JP2004358410A - 活性汚泥処理システムの膜分離装置及びその膜分離装置を備えた活性汚泥処理システム並びに活性汚泥処理システムの処理能力増強方法 - Google Patents
活性汚泥処理システムの膜分離装置及びその膜分離装置を備えた活性汚泥処理システム並びに活性汚泥処理システムの処理能力増強方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】活性汚泥処理システムの処理能力増大を図る場合に、そのシステムにおける処理汚泥に対する固液分離の能力を増大させるための構成を簡単な作業で構築可能にする。
【解決手段】生物反応槽1における生物反応処理後の処理汚泥を、膜エレメントで濾過して処理水を得るようにした槽外設置型の膜モジュール2に対し、膜エレメントを収容しているエレメント収容部23のみを交換可能な構成とする。予め、エレメント収容部23として長さの異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じてエレメント収容部23を選択的に交換できるようにする。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)できる。
【選択図】 図1
【解決手段】生物反応槽1における生物反応処理後の処理汚泥を、膜エレメントで濾過して処理水を得るようにした槽外設置型の膜モジュール2に対し、膜エレメントを収容しているエレメント収容部23のみを交換可能な構成とする。予め、エレメント収容部23として長さの異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じてエレメント収容部23を選択的に交換できるようにする。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所謂活性汚泥プロセスによって下水や産業廃水等の処理を行う水処理システム(活性汚泥処理システム)に適用される膜分離装置及びその膜分離装置を備えた活性汚泥処理システム並びに活性汚泥処理システムの処理能力増強方法に係る。特に、本発明は、水処理システムの処理能力を増大させるに際し、処理汚泥を固液分離する能力を容易に増大させるための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、下水や産業廃水等の汚水を処理する活性汚泥処理システムとしては種々のものが提案されている。その一例として、下記の特許文献1に開示されているように、脱窒槽及び硝化槽を備え、脱窒槽における嫌気工程及び硝化槽における好気工程により汚水の脱窒や脱リンを行う嫌気好気活性汚泥法を利用した水処理システムが知られている。
【0003】
この水処理システムでは、汚水中に含まれる窒素化合物が好気工程において活性汚泥により酸化されて硝酸性窒素になり、その後、嫌気工程によって硝酸性窒素から酸素を奪って窒素ガスを発生させ、これによって脱窒を行う。また、嫌気工程において活性汚泥からリンが一旦放出され、その後、好気工程によって活性汚泥にリンを過剰採取させることにより脱リンを行う。
【0004】
また、この処理システムでは、上記活性汚泥による生物反応処理によって流入水(汚水)が浄化された後の処理汚泥は最終沈殿槽へ流出される。そして、この最終沈殿槽の内部において処理汚泥中の固形分を沈殿させることによって処理水と汚泥とが分離され、上澄み水となった処理水をシステムから排出する一方、最終沈殿槽内に沈殿した汚泥を引き抜いて上記脱窒槽及び硝化槽へ返送するようにしている。
【0005】
ところで、この種の活性汚泥処理システムの一例として、下記の特許文献2に開示されているように、浸漬型分離膜ユニットを反応槽の水中に設置(浸漬)させたものが知られている。この浸漬型分離膜ユニットは、平板状の多数の膜エレメントを内装している。各膜エレメントは、例えば対向する2枚の濾過板(微多孔性膜等により構成されている)を備えこれら濾過板同士の間の空間に透過水チューブが接続されている。そして、膜エレメントの外部から濾過板を通して膜エレメント内部に透過された処理水を透過水チューブから抜き出すようになっている。このため、この浸漬型分離膜ユニットを活性汚泥処理システムに備えさせた場合には、上記最終沈殿槽が不要となってシステム全体のシンプル化及びコンパクト化を図ることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−1189号公報
【特許文献2】
特開平8−267064号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した活性汚泥処理システムは、一般に、工場や汚水処理施設に設置されるが、工場規模の拡大や汚水処理施設の拡張が行われた場合には、この活性汚泥処理システムの処理能力の増大を図る必要がある。
【0008】
通常、活性汚泥処理システムの処理能力を増大させるための手段としては、生物反応槽(脱窒槽、硝化槽)を大型化することになる。また、これに応じて処理汚泥を固液分離する能力も増大させる必要がある。従って、上記特許文献2に開示されている技術(浸漬型分離膜ユニットを生物反応槽の水中に浸漬させたシステム)にあっては、それまで使用していた浸漬型分離膜ユニットを大型のものに交換する必要がある。
【0009】
しかしながら、この浸漬型分離膜ユニットの交換作業は極めて煩雑である。何故なら、この浸漬型分離膜ユニットを交換しようとする場合、先ず、生物反応槽内の水を一旦抜き取り、既存の浸漬型分離膜ユニットの固定を解除(アンカボルトの取り外し作業)を行い、この浸漬型分離膜ユニットをクレーン等で吊り上げて生物反応槽から取り出す。その後、新たな大型の浸漬型分離膜ユニットをクレーン等で吊り上げて生物反応槽内部に搬送し、これを生物反応槽の底面にアンカボルトによって固定した後に、再び、生物反応槽内へ水を供給し、その後に運転を開始させるといった作業が必要であるためである。尚、既存の浸漬型分離膜ユニットを取り外すことなく、新たな浸漬型分離膜ユニットを追加設置する場合もあるが、この場合にあっても生物反応槽内の水を一旦抜き取る必要がある。
【0010】
更に、この新たな浸漬型分離膜ユニットに対して透過水チューブを接続したり、この透過水チューブを処理水槽へ接続するといった新たな配管接続作業も必要であり、これも浸漬型分離膜ユニットの交換作業の煩雑化の原因である。
【0011】
このような作業が必要であるため浸漬型分離膜ユニットの交換が完了するまでには長い期間を要し、その間、システムを停止させねばならず、場合によっては工場や汚水処理施設の稼働を長期間に亘って停止せねばならないといった課題があった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、活性汚泥処理システムの処理能力の増大を図る場合に、そのシステムにおける処理汚泥の固液分離の能力を増大させるための構成を簡単な作業で構築することが可能な膜分離装置及びその膜分離装置を備えた活性汚泥処理システム並びに活性汚泥処理システムの処理能力増強方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、生物反応槽における生物反応処理後の処理汚泥を、槽外に配設した膜エレメントで濾過して処理水を得るようにした膜分離装置に対し、膜エレメントの内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。また、膜分離装置のうち上記膜エレメントを収容している装置本体のみを交換可能な構成としている。つまり、予め、装置本体として長さの異なる、つまり固液分離能力の異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じて装置本体を選択的に交換できるようにしている。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)できるようにしている。また、この膜エレメントに対し、処理水の濾過方向とは逆方向に洗浄水を定期的に通過させることにより膜エレメントに付着している固形物を剥離除去するようにしている。
【0014】
−解決手段−
具体的には、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を固液分離するための膜分離装置を対象とする。この膜分離装置に対し、生物反応槽の外部に設置され且つ膜エレメントを収容した装置本体を備えさせる。また、この装置本体が、生物反応槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成するようにし、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るように構成している。そして、上記装置本体として、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類を用意しておき、処理汚泥の固液分離に要求される能力に応じて装置本体が選択的に交換可能な構成としている。
【0015】
より具体的な構成としては以下のものが掲げられる。先ず、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を固液分離するための膜分離装置を対象とする。この膜分離装置に対し、装置本体、導入部材、導出部材を備えさせる。装置本体は、生物反応槽の外部に設置され且つ膜エレメントを収容している。導入部材は、装置本体の一端に連結されて膜エレメントの一次側に汚泥を導入する。導出部材は、装置本体の他端に連結されて膜エレメントの一次側から汚泥を導出する。そして、これら装置本体、導入部材、導出部材が、生物反応槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成するようにし、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るように構成している。そして、上記装置本体として、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類を用意しておき、処理汚泥の固液分離に要求される能力に応じて装置本体が選択的に交換可能となるように、装置本体を導入部材及び導出部材に対してそれぞれ着脱可能に連結している。
【0016】
上記連結構造としては、装置本体の一端と導入部材との間、及び装置本体の他端と導出部材との間が、それぞれ連結部材によって着脱可能に連結されている。
【0017】
これらの特定事項により、今、ある長さの装置本体を備えた膜分離装置が活性汚泥処理システムに適用されている場合に、この活性汚泥処理システムの処理能力を増大させるのに伴って処理汚泥を固液分離する能力も増大させる必要が生じた場合には、先ず、現在適用している膜分離装置から装置本体のみを取り外す。そして、予め用意しておいた汚泥流路長さの長い装置本体を新たに膜分離装置に装着する。つまり、この新たな装置本体の各端部を導入部材及び導出部材にそれぞれ連結する。この作業のみで処理汚泥を固液分離する能力が増大することになる。
【0018】
従来の浸漬型分離膜ユニットにおいて固液分離能力を増大させるべくユニットを交換する場合には、旧ユニットを取り外す際に生物反応槽内の水の抜き取り作業やアンカボルトの取り外し作業が必要であり、また、新ユニットを取り付ける際にアンカボルトによる固定作業や生物反応槽内へ水の供給作業が必要であり、極めて煩雑な作業を要していた。これに対し、本解決手段によれば槽外設置されている膜分離装置の装置本体を交換するのみで済み、上記生物反応槽内の水の抜き取り作業などは必要ない。このため、簡単な作業で且つ迅速に固液分離能力を増大させるための構成を構築することができる。
【0019】
また、本解決手段に係る膜分離装置による処理汚泥の固液分離動作としては、先ず、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥は、装置本体と生物反応槽との間で構成される循環回路を循環する。つまり、生物反応槽から取り出された処理汚泥は、装置本体に供給され、一部の汚泥については後述する濾過が行われた後、生物反応槽に戻される。循環回路ではこの循環動作が繰り返される。
【0020】
装置本体では、生物反応槽から供給された処理汚泥の一部が膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過され、これによって、この処理汚泥の一部が固液分離されて処理水が得られる。つまり、上記循環回路での循環動作が繰り返されながら装置本体では処理水が順次得られていく。
【0021】
このように、膜エレメントの一次側では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れているため、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメントの一次側の面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメントに付着することなしに生物反応槽に戻される。このため、膜エレメントの一次側の面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、一般的な浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。浸漬型分離膜ユニットは、膜エレメントの一次側では汚泥が殆ど滞留した状態であるため、処理水が抽出された後の汚泥は押し流されることなしに膜エレメントの一次側の面に付着してしまい、汚泥の濾過を開始した後、短時間のうちに膜エレメントに大量の汚泥が付着してしまって、濾過能力が急激に低下してしまっていた。
【0022】
本解決手段の構成によれば、循環流の中から処理水を抽出するようにしているので、短時間のうちに膜エレメントに汚泥が付着してしまうといった状況は生じ難く、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能である。尚、循環回路の循環流速は、具体的には循環回路に備えられた循環ポンプの能力により決定される。
【0023】
更に、膜エレメントに対し、上記二次側から一次側に向けて洗浄水を通過させて膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去する逆流洗浄動作を所定時間毎に実行している。具体的には、処理汚泥の濾過動作(膜エレメントの一次側から二次側に向けての濾過)を停止した状態で、二次側から一次側に向けて洗浄水を通過させて膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離させる。例えば、膜エレメントの一次側面での固形物の付着量が多大になる前に逆流洗浄動作を実行するように上記所定時間を設定することにより、この付着している固形物を短時間で剥離することができ、この逆流洗浄動作に要する時間も短くて済む。このため、膜エレメントの一次側面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、浸漬型分離膜方式に比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、高性能の水処理を実現することができる。また、膜エレメントに対する薬液洗浄を行うようにしたものにあってはその頻度を低減することもできる(例えば6カ月に1回程度でよい)ため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【0024】
尚、逆流洗浄動作の実行タイミングとしては、例えば濾過動作を5min間連続して行った後に、8sec間の逆流洗浄を行うことなどが掲げられる。また、逆流洗浄動作に使用する洗浄水としては、濾過動作において得られた処理水を利用することが好ましい。この洗浄水としては上記処理水に限らず、個別の水(水道水等)であってもよい。また、付着固形物の剥離が容易に行えるように水に活性剤等を混入したものであってもよいが、この洗浄水は、膜エレメントの二次側から一次側へ透過した後には生物反応槽に流入することになるので、生物反応処理に悪影響を与えないものである方が好ましい。
【0025】
上記膜分離装置の具体構成としては以下のものが掲げられる。つまり、透過膜材料を円筒形に成形して膜エレメントを構成している。そして、多数本の膜エレメントを装置本体内に収容して、各膜エレメントの内部空間と生物反応槽との間で汚泥の循環回路を構成する。更に、上記生物反応槽から各膜エレメントに供給された汚泥が、各膜エレメントの一次側である内部から二次側である外部に向けて濾過されて処理水が得られるようにしている。
【0026】
このように、透過膜材料(例えばポリエステルやポリスチレン等)を円筒形状に成形して膜エレメントを構成し、多数本の膜エレメントを装置本体内に収容した場合、個々の膜エレメントの内側面積を比較的小さくすることができる。これは、膜エレメントの内面に汚泥が付着した場合に、個々の膜エレメントそれぞれにおける汚泥付着総面積の削減に繋がる。つまり、個々の膜エレメントにあっては、汚泥付着面積が小さいため、上記逆流洗浄動作による固形物の剥離をより簡単に行うことができる。このため、逆流洗浄動作に要する時間が短くなり、濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。また、膜エレメントから処理水を吸引する場合、この膜エレメントは円筒形に成形されているため、吸引負圧による変形は生じ難く、内部空間の形状を維持することができて、濾過能力を安定的に維持することが可能になる。言い換えると、膜エレメントの内部空間を大きく確保して個々の膜エレメントの濾過能力を高めようとする場合、平板状の膜エレメントであると、上記吸引負圧によって簡単に変形してしまう状況となるが、上述した如く円筒状に成形した場合には、吸引負圧による変形は生じ難いため、膜エレメントの内部空間を大きく確保することが可能になり、その結果、膜エレメントの設計の自由度(径寸法の設計自由度)を拡大することができる。具体的に、膜エレメントの外径寸法としては5〜8mm程度に設定される。
【0027】
上記膜エレメントの一次側空間における汚泥流速を高く確保するための手段として以下のものが掲げられる。つまり、循環汚泥(上記循環回路を循環する処理汚泥)が流れる膜エレメントの一次側空間にこの循環汚泥の流れ方向に沿って流れる気泡を供給することによって循環汚泥に搬送力を与える気泡供給手段を設けた構成である。
【0028】
この特定事項によれば、気泡供給手段から膜エレメントの一次側空間に供給された気泡が、一次側空間を流れる循環汚泥を、その流れ方向に押し流すことになり、この一次側空間で循環汚泥が滞留してしまうことがなくなる。また、この気泡は、膜エレメントの一次側面に対する汚泥の付着を抑制する機能も発揮することになり、膜エレメントの一次側面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量をよりいっそう低減することができる。具体的な構成としては、膜エレメントを縦型配置とし、一次側空間の下側から上側に向かって処理汚泥を流す構成としておき、膜エレメントの下側から一次側空間に向けて気泡を供給(エアリフト)する構成が掲げられる。これにより、気泡の浮力が循環汚泥の搬送力として与えられることになる。その結果、循環汚泥を循環させるために必要な動力(循環ポンプの動力等)を低減することができ、システムのランニングコストの削減を図ることができる。
