JP2004359545A - 抗癌剤耐性克服剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全性が高い抗癌剤耐性克服剤の提供。
【解決手段】式(I)で表される化合物又はその医薬上許容される塩及びそれらを有効成分として含有する抗癌剤耐性抑制剤。
〔式(I)中、R1、R2は、H、アルキル、アシル、シアノ又は−COOR。R3、R4、R13、R14は、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲノアルコキシ、アシル、アシルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アシルアミノ、R5は、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、又は、アシル。R6は、置換されていてもよいアロイル、アリールスルホニル。A、B、G、Q及びXは、N、CH、N→O又はN+−(R7)E−(R7はアルキル又はアリールアルキル、E−はハロゲンイオン、等の陰イオン)を表す。但し、A、B、Gが同時にNである場合及びA、B、G、Q、Xが同時にCHである場合は除く。Y、Zはそれそれの環を表す。〕
【選択図】なし
【解決手段】式(I)で表される化合物又はその医薬上許容される塩及びそれらを有効成分として含有する抗癌剤耐性抑制剤。
〔式(I)中、R1、R2は、H、アルキル、アシル、シアノ又は−COOR。R3、R4、R13、R14は、H、アルキル、アルコキシ、ハロゲノアルコキシ、アシル、アシルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アシルアミノ、R5は、水素、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、又は、アシル。R6は、置換されていてもよいアロイル、アリールスルホニル。A、B、G、Q及びXは、N、CH、N→O又はN+−(R7)E−(R7はアルキル又はアリールアルキル、E−はハロゲンイオン、等の陰イオン)を表す。但し、A、B、Gが同時にNである場合及びA、B、G、Q、Xが同時にCHである場合は除く。Y、Zはそれそれの環を表す。〕
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発名は、抗癌剤耐性克服剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌細胞の抗癌剤に対する耐性の発現が癌の薬物療法の上で大きな障害になっている。これまでに臨床において、同一抗癌剤による治療が反復されると次第にその効果が減弱し、他の薬剤に代えざるを得ないという経過をとることが一般的である。そのことから、癌細胞における抗癌剤耐性の存在が推定されてきた。基礎的にインビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)のいずれの方法でも、癌細胞が抗癌剤に対して耐性を獲得することはよく知られている。
抗癌剤による治療実験の初期には全体として薬剤感受性であった癌細胞集団も、治療のあとでは抗癌剤感受性細胞は死滅し、生き残った一部の抗癌剤低感受性細胞が増殖してくる。
【0003】
癌細胞が1つの抗癌剤に耐性になったとき、種類の異なる多くの抗癌剤に対しても耐性になることがよく起こる。これが多剤耐性(MDR)と呼ばれる現象である。多剤耐性細胞において、分子量約18万のp−グリコプロテイン(p−Glycoprotein)と呼ばれる抗癌剤耐性蛋白が見出されている(Tsuruo、T. : Jpn. J. Cancer. Res. 79: 285−296、1988)。
このp−グリコプロテインは抗癌剤の細胞膜輸送に関与して、いるいわゆる癌細胞からの抗癌剤汲み出し機構に関与していると理解されている。しかも、このp−グリコプロテインは、抗癌剤の種類に対する選択性が低いため、多くの抗癌剤を同じ機構によって細胞外に汲み出すため、癌細胞が多剤耐性を示すと考えられている。
p−グリコプロテインをコードするMDR遺伝子はヒトにおいてはMDR1とMRD2の遺伝子ファミリーを形成しているが、抗癌剤耐性に関与しているのはMDR1だけであり、MDR1の発現は臨床における薬剤対性とよく相関していることが明らかとなっている。
現在、癌の薬物治療において臨床上耐性が見られた場合、異なる作用機序を持った薬剤への変更あるいは併用治療が試みられている。しかし多くの場合癌細胞の多剤耐性のため治療が困難な状況に陥る。このような状況のもと、癌細胞の抗癌剤耐性に対し有効な抗癌剤耐性克服剤の開発が強く望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、副作用の少ない新しいタイプの抗癌剤耐性克服剤として有用な医薬を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の観点から、抗癌剤耐性を抑制する化合物を求めて種々の化合物を探索した結果、下記の式〔I〕で表されるアミノスチルバゾール誘導体(以下、本発明の化合物と称する。)が抗癌剤耐性克服作用を有することを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)式〔I〕
【化2】
[式中、R1およびR2は、同一又は異なって水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアシル、シアノ又は−COOR(Rは水素又は炭素数1〜6のアルキル)を表す。
R3、R4、R13およびR14は、同一又は異なって水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜6のアシル、炭素数1〜6のアシルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、炭素数1〜6のアシルアミノ、炭素数1〜6のアミノアルコキシ又はアルキル部分の炭素数が1〜6のモルホリノアルコキシを表す。また、R3とR13が一緒になってメチレンジオキシを表すか、若しくは、R4とR14が一緒になってメチレンジオキシを表すか、又は、R3とR13が一緒になってメチレンジオキシを表し、かつR4とR14が一緒になってメチレンジオキシを表してもよい。
R5は、▲1▼水素、▲2▼ハロゲン、アミノ、炭素数1〜6のモノアルキルアミノ、炭素数1〜6のジアルキルアミノ、モノホリノ、炭素数1〜6のアルコキシ若しくはヒドロキシで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、▲3▼ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル、▲4▼炭素数2〜6のアルキニル又は、▲5▼炭素数1〜6のアシルを表す。
R6は、▲1▼炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数7〜11のアロイル、又は、▲2▼炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲノアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリールスルホニルを表す。
Y、Zはそれぞれの環を表す。
A、B、G、Q及びXは、同一又は異なってN又はCHを表すか、又は、Y環のXとQのいずれか一方若しくはZ環のA、B、Gのどれかが、N→O又はN+−(R7)E−(R7は炭素数1〜6のアルキル又は炭素数7〜14のアリールアルキル、E−はハロゲンイオン、塩素酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンを表す)を表す。
