JP2004347860A - フッ化物光学薄膜の緻密化処理方法及びフッ化物光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学素子上へ堆積させた光学薄膜の構造を緻密化させる光学薄膜の緻密化処理方法を提供する。
【解決手段】フッ化物光学薄膜20が積層されたフッ化物光学素子18を反応炉2に格納する格納工程と、前記反応炉2内にフッ素ガスを導入して、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉2に格納された前記フッ化物光学素子18の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉2から前記フッ化物光学素子18を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法であって、前記緻密化処理工程における前記反応炉内の温度が200〜400℃、フッ素ガス濃度が10ppm〜100%であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】フッ化物光学薄膜20が積層されたフッ化物光学素子18を反応炉2に格納する格納工程と、前記反応炉2内にフッ素ガスを導入して、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉2に格納された前記フッ化物光学素子18の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉2から前記フッ化物光学素子18を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法であって、前記緻密化処理工程における前記反応炉内の温度が200〜400℃、フッ素ガス濃度が10ppm〜100%であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ化物光学薄膜の緻密化処理方法及び該処理方法により緻密化された光学薄膜を備えたフッ化物光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外波長(248nm)のKrFエキシマレーザ、ならびに、深紫外波長(193nm)のArFエキシマレーザを露光光源として利用する半導体露光装置が存在する。これらの半導体露光装置の光学系に使用されているレンズやミラー、プリズムといった光学素子は、鏡筒内に格納されており、この鏡筒内には窒素ガスが流通されている。また、各光学素子上には、反射防止膜や高反射膜、半透過膜といった光学薄膜がコートされている。
【0003】
光学素子材料そのものは、高純度粉末と反応性ガスを原料に用い、化学反応を充分に進行させるために1000℃以上の高温中で合成される。合成後は、充分に時間をかけて徐々に冷却され、必要に応じてアニール処理も施されるので、光吸収や散乱の原因となる不純物元素、欠陥やひずみが極力取り除かれている。また、研磨技術の発達により光学素子表面での散乱も著しく低下している。
【0004】
一方、光学薄膜は、抵抗加熱ないしは電子ビーム溶解による真空蒸着、イオンアシストを併用する真空蒸着、イオンプレーディング、スパタリング、イオンビームスパッタリングなどの各種PVD法により比較的低温で簡便に成膜されている。基板となる光学素子を比較的低温の加熱にとどめて光学薄膜を形成しなければならない理由は、高温に加熱すると、光学素子に熱変形が生じ、光学素子表面の加工寸法精度にくるいを生じて所望の結像性能が得られないためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで高温下で時間をかけて生成された光学素子材料そのものは緻密なバルク固体で、種々の気体分子が内部へ侵入する空隙は一切存在しない。一方、上述のように比較的低温な加熱にとどめられた光学素子上に形成された光学薄膜は、多孔質で空隙や細孔に富んだ非常に比表面積の大きな構造になっているために、莫大な量の水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が内部へ侵人して吸着する。揮発性有機物質及び揮発性無機物質のほとんどは、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長を吸収する。さらに次世代半導体露光装置の露光光源として用いられる真空紫外のF2レーザ波長(157nm)では、水蒸気さえも光吸収する。
【0006】
半導体露光装置において光学素子が格納されている鏡筒内は、窒素ガスが流通されているとはいえ、半導体露光装置の設置環境中及び窒素ガス中に含まれる微量の揮発性有機物質やアンモニアなどの揮発性無機物質及び水蒸気が鏡筒内に導かれてしまう。鏡筒内に導かれた揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気は、光学素子表面に成膜された光学薄膜上に付着し、光学薄膜の空隙や細孔をつたって内部深く侵入して吸着されて光吸収を引き起こす。さらにレーザ照射後は、重合あるいは固着してさらに光透過率を低下させる。
【0007】
縮小投影半導体露光装置では、レーザ光源から半導体回路が露光されるウエハまでの間に、数十枚にもおよぶ様々な形状・用途の光学素子が配置されており、光学素子の両表面、すなわち、光の入射側と出射側の両表面に光学薄膜がコートされている。つまり、薄膜コート面数は全光学素子数の2倍となる。1台の半導体露光装置において、使用される全光学素子は同一鏡筒内に設置されているので、ほぼ等しく鏡筒内に存在する揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気で汚染されて透過率が低下することになる。ここで、ある光学素子の片側コート面の透過率をTとし汚染による透過率低下量をΔTとすると、この光学素子の汚染後の両面透過率は(T−ΔT)2となる。全光学素子数をn個とすると、全系での透過率低下量は(T−ΔT)2Nとなる。従って、レーザ光源から数十枚に及ぶ全光学素子を透過してウエハ上に到達する露光光の光量は、汚染が全くない理想状態と比較して、汚染がある場合には致命的に小さくなる。もちろん、鏡筒内に持ち込まれる揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気量を極力抑える努力は行われるが完全にゼロにすることは不可能なので、現実には揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気物の吸着、重合固着に起因する透過率低下は、必ず生じる問題である。結局のところ、全光学素子を透過してウエハ面に到達した光量は、もとの光源光量の数%程度と極端に低くなっているのが現状であることから、露光時間が長くなり、重合物質が厚く析出した際の光学素子の交換頻度も増加してしまい、生産性が極端に低下している。
【0008】
