JP2004356397A - 筒状光電変換装置 - Google Patents
筒状光電変換装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004356397A JP2004356397A JP2003152391A JP2003152391A JP2004356397A JP 2004356397 A JP2004356397 A JP 2004356397A JP 2003152391 A JP2003152391 A JP 2003152391A JP 2003152391 A JP2003152391 A JP 2003152391A JP 2004356397 A JP2004356397 A JP 2004356397A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- photoelectric conversion
- cylindrical
- light
- layer
- conductive layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E10/00—Energy generation through renewable energy sources
- Y02E10/50—Photovoltaic [PV] energy
- Y02E10/52—PV systems with concentrators
Landscapes
- Photovoltaic Devices (AREA)
Abstract
【課題】設備および工数を低減することができる、高い変換効率の薄膜光電変換装置を提供すること。
【解決手段】透光性の筒状基体10の内周面に、透光性導電層20と光電変換層30と光反射性導電層40とが順次積層されている筒状光電変換装置1である。また、透光性の筒状基体10の内周面に、第1の透光性導電層20Aと光電変換層30と第2の透光性導電層50とが順次積層されている筒状光電変換装置2である。筒状基体の曲面性により入射光と反射光の光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。また、筒状基体10を反応容器すなわち真空容器とすることができるので、多数の真空容器を必要とせず、設備を大幅に低減することもできる。
【選択図】 図1
【解決手段】透光性の筒状基体10の内周面に、透光性導電層20と光電変換層30と光反射性導電層40とが順次積層されている筒状光電変換装置1である。また、透光性の筒状基体10の内周面に、第1の透光性導電層20Aと光電変換層30と第2の透光性導電層50とが順次積層されている筒状光電変換装置2である。筒状基体の曲面性により入射光と反射光の光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。また、筒状基体10を反応容器すなわち真空容器とすることができるので、多数の真空容器を必要とせず、設備を大幅に低減することもできる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状基体の内周面に形成された光電変換層を具備して成り、直射光による入射側の光電変換層からの光電流や、反射側の光電変換層からの光電流や、光反射体による反射光や迷光の受光による側面側の光電変換層からの光電流により変換効率の向上を図ることができる筒状光電変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光電変換装置、中でも急速に普及している太陽電池については、変換効率の向上、信頼性(光安定性)の向上、大面積化、および低コスト化を目指した開発が活発に行なわれている。
【0003】
最も普及しているバルクシリコン半導体基板を用いたバルク型太陽電池は、高い変換効率と優れた光安定性とを有しており、この太陽電池を多数個平面配列してモジュール化することにより大面積化を実現しており、住宅用太陽電池等の用途で広く市場に受け入れられている。
【0004】
一方、薄膜太陽電池は、安価な大面積基板を使用し、1枚の大きな基板上で光電変換層のセル分離を行ない、これらセルを同一基板上にて直列あるいは並列に接続することができるので、低コスト化の面で有望であるとされてきた。
【0005】
このような従来の薄膜太陽電池の例として、例えば、平板状の透光性基板上に透光性導電層と、PN接合あるいはPIN接合を有する光電変換層としての半導体層と、裏面の反射性導電層とを積層した構造が、スーパーストレート型としてよく知られている。また、従来の薄膜太陽電池の他の例として、裏面反射層を有する平板状の導電性基板上に、光電変換層としての半導体層と透光性導電層とを積層したものが、サブストレート型としてよく知られている。
【0006】
特に、太陽電池における変換効率向上には、禁制帯幅の異なる複数の半導体接合を利用して、例えばトップセルにシリコン系のPIN型非晶質半導体層を用いてボトムセルにシリコン系のPIN型結晶室半導体層を積層したり、光の利用効率を高めるために少なくとも1つの層表面を凹凸化したりする光閉じ込め技術の開発が活発に行なわれている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0007】
また、太陽電池として実際に用いる際には、基板の裏面電極側にバックシート等が封止樹脂にて接着され、耐環境特性への配慮がなされている。
【0008】
従来の薄膜太陽電池の例として、光電変換素子群を備えた2種類の基体を接着剤で機械的に貼り合わせて構成しておき、電気出力を別々に取り出すメカニカル・スタック型の薄膜太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0009】
また、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルの裏面電極とバックシートとの間に、断熱材を密着させた太陽電池パネルが知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0010】
また、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルの裏面に、断熱層を設けた薄膜太陽電池モジュールも知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0011】
また、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルの裏面に、真空断熱層を設けた薄膜太陽電池モジュールも知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0012】
さらに、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルにおいて、発泡体を設けた太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献5を参照。)。
【0013】
ところで、これらの薄膜太陽電池は、少なくとも光電変換層は大型の真空装置で、例えばシリコン系のPIN型半導体層は大型のインライン型プラズマCVD装置で製作されている。この装置では、大きな複数の真空処理室(それぞれP型,I型,N型の製膜真空室等)を有しており、この真空処理室の内部に大型基板を設置し、基板の加熱手段と原料ガスを分解をする励起手段とにより、基板を移動しながら複数種の半導体層(P型層,I型層,N型層等)を順次積層形成している。
【0014】
ところで、従来の光起電力装置の例として、筒状または球状の支持体表面または裏面のほぼ全面に半導体光活性層を有する光起電力素子を形成するとともに、上記支持体の上記光起電力素子が形成されていない部分に、支持体内部に光を導入するための導入部を連結した光起電力装置がある(例えば、特許文献6を参照。)。
【0015】
【非特許文献1】
JIS規格 C8939
【0016】
【特許文献1】
特公平5−27278号公報
【0017】
【特許文献2】
特開平7−297435号公報
【0018】
【特許文献3】
特開2002−111037号公報
【0019】
【特許文献4】
特開2002−111026号公報
【0020】
【特許文献5】
特開平9−191121号公報
【0021】
【特許文献6】
実公平3−8455号公報
【0022】
【特許文献7】
特開2003−77550号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来の薄膜太陽電池を始めとするバルク型の太陽電池の更なる普及には、低コスト化が大きな課題とされている。しかしながら、バルク型の太陽電池は、モジュール化において多数の小さな半導体基板を配列し接続しなければならず、シリコン半導体基板が割れ易いという問題点がある。また、モジュール化するに当たって工程数が多く部品点数も多いため、コスト高になってしまい、大幅な低コスト化が難しいという問題点もある。
【0024】
また、従来の薄膜太陽電池では、低い変換効率および光劣化の問題に対し、これまで様々な改善がなされてきたが、未だ充分でないという問題点もある。例えば、大面積化には、高度な特性均一化の技術開発と製造技術とが必要であるとともに、歩留りが低いという問題を抱えており、そのため低コスト化が容易に実現できず市場への普及が進んでいないのが現状である。
【0025】
例えば、大きな基板上に大面積で形成されたシリコン系半導体層の特性は実際にはばらついており、また、この半導体層と接する透光性導電膜の多結晶化による自生凹凸も実際にはばらついているため、これらを用いて分離形成された複数のユニットセルの発生光電流もばらつくこととなり、その集積化(直列接続)に伴って光電流が最も低いユニットセルに律速されてしまうために、高い変換効率が得られないという問題点がある。
【0026】
また、タンデムセルにおいては、トップセルとボトムセルのそれぞれの光電流のミスマッチングや面積分布に伴う光電流のばらつきにより、タンデムセルとしての光電流はどちらか低いセルの光電流に律速されてしまい、高い変換効率が得られないという問題点がある。
【0027】
さらに、光劣化の抑制には、例えばシリコン系セルの製作においては半導体層の膜質改善や薄膜化等が行なわれ、また、モジュール構造においては上記の従来例のように、断熱材や発泡体や真空断熱層を設けて、太陽光による温度上昇にて発生する非晶質シリコン系半導体の光劣化を抑制することが検討されている(特許文献2〜5を参照。)。しかしながら、いずれも断熱材や発泡体等の部材が必要となり、真空断熱層を使用するには真空化の手間が必要で気密維持の困難さがあるという問題点がある。
【0028】
また、メカニカル・スタック型の薄膜太陽電池モジュール(特許文献1を参照。)では、太陽光を2回受光することができ、かつ光電流の律速要因が無く、高い変換効率が得られるものの、基板が2枚必要であるためどうしてもコストが高たなってしまうという問題点がある。
【0029】
また、これらの薄膜太陽電池の光電変換層、例えばシリコン系半導体層を形成する真空処理室としては、少なくとも前室,P室,I室、N室および後室の5室からなる大型真空処理室が必要であり、さらにタンデム型の場合であれば、少なくとも前室,P室,I室,N室,バッファ室,P室,I室,N室および後室の9室からなる大型真空処理室が必要である。
【0030】
しかも、これらの各室で形成される半導体層の製膜時間には大きな違いがあり、各室間で処理時間を一様とすることができないため、高額な設備の利用効率が極めて悪いという問題点があった。そこで、製膜処理時間の長い、例えばI層の処理室を増やすことでこの問題点を緩和することも行なわれているが、この場合は逆に、高額な真空処理室が増えてしまい、設置面積も増加するため、設備コストの増大を引き起こしていた。
【0031】
さらに、例えばPIN型半導体層を積層する際に、P型半導体層のドーピング不純物である周期律表V族元素のP元素等がI型半導体層に拡散して変換効率を低下させるという問題があり、その対策としてP室とI室との間に拡散を抑止するバッファ層を挿入しようとすると、更に真空処理室のバッファ室が必要となり設備が大型化してしまうという問題点があった。
【0032】
これに対しては、各層の製膜工程を一室ですべて処理するバッチ型のPCVD(プラズマCVD)装置等が当初検討されていたが、製膜工程間で製膜室である真空容器の壁面からの他工程で使用した不純物の混入による不純物汚染の問題があって連続製膜を行なうことができず、また、製膜バッチ毎に真空容器の壁面を清掃しなければならないため、装置の利用効率が悪いという問題点があった。
【0033】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄膜太陽電池のように基板が1枚であり、かつ基板上で集積化を必要とせず、工程数が少なく、部品点数が少なく、大幅な低コスト化が可能で、変換効率の低下を抑制した、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0034】
また、本発明の目的は、太陽光の受光において、タンデム構造を取り入れることなくシングル構造でタンデム構造の効果を持たせて低コスト化と変換効率の向上とを両立させることができる、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0035】
また、本発明の目的は、従来の薄膜光電変換装置において光劣化の抑制に使用されていた断熱材や発泡体等の部材が不要であり、光劣化の抑制と低コスト化とを両立させた薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0036】
また、本発明の目的は、光電変換層を形成する基板そのものを反応容器すなわち真空容器とすることができ、更にはバッチ処理とすることができ、多数の真空容器を必要とせず、大幅な設備費の低減による低コスト化が可能な、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光電変換装置は、基体を透光性の筒状基体として、その内周面に光電変換層を形成して成る筒状光電変換装置とする。
【0038】
すなわち、1)本発明の第1の筒状光電変換装置は、透光性の筒状基体の内周面に、透光性導電層と光電変換層と光反射性導電層とが順次積層されていることを特徴とするものである。
【0039】
また、2)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記光電変換層と前記光反射性導電層との間に拡散防止層が形成されていることを特徴とするものである。
【0040】
また、3)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の前記内周面と前記透光性導電層との間に、集電電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0041】
また、4)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の内周面の表面,前記透光性導電層の表面,前記光電変換層の表面および前記光反射性導電層の前記光電変換層側の表面の少なくとも1つが凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0042】
また、5)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成ることを特徴とするものである。
【0043】