但し、A、B、Gが同時にNである場合及びA、B、G、Q、Xが同時にCHである場合は除く。]
で表される化合物又はその塩を含有する抗癌剤耐性克服剤、
【0007】
(2)式〔I〕中、R1、R2が水素、R3、R4、R13、R14が同一又は異なって水素、炭素数1〜3のアシル、ハロゲン又はヒドロキシ、R5が水素、ヒドロキシで置換された炭素数1〜3のアルキル、又は、炭素数2〜4のアシル、R6が炭素数1〜3のアルコキシで置換されたフェニルスルホニルでかつY環がフェニル、Z環が4−ピリジル又はそのオキシドである(1)記載の抗癌剤耐性克服剤、
(3)式〔I〕中、R1、R2が水素、R3、R4、R13、R14が同一又は異なって水素、アセチル、フッ素又はヒドロキシ、R5が水素、ヒドロキシで置換されたエチル、又はアセチル、R6がメトキシで置換されたフェニルスルホニルで、かつ、Y環がフェニル、Z環が4−ピリジルである(1)記載の抗癌剤耐性克服剤、
(4)式〔I〕で示される化合物が(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕1−オキシド、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシドおよび(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジンから選択される化合物又はその塩である(1)記載の抗癌剤耐性克服剤、および
(5)(1)記載化合物又はその塩を有効成分とする再発癌治療剤、
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
式〔I〕で示される化合物は、抗癌剤として既に公知である。(国際公開公報95/27699)。しかし本発明は、式〔I〕で表される化合物に、抗癌作用とは作用機作が異なる抗癌剤耐性克服作用を見出した点に特徴がある。上記式〔I〕の化合物が、耐性の原因となるp−グリコプロテインの癌細胞膜上での発現を抑えることにより、抗癌剤耐性克服作用を発揮することは、これまで全く知られていない。
【0009】
以下、本発明を詳述する。
「抗癌剤耐性克服剤」とは、癌細胞の抗癌剤に対する耐性現象、又は、構造も作用機序も異なる抗癌剤に対して耐性となった癌細胞の多剤耐性(MDR)現象を抑制する薬剤をいう。なかでも、多剤耐性の原因となるp−グリコプロテインの癌細胞膜上の発現を抑制して、多剤耐性現象を抑制する薬剤をいう。癌細胞は、その種類を問わない。
式〔I〕における「アルキル」としては、直鎖又は分枝状の炭素数1〜6のもの、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、nーブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル等を挙げることができる。とりわけ、炭素数1〜3のものが好ましい。
「アルコキシ」としては、直鎖又は分枝状の炭素数1〜6のもの、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、nーブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペチルオキシ、イソペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ等を挙げることができる。とりわけ、炭素数1〜3のものが好ましい。
【0010】
「アルケニル」としては、直鎖又は分枝状の炭素数2〜6のもの、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、メタリル、プレニル、イソプレニル、1,1−ジメチルアリル等を挙げることができる。とりわけ、炭素数2〜4のものが好ましい。
「アルキニル」としては、直鎖又は分枝状の炭素数2〜6のもの、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、3−メチル−2−ブチニル等を挙げることができる。とりわけ、炭素数2〜4のものが好ましい。
「アシル」としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルカノイル、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル等を挙げることができ、トリフルオロアセチル等のようにハロゲンで置されていてもよい。とりわけ、炭素数2〜4のものが好ましい。
「アロイル」としては、炭素数7〜11のもの、例えば、ベンゾイル、α−ナフトイル、β−ナフトイル等を挙げることができる。とりわけ、ベンゾイルが好ましい。
アリールスルホニルの「アリール」としては、炭素数6〜10のもの、例えば、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル等を挙げることができる。とりわけ、フェニルが好ましい。
【0011】
かかるアロイル又はアリールスルホニルのアリールは、同一又は異なる一つ以上の、R6の定義において例示した置換基で置換されていてもよい。
「ハロゲン」としては、塩素、フッ素、臭素、沃素とを挙げることができる。
「Y」環としては、フェニル、ピリジル、ピラジニルを挙げることができるが、フェニルが好ましく、とりわけ、他に置換基が無いか、又はエテニル基がアミノ基に隣接した位置に置換基を有するフェニルが好ましい。
「Z」環としては、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル及びそれらのNーオキシドを挙げることができるが、ピリジルが好ましく、その中でもとりわけ、4−ピリジルが好ましく、とりわけ無置換又は3位置換の4−ピリジル及びそのN−オキシドが好ましい。
一般式〔I〕において、R1、R2が水素で、−NR5R6が4−(メトキシフェニル)スルホニル アミノ又はN−(ヒドロキシエチル)−N−(4−メトキシフェニル)スルホニル アミノで、R3及びR13が水素又はヒドロキシ、アセチルオキシ若しくはフッ素でZ環が4−ピリジル又ははそのN−オキシドで、かつ、R4及びR14が水素又はヒドロキシ若しくはメトキシでY環がフェニルである化合物が好ましい。
【0012】
本発明に係る化合物〔I〕の塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等の無機酸の塩、又は、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の塩を挙げることができる。又、R1、R2がカルボキシの場合の塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩等を挙げることができる。
本発明に係る化合物は、例えば、国際公開公報95/27699号に記載の方法により製造することができる。
本発明に係る化合物のうち、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン及びその塩酸塩(化合物1)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物2)、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物3)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物4)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物5)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物6)が好ましく、とりわけ、化合物1および2が好ましい。