この発明の課題は、光学素子上へ堆積させた光学薄膜の構造を緻密化させるフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法及び該処理方法により緻密化されたフッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法は、フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素ガスを導入して、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法であって、前記緻密化処理工程における前記反応炉内の温度が200〜400℃、フッ素ガス濃度が10ppm〜100%であることを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法によれば、フッ化物光学素子に積層されたフッ化物光学薄膜のフッ素欠損の補充を行うと共に、フッ化物光学薄膜を緻密化することができる。従って、光学素子を格納している半導体露光装置の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0011】
また、請求項2記載のフッ化物光学素子は、請求項1に記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれたフッ化物光学薄膜を備えることを特徴とする。
【0012】
この請求項2記載のフッ化物光学素子によれば、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているため、揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができるフッ化物光学薄膜を備えるフッ化物光学素子を提供できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理方法について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。この緻密化処理装置は、光学薄膜を積層させた光学素子を収容する円筒状の内部空間を有する処理炉2を備えており、処理炉2の周囲には、外部ヒータ4が配置されている。処理炉2の底部には、ガス導入口6及びガス導入口6の開閉を行うバルブ8が設けられている。また、処理炉2の上部には、ガス排気口10、ガス排気口10の開閉を行うバルブ12、排気ガスの流量制御を行うと共に処理炉2の内部の圧力制御を行う流量・圧力制御装置14が設けられている。
【0015】
処理炉2の内部空間には、光学素子を支持する複数の光学素子支持台16が設けられており、各光学素子支持台16により、蛍石により形成されたフッ化物光学素子18が支持されている。なお、フッ化物光学素子18には、フッ化物光学薄膜20が積層されている。処理炉2の各光学素子支持台16の近傍には、ニッケル製の熱電対挿入管22が設けられており、各熱電対挿入管22には、処理炉2内のフッ素ガス雰囲気温度を計測するための熱電対24が挿入されている。
【0016】
次に、この光学薄膜の緻密化処理装置を用いたフッ化物薄膜の緻密化処理方法の説明を行う。ここで処理炉2の材質はニッケルであり、バルブ8、バルブ12及びガス配管の材質はニッケル−銅合金のモネルである。なお、処理炉2の内壁、ガス配管内壁、バルブ8、バルブ12の接ガス部の材質としては、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであれば良く、かつ、クロム、チタンの含有濃度が1%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である材料が用いられる。
【0017】
光学薄膜緻密化処理の第一工程(格納工程)では、フッ化物光学薄膜20が予め成膜されているフッ化物光学素子18を用意する。この用意したフッ化物光学素子18を洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する。
【0018】
第二工程(脱気処理工程)では、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のフッ化物光学素子18を150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する。なお、フッ化物光学素子18の温度計測には、熱電対24を用いる。この水分脱気処理工程における処理温度は100〜170℃の何れかの温度を適宜選択可能である。
【0019】
第三工程(緻密化処理工程)では、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。この緻密化処理工程において、フッ素ガス雰囲気において加熱することからフッ素欠損を防止しつつ、フッ化物光学薄膜を焼きしめフッ化物光学薄膜を緻密化させることができる。この際に、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。この緻密化処理工程における処理炉2内の温度は200〜400℃の何れかの温度を適宜選択可能であり、フッ素ガス濃度は10ppm〜100%の何れかの濃度を適宜選択可能である。
【0020】
第四工程(冷却工程)においては、処理炉2内の加熱を止めて、第三工程と同一のフッ素ガス濃度のまま、処理炉2内の冷却を開始する。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。
【0021】
第五工程(取出工程)では、ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるフッ化物光学素子18を取り出す。
【0022】
【実施例1】
真空蒸着法により、蛍石基板上に膜厚150nmのMgF2単層膜を堆積させて、サンプルとした。このサンプルを、上述の発明の実施の形態に記述したフッ化物光学素子上のフッ化物薄膜用の緻密化処理方法に従い、緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0023】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0024】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素ガス濃度のまま、処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。
【0025】
処理前後のサンプルであるMgF2単層膜の断面SEM写真を図2に示す。処理前のas−depo膜の断面を観察すると、基板/膜界面から膜表面に向かって細長い柱が伸びており、この細長い柱が束ねられた状態で膜が出来上がっていることが判る。as−depo膜は、典型的な柱状構造である。同時に、この細長い柱間には低分子量の気体が容易に通過できる隙間が空いていることも容易に確認できる。これら細長い柱の一本一本の表面に揮発性物質が吸着可能である。膜上部の表面の面積に比べて、膜の本来の比表面積は比較にならないほど巨大である。一方、本発明の緻密化処理を施した膜では、加熱された結果として、細長い柱どうしが癒着して個々の柱が太くなり、柱間の隙間も閉ざされたり狭くなったりして、緻密な構造へ変化していることが確認できる。