また、6)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされていることを特徴とするものである。
【0044】
さらに、7)本発明の第2の筒状光電変換装置は、透光性の筒状基体の内周面に、第1の透光性導電層と光電変換層と第2の透光性導電層とが順次積層されていることを特徴とするものである。
【0045】
また、8)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の前記内周面と前記第1の透光性導電層との間に、第1の集電電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0046】
また、9)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記8)の構成において、前記第1の集電電極が前記筒状基体の前記内周面の半周以下の幅で広面積に形成されていることを特徴とするものである。
【0047】
また、10)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記第2の透光性導電層の表面に、第2の集電電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0048】
また、11)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の外周面にその半周以下の幅で広面積に、光反射層が形成され、または光反射体が設けられていることを特徴とするものである。
【0049】
また、12)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の内周面の表面,前記第1の透光性導電層の表面,前記光電変換層の表面および前記第2の透光性導電層の表面の少なくとも1つが凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0050】
また、13)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記9)の構成において、前記第1の集電電極の前記光電変換層側の表面が凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0051】
また、14)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記11)の構成において、前記光反射層または前記光反射体の前記筒状基体側の表面が凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0052】
また、15)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成ることを特徴とするものである。
【0053】
また、16)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記15)の構成において、前記筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされていることを特徴とするものである。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の筒状光電変換装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0055】
図1および図2は、それぞれ本発明の第1の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す横断面図および縦断面図である。
【0056】
図1および図2に示すように、本発明の第1の筒状光電変換装置1は、透光性の筒状基体10の内周面に、透光性導電層20と光電変換層30と光反射性導電層40とが順次積層された構造を有している。この構造では光は図1に破線の矢印で示すように入射し、光反射性導電層40にて同じく破線の矢印で示すように反射し、いずれの光も光電変換層30にて光電流を発生させることができる。特に、光電変換層30が筒状基体10の内周面に形成されていることから丸みを帯びており光電変換層30に対する入射光の通過距離が長くなり、光閉じ込め効果に似た効果が期待できる。
【0057】
なお、図2には、後述する本発明の第2の筒状光電変換装置2に関する参照符号も併せて示してある。
【0058】
透光性の筒状基体10は、硼珪酸ガラス,ソーダガラス,サファイア等の透明無機質材料が耐熱性の観点から使い易く、また、鉄成分の少ない白ガラスが青ガラスより好ましく、さらにポリカーボネート等の透明有機樹脂等の材料でもよい。そのサイズは外径で5mmφ〜50mmφ、より好適には20mmφ〜30mmφが好ましく、肉厚は、0.3mmt〜5mmt好ましくは0.5mmt〜1mmtがよく、長さは10cm〜20m好ましくは1m〜2mがよく、耐圧は1kgW/cm2以上あるものがよい。透光性の筒状基体10の横断面形状は、図1に示す例では円形であるが、楕円形,正方形,長方形等、筒状であればどんな形状でも構わない。
【0059】
透光性導電層20は、不純物をドープしたSnO2,ZnO,In2O3,ITO(Indium Tin Oxide)等の材料から成るものがよく、スプレー熱分解法,ディップコート法,ゾル・ゲル法,真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法,溶液内薄膜成長法等で形成するのがよい。特に、筒状基体10の内周面に被膜形成するには、スプレー熱分解法またはディップコート法により形成するのが具合がよい。
【0060】
光電変換層30は、シリコン系等の非単結晶半導体,CIGS等の化合物半導体,色素増感型,有機光半導体,ナノ(サイズ結晶)シリコン等の材料から成るものがよく、これらによれば、接合を有する半導体,シリコン系の非単結晶半導体,非晶質シリコン系半導体や結晶質シリコン系半導体やこれらの混相がよく利用されていて具合がよい。
【0061】
シリコン系の非単結晶半導体の場合であれば、筒状基体10側にP型半導体膜を設けたP型半導体膜とI型半導体膜とN型半導体膜との積層によるPIN接合を形成することがよく、また、逆接合のNIP接合でも構わない。これらのシリコン系の非単結晶半導体は、水素化非晶質シリコン系半導体や水素化結晶質シリコン系半導体の積層であっても、またはこれらの混相であってもよい。このとき、最も厚いI層の膜厚は、非晶質シリコン系半導体であれば0.05μm〜1μm、好ましくは0.2〜0.3μmがよく、結晶質シリコン系半導体であれば0.5μm〜5μm、好ましくは1〜3μmがよく、混相のシリコン半導体であれば0.05μm〜5μm、好ましくは0.3〜2μmがよい。
【0062】
光反射性導電層40は、光電変換層30の電極としての役割と光反射の役割とを有していることを必要とし、高反射率のAg膜や低電気抵抗のAl膜やこれらの合金等を積層したものがよく、また他の金属材料を用いてもよい。光反射性導電層40は、真空蒸着法やスパッタリング法,イオンプレーティング法,ペースト焼付け法等で形成できる。また、光電変換層30の全面に形成して積層するものに限られず、櫛型等の電極パターンを形成した集電電極の構成であってもよい。
【0063】
なお、透光性の筒状基体10の内周面上の光電変換層30と光反射性導電層40の間に、金属酸化物,金属珪化物,極薄金属,沃化銅等から成る拡散防止層(図示せず)を形成すると、光反射性導電層40から光電変換層30への金属元素等の拡散による汚染がなく、密着性もよくなり好都合である。
【0064】
次に、本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態の一例について、図3に図1と同様の模式的な横断面図を示す。図3において、図1と同様の箇所には同じ符号を付してあり、10は透光性の筒状基体、30は光電変換層である。また、20Aは第1の透光性導電層であり、透光性導電層20と同様のものである。そして、50は第2の透光性導電層である。本発明の第2の筒状光電変換装置2は、このように透光性の筒状基体10の内周面に、第1の透光性導電層20Aと光電変換層30と第2の透光性導電層50とが順次積層されていることを特徴とするものである。
【0065】
第2の透光性導電層50は、透光性導電層20および第1の透光性導電層20Aと同様に、不純物をドープした酸化亜鉛(ZnO)や酸化スズ(SnO2)や酸化インジウム(In2O3)やスズドープ酸化インジウム(ITO)等の材料から成るものがよい。また、溶液内薄膜成長法,スプレー熱分解法,ディップコート法,ゾル・ゲル法,真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法等で形成するのがよく、特に、筒状基体10の内周面側で光電変換層30上に低温で被膜するには、溶液内薄膜成長法または熱CVD法により形成するのが具合がよい。
【0066】
図3および図2に示すように、本発明の第2の筒状光電変換装置2は、透光性の筒状基体10の内周面に、第1の透光性導電層20Aと光電変換層30と第2の透光性導電層50とを順次積層した構造を有している。この構造では、光は図3に破線の矢印で示すように入射し、入射側の光電変換層30を通過して発電し、さらに破線の矢印で示すように、反射側の光電変換層30を通過し発電するとともに、反射してその先の光電変換層30を通過し発電するように利用される。特に、光電変換層30が筒状基体10の内周面に沿って丸みを帯びていることから、光電変換層30に対する入射光や反射光の通過距離が長いため、光閉じ込め効果に似た効果が、図1に示す本発明の第1の筒状光電変換装置1よりもより多く期待できる。
【0067】
このような本発明の第2の筒状光電変換装置においては、実施の形態の他の例について図4に図3と同様の模式的な横断面図で示すように、透光性の筒状基体10の内周面と第1の透光性導電層20Aとの間に、第1の集電電極60を筒状基体10の内周面の半周以下の幅で広面積に長手方向に形成することにより、抵抗を低減することができるとともに、この第1の集電電極60を光反射層として利用することができて、効率向上によいものとなる。このような本発明の第2の筒状光電変換装置2Aにおける第1の集電電極60はAl,Ag,Pd,Cu,Ni,Au等、あるいはこれらの合金等により形成すればよい。その形成は、蒸着法やスパッタリング法等によればよいが、金属ペーストを線状あるいは帯状に塗布形成し、これを焼成する方が製造しやすい。
【0068】
なお、図1に示した本発明の第1の筒状光電変換装置1においても、筒状基体10の内周面と透光性導電層20との間に、この第1の集電電極60と同様に集電電極を形成してもよい。
【0069】
また、図4に示すように、透光性の筒状基体10の内周面上の第2の透光性導電層50の表面に、第2の集電電極70を所定の幅で筒状基体10の長手方向に形成してもよく、これにより、第2の透光性導電層50により集電する際の抵抗を低減することができて効率向上によいものとなる。この第2の集電電極70の材料は第1の集電電極60と同様のものでよく、その形成は、蒸着法やスパッタリング法等で形成してもよいが、金属ペーストを線状あるいは帯状に塗布形成し、これを焼成する方が製造しやすい。
【0070】
さらに、図4に示すように、第1の集電電極60を筒状基体10の内周面の半周以下の幅で広面積に長手方向に形成することにより、この第1の集電電極60を光反射層としても機能させることができ、集電電極の作用に加えて反射光を増すことによって、変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。
【0071】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置においては、その実施の形態のさらに他の例について図5に図3と同様の模式的な横断面図で示すように、透光性の筒状基体10の外周面にその半周以下の幅で広面積に長手方向に光反射層90を形成するとよい。このような本発明の第2の筒状光電変換装置2Bによれば、筒状基体10を通過して光反射層90に入射した光を、この光反射層90によって筒状基体10の内側に向けて再び効果的に反射させて光電変換に寄与させることができる。また、その実施の形態のさらに他の例を図6に図3と同様の模式的な横断面図で示すように、筒状基体10の外側に光反射体100を設けてもよい。このような本発明の第2の筒状光電変換装置2Cによれば、光反射体100を設けるのに際して被膜装置である真空蒸着装置等が要らず、反射率の高い金属等の反射板を例えば図6に示す形状のように加工して配置することによって、筒状基体10を通過して光反射体100に入射した光を、この光反射体100によって筒状基体10の内側に向けて再び効果的に反射させて光電変換に寄与させることができる。
【0072】
このような光反射体100の断面形状は、図6に示したような複数の平面を組み合わせた形状に限られず、曲面成型したものであってもよい。また、材料はアルミ板等の金属板でよいが、アルミ板にAg蒸着した光反射板や、腐食防止のため表面を樹脂被膜したり無機皮膜した金属板等であってもよく、そうすると信頼性が高いものとなる。また、板状のものに限られず、筒状基体10を載置することができるブロック体状のものであってもよい。
【0073】
また、光反射体100を設ける場合は、透光性の筒状基体10を複数個並べる場合等に、各筒状基体10同士を離して配置しても、図6中に矢印で示すように、筒状光電変換装置2C間の隙間に入射した光も有効に反射して、筒状基体10の内周面上に形成されている光電変換層30に吸収させて発電に寄与させることができる。
【0074】
本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2においては、光電変換層30が、内部に少なくとも1つ以上の接合を有する半導体層から成ることにより、この光電変換層30によって薄膜太陽電池として効果的に光起電力を得ることができる。
【0075】
さらに、透光性の筒状基体10の内周面を始めとして各層の表面を凹凸状を成すものとすることにより、その凹凸状の表面によって入射光の光閉じ込め効果を高めて、変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。例えば、筒状基体10の内周面を所定の凹凸状とするには、砥粒を吹き付けて表面加工するホーニング法やフッ酸等による化学エッチング法等を採用すればよい。
【0076】
また、透光性導電層20,第1の透光性導電層20Aおよび第1の集電電極60のいずれか1つの光反射表面となる表面が凹凸状を成すときにも、入射光の光閉じ込め効果をこれら凹凸状の表面により高めて変換効率の向上をもたらすことができる。これらの表面の凹凸化は、例えば結晶性透明導電膜(SnO2膜等)の形成条件により行なうことができる。
【0077】
また、光電変換層30の表面が凹凸状を成すときにも、その表面による反射光の光閉じ込め効果を高めて変換効率の向上をもたらすことができる。この光電変換層30の表面の凹凸化は、例えば結晶質半導体膜(μc−Si:H膜等)の形成条件により行なうことができる。
【0078】
さらに、第2の透光性導電層50および光反射層90の少なくとも一方の表面(光反射層90は光電変換層30側の表面)が凹凸状を成すときにも、反射光の光閉じ込め効果を高めて変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。
【0079】
