JP2004354640A - 光学薄膜の緻密化処理方法、光学薄膜及び半導体露光装置 - Google Patents
光学薄膜の緻密化処理方法、光学薄膜及び半導体露光装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】光学素子上へ堆積させた光学薄膜の構造を緻密化させる光学薄膜の緻密化処理方法を提供する。
【解決手段】酸化物光学薄膜72が積層された酸化物光学素子70を反応炉2に格納する格納工程と、前記反応炉2内に酸素ガスを導入して、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉2に格納された前記酸化物光学素子70の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉2から前記酸化物光学素子70を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法において、前記緻密化処理工程における前記反応炉2内の温度は150〜500℃、酸素濃度は1000ppm〜100%である。
【選択図】 図2
【解決手段】酸化物光学薄膜72が積層された酸化物光学素子70を反応炉2に格納する格納工程と、前記反応炉2内に酸素ガスを導入して、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉2に格納された前記酸化物光学素子70の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉2から前記酸化物光学素子70を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法において、前記緻密化処理工程における前記反応炉2内の温度は150〜500℃、酸素濃度は1000ppm〜100%である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学薄膜の緻密化処理方法、該緻密化処理方法により緻密化された光学薄膜及び該光学薄膜が形成された光学素子を有する半導体露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外波長(248nm)のKrFエキシマレーザ、ならびに、深紫外波長(193nm)のArFエキシマレーザを露光光源として利用する半導体露光装置が存在する。これらの半導体露光装置の光学系に使用されているレンズやミラー、プリズムといった光学素子は、鏡筒内に格納されており、この鏡筒内には窒素ガスが流通されている。また、各光学素子上には、反射防止膜や高反射膜、半透過膜といった光学薄膜がコートされている。
【0003】
光学素子材料そのものは、高純度粉末と反応性ガスを原料に用い、化学反応を充分に進行させるために1000℃以上の高温中で合成される。合成後は、充分に時間をかけて徐々に冷却され、必要に応じてアニール処理も施されるので、光吸収や散乱の原因となる不純物元素、欠陥やひずみが極力取り除かれている。また、研磨技術の発達により光学素子表面での散乱も著しく低下している。
【0004】
一方、光学薄膜は、抵抗加熱ないしは電子ビーム溶解による真空蒸着、イオンアシストを併用する真空蒸着、イオンプレーディング、スパッタリング、イオンビームスパッタリングなどの各種PVD法により比較的低温で簡便に成膜されている。基板となる光学素子を比較的低温の加熱にとどめて光学薄膜を形成しなければならない理由は、高温に加熱すると、光学素子に熱変形が生じ、光学素子表面の加工寸法精度にくるいを生じて所望の結像性能が得られないためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで高温下で時間をかけて生成された光学素子材料そのものは緻密なバルク固体で、種々の気体分子が内部へ侵入する空隙は一切存在しない。一方、上述のように比較的低温な加熱にとどめられた光学素子上に形成された光学薄膜は、多孔質で空隙や細孔に富んだ非常に比表面積の大きな構造になっているために、莫大な量の水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が内部へ侵人して吸着する。揮発性有機物質及び揮発性無機物質のほとんどは、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長を吸収する。さらに次世代半導体露光装置の露光光源として用いられる真空紫外のF2レーザ波長(157nm)では、水蒸気さえも光吸収する。
【0006】
半導体露光装置において光学素子が格納されている鏡筒内は、窒素ガスが流通されているとはいえ、半導体露光装置の設置環境中及び窒素ガス中に含まれる微量の揮発性有機物質やアンモニアなどの揮発性無機物質及び水蒸気が鏡筒内に導かれてしまう。鏡筒内に導かれた揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気は、光学素子表面に成膜された光学薄膜上に付着し、光学薄膜の空隙や細孔をつたって内部深く侵入して吸着されて光吸収を引き起こす。さらにレーザ照射後は、重合あるいは固着してさらに光透過率を低下させる。
【0007】
縮小投影半導体露光装置では、レーザ光源から半導体回路が露光されるウエハまでの間に、数十枚にもおよぶ様々な形状・用途の光学素子が配置されており、光学素子の両表面、すなわち、光の入射側と出射側の両表面に光学薄膜がコートされている。つまり、薄膜コート面数は全光学素子数の2倍となる。1台の半導体露光装置において、使用される全光学素子は同一鏡筒内に設置されているので、ほぼ等しく鏡筒内に存在する揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気で汚染されて透過率が低下することになる。ここで、ある光学素子の片側コート面の透過率をTとし汚染による透過率低下量をΔTとすると、この光学素子の汚染後の両面透過率は(T−ΔT)2となる。全光学素子数をn個とすると、全系での透過率低下量は(T−ΔT)2Nとなる。従って、レーザ光源から数十枚に及ぶ全光学素子を透過してウエハ上に到達する露光光の光量は、汚染が全くない理想状態と比較して、汚染がある場合には致命的に小さくなる。もちろん、鏡筒内に持ち込まれる揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気量を極力抑える努力は行われるが完全にゼロにすることは不可能なので、現実には揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気の吸着、重合固着に起因する透過率低下は、必ず生じる問題である。結局のところ、全光学素子を透過してウエハ面に到達した光量は、もとの光源光量の数%程度と極端に低くなっているのが現状であることから、露光時間が長くなり、重合物質が厚く析出した際の光学素子の交換頻度も増加してしまい、生産性が極端に低下している。
【0008】
この発明の課題は、光学素子上へ堆積させた光学薄膜の構造を緻密化させる光学薄膜の緻密化処理方法、該緻密化処理方法により緻密化された光学薄膜及び緻密化されたフッ化物光学薄膜または酸化物光学薄膜を有する光学素子を備える半導体露光装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の光学薄膜の緻密化処理方法は、酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載の光学薄膜の緻密化処理方法によれば、酸化物光学素子に積層された酸化物光学薄膜を緻密化することができる。従って、光学素子を格納している半導体露光装置の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0011】
また、請求項2記載の光学薄膜は、請求項1に記載の光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれたことを特徴とする。
【0012】
この請求項2記載の光学薄膜によれば、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているため、揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、真空紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素濃度が10ppm〜100%であるフッ素ガスを導入し温度を200〜400℃として、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0014】
この請求項3記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているフッ化物光学薄膜を有する光学素子を備える投影光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の投影光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照度ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素濃度が10ppm〜100%であるフッ素ガスを導入し温度を200〜400℃として、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、真空紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0016】
この請求項4に記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているフッ化物光学薄膜を有する光学素子を備える照明光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の照明光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照度ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0017】
また、請求項5記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0018】
この請求項5記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されている酸化物光学薄膜を有する光学素子を備える投影光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の投影光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照明ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0019】
また、請求項6記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだことを特徴とする光学薄膜を有する光学素子を含み、紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0020】