【0029】
また、この解決手段の場合、気泡供給手段から供給される気泡の形状を、膜エレメントの一次側空間における汚泥流れ方向に直交する断面の形状に略一致させることが好ましい。この場合、一次側空間には、汚泥に満たされた層と空気に満たされた層とが汚泥流れ方向で交互に存在することになる。このため、汚泥は気泡によって強制的に押し流される状態となり、気泡から汚泥に対して搬送力を確実に与えることができて効率の良い汚泥循環動作を行うことができる。
【0030】
上記気泡供給手段の具体構成としては以下のものが掲げられる。つまり、気泡供給手段として、装置本体における汚泥流れ方向に直交する断面の形状に略一致する形状を有する散気部材を備えさせる。
【0031】
また、この散気部材としては、以下の構成が掲げられる。つまり、装置本体を、汚泥流れ方向に直交する断面の形状が略円形の管状体とする。そして、散気部材を、上記装置本体の断面形状に略一致する円盤状の多孔質体により構成する。
【0032】
以上の構成によれば、装置本体の内部に収容された多数本の膜エレメントのそれぞれの内部空間(一次側空間)に対して空気を略均等に供給することが可能となる。このため、各膜エレメントの一次側空間での汚泥流量を略均一にできて、濾過能力の均等化を図ることが可能となり、その結果、膜分離装置全体としての濾過能力の向上を図ることができる。
【0033】
上記逆流洗浄動作をより効率的に行うための手段として以下のものが掲げられる。つまり、逆流洗浄動作の実行中に膜エレメントの一次側空間に比較的大量の空気を一時的に通過させる空気供給手段を設けた構成である。
【0034】
また、この空気供給手段としては、加圧空気を発生させる圧縮機を適用することが可能であるが、その他に以下の構成としてもよい。つまり、空気を貯留する貯留容器を備えさせ、逆流洗浄動作の実行中に貯留容器の内部空間を膜エレメントの一次側空間に解放して比較的大量の空気を膜エレメントの一次側空間に通過させる構成である。この構成によれば、例えば、上記気泡供給手段を備えさせた場合にその気泡供給手段から供給される気泡の一部を貯留容器に貯留させていき、逆流洗浄動作の実行中に、この貯留容器から膜エレメントの一次側空間に大量の空気を供給することができる。つまり、この場合、気泡供給手段から供給される気泡を逆流洗浄動作用の空気として利用することができ、特別な空気圧送機構が必要なくなってシステム構成の簡素化を図ることができる。
【0035】
次に、膜分離装置を薬液洗浄するようにした場合の解決手段について述べる。先ず、装置本体の薬液洗浄時にこの装置本体の内部に薬液を供給する薬液供給管を、装置本体から処理水を導出する導出管に接続する。また、この薬液供給管から導出管を経て薬液を装置本体の内部に供給する薬液洗浄動作を実行する薬液洗浄手段を備えさせている。具体的には、この薬液洗浄手段が、所定時間毎に薬液洗浄動作を実行するよう構成されている。
【0036】
この特定事項により、薬液洗浄時、薬液供給管から導出管を経て装置本体の内部に供給された薬液は、膜エレメントの二次側から一次側に向けて流入することになる。これは上記逆流洗浄の場合と同様の流れである。これにより、膜エレメントの一次側面に付着している固形物は容易に剥離され且つ溶解されて膜エレメントは浄化されることになり、効率の良い薬液洗浄を実行することができる。これにより、薬液洗浄動作に要する時間の短縮化を図ることが可能になり、膜分離装置を迅速に復帰させて濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。また、循環回路での汚泥循環を停止した状態で薬液洗浄を行うようにした場合、薬液洗浄に使用する薬液の量は装置本体内の容積程度で済むため、従来の浸漬型分離膜ユニットを薬液洗浄する場合に比べて使用薬液量の削減が図れる。これにより、薬液洗浄後の廃液の量が少なくなり、その処理を容易に行うことができる。
【0037】
また、膜分離装置には、薬液洗浄終了後に装置本体内の薬液を排出除去する排出手段を備えさせている。これによれば、薬液洗浄の終了後には、装置本体内の薬液はその大部分が排出手段によって排出除去され、この薬液が生物反応槽へ流入されてしまうことがない。従来の浸漬型分離膜ユニットでは、膜エレメントを薬液洗浄した場合、その薬液はそのまま生物反応槽内に存在することになり、汚泥の活性が低下してしまって、その後の生物反応処理に悪影響を及ぼしていた。本解決手段では、このような状況は生じないため、生物反応処理を常に安定的に行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を維持することができる。
【0038】
また、装置本体に、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を装置本体に向けて導入するための導入管を接続する。そして、この導入管には、生物反応槽から取り出した処理汚泥中の余剰汚泥を循環回路から引き抜くための引き抜き手段が設けられている。この構成によれば、余剰汚泥を引き抜くための構成を容易に実現でき、活性汚泥処理システムの実用性の向上を図ることができる。
【0039】
次に、複数の膜分離装置を生物反応槽に対して並列接続したシステムに対して本発明を適用する場合について説明する。先ず、生物反応槽に対して複数の膜分離装置が互いに並列に接続されている。また、逆流洗浄手段を、逆流洗浄時には複数の膜分離装置のうち選択された一つのみに対して逆流洗浄動作を実行する構成としている。この構成によれば、複数の膜分離装置のうち一つのみが逆流洗浄動作を実行し、その他の膜分離装置では循環汚泥の濾過動作が行われている。このため、システム全体としての濾過能力を大きく低下させることなしに上記逆流洗浄動作による膜エレメントの高性能化の維持を図ることができる。
【0040】
更に、生物反応槽に対して複数の膜分離装置が互いに並列に接続されており、薬液洗浄手段が、薬液洗浄時には複数の膜分離装置のうち選択された一つのみに対して薬液洗浄動作を実行する構成としている。この場合にも、複数の膜分離装置のうち一つのみが薬液洗浄動作を実行し、その他の膜分離装置では循環汚泥の濾過動作が行われている。このため、システム全体としての濾過能力を大きく低下させることなしに上記薬液洗浄動作による膜エレメントの高性能化の維持を図ることができる。
【0041】
また、上述した如く気泡供給手段を設けた場合において、嫌気好気活性汚泥法を利用した活性汚泥処理システムに本発明を適用した場合の循環回路としては以下の構成が掲げられる。つまり、生物反応槽として嫌気槽及び好気槽を備えさせる。そして、循環汚泥を装置本体から生物反応槽に戻す汚泥戻し管を、嫌気槽及び好気槽にそれぞれ対応して分岐させる一方、これら嫌気槽及び好気槽に対する汚泥戻し量を調整する戻し量調整手段(例えば三方弁)を備えさせるようにする。
【0042】
この構成によれば、好気槽から装置本体に供給された汚泥を汚泥戻し管によって嫌気槽に戻すことが可能となる。従来の嫌気好気活性汚泥法を利用した活性汚泥処理システムでは、好気槽から嫌気槽に汚泥を戻すための特別な戻し配管を備えさせ、この戻し配管にポンプを備えさせる必要があった。本解決手段によれば、この戻し配管及びポンプの機能を上記循環回路が備えることになる。このため、この循環回路を有効利用して好気槽から嫌気槽へ汚泥を戻すことが可能になり、従来の戻し配管及びポンプが必要なくなってシステム全体のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
また、上述した如く気泡供給手段を設けた場合、装置本体を流れる処理汚泥には空気(酸素)が供給されることになる。このため、好気槽に必要な空気量(DO(Dissolved Oxygen):溶存酸素量)をこの気泡供給手段によって処理汚泥に与え、この処理汚泥を好気槽に戻すようにした場合には、好気槽には曝気装置が必要なくなる。これにより、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、上記好気槽内に空気を供給する曝気手段(エアレーション装置)を備えさせ、この曝気手段から好気槽内に供給する空気の供給量を、気泡供給手段からの空気供給量及び装置本体から好気槽内への循環汚泥の戻し量に応じて調整する曝気量調整手段を備えさせている。この場合、好気槽に必要な空気量のうち、どの程度が気泡供給手段からの空気により賄われているかを、この気泡供給手段からの空気供給量及び装置本体から好気槽内への循環汚泥の戻し量によって認識し、その不足分のみを曝気手段から好気槽内に供給すればよい。これにより、好気槽内に必要以上の空気が供給されてしまうことがなくなり、曝気手段の稼働率を必要最小限に抑えることでシステムのランニングコストの大幅な削減を図ることができる。
【0045】
上述した各解決手段に記載の膜分離装置を備えた活性汚泥処理システムに係る解決手段としては以下の構成が掲げられる。つまり、膜エレメントを収容した装置本体が選択的に交換可能に構成された膜分離装置と生物反応槽との間で構成される循環回路を備え、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るよう構成された活性汚泥処理システムである。
【0046】
また、この活性汚泥処理システムにおける処理能力増強方法としては以下の解決手段が掲げられる。つまり、膜エレメントを収容した装置本体が選択的に交換可能に構成された膜分離装置と生物反応槽との間で構成される循環回路を備え、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るよう構成された活性汚泥処理システムに対して行われる処理能力増強方法に係るものである。そして、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類の装置本体を予め用意しておき、システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が変化した際、予め用意しておいた装置本体の中から要求能力に応じた装置本体を選択して交換するようにしている。
【0047】
これら活性汚泥処理システム及び処理能力増強方法によれば、システム全体の処理能力の増大に伴って要求される処理汚泥固液分離能力が増大した場合、既存の装置本体を処理能力の高い装置本体に交換する。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、本発明を、嫌気好気活性汚泥法を使用した水処理システムに適用した場合について説明する。また、本発明の理解を容易にするため、先ず、第1実施形態では、膜分離装置としての膜モジュールを1個のみ備えた水処理システムについて説明する。この膜モジュールを複数個備えた水処理システムについては第2実施形態で説明する。
【0049】
(第1実施形態)
−水処理システムの概略構成の説明−
図1は本形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。この図1に示すように、本形態に係る水処理システムは、生物反応槽1を構成する嫌気槽としての脱窒槽11及び好気槽としての硝化槽12、膜モジュール2、処理水槽3、薬液タンク4を備えている。
【0050】
脱窒槽11は、その上流側に設けられた微細目スクリーン13を通過した流入水(汚水)が導入されるものである。この脱窒槽11の内部には攪拌機14が設置されており、この攪拌機14の駆動に伴って脱窒槽11内の汚水が攪拌されて嫌気工程による処理が行われるようになっている。
【0051】
一方、硝化槽12は、上記脱窒槽11において処理された汚水が流入されるようになっている。また、この硝化槽12の内部には曝気手段としての曝気ブロアB1から延びるエア供給管61が導入され、このエア供給管61の先端に設けられた散気装置61aから空気が供給可能となっている。そして、この曝気ブロアB1の駆動に伴って硝化槽12内に空気が供給され、それに伴う好気工程による処理が行われるようになっている。
【0052】
以下、上記脱窒槽11及び硝化槽12において行われる生物反応処理(好気工程及び嫌気工程)の原理について説明する。先ず、汚水中に含まれる窒素化合物は、硝化槽12における好気工程において活性汚泥により酸化されて硝酸性窒素になり、その後、脱窒槽11における嫌気工程によって硝酸性窒素から酸素を奪って窒素ガスを発生させ、これによって脱窒が行われる(この際の硝化槽12から脱窒槽11への汚泥戻し動作については後述する)。また、嫌気工程において活性汚泥からリンが一旦放出され、その後、好気工程によって活性汚泥にリンを過剰採取させることにより脱リンが行われる。このような処理が生物反応槽1内で行われて脱窒及び脱リンが行われる。
【0053】
処理水槽3は、後述する膜モジュール2によって汚泥が固形分離されて抽出された処理水を回収するものである。
【0054】
薬液タンク4は、後述する膜モジュール2を薬液洗浄するための薬液が貯留されている。つまり、所定期間毎に実行される薬液洗浄時には、この薬液タンク4に貯留されている薬液が膜モジュール2に供給されることになる。この薬液洗浄のための配管構造及び薬液洗浄動作については後述する。
【0055】
−膜モジュール2の説明−
次に、本形態の特徴とする機器である膜モジュール2について説明する。図2は膜モジュール2の内部構造を示す断面図であり、図3は膜モジュール2の内部における膜エレメント22,22,…の収容状態の一部を示す断面図である。
【0056】
この膜モジュール2は、縦置き設置されたケーシング21を備えている。このケーシング21は、略円筒状の装置本体としてのエレメント収容部23と、このエレメント収容部23の下端に連結された導入部材26と、エレメント収容部23の上端に連結された導出部材27とを備えている。
【0057】
上記エレメント収容部23の内部には多数本の膜エレメント22,22,…が収容されている。より具体的には、図2に示すように、エレメント収容部23は、その長手方向の全体が一定の内径寸法を有しており、このエレメント収容部23に多数本(例えば615本)の膜エレメント22,22,…が束ねられた状態で収容されている。
【0058】
各膜エレメント22,22,…は、透過膜材料が円筒形に成形された小径(外径寸法が例えば5.2mm)の所謂ストロー形状の部材であって、その内部に汚泥が流入した場合、その汚泥から水のみを外部に濾過できるように微多孔性膜等により構成されている。尚、この膜エレメント22を構成する透過膜材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が掲げられる。透過膜材料はこれら材料に限るものではない。
【0059】
上記導入部材26及び導出部材27は、一端が開放された略カップ形状の部材であって、導入部材26はエレメント収容部23の下端に連結されることにより、このエレメント収容部23の下側に汚泥流入空間24を形成している。一方、導出部材27はエレメント収容部23の上端に連結されることにより、このエレメント収容部23の上側に汚泥流出空間25を形成している。
【0060】
また、膜エレメント22,22,…の長手方向の両端部分(汚泥流入空間24及び汚泥流出空間25に近接する領域)では、これら膜エレメント22,22,…の外周面とエレメント収容部23の内周面との間の上下の空間に樹脂が充填されており、これによって、各膜エレメント22,22,…の内部空間が汚泥流入空間24及び汚泥流出空間25に連通状態となり、各膜エレメント22,22,…の外部空間は汚泥流入空間24及び汚泥流出空間25に非連通状態となっている。
【0061】
<連結構造>
次に、エレメント収容部23に対する導入部材26及び導出部材27の連結構造について説明する。各連結構造は互いに同一であるため、ここでは導出部材27とエレメント収容部23との連結構造についてのみ説明する。
【0062】
図4は導出部材27とエレメント収容部23との連結部分の分解図(一部を断面で示している)、図5はこの連結部分の平面図、図6は連結部分を拡大して示す断面図である。
【0063】
これら図に示すように、エレメント収容部23の上端縁近傍位置には、その周方向の全体に亘る凹部23aが形成されている。同様に、導出部材27の下端縁近傍位置にも、その周方向の全体に亘る凹部27aが形成されている。そして、これらエレメント収容部23と導出部材27との間にはゴムリング28が介在され、且つこのゴムリング28の外周囲に連結部材29が装着されることによってエレメント収容部23と導出部材27とが気密性を維持しながら連結されている。
【0064】
上記ゴムリング28は、断面がT字状であって、エレメント収容部23と導出部材27との間に介在された状態では、図6に示すように、一部がエレメント収容部23と導出部材27とによって挟持された状態となり、他の部分がエレメント収容部23の外周面から導出部材27の外周面に亘って当接して、これらエレメント収容部23と導出部材27との連結部分の外周囲を囲むようになっている。
【0065】
連結部材29は、半円弧形状の一対の金属製のジョイント部材29a,29aにより成っている。このジョイント部材29a,29aは、図4及び図6に断面で示すように、略コ字型の断面を有しており、上端及び下端に内周側に向かって延びるフランジ29b,29bが形成されている。
【0066】
そして、連結部材29がゴムリング28の外周囲に装着された状態では、図6に示すように各フランジ29b,29bが、エレメント収容部23及び導出部材27にそれぞれ形成されている凹部23a,27aに嵌り込むと共に、ジョイント部材29aの内周面がゴムリング28の外周面を内周側に向けて押さえ込むようになっている。
【0067】
また、図5に示すように、各ジョイント部材29a,29aの周方向の端部には連結フランジ29c,29cが形成されており、各ジョイント部材29a,29aがゴムリング28の外周囲に装着された状態では、それぞれの連結フランジ29c,29c同士が重なり合うようになっている。これら連結フランジ29c,29cにはボルト孔が形成されており、互いに重ね合わされた連結フランジ29c,29cの各ボルト孔に亘ってボルトBが挿通され、このボルトBにナットNが螺合されることにより連結フランジ29c,29c同士が連結されるようになっている。このようにしてエレメント収容部23と導出部材27との間にゴムリング28が介在された状態で、その外周側に連結部材29が装着されることにより、エレメント収容部23と導出部材27とは気密性を維持しながら連結されている。エレメント収容部23の下端と導入部材26との連結構造も同様の構成となっている。