さらにまた、光反射性導電層40もしくは光反射体100の光電変換層30側の表面が凹凸状を成すときにも、筒状基体10を通過した光を乱反射して光閉じ込め効果を高め変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。
【0080】
以上のような凹凸状を成す各表面の凹凸の高低差およびピッチ(繰り返し間隔)は、これらによって良好な光閉じ込めの効果を得るためには、断面のTEM(透過型電子顕微鏡)観察によればそれぞれ50nm〜500nmおよび100nm〜600nm程度であることが好ましい。また、AFM(原子間力顕微鏡)測定によれば、凹凸の算術平均粗さRaが10nm〜100nm(0.01μm〜0.1μm)程度であり、Power Spectral Densityの最多波長(最多ピッチ)が0.2μm/cycle〜3μm/cycle程度であることが好ましい。
【0081】
本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2においては、光電変換層30が半導体層から成り、この半導体層が非単結晶材料から成るときには、構造緩和性がよく、堆積膜の信頼性が高いものとなる。また、その半導体層が少なくとも1つ以上のPIN接合を有する積層から成ることにより、製造上容易に光電変換層30を形成して光起電力を得ることができるものとなる。
【0082】
また、光電変換層30を構成する半導体層の非単結晶がシリコンを主成分とする材料から成るときには、資源不足等の問題がなく信頼性の高い薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。特に、半導体層の非単結晶が微結晶シリコンと非晶質シリコンとの混相から成るときには、接合部でのバンドギャップの適正化が図れて、比較的に薄い膜厚で高い変換効率の筒状光電変換装置が実現できる。さらに、半導体層が1つのPIN接合を有する非晶質シリコンから成るときには、薄い膜厚による低コストの薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。また、半導体層が1つのPIN接合を有する結晶質シリコンから成るときには、光劣化の無い信頼性の高い薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。また、半導体層が1つのPIN接合を有する微結晶シリコンと非晶質シリコンとの混相から成るときには、信頼性の高いバンドギャップの適正化が図れて、比較的に薄い膜厚で高い変換効率の薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。また、半導体層が2つのPIN接合の積層であり、筒状基体10の内周面側より、非晶質シリコンのPIN接合および微結晶シリコンのPIN接合が積層されて成るときには、光を効率よく分光・吸収することができ、高い変換効率の薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。さらにまた、半導体層が2つのPIN接合の積層であり、2つのPIN接合の間に、不純物ドープの非単結晶シリコン、または透明導電性金属酸化物から成るトンネル効果を有する中間層、またはオーミックコンタクト性を有する中間層を設けたときには、ほとんど損失なく光起電力を取り出すことができる筒状光電変換装置となる。さらに、半導体層が2つのPIN接合であり、筒状基体10の内周面側より、第1の非晶質シリコンのPIN接合および第2の非晶質シリコンのPIN接合が順次形成されて成り、第1より第2の非晶質シリコンのバンドギャップが小さいときには、薄い膜厚で光を効率よく分光・吸収することができ、高い変換効率の薄膜光電変換層30を有する筒状光電変換装置が実現できる。
【0083】
ところで、図2には、透光性の筒状基体10の端部に光電変換層30で発生した起電力を外部に取り出す電極端子21・41・51を形成した例を示している。21は透光性導電層20または第1の透光性導電層20Aに電気的に接続された電極端子、41は光反射性導電層に電気的に接続された電極端子、51は第2の透光性導電層50に電気的に接続された電極端子を示している。それぞれ、各層を積層する際に、マスキング等の手段を用いて、所望の位置や形状に形成することができる。そして、このように筒状基体10の端部に形成された電極端子21・41・51に図示しない外部接続コネクタもしくは外部リード線を取り付けることにより、外部への出力を確実に取り出すことができる。
【0084】
また、本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2は、その実施の形態の他の例について図7に図2と同様の模式的な縦断面図で示すように、透光性の筒状基体10の両端の開口が、封止部材、例えばキャップ110および封止樹脂120を用いて、気密に封止されて成ることが好ましい。このように封止部材を用いて両端の開口を封止することにより、筒状基体10の内周面に積層形成された光電変換層30を始めとする各層の耐環境性を高めることができる。また、この封止部材、例えばキャップ110に図示しない外部接続コネクタもしくは外部リード線を取り付けると、太陽電池を構成する際の部品点数が減って好都合なものとなる。なお、130は外部接続コネクタもしくは外部リード線の取り付けタップ(ネジ)である。
【0085】
このような封止部材としてのキャップ110には、金属(Al,SUS等),セラミックス(アルミナセラミックス等),ガラス,プラスチック等を用いることができる。また、封止部材としての封止樹脂120としては、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂),PVB(ポリビニルブチラール),エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA),エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA),フッ素樹脂,エポキシ樹脂等を用いるとよい。
【0086】
なお、封止部材はこのようなキャップ110と封止樹脂120との組合せに限定されるものではなく、例えば金属キャップ110と電極端子21・41・51とを直接封止する半田溶接等を用いてもよい。
【0087】
このような封止部材を用いて筒状基体10の両端の開口を気密に封止することにより、光電変換層30の断熱化が図れて、光劣化の抑制効果を高めることができる。また、これに際して、気密に封止した内部が気体として不活性ガスであるArガスやHeガスあるいはN2ガス等を封入して充填されているようにすると、光電変換層30の長期信頼性をより高めることができる。また、気密に封止した内部を真空状態とすれば、断熱効果があって、さらによいものとなる。
【0088】
本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2を用いれば、複数個を平面状もしくは曲面状の支持体上に平行に並べて配列するとともに、端部に接続された外部リード線もしくは外部接続コネクタを介して全体を直列もしくは並列または直並列に接続することにより、集積型の薄膜光電変換モジュールが実現できる。
【0089】
次に、本発明の第1または第2の筒状光電変換装置1・2の製造方法の一例について、筒状基体を化学気相成長(PCVD等)の反応容器として利用し、その筒状基体の内周面に光電変換層を形成する方法の模式図を図8に示す。
【0090】
図8に示すように、予め第1の透光性導電層を内周面に被膜した透光性の筒状基体210の内側に、一端の開口を塞ぐように取り付けたガス噴出し板220から原料ガス供給手段230によりSiH4ガス等の原料ガスを導入する。他方、他端の開口を塞ぐように取り付けたガス排気板240からは、使用済み原料ガス等が排気手段250により、除害設備を経由して排気される。
【0091】
排気手段250としては、ターボ分子ポンプ,メカニカルブースタポンプ,ロータリーポンプ,ドライポンプ等の真空ポンプが用いられる。ガス供給手段230としては、原料ガス(SiH4ガス等),活性化ガス(H2ガス等),ドーパントガス(水素希釈のB2H6,PH3ガス等)を、シリンダーボックスよりマスフローコントローラを経由してそれぞれ所定の流量で混合し供給できる装置が用いられる。
【0092】
この製造方法においては、最終的に製品となる透光性の筒状基体を化学気相成長の反応容器として用い、かつその筒状基体の内周面に光電変換層を化学気相成長法により形成することを特徴としている。この場合、光電変換層のPIN型半導体層はバッチ処理で形成することができる。従って、例えばインラインPCVD装置のように多数の大きな真空室が不要となり、設備費を激減することができる。また、大きな真空室では、その壁面にシリコン等の粉体が付着して定期的にクリーニングしなければならないが、その手間と装置の稼動停止を不要とすることもできる。さらに、従来の製造方法では製品と壁面とに付着していたラジカル種をすべて製品に付着させることができ、原料ガスの利用効率が高くなる。
【0093】
筒状基体の内周面に光電変換層を化学気相成長する方法においては、筒状基体の一端の開口に取り付けた、小穴を設けたガス噴出し板220をSUS等の金属で製作しておくことにより、これを励起電源の電極として使用することができる。また、ガス排気板240もSUS等の金属で製作しておくことにより、これを励起電源の他方の電極として使用することができる。これらの電極間に高周波電源260をマッチングボックス270を介して接続することにより、筒状基体の内部にグロー放電を発生させることができる。このとき、筒状基体の外周面の近傍に基体加熱手段280を設けておくことにより、筒状基体の内周面に膜質の良い光電変換層が形成される。励起電源としては、0.2MHz〜30MHzのRF電源や30MHz〜300MHzのVHF電源やマイクロ波電源等の広い周波数範囲の高周波電源260を利用することができる。また、基体加熱手段280としては、赤外線ランプ,シーズヒーター,面ヒーター等を利用することができるが、励起手段を妨げないという点では、赤外線ランプが好適である。
【0094】
そして、筒状基体の内部が外部よりガス圧力が低い状態とすることにより、筒状基体の内部で安定したグロー放電が維持でき、また、筒状基体の外部でグロー放電することがなく、原料ガスは筒状基体の内部でのみ分解して内周面に付着することとなり、筒状基体の外部では例え原料ガスを流しても分解・付着することはない。
【0095】
また、筒状基体の外部には、水素ガス等の活性化ガス、あるいはArガス等の不活性ガス、あるいはN2ガス等の安全ガスを少量流して満たしておくのがよい。これにより、筒状基体の外周面には膜が付着せず、また筒状基体が破損等したときの安全性が確保できる。さらにこのとき、筒状基体を含めて全体を容器で囲んでおくとより安全性を高めることができる。この容器の外壁は、さほど耐圧が必要でないので、薄い容器壁のもので囲むようにしておけばよい。
【0096】
【実施例】
以下に、本発明をより具体的に示す実施例1〜3を説明する。
【0097】
<実施例1>
実施例1では、図1および図2に示す本発明の第1の筒状光電変換装置を作製した。円筒形状の透光性の筒状基体には、硼珪酸ガラス管(φ40mm,長さ10cm,厚み3mm)を用いた。
【0098】
このガラス管の内周面に、500℃の基体温度に設定して、スプレー法によりSnO2:F膜を1μmの厚みで堆積した。次に、このSnO2:F膜上にプラズマCVD法によりPIN型半導体層をそれぞれ連続して堆積することにより形成した。まず、P型a−Si:H半導体層を100Å(0.01μm)の厚みで堆積した。なお、ここではP型a−Si:H半導体層を用いたが、P型a−SiC:H層であってもよい。P型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,B2H6ガス(H2で500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm,12sccm,2sccmとした。続いて、I型a−Si:H半導体層を3000Åの厚みで堆積した。I型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガスを用い、これらのガスの流量をそれぞれ15sccm,50sccmとした。さらに、N型a−Si:H半導体層を120Åの厚みで堆積した。N型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,PH3ガス(H2で1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm,3sccm,6sccmとした。基板温度はPIN層の何れも210℃とした。さらに、光反射性導電層としては、真空蒸着法によるAl膜を用いた。
【0099】
こうして得られた本発明の第1の筒状光電変換装置は、AM1.5下,100mW/cm2で変換効率3%を示した。
【0100】
<実施例2>
実施例2では、図3および図2に示す本発明の第2の光電変換装置を作製した。円筒形状の透光性の筒状基体には、硼珪酸ガラス管(φ40mm,長さ10cm,厚み3mm)を用いた。このガラス管の内周面に、500℃の基体温度に設定してスプレー法によりSnO2:F膜を1μmの厚みで堆積した。次に、このSnO2:F膜上にプラズマCVD法によりPIN型半導体層をそれぞれ連続して堆積した。まず、P型μc−Si:H半導体層を200Å(0.02μm)の厚みで堆積した。ここで、μcとは、粒径がサブミクロン以下の、いわゆる微結晶質を指す。なお、このP型μc−Si:H半導体層の代わりに、P型μc−SiC:H半導体層であっても構わない。P型μc−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,B2H6ガス(H2で500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ1sccm,200sccm,10sccmとした。続いて、I型半導体層を10000Å(=1μm)の厚みで堆積した。I型μc−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガスを用い、これらのガスの流量をそれぞれ10sccm,100sccmとした。I型層の結晶化率は65%であり、成長表面には自生凹凸が形成されていた。さらに、N型a−Si:H半導体層を120Åの厚みで堆積した。N型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,PH3ガス(H2で1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm,30sccm,6sccmとした。基板温度はPIN層の何れも220℃とした。続いて、第2の透光性導電層として、酸化スズ膜を溶液内薄膜成長法にて堆積した。
【0101】
こうして得られた本発明の第2の筒状光電変換装置は、AM1.5下,100mW/cm2で変換効率4%を示した。
【0102】
<実施例3>
実施例3では、実施例1および2と同様の円筒形状の透光性の筒状基体を用い、その内周面をサンドブラスト処理し、さらにフッ酸処理・洗浄して、凹凸を形成した。この凹凸の高低差およびピッチは、それぞれ約250nm〜350nmおよび約300nm〜400nmであった。このガラス管の内周面に、500℃の基体温度に設定してスプレー法によりSnO2:F膜を1μmの厚みで堆積した。次に、このSnO2:F膜上にプラズマCVD法により実施例1と同様にPIN型半導体層をそれぞれ連続して堆積した。
【0103】
光反射性導電膜として、本実施例では真空蒸着法によるAl膜を用いた。
【0104】