【0013】
本化合物を抗癌剤耐性克服剤、又は再燃癌若しくは再発癌治療剤として投与する場合、本化合物はそのまま又は医薬的に許容される無毒性かつ不活性の担体中に、例えば、0.1〜99.5重量%、好ましくは0.5〜90重量%含有する医薬組成物として、人を含む哺乳動物に投与される。
担体としては、固形、半固形、又は液状の希釈剤、充填剤、及びその他の処方用の助剤一種以上が用いられる。医薬組成物は、投与単位形態で投与することが望ましい。本発明医薬組成物は、経口的又は非経口的(例、注射、経直腸)に投与することができる。これらの投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんである。例えば、経口投与が特に好ましい。
【0014】
抗癌剤耐性克服剤、又は再燃癌若しくは再発癌治療剤としての用量は、年齢、体重等の患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した上で調製することが望ましいが、通常は、成人に対して本発明の有効成分量として、経口投与の場合、1日あたり、0.1mg〜500mg/ヒトの範囲、好ましくは、1mg〜200mg/ヒトの範囲である。場合によっては、これ以下でも足りるし、又逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また1日数回に分割して投与することもできる。
【0015】
経口投与は固形又は液状の用量単位、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、舌下錠その他の剤型によって行うことができる。
末剤は本化合物を適当な細かさにすることにより製造される。散剤は本化合物を適当な細かさと成し、次いで同様に細かくした医薬用担体、例えば、澱粉、マンニトールのような可食性炭水化物その他と混合することにより製造される。必要に応じ風味剤、保存剤、分散剤、着色剤、香料その他のものを混ぜてもよい。
【0016】
カプセル剤は、まず上述のようにして粉末状となった末剤や散剤あるいは錠剤の項で述べるように顆粒化したものを、例えば、ゼラチンカプセルのようなカプセル外皮の中へ充填することにより製造される。滑沢剤や流動化剤、例えば、コロイド状のシリカ、タルク、ステリアン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールのようなものを粉末状態のものに混合し、然るのちに充填操作を行うこともできる。崩壊剤や可溶化剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤が摂取されたときの医薬の有効性を改善することができる。
また、本化合物の微粉末を植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、界面活性剤中に懸濁分散し、これをゼラチンシートで包んで軟カプセル剤とすることができる。
錠剤は、賦形剤を加えて粉末混合物を作り、顆粒化若しくはスラグ化し、次いで崩壊剤又は滑沢剤を加えたのち打錠することにより製造される。
【0017】
粉末混合物の製造には、適当に粉末化された物質を上述の希釈剤やベースと混合し、必要に応じ結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、溶解遅延化剤(例えば、パラフィン)、再吸収剤(例えば、四級塩)や吸着剤(例えば、ベントナイト、カオリン、リン酸ジカルシウム)を併用することができる。粉末混合物は、まず結合剤、例えば、シロップ、澱粉糊、アラビアゴム、セルロース溶液又は高分子物質溶液で湿らせ、撹拌混合し、これを乾燥、粉砕して顆粒とすることができる。このように粉末を顆粒化するかわりに、まず打錠機にかけたのち、得られる不完全な形態のスラグを破砕して顆粒にすることも可能である。このようにして作られる顆粒は、滑沢剤としてステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ミネラルオイルその他を添加することにより、互いに付着することを防ぐことができる。このように滑沢化された混合物を次いで打錠する。こうして製造した素錠にフィルムコーティングや糖衣を施すことができる。
【0018】
また、本化合物は、上述のように顆粒化やスラグ化の行程を経ることなく、流動性の不活性担体と混合したのちに直性打錠してもよい。シェラックの密閉被膜からなる透明又は半透明の保護被覆、糖や高分子材料の被覆、及び、ワックスよりなる磨上被覆の如きものを用いてもよい。他の経口投与剤型、例えば、溶液、シロップ、エリキシルもまたその一定量が薬物の一定量を含有するように容量単位形態にすることができる。シロップは、本化合物を適当な香味水溶液に溶解して製造され、又エリキシルは非毒性のアルコール性担体を用いることにより製造される。懸濁剤は、本化合物を非毒性担体中に分散させることにより処方される。可溶化剤や乳化剤(例えば、エトキシ化されたイソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールエステル類)、保存剤、風味賦与剤(例えば、ペパミント油、サッカリン)その他もまた必要に応じ添加することができる。
必要ならば、経口投与のための用量単位処方は、マイクロカプセル化してもよい。該処方はまた被覆をしたり、高分子やワックス等の中に埋め込んだりすることにより作用時間の延長や持続放出をもたらすこともできる。
【0019】
非経口投与として注射剤、坐剤等を用いることができる。皮下・筋肉又は静脈内注射用とした液状用量単位形態、例えば、溶液や懸濁剤の形態を用いることによって行うことができる。これらのものは、本化合物の一定量を、注射の目的に適合する非毒性の液状担体、例えば、水性や油性の触媒に懸濁し又は溶解し、次いで該懸濁液又は溶液を滅菌することにより製造される。注射液を等張にするために非毒性の塩や塩溶液を添加してもよい。更に安定剤、保存剤、乳化剤等を併用することもできる。
直腸投与は、本化合物を低融点の、水に可溶又は不溶の固体、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、半合成の油脂(例えば、ウイテプゾール/登録商標)、高級エステル類(例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル)及びそれらの混合物に溶解又は懸濁させて製造した坐剤等を用いることによって行うことができる。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例、比較例及び実験例をあげて本発明を具体的に説明する。
【0021】
実施例1
(E)−4−〔2−〔2−〔N−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物1)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−〔(p−メトキシフェニル)スルホニル〕アミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン1−オキシド(化合物2)、(E)−4−〔2−〔2−N−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物3)および(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物4)の抗癌剤耐性克服作用は以下に記載するように、肺癌細胞株SBC3/Pとそのアドリアマイシン耐性株であるSBC3/ADRを10%FCS添加ダルベッコ変法イーグル(DMEM)培地で培養し、フローサイトメーターでの解析あるいはMTT法による細胞増殖抑制作用を検討することによって確認することができる。