この請求項6記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されている酸化物光学薄膜を有する光学素子を備える照明光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の照明光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照明ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。この緻密化処理装置は、光学薄膜を積層させた光学素子を収容する円筒状の内部空間を有する処理炉2を備えており、処理炉2の周囲には、外部ヒータ4が配置されている。処理炉2の底部には、ガス導入口6及びガス導入口6の開閉を行うバルブ8が設けられている。また、処理炉2の上部には、ガス排気口10、ガス排気口10の開閉を行うバルブ12、排気ガスの流量制御を行うと共に処理炉2の内部の圧力制御を行う流量・圧力制御装置14が設けられている。
【0023】
処理炉2の内部空間には、光学素子を支持する複数の光学素子支持台16が設けられており、各光学素子支持台16により、蛍石により形成されたフッ化物光学素子18が支持されている。なお、フッ化物光学素子18には、フッ化物光学薄膜20が積層されている。処理炉2の各光学素子支持台16の近傍には、ニッケル製の熱電対挿入管22が設けられており、熱電対挿入管22には、処理炉2内のフッ素ガス雰囲気温度を計測するための熱電対24が挿入されている。
【0024】
次に、この光学薄膜の緻密化処理装置を用いたフッ化物薄膜の緻密化処理方法の説明を行う。ここで処理炉2の材質はニッケルであり、バルブ8、バルブ12及びガス配管の材質はニッケル−銅合金のモネルである。なお、処理炉2の内壁、ガス配管内壁、バルブ8、バルブ12の接ガス部の材質としては、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであれば良く、かつ、クロム、チタンの含有濃度が1%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である材料が用いられる。
【0025】
光学薄膜緻密化処理の第一工程(格納工程)では、フッ化物光学薄膜20が予め成膜されているフッ化物光学素子18を用意する。この用意したフッ化物光学素子18を洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する。
【0026】
第二工程(脱気処理工程)では、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のフッ化物光学素子18を150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する。なお、フッ化物光学素子18の温度計測には、熱電対24を用いる。この水分脱気処理工程における処理温度は100〜170℃の何れかの温度を適宜選択可能である。
【0027】
第三工程(緻密化処理工程)では、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。この緻密化処理工程において、フッ素雰囲気において加熱することからフッ素欠損を防止しつつ、フッ化物光学薄膜を焼きしめフッ化物光学薄膜を緻密化させることができる。この際に、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。この緻密化処理工程における処理炉2内の温度は200〜400℃の何れかの温度を適宜選択可能であり、フッ素濃度は10ppm〜100%の何れかの濃度を適宜選択可能である。
【0028】
第四工程(冷却工程)においては、処理炉2内の加熱を止めて、第三工程と同一のフッ素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。
【0029】
第五工程(取出工程)では、ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるフッ化物光学素子18を取り出す。
【0030】
次に、図面を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理方法について説明する。図2は、第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置の構成を示す図である。なお、この第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置及び方法の説明においては、第1の実施の形態と同一の構成には、第1の実施の形態の説明で用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。
【0031】
この第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置においては、各光学素子支持台16により、石英ガラスにより形成された酸化物光学素子70が支持されている。なお、酸化物光学素子70には、酸化物光学薄膜72が積層されている。処理炉2の各光学素子支持台16の近傍には、ステンレス鋼製の熱電対挿入管23が設けられており、熱電対挿入管23には、処理炉2内の酸素ガス雰囲気温度を計測するための熱電対24が挿入されている。その他の構成は、第1の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理装置の構成と同一である。
【0032】
次に、この光学薄膜の緻密化処理装置を用いた酸化物薄膜の緻密化処理方法の説明を行う。ここで処理炉2、バルブ8、バルブ12及びガス配管の材質はステンレス鋼である。なお、処理炉2の内壁、ガス配管内壁、バルブ8、バルブ12の接ガス部の材質としては、酸化性雰囲気中で安定な金属であれば良い。
【0033】
光学薄膜緻密化処理の第一工程(格納工程)では、酸化物光学薄膜72が予め成膜されている酸化物光学素子70を用意する。この用意した酸化物光学素子70を洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する。
【0034】
第二工程(脱気処理工程)では、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内の酸化物光学素子70を150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する。なお、酸化物光学素子70の温度計測には、熱電対24を用いる。この水分脱気処理工程における処理温度は100〜170℃の何れかの温度を適宜選択可能である。
【0035】
第三工程(緻密化処理工程)では、酸素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように酸素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度350℃、圧力1気圧で一定となるようにする。この緻密化処理工程において、酸素雰囲気において加熱することから、酸化物光学薄膜を焼きしめ酸化物光学薄膜を緻密化させることができる。この際に、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。この緻密化処理工程における処理炉2内の温度は150〜500℃の何れかの温度を適宜選択可能であり、酸素濃度は1000ppm〜100%の何れかの濃度を適宜選択可能である。
【0036】
第四工程(冷却工程)においては、処理炉2内の加熱を止めて、第三工程と同一の酸素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、酸素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、アルゴンガスで置換する。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。
【0037】
第五工程(取出工程)では、アルゴンガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物である酸化物光学素子70を取り出す。
【0038】
次に、本発明の実施の形態にかかる露光装置の一例を説明する。図3は、図1に示す光学薄膜の緻密化処理装置により緻密化処理されたフッ化物光学薄膜を有する光学素子を備えた露光装置の基本構造であり、フォトレジストでコートされたウエハ上にレチクルのパターンのイメージを投影するための、ステッパと呼ばれるような投影露光装置に特に応用される。
【0039】
図3に示すように、この露光装置は少なくとも、感光剤を塗布した基板Wを表面301aに置くことができるウエハステージ301,露光光として用意された波長の真空紫外光を照射し、用意されたマスクのパターン(レチクルR)を基板W上に転写するための照明光学系101,照明光学系101に露光光を供給するための光源100,基板W上にマスクRのパターンのイメージを投影するためのマスクRが配された最初の表面P1(物体面)と基板Wの表面と一致させた二番目の表面(像面)との間に置かれた投影光学系500を含む。
【0040】
照明光学系101は、マスクRとウエハWとの間の相対位置を調節するための、アライメント光学系110も含んでおり、マスクRはウエハステージ301の表面に対して平行に動くことのできるレチクルステージ201に配置される。レチクル交換系200は、レチクルステージ201にセットされたレチクル(マスクR)を交換し運搬する。レチクル交換系200はウエハステージ301の表面301aに対してレチクルステージ201を平行に動かすためのステージドライバを含んでいる。投影光学系500は、スキャンタイプの露光装置に応用されるアライメント光学系を持っている。なお、光源100、レチクル交換系200、ステージ制御系300は、主制御部400により制御されている。
【0041】
そして、この露光装置は、上述のフッ化物光学薄膜を有する光学素子を使用したものである。具体的には、図2に示す露光装置は、照明光学系101の光学レンズ90及び/又は投影光学系500の光学レンズ92として本発明にかかるフッ化物光学薄膜を有する光学素子(光学レンズ)を備えている。
【0042】
この露光装置においては、フッ化物光学薄膜を有する光学素子を投影光学系500及び/又は照明光学系101に含んでいるため、光源100からの露光光としての真空紫外光を効率よく基板上に導くことができる。
【0043】
なお、上述の露光装置においては、光源からの露光光として真空紫外光を使用し、フッ化物光学薄膜を有する光学素子を使用しているが、光源からの露光光として紫外光を用い、図2に示す光学薄膜の緻密化処理装置により緻密化処理された酸化物光学薄膜を有する光学素子を備えるようにしても良い。
【0044】
【実施例1】
真空蒸着法により、蛍石基板上に膜厚150nmのMgF2単層膜を堆積させて、サンプルとした。このサンプルを、第1の実施の形態に記述したフッ化物光学素子上のフッ化物薄膜用の緻密化処理方法に従い、緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0045】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0046】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるフッ化物光学素子18を取り出す(取出工程)。