【0068】
このようにして、エレメント収容部23は、導入部材26及び導出部材27に対してゴムリング28及び連結部材29によって着脱自在に連結されており、上記ボルトBを外すことによって、導入部材26及び導出部材27から容易に取り外して交換できるようになっている。つまり、本実施形態に係る膜モジュール2は、エレメント収容部23が容易に交換可能な構成となっている。
【0069】
また、この膜モジュール2の導入部材26の底部には、後述する薬液洗浄動作の終了後に、この本体ケーシング21の底部から薬液を排出するための排出手段としての排出管64が接続されており、この排出管64には開閉自在なバルブV2が設けられている。つまり、薬液洗浄動作の終了後にこのバルブV2が開放されることにより、本体ケーシング21から薬液が排出され、生物反応槽1には流入しないようになっている。
【0070】
−循環回路の説明−
上記膜モジュール2と生物反応槽1とは、汚泥取り出し管51及び汚泥戻し管52によって互いに接続されており、汚泥取り出し管51に備えられた循環ポンプP1の駆動に伴って膜モジュール2と生物反応槽1との間で汚泥が循環するように構成されている。つまり、これら生物反応槽1、膜モジュール2、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52によって汚泥循環回路が構成されている。
【0071】
上記汚泥取り出し管51は、一端(上流端)が硝化槽12の下部に、他端(下流端)が膜モジュール2の汚泥流入空間24にそれぞれ接続されている。一方、汚泥戻し管52は、一端(上流端)が膜モジュール2の汚泥流出空間25に接続されている。この汚泥戻し管52の、他端(下流端)は分岐されており、一方の分岐管52aは硝化槽12に接続され、他方の分岐管52bは脱窒槽11に接続されている。つまり、膜モジュール2から流出した汚泥は、分岐管52a,52bによって硝化槽12及び脱窒槽11に選択的に戻される構成となっている。尚、各分岐管52a,52bの分岐部分には三方弁V1が設けられており、この三方弁V1の開度を調整することによって硝化槽12及び脱窒槽11に対する汚泥の戻し量が任意に設定可能となっている。
【0072】
このように、生物反応槽1、膜モジュール2、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52によって汚泥循環回路が構成されていることにより、生物反応槽1における生物反応処理後の処理汚泥は、生物反応槽1から取り出され、膜モジュール2に供給される。この膜モジュール2の内部では、汚泥流入空間24から各膜エレメント22,22,…の内部空間を経て汚泥流出空間25に向かう流れが生じている。このため、図7(a)に示すように、各膜エレメント22,22,…の内部空間を流れている汚泥の一部については濾過が行われ、処理汚泥の一部が固液分離されて処理水が膜エレメント22の外部に抽出される。このようにして循環回路での汚泥の循環動作が繰り返されながら膜モジュール2では処理水が連続的に得られるようになっている。尚、通常運転状態では、上記循環回路における汚泥循環量と膜エレメント22による処理水抽出量との比は「20:1」程度となるように設定されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0073】
尚、固液分離されて膜エレメント22の内部空間に残った汚泥は、この内部空間に生じている汚泥流に沿って膜エレメント22の内部空間から汚泥流出空間25、汚泥戻し管52を経て硝化槽12や脱窒槽11に戻されるようになっている。
【0074】
このように、膜エレメント22の内部空間(一次側)では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れているため、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメント22の内側面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメント22に付着することなしに生物反応槽1に戻されることになる。このため、膜エレメント22の内側面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。これにより、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。尚、図7(b)は、循環回路での循環動作が所定時間継続して行われて膜エレメント22の内面に僅かに固形物が付着した状態を示している。
【0075】
−処理水の取り出し−
上記膜モジュール2と処理水槽3とは、導出管としての処理水取り出し管53によって接続されている。この処理水取り出し管53は、膜モジュール2に接続する側が分岐されており、一方の分岐管53aは上記エレメント収容部23の下部に、他方の分岐管53bはエレメント収容部23の上部にそれぞれ接続されている。また、処理水取り出し管53には膜濾過ポンプP2が備えられており、この膜濾過ポンプP2の駆動に伴って、各膜エレメント22,22,…で濾過された処理水が各分岐管53a,53bから抜き出され処理水取り出し管53を経て処理水槽3に回収されるようになっている。
【0076】
−エアリフト−
また、本システムは、各膜エレメント22,22,…の内部空間に気泡を連続的に供給するためのエアリフトブロアB2を備えている。このエアリフトブロアB2と膜モジュール2の汚泥流入空間24とはリフトエア供給管62によって接続されており、エアリフトブロアB2の駆動に伴って、汚泥流入空間24にエアが供給され、このエアが気泡となって各膜エレメント22,22,…の内部空間に連続的に供給されるようになっている(図7(a)、(b)参照)。具体的には、リフトエア供給管62の先端には多数の開口が形成された散気管62aが取り付けられており、この散気管62aの各開口から汚泥流入空間24に気泡が供給され、これら気泡はその浮力によって各膜エレメント22,22,…の内部空間に連続的に供給されるようになっている。このように上記リフトエア供給管62及びエアリフトブロアB2によって本発明でいう気泡供給手段が構成されている。
【0077】
上述の如く各膜エレメント22,22,…の内部空間に気泡を連続的に供給するようにしたことにより、この気泡が、膜エレメント22内の汚泥をその流れ方向(上方)に押し流すことになり、膜エレメント22の内部空間で汚泥が滞留してしまうことがなくなる。また、この気泡は、膜エレメント22の内面に対する汚泥の付着を抑制する機能も発揮することになり、膜エレメント22の内面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量をよりいっそう低減することができる。これにより、気泡の浮力が循環汚泥の搬送力として与えられることになり、その結果、循環汚泥を循環させるために必要な動力(上記循環ポンプP1の動力)を低減することができ、システムのランニングコストの削減を図ることができる。
【0078】
また、この場合、膜エレメント22の内部空間に供給される気泡の外径は、膜エレメント22の内径寸法と略等しいか、または、膜エレメント22の内径寸法よりも僅かに大きく設定しておく。これによれば、膜エレメント22の内部空間には、汚泥に満たされた層と空気に満たされた層とが汚泥流れ方向で交互に存在することになり(図7(a),(b)参照)、汚泥は気泡によって強制的に押し流される状態となって、気泡から汚泥に対して搬送力を確実に与えることができて効率の良い汚泥循環動作を行うことができる。
【0079】
−逆流洗浄−
上記処理水槽3と処理水取り出し管53とは逆流洗浄管54によって接続されている。この逆流洗浄管54には逆流洗浄ポンプP3が備えられており、この逆洗浄ポンプP3の駆動に伴って、処理水槽3内の処理水が逆流洗浄配管54及び処理水取り出し管53を経て膜モジュール2のエレメント収容部23に供給されるようになっている(図1に破線で示す矢印参照)。
【0080】
つまり、所定時間毎に逆流洗浄ポンプP3を駆動することによって逆流洗浄動作を実行し、これによって、各膜エレメント22,22,…の内面に付着している固形物を剥離除去できるようにしている。この逆流洗浄動作の実行時には、循環ポンプP1の駆動は継続させる一方、膜濾過ポンプP2は停止され上記の濾過動作を停止するようになっている。このように上記逆流洗浄管54及び逆流洗浄ポンプP3によって本発明でいう逆流洗浄手段が構成されている。
【0081】
このような逆流洗浄動作を実行することにより、図7(c)に示すように、膜エレメント22の内側面に付着している固形物を容易に剥離除去することが可能であり、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、従来のものに比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、システム全体を大型にすることなしに、高性能の水処理を実現することができる。具体的には、従来の浸漬型分離膜ユニットにあっては処理能力が0.4m3/m2・day程度であったが、本実施形態に係る膜モジュール2では処理能力が0.8m3/m2・day程度に向上することが実験により確認されている。
【0082】
また、本形態によれば、膜エレメント22に対する薬液洗浄の頻度を低減することもできる(例えば6カ月に1回程度でよい)ため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【0083】
−エアインジェクション−
上記の逆流洗浄動作をより効率的に行うために、本システムは、各膜エレメント22,22,…の内部空間に比較的大量の空気を一時的に通過させるエアインジェクションコンプレッサCを備えている。このエアインジェクションコンプレッサCと上記汚泥取り出し管51とはエアインジェクション管63によって接続されており、エアインジェクションコンプレッサCの駆動に伴って、加圧エアが、汚泥取り出し管51、汚泥流入空間24を経て各膜エレメント22,22,…の内部空間に一時的に大量に供給されるようになっている。このように上記エアインジェクション管63及びエアインジェクションコンプレッサCによって本発明でいう空気供給手段が構成されている。
【0084】
この加圧エアによって、膜エレメント22の内面に付着している汚泥を迅速に剥離することが可能となり(図7(c)参照)、上記逆流洗浄動作に要する時間が短くなって、濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。
【0085】
−薬液洗浄−
上記薬液タンク4と処理水取り出し管53とは薬液供給管55によって接続されている。この薬液供給管55には薬液洗浄ポンプP4が備えられており、この薬液洗浄ポンプP4の駆動に伴って、薬液タンク4内の薬液が薬液供給管55及び処理水取り出し管53を経て膜モジュール2のエレメント収容部23に供給されるようになっている(図1に一点鎖線で示す矢印参照)。
【0086】
つまり、所定期間毎に薬液洗浄ポンプP4を駆動することによって薬液洗浄動作を実行し、これによって、各膜エレメント22,22,…の内面に付着している固形物を溶解除去できるようにしている。この薬液洗浄動作の実行時には、薬液洗浄ポンプP4を除く全てのポンプP1〜P3は停止され、上記の濾過動作やエア供給動作を停止するようになっている。このポンプの駆動制御による薬液洗浄動作の実行は、図示しないコントローラに備えられた薬液洗浄手段の制御により行われる。
【0087】
このような薬液洗浄動作を所定期間毎に実行することにより、膜エレメント22の内面に付着している固形物は容易に剥離され且つ溶解されて膜エレメント22は浄化されることになり、効率の良い薬液洗浄を実行することができる。これにより、薬液洗浄動作に要する時間の短縮化を図ることが可能になり、膜モジュール2を迅速に復帰させて濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。また、薬液洗浄に使用する薬液の量は膜モジュール2の本体ケーシング21内の容積程度で済むため、従来の浸漬型分離膜ユニットを薬液洗浄する場合に比べて使用薬液量の削減が図れる。これにより、薬液洗浄後の廃液の量が少なくなり、その処理を容易に行うことができる。
【0088】
−各動作の実行タイミング−
次に、上述した逆流洗浄動作や薬液洗浄動作の実行タイミングについて説明する。図8は、本水処理システムの動作を示すタイミングチャートである。この図に示すように、通常の処理水濾過動作にあっては、膜濾過ポンプP2、循環ポンプP1、エアリフトブロアB2が運転され、上述した汚泥の循環動作に伴う処理水濾過動作が実行されて、処理水槽3に連続的に処理水が抜き出されることになる。
【0089】
そして、この動作が所定時間A(例えば5min)実行された後に、逆流洗浄動作に切り換えられる。この逆流洗浄動作では、上述した如く、膜濾過ポンプP2が停止され、逆流洗浄ポンプP3が駆動されることにより実行される。この逆流洗浄動作は、図中の時間B(例えば8sec)だけ行われる。そして、この逆流洗浄動作の途中でエアインジェクションコンプレッサCが一時的に駆動され、加圧エアが各膜エレメント22,22,…の内部空間に一時的に大量に供給される。このエアインジェクションコンプレッサCの駆動タイミングとしては、逆流洗浄動作の実行時間のうちの中間の時間に行われる。尚、上記エアインジェクション動作は、逆流洗浄動作の開始と同時に実行するようにしてもよい。
【0090】
このような逆流洗浄動作が実行された後、所定時間のウエイト時間(図8中の時間E)だけ膜濾過ポンプP2の起動を禁止し、このウエイト時間の経過後に、膜濾過ポンプP2を起動して上記の循環動作に伴う処理水濾過動作が復帰されることになる。以上の動作が繰り返される。
【0091】
また、上記薬液洗浄動作は、6カ月毎に実行されるようになっている。この場合には、上述した如く薬液洗浄ポンプP4を除く全てのポンプP1〜P3は停止される。
【0092】
−エレメント収容部23の交換作業−
次に、水処理システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が増大した場合のエレメント収容部23の交換作業について説明する。
【0093】
本形態では、エレメント収容部23として、長さの異なる、つまり固液分離能力の異なる複数種類が予め準備してある。例えば、現在の水処理システムに使用されている膜モジュール2のエレメント収容部23が長さ2mのものである場合、1m、3mのエレメント収容部23が予め準備してある。そして、水処理システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が1.5倍に増大した場合には、現在の膜モジュール2に使用している2mのエレメント収容部23を、3mのエレメント収容部23に交換する。尚、予め準備しておくエレメント収容部23の長さ寸法としては上述したものには限らない。
【0094】
エレメント収容部23の交換作業としては、先ず、導入部材26及び導出部材27に対してエレメント収容部23を連結している各連結部材29を取り外す。つまり、各ジョイント部材29a,29a同士を締結しているボルトBを外すことによって連結状態を解除して導入部材26及び導出部材27からエレメント収容部(長さ2mのもの)23を取り外す。その後、新たなエレメント収容部(長さ3mのもの)23を導入部材26及び導出部材27に対して連結する。つまり、エレメント収容部23と導入部材26の間、及びエレメント収容部23と導出部材27との間にそれぞれゴムリング28を装着し、このゴムリング28の外周囲に連結部材29を装着(ジョイント部材29a,29a同士のボルト止め)する。これにより、ジョイント部材29aの内周面がゴムリング28の外周面を内周側に向けて押さえ込むようにしながら、エレメント収容部23と導出部材27との間、エレメント収容部23と導入部材26との間がそれぞれ気密性を維持しながら連結される。図9は、このエレメント収容部23が交換された後の水処理システムの概略構成を示す図である。
【0095】
また、このようにエレメント収容部23を交換する場合、膜モジュール2全体の長さが長くなってその高さが高くなるため、導出部材27の内部である汚泥流出空間25から生物反応槽1へ汚泥を戻すための汚泥戻し管52の一部分も交換されることになる。つまり、この汚泥戻し管52は、導出部材27に接続する第1汚泥戻し管52a、上記三方弁V1を備えた第2汚泥戻し管52b、これら第1汚泥戻し管52aと第2汚泥戻し管52bとを接続するエルボ管52cを備えている。図1に示すように、膜モジュール2の高さが低い場合には、立ち上がり寸法の短いエルボ管52cを採用する。そして、エレメント収容部23の交換によって膜モジュール2の高さが高くなった場合には、図9に示すように、立ち上がり寸法の長いエルボ管52cに交換されることになる。尚、第1汚泥戻し管52a及び第2汚泥戻し管52bは交換されることなく、既存のものがそのまま使用される。
【0096】
また、エレメント収容部23の交換に伴い、このエレメント収容部23に接続している各配管も一部が交換される。つまり、図1に示すように、上記処理水取り出し管53の各分岐管53a,53bや薬液供給管55の途中はフランジ接続により配管同士が切り離し可能な構成とされており(図1及び図9ではフランジ接続部分に符号Fを付している)、エレメント収容部23の交換時には、このフランジ接続部分が切り離され、新たに適用されるエレメント収容部23から延びる各配管がそれぞれフランジ接続されることになる。
【0097】
−実施形態の効果−
以上説明したように、本形態では、膜モジュール2の構成部材のうち膜エレメント22を収容しているエレメント収容部23のみを交換可能な構成としている。そして、予め、エレメント収容部23として長さの異なる、つまり固液分離能力の異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じてエレメント収容部23を選択的に交換できるようにしている。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)することができる。
【0098】
また、本形態では、交換可能な複数種類のエレメント収容部23としては、既設のエレメント収容部23に対して、外径が同一寸法であり、長さ寸法のみが異なっているものを採用している。従って、エレメント収容部23を交換しても膜エレメント22内部の汚泥流速が変化することがないため、循環ポンプP1を交換しなくても良好な汚泥濾過動作を行うことができる。このように循環ポンプP1の交換作業が不要であることによっても、エレメント収容部23を交換する際の作業を簡素化できる。
【0099】
