で28日間養生したものを用いた。
【0030】
2)塗り付けモルタル
試験に用いる塗り付けモルタルの調合は、重量比でセメント1、骨材(標準砂)2とし、フロー値が170±5となるように水−セメント比を調整して、JIS R5201の9.4の規定に準拠して練り混ぜた。
なお、セメントとしては、JIS R5210(ポルトランドセメント)に規定される普通ポルトランドセメントを、骨材としては、JIS R5210の9.2に規定される豊浦標準砂を用いた。
【0031】
3)試験体の作製方法
合成樹脂粉末を水に再分散し、上記1)の試験用基板の表面に刷毛で均一に塗り付け、温度20℃、65%RHの雰囲気下に24時間放置した。なお、打継ぎ材の塗布量は、固形分で50g/m2とした。次に、上記2)のモルタルを厚さ6mmになるように金ゴテで塗り付けて、20℃、80%RH以上の雰囲気下で48時間養生した後、さらに試験室中で26日間養生して試験体とした。
【0032】
4)標準状態の接着強度試験
上記3)で作成した試験体のモルタル面を、寸法40mm×90mmに基板に達するまで切り込んだ後、JIS A6916の5.6に規定する試験方法に準じて接着強度試験を行い、5箇所の測定値の平均値を求めた。結果を、打ち継ぎ物性として表1に示す。
【0033】
比較例1
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−2(重合度500、けん化度95モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0034】
比較例2
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−3(重合度500、けん化度88モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0035】
比較例3
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−4(重合度2400、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA−5(重合度1000、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量1.6モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0037】
実施例3
実施例1において、PVA−1の代わりに、PVA(B)製造例1で得られたPVA−6(重合度500、けん化度80モル%、1,2−グリコール結合量2.2モル%)を用いる以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0038】
実施例4
Em−1の182部(固形分100部)とPVA−1の5%水溶液160部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0039】
実施例5
Em−1の182部(固形分100部)とPVA−1の5%水溶液200部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0040】
実施例6
Em−1の182部(固形分100部)とPVA−1の5%水溶液240部を混合したものと、エマルジョンの固形分に対して2%の無水珪酸微粉末(平均粒径2μm)とを別々に120℃の熱風中に同時噴霧して乾燥し、平均粒径20μmの合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0041】
実施例7
実施例1において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりに、エマルジョン製造例2で調製したメチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート共重合体エマルジョン(Em−2)の192部(固形分100部)を用いた以外は、実施例1と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0042】
比較例4
実施例4において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりにEm−2の192部(固形分100部)を用い、PVA−1の代わりにPVA−2を用いた以外は、実施例4と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0043】
比較例5
実施例4において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりにEm−2の192部(固形分100部)を使用し、PVA−1の5%水溶液160部の代わりにPVA−3の5%水溶液240部を使用した以外は、実施例4と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0044】
実施例8
実施例4において、Em−1の182部(固形分100部)の代わりにEm−2の192部(固形分100部)を使用し、PVA−1の代わりにPVA−6を使用した以外は、実施例4と同様にして合成樹脂粉末を得た。得られた合成樹脂粉末の物性を実施例1と同様にして評価した。結果を併せて表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明により、後添加するポリビニルアルコール量が少ない場合でも再分散性に優れ、さらに再分散した場合の造膜性にも優れた合成樹脂粉末が得られる。また、この合成樹脂粉末を使用することにより、セメントまたはセメントモルタルなどの水硬性物質への分散性に優れ、さらに得られる水硬性物質に優れた強度および耐水性を付与することができる水硬性物質用混和材が得られる。また、本発明の合成樹脂粉末を使用することにより、接着性および耐久性に優れ、さらに機械的強度にも優れる水硬性物質用打継ぎ材が得られる。
Claims (7)
- ビニルアルコール系重合体を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体を分散質とするエマルジョン(A)に、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を配合した組成物を噴霧乾燥して得られる合成樹脂粉末。
- エマルジョン(A)の固形分100重量部に対し、重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)を3〜10重量部配合する請求項1記載の合成樹脂粉末。
- エチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体から選ばれる一種あるいは二種以上の不飽和単量体単位を有する重合体が、ビニルエステル系重合体またはα−オレフィン−ビニルエステル共重合体である請求項1または2記載の合成樹脂粉末。
- 合成樹脂粉末が、無機粉末を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の合成樹脂粉末。
- 重合度が200〜2000、けん化度が70〜85モル%のビニルアルコール系重合体(B)が、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の合成樹脂粉末。
- 合成樹脂粉末を水中に再分散させた後、200メッシュの金網でろ過した際の残渣の固形分が、合成樹脂粉末の全重量に対して0.5重量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の合成樹脂粉末。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の合成樹脂粉末からなる水硬性物質用混和材または打継ぎ材。
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- 2003-06-02 JP JP2003156746A patent/JP2004359721A/ja active Pending
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