【0047】
処理前後のサンプルであるMgF2単層膜の断面SEM写真を図4に示す。処理前のas−depo膜の断面を観察すると、基板/膜界面から膜表面に向かって細長い柱が伸びており、この細長い柱が束ねられた状態で膜が出来上がっていることが判る。as−depo膜は、典型的な柱状構造である。同時に、この細長い柱間には低分子量の気体が容易に通過できる隙間が空いていることも容易に確認できる。これら細長い柱の一本一本の表面に揮発性物質が吸着可能である。膜上部の表面の面積に比べて、膜の本来の比表面積は比較にならないほど巨大である。一方、本発明の緻密化処理を施した膜では、加熱された結果として、細長い柱どうしが癒着して個々の柱が太くなり、柱間の隙間も閉ざされたり狭くなったりして、緻密な構造へ変化していることが確認できる。
【0048】
【実施例2】
前述したように、半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内は窒素ガスにてパージされている。この鏡筒内に混入する可能性のある揮発性不純物は、酸素、水蒸気、芳香族系有機物、シロキサン系有機物、アンモニアであることが微量ガス分析の結果からわかっている。この中で、芳香族系有機物とシロキサン系有機物は光学素子上の光学薄膜表面に吸着した後、レーザ照射によって光CVD反応が生じて重合し固着して、光学素子の透過率を低下させる。これら有機物が、光学薄膜上で重合固着する現象を「曇り」と呼ぶことにする。
【0049】
半導体露光装置に採用されている光学薄膜が、曇りやすいか曇りにくいかによって、その露光装置の露光性能や生産性が決定される。我々は、光学薄膜に曇りが発生する環境を人工的に作り、その環境下で光学薄膜にレーザを照射して透過率変動を測定したところ、薄膜の構造によって曇り程度に大きな差がでることを実験により確認した。実験方法と結果を以下に説明する。
【0050】
図5は、レーザ照射実験装置の構成図である。表面に光学薄膜が積層されている光学素子に対して、ArFエキシマレーザを照射する目的で製作した実験装置である。また、光学素子を格納しているチャンバ内のガス環境や不純物濃度を変化させて、レーザ照射できるように構成されている。よって、このレーザ照射実験装置は、実際の半導体露光装置の鏡筒内にレンズやプリズム、ミラーといった光学素子を格納した場合と同等の結果が得られる実験装置である。
【0051】
図5に示すように、ArFレーザ発振機30から射出されたArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ光路32を介して光学素子34が収容されるチャンバ36内に導入される。即ち、ArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ発振機30とチャンバ36との間に設けられた開閉シャッタ38、導波管40及び入射側フッ化物窓42を介してチャンバ36内に導入される。
【0052】
チャンバ36内には、光学素子34を支持する光学素子支持台42が設けられており、この光学素子支持台42により支持される光学素子34には、光学薄膜44が成膜されている。チャンバ36には、射出側フッ化物窓46が設けられており、射出側フッ化物窓46から射出したArFエキシマレーザ光は、導波管48、開閉シャッタ50を介してジュールメータ52に入射する。なお、チャンバ36には、ガス導入管54及びこのガス導入管54の開閉を行う開閉バルブ56が設けられていると共に、ガス排気管58及びこのガス排気管58の開閉を行う開閉バルブ60が設けられている。
【0053】
まず、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなるDUV域反射防止膜を成膜してサンプルとした。同一のサンプルを2つ用意して、片方はas−depo膜サンプルとして何もせずにとっておき、もう一方には本発明のフッ化物用の緻密化処理を施し、緻密化処理済膜サンプルとした。
【0054】
as−depo膜サンプルと緻密化処理済サンプルの両方について、ArFエキシマレーザを照射する直前の透過率スペクトルを分光透過率測定器で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図6、図7に示す。
【0055】
次にas−depo膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。芳香族系有機物の代表としてのトルエンと、シロキサン系有機物の代表としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0056】
次に、緻密化処理済膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。先ほどと同様のトルエンとオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0057】
最後に、ArFエキシマレーザを照射した後のas−depo膜および緻密化処理済膜の両サンプルについて、透過率スペクトルを分光透過率測定機で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図6、図7に示す。図6及び図7のいずれの結果とも、レーザ照射後に透過率が低下し、かつ、スペクトルは長波長側ヘシフトしている。これは、紫外光を吸収する重合物が堆積したことを表している。すなわち、光を吸収することから透過率が低下し、重合物が光学薄膜上に堆積して膜厚が増えたことからスペクトルは長波長側ヘシフトしている。
【0058】
図6のas−depo膜サンプルと図7の緻密化処理済膜サンプルの結果を比較すると、緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、透過率低下およびスペクトルの長波長側へのシフトが顕著に少なくなっている。本発明の緻密化処理方法により、光学薄膜の構造を緻密化して空隙や細孔をなくしてやることで、不純物が空隙や細孔を通じて膜内部へ侵入し吸着することができなくなるので、重合膜堆積による透過率低下が大幅に抑制できた。
【0059】
本発明の緻密化処理方法により緻密化した光学薄膜を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長、真空紫外のF2レーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。これにより、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際の透過率低下や照度ムラの発生を抑制でき、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【0060】
【実施例3】
我々は鋭意研究した結果、フッ化物光学薄膜の持つ光吸収損失を低減させながら、該フッ化物光学薄膜を緻密化するためには、不純物を含まないフッ素雰囲気中において、該フッ化物光学薄膜を加熱しなければならないことを明らかにした。具体的な実験結果を以下に示す。
【0061】
平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを準備する。まず、このサンプルを本発明の実施の形態にかかるフッ化物用の緻密化処理方法に従い、フッ素雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、サンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0062】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0063】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをフッ素雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0064】
フッ素雰囲気での緻密化処理済膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図8の実線グラフに示す。フッ素雰囲気での緻密化処理済膜は、後述するas−depo膜に比べて、短波長ほど透過率が高くなっている。この理由は、フッ素雰囲気中において、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、同時にフッ化物薄膜のフッ素化反応が生じ、フッ化物薄膜中に存在している僅かなフッ素欠損部分にフッ素が補充されて、真空紫外領域における光吸収損失が低減されるからである。
【0065】
【比較例】
実施例3で用いたサンプルと同様にサンプルを2つ準備する。即ち、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを2つ準備する。一方のサンプルを、フッ素を含有していないヘリウム雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0066】
次に、フッ素を全く含まないヘリウムガス雰囲気中において、流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるようにヘリウムガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0067】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、処理炉2を開放し、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0068】
また、他方のサンプルは、成膜後に何ら後処理を施さなかった。このサンプルをas−depo膜と呼ぶ。
【0069】
ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜及びas−depo膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図8の破線グラフに示す。ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、著しく透過率が低く、短波長ほど透過率低下量が大きくなる。両サンプルの化学組成を、電子線プローブマイクロアナシリス(EPMA)装置を用いて詳細に分析した結果、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜はas−depo膜に比べて、フッ素含有量が大幅に減少していた。つまり、今回のヘリウムガスのようにフッ素以外の雰囲気中で、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、フッ化物薄膜は緻密化されるが、同時にフッ化物薄膜中からフッ素原子が乖離・気化する。その結果、フッ化物薄膜は、大幅にフッ素が欠損することになり、真空紫外領域における光吸収損失が短波長ほど増加する。
【0070】