また、本実施形態では、膜エレメント22の内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。このとき、膜エレメント22の内面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメント22に付着することなしに生物反応槽1に戻される。このため、膜エレメント22の内面での単位時間当たりにおける汚泥の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。従って、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。また、本形態では、この膜エレメント22に対し、処理水の濾過方向とは逆方向に洗浄水を定期的に通過させることにより膜エレメント22の内面に付着している固形物を剥離除去するようにしている。このため、膜エレメント22の内面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、従来のものに比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、システム全体を大型にすることなしに、高性能の水処理を実現することができる。また、膜エレメント22に対する薬液洗浄の頻度を低減することもできるため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【0100】
また、本形態では、上述した如く、循環汚泥を膜モジュール2の本体ケーシング21から生物反応槽1に戻す汚泥戻し管52を、脱窒槽11及び硝化槽12にそれぞれ対応して分岐させる一方、これら脱窒槽11及び硝化槽12に対する汚泥戻し量を調整可能な戻し量調整手段としての三方弁V1を備えさせている。このため、本体ケーシング21に供給された汚泥を汚泥戻し管52によって脱窒槽11に戻すことが可能となる。従来の嫌気好気活性汚泥法を利用した活性汚泥処理システムでは、好気槽から嫌気槽に汚泥を戻すための特別な戻し配管を備えさせ、この戻し配管にポンプを備えさせる必要があった。本実施形態によれば、この戻し配管及びポンプの機能を循環回路が備えることになる。このため、この循環回路を有効利用して硝化槽12から脱窒槽11へ汚泥を戻すことが可能になり、従来の戻し配管e及びポンプfが必要なくなってシステム全体のコンパクト化を図ることができる。尚、通常運転状態では、膜モジュール2からの硝化槽12への汚泥戻し量と脱窒槽11への汚泥戻し量とは「3:1」程度に調整されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0101】
また、曝気ブロアB1から硝化槽12に供給する空気の供給量を、エアリフトブロアB2からの空気供給量及び汚泥戻し管52から硝化槽12内への循環汚泥の戻し量に応じて調整するようにし、この硝化槽12内へ戻される汚泥中の酸素量と曝気ブロアB1からの酸素量との合算が目標DOとなるように曝気ブロアB1を制御すれば、硝化槽12内に必要以上の空気が供給されてしまうことがなくなり、曝気ブロアB1の稼働率を必要最小限に抑えることでシステムのランニングコストの大幅な削減を図ることができる。この曝気ブロアB1から硝化槽12に供給する空気の供給量の調整は、図示しないコントローラに備えられた曝気量調整手段の制御により行われる。尚、通常運転状態では、曝気ブロアB1からの空気の供給量とエアリフトブロアB2からの空気供給量とは「3:1」程度に調整されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0102】
尚、本形態では、硝化槽12へ空気を供給するための曝気ブロアB1を備えさせるようにしたが、硝化槽12に必要な空気量をエアリフトブロアB2によって処理汚泥に与え、この処理汚泥を硝化槽12に戻すようにした場合には、曝気ブロアB1が必要なくなる。これにより、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0103】
(第1変形例)
次に、上述した第1実施形態の第1変形例について説明する。本例は、逆流洗浄動作時に、各膜エレメント22,22,…の内部空間に比較的大量の空気を一時的に通過させるための構成の変形例である。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるため、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0104】
図10は、本例に係る水処理システムの概略構成を示す図である。この図10に示すように、本形態に係る水処理システムは、エアリフトブロアB2に繋がっているリフトエア供給管62の下流側が分岐されており、一方の分岐管62bは膜モジュール2の汚泥流入空間24に接続され、他方の分岐管62cは上記汚泥取り出し管51に接続されている。また、この他方の分岐管62cの途中には、エアリフトブロアB2から供給される空気を一時的に貯留する貯留容器65が設けられている。この貯留容器65の上流側及び下流側の配管には開閉弁V3,V4がそれぞれ設けられている。
【0105】
このため、処理水濾過動作時には、エアリフトブロアB2が駆動した状態で上流側の開閉弁V3のみが開放され、エアリフトブロアB2から供給された空気の一部が分岐管62cに流入して貯留容器65の内部に蓄えられていく。
【0106】
そして、逆流洗浄動作中に、上流側の開閉弁V3が閉鎖されると共に下流側の開閉弁V4が開放され、これによって、貯留容器65の内部に蓄えられた空気が、汚泥取り出し管51、汚泥流入空間24を経て各膜エレメント22,22,…の内部空間に一時的に大量に供給されることになる。これにより、膜エレメント22の内面に付着している固形物を効果的に剥離除去することができる。
【0107】
つまり、本例では、エアリフトブロアB2から供給される気泡を逆流洗浄動作用の空気として利用することによって、上記第1実施形態におけるエアインジェクションコンプレッサCやエアインジェクション管63を不要とすることができ、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0108】
(第2変形例)
次に、上述した第1実施形態の第2変形例について説明する。本例は、エアリフトブロアB2から各膜エレメント22,22,…の内部空間に連続的に気泡を供給するための構成の変形例である。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるため、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0109】
図11は本例に係る膜モジュール2の内部構造を示す断面図である。図12はリフトエア供給管62の先端に取り付けられた散気部材62dの斜視図である。これら図に示すように、リフトエア供給管62の先端には、膜モジュール2の本体ケーシング21の断面形状に略一致する円盤状多孔質体により構成された散気部材62dが取り付けられており、この散気部材62dが汚泥流入空間24の底部に設置されている。
【0110】
このため、膜モジュール2の本体ケーシング21の内部に収容された多数本の膜エレメント22,22,…のそれぞれの内部空間(一次側空間)に対して空気を略均等に供給することが可能となる。従って、各膜エレメント22,22,…の内部空間での汚泥流量を略均一にできて、濾過能力の均等化を図ることが可能となり、その結果、膜分離装置全体としての濾過能力の向上を図ることができる。
【0111】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本形態は、膜モジュールを複数個備えた水処理システムに係るものである。尚、ここでは5本の膜モジュールを備えた水処理システムについて説明する。また、各膜モジュールの構成は、上述した第1実施形態のものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0112】
図13は、本形態に係る水処理システムの配管系統図である。この図に示すように、各膜モジュール2A〜2Eは、生物反応槽1、処理水槽3、薬液タンク4に対して並列に接続されている。つまり、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52、処理水取り出し管53、逆流洗浄管54、薬液供給管55がそれぞれ各膜モジュール2A〜2Eに対応するように分岐されていると共に、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52、処理水取り出し管53、逆流洗浄管54、薬液供給管55の各分岐管には図示しない開閉弁がそれぞれ設けられている。また、図示しないが、エアリフトブロアB2に繋がるリフトエア供給管62及びエアインジェクションコンプレッサCに繋がるエアインジェクション管63も同様に、各膜モジュール2A〜2Eに対応するように分岐されていると共に、エアインジェクション管63の分岐管には開閉弁が設けられている。
【0113】
そして、本形態では、逆流洗浄時には5台の膜モジュール2A〜2Eのうち選択された1台のみに対して逆流洗浄動作を実行するようになっている。例えば、第1膜モジュール2Aに対して逆流洗浄動作を実行する際には、他の膜モジュール2B〜2Eでは、処理水濾過動作を継続して実行する。この時には、第1膜モジュール2Aに接続している各配管の分岐管に備えられた開閉弁のうち、処理水取り出し管53及び薬液供給管55の分岐管にそれぞれ備えられた開閉弁が閉鎖され、逆流洗浄管54の分岐管に備えられた開閉弁が開放されることになる。また、エアインジェクション管63に備えられた開閉弁も開放されることになる。
【0114】
そして、この逆流洗浄動作が終了すると、処理水取り出し管53の分岐管に備えられた開閉弁が開放され、逆流洗浄管54の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖されて、全ての膜モジュール2A〜2Eを使用した処理水濾過動作が復帰する。
【0115】
その後、他の一つの膜モジュール(例えば第2膜モジュール2B)の逆流洗浄タイミングに達すると、上記の場合と同様にして開閉弁の開閉が切り換えられて、この一つの膜モジュールに対する逆流洗浄動作が実行される。このようにして、順次、一つの膜モジュールに対する逆流洗浄動作が行われながら4台または5台の膜モジュール2A〜2Eにおいて処理水濾過動作が行われるようになっている。
【0116】
また、薬液洗浄動作においても同様に、5台の膜モジュール2A〜2Eのうち選択された一つのみに対して薬液が供給されて洗浄されることになる。例えば、第1膜モジュール2Aに対して薬液洗浄動作を実行する際には、他の膜モジュール2B〜2Eでは、処理水濾過動作を継続して実行する。この時には、第1膜モジュール2Aに接続している各配管の分岐管に備えられた開閉弁のうち、薬液供給管55の分岐管に備えられた開閉弁が開放し、その他の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖されることになる。また、エアインジェクション管63に備えられた開閉弁も閉鎖されることになる。
【0117】
そして、この薬液洗浄動作が終了すると、薬液供給管55の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖され、汚泥取り出し管51、処理水取り出し管53の分岐管に備えられた開閉弁が開放され、逆流洗浄管54の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖されて、全ての膜モジュール2A〜2Eを使用した処理水濾過動作が復帰する。
【0118】
このように、逆流洗浄動作や薬液洗浄動作にあっては1台の膜モジュールのみがその動作に移行し、その他の膜モジュールは、処理水濾過動作が連続して行われる。このため、システム全体としての濾過能力を大きく低下させることなしに上記逆流洗浄動作や薬液洗浄動作による膜エレメントの高性能化の維持を図ることが可能になる。
【0119】
本実施形態において、水処理システムにおいて要求される処理汚泥固液分離能力が増大した場合に、エレメント収容部23を交換する際には、全ての膜モジュール2A〜2Eのエレメント収容部23,23,…を同時に交換してもよいし、選択された幾つかの膜モジュールのエレメント収容部23のみを交換するようにしてもよい。
【0120】
−その他の実施形態−
上述した各実施形態及び変形例では、本発明を嫌気好気活性汚泥法を使用した水処理システムに適用した場合について説明した。本発明は、これに限らず、他の活性汚泥法を使用した水処理システムに適用することも可能である。
【0121】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、生物反応槽における生物反応処理後の処理汚泥を、槽外に配設した膜エレメントで濾過して処理水を得るようにした膜分離装置に対し、膜エレメントの内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。そして、膜分離装置のうち上記膜エレメントを収容している装置本体のみを交換可能な構成としている。つまり、予め、装置本体として長さの異なる、つまり固液分離能力の異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じて装置本体を選択的に交換できるようにしている。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)することが可能になる。このため、システムを停止させることなしにそのシステムにおける処理汚泥の固液分離の能力を容易に増大させることが可能である。
【0122】
また、膜エレメントの内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。また、この膜エレメントに対し、処理水の濾過方向とは逆方向に洗浄水を定期的に通過させることにより膜エレメントに付着している固形物を剥離除去するようにしている。
【0123】
このため、膜エレメントの一次側では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れており、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメントの一次側の面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメントに付着することなしに生物反応槽に戻される。その結果、膜エレメントの一次側の面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減されることになり、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。
【0124】
また、本発明では、所定時間毎に逆流洗浄動作を実行しており、これによって、膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去している。このため、膜エレメントの一次側面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、従来のものに比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、システム全体を大型にすることなしに、高性能の水処理を実現することができる。また、膜エレメントに対する薬液洗浄の頻度を低減することもできるため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】膜モジュールの内部構造を示す断面図である。
【図3】膜モジュール内部に膜エレメントが収容された状態を示す断面図である。
【図4】導出部材とエレメント収容部との連結部分の分解図である。
【図5】導出部材とエレメント収容部との連結部分の平面図である。
【図6】導出部材とエレメント収容部との連結部分を拡大して示す断面図である。
【図7】各工程における膜エレメント内の状態を説明するための図である。
【図8】水処理システムの動作を示すタイミングチャート図である。
【図9】エレメント収容部が交換された後の水処理システムの概略構成を示す図である。
【図10】第1変形例に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図11】第2変形例に係る膜モジュールの内部構造を示す断面図である。
【図12】第2変形例に係る散気部材の斜視図である。
【図13】第2実施形態に係る水処理システムの配管系統図である。
【符号の説明】
1 生物反応槽
2 膜モジュール(膜分離装置)
22 膜エレメント
23 エレメント収容部(装置本体)
26 導出部材
27 導出部材
29 連結部材
51 汚泥取り出し管
53 処理水取り出し管(導出管)
55 薬液供給管
64 排出管(排出手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、所謂活性汚泥プロセスによって下水や産業廃水等の処理を行う水処理システム(活性汚泥処理システム)に適用される膜分離装置及びその膜分離装置を備えた活性汚泥処理システム並びに活性汚泥処理システムの処理能力増強方法に係る。特に、本発明は、水処理システムの処理能力を増大させるに際し、処理汚泥を固液分離する能力を容易に増大させるための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、下水や産業廃水等の汚水を処理する活性汚泥処理システムとしては種々のものが提案されている。その一例として、下記の特許文献1に開示されているように、脱窒槽及び硝化槽を備え、脱窒槽における嫌気工程及び硝化槽における好気工程により汚水の脱窒や脱リンを行う嫌気好気活性汚泥法を利用した水処理システムが知られている。
【0003】
この水処理システムでは、汚水中に含まれる窒素化合物が好気工程において活性汚泥により酸化されて硝酸性窒素になり、その後、嫌気工程によって硝酸性窒素から酸素を奪って窒素ガスを発生させ、これによって脱窒を行う。また、嫌気工程において活性汚泥からリンが一旦放出され、その後、好気工程によって活性汚泥にリンを過剰採取させることにより脱リンを行う。
【0004】
また、この処理システムでは、上記活性汚泥による生物反応処理によって流入水(汚水)が浄化された後の処理汚泥は最終沈殿槽へ流出される。そして、この最終沈殿槽の内部において処理汚泥中の固形分を沈殿させることによって処理水と汚泥とが分離され、上澄み水となった処理水をシステムから排出する一方、最終沈殿槽内に沈殿した汚泥を引き抜いて上記脱窒槽及び硝化槽へ返送するようにしている。
【0005】