【0026】
【実施例2】
前述したように、半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内は窒素ガスにてパージされている。この鏡筒内に混入する可能性のある揮発性不純物は、酸素、水蒸気、芳香族系有機物、シロキサン系有機物、アンモニアであることが微量ガス分析の結果からわかっている。この中で、芳香族系有機物とシロキサン系有機物は光学素子上の光学薄膜表面に吸着した後、レーザ照射によって光CVD反応が生じて重合し固着して、光学素子の透過率を低下させる。これら有機物が、光学薄膜上で重合固着する現象を「曇り」と呼ぶことにする。
【0027】
半導体露光装置に採用されているフッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子が、曇りやすいか曇りにくいかによって、その露光装置の露光性能や生産性が決定される。本発明者らは、フッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子に曇りが発生する環境を人工的に作り、その環境下でフッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子にレーザを照射して透過率変動を測定したところ、薄膜の構造によって曇り程度に大きな差がでることを実験により確認した。実験方法と結果を以下に説明する。
【0028】
図3は、レーザ照射実験装置の構成図である。表面に光学薄膜が積層されている光学素子に対して、ArFエキシマレーザを照射する目的で製作した実験装置である。また、光学素子を格納しているチャンバ内のガス環境や不純物濃度を変化させて、レーザ照射できるように構成されている。よって、このレーザ照射実験装置は、実際の半導体露光装置の鏡筒内にレンズやプリズム、ミラーといった光学素子を格納した場合と同等の結果が得られる実験装置である。
【0029】
図3に示すように、ArFレーザ発振機30から射出されたArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ光路32を介して光学素子34が収容されるチャンバ36内に導入される。即ち、ArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ発振機30とチャンバ36との間に設けられた開閉シャッタ38、導波管40及び入射側フッ化物窓42を介してチャンバ36内に導かれる。
【0030】
チャンバ36内には、光学素子34を支持する光学素子支持台42が設けられており、この光学素子支持台42により支持される光学素子34には、光学薄膜44が成膜されている。チャンバ36には、射出側フッ化物窓46が設けられており、射出側フッ化物窓46から射出したArFエキシマレーザ光は、導波管48、開閉シャッタ50を介してジュールメータ52に入射する。なお、チャンバ36には、ガス導入管54及びこのガス導入管54の開閉を行う開閉バルブ56が設けられていると共に、ガス排気管58及びこのガス排気管58の開閉を行う開閉バルブ60が設けられている。
【0031】
まず、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなるDUV域反射防止膜を成膜してサンプルとした。同一のサンプルを2つ用意して、片方はas−depo膜サンプルとして何もせずにとっておき、もう一方には本発明のフッ化物用の緻密化処理を施し、緻密化処理済膜サンプルとした。
【0032】
as−depo膜サンプルと緻密化処理済サンプルの両方について、ArFエキシマレーザを照射する直前の透過率スペクトルを分光透過率測定器で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図4、図5に示す。
【0033】
次にas−depo膜サンプルを図3に示すレーザ照射実験装置内に格納した。芳香族系有機物の代表としてのトルエンと、シロキサン系有機物の代表としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0034】
次に、緻密化処理済膜サンプルを図3に示すレーザ照射実験装置内に格納した。先ほどと同様のトルエンとオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0035】
最後に、ArFエキシマレーザを照射した後のas−depo膜および緻密化処理済膜の両サンプルについて、透過率スペクトルを分光透過率測定機で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図4、図5に示す。図4及び図5のいずれの結果とも、レーザ照射後に透過率が低下し、かつ、スペクトルは長波長側ヘシフトしている。これは、紫外光を吸収する重合物が堆積したことを表している。すなわち、光を吸収することから透過率が低下し、重合物が光学薄膜上に堆積して膜厚が増えたことからスペクトルは長波長側ヘシフトしている。
【0036】
図4のas−depo膜サンプルと図5の緻密化処理済膜サンプルの結果を比較すると、緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、透過率低下およびスペクトルの長波長側へのシフトが顕著に少なくなっている。本発明の緻密化処理方法により、光学薄膜の構造を緻密化して空隙や細孔をなくしてやることで、不純物が空隙や細孔を通じて膜内部へ侵入し吸着することができなくなるので、重合膜堆積による透過率低下が大幅に抑制できた。
【0037】
本発明の緻密化処理方法により緻密化したフッ化物光学薄膜を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長、真空紫外のF2レーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。これにより、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際の透過率低下や照度ムラの発生を抑制でき、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【0038】
【実施例3】
本発明者らは鋭意研究した結果、フッ化物光学薄膜の持つ光吸収損失を低減させながら該フッ化物光学薄膜を緻密化するためには、フッ素ガス雰囲気中において該フッ化物光学薄膜を加熱しなければならないことを明らかにした。具体的な実験結果を以下に示す。
【0039】