実施例3及び比較例によれば、不純物を含まないフッ素雰囲気中において、フッ化物光学薄膜を加熱することにより、フッ化物光学薄膜の持つ光吸収損失を増加させることなく、該フッ化物光学薄膜を緻密化することができる。
【0071】
【実施例4】
真空蒸着法により、石英ガラス基板上に膜厚100nmのAl2O3単層膜を堆積させて、サンプルとした。このサンプルを第2の実施の形態に記述した酸化物光学素子上の酸化物薄膜用の緻密化処理方法に従い、緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。
【0072】
次に、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0073】
次に、酸素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように酸素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度350℃、圧力1気圧で一定となるようにする(緻密化処理工程)。
【0074】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一の酸素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、酸素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、アルゴンガスで置換する。次に、アルゴンガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。
【0075】
処理前後のサンプルであるAl2O3単層膜の断面SEM写真を図9に示す。処理前のas−depo膜の断面を観察すると、膜表面〜内部に渡って全域で空隙や細孔が容易に確認できる。一方、本発明の緻密化処理を施した膜では、空隙や細孔がなく、多孔質で大きな比表面積を有する構造から緻密で比表面積の小さな構造へ変化していることが確認できる。
【0076】
【実施例5】
実施例2において用いたフッ化物薄膜のレーザ照射実験装置(図5)を用いて、石英ガラス基板上の酸化物薄膜の曇り試験を行った。ただし、実施例2で用いたArFレーザ発振機30に代えて、KrFレーザ(248nm)発振機を使用する。
【0077】
まず、平行平板で厚み3mmの石英ガラス基板の両面に、SiO2/Al2O3の交互積層からなる反射防止膜を成膜してサンプルとした。同一のサンプルを2つ用意して、片方はas−depo膜として何もせずにとっておき、もう一方には本発明の酸化物用の緻密化処理を施し、緻密化処理済膜サンプルとした。
【0078】
as−depo膜サンプルと緻密化処理済サンプルの両方について、KrFエキシマレーザを照射する直前の透過率スペクトルを分光透過率測定器で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図10、図11に示す。
【0079】
次にas−depo膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。芳香族系有機物の代表としてのトルエンと、シロキサン系有機物の代表としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、KrFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0080】
次に、緻密化処理済膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。先ほどと同様のトルエンとオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、KrFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0081】
最後に、KrFエキシマレーザを照射した後のas−depo膜および緻密化処理済膜の両サンプルについて、透過率スペクトルを分光透過率測定機で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図10、図11に示す。図10の結果では、レーザ照射後に透過率が低下し、かつ、スペクトルは長波長側ヘシフトしている。図10の結果に対し、図11の結果では、レーザ照射後に透過率が低下、かつ長波長側へスペクトルがシフトしているが、その量は僅かである。図11の緻密化処理済膜のサンプルでは、本発明の緻密化処理方法により、酸化物薄膜の構造を緻密化して空隙や細孔をなくすことで不純物が空隙や細孔を通じて膜内部へ侵入し吸着することができなくなるため、重合膜堆積による透過率低下が大幅に抑制できる。
【0082】
なお、実施例2におけるフッ化物薄膜へのArFレーザ照射と比較して、本実施例における酸化物薄膜へのKrFレーザ照射では、レーザ照射後の透過率低下量およびスペクトルの長波長側へのシフト量が小さい。これは、ArFレーザ(193nm)の波長よりKrFレーザ(248nm)の波長が長い、即ちフォトンエネルギーが小さいため、有機物質の光CVD反応が進行しにくいことによる。
【0083】
実施例5の緻密化処理方法により緻密化した光学薄膜を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。これにより、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際の透過率低下や照度ムラの発生を抑制でき、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【0084】
【発明の効果】
この発明の光学薄膜の緻密化処理方法によれば、酸化物光学素子に積層された酸化物光学薄膜を緻密化することができる。
【0085】
また、この発明の光学薄膜によれば、この発明の光学薄膜の緻密化処理方法により水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているため、揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0086】
また、本発明の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理方法により緻密化したフッ化物光学薄膜または酸化物光学薄膜を光学素子に採用することにより、半導体露光装置において、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際における、透過率低下や照度ムラの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるフッ化物光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる露光装置の構成を説明するための図である。
【図4】緻密化処理前後のMgF2膜の断面SEM写真である。
【図5】レーザ照射実験装置の構成図である。
【図6】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜のas−depo膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図7】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜の緻密化処理済膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図8】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3交互積層の157nm用反射防止膜について、as−depo膜、フッ素雰囲気での緻密化処理済膜、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜の透過率スペクトルである。
【図9】緻密化処理前後のAl2O3膜の断面SEM写真である。
【図10】石英ガラス基板上に積層したSiO2/Al2O3の交互積層反射防止膜のas−depo膜について、KrFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図11】石英ガラス基板上に積層したSiO2/Al2O3の交互積層反射防止膜の緻密化処理済膜について、KrFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【符号の説明】
2 処理炉
4 外部ヒータ
6 ガス導入口
8 バルブ
10 ガス排気口
12 バルブ
14 流量・圧力制御装置
16 光学素子支持台
18 フッ化物光学素子
20 フッ化物光学薄膜
22 熱電対挿入管
24 熱電対
30 ArFレーザ発振機
32 ArFレーザ光路
34 光学素子
36 チャンバ
42 光学素子支持台
44 光学薄膜
52 ジュールメータ
70 酸化物光学素子
72 酸化物光学薄膜
101 照明光学系
500 投影光学系
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学薄膜の緻密化処理方法、該緻密化処理方法により緻密化された光学薄膜及び該光学薄膜が形成された光学素子を有する半導体露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外波長(248nm)のKrFエキシマレーザ、ならびに、深紫外波長(193nm)のArFエキシマレーザを露光光源として利用する半導体露光装置が存在する。これらの半導体露光装置の光学系に使用されているレンズやミラー、プリズムといった光学素子は、鏡筒内に格納されており、この鏡筒内には窒素ガスが流通されている。また、各光学素子上には、反射防止膜や高反射膜、半透過膜といった光学薄膜がコートされている。
【0003】
光学素子材料そのものは、高純度粉末と反応性ガスを原料に用い、化学反応を充分に進行させるために1000℃以上の高温中で合成される。合成後は、充分に時間をかけて徐々に冷却され、必要に応じてアニール処理も施されるので、光吸収や散乱の原因となる不純物元素、欠陥やひずみが極力取り除かれている。また、研磨技術の発達により光学素子表面での散乱も著しく低下している。
【0004】
一方、光学薄膜は、抵抗加熱ないしは電子ビーム溶解による真空蒸着、イオンアシストを併用する真空蒸着、イオンプレーディング、スパッタリング、イオンビームスパッタリングなどの各種PVD法により比較的低温で簡便に成膜されている。基板となる光学素子を比較的低温の加熱にとどめて光学薄膜を形成しなければならない理由は、高温に加熱すると、光学素子に熱変形が生じ、光学素子表面の加工寸法精度にくるいを生じて所望の結像性能が得られないためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで高温下で時間をかけて生成された光学素子材料そのものは緻密なバルク固体で、種々の気体分子が内部へ侵入する空隙は一切存在しない。一方、上述のように比較的低温な加熱にとどめられた光学素子上に形成された光学薄膜は、多孔質で空隙や細孔に富んだ非常に比表面積の大きな構造になっているために、莫大な量の水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が内部へ侵人して吸着する。揮発性有機物質及び揮発性無機物質のほとんどは、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長を吸収する。さらに次世代半導体露光装置の露光光源として用いられる真空紫外のF2レーザ波長(157nm)では、水蒸気さえも光吸収する。