ところで、この種の活性汚泥処理システムの一例として、下記の特許文献2に開示されているように、浸漬型分離膜ユニットを反応槽の水中に設置(浸漬)させたものが知られている。この浸漬型分離膜ユニットは、平板状の多数の膜エレメントを内装している。各膜エレメントは、例えば対向する2枚の濾過板(微多孔性膜等により構成されている)を備えこれら濾過板同士の間の空間に透過水チューブが接続されている。そして、膜エレメントの外部から濾過板を通して膜エレメント内部に透過された処理水を透過水チューブから抜き出すようになっている。このため、この浸漬型分離膜ユニットを活性汚泥処理システムに備えさせた場合には、上記最終沈殿槽が不要となってシステム全体のシンプル化及びコンパクト化を図ることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−1189号公報
【特許文献2】
特開平8−267064号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した活性汚泥処理システムは、一般に、工場や汚水処理施設に設置されるが、工場規模の拡大や汚水処理施設の拡張が行われた場合には、この活性汚泥処理システムの処理能力の増大を図る必要がある。
【0008】
通常、活性汚泥処理システムの処理能力を増大させるための手段としては、生物反応槽(脱窒槽、硝化槽)を大型化することになる。また、これに応じて処理汚泥を固液分離する能力も増大させる必要がある。従って、上記特許文献2に開示されている技術(浸漬型分離膜ユニットを生物反応槽の水中に浸漬させたシステム)にあっては、それまで使用していた浸漬型分離膜ユニットを大型のものに交換する必要がある。
【0009】
しかしながら、この浸漬型分離膜ユニットの交換作業は極めて煩雑である。何故なら、この浸漬型分離膜ユニットを交換しようとする場合、先ず、生物反応槽内の水を一旦抜き取り、既存の浸漬型分離膜ユニットの固定を解除(アンカボルトの取り外し作業)を行い、この浸漬型分離膜ユニットをクレーン等で吊り上げて生物反応槽から取り出す。その後、新たな大型の浸漬型分離膜ユニットをクレーン等で吊り上げて生物反応槽内部に搬送し、これを生物反応槽の底面にアンカボルトによって固定した後に、再び、生物反応槽内へ水を供給し、その後に運転を開始させるといった作業が必要であるためである。尚、既存の浸漬型分離膜ユニットを取り外すことなく、新たな浸漬型分離膜ユニットを追加設置する場合もあるが、この場合にあっても生物反応槽内の水を一旦抜き取る必要がある。
【0010】
更に、この新たな浸漬型分離膜ユニットに対して透過水チューブを接続したり、この透過水チューブを処理水槽へ接続するといった新たな配管接続作業も必要であり、これも浸漬型分離膜ユニットの交換作業の煩雑化の原因である。
【0011】
このような作業が必要であるため浸漬型分離膜ユニットの交換が完了するまでには長い期間を要し、その間、システムを停止させねばならず、場合によっては工場や汚水処理施設の稼働を長期間に亘って停止せねばならないといった課題があった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、活性汚泥処理システムの処理能力の増大を図る場合に、そのシステムにおける処理汚泥の固液分離の能力を増大させるための構成を簡単な作業で構築することが可能な膜分離装置及びその膜分離装置を備えた活性汚泥処理システム並びに活性汚泥処理システムの処理能力増強方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、生物反応槽における生物反応処理後の処理汚泥を、槽外に配設した膜エレメントで濾過して処理水を得るようにした膜分離装置に対し、膜エレメントの内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。また、膜分離装置のうち上記膜エレメントを収容している装置本体のみを交換可能な構成としている。つまり、予め、装置本体として長さの異なる、つまり固液分離能力の異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じて装置本体を選択的に交換できるようにしている。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)できるようにしている。また、この膜エレメントに対し、処理水の濾過方向とは逆方向に洗浄水を定期的に通過させることにより膜エレメントに付着している固形物を剥離除去するようにしている。
【0014】
−解決手段−
具体的には、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を固液分離するための膜分離装置を対象とする。この膜分離装置に対し、生物反応槽の外部に設置され且つ膜エレメントを収容した装置本体を備えさせる。また、この装置本体が、生物反応槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成するようにし、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るように構成している。そして、上記装置本体として、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類を用意しておき、処理汚泥の固液分離に要求される能力に応じて装置本体が選択的に交換可能な構成としている。
【0015】
より具体的な構成としては以下のものが掲げられる。先ず、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を固液分離するための膜分離装置を対象とする。この膜分離装置に対し、装置本体、導入部材、導出部材を備えさせる。装置本体は、生物反応槽の外部に設置され且つ膜エレメントを収容している。導入部材は、装置本体の一端に連結されて膜エレメントの一次側に汚泥を導入する。導出部材は、装置本体の他端に連結されて膜エレメントの一次側から汚泥を導出する。そして、これら装置本体、導入部材、導出部材が、生物反応槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成するようにし、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るように構成している。そして、上記装置本体として、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類を用意しておき、処理汚泥の固液分離に要求される能力に応じて装置本体が選択的に交換可能となるように、装置本体を導入部材及び導出部材に対してそれぞれ着脱可能に連結している。
【0016】
上記連結構造としては、装置本体の一端と導入部材との間、及び装置本体の他端と導出部材との間が、それぞれ連結部材によって着脱可能に連結されている。
【0017】
これらの特定事項により、今、ある長さの装置本体を備えた膜分離装置が活性汚泥処理システムに適用されている場合に、この活性汚泥処理システムの処理能力を増大させるのに伴って処理汚泥を固液分離する能力も増大させる必要が生じた場合には、先ず、現在適用している膜分離装置から装置本体のみを取り外す。そして、予め用意しておいた汚泥流路長さの長い装置本体を新たに膜分離装置に装着する。つまり、この新たな装置本体の各端部を導入部材及び導出部材にそれぞれ連結する。この作業のみで処理汚泥を固液分離する能力が増大することになる。
【0018】
従来の浸漬型分離膜ユニットにおいて固液分離能力を増大させるべくユニットを交換する場合には、旧ユニットを取り外す際に生物反応槽内の水の抜き取り作業やアンカボルトの取り外し作業が必要であり、また、新ユニットを取り付ける際にアンカボルトによる固定作業や生物反応槽内へ水の供給作業が必要であり、極めて煩雑な作業を要していた。これに対し、本解決手段によれば槽外設置されている膜分離装置の装置本体を交換するのみで済み、上記生物反応槽内の水の抜き取り作業などは必要ない。このため、簡単な作業で且つ迅速に固液分離能力を増大させるための構成を構築することができる。
【0019】
また、本解決手段に係る膜分離装置による処理汚泥の固液分離動作としては、先ず、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥は、装置本体と生物反応槽との間で構成される循環回路を循環する。つまり、生物反応槽から取り出された処理汚泥は、装置本体に供給され、一部の汚泥については後述する濾過が行われた後、生物反応槽に戻される。循環回路ではこの循環動作が繰り返される。
【0020】
装置本体では、生物反応槽から供給された処理汚泥の一部が膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過され、これによって、この処理汚泥の一部が固液分離されて処理水が得られる。つまり、上記循環回路での循環動作が繰り返されながら装置本体では処理水が順次得られていく。
【0021】
このように、膜エレメントの一次側では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れているため、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメントの一次側の面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメントに付着することなしに生物反応槽に戻される。このため、膜エレメントの一次側の面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、一般的な浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。浸漬型分離膜ユニットは、膜エレメントの一次側では汚泥が殆ど滞留した状態であるため、処理水が抽出された後の汚泥は押し流されることなしに膜エレメントの一次側の面に付着してしまい、汚泥の濾過を開始した後、短時間のうちに膜エレメントに大量の汚泥が付着してしまって、濾過能力が急激に低下してしまっていた。
【0022】
本解決手段の構成によれば、循環流の中から処理水を抽出するようにしているので、短時間のうちに膜エレメントに汚泥が付着してしまうといった状況は生じ難く、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能である。尚、循環回路の循環流速は、具体的には循環回路に備えられた循環ポンプの能力により決定される。
【0023】
更に、膜エレメントに対し、上記二次側から一次側に向けて洗浄水を通過させて膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去する逆流洗浄動作を所定時間毎に実行している。具体的には、処理汚泥の濾過動作(膜エレメントの一次側から二次側に向けての濾過)を停止した状態で、二次側から一次側に向けて洗浄水を通過させて膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離させる。例えば、膜エレメントの一次側面での固形物の付着量が多大になる前に逆流洗浄動作を実行するように上記所定時間を設定することにより、この付着している固形物を短時間で剥離することができ、この逆流洗浄動作に要する時間も短くて済む。このため、膜エレメントの一次側面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、浸漬型分離膜方式に比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、高性能の水処理を実現することができる。また、膜エレメントに対する薬液洗浄を行うようにしたものにあってはその頻度を低減することもできる(例えば6カ月に1回程度でよい)ため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【0024】
尚、逆流洗浄動作の実行タイミングとしては、例えば濾過動作を5min間連続して行った後に、8sec間の逆流洗浄を行うことなどが掲げられる。また、逆流洗浄動作に使用する洗浄水としては、濾過動作において得られた処理水を利用することが好ましい。この洗浄水としては上記処理水に限らず、個別の水(水道水等)であってもよい。また、付着固形物の剥離が容易に行えるように水に活性剤等を混入したものであってもよいが、この洗浄水は、膜エレメントの二次側から一次側へ透過した後には生物反応槽に流入することになるので、生物反応処理に悪影響を与えないものである方が好ましい。
【0025】
上記膜分離装置の具体構成としては以下のものが掲げられる。つまり、透過膜材料を円筒形に成形して膜エレメントを構成している。そして、多数本の膜エレメントを装置本体内に収容して、各膜エレメントの内部空間と生物反応槽との間で汚泥の循環回路を構成する。更に、上記生物反応槽から各膜エレメントに供給された汚泥が、各膜エレメントの一次側である内部から二次側である外部に向けて濾過されて処理水が得られるようにしている。
【0026】
このように、透過膜材料(例えばポリエステルやポリスチレン等)を円筒形状に成形して膜エレメントを構成し、多数本の膜エレメントを装置本体内に収容した場合、個々の膜エレメントの内側面積を比較的小さくすることができる。これは、膜エレメントの内面に汚泥が付着した場合に、個々の膜エレメントそれぞれにおける汚泥付着総面積の削減に繋がる。つまり、個々の膜エレメントにあっては、汚泥付着面積が小さいため、上記逆流洗浄動作による固形物の剥離をより簡単に行うことができる。このため、逆流洗浄動作に要する時間が短くなり、濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。また、膜エレメントから処理水を吸引する場合、この膜エレメントは円筒形に成形されているため、吸引負圧による変形は生じ難く、内部空間の形状を維持することができて、濾過能力を安定的に維持することが可能になる。言い換えると、膜エレメントの内部空間を大きく確保して個々の膜エレメントの濾過能力を高めようとする場合、平板状の膜エレメントであると、上記吸引負圧によって簡単に変形してしまう状況となるが、上述した如く円筒状に成形した場合には、吸引負圧による変形は生じ難いため、膜エレメントの内部空間を大きく確保することが可能になり、その結果、膜エレメントの設計の自由度(径寸法の設計自由度)を拡大することができる。具体的に、膜エレメントの外径寸法としては5〜8mm程度に設定される。
【0027】
上記膜エレメントの一次側空間における汚泥流速を高く確保するための手段として以下のものが掲げられる。つまり、循環汚泥(上記循環回路を循環する処理汚泥)が流れる膜エレメントの一次側空間にこの循環汚泥の流れ方向に沿って流れる気泡を供給することによって循環汚泥に搬送力を与える気泡供給手段を設けた構成である。
【0028】
この特定事項によれば、気泡供給手段から膜エレメントの一次側空間に供給された気泡が、一次側空間を流れる循環汚泥を、その流れ方向に押し流すことになり、この一次側空間で循環汚泥が滞留してしまうことがなくなる。また、この気泡は、膜エレメントの一次側面に対する汚泥の付着を抑制する機能も発揮することになり、膜エレメントの一次側面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量をよりいっそう低減することができる。具体的な構成としては、膜エレメントを縦型配置とし、一次側空間の下側から上側に向かって処理汚泥を流す構成としておき、膜エレメントの下側から一次側空間に向けて気泡を供給(エアリフト)する構成が掲げられる。これにより、気泡の浮力が循環汚泥の搬送力として与えられることになる。その結果、循環汚泥を循環させるために必要な動力(循環ポンプの動力等)を低減することができ、システムのランニングコストの削減を図ることができる。
【0029】
また、この解決手段の場合、気泡供給手段から供給される気泡の形状を、膜エレメントの一次側空間における汚泥流れ方向に直交する断面の形状に略一致させることが好ましい。この場合、一次側空間には、汚泥に満たされた層と空気に満たされた層とが汚泥流れ方向で交互に存在することになる。このため、汚泥は気泡によって強制的に押し流される状態となり、気泡から汚泥に対して搬送力を確実に与えることができて効率の良い汚泥循環動作を行うことができる。
【0030】
上記気泡供給手段の具体構成としては以下のものが掲げられる。つまり、気泡供給手段として、装置本体における汚泥流れ方向に直交する断面の形状に略一致する形状を有する散気部材を備えさせる。
【0031】
また、この散気部材としては、以下の構成が掲げられる。つまり、装置本体を、汚泥流れ方向に直交する断面の形状が略円形の管状体とする。そして、散気部材を、上記装置本体の断面形状に略一致する円盤状の多孔質体により構成する。
【0032】
以上の構成によれば、装置本体の内部に収容された多数本の膜エレメントのそれぞれの内部空間(一次側空間)に対して空気を略均等に供給することが可能となる。このため、各膜エレメントの一次側空間での汚泥流量を略均一にできて、濾過能力の均等化を図ることが可能となり、その結果、膜分離装置全体としての濾過能力の向上を図ることができる。
【0033】
上記逆流洗浄動作をより効率的に行うための手段として以下のものが掲げられる。つまり、逆流洗浄動作の実行中に膜エレメントの一次側空間に比較的大量の空気を一時的に通過させる空気供給手段を設けた構成である。
【0034】
また、この空気供給手段としては、加圧空気を発生させる圧縮機を適用することが可能であるが、その他に以下の構成としてもよい。つまり、空気を貯留する貯留容器を備えさせ、逆流洗浄動作の実行中に貯留容器の内部空間を膜エレメントの一次側空間に解放して比較的大量の空気を膜エレメントの一次側空間に通過させる構成である。この構成によれば、例えば、上記気泡供給手段を備えさせた場合にその気泡供給手段から供給される気泡の一部を貯留容器に貯留させていき、逆流洗浄動作の実行中に、この貯留容器から膜エレメントの一次側空間に大量の空気を供給することができる。つまり、この場合、気泡供給手段から供給される気泡を逆流洗浄動作用の空気として利用することができ、特別な空気圧送機構が必要なくなってシステム構成の簡素化を図ることができる。
【0035】
次に、膜分離装置を薬液洗浄するようにした場合の解決手段について述べる。先ず、装置本体の薬液洗浄時にこの装置本体の内部に薬液を供給する薬液供給管を、装置本体から処理水を導出する導出管に接続する。また、この薬液供給管から導出管を経て薬液を装置本体の内部に供給する薬液洗浄動作を実行する薬液洗浄手段を備えさせている。具体的には、この薬液洗浄手段が、所定時間毎に薬液洗浄動作を実行するよう構成されている。
【0036】
この特定事項により、薬液洗浄時、薬液供給管から導出管を経て装置本体の内部に供給された薬液は、膜エレメントの二次側から一次側に向けて流入することになる。これは上記逆流洗浄の場合と同様の流れである。これにより、膜エレメントの一次側面に付着している固形物は容易に剥離され且つ溶解されて膜エレメントは浄化されることになり、効率の良い薬液洗浄を実行することができる。これにより、薬液洗浄動作に要する時間の短縮化を図ることが可能になり、膜分離装置を迅速に復帰させて濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。また、循環回路での汚泥循環を停止した状態で薬液洗浄を行うようにした場合、薬液洗浄に使用する薬液の量は装置本体内の容積程度で済むため、従来の浸漬型分離膜ユニットを薬液洗浄する場合に比べて使用薬液量の削減が図れる。これにより、薬液洗浄後の廃液の量が少なくなり、その処理を容易に行うことができる。