こうして得られた本発明の第1の筒状光電変換装置は、AM1.5下,100mW/cm2で変換効率5%を示した。
【0105】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、上記の例では筒状基体を円筒形状のガラス管としたが、断面が四角形状の筒状のガラス管としてもよい。
【0106】
【発明の効果】
本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、1)透光性の筒状基体の内周面に、透光性導電層と光電変換層と光反射性導電層とが順次積層されていることから、筒状基体の曲面性により入射光と反射光の光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。
【0107】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、2)光電変換層と光反射性導電層との間に拡散防止層が形成されているときには、光反射性導電層から光電変換層への金属元素の拡散が無いので、金属元素の汚染による光電変換効率の低下を防ぐことができる。
【0108】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、3)筒状基体の内周面と透光性導電層との間に、集電電極が形成されているときには、取り出し電極の直列抵抗が小さくなるので、曲線因子が大きくなることと相まって、光電変換効率を向上させることができる。
【0109】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、4)筒状基体の内周面の表面,透光性導電層の表面,光電変換層の表面および光反射性導電層の光電変換層側の表面の少なくとも1つが凹凸状を成しているときには、斜め入射光が増えて光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。
【0110】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、5)筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成るときには、筒状基体の内側の光電変換層等と外気環境との遮断ができるので、耐環境性が高まり長寿命なものとすることができる。
【0111】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、6)筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされているときには、筒状基体の内側の光電変換層等と空気(酸素や窒素や水分等)との反応が無くなるので、光電変換特性等の経時劣化の恐れが無くなり、高い信頼性を有するものとすることができる。
【0112】
本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、7)透光性の筒状基体の内周面に、第1の透光性導電層と光電変換層と第2の透光性導電層とが順次積層されていることから、入射光が反射する前に筒状の光電変換層を2度通過できるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。
【0113】
本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、8)筒状基体の内周面と第1の透光性導電層との間に、第1の集電電極が形成されているときには、直列抵抗が小さくなるので、曲線因子が大きくなることと相まって、光電変換効率を向上させることができる。
【0114】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、9)第1の集電電極が筒状基体の内周面の半周以下の幅で広面積に形成されているときには、この第1の集電電極が高反射率であることから光電変換層を2度通過した光が反射されることとなるので、光電流が増し、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0115】
また、本発明の第2の筒状光電変換によれば、10)第2の透光性導電層の表面に、第2の集電電極が形成されているときには、第2の集電電極によって直列抵抗が小さくなるので、曲線因子が大きくなることと相まって、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0116】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、11)筒状基体の外周面にその半周以下の幅で広面積に、光反射層が形成され、または光反射体が設けられているときには、筒状基体を通過した光を反射させて再度筒状基体に入射させることができるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0117】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、12)筒状基体の内周面の表面,第1の透光性導電層の表面,光電変換層の表面および第2の透光性導電層の表面の少なくとも1つが凹凸状を成しているときには、斜め入射光が増えて光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0118】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、13)第1の集電電極の光電変換層側の表面が凹凸状を成しているときには、光電変換層を2度通過した光が斜めに反射・再入射して光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0119】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、14)光反射層または光反射体の筒状基体側の表面が凹凸状を成しているときには、筒状基体を通過した光が斜めに反射・再入射して光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0120】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、15)筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成るときには、筒状基体の内側の光電変換層等と外気環境との遮断ができるので、耐環境性が高まり、長寿命なものとすることができる。
【0121】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、16)筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされているときには、筒状基体の内側の光電変換層等と空気(酸素や窒素や水分等)との反応が無くなるので、光電変換特性等の経時劣化の恐れが無くなり、高い信頼性を有するものとすることができる。
【0122】
以上により、本発明によれば、薄膜太陽電池のように基板が1枚であり、かつ基板上で集積化を必要とせず、工程数が少なく、部品点数が少なく、大幅な低コスト化が可能で、変換効率の低下を抑制した、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【0123】
また、本発明によれば、太陽光の受光において、タンデム構造を取り入れることなくシングル構造でタンデム構造の効果を持たせて低コスト化と変換効率の向上とを両立させることができる、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【0124】
また、本発明によれば、従来の薄膜光電変換装置において光劣化の抑制に使用されていた断熱材や発泡体等の部材が不要であり、光劣化の抑制と低コスト化とを両立させた薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【0125】
また、本発明によれば、光電変換層を形成する基板そのものを反応容器すなわち真空容器とすることができ、更にはバッチ処理とすることができ、多数の真空容器を必要とせず、大幅な設備費の低減による低コスト化が可能な、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す横断面図である。
【図2】本発明の第1および第2の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す横断面図である。
【図4】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態の他の例を模式的に示す横断面図である。
【図5】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態のさらに他の例を模式的に示す横断面図である。
【図6】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態のさらに他の例を模式的に示す横断面図である。
【図7】本発明の第1および第2の筒状光電変換装置の実施の形態の他の例を模式的に示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1または第2の筒状光電変換装置の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1:本発明の第1の筒状光電変換装置
2,2A,2B,2C:本発明の第2の筒状光電変換装置
10:筒状基体
20:透光性導電層
20A:第1の透光性導電層
30:光電変換層
40:光反射性導電層
50:第2の透光性導電層
60:第1の集電電極
70:第2の集電電極
90:光反射層
100:光反射体
110:キャップ(封止部材)
120:封止樹脂(封止部材)
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状基体の内周面に形成された光電変換層を具備して成り、直射光による入射側の光電変換層からの光電流や、反射側の光電変換層からの光電流や、光反射体による反射光や迷光の受光による側面側の光電変換層からの光電流により変換効率の向上を図ることができる筒状光電変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光電変換装置、中でも急速に普及している太陽電池については、変換効率の向上、信頼性(光安定性)の向上、大面積化、および低コスト化を目指した開発が活発に行なわれている。
【0003】
最も普及しているバルクシリコン半導体基板を用いたバルク型太陽電池は、高い変換効率と優れた光安定性とを有しており、この太陽電池を多数個平面配列してモジュール化することにより大面積化を実現しており、住宅用太陽電池等の用途で広く市場に受け入れられている。
【0004】
一方、薄膜太陽電池は、安価な大面積基板を使用し、1枚の大きな基板上で光電変換層のセル分離を行ない、これらセルを同一基板上にて直列あるいは並列に接続することができるので、低コスト化の面で有望であるとされてきた。
【0005】
このような従来の薄膜太陽電池の例として、例えば、平板状の透光性基板上に透光性導電層と、PN接合あるいはPIN接合を有する光電変換層としての半導体層と、裏面の反射性導電層とを積層した構造が、スーパーストレート型としてよく知られている。また、従来の薄膜太陽電池の他の例として、裏面反射層を有する平板状の導電性基板上に、光電変換層としての半導体層と透光性導電層とを積層したものが、サブストレート型としてよく知られている。
【0006】
特に、太陽電池における変換効率向上には、禁制帯幅の異なる複数の半導体接合を利用して、例えばトップセルにシリコン系のPIN型非晶質半導体層を用いてボトムセルにシリコン系のPIN型結晶室半導体層を積層したり、光の利用効率を高めるために少なくとも1つの層表面を凹凸化したりする光閉じ込め技術の開発が活発に行なわれている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0007】
また、太陽電池として実際に用いる際には、基板の裏面電極側にバックシート等が封止樹脂にて接着され、耐環境特性への配慮がなされている。
【0008】
従来の薄膜太陽電池の例として、光電変換素子群を備えた2種類の基体を接着剤で機械的に貼り合わせて構成しておき、電気出力を別々に取り出すメカニカル・スタック型の薄膜太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0009】
また、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルの裏面電極とバックシートとの間に、断熱材を密着させた太陽電池パネルが知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0010】
また、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルの裏面に、断熱層を設けた薄膜太陽電池モジュールも知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0011】
また、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルの裏面に、真空断熱層を設けた薄膜太陽電池モジュールも知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0012】
さらに、従来の薄膜太陽電池の例として、シングルセルにおいて、発泡体を設けた太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献5を参照。)。
【0013】
ところで、これらの薄膜太陽電池は、少なくとも光電変換層は大型の真空装置で、例えばシリコン系のPIN型半導体層は大型のインライン型プラズマCVD装置で製作されている。この装置では、大きな複数の真空処理室(それぞれP型,I型,N型の製膜真空室等)を有しており、この真空処理室の内部に大型基板を設置し、基板の加熱手段と原料ガスを分解をする励起手段とにより、基板を移動しながら複数種の半導体層(P型層,I型層,N型層等)を順次積層形成している。
【0014】
ところで、従来の光起電力装置の例として、筒状または球状の支持体表面または裏面のほぼ全面に半導体光活性層を有する光起電力素子を形成するとともに、上記支持体の上記光起電力素子が形成されていない部分に、支持体内部に光を導入するための導入部を連結した光起電力装置がある(例えば、特許文献6を参照。)。
【0015】
【非特許文献1】
JIS規格 C8939
【0016】
【特許文献1】
特公平5−27278号公報
【0017】
【特許文献2】
特開平7−297435号公報
【0018】
【特許文献3】
特開2002−111037号公報
【0019】
【特許文献4】
特開2002−111026号公報
【0020】
【特許文献5】
特開平9−191121号公報
【0021】
【特許文献6】
実公平3−8455号公報
【0022】
【特許文献7】
特開2003−77550号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来の薄膜太陽電池を始めとするバルク型の太陽電池の更なる普及には、低コスト化が大きな課題とされている。しかしながら、バルク型の太陽電池は、モジュール化において多数の小さな半導体基板を配列し接続しなければならず、シリコン半導体基板が割れ易いという問題点がある。また、モジュール化するに当たって工程数が多く部品点数も多いため、コスト高になってしまい、大幅な低コスト化が難しいという問題点もある。