【0006】
半導体露光装置において光学素子が格納されている鏡筒内は、窒素ガスが流通されているとはいえ、半導体露光装置の設置環境中及び窒素ガス中に含まれる微量の揮発性有機物質やアンモニアなどの揮発性無機物質及び水蒸気が鏡筒内に導かれてしまう。鏡筒内に導かれた揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気は、光学素子表面に成膜された光学薄膜上に付着し、光学薄膜の空隙や細孔をつたって内部深く侵入して吸着されて光吸収を引き起こす。さらにレーザ照射後は、重合あるいは固着してさらに光透過率を低下させる。
【0007】
縮小投影半導体露光装置では、レーザ光源から半導体回路が露光されるウエハまでの間に、数十枚にもおよぶ様々な形状・用途の光学素子が配置されており、光学素子の両表面、すなわち、光の入射側と出射側の両表面に光学薄膜がコートされている。つまり、薄膜コート面数は全光学素子数の2倍となる。1台の半導体露光装置において、使用される全光学素子は同一鏡筒内に設置されているので、ほぼ等しく鏡筒内に存在する揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気で汚染されて透過率が低下することになる。ここで、ある光学素子の片側コート面の透過率をTとし汚染による透過率低下量をΔTとすると、この光学素子の汚染後の両面透過率は(T−ΔT)2となる。全光学素子数をn個とすると、全系での透過率低下量は(T−ΔT)2Nとなる。従って、レーザ光源から数十枚に及ぶ全光学素子を透過してウエハ上に到達する露光光の光量は、汚染が全くない理想状態と比較して、汚染がある場合には致命的に小さくなる。もちろん、鏡筒内に持ち込まれる揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気量を極力抑える努力は行われるが完全にゼロにすることは不可能なので、現実には揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気の吸着、重合固着に起因する透過率低下は、必ず生じる問題である。結局のところ、全光学素子を透過してウエハ面に到達した光量は、もとの光源光量の数%程度と極端に低くなっているのが現状であることから、露光時間が長くなり、重合物質が厚く析出した際の光学素子の交換頻度も増加してしまい、生産性が極端に低下している。
【0008】
この発明の課題は、光学素子上へ堆積させた光学薄膜の構造を緻密化させる光学薄膜の緻密化処理方法、該緻密化処理方法により緻密化された光学薄膜及び緻密化されたフッ化物光学薄膜または酸化物光学薄膜を有する光学素子を備える半導体露光装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の光学薄膜の緻密化処理方法は、酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載の光学薄膜の緻密化処理方法によれば、酸化物光学素子に積層された酸化物光学薄膜を緻密化することができる。従って、光学素子を格納している半導体露光装置の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0011】
また、請求項2記載の光学薄膜は、請求項1に記載の光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれたことを特徴とする。
【0012】
この請求項2記載の光学薄膜によれば、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているため、揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、真空紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素濃度が10ppm〜100%であるフッ素ガスを導入し温度を200〜400℃として、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0014】
この請求項3記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているフッ化物光学薄膜を有する光学素子を備える投影光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の投影光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照度ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素濃度が10ppm〜100%であるフッ素ガスを導入し温度を200〜400℃として、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、真空紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0016】
この請求項4に記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているフッ化物光学薄膜を有する光学素子を備える照明光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の照明光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照度ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0017】
また、請求項5記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0018】
この請求項5記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されている酸化物光学薄膜を有する光学素子を備える投影光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の投影光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照明ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0019】
また、請求項6記載の半導体露光装置は、投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだことを特徴とする光学薄膜を有する光学素子を含み、紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0020】
この請求項6記載の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理を施すことにより水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されている酸化物光学薄膜を有する光学素子を備える照明光学系を用いているため、光学素子を格納している半導体露光装置の照明光学系の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)及び照明ムラの発生を極力小さく抑えることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。この緻密化処理装置は、光学薄膜を積層させた光学素子を収容する円筒状の内部空間を有する処理炉2を備えており、処理炉2の周囲には、外部ヒータ4が配置されている。処理炉2の底部には、ガス導入口6及びガス導入口6の開閉を行うバルブ8が設けられている。また、処理炉2の上部には、ガス排気口10、ガス排気口10の開閉を行うバルブ12、排気ガスの流量制御を行うと共に処理炉2の内部の圧力制御を行う流量・圧力制御装置14が設けられている。
【0023】
処理炉2の内部空間には、光学素子を支持する複数の光学素子支持台16が設けられており、各光学素子支持台16により、蛍石により形成されたフッ化物光学素子18が支持されている。なお、フッ化物光学素子18には、フッ化物光学薄膜20が積層されている。処理炉2の各光学素子支持台16の近傍には、ニッケル製の熱電対挿入管22が設けられており、熱電対挿入管22には、処理炉2内のフッ素ガス雰囲気温度を計測するための熱電対24が挿入されている。
【0024】
次に、この光学薄膜の緻密化処理装置を用いたフッ化物薄膜の緻密化処理方法の説明を行う。ここで処理炉2の材質はニッケルであり、バルブ8、バルブ12及びガス配管の材質はニッケル−銅合金のモネルである。なお、処理炉2の内壁、ガス配管内壁、バルブ8、バルブ12の接ガス部の材質としては、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであれば良く、かつ、クロム、チタンの含有濃度が1%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である材料が用いられる。
【0025】
光学薄膜緻密化処理の第一工程(格納工程)では、フッ化物光学薄膜20が予め成膜されているフッ化物光学素子18を用意する。この用意したフッ化物光学素子18を洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する。
【0026】
第二工程(脱気処理工程)では、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のフッ化物光学素子18を150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する。なお、フッ化物光学素子18の温度計測には、熱電対24を用いる。この水分脱気処理工程における処理温度は100〜170℃の何れかの温度を適宜選択可能である。
【0027】
第三工程(緻密化処理工程)では、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。この緻密化処理工程において、フッ素雰囲気において加熱することからフッ素欠損を防止しつつ、フッ化物光学薄膜を焼きしめフッ化物光学薄膜を緻密化させることができる。この際に、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。この緻密化処理工程における処理炉2内の温度は200〜400℃の何れかの温度を適宜選択可能であり、フッ素濃度は10ppm〜100%の何れかの濃度を適宜選択可能である。
【0028】
第四工程(冷却工程)においては、処理炉2内の加熱を止めて、第三工程と同一のフッ素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。
【0029】