【0037】
また、膜分離装置には、薬液洗浄終了後に装置本体内の薬液を排出除去する排出手段を備えさせている。これによれば、薬液洗浄の終了後には、装置本体内の薬液はその大部分が排出手段によって排出除去され、この薬液が生物反応槽へ流入されてしまうことがない。従来の浸漬型分離膜ユニットでは、膜エレメントを薬液洗浄した場合、その薬液はそのまま生物反応槽内に存在することになり、汚泥の活性が低下してしまって、その後の生物反応処理に悪影響を及ぼしていた。本解決手段では、このような状況は生じないため、生物反応処理を常に安定的に行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を維持することができる。
【0038】
また、装置本体に、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を装置本体に向けて導入するための導入管を接続する。そして、この導入管には、生物反応槽から取り出した処理汚泥中の余剰汚泥を循環回路から引き抜くための引き抜き手段が設けられている。この構成によれば、余剰汚泥を引き抜くための構成を容易に実現でき、活性汚泥処理システムの実用性の向上を図ることができる。
【0039】
次に、複数の膜分離装置を生物反応槽に対して並列接続したシステムに対して本発明を適用する場合について説明する。先ず、生物反応槽に対して複数の膜分離装置が互いに並列に接続されている。また、逆流洗浄手段を、逆流洗浄時には複数の膜分離装置のうち選択された一つのみに対して逆流洗浄動作を実行する構成としている。この構成によれば、複数の膜分離装置のうち一つのみが逆流洗浄動作を実行し、その他の膜分離装置では循環汚泥の濾過動作が行われている。このため、システム全体としての濾過能力を大きく低下させることなしに上記逆流洗浄動作による膜エレメントの高性能化の維持を図ることができる。
【0040】
更に、生物反応槽に対して複数の膜分離装置が互いに並列に接続されており、薬液洗浄手段が、薬液洗浄時には複数の膜分離装置のうち選択された一つのみに対して薬液洗浄動作を実行する構成としている。この場合にも、複数の膜分離装置のうち一つのみが薬液洗浄動作を実行し、その他の膜分離装置では循環汚泥の濾過動作が行われている。このため、システム全体としての濾過能力を大きく低下させることなしに上記薬液洗浄動作による膜エレメントの高性能化の維持を図ることができる。
【0041】
また、上述した如く気泡供給手段を設けた場合において、嫌気好気活性汚泥法を利用した活性汚泥処理システムに本発明を適用した場合の循環回路としては以下の構成が掲げられる。つまり、生物反応槽として嫌気槽及び好気槽を備えさせる。そして、循環汚泥を装置本体から生物反応槽に戻す汚泥戻し管を、嫌気槽及び好気槽にそれぞれ対応して分岐させる一方、これら嫌気槽及び好気槽に対する汚泥戻し量を調整する戻し量調整手段(例えば三方弁)を備えさせるようにする。
【0042】
この構成によれば、好気槽から装置本体に供給された汚泥を汚泥戻し管によって嫌気槽に戻すことが可能となる。従来の嫌気好気活性汚泥法を利用した活性汚泥処理システムでは、好気槽から嫌気槽に汚泥を戻すための特別な戻し配管を備えさせ、この戻し配管にポンプを備えさせる必要があった。本解決手段によれば、この戻し配管及びポンプの機能を上記循環回路が備えることになる。このため、この循環回路を有効利用して好気槽から嫌気槽へ汚泥を戻すことが可能になり、従来の戻し配管及びポンプが必要なくなってシステム全体のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
また、上述した如く気泡供給手段を設けた場合、装置本体を流れる処理汚泥には空気(酸素)が供給されることになる。このため、好気槽に必要な空気量(DO(Dissolved Oxygen):溶存酸素量)をこの気泡供給手段によって処理汚泥に与え、この処理汚泥を好気槽に戻すようにした場合には、好気槽には曝気装置が必要なくなる。これにより、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、上記好気槽内に空気を供給する曝気手段(エアレーション装置)を備えさせ、この曝気手段から好気槽内に供給する空気の供給量を、気泡供給手段からの空気供給量及び装置本体から好気槽内への循環汚泥の戻し量に応じて調整する曝気量調整手段を備えさせている。この場合、好気槽に必要な空気量のうち、どの程度が気泡供給手段からの空気により賄われているかを、この気泡供給手段からの空気供給量及び装置本体から好気槽内への循環汚泥の戻し量によって認識し、その不足分のみを曝気手段から好気槽内に供給すればよい。これにより、好気槽内に必要以上の空気が供給されてしまうことがなくなり、曝気手段の稼働率を必要最小限に抑えることでシステムのランニングコストの大幅な削減を図ることができる。
【0045】
上述した各解決手段に記載の膜分離装置を備えた活性汚泥処理システムに係る解決手段としては以下の構成が掲げられる。つまり、膜エレメントを収容した装置本体が選択的に交換可能に構成された膜分離装置と生物反応槽との間で構成される循環回路を備え、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るよう構成された活性汚泥処理システムである。
【0046】
また、この活性汚泥処理システムにおける処理能力増強方法としては以下の解決手段が掲げられる。つまり、膜エレメントを収容した装置本体が選択的に交換可能に構成された膜分離装置と生物反応槽との間で構成される循環回路を備え、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るよう構成された活性汚泥処理システムに対して行われる処理能力増強方法に係るものである。そして、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類の装置本体を予め用意しておき、システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が変化した際、予め用意しておいた装置本体の中から要求能力に応じた装置本体を選択して交換するようにしている。
【0047】
これら活性汚泥処理システム及び処理能力増強方法によれば、システム全体の処理能力の増大に伴って要求される処理汚泥固液分離能力が増大した場合、既存の装置本体を処理能力の高い装置本体に交換する。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、本発明を、嫌気好気活性汚泥法を使用した水処理システムに適用した場合について説明する。また、本発明の理解を容易にするため、先ず、第1実施形態では、膜分離装置としての膜モジュールを1個のみ備えた水処理システムについて説明する。この膜モジュールを複数個備えた水処理システムについては第2実施形態で説明する。
【0049】
(第1実施形態)
−水処理システムの概略構成の説明−
図1は本形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。この図1に示すように、本形態に係る水処理システムは、生物反応槽1を構成する嫌気槽としての脱窒槽11及び好気槽としての硝化槽12、膜モジュール2、処理水槽3、薬液タンク4を備えている。
【0050】
脱窒槽11は、その上流側に設けられた微細目スクリーン13を通過した流入水(汚水)が導入されるものである。この脱窒槽11の内部には攪拌機14が設置されており、この攪拌機14の駆動に伴って脱窒槽11内の汚水が攪拌されて嫌気工程による処理が行われるようになっている。
【0051】
一方、硝化槽12は、上記脱窒槽11において処理された汚水が流入されるようになっている。また、この硝化槽12の内部には曝気手段としての曝気ブロアB1から延びるエア供給管61が導入され、このエア供給管61の先端に設けられた散気装置61aから空気が供給可能となっている。そして、この曝気ブロアB1の駆動に伴って硝化槽12内に空気が供給され、それに伴う好気工程による処理が行われるようになっている。
【0052】
以下、上記脱窒槽11及び硝化槽12において行われる生物反応処理(好気工程及び嫌気工程)の原理について説明する。先ず、汚水中に含まれる窒素化合物は、硝化槽12における好気工程において活性汚泥により酸化されて硝酸性窒素になり、その後、脱窒槽11における嫌気工程によって硝酸性窒素から酸素を奪って窒素ガスを発生させ、これによって脱窒が行われる(この際の硝化槽12から脱窒槽11への汚泥戻し動作については後述する)。また、嫌気工程において活性汚泥からリンが一旦放出され、その後、好気工程によって活性汚泥にリンを過剰採取させることにより脱リンが行われる。このような処理が生物反応槽1内で行われて脱窒及び脱リンが行われる。
【0053】
処理水槽3は、後述する膜モジュール2によって汚泥が固形分離されて抽出された処理水を回収するものである。
【0054】
薬液タンク4は、後述する膜モジュール2を薬液洗浄するための薬液が貯留されている。つまり、所定期間毎に実行される薬液洗浄時には、この薬液タンク4に貯留されている薬液が膜モジュール2に供給されることになる。この薬液洗浄のための配管構造及び薬液洗浄動作については後述する。
【0055】
−膜モジュール2の説明−
次に、本形態の特徴とする機器である膜モジュール2について説明する。図2は膜モジュール2の内部構造を示す断面図であり、図3は膜モジュール2の内部における膜エレメント22,22,…の収容状態の一部を示す断面図である。
【0056】
この膜モジュール2は、縦置き設置されたケーシング21を備えている。このケーシング21は、略円筒状の装置本体としてのエレメント収容部23と、このエレメント収容部23の下端に連結された導入部材26と、エレメント収容部23の上端に連結された導出部材27とを備えている。
【0057】
上記エレメント収容部23の内部には多数本の膜エレメント22,22,…が収容されている。より具体的には、図2に示すように、エレメント収容部23は、その長手方向の全体が一定の内径寸法を有しており、このエレメント収容部23に多数本(例えば615本)の膜エレメント22,22,…が束ねられた状態で収容されている。
【0058】
各膜エレメント22,22,…は、透過膜材料が円筒形に成形された小径(外径寸法が例えば5.2mm)の所謂ストロー形状の部材であって、その内部に汚泥が流入した場合、その汚泥から水のみを外部に濾過できるように微多孔性膜等により構成されている。尚、この膜エレメント22を構成する透過膜材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が掲げられる。透過膜材料はこれら材料に限るものではない。
【0059】
上記導入部材26及び導出部材27は、一端が開放された略カップ形状の部材であって、導入部材26はエレメント収容部23の下端に連結されることにより、このエレメント収容部23の下側に汚泥流入空間24を形成している。一方、導出部材27はエレメント収容部23の上端に連結されることにより、このエレメント収容部23の上側に汚泥流出空間25を形成している。
【0060】
また、膜エレメント22,22,…の長手方向の両端部分(汚泥流入空間24及び汚泥流出空間25に近接する領域)では、これら膜エレメント22,22,…の外周面とエレメント収容部23の内周面との間の上下の空間に樹脂が充填されており、これによって、各膜エレメント22,22,…の内部空間が汚泥流入空間24及び汚泥流出空間25に連通状態となり、各膜エレメント22,22,…の外部空間は汚泥流入空間24及び汚泥流出空間25に非連通状態となっている。
【0061】
<連結構造>
次に、エレメント収容部23に対する導入部材26及び導出部材27の連結構造について説明する。各連結構造は互いに同一であるため、ここでは導出部材27とエレメント収容部23との連結構造についてのみ説明する。
【0062】
図4は導出部材27とエレメント収容部23との連結部分の分解図(一部を断面で示している)、図5はこの連結部分の平面図、図6は連結部分を拡大して示す断面図である。
【0063】
これら図に示すように、エレメント収容部23の上端縁近傍位置には、その周方向の全体に亘る凹部23aが形成されている。同様に、導出部材27の下端縁近傍位置にも、その周方向の全体に亘る凹部27aが形成されている。そして、これらエレメント収容部23と導出部材27との間にはゴムリング28が介在され、且つこのゴムリング28の外周囲に連結部材29が装着されることによってエレメント収容部23と導出部材27とが気密性を維持しながら連結されている。
【0064】
上記ゴムリング28は、断面がT字状であって、エレメント収容部23と導出部材27との間に介在された状態では、図6に示すように、一部がエレメント収容部23と導出部材27とによって挟持された状態となり、他の部分がエレメント収容部23の外周面から導出部材27の外周面に亘って当接して、これらエレメント収容部23と導出部材27との連結部分の外周囲を囲むようになっている。
【0065】
連結部材29は、半円弧形状の一対の金属製のジョイント部材29a,29aにより成っている。このジョイント部材29a,29aは、図4及び図6に断面で示すように、略コ字型の断面を有しており、上端及び下端に内周側に向かって延びるフランジ29b,29bが形成されている。
【0066】
そして、連結部材29がゴムリング28の外周囲に装着された状態では、図6に示すように各フランジ29b,29bが、エレメント収容部23及び導出部材27にそれぞれ形成されている凹部23a,27aに嵌り込むと共に、ジョイント部材29aの内周面がゴムリング28の外周面を内周側に向けて押さえ込むようになっている。
【0067】
また、図5に示すように、各ジョイント部材29a,29aの周方向の端部には連結フランジ29c,29cが形成されており、各ジョイント部材29a,29aがゴムリング28の外周囲に装着された状態では、それぞれの連結フランジ29c,29c同士が重なり合うようになっている。これら連結フランジ29c,29cにはボルト孔が形成されており、互いに重ね合わされた連結フランジ29c,29cの各ボルト孔に亘ってボルトBが挿通され、このボルトBにナットNが螺合されることにより連結フランジ29c,29c同士が連結されるようになっている。このようにしてエレメント収容部23と導出部材27との間にゴムリング28が介在された状態で、その外周側に連結部材29が装着されることにより、エレメント収容部23と導出部材27とは気密性を維持しながら連結されている。エレメント収容部23の下端と導入部材26との連結構造も同様の構成となっている。
【0068】
このようにして、エレメント収容部23は、導入部材26及び導出部材27に対してゴムリング28及び連結部材29によって着脱自在に連結されており、上記ボルトBを外すことによって、導入部材26及び導出部材27から容易に取り外して交換できるようになっている。つまり、本実施形態に係る膜モジュール2は、エレメント収容部23が容易に交換可能な構成となっている。
【0069】
また、この膜モジュール2の導入部材26の底部には、後述する薬液洗浄動作の終了後に、この本体ケーシング21の底部から薬液を排出するための排出手段としての排出管64が接続されており、この排出管64には開閉自在なバルブV2が設けられている。つまり、薬液洗浄動作の終了後にこのバルブV2が開放されることにより、本体ケーシング21から薬液が排出され、生物反応槽1には流入しないようになっている。
【0070】
−循環回路の説明−
上記膜モジュール2と生物反応槽1とは、汚泥取り出し管51及び汚泥戻し管52によって互いに接続されており、汚泥取り出し管51に備えられた循環ポンプP1の駆動に伴って膜モジュール2と生物反応槽1との間で汚泥が循環するように構成されている。つまり、これら生物反応槽1、膜モジュール2、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52によって汚泥循環回路が構成されている。
【0071】
上記汚泥取り出し管51は、一端(上流端)が硝化槽12の下部に、他端(下流端)が膜モジュール2の汚泥流入空間24にそれぞれ接続されている。一方、汚泥戻し管52は、一端(上流端)が膜モジュール2の汚泥流出空間25に接続されている。この汚泥戻し管52の、他端(下流端)は分岐されており、一方の分岐管52aは硝化槽12に接続され、他方の分岐管52bは脱窒槽11に接続されている。つまり、膜モジュール2から流出した汚泥は、分岐管52a,52bによって硝化槽12及び脱窒槽11に選択的に戻される構成となっている。尚、各分岐管52a,52bの分岐部分には三方弁V1が設けられており、この三方弁V1の開度を調整することによって硝化槽12及び脱窒槽11に対する汚泥の戻し量が任意に設定可能となっている。
【0072】
このように、生物反応槽1、膜モジュール2、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52によって汚泥循環回路が構成されていることにより、生物反応槽1における生物反応処理後の処理汚泥は、生物反応槽1から取り出され、膜モジュール2に供給される。この膜モジュール2の内部では、汚泥流入空間24から各膜エレメント22,22,…の内部空間を経て汚泥流出空間25に向かう流れが生じている。このため、図7(a)に示すように、各膜エレメント22,22,…の内部空間を流れている汚泥の一部については濾過が行われ、処理汚泥の一部が固液分離されて処理水が膜エレメント22の外部に抽出される。このようにして循環回路での汚泥の循環動作が繰り返されながら膜モジュール2では処理水が連続的に得られるようになっている。尚、通常運転状態では、上記循環回路における汚泥循環量と膜エレメント22による処理水抽出量との比は「20:1」程度となるように設定されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0073】
尚、固液分離されて膜エレメント22の内部空間に残った汚泥は、この内部空間に生じている汚泥流に沿って膜エレメント22の内部空間から汚泥流出空間25、汚泥戻し管52を経て硝化槽12や脱窒槽11に戻されるようになっている。
【0074】