【0024】
また、従来の薄膜太陽電池では、低い変換効率および光劣化の問題に対し、これまで様々な改善がなされてきたが、未だ充分でないという問題点もある。例えば、大面積化には、高度な特性均一化の技術開発と製造技術とが必要であるとともに、歩留りが低いという問題を抱えており、そのため低コスト化が容易に実現できず市場への普及が進んでいないのが現状である。
【0025】
例えば、大きな基板上に大面積で形成されたシリコン系半導体層の特性は実際にはばらついており、また、この半導体層と接する透光性導電膜の多結晶化による自生凹凸も実際にはばらついているため、これらを用いて分離形成された複数のユニットセルの発生光電流もばらつくこととなり、その集積化(直列接続)に伴って光電流が最も低いユニットセルに律速されてしまうために、高い変換効率が得られないという問題点がある。
【0026】
また、タンデムセルにおいては、トップセルとボトムセルのそれぞれの光電流のミスマッチングや面積分布に伴う光電流のばらつきにより、タンデムセルとしての光電流はどちらか低いセルの光電流に律速されてしまい、高い変換効率が得られないという問題点がある。
【0027】
さらに、光劣化の抑制には、例えばシリコン系セルの製作においては半導体層の膜質改善や薄膜化等が行なわれ、また、モジュール構造においては上記の従来例のように、断熱材や発泡体や真空断熱層を設けて、太陽光による温度上昇にて発生する非晶質シリコン系半導体の光劣化を抑制することが検討されている(特許文献2〜5を参照。)。しかしながら、いずれも断熱材や発泡体等の部材が必要となり、真空断熱層を使用するには真空化の手間が必要で気密維持の困難さがあるという問題点がある。
【0028】
また、メカニカル・スタック型の薄膜太陽電池モジュール(特許文献1を参照。)では、太陽光を2回受光することができ、かつ光電流の律速要因が無く、高い変換効率が得られるものの、基板が2枚必要であるためどうしてもコストが高たなってしまうという問題点がある。
【0029】
また、これらの薄膜太陽電池の光電変換層、例えばシリコン系半導体層を形成する真空処理室としては、少なくとも前室,P室,I室、N室および後室の5室からなる大型真空処理室が必要であり、さらにタンデム型の場合であれば、少なくとも前室,P室,I室,N室,バッファ室,P室,I室,N室および後室の9室からなる大型真空処理室が必要である。
【0030】
しかも、これらの各室で形成される半導体層の製膜時間には大きな違いがあり、各室間で処理時間を一様とすることができないため、高額な設備の利用効率が極めて悪いという問題点があった。そこで、製膜処理時間の長い、例えばI層の処理室を増やすことでこの問題点を緩和することも行なわれているが、この場合は逆に、高額な真空処理室が増えてしまい、設置面積も増加するため、設備コストの増大を引き起こしていた。
【0031】
さらに、例えばPIN型半導体層を積層する際に、P型半導体層のドーピング不純物である周期律表V族元素のP元素等がI型半導体層に拡散して変換効率を低下させるという問題があり、その対策としてP室とI室との間に拡散を抑止するバッファ層を挿入しようとすると、更に真空処理室のバッファ室が必要となり設備が大型化してしまうという問題点があった。
【0032】
これに対しては、各層の製膜工程を一室ですべて処理するバッチ型のPCVD(プラズマCVD)装置等が当初検討されていたが、製膜工程間で製膜室である真空容器の壁面からの他工程で使用した不純物の混入による不純物汚染の問題があって連続製膜を行なうことができず、また、製膜バッチ毎に真空容器の壁面を清掃しなければならないため、装置の利用効率が悪いという問題点があった。
【0033】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄膜太陽電池のように基板が1枚であり、かつ基板上で集積化を必要とせず、工程数が少なく、部品点数が少なく、大幅な低コスト化が可能で、変換効率の低下を抑制した、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0034】
また、本発明の目的は、太陽光の受光において、タンデム構造を取り入れることなくシングル構造でタンデム構造の効果を持たせて低コスト化と変換効率の向上とを両立させることができる、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0035】
また、本発明の目的は、従来の薄膜光電変換装置において光劣化の抑制に使用されていた断熱材や発泡体等の部材が不要であり、光劣化の抑制と低コスト化とを両立させた薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0036】
また、本発明の目的は、光電変換層を形成する基板そのものを反応容器すなわち真空容器とすることができ、更にはバッチ処理とすることができ、多数の真空容器を必要とせず、大幅な設備費の低減による低コスト化が可能な、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光電変換装置は、基体を透光性の筒状基体として、その内周面に光電変換層を形成して成る筒状光電変換装置とする。
【0038】
すなわち、1)本発明の第1の筒状光電変換装置は、透光性の筒状基体の内周面に、透光性導電層と光電変換層と光反射性導電層とが順次積層されていることを特徴とするものである。
【0039】
また、2)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記光電変換層と前記光反射性導電層との間に拡散防止層が形成されていることを特徴とするものである。
【0040】
また、3)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の前記内周面と前記透光性導電層との間に、集電電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0041】
また、4)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の内周面の表面,前記透光性導電層の表面,前記光電変換層の表面および前記光反射性導電層の前記光電変換層側の表面の少なくとも1つが凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0042】
また、5)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成ることを特徴とするものである。
【0043】
また、6)本発明の第1の筒状光電変換装置は、上記1)の構成において、前記筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされていることを特徴とするものである。
【0044】
さらに、7)本発明の第2の筒状光電変換装置は、透光性の筒状基体の内周面に、第1の透光性導電層と光電変換層と第2の透光性導電層とが順次積層されていることを特徴とするものである。
【0045】
また、8)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の前記内周面と前記第1の透光性導電層との間に、第1の集電電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0046】
また、9)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記8)の構成において、前記第1の集電電極が前記筒状基体の前記内周面の半周以下の幅で広面積に形成されていることを特徴とするものである。
【0047】
また、10)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記第2の透光性導電層の表面に、第2の集電電極が形成されていることを特徴とするものである。
【0048】
また、11)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の外周面にその半周以下の幅で広面積に、光反射層が形成され、または光反射体が設けられていることを特徴とするものである。
【0049】
また、12)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の内周面の表面,前記第1の透光性導電層の表面,前記光電変換層の表面および前記第2の透光性導電層の表面の少なくとも1つが凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0050】
また、13)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記9)の構成において、前記第1の集電電極の前記光電変換層側の表面が凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0051】
また、14)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記11)の構成において、前記光反射層または前記光反射体の前記筒状基体側の表面が凹凸状を成していることを特徴とするものである。
【0052】
また、15)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記7)の構成において、前記筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成ることを特徴とするものである。
【0053】
また、16)本発明の第2の筒状光電変換装置は、上記15)の構成において、前記筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされていることを特徴とするものである。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の筒状光電変換装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0055】
図1および図2は、それぞれ本発明の第1の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す横断面図および縦断面図である。
【0056】
図1および図2に示すように、本発明の第1の筒状光電変換装置1は、透光性の筒状基体10の内周面に、透光性導電層20と光電変換層30と光反射性導電層40とが順次積層された構造を有している。この構造では光は図1に破線の矢印で示すように入射し、光反射性導電層40にて同じく破線の矢印で示すように反射し、いずれの光も光電変換層30にて光電流を発生させることができる。特に、光電変換層30が筒状基体10の内周面に形成されていることから丸みを帯びており光電変換層30に対する入射光の通過距離が長くなり、光閉じ込め効果に似た効果が期待できる。
【0057】
なお、図2には、後述する本発明の第2の筒状光電変換装置2に関する参照符号も併せて示してある。
【0058】
透光性の筒状基体10は、硼珪酸ガラス,ソーダガラス,サファイア等の透明無機質材料が耐熱性の観点から使い易く、また、鉄成分の少ない白ガラスが青ガラスより好ましく、さらにポリカーボネート等の透明有機樹脂等の材料でもよい。そのサイズは外径で5mmφ〜50mmφ、より好適には20mmφ〜30mmφが好ましく、肉厚は、0.3mmt〜5mmt好ましくは0.5mmt〜1mmtがよく、長さは10cm〜20m好ましくは1m〜2mがよく、耐圧は1kgW/cm2以上あるものがよい。透光性の筒状基体10の横断面形状は、図1に示す例では円形であるが、楕円形,正方形,長方形等、筒状であればどんな形状でも構わない。
【0059】
透光性導電層20は、不純物をドープしたSnO2,ZnO,In2O3,ITO(Indium Tin Oxide)等の材料から成るものがよく、スプレー熱分解法,ディップコート法,ゾル・ゲル法,真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法,溶液内薄膜成長法等で形成するのがよい。特に、筒状基体10の内周面に被膜形成するには、スプレー熱分解法またはディップコート法により形成するのが具合がよい。
【0060】
光電変換層30は、シリコン系等の非単結晶半導体,CIGS等の化合物半導体,色素増感型,有機光半導体,ナノ(サイズ結晶)シリコン等の材料から成るものがよく、これらによれば、接合を有する半導体,シリコン系の非単結晶半導体,非晶質シリコン系半導体や結晶質シリコン系半導体やこれらの混相がよく利用されていて具合がよい。
【0061】
シリコン系の非単結晶半導体の場合であれば、筒状基体10側にP型半導体膜を設けたP型半導体膜とI型半導体膜とN型半導体膜との積層によるPIN接合を形成することがよく、また、逆接合のNIP接合でも構わない。これらのシリコン系の非単結晶半導体は、水素化非晶質シリコン系半導体や水素化結晶質シリコン系半導体の積層であっても、またはこれらの混相であってもよい。このとき、最も厚いI層の膜厚は、非晶質シリコン系半導体であれば0.05μm〜1μm、好ましくは0.2〜0.3μmがよく、結晶質シリコン系半導体であれば0.5μm〜5μm、好ましくは1〜3μmがよく、混相のシリコン半導体であれば0.05μm〜5μm、好ましくは0.3〜2μmがよい。
【0062】
光反射性導電層40は、光電変換層30の電極としての役割と光反射の役割とを有していることを必要とし、高反射率のAg膜や低電気抵抗のAl膜やこれらの合金等を積層したものがよく、また他の金属材料を用いてもよい。光反射性導電層40は、真空蒸着法やスパッタリング法,イオンプレーティング法,ペースト焼付け法等で形成できる。また、光電変換層30の全面に形成して積層するものに限られず、櫛型等の電極パターンを形成した集電電極の構成であってもよい。
【0063】
なお、透光性の筒状基体10の内周面上の光電変換層30と光反射性導電層40の間に、金属酸化物,金属珪化物,極薄金属,沃化銅等から成る拡散防止層(図示せず)を形成すると、光反射性導電層40から光電変換層30への金属元素等の拡散による汚染がなく、密着性もよくなり好都合である。
【0064】
次に、本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態の一例について、図3に図1と同様の模式的な横断面図を示す。図3において、図1と同様の箇所には同じ符号を付してあり、10は透光性の筒状基体、30は光電変換層である。また、20Aは第1の透光性導電層であり、透光性導電層20と同様のものである。そして、50は第2の透光性導電層である。本発明の第2の筒状光電変換装置2は、このように透光性の筒状基体10の内周面に、第1の透光性導電層20Aと光電変換層30と第2の透光性導電層50とが順次積層されていることを特徴とするものである。
【0065】
第2の透光性導電層50は、透光性導電層20および第1の透光性導電層20Aと同様に、不純物をドープした酸化亜鉛(ZnO)や酸化スズ(SnO2)や酸化インジウム(In2O3)やスズドープ酸化インジウム(ITO)等の材料から成るものがよい。また、溶液内薄膜成長法,スプレー熱分解法,ディップコート法,ゾル・ゲル法,真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法等で形成するのがよく、特に、筒状基体10の内周面側で光電変換層30上に低温で被膜するには、溶液内薄膜成長法または熱CVD法により形成するのが具合がよい。