第五工程(取出工程)では、ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるフッ化物光学素子18を取り出す。
【0030】
次に、図面を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理方法について説明する。図2は、第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置の構成を示す図である。なお、この第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置及び方法の説明においては、第1の実施の形態と同一の構成には、第1の実施の形態の説明で用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。
【0031】
この第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置においては、各光学素子支持台16により、石英ガラスにより形成された酸化物光学素子70が支持されている。なお、酸化物光学素子70には、酸化物光学薄膜72が積層されている。処理炉2の各光学素子支持台16の近傍には、ステンレス鋼製の熱電対挿入管23が設けられており、熱電対挿入管23には、処理炉2内の酸素ガス雰囲気温度を計測するための熱電対24が挿入されている。その他の構成は、第1の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理装置の構成と同一である。
【0032】
次に、この光学薄膜の緻密化処理装置を用いた酸化物薄膜の緻密化処理方法の説明を行う。ここで処理炉2、バルブ8、バルブ12及びガス配管の材質はステンレス鋼である。なお、処理炉2の内壁、ガス配管内壁、バルブ8、バルブ12の接ガス部の材質としては、酸化性雰囲気中で安定な金属であれば良い。
【0033】
光学薄膜緻密化処理の第一工程(格納工程)では、酸化物光学薄膜72が予め成膜されている酸化物光学素子70を用意する。この用意した酸化物光学素子70を洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する。
【0034】
第二工程(脱気処理工程)では、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内の酸化物光学素子70を150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する。なお、酸化物光学素子70の温度計測には、熱電対24を用いる。この水分脱気処理工程における処理温度は100〜170℃の何れかの温度を適宜選択可能である。
【0035】
第三工程(緻密化処理工程)では、酸素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように酸素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度350℃、圧力1気圧で一定となるようにする。この緻密化処理工程において、酸素雰囲気において加熱することから、酸化物光学薄膜を焼きしめ酸化物光学薄膜を緻密化させることができる。この際に、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。この緻密化処理工程における処理炉2内の温度は150〜500℃の何れかの温度を適宜選択可能であり、酸素濃度は1000ppm〜100%の何れかの濃度を適宜選択可能である。
【0036】
第四工程(冷却工程)においては、処理炉2内の加熱を止めて、第三工程と同一の酸素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、酸素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、アルゴンガスで置換する。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。
【0037】
第五工程(取出工程)では、アルゴンガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物である酸化物光学素子70を取り出す。
【0038】
次に、本発明の実施の形態にかかる露光装置の一例を説明する。図3は、図1に示す光学薄膜の緻密化処理装置により緻密化処理されたフッ化物光学薄膜を有する光学素子を備えた露光装置の基本構造であり、フォトレジストでコートされたウエハ上にレチクルのパターンのイメージを投影するための、ステッパと呼ばれるような投影露光装置に特に応用される。
【0039】
図3に示すように、この露光装置は少なくとも、感光剤を塗布した基板Wを表面301aに置くことができるウエハステージ301,露光光として用意された波長の真空紫外光を照射し、用意されたマスクのパターン(レチクルR)を基板W上に転写するための照明光学系101,照明光学系101に露光光を供給するための光源100,基板W上にマスクRのパターンのイメージを投影するためのマスクRが配された最初の表面P1(物体面)と基板Wの表面と一致させた二番目の表面(像面)との間に置かれた投影光学系500を含む。
【0040】
照明光学系101は、マスクRとウエハWとの間の相対位置を調節するための、アライメント光学系110も含んでおり、マスクRはウエハステージ301の表面に対して平行に動くことのできるレチクルステージ201に配置される。レチクル交換系200は、レチクルステージ201にセットされたレチクル(マスクR)を交換し運搬する。レチクル交換系200はウエハステージ301の表面301aに対してレチクルステージ201を平行に動かすためのステージドライバを含んでいる。投影光学系500は、スキャンタイプの露光装置に応用されるアライメント光学系を持っている。なお、光源100、レチクル交換系200、ステージ制御系300は、主制御部400により制御されている。
【0041】
そして、この露光装置は、上述のフッ化物光学薄膜を有する光学素子を使用したものである。具体的には、図2に示す露光装置は、照明光学系101の光学レンズ90及び/又は投影光学系500の光学レンズ92として本発明にかかるフッ化物光学薄膜を有する光学素子(光学レンズ)を備えている。
【0042】
この露光装置においては、フッ化物光学薄膜を有する光学素子を投影光学系500及び/又は照明光学系101に含んでいるため、光源100からの露光光としての真空紫外光を効率よく基板上に導くことができる。
【0043】
なお、上述の露光装置においては、光源からの露光光として真空紫外光を使用し、フッ化物光学薄膜を有する光学素子を使用しているが、光源からの露光光として紫外光を用い、図2に示す光学薄膜の緻密化処理装置により緻密化処理された酸化物光学薄膜を有する光学素子を備えるようにしても良い。
【0044】
【実施例1】
真空蒸着法により、蛍石基板上に膜厚150nmのMgF2単層膜を堆積させて、サンプルとした。このサンプルを、第1の実施の形態に記述したフッ化物光学素子上のフッ化物薄膜用の緻密化処理方法に従い、緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0045】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0046】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるフッ化物光学素子18を取り出す(取出工程)。
【0047】
処理前後のサンプルであるMgF2単層膜の断面SEM写真を図4に示す。処理前のas−depo膜の断面を観察すると、基板/膜界面から膜表面に向かって細長い柱が伸びており、この細長い柱が束ねられた状態で膜が出来上がっていることが判る。as−depo膜は、典型的な柱状構造である。同時に、この細長い柱間には低分子量の気体が容易に通過できる隙間が空いていることも容易に確認できる。これら細長い柱の一本一本の表面に揮発性物質が吸着可能である。膜上部の表面の面積に比べて、膜の本来の比表面積は比較にならないほど巨大である。一方、本発明の緻密化処理を施した膜では、加熱された結果として、細長い柱どうしが癒着して個々の柱が太くなり、柱間の隙間も閉ざされたり狭くなったりして、緻密な構造へ変化していることが確認できる。
【0048】
【実施例2】
前述したように、半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内は窒素ガスにてパージされている。この鏡筒内に混入する可能性のある揮発性不純物は、酸素、水蒸気、芳香族系有機物、シロキサン系有機物、アンモニアであることが微量ガス分析の結果からわかっている。この中で、芳香族系有機物とシロキサン系有機物は光学素子上の光学薄膜表面に吸着した後、レーザ照射によって光CVD反応が生じて重合し固着して、光学素子の透過率を低下させる。これら有機物が、光学薄膜上で重合固着する現象を「曇り」と呼ぶことにする。
【0049】
半導体露光装置に採用されている光学薄膜が、曇りやすいか曇りにくいかによって、その露光装置の露光性能や生産性が決定される。我々は、光学薄膜に曇りが発生する環境を人工的に作り、その環境下で光学薄膜にレーザを照射して透過率変動を測定したところ、薄膜の構造によって曇り程度に大きな差がでることを実験により確認した。実験方法と結果を以下に説明する。
【0050】
図5は、レーザ照射実験装置の構成図である。表面に光学薄膜が積層されている光学素子に対して、ArFエキシマレーザを照射する目的で製作した実験装置である。また、光学素子を格納しているチャンバ内のガス環境や不純物濃度を変化させて、レーザ照射できるように構成されている。よって、このレーザ照射実験装置は、実際の半導体露光装置の鏡筒内にレンズやプリズム、ミラーといった光学素子を格納した場合と同等の結果が得られる実験装置である。
【0051】
図5に示すように、ArFレーザ発振機30から射出されたArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ光路32を介して光学素子34が収容されるチャンバ36内に導入される。即ち、ArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ発振機30とチャンバ36との間に設けられた開閉シャッタ38、導波管40及び入射側フッ化物窓42を介してチャンバ36内に導入される。
【0052】
チャンバ36内には、光学素子34を支持する光学素子支持台42が設けられており、この光学素子支持台42により支持される光学素子34には、光学薄膜44が成膜されている。チャンバ36には、射出側フッ化物窓46が設けられており、射出側フッ化物窓46から射出したArFエキシマレーザ光は、導波管48、開閉シャッタ50を介してジュールメータ52に入射する。なお、チャンバ36には、ガス導入管54及びこのガス導入管54の開閉を行う開閉バルブ56が設けられていると共に、ガス排気管58及びこのガス排気管58の開閉を行う開閉バルブ60が設けられている。
【0053】