【0022】
実験例1
肺癌細胞株SBC3/Pとそのアドリアマイシン耐性株であるSBC3/ADRのそれぞれを前記培地で2日間培養し、p−グリコプロテインの発現をフローサイトメーターで比較した。すなわち、培養細胞を抗ヒトp−グリコプロテインモノクローナル抗体(コールター社、商品番号IM2370)で染色し、Becton−Dickenson社のフローサイトメーターで解析した。SBC3/ADRではSBC3/Pに比してp−グリコプロテインが高発現していた(図1)。
アドリアマイシン耐性細胞株SBC3/ADRの培地に化合物1を最終濃度50ng/mlになるように添加すると化合物1はp−グリコプロテインの発現を抑制し、この作用は時間経過と共に増強された(図2ー4)。
【0023】
実験例2
肺癌細胞株SBC3/Pとそのアドリアマイシン耐性株であるSBC3/ADRを96穴プレートに5X104個まいてアドリアマイシンまたは化合物1を培養液中に添加48時間後にMTTアッセイ法で生細胞数を計数し、アドリアマイシンまたは化合物1の増殖抑制活性検討した。SBC3/ADRは親株SBC3/Pに比べてアドリアマイシン50ng/mlによる増殖抑制は少なかった(図5)。
また化合物1はアドリアマイシン耐性細胞株SBC3/ADRにも肺癌細胞株SBC3/Pと同様の著明な増殖抑制効果を示した(図6)。
また、同じ方法により化合物3を最終濃度500ng/mlとなるように培地に添加し、その増殖抑制活性を検討したところ、化合物1とほぼ同等の細胞増殖抑制効果を示した。
【0024】
実験例3
SBC3/PとSBC3/ADRをそれぞれ96穴プレートに5X104個まき、化合物2(30mg/kg)を投与後1時間のマウスの血清を段階希釈して培養液中に添加した。コントロールとしては同量の血清を添加した。48時間後にMTTアッセイにて生細胞数を検討した。化合物2を投与したマウス血清はアドリアマイシン耐性細胞SBC3/ADRにもSBC3/Pと同様の著明な増殖抑制効果を示した(図7)。
SBC3/ADRをそれぞれ96穴プレートに5X104個まき、化合物2を30mg/kg、100mg/kg、および300mg/kg投与されたマウス血清を段階希釈して培養液中に添加した。コントロールとしては同量の血清を添加した。72時間後にMTTアッセイにて生細胞数を検討した。化合物2は投与量に応じてアドリアマイシン耐性細胞株SBC3/ADRの増殖抑制効果を示した(図8)。
また、これと同様の方法で、化合物4を1.5mg/kg、5mg/kg、15mg/kg投与したマウス血清を段階希釈して培養液中に添加したところ、化合物2と殆ど同様のSBC3/ADRの増殖抑制効果を示した。
【0025】
実施例2
急性毒素
5週令のCDF1雄性マウスを用いた。化合物2を0.5%メチルセルロースに懸濁し、経口ゾンデを用いて単回経口投与した。2週間後の死亡数よりLD50値プロビット(Probit)法で算出した。その結果、化合物2の毒素は非常に低かった。
以上の結果より本発明に係る化合物は、非常に毒性が低く、安全性が高いことが明らかである。
上記の実施例1および2の結果より、本発明に係る化合物が非常に優れた抗癌剤耐性克服作用を有し、且つ毒性も低いことが明らかとなった。
【0026】
上記成分の割合で秤量し、均一に混合した後、カプセル充填機を用いて2号カプセル220mgを充填し、硬カプセルを製造した。
【0027】
処方例2
上記成分を均一に混合し、練合した後に造粒機で直径0.7mmに造粒し、顆粒剤を製造した。
【0028】
【発明の効果】
本化合物は、強い多剤耐性克服作用を有し、毒性も低く、経口投与も可能であることから、抗癌剤耐性克服剤として安全に用いることができる。また、抗癌活性を合わせ持っているので臨床上大きな利点を有している。すなわち、他の抗癌剤と併用することにより、その抗癌剤に対する癌細胞の耐性化を抑えることにより耐性癌に対する併用効果を期待できる。また、抗癌剤の投与により耐性化した癌を感受性化させることができる。
すなわち、肺癌、乳癌、消化器癌、前立腺癌、血液癌等の各種の悪性腫瘍の化学治療において、抗癌剤耐性克服剤として癌に対する化学療法を確実なものとし、かつ、長期間、安全に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SBC3/P株とSBC3/ADR株におけるp−グリコプロテイン発現量
【図2】化合物1添加培地と無添加培地における添加6時間後のSBC3/ADR株のp−グリコプロテイン発現量
【図3】化合物1添加培地と無添加培地における添加12時間後のSBC3/ADR株のp−グリコプロテイン発現量
【図4】化合物1添加培地と無添加培地における添加24時間後のSBC3/ADR株のp−グリコプロテイン発現量
【図5】SBC3/P株とSBC3/ADR株に対するアドリアマイシンの細胞増殖抑制効果
【図6】SBC3/P株とSBC3/ADR株に対する化合物1の細胞増殖抑制効果
【図7】SBC3/P株とSBC3/ADR株に対する化合物2投与マウス血清の細胞増殖抑制効果
【図8】SBC3/ADR株に対する量の異なる化合物2投与マウス血清の細胞増殖抑制効果
【符号の説明】
図1の細実線:SBC3/P株
太実線:SBC3/ADR株
図2ー4の破線:化合物1無添加SBC3/ADR株
実線:化合物1添加SBC3/ADR株
図5の実線:SBC3/P株
破線:SBC3ADR株
図6の実線:SBC3/P株
破線:SBC/ADR株
図7の1:コントロール血清処理SBC3/P株
2:コントロール血清処理SBC3/ADR株
3:化合物2の30mg/kg投与マウス血清処理SBC3/P株
4:化合物2の30mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
図8の5:コントロール血清処理SBC3/ADR株
6:化合物2の30mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
7:化合物2の100mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
8:化合物2の300mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
【発明の属する技術分野】
本発名は、抗癌剤耐性克服剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌細胞の抗癌剤に対する耐性の発現が癌の薬物療法の上で大きな障害になっている。これまでに臨床において、同一抗癌剤による治療が反復されると次第にその効果が減弱し、他の薬剤に代えざるを得ないという経過をとることが一般的である。そのことから、癌細胞における抗癌剤耐性の存在が推定されてきた。基礎的にインビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)のいずれの方法でも、癌細胞が抗癌剤に対して耐性を獲得することはよく知られている。
抗癌剤による治療実験の初期には全体として薬剤感受性であった癌細胞集団も、治療のあとでは抗癌剤感受性細胞は死滅し、生き残った一部の抗癌剤低感受性細胞が増殖してくる。
【0003】