【0066】
図3および図2に示すように、本発明の第2の筒状光電変換装置2は、透光性の筒状基体10の内周面に、第1の透光性導電層20Aと光電変換層30と第2の透光性導電層50とを順次積層した構造を有している。この構造では、光は図3に破線の矢印で示すように入射し、入射側の光電変換層30を通過して発電し、さらに破線の矢印で示すように、反射側の光電変換層30を通過し発電するとともに、反射してその先の光電変換層30を通過し発電するように利用される。特に、光電変換層30が筒状基体10の内周面に沿って丸みを帯びていることから、光電変換層30に対する入射光や反射光の通過距離が長いため、光閉じ込め効果に似た効果が、図1に示す本発明の第1の筒状光電変換装置1よりもより多く期待できる。
【0067】
このような本発明の第2の筒状光電変換装置においては、実施の形態の他の例について図4に図3と同様の模式的な横断面図で示すように、透光性の筒状基体10の内周面と第1の透光性導電層20Aとの間に、第1の集電電極60を筒状基体10の内周面の半周以下の幅で広面積に長手方向に形成することにより、抵抗を低減することができるとともに、この第1の集電電極60を光反射層として利用することができて、効率向上によいものとなる。このような本発明の第2の筒状光電変換装置2Aにおける第1の集電電極60はAl,Ag,Pd,Cu,Ni,Au等、あるいはこれらの合金等により形成すればよい。その形成は、蒸着法やスパッタリング法等によればよいが、金属ペーストを線状あるいは帯状に塗布形成し、これを焼成する方が製造しやすい。
【0068】
なお、図1に示した本発明の第1の筒状光電変換装置1においても、筒状基体10の内周面と透光性導電層20との間に、この第1の集電電極60と同様に集電電極を形成してもよい。
【0069】
また、図4に示すように、透光性の筒状基体10の内周面上の第2の透光性導電層50の表面に、第2の集電電極70を所定の幅で筒状基体10の長手方向に形成してもよく、これにより、第2の透光性導電層50により集電する際の抵抗を低減することができて効率向上によいものとなる。この第2の集電電極70の材料は第1の集電電極60と同様のものでよく、その形成は、蒸着法やスパッタリング法等で形成してもよいが、金属ペーストを線状あるいは帯状に塗布形成し、これを焼成する方が製造しやすい。
【0070】
さらに、図4に示すように、第1の集電電極60を筒状基体10の内周面の半周以下の幅で広面積に長手方向に形成することにより、この第1の集電電極60を光反射層としても機能させることができ、集電電極の作用に加えて反射光を増すことによって、変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。
【0071】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置においては、その実施の形態のさらに他の例について図5に図3と同様の模式的な横断面図で示すように、透光性の筒状基体10の外周面にその半周以下の幅で広面積に長手方向に光反射層90を形成するとよい。このような本発明の第2の筒状光電変換装置2Bによれば、筒状基体10を通過して光反射層90に入射した光を、この光反射層90によって筒状基体10の内側に向けて再び効果的に反射させて光電変換に寄与させることができる。また、その実施の形態のさらに他の例を図6に図3と同様の模式的な横断面図で示すように、筒状基体10の外側に光反射体100を設けてもよい。このような本発明の第2の筒状光電変換装置2Cによれば、光反射体100を設けるのに際して被膜装置である真空蒸着装置等が要らず、反射率の高い金属等の反射板を例えば図6に示す形状のように加工して配置することによって、筒状基体10を通過して光反射体100に入射した光を、この光反射体100によって筒状基体10の内側に向けて再び効果的に反射させて光電変換に寄与させることができる。
【0072】
このような光反射体100の断面形状は、図6に示したような複数の平面を組み合わせた形状に限られず、曲面成型したものであってもよい。また、材料はアルミ板等の金属板でよいが、アルミ板にAg蒸着した光反射板や、腐食防止のため表面を樹脂被膜したり無機皮膜した金属板等であってもよく、そうすると信頼性が高いものとなる。また、板状のものに限られず、筒状基体10を載置することができるブロック体状のものであってもよい。
【0073】
また、光反射体100を設ける場合は、透光性の筒状基体10を複数個並べる場合等に、各筒状基体10同士を離して配置しても、図6中に矢印で示すように、筒状光電変換装置2C間の隙間に入射した光も有効に反射して、筒状基体10の内周面上に形成されている光電変換層30に吸収させて発電に寄与させることができる。
【0074】
本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2においては、光電変換層30が、内部に少なくとも1つ以上の接合を有する半導体層から成ることにより、この光電変換層30によって薄膜太陽電池として効果的に光起電力を得ることができる。
【0075】
さらに、透光性の筒状基体10の内周面を始めとして各層の表面を凹凸状を成すものとすることにより、その凹凸状の表面によって入射光の光閉じ込め効果を高めて、変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。例えば、筒状基体10の内周面を所定の凹凸状とするには、砥粒を吹き付けて表面加工するホーニング法やフッ酸等による化学エッチング法等を採用すればよい。
【0076】
また、透光性導電層20,第1の透光性導電層20Aおよび第1の集電電極60のいずれか1つの光反射表面となる表面が凹凸状を成すときにも、入射光の光閉じ込め効果をこれら凹凸状の表面により高めて変換効率の向上をもたらすことができる。これらの表面の凹凸化は、例えば結晶性透明導電膜(SnO2膜等)の形成条件により行なうことができる。
【0077】
また、光電変換層30の表面が凹凸状を成すときにも、その表面による反射光の光閉じ込め効果を高めて変換効率の向上をもたらすことができる。この光電変換層30の表面の凹凸化は、例えば結晶質半導体膜(μc−Si:H膜等)の形成条件により行なうことができる。
【0078】
さらに、第2の透光性導電層50および光反射層90の少なくとも一方の表面(光反射層90は光電変換層30側の表面)が凹凸状を成すときにも、反射光の光閉じ込め効果を高めて変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。
【0079】
さらにまた、光反射性導電層40もしくは光反射体100の光電変換層30側の表面が凹凸状を成すときにも、筒状基体10を通過した光を乱反射して光閉じ込め効果を高め変換効率の向上をもたらすことができるものとなる。
【0080】
以上のような凹凸状を成す各表面の凹凸の高低差およびピッチ(繰り返し間隔)は、これらによって良好な光閉じ込めの効果を得るためには、断面のTEM(透過型電子顕微鏡)観察によればそれぞれ50nm〜500nmおよび100nm〜600nm程度であることが好ましい。また、AFM(原子間力顕微鏡)測定によれば、凹凸の算術平均粗さRaが10nm〜100nm(0.01μm〜0.1μm)程度であり、Power Spectral Densityの最多波長(最多ピッチ)が0.2μm/cycle〜3μm/cycle程度であることが好ましい。
【0081】
本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2においては、光電変換層30が半導体層から成り、この半導体層が非単結晶材料から成るときには、構造緩和性がよく、堆積膜の信頼性が高いものとなる。また、その半導体層が少なくとも1つ以上のPIN接合を有する積層から成ることにより、製造上容易に光電変換層30を形成して光起電力を得ることができるものとなる。
【0082】
また、光電変換層30を構成する半導体層の非単結晶がシリコンを主成分とする材料から成るときには、資源不足等の問題がなく信頼性の高い薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。特に、半導体層の非単結晶が微結晶シリコンと非晶質シリコンとの混相から成るときには、接合部でのバンドギャップの適正化が図れて、比較的に薄い膜厚で高い変換効率の筒状光電変換装置が実現できる。さらに、半導体層が1つのPIN接合を有する非晶質シリコンから成るときには、薄い膜厚による低コストの薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。また、半導体層が1つのPIN接合を有する結晶質シリコンから成るときには、光劣化の無い信頼性の高い薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。また、半導体層が1つのPIN接合を有する微結晶シリコンと非晶質シリコンとの混相から成るときには、信頼性の高いバンドギャップの適正化が図れて、比較的に薄い膜厚で高い変換効率の薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。また、半導体層が2つのPIN接合の積層であり、筒状基体10の内周面側より、非晶質シリコンのPIN接合および微結晶シリコンのPIN接合が積層されて成るときには、光を効率よく分光・吸収することができ、高い変換効率の薄膜光電変換層30を用いた筒状光電変換装置が実現できる。さらにまた、半導体層が2つのPIN接合の積層であり、2つのPIN接合の間に、不純物ドープの非単結晶シリコン、または透明導電性金属酸化物から成るトンネル効果を有する中間層、またはオーミックコンタクト性を有する中間層を設けたときには、ほとんど損失なく光起電力を取り出すことができる筒状光電変換装置となる。さらに、半導体層が2つのPIN接合であり、筒状基体10の内周面側より、第1の非晶質シリコンのPIN接合および第2の非晶質シリコンのPIN接合が順次形成されて成り、第1より第2の非晶質シリコンのバンドギャップが小さいときには、薄い膜厚で光を効率よく分光・吸収することができ、高い変換効率の薄膜光電変換層30を有する筒状光電変換装置が実現できる。
【0083】
ところで、図2には、透光性の筒状基体10の端部に光電変換層30で発生した起電力を外部に取り出す電極端子21・41・51を形成した例を示している。21は透光性導電層20または第1の透光性導電層20Aに電気的に接続された電極端子、41は光反射性導電層に電気的に接続された電極端子、51は第2の透光性導電層50に電気的に接続された電極端子を示している。それぞれ、各層を積層する際に、マスキング等の手段を用いて、所望の位置や形状に形成することができる。そして、このように筒状基体10の端部に形成された電極端子21・41・51に図示しない外部接続コネクタもしくは外部リード線を取り付けることにより、外部への出力を確実に取り出すことができる。
【0084】
また、本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2は、その実施の形態の他の例について図7に図2と同様の模式的な縦断面図で示すように、透光性の筒状基体10の両端の開口が、封止部材、例えばキャップ110および封止樹脂120を用いて、気密に封止されて成ることが好ましい。このように封止部材を用いて両端の開口を封止することにより、筒状基体10の内周面に積層形成された光電変換層30を始めとする各層の耐環境性を高めることができる。また、この封止部材、例えばキャップ110に図示しない外部接続コネクタもしくは外部リード線を取り付けると、太陽電池を構成する際の部品点数が減って好都合なものとなる。なお、130は外部接続コネクタもしくは外部リード線の取り付けタップ(ネジ)である。
【0085】
このような封止部材としてのキャップ110には、金属(Al,SUS等),セラミックス(アルミナセラミックス等),ガラス,プラスチック等を用いることができる。また、封止部材としての封止樹脂120としては、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂),PVB(ポリビニルブチラール),エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA),エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA),フッ素樹脂,エポキシ樹脂等を用いるとよい。
【0086】
なお、封止部材はこのようなキャップ110と封止樹脂120との組合せに限定されるものではなく、例えば金属キャップ110と電極端子21・41・51とを直接封止する半田溶接等を用いてもよい。
【0087】
このような封止部材を用いて筒状基体10の両端の開口を気密に封止することにより、光電変換層30の断熱化が図れて、光劣化の抑制効果を高めることができる。また、これに際して、気密に封止した内部が気体として不活性ガスであるArガスやHeガスあるいはN2ガス等を封入して充填されているようにすると、光電変換層30の長期信頼性をより高めることができる。また、気密に封止した内部を真空状態とすれば、断熱効果があって、さらによいものとなる。
【0088】
本発明の第1および第2の筒状光電変換装置1・2を用いれば、複数個を平面状もしくは曲面状の支持体上に平行に並べて配列するとともに、端部に接続された外部リード線もしくは外部接続コネクタを介して全体を直列もしくは並列または直並列に接続することにより、集積型の薄膜光電変換モジュールが実現できる。
【0089】
次に、本発明の第1または第2の筒状光電変換装置1・2の製造方法の一例について、筒状基体を化学気相成長(PCVD等)の反応容器として利用し、その筒状基体の内周面に光電変換層を形成する方法の模式図を図8に示す。
【0090】
図8に示すように、予め第1の透光性導電層を内周面に被膜した透光性の筒状基体210の内側に、一端の開口を塞ぐように取り付けたガス噴出し板220から原料ガス供給手段230によりSiH4ガス等の原料ガスを導入する。他方、他端の開口を塞ぐように取り付けたガス排気板240からは、使用済み原料ガス等が排気手段250により、除害設備を経由して排気される。
【0091】
排気手段250としては、ターボ分子ポンプ,メカニカルブースタポンプ,ロータリーポンプ,ドライポンプ等の真空ポンプが用いられる。ガス供給手段230としては、原料ガス(SiH4ガス等),活性化ガス(H2ガス等),ドーパントガス(水素希釈のB2H6,PH3ガス等)を、シリンダーボックスよりマスフローコントローラを経由してそれぞれ所定の流量で混合し供給できる装置が用いられる。
【0092】
この製造方法においては、最終的に製品となる透光性の筒状基体を化学気相成長の反応容器として用い、かつその筒状基体の内周面に光電変換層を化学気相成長法により形成することを特徴としている。この場合、光電変換層のPIN型半導体層はバッチ処理で形成することができる。従って、例えばインラインPCVD装置のように多数の大きな真空室が不要となり、設備費を激減することができる。また、大きな真空室では、その壁面にシリコン等の粉体が付着して定期的にクリーニングしなければならないが、その手間と装置の稼動停止を不要とすることもできる。さらに、従来の製造方法では製品と壁面とに付着していたラジカル種をすべて製品に付着させることができ、原料ガスの利用効率が高くなる。
【0093】