まず、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなるDUV域反射防止膜を成膜してサンプルとした。同一のサンプルを2つ用意して、片方はas−depo膜サンプルとして何もせずにとっておき、もう一方には本発明のフッ化物用の緻密化処理を施し、緻密化処理済膜サンプルとした。
【0054】
as−depo膜サンプルと緻密化処理済サンプルの両方について、ArFエキシマレーザを照射する直前の透過率スペクトルを分光透過率測定器で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図6、図7に示す。
【0055】
次にas−depo膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。芳香族系有機物の代表としてのトルエンと、シロキサン系有機物の代表としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0056】
次に、緻密化処理済膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。先ほどと同様のトルエンとオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0057】
最後に、ArFエキシマレーザを照射した後のas−depo膜および緻密化処理済膜の両サンプルについて、透過率スペクトルを分光透過率測定機で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図6、図7に示す。図6及び図7のいずれの結果とも、レーザ照射後に透過率が低下し、かつ、スペクトルは長波長側ヘシフトしている。これは、紫外光を吸収する重合物が堆積したことを表している。すなわち、光を吸収することから透過率が低下し、重合物が光学薄膜上に堆積して膜厚が増えたことからスペクトルは長波長側ヘシフトしている。
【0058】
図6のas−depo膜サンプルと図7の緻密化処理済膜サンプルの結果を比較すると、緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、透過率低下およびスペクトルの長波長側へのシフトが顕著に少なくなっている。本発明の緻密化処理方法により、光学薄膜の構造を緻密化して空隙や細孔をなくしてやることで、不純物が空隙や細孔を通じて膜内部へ侵入し吸着することができなくなるので、重合膜堆積による透過率低下が大幅に抑制できた。
【0059】
本発明の緻密化処理方法により緻密化した光学薄膜を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長、真空紫外のF2レーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。これにより、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際の透過率低下や照度ムラの発生を抑制でき、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【0060】
【実施例3】
我々は鋭意研究した結果、フッ化物光学薄膜の持つ光吸収損失を低減させながら、該フッ化物光学薄膜を緻密化するためには、不純物を含まないフッ素雰囲気中において、該フッ化物光学薄膜を加熱しなければならないことを明らかにした。具体的な実験結果を以下に示す。
【0061】
平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを準備する。まず、このサンプルを本発明の実施の形態にかかるフッ化物用の緻密化処理方法に従い、フッ素雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、サンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0062】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0063】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをフッ素雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0064】
フッ素雰囲気での緻密化処理済膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図8の実線グラフに示す。フッ素雰囲気での緻密化処理済膜は、後述するas−depo膜に比べて、短波長ほど透過率が高くなっている。この理由は、フッ素雰囲気中において、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、同時にフッ化物薄膜のフッ素化反応が生じ、フッ化物薄膜中に存在している僅かなフッ素欠損部分にフッ素が補充されて、真空紫外領域における光吸収損失が低減されるからである。
【0065】
【比較例】
実施例3で用いたサンプルと同様にサンプルを2つ準備する。即ち、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを2つ準備する。一方のサンプルを、フッ素を含有していないヘリウム雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0066】
次に、フッ素を全く含まないヘリウムガス雰囲気中において、流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるようにヘリウムガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0067】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、処理炉2を開放し、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0068】
また、他方のサンプルは、成膜後に何ら後処理を施さなかった。このサンプルをas−depo膜と呼ぶ。
【0069】
ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜及びas−depo膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図8の破線グラフに示す。ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、著しく透過率が低く、短波長ほど透過率低下量が大きくなる。両サンプルの化学組成を、電子線プローブマイクロアナシリス(EPMA)装置を用いて詳細に分析した結果、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜はas−depo膜に比べて、フッ素含有量が大幅に減少していた。つまり、今回のヘリウムガスのようにフッ素以外の雰囲気中で、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、フッ化物薄膜は緻密化されるが、同時にフッ化物薄膜中からフッ素原子が乖離・気化する。その結果、フッ化物薄膜は、大幅にフッ素が欠損することになり、真空紫外領域における光吸収損失が短波長ほど増加する。
【0070】
実施例3及び比較例によれば、不純物を含まないフッ素雰囲気中において、フッ化物光学薄膜を加熱することにより、フッ化物光学薄膜の持つ光吸収損失を増加させることなく、該フッ化物光学薄膜を緻密化することができる。
【0071】
【実施例4】
真空蒸着法により、石英ガラス基板上に膜厚100nmのAl2O3単層膜を堆積させて、サンプルとした。このサンプルを第2の実施の形態に記述した酸化物光学素子上の酸化物薄膜用の緻密化処理方法に従い、緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。
【0072】
次に、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガス又はアルゴンガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱し、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0073】
次に、酸素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように酸素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度350℃、圧力1気圧で一定となるようにする(緻密化処理工程)。
【0074】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一の酸素濃度のまま、処理炉2内の圧力を1気圧に維持しながら処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、酸素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、アルゴンガスで置換する。次に、アルゴンガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。
【0075】
処理前後のサンプルであるAl2O3単層膜の断面SEM写真を図9に示す。処理前のas−depo膜の断面を観察すると、膜表面〜内部に渡って全域で空隙や細孔が容易に確認できる。一方、本発明の緻密化処理を施した膜では、空隙や細孔がなく、多孔質で大きな比表面積を有する構造から緻密で比表面積の小さな構造へ変化していることが確認できる。
【0076】
【実施例5】
実施例2において用いたフッ化物薄膜のレーザ照射実験装置(図5)を用いて、石英ガラス基板上の酸化物薄膜の曇り試験を行った。ただし、実施例2で用いたArFレーザ発振機30に代えて、KrFレーザ(248nm)発振機を使用する。
【0077】
まず、平行平板で厚み3mmの石英ガラス基板の両面に、SiO2/Al2O3の交互積層からなる反射防止膜を成膜してサンプルとした。同一のサンプルを2つ用意して、片方はas−depo膜として何もせずにとっておき、もう一方には本発明の酸化物用の緻密化処理を施し、緻密化処理済膜サンプルとした。
【0078】
as−depo膜サンプルと緻密化処理済サンプルの両方について、KrFエキシマレーザを照射する直前の透過率スペクトルを分光透過率測定器で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図10、図11に示す。
【0079】
次にas−depo膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。芳香族系有機物の代表としてのトルエンと、シロキサン系有機物の代表としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、KrFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0080】