平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面にMgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを準備する。まず、このサンプルを本発明の実施の形態にかかるフッ化物用の緻密化処理方法に従い、フッ素ガス雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、サンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0040】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0041】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素ガス濃度のまま、処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをフッ素雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0042】
フッ素雰囲気での緻密化処理済膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図6の実線グラフに示す。フッ素雰囲気での緻密化処理済膜は、後述するas−depo膜に比べて、短波長ほど透過率が高くなっている。この理由は、フッ素雰囲気中において、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、同時にフッ化物薄膜のフッ素化反応が生じ、フッ化物薄膜中に存在している僅かなフッ素欠損部分にフッ素が補充されて、真空紫外領域における光吸収損失が低減されるからである。
【0043】
【比較例】
実施例3で用いたサンプルと同様のサンプルを2つ準備する。即ち、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面にMgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを2つ準備する。一方のサンプルを、フッ素を含有していないヘリウム雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0044】
次に、フッ素を全く含まないヘリウムガス雰囲気中において、流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるようにヘリウムガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0045】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、処理炉2を開放し、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0046】
また、他方のサンプルは、成膜後に何ら後処理を施さなかった。このサンプルをas−depo膜と呼ぶ。
【0047】
ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜及びas−depo膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図6の破線グラフに示す。ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、著しく透過率が低く、短波長ほど透過率低下量が大きくなる。両サンプルの化学組成を、電子線プローブマイクロアナシリス(EPMA)装置を用いて詳細に分析した結果、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜はas−depo膜に比べて、フッ素含有量が大幅に減少していた。つまり、今回のヘリウムガスのようにフッ素以外の雰囲気中で、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、フッ化物薄膜は緻密化されるが、同時にフッ化物薄膜中からフッ素原子が乖離・気化する。その結果、フッ化物薄膜は、大幅にフッ素が欠損することになり、真空紫外領域における光吸収損失が短波長ほど増加する。
【0048】
実施例3及び比較例によれば、フッ素ガス雰囲気中において、フッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子を加熱することにより、フッ化物光学薄膜の光吸収損失を増加させることなく、該フッ化物光学薄膜を緻密化することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができるフッ化物光学薄膜を備えるフッ化物光学素子を提供できる。従って、このフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法により緻密化したフッ化物光学薄膜を備えるフッ化物光学素子を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長、真空紫外のF2レーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際における、透過率低下や照度ムラの発生を抑制することができ、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。
【図2】緻密化処理前後のMgF2膜の断面SEM写真である。
【図3】レーザ照射実験装置の構成図である。
【図4】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜のas−depo膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図5】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜の緻密化処理済膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図6】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3交互積層の157nm用反射防止膜について、as−depo膜、フッ素雰囲気での緻密化処理済膜、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜の透過率スペクトルである。
【符号の説明】
2 処理炉
4 外部ヒータ
6 ガス導入口
8 バルブ
10 ガス排気口
12 バルブ
14 流量・圧力制御装置
16 光学素子支持台
18 フッ化物光学素子
20 フッ化物光学薄膜
22 熱電対挿入管
24 熱電対
30 ArFレーザ発振機
32 ArFレーザ光路
34 光学素子
36 チャンバ
42 光学素子支持台
44 光学薄膜