このように、膜エレメント22の内部空間(一次側)では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れているため、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメント22の内側面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメント22に付着することなしに生物反応槽1に戻されることになる。このため、膜エレメント22の内側面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。これにより、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。尚、図7(b)は、循環回路での循環動作が所定時間継続して行われて膜エレメント22の内面に僅かに固形物が付着した状態を示している。
【0075】
−処理水の取り出し−
上記膜モジュール2と処理水槽3とは、導出管としての処理水取り出し管53によって接続されている。この処理水取り出し管53は、膜モジュール2に接続する側が分岐されており、一方の分岐管53aは上記エレメント収容部23の下部に、他方の分岐管53bはエレメント収容部23の上部にそれぞれ接続されている。また、処理水取り出し管53には膜濾過ポンプP2が備えられており、この膜濾過ポンプP2の駆動に伴って、各膜エレメント22,22,…で濾過された処理水が各分岐管53a,53bから抜き出され処理水取り出し管53を経て処理水槽3に回収されるようになっている。
【0076】
−エアリフト−
また、本システムは、各膜エレメント22,22,…の内部空間に気泡を連続的に供給するためのエアリフトブロアB2を備えている。このエアリフトブロアB2と膜モジュール2の汚泥流入空間24とはリフトエア供給管62によって接続されており、エアリフトブロアB2の駆動に伴って、汚泥流入空間24にエアが供給され、このエアが気泡となって各膜エレメント22,22,…の内部空間に連続的に供給されるようになっている(図7(a)、(b)参照)。具体的には、リフトエア供給管62の先端には多数の開口が形成された散気管62aが取り付けられており、この散気管62aの各開口から汚泥流入空間24に気泡が供給され、これら気泡はその浮力によって各膜エレメント22,22,…の内部空間に連続的に供給されるようになっている。このように上記リフトエア供給管62及びエアリフトブロアB2によって本発明でいう気泡供給手段が構成されている。
【0077】
上述の如く各膜エレメント22,22,…の内部空間に気泡を連続的に供給するようにしたことにより、この気泡が、膜エレメント22内の汚泥をその流れ方向(上方)に押し流すことになり、膜エレメント22の内部空間で汚泥が滞留してしまうことがなくなる。また、この気泡は、膜エレメント22の内面に対する汚泥の付着を抑制する機能も発揮することになり、膜エレメント22の内面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量をよりいっそう低減することができる。これにより、気泡の浮力が循環汚泥の搬送力として与えられることになり、その結果、循環汚泥を循環させるために必要な動力(上記循環ポンプP1の動力)を低減することができ、システムのランニングコストの削減を図ることができる。
【0078】
また、この場合、膜エレメント22の内部空間に供給される気泡の外径は、膜エレメント22の内径寸法と略等しいか、または、膜エレメント22の内径寸法よりも僅かに大きく設定しておく。これによれば、膜エレメント22の内部空間には、汚泥に満たされた層と空気に満たされた層とが汚泥流れ方向で交互に存在することになり(図7(a),(b)参照)、汚泥は気泡によって強制的に押し流される状態となって、気泡から汚泥に対して搬送力を確実に与えることができて効率の良い汚泥循環動作を行うことができる。
【0079】
−逆流洗浄−
上記処理水槽3と処理水取り出し管53とは逆流洗浄管54によって接続されている。この逆流洗浄管54には逆流洗浄ポンプP3が備えられており、この逆洗浄ポンプP3の駆動に伴って、処理水槽3内の処理水が逆流洗浄配管54及び処理水取り出し管53を経て膜モジュール2のエレメント収容部23に供給されるようになっている(図1に破線で示す矢印参照)。
【0080】
つまり、所定時間毎に逆流洗浄ポンプP3を駆動することによって逆流洗浄動作を実行し、これによって、各膜エレメント22,22,…の内面に付着している固形物を剥離除去できるようにしている。この逆流洗浄動作の実行時には、循環ポンプP1の駆動は継続させる一方、膜濾過ポンプP2は停止され上記の濾過動作を停止するようになっている。このように上記逆流洗浄管54及び逆流洗浄ポンプP3によって本発明でいう逆流洗浄手段が構成されている。
【0081】
このような逆流洗浄動作を実行することにより、図7(c)に示すように、膜エレメント22の内側面に付着している固形物を容易に剥離除去することが可能であり、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、従来のものに比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、システム全体を大型にすることなしに、高性能の水処理を実現することができる。具体的には、従来の浸漬型分離膜ユニットにあっては処理能力が0.4m3/m2・day程度であったが、本実施形態に係る膜モジュール2では処理能力が0.8m3/m2・day程度に向上することが実験により確認されている。
【0082】
また、本形態によれば、膜エレメント22に対する薬液洗浄の頻度を低減することもできる(例えば6カ月に1回程度でよい)ため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【0083】
−エアインジェクション−
上記の逆流洗浄動作をより効率的に行うために、本システムは、各膜エレメント22,22,…の内部空間に比較的大量の空気を一時的に通過させるエアインジェクションコンプレッサCを備えている。このエアインジェクションコンプレッサCと上記汚泥取り出し管51とはエアインジェクション管63によって接続されており、エアインジェクションコンプレッサCの駆動に伴って、加圧エアが、汚泥取り出し管51、汚泥流入空間24を経て各膜エレメント22,22,…の内部空間に一時的に大量に供給されるようになっている。このように上記エアインジェクション管63及びエアインジェクションコンプレッサCによって本発明でいう空気供給手段が構成されている。
【0084】
この加圧エアによって、膜エレメント22の内面に付着している汚泥を迅速に剥離することが可能となり(図7(c)参照)、上記逆流洗浄動作に要する時間が短くなって、濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。
【0085】
−薬液洗浄−
上記薬液タンク4と処理水取り出し管53とは薬液供給管55によって接続されている。この薬液供給管55には薬液洗浄ポンプP4が備えられており、この薬液洗浄ポンプP4の駆動に伴って、薬液タンク4内の薬液が薬液供給管55及び処理水取り出し管53を経て膜モジュール2のエレメント収容部23に供給されるようになっている(図1に一点鎖線で示す矢印参照)。
【0086】
つまり、所定期間毎に薬液洗浄ポンプP4を駆動することによって薬液洗浄動作を実行し、これによって、各膜エレメント22,22,…の内面に付着している固形物を溶解除去できるようにしている。この薬液洗浄動作の実行時には、薬液洗浄ポンプP4を除く全てのポンプP1〜P3は停止され、上記の濾過動作やエア供給動作を停止するようになっている。このポンプの駆動制御による薬液洗浄動作の実行は、図示しないコントローラに備えられた薬液洗浄手段の制御により行われる。
【0087】
このような薬液洗浄動作を所定期間毎に実行することにより、膜エレメント22の内面に付着している固形物は容易に剥離され且つ溶解されて膜エレメント22は浄化されることになり、効率の良い薬液洗浄を実行することができる。これにより、薬液洗浄動作に要する時間の短縮化を図ることが可能になり、膜モジュール2を迅速に復帰させて濾過動作の稼働率の向上を図ることができる。また、薬液洗浄に使用する薬液の量は膜モジュール2の本体ケーシング21内の容積程度で済むため、従来の浸漬型分離膜ユニットを薬液洗浄する場合に比べて使用薬液量の削減が図れる。これにより、薬液洗浄後の廃液の量が少なくなり、その処理を容易に行うことができる。
【0088】
−各動作の実行タイミング−
次に、上述した逆流洗浄動作や薬液洗浄動作の実行タイミングについて説明する。図8は、本水処理システムの動作を示すタイミングチャートである。この図に示すように、通常の処理水濾過動作にあっては、膜濾過ポンプP2、循環ポンプP1、エアリフトブロアB2が運転され、上述した汚泥の循環動作に伴う処理水濾過動作が実行されて、処理水槽3に連続的に処理水が抜き出されることになる。
【0089】
そして、この動作が所定時間A(例えば5min)実行された後に、逆流洗浄動作に切り換えられる。この逆流洗浄動作では、上述した如く、膜濾過ポンプP2が停止され、逆流洗浄ポンプP3が駆動されることにより実行される。この逆流洗浄動作は、図中の時間B(例えば8sec)だけ行われる。そして、この逆流洗浄動作の途中でエアインジェクションコンプレッサCが一時的に駆動され、加圧エアが各膜エレメント22,22,…の内部空間に一時的に大量に供給される。このエアインジェクションコンプレッサCの駆動タイミングとしては、逆流洗浄動作の実行時間のうちの中間の時間に行われる。尚、上記エアインジェクション動作は、逆流洗浄動作の開始と同時に実行するようにしてもよい。
【0090】
このような逆流洗浄動作が実行された後、所定時間のウエイト時間(図8中の時間E)だけ膜濾過ポンプP2の起動を禁止し、このウエイト時間の経過後に、膜濾過ポンプP2を起動して上記の循環動作に伴う処理水濾過動作が復帰されることになる。以上の動作が繰り返される。
【0091】
また、上記薬液洗浄動作は、6カ月毎に実行されるようになっている。この場合には、上述した如く薬液洗浄ポンプP4を除く全てのポンプP1〜P3は停止される。
【0092】
−エレメント収容部23の交換作業−
次に、水処理システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が増大した場合のエレメント収容部23の交換作業について説明する。
【0093】
本形態では、エレメント収容部23として、長さの異なる、つまり固液分離能力の異なる複数種類が予め準備してある。例えば、現在の水処理システムに使用されている膜モジュール2のエレメント収容部23が長さ2mのものである場合、1m、3mのエレメント収容部23が予め準備してある。そして、水処理システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が1.5倍に増大した場合には、現在の膜モジュール2に使用している2mのエレメント収容部23を、3mのエレメント収容部23に交換する。尚、予め準備しておくエレメント収容部23の長さ寸法としては上述したものには限らない。
【0094】
エレメント収容部23の交換作業としては、先ず、導入部材26及び導出部材27に対してエレメント収容部23を連結している各連結部材29を取り外す。つまり、各ジョイント部材29a,29a同士を締結しているボルトBを外すことによって連結状態を解除して導入部材26及び導出部材27からエレメント収容部(長さ2mのもの)23を取り外す。その後、新たなエレメント収容部(長さ3mのもの)23を導入部材26及び導出部材27に対して連結する。つまり、エレメント収容部23と導入部材26の間、及びエレメント収容部23と導出部材27との間にそれぞれゴムリング28を装着し、このゴムリング28の外周囲に連結部材29を装着(ジョイント部材29a,29a同士のボルト止め)する。これにより、ジョイント部材29aの内周面がゴムリング28の外周面を内周側に向けて押さえ込むようにしながら、エレメント収容部23と導出部材27との間、エレメント収容部23と導入部材26との間がそれぞれ気密性を維持しながら連結される。図9は、このエレメント収容部23が交換された後の水処理システムの概略構成を示す図である。
【0095】
また、このようにエレメント収容部23を交換する場合、膜モジュール2全体の長さが長くなってその高さが高くなるため、導出部材27の内部である汚泥流出空間25から生物反応槽1へ汚泥を戻すための汚泥戻し管52の一部分も交換されることになる。つまり、この汚泥戻し管52は、導出部材27に接続する第1汚泥戻し管52a、上記三方弁V1を備えた第2汚泥戻し管52b、これら第1汚泥戻し管52aと第2汚泥戻し管52bとを接続するエルボ管52cを備えている。図1に示すように、膜モジュール2の高さが低い場合には、立ち上がり寸法の短いエルボ管52cを採用する。そして、エレメント収容部23の交換によって膜モジュール2の高さが高くなった場合には、図9に示すように、立ち上がり寸法の長いエルボ管52cに交換されることになる。尚、第1汚泥戻し管52a及び第2汚泥戻し管52bは交換されることなく、既存のものがそのまま使用される。
【0096】
また、エレメント収容部23の交換に伴い、このエレメント収容部23に接続している各配管も一部が交換される。つまり、図1に示すように、上記処理水取り出し管53の各分岐管53a,53bや薬液供給管55の途中はフランジ接続により配管同士が切り離し可能な構成とされており(図1及び図9ではフランジ接続部分に符号Fを付している)、エレメント収容部23の交換時には、このフランジ接続部分が切り離され、新たに適用されるエレメント収容部23から延びる各配管がそれぞれフランジ接続されることになる。
【0097】
−実施形態の効果−
以上説明したように、本形態では、膜モジュール2の構成部材のうち膜エレメント22を収容しているエレメント収容部23のみを交換可能な構成としている。そして、予め、エレメント収容部23として長さの異なる、つまり固液分離能力の異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じてエレメント収容部23を選択的に交換できるようにしている。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)することができる。
【0098】
また、本形態では、交換可能な複数種類のエレメント収容部23としては、既設のエレメント収容部23に対して、外径が同一寸法であり、長さ寸法のみが異なっているものを採用している。従って、エレメント収容部23を交換しても膜エレメント22内部の汚泥流速が変化することがないため、循環ポンプP1を交換しなくても良好な汚泥濾過動作を行うことができる。このように循環ポンプP1の交換作業が不要であることによっても、エレメント収容部23を交換する際の作業を簡素化できる。
【0099】
また、本実施形態では、膜エレメント22の内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。このとき、膜エレメント22の内面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメント22に付着することなしに生物反応槽1に戻される。このため、膜エレメント22の内面での単位時間当たりにおける汚泥の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。従って、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。また、本形態では、この膜エレメント22に対し、処理水の濾過方向とは逆方向に洗浄水を定期的に通過させることにより膜エレメント22の内面に付着している固形物を剥離除去するようにしている。このため、膜エレメント22の内面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、従来のものに比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、システム全体を大型にすることなしに、高性能の水処理を実現することができる。また、膜エレメント22に対する薬液洗浄の頻度を低減することもできるため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【0100】
また、本形態では、上述した如く、循環汚泥を膜モジュール2の本体ケーシング21から生物反応槽1に戻す汚泥戻し管52を、脱窒槽11及び硝化槽12にそれぞれ対応して分岐させる一方、これら脱窒槽11及び硝化槽12に対する汚泥戻し量を調整可能な戻し量調整手段としての三方弁V1を備えさせている。このため、本体ケーシング21に供給された汚泥を汚泥戻し管52によって脱窒槽11に戻すことが可能となる。従来の嫌気好気活性汚泥法を利用した活性汚泥処理システムでは、好気槽から嫌気槽に汚泥を戻すための特別な戻し配管を備えさせ、この戻し配管にポンプを備えさせる必要があった。本実施形態によれば、この戻し配管及びポンプの機能を循環回路が備えることになる。このため、この循環回路を有効利用して硝化槽12から脱窒槽11へ汚泥を戻すことが可能になり、従来の戻し配管e及びポンプfが必要なくなってシステム全体のコンパクト化を図ることができる。尚、通常運転状態では、膜モジュール2からの硝化槽12への汚泥戻し量と脱窒槽11への汚泥戻し量とは「3:1」程度に調整されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0101】
また、曝気ブロアB1から硝化槽12に供給する空気の供給量を、エアリフトブロアB2からの空気供給量及び汚泥戻し管52から硝化槽12内への循環汚泥の戻し量に応じて調整するようにし、この硝化槽12内へ戻される汚泥中の酸素量と曝気ブロアB1からの酸素量との合算が目標DOとなるように曝気ブロアB1を制御すれば、硝化槽12内に必要以上の空気が供給されてしまうことがなくなり、曝気ブロアB1の稼働率を必要最小限に抑えることでシステムのランニングコストの大幅な削減を図ることができる。この曝気ブロアB1から硝化槽12に供給する空気の供給量の調整は、図示しないコントローラに備えられた曝気量調整手段の制御により行われる。尚、通常運転状態では、曝気ブロアB1からの空気の供給量とエアリフトブロアB2からの空気供給量とは「3:1」程度に調整されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0102】
尚、本形態では、硝化槽12へ空気を供給するための曝気ブロアB1を備えさせるようにしたが、硝化槽12に必要な空気量をエアリフトブロアB2によって処理汚泥に与え、この処理汚泥を硝化槽12に戻すようにした場合には、曝気ブロアB1が必要なくなる。これにより、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0103】
(第1変形例)