筒状基体の内周面に光電変換層を化学気相成長する方法においては、筒状基体の一端の開口に取り付けた、小穴を設けたガス噴出し板220をSUS等の金属で製作しておくことにより、これを励起電源の電極として使用することができる。また、ガス排気板240もSUS等の金属で製作しておくことにより、これを励起電源の他方の電極として使用することができる。これらの電極間に高周波電源260をマッチングボックス270を介して接続することにより、筒状基体の内部にグロー放電を発生させることができる。このとき、筒状基体の外周面の近傍に基体加熱手段280を設けておくことにより、筒状基体の内周面に膜質の良い光電変換層が形成される。励起電源としては、0.2MHz〜30MHzのRF電源や30MHz〜300MHzのVHF電源やマイクロ波電源等の広い周波数範囲の高周波電源260を利用することができる。また、基体加熱手段280としては、赤外線ランプ,シーズヒーター,面ヒーター等を利用することができるが、励起手段を妨げないという点では、赤外線ランプが好適である。
【0094】
そして、筒状基体の内部が外部よりガス圧力が低い状態とすることにより、筒状基体の内部で安定したグロー放電が維持でき、また、筒状基体の外部でグロー放電することがなく、原料ガスは筒状基体の内部でのみ分解して内周面に付着することとなり、筒状基体の外部では例え原料ガスを流しても分解・付着することはない。
【0095】
また、筒状基体の外部には、水素ガス等の活性化ガス、あるいはArガス等の不活性ガス、あるいはN2ガス等の安全ガスを少量流して満たしておくのがよい。これにより、筒状基体の外周面には膜が付着せず、また筒状基体が破損等したときの安全性が確保できる。さらにこのとき、筒状基体を含めて全体を容器で囲んでおくとより安全性を高めることができる。この容器の外壁は、さほど耐圧が必要でないので、薄い容器壁のもので囲むようにしておけばよい。
【0096】
【実施例】
以下に、本発明をより具体的に示す実施例1〜3を説明する。
【0097】
<実施例1>
実施例1では、図1および図2に示す本発明の第1の筒状光電変換装置を作製した。円筒形状の透光性の筒状基体には、硼珪酸ガラス管(φ40mm,長さ10cm,厚み3mm)を用いた。
【0098】
このガラス管の内周面に、500℃の基体温度に設定して、スプレー法によりSnO2:F膜を1μmの厚みで堆積した。次に、このSnO2:F膜上にプラズマCVD法によりPIN型半導体層をそれぞれ連続して堆積することにより形成した。まず、P型a−Si:H半導体層を100Å(0.01μm)の厚みで堆積した。なお、ここではP型a−Si:H半導体層を用いたが、P型a−SiC:H層であってもよい。P型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,B2H6ガス(H2で500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm,12sccm,2sccmとした。続いて、I型a−Si:H半導体層を3000Åの厚みで堆積した。I型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガスを用い、これらのガスの流量をそれぞれ15sccm,50sccmとした。さらに、N型a−Si:H半導体層を120Åの厚みで堆積した。N型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,PH3ガス(H2で1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm,3sccm,6sccmとした。基板温度はPIN層の何れも210℃とした。さらに、光反射性導電層としては、真空蒸着法によるAl膜を用いた。
【0099】
こうして得られた本発明の第1の筒状光電変換装置は、AM1.5下,100mW/cm2で変換効率3%を示した。
【0100】
<実施例2>
実施例2では、図3および図2に示す本発明の第2の光電変換装置を作製した。円筒形状の透光性の筒状基体には、硼珪酸ガラス管(φ40mm,長さ10cm,厚み3mm)を用いた。このガラス管の内周面に、500℃の基体温度に設定してスプレー法によりSnO2:F膜を1μmの厚みで堆積した。次に、このSnO2:F膜上にプラズマCVD法によりPIN型半導体層をそれぞれ連続して堆積した。まず、P型μc−Si:H半導体層を200Å(0.02μm)の厚みで堆積した。ここで、μcとは、粒径がサブミクロン以下の、いわゆる微結晶質を指す。なお、このP型μc−Si:H半導体層の代わりに、P型μc−SiC:H半導体層であっても構わない。P型μc−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,B2H6ガス(H2で500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ1sccm,200sccm,10sccmとした。続いて、I型半導体層を10000Å(=1μm)の厚みで堆積した。I型μc−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガスを用い、これらのガスの流量をそれぞれ10sccm,100sccmとした。I型層の結晶化率は65%であり、成長表面には自生凹凸が形成されていた。さらに、N型a−Si:H半導体層を120Åの厚みで堆積した。N型a−Si:H半導体層の原料ガスとしては、SiH4ガス,H2ガス,PH3ガス(H2で1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm,30sccm,6sccmとした。基板温度はPIN層の何れも220℃とした。続いて、第2の透光性導電層として、酸化スズ膜を溶液内薄膜成長法にて堆積した。
【0101】
こうして得られた本発明の第2の筒状光電変換装置は、AM1.5下,100mW/cm2で変換効率4%を示した。
【0102】
<実施例3>
実施例3では、実施例1および2と同様の円筒形状の透光性の筒状基体を用い、その内周面をサンドブラスト処理し、さらにフッ酸処理・洗浄して、凹凸を形成した。この凹凸の高低差およびピッチは、それぞれ約250nm〜350nmおよび約300nm〜400nmであった。このガラス管の内周面に、500℃の基体温度に設定してスプレー法によりSnO2:F膜を1μmの厚みで堆積した。次に、このSnO2:F膜上にプラズマCVD法により実施例1と同様にPIN型半導体層をそれぞれ連続して堆積した。
【0103】
光反射性導電膜として、本実施例では真空蒸着法によるAl膜を用いた。
【0104】
こうして得られた本発明の第1の筒状光電変換装置は、AM1.5下,100mW/cm2で変換効率5%を示した。
【0105】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、上記の例では筒状基体を円筒形状のガラス管としたが、断面が四角形状の筒状のガラス管としてもよい。
【0106】
【発明の効果】
本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、1)透光性の筒状基体の内周面に、透光性導電層と光電変換層と光反射性導電層とが順次積層されていることから、筒状基体の曲面性により入射光と反射光の光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。
【0107】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、2)光電変換層と光反射性導電層との間に拡散防止層が形成されているときには、光反射性導電層から光電変換層への金属元素の拡散が無いので、金属元素の汚染による光電変換効率の低下を防ぐことができる。
【0108】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、3)筒状基体の内周面と透光性導電層との間に、集電電極が形成されているときには、取り出し電極の直列抵抗が小さくなるので、曲線因子が大きくなることと相まって、光電変換効率を向上させることができる。
【0109】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、4)筒状基体の内周面の表面,透光性導電層の表面,光電変換層の表面および光反射性導電層の光電変換層側の表面の少なくとも1つが凹凸状を成しているときには、斜め入射光が増えて光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。
【0110】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、5)筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成るときには、筒状基体の内側の光電変換層等と外気環境との遮断ができるので、耐環境性が高まり長寿命なものとすることができる。
【0111】
また、本発明の第1の筒状光電変換装置によれば、6)筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされているときには、筒状基体の内側の光電変換層等と空気(酸素や窒素や水分等)との反応が無くなるので、光電変換特性等の経時劣化の恐れが無くなり、高い信頼性を有するものとすることができる。
【0112】
本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、7)透光性の筒状基体の内周面に、第1の透光性導電層と光電変換層と第2の透光性導電層とが順次積層されていることから、入射光が反射する前に筒状の光電変換層を2度通過できるので、光電流が増して、光電変換効率を向上させることができる。
【0113】
本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、8)筒状基体の内周面と第1の透光性導電層との間に、第1の集電電極が形成されているときには、直列抵抗が小さくなるので、曲線因子が大きくなることと相まって、光電変換効率を向上させることができる。
【0114】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、9)第1の集電電極が筒状基体の内周面の半周以下の幅で広面積に形成されているときには、この第1の集電電極が高反射率であることから光電変換層を2度通過した光が反射されることとなるので、光電流が増し、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0115】
また、本発明の第2の筒状光電変換によれば、10)第2の透光性導電層の表面に、第2の集電電極が形成されているときには、第2の集電電極によって直列抵抗が小さくなるので、曲線因子が大きくなることと相まって、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0116】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、11)筒状基体の外周面にその半周以下の幅で広面積に、光反射層が形成され、または光反射体が設けられているときには、筒状基体を通過した光を反射させて再度筒状基体に入射させることができるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0117】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、12)筒状基体の内周面の表面,第1の透光性導電層の表面,光電変換層の表面および第2の透光性導電層の表面の少なくとも1つが凹凸状を成しているときには、斜め入射光が増えて光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0118】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、13)第1の集電電極の光電変換層側の表面が凹凸状を成しているときには、光電変換層を2度通過した光が斜めに反射・再入射して光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0119】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、14)光反射層または光反射体の筒状基体側の表面が凹凸状を成しているときには、筒状基体を通過した光が斜めに反射・再入射して光路長が長くなるので、光電流が増して、光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0120】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、15)筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成るときには、筒状基体の内側の光電変換層等と外気環境との遮断ができるので、耐環境性が高まり、長寿命なものとすることができる。
【0121】
また、本発明の第2の筒状光電変換装置によれば、16)筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされているときには、筒状基体の内側の光電変換層等と空気(酸素や窒素や水分等)との反応が無くなるので、光電変換特性等の経時劣化の恐れが無くなり、高い信頼性を有するものとすることができる。
【0122】
以上により、本発明によれば、薄膜太陽電池のように基板が1枚であり、かつ基板上で集積化を必要とせず、工程数が少なく、部品点数が少なく、大幅な低コスト化が可能で、変換効率の低下を抑制した、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【0123】
また、本発明によれば、太陽光の受光において、タンデム構造を取り入れることなくシングル構造でタンデム構造の効果を持たせて低コスト化と変換効率の向上とを両立させることができる、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【0124】
また、本発明によれば、従来の薄膜光電変換装置において光劣化の抑制に使用されていた断熱材や発泡体等の部材が不要であり、光劣化の抑制と低コスト化とを両立させた薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【0125】
また、本発明によれば、光電変換層を形成する基板そのものを反応容器すなわち真空容器とすることができ、更にはバッチ処理とすることができ、多数の真空容器を必要とせず、大幅な設備費の低減による低コスト化が可能な、薄膜光電変換層を用いた光電変換装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す横断面図である。
【図2】本発明の第1および第2の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態の一例を模式的に示す横断面図である。
【図4】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態の他の例を模式的に示す横断面図である。
【図5】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態のさらに他の例を模式的に示す横断面図である。
【図6】本発明の第2の筒状光電変換装置の実施の形態のさらに他の例を模式的に示す横断面図である。