52 ジュールメータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ化物光学薄膜の緻密化処理方法及び該処理方法により緻密化された光学薄膜を備えたフッ化物光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外波長(248nm)のKrFエキシマレーザ、ならびに、深紫外波長(193nm)のArFエキシマレーザを露光光源として利用する半導体露光装置が存在する。これらの半導体露光装置の光学系に使用されているレンズやミラー、プリズムといった光学素子は、鏡筒内に格納されており、この鏡筒内には窒素ガスが流通されている。また、各光学素子上には、反射防止膜や高反射膜、半透過膜といった光学薄膜がコートされている。
【0003】
光学素子材料そのものは、高純度粉末と反応性ガスを原料に用い、化学反応を充分に進行させるために1000℃以上の高温中で合成される。合成後は、充分に時間をかけて徐々に冷却され、必要に応じてアニール処理も施されるので、光吸収や散乱の原因となる不純物元素、欠陥やひずみが極力取り除かれている。また、研磨技術の発達により光学素子表面での散乱も著しく低下している。
【0004】
一方、光学薄膜は、抵抗加熱ないしは電子ビーム溶解による真空蒸着、イオンアシストを併用する真空蒸着、イオンプレーディング、スパタリング、イオンビームスパッタリングなどの各種PVD法により比較的低温で簡便に成膜されている。基板となる光学素子を比較的低温の加熱にとどめて光学薄膜を形成しなければならない理由は、高温に加熱すると、光学素子に熱変形が生じ、光学素子表面の加工寸法精度にくるいを生じて所望の結像性能が得られないためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで高温下で時間をかけて生成された光学素子材料そのものは緻密なバルク固体で、種々の気体分子が内部へ侵入する空隙は一切存在しない。一方、上述のように比較的低温な加熱にとどめられた光学素子上に形成された光学薄膜は、多孔質で空隙や細孔に富んだ非常に比表面積の大きな構造になっているために、莫大な量の水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が内部へ侵人して吸着する。揮発性有機物質及び揮発性無機物質のほとんどは、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長を吸収する。さらに次世代半導体露光装置の露光光源として用いられる真空紫外のF2レーザ波長(157nm)では、水蒸気さえも光吸収する。
【0006】
半導体露光装置において光学素子が格納されている鏡筒内は、窒素ガスが流通されているとはいえ、半導体露光装置の設置環境中及び窒素ガス中に含まれる微量の揮発性有機物質やアンモニアなどの揮発性無機物質及び水蒸気が鏡筒内に導かれてしまう。鏡筒内に導かれた揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気は、光学素子表面に成膜された光学薄膜上に付着し、光学薄膜の空隙や細孔をつたって内部深く侵入して吸着されて光吸収を引き起こす。さらにレーザ照射後は、重合あるいは固着してさらに光透過率を低下させる。
【0007】
縮小投影半導体露光装置では、レーザ光源から半導体回路が露光されるウエハまでの間に、数十枚にもおよぶ様々な形状・用途の光学素子が配置されており、光学素子の両表面、すなわち、光の入射側と出射側の両表面に光学薄膜がコートされている。つまり、薄膜コート面数は全光学素子数の2倍となる。1台の半導体露光装置において、使用される全光学素子は同一鏡筒内に設置されているので、ほぼ等しく鏡筒内に存在する揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気で汚染されて透過率が低下することになる。ここで、ある光学素子の片側コート面の透過率をTとし汚染による透過率低下量をΔTとすると、この光学素子の汚染後の両面透過率は(T−ΔT)2となる。全光学素子数をn個とすると、全系での透過率低下量は(T−ΔT)2Nとなる。従って、レーザ光源から数十枚に及ぶ全光学素子を透過してウエハ上に到達する露光光の光量は、汚染が全くない理想状態と比較して、汚染がある場合には致命的に小さくなる。もちろん、鏡筒内に持ち込まれる揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気量を極力抑える努力は行われるが完全にゼロにすることは不可能なので、現実には揮発性有機物質、揮発性無機物質及び水蒸気物の吸着、重合固着に起因する透過率低下は、必ず生じる問題である。結局のところ、全光学素子を透過してウエハ面に到達した光量は、もとの光源光量の数%程度と極端に低くなっているのが現状であることから、露光時間が長くなり、重合物質が厚く析出した際の光学素子の交換頻度も増加してしまい、生産性が極端に低下している。
【0008】
この発明の課題は、光学素子上へ堆積させた光学薄膜の構造を緻密化させるフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法及び該処理方法により緻密化されたフッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法は、フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、前記反応炉内にフッ素ガスを導入して、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程とを含む光学薄膜の緻密化処理方法であって、前記緻密化処理工程における前記反応炉内の温度が200〜400℃、フッ素ガス濃度が10ppm〜100%であることを特徴とする。
【0010】
この請求項1記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法によれば、フッ化物光学素子に積層されたフッ化物光学薄膜のフッ素欠損の補充を行うと共に、フッ化物光学薄膜を緻密化することができる。従って、光学素子を格納している半導体露光装置の鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。
【0011】
また、請求項2記載のフッ化物光学素子は、請求項1に記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれたフッ化物光学薄膜を備えることを特徴とする。
【0012】
この請求項2記載のフッ化物光学素子によれば、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれ緻密化されているため、揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができるフッ化物光学薄膜を備えるフッ化物光学素子を提供できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理方法について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態にかかる光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。この緻密化処理装置は、光学薄膜を積層させた光学素子を収容する円筒状の内部空間を有する処理炉2を備えており、処理炉2の周囲には、外部ヒータ4が配置されている。処理炉2の底部には、ガス導入口6及びガス導入口6の開閉を行うバルブ8が設けられている。また、処理炉2の上部には、ガス排気口10、ガス排気口10の開閉を行うバルブ12、排気ガスの流量制御を行うと共に処理炉2の内部の圧力制御を行う流量・圧力制御装置14が設けられている。