癌細胞が1つの抗癌剤に耐性になったとき、種類の異なる多くの抗癌剤に対しても耐性になることがよく起こる。これが多剤耐性(MDR)と呼ばれる現象である。多剤耐性細胞において、分子量約18万のp−グリコプロテイン(p−Glycoprotein)と呼ばれる抗癌剤耐性蛋白が見出されている(Tsuruo、T. : Jpn. J. Cancer. Res. 79: 285−296、1988)。
このp−グリコプロテインは抗癌剤の細胞膜輸送に関与して、いるいわゆる癌細胞からの抗癌剤汲み出し機構に関与していると理解されている。しかも、このp−グリコプロテインは、抗癌剤の種類に対する選択性が低いため、多くの抗癌剤を同じ機構によって細胞外に汲み出すため、癌細胞が多剤耐性を示すと考えられている。
p−グリコプロテインをコードするMDR遺伝子はヒトにおいてはMDR1とMRD2の遺伝子ファミリーを形成しているが、抗癌剤耐性に関与しているのはMDR1だけであり、MDR1の発現は臨床における薬剤対性とよく相関していることが明らかとなっている。
現在、癌の薬物治療において臨床上耐性が見られた場合、異なる作用機序を持った薬剤への変更あるいは併用治療が試みられている。しかし多くの場合癌細胞の多剤耐性のため治療が困難な状況に陥る。このような状況のもと、癌細胞の抗癌剤耐性に対し有効な抗癌剤耐性克服剤の開発が強く望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、副作用の少ない新しいタイプの抗癌剤耐性克服剤として有用な医薬を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の観点から、抗癌剤耐性を抑制する化合物を求めて種々の化合物を探索した結果、下記の式〔I〕で表されるアミノスチルバゾール誘導体(以下、本発明の化合物と称する。)が抗癌剤耐性克服作用を有することを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)式〔I〕
【化2】
[式中、R1およびR2は、同一又は異なって水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアシル、シアノ又は−COOR(Rは水素又は炭素数1〜6のアルキル)を表す。
R3、R4、R13およびR14は、同一又は異なって水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜6のアシル、炭素数1〜6のアシルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、炭素数1〜6のアシルアミノ、炭素数1〜6のアミノアルコキシ又はアルキル部分の炭素数が1〜6のモルホリノアルコキシを表す。また、R3とR13が一緒になってメチレンジオキシを表すか、若しくは、R4とR14が一緒になってメチレンジオキシを表すか、又は、R3とR13が一緒になってメチレンジオキシを表し、かつR4とR14が一緒になってメチレンジオキシを表してもよい。
R5は、▲1▼水素、▲2▼ハロゲン、アミノ、炭素数1〜6のモノアルキルアミノ、炭素数1〜6のジアルキルアミノ、モノホリノ、炭素数1〜6のアルコキシ若しくはヒドロキシで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、▲3▼ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル、▲4▼炭素数2〜6のアルキニル又は、▲5▼炭素数1〜6のアシルを表す。
R6は、▲1▼炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数7〜11のアロイル、又は、▲2▼炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲノアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリールスルホニルを表す。
Y、Zはそれぞれの環を表す。
A、B、G、Q及びXは、同一又は異なってN又はCHを表すか、又は、Y環のXとQのいずれか一方若しくはZ環のA、B、Gのどれかが、N→O又はN+−(R7)E−(R7は炭素数1〜6のアルキル又は炭素数7〜14のアリールアルキル、E−はハロゲンイオン、塩素酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンを表す)を表す。
但し、A、B、Gが同時にNである場合及びA、B、G、Q、Xが同時にCHである場合は除く。]
で表される化合物又はその塩を含有する抗癌剤耐性克服剤、
【0007】
(2)式〔I〕中、R1、R2が水素、R3、R4、R13、R14が同一又は異なって水素、炭素数1〜3のアシル、ハロゲン又はヒドロキシ、R5が水素、ヒドロキシで置換された炭素数1〜3のアルキル、又は、炭素数2〜4のアシル、R6が炭素数1〜3のアルコキシで置換されたフェニルスルホニルでかつY環がフェニル、Z環が4−ピリジル又はそのオキシドである(1)記載の抗癌剤耐性克服剤、
(3)式〔I〕中、R1、R2が水素、R3、R4、R13、R14が同一又は異なって水素、アセチル、フッ素又はヒドロキシ、R5が水素、ヒドロキシで置換されたエチル、又はアセチル、R6がメトキシで置換されたフェニルスルホニルで、かつ、Y環がフェニル、Z環が4−ピリジルである(1)記載の抗癌剤耐性克服剤、
(4)式〔I〕で示される化合物が(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕1−オキシド、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシドおよび(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジンから選択される化合物又はその塩である(1)記載の抗癌剤耐性克服剤、および
(5)(1)記載化合物又はその塩を有効成分とする再発癌治療剤、
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
式〔I〕で示される化合物は、抗癌剤として既に公知である。(国際公開公報95/27699)。しかし本発明は、式〔I〕で表される化合物に、抗癌作用とは作用機作が異なる抗癌剤耐性克服作用を見出した点に特徴がある。上記式〔I〕の化合物が、耐性の原因となるp−グリコプロテインの癌細胞膜上での発現を抑えることにより、抗癌剤耐性克服作用を発揮することは、これまで全く知られていない。
【0009】
以下、本発明を詳述する。
「抗癌剤耐性克服剤」とは、癌細胞の抗癌剤に対する耐性現象、又は、構造も作用機序も異なる抗癌剤に対して耐性となった癌細胞の多剤耐性(MDR)現象を抑制する薬剤をいう。なかでも、多剤耐性の原因となるp−グリコプロテインの癌細胞膜上の発現を抑制して、多剤耐性現象を抑制する薬剤をいう。癌細胞は、その種類を問わない。
式〔I〕における「アルキル」としては、直鎖又は分枝状の炭素数1〜6のもの、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、nーブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル等を挙げることができる。とりわけ、炭素数1〜3のものが好ましい。
「アルコキシ」としては、直鎖又は分枝状の炭素数1〜6のもの、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、nーブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペチルオキシ、イソペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ等を挙げることができる。とりわけ、炭素数1〜3のものが好ましい。