次に、緻密化処理済膜サンプルを図5に示すレーザ照射実験装置内に格納した。先ほどと同様のトルエンとオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、KrFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0081】
最後に、KrFエキシマレーザを照射した後のas−depo膜および緻密化処理済膜の両サンプルについて、透過率スペクトルを分光透過率測定機で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図10、図11に示す。図10の結果では、レーザ照射後に透過率が低下し、かつ、スペクトルは長波長側ヘシフトしている。図10の結果に対し、図11の結果では、レーザ照射後に透過率が低下、かつ長波長側へスペクトルがシフトしているが、その量は僅かである。図11の緻密化処理済膜のサンプルでは、本発明の緻密化処理方法により、酸化物薄膜の構造を緻密化して空隙や細孔をなくすことで不純物が空隙や細孔を通じて膜内部へ侵入し吸着することができなくなるため、重合膜堆積による透過率低下が大幅に抑制できる。
【0082】
なお、実施例2におけるフッ化物薄膜へのArFレーザ照射と比較して、本実施例における酸化物薄膜へのKrFレーザ照射では、レーザ照射後の透過率低下量およびスペクトルの長波長側へのシフト量が小さい。これは、ArFレーザ(193nm)の波長よりKrFレーザ(248nm)の波長が長い、即ちフォトンエネルギーが小さいため、有機物質の光CVD反応が進行しにくいことによる。
【0083】
実施例5の緻密化処理方法により緻密化した光学薄膜を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質が光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。これにより、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際の透過率低下や照度ムラの発生を抑制でき、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【0084】
【発明の効果】
この発明の光学薄膜の緻密化処理方法によれば、酸化物光学素子に積層された酸化物光学薄膜を緻密化することができる。
【0085】
また、この発明の光学薄膜によれば、この発明の光学薄膜の緻密化処理方法により水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているため、揮発性有機物質、揮発性無機物質が酸化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる酸化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0086】
また、本発明の半導体露光装置によれば、光学薄膜の緻密化処理方法により緻密化したフッ化物光学薄膜または酸化物光学薄膜を光学素子に採用することにより、半導体露光装置において、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際における、透過率低下や照度ムラの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるフッ化物光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態にかかる酸化物光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる露光装置の構成を説明するための図である。
【図4】緻密化処理前後のMgF2膜の断面SEM写真である。
【図5】レーザ照射実験装置の構成図である。
【図6】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜のas−depo膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図7】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜の緻密化処理済膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図8】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3交互積層の157nm用反射防止膜について、as−depo膜、フッ素雰囲気での緻密化処理済膜、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜の透過率スペクトルである。
【図9】緻密化処理前後のAl2O3膜の断面SEM写真である。
【図10】石英ガラス基板上に積層したSiO2/Al2O3の交互積層反射防止膜のas−depo膜について、KrFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図11】石英ガラス基板上に積層したSiO2/Al2O3の交互積層反射防止膜の緻密化処理済膜について、KrFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【符号の説明】
2 処理炉
4 外部ヒータ
6 ガス導入口
8 バルブ
10 ガス排気口
12 バルブ
14 流量・圧力制御装置
16 光学素子支持台
18 フッ化物光学素子
20 フッ化物光学薄膜
22 熱電対挿入管
24 熱電対
30 ArFレーザ発振機
32 ArFレーザ光路
34 光学素子
36 チャンバ
42 光学素子支持台
44 光学薄膜
52 ジュールメータ
70 酸化物光学素子
72 酸化物光学薄膜
101 照明光学系
500 投影光学系
Claims (6)
- 酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、
前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、
前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、
前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程と
を含むことを特徴とする光学薄膜の緻密化処理方法。 - 請求項1に記載の光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれたことを特徴とする光学薄膜。
- 投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、
真空紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、
フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素濃度が10ppm〜100%であるフッ素ガスを導入し温度を200〜400℃として、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系と、
を備えることを特徴とする半導体露光装置。 - 投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、
フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素濃度が10ppm〜100%であるフッ素ガスを導入し温度を200〜400℃として、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、真空紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、
前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系と、
を備えることを特徴とする半導体露光装置。 - 投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、
紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、
酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系と、
を備えることを特徴とする半導体露光装置。 - 投影光学系を用いてマスクのパターン像を基板上に投影露光する半導体露光装置であって、
酸化物光学薄膜が積層された酸化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内に酸素濃度が1000ppm〜100%である酸素ガスを導入し温度を150〜500℃として、前記酸化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記酸化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記酸化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞いだ光学薄膜を有する光学素子を含み、紫外線を露光光としてマスクを照明する照明光学系と、
前記マスクのパターン像を前記基板上に形成する投影光学系と、
を備えることを特徴とする半導体露光装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003151338A JP2004354640A (ja) | 2003-05-28 | 2003-05-28 | 光学薄膜の緻密化処理方法、光学薄膜及び半導体露光装置 |
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JP2003151338A JP2004354640A (ja) | 2003-05-28 | 2003-05-28 | 光学薄膜の緻密化処理方法、光学薄膜及び半導体露光装置 |
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JP2003151338A Pending JP2004354640A (ja) | 2003-05-28 | 2003-05-28 | 光学薄膜の緻密化処理方法、光学薄膜及び半導体露光装置 |
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Cited By (2)
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JP2007127681A (ja) * | 2005-11-01 | 2007-05-24 | Tokai Kogaku Kk | プラスチックレンズ |
JP2015225280A (ja) * | 2014-05-29 | 2015-12-14 | Hoya株式会社 | 位相シフトマスクブランク及びその製造方法、並びに位相シフトマスクの製造方法 |
-
2003
- 2003-05-28 JP JP2003151338A patent/JP2004354640A/ja active Pending
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