【0015】
処理炉2の内部空間には、光学素子を支持する複数の光学素子支持台16が設けられており、各光学素子支持台16により、蛍石により形成されたフッ化物光学素子18が支持されている。なお、フッ化物光学素子18には、フッ化物光学薄膜20が積層されている。処理炉2の各光学素子支持台16の近傍には、ニッケル製の熱電対挿入管22が設けられており、各熱電対挿入管22には、処理炉2内のフッ素ガス雰囲気温度を計測するための熱電対24が挿入されている。
【0016】
次に、この光学薄膜の緻密化処理装置を用いたフッ化物薄膜の緻密化処理方法の説明を行う。ここで処理炉2の材質はニッケルであり、バルブ8、バルブ12及びガス配管の材質はニッケル−銅合金のモネルである。なお、処理炉2の内壁、ガス配管内壁、バルブ8、バルブ12の接ガス部の材質としては、ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、アルミニウム及びアルミニウム系合金の中の少なくとも一つであれば良く、かつ、クロム、チタンの含有濃度が1%以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である材料が用いられる。
【0017】
光学薄膜緻密化処理の第一工程(格納工程)では、フッ化物光学薄膜20が予め成膜されているフッ化物光学素子18を用意する。この用意したフッ化物光学素子18を洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する。
【0018】
第二工程(脱気処理工程)では、真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のフッ化物光学素子18を150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する。なお、フッ化物光学素子18の温度計測には、熱電対24を用いる。この水分脱気処理工程における処理温度は100〜170℃の何れかの温度を適宜選択可能である。
【0019】
第三工程(緻密化処理工程)では、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。この緻密化処理工程において、フッ素ガス雰囲気において加熱することからフッ素欠損を防止しつつ、フッ化物光学薄膜を焼きしめフッ化物光学薄膜を緻密化させることができる。この際に、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。この緻密化処理工程における処理炉2内の温度は200〜400℃の何れかの温度を適宜選択可能であり、フッ素ガス濃度は10ppm〜100%の何れかの濃度を適宜選択可能である。
【0020】
第四工程(冷却工程)においては、処理炉2内の加熱を止めて、第三工程と同一のフッ素ガス濃度のまま、処理炉2内の冷却を開始する。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。なお、冷却工程中は、排気系を開放してガスを流しつづける開放系処理炉としてもよいし、排気系を止めてガスを流さない密閉系処理炉としてもよい。
【0021】
第五工程(取出工程)では、ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるフッ化物光学素子18を取り出す。
【0022】
【実施例1】
真空蒸着法により、蛍石基板上に膜厚150nmのMgF2単層膜を堆積させて、サンプルとした。このサンプルを、上述の発明の実施の形態に記述したフッ化物光学素子上のフッ化物薄膜用の緻密化処理方法に従い、緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0023】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0024】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素ガス濃度のまま、処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。
【0025】
処理前後のサンプルであるMgF2単層膜の断面SEM写真を図2に示す。処理前のas−depo膜の断面を観察すると、基板/膜界面から膜表面に向かって細長い柱が伸びており、この細長い柱が束ねられた状態で膜が出来上がっていることが判る。as−depo膜は、典型的な柱状構造である。同時に、この細長い柱間には低分子量の気体が容易に通過できる隙間が空いていることも容易に確認できる。これら細長い柱の一本一本の表面に揮発性物質が吸着可能である。膜上部の表面の面積に比べて、膜の本来の比表面積は比較にならないほど巨大である。一方、本発明の緻密化処理を施した膜では、加熱された結果として、細長い柱どうしが癒着して個々の柱が太くなり、柱間の隙間も閉ざされたり狭くなったりして、緻密な構造へ変化していることが確認できる。
【0026】
【実施例2】
前述したように、半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内は窒素ガスにてパージされている。この鏡筒内に混入する可能性のある揮発性不純物は、酸素、水蒸気、芳香族系有機物、シロキサン系有機物、アンモニアであることが微量ガス分析の結果からわかっている。この中で、芳香族系有機物とシロキサン系有機物は光学素子上の光学薄膜表面に吸着した後、レーザ照射によって光CVD反応が生じて重合し固着して、光学素子の透過率を低下させる。これら有機物が、光学薄膜上で重合固着する現象を「曇り」と呼ぶことにする。
【0027】
半導体露光装置に採用されているフッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子が、曇りやすいか曇りにくいかによって、その露光装置の露光性能や生産性が決定される。本発明者らは、フッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子に曇りが発生する環境を人工的に作り、その環境下でフッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子にレーザを照射して透過率変動を測定したところ、薄膜の構造によって曇り程度に大きな差がでることを実験により確認した。実験方法と結果を以下に説明する。