【0010】
「アルケニル」としては、直鎖又は分枝状の炭素数2〜6のもの、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、メタリル、プレニル、イソプレニル、1,1−ジメチルアリル等を挙げることができる。とりわけ、炭素数2〜4のものが好ましい。
「アルキニル」としては、直鎖又は分枝状の炭素数2〜6のもの、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、3−メチル−2−ブチニル等を挙げることができる。とりわけ、炭素数2〜4のものが好ましい。
「アシル」としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルカノイル、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル等を挙げることができ、トリフルオロアセチル等のようにハロゲンで置されていてもよい。とりわけ、炭素数2〜4のものが好ましい。
「アロイル」としては、炭素数7〜11のもの、例えば、ベンゾイル、α−ナフトイル、β−ナフトイル等を挙げることができる。とりわけ、ベンゾイルが好ましい。
アリールスルホニルの「アリール」としては、炭素数6〜10のもの、例えば、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル等を挙げることができる。とりわけ、フェニルが好ましい。
【0011】
かかるアロイル又はアリールスルホニルのアリールは、同一又は異なる一つ以上の、R6の定義において例示した置換基で置換されていてもよい。
「ハロゲン」としては、塩素、フッ素、臭素、沃素とを挙げることができる。
「Y」環としては、フェニル、ピリジル、ピラジニルを挙げることができるが、フェニルが好ましく、とりわけ、他に置換基が無いか、又はエテニル基がアミノ基に隣接した位置に置換基を有するフェニルが好ましい。
「Z」環としては、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピラジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル及びそれらのNーオキシドを挙げることができるが、ピリジルが好ましく、その中でもとりわけ、4−ピリジルが好ましく、とりわけ無置換又は3位置換の4−ピリジル及びそのN−オキシドが好ましい。
一般式〔I〕において、R1、R2が水素で、−NR5R6が4−(メトキシフェニル)スルホニル アミノ又はN−(ヒドロキシエチル)−N−(4−メトキシフェニル)スルホニル アミノで、R3及びR13が水素又はヒドロキシ、アセチルオキシ若しくはフッ素でZ環が4−ピリジル又ははそのN−オキシドで、かつ、R4及びR14が水素又はヒドロキシ若しくはメトキシでY環がフェニルである化合物が好ましい。
【0012】
本発明に係る化合物〔I〕の塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等の無機酸の塩、又は、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の塩を挙げることができる。又、R1、R2がカルボキシの場合の塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩等を挙げることができる。
本発明に係る化合物は、例えば、国際公開公報95/27699号に記載の方法により製造することができる。
本発明に係る化合物のうち、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン及びその塩酸塩(化合物1)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物2)、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物3)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物4)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物5)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物6)が好ましく、とりわけ、化合物1および2が好ましい。
【0013】
本化合物を抗癌剤耐性克服剤、又は再燃癌若しくは再発癌治療剤として投与する場合、本化合物はそのまま又は医薬的に許容される無毒性かつ不活性の担体中に、例えば、0.1〜99.5重量%、好ましくは0.5〜90重量%含有する医薬組成物として、人を含む哺乳動物に投与される。
担体としては、固形、半固形、又は液状の希釈剤、充填剤、及びその他の処方用の助剤一種以上が用いられる。医薬組成物は、投与単位形態で投与することが望ましい。本発明医薬組成物は、経口的又は非経口的(例、注射、経直腸)に投与することができる。これらの投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんである。例えば、経口投与が特に好ましい。
【0014】
抗癌剤耐性克服剤、又は再燃癌若しくは再発癌治療剤としての用量は、年齢、体重等の患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した上で調製することが望ましいが、通常は、成人に対して本発明の有効成分量として、経口投与の場合、1日あたり、0.1mg〜500mg/ヒトの範囲、好ましくは、1mg〜200mg/ヒトの範囲である。場合によっては、これ以下でも足りるし、又逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また1日数回に分割して投与することもできる。
【0015】
経口投与は固形又は液状の用量単位、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、舌下錠その他の剤型によって行うことができる。
末剤は本化合物を適当な細かさにすることにより製造される。散剤は本化合物を適当な細かさと成し、次いで同様に細かくした医薬用担体、例えば、澱粉、マンニトールのような可食性炭水化物その他と混合することにより製造される。必要に応じ風味剤、保存剤、分散剤、着色剤、香料その他のものを混ぜてもよい。
【0016】
カプセル剤は、まず上述のようにして粉末状となった末剤や散剤あるいは錠剤の項で述べるように顆粒化したものを、例えば、ゼラチンカプセルのようなカプセル外皮の中へ充填することにより製造される。滑沢剤や流動化剤、例えば、コロイド状のシリカ、タルク、ステリアン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールのようなものを粉末状態のものに混合し、然るのちに充填操作を行うこともできる。崩壊剤や可溶化剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤が摂取されたときの医薬の有効性を改善することができる。
また、本化合物の微粉末を植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、界面活性剤中に懸濁分散し、これをゼラチンシートで包んで軟カプセル剤とすることができる。