次に、上述した第1実施形態の第1変形例について説明する。本例は、逆流洗浄動作時に、各膜エレメント22,22,…の内部空間に比較的大量の空気を一時的に通過させるための構成の変形例である。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるため、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0104】
図10は、本例に係る水処理システムの概略構成を示す図である。この図10に示すように、本形態に係る水処理システムは、エアリフトブロアB2に繋がっているリフトエア供給管62の下流側が分岐されており、一方の分岐管62bは膜モジュール2の汚泥流入空間24に接続され、他方の分岐管62cは上記汚泥取り出し管51に接続されている。また、この他方の分岐管62cの途中には、エアリフトブロアB2から供給される空気を一時的に貯留する貯留容器65が設けられている。この貯留容器65の上流側及び下流側の配管には開閉弁V3,V4がそれぞれ設けられている。
【0105】
このため、処理水濾過動作時には、エアリフトブロアB2が駆動した状態で上流側の開閉弁V3のみが開放され、エアリフトブロアB2から供給された空気の一部が分岐管62cに流入して貯留容器65の内部に蓄えられていく。
【0106】
そして、逆流洗浄動作中に、上流側の開閉弁V3が閉鎖されると共に下流側の開閉弁V4が開放され、これによって、貯留容器65の内部に蓄えられた空気が、汚泥取り出し管51、汚泥流入空間24を経て各膜エレメント22,22,…の内部空間に一時的に大量に供給されることになる。これにより、膜エレメント22の内面に付着している固形物を効果的に剥離除去することができる。
【0107】
つまり、本例では、エアリフトブロアB2から供給される気泡を逆流洗浄動作用の空気として利用することによって、上記第1実施形態におけるエアインジェクションコンプレッサCやエアインジェクション管63を不要とすることができ、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0108】
(第2変形例)
次に、上述した第1実施形態の第2変形例について説明する。本例は、エアリフトブロアB2から各膜エレメント22,22,…の内部空間に連続的に気泡を供給するための構成の変形例である。その他の構成は上述した第1実施形態のものと同様であるため、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0109】
図11は本例に係る膜モジュール2の内部構造を示す断面図である。図12はリフトエア供給管62の先端に取り付けられた散気部材62dの斜視図である。これら図に示すように、リフトエア供給管62の先端には、膜モジュール2の本体ケーシング21の断面形状に略一致する円盤状多孔質体により構成された散気部材62dが取り付けられており、この散気部材62dが汚泥流入空間24の底部に設置されている。
【0110】
このため、膜モジュール2の本体ケーシング21の内部に収容された多数本の膜エレメント22,22,…のそれぞれの内部空間(一次側空間)に対して空気を略均等に供給することが可能となる。従って、各膜エレメント22,22,…の内部空間での汚泥流量を略均一にできて、濾過能力の均等化を図ることが可能となり、その結果、膜分離装置全体としての濾過能力の向上を図ることができる。
【0111】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本形態は、膜モジュールを複数個備えた水処理システムに係るものである。尚、ここでは5本の膜モジュールを備えた水処理システムについて説明する。また、各膜モジュールの構成は、上述した第1実施形態のものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0112】
図13は、本形態に係る水処理システムの配管系統図である。この図に示すように、各膜モジュール2A〜2Eは、生物反応槽1、処理水槽3、薬液タンク4に対して並列に接続されている。つまり、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52、処理水取り出し管53、逆流洗浄管54、薬液供給管55がそれぞれ各膜モジュール2A〜2Eに対応するように分岐されていると共に、汚泥取り出し管51、汚泥戻し管52、処理水取り出し管53、逆流洗浄管54、薬液供給管55の各分岐管には図示しない開閉弁がそれぞれ設けられている。また、図示しないが、エアリフトブロアB2に繋がるリフトエア供給管62及びエアインジェクションコンプレッサCに繋がるエアインジェクション管63も同様に、各膜モジュール2A〜2Eに対応するように分岐されていると共に、エアインジェクション管63の分岐管には開閉弁が設けられている。
【0113】
そして、本形態では、逆流洗浄時には5台の膜モジュール2A〜2Eのうち選択された1台のみに対して逆流洗浄動作を実行するようになっている。例えば、第1膜モジュール2Aに対して逆流洗浄動作を実行する際には、他の膜モジュール2B〜2Eでは、処理水濾過動作を継続して実行する。この時には、第1膜モジュール2Aに接続している各配管の分岐管に備えられた開閉弁のうち、処理水取り出し管53及び薬液供給管55の分岐管にそれぞれ備えられた開閉弁が閉鎖され、逆流洗浄管54の分岐管に備えられた開閉弁が開放されることになる。また、エアインジェクション管63に備えられた開閉弁も開放されることになる。
【0114】
そして、この逆流洗浄動作が終了すると、処理水取り出し管53の分岐管に備えられた開閉弁が開放され、逆流洗浄管54の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖されて、全ての膜モジュール2A〜2Eを使用した処理水濾過動作が復帰する。
【0115】
その後、他の一つの膜モジュール(例えば第2膜モジュール2B)の逆流洗浄タイミングに達すると、上記の場合と同様にして開閉弁の開閉が切り換えられて、この一つの膜モジュールに対する逆流洗浄動作が実行される。このようにして、順次、一つの膜モジュールに対する逆流洗浄動作が行われながら4台または5台の膜モジュール2A〜2Eにおいて処理水濾過動作が行われるようになっている。
【0116】
また、薬液洗浄動作においても同様に、5台の膜モジュール2A〜2Eのうち選択された一つのみに対して薬液が供給されて洗浄されることになる。例えば、第1膜モジュール2Aに対して薬液洗浄動作を実行する際には、他の膜モジュール2B〜2Eでは、処理水濾過動作を継続して実行する。この時には、第1膜モジュール2Aに接続している各配管の分岐管に備えられた開閉弁のうち、薬液供給管55の分岐管に備えられた開閉弁が開放し、その他の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖されることになる。また、エアインジェクション管63に備えられた開閉弁も閉鎖されることになる。
【0117】
そして、この薬液洗浄動作が終了すると、薬液供給管55の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖され、汚泥取り出し管51、処理水取り出し管53の分岐管に備えられた開閉弁が開放され、逆流洗浄管54の分岐管に備えられた開閉弁が閉鎖されて、全ての膜モジュール2A〜2Eを使用した処理水濾過動作が復帰する。
【0118】
このように、逆流洗浄動作や薬液洗浄動作にあっては1台の膜モジュールのみがその動作に移行し、その他の膜モジュールは、処理水濾過動作が連続して行われる。このため、システム全体としての濾過能力を大きく低下させることなしに上記逆流洗浄動作や薬液洗浄動作による膜エレメントの高性能化の維持を図ることが可能になる。
【0119】
本実施形態において、水処理システムにおいて要求される処理汚泥固液分離能力が増大した場合に、エレメント収容部23を交換する際には、全ての膜モジュール2A〜2Eのエレメント収容部23,23,…を同時に交換してもよいし、選択された幾つかの膜モジュールのエレメント収容部23のみを交換するようにしてもよい。
【0120】
−その他の実施形態−
上述した各実施形態及び変形例では、本発明を嫌気好気活性汚泥法を使用した水処理システムに適用した場合について説明した。本発明は、これに限らず、他の活性汚泥法を使用した水処理システムに適用することも可能である。
【0121】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、生物反応槽における生物反応処理後の処理汚泥を、槽外に配設した膜エレメントで濾過して処理水を得るようにした膜分離装置に対し、膜エレメントの内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。そして、膜分離装置のうち上記膜エレメントを収容している装置本体のみを交換可能な構成としている。つまり、予め、装置本体として長さの異なる、つまり固液分離能力の異なるものを複数種類準備しておき、活性汚泥処理システムの処理能力の変更に応じて装置本体を選択的に交換できるようにしている。これにより、大掛かりな改修工事や新たな配管接続作業を必要とすること無しに、システムにおける処理汚泥固液分離能力を増大(増強)することが可能になる。このため、システムを停止させることなしにそのシステムにおける処理汚泥の固液分離の能力を容易に増大させることが可能である。
【0122】
また、膜エレメントの内部に比較的高い速度で処理汚泥を通過させながら、一部の処理汚泥に対して濾過を行って処理水を抽出するようにしている。また、この膜エレメントに対し、処理水の濾過方向とは逆方向に洗浄水を定期的に通過させることにより膜エレメントに付着している固形物を剥離除去するようにしている。
【0123】
このため、膜エレメントの一次側では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れており、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメントの一次側の面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメントに付着することなしに生物反応槽に戻される。その結果、膜エレメントの一次側の面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減されることになり、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。
【0124】
また、本発明では、所定時間毎に逆流洗浄動作を実行しており、これによって、膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去している。このため、膜エレメントの一次側面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、活性汚泥処理システムの高性能化を図ることができる。その結果、従来のものに比べて、小さな膜面積であっても単位時間当たりに得られる処理水の量を大幅に増大(高フラックス化)することができ、システム全体を大型にすることなしに、高性能の水処理を実現することができる。また、膜エレメントに対する薬液洗浄の頻度を低減することもできるため、水処理動作(濾過動作)の稼働率の向上を図ることができ、これによっても高性能の水処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】膜モジュールの内部構造を示す断面図である。
【図3】膜モジュール内部に膜エレメントが収容された状態を示す断面図である。
【図4】導出部材とエレメント収容部との連結部分の分解図である。
【図5】導出部材とエレメント収容部との連結部分の平面図である。
【図6】導出部材とエレメント収容部との連結部分を拡大して示す断面図である。
【図7】各工程における膜エレメント内の状態を説明するための図である。
【図8】水処理システムの動作を示すタイミングチャート図である。
【図9】エレメント収容部が交換された後の水処理システムの概略構成を示す図である。
【図10】第1変形例に係る水処理システムの概略構成を示す図である。
【図11】第2変形例に係る膜モジュールの内部構造を示す断面図である。
【図12】第2変形例に係る散気部材の斜視図である。
【図13】第2実施形態に係る水処理システムの配管系統図である。
【符号の説明】
1 生物反応槽
2 膜モジュール(膜分離装置)
22 膜エレメント
23 エレメント収容部(装置本体)
26 導出部材
27 導出部材
29 連結部材
51 汚泥取り出し管
53 処理水取り出し管(導出管)
55 薬液供給管
64 排出管(排出手段)
Claims (11)
- 生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を固液分離するための膜分離装置であって、
上記生物反応槽の外部に設置され且つ膜エレメントを収容した装置本体を備えていると共に、この装置本体が、生物反応槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成しており、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るようになっている一方、
上記装置本体として、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類が用意されており、処理汚泥の固液分離に要求される能力に応じて装置本体が選択的に交換可能に構成されていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を固液分離するための膜分離装置であって、
上記生物反応槽の外部に設置され且つ膜エレメントを収容した装置本体と、この装置本体の一端に連結されて膜エレメントの一次側に汚泥を導入する導入部材と、装置本体の他端に連結されて膜エレメントの一次側から汚泥を導出する導出部材とを備えていると共に、これら装置本体、導入部材、導出部材が、生物反応槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成しており、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るようになっている一方、
上記装置本体として、汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類が用意されており、処理汚泥の固液分離に要求される能力に応じて装置本体が選択的に交換可能となるように、装置本体が導入部材及び導出部材に対してそれぞれ着脱可能に連結されていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項2記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
装置本体の一端と導入部材との間、及び装置本体の他端と導出部材との間は、それぞれ連結部材によって着脱可能に連結されていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項1、2または3記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
膜エレメントに対し、上記二次側から一次側に向けて洗浄水を通過させて膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去する逆流洗浄動作を所定時間毎に実行する逆流洗浄手段を備えていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項1〜4のうち何れか一つに記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
循環汚泥が流れる膜エレメントの一次側空間にこの循環汚泥の流れ方向に沿って流れる気泡を供給することによって循環汚泥に搬送力を与える気泡供給手段が設けられていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項4記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
逆流洗浄動作の実行中に膜エレメントの一次側空間に比較的大量の空気を一時的に通過させる空気供給手段が設けられていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項1〜6のうち何れか一つに記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
装置本体の薬液洗浄時にこの装置本体の内部に薬液を供給する薬液供給管が、装置本体から処理水を導出する導出管に接続されており、
この薬液供給管から導出管を経て薬液を装置本体の内部に供給する薬液洗浄動作を実行する薬液洗浄手段が設けられていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項7記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
薬液洗浄手段は、所定時間毎に薬液洗浄動作を実行するよう構成されていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 請求項1〜8のうち何れか一つに記載の活性汚泥処理システムの膜分離装置において、
装置本体には、生物反応槽において生物反応処理を行った後の処理汚泥を装置本体に向けて導入するための導入管が接続されており、
この導入管には、生物反応槽から取り出した処理汚泥中の余剰汚泥を循環回路から引き抜くための引き抜き手段が設けられていることを特徴とする活性汚泥処理システムの膜分離装置。 - 上記請求項1〜9のうち何れか一つに記載の膜分離装置を備えた活性汚泥処理システムであって、
膜エレメントを収容した装置本体が選択的に交換可能に構成された膜分離装置と生物反応槽との間で構成される循環回路を備え、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るよう構成されていることを特徴とする活性汚泥処理システム。 - 上記請求項1〜9のうち何れか一つに記載の膜分離装置を備えた活性汚泥処理システムの処理能力増強方法であって、
膜エレメントを収容した装置本体が選択的に交換可能に構成された膜分離装置と生物反応槽との間で構成される循環回路を備え、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより処理水を得るよう構成された活性汚泥処理システムに対し、
汚泥流路の長さが互いに異なる複数種類の装置本体を予め用意しておき、システムにおける処理汚泥固液分離能力の要求が変化した際、予め用意しておいた装置本体の中から要求能力に応じた装置本体を選択して交換することを特徴とする活性汚泥処理システムの処理能力増強方法。
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