【0028】
図3は、レーザ照射実験装置の構成図である。表面に光学薄膜が積層されている光学素子に対して、ArFエキシマレーザを照射する目的で製作した実験装置である。また、光学素子を格納しているチャンバ内のガス環境や不純物濃度を変化させて、レーザ照射できるように構成されている。よって、このレーザ照射実験装置は、実際の半導体露光装置の鏡筒内にレンズやプリズム、ミラーといった光学素子を格納した場合と同等の結果が得られる実験装置である。
【0029】
図3に示すように、ArFレーザ発振機30から射出されたArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ光路32を介して光学素子34が収容されるチャンバ36内に導入される。即ち、ArFエキシマレーザ光は、ArFレーザ発振機30とチャンバ36との間に設けられた開閉シャッタ38、導波管40及び入射側フッ化物窓42を介してチャンバ36内に導かれる。
【0030】
チャンバ36内には、光学素子34を支持する光学素子支持台42が設けられており、この光学素子支持台42により支持される光学素子34には、光学薄膜44が成膜されている。チャンバ36には、射出側フッ化物窓46が設けられており、射出側フッ化物窓46から射出したArFエキシマレーザ光は、導波管48、開閉シャッタ50を介してジュールメータ52に入射する。なお、チャンバ36には、ガス導入管54及びこのガス導入管54の開閉を行う開閉バルブ56が設けられていると共に、ガス排気管58及びこのガス排気管58の開閉を行う開閉バルブ60が設けられている。
【0031】
まず、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面に、MgF2/LaF3の交互積層からなるDUV域反射防止膜を成膜してサンプルとした。同一のサンプルを2つ用意して、片方はas−depo膜サンプルとして何もせずにとっておき、もう一方には本発明のフッ化物用の緻密化処理を施し、緻密化処理済膜サンプルとした。
【0032】
as−depo膜サンプルと緻密化処理済サンプルの両方について、ArFエキシマレーザを照射する直前の透過率スペクトルを分光透過率測定器で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図4、図5に示す。
【0033】
次にas−depo膜サンプルを図3に示すレーザ照射実験装置内に格納した。芳香族系有機物の代表としてのトルエンと、シロキサン系有機物の代表としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0034】
次に、緻密化処理済膜サンプルを図3に示すレーザ照射実験装置内に格納した。先ほどと同様のトルエンとオクタメチルシクロテトラシロキサンの混合蒸気を窒素ガスに乗せて、レーザ照射実験装置内に循環させながら、ArFエキシマレーザをサンプルに106ショットだけ照射した。
【0035】
最後に、ArFエキシマレーザを照射した後のas−depo膜および緻密化処理済膜の両サンプルについて、透過率スペクトルを分光透過率測定機で測定した。測定した透過率スペクトルをそれぞれ図4、図5に示す。図4及び図5のいずれの結果とも、レーザ照射後に透過率が低下し、かつ、スペクトルは長波長側ヘシフトしている。これは、紫外光を吸収する重合物が堆積したことを表している。すなわち、光を吸収することから透過率が低下し、重合物が光学薄膜上に堆積して膜厚が増えたことからスペクトルは長波長側ヘシフトしている。
【0036】
図4のas−depo膜サンプルと図5の緻密化処理済膜サンプルの結果を比較すると、緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、透過率低下およびスペクトルの長波長側へのシフトが顕著に少なくなっている。本発明の緻密化処理方法により、光学薄膜の構造を緻密化して空隙や細孔をなくしてやることで、不純物が空隙や細孔を通じて膜内部へ侵入し吸着することができなくなるので、重合膜堆積による透過率低下が大幅に抑制できた。
【0037】
本発明の緻密化処理方法により緻密化したフッ化物光学薄膜を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長、真空紫外のF2レーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされるフッ化物光学薄膜の透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができる。これにより、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際の透過率低下や照度ムラの発生を抑制でき、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【0038】
【実施例3】
本発明者らは鋭意研究した結果、フッ化物光学薄膜の持つ光吸収損失を低減させながら該フッ化物光学薄膜を緻密化するためには、フッ素ガス雰囲気中において該フッ化物光学薄膜を加熱しなければならないことを明らかにした。具体的な実験結果を以下に示す。
【0039】
平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面にMgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを準備する。まず、このサンプルを本発明の実施の形態にかかるフッ化物用の緻密化処理方法に従い、フッ素ガス雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、サンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0040】
次に、ヘリウムガスで10ppmに希釈されたフッ素ガスを処理炉2内に導入する。流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるように希釈フッ素ガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0041】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、同一のフッ素ガス濃度のまま、処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、希釈フッ素ガスの導入を止めて、処理炉2内を排気し、ヘリウムガスで置換する。ヘリウムガス置換を止めて処理炉2を開放して、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをフッ素雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0042】