錠剤は、賦形剤を加えて粉末混合物を作り、顆粒化若しくはスラグ化し、次いで崩壊剤又は滑沢剤を加えたのち打錠することにより製造される。
【0017】
粉末混合物の製造には、適当に粉末化された物質を上述の希釈剤やベースと混合し、必要に応じ結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、溶解遅延化剤(例えば、パラフィン)、再吸収剤(例えば、四級塩)や吸着剤(例えば、ベントナイト、カオリン、リン酸ジカルシウム)を併用することができる。粉末混合物は、まず結合剤、例えば、シロップ、澱粉糊、アラビアゴム、セルロース溶液又は高分子物質溶液で湿らせ、撹拌混合し、これを乾燥、粉砕して顆粒とすることができる。このように粉末を顆粒化するかわりに、まず打錠機にかけたのち、得られる不完全な形態のスラグを破砕して顆粒にすることも可能である。このようにして作られる顆粒は、滑沢剤としてステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ミネラルオイルその他を添加することにより、互いに付着することを防ぐことができる。このように滑沢化された混合物を次いで打錠する。こうして製造した素錠にフィルムコーティングや糖衣を施すことができる。
【0018】
また、本化合物は、上述のように顆粒化やスラグ化の行程を経ることなく、流動性の不活性担体と混合したのちに直性打錠してもよい。シェラックの密閉被膜からなる透明又は半透明の保護被覆、糖や高分子材料の被覆、及び、ワックスよりなる磨上被覆の如きものを用いてもよい。他の経口投与剤型、例えば、溶液、シロップ、エリキシルもまたその一定量が薬物の一定量を含有するように容量単位形態にすることができる。シロップは、本化合物を適当な香味水溶液に溶解して製造され、又エリキシルは非毒性のアルコール性担体を用いることにより製造される。懸濁剤は、本化合物を非毒性担体中に分散させることにより処方される。可溶化剤や乳化剤(例えば、エトキシ化されたイソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールエステル類)、保存剤、風味賦与剤(例えば、ペパミント油、サッカリン)その他もまた必要に応じ添加することができる。
必要ならば、経口投与のための用量単位処方は、マイクロカプセル化してもよい。該処方はまた被覆をしたり、高分子やワックス等の中に埋め込んだりすることにより作用時間の延長や持続放出をもたらすこともできる。
【0019】
非経口投与として注射剤、坐剤等を用いることができる。皮下・筋肉又は静脈内注射用とした液状用量単位形態、例えば、溶液や懸濁剤の形態を用いることによって行うことができる。これらのものは、本化合物の一定量を、注射の目的に適合する非毒性の液状担体、例えば、水性や油性の触媒に懸濁し又は溶解し、次いで該懸濁液又は溶液を滅菌することにより製造される。注射液を等張にするために非毒性の塩や塩溶液を添加してもよい。更に安定剤、保存剤、乳化剤等を併用することもできる。
直腸投与は、本化合物を低融点の、水に可溶又は不溶の固体、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、半合成の油脂(例えば、ウイテプゾール/登録商標)、高級エステル類(例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル)及びそれらの混合物に溶解又は懸濁させて製造した坐剤等を用いることによって行うことができる。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例、比較例及び実験例をあげて本発明を具体的に説明する。
【0021】
実施例1
(E)−4−〔2−〔2−〔N−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物1)、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−〔(p−メトキシフェニル)スルホニル〕アミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン1−オキシド(化合物2)、(E)−4−〔2−〔2−N−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド(化合物3)および(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン(化合物4)の抗癌剤耐性克服作用は以下に記載するように、肺癌細胞株SBC3/Pとそのアドリアマイシン耐性株であるSBC3/ADRを10%FCS添加ダルベッコ変法イーグル(DMEM)培地で培養し、フローサイトメーターでの解析あるいはMTT法による細胞増殖抑制作用を検討することによって確認することができる。
【0022】
実験例1
肺癌細胞株SBC3/Pとそのアドリアマイシン耐性株であるSBC3/ADRのそれぞれを前記培地で2日間培養し、p−グリコプロテインの発現をフローサイトメーターで比較した。すなわち、培養細胞を抗ヒトp−グリコプロテインモノクローナル抗体(コールター社、商品番号IM2370)で染色し、Becton−Dickenson社のフローサイトメーターで解析した。SBC3/ADRではSBC3/Pに比してp−グリコプロテインが高発現していた(図1)。
アドリアマイシン耐性細胞株SBC3/ADRの培地に化合物1を最終濃度50ng/mlになるように添加すると化合物1はp−グリコプロテインの発現を抑制し、この作用は時間経過と共に増強された(図2ー4)。
【0023】
実験例2
肺癌細胞株SBC3/Pとそのアドリアマイシン耐性株であるSBC3/ADRを96穴プレートに5X104個まいてアドリアマイシンまたは化合物1を培養液中に添加48時間後にMTTアッセイ法で生細胞数を計数し、アドリアマイシンまたは化合物1の増殖抑制活性検討した。SBC3/ADRは親株SBC3/Pに比べてアドリアマイシン50ng/mlによる増殖抑制は少なかった(図5)。
また化合物1はアドリアマイシン耐性細胞株SBC3/ADRにも肺癌細胞株SBC3/Pと同様の著明な増殖抑制効果を示した(図6)。
また、同じ方法により化合物3を最終濃度500ng/mlとなるように培地に添加し、その増殖抑制活性を検討したところ、化合物1とほぼ同等の細胞増殖抑制効果を示した。
【0024】
実験例3
SBC3/PとSBC3/ADRをそれぞれ96穴プレートに5X104個まき、化合物2(30mg/kg)を投与後1時間のマウスの血清を段階希釈して培養液中に添加した。コントロールとしては同量の血清を添加した。48時間後にMTTアッセイにて生細胞数を検討した。化合物2を投与したマウス血清はアドリアマイシン耐性細胞SBC3/ADRにもSBC3/Pと同様の著明な増殖抑制効果を示した(図7)。
SBC3/ADRをそれぞれ96穴プレートに5X104個まき、化合物2を30mg/kg、100mg/kg、および300mg/kg投与されたマウス血清を段階希釈して培養液中に添加した。コントロールとしては同量の血清を添加した。72時間後にMTTアッセイにて生細胞数を検討した。化合物2は投与量に応じてアドリアマイシン耐性細胞株SBC3/ADRの増殖抑制効果を示した(図8)。
また、これと同様の方法で、化合物4を1.5mg/kg、5mg/kg、15mg/kg投与したマウス血清を段階希釈して培養液中に添加したところ、化合物2と殆ど同様のSBC3/ADRの増殖抑制効果を示した。
【0025】
実施例2
急性毒素
5週令のCDF1雄性マウスを用いた。化合物2を0.5%メチルセルロースに懸濁し、経口ゾンデを用いて単回経口投与した。2週間後の死亡数よりLD50値プロビット(Probit)法で算出した。その結果、化合物2の毒素は非常に低かった。