【図7】本発明の第1および第2の筒状光電変換装置の実施の形態の他の例を模式的に示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1または第2の筒状光電変換装置の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1:本発明の第1の筒状光電変換装置
2,2A,2B,2C:本発明の第2の筒状光電変換装置
10:筒状基体
20:透光性導電層
20A:第1の透光性導電層
30:光電変換層
40:光反射性導電層
50:第2の透光性導電層
60:第1の集電電極
70:第2の集電電極
90:光反射層
100:光反射体
110:キャップ(封止部材)
120:封止樹脂(封止部材)
Claims (16)
- 透光性の筒状基体の内周面に、透光性導電層と光電変換層と光反射性導電層とが順次積層されていることを特徴とする筒状光電変換装置。
- 前記光電変換層と前記光反射性導電層との間に拡散防止層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の前記内周面と前記透光性導電層との間に、集電電極が形成されていることを特徴とする請求項1記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の内周面の表面,前記透光性導電層の表面,前記光電変換層の表面および前記光反射性導電層の前記光電変換層側の表面の少なくとも1つが凹凸状を成していることを特徴とする請求項1記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成ることを特徴とする請求項1記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされていることを特徴とする請求項1記載の筒状光電変換装置。
- 透光性の筒状基体の内周面に、第1の透光性導電層と光電変換層と第2の透光性導電層とが順次積層されていることを特徴とする筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の前記内周面と前記第1の透光性導電層との間に、第1の集電電極が形成されていることを特徴とする請求項7記載の筒状光電変換装置。
- 前記第1の集電電極が前記筒状基体の前記内周面の半周以下の幅で広面積に形成されていることを特徴とする請求項8記載の筒状光電変換装置。
- 前記第2の透光性導電層の表面に、第2の集電電極が形成されていることを特徴とする請求項7記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の外周面にその半周以下の幅で広面積に、光反射層が形成され、または光反射体が設けられていることを特徴とする請求項7記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の内周面の表面,前記第1の透光性導電層の表面,前記光電変換層の表面および前記第2の透光性導電層の表面の少なくとも1つが凹凸状を成していることを特徴とする請求項7記載の筒状光電変換装置。
- 前記第1の集電電極の前記光電変換層側の表面が凹凸状を成していることを特徴とする請求項9記載の筒状光電変換装置。
- 前記光反射層または前記光反射体の前記筒状基体側の表面が凹凸状を成していることを特徴とする請求項11記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の両端の開口が封止部材により封止されて成ることを特徴とする請求項7記載の筒状光電変換装置。
- 前記筒状基体の内部が不活性ガスで充填されているか、または真空状態とされていることを特徴とする請求項15記載の筒状光電変換装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152391A JP2004356397A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 筒状光電変換装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152391A JP2004356397A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 筒状光電変換装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004356397A true JP2004356397A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34047620
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003152391A Pending JP2004356397A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 筒状光電変換装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004356397A (ja) |
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006245134A (ja) * | 2005-03-01 | 2006-09-14 | Clean Venture 21:Kk | 光電変換装置およびその光電変換素子の製造方法 |
JP2007059799A (ja) * | 2005-08-26 | 2007-03-08 | Sharp Corp | 太陽電池およびその製造方法 |
US20090014055A1 (en) * | 2006-03-18 | 2009-01-15 | Solyndra, Inc. | Photovoltaic Modules Having a Filling Material |
JP2009537985A (ja) * | 2006-05-19 | 2009-10-29 | ソルインドラ,インコーポレーテッド | 気密密閉非平面太陽電池 |
US20110192447A1 (en) * | 2010-02-08 | 2011-08-11 | Alan Shteyman | Three-dimensional total internal refraction solar cell |
JP2012186870A (ja) * | 2011-03-03 | 2012-09-27 | Shigetaka Yamahashi | 太陽光利用による複合発電装置 |
NL2010295A (en) * | 2012-02-13 | 2013-08-14 | Flexsol Solutions B V | A process to make a tubular formed object. |
JP2014168085A (ja) * | 2006-03-18 | 2014-09-11 | Solyndra Inc | 非平面太陽電池のモノリシック集積 |
CN104916719A (zh) * | 2014-03-13 | 2015-09-16 | 台积太阳能股份有限公司 | 圆柱形太阳能电池模块以及该模块的制造方法 |
CN106026858A (zh) * | 2016-06-24 | 2016-10-12 | 国网安徽省电力公司黄山供电公司 | 一种电网用太阳能发电系统 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152391A patent/JP2004356397A/ja active Pending
Cited By (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006245134A (ja) * | 2005-03-01 | 2006-09-14 | Clean Venture 21:Kk | 光電変換装置およびその光電変換素子の製造方法 |
JP2007059799A (ja) * | 2005-08-26 | 2007-03-08 | Sharp Corp | 太陽電池およびその製造方法 |
US20090014055A1 (en) * | 2006-03-18 | 2009-01-15 | Solyndra, Inc. | Photovoltaic Modules Having a Filling Material |
JP2014168085A (ja) * | 2006-03-18 | 2014-09-11 | Solyndra Inc | 非平面太陽電池のモノリシック集積 |
JP2009537985A (ja) * | 2006-05-19 | 2009-10-29 | ソルインドラ,インコーポレーテッド | 気密密閉非平面太陽電池 |
JP2013243403A (ja) * | 2006-05-19 | 2013-12-05 | Solyndra Inc | 気密密閉非平面太陽電池 |
US20110192447A1 (en) * | 2010-02-08 | 2011-08-11 | Alan Shteyman | Three-dimensional total internal refraction solar cell |
US9159858B2 (en) * | 2010-02-08 | 2015-10-13 | Alan Shteyman | Three-dimensional total internal reflection solar cell |
JP2012186870A (ja) * | 2011-03-03 | 2012-09-27 | Shigetaka Yamahashi | 太陽光利用による複合発電装置 |
NL2010295A (en) * | 2012-02-13 | 2013-08-14 | Flexsol Solutions B V | A process to make a tubular formed object. |
CN104916719A (zh) * | 2014-03-13 | 2015-09-16 | 台积太阳能股份有限公司 | 圆柱形太阳能电池模块以及该模块的制造方法 |
CN106026858A (zh) * | 2016-06-24 | 2016-10-12 | 国网安徽省电力公司黄山供电公司 | 一种电网用太阳能发电系统 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN109004053B (zh) | 双面受光的晶体硅/薄膜硅异质结太阳电池及制作方法 | |
EP2110859B1 (en) | Laminate type photoelectric converter and method for fabricating the same | |
JP4086629B2 (ja) | 光起電力素子 | |
US20070023081A1 (en) | Compositionally-graded photovoltaic device and fabrication method, and related articles | |
US20080000522A1 (en) | Photovoltaic device which includes all-back-contact configuration; and related processes | |
US20080245414A1 (en) | Methods for forming a photovoltaic device with low contact resistance | |
US20090101201A1 (en) | Nip-nip thin-film photovoltaic structure | |
US20110308582A1 (en) | Photoelectric conversion device and manufacturning method thereof | |
US20130340817A1 (en) | Thin film silicon solar cell in tandem junction configuration on textured glass | |
JP2004356397A (ja) | 筒状光電変換装置 | |
EP2323172A1 (en) | Photoelectric conversion device manufacturing method, photoelectric conversion device, and photoelectric conversion device manufacturing system | |
US8652871B2 (en) | Method for depositing an amorphous silicon film for photovoltaic devices with reduced light-induced degradation for improved stabilized performance | |
JP2002305315A (ja) | 半導体素子の形成方法及び半導体素子 | |
US20110308587A1 (en) | Photoelectric conversion device and method for manufacturing the same | |
WO2012065957A2 (en) | Improved a-si:h absorber layer for a-si single- and multijunction thin film silicon solar cell | |
JP2002170973A (ja) | 半導体素子の形成方法及び半導体素子 | |
WO2012089685A2 (en) | Siox n-layer for microcrystalline pin junction | |
JP2004296615A (ja) | 積層型光起電力素子 | |
JP6653696B2 (ja) | 光電変換素子 | |
US20120037407A1 (en) | Electronic Apparatus and Method of Manufacturing the Same | |
CN220796756U (zh) | 硅异质结太阳能电池、太阳能光伏组件和光伏系统 | |
WO2012028717A1 (en) | Improved a-si:h absorber layer for a-si single- and multijunction thin film silicon solar cells | |
US6897559B2 (en) | Silicon-based thin film forming apparatus, silicon-based thin film forming method and semiconductor element | |
JP2004296616A (ja) | 光起電力素子 | |
CN117926225A (zh) | 光伏组件及其太阳能电池、太阳能电池的硅片原子沉积方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051114 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081118 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20081118 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090317 |