フッ素雰囲気での緻密化処理済膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図6の実線グラフに示す。フッ素雰囲気での緻密化処理済膜は、後述するas−depo膜に比べて、短波長ほど透過率が高くなっている。この理由は、フッ素雰囲気中において、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、同時にフッ化物薄膜のフッ素化反応が生じ、フッ化物薄膜中に存在している僅かなフッ素欠損部分にフッ素が補充されて、真空紫外領域における光吸収損失が低減されるからである。
【0043】
【比較例】
実施例3で用いたサンプルと同様のサンプルを2つ準備する。即ち、平行平板で厚み3mmの蛍石基板の両面にMgF2/LaF3の交互積層からなる157nm用反射防止膜を成膜したサンプルを2つ準備する。一方のサンプルを、フッ素を含有していないヘリウム雰囲気中にて緻密化処理を行った。即ち、このサンプルを洗浄した後、処理炉2内の光学素子支持台16上に固定する(格納工程)。真空ポンプを用いて、ガス排気口10を通じて、処理炉2内の圧力が10−4Paになるまで処理炉2内の気体を排気した後、処理炉2内にガス導入口6を介してヘリウムガスを導入しながら、外部ヒータ4を用いて処理炉2内のサンプルを150℃に加熱して12時間保持し、水分を脱気する(脱気処理工程)。なお、サンプルの温度計測には、熱電対24を用いる。
【0044】
次に、フッ素を全く含まないヘリウムガス雰囲気中において、流量・圧力制御装置14を用いて、処理炉2内の圧力が1気圧になるようにヘリウムガス流量を調節しながら、処理炉2内の温度を300℃まで加熱する(緻密化処理工程)。300℃に到達後は緻密化処理の計時を開始し、温度300℃、圧力1気圧で一定となるようにする。
【0045】
次に、処理炉2内の加熱を止めて、処理炉2内の冷却を開始する(冷却工程)。処理炉2内の温度が室温まで下がった時点で、処理炉2を開放し、緻密化処理を施した被処理物であるサンプルを取り出す(取出工程)。このサンプルをヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜と呼ぶ。
【0046】
また、他方のサンプルは、成膜後に何ら後処理を施さなかった。このサンプルをas−depo膜と呼ぶ。
【0047】
ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜及びas−depo膜について、分光透過率測定器で測定した透過率スペクトルを図6の破線グラフに示す。ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜は、as−depo膜に比べて、著しく透過率が低く、短波長ほど透過率低下量が大きくなる。両サンプルの化学組成を、電子線プローブマイクロアナシリス(EPMA)装置を用いて詳細に分析した結果、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜はas−depo膜に比べて、フッ素含有量が大幅に減少していた。つまり、今回のヘリウムガスのようにフッ素以外の雰囲気中で、フッ化物薄膜を加熱して緻密化反応を進行させると、フッ化物薄膜は緻密化されるが、同時にフッ化物薄膜中からフッ素原子が乖離・気化する。その結果、フッ化物薄膜は、大幅にフッ素が欠損することになり、真空紫外領域における光吸収損失が短波長ほど増加する。
【0048】
実施例3及び比較例によれば、フッ素ガス雰囲気中において、フッ化物光学薄膜を備えたフッ化物光学素子を加熱することにより、フッ化物光学薄膜の光吸収損失を増加させることなく、該フッ化物光学薄膜を緻密化することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、光学素子を格納している鏡筒内に残留する揮発性有機物質、揮発性無機物質がフッ化物光学薄膜に吸着・重合することで引き起こされる透過率低下(曇り)を極力小さく抑えることができるフッ化物光学薄膜を備えるフッ化物光学素子を提供できる。従って、このフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法により緻密化したフッ化物光学薄膜を備えるフッ化物光学素子を半導体露光装置へ採用すれば、紫外のKrFエキシマレーザ波長、深紫外のArFエキシマレーザ波長、真空紫外のF2レーザ波長を露光光源に用いる半導体露光装置において、半導体ウエハ上に微細回路パターンを焼き付ける際における、透過率低下や照度ムラの発生を抑制することができ、半導体露光装置の生産性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学薄膜の緻密化処理装置の構成図である。
【図2】緻密化処理前後のMgF2膜の断面SEM写真である。
【図3】レーザ照射実験装置の構成図である。
【図4】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜のas−depo膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図5】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3の交互積層反射防止膜の緻密化処理済膜について、ArFエキシマレーザ照射曇り試験を行う前後の透過率スペクトルである。
【図6】蛍石基板上に積層したMgF2/LaF3交互積層の157nm用反射防止膜について、as−depo膜、フッ素雰囲気での緻密化処理済膜、ヘリウム雰囲気での緻密化処理済膜の透過率スペクトルである。
【符号の説明】
2 処理炉
4 外部ヒータ
6 ガス導入口
8 バルブ
10 ガス排気口
12 バルブ
14 流量・圧力制御装置
16 光学素子支持台
18 フッ化物光学素子
20 フッ化物光学薄膜
22 熱電対挿入管
24 熱電対
30 ArFレーザ発振機
32 ArFレーザ光路
34 光学素子
36 チャンバ
42 光学素子支持台
44 光学薄膜
52 ジュールメータ
Claims (2)
- フッ化物光学薄膜が積層されたフッ化物光学素子を反応炉に格納する格納工程と、
前記反応炉内にフッ素ガスを導入して、前記フッ化物光学薄膜を加熱して緻密化する緻密化処理工程と、
前記反応炉に格納された前記フッ化物光学素子の冷却を行う冷却工程と、
前記反応炉から前記フッ化物光学素子を取り出す取出工程と
を含む光学薄膜の緻密化処理方法であって、
前記緻密化処理工程における前記反応炉内の温度が200〜400℃、フッ素ガス濃度が10ppm〜100%であることを特徴とするフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法。 - 請求項1に記載のフッ化物光学薄膜の緻密化処理方法を施すことにより、水蒸気、揮発性有機物質及び揮発性無機物質が侵入可能な細孔を塞がれたフッ化物光学薄膜を備えることを特徴とするフッ化物光学素子。
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