以上の結果より本発明に係る化合物は、非常に毒性が低く、安全性が高いことが明らかである。
上記の実施例1および2の結果より、本発明に係る化合物が非常に優れた抗癌剤耐性克服作用を有し、且つ毒性も低いことが明らかとなった。
【0026】
上記成分の割合で秤量し、均一に混合した後、カプセル充填機を用いて2号カプセル220mgを充填し、硬カプセルを製造した。
【0027】
処方例2
上記成分を均一に混合し、練合した後に造粒機で直径0.7mmに造粒し、顆粒剤を製造した。
【0028】
【発明の効果】
本化合物は、強い多剤耐性克服作用を有し、毒性も低く、経口投与も可能であることから、抗癌剤耐性克服剤として安全に用いることができる。また、抗癌活性を合わせ持っているので臨床上大きな利点を有している。すなわち、他の抗癌剤と併用することにより、その抗癌剤に対する癌細胞の耐性化を抑えることにより耐性癌に対する併用効果を期待できる。また、抗癌剤の投与により耐性化した癌を感受性化させることができる。
すなわち、肺癌、乳癌、消化器癌、前立腺癌、血液癌等の各種の悪性腫瘍の化学治療において、抗癌剤耐性克服剤として癌に対する化学療法を確実なものとし、かつ、長期間、安全に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SBC3/P株とSBC3/ADR株におけるp−グリコプロテイン発現量
【図2】化合物1添加培地と無添加培地における添加6時間後のSBC3/ADR株のp−グリコプロテイン発現量
【図3】化合物1添加培地と無添加培地における添加12時間後のSBC3/ADR株のp−グリコプロテイン発現量
【図4】化合物1添加培地と無添加培地における添加24時間後のSBC3/ADR株のp−グリコプロテイン発現量
【図5】SBC3/P株とSBC3/ADR株に対するアドリアマイシンの細胞増殖抑制効果
【図6】SBC3/P株とSBC3/ADR株に対する化合物1の細胞増殖抑制効果
【図7】SBC3/P株とSBC3/ADR株に対する化合物2投与マウス血清の細胞増殖抑制効果
【図8】SBC3/ADR株に対する量の異なる化合物2投与マウス血清の細胞増殖抑制効果
【符号の説明】
図1の細実線:SBC3/P株
太実線:SBC3/ADR株
図2ー4の破線:化合物1無添加SBC3/ADR株
実線:化合物1添加SBC3/ADR株
図5の実線:SBC3/P株
破線:SBC3ADR株
図6の実線:SBC3/P株
破線:SBC/ADR株
図7の1:コントロール血清処理SBC3/P株
2:コントロール血清処理SBC3/ADR株
3:化合物2の30mg/kg投与マウス血清処理SBC3/P株
4:化合物2の30mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
図8の5:コントロール血清処理SBC3/ADR株
6:化合物2の30mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
7:化合物2の100mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
8:化合物2の300mg/kg投与マウス血清処理SBC3/ADR株
Claims (5)
- 式〔I〕
R3、R4、R13およびR14は、同一又は異なって水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜6のアシル、炭素数1〜6のアシルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、炭素数1〜6のアシルアミノ、炭素数1〜6のアミノアルコキシ又はアルキル部分の炭素数が1〜6のモルホリノアルコキシを表す。また、R3とR13が一緒になってメチレンジオキシを表すか、若しくは、R4とR14が一緒になってメチレンジオキシを表すか、又は、R3とR13が一緒になってメチレンジオキシを表し、かつR4とR14が一緒になってメチレンジオキシを表してもよい。
R5は、▲1▼水素、▲2▼ハロゲン、アミノ、炭素数1〜6のモノアルキルアミノ、炭素数1〜6のジアルキルアミノ、モノホリノ、炭素数1〜6のアルコキシ若しくはヒドロキシで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、▲3▼ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル、▲4▼炭素数2〜6のアルキニル又は、▲5▼炭素数1〜6のアシルを表す。
R6は、▲1▼炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数7〜11のアロイル、又は、▲2▼炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲノアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリールスルホニルを表す。
Y、Zはそれぞれの環を表す。
A、B、G、Q及びXは、同一又は異なってN又はCHを表すか、又は、Y環のXとQのいずれか一方若しくはZ環のA、B、Gのどれかが、N→O又はN+−(R7)E−(R7は炭素数1〜6のアルキル又は炭素数7〜14のアリールアルキル、E−はハロゲンイオン、塩素酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンを表す)を表す。
但し、A、B、Gが同時にNである場合及びA、B、G、Q、Xが同時にCHである場合は除く。]
で表される化合物又はその塩を含有する抗癌剤耐性克服剤。 - 式〔I〕中、R1、R2が水素、R3、R4、R13、R14が同一又は異なって水素、炭素数1〜3のアシル、ハロゲン又はヒドロキシ、R5が水素、ヒドロキシで置換された炭素数1〜3のアルキル、又は、炭素数2〜4のアシル、R6が炭素数1〜3のアルコキシで置換されたフェニルスルホニルでかつY環がフェニル、Z環が4−ピリジン又はそのオキシドである請求項1記載の抗癌剤耐性克服剤。
- 式〔I〕中、R1、R2が水素、R3、R4、R13、R14が同一又は異なって水素、アセチル、フッ素又はヒドロキシ、R5が水素、ヒドロキシで置換されたエチル、又はアセチル、R6がメトキシで置換されたフェニルスルホニルで、かつ、Y環がフェニル、Z環が4−ピリジルである請求項1記載の抗癌剤耐性克服剤。
- 式〔I〕で示される化合物が(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン、(E)−4−〔2−〔2−〔(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕1−オキシド、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシド、(E)−4−〔2−〔2−〔N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン、(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジン 1−オキシドおよび(E)−4−〔2−〔2−〔N−アセチル−N−(p−メトキシフェニル)スルホニルアミノ〕フェニル〕エテニル〕ピリジンから選択された化合物又はその塩である請求項1記載の抗癌剤耐性克服剤。
- 請求項1記載化合物又はその塩を有効成分とする再発癌治療剤。
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